第32回政府税調総会終了後会長記者会見の模様

日時:平成14年9月3日(火)16:11 ~16:44

石会長

それでは、今日、税制調査会総会を行いましたので、その概略--概略といっても内容については一々触れる必要はないと思いますので、取りまとめた立場から、今後どういう形でこれまでの議論を利用するか、あるいは活用するかという点に絞って、議論したいと思います。

今日の最大のねらいは、「あるべき税制」の実現に向けた議論の中間整理、この案、お手元におありかと思いますが、今日の後半で議論いたしました。この文案、これがどういう位置づけで、これを今後どういうふうに活用するかという点。それから、今日出された幾つかの委員の意見をどういうふうな方向に持っていって、最終的な案に生かすかといったような点を少し整理してみたいと思います。

まず、この文章は、塩川大臣の「透けて見えるような、今後の税制改革の方向が透けて見えるような」という、そういう発言があり、我々も中間的にまとめるには今いい時期だと思いましたので、まとめました。11回の対話集会を経て行われたものでありますから、一応、国民の声というものを受け止めて書いたと。これは、総会の場でも申し上げましたように、3段階のパーツに別れておりますから、そういう意味では、最後のパーツを見ていただきますと、我々が考えている方向が、俗に言われる「透けて見える」ということになるかもしれません。

それから、和田委員からございましたが、対話集会との絡みがかなり重要視されているので、対話集会の情報として、対話集会の資料がもう1つございましたが、これをまとめてつけ加えて、この中間整理の補完資料として使いたいと思います。

そこで、3つ、4つ、我々の言いたいことがこの各項目の中に隠されていると思いますが、それが「透けて見える」具体例になるかどうかわかりませんけれども、例えば、2ページ目の一番下に書いてある「配偶者特別控除の見直しについては、逆転現象に対しては所要の配慮措置を講じる」というのは、「ぶら下がっている面」についてそれなりの配慮をするということだろうととれるでしょう。

それから、次の外形は、このままのとおりでございます。

それから、研究開発投資につきましては、やはり増加したものではなくて根っこからということがあり得べしということと、それから、一般減税か政策減税かという議論がしばしば行われておりますが、我々は政策減税の中でより税源を有効に使いたいという意味においては、既存の租税特別措置を大胆に統廃合する中で、ある種の統廃合、選択と集中をやりたいということをここに書き込んでおりますから、研究開発投資、あるいは設備投資、この辺は既存の制度との絡みでやってみたいと、やらなきゃいけないと考えています。

それから、4ページ、5ページ目に書いてございます、簡易課税制度、これはすぐというわけにはなかなかいかんでしょうけれども、いわゆる見直しではなくて、廃止の方向で検討するということもはっきり書き込んでございます。

やはり一番のこのペーパーの眼目は、生前贈与の6ページ以下のところで書かれております、相続税・贈与税の一体化の具体的な方向性をここではっきり書き込んだということだろうと思います。これをいかに制度に落としていくかということがこれからの仕事ということになります。

「その他」はほんの2行しか書いてございませんが、この「その他」に書き込まれるべき資料は、材料は、まだまだ幾つか出てこようかと思います。それを踏まえて、これからの増税・減税の組み合わせということが実際的に議論の対象になるというふうに考えていただきたいと思います。

これは、やっている最中--やっている最中という意味は、6月7日に小泉首相から出されました「小泉5項目」について、具体的に制度設計をしようと、これを来年度税制改革の具体的な提案にしようと、いうふうに段取りをしているその最中に先行減税、あるいは(増減税)一体等々出てきたものですから、我々の当初のもくろみとは大分ずれた面で幾つかつけ加えなければならない点ができたということは、今日の総会の議論を見てもおわかりのとおりだと思います。つまり、委員の方では、5項目の制度設計というものはさることながら、増税がどのぐらいで、減税がどのぐらいでというところ、先行の程度はどのぐらいで、後どういうふうにするのかという関心もございます。ただ、基礎問題小委員会でも大分議論いたしましたけれども、あくまで我々は、制度設計ということを税調の任務としております。典型的なのは相続税・贈与税の一体化の制度設計でありますが、結果として5項目の組み合わせによっていかようにもできようかと考えております。8月6日にまた1兆円を超える規模の先行減税でやって、多年度減税というふうに言われておりますが、こういう設計はまさにこれからの話と思っています。「その他」の項目にございます、金融関連税制、土地関連税制、あるいは寄附税制等々も、当然これ以外に入ってくる項目であろうし、議論しなければならない項目であると考えております。そういう意味で、狭く、この5項目の中だけで出と入りを議論するというようなことを今考えているわけではございません。そういう意味で、まだ大まかな方向を今日決めただけでありますから、これから本格的に議論しなければいけないと思っています。

今、恒久か、時限かというような議論もかなりマスコミはとらえられておりますが、これはたしか昨日、那覇で塩川大臣も触れられましたように、私自身も前から時限か、恒久かという組分けで、恒久が増税で時限が減税だなんていう組み合わせで将来増税になるのはけしからんという議論は、僕はあまり役に立たない不毛な議論だと思っています。つまり、時限といったって、租税特別措置を見てもらえばわかるように、絶えず延長されていますし、恒久と言いつつ、数年後にばっさりなくなっちゃう税だってあるわけですし、改正があれば恒久ではあり得ない。そういう意味で、今の2点に立って、数年先を見て増税になるというような趣旨の議論はしてもあまり意味がないと思いますし、ただ、諮問会議自体、2010年でプライマリーバランスを黒字にしたいと言っていることは、あと数年たてばその方向に行かなければならないということであり、いろいろな組み合わせもあろうかと思いますが、負担増の方の議論というのは本格的に出てくるんだろうと思いますね。そういう意味で、当然のことながら、時限とか恒久とかというのはこれから極めて流動的でありますから、その辺は十分言葉としても気をつけて議論をしたいと思っています。

というわけで、これから後やるべきことは、「税についての若者集会」というのを10月22日に1回やります。これはぜひ新聞、マスコミを通じて宣伝していただきたいんですが、280人分の席しかないのでそれほど大規模にはできませんけれども、都内の各大学に声をかけて、そして学生をいっぱい集めて、今までの対話集会は8対2ぐらいの男女比でありましたが、今度は五分五分ぐらいになればにぎやかになるかなと思っています。それから意見発表者に当たる各大学のスピーカーも、女子学生も出てこようかと思いますので、そういうことを踏まえて、3時間ほど議論してみたいと考えております。

総会の方は、今月の末あたりから本格化しますし、基礎問題小委員会では事務局が再度今日の方針を受けて作業を始めるという制度設計の細かい点も(議題として)ございます。それを踏まえて、後半から議論を開始して、11月の真ん中ぐらいには今度は中間整理ではなくて、一応来年度税制改正として提案できるようなものも含めて、最終的な基本方針の方向づけを出してみたいと、このように考えています。

以上です。

記者

今の会長のご説明ともちょっと重複したりするんですけれども、この中間整理をするまでの議論が5項目中心の制度設計で、後から総理の先行減税1兆円超というのが出てきたと。それで、そこの部分がこの中間整理は透けて見えるような形になっているわけですけれども、総会でも委員からその関係がよく見えないと。今、会長も、その5項目だけではなくて、いろんなものを出と入りで考えるなんていうお話ですが、結局、先行減税の柱がその5項目の中から出てくると考えると…。

石会長

いや、5項目以外にもあるでしょう。「その他」あたりで、これからいろいろ多分、外界もうるさくなってくるから、何かあるかもしれない。まあ、いいや。5項目について、それで?

記者

ということを考えるとなかなか、委員からの指摘にもありましたけれども、政策的な投資減税にしても、会長のお話のように、租特の整理を前提としてとか、真に必要な分野に限るということになってくると、なかなか大きなものにならないんではないかと。あと、組み合わせの点でも、例えば、先ほどおっしゃった、すぐにはできないとおっしゃったような消費税の簡易課税制度なんかについても、例えばそれを15年度にやらずに16年度にやるから、そこは多年度税収中立になるんだとか、そういうイメージというのは何かございますんでしょうか。

石会長

まだございませんけれども、この秋に議論して、少し具体的な設定ができればやってみたいと思います。今ご指摘のように、我々としても5項目で基本設計をやっているところに、後からいわゆる先行減税が出てきましたから、その組み合わせは、実は木と竹を継いだような状況ですよ、まだ。そういう意味で、これから議論すべきことは、まだ時間はたっぷりありますから、秋に、あるいは暮れにかけまだ数カ月ありますから、時間的には十分時間があると思いますから、そこで処理したいと思っています。

記者

あと、基本方針とちょっと細かな文言の話なんですけれども、書き振りの問題で、例えばさっきの簡易課税制度だと、基本方針は確か「廃止を含めて云々」だったと思うんですけれども、中間整理では「廃止の方向で検討する」と。あとは、外形課税の話だと、景気の状況を踏まえてみたいな話がなくなっているとか…。

石会長

なくなっちゃった。「基本方針」にもないんだよ。

記者

ないんでしたっけ。というように、ある程度、5項目については強目に、特に公平な課税を目指す点では強目に出ていると考えればいいんでしょうか。

石会長

あのね、これはまだ議論していませんけれども、僕は5項目が同時に、一斉にわーっと走り出すと、それもすべて全廃に向けて走り出すというのは不可能だと思っていますよ。例えば、配特の見直しといったって、38万円、この間も何回も説明していますけれどもね、一挙になくすような方向で制度改正できるかといったら、これは難しいでしょう。したがって、恐らく、増税の方向ということが強く出る場合には、必ず慎重な議論を重ねつつ、激変緩和も踏まえつつやらなきゃいけない面が多々ある。それから、今日、奥本さんが株価等の絡みでご心配になっていましたけれども、アナウンスメント効果としては、税制改革というのはある程度効いてくるんでしょう。実態面でどれだけ効くかわかりませんけど。そういう点の配慮もあるでしょう。そういう意味で、我々として拙速にこれをすぐさま制度に移してどうこうというのは、恐らく現実的ではないと考えています。そういう意味で、先行減税、その組み合わせでどうかということは、これからもうちょっと時間をかけて考えてみたいと。何回も繰り返しますが、それしか今の段階ではお答えできないと思っています。

それから、最近非常に苦慮したのは、この間も議論しましたように、増税玉と減税玉の具体的なものがすぐさま、昔ほど簡単に出てこないということですよね。したがって、その具体的な候補がない中での選択でありますから、極めて組み合わせが難しいと、このように考えています。つまり、中長期的な視点から見ると、今こんなことをしていいかどうかというようなことまで入れなきゃいけないかもしれないし、入れてもあまり効果がないんではないかと。こういう視点もあるだろうし、いろんな面からの配慮が重要なので、時間がもう少しかかるということだけ、今日、申し上げておきます。

記者

今日の審議でも一部出てきたかと思うんですけれども、先ほど5項目以外のこれからの検討対象になることで、証券税制の問題ですね。今日も奥本さんあたりから議論が出たようですけれども、1つには、これから何をするかということもあるけれども、今仕組まれている制度がかなり複雑でわかりにくいといった批判も出ています。そういったことについて、証券税制、これが市場の活性化に結びつく、結びつかないというのはいろいろな議論がございますけれども、改めてご見解を伺いたいんですが。

石会長

いや、あれは、ある意味で政府税調、これもちょっと弱気なんだけれども、政府税調が絡まないんですよ、あの議論は、ほとんど。あれだけの制度になってしまって、既にもう来年の1月から移すとやっている段階で、今どれだけそれを逆の方向なり、ある方向に舵を切ってとれるのか。これは僕は政治的なマターだと思っています。我々の関心はですね、ひとえに金融所得の一元化、その総合化というところに焦点があります。中長期的な提案、議論、これは我々の一番なすべきことだと思っていますが、今ある、複雑なという批判のあるものをどうするかというのは、ちょっと我々の手を離れているんじゃないかと思っていますね。それ以上また何かいろいろなことをいじくっても恐らく株価には影響しないでしょうし。といって、我々が長年主張しています、申告分離一本化、これはそれなりの評価もできるし、リスクを取れるような税制にもできるというふうに評価しているんですが、余りにも付帯的な措置がぶら下がり過ぎたので。ただ、くどいようでありますが、ちょっと我々の中で、いろいろ中長期的な視点からの提案はしたいと思っておりますし、今の制度の欠陥なり、問題点は指摘したいと思っていますが、これがすぐに制度改革に結びつくようなところまではなかなか難しいと思っています。

記者

先ほどのお話でちょっと確認ですが、2点ぐらい聞かせてください。

「その他」にありました金融課税と土地税制の問題ですけれども、これは15年度改正の中にも入ってくるのかどうかというところが1点目と、それから、先ほどの1兆円を超える規模の減税の総理のお話なんですけれども、ここについては、確かに5項目の中で増税、減税の組み合わせということはこれから考えますということだと思うんですけれども、じゃあ、その規模をどうするかとか、例えば多年度税収中立のときの考え方をどうするのかというのは、これは税調の方でも何か議論をして、何か結論を出そうということにするんでしょうか。そこら辺はどうなんでしょうか。

石会長

後段のことに関しましては、これから総会も含めて税調の方々の議論を踏まえて議論したいと思っていますが、私はね、全く個人的なんですがね、恐らく、今税調があり、諮問会議があり、党税調があり、与党税調があり、様々なところで税制改革案を持っていますよね。そういう意味において、ある種の分業ができていると思っているんですよ。我々政府税調の一番の仕事は、やはり今回明らかになったように、相続税・贈与税の一体化の税を仕組むなんていうのは我々しかできないと自負しているんですよ、ある意味では。そういう意味の具体的なデザインをするのは我々の仕事と思っていますから、その結果、どういう税制改革案が個々の税で出てくるかと。それを踏まえた後での増税・減税の組み合わせ、先ほど申し上げたように、例えば配特をなくすとき、38万円を30万円にするか、20万円にするか、15万円にするかによって税はずっと変わってきますよね。増税幅が。そういうことは、僕は最終的に、恐らく政治的な判断が非常にきつく効いてくると思いますから、そういうことでやはり、国民の付託を受けた政治家が決められるのが筋じゃないかと思っています。そういう意味で、我々が他の党税調とか諮問会議がやっております増・減税一体の…じゃないや、多年度税収中立の組み合わせ云々について、もしくは塩川大臣あたりから「これとこれを検討してみい」というようなことが政府税調に対してあればやりますが、それについて具体的な案をこちらからぶつけるということは、ちょっと難しかろうとは考えています。

それから、「その他」のところで、恐らく金融税制と証券税制かと思いますが、私、今、先にお答えしたように、税調ではなかなかここはイニシアチブはすぐはとらない方がいいだろうし、とれないと思っています。土地税制については、恐らく政治的にはいろんな問題が出てくる可能性が十分あるんですね。我々、好むと好まざるとにかかわらず、その項目を踏まえて、減税・増税の組み合わせ等々に何か意見があるなら言うべきことがあるかもしれません。土地税制は、例の登録免許税とか不動産取得税とか何かいろいろ巷に上がっているものが出てくる可能性はある。それについてどのような取り扱い方をするかも議論の対象でありますが、そのぐらいのことを考え、それは恐らく来年度税制改革、特に地価とか株価というのがこのようなものに続いてあとまたぞろ出てくる可能性はある。ただ、僕は寄附金税制にしても、公益法人税制にしても、納番にしても、二元的所得税にしても、まだまだやるべきことがあると思っていますから、それは我々の一種のテリトリーでありますから、ぜひやっていきたいと思っています。それは来年まででなくてもいいと思っています。長目のやつはね。

記者

配偶者特別控除なんですけれども、会長が総会の冒頭でおっしゃったように、議論としては女性の中でも二分しているような状況であったと思うんですけれども、そうではありながら、廃止というふうに非常にきつめのトーンで盛り込まれたというところの背景と、この廃止というものの制度的な細かい話なんですけれども、どういうふうに--上乗せの部分を減らしちゃうという考えということでよろしいんでしょうか。

石会長

大澤さんから申し入れがあったというのはご紹介しましたように、ある一方の立場からは、もう配偶者控除そのものも廃止せよという強い意見が出てきておりますが、一挙に76万円を対象に課税ベースを広げるというのは難しかろうと思っています。そういう意味では、配特でしょうね、最初は。で、配特も、上積み部分とぶら下がっている部分がありますから、まず第一歩としては、上積み部分、これだって 900何十万の人が絡んでいますから、大きな問題だと思いますから、一挙に38万円を根こそぎというのは難しかろうと思っています。そういうことも踏まえまして、僕も10年、15年といっているのは、あるものを1年で終わり、次のものを2年目に終わり、3年目に終わりというよりは、同時並行的にいろんな制度を徐々に、時の景気情勢、時の財源等々を踏まえてやっていくしかないと思っているんですよ。そういう意味では、実際に動き出したときにどれだけの、つまり急激な変革というのは難しかろうと思いますから、徐々にやるという意味においては、同時並行的にいろんなことをやらなきゃいけない。その第一歩が恐らく5項目だと思っているんですよ、初年度ね。配特もその中でありますが、配特をまず1年目にやめて、2年目に配偶者控除なんていうのはちょっと難しかろうと思っていますから。それから、配偶者特別控除というのは、やはり時の要請、あるいは時代の流れに合わなくなってきているということは多くの人が認めていると思っています。私自身もそう考えています。配偶者特別控除、対話集会でもいろいろ議論がありますが、専業主婦の持っております内助の功、例えば子供の教育の問題とか、家事のこととか、両親の介護のこと、すぐ出ますが、これに説得力がないのは、共働きでも、あるいは自営業の人もやっているよと言われちゃうんですよね。だから、何でサラリーマンだけそういう面倒を見るかという議論だと思います。したがって、子育て等々の議論が出るなら、また子育ての方を歳出の方でやるとかいろんな方法もあろうと思いますので、税だけでは難しいと考えています。お答えになっているかな、いいですか。

記者

何点かあるんですが、一番シンプルなところから。

まず、1兆円超の先行減税との関係なんですが、今日出てきた中間整理が中心になって仕組まれていくというイメージは、それでいいんでしょうか。

石会長

何になって?

記者

中心。これが核となって1兆円超減税…。

石会長

そうだよ。あと、この周りにいろいろ、クリスマス・ツリーみたいにくっつくであろうというふうにお考えいただいていいと思います。

記者

それから、今日出てきた文言の中の、具体的なイメージについて、石会長がどんなふうに思っていらっしゃるのかというのを聞きたいんですが、「設備投資減税の真に有効な戦略分野に集中・重点化」とあるんですが、「真に有効な」というのはどういうものをイメージしているのかというのが1つ。それから、免税点制度で、6割強が免税事業者で、それを「相当程度縮小させる」。この「相当程度」というのはどれぐらいのイメージかと。それから、もう1点、そのすぐ下ですね。簡易課税のところで、「基本的には廃止の方向で」という、その「基本的に」という言葉がくっついている意味を教えてください。

石会長

これは役人言葉だな。逃げ道があるということで、時間がかかるからね。それから一挙にはできないかというようなニュアンスもあるし、それから2億円を1億円ぐらいに1回落として、それからやるという2段階、3段階工法でやっていくかということを含めて、何だか、お役人がここにいるけど、すぐ「基本的」とか「など」とか入れたがるからさ、僕は極力落とそうと思っているんだけど、ここは入れておいても、今言ったように、一挙に簡易課税上限2億円をばんと飛ばすのは難しかろうから。だから、「基本的」と入ったら、やや腰が引けていると思ってくださっていいですよ。一挙には行かないと、こういうことだと思うよ。

それから、2番目の免税点のところだっけ。「相当程度縮小」--確か、昨日、那覇で塩川大臣は「 1,000万円だ」とおっしゃっていたけれども、そんなイメージか、あるいは 1,500万円か。つまり、半分か3分の1かというイメージはかなりできかかってきたのかなという感じはしています。それから、法人はもういいじゃないかというやつね。個人の方の 1,000万円とか、個人の方の 1,500万円以下とか、そういう感じだと思いますね。

それから「真に有効な」というのも、この「真に」だとか、「本格的」だとか、何とかかんとか「抜本的」だとか、これを言いたがるものでありまして、何かあるかな、この「真」は。恐らく、私は個人的には、そう広くやった方がいいだろうと思っていますけれども、何分にも財源が限られているし、重点4分野というのが出てきていますから、恐らく「有効な」という中には、重点項目のナノテクと、環境と、ITと…何だっけ、もう一発は。

事務局

バイオです。

石会長

うん。そういうものを想像していただいていいのではないかと思います。

以上3つだったっけな。

記者

最初の5項目に関しては、以前、通算で税収チャラ、中立でいいというお考えを表明しておられましたけれども、1兆円という話が出てくると、この5項目でチャラにというのはちょっと無理があるんじゃないかなと。やはり、減税になるという理解でよろしいんでしょうか。

石会長

あのね、僕は増減税一体で前からいいと思っていたんですよ、8月6日の首相から多年度税収云々でね。僕はね、首相もそう考えていたんじゃないかと思うんだよ、今考えたら。ただ、この景気情勢だし、特に政治的なインパクトからいって、何かやっぱり税制も先行してやらなきゃいかんだろうという配慮があったという意味で、僕は政治的に、何回も言っているように、この種の組み合わせができることはしようがないなと思っています。1兆円規模になったとき、この5項目の中の組み合わせでね、今日、佐野さんがたしか増税の方ばっかり大きくなっちゃって、1兆超えちゃうんじゃないかというふうに心配していたと思うけど、それはさっきから何回も言っているように、38万円を一挙に片づけようなんていうから多くなるんで、それはいかようにも組み合わせは可能でありますから、増税1兆円、逆に言えば減税の方が難しいですよ、いろいろ確保するの。どっちかといったら減税玉がない方が重要なんでね。これにさっきの「その他」の項目がつけ加わって、というようなことが恐らくそこで効いてくるんでしょう。何度も言っていますように、当初の出発点と途中でいろんな外野席の要望が加わったということで、我々基本路線もやや修正を余儀なくされている面もあるということで、これからのお手並みをご覧あれということだな。

記者

法人課税の実効税率についてなんですが、外形標準課税のところにちらっと載っているんですけれども、諮問会議の民間議員などからは、やはり実効税率の大幅引き下げなどの声が依然としてあって、改めてその政府税調として、それから石先生のご意見として、実効税率についてどうお考えか。

石会長

実効税率につきましては、もう基本方針にもはっきり書いてございますし、我々は 40.87%だったかな、あれはアメリカとほぼ同じだし、ドイツが急激に下げて 38.幾らになっていますけれども、地方税のところを除けば、まさに国際的なレベルに達していると思っている。かつ、国際比較において、法人の税負担が高いか、低いかというのは、いろいろなやり方はあります。ただ、決め手はありません。法定実効税率だけでやると、これは正確に法律に書かれた問題がありますから、高い、低いははっきりしますが、内閣府が出しましたように、法人の実効負担になりますと、これは実態面、例えば割増償却がどうだ、引当金がどうだ、税額控除がどうだと全部絡んでくる話でありますから、税率の問題だけではないんですよね。そういう意味で、僕は内閣府がああいうものを出して、あれを言うなら、いかに日本の法人は償却とか税額控除とか等々、政策減税の方の恩恵をこうむっていないという意思表示なら使えると思うけど、あれを税率の話に引っかけていくと、かなり迂回した議論にならざるを得ないと思っています。

それで、ここ何回も申しておりますが、法人税は今後、租特の整理も含め、租特の整理はしていくにしても、基本税率、長期的には引き下げる方向、負担を軽減する方向であるということで、僕はこれは基本的に諮問会議と一致していると思います。ただ、問題は、今どっちをやるかということで、税率に関してはね、何遍も申し上げているように、平成9年度、10年度、11年度あたりでもう9%下げて、今日の資料にも出ていると思いますが、その間、設備投資、ちっとも増えていないんですよ。何が増えているかというと、債務返済が増えているということと、企業の内部留保が増えているぐらいの話であって、さらに今ここでやるということがどれだけの効果があるかどうか。あるメッセージは含めることができるかもしれませんが、それとて3割の黒字企業だけに適用されるというのは、同じ財源を使うにしても問題ではないのかと思っています。私は、課税ベースを「広く」、税率を--「薄く」というのは大賛成で、これは諮問会議の人といつも言っているんですが、ただ「薄く」はとりあえず終わったと。これからは「広く」だと思っていますから、「薄く」をさらにやるというのには、それなりの理由がなければいけない。それは恐らく、あれでしょうね。法人が黒字になるのが半分ぐらいになるとか、今みたいに3割の企業しか基本税率下げても利用できないというのは問題だし、それから、新たな問題として出てきた問題としては、やはり税制全体を見渡して、そのバランスを考えて減税なら減税、増税なら増税をしなきゃならないというときに、過去に過大な減税をしてきた法人税、法人体質では難しいと思っています。対話集会でも大分出てきましたけれども、まして例の不祥事まで絡んだ今の企業に対して、そんなに税の方で面倒見てやる必要があるかというのがこれからどんどん出てくると思いますから、私は、いろんな意味で、税率の方はどうも問題であると思っています。それから、この間も申し上げましたけれども、研究開発とか政策減税の方が赤字法人にも使える余地がございますから、今のようなー極めて異常な時期と言うべきでしょうーのときには、基本的なロジックを使って税率を下げるということよりは、特異な時代を反映して、政策減税の方が向いているとは思います。政策減税もやたらと細々やるよりは、選択をして一度にまとめてやれという意味で租特を整理せいと言っているわけです。しかし、この議論は今の時点で言っているわけでありますから、恐らく数年後にはまたアメリカが基本税率をどんと下げるとかね、ドイツがどんと下げるとかね、そうなれば、当然基本税率の下げは議論になると思っていますし、それはやるべきだと思っています。だから、それはその時期に合わせて議論すべきで、今は我々の方に書いた方針でいいと思っています。

よろしゅうございますか。他に何かございませんか。今日は活発なご質問をいただいて。どうも。

(以上)