第31回政府税調総会終了後会長記者会見の模様

平成14年7月12日

石会長

久しぶりに総会を開きました。ご出席の方々はもう既にどういう議論がされたかおわかりだと思いますが、そういう意味で今日はお話することはあまりないんですが、島田さんと私がだいぶやりとりをして、今後の考えていることが一通り整理がついたかなあと思っております。

対話集会第2弾をやって、その後8月の後半、主として小泉5項目の中身を詰めるという作業が残されておりますから、それを固めつつ9月~10月にかけて中身を2003年度税制改革に結びつけるような形の議論をして行って、11月にはその中身を出したいと。そういう意味では次の政府税調の目標は、始めは基本方針第2弾的なイメージだったんですが、6月にだいぶ深くコミットしたものを作ったものですから、次なる第2弾までは少し時間が必要だし、5項目が出て来たということもございますから、5項目中心に11月まで検討し、それを中心にしたものを書きたいと、それ以降年明けにかけて基本方針で触れなかったもっと根源的なもの、もっと時間をかけてやらなきゃならないものを中心にやりたいと、このように考えております。

皆さんのご関心も対話集会の方にあろうかと思いますが、私も個人的には対話集会での反応といいますか、国民の代表の参加者の意見を生で聞いてみたいと考えております。

我々の争点であります「あるべき税制論」について、どういう形で意見が具体的に出るのか、これは第1ラウンドの1回目から6回目とは様変わりの状況でありまして、1回目から6回目はどちらかと言いますと白紙の状態でご意見を聞きたいという形ですから、どのような議論にも対応できたわけであります。

今回はある意味で我々なりのスタンスを出したものについて議論しようということでありますから、様々な意見が出て来ると思いますが、ただ、お願いしたいことは、「あるべき税制」について考えてもらいたいという問題提起であります。誰か他の人が税金を払えばいいじゃないかという話では、これからの少子高齢化・借金漬けの世界における日本の財政・税制はもたないと思いますので、それをしかと議論していきたいと思っておりますが、当然まだ議論がそれほど進展しておりませんから、アンケートの最後に答えていただきたいと思っております「あるべき税制論」に賛成か反対かの質問については、当然のことながら賛成の方がかなり少ないとみておりますが、ただこれはこれから時間をかけてじっくり議論を進めなければいけないものだと考えております。

そういうわけで今日は本質的な内容を議論しておりません。今後のスケジュールと決算内容等々でございますから、私の方から今日はご説明する内容はございません。あとはご質問についてお答えしたいと思います。

記者

小泉5項目に関して8月若しくは9月ぐらいに中間取りまとめをするというような話がありますが。

石会長

塩川大臣はそのようにおっしゃってますね。そこで中間取りまとめの意味ですけど、9月2日に沖縄での最後の対話集会が終わります。その報告というのは、5回分の対話集会をまとめてどういう議論があったかというのを我々なりの視点で議論したものを、9月の総会で報告したいと思います。その前に基礎小を2回くらいやっておきたいと思います。

総会でまとめたものがある意味で塩川大臣にお答えするような内容のものになっていればいいのかなと思っています。それを報告書の形でまとめるかどうかはわかりません。それと同時に5項目もすんなり整理がつくものと、まあどう考えたって相続・贈与の一元化なんていうものは難しい問題ですからね。9月の段階ですぐというわけにはいかないと思いますね。11月までに整理できればというものだと考えております。9月の答申はそういう形で整理したいと考えております。

記者

5項目に関して会長がある程度絵を描いていらっしゃるようなものがあれば、いくつか挙げていただけますか。

石会長

5項目の方向性は既に決まっていて、あと問題になるのは、もう方向が決まっていてあとどれ位の規模でどうするかっていう問題と、それから例えば、研究開発投資と一口に言うけども、研究開発というものの定義をしっかりとしないことには、なかなか実際にそれを研究開発の中で減税するというようなことはできないし、特定の分野をどうみるかというような議論が残っておりますから、この問題は一番、というか非常に時間がかかりますね。

それから外形標準課税については、総務省案というのが出てますけども、これはもう一回見直して、どういう格好でやるかという議論もしなければいけないと思っています。

それから、益税と称されるものの中身、これの免税点あるいは簡易課税制度、これはどちらかと言いますと、制度の仕組み、変更の幅、その議論になると思いますので、我々として具体的に数字を入れられるかどうか、これは自民党税調の方の意見もあると思いますから、これについてはそのまま数字のない形で出すということもあると思います。

それから、何度もここで申していますように、相続・贈与の世界で新しい形で生前贈与、あるいはこれは生前相続と言うべきかもしれません。そういうスキームを具体的にどう仕組むか、ここでも随分議論しましたが、だんだん、ある程度のスキームは、法制化のレベルまでは行きませんけども、こういう格好でやれたらなあという話は何回もここでご説明したような格好でいくんじゃないか。つまり65歳以上の人に生前贈与を、相続税と一体化した条件の中でやっていくと。ただしそれ以外で贈与だけで終わる方々もまた残るわけで、現行制度がそのまま残る。だから現行制度ともう一つ別の相続・贈与一本化の中での相続という世界が作れたらなあと思っていますが、それもある程度できるのではないかと思っています。

記者

5項目の制度設計にあたって、諮問会議へも議論をフィードバックして一緒に共同してやるという意見もありますが。

石会長

それがこれからどうなるかはわからないですが、一緒に協議してやるというスタイルをとるのか、それともこちらがとりあえず制度設計をして、ご存知のように政治的なマターの問題も多いから、与党三党あるいは自民党税調に意見を投げかけるというようなこともおそらく官邸あたり、あるいは政府がやるかもしれません。したがって、諮問会議とだけ一緒にやっていいのかどうか。つまり、そこで一緒にやる方がよいのか、我々の案をまとめて、それを他の審議される方にまわすのがよいのか、これから考えてみたいと思いますが、まあ政府税制調査会もそれなりに一つの機関であってそれなりに機能しておりますから、我々だけで先に議論してまとめて、それを直す、直さないというのは他の方の意見を仰ぐのがいいのかなと思っております。

記者

会長の対話集会の説明用のスライド資料を見ますと、総理の5項目のうちの研究開発減税のところと、投資減税については資料が無いのですが。

石会長

そんなことを言えば全部載せていませんよ。つまり、これは口頭で説明するつもりなんですよ。というのは、固まってないんだよ。見るべき資料っていうのがあまり見当たらないからやめたんだよ。資料は17~18枚用意しましたけれども、11~12枚が精一杯だろうということで切ったんだよ。何かあったら、パワーポイントをこれから直すのは大変だから入れ込むのは難しいかもしれないけれど、むしろ、おっしゃるとおり研究開発投資のところの裏付けとなるバックデータになるようなものは確かに入ってませんね。ただこれは口頭で最後の12ページを説明するときには、特にここに留意して説明しましょう。

記者

塩川大臣が今朝の会見でも投資減税とかについてはできるだけスピード感のある対応が必要だと指摘をされていて、それなりに関心を集めているところだと思うんですが、会長の方からは対話集会ではどういう説明をされるんでしょうか。

石会長

まだ一週間ありますからこれから考えますが、租税特別措置の整理合理化というものと絡んでくると思うんですよ。そこで、ああいう様々なものが入り込んでいるものを整理しつつ、選択と集中で研究開発投資の方にどかっと入れるということもあり得ましょうし、それから研究開発というイメージが、今、試験研究費というカテゴリーがございますが、これとイコールにするのか、それから投資減税という方と研究開発減税というのが二つ並んでいて、これもいくつか解釈が分かれているんですが、これをどういう形で具体化するかということについては正直言ってまだ税調でも議論しておりませんし、イメージはかなり先行しているにしても、具体像がまだ手許に無いんですよ。私自身も、今申し上げた租税特別措置を整理するという説明しか今のところ頭に無いんですが、新規に、また、別途新しいものをやるということよりは、つまり、規模をどのくらい考えているかという話も念頭にあるんでしょう?何兆円とか、何兆円は無理だな、何千億円とかね。そのへんはおっしゃるとおりもう少し説明の段階までには詰めてみたいとは思っています。まだこの問にお答えするだけの精査をしていません。

記者

前回基本方針を出された後に、諮問会議の民間議員の方から法人の実効税率についてもっと大幅な税負担の軽減を念頭に置くべきだというようなものが諮問会議に出たんですけども、これについては会長としてのご意見はどのようなものなんでしょうか。

石会長

個人的には様々な形の実証分析に値するデータが出るのはウェルカムだと思います。かつて私も一研究者として実効税率を個々の財務諸表レベルから拾ってやったことがありましたが、あの種の問題の一番の困難さは、本質的な意味での国際比較は難しいんですね。どういうことかというと、ご覧になるとわかりますが、エレクトロニクスが6%くらいしか負担しなくて、かたや小売が40数%もというように、すごくばらつくということは、あれは個々の企業の特性をもろに反映した数字なんですよ。

例えば、僕はわからないけれど、あれはどういう形で計算したかというのを要求して精査してみたいと思いますが、おそらくあれは上位何社かのものの平均だと思うんですよね。したがって、あれは税率の問題じゃなくて課税ベースの計算の結果出て来る話なんですよ。例えば、損失繰越がアメリカで多くて日本で少ないとか、加速度償却の制度がどうだこうだというまさに政策減税のところ、租税特別措置のところの違いがもろに出ているわけですから、あれを使って法人税5%減税を要求する根拠にはならないと思う。だってあれは今言ったように課税ベースのところの比較から出てきたところで、税率はまさに、法定税率で日本の国税が30%の税率なのがアメリカでは35%だとかフランスが33%だとかイギリスが30%だとか、それに地方税が乗っているという話ですね。あれを使って本格的に法人税率引下げということをおっしゃって来るならば、私どもは、特に私個人的には、ちゃんと計算の過程を開示してもらわないと、あの種の個別の企業をベースにした実効税率というのは、どこの企業を選ぶかによってがたがた変わりますからね。それを日本の中の一般的な意味での税率引き下げに、というのは難しいと思います。それと同時にあれは税率の問題じゃなくて、加速度償却とか損失繰越の程度というところがもろに絡んでくるわけですから、そのへんであの議論をするのは難しかろうと個人的には思っています。

それからやっぱり減税財源をどうするのかというところが気になりますね。まあ、それが歳出カットという形で出てくるならば、歳出面でカットするものの具体的なものを出してもらいたいし、歳出カットの減税というのは、歳出カットの方がデフレ効果は強いですからね。活性化税制にはなり得ないと思います。ご存知のように法人税を減税してもおそらく過去の債務の償還にまわるでしょう。あるいは個人に減税しても貯蓄にまわるでしょう。しかし、歳出削減の方は100%有効需要を削りますからね。だからデフレ効果はかえってあの組み合わせは強くなると思ってますから。

ただ、いろんなデータが出ていろんな観点から議論するということはウェルカムでありますから、諮問会議に出すのなら、中身を精査するということについて議論を深めたいと思っています。結論を言うと国際比較するなら税法に書かれた法定税率以外のものは難しかろうと思っているんですよ。

記者

土地税制の見直しについては、5項目に入っていませんが、議論はされるのでしょうか。

石会長

今日は、5項目プラスαというような形で秋に議論があるかなあと思ったところで、土地とか証券ということは与党三党の税調が言ってますよね。ということと、デフレ対策としてどうかという議論がたぶん残るし、5項目だけで来年度税制改革の主要な項目は網羅されない議論もありますので、議論としては土地なり、証券税制は今度1月に新しくなりますから、土地の税についての議論はしなければいけないと思っていますが、我々はこの間のデータを見たように、バブル期のまさに地価が高騰したときにどかんとのっけた税負担の重さをまだちっとも取ってないじゃないか、罰則的な高い土地税制をなくしていない、という意見があるが、それは誤解でありまして、綺麗にそれはなくしてありまして、すでにこれは様々なことをやっているわけでありまして、いざこれ以上やるとなるとどういうことがあるかと言いますと、検討の材料にはいたしますけども、具体的に何ができるかということは疑問であります。土地はそんなに話にならないんじゃないかと思っていますけどね。

記者

自民党の麻生会長は何度も土地税制について言っていますが。

石会長

あの方はしょっちゅう言ってますからね。何回も聞いてますから。私も同じように別のことを言ってますから。勝手に各々言い合っているということでしょうね。どうなのかわかりませんけど。そういうもんですよ。政策というのは一本でまわって行くわけじゃなくてね、いろんな議論があって集約されていくわけですから、その過程の中で政府税調も、例えば、いろんな流通税もあるし、固定資産税もあるし、特別土地保有税もあるし、登録免許税等々、もう一回見直すということはやぶさかではございませんので、議論したいと思っています。

(以上)