第28回総会後の記者会見の模様

平成14年6月4日

石会長

今日は、総会を開きました。今答申案の案文を練っていますので、それをまだ外部にお示しする段階ではございません。今日受けた様々な論点を整理して、起草会合をもう一回、今週の金曜日に開いて、来週の火曜日に総会を開いてそこでまとめたい。このように考えています。

大体書きたいと思うことは、5月24日に提出した「議論の整理」の中に盛り込まれておりますし、それをこの間経済財政諮問会議に持っていって説明したという意味においては、骨格はおそらくお判りいただいたと思います。そこで、やはり利害関係といいますか、これから詰める論点はどこかということについて、皆さんご関心があると思います。私もどうやってまとめていこうかということにつきましては、やや苦労するところもございます。そういう意味で、5、6つ議論をしなければならない問題を示します。ほぼ多数の意見で一本化できるところもあるし、真っ二つに分かれててどうしようかと苦労しているところもあるということです。

一つは外形課税。法人事業税の外形課税は、中小企業に配慮すべきとか、景気の問題とか、赤字法人課税はどうかとかいろいろ議論がありましたが、大体の方向として早急にやれという方向に固まると思います。これはある意味では、今、法人税率の実効税率引下げ等の議論にも絡んでおりますので、是非我々としても強く押したいと考えています。

それから、道路の特定財源を一般財源化を含めた形で議論が出来るかどうか、どういう形で書くかという事は、もう一ラウンドしないと結論が出にくいと思います。というのは、地方の代表から、当然のこと、地方の目から見ると道路の整備はまだ不十分である。その段階で如何なものかということ。それから道路公団も含めた現状の道路に対する様々な行革の視点から問題ではないかという意見もあって、これは書き振りとしては、一応、一般財源化を進めるというトーンで書きたいと思いますが、それをどういう恰好で絞り込むかという議論が残ると思います。これが第2点。

第3点は、酒・たばこは個人的な嗜好によりますので、当然のこと様々な議論が繰り返されたことは容易に予想されると思いますが、酒はこの間のトーンで、負担を両方で縮めるべきという議論に留まると思いますが、たばこは論点が2つあって、健康志向の高まりでたばこ、喫煙が問われているという文言と税率引上げを明記するか。これについて両方の議論がありまして、原案では健康を含めてやるというのは賛成が得られないけど、税率引上げの是非を検討するくらいのことは書きたいと思ってますが、その原案的なもので丸く収まるかどうか、これから少し議論をしてみたいと思います。

それから生前贈与。これは一応やる方向で書くつもりです。ただ新しい仕組みで、租税回避という問題をどう処理するか、というのは非常に大きな問題だと思います。それを含めて、かつ、やっぱり生前贈与と言えども、金持ち優遇というイメージを、高額所得者間の資産移転ということの問題、勝ち組みが益々勝つような制度はいかがなものかという議論もありまして、これから少し書き振りをと思ってます。

最後に環境のところですが、京都議定書がこのような恰好で正式にGOのサインが出る中で、もう少し環境に対する税制の役割を強調して書くべきという議論と、まだ国際競争力の検討等で、俗に言えばアメリカ、カナダが乗ってこないところで、産業界への影響はどうかという議論があって、ただこれは環境に対して非常に重要な問題だということなので、将来に向けて書くことが可能だと思ってます。

そういう意味で、道路とたばこのところをどうするか、私は個人的には両論併記的なことはしたくないので、といって多少少数の意見の紹介もと思ってます。あと、書き方ですが、補論というのを付ける予定でおりまして、補論は理論的な背景をしっかり説明しなければ判りにくい、例えば二元的所得税論とか、相続税と贈与税の一元化とかというあたりは、大いに補論で論じておかないと本文が分からないというものですが、そこに少数の意見も紹介、主な意見で本文に載せなかったものを載せて、そこで皆さんの意見をくみ上げた形をとりたいと思ってます。本文と補論のやりとりは、これからもう一仕事しなければならないかなぁと思ってます。

そういうわけで、段々焦点は決まってきたのですが、最後答申を書くに当たって、みなさんが一番強調されていることは、歳出削減ということを大上段にもっともっと強調するべきである。歳出削減というのは、単に口で言っているだけ、総論で言っているだけではダメで、もう少し具体的な書き方が必要ではないかという提言、ご提案があり、こないだ財政制度等審議会が具体的に踏み込んだことを出されてますから、財政審と税調は一体化ということもあって、そういう点の知恵を借りる恰好で、出してはどうかということであります。

それから、第2の強調点は、中長期的な視点ということを言わざるを得ないし、そうなると税制の構造的な一面を治す過程で、どうしても増税的なムードは出ざるを得ないが、それに対して明るい側面を少し書き込むことは出来ないかという形で、いろいろ書き振りはあろうかと思いますが、短期的に減税等をしようという意見に対しましては、中期的な視点から説明がつく範囲でと考えていますから、生前贈与の話ですとか、おそらく租税特別措置を見直す過程での研究開発費、研究開発投資ですか、そういう形に絞られてこようかと思ってますが、それに対して、何年かはっきりは断定できませんが、当面は増減税同額といった話になろうかと思いますから、今言ったような構造的な歪みをなくすならば、どこかで調整しなくてはいけないのならば、こないだも少し言いましたが、所得控除の見直しで、配特と特定扶養控除あたりを最初に手をつける議論はあるだろうし、企業関係も含めて租税特別措置を見直す過程で課税ベースを広くするという視点はどうしても欠かせないだろうし、それから消費税は、もう既に報道していただいてますが、将来的には上げざるを得ないというトーンをとっておりますから、やっぱり制度の信頼感を得るためには、「益税」対策、免税点の問題とか、簡易課税制度、これをはっきりさせる形で書いておきたいし、それからインボイス、この問題も将来的な問題としては早急に議論しなくてはいけないということです。

それから最後、金融所得課税について、納番の問題とか。納番を積極的にやりたいと思ってますが、それに対する配慮、プライバシーの問題等の議論はしかと書き込みたいと思ってます。

記者

さらに議論が必要な点を5点ほど述べられましたけど、道路特定財源の一般財源化についてはもう一ラウンドくらいというお話でしたが、それは今度の起草会合と総会でこなせるというお考えですか。

石会長

やらざるを得ないですね。そう思ってます。

昨年度の年度答申にも書き込んであるとこなのですよ。それとの比較において、どういう形で本文対補論の関係を処理するかを含めて書き込まないといけないですから、他のパーツと比べておかしな形にならない書き方をしたいと思います。

記者

今日の総会に、勤労者の立場からの意見書が出されましたけど、この中では給与所得控除は現行制度を維持するとか、課税最低限の安易な引き下げは認められないとか、今までの税調の論議に反する意見があったのですが、これについてはどのようにお考えでしょうか。

石会長

これは全部を読んでないので判りませんけど、税制改革は必要ない、するなというトーンですよね、どっちかと言えば。今やっていることについて、あまり賛成できないという方向で書かれてますので。だからこれを少数意見的な扱いになるのか、それとも本文の中でどこかに組み入れるのか、今日積極的に本人からご発言があり、消費税の方は良いとか、所得控除の見直しは結構だと、ここに書いてあるトーンよりはもっと積極的な内容のご発言がありましたので、もうちょっとご本人の声を聞いて、つまり文章で出されたものについては、出さない人もいますから、補論等々では取り上げるつもりはございません。直接、席上でご発言あったことを取り入れたいと思ってますから、これはあくまで個人的見解を委員に示したということですから、これは議論とは関係付けない方向で処理したいと思います。とはっきり言いました、今日。

記者

先週の土曜日にテレビ番組に出演されまして、消費税率について具体的に、10年、15年で10%というのは普通の議論だと。それから逆進性緩和ということで、複数税率とか食料品の軽減税率も検討するような話もされましたけど、確認ですが、これは基本方針にはその具体的な税率というのは書き込まない…

石会長

書き込みません

記者

逆進性緩和についてはどのような。

石会長

通常のパターンと同じように、他の税、例えば累進税の話とか相続税・資産課税の話、あと歳出面で本当に必要な社会保障費も含めて逆進性への対応の仕方を通常のパターンで書くということであります。

実は、福祉目的税的なことをどうしようかというのは議論が出てますが、少しまだ早いのではないかと思ってます。それから、いつ何%上げるかという話もまだ少し早いと思いますし、こないだ話しましたが、6月の段階というのは、ある意味では主要な論点整理でありまして、具体的な制度設計まではとても及ばない、入り込めないと思ってますので、また対話集会を5回ほどやることを考えてますので、そういうことを踏まえて、秋にもう少し踏み込んだものを書きたいと思います。

記者

テレビでの消費税の具体的な率と実施時期に言及されたわけですけど、この根拠というのはどういうものなのでしょうか。

石会長

僕はテレビでそれほど、あとで、皆さんと議論しているときには言った記憶があるけど。いずれにしても、10年、20年の単位で考えれば上げざるをえないということはこないだここで喋ったと思います。それで、将来的には上げざるをえないだろうという根拠は、当然少子高齢化の福祉財源、福祉国家。それから僕も当然歳出カットはギリギリやってもらわないといけないし、これは小泉総理の公約ですから全面的に具体的な例を挙げて、国民的に納得ができるところまでやってくれというのは当然のこととして、今の一般会計の例を出すまでもなく、82兆円という歳出に対して47兆円の税収のギャップ35兆円を、もっと広がるのですよね、これから。これをなんかの税で補わなければならないし、すでに2004年、基礎年金は3分の2から2分の1になって、安定財源をと言っているときに、誰しも思っているのは消費税だと思いますので、根拠は明々白々だと思ってます。

おそらく消費税を上げないでやるとなると、歳出を47兆円まで下げるということの議論がどこまで納得を得るかということと、もう一度所得税・法人税の世界で勝負して、消費税はこのまま据え置くといくのか、それとも丸ごといくのか、そのへんの選択、タックスミックスをこれから議論するという中で、大方の人は消費税に乗ってくる、乗らざるをえないという読みがあります。それは各国の知恵です。欧米諸国の例を見て。米はあんまりないかもしれないが、欧州それから豪州、カナダとか、アメリカを除いたところの先進国の知恵はそこにある。つまり社会保障負担と消費税の兼ね合いでどっちかという議論はありますが、福祉国家の財源というのは大きな問題だと思います。福祉というか高齢社会への対応ですね。

記者

控除の見直しでいろいろな項目が挙がってますが、配偶者特別控除と特定扶養控除を優先的に見直すという方針は、基本方針に明記されることになるのでしょうか。

石会長

どこをどう優先的にとは書いてませんが、会長の判断ということで許していただけますか。ここにどれが第1順位で、どれが第2順位かなんて書けないじゃないですか、ここには。

当面、様々なトーンからみて、経済社会構造とミスマッチを起こしているのはそのあたりだと思ってますから。そういう視点から見れば、配特それから特定扶養控除あたりのぶらさがっているところ、そのへんから着手するのが筋ではないかと思われます。それを基礎控除の拡大あたりでどれだけ吸収できるかという問題だと思います。

今言った特定扶養控除、配特。それから配偶者控除と扶養控除について3つくらい、ここだけは選択肢を出して、対話集会等で聴きたいと思ってます。そういうパーツも一部設けてます。というのは、まだ我々だけで断言できないものがあろうかと思いますから。それは後でご覧いただければと思います。

記者

手続き的なことですが、11日に決定後総理に提出・・・

石会長

14日くらいになるのではないかなぁ。

記者

7日に諮問会議で税制改革の方針が出るようですが・・・

石会長

税制改革単独で出るのですか?それとも例の活力等の一環で出るのですか。

記者

たたき台について議論するということで、税制改革についてですね。そこにこの前回説明した政府税調の論点整理など反映される形になるのでしょうか。

石会長

それは全然インディペンデントじゃないかと思います。別に調整をしなければいけない必然性も無いし。ただ最終的には総理が両方とも諮問する、あるいは諮問に類することをしているとことなので。ただ私はそんなに違ったものが出てこないと思いますよ。せいぜい、税率構造をもう一段、今の時点から「広く、薄く」ということを言っている建前上、「薄く」のために税率構造を一段下げるか、我々みたいに過去数年から見てもう「広く、薄く」やっているから、もうそこは済んでいるのではないかという議論で、法人税はおそらく外形のところをやれば薄くなりますから。問題は所得税のところの累進税率を合わせたとこあたりをもう一段下げられる余地があるか、下げる必要があるかという議論だと思います。課税最低限を引き下げようと言っているときに、上だけ下げるわけにもいかない。全体をもう一段下げて、さらに累進構造をペシャンコにするようなことに積極的な論拠があるかどうか、これは議論の分かれるところだと思います。それでどれだけ活性化するか、その程度で。そんな感じがします。

記者

14日の日は改めて総会をやって、最後・・・

石会長

はい。手打ちをします。それで塩川大臣からも締めのお言葉をいただきたいと思ってます。それで、よく分かりませんが、一応諮問に答える形で答申を作ったことにおいて、官邸に持っていくことになるのではと思います。日程的に合えばです。そういう意味で来週で整理ができればという願望です。

(以上)