第27回総会後の石会長記者会見の模様

平成14年5月24日

石会長

まとめの前の総会は、今日が多分最後になると思います。まとめる前というのは、起草する前という意味です。

そこで、まず最初に今後の日程等についてお話したいのですが、既に総会にご出席の方がいっぱいいらっしゃいますから、あえて細かい内容に触れませんが、一応6月4日、11日と2回、我々がまとめたものをチェックし、総会として、税調として意見を集約する場を設けておりますので、今日今からご説明申し上げる論点の整理、あるいは議論の整理を踏まえてある程度文章化をこれから図ろうかと思います。これは来週から、何回でまとまるかは判りませんが、一応ここに書いてあるような内容のことをこれからまとめ、総会にかけ、中旬までに一応中間段階での主要な論点メモというものを文章化して提出したいと思っています。

それほど膨大なものではなくて、大体A4版で20枚くらいで、かつ議論の紹介等をした補論を付け加えたいと思っております。そこで、この論点の整理、先ほどの総会の最後でも行いましたので、もう一度は繰り返しませんが、どういう点で、どういう観点で私どもがまとめたいかという点を中心にご説明したいと思います。

これは何度も繰り返しておりますが、10年、20年後の日本の税制のあり方を考えたいというのが一番根本的な問題であります。したがいまして、過去の経緯を見ますと、当然のこと歪みを直す、あるいは非常に不合理な点を直すとなりますと、ある税目についてはやっぱり増収にならざるを得ない面もあろうかと思います。ただ、これを今年度中とか来年度に一挙にやろうだとかは毛頭考えておりませんので、中長期的な問題を短期に置き換えてすぐ増税路線に走った等々の説明は困る、ということだけ最初に念を押したいと思います。

おそらく、評価のポイントは何年先かはわかりません。21世紀がだんだん進んでいく中で、日本は少子高齢化という非常に大きなネックにぶち当たるわけです。そして財政赤字は非常に深刻になる。そして国際化の波は一挙に押し寄せてくるだろう。そういう世界において、このままの税制で駄目だということは、みなさん基本的認識をお持ちだと思いますから、どういう形で耐えうる税制を作るかという視点から、我々が提起する問題を評価していただきたい。単に2、3,000億円程度のデフレ対策用の活性化税制と銘打ったものをやるかやらないかというよりは、構造的に見て日本の税制かくあるべしという視点から、我々は議論したいと思いますので、その視点から是非ご議論いただきたい。おそらく、経済財政諮問会議もこれから出てくるであろうし、党税調も出てくると思いますが、長期に目をやったときに、おそらくこの手の議論は、大なり小なり同じ議論にならざるを得ないので、そういう意味で我々は直近の今年度、来年度については議論があれば整理はいたしますが、直近の議論にしても中長期的なあり方論から逸脱しない方向でやっていきたいと考えております。問題をすり替えて、中長期的な点を短期の点から批判されるのは一番困るという点だけ念を押したいと思います。したがって、批判していただくのはあるべき論から是非批判をしていただきたい。例えば、不公平是正とは言いつつもその目的に達していないではないか、あるいは中立と言いつつこれが活性化につながるという議論をしているけれども、そうかね、という視点。それから、いくつかありまして、これからご説明しますが、経済社会とのミスマッチを是正するというけどこれではミスマッチが一つも是正されていないではないかという視点。こうした点についてご議論いただきたいと思います。

「総27-11」というのが、5月21日の基礎小までの議論をまとめたもので、トータルの視点です。経済財政諮問会議のペーパー、「平成の税制改革」と出ておりますが、あれも私はよくまとまっているペーパーだと思っております。あちらは、どちらかと言いますと、項目別に切って、そこに税制をくっつけたというスタイルになってます。われわれはどちらかと言いますと、まず基本的な考え方や基本的な理念を最初総論的に述べて、その後に、ここに書いてありますように、基本的な考え方をいかに個別の税で具体化するかという点を書き込みたい。こういうスタイルでやっておりますから、大きな方向を諮問会議が出してくれれば、それを基本設計とするならば、詳細設計は個別の所得税以下のところで議論を展開したいと、こういうふうに考えております。

主要な論点を3つ4つあえて申し上げさせていただきますと、やはり所得控除の見直しというのが1番大きなポイントとなり、ここに経済社会の構造とのミスマッチというエッセンスが盛り込まれていると思います。家族に対する控除のところ、あるいは老齢者控除のところはこれから議論をつめていかなければならないと考えております。

ここと累進税率の見直し、今日、島田さんが言っていた問題をどう処理するか。基本的にはどの図を見ても、基本税率や実効税率を見ると諸外国の中で日本が 一番ぺちゃんこになっているんです。かつ、10%のところに8割の給与所得者がいるというような状態でありますから、税率でどこまでいじれるかということについては、慎重に議論したいと思います。基本的には「広く薄く」の「薄く」は小渕内閣以降の議論で一応私達は実施済みであると考え、さらに一段の努力をするかどうかは慎重な態度をとらざるを得ないと考えております。つまり「広く薄く」の議論は過去ずっとバブル崩壊以降の減税等々を踏まえた中で、ここ数年来すでにやってきたことなので、すでに過去の財産として残っているという印象でございます。

それから、法人税につきましても、やはり外形課税の導入については是非積極的に導入を明記して、この導入を実現するべく努力はしたいと思っていますし、国・地方合わせた法人税率の引き下げの議論と結びついてくるわけでありまして、これは是非やりたい。

それからやはり租税特別措置の中身で、いまある政策減税的なところを再度リシャッフルして、大くくりに使命の終わったところ等を整理することによって、新しい展望が開けるということがあろうかと思います。この間も使った言葉だと思いますが、集中と選択、選択と集中という形からなんかそこにできるものがないかと考えております。基本的に法人税も課税ベースを拡大して税率をどこまで下げられるかという議論は外形と絡んでくる話でありますから、その議論を踏まえつつ処理できると思っています。

それから、消費税については先刻、今日の議論でほぼ意見が一致したと思いますが、「益税」対策等々を含め、第一段階としては信頼度を取り戻す努力を最大限にすると。ただ10年20年先で今の税率でいくはずがないと皆さん思っているし、おそらくここにいる皆さんもそう思っておられるでしょう。そういう意味で二段階目にそういうことが待ち受けるならば、免税点以下、簡易課税制度以下、しっかり見直すということ、これは我々の意見としてはほぼまとまったと思います。

それから、資産課税については、まさに贈与・相続の一元化という議論をこれからしていくことになろうかと思います。

それから酒、たばこは今日も発泡酒のところで基礎問題小委員会の議論と今日の総会の議論がかなり割れました。しょうがないですよ、メンバーが違うんだから。テロップにながれちゃったことを今日は訂正しなきゃなんないかもしれないけども、やはり発泡酒を今の段階で引き上げられるかということは色々ご意見があった。ただ、おそらく意見の分かれる先は、本体のビールと発泡酒の格差を縮めろというご議論につきると思うし、いつまでもヒット商品のままでいるわけがありませんから、時限的にいつまでにどうするという中期展望を与える形で発泡酒を見直すという議論もあろうし、何よりも酒税全体が非常に複雑であり、税としてゆがんでいる面もある。典型的なのは発泡酒がビールでなくて雑酒になっていますから。そういう点もあるので、これは直したい。

それからたばこ税については今日は健康談義も大分出てきましたし、そういう意味でこれは引き上げの方向で是非議論してみたいと考えております。特に税源という意味においては、数少ない候補になりうると考えております。

それから道路特定財源については、地方の方に随分議論をいただきましたが、これは昨年の暮れから一般財源にすると書き込んでおりますし、加藤前会長以来税調は一貫して一般財源化ということを考えております。地方の方々のご苦労もあろうかと思いますが、そのご議論はご議論として書き込むことはやぶさかではございません。本文ではなくて補論の方に。問題は環境税との対応でございますが、これについては今後の推移を見ながらということになろうかと思っています。

最後の大きな問題は、国と地方の間の税源移譲の問題だと思います。片山試案も出てきたことだし、これについての我々の対応というのは非常に注目されているかと思います。ただ、税調の基本的な認識としては、やはり税源移譲する前の前段階の条件として歳出見直しが先ではないか。市町村合併がある程度めどがつき、受け皿論もこれまたあり、何といっても地方交付税についての一種の不信感が税調には非常にあって、これがなければという議論。それから当然のことながら国庫支出金の問題。そういう形で税源移譲の問題というのは慎重に、まず前提条件あたりを整理しながらということなので、一足飛びに片山試案のように住民税と地方消費税を使ってという議論は、一挙にはいかないと思います。ただ、長い目で見ればそういう流れというのはとうとうとあるわけですから、均等割を上げたりという独自の努力がされる中で培った信頼は出てくると思いますから、そういう条件を踏まえつつこの議論をしてみたいと考えています。

あとは、基礎小の皆さんから出た議論を文章化したものを次回の総会に出すべく、10日程度、努力をして整理をしていきたいと思います。

まとめるという段階で、今日出された経済特区等々ははじめて出たもんですから、経済特区について、税の問題として日本が東京、大阪だけとりあげるのは難しかろうという議論もあり、非常にアイデアとして面白いので議論したいと思いますが、これを急に中間の論点整理に載せることは急な話で準備不足でもありますから、G7の国がどこまで税でああいうことをやって、ウエルカムという対応で外国から人や企業を呼ぶということがあり得るか、金融センターにするかという問題、これは今回は先に延べさせてもらいたいと思います。

以上こちらの基本的な方針を申し上げました。ご質問があればお答えできる範囲でお答えいたします。

記者

では、幹事から何点か伺います。最初に消費税で基本的なところの確認ですけれども第一段階の益税、不信感の解消が行われた後の第二段階としてそういうことが待ち受けるならといわれましたけれども、将来の税率の引き上げの必要性というものの、ある程度コンセンサスが得られたということでしょうか。

石会長

ある程度というか全面的にあったんじゃない?

記者

それから総会でも出てましたけれども、将来税率アップの時の逆進性の緩和というのも是非すべきだという意見が色々ありまして、ヨーロッパ並になったときにそういうことをすべきではないかということなんですが、ヨーロッパ並というのは具体的に税率がどれくらいで、逆進性緩和策としてどういうことをお考えですか。

石会長

今日小泉さんの言葉の解釈を巡って内閣が続く限りだとか議論がございましたけども、時期的には全く今の段階では政治情勢・景気情勢によるとしか言えませんね。その辺の状況が好転して2・3年後に始まるのか、あるいは5・6年から7・8年かかるのか、そしてその時期に応じて、財政赤字の解消の速度、あるいは高齢化による社会保険の負担の問題等々あって、議論は幅5%から一挙にどうなるのかという議論をしなきゃなりませんけども、めどはつきませんね。ただ10年20年するとおそらく2桁の前半くらいになってるのかもしれませんけども。そこは今の段階では予測はつきません。

ただ、ご存じのように2004年度に基礎年金3分の1が2分の1になるところでこの議論は出てくるんでしょう。あれは安定した財源ですから消費税かわかりませんけれども、かなりの人は消費税を念頭においてるんでしょう。そのころ議論が出てくるかもしれません。そのときに議論が起きうるとは思いますが、今後の景気、あるいは政治情勢だと理解しております。

逆進性は、今日も随分議論になりましたように所得をベースにしてやれば確かに逆進性なんですよね。ただ課税というのは他に消費もあり資産もありという形で、所得だけでトータルで見たときの逆進性は計れなくて、消費というのがそれを補っているという面もあるので、おそらくそれは解釈の問題だと思いますが、消費課税の意義を認めつつ、最近の累進税率が落ちたというところで逆進性を助長するという議論は避け得ない。したがって資産課税のところで再分配効果を高めるとか、あるいは、最後はやっぱり逆進性の問題の1つの解決は歳出面での対応だと思いますけどね。税を使って例えば最低税率を大幅に下げちゃうとか還付するとか等々いろんな案はありますけども、皆で分かち合うという視点からいくと本当に必要な方は歳出面で面倒を見るとしても、還付とか何とか制度をそこに仕組むのは難しいと思いますね。

と、同時に受益と負担が密着しているから地方に消費税は向いてるという議論、おそらくこれは賛否両論分かれるかと思いますが、福祉目的税的な議論というのは、納得の材料に使われるという余地はあると思います。

記者

それから「議論の整理」というペーパーの関係で言いますけども、基本的な考え方として、所得税に関して広く薄くの薄くのほうの議論は終わっていると。で、最後に島田教授から若干問題提起があったんですけども、それと違うんですけども、今日の総会でも一部言われてたことですけども、消費税を最初に導入するときにその負担の緩和の意味で、控除を厚くして課税最低限を上げたというような経緯があって、そこのところの議論が今回の改革のときに抜け落ちてるんじゃないかという意見もあるんですがその点についていかがでしょうか。

石会長

広く薄く皆で負担を分かち合うという言葉は抽象的なスローガンですよね。これを個別の税で全部生かすということは不可能なんですよ。そういう意味で所得税の世界だけでそれはできないと思う。そういう報われる云々の議論はね。僕はその議論がまだ生きてるのはね、相続税の世界だと思う。最高税率70%を50%に下げていってね。広く負担するという意味において課税最低限を広げたいと我々は思ってますから。法人税の世界では課税ベースと外形のところがどうなるかによりますけどね。我々が何度もいっているように報われる云々の議論は、気をつけなきゃいけないのは低所得者の負担は増す一方で高所得者の負担を減らすような方向で、税調にも強い意見がございますように、国民的納得はなかなか得られないだろうという危惧を持っています。

だから、トータルな税制の中で皆で分かち合うと言ったときに消費税があるという話、それから、税率を下げるという意味において報われるという点においては、贈与税といったってほんのちょっとの人の話ですが、それをこれからどういうふうに内容を盛り込めるのか。

今日も増税一色という話ではとても税制改革にならないから、島田さんほど楽しく税制改革というのは難しいけれども、そこは考えないといけませんが、できる限りそういった配慮をしたいと思ってます。つまり減税のところでできることが何かあるのかですが、これは難しいと思いますけども、できる範囲であればね。

記者

それからこの中に所得税の最低税率のブラケットの幅という課題があるんですけども、このブラケットの幅を縮めるというようなお考えはあるんでしょうか。

石会長

現段階においては問題の指摘に留まると思います。ご存じのように10%に8割の納税者、給与所得者がいるというのは日本だけですから。こういう状態であるということはよく理解していただくことは、間接的に累進税率の緩和はもうかなり終わってるよと。こういうメッセージになろうかと思いますので。この指摘はこれを一挙に直すということは今回難しかろうと思っています。今回も先もわかりません。ということは、将来を見通して減税ってやらなきゃなんないんですよ、制度改正というのは。

記者

中長期的なものと短期的なものを分けて考える具体例というのは?

石会長

典型的な例は生前贈与ですよ。生前贈与というのは、相続税と贈与税が一体とならなければ今の贈与税というのは第三者にも誰にもできるわけです。ところが相続税の世界になると限られちゃうでしょ。法定相続人がいてね。これはそういう接点がないから。例えば、生前贈与なんてまさに典型的だと思います。

そういう意味において、また贈与税・相続税の一元化というのは来年から議論を始めても来年度にすぐ入るとは思いません。そこで10年間くらい調節できるというふうに考えるのか、そういう議論がございますが、いずれにしても税制改革が具体的に制度に移されるのは何かやるとしても来年の1月、典型的には来年度でしょう。そういう点から言いますと、全ての面で短期的に何かすると言っても構造的な問題で無理なんですよ。そういう意味で二元的所得税でもそうです。資本所得と勤労所得と分けてね。僕が言っているのはリスクをとるような税体系におそらくなるという意味において、資本所得あるいは金融所得を一元化する、総合化することは意味があると思いますけれども、これも来年度すぐっていうのは土台無理だと思います。しかし構造改革に資するという意味では、そういうものを是非入れたい。そういう視点から是非評価してくれと、何度も繰り返しているわけです。だから、どこの主体が言っても、相続、贈与の一元化とか二元的所得税とか、時間かかります。どんなに早くたって数年かかるんじゃないですか。納番もいれなきゃなんないといいますとね。

記者

今のに関連しまして、中間のとりまとめの中ではこれだけたくさん論点がある中の優先順位を付けていくお考えなのか。

石会長

我々ある意味では規模とか時期とか等々は6月の段階ではやらないと思います。例えば配偶者控除を見直すといったって、どのくらいの方向で見直すか、これはできない。秋にできるかどうかも分かりませんが、とりあえずこの案を作ってから、また公聴会なるものもやってみたいし、配偶者控除を見直すといっても、これは真っ二つに分かれますね、対話集会を見ても。その後どういう方向に持っていくか。基礎控除を拡大することで吸収できるか等を含めて、11月の段階になるか10月になるかわからないけども、小泉さんが1月の段階で諮問してくれたものに対する答えは出したいと思います。その段階で出てきたもので我々自身が優先順位を付けるのか、それとも2003年度の税制改革に党税調がこれをしようという形において結果的に政治的に優先度が付くということがあり得ると思うんですよ。ただ我々としては書きぶりによっては所得控除のこれは先にやってくれとかね、等々は11月の段階になると少し書けるかも知れません。つまりフィージビリティの問題ですよ。可能性ね。これはおそらく所得控除一つをとっても、比較的できやすいものから非常に難しかろうというものもあるから、それは少し我々と精査してみたいと思います。だから、我々の中でつける、政治的、党税調あたりでジャッジメントしてもらうということも含めて、少しは先行組と数年かけてじっくりやるのと、今申し上げたように贈与、相続の一元化とか二元的所得税なんていうのはそう簡単にやれない。だから所得控除の課税ベースを広げる中の候補をちょっと言えるかどうかですね。

記者

消費税なんですが、論点整理だと将来の税率を高める方向であると。かなりクリアに書かれているんですが、6月にまとめる方針にもこういうクリアな形で方向性を出されるお考えでしょうか。

石会長

これは起草の段階で考えてみたいと思いますが、今日の総会のご議論を聞いてるとわかるように、上げなくていいという人はいない。ただその書きぶりとして、明確にどれくらい書くかどうかについては幅がある。したがってここの1行だけでどういうふうなイメージを与えるかわからないけども、将来といってどのくらいの将来か、役割を高めるといったってどのくらいの役割なのかよくわからない。ただ従来よりは踏み込んだ書き方になると思います。つまり今日の議論は、どこもこういうことに触れないのは無責任ではないかと。審議会の審議会たる所以はやはり方向性を示すということがあるのかなというご議論もあったし。ただこれでまたこれがわーっと出ちゃって我々が考えてるようなことが埋没してもいけないので、書きぶりには気をつけて下さい。

記者

そういう意味で外形課税の方も今まで既に導入方針は明記してたと思いますが、来年度からとか明記するのは難しいですか。

石会長

あれは政治的に決まってますよね。2003年度中だったかな。景気の条項とか入ってますけど。我々としては積極的に。ただ政治的にはまだ難しいでしょう。ただ、より実施の方向に向けて前向きに取り組んでるという姿勢が出るような書き方をしたいと思いますが。ただ我々の手は離れていると思ってるんです。あと、我々問題提起した側として、フォローアップのために一生懸命やってくれというそういう提案は是非受けたいと思います。

記者

1月の段階で税についての抜本的な議論をするというときにイメージとして社会保障であるとか、国と地方であるとか、そういうものも税調が全てできるわけではないわけですが、そういうものを総体として議論をして6月を迎えられるのかなと思いましたが、税調は淡々と仕事をしているわりに、そういう税の制度の外側にあるものとの関連はあいかわらず足りないなと思うんですよね。これはこの先どうなっていくべきだと思いますか。

石会長

それは大いに反省しています。この間ある図を見て愕然としたんだけれども、国税より社会保険料負担の方がもう大きいんですね。税調が国税だけやってるんだったら、相対的にウエートがおちてますよ、税調の役割は。そういう意味で、これから社会保険負担というのを除いて議論はできないんですね。そういう意味で縦割り型審議会の役割の限界は大いにある。税を議論するときに社会保険を入れた議論というのは絶対必要になる。その端的な例が基礎年金3分の1を2分の1に上げるときにでてくるので、そこで我々としても積極的にどっちでやるかという議論をせにゃいかん。ある意味では税でやれという結論が出ちゃってますけど。今後いろんな意味で、受益者負担を含めて負担論がありますから、その場を作りたいと思っています。

それから、言い忘れましたけど、21日の諮問会議でも随分議論したんですけれども、地方交付税を議論する場を設けろと。塩川大臣も竹中大臣も言ったように私も大いにそれは主張いたしました。今の税調だけでもできないし、地方分権推進委員会だけでもできないでしょう。そういう場ですね。大きな仕組みが必要だと思います。が、そのために諮問会議ができたんですよ。本当は諮問会議が積極的に方向を出していただければいいと思うけど、見るからに諮問会議が忙しすぎるね。あれはなかなかまとめるだけの時間とサポーティンググループ等々がないから、ああいうことをこれからどうするかを含めて議論すべきだと思いますね。諮問会議が決して無能だということではなくて。

記者

そうしますと社会保障とか地方交付税の問題についてそういう場で本格的な議論が仮に行われた場合に、今とりまとめようとしている税制改革の方向性というのは大きく変わってくる可能性もあるんでしょうか。

石会長

それはないと思いますよ。税制調査会だから税という形で税から見ています。本当いえば社会保障とかやんなきゃなんないけどちょっと時間的・エネルギー的に許容範囲を越えてる。そういう意味ではこれから、まだ来年9月に中期答申を出すまで時間がありますから、少しでもそういうものを取り入れてやっていきたいと思いますが、役所は役所のいろんな縦割りのシステムがありますから、どこまでそれができるかわかりませんがそういうふうにしたいと思っています。だって国民の側からすれば税で持っていかれようが社会保険料で持っていかれようが同じですからね。

記者

今の関連なんですけれども、社会保障とか国と地方の関係とか、6月の書きぶりは、原理原則的なものに留まらざるを得ないのかというのが1つと、6月に出た後、場を設けようというふうに提案なさっている以上、税調での議論はどういう役割を果たすようになるのか。

石会長

基本的な理念とか基本的な方針というのを前段において今後進めますから、6月にまとめますから、何回も申し上げたように具体的な数量的な問題とか時間軸の問題を6月の段階で言うのは難しかろうと思っています。それを少しでも補うのが11月の段階だと思いますね。それから、なんとなくここの審議会はここまでという縄張り意識があろうかと思いますが、これから相互協定を結んで、税一つにしても社会保険料を念頭に置かなきゃ議論ができないということがありますからね、審議会の中でまず守備範囲を広げてくということがあってもいいと思います。しかしそれでも限度があるから、枠を超えた新しい場の設定ということはこれからも呼びかけなきゃいけないと思っています。相互でやっていく。だから税調としては幅広の議論を、これから外の方まで含めてやろうと打ち出したいと思っています。やんなきゃいかんでしょう、それは。

記者

今日本間先生も総会の中でおっしゃってましたが、課税ベースの見直しの話だけが表に出るとどうも増税色が強いと言われがちだと。バランスのとれた税負担構造とおっしゃったか、そういうことも税調で議論すべきじゃないかと。この間の諮問会議のペーパーでもそういうことが書いてありましたが、そこで今回の論点整理を見ると、所得なんかについても累進緩和は実施済みですと、最低最高税率共に低水準とありますが、そもそもあの言葉との関連はどうなってるのかなというのが1点。

そこで、今回の税制改革の議論が始まった当初のころは、先生も所得税の見直しのところで課税ベースの見直しとともに税率の調整は必要だと。特にトップのところは必要だとおっしゃっていたように記憶しているんですけれども、そこはいつどこでどういうふうに変わってしまったんでしょうか。

石会長

本間さんのお出しになったのはおそらく時間軸のずれがあったのかもしれない。諮問会議が減税で税調が増税でと悪者扱いされてるけど、それはおそらく時間軸をどこに置くかによると思いますが、ただ正直申して我々は中長期の問題をやってますからね、減税をどんどんやるっていうことは、安定した税制を構築したいという視点からは減税減税とは言えないという理由があります。ただおっしゃるように構造的な歪みをなくすときに、増収になる場合と減収になる場合とおそらくあると思いますから、そこをよく議論することによってバランスがとれたと言いますけども…、彼の議論も質的な面を言ってるんだと思いますよ。数量的に全くバランスがとれてとんとんのということは中長期的に構築することはできないし、諮問会議もプライマリーバランスを黒字化しろって言ってる手前、我々と同じような議論にせざるを得ないということは目に見えてますよね。そういう意味で短期の議論をするときに、減税財源をいわない、活性化議論は僕は非常に無責任だと思いますね。

今日は今井さんがおっしゃったように歳出カットで財源を出すということ自体、あり得るのかどうかという問題、出たやつを減税に回すというのが問題だと。歳出削減でね。今後短期的に投資減税を打ち出すのか、あるいは研究開発減税を打ち出すのかわかりませんが、これもあくまで私は減税財源がいると。仮に赤字国債でやるっていうなら、国債の格付けが問題になってる以上、そこも気にしないという感じでどんどん無視してやるのか、それの議論を踏まえてトータルで議論すべきだと思います。

今日本間さんのおっしゃったバランス論は、税調に対する非常に思いやりのあるコメントだと思います。そういう意味で第2の質問にお答えしますけども、当初は課税ベースを拡大して税率でということを所得税の世界ではあり得るかなと思いました。しかし様々なデータを見ると、これほど累進構造がへしゃげている国は日本のみでありますし、僕はあのとき気がつかなかったのは、80%の給与所得者が10%のところにいるという、10%に実質的にはフラット化しているという世界で、やっぱり税率というのは難しかろうと。あるならおそらく最高税率のところ、それから住民税合わせたところでと思いましたけど、これも今後の議論のなりゆきですけれども、いじるのは非常に難しかろうということと、課税最低限を下げて最高税率を下げるというのはこれはまさに低所得者いじめで、高所得者優遇というのは税調でももたない。

そういう意味で私は、課税最低限を下げたときの激変、痛み緩和で、何度も繰り返していますように、できるレベルでしかあり得ませんが、基礎控除などをある程度拡大するとか、歳出でやるしかないだろうと。税率に跳ね返らせるのは、所得税の世界では難しかろうと。法人税の世界ではまだ議論の余地があるのかもしれない。あと、別途財源をいろんなところから確保してきて組み合わせるということはあるかもしれない。例えばたばこあたりを増税してどうかという議論はあるかもしれない。当初言った方向はある時点から変えざるを得なかったということです。

記者

今日の議論でどういうふうに集約されていくのかわからなかったのが、特定財源について、議論百出で。

石会長

あれは暮れに結論がついてるんだよ。

記者

ということは今までの書きぶりのとおりということでいいんですか。

石会長

もっと強く書いてもいいくらいだ。この間も出たんだ、あの議論は。加藤前会長以来一般財源化というのはつながってるんですよ。議論すれば当然出ますよ。立場もあるし、皆さん見てるんですから。立場上黙ってるわけにはいかないでしょう。

(以上)