第26回総会終了後の石会長記者会見の模様
平成14年4月26日
〇石会長
それでは、今行いました26回目の総会の概略というか、今後どういう形でこの議論を活用するか、あるいは利用するかという点で少し整理をさせていただきます。今日26-2という文書を皆さんに渡してあると思います。1枚目が項目でありまして、2枚目以降は一応3つの主要な、所得税、法人税、資産課税のパーツごとに分けて、マルが書いてあって、項目が頭出ししております。事務局にお願いして、これまでの様々な議論をこういう形でまとめて、これに段々文章を付けて、あるいは内容を付けてですね、あるいは税制改正の方向を出しつつ、論点を整理していきたいと思っております。そういう意味では、これは粗々の基本的な項目を整理したという形で捉えて頂けたらいいと思います。例えば個人所得課税では、マルが2つ付いてあるところはどちらかというと総論的な話ですが、控除の見直しも、見直しの視点を並べ、その後、人的控除以下具体的な控除の項目を掲げて、どういうふうに整理していこうかという論点を出した訳です。今後まだやれていない所で、消費課税関係とか租特の関係等有りますので、それは連休明けの基礎小で積み残した分をやっていきたいと考えています。法人課税についても所得課税についても資産課税についてもそのような形で今後進めていきたいと思いますので。大体我々の基本的な方向はこういうことであるということを冒頭申し上げておきたいなと思っております。
それから内容につきましては、既に総会の席にて私も議論を整理しながら「こういうことでいいですか」と念押ししてきましたので繰り返しません。ただ、堀田さんがいみじくも最後言ってくれた「明るいことはないかね?」ということで、これからどういうトーンで書こうかと思っていますけれども。ただこういうふうに現行の税制の問題点、ある意味では歪みと言っていいかもしれないし、直さなければいけないと言っていいと思いますが、それを段々整理していきますと、どうしても課税ベースを広げるという形が主力になります。税率がどこでどれだけ調整できるかというのはまだわからないし、増やす方と減税の方向の調整はまだできていませんが、これまで過去に極端な形で減税してきたということになれば、取り戻すということになれば、おそらくそこで増収、増税の方向が出てくるようなトーンになるかもしれませんが。あくまで我々財源の問題というのは、6月段階で目指しております論点には多分具体的な数字としては当然書き込めないわけであります。そういう意味で現行税制の一言で言うと「空洞化」ですね、それを改めるという方向でいった時に、結果としていつどうなるかわかりませんけれども、整理の方向としては、課税ベース拡大が中心になるかと思います。ただ、これは景気との見合いも有りますし、今後の審議の流れもありますから、我々が今考えているタイムスパンでどこまでどう書けるかということは全く今のところ未定であります。いずれにしましても、論点整理を6月にやって、少し具体的に話を盛り込んだものは秋にして、その後おそらく政治的な判断で、2003年度税制改正あるいはより中長期的な方向の税制改正の仕分けが行われるであろうと考えております。その中で我々としては、パーツパーツにもう少し具体性を盛り込んだ形で議論を進めて来年度9月の中期答申にもって行くというやや長めの構想を描いております。
敢えて今日基礎小でやったものを総会に出したわけですから、総会で、言うなれば承認されたといいますか、そういう点だけ若干触れておきたいと思います。公平・中立・簡素という三原則を堅持しようということは、ほぼ我々の中で意見が一致したというふうに考えております。それからこれから様々な形で見直しをする時に、どうしても激変緩和的な要素が必要になってくるという時には少しステップバイステップでやるということは当然のことで、縮減そして廃止という段取りをどう描くかという問題、それから歳出面で控除の縮減又は廃止をカバーしなければいけないという問題、そういう事を踏まえつつ少し先の見通しを立てたいということについていろいろご議論がありましたけれど大体皆さんの賛同を得たと思います。
それから法人税の場合の活性化について、研究開発、あるいは一般の投資減税等については意見がまだ分かれておりまして、例の試験研究費のところの増部分等の議論がございましたけれども、重点的、効果的にある領域を目指してやるのか、それとも一般的に対象を広げて投資減税みたいに考えるか、これはこれからの議論でちょっとまだ我々の段階では詰めきれなかったと思っております。 これから議論したいと思います。
それから相続、贈与の世界ではやっぱり相続税、贈与税の一元化というのは基礎小で提案した問題をそのまま総会でも受け止めていただいたし、累積課税の方向で、アメリカ型みたいに一生涯でやるか、あるいは他の国みたいに10年、7年でやるかという議論は残ると思いますが、その点の議論はこれから詰めていきたい。
それから今日は公にはならなかったけど文化財の相続税の話とかNPOの寄附の話とか、そういう点についてはほぼ基礎小で行われたものがあそこでは受け止められたなという感じはいたしております。
そういうわけで、過去4回ほど積み重ねた議論の基礎小の問題が、総会ではほぼ全面的に、言うなればコンファームされたと理解をしておりますので、これをベースにしてまた次のテーマを取り上げ基礎小で議論を深めていきたいと思います。基礎小はあと連休明けに今のところ基本的な論点として取りまとめる前までに3回ぐらいを考えております。所得税、資産税の積み残し分がまだございますからそれの議論、それから消費課税、この関連の問題あるいはまだ社会保険の問題もあるし、租特の問題もありますし、やらなければいけない。それからもう一つ大きな問題としては国と地方の関係をどうするか、酒・タバコも含めエネルギー関係を含め、個別消費税の世界はどうするかという形で一当たりやっていきたいと思います。3回で収まるかどうかわかりませんが、1回3時間ぐらい詰めて、5月の末ぐらいには個別にパーツごとに整理がついた後、5月の最後の週あたりから取りまとめに入りたいと、このように考えております。
〇記者
それでは幹事社からいくつか質問をさせていただきます。控除の見直しは基本的な方向性としてコンファームされたということですが、税率構造の見直しの議論というのは・・・
〇石会長
所得税の話ですか。それは今日ちょっと時間的制約もあるし所得控除の見直しという論点でありましたから、税率の方にどれくらい跳ね返させるか等の議論はしておりません。しておりませんが、フラット化がもう一段できるかどうかについては先ほどデータで示したように、給与所得者でいえば1%分ぐらいしかトップのほうに入っていない、ところが10%のところに8割入っているというのはそういう税率構造がいいのか悪いのか議論するという過程で課税最低限を下げた時にどう跳ね返ってくるか精査しなければいけないでしょうね。従ってこれは積み残した部分の問題として取扱いたいと思います。
〇記者
その中で手当の分、先ほど歳出面での手当とおっしゃいましたが、その辺ともあわせて議論されるということですか。
〇石会長
ただね、歳出面うんぬんとはいっても政府税調の直接の所管事項でもないので難しいとは思いますが。そういうスタイル、姿勢、これは一つ考え得るとは思っています。所得控除というのは所詮個々の納税者の事情を加味して作ったものですから、一つ二つ落としていけば当然個々の事情を無視することができればいいけど、そうでない場合、何かしなければいけないといった時に、そっちの配慮があると思います。僕は長い目で個人的には例のパーソナルエグゼンプション(人的控除)というアメリカ型、一人一つというようなやり方のほうがスッキリはしていると思います。ただ一挙にそこまで難しいと思いますが、個々の納税者の担税力に応じてシンプルにやるとしたら、もういろんな扶養だ、配偶者だ、同居老親だ、勤労学生だ等々、税で個別の事情をみていくよりは、ある方向として望ましい方向としてはパーソナルエクゼンプションスタイルというのは考えてもいいのではないかとは思いますけど。ただあまりにも距離が遠すぎる、現状の所得控除制度と比べると。ただそういう議論をするのも一つの方法だと思っています。
〇記者
6月の取りまとめのタイミングでは、今日の議論の中で出てきたスケジュール感みたいなものを6月には盛り込むのかというのが一つ、それから、活性化のところで議論が分かれましたけれども、活性化として何か減税を考えるというところで分かれているというふうに認識されるのか、あるいはやり方のところでどういうやり方をチョイスするのかで分かれているのか、会長の意思はどちらかと。
〇石会長
一点目はステップバイステップ、具体的な方法、言うなれば諮問会議の改革工程表みたいに、これちょっと具体的に突っ込むのは、私は難しいと思っております。優先度をつけるという意味において、私は控除というのは配偶者控除、配偶者特別控除、給与所得控除、あと退職所得控除とかそれから公的年金等控除とか、これ挙がっていますよね項目が。これがある意味では我々がやりたいと思っています検討事項でありますから、その問題点を整理した後で、どこが一番問題で、どこからやっていくのかぐらいのことは順序付けしたいと考えています。
それから活性化税制は、減税がそもそも必要かどうかという事と、減税をした後対象を重点化するのか一般化するのかと、これも実は議論は分かれていますね。おそらく活性化しようといった時の有力な話は研究開発、今のところ試験研究という形で増分だけかけておりますが、あれをどういうふうに加工するのか、あるいは対象を、今たまたま基礎研究のみならず応用面までカバーしているようでありますが、それが本当にそうなっているのかどうかを踏まえて対象をどういう形でやるかという二段構えでやらなければいけないと思います。そういう意味で塩川大臣のお話もあって、研究開発費というのは経済界の実際のほうが強いので、そう言う人が対象かと思いますけどね。是か非かの後、絞り込むか一般化という議論は残っているというのはちょっとこれからの議論としていかなければいけないかなと思います。
〇記者
両方ともまだ議論している・・・
〇石会長
えー、出来てないと思いますね。ここは今日の議論では。それはまだ基礎小でもまだ議論が終焉していませんからね。その状況状況でもうしばらく議論を繰り返さなければいけないかとは思っておりますが、6月の段階では何らかの形で結論に導くような議論をしなければいけないかと思っていますけどね。
〇記者
個人所得のメモのP2の税負担の空洞化という一つ目のマルで、今後のあるべき個人所得課税について税負担の増加は避けられない課題だと。過去にやった減税があるので、その分についてはあるべき姿は増税だよというふうに解釈するのですけれども、この点についてこれから議論があるかもしれないし政府税調としての立場というのもあるのかもしれませんけれども、総理が言っておられる「税制改革を通じた経済の活性化」とか「努力が報われる税制」といったところに対する配慮といったのはここの段階でなかなか出てこないような感じがするのですけれども、その点についてどう答えていかれますか。
〇石会長
「痛みを分かち合う」というのはまさに広く薄くだから、それはそれでいくと思うんだよね。それから「努力が報われる」ということに対して、諮問会議などのお考えは、確か税率の緩和ではないかと私は思っておりますけどね。そういう意味で法人税について今日要望があったし、それからトップレートのところ、個人所得課税ですね、それがもう一段あるのかどうか、それはおそらく報われる人や企業に対する一つのメッセージだと思いますから、それは議論としては今後残り得ると思いますね。法人課税ではドイツがああいう形で下げたけど。
ただこれも逆な議論が税調にはしばしばあって、報われるというのはあるレベル以上の所得水準、資産を持っている人がその範囲に入るのでね、そこから落ちているかなり多くの納税者なり企業なりがそれの対象にならない時に、今日も「結果の平等を目指すと言ったってそれが不平等になるんじゃないか」という議論ね、これは僕は押さえなければいけないと思っています。だから努力をして報われるといった時に、そもそも努力したってどうしようもない、努力のしがいのない人を税でどうカバーするかという議論が抜けていると思います。それを入れた形で、つまり所得の分配面での配慮ですね。それはおそらく相続税の世界でも生きてくるだろうし、それから所得税の世界でも生きてくるだろうし、贈与の世界でも生きてくるだろうから、そこは我々の税調としては、しかと押さえなければいけないと思っております。
〇記者
解釈の問題ですが、その下の税率ブラケットのところで、確かに最低税率のブラケットに8割入っているという問題について、活性化とかそういったことで何かインセンティブを考える際に、この8割の人たちは、控除の見直しをしたことによって税負担がそのまま増えちゃうという形になって、若干さっき委員の指摘もありましたけど夢がないと言いますか、明るい部分が無いような印象があるのですけれども、この点はどのように考えたらいいのでしょうか
〇石会長
どうしますかね。そもそも税は暗いものだっていう話をしたのだけども、何か明るいというのは、すべからく今の現行の税負担を軽減するようにもっていけば少しは明るくなるかもしれない。ただご存知のように我々の問題意識は、現状を非常にあるべき姿から見ると遠のいているから、直していくことになると、明るくないほうになってしまうのだけど、明るくやれる所がないわけではないでしょう。NPOの寄附とか、あと何かな、探すのがちょっと苦しいかもしれないけれども。教育とか子育てとかでかなりまた面倒見るとなると、所得控除の広がりを認めることになるからね、だからこれは苦しいところですね。そういう意味でどういう形でバランスをとるか、これから苦慮するのが続くと思いますけれども、言葉だけ明るくしても仕方がないし、態度だけ明るくしても仕方がないのでね、そこが苦慮していますけれども。そういう指摘も踏まえつつ、といって論点を残さないで書きたいと思っておりますが。何かありますかね、知恵ありませんか。苦慮しています。
それから活性化にしても、今急にこれから見直す方向を打ち出したとしても、私は急に出来るとは思ってないのです。徐々に激変緩和を含めつつ、極力控除見直しでも他の控除との絡みを考えたら、税率との調整を考えたりという形でじっくり腰を据えてやるしかないなというふうに思っておりますので、一挙にどうだっていうことは難しかろうかという印象を持っております。
〇記者
諮問会議の議論との兼ね合いなのですが、6月にいずれも報告、基本方針が出されるふうになっていまして、そこの擦りあわせというか役割分担というのは今後どんなふうに考えられますか。
〇石会長
いずれ5月中に出席を要請される場もあろうと思います。そこで議論がどうなるかわかりませんが、税調はこういう事を考え、こういう審議を進め、こういう方向に持っていくということは申し上げたいと思っています。内々諮問会議の民間委員なり、竹中大臣と議論していますと、改革のカバレッジはそんなに変わらないと思います。大体、今の現行税制の問題点は似たような事が対象になりますから。問題はこの間も申し上げたようにタイミングの問題であり、優先順位の問題であり、どういうステップを踏むかということだと思いますので、いつの時点でどっちがどう出すかというところは決まっておりませんが、内容的には詰めていけばそんなに相反する方向ではないというふうに確信はしております。
〇記者
激変緩和の話なのですけれども、一方で塩川財務大臣の原則で一定期間内の増減税ということもあって、要するにこれから中期答申を6月に向けてまとめていく時に、今年度の改正だけでなく少し長い所まである程度タイムフレームというか、激変緩和で最初まず1年間目でこのぐらいして何年後にどうするとか少しは描けるのでは・・・
〇石会長
そういうテクニカルに渡る部分は仮に出来るとしても答申の中にそういうところまで書き込むのがいいのかどうかでしょう。我々は主要な論点を整理して、主要な項目を挙げて改革の方向を示すとしてね、一歩先を進んで、いつまでにこれやって、これとこれと激変が過ぎるから組み合わせてどうだというところまでやるかどうか、やるべきかどうかちょっと今、考え中ですね。そういう答申は今まで出たことないのですよ、政府税調等で。基本的な方向をきちんと出すというのが我々の視点でありますから、せいぜい出来ることは、いくつかある主要な、例えば所得控除の見直しを5つか6つあげたとして、どっちからどうやっていくのかぐらいのことは言えるかもしれないけど、これをいつまでにやって、次はこれだという工程表的発想は税制改革にはなじまないと思います。つまり対国民との対話において、あるいは国民との議論においてしなければいけないとなると、金融政策だとか予算編成とか補助金の整理みたいに特定のところがぽんと決まれば決まってしまうものではありませんから。税はやっぱりせいぜい優先度を莫として示す程度が精一杯だと思います。
〇記者
総会の中で所得税のロットの話が出ましたが、その中で代表的な恒久的減税についての話も出たと思いますが、これについてはどうお考えですか。
〇石会長
恒久的減税の中の定率減税が3兆円ぐらいあって、恒久的減税が全体として5兆いくらあるのです。今日それが果たしてそもそもの狙 いである景気対策にまだ役立っているとみるのかどうかということ検証せいとか、従っていずれの時期には見直すべきであるという議論も兼ねがね出ているのです。それは景気対策として役に立ってないかどうか分からないけど、これを確実に無くしたら、景気に対しては足を引っ張るでしょう。従って、それを直す時期はいずれ来ると思いますし、これをいつまでものせておくということは、所得税の役割を著しく減殺していると思いますので。ただこれから出てくるであろう税源を他の改革の所に当てこむとかという議論は多分あるでしょうね。廃止したらそれだけ税が戻るわけでしょう。戻った税を使って何か税制改革の方向に使えるかどうかという議論はあるでしょう。具体的にどこに充てるかは議論の対象になっておりませんが。あるいは純粋に取り戻すというのも、もう一つあるんでしょうし。その辺まだ他のいろいろな事情もございますから議論しておりませんが、少なくともここについて議論することはあり得ると思います。あり得るし、やらなければいけないと思っております。
(以上)