第33回総会 議事録
平成14年10月18日開催
〇石会長
時間になりました。33回目になりますが、総会を開催いたします。
今日は2時間半、4時半までの予定でございますので、途中退室のご予定の方もいらっしゃると聞いておりますから、議題を眺めて、早めに退室の場合にはご発言いただいて、先のほうまで、やってないものにご発言いただいても構いませんから、その点は特にご留意ください。
今日は非常に盛りだくさんのテーマがございますので、ぼんぼん進みますので、少し駆け足になり過ぎるかなあと思われるところもあるかもしれませんが、お許しいただきたいと思います。
最初にあることを諮りまして、皆さんからお許しをいただきたいと思いますが、最初は、新しい非営利法人課税に関するワーキング・グループを基礎問題小委員会の下につくりたいという提案でございます。
実は今年の3月に、公益法人制度の抜本的改革についての閣議決定がなされまして、来年3月までに「公益法人制度改革大綱」というものを閣議決定することにしておりまして、それでいろいろ、中間法人とかNPOとか、そういうものに関しまして抜本的な見直しが公益法人制度全体にございます。税も絡んでまいりますので、そこで、この非営利法人課税ワーキング・グループというのを立てたいと思います。今日詳しくまだメンバー等々を発表するまでに至りませんけれども、お許しをいただきましたら、今月末か来月初めからスタートしたいと考えております。よろしゅうございますか。――NPO関係はいろいろと話題を呼んでおりますので、そこでしっかり税制をまとめたいと考えております。
それからもう一つ、特定口座、今新しい証券税制のスタートの前にいろいろ話題を投げかけておりまして、話題というよりは非常にクレームがついておりまして、それにつきまして、国税庁を中心に財務省、総務省でワーキング・グループをつくりまして幾つか検討され、改善の方向を打ち出しているようでございますので、簡単にこれを古谷税制第一課長からご説明いただきましょう。
古谷さん、お願いします。
〇古谷税制第一課長
税制一課長でございます。
お手元に「説明資料(特定口座関係)」という横長の資料がございます。右肩に基礎小20-8と書いてございます。これに沿いましてご報告を申し上げます。
目次を飛ばして1枚お開きいただきますと、「特定口座制度」の改善・簡素化ということで書かせていただいておりますが、ご承知のように、昨年いろいろとご議論いただきまして、株式譲渡益課税につきましては、来年の1月から申告分離課税へ一本化される予定でございますが、それとあわせて投資家の申告の負担を軽減するために、特定口座制度というものを導入予定でございます。
(注)のところでございますけれども、特定口座制度というのは、証券会社ごとに投資家が1つずつ特定口座を設けることができますが、特定口座内の取引につきまして、「年間取引報告書」が証券会社から発行され、それをもって投資家は簡易な申告が可能になるというほかに、[2]でございますが、投資家が特定口座内の取引について源泉徴収をしてくださいという方向を選択しますと、その分、申告が不要となるという仕組みでございます。
この特定口座制度を含めます新しい証券税制につきましては、この9月から各証券会社でその開設の準備が始まっておりますけれども、非常に複雑でわかりにくいとか、使い勝手が悪いという投資家からの批判がございます。これを受けまして、私ども、制度の円滑な実施を図る観点から、財務省・国税庁・総務省による事務方で「特定口座実施円滑化プロジェクト・チーム」を設置いたしまして、日本証券業協会、それから全国の証券会社17社から直接お話を伺いまして、問題点の洗い出しをいたしました。率直な意見交換をさせていただいたと思っております。このたび、今回の要望に対する改善措置をまとめましたので、ご報告をさせていただきたいと思います。
3つ目の〇ですが、この特定口座制度につきまして、投資家の利便を向上させる観点から、より簡素に、より使い勝手をよくするため、現時点での要望項目のほとんどに前向きに対応することといたしました。検討結果は、先週の基礎問題小委員会に報告をさせていただいた後、11日でございますが、公表させていただいております。このうち、運用面の措置、政省令、通達で対応できますものについては、11月中旬を目途に速やかに実施をしたいと思っております。さらに法律事項につきましては、次期通常国会で所要の対応を図りたいと考えているところでございます。
2ページ目に進んでいただきまして、主な見直しの内容でございますが、非常に技術的、実務的なものが多うございますので、幾つかのご報告をさせていただくことにさせていただきます。
1つは、2ページ目にございますが、「特定口座制度の仕組みの簡素化」ということで、源泉徴収の方法の見直しをさせていただきたいと思っております。
真ん中に投資家からのクレームを整理してございますが、「申告が不要になる」と言われて、源泉徴収ありの特定口座を利用しようと考えたけれども、税金がとられ過ぎとなるケースが生じるため、結果的に投資家本人による還付申告が必要となってしまうという問題点が指摘されました。
これに対しまして、右の方の「見直しによる対応」という欄でございますが、現在の源泉徴収税額を毎月国庫納付する仕組みを改めまして、16年1月から、年間分を一括して国庫納付する仕組みとする年間分一括納付方式に改めたいと思っております。
同時に、取引ごとに譲渡益の洗替えを行いまして、損失が発生しました都度、すでに徴収している税額から投資家の口座に還付、返還を行うという仕組みをいたします。
その結果、源泉徴収額のとられ過ぎが解消し、その分の還付申告が不要となるといった効果がございまして、実質的には、実額の譲渡益に対して、この特定口座を利用されますと、源泉分離課税と同じような効果が投資家が享受できるという方向で、申告の手間を省く見直しをさせていただきたいというのが第1点でございます。
3ページ目にいっていただきまして、煩雑で非常に不合理であるといった批判が経過措置についてもいろいろございまして、経過措置の簡素化を図らせていただきたいと思っています。
1つは、「特定口座への実額での株式移管」と書いてございますが、真ん中の欄を見ていただきますと、バブル期に高値で購入した株式、NTT株なんかが典型であろうかと思いますが、それを特定口座に移管しようといたしましても、現在の仕組みですと、一律に、昨年10月1日の終値の80%というみなし取得価額が適用されるということで、かえって損をしてしまうというクレームがございました。
これに対しましては、平成4年末以前に取得された古い株式でありましても、一律にみなし取得価額を適用する現行制度を改めまして、証券会社が証明できます場合には、実額で移管することを可能としたいと考えております。
それから2番目の箱でございますが、「特定口座への株式移管期間の1年間延長」ということで、特定口座制度のメリットを十分に理解してから利用開始したいのに、今年中でないとその開設の申し込みができず、保護預り口座からの株式移管ができないというクレームがございました。
これに対しまして、特定口座への株式移管期間を1年間延長いたしまして、来年1年間、平成15年中の開設の際にも、この経過措置である保護預り口座からの株式移管ができるようにしたいと考えておりまして、これによって、個人投資家はもう少し判断、準備をしていただく時間が確保できるということでございます。
3点目以降、住民税での対応等、いろいろと改善措置を講じさせていただいておりますが、非常に技術的になりますし、時間の関係で一々は省略させていただきますが、今回発表させていただきましたのは、現段階での要望への対応でございまして、今後とも、投資家や証券会社からの要望をお聞きして、さらなる改善や簡素化の作業を進めていきたいと思っておりますので、今日は現時点での改善案ということでご報告させていただきます。
よろしくお願いいたします。
〇石会長
ありがとうございました。
それでは、少し時間をとりまして、今のご報告に対しましてご質問なりご意見を賜りたいと思います。ただ、証券税制全般につきましては、後ほど金融・証券税制というカテゴリーで議論する時間を設けますので、これからご議論いただくのは特定口座に関してのみ、何かご意見がございましたら、伺いたいと思います。どなたかいらっしゃいますか。どうぞ、奥本さん。
〇奥本特別委員
この特定口座の改善につきましていろいろご努力いただきまして、業界としても大変、そういう意味では感謝しているところでございます。ただ、今最後のほうにご説明ありましたように、これですべて終わりではないということでございましたが、今一番やはり問題になりますのは、お客様といいますか、個人が証券会社に預けてなかった株、つまりタンスに入っているような株券とか、それから銀行の担保に入っているような株券、これの取得価額の認定がまだ大変不都合な部分があるというふうに理解しております。
つまり、去年の10月1日という基準日以前に証券会社が預かっているものにつきましては、今ご説明ありましたように、いろいろ改善が施されたわけですが、そのときに入ってなかった株券につきましての簿価といいますか、取得価額、これの認定がなかなか制度的、法律的にもいろいろ難しい面があることも承知しますが、これに対する一つの改善策について引き続きご検討いただきたいということをあえてつけ加えさせていただきます。ありがとうございます。
〇石会長
何か具体的にご提案ございますか。改善とおっしゃっているからには。
〇奥本特別委員
例えばタンスに入っているような株券でも、株主名簿で取得日というのはわかるはずでございます。ですから、そういったことを簿価の認定にするとか、もっと極端なことを言えば、要するに、本人がこの簿価は幾らであるということを申請したらば、基本的にはそれを全部認めてしまうと。つまり、それはいわゆる善意の、人間皆性善でございますので、そういうようなことまでできないかとか。
それから、今あえて言わなかったのですが、相続で受けた株、つまり、例えば3,000円で相続した株、それが現在1,000円になってしまっているというようなときに、本人、相続人の心理状態としては、これは3,000円で税金払ったではないかというような気持ちが強いわけですね。それに対する不満というのもかなり、我々のところに来ているクレームの一つとしてはございます。そういったものもやはり考慮していただく必要が本当はあるのかなという気もしておりますけれども、いずれにしましても、簿価の認定といいますか、取得価額の認定というのはなかなか技術的に難しい面もありますので、かなり思い切ったことまで考えていただかないと、なかなか全体の不満の解決にはならない部分があることは事実だと思います。
〇石会長
ありがとうございました。性善説に立った思い切りのよさというようなご提案のようですけれども、業界自体がそれに対してどういう答えをされているかが多分問題になってくると思いますが、わかりました。また事務局も受け付けると思います。他にございますか。よろしゅうございますか。
それでは、きょうは話題というかテーマが山ほどございますから、また後ほど、金融・証券税制のところで問題になりましたらご発言いただきたいと思います。
それではこれから、基礎問題小委員会を過去4回ほどやりまして、その間に経済財政諮問会議でのいろいろな議論もございますから、それを逐次ご説明しつつ、具体的なテーマに話を持っていきたいと思います。
そこで、若干整理しておきたいと思いますが、今、基礎問題小委員会という形で、来年度税制改正、あるいは「あるべき税制」の姿をどう持っていくかということを議論いたしておりまして、実は9月3日の総会では中間整理をご覧いただいたと思います。それからさらに9月下旬から週1回やっておりまして、本来ならもっと早く総会を開くつもりで、2回基礎小をやって1回総会を開くぐらいのほうがよかったのですが、いろいろな事情もございまして、4回、基礎小をやってしまいましたので、今日かなり話題が、あるいは議題が込んでいるということであります。
そこで、その間に10月11日と17日に経済財政諮問会議に出て、我々がやっております幾つかのことにつきましてご説明もしてまいりました。と同時に、経済財政諮問会議でも幾つか議論が進んでおりますので、それを総括ご説明いただくほうがいいかと思いますので、永長調査課長のほうから簡単にこの辺の経緯をご説明いただけますか。よろしく。
〇永長調査課長
調査課長でございます。
お手元資料に、A3判、ちょっと大きめの資料と、それから3つ、A4判の資料、「基本的方向について」「全体像」、それから宮島先生、奥野先生のメモの4つの資料につきまして、多少はしょりぎみになりますが、ご説明申し上げたいと思います。
まず最初に、今会長お話しになりました10月11日でございますが、この日、先に基礎問題小委員会がございまして、そこでこの塩川大臣提出資料が出されまして、その後、経済財政諮問会議に提出されております。「来年度税制改革の基本的方向について」ということで、「基本的考え方」「来年度税制改革において、経済活性化に資する『あるべき税制』を構築するため、多年度税収中立を図ることにより、財政規律を堅持しつつ、現下のマクロ経済の状況を踏まえ、1兆円を超えるできる限りの規模を目指した先行減税を含め、税制改革全体を一括の法律案としてとりまとめる。なお、税収中立期間後の税制については、その時点における経済・財政・税収の状況等を勘案しつつ、税体系全体や2010年来初頭のプライマリーバランスの黒字化目標との関係の中で改めて検討を行う」。
このような基本的な考え方の下にということで、2.でございますが、「検討の具体的内容」。若干はしょらせていただきますが、「広範にわたり、将来の『あるべき税制』の構築の一環として、具体的には」ということで、「法人課税においては、21世紀の我が国を支える戦略分野の成長を支援する」ということで、「研究開発・投資減税を集中・重点的に行う」。「なお」といたしまして、「税率の水準については、マクロ経済の状況、国際的視野、税体系のあり方を勘案しつつ、引き続き検討を行う」とされております。
(2)は、個人所得課税の空洞化の状況を是正したいということで、「取り組みの第一歩として配偶者特別控除、特定扶養控除の廃止・縮減を図る」。
(3)は、消費税について、税体系におけるその重要性にかんがみ、制度に対する国民の信頼性、透明性を向上するということで、免税点、それから簡易課税制度を抜本的に改革するとなっております。
(4)は、高齢化の進展を踏まえ、高齢者の保有する資産の次世代への移転の円滑化に資するということで、相続税・贈与税の一体化を行う。あわせて、相続税の最高税率、それから控除、こういったことを見直す。
(5)が地方税でございますが、「税負担の公平性の確保、地方分権を支える基幹税の安定化等を図るため、法人事業税に外形標準課税の導入を図る」。
(6)が土地税制、(7)が金融証券税制、さらには(8)に中小企業税制について記述がございまして、(9)その他ということで、財務大臣からこの旨のメモが経済財政諮問会議に提出されたわけでございます。
この日、同日でございますが、ちょっと後先になりますが、先ほどちょっと見ていただきました宮島先生、奥野先生の「税制改革と経済財政政策の運営について」というメモ、これも同日の基礎問題小委員会に出されまして、同日の経済財政諮問会議において、石会長のほうからご提出いただきました。後でお読みいただければと思いますが、基本的には、税制に対する信頼を回復する、それから財政の維持可能性を回復する、そういった観点のメモでございます。
種々活発なご議論があったわけでございますが、ちょっと色が違いますが、白くなってます「税制改革の全体像」というものがございます。これが昨日の経済財政諮問会議におきまして竹中大臣のほうからご提出になり、会議としてご了承されたものでございます。
「15年度税制改革の位置付け」ということで、(1)(2)(3)となっておりまして、2.「15年度税制改革」として、「総合的な政策対応」ということで、中段でございますが、「税制面では、先行減税を1兆円を超える出来る限りの規模とする必要がある。具体的には、下記の方向で検討し、財政規律を堅持しつつ今後のマクロ経済動向等を踏まえ決定する」ということで、「改革の方向」といたしましては、1つ目のパラグラフ、これは法人関係でございます。研究開発やIT投資に対する減税、活力ある中小企業の経営基盤の強化、それから外形標準課税。「法人税率の取り扱いについては、マクロ経済の状況、国際的視野、税体系のあり方も勘案しつつ引き続き検討する」となっております。
その次のパラグラフ、幾つかの税が入っておりますが、相続税・贈与税の話、土地税制、それから金融・証券税制、「これらの改革は 資産デフレの克服にも寄与する」と位置づけられております。
「また」といたしまして、これはいわゆる増収項目でございますが、消費税、ページをまたぎますが、配偶者特別控除や特定扶養控除、この辺の記述がございます。
基本的には、先ほどご紹介いたしました財務大臣の提出メモと平仄がとれているわけでございます。
こういった15年度改正に向けての全体像が示されておるわけでございますが、A3判の大きな紙にちょっとお戻りいただきまして、これはことしの6月に政府税調でおまとめいただきました「あるべき税制の構築に向けた基本方針」というものを、いわば工程表的に整理したものでございます。
一番左側の欄がいわゆる「基本的考え方」で、真ん中の「当面の課題」、これがいわゆる15年度改正で取り組むもの、その右の「その後の課題」ということでございます。
いずれにいたしましても、当調査会でご議論いただきましたように、一番右の「経済社会の活性化」のための「あるべき税制」を目指したいと。各税目における一つの流れがあるわけでございます。
個人所得課税については、空洞化の状況を是正するという中で、今後、いわゆる人的控除の基本的構造のさらなる見直し、公的年金等控除の高齢者に関する控除等々、見直すことを念頭に置きつつ、15年度の「当面の課題」といたしましては、配偶者特別控除、特定扶養控除等を見直すと。
法人税につきましては、ちなみに、一番右にございますけれども、「今後の法人税率の水準については」ということで、[1]、[2]、[3]を踏まえて検討。それから非営利法人等の扱い。こういったものを念頭に置きつつも、15年度においては、21世紀をリードする戦略分野に政策税制を集中的・重点化させると。これを当面の課題としております。
消費税につきましては、「基本的考え方」でございますが、極めて重要な税であるということで、これまたちょっと飛びます。「その後の課題」でございますが、将来的には、社保支出の増大や財政構造改革を展望して、今後、税率を引き上げ、役割を高めていく必要というご指摘をちょうだいしておりまして、それに向かう一つの糧として、制度の信頼性、透明性を向上させるということで、15年度は、事業者免税点制度、簡易課税制度。
相続税につきましても、「基本的な考え方」のもとで、この真ん中でございますけれども、相続税・贈与税の一体化の措置を導入したいと。
外形標準課税につきましても、ここに書いてあるいろいろな観点から、内容について必要な検討を加え、その意義の更なる周知に努め、早急に導入する。
そのほか、固定資産税、土地税制、金融・証券税制と15年度改正において取り上げていただく。この「当面の課題」の欄、真ん中の欄を縦に見ていただきますと、いずれにしましても、一番右に至る「あるべき税制」に向けての取り組みの一環であると位置づけておるということでございます。
はしょりましたが、以上でございます。
〇石会長
ありがとうございました。今の永長さんのご説明で、我々がこれまでやってきたこと、あるいはこれからやるべきことに関しましてある種の鳥瞰図が与えられたわけでございます。
そこで、今日ここで議論しなければいけないのは、個々の税目について今後議論を深めつつ答申案を書いていくわけですが、基礎問題小委員会でやりましたことをさらっとご紹介しつつ、幾つか意見を賜りつつ、パーツパーツで固めていきたいと考えております。
以下、ここで議論申し上げたいのは、今最後に永長さんが使われた大きな図の左端に個人所得課税、法人税、消費税等々8つほどの項目が書いてございますが、これごとに、今から基礎問題小委員会で議論いたしました内容をご紹介いたしますので、それにつきましてご議論いただきたいと考えております。そこで、土地税制について意見を言いたいのだけれどもちょっと早めに退室したいという方はどうぞ、早めでも結構でございますから、言及していただいて構いません。
それでは、「これまでの審議状況」、総33-1という紙が配られていると思いますから、これに従いまして、大体の項目が並んでおりますから、これに若干の話をつけ加える形で議論を整理し、そこでご議論を賜りたいと、このように考えております。たしか7つぐらいの項目に分かれておりますので、駆け足になるかもしれませんが、私の説明で漏れている点でも結構でございますから、この税に関してぜひとも言っておきたい、ぜひとも改善の方向を要望したいという点がありましたら、遠慮なくご議論いただきたいと思います。また基礎問題小委員会に持ち帰りまして議論をいたしたいと思います。
個人所得課税でありますから、当然のこと、住民税も入っておりますが、今我々やろうとしておりますことは、基幹税として、空洞化という現象が著しく、目に余るものがあると。空洞化の是正をしたい。具体的には課税最低限があまり上がり過ぎた。上がり過ぎた最大の原因は、個々の所得控除が高くなり過ぎていると。それから経済社会の構造変化に対応し切れてない。つまり、今ある所得税というのは、家族のライフサイクルからいいますと、奥さんが家にいて専業主婦で、片稼ぎの家庭を大体頭に置いている。したがって、配偶者特別控除とか、あるいは配偶者控除そのものがまだかなり重要な役割を演じてますが、今の男女共同参画時代にふさわしいかどうかという問題提起がされております。
それから高齢者はあくまで社会的弱者として扱っておりますから、高齢者に対する幾つかの特定の控除、例えば老齢者控除であるとか公的年金等控除、いっぱいありまして、これをこれからどうしたらいいかというような議論、これもございます。
そういう意味で、見直しの視点としては、「基本的考え方」で書いてございますが、なるべく所得控除というものを簡素化・集約化していこうと。それから課税の公平・中立・簡素というのが税調の掲げる税制改革の目標でございますから、それに沿った形で、個々の人々の選択をあまり税で歪めないようにしようと。具体的に申しますと、家庭の主婦が103万円という壁で、自分の労働時間なり自分の給与なりを調整するというのは、ある意味で税で歪めているわけでありますから、そういうものでないようなという視点から、中立的なことを考えています。
それから広く薄くという議論がございます。そこで、広くというのは所得控除を見直しつつ課税ベースを広げるのですが、薄くのほうの累進課税の税率、これは十分、過去の減税でやってきたという認識がありまして、所得税に関していえば、広くのほうがやはり、当面というか将来課題になると思います。
そこで、今考えております課税の方向は、ここに書いてございます人的控除の見直しでありまして、6月に、小泉首相から5項目の来年度税制改革の指針が出ました。そこにもはっきり書かれておるのですが、配偶者特別控除、それから特定扶養控除、こういうものについて抜本的に見直してはどうかという形で議論を進めてきております。
配偶者特別控除につきましては基本的に制度を廃止したいと。ただ、38万円という大きな固まりでありますから、一挙にできるかどうか、その問題もございますし、それから税引き後の、手取りの逆転現象というのを防ぐために作った103万円を超えた後にぶら下がっている部分の配偶者特別控除がありますから、それまで取っ払うのかどうか、そんな議論があるわけでありますし、特定扶養控除などの各種割り増しというのは幾つか、例の16歳から22歳までの高校生、大学生の教育控除的な特定扶養控除とか、そのほか、老親がいるとか、あるいは身障者がいる等々、いろいろ加算・割増がついておりますから、こういうものをできるだけ簡素化できないかということで問題を考えております。
そういう意味で、所得税についてご議論賜りたいのは、今二十幾つかある所得控除を長い目で見て減らす方向で考えていこうということですが、どうしても増税の項目になりますからそう簡単にはいかないと思いますが、具体的な進め方、あるいはどういう項目に問題があるか、たまたまこれは2つ今出ておりますが、それ以外にも話題になっておりますようなものが幾つかございますから、それについてどう考えたらいいか。
たまたま、私、今、公的年金等の控除とか、老齢者も出しましたし、時々出てくるのは勤労学生控除であります。こういうものにつきまして、広くするという方向につきまして、どうしても税収の増になるので慎重にやるという、景気の問題もございますが、それ等につきましてご議論いただけたらと思います。
これにつきましては特に補足の説明をお願いしませんので、以上の私の説明で基礎問題小委員会の空気がおわかりいただければいいと思いますし、さらに何か情報が必要だということであればご発言いただきたいと思います。どうぞ、どなたでも結構です。どうぞ、津田さん。
〇津田委員
この配偶者特別控除の考え方は、男女共同参画社会というような流れに沿っての見直しという趣旨を含んでおります。ところが、住民税の均等割につきまして、生計を一にする妻については、所得100万円以上あっても均等割を課さないと、こういう昔ながらの格好になっておりまして、思想的にも、この配偶者特別控除の見直しと同じようなことでございますので、一緒にお考えいただきたいと思います。
〇石会長
ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。よろしゅうございますか。
といっても、話題が大きくなり過ぎて、ちょっとご発言しにくいのかもしれませんが。一通り細かい資料でご説明した後なので、一々制度的な問題を申し上げてございませんが、それでは基本的に、時間がどのぐらいかかるかわかりませんが、将来の方向としては、この課税ベースを広くするという意味において、各種の、これまで積み重ねてきた所得控除を見直すという方向が一応我々のあるべき税の姿ということで、よろしゅうございますね。また戻っていただいて構いませんから、今日は時間の関係もあるし、先へ先へというわけではないですが、急がせていただきます。
法人税、これは後で税制第二課長からも追加的なご説明をいただく予定でございますが、昨日、私、経済財政諮問会議にも出席いたしまして、研究開発減税、投資減税、これをまとめました別紙がついていると思いますが、その整理したものを経済財政諮問会議でご披露というか説明してまいりました。これにつきましては、マスコミ報道からもいろいろな形で情報が提供されていると思いますが、先行減税という話がデフレの深刻化とともに出てまいりました。
そこで、今減税の対象になるのは何かといいますと、所得税でもない、消費税でもない、法人税だろうと。これは一致しているのですが、やり方といたしましては、税率見直しでいくのか、引下げでいくのか、この特定の分野の研究開発・投資減税といった政策減税でいくのかという議論を大分いたしました。
基礎問題小委員会でも、これにつきましてはずうっとこの間まで議論を繰り返しておりまして、税調のこれまでのスタイルからいいますと、課税ベースを広くする、その視点で租税特別措置を見直せということを言っておりましたので、この研究開発・投資減税の領域は、ある意味では租特を広げることになりますので、かなり抵抗を示される委員の方もございました。
そこで、税率引下げのほうがいいではないかと。これはこれでまた大いに議論いたしましたが、過去5年間に9%ぐらい急に下げてきておりますね。しかし、その結果、設備投資に向かったというよりは過剰債務の返済に企業は向かったのではないかと。これまた事実だろうと思いますし、それならば方向を少し転換し、同じ財源を使うならば、税率引下げより、この研究開発、設備投資のほうが今の、現下の景気対策として有効ではないかという話に落ちついたわけであります。
ただ、政策減税であって、租税特別措置というものに絡みますから、既存の租特の関連項目を大いに統廃合の対象にして、そこの改革を重ねつつ、この研究開発・投資減税ということを踏み切ったわけであります。具体的な内容につきましては、ちょっと重要な点もございますので、道盛さんから追加説明してもらいましょう。じゃ簡単によろしく。
〇道盛税制第二課長
それでは、お手元に、10月17日税制調査会会長談話「研究開発減税・投資減税の基本的枠組み」という4枚紙、それからその下に「資料」といたしまして総33-2という資料がございますが、この2つを使いまして簡単に、研究開発減税、投資減税のおまとめいただきました枠組みをご説明させていただきたいと思います。
会長談話の1枚目は、多年度税収中立のもとで、研究開発減税と投資減税もこの方針に従い実施されなければならないといった総論的なことを書いていただいておりまして、2枚目以降に具体的な枠組みが記述されております。
2枚目をお開きいただきまして、10行目ほどからの1.「研究開発税制」でございますが、最初の4行を読ませていただきますと、「企業が行う研究開発の成果は広く経済全体に恩恵を及ぼすものである。しかし、投資リスクが高いため、市場原理に任せるだけでは十分な活動が行われない可能性がある。このような外部効果を有する研究開発に対し、政策税制で支援することには一定の合理性が認められる」という基本的な判断のもとに、制度を見直していただきました。
横紙のほうの「資料」33-2を1枚おめくりいただきますと、そこに現行の我が国の増加試験研究費の税額控除制度の枠組みが記載されてございます。右の表でわかりますが、過去5年間のうち上位3期分の平均の試験研究費の額から増えた分に対しまして15%の税額控除があるという仕組みでございまして、これが増加試験研究費等の税額控除制度でございます。
一方、もう一枚おめくりいただきますと、諸外国の研究開発関連税制を比較してみますと、一番左に日本、それから一番右にフランス、この2つの国は基本的にやはり増加試験研究費に対する制度を設けてございますが、真ん中の2つ、アメリカとイギリスは若干制度を異にしておりまして、特に左から2つ目のアメリカを見ていただきますと、「試験研究費の税額控除」ということで、やはり増加試験研究的な制度が[1]としてございますが、その下の4行目からの※印でございますが、上記に代えて、当期の試験研究費を分子、分母を収入、売上高でございますが、この比率に応じまして試験研究費の2.65%~3.75%の税額控除を選択することができるということで、いわば根っこからの試験研究費の総額に対する税額控除制度というのを仕組んでいるわけでございます。
イギリスも同様の発想に立ってございます。
こういった発想を取り入れまして、もう一度、石会長談話のほうにお戻りいただきますと、2ページの一番下の3行でございますけれども、「現下の状況を踏まえ、我が国においても、研究開発支出の『総額』の一定割合を税額控除する制度を新たに導入する必要がある」ということをご指摘いただいております。
もう一枚おめくりいただきまして、具体的な制度設計といたしましては、3ページの上のマル4つでございますが、[1]「研究開発支出を増加させるインセンティブを高める観点から、基本的に売上高に占める研究開発支出の比率が高いほど、税額控除率を高く設定する」。
今見ていただきましたが、アメリカにおきましても、試験研究費の割合が高いほど、先ほどの税額控除例ですが、2.65~3.75ということで、高い試験研究費の割合の法人ほど税額控除割合が高いという仕組みにしてございまして、こういった制度を参考に、税額控除割合を設定していってはどうかという考え方が1つでございます。
[2]でございますが、「研究開発はあらゆる分野で行われるものであることから、支援対象を特定の業種に限定せず、海外への委託研究を含め研究開発全般に適用する」。
[3]でございますが、基礎的な研究を支援するという観点から、大学や研究機関等との共同研究や委託研究に対しては高い税額控除率を設定する。また、ベンチャー企業、あるいは経営基盤の弱い中小企業についても、同じように一定の配慮を行うということでございます。
[4]でございますが、先ほど申し上げましたが、外部効果というのが研究開発にございますので、21世紀の我が国を支える産業・技術の創設につながるという観点から、「本制度の基幹的部分は期限を区切らない措置とする。ただし、集中的に政策効果を高める観点から、時限措置として上乗せする部分を設ける」というふうに整理いただいております。
もう一つの柱でございます「設備投資減税」でございますが、最初の5行にございますとおり、一般的な投資促進税制というのは、企業がむしろ過剰な設備、債務を抱える中で、有効か疑問があるという観点、あるいは将来的に競争力を失う産業にも優遇措置を与えるため、構造改革に逆行しかねないという観点から、その下の行でございますが、「真に有効な分野に集中・重点化した投資促進税制を創設する」という、中間整理でいただきました基本的な考え方のもとに、一つの分野としましてはIT投資減税ということで、IT投資の促進につきましては、短期的な効果、あるいは中長期的な競争力強化の効果等が期待できますので、「集中的に政策効果を高める観点から、期限を区切り重点的な政策税制を講じる」。そして、このような観点から、従来、ハードウエアが中心でございました設備投資減税につきまして、「ソフトウエアも含むIT投資全体を対象とし、対象事業者の限定は行わない」というような考えをお示しいただいております。
1枚おめくりいただきまして、また、「研究開発用の機械、設備等の特別償却」につきましても、研究開発については、前述のような税額控除制度を導入するほか、研究開発を設備投資の面からもさらに支援するため、期限を区切り、特別償却による支援措置を講ずることとするということで、本措置についても対象業種を限定しないということでございます。
このような措置をとることにより、特に、いわゆる重点4分野、ITにつきましては個別のIT投資減税がございますが、バイオ、ナノテクのような基盤技術、いわゆる各最終成果物に対しましては、基礎となる、基盤となる技術につきましては、研究開発用の機械、設備のところで、まさにそれを促進するための設備投資が現在行われているということでございますので、こういった研究開発用の機械、設備の措置をとることによりまして、いわゆる「骨太の方針」の中で指摘されております重点4分野に係る設備投資が促進されるものと考えられるというふうになってございます。
以上でございます。
〇石会長
ありがとうございました。
この法人税の問題に関しまして、森下委員のほうから私あてに意見書が出ておりますから、この議論に関係して、後でご参照いただけたらと思っております。
では、今の法人税の改革の流れにつきましていろいろご意見あろうかと思いますので、ご意見なりご質問なり、どうぞ。
基礎問題小委員会の委員の方はみんな随分議論し尽くしましたから、何かあればご発言でしょうけれども、どうぞ総会だけの委員の方、いろいろあろうと思いますから。どうぞ、佐野さん。
〇佐野委員
この企業税制についてちょっと一言申し上げたいのですが、きょう配られている経済財政諮問会議、きのうのペーパー、「税制改革の全体像」という文書が出ておりますが、2.「15年度税制改革」の(2)「改革の方向」の中に、「活力ある中小企業の経営基盤の強化のための税制見直し等を実施する」という表現が用いられているわけです。
先ほど事務局のほうから配られたこのA3の一枚紙でいろいろ項目がありますが、経済財政諮問会議のほうの項目立てと税調のほうの項目立てでちょっと違うなと感じるのは、実は中小企業税制という項目が経済財政諮問会議では独立している。ところが、この税調では、少なくともきょう配られたペーパーには中小企業税制という項目立てがないという印象を受けるわけです。
この経済財政諮問会議のきのうのペーパーに沿って言いますと、「活力ある中小企業の経営基盤の強化のための税制見直し」、これについて、すぐに連想されるのは、実は同族会社の留保金課税のことなのであります。この表現ですと、即座に留保金課税制度を連想するわけでありますが、中小企業税制として留保金課税の存廃を中心とする検討を税制調査会としては放棄するのか、それともやっていくのか、そこら辺の印象はどうなのでしょうか。
〇石会長
A3のほうには中小企業関係は入っておりませんが、塩川大臣提出メモ、「来年度税制改革の基本的方向について」という方の(8)には、はっきり書いてございまして、「活力ある中小企業の経営基盤を強化するため、中小企業税制の見直しを行う」と。その中には留保金課税の問題も検討対象に入ってくると思っておりますので、いずれお出ししたいと思います。
本間さんのほうで、経済財政諮問会議の方の中小企業の何か補足的にございますか。
〇本間委員
今の佐野委員のようなことを念頭に置きながらこれはまとめたものではないということだけはあれしておきます。
ついでですが、よろしゅうございますか。
〇石会長
どうぞ。
〇本間委員
退席をしなければなりませんので、2点ばかり質問させていただきたいと思います。
1つは、これは報道等なんかでされております研究開発投資、設備投資税制というものを実施した場合の減収規模、これは1兆円超という形で書かれておりますが、どういう根拠でその数字が出ているかということ。これは今後非常に大きなテーマになろうかと思いますので、そのことを第1点、お願いいたしたいと思います。
それからもう一つ、個人所得税、ちょっと退席せざるを得ませんので申し上げますと、過去の政策減税との整合性をどうとるかということでございます。空洞化ということを強調されるということは、過去に行った制度減税、政策減税というものが見直しを迫られるような部分がございます。例えば、先ほど、女性の社会進出との関係の中で断層現象が起こっているような問題が、過去において説明は、これはないのだということを説明されてこられたわけで、それをどういう具合に説明するのだと。
さらには、空洞化の問題ですが、家族との関係の中で、とるべきものをとらなくて、それが空洞化につながっているというようなニュアンスが存在するわけで、制度で認めた上では空洞化ではないわけですので、その制度の持っているインプリケーションについて、言葉使いがちょっと正確ではないなという印象を所得税関連では持っております。
以上、2点です。
〇石会長
前段は、研究開発・設備投資減税につきまして、各省庁から大分要望をいただいております。具体的に金額までつけ加えた形での要望もございまして、要望ベースで見て研究開発関係が、6,000億ぐらいかな、それからあと5,000億ぐらいかな、IT関係等々ですね、要望ベースでありますから、あくまでこれがそのまま実現するわけではありませんが、説明では必ず要望ベースで見て、こうこうと言っておりますので、そういうふうにご理解ください。
〇本間委員
これは今後はきちんとした精査をされるわけですね。
〇石会長
ええ。それは当然のこと、今後。何かそれについてありますか。精査の方法等々について。――じゃ石井さんのほうから。
〇石井審議官
まさにこれから、具体的な控除率をどう設定するか等によりまして、結果として減収規模がどのぐらいになるかということが出てまいりますので、今の数字としては要望ベースの数字しかないわけでございますが、ただ、他方で、全体の研究開発支出は、ご承知のとおり10兆円ぐらい、日本国全体であるように経産省の資料でも伺っておりますので、そういう中でどの程度の、どういう率、具体的にあって、経済状況等も踏まえた全体の視点の中でこれから具体的なものを決めていっていただくということでございますので、今はそれ以上申し上げられないと思います。
〇石会長
2番目におっしゃった言葉使いの点、ちょっと私、まだ本間さんの真意がわからないわけですが、十分、誤解ないような使い方をしたいと思っています。ほかにいかがでしょうか。
どうぞ。
〇今野委員
先ほどご説明いただきました「税制改革の全体像」とか、今年の「基本的方向について」の中で、もうすでに法人事業税に外形標準課税が導入されるということが決まっているように書かれておりますけれども、言うまでもなく……
〇石会長
すみません。外形は次のテーマですから。でも、先倒しでどうぞ。
〇今野委員
やはり今のような、ここに来てまた一段と開業率を閉業率が急カーブで上回ってきているというような中で、もちろん失業率も高まっていますし、99%の中小企業は本当に日々の資金繰りにあえいでいる、そういう厳しい状況の中で本当に今この外形標準課税を導入することが正解なのでしょうかということです。
1つには、時期を本当によく慎重に考えていただきたいということと、それからさらに税金の使い方に関して、もっともっとさらに厳しい見直しをした後のことではないかという2つの理由から反対をさせていただきたいと思います。
〇石会長
その問題は当然次にやる予定でございましたので、ちょっと前広にご発言いただいたと受けとめさせていただきます。
ちょっとまた法人税に戻りまして、法人税関係で、特に経済界、あるいは実際にいろいろ携わられている方、ご意見ございますか。よろしゅうございますか。
それでは、強いご反対というものは研究開発と設備投資減税の我々の方向にないという理解でよろしいかと思いますが、引き続きいろいろな形で税率を見直す、あるいは中小企業関係で見直すということはすでに問題意識を持っておりますから、これから具体的に煮詰めていきたいと思います。
どんな項目を以下私の頭の中に置いて議論するか、ちょっと言っておかないと、今みたいにちょっと前倒しで出てまいりますので、次は外形課税をやりたいと思います。その次が消費税、次いで相続税・贈与税、そして固定資産税、土地税制、最後に金融・証券税制という形で考えておりますので、その順番で大体頭に入れておいていただけたらと思います。どうも今野さん、失礼しました。
それでは外形にいきましょう。外形は、今まさに今野さんが先追い的と言っては失礼ですけれども、非常にクリアーカットにある立場をご説明いただきました。実はもう片方に、当然これは長年の懸案事項だからぜひ実行してほしいという議論もございます。そこで、外形、いろいろな形でやってきておりまして、総務省からも具体的な案が出、かつ、日商から出されてきておりますような具体的な計算、影響の方法も検討を加えました。
そこで、外形の基本的な考え方というのは、応益原則、これを税の上で明確にしたいとか、地方分権を支える基幹税として安定した財源を得たいとか、あるいは、やはり赤字法人といえどもいろいろ恩恵をこうむっているのだから払ってもいいではないかということは、逆にいえば、黒字法人のみにこの法人事業税をかぶせていいのか、頑張っているところにはもう少しいろいろ恩恵があってもいいではないか等々の議論があって今進んでいるわけであります。
そこで、経済財政諮問会議でもこれにつきましては片山大臣と平沼大臣の間で、対立と言っては語弊があるけれども、論争がございまして、今もって決着がなかなかつけにくいことでありますが、政府税調としては一貫して早期に導入すべきということを累次の答申で書いておりますから、そのスタンスでいいかと思いますが、当然、景気の動向これありで、いつ入れるかということになりますと、この辺の時期の問題がいろいろあろうかと思います。どうぞ、これにつきましても自由にご議論いただきたいと思いますが。どうぞ、室町さん。
〇室町特別委員
前回もちょっとこの話をさせていただきましたが、先ほど今野さんがおっしゃいました時期、いわゆる導入決定の時期、導入は実際はちょっとおくれるのですが、決定の時期が今でいいかどうか、これが1つと、それから資本金を外形標準にするという問題点、それからもう一つは、持株会社のお話をさせていただきたいと思います。
持株会社につきましては、総務省でいろいろご検討いただいておりまして、それは大変ありがたく思っておりますし、そういう形で解決されていくのかなあと。ただ、2つの問題、時期の問題には、現下のこの経済情勢で、本当に今決定するのが、センティメントも含めていいのかどうかという点については、私も、先ほど今野さんおっしゃったような感じで、業界もそういう意味では、いろいろな業界もまだ十分合意が得られてない、納得性が得られてないのではないかなと、そんな感じがしております。
それから資本金につきましては、これは業界によっていろいろな問題があるかもわかりませんので、あるいは私どもの身勝手と言われるかもしれませんが、銀行業の場合はいわゆる自己資本の充実が非常に強く要請されておりまして、その結果としても非常に大きい資本金になっている。そういう意味で、所得と外形が1:1とか、あるいは付加価値と資本の関係が2:1とか、こういう関係からいくと、私も正確に計算しておりませんが、大分崩れた格好になるのではないかなとか、そういう意味で、資本の基準というものについても、もう一度慎重な検討が必要ではないかなと。中身について、内容についてですね。内容については詰めてと、こう書いてありますが、そこのところをちょっとお願いしたいなと、こんな感じでおります。
〇石会長
ただ、今、持株会社については資本割のところはいろいろ検討されているようで、お聞きになっていると思いますが、まだ数行しか書き込んでないので、どこまで実際にということはお考えにくいと思いますが、その方向で考えておりますので、二重課税にならないようにという視点は重要になってくると思います。ほかにいかがでございましょうか。どうぞ、貝原さん。当然手が挙がると思いました(笑)。
〇貝原委員
外形課税については、今までの大勢の議論と違う意見だけが今日出ましたので、改めて私、確認的に発言しておかないと、意見がないと思われては困りますので発言させていただきますが、もともと、この外形課税の導入の基本的なことは、法人全体の7割ぐらいが赤字になっている。その中には当然のことながら大きな資本の企業がたくさんあるわけでして、我々の地域でもそうですが、地域の実態からいたしますと、小さな企業で所得を一生懸命努力をして出しているところは事業税がかかりますけれども、大きな事業、それなりにもちろん努力はされているのですが、赤字になっているところは税負担が、個人事業税については一銭も負担されないということについての一般的な、感覚的に不公平という部分があるわけでありまして、したがいまして、私、この前も説明がありました税の対話集会におきましても、この法人事業税については、いろいろ中小企業の問題はあるにいたしましても、大勢としては導入すべきだという意見のほうが非常に多いということでございますし、私は、そういった国民の税負担の公平という観点からこれは議論されて導入の方向が決められているものだというように理解をいたしております。
ただ、ただいまご意見が出ましたような中小企業に対する対策、あるいは持株会社等に対する課税の仕方、こういったことにつきましては導入の時期も含めて、導入の時期といいますか、私は導入の時期については、今の総務省案でもかなり、5年間ぐらいかけて順次本則のほうへ持っていくということ、それから本則自体が本来、全額を私は外形課税すべきだと思うのに、所得課税と外形課税と半々にするというのが本則になって、これも私は経過的な考え方ではないかという気さえするのですが、そういった意味では、原案でも十分、課税の時期、あるいは中小企業対策等について配慮された原案になっているのではないか。そういう点からも、方針どおり、15年度から導入するということを政府税調としてはぜひお決めいただきたい、このように思います。
〇石会長
ありがとうございました。段階的導入ということはもう制度化してますが、今の導入の時期は景気との絡みの導入なのですね。それはどのぐらい配慮したらよろしいですかね。つまり、来年の4月からというのは、まだ景気がそう上向いているとは思ってない人が多いと思いますが、その辺の配慮をどのぐらい税調としてやるかという何かご判断ございますか。
〇貝原委員
おっしゃるとおりだと思いますが、そういう状況がここ数年ずうっと続いてくる中で総務省案が5年間かけるというような原案になっているわけですね。したがいまして、もうそれで十分ではないかというのが私の意見です。
〇石会長
片山大臣も平成18年までこんな状態だと大変だと言ってますから、その辺の段階的導入という形で、今の景気のことは十分配慮しているというお考えのようですね。ほかにいかがでしょう。どうぞ、松尾さん。
〇松尾委員
これまでの政府税調の論議の経緯にこだわらず発言させていただきたいと思うのですが、私の考え方としましては、やはり地方税、法人に依存し過ぎていると思うのですね。非常に法人に依存し過ぎている。そこはやはり問題ではないのか。国際的な潮流を顧みますと、やはりちょっと問題があるのではないかと私は思います。
それで、この外形課税、総務省案によりますと、いろいろな配慮をしている。中小企業などに配慮した結果、ふたをあけてみたところ、大企業ばかりにしわ寄せされるということではこれは困ると思うのですね。税収中立と言いながら、赤字法人が増税になるだけではなくて、黒字法人でも大方が増税になると言われているわけです。そうなりますと、結局とりやすいところからとるということになってしまうわけですね。これはやはり考える必要があると思います。ということで、やはり法人住民税の均等割をもうちょっと充実するとか、そういうことを考える案もあるのではないのかということです。
〇石会長
ありがとうございました。また新しい視点からのご提案がございましたけれども、ほかに。どうぞ、津田さん。
〇津田委員
地方税が法人課税にどの程度頼るかということなのです。これはやはり、地方分権におきます国税・地方税を通ずる税源配分の一環で考えるべきことだと思うのです。ですから、ちょっと次元が違うのではないか。私はむしろ、スウェーデンなどは所得税はほとんど地方税へ渡してしまっていると、そういうような抜本的な考え方というのがあると思うのですが、これはまだもうちょっと先の話ではないかと思います。
それから黒字も増えるというのですが、よく言われております、赤字が7割法人と言われてますと、残りの3割の黒字の中でも実は1割が本当の意味での税金を払っているので、2割もそれほどの税負担をしてないと。そういうようなところにこの外形的なもので若干増えるということはあるのですが、しかし、それにしましても、要するに法人課税の実態が1割の特定の法人にかかっているということは税全体としても是正しなければいかんかということ。
それからもう一点言わせていただきますと、景気との関係ですが、これは私ども、昭和50年ぐらいからやっておりますけれども、景気のいいときは今の法人事業税で所得課税していたほうが、正直、地方団体、左うちわなのですよ。それで、そのときは言わないで、景気が悪くなると、こういうようなことを言われている経緯もありまして、やはりこういうような経済情勢におきましても、長期的、中期的な観点から、この安定税源の確保ということは粛々と進めていかなければならないのではないかと思います。
〇石会長
ありがとうございました。ほかによろしゅうございますか。
なければ先にいきたいと思いますが、ここはなかなか、今日の議論をまとめるのは難しいですね。ただ、累次の政府税調の答申にはだんだん導入の方向を強める方向で書き込んでいるのですね。それは景気がございますから、そのとおりやっていいかどうかわかりませんけれども、ただ、今賛否相半ばする議論の中で過去の答申を根底から覆すというのはちょっと難しかろうと思いますで、基本的にはこれまでの答申の方向で考えざるを得ない。
ただ、いろいろな附帯事項、例えば資本等の配分をどうするか、まだ見直しの条項が幾つかございますから、そういうものを踏まえつつ導入の方向で努力するとか、そういうような書き方、ニュアンスではなかろうかと私は受けとめております。
それでは、次、消費税に移りたいと思いますが、消費税もこれまで随分議論してまいりまして、ほぼ議論は出尽くしたような感じを私は持っております。基礎問題小委員会では特に3つの問題を議論いたしました。1つは中小企業特例、これを抜本的に見直すという視点から、免税点制度、これも幾つかデータが出てきましたが、3,000万円以下どうなのかと。それを縮めようと。1,500万円から1,000万円にしようか、いろいろございますが、俗に言われます益税というものの解消、あるいはこれに対して対話集会でも非常に不満もあったという形で、これを縮小しようと、制度を見直そうという方向では一応大きな流れはできているというふうに理解しております。
それから簡易課税制度、これもいろいろなデータを拝見しますと、最近、簡易課税制度そのものを選択する割合が減ってまいっております。これはある意味では、簡易課税制度というのは導入して慣れるまで暫定的に入れたという、そういう性格の問題もございますから、そろそろ見直しの時期ではないか、廃止の時期ではないかというのが基礎問題小委員会でも大きな流れとしてはあったと思います。
それから申告納付回数、これも今あるよりはもっと増やしてもいいではないかということもあり、検討の方向で議論をいたしております。
いずれにいたしましても、将来、税率アップということはおそらく基礎問題小委員会で、私自身もそうですが、議論は避けて通れない。そのときに、消費税制度に対する国民の信頼がなくては税率アップ自体も非常に大きな問題だろうという意味で、とりあえず、この中小企業特例を中心に、申告回数も増やしたりして議論を重ねていこうという形であります。塩川メモにも書いておりますし、小泉5項目にも書いてございますが、一応この中小企業特例見直しということを先行減税の裏の税収確保につなげた議論として結びつけておりますので、この辺いろいろご議論いただきたいと思います。これが今進めている方向でございます。何かこれについてご質問ございませんか。どうぞ、和田さん。
〇和田特別委員
消費税につきましては、この中小特例措置というのはやはりできるだけ見直していく方向というのが必要だと思います。これは金額の割合からいえばそう多くなくて、そして事業者数からいえば非常に多いということは以前の資料にもありましたけれども、逆に、事業者の数が多いということは、私たちの身の回りにあるお店が多いということなのですね。今、石先生おっしゃいましたように、消費税について、私の消費税についての考えそのものは違いますけれども、とにかく、例えば100円のものを買って、105円払わなければ絶対にその商品を手にすることができないと。そして、その5円が全部免税業者のふところに入ってしまうということは考えておりません。ですけれども、全額が国庫に入らないということは、相当大勢の人が消費税導入されて以来ずうっとやはり考えておりまして、いつも何か心の中でくすぶっている存在だということで、中小のお店の人たちが今の経済状況、大変苦しいというのはわかりますけれども、それとこれとはやはり別の問題として手をつけていくべきではないかなと思います。3,000万円をどれぐらい下げるかというのはこれからの議論だと思いますけれども、下げる方向で考えるべきだと思います。
〇石会長
ありがとうございました。
今、日本の3,000万円に対するものに次いで大きいのがイギリスで、大体1,000万円弱ですね。その後は大体400~500万円から、もっと低いところもありますので、3,000万円を3分の1とか2分の1等々するについては、国際的レベルに近づけるという意味では多分ご賛同いただけると思いますが、それにしてもいろいろまだ議論詰めることがあろうかと思います。どうぞほかに。――よろしゅうございますか。
これも随分議論し、資料も提供いただきましたので頭に入ってようかと思いますが、それでは、これにつきましては、大方、信頼を回復するという意味で、中小特例措置等々を見直すという方向で、免税点、簡易課税、これについて見直すということについてはあらかた基本的な方向にご賛同いただけるというふうにまとめさせていただきます。
それでは、もう一つ大きな話題が次の相続税・贈与税でございまして、これはかなり技術的にもご説明をする必要がございますが、基本的には、110万円の今ある基礎控除、それに対して、それを超えたところへややペナルティ的に高い贈与税率、これは相続税とは関係ないと。こういう世界とは別に生前贈与を促進するような形の相続税・贈与税を一体化したスキームを考えております。
具体的な内容を川上企画官のほうからご説明いただきましょう。川上さん、少し時間余っているから、君に余計にやるから、ちゃんと説明して(笑)。
〇川上企画官
それでは、お手元に総33-3という資料がございます。これに基づきましてご説明させていただきます。
先日、10月11日の基礎問題小委員会におかれましては、前回、中間整理の中で4項目の形でご覧いただいておりました一体化、全体の仕組みをその後の検討の進捗も踏まえてバージョンアップいたしましたもの、それから特に今回の新しい制度の中で、贈与段階の課税の仕組みについてどう考えるかという2点につきまして私どもの考え方をご説明し、ご審議をいただいたということでございます。
1枚おめくりいただきまして、前回ご覧いただいた一体化のポンチ絵を、その上にございます現行と比較したイメージ図ということで掲げさせていただいております。今会長からもお話しございましたけれども、その現行が暦年の贈与税とり切りであるのに対しまして、今回の一体化措置は相続時にそれまでの贈与財産と相続財産を合算いたしまして相続税額を計算する。そして、それまで支払いました贈与税額を控除するという、いわゆる精算の仕組みを入れるということが一つのポイントでございます。それにあわせまして、贈与時の税負担はこれまでの暦年の贈与税よりも軽減するということもこのポンチ絵の中に示してございます。
このような仕組みによりまして、資産の移転時期の選択についての中立性、生前贈与で渡しましても、相続で渡しましても、中立であるということを確保いたしまして、資産の移転の円滑化に資するということが制度の眼目とされております。
1枚おめくりいただきまして、2ページ目でございます。「相続時精算課税制度(仮称)」と書いてございます。今回、今の精算の仕組みをこのように仮に名づけてございます。前回、4項目の検討の方向としてご審議いただいた内容を、その後、法制局とも相談し、また検討が詰まってきたものを書き加えまして、前回は口頭で申し上げたものも含めまして、ポイント式に書き下して整理をしたものでございます。
適用対象者、満65歳以上の親が贈与者と。ここら辺は変わってございませんが、受贈者というところで少し要件を書き加えております。次世代への資産移転の円滑化に資するということから、次世代であり、かつ、将来、贈与者の相続人となる人ということで、前回、推定相続人たる子に限定するということを申し上げました。
そして、前回、口頭で、この受贈者につきましても、年齢要件は検討課題であると申し上げておりましたけれども、やはり制度の趣旨を踏まえますと、贈与の受け手につきましても、最低、もらった資産を管理・処分できる成人である必要があるのではないかということで、今回、20歳以上ということを明示させていただいております。
「適用手続」でございます。若干技術的なことは除きまして、先日も口頭で申し上げたことの確認でございますが、3番目の〇でございます。受贈者である兄弟姉妹が別々に、また、贈与者である父、母ごとに選択が可能という制度を考えております。
それから「適用対象となる贈与財産等」でございますが、基本的に制限はしないという方向でございます。
それから「税額の計算等」ということで、先ほど申し上げました精算の仕組みを再確認してございますが、特に下3つのポツでございますが、相続税額は従来と同じ相続税の方式で計算する。それから相続税額から控除をし切れない贈与税相当額は還付もする。それから相続財産と合算する贈与財産の価額は贈与時の時価とするというようなことを、先日、口頭でも申し上げておりますが、ここに書き下して確認をさせていただいております。
3ページ目、いつも見づらい資料でございますが、「相続税の基本的な仕組み」。細かいところは省略いたしますが、ここで、2つ目のポイントをご説明するに当たってご覧いただきたい点が2点ございます。
1つは、一番上、相続税の計算のスタートでございますけれども、相続人全員がもらった遺産を合計した遺産の総額から相続税の計算がスタートするということをまずご確認いただきたいと思います。
それから3段ぐらい下がってまいりまして、課税最低限というところがございます。今、基礎控除というところが5,000万円の定額部分、それから1,000万円×法定相続人数に比例いたしまして、基礎控除というものがこの全体の遺産総額から引くことが認められているということでございます。この5,000万円+1,000万円×法定相続人数の基礎控除が相続人みんなの分としてこれだけあるということをご確認いただきたいと思います。
それから4ページ目でございますけれども、これは「相続時精算課税制度に係る税額計算の流れ」を書いてございます。ちょっと細こうございますので、時間の関係もございますので省略させていただきます。
そこで、5ページ目、6ページ目が大きな2つ目のポイントでございますけれども、今回、この新制度におきます贈与時の課税の仕組みについてどう考えるかということでございます。ここも「基本的考え方」ということで少し長めに書いてございますけれども、ポイントを申し上げますと、今ご覧いただきました日本の相続税の仕組みにおきましては、相続時には他の相続人からもらった分も全部合算して相続税額を計算するという仕組みになっております。
したがいまして、あらかじめ各受贈者の方から軽減した贈与税をいただくわけでございますが、これをいただいておりましても、相続時点でなければ最終的に正確な納付税額は確定しないというのが今の仕組みの前提でございます。
したがいまして、先ほど、相続時精算課税という仕組みの中で、生前贈与で渡そうが、相続で渡そうが、税制としての中立性は確保されてまいりますので、その意味で、贈与段階での贈与税は各年での概算払いで結構ではないかと。したがって、その仕組みは簡素であることが望ましいのではないかというのがこの5ページ目に書いてございます「基本的考え方」のエッセンスでございます。
そこで、最後、6ページ目でございます。具体的にこの仕組みにつきまして、「控除」「税率」の考え方を書いてございます。ここは少し詳しくご説明させていただきます。
最初の〇でございますけれども、相続税の基礎控除により、相続時の精算では一定額の財産までは非課税になる。先ほどの5,000万円+1,000万円×法定相続人数比例ということでございますが、これは非課税になることを考慮いたしますれば、受贈者の申告を前提に、一定金額までの贈与につきましては、贈与段階でも贈与税を課税しない措置、これを何と呼ぶかというのはございますが、特別控除等と仮に名づけてございますが、これを講ずることが適当ではないかということでございます。
相続時の負担とある程度バランスをとりませんと、まず贈与段階で払い過ぎになっておりましたら、この新しい制度はなかなか納税者の方のご利用も進まないということになりますし、それから、後ほどそれを還付でお返しするという手間も生ずるということでございます。したがって、相続時の非課税とある程度バランスをとった非課税措置というものが必要ではないかということでございます。
それから、現在の暦年課税の贈与税の110万円の基礎控除との比較でございますけれども、この基礎控除はその金額まで申告を要しない控除でございますけれども、本制度の場合は相続時までの継続管理ということが前提でございますので、申告は必要であろうと考えております。その上で、一定額までは税額をゼロにするということで、これを今仮に特別控除等という形で書きあらわしているところでございます。
2番目の〇でございますが、毎年比較的少額ずつの贈与を受ける者にも公平にこの制度を利用していただくためには、ここは先日、贈与時のガチガチした累積課税はしないということで整理してございますけれども、この点につきましては、管理上の負担はある程度増加いたしましても、この非課税措置を限度額まで多年分にわたり利用できることとすべきではないかということで考えております。
それから3番目に具体的なこの非課税措置の水準でございますが、定額部分と法定相続人比例部分からなる相続税の基礎控除の水準との関連を踏まえて設定すべきではないかという書き方をしてございます。先ほど、現行5,000万円+相続人一人当たり1,000万円ということを申し上げました。これは相続人みんなのものでございます。したがって、これを贈与段階で一人当たりベースで考えるとどうなるかということがご議論になるかと思います。
なお、この5,000万円、1,000万円につきましても、相続税本体の基礎控除の見直しのご議論というのはまた並行してございますので、ここで、そういう意味で確定数値で書いてないところでございますけれども、まず、法定相続人比例、現行ですと1,000万円、各人の持ち分としてございますので、贈与時も、この一人当たり1,000万円というのは一つの考え方であろうかと思います。
これに加えまして、今の定額部分、現行ですと5,000万円というものをどう考えるかということでいろいろご議論が分かれるのではないか。今、平均的な法定相続人数は3.6人ということでございますが、これはもちろん家族によって違います。10人おられる場合もあるということでございますので、この1,000万円は持ち分といたしまして、この1,000万円に上乗せをすべきかどうか、するとすればどれぐらいの上乗せができるかどうかと。ここについていろいろお考えがあろうかと思っております。
それから3.の「税率」のところでございます。先ほどの概算払いということを前提にいたしますと、税率についても、一律または2段階程度の極力簡素な税率構造でいいのではないかということが1番目の〇でございます。
そして2つ目の〇でございますが、同じく概算払いとしての性格を踏まえまして、具体的なこの税率水準について非課税措置の水準との適切な組み合わせの中で設定するべきではないかと。具体的に申しますと、これはいわばトレードオフの関係にあるのではないかと考えておりまして、非課税措置が比較的小さければ、税率は低めでもスタートしてもいいのではないか。非課税措置が大きい水準でございましたら、税率は少し高めにいただくと、そういうトレードオフの関係になるのではないかという考え方をしております。
今後このような考え方に沿ってご了承いただければ、検討を進めまして、最終的には、今後ご検討いただきます相続税本体の税率・基礎控除の見直しもにらみながら、具体的水準を詰めてまいりたいと考えております。
以上でございます。
〇石会長
ありがとうございました。
いかがでしょうか。新しいスキームを考えました。ご存じのように、個人金融資産1,400兆、大体高齢者の中でとまっているという形でございまして、それを若い世代に譲るという形で資産の移転が行われれば、それなりに経済活性化するという視点もありまして、こういう案も出しましたし、我々の今回の税制改革の中でも一つの目玉になっているのではないかと思いますが、いろいろご議論いただきたいと思います。いかがでしょうか。
どうぞ。
〇柳島委員
最初のページの2行目に代襲相続人と出ていたのですが、前回はたしか親から孫も含むという表現だったと思いますが、これは具体的にはどういうことを指しているのですか。
〇石会長
代襲相続人というのは、僕の理解では、息子のほうが親より先死んじゃって孫がつくという場合の孫ですよね。それで?
〇柳島委員
だから、例えば子どもがいなくて、親戚なんかを相続させる場合も……。
〇石会長
養子縁組みをしてということですか。
〇柳島委員
ええ。
〇石会長
養子縁組みはおそらく認めざるを得ないと思いますが、その辺細かい配慮してますか、川上さんのほう。
〇川上企画官
前回ご説明申し上げましたように、この制度は相続時精算課税ということでございますので、最終的に相続人になる方が対象になるだろうということで、先日、子である推定相続人と、したがって孫は入らないということを申し上げたと思います。それで、その場合例外としまして、子どもが親よりも先に亡くなった場合等に、民法上も孫が子どもに代わって相続人になるという規定がございますので、そこをここで代襲相続人ということで確認させていただいているところでございます。
それから、養子は当然、民法上、相続人になりますので、これはこの中に含まれるということでございます。
〇石会長
ただ、養子の数って少し制限しているのだよね。何人でもいいわけではないでしょう。今2人だっけ?
〇川上企画官
はい。相続税の計算上、実子がおられない場合に2人、それから実子がいる場合には1人という制限をしてございます。ただ、それは相続税の計算上、先ほどご覧いただきました基礎控除の数字を計算する際の法定相続人数としてはそういう制限を設けているということでございますけれども、今回この制度に乗るか乗らないかというところで、この養子さんは入りますと、この養子さんは入らないということはなかなか区切れないという議論を法制局とはいたしておりまして、そういう意味では、今回、養子の数を制限することは考えてないということで、ここに「人数の制限はない」と書いているところでございます。
〇石会長
考えてないのですか。ほかにいかがでしょうか。
今井さん、前にこういうお考えをお持ちでしたよね。どうですか、印象的に。
〇今井委員
これは現在の消費を多少でもかさ上げするためには非常にいい制度ではないかと思います。詳細の中身はまだよくわかりませんけれども。
〇石会長
ほかにいかがでしょうか。――どうぞ、佐野さん。
〇佐野委員
これは基礎問題小委員会でも出たのですが、このスキームはスキームとして、税率の引下げということになりますと、この事務局のほうの資料ですと、慎重に相続税のみを取り上げている。つまり、贈与税の税率引下げは考えてませんということのようであります。このいわゆる精算課税制度という、この制度はこの制度として、別途、言ってみれば、今の相続税・贈与税と同じように、1回払えばもうそれでいいと。要するに被相続人が死んだ場合に、またもう一回合算して計算し直すとか、あるいは代襲相続が起きてしまって孫が精算課税の対象になってしまうとか、あるいは特別控除制度というものがあって、少額でもその都度申告登録しなければいかんとか等々考えるとちょっと、これよりも1回で、贈与税払えばそれでおしまいというようにしたいなと。
この制度は今もあるわけですが、ご承知のように、1億円を超えると70%の税率がかかる、そういう贈与税の税率構造になっていると。この精算課税制度を設けるのと同時に、贈与税の税率を引き下げて、できれば相続税と同じ税率構造にして、いわゆる払い切りか、あるいは相続時精算課税制度にするか、選択の幅を設けたほうがよりこの世代間の財産移転というのが進むのではないかと。私は、相続時精算課税制度、これ一本でどこまで財産移転が進むのかどうか、さらに検討の余地があると思っております。
〇石会長
今のご発言、基礎問題小委員会でもいただきまして、今後の検討課題といたしましたが、今出しましたスキームとはちょっとまた別の視点からの新しいお考えであろうという形で、慎重に議論させていただくということで受け取っております。佐野さんも、今この段階で突っ込めというところまで強くおっしゃってはいないのですよね。1回払いの新しい、要するに佐野スキームをですね……
〇佐野委員
だから、1回払いとかなんか言う前に、今の贈与税の税率を引き下げたらどうかと。
〇石会長
それもあると思います。110万円の後の贈与税ですね。ただ、今回のこの精算払いのほうの贈与税率はどうせ1段階か2段階ですから、20%か30%か40%ですから、じゃ今の佐野さんのお考えは、現行贈与税の税率を下げろと。それはあり得ると思います。おそらく相続税も少し見直すと思いますから。ほかにいかがでしょうか。どうぞ、佐瀬さん。
〇佐瀬特別委員
質問的なあれですが、前に基礎問題小委員会でもちょっとお聞きしたのですが、この問題は、60歳からスタートしまして、15年とか20年とか、お父さん、おじいさんは生きるわけですから、その場合、追跡が、前はこういうのは難しいとおっしゃっていたのですが、最近はこの制度ができるだけの、執行上の問題で追跡ができるということをちょっとお聞きしました。
それはどうしてかというと、ちょっと聞いた限りでは、だれか死んだ場合は、亡くなった方は全部税務署に報告が来るとなってますが、その報告というのは、第1に、これは公式の行政上の法律か何かに基づいて来ているものなのでしょうか。したがって、100%カバーできるものなのでしょうか。
それから第2に、そういう場合は亡くなった方のところに、15年もすれば、あるいは20年もすればわからなくなってしまうこともあると思うのですが、税務署側からきちんと通知が来る、こういうシステムとイメージしてよろしいのでしょうか。
〇石会長
それは確かに重要な問題でありまして、ちょっと議論したいと思いますが、もう一度ここで確認のために……。
〇川上企画官
まず通知につきましては、ちょっと何条か忘れましたけれども、相続税法上規定がございまして、亡くなった所の市町村長から課税当局に通知が来るというのは法律上規定がございます。それから執行が比較的効率的にできると申し上げておりますのは、仕組みとしまして、相続時の精算、そして贈与段階であまりガチガチ累積課税をしないということで手間が省けるということを申し上げているところでございます。相続時にきちんと過去の贈与の申告をさかのぼってチェックして適正な課税をするということのシステムについては、今後検討していくということでございます。
〇石会長
どうぞ、中里さん。
〇中里特別委員
おそらく理論的には検討済みだろうと思いますから、あまり野暮なことをお聞きするつもりはないのですけれども、この65歳以上とか20歳以上という年齢による差別というのか区別がございまして、もちろん租税特別措置のような場合に、経済的な政策手段として一定の場合に限るというのはあると思いますが、これだけ見てますと、必ずしもそういう感じでもないとなると、行政的な便宜とかいう意味ではなく年齢で分けるということに関しては、例えば憲法違反とかそういうおそれというのは、もちろん法制局で詰めてらっしゃいますからそんなことはないと思うのですが、どういうご説明になさるおつもりなのでしょうか。
〇石会長
それは答えていただいたほうがいいですね。どうぞ。
〇川上企画官
まず、高齢者の方からの資産移転を円滑化するという意味で65歳という線を1つ引いたらどうかというお話がございましたし、それからもらった側がまたちゃんと資産を管理・処分できるような一定の年齢に達しておられないとこの制度の趣旨にそぐわないだろうということで、20歳という線を引いてはどうかというご提案を申し上げているわけですね。したがって、今法制局ともそこら辺議論はさせていただいてますけれども、そういう制度の趣旨からして、そこに線を引くのは、それはそれで政策として合理性があるだろうと。
それから、例えば65歳で差別があるかということを申し上げれば、どなたも65歳になるわけでございますので、そういう意味では、65歳を超えたところでこういう趣旨の制度に乗ってくるということは、必ずしも憲法上差別になるということではないのではないかと個人としては思っておりますし、法制局とも、そこでだめだというようなご議論にはなってないと承知しております。
〇石会長
法学者のご意見ですが、経済学者もこの年齢制限についてはかなり抵抗を示した人もいましたよね。65で切らないで、やるときやったらいいではないかということと、15年も20年も時計の時間軸をなくしてしまって、つまり20年前と20年後は財産の価値が違うわけですから、そういうところを同じ時価で評価していいかねという議論もあっていろいろやりましたが、結局、大きな制度を確立するために少し割り切りが必要であろうというような議論になり、この案が一応基礎問題小委員会でも通ると、そんなことかと思いますが、ほかにいかがでしょうか。
〇菊池特別委員
この制度は僕嫌いなのですが(笑)、というのは、もともと高齢者にたくさん資産が集まるような制度を残しておいて、そのまま溜まって、しようがないからこっちにずらすというのは、税制としても別の手を打つ手立て、時間長くかかりますけれども、根源的に資産の偏りが高齢者にばかりいかないような税制をつくるのがもともとだと思うのですが、そこからずっと考えまして、これはきっと呼び水になって殺人事件が起きるだろうというふうに危惧するものですから(笑)、受贈者というのは受贈する権利があたかもあるのかないのかと。贈与者のほうの意図にひたすらこれは依存するのかどうか。早くよこせということは言っちゃいけないというようなことをどこかに書いておかないとまずいのではないかなと思うのですが(笑)、どうでしょうか。
〇石会長
それまで書き込むかどうかですけどね。何か考えてますか。
〇川上企画官
これは民法上は、双方の合意があって贈与というのは成り立つということで聞いておりますので、そういう意味では、贈与者の意に反して贈与が行われるということは法律的にはないという理解かと思います。
〇石会長
なんか、息子、娘に裏切られてリア王みたいになるのは嫌だという人もいますからねえ。これは両方とも書かなければいけないのかもしれませんが。ただ、菊池さんの言う、年寄りに金融資産を残さないような税制ってどんなことをやるのですか。
〇菊池特別委員
例えば、過去においてマル優をずっとやってきたわけですよね。老人マル優くっつけたりしてそっちを優遇してきたのもあるし、現状を見れば、毎年毎年40兆円、年金をつぎ込んでいるわけですよね。金持ちだろうが何だろうが。それをやっておいて、これで動かせるのは、まあ40兆全部動かすというのは無理と思いますけれども、微々たるものをこれで動かすということで経済活性化するというのはいかにもせこいということです。
〇石会長
わかりました。ほかによろしゅうございますか。
それでは、これにつきましてはいろいろ根源的なそういう問いかけも今菊池さんみたいにございましたが、基本的には、流れとしてはこの方向で進めてくれと。もう少し詳細設計をしてからというご判断もございますが、一応皆様からお認めいただいたと。
ただ、相続税、あるいは贈与税の現行税制についての見直しは必要であるという声があったというふうにテイクノートしておきたいと思います。
それでは次に固定資産税、土地税制、これについて議論いたしたいのですが、これにつきましては、幾つか議論の中で、特に固定資産税は来年、3年ごとの評価替えでございまして、その問題を踏まえましていろいろご説明を受けました。評価の方法等々議論いたしましたが、依然として市町村税として基幹税目の地位を保っているわけでありますから、それを保つ、あるいは、要するに土地の評価が負担の均衡化、適正化の中で位置づけられて、長い目標でございました地価公示の7割といったようなこともまた実現に向けてということだろうと思います。
そういう意味で、淡々と3年ごとの固定資産税の評価替えをやるというのがご説明であり、それに対して基礎小ではそれほど大きな反論もなかったと思います。より大きな問題は、多分、土地税制のほうにあろうかと思いますが、土地税制は、今登録免許税とか不動産取得税とかいうものが土地流通関係で、例のデフレ対策として幾つかテーマとして持ち上がっておりますので、この辺についてご議論があればいただきたいと思います。
ただ、一般的には、土地税制について、バブル期に乗っけた罰則的な高い税がまだ残っておると。それが今の地価低迷の最大の原因であるというような議論もございますが、そういうことはないよということはデータ上、資料上お示しいただいたと思っておりまして、一応基本的にはバブル期以前の水準にさまざまな形で税は戻っているという認識を持っております。
例えば地価税は事実上凍結でございますし、土地譲渡益課税についての短期的な投機についてのペナルティ的な高い税率もなくなりましたし、土地譲渡益課税26%が、利子とか、そのほかの20%に比べて高いという議論は残るかもしれませんが、この辺の問題をどう理解するかということもあろうかと思います。
じゃちょっとこれにつきまして、いろいろご関心の方もいらっしゃると思いますので、ご意見なり。――どうぞ、三山さん。
〇三山特別委員
ある企業の話としてちょっと聞いてほしいのですが、最近、持株会社ができたり、あるいは分割・再編が進んだりといことで、いろいろなことがあります。例えばAとBという2つの企業に分割・再編するということは最近しょっちゅうあることですが、その際に、もともと持っていたAという企業の資産をどっちに移すか。AのままにするかA´にするかと、こういう話がある。
ある企業から実際に聞いた話なのですが、登録免許税だけで7~8億とられそうだということがわかって非常にたじろいだと。もちろん、分割・再編の場合は軽減税率が適用されているにもかかわらずそうであると。一方で、政府のいろいろな政策でアクセルを踏みながら、片方でたじろくほどのブレーキもかかっているということで、登録免許税等々の見直しは当然だろうと思います。
ここから先は、たとえていえば塩川大臣が仮に企業だとすれば、塩川正十郎会社が塩川小十郎会社に変わっただけで、その資産がみんな登録免許税として払うというのは極めておかしいと思います。したがって、ここから先はちょっとラフな議論になるのですが、固定資産税その他、保有、所有に関する税は当然として、さっきみたいのを流通と言うのかどうかわかりませんが、土地が動くことに関する税は思い切って見直す必要があるのではないか。土地が動けば住宅は建つ、あるいはビルは建つ。そうすると、住宅が建てばいろいろ影響力も広がるということで、不動産取得税を含めて思い切った見直しがぜひとも必要なのではないかと思います。
〇石会長
数年前に3分の1ぐらいに課税ベースをしているわけですが、それでも十分でなく、それで阻害効果が多分起こっているというご判断だと思います。
じゃ松浦さん、どうぞ。
〇松浦委員
地方税に関しまして数点申し上げさせていただきたいと思います。
まず固定資産税でございますけれども、ご存じのとおり、現在、地方財政をめぐる極めて厳しい環境の中で、市町村の基幹税目であります固定資産税、私ども、高崎市では税収の約40%ぐらいを占めておりますが、安定的な確保は非常に重要なことであると思っています。ただでさえ固定資産税は地価の下落や建設物価の下落等によりまして大幅な、来年度また税収減が見込まれる大変厳しい状況にあります。全国的に約3,000億とも言われています。
これに加えまして、今お話もございましたように、商業地等における課税標準額の上限、今評価額の70%ということになってますが、さらにこれを引き下げるというご議論もあるようでございますが、市町村財政に甚大な影響を与えるために、ぜひ避けていただければと思ってます。
また、デフレ対策として固定資産税を引き下げるべきといった声も聞かれるところでございますけれども、こうした政策減税のために、市町村の基幹税でございますので、これを危うくすることは厳に避けるべきだと考えております。
なお、特別土地保有税でございますけれども、現在、最終的に有効利用される予定があれば課税されない仕組みになっております。地方財政をめぐる極めて厳しい環境のもと、本税を引き続き守っていくことも重要であると思っております。
また、都市の税制であります事業所税がございますが、これは30万以上の町に係るわけでございますが、貴重な都市再生のための財源として重要でございまして、今後とも維持していくべきであると考えております。
〇石会長
ありがとうございました。どうぞ、今井さん。
〇今井委員
やはり今、資産デフレというのが一番大きい問題だと思うのですが、そうしますと、土地に関する税制、それから証券に関する税制というのを早急にやはり見直すべきだと思います。それで、今固定資産税のお話がございましたけれども、この負担の水準といいますか、評価額に対する課税標準額の割合ですけれども、これは全国平均では今55ぐらいなのですね。それで、どんどん上がってきて、それから都市なんかでは今65を超えてますから、これはやはり55ぐらいに全国均衡化、平準化すべきではないかと私は思うのですが。
それからもう一つ、家屋といいますか、非住宅の家屋ですが、これの課税水準も非常に高くなってますので、見直すべきではないか。先ほど外形標準の話がありまして、これは市町村と都道府県と違うかもしれませんけれども、すでに非常にいろいろな形で外形標準がかかっておりますので、この辺はいろいろな観点からもう少し簡素化を図るべきではないかと思っております。
それから、今の土地の流通の課税、あるいは譲渡益課税、こういったものもやはり見直さないといけないのではないかと。これは非常に大事なことではないかと思います。内容については、具体的にどれをどうしたらいいかということはちょっと私には提案する内容を持ち合わせませんが、経団連から提案しておりますので、それをごらんいただければと思います。
〇石会長
ありがとうございました。どうぞ、松本さん。
〇松本委員
松浦委員がおっしゃったのですが、重ねて、町村の立場もございますので、固定資産というのは大事な税目でございます。市町村は自主財源が非常に厳しくなって、乏しくなってきております。その中にあって、介護保険を実施したり、また少子・高齢化の対応問題、また立ちおくれている生活関連施設の整備、あるいはごみ収集等、住民生活に必要なサービスを着実に進めていかなければいけないわけでございます。その財源が、約半分が固定資産税で補っているわけでございます。たとえていいますと、全国では市町村税の固定資産税の割合が約45%でございます。
実は私のまちも調べてみたのですが、徴税における固定資産税が実は57.7%になっております。市町村の財政はさらに厳しくなってくることが予想されるわけでございますが、そういうことで、基幹税目であります固定資産税の安定的確保をぜひお願いしたいと思います。また、課税の公平性を確保する観点からいたしましても、負担水準の均衡化を促進する方策についても十分に検討する必要があるのではないかと思います。
〇石会長
ありがとうございました。ご意見、承っておきます。ほかにいかがでしょうか。どうぞ、柳島さん。
〇柳島委員
基礎問題小委員会のとき申し上げたので重複を避けたいと思うのですが、現在の土地税制というのは土地不足時代につくられたもので、今現在、企業の海外立地なんか進んでまして、かつての、土地は有限資源だという概念自体がもう変わってきているということで、トレーダブルグッズにもうなっているのだから、土地税制そのものも、現在は稼得力以上の税制をかけているというのが私の意見なのです。だから、これはやはり全体を引き下げるべきだということです。
それから事務局にお願いしたいのは、国際水準を見て日本の土地税制は過重かどうかという、これは比較は難しいだろうと思うのですが、そういうデータがあったらぜひご提出願いたいと思います。
〇石会長
それはもうありますよね。どこか、すぐ指示してもらえる?
〇川上企画官
お手元の基礎小19回目の19-4「資料(土地税制(国税)関係)」の23ページでございます。「諸外国における土地売買に係る流通税負担(商業用地の場合のモデル試算)」ということで、先日の基礎問題小委員会でご紹介している資料でございます。
これをご覧いただきますと、地方税含めて、土地売買に係る流通税、必ずしも日本だけが高いわけでもないというようなことが、このモデル試算の限りでございますけれども、見てとっていただけるのではないかと。税目の詳細はその前の22ページにございます。
〇株丹固定資産税課長
あと地方税、保有課税の関係では、同じ19回目の資料でございますが、19-3というのがございまして、15ページのほうに主な諸外国との比較というのを出させていただいております。不動産税、あるいは財産税との比較ということで、こちらのほうをごらんいただきますと、アメリカやイギリス、あるいはフランスといったところと比較して、日本、決して重いという形にはなっておらない。国民所得との対応、あるいは租税全体の中での収入の割合というものを出させていただいております。
〇石会長
よろしゅうございますか。国際比較、いろんな面倒くささありますが。どうぞ、佐野さん。
〇佐野委員
先ほど石会長が、今度の固定資産税の評価替えに当たって、これまでどおりで結構だという意見があって、なんか淡々と基礎小委員会では審議が行われたと。ちょっと私どもの言い方がまずかったのか、これまでどおりでいいのかどうかというのは、基礎問題小委員会でもかなりいろいろな意見が出たように私の印象ではあるのですが、改めて個人的な意見を言わせていただくと、やはり地価が十何年かにわたって下落している。それぞれの評価替えに、時々に、地価が下がってなぜ税負担が上がるのだという納税者からの不満にこたえて、それぞれに手を打ってきた。各3年ごとの評価替えで。今度は何もしなくていいよというわけにはなかなかいかないと思います。私は、地価の下落がなお続いているという状況に照らして、やはり実効負担率といいますか、納税者側の立場に立った制度の見直しというのはやはり検討すべきテーマではないかと思います。
思い切ったことを申しますと、先ほど今井委員から、負担水準は55に、つまり税金を下げる、その基準を55にしろというご意見がありましたけれども、私は、例えばこの負担据え置き区分である6割、これを負担据え置きを取っ払って、これは引下げ区分に変更してはどうかというような意見も持っております。
それから、これも基礎問題小委員会で何度も申し上げましたけれども、家屋というものに対する評価がこれまでどおりの評価方式でいいのかどうか、これも今回検討すべきテーマではないかと思います。
ついでですが、ちょっと事務局に申し上げたいのだけれども、このA3に「あるべき税制の構築に向けた基本方針」という図が出ておりますが、この日付を見ると平成14年9月27日でありまして、それ以来3週間たっております。この間、基礎問題小委員会は週1回とか2回とか精力的に議論してきたわけで、こういう3週間前のを出されると、この3週間我々は何やっていたのだと。その時々の議論を審議状況に応じて、少しこれも見直してもらいたいというのがこちらの注文でございます。
〇石会長
最後の点は、そういう点もありますが、過去にどういう資料が出たかという点もまた重要なのでね。バージョンを重ねていただくということが必要かもしれません。
それから佐野さんのおっしゃるとおり、まとめて「淡々と」と言ってしまったのは行き過ぎかもしれません。特に佐野委員からは家屋の問題、今言った、土地が下がるのになぜ上がるかというところの調整、それから今の均衡化のやり方等々出たことをあまりご紹介しないで、すみませんでした。
ただ、具体的に来年度の見直しに対して、こことこことこことというものをどうやったらいいかというところまで議論が、私、煮詰まってなかったと思いますし、まとめ方がまずかったのですが、幾つか問題を出されたけれども、それを大きくのみ込んで、多分、従来の方針と大きく変わらないような方向でいくのではないかと思ったものですから、それはちょっと先取りしたかもしれません。ご議論、幾つかまた賜りたいと思います。よろしゅうございますか。
どうぞ。
〇貝原委員
土地税制全般については何らかの対策が必要だろうという感じは、私、個人的には持っているのですが、その中で不動産取得税だけに限って議論するというのもいかがかと思いますが、不動産取得税について、不動産の流通にブレーキをかけているというような印象があって、税率を全般的に引き下げるということであればいささか問題なのではないかと。実質的に地価がこれだけ下がっておりますし、実質的な税負担としてはもう100分の1以下ぐらいの実効負担率の税でありますので、私、一般的に下げるべきものではないのではないかと。
全体の財政状況等から判断しましてそういう感じがするのですが、もし何らかの形でこれを軽減することによって流通を、特定の場合に有効であるというようなことがあるとすれば、それは法人税についての議論のときの政策減税と同じように、一定の要件が本当に実効のあるものとしてそういう税制が可能かどうかということをよく検証した上でご検討いただけたらいかがかと、このように思っております。
〇石会長
ありがとうございました。よろしゅうございますか。
これまた、皆さんのご意見を聞いていると、ある一定方向にまとめるというのも難しいですね。ただ、はっきりしておりますことは、土地税制、固定資産税、堅持しつつも、今のさまざまな土地流通を阻害している、あるいはとうとうデフレ対策用で、何らかの見直しが必要であるというようなご議論があったということで、それを踏まえまして少し、次回に出します、基礎問題小委員会あたりに出すところの文案は考えてみたいと思います。
それでは、やっと最後のテーマになりましたが、最後のテーマは金融・証券税制でございます。これも随分議論を重ねてまいりまして、幾つか論点が出てまいりました。今日の冒頭のプロジェクトチームで特定口座、この議論もございまして、これはある意味では、1月から始まります新証券税制がわかりにくいということに対しまして、簡素でわかりやすい税制にしたいというねらいから、幾つか今努力をしているわけであります。
そして配当課税についても随分ご提案もございまして、配当課税につきましては、15年改正におきまして、原則として利子並み課税、20%の定率課税にしようという方向で今検討中でございますし、投資信託につきましても、幾つか新しい方向で考えたい。あるいはキャピタルゲイン、株式譲渡益課税につきましては、すでに織り込んでございます期限付きの譲渡という形で、ある期限が来るとどっと解約されて株安要因になるのではないかというご心配がありますので、それについては株式の取得・保有という点で少し改善していきたい。期限付き譲渡ではなくて、持つときの要件ですね。これを取得・保有にしたいとか、幾つか考えておりますが、まだ一段と複雑なところに関しまして改善の余地はあるのかもしれませんが、何せ1月1日から始まる、まだやってないのにこれが始まる前からさまざまなものを改正するのもいかがかということを思っておりまして、個人的には、やはり発足させて、その流れの中で直すべきことは直すという形でやるしかないのではないかとも考えております。
ただ、長い目で見れば、この利子・配当・株式譲渡益課税というのは金融所得の一元化、金融所得というものをニュートラルにする意味で、その世界の中でこういうものをまとめるほうがいいだろうという形で、できるだけ早い間に金融課税小委員会等々立ち上げまして、この一元化の先行きについての議論をしたいと、このように考えております。
いずれにいたしましても、金融商品間の中立性というのも非常に重要でございますから、今あるように、個々の商品ごとに税負担が違うということもございますし、いろいろな問題があるということは現に言われていることでありまして、それはこれからの議論で直す方向で議論したいと。また、大きな意味で構造的な改革を行わせたいと、このように考えております。
最後、金融・証券税制に絡めまして、かつ、先ほどの特定口座についてまた戻ってご議論いただいても結構でございますから、この括りにつきまして、ご質問なりご意見があればと思います。どうぞ、奥本さん。
〇奥本特別委員
金融・証券税制に関しまして、今会長おっしゃったような、利子・配当・株式譲渡益に対する課税の将来の一本化に向けた検討、これは私どもとしても長年の念願であります。ぜひ積極的なご検討をいただきたいと思います。
ただ、今回の税制改正の中で我々も危惧した部分が現実にいろいろ出てきたわけですが、やはり税務署と接触したくないという現実の声というのはかなり迫力がございます。この点、今後の一体化に向けた検討というときに、どうやって現実問題としてそういったことを処理していくといいますか、やっていくのか、大変難しい宿題が出てきてしまったような気がしております。今後の課題として当然必要なことですが、なかなか現状のあれでは難しいものも見えるということをちょっとつけ加えさせていただきます。
それから配当課税について、利子並み課税ということで前向きなご検討をいただいているということにつきましては、大変ありがたいといいますか、結構なことだと思いますし、現在のような低金利の時代、現実に、ご承知のとおり、東証上場銘柄の平均利回りが、配当に対する平均利回りで1%を超えております。現実にですね。そういう状況でございますので、これに対する税の優遇措置というのは、新しい資金の導入に対する効果も期待できるものだと思っております。
〇石会長
奥本さんに1つ教えてもらいたいのですけれども、税務署と接触をとりたくない株式投資家をどうするかというのは、これは大問題だと思うのですよね。基礎問題小委員会でも随分議論いたしました。特定口座をつくって、税務署に行かなくていいよと、証券会社がかわりにやってやるよというところを大々的に言ったことが間違いだということを鋭く指摘されている方もいらっしゃると思いますし、日本の株式投資家のみが源泉分離等々の恩恵で、世界的に見ると、株式投資家はやはり税務署と関係してますよね。日本のカルチャーなり風土、これは未来永劫にその条件を考えなければいけないのでしょうかね。
〇奥本特別委員
私、この場でどこまで申し上げていいのかよくわかりませんが、全く予想外の出来事と言っては失礼ですけれども、予想以上の反応があったことは事実でございます。1つにはやはり、長いこと非課税というような制度に慣れていた。分離課税が非課税とは言いませんが、そういうものに慣れていた。あるいは預貯金を含むほかの金融商品が分離課税という中で、なぜ株式だけがということが1つ大きな点にあったのだというふうには思っております。
それから、これからの新しい投資家を勧誘するのについて、今回の税制の改正というのは、私どもとしても実はかなり高く評価した部分でございます。それによって株式投資に対する優遇税制をより考えやすくなるということに対する評価というのは期待していたわけでございますけれども、その制度が実は、今石会長もおっしゃったように、残念ながら、それぞれが期限がついてしまったために、よりわかりにくく複雑になってしまったということが1つございまして、本来メリットであったものがそういうふうな評価を受けなかったという点がより反論を受けたのだと思います。
特定口座というものをつくったのは、やはり投資家にとっての利便性を考えて作ったものでございまして、これにつきましては、主税局、かなり一生懸命協力していただいて作ったつもりなのですが、残念ながら、使い勝手がちょっと悪かったという事実もございます。そういったものがすべて重なったものだというふうには理解しますが、やはり、株式だけが税務署との接触窓口があるよということに対する抵抗というのは、本当は我々が思っているよりか強くあるのかもしれません。
〇石会長
無理な問いをいたしまして、すみません。ほかにいかがでしょう。どうぞ、室町さん。その次、今野さんね。
〇室町特別委員
いわゆる株式市場、あるいは証券市場の活性化、これは先ほどから出ている資産デフレ対策としても非常に大切なことだと思うのでございますが、しかし、また逆に、中長期的に見ましても、日本の今の金融システムを本来の意味での、もっと直接金融市場の育成といいますか、どちらかというと間接金融一本でやってきたようなきらいのあるシステムを変えていく、それで長期的に安定した金融システムにしていくという意味では、資本市場、特に株式市場というのは非常に大切なものではないか。そういう意味で、残念ながら、投資の状況も日本はまだおくれていると言わざるを得ないと思います。それにはいろいろな理由があると思いますけどね。
やはり最終的には、本来の貯蓄者である個人の投資家が幅広く参加していくようなものになっていかないと。これは10年かかるか5年かかるかわかりませんが、そういうような意味での抜本的な改革、ある意味で配当も利子も同じにしますというよりも、ややインセンティブを持った、それはしかも構造改革というような意味での、そういうようなことは考えられないであろうかという感じがちょっとするのでございますが。
〇石会長
税でとおっしゃる意味ですか。
〇室町特別委員
もちろんほかのものもありますが、税もバックアップするような体制。具体的に、例えば少額の譲渡益課税は免除しましょうというのが一部ございましたね。期間的な制限があるかもしれませんが、こういったものを恒久化するとか、何か工夫ですね。譲渡益課税についていえば例えばそういうようなこととか。
〇石会長
歴史的に見ると、例えば譲渡益課税がゼロのときが一番個人投資家は減っているのですよね。昭和28年から、要するに1953年から89年まで非課税ですよね。株式譲渡益課税は。そのときに個人投資家、どんどん減っているのですよ。
〇室町特別委員
歴史的なものはやはりそこで考えなければいけないと思うのですけどね。例えばアメリカの今の、要するに市場の段階がこの辺までいっているとしたら、日本がちょっとまだおくれているとか。だから、必ずしも、アメリカでは総合課税だから日本もそれでいいではないかというだけでもないのではないか。
〇石会長
でも、アメリカは配当の二重課税の調整をしなくても日本より株価高いでしょう。ドイツは株式譲渡益課税ゼロで一番落っこっているでしょう。やはりそういうのは考えないと、税を安くすれば何でもいいという話ではなかろうと僕は思っているのですよ。
〇室町特別委員
ええ、それはおっしゃるとおりです。私もそこまで申し上げているつもりはありませんが、少しそういった金融システムをというような……。
〇石会長
じゃ僕のほうに反論があると思います。どうぞ、奥本さん。
〇奥本特別委員
もちろん、歴史的に見て云々というお話は、戦後、日本の株式の民主化というような流れの中で大きく株主が変わったという歴史の中で起こっているいろんなことだと思います。それから、よその国で云々というお話もございますが、やはり基本的に、株式市場、この13年間下げ続けているわけですね。実際、日本の株式市場というのは。逆に計算しますと、TOPIXを使っても、年平均9%の下げになっているわけです。つまり、13年間誰も儲かってないという現実があるわけですね。投資してもうかるという期待値がそれだけ薄いというよりか、逆に、投資したら損するのではないかみたいなことが、残念ながらムードとして出てきているということが、もう一つ、個人投資家を引き入れない部分にあるのだろうと思います。
今度、今の株価については、この場で申し上げるまでもなく、極めて危機的な状況にあると我々も思っておりまして、おそらく、金融制度を破綻させるような、株価がそういうものを引き起こすような事態も現実に起こってきているわけなので、ぜひ、そういった意味では緊急事態なので、この際思い切った税制についての考え方を出していただきたいということで、緊急措置として、我々、証券界と全銀協、信託銀行協会、それに生保業界、損保業界の金融5団体が一緒の提案としまして、緊急措置としての、譲渡益課税につきまして当分の間非課税にしてほしいという要望を出しました。もちろん、経団連の機関決定でも、譲渡益課税についての非課税というものを緊急措置として今お願いしているところでございますけれども、これは税を変えたからどうのこうのとかいうのではなくて、やはりその一つのきっかけをつくる必要がある。
逆に、繰り返しになって申しわけないですけれども、このような、ある意味では危機的な状況にあるという株式市場、これは投資家の側、投資する立場から見れば逆に千載一遇のチャンスなのかもしれません。だから、そういった意味で、今ここで一つの全体の流れを変える、証券市場に個人金融資産を引き入れてくるチャンスということも言えると思いますので、ぜひそういったことも考えていただきたい。
それから、先ほど、利子並みの課税について、私、ありがたいと申し上げたのですが、考え方をこうしていただいたことがありがたいのであって、当然のことながら、今おっしゃられたような、当然その上でインセンティブをつけるようなこと、これによってやはり証券市場のほうに資金を引き入れるということ、これは政治、政策の問題だと思いますけれども、それは当然のことながらこれからもお願いしなくてはならない問題だと思っております。
〇石会長
今井さん、関連ですか。
〇今井委員
関連です。
〇石会長
じゃ関連で。その次、今野さん、お願いします。
〇今井委員
今おっしゃったようなことを申し上げたかったのですが、要するに、今、時価会計が採用されていて、そして持株が、持ち合いがまだ完全に解消されない中で時価会計が採用されてますから、非常に株価の変動というのが企業業績に大きな影響を与えてしまうのですね。それで、本来ならば持ち合いを解消するために受け皿が要る。その受け皿というのは個人でないといけないわけですね。ですから、今みたいに、金融資産の6%しか個人が持ってないという形を変えていかなければいけないわけでして、そういうきっかけをつくるためにはやはり思い切った、みんながびっくりするようなことをやらないといけないのではないかと思うのです。
もちろん、株価というのは、我々企業がきちっとした収益を上げなければいけませんし、それから自社株を買って環境をよくしなければいけないのですけれども、今そういう努力は努力として、やはり個人個人に市場に参入してもらわないと、日本の、今金融構造いろいろやっていても、結局それが証券市場に向かないとうまくいかないと思うのですよ。ですから、思い切った、時限的に譲渡益課税をゼロにするとか、そういうことが私は必要なのではないかと思っているわけです。
〇石会長
今野さん、どうぞ。
〇今野委員
エンジェル税制の話をしていいですか。
〇石会長
どうぞ。
〇今野委員
今皆さんがおっしゃっているような状況の中で、やはり景気と雇用を確保するためにはどうしても今新しい産業の開発の育成というのに力を入れなければいけないと思うのですけれども、何といっても、ニュービジネス、ベンチャーといったものは非常にリスクが大きくて、アーリーステージのベンチャーに資金がなかなか回らない。もはやこの時代にマッチしなくて、寿命が来て終わる企業ではなくて、非常にすぐれた技術とかサービスを持ちながら、あと一歩というところで、今酸素が回らなくて消えていくといったような現象にもっと私たちは危機感と関心を払わなければいけないのではないかと思っております。
間接金融はもはや本当に望むべくもないので、直接金融の道を開かなければいけなくて、それで平成9年にエンジェル税制を一応創設していただいたのですけれども、依然としてそれはあまり功を奏していないと私は思います。
今日本ではエンジェルによる投資は、年間たかだかまだ数十億ですが、イギリスでは1,200億円、アメリカは1兆も2兆もと言われているのに比べて、本当に低調だと思います。それをどうすればいいのか。そういうベンチャーキャピタルが活発になったイギリスなんかは、それとほとんど並行して開業率が非常に大幅にアップしているというこの現実にももっと注目したいと思うわけですけれども、それではどうしたらいいのか。
なぜ日本はそれだけ低調なのかといいますと、日本のエンジェル税制というのは、株式公開したときに、その譲渡益の4分の1を圧縮しますとか、倒産を含めた譲渡損が出たときには3年繰り越しますということで、非常にインセンティブが小さいのですね。その結果、せっかくの優遇措置にもかかわらず、非常に中途半端で効果がほとんど出ていないという現象で、そういう中途半端なものをつくるということは意味がないので、ではどうしたらいいかというと、英国とか、その後、フランス、韓国なんかが実施して大きな実績を上げているように、投資時点でちゃんとインセンティブを実感できる、つまり投資額の、ほかの国では20%を税額控除するという制度を導入して、それでエンジェル投資が急増しているわけですね。ということを、エンジェル税制のさらなる見直しを提案したいと思っております。
エンジェル税制というと、何か一部の金持ち優遇税制ではというような偏見がありまして、なかなかこの場でも活発な議論がなされないのですけれども、エンジェルの人にインセンティブを与えて、ベンチャーを育成・活性化することで、本当に世の中に出る波及効果は非常に大きいと思います。ここのところに来てノーベル賞が突然2人出たわけですが、ああいう人たちはベンチャーという形でもたくさん眠っているはずです。そういうことにもうちょっと政府税調も関心を払ってほしいと思いますので、エンジェル税制の見直しを提案したいと思います。
〇石会長
そのエンジェル税制につきましては、累次の基本答申には数行必ず触れてますよね。ただ中身があまりないというのがご主張でしょうね。よくテイクノートしておきましょう。どうぞ、水野さん。
〇水野(勝)委員
先ほどからご議論のございます金融税制、これは、今までは株式でございますと持ち合いがわりあい簡単にできた。銀行さんがたくさん持っていただいた。5%という制限はありましたけれども、かなりな部分を持っていただいていた。それが状況が変わってきたという意味では、個人の株主に、大いに個人に期待しなければいけないということは高度成長時代とはちょっと違ってきた様相であろうと思います。
高度成長時代も一貫して非課税でございましたけれども、63年以来、課税になった。そして、その後源泉分離で来たのですけれども、いよいよ来年からは本格的な、とは申しましても申告分離ですけれども、課税になった。ここはやはり、ですから個人の方に極力ご配慮して、申告しやすい体制をつくっていただくということで特定口座が始まったと思います。ですから、個人の方がとにかく簡単に計算なり申告が済むように、極力、先ほどご説明ございましたけれども、特定口座の使い勝手についてはさらにさらになお円滑に利用できるように、個人の方が簡単に申告できるような道を開いていくという点は大切だと思いますので、なお一層ご努力を願いたいと思うわけでございます。
また、今までの利子課税や配当課税と違って、元本の問題。元本の問題というのは、今までわりあい片隅に追いやられていた。例えば銀行がペイオフになった、そういうことはあり得ないのですけれども、そういった場合の資産の損失をどうするのか。今の税法ですと、それは残念でしたということになる。株式が、会社が倒産してゼロになる。これはもう全くゼロになってしまうだけの話。しかし、そこらを元本の問題も含めて資産課税の問題として今後長期的に検討されてもいいのではないか。そういったことでも個人の魅力を高めることになるのではないかと思います。
しかし、一方、所得税でございますから、最終的には税務署に申告をいただくというのは大原則でございます。最近ではサラリーマンの方でも1,000万人を超える人たちが申告をするようになっている。それから、昔から土地問題、これは申告とも絡んで非常に厄介ですが、土地の供給をされる方というのは、大半は農家の方々が自分で所得税を計算して納めている。もちろんご自分ではやってないと思います。農協の方が手伝ったり、税理士先生がご指導している。サラリーマンの方や農家の方に比べれば、そう言っては失礼ですけれども、証券投資をなさる方のほうがよっぽど経理面には明るいわけでございますから、そこは、ご自分で計算をするとなっても、ほかの所得税の種類の納税者よりはよっぽど数字には明るいわけですから、基本的にはやはり所得税として申告にご協力いただくというのは、これは最終的にはお考えをいただく必要があるのではないか。
しかし、できるだけそこは直接税務署に接触しなくて済むように、証券会社の口座で済むようにしていけば、個人の方も大いに市場に参加いただけるようになるのではないかと思うわけでございますので、基本的には特定口座の使い勝手がよくなるように、さらに年末から年明けにかけてもご検討願えればと思うわけでございます。
〇石会長
ありがとうございました。堀田さん、どうぞ。
〇堀田委員
全般についていいですか。
〇石会長
どうぞ。
〇堀田委員
法人課税と相続税等につきまして。法人課税の問題で、研究開発減税、設備投資減税、大変適切な選択だと思うのですけれども、租税特別措置をなるべく統廃合しようという全体の姿があります。それで私は、今後はすべての政策減税について時限立法にするという基本態度を決めたほうがいいのではなかろうかと。
〇石会長
検討しているのですよ、時限立法に。繰り延べているわけですよ。
〇堀田委員
ですから、その原則をここでしっかり今後貫くことが大事かなと思います。
それから相続税、贈与税はもう大きな流れですので黙っておりましたけれども、殺人事件までは起こらないとは思いますが、体が弱ってきた高齢者は相当、これをもとにひどい目に遭わされるであろうというのが大体状況を見ているとわかりますので、もらったドラ息子の財産の浪費、それから財産をとられる高齢者、そういうのが一方で出てくるおそれは私はかなり高いのではなかろうかと。ですから、これは立法して、これを時限措置というわけにはいかないでしょうけれども、できれば、例えば附帯決議に持ち込んで、5年後なら5年後にプラスマイナスちょっと見極めてみるとか、何かそういう措置が欲しいなという気がいたします。
〇石会長
堀田さんが言うと臨場感ありますねえ(笑)。心配になってきた。どうぞ、和田さん。
〇和田特別委員
ちょっとおくれてまいりましたので、資料いろいろ拝見している間に、個人所得税のところで発言し損ないましたので。
1点は人的控除の見直しの問題ですけれども、配偶者特別控除、それから特定扶養控除、これは大分以前、丁寧に議論したときにも、私は筋としては、やはりこういうものは見直す必要があるのではないかと。ただし、今の非常に厳しい経済状態の時期に、いきなり外すというのではなくて、例えば基礎控除を引き上げるとか、何らかの手を打って、少なくとも増税になるというのは今の時期には少しむちゃ過ぎるのではないかと発言いたしましたけれども、もう一度発言しておきます。それが1点です。
それからもう一つは空洞化の問題で、4人に1人は払ってないということをよく言われるのです。それで、空洞化というのは、言ってみれば就業者の人数から納税者を引いて、そして分母に就業者を持ってきて、それが25%になるということだと思うのですけれども、サラリーマンの所得税の納税者数を見てみますと、勤続1年以上のサラリーマンですと86%納税しているわけですね。それから勤続1年未満が52%ということが出ているわけです。そうすると、就業者というのが結局パートとかアルバイトとかフリーターとか全部入ってますので、そこら辺のところの問題ではないかなという気がするのです。
ですから、4人に1人がということがよく言われて、広く薄く課税するという全体の課税の方向で考えますと、パートとかアルバイトなどの納税者、結局、そういう人たちというのは収入が少ないから払ってないわけですよね。そういうところからも納税してもらうようにするということなのでしょうかということで、以前から時々申し上げているのですけれども、1年に1回、私どもの消費者大会があるものですから、今それの税の資料を持ち寄りまして計算したり考えたりしている間に、4人に1人というのをどう考えたらいいのだろうかというときに出てきた疑問です。
それともう一つは、標準世帯というのが、もう長々とは申しませんけれども、本当にこれが標準なのかということを私はもう10年ぐらい前から言いまして、何年か前から、夫婦2人とか、独身、いろいろ、4つの類型が出てきまして、それで見ますと、決して日本だけが飛び抜けて、課税最低限がどのグループでも最高だということは言えないと思うのですね。でも、相変わらず課税最低限が国際的に見て非常に日本は高いのだという一言で片づけられることが多いものですから、その辺のところが納得いかないということです。
それともう一点は、これは税金ではないと言われてしまえばそれだけですけれども、医療費の負担が増え、それから介護保険料のアップが言われておりまして、非常に、これは介護保険料ではあっても税金と全く同じ、むしろ税金よりも生活に厳しい影響を与えておりますような状況の中でのことだということをやはり頭に置いて、税制というものはぜひ考えていかなければいけないなということを感じております。
〇石会長
今日はもう時間がないので事務局からお答えいただけませんが、就業者の定義とかなんかが今のご発言の中で少し整理する必要があると思いますから、いずれまた時間を見つけて。
じゃ最後、松尾さん、簡単に。
〇松尾委員
簡単にいたします。株式譲渡益課税の問題ですが、金融システムの機能を回復することが緊急課題ということは私も同じ認識であります。ただし、緊急の措置として、当分の間非課税にすることが果たして市場の安定に結びつくのかどうかですね。私は非常に疑問があると思うのですね。むしろ、やはり安定的な証券税制としては、利子・配当・株式譲渡益課税の一体化を大胆かつ早急に実現したほうがよろしいと、私はそう思います。
〇石会長
ありがとうございました。ちょうどあと2分残して4時半という段階でございますが、この最後の金融証券のテーマ、なかなか難しい問題をはらんでおりますが、特に経済界のお三人の方から、株式譲渡益非課税、緊急措置をせいというご提案がございました。いずれにいたしましても、基礎問題小委員会でもう一回持ち帰って議論する場もあろうと思いますが、ただ、これはどれだけ効果があるか。短期的には効果あるのでしょうけれども、構造的にどういう問題があるかも慎重に見極めなければいけないでしょうし、私は個人的には、税制学者としては、やはり偉大なる不公平税制を生みますからどうかという議論は多分残ると思いますが、いずれ議論して、また次の総会、もしくはこういう問題を議論する場があればまたお諮りしたいと思います。
いずれにいたしましても、金融所得の一元化に向けて大きな構造的な取り組みをしろということにつきましては共通の理解があったと思いますし、それから、今ある特定口座も含めてもう一段の改善を努力するという点につきましても、いろいろご示唆があったと思います。
それでは、長い間本当に申しわけございません。2時間半ほどかけましたが、今日の議論を終わりにしたいと思いますが、以下、ちょっと次回の日程をかいつまんで申し上げます。
基礎問題小委員会は22日にございますので、今日いただきましたような問題も含め、さらに残った幾つかの大きな問題がございます。今日は実は議論できなかったのですが、「これまでの審議状況」に書いてございますように、酒、たばこ、エネルギー関係諸税、国際課税等、これは残っておりますので、次回の基礎問題小委員会でやりたいと考えております。
それを受けて、29日の午後、総会を開催いたしまして総括的な整理を行いたいと思います。今日お出しいただきましたいろいろな論点もそこで再度お諮りする場があろうかと思います。
そこで、15年度税制改正に向けまして起草作業をその後行いたいと思いますので、また起草の段階で1~2回、あるいは2~3回か、総会を開き、起草文の流れをご審議いただくことがあろうかと思います。いずれにいたしましても、11月中旬をめどに、この起草文を整理し、この間の中間的な整理を踏まえ、来年度税制改正、あるいはもっと長い目で見たあるべき税の姿を取りまとめたようなものを出したいと考えております。
事務局から日程的によろしいですか。――じゃ本当に長時間ありがとうございました。では、これにて散会いたしたいと思います。
〔閉会〕
(注)
本議事録は毎回の総会後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。
内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。