第28回総会 議事録
平成14年6月4日開催
〇委員
それでは、時間になりましたので、今日は議題が山積しておりますから、まだお見えになってない方もいらっしゃいますけれども、始めさせていただきます。
読んでご議論いただき、読んでご議論いただくというのをツーラウンドやって3時間と見ておりますので、途中、1時間半終わりましたら、ピシャッと休憩をとりたいと考えております。
そこで、あらかじめ忘れないうちに、今日の資料はまだ完成版ではございませんので、会議後にお返しいただきたいというふうに上に書いてございますので、2つ、基本方針案と補論がございますが、これはお忘れなく、お帰りのときには置いて帰ってください。
今日は、非公開ということになっております。というのは、この案文が外に流れ出すにはまだ時期尚早でございます。ただ、今日の会議の要点は記者会見で概略私のほうから説明していきますが、一応きょうのご発言の内容は議事録として名前を抜いた形であと出ますので、その点だけはご了解いただきたいと思います。
それでは、議事に入る前に、5月30日に、私、経済財政諮問会議に出まして、ここに「石税調会長提出資料」というのがございますが、これについて、ほんのちょっとご説明いたします。10分ぐらいでやれということでございますが、「議論の整理」というのが出ておりまして、これはもうすでに税調で出た資料でございます。この概略説明をいたしました。
やはり一番はっきり見えるのは最後の表でございまして、これにおそらく諮問会議と税調の議論の違いのエッセンスが隠れていると思いますので、この表だけ簡単にご説明いたします。
「『広く薄く』の観点からのこれまでの対応」という図が一番最後にくっついておりますから、これをちょっとご覧ください。これは俗に言われます「広く薄く」というのを、所得税、法人税、消費税、相続税と4つの主要な項目をつけて、過去どういう形で処理してきたかということの一枚紙でございます。「広く薄く」の代表的なものは、ここに書いてございます消費税でございまして、消費税の創設・充実と改善したこのプロセスは、まさに「広く薄く」の過程でやったということだと思います。そして、所得税の累進税率の緩和とか恒久的減税等々はまさに薄く負担してもらおうという趣旨でやったのですが、広くという課税ベースの拡大がまだだめだという意味でバーが入っていると。これから、我々、所得控除の抜本的な見直しをするというのは、このバーのところを埋めていこうという趣旨でございます。
法人税は、これは広くも薄くも、とりあえずどこに完成度を求めるかわからないけれども、これまでやってきたと思います。引当金であるとか、減価償却の制度を見直したりいたしました。税率も下げました。そういう形で、法人税はこの中では一番「広く薄く」の方針に従っていると思います。
相続税は、累進税の緩和をし、最高税率もまだ高いので、ここはまだ薄くできる余地はあろうかと思います。つまり、最高税率70%を下げろと、今日の報告書にも書いてございますから余地はあろうかと思いますが、やはり広くのほうはやってないという趣旨でございます。ここにバーが入ってます。
そこで、諮問会議とちょっとやりとりがあって、この前に書いた三枚紙あたりも、まだ思想がわからんとか、内容がわからんから認めたくないというようなことをはっきり言った議員もございましたけれども、「広く薄く」はこれからやりたいと言うのですよ、諮問会議は。だから、税率も下げたいと言っているわけです。
それに対して私が、ここに書いてあるように、もう小渕内閣以降随分やってきたではないかと。累進税率の例の税率表を見ていただくとわかるように、主要先進国で一番ぺしゃんこになっているわけでありまして、これ以上やる必要があるかどうかということは問題提起をいたしましたが、そこをやりたいというお考えの方と、それから法人税をもう一段下げたいという。我々、法人税は、外形課税を考えておりますから、あれが実現いたしますとおのずから実効税率は下がると思ってますので、それはそれで対応できると考えております。
こういうことで幾つかやりとりがあって、また新聞におもしろおかしく書かれておりますが、今日の本論はもっと別なところにありますから、先にいかせていただきます。
そこで、今日は基本方針案と補論、この中身を総会としてあるところまでお詰めいただくというのがきょうの主要な議題でございます。この基本方針案と補論は、一応事務局にたたき台をつくってもらいまして、私と代理、それから基礎小の皆さんでそれをかなり書き加え、特に文章までチェックしまして、全体像を簡明かつ明確に書きたいという意思から、きょう見ていただければどれだけ成果が上がっているかわかりませんが、一応つくりました。
これは国民に対するメッセージだと思ってますから、私はやはり、こういう意見があったとか、ああいう意見があったとか、こっちが多かったとか、あっちが等々やっても、見るほうは何を言っているのだかわからんということで、すっきりした議論をまとめたいと思ってます。言うならば、多数の意見に従って、両論併記は避けたい。
ただし、この「補論」の中に、年度改正でもやりましたように、主な意見はぜひ紹介をいたしたいと思ってます。つまり、本論の中で十分に意が尽くされなかったと思われる方のご意見はそこでご紹介するという形で、その辺はおさめていただけたらと考えております。
そこで今日は、今から読み上げていただきますが、ちょっとお開きいただきますと、ちょうど真ん中で区切りのいいところがございまして、消費税の前まで、これで第1ラウンド、つまり12ページまでですね。これを一とおり読んでから、この内容について皆さんのご意見を伺い、できたら3時半までにこれを終えて、残り消費税以下を、後半の部分で消費税、資産税等々をやっていきたいという段取りで、5時をめどに終わりたいと考えております。
それでは、いつも事務局、大変ですが、すみません、最初のところを読んでください。
〇事務局
はじめに
21世紀に入った今日、現行税制の抜本改革は避けて通れない課題となっている。現在われわれのもつ税制の基本的理念、骨格は、昭和25年に導入されたシャウプ税制に大きく依存している。爾来半世紀が経過し、その間、高齢化社会の到来などを見据え、消費税の導入、個人所得課税の累進緩和等の抜本的な税制改革が行われたが、その後、様々な側面で加速しつつある経済社会の構造変化に税制が十分に対応しきれなくなりつつある。今後10年あるいは20年を視野に入れた税制の再構築が求められている。
当調査会は、平成12年9月の森内閣総理大臣からの諮問に基づき、昨年7月に基礎問題小委員会を設置し、中長期的な税制のあり方について検討を開始した。本年1月、小泉内閣総理大臣の指示を受け、中長期的な視点からのわが国税制の抜本改革に向け本格的な審議を始めた。それ以来、約6ヶ月間にわたり審議を進め、全国6ヶ所で開催した「税についての対話集会」での結果も踏まえ、あるべき税制の全体像について、基本的な方針を公表することとした。小泉内閣総理大臣の指示は、将来のわが国税制のあるべき姿を、中長期的な構造改革の視点から、「予断なく、予見なく」、また、「聖域なく」議論して欲しいというものであった。また、仮に、短期的な経済活性化のための税制見直しを行うとしても、あくまで中長期的な基本的方向との整合性を図るべきであるとの指示も受けた。この税制改革に対する取り組み方は、当調査会の目指す方向とまったく軌を同じくするものである。
かかる視点から、われわれは短期的な視点というより、21世紀前半をも視野に入れた中長期の時間軸の中でわが国税制のあるべき姿を検討することにした。今回示すものはあるべき税制の全体像についての基本的な方針であり、個別税目に関する見直しの具体的な内容や着手すべき時期については、これからの審議を待たねばならない。
シャウプ税制以来の税制全般にわたる抜本的な改革という狙いから、改革の内容もかなり広範囲でかつ大規模なものとなる。構造上の歪みを改める狙いから、結果として負担増の方向になる見直しの部分もかなり生じてくる。しかしながら、われわれはこの改革案を本年度あるいは次年度から一度に実施に移そうと提案しているのではない。その実施に当たっては、段階を追って慎重に進めねばなるまい。勿論、実施に当たっては、まずは、徹底した歳出削減、行政改革の断行により国民の理解を得ることが不可欠である。また、持続可能で効率的な社会保障制度のあり方について議論を深める必要もあろう。今後とも、少子・高齢化社会の下で財政赤字累増にあえぐ日本において、中長期的観点からどのような税制の姿とすべきなのかを示したつもりである。この提案を受け、「あるべき論」としての税制の再構築等に関し、広く建設的な議論が行われることを期待したい。(P1)
第一 基本的考え方
一 経済社会の活性化に向けたあるべき税制の構築
21世紀を迎え、少子・高齢化、ライフスタイルの多様化、グローバル化、情報化、経済のストック化、地球温暖化等の環境問題への意識の高まりなど、経済社会の構造は大きく変化している。とりわけ少子・高齢化は予想以上の速さで進行している。最新の人口推計によれば、出生率は一段と低下し、2006年をピークに人口が減少に転じる。生産年齢人口は今後継続して減少すると見込まれている。また、情報化の急速な進展、グローバル化のかつてない速さでの広がりの中で、世界規模での企業競争はますます激化している。
現在、国民の経済社会の先行きに対する閉塞感が深まっている。少子・高齢化が進展し、生産年齢人口が減少する中で、経済社会の様々な構造変化に的確に対応できなければ、わが国は活力を喪失し、長期的に低迷の道を歩みかねない。持続的な経済社会の活性化を実現するため、広範な制度改革を含む構造改革が急務である。税制についても、その一環として、中長期的視点に立って、あるべき改革の全体像を明確に示し、これを実行していくことで、国民の自信と意欲、国家への信頼を回復させ、経済社会の活性化を図る必要がある。
二 あるべき税制の構築に向けた視点
経済社会の活性化に向けたあるべき税制の検討に当たっては、引き続き「公平・中立・簡素」の原則(補論参照)を基本とすべきであるが、特に、上記のようなわが国を取り巻く状況を考慮すれば、以下の四つの視点を踏まえることが重要である。
1.自由な経済活動を妨げない税制 -効率的な資源配分と政策の集中-
わが国は高度経済成長の過程で画一化した経済社会が形成され、政策誘導型の施策が重視された。税制においても特定の政策目的実現のため租税特別措置が活用されてきた。しかしながら、21世紀の世界規模での市場経済化、価値観の多様化した経済社会においては、民主導による市場を通じた効率的な資源配分が重視される。税制についても、個人や企業の自由な選択を妨げない、経済活動に中立で歪みのない、努力が報われるものとすることを基本とせねばならない。こうした観点から既存の政策誘導的な税制上の措置の整理・合理化を進めつつ、政策税制は真に有効な分野に集中すべきである。
2.課税の適正化・簡素化 -税制への信頼、社会への参画-
少子・高齢化など様々な構造変化に対応しきれず、結果的に税負担の歪みや不公平感を生じさせている税制上の諸措置を放置した場合には、国民の税制への信頼、社会参画への意欲を失わせ、社会の活力を低下させるおそれがある。社会共通の費用を国民皆が広く公平に分かち合うという観点から、こうした措置の適正化を図っていく必要がある。(P2)
さらに、納税者の税制への信頼確保の観点からは、制度面のみならず執行面での適正化に努めることも重要な課題である。この観点から、納税者にとって分かりやすい簡素な税制を構築する必要もある。簡素な税制は経済活動を行う際の予測可能性を高め、納税コストの低下を通じて、経済社会の活性化に寄与する。
3.安定的な歳入構造の構築 -将来不安の払拭-
持続的な経済社会の活性化を考えるに当たっては、安定的な歳入構造の構築も重要な課題である。わが国の財政は、多額の長期債務残高を抱え(平成14年度末の国・地方の長期債務残高見込み約693兆円、対GDP比約140%)、債務の累増に歯止めがかかっていないなど国・地方を通じて極めて厳しい状況にある。これが将来世代への重荷となっている。さらに、社会保障制度の改革を行っても、少子・高齢化の進展に伴い、今後、年金・医療給付などの増大は避けがたいと見込まれる。他方、これを賄う租税の現状は、約81兆円の国の歳出額に対して約47兆円の税収(平成14年度予算ベース)に留まっており、租税負担率は主要国の中で最低水準である。社会共通の費用を賄うという租税の役割(財源調達機能)は十分に果たせていない。
このような状況は、財政の持続可能性に対する懸念を通じて国民の将来不安を招く一因となっている。こうした不安を払拭し、経済社会の活力を回復していくためには、高齢化等に伴い必要となる公共サービスを支えるに足る安定的な歳入構造の構築が必要である。
今後、持続可能な財政の確立に向けて、21世紀初頭のできるだけ早い時期にプライマリーバランスの均衡化を達成することが求められる。このため、歳出面での徹底した改革を強力に進めることが不可欠であるが、租税負担水準の引上げは不可避である。
現下の経済事情から租税負担率の引上げ自体が当面の課題になり得ないにしても、税制改革の推進に当たってはこの方向性に反しないことが最低限必要である。仮に経済社会の活性化のために真に有効な措置として減税を行う場合であっても、そのことが財政の悪化を招くことのないように、具体的な増税と一体として措置すべきである。
4.地方分権と地方税の充実確保
地方税は、地域における行政サービスの経費を地域住民がその能力と受益に応じて負担し合うものである。このことから、応益性を有し、薄く広く負担を分かち合うものであること、さらに、税収が安定したものであることが望ましい。また、自主的な課税を行いやすい税体系であることも重要である。
一方、地方税の現状は、地方の歳出規模と地方税収入が乖離しているほか、個人、法人とも税負担をしない者の割合が大きく地方
税の応益的性格が損なわれかねない状況になっており、また、特に都道府県の税収は極めて不安定である。(P3)
そのような中、わが国の構造改革の重要な柱として、地方分権を推進し、自立した国・地方関係を確立し、活力と個性のある地域社会を実現していくことが求められている。地方の自律性を高めるためには、市町村合併の推進や地方歳出に対する国の関与の廃止・縮減などによる地方行財政の効率化を前提に、地方公共団体が、受益と負担の対応関係を意識しつつ自らの責任と判断で地域のニーズに応じた行政サービスを実施できるよう自主財源を中心とした歳入基盤を確立することが必要である。
このためには、地方税の現状を望ましい姿に改革することを目指し、税源の偏在性が少なく、税収の安定性を備えた地方税体系を構築するとの観点から、地方税の充実確保を図ることが重要となる。
三 あるべき税制が目指す方向
これまで「広く薄く」の観点から、昭和62・63年の抜本的税制改革以降、消費税の創設・充実を図る一方で、個人所得課税の累進緩和、法人税率の引下げ等を実現してきた。こうした中、上記の視点から今後のあるべき税制を考えると、その改革の主な方向は以下のとおりである。
個人所得課税については、累次の減税の結果、税負担水準が極めて低いものとなっており、基幹税としての機能を回復する必要がある。同時に、経済社会の構造変化に対応するため、諸控除の見直しなどを図る必要がある。
法人課税については、経済のグローバル化が進展する中で、企業の自由な活動を妨げない中立的な税制の構築を基本とすべきである。同時に既存の租税特別措置の大幅な整理・合理化を進めつつ、経済社会の活性化の観点から真に有効な措置を集中的・重点的に措置する必要がある。
消費税については、世代間の公平の確保、経済社会の活力の発揮等の観点から、今後、その役割を高めていく必要がある。制度に対する国民の信頼感を高めるべく適正化を図り、税率水準の見直しを図ることが課題である。
相続税・贈与税については、富の再分配という機能、少子・高齢化や経済のストック化の進展を踏まえ、最高税率を引き下げつつより広い範囲に適切な負担を求めるべきである。また、生前贈与の円滑化の観点から、相続税・贈与税の調整について一体化を図る必要がある。
また、地方税の改革の方向については、地方税の充実確保の一環として、国と地方の役割分担の見直しを踏まえ、国庫補助負担金の整理・合理化や地方交付税の財源保障機能のあり方の見直しと併せて、税源移譲を含め国と地方の税源配分のあり方について根本から見直すべきである。その際、国・地方それぞれの財政事情や個々の自治体に与える影響を考慮に入れる必要があろう。国・地方を通じる税負担の水準について再検討することも必要である。(P4)
地方税の応益性の確保のために、個人住民税における所得割の諸控除や均等割の見直し、法人事業税への外形標準課税の導入、固定資産税の安定的確保、課税自主権の尊重などの対応が考えられる。
こうした措置を着実に実施に移していくことにより、所得・消費・資産等の間でバランスのとれた税体系に配意しつつ、21世紀初頭において国民皆が広く公平に負担を分かち合う観点からあるべき税制を構築し、持続的な経済社会の活性化を実現していくことが課題である。
第二 個別税目の改革
一 個人所得課税
1.個人所得課税の現状と課題 -基幹税としての機能の回復-
わが国の個人所得課税(国税:所得税、地方税:個人住民税)は、累次の減税の結果、主要国との比較において、税負担水準(税収の対国民所得比、個々人の税負担割合等)が極めて低く(「狭く薄い」)、基幹税として本来果たすべき財源調達や所得再分配などの機能を喪失しかねない状況にある。個人所得課税制度の検討においては、こうした「空洞化」の状況を是正し、その基幹税としての機能を回復する必要がある。同時に、少子・高齢化など経済社会の構造変化の中で、税負担に歪みが生じている面があればこれを是正するとともに、根強い「不公平感」にも対処していかなければならない。
あるべき個人所得課税制度を将来にわたり構築する過程においては、税負担の増加も課題にならざるを得ない。その場合、負担増が急激なものにならぬよう、段階的に実施していくことが考えられる。
2.今後の改革の方向
(1) 基本的考え方 -広く公平に負担を分かち合う-
[1] 諸控除
わが国の個人所得課税の「空洞化」を示すものとして、就業者総数に占める非納税者の割合や、課税最低限の高さが指摘できる。課税最低限は一定の基本的な控除の積み上げであり、その水準は納税者と非納税者を分かつメルクマールとなるだけでなく、全ての納税者の課税所得金額を左右する。課税所得は、税率とともに税負担の最も基礎となる要素であり、諸控除のあり方の見直しは、「広く公平に負担を分かち合う」との理念の下、極めて重要な課題である。今後、その見直しを行っていくに際しては、次の3点が重要な視点となろう。
イ.所得税・個人住民税においては、婚姻、育児、老齢等の様々な生活の局面に応じ、各種の控除が措置されている。個々人の事情を斟酌し得ることは、この税目の重要な長所であるが、これまでに社会保障等の生活関連の「インフラ」整備等が進展してきたことも踏まえれば、税制としてはできる限り簡素化・集約化する方向を目指すことが適当である。(P5)
ロ.諸控除の見直しに当たっては、男女共同参画社会の進展や雇用慣行の変化等のライフスタイルの多様化、少子・高齢化の進展といった構造変化に対し、税負担に歪みが生じないような、また、経済社会の中で行われる個々人の自由な選択に介入しないような中立的な税制とすることも重要である。
ハ.高齢化の進展により、公的年金等控除などによる課税ベースの縮小がますます加速する。この「空洞化」を是正するためには、課税ベースを拡大する方向で諸控除のあり方を見直すことが必要である。
[2] 税率構造
税率については、その引下げや刻み数の簡素化により最低・最高税率ともに主要国に比して低い水準にある。さらに、最低税率が適用される所得金額の範囲(ブラケット)が拡大されてきた。所得税について見ると、現在、納税者(民間給与所得者)の約8割が最低税率(10%)の適用のみで済むという主要国の中でも特異な状況となっている。このように見ると、わが国の所得税制は極めて低い水準で事実上「フラット化」した税率構造となっている。
個人住民税については、その負担分任の性格のため、所得税よりも緩やかな累進構造となっている。また、納税義務者の約6割が最低税率(5%)のみの適用となっている。
こうした税率構造の累進緩和は、昭和62・63年の抜本的税制改革の際、有価証券譲渡益を原則課税化するなど課税ベースを拡大す るとともに、勤労意欲や事業意欲等に配慮する観点から実施され、更にその後も景気対策等の観点から減税が行われた結果である。
本来果たすべき財源調達機能や所得再分配機能の発揮の観点から考えれば、これ以上の税率の引下げは適当ではない。むしろ、現在の最低税率のブラケットの幅を縮小することが今後の選択肢として考えられる。(補論参照)
[3] 恒久的な減税
平成11年度に実施され、現在も継続しているいわゆる「恒久的な減税」は、所得税・個人住民税をあわせて約4.1兆円の規模にのぼる。この「恒久的な減税」、とりわけ定率減税(約3.5兆円)は、景気回復に最大限配慮した負担軽減を主眼とした措置であるので、経済情勢を見極めつつ、廃止していく必要があろう。
(2) 諸控除の見直し
[1] 家族に関する控除
イ.わが国の所得税・個人住民税においては、家族構成など個々人の生活上の事情を、納税者の担税力の減殺要因とみて、様々な人的控除等を設け、これを斟酌している。(P6)
これらの控除等については、以下のような問題がある。すなわち、(イ)制度創設時と比べ社会保障や教育等の分野において各種の「インフラ」が整備されてきている、(ロ)個々人の生活上の事情は様々であり、税制で個別に配慮することには自ずと限界があるほか、生活が豊かになり、配慮すべき事情についての国民の価値観も多様化している、(ハ)各種の割増・加算措置が多く追加された結果、本人に係る控除に比べ家族に係る控除の方が大きくなっており、また制度が複雑になっている。
ロ.これらの問題を解決するため、前述の視点を踏まえて検討されるべきであり、具体的には、
・特定扶養控除、老人扶養控除等の様々な割増・加算措置、勤労学生控除や寡婦(夫)控除等の特別な人的控除は、廃止を含め、制度をできるかぎり簡素化すべきと考える。なお、障害者控除のように真に配慮が必要な者についての控除については引き続き存置する。
・配偶者特別控除については、配偶者の収入の増加に応じて世帯主本人の控除額が減少する仕組みがとられていることにより、いわゆるパート労働者の就労調整の原因とされる世帯の税引後手取りの逆転現象は税制上解消されている。しかしながら、配偶者控除の上乗せという仕組みであるため、配偶者については世帯主本人に二つの控除が適用されることとなり、本人や、他の扶養親族に係る配慮とバランスを失することとなっている。また、男女共同参画社会の形成の観点からは、男女の社会における活動の選択に対し中立でないという指摘も多い。これらを踏まえれば、配偶者特別控除については、基本的に制度を廃止することが考えられる。なお、その際、税引後手取りの逆転現象について税制上何らかの配慮は必要であろう。
ハ.このような適正化措置を講じることにより、基本的には家族に関する控除を基礎控除、配偶者控除、扶養控除に簡素化・集約化すべきと考える。
ニ.次に、これらの3控除からなる人的控除の基本構造の更なる見直しについては、論点を明確化するため、あえて次の三つの異なる考え方を理念型として示し、国民の議論に付したい。
なお、考え方2または考え方3のように、配偶者控除や扶養控除を廃止する場合には、基礎控除を拡充することが適当である。
(考え方1-基礎控除のほか、配偶者や扶養親族について、人的控除を設ける)
扶養による担税力の減殺に配慮するという、現行の人的控除の趣旨を踏まえたもの。配偶者と扶養親族との区別をなくし、「家族控除(仮称)」とする案も考え得る。ただし、男女共同参画社会の形成の立場からは、配偶者特別控除のみならず、配偶者控除も廃止すべきとの意見もある。(P7)
(考え方2-基礎控除のほか、児童及び老齢の親族について、人的控除を設ける)
基本的には本人の基礎控除のみしか認めないとの考え方に基づくもの。その上で、成人は自ら就労して所得を稼得し、自らに基礎控除を適用する可能性を持つ一方、児童及び老齢の親族については、その可能性が少ないことから、これを扶養する者の控除として取り込むという趣旨。扶養に伴う担税力の減殺に配慮しないことに加え、親族が一定の年齢に達するだけで本人の税負担が急変してしまうなどの問題がある。
(考え方3-基礎控除のほか、児童について税額控除を設ける)
育児等に対し、税額控除という形で政策的に配慮するもの。扶養に伴う担税力の減殺を全く認めないといった考え方は所得税制に馴染みにくく、また、他の所得控除と税額控除が混在することとなるため制度として複雑になる。いずれにしても、非納税者には政策的配慮が及ばない。
[2] 高齢者に関する控除
現在、高齢者本人に対しては、老年者控除(適用所得要件1,000万円以下)や公的年金等控除の定額控除等の割増が適用されているなど、税負担面で様々な配慮が行われている。一方、高齢社会対策大綱(平成13年12月 閣議決定)においては、「年齢だけで高齢者を別扱いする制度の見直し」が課題とされている。
少子・高齢化が進行していく中、高齢者に関する控除を見直し、高齢者と社会保障制度等を支える現役世代との間の公平確保を図ることは喫緊の課題である。OECDの調査によれば、わが国は社会保障給付に対する課税額の割合が極端に低いと指摘されている。公的年金等収入を課税対象として取り込んだ上で、能力に応じた負担を求めることは、実質的な給付水準の調整を通じて世代間の公平のみならず、高齢者間の公平にも資することになろう。
公的年金等については、拠出段階で社会保険料控除により全額控除されているにもかかわらず、給付段階に公的年金等控除等が設けられている。また、かつて給与所得とみなされ給与所得控除が適用されていたため、新たな控除として公的年金等控除が創設された際に、給与所得控除と趣旨が異なるにもかかわらず基本的に同程度の水準とされた。また、給与所得控除とは別の控除と整理したことから、公的年金等以外に給与を得ている者にとっては、給与所得控除と公的年金等控除が各々適用されることになっている。
これらの観点を踏まえ、老年者控除については、その適用所得要件を見直すなど、真に配慮すべき高齢者に対する控除としての位置づけを明確にすべきである。また、公的年金等控除については、社会保険料控除がある以上、本来不要とも考えられるが、少なくとも世代間の公平を図る観点から、定額控除の割増と老年者控除との関係を整理するなど、大幅に縮減する方向で検討する必要がある。(P8)
他方、社会保険料控除等については、一般に主要国では公的年金の本人拠出の掛金については控除を認めていない。年金制度が多様化し、任意性の強い拠出も見られることなどから、貯蓄課税との均衡を踏まえ、その対象範囲を吟味せねばならない。
[3] 給与・退職金に関する控除
イ. 給与所得控除は、マクロ的にみるとその総額(平成14年度予算ベースで62.8兆円)は、給与総額(222.8兆円)の約3割の水準になっている。これは、給与所得者の必要経費に関する概算的な控除としては説明しきれない高い水準と言える。主要国における勤務費用の概算控除は定額であったり控除限度額が設定されており、これと比較してわが国では控除額の上限がない点も問題である。
当調査会は、従来、給与所得控除の性格について、「勤務費用の概算控除」のほか、被用者特有の事情に配慮した「他の所得との負担調整のための特別控除」という二つの要素を含むものと整理してきた。昨今、被用者は就業者の約8割を占めるようになっており、また、多様な就業形態を選択する者が増加している。このような中で、被用者特有の事情に特に配慮する必要性は低下してきていると考える。
上記のような事情を踏まえると、給与所得控除については、勤務費用の概算控除としての合理的な水準を見極めつつ、縮減を図る方向で検討する必要がある。
なお、一般の被用者の間では、事業経営者は法人形態を利用して税負担の軽減を図り得る、その所得捕捉が十分に行われていないのではないか、といった不公平感が根強い。このため、こうした不公平感をも念頭に置いた上で給与所得控除の縮減を図る必要がある。
また、給与所得者の必要経費との関連では、給与所得控除により概算で勤務費用を控除する方法のほか、特定支出控除制度が設けられているものの、その適用例は未だ僅少である。この制度は、勤務に直接必要な特定の支出を実額で控除することを認める仕組みである。同制度の対象となる特定の支出の範囲は主要国と比較して狭いものではなく、その適用例が僅少なのは、給与所得控除の水準が相当に高いことを表しているとも言える。したがって、給与所得控除を縮減することとなれば、特定支出控除の選択的適用が増加することになろう。あわせて、社会経済情勢の変化を踏まえ、特定支出控除の対象となる勤務費用の範囲について検討することも重要である。
ロ.退職金については、その支給実態が企業によって様々であるにもかかわらず、勤続年数に応じて一律に控除額が算出され、また、勤務年数が短期間でも所得の2分の1のみに課税されるなど制度的に必ずしも合理的とは言えない面がある。特に退職所得控除は、勤続年数20年を境に1年当たりの控除額が40万円から70万円に増える仕組みとなっている。(P9)
近年、退職金の支給形態の変化、中途退職や転職の増加、退職金を支給するかわりに給与を増額する企業の存在など、雇用環境や慣行が変化している。税負担の差異を考慮し、給与支給を少なくする分、退職金を手厚く支給するといった行為が行われている可能性もある。
退職金に対する課税のあり方については、退職金の支給実態を踏まえつつ、税負担の公平を確保するよう見直す必要がある。
[4] 政策的措置としての控除
生損保控除や住宅ローン控除など、特定の政策目的のために控除が設けられており、税制の歪みを助長し、更には空洞化の一要因となっている。
今般、人的控除などの税制の基本構造に関わる部分についても、課税ベース拡大という視点から廃止、縮減の方向を検討する以上、政策的措置としての控除については、より厳しくその妥当性を吟味の上、廃止を含め見直す必要がある。
(3) 個人住民税のあり方
[1] 基本的考え方
個人住民税は、地域社会の費用を住民がその能力に応じ広く負担を分任するという独自の性格(負担分任の性格)を有するとともに、地方公共団体が少子・高齢化に伴い提供する福祉等の対人サービスなどの受益に対する負担として、対応関係が明確に認識できるものであり、また、税収入の面で見れば、税源の偏在性が少なく、税収の安定性を備えていることなどを踏まえ、地方税の基幹税として充実確保を図る必要がある。
[2] 所得割
所得割の所得控除及び課税最低限については、個人住民税の負担分任の性格から所得税に比較してより広い範囲の納税義務者がその負担を分かち合うべきものであるため、所得税より低い水準で設定すべきである。
[3] 均等割
均等割の税率は、これまで数次にわたり改正が行われてきたが、国民所得等の推移と比較すると、なお低い水準にとどまっている。
均等割の税率について、人口段階区分に応じた税率の格差の縮小を含め、その水準の見直しを図る必要がある。
また、生計同一の妻に対する非課税措置については、男女共同参画社会の進展を踏まえ、個人単位課税の観点からそのあり方を見直す必要がある。(P10)
二 法人課税
1.法人税
(1) 法人税の現状と課題 -財源調達機能と経済社会の活性化-
累年にわたる法人税率の引下げと近年の企業収益の悪化等により、法人税収は著しく減少してきており、法人税収の国税収入に占める割合は20%台前半まで低下してきている。
今後、企業活動のグローバル化が進展する中で、法人税の財源調達機能を確保しつつ、経済社会の活性化の視点から法人税をどのように改革するかが課題である。
(2) 今後の改革の方向
[1] 基本的考え方 -歪みの少ない中立的な税制の構築と政策税制の重点化-
法人税は、経済がグローバル化する中で、企業の創意工夫を尊重し、競争力を維持・強化するため、国際的に整合性がとれ、企業活動に対し歪みの少ない中立的な税制であることを基本とすべきである。
このような観点から、平成10年度以降、課税ベースを拡大しつつ、税率を国際水準並みに引き下げるとともに、連結納税制度の導入等の大きな改革を行ってきた。今後とも、経済社会の活性化のために、このような基本方針で法人税の改革を行っていく必要がある。
しかしながら、累次の税率引下げにより、国の法人税率は既に先進国並みの水準となっており、開発途上国の水準を念頭において、これ以上の税率引下げを行うことは適当ではない。
今後の法人税率の水準については、わが国の租税負担全体の水準や税体系全体のあり方との関連、更には先進国との税率のバランスを踏まえて検討していくべきである。
なお、法人事業税に外形標準課税を導入することにより、法人所得課税の実効税率は引き下げられることとなる。
一方、税制の簡素化、課税ベースの拡大の観点から、既存の租税特別措置の整理・合理化を大胆に進めるとともに、経済社会の活性化と構造改革のために、真に有効な政策措置を集中・重点的に講じる必要がある。併せて、事業活動が多様な形態で行われている等の経済社会の新しい動きに対応して、法人税の諸課題に取り組むべきである。
[2] 政策税制の集中・重点化 -明確な国家戦略を前提とした重点的な措置-
わが国企業の競争力強化や産業構造の改革を進めるためには、21世紀をリードする産業・技術を見据えた明確な国家戦略を前提に、規制改革や歳出措置も含めた総合的な政策の重点分野への集中投入が必要である。その一環として税制についても既存の租税特別措置の整理・合理化を大胆に行いつつ、新産業や技術革新の創出等を目指し、政策税制を研究開発分野等真に有効な分野に重点化すべきである。(P11)
[3] 経済社会の新しい動きへの対応
経済活動のグローバル化や金融の自由化等に伴い、様々な投資形態が出現するとともに、企業の事業形態や事業規模も多様化している。また少子・高齢化社会において、NPO法人等の行う民間非営利活動は、活力ある経済社会を構築していく上で、大きな役割を果たしていくことが期待される。
こうした経済社会の新しい動きに対応して、法人の性格も踏まえつつ、次のような諸課題に取り組むべきである。(補論参照)
イ.適正な課税を確保しつつ円滑な企業活動に資する観点から、同族会社の留保金課税、パートナーシップ等の多様な事業体に対する課税について見直すこと。
ロ.これまで課題としてきた収益事業課税、軽減税率等の公益法人等に対する課税のあり方については、公益法人改革の動向を踏まえつつ、NPO法人や中間法人等の新たな法人等に対する課税のあり方も含め、非営利法人課税全体のあり方の中で幅広く見直すこと。
ハ.寄附金税制についても、諸外国の制度や民間非営利活動の実態を踏まえ、認定NPO法人制度等の各制度間の整合性を図りつつ、新たな公益活動の担い手としてのNPO法人等の円滑な活動に資するよう見直すこと。
2.法人事業税 -外形標準課税の導入-
法人事業税への外形標準課税の導入は、税負担の公平性の確保、応益課税としての税の性格の明確化、地方分権を支える基幹税の安定化、経済の活性化・経済構造改革の促進などの重要な意義を有する改革である。約7割の法人が法人事業税を負担していないという「税の空洞化」の状況の是正を図るとともに、法人所得に係る税率の引下げにより、努力した企業が報われる税制を確立し、また、真の地方分権の実現に資するため、早急に導入すべきである。(P12)
〇委員
長文の朗読、ありがとうございました。
これからご議論いただきますが、ちょっと忘れない前に、今日はご意見を欠席委員から文書でいただいておりまして、資料の最後に載せてございますので、お目通しをいずれいただきたいと思ってます。
そこで、以下のやり方でございますが、今から約1時間弱、この前半の部分についてのご議論をいただきたいと思います。文章がそれ自体どうもわかりにくいとか、どうも読み取りにくいという点もございましょう。それから内容的に、これは反対の方向ではないかというご議論もあるでしょう。そういう形で、具体的に論点をご指示いただいて、その理由づけとか何かはごく簡単にご説明ください。今日はなるべく多くの人にご議論いただきたいので、一人の人にあまり時間を提供するわけにいきませんので、あまり演説は今日はしなくて結構ですから、ご自分の、一番ここをこう直してほしいというところをダイレクトに言っていただきたいと思います。
「はじめに」を含めて、「基本的考え方」がまず3分の1ぐらいございまして、その後、個人所得税、法人税でございますが、最初はこの「はじめに」と「基本的考え方」あたりから議論し、時間を見て、この前半の部分全体をカバーしようというふうに持っていきたいと思います。途中退室のご予定の方は、ご遠慮要りませんから、後のほうまで含めて言っていただいても構いません。
それでは、どうぞどなたでも結構ですから、時間のロスでありますから、どんどん言ってください。どうぞ。
〇委員
外形標準課税についてお話をさせていただきます。2ページ、3ページ、それから11ページ、12ページあたりです。読んでいただきましたけれども、ここに書かれている論理は一々ごもっともという意味で、論理的には本当に破綻がなく論理が積み上げられてきていると思いますけれども、最後に、だから外形標準課税はもう当然導入すべきことというふうな論調で書かれておりますが、私は、いろいろな経済団体がたくさんある中で、特に中小企業者を中心としている団体とか、ニュービジネスベンチャーの団体とか、そういうところで頻繁にいろんな話し合いとか、またアンケートリサーチなどをやっております。時間があると、私は地方に行って、いろんなそういう方々との話し合いもさせていただいておりますが、そういうふうに私たちが知っている実態はここでの議論をはるかに超えて深刻なものです。グローバル化の中で、高コスト構造の日本はどんどん空洞化されて……
〇委員
どこか修文のご希望があるのですか。
〇委員
そうですね。地方に行くと、本当に打ちのめされているその実態がここには反映されていないと思います。修文というよりも、全体的にそういう中小企業経営者たちの実感が反映されていない税制というのはなぜかというと、そういう当事者の意見を聞くべき場があまりないのではないのかと思います。
外形標準課税も、1社4万円ぐらいのものと言われておりまして、大したことではないという意見もあるかもしれませんけれども、その金額ではなくて、そういう打ちのめされた現状にさらに追い討ちをかけるような外形標準課税を、タイミング的に今がそのタイミングとはやはり私はどうしても思えません。これは最大の課税ベースは賃金ですが、さらに雇用に大きな打撃を与えることによって、その結果は目に見えていると思いますので、その時期をもっと熟慮する必要があるのではないか。今すぐにとか、早急にということをもし修文と言うならばお考えいただきたいと思います。
〇委員
政治的には2004年中にやれという一応の、国会というか、政治的な判断を下されておりますから、ただ、それをそのまま受けとめることもないかもしれませんが、委員のおっしゃるとおり、中小企業の痛みとか、あるいは景気への配慮というようなことが修文の中で生かされるとすると、12ページあたりですね。ちょっと工夫してみたいと思います。
どうぞ、ほかに。
〇委員
8ページから9ページにかけてですが、年金の「高齢者に対する控除」の中で、公的年金について、給付の場合と保険料拠出の場合と両方にかけるような感じになってまして、現在、両方ともかかってないというところに非常に大きな問題があるわけですが、8ページの後ろから3行目ぐらいのところには、「また、公的年金控除については、社会保険料控除がある以上」云々とこう言っておきながら、9ページでは、社会保険料控除についても、「貯蓄課税との均衡を踏まえ、その対象範囲を吟味せねばならない」と、ここでもかけるという、ちょっとこれは行き過ぎなのではないかなあと。
それから、その9ページの一番上の「一般に主要国では公的年金の本人拠出の掛金については控除を認めていない」と言い切っておられますが、これは、私、事実がはっきりしませんが、ちょっと言い過ぎではないだろうかと。要は言いたいのは、給付のときにかけるのなら拠出のときにはかけないというぐらいの少し斬新的なことでいかないといけないのではないかなということが私の意見でございます。
それとの関連で、10ページの[4]「政策的措置としての控除」で、「生損保控除や住宅ローン控除など」云々とありますが、特にこの中の生損保控除、特に生命保険料控除、個人年金保険料控除については、過去何回もこの調査会で指摘しておりまして、公的年金にそういうものを求める以上は、やはり生損保、特に生命保険料控除や個人年金保険料についてはもうちょっと厳しく、「廃止を含め見直す必要がある」ではなしに、「廃止をすべきである」とか、特にそういう点については、バランスからいって、公的なものに拠出と保険料と両方負担を求めるという、ここはおかしいと思いますけれども、片方にしていただきたいと思いますが、それと同時に、私的なものについてはもうちょっと厳しくいくべきではないかというのが私の意見でございます。
〇委員
ありがとうございました。ちょっとわかりにくい点があるかもしれませんね。いずれにいたしましても、入口、出口ともに何ら税負担を負ってないのはおかしいという建前で、双方、少しそれを加味しようという形で、ちょっと文章がわかりにくくなっているかもしらん。ちょっと工夫します。
それから生損保のところは毎年毎年言っているわけでございまして、これをどういうふうに修文するかもちょっとまた考えさせていただきます。
〇委員
今、法人事業税の問題につきまして、外形標準課税の導入についてご意見があったのですが、私は全く逆の意見でありまして、私も、もう現職は引きましたけれども、現職当時、この問題について納税者といろいろ議論をいたしました。そのとき、当初は反対の意見が非常に多いのですが、よく実態をお話ししますと、納税者の方もよく理解していただきまして、私の経験では、大企業が7割近くも納税をしない、大変長い間納税をしないということについて、むしろ非常に不満が高まっている。ご指摘のような、中小企業に対する配慮ですとか、あるいは課税標準、外形のどういう部分をどうとるかということについては、いろいろ配慮すべき点はあるのかもしれませんが、私は外形標準課税の導入自体はできるだけ早期に行うべきだと、このように考えます。
〇委員
わかりました。基礎問題小委員会の委員の人は、もう俺は言ってあるからいいというのではなくて、今日は総会で、また仕切り直しをしているわけでありますから、どんどんそういう点、両方いろいろあったときには、参加意識に目覚めて大いに発言していただきたいと思います。
どうぞ、ほかに。
〇委員
12ページ、これは総会のほうは私も手を挙げて、基礎小委員会でも何度か申し上げている。個別法人課税の見直しとあわせて、協同組合というものの軽減税率を、本来30%なのに22%になっていると。協同組合の中には日本で6番目の申告所得を出している法人まであると。それが22%の軽減税率でいつまでもいいのですかねと、これは検討する必要があるのではないですかということを何度か申し上げているのですが、本日の段階でも何ら入ってない。これは、入れてない何か理由があるのですか。
〇委員
「等」とかなんかで読めるのではないかということと、おっしゃる協同組合、どこに突っ込んだらいいのですか。具体的に文章の中で。
〇委員
別に、イ、ロ、ハ……。
〇委員
別建てにしようというのですか。
〇委員
ええ。「協同組合の軽減税率についても検討を要する」というぐらいの表現でいかがでしょうか。
〇委員
ちょっと検討させていただきましょう。
〇委員
全く同感です。私も強くそれを求めます。
〇委員
わかりました。
〇委員
ちょっとこの仕組みでありますが、構成の問題ですけれども、4ページに「あるべき税制が目指す方向」ということで、一つの基本的な方向を示すということですが、これは中を見てみますとかなり具体的にはっきりとこう書かれておりまして、それと第二、5ページ以下の「個別税目の改革」で出されている改革の提案です。これを比べてみると、そこの「あるべき税制が目指す方向」に「基本的考え方」のところに載っているものと載っていないものが出てくるのですけれども、ここで何か損が生ずるというおそれはないかなということをちょっと考えておりますが、いかがでしょうか。
〇委員
ありがとうございました。これはたしか前にも委員からご指摘いただきましたが、言うなれば、4ページのところはエクゼクティブサマリーみたいに、全項目についてはこういうことをやるよと基本的姿勢を出して、その後の細かい議論の橋渡しをしているわけで、当然のこと、サマリーというのは全部を100%、フルにはカバーし切れてないかもしれませんけれども、トータルの意味で言っているので、今の点、もう一回精査してみますが、問題はないだろうと思ってます。ただ、どっちかを省いてしまえというようなところまでのご提案ではないですね。
〇委員
「目指す方向」にはないということが、何か比重でもつけているように思われても困るなということです。
〇委員
ちょっとその辺考えてみます。
〇委員
ちょっと根本的な点で申しわけないですが、まず1ページですね。「はじめに」のところですが、これは書き出しがシャウプ税制のことから書き出して、さらに中段以下のところで、「シャウプ税制以来の税制全般にわたる抜本的な改革」ということになってますので、これは国民サイドで読むと、シャウプ税制自身の問題点を何か変えるのかなあと、大きな構造を変えるのかなあと思うのですけれども、その後のほうで出てくるのは、別にシャウプ税制でつくった骨格を変えるわけではない、理念を変えるわけではない、むしろそれ以後にいろいろ妙な歪みが生じてきて、その歪んでしまった点を変えてしまうと、どうもこういうことのようです。それならばそういうふうに、本来の理念、税のあるべき姿として、骨格はそれでずっと継続していくのだけれども、その後、さまざまな歪み、あるいは現状に合わない点が出ているから、そこを直すのだと。むしろ基本のスタンス、そういうほうがわかりやすいのかなあということをまず感じました。
それから2ページですね。この「基本的考え方」のところで、一でいきなり「経済社会の活性化」と出てくるのですけれども、やはり税制の問題はかなりの長期のスタンスで見直すとなると、国民の感じでいえば、何がおかしいかといったら、税で入ってくる分以上にどんどん使っていって借金を重ねている。税のほうが何とかそれに追いつかなければいけないのだけれども、なかなか追いつけないと。そこが一番抜本的な問題なので、だから、そのことはやはり少し書いておかないと、いきなり「経済社会の活性化」では、むしろ減税してくれるのかというような感じにもなります。もう少しありのまま説明したほうがいいのかなと思います。
それから4ページの三「あるべき税制が目指す方向」で、「これまで『広く薄く』の観点から」とあって、広くのほうは公平にということで、それまでの説明でわかるのですけれども、薄くというのがなぜなのか。そこの説明がないので、公平からならば、「広く厚く」だってあり得るわけだし、薄くするというところの理由の説明が要るのではなかろうかと思います。
それからあともう一点だけ。細かい点ですけれども、9ページの中ほど、ちょっと下、「上記のような事情を踏まえると」、その次の段でありますけれども、「なお、一般の被用者の間では」云々とあって、事業経営者についての所得捕捉が十分に行われていないのではないかという。サラリーマンにそういう不公平感が根強いと。それはそのとおりです。「このため、こうした不公平感をも念頭に置いた上で給与所得控除の縮減を図る必要がある」。ここへ飛んでくるのがサラリーマンとしてはどうも納得できないので、捕捉をちゃんとしてないならきっちり捕捉してくれと。国民総背番号制でも何でもいいですけれども、まずそっちが先ではないかという、なんかごまかされているような感じもいたしますので、その点もしっかり書いてほしいなと思いますがね。
〇委員
最後の点からお答えしますが、おっしゃるとおり、なるほどねえ。不公平感がまだあれば、給与所得控除というのは過大に言っているだろうという判断のもとに、少し縮減したいというときに、例えばうんと縮減するのではなくて、中ほどなのかというあたり、不公平感をくみ上げたいということだと思いますが、ちょっとわかりにくいでしょうね。
それから第1点目におっしゃったシャウプ税制との関係でありますが、私は個人的に、シャウプ税制というのはもう半世紀前に導入されて、その後大幅に変えられて、要するに経済社会にマッチしないと思っているのですよ。例えばあのときには消費税もありませんでした。それから所得税も、まさに亭主が働いて奥さんがうちにいるというようなタイプの所得税でありますし、グローバル化でも情報化でもないときにできた税制でありますから、やはりシャウプ自体がもう骨格から揺らいでいると。大いに公平を重んじ、地方自治を重んじたのは結構だけれども、ですから、やはり変えなければいかんだろうと。世紀も変わりましたから。そういう趣旨で、シャウプ税制そのものを変える方向だというのが委員のお考えに対するお答えだと思います。
あとの2つ、もう一つは、2番目の、まさに財政収支バランスの話はそのとおりだろうと思います。3番目は何でしたっけ。
〇委員
薄くの線ね。
〇委員
これはおっしゃるとおり、我々、耳ダコになっているから何となくわかったような。これはもう税率引下げということでありまして、その後に累進税率の緩和とかなんとか書き込んでありますよね。これで受けるのですが、おっしゃるとおり、「広く薄く」を一般的に、最初出てきたとき、おわかりにくいと思いますが、ちょっとこれ、工夫が必要かもしれませんね。
〇委員
その第1点のシャウプ税制のことで、私、全く専門外なのですけれども、いろいろ税目が変わったのもおっしゃるとおりで、経済に合わなくなったのもそのとおりだと思うのですけれども、基本的にあれはやはり自主申告制度で、しかも所得税、直接税を基本にして、公平に広く薄くという理念は、それ自体は今も変える必要は毛頭ないので、だから、そこのところ。もし理念を変えるのか、あるいはそれが現実に合わなくなった点を変えるのか。私は、その現実に合わなくなった点、そこのところをしっかりわかりやすくという。
〇委員
そのとおりですよ。やはり公平・中立・簡素はシャウプにある原理原則だと思いますよ。ただ、今言った、社会構造に合わなくなった点をと思ってます。わかりました。
〇委員
外形標準課税、今さらですけれども、これはもうさんざん今まで議論して、それで変えるべきところはもうすっかり変えてきておるので、ぜひ今回はひとつ早急にそれを外さないでもらいたい。以上です。
〇委員
外形標準課税については僕も全く今の意見と同じです。それから先ほどの委員の意見にも同じです。早急にやるべきだと思います。特に、ちょっと中小企業のことをおっしゃいましたけれども、大企業で払ってないところが多いということが問題なのです、これは。まあいいでしょう、それについては。
それから、農林中金や全共連、あるいは生協、あるいは信組、信金、これは軽減税率適用というのはもうそろそろ要らないのではないかと。そもそも、大体、神戸生協なんてものすごくもうかってますでしょう。あれ、昔、大正時代に賀川豊彦が本当に貧しい貧民窟のために始めた生協運動、そのころやっていたのですよ。そういう時代があった。今はそうではないのです。だから、そういう軽減税率はやはり一律になくすようにしていくべきだという。フラット化とか、幅広く薄くとか、そういうことで。
もう一つ、一番言いたいのは、僕、途中退室なのでちょっと申し上げたいのですが、道路特定財源の記述ですけれども、19ページに入りますけれども、上から2行目、「歳出面を含めた基本的なあり方について検討を行う必要があり、当調査会としては、一般財源化を含め見直しを検討すべきと考える」。これは1行の中に「検討」が2個も入っているのですね。「検討を行う必要があり」、最後の方の結論を少し強くしたほうがいいので、「一般財源化を含めた見直しを図るべきと考える」と、こういうふうに強く言っていただきたい。
なぜかというと、5月31日に自民党の国土交通部会と道路調査会の合同会議がありまして、道路特定財源の維持を求める決議を採択しまして、そのときに古賀さんが、これは読売新聞の記事があるのですが、「一般財源化という考えられない議論をする有識者がいると発言したのも、猪瀬氏を念頭にしたものだ」と書いてあるので、政府税調がそう言っているのだということが大事なので、そんなおかしな話はないので、だから、政府税調はきちんと言ってくれないと。
〇委員
だから、「当調査会としては」とわざわざ入れてあるのですよ、ここに。個人ではなくて、3行目。
〇委員
「検討すべき」なんて緩い表現ではなくて、その前に「検討」があるので、「見直しを図るべきと考える」。
〇委員
「図る」も要らないですよ。
〇委員
「見直すべきだ」でいいのだ。「図る」は要らない。
〇委員
このときにまた、地方の方々、いろいろご意見あろうと思いますが、それは十分に……
〇委員
「検討」が2回も1行にある必要はないのだよ。
〇委員
わかりました。それは文章上おかしいので、ここはもう少し強化せいというご発言ね。委員、また後で言っていただきますから。その場になりましたら。
〇委員
先ほど会長からご紹介いただいたように、文書で出してますので、詳しくはそちらのほうをお目通しいただきたいと思いますが、今回のこれを読ませていただいていますと、例えば個人所得課税、5ページのところですけれども、税負担の増加も、これは将来ですけれども、「課題にならざるを得ない」という明確な書き方をしていたり、消費税は後で詳しく出るのでしょうけれども、4ページの消費税のところを見ますと「その役割を高めていく必要がある」「税率水準の見直しを図ることが課題である」ということで、さらに個人所得のほうでいうと、諸控除についても見直し整理していくと書かれておって、全体として増税の方向がかなり強く出されていると思うのですね。
諸控除のことについてはこれまで何度か発言してきましたので、会長、おわかりのとおり、私たちも今の21世紀の社会にふさわしい形で見直していく必要があるし、そのことを否定するものではありませんので、「配偶者控除」という言葉がまだこの後残っているのだけれども、この配偶者控除という言葉で残すのかどうかということも含めてちょっと検討しなければならんと思います。
基本的な控除だとか扶養控除だとか、幾つか残さなければならんことの控除はあるだろうけれども、全部そのまま残るということについては、私たちもその必要はないのではないかと。ただし、かわりに社会保障という給付できちっとそのことは考えますよと。その社会給付ということについて言うと、表現は極めて弱いというのが1つ申し上げたいのと、それから個人にかかわる所得税だとか消費税のほうは将来的には増税なのだなというのが、これはそのときの少子・高齢化社会の中で社会的な公共サービスをみんなで負担し合うというときに必要なことになってくるだろうと思うのですね。
消費税も、それから個人所得税のほうも含めて、今の税の仕組みで不公平感があるわけですよね。この後のほうをさっと目通させてもらったのですが、例えば資産性所得に対しての、と合わせた、勤労所得と合わせて総合課税ということについて、その言葉がないように思うのですよ。まだ後ろのほうを見てないから、あるかもしれませんけれども。番号制をきちっと引いて、すべての人から公平に徴収される仕組みというものをつくって、そういう改革をきちっとやった上でなお税が足りなかったら、税の負担を求めていくということなのだろうと思うのです。そういう前提のところをきちっと書かないでおいて、何か税の負担のことも課題になるとか、そういう書き方というのは私自身はあまり好きな書き方でない。公平な税制という、すべての人が納める仕組みをきちっとまずつくって、その上で足りない部分については国民の理解を得ながら負担を求めていくというふうに、そういうような書き方をどこかでしていただきたいなと。消費税のところは「適正化を図り」という言葉が入ってますよね。非常に弱いと思うのですけれども、それが一応前提になっているのですけどね。
〇委員
わかりました。税調、長く総合課税の旗を振っておりまして、ここでも決してそれを全面的に否定したわけではなく、「補論」の5ページにも一番下に書いてございますし、納番のことは後ほど20ページに触れています。ただ、ご承知のように、いかに長い間の苦労が報われないかというのは、総合課税自体にいろいろな問題点がまだ内在しているかということでございまして、引き続き検討でございますが、おっしゃる思想は、固まってないからちょっとご不満でしょうけれども、散見されるのは事実なのですよ(笑)。何かそれはもう少し、できるかどうか考えてみます。
〇委員
今の、委員がおっしゃったこととちょっと関連するので、「はじめに」のところですけれども、これは400字の原稿に換算すると3枚ぐらいで、3枚ぐらいで上手に書かないといい原稿料もらえないという感じもあるので(笑)、ここのところ、一生懸命頑張って書いていただきたいと思うのです。というのは、やはりここを読んで、税調がどのスタンスでいるのかなというのがわかるようになっていただきたいと思うと、私の読み方でいうと、私は最後のパラグラフの「シャウプ税制以来の」という、そこから下の部分がやはり税調のあるスタンスだと思うのですね。この中には、例えば、改革するけれども、徹底した歳出削減とか、行政改革の断行とか、そういうことを前提にしなければならない、これが不可欠なのだということがここにありまして、先ほど委員がおっしゃったことでもあるのですけれども、ここの部分、そういう部分をちゃんとやった上での歪みを変えていく税制改正になるのだという。私の目から見ると、ここの部分をもう少しきっちり書けないかなと思って。後ろの多少上のほうをつまんでも(笑)、ここの部分にもう少し何か説得力を持たせられないかなあという感じはするのですよ。せっかく「はじめに」なので。その分、「基本的考え方」というところでわりと丁寧にいろんな書き方をしてらっしゃるので、なんかそういう、原稿料がとっても払ってよかったと思えるような原稿にならないかなあという気がしてます。
〇委員
ちなみに、ここは僕が書いたところですから(笑)、さらに一段と努力します。
〇委員
もうちょっと高く出せばきっとよくなると思います(笑)。
〇委員
二三ありますが、今のところにまず最初にコメントがあるのですけれども、「シャウプ税制以来」というのは半世紀ぶりの本格的な税制改革に挑むのだと、そういう意気込みだろうと思うのですね。さっき会長のご説明は、シャウプ税制以来いろいろなものがくっついてきて、パッチワークでやってきて、ちょっと全体像に合わなくなってきているということだったのですが、それはそうだと思いますけれども、むしろこの半世紀たった税体系全体を見直すというところに力点があって、シャウプ税制そのものの理念かどうかということではないだろうと思うのですよね。ですから、先ほどの委員が言われたことは重要なポイントだなあと思いますね。
私は、むしろ重要なことは、会長、強調されるべきは、高度成長の社会経済が終わって人口が縮小していくと。経済のメガトレンドの根底が変わっていきますね。そこのところでいろいろな不都合が出てきているのだということを1ページ目にやはり書かれたほうがいいのではないかと思うのですね。ですから、シャウプ税制ということは2度出てくるので、私はむしろ半世紀ぶりの大改革なのだと、メガトレンドが変わっているものなのだというふうに書かれたほうが、シャウプ税制そのものがどうのこうのという話では本当はないのではないか。そう言うとちょっとマイナーな感じになってしまうのではないかという感じがするのですね。
それをちょっと提言申し上げたいのと、今委員が言われたこと、私も実は同感で、この行政改革で、要するに税金をむだな使い方をしている仕組みをどう変えるかということについての言及がこの中に、さすがに会長の書かれたこの1行だけなのですよね。このレポートの中で。やはりこれはどこかでパラグラフを1つあけるぐらい強調されたほうがいいだろうと思うのですね。多分2ページ目あたりのところへかかるのかなあと、あるべき税制の構築に向けた視点の前段ぐらいのところにやはり強調されたほうがいいのではないかというのがあります。
それからもう一つ、さっき委員が言われたことについては、私は、委員が一番言いたかったのはおそらく、中小企業が非常に苦しんでいるということをどこかに書き込んでくれということだろうと思うのですね。そうだとすると、むしろこれは2ページの前段あたりのところで書かれるべきではないか。
この2ページの前段の書き方ですけれども、人口が減っていきます、情報化、グローバル化、それで構造変化ですと、こういう書き方なので、もうちょっとこれははっきりしているのですよ。つまり、人口が減っていくというのは、成長しない、税収がない、しかし、高齢化していきますから、社会保障支出、その他で負担増はものすごく増えていく。そのギャップがどうしようもない。だから、それを理解してくれというふうに書き込んだほうがいいわけでね。そんなことはわかっているだろうと言ったのでは普通の人にはわかりにくいので、ぜひそこまで書いていただきたい。そのときに、今これを改革するときには痛みは相当大変だという意味で、委員の言われたのはそこだろうと 思うのです。
ポイントは、さっき外形標準にかかわらしめておっしゃったのですけれども、私は外形標準はほかの三先生方と同じ意見で、ただ1つ足りないのは、12ページの最後のところに「真の地方分権の実現に資するため」。これだと、外形標準課税を入れると真の地方分権の実現というふうにとれるのですけれども、それは何を言っているかというと、税とったら実現するわけではないのですよ。税をとるから、地方自治体が真剣になって、サービスをきちっとして、情報開示して説明するから、その切磋琢磨があるから地方分権になるのであって、税とればというふうにとれてしまいます。この文章だと。だから、税制を確立し、地方自治体もサービスを充実し、情報開示して透明に努力をすると。そういう切磋琢磨の条件になると。ここまでやはり一言書いたほうがいいと思います。
それからもう一つは16ページ。ちょっと恐縮ですが、早く失礼するものですから。16ページの「相続税・贈与税の一体化」のところで、「高齢化社会の到来につれ、生前贈与の社会的要請も根強い」というのが理由なのですよね。生前贈与について。この前までいろんな議論をしてきた中で、これはもっと詳しい論議があったのですけれども、一気に省略されたようですけれども、しかし、この議論は多分、いつも議論を出されますけれども、これはわからないと思いますね。
つまり、なぜ生前贈与の意味があるのかということですが、非常に重要な問題は、金融資産だけの生前贈与だと、これは金持ち優遇と言われてもしようがないと思うのですけれども、住宅の問題なのですよね。それは繰り返し言われているわけですけれども、総会でもう一回言いますと、議事録に残していただきたいのですが、つまり、住宅資産を、相続税のときまで待っていると非常に高齢化してしまう。それを70近くなった人に相続させても意味がない。その住宅市場の流通市場を整備すると、そういうような意味で、資産の有効活用という意味で、これはむしろ多くの人に適用される問題なので、そういう住宅の問題が大きいのだということをやはり明記する必要があると思いますね。
〇委員
15ページの真ん中ぐらいに入れたよ。一体化のところではないけど。「暦年で単一年」の4、5行以下です。「高齢者の保有する資産(金融資産のみならず住宅等の実物資産も含む)が現在の早い時期に次世代に移転するようになれば」云々の話ね。これは委員の顔を思い浮かべて入れたところです。
〇委員
どうも失礼しました。それではここはオーケーです。ということで、むしろ最初の1ページのところと2ページのところね。
〇委員
ただ、メガトレンド云々というのは税制そのものの改革と関係ない話で、社会の変革を言っているわけね。ここでは、要するに税制というのはあるエポックメイキングごとに大きな改革があったのだよ。だから、シャウプに匹敵するものはないと思うし、今やろうなんていうのは、シャウプに比べればチャチなものですよ。だから、これは戦後税制という意味がシャウプという出発点で代表されているのだよね。
〇委員
戦後税制というのも言われたほうがいいですよ、それじゃ。シャウプを2度繰り返されるよりもね。だけど、税制を変えるときは税制は社会経済のメガトレンドと対応するわけですから。
〇委員
それなら、メガトレンドは上のほうに入れますよ。メガトレンドがお好きのようなら。
〇委員
そのほうがいいですよ。
〇委員
また顔を思い浮かべて考えます。
〇委員
頑張ってください。
〇委員
もう今までに発言が出ているところですけれども、やはりこの1ページの歳出削減というところはぜひもう少し書き込んでいただきたいと思います。これについては、今いろいろな政策を考えるときに、納税者の立場でという前提でいろいろ考えたり、費用対効果ということが非常に厳しく出るようになってまいりましたので、この1行の書き方ですと、全部言えているのですけれども、もう少し書き込んでいただきたいとお願いしておきたいと思います。
〇委員
量をもって尊しとしないで、ばさっと質でやったつもりなのですけどね。数行増したほうがいいのかもしれませんね。
〇委員
やはり量ももう少しあったほうがいいと思います。とりあえずこれだけ入れてあるみたいな言い方を絶対するに違いないと私は読みますので。
もう一つは、この参考資料のほうの2ページ、限界税率ブラケット別納税者の国際比較というものですが、これが5ページとか6ページに当たるところだと思うのですが、これが10%しか払わない、税率10%というのが約8割、広く薄くていいじゃんということになっちゃいません? というのは、これのもう一つ重要なのは、この右の端っこのほうの1%未満の人が多分半分ぐらい負担しているはずですよね。税率の、所得、たしか。
〇委員
はい。
〇委員
それも同時に出さないと、偏っているという説明にならないのではないかなという気がします。それだけです。
〇委員
納税者数と税額のほうのこういうのが必要だと。僕もちょっとそういう気がしますね。
〇委員
各論の中で1点、9ページの終わりのほうに「給与・退職金に関する控除」がありまして、退職金について云々とありまして、これは見直しはいいのですけれども、その理由が、これを読みますと、もっぱら不公平とか税金をとる技術的な話になっているように思われるのですけれども、20年を境に、1年当たりの控除額が40万から70万円に増える仕組みになっていると。この部分は私は前から問題ではないかと思っておるのですけれども、つまり、19年でやめるよりも、もう何が何でも20年以上勤めよというようなことを、この終身雇用制というか、長期就労を促進するような国のあり方というのがもう時代に合わないと。つまり、労働力の流動化をこういうのが妨げているのではないかと思われるわけです。
ですから、この理由の中に、見直す必要性の中には、就業意識の変化というか、長く勤めればそれがいいというものではないのだという、変化に合った税制にすべきであるという趣旨を少し書き加えていただきたいなと思います。
〇委員
そのつもりで議論したのに、いつの間にかヴィヴッドには出てないですな。わかりました。
それでは、2回目の発言の人はちょっと待ってください。どうぞ。
〇委員
2つあって、1つは、全体のトーンが、会長のご意向があって、かなり断定的に書いてあって、それの反対意見というのが「補論」か何かで収容するという仕組みになっていて、それでいいのですよ。その中でたった1つだけ、異色のものがこの中に入っているわけだ。7ページの、これが実は重要な、極めて簡単にしか書いてないけれども、7ページのニで、これからいろんな諸控除をどう改正するかということについていろんな意見がありますよ。考え方1、考え方2、考え方3とあるでしょう。これはパブリックコメントを求めるというか、これこそ、まさに女性の関心事の半分以上、これですよ。これは極めて単純に書いてあるわけだ。これでもわかるだろうと言われればわかるかもしれないけれども、まことに単純にしか書いてないのですよ。利害得失がそれぞれあるわけで、これは夏から秋にかけてもう一回地方との対話をやるのだったら、半分ぐらいのテーマはここになるのだよ、実は。だから、ここでは選択求めているのだ。ほかは全部、我々、こう思いますよと言っているわけだよ。これは選択を求めているのですよ。まさにパブリックコメントの最重要テーマの一つになることは間違いないのでね。これ、もうちょっとしっかり書き込んでもらいたい。いいですか。えらい短いことで書いてあって、これだけ読んだのではよくわからないから、これをもうちょっと懇切丁寧に書いてもらって……
〇委員
利害得失なりねらいなりということですか。
〇委員
もうちょっとね。これではよくわからないです。
それから2番目は、さっき、議論があった歳出削減論ね。この総論だったら、だれも反対しないのだ。僕も、総論で書くこと、大賛成。問題は、各論にわたったところでまた紛糾するのですよ。何切るのだという話ですからね。みんなわかっている。
それで提案したいのは、財制審が、もう出したでしょう。うちはあそこと連携しているのだから、そこで、せっかく向こうで提案しているのなら、それがまた論議を呼ぶかもしれないけれども、福祉か、公共事業か、人件費かといろいろあるわけだから、それを幾らか例示しないと、この総論ではほとんど迫力ないのです、これは。ということを入れたほうがいいですよということです。
〇委員
ちょっと引っ張ってきてね。
〇委員
この「補論」に少数意見なり反対意見を収容するということなので、今現在の「補論」というのはホットイシューについてより詳しく説明しているだけで、全く少数意見出てないのです。それはこの後書くということですか。
〇委員
はい、そういうことです。
〇委員
それで、少数意見としてもぜひ収容していただきたいのは6ページ。
〇委員
少数意見でいいのですか。
〇委員
いや。6ページの[3]の「恒久的な減税」、定率減税は経済情勢を見極めつつ廃止していく必要があろうというのは、私、これは反対でございまして、これはまさに恒久的の「的」をとって、恒久減税にすべきであるというふうに考えます。その分は、各種控除の廃止・縮小でその財源は出すというのが私の考えです。
〇委員
だけど、今、頭打ち25万円の20%なんて、やや制度として違和感のある制度だよね。まさに、何というのかなあ、所得税って……
〇委員
それはだからブラケットの組み合わせでやればいいのですよ。率の。
〇委員
どうですかねえ。それでうまくいくかなあ。つまり、あれはアドホックにボーンと入れたわけですよ。簡便的に。それをさらに恒久化しちゃうとね。だったら、同じ財源使うのだったら、それで使って、また税率見直すか、控除見直すか、ブラケット見直すほうがまだ筋がいいと思いますけどね。これは僕は筋張る?と思っているものだから、直し方はいろいろあると思うけれども、このまま残せと言われると、少数意見ですね。よろしいですか。
〇委員
だから、要するに定率ではなくて、ブラケットというか、要するに税率構造のあれの組み直しに当てるべきだと。
〇委員
ちょっと考えてみましょう。
〇委員
ちょっと細かいところで、先ほど、退職金のくだりがございました。9ページです。一番下のほうのロという項目で、退職金に関することが書いてあるわけですが、一二のご意見が出たように記憶しておりますし、私もそういう意見を持っているわけですが、この2行目、「勤務年数が短期間でも所得の2分の1のみに課税されるなど」と、この「など」に入っているかもしれませんが、実は問題なのはもう一つ、何回ももらっているくせにこの2分の1がそのたんびに控除されると。累次の稼得というのを、短期間と同時に、おかしいよというのはそこに1つ入れておいてもいいのではないか。
それから、この退職金の項目の最後のところ、「退職金に対する課税のあり方については、退職金の支給実態を踏まえつつ」というところに1つ、私は利用実態というのを入れてもらいたい。幾ら支給しているかということと同時に、例えばやめるときに会社から借りている住宅ローン全部返さなければいかんとか、結構、この退職金というものがサラリーマン生活に一気にスパッといかないだけに根を張っちゃっているものなので、入れられたら、支給実態と同時に利用実態という言葉も何か入れてほしいなという、これはそう強い要望ではありません。
〇委員
そうですか。利用実態ね。
〇委員
2点あります。
まず1点目は、先ほどおっしゃられた7ページの選択案の説明の仕方ですけれども、後段のハのところに、基本的に家族に関する控除を基礎控除、配偶者控除、扶養控除、この3つに集約化するという前提が書いてあって、これをもとに基礎控除をつくりますというふうに書いてあるわけだから、これを書くのであれば、考え方1、これは基礎控除とその他の配偶者、扶養控除というこの2つのグループに集約する。それから考え方2というのは、ここにきちっと配偶者控除は廃止、基礎控除と児童及び老齢を一つのグループにして人的控除。考え方の3は、配偶者控除は廃止、それから老齢・親族、これはどっちでもいいのですけれども、配偶者控除は廃止、基礎控除と児童控除、児童については税額控除案というふうに、配偶者控除のことが考え方の3のところにきちっと頭に入れていただかないと、この3つの基本構造という言い方がきちっと対応しないので……。
〇委員
対応という意味ではそうなっているんじゃないの。
〇委員
なっているのですけれども、わからない、これは。全くわからない。お願いします。
〇委員
わかりました。
〇委員
2番目。特定財源のところですが、18ページです。この特定財源の書き方がもろに当局の方がご苦労なさった跡がよくわかるのですが、まず、道路財源という形のものが受益と負担、いわゆる受益者的な税金であるかどうかという点からいえば、道路整備財源であったわけで、この言い方、若干疑問です。
〇委員
場所はどこ?
〇委員
18ページの2の(1)「特定の公的サービスからの受益と負担との間に密接な対応関係が認められ」というところですが、道路財源の場合には、もともと道路整備を促進するという側面が強かったわけだから、受益と負担というグルーピングはむしろ後からくっつけた論理であって、道路整備の政策的目的のための税源ではなかったのかという。高速道路はわかるのですけれども、こちらのほうはむしろスピードアップするための税源なので、これはちょっと拡大解釈し過ぎではないかと。
〇委員
どうなのかなあ。ただ払ってもらいたいという意味で目的税化したほうがね。それは、目的税化というのは受益と負担ですよ、やはり。ちょっとそれはもともとの法律等々見てみましょう。
〇委員
はい。その次のパラグラフは、一般財源化の方向を検討したいと書いてありまして、要するに、この特定目的財源の目的そのものはほぼ達成されたというようなニュアンスが書いてあって、その次は「いずれにしても」なのですね。「いずれにしても」というふうにひっくり返っちゃって、今度は環境税的な側面から見れば、税負担全体は高くないから引き下げることは適当でないとはっきり書いてしまっているというところが、要するに論理のすりかえというか、最初の特定目的化はもうおかしいですねと言って、次に、今度、環境税的な意味ならわかりますよというふうに、途中でパラグラフが変わるときに、むしろこういうふうに環境目的、環境保全という目的税だったらおかしくないというふうに言いかえてしまうというのが、これはわかるのですけれども、おかしいです。
〇委員
いいんじゃない。環境税はそういうものだよ。
〇委員
一般なのか環境税なのか。だから、ご苦労なさった跡がよくわかっていかんともしがたいのですが、論理的にはおかしい。
〇委員
委員、先にお帰りになるということなので、後から言うと卑怯になるので先に申し上げたい。大体委員とは同じ意見のことが多いのですけれども、道路特定財源に関するところで、気になっているのは、ことし決めなければいけない暫定税率の問題がありますよね。そのことを考えると、今の道路整備というのはこれで本当に行き渡ったのかということになると、都市も地方もやや疑問があるし、それから環状道路のつくり方も中途半端に終わっているのが実態ですよね。どこかでそれをやらなければいけない。だから、税のあり方としては、私は、目的税的なものよりは一般財源のほうが望ましいと思うのですけどね。その考え方は賛成なのですが、この時点であまり道路財源を一般財源化しろと言い切ってしまって大丈夫かなあと。つまり、極めて歳出の問題なので、その辺どうなのかなあとちょっと疑問に思っているものですから、その点ひとつ、もうちょっとやわらかくしておいたほうが無難かなという。
それから外形標準に関しては、これは何度も申し上げてますが、これはやはり国も地方もそうですが、こういう非常に歪んだ状態、しかも、国、地方ともに危機的な状態ですよね。こういうときに、非常に大きな歪みがある制度をそのままにしておくのはおかしいということで、これはやはり急ぐべきであると。外形標準ね。というふうに思います。
それから所得税に関しては、配偶者控除の見直しは当然するわけですが、そうかといって全部廃止というわけにもいきませんので、やはり人的控除というようなとらえ方で少し、先ほどお話がありましたけれども、そういう組みかえを考えたらどうかと思います。
〇委員
ぼつぼつ幕引きたいのですけれども、この前半でぜひ発言というのは……。
〇委員
そういう一般論ではないのだよね。つまり、前にもちょっと申し上げたけれども、こういう特定財源で金が余っているとろくな使い方をしないということが問題なので、道路の整備は重要なのですよ。だけど、この前もちょっと説明しましたけれども、100メートルごとにオーバーブリッジがあるのですよ。わかりますか。あの高速道路の上に、この間もちょっと第二東名を見てきたのですけれども、橋が1個かかるわけですよ。そうすると、100メートル行ったらまたそこに橋がかかるわけ。それで、そこの橋のところには道がないのだよ。道がないのに橋がかかっている。
これは多分、その農家のおっさんが、おれ、向こうへ渡りたいとか言ったのだろうね。あれ1個、7~8億円かかるのですよ。幅広いから。本当だったらそこに特養が1個ずつできていくのだよ。そういうふうにお金を使っているから、だから、そういう特定財源というものはだめだよと1回言わないとわからないんだって。そういうことが。
〇委員
まだいらっしゃるんでしょう。後半。
〇委員
おります。
〇委員
これについて論戦に参加したい人がいっぱいいますから、またインバイトします。
〇委員
道路の問題、いいのですか。
〇委員
まだ待ってください。後半でやりますから。
〇委員
目的税との関連もあるのですけれども、一般的に受益と負担との関係を考えました場合に、まず、社会保険料みたいに直接受益と負担が結びつくものがありますね。それから一般の税のように、ご議論があるように、税というのは本来ひもつきの歳出であってはならないという原則はあるのですが、その中間に目的税というのがあるわけですね。
私は、納税者の立場から考えました場合に、自分の納めた税金がどこに使われるのかということがわからないまま、白紙委任で総量が足りないから税率を上げますよというほうがいいのか、いや、少子・高齢化で、こういうことになって財源が不足するのですと。したがって、消費税でも目的税化すべきだというような議論もあるわけですね。私は納税者心理からすると、自分たちが納めた税金はどこへどういう形で使われているのかということが明らかになるほうが理解しやすい。
そういった意味で、私は、具体的に言いますと、2ページに「課税の適正化・簡素化」が書いてありますが、下から3行目のところ、「社会共通の費用を国民皆が広く公平に分かち合うという観点から、こうした措置の適正化を図っていく必要がある」と書いてありますが、その間のところに「負担と受益の対応を明確化することを含め」という、説明責任を明確にすべきだということを書くべきなのではないのかと。どこへ書くべきか、ちょっといろいろあちこち見たのですが、私、ここが一番いいとは思いませんけれども、そういう考え方は少なくとも目指すべき方向の中に、視点の中に入れるべきではないかと、こういうことをぜひお願いしたいと思います。
〇委員
委員、そうなると、特定財源にみんななってしまうから、これは地方の、福祉とか、地方公共サービスにあるいい側面だけれども、これを全面的には適用できませんよね。だって、そもそも税金というのは受益と負担を特定できない。つまり、マーケットに売れないから一般的に広く薄くみんなに負担してもらってコストを負担するわけだから、はなから受益がわかっていれば、何も税金使わないでマーケットで売ればいいわけですからね。だから、どこか書き込みたいと思いますが、ここは総論的なところですからね。何か工夫、社会保障のところとか、何かではあるかと思いますが、ちょっと考えさせてください。それでよろしゅうございますか。
〇委員
はい。
〇委員
圧倒的なマイノリティの立場からもう一言つけ加えさせていただきます。
〇委員
声が大きいほうにとか、数の論理だとおっしゃいましたけれども……
〇委員
いやいや、そういうことじゃない。ロジックの問題で言いますから。
〇委員
はい。それは政府税調における現象でありまして、必ずしも国民全体の中で圧倒的なマイノリティ、数の論理でしているかというと、そうでもないのではないか。必ずしも国民のバランスを代表していない、この委員構成に問題があると思っております。そういうことは税の3原則、税の公正ということにも多少問題があるのではないかと思っております。
それから外形標準課税、国民がそういう痛みを受けるのならば、引き受けるとするならば、これは最初から何回も出していることですけれども、本当に歳出、それから行革、国民が納得するレベルで行革は進んだのかということがやはり抜けているのではないか。それから委員もおっしゃいましたけれども、公共サービスがもっと徹底的に見直されて、しかる後に外形標準課税だと思います。必ずしもそれをみんなが反対しているのではなくて、お互いにやろうというその2つの視点がまだ徹底していないというところに最大の問題があると思っておりますので、ぜひそういう国民の声も、声なき声をお聞きいただきたいと思います。そういう人たちの声はなかなか代弁する人が、この中では本当に私以外にはどなたもおられないと思いますので、こういう場に乗ってこないというところに本当に問題があるのではないでしょうかと思っております。ぜひ行革、公共サービスの見直し、お願いしたいと思います。
〇委員
「国民の納得するレベル」というのはいい文句だと思います。それから対話集会等々を通じて一応声なき声もと思ってます。といって、この税調がわずか30人ぐらいのところで全国民の代表選手というわけにもいきませんからね。人十倍ぐらい声を出して言っていただければ十人力になると思いますが、わかりました。その辺は。
じゃ委員、最後にしたいけど。
〇委員
1点だけ。15ページの贈与税の括弧の中の文章ですけれども、これは金融資産が主体になっていると思いますけれども、こういう書き方をすると、金融資産を生前贈与するというのは、他の委員なんか、よくおっしゃってますけれども、金持ち優遇という面があり得ると思うのですね。住宅資産というのは別に大衆の問題ですが、だから、これ、もっとシンプルに書きかえたほうがいいのではないか。つまり、高齢者の保有する資産、とりわけ住宅等が現在よりというふうに書いてしまうと、これは金持ち優遇ではない議論になりますのでね。
〇委員
ただ、これは相続税と贈与税で通算しますから、別に金持ち優遇でははねのけられるのですよ。生前贈与しても、あと相続でちゃんと整理してもらうという発想ですからね。
〇委員
一体化でしょう。
〇委員
一体化だから、いいのですよ、別にいつどうしようが。時価で?関係なく、後で生涯でパッと整理しますから。今回は金持ち優遇を避けるために一体化やるのだから、一元化やるのだから、大丈夫だよ。
〇委員
それの資産の有効活用というのですけれども、どちらかというと、中層階級以下の人たちがそれでは、毎日の生活をしているわけですけれども、生前贈与をやりますかね。
〇委員
わかりません。多分やるでしょう。今、110万より、生涯、資産を生前にやろうが死んだときやろうがという選択がニュートラルになれば、それは、年寄りで親子関係でもよければね。
〇委員
よければね(笑)。そこが問題だと思うのですよ。
〇委員
それはここで議論できないよ。よければ、悪ければ、両方。いい場合、悪い場合なんて、ケースできないじゃない。
〇委員
結構です、結構です。議論としては、資産、とりわけ住宅をという提案だけしておきます。以上です。
〇委員
わかりました。じゃ第1ラウンド、終わりにしましょう。それで、あと……
〇委員
1点だけ確認させてください。何かを主張するのでなくて、この「補論」のほうに少数意見が載っています。それで、皆さん、たくさんしゃべりたいものだから、僕も一部しかしゃべってないのでね。この文章で出したことと、今日出されたことと、違う部分が、例えば所得税の控除の問題だとかという違いがあるのですが、そういうのは「補論」のほうに載せていただけるのでしょうか。それとも、口頭で言ったものしか載らないのでしょうか。
〇委員
文章を入れたら切りないのですよ、これ。どんどん後ろに持っていかれると。それで、出した人と出してない人の不公平もありますからね。それは口頭でおっしゃってください。それは大いに「主な意見」で採用したいと思いますけれども。そうしませんと、これだけ膨大なものを、全部おれの言った意見入れてくれというわけにいかないでしょう、それはやっぱり。
短く言っていただいて、これで終わりにします。
〇委員
私、ちょっと失礼しますので、18ページの(2)のたばこ税のところですね。たばこ税の、「今後、税率引上げの是非を検討していく」ということですが、是なのか非なのか、何をやれというのかよくわからないので、ここはちょっと腰が引けてますので、ここは愛煙家が大分おられますのであれですけれども、私はやはり「今後、税率引上げについて検討していく」というふうな修文をぜひお願いしたいと思います。
〇委員
わかりました。それでは、まだまだと思いますが、第2ラウンドは冒頭から、前半のほうもおっしゃっていただいてもいいです。
それでは、ちょっと5分ほど休みましょう。42~43分に戻ってきてください。
(暫時休憩)
〇委員
それでは、5時まででありますから1時間15分しかありませんが、とりあえず消費税以下を読み上げていただいて、また同じようなペースでやっていきたいと思います。
事務局、申しわけないけれども、また朗読をお願いします。
〇事務局
三 消費税
1.消費税の現状と課題 -安定的な基幹税目とするために-
消費税は、昭和63年の制度創設以来、その税収は安定的に推移し、国税収入の約2割を占めるなどわが国税制の基幹的な税目の一つとして定着してきた。しかし、その一方で、国民の間には、現行制度に対する不信感が依然として根強く残っていることも事実である。
今後、少子・高齢化、グローバル化の一層の進展に伴って、消費税の役割がますます重要となっていく中で、制度の信頼感を高めるとともに、その税率水準の見直しを図ることが大きな課題となっている。しばしば指摘される消費税の所得に対する逆進性の問題については、消費税だけでなく、税制全体、更には、歳出面を含めた財政全体で判断することが必要である。(P12)
2.今後の改革の方向
(1) 基本的考え方 -国民の信頼性の向上を図り消費税の役割を高める必要性-
消費税は、少子・高齢化社会において、勤労世代に過度の負担を求めず、経済活動に対し中立的である等の性格から、世代間の公平の確保、経済社会の活力の発揮、安定的な歳入構造の確保のため極めて重要な税である。
社会保障支出の増大や財政構造改革を展望すれば、今後、税率を引き上げ、消費税の役割を高めていく必要がある。このためには、徹底した行財政改革を進めるとともに、消費税制度に対する国民の信頼性、制度の透明性を向上させるための措置を講じる必要がある。
このような観点から、まずは、以下に述べるような中小事業者に対する特例制度や申告納付回数の見直しを行うとともに、消費税の滞納について、引き続きその未然防止、整理促進に取り組むべきである。また、消費者の便宜のため、価格の総額表示(含む税額明記)が促進されるよう関係機関において適切に対応していく必要がある。
(2) 信頼性、透明性の向上に向けた改革 -中小事業者に対する特例措置の抜本的な改革等-
[1] 中小事業者に対する特例措置
中小事業者に対する特例措置は、中小事業者の事務負担に配慮し、事務の簡素化を図るために設けられている措置であるが、制度創設から既に13年が経過しており、制度全体に対する国民の信頼性、制度の透明性を向上させる観点から、早急に抜本的な改革に取り組むべきである。
イ.事業者免税点制度
事業者免税点の水準(課税売上高が3,000万円以下)は、制度創設以来据え置かれ、依然として6割強の事業者が免税事業者となっている。このため、消費者の支払った消費税相当額が国庫に入っていないのではないかとの疑念を呼び、これが消費税に対する国民の不信の大きな背景になっていると考えられる。
したがって、個人事業者と法人の相対的な事務処理能力の差異も念頭におきつつ、現行の免税点制度を大幅に縮小すべきである。
現行の高い免税点水準の下では、事業者間取引を行う免税事業者が多数存在することを踏まえ、免税事業者からの仕入税額控除が認められている。その結果、消費税制度の透明性が低くなっているという問題については、後述するインボイス制度の採用ではなく、事業者免税点の水準を大幅に縮減することで対応が可能である。(P13)
ロ.簡易課税制度
簡易課税制度は、これまでも見直しが行われてきており、その適用割合は低下してきている。しかしながら、消費税制度が定着し事業者が納税事務に習熟してきたと考えられること、また事務処理能力のある中小事業者が納税額の損得を計算した上で適用している実態が多数存在していると指摘されていることから、制度の廃止を含めた抜本的見直しを行うべきである。
[2] 申告納付制度
消費税の申告納付制度については、これまでも、消費税の預り金的性格に鑑み、いわゆる運用益問題の解消に資する観点から改正が行われてきた。このような消費税の性格を考慮すれば、更に申告納付の回数を増やす方向で検討すべきである。申告納付回数について検討を行う場合には、納税者の事務負担や税務行政コスト、更には消費税の滞納問題との関係にも留意しつつ、幅広い観点から検討を行う必要がある。
[3] 総額表示方式(消費者に対する価格表示のあり方)
消費者に対し消費税を含めた価格の総額を表示すること(総額表示方式)は、消費者の便宜を図る観点から積極的に検討されるべきである。ヨーロッパ諸国と同様、今後、消費者保護行政等の中で早急に具体化が図られるよう、関係機関において適切に対応していく必要がある。
[4] インボイス制度
消費税制度の信頼性を向上させるためには、仕入税額控除の際に税額を明記した請求書等の保存を求めるいわゆる「インボイス方式」の採用が検討課題となる。しかしながら、現行消費税制度における請求書等保存方式は、単一税率や狭い非課税範囲の下では、適切な仕入税額控除に支障がない。将来、複数税率が採用される場合に、軽減税率の対象となる範囲なども踏まえ、その採用について具体的な検討を行うべきである。
(3) 税率構造等
消費税の税率構造は、制度の簡素化、経済活動に対する中立性確保の観点から極力単一税率が望ましい。仮に、将来、消費税率の水準がヨーロッパ諸国並みである二桁税率となった場合には、所得に対する逆進性を緩和する観点から、食料品等に対する軽減税率の採用が検討課題となる。その場合においても、事業者の事務負担をはじめとする社会経済的コスト等に配慮する観点から、その範囲は極力限定する必要がある。
また、非課税範囲の拡大やゼロ税率の採用については、消費一般に対して広く公平に負担を求めるという消費税の特徴を大きく損なうなどの問題があることから適当でない。(P14)
(4) 地方消費税
地方消費税は、平成6年の税制改革において、地方分権の推進、地域福祉の充実等のため創設され、平成9年度から実施されて以来、清算を行うことにより税収の偏在性が少なく、安定的な基幹税目の一つとして大きな役割を果たしている。少子・高齢化等の進展に伴い、今後、福祉・教育等の幅広い行政需要を賄う税として、地方消費税の充実確保を図っていく必要がある。
四 資産課税等
1.相続税・贈与税
(1) 改革の基本的考え方 -経済社会の構造変化への対応と負担の適正化-
相続課税を取り巻く環境は、次のように大きく変わってきている。
[1] 経済のストック化の進展により、今後、相続による資産移転の増加が見込まれること
[2] 社会保障の充実により老後扶養が公的に負担される以上、相続時に残された個人資産については、その一部を社会へ還元する必要があると考えられること
[3] 高齢化の進展により、相続による財産取得が相続人のライフサイクルのより後半にシフトしていく結果、相続財産が相続人の経済的基盤を形成する意味合いが相対的に薄れつつあることかかる状況を踏まえ、従来より広い範囲に適切な税負担を求める必要がある。
その際、負担の適正化の観点から最高税率については引き下げる一方、累進は現行程度の水準を維持することが適当である。
暦年で単一年の課税であるわが国の贈与税においては、相続税の課税回避を防止する観点から税負担は比較的高い水準に設定されている。高齢化の進展に伴って相続による次世代への資産移転の時期がより後半にシフトしていることから、資産移転の時期の選択に対する中立性を確保することが重要となってきている。高齢者の保有する資産(金融資産のみならず住宅等の実物資産も含む)が現在より早い時期に次世代に移転するようになれば、その有効活用を通じて経済社会の活性化に資するといった点も期待されよう。このような観点から、相続税・贈与税の調整のあり方(生前贈与の円滑化)を検討すべきである。
事業承継関連の特例措置については、中小企業の事業の円滑な承継に貢献している点は認められるが、相続後の事業継続に対する過大なインセンティブは、新規の創業や新たな事業展開とのバランスを失わせることを踏まえ、そのあり方を見直していく必要がある。
その際、高齢化の進展に伴い、相続人が被相続人と共に事業を行っていた場合の共に働いた期間も長期化していることから、生前における円滑な事業の移転を図ることや、相続までの財産形成への貢献に着目することが重要である。(P15)
(2) 相続税の改革の方向性
[1] 課税ベース
基礎控除については、「基本的考え方」及び地価の下落等を踏まえ、「広く薄く」の観点から引下げの方向で検討すべきである。なお贈与税の基礎控除については、相続税と贈与税の調整の検討において、相続税の基礎控除との関係を考慮し見直す必要がある。
死亡保険金・死亡退職金の非課税措置については、公的な社会保障制度の充実等を踏まえ、資産選択に対する中立性、簡素化などの観点から、廃止・縮減の方向で考えるべきである。
小規模宅地等の課税の特例をはじめとした事業承継関連の特例措置については、長期にわたる地価の低下等を踏まえ、将来的には事業用資産全体に適用される特例措置への改組も含め、そのあり方について検討する必要がある。
[2] 税率構造
最高税率については、個人所得課税の最高税率(50%)との較差が大きく、諸外国の例に比しても相当高いことに鑑み、引き下げることが適当である。
累進構造については、「基本的考え方」や、最高税率の引下げで高資産家の税負担は相当程度軽減され得ること等を勘案し、現行程度の累進を維持すべきである。
税率の刻み数に関しては、相続税は臨時・偶発的に発生するものであるため、遺産額により税負担を大きく変動させるのは適当でなく、遺産額に応じたある程度滑らかな負担の変化を確保することが望ましい。
(3) 贈与税の改革の方向性
[1] 相続税・贈与税の一体化
高齢化社会の到来につれ、生前贈与の社会的要請も根強い。かかる観点から、相続税・贈与税の累積課税化も含め、両者を一体化する方向で検討する。(補論参照)
累積課税化の方法は、一生累積課税方式と一定期間累積課税方式の二つに大別されるが、いずれの方式も、納税者、執行当局の双方に財産の長期管理を要求する仕組みである。したがって適正な執行を確保する上では、その導入に当たり執行当局のより一層の機械化の推進、立証責任の転換や除斥期間・時効の延長等の検討、納税者番号制度の導入など、長期にわたる財産移転の記録、確認、名寄せ・突合等が可能となる環境整備が必要不可欠となる。
それまでは、二つの累積課税方式のいずれについても完全な形で実施することはできない。生前贈与の必要性の程度、国民の財産保有のあり方等を踏まえ、今後、累積課税のための仕組みをどのように整備していくのかを検討すべきであろう。これにあわせ、次世代への資産移転の時期の選択に対して中立性を重視する観点等から贈与税を見直すことの必要性を踏まえれば、暫定的な措置の導入を検討すべきである。(P16)
[2] 第三者に対する贈与の取扱い
最終的に相続関係のない第三者に対する贈与の課税のあり方が問題となっている。これに関しては、贈与の実態を見極めた上、相続税の課税回避防止という機能をも踏まえ、所得課税へ移行させることも考え得る。
2.固定資産税
(1) 固定資産税の現状と課題
固定資産税は、どの市町村にも広く存在する固定資産を課税客体としており、税源の偏りも小さく市町村税としてふさわしい基幹税目であり、今後も本税の安定的な確保が重要である。
(2) 今後の改革の方向性
地価公示価格の7割を目途とした評価水準については、全国的な評価の均衡化、適正化の観点からこれを維持することが適当である。
負担水準の均衡化については平成9年度以降ある程度進展しつつあるが、依然として地域や土地によって相当のばらつきが残っており、今後、評価替えの動向、負担水準の状況や市町村財政の状況等を踏まえ、負担の均衡化・適正化を更に一層促進する措置を採る必要がある。
3.土地税制・住宅税制のあり方
土地税制については、地価の変動にあわせ見直しが図られてきた。バブル期の対応として課税強化された部分は、既に廃止されるなどそれ以前の水準まで戻っている。
現在、地価については、二極化・個別化が進展し、バブル崩壊に伴う調整過程という見方のみならず、地域経済の動向や産業構造の変化の観点からの分析が必要となっている。こうした構造的な変化を踏まえ、土地基本法の基本理念の位置付けも含め、土地政策のあり方全般の見直しが求められている。
土地税制については、土地政策の見直しとあわせ、地価の推移、土地の譲渡益に対する課税ベースが大きく浸食されている現状をも踏まえ、検討すべきである。
住宅に関しては、政策的な見地から、特に持家の取得・保有・譲渡の各段階で税制上種々の軽減措置がとられてきた。しかしながら、持家比率が一定の水準に達した上、少子・高齢化の進展とともに住宅需要が量的に減少していかざるを得ない。その一方で、内容面でも借家や住替え等需要が多様化する中で、持家取得促進を中心とした住宅政策のあり方が問われている。住宅に関する税制については、住宅を巡るこうした環境の変化を踏まえ、住宅ローン控除等従来の軽減措置のあり方を検討すべきである。(P17)
4.金融税制のあり方
金融資産からの所得に対する課税については、経済のストック化(金融資産の累増)が進展する一方、少子・高齢化に伴い勤労性所得の相対的減少が見込まれており、今後より重要性を高めることとなる。こうした中、金融商品の多様化・複雑化、市場の国際化・電子化、「足の速さ」といった取引の特徴及び事業体(集団投資スキーム)レベルにおける課税との関連に配慮しつつ、金融商品間の中立性や金融分野以外の所得との公平性の確保、更に、制度の簡素化等、現行制度の見直しを検討していく必要がある。なお、その際、納税者番号制度をはじめとする所得捕捉体制の整備があわせて検討されるべきである。
わが国金融を巡っては、そのあり方として「貯蓄から投資への切り替え」が指向されている。また、「二元的所得税」の考え方や金融税制の「一元化」の是非については、資産性所得と勤労性所得に対する課税のバランス等について検討を要する。(補論参照)
五 その他
1.酒税、たばこ税
酒類、たばこについては、特殊なし好品として、諸外国と同様、従来から他の物品に比べ高い税負担を求めてきており、わが国の税体系において重要な役割を果たしてきている。わが国の厳しい財政事情を踏まえれば、今後とも、酒類、たばこの生産・消費の動向等を勘案しつつ、適切な税負担水準の確保に努めていく必要がある。
(1) 酒税
酒税については、税制の中立性、公平性を確保する観点から、現行の酒類の区分(10種類)の簡素化を図り、酒類間の税負担格差を縮小する方向で見直していく。とりわけ「同種・同等のものには同様の負担」という消費課税の基本的考え方に適合していないものについては、早急に負担の均衡を図るべきである。
(2) たばこ税
欧米主要国においては、近年、たばこの税負担が引き上げられてきている。
たばこの税負担のあり方については、小売価格に占める税負担割合の状況、消費動向、諸外国の動向、財政状況などを総合的に勘案し、今後、税率引上げの是非を検討していく。
2.特定財源等と環境問題への対応
(1) 特定財源等とエネルギー関係諸税等
特定の公的サービスからの受益と負担との間に密接な対応関係が認められ、そのサービスの財源を制度的に確保する必要がある場合には、特定財源等が用いられてきている。特定財源等は、このような財源確保に有効な仕組みではあるが、一方では資源の適正な配分を歪め、財政の硬直化を招くおそれもあり、常にその妥当性を吟味していく必要がある。(P18)
道路特定財源等については、制度創設の経緯を踏まえ、現在においても特定財源という形で道路事業のための財源を引き続き確保していく必要があるのか、財政を硬直化させる要因となっていないか疑問視されている。歳出面を含めた基本的なあり方について検討を行う必要があり、当調査会としては、一般財源化を含めた見直しを検討すべきと考える。
いずれにしても、道路特定財源等を含むエネルギー関係諸税等については、わが国の自動車に係る税負担全体が国際的にみても高くない水準にあり、自動車の社会的コストや環境の保全の観点に鑑みれば、その税負担水準を引き下げることは適当ではない。また、現行の自動車関係諸税は税目が多く複雑であるとの指摘もあり、自動車に係る税体系のあり方は今後の検討課題である。
(2) 環境問題への対応
京都議定書の目標達成に向けて、この3月に見直しが行われた地球温暖化対策推進大綱においては、「税・課徴金等の経済的手法については、他の手法との比較を行いながら、様々な場で引き続き総合的に検討する」こととされている。環境問題に対する税制面での対応については、国民に広く負担を求めることになる問題だけに、国民の理解と協力が得られることが不可欠である。国・地方の環境施策全体の中での税制の具体的な位置付けを踏まえ、汚染者負担の原則(PPP)に立って幅広い観点から検討していく必要がある。その際、既存のエネルギー関係諸税等との関係についても検討する必要がある。
3.国際課税
グローバル化、情報化・電子化の進展に伴い、複雑多様化した企業活動の実態把握は一層困難となっている。また各国の税制の相違や間隙を利用する租税裁定取引により意図的に課税所得の縮減を図る動きも顕在化している。国際課税では、所得の国外流出は実質的に課税権の喪失を意味することから、今後は国境を越える活動についてわが国の課税権を十分に確保していくために、制度の見直しを進めるべきである。国際課税の適正化は、内外の経済活動に対する課税の中立性・公平性を確保する観点からも実行せねばならない。
具体的には、国外からの進出形態の多様化に対応し、多様な事業体や外国法人の支店に対する課税のあり方を見直すべきである。一方、わが国企業の国外活動の拡大を見据えると、今後外国子会社合算税制や外国税額控除制度の適正化を検討していく必要がある。また、グローバル化に対応し適正な執行を確保する観点からは、租税条約等に基づく外国当局との情報交換を活用し国外情報へのアクセスの充実を図ることが重要である。その前提として、条約相手国の要請に基づき執行当局が情報を収集し相手国に提供できるように、法制面を含む制度整備を行うべきである。(補論参照)
さらに、グローバルな性格を有する電子商取引については、一国で対応することは困難である。かかる点、OECD等における議論を通じて国際的に調和のとれた対応を検討し、事業者の予測可能性を高めるとともに、適正な課税を確保していく必要がある。(P19)
4.課税自主権の尊重
課税自主権を活用し、地方自ら財源確保を図ることは、地方分権の
観点から望ましい。
ただし、その場合には、公平・中立などの税の原則により納税義務
者や課税標準などについて十分な検討が行われることが望ましく、住民に正面から向き合い自らの責任と負担で施策を進める姿勢が求められる。
六 納税者の信頼確保に向けた基盤整備
あるべき税制を構築する観点から、税制全般にわたる改革に取り組んでいくに当たっては、税制及び税務行政に対する納税者の信頼を確保していくことが不可欠である。このため、納税者が円滑に申告・納税できるような環境を積極的に整備するとともに、適正・公平な課税を実現できるような税務執行体制を整備していく必要がある。こうした考え方に立って、制度、執行の両面において、以下のような取組みを推進していくことが重要である。
1.納税者番号制度
近年における経済取引の国際化や情報化・電子化の急速な進展に見られるように、納税者番号制度を取り巻く環境は大きく変化しており、こうした状況を受けて、国民の意識についても変化の兆しがうかがわれる。
納税者番号制度については、制度の意義やその具体的活用の仕方など様々な論点が残されているが、その導入に向け、具体的な成案を得るべく早急に検討を開始する。
2.源泉徴収・年末調整
所得税は、納税者自らが税額を確定して自主的に申告・納付する申告納税制度を基本としている。給与等に係る税額の納付については、源泉徴収及び年末調整が実施されている。年末調整では政策的な控除をも含めて税額の精算が行われるため、一般の給与所得者は基本的に確定申告を要しない。このような現状については、納税者意識の向上の観点から問題であるとの指摘がある。
源泉徴収及び年末調整は、適正かつ確実な課税の担保、納税者の手続きの簡便化等の観点から制度としては今後とも必要であろう。しかしながら、給与所得者が自ら確定申告を行うことは、納税者意識の向上の観点から見れば重要であり、これを拡充する方策について引き続き検討する必要がある。
3.公示制度
現在、所得税、法人税、相続税等について設けられている公示制度は、主として第三者による監視という牽制的効果を狙うものとして、昭和25年に導入された。所得税については昭和58年に高額納税者への顕彰の趣旨も兼ねて所得公示方式から税額公示方式に変更されている。同制度については、所期の目的外に利用されている面があるなど個人のプライバシーへの配慮の観点からは問題なしとしない。他方、高額納税者を社会的に評価する側面もあろう。また、制度変更により、国民一般から見て申告納税制度の信頼度が低下することは好ましくない。公示制度の存廃については、これに代わる制度を含め、今日的視点から検討する必要があろう。(P20)
4.その他
(1) 国税庁においては、納税環境の整備を図るとともに、適正・公平な税務行政を推進する観点から、分かりやすい広報の推進、納税相談への迅速・的確な対応、調査・指導の的確な実施等の目標を設定し、その実績を評価するなど、納税者志向の税務行政に努めてきている。今後とも、こうした取組みを推進していくべきである。
(2) 情報化・電子化を活用して納税者利便の向上等を図る観点から、現在の書面による手続に加え、インターネットを通じて自宅等に居ながら税務手続を可能とする電子申告や電子納税について、セキュリティの確保等に留意しつつ、円滑な導入を図ることが必要である。
(3) 適正・公平な課税を実現する環境整備の一環として、国際化、情報化など経済社会の構造変化に対応し、国民の理解と協力を得て、資料情報制度の拡充を図っていくことが重要である。(P21)
〇委員
ありがとうございました。
それでは、今から55分ほど時間がありますので、後半、消費税以下、議論いたしましょう。比較的短いので、どこからどこまでと言わず、お気づきの点からぼんぼん出していただいたほうが時間の節約だと思いますから、どうぞページを言って、修文のご希望の箇所、あるいは案文などをおっしゃっていただければと思います。
〇委員
さっきの道路特定財源、19ページのところですね。委員が「一般財源化を含めた見直しを検討すべき」というのを「一般財源化を検討すべき」というふうに直せと言っていたのではないかと思うのですけれども、もしそうだったら、僕はこれは絶対反対で、それだったら、この一般財源化そのものを削ってもらいたいということを言いたくなってしまうのですよね。だから、この一般財源化を含めた見直しを検討すべきというあたりがまあぎりぎりのところかなと私は思います。
〇委員
原案賛成、原案支持ですね。
〇委員
原案ならいいです。だから、さっきみたいに直されたのではちょっと……。
〇委員
相続税ですけれども、贈与税との関係で、むしろ生前贈与で資産を運用するとこういうメリットがあるということで、そういう方向で書かれているわけですけれども、ちょっとアメリカの文献を見ましたところが、この累積課税というのがほとんど働いていないという記述がありまして、それで非常に心配になりまして、結局、この累積課税という仕組みは、いわゆる遺産の段階、相続をする段階になったり、遺産が分散してなかったので、さかのぼって課税するという、非常に消極的な観点からとらえられることもあるわけですね。
そうしますと、ここでは非常にいい面だけが書かれているわけですが、一生累積、一定期間累積とありますけれども、それと裏腹をなしている、散逸してしまうと、家族間に税金が低いときを利用して課税の回避が行われると、やはりそういう面がどうしても出てまいりますので、これは「補論」のところでも構いませんので、そこには十分留意をしていただきたいと思っております。お願いいたします。
それからもう一つは、先ほどの最後の18ページに、この間から問題になっております酒税、たばこ税、この記述を見ますと、この2つの消費税はもともと性格がちょっと変わっておりまして、1つには財政物資であるということと、もう一つは、いわゆる国民の健康の問題があるというようなことで、非常に矛盾することをわざとやっているわけですけれども、あえて課税することで消費を抑制すると、そういう面がありますので、ここには、WHOなどで指摘されているようなこと、何も書かれておりませんけれども、やはり国民の健康とは切っても切れない関係にあるものであるということ、その点から課税というものも考えていいのではないかと。そういうくだりをちょっとつけていただいてはどうだろうかと思います。なかなか会長の前でお話ししにくいのですけれども(笑)、簡単にいえば、増税してもやむを得ないなというように私は考えております。
〇委員
健康指向は酒税、たばこ、両方にひっかけるのですか。片方だけですか。
〇委員
現実にはやはりたばこではないでしょうか。
〇委員
全く同じテーマですが、16ページの「相続税・贈与税の一体化」のところですね。この相続税・贈与税の一体化というのは、経済活性化の観点から非常に重要な意義があると私は思います。同時に、世の中、知恵者が多いですから、これはやはり悪用しようという人たちも必ず出てきますね。そういう意味では、租税回避行為に対する対抗策というのをやはり検討する必要があると思うのですね。相当長期間タックスプランニングができますし、節税の工夫もできやすいと。そういう問題はちょっと注意しておく必要があると思います。
それから全く同じたばこの問題でありますが、これは財政物資でありますから、財政当局がその気になれば引き上げられると思うのですね。ですから、これは委員の意見と違うのですけれども、「税率引上げの是非を検討していく」と、この表現で私はいいと思います。
それと健康上の問題でありますが、これはJT自身、リスクのある商品というふうに断って販売してますね。さらにそこを追い討ちをかけるのかどうかという問題が出てくると思います。この健康の問題、非常に国民がみんな関心あるのですが、ちょっと調べてみましたところ、財政制度審議会のたばこ事業部会というのがあるのですね。これが喫煙と健康に関する問題、先ほど触れられましたWTOのたばこ対策枠組条約案を含めて検討しているのですね。これはまだ検討最中ということですので、政府税調としてはやはり財政審の審議結果を注目する必要があるだろうと思います。
〇委員
どうぞ、お待たせしました。
〇委員
すみません。さっきから道路の問題が出ていたわけでございますが、18ページから19ページにかけてでございますが、これを見て、または今までの発言からいたしまして、どう見ても一般財源化の方向が強く出てきて、バランスをかけているのではないかというような気がしたわけでございます。
さっき、都会の問題が出た。また、地方はまだまだ道路にかけてはやはり整備がおくれているわけで、道路特定財源が必要でございます。受益者が負担する合理的な制度であると思っているわけですが、再度申し上げたいのですが、私の町にちょうど高速道路がございます。それをおりて実は国道に入るのですが、西のほうはバイパスができております。私の町から3町ができてなくて、その東のほうはできているわけですが、そういうことで、道路に対してはニーズがものすごく高いわけでございますが、こういうところが全国には大分あるのではないかと思います。
そういうことを考えますと、国民として道路整備については期待感が高いわけで、その上に暫定の税率までかけているわけでございます。持ってきたのですが、昨年の答申等においても本当に配慮していただきまして、道路特定財源については、「依然として道路整備の必要性はあり、これを維持すべきであるとの意見もあった」ということで書いていただき、本当に感謝していたわけでございますが、今度見てみると、もう一般財源化というのが強調されてしまっているのではないかと思います。
何とかその点で、石会長、5月24日に、昨年の年末に書いた程度でよろしいかというようなことだったわけでございますが、ぜひ、地方の立場として、この特定財源、ここでは、見ていたらもう少数意見になっておりますが、やはり1行入れていただきたいと思います。これは本文に入れていただきたいと思います。お願いします。
〇委員
金融税制、17ページから18ページにかけてです。やはり金融税制の一元化ということを、基本的に議論の中にいろいろあったのではないかと思うのです。それで、二元的所得税論云々ということもさることながら、その以前に、ここにも書いてありますけれども、金融商品そのものが大変難しい状態になっている中で、やはり金融税制というものを一元化するということは最低これからの中で必要なことだと思います。
それともう一つ、酒税、たばこ税ですけれども、消費課税ということで、ここに酒とたばこが出てくるわけですが、酒はこういうことで簡素化ということですが、たばこにつきましても、私、たばこを吸うから言うわけでもないのですが、ここでたばこだけ税率引上げというふうに決めつけるのはいかがなものだろうかと。当然のことながら、いろんな議論があった上でするというのならともかくですが、あまり議論もないまま、酒、たばこだけ税を上げちゃえというのも、ちょっと乱暴過ぎるのかなという気もします。
〇委員
たばこは基礎小でかなり議論あったもので、そこで載っけたということです。ご意見、伺っておきます。
〇委員
先ほどの委員と全く同意見です。ぜひ14年度の税制改正答申と同じく、道路整備の必要性と同時に、特定財源の合理性、こうしたものを本文に盛り込んでいただきたいと思ってます。
〇委員
わかりました。1行でいいのですか。
〇委員
小委員会などでも、私、休んだときしたのかもしれませんが、あまり議論にならない、1つ目は質問ですけれども、19ページですね。エネルギー関係諸税、上のほうにありますが、「我が国の自動車に係る税負担全体が国際的に見ても高くない水準にあり」で、負担水準を引き下げることは適当でないと、こう書いてありますが、これは質問ですけれども、自動車工業会が去年の秋のモーターショーでくれた資料によると、日本の自動車の税負担というのは、ここに比較があるのですけれども、排気量1,800CC、車体価格180万円の車で9年間使用した場合の比較ということで、日本はその9年間に70万円、ドイツが39万円、イギリスが54万、アメリカは18万、フランスが45万と日本が非常に高くなっているのですけれども、この辺のデータの読み方の違いというのはどういうことなのかなあというのが1点ですね。
それからもう一つ、私は車のユーザーとして、やはり実感としては日本の車にかかる税金は非常に高いと思うのですね。これはもう何十年も前の、自動車はぜいたく品と見られた時代に、いろいろ寄り集まった税金が安易にかけられたというか、それがいまだに続いている。しかし、今、地方では自動車というのは全くの生活必需品であることを考えると、やはりこの辺は「引き下げることは適当ではない」と言い切るべきでなく、特に今後、例えば消費税を上げるようなときには、この本体の価格が大きいから非常に負担も大きくなる。そういうことも踏まえた場合、「引き下げることは適当ではない」と言い切るのはいかがなものかと。引下げも検討する必要があるのではないかと考えます。
以上が自動車の問題。
それから、ついでにたばこについてですが、これは小委員会で少し議論がありましたけれども、健康のために上げるというようなのは、大人の自己責任で自分の健康を管理すべきであって、税金が関与すべき問題ではないと思います。全体の税負担、財政事情からいろんなものを上げなければいけないというときであれば、これはまあ仕方がないと思いますが、酒とかたばこという安易なところにすぐその負担を求めるのは、「財政規律」という言葉がありますけれども、「税制規律」という言葉かどうか知りませんが、安易な引上げは税制規律にもとるのではないかという気がします。
とりあえず以上です。
〇委員
今のにお答えするような資料、ありますか。
〇事務局
お手元にお配りしております資料のうちの国税関係資料、参考6という下のほうに入っております分厚い資料の20ページでございます。
今、委員のおっしゃられました、モーターショーの際に配られた資料というのは私ども存じておりません。今直ちにはちょっと存じておりませんけれども、ここで下にございますとおり、2,000CCクラスの場合で6年間使った場合の金額の比較をさせていただいております。これが、私ども、税制調査会のほうに提出させていただいております資料を毎年毎年リニューアルさせていただいているものでございます。
〇委員
これは燃料課税が入ってないではないですか。どうですか。燃料課税のところを除くと、この上に乗っかっているのは確かに今高そうですな。
〇委員
そうです。これは燃料課税を入れるとこうなってますが、自動車工業会のは燃料は入ってません。自動車ですから。私は自動車のことを言っておるわけです。
〇委員
そういう比較でしょう、きっと。
〇委員
何カ所か、質問も含めてです。初めに12ページの消費税のところの一番下の行ですが、前回発言しまして、平成6年の答申の中で消費税の逆進性の問題が、消費税だけを考えるのではなくて、ほかのものは累進税率になっているし、社会保障も適当に充実してきたので、消費税の逆進性だけを取り出してはいけないという文章が答申の中にあるのですけれども、今ほかの税率がみんな累進になってきているときにどうやって説明するのかという発言をいたしました。
ここに出てきたのが、「消費税だけでなく、税制全体、さらには歳出面を含めた財政全体で判断する」、こういう言い方、これは何を意味しているのかがわからないのです、まず。それで、平成7年の書き方と比べて、あの書き方はまだ納得できると思うのですけれども、それから変わっていることについて全然説明になっていないと思います。
それから次は、15ページの「資産課税等」の1の「相続税・贈与税」の(1)の[2]ですけれども、「社会保障の充実により老後扶養が公的に負担される以上」と言い切ってますけれども、確かに一部負担はありますけれども、むしろ介護保険などによりまして、これからは共助、公助、自助ということがよく言われておりますときに、こう言い切ることはどうなのかなという、これは疑問です。
それから次が16ページの相続税とそれから贈与税の一体化の問題について、私はこの累積課税というのが、ぱっと読んだ範囲で、これで一切問題が解決すると言えるのかなあという疑問、よくわかりませんので、持っておりまして、やはり累積課税というのはなかなかそう、ここに書いてあるようにきれいにばかりいくものじゃないよというお話を伺いますと、前から言っておりますような、別に、金持ち優遇という言い方はしませんけれども、世の中が今以上に勝ち組がますます勝っていくということに対する疑問は消えておりませんということです。
それから19ページの環境税、「環境問題への対応」の一番下の文章なのですが、「既存のエネルギー関係諸税等との関係についても」と言ってますけれども、これは「との関係」というのは要らないのではないでしょうか。「関係諸税についても検討する必要がある」と思うのです。
それから20ページの「納税者番号制度」のところですが、これはやはりみんなが関心を非常に持ってきたということは確かに言えますけれども、個人情報の保護、あるいはプライバシーの問題が、私が読み落としているのでしょうか、書いてないのではないかなと思いまして、特に今、個人情報について非常に世の中厳しい議論が行き交っておりますときに、個人情報の問題、プライバシーの問題、一切触れないのはいかがかなということです。
それと、今の5分の休憩時間の間に、この前の特定扶養控除や何かのところ、ちょっと読み直してみたのですけれども、確かにちょっとわかりにくいので、せっかく国民の議論に付したいということを言っていらっしゃいますから、もうちょっと読んで、すぐにわかりやすくしていただきたいと、重ねてお願いしておきたいと思います。
以上です。
〇委員
委員のご意見、修文で少し考えさせていただきたいと思います。
〇委員
金融税制につきまして、特に18ページが主体でございますが、金融税制、税のかけ方、あるいは税率、非常に複雑多岐なところがあって、確かに、ここにありますように、簡素化を図る、あるいは商品間での中立性を図る、そういう意味ではよくわかりますし、そのために、例えば金融税所得の一元化とか、あるいは二元的所得税とか、そんな話が出ておりますが、同時に、ここにも書かれておりますように、我が国の金融をめぐっては、貯蓄から投資への切り替えというのがまさに必要とされている。特にこういう時代、経済の活力を引き出すためにも、資本市場の活性化という形で強くそういうことが認識されているわけでございまして、我々、金融機関の間でも、やはり間接金融そのものが非常に行き詰まっているという問題もございます。
そういう中で、この「補論」も一緒に読めばもう少しわかるわけですが、ここの総論だけですと、もうちょっと方向性もはっきり出したほうがいいのではないかなと。例えば簡素化とか中立化、そういったことはもちろん必要であるけれども、やはり活力を出すための資本市場の育成、そのための例えば投資リスク商品への投資ですか、そういったものを促進とか、もう少しそういう面を強調して出していったほうがいいのではないか、そんなふうにちょっと感じる次第でございます。
〇委員
ありがとうございました。一工夫できるかもしれない。どうぞ。
〇委員
18ページ、ある意味では表現の問題だろうと思いますけれども、酒、たばこは財政物資、だから適切な税負担水準の確保が必要だと。そういうことで総論として書かれておる。その中での内訳として、酒税については、中身の見直し、制度の見直しでございますが、たばこについては、もっぱら負担水準、税率の引上げの是非を検討していくという、ここは総論としての適切な税負担水準の確保、適正でも適切でもいいと思いますけれども、そういうことで、総論と各論のところをあわせておいていただくのがどうか。それによって、先ほどの委員のご提案の、腰が引けているということもなくなりますし、また税負担水準、引き続き見直していく、3年前やったばかり、そういった意味においては会長のおっしゃる趣旨も十分それで理解、確保されるのではないかと思うわけでございます。
次が20ページでございますが、「源泉徴収・年末調整」、できるだけ給与所得者が確定申告を行うということは大切だというのが下から7行目にございますけれども、これはぜひともとは思いますけれども、一方、税務行政のほうとしては、これによって非常に仕事が増えて立ち行かなくなるという心配をしょっちゅうするわけでございます。そういった意味においては、納税者意識の向上の観点から見れば重要でありと。その次ぐらいに、税務行政の事務量等にも配慮しつつとか、そういうふうに安心してもらって、執行サイドからも乗り気になってもらえるようなことが考えられないかということでございます。
それから1つ、もとへ戻って恐縮ですけれども、12ページ、先ほど議論がございました協同組合の問題でございますが、確かにこれは一つの問題でございますが、63年の抜本改正のときに、消費生活協同組合につきましては、そこで一応の配慮というか、処理がなされたりしておって、税務当局としてもこの点は従来から頭にある話ですので、イ、ロ、ハにさらに1つ、大きな項目を出してということでなくても、先ほど会長のお話では、「等」の中に入っているという読み方もあるわけでございますけれども、そこを協同組合のあり方とか、「等」で読めればもうそれでいいのですけれども、ロの中に、そこに若干触れるというあたりの表現の仕方もあるのではないかと思うわけでございます。
以上でございます。
〇委員
私も、「等」というのは嫌いですから、極力はっきりした文字を突っ込むのがいいと思います。委員にちょっと質問ですが、18ページのたばこのところですが、「引上げ」でなくて、「適正な水準」というほうがいいというご意見ですね。
〇委員
適正な水準の確保を検討していくとか、努めていくとか、これは従来からそうして、またはそういう表現のもとで……
〇委員
でも、適切な負担と税率引上げは根本的に違うのではないですか、やはり。響き方が。
〇委員
読むほうは、それはもうおおむね同じように受け取って。
〇委員
あちこちしますけれども、19ページで、やはり一般財源化すると、あたかも一般財源化すれば道路つくらないというのを前提にしているような感じを受けるのですが、必要な道路はつくるという話でしょうから、この一般財源化というのはすべきであると、入れたほうがいいと思います。
あと、その下の環境問題ですけれども、京都議定書、結構このごろ凝っているのですけれども、結構大変な話で、いずれこれは税金でも何かやらなければいけないというわりには、この書き方が全然せっぱ詰まってないとか人ごとという感じがあるので、もうちょっと我が事のように表現したほうがよろしいのではないでしょうかと思います。
あとは住宅税制と相続・贈与の一本化の話ですが、15とか17ページあたりですが、一本化というか、この相続・贈与のほうは要するに高齢者から、普通、現役世代に早く資産を移せと。その中心は大体住宅だぞということを前提にしているわけですけれども、この17ページの「土地・住宅税制のあり方」の最後のほうは、そういう持ち家制度というか、住宅のあり方についてそもそも問題があるぞというふうに書いてあるわけですよね。そこは整合性とれる、別にとる必要もないのですが、ちょっとあわせたほうがいいような気はします。
というのは、僕、そもそもこの相続・贈与税の改正によって住宅を年寄りから若いほうに移すということ自体、反対ですから、特にそこ、妙に感ずるのですが、住宅というものは税制だけで動くものではないということもどこかに書いてくださいというのを前に言ったのですけれども、全然入ってないこともあり、必ず、これやると詐欺師みたいなのが出てきて、全国のおじいさん、おばあさんが被害にあうかもしれないので、それに対する罪悪感も事前に持ってますから、その辺をちょっと慎重に書いてもらいたいなと思います。
あと2つ、消費税の逆進性でいつも思うのですけれども、金持ちは高いものを買うから、いっぱい消費税払うから逆進性になってないのではないかなというのは通じない論なのですかね。圧倒的少数意見なのかもしれないけれども、そういうのを思ったりします。
あと最後にもう一つ、圧倒的少数意見だと思いますけれども、6ページの恒久的減税の廃止。「経済情勢を見極めつつ」というのは不要だと思います。即廃止すべきだと思うのですが、というのは、恒久的減税というのは意外と減税されている人は実感がなくて、わからないで、ただ引いてあるということですので、税率上げるわけでもないから、気がつかないうちにとるのにはいいのではないかということです。
あともう一つ、「はじめに」というのをもう一回読み直してみると、いいのですけれども、さっきも言ってましたけれども、歳出削減のほうは具体的に何と何だというのが3つ4つないと迫力出ないというのと同時に、会長の思い入れの税制を、例えば消費税上げるとか、租特はみんなやめてしまうとか、外形入れる、どれでもいいですけれども、3つぐらい例示してもらったほうが新聞記者もわかりやすいのではないかなと思って(笑)。一般論過ぎるので、やはり具体的税の項目を3つか4つ挙げるのがインパクトあっていいのではないかと思います。
〇委員
初めは一般論から徐々にやるのですよ。でも、規制も一つの方法かもしれません。いろんなご意見いただきまして、ありがとうございました。極力生かす方向で考えますが、全部委員のを生かすわけにはいかないかもしれない。
〇委員
先ほどの協同組合のことですが、なぜそこまで慎重になるのか。つまり、この基本方針全文を見て、企業にせよ、個人にせよ、押しなべて幅広く負担の痛みをのんでもらうという全体のトーンの中で、この協同組合の軽減税率というのはそんな軽い問題ではない。また、税収面からいっても、かなりの税収確保という面からいっても効能がある。私は、イ、ロ、ハの、もう一つこれに並べた項目を立ててもいいのではないか。この問題は小委員会あたりでももう一回、委員のご意見をもっと詳しく聞きたいと思います。
それで、今度の基本方針を読んで、要するに税金とる話ばかりで、こっちからとる、あっちからとるという、そういうトーンですよ、これはだれが読んだって。それはそれなりの理由があるし、合理性もあるし、それなりの趣旨もあるということですが、1つだけ、一番最後のところ、これは、私、小委員会のほうでも指摘したのですが、「その他」の中で、公示制度、あるいは納税環境というところで、公示制度云々で意見を申し上げたのは、高額納税者というのを社会的にもっと感謝しようやと。こういうご時世にあって、これだけ所得税だけで1,000万円も払ってくれるような人に対して。そういう社会的な気持ちがあってもいいのではないかと。とりわけ、何でもかんでもみんな税金とるのだという話の中で、1つぐらい、そういう温かいところがあってもいいのではないか。
私は具体的には、公示されるような高額納税者には特別のメダルかなんかつくって、それを税務署長が自宅までお届けに上がれと。そのぐらいあってもいいだろうというようなことを申し上げたのですが、小委員会でも、そういう顕彰制度の拡充というのをどこか一言入れておいたらどうですかと言ったら、全然入ってなくて。
〇委員
そのために、「社会的に評価される側面がある」と、ちょっとやわらかにしたのです。
〇委員
それは違う。これだけでこれが評価されているという、それは公示制度の見方の問題なのであって、そうじゃないと思っている人がいる。だからこんな問題が起きているわけなので、これでもう評価終わりだよということとはまたちょっと違うのではないでしょうか。
〇委員
はい。「顕彰」の2文字で随分議論したのですよ。代理たちと。どうも「顕彰」という字まで使うのはどうかなという意見があって、ちょっとまた基礎問題でここはもみましょう。
初めての人を優遇しましょう。じゃどうぞ。
〇委員
環境税、環境問題、19ページで、基礎小委員会でどういう議論がなされているのかは承知しておりませんけれども、今の段階においては、この程度のふわっとした書き方のほうがいいのではないかと。先ほどの委員はもうちょっと思い入れを入れて書いたほうがいいというご意見ですが、むしろこの程度がいいのではないかと思います。
ただ、そういう観点からちょっと気になりますのは、汚染者負担の原則(PPP)というのが書いてありますけれども、いずれにしろ、議論する場合には、これが頭の中に大きな位置を占めることは当然でありますけれども、負担者を、汚染者負担の原則でもし環境税だと書かれてしまうことになりますと、これはおそらく日本の産業界にとって、特定の産業にとって大変な国際競争力の問題が出てくるというようなこともありますので、現段階ではあえて、この「汚染者負担の原則」という文字を入れておく必要があるのかどうか、必要がないのではないかと思います。
それからもう一つ、先ほどどなたかがおっしゃいましたけれども、既存のエネルギー関係諸税との関係ですが、この関係の意味が非常にあると思いますので、これはぜひ残しておいたほうがいいと思います。
それからもう一つ、消費税のインボイスでありますが、私はいずれにしましても、いずれ消費税は相当大幅に上げざるを得ないし、そういう中で、これは単一のほうがいいに決まってますけれども、おそらく複数税率というようなことにもなる可能性もあると。そういった段階におきましては、どうしてもこのインボイスが必要になってくるということでもありますし、いずれにしても、諸外国の例を見ましても、このインボイスが非常に大きな役割を果たしていると思います。
14ページに「インボイス制度」とありますが、この書き方自体はこれでいいのですが、1ページ前の13ページに、中小企業者の特例措置、「事業者免税点制度」の一番最後のところですが、「後述するインボイス制度の採用ではなく、事業者免税点の水準を」云々と書いてありますけれども、この事業者免税点の水準を大幅に縮減することで対応が可能であるというのは結構だと思いますけれども、ここでわざわざ「インボイス制度の採用ではなく」ということを書く必要があるのかどうか。できればこれは削っていただいたほうがいいと思います。
〇委員
今の点は基礎小で議論があって、ある人が、ヨーロッパは非常に低いと。これはインボイスがあるから、やはり課税業者にならないと、要するに仕入控除してもらえないから、とりあえずインボイスひっかけて発言されたものですからそこに書きましたけれども、もう一度ちょっとその辺のことを検討はしてみたいと思います。
それからPPPはずっと前から入っているのですよ、もう。歴代。だから、今変えると、何でPPPを放棄するかと言われるし、これは1970何年にOECDが言ってますから、これは……
〇委員
わかりました。じゃあえてこだわりません。
〇委員
あと何人ぐらい発言のご希望ございますか。5人ぐらいだな。じゃこっちからいきますか。どうぞ。
〇委員
道路特定財源の問題ですけれども、知事会の代表がいらっしゃらないので、ちょっと私、代弁するような形で申し上げたいと思うのですが、この道路財源につきましては、道路を建設することについてのいろいろ議論がありますけれども、今そのことについて厳しい住民からの批判も出ておりますので、コスト・ベネフィットについてきっちりした評価するシステムで今始まっているわけですね。ベネフィットがあるということは、結局、道路を建設する、あるいは改良するそのことによって、利用者が受益があると、その分に応じた負担をしてもらいましょうという考え方で財源を考えていこうということになってますので、かねてからこの道路財源の場合には、納税者のほうからすると、流通コストがものすごい高コストに、外国に比べたらなっているという批判がありまして、これを下げろという意見があるわけですが、もし一般財源化するということになると、他の財源に使うというぐらいなら減税すべきだという意見のほうが圧倒的に私は強くなるのではないかと、このようなことを思います。
それと、従来の建設サイドの意見は、建設費の財源を確保するために道路財源が必要だ必要だという意見が非常に強くて、過去の借金で建設をした財源に充当して有料道路を無料化するということについてはあまり意見が出なかったのですが、やっと最近は、建設サイドのほうでも諸外国との道路の利用コストについて、これだけ先進国の中でも日本が特異な構造になっている、それが我が国の高コスト体質の一つにもなっているということで、償還財源に道路財源を充てるというようなことについても目が向き始めている。
そういうことからいたしますと、財政当局はこれを一般財源化すべきだということを言い、建設サイドは建設財源にすべきだという意見で対決していたのですが、その中間として、過去に建設したものの償還に充てる、このことによって国民負担が軽減されるわけですから、そういったことについても十分検討する必要がある。
そういった意味で、これは「疑問視されている」という言葉が19ページの上から2行目に書いてあるのですが、どちらかというと一方的な疑問だけが特に書いてあるような感じがいたしますので、もう少し適切な表現がいいのかなあと思いますが、それが無理だとしましても、少なくとも「検討すべきである」という最後の言葉は入れるべきだと、私はそんなように思います。
〇委員
道路財源は数がものいうところもありそうなので、私としては、一般財源化を強調する表現を貫くべきだと思います。
それからもう一つ、21ページの「その他」の(1)、これは国税庁の宣伝で、こういうのが入っていると、全体のこの答申そのものが評価を下げてしまうと思いますね。これはちょっとまずいのではないかなあ。ちょっと今考えてみたのだけれども、修文のしようがないから、削除。
それと、こういうことに触れる場合、地方の税務行政については何も入ってないのだけれども、いいのでしょうか。
〇委員
消費税のことで、消費税についての益税とか、滞納についてこれを改めていくということで書かれている部分について、私は基本的にずっと賛成であります。ですから、13ページの(2)の[1]、[2]、[3]、私はこのとおりの考えであります。
ただ、インボイスについては、単一だから入れなくていいという考えではありません。やはりきちっとインボイス式にすべきだろうと。今でも。それと税率構造について、将来のことでありますけれども、地方消費税のところでは、「今後、福祉・教育等の幅広い行政需要を賄う税として」と書かれているのですが、私も、こういう改革を行った上で、年金なら年金という目的税のためにこれを引き上げるということについては検討していくべきだと思いますが、その際は逆進性について十分考慮されるべきだと思います。
それから酒、たばこ税はこの間申し上げました。
〇委員
酒、たばこは何とおっしゃったのですか。
〇委員
庶民のささやかな楽しみで、消費者マインドを余計冷やすというので申し上げました。ただ、会長からは、将来はどうなのだと言われたので、全体を見てから言いますという意味なのですね。
納税者番号のことで、これは賛成の立場なのですが、これは捕捉率の問題や、それから総収入に対して応能負担をきちっとすべきだということからですけれどもね。だから、これは「補論」の5ページの(3)に若干書かれているのですけれども、やはり総合課税ということをきちっと考えるべきであるということとプライバシー保護と、この2つを十分考えて、番号制ということに賛成であります。
あと一言だけ。ちょっと戻るのですが、所得と退職金の控除のところについては、原案にはちょっと賛成できません。現状維持へという少数意見を申し上げておきます。
〇委員
1つだけ。環境税――環境税という言葉は使ってないのですけれども――のところですけれども、「12年の我が国の税制の現状と課題」というときに、一番ボリューム深く環境問題について言ってくださって、その後13年の答申、14年の答申とずうっとトーンダウンしてきているので、この程度のことでしようがないのかなあとも思うのですけれども、身分的なことですが、「特定財源等エネルギー関係諸税等」という中に含まれてしまう程度の身分ですか。環境税、環境問題というのは世帯主にはなり得ない?(笑)
〇委員
今のところ、環境税を議論する環境がまだ乏しいという意味で、まだ赤ん坊かなんかで、なかなか成人化してこないのが問題なのですよ。
〇委員
大気汚染とか廃棄物とかごみとか、そういう問題、地方税とのかかわり合いとかいろいろあったので、この中に隷属的に入れられているのはかわいそうだという感じが多少するのですけれども。ごめんなさい。
〇委員
わかりました。もうちょっとトーンアップというのかな、考えてみましょう。
〇委員
簡潔に4点言います。
18ページのたばこ税ですけれども、これは是とする方向で、一番最初、委員がおっしゃったように、健康の観点から上げるということがはっきり出るようにしてほしいというのが要望です。個人の勝手という議論が幾つか出たので、私、言いたくなったのですけれども、これはこの間NHKでも医者が言ってましたけれども、ガンの3分の1はたばこが原因であると。ガンになれば、これは医療費、介護費用、いろんな税金、その他かかるわけでありまして、しかも、あれは吸っている人の隣にいる人が大変被害をこうむるということで……
〇委員
だから、1つあけているのです、そこは。
〇委員
それで大丈夫かどうか。そういう社会保障費を増大させているという問題がありますから、とっても個人の勝手では済まないだろうと私は思います。
それから16ページ以下、相続税等についてですけれども、これも少数意見で、既に言っておりますので言いませんが、中ほど、「税率構造」、最高税率を下げよという点ですが、これは反対です。全部取り上げて社会保障に使えばいいのではないかという意見で、何とか少数意見に入らないかと思っております。
その関連で17ページの一番上の[2]のところで、「第三者に対する贈与の取り扱い」。相続税の回避のために所得課税へ移すということ、それはそれでいいのですけれども、私はむしろ、子どもたちに財産をやって、これはとんでもない、自立しない、子どもを歪めてしまうよりは、公益目的でどんどん使ってもらうのがいいので、例えばNPOに寄附するとか、これは法人税のところに書いてありますけれども、ここにもできれば、そういう公益目的でつくったものについては税制上優遇措置を講じるというぐらいのことを書いていただけないかと思います。
それから最後にもう一点、同じ相続税に関して、これは「補論」の12ページの(2)で「家族の被相続人に対する貢献とそれに対する求償、救済」について法律論が展開されているのですけれども、この面倒見を見た相続人についてどうするかという話が適用されている。これは削ってほしい。品がないといいますか。実態からして、子どもに面倒を見てもらうのを期待するのも、もう今の時代、実態として合わないでしょうし、また、面倒を見て、その分の金がどうのこうの、相続の中でという話。それは現実にあることは承知してますけれども、ここで書くのはいかがであろうかという感じがいたします。
〇委員
最後はちょっと民法の先生に勉強しまして、その話が大分出たのですよ。それで、そういう思い入れもあって、せっかく勉強した成果も一部は、やったという証拠にといいますか、まさに専門家に言われたわけだから、ちょっと考えてみましょう。
〇委員
先ほどでしたか、これはどこから見ても増税ばかりじゃないかというご意見でしたね。そうでないところもあるのですよね。2ページのところ、「あるべき税制の構築に向けた視点」「自由な経済活動を妨げない税制」「課税の適正化・簡素化」、ここは非常にそういう意味では重要なところだと思うのですよ。
ところが、このところがちょっと抽象的過ぎて、国民に対するメッセージとしてはどうも物足りないのですね。もっとアピールできるような書き方ができないのか。例えば中長期的な視点から、目先のことにとらわれないで、やはり聖域なく税制全般を見直すと。10年、20年見て展望しているわけですから、それぐらいの意気込みがやはりあっていいのだろうと思うわけですね。
それから税の執行、これは非常に重要なのですよね。国税庁のところも、これは重要だと思います。ですから、ここの、「制度面のみならず執行面での適正化に努めることも重要な課題である」。これは重要どころか、もっと重要、極めて重要なのですよね。そういうところ、もっとメリハリをつけた強調の仕方ができないかと思います。
〇委員
全面に増税ムードというのは、諮問会議でも大分つらく当たられましたが、逆にいえば、中長期で見て、減税をやれというのはまず言えない。どんどんやれとも言えないでしょう。しかし、今までやり過ぎたのだから、その辺はあえて、私が矢面に立ちますけれども、そう減税ムードを立てる、萎縮することはないですよ。しようがないではないですか。
〇委員
減税という意味ではなくて、自由な経済活動を妨げないと、これは大事だと思うのですね。そういうのがあれば直すということが必要だろうと思います。
〇委員
そういうことです。
〇委員
今おっしゃいました、この20ページのいわゆる租税の、行政の問題ですけれども、この書き方ですが、納税者番号についてはどうしてもプライバシーの問題がありますので、これには言及しなければいけないでしょうと思います。
それから2番目の後ろですが、「給与所得者がみずから確定申告を行う」と。これはどうしても電子申告の問題が前提になって、それが動かない限りはちょっと難しいと思いますけれども、電子申告のことが「その他」で後ろのほうに隠れておりますが、それはもうちょっと強調していただいたほうがいいのではないかと思っております。2003年か2004年にはもう実現されるというお話ですので。
それから21ページ目の4「その他」の(1)、これは今ご批判ありましたが、これは確かに書き方が抽象的ですが、やはり納税環境の整備ということで、納税者の協力を促すと。期待すると。そのためには、納税相談、さらには事前照会制度、こういったものを充実させていくという非常に重要な任務があると思いますので、多少具体化しまして、事前照会といったもの、これは現実には対応が難しいところはあると思いますけれども、金融、それから組織再編など、すでに実際には事前照会やっておりますので、その辺に踏み込んで書いていただいたらよろしいのではないかと思います。
それからもう一つ、申しわけないですが、たばこの問題ですが、ちょっと参考資料としていただいた6の13ページには、WHOの条約が出ておりまして、2002年10月に開催して、そこでまた、たばこ需要削減のための価格と課税措置について議論するというようなお話があって、財務省で対応されることになると思いますが、そういうこともやはり前提にありますので、少しはっきりと書かれたほうがいいのではないかと思っております。
〇委員
ぼつぼつ幕引きしたいのだけど。
〇委員
30秒だけね。たばこに関連して健康等の問題が出ていて、僕は基礎小委でも申し上げたけれども、もし健康問題を持ち出すのなら、僕は税率をいじくるかどうかというのは別の観点でやったらいいと思っているのですよ。いいですか。健康問題を持ち出すのなら、今もちょっとおっしゃった方が何人かいらっしゃるけれども、酒のほうがはるかに深刻だと言っているの。アルコール依存症、今250万、平均年齢50歳。わかりますか。これは家庭内争議のもとなのですよ。たばこで早く死んじゃっても勝手の自由だけれども。家族全体が崩壊するわけでもないのだから。だから、健康論を言うのだったら全部にかぶせなければだめ。それで、さらに言うのだったらば、健康に悪いやつは全部懲罰的に税金をかけるという哲学を徹底しなければ、全く恣意的な話になってしまう。だから、そんなこと書かないで、この原案に近いことで私はおさめるのが一番いいと思っている。それだけ。
〇委員
たばこは外部不経済が酒よりあるのですよ、やはり。酒は一人で、致酔性で、脳溢血で死んじゃうけれども、たばこはみんなに影響する外部不経済。これは議論はもういい(笑)。
〇委員
今のたばこの関連で一言。健康というか、医療費が増えるという話がありましたけれども、たばこを吸ってない人に煙がいって病気になるというのは、これは別ということで。
それからもう一つ、たばこが害になるかならないか、仮に有害であるという前提ですけれども、もし医療費の問題を言うのでしたら、国民がたばこをやめてもっと長生きした場合、高齢化が一層進んで、老人医療費というのが、どっちみち病気になるわけです。だから、長期的に見ればこれは同じことだと思うのですね。それだけ言いたかった。
〇委員
いやあ、いろいろ今日は出ましたなあ。ここで司会していてエンジョイさせていただきましたけれども、まだあるの?じゃ最後ね。
〇委員
だれもほめないから、一言ね。この原案、よくできてますよ。大変よく配慮されておって、だから、多少の修文があるとしても、基本的にはこれでいったらどうですか。
〇委員
委員みたいに言っていただければ結論が出たから、それにしても、今日は対立点が歴然とあらわれたところが幾つもありますから、これから少し議論して、金曜日、起草会合やりますから、そこでもう一回練って、再度文案を練って、来週の11日の午前中、それは実質的に最後の審議になりますので、そこで丸くおさめていただくべく皆さんのご協力をいただきたい。それに丸くおさめていただくべく文案ができるかどうかはこの週末いかんにかかってますので、我々も一汗かきますので、その辺は、最後は寛大な精神をお持ちいただけたらというところもあるかもしれませんが、それはやってみましょう。
そういうわけで、今日は本当に長くありがとうございました。あと何か言うことあったかな。資料を残していっていただかなければいけないということと、それから再度確認いたしますが、6月11日火曜日、10時から12時と2時間予定しております。よろしゅうございますか。
それでは、どうも長々とありがとうございました。
〔閉会〕
(参照)第28回総会において審議された「補論」
総論関係
〇「公平・中立・簡素」の原則について
「公平・中立・簡素」の原則については、当調査会がこれまで税制の構築に際して規範的な基準として用いてきたものである。経済社会の構造が変化しようとその重要性は変わらず、引き続き税制の基本とすべきである。
1.公平
「公平」の原則とは、様々な状況にある人々が、それぞれの負担能力(担税力)に応じて負担を分かち合うものであり、水平的公平と垂直的公平がある。前者は、等しい負担能力のある人には等しい負担を求めるというものであり、いかなる経済社会状況においても変わることのない最も基本的な要請である。後者は、負担能力の大きい人にはより多くの負担をしてもらうというものであり、個人所得課税などの累進構造などによる所得や富の再分配がその役割を担っているが、その程度については、平等感や勤労意欲といった観点から、「機会の平等」や「結果の平等」に対する国民の考え方により選択されるべきものである。
公的部門が担う所得再分配については、歳出面における国の関与が限られた時代においては、個人所得課税の累進構造等を通じて歳入面を中心に行なわれていた。しかしながら現代社会において、社会保障・社会福祉制度が充実される中で、歳出面の役割が高まってきている。他方、歳入面について見ると、昭和62・63年の抜本的税制改革や平成6年の税制改革等を通じて、個人所得課税の税率構造の累進緩和等が図られ、負担水準が極めて低いものとなった結果、個人所得課税の所得再分配機能は限られたものとなっている。今後、市場機能が発揮される中で就業・雇用形態の多様化などが所得格差を拡大する方向に働く可能性も考慮すれば、これ以上の所得再分配機能を弱める方向での個人所得課税の見直しには慎重であるべきである。
2.中立
「中立」の原則とは、税制が、その負担を通じて経済社会に対して何らかの影響を与えることは避けられないが、個人や企業の経済活動における自由な選択をできるだけ阻害しないようにすることである。
わが国が高度成長期を経て経済大国となる過程において、規格化された商品を大量に生産・消費する経済社会が形成されてきた。その中で、資本蓄積、貯蓄増強、特定の産業育成などのため、税制が政策誘導的に用いられてきた。いわゆる「護送船団方式」に代表されるような政府主導・公的介入による事前規制型の政策が各分野で有効とされ、税制においても、個人や企業の行動を特定の政策目的へ誘導するため、租税特別措置等といった例外的な優遇措置が活用されてきた。その結果、経済活動に対しできるだけ中立であるべき税制に、数多く歪みが存在するようになった。(P1)
21世紀に入り、グローバル化・情報化等が進展し、個人や企業のニーズが一層多様化していく中で、市場を通じた資源配分が従来以上に重要となりつつある。そうした状況の下、政策発動のあり方も、個人や企業が創意工夫を最大限発揮できるよう事後チェック型の手段が求められるようになってきている。税制についても、民主導による市場重視の経済社会を実現するため、個人や企業の自由な選択を最大限尊重し、経済活動に対して歪みのない中立なものとすることが必要である。その結果として、経済の活性化は民間の経済活動により幅広く実現するはずである。
3.簡素
「簡素」の原則とは、個人や企業が経済活動を行うに当たって税制はその前提条件として常に考慮される要素であることから、税制の仕組みをできるだけ簡素なものとし、納税者が理解しやすいものとすることである。21世紀のあるべき税制の構築に当たっては、前述のように個人や企業の自由な選択を妨げない観点から、税制を経済活動に対して中立なものとするとともに、できるだけ簡素で分かりやすいものとすることが求められる。もとより、グローバル化、情報化・電子化等の進展に伴い、経済取引が複雑化・多様化する中で、租税回避を防ぐためには、税制がある程度複雑なものとなることはやむを得ない。しかし、不断の見直しを行い、極力簡素なものとすべきである。また、簡素な税制の構築により、執行面での対応を含め、納税者の税制に対する信頼を確保することも重要な課題である。(P2)
個人所得課税関係
〇 個人所得課税の税率構造
1.わが国の所得税の税負担水準(平成14年度国民所得比4.3%)が極めて低いことの要因として、諸控除や税率水準のほか、税率が適用される所得金額の範囲(ブラケット)、特に最低税率の適用範囲が拡大されてきたことがあげられる(夫婦子2人の給与所得者の場合、所得税の最低税率が適用される給与収入の最大値をみると、日本では831万円であるのに対し、アメリカは389万円、イギリスは170万円、フランスは509万円となっている。なお、ドイツは方程式方式のため、ブラケットの概念が無く、最低税率は20%である)。
さらに、ブラケット別の適用者数をみると、納税者(民間給与所得者)の約8割に対して、最低税率である10%のみが適用される状況となっている。しかも、この最低税率のブラケットの広さは、給与所得者の1%に満たない最高税率(37%)適用者も含めて全ての納税者がこれを享受しており、その結果、各所得者層とも主要国に比して低い税負担水準にとどまっている。このようにわが国の所得税制は極めて低い水準で事実上「フラット化」した税率構造となっている。
2.このような現在の税率構造については、次のような問題点がある。
(1) 大多数の納税者が最低税率(10%)のみに分布するという現在の税率構造は、主要国の中でも特異であり、税負担の「空洞化」をもたらす要因となっていること
(2) 経済の基調変化により、今後、物価や実質賃金の大きな上昇が想定しにくくなっている中、緩和された累進構造の下では、財源調達機能の改善が予想し難いこと
(3) 近年のわが国の所得分布の状況は、かつてのような平準化の動きは見られず、今後、就業・雇用形態の多様化などが所得等の格差を拡大する方向に働く可能性を考慮すれば、引き続き、税体系における所得税の所得再分配機能の重要性は軽視し得ないこと
したがって、わが国所得税については、最低税率のブラケットの幅を縮小することが今後の選択肢として考えられる。
3.税率の水準についても、上述の問題点を踏まえれば、これ以上の引下げは適当でない。これに関連して次の点に留意する必要がある。
(1) 「諸控除の見直しによる課税ベースの拡大にあわせ、税率を引き下げる」との議論があるが、次の理由により、実現は困難である。
[1] わが国所得税は、累次の減税により、税率の引下げが先行し、既に最低・最高税率ともに主要国に比して低い水準となっている。その一方、課税ベースの拡大が課題として残されていること(P3)
[2] 財源調達や所得再分配など、基幹税として本来果たすべき機能の回復が求められていること
[3] 諸控除の見直しに伴う税負担の変化は、言わば適正化の結果であり、かつ、個々人への影響は様々であることから、税率の変更でこれを相殺することは適切でなく、かつ、不可能であること
(2) 特に最高税率の引き下げについては、諸控除の見直しにより、所得の多寡を問わず多くの者が税負担増を分かち合うこととなる中で、限られた高所得者層のみに税負担軽減を図ることとなるので、「広く公平に負担を分かち合う」との理念に照らし、国民的な理解が得られるかという問題がある。
(3) いずれにせよ、諸控除の見直しに当たっては、真に必要な配慮は引き続き行わなければならない。また、急激な変化を避け、段階的に行っていくことは重要である。
4.個人住民税については、地域社会の費用を住民がその能力に応じて広く負担を分任するという独自の性格(負担分任の性格)から、所得税よりも緩やかな累進構造となっている。また、納税義務者の約6割が最低税率(5%)のみの適用となっている。
個人住民税についても、地方税の基幹税としての財源調達機能等の発揮の観点から考えれば、税率の引下げは適当ではなく、また、最低税率のブラケットの幅を縮小することが今後の選択肢として考えられる。
なお、3で述べた諸点は、基本的には個人住民税においても留意すべきである。(P4)
〇 「二元的所得税」と金融税制の「一元化」
「"貯蓄から投資へ"という金融のあり方の切り替え」をも踏まえ、株式譲渡益課税について、利子との均衡にも配慮しつつ税率を引き下げる等(平成15年1月)のほか、当面の優遇措置が講じられている。また、老人等マル優制度が段階的に縮減されることとなっている。
こうした中、金融資産からの所得に対する課税に関し、北欧諸国で採用されている「二元的所得税」の考え方や金融税制の「一元化」の是非について議論がある。
1.「二元的所得税」について
(1) 「二元的所得税」の考え方は、資本は労働よりも流動的であることを前提として、「勤労所得」に対して累進税率を適用する一方、「資本所得」に対しては「勤労所得」に適用する最低税率、更には法人税率と等しい比例税率で分離課税するものである。これにより、資本取引への課税の効率性、中立性や、生涯を通じた税負担の水平的公平性の確保等が図られる点で望ましいとする。
北欧諸国でこの考え方が採用された背景としては、[1]民間貯蓄が低水準であった、[2]インフレ率が高かった、[3]小規模開放経済の下において、高水準の社会保障を支えるべく、金融資産などの流動的な源泉からも歳入を確保する必要に直面していた、[4]負債利子が控除され課税ベースが大きく浸食されていた、などがあげられている。
(2) 一方、この考え方に対しては、[1]「資本所得」を「勤労所得」より軽課することは垂直的公平の観点から問題があること、[2]個人事業主や小規模法人の事業収益を「勤労部分」と「資本部分」に分割することに伴う技術的な問題があること、[3]「勤労所得」と「資本所得」とは本質的に異なるものではなく、また、取引形態を操作し、所得分類を変更する可能性もあること等が指摘されている。また、わが国と比較すると、[4]当時の北欧諸国の経済情勢は、貯蓄率等の面で、現在のわが国と異なること、[5]北欧諸国においては、「資本所得」、「勤労所得の最低税率」、「法人税率」がほぼ同じ30%前後で構成されており、わが国とは著しく異なること等に留意する必要がある。
(3) 当調査会は、わが国所得課税のあり方について、包括的所得税論の立場に立脚しつつ、総合課税への移行を目標としてきた。同時に、金融関連では、所得捕捉体制の問題から、現状では総合課税を基本に一部は分離課税を認めることが現実的としてきている。「二元的所得税」の考え方については、総合課税の前段階と捉え得るのか、また、今後これが北欧諸国に止まらない流れとなるか等について、これから検討を要するものと考える。(P5)
2.金融税制の「一元化」について
わが国の金融税制について、「一元化」して課税すべきという意見がある。「二元的所得税」の考え方がこうした意見に援用される場合もある。金融税制の中立性や簡素性の確保は引き続き重要な課題であるが、「金融所得」といった所得分類を新設し、「金融所得」内での損益通算を可能とすることについては、以下の問題点がある。
(1) 「金融所得」の新設については、
[1] その具体的な範囲、他の「資本所得」と区別することの論拠、商品ごとの所得の性質等の差異、事業体レベルにおける課税との関連をどう考えるか等の問題がある。なお、「二元的所得税」は、あらゆる所得を「勤労所得」と「資本所得」に2分して課税するという考え方であり、北欧諸国における「資本所得」には、金融収益のみならず、土地譲渡益、不動産収益、事業所得(投資収益部分)などが含まれる。
[2] 現行の所得分類は、所得の法的性格のほか、所得金額の計算方法が異なることを前提に構成されている。利子がそのまま「利子所得」となる一方、株式等の「譲渡所得」は譲渡価額から取得費等を控除する必要があるなど、所得金額の計算方法は金融商品毎に異なっており、現行法上の「所得分類」として、これらを一括した新たな分類(「金融所得」)を設けること自体に特段の意義は見出せない(「二元的所得税」を採用している北欧諸国でも、「資本所得」の中で金融商品毎に所得金額の計算方法が異なっている)。
(2) 「金融所得」内での損益通算については、
[1] 株式取引に伴うリスクの軽減に資する反面、株式譲渡損益は発生時点に裁量性・操作性があるなどの点で、利子や配当とは異なるほか、租税回避に利用され易いとの問題もあり、他の所得との損益通算を可能とすることは必ずしも適当でない。総合課税を採用している主要国においても、他の所得との損益通算は基本的には認めておらず(注)、「二元的所得税」を採用する北欧諸国でも、利子や配当などとの損益通算の取扱いは区々となっている。
[2] 株式譲渡損と利子との通算を認めるためには、現在、源泉分離課税の対象とされている利子所得を申告課税に変更する必要がある。これについては、利子課税の基本的な問題として、国民経済的な観点からの検討や、適正な所得捕捉を行うための納税者番号制度や新たな調書制度の導入が課題となる。
(注)株式の譲渡損失と他の所得との損益通算については、イギリス、ドイツ、フランスでは認められていない。アメリカでは土地の譲渡損失と合わせて3000ドル(約37万円)に限定されている。(P6)
3.制度の簡素化等
金融税制については、金融取引の高度化等を反映して複雑化せざるを得ない面もあるが、広く一般国民に関係するものであるため、課税の公平・中立と並んで、制度の簡素性に配慮すべきである。「二元的所得税」や「一元化」の議論も、税制の簡素化の必要性と基本的な方向を同じくするものとも考えられる。
また、度重なる税制改正により課税関係が頻繁に変更されることは、投資や商品開発の前提を不安定にする可能性があるほか、租税回避行為の誘因となりかねない。今後の金融税制の見直しに当たっては、課税の公平・中立・簡素の基本原則に加え、制度の安定性も重視すべきである。
さらに、金融商品が多様化・複雑化する中で、金融税制のあり方を考えるに当たっては、納税者番号制度が存在しないことが一定の制約要因となっていることは否定できない。資料情報制度の充実とあわせ、金融資産からの所得に係る執行体制の整備について、具体的な検討を促進することが必要と考える。(P7)
法人税関係
〇 法人の性格と法人税のあり方
1.法人税のあり方については、従来、法人の性格を巡る法人擬制説(法人は個人(株主)の集合体であると見る考え方)と法人実在説(法人を株主と独立した存在であると見る考え方)を対立させて演繹的に議論されることがあった。特に、配当に対する所得税と法人税の負担調整に関して、法人実在説の立場からは、法人税は法人独自の負担であり負担調整は不要であるとされ、法人擬制説の立場からは、法人税は所得税の前取りであり、負担調整を行うべきであるとされる。しかしながら、法人企業の経済活動の実態や法人税等の転嫁等についての検討を踏まえると、法人税について法人実在説あるいは法人擬制説という形で一面的に割り切ることは困難である。
2.他方、近年急速に進展する企業活動のグローバル化や金融・投資活動の多様化を踏まえると、法人の性格や法人税のあり方に関しては、新しい問題が生じている。すなわち私法上の「法人」に加えて、多様な事業体の設立目的や法的位置付け、更にはその規模、存続期間等の経済実態をどのように捉え、個人段階の課税との関連に配慮しつつ法人税の課税対象や課税方式を考えるかという新たな課題に取り組む必要がある。
具体的な検討課題は以下の通り。
(1) 外国のパートナーシップ等、私法上の「法人」ではないが実態的には「法人」と同じような事業や投資を行う多様な事業体がわが国で活動するようになっている。また、このような事業体の中には、特定の投資や事業が終了すれば清算するといった、これまで「継続企業」(ゴーイング・コンサーン)として想定された典型的な法人企業と異なる「法人」や事業体が出現してきている。現行の法人税は、基本的に私法上の「法人」を課税対象としているが、このような新たな状況を踏まえ、「法人」と同様にグローバルな活動を行っている多様な事業体に対し適正な課税を確保する観点から、法人税の課税対象や課税方式を検討していく必要がある。
(2) 一方で、私法上の「法人」ではあっても、実態として個人事業者と変わらない「法人」について、法人税の課税対象とするかどうかという問題もある。諸外国の例を見ると、
ドイツでは、合名会社、合資会社に対して法人課税ではなく個人課税であり、アメリカでも、一定の小規模法人については、個人課税を選択できる制度となっている。また、わが国の場合、特に中小法人の中で多年にわたって赤字のまま存続している法人が少なくなく、恒常的に赤字法人割合も高いため、税制上何らかの対応が必要ではないかと考えられる。このため、諸外国の制度も踏まえて、法人税の課税対象や課税方式を検討していく必要がある。(P8.9)
相続税・贈与税関係
〇 相続税・贈与税
1.課税根拠
相続を契機とした財産移転に対する相続課税の課税根拠は、基本的には、遺産の取得(無償の財産取得)に担税力を見出して課税するもので、所得の稼得に対して課される個人所得課税を補完するものと考えられる。その際、累進税率の適用により、富の再分配をより効果的に図る役割を果たしている。
個人から贈与により財産を取得した者に対しては、取得財産の価額を課税価格として、贈与税が課される。贈与税は、相続課税の存在を前提に生前贈与による相続課税の回避を防止する意味で、相続課税を補完する役割を果たしている。また、相続課税と同様、贈与という無償の財産取得に担税力を見出して課税する位置付けもある。
2.課税方式(遺産課税方式、遺産取得課税方式及び併用方式)
わが国の相続税は、明治38年に遺産課税方式によって創設され、シャウプ勧告に基づく昭和25年の改正で課税方式が遺産取得課税方式に変更された。その後、昭和33年に、税制特別調査会における幅広い議論を踏まえ、遺産取得課税方式を採りつつも、税負担総額は各相続人の実際の取得にかかわらず法定相続人の数と法定相続分によって一律に算出するというわが国独特の制度(法定相続分課税方式)が創設され、現在に至っている。
法定相続分課税方式が昭和33年度改正において導入された背景としては、それ以前の純粋な遺産取得課税方式において、
(1) 税務執行上仮装分割などを防止することが困難であること
(2) 分割容易な遺産と困難な遺産との税負担が不均衡となること
(3) 農業の零細化を促進する(農業政策等と不整合となる)おそれがあること
等の問題点があった。現在においては、相続人の人数の減少傾向、農地に係る納税猶予制度の存在等、制度導入当時とは状況の変化が見られる。財産取得者の個人的担税力に即した合理的な課税を行うことはできないという遺産課税方式の問題点や、遺産の総額が同じであれば、分割方法にかかわらず税額の総額は一定であるという現行の方式のメリットは、依然認められ、法定相続分を基調とする取得課税による現行の体系については維持すべきである。(P10)
3.一生累積課税方式と一定期間累積課税方式
「生前贈与を相続と一体として捉え、両者を相続時点まで完全に累積し、課税についてもその時点で清算を行う」という考え方を貫徹すれば、一生にわたる贈与を累積し、相続と合わせて課税(各年ごとに累積贈与額に対する税額を納付、過年分納付額は税額控除、相続においては納付贈与税額を控除)する一生累積課税方式を採用すべきこととなる(その際、相続関係のない者については別途の課税を行う)。
他方、「贈与と相続との完全な累積・清算」という考えには必ずしもとらわれず、現実的なレベルで贈与・相続を通じた税負担を平準化する考え方からは、一定期間にわたる贈与を累積して課税(各年ごとに過去一定期間内の累積贈与額に対する税額を納付し、過年分納付額は税額控除、相続前一定期間内の贈与は相続と合わせて課税)する一定期間累積課税方式が導かれる。
一生累積課税方式は、基本的には、生前贈与を行ったとしても、又はすべてを相続したとしても合計税負担額は変わらず、親子間の財産移転のタイミングの選択に対し中立的という利点があるが、執行が困難であるという問題点がある。
一定期間累積課税方式は、相続前一定期間外の生前贈与が多いほど相続時の負担は減少し、生前贈与を促進する働きがある。生前贈与と相続との間の中立性はある程度確保されるものの、一生累積課税方式には劣っている。一方、税務執行については、一生累積課税方式ほど困難でない。
4.民法との関連(被相続人による財産の処分・相続人の貢献と相続法)
(1) 生前贈与が円滑化された場合の民法上の論点
生前贈与の円滑化により特定の者に贈与が集中した場合、民法との関連では、他の推定相続人である親族からの遺留分減殺請求によって贈与が覆る事態が生じ得る。
遺留分減殺請求は原則として相続開始前1年間の遺贈・贈与に及ぶが、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をした場合、それ以前の贈与も対象となし得る。続柄に関しては、法定相続人の遺留分を「害する」意思が比較的認められやすい親族の方が、第三者に対するよりも贈与が覆る可能性は高く、特に、法定相続人のみが受ける特別受益に対しては、判例により、ほぼ無条件に遺留分減殺が認められている。
推定相続人に対する生前贈与が促進された場合、贈与が遺留分減殺請求により覆る可能性は拡大していく。しかし、民法の相続に関する規定は、被相続人の財産に関する決定権を尊重しつつ、相続分や遺留分によって相続人間の公平性の調整を図っており、贈与が覆る事態は、相続法の原理からは避けられないものとして想定されていると考えられる。
したがって、贈与が覆る可能性が高まることをもって、生前贈与を円滑化する税制上の措置に制限を加える必要はないが、制度の設計に当たっては、贈与が覆る可能性があることを念頭に置いて検討を行う必要がある。(P11)
なお、親族以外の第三者に対する贈与は、遺留分との関係で覆る可能性が低いが、このことが悪用される可能性を踏まえれば、法定相続人とそれ以外の者とで生前贈与の税負担を異なる水準とし、第三者に対する贈与に係る税負担を重く設定することも考えられる。
(2) 家族の被相続人に対する貢献とそれに対する求償、救済
高齢化社会の到来を受け、親の扶養(生計費の補助)や介護(以下、これらをまとめて「面倒見」という。)を行った者について、親からの相続や生前贈与において配慮が払われるべきではないかとの論点がある。
民法においては、「扶養」は本来対価性がなく、生活の資力がないなど要扶養状態になった者に対し、その生計を補助する一方的な義務が発生する。親に財産がある限り民法上の「扶養」の義務は生じない。他方、相続は財産の存在を前提とするため、厳密には民法上「扶養」と相続とは連動しないが、親の「面倒見」を行った相続人の貢献については、寄与分や「面倒見」を行わなかった他の相続人に対する対価の求償などによる相続における救済が、判例においては認められている。
こうした「面倒見」と相続とを巡る民法の分野における論点は、更なる高齢化の進展の中で、より大きな問題となっていくと考えられるが、現行民法の規定を改めるに足るような意見の収斂は未だなされていない。ただし、
[1] 民法上の相続は身分(続柄)で一義的に決定されるものであること
[2] 「面倒見」を行ったり事業を補助した相続人による他の相続人に対する求償について、寄与分などを用いて調整を図ることには限界があること
等を踏まえれば、あらかじめ、契約等の財産法において具体的な解決を図ることが適当とする意見が有力である。
(注)法定相続人の配偶者(典型的には「息子の妻」)など、そもそも相続権がない家族の貢献については、遺留分(配偶者や子供は法定相続分の2分の1)を害さない範囲で贈与・遺贈が可能であり、基本的には、家族・親族の話し合いで円満な解決を図ることが望ましいとする意見が有力である。
以上を踏まえれば、「面倒見」や事業の補助等の相続人の貢献を相続と関連づけ、更には、その延長線上で、相続課税において「面倒見」について配慮した措置を講じることは、民法における「相続」の基本的考え方と抵触することから、限界があると考えられる。(P12)
その他
〇 国際課税
1.国内における活動への対応
国外からの投資・事業活動に利用される事業形態の多様化が進む中、特にパートナーシップ、匿名組合や信託など法人格を持たない事業体に対する課税に困難が生じている。多様な事業体については、今後、法人課税の対象となる範囲も含め、課税のあり方を見直し、税制上の取扱いの明確化と適正な課税の実現を図る必要がある。また、外国法人の支店に対する課税については、子会社に対する課税とのバランスを図る観点から、諸外国やOECDの場で見直しが進んでいる。支店が実質的な租税回避に利用されていることも考えられるので、その課税のあり方も見直していくべきである。
2.国外における活動への対応
企業の国外活動が拡大していく状況の下、その成果についてわが国の適正な課税権を確保していくことがより一層重要となる。外国子会社合算税制(いわゆるタックス・ヘイブン税制)は、所得の国外留保による課税繰延を防ぐことによりわが国の課税ベースを確保する機能を有しており、今後は企業の国外活動の実態等を踏まえた上で、その適正化を検討していく必要がある。外国税額控除制度については、控除限度額の流用などによる課税ベースの浸食を防止する観点から、制度を不断に見直していくべきである。
3.執行面での対応
グローバル化に対応して適切な執行を確保するには、国外に所在する課税情報への執行当局のアクセスを充実していくことが重要となる。国際的には、最近多くのタックス・ヘイブンがOECDに対して実効的な情報交換の実現を約束するなど、執行当局間の情報交換を強化する動きが顕著である。わが国も、今後租税条約に基づく情報交換の拡充を図るほか、タックス・ヘイブン等との間では情報交換協定の締結を検討していかねばならない。情報交換制度が相互主義の原則に基づく以上、その前提として、わが国も国際的なスタンダードに従い、条約相手国から情報の提供を求められた場合には、わが国の課税上の利益の有無にかかわらず執行当局が迅速に情報を収集し相手国に提供できるように、法制面を含む制度整備を行うべきである。(P15)
(注)
本議事録は、毎回の総会後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。
内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。