第27回総会 議事録

平成14年5月24日開催

石会長

第27回目になりますが、総会を開催させていただきます。どうもお忙しいところをありがとうございました。今日は、議題が山積みになっておりますし、あらかじめ、「議事予定」というのが書いてございます。お願いしたいのは、右に時間の配分が書いてありますから、このとおりうまく進行したいと思います。発言も、これに合わせてうまい具合にぜひ調整をお願いいたしたいと思います。

冒頭、総理との懇談会、それから、経済財政諮問会議にも出ましたということで、報告事項といたしまして、この辺から概略御説明させていただきます。

17日夜でしたが、マスコミの委員を中心に総理官邸にお邪魔いたしまして、食事をとりながら、いまやっております税制改革の論議とか、今後どうしようかという議論をだいぶ詰めて行なってまいりました。食事をしながらでありますから、和気あいあいということで、小泉さんは盛んに、俺は就任以来一番元気な時期であるということを強調していましたね。顔色もよく、えらい張り切ってました。

新聞にも一部出ておりますが、結局、総理の一番言いたかったことは、自分の内閣の時代は徹底的に歳出カットをしたい、無駄、不効率な歳出をカットしない限り今後いかなる財政運営もよくないだろう、したがって増税というのはやる気はないと。ただ、小泉さんの増税の意味は、税率引上げの意味なんですね。したがって、我々がここで議論しております構造改革をやって、結果として課税最低限の引下げ等々から出てくるであろう一種の増収については、小泉増税という語録にはないようであります。構造改革、歪みをなくす等々についてはぜひやってくれ、というメッセージだというふうに受け取ってまいりました。

念頭にあるのは、おそらく消費税率のアップだろうと思います。この辺について、どうですかという誘いの水を向けた委員の方もいらっしゃったのですが、それは、頑としてお譲りになっていなかったという印象を持ちました。

それから、21日に、私、経済財政諮問会議に呼ばれて税制改革の審議に参加してまいりました。このときはいっぱい議題がありまして、社会資本整備、国と地方の関係、税制改革と三本立てでございましたので、時間もあまりございませんでしたが、諮問会議のほうからお出しいただく議論に耳を傾け、若干のコメントをしてまいりました。

後ろのほうに、「地方財政の構造改革と税源移譲について」という片山大臣の御提言がございます。これは新聞でも概略紹介されていますから、お目通しかと思いますが、5.5兆円の国税を地方のほうへ譲ると。この辺につきましては、また簡単にあとで総務省から御説明があろうかと思います。そのあとに、塩川大臣の「地方の自立のための改革の基本的視点」というお立場からの御意見がございました。そういう形で、国と地方の関係、税源移譲の関係、かなり濃密な議論をしてまいりました。

税制改革については、奥田委員から、民間4議員の税制改革案につきまして試案が出されて、これは、「平成の税制改革」という形で御議論をいただいている2枚紙がございます。おそらく、我々がこれから議論しようという議論の方向と同じような形の議論になっていると思いますが、個々の税目についてはまた違った切り口からやっておりますから、出ておりませんが、考えている方向としては同じ軸に乗っかっていると思います。

それから「経済活性化戦略」、これはその当時は御説明がございませんでしたが、資料が入っておりますし、幾つか諮問会議の資料が入っているという形で議論がございました。

税制改革につきましては、これから諮問会議と税調がともに案をつくって、6月中旬を目指して議論を整理しながら今後の税制改革のプランを練るという形でございました。最後、時間が押してきたものですから、あまり細かく入った議論はできなかったということでございますが、諮問会議のお考えが大体わかり、紙に載っていますので、あとでご覧いただけたらと思っています。

我々は今度は5月30日に御説明に行って、税調の審議状況を向こうに御説明して、また、いろいろ議論を伺ってこようかと考えております。

簡単でありますが、今日はほかに議題が山積みでございますから、あとに移らせていただきます。また御質問があれば御議論いただくことにしますが、今日は3時間を考えておりますので、途中4時ごろ、できたら休憩をとりたいと考えております。

前半で、消費税、し好品課税、エネルギー課税を終えまして、後半で、国・地方、納税環境の整備、租特、金融関係税制等々に少し時間を割り振りつつ議論を深めていきたいと考えております。

それでは、早速でありますが、最初に、「経済活性化戦略中間整理」の概略について、事務局に御説明いただくとともに、谷口副大臣から、経済特区につきまして、最近の御視察も交えて御意見を伺うことにしたいと思います。

最初に、稲垣さん、御説明ください。

稲垣調査課長

御存じのことかと思いますが、いま、経済財政諮問会議では、先ほど御紹介がございました、税制改革、経済活性化戦略、歳出の改革というのが三つの大きなテーマということでお話し合いになっておられまして、この件は二番目の経済活性化戦略の話でございます。お手元に「経済活性化戦略中間整理」というかなり大部のものがあるかと思いますが、これは、去る5月13日に民間4議員の連名ということで議論の取りまとめがなされたということで、これに沿いまして、これを少し肉付けするような形で6月に向けて取りまとめが行われていくというものでございます。

ちょっと大部でございますので、これをめくっていただくのは恐縮でございますが、その前に、「経済活性化戦略中間整理とりまとめに当たって」という民間4議員ペーパーがございます。こちらを見ていだきますと、副題にございますように、「6つの戦略、25のアクションプログラム」ということで、この4枚ほどの紙の一番最後、4枚目でございますが、わかりやすく表になっております。

「6つの戦略」といたしまして、技術力、人間力、経営力、産業発掘、地域力、グローバルという6つの戦略に25のアクションプログラムがぶら下がっているというものでございまして、この中にも実は税制の絡みの話が幾つか出ております。例えば経営力戦略のところの三番目のポツでございますが、「直接金融市場の整備」ということで、金融資産課税の見直しといったことがうたわれているわけでございます。

その中に、下から二番目のコラムでございますけれども、地域力戦略の中に「構造改革特区の導入」ということもうたわれておりまして、これにつきまして、またこれからお話があるということでございます。

以上、簡略でございますが、御紹介させていただきました。

石会長

サマリーバージョンがいま御説明いただいた資料ですね。

稲垣調査課長

はい。

石会長

わかりました。あと、お時間のあるときにお目をお通しいただけるかと思います。

それでは、谷口副大臣、よろしくお願いします。

谷口副大臣

まさに今、経済財政諮問会議で経済特区のことも議論されておるようでございますけれども、先日、EBRD(欧州復興開発銀行)の総会に行ってまいりまして、その途中、アイルランドのダブリン、またイギリスのロンドンにも行ってまいりまして、金融関係者とのやりとりをしてまいりました。そのあたりの状況を踏まえて御報告、また、この政府税調で御議論をお願いいたしたいということも含めまして、申し上げたいというように思う次第でございます。

特にダブリンは、OECDでも「有害な税制」という形で規定をされておりまして、2003年にはこのようなことを解除するために、そういう予定でおるわけでございます。法人税の基本税率で申し上げますと、EUに参加する前には基本税率が32%。それが現在16%の基本税率になっておるわけでございます。

そういう状況の中で、ダブリンのドックランドヤードというところに金融特区をつくったわけでございます。ここの金融特区内での基本税率は10%という形にし、それにつけ加えまして、不動産の取得につきましては初年度で100%の償却ができる、また、不動産の賃貸料についてはその倍額までが損金算入できる、このような税制上の対応をいたしたわけでございます。これがスタートしたのが1987年からでございまして、6年から7年間は当初の目論見どおりうまくいかなかったわけでございますけれども、その後、1994年ぐらいから非常にはずみがつき、大きく状況が変わってまいったということでございました。現在、世界のトップ50銀行のうち半分以上が進出し、1万1,000人の直接的雇用を創出し、純資産で2,390億ユーロの金融資産が管理されている。

そもそもアイルランドは非常に失業が高い状況の中で、このような良質な雇用機会を大量に創出するといったようなことと、もう一つは、ダブリンのドックランドの開発を行うというようなことでこれがおし進められたわけでございますが、私どもがこのような状況をお聞きし、また、現地を視察したところ、当初の目標をはるかに上回る結果が出てきたというように考えるわけでございます。

そういうダブリンの状況を見て、先ほども申し上げましたように基本税率がいま10%でございますが、これを2003年には統一する、金融特区と金融特区でないところと単一税率にすると。特区内は10%が12.5%になるわけでございますが、この税率にしたところで、進出企業が退出するといったようなことは全く考えておらないといったような形で、このエリア全体がより一層規模の拡大が行われている、こういう状況でございます。

この金融特区ということについては、現在、沖縄で金融特区が行われているわけでございますが、沖縄の金融特区はいわば沖縄の地域の活性化という観点で行われているわけでございます。日本全体の景気の活性化、東京が国際金融センターであるというようにおっしゃる方がいらっしゃるのですが、アジア全体の状況を見ますと、シンガポール、香港といったところに外資系のアジア統括本部が置かれており、非常にボリュームがあるわけでございますが、東京はそういう意味では国際金融センターになり得ていないということで、私は、東京ないしは大阪といったような大都会のところに金融が集積するようなセンターをつくる必要があると。

このためには、一つは税制上の対応が必要であろう。もう一つは、わが国は英語圏ではございませんから、英語をしゃべれるような人的インフラも必要だろう。また、一段の集積した建物をつくって、ロンドンのシティであるとか、ダブリンのような地域を構築することが必要なのだろうと思うわけでございます。これが、産業の活性化に結びつくのだろうというように思うわけでございます。

また、もう一方の観点は、いまアジアの中でわが国がどのように対応するのか。ユーロの経済圏があり、アメリカの経済圏があり、そのはざまに入ってアジアがどういうように対応していくのか。いわばわが国の国家戦略という観点から見た場合に、いま国のほうは、日・アセアンとか、アセアン・プラス3だとかいうようなことで対応いたしておるわけでございます。「AMF構想」というのが従来あったわけでございますが、これがうまくいかないと。いま、そういう状況の中で、バイでございますけれども、「チェンマイ・イニシアチブ」といったような通貨スワップをやっているわけでございます。

いずれにいたしましても、アジアの中のリーダーにわが国がなっていくといった場合に、金融の集積地がわが国にないといったことも念頭に入れて、これがシンガポールにあり、また香港にあるといったような場合に、果たして問題がないのかというようなことも含めまして、東京、また大阪がこのような大規模な金融特区になるためには税制上の観点からどのような対応がやり得るのか、ということも一つ大きな課題ではないかというように感じまして帰ってきた次第でございます。

その観点から、この税制調査会におかれましても、経済特区、なかんずく金融特区ということに対してぜひ御議論をお願い申し上げたいというように考える次第でございます。

石会長

大変有意義な興味あるお話を、ありがとうございました。

それでは、ちょっとデータ的なフォローも必要と思いますので、二課長の古谷さんから、簡単に御説明ください。

古谷税制第二課長

それでは、資料で「総27-1」という「国税関係資料(特区関係)」というのをごらんいただきたいと思います。関連の事実関係について御報告を申し上げます。

おめくりいただきまして、経済財政諮問会議で地域力戦略の一環として「構造改革特区」という提言が出てございます。これの税財政との関連についてだけ諮問会議の資料から引っ張らせていただいておりますが、1ページの「構造改革特区について」ということで、(3)でアンダーラインを引いたところだけご覧いただきたいと思います。「構造改革特区は、産業集積による地方経済の活性化との意味も持つが、その推進は『自助と自立の精神』に基づきなされなければならない。この原則の下で構造改革特区が、国・地方の財政規模の拡大、従来型の財政措置を中心とする振興策とならないよう留意しなければならない」という整理になってございます。

2ページと3ページは、「地方公共団体の特区に関する構想例」ということでございますので、ご覧いただきたいと思います。

4ページにお進みいただいて、やはり諮問会議で平沼経済産業大臣から提出されました、これは「規制改革特区」の構想でございますけれども、ここでも、アンダーラインを引いたところにございますように、「地域間競争を起こし、『個性ある地方』の自立した発展と活性化を促進」ということで、国の財政資金に頼ることなく、「規制改革」を手段として、競い合う形の特区とすべきであるといったような御提言になってございます。

5ページにお進みいただきまして、これは、総合規制改革会議のほうでございますが、これも規制改革特区ということで、「特定地域を対象とした地域振興策ではない」といったような観点からの御議論だと伺っております。諮問会議やこの総合規制改革会議では、構造改革特区とか、規制改革特区といった観点の特区の御議論ではなかろうかというふうに受けとめてございます。

それから、6ページでございますが、先ほど谷口副大臣からもお話がございました、沖縄の金融業務特別地区における所得の特別控除制度について簡単にご覧いただきたいと思います。沖縄振興特別措置法によりまして指定された金融業務特別地区、いわゆる金融特区でございますが、ここで法人が設立いたしました場合、設立後10年間、金融業務に係る事業から得られた所得について、35%の所得控除をするということでございます。

ただ、金融と申しますのは、非常に足の速い所得でございまして、所得の移転が比較的容易で、どの地域で得た所得でもつけかえができるといった租税回避のおそれがございまして、カッコ内に書いてございますように、「同地区内において金融業務に係る事業に従事する者の人件費の20%を限度とする」といったようなハードルを設けさせていただいた特例になってございます。制度の内容はそこに書いてあるようなことでございますので、ご覧いただきたいと思います。

それから7ページ以下は、副大臣からもお話がございました、OECDにおける「有害な税の競争」に関する資料をつけてございます。9ページ、10ページに有害税制リストがございますが、お話にもございましたように、ダブリンの国際金融サービスセンター、これが有害税制リストに載っかっているということでございます。ごらんいただければと思います。

簡単ですが、御紹介させていただきました。

石会長

ありがとうございました。

実は、この特区の問題は基礎問題小委員会でもまだ議論しておりません。今日初めてお出しするようなこともございますので、基礎問題小委員会に御出席の委員の方もいろいろ御関心をお持ちだろうと思いますし、当然のこと、総会に御出席の方もそうだと思いますので、いまから10分か15分ぐらい時間をとりまして、自由に意見を交換いたしたいと思います。どうぞ、どなたからでも結構です。

河野さん。

河野特別委員

前回だったか、谷口副大臣が、国税の高額納税者を公示する制度の是非について問題提起されました。あれは実に面白いテーマで、税調にぴったりのテーマだったから、我々の議論は大いに盛り上がっておるし、現に引き続き検討することになったんですよね。それで、今日はまたえらい大きな弾を撃たれてびっくりしているけれども、いま、官邸の諮問会議でやっているような経済特区の話は、谷口さんの話に比べればはるかに小粒な話で、地域間競争の話ですね。しかし、そこで大きな構想が練られて、税金の面についてはこういうことを考えたらどうだというのに、我々のほうに付け足しが来るというあれになっている。それは普通の議論のあり方だと思いますが、いま、副大臣の話を聞いていると、実に面白い話で、そういうことをやっている国もあるし、問題もあるかと思いますけれども、とにかく発想は面白いと思うんですね。

ただ、政府税調が、金融特区という大国家戦略の議論を正面切ってやるというのは、我々に与えられた任務から見れば、ちょっと違うのではないかなと。それこそ官邸で大議論をやってもらって、そこで大国家戦略がかたまるならば、東京でも大阪でも構いませんよ。それで我々のほうに「税金の問題しっかり考えろ」というのならば、事の順序としてはごく穏当な話だと思いますし、いつものことながら谷口さんの話は面白いけれども、今回は、内容の問題に触れるのはあとにして、ちょっと手順の問題でどうかなという気がします。

石会長

松尾さん。

松尾委員

谷口副大臣の御提案、大変興味があるのですが、こういう問題は、経済財政諮問会議で出されているように、自助と自律の精神に基づく必要があると思います。これはやはり基本的な原則だと思います。基本的な考え方はそうだと思います。

それで、税でどう対応できるかということは、当然、政府税調で議論の対象になると思いますが、私の見解としては、「従来型でいいのかどうか」ということなんですね。従来のテクノポリス型のような、税をまけてやってというのが今の時代、いいのかどうか。諮問会議で出されているように自助と自律の精神ということになりますと、税に依存しないほうがいいのではないでしょうか。税とか補助金に依存しない方向でできれば、それに越したことはありません。いずれにしても租税特別措置なども活用しようということになるでしょうが、そういった従来型の政策減税はいかがなものか。その辺は慎重に考える必要があると私は思います。

石会長

どうぞ、猪瀬さん。

猪瀬委員

特区構想というのは、前から僕はいろいろ関心を持って聞いていたりしたのですが、基本的に平沼経済産業大臣がおっしゃっているように、国の財政資金に頼ることなく規制改革を手段としてやるというのが、特区構想の一番のポイントだと思います。租税特別措置も結局は特区なんですよね。減税特区みたいなものですから、結局、租税特別措置のようなものがどんどん増えていくような形であったら、今回提案している規制改革特区の意味は台無しになってしまう。

規制改革、規制を撤廃することによって民間資金がそこに一気に流入するというのがミソで、この発想は、財政資金を使うとか減税でやるとかいうことではない。運用難に陥っている民間資金が、規制を取り払うことによってそこに流れ込んでいくところが一番のポイントだと思います。したがって僕は、今回出てきた特区構想はいままでと違うと思うので、税金の問題とか、財政の問題と絡めないほうがいいと僕は思います。

石会長

では、松田さんと佐野さんの順番でいきますか。

松田特別委員

面白いアイデアだと思いますけれども、谷口副大臣が具体的に言及された東京と大阪は、銀行税というのがあって、これは「銀行よ、来てくれるな」という税なんですね。親の心子知らずというか、まずこういう話をする前に銀行税をきっちりやめてもらわないと、話にもならないというのが現状ではないかというふうに思います。

石会長

そういうご提案ですね。

では、佐野さん、どうぞ。

佐野委員

松田さんの言ったこととほぼ同意見ですが、財政措置、税制措置を使うのが是か非かという問題はともかくとして、安易に使うと、ますます東京一極集中を促進してしまうのではないか。谷口副大臣は大阪ということを念頭に置いていますが、例えば東京と大阪で同じことをやったら、かなりの部分また東京に来てしまいますよ。そういう懸念もどこかに留意しておいたほうがよろしいかと思います。

石会長

よろしゅうございますか。牧野さん。

牧野特別委員

大体いままでの御意見と同じで、特区自体には非常に興味がありますけれども、国税をいじってくるということになりますと、特に法人税をどうするということになりますと、国税という基本的な制度はやはり全国一律できちんとあるべきであって、これを地域の活性化のためにどうこうしていくということについては、G7の国でもある日本にとって、これは非常に問題があるというふうに思います。

ただ、規制という政策的にどんどん変わるようなものについては、そこだけ早めて規制緩和をやっていくということはあるので、特区というのは、そういういろいろな手段を講ずることはできると思います。

それから、仮に税にしても、例えば地方税などで法律の許される範囲において、それぞれの地方が競争的にそれをどうこうしていくということはおそらくあり得るかと思います。現に租特でいままでないわけではないですが、これはむしろ整理をしていくほうが本道であって、減税を強化していくという方向については非常に問題があると思います。もちろん、シンガポールでありますとか、発展途上国ですから、こういった国については有効な全体の経済発展の手段になることはあると思いますけれども、日本の場合にはいかがかというふうに思います。

石会長

はい、どうぞ。

谷口副大臣

いま、シンガポールは発展途上国だとおっしゃったわけでございますが、アジアにおける金融の中心地になっているわけですね。今回の税制の議論は、諮問会議でも、シャウプ勧告以来の大幅な抜本的改革を行おうと。また当税調でも、年次の改革ではないわけですので、抜本的な観点からどういうあり様なのかということを考えていく必要があるだろうと思います。現在、皆さん方は、東京または大阪が大きな金融センターだと思っていらっしゃると思いますけれども、海外から見ると、さっきも申し上げたように、十分に金融が集積するところに至っておらないという現状、また、アメリカにはニューヨークがあり、イギリスにはロンドンがある。これからEUでフランクフルトあたりが出てくるのかもわかりませんが、いずれにいたしましても、わが国に実体的な国際金融センターがないということも含めて、税制上でいかに対応し得るのかということを、私、問題を投げかけたわけでございますが、よく考えていただければと思います。

石会長

問題提起をいただきまして、皆さんの御意見も聞きました。非常に興味ある御提案だと思いますが、この場では、直に税の問題としてとらえるよりは、規制緩和とか、その他、従来型でない方法もあるではないかということで、今後、これは幅広に税調でも議論すべきテーマであろうと思います。また、諮問会議等、ほかの審議会でもこの種の話が出てくると思いますので、絶えず情報をいただきながら今後の審議という形にしていきたいと思います。何せ急に出てきたばかりの話でありますから、今後もう少し勉強してという基本的なスタンスが必要かと思います。

それでは、次のテーマ、消費税について議論を移させていただきます。

この議論は幾つか議論がございました。これまで、消費税というものについてどんなことを議論したらいいかという形で議論いたしましたが、簡単に申しますと、基幹税でありながらこの消費税という制度には不信感が多い。今後、基幹税を育てていくという視点から見ますと、制度の信頼回復のためにしかるべき手を打たなければいけない。俗に言われるのは、益税の解消をどうするかという問題がありました。そこで課税最低限の話とか、簡易課税の話等々ございましたし、今後、少子・高齢化の社会においてはこの税収確保というのが問題になるとして、これをどういう形で認めてもらうかということになろうと思います。

そこで、免税点、課税最低限、それから、申告納税制度がまだまだ回数が少ない。4回だったかな、3回だったかな。したがって、これはまけてやってもいいではないかという議論もあったり、価格表示の問題、内税、外税の問題があって、これをどうしようかという議論もこれからしなければいけないということでございます。

それから、将来、税率がヨーロッパの諸国並みにいくかどうかわかりませんが、それに近い水準になったときに、逆進性緩和という問題も踏まえて議論しなければいけないし、簡素化といった点もおそらく入り込んでくるだろう。それは、複数税率にしていいかどうかという議論になりますし、インボイスという問題はおそらく避けて通れないだろうし等々、そういう議論をいたしました。急に税率アップという話に行かないのは重々わかっておりますが、将来の消費税のあり方と絡めて、制度の改善のためにどのような議論ができるかという点で御議論があったわけでございます。

それでは、こういう議論があったという私の紹介だけにいたしまして、税制二課長と都道府県税課長の古谷さんと木内さんから簡単に資料の説明をいただきましょう。

では、古谷さん、お願いします。

古谷税制第二課長

「総27-4国税関係資料[2](消費税関係)」というのをお開きいただきたいと思います。

目次を飛ばしていだたいて、1ページでございます。一般会計税収の中の消費税収のウエートの変化を見ていただいております。14年度予算で一般会計の消費税収が9.8兆円。これは一般会計ですので、5%のうちの4%分でございます。したがいまして1%、ほぼ2.5兆円ということでございますが、平成9年から税率が上がりまして、定常状態になって、ほぼ全税収の2割を占める基幹税ということになってきております。

2ページ目は、いつもご覧いただく税率の国際比較でございますので、省略いたします。

先ほど石会長からお話がございましたが、3ページでご覧いただきますように、平成元年に消費税が創設されまして後、平成3年の改正と平成6年秋の税制改革の際の改正、制度について幾つか手直しが行われております。特に[2]の免税点制度、[3]の簡易課税制度、[4]の限界控除制度は、創設時に、中小事業者の事務負担に配慮した特例として設けられました。このうち[4]の限界控除制度はすでに廃止されております。簡易課税制度につきましても、適用の上限、あるいは業種ごとのみなし仕入れ率といったものが改善されてきておりまして、現在、右のほうでご覧いただくような姿になっております。免税点制度は、創設当初から、3,000万円以下の売上の方は免税という制度が基本的には維持された状態で現在に至っているということでございます。

それから、[6]の申告納付の関係でございます。消費税の預かり金的な性格を踏まえまして、申告納付につきましては平成3年の改正で中間申告の回数を増やしておりまして、現在、税額が400万円を超えます場合には年3回の申告納付と1回の確定申告ということで、年4回納税をしていただくということになってございます。

4ページにお進みいただきまして、これもときどきご覧いただく資料でございますが、事業者に占めます免税事業者の割合、上の真ん中のCのところで62%の方が免税事業者でございます。売上高に占めるウエートとしては、一番下のF/Dで2.5%程度ということでございます。

5ページで、簡易課税制度の適用状況につきましては、平成元年の創設当時は簡易申告者のウエートが68%ほどございましたけれども、先ほどの適用上限の引下げ等によりまして、現在のところ47.1%、売上の割合では5.5%まで来ているということでございます。

6ページは、申告納付についての細かな資料でございますので、省略させていただきます。

最後の7ページでございますが、消費者保護の観点からの価格表示のあり方ということで、消費税の税額を含みます価格の総額を表示する必要性について御議論をしてきていただいてございます。ヨーロッパ諸国におきましても、税法上の規制ではなくて、消費者保護の観点から行われます価格表示に関する規制の中におきまして、総額の表示を義務づけておるということでございまして、わが国においても、消費者保護の視点から総額表示の方向での検討が課題であろうかというふうに考えております。

簡単でございますが、以上でございます。

石会長

ありがとうございました。

では、木内さん、地方税関係をお願いします。

木内都道府県税課長

それでは、「総27-5地方消費税関係」につきまして御説明させていただきたいと思います。

1ページをご覧いただきたいと思います。地方税収と地方間接税収及びその割合の推移ということでございます。なお、ここで言っております地方間接税と申しますのは、下の注の2にございますが、地方消費税、特別地方消費税、ゴルフ場利用税、たばこ税ということでございますけれども、まず平成元年に消費税が導入されました。それに伴いまして、地方の間接税である電気税、ガス税、木材引取税が廃止されまして、娯楽施設利用税、料理飲食等消費税といったものが税率調整されたところでございます。

その後、平成9年に地方消費税が導入されました。そして平成12年には、特別地方消費税、これは昔の料理飲食等消費税が変わったものでございますが、これが廃止になったということでございます。これらの間接税の地方税収に占める割合は約1割ということで、最近、安定的に推移しているところでございます。

続きまして2ページで、地方消費税の概要につきまして簡単に御説明させていただきたいと思います。

まず、3でございますが、課税標準、これは消費税額を課税標準としておりまして、税率は消費税額の100分の25ということで、消費税率に換算しますと1%ということになるわけでございます。6の清算・交付でございますけれども、これは、最終消費地に地方消費税は帰属するという考え方に基づきまして、都道府県は、国から払い込まれた地方消費税相当額について、消費に関連した基準によって都道府県間において清算をする。そして、清算後の2分の1につきましては、人口、従業者数にあん分いたしまして、都道府県内の市区町村に交付するといった仕組みをとっておるところでございます。

以上でございます。

石会長

ありがとうございました。それでは、いまから約30分時間をとりまして、消費税につきまして皆さんの御意見を伺いたいと思います。

政府税調が中間報告をまとめるに当たって、消費税をどう取り扱うかということは世間もマスコミも非常に関心を持っておりますので、ぜひ、きょうの段階でその基本的な方向が示唆される形で御議論いただきたいと思います。基礎小で御議論いただいた方も、もう一度総会で言っていただかないと正式の議事になりませんから、その辺も踏まえて、どうぞ活発な御議論をいただきたいと思います。

どうぞ。

榊原委員

会長も言われたように、少子・高齢化社会に拍車がかかっていく中で、消費税の将来のアップについては真剣に考えていかなければならないだろうと私どもも考えておりますが、その前に、消費税の益税とか滞納ということについて勤労国民にとっては税の不公平感を持たされております。国民が負担した税が適切に国庫に納付されますように、現行の帳簿方式の税額票をインボイス方式にするとか、免税点の引下げ、簡易課税制度の廃止、消費税の滞納防止のための納付回数の増加、記帳義務者の範囲の拡大と罰則の創設などによる記帳義務の強化など、消費税の抜本改革に早急に着手すべきではないかと私どもは考えております。

石会長

ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

和田さん、どうぞ。

和田特別委員

消費税につきましては逆進性の問題というのが大きな課題だと思います。それで、ほとんど毎年私が使わせていただいております、日本生協連の昨年の「税と社会保険料調べ」がまとまりつつあるところですが、それで逆進性のところを見てみますと、年収400万円未満の世帯では3.31%。当然ですけれども、これが最も高いです。それから、1,500万円以上の世帯では1.31%と一番低くなっていまして、その差が2%あります。

石会長

消費税の実効の負担率ですね。

和田特別委員

そうです。この2%の違いというのは、年収400万円未満の世帯にとっては相当大きな重荷になっていると言えるだろうと思います。逆進性の問題というのは、消費税が入ったとき以来いつでも問題にしてきたのですが、平成6年の税制改革についての答申の中で、これも前に発言したことがありますけれども、消費税が所得に対して逆進的ではないかといった問題については一つの税目のみを取り上げて議論すべきものではなく、所得税をはじめとする全体の中で社会保障も含めて判断していく問題で、わが国の税制がかなり累進性を持っている、それから、社会保障の歳出面の施策が国民生活のさまざまな分野で整備・充実されていることも考えることが必要であると、答申の中で述べられています。

それ以降、所得税にしても、累進が非常に緩和されているときに、当然のことですけれども、逆進性の問題をどうとらえていくのかということは決して見逃すことはできないと考えております。社会保障制度が整備・充実されてきているといいますけれども、例えば介護保険とか、医療制度の個人個人の負担というのはどちらかといえば増えて、場合によっては税よりも社会保険料のほうが生活を脅かす割合が大きいとすら言われるようになっております。平成6年の答申に述べられているのは、ほかが累進的だし社会保障が充実してきたから、逆進性だけを取り上げてはいけないということが答申の中に入ってしまったのですけれども、やはりここのところはちゃんと検証し直さなければいけないというふうに感じております。

それともう一つ、先ほどの資料の中で消費者に対する税額表示の問題がありました。一昨年の中期答申をまとめましたときに「消費者保護」という言葉が出てきまして、ほかの国がそういう言葉を使っているかどうか、それは別として、いまの私たちの立場から考えて、消費者保護で総額表示をすると。総額表示をしても、税額が幾らなのかとわかるようにするのが本来の税金のあり方ではないでしょうか。ほかのものであっても、税額が幾らというのがわかっていないものがたくさんあります。幾ら負担しているということがわかるのが本来の望ましいあり方だと思いますので、単純に総額表示というのはいかがなものかなと考えております。

石会長

後段は、税額を明記しろという御意見ですか。

和田特別委員

はい。

石会長

前段は、私も逆進性は平成6年以降高まっていると思いますが、仮にこれを前提にして具体的にどういう御提案がありますか。

和田特別委員

具体的な提案というところまで申し上げ切れませんけれども、逆進性を何とかしなければいけない……。

石会長

という問題提起ですね。

和田特別委員

はい。このままにはしておけないということです。

石会長

わかりました。

では、諸井さん。

諸井委員

地方分権をここずっとやってきて、地方の場合の歳出と税収の乖離というのが非常に大きな問題です。それをいずれ税源移譲で埋めていかなくてはいけないわけですけれども、地方にとっては、偏在性が少ないということと、景気によって変動するというのは困るわけです。なるべく安定的で偏在性のないものが地方では重要だと思いますから、そういう意味でこの地方消費税というのは、地方の税収にとって、将来も含めて非常に大事だなということを申し上げておかないといけないのではないかということでございます。

石会長

貝原さん。

貝原委員

諸井さんの意見に関連して一点だけ追加させていただきたいと思います。かねてこの税制調査会で議論するときに、税の議論が中心になりますから、当然ではありますけれども、税によってどのような行政サービスがなされるのかということとの関連において税の議論をすべき部分があるだろうと思うのです。先ほどの逆進性の問題、たしかに消費税は非常に大きな課題ではありますが、納税者サイドから言いますと、納得できるサービスに充てられるのであれば、こういった消費税についても理解が得られる部分があるだろうと思うのです。

そういった意味では、普遍的とか安定的ということのほかに、消費税というのは税の性格として、地方の行政サービスの負担という意味では適した税なのではないのか。負担とサービスとの関係が国税よりより明確になるという意味で、住民からの監視の目も十分とれるということから納得されやすい部分があるのではないか。そういったことから、地方を税源としてこの消費税を念頭に置きながら今後議論をしていただきたい、このようなことを申し上げておきます。

石会長

受益と負担の関係から、地方消費税というものが非常に適合性があるという御主張でございますね。わかりました。

ほかにいかがでしょう。佐野さん。

佐野委員

5月17日に首相官邸で総理と懇談した際に、総理が、俺が総理でいる間は消費税は上げないとおっしゃったわけです。その質問をしたのは実は私でありまして、「消費税どうするんですか」と言ったら、「俺がやっている間は上げない」と。そのときは、ずいぶんあっさりしているな、そんな簡単なものなのかな、という印象を持ちました。総理のそういうお考えはお考えとして、審議会の立場として、なかなかそうもいきませんよという意見を申し上げるのも審議会の役割ではないか。

私は、今度の6月の答申か報告か知りませんが、税調の意見の取りまとめにおいては、消費税の将来の引上げに触れざるを得ないと考えております。なかんずく、5月21日に諮問会議の民間委員がお出しになっている「平成の税制改革」というペーパーを見ましても、「税制改革の視点」の中で「社会保障制度の改革と合わせて行う」というスタンスが明示されているわけです。

とりわけここ1、2年は、年金も次の財政再計算が始まっている、新しい高齢者医療制度を年内に立案する、あるいは介護保険も3年目の見直しが間近に迫っている等々、社会保障制度改革の課題がずらっと並んでいる。しかも、2004年度からは基礎年金の国庫負担引上げが法律に明示されている等々を考えると、社会保障、社会保険の枠内だけで全部処理できるのかどうか。なにがしか消費税というか、一般財源からの投入という可能性も除外しておくわけにいかない。そういう意味から言っても、消費税の将来の引上げに一切触れないというわけにはいかないのではないかと思います。

石会長

どうぞ、菊池さん。

菊池特別委員

今度のこの審議自体が、基本的に全面的に見直して、将来、社会の変化に合わせた税制を考えていくということではないかと思って参加しているのですが、それで見ますと、いま佐野さんもおっしゃったように、消費税はいずれ上がっていくということは念頭に置いて、それをそろそろ公にも知ってもらうというのが重要ではないかと思います。

それで、僕も小泉さんのあれに参加したのですが、「私の内閣は」というのではなくて、微妙に「この内閣は」と言ったように……(笑)。そうではないかなと思っていたら、そうだなというふうに思えるようになってきたのですが。

それで、僕も何かの拍子で益税をもらったことがありまして、消費税をもらう立場に一回だけなって、どうしてこんなものがもらえるのかというのは不思議だったです。聞いてみたら、それはもらっていいんだよというので、もらいましたけれども、あれは明らかに変でありまして、そういうものを残したまま消費税の税率をいじることになると、不公平感が出てきて説明し切れないことがある。

もう一つは、消費税、最初は認識してもらうために別枠で取っていたと思うのですが、もう十分に認識は行き届いたということで、内税にすれば、取られてもどれが税金かわからないというのが現実的な日々の生活になりますから、内税にすると。価格として総額表示するということを早急に取り入れるべきだと思います。

石会長

菊池さん、それは事業者の扱いで消費税にのっかったんですけど、申告してちゃんと届けなきゃいけないんですよ。

菊池特別委員

しましたよ。したけど、それはもらっちゃっていいのだそうです。

石会長

そうかなあ。違う、違う。申告のときに、ちゃんと自分で消費税分を申告しなければいけない。税務署に聞いたら、そう言ってますよ。黙って入れたのは益税の恩恵に浴したというだけの話で、それはイリーガルですよ(笑)。違いますか。

〔「免税業者でしょう」という声あり〕

石会長

彼が免税業者ということはないでしょう。ちょっと確認したい。3,000万円以下だったら入れちゃっていいの? 僕が税務署に聞いたら、入れなければいけませんと。ということは、僕は3,000万円超えてると思われたのかなあ。

菊池特別委員

石さんは多いからですよ。

石会長

では、いまのは訂正。免税業者であればいい、自分の所得と比べてやりなさいということですな。わかりました。決して益税ではありません。どうぞ、河野さん。

河野特別委員

僕は、消費税についてはどこでも申し上げるんだけれども、二段階説なんですよ。第一段で、来年度に年末答申して、来年度中にやってもらいたいことは、消費税の欠陥だと言われている、簡易課税方式の問題と免税点制度の話。これは相当大きな益税を発生しているかもしれないと納税者から疑われているんですね。経済情勢とか政治情勢によってどうしても税率アップだということになったときに、その前にこれをこなしておかないと税率アップもできないという気がします。いずれは税率アップの時期が来るに違いないけれども、時期はわからないから、とりあえずその前にいまの消費税をもっとすっきりした姿にしたい。

それから、和田さんの話はもう10年間同じことを聞いているけれども、おっしゃるとおりなんだ。その話は、いまの話ではなくて、税率アップのときに再び和田さんと論争しようと思っているけれども、いまはそういうことを踏まえながらも、和田さんが言われたみたいにいろいろなことの中で消費税があるわけで、これだけで税収が確保されているわけでも何でもないから、それはだんだんにわかっていただきたい。以上。

石会長

では、水野さん、猪瀬さん、それから村上さん。どうぞ。

水野(勝)委員

昭和63年度のこの税制調査会で、抜本改革で消費税が導入された。このときの一つの考え方は、所得税というのは所得に対する税として考える、消費税というのは、所得とともに消費そのものについて担税力を見たらどうか、それのほうがむしろ現実的な担税力として見得るのではないか、そういう観点もあったと思います。そういった意味におきましては、あくまで消費税というのは比例税であると言っていいのではないかと思うわけでございます。しかし、所得なり収入に対する負担割合も税制上は見ておくべきは当然でございます。

そういった意味におきましては、逆進的な傾向が認められるの確かですが、先ほどのお話の3.3%から1.3%というのは、倍、半分となっているわけでございます。基礎問題小委員会の13回目のときに出された収入別負担割合を見ますと、5分位に分けて、第1分位が2.7%、第5分位が2.0%ということですので、それほど極端な負担率の逆進性というか、逆転は認められないのではないかという感じでございます。しかし、基本的には消費に担税力を見たので、比例税であると言っていいのではないかと思うわけでございます。

それから、将来の負担率でございます。昭和63年に導入されたときは3%でございまして、当時の竹下総理は、とにかく導入されたのだ、この20世紀の間においては3%で我慢しなければいかんぞ、と言われたことがございます。しかし、20世紀の間に3%は5%にされたわけでございます。単に増税ということでしたらなかなか納税者の理解は得られないかと思いますけれども、今後、経済が安定的に成長軌道に乗ったとか、プライマリーバランスを中心としてとにかく財政構造の抜本的な改革を見直すんだというときには、当然の候補の項目ではあろうかと思うわけですので、その筋道は、税制調査会としてもはっきり申し述べていっていいのではないかと思います。

石会長

猪瀬さん。

猪瀬委員

先週の総理との懇談での発言についてですけれども、佐野さんが言われたことで、「私の内閣では」とか、「私の任期中では」とか、いろいろ微妙な発言だけれども、これは、前提が歳出の見直しだと。歳出のカットができるのであればということで、それをもう少し言うと、郵貯改革とか、特殊法人改革とか、これがうまくできたならばという意味なんですよね。

僕も特殊法人改革にかかわっている立場から申し上げますと、「これがうまくいったら」というふうに解釈すべきなので、うまくいかなくて、それで消費税を上げるというわけにいかないだろうというのが小泉さんの発言の趣旨です。実際に特殊法人改革と郵貯の問題というのは、うまくいくかどうかわからないんですよ。これ、大問題で、この大問題を真っ正面から処理していかないで、それで消費税を上げるなんていうのは、納税者の理解を得られませんよ。小泉さんの発言の本来の意味はそこですから、あえて強調しました。

石会長

本来の意味はどうか、今度お会いしたときに確かめてきますわ。

では、佐瀬さん。

佐瀬特別委員

小泉総理の発言は、私の記憶によると「私の任期中は上げない」と。任期を何年やるかわかりませんけれども、早くなったり遅くなったりする可能性はあると思います。歳出、歳入の30兆円以上あるギャップを、歳出削減だけで縮めていくことは到底考えられないと思います。いま国債の格付けがどんどん下がって、海外からの目が厳しいのは、財政再建の展望がないからでありまして、いずれは、どう考えてもある程度消費税は上げなければいけないのではないかと、私だけでなく世の中の人の多くは思っておるようです。ですから、今回の税制改革に当たって、将来は負担増をしなければいけないと明示することは、外国に対するメッセージにもなるのではないかと思います。

その場合、当然、逆進性というのは必ず問題になって、大きな争点になると思います。ただ、これは技術的にどうなのでしょうか。私は専門家ではないのでよくわかりませんけれども、消費税の還付制度とか、それには納税者番号とかいろいろあるでしょうけれども、そういうことで解決していけるのではないか、そこで検討する必要があるのではないかと思います。

石会長

ありがとうございました。では、村上さん。

村上特別委員

いまの佐瀬委員と同じ意見ですが、この間の総理の懇談のときにも言ったのですけれども、要するに基本は、国がこういう状況になっているときに誰が支えるのですか、ということを踏まえて議論する必要があるのではないかということです。

具体的に一つひとつ税目を挙げれば、みんなまけてくれとかそういう話になるわけで、では、誰が負担するのですかということになると思うんですね。消費税についても同じで、逆進性があることは間違いないわけで、できるだけ低いほうがいいと思います。そういう面の配慮はもちろんしなければいけませんけれども、最終的にどの税目でどのくらいの財源として期待するのか、そういう立場からの議論をして、その中で消費税についてはこのくらい負担をお願いしなければいけないというふうに考えるべきで、所得税、法人税、その他の諸税を含めて、全体のバランスの中で判断していく問題だと思います。

ですから、結論的には消費税の引上げも捨て切れないというか、排除すべきでないということになると思うのですが、消費税がいいか悪いかという議論をここで詰めても、私が考えているそういう趣旨からすればちょっとバランスを欠くかなという気がします。

石会長

あと消費税について、御発言御希望の方いらっしゃいますか。では、本間さんだけでいいですね。どうぞ。

本間委員

最近、非課税の割合というテーマがいろいろ言われているわけですけれども、25%とかいうような言い方がされております。私、もう少し突っ込んで調べたのですけれども、給与所得者の中で非課税の割合は大体12%です。自営業者はその倍ぐらい、24~25%です。そして農業者、その他というのは50%以上が非課税業者です。所得で把握する限りにおいて実はそれだけの差がある。和田さんのおっしゃった問題は、実はクロヨンの反映でもあるかもわからないという問題です。つまり所得が担税力の唯一の指標かということになりますと、先ほど水野委員がおっしゃったとおり、それを補正するという意味で消費税というのは機能する可能性があります。

さらには貯蓄を調べてみますと、農業、その他が小さいということは、勤労所得者に比べてはないわけでありまして、資産との関係において見れば、これは逆進的ではないということも言えるわけであります。

さらに、現役世代とリタイアされた方の割合でいきますと、いまのストックの保有の状況を反映して、実は、消費税というのは世代間の対立を緩和させる効果があるということですから、あまり所得だけをメジャーにして税負担の不均衡をおっしゃるのは、現実のミクロの状況から考えると、複雑ないまの状況に適していないのではないか、幅広く負担のありようは検討すべきではないか、これが第一点であります。

第二点は、皆さん消費税に非常に積極的な御議論があるわけですけれども、おそらくこれは、時間軸をどういう具合に設定するかということが非常に大きなテーマだろうと思います。中期展望というものがありまして、これは今後5年を見通している展望ですけれども、この中で消費税というものに触れるのかどうか。一つは、先ほどからお話がございますとおり、基礎年金の部分の3分の1から2分の1の引上げはこの期間の中にございます。もう一つは、事業税との関係があるわけですけれども、国と地方の財源移譲等の中で、片山大臣からもこの提案が出ているということもございます。

この二点の関係の中で消費税に触れるかどうかという問題。そして、そのあと越えた部分については、当然のことながら、給付等が増えていく段階の中で、高齢者、医療制度の問題とか、年金の給付水準のもたらす税負担への圧力をどのようにこなしていくかという問題、ここを十分に整理していただいた上で消費税の位置づけというのを書いていただければ非常にありがたい、こういうことであります。

石会長

総括的なおまとめをいただきまして、ありがとうございました。そのとおりであろうと思います。消費税はきょう、私が記者レクをしますと、おそらく質問が集中すると思いますが、次のような取りまとめにさせていただきたいと思います。

将来のアップは、少子・高齢化等々を考えればやむを得ざる事態であろうが、第一段としては、俗に言われます益税、いうなれば免税点の引下げ、簡易課税制度等々をどう見直すかということをまずやらないと将来に備えての準備が終わらない。それと、滞納、インボイス、記帳等々の不公平感を一掃する形のことはまず必要であろうということですね。それが第一点。

それから、地方消費税というのは地方の視点から見ると重要で、特に地方になじみやすい。つまり、受益と負担の関係から見て逆進性というものをある程度納得してもらえる、そういう要素もあるよというのが地方の税源としては重要であるという御意見。

それから、逆進性の解釈をめぐりまして、所得のみを取り上げれば、平成6年のときに比べ累進税が落ちていますし、社会保険料負担も増えている等々を踏まえれば、所得のみのベースでは逆進性だろうけれども、ただ、消費税を導入したときの背景から言うと、消費税そのものに担税力を認めれば比例税であろうし。最後に本間さんがおっしゃっていただきましたように、所得が唯一のメジャーではなくて、さまざまに入り組んでいる例えば世代間の不公平感等々を踏まえれば、消費によってその辺を補完するというか、是正する役割もあろうかというので、単一のメジャーではなくて、所得、消費、あるいはストック資産も踏まえて議論すべきである、こういうような御議論だったと思います。

あと、表示の問題ですね。総額表示の中で、税額をはっきり書けという御意見のほかに、定着したということを踏まえて内税がいいのではないかと。そういう御議論があったかのように思います。

最後は、第二段階としての消費税アップ。これは、小泉首相の意見も踏まえていろいろな解釈もあるわけですが、そう簡単ではなかろうと。そういう意味で、時間軸の設定、とりわけ5年間ぐらいの話でどう書けるか。特に基礎年金の例の3分1、2分の1の話もこれあり、国から地方への税源移譲の問題これありで、そうのんびりもできないかもしれない。いずれにいたしましても、時期は明示できませんが、将来的には税率アップ、もろもろの事態を考えれば、やむなしということであろうという御議論に集約されたと思います。

それでは、次の議論といたしまして、酒税、たばこ税、エネルギー関係諸税、これを終わりにして、休憩をとりたいと思いますが、これの議論は次のようになっていたかと思います。

エネルギー関係諸税というのは、道路を中心とした特定財源の歳出面を幾つか基本的に構築しているわけでありますが、我々は加藤前会長の時代から一般財源化ということを提唱し、それとの絡みで公共事業関係の長期計画等々は見直せということもだいぶ言ってきたわけであります。これからは、おそらく環境との対応で、暫定税率が終わったとき等々の議論とも絡んできますが、揮発油税等のところをどうするかというのは大きな問題であります。環境税の議論すべき環境がまだ熟していないということもございまして、即にくっつけるわけにはいかないという判断ではございますが、長い目で見れば、環境税とのリンクは避けて通れない議論でもありましょうから、そこはそこで押さえる。ただ、一般財源化ということについては年来の主張でございますから、これはもう一回議論をすべきではないか、このように思います。

酒税は、いろいろ資料をお出しいただき、また、あとからも御説明いただきますけれども、現在10種類に分かれております種類別のものを、もう少し簡素化していいではないかということと、それに応じて種類間の負担調整というのはあり得べし。その観点において、昨年だいぶ議論いたしました発泡酒の問題、本体のビールとの関係、これの税負担格差の縮小という議論は当然起こってこようかと思われますし、何といっても、ビールと同じようなものと思っている発泡酒が雑酒という位置づけになっております。そもそも、税の中での発泡酒の取扱いが雑酒でははなはだおかしいのでありまして、そういうことも踏まえまして議論しなければいけないと考えております。

たばこ税につきましては、国際比較等々の面で見て、最近5年ぐらいのベースで見て、日本のたばこの税負担は必ずしも引上げ幅が他の国に比べると大きくないということもあって、将来的な税負担のあり方論は当然のこと議論しなければいけないだろうという議論になっていると思います。

それの三つにつきまして、第二の大きなくくりとして御議論いただきたいと考えております。

では、道盛さん、資料説明をお願いします。

道盛税制第三課長

お手元に置いていただこうと思いましたが、一応簡単に御説明させていただきます。ごく手短にいたします。

順番が違っていて申し訳ございません、まず酒税でございます。1ページをお開きいただきますと、いま会長からお話しいただきましたとおり、日本の酒税というのは、1ページの図、10種類に区分されて税率が設定されております。その中で税負担格差があるのではないかという例として、真ん中辺のビール、一番下の雑酒の中に発泡酒。発泡酒の現在売られておりますのは大半が「その他」という一番安いところの種類でございまして、半分ぐらいの税負担になっているという問題ですとか、あるいは、清酒、合成清酒、果実酒といったある程度類似性のあるものについて、税負担が異なっているというような状況がございます。

2ページをお開きいただきますと、長いスパンをとりまして、課税数量の推移と課税額の推移を見たもので、高度成長期、昭和時代を通じて、課税数量も増えるとともに、下のほうに改正増減収という形で載せておりますが、何回か増税がございまして、それを上回る形で課税額が伸びていったのが昭和の時代でございます。最近に至りまして、特に平成6年で一回ピークを迎えましたあと、課税数量(棒グラフ)のほうは横ばいの中で、課税額(折れ線グラフ)のほうがどんどん落ちてきているという状況がございます。

3ページをお開きいただきますと、その背景として、ビール、発泡酒の中で発泡酒の割合がどんどん増えている。昨年は約3割であったと申し上げましたが、今年に入りまして4割近い数字になっております。

同じ資料の5ページをお開きいただきますと、諸外国の酒税の分類でございます。ここにございますとおり、各国それぞれの事情に応じて違っておりますが、区分としては、少ないところでは四つ、多いところでは八つ程度の区分となっておりまして、いずれにしても日本よりも少なめでございます。

6ページ以下がたばこ税でございます。たばこ税につきましては7ページをお開きいただきますと、右下にございますが、税額の負担割合という意味では安定的に推移しております。9ページは、いま会長からお話しいただきましたとおり、諸外国との比較をしてみたものが、特に右側の表にございます濃い部分がたばこ税の額。10ページをお開きいただきますと、最近5年間のG5諸国のたばこ税の引上げ状況といったものを表にいたしております。

12ページ以降は、先ほどお話しいただきました特定財源の一覧表を3ページにわたってお載せいたしております。

その議論の際でございますが、16ページ、17ページ、特に16ページはガソリンの税負担を諸外国で比較してみたものでございます。日本はOECD諸国中ほぼ中位、真ん中辺ぐらいの負担率。下のほうにございますイギリスなどは、きわめて高い税負担の状況となっているのが現状でございます。

17ページに、自動車そのものに関する年間の税負担額の国際比較もお載せいたしております。

最後、18ページ、環境税のような議論がございますが、地球温暖化対策推進本部の今年3月の「大綱」をお載せしております。一番下にございますが、「他の手法との比較を行いながら、さまざまな場で引き続き総合的に検討する」という位置づけになっております。

以上でございます。

石会長

では、地方税関係、どなたにお願いできるのかな。

木内都道府県税課長

「27-7地方税関係」でございます。

1ページ目は、地方税では軽油引取税と自動車取得税が目的税ということでございます。下ほうは譲与税の内容でございます。

2ページ目でございますが、網かけ部分をごらんいただきたいと思います。地方におきましては、道路事業費に占める特定財源の割合、32.7%という状況になっております。また、下のほうでございますが、地方道の改良率、52.7%ということで、半分ちょっとの改良率であるという現状を御報告させていただいております。

以上でございます。

石会長

それでは、酒、たばこ、エネルギー関連、一括いたしまして、15分前後をとりまして議論を整理しておきたいと思います。

諸井さん、どうぞ。

諸井委員

最初の酒のほうですが、結局、ビールと発泡酒の問題でしょうけれども、そもそもビールがほかのものに比べて高いんじゃないですかね。両方合わせるというのだったら、むしろビールを下げて発泡酒に合わせるのが筋ではないか。あるいは、この際やるのだったらお酒全体のバランスをもう一遍見直すと。

エネルギーの関係は、道路特定財源というのは道路をつくるという前提で納税者が納得して払っているわけですよね。だから、それは道路に充てないということになったら、一遍減税するなりやめるなりする。環境税というのを考えるのだったら、ただガソリンだけにかけるという話ではなくて、いろいろなことを考えてきちんと設計しないといけないのではないかと思います。安易に道路特定財源から環境税へというのはちょっとおかしいのではないか。

以上です。

石会長

ただ、揮発油税は有力な候補にはなるわけですね。

諸井委員

もちろん、そうです。

石会長

そういうことでしょうね。わかりました。

福原さん、どうぞ。それから松永さんですね。

福原委員

発泡酒については今野さんもかつてから、新規参入者に対して優遇すべきであるという御意見でございましたが、今回、課税ベースを拡大することによって所得の低い方々に当然課税が行われると思うんですね。ここで、ささやかな楽しみを奪うということはいかがなものか。これはちょっとロマンティックな話ですが、そういうことがございますのと、それから諸井さんの言われたように、逆にビールが高すぎるということがあれば、それの調整ということもあるのではないか。

もう一つは、発泡酒を上げますと、ほかの例えばチューハイとか、そういうほうに消費が移転しまして、結局、酒税全体としては増収にならなくなってしまうというシミュレーションもできるのではないかと思いますので、これは一度検討されることをお勧めするわけです。

第二番目に、たばこでございます。諸外国、特に英国の場合は、たしか医療保険費との関係でこれを高くしているところがあったというふうに聞いております。わが国でも、諸外国に対して水準が低過ぎることと同時に、たばこを吸うことは健康に悪いという定説に大体なっておりますので、その点からも、吸わせないようにするために上げるという言い方がいいかどうかわかりませんけれども、若干上げることについては優先的に取り組むべきではないかと考えております。

松永委員

私も福原さんがおっしゃったとおりで、ちょうど「27-6」の3ページにビールと発泡酒の課税数量とか出ておりますけれども、これを見ると、いかにも発泡酒比率が高くなって、発泡酒が悪者扱いというとちょっと変ですけれども……。ここ数年の数少ないヒット商品だと思うんですね。冒頭におっしゃった経済活性化戦略から言っても、ここに持ってくるというのはいかがなものか。消費税というのは長い目で見たらやむなしと、そこくらいまではまだ納得できるのですけれども、これだけ理解しやすいものというのは何かおいしくないなあと。先ほどの「ささやかな楽しみを」というのも、ほんとに理解できるなというふうに思います。

石会長

私も学生によく言われますよ。「我々の楽しみを奪わないでくれ」と言われますけれども、ただ、ヒット商品というのは永遠にヒットじゃないんですよね。いつ頃が来たら手打ちというか、普通になりますか。

松永委員

先ほど福原さんがおっしゃいましたように、発泡酒をそういうふうにすると焼酎に行く。それは以前、ウイスキーを上げたときにウイスキーが落ちたというのと同じなのではないかなというふうに思います。

石会長

どうぞ。

松浦委員

道路の特定財源の問題ですが、いま一般財源化という話が出ておりますけれども、我々地方にとりまして道路というのはまだまだ必要なんですね。いわゆる特定財源、国からの補助金が来るわけですけれども、一般財源としてもほぼ同等のお金がここに出ているわけで、なかなか大変なんですけれども、そうした点で住民のニーズが非常に高い問題なわけでございまして、我々選挙をやる身にとっては、道路をつくるというのは非常に重要問題です。ですから、知事さん方の中には、国の道路特定財源を一般財源化するのであれば、道路整備のニーズが高く、財政状況の厳しい地方の道路特定財源に回すべきだという話もあるわけでございます。ぜひその点を考慮していただければというふうに思います。

石会長

地方道路に限定しろということですか。

松浦委員

はい。いつも私は申し上げているのですが、税調の中では、国道・地方道と書いて、国道だけで、地方道がすぐ抜ける傾向にあるわけですね。地方道が大事だということを申し上げたいわけです。

石会長

どうぞ。

松本委員

たばこ税ですが、私の北方町では、平成14年度の予算で税収の6.3%を占めているわけでございますが、全国の町村でも税収の約6%を占めているのではないかと思います。この税は税源の偏在が少なく、安定的で、伸長性があり、また、貴重な地方税源となっているところでございます。最近の新聞などで、時折、税率の引上げの報道がなされておりますが、たばこ税の税率は国1・地方1を基本として決定されており、税率の引上げの際は厳しい地方財政にも十分配慮し、少なくとも1対1の割合を確保していただきたいと思います。

それから、いま松浦委員が申されたのですが、地方にとっては本当に道路関係が遅れているわけです。それからニーズも高いわけでございますが、私の町、実を申し上げますと、国道が入っております。それとともに、今度6町で合併することにしているのですが、それに通ずる道路関係、それとともに、住民の生活、あるいは社会的活動がやはり道路になってくるわけでございます。そういうことでいまバイパスをお願いしているわけですが、まだ解決しておりません。ニーズも高いわけですから、ぜひとも道路整備についてはよろしくお願いしたいと思います。それと同時に、先ほど話が出ましたが、暫定税率も2倍かかっているわけでございます。

一般財源にいたしますと利用者に重い負担になってくるわけでございますから、一般財源にするならば、使途の見直し、それと負担水準の見直しが検討されまして、暫定税率の引下げも考えながらやっていただきたいと思います。我々は特定財源とともに一般財源を多くつぎ込んでいるわけでございます。そういうことで、道路特定財源については地方の立場としては堅持をしていただきたいと思います。

石会長

前段は、たばこ税を上げたら地方もちゃんと払えというのに力点があるのか、それとも、そもそも上げていいよというほうなのか、どちらですか。

松本委員

いままでどおり1対1にしてもらいたいということです。

石会長

そうすると、上げることはかまわんということですな。

松本委員

まあ、そうですね。

石会長

わかりました。

榊原さん、どうぞ。

榊原委員

松永委員や何人かが言われたことと同じですけれども、発泡酒の税率を上げるとか、たばこを上げるということについて言えば、いまのこの冷えきった消費マインドをさらに加速させてしまって、経済の活性化にはつながらないのではないかということを申し上げておきたい。酒と言われたので、もしもワインについて増税などを考えられているとすれば、御承知のとおりワイン業者の94%は中小企業です。そこに対して大きな打撃を与えてしまうので、ワインの増税などについては慎重にやるべきではないかと思っています。

石会長

短期の側面を強調されましたけれども、我々の税制改革は中長期のほうで話が行くと思いますが、そのときは将来は考え得るという余地は残っているのですか。

榊原委員

全体を見てからでないと、ちょっと返事はできません。

石会長

そうですね。わかりました。どうぞ、松尾さん。

松尾委員

発泡酒同情論が多いものですから、一言。酒税については税負担格差を小さくするというのは基本だと思います。その中で発泡酒、ビールについて考えていく必要がある。それが、いま直ちにビールと発泡酒の税率を同一にすることについては、相当反対の方がいらっしゃるわけですね。でも、これはもう実際問題として同じものですから、ビールと発泡酒一体どこが違うのかと。はっきり言って隙間商品ですよね。隙間商品が出てきてヒットはしたのですが、私も飲みますけれども、ビールと全く同じですよ。そういうものが極端に税率が低いというのはやはり問題だと思います。

ですから、いますぐ同じ税率にしなくても、期限を切って何年後には一緒にするべきだと思います。いますぐでなくても結構ですよ。その間、企業努力は認められるわけですから、その間に企業も対応していただきたい、こういうふうに思います。

石会長

和田さんのお手が挙がっていますが、あと水野さん、松田さん、本間さん。もう終わりにしたいんだけど、いきましょう。和田さん。

和田特別委員

今回の一連の税制改革の中で、環境税というのを検討していくことが必要だと思います。それに先立って、現行のエネルギー税制全体をもう一度見直すことが必要だと考えております。

それで、きょういただきました資料の中に経済財政諮問会議の「平成の税制改革」という2枚があります。これを見ていましたらば、2ページ目の「(3)長期にわたる安心の確保」というのはたしかにいま非常に必要なことで、安心感がないということがいろいろ言われております。この下のところの黒マル二つがちょっと関係あると思うのです。「公共事業の長期計画における重点化を行い、特定財源制度を見直す」、それから最後のマルが、「地球環境に配慮した税制をめざす」。

ちょっと伺いたいのですけれども、このまま読んでいますと、道路の特定財源であるガソリン税など、公共事業に関係するものだけが見直しの対象になってしまっているのかなという気がするのですけれども、そうではなくて、公共事業に関係のないものも含めて見直しの対象にすべきだなと。例えばエネルギーの特定財源のようなものも、公共事業に直接関係はないように見えますけれども、全体についての見直しをした上で環境税をどうするかということを考えていく必要があると思います。

石会長

いまのところ、会長代理でできればお願いします。

本間委員

いま和田さんの御指摘のとおり、我々は道路特定財源に限定して書いているわけではございません。エネルギー関連もすべて含めてということであります。その次の文章は、含蓄のある文章として御理解いただければいいという具合に思います。まだ結論も出ておりませんので。

石会長

ついでに御意見を述べてください。いま、手を挙げられたでしょう。

本間委員

税制改革のベーシックなアプローチというのは、一つは、課税ベースをできるだけ広げて税率は薄くというアプローチと、同一カテゴリーのものに対しては基本的には同一の税率を適用する、こういうことでありますけれども、いまの発泡酒の問題は、同一の税率にするというような形で相当近似性の高いものであろうと思います。しかし、インセンティブ、先ほどおっしゃいましたとおり、初期の状況の中ではそれは正当化されるということがあり得るのだろうと思いますが、その際、近似的な税率というものを上に上げるのか、下に下げるのかという問題はあるわけで、それはトータルとしてできるだけ低くしたほうがいい、こういう問題がありますから、その点についてぜひ考えていただきたいということ。

それからもう一つは、全体としてのイメージで、税の専門的な調査会としてはやむを得ない部分があるのだろうと思いますが、不公平税制あるいは非効率の税制として課税ベースの見直しを徹底化するということは、先ほどのアプローチからすれば当然のことですが、それだけが議論の俎上にのせられますと、あたかも税調が全部増税的な色彩でやっているのかと、こういうことがかなり世の中からは指摘されておるわけであります。バランスのとれたベーシックなアプローチを、どういう形で税制調査会が議論するかどうかということが私は非常に重要なのだろうと思います。その際に、税収の必要性についてどのように説得するかという問題は、それはまた別個の問題だろうという具合に思います。それを合わせて明示的に議論をしていくということが必要なのだろうと思います。以上です。

石会長

増税の色彩ということで報道されていますが、私は、所得控除を見直すときには、あるものは統廃合、やめてしまうけれども、あるものでカバーしようという説明をしていますし、歳出面で面倒を見ろと言っております。いろいろな工夫はしておりますけれども、どうもそこは報道ぶりがそうならないんだよ。私の責任もありますけどね。

では、水野さん。手短にお願いします。

水野(勝)委員

酒とたばこ、これは財政物資でございますので、適切な負担水準が確保されるよういつも検討されてきているわけでございます。たばこにつきましては、先ほどの御説明で外国より安い面もあると。例えばイギリスはかなり高く見えるわけで、この表ですと、イギリスの3分の1ぐらいですけれども、イギリスは、平均的なサラリーマンですと所得税が日本の10倍以上高い。平均的なサラリーマン、所得税と1年間に吸うたばこ税とは大体同じくらい。ところが、イギリスですと、所得税に比べてたばこ税は4分の1ぐらいになっている。そういう全体としてのバランスもあることは確かでございます。

それから、健康の問題でございますけれども、これは、たしかに疫学的・統計学的にはいろいろな病気との関連が深いと言われておりますけれども、病理学的にはそこは何ら立証されているわけではないわけでございます。たばこと健康の問題につきましては、たばこ事業法に基づきまして、現在、財政制度等審議会で検討が行われているところでございます。

それから、先ほどの資料、御説明がありませんでしたけれども、WHOで健康とたばこの条約が検討されております。その中に、健康と税負担の水準の条文も入れられて候補になっているわけでございますけれども、あくまで税負担水準、酒であれたばこであれ、これは各国の主権マターであるということで、そういった条約で健康との関連で税負担水準を規定することは日本政府としては反対であると。こういうふうな態度を維持しているところでございます。

石会長

松田さん、どうぞ。

松田特別委員

まず、発泡酒ですけれども、これは、ビールと同じようなものにあれだけ安い税率のものがあるというのはやはりおかしいわけで、ビール並みに上げるべきだと思います。

それで、ヒット商品というのが出たんですけれども、これはヒットするのは当たり前で、自分の会社で売っている製品の中で安いものを出せば売れるのは当たり前で、食われているのは自分の会社の製品。経営者としてこんな馬鹿なことはないというふうに思います。

それから、ガソリン税など道路特定財源ですけれども、これは暫定税率で高くなっていると。道路に使うからみんな許してくれているというのは真っ赤な嘘だと思います。みんなガソリンを買うときに、このガソリン税は道路建設のために使われているから払うのだと、そういうふうに思ってガソリンを買う人はおそらく一人もいないと思います。車に乗るのに便利だから買っている。要するに、ガソリンには担税力があるからいまの税金があるわけでして、それが道路建設と関係があるというのは、曲解というか、まさにためにする議論であるというふうに思います。

以上です。

石会長

また新しい解釈が出ましたね。どうぞ、佐野さん。

佐野委員

道路特定財源に絞って申し上げますと、これを従来どおりというようなことになると、これは税制改革になりません。小泉首相もこの前会ったときに、既存のルール、既存の構造を変えるのが自分の使命だと思っているし、税制改革もその基本線に沿ってやってもらいたいということをおっしゃって、その路線に従えば、この長年の懸案をこの際またパスする、そのままになってしまうということになれば画竜点睛を欠くということであって、最優先に一般財源化というのは打ち出すべきだと私は思います。

それからもう一つ、道路特定財源の話ばかりしていますが、一方で活性化ということで、かなりの減税項目も用意しなければいけない。しかし、その財源は国債に依存しない。歳出とか既存の税収構造の見直しで工面すべきであるという考え方が、諮問会議のほうで示されています。私も全く同感であります。この線に従えば、余裕のあるといいますか、持ち出せる財源としてもこの特定財源というのは軽視するわけにいかないと思います。

もう一つ最後に、地方の方々から、道路整備の必要性というのが話されていますが、その点は私も全く同感なのであります。ただし、道路をつくるということと、税収を全部道路につぎ込むお金の面と、これは一緒に考えなくてもいい。私は道路をつくるのは別に反対ではありません。しかし、入ってくる税金を全部使えるのだ、あるいは、全部使わなければいかんのだという環境だと、コストダウンということが全く行われない。民間は1割、2割のコストダウン、あるいはそれ以上のコストダウンをやっているわけで、なぜ、公共事業、あるいは道路だけコストダウンというのがめぼしい成果が上がらないのか。これは、一つにはこの特定財源というのがある。そういう意味からも見直しは断固として打ち出すべきであると思います。

石会長

では、水野さん、最後に。

水野(忠)委員

これからの税制改正の審議に当たってですが、基本的な認識といいますか、どういうことなのかと思いましたのですが、いわゆる課税ベースを拡大する、同時に税率を引き下げる。これは、大体の基本的な税制改革の方針でありましたが、つい昨年度12月に出しました平成14年度の税制改正を見ますと、平成10年に--当時は石先生が法人課税小委員会の委員長をされて、課税ベースの拡大を検討すると同時に、それをもとに税率を下げるということだったのですが、平成10年に37.5%から34%に下がった。そこから先なのですけれども、30%まで税率が下がりまして、それを昨年末の答申では、いわゆる課税ベースの拡大が遅れて、それより先に税率のほうの引下げが先にいってしまった。ですから、これについては検討しなければいけないという旨が14年度の税制改正の答申に出ております。

ですから、課税ベースの拡大とその税率を一体と見るというのは、現実の段階としまして、いま税率が先に下がってしまった状態で課税ベースの拡大が追いついていかないという状況にあるということ、この点は認識しておくべきではないかなと私は思います。

石会長

酒、たばこ、エネルギーとどう関係あるの? いまの話は。

水野(忠)委員

お話が出たものですから。

石会長

そうですか。では、それはトータルのほうで御意見として伺っておきます。

貝原さん、どうぞ。

貝原委員

道路特定財源のことについて手短にお話をしたいと思いますが、私ども阪神・淡路大震災を経験しましたときに、日本の都市のあり方について非常に深く反省をさせられたところであります。そのことが、旧国土庁で議論されました「21世紀の国土ビジョン」の中に反映されているのですが、昨今の議論の中では都市の問題が非常に集中的に議論されていて、都市と多自然居住地域との関係、国土全体の利用の仕方ということについて、もう議論がなされなくなってしまっている。今後、大きな津波地震等が警告されているわけですが、おそらくああいうものが起きましたときには、再び国民の中で大きな反省として出てくるのではないか、そういうような観点からいたしまして、道路特定財源につきましては、私も長い間この創設にかかわってきた者の一人として、一般財源化することにつきましては、先ほど御意見もありましたけれども、私の経験からすると、いまの道路の整備水準からして、一般的には国民の納得はなかなか得られない部分があるのではないかと思います。

そのこととは別に、よくこの税調では国際比較の議論がなされますが、道路の有料道路制度について外国との比較をしていただきますと、有料道路で建設費まで道路代金として取っているという国は皆無であります。メンテナンスの費用を一部取っているというところはありますけれども、本来の国民的な生活道路であります一般道路について、観光道路は別でありますが、諸外国に比べて非常に遅れていた日本で、急スピードで道路を整備しなければいけないということで、財投を活用してこういった有料道路制度を日本でつくっているわけであります。正直言って、外国に比べてこういう道路について負担があるということは、せっかくつくった道路を有効に活用されないということになっていますし、そういった意味では狭い国土を広く使うということについても障害になっている。

そういったことからすると、あまり多くの議論はなされませんけれども、私は、道路特定財源は過去の道路建設費に充当して道路料金を引き下げる。建設だけに活用するということが問題であるとすれば、こういうことに使うべきではないのか。これはある意味では、国民の負担を下げるという意味になるわけでありますから、経済活性化につきましても非常に大きな有効な手段になるのではないか、このように思います。

猪瀬委員

すみません、ほんの30秒ぐらい。

石会長

はい。言いたいわけですね。

猪瀬委員

こういう話が出てくると、道路特定財源の見直しというのはやはりちゃんとやっておかないと、ひどいのは高速道路のところでオーバーブリッジというのがあるんだけど、橋で、300メートルぐらいのところに3本もあるんだよね。そういうことをやっているから、やはり道路特定財源というのはそのままではだめだよということを言っておかないと、コストの発想が出てこないですよ。

石会長

いまの議論を、私なりに要約させてもらいます。

酒税に関しましては、いろいろ複雑になっているのを簡素化しろというお声もありましたが、発泡酒については意見が分かれましたね。ただ、意見がだんだん集約しつつあるのは、本体のビールとの間のギャップがあるから、そこの間を縮めるような、上下で接近を図るようなというような御意見が、折衷案としてはだいぶ有力になってきたのではないかと思われます。ただ、いまの景気動向も踏まえ、元気が出るような税制改革という視点もあるのかもしれませんが、発泡酒はヒット商品であることを踏まえれば、即上げるのはという御意見もあったし、同一税制だから上げてもということで、即、まともにビールと一体化しろという御意見ではなかったと思います。

実は基礎問題小委員会では、どちらかというと「上げる」の方向があったものですから、そういう記者レクをして、上下の差を縮めるということもちょっとは言ったのでありますが、「政府税調は発泡酒を上げる」なんてテロップに出ちゃったということで、きょうはまたこの揺り戻しがあったのかなとは思います。お酒はそういうことですね。

それから、たばこについては、医療費関係との関係もあり、優先的に取り扱ってあげてもという御意見、あるいは、地方の重要な財源であるという点からの御指摘もありました。まだ健康等々で問題もそう確定していないからという御意見もあったという形ですが、主力はたばこ税引上げについて御意見が多かったと思います。

道路特定財源も、地方の代表の方々はやはり事柄の性格上、温存というか、維持を主張されるのは当然だと思いますが、さはさりながら、このまま道路特定財源にしておくとコスト意識がない、したがって一般財源化ということを表に出して最優先課題にせいという声も強かったという点で、これも意見が分かれたかなと思われます。

それでは、数分休みましょう。4~5分休んで、またお集まりください。パンクチュアルに始めますから。

〔休憩〕

石会長

再開しましょう。あとちょうど60分しかなくて、まだ議題が三つ、四つ残っておりますから、簡潔にいきたいと思います。

最初が、国と地方の関係でございますが、今井さん、あまり時間がないのですね。

今井委員

ええ。

石会長

では、ちょっとご発言ください。特に時間を提供します。

今井委員

ありがとうございました。しばらく出ておりませんので、ちょっと総論的なものを含めて発言させていただきます。

3月5日の小委員会でも申し上げたのですが、財政との関係で、財政が容易ならぬ状況になっておりますので、歳出削減というのは最大限に努力をしなければいけないのですけれども、プライマリーバランスが13兆円も赤字の現在、財政削減、歳出削減を財源にした減税ということは考えるべきではないと思っております。歳出削減は国債発行の減に結びつけるべきだと思っております。

さはさりながら、税の中立の中で経済活性化のための諸施策は必要だと思いますので、経済活性化のために一番効率のある税は何かというのを三つぐらい申し上げたいのですが、一つは、消費を活性化するために相続税の控除を贈与税に前倒しして活用する、そして若い人に所得を移転するということは、これは、税財源が要らないで消費の活性化に結びつくというふうに思っております。

それから、これからの日本経済の活性化にとって大事なことは、研究開発とIT投資だと思っておりますので、これについてはやはり減税を考えるべきだと思います。ただ、財源につきましては、少し先の増税を担保にするとか、あるいは租特がたくさんありますから、そういう租特の部分を削ってこちらへ回すとか、いろいろそういうことを考えるべきだと思います。

最後にもう一つ、さっき消費税の議論が出たかと思いますが、どんなに歳出を削っていっても、小渕内閣のときに8兆円減税したということで、いま、税財源が足りないと思います。いずれ、国と地方どちらかの消費税が話題になってこざるを得ないということでございますので、そういうときのアレルギーに備えて、益税を縮減、廃止するということをできるだけ早期に実施すべきではないか、かように思っております。

以上、お時間をいただきましてありがとうございました。

石会長

ありがとうございました。いままで出た議論、大体そういう議論も出ておりましたから。

それでは、次の大きなイッシューでございますが、国と地方の関係でございます。これは、事務局からまた御説明いただきますが、我々としては、税源移譲を含む国と地方の税源配分の問題も議論いたしました。その前提として、市町村合併とか地方歳出の見直しというのが大きな問題であろう、あるいは、地方交付税制度の改革そのものも必要であろうというようなこともあり、トータルで税源配分を目指さなければいけないと。当然、役割分担の見直しもありますよね。そういう議論をいたしました。

それから、過去とかヨーロッパ等々の比較などにおいても、どういう状態になっているかということも踏まえて議論いたしました。税源移譲して地方の公共サービスの税源になったときに、やはり行政のコスト削減効果があるではないかという御議論もずいぶんあったように思います。そういう意味で、そういう前提さえ満ちればという議論がございましたが、ただ、貧乏人が、あるいは借金を重ねている同士がその辺でパイを取り合ってもどうかね、と。国の信認に大きくマイナスになるのではないかという問題もあったりして、この問題もいろいろ議論があったということでございます。

また御議論いただくとして、では、岡崎さんと道盛さんから、簡単にバックグラウンドデータを御説明ください。

岡崎企画課長

それでは、縦長の「総27-8地方税関係資料(国・地方関係等)」で簡潔に御説明します。

1ページをお開きいただきます。地方税制の現状と課題という認識につきまして、4点ほどあります。一つは、従来から言われておりますが、租税収入が国・地方3対2なのに支出は2対3であって、この乖離を埋めることが課題であるということ。

2番にありますように、地方税も空洞化が進んでいるという状況にあります。住民税においても就業者のうち5人に1人が納めていない、法人については、7割がいわゆる応益課税である事業税を納めていないという状況である。

3番に、都道府県税収は特に事業税等が基幹税でありますが、非常に不安定であるということ。それから、市町村税収は比較的安定しておりますが、最大の基幹税の固定資産税が減少し始めたりしているという状況が書いてあります。

4番目に、地方税、いろいろな種類がありますが、特にここに3税が書いてあります。一番下の法人2税のように、東京が1人当たり100入るとすると、沖縄は2割ぐらいしか入らないということで、税目によって非常に偏在があります。

2ページにまいりまして、そういう状況下で地方税の目指すべき方向として、「応益、広く薄く、安定」という三つのキーワードであろうかと思います。

真ん中は、前のページと同じですので飛ばしまして、先ほど申し上げた課題への対応として、国からの税源移譲等によりまして、国税と地方税の比率を2対3、3対2の問題を踏まえて1対1程度にしたいということを指向したらどうか。その場合に、偏在性の少ない住民税なり地方消費税を拡充したらどうか、こういうことでございます。

それから、個人住民税における諸控除の見直し、検討をしなければいけない。法人事業税の外形標準課税を導入すべきである。固定資産税についても安定的確保が必要だというようなことを対応策として挙げております。

そういうことで、住民による税の使途に対するチェック機能が身近なところで向上するであろう。そういうことで、地域経済の活性化なり効率化等にも資するのではなかろうかということでございます。

あと、資料がありますが、9ページだけ一点。税源配分の前に事務の役割分担、事務の配分が前提だという議論がときどきございます。9ページの真ん中にあります棒グラフでございますけれども、斜線が、地方で行っている事務でございます。実は日本の場合には、大きな事業として、国土開発、学校教育、民生等、すべて6割から8割5分程度、すでに地方で行われておりまして、事務は相当程度分権化しております。移っているのですが、財源のほうが補助金等で留保されている。それによる関与がなされているという問題でありますので、いまの状態でも、ぜひこの辺の解消のために税源の移譲が必要ではないかということであります。

これが、基礎小委員会で御説明させていただいたことでありますが、その後、片山大臣が、先ほど会長からお話がありましたように、諮問会議に、お手元にも一応お配りしております、「地方財政の構造改革と税源移譲について」という試案を総務大臣個人の案として提出されたところでございます。詳しい内容は省略いたしますが、基本的には第一段階として5.5兆円の税源移譲、それと合わせて同額の国庫補助負担金のカットをする。それから交付税のほうは、算定方法の簡素化なり見直しを行うということ。第二段階で、地方財政収支の改善を踏まえまして、地方交付税を今度は地方税にかえていく。地方交付税の額を削減して地方税の移譲を進める、こういう二段階の案になっているものでございます。

私からは以上でございます。よろしくお願い申し上げます。

石会長

道盛さん、どうぞ。

道盛税制第三課長

それでは、資料「27-9」に基づきまして簡単に御説明いたします。

1ページにございますが、こちらが経済財政諮問会議の「骨太の方針」と呼ばれているものでございまして、「地方税の充実確保」についての記述がございます。これを図示化いたしましたのが2ページでございます。これを読ませていただきますと、「地方行財政の効率化を前提に、まず、国と地方の役割分担を見直しを行って、これを踏まえ、国庫補助負担金の整理合理化、地方交付税のあり方の見直しとともに、税源移譲を含め国と地方の税源配分について根本から見直し、そのあり方を検討する。その際、国・地方それぞれの財政事情や個々の自治体に与える影響等を踏まえる必要がある」ということで、ここに、国・地方の税源の問題を考えるに当たっての基本的な考え方並びにその手順が示されているものと私どもは思っております。

3ページをお開きいただきますと、先ほどもお話にございました、上が国と地方の歳入、下が国と地方の歳出をあらわしたものでございます。上のほうの歳入が、国が3対地方が2、国と地方の歳出、下のほうが、国が2対地方が3ということで、ここが1対1というお話の根拠になっているものでございます。

この図自体、私どもから見ますともう一つの事実をも示しております。そもそも租税総額が88兆円の中で159兆円の歳出を行っているという、きわめて大きなアンバランスをもこの表は示しておりまして、こういう大きなアンバランスの中で割合のみの議論は必ずしも物事をすべてとらえていないというように思われます。

4ページにつきましては、主要国における租税負担率の国際比較ということで、右上にございますが、日本が22.9%で租税負担率が非常に低いというお話がよくございますが、左側に国税と地方税に分解したものでございます。国税がG5中最低、地方税がG5中2番目という数字になっております。

5ページ、同じことを所得課税についてやってみたものでございます。

それから6ページをお開きいただきますと、これも所得課税の中で御議論いただきましたが、日本では10%の税率ブラケットの中に入っている方が納税者の8割ということで、ここの10%、諸外国に比べると非常に低い数字になっております。その意味ではこれが仮に下がるようなことになると、そもそも国の基幹税と言えるかという問題も生じてくるわけでございます。

8ページをお開きいただきますと、消費税・地方消費税の仕組みが書いてございます。転々流通する中で多段階で課税されていくのが消費税、地方消費税の仕組みでございまして、この結果、例えば真ん中の卸売業者の段階の税率だけが自主的に決められてしまいますと、そもそも制度全体が動かなくなってしまうという宿命を帯びた、いわば自主的な決断を許さない税金として仕組まれているわけでございます。

最後、11ページをお開きいただきますと、財政制度審議会の中間報告ということで、アンダーラインのところを見ていただきますと、地方交付税が基準財政需要の算定を通じて地方の標準的行政に必要な財源を保障していることが、住民にとって受益と負担の関係を希薄にし、中央への依存体質を強めているとの指摘があり、こうした財源保障機能を縮小するというような形の地方交付税制度の抜本的な改革が大きな課題であるということで、[3]のところにございますが、税源の偏在を調整する制度に近づけていくといったような指摘がなされております。

もう1枚、「塩川議員提出資料」ということで、塩川大臣が先般21日の経済財政諮問会議に提出資料をおつけしてございます。中身は、最初の2枚が、最初に申し上げました、税源配分だけの問題ではなく、受け皿の問題ですとか、あるいは地方交付税の問題を一体的・同時進行的に解決することが必要であるといった趣旨。

3ページ目には、いま申し上げましたような事情を背景に、税源移譲にはさまざまな問題があるということを2で、それから1で、地方税を見直すときにはとにかく地方税のあり方、理念に即した形で、それにふさわしい税目の充実を図っていく必要があるといったことが記載されております。

以上でございます。

石会長

お2人から含蓄のある御説明がありましたけれども、よく両陣営の苦衷を察して御議論いただければと思います。

申し忘れないうちに、最後に資料として、きょう御欠席の草野さんから「税制改革に関する意見」というのが2枚紙でまとまっていますから、おついでの節にお目通しください。

それでは、いまから10分ほど時間を使いまして、いまのお2人の御説明プラス私の簡単な「基礎問題小委員会における議論」を踏まえて、国と地方の関係につきまして、御意見をどうぞ。

諸井さん、どうぞ。

諸井委員

きょうはたびたび発言して申し訳ないのですが、いまの地方の問題です。これは個人的な意見ですけれども、いまの国・地方を通しての財政の状況というのは、増税をやらなければ到底解決しない。それは、期間は5年というのはちょっと難しいかもしれません。10年ぐらいのスパンで考えないといけないのではないかと思うのですが、その10年間、小泉さんがもつかどうかは別として、いずれにしても増税というものはやっていかなくてはいけない。そのときに国と地方の税源配分をしっかり考えてやるというのが、本来の筋だと思うんですよね。しばらくの間は、経済情勢を考えても増税はなかなかできないだろうと思うが、そうなると差し当たってやらなくてはいかんと思うのは、補助金の関係だと思います。なぜかというと、いままで、大体国が地方にいろいろな指示をして、こういう仕事をやれ、ああいう仕事をやれということをやってきた。だから、地方の歳出というのは、さっきの表で見るように非常に多いわけです。

しかし、それについて地方には裁量権がなくて、国の指示のとおりに--国というものは各省庁ですけれども--やらなくてはいけない。倹約しようとか何とかと考えてもそういう余地がないというところにあって、それはさらに、財源の面で補助金で制約をしてくる、補助条件をいろいろつけて制約をしてくるということになっているわけです。

ですから、これからは国・地方として歳出をカットしていく。歳出カットということになると、地方の歳出は80~90兆円あるわけですから、これに手をつけないで歳出のカットなんかできるわけがない。そのときには、片一方で、地方が自分の裁量でいろいろな倹約をしたり効率化をするというようなことをしてもらわないと、できるわけがない。いままでは国が全部指示をするかわりに、その財源は補助金で見、地方債で見、さらに足りなければ交付税で見るというふうにやってきた。だから、地方のほうは全部中央依存でやればよかった。しかし、こういう財政状態だったらそういうことは続けられないのだから、そうすると、地方のほうに裁量権を与えて、そのかわり倹約をしてもらう、あるいは合併なんかを進めてもらう。こういう方法で行くしかないと思うんですよね。

さしあたって税源移譲がすぐにはできないのだとすれば、補助金をカットしていく。そのことによって地方の裁量を増やしていく。そのことによって、さらに歳出の効率化にもつなげるし、あるいは、その財源というものも地方のほうへ何らかの格好で回していくというやり方が必要なのではないのか。必ずしも地方の立場を代表しているかどうかわかりませんけれども、さしあたってやるのは補助金と。最終的には、増税というものを含めて考えないとどうしようもないのではないかというのが私の意見です。

石会長

ありがとうございました。どうぞ、河野さん。

河野特別委員

時間がないので、簡単に結論めいたことだけ言いますけれども、地方税関係で三つ述べたいんですわ。一つは、法人事業税の外形標準化というのは、ここのところ数年間、大議論をやってきて、私の体験では論点はほぼ出つくしてきていると思うんですよ。年末答申するときには、今度は実施すべきだというゴーサインを明快に出すべきだと思います。理由は言うまでもないことだと思うから、やめます。

ここに企業関係者の方がだいぶいらっしゃるけれども、いま、企業関係の中で国税の法人税を下げろという議論があるんですね。私は、先進国との比較から言ったら、それはかなり強引な主張だと思います。ただ、外形標準化というのを実施すれば、黒字企業--赤字は別ですよ、トヨタみたいな大黒字企業は法人税の実質負担が4%ぐらい軽くなるのです。これ、副次効果ですよ。外形標準化というのはそのためにやっているのではないかと。しかし、そのことを考えてみれば、法人税議論をやるならば、外形標準化ということをよく考えてそれにのることが現実的かつきわめて賢明な態度だと私は思う。

二番目は、もっと具体的な話なんだ。法定外税のことについての具体的な問題を提起して、税務局長の答弁を求めたいのだけれども、どういうことかというと、福島の知事がごく最近、原子力発電所の燃料税について実質2.4倍に急激に上げるという案を発表して、6月県議会で通そうとしているんですよ。僕はこれ、何が問題かというと、東京都の銀行税のときもそうだったけど、あれに比べればもうちょっとましだけれども、とにかく強引に一方的に、投票権を持たないたった一つの東電という企業に対して膨大な負担増を求めて平気で来ている。しかも、2.4倍とは何事だということが一つ。

これは、国のエネルギー政策なりいろいろなことがあるのですけれども、セキュリティの点から言っても、温暖化の対策から言っても、原子力を抜きにした議論というのはあり得ないのです、好き嫌いは別にして。そのときに、原子力発電がうまく回らないようにする税負担を求めるということはいかがなものか。

三番目に、いま、別のところで電力の小売り全面自由化という議論をやっているんですよ。これを法律化して、電力を下げろという議論をやっているわけだ。現に下げているわけだ、東電を含めて。そのときに、これ以上こういう形で税負担を強引に求めるということは、結局、我々東京の電力消費者に負担が回ることになるんですよ。福島県民には全然回らないんだ。これ、一番面白いところなんだ。これもまた問題なんだね。

私は、いまの原案のまま強引に福島県が事を通すならば、ここから先、総務省に聞きたいんだ。これ、本当に同意できるのか、あんた方。3カ月間、いろいろ審議すると思うけれども、その前に合理的な判断を知事が下して、国政のこともあるし、負担増のこともあるし、とにかく不公平なこともあるし、いろいろなことがあるんだね。冷静に考えて事態を丸くおさめるなら、それはまた別問題だと。だけども、いまのままで行くのだったら、総務省、法定外税のあり方論から言っても、こんなものに同意することになったらえらいことだと思ってるんですね。これは課税自主権の乱用ですよ、どこから見たって。ということで、これは答弁を求めたい。

以上、二つ。

瀧野自治税務局長

ただいまの福島の法定外税のお話がございました。御案内のように、平成12年、諸井先生が会長でございました分権推進委員会におきまして、法定外税の要件の見直しが行われました。そういったことを契機といたしまして、地方公共団体におきまして法定外税に非常に期待をして、いろいろな形で活用しようという動きが強まっていることは事実でございます。

しかし、いま御案内ございましたように、特に納税者が限られている場合に、よく納税者の方と議論をして検討を深めていくことも必要ですし、その場合に、国の経済政策との整合性が必要であることも事実であります。その点については法律にも書いてございます。我々としては、現段階では福島県のほうからまだ具体的なお話を聞いてございませんけれども、法定外税の運用につきまして通知も流しまして、納税義務者とお互いによく話し合いをし、理解できるところ、そうでないところをちゃんとわきまえた上で議会にかけていただきたいということを申し上げているところでございますので、福島県の案件につきましてもそういったことで対応していただけるものと考えております。

石会長

「総務省はどうするか」という質問ですよ、いまは。

瀧野自治税務局長

総務省は、いまも申し上げましたように、まだ具体的に県のほうから来ていないわけでございますので、いまの段階で同意、不同意ということについて明確なことを言える段階ではないということでございます。

石会長

はい、わかりました。

では、島田さん、どうぞ。

島田委員

二点だけ簡潔に申し上げたいと思います。先ほど諸井さんも言われたことですが、地方にとって、財源を効率的に使うためには裁量権というのはできるだけ広げる必要があるのですけれども、一つそこで問題提起したいのは、全国各地、地方にたくさんある行政財産を活用できないのかということなのです。いろいろな行政財産があります。例えば小学校とか教室があいてますね。そういうのを使うというのが、実はものすごく使いにくいんですね。

これは、明治以来の財産管理法制のかかわりもあると思うのですが、なぜ私はここに危機感を持つかというと、経済のメガトレンドが、人口減があって、新しい税収というのがなかなか確保できない。ロングターム・ディクラインに入っているわけです。そういうときに、では、増税しないでサービスを拡大する手はないのかというと、あるわけですね。ストックでたくさんの行政財産があるので、これをもっとフレキシブルに地方自治体の判断で転用・活用できるというようなことを含めて、裁量の余地を増やすということは基本的に進める必要があるのではないかと思います。

もう一つは外形標準課税の問題で、私も河野さんと同意見で、外形標準課税、議論はもう尽くしたと思うんですね。尽くして、変な方向にまで行ってしまったという感じもしないではないけれども、外形標準課税というのはいろいろな指標を考えましたが、基本的には付加価値というところに集約すると思うのです。あの中で、労務費の占める負担が大きいので雇用にマイナスだという妙な議論がありますし、もう一つは、消費税との関係もあるのだと思いますけれども、私は今回は、基本的な考え方、つまり「誰もが税を払って、努力する者が報われる」という意味では、やはり外形標準課税は導入すべきだということを明記すべきだと思います。

石会長

ありがとうございました。あと、一つ、二つ、どうぞ。

では、水野さんと松本さん。

水野(勝)委員

先ほど諸井委員からもお話がありました財源配分、まだその段階ではないということですが、しょっちゅう税源配分の話が出てくる税源移譲でございますけれども、税源移譲がもし行われるとすれば、それは、地方が汗をかいて自分で集める税金に集約すべきではないか。それによって受益と負担が明確化するということでございます。

まず第一に挙がりますのは所得税、これを移譲するというのですけれど、現実、個人の所得税というのは、皆さん税務署に申告書を出せば、それが自動的に地方に回るというシステムでございます。もちろん、若干の失格者の話はありますけれども、一元的に国で執行していると言ってもいい。それを移譲するということは何ら移譲にならない。単なる収入の配分にしか過ぎないのではないか。これでは本当の地方の税源移譲ではないと思います。

現在でも、所得税15兆円、8兆円が住民税ですが、35~36%が地方に回っている。これは、国の税務署が集めている税金だと言っていいわけですが、これが交付税で32%行くと、もう半分以上は地方に行っている。その後さらに、いま言われております3兆円を回すなどと7割が地方に行くわけでございます。同じ税源で、やっているのは国の税務署で、しかし、その7割は地方が使うというのでは、あまりにも税源移譲という名前から反する。あまりにも国がお人好しではないかという感じもするわけでございます。

これは消費税でも同じでございます。現在の消費税の仕組みは、前段階税額控除、多段階の売上税ですから、これは地方団体にはなかなかなじまないのですけれども、これが現在2割、交付税で言ってすでに4対1になっています。言われているように、2兆5,000億円を地方に回すと、64~65%が地方が使う。やはり国が集めていて、しかし、使うのは6割、7割が地方だと。こういうのでは受益と負担という原則に反する税源でございますから、税源移譲というのであれば、地方が本当に自分で努力をして、自分で納税者から集めるような税を地方にお願いをする、そういうものが現にあるわけでございます。均等割でございますし、固定資産税でございますし、いま話の出ている外形標準課税もその一つではないか。事業税でございます。そういった方向で、将来、税源移譲という問題が起こるときには対処する。

今回の基本方針にそこまで将来の方向が入るかどうかわかりませんが、もし方向が示されるとしたら、受益と負担の明確化という、まさにおっしゃられているような方向の中での税源の配分を考える必要があると思うわけでございます。

石会長

松本さん。

松本委員

いま、いろいろお話があったわけですが、地方では税を取る客体というのが本当にないわけなのです。先ほど話が挙がっておりましたが、やはり歳出関係、収入関係、乖離があるわけでございます。またその中には、さっき図表であったのですが、国の政策関係で7割以上が地方でやっているわけですけれども、公共投資しても、社会保障、あるいは教育関係、そういうことで、国の政策関係も縮減といいますか、そういうことも見直しが必要ではないかと思います。

それと、税源移譲関係です。前回にもちょっと申し上げたのですが、内閣府の1例、7兆円、それから、片山大臣の21日の5兆5,000億円の税源移譲というのが出てまいったわけでございますが、そうしていただいて地方分権を実のあるものにしていただきたいというような感じがいたします。

それと、地方交付税に対して算定方法を簡単にというようなことが出ていますが、実は人口のみやられた場合には、やはり森林や農地関係を持っているのですが、そういうところで公益的な機能を十分発揮しているわけですから、自然環境の保全管理、そういうところも適切に評価をお願いしたいというような気がいたします。

それと同時に、現在、地方がなかなか厳しくなってきております。どこでも合併、これは避けては通れないという気持ちでやっているわけでございます。そういうことで自主的合併といいながらも、やはり我々は厳しい状況下で、任意の協議会、あるいは法定の協議会をつくって合併に向かって進んでいるわけでございます。そういうことで町村長も非常に厳しい時代になったということを皆さん理解して、対応しておりますので、その点は十分理解していただいて、税源移譲関係、地方交付税を見直すならば、そういうところも十分に検討してお願いしたいと思います。

石会長

やはり5時までに終わりたいと思いますから、いま、御意見が挙がっていますけれども、誰かの意見に賛成というのは「その人に賛成」で結構ですから、独自の御見解のあるところだけかいつまんで言ってください。どうぞ、松浦さん。

松浦委員

いま松本委員のおっしゃったことに賛成ですけれども、いま我々地方は、地方の時代だとか、地方分権とか、だいぶおだてられているわけですよ。しかし、それに伴う税財源というのは一向に来ないわけですね。そうすると、先ほどから議論になっているように、考えられるのは法定外税と。ところが、いまおっしゃったように原子力研究所にかければ文句が来る、銀行にかければ取れないというようなことで、地方としても一応いろいろ知恵を絞っていて、一般の税を取ることに対する事務的能力がないとか言われていますが、そういうことは絶対ないということです。いま、地方も絶えず勉強しておりますので、そこら辺をぜひお考えいただきたい。それだけです。

石会長

では、水野さん。それから、津田さんね。

水野(忠)委員

先ほど岡崎課長から御説明がありました、2ページのいわゆる税源の問題ですけれども、地方税と外形標準課税を挙げられましたが、このどちらも付加価値にかけている税金であるということですね。それから、特に地方消費税の場合は国に徴収の委託をしておりますので、これが果たして地方分権という時代にふさわしいのであろうか。そうなると宿題は、地方消費税のほうで独自に調査して取るような仕組みがとれるかどうか。それができないようでしたら、むしろ外形標準に一本化する、こちらのほうが筋が通るのではないかなと。少なくとも徴収委託のままの地方消費税拡充、これはあまり方向としては適切ではないかなと。意見ですけれども。

石会長

では、津田さん。

津田委員

いままで言った意見で尽きるわけですが、つけ加えますと、官から民への流れと同時に、中央から地方へというのは構造改革の非常に大きな柱でございます。それから、外形課税の問題の課税ベースを広げて税率を下げることも、これも構造改革の一環でございますので、これは外すべきものではない、かように思います。もうそれ以上言いません。

ただ、河野さんの発言の中で若干言わせていただきますと、核燃料税等の問題が出る前に、地方団体の意見は発電県の電力料金を安くしてくれ、そうすれば地域振興に役に立つと。ところが、国のほうの指導は、全国一律料金。電力会社ごとかもわからないですが、全国一律料金ということで、発電県で汗をかいているにもかかわらず、電気料金は同じと。それならば代わりに税収で地域振興をやらなければ、というような議論があったことを忘れてはならないのだと思います。

それから、行政財産の活用の問題です。これは、国庫補助金適正化法の問題が実は補助金ががんじがらめになっておりますので、その問題がございます。ただ、地方団体でも最近は努力しまして、なるべく休日休館をなくそう、建っているものはフルに使おうと、こういう頭になってきております。それがまた雇用対策にもつながるということで、各地方団体でも、行政財産をフルに使おうという流れになっておりますことを言います。

石会長

では、松尾さんと貝原さんで終わりにします。

松尾委員

税制改革と言っているわけでありますから、中長期的には地方税の分野は私も大胆な改革が必要であると思います。これは、国のほうも相当腹をくくってかからなければならない問題、それほど重大な問題だろうと思うのです。短期的には、国・地方とも双方並び立つような施策が当然必要なわけでありまして、その視点からこの片山さんの試案を見ますと、第一の国庫支出金の地方税への振替えを先行実施、国から地方への税源移譲5.5兆円ですね。所得税、消費税いずれも無理ですよね。実際問題として、いまのような財政状況の中でこんなことができるはずがないと思います。

それから、補助金のほうですけれども、これは行政のスリム化につなげる必要があると思います。

それから、地方交付税交付金制度の改革、これは一言だけ言いますけれども、財源保障機能、これは廃止する必要があると私は思います。

以上です。

石会長

では、貝原さん、どうぞ。

貝原委員

国と地方の税源の問題についていろいろ御意見がありました。先ほど、負担と受益の関係で国税に徴収されたものが地方に税源移譲するのはおかしいという議論が述べられましたが、私はそれは全く誤解ではないかと。諸外国との税制比較の中で、わが国の税収構造上最も大きなものの差の一つとして、納められる税収の帰属の主体と行政サービスを決定する主体とに差がある。このような税収構造になっているからこそ、先ほどの受益と負担のサービスを明確にするためには、国が国税として取って地方のサービス財源を提供するというのではなくて、地方サービスを提供する地方自治体が税を決定するという仕組みにすべきなのではないか。これは、税源の移譲というような言葉では、そういった意味では誤解があるのではないか。私は、適正な税制構造にすべきだという観点に立ってこのことを判断すべきだ、このように思います。

そういう観点からすると、二点目として、先ほど片山大臣の提案は実現不可能だとおっしゃいましたけれども、私の見る限り、国税として徴収したものを補助金として地方団体に交付しているものをやめるならば、それに相当する国税を地方税のほうに構造の改革をするということは決して荒唐無稽な話ではない、このように思います。

もう一つは、法人事業税の外形標準課税。これは、河野さん、島田さんがおっしゃったとおりだと思いますので、ぜひ実現をお願いいたします。

石会長

まだ大きなテーマがもう一つ残っていますが、いまの段階で、国と地方の関係についてちょっとまとめておかなければいけません。外形課税につきましては、即刻やれと。ゴーのサインを出して本格的にやれと、そういうことで要約しても間違いなかろうと思いますので、これははっきりさせていただきます。

それから税源移譲については、両方の側から同じような形で、要するにぜひ進めるべきだと。特に最後の貝原さんの御意見のように、適切な税収構造の見直しという意味からは国税たるものでも地方税に移すのは意味があるではないか、片山プランもいいではないかというお話ですし、逆に言えば、片山プランの税源の配分のもとになっている所得税、あるいは地方消費税、そもそもそれは問題であると。本来やれるべきものを持っているのだから、均等割とか固定資産税でやるべきであるという御意見、これも強かったと思います。

この辺は、これからどう書くのかという点ではかなり難しい問題があろうかと思いますが、今後、国と地方の関係というのは、諸井さんがおっしゃったように増税なしでは問題は解消しない。ただ、10年間ぐらいのタイムスパンで見て、そして、地方歳出のカットというのは補助金がどうしても問題になろうという御指摘ですね。あと、補助金の見直しに含めて地方交付税の問題も出されたと思いますが、そんなところで、大体基礎小でやりました問題の延長上に御議論があったかのように思います。

それでは、あと残り少なくなりましたが、残っている問題は、納税環境の整備、租特、金融関係税制、相続法制、これは、1つあたり1時間とってもかかるようなテーマでありまして、残り20分ぐらいで整理しなければいけないのは大変問題であります。

我々基礎小でやったこれまでの議論は、納税環境の整備は何が一番問題かというと、やはり公示制度のあり方で、プライバシーの配慮等からやめるべきだという意見と、片や、申告納税制度の信頼度をここで確保しているのだからやるべきだと、御意見が二つに分かれたと思います。ただ、もう半世紀以上前にできた制度でありますから、何らかの形でレビューするということはあり得ようかと考えております。

それから、租特のほうはずいぶんやりました。秋にもやりましたので、これ以上述べることはないと思いますが、ただ、思い切って全廃するような意気込みでとりあえず見直すへきであるという御議論もあったし、それから、いろいろな投資減税項目が新しく要求されていますが、現在あるものを見直した上でやる必要があろうかという御議論が強かったと思います。

金融関係税制は幾つかあったのですが、二元的所得税論の議論もございましたし、それから、金融商品の収益性に課税する場合には、中立という点から総合課税というのは、これは二元的所得税論でありますが。それから、これから高齢化社会になって、ストックという面で、どうしても金融のほうでストック化が行われますから、金融課税税制というのは今後ますます重要になるであろうと。同時に、納番等々を入れて租税回避行為に備える必要があろうし、資料の情報を交換する制度、あるいは、資料情報の制度をしっかりすべきであるという御議論があろうと思います。

相続税、贈与税の世界もすでに議論は終わっておりましたが、今回、民法の側面でヒアリングを受けました。早稲田大学教授の岩志先生に来ていただきまして、税法の世界と民法の世界ではかなり食い違っている面もあるということを実感いたしました。たとえて言うなら、介護の点で、非常に面倒を見てくれた人に相続財産を渡したいといっても、これは民法の世界ではなかなか難しかろうというような議論がございまして、一同納得したという点もございます。

以上、かいつまんで我々の基礎小の議論を説明いたしましたが、それでは、大急ぎで事務局のほうからいまのバックグラウンドデータを御説明いただきたいと思います。

川北さん、古谷さん、よろしくお願いします。

川北税制第一課長

お時間の関係もございますので、簡単に御説明させていただきます。資料は「総27-10」というものでございます。

3項目ございますけれども、一つ目の項目、公示制度の関係でございます。1ページ、谷口副大臣からすでに御指摘がございましたが、先ほど会長からも御紹介がございました公示制度の関係でございます。特に関心のございます所得税で見ていただきますと、左側、税額1,000万円超の方につきまして、氏名、住所、所得税額が公示されまして、翌年の5月16日から5月いっぱい公示期間がございます。つい先日、昨年の分の報道がございましたので、お目にとまったかと存じます。

2ページにまいりまして、現在の公示対象人員でございます。58年に税額1,000万円超というふうに公示の要件が変わりまして、以来、申告納税者のうちの大体1%、12年分ですと8万人ぐらいが公示されているという状況でございます。

3ページは国際比較でございまして、省略させていただきます。

第二点目、4、5、6ページ、租税特別措置の関係でございます。例えば5ページにまいりますと、全体の減収額が2兆円弱、その中で所得税が1兆2,900億円、法人税が4,300億円強というような、よくご覧いただいている資料でございます。

第三点目、金融の関係でございます。この点については、7ページの「二元的所得税」、会長からも言及がございましたので、制度だけ簡単にごらんいただきます。北欧諸国でとらえております二元的所得税ですが、左上に、理論的仕組みということで、資本所得と勤労所得を分離して課税をする、勤労所得は累進、資本所得は比例、資本所得の税率は勤労の最低と法人税率を等しく設定するというような理念でございます。

この場合の資本、勤労の別が右の上のほうに書いてございます。資本のほうは、いわゆる金融のほかに、土地とか、家賃とか、さらには、いわゆる事業所得のうちの投資収益的な部分も入るということで、資本と勤労の二つに分けるというものの考え方のようでございます。

下のほうに北欧の税率が書いてございます。概ね、勤労、資本、法人、30%ほどでそろった形になっておりまして、その上で勤労所得につきましては累進税率がかかるということでございますので、現在のわが国と比べますと、勤労所得の最低税率、あるいは資本所得の税率がわが国の税率よりも高くなっているという事実がございます。

8ページ、9ページ目、関連する資料でございますが、お時間の関係で省略させていただきます。

それから、ちょっと補足的に、先ほど消費税の益税の関係のときに菊池委員と石会長のやりとりがございました。私、聞いておりまして、消費税の話と所得税の話が交差したような感じがいたしましたので、念のためではございますが、一言御報告させていただきます。

一般に市場の慣行では、消費税の免税業者か課税業者かを問わず一律な価格で取引されるという慣行があると思います。それで免税業者の場合でも、いわば税込み価格といいますか、税相当分込み価格で取引されることがある。その点を菊池委員は、御自身の例を引かれて御説明されたかというふうに思いますが、そのあと、所得税の世界にまいりますと、免税業者であっても消費税相当分を含めた全体が所得税の収入になりまして、そこから所得税を計算するということになります。会長から、入れるんだよというふうなお言葉がございましたが、それは、所得税の収入のほうには、消費税相当分といいますか、もちろん全体が収入となって計算をするということでございます。両先生の御指摘とも、その局面の御指摘、そのとおりでございまして、食い違っているということではございませんが、若干、所得税と消費税の関係を御説明させていただきました。

以上でございます。

石会長

では、古谷さん。

古谷税制第二課長

川北課長にまとめて言っていただきましたので、追加はございません。

石会長

いまの最後の菊池・石論争というのは重要ですから、皆さんよく頭に入れて、ゆめ間違いなきように。菊池さんは消費税の世界で議論されて、私は所得税で議論して、ともに正しいというお墨付きを課税当局からいただきましたから。

それでは、残った時間、もう10分もないですが、いまの問題提起につきまして、どうぞ。

島田委員

贈与のことをひとこと言ってもいいですか。

石会長

どうぞ。

島田委員

これはいろいろなところで議論されて、もうそろそろ詰まっているかなと思うのですけれども、個人の持っている資産の最大の資産は住宅資産で、この住宅資産を相続まで持っていると、5,000万円まで控除ですから、ほとんどの人は相続税を払わないわけで、実は税収もないわけなんですね。お亡くなりになる頃は最近は90歳近くなっていますから、それをもらう人というのは60歳幾つで、もう70歳近い。もらっても役に立たない。それを、本当に使うときの人たちに使わせるという意味で、生前贈与というのはぜひ書き込むべきだと思います。

これは金持ち優遇という説がありますが、そうではないのであって、普通の庶民が死ぬまで持っていればタダになるけれども、生前に渡すとえらい税金がかかってくるので、それを軽減することによって住宅資産が流動する。そのことについて、私はむしろ課税収入が出てくるだろうと思うんですね。ということで、ぜひ書き込むべきだということを言っておきます。

石会長

では、榊原さん。

榊原委員

基本的に考え方としては、租税特別措置法について早急に整理・合理化すべきだというのは同じです。法人税の問題もありますけれども、時間がありませんので、個人にかかわる租税特別措置について意見を申し上げておきます。この見直しに当たっては、税制の枠組みの中だけで検討するのでは不十分なので、社会保障政策とか住宅政策など、全体の政策とセットで検討すべきではないかというふうに思っております。

以上です。

石会長

ありがとうございました。ほかにいかがですか。

猪瀬さんと、佐野さんと、奥本さん、どうぞ。

猪瀬委員

租特のことですけれども、これは基礎小で議論が出尽くしているのですが、あえて一言だけつけ加えさせていただきます。特定地域や特定業種や特定個人に対する税の減免ということでありましたけれども、これは、先ほど特区の構想が出てきましたから、追い風だと思うんですね。つまりお金を使わないで規制を撤廃すれば、そこでいろいろなことができる。例えば医療だったら株式会社に参入できるとか、あるいは、刑法をちょっと外すとカジノができるとか、いろいろな特区ができますよね。お金が一銭もかからない特区というものをつくっていくことによって、租特の場合は、党税調の人たちがうるさいわけですから、党税調の人たちに、タダでできるいろいろなものがあるよというふうに説明してもいいかなというふうに思いましたけれども。

石会長

佐野さん。

佐野委員

租税特別措置について申し上げたいのですが、何かこの政府税調では租税特別措置を目の敵にするような風潮を感じてならないわけです。もちろん存在理由を疑うようなものもありますが、それなりの経済効率性、合理性を持った措置もあるというふうに基本的に私は考えております。むしろ投資減税等々のいわゆる対企業活性化策あたりは、もっと一般的に細かいものは統合し、使い勝手をよくするという方向で考えたらどうかと思います。

もう一点、この租税特別措置の議論になりますと、租税特別措置法に盛られた措置が中心になっているわけであります。法人税の本法に規定されたのは検討の対象外というような傾向が感じられてなりません。何が言いたいかといいますと、法人税の税率のことであります。とりわけ協同組合に関して、これまでもちょっと触れられたことがあるように思いますが、きょうの新聞の去年の企業別の申告所得ランキングを見ると、第6位に全芝連がランクされている。2,300億円の申告所得があったというふうに報じられております。しかし、この全芝連は協同組合でありまして、法人税率が22%。大幅な軽減税率になっているわけです。本来なら30%のところを22%で済んでいる。2,300億円売り上げる全国6位の事業体が、なぜいまだに軽減税率の適用を受けているのか、なぜこれが議論にならないのか。つまり、租税特別措置法だけではなく、法人税の本法の中にあるものも取り出して、この特例はもう要らないのではないかと、そういう姿勢で今後検討すべきだと思います。

石会長

わかりました。どうぞ、奥本さん。

奥本特別委員

税の公平・公正という問題が一番大きな問題だというふうに思います。そういった意味では、さんざん議論になっている部分だと思いますけれども、納番制の導入ということについてはもっと真剣な議論が必要なのかなと。特にこれからいろいろ議論が行われるのだと思いますけれども、金融関係税制の議論のときに、金融商品というもの全体をどうするかという議論をせざるを得ない場面なのだと思います。それだけに、納番制といいますか、キーとなる番号制がないということは、実際に実行不可能になってくる部分が多過ぎるのではないか。これについては、マーケットの活性化というものを含めて真剣な議論が必要なんだというふうに思います。

石会長

ありがとうございました。ぼつぼつよろしゅうございますか。今日は皆さん頑張りましたからね。それでもまだ6分ございますから、最後に、今後の進め方等々でまとめさせていただきます。

「27-11議論の整理」という紙があろうかと思いますが、これが、今日まで議論いたしました論点の整理でございます。最後、これについて私が御説明いたしまして、皆さんの御了解を得たいと考えております。

つまり、基礎小を2、3回やって総会を繰り返しましたので、今日の総会が最後でございます。そこで、あとの状況から御説明しますが、次の総会は6月4日、それから6月11日を考えております。6月4日は2時から、6月11日は午前10時から12時を予定しておりますが、それまでに、一応私と上野さんを中心にして、かつ基礎問題小委員会の方々にもお助けいただいて、文章にしたものを少し用意したいと考えております。

その文章にしたいものの骨子が、きょうここに整理いたしました「27-11」に書いてございます議論の整理でございますので、大体こういう項目で重要な論点を整理して、これに文章をくっつけていくという格好にしたいと考えています。せいぜい多くてもA4版で20枚ぐらいの範囲におさえ、皆さんの議論で割れているところもありますから、最終的に難しい面もございますが、できたらすっきりした一本化した文章にして、意見が分かれているところは、いうなれば議論の紹介、補論という形で、そこで十分にいろいろな意見を御紹介するという格好にできたらしたいと考えております。

そこで、本論のほうの骨子と申しますか、我々の言いたいことをここに書いてございますが、かいつまんでさっと御説明します。今回の議論というのは、あくまで中長期的な視点に立っての税制のあるべき姿論なんですね。小泉首相からも言われておりますのはまさにこの点でございまして、経済社会構造が大きく変わった、それに対していまの税制がどうもマッチしていない、俗に言われるミスマッチが起こっている。構造改革の一環としてどうしてもそれをやらなければいけないというのが大きな狙いでありますし、もう一つは、あるべき姿論の中に書いた、安定的な歳入構造の確保という点が重要です。

そういう意味で、今日もずいぶん議論になりましたけれども、すぐさま以下述べるような形のことを実行できるとは思っておりませんし、どうしてもあるべき姿論から言いますと、増収増税のムードが漂ってくるところもずいぶんあります。これを短期的な視点からとらえられてしまうと誤解をされるので、あくまで10年、20年先の税制の再構築を目指して、基本的な考え方はこうだという形で行いたいと思います。自由な経済活動を妨げない税制をつくりたいと思いますし、適正・簡素化もしたいと思いますし、分権にふさわしい税体系もしたいと思いますし、何よりも、ライフサイクルも変わったし、雇用も変わったし、それから少子・高齢化というものがもろに来る税制では、そう短期的な小規模な変更だけではおさまりませんから、大きな視点から問題をとらえたい。

そこで、まず個人所得税は、ここに書いてございますように、基本的な見直しは、皆が広く公平に分かち合うといった基本理念は必要でございまして、そういう面から、男女共同参画も踏まえて、さまざまなことに対応するべく諸控除のあり方を考えなければいけないだろうということがポイントになろうと思います。よく、広く薄く負担という形で議論されますが、所得税の世界においては、実は「薄く」のほうは、すでに小渕内閣以降の大幅な減税によって、累進税率が大幅に緩和されておりまして、ほぼ議論が終わっている。問題は「広く」のほうであろう。その意味において諸控除のあり方を細かく検討していく必要があろうと。ここに書いてございますような形の、幾つかの基礎控除以下等々のあり方が問われる。それから個人住民税のあり方も、所得割、均等割を踏まえて幾つかの点から整理しなければいけないでしょうし、独自課税という意味において均等割の話は大きく問題になるでしょう。

法人税の世界は、ここで一番強調しておきたいのは、課税標準の導入を我々としてはもっともっと前向きにやらなければいかんという議論です。それから、基本的な視点としては、グローバル化された世界で企業活動に対してゆがみのない税率、税制を中立的にやっていけば、おのずから活性化に資するであろうという点です。そういう点と、いま問題になりましたが、公益法人、NPO法人、寄附税制等々、経済社会に即した新しい対応をしなければいけないだろうし、集中と選択という視点から租特を整理しつつ、おそらく明確な方向に重点的に資金を配分する点から税制を見なければいけないだろうと。

消費税に関しては、今日、先ほどもまとめましたような第一段、第二段で、おそらく信用回復につながることをまず先にやるべしと。

それから資産税につきましては、おそらく相続税、贈与税の世界は、例の一元化が前提になっておそらく生前贈与というものが制度化されると思いますので、時間がかかるかもしれませんが、この一体化というものはどうしても議論しなければいけないし、それから、ストックの段階で再分配効果を上げない限り、フローの段階で再分配の力が落ちておりますし、逆進性の間接税を中核に移していくということになると、ますます再分配機能が弱まっておりますから、それは、しかとストックの段階で、かつ生前贈与も含めて資産課税でやるということになろうかと思います。固定資産税の世界もまた見直しの時期に来ておりますし、この辺を踏まえて、土地税制、住宅税制も幾つか論点がございますので、整理したい。

金融税制のあり方としては、ここに書いてございませんが、納番も含め二元的所得税の議論もしなければいけないし、金融あるいは資本所得を一括して総合課税化という議論もおそらくあり得ると思いますから、そういう点も書き込みたい。

その他、個別の間接税で、酒、たばこ、発泡酒の問題もございましたが、酒に関しては簡素化、合理化という視点から格差を縮める。発泡酒、あるいは本体のビールとの関係もございましたし、たばこもいろいろ御議論があろうかもしれませんが、健康論議の高まりもあって、税負担を上げるを考えていいではないかという議論もあったし、それから、特定財源、これもまた一般財源化の是非をめぐって御議論もありますけれども、一般財源化というのはもう長年我々税調で言っておりますから、これを中心に書かざるを得ないと思っています。国際課税の問題あり、税務行政、納税環境の問題これありですね。

最後は、地方分権にふさわしい地方税のあり方で、もう一回整理してくる段階で御議論いただきたいと思いますが、税源移譲の問題をどこまで書き込むか、その前提として、国庫支出金あるいは地方交付税のあり方をどこまでやるか、この辺の議論。それから、ここに書いてございませんが、市町村合併あたりもおそらく議論の中核に据えなければいけないかもしれません。

そういう形で、ひと通りこの項目でこれまでの議論を整理したという意味で、まだ落ちている部分は幾つかございます。落ちている部分があって、ここに書く必要はないという部分はないと思いますが、落ちている部分も少し踏まえつつこれから議論をしていきたいと思っております。

こういうものに関しまして、まとめの段階におきましての御忠告なり、我々が留意しておくべき点がございましたら、ぜひ御議論いただきたいと思います。

どうぞ。

島田委員

一点だけ。大変よくまとまっていると思うのですが、この委員会は総理大臣の諮問委員会ですよね。

石会長

そうです。

島田委員

総理大臣が今年の1月17日に、官邸で石会長をはじめ皆様を集めて、こういう方向で税制改革をやってくれということをおっしゃったと思います。国民みんなが広く負担をして、誰もが払って、そして努力の報われる税制というのをやってくれと、こう言われたと思うのですけれども、所得税のところに、「広く負担」のところだけは出ているのですが、努力が報われるというのは出ていないんですね。所得税について言うと、いま会長おっしゃられたように、たしかに小渕政権のときにかなりいろいろ減税なさった。ただ、私は税率の議論はそれで終わっているとは思わないんですね。つまり、タックスベースをもっと広げる余地があって、タックスベースをもっと広げるともっと税率が下げられる可能性はあって、それが努力に報いる税制だということがあると思います。これは法人税でも、地方と中央の関係でもあることでございます。

ですから私は、冒頭の「あるべき税制の構築に向けた視点」の中で、自由な経済活動ほか4点ありますけれども、その冒頭に、「誰もが負担して、努力が報われる税制」という総理大臣の言葉を書くべきではないかということを御提案申し上げたいと思います。

石会長

島田さんに一点聞きたいのですが、課税最低限を下げるというのは、みんな広く負担するから一種の痛みが低所得者に来ますわね。いまおっしゃっている税率見直しというのは、上のほうが大体頭にあるのでしょう。トップレートのところが。報いられるという意味でね。

島田委員

トップだけではありませんね。

石会長

そうすると全体を? 下まで?

島田委員

全体構造ですからね。

石会長

そうすると、10%はどうするのですか。10%という最低税率は、いま、5%にはしないと言っているのですが、その辺はどうされるのですか。つまり、10%のところにもう8割の納税者が入っているんですよ。

島田委員

これ、構造の問題ですから、タックスベースを広げればそこに税率を絶対的に下げる余地が生まれるので、それをどう配分するかということについては、先生がおっしゃられたように、「上だけでしょ」と言われると、ちょっと私はそうとは言い切れないけれども……。

石会長

たしかに課税ベースを広げれば積木の下が重なりますから、全体的に税負担は重くなりますから、それは何らかの手当ては必要かと思いますが、どの辺をメドにして「報われる」とおっしゃっているのかなと思って。

島田委員

努力が報われるというところは、「上でしょ」とおっしゃられたので、いますぐに上だというふうに限るのはちょっと誤解を呼ぶんですよね。

石会長

それを聞いてるんですよ、私は。

島田委員

だから、そこが問題なのです。僕の言っているのは基本の考えですから、「あるべき税制の姿」の中にそれを書くということはできる。

石会長

でも、それを書いたら、制度に移さなければいけないじゃないですか。

島田委員

それはもう会長に頑張ってもらいたい。

石会長

わかりました。

水野(勝)委員

「誰もが」というそういう観点もあって、63年に消費税というものを一つの所得税と並ぶ基幹税として導入されたという点もありますので、そういう意味からすれば誰もが負担している。もう少し負担していただきたいというのはわかるけれども、「誰もが負担」は、してもらっているとも言えるのではないかという気もするわけでございます。

島田委員

ただ、法人税がありますよ。事業税がありますよ。

石会長

どうぞ。

榊原委員

資産性所得、いわゆるキャピタルゲインでの総合課税問題について、これはどこのどの項目で扱うのでしょうか。

石会長

この項目では3枚目の「金融税制のあり方」のところに--これはまだずいぶん落ちていますけれども--絡んでくる話で、いまから、利子・配当、キャピタルゲイン等々、それプラス土地等々、不動産関係のキャピタルゲインも入れて、おそらく資本所得という概念になると思いますが、それを総合課税にすべきかどうか、あるいは二元的という意味で、勤労性所得と資本性所得を分けて書けるかという議論をここでしたいと思っています。そこで一挙に総合課税まで行けるのかどうか、ワンステップとして二元的にするのか、この議論もここで整理したいと思います。整理した段階でまた御意見をいただきたいと思いますが、納番も入れてそういう形の議論をここで整理したいと思っています。

榊原委員

わかりました。

石会長

どうぞ、和田さん。

和田特別委員

また何度も同じことを言っていると言われそうですが、ただ、いま石会長がおっしゃいましたので。「努力をすれば報われる」というのが、いろいろな人が、自分も低所得だけれども、一生懸命汗水たらせば報われるというふうに理解している方が多いんですね。どうもいま見ていると、そうではなくて勝ち組がますます勝っていく。だから、税制の問題でもあり、日本の社会をそういうふうにしていっていいのかなという疑問が私は残るものですから。ちょっとそんな感じです。

石会長

はい、わかりました。

では、村上さん。

村上特別委員

いまの島田先生の税率の議論というのは、一般に誤解を与えるおそれがあるのではないかと思います。つまり、各種控除をいくらかいじります。そうすると、少しずつどうしても全体に広く薄く、増税のような形になるわけですよね。それをどこかで税率で消すとなると、全くオーダーの違うもので消してしまう。そうすると減税のような姿になりますから、そこは、減税をやるつもりではないんですよということをやはりきちっと言っておかないと、みんなが税金がまかると思ってしまって、それで働き甲斐があるのだと考えられたら、何のためにこの議論をしているのかわかりませんので、そこはきっちり言っておかないといけないと思います、基本認識として。

私は最初に申しましたように、誰がこの国を支えるのか、誰がこの財政を支えるのかという基本的な視点がそこで欠けてしまうと、みんなが税金まけてくれという話になってしまいまして、これだけ長時間やって意味がないですよ。

石会長

松本さん、どうぞ。

松本委員

道路特定財源ですが、大勢が一般財源という風向きだろうと思いますけれども、我々地方の立場では、受益と負担ということで道路関係はやはり堅持していただきたいという地方の立場がございますので、その点もちょっとばかり書いていただきたいという気がいたします。

石会長

年末に書いたような程度でよろしゅうございますね。

松本委員

はい。何かちょっと書いてもらわないと、我々、立場がございません。

福原委員

昨年、文化芸術振興基本法ができまして、文化芸術に資する寄附金については優遇されることになっているのですが、実際には入り口は非常に狭いわけです。もう一つは、それが仮に認められた指定寄附金だとか、特定公益増進の寄附金としても、個人所得税のほうは1万円の控除(下限額)があるのです、どちらか低いほうからの。特定寄附金または所得金額25%以下からさらに1万円を引いた金額なんですね。ところが、個人住民税のほうは10万円を引く控除になるわけです。ですから、これは合わせていただいたほうがいいのではないかということです。

石会長

そのお話もまた織り込んで。とにかくいろいろ要望がございますから、頑張って一応つくってきますから、その段階でまた御議論いただけたらと思います。

どうもすみません。10数分遅れましたが、頑張ったということで、きょうはこれでよろしいでしょう。どうも御苦労さまでした。

〔閉会〕

(注)

本議事録は毎回の総会後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。

内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。