第26回総会 議事録
平成14年4月26日開催
〇石会長
それでは、時間になりました。総会を開きたいと思います。お忙しいところ、どうもありがとうございました。
本日は、財務省の尾辻副大臣、谷口副大臣ご出席いただいております。吉田政務官は1時間半ほどおくれて、15時半ごろお見えになります。また何かございましたら、どうぞぜひご発言ください。
それでは、委員がかわられましたので、最初にご紹介いたします。草野忠義委員でございます。よろしくお願いします。それから榊原長一委員でございます。よろしくお願いします。
それから、従来から電子メール等でさまざまなご意見を伺うことになっておりますが、昨年の10月から3月までの間に寄せられましたのが153件まとまって、入り口のほうに冊子として置いてございますので、時間を見つけられてはご覧いただきたいと思います。個人所得税関係が46件、消費税関係が59件となっておりまして、それ以外、その他でございます。
今日は、お手元に議事という形ですでに配付済みと思いますが、報告事項を最初に行いまして、その後、これまで基礎問題小委員会でやってきました審議条項をご報告いたします。個人所得税、法人税、資産課税と3つ分けてやりたいと思います。そこで、だんだんまとめの時期にも入ってきておりますので、この基礎問題小委員会で行いました審議状況を項目別に配列いたしまして、そこにどういうことがあったということをご紹介しつつ、今日は改めてまたご議論いただいて内容を深めていきたいということを考えております。
大体今日は5時まで考えておりますので、すみません、3時間ですが、4時ごろちょっと休憩をとりたいと考えております。それでは、早速本論に入りたいと思います。
最初の報告事項は、3月29日に経済財政諮問会議に私が出席いたしましたその状況と、それから7月16日に塩川大臣がいわゆる3原則というのをお出しになりましたので、その辺は事務局からご説明いただくことにいたします。その後で、税のための対話集会、6回ちょうど終わりましたので、その状況につきまして、簡単にまた事務局からご説明いただきます。
それでは、最初に諮問会議の状況でございますが、一番上に、3月29日、牛尾さん以下4名の方の連記で、「税制改革の検討課題(論点整理)」という資料があろうかと思います。それについて簡単にご説明しつつ、どういう議論があったかということの内容をご紹介いたします。
このときは、税制改革についてということで私のみ呼ばれまして、先方からこの資料が出て、これを軸にいたしましてさまざまな議論をしたわけであります。
ただ、この紙が出る前に、新聞ですでに、「中立」ではなくて「活力」という言葉を使いたいというような報道がございまして、それを改めて公の席で言ったということで、このペーパーはそれなりの意味があるペーパーになっております。
そこでまず「基本認識」でありまして、「日本の経済社会の現状」という形で幾つか書いてございますが、国際競争力が激化した中で経済力が落ちているとか、チャレンジ精神がなくなったとか、ミスマッチがさまざま社会的に起こっているとか、地域活力が低下している、少子・高齢化等々のまず認識があるわけですね。
それから、こういうものを受けて今後どういう形で経済社会を持っていきたいかというところで、(2)「これからの経済社会の姿」に幾つか書いてございます。これは後からお目通しいただければいいと思いますが、重要な点は、これまで水膨れ体質になっていたと。これからは民間活動を主役に据えた創意工夫、そういうチャレンジ精神で質の高い成長をしたいと。この辺で諮問会議が一番言いたいことが書かれているかと思います。
そこで、我々のポイントは、「新たな経済社会を実現する税制改革のあり方」という2.のところで、「新たな税制の理念」に書いてあることが一番重要でございます。
冒頭申し上げましたように、我々が絶えず使っております「公平、中立、簡素」の租税三原則、これを改めて正確に再定義して、「公正、活力、簡素」というしたいということがはっきりここで書かれております。そこで、「公平」と「公正」というのは似たような概念になりますので、「平」という字と「正」という字を変えただけでありまして、あまり論点になりませんでしたが、問題は「活力」という言葉をどういうふうに定義してどう使ったかでございますが、ここをお読みいただきますと、「中立」と書かれて、「人々や企業の選択を歪めず、経済社会の『活力』を最大限発揮させる」と。これは我々が通常ここで使っている言葉と全く同じなのですよね。ここの定義によれば。
ということはどういうことかというと、政策誘導的、税制の政策活用のように、特定の業種とか、特定の地域とか、特定の人に対して何か個別の税制で対応するというよりは、そういうことによって選択を歪めるのはよくないという意味で、中立的な意味というのは選択を歪めないような格好で、最大限民間の方に力を出してもらうという趣旨なのですが、そういうことを言うと、何でこれ変えなければいけないかということで、大分その辺は議論をいたしました。
また後ほど触れますが、それをベースにして、3ページに課題が幾つか書かれております。活力を引き出すためには、課税ベースを拡大して税率構造を、これは見直せというのは引き下げろということだと思いますし、これによって活力、中立というのは一応具体像が思い浮かんでくると思いますが、こういうこと。それから多様な選択を可能にして、社会に参画できる税制にしろとか、長期にわたって安心を支える税制にしろとか、地方の自立、特色ある発展をしろとか、こういう、言うなれば理念論がここに書かれております。
そこで、諮問会議のねらいは、この「改革のスケジュール」というところにあったようでございますが、例の集中調整期間であるとか、その後どうだというのがありました。これは具体的に紙としては出てこないで、たしか竹中大臣が記者会見のときにそれを読み上げたとかいう形で処理されたはずであります。
そこで、これは一応ご説明いただいた後の議論でございますが、2ページ目に戻りますと、「中立」という定義と「活力」という定義は、共通の了解事項としては政策誘導型の税制ではないよという形で議論いたしましたが、ただ、だんだん議論していくにつれて、やはり税制を活用して、例えば投資優遇したいとか、個人消費を高めたいとか、生前贈与などやると個人消費が高まるのではないかということもちらちら議論が出てきましたし、やはり「中立」というと何もしないというイメージを持つではないかと。したがって何かしたいのだという意思をここに込めたいということもだんだん出てきて、民間4委員と、それから大臣の中でも幾つか意見が分かれたこともあって、私が見るところ、どうもこれはやや同床異夢の感じがするなあという感じはしてきました。
ただ、小泉首相ははっきり、こういうふうに似たような定義をして使うのは、何で「活力」なんていう言葉を改めて使うのだと、私は「中立」でいいとはっきりとおっしゃってましたから、その点は私は、同じ定義でやるのだということについては、しかし看板を若干変えるのだということについては了解事項に達したと思いますが、根っこはやはりその辺、根深いかなと思ってます。
つまり、「中立」というのは民間の活力を生かすために広く適用する税制なのだけれども、どこか特定の分野に何か投資税額控除みたいにやるときには、市場の失敗があって、ほうっておくと研究開発投資が足りなくなるとか、あるいはもっと典型的には環境汚染が進むようなときには税制でいろいろチェックを入れるわけですが、そういう格好のときには、おそらく個別の税制を使うことは是認されるだろうということには了解事項がありますが、原則的には広く民間の経済主体に対して影響を与える。具体的には課税ベースを広く拡大しながら税率を下げるといったようなことがいいのではないかという基本了解に達しましたが、ただ、根っこにはやはり完全に相一致しないものがあるかなという印象も受けて帰ってきました。
そのほかに法人税の国際比較の問題があったり等々ございましたが、諮問会議は1時間半ほどの短い時間でございましたので、これで大半費やされたというのが実態ではないかと思います。ほかの点については、何かご質問があったらお答えしますが、そういうことでございます。
それでは、清水さんのほうから、その他の塩川大臣のご発言等々について簡単にご説明ください。
〇清水総務課長
総務課長の清水でございます。
4月16日の経済財政諮問会議の際には、塩川大臣のほうから、これから諮問会議も含めましていろいろ取りまとめが行われてまいりますので、その取りまとめに当たっての、財政をあずかる大臣のお立場から、議論の土俵というのでしょうか、基本的枠組みというような形で3つの原則が示された、これまで国会等の場でもお述べになったところと相通ずるところかと思いますが、3原則を示されたところです。
第1が税制改革ですが、1.の(1)にございますように、「税制改革に当たっては、財政規律の観点から、仮に減税を先行させるならば、増減税の具体的内容・実施時期等を含め、一つの法律案にこれを盛り込むものとする」ということで、増減税一体、一定期間内で税制中立であるという原則を示されております。
「政策減税を行う場合には、経済活性化のために真に有効なものに限ることとし、その場合にも、上記原則による」。さらに「財政のプライマリーバランス回復に向けた取り組みとの整合性を確保する」といった点を示されております。
第2、第3は歳出等でございますけれども、第2の原則では、歳出については、やはり財政規律の観点から一層の抑制と重点化を図るということで、(2)にございますように、15年度の財政運営については、中長期の展望を踏まえて新たな考え方を6月中に取りまとめる。
それから第3番目には、いろいろな政策運営をする際、民間経済の活性化に向けて成長分野に国の政策を集中していくべきだと。諮問会議においても望ましい産業構造とか研究開発の中で重点投入するべき分野を明確にする。そういったことが必要だという、以上3つの原則をこれからの取りまとめに当たっての枠組みとして示されたところです。
以上でございます。
〇石会長
ありがとうございました。
それでは、次の報告事項、「『税についての対話集会』関係資料」というのは26-1とかなり分厚い冊子になってございます。私のほうから簡単に感想を述べ、その後、全面的に面倒見ていただきました美並企画官のほうから、内容についてご説明いただきます。
ちょっと1ページ目を広げてください。3月に2度やりまして、この報告は前回の総会のほうで済ませておりますので、きょうは3、4、5、6回の帯広から松山までやった内容についてご報告いたします。
出席の委員はこういう形で、大変お忙しいところ、ありがとうございました。特筆すべきことは、津で塩川大臣、大阪で谷口副大臣にご出席いただきました。活発に議論にご参加いただいたわけでございます。
人数はトータルで1,069人ですが、細かく見ると200人を超えているところとか、127人とかありますが、これは人気度ではなくて、会場の大きさ、狭さでありますので、この数量はそういう意味でご覧ください。いずれにしても満席でございました。
あと内容等々いろいろございますが、私の受けた印象は、極めて建設的な意見の交換が行われたのではないかと思いますし、それから、今回は、この間もご説明しましたが、アナライザーという集計機を使いまして、瞬時にパーセンテージで回答がわかるような質問項目も用意できまして、それが非常に有益であったと考えております。
そういうところから見ますと、トータルで1,000人ぐらいの参加者でございましたが、やみくもに減税してくれという声はそう強くなく、税制の不公平さをなくしてくれとか、あるいは税の使途をはっきりするような形にやってほしいという声が強かった。それから特定の一部の資産家なり高額所得者に税をかければいいというよりは、公共サービスは全員で受けているのだから、みんな広く負担すべきではないかという声が圧倒的に多かった。それから税制で個々の納税者の事情を加味するような形でいろんな手当てをすると複雑になり過ぎるから、もうそういうのはやめてシンプルにいきましょうというのも圧倒的に多かったという意味で、手前みそでありますが、公平・中立・簡素なんていう原則に従ってということが一応浸透したのかなという感じもいたします。
最後のページにございますように、「非常に有意義であった」「まあ有意義であった」というのがすべての会場で9割に達しておりますので、それなりに我々の試みは効果的であったと考えております。
一言で言うと、国民の参加と選択という我々の基本姿勢はますます重要になったのではないかと思います。これが本格化するといろいろ、広く薄くと言ったって、広くというのが自分に来たときに、本当にこれは大変だという形でかなり身構える方もいらっしゃるかもしれませんが、やはり国民のほうに情報を投げかけていろいろ判断してもらうということはこれからますます重要になると。要するに、極めて賢い国民層であるという実感を得ました。何かわからないから、いいかげんにしてボンとやろうというのは、とてもじゃないけれども、そういうスタイルの税制改革は無理であろうという感じを受けたわけであります。
では美並さん、簡単に内容をご紹介ください。
〇美並企画官
総務課企画官の美並でございます。税についての対話集会について、データのところなど、補足してご説明させていただきます。
同じ資料の2ページ目を開いていただけますでしょうか。今、会長からお話しありました1,069名の参加者の内訳でございます。会場ごとにややばらつきがございますけれども、全体としまして、男性が8割、女性が約2割でございました。年代別には50代が一番多く3割、40代、それから60代が約2割ということでございます。
もう1ページめくっていただきまして、「会場の参加者との対話」とございますけれども、これが今会長からお話しあったアナライザーというシステムを使いまして行った質問の結果でございます。7つの質問を行っておりますけれども、かいつまんでご説明させていただきます。
PART1のほうで、「あなたは税金についてどのような要望がありますか?」というところを質問させていただきまして、これについては[2]の「不公平をなくしてほしい」という回答が37%と一番多うございました。
PART2のところでございますけれども、1つ目は今後の公的サービスの水準と負担の関係についての質問でございますが、1つ目の選択肢は、「公的サービスの水準は維持させるべきで、負担が増えてもやむを得ない」。2つ目の選択肢が「負担が増えては困るので、サービスの水準が下がってもやむを得ない」。これについては、各会場、大体拮抗したような数字でございました。
2つ目の質問、財政赤字の解消方策につきましては、3つ目の選択肢「歳出削減と増税を組み合わせる必要がある」というのがどの会場でも最も多く、平均では58%でございました。
3つ目の質問、これも会長からお話しありましたけれども、税金の負担のあり方についての質問でございますが、「幅広くだれもが負担するほうがよい」という回答が最も多く、75%でございました。
最後の質問でございますけれども、税金の仕組みでございますが、2つ目の選択肢、「できるだけわかりやすい税制にしたほうがいい」という回答がどの会場でも多く、平均では73%ございました。
4ページ目、めくっていただきますと、各会場で意見発表をお願いした方のご氏名、ご職業を記載させていただいております。各会場4~6名の方に意見発表をお願いいたしました。帯広以降では、このうち2名の方は一般の公募でございます。主婦の方、サラリーマンの方、事業者の方等々、幅広い分野から意見をお伺いしました。男女別、年代別でも偏りなくなっているかと思います。
もう1ページめくっていただきまして5ページ以降、この意見発表者32名の方に加えまして、毎回、フロアから一般参加者の方から挙手でご意見をお伺いしました。平均7~8名だったろうかと思います。この方々から伺ったご意見をここに分類して書いております。税制全般、税の使途、個人所得課税、法人所得課税、消費課税、資産課税、税務行政、国と地方、教育、広報、その他に分類して23ページまで記載しております。説明は省略させていただきます。
24ページをめくっていただけますでしょうか。それ以外にも参加者の方々にアンケートをとらせていただきました。回答数は577でございまして、ここでも、「税制についてのご意見、ご要望がございましたらご記入ください」ということで、回答が寄せられております。ここに記載しておりますのは回答の概要でございますが、アンケートの結果そのものは冊子にしまして入り口に置いておりますので、もしお時間あればご覧いただければと思います。
最後のページが、会長からも紹介があった、同じくアンケートの結果でございます。「非常に有意義であった」「まあ有意義であった」という回答がどの会場でも9割に上っているということでございます。
以上でございます。
〇石会長
ありがとうございました。
今の説明につきましてご質問もあろうかと思いますが、後ほどの質疑のときに、もしかおありでしたらおっしゃっていただければという形で、きょうの本論に入りたいと思います。
きょうは、基礎問題小委員会で行いました議論を紹介しつつ、また、総会の皆様からそれについての追加的なご質問なりご意見なり等々いただきたいという趣旨でございますので、基本的には、今後我々、6月をめどに主要論点をまとめていくというときの骨子になる部分を形成していきたいと思ってますので、そういう視点からぜひご意見をお寄せいただきたいと思います。
最初に、私を含め20分弱で状況をご説明して、その後、40~50分討論の時間をじっくりとりたいと思いますので、ご意見をおまとめいただきながら我々の説明を聞いていただきたいと思います。
26-2という資料をごらんいただけますでしょうか。これは4月に行いました基礎問題小委員会の日程と、そこで行いました内容につきまして、ご説明してございます。大体、所得課税と法人課税と資産課税を軸にしております。そして、ここに書いてございますように、村上さん、大澤さん、吉川さん、宮島さん、お四方からヒアリングを受けたという組み合わせで議論いたしております。いずれの時間も、2時間のところもありましたけれども、3時間という大層な時間を使いました。
それでは、最初にめくっていただきまして、私のほうから、個人所得課税での議論の概略を説明して、後で、資料に基づきまして国税、地方税、簡単につけ加えていただくと。
2ページ目をご覧ください。ここに「基礎問題小委員会(4月)における議論(個人所得課税)」と書いてございます。大きな〇で見出しが書いてございますが、最初のところは総論的な、序論的な議論でございまして、ここでも何回も言っておりますように、税負担の空洞化、これが問題であるという意味で、累次の減税により負担が低下して、その結果、課税最低限の問題があるとか、納税者の数が問題であるとか、税率構造等々が問題であって、「あるべき」という姿をどう描くかは別として、あるべき姿から見ると随分税負担が減少しているから、戻すのならば負担は避けられないであろうというのが総論的なイメージですね。
それから、これは村上さんのご発言にもあったのですが、税率とかブラケットといいますと、所得税の最低税率、つまり、10%を適用されるところのブラケットが非常に長くて、給与所得者の納税者の約8割がそこに入ってしまったと。それで37%という最高のブラケットには1%であるというような状況で、最近、給与所得の税収伸び悩み等々ある。したがって、この10%のところがまさにイギリスの言う基本税率のブラケットになっているという点で、これが税収が思ったほど上がらない大きな、あるいは空洞化を招いている原因の一つにはなっていようかという認識であります。
したがいまして、課税最低限を下げつつ、フラット化をもっとやれといったときに、1%しか適用されてない税率をいじるかということになると、適用の方々が非常に少ないという意味において、問題があるかなという印象は個人的には持ちました。
それから大きな問題は、後から資料で説明していただきますが、諸控除の見直しなのですね。諸控除というのはもう随分ございます。そこでどういう形で見直しの視点をするかというのは、3項目まとめておきましたが、やはり課税ベースを広げるということが大きなねらいでございますと、見直しという意味は、諸控除の不要なもの、役目の終わったもの、それからもう縮小してもいいものを一応整理しながら議論を進めるという意味で、課税ベースの拡大になるわけですね。
それから2番目は、社会保障制度などが随分完備したわけですね。昔、所得控除、随分拡張してきたときと比べますと、個々の人々の生活上の事情を社会保障で随分見られるようになっている。それにもかかわらず、まだ相変わらず税制で広くというか、非常に配慮していると。そういう点から言って、簡素化とか集約化ということが可能かどうかという視点がどうしても重要になろうということであります。
それから3つ目の視点は、社会経済構造が非常に変わってきたと。例えば、ここに書いてございますように、男女共同参画社会、あるいはライフスタイルの多様化、雇用慣行が変わってきた、少子・高齢化等々あり、世代間の不公平、公平の問題があるという視点から、今ある控除というものに問題はないかという見直しの視点が重要であるということだと思います。
そこで、分け方は通常、人的控除、それから給与所得控除等々と幾つか分けられますが、最初にやはり人々に直接関係のある控除として、アメリカあたりだとパーソナル・エグゼンプションと言ってますが、そこにある一番問題点として今指摘されているのが配偶者控除、配偶者特別控除でございまして、働く女性とそうでない専業主婦等との間で、この配偶者控除等をめぐってさまざまな議論があるわけであります。
冒頭申し上げました大澤さん、男女共同参画会議のほうからお出ましいただきました方からの議論にもございましたように、そろそろ配偶者控除等というのを見直すべきではないかという議論もここで行われました。
問題は、配偶者控除等と言ったときに、配偶者控除、配偶者特別控除が2つあるほかに、配偶者本人も基礎控除を使えるという、3つ、要するに3つの控除を実質的に受けるのは果たしていいかと。それからパートの労働者に103万円の壁というのがあるわけでありますが、それが103万円の壁を破らないように、就労調整をするといったあたりがどうかというような議論がここであるわけで、今日もこれはいろいろご意見賜りたいと思います。
対話集会でもこれを見直すべきだという声は随分出ましたけれども、片や専業主婦という立場から、専業主婦の社会的価値を認めて、これは断固維持してもらいたいという声も当然ありましたし、この基礎問題小委員会でも、パート労働者の103万円をなくすということは、本格的な労働者にするということになるとまた社会的な影響は大きいだろうという議論もあり、この辺はこれから我々、大いに議論しなければいけないことだと思います。
それから扶養控除ですが、扶養控除といっても、単に38万円のところ以外に、さまざまに各種の割増やら加算、いろいろついているわけですね。たしかだれかがクリスマスツリーと言ってましたけれども、いろいろぶら下がっているわけです。例えば16歳~22歳の、例の特定扶養控除、大学生まで扶養控除の対象にして、学費など含めて手厚くしようと、63万円。そのような特別な割り増しもありますし、また同居老親等の特別な枠もあるという形で、どうもすっきりしてない、さまざまなものがついているので、これをどうしようかと。少子化というのをにらんで、逆にいえば控除というものをどう考えたらいいか、あるいは歳出面で見たほうがいいではないか等々も議論があるわけであります。
それから3つ目が老年者控除、寡婦(夫)控除、勤労学生控除あたりは今後どうするか。つまり、高齢者を一まとめにして社会的弱者で、老年者控除というのを、50万円認めるというような制度が果たしていいかどうか。画一的な高齢者像の見直しを図る必要があろうし、それから勤労学生控除というのは、たしか昭和26年に、できた非常に古い古い制度でありまして、一体勤労学生というものの実態がどう反映されているかという議論。それから適用者が6万人しかいないということを踏まえてどうするかという議論。それから寡婦の、婦人がつくとすぐ夫のほうもつくように、すぐさま横並び的に増殖するような控除があるわけでありますが、これを今後どうするかという問題ですね。
それから、もう一つ大きな議論になったのが給与所得控除でございます。これは新聞でもかなり報道されたと思いますが、アメリカ型の概算控除と実額控除というのを踏まえつつ、給与所得控除というものをサラリーマンに本当に実額的に控除させてもいいではないか、申告納税者になってもらってもいいではないかという議論が根強くあったわけであります。
これは対話集会でもサラリーマンの代表が必ず言ってました。サラリーマンの最大の欠陥は、源泉徴収と年末調整で税が終わってしまうから納税者意識が目覚めないと。したがって、サラリーマンといえども申告納税にすべきではないかと、こういう議論であります。
そこで、今統計的に言いますと、給与総額の約3割がこの給与所得控除で引かれますので、これはある意味で、事業者から見るとかなりの割合で引かれているのではないかという不満の指摘もありますね。従来、この3割の中身を、1割5分、1割5分というわけではありませんが、2種類の性格があるという考え方をしておりまして、1つが勤務費用の概算控除ですね。いわゆる必要経費ですね。それから他の所得との負担調整。これはクロヨンとかトーゴーサンとか言われる課税所得の捕捉率の問題もありますが、担税力の差異を、言うなれば給与所得控除で面倒見てやるよという発想なのですね。この辺を従来どおりの方針でいくかどうか、これも議論のあるところであります。
それから特定支出控除というのは昭和62年の抜本改革時に入ったものでありまして、実際に積み上げていっていいよということですが、利用実態が非常に悪い。何人かという話であります。そういうことも踏まえて、片やまたクロヨン的な要素もまだ残っているから、サラリーマンの不公平感があるよと、これをどうするかという議論があって、アメリカ並みに概算控除と実額控除を選択制にするということも大分議論いたしました。つまり、すべてを申告にするというのは嫌だという、つまり、もっとシンプルに手軽に納税したいという人もいるとなれば、おそらく選択制がいいのではないかというのは実際的な見方であります。
それから退職所得控除。これはこれまで年功序列と終身雇用なんていうのをベースにして、長くいればいるほど退職金の退職所得控除は有利になるような仕組みになってます。そういうことになりますと、今非常に大きく日本の慣行で崩れているのは雇用慣行であります。そういう意味で、実際の就業形態が多様化した中でこの退職所得の意味が大きく変わっているのだから、控除を見直せという議論が随分ありました。
それから最後には保険料関係でございますが、公的年金等の控除という出口のほうと保険料の控除の入口のほうの関係をどうするかということが大分議論になりました。大分というか、非常に議論になりました。宮島さんのご報告もございましたように、これから少子・高齢化がどんどん進むと、おそらく課税ベースを一番浸食するのは社会保険料控除なのですね。それで、このままでいいかどうか。それから、今日本はご存じのように、拠出と給付、入口と出口両方に極めて緩い税の取り扱いになっており、事実上、年金の世界に入りますと非課税になっている。この状況でいいかと。ほかの国は大体どっちかで課税の対象になっているわけですね。出口か入口か、こういうことを考えて議論しなければいけない。
と同時に、言うなれば年金というのは給与所得をためていって退職後にもらうということでございますから、現役の稼いでいるときに給与所得控除という形で控除の適用を随分受けて、同時に、年金という形でもらったときに公的年金控除と二重ではないかという議論。これも税の専門家から絶えず等しく言われていることでございます。
そういうことがございますし、それからあと個人住民税のほうでは幾つか似たような、国税の所得税と似たような問題がございますが、均等割というのが別途ございまして、これはもうちょっと拡大してもいいし、専業主婦についても適用してもいいではないか、等々の議論があったわけであります。
あと残っている問題として、今後これから詰めますが、資産性所得、租特の問題、それから納税を支える制度として、確定申告とか資料情報とか公示の問題を連休明けにやろうという形になっております。
それでは、私のほうからは基礎小の概略説明で、あと資料につきまして、川北さんと三宅さんのほうからごく簡単にご説明いただけますか。
〇川北税制第一課長
税制一課長の川北でございます。
26-3「資料」という資料がございます。今、石会長のほうから基礎小委員会でのご議論のご紹介がございましたので、関係の資料だけ、主だったものだけ数ページ、ご参考のためにご説明させていただきます。基礎小の資料はお手元に大変大部なものがとじ込んでございますので、私のほうは簡単にピックアップしたものだけご覧いただくようにいたします。
まず1ページ、「人的控除の概要」というものがございます。人的控除、先ほど来ご議論出ましたが、上のほうに基礎的な人的控除、下のほうに特別な人的控除ということで並べてございます。基礎的なほうも基礎控除、配偶者控除、扶養控除といった主だったものに対しまして諸々の加算措置がありまして、ここに創設年がございますが、徐々に増えてまいりまして、ここにご覧いただくような状況になってございます。
対象者は、ここにございますようにそれぞれでございますので、したがいまして、例えば基礎控除ですと4,000万人の納税者みんなに適用されているわけでございますけれども、そのほか配偶者控除や扶養控除は1,000万人単位の適用でございますし、小さな控除になりますと対象者が10万人規模というものもございます。控除額が所得税、個人住民税というふうに右に書いてございます。
おめくりいただきまして2ページでございますが、「諸控除の見直しの影響」につきまして非常に象徴的な形で図示したものでございますので、ご議論のためにちょっとご覧いただけますでしょうか。諸控除、人的控除の見直しの影響でございます。
この下の表は給与収入700万円のサラリーマンの方で、一番左ですと夫婦子2人、配偶者特別控除、特定扶養控除が適用されている方のケースでございますが、700万円の給与収入からもろもろの控除を引きますと、課税所得が網かけになっております225万円ということでございます。
これに対しまして右のほうの柱は、同じ700万円ですが、単身世帯で、配偶者、あるいは扶養控除のない方ですと、控除が基本的には基礎控除だけになりますので、課税所得が402万円ということになってございます。
したがいまして、同じ700万円の給与収入でも、世帯の形によりまして課税所得が左端と右端のように異なっているという状況でございます。
左端のほうから、例えば配偶者控除や配偶者特別控除を廃止いたしますと、その分の控除がなくなりますので2つ目の柱のようになりますし、さらに、扶養控除を廃止いたしますとその次の柱のようになりまして、左から3番目と一番右側が全く同じような形になるということでございます。
一番左と一番右の税負担の差異というのが適切かというご議論のほか、また、右から2番目と一番右、妻子の存在ということが税制上全く影響ない形にするのがいいのかどうかと、このようなご議論かと思っております。
いずれにいたしましても、控除の見直しの影響は、この各世帯それぞれの控除の適用によって違いますので、それぞれの見直しによりまして、家計、納税者への負担が影響がございます。
3ページは「給与所得控除」の表をつけさせていただきました。給与所得控除は、左上にございますように、給与収入の段階に応じまして控除率が変わっておりますが、いずれにいたしましても、収入が増えますと控除も増えるような形でございます。それが下のほうの棒グラフになってございます。
全体としまして、(参考1)にございますように、給与総額に対して28.2という数字がございますが、3割弱。(参考2)にございますように、諸外国ではもう少し低い水準で、定額、あるいは上限があるといったような制度でございます。
続きまして、公的年金のほうの関係でございます。4ページでございます。公的年金は拠出時、給付時というふうに左のほうに書いてございますが、拠出の段階で社会保険料ございますので、これは社会保険料控除で所得控除になってございます。給付の段階では、年金収入が入りました後、公的年金等控除でまず控除されまして、それから65歳以上の方は老年者控除の控除がございまして、さらに基礎控除、その他の人的控除が加わりまして、最終的に残った課税所得に対しまして税額計算が行われるということでございます。
「公的年金等控除の沿革」につきまして、右に(参考1)とございますが、公的年金につきましてはかつては給与所得とみなされまして、給与所得控除、あるいは老齢者の年金特別控除というのがございましたが、基本的には給与所得控除が適用されてございました。63年の改正で雑所得の課税になりまして、新たに公的年金等控除が創設されたということになってございます。したがいまして、給与収入と年金収入と両方お持ちの方につきましては、給与収入につきましては給与所得控除、年金収入につきましては公的年金等控除と双方が適用される形になってございます。
(参考2)は、公的年金にも源泉徴収がございますので、その源泉徴収はこういった人的控除を加味した形で源泉徴収が行われております。その結果のほうから推計いたしますと、年金の支払い額32兆円強に対しまして、源泉徴収の対象になっているものが2兆円ほどでございますので、いろいろなもの控除で源泉徴収の対象にならない部分がこの30兆ぐらいあるのかなということでございます。
続きまして5ページは、控除から離れまして税率構造につきましてご説明させていただきます。左半分はよくご覧いただいている表でございますが、日本とイギリスとアメリカの実効税率を並べたものでございます。日本の実効税率がアメリカ、イギリスに比べまして下のほうに位置しているというものでございます。諸控除を見直しまして、課税最低限を下げますと、このラインが左のほうに若干動くわけでございますが、カーブの形状が日本とアメリカ、イギリスには大分違いがございますが、これは課税最低限の問題というよりは税率構造の違いの問題でございます。
税率構造につきましては、右半分のほうに、これは所得税だけご覧いただきますが、税率構造を単純な階段状のグラフにしたものでございます。日本が500万円の左のところから始まっております。ここから課税最低限が始まりまして、10%、20%、30%、37%という段階でございます。
一番下のイギリスを見ていただきますと非常に左に詰まったような形になっておりますが、10%から、すぐ22%、40%に上がるという形でございます。
したがいまして、日本とイギリスの税率構造の差を見ますと、イギリスのほうがかなり左に詰まった感じになっておりますので、これを実効税率のカーブに描き直しますと、左のように、イギリスのほうが立ち上がりが早いと申しますか、胸を張ったような形のカーブになってございます。
その上で、どの税率にどのぐらいの納税者が分布しているかというのが、日本とイギリスにつきまして箱の中にちょっと数字を書いてございますけれども、日本は所得税の最低税率10%のところに納税者の8割が分布しております。イギリスのほうを見ますと、10、22のところが早く立ち上がりますので、この辺に、10%に1割の納税者の方、22%に8割の方が分布しているという状態でございます。したがいまして、この人数に税率を掛けまして税収が出てまいりますので、日本の所得税の税収の少なさかげんというものは、このブラケットの関係が非常に大きく効いているのかなという状況でございます。
6ページは所得税の税収の推移でございますが、説明は省略させていただきます。
〇石会長
それでは、地方税、三宅さん、お願いします。
〇三宅市町村税課長
それでは地方税ですが、個人住民税の所得割については、所得税と基本的な仕組みで共通する部分がございます。ですので、ただいまご説明の「資料」という資料の中にも個人住民税の内容を含んでおります。仕組みが共通してますので課題点も共有する部分も多々ございます。したがいまして、その点についての個々の説明は重複しますので省略させていただきます。
ただ、1点申し上げますと、控除についても基本的に仕組みが共通でございますが、人的控除について言えば、それぞれの控除額について小さいものになっております。そういう形をとることによりまして、世帯類型のいかんにかかわらず、住民税のほうが広い範囲の方からご負担をいただくことができるような仕組みができております。
それから次に資料で「地方税関係資料」、総26-4というのがございます。1ページをご覧いただきたいと思いますけれども、1ページは納税義務者、あるいは人的非課税の資料になってございます。ここで申し上げたいことは、一旦、住所を有する個人はすべて納税義務者とした上で、その中で現に生活保護、生活扶助を受けている世帯、そういったところは非課税になっている。それから、そういった水準の所得しかない方についても非課税にするという制度がございます。そのほかに、老年者、未成年者、寡婦(夫)、障害者で一定の合計所得以下についても非課税にしている。それから、先ほど言及ありましたが、均等割に関して、生計同一の妻に関して非課税の制度がございます。
それから1ページおめくりいただきまして、2ページが個人住民税の均等割の税率等の資料でございますが、ここでご覧いただきたいのは、現在、市町村民税と道府県民税の2つあるわけですが、そういった形になりましたのが昭和29年に原型ができております。当時、これは一番下の欄にございますが、住民税の税収の中に占めるシェアが13.4%ございました。これが現在、平成12年、一番右のところですが、1.9%になってしまっているといった点。それから市町村民税のところ、税率をご覧いただきますと、人口規模によって3種類に分けてある。すなわち、50万でしたら3,000円というようなことで、人口規模で税率が決まる形になっております。
以上でございます。
〇石会長
ありがとうございました。
それでは、今から40分ほど時間をとりまして、この国税、地方税の所得税関係の今ご説明をいただきましたことに関しましてご議論いただきたいと思います。ご質問でも結構でございますが、できたら、なるべく積極的なご意見を賜りたい。これから我々、主要論点をまとめていくに当たってぜひ参考にしたいと思います。どうぞ、どなたでも結構です。
諸井さん、どうぞ。
〇諸井委員
ちょっとお先に失礼しますので。
今のお話を伺っていて、やはり我々とすればなるべく簡素でわかりやすいという形に持っていくべきだし、あまり政策目的をこの税制に持ち込むというのはやはり問題があるので、今度いい機会ですから、なるべく整理していくというのが基本ではないかと思うのですね。ただ、日本の場合には一遍に、明日からゼロというのはなかなか難しいところがありますから、一体何年ぐらいかけて整理していくのか、その辺のタイムスケジュールを明確にして、逐次整理していくということが必要ではないかと思うのですね。
それから、前にも何遍も申し上げたのですが、公平性というのですか、納税者番号のことは、これはいずれまた出てくるだろうと思いますけれども、こういうこととの絡みの中でもやはり必要なのではないのかなという感じがしております。
〇石会長
タイムスケジュール立てるとおっしゃるのは、これとこれとこれとは問題ありと。したがって、激変緩和も含めてこれからどういう手順でやるかというような、少し時間をとれということですね。
〇諸井委員
ええ、そうです。
〇石会長
はい、わかりました。ほかにいかがですか。どうぞ、草野さん。
〇草野委員
初めて参加をしましたので、前に議論にあったこととダブるかもしれませんけれども、幾つか意見を申し上げさせていただきたいと思います。
まず最初にご説明ありました公正・中立・簡素という基本的な考え方は堅持していくべきだというふうに思っております。立場によって公平とか公正がどういう部分があるか、なかなか難しいと思いますけれども、私ども、勤労者、サラリーマンの立場から言いますと、冒頭ございました税の空洞化という話もありますが、やはり勤労者の痛税感というのでしょうかね、これはやはりかなり大きいものがあるのではないかと思っております。
したがいまして、水平的な公平さ、あるいは垂直的な公平さというものをきちっと分析していただいて、基本的には公平な税制というものを堅持していただきたいと思っているわけであります。特に所得捕捉の問題も、やはり長年言われてきておりますが、なかなかそこは解消されてないのではないかと私どもは思っております。先ほど、勤労者の基礎控除の問題もありましたけれども、諸外国との比較云々もありますけれども、基本的には、私どもの計算でいきますと、大体3割は超えているのではないかと思っております。
これはどこまで入れるかというのは見方によって違うと思いますけれども、今平均で言いますと28%ぐらいでしょうか。私どもの計算では大体30%、3割ぐらいはあるのではないかと思っているところであります。
それから垂直的公平という意味で言えば、いわゆる累進構造の問題。確かに先ほどのカーブで税負担が下がっているのは、これは減税やってきたから当たり前のことだろうと思うのですけれども、所得分布でいいますと、第1・5分位、第5・5分位の税の比率というのは、むしろ倍率としては下がってきている。これは高い税率のところを下げてきたからそういうふうになっているのだと思いますが、基本的にはやはり応能負担という原則から考えますと、この辺はきちんと整理して、維持していく方向で考えるべきではないかなと思っているところであります。
それから簡素という意味で整理されるということは大事なことだと思いますけれども、日本の社会の仕組みをどうしていくかというところに非常に大きくかかわってくる問題ではないかと思っております。今ここで議論すべき話ではないのでしょうけれども、確かに経済構造、雇用構造変わってきておりますが、日本の経済や社会の仕組みをどうしていくのかという観点に立ってみますと、自立ということは確かに重要でありますが、いわゆる競争市場主義的な世の中に本当にしていっていいのかどうかという点では、私どもは疑問を持っておりますので、そういう意味では、人的控除の整理という面から考えますと、今の税の仕組みというのはいろんな面に配慮してできている仕組みではないかと思っておりますので、それを今申し上げたような観点から単に整理するということが目的にならないように、ひとつきちっと整理していただきたいなと思っているところであります。
まだ申し上げたいことがありますが、あまり細かい点を申し上げてもいかんと思いますので。
〇石会長
また続きのラウンドでお願いします。1点お聞きしたいのですが、サラリーマンの方が申告納税にしてくれという声が非常に強いのですが、それについてはどういうお考えですか。
〇草野委員
私どもとしては、先ほど石会長もおっしゃいましたように、選択制でやるべきだろうと思っております。もちろん、もう面倒くさいからやってくれよという人もいますから、全部申告納税にするというのはちょっと一挙にやり過ぎだろうと思いますので、選択制にしていただければ一番いいのではないかと思っておりますし、今触れられました納税者番号制は、私どもは基本的に導入すべきだというスタンスに立っております。
〇石会長
ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。どうぞ、福原さん。
〇福原委員
少し先のほうへいってしまうかもしれませんし、この前も申し上げたかもしれませんけれども、簡単に申し上げますと、法人税は依然として、下げたのにもかかわらず……
〇石会長
福原さん、まだずっといらっしゃいますね。法人税、次のラウンドなのですけど。
〇福原委員
簡単に言います。下げたにもかかわらず、まだ高いのですね。というのは、減税競争が各国で起こっているということなのですよ。このことを1つ考えておいていただいて、それと、今、法人税が減収なのは赤字法人が増えているということですね。
問題は、赤字法人が増えたから減収になるのか、あるいは赤字法人を黒字化して税収を増やすのか、ここがもう一つの問題になるわけですね。同じように、草野さんのおっしゃったような社会体制を変えるのかどうかということもこれと実はかかわっておりまして、今の長期雇用というような社会慣習をそのまま持っておくほうが全体の生産性は上がるのかというようなことを私たちはどう考えていくのか。税制の中立と申しますけれども、結局それが雇用形態も変えるかもしれないということも考えておかなければならないということだけご指摘申し上げておきたいと思います。
〇石会長
ということは、退職給与引当金も考えろというお話ですか、今のインプリケーションは。
〇福原委員
そうです。
〇石会長
それはあまり過度に見直すと長期雇用ができないよということですね。
〇福原委員
いや、過度に突然見直すと。ですから、先ほどのお話のように、ある期間を置いて何をするという目標をつくっておいたほうがいいのではないかと、こういうことです。
〇石会長
わかりました。どうもありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。今日はあまり発言活発ではないですねえ。法人税にいっていいですか。どうぞ、榊原さん。
〇榊原委員
草野委員の発言と重複いたしますけれども、これまでの税の3原則はやはり守っていただきたいと。資料をいただいて、読み方の相違なのかもしれませんが、前回の総会のパールマン教授のお話の中で、経済の効率とかいう話は結局は税の中立性なのだと、私はそういうふうにこの絵を読んでみましたので、やはり公正・中立・簡素という3原則は堅持していただきたいと思います。
それから少子・高齢化とか女性の社会進出とか、国民の生活、ライフスタイルの変化とか、それに応じての税制改革というのは当然必要なことだと思いますので、今の人的な控除制度というのも見直していかなければならんという、見直しという点について言えば同じですが、あわせて、ここは税調ですから支出のことはあまり話しないのかもしれないけれども、社会保障とか社会サービス、そういうものとあわせながらこの控除のあり方をやはり検討しないと、増税だけが国民に押しつけられてしまうような印象が与えられるので、可能であればセット論議のようなことで進めてほしいなと思います。
〇石会長
確認ですが、ある控除を整理したら、そういうものに対しては歳出面で少し手当てができないかというご提案ですね。
〇榊原委員
はい。
〇石会長
それは我々もかねて議論しております。ほかにいかがでしょう。
〇谷口財務副大臣
副大臣の谷口でございますが、前回の小委員会でも私申し上げたのですが、今回のこの税制改革がどの程度のレンジを想定したものなのかと。例えば人口構造の変化が、この20年先ぐらいが高齢化のピークになると言われておるわけですが、個人の負担する税金というのは、働き手が負担する税金と、広く浅く負担する税金があると。このような観点でいったときに、将来どんどん、いわば雇用の、働き手の中心のところが減少してくるといったような場合に、所得税と直間比率の問題もある程度の関連性を持った形で議論しなければ、そのコアのところに過重に負担をお願いするといったようなことになりますと、これは大きな問題になってくるのだろうと考えるわけで、ですから、仮に20年ぐらいを想定した税制改革をということになりますと、当然そのようなことも観点を入れていかなければならないのではないかと思うわけです。
〇石会長
ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。――あまり今日は活性化しませんなあ、議論が。それじゃ法人税いきましょうか。よろしいですか。
じゃ和田さん。なんか遠慮がちな方もいらっしゃいますけれども、こっちから指名しましょうか。
〇和田特別委員
諸控除の見直しの中での人的控除につきましては、やはり配偶者控除、あるいは配偶者特別控除を含めまして見直しということでは、進める方向はその方向で進めるべきだと思います。ただ、今すぐにすべてをばっさりと切るということはちょっと無理ではないかなという点も考えられますので、期限を段階的にやるのか、あるいは金額的に段階的にやるのかということも含めて考える必要はあると思います。
それで、新聞の投稿欄なんかを見てましても、こういうことについて投稿が時々出されておりますけれども、数年前までは、やはり専業主婦の社会的な役割というものを考えて守るべきだというようなご意見が相当強く出されたことがあったと思うのですけれども、最近の投稿を見てみますと、専業主婦であっても、そっちの方向というのは無理ないなと。だけれども、今すぐに全額というのではちょっと大変だ、厳し過ぎるというふうに少し変わってきているような、これは投稿の出し方の面もありますから一概には言えないと思いますけれども、そういう方向に少し動いてきているのではないかという感じがあると受けとめております。
それと、一番初めにお話のありました税の理念の公平・中立・簡素というのは、やはり税の原則としてきちんと位置づけておく必要があるのではないかなと思います。ここの文章として、公平のところに、「結果の平等より機会の平等」ということを書いてありますけれども、今、主な議論の場ではないかもしれませんけれども、私は今、社会が目指そうとしているところというのが、どちらかというと機会の平等と言えるのかどうか、その辺の社会のこれからの目指すべき方向、これは税制だけの問題ではなくて、その辺のところに疑問を持っております。ですから、例えば相続税なり生前贈与の問題なども含めまして、機会の平等というのが今以上に不平等になっていく世の中になるのではないかなと。
これは何度も発言しておりますけれども、駆けっこのように、スタートラインが同じで走って、頑張った人が報われるというならわかるのですけれども、機会の平等というのが一般の認識としては今以上に広がってしまうのではないか。勝ち組がさらに勝ち組になっていく世の中でいいのかなという疑問を感じております。
〇石会長
ありがとうございました。和田さんが配偶者控除、特別控除を見直せと言うときの最大の論拠はやはり男女共同参画の主張ですか。
〇和田特別委員
はい。
〇石会長
わかりました。それで、それに対して専業主婦もやや認め出したと、こういうことですね。おっしゃることは。
〇和田特別委員
ええ、そのような感じで受けとめております。
〇石会長
わかりました。ほかにいかがでしょうか。
村上さん、何かございませんか。この間ご報告いただいたことをもう一回ここでなぞっていただくのも、聞いてない人もいらっしゃいますから、ご持論をもう一回展開されても結構ですが。
〇村上特別委員
先ほど石会長のご説明と当局の資料説明で私の言いたいことはほぼ達しているのですが、1つは、基礎小委員会で申し上げたことで、改めてここで発言したいのは、いわゆる所得税にどのぐらい求めるのが正しいのかという、そういうボリューム感といいますか、ボリュームの観点からもう少し議論があってもいいのかなと。つまり、今の所得税は、14年度の予算では15兆8,000億ですが、いわゆる定率減税などによって大体6兆円ぐらい減収になってしまっているということをこの間申し上げたのですけれども、ですから、それを本当に正しい、ボリューム論から言えば6兆円ぐらいの幅が、つまり落ち込みがあったのかなと。そこを埋めるという感覚でひとつ議論する必要があるのかなということです。
〇石会長
ありがとうございました。ほかによろしゅうございますか。
どうぞ。
〇福原委員
ここでちょっと当局でジレンマが起きると思うのは、簡素を目指すわけですね。できるだけ複雑な控除を取っ払おうということを考えるのですが、先ほどの話のように、構造的に考えると全部取っ払われてしまうと大変なことが起きてしまうということなのですね。そうしますと、抜本改革とは言いながら、何年かを設けてタームを2つか3つに分けなければ実際的には実現しないのではないかと思います。
〇石会長
私もそう思います。いずれ皆さんにご議論いただきたいのは、税制でどこまで個々の需要、世帯構成だとか、あるいは身障者の方とか、老親と同居している等々、面倒見るかという限度なのですね。そこは税調の基礎小でもちょっと議論の分かれ目のところで、いずれまたご議論いただきたい。
それからもう一点、配偶者控除を仮になくすとしても、専業主婦の方は、我々、扶養控除で救えると。救えるというのは言い方おかしいですけれども、扶養控除の適用者になればいいと考えておりますので、そこはそこなりの控除の間のシフトが起こり得るということですね。よろしゅうございますか、ほかに。
それでは、今日は非常にスピーディに進んでいるということで、次にいきましょうか。また時間をとりますから、個人所得税にお戻りいただいて構いません。それでは、次に法人課税のほうに話を進めさせていただきます。26-2という資料の4ページ目になりますか、法人課税についてご説明させていただきます。つまり、我々がどういう議論をしたかということでございます。
これは経済財政諮問会議の吉川さんにも、「我が国産業の現状と今後の政策の方向」という形で議論に加わっていただきました。吉川さんは諮問会議の議員というのではなくて、産業構造部会の一員という形で来ていただいたのですが、そういう形で活性化と税制をどうとらえるかといったような議論もここで行いました。
そこで、4ページに沿って簡単にご説明いたしますと、まず現状認識としては、国税・地方税ともに法人税の収入が非常に落っこっていると。先ほどどなたかおっしゃいましたけれども、赤字法人の割合が増えているということにも大いに起因するのでしょうけれども、結果として、赤字法人の割合が増えているということが課税業種を減らして、こういうことになっているという認識ですね。
それから近年、いろいろな形で法人税制改正してきました。私の印象では、課税ベースを拡大して税率を下げるということは、個人所得税に比べると比較的、法人税では過去に実現したと思っています。そういう意味で、我々の言う公平・中立・簡素に適合した改正を過去にやってきたかなと思いますが、その原則的な立場は、国際的な整合性という形で税率を下げつつ、その財源をまた課税ベースに広げるという形でやってきたということで、歪みのない中立的な税制というのを基本的に目指したということだと思います。
先ほど福原さんから、税率はまだ重いというご判断もございました。これは確かにドイツが大分最近下げましたので、そういう比較において税率は先進国との比較において問題が残っているかもしれませんが、後ほど表で示していただきますが、他のアメリカ、フランス、イギリスと比べると、まあ国際的レベルになっているかなという印象でございます。
それから、話題は過去になりましたけれども、連結納税、これが制度的に徹底的に進めてきたというのがこれまでの改正だと思います。それからやはり我々基礎小で法人税に関して議論したのは、経済活性化対策としての法人税という考え方でございます。それは先ほど申した中立とか活力にも関係する話でございますし、それからパールマン教授に来てもらって、レーガンの税制についてのご報告も受けました。いろんな議論をいたしましたが、競争力の強化とか産業構造改革に資するような、言うなれば国家戦略として法人税をどう使えるかという視点も議論いたしました。
企業の研究開発とか設備投資等々にどれだけこの税制を使えるかと、いろんなバックグラウンドのデータ等はご紹介いただきますが、税制でインセンティブをどこまで与えたらいいかについて、ちょっと明確なる判断基準は難しいのですが、一般的な投資減税でやるというのはやはり問題が、つまり財源も含めて問題が多いので、重点分野に限定するかという議論もあるのですが、これをやるとまた中立の原則にも反するので、この辺は悩ましいところだと思いますが、ただ、今いろんな形で放っておくと、設備投資が伸びないなんていうことになれば、一種の市場の失敗という形であるのかもしれません。
ただ、既存の租税特別措置等々がまだまだ残っておりまして、そういう意味で、政策減税というものを仮にやるなら集中と選択で、本当に必要のあるところに向けたらどうかという議論がどうしても出てくるわけですね。そういう意味で、今後この辺の議論は課税ベースの拡大とともにやらなければいけないという判断でございます。
それから「構造変化への対応」という形で、これは随分議論になりましたけれども、公益法人とかNPO法人の課税の問題、それから寄附金の問題ですね。これもここで取り上げるべきであろうと考えておりますし、また、さまざまな事業体が新しく今出てきておりますので、それに対してどういう対応をするか。
それから、すでに昨年ぐらいまでで外形標準課税の話を終わっておりますが、しかし、この間の東京都の銀行税の話もこれあり、法人事業税の要するに外形について、応益原則として再度その辺の性格を強調して議論しなければいかんかという印象を持ちました。
それでは、事務局のほうから、ちょっとバックグラウンドのデータにつきましてご説明いただきたいと思います。古谷さんと木内さん、きょうは時間がありますから、余計に説明してくださっても結構ですので(笑)。
〇古谷税制第二課長
税制二課長の古谷でございます。
先ほどの横長の「資料」の7ページをお開きをいただきたいと思います。事実関係等について補足をさせていただきます。「法人税収の推移」ということになってございますが、一番右、14年度予算で法人税収11兆円ございます。これがピークのころは、平成元年、19兆ということで、ピークのころに比べてほぼ半減しつつあるわけですけれども、全体の税収に占める割合も、多いころは3割から4割ということでございましたが、現在、2割近くまで下がってきておるということで、これは後ほどご覧いただきますが、企業収益の悪化に伴いまして欠損法人割合が増えておるということや、最近、税率を引き下げてきたということが主な要因かと思われます。
8ページにお進みいただいて、欠損法人割合、最近69.9%ということで、一番低かったころが平成2年で48.4%でございます。バブル後、欠損法人割合が急増してきております。
ただ、この48.4というところもご注目いただきたいのですが、景気のいいときでも恒常的に5割くらい赤字法人があるということで、法人税のあり方という観点から、この赤字法人割合をどう考えるかという論点も考えていただけるとありがたいなと思っております。
それから9ページでございますが、石会長からお話がございましたように、法人税につきましては、企業活力という観点からは、そこにございますように、企業間・産業間の中立性の確保、経済の活性化という観点で、課税ベースを広げて税率を下げるという改革をずっとやってきておりまして、ピークの43.3%から、現在30%まで税率が下がってきておるということでございます。
同じような法人税の改革が先進国でも行われておりまして、10ページをご覧いただきますと、80年代、90年代を通じまして、先進国、G5で見ていただいておりますが、税率が下がってきております。特にドイツが56%から、最近25%まで下げておりまして、G5で見ると日本はほぼ先進国並みというところまで下がっておるというのが現状でございます。
こういう中で、経済活性化ということを中心に法人税のありようをどう考えるかということでございますが、政策税制の観点で、設備投資や研究開発という関係の減税の議論がございます。
11ページをご覧いただきますと、「我が国国内法人の設備投資額等の推移」ということで経済産業省の研究会の資料をつけさせていただいておりますが、棒グラフでまず見ていただきますと、90年代以降、企業部門は資金余剰という状態にございます。こういう中で、キャッシュフローが増えましても、見ていただきますように、設備投資額(B)でございますが、最近は増えておりませんで、企業は、全体として見ますとキャッシュフローの増加を、設備投資というよりは有利子負債の減に充てておりまして、積極的な設備投資が進められるというよりは、バランスシートの調整に追われているというのが現在の企業の状況でございます。
こういう中でどういったところに経済活力を求めていくかということで研究開発の議論がございますけれども、12ページ、縦の資料になって恐縮でございますが、4月3日の諮問会議に私どもの大臣から出した資料でございます。研究開発と税制ということで、2番目の〇にございますように、「今後、我が国の民間研究開発の現状や問題点について十分吟味し、戦略的な研究開発を推進する総合的な施策が必要」ということと、下の○でございますが、競争力の強化ですとか、産業構造改革についての明確で具体的な国家戦略がまず必要ではないかといった問題提起をさせていただいているところでございます。
簡単ですが、以上です。
〇石会長
それでは、木内さん、お願いします。
〇木内都道府県税課長
それでは、総26-4という資料、「地方税関係資料」の3ページをお願いいたします。「法人事業税収の推移」でございます。法人税と同じような傾向をたどっておりますが、一番多い時期には6兆円を超える税収があったわけでございますが、最近は4兆円前後ということでございまして、都道府県税収に占める割合も約4分の1程度というところに低下してきております。
4ページをお願いいたします。法人事業税におけます「欠損法人割合の推移」でございます。上の線が全法人ということでございます。平成の初めごろは44.3%というところもあったわけでございますが、現在、68.4%が赤字法人。下の線は資本金1億円超の大法人でございますが、平成初めごろは約4分の1程度であったものが、最近は5割を超えるといったところに高まってきておる状況がうかがえるかと思います。
5ページは「法人事業税の税率の推移」でございます。今、基本的には一番右端にございますとおり9.6でございます。初め12%から始まりまして、平成10年度に11%、11年度から9.6%ということになっております。こういうような法人事業税収の状況の中で、当税調におきましても、法人事業税に対する外形標準課税の導入ということをご議論いただいたところでございます。
6ページにございますとおり、法人事業税を変えなければならないその趣旨ということでございますが、まず[1]でございます。事業規模に応じて薄く広く公平にいただくべきではないか。また、応益課税という性格にかんがみれば、受益に応じた負担を求めるべきではないか。また、安定的な行政サービスを提供し、地方分権を支えるという観点から、基幹税の安定化を図るべきではないか。さらに、努力した企業が報われるという税制を考えるべきではないかというご議論をいただいたところでございます。
そういう中で、7ページでございますが、簡単に仕組みをご紹介いたしますと、一番左端にございますとおり、現行は所得に対して課税標準を所得として税率9.6%でいただいております。それを現在、一番右端でございますが、所得に対する部分は半分にいたしまして、残り半分を外形でいただく。半分のうち一部は事業活動規模を反映した付加価値、内容的には報酬、給与額、純支払い利子、純支払い賃借料、そこに単年度損益をプラスマイナスするという付加価値割、それとさらに資本割という概念を入れさせていただきました。
旧自治省案につきましては、報酬、給与を課税標準にするということで、賃金課税という批判もあったわけでございますが、資本割を導入することによりまして、給与の割合を大幅に引き下げることができたということでございます。
そして次の8ページでございますが、この外形標準課税の導入につきましては、今年の1月閣議決定されました「構造改革と経済財政の中期展望」におきましても、下線引いてございますけれども、「各方面の意見を聞きながら検討を深め、具体案を得たうえで、景気の状況等も勘案しつつ、平成15年度税制改正を目途にその導入を図る」としていただいたところでございます。
以上でございます。
〇石会長
ありがとうございました。木内さん、この旧自治省案というのはもうついえたのですか。ついえたという意味は、改正案に100%置きかわったというふうに理解してこれから議論するのですか、我々は。それはどうですか。
〇木内都道府県税課長
一昨年、この旧自治省案というのを提示させていただきまして、当税調でもご議論いただきました。そして、その後もいろいろと関係各団体からもご議論いただきまして、いろいろご議論を踏まえた上で、昨年、改革案というのを出させていただきましたので、基本的にはこの改革案というのをたたき台にしてご議論いただければと思います。
〇石会長
わかりました。それでは、国税・地方税の法人税関係、今ご説明がありましたので、これから皆さんのご議論をいただきたいと思います。それから基礎小に出ている委員の方も、2度繰り返すのは面倒くさいと言わずに、聞いてない方もいるわけですから、どうぞ自説をどんどん言っていただきたいと思います。どうぞ、牧野さん。
〇牧野特別委員
現在、税の空洞化というのは非常に問題になっているわけですけれども、産業の空洞化、国際競争力の弱体化というのは非常に大きな問題だと思っております。そういう状況の中で、法人課税を産業の活力維持・向上というふうにどう使っていくかというのが今非常に大きな問題だと思います。
この基礎小の議論にもございますけれども、そういう中で、投資減税でありますとか、研究開発減税でありますとか、いろいろあるわけですが、この投資減税につきましては、私は非常に問題があると思います。先ほどの説明もございましたけれども、一般的な投資減税は果たして投資の促進に効果あるのかどうか。これは現在、過剰施設が非常に多い産業もあるわけですから、そういうときにこういうものを導入してどうかという問題がありますが、研究開発に限っては、これに限ってむしろ重点的に税制上の措置を講ずるということが現在の活性化に、産業の活性化に非常に効果的ではないかと思います。
それも含めて、これはちょっと質問にもなるのですが、法人税ですね。法人税というのは法人税率だけの問題ではなくて、地方税も含めた法人課税全体ですが、これについては、今説明もありましたように、累次引き下げて、欧米並み遜色ないということで、私もそういう前提でものを考えてきたのですが、これは、聞くところによりますと、財政諮問会議等で、必ずしもそうではないというデータなり議論が出ているやに聞いております。
数字というのはどういう観点から見るかによっていろいろ違ってくるわけですが、あくまでも現在の国際的なそれぞれの産業の競争力、活力の強化という観点から見た場合に、単純な税率の問題ではなくて、実態的にどうなのか、これをひとつ教えていただきたい。もしそういう観点から日本の法人課税の体系といいますか、全体がやはり問題があるとすれば、私は、個別の租特でやるよりも、法人税体系をもっと下げていくということが本論ではないかと、本筋ではないかと思います。
それからもう一つは、今説明がありました法人事業税でありますけれども、これはいろいろ昨年、一昨年大きな議論があったわけですが、私も、法人事業税の外形標準化は当然というか、そのとおりだろうと思います。ただ、これをどういうような具体的な案をつくるかということにつきましては、ここに先ほどご説明がありましたような案が一つのあれだと思いますけれども、原案、旧自治省案に比べて資本割を入れるとか、いろんなご工夫があるわけですが、これも企業の、特に製造業の活力維持という観点から、具体的にどういうのが一番いいのか、この辺については今後いろいろ議論もあり得るのではないか。代案がない以上、私はこういうことになっていくと思いますけれども、その辺については依然として賃金課税の分があるわけですから、私は賃金課税が絶対いかんとは言ってませんけれども、この辺、本当に企業の活力を阻害しないという観点からの具体案については十分なご検討をいただきたいと思います。
〇石会長
ちょっと法人税負担の実効税率についてご議論ございましたが、ちょうど3月29日に私が諮問会議に出ているときに、経産省のほうから出た資料をめぐってちょっと議論がありましたのでご紹介しておきますが、財務諸表を使いまして、個別の企業ごとに法人税の負担を計算されたのですね。細かい手法がなかったから、そのとき気がついたことは、個々の、NECであるとか、電機メーカーが法人税の実効税率が60%を超えるような非常に高い数字が出ていた。それで小泉さんが、大蔵から見る数字はいつもそんな高くないけど一体どうなっているのだと、まず両方精査して比べろという問題提起が冒頭ございまして、そこで大分議論があったので私も発言したのですが、財務省から出す実効税率というのは、先ほど数字にあるように、40%ぐらいなのですね。これは課税所得分の、国税・地方税の税額を計算してますから、いわゆる課税の概念による実効税率なのですね。経産省の出した個別の企業ベースは財務諸表でありますから、当然、税引き前の収益、利益分の税負担なのですね。だから、これは実効税率という言葉を使ってもかなり意味が違う概念なのですよ。
つまり、あえて言えば、分母、分子が同じ土俵に乗った所得概念なり事務概念でないと、厳密な意味での実効税率というのは計算できない。ただ、企業の側から出すと、実際に自分が払っているのは収益から払っているのだから、こういう計算もいいではないかと。確かにその意見がありますが、ただ、実効税率という言葉を使うと、片や40%で我々なじんでいる頭を、60ぐらいになってしまうと、その20は一体何かねという議論が当然出てくるわけで、その点がご検討をお願いしたいという形で、おそらく首相からもそういう指示があったと思いますが、これについて何か事務局からございますか。
〇古谷税制第二課長
皆さんのお手元にある分厚いこの資料の中に関係の資料が入っておりまして、見つけにくいかもしれませんが、基礎問題小委員会9回以降という束で、10番のインデックスがついておる4月12日の基礎小の資料で、真ん中あたりですが、基礎小の10-5というのが右上についた二枚紙の資料がございます。「法人課税の実効税率の日米比較」と書いてございます。見つかりましたでしょうか。
では、説明いたします。会長からお話がございましたように、私どもがいつも政府税調にお示しをしてます実効税率は、ここに書いてございますように、国と地方の法人課税の税率を組み合わせた総合的な税率水準でございます。いわば課税所得に国・地方を通じてこの税率が適用されるという意味での実効税率でございます。
具体的には、そこで見ていただきますように、法人税、事業税、法人住民税の3つの税率を組み合わせておりまして、国税で27.37、地方税で13.50、合わせて40.87というのが日本の実効税率でございます。
これに対してアメリカが、そこにございますように、連邦の法人税率が35%、州は50州それぞれでございまして、便宜カリフォルニア州を従来から使っておりまして、これを合わせますと40.75%ということでございます。アメリカの場合には州によって区々でございまして、ニューヨーク州ですと、そこにございますように、7.5に付加税が乗っかったり、ニューヨーク市で別途法人課税が行われるということで、ニューヨーク州の税率をカリフォルニア州の税率に変えますと、この実効税率が実は45.95%になります。
一方で、マイクロソフトなんかが立地してますワシントン州シアトルでございますが、ここは州税の法人税が非課税でございますので、これをカリフォルニア州のかわりに使うと、この40.75が連邦だけで35になるといったような形で見ていただければよろしいかと思いますが、これに対しまして経済産業大臣がお示しになったいわゆる実効税率、これは、そこにございますように、日米それぞれ10社の企業の連結財務諸表上の分母に税引き前当期純利益を用いて、分子に法人税等を持ってこられるということで、いわば結果としての、その企業の連結財務諸表上の税負担水準でございまして、これをたまたま日本企業でいうと13年3月期、アメリカ企業で2000年12月期等で10社の平均をとると、日本が47%程度、アメリカが33.6%ということで、この間に13.5%の格差があると。この格差のうち10%程度が地方税の格差であるというご説明を諮問会議でされたと伺っております。
2ページ目にいっていただきまして、この2つの指標をご覧いただく際に、特にこの経済産業大臣が指摘された実効税率は、個別企業の特定の事業年度の実際の活動結果を反映した、いわば事後的な税負担水準でございまして、企業会計上の利益と税務会計上の所得にはそれぞれ日米で違いがございます。企業の投資や財務行動等によって、各事業年度のこの実効税率は結果において大幅に変動する数字でございます。さらに税率が低い外国での活動や税率の低い州での活動が大きければ、結果的にこの実効税率は低くなる。そういった留意点にご留意の上見ていただく必要があろうかと思います。
それからもう一つ、連結納税制度の影響がございまして、アメリカはすでに連結納税制度を導入しておりますが、日本はまだ導入しておりませんで、この結果、日本企業のこの実効税率はアメリカより高くなる可能性がございます。
具体的に申し上げますと、その下の表で、ちょっとややこしゅうございますが、アメリカの場合には分母の利益は連結財務諸表で黒字と赤字が通算されております。さらに、分子の税額も連結ベースということで黒字と赤字を通算した利益に対する税額になっております。
それに対して日本の場合には、分母は通算されておりますが、分子の税額は黒字企業の税額を単純合計した結果であるということで、分母、分子両方圧縮されているアメリカよりは、日本のこの実効税率が高くなる可能性がある。
こういった点を見て指標をご覧いただく必要があろうかと思いますが、結果としての税負担ということでこういうことになっているという問題指摘を経済産業大臣はその際されたと私どもは受けとめさせていただいております。
〇石会長
ありがとうございました。そのとおりでございますので、結果を見るときにどういう形のものを使っているかということを常に頭に入れていただけたらと思います。次、どなたかご発言ございますか。どうぞ、福原さん。
〇福原委員
これでかなりわかってまいりましたが、今財務省でお示しになったのは先進ヨーロッパ諸国でありまして、私たち、特に日本の中小企業が今、競争相手になっているのはアジア諸国なのですね。アジア諸国はこれよりかなり低い水準の法人税率をどうも使っているようです。これは今の話ではよくわかりませんので、何を分母に何を分子にしているかわかりませんが、かなり、もう10%ぐらいずつ低くなっているような感じがいたします。多分中国は33%というのはどうなのでしょうかね。あるいはタイが30%、それからシンガポール24.5%という数字がありますけれども、これは分母と分子わかりませんが、この辺もひとつまたお考えの中に入れていただきたいと思います。それから法人課税の中に法人が負担すべきものとして、今の外形標準も当然ありますし、それからまた法人が負担すべき固定資産税額もあるわけです。
ちょっと固定資産税額のことに触れさせていただきますと、先に言ってしまいますが、税率は随分低くしていただいているのですが、地価は平成元年ごろから急激に下落しておりますので、結局のところ、これまた実効税率は上がっている。税額はほとんど変わっていない。しかしながら、地価の総額はものすごく減っている。そして負担は増えている。こういうこともございますので、法人税率というのは国税ばかりではなくて、地方税、固定資産税、事業税、そのほかすべてひっくるめてトータルして考えていただきませんと、国税としての法人税だけをお考えになっていると、一企業の負担はそれでは表示されないわけです。
それと、連結をせっかく導入していただいたわけですが、連結というのは企業グループの財務状況を正確に表現するために導入したわけですが、結果として、連結はできたのですが、それによる税の控除というのは受けられないということになりましたので、この辺ももう一度お考えになっていただく必要があるのではないかと思っております。
〇石会長
わかりました。アジアの諸国との比較というのは難しいですよね。法人税というのは、私の私見でありますが、経済の発展とともにだんだん立派なものができてくる。つまり、企業経営が正確になり、会計がしっかりし、そういう形で法人税というものが企業課税として成熟するわけですから、欧米諸国と日本の法人税を比べるのは非常に意味があると思いますが、現段階のアジアの諸国と日本の高度に完備した企業国の法人税と比べるのはかなり無理があるのですよね。
ちょっとそれを含めて何か事務局のほうで……。
〇古谷税制第二課長
また先ほどの束の資料で大変恐縮ですが、同じ10番の基礎小の10-4の資料の33ページというのを、申しわけありません。先ほど福原委員のほうからお話がございました、中国33、タイ30といった税率は、日本で言うところの法人税表面税率30%、それに見合うものとして、33ページで比較させていただいております。そういう意味で、法人税率はアジア諸国、大体2割から3割というところであろうかと思います。
それで34ページをご覧いただいて、法人税だけではなく、アジア諸国の租税負担率をこうやって比較いたしますと、日本よりも高い租税負担率の国がございます。特に白抜きの消費課税がアジア諸国では比較的負担率でウェイトも高くなっておりまして、いろんな経済や社会の熟度ということで帳簿をつけたり、会計が必ずしも進んでない国においては一般的に消費課税が先行するといった傾向もございまして、IMF等でも、アジア諸国にはインカムタックスよりはこういった消費課税の導入が求められてきたといった経過もありまして、なかなかG5諸国と日本を比較するほど比較は簡単ではないなと感じているのが現状でございます。
さらに36ページ以降、アジア諸国との労働コストの比較、あるいは37ページに公共料金や通信費、あるいは地価、事務所の賃料等の比較をJETROの資料でさせていただいておりますが、アジアとの競争ということを考えました場合に、必ずしも法人所得税の負担だけで問題が解決する話でもないのではないかということで、いろんな面でのご議論をいただきたいなということで、この辺の資料を基礎小では提出させていただいたところでございます。よろしくご議論いただきたいと思います。
〇石会長
ありがとうございました。今の点も含めるのは結構でございますから、法人税全体につきまして、何かございませんでしょうか。
〇中里特別委員
法人税の負担を一般的にすべての業種について比較するとなかなかミスリーディングなところもあるのかもしれません。例えば大規模な生産設備を有するメーカー等ですと、土地や建物の場合はよろしいのでしょうけれども、これはあまり税調では出てこないかもしれませんが、事業用資産、事業用の減価償却資産に対する固定資産税というのがございまして、これはどう考えても法人税の一部みたいなところがあって、申告方式で毎年納付するという他の固定資産税とは著しく異なるものがありますね。これなんかは法人に対するかなりの負担に、特に事業活動を行う法人に対してはかなりの負担になっているということがあると思います。
それから前に『租税研究』で松田委員がお書きになっていたので私読んだのですけれども、国際競争に著しくさらされている業種として例えば海運業というのがあるわけですけれども、世界の海運国というとオランダとかスウェーデンとかノルウェーとかイギリスとか、そういう国があるのだろうと思いますけれども、こういう国では国際運輸業について、自国のあれについて、我々が持っているトン税とはちょっと別のTonnage Taxという、要するにトン数に応じて課税する、比較的というか、かなり低い水準の、法人税にかえてそのTonnage Tax(トン税)というのをかけて国際競争力強めているというのがありますので、表面税率でどうこうということ以上に、業種ごとにきっといろいろな差があると。
それから福原委員がおっしゃったように、ふだん法人税の一部とは認識されてないような償却資産に対する固定資産税のようなものも含めると、なかなかどうして、確かに日本は重いということも考えようによってはあるのかもしれません。これは別に固定資産税がいけないとか、そういう意味ではなくて、トータルで考えるとなかなか業種によっては不満が出ることはあると。逆にいうと軽く課税されている業種というのもあるはずですけれども、それはちょっと語弊がありますので、その辺にしておきます。
〇石会長
ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。
じゃ佐野さん、その次、室町さん。どうぞ、佐野さん。
〇佐野委員
これまでの議論を伺っていると、どうも政府税調と経済諮問会議の関係がまず、会長のほうから説明がありましたけれども、どうも諮問会議のほうは減税メニューというものを前面に出して、財源論というものをおろそかにしていると。一方、これまでの議論の段階では、政府税調は所得税を中心に増税論議ばかりやっているというような対比が世間に受け取られている。いずれ諮問会議も財源論に来るでしょうし、政府税調も増税論一本やりというわけにはいかない。いずれさや寄せされていくでありましょうと思っております。このまま、何か増税論と減税論が並行的に進んだら6月末にはとてもまとまらないと思っております。
この減税論の今一番先頭を走っているような投資減税と研究開発税制ですが、ひとつ研究開発税制について、ちょっとふだんから気になっていることを改めてここでも申し上げたいと思います。といいますのは、塩川財務大臣が経済諮問会議の議員として4月3日に提出された「経済活性化のための研究開発と税制」という資料でございます。
何が気になるかというと、ここで「効果的・効率的な研究開発」、あるいは「戦略的な研究開発」という言葉が用いられているわけであります。私は研究開発に対する誘導措置、活性化措置というものをやる必要があると思っているわけですが、問題はそのやり方ということで私なりの意見がある。それが効果的・効率的とか、あるいは戦略的とかいうことに限定していいものかどうかということであります。
私は、この研究開発というものをあまりに縛らないで、もっと一般的な研究開発に幅広く適用する、そういう税制が必要ではないか。なぜならば、効果的とか効率的とか戦略的とか、これはだれが決めるのだと、あるいはだれが将来に責任を持てるのだということでありまして、これは企業の内部の努力、工夫から生じてくるものにほかならない。その執行、行政府とか、あるいは国会が決められるような問題ではない。つまり、何が効果的か、効率的か、何が戦略的かというのは、ある意味では民間の創意工夫によって出てくるものであって、それをあまりに法制的に絞り込むのはどうかという気がしております。
例えば先端技術、ITとか、あるいは遺伝子工学とかいろいろ、おそらくそういうことを想定してられるのでしょうけれども、私は、第二のインスタントラーメンが出てきてもいいし、第二の宅急便が出てきてもいい。あるいは、福原さんおいでですけれども、だれでも美男美女になれる化粧品ができてもいいと。別に今挙がっているような先端技術に特化する必要ない。つまり、研究開発にはそれぞれの役割があって、それぞれの創意工夫がある。それが経済を活性化し、社会に貢献するものであると思います。
それともう一つ、それに関連して、この研究開発税制の現状とも絡むわけですが、研究開発というのは何段階かのステップを経るものだと理解しております。基礎研究から始まり、応用研究から始まり、商品化、開発、研究、幾多の段階を踏むわけでありまして、現在の税制はどうもこの基礎研究というものに限定され過ぎているのではないか。もっと応用、開発、商品化、そういった段階も研究開発としての価値に違いはないわけでありまして、この税制を考える場合はあまねくといいますか、上流から下流まで幅広く税制の対象にするという発想が必要ではないかと思っております。
〇石会長
今事務局のほうにお尋ねしたいけれども、佐野さんの言った、応用まで含めて研究開発というのは実際に使えるのですか。使えないのですか。
どうぞ。
〇古谷税制第二課長
今、税法上の試験研究費ということで、先ほど佐野委員からお話があった増加試験研究費の税額控除というのは今試験研究税制の中心になっているわけですけれども、現在の試験研究費の概念の中には、基礎から応用、実用段階まで広く入ってはおるのです。ただ、最近の議論は、それが増えないから増加分だけを対象にされたのだと使い勝手が悪いとか、そういう議論にはなっておりますが、範囲という意味では試験研究費の中に入っているというふうに理解しております。
〇石会長
ありがとうございました。
じゃ室町さん、どうぞ。
〇室町特別委員
若干総論的なお話で恐縮でございますが、このペーパーにありますように、経済活性化策と法人税、いわゆる経済活性化策のために税制で何ができるか検討することが必要だと。私、大変いいことが書いてあると思うのでございます。日本経済、短期的な問題はもちろんございますが、中長期的にもやはり大きな問題を抱えているわけでございまして、これをいかに活性化させていくかということが世界の中での日本の地位というのをこれから決めていくという、大げさな意味でそういうことだと思いますので、これはぜひこういう方向を打ち出していただきたいと。
その中で、研究開発減税、あるいは投資減税、あるいはスクラップ&ビルド減税みたいなことがあってもいいかもしれませんが、そういった具体的なものになるのか、あるいは包括的な税率の引下げをもって対応すべきなのか、この辺はよく研究する必要があると思いますが、いろんな意味でいろんな工夫を、今、企業は企業で自己努力をしながら、また政府は政府でいろんな対策を考えている中で、今この税制改革というのがいわゆる可能性のある一つの道として大変大きく注目されているわけでございますので、この辺のところを大きく浮かび上がらせて税調でも出していくことがいいのではないかと思うわけでございます。
〇石会長
ありがとうございます。
ほかに法人税でご発言は、猪瀬さんと松尾さん、お二人でよろしいですか。では、猪瀬さん、どうぞ。
〇猪瀬委員
先ほどの所得税の人的控除なんかをすっきりさせていくという方向、今度の外形標準課税のやつは、欠損法人がどんどん増えていく中で、いつまでも各方面の意見を聞きながら検討を深めというのは、ずっと各方面に意見を聞いて検討も深めたので、大体いつも、この話というのは、外形標準課税は時間の終わりのほうに来るのだけれども、そろそろきちんとやったほうがいいなと思うのは、やったほうがいいというのはもう決めたほうがいいでしょうという感じがするのは、東京都の外形標準課税、裁判で負けましたよね。これは負けるとわかっていて負けたということでしょうけれども、大阪は負けたにもかかわらずまた始めるとか言って。そういうふうなことであれば、やはり国のほうできちんとはっきりさせておかないとモラルハザードであると思うのですね。ですから、これは去年もおととしも出ていてなかなか決まらないということだけれども、先ほど言った人的控除なんかをすっきりさせるのと同じ考えで、やはりフラットにして公平にしてということで考えれば、もういいのではないかということなのですね。
〇石会長
わかりました。
じゃ松尾さん、最後にどうぞ。
〇松尾委員
地方税としての企業課税を考える場合に、受益と負担との関係、これが個人の場合と違って、やはり非常に明確になりにくいという点があると思うのですね。この点はちょっと考えておく必要がある。
それで、法人事業税の改革案でありますが、これは前から議論になっていて、また言うのもちょっと憚られるぐらいなのですが、転嫁の問題をどう考えるかということなのです。この改革案にしましても、転嫁しますと、結局消費税と一体どこが変わるのだと、どこが違っているのだという問題がありますね。じゃ転嫁しないとどうなってしまうのか。いわば冥加金的な性格のものではないのかと、こういうことも考えるわけです。結果としてどういうことになるかといいますと、とりやすいところからとるということですよね。石原銀行税なんていうのはその典型ですから。
ということで、私は、この議論はあまり長過ぎて、自分で言うのもうんざりしたのですけれども、やはりこの問題を消費税改革の際に解決するというのも選択肢の一つとして残していいのではないかと思います。
〇石会長
消費税改革といってもまだ進んでませんけれども、4~5年先でもいいという話ですか。
〇松尾委員
この税の姿から言いますと、転嫁の問題、避けて通るわけにいかないと、ちょっと延びてもしようがないのかなということであります。
〇石会長
わかりました。
それでは、ちょうど4時近くになりましたので休憩をとりたいのですが、ただ、これまでやった議論をちょっと整理しておいたほうがいいと思いますので、私なりに論点の整理をして、それが終わった後で休憩にしたいと思います。
前半は所得税、大分ご議論いただきました。幾つかの重要な論点が出たと思いますが、二三、基本的な方向として言えることは、第1点は、公平・中立・簡素、この3原則を堅持せいということを強くおっしゃった方が随分いたので、これは確認の意味で申し上げることができると思いますね。
それから第2は、やはり簡素も含め、これから所得控除見直しということは必然的に起こるだろうと。そのときはタイムスパンとかタイムスケジュールという言葉がありますように、一挙にできないなら、それだけステップ・バイ・ステップでいくべくプログラムを立てたほうがいいではないかということですね。
これに絡めて、所得控除を見直すと必ず不利をこうむる方々がいるから、それは順々にやっていくということと、もう一つは、歳出面でできるだけフォローできれば歳出面で少しカバーするという議論があってもいいのではないかという議論。これが2点目だと思いますね。
それから3点目は、給与所得控除、幾つか論点が出ましたけれども、重要な点は申告の選択制というのも考慮の中に入るではないかということだろうと思います。
それから配偶者控除については、ご議論があった中で、事態の変化も大分起こってきたと。そういう意味で、男女共同参画という視点から議論は成り立つのではないかというご議論があったように思いますが、機会の平等と一口で言うけれども、それを目指す方向で税制改革をするつもりなのが不平等のほうにいってしまうということについては厳に注意せいというご議論。これが4つ目。
最後に、やはりロットとしての所得税の役割をこの際しかと考えるべきだと。おそらく恒常的な減税をどうするかという処理の問題に絡むと思います。
それから法人税は今終わったところでございますが、やはり具体的な経済活性化という視点から、投資減税、あるいは研究開発投資に対する問題で、一般的にやるのか、重点的にやるのか、これについては意見が分かれましたね。当然のことだと思います。ロジックも理屈づけも少し分かれたかと思いますが、これは今後、この種のことをやるときには必ず出てくる問題でありますので、議論は深めていかなければいけない。
それから外形標準課税、これはすぐやるべしということと、それから転嫁の問題もあるから、消費税の中で一体化して議論したほうがいいではないかというご議論の違いもありましたし、それからちょっと前後しますが、法人税負担の、言うなれば実際の負担ですよね。実効税率と言ってもいいし、実際の負担と言ってもいいのですが、その比較においてはいろいろ物差しがあるので簡単ではない、その背後にある事情を十分見極めてということと、それから法人税だけでなくて、企業全体の負担というものを見ないと実際にはできないだろう。そういうご議論があったかと思います。
あと、休みましてから資産課税に移りたいと思います。それでは、4時10分ぐらいまで少し休憩しましょうか。またお戻りください。それでは、ちょっと休憩します。
(暫時休憩)
〇石会長
それでは、再開します。
それでは、話題を変えまして、今度は資産課税に移りたいと思います。資産課税のほうも一応整理がついておりますので。ただ、国税の相続税、贈与税の話と、それから固定資産税など含めた地方資産課税、ちょっと違いますので、少し分けて議論いたしたいと思います。
26-2という資料をご覧ください。その5ページ目であります。基礎小でも随分、この相続税、贈与税というのは議論いたしました。我々の関心が非常にあるということと、それから生前贈与ということを使って、例の1,400兆円ある個人金融資産を何か誘導できないかという問題意識があり、幾つか、税調でというよりは、他のところでそういう案が出てますので、この問題、かなり関心があったと言うべきでしょう。
取り巻く環境の変化として、少子・高齢化、これはあえて言うまでもないですが、言うなれば生産年齢人口が減るとか、それから相続税の世界でいいますと、やはり相続による財産の取得時期が相続人のライフサイクルの後半にだんだんシフトする。つまり、昔だと60代の親から30代にもらったという人が、今や90代の父親に60代ぐらいでもらうということがありまして、これがだんだん後半にシフトするとき、老後が短くなったときに相続して財産をもらっても困るではないかという議論は当然あるわけですね。それから老後の扶養という形で、同居・介護と公的なものをどう関係づけて、かつ相続税を考えるか、あるいは生前贈与のタイミングをどうするか、こういう議論がありました。
それから資産がどんどんストック化して、高齢者に保有資産が増大してますので、これを相続という段階でどういう形で課税の対象にするかというのは今後大きな問題になるという印象を持っておりますし、それから所得税の累進課税がフラット化して、再分配効果が一段と弱まり、かつ、それに間接税が絡んできておりますから、税制全体の再分配機能が弱まった中でこの相続税をどうするかという大きな問題だという印象というか、意識を持っております。
そこで、どういう議論があったかといいますと、まず課税の根拠としては、ここに書いてございますように、そもそも無償で親から子にそういう関係でもらった取得財産には担税力があると見て課税するわけですね。その場合に、相続税と贈与税とは一体化して、贈与税は相続税の補完でございますから、一体化して考えるというのは正確なのでしょう。
それから課税方式は、ご存じのように、遺産課税でやるか、遺産取得課税でやるか。つまり、平たくいえば、遺産を贈るほうの側に課税するのか、受け取る側でやるかという形。それから併用性。日本の場合はどっちかというと併用性という形をとっているかなと思ってます。
それから問題は、今、相続税と贈与税の間が切れているのですね。法律は一体化しておりますが、贈与は贈与、相続は相続でかけられておりますから。これを将来的には累積課税という形、つまり、人の一生涯の資産をトータルで課税する。生前に資産をトランスファーする。そして遺産としてそこで最後整理するといったような、そういう形のものが必要ではないかという印象を深く持っておりまして、この方向についてはある程度合意ができているかなと思ってます。
それから次の6ページ目になりますが、課税ベースというのは、今、奥さんと子どもが3人いた場合には、基礎控除5,000万円で、あと1,000万ずつありますから、9,000万円まで非課税になるのですが、この基礎控除の水準は高いのではないかという印象を持っている人、私も含めてでありますが、多かったということと、それから特例措置がいろいろ入り込んでまして、例の死亡保険金とか死亡退職金にはかなり大幅な非課税措置があるし、それから事業承継の場合、これは対話集会でも必ず問題になりましたけれども、非上場株の評価の問題もさることながら、そっちが問題あると同時に、今度は逆にいって住宅、事業用資産の、言うなれば小規模宅地等の課税の特例が大き過ぎるのではないかと。
住宅に関しては200平米まで8割減額でありますから、2割しかかかってないという世界でいいかどうかという議論があるわけですね。それからあと住宅資金の贈与に関して5分5乗でかなり優遇されていると。
そういう意味で、最高税率7割というのは非常に高いというのは税調が一貫して言ってますので、7割を引き下げて課税ベースを拡大するという方向があるのかもしれませんが、そういう議論はまだ明示的ではございませんが、そこは皆さんお持ちと思ってます。
それから累進税の構造をフローの所得課税とストックの贈与税の中では同じである必要があるかどうか、これも議論のあるところであります。
今後の課題として、民法の問題は非常に大きいのですね。特に均分相続の問題はどうするかという問題もありますし、執行面で立証責任、どこに置くか、あるいは信託の問題がおそらく相続上出てくるだろうし、延納・物納の問題もあるという形で、今後これを詰める必要があるという意味で、議論の予定を書いておきました。
この点につきまして、資料が用意されておりますから、企画官の菊地さんと……それで、地方のほうも一緒に議論してしまって、質問だけ分けましょうか。じゃ菊地さんと株丹さん、続けてちょっと資料のご説明をください。
〇菊地企画官
資産税を担当しております企画官の菊地でございます。私のほうから、ただいまの会長のご報告に関連したそのバックグラウンド、ポイントを絞ってご説明させていただきたいと存じます。先ほど来使っております、総26-3と書かれております横長の資料の13ページをお開きいただければと存じます。
ここに「主要国における相続税・贈与税の基本的仕組み」を整理いたしました。まず相続税の課税方式ですが、大きく分けて2つになっております。アメリカ、イギリスのように、残された遺産全体を課税対象とする遺産課税方式、日本、ドイツ、フランスのように、相続人が実際に取得した遺産に応じて課税する遺産取得課税方式、こういった大きく2つに分かれております。その中でも、我が国は総額の算出の際については法定相続人の数と法定相続分を用いるということで、この遺産取得課税を若干修正した方式になっております。
そういった課税方式の関係から、納税義務者は、アメリカ、イギリスのような遺産課税方式の際には遺言執行人、あるいは贈与者という形で、言うなれば出すほうということになります。遺産取得課税方式のほうは相続人、受贈者ということで受けるほうということになります。
その次に贈与税の課税方法というのを整理いたしましたが、今、会長からもありましたように、我が国は単年度で課税を完結させるという方法をとっております。他方、アメリカは過去すべての贈与を累積するというスタイル、イギリスは過去7年分の累積、ドイツ、フランスは過去10年分の累積という方式をとっております。
その下、相続時の課税方法というところですが、いわゆる相続税と贈与税の調整というところで、我が国は相続前3年以内の贈与については累積して相続財産と合わせて課税するという方法をとっておりますが、アメリカは先ほどの贈与税と同様に、生涯にわたる贈与を累積して、最後に遺産と合算する。イギリスは7年、ドイツ、フランスは10年という形で、そういった一定の期間の贈与と相続を合算して課税するという方法をとっております。こういった場合、すでに支払いを済ませた贈与税の額についてはどの国も控除するという形になっております。
14ページにこの贈与税の課税方式、我が国の採っております暦年課税方式、アメリカ、フランスなどのような累積課税方式をちょっと模式的にあらわしてみました。左側は我が国の暦年課税方式ですが、これは毎年の贈与額に応じまして基礎控除を差し引き、それに該当する分の税を納めていただくという形で、毎年毎年完結いたします。
右側、累積課税方式ですが、例えば1年目、これは贈与額がたまたま基礎控除の額より小さかったものですから、このときには税額がゼロということになります。2年目は贈与がない。3年目にまたここにあるような金額の贈与が行われた場合には、1年目と3年目の贈与を合算いたしまして、その合計額で全体の税額を計算するというようなことをしております。ここで合算した額から基礎控除を差し引いて、残った分に該当する税額を計算して納税いたします。黒い部分がその納税額を表現しております。
4年目に、さらにまたこういった金額の贈与が行われた場合ですが、この場合には過去の4年間分の贈与をすべて累積いたしまして、その合計額について税額を計算いたします。この場合、3年目にすでに納税した分、薄い部分ですが、それがありますので、その分を控除して、残りの黒い部分に該当するものだけを納税していただく。
アメリカであれば、このようなことを生涯にわたって行い、フランス、ドイツであれば10年間について行う。11年目になりましたら、最初の1年目を外しまして11年目を入れてという形で、10年間分だけ常に累積計算するというようなやり方になっております。
15ページにまいりまして、こういった贈与税の課税方式の類型、これはさきの中期答申の中の整理ですけれども、それぞれ特色がございます。まず一番上、一生累積課税方式ですが、この場合、右側の特色のところですが、生前贈与を行っても、すべてを相続した場合でも、合計税負担額は変わらないというメリットがございます。
他方、その下ですが、一生にわたる贈与を管理する必要があるため、比較的執行が困難であるという点もございます。
一番下、暦年課税、我が国のところは生前贈与による租税回避を防止するため、贈与税負担を相続負担より重くする必要があるということで、これでちょっと生前贈与しづらいような体系になっているのではないかというご指摘をいただいております。もう一つありますのは、税務執行は単年度で完結するということで、最も容易というような特色を持っております。
その中間にありますのが、ヨーロッパにありますような一定期間累積するという方式でございます。
もう一枚おめくりいただきまして16ページが相続税に関します課税状況の推移でございます。相続税の負担の水準について過去にさかのぼって見たものでございます。一番下、箱囲いしておりますが、11年度で、亡くなった方に対する課税の件数、これが今大体5%。亡くなった方100人の方に対して5人程度の方が課税対象となるという状況になっております。これを過去見ますと0.8という時代もあれば、一番大きな数字で7.9というのもございます。こういった課税の割合をどう考えるか。
あるいは一番右側のカラムになりますが、一番下、12.7という数字のところに箱囲いしておりますが、これは課税された方の平均的な負担割合でございます。この12.7という数字も、その上を見てみますと9.1という数字から22.2という数字までいろいろ変化がございます。これまでの傾向を概観いたしますと、基本的には経済規模の拡大ですとか、あるいは家計資産の増大に伴いまして、徐々に課税割合、負担割合のいずれも増加するという傾向が見られると思います。
ただ、それがある水準になりますと、やはり負担感というものが出てまいりますのか、軽減の方向で制度改正が行われるという状況が見てとれるかと思います。このように、ここでは件数ベース、税額ベースという2つの指標をお示しいたしましたが、こういったあるべき負担割合の水準を考えていくというのが一つの論点であろうかと考えております。
私からの説明は以上でございます。
〇石会長
じゃ続けて株丹さん、地方税のほうをお願いします。
〇株丹固定資産税課長
固定資産税課長、株丹でございます。
続きまして地方資産の関係でございますが、資料は「地方税関係資料」、総26-4の9ページをご覧いただきたいと思います。こちらのほうでは固定資産税の最近の税収の動向を棒グラフ、折れ線グラフでお示ししてございまして、土地、家屋、償却資産について棒グラフで示して、合計額を折れ線でご覧いただけるようにしてございます。
合計額のところをご覧いただきますと安定的に推移してきたと言ってよろしいかと思いますが、12年度につきまして、前年度より減少しておりまして、これは固定資産税としてつくられてから初めての減少でございます。12年度は3年に1度、固定資産税については評価替えを行う年に当たっておりまして、最近の傾向として、評価替えをいたしますと、土地だけではなく、家屋の税収につきましても減ってしまうという状況でございます。
なお、土地のほう、棒グラフをご覧いただきますと11年度がピークで、それ以降は漸減してきているというのが現状でございます。
次に10ページをご覧いただきたいと思います。固定資産税の土地、特に宅地でございますけれども、評価と課税の最近の経緯をお示ししております。大きくは3つの時期に分かれると思っておりまして、まず平成5年度まででございますが、評価のところの[1]にございますように、これまでの時点では市町村の間、あるいはそれぞれの市町村の中でも土地ごとに、これは地価公示ですとか相続税、もちろん固定資産税の評価もございますけれども、そういう公的土地評価の間で評価水準に大変大きな格差がございました。また、全体的に評価水準が相当低い水準にあるというご指摘もございました。
それを踏まえまして、平成6年度から8年度までのところでございますが、評価のところの[1]にございますように、公的土地評価について均衡化・適正化をしなければいけないということで、いわゆる7割評価を固定資産税、宅地について実施したわけでございます。地価公示の7割というものを固定資産税のほうの宅地の評価ということで行ったわけでございます。
それに伴いまして、課税については評価額が大きく上がりますので、それに対応する措置をそれぞれ講じてございますが、※印で下のほうに書いてございますけれども、それまで、課税標準額と評価額、それぞれの土地、基本的には一致しておりましたものが乖離を来たしたと。そういうふうにしませんと税負担が大幅に増えてしまうわけでございますけれども、乖離の程度もばらばらになったということがございました。
それを踏まえまして、平成9年度以降現在まででございますが、評価につきましては、据え置き年度――基本的に固定資産税は3年に1度、価格を決定いたしますと、その価格を3年間使うわけですが、そうではなくて、通常は据え置きとなっているときにも評価額を修正するということをいたしまして、また課税については負担水準について均衡化の措置をとるということをしております。現在はその均衡化を図っている最中にあるということでございます。
下のほうの※印、2つございますが、この考え方は、本来同じ価格、評価額の土地であれば同じ税額を負担するというのが税の負担の公平の観点から重要だということでございます。現状は、地価の下落の影響がございまして、大都市では、納税者の数で見たときには8割方が税額が引き下げられる、あるいは据え置きになるというところに置かれているという状況がございます。
11ページでございます。こちらのほうは昭和48年に創設されて以来の特別土地保有税、税収額の推移、それから別な表をちょっと合体させていただいておりますけれども、制度の主な改正点もあわせてお示しさせていただいております。制度の改正、枠の中に入れてちょっと字が小さいのですけれども、特に点線のところで<バブルに係る対応>ということで枠かけてございますが、こちらのほうでご覧いただきますと、地価上昇期に課税を強化いたしました平成3年度なり63年度なりの強化した部分につきましては、既に廃止されておるということをお示ししているものでございます。
税収の推移のほうは、制度改正を反映いたしまして、平成3、4年ごろのピーク時から比べますと相当減ってきてございます。現在の特別土地保有税は未利用地の有効利用を促進する税に変わってきているという状況であると思ってございます。
大変簡単でございますが、以上でございます。よろしくお願いいたします。
〇石会長
ありがとうございました。それでは、ちょっと性格が違うトピックスなので、前半の部分で、相続、贈与の税をまず議論して、一段落、すっきりいきましたところで、固定資産税を中心といたしました地方資産課税等をご議論をいただきたいと考えております。どうぞ、どなたでも結構です。
じゃ福原さん、どうぞ。
〇福原委員
相続税につきましては、上限額はもう70%というのは引き下げることがほとんど方針として変わっておりませんので、控除ベースを引き下げる、課税ベースを拡大するということについては、私は賛成でございます。それからもう一つは、相続、贈与を通じて累積課税にすべきではないかと考えております。
それからもう一つは、特に中小企業者において、これは毎回申し上げるように、事業承継と個人の財産とはもちろん一緒にどんぶり勘定している会社もありますけれども、多くの場合にはやはり分離しているのでありまして、それは非公開の株式になっておりまして、ビルを所有したり、あるいはそこで営業したりしておりますと、非公開株式に価格の査定をされまして、それに対して現金で納入しなけれはならないということは、もう事業をやめろと言うに等しいわけでして、この事業用の資産の相続については別途考えていただきたいと思うわけでございます。
それから、これは全体の税の構造とは違うわけですが、文化財等を個人でお持ちのものがありまして、文化財というのは必ずしも美術品ばかりではなくて、広大な、要するに公園みたいになるような庭園でありますとか、あるいは景勝豊かな土地でありますとか、フランスでいえばシャトーみたいなものであるとか、そういうものがあった場合に、これが相続税の対象になりますと海外に流出するとか、あるいはそれが隠されるとか、あるいは全部木を切り払わなければならないとか、そういうふうに分解してしまうことがあり得ますので、英国では、世襲財産救済(Relief for Heritage Assets)というタックス・エグゼンプション、税額控除があるそうでございますので、ぜひこれはお考えいただきたいと思っております。
というのは、所有者が公開を原則としている場合には、それに対して税額が免除されて、そしてその公開をやめたときには税額が徴収されると、あるいはその次の代にも同じようなことが起こるという制度だそうであります。このこともぜひお考えくださいませ。
〇石会長
福原さんね、承継税制、いつもご提起ありますが、対話集会でも、これは必ず出てくるのですよね。そこで、やはり論点は非上場株の評価の問題ですか。それが今のままでは過大であるから、全然やめろということではなくて、それを下げろということですか。
〇福原委員
過大と言うよりは、なくせということではありません。ただ、とても現金でそれを払うことはできないということであります。
〇石会長
払える人も当然いるでしょうけれども、要するに今のやり方が過酷であるという印象ですね。
〇福原委員
基準を変えていただいたわけですけれども、基準を変えていただきましたら、今度は優良な企業のほうが評価額が上がってしまったのですね。で、たくさん税金を納めている会社はたくさん相続税を払わなければならないということになってしまったわけです。
そこで、これをどういう方式に変えるかは別として、非公開株式というのはもともと売ることができないわけです。また、売ったとしてもその価格で買う人があるわけはないわけです。というようなことから、これについては全く違った考え方を導入しなければならないのではないか。ただし、外国に一体そのようなやり方があるのかどうかというのは、まだ私たちも調べておりません。
〇石会長
また具体的に何かあったらご提案ください。どうぞ、ほかに。どうぞ、猪瀬さん。
〇猪瀬委員
累積課税方式のことで、質問というわけではないのだけれども、これは日本も昭和50年代ぐらいまでは3年ぐらいやっていたということですが、これはイギリス、ドイツ並みだと7年とか10年とか。これは僕は単純な話だと思うのです。昭和50年代というのはITがなかったからでしょう。これは執行の問題で大変だと言うけれども、今のIT機器を使っていたら変わったのではないかと思うのですけど、そういうのはどうなのですか。
〇石会長
あと番号でしょうね。
〇猪瀬委員
番号は、だけど実質ありますもの。
〇石会長
まあそれはやってできないことはないとは思いますが、何か菊地さんのほう、アイデアある? 今の執行面でちょっと累積が、今のままでは難しかろうという提案に対して。
〇菊地企画官
累積課税が執行面で大変だという論点、幾つかあると思います。今、ITという論点と、あと番号という論点が出たと思いますが、実はそれ以外にも、先ほどの2枚紙にあったのですが、立証責任がどちらにあるのかという点ももう一つの論点としてあるかと思います。我が国の場合には、課税の際に何らかの訴訟になった場合には、その事象についての証明というものをすべて税務当局が行わなければいかんという状況になっております。
したがいまして、これが長期間の累積になればなるほど、そういった長期間にわたる実際のその資産の移転と、例えば申告の正確さというものを当局のほうがすべてある意味で管理し、さらには訴訟になれば立証することが求められるということがございます。
また、それ以外にも、これも基礎問題小委員会でちょっと論点として出たのですが、例えば生前贈与の際に多額の贈与を行い、長期間にわたって累積した後、相続の時点で全体を精算するという考え方をとったときに、相続の時点にすべての相続財産があれば、その相続財産を基本に納税というのをしていただけるのですけれども、生前贈与の際に多額の贈与が行われて、仮にその贈与を受けた側が全部それを使い切ってしまって、相続のときに全体で精算しようとした場合でも、もうすでに資力がないといったことも想定されるというのも実は小委員会のほうで出ております。そういった面も含めて、幾つか実は執行面で超えなければいけないハードルというのはあるのかなと考えております。
〇石会長
ありがとうございました。ついでに、文化財の相続税は今日本はどうなっているのですか。今福原さんが出された話。わかりますか。
〇菊地企画官
文化財、ご本人が所有権を持ち続ける場合には、残念ながら、わが国の今の制度のもとでは、評価をして、その分に伴います税を納めていただくということになっております。ただ、例えばその文化財を財団法人のような公益の法人に寄附するというような場合には、言うなれば公益目的のための寄附ということで、そういった寄附をした財産については相続税の計算から外すというような制度は持っております。
〇石会長
ありがとうございました。
どうぞ。
〇福原委員
英国の場合には、今寄附ではなくて、個人の資産として残したまま、美術館やギャラリーなどへの長期の貸し出し、一般に公開されている部屋でも陳列ということで、それを文化財として認めるかどうかということは、美術館ギャラリー委員会というのがガイドラインを作成し、その助言に基づき内国歳入庁が行うということになってますね。
〇石会長
それをやると少しよくなるということですね。
〇福原委員
そうです。
〇石会長
ほかにいかがでしょうか。どうぞ、中里さん。
〇中里特別委員
資料のほうで主要国における相続税、贈与税の基本的な仕組みについての詳しいご説明があったのですけれども、課税の対象となる財産の範囲が、これもなかなか難しいところは、例えば、遺産税は別ですけれども、アメリカの贈与税は、アメリカ国債の贈与は非課税のはずですね。インタンジブルとかなんとかいう要件があって、遺産税ではかかるのですけれども、そうすると、事実上、こういう複雑な仕組みを用意しても、おばあちゃんが孫にお小遣いよということでアメリカ国債を少しずつあげるとか、なんかそういうことをよくやっているという、今やっているかどうか知りませんけれども、話を聞いたことありますから、ちょっとそういう課税の対象から漏れているものがどういうのがあるのかということを、それはいい悪いは別として、考えないと、単純な比較、これは仕組みの比較ですからこれはこれでよろしいのですが、やはり日本は重いだろうというのは事実。それがまた日本のよさにもつながっているわけで、あとは価値判断の問題ですけれども、そこはあるのではないかと思います。
〇石会長
ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。よろしゅうございますか。
それでは、ここで地方資産課税のほうまでひっくるめて、また相続に戻っていただいても結構ですから、どうぞ地方税関係について、また、先ほど外形のほうで言い残された方もいるかもしれませんから、どうぞまたお出しくださって結構です。
〇津田委員
前のほうの議論で、個人所得課税の関係については、均等割というのをやはりもうちょっと見直す必要があるのではないか。私なんか、目標としては月1,000円ぐらいの均等割というのはご納得いただけるし、地方団体もそのぐらいの努力をしなければいかんのではないかと考えてます。
それから所得課税の中でやはり国の所得税と個人住民税の関係、これは今後の地方財源の絡みでの議論になってくるわけですが、そこいらもにらみながら、所得税、住民税というものの見直しが必要ではないかと思います。
それから例の定率減税の問題で、あれなどは25万円で打ち切りですか。ここで議論しているのは、最高税率を少し下げたらどうかというような議論をしてますけれども、まず現状としまして、25万円という打ちどめ方式、あるいは定率という減税というのをいつまで残しておくのがいいのかどうか。その前提として、定率減税というのをやったときに果たして景気対策として効果があったのか、そして現状においてその効果がどういうことになっているのか。どうも今までの議論では、もう効果なんてないのではないか、みんな忘れているのではないかというような議論が出ておりますので、その問題がまず片づけるべき問題ではないかと思います。
それから事業税の外形課税の問題ですが、これはきょう素朴な議論を申しますと、国でもそうですが、地方団体の場合には地方行政とそれの税負担というものは目に見える形でわかるわけですね。それで、この外形課税の問題の一番のあれは、要するに応益方式ということを打ち出しておるわけですが、住宅地のあるコンビニが税金を納めているのに、何で駅前の一等地の銀行が税金を納めてないのか。ここいらはやはり国民感情、特に地域におきます税負担の感情としてはやはり議論があるのではないか。あるいは広大な海を埋め立てた石油コンビナートは全然払わないと。ところが、街の八百屋さん、豆腐屋さんでも、法人化しているときには税金を払って、どうもおかしいのではないかという素朴な議論というものを大切にすべきではないか。
都の銀行税でもいろいろ問題があるわけなので、ああいうふうにねらい撃ちはまさしくいかんわけですけれども、外形課税の目指しているのはむしろ負担と分任ということで、薄く広くという観点でございますので、東京都の問題も、あれ自体、問題を1つ提起したし、今申しましたように、地方における地方行政とそれの税負担をどうあるべきかというものについては、これは正直いって国民感情、かなり支持したということも否定できないわけでございます。それではなくて、今度は外形課税の問題はむしろねらい撃ちではなくて、広く薄く負担してもらうという趣旨ですので、やはり早急的に導入ということを考えるべきではないかと思います。
〇石会長
ありがとうございました。どうぞ、掘田さん。
〇堀田委員
全般通じてですけれども、この時期に特別にこういうものをまとめようとしているのは、構造改革との関係で話が起こってきたと思うのですけれども、どうも今までの議論、すっと素直にまとめていくと、非常に感情的な印象で申しわけない、暗いですよね。別に明るくすることが大事とは思わないのですが、国民が納得する、受け入れる、むしろ積極的にそうなったほうがいいと思うような、改めるための旗印といいますか、そういうものが必要だと思うのですが。
そういう点から少し個別に見ますと、個人所得課税関係、3つの原則を立ててやる、それぞれの原則ともにいいのですけれども、やはり国民の観点から見たら公平ということ、要するに今非常に不公平であることに対して非常に怒っておる。そこのところを個人所得課税というのは前面に出すべきであろうと。特に強調すべきであろうと。
ですから、不要な控除はなくしてしまうというのもそういう観点から、なかなか書きにくいでしょうが、控除が不公平を招いているので、そういうことがないようにきちんとするのだということをはっきりと打ち出すべきだし、それから徴収について、例のクロヨン問題、これについてもきちんと取り組むのだということはここでしっかり打ち出して、みんなが納得する公平な税制を実現するという理念を強調する必要が強いだろうと思います。
それから法人課税について言えば、競争力強化というのも大変いいですけれども、やはり国民の感情に、競争力も大変欲しいけれども、国民生活を安心できるものにしてほしい、楽しいものにしてほしいというのもずっと強くなってきておるので、そういう意味では、例えば人を直接扱うような事業、教育関係事業、特にチャータースクールとか落ちこぼれの子どもたちを扱う事業、子育て支援の事業、それから高齢者に対する介護、その他の、これも直接人が人を扱うそういった事業、こういうものを大切にする。そのための若干の優遇税制を打ち出す。これは大した額ではないですけれども、やはりそういう生活に密着したものを打ち出すのが国民の心を引くのではなかろうか。
それから法人課税についてもう一つ言えば、やはりNPO課税、その他、あなた方が一生懸命やるものについては、きちんとみんなのためにやるのだから評価しますよということを打ち出す。これもやはり明るさを持ち出すために必要ではなかろうか。
それから相続税、広く課税するというのは大賛成ですけれども、これはやはり高齢社会ですから、高齢者が築いてきた資産でそれぞれ支え合うのだというそこの理念を強く強調することが必要ではなかろうか。
最後に、課題出ておりませんが、今も出ましたけれども、地方自治体の充実といいますか、いろいろな権限を地方自治体に移していって、住民の生活に密着した、住民の意思の反映されるような行政の実現ということはやはり大切だと思いますので、財源を、これは書かれることはないでしょうが、消費税を思い切って地方自治体に課税権を移してしまうという、そこまでは書かなくても、かなり大胆な権限充実策を打ち出すのがやはり納得を得ることかなと思います。
〇石会長
でも、堀田さん、税というのはしょせん暗いのですよね、これ(笑)。それをいかに明るくやっていくかというのは、これから皆さんのお知恵をかりて、書きっぷりだと思いますがね。
〇堀田委員
ちょっと一言。暗いものを明るくするのは、それでどうなるかという、そこに明るさがやはりないといけないのではないかと思います。
〇石会長
どうぞ、今野さん。
〇今野委員
せっかくの堀田先生のご発言にちょっと励まされてお話をさせていただきたいのですが、本当におっしゃるとおり、暗い税をどう扱うかによって本当に社会に明るいメッセージを送ることは可能だと思います。私の場合、起業してから33年にもなるのですけれども、起業してすぐのあたりから、うちは女性企業でしたから、女性ばかりの会社でしたから、すぐのころから、この控除を受ける人も受けてない人も両サイドが非常に苦しんできたという経緯がございます。
就労調整と言いますけれども、これは本人の意思ということもありますけれども、実はこの問題は非常にいろいろあちこちに根を張っておりまして、例えば妻の収入が夫を超えたり、または昇進、プロモーションが進むに従って家庭内の不和といいますか、不協和音というものも出てくるということを女性たちは大変言っておりますし、その結果、夫と妻の固定した役割意識というものもずっと引きずってきたと思いますし、また、その結果、企業内においてプロモーションがおくれたり、労働力としての女性に対する評価がなかなか上がらなかったりというところに大きく影響していると思います。
それで、男の人たちのこのことに関する本音というのは本当はどうなのか。こんな30年近くも議論しながら全然実行しようとしなかったということに関して。私もいろんな経済団体で名指しで、あなたのような女性がいるからこそ、子どもの問題とか老人の問題とか、社会のいろんな病理を引き起こしているんだと言われたようなこともありまして、男の人たち、本当に経済界のリーダーと言われる方々もなかなかその辺になると、私たちからすると困ったものだと思っておりますが、でも、とかく女性の労働力というのは、景気の悪いときにはいち早く景気の調整弁として切り捨てられたり、また労働力不足という事態が起きると、女郎買いという大変屈辱的な言われ方で社会に呼び込まれたり、そういう方向に使われてきたと思いますけれども、アメリカのどなたかがおっしゃっておりましたけれども、日本の一番のシークレット・ウェポンと言われている女性の労働力をもっとしっかりと、景気の調整弁とか労働力不足解消とかいうことではなくて、本当に男も女もみんなが持てる能力を発揮して男女共同参画型社会のあるべき姿を実現するためには、もういつまでもこれ以上議論しているあれがないのではないかと思っております。
それから、先ほど石会長さんが、もし配偶者控除がなくなっても扶養控除で救えるという一言がございましたけれども、それも、本当に簡素で公正で活力を生むためという税制改革を考えるならば、そういう考え方ではなくて、健康で職を持つのに何ら支障のない人が、それでも自分のライフスタイルの選択として選択した場合は、そんなにあれかこれかの控除をしなくてもいいのではないかと思っております。
そういう配偶者控除が、この間大阪では女性たちが活発に発言なさったということで、私はさっき資料を読んでみたのですけれども、この対話集会の資料の中にはそれがほとんど触れておられない。ということもちょっと不思議だなあと。そんな活発に議論されたのだったらば、やはりそのようにここにも記述していただきたいと思います。
それやこれや、いろいろ申しましたけれども、そこまで考えて、いろんな根を張っている問題の先々まで考えて、この際改革しようとしているということをメッセージとしてアピールすれば、この暗い税も明るい何かパワーを生むと私は思っておりますので、ひとつぜひよろしくお願いいたします。
〇石会長
今野さんね、これの10ページあたり、随分やりとり書いてありますよ。1ページぐらい書いてありますから、ちょっとご覧ください。配偶者控除をめぐって。
どうぞ。
〇松本委員
固定資産税関係ですが、もうご存じのとおりに、現在は地方財政は非常に厳しい状況にあるわけでございます。こういう中でございますので、固定資産税関係、市町村の基幹的な税目でございますので、本税の安定的な確保が重要であるのではないかと思います。
7割をめどとする評価水準について、評価の均衡化、適正化の観点からこれを維持していただくようにお願いしたいと思います。次回の評価替えが平成15年度以降に、税の負担率につきましては課税の公平の観点から、平成9年度以降続いております税負担の均衡化、適正化をさらに進める措置を講ずることが必要でないかと思います。しかしながら、現在の手法では全国的な均衡化が図られるまでには今後かなりの年数が必要とされるところでございます。課税の公平の観点から、そのあたりを含めながら検討が必要かと思います。
それから、先ほど堀田先生から税源移譲の関係が出てきたわけでございますが、税源移譲、消費税ということが出てまいりました。消費税、それから所得税の一部、そういうことで移譲していただければ、地方団体として、地方交付税関係、見直し関係、また国庫負担金、補助金の問題――昨年の12月だったと思いますが、内閣府のほうから、一部の消費税と所得税移譲ということがちょっと新聞報道で見たわけでございますが、それをしていただいたら7兆円ということも出てまいりました。そういうことになれば、不交付団体も大分、40%ぐらい減ってくるのではないかというような気がいたします。その点はちょっとわからないでいるのですが、これは報道でちょっと見たものですから、さっき移譲の件が出たものですから、つけ加えておきます。
〇石会長
あの7兆円は単なる試算の報告でありまして、あれはまず実現されるのかどうかわかりませんけれども、一つのケーススタディということで、あまり過大な期待はかけられないほうがいいかもしれません。よくわかりませんが。さて、ぼつぼつ時間ですが……。
水野さん、どうぞ。
〇水野(勝)委員
先ほどの今野委員のお話とも関連して、それから先ほどちょっと会長がおっしゃった、配偶者控除がなくなっても扶養控除で救われる場面もあるという点でございますけれども、思い切って簡素化するということであれば、あらゆる人についてすべて50万、60万、あるいは100万かもしれない、男でも女でも、子どもでも大人でも年寄りでも、とにかく一人一個、公平に控除がある。それを扶養控除と言えば扶養控除かもしれませんが、アメリカのような人的控除ということで、すべて万人平等にその控除があるのだというふうに考えれば、女性も、いや、扶養控除なんていうものでない、そんなものなら要らないというあれもなくなるかもしれない。そうした方向での明るい簡素な仕組みというものもあるのかなあという感じがいたします。
〇石会長
それでは、時間がもう5時でございますので、よろしゅうございますか。
それでは、資産課税のほうはもうすでにいろいろ議論があってまとめる必要もないかもしれませんが、相続、贈与の一本化という形でご議論があり、累積課税についてはご賛同があったし、それから相続税率を下げて課税ベースを広げるという話とか、事業承継についての評価の問題をもう少し見直してくれとか、課税の対象をどうしてくれると、こういう議論がございました。所得税、あるいは堀田さんのご提案等々は総論の部分でまた再度使わせていただきますが、そういう関係のまとめでよろしいかと思います。
それでは、次回総会は5月24日2時から、多分5時になると思いますが、5月に、連休明けにまた3回ぐらい基礎小を考えておりますので、取り残して議論した部分、漏れていた部分を再度ご報告いたしまして、皆さんのご議論を大きくいただきたいと思ってます。
基礎小はこれから個人所得課税、資産課税で積み残した部分とか、まだ消費課税をやっておりません。それから国と地方の関係もやっておりません。そういうことを詰めながら議論してまいりたいと思いますので、その状況を次回の総会ではご報告したいと思います。事務局のほうからよろしいですね。ないですね。
じゃどうも長時間、3時間は少し疲れますが、どうもありがとうございました。
〔閉会〕
(注)
本議事録は毎回の総会後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。
内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。