第25回総会 議事録

平成14年3月26日開催

石会長

それでは、時間になりました。今日は第25回目になりますが、税調の総会を開催いたしたいと思います。

今日は、財務省のほうから谷口副大臣、吉田大臣政務官、それから総務省の滝大臣政務官が御出席でございます。

御案内いたしましたように、前半は、ロナルド・パールマンさん、元アメリカ財務省の租税政策担当次官補、日本でいうと主税局長と同じようなポジションだと思いますが、御出席いただきまして、レーガン時代の租税政策につきまして御説明いただきます。

その前に、私のほうから経済財政諮問会議に出席したこと、それから、二度行いました対話集会の模様をお話しします。

そして、後半は、基礎問題小委員会でやりましたことの御報告をいたすとともに、これからの各論に入る前のステップとしまして、総論的な締めとして、社会、国家あるいは家族というのがどのような格好になっていくかというようなことの問題提起を行いたいと考えております。

それでは、議事の進行メモに従いまして、最初に、経済財政諮問会議、「税についての対話集会」につきまして、私のほうからごく簡単に時間をいただきまして御説明をいたします。

今月の8日に、最初でございましたが、諮問会議のほうに呼ばれまして、税制改革の論議に参加してきました。論議に参加というより、私が10分ぐらい問題提起をし、かつ、地方財政改革推進委員会の委員長の西室さんが地方分権についてお話ししたという形で、あと、そういうものをめぐって自由に議論したということでございます。

私、スケジュール的なことを申し上げたあとで2点ほど強調いたしましたことは、いま税制改革は、大きくいって中長期の構造改革に資する税制改革と、それから、ごく短期的な意味でのデフレ対策としての税制改革があるだろうと。その内容につきまして、いまどういうことをやっているかという御説明をしたあとで、税調としては、やはりあくまで構造改革との絡みで、中長期的な視点から税制かくあるべしという議論をしているのだと、主軸はそこにあるのだということで、小泉首相が言われたようなことを引用しつつ、現にやっていますことを御説明いたしました。

それから、デフレ対策としては、過去にずいぶんいろいろなことをやってきた結果、財政赤字がたまったということもございますし、どれだけ有効だったかということも疑問もございますし、今後同じことをやるかどうかについては、慎重な対応をとるべきであると。条件としては、ごく短期的にいって、財源がどこで確保できるか、あるいはどれだけ有効な手だて、手段が具体的に見つかるか、それから、どれほど効果が期待できるかというようなことを慎重に議論しなければいけないという意味で、短期的な問題の整理をいたしました。

その後、諮問会議のいろいろな方の議論を聞いておりますと、構造改革に資する税制改革というのがおそらくメインであろうという意味におきましては、我々とそんなに変わらないと思いました。そういう意味で、あとの対話集会のところでも御説明しますが、マスコミ報道等々を見ますと、諮問会議と我々がいかにも対立した格好でとらえられ、片や財政再建派であり、片や景気刺激派であり、えらい溝があって、その溝がどんどん広がっていくというような報道がございますが、諮問会議に出る限り、2つの円は同心円上でかなりのところがオーバーラップしておりまして、構造改革の必要性、税制もその視点からやるというのは十分に皆さん認識されております。

ただ、現下の経済情勢、やはり政治家の方も入っていることもあり、デフレ対策ということをそう簡単に切って捨てられない意味において、短期の面も注意すべきであると。それについては我々も端から全面的に否定しているわけではございませんから、そこにおいてもおそらく共通の土台はあるのだろうと思っていますので、皆さんが見聞する様々な記事で、両者が対立しているというよりは、はるかに同一円周上にいるであろうということは、間違いもない事実だろうと思います。本間さんが来れば補足してもらおうと思いましたが、ちょっと今日はお休みになられたようなので、またいずれ機会を見つけて議論はいたしたいと思っています。

それから、対話集会のほうでございますが、資料がございますので、ちょっとお目通しいただけますか。「税についての対話集会」、第1回、第2回、千葉と、きのうは鹿児島でやりました2つの報告書が出ておりますから、お目通しいただければいいと思います。

千葉が200人ぐらい、鹿児島が160人ぐらいという形で、ちょっと気になりましたのは、1時半から4時という平日の時間帯でありますので、いまトータライザーという例のボタンを押してアンケートを集計できる機械がありますので、それでとりますと、8割がやはり男性なんです。女性が2割。50歳代、60歳代の男性がそのうちのかなりの部分でありますから、大体昼間の時間に来ていただくというのは、サラリーマンで会社を休んでというのはなかなか難しかろうということと、若い女性がほとんど目につかないということと、千葉では10代がゼロでしたね。鹿児島で1人という感じでございますので、今後、少しこの辺の時間帯を考えてみたいとは思っています。

それから、議事の中に、例のトータライザーを使いまして集計した結果が、千葉のほうも、あるいは鹿児島のほうも出ておりますから、後ほどお目通しいただければいいと思いますが、この結果等々を見ますと、やはり税制については、公平にしてほしい、あるいは簡素にしてほしい、あるいは薄く広くがいいよということは、かなり御理解をいただいているという感じを持ちました。

どちらの集会も非常に活発にフロアからも意見が出ました。我々の間も分業してお答えするという意味では、対話集会の実は非常に上がっているのではないかと自画自賛いたしております。司会者の大宅さんと竹内さんがともにベテランでありますので、うまくその辺をリードしてくれたということもございますが、その結果は、『会場アンケート集計結果』という1枚紙が出ていますよね。「本日の税についての対話集会はいかがでしたか?」という、これは全員に書いていただけない面もございますが、千葉も鹿児島も「非常に有意義であった」「まあ有意義であった」という[1]と[2]を足すと、9割を超えた人が、まあ有意義であったという評価をしていただいています。まあ、問題意識があった人が来ていますから、何か1つ得れば有意義であったと言っていただけるのだと思いますが、この3番、4番の「有意義ではなかった」というのが非常に少ないという意味において、我々のいうなれば地方行脚はそれなりの成果を上げているのかなという感じはいたしております。

あと細かいところは、この資料に沿ってお目通しいただければと思います。

ただ、千葉と鹿児島のときで、我々も若干ノウハウを得たのは、私が30分ぐらい税の現状を説明しますよね。どうしても少子高齢化で、あるいは財政赤字の累積でというまず現状分析から入って、現行税制を説明し、国際比較の図などを使うと、日本は税負担が低いという結果が出ますよね。そうすると、財政赤字が大変だ、税負担が低いというと、これは将来増税ではないかと、すぐさまとられて、千葉では増税集会であるという批判が最初に出たので、鹿児島では一生懸命、これから先は皆さん国民の選択であるということを強調いたしまして、すべて増税のほうだけ、将来はさておき、当面、そういう格好ではなかなかできないだろうということは御説明しつつ、やはり歳出カットという声が非常に強いですよね。歳出カットというのをやはりやってくれと。それがおそらく我々今後議論するときの大きな1つの制約条件にならざるを得ないと思っています。

それから、意見発表者の中に女性2人が入っておりますので、特に若い主婦の方あたりからは、きのうあたりは特に、子育てに関し何か支援を具体的にやるべきであるというような御議論がございました。

それが概略でございまして、あと4回やるというわけで、この成果を積上げますと、かなりの程度、1回当たり170~180人から200人でございますが、情報としては、集まってくるものから得るものはあるのではないかと密かに期待をいたしております。

それからあとのことは、また起こり次第議論いたしたいと思います。

それでは、本論に入る前に、谷口副大臣のほうからちょっと御意見をいただくということになっておりますので、どうぞ。

谷口財務副大臣

このたび財務副大臣を拝命をいたしました谷口でございます。ちょっと時間をいただきまして、私の意見を表明させていただきたいと思います。

前回、基礎小委員会がございまして、若干私もお話をさせていただいたのですが、時間も足りないということでございましたので、もう一度お話をさせていただきたいと思っております。

政府税制調査会の委員の皆さんには、大変真摯な御議論を賜りまして、非常にありがとうございます。いま1月から始まっております通常国会におきましても、今回の抜本的な税制論議の質問も多々あるわけでございます。そのときに塩川財務大臣は、次のような3点をおっしゃっておるわけでございます。

1つは、この税制論議の中で、歳出歳入のバランスという観点があるだろう。もう1つは、経済の活性化という観点があるだろう。税制が一体経済の活性化という観点で何をなし得るのかというような観点があるだろう。もう1つは、公平・不公平という観点があるだろうと、このような3つのポイントで税制論議がなされるだろうというようにおっしゃっておるわけでございます。

1月から大変な御議論をいただいておるわけでございますが、私の意見を述べさせていただきたいと思うわけでございます。何点か持っておりまして、まず1つは、先ほど石会長のほうからもございましたが、家族のあり方であるとか、国のあり方というような抜本的な議論をこの場で行っていただく必要があるだろうと。

その観点で私が申し上げたいのは、1つは企業のあり方、企業というのは一体どういう存在なのかと。例えば法人税におきまして、企業とは一体どういう存在なのか。御存じのとおり、我が国の現行商法におきましては、債権者保護の立場に立った100年以上続いた商法があるわけでございます。一方、証券取引法は投資家保護の立場に立った、アメリカ法をベースにした考え方でございます。ですから、商法、また企業会計、また税というようなところが、いくたびかの調整がいままでなされてきたわけでございます。まずアメリカにおける企業のあり方を考える場合に、一般的に投資家保護の立場でございますから、株主の意見が最大のものなのだということですから、アメリカで、我が国でもいま非常に行われておるわけでございますが、例えばM&Aで企業を売却するといったように、ベンチャービジネスが出てきて、1つの商品のように企業を売却するといったようなやり方があるだろう。もう1つは、現行商法も、そういうところに源流があるのだろうと思いますが、経営者、債権者、また会社の利害関係者もおられて、1つの社会的存在としての企業のあり方があるのだろうと。このような観点で見たときに、その企業はどういうように考えるべきなのか.
また、もう1つの論点は、いま現行法人税法は、擬制説の立場に立っておるわけでございますね。ですから、私も平成6年度の税制改正大綱をつくったときに、赤字法人課税の議論があったわけでございます。そのときに、本来なら、例えば均等割を課すというような方法もあるのだろうと思うのです。ところが、法人税法におきますと、本来、法人というのは実在しないものなのだと、最終的に個人に帰着するものなのだといったような考え方がございますので、均等割を課すことはできない。ですから、法人が赤字になった場合に、この赤字になった1つの原因は、交際費を支出するといって、利益が本来あるのだけれども、法人税を支出することによって赤字になってしまうというような考え方の中で、交際費課税をやったわけでございます。

ですから、私も1月から答弁をする機会が増えておりまして、そのときに財務省の答弁を見ておりますと、法人も会費を払う必要があるのだと、こういうような答弁ぶりがあったのです。実はしかし、会費という概念は、企業が実体的に存在しているというその前提の中で起こり得ることでございますから、法人擬制説という立場に立っておる現行の法人税体系がそれでいいのかどうかと、こういうような議論も1つする必要があるのではないかと、このような企業のあり方の問題意識を持っておるわけでございます。

もう1つは、これは塩川大臣もおっしゃっておりますが、家族の問題でございまして、資産税、贈与税、相続税のときに、資産を受けられる方が親の面倒を見るのか、見ないのか、といったようなことは全く無視されて現在あるわけでございますけれども、そのようなことでいいのかどうかというような考え方があるのだろうと思うわけでございます。

もう1つは、女性の社会進出といった観点で、現行所得税法は、配偶者控除、配偶者特別控除というのがあるわけでございます。女性が家庭の中におられるといったことについての控除が認められておる。というような観点でいくと、現行所得税の女性の社会進出に関しては、消極的な見方をしておるのではないかと。このような観点で、いまのような女性がどんどん社会進出していらっしゃるといったような状況の中で、これからの女性税制と申しますか、所得税のあり方について、どのように考えるのかといったようなこと。

また、もう1つは公示制度でございます。これは昭和24年にシャウプ勧告がございまして、翌年昭和25年に公示制度が創設されました。これは第三者通報制度とともに行われたわけでございます。要するに、いま所得番付というのがございますが、いま税額で番付をやっておるわけでございますけれども、これのそもそものつくられたきっかけというのは、必ずしも高額の納税をしていらっしゃる方に交付をするといった観点でやられたものではないということでございます。まさに総理もおっしゃっておるように、努力が報われる社会といったような考え方で見ますと、多額納税者をむしろ国が交付するといったようなやり方がやはり考えられるべきではないか。

現行の公示制度におきましては、先ほども申し上げましたように、25年に創設されましたが、各税目の本法の中に入っておるわけでございます。このような考え方が一体いま現在の状況、また、いま税を実質的に議論する場合の、その努力が報われる社会といった観点からの整合性をどのように考えるのかというようなことを私も考えておりまして、1つ私自身の意見として、皆さん方に考えていただければ大変ありがたいということで申し上げた次第でございます。

4月になれば、もうそろそろ予算も成立する予定でございます。いよいよ実質的な税制の議論になるわけでございますけれども、それ以外の論点もございますが、私が申し上げた論点も、議論のテーマとして取り上げていただければ、非常にありがたいというようなことでございます。

石会長

ありがとうございました。3点、いずれも重要な論点をお出しいただいたと思います。この税調でもしかるべき時期に各々取り上げなければいけないと思っておりますので、またそのときも含め、また他のときも含め、また御議論を賜りたいと思っています。

それでは、きょうの本論でございますパールマンさんをお呼びいたしまして、お話を聞こうかと思います。

では、パールマンさんをお呼びください。

(ロナルド・パールマン氏 着席)

それでは、御講演をいただく前に、パールマンさんの略歴をごく簡単に御紹介いたしたいと思います。

パールマンさんは、先ほど申し上げましたように、レーガン税制改革当時、財務次官補といたしまして、これは先ほど申し上げたように、我が国の主税局長に相当いたしますが、1983年から85年までワシントンのほうで実際にレーガン税制改革に従事されました。

その後、議会の合同租税委員会事務局の局長を88年、89年、90年まで歴任されまして、それ以来、アメリカの租税政策の立案あるいは企画に深く携わってこられました。

現在、ワシントンにございますジョージタウン大学のロースクールのほうで教授をされておりまして、税のほうの御担当でございます。また、議会での証言であるとか、現在の政権に対する様々なアドバイス等々、いま米国の租税政策における最も有力な方のお一人でございます。

今回、外務省が、これは毎年実施しておるのですが、招聘プログラムを持っておりまして、それで招聘を受けて来られましたので、この機会に、ちょうど我が税調も様々な形で税制改革を論議いたしておりますので、パールマンさんにアメリカの実態に即し、かつ、レーガン税制改革の当時の状況等々の御説明をいただいて、それを参考に我々も議論に参加したいと、こういう形でお呼びいたしました。

それでは、さっそくお話を承りたいと思います。

パールマン教授

皆さまこんにちは。石会長及び税調の皆さま、本日は私のお気に入りのテーマであるところの税制改革について述べることができ、とても光栄に存じております。まず御招待いただいた石会長に対し、心より御礼申し上げます。

私は、以前から日本の学界、財界、政府の方々と何度も機会を得まして租税政策について討議する機会がございました。そこから学ぶところはとても大でした。本日も皆さま方からいろいろ教えていただけるものと確信し、期待しているところであります。

石会長がおっしゃったように、私は現在学者でございまして、アメリカ政府の職員ではございません。ですから、申し上げる見解は私見でございまして、必ずしもアメリカの財務省がサポートしているものでもないということをお断り申し上げます。

私は、1980年代中盤のレーガン政権下の税制改革案づくりに関わる光栄を得ました。また、86年税制改正法成立の前後にかけても、大統領及びアメリカの議会に対して、アドバイスする光栄にも浴しております。レーガン政権下におけるアメリカの税制改革努力が  幾ばくかでも皆さま方の御参考に供していただければ、とても幸いに存じます。

レーガン大統領は1980年の大統領選挙において、景気刺激策として、個人所得税及び法人税を相当程度減税することを公約いたしました。この大統領選は不景気の真っただ中に行われまして、その税制改正案は即効的な景気刺激を目的とするものであったのです。このため当選直後には、1981年経済再建税法を制定し、個人所得税の最高税率を70%から50%に引き下げたほか、主にリベラルな減価償却や資本資産に対するインセンティブ等を通じまして、企業課税を相当程度軽減いたしました。こうした税制改正は、労働供給と貯蓄・投資の刺激を意図したものであったのです。

1年後、大幅な財政赤字に直面いたしまして、アメリカの議会は1982年、課税の公平と財政責任法(TEFRA)を可決いたしました。これは平時における当時においては米国市場最大幅の増税であったのです。1984年にはさらなる増税が行われました。そして、84年法と82年法は、1981年法を導入した企業に対する税インセンティブを縮減し、課税ベースを広げました。

86年税制改革法は、個人所得及び企業所得の課税ベースのさらなる拡大に結びついた一方、法人税率を同時に46%から34%に引き下げ、個人所得の最高税率も50%から28%へ引き下げられました。これは15%と28%の2段階税率構造導入の一部として行われたのです。これに続くブッシュ及びクリントン政権下においては、法人所得税率は35%に、また個人所得税の最高税率は39.6%に上昇いたしました。

2001年の税制改正により、個人所得の最高税率は39.6%から段階的に引き下げられ、2006年に35%になるということになります。皮肉なことに、35%という税率は、レーガン大統領が1985年に税制改革を発表した際、提案したものと同じ税率であります。

過去20年間アメリカにおける租税政策及び税制改革をめぐる議論は、1981年の減税法の影響を受けてきております。エコノミストは81年法のマクロ経済効果について、議論をまだ続けておりまして、その見解は鋭く対立しております。81年法がサプライサイダーが主張したように、供給面におけるプラスの経済効果を生んだという明確な証拠はありません。80年代後半及び90年代にかけて、確かにアメリカが好景気の恩恵を享受したのは事実であります。例えば実質GDP成長率は83年から89年において平均4%であり、失業率は1982年の9.7%から89年の5.3%に下落はしております。しかしながら、この好景気が主として81年法の減税に帰されるものかどうかについては、明らかではありません。81年の景気後退後の低金利及び財政支出の増加が、経済状況の改善に寄与したと思われます。さらに、1981年、83年のアメリカ経済の回復は、情報処理装置ですとか自動車など、1981年に成立した資産投資インセンティブによる恩恵を大して受けない資産への投資により導かれたものであったということが示唆されております。

このように1981年法の経済効果については、様々な議論があるところでありますが、2点はっきりしていることがあります。1つは、80年代から90年代にかけて、純投資及び貯蓄の対国民所得比が大きく減少したことであります。もう1点否定できないことは、1981年法のもたらした税収の落ち込みが記録的な財政赤字を引き起こしたことです。そして、この財政赤字は1980年代から累積し始め、解消には20年近くを要しました。財政赤字は、同時期の税収の増にもかかわらず、81年にはGDP比2.6%、89年には同2.8%でありました。81年の減税と財政支出増が生み出した財政赤字は、80~90年代、一貫して租税政策議論に影響を与え続けたわけであります。そして、さらに述べました82年及び84年の増税に結びついたわけです。

80年代初めからのアメリカの財政赤字は、租税政策以外の分野における議論の方向にも影響を与えました。小さく非介入的な政府を支持する者にとっては、財政赤字は政府支出を抑えるので、良いことであると映りました。一方、インフラ整備はもとより、社会福祉等の一層の充実に努めるためにさらなる政府支出が必要と考える人々にとっては、財政赤字は望ましくない展開であると考えられたのです。

1986年税制改革法は、今後は1986年法と呼びたいと思いますけれども、これは1918年の所得税法導入からこの方、最も重要な税制改革であると多くが認めております。経済刺激を目的とした81年法や、歳入の増加を目的とした82年法及び84年法と異なり、86年法は短期的な経済状況への対応のためのものではありませんでした。むしろ3つの伝統的な租税政策の目標、すなわち税法における公平、簡素な税法及び経済効率の向上を追求するために、大統領及び米国議会により、また大統領及び議会主要メンバーの指導に導かれたアメリカの国民によってなされた決断であります。私は86年法はこれらのいずれの目標についても進展を遂げたと考えております。ただし、90年代に入ってからの改正が、我々が86年法で追求した内容を損ねてきたことは残念であります。

短い説明の中では、公平(fairness)ということについて、これは1986年法の重要な目標の1つだったのですが、完全に言い尽くすことは不可能です。公平な税制とは何かということについても、当時も多くの議論があり、また現在でもそれは続いています。公平はその人それぞれによって異なった意味を持つことは皆さんもよく御存じのとおりであります。86年に我々は所得税制における公平を改善するために、2つの目標を立てました。

第1に、より多くの最低所得者層が所得税を納税する義務を免除されるべきであると考えたのです。ここで言う最低所得者とは、可処分所得のほぼすべてを、食料や住居等の最低限の生活必需品に充てなければならないような人々のことを指します。大統領の税制改革案は600万人の低所得者及びその家族について、一切の所得税の納税義務を免除することを狙いました。このことにより、私は大統領はアメリカの税制をより公平なものにすることに成功したと思います。

公平に関して目指した第2の点は、最終的な法律に盛り込まれた広範囲の税率の引下げに関連するものです。先に申し上げたとおり、86年法は個人所得税の最高税率を50%から28%に引き下げました。税率引下げをいかに設計するかという問題は、公平についての重要な問題を惹起いたしました。これに対する回答は、所得税を納税しているすべてのアメリカ市民が、確実に税率引下げの恩恵に浴させるという政策的な決定によりなされました。この目標は、我々が言うところの配分における中立性と呼んだ原則に基づき達成されました。個人所得税率の引下げは86年法による税率引下げによる個人所得税の負担が、各所得階層における納税者によって、86年法成立前と同じ配分となることをある程度保証するようなものとして設計されたのです。こうすることにより、所得の高い個人と低税率が適用される個人の双方が、つり合った割合で税負担軽減の恩恵に浴したということになりました。配分における中立性の達成は非常に困難であり、完璧であったとは言えませんけれども、税率軽減を各所得グループの個人に公平に配分しようとする試みは、86年法の重要な到達点の1つでありました。

ここで税制の公平性を図る際において、あるいは税制がより公平となり得るかどうかを考える際において、私が非常に大切と考えている点について述べてみたいと思います。86年法がすべての個人に適用される所得税率を引き下げ、また、日本で言うところの課税最低限を引き上げることにより、より多くの低所得者の租税負担を免除したにもかかわらず、86年法は低所得者の全体的な税負担に効果的に対応したものとはなりませんでした。この不幸な結果は、低所得者を含むすべての米労働者が支払わなければならない社会保険税、社会保障及びメディケア等ですけれども、その負担が比較的高いことに起因するものであります。この経験は個人の税負担を考える場合、直接税であるか、間接税であるかを問わず、すべての税負担を視野に入れなければならないということを端的に示しております。

次に、1986年法の第2の目的について述べてみたいと思います。レーガンの税制改革提案における2番目に重要な目標は、税法の簡素化でありました。しかし、改正法案において検討を重ねるにつれ、我々が当初目指したほどの成果を上げることはできないことが明らかになってまいりました。このため、簡素化は重要な目標ではあるものの、優先度は低く位置づけられることとなったのです。

86年法の欠点の1つは、私の見解では、簡素化が十分でなかったということです。事実、企業課税は改正前に比べはるかに複雑になりました。今日、複雑化したアメリカの所得課税制度は大いに憂慮されております。

皆さまの税調の審議に当たりましても、私としては税法の簡素化をぜひ優先なさることをお勧めいたします。税法が透明で個人・法人の納税者にわかりやすく、税法の遵守が容易である限り、すべての納税者はより税制に信頼を置き、尊重するようになるでありましょう。

税制改革における我々の3番目の目標は経済成長でありました。「経済成長」とは、より効率的な税制を意味する政治的な言い回しです。私はこれは非常に重要な目標であったと思います。しかし、御存じのように、税制における経済効率性の向上をめぐっては、様々な見解があることはしかりです。

我々が1986年税制改革に向けた議論の中で「経済成長」というフレーズを選択したことは、税制改革論議に混迷を加えました。一方の見解としては、税制改革は様々な行動を奨励するための税インセンティブ、いわゆる租税特別措置と呼ばれるものの創設、または拡大を通じて景気を刺激することによって、経済成長見通しを改善させるべきであるというものであります。他方の見解は、実はこれとは正反対のものなのですけれども、税制改革は特定の行動を奨励するための措置を制限または廃止すべきであるというものでありました。中立性を確保しようという考え方でありまして、レーガン税制改革の原案を策定するに当たり、後者が我々の目指すところの目標でありました。

我々の哲学は市場主義でありました。一般的に、市場は経済行動を調整する最善の手段と信じていました。所得控除、特別控除、対象を限定した税額控除といった手段により、税制を通じて行動に影響を与えようとする試みは、どんなにうまくいったとしても、精度は低く、決して非常に効率的なものではあり得ません。悪くすると、これらの優遇措置は歪みをもたらし、非効率的であり、高くついてしまいます。我々は当時そのように確信しており、いまもそう思っているのですけれども、長期的な経済成長のためには、企業の意思決定に非介入的であり、異なった経済活動に対する実効税率の格差を最小限にとどめる税制が必要であると考えます。

1986年の税制改革に向けた準備作業の中で、我々は経済成長に対する市場主義の考えを実施するためには、様々な、また往々にして有力な有権者に支持されている米国税法にある多くの優遇措置を廃止しなければならないということは認識しておりました。次の問題は、いかにして政策立案者たちが優遇措置の廃止を進んで支持せざるを得なくなるようなプレッシャーを立法過程において加えることができるかということになったのです。

この問題には、我々が「歳入中立(レベニュー・ニュートラル)」と呼びました非公式な運営ルールで対応いたしました。このルールのもとでは、税制改革法案が純税収を増加も減少もさせません。したがって、我々が承知していたように、税制改革に所得税率の引下げを盛り込むならば、それによる減収の見込額は課税ベースの拡大、すなわち既存の税制優遇措置の廃止を通じて補填されなければならないということになります。

この戦略はうまくいきました。税率の引下げは1986年法の大きな推進力となりました。しかしながら、税率の引下げだけでは相当程度の税収減と財政赤字の増加をもたらしていたでありましょう。したがって、歳入中立は政治プロセスにおける重要な制約となったのです。歳入中立は議員及び大統領に対し、特定の利益により支持され、歳入中立のタガがなければ温存されてしまったであろう当時の税法の規定を再度吟味し、多くの場合廃止することを迫りました。

ただ、この戦略は完全に機能したとも言えないと思います。86年法では、私なら廃止されるべきだったと考えるような多くの特定利害のための規定が残されてしまいました。しかし、歳入中立の要請は極めて有益な規律とはなりました。このため、私は将来の税制改正インセンティブにおいても、これは有用なガイドラインになると思っています。

86年法の不完全さから学ぶべき教訓もあります。それは、完全性は望ましい目標だけれども、めったに達成できないということです。しかし、高い意志を持つ政策立案者であるならば、税制改革の努力をあきらめるべきではありません。むしろ最善な結果を目指すべきであります。

租税特別措置をめぐる86年法における米国の経験から学べることがあります。第2の教訓とも言えましょう。これはニューヨークヤンキースのスター選手、ヨギ・ベラが言ったアメリカ人にとってユーモラスに聞こえる言葉を借りれば、「すべてが終わるまでは、まだおしまいではない」ということだと思います。86年税制改革法が可決されるやいなや、廃止または縮減された特別措置を復権させようと画策する動きが起こりました。そして、いくつかは成功したのです。これまでに86年法で廃止または縮減された措置のうち、いくつも復活してい ます。86年法のはめた他のタガを外そうという圧力は、我々がここで話している瞬間にもやむことはないのです。

税制改革に着手する場合、日本においてもそうだと思うのですけれども、政府は景気を刺激し、経済成長に資する税インセンティブを導入するように働きかけられます。実際、皆さまお一人お一人が、ある特定の個人のグループまたは特定分野の企業を優遇し、日本経済にとって望ましいような何らかの特別な税法の改正を思いつかれるかもしれません。おそらくその判断は間違ってはいないのだと思います。しかし、私は租税特別措置を導入する際には、厳格に吟味することをお勧めしたいと思います。一旦法律になってしまいますと、たとえそれが期待される成果を生まなくとも、たとえ減税額が減税以外のメリットに見合わなくても、また、たとえ経済に予期せぬ歪みを生じさせようとも、廃止するのは非常に困難になるからです。したがって、税制の改正作業に参加する方々は、みんな提案される税のインセンティブの範囲や有効性について厳しく尋ね、すべてについて回答を求めることが重要であります。納税者が新しい税法改正にどのように対応するかを完全に理解する試みとして、データや経済分析を求め、政府、民間の法律家その他の専門家と十分に協議することが重要であります。

私は、先ほどのコメントにおいて、86年法は公平、簡素及び経済効率の向上といった目標の達成に向け進展があったとの認識を示しました。残念なことですが、アメリカでは、政治的に力のある特別利益団体が議会に働きかけ、86年法に含まれていた多くの改正を後退させていきました。現在では86年法によって始まった税制改革の動きを続けていくことは、政治的に不可能です。塩川大臣は、先の国会演説において、「21世紀においては、経済活動に中立で歪みのない、簡素でわかりやすい税制の構築が求められる」と述べられたと承知しておりますが、私もこれに同意見でございまして、この理念にアメリカもいつの日か立ち返ることを期待しております。

最後に、非常に難しい問題でありますが、資産性所得について課税すべきか否か、また、どの程度課税すべきかという問題について述べたいと思います。政治的スタンスに関わらず、米国の多くのエコノミストは、消費課税は所得課税の望ましい代替物であると考えていると言っていいと思います。なぜなら、消費課税において資産性所得は課税されないからです。資産性所得を課税しない税制は、企業収益への二重課税を排除し、企業投資の即時償却を認め、個人の投資所得への一切の課税を排除します。こうした税制は、おそらく貯蓄を増やし、企業投資に好ましい環境を整え、ひいてはGDP成長率を高めるでありましょう。

もちろん、このように主張される消費課税のメリットについては、多くの議論があります。個人的には、私は資産性所得に全く課税しないという考え方にはまだ納得できておりません。第1に、そのような課税ベースの縮小によって、主張されているような劇的なGDPの成長に当然結びつくということについては、到底同意できないからです。第2に、私はそのような税制が労働を一段下の役割に置くことを懸念しています。私は勤労が資産に比べ重要性や価値が劣るとは全く考えていません。力強い経済はその両方を必要とするのであり、私は所得税制において直接的に、また、消費税制において間接的に、賃金のみに課税するような税制に対する国民一般の反発を懸念するものであります。

これは、今日において最も難しい問題です。消費課税に賛同しない者であっても、私たちは資本の非常に流動的な世界に住んでいます。例えば、アメリカの企業が国内投資を削減もしくは中止し、タックスヘイブンまたは税の減免やその他の税インセンティブを提供する国に資本を振り向けることは比較的容易であります。知的所有権や他の無形資産の流動性もこのような企業戦略を容易にしています。

アメリカの多国籍企業は、海外投資を増やし続け、今日では収益の50%以上を海外事業から上げている主要企業はめずらしくありません。さらに、多くの米国の法人が製造工場や試験研究施設を海外に移転させています。いくつかの企業は、その法的な住所、設立  国をアメリカからオフショア国に移転されています。

私はこの止まりそうもないないアメリカ企業による資本の海外流出を懸念しております。私は多国籍企業がその国際的な活動を拡大する努力については賛成です。しかし、試験研究施設や製造工場の海外流出に結びつく国際的な活動の拡大は、長期的にはアメリカ経済と国民に打撃を与える可能性があると考えます。

これは、米国及びすべてのほかの先進諸国が直面している問題だと思いますし、最も重要かつ困難な租税政策上の問題であると思います。経済界はアメリカ政府に対し、連邦所得税を含む企業課税の減税によって、資本流出に対応するよう要求しています。現在、次の2つを含む提案がなされています。全世界課税制度をあきらめ、源泉地課税制度を採用し、本国に送金されない限り、あらゆる海外事業からの収益に対する課税を免除すること、そして、資本控除(減価償却控除)の拡充により、国内投資に対してより寛大な資本へのインセンティブを与えるというものです。

もちろん、資産性所得への課税廃止は1つの対応でありましょう。これは実に安直な対応であり、おそらく最後の最後に必要とされる対応であると考えます。私はまだ納得していません。私はこの困難な問題、将来にわたりあらゆる先進国が直面すると思われる難題に対して、さらなる熟考が行われる必要があると考えます。

以上、私の発表でございました。必然性がございまして、とても簡略に申し上げざるを得ませんでした。何か御質問がございましたら、今日おっしゃっていただければと思いますし、そうでなければ、電話ですとかインターネットを介して御連絡いただいても結構です。本日お会いできてとても光栄でした。税調のメンバーとしてとてもチャレンジングな課題を負っておられるとは思いますけれども、ぜひ前向きに日本の税制政策を変えていただくことによって、大きな成果を上げていただければと思います。御成功をお祈りします。御清聴どうも  ありがとうございました。

石会長

大変有益な御説明、御意見をいただいたと思います。今日は主として1986年、これは俗にレーガン・マーク2と言われておりますが、レーガンの税制改革のマーク1との比較においてマーク2、つまり、第1期と第2期の比較をしつつ、第2期のことを御説明いただきまして、公平・簡素、そして効率性あるいは経済成長という点でやったという御議論で、特に経済成長とか効率性といったときの議論が、我々がいま議論しております公平・中立・簡素等々のある目標との比較において、示唆に富む御説明をいただいたと思います。

議論をいまからいただく前に1点だけちょっと補足しておきますけど、最後のほうでConsumption Taxということを何回かおっしゃっていますが、これは我々が使っております固有名詞のConsumption Taxでないのは明らかでございまして、いうなれば直接税の世界で、所得マイナス貯蓄という形で消費課税ベースにかけるという、そういうものでありますから、いうなれば貯蓄が除かれ、いわゆるキャピタル・インカム、資本性所得から除かれる世界においてどうかという議論を、最後にアメリカの企業の海外流出、あるいはキャピタル・フライトの関係において御説明になったというところで、さしでがましい話でございますが、1点だけ言葉の補足をしておきます。

それでは、これから20~30分時間を取りまして、いまの御説明につきまして、いろいろ御質問あるいは御意見をいただけましたら、我々として有意義な時間が持てると思います。どうぞ、どなたからでもけっこうです。

島田委員

とてもすばらしいお話をどうもありがとうございました。2つ御質問してよろしいでしょうか。

まず第1番目が、3ページの下のところなのですけれども、ここで基本原則、基本目的ということで、86年の税法が目指したところが書いてあります。簡素性ですとか公平性を上げるということ、そして、経済効率を上げるというふうに書いてあるのですけれども、現在、日本でも議論が起こっておりまして、何を目的として日本における税制改正を行うべきかということが問題になっているわけです。石会長が最も考えておられる点なのですけれども、我々としては、前提条件として3つの目標があるべしと思っています。1つは公平性、もう1つは簡素性、そしてもう1つが中立性ということであります。

質問ですけれども、先生はどういうふうにお考えでしょうか。現在の日本で展開されている議論について、どうお考えでしょうか。経済効率が先なのか、中立性が先なのか、どういうふうにお考えでしょうか。

それから、パールマンさんは、税制改革によってアメリカの経済成長が必ずしも起こったのではないのかもしれないとおっしゃったのですけれども、そうであったならば、重要な原動力は何だったのでしょうか。アメリカの景気加速をもたらした背後にあるものということで、税制改正でなければ何だったのでしょうか。

パールマン教授

それでは、私のほうからお答え申し上げたいと思います。別々にお答えします。

まず第1に、中立性ということなのですけれども、これは本当に適切な3番目の目標だと思います。公平性、簡素さ、中立性、順序はどうであれ、この3つが重要であると私も考えております。

「効率」という言葉も出ました。86年当時において、効率性ということについては、効率性イコール経済成長であったわけです。政治的な言い回しは経済成長であったということでありますから、できるだけシステムとしては中立性を保ちたかったということであります。中立性を保つシステムができれば、効率性が経済において高まると思っておりましたし、その結果、より大きな経済成長が遂げられると思っていたからです。

第2の御質問です。もちろん、多々マクロ経済的な要因が働いており、なぜある特定の国の経済が繁栄したのか、説明できると思うのですけれども、特にこの期間において、80年代後半から90年代の初めにかけて、アメリカでは生産性が向上いたしました。R&Dも増進されましたし、また、生産性も増したわけです。そして、ハイテクが産業として大いに振興いたしました。これが大きな原動力となってアメリカの経済がブームになったのだと思います。そして成長したのだと思います。

ただ、税制の政策が、役割がゼロだと申し上げているわけではないのです。もちろん、それなりに果たす役割はあります。ただ、同時に重要なことは、非常に大きな経済において、日本もそうですし、アメリカもそうですが、経済が大きなところにおいては、ほんの少し税制をいじっただけでは、もちろんほんの少しいじったとしても全体が多いので、全体として大きな税収減につながったりするわけですけれども。しかし、小手先で税制を動かしても、それほど大きな結果は経済の成長には与えないということです。つまり、手直しの規模が余りにも小さすぎるからということなのですが、これがまさに起こったのがアメリカです。

私が本日申し上げたコメントですけれども、81年の税法がもたらした結果というのは、私のコメントではないのです。私もできるだけ評価したいとは思っているのですけれども、どういう論がいまあるかということを紹介申し上げただけです。エコノミストとしてアメリカ経済を研究していた人の言を借りただけであります。でも、エコノミストの間でも意見が分かれておりまして、81年の法律が非常によかったという人もいるわけです。あれをあのとおりに議会がやらせてくれたら、もっといい事態に展開していたと思っている人たちもいるわけでありまして、大きな議論を呼んでいます。でも、当時は政策上の結論というのは、赤字が増すほうがタックスのインセンティブを与えるということよりも、ずっと恐いと思っていたということであります。

石会長

ダイレクトに関心事に入ってもらいましたから、議論がしやすくなったと思います。どうぞ日本語でも英語でも、今日は通訳がついていますから、おっしゃっていただけますか。時間はたっぷりありますから。

中里特別委員

昔、ロースクールの教室で所得税法の講義を聞いていたころを思い出してしまいました。ありがとうございます。

質問なのですけれども、租税制度の目的と効果をどのように分けるべきかということが、とても重要な意味があるのではないかと思いま す。ビジネスの人たちは、租税制度は国内における生産を引き下げる効果を持っているから減税しろと、とても安易に、安易というか当然のことなのでしょうけど、主張なさいますが、日本の立法者であれ、どこの立法者であれ、国内の生産を引き下げることを目的として法人税を課税しているわけではございませんですね。でも、結局そこは、最終的には目的なのか、結果なのか、という二元対立になってしまうのではないかと思うのです。あらゆる租税特別措置はいけないと、私のように租税法を専攻としている人間ならばそのように考えるわけですが、ビジネスの方々は必ずしもそう考えずに、結果と目的をあえて混同なさるのか、あるいはメンタリティとしてそうなのかわかりませんが、そういう傾向があるわけですけれども、両者を区別する基準のようなものは何かございますでしょうか。

パールマン教授

まず冒頭に当たりまして、いまおっしゃったとおりだと思うのです。やはり目標と効果、両方考えなければいけないと思います。目標を設定するのは簡単なのです。目標の設定のやり方によっては意見が異なるかもしれないけど、目標をとりあえず特定することは簡単なわけです。

そして、望ましい効果としては、目標がその効果を担ってくれれば一番いいわけです。でも難しい。政府にも問題がある、民間部門にも問題があるということであって、それぞれ効果の測定の仕方にもそれぞれの持論があると思います。ですから、どんなにベストな状況であっても、評価は難しいということで、特定の税制措置を取り出して、この税制効果はこういう効果がきっちりとありましたと特定することは難しいということです。ですから、税制の政策の評価というところが一番難しいのだと思います。的確な評価というのはできにくいわけですから。

だからこそ、あえて申し上げたいのですけれども、なかなか答えを100%出すことはできないということです。これは認めます。ただ、審議を行うに際して、例えばある特定の提案がいま出ているのであれば、まず目指す目標はわかっているわけです。ですから、少なくとも確実にできるだけ情報を取りまして、評価をする。そして、この措置がとられたらどういう効果をもたらすのか、できるだけ事前に情報を集めて調査をするということだと思うのです。評価をするということです。事前評価というのがとても重要だと私は思っているのですけれども、これは行動的な効果をもたらすということだと思います。

例を挙げましょう。81年において、レーガン大統領は投資税控除を増したわけです。これは投資を促進しようということで、有形の個人資産に対して適用されたということであります。でも、企業の中で研究などを行っているところ、例えば知的な財産について研究されているところは、対象にはならなかったということであります。投資控除というのはとてもコストのかかる措置であります。そして、別にハイテク経済に対して大きな効果をもたらさなかったわけであります。ハイテク企業というのは、ハードなセットにあまり投資しないわけで ありまして、知的な財産に投資をしているわけですから、この控除の対象にはならなかったということであります。

ですから、当時もし考えていれば、今後経済のたどる方向性は何なのであろうということを事前に考えていたのであれば、1つの分野に対してインセンティブを供与したとしても、経済の向上にはつながらないかもしれないという状況があるということです。ですから、全体像を見て、こういう特別措置をとったらどういう効果が上がるのか、事前にできるだけ評価するということだと思います。いい結果をもたらすのか、悪い結果をもたらすのか、全体から評価するということです。もちろん、最初からノーと断言することはできないと思うのですけれども、少なくとも審議をなさる際にできることは、質問を聞くということだと思います。質問は出してみる。そして、それに対応してもらえるようにできるだけ分析をして、できるだけ情報を出してもらうということだと思います。

石会長

どうぞ、河野さん。

河野特別委員

一番最後に言及された経済の空洞化の話ですけれども、先生おっしゃるように、日本でもこの問題は非常に緊急の課題になっているのです。日本はまだアメリカほど海外生産比率が高くありません。だけども、いま中国を中心にして急速にそれが進んでいまして、これからどうすべきなのかということを考えているわけですね。

それで、2つ質問があるのです。いままでアメリカ政府は、企業のこのような海外活動の展開ということについて、それを多少でも抑えるための措置を税制上とったことがあるのかどうか。これが第1点。第2点は、いま先生が2つの提案があるのだとおっしゃいましたけれども、これは一体実現可能性があるのか、ないしは効果があるのか。この2つについて。

パールマン教授

先生がおっしゃいましたように、この空洞化というのはとても深刻な問題なのです。これは世界共通の深刻な問題だと思っています。ある程度においては、税制上の競争というのが増してきたということです。可能であったし、実際に増しているということであります。アイルランドやシンガポールやその他もろもろの国が、単純に決断をして、例えば国内におけるビジネス施設に対して課税をしないというふうにするのであれば、ぜひその国に進出したいと思う企業が増えるのは当然です。これは世界の厳然たる事実であり、いろいろな国が直面している問題です。

アメリカは何年にもわたっていろいろな形で対応してまいりました。例えば税制の条項をつくって、海外に行かせないように、その意思を削いだといったようなこともありましたが、現在のアメリカの税法によりますと、タックスは全世界ベースで課税されているわけです。一般的には、すべてではないわけですけれども。

どうしてこういうことをやっているのか。それはアメリカの企業に対して、タックス・ベネフィットですとか、タックス・アドバンテージは、たとえ海外に施設を移しても、ありませんよということを言いたいからです。だから全世界課税制度をやっているということなわけです。どこにいても同じレベルの課税がされるということを認識させたいからです。もちろん、これは曖昧性があって、精緻性のないものであって、あまりうまくいっていないと私は思っているのですけれども。

また、現在ではある提案が出ておりまして、例えば、アメリカ国外に本拠地を置くような企業に対して、課税をどういうふうにするかということで、いま提案が出ているのです。この提案は法律化はしないと思うのですけれども、でもこれも政治的なプロセスのもたらした結果です。アメリカでもいくつかの有名な企業、大企業が、もうすでに本社を海外に移すということを発表したか、すでに移してしまったからです。

租税の競争と税のインセンティブを出して資本を誘致しようというわけでありますけれども、唯一こういった問題を解決するのは、マルチで行動を取る以外にないと思っております。一国だけではとても解決できない問題であるからです。世界中にいろいろな国がありまして、いろいろな国が例えば法人税ゼロと言い出したらどうなるでしょうか。アメリカの企業に対しても、日本企業に対しても、「私のところに来てくれれば法人税ゼロですよ」というふうにして誘致をすれば、本国はなかなかなすすべがなくなってしまうわけです。企業は出ていってしまってもしようがないからということ。だから、それに対応して我が国の法人税率も下げましょうということになるわけです。そして、法人税率として競争力のあるものをつくっていこうという動きになってしまうわけです。

実際にこういうことが結果として起こっています。税の競争ということで。ただ、長期的な観点から考えますと、本当にこういった困難な問題に解決策があれば、唯一の方法というのは、マルチで、多国間で協力をする以外にないと思っております。ここで言う協力とは、例えばOECD内で現在進んでいるような協力です。有害な税競争については、いろいろ検討が進んでおりますので。OECD発意でいろいろなインセンティブがとられております。そして、進展を来すのであれば、もうマルチ以外にないと思っています。

石会長

それでは、どうぞ、柳島さん。

柳島委員

昔、CATO研究所のニスカネンさんが書いた『レーガノミックス』というのを読んで、最後の最後に、レーガノミックスが成功したかどうかはまだわからないのだ、ということを書いておられるのが印象に残っているのですが、このフェイズ2に関しては成功だという評価なのでしょうか。その辺が第1点の質問と、もう1つは、あのときレーガン政権は相当ディ・レギュレーションというのをやりましたね。ディ・レギュレーションとタックスのインセンティブの仕組みというのは、何か具体的にやられたことはあるのでしょうか。その2つです。

パールマン教授

私自身は、当時は規制緩和には全く携わっていなかったのです。もちろん質問者がおっしゃったように、規制緩和というのはアメリカの経済に確かに影響を与えました。これは明らかです。いい影響もあったし、悪い影響もあった。両方です。でも、効果があった、影響があったというのは確かなのです。いい意味でも悪い意味でも。ニスカネンさんというのは、レーガン・エコノミクスがうまくいかなかったというふうに言っていたわけではないわけです。私が政府にいたときに、レーガン政権に対していろいろ批判をしていたみたいですけれども。

ただ、81年の税法は最も強力な試みであって、サプライサイドの原則を税制に入れたと言われていますけれども、これは論議が分かれているところなのです。うまくいったと言う人もいれば、全然うまくいかなかったという人もいるということで、二分されているということです。経済的なコンセンサスとしては、どちらにしても、曖昧でわかっていないということです。どんなに頭をひねって考えていても。ですから、考えは二分しているということなのです。

もちろん86年法というのは、レーガノミックスではなかったということです。100%レーガノミックスの正反対と言ってもいいぐらいです。レーガノミックスというのは、政策としてタックス・システムの中に具体的なインセンティブを入れる、そして、入れればきっとプラスの影響が出るに違いないとしたものであります。でも、86年の税法は、特にレーガン大統領の提案されたものは、全くその正反対のルートを行っていたということです。

当時の提案というのは、中立性の原則をベースに立てられていました。86年の提案をごらんになっていただくと、これは大統領提案、また財務省も関わったものでありますけれども、インセンティブを減らそうとしたわけです。具体的なセクターだけに適用されるようなインセンティブはできるだけ減らそうとしたわけであります。つまり、全体的な経済を見て、市場の原則がもっと働きやすいようにするというのが主眼点になっておりました。ですから、86年の税法は、レーガノミックスとは私は全然受け取ってはおりません。

当時、我々が働いていたときに、86年の提案をつくっていたときに、そして、86年を目指して働いていたときのことなのですけれども、我々はずっと好奇心を持っていまして、財務省の一員として提案していたわけでありますけれども、大統領が個人的にどういうふうにこの提案を思われるかなといつも思っていたのです。

大統領と同室になりまして、ミーティングを開いていたときを思い出します。そして、そのときに具体的な提案を討議しておりました。大統領は我々におっしゃったのです。例えば、「大統領閣下、我々はこの特定の別税制措置を廃止したい」というふうに提案するわけです。そうすると、大統領は議論する代わりに、「もちろんいいですよ。それが常識的だね。何でこんなのが法律に入っていたんだろう。廃止していい」と、つまり、投資する先は自分で決められるようにするのが筋だというふうにおっしゃったわけで、大統領は中立性の原則を十分支持しておられたということです。81年は違った税法を通したわけですけれども。

石会長

ありがとうございました。

では、貝原さん。

貝原委員

本日の主題とはちょっと外れるかもしれませんが、地方税とのかかわりについてお尋ねをしたいと思います。私はかつて、日本政府の一員として日米租税条約交渉の中で地方税を担当したことがあります。そのときに相互非課税の協議をしたのですが、日本の場合は、日本政府が地方税法という法律を企画、そして議会の承認を得て、地方税についても中央政府が税制の内容を決定することができるのですが、アメリカの連邦政府は、州税あるいはそれ以下のローカル・オーソリティの税については、コミットができないというようなことで、なかなか同じスタンスで交渉ができなかった経験があるのです。こういった租税政策を議論する場合に、連邦税制が中心としてのお話だったと思うのですが、州税をはじめとするローカル・オーソリティの租税収入が、アメリカの全租税収入のいま何割ぐらいを占めているかということと、相当程度のウエイトを占めていると思うのですが、その場合に、こういった租税政策について、連邦税制と地方税制との調整は何らかの形で行うことができる実態にあるのかどうか、そのことについてお伺いしたいと思います。

パールマン教授

わかりました。おっしゃったことは正しいです。1つ例外があったのですけれども、連邦政府は、州法及び市町村税の政策については、何ら役割を果たさないのですが、1つ例外があります。州法であれ、市町村レベルの法律であれ、州際交易に悪影響を与えるような場合については、連邦が権限を持っているということになっておりまして、これが大きな制約として州に対してかかっているわけです。

例えば、昨年のことなのですけれども、例を挙げましょう。アメリカの議会は連邦法を成立させまして、これによって、州はある特定のテレコム関係の課税をすることを禁止されたわけです。というのは議会のほうが決定をして、こういう税法を通してしまうと、州際業務に支障が生じるからと思ったからです。これが唯一の例外なのですが、こういうときには、連邦として州、市町村に対して介入できるということになっております。

歴史的に申し上げると、いまもそうなのですけれども、アメリカにおいては、州法及びローカル・タックスというのは、全体の比率からいうと、税収的には比率は少ないわけです。申しわけないです。何%かということは、いまは申し上げられないのですけれども、全体から見るととても小さい比率です。

州及びそれ以下に入ってくる歳入のパーセンテージは、この20年間で増えてはいるわけです。でも、まだ絶対レベルではそれほど増えていないということ。でも、パーセンテージ的にはかなり増えてまいったことも事実です。企業のほうは、それによってより多くの注目を地方税に示すようになってきます。例えば工場をどこに建てるかですとか、研究施設をどこに建てるか決めるに当たって。

連邦と地方の税当局との関係及びその政策の関係なのですけれども、アメリカにおいては、ある程度は、例えば控除をどこまで認めるかということで見られています。つまり、ローカルのレベルで課税されているもので、連邦のレベルでその控除が効くといったようなものがあるということです。

どうやって調整をとるかといったようなことは、日本ほどうまくはいっておりません。というのは、アメリカでは州政府に与えられている自由度が大きいですから。ただ、州のレベルでも、世界のレベルでいま行われているような租税競争というのがあるわけです。ですから、ある州が税率を引き下げる。そして、企業をほかの州から誘致したいと思うわけです。こういった税競争が起こるのは残念なことだと思っております。というのは、タックスベースが侵食されてしまうということ、そして、誰も敗者になってしまって、勝者になれないからです。ですから、もうちょっと中央と州のレベルで調整が行われればいいと私自身は思っています。でも、アメリカの憲法がそういうふうになっておりませんので、うまくそういう調整がとれていないのですけれども、この部分では、日本の制度のほうが多分いい制度だと思います。

石会長

時間が来ましたが、もう1つぐらい質問をいただくことができます。

では、菊池さんどうぞ。

菊池特別委員

中身ではないのですが、新しい税制を導入する際に効果を予測するのは大事だとおっしゃっていまして、それを実施した結果、それがよかったのかどうかはわからないということだったわけですが、導入の段階において、予測を本気にさせる方法というのは、企業秘密かもしれないのですが、1つ、2つ教えてほしいのです。それは大統領なのですか、どうやって説得していくかというか、ディベートで積み上げていくのか、そこのところが一番難しいと思うのですが、どうなさっているのでしょうか。

パールマン教授

とてもいいテーマをおっしゃっていただけたと思います。では、企業秘密に関わることかもしれませんけど、申し上げたいと思います。絶対正しい予見はできないということです。もうこれは決まっています。どんなに努力を注ぎ込んだとしても、そして全努力を配して我々もやってきたわけですけれども、絶対に具体的な税の条項がもたらす効果を予測することはできない、多分当たらない可能性のほうが大きいということであります。

予見可能性ということなのですけれども、予見可能性の責任というのは、究極的には行政府にある、つまり財務省にあるということです。議会のほうもリソースは持っていますし、私自身もある委員会のヘッドを務めていたことがございまして、議会のスタッフとして提案の評価を行ったこともありました。ですから、議会側としてもある程度予見可能性については責任を持っているのですけれども、主たる責任は財務省側にあるということです。

予見というのは2つの形を持ってできるということです。第1番目のやり方というのは、数値的に税収を推計するということです。特定の税制改正によるところを、どのくらい税収に対して影響があるのかということを数値的に出すわけです。計算するわけです。これはかなり高度なミクロ経済にまつわるところの科学的作業になっております。そして、ミクロ経済のエコノミストはとても高度でありますので、精緻なモデルを使って、ある特定の税法の条項がどういう影響を出すのか、はじき出すことができるわけです。そして、かなりこの種の予見の精緻度、精度は高いということです。確率としては。これは数学的な成分です。

もう1つ成分があるわけです。これは行動上の効果ということです。行動パターンのもたらす効果ということで、つまり、個人であれ、企業であれ、行動的に税制改正にどう反応するかということです。廃止でもいいし、新しいものを導入するでもいいわけなのですけれども、行動的な反応を予測するということです。でも、これはなかなか数字でとらえるのは難しいということで、やはり納税者の頭の中、心の中に入り込まないとわからないわけです。心の内なりを。様々な要素が絡んでまいります。一旦この税法が絡みますと、税にまつわるもの、税に直接まつわらないもの、いろいろな要素が個人に対しても企業に対しても絡んでくるわけです。

アメリカでは、いろいろな領域が絡んでまいります。エコノミストの話もしましたけれども、エコノミストはとかく行動上の変化、もしくは違いというのを、数学モデルで説明しようとするわけです。でも、弁護士でしたら、まず法律を読んで、そのあと、私の依頼人だったらどういうふうに反応するだろうという憶測をするわけです。ですから、私もそうなのですが、主観的にものを見るわけです。

そして、予見可能性のいい情報源というのは、企業を見ることです。企業を見れば大体わかるということだと思うのです。企業の人たちのことを聞けば、かなり参考になるということです。もし単刀直入に積極的に受け取ってくれているのであれば、企業人はそういうふうに言ってくれます。例えば、こういう特定の経済分野に対してこういう措置を考えているのだけれども、どう思いますか、というふうに企業人に聞きますと、大体的確な答えが返ってきます。そして、もちろん業種によってリアクションは違うのですけれども、業種によって受けとめ方が違うということがわかるということ自体、大きな参考になるということで、自分なりに予見ができるということです。でも、企業秘密でも何でもないのです。難しいということだけです。それに尽きるということで。でもとても重要なことで、このことを考えるということは、とても重要なことなのです。どうもありがとうございます。

石会長

予定した時間にもなりましたので、よろしゅうございますか。では、最後に1つショート・クエスチョンを。

中里特別委員

税制政策の構築において、税理弁護士が果たす役割はどういうふうなものであると思いますか。タックス・ローヤーというのは私とあなたしかこの部屋にはいないのですが、タックス・ローヤーの果たす役割というのは何だとお考えでしょうか。多分、我々の能力を過小評価されているというのが大きな問題ではないでしょうか。アメリカではタックス・ローヤーが多すぎるということでいつも批判されているのですけれども。

パールマン教授

タックス・ローヤーは非常に重要な役割を果たせると私は思っています。もちろん独占してはいけませんし、タックス・ローヤーだけが最優先されるということでもありません。そうあってはいけないわけです。でも、タックス・ポリシーの構築のプロセスにかかわるべきであると思います。どうやって法律を設計するか、どうやって解釈するかということでありますので、解釈においても、案の策定においても、エコノミストにはできないスキルが必要になります。ですから、そこでタックス・ローヤーのスキルが生きてくるのだと思います。タックス・ローヤーでしたら、いろいろな文言を考え出すこともできますし、そして、最終的に目指すところの政策上の目標を克明に書き出すことができるわけです。そして、タックス・ローヤーとして、納税者の反応についても前もってある程度評価することもできると思います。

タックス・ポリシーのプロセスというのは、協力的なプロセスだと思っています。いろいろな者が同時に関わってくるわけです。弁護士も関わってくるということであり、もちろん、すべて100%貢献するわけではないけれども、部分的には貢献するということだと思います。

石会長

では、これでパールマンさんとのディスカッションは終わりたいと思います。

もしよろしければ、いらしていただいてもけっこうなのですけれども、どうでしょうか、通訳はついておりますけれども。どういたしましょうか、パールマンさん、ここにお残りになりますか。

パールマン教授

では残ります。

石会長

では、パールマンさんにはもうしばらくとどまっていただきまして、通訳が使えるかどうかわかりませんが、もし機会があったら、またお話を承りましょう。

それでは、次の議題に移らせていただきます。

基礎問題小委員会が総会と総会の間に二度行われましたので、その間に行われましたITの関係、国際課税の関係、いろいろ議論いたしましたので、今日はスピーカーである神野さん、田近さん、水野さんがいらっしゃいませんので、稲垣調査課長からごく簡単にその辺の状況を御説明いただきましょう。よろしく。

稲垣調査課長

それでは、恐縮でございますが、お手許に大部の資料がございます。これが3月5日と3月19日の基礎問題小委員会で提出されました資料でございます。これは中身に立ち入ってまで御説明しても、大変時間が押してまいりますので、どういう資料がどういう形で提出されたかということで御説明させていただきたいと思います。

まず、3月5日のほうでございますが、財政審会長でもあります今井委員のほうから、「基礎小7-1」『参考資料』というのがございますが、これに基づきまして、財政の現状について簡単なお話がありました後、いくつかまとめといたしまして、概括的なコメントといいますか、ございました。

1つは、いまの財政の危機というのは、1つには大幅減税の先行、それから、財政を経済対策として使ってきたことによる影響、歳出面でございますが、この両面がございまして、両方から本当は攻めて行かないと、財政構造の改革はできないということでございます。

それから、税制の抜本的な見直しのポイントといたしまして、将来は財政構造改革のためには、どうしても税収増を図らなければいけない。

それから、改正は何としても公平・中立・簡素、先ほどから話題になっておりますが、ということを取り戻さなければいけない。

それから、3番目といたしまして、努力が報われる税制。

それから、経済界のお立場ということがございまして、経済の活性化に資する税制ということで、その一環といたしまして、国際的な整合性をとることが大事だということでございまして、こういった概括的な御指摘があったということでございます。

それから、その次でございますけれども、「基礎小7-2」という資料でございますが、これは最前から私ども事務局から御説明させていただきましたものにつきまして、宿題いただいたもの、税の空洞化の話、あるいは社会保障とあわせてどのように税負担を考えたらいいのかというようなことにつきまして、資料をとりそろえさせていただいたものでございます。

それから、「基礎小6-3」というものがございますけれども、これは持ち越しになっていた分でございますが、各国の財政及び税制をめぐりますデータにつきましてまとめましたものでございまして、「基礎小7‐3-1」と「基礎小7‐3-2」というのがございますけれども、これに沿いまして、神野委員のほうから、サッチャー税制改革につきまして、やや委員特有のシニカルな表現も入っておりますが、かなり詳細なレジメでございまして、これに基づきまして御説明があったということでございます。

中身といたしましては、3ページ目以下でございますけれども、サッチャー税制改革につきまして、4つのフェイズに分けまして、事実を御説明になったということと、7ページ以下でございますけど、サッチャー税制改革の光と影ということでございまして、1つはインフレーション、大変な2桁インフレの抑制に成功したということ、それから、製造業の生産性上昇がもたらされたということ、他方で、不平等の拡大、失業と倒産の増加、生活の安心と安全の崩壊といったこと、それから、公共領域におけるモラルとモラールの低下ということでございまして、最後9ページ目以下でございますが、歴史の教訓に学ぶということでございまして、1つは状況の相違を認識する、制度の相違を認識する、それから、ストロング・ファイナンス、強い財政のための強い租税制度が必要である。広い課税ベースで租税の公平をということと、自らの判断でということをコメントとしておっしゃったということでございまして、その関係のデータ等が「7-3-2」にあるというものでございます。

それから、駆け足で恐縮でございますが、その次、第8回、3月19日の基礎問題小委員会でございますが、こちらは石会長のほうから、先ほどありました地方公聴会及び諮問会議の御報告をいただきまして、1つのトピックスが「IT化と税制」ということでございまして、水野(忠)委員から、「基礎小8-1」という資料でございますが、IT化のもたらす税制のインプリケーションということで、もっぱら納税者番号制度の話がメインの内容でございますが、お話がございました。

いままでの経緯等を振り返っていただきまして、2ページ目以下でございますけど、1つは再検討の必要性が納税者番号制度でございます。情報化の進展を待って出てきたのではないかということで、1つは納税者番号をどこまで適用するか、適用範囲をどう考えるか。それから、制度の意義というのもかなり違ってきているのではないかと。ただ、一方でプライバシーの侵害に対する国民のアレルギー、そういったものが強い。これにどう対処するか。

それから、もう1つは、あとでも出てまいりますが、電子申告というのが現実の問題となっておりますので、このための環境整備が必要であるのではないか。

4ページ目のボトムでございますけど、ここで1つ63年、平成4年度報告書では、国税庁独自の納税者番号を設けないということでやっているけれども、その再検討ということも考えなければいけないのではないかという御指摘。

それから、これは5ページ目に書いてございますけれども、共通番号への情報の収集、あるいは民間利用につきましては、アレルギーを考えると、少し慎重に対応すべきではないかということと、一番最後のところでございますが、将来的課題といたしまして、納税者番号制度についても、国際化ということを考えていかなければならないのではないかという御指摘がございました。「基礎小8-2」というのがその関連のデータでございます。

それから、「基礎小8-3」というデータ、これは国税庁のほうから、いま税の執行の現場でITに関わるものといたしまして、KSK(国税総合管理システム)、それから、民間の電子化に対してどういうふうに調査等を対応しているかという問題、それから、電子申告、電子納税、あるいはタッチパネルといった新たな情報機器を利用した納税環境の整備ということについて、御報告がございました。

「基礎小8-4」のほうは、同じような話でございますが、地方税の関係で電子申告等どうなっているかという実状の御説明でございます。

それで、この日もう1つのトピックスといたしまして、「国際化と税制」ということで、中里委員からプレゼンをお願いいたしまして、「基礎小8-5」というレジメでございますが、「はじめに」というところと「まとめ」というところに、私の見るところポイントが尽きているのではないかと思いますが、執行に穴のあいた租税法は、どのような租税理論のもとにおいても正当化できないということでございまして、現行法に照らして適法であれば、納税者を責めることはできないということで、二のところでいくつか具体例をお示しいただきましたが、しかし、放置もできないということでございまして、「まとめ」にございますように、執行面の重要性を認識する必要性があるということでございま す。

あと、「基礎小8-7」の資料でございますが、これは事務局のほうから、データ等について御説明させていただいたということでございます。

雑駁でございますが、以上でございます。

石会長

時間の制約があって、大急ぎで御説明いただいたので、おわかりにくかった面もあろうかと思いますが、基礎問題小委員会がいかに頑張って議論しているかという一端を、この資料の多さをもって御判断いただければと思いますが、そういう形で逐次まとまった段階でこちらに出していきたいと思っています。

それでは、残り30分ございますので、その30分を有効に使うために、今後どういう議論をしていくかということ、これに関しまして、少し前広に私の腹づもりなどをお話しさせていただくとともに、やはり税を議論するときに、どんな社会像、どんな国家像、あるいはどんな家族像、こういうことを考えるかということによって、税のこれからの議論がずいぶん変わってくると思いますので、その辺の議論も総論を最後締めくくる意味で御議論いただきたいのです。

お手許に1枚紙の、「少子高齢化の進展」以下丸が3つ書いてあるような図がいっていると思います。これは、これから御説明したあとで御議論いただきますが、これとの絡みで今後どういうことを我々はやらなければいけないかということを、大体腹づもりを申し上げますと、3月いっぱいで今日総論のところをひとまず終わって、4月以降は、個々の所得税とか資産税とか法人税とか、そういうものの具体的な中身の検討に移りたいと考えております。おそらく課税最低限の話も出てきますでしょうし、法人課税で税率とか、あるいは租特の整理等々をどう考えるかとか、資産課税の世界で相続税、譲与税、あるいは土地の問題、あるいは流通関係の問題等々出てくることでしょう。

一応、基礎小3回と、それを受けての総会を4月最後に考えておりますが、5月に入りましてからは、消費税の世界、あるいは社会保障と税の関係とか、あるいはエネルギー関係税、これはいろいろな意味で環境の問題にも絡みますから、そういう問題もやっていきたい。それから、国と地方の関係で基礎問題小委員会をフルに一回分使って、話題の様々な問題をここで議論したいと考えております。

いずれにいたしましても、6月に税調の基本的な考え方をまとめたいと思っていますので、5月の総会でそれまでやってきました基礎小の問題を御審議いただいて、どういう格好でまとめていくかは別として、6月19日に国会が会期切れでございますので、そこを目処にするかどうかはさておき、6月の初めごろまでに、ある検討課題をまとめたいと、このように考えております。

そこで、いま申し上げましたように、例えば、課税最低限1つの議論をするにしても、あるいは所得税と言ったほうがいいかもしれないけれども、所得控除というものがどうかという議論をするとき、すぐ配偶者控除であるとか、扶養控除であるとかという問題が出てきますよね。実はこれはいま我々が持っております現行所得税制というのが、半世紀前にできましたシャウプ税制のころにできたものをそのままずっと引きずっておりますから、当然のこと、いまの所得税と、それから、現在の我々の社会経済は構造的にずいぶん変わってきています。俗に言われますミスマッチが起きているわけでありまして、そういう意味で、所得税を前提としております社会・経済が変われば、当然のこと、変わったのをどういう形でつかまえるかという意味において、議論もしなければいけない。

それから、法人税1つとっても、グローバル化されていない世界でつくった法人税というのは、当然のこと、グローバル化されたいまのような時代にはそぐわない面も持っているわけでございまして、その議論もしなければいけないし、様々な形で、いま社会貢献とか、あるいはNPOの活動も入ってきたり、いろいろな形で個人と家計、あるいは企業といったようなもので割り切れない面もずいぶん出てきているわけですね。だから、そういった面も含めて、どういう形の社会をこれからつくっていきたいかという議論をしなければいけないわけであります。

そこで、ほんの数分使いまして、ここの粗々の項目だけ書いた紙がございますが、「少子高齢化の進展」「グローバル化な競争の激化」「努力が報われる社会」と1枚紙がございますが、この辺の項目に従って、我々はある程度共通の理解を持たなければいけないのではないかと考えておりまして、あと残った時間で御議論いただきたいわけであります。

そこで、少子高齢化の進展というのは、もう言わずもがなでございますが、その背後におそらく出てくる問題は、男女共同参画の社会というのが今後出てき、女性も男性も同じ対等な形で働き手になる、就業構造を支えるということになりますと、税の世界でも当然のこと、個人の単位でやるか、夫婦の単位でやるか、世帯の単位でやるかというのを踏まえて、男女の、昔と違えてやっていたものが一緒になったときの問題がありますね。

それから、いま65歳以降を高齢者と考えておりますが、一説によれば、70でも75でもいいではないかということもあり、生涯ずっと現役で企業で働く、あるいはいろいろな形で働くという人がいるような社会を考えたほうがいいかもしれない。そういう意味では、老人は弱者ではないということもありますね。

それから、家族のあり方、扶養の問題も様々な問題がありますね。核家族になり、そして、誰が扶養するか。扶養を政府に任してしまうのか、施設に任してしまうのか、あるいは家族で抱えるのか、そんな問題。

それから、国民の将来不安への対処というのは、年金、介護、医療、様々な公的な制度が本当に将来まで続けられるのか。特に私どもの60を超えた世代は、そのままゴールインかもしれないけれども、団塊の世代以降の人は大変だと思いますし、いまの20代、30代、これは非常に大変だと思いますよね。

昨日の鹿児島の意見発表者の方は、たしか20代の主婦で、子供を3人育てていると言っておられましたが、私の世代はやはり大変だと言っていましたよ。要するに、子育ての援助をどうしてくれるのか。あるいは、将来の納税者を3人養っている立場として、それに対していかなる面倒を政府は見てくれるかと。そのとおりですよね。そういう形が当然あるので、その辺の議論もしなければいけない。

それから、今日はパールマンさんの話にありましたように、グローバル化されたとき、結局、キャピタル・フライトも含めて、企業活動というのはどんどん外へ行ってしまうわけですよね。それをどうするのかと。中国の問題をいま抱えておりますし、国内もいろいろ問題を抱えております。

それから、前から言われておりますが、ヒト、モノ、カネがどんどん国境を越えて流れる世界において、どういう税制をつくるか。これも大問題なんですね。ここにも国際課税の専門家はいっぱいいらっしゃいますけれども、実態が動いたあと、どういう制度にしていくかというのは、大きな問題だと思います。

それから、最後の、努力が報いられる社会というのは、これまでそんなに大きく取り上げられなかったテーマだと思いますが、これはある意味では小泉さんが問題提起されたという意味で、我々も真剣に受けとめる必要があると思います。要するに、税の面でも努力した人が報われるという意味では、ある意味では高度のシャープな累進課税ではないだろうというイメージもございますし、とりあえず、いろいろな努力の結果出てきたアウトカムに対して、税は少し優しくしてもいいのではないかというようなシステムがあるのかもしれないし、それから、失敗したときにリカバリーできるだけの措置を、リスクを取った人についてのリターンも何か考えてやったほうがいいのではないかという、そういう制度もあるでしょう。

それから、結果として社会的に失敗しても、セーフティネットで救ってやるといったような、そういうシステムがあってもいいのではないかということ。

それから、これからは、先ほど申し上げましたけど、NPOも含めて、いうなれば従来の政府、企業、個人あるいは家計という外でいろいろな形で社会的貢献をした人、これに対して税でどういう面倒を見られるか。寄附金税制なんてその一環かもしれません。NPO法人の税制もそうかもしれない。こういうこともこれからは考えなければいけないだろうという意味で、いうなれば国家像、あるいは社会像、あるいは家族像、こんなことがこれから我々が考えなければいけない税制と社会構造の構造的なミスマッチをするときに、やはり持っていなくてはいけない議論だと思うのです。

急には議論がまとまらないと思いますが、今日は残った時間を使いまして、どこからでもけっこうでございますから、問題意識を開陳していただきまして、そういう方向で議論しようかなというムードをつくっていただければと思っております。

どうぞ、どなたでもけっこうです。

では、村上さん、島田さんにします。どうぞ村上さんから。

村上特別委員

いま石会長がおっしゃったことで結論が出ているようですので、繰り返しみたいになりますけれども、やはり少子高齢化というか、そういう社会構造の変化に対応した所得税制というか、それが大きな検討対象になっていくべきだと思います。

財務省の説明でもいままでありましたけれども、65歳以上が人口の18%ぐらいに達しているし、女性の就業人口というか社会進出が4割ぐらいにもう達しているというようなことで、このいまの税制は、やはり家族単位といいますか、基本的に夫婦と子という考え方ですよね。だから、それはやはり大分変わってきている。よく石会長がおっしゃる「個」ですね。「個」の税制、「個」に着目した税制、そういう単位の税制という考え方をやはりある程度織り込んでいかなければいけないのではないか。そういう中で、扶養控除とか配偶者控除、特に特別のつくものがありますが、そういうものも見直す必要があるのではないかなと。

それから、生涯現役社会と書いてありますが、これについてもやはり、いわゆる生産年齢がずっと高齢化しているわけですから、年金課税の問題とか、そういうものももう一度見直しをしていかなければいけないのかなと思います。

ちょっと繰り返しになりますが、やはり官民挙げて男女共同参画社会をつくろうというのでやっているわけですから、妨げではないかもしれませんが、それを誘導するような所得税制、そういうものが必要かなと思います。

石会長

ありがとうございました。

島田さんどうぞ。

島田委員

広い問題と、若干スペースフィックな問題と、2種類ちょっと申し上げたいと思いますけど、1つは、石先生のサマリーの中で、努力が報いられる社会、これは経済の効率性と言い換えてもいいかもしれませんが、あるいは活力と言い換えてもいいかもしれませんけど、これは基本的に私は所得税と法人課税というものの大きな改革が必要だと思うのです。さっきパールマン先生がおっしゃった経済効率がニュートラリティから出てくるというのは、経済主体に選択をさせろという考え方だと思うのですけれども、それを実現するのは、所得税の限界税率を下げて、課税最低限を引き下げて、できるだけ広いタックス・ベースをとる中で税率を下げるということが、人々が勤労意欲を増進させる。ニュートラルな、しかしエフィシェントな方式になると思うのです。

もう1つ企業課税ですけど、やはり7割近い企業は法人税を払っていないというのは大問題なので、ここのところはやはり外形標準も含めて、できるだけ広く薄く払っていくということにすべきだと思います。

そして、ちょっと具体的な話になりますが、先ほど鹿児島の例を出されまして、家族のあり方。これは私は所得税とかそういうことで対応する、あるいは児童手当とかということで対応することではないと思うのです。なぜかというと、やはり出生率が非常に低くなっているのは大都会なんですよね。はっきり言って子供を育てにくいわけですよ。つまり、大都会で頑張って就業しているお母さんたちが子供を育てにくいというのは、かなりの要因は、子育てインフラがないということですね。これはやはり社会福祉法人のところに高率な補助が集中していて、国や地方の持っている資金がそこで吸収されてしまうものですから、しかも、そういう補助が入っているために、民間の企業とイーブンにならないのです。極端に安いフィーでもってそこが提供してしまうために、民間が成立しないということのために、いま子育て期の女性の日本の就労率は5割前後だと思いますけど、これは昔は先進国は大体そうだったのですが、いまは7、8割のところへ来ている。実をいうと、子育てインフラが都市で整備されれば、あと150万か200万ぐらいの人々がフルタイムの仕事に着けるわけですね。そういうことが経済の効率、それから個人の自由、生活の向上と、一石三鳥、四鳥になる。それを税制がどう支えるかというと、実は税制はここはマイナーな問題だと思うのです。ですから、ぜひそういう問題が出たときに、石先生にそういうふうに事実を明らかにして言っていただきたいと思います。

それから、もっと大きいのは、税制問題に関わるのは、実は住宅問題があるのです。これは先生の将来不安と関係がありますけど、日本はこういうことで住宅政策をやってきたと思います。戦後50年間持ち家政策を徹底的に進めて、貧弱な家からだんだん大きな家へ移り住んでいく。そして、最後死ぬと、相続をすると、相続税を払う人はほとんどいません。住宅で相続税を払う人というのは、本当に1割いませんね。ということで、だんだん大きな家に移り住んで、最後は相続税を払わないで済むのだと、こういうハッピーライフサイクルを住宅税制として描いていたと思う。それは高度成長時代には成功したと思います。

いまそれがものすごい矛盾を呼んでいるのはこういうことなのです。親が死ぬのはいまいくつかというと、80代の最後のほうです。そのとき子供たちは60代を過ぎているんですね。もう家を持っている。そんなときに死んだ親の家が入ってきたって、迷惑千万以上のものでない。これをもうちょっと早いうちに子供に資産を移転するということをするためには、やはりこれは生前贈与だと思うのです。ここは税が非常に大きな役割を果たすので、いま高齢化社会はそういうふうになってきたのだということになりますと、これはいろいろな意味で資源の最適配分になるので、やっていただきたい。

もう1つ最後に申し上げますのは、やはり高齢社会、成熟社会では、資産を活用しなければいけない。資産を活用するときに、これは諸外国の方は、おそらくパールマンさんもごらんになって、日本の状況は変だと思われると思うのですけど、これだけの資産大国のはずなのに、資産を持っていても、高齢化社会で生活の不安が払拭されない。まともな国で、資産がリターンを生むような仕掛けになっていれば、リートが発達したりいろいろなことがあって、やっていれば、資産が生むイールドでもって人々は暮らせるはずなんです。そうなっていないのは、マーケットが非常におかしな状況になっているというのが1つ。

それから、公的資産が全国に莫大にあるんです。全国2万3,000も小学校があって、どんどん統廃合しているのに、あいた土地が使えない。それは行政財産ですから、普通財産転換すると、いろいろな問題が起きてくるんです。こういうところは税の問題ではありませんけれども、税もそれと矛盾しない形で、つまり、これまで高度成長期に蓄積してきた膨大な公的資産が、他の目的のために、国民の幸せのために使われるようなことに、税が妨げにならないような設計というのが必要で、この個別の問題は税が大きな役割を果たす必要はないのですけれども、むしろ社会システムの再設計をして、それと税が矛盾しないような格好にするということが必要ですね。

最大我々が心がけるべきは、法人課税と所得税のタックス・ベースを広げて、税率を下げる。これは石先生の御指導で徹底的にやってもらいたい。そういうふうに思います。

石会長

また個別なときに具体的に御提案ください。どうぞ、諸井さん。それから松尾さんにします。

諸井委員

いまの石先生のお話を聞いていて、私の考えが税調の流れとは違うのかもしれないのですけれども、いま税で問題になっているのは、2つ大きな違った問題があると思うのです。1つはやはり根本的に一体税をどういうふうにしていくかという話で、もう1つは、いわゆるデフレ対策というようなことで、当面、問題が起こったときにどうするかという2つの違う問題があるのだろうと思うのです。

前のほうの問題は、基本的には公正・中立・簡素ですか、そういう税の原則に対して、現在の税制は必ずしもそうなっていない。我々自身がそういういろいろなものをくっつけて、決して簡素でも中立でも公正でもないものを、いま我々はつくってしまっているわけですよね。それはやはりきちんともとへ戻すという、そういうことはやはりやっていかなければならない。

そういう中で、さっき石会長の言われたいろいろな問題というのは、これは私はもちろん、日本の状況が変わっているのですから、変わったものに対応しなければならないという点では賛成なのですけれども、いまおっしゃったようなことをあまり考えすぎると、これまたさらに特別措置みたいなものをいっぱいくっつけることになる。そのところをどういうふうに考えるか。いま島田先生がおっしゃったように、むしろ税でないところでやらなければいけないことがどうも多いような気がするのです。そこをですから間違えないようにしなければいけないということが1つ。

それから、もう1つのいわゆるデフレ対策みたいなものは、確かにいま日本の経済は非常に微妙な状況にあって、ひょっとすると、株価が暴落をする、不良債権が増える、倒産が増える、そうすると雇用状況が非常に悪化をする、さらに消費が下がる、デフレがさらに進む、この悪循環が猛烈な勢いで進み出すと、やはり一種の恐慌の状態になるのだろうと思うのです。そういう問題が起こりそうになったら、これはいかなる手段を講じても防がなくてはいけないということではないかと思うのです。そのときに一体税制で何ができるのだろうか。これはこれで片一方で議論をしておいてもらわないと、こういうのが来るときは一気に来ますから、それから税調を開いて半年もかけてというのでは、とても間に合わない。

そうすると、一体そういうときに効くようなものが何かあるのだろうか。証券税制がどうだとか、あるいは減税がどうだとか、いろいろあると思います。それはしかしいまから議論をしておいて、いざそういうときには、これとこれとこれがいいのではないかということを、税調としても提案できるようにしておかなければいけないのではないのか。そのときに、多分我々がこれから考える基本的なこうあるべきというのと矛盾するようなことがいっぱい出てくるのだろうと思うのです。しかし、それは恐慌のときにはやらざるを得ない。しかし、それは恐慌対策なのだから、ずっと長く続く基本的な構造的な税制改革ではなくて、それは短期的な時限的な、その問題の処理のためだけの改革だと。これを2つ分けて考えないと、また新聞のおもちゃにされるような話になってしまうのではないのかと考えます。ちょっといまの皆さんの流れとは違うのかもしれないのですけれども。

石会長

いやいや、まさにぴったりなんですよ。そういう議論を諮問会議もやっているし、私も行って、税調でも2段構えでこういう議論もあるしという形で、公平・簡素・中立とか、あるいは活力との組み合わせ、そういうことをやっているわけでありますから、まさにいま整理いただいたので、まさに議論の方向はそっちへ行っていると思いますので、御心配いただかなくてもいいと思います。ただ、程度の差はいろいろあるかもしれませんけど。

では松尾さん、どうぞ。

松尾委員

マクロの面で見ますと、21世紀の経済社会は、IT革命と言われるような新しい技術の出現、それと消費者の需要の変化、この2つだと思うのです。この2つがやはり大きな特徴であると思うわけです。としますと、この重大な変化からいや応なく構造改革を迫られているわけでありまして、構造改革を先送りすればするほど、コストが大きくなるばかり。それは給与、家計にはね返ってくる。こういう図式だろうと思うわけです。

これ以下、ちょっと諸井さんの御意見と違ってくるのですけれども、そこで、政府の施策が景気対策という形で、短期的痛みを回避しようとしますと、やはり根本的な解決は先送りされて、非常に将来の日本経済にマイナスの効果を与えると私は思うわけです。最も必要なのは、個人の場合もそうですし、企業の場合もそうだと思いますけれども、やはり自助努力だと思うわけです。規制緩和、自由化を進めて、市場メカニズムを活用する以外にないわけでありますし、グローバル資本主義のもとで、それが世界的にすでに大きな流れになっているというわけで、税制もこの流れに沿ったものであるべきだと私は思うわけです。

この文脈で税制でやるべきことは何か。これは石先生が以前プレゼンテーションで示されたとおり、やはり個別の経済主体の行動を妨げない税制、これを確立するのが一番だと思います。それによって構造改革をサポートする。これが経済の活性化にもつながると思います。この場合、税制主導はあり得ないと私は思います。

財政の中心的な役割は、高齢化社会を迎えて、介護保険、医療保険、非常にこういった切実な問題、さらには社会生活全体にのしかかってくる環境問題、それから、経済援助を含む広い意味での安全保障問題、教育問題などに収斂せざるを得ないと思います。つまり、言いたいのは何かといいますと、やはり小さな政府を目指すべきだということであります。個人も企業も甘えは許されないのでありまして、政府から恩恵を受けようとすれば、やはり大きな政府を許すことになると思います。

小さな政府を目指すといいましても、セーフティネットはしっかりさせなければいけませんから、公的サービスの増大はある程度避けられないでしょう。その場合、それを賄う財源について、国民の負担をどうするか。これは重大な問題であります。この問題を考えるに当たっては、まずやはり日本の税負担が国際的に見て軽いと、こういう事実は率直に認めなければならないと思います。現行税制の仕組みが、本当に現在の社会情勢に合っているのかどうか。これまでの単なる惰性で一方的に偏りすぎていないか。中長期的視点から、これまでの経緯にこだわらず、やはり抜本的な税制改革を進める時期に来ていると私は思います。

以上、私の問題意識です。

石会長

ありがとうございました。

では、今野さんどうぞ。

今野委員

努力が報いられる社会、努力と挑戦を可能にするような社会システムということに関してですけれども、先ほど島田先生がおっしゃったような、広い課税ベースをつくることとか、また、7割もの赤字法人に対して、見直しをしようということ、そういうことはもちろん大事です。弱者への配慮ということも大事ですけれども、例えば、非常に優れた技術を持ちながら、時代とのミスマッチングということで、非常に苦しんでおられる町工場というのはありますけれども、全体的に言うならば、やはり7割もの赤字法人というのは、もはや時代とうまく整合性を持っていないということですから、弱者への配慮ということと同時に、税でつくる国家像とか、企業像とかというふうに考えるならば、新たに時代の大きなニーズを背負ってチャレンジしようとする人たちが、もっと出やすい、もっとやりやすい社会をつくるため、例えば直接金融がもっと容易に得られるとか、そのためにもそちらのほうにもっと配慮をすべきだと思います。そうすることで、失われた10年とか、気力をなくしてしまった日本の社会から、もう一度活力ある企業社会をつくるためのパワーシフトをそこでやっていきたいと思っております。

せっかくパールマン先生がいらっしゃるのですから、さっきお伺いすればよかったかなと、アメリカではその辺どうなさっているのか伺いたかったなと思いますけれども、ぜひともそのように考えて、新しく税でつくる企業像というものを考えてみたいと思っています。

石会長

時間がそろそろなくなってきました。河野さんお手が挙がっていますね。あとぜひ御発言というのは、貝原さん、和田さん、福原さんですね。短くやってください。お願いします。

河野特別委員

まず、少子高齢化の進展、この話をやるときには、圧倒的に女性の意見を全面的に聞くという作業をやれば、問題点はどんどん出てくるんですよ。石さんが言う前に、ここに有力な女性議員がたくさんいらっしゃるわけだから、経営者の方もいらっしゃるし、子育ての最中の人もいるし、それから、介護で苦労する女性もたくさんいるわけだ。いま大体日本人は年間100万人ぐらい死んでいるそうだけれども、我々が死んだあと20年ぐらいのときには、130~140万人死ぬというような大量死の時代が来るんです。それは、日本は大量の介護が必要になる社会になるわけだ。それは男の負担もあるけれど、女性の負担もあるわけで、これは女性の声を圧倒的に聞くという作業さえしっかりやればいいと。ただ、女性議員はなかなか出席してくれないから困るけどね。

2番目は、グローバルの競争の話。これさっきちょっと質問したところにも関連するのだけど、一体どのレベルまで日本の海外流出、経済空洞化を認めるのか、放任するのか、どこかでとどめを刺すのか、刺しても効果がなかったときに何をやるのかということを考えなければいけないですね。これは講師がおっしゃったみたいに、我が日本経済にとって大きなテーマですよ。

それで、僕はいろいろな関係者に言っているのだけど、小さな租特を導入することが必要ならやったらいいと思うけれども、それは全体の空洞化対策には全く一部だと。全体像をどうするかということについて、経済関係各省はしっかりしたビジョンを持つべきだと。その中で租特はこういうのをやりますという説明ならわかりやすい。それは十分ではないと私は実は思うんだ。これは主として産業経済省の責任かもしれない。牧野さんがいるから、牧野さんの意見も聞きたいけど、いずれにしても、そういうふうな全体像の中で空洞化対策をやるということが必要だと思います。

石会長

4時になりましたけど、ちょっと時間を今日は延長させていただきます。いま河野さんおっしゃったとおり、きのうの鹿児島でも、税制改革の議論、社会保障の議論、これは若い人がいなければだめだと。それから、女性も入れなければいけないとバンバン出まして、考えたら私など20年先の税制改革など関係ない年になってきましたから、税調の高齢化も少し是正する必要が出てくるのかなとは思っています。

では、貝原さんどうぞ。

貝原委員

簡単に申し上げますが、いま日本の構造改革の流れは2つあると思うのです。これは努力が報われる社会と言われるように、官主導型から民自立型という流れが1つあると思うのです。もう1つは、集権型の国家構造を分権型にしていかなければいけない。さっきのパールマンさんの話ですと、連邦制ですから、ちょっと逆のような意見もありましたけれども、日本のような非常に集権的な国家は、分権的な構造にしていかないと、活力が出てこないという方向ですね。

そういう中で、公聴会の議論を見てみましても、簡素というときに、自分の納めた税金がどこでどう使われているのかわからないということについての答えをきちんと出さないと、この問題は非常に大きな部分が欠落するのではないか。

プライマリー・イン・バランスがありますから、ちょっと言いにくいのかもしれませんけど、具体的に言って地方自治体の行政サービスだったら、もっと所得の低い人でも税負担はしてもいいという議論だって当然あると思うのです。わかりやすい行政サービスを提供するのだったら、負担してもいいという議論があるはずでありまして、あまり総額のバランス論だけではなくて、税の実態をそこまで考えるとすれば、会長の話では5月に地方税を議論していただくということで、私も了解しましたけれども、この丸の中に、わかりやすさということ、分権構造ということを、1つの大きな流れとして取り組んでいただきたいと思います。

石会長

すみません、漏れていました。当然だと思ったものですから。

では、和田さんと福原さん、続けて手短にお願いします。

和田委員

「努力が報いられる社会」という言葉が非常に数多く使われるようになってまいりまして、これはたしか12年の税調の「21世紀に向けた国民の参加と選択」というところで使われた言葉で、総理が使われてから非常に数多く出てきたというように理解しております。

ただ、私は先ほどの石先生のお話や皆さん方の御発言を伺っていて、よくわからないのは、報いられる社会にしていこうということは、いまが報いられていないということなのか、その辺がよくわからないのです。例えば累進をもっと下げていくとか、それから、もうちょっと広い考え方を入れたときに、高齢者の資産なり家なりというものを、もっと若い世代に早い時期にバトンタッチできるようにしていくことが、活性化の意味も含めて必要ではないかという話が出ております。生前贈与のいまの110万を、もっとさらにびっくりするような金額がよく新聞などでは取り沙汰されておりますけれども、すべての若い人たちが高齢者からそれを受けられるなら、それはそれでいいと思うのですけれども、相当格差があると思うのです。いま現在、資産にしろ所得にしろ、相当格差があり、さらにこれが広がっていくということを是認するやり方でいいのかどうかというところで、私は何回も同じような発言をしていますけれども、それでいいのかどうかということで、私は無理に非常に極端な悪平等を言っているわけではないのですけれども、若い人たちが成人になってスタートしようとするときに、生前贈与で自分たちの友達の何人かは非常に大きな金額をもらっている。あるいは、住宅のために、もう家が1軒建つだけのものを親から得ているというような状況と、本当にこれからローンを組んで、家を何とかしていかなければならないという、そのまるっきり違うところのスタートというものがあって、果たして公平と言えるのだろうか。そういうところでいささかやる気をなくしてしまうとか、そんなことも出てくるのではないかというようなことを考えますと、努力が報いられるという非常に簡単な言い方をしますけれども、広い範囲で見ていかなかればならない。

それともう1つ、男女共同参画社会の視点からは、簡単に申し上げます。やはりこれからは「個」というものを目指していく社会ということを申し上げておきます。

石会長

ありがとうございました。

では、最後に福原さんどうぞ。

福原委員

最後ですので簡単に、問題提起だけいたします。

いま、国際化による空洞化というお話がございましたが、その結果として、タックス・ウォーみたいなものが始まってしまったわけです。税金戦争みたいなものが。そうしますと、小さくて、そして税負担のない国ほど有利な税率を提供できるということになって、そこに呼び込みされているわけです。いま私たちも呼び込みをされているところがいくつもありますが、そうしますと、大きな国ほど戦いにくい。しかも武器を使って戦うのではないという、そういう状況が起きているということだけお伝えしておきます。

石会長

東南アジアですね、多分。

福原委員

いえ、ヨーロッパにもございます。

石会長

では、最後に副大臣の谷口さんから御発言いただきたいと思います。どうぞ。

谷口財務副大臣

多様な、多岐にわたった論点をいろいろお話をいただいたわけでございますが、私いまお話をしたいことは、いま福原委員のほうからおっしゃったことに若干関わっているわけですけれども、経済財政諮問会議でも経済特区というような論点があるようでございます。これは経済産業省がそのようなことを言っておるわけですが、いま経済の空洞化といったような状況が先ほどにも問題の指摘がありましたが、一方で外国資本を誘引するといった形での、もう今回沖縄に金融特区を設けたわけでございますけれども、一国二制度と言われるような経済特区について、税制上、いわばグローバルな競争の激化というところの戦略性といいますか、国家戦略といいますか、そのようなことが税でなし得るのかどうか、といったような観点も1つポイントになるのではないかというように、問題提起をさせていただきたいわけでございます。

石会長

ありがとうございました。最後に俄然盛り上がりまして、時間がないのが残念でありますけれども、今日これで終わるわけではございませんから、今後も続けていただきたいと思います。

パールマンさんも、さらに議論はないかと言ったら、時間がないのを察されて「いいよ」とおっしゃっていますので、きょうはこれで終わりにいたしたいと思います。

次回以降の予定をちょっと申し上げますが、総論的な話をこれまでやってきましたので、来月に入りましてから各論に入りたいと、先ほど申し上げたとおりでございまして、だんだん具体的な問題をしていきたいと思います。4月26日に次の総会を考えております。金曜日であります。早めにテイクノートしていただければと思います。

ちょっと時間が過ぎましたが、これで終わりにいたしたいと思います。どうも長時間ありがとうございました。

〔閉会〕

(注)

本議事録は毎回の総会後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。

内容には正確を期してしますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。