第24回総会 議事録
平成14年2月19日開催
〇石会長
それでは、時間になりました。24回目になりますが、総会を開催させていただきます。
今日は財務省から尾辻副大臣がお見えでございます。よろしく。それから、吉田大臣政務官が1時間ほど遅れて御出席とのことでございます。何かございましたら御発言ください。
それでは、今日はいくつか議論に入る前に御説明しなければならないことがございますが、今日の本来の目的は、御案内に出してありますように、前半と後半とに分けまして、前段で、あるべき税制を考える際の主な論点を、基礎問題小委員会の議論を踏まえまして御説明したい。これは前半でございまして、後半は、レーガン税制等々を含め財政、経済の現状を御説明したい。これが後半で、一応二部立てにいたしたいと思います。
議論に入る前に、今日はお忙しいところ福田国税庁次長にお願いいたしまして御出席いただいております。いまからちょっと御挨拶、お話をいただけるようでありますので、福田さん、お願いいたします。
〇福田国税庁次長
国税庁次長の福田でございます。御挨拶、御説明できるとうれしいわけでございますが、実はお詫びも含めまして、いくつかお話しさせていただきたいと思います。
まず第1点は、先般の元国税局長の脱税事件についてでございます。去る1月10日、東京国税局は、浜田常吉元税理士、実は元札幌国税局長であったわけでありますが、この元税理士を所得税法違反の疑いで東京地方検察庁に告発いたしました。同日、東京地方検察庁は元税理士を所得税法違反により逮捕し、1月30日、所得税法違反により東京地方裁判所に公判請求しております。
控訴事実の要旨を申し上げますと、同人・被告人は、税理士業を営んでいた者でありますが、自己の所得税を免れようと企て、売上げを除外するなどの方法により、同人の平成9年から平成12年までの4年間の所得、合計約7億4,000万円を秘匿し、所得税合計約2億5,000万円を免れたというものでございます。
今回の事件は、すでに退職した者、この者は平成8年に退職しているわけでございますが、すでに退職した者が起こしたこととはいえ、長年税務の職場に勤務し、しかも国税局長まで経験した者が、自らの脱税で国税当局に告発された上、検察当局に逮捕、起訴されたというものでございまして、まさに裏切られた思いであり、私ども大変残念に思っております。
ただ、今回の事件は、東京国税局において査察調査を実施して告発を行ったものでございまして、国税当局は、課税上問題があると認めるものに対しましては、その社会的な地位、経歴等のいかんにかかわらず、法令に基づき厳正に対処すべく努力しているところでございます。
私どもといたしましては、今回の事件が税務行政に対する信頼を損ないかねないことを重く受けとめまして、さっそく1月の16日には臨時の全国国税局長会議を開催し、適正、公平な課税の実現など、税務行政に対する信頼の確保のための今後の対応について、議論を行いました。その会議におきまして、職員の綱紀保持の徹底を図りますとともに、意識の維持に努めまして、適正な税務執行に対して、いささかの疑念も生じないよう厳正な執行を行うことにより、税務行政に対する国民の皆さまの信頼の確保に全力を挙げて努力していくことを確認し、各国税局署においては、臨時税務署長会議を開催するなど、この旨を職員に周知徹底したところでございます。
私どもといたしましては、このような努力を積み重ねますとともに、引き続き一般の納税者の方々には親切、かつ丁寧な態度で接する一方、悪質な納税者に対しては、厳正な態度で臨むことにより、税務行政に対する国民の皆さまの信頼を確保し、期待にこたえてまいる所存でございます。
それから、もう一つは、さらにお詫びの話なのですが、御案内のように、確定申告が2月16日から3月15日までということでございますが、本年は2月16日が土曜日に当たっておりまして、税務署の閉庁日の関係から、受付に収受箱のようなものは置いていたわけでございますけれども、いわゆる窓口は開いていなかったわけでございまして、確定申告の相談などは、実は昨日2月18日、月曜日から始まることになっていたわけでございます。この広報に努めてまいったわけでございますけれども、十分ではなかったということで、納税者の方々に御迷惑をかけることになってしまいました。今後とも確定申告につきましては、納税者の方々にこのような御迷惑をかけることのないように、改めてわかりやすい広報に努めてまいる所存でございます。
以上2点でございます。
〇石会長
ありがとうございました。
以上2点、福田さんのほうからお詫びの言葉がございましたが、この際、国税庁並びに福田さんのほうに何か特に言っておきたいということがあれば、せっかくの機会でございますから、御発言いただきたいと思いますが、どうぞ。
〇松尾委員
せっかく福田さんがいらっしゃっているので、ちょっと伺いたいのですが、これは非常に重大な事件で、その重大性は当事者である国税庁の方が一番認識していらっしゃると思うのですが、私たちも税制を審議する立場から、これは非常に重大に受けとめざるを得ないわけですね。それで、どうしてこういう事件が起きたのか、しかも再発防止のためにどういう手当てを講じていらっしゃるのか、その辺を伺いたいわけです。
具体的に言いまして、国税庁の現場にいらっしゃった方は、一番税務に詳しい方たちですから、卒業なさった後、税理士におなりになるのはいいと思うのですけれども、どういう要件を満たすと税理士になれるのか、要するに全く試験などは免除されて税理士になるのか、その辺一般の人はあまり知らないのです。どういう恩典があるのか。それはこれまでどおりでいいのかどうか。その辺、再発防止のためにどうお考えになっているか、具体的にどういうことをなさるつもりなのか、ちょっと伺いたいわけです。
〇福田国税庁次長
なぜ起きたのか、これは非常に難しい問題で、これから裁判等で明らかになると思うのですが、一般的に申し上げますと、いわば収入を除外したという非常に単純な手口でございます。では、なぜもっと早期に発見できなかったのか、これは反省点ではございます。
いずれにしても、自分の30年あるいは40年にわたる第一の人生と申しましょうか、長く職場で、これはどの職場でも同じであろうかと思いますけれども、それにいわば泥足で踏みにじるようなことになったということで、私ども改めて、今度は退職する職員につきましては、そこら辺のところは、オリエンテーションを改めてしっかりやっていきたいと思っております。
それから、税理士試験のことのお話がございましたが、実は今年の4月1日に新しい税理士法、改正法が施行されますけれども、これまでのことで申し上げますと、基本的に 23年間以上職場にいますと、試験は免除される。ただし、簿記会計あるいは財務諸表、そういったものにつきましては、国税審議会が指定する、指定研修と言っておりますが、その研修を受けて、それに合格する者について、したがって、税法の試験と会計の関係の試験、この2つのグループを合格すると税理士になれるわけでありますが、一般の税務署の職員につきましては、税法は基本的に一定年数以上勤務すれば免除、それから会計のほうは、研修を受けて試験を受けると免除、こういうふうになっております。
ちなみに、この試験、これは去年の数字を申し上げますと、会計のほうの合格率は6割ちょっとぐらいということでございます。なお、正確なことを申しますと、その前はもう少し合格率が高うございました。これは、私が申し上げるまでもないのですが、いろいろと会計の制度が変わっているということで、合格率が落ちている。これが実情でございます。
〇石会長
ありがとうございました。
ほかに御発言ございますか。よろしゅうございますか。
いま松尾さんのおっしゃっていたことに尽きておりますが、我々といたしましても、大変深刻に受けとめております。税制改革をこれから本格的にやらなければいけないときに、こういうものを引きずっていては、なかなかやりにくいというのが実態でございます。ただ、いま福田さんのお話のように、多々御努力をいただいて、再発なきようにということでお考えのようでございますから、どうか、今後その方向で一段と進めて、二度とこういうことがないようにお願いいたしたいと思います。
では、福田さん、お忙しいところありがとうございました。
〇福田国税庁次長
どうも貴重なお時間をいただきまして、ありがとうございました。
(福田国税庁次長 退席)
〇石会長
それでは、これから具体的な審議に入りたいと思います。
最初、私のほうから、今後の取扱いにつきまして、若干説明をさせていただきます。
「基礎小5-1」『税制調査会の今後の審議の進め方』という1枚紙がございますが、これに目を通しながらお聞きいただきたいと思いま す。
前回の総会で、小泉首相自ら御出席いただきまして、21世紀のあるべき姿、税制のあるべき姿を、予断なく予見なく聖域なく議論してくれという御依頼がございました。そういうわけで基礎問題小委員会を立ち上げまして、すでに2回ほど消化しております。その内容を今日御紹介するというのが大きなテーマでございますが、そこでも皆さんと議論いたしましたが、次のようなことで秋までのスケジュールをこなしたいと考えております。
この「基礎小5-1」の資料にございますように、現在、1月から3月の間の期間、最初のくくりでございますが、基本的論点を中心に検討をしようと。基礎小を隔週程度、月2回ですね。それを受けて月1回程度の総会でそれを報告して御議論いただこうという段取りを3月までやっております。
それから、同じような形で4-6と具体的な税制についてもう一段と深めたようなことをやりたいと思いますし、この間、あとでもう少し詳しく申し上げますが、国民との対話集会あるいは地方公聴会なるものを、実際に3月から動き出しますが、4月、5月も続けていきたいと思います。
6月冒頭かそこらになるかと思いますが、基本的な方針、「あるべき税制の構築に向けての基本的な方針」というのを、そこで一段階つけて議論を整理したいと考えております。そのとき、ここで皆さんの御議論を賜ると同時に、公聴会等で対話を重ねた結果も踏まえつつ、我々、今後どういう形であるべき税制を考えるかという議論を整理したいと考えています。
そこで、今度は我々の基本的な方針が固まるわけでございますから、仮に対話集会に出るとしましても、今度は我々の意見を国民の方々から御批判いただく、あるいは御意見いただくという形で、できたら夏もこの対話集会は続けていきたいと考えております。10月か11月になるかと思いますが、平成15年度税制に盛り込むべき事項について、いうなれば主要な論点を整理して、そして実はもう一つ大きな宿題がありまして、来年の9月には我々の任期が切れ、そこで中期答申を出さなければいけません。これは森首相から受けた「21世紀初頭のあるべき税制の姿」ということでございまして、小泉さんから受けたのと同じような方向での議論でありますから、延長上にあると考えられます。いずれにいたしましても、今年の秋まとめたものをベースにして、来年の9月に出すべき、いうなれば最終的な中期答申をまとめたいと考えておりますので、いずれにいたしましても、秋には、長めの中長期的な大きな問題、かつ、そこから15年度税制改正に実際に移せる、実行に移せるものもここから拾ってこられると思いますが、そういう2つの目的でもって、今年の秋、主要な論点をまとめてみたいと、このように考えております。
そこで、いまちょっと申し上げましたが、資料に多分入っていると思いますが、税調の国民との対話集会というのをいま考えておりまして、第1回目、第2回目の日付と、千葉市、鹿児島市ということが出ております。3月18日、3月25日、両日、ここで基礎小の先生方を中心に3人ぐらいと、それから、経済財政諮問会議にも声をかけておりますので、そこからまたお1人ないし2人来ていただきまして、5、6人のチームを組んで、実際に対話に臨みたいと考えております。
この狙いは、先ほど来申し上げておりますように、白紙の状態で国民の方々の率直な御意見を聞いてこよう、耳を傾けようという趣旨でございます。それをまたここで御報告し、また皆さんの判断も伺いたいと考えておりますが、これは対話集会でありますので、極めてオープンにして、できるだけ多くの方にお集まりいただけるような場を設定したいと考えております。意見を言っていただく方も一般的に公募して、誰でも参加できるようにしたいなとも考えております。そういうわけで、いろいろまたお忙しい中、御無理をお願いする先生方もいらっしゃるかと思いますが、よろしくお願いをいたします。
それから、もう1点、基礎問題小委員会のメンバーに新しく専門家として大学の関係者、研究者の方に5名加わっていただきました。御紹介しておきます。
特別委員でございました神田秀樹さん、中里実さん、それから専門委員でございました神野直彦さん、田近栄治さん、それから前は税調のメンバーでございましたが、宮島洋さん、いまやめておられますので、現在、専門委員に御就任いただくべく手続中でございまして、5人のメンバーを追加して、基礎問題小委員会でこれから本格的な議論を詰めていきたいと、このように考えております。
それでは、少し時間がたちましたけれども、以下、前半の我々の審議の内容に入りたいと思います。
まず最初に、私のほうから、「基礎小5-2」という資料を使いまして、基礎問題小委員会で冒頭どういう姿勢で税制改革に取り組むかということをまとめましたので、そのことを簡単に10分程度の時間をいただきまして御説明をいたしたいと思います。その後、稲垣調査課長、奥野さん、お2人からも、基礎小でやりました第1回目の報告の内容につきまして、もう一回簡単に繰り返して御説明いただくという段取りをつけたいと考えております。
そこで、私のほうから最初に問題提起をさせていただくのは、税制と経済の再活性化とか、あるいはインセンティブスの関係をどう考えたらいいかということで、1枚目にちょっとした図がございますし、2枚目には新聞の切抜きがございます。これは後ほどお読みいただけたらと思います。
そこで、いま税制によるデフレ対策をどうしたらいいかということを踏まえまして、税制と経済活力の関係がいくつかの点で議論されていると思います。そこで、ここに20世紀型と21世紀型と2つ左右に分けて箱を2つずつ書いてございますが、これはあくまで主軸になる考え方でありまして、すべてがこの2つにはっきり峻別されるということではなくて、基本的な議論の仕組み、あるいは基軸はどういう形であるかということをたまたま類型化したということでございます。
そこで、20世紀型と申しておるのは、戦後、敗戦から立ち上がって高度成長を遂げて、バブルに突入するまでのいうなれば高度成長型の経済システムの中で、やはり大きな特色は、官主導、政府介入による大量生産、あるいは大量消費型の社会をつくってきたと思います。このときに官主導、政府介入というのは、いうなれば事前規制ということがあって、関係団体あるいは関係省庁、あるいは政治家も絡めて、ごく限られたところである規制が進んで、そこである特定の成長政策なら成長政策をやってきたということでございます。
となりますと、税制も当然、ある特定の政策目標を誘導するということについて、市民権が得られていたわけでありまして、租税特別措置とか非課税の措置、あるいは様々な特定の政策目標にかけた所得控除とか、税制の中にはある特定の目標、それは所得の場合もあるし、特定の業界の優遇措置もあるし、様々ございますが、そこにいくつかの税制の活用があった。代表的なのが貯蓄優遇でありましょうし、資本蓄積でありましょうし、それから、福祉を支えるという意味での税制の補助金的な使い方もありましたし、あるいは、おそらく昔は輸出増強みたいなものもここの中に入っていたと思います。
これが一応ベースにあって、しかし、税調は課税の公平・中立・簡素というのを言い続けてきたと思いますが、この軸足から見て、公平とか中立とかというものに極力戻したいと言いつつも、この20世紀型の税の仕組みでは、そこになかなか戻れない側面もあったかと思っております。
そこで、いま考え、これからどうしようかというときに、21世紀型というのを改めて書きましたが、これも一足飛びに20世紀から21世紀に全く変わったような局面でディメンションが移るというわけではなくて、基軸としてこういう考え方でやらないと、税制改革はできないなというふうに考えておりまして、一挙にここまで行けるかどうかはこれからの議論でありますが、依るべき視点はここだろうと考えております。
これは、どちらかといいますと、官主導から民主導に当然移るだろうと。それで、マーケットを通じて資源配分というのが行われ、全体より個というものが大事になるような形の、いわゆる個別ニーズ対応型の社会に当然なってくるだろうと。そういう意味で、事前規制を離れ、おそらく事後チェック型のそういう政策決定の仕組みになってくるだろうと。これはすでに金融行政を含め、産業規制も含め、様々そういう形ができてきているわけですね。いうなれば規制から規制緩和へという大きな流れがあるわけです。
その中で、税制はどうするかというと、民主導であり、民意を妨げない形で自由に行動してもらったほうがいいということならば、おそらくニュートラルな、歪みのないような税制を社会全体のインフラとしてつくっておくべきであろうと。これはごく自然にそういう格好になりますね。そういう意味で、我々の「公平・中立・簡素」というスローガンが本当に生きてくる、あるいは生かすような、そういうベースをつくるほうがいいだろうなと、これが規範的な意味での税制とインセンティブスの関係でございます。
これに対して、当然、基礎問題小委員会でも、それはよくわかるけれども、理念形としてわかるけれども、いまの景気後退なり景気不振のときに、完全に政府は手放して民間に任せていいか。まだ政府が何かやらなければいけない側面というのも残っているのではないかという御批判も当然あり、それが、あとから皆さんの御意見をいただきたいと思いますが、税制とデフレ対策の関係であろうかと思います。
基本的には、おそらく我々の根っこにある考え方は、こういうふうに変化させるべきではないかという形で、抜本税制改革の軸足を移して考えるという側面をちょっと整理したということでございます。
1枚飛ばしていただきまして、もう一つサブ的に御説明したのは、税調というのはいままでどういう役割を果たしてきて、どういう過去の歴史を持っていたかということでございます。ここに税制改革における2つのタイプ、型というのを書いておきましたが、日本はこの政府税調で代表される審議会、このルートを通じて税制改革の案をつくり、いうなれば諮問は首相から受けるわけですが、受け、答申を出し、それを国会に出すという形で議論をしてきたわけですね。アメリカとかイギリスとかほかの国は、そうではなくて、レーガン税制改革にしても、サッチャーのときも、例えば欧米のいくつかの主要な税制改革のときには、必ずこのタスク・フォース型の専門家グループができてきます。一番いいイメージは、日本のシャウプ税制システムです。あれは7人の委員がマッカーサーによって指名されてアメリカから来て、たしか4か月ぐらいで報告書をつくり上げて、それを国会で議論して、戦後のシャウプ税制というのをつくったわけでありますが、レーガンのときもおそらくそのようになったとお考えいただいていいと思います。ただ、これはあくまでタックス・リポートを公表するので、これがすぐさま税制につながるわけではなくて、議会なり国会で審議を経て、そこで実施に移される。こういう形であります。
昔、政府税調が極めて力が強いときは、この答申イコール国会審議を完全に修正されないで通すという意味において、答申そのものがある意味では税制改革に結びついたという時期はございました。
ただ、ここに書いてございますように、党税調、いまは与党税調、あるいは自民党税調といろいろございまして、税調の関係でいくつか国会へ行く前にいろいろなせめぎ合いもあるというのは事実でございますが、そういう形で税制調査会の役割もずいぶん変わったということを、ここでちょっと申し上げたい。つまり、欧米型のタックス・リポート型のことをやるのかどうか、これからの議論の流れの中で少し考える必要があるのかもしれませんが、逆に言ってまた国民の代表という形でこの政府税調ができておりますから、そこの審議を踏まえて答申を出すというのはまた意味もあることだと思いますので、その辺は税調の持つ固有の宿命と言うべきことだと思います。
あと数分で終わりますが、次にちょっと整理いたしました。税調というのはいつごろできて、どういう形でこれまで発展してきたか、税調の委員になられても、失礼ながらこの辺のことを御存じない方が大半ではないかと思いまして、私、大蔵省の昭和財政史のプロジェクトに入っていたものですから、昔の資料を引っくり返す機会がございました。いろいろおもしろい事実もございましたし、昔の税調委員はいくら謝金をもらっていたかなどという資料も出てきまして、おもしろかったのですが。ここに出ておりますように、1962年の8月にこの税調というのは恒久化されました。ただし、その3年前、1959年4月に、一応時限立法で税調の前身であるものができ、これは中山伊知郎さんが会長で、委員30名でスタートしたのですが、実はその前に、40年代、50年代というのも、税調に似た組織はいっぱいあったのです。これは絶えずある限定された時期に、限定されたトピックスも扱ったことがございますが、つくっては壊し、つくっては壊しという形で税制の議論をしてきたものですから、1950年代後半に入りましてから、やはり税というのは恒久的に議論しなければいけないという形で政府税制調査会というのができ、ここで我々のいまあるこの場は、1962年8月に恒久化された、いうなれば総理府設置法に基づく内閣総理大臣の諮問機関としてできたと、こういうことでございます。
そこで、もうこの60年代、70年代に入っている方はいらっしゃらないわけですが、いろいろ資料をひもときますと、60年代、70年代、できてから20年近くは、おそらく先ほどの冒頭の図で申しますと、政府税調の一人舞台でございまして、政府税調が大体決めたことがそのまま、自民党の単独政権もございましたけれども、国会で通るという時代でございましたから、税調の議論がまさに一番重要、かつ、ここは国民の各層の代表でございますから、ここでの調整を経れば、大体税制改革ができるという時代がありまして、そういう意味で一人舞台と書いておいたのですが。その後、80年代に入りましてから、自民党税調ができ、様々な政治家の御専門の方もあらわれ、そこで税調と対立をしたり、協調したり、いろいろな形で2つの税調がせめぎ合ってきたというのは事実でございましょう。
しかし、やっているうちに自ずから知恵は出てくるもので、いまあるように、自民党税調はどちらかといいますと、政治的な決断を迫られるごく短期的な政治的決着を図るような形のところに責任を持ち、この政府税調は、中長期的な視点から日本の税制のシナリオを描くという分け方になってきたと思います。端的に申すと、地価税にしても、消費税にしても、その基礎的な構築は全部政府税調でやりましたが、最後に税率を入れるときは、たしか党税調がやったはずでありまして、そういう意味でのいうなれば仕事の分担というのが多分だんだんできてきて、今日に至ってきたと、こういう状態だろうと思います。
最後に1枚、どんなことをこれから議論しなければいけないかということでございますが、これは大体先ほど申し上げた5月までの基本的な方針を決めるまでの主要な論点を一応メモっておきました。これはあとからお目通しいただければいいのですが、いますでにこれからやろうとしていることもここに書いてございます。やはり根っこにあるのは、税制、租税の基本的な役割は何かと。景気対策とか所得分配という議論は当然あることながら、やはり公共サービスとしての必要な財源を必要なだけ調達できるような税制にしなければいけないのではないかというのが根っこにあって、その対応が非常に穴があいてきたという意味において、空洞化が起こっているのではないかという問題意識、私は個人的に思っております。
重要なことは、この5つ目の丸印にございますが、経済社会の構造変化への対応という形で、少子・高齢化以下、グローバル化、情報化、経済のストック化、環境問題、こういう、経済が変わったよ、社会が変わったよというところとの接点での税制が、これらに対応し切れていない面があるのではないかという問題意識を持っておりまして、そういう視点から、5月まで基本的な論点をまとめれば、自ずから個々の税目、個々の税制についての改革の方向が浮かび上がってくるのではないかと私は思っております。
それから、最後の丸は、地方分権と地方税のあり方でございまして、これも小泉さんが一つ問題意識でございます地方交付税の問題が絡みますけれども、こういう問題もやっていかなければいけないと考えております。
以上、10分ほど時間を使いましたが、基礎小の第1回目に私が御報告した中身のサマライズでございます。
では、稲垣さんと奥野さんに続いてやっていただきましてから、皆さんから自由な御議論をいただきたいと思います。
稲垣さん、お願いします。
〇稲垣調査課長
それでは、私のほうから、『経済社会の構造変化』という題で、小さくて見にくい表で恐縮でございますが、「総会24」という資料でございます。これをご覧ください。
これは基礎小にお出しした資料からややデータが新しくなりまして、リニューしておりますけれども、あるべき税制を考えるに当たりまして、一つの基礎となるデータ集でございます。審議の御参考のために、とりあえず、いま石会長からも御指摘がございましたけれども、従来御議論いただいている項目、あるいは御指摘いただいている事項につきまして、事務局で取りまとめたものでございます。
恐縮でございますが、一番左のところの項目でございますけれども、これが構造変化についてのいわば切り口ということでございまして、経済の成長、あるいは下のほうにまいりまして、高齢化・少子化といったようないわば切り口が書いてあるわけでございます。
右のほうに向けまして、縦の欄は、まずシャウプから戦後の税制が始まっているわけでございますが、そのシャウプ勧告当時、それから、高度成長真っただ中の昭和40年、それからまた20年たちまして昭和63年と平成2年、この間には消費税の導入という大きな改革があったわけでございます。そして、現在に至るというところのデータが表にしてございます。
これは先ほど申し上げましたように、とりあえずまとめたというものでございまして、このほかにもいろいろ切り口があろうかと思います。また御指摘いただければ、それについては事務局のほうでデータ等をおそろえしたいと思っております。
簡単でございますが、以上でございます。
〇石会長
奥野さんのほうから、『日本経済と税制の役割』というペーパーを御用意いただきまして、御説明いただきますので、奥野さん、お願いします。
〇奥野委員
奥野でございます。「基礎小5-7」というペーパーで、『日本経済と税制の役割』ということで、私の考えをちょっとまとめてあります。10分ほど時間をいただいて御説明したいと思うのですが、まず日本経済の現状と展望でございます。私の理解では、日本経済の現状というのは、デフレと長期不況というものがいま並存している。そこに非常に大きな問題があって、御存じのように、政府の累積赤字とデフレとがございますし、潜在成長率が非常に低下している。
そういうことの基本的な背景には、問題として経済構造が非常に旧態依然である、変わらないということ。それから、先ほどから申し上げているデフレが続いている。それから、財政のプライマリー・バランスが非常に赤字である。
こういう状況であるがために、ずっとこの10年ほど折に触れとってきたケインズ型財政政策では、対処はもはや不可能ではないか。それから、ここには書いてございませんが、サプライサイドの政策というものも、サプライサイドもいくつかのタイプに分かれますけれども、単にサプライを増やすという形では、いまの不況には対処できないだろうと。だから、もう少し構造的なサプライサイドなら話は別ですが、単純なサプライサイドの政策でも対処できない。ですから、そういう意味で、もうちょっと別種の対策が必要だろうということでございます。
それから、構造問題の非常に大きな問題の1つとしてございます金融機関の不良債権と企業部門の過剰債務という債権債務の問題がございますが、これは私の理解では、単に過去のストックとしての不良債権とか過剰債務があるということに問題があるだけではなくて、それ以上に実質金利が非常に高止まっているデフレ下では、新しく企業部門の債務が不良化して、金融機関の不良債権としてフローとして新しく生まれてくる。したがって、ストックを処理しているだけでは不十分であって、それだけでは新しく生まれてくるフローを解決できないということで、基本的にはデフレを脱しないと、この不良債権、過剰債務問題というものは解決しないのではないか。もちろん、不良債権、過剰債務を何らかの、例えば公的資金の投入等である程度解決することは大事だろうと思いますが、それだけでは解決できないと私は思っております。
それに加えて、御存じのように国際競争力の低下、中国を初めとするアジアの台頭であるとか、空洞化、高齢化の進展というような問題もございますし、その対策としての構造改革というものが非常に重要だろうと思います。規制改革、財投・特殊法人改革、行政改革、産業構造改革などがありますけれども、いずれにしても、そういう経済構造の変革が急務で、税制改革はその1つであって、基本的にいえば、我々が問題としている税制改革というのは、1つには小手先でない構造改革を行うための1つの手段であるということ。
それから、ここには書きませんでしたけれども、これからるる述べますことは、税制改革によってプライマリー・バランスを回復するということが極めて重要ではないかというのが2番目でございます。
それから、税制改革の3番目の役割としては、これは本来は金融政策がやるべきことですから、税制がやるべきことでは必ずしもないのですが、もし何らかの形でそれをすることが可能ならば、税制改革によってデフレを脱却することの一助になるということは大事かと思います。
そういうことをすれば、目下進んでいる情報化とか技術革新、あるいは環境など新しい産業の流れに乗っかった新しい日本経済を再建するということは、不可能ではないかもしれない。そのためには、構造改革とそれに伴う税制改革、それから金融政策の問題が極めて重要ではないかと思います。
「日本経済の将来展望」と書いてございますが、大事なのは、かなりの部分、石会長のお話と重複しますから、1点か2点だけ強調いたしますと、思い込みに依存する旧来型の価値観というものに少し日本ははまり込みすぎていて、社会的弱者ということに少し考えが行きすぎているというのが私の印象でございます。とりわけ、老人マル優というのが前回の税調で基本的に廃止になりましたけれども、老人というのは、しかし、所得とか資産ということで考えれば、たくさんお持ちの方もたくさんいらっしゃるので、単に老人だから社会的弱者だ、あるいは、これも別の例ですが、単に中小企業だから社会的弱者だとか、地方に住んでいるから社会的弱者だということではなくて、もう少しきめの細かい弱者像ということをきちんと定義して、それに対処するということが大事だと。そういう意味では、社会的価値観の強制による画一性から、自己責任原則に基づく多様性というものが必要だろうと思います。
それから、事前調整から事後チェックというのも石会長がおっしゃったとおりですし、効率的な政府の実現と説明責任の貫徹というようなものも大事かと思います。
ただ、市場システムの限界も存在しますから、その市場の失敗への対処、及び国際化、グローバル化への対処等も必要かと思います。
問題なのは、日本財政と税制の現状だろうと思うのです。ここに書きましたが、日本の財政の現状というのは、御存じのとおり、国の歳出額81兆円に対して税収は47兆円でございまして、国民負担率が38.3%、税と社会保障で国民は国民所得のこれだけを負担している。しかし、赤字国債で支払っている支出部分も含めれば、潜在的負担率は46.9%に上るという非常に大きな赤字を持っている。その結果、国・地方を合わせれば、財政赤字自体はGDP比で6.3%になっている。それから、長期債務の残高、これはGDP比ですでに140%を超えるという、先進国ではちょっと例のない水準に来ている。
それに加えて国・地方のプライマリー・バランスの赤字が4%程度であるという状況でございます。プライマリー・バランスということは皆さんもう御存じでしょうが、念のためにもう一度ここで述べさせていただきます。プライマリー・バランスというのは、簡単に言えば、借入金、国債収入を除く歳入、本来の税収部分から、国債償還費と利払費を除いた歳出、つまり本来国債がゼロであれば、純粋の歳出がこれだけだと。純粋の租税歳入から純粋の歳出を引いた部分がプライマリー・バランスでございます。
現状でこのプライマリー・バランスが4%であって、これが極めて大きな赤字で非常に問題だと言われているわけですが、実はこれを黒字化しただけでは、財政は維持可能にはなりません。そのことを、皆さん御存じかもしれませんが、念のために申し上げておいたのがこの(1)でございます。つまり、租税収入というのは、非常に大ざっぱにいえばGDPの成長率ですね、それと同じぐらいの成長率でしか伸びていかないわけですね。ところが、国債の残高というのは、これは借入金ですから、利子負担というもので長期の名目金利というものの比率で増えてまいります。ですから、GDPと国債残高の比率を一定の割合に保って、それ以上に増えないようにするためには、名目経済成長率、つまり本来の財政の部分の伸び率が債務残高の伸び率を上回るという状況でないと、財政は維持可能ではないということになります。
その上で、名目経済成長率が名目金利を超えている、あるいは等しいという状況があって、初めてプライマリー・バランスを均衡させることで、国債発行額/GDP比率、ないしは国債残高/GDP比率を一定率以下に維持可能である。この(1)と(2)の両方が成立していないと、財政赤字は発散してしまうということになります。
現状の問題点はどういうことかというと、そもそも、プライマリー・バランスという部分で4%程度の赤字が出ている。内閣府が最近発表しました「改革と展望」という文章がございますが、私の印象では、これは極めて楽観的な推計だと思うのですが、これでもってやっと2010年ごろにプライマリー・バランスがバランスするということになっております。
その背後にある過程として、実は来年か再来年にデフレから日本経済は脱却するということが書かれているわけですが、現状では実はデフレでありまして、名目経済成長率が名目金利を上回るという状況にはございません。現実には、名目経済成長率はマイナス1%程度、国債の名目利子率、長期利子率は大体1.5%前後。したがって、仮にプライマリー・バランスがいまバランスしていたとしても、国債/GDP比率というのは2.5%前後の比率で増えていく状況にある。そういう意味で、プライマリー・バランスが回復したとしても、デフレが継続すれば、財政の維持可能性は実現しないという危機的な状況にあるということになります。
しかも、いまの話は、経済成長が例えばマイナス1%であったときには、税収もマイナス1%で増えるということを仮定しましたけれども、現実の税の構造にはビルト・イン・スタビライザーという仕組みがあって、デフレで例えば名目の経済成長率がマイナスになれば、所得税の課税最低限以下に所得が落ちていく人たち、あるいは税の累進構造も名目ですから、税のブラケットが下がっていくという人たちがどんどん出てきて、例えばマイナス1%の名目経済成長率であれば、おそらく税収はマイナス2%とかマイナス3%しかならない。そ の分だけ先ほどの問題が危機化するという状況になります。
だとすると、では、いまのような状況でプライマリー・バランスは赤字で、しかもデフレで、このまま財政の問題を放置したときに何が起きるかということも、いわば思考実験で考えてみますと、端的にいえば以下のようなことが起きるだろうということになります。つまり、現状のデフレ不況によって、先ほど申しましたように税収は減る。他方、不況ですから様々な形で支出増をせざるを得ない。そうすると、いま以上に財政赤字が増大する。当然、その結果、税収は不足していますから、国債を増発せざるを得ない。そうすると、いますでに起こりつつありますが、国債格付けがどんどん低下していく。そうすると、国債利子率が増えますので、利払費が増加する。そうすると、財政赤字がさらに増大する。ということは、基本的にはもう国債がどんどん格付けが下がっていって、ジャンクボンド化していくということで、国債の市場消化が不可能になる可能性が事実上近い将来に起こり得る可能性がある。
そういうことになったとしたときには、そういうことはいままで先進国で起きたことはないわけですが、途上国ではこういうことが比較的頻繁に行われ、アルゼンチンなどはそうですが、そういう場合には、基本的には国債を中央銀行引受けせざるを得ないだろうという、いま日銀は拒否をしていますが、そこまでいけば引き受けざるを得なくなるでしょうから、そうなると、基本的には日銀が日銀券を刷って財政の赤字を引き受けるという形になって、ハイパーインフレーションになる。そうすると、為替が暴落して、資本逃避が起こるというようなことになる。そういうふうに私はかなり危惧せざるを得ないと思います。
そういう意味で、財政、とりわけ税制の中期目標としては、1つがプライマリー・バランスの回復、それも先ほどのビルト・イン・スタビライザー等いろいろありますから、単にバランスすればいいというものではなくて、少しプラスの余裕を持ったバランス回復が必要であろうと。
それから、本来、これは金融がやるべきことですけれども、財政、税制でも何か手があって、歪みをつくり出さないのならば、デフレ脱却のための何らかの手を打つということも大事かと思います。
最後の税制の役割と将来展望ということは、石会長の最後のペーパーとほとんど重複しますので、これでおしまいにさせていただきます。
以上です。
〇石会長
ありがとうございました。
それでは、いま3人のスピーカーが問題提起しましたが、2、30分時間を取りまして、これを軸に御議論いただきたいと思います。というのは、ぜひ私もお尋ねしたいのは、税調として、いまの日本経済、特に短期面に限定したときに、どういう対応をするかということは、実は議論しておいたほうがいいでしょう。
奥野さんの話、私の話は、おそらく中長期的な視点から見るとそうだろうという形で、大方の方は多分御賛同いただける面が多々あると思いますが、では、いまの現状、短期的なデフレ対策云々もそのままでいいのかどうかということは、ちょっとまた議論があるのではないかと思います。特に経済界でいろいろおやりになっていらっしゃる経済人の方もいらっしゃいますので、率直な御意見をお尋ねしたいと思います。どうぞ、森下さん。
〇森下委員
いま、これからの税制を基本的に考えていく中で、中長期の問題を考えなければならないということでお話がございました。私はプライマリー・バランスも含めて非常に大事なことだと思います。よって、いままでの税調は、比較的単年度のいわば税制中立といいますか、税項目中立といいますか、そういう問題にやや終始しがちであったという、これはある程度やむを得ない面もあったと思うのですけれども。今回こういう抜本改革という機会でございますので、経済財政諮問会議のほうも言っていくと思いますけれども、少なくとも5年ぐらいのスパンで、これは先ほどは2011年というあたりも出ておりましたけれども、さしずめ5年スパンか、もう少し長期の段階まで含めた、あまり単年度だけでやると、抜本改革や税改革ができないのではないかという意味で、中長期の観点を前提にした抜本改革という視点をやはり絶えず置いておくということが、私は1つは大事ではないかなということです。
もう1点は、いま石会長からもちょっと経済界という当面といいますか、先ほど奥野先生の日本のデフレ・スパイラルの、何か悪魔のサイクルみたいなことが説明がございました。まさにここへ入っていけば悪魔のサイクルになってしまうと思いますので、そういう意味で、いま現在の財政、金融の中だけでデフレ・スパイラルを脱出するというのは、なかなかいまの財政状況から考えましても、限られた施策しか出てこないという意味で、当面というふうな、デフレ・スパイラルを脱出するという意味におきましては、いま日本で持てる最大の資産というのは、個人金融資産が最大ではなかろうかと思うのです。その1,400兆円とも言われている個人金融資産を、大体65歳以上に大半は固まってしまっているわけですから、そういう意味では、よく言われる世代間でそれを移動させるということを活用して、ある程度の必要なところへ必要なお金が流れるようなことをすると、これは別に財政政策でも金融政策でもないわけでありまして、これには私は税というテコがあれば、それが移動するのではないかということで、いまよく言われている贈与税というものを、これは中長期に見れば、相続税の先食いになるかもわかりませんけれども。しかし、いま日本の置かれているデフレのこういう危機感からいきますと、一番やりやすいといいますか、そういう贈与税を活用した、それを思い切った、いままでのような110万円とかというようなレベルではなしに、1桁上げたぐらいからもう一つ上げるぐらいの感じで、贈与税を移動させる。
それを、移動さすだけではまたいけませんので、できるだけ、例えば住宅とかいうようなところにある一面方向を定めるというのも1つの方向。具体的な中身はちょっと別として、1つの例として、そういう住宅というのは、日本の住宅のストックという面から見ますと、まだまだ世界的なレベルからいきますと、非常に貧相なレベルでありますから、そういう意味では、例えば先般の阪神大震災のようなことが日本の例えばどこかの地域で起きれば、悲惨な事故になるというようなことから考えても、住宅のストックというものはもう少し改善すべきではないか。
そういうふうに世代の移動というものを含めたそういうことを考えれば、あまり赤字国債も出さずにということは可能になるのではないか。土地税制も含めまして、資産デフレの原因は土地にも起因していますので、土地のもっと移動しやすいような譲与税の削減というか、減税といいますか、そういう資産的なもののデフレをまず解決するということと、世代間の資金の移動というようなことは、当面の策としては、税として考えられるのが一番いいのではないかという意見でございます。
〇石会長
ありがとうございました。どうぞ、諸井さん。
〇諸井委員
さっきの奥野先生の分析は、私は基本的に大体賛成でございます。認識は同じでございます。これが具体的な数字になっていくと、どうなのでしょうか、いまプライマリー・バランスというのは、4%とおっしゃった。そうすると、大体20兆円ぐらいの感じになるわけですか。私は15~16兆円なのかなと思っていましたけれども、いずれにしても、そのような数字なのだろうと思います。
それから、700兆円の長期債務が国・地方であるわけで、これの金利負担というのが、大体1.5%とすれば10兆円ぐらいですか。2%とすれば15兆円ぐらいですね。いずれにしても、トータルして30兆円ぐらいがいまの財政で不足している。今年また進行していくと、さらにそれが多くなるのかもしれないけれども、今年度のベースでいうと、大体そんなものではないかと思うのです。
これを一体ゼロにするということになると、どういうことになるか。例えば歳出のカットと、税の増収と、増税と、この3つに10兆円ずつ分けると、これは乱暴な議論ですけれども、どういうことになるのか。例えば、歳出カットで10兆円ぐらい切れそうなところは、国の公共投資が10兆円あって、地方が27兆円ありますから、合計37兆円。この中から切るぐらいしかないのだろうと思うのです。むしろ社会保険などはだんだん税のほうへ負担がかかることになりかねない情勢で、それをどう防ぐかがいま問題なのだろうと思います。
もし公共投資を10兆円切るということになると、これは1年や2年ではもちろんできないわけで、毎年1兆円ずつ切っても10年ぐらいかかってしまうわけですね。それでも景気に対する影響というのは相当なものではないかという感じがする。しかし、その辺しか切るとすればないのではないのかなと。
それから、増収で考えた場合に、年2%の成長率が5年続けば、確かに10%ぐらいにはなりますよね。10兆円まではいかないかもしれないけれども、そのぐらいの金額になるのかもしれない。国・地方の税収が合計で85兆円、それ以外に税外収入が10兆円ぐらいあると思いますから、大体そのぐらいのことになるのかもしれない。しかし、5年連続2%というのは大変なことですね。ですから、実際は多分これも10年ぐらいかかってしまうのではないのか。
それから、増税で考えると、所得税の課税最低限という問題はありますけれども、非常にわかりやすいのはやはり消費税で、これを現在の5%から10%にすると、多分、12~13兆円ぐらいですか、増税になるのだろうと思います。これだって一遍にやったらおそらく経済がめちゃめちゃに冷え込んでしまうのでしょうから、私は、非常に乱暴な議論ですけれども、1年に1%ずつぐらい様子を見ながら上げていったらどうか。毎年駆け込み需要も出てくるというようなことを言っておるわけですけれども、いずれにしても、30兆円の穴埋めというのは、大体やはり10年はかかるのではないのか。その10年のプロセスの中で、では、毎年毎年の年次改正というだけで考えていっていいのか。
いずれにしても、この30兆円というのはどこかで埋めていかなければならないのだから、10年かかるか何年かかるかわからないけれども、そのときに形としてはこういうふうな形で埋めていくのだと。財政、税制、それを含めたトータルのシナリオ、イメージ、あるいは理念というものがあって、それをだんだん時間をかけてやっていくというような発想が必要ではないか。
ちょっとおこがましいのですけれども、そんなことを考えましたので、ありがとうございました。
〇石会長
長期的に少し作戦を練るということですね。わかりました。
ほかにどうぞ。島田さん。
〇島田委員
今日の奥野さんのレポートは、非常に簡潔で、しかし要点を網羅しておって、非常に重要な我々のベンチマークになるのかと思います。
石会長にちょっとお願いしておきたいのは、税調として経済観を整理するというのは非常に重要なことだと思うので、これをベンチマークにして、きちっとしたのを一度つくられるといいのではないかと思います。いまの皆さんの御意見を盛り込むような形で。
そこで、ちょっと1つ意見を申し上げたいのですけれども、いま諸井さんも言われて、10年かかるのか、どうなのかという話なのですけれども、一番重要なことは、日本経済が所得を増出するメカニズムというのを、どういう形で新しい時代に持つかということなのです。奥野論文の中で、小手先ではない構造改革をと言われているのに万感こもっていると思うのですけれども、これまでの経済構造、経済システムだと、所得を増出するのがものすごく難しいですよ。なぜかというと、石先生は先ほど短期的に問題があるのだとおっしゃった、それはあるのです。短期的な問題は、奥野さんがおっしゃったビシャスサークルが、例えばいつ銀行が突然死してもおかしくないような状態がいま出てきているわけですよね。
それはまあそれとしておいて、中長期に見たとしても、それに重なって出てくるのは人口減、グローバル化の状況の中で、かつてのように工業生産でもって所得を増出して、海外へ売って、そしてそれをみんなでシェアする、そういうメカニズムはもう働かないのです。
どうするのか。人口が減っていきますから、いままでの経済構造ならほとんど成長しない経済になりますね。だけど、本当にそうなのか。私は、人口が減っていって高齢化しても、実はテクノロジー・プログレス、資本の効率化というのは可能ではないか。それはいままでの需要構造でない需要構造に着目をして、所得を増出する。それは何だというと、やはり莫大な貯蓄のストックに象徴される市場の潜在需要なのです。それは何だというと、サービス、生活、環境、そういった類のものだと思います。輸出立国というのはとうの昔に終わっているわけです。
それをどうするのかということと、もう一つあるのは、公共的な資産というのがものすごく無駄遣いされています。ですから、それをどう使うのか。ということは、要するに新しい所得増出のメカニズムをどう我々は考えるか。それから、我々のすでに持っている資本ストック、公共資産、こういうものをどう活用する仕掛けを考えるのか。それを市場メカニズムにどう委ねて、透明・公正な市場の中でそれを活用するメカニズムをつくるのか、こういうことだと思うのです。
税でそれを見ますと、やはりどうしても我々がやっていかなければいけないのは、所得税のフラット化に近い、いきなりフラット化はできませんけれども、全員が負担する、そして税率があまり高くない所得税ですね。それで消費税はやはり高くせざるを得ない。そうしますと、やはり本当の意味での弱者は気の毒になってきまして、ここのところをどうするかというと、税で賄うのではなくて、機能的なシビルミニマムですね。教育とか医療とか、それをやはり提供すべきだと思いますね。
一番象徴的なのは、例でいえば身障者の方々ですよね。こういう人たちが稼得能力がない中でどうやって生きていくのかというのは、これは考えなければいけない。ほかにたくさんいらっしゃいますけれども、いわゆるえせ弱者ではなくて本当の弱者がいますから。
それから、資産課税は、さっき申し上げたように、私的・公的な資産両方含めて、流動化するのを促進するような税でないとまずいと思うのです。
それから、もう一つあるのは、資産課税、資本市場をどうするか。私は基本的には資産の証券化を中心にした層の厚いセカンダリー・マーケットがたくさんできて、未公開株から何からよく循環する、そういう仕方ですね。そういうベースがあると、不良債権の処理もしやすいし、ベンチャーも資金調達しやすい。いまのように借金メカニズムだと、ベンチャーはほとんど資金調達できませんし、不良債権の処理もできない。ですから、セキュリタリーゼーションですね。これを徹底的に進めるので税が何かそれをバックアップすることはできるのか、というようなことだと思うのです。
そういう政策論を我々ができるように、石先生の御指導で、もうちょっと踏み込んだ、我々の経済認識、これは経済財政諮問会議でもやっていますし、中長期のものもありますし、財務省もやっていますけれども、やはり石先生のもとで、一度この奥野論文をもとにしてきちっとしたものをつくってみて、中長期を入れてみて、こういう形にすると所得増出ができるよと。
よく言われている需要創出型の構造改革、最近認識が出てきましたけれども、これはやはり一番重要なのは、さっきどなたかがおっしゃった住宅問題なのです。つまり、どういうことが起きているかというと、これから低成長になっていく。それで、住宅はいま5,100万戸あって、4,400万家計で700万戸も余っている。ここのところへただ遺産相続の前倒しをして持たせればいいのかという話ではないのです。というのは、所得が増えていかない社会で住宅ローンを組むと、若い人たちはこれから陸続と個人破産しますよ。そんなようなマーケットでいいのか。そうじゃないんですね。もうちょっと住宅が公正に評価されて流通するというベーシックなものをつくって、そのもとで貯蓄がいろいろなサービス、支出に使われるような仕組みをつくるということが重要だと思うのです。そんなことです。
〇石会長
ありがとうございました。要するに、構造改革の必要性と、それに対する種々の税制構築ですね。
〇島田委員
石経済観というのを……。
〇石会長
わかりました。ほかにどうでしょうか。まだ10分ぐらい時間を取ってもいいのですけれども、論客が立て続けに言ったから、ちょっと出にくいですか。どうぞ、村上さん。
〇村上特別委員
ちょっと確認しておきたいのですが、塩川財務大臣が今日の記者会見で、政府税調はまず減税先行の議論をしてもらいたいということをおっしゃっていますが、これはそういうことなのですか。それと、この税調の審議にどういう影響を与えるのか。
〇石会長
私、直接聞いていませんが、身近にいた大武さんが何か情報があると思いますから。
〇大武主税局長
今日の閣議後の記者会見で、いわば、こう言ってはあれですけれども、記者の方から聞かれてお答えになった話ですので、具体的には報道としてはわかりません。ただ、いずれにしても、総理も予見なく予断なく議論してほしいということは変わっておりませんし、むしろ、今回のデフレ対策の中に税制という言葉は実は出ておらないということでもおわかりのとおり、まさに税というのは構造改革の基本であるので、きちっとした議論をやってほしいというのを、これは総理からはいただいております。
多分、塩川大臣も同様だと思うのですが、したがって、例えば2月19日、今日の本会議での御答弁でも、申し上げますとこういうふうに答弁しておられるようでございます。「税制の抜本改革における改革の方向性を明示せよというお尋ねでございます。私たちは15年度税制改正に対しまして、これから議論を始めるわけでございますが、その考え方といたしまして、21世紀の税制のあるべき姿をまず探索しようということでございまして、改正のために理念を明確にしようと。まず1つは、財政秩序を保つための歳入・歳出のバランスを考えた税制ということにするのか。当然重要な案件でございますが。または経済活性化のためのいわば減税先行型で経済活性化のために改革に取り組むのか、あるいは3番目として、税の公平論に基づきまして、公平・不公平の是正に重点を置くのか、といろいろな税制の考え方がございますが、これらの理念についての理念をまず明確にし、そして、4、5月ごろに当たりましては、これを本格的な現実の経済社会、あるいは国民社会に即した税制改正の骨格を固め、6月に法制改革を含めた姿を国会に提示いたしたいと思っております」と、いわば骨太の議論をしたいと、こういうお答えを本会議でも今日しておられますので、その趣旨で3つぐらいの観点の中で、いわば経済活性化のためのというのを強めに言われたのかなと思っていますが。ただ、いずれにしても、ここはあくまでも税制の基本的なあるべき姿をきちっと描くということが我々に課された課題であるということは、変わっていないのかと思っております。
〇石会長
釈然としないところもありますけれども、よろしゅうございますか。塩川さんは時々ああいうことを発言されておりますので、我々が振り回されても困るなとは思っています。
ほかにいかがでしょうか。本間さん、どうですか。
〇本間委員
いま主税局長のほうから御説明いただいた問題でありますけれども、私も、経済財政諮問会議でも税制改革の議論をするというときに、おそらくフレームの問題としてどのようなスタイルで議論を進めていくかということは、極めて党の税調、政府の税調、かつ、経済財政諮問会議、それぞれ若干ニュアンス、あるいは力点の置き方が違うのではないかということを、実は恐れております。
党は、おそらく直近の経済状況を非常に重要視されるということだろうと思いますし、政府税調では、税の構造上の問題が重要なポイントになってまいると思いますし、経済財政諮問会議の場合には、それを重視しつつ、かつ、中長期的な観点の中で経済活性化の問題をどのように、島田委員が御指摘のような方向性というものを出すかということ、この三者三様のいわばフレームの相違を、どのように時系列的に組み合わせていくかということが、おそらく今後極めて重要なポイントになってくるのだろうと思います。
おそらく短期的な問題、中期的な問題、奥野委員から御指摘のとおり、プライマリー・バランスの問題は中期的な課題として10年前後の中でこれを検討しなければならないと思いますし、高齢・少子化の中でこれから2020年、あるいは2025年を念頭に置きながら、制度改革を絡めての社会保障との関係の中における税の十分性、社会保険料の十分性というものをどのように担保するか、ここらあたり整理をしながら進めてまいりませんと、おそらく混乱をするだろうと。ぜひそういう点で頭を整理しておく必要があるのだろうということだろうと思います。
以上です。
〇石会長
ありがとうございました。おっしゃるとおり、三者三様の取り組み方の面があまりにも露骨に出ますと混乱しますので、本間さんもここにいていただいていますし、私も諮問会議に行って説明しようかと思いますが、お互いに連絡を密にして、その辺の齟齬が極力ないような努力はしたいと思っています。
ほかにいかがでございますか。諸井さん、どうぞ。
〇諸井委員
やはり混乱してはいけないと思うのは、いま経済が底割れする危険性があると。もう今年とか3月とかいうことに。それが起こりそうになったときに何をやらなければいけないかという問題と、それから、さっき話したように、10年ぐらいかけて構造全体を変えていく。島田さんのおっしゃったようなことも含めて。それをどういうふうにしていくかという話は全く別な話なのです。本当に今年底割れが起こりそうなら、それはそういう構造改革の進み方とは全く逆方向であっても、短期的にやらなければならない場合がある。ただ、党というのはその場合に、そういうものを鬼の首を取ったようにしてどんどんやってしまう危険性があるから、そこは僕はチェックしないといけないと思います。
〇石会長
何か短期的にやらなければいけないとおっしゃった具体的な中身はありますか。
〇諸井委員
例えば、さっき奥野さんのお話の中にもあった、最終的には日銀引受けにつながるのではないか。そういうようなことだって、もし底割れが本当に起こってパニックになりそうなら、あり得る話なんですよね。
〇石会長
金融の面でね。
〇諸井委員
ええ。だけど、それはなるべく短期で終えてやめなければいけないのだけれども、そういうこともあり得るのだから、そのことと構造的な問題とは別に考えなければいけないと思います。
〇石会長
わかりました。よろしゅうございますか。
それでは、時間も押してきましたので、次の後半のテーマに入らせていただきたいと思います。
レーガン税制を少し基礎小でも勉強いたしました。田近さんから御報告いただいたのですが、今日はちょっとお見えでございませんから、代わりにその辺のサマリー的なことと、それから、我が国税制、財政の現状を、国税、地方税両方から眺めていただこうと思います。稲垣さんと岡崎さんにまず御説明いただいてから議論に入りたいと思います。
では、稲垣さん、よろしく。
〇稲垣調査課長
では、お手許にございます「基礎小6-1」という資料、それから「6-2」という分厚い資料、それから、レーガン税制の関係でございますが、「基礎小6-4」という資料と「6-5」という資料でございます。
まず最初に、財政及び税制の現状ということでございまして、基本的に「6-2」という横長の資料でございます。これに沿いまして御説明させていただきます。この資料、資料集と言っていいかと思いますが、いままで折に触れて御説明させていただきました資料につきまして、予算等新しくなりましたので、数字をリニューしたものでございます。大部でございますので、かいつまみながら復習を兼ねまして御紹介いたしたいと思います。
恐縮ですが、1ページ目を開いていただきまして、これは一般会計の財政事情を示した図でございます。我々は俗にワニの図と呼んでおりますけど、ワニが口を大きくあけたような形で開いておりまして、上あごに当たります部分が一般会計の歳出の総額、下あごの部分が税収のほうでございます。平成2年あたりを喉元といたしまして、ずいぶん幅が広がっている。この幅の部分が下にございます公債の発行につながっているわけでございます。歳出のほうの乖離が大きいわけでございますが、下のほう、税収のほうでございますけれども、下あごが外れたような格好でございまして、歳出のほう、まがりなりにも最近は少し抑えられた格好になっておりますが、税収のほうは、いささか心もとない状況、あごが外れっぱなしと言っていいのでしょうか、状況が続いているということでございまして、14年度の一般会計税収が46兆8,000億円。これは横に見ていただきますと、昭和62年度の数字と同じでございます。ただし、このときは、下にございますように、歳出に占めます税収の割合は8割以上でございましたが、平成14年度の予算の数字は57.6%、6割を切ったという心もとない状況でございます。
ちなみに、この間、昭和62年度から平成14年度にかけまして、名目のGDPは4割弱伸びておりますが、税収のほうは同じ数字になっているということでございます。
次のページでございますが、これを受けまして公債残高の累増ということでございます。左のほうが公債残高の推移でございますが、これを見ていただきますと、昭和60年度が134兆円ということでございまして、14年度末にこれが414兆円になる見込みと、3倍強に残高が膨らんでおるということでございます。
右のほうの黒い棒グラフでございますが、これが利払費でございます。ちょうど平成14年度の10兆円弱というのが利払費でございますが、横を見ていただきますと、先ほど申し上げました昭和60年度、これが9兆7,000億円。残高が3倍に膨らんでおりますが、利払費はほぼ同水準ということで、申し上げるまでもございませんが、これは低金利と国債管理政策を非常にきつくやりまして、こういう水準を保っているということでございます。
それから、少し抜かしていただきまして、6ページ、7ページでございますが、これは国際的に見ましたフロー及びストックの財政赤字の数字でございます。いずれにいたしましても、G7の中でフロー、ストックとも最悪の水準ということでございます。フローのほうは若干下げどまってきたわけでございますけれども、ストックにつきましては、どんどん累増しているという状態でございます。
それから、駆け足で恐縮ですが、8、9ページを抜かしていただきまして、10ページ目、これは平成に入りましてからの一般会計の税収を見ているものでございます。右のほうに下に向かって矢印が下りておりますが、恒久的な減税ということで、平成11年度から国・地方を合わせまして6兆6,000億円、国税ベースでいいますと5兆円弱でございますけれども、この減税が続いている。ある意味では、先ほど緊急避難という話がございましたが、4年にわたりまして毎年これだけの大きなパッケージの減税が続いているということを御理解いただければと思います。
これは見ていただきますと、下の実線のところが税収の実際のグラフでございますが、御存じのように、12年度、13年度は郵貯の集中満期がございましたので、この分の源泉所得税が上ぶれた部分、これを全部引いて見ますと、点線の部分でございまして、こうやって図示してみますと、やはりここの10年度、特別減税を含めまして、ここと前との間に段差がついた状態がいま継続しているという状況でございます。
それから、1ページ抜かしていただきまして、12ページ目、先ほど奥野委員のほうからもお話がございましたが、我が国の国民負担の水準につきまして、G5諸国と比べてみたものでございます。くちゃくちゃした図で恐縮でございますけれども、下のほうの少し色分けしてあります部分が各税の負担でございまして、これを合わせましたものが租税負担率。これに白抜きの部分が社会保障負担でございますので、これが国民負担。さらに、これに財政赤字、グレーの部分でございますが、これを乗せまして、私ども潜在的な国民負担率と言っておりますが、これがほぼ歳出規模に匹敵するということでございます。
見ていただきますと、アメリカが低福祉・低負担の国、ヨーロッパ諸国が高福祉・高負担とすれば、歳出の規模、潜在的な国民負担率といたしましては、日本はちょうどその間に入っているということでございまして、いわば中福祉と言ってよろしいかと思いますが、これは申すまでもございませんが、財政赤字のおかげといいますか、ためにこうなっているわけでございます。これを除いてみました国民負担率で見ていただきますと、38.3%。アメリカの35.8%と似たようなレベルになっているわけでございますが、御存じのように、アメリカは医療等も国民皆保険ではございませんので、社会保障負担が少ないということで、一番下の租税負担のところで見ていただきますと、G5で見ていただきましても、あとから出てまいりますG7で見ても、これは最低になっているということでございます。
かつ、中身を見ていただきましても、実は一番下のところが個人所得課税でございます。NI比で6.8%。アメリカは直接税中心の国でございまして、13.4%と高いわけでございますが、いわゆる間接税中心と言われておりますフランス等と見比べていただきましても、NI比で見たマクロの個人所得課税の負担は低いものとなっているということと、申すまでもございませんが、消費課税の負担は、これはポツポツで示されたところでございますが、これも7.1%ということでございまして、高い付加価値税率を課しておりますヨーロッパ諸国に比べますと、低い水準となっているのが国際的に見た我が国の国民負担の現状かと思います。
あと、13ページはほかの国との比較を出しております。
14ページ目、これはGDP比で示させていただいておりますが、先進国クラブと言われておりますOECD30か国の租税負担率を比べますと、日本はメキシコを除きまして29番目と、最低水準に属しているという話でございます。
あと、15ページはまた違った国と比べたものでございまして、抜かさせていただきまして、16ページ目、これが所得税の納税者数という、最近、4人に1人お払いいただいていない実情だという御説明をしているもとになっているものでございます。実はここにつきまして、これは雇用統計と、それから私ども税務統計と突き合わせまして、その差の部分で4分の1の方が所得税を負担していただいていないということで出しているわけでございます。
なかなか中身がわかりにくいのですが、あえて税務統計の中から、18ページ目でございますが、どういう方が所得税の非納税者になっているかということでございまして、収入階層別、これで見ていただきますと、当然のことでございますけれども、収入の低い方、これは実は給与所得者の一部の数字でございますけれども、200万円以下の方で大体3分の2ぐらいを占めるという数字でございますが、右のほうを見ていただきますと、900万円、1,000万円に近いところの方でも、所得税がゼロになっているというケースがあるわけでございます。
これをマクロの数字から、少し中身のイメージでございますけれども、示したものが19ページ目でございます。機械計算例等でございますが、これはマクロの統計から控除の対象、控除額等がわかりますので、これを人数で機械的に平均したものでございまして、例えば配偶者控除は平均配偶者数0.7人と書いてございます。こういうケースは実際はあり得ないのですが、10人に7人の方が控除対象配偶者がいらっしゃるということでございまして、この[1]のほうは300万円から400万円、夫婦子2人の課税最低限と言われているところの収入階層を持ってきたものでございますが、そこにございますように、給与額が平均で350万円ほど、給与所得控除が120万円余というのに対しまして、配偶者控除が10人のうち7人の方が控除対象配偶者がいらっしゃる。
それから、平均扶養親族と平均特定扶養親族を合わせまして1.9でございまして、大体やはり2人のお子さんがいらっしゃるのかなというようなことで、あと、10人に3人ぐらい親御さんと同居されているというようなことでございます。所得控除が給与から給与所得控除を引いたものより平均しまして上回るという姿でございます。ただし、これはあくまで平均計算ということでございます。
20ページ目、次のページが、一番上のところ、700人ぐらいの方がいらっしゃるわけでございますけれども、収入が900万円から1,000万円ぐらいの方で非課税になっているケースは、そこにございますように、いろいろ家族構成の中身がございますが、差し引きの最後の計算のところに出てきます税負担が、平均しまして26万3,000円に対しまして、住宅取得控除、住宅ローン控除が36万7,000円ということでございまして、これで打ち消している。
ちなみに、これは年末調整の段階でゼロになっている方しか拾えませんので、確定申告で医療費控除等、これもかなり大きなものになっておりますが、受けられていると、またこの外でも納めていらっしゃらない方があり得るという話でございます。
それから、21ページ目でございますが、これは世帯内の就業状況の推移ということでございまして、見ていただきますと、実は共働き世帯の割合というのは、昭和50年代から、B/Aというところであまり変わっていないのですが、これは個人事業主の商店等があるのだと思いますが、夫婦ともサラリーを取っていらっしゃる方、雇用者のいる世帯というのは、やはり増える傾向にあるということでございます。
あと、ずっと資料をつけておりますが、それは個人所得課税、あるいは法人所得課税、相続税等につきまして、縦長の『税の空洞化』と題しております「6-1」の資料にまとめさせていただいているものでございます。恐縮でございますが、四角の中だけ、ポイントのところだけでございますけれども、個人所得課税の現状では、2番目の丸のところ、恒久的減税の結果、大多数の納税者にとりまして、個人所得課税に係る納税額はかなり低いものとなっているということと、所得の高い層で見ていただいても、諸外国に比べて個人所得課税に係る負担額というのは決して高くない。
それから、法人所得課税の現状の四角の中でございますが、全法人の約7割が欠損法人になっておりまして、トップ1万8,000社で税額の3分の2、トップ672社で税額の3分の1を納税している状況にあるということと、景気停滞と不良債権が増大しておりまして、累積損失、その下にございますが、11年分で見まして、90兆円の累損がたまった状態になっているということでございます。
それから、相続税の現状でございますが、相続税を御負担いただいているのは、亡くなった方100人に対しまして5人、それから、バブル期以降の累次にわたる減税や特例の拡充によりまして、相続税負担は緩和されたものとなっているということでございまして、その下でございますが、基礎控除、法定相続人4人の場合でございますけれども、昭和62年の3,600万円から9,000万円まで上がっている。
それから、消費税でございますけれども、付加価値税を採用している国の中で、我が国の税率は最低水準ということでございます。それから、全事業者のうち6割強が免税事業者になっている。ただし、これは売上高ベースは2%強というものでございますが、こういったことでございまして、これがまとめでございます。
それと、大変駆け足で恐縮でございますけれども、レーガン税制のほうでございますが、資料の「基礎小6-4」と「6-5」というものをご覧いただけますでしょうか。「6-4」のほうは、これは田近委員のほうから説明があったところでございまして、私ごときから何をか言わんやということでございますけれども。ポイントといたしましては、その概要の一番上にございますけれども、「税が投資、貯蓄、労働に直接的な影響を与えて減税すれば、経済成長を促進して税収が増えるというのは、これまで事実によっては確かめられていない。これは80年代のレーガン税制でも起きなかった」ということでございますが、その下に書いてございますように、経済学的に所得効果と代替効果の問題、それから、ほかの表に出ていない行動の問題ということで、なかなか単純には評価はできないのではないかというようなことがポイントでございまして、あとは後ろのほうに参考というのがついておりますが、むしろこの「6-5」のほうで、ファクトといたしまして、レーガン税制というのはどういうものだったかというのを簡単に御説明させていただきたいと思います。
「6-5」の1ページ目でございますが、レーガン税制と一口に言いましても、2つのフェイズがございます。右と左に書き分けておりますが、1981年の改正におきましては、これ5年間で7,500億ドル、ネット減税ということで、サプライサイダーの理論に基づいた施策でございましたが、これは1970年代を通じて非常に高インフレでございまして、2桁にも達するようなインフレでございました。このもとでの施策であったということでございまして、内容はそこにございますように、所得税につきまして税率の引下げ、キャピタルゲイン税率にしても同様でございます。
それから、法人税につきましては、よく言われる話でございます、加速度償却等のいわゆる租税特別措置、タックス・エクスペンディチャーの拡充が行われたわけでございます。
これに対しまして、1986年の改正、レーガンIIと呼ばれているものでございますが、これは5年間で歳入中立ということでございます。その目的のところの最後にございますが、公平・簡素でかつ経済成長を促す税制を構築したということでございまして、内容といたしましては、所得税の税率構造の簡素化ということで、14段階、11%から50%までのものを2段階の15%と28%の2段階税率にしたということでございます。
ただ、これは、ちょっと申しわけございません、先走って3ページ目でございますが、確かにレーガン税制の1988年と書いております、86年改正の結果でございますけれども、この段階では2段階でございましたが、その後、財政赤字が増大したということ等もございまして、ブッシュ政権、これはお父さんのブッシュでございますけれども、この時期に3段階に、31%まで上げまして、クリントン政権下で、OBRA93という財政調整法でございますが、これに基づきまして39.6%までの5段階という税制になっております。
ちなみに、現行が一番右でございますが、日本のブラケットの形を次のページにつけておりますが、かなり似たような形になっているということだけ付言させていただければと思います。
恐縮でございますが、また1ページに戻らせていただきまして、所得税につきましては、課税ベースの拡大ということで、いろいろな諸控 除等について、廃止・縮減、共稼ぎ控除とかローン利子控除の縮減をやっているということと、キャピタルゲイン税率を引き上げたということ。
それから、法人税につきましては、これは税率をぐっと引き下げまして、一方で課税ベースを、その前に導入したものも含めまして、かなり大幅に整理するという、いわば法人税改革の方向に沿った中立的な税制改革をやったということでございます。
その次のページが実は結果でございまして、レーガンの81年のほうは、御存じのように、かなり強気の見通しで、結果的に見ますと、かなり歳入割れを起こすということで、財政赤字の膨大を招いてしまったということでございます。
86年の改正は、歳入面では中立ということで、見ていただきますと、大体改正時の見積もりと同様ということでございます。ただし、このときは歳出削減計画、こちらのほうが思い通りに進まなかったということで、財政赤字はさらに拡大の一途をたどったという歴史でございます。
簡単でございますが、以上でございます。
〇石会長
ありがとうございました。
では、地方税関係、岡崎さん、お願いします。
〇岡崎企画課長
一番厚い『説明資料』の中に若干地方の関係がありますので、2、3点だけ御説明いたします。
『説明資料』の3ページ、地方税のほうの収入の推移を掲げさせていただいております。
それから、4ページ、5ページですが、4ページに財源不足の状況でして、歳入歳出の乖離が出ておりますが、平成6年以降、急激に大きくなっております。これを毎年埋めてきているということで、下のグラフのように、実質的な公債依存度が高くなっているということであります。
5ページは、借入金の残高でございまして、実質的な地方の借入残高を合計いたしますと、14年末で195兆円となっておりますが、これまた平成3年度以降あたりの伸びが大変大きくて、平成3年度の70兆円に比べますと、2.8倍にこの10年間で増えてきているということでございます。
それから、飛びましてもう1点だけ、17ページでございますが、先ほど国税の説明に関連いたしまして、同じような計算で個人住民税の所得割につきましての納税義務者数を計算いたしております。若干国税と違いますのは、課税最低限が住民税は低いものですから、一番下にありますように、国税ですと、勤労者の4人に1人が払っていないということですが、住民税所得割ですと、5人に1人ぐらいの感じになるということでございます。
それ以降、地方税の資料もございますが、時間の関係で省略をさせていただきます。
『税の空洞化』の資料等は、国税と含めた紙になっておりますので、説明を省略いたします。
以上でございます。
〇石会長
ありがとうございました。
まだ30分弱時間が残っております。いまお2人の課長から御説明いただきました財政・経済の現状につきまして、いろいろ御議論賜りたいと思います。これのみならず、将来どういう形で我々税調として議論を進めるかということを踏まえて、幅広に御議論いただけたらいいと思います。いま御説明いただきましたのは、2月15日、第2回目の基礎小でやりました内容をほぼ御紹介いただいたということでございますので、また持ち帰って基礎小でやるべきような何か新しい側面の御提案があれば、ぜひお伺いしたいと思います。どうぞ、島田さん。
〇島田委員
一言だけなのですけれども、税を考えるときに、公平・簡素・中立という三原則を必ず踏まえて税制改革を考えますね。前にも総会のときにちょっと発言させていただいたのですけれども、日本が何十年に一度の歴史的な変化のいま局面に立っていて、これから人口が減っていく、そして経済構造の根底が全然変わっていくという中で、もう一つ、活力という基本原則を税制の論議の中に入れて、それからあらゆる税項目のあるべき姿を一度整理してみるというようなことは可能なのですか。会長にちょっとお伺いしたい。
〇石会長
これはレーガンのときにも、活力、バイタリティというのが入ったときもあったのですが、ごく紋切り型に現実的に言うならば、公平・簡素・中立が片一方にあると、活力はまた別な側面かもしれない。
ただ、島田さんがおっしゃっているように、中長期的な視点から、住宅の問題も含め、あるいは福祉とかサービスとかいろいろ様々な構造変化に対応する税制をつくっていくというときに、活力が重要だという意味において、何か従来型の単に景気刺激のために減税しろとか、租特を使えとか、等々といった違った意味の活力がおそらく島田さんの頭の中には多分あるんですね、お話を聞いていますと。そういう意味で、右と左に両極端に分かれるような意味での中立と活力ではないような気もしているのですが。ちょっとそれはこれから具体的な場で、ぜひお知恵を拝借して……
〇島田委員
1つは、ワークインセンティブですね。これは所得税とか消費税にもかかわると思いますし、それから、やはり投資のインセンティブですね。
それから、ぜひ税調でも総合的に論じていただきたいのは、私どもの持っている様々な資産、そのうちの半分ぐらいは公的資産だと思うのですけれども、公的資産の活用ということを考えられないのかというのは、非常にいつもぶつかりまして、行政財産というのが日本にはありますね。どこの国にもありますけれども。
例えば、小学校を行政目的のためにつくります。これを、子供の数が減ってくる、しかし土地・建物があいている、当然、別のところに使っても本来いいはずなのですけれども、ただ、明治以来の財産法制の分け方なのだろうと思いますが、行政財産というのは、直ちにはほかの目的に使えない。一応、普通財産化しますね。そうすると、国の財産であった場合には、多分所轄の省が変わると思うのですが、地方自治体の場合は所轄の省は変わらないと思いますけれども、これは例えば小学校を高齢者の施設に変えるというようなことを地方自治体でやると、行政財産をつくるときに注ぎ込まれた予算というのは、償還しなければいけないわけですよね。これは、公的部門には減価償却というような考えはないですから、やはりしなければならないのでしょうね。ところが、そんなお金が地方自治体にあるわけがないので、そうすると、地方債を発行してどうとかというと、それはやはりできないようになっているとか。
私は、公的資産の活用基本法といいますか、要するに公的資産のために国民があるのではなくて、国民のために公的資産があるのですから、だから、明治以来ずっと経済成長して、人口が増えてきたから、新しい公的資産をつくるときは、全部フレッシュな税金で可能だという前提があるのだと思いますし、それ以外の会計上のいろいろな理由があるのだと思いますけれども、そんなものをトータルで洗い直して、日本人がいま持っているものはみんな国民のために使っていいのだと、そういう考え方ですね。フレッシュな税金というものは、とても我々は負担できないのだという考え方でやれないかなと思うのですけれども、ちょっとそんな意味も含めています。
〇石会長
全く新しい御提案だと思いますが、大いに検討すべき材料だろうと思います。ただ、税とは直接絡みませんね。要するに、公的資産、行政資産の処分の問題でしょう。
〇島田委員
ただ、これから国民の税負担能力がないので……
〇石会長
ないからという間接的な意味でしょう。
〇島田委員
そうですね。ですから、これはやはり税調と主計というのが一緒になって、あるいはこれは総務省の管轄が実をいうと非常に大きいのです。ただ、財務省が踵を接して動いてくれないと、総務省も動けないという面もあると思うのです。だから、これは総合的な問題でお願いします。
〇石会長
わかりました。
ほかにいかがでしょうか。どうぞ、佐野さん、それから津田さんにしていただけますか。佐野さんから先にどうぞ。
〇佐野委員
先ほどから御意見がいろいろ出ていらっしゃいますが、今回の税調の議論というのは、やはり視野を広く広げないといけないということは、全く賛成です。単に税制の議論だけでは議論にならない。つまり、今回の諮問に答える答申とならないという感じがいたします。例えば、歳出面にももっと視野を広げるべきであります。
先ほど諸井さんが、もう削れるのは公共事業ぐらいしかないというようなことをおっしゃいましたけれども、1つ忘れていけないのは、最大の歳出項目というのは、実は公務員の人件費であります。年間35兆円を使っているわけでありますが、国が、あるいは地方が大幅な赤字、真っ赤っ赤な赤字。民間企業ならとっくに累積債務にまみれて倒産というような状況で、なぜ公務員の人件費に対してもっと目を向けないのか。増やさない、ゼロだと、来年度の予算でもゼロということになっておりますが、これでは物足りない。公務員の人件費をどう見るかというのは、これからどうしても避けて通れないテーマであります。もちろん、税調がどこまで具体的に踏み込むかどうかは別にして。つまり、歳出全般にわたる視野を広げていかなければいけないということが1つ。
それから、そればかりではなく、金融政策あるいは為替政策、もっと言えば、これも小委員会で私が何度か申し上げていますが、生産・雇用の海外流出、つまり実質的に付加価値が海外に流出してしまっている。それが税収の減少をもたらし、さらに歳出の拡大圧力になっている。この状況をどうすればいいのだという、そこら辺まで目を向けなければいけないと思います。
それから、もう一つは社会保障との関係であります。これも前回の中期答申あたりでは議題になったわけですが、私の印象としては、まだまだ不十分という印象がいたします。
幸いなことに、今回の税制改革論議は、経済財政諮問会議もやるというふうに聞いております。経済財政諮問会議では、そのような幅広い視野からのおそらく議論がなされるものだと思うわけであります。税調としても同じような視野で、同じようなスタンスでやっていかないと、ハーモニーができないという感じがいたします。もちろん、どこまで踏み込むか、どこまで具体的にいくか、濃淡の差はあるにせよ、意識としては共有すべきではないかと思います。
そこで、1つだけ申し上げたいのですが、この資料にも関係するわけでありますが、例の社会保障との関係であります。これは今回間に合わなかったのかもしれませんけれども、次回あたりには、事務局にその関係の、つまり社会保障負担、そして最近では給付の抑制、自己負担の拡大と、3つ合わさっていろいろあちらでは改革がすでになされているわけでありますが、そこら辺の状況と税の関係というのを、わかりやすい資料として御提供いただきたい。
私も個人的に主税局からかつて入手したことがあるわけですが、年収1,000万円ぐらいまでは、社会保険負担のほうが大きい。これが実は税負担を重い印象にさせている。実際の家計、納税者の家計では、税と社会保障負担というのをはっきり分けて考える習慣はないわけで、むしろそのほうが自然だと思うわけでありますが。
そこで、例えば今日の配られた資料の、いま説明のあった資料の19ページに、348万8,000円まで機械的に試算すると、所得税がかかりませんという資料があって、これはずいぶん機械的すぎる、あるいはもっとはっきりいえば、財務省に都合のいいような計算になっていますなと、小委員会でちょっと皮肉を申し上げたわけですが、ここで1つ注目しなければいけないのは、348万8,000円の所帯が税金がかかりませんということでありますが、社会保険料控除が41万9,000円とこのうちに入っているわけであります。348万8,000円の所帯で実は42万円の社会保険を払っている。ここら辺が非常に負担感が大きい。それが引いては税金が重いという、国際比較、いろいろ客観指標でやると軽いという結果もいろいろ出てくるわけですが、個人の家計の実感としては、42万円が相当重くのしかかっている。これが今後の税制論議、こういった現実を抜きにして税制だけで議論を進めるというわけにはなかなかいかない。
そんなわけで、ぜひ次回までに事務局に要求しますが、社会保険負担と税金の負担の合わせたような、そういう資料を提出していただくようお願いいたします。
〇石会長
これは階層別の負担ということですね。たしか従前準備されているのがあるかと思いますから、また御用意ください。
では、津田さん。
〇津田委員
空洞化の見方なのですけれども、これ以外に、要するに年金生活者の公的年金等控除というのがかなり大きいものですから、ほとんど落ちているのではないかと。16ページの表で見ますと、65歳以上が2,180万人ですか。単純に老夫婦だけでいえば1,000万世帯なのでしょうけれども、もちろん扶養家族の中へ入っているのがありますから、もっと少ないにしても、かなり何百万世帯というのが、この年金生活者として年金控除等でほとんど落ちてしまっているということが考えられる。それもいいと考えるのか、やはり課税ベースの拡大のときに、ウイングを広めるという意味で、公的年金課税の問題というのも、やはり大きな問題ではないかと、こういうふうにこの表を見まして思いました。
〇石会長
いずれ年金の問題は税制と絡めて議論する予定ではございますので、そのときに改めてまたその辺のマクロ的なデータも踏まえて議論する必要があろうかと思います。
では、水野さん。
〇水野(勝)委員
先ほど島田先生からお話のあった資産の活用、島田先生のお話は、公的資産ということでございましたが、公的資産に限らず、私的部門を含めて日本は過剰投資を10年繰り返してきたために、非常に資産の収益率が悪くなっている。企業でいえば、ROEというのは、本当に1%か2%が平均なのでございます。個人も金融資産1,400兆円、これがなかなか消費に出てこない。そういう意味におきましては、今後の税制改正の中では、資産に対する課税というのを大きなテーマとして取り上げられていいのではないかと思うわけでございます。
この田近先生のレーガン改革の分析の中にもあります、税制改正には代替効果と所得効果があるということでございますが、一定のストックを持つようになりますと、所得効果のほうが働いてしまって、先ほどのワークインセンティブといった面は小さくなっているのではないか。それにかえて今後は資産をどうする。そういう意味におきましては、所得課税の中の金融資産を中心とした資産所得課税、それから相続税、それから贈与税、これらをひっくるめた新しい観点から、何か検討ができないかと思うわけでございます。
では、相続税を取り上げるというときに、減税かといえば、むしろ相続税は非常に高くしておけば、どんどん使うようになるという面もあるわけでございますから、減税になるのかどうか、そこはよくわかりません。また、相続税がかからないような人が贈与税は非常に高い。そうなると、では相続まで待つかというのもあるかもしれない。そういった全体をひっくるめて、所得課税ももちろん基本的な見直しも必要かとも思いますけれども、資産所得課税も含めた資産課税につきまして、今後のテーマとして必要ではないかと思います。
〇石会長
ありがとうございます。
では、松尾さんどうぞ。
〇松尾委員
今日の奥野先生や事務局の方々の御説明を伺っていて感じたことであります。というのは、バブル崩壊後、これまでの財政出動が、減税を含めて150兆円をもう超えているわけですね。結果はどうだったかというと、景気対策には効果がなかったばかりか、いたずらに財政赤字を拡大しただけである。この点、この事実をやはり再確認しておく必要があると私は思うのであります。
その財政問題の深刻さについては、一般国民はもうわかっているのです。ここでさらに追加的な財政出動をすると、一体どうなるのか。やはり将来増税としてはね返ってくる分が増えるだけだと、国民は極めて合理的な判断をしているわけでありまして、期待されるような効果を上げるのは不可能であると思います。
景気対策に財政政策が有効でないということは、これは日本だけではなくて、外国でも証明されておるわけでありまして、構造財政収支を悪化させるだけということですね。これまで日本経済が低迷して、デフレ的な状況まで出てきたという原因は何だったのか。結局は財政を主とする総需要拡大政策を繰り返して、不良債権を含む構造改革を先送りしてきたことにある。これは非常に明らかであると思うのです。ですから、現在、デフレ対策に対してどうするか。やはり不良債権処理を含む構造改革を徹底する以外にないと思います。
さらに、成長率を上げるということになれば、やはり金融政策、さらに打つ手はあると私は思うわけです。そういう意味では、拡張的な総需要拡大政策ではなくて、拡張的な金融政策にもっと推進する以外にないのではないかと思うわけです。
金融政策の景気刺激効果、これは普通に考えられているよりは大きいと言われておりますね。先ほど諸井さんが、現在の経済状態について、非常に危機感を示されたわけでありまして、本当にパニック状態になったら、やはり日銀引受けも考えざるを得ないのではないかという御趣旨の発言でしたけれども、やはり日銀引受けというのはハイパーインフレのことでありますから、それはもちろん御承知の上でおっしゃっているのでしょうけれども、そういう事態になったら、これはもう日本経済は破滅ですね。それ以前にやれることはやはりあると私は思います。長期国債の買入れなどをもっと増やしてもいいわけですから、これは塩川財務大臣もおっしゃっているようですけれども、まだまだやる手はある。当面のデフレ対策に対してやることは、金融政策であると私は思います。
税制改革については、明らかに構造改革の大きな柱であります。その際気をつける必要があるのは、やはり日本経済の活性化のために税制が妨げになっている部分があるのか、ないのか。その辺は十分点検する必要があると思うわけです。十分点検した上で、それで実際に妨げになっている部分があるとすれば、やはり阻害要因は除去していくということが必要であると思います。
いずれにしましても、小さな政府を志向するという視点がやはり重要であると思いますし、小さな政府というのは、いまやもう国際的な常識であると私は思います。
〇石会長
ありがとうございました。どうぞ、本間さん。
〇本間委員
資料のお願いをしたいと思います。稲垣さんから先ほど御説明いただいた、例えば19ページ、これはイメージとして非常にわかりにくい、アグリゲートされて割った話でして、0.1とか、配偶者が0.7ということはあり得ないわけでありまして、佐野さんが前に御要求された資料だと思いますが、家族の属性とかライフスタイルの多様化、それとの関係で課税最低限あるいは税の空洞化をどういうぐあいに評価をするかという、そういう意識からこれを見なければいけないテーマでして、家族の属性に応じて、例えばそれぞれの属性を1としたときに何%非課税になっているのか、そして、ウエイテッド・アベレージが全体として4分の1になっている。こういうことを考えなければ実はだめだということなのです。それは社会保険料との関係というものと、当然、65歳以上の方で年金生活者が雑所得という形でこういう形になっているよということでやらなければいけないので、それがないと、こういう形でやると、かえって事態をコンフューズするということになりはしないか。ぜひそこの部分のところを御工夫を願いたいということであります。
〇石会長
それは、わからなくなったら本間さんのところへ聞きに行ってください。
どうぞほかに。よろしゅうございますか。何か新しくいまやるべき具体的な策でもおありであれば、御提案もいただきたいし、よろしゅうございますか。
それでは、ほぼ時間になってきてはいますが、まだ2つ、3つ御意見を伺いたいとも思いますが、ただ、御意見がなければこれで終わりにしたいと思います。
次回以降のことを少し御報告しておきたいと思います。次回の総会は3月26日、午後2時から考えております。そこで、その前段に多分2回ぐらい基礎問題小委員会ができますので、その御報告と、そこでは今度はレーガンだけではなくてサッチャー税制のこともやりたいし、あるいは電子申告とか国際課税等々、盛りだくさんのテーマを多分議論すると思いますので、その御報告。と同時に、来月二度ほど予定しております国民との対話集会の内容等々も御報告したいと、このように考えております。
事務局のほうから特によろしいですね。
それでは、ちょっと数分早いのでありますが、長時間どうもありがとうございました。今日はこれにて散会いたしたいと思います。
〔閉会〕
(注)
本議事録は毎回の総会後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。
内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。