第19回総会 議事録

平成13年11月27日開催

石会長

第19回目になりますが、総会を行いたいと思います。

前回から、14年度税制改正答申に向けて議論を始めておりますが、きょうから、中身に立ち入った本格的な議論をやっていきたいと思っております。

お手元に、「主要検討項目」というのが書いてございますが、一応来年度税制改革にのせるというテーマと、それ以外、中長期的に見たらいいかなというテーマは分けてございますが、個別の税に関するところまでは来年度の税制改正にのせたいと思いますので、御議論を賜りたいと思います。「その他」のところは、納番、環境税、電子申告等々ございますが、これは、これからの継続審議になろうかと思います。

そこで、きょうを入れて総会は合計で3回あります。その間に、上野代理にお願いしてございます起草というのが2回ございまして、総会、起草、総会、起草という形で答申案をまとめていって、できれば、14日ぐらいに整理いたしたいと考えております。

そこで、答申のスタイル等々についてのお願いです。我々はこれから、いずれにしても2年後は中期答申に本格的に取り組んで、税制改革の抜本的な流れを整理しなければいけないのですが、従来は税調の答申というのは、各界の代表の方の意向を受けて、ああでもない、こうでもないという議論が非常に多かった。というのは、議論をみんな紹介する中で、多数意見と少数意見と分けるような格好で、読む人が読めばわかるのですが、普通の人が読んでもわからないような文章が多々あって、それでは国民に対するメッセージが伝えられませんので、なるべく骨太ですっきりした書き方でいきたい。ということは、意見の集約はできるだけ一本化してやっていきたいと考えておりますので、ぜひ皆様の御協力をいただきたいと考えております。

経済財政諮問会議とか、財政制度等審議会等々、ほかの省庁の最近のさまざまな審議会を見ましても、小泉内閣ができてから、その審議会の性格をはっきりあらわすように書いてあると思います。

従来とは違った面が環境的に多々ございますので、自分の組織を代表して言わなければならないこともあるでしょうが、民主主義のルールに従って、最後は、多数決的なほうに意見を集約させていただけたらと思います。実際にやってみなければわかりませんが、そういう気構えで、私、座長をさせていただきますので、よろしく。したがって、ご自分の意見は、強めるところは強めて、なるべく速やかに賜れば、おのずからこの会全体のムードがわかってくるのではないかと思いますので、ぜひ御協力をいただきたいと思います。

きょうは、申し訳ございませんが、3時間を予定してございます。説明者がたしか10数人いるはずでありますので、時間もパンクチュアルに守っていただいて、有意義に使いたいと思います。できましたら、真ん中あたりで5分ぐらい休憩をとりたいと考えております。途中で御退席の委員の方もいらっしゃると思いますが、そのときは、御関心のところを前もってお答えいただいて、御議論いただいても構いませんから、そういう形で進めさせていただきたいと思います。

説明者の方、御自分たちで時間の配分は先刻通告されていると思いますので、しかと守っていただきます。そうしませんと、時間内に終わらないといけませんので。

では最初に、平成14年度税制改正の検討に当たって、どういうことが論点になるか、これまでの税制の流れ、現状について、総論的に御説明いただきましょう。調査課長の稲垣さんと企画課長の小室さん、順次お願いします。

稲垣調査課長

「総19-1」という資料に沿いまして、御説明させていただきたいと思います。

恐縮でございますが、表紙と目次をめくっていただきまして、1ページ目でございます。これが、一般会計の財政事情を示したグラフでございます。上のほうに放たれております線が歳出のライン、下のほうが税収のラインでございます。離れてなかなか出会わない線でございまして、このギャップが公債の発行ということになっているわけでございます。

見ていただきますと、税収のほうでございますが、平成2年度がピークでございまして、60兆ございましたものが、平成12年度の決算時点で50兆7,000億円と。50兆円を回復したわけでございますが、13年度は、残念ながら1兆1,000億円の補正減を立てましたので、再び50兆円を割るという状態でございます。

下のほうに歳出の占める税制の割合が書いてございます。平成2年度は86.7%、これだけを税で賄えたわけでございますが、平成13年度を見ていただきますと、59.3%ということで6割を賄いがたい状況でございます。

その次は地方の話でございますので、4ページ目まで飛んでいただきまして、近年の税制改革等の流れを記したものでございます。御存じのように、平成に入りまして、抜本的税制改革というので消費税の導入が図られたわけでございます。併せまして、個人所得課税、法人課税につきまして、直接税の負担軽減が図られているということでございます。

引き続きまして、その次の欄、平成3年でございますが、土地税制改革ということで、当時のバブルを受けまして、一番右の資産課税の欄では、土地譲渡益課税の適正化、地価税の創設、これは4年からでございますが、こういったことが行われたわけでございます。ただ、これにつきましては、その下のほうに書いてございますが、バブルの崩壊に伴いまして、順次、土地譲渡益課税、相続税について負担軽減が図られる、あるいは地価税については課税停止ということになっているわけでございます。

三つ目の平成6年の税制改革以降は、次のページにもう少し細かな表がございますので、ご覧いただけますでしょうか。点線で囲っておりますように、個人所得課税のほうで制度減税が法定されまして、税率構造の累進緩和、課税最低限の引上げが図られる一方で、消費税率の引上げ等で、地方消費税の創設を含めまして、3%の税率が5%になるということでございます。

ただし、これはその当時の景気状況にかんがみまして、制度減税につきましては平成7年から施行、消費課税につきましては平成9年から施行ということでございまして、先行減税が行われたわけでございます。

個人所得課税の欄にございますように、3.5兆円の先行減税に合わせまして、7年、8年と2兆円ずつの特別減税が行われたわけでございます。平成9年に至りまして、これは戻ったわけでございますが、先行減税につきましては、制度的にずっと組み込まれているということでございます。

その後、平成9年あたりから、金融危機あるいはアジア通貨危機ということで、景気の低迷を受けまして、一つは、個人所得課税でございますが、二度にわたり4兆円の特別減税を行われたことと併せまして、この年は法人税制改革ということで、法人税につきまして基本税率が引き下げられましたが、この年につきましては、課税ベースの適正化ということでこれが賄われたわけでございます。

ところが、平成11年にまいりまして、恒久的な減税ということで、個人所得課税の4兆1,000億円、法人課税の課税ベースの適正化を伴わない税率引下げということで2兆5,000億円、これがずっと続いて、いまの税収を押し下げるようになっているということでございます。

次のページは、個人所得課税につきましてポンチ絵的にイメージを示したものでございます。

7ページは、所得・消費・資産等の税収の構成比でございます。二度の消費課税の拡充等を経まして、結果的に現在は比較的バランスのとれた姿になっているということでございます。

次のページは、以上のような制度減税等を経まして、国民負担率等々の数字でございます。ご覧になっていただきますように、租税負担率について申しますと、平成2年の27.4%が、13年度見込みでございますが、22.6%、約5%ポイント程度下がっているという姿でございます。ただし、国民負担率で見ますと、社会保障負担のほうが上がって、38.8%が36.9%という姿でございます。

その次のページは、国民負担率の国際比較でございます。国民負担率ということで見ますと、日本はアメリカと同程度でございますが、日本は莫大な赤字で財政を賄っているということで、潜在的な国民負担、財政赤字まで合わせたところで見ますと、45.3%ということで、受益といたしましてはアメリカとヨーロッパの中間的なところでございます。

中身を見ていただきますと、アメリカは直接税中心の国でございますので、ここより小さいのはむべなるかなということでございますが、ヨーロッパ諸国に比べましても個人所得課税の比率が小さい。もちろん消費課税につきましても、国際的に見ますと、ヨーロッパ諸国に比べて低い水準にあるということが言えるかと思います。

そのあと、10ページ目、11ページ目、12ページ目は、どの諸国とどういう比べ方をしましても、日本の租税負担が低いということを試しにつくってみた表でございます。

簡単でございますが、以上でございます。

石会長

ありがとうございました。

では、小室さん、お願いします。

小室企画課長

いまの資料、「総19-1」の2ページに、地方税収入の推移について書いてございます。

そこで3ページですが、地方財政のほうも、税収の落ち込み、減税等で相当大きな不足が生じております。グラフにありますとおり、ここで急激に増えておりまして、13年度では14.4兆円の不足で、これを、地方債の増発、特別会計の借入れで賄っておりますが、特別会計の借入れはやめようということで改革しているところでございます。

1ページめくっていただきまして、4ページで、二点だけ。一つは、消費課税のところで、消費税創設の際に電気税、ガス税といった地方の間接税を整理統合、それから、地方消費税創設のときには消費譲与税を振り替えてございます。法人課税、所得課税では、一番下のほうですけれども、税率引下げのとき、例えば65%から50%のときには、地方の住民税も15%から13%へ、あるいは法人事業税も下げたりしてございます。

次の5ページは、資産課税のところだけごらんいただきますと、右上のところですが、平成6年に、固定資産税の評価の関係で地価公示価格7割評価を実施し、さらに平成9年、均衡化、調整措置を講じています。この辺、後ほどまた出ます。

それから6ページをお願いいたします。国税、地方税合わせた減税のイメージ図ですが、例えば制度減税3.5兆円の中では1兆円、恒久的な減税、最初の4.1兆円の中では1.1兆円、これは地方税の関係が減税しております。地方の場合は、そういった地方税の減税と同時に国税の所得税、法人税の減税が、交付税によってまたはね返ってくるという面だけつけ加えさせていただきます。

お飛びいただきまして、13ページ、最近の地方税の関係で、6月に閣議決定しました「経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針」、いわゆる「骨太」ですが、本文3行目から、「国と地方の役割分担の見直しを踏まえつつ、国庫補助負担金の整理合理化や地方交付税のあり方の見直しとともに、税源移譲を含め国と地方の税源配分について根本から見直しそのあり方を検討する」、こういったものをいただいております。

最後に14ページですが、いわゆる工程表の中でも、中ほどのマルにございますが、「税源の偏在性が少なく、税収の安定性を備えた地方税体系を」、それから、地方分権改革推進会議の進捗、こういったことに触れてございます。

以上でございます。

石会長

ありがとうございました。いま、お二人の課長から、マクロ的な側面、特に租税負担率とか、これまでの10数年にわたる減税の動向を、国税、地方税でお話を伺いました。

まず最初に、粗ごなしということで御説明を受けましたけれども、これから細かい議論に入る前に、総論的なところで、御質問なり御意見があれば伺っておきたいと思いますが、いかがでしょうか。

では、各論に入った中でまたお戻りいただくという格好でいいかと思います。盛りだくさんなテーマがございますから、早速、各論に入りましょう。

最初が、法人課税あるいは租特の整理・合理化でございまして、連結等々の話もここで一括議論いたしたいと思います。まず、先日来、連結納税の取扱い方につきまして、マスコミがさまざま報道しておりますので、その辺を大武主税局長から御説明いただこうかと思います。

大武主税局長

連結納税制度につきましては、先般、法人課税小委の取りまとめを受けまして、本総会におきましても御支持をいただいて、それを受けまして鋭意作業を進めてまいりました。資料19-2の次に3枚紙で置いてあります「連結納税制度について」をあとで読ませていただきますけれども、その事情から、次期通常国会に法案を提出するとなりますと、実は1月末までに法案を取りまとめなければならないという事態でございますが、遺憾ながら物理的に不可能ということが予見される事態となりました。

以下、この資料を読ませていただきます。古谷課長、お願いいたします。

古谷税制第二課長

それでは、お手元の資料を読まさせていただきます。「財務省主税局説明資料」という横長のものでございます。

連結納税制度について
1.連結納税制度については、本年10月に法人課税小委員会において「連結納税制度の基本的考え方」をおまとめいただきました。また、「改革工程表」において、「国際的に遜色のない、21世紀わが国法人税制としてふさわしい制度を構築すべく、平成14年度予算の『国債発行30兆円以下』との方針の下、所要の財源措置を講じた上で、平成14年度創設を目指し、検討を進める。」とされておりまして、年末に向けての14年度税制改正作業において御議論いただいた上で結論をいただきたいと考えておりました。

2.しかしながら、事務的に進めてきた準備作業は、複雑・膨大であり、かつ、13年度税制改正で導入した企業組織再編税制との関係も深く、その作業に対応できる専門的知識を有した人材が限られていることから、作業にはなお相当の時間を要し、遺憾ながら、14年度税制改正作業の中で結論をいただいて、1月末までに法案を取りまとめて次期通常国会に法案を提出することは事務的に困難となりました。

3.財務省としても、「改革工程表」に定められた通り14年度中の制度導入を実現したいと考えており、可能な限りの事務体制を整えた上で、鋭意作業を進め、極力早期に準備作業を終え、速やかに法案を提出したいと考えております。

1枚おめくりいただきまして、大変恐縮ですが、この準備作業が思いのほか、複雑・膨大となっております事情について、整理させていただきました。時間の関係で一々説明いたしませんが、幾つかご覧いただきたいと思います。

(1)連結納税制度は、単体法人を前提とする現行法人税の課税体系に新たな課税体系を創設するもの。法人税法及び租税特別措置法全般の改正
が必要でございます。法人税法では、従来の単体納税制度に連結納税制度及びこれらの制度間の調整が加わり、その内容量は従来の2.5倍になる見込みでございます。加えて、法律よりも分量が多い政省令の改正も同時に必要となります。

(2)複雑な税額計算プロセスを過不足なく条文化することが必要でございます。中身は省略させていただきます。

(3)特に、連結グループへの加入・離脱に関し、詳細な規定が必要。連結グループへの加入は、株式取得による100%子会社化のみならず、株式移転、株式交換、合併、分割型分割、分社型分割、現物出資等、十数通りの場合につき検討し、所要の規定が必要でございます。連結グループから離脱した場合には、連結申告から個別申告に適正に移行させるため、詳細な規定を設けることが必要となってまいります。

(4)租税特別措置についても、膨大な規定の整備が必要。租税の連結グループへの適用、計算、要件の判定等につきまして、それぞれの租特について、判定をして、条文改正作業が必要となってまいります。

(5)準備作業の過程で新たに提起された課題による作業の遅れが残念ながらございました。租税特別措置の「聖域なき見直し」について、例年より早く事務的な協議を開始いたしましたが、年末の税制改正作業前にこれにつきまして決着を図ることは、実際問題として困難な状況にございまして、これを待ってからの作業ということになりますと、ちょっと難しいという事情も加わっておりました。

大変恐縮ですが、以上でございます。

大武主税局長

以上のような実情でございますが、一言、たとえで恐縮ですが、付言させていただきたいと思います。

実は、すでに本年、法律で成立・施行させていただきました、法人税法の改正としての企業分割税制というのがございました。それと連結納税制度とは不可分、言いかえますと集団企業税制でございまして、お碗のふたとお碗に当たるような関係にございます。企業分割税制のほうが、どちらかといえばふたで、お碗のほうがまさに連結納税でございますが、実は、このふたに相当する企業分割税制を、あらゆるケースに対応できるよう精緻に策定しましたために、お碗に当たる連結納税制度の法制化もまた、それに対応できるべく精緻につくらなければならないという事情になりました。

実は、粗っぽくつくればということも十分検討したわけですが、ふたのほうがすでに非常に精緻にできているものですから、両方を兼ね合わせようとすると、ありとあらゆる場合に対応した法整備をしなければならないという事情がございました。

しかし、そのふたに当たります企業分割税制自体、ことし法制化したばかりで、しかも分割というのは、企業でもきわめてマージナルなケースで発生する行為でございます。連結納税のように継続的にずっと続くような税制でないものですから、残念ながら、従来の法人税法全般に精通している職員は多数おるのでございますが、企業分割税制までを十分理解し切れているという状況には実は立ち至っていないわけでございます。

したがいまして、お碗に当たる連結納税も、このふたに当たる企業分割税制を策定した者にしか策定作業ができないという困難な事情がございまして、現在17名で対応しているわけでございますが、単に人を増やしただけでは、これから残り2カ月しかないものですから、対応できないという状況がありまして、審議に入る前に、このような形で、事務的に難しいということを申し述べざるを得ない状況に立ち至ってしまったということでございます。

もちろんここにありますように、「改革工程表」にあるとおり、14年度中の制度導入ということで、コアメンバーはこの者たちにやってもらわざるを得ないものですから、そこを補強する形でも鋭意作業を進めて、極力早期に法案を出したいというふうには思っておる次第ですが、以上の事情にあるということを最初にお詫び申し上げなければならないということでございます。

石会長

ありがとうございました。苦渋に満ちた、さまざまなことがあるということ、おわかりいただけたと思います。きょうの資料の一番最後に、連結について、予定どおり入れてくれないかという森下さんの要望がついておりますので、御参考までにあとでご覧ください。

それでは、いまのことについて御質問があるかもしれませんが、連結以外の法人課税の問題点もございますので、引き続いて、これを説明したあとで、法人課税についての御質疑を一括いただきたいと思います。

それでは、古谷さんと、都道府県税課長の岡崎さんから、おのおの御説明ください。

古谷税制第二課長

それでは、資料の「19-2 説明資料(法人関係税制)」をご覧いただきたいと思います。盛り沢山資料をつけさせていただいておりますが、14年度税制改正作業の中で御議論いただきたい個別のテーマを、若干御紹介、御説明させていただきたいと思っております。

12ページをお開きいただきたいと思います。こちらに「中小企業またはベンチャー支援に関する税制上の措置」ということで、幾つかの租税特別措置を並べさせていただいております。経済政策との関係で、ベンチャー支援について、法人税の中でもいろいろな政策的配慮が必要ではないかという御議論が関係省庁から出ております。

例えば12ページの上から五つ目のマル、「事業化設備等を取得した場合等の特別償却又は法人税額の特別控除」ということで、特定のベンチャー企業については、機械装置の取得について一定の政策税制を実施しているところでございます。

それから、15ページをお開きいただきたいと思います。「同族会社の留保金課税制度の概要」ということで資料をつけさせていただいております。御承知のように、真ん中に絵がございますが、同族会社の社内留保につきまして、一定の留保控除額を超えるときには、10%から20%までの税率で法人税に加えて留保金課税をお願いするという制度でございます。同族会社の場合には少数の者に経営権が支配されているということで、利益を配当や役員賞与という形で分配した場合における個人段階での累進税率による所得税を免れるため、社内留保を図る傾向もあるという判断から、留保金に対して一定の課税をさせていただくという制度でございます。

これにつきましては、下のほうにございますが、中小企業の内部留保、自己資本の充実といった政策要請がございまして、平成12年度の改正時に、開業間もない中小企業とかベンチャー企業については、同族会社の留保金課税の適用を一時停止するという租税特別措置を導入いたしておりますが、中小企業の現下の資金調達環境が非常に厳しいということで、こういったものについての拡充という議論がなされております。

これについては、16ページをご覧いただきますと、昨年の中期答申におきまして、下のほうでございますが、「同族会社に対して通常の法人税のほか、一定額を超える内部留保に対して追加的な課税を行うことにより、間接的に配当支出の誘因としての機能を果たしつつ、法人形態と個人形態における税負担の差を調整しようとするものであり、現行の法人税と個人所得課税の基本的仕組みを前提とする以上、今後とも必要な制度です」という御答申をいただいております。

それから、17ページにお進みいただきまして、交際費課税につきましても、与党等から、現在の損金不算入制度を緩和できないかという御議論がございます。17ページの資料にございますように、現在、大法人につきましては交際費全額を損金不算入としております。中小法人の場合には、定額控除を超える部分は全額損金不算入、定額控除までは2割相当が損金不算入といった扱いになっております。

交際費については、18ページのグラフでご覧いただきますように、平成3年ごろがピークで、6.2兆円ございましたが、現在は4.4兆円ということで、この間ずっと交際費については損金不算入という制度が続いておるわけでございます。税制というよりは、企業の経営環境の中で現在ここまで交際費が減ってきているというのが実態でございます。

19ページにございますように、中期答申では、「濫費の支出を助長するおそれがある、あるいは、公正な取引を阻害する可能性がある、企業による巨額の消費的支出に支えられた価格体系により個人が生活の豊かさを実感できないのではないか。こういった観点から、現在の制度を引き続き維持すべきである」という御答申をいただいております。

20ページでございますが、いわゆる「骨太の方針」の一部を抜粋させていただいております。七つの改革プログラムの中に「知的資産倍増プログラム」というのがございます。人材大国、科学技術創造立国を実現するという観点から、アンダーラインが引いてございますが、「民間からの教育研究資金の流入を活発化するため、大学が受ける寄附金、大学が行う受託研究の充実のための環境整備について、税制面での対応を含め検討する」ということで、学校法人に対する寄附の損金算入枠の拡大、あるいは私立大学への委託研究費の非課税化といった議論が関係省庁から寄せられております。

これについて、現状は25ページをご覧いただきたいと思います。学校法人、私立大学等の場合には、学校の建設や教育研究費用に充てるものについては、指定寄附金ということで全額が免税になっております。それから右のほうにありますが、学校法人自体が、特定公益増進法人というふうに位置づけられておりまして、現在、一般寄附金の枠とはもう一つ別枠に損金算入枠が認められているという制度になっております。

26ページ、きわめてマクロで寄附金の損金算入限度額の利用状況をご覧いただくと、特定公益増進法人に対する寄附金は、上のほうでございますが、現在、総枠の12.4%を使うにとどまっておりまして、枠としては、なお相当使用枠が残されているのが現状でございます。

時間の関係で、はしょらせていただいて恐縮でございますが、27ページ以降は、租税特別措置の関係の資料をつけてございます。これは何度か御説明させていただきましたが、聖域なき租特の見直しということで、関係省庁と現在事務的にも協議をさせていただいております。

31ページに、基礎小委員会で石小委員長にまとめていただいた見直しの試案ということで、租特の「判定の視点」というのを幾つかいただいております。こういった観点から、現在、鋭意関係省庁とやっておりますが、これにつきましてもまた御議論を賜ればありがたいと思っております。

簡単でございますが、以上でございます。

岡崎都道府県税課長

「総19-3 地方法人課税・外形標準課税説明資料」ということで、簡潔に説明いたします。

1ページから3ページまでは、税率の資料でございますので省略いたします。

4ページ以降が租特の関係でありますが、私どもで国とは別に大きな特別措置としてありますのは社会保険診療報酬だけでございます。5ページ、6ページ、7ページにその関係がつけてございます。

簡単に申し上げますと、社会保険診療報酬部分について、国税である法人税、所得税では課税されておりますが、実質的に非課税になっているというのが事業税の扱いでございます。

また、その経緯でございますが、5ページの[2]にありますように、昭和27年の議員修正で、医業、歯科医業の保険収入が除外されるという修正案が成立しているということでございまして、個人、法人合わせて820億円の事業税の減収になっております。

6ページにありますように、国税のほうは概算経費率というのがありますけれども、基本的には課税されておりますし、一番下でございますが、63年の改革の際に、収入金額が5,000万円を超えるものについてはこの概算経費率が適用されないとなっておりますので、基本的には原則課税、地方税は引き続きいまでも非課税ということでございますので、7ページにありますように、累次の答申におきましても、税負担の公平の観点から見直しの検討が叫ばれているところでございます。私どもとしても、これからもこれは何とか見直しをしたいということで、諸般の情勢はございますが、努力をしていきたいと思っております。

8ページ以降は外形の問題でございます。事業税の外形標準課税、経緯は御承知でございますので、くどく説明は申し上げませんが、8ページが、昨年7月の中期答申で全体的な考えをお取りまとめいただいたことの一部の抜粋でございます。

そういうことで、ちょうどいまから1年ほど前ですが、昨年の11月、自治省の案を出させていただきました。それを受けまして、9ページ、当調査会の年末の答申におきまして、「[3]自治省案は、現行の所得課税よりも望ましいものである」という評価をいただきまして、その真ん中あたりですが、「今後、この自治省案に関する様々な議論を参考としつつ、引き続き各方面の意見を聞きながら、早期導入を図る」というようになっております。

10ページは、党のほうでございます。党からは、一番下にありますよう、今後、課税の仕組み等についてさらに検討しなさいというような宿題もいただいております。

11ページは、地方分権推進委員会の最終報告でございます。ここでも、薄く、広く、公平な課税でやって早期導入を図るべきだということをまとめていただいております。

12ページに、「骨太の方針」、最後の4行ですが、閣議決定でも、景気の状況等も勘案して導入を図るという方向性が定められております。

13ページは省略いたします。

私ども、そういう宿題もいただいておりますので、この1年間、経済界、あるいは都道府県、その他、関係方面の御意見を聞く機会をつくってまいりました。そういう中で聞きますと、14ページ、15ページにまとめましたけれども、「薄く、広く、公平に」とか、必要性等につきましては、おおむね理解いただける方が多かったように感じております。

仕組みにつきましては、一番多かったのは、人件費が入っているではないかと。これは、中立性等一生懸命説明はさせていただきましたが、雇用に関係があるのではないかという懸念が非常に強かった。そういう意味では、給与の部分が多すぎるのではないか、制度が複雑ではないか、中小企業に配慮しすぎではないか、そういうさまざまな御意見がございました。

それから15ページにありますように、最近の議論では、いまの景気から見て導入のタイミングは最悪ではないかという御意見もありましたが、一方で、今後の経済社会を見据えてこういう税こそ早く入れるべきだ、という御意見もございました。

そのような議論を承りまして、現在、私どもとしては景気の状況が非常に厳しいことは十分承知しておりますが、逆に、こういう時期こそ日本の経済の将来を見据えた骨太の税制の議論をしていただきたいということで、いろいろ検討しております。今朝ほど一部の報道に記事が出ておりましたけれども、正直申し上げまして、現在、関係方面の御意見を聞きながら税率等の詰めの作業をいたしておりまして、成案を得次第、当調査会にも御報告させていただきまして、御意見を賜ればと考えております。

以上でございます。よろしくお願い申し上げます。

石会長

ありがとうございました。連結から始まりまして、租特あるいは外形のところまで、法人課税を議論した現状を御説明いただきました。

20分ほど時間をとりまして、法人課税関係につきまして皆様の質疑あるいは御意見を賜りたいと思います。特に連結関係等々で御意見もあろうと思いますので、お出しください。どなたからでも結構でございます。

松尾委員

連結納税の問題でありますけれども、森下さんの御意見を読みますと、「何としても当初予定どおりの導入ができるよう再検討を強く望む」と書いていらっしゃいます。これは物理的にできないということなのでしょうが、14年度中の制度導入を実現したいということですから、14年度の一体いつごろになるのか、ある程度めどを示せるものなら、示してやったほうが親切というものだろうと思います。その辺は示せるのか、示せないのか。あるいは、14年度中にこれを導入する場合、8,000億円の財源補てん措置を同時に実施することになるのでしょうか。その点、お尋ねしたいと思います。

石井審議官

私どもも、具体的な導入時期が示せればそれにこしたことはないという気持ちでおりますが、いま、事情を外に向かって御説明している最中でございます。それにしても可能な限り早く成案を得ろという御指摘が非常に強うございますので、誠心誠意、早い法案提出に向けて努力したいと思っておりますが、現段階で具体的日にちまで、申し訳ございませんが、お答えできる用意が整っておりません。

それから、年度途中に仮に導入いたします場合に、財源措置をどうするか。これは、14年度の予算全体の問題にもかかわってくる問題でございますが、いずれにいたしましても基本的な考え方としては、私どもはどういう事態であれ、何とか減収部分を穴埋めしつつ制度を導入したいという基本的な考え方でございます。具体的に、穴埋め措置の中身いかんによって年度途中での対応ができるのかできないのかという技術的な問題が出てくる可能性がございますけれども、増収措置自体の中身に応じてそれは考えるしかないというふうに、率直に言って思っております。

石会長

現状では精いっぱいの御説明かと思います。どうぞ、佐野さん。

佐野委員

「14年度中の制度導入を実現したいと考えている」という下りで、伺いたいのですが、14年度中の制度導入という意味は、14年の4月から始まる年度に遡及して適用するという意味ですか。つまり、来年度の決算に間に合わせるというか、適用される可能性もあるということですか。

石井審議官

そこも含めましてさらに突き詰めた検討を早急にいたしたいと思っておりますが、御承知のとおり、不利益処分についての遡及は法律上なかなか難しいということが、税法に限らず一般論としてございます。今回導入を予定しております連結納税制度の中で、寄附金の扱いとか、交際費の扱いとか、単体時代の扱いと連結導入後の扱いとが異なってくる可能性になる仕組みがございます。

そういうものがありながら、遡及適用ができるのかどうかということは、基本的にはなかなか難しい問題だなと考えております。なおそこは検討したいと思いますけれども、仮にそれが難しいということであれば、導入時点において、遡及ではなくて、施行期日がいつになるか現段階では申し上げられませんけれども、導入後のしかるべき期日から開始される事業年度からしか適用できないと。逆に申しますと、4月から3月までの決算期を持っておられる会社については、遡及がない限りできない可能性もあり得るというふうに思っております。

佐野委員

細かい質問で失礼ですが、この連結納税というのはあくまでも選択制、任意制なので、不利益になる場合は選択しない、利益になる場合のみ選択するということで、不利益、不遡及にあまりこだわらなくてもいいのではないかという考え方はできませんか。

石井審議官

まさにその辺も含めて、早急に議論を尽くしたいと思っております。

水野(勝)委員

いままでの単体課税を基本的に変更する税制改正ですから、大もとであることは確かだろうと思います。先ほどの御説明で、ふたの部分があまりにも精緻だからという点もそのとおりだと思います。あの改正を見ますと、いままで商法上およそ考えられなかった分割ですから、丁寧に扱って、税制も非常に精緻にできている。それを前提にするから非常に大変だという御説明。たしかにあの分割は精緻すぎるぐらい立派な税法になっていると思います。そういうものができたわけですから、それに合わせて明治以来の単体課税を改変するのだから、そごがあってはいけませんから、慎重に対処されるのはやむを得ないと思うわけでございます。

ただ、連結というのは、正面から取り組もうとすればそういうことですけれども、企業がリストラをする、赤字部門を分ける。そういう場合に、赤字部門を分けてしまうと税負担が増えるという点がある。そうしたケースについて、新年度から適用できるようないわば特例的なものをとりあえず導入しておいて、あとは本当にじっくり検討していただくということも考えられないわけではない。

関係者は、せっかくつくるのであれば、最初から完璧なものという観念が強いのだろうと思いますけれども、企業としての最少限度の要請に応えるものとして最初の年度は出発してというようなことは、考えられるのか考えられないのか。御無理だという御感触だとは思いますけれども、いかがなものでございますか。

石会長

難しそうですね。どうぞ教えてください。

石井審議官

お考えはよくわかるのでございますが、現状ではなかなか難しいと思っております。

河野特別委員

連休前にこのニュースを聞いたときに、半分は物理的なことがあるのかなと。いまどき財務省の役人がこんなことを言い出すということは異例中の異例で、僕は経験がないものだから、本当にそうかもしれないと思ったと同時に、半分は、いろいろややこしいことがあるので、この話はやはり1年間延ばしたいというふうに思ったんですよ。

連休で遊びほうけて帰ってきて、いろいろ取材してみたら、いまの局長の話ではないけれども、本当に物理的に大変だという話。こんなことを謝らなければいかん立場も大変きついだろうとは思っていますが、ただ、さっきの局長の説明で、この問題を処理できるキャリアを含めた16~17人の人がやっていらっしゃって、人間的な限界まで作業量が多すぎるということはわかったとして、いまさら増員しても間に合わないというお話。それも当たってるかもしれないと思うのですが、それならば、いま11月の下旬でしょう。膨大な作業になることは、夏ごろから百もわかっていたはずです。そのときに、しようがないから、経団連からも人を出せ、通産省からもやってきて手伝えというふうなことができなかったかどうかということについて、一つ疑問が残るのですが、それに答えてもらいたい。

それからもう一つ、水野先生にお尋ねしたい。水野先生は、小委員会の責任者としてこの問題を全部フォローされてこられたわけで、水野先生から見て、いまの財務省の説明というのはどの程度腑に落ちるものか。先生が一番詳しいのですから。我々はよくわからないから、実際聞いていて。

石会長

大武さんのほうから説明して、あと、水野さんに移します。

大武主税局長

まさにいままでのご質問、いずれも的を射ているわけですが、この問題につきましては、さかのぼりますとその前に時価会計というのもございまして、法人税自体が商法改正に見合って次々と改正をしてまいりました。従来の法人税そのものを理解している者はかなりたくさんいますし、精通している者も多いのですが、この間の企業会計の諸法も含めた変転、それに対して、アメリカ型と言ったほうがいいのでしょうか、法人税法に全部書き切ってしまう--先ほど水野委員からもお話がありましたが、従来の法人税というのは、どちらかというと法律はかなり骨太に書いてありまして、政省令、さらに通達というところで全体が対応できる仕組みになっていた中で、企業分割、時価会計からでございますが、全部法律で書き切るというスタイルになりました。

実は、3年前からこのチームは発足して対応してきたわけでございます。したがって、従来の法人税と、方針転換というか、書き方を含めてかなり体系が変わってしまいました。そこで、夏の時点まで企業分割税制が、ことし通した法制の政省令、通達を含めるところの調整が残っておりまして、事務作業がかなり遅れておりましたから、もちろん充実も含めて、さらには、当時からこの事態も全く想定されなかったわけではないものですから、当初から、4月実施は難しいという線を打ち出すべきではないかという気も私個人はしておりました。

しかしながら、当初からの実施ということがあったものですから、しかも、定員を伸ばしたとしても、夏の時点でキャッチアップに半年以上かかるという事態でございまして、それをやっていたのでは、むしろホンチャンの作業の足手まといになるという事態もございました。そこで、かなりリスキーではあったわけでございますが、17名という体制で対応せざるを得なかったという事態でございます。

残念ながら、一つ予期せざる部分と申しますのは、私どもの努力が足りなかったのかもしれませんけれども、租税特別措置の整理・合理化なり、金融との関係の調整等々手間取っておりまして、早期にフィックスしたものができないという事態の中で、彼らの法制作業自体も、一つ一つが全部に波及してしまうものですから、作業が進まない事態に立ち至ったということかと思っています。

当然、いまから補強することはいたしますが、たぶんこれもコアメンバーの補強はできない。いわゆるパーツ、パーツをやる人間を補給していくということしかあり得ないと思っています。これを全部一からやろうといたしますと、またさらに大きな時間を要してしまう。何せこの体系の中で早くやるしかないのではないかというのが、実務家としての感じでございます。

もちろん、先ほど来お話のあった遡及の点は、極力早く法案化するということは私ども命がけで頑張るつもりではありますけれども、物理的な限界があるということもどうも否めないことなものですから、総会に入る前の時点で、むしろ中途半端でいるよりも申し上げたほうがいいだろうという判断で、このようなことになっているということでございます。

石会長

では、水野さん、簡単に事情を御説明ください。

水野(忠)委員

この問題、私、小委員会で取りまとめをさせていただきまして、総会で報告したときに、石会長より長すぎると言って怒られたわけですが、それだけ論点が非常にたくさんございます。この前に、企業組織再編税制、特に分割の話がありましたけれども、あれも基本的な考え方を取りまとめまして、どういう立法になるかと思っておりましたが、全く予想に反したような立法が出てきて--ちょっと長くなって恐縮ですが、具体的には、2条の定義規定のところにいきなり適用の要件が出てきたわけですね。なぜかという質問をしましたところ、後ろの条文すべてにかかわってくるので一番最初に置いたというお話があったわけです。そういうように、技術性が非常に強いし、専門性が強い。

いま局長が言われましたように、しかも会社分割が入ったことによって、形式的には従来の大陸的な発想からアメリカ的な発想に変わったということもありまして、さて、それを全部フォローできるのはどういう人たちかというと、当然限られてくるわけです。

私、中のことは存じませんが、大学で法律の解釈は教えますけれども、立法の仕方というのはほとんど教えていない。これはよその国でもそうですが、なぜかといいますと、非常に個性が強いものであって、ある意味で芸術的な、パッとひらめいて書くといいますか、法人税ですと1条から最後の150条前後まで、これを全部頭の中に入れた上で、今度の連結ですと、さらにそれを全部練り直して何か構想を描く。こういう作業であるために、研究対象とすることもなかなかできないし、トレーニングすることもできないものではないかと思います。

先ほど局長が言われましたように、ここで、企業組織再編税制という新しい税制を法人税法に組み込みましたので、なおさらそれが難しくなった。これ、私が読んでもまだ理解できないところがありますぐらい、非常に精緻であり、3月に本法ができたばかりですので、大半の税務職員の方もまだフォローできていない状況だと思います。そこへもってきて今度は、その法律をもとにして連結という新しい仕組みをつくる。これは大変なことだと思います。残念なことですけれども、基本的な方針はまとまりましたが、それから、さあ、どういう立法をするか。いわゆる平面図はできたけれども、立体をつくるという作業、内閣から見ると事務作業になりますが、立法というのは我々にとっても非常に大事な作業ですので、きちっとしたものをつくっていただきたいと思います。

先ほど水野会長が言われましたが、特にイギリス、ドイツではグループ・リリーフと言ったりして、損失だけを親会社と子会社が相殺できるような簡単な仕組みもありますが、税制調査会の小委員会の立場として、もっとしっかりしたものをつくりたいというところでスタートいたしましたので、いまからまたそれをやるということは、それをもう一回転換するという難しさが出てまいりますので、なかなか難しいのではないかと思っております。

立法というのは、一つのアートといいますか、そういう作業であることは、私もはたで見ていてだんだんわかってきたという状況でございます。残念でありますけれども、14年の間にできれば幸いであると思っています。企業の方には非常にダメージがありますけれども、難しい問題であることは事実で、しかもそれが重なってしまったということも本当の話でありますので、私としては今後の進展に期待したいというところでございます。

ですから、人を増やすことは、悪い言葉で言うと、足手まといという言葉がございます。どんな職場でもそうだと思いますが、途中から知らない人が入ってくると大変なことになりますので、人を増やしてもうまくいかないものではないかと思っています。

石会長

では、福原さん、どうぞ。

福原委員

地方法人課税と外形標準課税についてきわめて単純なことを伺いたいのですが、11ページに「現在の所得課税に比べ、薄く、広く、公平な課税を図ろうとするものであって、現行の所得課税よりも優れている」と。ということであるならば、ウエートを変えるというお考えがこの裏にあるのでございましょうか。

岡崎都道府県税課長

ウエートといいますと……。

福原委員

現行のほうを減らして、外形のほうを足していくということです。

岡崎都道府県税課長

昨年、自治省案で出した考え方は半々になってございますが、外形課税の思想を徹底すれば確かに全部外形ということはあるのでしょうが、長いこと所得課税でやってきたという経緯も踏まえまして、当面、半分を目標にして設定されております。その先は、その後の皆様方の御議論なりを踏まえてということで整理をしています。

福原委員

そうすると、いまおつくりになっている試案も半々ということを前提にしているわけですか。

岡崎都道府県税課長

基本的には、そこの部分を大きく変えようというほどの変更をする予定はございません。

本間委員

また連結納税の問題に戻って恐縮ですけれども、前々回及び前回、経済財政諮問会議でこの問題は大変大きな問題として取り上げられました。私は、いろいろな御事情を御説明いただいておりまして、その辺のところ理解しているつもりでありますが、経済政策あるいはその具体的な措置を執行していく段階で、事務方の問題を理由にしてこれを先送りするというのは、政府の形態としていかがなものかという非常に基本的な問題が指摘されているということであります。これは、表に出してはいけない理由ではないかということすらおっしゃった方がいらっしゃいます。この問題を、監督責任というところまで言及された方もいらっしゃいました。そういうことが原則的な部分で引っかかってくる。

これはあらゆる問題に波及することでありまして、できないということを言えば、実現がずっと遅れることを許容する危険性すらあるわけでして、いくら事情は理解した上でも、こういうことがあってはならないということはどこかで担保しておく必要があるのではないかという気がいたします。

その上で、私も含めて、遡及という言葉を使って--作業が遅れるのであれば、それが14年度から効果を発揮できるような形で企業の方々は準備しておりますから、その点で対応できないか。先ほどの御指摘の中にございましたけれども、不利益の問題については非対称的な制度でありますから、その辺のところは事務的な形で遅れるのであれば、法律上の問題をクリアしながらそのような線でおさめることが、いまの段階では最善の解決策ではないかという気がいたします。

石会長

ありがとうございました。具体的な御提案をいただきました。前段におっしゃっているとおりでしょう、政治的には。また、本間さんの御参加になっている経済財政諮問会議での議論はまさにそのとおりだと思います。

どうぞ。

中里特別委員

法律家なので、ぜひご理解いただきたいのですけれども、これは事務的ミスという問題ではなくて、理屈を詰めて制度の首尾一貫性を保ちつつ条文をつくっていきますと、とにかく部分的な手直しで済まないことをやっているわけですから、次から次へと、最初予想していなかったような問題が技術的なところで起こってくると思うのです。しかも、商法大改正の影響等も考慮しなければいけないということがありますし、ミスというのはちょっと強すぎる……。

本間委員

いえ、ミスということではなくて、それを理由にして実施を基本的に担保できないということになれば、それは将来に向かっての禍根になる危険性がある。そこの部分をあまり前面に理由として出さないほうがいいのではないかということを申し上げているわけです。

石会長

事情は重々おわかりの上で御両氏は議論しているし、ほかの方も議論していると思います。現段階において、今後どういうふうに波及しないように歯止めをかけるか等々というのは具体的に難しい。ただ、善後策として、現状のままで何かできないかというところで策を考えるほうが建設的かもしれません。これは、石井さんが先ほどから御説明になっていますし、局長も御説明になっていますので、この辺は十分に御配慮いただいてということで。

まだこの議論が蒸し返されることもあるかもしれませんし、きょうは、事情を十分に理解したという段階で終わらせていただきたいと思います。議題は山ほどありますので、少し先に進ませていただきます。

次は、金融・証券関係の税制でございます。これにつきましてもだいぶ議論を重ねてまいりましたが、最初に、事務局から簡単に御説明いただきます。

それでは、川北さん、小室さん、お二人からまず御説明ください。

川北税制第一課長

本日はこの後、金融小委員会の審議の状況につきまして中里委員から御報告がございますが、私のほうからそれに先立ちまして、関係の制度につきましてご覧いただきました上で、審議状況の御報告を聞いていただきたいと思っております。大きく分けまして、内容は、貯蓄優遇税制の件と株式投資信託の現状の制度でございます。

今回、株式譲渡益につきまして法律改正を出させていただきまして、昨日、法案が成立いたしました。一部緊急に施行するものがございまして、それは今週の金曜日、30日ということになっております。ありがとうございました。そこは法律の件でございます。それが数ページございますが、そこは飛ばさせていただきまして、5ページ以降、貯蓄優遇税制につきまして現行制度の関係を御説明させていただきます。

5ページ、少額貯蓄非課税制度、いわゆる老人マル優でございます。備考1にございますように、63年までは一般の少額の非課税制度がございましたが、現在は老人等に対する利子非課税制度に改組されております。内容は御承知かと思いますが、上半分にございますように、預貯金、国債・地方債、郵便貯金と、それぞれ350万円ずつの非課税限度額で3グループ、都合1,050万円までという制度でございます。

利用人員は、比較的新しい統計が手に入ります郵便貯金の欄で見ますと、上から3段目の右のほうですが、1,135万人、1人当たり273万円という状況でございます。

6ページは、これまでの減収額あるいは非課税貯蓄の残高の数字でございます。左下ですが、12年、13年、減収額が増えておりますのは、郵便貯金の集中満期の関係でございます。

7ページ以降、老人の貯蓄資産の状況ということで何枚か資料がございます。統計の限界もございますので、非常にまちまちな老人の実態について必ずしも解き明かしかねる面もございますが、いろいろな角度から見ていただければと思います。

7ページ、貯蓄動向調査でございます。左側が勤労者世帯、右側が世帯主が65歳以上の世帯の数字でございます。それぞれの左側は1人頭の年間収入金額でございます。高齢者世帯ですとお子さんが独立されますので、世帯の人員が減ってまいるということもございますが、1人頭の年間収入で見ますと、あまり変わらないような数字でございます。一方、黒いほうは平均の貯蓄額ですが、これは、高齢者世帯になりますと、勤労者世帯平均の倍ぐらいのストックを持っておられるということでございます。なお、この場合の貯蓄はいわゆる預貯金だけではございませんで、有価証券や保険などの残高も入っております。

8ページは、65歳以上の世帯の貯蓄の分布図だけ見たものでございますが、一番右にございますように、3,000万円以上の貯蓄のストックがある高齢者の方が3割ぐらいおられるということでございます。

9ページは、貯蓄ではなくて収入のほうから見たものでございます。濃いほうの黒が高齢者世帯でございますけれども、年間100万円、200万円、300万円といったところのウエートが大きくなっております。

10ページは、世帯主の年齢別で貯蓄と負債の残高を見たものでございますが、一番右が平均、その隣に65歳以上の方の数字がございます。薄いほうが貯蓄、濃いほうが負債でございますが、貯蓄のほうは2739という数字がございますけれども、30代、40代の方の2倍、3倍、4倍という数字でございます。負債のほうは、お年を召すに従いまして平均的には下がっているということでございます。

11ページは、高齢者の世帯主の方の世帯における所得の内容を、国民生活基礎調査で見たものでございます。昨今、年金、恩給などの充実もございまして、全体の収入に占める内容で見ますと、年金、恩給のウエートが上がっております。その中で、右から二つ目に、利子・配当による所得という欄がございます。国民生活基礎調査の上でのものではございますけれども、昭和63年当時、8万円、所得の中の3.3%でございますが、平成10年ですと、一番右下にございますように、3万円強、全体の収入の1%ぐらいでございます。これは、金利水準とか、年金の充実といった点もございますが、平均的に見ますと、収入の1%程度が利子・配当収入でございますので、老人マル優制度の対象となる部分はさらにこのうちのごく一部になる可能性があるということでございます。

12ページは、貯蓄を年齢別に見ますと、お年寄りの方が持っておられる数字が大きいという表でございます。

以上、老人マル優の関係でございました。

次に、保険料控除の関係でございます。国税、地方税、次のページ以降互い違いになって恐縮でございますけれども、13ページの右下、「生命保険料控除の沿革」という箱の絵がございます。生命保険料控除は古く大正12年に創設されまして、一たん廃止されました上で昭和26年にまた創設されまして、49年以降、最高5万円の控除制度でございます。右にあります個人年金の保険料控除制度は、50年にできまして、平成2年に引き上げられて5万円。都合10万円の生命保険料控除となっております。

14ページはめくっていただいて、15ページでございますが、損害保険料控除でございます。右下にございますように、創設が昭和39年、金額は3,000円と1万5,000円になっております。

また1枚めくっていただきまして、17ページ、その適用状況でございます。急ぎまして恐縮でございますが、左側の一般の生命保険料控除は、納税者のうち使われている方が8割強ということで高いレベルで安定しております。個人年金保険料控除は、右側にございますように15%から20%の間でございます。

また1枚めくっていただきまして、19ページ、損害保険料控除の適用状況ということで、40%から60%と安定した形でございます。

ちょっと飛ばしていただきまして、22ページ、御案内の租税特別措置の減収額でございます。

以上、生命保険料控除の関係を御説明いたしました。

それから、後ほど小委員会の審議状況の御報告の中で、株式投資信託の課税についての下りがございます。その前提といたしまして、現状の課税がどうなっているか見ていただくために資料を用意させていただきました。

27ページをご覧いただきましょうか。「個人向け金融商品の課税関係」という表がございます。左側に、預貯金、公社債、公社債投資信託と上から三つございますが、これは、それぞれ所得分類を利子所得というふうにいたしまして、源泉分離課税の対象になっている、老人マル優の対象になっているということでございます。目を右に追っていただきまして、源泉分離課税でございます。この場合、利子で課税いたしておりますので、譲渡益につきましては課税外の取扱いでございます。

一方、一番下に株式がございますが、株式は収益分配は配当で、それは総合課税、譲渡益課税があるという二つの流れがございます。真ん中に公募の株式投資信託という網かけの部分がございますが、公募の株式投資信託は、右に目で追っていただきますと、配当所得という取扱いでございますけれども、実際の課税は利子並課税ということで、収益は源泉分離課税になっているわけでございます。これは、昭和39年以降、利子並みということで、貯蓄類似商品、あるいはそういう売り方のほうが大衆に便宜であるということで経緯が進んでおりますが、今回これが、現状のままが正しいかどうかという点につきまして御議論をいただいております。

28ページは、若干視点が変わりますが、集団的な投資スキームにつきまして、一たん法人税をかけまして、その上で配当したものについては、配当を損金算入するというやり方で新しい集団投資スキームができてきておりますが、証券投資信託は、一番下にございますように、法人税課税の取扱いは行われていないことが整合性上問題があるかどうかというための表でございます。

急ぎまして恐縮でございますが、29ページ、若干角度が違いますが、金融・証券関係の租税特別措置ということで、死亡保険金を受けたときに、被相続人が負担した保険料の部分につきましては本来相続税の課税対象でございますけれども、真ん中にございますように、500万円×法定相続人分は非課税とされている。そういう租税特別措置がございますので、租税特別措置の見直しの観点から御議論していただきたいということで、資料をつけさせていただいております。

以上でございます。

小室企画課長

同じ資料の2ページにお戻りいただきたいと思います。「総19-4」、2ページ、地方税法の関係も昨日通りました。本当にお世話になりまして、ありがとうございます。

6ページへ飛んでいただきまして、住民税の減収額を国税と並べて書いてございます。

さらに14ページへお飛びいただきまして、生命保険料控除は、国税5万円に対して3万5,000円ということで下に書いてございます。

1枚飛んで16ページが損害保険料控除、額が若干低うございます。

さらに18ページ、これは、生保・個人年金の関係の適用割合の数字でございます。

1枚飛んで、20ページが損保の適用状況でございます。

24ページへお願いいたしまして、地方税の主な非課税等特別措置で、左のほうに生・損保、老人マル優、青色申告のはね返り分ということで、推移は25ページにございます。

最後に26ページをお願いします。利子・配当課税のところで、一番下の配当の「1銘柄当たり1回5万円(年1回10万円)以下」、ここの部分は確定申告が不要という形で、所得税でございますが、住民税のほうは非課税になっているというところだけ申し上げて、資料の説明を終わります。以上です。

石会長

ありがとうございました。

金融小委員会が、証券税制、貯蓄優遇税制、株式投信、さまざまな角度から御検討いただいております。きょう、奥野小委員長から御説明いただく予定だったのですが、体調を崩され、お見えになっておりません。そこで、代理の中里さんから代わって御説明をいただきたいと思います。

中里特別委員

それでは、御説明させていただきます。

「金融小委員会の審議状況」というタイトルが入っております紙を見ていただきたいのですけれども、株式譲渡益課税についての取りまとめを9月に提出いたしましたが、それに引き続き、貯蓄優遇税制と投資信託税制に関する税制についての議論を行い、このたび御報告させていただきます。

小委員会全体としては、これらの議論を通じて、納税者番号制度の導入に向けた検討をはじめ、所得税制全体を広く視野に入れつつ金融税制全般を体系的に検討することの必要性に改めて気づいたということでございます。具体的な二つの問題について、それぞれ簡単に御説明します。

まず貯蓄優遇税制の是正についてでございますけれども、少額貯蓄非課税制度等と、生命保険料控除制度・損害保険料控除制度についての議論を行ったわけですが、これについては従来、税制調査会におきまして社会保障制度のあり方を検討する中で、制度のあり方を見直していくべきではないか、廃止もしくは縮減に向けて見直しを行うべきではないか等の考え方がたびたび示されてきたわけですけれども、実際のところ、制度創設以来そのような見直しは行われておりません。

小委員会としては、以下述べるような理由で両制度は基本的に廃止すべきものであると考えるわけでございます。そうはいいましても、いろいろな経緯を踏まえますと、少なくとも時限を付した「サンセット措置」へ移行するなど何らかの具体的な措置を講ずるということでございます。

老人マル優については、高齢者相互間のみならず、世代間の租税負担の公平を確保するという視点も重要でございます。先ほどの資料の説明でもご覧になっていただけたと思いますが、高齢者世帯の所得に占める利子所得の平均割合は1%前後でございます。「金融のあり方の切り替え」の方針とか、「租税特別措置の聖域なき見直し」の方針等が打ち出されておりますけれども、典型的な租税特別措置である少額貯蓄非課税制度等について、基本的には廃止に向け検討することが適当であるという考えが集約されました。

保険料の控除については、制度創設後かなり長期間が経過しており、また、それぞれの保険の加入率も相当の水準に達しております。大半の納税者に対してこの制度が適用されているわけで、これ以上租税特別措置の目的であるところの誘因効果も期待できないわけです。特に保険に限って優遇する制度でございますので、金融商品間の租税負担の公平性及び中立性等に照らすと大きな問題があるということです。

保険加入時に限らず、保険料支払い期間を通じて所得控除が継続する以上、所得の多寡にかかわらず利用可能となっているところが問題であるという指摘もございました。本制度も「租税特別措置の聖域なき見直し」という方針のもと、廃止に向け検討を進めるべきであるということでございます。

証券投資信託に関する租税制度については、株式投資信託について、先ほどの説明にあったとおり、収益の分配金が配当所得に分類される一方で、昭和39年以降、「利子並」課税が継続されてきているわけです。「金融のあり方の切り替え」との関連で、こうした取扱いも見直す必要があるかどうかについてさまざまな議論が行われたわけでございます。

3ページ目に入っていただきたいのですが、「(1)株式投資信託に関する所得課税のあり方」のところで、いろいろな考え方があるのですが、収益を利子並に扱いつつ譲渡時には譲渡益課税を行うなどという考え方は、クロスしているというのか、先ほどの図の斜めになっておりまして、租税体系上の整合性を考慮しない取扱いでありまして、適当とは言えず、とるべきではないということでございます。

a、b、cを簡単に見ていただきますと、a、株式投資信託に対する「利子並」課税を変更し、収益分配金に配当としての課税を行うなどとする意見が多かった。

b、株式投資信託の株式の組入比率はゼロから100%までさまざまでございますので、これを単純に株式と同一視することが課税上適当かという点に関して、そこに書いてあるような意見がございました。

c、株式投資信託について、現行の「利子並」課税が合理的ではないかとの意見もございました。

あと、詳しいところはご覧になっていただきたいと思います。

それから4ページ目でございます。これも先ほどの説明資料の中にございましたが、集団的な投資スキームに対する課税全体の中で考えた場合、証券投資信託以外のものについては、ファンドである会社や信託を一たん法人税の課税対象とした上で、たまりのない場合、収益の分配を課税所得の計算上損金算入する等の取扱いがなされているわけです。これは、要するに法人税を課税しないということになるわけですけれども、法人税を課税した上で課税しないというのも変ですが、たまりの場合には法人税が課税されるということでございます。

集団投資スキーム全体を通じて、課税の整合性を図る観点から考えるならば、証券投資信託に対してファンド段階で一たん法人税の課税対象とした上で、投資家に配った場合には、その分について損金算入をする等のほかと同じような手当てを講ずるのが、バランスがいいのではないかという考えでございます。

それから、証券投資信託課税をめぐる所得税制上の論点ということで、(3)がございます。ここは、まとめというか、総論的な話ですけれども、単に金融税制の問題ではどうも済まないことでございまして、所得税制全体のまことに基本的なあり方にも関連するものでございますから、将来にわたって本格的にさらに検討が進められなければならないということでございます。

以上です。

石会長

ありがとうございました。明確にある解が出ている部分と、いまの段階では、慎重なるがゆえにはっきりした方向を出していないところとございますが、金融小委員会の議論は着々と進んでいるようであります。

それでは、大体予定どおりに進行しているのですが、15分ぐらい時間をとりまして、金融あるいは証券税制につきまして御意見を賜りたいと思います。

松浦委員

市町村の立場から一言だけ申し上げたいと思います。

いま御説明のありました「19-4」の26ページ、確定申告が不要という非課税の問題がございます。少額配当については個人住民税が非課税となっておりますけれども、さらに非課税範囲が拡大するというのが、ちまたのうわさでも聞いているわけでございまして、課税の公平・適正化の観点からこれは問題ではないかと思っております。

石会長

ありがとうございました。御意見を伺っておきます。

河野さん、どうぞ。

河野特別委員

金融小委員会のお話で、いままでこういう提案がなかったので、ああ、そうか、こういう考え方もあるのかと思って感心したのは、一番最初のページの最後のほうで、「小委員会としては、以下に示すとおり、両制度は基本的に廃止すべきものと考えるが、こうした経緯を踏まえれば、少なくとも、時限を付した『サンセット措置』へ移行する」と。この「サンセット」というのは初めてなんですよ。

私がなぜこれに注目したかというと、諸井さんの下で6年間、地方分権委員会をやったとき、1年半ぐらいは、補助金をいかにするべきかという大議論をやったんです、関係各省が全部出てきて。農林省から全部、補助金で行政をやっている政策ここありとしてね。それに対して地方の市長は、「いや、補助金をまとめてこっちによこせ、使い方はこっちで考えるから」という意見のぶつかり合いだったんですよ。

妥協として出てきたのは、補助金制度を導入すると、それが延々と既得権益で、配るほうは偉そうな顔して配る、もらうほうも、辞を低くして陳情しながらカネをもらってくる、こんな愚かなことはやめたらいいという話があって、結局、この制度は、これから導入するものについては当たり前のこと、いままであるやつもどこかでおしまいと。農林省も建設省も通産省もある政策目的でやるわけで、3年なり5年やったら、これでおしまい、延ばすのだったら、特別の理由がなければ延ばせないと。補助金をそういう形にして税金の浪費を防ぐ、という議論に終わったことがあるんですね。私は、金融小委員会の人がよくこれに注目したと思っているんです。

この前もちょっと申し上げたけれども、生保と損保の問題、老人マル優もそうだけれども、何遍言っても空振りなんですよね。私はこのぐらいむなしい議論を20数年間やったことない。今度初めて、そうだ、サンセットというアイデアを入れてみればもっと議論が煮詰まるかもしれないと。ただ、10年後のサンセットでは話にならない。2年ないし3年後にはかくかくの理由でおしまいにしますよということを言ってはじめて、本格的な議論になると思ったので、これは大変結構な提案だと思って、さっき会長がおっしゃっていたけれども、今度の「骨太」の中にこれを入れることに私は大賛成。

石会長

ありがとうございました。新しい御提言が出ました。

ほかにございますか。どうぞ、本間さん。

本間委員

この問題、精力的に御検討いただいて大変ありがたいと思っているわけですが、金融所得課税について中里さんが最後におっしゃった、理論的にどのようにきちんと議論をするか、包括所得税的な考え方で、かつ7分類のような状況を克服して、金融課税全体の中で貯蓄優遇型から投資優遇型に転換していくか、構造改革の一つの大きなテーマであろうと思います。したがって、これまでの枠組みを少し広げて、ぜひ根本から御検討をいただくようにお願いいたしたいと思います。

石会長

その問題意識は、税調全体あるいは基礎問題小委員会で持っておりまして、金融小委員会でやるか、基礎小委員会でやるか、まだ決めておりませんが、いずれにしても金融所得だけでも総合課税にできないかという声も非常に強いわけです。言うなれば二元的所得税論です。本間さんも重々御承知と思いますが、そういう点も踏まえてこれから少し議論を詰めたいと思っています。何といっても理論的なバックグラウンドが必要ですからね。どうぞ、和田さん。

和田特別委員

いまの御説明の中に高齢者の問題が何カ所が出てまいります。前回も発言をいたしまして、繰り返しになりますけれども、いま高齢者は、貯金にしても、現役の世代から見ると相当裕福に持っているという言われ方がされております。決して一律に弱者として扱う必要はないと。そこに反対するわけではないのですけれど、結果としてあまりにも平等でありすぎた。それの反動のように、高齢者に裕福な人が多いというそちらのほうが非常に強く出されております。

例えば、昨年出しました税調の中期答申、あるいは昨年の10月に政府でまとめられました「21世紀に向けての社会保障」、それから、ことしの7月の「骨太の方針」、どれを見ましても、現役世代と遜色がなくて、資産は勤労世帯に比べて大きいという大前提が出されております。

きょうの「19-4」の資料の8ページに「世帯主の年齢が65歳以上の世帯の貯蓄の分布」が出ております。これを見ますと、右へ行くと、3,000万円以上のところが30%を超えていることになっておりますけれども、たしか総務庁の調査というのは単身者が入ってないんですね。国民生活基礎調査のほうで見ますと、100万円未満というところが30%を超えてあるわけで、二極分化していることがはっきり出ているところを見落としてはいけないと思うのです。

ですから、何度も申し上げますように、所得も資産も十分にある人は、高齢者であろうがどういう年代の人であろうが、応分の負担をするというのは当然ですけれど、うっかりすると、高齢者は金持ちだというその一言のほうが世の中に喧伝されすぎているという気がいたします。前回私は、所得の分布とか、年金の分布のところもある程度触れさせていただきましたので、重複は避けますけれど、高齢者世帯の生活そのものの平均を見ますと、月額の赤字がたしか1万9,000円ぐらい出ています。そうすると、年間20万円を超える貯金の取り崩しが当然出てくるわけで、それで見ますと、たしか貯蓄が1,500万円までで50%ぐらいになっていると思うのです。そうすると、それくらいの貯金を持っているのを果たして金持ちと言っていいのかどうか。病気もしないで、災害もなくて、という数字のわけですよね。

ですから、貯金を取り崩し始めて、1,000万円なり、2,000万円なりの貯蓄というのは、月々の生活はそれで間に合っていて、あと余裕があるから貯金を持っているわけでは決してないという人たちが非常に多いわけで、そういう人のところもきちんと配慮する必要があるということを、ダブりますけれども、申し上げておきたいと思います。

平等を求めすぎたのが日本をダメにしたということがよく言われていますけれども、それの反動のようにいろいろな対応がなされて、結果として、相続税の問題なり、贈与税の問題で、機会そのものが非常に不平等になって、駆けっこで言えば、スタートラインが同じところからヨーイドンではなくて、努力する人が報われるという言葉がいま非常に多く使われているのですけれども、所得が非常に多くなったときにそれが報われない。いままで、あまりにも累進の高いところで税金を取り過ぎていたということがよく言われるんですけれど、報いられるというと、何となく庶民が営々として努力したところが報いられるのかと思うと、決してそれを言っているのではないということがやっとわかってきたところでして、やはりそういうところとを見ていく必要があるのではないかと思います。

そういうことを考えてみますと、私はきょう、ちょっと早めに失礼しますので、先に触れさせていただきますが、発泡酒の問題も、前回私は、「あえて反対というところまでは申し上げませんよ」と申し上げました。いろいろな議論がありますけれども、取りやすいところから取ると。税率が同じでなければいけないのだったら、ビールのほうを下げればいいではないかという議論もあるわけで、発泡酒というのは本当に家庭で飲まれているんです。外で飲むところでの消費よりも、家庭で飲まれているということを考えますと、取りやすいところから取るというのはいかがなものかなという気持ちもいたしております。

以上でございます。

石会長

ありがとうございました。ぼつぼつ休憩にしたいのですが、和田さんがお話しになりました、両極端に高齢者の所得あるいは貯蓄が分かれているというのは非常に重要なポイントだと思います。低所得者層のデータをもう少し精査する必要もあるかもしれませんし、いずれ事務局にお願いして、そういうところをもう少し集中的に議論ができるデータも出していただこうと思っています。御指摘のとおり、重々議論すべき余地はあると思っています。

諸井委員

一言だけ。こうやって議論していけばしていくほど、早く納税者背番号を入れて、本当の意味の公平を実現することが絶対必要だと思います。以上。

石会長

それは、金融小でも基礎問題小でも、十分に問題意識はあります。絶えず諸井さんのほうからプレッシャーをかけてください。

それでは、ちょうど折り返し点というか、中を越えたので、ここで休憩にしましょう。

〔休憩〕

石会長

再開します。

それでは、資産課税、酒税、その他が残っておりますので、逐次、御質問いただきつつ議論するという段取りでいきたいと思います。

最初に資産課税等につきまして、菊地企画官、岡崎課長双方から、まず、国税、地方税につきまして簡単な御説明を受けましょう。

菊地企画官

私のほうからは、「総19-6 説明資料(資産課税等)」という資料によりまして、相続税に関連しての中小企業の事業承継、さらに土地税制、租税特別措置の見直しに関連いたしまして、住宅に係る各種特例措置、青色申告に関する特例措置、こういった内容について御説明させていただきたいと思います。

まず、資料の1ページでございます。各論に入る前に、相続財産について全体を把握していただきたいと思いまして準備いたしました。これは相続財産を種類別に示したものでございます。一番左側が土地でございます。土地が6割から7割程度占めているということですので、これまで、地価の動向に関連した制度改正をどうしても行ってまいりました。

資料の2ページは、地価の動向を折れ線グラフ、さらに行いました各種の改正を、箱囲いで示しております。簡単に御紹介しますと、バブル期における地価の動向を踏まえながら累次にわたって減税や各種特例措置の拡充をしてまいりました。基礎控除等の拡大、税率構造のフラット化を行っています。

そういった関係で、現在、相続税は亡くなった方100人のうち5人の方にだけ納税していただくような税金になっております。最近、この相続税に関して、何らかのインセンティブとして活用できないかというお考えも示されるようになってまいりました。他方、税調の中期答申でも一部指摘されておりますが、すべての財産を平等に扱うことが課税の公平上強く求められるという相続税の性格、課税時期が人の死亡という非常に偶発的な事象による点、あるいは、一生涯において課税される機会がごく限られている、そういった点からそもそも政策手段として適切かどうかという論点もあろうかと思います。

3ページにまいりまして、ここから、中小企業の事業承継に関連した個別の御説明に移らせていただきます。

中小企業の事業承継に関しましては、平成4年度以降を見ましてもいろいろな手当てをしてきております。大きく分けまして、三つぐらいの要素に分かれております。一つは、小規模な土地について課税価格の減額を行っております。例えば事業継続をした場合に、事業用の土地、現在では80%まで減額する。ですから、実際に課税されるのは20%だけという状況になっております。さらに、その面積も現在400平米まで拡大されているというところでございます。

それ以外にも、延納を選択した場合に利子税を納めていただきますが、その利子税の軽減という措置を平成11年、12年に行っております。それ以外にも、特に中小企業の方ですと、同族会社の株式ということで取引相場のない株式をお持ちの方が多いのですけれども、そういった評価方法の適正化も行ってきております。

4ページ、5ページ、6ページは、そういった個々のものについての資料ですので、割愛させていただきます。

7ページは、中期答申でこういった点について指摘をいただいております。下のほうのラインのところですが、事業承継に関してはメリット、デメリットの両論がある、そういったところに留意してあり方を検討すべし、という御指摘をいただいております。

8ページですが、最後のところで、事業承継の問題につきましては、「長子相続制度の下で、長子が代々の事業をごく普通のこととして引き継いでいましたが、今日では、民法の均分相続制度の下で、基本的に兄弟全員が財産を均等に相続することとされている」という、税制では解決し得ない問題が少なからずあるということも御指摘いただいております。

9ページにまいります。こういった事業承継をめぐる問題で、国民生活金融公庫総合研究所が、国民生活金融公庫の取引先を対象にしてアンケート調査をした結果でございます。全体で事業を承継しなかった方が8.4%いらっしゃいます。その事業を承継した方の中で問題があったというのが、先代からの借金の返済、あるいは、競争力、技術力、信用力の低下というところを指摘している方が多く、相続税の支払いを指摘している方もおりますが、これは6.6%という数字でございました。

他方、事業を承継しなかった方の御回答では、一番多いのが「将来性への不安」ということで、事業・地域に将来性・発展性なし、あるいは積極的転廃業ということで、みずから興味ある事業を始めたかった、こういうことを指摘されておられまして、「相続税支払いが負担」という項目をお答えになった方が実はいなかったという事情もございます。

時間がないものですから、ちょっとはしょりますけれども、10ページ、ここからは土地税制についての御説明になります。土地につきましては、所得税、法人税の譲渡益にかかる課税の問題、上のほうが税率の特例を整理してございます。一番下の段が特別控除でございますが、一番上のマルにありますように、「収用等のために譲渡した場合の特別控除の特例」ということで、例えば5,000万円という大きな金額の控除を置いております。こういった多数の特別控除がございます。

11ページは、税率についての推移をお示ししたものです。

もう1枚おめくりいただいて、12ページは、11年で土地の譲渡に関しての全体像がどうかということをお示ししたものです。譲渡価額が19兆円ありますが、そのうち取得費、譲渡費用ということで8.5兆円がいわゆるコストに当たるところになります。残りの譲渡益が10兆5,000億円あるのですけれども、このうち、いま御紹介しました特別控除などで実は6.9兆円という課税ベースの大きな欠落が生じております。

13ページは、法人のいろいろな措置の変遷でございます。

14ページは、これまで所得税、法人税の世界のお話をさせていただきましたが、ここからは、流通税である登録免許税に関して触れさせていただきたいと思います。登録免許税は、住宅、都市開発、不動産証券化という土地に関連した特例措置をたくさん持っております。また最近、土地の需要を喚起するために、こういった登録免許税を手数料化するなどして、負担を大幅に軽減してはどうかという御議論もございます。

1枚飛ばして、16ページを見ていただきたいのですが、先ほども御紹介しましたが、地価の動向でございます。ピーク時から見ますと、13年度は商業地では74%の下落、住宅地で49%の下落。これほど下落しているにもかかわらず、土地の需要が伸びていないというのが現状でございます。

17ページは、年間どれぐらい下がっているかというのをモデル的にあらわしたものでございます。年間で見ましても、8~9%を超える下落でございまして、実はいま、登録免許税は地価の約1%程度の負担になっております。ですから、こういった下落の中で地価の約1%の登録免許税を軽減して、どれくらいの効果があるのかといった論点があるかと存じます。

その効果の反面、18ページでございますが、登録免許税、結構税収がございまして、13年度で8,000億円余り、このうち約6,000億円が土地関連のものでございます。ですから、土地に関連する登録免許税の軽減といいますと、こういった部分が大きく税収減、いうなればコストがかかるということでございます。こういった点と先ほどの効果の点、こういったものをどのように考えるかというのが論点かと存じます。

19ページは、諸外国においても土地売買に関連して、国税、地方税の違いはあれ、流通税の負担があることをお示ししたものです。

20ページは、これに関連して中期答申での御指摘をいただいたものでございます。

21ページ以降、租税特別措置に関連して、住宅にかかる特例措置ということで、所得税の住宅ローン減税についてお示ししております。真ん中の枠囲いのところですが、御案内のとおり、昨今の景気対策の関係で住宅ローン減税の拡充が行われております。現在、年間最大50万円まで、10年間の税額控除という制度になっております。

1ページ飛ばしていただいて、23ページですが、年間50万円の所得税の税額控除はどれくらいの方々が該当するか。サラリーマンの方で比較いたしますと、夫婦子2人の方で給与収入934万円をちょっと超える方が、この50万円の所得税額控除を利用すると、所得税がゼロになってしまうという水準でございます。その下に課税最低限を掲げさせていただいておりますが、課税最低限を大幅に上回るところで所得税がゼロになるという手厚い措置になっております。

住宅に関しましては、これ以外にも、贈与税に関連して特例措置がございます。24ページが概要ですが、25ページの図を見ていただきますと、一時に贈与された金額を、5年間均等にもらったというふうに仮定計算して、それを実際に贈与が行われた年に納税していただくということで、具体的には26ページのような形で、一時に贈与を受けるよりも贈与税の税額が軽減されるという措置もございます。

最近、こういう特例措置を住宅以外にも拡大してはどうかという御議論もありますが、住宅に関連するもろもろの事情との関係をどう考えるかという点が論点かと存じます。

あと、27ページにありますように、登録免許税においても住宅については軽減措置を置いております。

28ページですが、最後に、青色申告特別控除制度について簡単に御説明させていただきます。青色申告制度自身は、シャウプ勧告を受けて昭和25年に設けられておりますが、平成5年に青色申告特別控除が創設されまして、正規の簿記の原則に従い記録している方には、現在55万円の控除。簡易な簿記の方法により記録している方には、45万円。一般的な方には10万円という特別控除を置きまして、青色申告の一層の普及・奨励を図り、適正な記帳慣行を確立するという目的のもとに行っております。

29ページは、そういった青色申告の方々についての数字でございます。[1]のところにありますように、現在300万人ほどでさほど変化はございません。また一番右側、申告納税額のある方で青色申告をしている方の割合も50%程度で、変化がないという状況になっております。10年間、まさに横ばいの状況の中で、適正な記帳慣行をどのように誘導していくのかという点について、どう考えていくかというのがこの論点であると考えております。

私の説明は以上でございます。

岡崎都道府県税課長

「地方資産課税等説明資料 総19-8」でございます。

1ページは、固定資産税の概要でございます。一番メインの資産課税は固定資産税で、制度の説明はここにありますけれども、一番下のグラフにありますように、市町村の税収の45%を占めている大変な基幹税でございます。課税標準の欄にありますように、住宅用地につきましては、非常に大胆な6分の1の課税標準の特例があるということでございます。

大きな議論は、固定資産税は15年に評価替えを控えて、来年になるかもしれませんが、2ページで若干経緯だけ説明させていただきます。平成5年度までは、正直申し上げまして、評価の[1]にありますように、各土地間で評価水準、市町村の間でも違いました。そこで平成6年に、公的土地評価を均衡化させようということで、鑑定を入れまして、地価公示価格の7割をめどに評価をするということで、全国的に評価の水準は統一されたというのが平成6年度の大きな改革でございました。

ただ、真ん中の「課税」にありますように、そのために評価が急に上がった土地がございます。そういう土地は急に税額を上げられませんので、緩やかに上げるということをして、上げ切れておりません。そうしますと、同じ評価額の土地で、実際の税額(課税標準額)に差があるというのが平成6年から8年までの実態でございました。

そこで、9年度に7割評価を継続するとともに、地価下落したときに3年据え置きでは酷なので、下落修正できるという制度を入れました。それと、一番下の課税でありますけれども、非常にばらついておりますので、評価を統一して、それに比べて安い土地は少しずつ上げさせていただく。高い土地はストンと下げさせていただくという仕組みを入れました。この負担調整措置というのが9年度でございます。

3ページからは細かいので飛ばしまして、いまの9年度のスキームを7ページでごらんいただきます。これは、9~11年度のスキームですが、端的に申し上げますと、一番左側、評価額1,000万円、つまり公示価格ベースが1,429万円ぐらいの土地が仮に四つあったとして、残念ながら過去の経緯がありまして、A、B、C、Dのように実際の税額はさまざまでございます。課税標準が四つ。

これが仮に30%、値段が同時に下がったとしますと、A、Bはキャップをはめていますので、560万円に下がりますけれども、Cは据え置かれる。Dはほかに比べて安いので、少し上げさせていただく。こういう例が、よく言われます、地価が下がっているのに税が上がるということでございまして、そういう意味ではDの土地はもともと安いので上がるという仕組みになっております。これをどんどん進めて均衡化を図ることが、一つの大きな目標になっております。

10ページをごらんいただきますと、評価額に対する課税標準の割合は相当ばらついておりましたが、9年度以降のスキームを入れました結果、12年度は相当にまとまってきた、かなり均衡化が進んだのはおわかりいただけると思います。

11ページをごらんいただきまして、都道府県別に負担水準を見ますと、同じ評価額の土地であれば、東京なり大阪は6割程度の課税標準になっているのに対して、例えば徳島、鳥取、福井、まだ3割台のところ、あるいは、沖縄のように非常に低いところもあるという現状でございます。均衡化をどんどん進めることは一つの課題だと思っております。

12ページ、一つ御報告申し上げますが、ことし、情報開示について改正をしたいと思っております。固定資産台帳は本人の評価しか見られなかったものを、周りと比べないと自分の評価が正しいかわからないという声がありますので、市町村内のすべての土地を納税義務者は評価額を見られるようにいたしたい。それから、人の台帳の閲覧は基本的にできないのですが、例えば借地・借家人等に対して、税額を教えてあげられるような制度を入れたらどうかということでございます。

以上、固定資産税をざっと申し上げましたが、最後に19ページ、県の資産課税として不動産取得税がございます。昭和29年に、固定資産税の税率を1.6%から1.4%に下げまして、先ほどのような形で購入時に課税するということでつくられた税でございます。これにつきましても、住宅用地等には大きな特例がありまして、実質的に、普通の都市部の住宅を買いますと、土地も家屋も非課税というぐらいの大きな特例が入っております。大体5,000億円を超える主要な都道府県の税でございます。

21ページは、一番下にありますように、1%ないし1.4%程度の実負担になっているということでございます。

税収は、22ページにありますように、もちろん一時増えましたが、現在は62年ころの水準の税収に戻っています。

あと、特別土地保有税、事業所税の資料がございますが、説明は省略させていただきます。以上でございます。

石会長

ありがとうございました。国税、地方税、資産税関係は何かと議論の多いところでありますし、政治的にもかなり話題を提供しております。10分ほど時間をとりまして、この資産課税等につきまして御意見を賜りたいと思います。いかがでしょうか。

松浦委員

ただいま、固定資産税について説明がございましたけれども、納税者に対する固定資産課税台帳縦覧制度の拡充、情報開示を、私どもとしては一層進めていかなくてはいけないと思っております。いままでは自己の資産に関する部分に限定されていたわけですけれども、これを、市町村内のすべての土地家屋「縦覧帳簿」を新たに整備していかなくてはいけないというふうに地方としては思っております。

松本委員

また地方の立場で申し上げたいと思います。固定資産税についてでございますが、さっき説明がありましたように、固定資産税は市町村にとっては基幹的な税目であって、本税の安定的な確保が重要であると考えております。

また、次回の評価替えは平成15年度になるわけですが、それ以降についても、税負担については7割をめどにする評価水準を維持していただきたいということ。さらに一層負担の均衡化、適正化を進めていただきますようにお願いしたいと思います。

石会長

相次いで地方の首長さんから御意見がございましたけれども、相続税、贈与税等々、別な点で何か御意見はございませんか。

水野(勝)委員

固定資産税は、小規模宅地ですと、先ほどのお話で6分の1に減額されている。相続税について言えば、8割控除ということですから、普通の場合、5分の1課税になっているということでございます。こういうあたりを見ますと、地価も安定してきておりますから、むしろもとに戻すことが必要ではないかとも思うわけですが、それはなかなか難しいかもしれない。

しかし、現行の資産課税水準、特別措置ではあっても、ほとんど一般的に適用されるわけですから、これ以上の負担軽減はなかなか難しいのではないか。いずれ、税制全体の抜本的な改革の時期があろうかと思いますから、そのときに所得課税、資産課税、消費課税を含めて検討することが適当ではないか。いまの時点でいろいろな政策的な目的から、これをさらに部分的にしろ全体的にしろ下げるのはいかがか、という感じがするわけでございます。

それから、贈与税の資料、先ほどは御披露がございませんでしたが、休憩のときに見ていたら、贈与税の10ページの数字、これはなかなか面白い数字だなと思いました。バブルのときに比べると、贈与税は全体の課税価格、2兆5,000億円が1兆2,000億円になっている。1件当たりを見ましても400万円が200万円になっている。非常に下がってきている。これはどういう……。バブルが崩れて贈与の余地がなくなったのか、社会保障制度、その他、将来の不安が言われるので、年寄りが贈与しなくなったのかなとも思います。それに対して、今年、基礎控除を60万円から110万円に上げた。こういうあたりも、この贈与税の課税状況の実態からすると逆だったかなという感じもする。

こういった意味も含めて、相続税、贈与税、固定資産税、最近のいろいろな動向を全体的にじっくりと検討して方向を出すべきものではないか。目先のもろもろの政策的要請でいま手を加えるのはいかがか、という感じでございます。

村上特別委員

登録免許税ですが、これは、土地を買ったときにはオヤッと思うぐらい高い感じはするのですが、しかし、一部で議論されているように、土地の流動化をねらって、これを軽減するとか、撤廃するとかいうのはいかがなものかという気がいたします。土地の流動化が促進されていない理由は、私は新会計に大きな原因があると考えています。

石会長

何会計ですか。

村上特別委員

国際会計基準に基づく新会計の適用が一番大きな理由……。もちろんデフレスパイラルもありますが、制度的には新会計のほうをむしろ考え直したほうがいいのではないかという気もするくらいで、そういう議論に対してはきちんと説明をする必要があるのではないかというふうに思います。

石会長

すみません。ちょっと理解できませんが、新会計と土地の流動性の阻害というのはどういう……。

村上特別委員

評価で損益計算書にのせるようになりますね。そうすると、企業は資産はなるべく持つなという動きになりますから、土地も当然危ないから、これは売っているわけですよね。ですから、土地を売ったり社宅を売ったりしています。そういう動きが、流動化というよりは土地の価格をどんどん下げる不安要因になっているということですから、決して税制の理由によるものではない、そういうことです。

石会長

わかりました。よろしゅうございますか。

河野特別委員

これは新聞報道だけしか材料がないので、議論できないし、きょう、事務方がそういう問題提起をしないので、これ以上はなかなか議論できないのですけれども、次回に財務省にお願いしておきたいのは、中小企業の事業承継と生前贈与について、財務大臣、塩爺さんが独自の考えを持っていらっしゃる。ほとんど核心に近い判断を持っていらっしゃると聞いています。その案がここに出てこないと議論ができない。水野さんが苦し紛れに、財産税に対してはもっとゆっくりやったらどうだと言われている。それは煙幕を張ったような話で、本当に核心を突いた議論ができないんですよ、この問題提起では。

どうせ年度末の答申には、それが大きな柱の一つか二つになるだろうと思う。具体的には生前贈与ではこんなことが議論されています、株式を買うのだったら、住宅と同じように生前贈与の税金をまけてもいいよと、この話は何でも株式市場対策なんだねとか、いろいろある。それも一つの意見だと思うけれども、当然、世の中にはそれに対する懐疑的な意見もあり得るわけです。とにかく材料を出してもらわなくては議論できない。新聞報道だけでは議論できないということなので、お願いしておきたいのです。

もう一つ。さっきサンセット方式に賛成だということを申し上げたのですけれども、今度の国会で通った株式譲渡益について、ある条件のもとで株を購入し、ある条件のもとで売ったときには税金は一銭もかからないよというのが入ってるんですよね。これも株式市場対策です。これも財務大臣の発案ですね。面白いんですよ、財務大臣の発言がみんな通ってるわけだ。いまの状況下で、まあまあそんなことかということで国会を通ったと思うのですけれども、これははっきりと年限が限られていますから、考えてみればこれはサンセットなんです。時間が来たら、またそれを延ばすというようなことがあったのでは、ますます全体としておかしくなるのではないかという気がするので、せっかく法案もそうなっているわけで、念には念を押しておきたいということです。

石会長

前段でおっしゃった塩爺さんの問題提起、具体的に真意を確かめてここでやれという意味ではないですよね。どういう考えでおっしゃったのか。つまり、事業承継の問題はここでもずいぶん長くやってますよ、議論として政治から出てますからね。そういう外側からのいろいろな批判に対して、税調としてそれを受けとめて、こうやるべきであるという議論をするのか、それとも、いままでのところで直す必要はないではないかと。我々はそういうスタンスをとったんですよね。

河野特別委員

そういう割り切り方も一つ。

石会長

だから、別にそこで塩川さんの話をかぶせなくてもいいわけでしょう。何も税調の会員でもないのだし、メンバーでもないのだし、いいじゃないですか。

河野特別委員

ややこしいことに首を突っ込みたくないというなら、それはそれでわかるけどね。

石会長

別にややこしくなるわけでもないとは思いますけど、それより、福原さんのほうから事業承継の問題は提起してもらったほうがもっとすっきりしますよ。

福原委員

事業承継は中小企業の団体からは常に出てくる問題ですよね。農地並みの課税をというようなことをこの前大臣がおっしゃったので、それと、事業をやっている株式、ほかの事業用資産とは違うんだということを我々は言ってるのですけれども、これはまだ大臣のところまでは到達していないと思います。

石会長

この問題は、私が税調の委員になってから20年近く言い合っているわけで、さっきの老人マル優の話、あるいは生・損保控除の廃止ではないけれども、絶えず言ってるわけで、また言わざるを得ないことになるかもしれませんけれども……。ただ、福原さんはいろいろ問題を抱えてますよね。

福原委員

ただ、このアンケートによると、相続税によって事業承継しないのはゼロだというのもありますし、何とも言えないですね。我々の側からするアンケートは、また違う数字が出てくるわけです。

石会長

では、酒税のほうに話を移しましょう。

道盛さん、まず最初に御説明ください。

道盛税制第三課長

それでは、お手元の「19-9」という資料で御説明させていただきます。酒の税金につきましては昨年も御議論いただきましたところでございますので、簡潔に御説明させていただきます。

まず、1ページをお開きいただきます。酒税の税率ですが、ここの表にございますように、酒税の区分ごとに10種類に分けまして税率を設定しております。一番下に雑酒という項目がございますが、雑酒の中にいま大変需要の伸びている発泡酒が入っております。

2ページをお開きいただきますと、その10種類の酒の区分ごとに、課税数量及び課税額、税収の推移を載せております。一番下の合計欄のところで見ていただきますと、ここのところ、お酒の売れる数量は1,000万キロリットル強の水準でほぼ横ばいでございます。一方、その右の欄、課税額の欄を見ていただきますと、1兆9,000億円ございました平成10年度から、12年度は1兆8,000億円ということで、減少傾向にございます。

3ページをお開きいただきますと、その1,000万キロリットルの課税数量の推移を追ってみたものでございます。一番上は、圧倒的に数量の多いビールでございますが、平成6年度をピークに減少を続けてきている。それに代わりまして、平成6年度以降急速に伸びておりますのが雑酒、これが基本的には発泡酒でございます。そのほかのお酒には、例えば果実酒類、下のほうにございますが、平成10年度まで非常に伸びておりまして、その後ちょっと下がっておりますが、こういった伸びたお酒もございますが、圧倒的に発泡酒の伸びが大きいという現状にございます。

4ページをおめくりいただきますと、昨年の答申で酒税につきましては記述をいただいております。10行目ぐらいの(2)で、「酒税などの消費課税については、中期答申でも指摘しているとおり、税制の中立性や公平性の観点から、同種・同等のものには同様の負担を求めることが要請されます」と。その段落の二つ下を見ていただきますと、「消費課税の基本的考え方に照らせば、ビールと発泡酒の間に現在のような違いを設けることが適切かどうかということについて意見がありました」と。

もう一つ下の欄でございますが、果実酒につきましても、「清酒との負担の均衡を図る方向で検討することが適当ではないか。甘味果実酒、合成清酒等についても、負担の均衡を図る方向で検討することが適当ではないか」という御議論をいただいた上で、一番下の段落でございますが、「他方、来年度税制改正に向けて検討することは時期尚早ではないか」という御指摘もございまして、結果的に昨年度は改正が見送られております。

5ページをお開きいただきますと、その後1年間の推移でございますが、ビールと発泡酒の課税数量の推移を載せております。先ほども御説明しましたが、基本的にビールと発泡酒、合計の数量は700万キロリットルということで変わっておりません。どんどん発泡酒の割合が高まっておりまして、昨年御議論いただきました12年度におきましては、下のほうに発泡酒比率という欄がございますが、ビール、発泡酒合計に対しまして、発泡酒の割合が22%でございましたが、今年に入りまして、また爆発的に伸びておりまして、発泡酒は32%。いわゆるビールと言われているもののうち、3本に1本は発泡酒となっております。

6ページをおめくりいただきますと、その結果、ビール、発泡酒の合計の課税額で言いますと、税率の低い発泡酒にどんどんシフトしているために、税収減がずっと続いてきておりまして、平成8年度から見て約2,000
億円の減収になっております。

7ページにございますのが、ビールと発泡酒の負担の比較でございます。缶ビール1本当たりについて見ますと、ビールが77円70銭、発泡酒が36円75銭でございます。

8ページをおめくりいただきますと、基本的に麦芽比率67%以上のものをビールと定義しております。これは明治以来そういう定義を置いております。それに対して発泡酒というのは昔はなかったわけでございますが、終戦直後、発泡酒という規定を設けました。当時は、焼酎に混ぜ物をして発泡させたもの、これは合成ビールと呼ばれていましたが、そういうものでございまして、そういう性格のお酒に対して税率を設定したというものでございました。それに引きずられた関係でございますが、税率格差はあったわけでございまして、現在でも残されております。

ところが、9ページをおめくりいただきますと、現在発泡酒として売られているものは、ここにございますとおり、原料、基本的な製法、それからよく誤解されますが、アルコール度数等はビールと一緒でございます。麦芽比率が高いか低いかという違いでございます。それから、基本的な製造設備はビールの製造設備をそのまま使っております。一番下にございますが、味、色などの性状、品質はビールに近似しているという状況にございます。

最後、10ページでございますが、もう一つの論点であるワイン等につきまして、アルコール度数1度当たりの税率を比較したものでございます。右のほうにございます蒸留酒。昔はウイスキーが高くて、焼酎が低かったわけでございますけれども、WTOの勧告などがございまして、これに対応して税率が均等化されました。それに対しまして、醸造酒、あるいは混成酒、これは混ぜ物のお酒でございますが、これにつきましては、まだデコボコとかなり負担の不均衡が残っているという状況でございます。

以上でございます。

石会長

ありがとうございました。疲れてきたので一杯やりたいところでありますが、税金の問題として我々はこれからしばらく議論いたしましょう。御質問なり御意見を伺いましょう。特に発泡酒の値上げ等々はいま社会的に問題になっています。いろいろ御意見があろうと思いますし、先ほど和田さんから御開陳がございましたけれども、ほかの方々、いかがでしょうか。

松尾委員

この発泡酒の問題は、去年の税調答申で政府税調としては方向を出しているわけですね。私は基本的に今回もそれでいいと思います。私も発泡酒を飲んだことがあるのですが、最初は勘違いしておりまして、ビールまがいの商品でアルコール度数がないのかなと思って飲んだら、ビールそのものですね。非常においしいですよね。キレがいいといいますか。そういう意味で同種・同等なものであろうと思いますし、なぜ同じものが税金が安いのか、当然、疑問に思うわけであります。

取りやすいところから取るというお話がありましたが、酒税は基幹税でもありますし、嗜好品ですから、発泡酒には担税力がある。ビールももちろんあります。たしかにビールの税率は、半分くらいが税金ですから、ちょっと高いという感じはありますが、嗜好品である以上担税力があるという点については注目せざるを得ないと思います。

創業者利益のことも言われますが、これはデビューして5、6年経っているわけです。もう十分創業者利益は得ているし、今の時点で創業者利益云々というのはむしろおかしいと思います。税金逃れと言っては言い過ぎですが、税金のところをにらんだ隙間商品と言わざるを得ないと思いますし、これはもう踏ん切りをつけて格差是正すべき時期であると思います。

石会長

一つの御意見が出たと思いますが、ほかにいかがですか。

諸井委員

なぜ、麦芽何%というので税率の差をつけたのですか。最初にそもそもこの税率を決めたときの経緯がどうもよくわからない。さっきの焼酎に混ぜ物と。たしか私も覚えがありますよ。覚えがあるけれども、それのせいなんですかね。これ、どうもよくわからない。

道盛税制第三課長

現在のビールの定義というのは明治38年に端を発しておりまして、酒税は個別の間接税に分類されますので、課税対象を定義する必要があるわけです。明治時代はドイツからビールが入ってきたわけです。ドイツは麦芽100%がビールだとされている国でございます。あるいはアメリカやイギリスのように、麦芽比率で区分していない国もございます。国によっていろいろあるのですけれども、日本の場合は、明治時代に導入するときに、麦芽比率をある程度高いもので、しかし、日本の事情で米などを添加しておりましたので、米をある程度使ってもいいということで、67%という麦芽比率を決めて、それをビールと定義づけたということになっております。

石会長

歴史的にはそういう事情のようですが、何となく釈然としないところもありますな、麦芽比率でやられると。

諸井委員

麦芽比率が50%以上というのも、同じ税率ですか。

道盛税制第三課長

御説明させていただきますと、終戦直後に合成ビールというものが出てきましたときには、焼酎に混ぜ物をするような類いのものでございまして、発酵させて現在のビールと同じような形でつくるものではなかったわけです。ところが、平成6年にビールと同じ製法を持った現在の発泡酒が誕生いたしまして、平成8年の税制改正を一回行いました。

現在は平成8年の税制改正後の姿でございまして、当時は実は二つ発泡酒が出ておりまして、一つが麦芽比率65%のもの、もう一つが麦芽比率25%のものでございました。65%のものについては、ビールが67%でございますから、味はほとんど同じようにつくれるわけでございまして、そのときの議論の結果、これは同じものだということで、その時点で同じ税率に改めたということがございます。一方、25%のほうにつきましては、やはり味の差があるということで、税率の格差が残されたということでございます。

石会長

そうなると、いま、味の差がなくなったというのが問題なのね。

道盛税制第三課長

今売られている日本の大手メーカーの発泡酒は、すべて25%未満のところでございます。

石会長

諸井さん、発泡酒飲んだことないですか。

諸井委員

ありますよ。全然変わらないですよ。

石会長

そうでしょう。

水野さん、どうぞ。

水野(勝)委員

なかなか説明が難しい面もありますけれども、先ほどお話がありましたように、嗜好品というのは担税力がある。ということは、売れるということだろうと思います。発泡酒については、今までのものが売れたというよりは、今まで25%ではビールの味が出せなかったのが、企業努力もあり、技術の進歩もあって、売れるようなものができたということは、新しい種類の酒の製品が開発されたということで、新しい見地から、これはひとつこういう負担水準をお願いしたいというふうに、今までの経緯は切り放して説明してお願いすることができないものかと思います。

37年頃に酒税を改定いたしましたときに、個別の製品、商品を挙げるのは不適当かもしれませんが、「ダルマ」が売れ始めた時期がございました。それ以前は従価税というのはあまり一般的ではなかったのですけれども、新しく従価税を導入した。とにかく売れるのですが、アルコール度数云々というのではなくて、かなり高い価格のものが出てくるので、そういったものは従価税だと、新しい制度で対応させていただいた時期もある。

商品としてよく売れるもの、嗜好品としてたしなまれるものは、新しい市場への参加者だというぐらいに割り切って、何かうまくまとまりがつけられないものかという感じがいたします。

諸井委員

意見を言っていなかったので。やはりビールの税率が高いという議論はどうしても出てくるんじゃないですかね。それに対して、明確な説明、これでいいんだという説明ができるのか。これで売れているからいいんだ、という議論になるんですかね。

それと、今支持率の時代でしょう。発泡酒はやばいですよ。小泉さんの支持率に影響するかもしれないですよ。だから、これは相当慎重に考えないといけない。ビールとの関係の問題が一つと、支持率との関係が一つと、両面からかなり慎重に考えないといけないのではないか。

中里特別委員

品質表示の問題と税金の問題は一旦切り離したほうがいいということと。もう一つ、WTOの問題ですけれども、外国で発泡酒をどの程度つくっているかわかりませんが、麦芽25%以下のビール類似のものをつくっているのが、大部分日本だけだとしますと、日本産品の不当な保護ということで、WTOでやられる可能性があるのではないか。もちろんパネルに行かなければいいのでしょうけれども、そちらが心配になります。税調は理屈を通すところでしょうから、理屈上どうなのかというのは考えておいたほうがいいのかもしれないと思います。

今野委員

そんな昔に酒税がつくられたままになっていたわけですから、そういう税率の隙間をついて、新商品開発とか技術が開発されてくるということは、私はこれから本当に大事なことではないかと思います。開発して商品化されて、3年なのか、5年なのか、7年なのか知りませんが、ある期間はそういうものをバックアップする期間を設ける。または、そういう税制をつくったまま放りっぱなしにしておかないで、ときどき、ちゃんと時代に対応しているかどうかを見直していく、どちらかだと思います。

これはお酒に限らず、税制のほうを放っぽり出しておいて、そこにベンチャースピリッツでいろいろな企業が努力をしてくると、それをすぐ捕らえてしまってやる気をなくさせるのは、私はおかしいと思います。

石会長

今野さん、創業者利益というのは何年ぐらいが目処だと思いますか。

今野委員

少なくとも最低5年ぐらいは絶対欲しいと思います。

石会長

この間ビール会社に聞いたら、50年だと言ってましたね。道盛さん、発泡酒が最初にできたのは何年?

道盛税制第三課長

平成6年でございます。

佐野委員

発泡酒の税率上げ容認論が多いので、あえて私は慎重論で、何人かいらっしゃるけれども、一言だけ申し上げますと、伸びている商品はしばらく伸ばすべきだという考えです。酒税の種類別の税収を見ると、発泡酒が唯一伸びている。そこに冷水を浴びせるようなことは、税制としてやるべきではないというのが私の意見です。

石会長

あと数回、この種の議論をすることもできますので、そのときにまた御意見を伺いたいと思いますが、これはなかなか難航しそうですな。

それでは、その他の議論にいきたいと思います。その他の議論として、納税者番号、環境税、電子政府、国際課税等々ございますが、稲垣さん、杉江さん、小室さんの順で御説明いただいて、また10分ほど議論いたしましょう。

稲垣さんから、どうぞ。

稲垣調査課長

「総19-10」という資料がお手元にあるかと思いますが、1枚めくっていただきまして、目次でございます。大まかに四つ項目がございます。一つが納税者番号制度。一つが「環境問題への対応とエネルギー関係諸税」と書いてありますが、いわゆる環境税絡みの話でございます。もう一つが国際課税。最後に電子申告等ということでございますが、国際課税を除きました三つについて私から御説明させていただきたいと思います。

2ページでございますが、納税者番号制度でございます。これもすでに御承知のことかと思いますが、そこに書いてございますように、各種の取引に際して納税者が取引の相手方(金融機関等)に番号を告知する。それから、納税申告書、あるいは取引の相手方(金融機関等)が、税務当局に提出すべき法定資料に番号を記載することを義務づけることによりまして、納税者に関する課税資料をその番号をキーとしてマッチング(突き合わせ)するということで整理し、管理する制度でございます。

諸外国においては、アメリカは年金番号方式、北欧諸国中心でございますが、住民台帳方式といったやり方で、いわゆる納税者番号制度が採用されているところでございます。

3のところでございますが、わが国でこの納税者番号に関連する制度といたしまして、一つは、平成9年の1月からでございますが、社会保険庁のほうで基礎年金番号というのが実施されております。もう一つ、総務省さんのほうでいま準備中ということでございます。「改正住民基本台帳法」というのが成立しておりますので、これを受けまして、14年の8月ぐらいと聞いておりますけれども、新たに住民票コードという番号が通知されるやに聞いております。

次のページですが、昨年の中期答申の概要でございます。下線が引いてある部分だけ御紹介させていただきますが、三つ目のマルでございます。「納税者番号制度の導入は、利子所得などを含めた総合課税化の前提条件となり、個人所得課税の課税方式の選択の幅を広げます」。その次のところで、「タックス・コンプライアンスの向上に寄与することが、納税者番号制度の重要なメリットであり、資料情報制度などの納税を支える他の諸制度のあり方とも併せて検討を行っていくことが必要」と、うたわれているわけでございます。

その二つのマルに書いてございますように、納税者番号制度の導入にはコストがかかるということと、プライバシー保護の問題、こういった問題を克服せねばならないということでございまして、最後、結論でございますが、「制度の意義、さまざまな論点について、今後、国民の間でさらに議論が深まることを期待するとともに、全国一連の番号の整備をはじめとした諸状況(先ほど御紹介したようなことでございますが)の進展を踏まえながら、その導入について検討を進めていく必要があります」ということでございます。

このあと、新たに出てきた状況といたしまして、その次のページでございます。先ほども中里委員から、それ以降の議論の御報告がございました。この秋にちょうだいいたしました、金融小委員会の証券税制等についての意見の中で納税者番号制度に触れられております。「金融証券税制の構築に際し、納税者番号制度が存在しないことが、一定の制約要因となっていることは否定できない。納税者番号制度の導入に向けて、具体的な検討を促進することが必要と考える」ということでございます。

先ほど御紹介いたしましたように、納税者番号制度の話をします場合、どちらかというと完璧な総合課税化という文脈の中で話されることが多いように思います。私の個人的な受けとめ方でございますが、このときの議論の中では、二元的所得税論、こういったものを含めましても、制度構築に当たっての基礎条件として納税者番号制度は必須ではないか、という御議論だったと思います。

次のページでございますが、先ほどちょっと御紹介いたしました方式別のものでございます。三つ分類されておりまして、年金番号を使いますアメリカ方式、住民台帳番号のように全国民につけられる番号を使います北欧方式、これが真ん中のグループ。最後、イタリア方式と呼んでいるものは、税務のためだけに使われるというものでございます。

その次のページでございますが、先ほど御紹介いたしました基礎年金番号と住民票コード、それぞれの制度の概要でございます。

その次のページは、それぞれにつきましてメリット、デメリットを記載させていただいております。年金番号については、メリットとして、受益を伴う行政分野で利用されておりますので、わりあい取っつきやすいのではないかということ。それから、民間利用について規制がないということ。デメリットといたしましては、年金の対象になっていない方については自主申請とならざるを得ないことから、二重付番、付番漏れが生じる可能性があることに加えまして、この番号につきましては法律上の根拠がない、厚生省令で規定されているものであるということです。

一方の住民票コードのほうでございますが、これは外国人を除きます居住者すべてが対象。しかも法律上、「住民基本台帳法」という根拠がございます。他方、デメリットといたしまして、住民票コードにつきましては民間利用が禁止でございますので、何らかの法的手当てが必要になってくる。何せ新しい制度だということで、今後の動向に十分注意する必要があるということでございます。

以上が、納税者番号制度の話でございます。

次に、環境問題への対応とエネルギー関係諸税の話でございます。

1枚めくっていただきまして、9ページ、先般来ニュースになっておりますのでよく御存じかと思いますが、11月10日、COP7(気候変動枠組条約第7回締約国会議)におきまして、京都議定書、先進国が5%、CO2等を減らすというものでございますが、これについて細目が決まった。これを受けて11月12日、翌々日ですが、政府の地球温暖化対策推進本部で、「京都議定書の締結に向けての今後の取組みについて」という決定が行われました。一つは、地球温暖化対策推進大綱についての見直しと、次期通常国会に向けまして締結の承認、そのための国内制度の整備・構築の準備を本格化するということが決められております。

かたがた10月には、環境省さんのほうでございますけれども、中央環境審議会に「地球温暖化対策税制専門委員会」というのが設けられました。こちらの委員の方も何人か向こうのほうに参加されていると伺っておりますが、ここで年内5回ほど審議をして、中間取りまとめが行われるやに聞いております。

この場等で明らかにされた環境税についてのスタンスでございますけれども、環境税というのは、京都議定書の締結の必須の前提ではないということが一つ。ただし、導入されれば、この目的に沿ったものであるということが言われています。

その次のページは、中期答申からの抜粋でございます。環境税に関する記述ですが、一番大事なところ、一番目のマルですが、「汚染者負担の原則を基本とする」、それから、「規制的手法、自主的取組み、経済的手法」といった各種手法の特徴を踏まえた適切な組合せの中で、「環境施策全体の中での税制の位置づけが明確にされる必要がある」。三つ目のマルでございますが、「既存のエネルギー関係諸税との関係についてどう考えるかという議論」。一番最後でございますけれども、「PPPの原則に立って、引き続き幅広い観点から検討」ということがうたわれているわけでございます。

その次の11ページは、先ほど組み合わせると言いました、規制的手段、自主的取組み、経済的手段、それぞれについてのメリット、デメリットでございますので、御参考にしていただければと思います。

13ページは、諸外国における導入状況でございます。ヨーロッパ諸国を中心にして、いろいろな形で環境面の対応が図られているわけでございますが、その実態としては区々ばらばらだということでございます。

駆け足で恐縮でございますが、14ページ、「わが国の税制と環境との関わり」でございます。二つの面で税制はかかわっておりまして、一つは、課税目的は異なっておりますけれども、結果としてCO2の排出抑制等につながっているものとして、石油税、揮発油税等のエネルギー関係諸税があるわけでございます。

他方、PPPからしますと少しおかしいという部分もございますけれども、個々の政策目的に照らして、特例的に税負担の軽減等、租税特別措置等でございますが、これを行うものの中にも環境関連がございまして、その右に書いてあるようなものでございます。

その次のページは、エネルギー関係諸税等の概要ということで、国税のほうで7税目ございます。エネルギー関係諸税の場合、受益と負担に比較的一定の関係を見い出しやすいということもあろうかと思いますが、ここに掲げてありますいずれも、法的あるいは事実上の特定財源になっているものでございます。

このうち、特にガソリン関係諸税、自動車重量税、揮発油税、地方道路税、自動車重量税でございますが、来年度に道路整備5カ年計画が終期を迎えます。この間の暫定税率ということで上乗せが図られておりまして、この計画後も、取扱いをどうするかということを検討しなければならないということでございます。

ただ、本年度につきましては、もっぱら特定財源の関係の議論は、自動車重量税、ここについて歳出面でどうするかということが検討の中心だというふうに聞いております。

国際課税を抜かしまして、電子申告でございますけれども、一言で言わせていただきます。25ページ、e-Japan 重点計画、あるいは規制改革推進3カ年計画等で、政府全体として、2003年度までのできる限り早い時期にすべての手続き等をインターネットで行えるようにするということでございます。

国税につきましては、26ページにございますように、「平成15年度から、一部税目について」と。いま国税庁でやっておりますのは、所得、法人、消費の3税でございますが、この申告につきまして電子申告ができるようにと。それ以外の原則すべての申請手続き、納付手続きについても、15年度中に電子化するという方向でやっているところでございます。

以上でございます。

杉江国際租税課長

いまのお手元の資料、戻りまして、18ページをお開きいただけますでしょうか。国際課税につきましては、国際化の進展に伴ってどういうふうにわが国の課税権を確保していくかというのが、大きな問題意識としてございます。ここでは、外国の投資家がわが国で事業を行って、その収益を外国に持って帰るという例を出しておりますが、従来ですと、子会社とか支店という形式で進出してきたわけですが、最近では、パートナーシップとか、さまざまな事業形態で事業活動が行われております。

それにつきまして、法人課税の対象となる場合、ならない場合というものが出てきておりまして、そういうさまざまな事業体に対してどういうふうにわが国の税をかけていくかという問題がございます。さまざまな事業体の構成員に対して課税する場合も出てくると思われますが、そういう場合には、構成員がどういう所得を得ているか、そういう情報を税務当局がきちんと把握をすることが、国際課税の面において、適正な課税を実現していく上で大きな課題として考えられるところでございます。

19ページを開いていただけますでしょうか。国際課税においては、現在、OECDの租税委員会というところで「有害な税の競争プロジェクト」というのをやっております。これは、先ほど申し上げました国際化、情報化の進展に伴いまして、各国で足の速い経済活動を誘致するという、有害な税の引下げ競争が行われているという問題意識がございます。有害な税の引下げ競争が行われますと、サラリーマンの所得とか、消費とか、そういうような可動性の低い課税ベースに重課がされるということで、税体系の公平性、中立性が損なわれる。あるいは課税ベースが侵食されて税収が減る、ひいては資本移転・経済活動の歪曲につながるというのが、この有害な税の競争の考え方でございます。

現在、OECDの租税委員会では、アメリカとフランス、アイルランド、それからわが国が、幹事国として「有害な税の競争プロジェクト」を推進しているという状況でございます。

20ページでございますが、現在どういうことがやられているかと申しますと、全世界的に有害な税制をなくしていこうということで、まず加盟国の有害税制をなくすという考え方のもと、加盟国の有害税制のリストが公表されております。これを21ページと22ページにつけております。注のところに書いてありますが、OECD加盟国は新規の有害税制を導入しない、それから、現在ある有害税制については2003年までにそれをなくすという約束が行われておりまして、ここには47の有害な税制がリストアップされております。幸いなことに日本の有害税制はリストアップされておりませんが、OECD30カ国のうち21カ国が47の有害税制を持っているということで、有害税制を持っている加盟国は、2003年までにこの有害税制をなくすことを約束しております。

もう一つは、タックス・ヘイブンの状況でございます。23ページに「タックス・ヘイブン・リスト」をお示ししておりますが、昨年6月にこのタックス・ヘイブン・リストが出されまして、下のほうにございます35の国が、有害な税制を持つ国としてOECDは指定しております。

1のところにある6カ国については、有害税制はございますが、2005年までに有害税制をなくすというふうに約束したことで、タックス・ヘイブン・リストからは除外するという取扱いにしております。現在は、下のほうの35のタックス・ヘイブンの国とOECDが交渉いたしまして、上の6カ国と同様に、2005年までに有害税制をなくすかどうかということを協議しておりまして、現在までのところ、このうち6カ国が有害税制をなくすというふうに約束をしております。来年の2月までに約束をするというふうにOECDでは決めておりまして、それを受けて、来年、有害税制を除去すると約束しなかった国については、「非協力的なタックス・ヘイブン」ということで、またリストを出そうという考え方になっております。

以上、「有害な税の競争」について御説明いたしました。

小室企画課長

最後の資料、「総19-11 地方税説明資料(その他)」をお願いいたします。

3点申し上げます。まず第一が、1ページの地方税の電子申告ですが、これは地方団体がやるのを支援するということで、法令等の整備も必要ですが、具体的には13年度、14年度で標準的なモデルシステムを研究開発して、これを地方に提示する。それについて、15年度以降地方団体にやってもらうということで、3にございますように、協議会というテーブルを設けて進め始めております。

2点目は、2ページの環境との関係です。地方のほうで、温暖化対策関係、CO2関係も、緑化とか、交通基盤、自動車利用、例えばパークアンドライドとか、そういう施策を始めております。

そこで4ページに飛んでいただきたいのですが、地方税との関係で申し上げますと、従量税といいますか、使用量、排気量に応じた税制があります。それから、2番のところにありますように、公害防止とか低公害の関係、これは軽減しております。

3番が新しいのですけれども、軽課だけでなくて、環境負荷の大きいものは重課、併せて、13年度改正で自動車税、グリーン化ということでやっております。5ページに資料がございます。

さらに4番、新しい動きとしては、三重県の産業廃棄物税(法定外目的税)として同意され施行されております。これは資料が後ろに入ってございます。

最後に、9ページに飛んでいただきまして、生活保護基準の関係と住民税です。一番下の注にございますように、前年の生活保護基準額、あるいは、それから教育扶助、住宅扶助を除いたのが生活扶助額ですが、これらの額と、住民税の均等割、所得割、それぞれの非課税限度額、すなわちこの額より以下のところは住民税がかからない、そういう非課税限度額ですが、これが逆転しないようにずっと支えてきたわけです。

一番上の数字で見ていただきますと、12年度に251万4,000円から252
万8,000円に上げて、逆転しないようにと。ずっと右にいっていただきまして、14年度、このままですと前年の生活扶助額よりも非課税限度額が下回ってしまうということで、生活扶助を受けながらなおかつ税を取られる、こういう事象も起こり得るということで、この辺の御議論をいただければという趣旨でつけております。

以上です。

石会長

ありがとうございました。さて、盛り沢山のテーマの問題点の御指摘をいただいたわけです。数分でございますが、時間も残っております。この際確かめておきたいこと、あるいは、意見を申したいというところがございましたら、どうぞ。

堀田委員

取り急ぎ、二点。

まず納税者番号制度、これはぜひ導入が必要だと思います。理屈はもうしっかり決まっているので、あとはどれだけ健全な国民が支持するか、ここにかかっている。ですから、損得問題でデータが欲しい。例えば、これを導入するとどれだけきちんとした納税がなされるのか。これは推測しかないですけれども、脱税その他の数値から推測する。もう一つは、海外で取り入れた例もあると思いますので、そういったデータが欲しいなというのが第一点です。

第二点は、最初に石会長が、今度の答申は国民にわかりやすいものにとおっしゃいました。これは大事なことで、特に租税特別措置法等に取り組む際には国民の理解は非常に大切だと思うのですけれども、いままでの資料は国民にとってはなかなか難しい。どこが難しいかというと、制度の変遷といいますか、先ほど酒税でも出ましたけれども、例えば優遇制度を設けた、これを廃止するというような場合に、どういう状況のもとで、どういう政策目的でそういう優遇制度を設けたのか、そこからきちんとスタートして、その後、それがどの程度目的を達したか、その政策評価があって、だから現在はこうだと。こういう説明があると、国民は非常にわかりやすいかなというふうに思います。

貝原委員

二点、申し上げたいと思います。

一点は、環境税制についてであります。これにつきましては、先ほど資料で説明がございましたように、昨年の中期答申でも適切な方向性は出してあるわけです。私、ちょっと心配しますのは、エネルギー課税ということになりますと、徴税のやり方としては川上課税がやりやすいということになります。そういうふうに行き過ぎては問題があるなと思って意見を申し上げるのですが、この税制が、環境負荷を減少させることに最終の目的があるとすれば、いま、生活型環境汚染が非常に大きい現状にありまして、やはり川下、消費者側においてきちんとした負担が明確な形で出ることが望ましい。消費税の内税とか、所得税の源泉徴収についていろいろ議論があるようなことがこの環境税制にあっては、うまくないのではないか。そのように思います。

私も、現職の自治体の責任者のときにこの問題に着目しまして、私なりにいろいろ検討させていただいたことがあります。税源が移動するということで、単独の府県ではなかなかやりにくいという問題がたしかにありますが、法定外目的税にすればその問題は解消できると思いますので、ぜひそういうことの御検討をお願いしたいということが一点です。

もう一点は、冒頭に申し上げるべきだったのかもしれませんが、いま、地方財政のあり方がいろいろな調査会、審議会で議論になっております。来年度の地方財政対策として、交付税、補助金の見直しが現実に日程として挙がってくるのではないかと思います。このことについて税制調査会としては、来年以降御議論になる予定になっていることは承知しておりますが、ことし、財政のほうでそういうことがなされるということになりますと、当然、税源移譲も具体的な議論にならざるを得ない。そういうことをしっかり視点に置いたスタンスを、税調の答申でもとっておくべきではないかと思いますので、よろしくお願いいたしたいと思います。

河野特別委員

今年度末の環境税の書き方ですけれども、二つあって、一つは、こういう状況で国会で来年5月末ぐらいまでに批准が行われるとすれば、国内体制整備論が出てきて、当然、排出権取引……。いろいろな方式があります。消費税も関係税もあるけれども、それをどういうふうに組み合わせるかという話が出てくることは明らかです。準備が進んでいるわけですから。

いまの段階で政府税調は細かい議論はできないわけだから、政府税調としては、そういう条件が発生したときには、環境税は正式に取り組みますよという明快な意思表示をする、この一点だけでも重要なんですよ。もしそれで不十分だとすれば、ここから先はもうちょっと詳しく書いても構わないけれども、環境税導入についてはいろんな選択肢があるんですね、議論の流れを整理してみれば。一番単純なのは、非常に大型の、消費抑制的な、いま知事がおっしゃったみたいな、末端で、ガソリンも電気も消費抑制に響くような程度のすごいやつをかける。これは兆単位のお金になるという話です。

もう一つは、それはいろいろな意味で難しいし、好ましくないだろうと。二つ理由があって、既存のエネルギー税制をどう組みかえるかということがきわめて現実的な案なんだというふうにまで書き込むか、どちらかですね。そこまでの議論が当審議会でできるかどうかわからないと私は思いますが、とりあえず来年、国会批准が行われるとするならば、あくまでも財界は批准することに対して反対しますから、政府税調はきちんと取り組みますよということを意思表示するだけでも十分だと僕は思います。

石会長

タイミングをはかっての御意見だと思いますが、十分考慮したいと思います。

松本委員

個人住民税関係で申し上げたいと思います。課税ベースを広くとるということは、課税最低限を引き下げる、そういう議論については賛成でございます。しかしながら、一方で市町村の現場においては、生活保護世帯関係、所得の低い層の人たちに課税するということはちょっと問題があるのではないかと思います。そういうことで生活保護基準の引上げに対応して、所得割並びに均等割の非課税限度額を見直してきたところでありますので、今後も同様の措置をお願いしたいと思います。

水野(忠)委員

一言で申し上げます。いま出てまいりました電子申告ですが、検討を始めて、どういう納税者の利便性があるだろうかという観点から議論してきたのですが、これを拝見すると、それは当然のことで、それのみならず、いろいろな場面で申請、その他の手続きが全部電子化されると。そうなりますと、ますますセキュリティの問題が大事になってまいりますが、現在の公務員法による公務員の守秘義務といったものだけでは不十分である。電子化に対応する何か新しいセキュリティのシステムを考えていかなければいけないだろうと思っております。これは当然いろいろなところで検討されていると思いますので、折りに触れてお知らせいただければと思います。

石会長

ありがとうございました。きょうは、盛り沢山のテーマを提供いたしましたから、あっち行ったりこっち行ったり、話が飛んでしまって、なかなか議論しにくかったと思いますが、とりあえず全体の枠を決めようという形でこれだけ論点を叩いてきました。次回以降は、きょうの議論も踏まえ、また前からの議論も踏まえて、少し論点を整理した形で御議論いただくべく資料を用意したいと考えております。

次回は、12月4日、来週の火曜日ですが、2時から、同じ場所で、論点整理、答申案の作成をやっていきたいと考えております。

きょうはネットでの中継が入っておりますが、これから、起草かつ答申案をまとめていくという形でございますので、次回以降はネット中継をやめる。それから、マスコミの方、また各省庁幹事の方にも失礼ですが、例年の取り決めのようでございますので、御遠慮いただく形になろうかと思います。

ただ、昨年までとは違いまして、総会の議事録は公開しているわけです。これは引き続き、起草の段階でも議論をちゃんと世に示す必要がございますので、議事録を公開するということと、私自身が審議のあと、総会終了後に記者レクをすることは最低限やりたいと考えております。

よろしゅうございますか。やはり3時間はなかなか骨が折れますが、あと3回あるかもしれませんから、十分に気力を充実させて御参加いただきたいと思います。

きょうは、長時間、どうもありがとうございました。

〔閉会〕

(注)

本議事録は毎回の総会後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治 税務局の文責において作成した資料です。

内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。