第17回総会 議事録

平成13年10月16日開催

石会長

それでは、時間になりましたので、第17回目になりますが、税調の総会、開催させていただきます。まだお見えになってない方が二三いらっしゃいますが、追っつけお見えになると思います。

それでは、予定に従いまして、きょうのメインのトピックスが2つございまして、連結納税と租税特別措置等につきまして、小委員会でやっているその議論をご紹介いたしたいと思います。最初が、先週9日の火曜日、法人課税小委員会をやりまして、連結納税の基本的な骨子をまとめましたので、きょうはこの総会でお諮りして、それから公表のほうに向けたいと思ってます。

もう一つは、2日、火曜日の基礎問題小委員会で企業関係の租税特別措置を議論いたしました。この議論の内容もご紹介いたしたいと思います。

その前に、資料に入っていると思いますが、今井さんと貝原さん、お二人から、きょうご欠席だということで、書面でご意見を伺っております。最後のほうに入っていると思いますが、時間を見つけてぜひお目通しいただきたいと考えております。

それから、電子メールや郵送で税制全般に対するご意見を国民の方からいただいておりまして、4月から9月までの間に寄せられました意見の冊子が入り口のほうにございますので、機会を見つけて、時間を見つけてご覧いただけたらと思います。個人所得関係が25件、消費税関係が36件などで合計91件ございました。それからインターネットで中継しておりますが、それに対して、非常にいいことだということで、自画自賛でございますが、おほめのメールも来ているということで、そういう点もまた、ご関心の方はお目通しいただきたいと思います。

それでは、2つの大きなイシューズの前に、例の株式譲渡益課税につきまして、一応我々としても意見がまとまって、そして与党三党でも見直し案がまとまりましたので、それについて事務局からまずご報告いただき、議論の前段といたしたいと思います。

では、川北さんと三宅さん、簡単にご報告ください。

川北税制第一課長

税制一課長でございます。証券税制につきまして、ご報告申し上げます。

証券税制につきまして、会長からも今ご紹介ございましたが、9月18日に金融小委員会で意見を取りまとめいただきまして、その次、25日に、前回の総会でございますが、小委員長より、その意見につきましてのご報告があったということでございます。その後は臨時国会が始まりまして、冒頭、総理の所信表明演説でも、証券関連の税制についての法案を今国会に提出するというような方針が公になりまして、そういった経緯を踏まえまして、さきの10月3日に、与党三党で見直しの内容につきまして具体的なものが取りまとめられましたので、本日、それにつきまして簡単にご報告させていただきたいと思います。

お手元の資料の中に「株式等譲渡益課税の見直し」、平成13年10月3日、自由民主党、公明党、保守党という、右上に各党の名前が書いてある資料がございますが、それが10月3日に取りまとめられた資料そのものでございます。

別途、もう一個の資料で、「株式等譲渡益課税見直し案(ポイント)」という簡単な紙を用意いたしましたが、説明の便宜上、こちらに沿いまして見ていただきたいと思います。

大きく3つに分けてございますが、まず第1点が「申告分離課税の見直し(平成15年実施)」でございます。特に1は「申告分離課税への一本化」でございます。源泉分離課税、いろいろ税制上の問題点がよく指摘されてございましたが、申告分離課税に一本化するということで、金融小委員会では、できる限り繰り上げて一本化するのが適切だという意見をいただいておりました。平成15年4月が現行法でございましたが、これを3カ月繰り上げまして、平成15年の1月1日からということでございます。

所得税でございますので、暦年課税の原則ということもございますし、譲渡損失の繰越控除制度を今回導入いたしますので、年の中途からですと第1回目の申告がややこしゅうございますので、そういった便宜も考えまして、1月1日からということになってございます。そのときにあわせまして、申告分離課税の税率の引き下げを行うということでございます。上場株式を対象にいたしまして、現行が国税20%、地方6%の26%でございますが、改正案では15%、5%、合わせて20%ということでございます。

3にございますように、そのときに譲渡損失の繰越控除制度を創設するということで、上場の株式を対象にいたしまして、繰越期間は損失が生じた年以降の3年間というものでございます。

※印のところはちょっと飛ばしまして、IIにまいりますと、Iのほうはいわば恒久的と申しますか、恒常的な申告分離課税制度の改善でございますが、IIのところは当面の時限的な優遇措置といたしまして、長期、1年超の保有の株式につきましての特例がございます。これは広く国民一般が長期的な資産運用を図るというような観点から、1年超の保有株式につきまして、1にありますような本体よりもさらに税制上の恩典を与えているものでございます。

まず「暫定税率」でございますが、平成15年、16年、17年の3年間につきましては、上で20%と申し上げましたが、1年超保有につきまして、暫定税率の10%、内訳は国税7%、地方税3%、合わせて10%の暫定税率を設けるというものでございます。

次にIIの2でございますが、100万円の特別控除制度がございます。これは現行法ですと平成15年の3月31日までの制度でございましたが、これを延長いたしまして、平成17年末までということでございます。あわせまして、15年、16年、17年につきましても暫定税率と100万円特別控除の延長で、1年超の上場株式についての特例ということでございます。

それからIIIにまいりまして、IとIIは15年以降の譲渡益に関するものでございましたが、14年中の措置といたしまして、IIIに「緊急投資優遇措置」というものを設けております。これは譲渡益課税の枠組みの中で、当面の市場の関係もございまして、株式市場に個人投資家が入ってくるようにというような観点もございまして、緊急かつ異例の措置として設けられたものでございますが、上場株式を対象にいたしまして、平成14年末までに購入する。そして保有期間でございますが、15、16の2カ年間は保有しておいていただいて、売却期間の平成17、18、19の3年間の間に売った場合につきまして、14年中の購入価額の1,000万円までにつきましては、売却した場合の譲渡益を非課税にするという、緊急投資優遇措置というものでございます。法案が通りまして、公布・施行の日から14年末までの購入に対しまして、非課税措置を設けるというものでございます。

1つ前に戻りまして、Iの3の下に※印がございます。平成13年9月30日以前に取得した上場株式等に係る取得費の特例の創設というものでございます。申告分離課税でございますと、投資家のほうで申告いたしまして、いわば売り値から買い値を引きました譲渡益を計算するわけでございますが、古くから持っていた株のように、買い値、つまり取得費がはっきりしない、特に相続を経た場合などということで、そこの辺の便宜の措置の要望もございまして、今回、この※印にありますような特例を設けるようにしてございます。平成13年の9月末までに買って持っておりましたものにつきまして、10月1日の価額の8割を選択的に取得費にすることができるという特例規定を設けて、いわば申告の便を高めているというものでございます。

見直し案の大宗は以上でございますが、三党の資料の中にはこれ以外に、不動産投資証券の取り扱いですとか、新規の公開株式の特例等の調整規定などにも触れてございますが、詳細は省略させていただきます。

以上でございます。

石会長

ありがとうございました。

それでは、三宅市町村税課長、お願いいたします。

三宅市町村税課長

市町村税課長でございます。

地方税に関して、若干補完をさせていただきます。内容等はただいまご説明のありましたとおりでございます。地方税につきましては、この申告分離課税への一本化によりまして、従来、源泉分離課税に際してはやむを得ず課税できておりませんでした部分が適正化させていただけるということになります。

それから、ご説明の中にもありましたが、地方税につきましては、従来、26%のうち6%ということでございましたものが、20%のときには地方税5%、また暫定で10%の期間においては3%分ということになっております。

以上でございます。

石会長

ありがとうございました。今お二人からご説明いただきました株式等譲渡益課税見直し案につきまして、これは我々も長いこと議論してきた非常に関心のあるテーマでございますので、こういう形で一応案が固まりましたので、いろいろご意見なりご質問なりあろうかと思いますので、少し時間を設けて議論したいと思います。いかがでございましょうか。よろしゅうございますか。――皆さん、これで納得してしまったのかな。

それでは、決まったものはということだろうと思いますが、そういう形で一応決まりましたので、ご報告させていただきます。

あと、金融小委員会は次回は30日火曜日に開催いたします。一応キャピタルゲイン関係の税制は、言うならば、ちょっと不本意ながらもというところもございますが、一応けりがつきましたので、今後は他の金融所得につきまして、言うならば投信のところとか、配当のところとか、これから理論的、専門的に議論をしていきたいと考えております。また節目節目でご報告をこの総会で行いたいというふうに予定しております。

それでは、きょうの本論に入ります。最初は、法人課税小委員会がまとめていただきました連結納税に関します基本的な考え方でございます。これにつきまして、では水野小委員長のほうからポイントをご説明ください。

水野小委員長

それでは、法人課税小委員会、先ほど会長からお話しありましたように、10月9日、第17回目の会合で連結納税の基本的な考え方、取りまとめをいたしました。きょうはそれにつきましてご説明させていただきたいと思います。折に触れてその審議の経過はお話しさせていただいておりますが、きょうは報告ということで多少時間がかかりますが、20分をめどに頑張りたいと思います。

資料でございますが、白紙の上のほうに「税制調査会総会了承後公表」という表紙のついたもの、この1ページに「連結納税制度の基本的考え方」というのが出てまいります。これが本小委員会の取りまとめでございますので、これをごらんいただきたいと思います。

まず最初に、簡単に審議の経緯のお話をさせていただきますが、この法人課税小委員会が再開されましたのは一昨年の7月のことで、それから17回にわたって会合を行ってまいりました。その間かなり世の中が動きまして、具体的に、いわゆる会社法関連ですけれども、会社分割制度というのが商法に入りました。それにあわせまして、いわゆる税制上の措置を考えなければいけないということで、一たんそこで連結納税の議論から会社分割の課税のほうへとテーマを多少集中させまして、それで今年の4月に、組織再編税制ということで法人税法の本法の改正を行って施行するというような状況になっております。

そこで企業の組織再編税制という話が進んできておりますが、この連結納税制度も、企業の組織再編、極めて関係のあるものでございますが、昨年の10月に企業の組織再編税制の基本的考え方を取りまとめいたしまして、その次の11月から連結納税の検討を再開いたしました。

具体的に昨年行いましたことは、4月から5月にかけて、アメリカ、ドイツ、フランスに調査にまいりまして、この時点で、連結納税と会社分割税制、合わせて調査をしてまいりました。そういったものも基礎にいたしまして連結納税制度の議論を再開したのが11月ということで、それからほぼ1年かかりまして、「連結納税制度の基本的考え方」というものを取りまとめることができました。

そこで本題に入らせていただきますが、先ほど申し上げました「連結納税制度の基本的考え方」にちょっと目をお通しいただきたいと思います。まず最初に「基本的考え方」ですけれども、1.に「連結納税制度の意義」ということが出ております。これはかなり経済界のほうが先走って、とにかく連結納税制度を導入してほしいという話のほうが随分前からございましたが、何か理論的な基礎に立って物事を議論しませんと方向づけができませんので、そこで連結納税制度の意義というものを検討いたしました。

こちらを見ていただきますと、連結納税制度は企業グループの一体性に着目して、いわゆる親子会社、多国籍企業、こういったものになりますけれども、一つ一つの企業はそれ自体個別の法人でありますが、にもかかわらず、企業グループとした場合には一つの一体的な経営がなされていると。ここでは「あたかも一つの法人であるかのように」と書いてございますが、一体的な経営がなされている法人につきましては、課税上も一つの法人のように計算をする。ここでは「所得と欠損を通算して所得を計算する」というような表現にしておりますが、そういう形で考えることができるのではないかということでございます。非常に一体的な企業グループは経営も一体的に行われている。それに対応するには税制上も、一つのグループには一つの法人税の適用を行う。

ただ、後で申し上げますけれども、これはそれぞれ一つ一つばらばらな法人でございますので、基本的には一つ一つの法人がまず収益と損失を計算する。それを前提とした上で、それを親会社のところでまとめて調整を加えて一本化するということでございます。

何度かお話ししておりますが、決して、企業グループの一体性ということで、すべてのいわゆる取引に係る金額等、これを直接親会社が管理して、そこへ全部のデータを送って、それでまとめて計算するということではございません。あくまで企業グループですが、出発点としては、それぞれの個別の企業が従来のように法人税を計算するに当たって、収益と損失を計算してまいりましたが、その計算という仕組みを前提とした上でまとめるということでございます。その考え方といたしまして、企業グループの一体性ということ、企業グループが一体として経営がなされている、それに従って税制も対応するということでございます。

そこで、1.の(2)を見ていただきますと、これはすでにもう新聞でも公に出ておりますが、どのような会社をこの企業グループの対象にするかということです。ここにありますように、「企業の事業部門が100%子会社として分社化された企業」、ここに100%という言葉が出てまいります。基本的に対象とするのは100%の子会社である。いわゆる企業グループの一体性というのを考えますと、まさしく100%子会社が一体性をなしていると。これはそういうことでございますので、100%という要件はこの企業の一体性というところから出てきております。

そういうようなことでございますが、このような新しい課税の仕組みをつくることはどういう意味があるかということをつけ加えますと、(2)の最後の段落でございますけれども、独占禁止法で持株会社が解禁されまして、それと、先ほど申しましたが、商法の改正がなされて、会社分割制度、さらにその前に持株会社の設立のための改正なども行われております。そういうような形で企業のグループ化が一層進んでいる。現実にフィナンシャルグループといった形で持株会社が出てきておりますので、そういったものに対応して、我が国の企業の組織再編成、これを促進する。逆にいえば阻害しないような形で税制も対応して、国際的な競争力を維持する、さらには強化する。そういったことで新しく連結納税制度を創設して、21世紀の経済的な基盤、インフラストラクチャーとして使えるものを創設したいということでございます。

そこで、(3)を見ていただきますと、先ほどから言っておりますが、それぞれの法人が一つ一つの法人格を持っているけれども、納税単位としてはグループである。非常に新しい仕組みをつくるということでございます。ですから、従来は一つ一つの法人でそれなりに法人税が適用されてきておりますけれども、これを1つにまとめて課税するというのは全く新しい制度ということになります。

ですから、(3)のところに、ほかにも出てまいりますが、「創設」という言葉が出ておりますのは、我が国の法人税、これを前提とした上で、従来の法人税の仕組みと整合性がとれた形で新しい連結納税制度の仕組みをつくっていくと。こういう意味で、「創設する」ということになっております。

(4)に、これはごく簡単に申し上げますが、いわゆる連結納税の議論の間に、例えばアメリカ型だとかフランス型、ドイツ型とかいろいろ議論が小委員会の内外でなされました。場合によっては週刊誌にまで取り上げられたこともありましたけれども、そういったそれぞれの国の連結納税制度、先ほども調査に行ってまいりましたとお話ししましたように、参考になるものでありますけれども、それぞれの国が独自の背景を持って独自の歴史のもとに作成してきておりますので、我が国の連結納税制度もいろいろな考え方を参考に方針を決めてまいりましたが、基本的に我が国の連結納税制度、日本型といったものを考えております。

それから、この連結財務諸表制度も非常に大事なもので、証券取引法の改正で連結財務諸表の作成というものが強化されまして、またこれが企業のグループ化というものを一層顕著な形にしてきておりますけれども、2ページになりますが、連結納税制度と連結財務諸表、名前は似ておりますけれども、これに書かれておりますように、連結財務諸表というのはあくまで投資家、株主対象、それから企業の独自の経営判断をするに当たってのデータを提供するものでありますので、連結納税といった制度とは目的を異にしております。

さらにつけ加えますと、連結財務諸表はいわゆる多国籍企業、外国の子会社も対象になりますが、連結納税は、税制というものは国の権力の作用でございますので、それはなかなかできないということで、我が国の国内企業だけが対象になる。ここに大きな違いが出てまいります。

そこで具体的に、2.に「連結納税制度の基本構造」というものがありますので、簡単にお話しさせていただきます。(1)ですけれども、先ほどから言っておりますように、企業グループとして非常に一体性があるものということで、これは100%子会社を対象に考えております。ここは、例えばアメリカ合衆国は80%であるといったようなことがありますが、日本型という独自のものでやるということ、それから、先ほどお話ししました、一体的経営といったものを重視してまいりますと、やはり100%子会社を対象とするのがよろしいであろうということでこうなっております。

さらに、企業グループの一体性に着目するということでありますので、(1)の下のほうの段落を見ていただきますと、100%子会社、一たん連結納税制度を会社が選択する、選択する自由は認めるようになっておりますが、選択した場合には基本的には継続して適用することが求められている。なおかつ、100%子会社は全部その中に含められなければいけないと。例えば会社によって選んで連結のグループに入れて、場合によっては外すものをやるとか、そういった自由は認めない。いわゆる恣意的な租税回避につながるおそれが当然出てまいります。一言でいいますと、もうかっている会社と赤字の会社をまとめて課税するという仕組みでございますので、当然、非常に心配されるのは、租税回避、いわゆる損失を使って所得を消していくということが起こり得ますので、そういったことで、これは基本的に100%子会社、全部まとめて1つであるというところから出発いたします。

続きまして(2)でございます。しかしながら、いわゆる企業グループ、一体性であると言いますが、ちょっと矛盾するようなお話ですが、そこでもやはり加入・離脱といったものが出てまいります。現実に起きておりますけれども、例えば一つの製鉄会社の子会社をよそのグループに合併させるなり売ってしまうというようなことが現実に出てまいります。いわゆる企業の組織再編成ですけれども、企業のグループから出していく、あるいは逆に企業グループに新しく加わる。これは現在のある姿の企業グループというものと、連結納税制度が採用されて100%というはっきりした線が出てまいりますと、企業のほうでも対応して100%保有会社にしていくという作業は当然行われると思いますので、そういう関係で、後から加入してくるとか、そういうことが出てまいります。そこで、そういうようなことで加入・脱退という問題がやはり考えなければいけない問題でございます。

また租税回避に戻りますけれども、一番あり得ることは、これを簡単に認めますと、赤字会社をたくさん買ってきて、それをグループに入れると、これだけで納税額を減少させることができることになりますので、特にグループ企業への加入ということは非常に大きな論点になってまいります。

1ページ進んでいただきまして3ページ目、上のほうに書いておりますけれども、基本的な考え方として、多少これは技術的で恐縮ですが、いわゆる加入に当たりましては、加入といいますか、連結納税制度を選択するという場合も含まれますが、その段階からグループ企業になるということで、それまでは単体法人として納税単位であった。で、単体法人であった期間についてはそこで一くくりにして、ここで課税を完結させて、グループで事業活動を開始する。そういうことで、そこから新しい事業年度にするという考え方でございます。

そこで、(3)にまいりますと、いわゆる公平・中立・簡素と言われておりますので、できるだけ簡素とすべきでありますけれども、これはどの国でもそうでありますが、連結納税制度というのは単体の法人税、それを前提とした上で、さらにそれをグループ化した企業に応用するといいますか、また制度を構築するということで、嫌でも複雑なものにならざるを得ないということでありますので、ここで確認する意味で、「ある程度複雑になることはやむを得ない」と認識していただきたいということでございます。

それから、ここに諸外国の経験等出ておりますが、先ほどからお話ししておりますように、連結納税というのは一言でいえば、別の企業の損失でまた別の企業の収益を相殺するという性格を持っておりますので、租税回避に使われやすい。ですから、個別の規定のところでもそれに対応するものは設けますが、包括的な租税回避の防止規定もやはり必要であろうという基本的な方針でございます。

それで、3.「税収減への対応」というお話でございますが、非常に関心を持たれる方が多いと思いますが、すでに8,000億円の減収が見積もられているということでございます。これは大体三千何百社のアンケート調査をもとにして計算したということでございますが、この税収減の問題をどうするかと。すでに基本的な方針として、財政の問題として小泉首相が30兆円という限度を設けておりますので、それとの兼ね合いで、8,000億円の減収、これはカバーしないと、連結納税制度を創設しても動くことができないのではないかとか、いろいろございます。そこで、何らかの増収措置というものを講ずる必要があるとなっております。これは後でまた、選択肢を提供しておりますので、そこでもう一度対応させていただきます。

ただ、いわゆる経済財政諮問会議のほうの「改革工程表」の中でも、これは「財政措置を講じた上で」という留保をつけてありますので、必ずしも、すぐに、直ちに立法化して動き出すというものではなく、財政措置が伴わなければいけないということでございます。

4ページにまいりまして「基本的な仕組み」、すでにお話ししておりますので、ここはますます技術的になりますので、ごく簡単にお話しいたしますが、先ほどから言っておりますように、100%子会社対象であると。ただ、100%子会社と言いましても、最近、数年前からストックオプションが認められるようになりました。それから従来から従業員持株制度というものは存在しておりますので、こういったことが100%要件によって排除されてはまずいということですので、それについては何らかの形で除外できるようなルールをつくるということでございます。

それから2.の「適用方法」です。これは、先ほど選択できるということをお話しいたしましたが、いわゆる青色申告の承認の申請の手続というのは個別の法人にありますけれども、同じになるかは別でありますが、やはり税務当局の承認という手続を踏むことにすると考えております。一たん選択した場合には、やむを得ない理由がある場合でなければやめることはできない。というのは、それによって収益・損失の操作、いろいろ操作されてしまうことになってはいけないということでございます。

それから次、「納税主体」ですが、これは基本的には親会社が税金を最終的に計算して申告・納付するということであります。付随的に、(2)ですが、「連帯納付責任」といった技術的な用語を使っておりますが、簡単にいえば、企業グループの子会社は、なじみのある言葉では連帯保証責任、そういったような責任を負わなければいけないということであります。

それから4.の「事業年度」は省略いたしますが、5.の「連結所得金額及び連結税額の計算」、ここだけごく簡単にお話しさせていただきます。先ほど初めに申しましたけれども、各法人の所得金額を基礎とする。ですから、いわゆる親会社のところで全部データを集めて計算するというのではなくて、各法人それぞれが収益と損失を計算して、それをもとにして各法人の所得を計算いたします。これに調整を加えて、これを連結調整と呼びますが、連結グループを一体として所得計算を持ってくるということでございます。何が連結の場合の調整であるかということは、これから申し上げてまいります。

そこで5ページに移っていただきますと、時間もなくなってまいりましたのでごく大ざっぱにだけ申し上げますが、大きい点は、1つは、(2)を見ていただきますと、これは通常、内部取引と呼んでおりますが、グループ内の取引というのが今度問題になってまいります。連結グループ、一体的に経営がなされていると。しかしながら、やはり一つ一つの法人でありますので、その法人間の取引が行われるということが十分あり得ることでありますし、棚卸資産など特に、だんだん段階を踏んで系列会社を回っていくことになります。

これにつきましては、(2)の[1]ですが、基本的には時価によって計算を行う。従来ですと、ある程度、関連会社間ですと多少好きな値段で売り買いできたわけですが、これは課税上は時価によって行いますということをはっきり出しております。

ただ、時価によって行いますけれども、[2]のところですが、課税それ自体は、その取引によって動いた資産、通常、棚卸資産、その他、それからここでは土地といったものがありますけれども、課税を行うのはその資産がグループの外へ出た段階で行うということであります。ですから、基本は時価によって行うということでこれは記録されますが、課税を行うのはグループ外に出ていく段階で行う。そういう意味で、ここで繰延べと言っております。これが基本的な連結の調整の一つの大きな論点でございます。

なお、この時価の問題ですが、小委員会の中で時価と言っても、そう簡単にすぐ出てくるものでないことは、税制調査会でも、固定資産税、あるいはいろいろなところで問題になりますが、時価をどういうふうに定義づけるか、こういったことはもう少しはっきりさせるような形でというご意見もいただいております。

それから(2)の法人間の取引ですが、もう一つ、小委員会のご意見を紹介させていただきますと、[3]の寄附金でございます。寄附金というのは、一般的には、大体諸外国の例では、慈善寄附金、宗教法人、いわゆるボランティア、その他の慈善活動をやっている団体への寄附金を対象としておりますけれども、我が国の実際の実務ではそれよりもかなり広く使われております。

現実には、例えば親会社が子会社を救援するために無償で貸し付けを行ったりする例、それから債務を免除するということがあります。これも従来は実務では寄附金の中に入れて損金算入を認めてきたわけですが、ここに書いてありますように、内部取引ということで、今度は寄附金はもう損金算入はやらないということにいたしました。それに伴って、従来の実務が影響を受けて混乱するおそれが出てまいります。そこで、それに対応できるように、この寄附金の中身につきましても、定義といった形でできるだけ明確化を図るというようなご意見もいただいております。

以上が大体連結所得の計算の場合でございます。

それから(4)に飛んで話をさせていただきますが、いわゆる連結納税で重要なポイントは、この欠損金をどういうふうに扱うかということであります。原則として連結欠損は5年間で繰越控除できると。これは単体の法人の場合の例を連結企業グループに当てはめたものであります。

ただ、何度も言っておりますように、欠損金というものは非常に租税回避に乱用されるおそれがありますので、あくまで連結、この加入前のものにつきましては、持ち込まないといいますか、個別の法人独自で行う。いわゆる連結前の欠損について持ち込んで、それを使うことは認めないということ、これを原則にしております。

ただ、技術的になりますけれども、例えば合併などが伴って行われるような場合があります。それによって欠損金を動かせるかどうかですが、この春につくりました組織再編成税制の中で、例えば資格を備えた合併につきましては欠損金の繰り越しを認めたりしておりますので、それと同様な状況にあるものにはそれを認めるということでございます。

それから6ページに進んでいただきますと……

石会長

水野さん、これ全部やる? もうはるかに20分はオーバーしているのだけど。

水野小委員長

申しわけありません。もう終わりにいたします。

(4)を見ていただきますと、税収減への対応ですね。これにつきましては、連結納税、例えばすでにお話ししてました欠損金について、個別の企業の欠損金は入れないとか、あるいはその下の(5)ですけれども、連結付加税といったような税金の考え方、あるいはさらには租税特別措置等の課税ベースの拡大といったもの、いろいろな措置が考えられるということで考えております。

すでにその以降のことはもうお話ししてありますので、会長のご注意もありましたので(笑)、これで終わらせていただきまして、ご意見等を承りたいと思います。どうも失礼いたしました。

石会長

どうもすみません。途中でストップをかけたりいたしまして。大変わかりやすくご説明いただいたと思います。全文ではありませんから全容をつかみ損ねているかもしれませんが、きょうここでご議論いただいて、この総会として、この連結についての基本的な考え方をご承認いただきたいと思ってますので、どうかご質問なりご意見なりお寄せいただけたらと思います。どうぞ。

では福原さん、森下さんの順でいきましょう。

福原委員

8ページでございますが、税収減に対する「付加的な上乗せ」というのが一番上にあるわけですが、これはどういう中身でございましょうか。

水野小委員長

今お話ししました、いわゆる連結付加税の考え方のことをここではこういうふうに書いております。

福原委員

そうすると、これはますます複雑になってくるのではないでしょうか。

水野小委員長

確かに多少複雑……具体的には小委員会で、さあ連結付加税の仕組みをどうしようというところは議論しておりませんので。それはかなり大きな問題になりますので。

福原委員

議論になるときにその辺をご留意いただきたいということで。

石会長

複雑にならなければよろしいのですか。ご意見としては(笑)。そうではないでしょう。

福原委員

いや、複雑になる前に、果たして税収減になるということが本来の目的とどうなるのかということでございます。

石会長

そういうことと、それから補てんのとき、どういう手段がほかにもあるかということを考えることですね。

福原委員

はい。

石会長

わかりました。どうぞ、森下さん。

森下委員

ただいま水野小委員長から詳しくお話しいただきまして、また小委員会ではたび重なる議論を重ねていただいて、きょうこのようにまとめていただきましたことに対しまして、深く敬意を表したいと思います。

2点、意見を申し上げたいと思います。前文につきましては、先ほど意義をあえて詳しくご説明ございましたので、私も前回に申し上げましたので、その必要性ということにつきましては省略させていただきます。

2点のうち1点でございますが、ただいまご説明ありました本ページの、ちょうど石会長から全部やるのというところの最後まで入ったところでございますが、連結の繰越金額の項目であります。この連結納税制度の導入にあたり、またある意味では制度設計になるのかもわかりませんけれども、この取り扱いには本当にいろいろと功罪があったり、また意見が集中するところでございますし、我々経済界としても全部が全部受け入れられるというものではございませんが、この国際競争下で、連結納税制度を導入して企業の活性化を図っていくためには、ある程度ぎりぎりのところの何かの知恵を、今この文面には出てきているように思いますので、そのあたりを今後詳細にわたって詰めが入ると思いますけれども、そのときには、ぜひひとつ実務面とかにおいていろいろな意見をさらに吸収していただいて、何とかぎりぎりのところでお互いに制度が確立するよう、導入できるようなことにご配慮なりをしていただきたいというのが1点であります。我々のほうもやはり使いやすいということが前提でなければ意味がありませんので、その点を1点、ご要望申し上げておきたいと思います。

2点目は、前回にも特に税減収の問題が大きな話題になりまして、私たちもそのときびっくりしたわけでありますが、その後いろいろと議論を重ねてまいりました。連結納税制度を導入する当初の税減収については、やはり何かでカバーするという点においては、法人課税全体の中のベースで検討していくと。いわば法人課税全体の課税ベースを見直していくというふうな方法で、何とかそのような方法で最低限のあれができないものかと、我々もそのように一歩も二歩も踏み込んだ考え方でいきたいという思いを持っております。

ぜひその点もお互いに、今の国際環境下の中で経済の活性化をさせていくためにはこの制度が必要であるという前提で、そのあたりの法人税全体のベースの中で踏み込むべきものも踏み込んでいかないと、いや、これは反対、これは反対ではいけないのではないかという意見をちょっと申し上げておきたい。

そして新たに、まだ足りないからさらに付加税を新設するというようなことは、法人税全体の見直しの中で解決すべきであって、新たな付加税を何するということについてはあえて反対の意見を申し上げておきたい。

以上でございます。

石会長

建設的な、前向きのご発言をいただいたと思いますが、小委員会でもその辺、課税ベースの見直しを含めて検討しておりましたので、何らかの処置はできると思います。ほかにいかがでしょうか。

牧野さん、どうぞ。

牧野特別委員

この連結納税制度は、コーポレート・ガバナンスを国際的なものにあわせ、それにマッチした税制にするということで、現下非常に急がれていると思います。したがって、これはぜひ早期、来年度から発足することを強くお願いいたしたいと思います。この制度の内容につきましては、今ご説明ありましたけれども、大変結構だと思いますし、小委員会のご検討に敬意を表します。

ただ、今議論が出ておりましたけれども、最大の問題は、おそらくこの減収分をどうするかということだろうと思います。この制度は、今申し上げましたように、今後、基本的な企業活動が活性化していくということで、非常に長期的なことを目的にしているわけでありますけれども、企業が活性化すれば将来税収が上がると、したがっていいだろうということには私はならないと思います。これはこの議論の検討を始めたときの経緯からいたしましても、現下の財政事情、その他から見ましても、やはりきちんとこの減収は補てんする措置を講ずる必要があると私は思います。

ただ、その場合に望ましいのは、やはり課税ベースを適正化するということ、あるいは次の議題にあるかもしれませんが、政策減税、租特ですね、必要がなくなったもの、あるいは薄れたものについてこれを廃止するということから、結果としてそこから得られる増収分を充てるということが最も望ましいと思いますが、それでもこれがカバーできない場合、私はこれは極力こういう努力をしていただきたいと思いますけれども、カバーできない場合は、望ましくはないと思いますけれども、私は付加的な税を課することもやむを得ないと。

ただ、これについては極めて暫定的なものにするとか、相当強い歯どめをかける必要があると思いますけれども、本件が非常に長期的な制度、基本的な制度であるということ、それから、繰り返しになりますけれども、この検討を始めたときの経緯にかんがみまして、そこはきちんとする必要があると思います。

石会長

どうもありがとうございました。では水野さん、その次、柳島さんね。どうぞ、水野さん。

水野(勝)委員

今もお話しございましたように、企業の活性化に寄与できる、国際的な展開にも寄与できるという、組織の再編に関連した新しい税制は非常に結構なことではないかと思うわけでございます。大きな方向としては先ほどご説明ございました。おおむねよろしいのではないかと思います。

ただ、1つ欲を申し上げれば、まさに企業の展開は国際的になってきている。しかし、おそらく今回の連結納税制度は国内法人に限られているのだと思います。外国の子会社というものを連結にする場合には国際課税も絡んで非常にややこしくなるとは思いますが、基本的には国際的に展開するケースが多いわけですので、将来におきましてはそうした国際的な適用関係も頭に置いてもいいのではないかと思いますが、まず出発するときは、簡明な点も、簡素ということも念頭に置いて、こういう形でよろしいのではないかと思うわけでございます。

それから減収額の点については、やはりそういうふうに企業の国際競争力を強化する、活性化するということでございまして、これが数千億円、8,000億円の減収ということになると、なかなか容易な問題ではないと思います。しかし、減収、減税が目的ではないわけでございますから、いろいろな方法を通じて、何とかして減収額は解消する、あるいは最小限度にする、いろいろな方法でやってみる、考えてみる必要があるのではないかと思うわけでございます。

例えば単体課税をしたときの税額というのはわかるわけですから、単体課税をしたときと連結納税したとき、1割以上は違わないように、そこでストップするとか。やはり全体の法人に付加税となると、なかなか、納税者それぞれの企業に納得が得られるか。まずはその適用会社、適用グループに着目したそうした措置が考えられないか。そういったものも一つの方法ではないかと思うわけでございます。

あとは細かい質問ですけれども、先ほど5ページでご説明ございました連結グループ内の資産の取引で、(2)の[1]のところ、時価によって行うものとする、その中に棚卸資産も入るというようなご説明がございました。しかし、[2]のほうの取引も、棚卸資産が入ると結局はグループを出るときに課税になるのだということでご説明がございましたけれども、どうせそのグループ外に出るときに課税ということであれば、グループ間取引を時価によって云々するという実益があるのかどうか。あるいは私の説明の聞き違いか誤解かもしれませんが、要するにグループ企業間の内部取引になってしまいますので、これは無視するということだろうと思うわけでございます。

それから第2点は、後ろのほうにございました、ちょっとさっき拝見した中で、減価償却というのは単体で判定するのだというのがございます。これは9ページでございますけれども、減価償却した場合には固定資産についてのものに限るのか、例えば子会社をかなりな金を使って買収する、その買収部分の相当部分が営業権(のれん)であるというようなときに、その営業権、暖簾も減価償却としてこの場合に適用して、その会社の自分の決算、「個別計算による」とございますが、それは認められるのか。子会社を買収したときの営業権(のれん)、これはどういうふうに解釈するのか。それを個別計算で認めて本当にいいのか。いや、そのほうがありがたいとも思うわけでございますが、そこらの点を教えていただければと思います。

石会長

以上2点でよろしゅうございますか。

水野(勝)委員

はい。

石会長

では水野さん、お願いします。

水野小委員長

今、水野会長から言っていただいてちょうどよかったのですが、私は先ほど、棚卸資産のところを繰り延べるような表現をちょっと申し  上げました。これは間違いでございまして、失礼いたしました。棚卸資産は普通どおり課税いたします。

それから今の2点につきまして、特に営業権の評価、これをどうするかといった難しい問題がございますが、これはちょっとこれから詰めていただきますが、事務局のほうで補足していただけますでしょうか。

古谷税制第二課長

2点目のご質問につきまして、9ページに、減価償却費については確定した決算で損金経理というのが前提になっておりますので、各法人の個別計算ということにさせていただこうと思っておりますが、営業権につきましても、無形固定資産ということになっておりますので、基本的にはこの減価償却費と同じ個別法人ごとの計算という扱いになろうかと考えておりますが、詳細はこれから詰めさせていただきます。

石会長

水野さん、将来的に海外の子会社まで入れてはどうかというようなお話もございましたけれども、将来展望はいかがでしょうか。

水野小委員長

将来展望、これは個人的な意見になってしまいますが、確かに連結納税が一体的経営といいますと、本当は外国の法人も入れないと趣旨が通らないわけですが、そうしますと、ただ外国は外国で課税いたしておりますので、非常に難しい。移転価格税制の中に取り込んだような形になってしまいますので、これは、私個人といいますか、国家と国家のレベルの話し合いがないと非常に難しいのではないかと思います。

石会長

難しいというご指摘だけで十分だと思います。

水野小委員長

ちょっと1点だけ補足といいますか、非常に申しわけないですが、大事なのを、地方税、事業税の点をちょっと落としてしまって、まことに申しわけないことをいたしました。

8ページに出ておりますが、法人事業税ですが、これは連結には入りません。各個別の法人が収益と損失を計算するということをやりますので、事業税の場合には、その連結所得を計算する過程で出てまいります各法人のデータを使って計算するということがこちらに書いてございます。

以上の点だけつけさせていただきます。

石会長

ありがとうございました。

では柳島さん、どうぞ。

柳島委員

まず、例の付加税の話ですけれども、つまり付加税というのは戦争とか非常時のときの上乗せ税ではないかなという気が私はしておりますので、本来の筋からいえば、租税特別措置で、小泉内閣、改革を言っているのだから、そういうものを削るか、歳出を削るかでやはりやるべき筋合いのものではないかなという感じがしております。これだけです。

石会長

大体そういう流れのように思いますが。

では大田さん。

大田委員

同じなのですが、私も付加税には基本的に反対です。なぜかというと、結局この措置は、相対的に見て巧妙な租税回避をするところに有利に働いて、納税前からグループを一体として見てやっていたところに不利に働くと思うのですね。付加税は。ですから、一律に課税するよりも、水野さんがおっしゃったように……

石会長

水野さんね?

大田委員

すみません。水野先生ではなくて、水野さん(笑)。単体課税よりも、納税額が一定割り込むところに下限をつけるといいますか、その方法のほうが筋が通っていると思います。それから、もちろんこれをてこに租特を全廃に近いぐらい廃止するということが必要だと思います。

石会長

では堀田さん、お待たせしました。

堀田委員

実態を知らない素人ですのでピンボケのことを言うと思いますけれども、私は、この連結納税制度の一番基本のところの理念といいますか、そこのところがどうもはっきりしないので、ちょっと理解しにくいところがあるわけです。

それで、1ページの2段目のところに、なぜ連結納税制度をとるかというところで、実質的に一グループである場合には、個々の法人を単位とするよりも、一体として課税するほうがその実態に即した適正な課税が実現されることになると。つまり、税の実質課税の原則からして、実態的に一体であれば一体であるほうがよりいいのだという考え方だとしますと、それではなぜ選択制が許されるのか、そこのところがよくわからない。

もしこれが、名目を重視して個々の法人ごとにするのが大原則であると、ただ実態的にどうしてもという場合には厳しい条件のもとで認めてあげてもよろしいと、そういう考え方であれば選択制というのはよく理解できるのですけれども、基本の思想がどちらなのか、そこのところがわからない。

その観点からしていきますと、例えば2ページ、下から2段目ですけれども、一度選択したら、その後はそう簡単には変えられませんよと。これもやはりよくわかりかねるので、もし実態的に、実質原則で、あくまで実態に応じてやるというのであれば、実態が変わればやはり変えてあげるというのが当然の考え方になるので、一遍選択したらもうだめよというのも理屈がどうも私にはわかりかねる。

それから同じような観点であと幾つか。3ページ、下から2段目で、包括的な租税回避行為の防止。これは基本理念とは必ずしもかかわらないかもしれませんが、確かに租税回避行為、いろいろふえること、しかも難しい租税回避行為になることは十分予測されるのですけれども、包括的な同種規定をどう設けられるのか。今の逋脱犯の規定はこの上なく包括的でありまして、事前の赤字会社の欠損金、それだって逋脱規定で十分やれるので、どういうふうなことをお考えなのか。これも今のどっちの理念かで若干規定のあり方が変わってくるかなという気もいたします。

それから同じ3ページ、一番下の段の「税収減への対応」。これも実質的に一体として課税するほうが適正だと言うのであれば、適正なことをしておいて、なお減るから課税をやるというのは、一体どこからそんな理屈が出てくるのか。

これがもし、いわば恩恵的にというのはちょっと言い過ぎですけれども、本来名目的にやるのが原則で、しかし、実態を本当に備えているならば、連結課税を認めてあげてもいいと言うならば、そういう恩恵をあげるわけだから、減る分、しばらくの間はちょっとほかのほうでまたいただきますよという考え方も出てくるかと思うのですけれども、どうも、もとの基本理念が実質主義で来ているならば、ちょっとこの付加課税の理屈が出てきにくいのではなかろうか。

それからもう一点だけ。4ページの中ほどの「適用方法」で、「税務当局の承認」とあります。これも、恩恵的であるならば、もちろん承認はそれでよくわかるのですけれども、実質そっちのほうがいいという、そのときになぜ承認が出てくるのか、どういう基準で承認されるのか、そのあたりもちょっとわからないので、大変素人の意見で申しわけないのですが。

石会長

いやあ、素人ではなくて、超専門的なお立場からの鋭いご指摘だと思いますが、どうぞ水野さん。

水野小委員長

堀田先生、本当に法律家そのもの一貫したご意見をいただきまして、そのとおりでございます。ですから、やはり基本的には、企業が望んで、企業経営を行っていく上でこういうふうにしたいという希望があったときに、それをできるだけ阻害しないようにということで考えると。その場合に、企業が経営を行うときに当然、グループとして全体、大体税負担どのぐらいになるだろうという予測も立てながらいろいろ活動するわけですので、そういうことを阻害しないようにと。そういう意味で考えることができるのではないかと思っております。

ですから、先生が先ほどご指摘いただいた、実質的に一つの法人、これは少なくとも実質課税といった税務行政の考え方ではなくて、補足的な説明としてとらえていただきたいと思います。ですから、先生言われたとおりで、むしろ、先生、これは恩恵とおっしゃいましたが、まさにそのとおり理解いたしますと、先生のご説明どおりでぴったり並ぶような、一貫した理屈が立つというように考えております。

ちょっと事務局のほうから補足いただけますでしょうか。よろしいですか。

石会長

事務局よろしいですか。何かあればどうぞ。

古谷税制第二課長

いいえ、特に。

石会長

じゃ堀田理論に従ってということですな。ぼつぼつ時間ですけれども、この際ぜひというのがあれば。

では中里さん。

中里特別委員

堀田先生、実態の把握を形式的に行うというのは租税法の原則としてご理解いただけたら、その実態を判断、なかなかできないものですから、形式をということなのだろうと思います。

課税ベースの拡大と租税特別措置の整理によって減収分をということですけれども、課税ベースの拡大と租税特別措置の整理というのは、連結の導入を仮にしない場合であっても進めていかなければいけないことでございますので、その上で減収をどうするかという問題提起のほうがいいのではないかと思います。

付加税の妥当性についてはいろいろご意見あると思いますが、私が恐れるのは、この前の財務省の計算による減収額というのは、課税逃れを前提に置いてないのですね。私だったら幾らでも、と言うと言い過ぎですが、租税回避による減収分、しかも否認できないような減収分まで入れてしまいますと、なかなか厳しいものがあるのではないか。

例えば持株比率の操作なんていうのは簡単ですから、連結から離脱なんていうのは幾らでも、否認されない限りできるはずでして、その減収分も入れると、場合によっては付加税ということもあり得るというのが、連結と関係ない企業、例えば中小企業に負担がしわ寄せされていいのかという意見も出てくると思いますので、それはちょっと難しい問題だと思います。

それから、地方税も住民税が減ってくる可能性がございますので、これは地方税にとっても大切な話なのですね。

あと外国法人のことですが、タックスヘイブン対策税制は実質連結でございますが、今のところ黒字だけ合算するという形になってますので、なぜ赤字が合算できないのかという理論上の説明は非常に難しくなるということがあるのではないかと思います。

もう一つ、これは余計な話ですが、課税逃れと非常に絡むのですけれども、連結納税を行っている会社の連結というのはできないのでしょうか。つまり、親、子、孫、3段階になっていて、子会社と孫会社が連結されていて、幾つかあって、同一の親会社の下にいるという場合に、連結している子会社の連結というのは。3段階は無理ですよね。親、子と言ってますから。だけど、連結している子会社同士を親会社段階が連結するというのは、もう考えただけで疲れてしまうような感じですけれども、小委員会で議論したかどうかちょっと記憶がないものですから。

石会長

何のためのそういう疑問を持つのですか。

中里特別委員

ある種の課税逃れに使われるという想像が働くからです。

石会長

そうですか。何かお答え……。どうぞ、古谷さん。

古谷税制第二課長

今の中里先生のご指摘で1点だけ補足させていただきますと、4ページの「適用法人」のところに書いてございますが、「発行済株式の全部を直接又は間接に保有されるすべての内国法人」ということで、孫、ひ孫までいく可能性はあろうかと思います。

石会長

さて、まだ議論は尽きないところもございますが、次にもう一つ議題がございますので、ぜひということがなければよろしゅうございますか。

それでは、ちょっとここで皆さんの合意を得ておきたいのですけれども、法人課税小委員会でまとめました、今お手元にございます「連結納税制度の基本的考え方」、これは総会としてお認めいただく方向でよろしゅうございますか。皆さんのサポートは大分あったように私は座長として受けとめておりますし、きょうは大変密度の濃い議論をいただいたと思います。

それでは、これは了承したという形で、総会の一種の機関決定というふうにさせていただきます。今後はこれに基づきまして実際にいろいろな制度がもっともっと細かく決められていくわけだと思いますので、これからは詰めの作業を事務局のほうにお願いするという形になっていこうかと思います。

それでは次に、租税特別措置を中心といたしました基礎問題小委員会の内容について、まず、私が小委員長を兼ねておりますのでご説明し、かつ事務局のほうから、小委員会に出されました資料、重要なものがございますので、それにつきまして簡単にご説明いただいて、その後、自由にご議論いただくという格好にいたしたいと思います。

そこで、「基礎問題小委員会における検討課題(案)」というのが一枚紙で中ほどのところに入っていると思いますが、ちょっとご覧いただけますでしょうか。基礎問題小委員会というのは、言うなれば2年後にこの税調として提出する中期答申に備えて準備を始めたという、そういう基本的な問題を議論する小委員会でございますので、何を議論しようかというところから、一応委員の方から課題を提供いただきました。

そこで、「検討課題」という形でずうっと並んでおりますが、「検討課題」の下のほうに、まず租税特別措置、企業関係、それから企業関係以外、第2回、第3回に並んでございますが、そこから我々は手がけることにいたました。第4回目、来月中旬にございますが、一応税制がバブル期以降どのような形で変わってきたかを総点検する必要があろうと。これがメインイシューでございまして、そのほか、年が明けて14年に入ってからは、中期答申に向けた検討といたしまして、各租税ごとの問題点とか、納番とか、税でやるか保険でやるかとか、あるいは揮発油税を含めた特定財源のあり方、あるいは地方交付税、補助金を含めた形での地方税財政のあり方等々に一応向けていきたいと考えております。これはまだ日程的には固め切っておりません。

と同時に、「参考」というほうに「改革工程表」とか「改革先行プログラム」という言葉が踊ってますように、言うなれば、税制論議をする基礎になるようなことが、経済財政諮問会議を中心としてさまざま起こってございます。それを適宜メインの検討課題に組み合わせまして、副次的という位置づけになるかもしれませんが、取り込んで議論したいと考えております。

前回の第2回の小委員会におきましては、企業関係の租特をやると同時に、このマクロ的な状況下にございます、言うなれば経済・財政のいろいろ基礎的な、今起こっておりますことを議論したという意味において、右のほうの「改革工程表」とか「改革先行プログラム」等々の議論もいたしました。そういう形で組み合わせて今後やっていきたいと考えております。

そこで、本論のほうは租税特別措置の見直しの言うなれば基準づくりをやっていこうという形で、次に「租税特別措置見直しについて(メモ)」という私の私案、10月2日付のメモでございますが、租特というのは、これから事務局からご説明いただきますが、78とか79、企業関係でございます。それを一本一本片づけていくというのも大変でございますが、しかしそれはそれなりに今まで存続したというのは理由があるわけでございまして、それをどういう形で見直していくかということにつきましては、さまざまな判定基準が必要かとも考えております。

我々はやはり、先ほどの連結付加税のときもたびたび議論になりましたように、法人税の課税ベースを拡大するということが課税の公平・中立・簡素につながるし、それが我々が長年追求してきました税制改革の一つの方向づけでございますので、租税特別措置というのはどうしても見直さなければいけないと。これは長年の宿題でございます。

と同時に、公債発行額30兆円以下といったような大きな縛りがある中で、隠れた補助金でありますから、隠れた補助金を見直していくということはある意味で歳出の合理化ということでございますので、それなりに大義名分があるというふうに考えております。

そこで、このメモのほうの2ページ目を見ていただきたいのですが、ここに4つほどの基準をつくっておきましたが、これを1つだけ使うというのではなくて、幾つか組み合わせて、現にある78の租特の見直しの基準にしたいと。これは言うなれば個別に積み上げる方法の一つの手段としての具体的な基準づくりでございますが、1つは「政策目的の検証」ですね。これは、当時つくられた。しかし、20~30年たってみるとその政策目的が今の目的と合致しないということがあり得るのですね。例えば輸入の促進、あるいは貯蓄促進といったようなものが今本当に国の政策目標としてまだまだ重要かというと、そうでもなかろうということは当然ありますので、税でそれをやらなければいけないかということを今再検討する。その意味において「政策目的の検証」が必要です。

それから2番目に書いてございますが、効果。これも要するに政策減税をやるとして、コストがかかりますから、減収額であるとか、税制が非常に複雑になる、あるいはディストーションを起こす、ゆがみを起こすということもございますので、この効果を上げるのにコストがどのぐらいかかるかというような指摘も非常に重要になってまいります。

それから、あえて一緒にしてしまったのですけれども、税を使うのは最適な手段かということも実は議論する必要があるのですね。隠れた補助金と申し上げましたが、実は歳出でダイレクトにやってもいいわけでございまして、直接補助金と隠れた補助金の比較において、この租特を使う必要があるかどうかというのは、やはり最適手段の選択として重要な意義を持ちます。あえていえば、これは1つにまとめましたが、2つに分けてもいいような、ちょっと違った性格の議論とも考えられます。

それから3つ目として、特定の業界、特定の企業、特定の地域のみを言うならば集中的といいますか、重点的にこの租特の対象になっているのだったら、やはりこれは考えなければいけないかもしれない。そういう意味で、特に特定の業界の基本的な資産、これを何で租特でカバー、要するに面倒見なければいけないか、優遇しなければいけないかという問題もあったりして、こういう、あまりにも特定なものに偏っていることについてはもう一回議論はしなければいけないだろう、あるいは見直さなければいけないだろうと。

それから4番目でございますが、「低調な利用実態」。例えばリゾート法みたいに、すでに完結しているもので、つくってはみたがあまり使われてないといったようなこともあったり、いろいろなことがございますので、これも1回見直す必要があろうかという感じで見直しました。

そのほか、導入されてから40年も45年もたっているものがある。これは[1]の問題と絡むかもしれませんが、そういうのをどうするか等々いろいろ議論いたし、こういう基準についての議論をいたしました。

というのが言うなれば個別的な、積み上げ的な見直しの方向ですが、もう一つ議論になったのは、もういっそゼロベースでやったらどうかと。もう78、79一括やめて、それで本当に必要なものだけ拾い上げていくと。それは必要だというほうが立証すればいいではないかという議論も出たりして、今、小泉内閣でやっております特殊法人の見直しと同じような手法がこの際使われるべきではないかという議論、これが反対の極として出ました。

ちょうど中間としては、そうはいっても、今主税局が頑張って各省とわたり合っていろいろ交渉している中であるから、そっちのルートも使うべきであると言うなら、初年度は一括、すべての租特について10%、20%、額を切れと。それで次年度以降、別な方法を個別でやっていくとか、そういう組み合わせもあるではないかという、言うなれば3通りの議論があり、といって、どっちが有力だということではございませんが、そういう議論を積み重ねて、企業関係の租税特別措置の問題点を洗い直したということでございます。

私の説明は抽象的でございますので、これは以下事務局の資料によって裏づけていただきたいと思います。

それでは、調査課長の稲垣さん、税制二課長の古谷さん、それから企画課長の小室さんから順次、資料のご説明をお願いします。

稲垣調査課長

調査課長の稲垣でございます。よろしくお願いいたします。

私のほうからご説明いたしますのは、「資料」、基礎小2-1と書いてあるものでございます。横長の資料でございますが、この1ページ目をおめくりいただきますと、「『租税歳出』(tax expenditures)について」ということでございます。このtax expendituresというのが租特に相当します概念として国際的に使われています。租税歳出と訳したり、租税支出と訳したりしておりますが、その概念でございますが、その下に書いてございます。これはOECDのペーパーに基づいておりますが、「租税体系上のある基準又は規範(a benchmark or norm)から乖離した特別な措置であり、例えば、所得控除、税額控除、軽減税率、課税繰延べ等が含まれる」ということでございます。

ただ、その下のところに書いてございますように、「他方」ということでございますが、何が具体的にこの「租税歳出」に該当するかどうかという具体的な定義、判断基準、これは主観的なものとならざるを得ないことから、実際問題といたしまして、公表されております「租税歳出」の内容は各国ごとに異なっているということでございます。

例えばアメリカにおきましては、適格年金、あるいは401kといったようなもの、あるいは州税、地方税を所得から控除できるといったようなものまでこの「租税歳出」という取り扱いでございまして、これは後で出てまいりますが、アメリカには広い基準と狭い基準とございまして、広いほうの基準でとりますと、長期のキャピタルゲイン課税の軽減税率、あるいは一定以下の所得の法人に対する軽減税率といったものまで、この「租税歳出」の中で扱っているということでございます。

またイギリスにおきましても、中小企業の軽減税率は租税支出とされているそうでございます。また少し変わっておりますのがフランスでございまして、先ほども議論ございました連結納税でございますが、これも、ディペンス・フィスカル、英語で言いますとtax  expendituresということで、この「租税歳出」の範疇に入れられているようでございます。

その公表状況でございますが、アメリカ、ドイツでは、1960年代の後半になりまして「租税歳出」の公表を始めております。1999年時点での数字でございますが、OECD加盟国約30カ国ほどございますが、この4分の3が定期的に租税歳出の内容を公表しております。

我が国につきましては、実は米、独に先立ちまして、すでに昭和33年から毎年度、項目別の租特の減収額を、予算審議の参考ということで提出しておるところでございます。

もう一枚めくっていただきまして、これは99年のOECDのエコノミック・サーベイでございますが、この中に、我が国の租税歳出、租税特別措置についての指摘がございます。「租税歳出は、『正規』の税体系からの逸脱という点から概ね定義することができる。厳密な定義は、何が『正規』の体系と認識されるかによって、各国毎に若干異なっている。日本では、退職所得控除を含む大部分の諸控除が『特別』ではなく『正規』と考えられていることから、租税歳出はかなり限定されている。1999年度における、いわゆる租税特別措置による減収額は、約2兆円、すなわちGDPの0.4%程度にのぼる」ということで、単純に数字だけ比べてみますと、かなり小さいとか、取り方が狭いということでございまして、これは一つの見方でございますけれども、日本の場合かなり限定的に考えて、言葉は悪いのですが、ちょっと札つきのものが租税特別措置になっているという見方もできるかと思います。

次をめくっていただきまして、この租税歳出という考え方が出てきた経緯でございます。これはアメリカからでございまして、3ページ目の「経緯」のところでございますが、1960年代の後半になりまして、ベトナム戦争の戦費調達の問題を契機といたしまして、連邦財政赤字の削減について議会でいろいろ検討が行われております。この中で各種の税制上の特別措置が直接的な財政支出(補助金等)と実質的に同じ政策目的を達成する手段でありながら、隠れた補助金という表現がございますが、予算書には計上されてない。このため、予算審議にかけられない「隠れた歳出(hidden spending)」になっているということが指摘されました。

これを受けたような形でございますが、67年、当時、財務省の租税政策担当次官補でございましたスタンレー・サリーは、この方はハーバード大学の名誉教授をなさった方だそうですが、政府の予算措置を通じて行われる直接歳出以外の税制上の措置を通じて行われる間接歳出に対して「租税歳出(tax expenditures)」という造語を当てました。この上で、直接歳出、いわゆる予算でございますが、のみならず租税歳出も含んだ完全会計の必要性を主張されたわけでございます。これを受けまして、68年、翌年の財務省の年次報告書におきまして、「租税歳出予算」が初めて公表されております。

これは、3つ目の〇のところに書いてございますように、74年に法定義務化されまして、定義も明文上置かれ、大統領及び議会の予算局、CBOでございますが、ここから毎年、租税歳出予算の作成及び議会への提出が法定されたわけでございます。

この「定義」でございますが、4ページ目でございます。そこに書いてございますように、「連邦税法の規定に基づく総所得からの特別の除外、免除若しくは控除又は特別の税額控除、特別の税率若しくは課税繰延べから生ずる歳入の減少をいう」ということで、これはもちろん訳をしてあるからわかりにくいところでもございますけれども、実際これを読んでもすぐどれが租税歳出に当たるかというのはわからないわけでございまして、この判定基準として、現在、2種類の基準が用いられております。

もともとは、この上にございます標準税基準(normal tax baseline)というものが使われておりまして、これもガチガチの包括的所得概念、先ほど広い基準と申しましたが、これをもとにしておりまして、これを「正常な税構造」としておりますので、かなりいろいろな諸控除等が逸脱したものだという判定を受けるわけでございます。

これが実際やや広過ぎるということ、それから、実を申しますとレーガンが、レーガン1期でございますけれども、一気にサプライサイドの政策等をとったこともございまして、かなり増加してしまったということもございまして、こういったことも背景にいたしまして、新しく参照税法基準というのを83年から取り入れております。

これはなかなかわかりにくいのですが、現行税法の一般原則から外れたものを租税歳出としておりまして、実は、先ほど法律上の義務になっていると申し上げましたが、議会の予算局にはこの上のほうの標準税基準のみ、それから大統領府の予算局、大統領予算局でありますOMBのほうからは、この標準税基準と参照税基準という2つの基準が並列して報告されているということでございます。

実際の使われ方につきまして、GAO、アメリカの検査院のレポートでございますが、その下にございますように、抜かして読ませていただきますと、「租税歳出額の割当てにも歳出プログラムとの比較にも用いられていない。この結果、政策決定者が租税歳出と直接歳出とを明示的に比較したり、振り替えたり(トレードオフ)することはほとんどない」ということで、完全会計ということでかなり野心的に出てきた試みでございますけれども、必ずしもうまく使われてはいないということでございます。

さはさりながら、では租税歳出、アメリカでは放置しっぱなしかということになりますと、5ページ以下に書いてございますが、いろいろな取り組みが行われてきております。クロノロジカルに並べておりますので、ざっと述べさせていただきますと、最初は69年に導入された措置でございますが、ミニマムタックス。これはやり方が非常に複雑でございまして、78年、あるいは86年に、個人、法人それぞれ、代替ミニマムタックスという制度に変わっておりますが、要するに各種の特別措置を利用して税負担を大幅に軽減している個人、法人については最低限の税負担を計算いたしまして課すという制度でございます。

それからその下、2.「サンセット法導入の試み」ということで、これは歳出、歳入両面におきましてサンセットとすることを義務づける法案でございましたが、その最後に書いてございますように、審議の途中で租税歳出はそもそも外されるということの上、最終的には廃案になっております。

それから6ページ目でございますが、レーガンの税制改革、これはレーガン2期目でございますが、86年のレーガン税制改革におきましては、14の租税歳出項目が廃止、16の租税歳出項目が規模縮小。そこに所得税、法人税それぞれ例がございますが、こういった整理を行いまして、86年から88年にかけまして、それ以前に比べますと、額にして4分の1程度、租税歳出がカットされたという歴史がございます。

それからその下の4.のところはPay-As-You-Go原則ということでございます。下の〇でございますが、結論から言いますと、義務的経費を新たに設ける場合、もしくは減税を行う場合には、増税または義務的経費の削減が同一年度内に行われなければならないということになっておりますが、基本的にスクラップ・アンド・ビルドで、何らかの歳出か歳入のほうで財源を持ってこない限り、特別な税の措置等はとれないという原則が法定されているわけでございます。

それから7番目はまだ途中の話でございますけれども、Line-Item Veto Act、項目別拒否権法というのがございます。これは一たん違憲判決を受けておりますが、ここにおきましても、[3]のところでございますが、100者以下のものを対象といたします税制上の恩典措置につきましては、個別に大統領のほうが拒否できる拒否権を発動できるという規定を置くことを2002年度の予算教書のほうで提案しているところでございます。

ざっとでございますが、以上でございます。

石会長

では、古谷さん、お願いします。

古谷税制第二課長

税制二課長でございます。

お手元の基礎小2-2という資料をお開きいただきたいと思います。企業関係の租特を中心にお話をしたいと思いますが、まず1ページ目でございます。こちらの税制調査会のほうでも、租特につきましては、税制の基本原則との関係で、そこにございますように、特定の政策目的を実現するための政策手段であるということと、基本的に特定の人々の負担を軽減することにより誘導しようとするものである。それから租特自体は「公平・中立・簡素」という租税原則に反するものであるという整理をしていただいておりまして、こうした考え方のもとに、これまでも整理・合理化の努力をしてきているのですが、特に2ページでごらんいただきますと、小泉内閣のいわゆる「骨太の方針」の中で「経済の再生」という項目の7番目に「税制改革」というのが整理されておりまして、その中で、租税特別措置について聖域なく徹底した見直しを行うという方針が示されております。

これを踏まえまして、3ページをご覧いただきますと、今年の8月、シーリング閣議の際に、大変異例ではありますが、財務大臣のほうから、14年度税制改正においては、従来、事実上聖域となってきた租税特別措置についても徹底した見直しを行い、廃止を含め大幅な整理・合理化を行っていく必要があるということで、関係閣僚に協力依頼をしたという経緯がございます。

4ページをお開きいただいて、大変小さな字で恐縮でございますが、「企業関係租税特別措置一覧」で、78項目、税額控除・所得控除、特別償却、準備金、その他ということで、特別措置の手法ごとに整理させていただいております。下のほうに、小さな字でございますが、(注)2.で、「上記のほか、経済対策として中小企業投資促進税制がある」と書かせていただいておりますが、平成10年の総合経済対策で講じられて現在も続いております中小企業投資促進税制、これを加えまして、現在79項目、企業関係の租特がございます。

5ページをご覧いただくと、それぞれの租特の手法の例ということで書かせていただいておりますが、上の税額控除、所得控除の2つはいわゆる法人税を永久に免除する手法の特別措置でございます。投資減税等に税額控除は多用されてきた経緯がございます。

それから3番目の〇の特別償却は、通常の減価償却を超えまして加速度的に償却を行うものでございます。初年度の特別償却という手法と一定期間の割増償却という手法がございまして、一定の設備投資等につきましてインセンティブを与えるという税制措置として、この特別償却も多用されてきた経緯がございます。

それから一番下の準備金、これは特定の費用又は損失に充てるため利益の留保を認めるものでございまして、引当金とは異なり、特別措置として位置づけられてきておりまして、この特別償却と準備金はいわば課税を繰り延べるという特別措置の手法でございます。

6ページは省略させていただいて、7ページをご覧いただきますと、よくご覧いただく表でございますが、平成13年度租税特別措置による減収額は、所得税、法人税、その他で2兆4,000億円ほどございます。このうち、きょうご覧いただくのはその法人税4,900億円ということでございます。これが79項目の減収規模が現在5,000億円弱になっているということでございます。

それから8ページが今の7ページを項目別にやや詳細に整理したものでございまして、このような形で国会に資料として提出させていただいておるものでございます。

それから9、10はちょっと飛ばしていただきまして、11ページをご覧いただきますと、企業関係租特のうち減収額の大きいもの、79項目のうち、いわばベスト15というのをここに並べてございます。この減収額が100億円を超えているのが上から12番目までで、このベスト15だけ、右側の減収額を足しますと、約4,600億でございますので、全体4,900億のうち、上から15番目までの措置でその大半を占めているということで、79項目、企業関係租特ございますが、一つ一つを見ますと、極めて小さな租特が減収額という観点からはあるということでございます。

このうち、左側の番号で1番、2番、それから5番、7番、14番、このあたりは中小企業関係の租特でございまして、ざっと計算いたしますと、中小企業向けの租特が先ほどの4,900億のうち3,000億強ということで、3分の2が中小企業関係の租特でございます。

それから3番目のエネルギー需給構造改革推進投資促進税制とか、12番、公害防止用設備、15番、再商品化設備、こういったところはやや環境対応、環境対策の観点から講じられてきている租特でございます。

それから13番をご覧いただくと、低開発地域等工業用機械等の特別償却。これは昭和36年に創設されましたが、池田内閣の所得倍増計画のときに地方に工場を移転しようといったような観点でつくられた特別償却制度がなお残っておるというものでございます。

それから6番目とか8番目、使用済核燃料再処理準備金、原子力発電施設解体準備金、これは電力会社が使っておられる準備金でございます。

それで12ページに進んでいただくと、先ほどの4,900億というのが法人税収全体でどのくらいのウェイトを占めるかというのが、一番下の13年度のところで4.1%となっております。このように、企業関係の租税特別措置の減収額が法人税収との比較でどれぐらいのウェイトになっているかというのを年次的に並べたものでございますが、高度成長のころ、40年代は7%台、47年に9%までいったことがございまして、やはり高度成長のころは投資減税的な特別措置を多用しておりましたが、その後、50年代に入りまして、財政再建路線の中で、租特についても整理・合理化が進んできておりまして、大体3%前後というウェイトになっておりますが、先ほど申し上げた平成10年の経済対策で中小企業投資促進税制を行うようになりまして、11、12、13と、括弧の中でございますが、やや最近高くなってきているというのが現状でございます。

それから13ページをご覧いただいて、「創設後長期にわたる企業関係租税特別措置」ということで、5年刻みで書かせていただいておりますが、一番古いのが昭和26年にできた船舶等の海外特別償却というものがございます。先ほど申し上げた低開発地域工業開発地区における機械の特別償却というのは、40年以上のところに昭和36年と書いてございます。

それぞれの措置が手つかずでこのまま長年経過しているということではございませんで、例えば一番古い船舶の特償についても、特別措置の対象となる船舶の種類等についてはその都度いろいろな見直しをし入れかえをしてきております。このように長い間項目として継続している措置がかなりたくさんあるというのが現実でございます。

それから14ページはこれまでの整理・合理化の状況を整理させていただいておりますが、廃止や縮減について毎年努力してきておりますが、なお新規の創設といったこともございまして、現在、78+1という状況になっているところでございます。

それから一番最後の15ページでございますが、先ほど会長からもお話がございましたように、法人税の企業関係租特につきましては、法人税の課税ベースの拡大・適正化という観点からもぜひ必要であるということで、これまでも連年努力してきておりますが、引き続き、先ほどの「骨太の方針」のもとで、私どもとしても作業を進めていきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

以上でございます。

石会長

それでは、地方税関係、小室さんから。

小室企画課長

はい。今の「説明資料」、基礎小2-2の9ページのところでございますが、地方税のほうは、実は次回、26日の基礎問題小委員会になりますので、概要になってございます。そこに主なものが挙がってございますが、個人住民税、法人住民税につきましては、これは都道府県の分と市町村の分それぞれ足し込みになっております。内訳は次ページに書いてございます。

それともう一点、国税の所得税、あるいは法人税の特別措置が影響するわけで、特に今ご説明がありました国税の法人税のほうの特別措置というのが、ここでいいますと、法人住民税ですとか、あるいは都道府県の事業税、こちらにはね返ってまいります。

なお、固定資産税については、そのうち新築住宅、これにはマンション等の中高層のものも含めまして約1,580億円、新築特例が入ってございます。

以上でございます。

石会長

ありがとうございました。

なお、79の個別の中身についてご関心の方は、基礎小2-3の「参考資料」というものに細かく載ってますから、ぜひお帰りになりましてからご検討ください。

それでは、あと15分ほど時間がございますので、私がご説明したことに加え、3人の課長から資料説明ございましたことも含めて、15分ほど時間を割いて議論いたしたいと思います。租特の考え方、あるいは進め方等々についてご意見、ご質問あればどうぞ。どなたもいらっしゃいませんか。

諸井さんあたり、何か発言をしていただけますか。

諸井委員

そうですねえ。企業の人間でこういうことを言うといかんかもしれんけれども、これなんか、もう全部やめたらどうかなという気がします(笑)。機関委任事務制度撤廃のような感じで、これ一個一個やっていたらなかなかいろいろ出てくるのではないですか。僕はよく知らないけれども、これは政治が絡んでいるのですかね。つまり、例えばこの租特をつくるときに、政治家が、これはおれのつくった租特だというのはあるのですかね。

石会長

よくわからないから、ちょっとそれ、ご説明いただこうかなあ。党税調の役割はここにあるのではないですか。

石井審議官

創設の経緯それぞれございますけれども、それぞれの業界等、幅広く関与、関連しておる措置もございまして、当然、政治の世界でもそれに伴いましてご関心をそれぞれ強くお持ちになっておられます。年末のいろいろ党でのご議論の際にも非常に個別の問題についてさまざまなご意見がその場で表明されるわけでございます。

石会長

したがって難しいということですな、個別につぶしていくのは。しかし、まあやる必要があるでしょうね。

諸井委員

だから、逆にいうと全部つぶしてしまうほうがいいのかもしれませんね。

石会長

建設的なご意見というのか、破壊的なご意見かよくわかりませんが(笑)、私、賛成ですね。どうぞ、松尾さん。

松尾委員

この連結納税制度との絡みですが、連結納税制度の実施に当たっては、租税特別措置、法人関係、基本的にはやはり全廃すべきだと思うのですね。それで、実際残すとどういうことになるのか。基本的な考え方、各個別制度における取り扱いの中で一部は出ているようですけれども、仮に生き残った租税特別措置については、連結グループ一体を対象とするのが当然だろうと思いますが、やはり一部、個別に扱わなければいけないというケースも出てくるのでしょうかね。その辺ちょっと質問ですけれども。

石会長

ちょっと水野さん、もう一回説明して。あなたの領域だよ。

水野小委員長

私の意見が入ってよろしいでしょうか。

石会長

構いません。どうぞ、どうぞ。

水野小委員長

先ほど稲垣課長がおっしゃいました、フランスでは連結納税そのものが特別措置であると、それから堀田先生の、恩恵的な制度ではないかと。そうしますと、何か、いわゆる連結納税制度を創設すると、それと対照的に今度は中小法人のための特例が特別措置といってつぶされていくと、今度、中小法人から連結納税制度そのものに対してすごい反発が出てくるという、この両者の対立ですね。このあたりがどうなるか、私、非常に心配になってまいりまして、連結納税制度は法人税法本体、あるいはそれ以上の大きな形をなしまして、特別措置という扱いではないですが、実質的に一般の企業家の方が見た場合には、ある意味で、大企業のグループを救済して片方で中小法人の特例を廃止する、この非常に対立した状況ですね。これを考えると非常に難しいなと思います。

石会長

何か経済界のほう、ご意見……。どうぞ、松田さん。

松田特別委員

最近いつも同じ話をしているので若干気はとがめるのですけれども、要するに日本企業の国際競争力の低下というのは著しいものがあるわけでして、税で何とかしてやってもだめな企業が多いのかもしれませんけれども、税で何とかしてやれば助かるという企業もあるし、これから再生ということを目指すなら、税である程度のことを考えて、国際競争力の面である程度のことを考えてやってもまあしかるべきではないかと最近考えてます。

例えばアイルランドなんていう国、非常に栄えているのですけれども、あそこはやはり税のインチキで栄えている部分がかなりあるわけですね。これは現実なのですね。だから、日本は本当にこういうところ、まじめにやってきて財政がガタガタになったのですけれども、まじめにやり過ぎて、今度は企業もガタガタになりつつあるということはやはりもう少し考えてもいいような気がします。

あと、石先生のご指摘の中で、直接補助金でというお話、それで効果を測定するというところがあったのですけれども、直接の補助金というのは今WTOでかなりひっかかりますね。今度のアメリカの航空会社に対する援助についてもかなりEUが文句言うとかいうことで、企業に対する直接財政支出というのは世界的に相当否認される傾向になってきてます。

税のほうは、OECDでいろいろ有害な税制というのをやってますけれども、まだ税は各国固有の国権の範囲という概念が強いですから、それとあと、わかりづらいということもこれありで、お目こぼしに遭っているケースが多いわけですね。ですから、そういうことも考えて、私は、一律全部廃止というのはやはり乱暴であって、個別に一つずつ見てやるしかないのではないかと思います。

非常に格好悪い意見で言いづらいのですけれども、あえて発言させていただきました。

石会長

いや、よろしいのではないですか。ただ、松田さんのおっしゃるWTO等とひっかかるというのは、輸出促進にかかわるような財制の特別措置ですよね。

松田特別委員

いや、それだけではないですよ。

石会長

いや、でも、それは何たって直接補助金でやってはいけないというのは輸出優遇ですよ。79レベルの話になるとそう多くないですよ、それは。だから、国内の企業を大いに助けて、結果として輸出のほうに向けるという考え方はよくわかりますけれども、今云々の話はさほど議論には結びついてこないような気もしますがね。

ただ、おっしゃるように、アイルランドではないけれども、少し律儀にやり過ぎるのはけしからんというのも一つのご意見ですから、租特の議論のときには重要な一つのアングルかもしれません。ご意見を伺っておきます。ほかにいかがでしょうか。

どうぞ。

堀田委員

では簡単に。基礎小にちょっと出れなかったものですから。

私も諸井さんのご意見に賛成ですけれども、ただ、人を処刑するときにはやはり弁解を聞かなければいけないので(笑)、恩典は大いにあるから意見はもちろん聞かなければいけない。問題は、業界が絡む、政治が絡んでますから、一斉に弁解ではなしに、圧力とか、そういう非合理的な方法で来ることは大変に好ましくないので、それで、この税調に窓口といいますか、その主張の受付係のようなものを事務局なら事務局に設けてもらって、業界なら業界でまとめて、なぜそれを存続しなければならないのかを簡潔にまとめ、データも簡潔に添えてそこへ提出してもらって、それを審議する。そこで合理的な議論を展開できないものはもうだめであると。政治的なそういう圧力は全部そのルートを通じて論理でやるというような形をひとつ設けると、聞けるのかなという気はいたします。

石会長

小委員会では事務局が随分ご苦労になっているわけです。各省との折衝で。その苦労話もちょっと一部ご披露はいただきましたが、おっしゃったとおり、まだ我々として相手の言い分を聞いて断を下すというような措置をやるべきだというのはおっしゃるとおりだと思います。考えてみる必要があると思います。どうぞ、水野さん。

水野(勝)委員

今の堀田委員のおっしゃる手法、一つ一つ本当に事務的にやっていてもなかなか限界があるという点がありますから、何か新しい手法が効果的なのかもしれないと思います。

それから1つ、これは非常に難しい面ですけれども、地方税の関係で社会保険診療報酬の特例というのがある。これはまさに先ほど話のあった政治に絡む問題だろうと思います。この社会保険診療報酬は国のほうにもあるわけで、8ページを見ますと、国の場合には190億の減収になっている。一方、地方税の場合、事業税ですけれども、820億。これは圧倒的に地方税のほうに大きいわけですけれども、これは昭和29年にできた、昔からの長い歴史のある問題ですが、国税の減収も相当大きかった。

しかし、消費税の導入を含む抜本改革のときに大きく取り上げられまして、基本的にかなり縮減されて、国税では190億に対して、地方税、事業税のほうが今や大きくなっているという点が注目されるわけでございます。このあたりはおそらくいろいろな利害関係が絡んで難しい面ではあると思いますけれども、取り上げられていい問題ではないかと思うわけでございます。

それからもう一つ、9ページの地方税の関係で見ますと、(注)に、住宅用地の固定資産税の特例は入ってないという注書きがございますけれども、固定資産税の小規模宅地、これは現在、課税標準が6分の1になっている。昭和40年代から始まった土地問題への対応だと思いますけれども、最初は2分の1になり、次が4分の1になり、今6分の1であるということで、この20~30年来、普通の住宅に住んでいる人の固定資産税というのはほとんど変わってないという実態ではないかと思うわけでございます。

これが6分の1が6倍になれば相当な収入規模にはなるわけですが、それは言うべくしてなかなか難しいかもしれない。現金収入が伴うわけでもございませんので、非常に昔から難しい問題とされているわけでございますけれども、地価が安定化と申しますか、低落傾向にあるというときには、6分の1はせめてその前の4分の1なり何なりに縮減できないか。これはしかし、この整理によりますと租税特別措置の中に入っていないということでございますが、検討されてもいい問題ではないかと思います。

石会長

地方税のときにそういう問題も出てこようと思いますが、総務省側から、社会保険診療について何かお答えすることございますか。その後、佐野さんにお願いします。

岡崎都道府県税課長

今お話しのとおり、地方税、はるかに大きいのは、もうご承知のとおり、地方税のほうは原則非課税になっております。これは29年に議員立法で非課税になって以来、いろいろ議論はありましたが、そのままの形で今来ている。国税のほうは、一定の概算経費等はありますけれども、基本的に課税で来ておりまして、かつ、それを逐次適正化してきているというような経緯がありまして、地方税がちょっとおくれて残されてしまっているような形がございますので、私ども、これにつきましては機会をつかまえて何とか是正したいと思っておりますので、基礎小においてまたご議論いただきたいと思っております。

石会長

では佐野さん、最後によろしいですか。どうぞ。

佐野委員

この租税特別措置の議論というのはもう何十年も実はやっているわけで、そのたびに、全部やめろとか、いろいろなご意見が出るわけですが、私はこの問題に遭遇するたびに空しさを感じております。例えば一番最初のほうにあった株式の譲渡益課税、おそらくこれも特別措置になろうかと思うわけですが、特定の条件づきながら、株を売って所得を得ても税金はただよと。それを特別措置として認めますと。しかし、例えば増加試験研究費の税額控除、これはけしからんと、やめちまえという議論がどうしてできるのか、そこら辺が非常に悩ましいところだと思います。先ほどからいろいろ、全部やめろというご意見が出ているわけですが、それだったら、じゃこの株式の譲渡益課税もどうなるのだというところの議論もちゃんとしておかなければいけないと思います。

それから、先ほど堀田さんのほうから、何か窓口的なものをつくろうというご提案がありましたけれども、私も基本的に同感なわけです。実はこういうことをやると、例えば税調がいろいろな関係団体あたりの陳情とかなんかでまたもみくちゃにされるので、私はあまり個人的には乗り気ではないわけですが、租税特別措置をめぐる一つの特徴といたしまして、わからないうちに結論が出てしまうと。毎年問題になるけれども、何か当事者同士で、知らないうちに自民党の税制改正大綱に載っているという。つまり第三者の目を経ない、つまり評価を経ないところで決まるということも租特の一つの特徴で、これは何とか排除しなければいかんなということで、やり方はいろいろありますでしょうし、負担とか摩擦等々起きるかもしれませんが、第三者の検討に付するというところは必要かと思います。

石会長

ありがとうございました。

ちょうど4時になりましたのでぼつぼつ終わりにしたいのですが、よろしゅうございますか。

河野特別委員

ちょっと一言。

石会長

どうぞ。

河野特別委員

黙って帰ると頭が痛くなるから(笑)。

これは事務局に対する質問ではなくて、森下さんに聞きたいのです。きょうは今井さんがペーパー出して、それで同じことを森下さんもおっしゃったのだけれども、連結納税に絡む話で、一次減収に対する対応として、あくまで法人税の課税ベース見直しによって対応すべきであると考えると今井さんは書いてきたのですよ。牧野さんも同じようなことをおっしゃったのだけれども、そのときに、森下さんが例えば法人税の課税ベース見直しというときに、具体的に2つ3つ挙げていただけば何ですか。

森下委員

例えば退職給与引当金というのが一例にありますね。

石会長

きょうは大分歩み寄りのあった議論が出てきたなあという気がいたしておりまして、座長としてまとめがいがあるのかなとは思っておりますが、それともまた違った議論も片や少しは出てきておりますが、いずれにいたしましても、きょうは連結と租特、これが意外に結びついているところがありまして、議論いたしましたが、大変実りのある議論だったと思います。具体的なご提言も多々いただいたような気がいたします。

後のことにつきまして若干ご報告、お諮りしたいことがございますが、次回の総会は11月20日の火曜日、午後2時から開催の予定でございます。

そこで、11月末から恒例の年度改正の議論に入らなければいけないのですが、これはおそらく11月の最後の週から12月の2週、12月前半にかけて議論が本格化すると思いますので、まとまった段階でまた総会にお諮りする必要もございます。そういう意味で、普通は定例日は火曜、金曜なのですが、それ以外にもお集まりいただくことをお願いするかもしれないので、ちょっとご了解いただきたいと思います。いずれ正式にはご案内を差し上げる予定でおります
それから年度答申のほうでございますが、これは毎年、来年度の主要な税制改正項目について議論し、昨年は発泡酒の問題も含めていろいろやったのですが、今回は、「骨太」「簡潔」という言葉がはやっておりますように、なるべく明確にしたいと考えておりまして、コンパクトな形でまとめられたらと考えております。

それから、当然のこと、起草委員会というのをいつも年度の末の審議にはつくっており、会長代理の上野さんにお願いするということに多分なるのだと思いますが、この答申案の作成の起草委員会には、甚だ申しわけございませんが、基礎問題小委員会のメンバーの方々に兼任でお願いしようかと。大体そういう腹づもりで基礎問題小委員会も立ち上げておりますので、ついでながらお願いいたしたいと考えております。

年度改正について特にご要望等々ございますか。よろしゅうございますか。

それでは、時間が若干過ぎましたが、きょうはこれで終わりにいたしたいと思います。どうも長時間ありがとうございました。

〔閉会〕

(注)

本議事録は毎回の総会後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。

内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。