第16回総会 議事録
平成13年9月25日開催
〇石会長
それでは、第16回総会を開催いたしたいと思います。
この総会は夏休み明け最初でございます。この間、新聞紙上等で御存じのように、三つの小委員会が立ち上がっておりまして、おのおの議論を開始しております。きょうは、それを中心に御報告し、御意見を賜りたいと考えております。
金融小委員会では、いま一番重要な証券税制を議論しておりますが、基本的な考えを、先日、表に出しました。8月31日以降4回にわたってやっておりますので、きょうはそれを中心に御議論を賜るのではないかと思っております。
法人課税小委は、午前中、連結納税制度の骨子案をめぐって議論し、かつ、減収額をめぐって幾つかの試算も、きょう、御報告できると思っています。
それから、より長い目で見た税制の根幹にかかわる議論を始めようということで、基礎問題小委も立ち上げました。今後、どういう問題をやろうかという論点を整理してテーマを決めようという形で議論いたしましたので、この御説明もいたしたいと思います。
同時に、9月3日に財政制度等審議会との合同会議をやりましたので、どういう議論があったかということも後ほど御紹介したいと思います。
それでは、本日の議事に入る前に、総務省の事務局に異動がございました。石井税務局長から御紹介いただけますか。
〇石井自治税務局長
9月1日付で人事異動がございましたので、御紹介申し上げます。
まず、株丹前市町村税課長でございますが、今回、新しく固定資産税課長になりました。
三宅義彦は、総務省の大臣官房会計課企画官をやっておりましたが、新しく市町村税課長になりますので、よろしくお願いいたします。
それから、お世話になりました井上源三前固定資産税課長は、総務省の自治行政局市町村課長になりましたので、ひとつよろしくお願い申し上げます。
〇石会長
それでは、早速きょうの審議に入りたいと思います。
最初に、金融小委員会がまとめました「意見」につきまして、奥野さんから、その背景、あるいは、基本的な考え方等々につきまして御説明をいただきたいと思います。
奥野さん、よろしくお願いします。
〇奥野小委員長
お配りしてある「証券税制等についての意見」という資料がございますが、これは、先週9月18日の金融小委員会で取りまとめました意見でございます。これについて、簡単に御説明させていただきます。
まず前段の部分で、いわゆる「骨太の方針」ということで、「証券市場の構造改革」として、「貯蓄優遇から投資優遇への金融のあり方の切り替え」ということが主張されました。それに伴って「税制面での構造改革」を着実に実行することが必要だというふうに述べております。
「証券市場の現状認識等」というのがIでございますが、イの部分で、「一部の限られた『個人投資家』が短期売買で利益を狙う場としてだけではなく、広く一般の国民が、長期・安定的な資産運用を図ることが可能な場として、証券市場の健全な形成を目指していくことに政策の重点を置く必要がある」。
あるいは、ロですが、「証券業界や市場自体への不信感の存在が大きいので、その払拭が必要である」。
ハですが、「発行会社においては、株式重視の経営姿勢を確立することが求められている。また、行政においても、市場監視・取締りの抜本的強化が必要である」というふうに述べております。
ホですが、「貯蓄を優遇してきた制度・構造の是正も重要な課題」として挙げております。
ヘでは、「包括的な『インフラ』を早急に整備することが重要であり、関係者の積極的な対応を望みたい」というふうに述べております。
以上をもとにして、トで、「本小委員会は、こうした本質的問題の解決抜きに、税制によって証券市場を活性化させることには限界がある」ということを強く指摘しているところであります。
3ページ目の「II.証券税制のあり方」でございますが、(1)の「基本認識」として、イで、「市場の透明性や信頼性の向上と整合的な方向を目指すことが必要である」というふうに述べております。
ロでは、「『金融のあり方の切り替え』との方針に照らし、一般の国民による株式の長期・安定的な保有を促し、厚みのある市場形成に資することが重要である」として、むしろ「売買」ではなく、「保有」に着目した見直しのほうが本来は重要であるということを指摘しております。
ハでは、貯蓄優遇税制に関して、少額貯蓄非課税制度等(老人マル優等)についても、「基本的には、その廃止に向け検討することが適当である」としております。
さらに4ページの「(2)株式譲渡益課税のあり方」でございますが、この具体的な論点として、イで、「源泉分離選択課税方式は、これを廃止し、申告分離課税へ一本化すべきである」としております。
ロでは、「源泉分離課税の廃止時期をできる限り繰り上げることが適当である」としております。
「損失繰越」につきましては、イで、「申告分離課税へ一本化され、源泉分離選択による税負担調整が不可能となった後は、損失繰越制度の創設を検討すべきである」としております。
ハで、「現行の源泉分離選択課税方式の下で、損失繰越を認めることは採り得ない」としております。
さらに、「申告分離課税の税負担水準」につきましては、5ページの一番下のハで、「申告分離課税への一本化後においては、100万円特別控除制度を廃止または縮減した上で、長期保有上場株式の譲渡益に関しては、税率を原則として20%とすることが適当」としております。
6ページに、「簡便な申告」についても触れております。
以上でございます。
〇石会長
ありがとうございました。
この問題をめぐりましては、当政府税調以外にも、さまざまなところでさまざまな議論が起きております。総会に御出席の委員の方々も非常な関心をお持ちと思いますので、少し時間を割きまして、この報告書に対する質疑でも結構でございますし、御意見でも結構でございますし、あるいはまた単独で、御意見をお持ちであれば御紹介いただきたいと考えております。きょうの一つの大きなテーマでございますので、じっくり議論したいと思います。どうぞ、どなたからでも結構ですから、御発言ください。
〇室町特別委員
ただいまの御報告の中で、ちょうど3ページに当たるところだと思いますが、「『売買』ではなく、『保有』に着目した見直しを検討する」、こういう言葉がございます。実は私どもの銀行は、いま、保有株をかなり積極的に手離しているといいますか、売却しておりますし、今後、株の保有制限という問題も出てまいりますと、さらにかなりの量の株式を売却していくことになると思うわけであります。
そんな中で、このことはある意味でここにもうたわれていると思いますし、広くその他でうたわれておりますが、銀行保有ということではなくて、投資の主体が個人を中心としたそういう方向へ行く、そういう証券市場の改革とか、ひいては、金融システムのあり方として直接金融市場の強化、こういうことになる。そういうことで非常にいいわけで、そんな中で私も、「保有」に重点を置くことは大変大事なことではないかと思うわけでございます。
これは、銀行の預金利子に対する源泉分離との整合性という問題はあるかもわかりませんが、この辺のところはそういうふうに理解したらよろしいのでしょうか、ということでございます。そうであれば、これはそういう方向がいいのではないか。ほかに、申告分離における税率の引下げとか、その他、いろいろ出ております。こういったことは、先ほどのような観点から言って、直接すぐどうこうということではなくて、長期的に株式市場がよくなったときに本当に価値を発揮するという意味でも、中長期的には重要なメッセージであろうと思います。意見とも質問ともあれでございますけれども、保有の場合の税率なども検討課題になるのかなということをちょっとお伺いしたいと思います。
〇石会長
保有の場合というのは、どういうことですか。
〇室町特別委員
ごめんなさい、配当課税です。これをどういうふうにとらえたらいいのでしょうかと、そこも含めてですね。
〇奥野小委員長
要するに、こういう保有の問題が重要であるということを指摘するにとどまっておりまして、具体的には配当課税をどうするかとか、場合によっては、保有枠によってある程度の減税もあり得るかと思います。そういう意見もありましたけれども、具体的なことに関してはまだ煮詰まった議論はしておりません。御意見として承っておきたいと思います。
〇石会長
これは、どちらかといいますと譲渡益のほうを中心に議論いたしましたから、当然、その背後にはおっしゃるとおり配当の問題も念頭にございますけれども、これには盛り込んでおりません。ただ、小委員会では今後議論の対象になろうかと思います。どうぞ、ほかに。
〇森下委員
論議が非常に多岐に渡ると思うのですけれども、5ページに、「税率を原則として20%とすることが適当と考える」と。この20%原則というのは、もっと下げたらどうだとかいうような論議はあまりなかったのでございましょうか。
〇奥野小委員長
税率を下げたほうがいいという議論も全くなかったわけではないのですが、小委員会の中では少数だったというふうに私は記憶しております。20%程度までという議論が利子所得等との並びで多数意見に近くて、むしろ26%に据え置くべきだという議論もございました。お答えになりましたでしょうか。
〇森下委員
先ほどの配当の問題とも絡むと思うのですが、本来これを取り上げている間接、直接とか、また、個人の株式投資の方を多く誘導する一つの税制としては、もう少し思い切って税率を下げることも、この機会にいいのではないかということを意見として申し上げておきます。
〇石会長
この報告書をごらんいただきますとわかりますように、あまり少数意見は紹介してございませんし、両論併記もやめております。たった1カ所だけ、5ページには載せてありますが。そこで少数意見は紹介していないので、20%以下の議論はのっかっておりません。
ただ、100万円の基礎控除と抱き合わせますと、20%というのは、実は利子所得の20%よりはるかに優遇されているのです、この間数字を出しましたように。ようやく433万円までは20%以下になりますから、そういう意味で20%でもかなり優遇なので、10%になるとどうかなという問題は小委員会のメンバーはかなり持っていたと思います。それで書いていないということでございますが、御意見を承っておきます。
いかがでございましょうか。
〇奥本特別委員
当事者でございますので、ちょっと意見を申し上げます。
委員会におきます、源泉分離課税を廃止して申告分離課税に移行するという考え方につきましては原則結構だと思います。ただ、申告分離課税に移行するにつきましては、やはりそれなりの優遇制度をいろいろ考えていただきたい、インセンティブをつけていただきたい。つまり、先ほど室町委員からもお話がありましたように、市場の活性化といいますか、現在の国民金融資産をどうやって証券市場に取り入れてくるかということが主目的、主題だと思っております。したがって、ここにありますように、税率につきましても、やはり思い切った引下げがぜひ望まれるところだというふうに思っております。
また、申告分離課税という制度をとっていただきませば、いわゆる譲渡損失の繰越控除という制度も、ぜひ実行していただきたいというふうに思うわけです。
ただ、移行するに当たっての手順は大変重要かというふうに思います。源泉分離課税という制度がいいとか、悪いとかという議論は別にしまして、長いことこの制度になれ親しんできていることは事実でございますので、申告分離という制度に移行するにつきましては、この制度の円滑な実施のための手順がいろいろあるのかなというふうに思います。
最後に書いてあります、申告分離制度になったときに、簡便な申告ができるようにすることはぜひとも必要なことでありますし、また、現実問題としまして、取得価格が不明の株式等に対する手当てといいますか、対応といいますか、これも申告分離に移行するについては絶対必要な部分かと思います。こういったことを踏まえますと、現実には、取り扱える証券会社がいろいろ事務的な負担をすることが、顧客に対して、簡便な申告をするためにどうしても必要なことなのかなというふうに検討の中では我々思うわけですが、そのためにはシステム面の対応もどうしても必要になります。一部言われていますように、前倒しの実施ということで、例えば来年早々にもそれが実施されるということは、あまりにも乱暴すぎるというふうに思うわけです。やはり円滑な制度移行のための経過措置をぜひ検討していただきたい。
また、現在のような分離課税の制度とは離れても、源泉分離への移行に伴う混乱を避けるためにも利用上の経過措置も現実には必要なのかなと。何らかの手当てをしながら、若干の期間、そういったものを残すことも現実には必要なのかなというふうにも思っております。
また、繰り返しになりますけれども、長期保有のために配当課税の軽減ということはぜひ今後の課題として考えていただきたいことだと思いますし、大きく国民の預貯金の流れを変えるという点では、例えば贈与税の特例措置を検討していただくこともいずれは必要なのかなというふうに思っております。
株と並行しまして投資信託につきましても、株式と同じような措置が今後の問題としては起こるのかなと。やはり小口の資金を集めるための投資信託というのは重要な商品だと思いますし、投資信託につきましても株式と同じような優遇措置を考えていただきたいと思います。
〇石会長
奥野さん、投資信託について議論したことを御紹介いただけますか。
〇奥野小委員長
3ページ、(1)のロの第2パラグラフですが、「その際、一般の国民が個別に市場参加するのではなく、投資信託など、仲介機関を通じて株式を保有する仕組みの重要性も指摘できる」というふうに投資信託についても書き入れてございます。これは小委員会の議論で、基本的に投資信託はきわめて重要だし、損失繰越においても、投資信託の損失繰越を認めることは重要ではないか、という指摘があったがために入れた文章でございます。
ただ、現実問題として言いますと、投資信託の税制上の扱いが株式等と違っていろいろな法律上の問題がありまして、そう簡単に措置できないということがあるために、今回の考え方ではこの程度の文章にとどめさせていただいております。
それから、奥本委員から御指摘の、源泉分離等のとりわけ経過措置等の問題でございます。おっしゃることはよくわかるのでございますが、これは実務のことでしょうから、国会とか当局等で御検討なさると思いますけれども、一点だけ申し上げておきますと、奥本委員もおっしゃられる損失繰越を導入するためには、源泉分離と申告分離を並立させたままではできないというのが小委員会の基本認識でございます。損失繰越を導入するためには申告分離へ一本化することは必要であって、損失繰越をとにかく早く入れないとリスキーな株式の活性化にはつながらないということで、申告分離に移行することをできるだけ早くというのが我々の考え方になっております。
〇石会長
投資信託については小委員会でも大変活発な議論がありまして、いずれ近いうちに、時間をとって本格的に議論をしようと言っておりますので、そのうちまた結果を御報告できる時期があるかもしれません。そういう状況です。
〇奥本特別委員
ありがとうございます。重ねて一言ですが、実行を早めることについて基本的なお考えはわからないわけではないですし、我々自身も、早くいろいろな優遇策をとっていただきたいということもあるのですが、周知徹底させる問題とか、あるいは、先ほど言いましたようなコンピュータの処理上の問題も、現実問題としてはきわめて大きな問題でございます。いたずらに混乱を招くリスクも大変高いのかなと思っておりますので、その点につきましては十分な御配慮をお願いしたいと思います。
〇石会長
承っておきます。事務当局もずいぶん検討すると思います。
〇和田委員
2ページで、「家計の資産選択における変化を促すとすれば、貯蓄を優遇してきた制度・構造の是正も重要な課題となる」、3ページで、少額貯蓄非課税制度について具体的には老人マル優というのがまず出てきておりまして、「その廃止に向け検討することが適当である」とありますけれども、これには疑問を感じております。
と申しますのは、老人の実態を見ておりますと、高齢者世帯の所得は平成11年で250万円以下というところが53%になっているわけです。これは、平成10年は四捨五入して48%だったところが11年には53%になっている。中央値を見ましても、平成10年が258万円だったのが、11年には230万円になっているという厳しい高齢者の実態が出ております。
例えば250万円としても月額20万円ということで、高齢者の生活費が幾ら要るかというのはいろいろなところで数値が出ておりますけれども、おおむねぎりぎりの生活で20何万、少しゆとりのある生活だと、さらに数万ないし10万円は要るということが出ておりますので、この50%以下の高齢者の生活というのは、なけなしの超低金利の中で貯金をしながら、それを取り崩している実態だと言うことができると思います。
そして、高齢者に限りませんけれども、預貯金の目的は、病気になったときであるとか、老後の心配というのがまずトップに出てくるわけです。その点を考えましても、元利が安定しているとか、何かあったときにすぐ換金できるというために、やはり預貯金に頼らざるを得ない生活をしております。たとえここで少額貯蓄非課税制度、あるいは老人マル優の廃止がありましても、そういう高齢者が、リスクを負って証券投資というものに向けるだけの余裕はとてもないわけで、その辺を考えていかなければならないというふうに考えております。
ですから、高齢者の中でも、高額の所得の方、あるいは資産が非常に多い方についてはそれなりの負担を求めるのは当然ですけれども、50%以下の人が年収250万円以下だという実態を考えたときに、ここでストレートに老人マル優の廃止というのは、社会政策の上から問題ではないかということを申し上げておきたいと思います。
〇石会長
ここに「廃止に向け」と書いてございますので、廃止そのものではなくて、縮減という意味もたぶん入っているはずであります。枠を全部埋め尽くしていないというのが現状ですから、その辺、幾つか議論の余地はあると思います。論理整合的に預貯金から証券投資という意味がここに入っているものですから。でも、検討の対象にしたいと思っています。
奥野さん、何かありますか。
〇奥野小委員長
一言だけですが、これは税調の小委員会なので、どうしても貯蓄優遇の仕組みということになったときに出てくるものは老人マル優になるわけですが、そのほかにも貯蓄優遇の仕組みとして、少額公債の制度とか、少額郵貯の制度とか、あるいは郵貯そのものが政府保証がついているとか、さまざまな意味で貯蓄優遇されている。それの一つの典型的な例として、やや象徴的に老人マル優を扱うという面もあることをお断りしておきたいと思います。
〇石会長
今野さん。
〇今野委員
国民の預貯金中心から株式投資の方向に大きく意識を変えていこうというのは大変結構なことですし、そのために証券税制等を見直していただくことも大事なことだと思っております。でも、税制を変える前にまず国民が株式投資に向かうようにしなければいけないわけです。1ページのIのロにも書かれておりますように、「一般の国民の証券市場への参加が進まない理由としては、証券業界や市場自体への不信感の存在が大きな要因としてあげられる」と。そのとおりでして、過去二つの大きなバブルの中で、一般の投資家は大変大きな傷を負っているわけです。そういう経験からどのように意識を変えていくかということになりますと、そんなに生易しいことではないと思っております。
例えば日本とアメリカの証券会社の仕組みを考えただけでも、日本は、売買をしたその回数と量によってその証券会社は利益を上げていくわけですけれども、アメリカは、自分が持っている投資家に利益を上げさせて、そのパーセンテージで証券会社は利益を得る、そこが基本的に考え方が違うと思います。
私も試しに日米両方の証券会社にお世話になってみたことがありますけれども、そういう仕組みの違いから、当然のことですけれども、ポートフォリオの組み方なども真剣味が全く違うんですね。日本の場合は、投資家に損をさせようが得をさせようが、売買をさせるたびにチャリンチャリンと落ちていくわけですから、証券会社としては全く痛みがないわけです。そういう基本的な構造改革をないがしろにしたまま意識だけを変えようと思っても、それは全く無理なことだと思っております。
ロのところにも、「まずは不信感の払拭に向けた業界自身の更なる努力が必要」と簡単に書いてありますけれども、その辺のことに関して、証券会社はどういう認識のもとに、何を反省して、どのような改革努力をしようとしておられるのか。もしこの金融小委員会の中でその辺の具体的な議論があったのでしたらば、その辺もお聞かせいただきたいと思います。
〇石会長
当然、その議論もいたしましたし、奥本さんに有識者でお越しいただき、証券業界に詳しい方もいらっしゃいまして、一応お話をお聞きいたし、その辺の業界の実態、問題点、改革の方向等々につきましては議論を承りました。それが現状でございますが、何か中身についてお知りになりたいですか。
〇今野委員
どれくらい一般の投資家の痛みが……。
〇石会長
それでは、奥本さんがいらっしゃいますから、そのときに述べていただいたことを御説明いただいたほうがいいですね。
〇奥本特別委員
厳しい御指摘でございまして、御指摘の点につきまして、我々証券界として厳しく反省していることも事実でございます。基本的に信頼という一つの触媒みたいなものがなければ、リスクマネーの導入というのは不可能であることは当たり前のことだと思います。残念ながら、御指摘を受けるようなことが過去においていろいろあったことも事実だと思います。私どもとして、では、それに向かってどうするかということにつきましては、改めていろいろな改革の取組みをしております。具体的にこの場で申し上げていいのかどうかあれですが、少なくとも昨年来、すべての証券会社のトップと私自身全部面談いたしました。いかにそういったことに取り組むかということについて改めて問題を提起し、それぞれ議論を積み重ねました。
その結果としまして、21世紀に向けての証券会社の取組みにつきまして、このたび5項目を挙げまして徹底を図っております。証券会社の店頭にそういったものを張ると同時に、各営業マンの営業手帳にそういったものを添付するなどのこともしております。もちろんコンプライアンスという問題につきまして、大変重要であると同時に、価格変動商品を扱う上での問題というのは多々ございます。この辺につきましても、本年4月に入りましてから重ねての徹底を証券会社との間で図っております。また、金融庁からもアクション・プログラムが出ました。いろいろ細かい御指示もちょうだいしております。
いま御指摘の点につきまして否定するつもりはございませんが、少なくとも私が昨年就任以来、この業界は大きく変わりつつあるということにつきましては、自信を持って申し上げられる部分だというふうに私自身は思っております。証券市場というのは、たしかに媒介となります証券会社の信頼が重要な部分であること、これは間違いございません。しかし、それだけで証券市場が一般大衆のものになっていないのかどうかということ。つまり、株式の下げ相場の中でのいろいろな問題点が現実には投資家離れを起こしていることも事実だと思っております。また、あえて申し上げれば、日本の政策そのものが、預貯金有利の、いわゆる預貯金に傾斜したもろもろの政策が従来ともに打たれていたという問題もあるのかというふうに思っております。いずれにしましても、御指摘の点につきましては肝に銘じております。一歩一歩直してまいりますので、ぜひ御了解いただきたい。
ただ、いま委員がおっしゃられました、アメリカと日本との営業方針が違うではないかという点につきましては、かなりの改善といいますか、現実的にはかなり大きく変わっております。現在、アメリカの大手証券会社の営業方針と、日本の大手証券会社の営業方針と大きく変わってはいないと思います。アメリカも大から小までいろいろな証券会社があることも事実でございますので、何分よろしく御理解のほどお願いします。
〇石会長
突然話を振りまして申し訳ございません。今後、大いに改善・努力していただきたいと思います。どうぞ、島田さん。
〇島田委員
この小委員会のレポート、非常に簡潔に重要な点をとらえてよくできていると思うのですが、一つ、全体的な考え方と、二、三、質問ですが。基本的にこの問題意識は、金融のあり方を切りかえていく、これまで貯蓄に人々も依存していたし、企業も銀行からの融資に依存していたという考え方が、今日の不良債権問題、その他を含めて限界に来ているということがあると思います。それを、できるだけ自己リスクのリスク資本市場のほうへ、個人の金融資産のポートフォリオも、企業の資金調達のあり方も転換していこうと、基本的な考え方はこういうことでよろしいんですよね。
そうしますと、ここで証券市場という言葉は、現状の一部、二部市場とか、そういうことに限られているとは書いていませんけれども、改善の方向はそちらのほうに具体的な議論が出ているのですが、一つ、基本的な考え方としてこういうことは御議論を深めていただけるといいのかなと思うのです。それは何かというと、証券市場は言ってみれば大きなピラミッドになっているかもしれません。上場市場というのは、いろいろな条件を満たした企業が公開市場で上場して取引をする、こういうことで、これももちろん重要なのですが、しかし、多くの方々が長期で資産を保有する、特にリスク資本を保有するというには、どの企業の将来性に賭けるのか、どの産業の将来性に賭けるのか、そういうことについての興味がなければいけない、あるいは理解がなければいけない。ここは、基本的な人々の自覚というか、あるいは教育問題なのかもしれないですね。
産業構造全体を見ると、未公開株の市場というのが本来はもっともっと大きくなければいけなくて、中小企業の場合はすぐには上場できにくい。しかし、未公開株でそれを保有してもらって資金調達もする、あるいは興味を持った人たちが、自分の理解できる企業の将来に賭けるということでその資金を持つというのは、プライベート・エクイティ・ファイナンスの話ですけれども、あるわけです。プライベート・エクイティ・ファイナンスは、大変な専門家の方が個々の企業の将来性を見てやるという仕組みはアメリカでも日本でもありますけれども、アメリカなどに比較的広まっているのは、それほどでなくても、身近な企業、地元の企業で未公開の株を長期で持つというような考え方もあるわけです。日本で言うと、例えば匿名組合をつくってそこで資金を調達する、あるいは間接的に投資事業組合が入ってそれをやるという仕掛けもあります。
ここら辺のすそ野を広げる作業、そして人々に、企業の将来とか、経済の将来に興味を持ち、かつ責任を持ってもらうという基本的な考え方がないと、投資したのに何で損してしまったんだとか、貯金で優遇しておいてくれないと困るとか、そういう認識とか知識とか情報がないと、どうしてもそうなってしまうわけです。だから、全体の考え方ですけれども、基本インフラでもう少しその辺を議論していただいて書き込んでいただいてもいいのかなと思います。プライベート・エクイティ・ファイナンスの話だと思います。
それで、ちょっと質問なんですけれども、さっきの投信です。一般の多くの庶民は、基本的には投信でないと、あるいはインデックスか何かでないと、リスクもわかりませんし、個々の企業を理解しにくいので、どうしてもこうなる。これについては暫定的、過渡的には私は非常に大きいと思うのです。あるいは、現実的に資本市場拡大というとやはり投信だと思うのです、個人の多くの中産階級の資金をそこに導き込むには。それは、先ほどいろいろな理由でもって難しいのでというお話がありましたけれども、これは「難しい」では済まないので、何が難しいのか、一つ、二つ、御説明いただければありがたいし、そんな簡単に2分や3分で説明できるということでなければ、こういう仕掛けで法律的に難しいのだということを、事務当局でまた用意していただいて教えていただけたらありがたい。
もう一つは、もっと簡単な問題ですけれども、損失繰越は何年ぐらいという議論を皆さんは腹積もりとして持ってやっておられるのか、教えていただきたい。
〇石会長
3年でしょうね。
〇島田委員
3年ですか。短くありませんか。
〇石会長
過去にさかのぼる期間が長いほど複雑になりますからね。島田さんは5年とおっしゃりたいのですか。
〇島田委員
僕は、5年ぐらいあってもいいのではないかと思います。
〇石会長
そこは議論になると思いますけれども、一応我々は念頭には3年を置いて議論したはずです。
〇島田委員
わかりました。最後の質問はお答えいただいたので、投信の問題はどうですか。あるいはプライベート・エクイティ・ファイナンス。
〇奥野小委員長
先に損失繰越のほうですけれども、4ページの一番最後のロに、「特例として認められている現行の損失繰越制度(災害による損失繰越等)などとの整合を踏まえた」と。その「災害による損失繰越」というのはまさに3年なのです。ですから、ここに書いてある文章も暗黙のうちに3年ということを言っている。ただし、具体的な年限の議論は明示的にはしなかったのですが。
〇島田委員
だけど、災害は緊急非難ですよね。
〇奥野小委員長
はい。
〇島田委員
リスク資本ですから、いろいろな変動があるので、一体どこが適当なのかというのは、緊急非難として3年というのがあったから、それで横並びでというのは……。
〇石会長
書いてないのは、決めていないということですよね。念頭にはこれとの関係で3年を中心に議論したということです。
〇島田委員
5年ぐらいを見てしっかりやっていただきたいという要望はあります。
〇奥野小委員長
投信に関しては事務局に説明してもらったほうがいいと思います。私みたいな素人は特に法律のことは全然わかりませんので。
〇島田委員
とんでもないです。ありがとうございます。
〇奥野小委員長
一言で言ってしまえば、投信が株式と同じ扱いになっていないということです。それを、ほかの金融資産との関連も踏まえながらきちんと議論していく、まぎれのないような税制をつくっていくためには、すぐにはできないということです。難しいからできないという意味ではなくて、すぐにはできない、だから中期的に考えましょうということです。
〇島田委員
さっき和田さんもおっしゃったのですけれども、所得水準の低い人にとっては少額貯蓄の優遇というのは不可欠であると。私もそれはある種理解できるんですよね。少額で投資をする最初というのはやはり投資信託で、相当多数の方も投資信託で、それを集めて機関投資家は膨大な額を運用するわけです。それについて、法的な扱いが全然違うのはわかりますけれども、経済全体のあり方、人々のニーズから見て、ここはどんなに急いでも、投信についても株を持つのと同じぐらいの優遇がなければおかしいと思うのです。
〇石会長
いま、配当所得の扱いになっていますけれども、一課長の川北さんにでも説明してもらおうかな。
〇川北税制第一課長
では、一言だけ御説明させていただきます。
投資信託の収益につきましては、現在の所得税のもとでは配当所得のものの考え方でございます。ただ、一部の公募の株式投信につきまして、公社債投信もそうですが、利子並みの課税ということで、一部の株式投信については利子並みの課税をしております。結論として、利子と同じように源泉分離の20%の課税を一部の株式投信にしてございます。そこは、配当所得ではありながら利子並みというのが現在の扱いでございまして、これは、利子並みで源泉分離で取りきりで終わりという形が、おそらく庶民にとってはむしろ利子との並びでわかりやすいというような経緯もあってとられてきた制度かと思います。
現在議論になっておりますのは、株式投信、そのほかの投信につきましても、仮に損が出たときにそれ以外の利益と相殺をするとか、株式並みの優遇をするとかいうような御議論でございます。そうしますと、いま配当収益だけれども利子並みだというふうにしているものを、もう一回配当並みに考え直す、あるいは配当と譲渡益の関係をどうする、いまの利子並みにしているのも一部の投信でございますので、株式投信以外に公社債投信もございますし、それをミックスしたものもあるというようなことで、現在の所得税の中での利子・配当、キャピタル・ゲインの関係をもう一度整理する必要がある。今回は、キャピタル・ゲインの議論がございましたので、その部分だけ「意見」としておまとめいただきましたが、株式投信にしますと、そういう税法上の問題の整理をさせていただきたいということを事務局のほうは思っているところでございます。
〇石会長
将来の課題にするつもりですから。
〇島田委員
とても大変だと思いますけれども、ぜひお願いしたいですね。
さっきのプライベート・エクイティ・ファイナンス、未公開株について、小委員長から何か一言いただけますか。実は、企業の将来性を判断していく一つのあり方としてはかなり身近なんですよね。
〇奥野小委員長
いま事務局からも出ましたけれども、今回の意見というのは、譲渡益課税を中心に議論を取りまとめるということで、基本的に上場していないものに関しては見るのは非常に困難であるといいますか……。
〇島田委員
視野の外と。
〇奥野小委員長
そうですね。投信も含めて関連することに関しては、早急にもう少し検討していきたいというふうに考えております。
〇島田委員
要望ですけれども、金融のあり方の転換を考えたときに、産業構造の広がりでは、未公開株、中小企業、そういうところへ多くの人たちが資金を投入していく、そうしながら学んでいくというのは、インフラとしてはとても重要なインフラなので、いずれかのチャンスにできるだけ早く議論していただきたいと思います。
〇石会長
現状においては、小委員会ではやや荷に重すぎるかなという感じはしますけどね。それなら島田さんに入ってやってもらおうか。要するに情報を取るのが大変でしょう。これは小委員会の中でどこまでできるかわかりませんが、問題意識としてはまさに鮮明にお出しいただきましたので、念頭に置きたいと思います。
ほかにいかがでございますか。
〇佐野委員
この小委員会の意見書ですが、出だしは大変結構だと思います。つまり、譲渡益ということよりも、「広く一般の国民が、長期・安定的な資産運用を図ることが可能な場として、証券市場の健全な形成を目指していくことに政策の重点を置く必要がある」と。この最初に書き出したことは大変評価できる点ではないかと思います。
ただ、それにしてはそのあと出てくるのが全部譲渡益課税の話ばかりでありまして、一番最初に書かれているなら、もう少し配当課税についても踏み込んだ記述があってもよかったかなと思います。お話を伺っていると、時間的余裕、資料的な余裕がとてもないということではありますが、譲渡益課税に関する部分は、これを見ますと、どうも来年4月実施ということのようであります。この4月実施に合わせて、配当課税についてもどうするのか併せて決めてもらいたい。今度の臨時国会では間に合わないかもしれないけれども、年度改正に向けて配当課税のあり方を精力的に議論していただきたいということです。先ほどの会長のお話ですと、中期的とか、長期的とかいうことを言われた。聞き間違いかもしれませんが、そうではなくて、来年4月に間に合うように議論していただきたい。
投資家からしますと、譲渡益がどうなるか、配当益がどうなるか、キャピタル・ゲインとインカム・ゲインは不可分のものでありまして、一体的になって投資を判断するというのが投資家の行動なわけであります。譲渡益だけ決めて配当のほうはいつになるかわからないということでは、的確な投資判断ができないということにもなりかねません。ひとつ年度改正に向けて頑張っていくという気持ちで取り組んでいただきたいというのが、第一点であります。
それから、高齢者のマル優の問題が3ページに出ております。先ほどの会長の説明では、「廃止に向け検討する」ということで穏やかな表現になっているということのようでございます。それはそれで理解できるのでありますが、私のような立場から見ると、ここに老人マル優の廃止というのが出てくることが証券税制とどう絡むのか。ありていに言うと、少し悪ノリではないかという気もいたします。私は、これはこれで存在価値があると思っているものでありますから。もちろん、350万円が3種類あって、全部合わせると1,000万円超えるということについては若干異論もありますが、それを全部やめてしまうということなのかどうか、ここは慎重に御検討いただきたい部分かなと思います。
それから、老人マル優に関してどうも理論的な進め方で、「貯蓄優遇から投資優遇」と。その線上に老人マル優の廃止問題が出てきているようでございますが、これをやめることが果たして貯蓄優遇の見直しなのかどうか。逆に、これをやめるからよけい貯蓄する。つまり、利子収入を確保するためによけい貯蓄してしまうという反応も経済の世界にはあるわけでして、これをやめることがすなわち貯蓄を減らす、株に向かわせることに必ずしもなるのかどうか。ここら辺の理論的検討も再考の余地があるのではないかというふうに考えております。
それからもう一つ、これは質問でございます。無駄な質問かもしれませんが、これは、例えばストックオプションとか何か、あるいは上場公開時の利益等々全部ひっくるめた議論ということですね。
〇石会長
この中でですか。
〇佐野委員
株の申告分離の……。
〇石会長
配当についてもストックオプションについても触れていないのは、ここに書いてございますように、いま緊急の課題として、キャピタル・ゲインを中心にして証券税制のさまざまな要望、意見が出ていますね。それについて、我々もできる範囲で意見をまとめておこうとしたので、これですべて終わりではなくて、おっしゃるような配当についても、また証券税制をめぐるストックオプション等々についても、まだ奥野小委員会は続きますので、金融小委員会という中で次なるものをいろいろ議論する課題は持っているわけです。だから、すべてこれで証券税制は終わりという意味ではございません。よろしいですか。
〇佐野委員
確認ですが、そうしますと、ここに書いてあるのはあくまで上場されている流通株であって、ストックオプションの場合の譲渡時とか、未公開株を売って公開利益を得た場合とかいうのは、ここでは想定していないわけですか。
〇木村審議官
御承知のとおりストックオプションについて課税の特例がごさいます。これは、株式に関するものでございますし、申告分離課税に関するものでございますけれども、今回、金融小委員会で緊急におまとめいただきましたのは、株式譲渡益課税に関する基本的な考え方ということでございます。具体的にこれがこういう形になった場合にストックオプション税制がどうなるのか、それから、公開株に関する創業者利潤の課税の特例をどうするのか、これは次の問題だろうと思っています。
ただ、そういった問題につきまして、これから金融小委員会で取り上げるかどうかは、まさに奥野小委員長、それから会長等に御相談いただく話だろうと思っております。
〇石会長
予定した時間が来ましたので、河野さんと菊池さんで終わりにしたいと思います。
〇河野特別委員
全体の状況を考えて、2カ月くらい前までは、金融小委員会の先生方の作業も年末をめどに仕事をやってこられたと思うのです。しかし、諸般の事情これありで、スピード感が求められている世の中だということもあって、テーマを限定しながら一応結論を出された。しかもそれは、少なくとも税調なり金融小委員会の先生方が、かねて思っていらっしゃるようなことを整理されたというふうに思うのです。臨時国会でどうこうという話が処理の問題としてあるそうですけれども、いまの段階で、テーマを限定してスピード感を持ってこの問題を処理することは政治的にも経済的にも賢明だと思うのです。
もう一点は、そういう議論の流れをリードする形をとったのは実に珍しいことで、党税調ではなくて政府税調であったということも、諸般の事情からそうなったので、政府税調が主体的な態度を明確にしてこれからリーダーシップをとり続けるなどということはないけれども、そうは言ってもあまり自虐的になる必要もないので、我々はやることをやっているというふうに考えているわけです。したがって、いま、ずいぶんいろいろな議論が出たことを頭に置きながらではありますけれども、この線で私は小委員会の報告をあらかた支持したいと思います。
〇石会長
あらかたというと、どこかおかしいところがあるのですか。
〇河野特別委員
いえ、おかしくないですよ。いいんですよ。特に石さんが個人的にずいぶんリーダーシップを取られたことも天下に明らかで、このくらい露出した委員長も珍しいと思いますけどね。
〇石会長
菊池さん、どうぞ。
〇菊池特別委員
私も、書いてあるとおり行けばいいと思うのですが、一つ、心配というか、結果的にいいとこ取りされると大変なことになるなと。例えば、源泉分離は残す、100万円は200万円になる、損失は5年ではない、6年、7年になる、税率も下がると。それで、前文のほうに書いてある取締り強化とか、市場の活性化手段はやらないということになると、ますます証券市場に対する不信感が高まって、未来永劫、証券市場にカネが入っていかないということも心配されますので、今回のこの案はセットである、いいとこ取りはいけないよというくだりを、どこかに一言入れておいたほうがいいのではないかと思います。
〇石会長
それほど露骨には書いていないのですけれども、4ページのロに一応その思いが入っているんですよ。ロの2段目で、「源泉分離課税の廃止は、以下に掲げる制度改正の前提である」と言っているわけであります。前提であるというのは、いいとこ取りを許さんという意味を加えていますが、今後、そういう御配慮をいただくならもう少しどぎつく書く可能性もありますけれども、今回はこれで一旦おさめたのです。
〇菊池特別委員
そこはそうだろうなと思って読んだのですが、最後にしつこいように、申告のあとにもう一回改めてと。
〇石会長
わかりました。ただ、これは出してしまったものですから、いまから追加はできませんが、配慮したいと思います。
それでは、予定した証券税制等の意見の交換は、時間が来ましたので、次に、法人課税小委員会で連結納税制度の骨子案に向けて議論が進んでおりますので、その状況を委員長の水野さんからまず御説明いただきたいと思います。
〇水野小委員長
それでは、法人課税小委員会ですが、簡単に御報告させていただきます。7月にも中間報告いたしましたが、いままで主要な検討項目について話を進めてまいりました。夏の間に事務局で連結納税制度の骨子をつくっていただきまして、きょう、それについて検討いたしました。資料といたしましては、「法小16-1」と書いてございます横の「説明資料」と、もう一つは「法小16-2討議用メモ」、この二つを御用意いただきたいと思います。
最初に、私のほうで「討議用メモ」に従いまして大体審議の様子をお話しいたしまして、次に、「16-1」を使って事務局のほうで、連結納税を創設した場合の減収の見込み額、これについてお話しいただきたいと思っております。
それでは、「討議用メモ」に従いまして簡単に審議の様子をお話しいたします。
まず第一に、「基本的な考え方」です。この時点で基本的な考え方が出てくるというのはどういうことかと申しますと、あとのほうに出てまいりますが、各国それぞれ歴史的な経緯がございます。例えばアメリカ合衆国では、戦時の超過利潤が出た、それに税金をかけたわけですが、それを回避するために企業分割が行われたので、全部関連企業をまとめて課税する、そこから連結納税が出発したとか、そういうような経緯があります。あるいはドイツでは、取引高税に関連して関連企業グループの収益と損失を相殺する仕組みをつくったとか、いろいろありまして、なかなか理論的な根拠がはっきりしないものであるわけです。
そこで、特にこの骨子には「基本的な考え方」というところがずいぶん詳しく出ておりまして、「討議用メモ」に簡単に出ておりますが、一言で言えば、一体的な経営をしている企業グループについては一つの実体と見て課税を行うということであります。ですから、法人として見ますと、たくさんの複数の法人があるわけですが、これを課税する場合には、ここには「一つの法人」とありますが、一つの法人と見なして課税を行う。それが連結納税の基本的な考え方でございまして、そういう仕組みを創設することによりまして、企業の組織再編成を促進するとともに、我が国の国際的な競争力の強化を維持することに努めたいというものであります。最近でも、非常に新聞をにぎわしておりますように、グループ企業化が進んでおります。持株会社といったものも出てまいりましたので、それに対応した税制の仕組みを考えるということでございます。
具体的に申しますと、2のところですけれども、連結納税制度の対象は100%子会社を考えております。中には、先ほど出ましたストックオプション、従業員持株会によって与えられる株といったものはありまして、こういった例外は当然考慮に入っておりますけれども、基本的に100%子会社というものを対象と考えているわけであります。
それから3番目、加入・離脱ということがここでは書かれております。いま、100%子会社を対象にしているということでありまして、それによって一体的な企業経営を行っている企業グループを課税の対象にするということですが、100%というのは、1%でも欠ければ離脱の問題が出てまいります。また、従来は95%くらいの子会社が連結に加わるために100%にする、こういうこともあるわけで、加入・離脱といった問題が出てまいります。これもかなり技術的な問題がございまして、加入・離脱に伴って従来のその企業の含み損益をどうするか、それから、欠損金がある場合に欠損金を繰り越すかどうか、そういう問題などがありますが、そういうことを議論しております。
4番目は、先ほどちょっとお話しいたしましたが、それと並びまして、企業会計、商法会計のほうで財務諸表というものがございます。そちらは、アメリカ合衆国のFASBですとか、国際会計基準といった形で統一の方向が見られますけれども、どうも税制の場合はそれとはかなり違っている。先ほど申しましたが、歴史的背景、それからその国々の法人の単体としての課税の仕組みも違いますので、なかなか基本的な統一性は見られない。我が国の場合は、特に従来単体課税をやっておりましたので、そういった法人税の基本的な仕組みとどうやって整合性をとったらよろしいのか、こういったところが論点であります。
5番目です。ここでは、簡素は大事であるけれども、「納税者の税負担に関する予見可能性と法的安定性を保証するためには、複雑になることはやむを得ない」と。先ほどお話ししましたような欠損金の問題、含み損益、グループ化したときにどういうふうに扱うか、さらには、内部取引として関連企業グループ内での取引をどう扱うか、技術的な論点が非常に多くございます。それについても規定を置かざるを得ませんので、そういう意味で複雑化することはやむを得ない、このようになっているわけでございます。
6番目ですが、これは非常に大事で、税収の減収が生じる可能性が高いと。あとで二課長から御説明いただきますが、いわゆる税収の減収に対してどう対応するか。きょう午前中に法人課税小委員会がございましたが、そこで大きな議論がありましたのが、連結に伴う付加税をかけるかどうかということ、あるいは課税ベースの拡大、これは平成10年に行ったところですが、その積み残したものにつきましても課税ベースの拡大で再検討を行う必要があるのではないか。このようなことを議論しております。
あと、いまお話ししましたようなことに基づきまして、「基本的な仕組み」を2ページ、3ページで書いてございます。
一点だけ申し上げますと、3ページの最後に「地方税」が出ております。法人税が連結になった場合、地方税のほうはどうなるのかということですが、連結の法人税を計算する段階で、各企業が個別にデータを提出する段階が出てまいります。それを使って法人事業税の場合には計算して申告するということですので、地方税につきましては基本的には単体課税ですけれども、申告のプロセスを見ますと、何らかの形で連結の納税と関連性を持ったような形で手続きが進められる、そのようなことを考えております。
きょう、骨子につきまして第1回目の議論をいたしましたが、次回、10月9日にまた議論を進めて、何とか早く取りまとめできるように努力したいと思っております。そして、総会にもできるだけ早くその取りまとめ案、基本的な考え方をお示ししたいと思っております。
〇石会長
では、古谷さん、お願いします。
〇古谷税制第二課長
それでは、「法小16-1」という横長の説明資料で簡単に御説明させていただきます。
いま、小委員長からお話がございましたように、連結納税制度の創設によりまして、企業グループの中の所得と欠損を通算するというのが連結納税の基本的な要素でございます。法人税の減収が生じるわけでございますが、それについて私どものほうで、この夏、アンケート調査を実施して試算させていただきました。100%子会社を連結の対象にするという前提で議論が進んでおりますので、その関係でアンケート調査をしてございます。
「アンケート調査の概要」というところで見ていただきますと、対象法人は、上場会社、店頭登録会社等、4,765 社にアンケート調査を出しまして、平成12年度以前5事業年度の親会社及び100%子会社の所得・欠損金額を報告していただいております。回答が3,111 社、約3分の2からございました。この3,111 社というのは親会社の数でございまして、そこに連なっております100%子会社数が1万7,700社という規模で回答をいただいております。
2に書いてございますけれども、試算でございます。納税額が減少する企業グループは連結納税を採用する等の一定の仮定を置いて機械的に試算しておりますが、その下の絵で見ていただきますように、左側は親会社が利益法人である場合、この場合には、100%子会社の欠損金額と相殺される形で課税所得が減少いたします。右のように、親会社が欠損、赤字である場合には、100%子会社の利益、黒字で課税所得が減少するということになるわけですが、それぞれ、親会社の利益とか欠損が子会社の欠損や利益よりも相当大きかったものですから、子会社の欠損金額なり利益金額で課税所得の減少が決まってくるというパターンをこのアンケート調査から見い出しまして、試算をいたしております。
具体的には(1)、まず、アンケート調査に係る課税所得の減少額を計算いたしました。カッコの中に、「アンケート調査回答法人による課税所得の減少額に、100%子会社化による課税所得の減少額を加算」と書いてありますが、100%未満の子会社を100%子会社にして節税を図るといいますか、そういった企業行動があり得るだろうということを加味してまずここを計算してございます。その上で、(2)でございますが、国税庁統計をもとにこのアンケート調査を全国ベースに広げまして、(3)で税率をかけるという機械的な計算でございます。
その結果が、2ページ目に式で並んでおります。細かい点は省略いたしますが、真ん中あたり、点々で囲んでございますけれども、約8,000億円程度の法人税の減収額という試算結果になっております。ただ、次の3に「減収額の変動要因等」と書いてございますが、この減収額は平成12年度の法人の所得・欠損に基づく機械的な試算なものですから、実際にどのくらい減収額が出るかというのは、連結納税制度ができたときの法人の実際の所得・欠損の状況とか、どれくらいの企業が選択されるかといったさまざまな要因に左右されますので、厳密に見積もることは困難でございます。
ただ、私どもとしては、「しかしながら」と書いてございますが、今後の経済状況の変化が法人の所得・欠損に与える影響、あるいは、欠損子会社の持株割合を100%に引き上げて連結グループに組み入れる等の企業行動、それから、業界再編による企業グループの大規模化が、そもそも現在進んでいるといったことによりまして、実際の減収額は機械的な試算を上回る可能性があることを念頭に置いて、作業を進めていきたいということを御報告申し上げました。
これとの関連で御参考までに、次のページに「改革工程表」の抜粋をさせていただいております。先週、経済財政諮問会議で、「連結納税制度については、国際的に遜色のない、21世紀の我が国法人税制としてふさわしい制度を構築すべく、平成12年度予算の『国債発行30兆円以下』との方針の下、所要の財源措置を講じた上で、平成14年度創設を目指し、検討を進める」、こういうふうになっております。こういった考え方で今後の作業を進めていただきたいというふうに、私どもとしては考えているところでございます。
簡単ですが、以上でございます。
〇石会長
ありがとうございました。
それでは、連結納税をめぐる一連の関係、税収面も含めて御議論いただきたいと思います。
〇森下委員
ただいまの御説明で、小委員会のほうで精力的に御検討いただいている内容についてはおおむね理解はしているつもりでございます。まず、平成13年度、企業再編税制というものを導入していただきまして、これは非常にタイムリーであったと思いますし、また、いまの産業界の変化から言いますと非常に適切だったと思います。それに関連いたしますと、連結納税制度というものはいわば企業再編税制と連動した一つの税制だろうと思うのです。企業の有る姿からいきますと、大体連動しているように思いますので、そういう意味では、ぜひとも連結納税制度を14年度には導入できるようにお願いしたい。
ただし、いま御説明のあったように、減税に対してどういう処置を講ずるのかという問題が非常に大きな論議だと思います。単年度とか翌年度というふうな近視眼的な立場に立って云々するよりも、もう少し中長期にわたって、企業再編税制と連結納税制度をワンセットにして、企業の国際競争力を高めていくというための企業再編がやりやすいということ、そして税制がそれをサポートできることが、前文にあります「我が国企業の国際競争力の維持、強化」と、それが原則だろうと思うのです。
そういう意味で14年度が減税になるがゆえに、先ほど小委員長の説によりますと、付加税という問題が論議されたとか、また課税ベースの拡大というふうになってきますと、結局、それを採用される企業がだんだん減ってくるのではないか。ということは、企業再編とか、事業構造再編とか、企業の国際競争力に歩を進めていくというのが少し頓挫してしまうのではないか。減税のことはある程度理解はいたしますけれども、公平で簡素で透明な一つの制度を確立していただいて、多くの企業がこれを採択できるような方法を、ぜひひとつ中長期の観点で御議論いただきたいし、我々もそういうことを希望いたしたいと思います。
〇石会長
わかりました。当面は減収はあまり気にするなということですね。
〇室町特別委員
ただいまの御意見にも通用するところでございますが、連結納税制度導入の目的は、私どもは、企業の組織形態を柔軟に変更しながら経営資源を効率的に使っていく、こういうものとして柔軟に使えるということで非常に期待しているわけでございます。
そういう中で、減収策として出てきておりますが、付加税とか、2ページの下に、欠損金額の繰越控除をどうするかという議論が出ております。付加税のことはともかくとして、この繰越欠損金額につきましても、2ページの(4)の[1]番と[3]番をどういうふうに連結して読んだらいいのかということでございます。
[1]のほうは、一定の場合に限り、その法人に帰属することとなる所得金額を限度として繰越控除できる、[3]は、税収減対策として、逆にこれを控除しないことがある、こういうふうに書かれていると思いますが、この問題につきましては、企業経営上、大変大きな影響が出てくる問題だと私は思います。つまり、課税の基幹損益を通算して見ていく、これが中長期的な経営の観点から必要であるという点ですね。そういうふうに私どもは繰越しという問題を認識しているわけでございますが、仮にこれを税収減対策と認めないということになりますと、やはり相当大きな影響が出てくる。この辺は慎重に御検討いただきたいというか、同時に、何か御教示いただきたいところでございます。
〇石会長
御教示というのはどういう意味かな。やるとどういうことが起こるかということを、もう少し詳しく知りたいとおっしゃるのですか。
〇室町特別委員
非常に大きい影響が出ると私は理解しております。
〇石会長
水野さん、どうですか。
〇水野小委員長
ちょっと影響までは議論しておりませんが、古谷さんから何かつけ加えることはありますか。
〇石井審議官
一言、私どもの事務方の立場だけ、言わずもがなでございますが、申し上げておきたいと思います。
先ほど御説明の中で申し上げましたが、「改革工程表」で政府の基本姿勢みたいなものを、これは先週の金曜日、経済財政諮問会議で御検討の上でお決めいただいたわけでございます。私どもは、連結納税が日本の企業に関するインフラ整備のためにぜひとも前向きに検討すべきであるという御主張自体は、これはよく理解しているつもりでございますが、実はここにまいりまして、御承知のような30兆円の国債発行という内閣全体としての大命題が設定されました。仮に14年度導入ということになりますと、一方でこの30兆円という国債発行を抑えながら、先ほど御説明申し上げました8,000億円、これも相当大きな金額でございます。法人税収全体が10兆円ちょっとある中で1割弱の減収になるという話でございますので、この問題をどう両立なりクリアしていくべきなのかということを、引き続き、法人課税小委、いろいろな場でも御議論いただければというふうに思っております。
〇石会長
これは、きょう一挙に解決できる問題ではありませんので、また問題を持ち寄りつつ議論したいと思います。
松田さん、どうぞ。
〇松田特別委員
私も同じような意見になってしまうのですけれども、前文のところで述べているように、我が国企業の国際競争力の強化のためにこれを入れるわけです。それだったら、入れて強化してもらうために、どんどん利用してほしい税制なわけですね。こちらでアクセルを踏んでおいて、付加税でブレーキというのはやはりおかしいと思います。来年度、8,000億円足りなくなっても、5年後、10年後にそれが1兆円、2兆円の税収になって返ってくることを期待してこういうことをやるわけですし、また、それでないと日本経済は本当に沈没だと思います。
ここに森下さんがいらっしゃって大変失礼ですけれども、松下というあの企業でさえ、いま、国際競争力がどうなっているか。それを考えたら、あらゆる手段をとって企業の活性化ということは考えなければいけないと思います。それに比べたら8,000億なんて目じゃないですよ。大体、こういう景気状況で、来年度30兆円の国債をちゃんとやれると思っているほうがおかしいわけでして、そこで付加税という姑息な手段の導入というのは私は反対せざるを得ません。
〇水野(勝)委員
たしかにこの制度は国際競争力の強化の観点から行われるわけですけれども、例えば企業がリストラをする、赤字部門を分ける、独立させる、そうすると、企業の課税負担は増えてしまうことになるわけでございます。そういったことは好ましくないことでございます。企業の再編税制のほうも、場合によっては、再編すると臨時にいろいろな評価益課税が出たりする、それを避けるためにああいう税制が行われた。今回も、リストラ、いろいろなインフラ整備をしたら、課税負担、租税負担が増えるということ、これは避けなければいけない。それを避けることによってそうした再編、インフラ整備を進めるという意味だろうと思います。
そうしますと、企業としては別に負担が減ることを目的としてされるわけではない。だから、減る場合はひとつ勘弁願いたいというのは特段企業を制約する話ではないのではないか。ここに、個別の情報申告も税務署のほうへ出すというあれになっていますから、従来方式で課税した場合の負担と違う場合、負担が下がる場合は、それは従来方式の納税額でお願いしたいといっても別に企業としては困るわけではない。いままでと負担は変わらないわけでございますから。そういう方式がやや複雑で姑息だというなら、付加税というのはなかなか難しいかもしれませんが、そのほか、租税特別措置の整理とか、あるいは課税ベースの拡大とかで、何とか全体として負担が減るという方式での導入は、かえって世の中の支持を得るだろうかと思うわけでございます。
30兆円の話を出されましたけれども、30兆円とは次元の違う話でございますから、あまり30兆円と結びつけるのはいかがかなという気がいたします。
〇松尾委員
この連結納税制度はやはり税制のインフラでありまして、税制全体に占める重要性は非常に大きいと思うのです。証券税制も大事ですけれども、それよりはるかに重要な意味がある。ですから、これはきちんと導入することが必要であると私は思います。
それで、創設の目的ですが、ここに書いてありますように、企業の組織再編成を促進することによって国際競争力の強化を図るということでありまして、先ほど水野さんもおっしゃいましたけれども、これは法人税の減税を目的とするものではないわけですね。この点について留意せざるを得ないわけであります。
一方、財政の状況はどうか。プライマリー・バランスを確保する緊急性があるわけです。ですから、8,000億円程度の減収は目じゃないというわけにはいかないわけでして、何とかこれは埋め合わせることが重要でしょう。財政全体としてどうしてもそうせざるを得ないと私は思います。
では、どうするのか。所得税を増税するのか、あるいは消費税を増税するのか。そういう状況にないですね。所得税増税、消費税増税などということで国民の理解を得られる状況にはない、これははっきりしております。やはり法人税制の中で考える必要があるでしょう。租特の問題もありますし、課税ベースも調べてみればいろいろ問題はあるに違いない。そういったものをいろいろ組み合わせて、あるいは8,000億円以上になるのかもしれませんけれども、8,000億円を埋め合わせるという措置はどうしてもとらざるを得ないと私は思います。
〇福原委員
皆さんおっしゃったとおりなのですが、一つ、根本的に疑問がありますのは、100%子会社に限られているわけですね。諸外国で例を見ても、必ずしもそうでないところもあるようで、実体的には合弁会社の子会社のほうが利益が上がっているという会社のほうが多いのではないでしょうか。それを連結させる--させるというとおかしいのですが、(連結)するということによれば、利益の総額はむしろ上がってくるはずなのです。
2番目に、この目的は、経済構造を変革するインセンティブを与えるためであると私は承知しておりますので、企業として節税のために連結納税をお願いするということとは反対ではないかと思うのです。したがって、当面8,000億円の税収減になろうと、企業としては内外の圧力によって、合計であろうと単体であろうと利益を押し上げなければならないという必然性がありますので、そうすれば税収も上がってくるというのが、経済の活性化という筋道に沿えば妥当な考えではないかと思うわけです。
〇石会長
水野さん、100%にこだわったあたりの状況の御説明、何かありますか。
〇水野小委員長
100%というのは、こちらに書いてありますが、企業の一体的経営と、それを一貫させますと100%ということになるわけです。だから、例えば98%といった場合の2%が孫会社とか、そういうのは全部みなし規定で入ってまいりますので、ここで言っている実質の100というのは、親会社がまるまる100%持っている場合だけではなくて、関連企業間で100を持っているという場合を考えていただいたほうがいいと思います。ただ、全く違う部外者が1%を持っていると。これも変な話ですけれども、少数株主として存在の大きなものが入っているような場合はやはり除かれるであろうと。そういうことで100%にしているわけです。ですから、いまの同族会社の規定などにありますように、あくまでみなし規定で100という場合を考えていただいたほうがよろしいのではないかと思います。
ただ、これが51とかそのくらいになってまいりますと、経営が一体と言えるかどうか。むしろ企業の中で内輪もめをするような状況も考えられますので、そこは同じには考えられないということですので、「基本的な考え方」の一番最初に出ておりますが、「一体経営がなされ実質的に一つの法人と見ることができる」、これを唯一の支えにしてこういう制度を仕組んでいるわけです。御理解いただきたいと思います。
〇石会長
ほかに何かございますか。
〇河野特別委員
物事には経過というのがあって、産業界が企業分割並びに連結の話をだいぶ前から問題を提起したんですよね。裏でのいろいろな交渉があったわけです。連結について言えばこういう交渉があったんです。どういうことかというと、税収をある程度確保することは財務省としては当たり前だろう。しかし、我々は構造改革論からいって連結をどうしてもやってもらいたい。その両者を並立させるために--これ、アメリカでやったかどうかあれだけれども、景気が全面的に回復するとかいうことが簡単ではないにしても、将来よくなるということを思いながら、暫定的にある時期、付加税をかけてもいいよというメッセージを出しながら交渉した経過があるわけです。それで、いま、こういう状況下でますます連結納税の必要度が高まっている。片や、税収の問題もますます問題がシャープになっているということなのです。
これをどういうふうに考えるか。難しい話だと思うんですよ。僕は数年前からこういう裏の議論に参加しているときに、あの当時に比べて何が起こっているかというと、最近よく「骨太」の議論ということが言われますけれども、所得税と法人税、このぐらい骨細になってしまった基幹税制というのは考えられない。そのときのお互いの腹の内での共通認識は、いずれ遠からず時期が来れば、消費税を大幅に上げて事を済ますという了解があるからこそ、法人税の減税も所得税の減税もやったわけですね。ところが、その展望がいまの状況ではなかなか見えにくい。その中でこの問題が足元の問題として浮上してきたということだと思うのです。
何を言いたいかというと、付加税ですべてを処理することが現実的にはなかなか難しいのかもしれないと思えば、租特というテーマがあって、これで法人課税は大した金額ではないんです、考えようによっては。租特全体のことについてもう少し思い切った手の入れ方を、法人とか何とかに限定しないで議論するという荒っぽいことも、いまは俎上にのせないといけないのではないか。抵抗が大きいからやめておこうではないかというのも一つの判断だと思いますけれども、そういう状況にあると思います。
水野先生が付加税のことについて言及されるのは、いままでの歴史的な背景から見て当たり前のことだと思うのです。ただ、いかにもいまの状況というのは、数年前に裏でそういう交渉をやったときに比べれば、もっともっと事態は悪化しているのです。それでグズグズ言っていて、おまえ何が言いたいんだと言われるから、さっき申し上げたときに僕は話を逃げているわけだけどね、租特の問題も含めて。しかし、全然手当てしなくていいよという議論はあまり有効ではないのではないか。当時だって、そういうことを要求しすぎると、企業エゴだとか、財界エゴだと言われるから、我々は付加税でものみますよということを言っていたんだから。いまはそんなことは一切ないことになっている。事情が違うから無理もないと思うけれども、経過はそういうこともあったということは頭に入れておいてもらいたい。
〇石会長
過去の経過をおまとめいただきまして、ありがとうございました。皆さんの御意見を聞いていると、苦渋の選択ですね。我々もいずれこれを本格的に議論しなければいけないと思いますが、きょうは、連結の内容と減収額が出ただけでございますから、本格的議論は以下に持ち越したいと思いますし、また、水野さんのほうでおまとめいただく段取りが次にあるようであります。この問題は難しいかと思いますが、そのときにでも一応の整理はしていただきたいと思っております。
予定した時間は過ぎましたが、連結に関してぜひともこの際言っておかなければという方はいらっしゃいますか。
〇上野会長代理
連結納税の考え方についてというよりは、いまの河野委員などの話に関連する話ですけれども、こういう税制を考えていく結果、財政収入が減るんだということになる。これは、ほかのいろいろな税制改正全体としての税収への影響を見定めなければいけないということにつながってくると思うのですが、トータルとしてどういう税収になるのかというのは、やはり考えざるを得ない問題だろうと思います。
先ほどプライマリー・バランスの回復の問題も出ましたが、もっと足元の問題として、国債の増発で賄うということになれば、やはり金利への影響というのは出てくるのではないかということが心配されているわけでございます。簡単に30兆円を膨らませるわけにもいかないと思いますし、それから、財政支出のほうもまたそう簡単にはいかない。いろいろな要素が動かしがたいものであることはもちろんわかっているわけでございますけれども、そういう諸要素との関連の中で税収の減をどういうふうに考えるのかということは、非常に大事な問題として考えていかざるを得ない問題ではないかと思っています。
〇村上特別委員
いまのお話と同じようなことになるのですけれども、連結納税制度は、それ自体は非常に効率的でいい制度であるし、国際競争力強化という観点からも必要な制度だと思います。それはいずれやったらいいと思うのですけれども、こういう財政危機が言われているときに、試算ですから、どのくらいになるかわかりませんが、1割ぐらいの減収が見込まれることがほぼ明らかな時点でこの制度をやるのかどうかは、よく考えたほうがいいのではないか。ほかにも、金融ビッグバンとか、持合株の解消とか、グローバル路線に沿っていろいろな制度が行われています。国際会計制度もそうです。そういうことを言っていられる時かというのであれば、そういうものは全体としてもう少しテンポを遅らせるというのも一つの方法ではないかと思います。
連結納税制度といえども、税制からすれば中立でなければいけないわけで、明らかに大きく増税になる、税負担が増えるという場合は論外の話だと思うのです。同じように、減収がかなり大きいという場合には、そこはよくタイミングを考えなければいけない。
もう一つ、租税回避行為にも触れられていますが、それをどういうふうに担保していくのか。そこのところもきょうのあれでははっきりしていませんので、その辺はもう少し議論を深めていかなければいけないことではないかと思います。
〇石会長
いろいろご忠告いただきました。それでは、そういう線に沿って水野さんにまたお願いしておまとめいただいて、再提出したいと思います。
残った時間で、基礎問題小委員会の進捗状況と、財政制度等審議会と合
同の会合をいたしましたので、ごく簡単に御説明いたしたいと思います。
とりわけ基礎小の論点で非常に重要な点は、今後どういう形で検討課題を設定しようかということに力点があったわけでございます。この基礎小は、2年後に迫りました「中期答申」の見直しの基礎工事をするという位置づけでございまして、今後、どういう視点で、どういうテーマが重要になるかということを、小委員会の委員の方のアンケート、レポート、それによって決めようという形でございます。
我々の視点は、21世紀にふさわしい税制の再構築ということで、よく言われます税制の歪みとか、不公平とか、複雑さ、こういうものを避けて税調として理論的、基礎的な検討をしたいということがございます。それから、経済財政諮問会議でも税制に対するいろいろな注文がついてございます。そういうことを踏まえまして、今後、どういう形で取り組むかという点に力点を絞ったわけでございます。
そこで、お手元に「基礎小1-1 委員から寄せられた検討課題案」というのが出てきておりますが、ここに、寄せられた御意見をまとめた表がございます。右に出ておりますカギカッコの数字は、22人います小委員会の方々の中で、どのぐらいの方がこの問題に対して御関心があるかという点を示した数字でございまして、関心の度合いを示すという意味においては一つの参考になろうかと思います。
これをごらんいただきますと、ほとんどすべての論点が出ております。個人所得税、法人税、消費税、資産課税。問題は「その他」のほうに幾つかあるかと思いますが、「その他」にありますことが、非常に難しいし、これから検討しなければいけない問題として、我々の審議の中核にドカッと座るのではないかという感じを持っております。
第1回目の小委員会はこれを中心にしていろいろ議論したわけでございます。幾つか論点を整理いたしますと、やはり「その他」に出ております論点が一番重要ではないかという意見をお持ちの方が多かったように記憶しております。連結に関する減収についても、租税特別措置を全面的に見直して、そこから増収策が考えられないかという御意見もだいぶ強く出ておりますが、最初のテーマとしては租特を取り上げていこうと考えております。つまり、課税の公平・中立・簡素という視点から見まして、租税特別措置は税調として年内で見直そうと言われておりますので、時宜にかなった点かなと思っております。
それから、税と社会保障関係、これは将来どういう問題になるかという点も非常に強い問題意識を持っておりますし、いま急にというわけにいきませんが、プライマリー・バランスの均衡ということで、マクロの経済、あるいはマクロの動向を踏まえつつどうしようかという点では、これは税負担の問題と絡めて必ず出てくる問題でございますので、これも視野に置く必要があろうかということです。
それから、道路に限らず特定財源のあり方、この使途とか税率、それと環境税との絡み、これも大きな問題になろうと我々はかねがね考えております。
これほどまで日本経済がグローバル化いたしましたから、生産拠点の海外移転の問題も含めて、国際課税のあり方という問題も今後のテーマとしては欠かせない。それから地方の税財政問題として、補助金の問題、地方交付税の問題、税源配分の問題等々、いろいろ問題がございます。
とりあえずここで議論いたしましたのは、関心のある問題をピックアップしたという形でありまして、これを、いつ、どの段階でやるかというのはこれからでございますが、とりあえずいまのところ、メインのテーマとして大きな問題を拾い上げる。その最初を、「租税特別措置の全面的見直し」にしております。同時に、おそらくその時々にいろいろな問題が出てきますので、それに対して税調としてどういうふうに意見を言うかという点でも、副次的なサブの位置づけになろうかと思いますが、論点もそのたびごとに拾い上げて議論していきたい、このように考えております。
いずれにいたしましても、どういうトピックスをいかなる順番でやるか等々につきまして、そのうち税調として「改革工程表」みたいなものができればと思っておりますので、御披露できることになろうかと思います。そういう意味で、きょう残った時間で、この「検討課題案」をごらんいただきまして、ここを中心に今後早急にやるべきだという御意見を賜りたいと思っております。
それから、財政制度等審議会と税調委員の合同会議はたぶん3回目になったと思いますが、いま財制審のほうで歳出合理化の審議をやっておりまして、財務大臣に建議するというのが11月半ばごろに来ます。我々、歳入側の税制のほうをやっているわけでありまして、絶えず、歳入歳出両側から日本の経済、日本の財政に資する議論をしたいという意味で集まったわけでございます。
このときは、財政の問題そのものというよりは、雇用対策、特に島田さんが問題提起をされて、雇用のあり方とか、雇用対策の出し方とか、5%失業の解釈ということにつきまして過半の時間を使ったと記憶いたしております。その後、具体的に「明るさ」を持った構造改革をしなければいけないという意味において、介護とか、託児所の問題とか、住宅の中古市場の販売の仕方とか、さまざまな問題が多く出されたと思います。私どもは聞き役に回った点も多かったのですが、証券税制について、財制審側のほうで御興味もあったので、幾つか説明はいたしておきました。
今回の会議の状況は、主として、いま申しました構造改革に資するような財政運営は何かないかということを共に議論したという形で、別に結論を出すとか、ある方向にまとめるという形ではなかったものですから、お互いに意見を交換したという点で終わったと思います。
残った時間が15分ほどございます。総会の委員の方々に、基礎問題小委員会としてどういうものを最初に、かつ、重点的にやるべきかという点について、御注文があればぜひ伺って、今後の議論の参考にしたいと思います。
〇福原委員
いまのところ中小企業は大変悩んでおりまして、御存じのとおり、開業率のほうが減っているというような状況です。その中で相続税ですが、個人の相続税と、事業を続けるための事業承継の税制の枠組みを分けていただけないだろうかと。これは大変難しい話ですが、フランスの場合では、事業承継の部分については50%控除だという話も聞いておりまして、その辺のことをお考えいただきたいと思っております。
第2番目に、同じことの続きですけれども、中小同族会社については、留保金があると、それに対して課税されているのが現状でございます。法人税を払った後の所得金額を留保しておくとまた課税される。これは、個人所得税のほうが法人所得税よりも高かった時代に、みなし法人的に同族会社をつくってそちらに流れたという説を伺いましたけれども、今日、そういう時代ではありません。それどころか、若干の留保金でもないと、今日のような状況では、中小企業は経営が危なくなると、銀行は貸しはがしということをされる。そのための留保金ではないかというふうに考えるわけで、これについてはぜひ再検討をお願いしたいと思います。
〇石会長
古くして難しい問題でありますが、取り上げて議論いたしたいと思います。
〇諸井委員
いまの基礎小委員会のテーマの中で、納税者番号の問題が5票ぐらいしか入っていなかったと思います。先ほどの譲渡益課税の話を聞いていても、結局、どうやったって不公平は不公平なんですよね。納税者番号というのは昔から言われているけれども、実際には到底実現不可能であるというような感覚で我々もいままで考えてきた。ところが、今度のテロ対策で、イギリスなんかでも国民の背番号というようなものがクローズアップしてくると思います。
やはりこれから目指すべき方向というのは、公平で公正で透明性があるということ。そうでないと納税者の納得はなかなか得られない。そういう意味で、企業の租特をやられるのは私も結構だと思うのですけれども、納税者番号というのは、本気になっていよいよやらなくてはいけないのではないかと私は思います。
〇石会長
実は、金融小委員会のほうともこの問題は絡みますので、そのすみ分けをどうするか等々はこれからの議論だと思います。双方でやってもいいのですが、いずれにしても、おっしゃるとおり本気になって近いうちに取り組みたいと思っています。
この基礎小の問題は、総会の委員の方々からどれをという詳細設計はまだできておりません。こんなものかというアバウトな案でございますが、一応承認をいただいたということでよろしゅうございますか。これは折りに触れて問題設定をしながらお諮りして、皆さんの御意見を聞きたいと思っています。きょうだけではございませんから、また折りに触れて論点をお出しいただきたいと思います。
よろしゅうございますか。
〇諸井委員
一つだけお願いがあるのですけれども、プライマリー・バランスの議論というのはこれから非常に重要になってくると思うのですけれども、プライマリー・バランスの数字的な明確な基礎があまりはっきり出ていないように思います。一遍、どこかで説明してもらえるとありがたいと思います。
〇石会長
はい。そういうこともありまして、今井会長の財政制度等審議会のほうでもそういう作業をぼつぼつ始めていただいているようなので、その辺から一回話をお聞きするか、あるいは、主税局独自でその辺の問題を整理して、いずれかの場合にデータとして出していただくか、これから検討したいと思います。おっしゃるとおりだと思います。
ただ、議論を始める時期はなかなか難しいですよね。この景気でありますし、さまざまな状況がありますので。しかし、それは当然我々の頭の真ん中に置いておかなければいけない話だと思いますので、いずれ議論はいたしたいと思っています。
それでは、まだ若干時間は残っておりますが、次回以降の日程を申し上げて、散会にいたしたいと思います。
次回の総会は、10月16日の午後2時からを考えておりまして、この場所になると思います。
その一つの議題は、それに先立って9日の火曜日に法人課税小委員会がございます。連結納税についての骨子案をまとめる予定のようでありますので、できればこの骨子案を総会にお諮りしたいと思います。
それから、第2回目の基礎小を2日・火曜日にやる予定にしておりますので、そのときに租税特別措置を議論する形になります。どういうとっかかりで、どういうスキームでやるかという点につきましても議論の内容を御紹介いたしたいと思います。
また、その時々でいろいろな問題も出てこようかと思いますので、スピーディに議論をまとめつつ、我々の意見を世に問うという作業も必要だと思いますので、ぜひそういう形でやっていきたいと思います。基本的には総会は月に1回は少なくとも開く予定で、皆さんの御意見を聴取したいと思いますので、よろしくお願いいたします。
時間が5、6分早いのでありますが、早いのもいいのではないかと思います。きょうはこれにて散会いたします。
どうもお忙しいところをありがとうございました。
〔閉会〕
(注)
本議事録は毎回の総会後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。
内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。