第15回総会 議事録

平成13年7月31日開催

石会長

それでは、税制調査会第15回総会を開きたいと思います。

きょうはお2人の大臣がお見えでございます。そこで、塩川財務大臣から御挨拶をいただきたいと思います。

よろしくお願いします。

塩川財務大臣

皆さん、暑いところをお集まりいただきまして、これから税制調査会の第15回総会を開催していただきますこと、本当にありがとうございます。感謝申し上げます。

それでは、一言御挨拶させていただきます。

税制調査会の委員の皆さんには、平素から活発な御議論をいただいておるところであり、心から感謝申し上げます。政府は「構造改革なくして景気回復なし」の考えのもとで、聖域を設けず構造改革を強力に推進していく方針であります。

そこで、先般閣議決定されました「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針」(いわゆる「骨太方針」と言われるものでございます)等を踏まえつつ、経済財政の構造改革を強力に推進することといたしております。まずは、平成14年度予算編成において国債発行額を30兆円以下に抑えることを目標としつつ、メリハリのある予算を実現し、また、その後プライマリー・バランスを黒字とすることを中期目標として、本格的に財政再建に取り組んでまいりたいと考えております。

税制につきましては、財政構造改革との関連では、安易に増税に頼ることなく、まずは歳出の徹底した見直しを行う必要があり、その上で公的サービスの水準と、これを賄うに足る国民負担のあり方についての国民的な議論が必要であると考えております。

このような現状を踏まえまして、調査会におかれましては新世紀においても公正で活力ある社会を実現していくため、公平・中立・簡素といった基本原則にのっとった税制を構築するべく、経済財政の構造改革の一環として税制の改革に向けて引き続き幅広い観点から御審議いただきたいと考えております。

委員の皆さんにおかれましては、現在、金融・証券税制や連結納税制度について精力的に御審議いただいているところであります。金融・証券税制については、21世紀にふさわしい金融・証券税制のあるべき姿を、市場の透明性の向上など証券市場の構造改革に資する観点から、また連結納税制度については、我が国における企業グループの一体的経営の傾向が強まる中で、実態に合った課税を行うという観点から幅広く検討・審議を行っていただきたいと考えております。

また、現行の税制の歪み、不公平と指摘されている点について、理論的・基礎的検討を行う小委員会を新たに設置されると石会長から承っております。経済社会の構造変化等に対応した21世紀初頭における望ましい税制の構築に向けて、国民の参加と選択は従来にも増して重要になってきているとき、腰を据えた専門的な議論に対する期待は高まっております。

引き続き精力的な御審議を賜り、国民にわかりやすく、あるべき税制の姿について適切な指針等の情報を発信していただきますようお願いいたします。

簡単でございますが、以上をもちまして御挨拶にさせていただきます。御苦労でございますが、よろしくお願いいたします。

石会長

どうもありがとうございました。まだしばらく御滞在でウォッチを……。

塩川財務大臣

御意見を聞かせていただこうと思っております。

石会長

では、我々も張り切ってやりましょう。

それでは、議事予定に従いまして議論を進めたいと思いますが、このたび事務局のほうで人事異動がございました。大武さん自身が代わられたわけでありますが、そこで、主税局長の大武さんより御挨拶方々皆さんを紹介してください。お願いします。

大武主税局長

すでに、金融小委員会、法人小委員会におきましては御紹介させていただいておりますので、一部の委員の方々には繰り返しになるかもしれませんが、御了解いただきたいと存ずる次第です。では、よろしくお願いいたします。

私、主税局長を拝命いたしました大武でございます。前任の尾原は国税庁長官に就任いたしております。

審議官をいたしておりました竹内が理財局次長に就任いたしまして、その後任に、秘書課長をしておりました石井が就任しております。

総務課長をしておりました小手川が官房参事官に就任いたしまして、その後任に、税制第一課長をしておりました清水が就任いたしております。

新しい税制第一課長には、主計局主計官をしておりました川北が就任いたしております。

調査課長をしておりました池田が国税庁法人課税課長に就任いたしまして、その後任に、理財局調査室長をしておりました稲垣が就任いたしております。

税制第二課長をしておりました真砂が、主計局主計官に就任いたしまして、その後任に、大臣秘書官をしておりました古谷が就任いたしております。

いずれも、前任者同様、よろしくお願いいたしたいと思います。

また、7月10日から、税制第一課、二課及び三課の事務分担が変更されまして、税制第一課については所得税及び相続税等の資産課税を所掌し、税制第二課については法人税及び消費税を所掌することとし、税制第三課については個別間接税、通則法規及び地方税等を所掌することになりました。

なお、審議官の所掌につきましては、木村審議官が税制第一課及び国際租税課、石井審議官が税制第二課及び税制第三課を所掌することとなります。

いずれにせよ、全員が一丸となって対処してまいりたいと存じておりますので、よろしくお願いいたしたいと思います。

石会長

ありがとうございました。それでは、早速きょうの審議に入りたいと思います。

審議に先立ちまして、二つの小委員会、法人課税小委員会並びに金融小委員会のこれまでの審議経過につきまして、小委員長からごく簡単に御報告をお願いいたしたいと思います。

まず、水野さんから、法人課税小委員会の概要を御説明ください。

水野小委員長

それでは、私のほうから法人課税小委員会の審議の状況について御報告させていただきます。資料は「総15-1」となっておりますので、こちらをご覧いただきたいと思います。

現在まで15回審議をしてまいりました。途中、いわゆる組織再編成の税制、具体的には、企業の合併・分割といった問題が持株会社を中心とした企業の再編成の中で出てまいりまして、それに対応した税制を考えなければいけないということで、企業再編成の税制、これがことしの3月に成立しておりますが、その関係で連結納税制度の検討が少し遅れました。具体的に申し上げますと、平成12年、昨年11月の段階でようやく再開いたしまして、そのあとは年度改正に入りましたもので、平成13年、ことしになりまして5月に再開しております。6月から3回を使いまして、いままで、連結納税制度の検討課題として取りまとめました論点について検討を進めて、できればその方向性を打ち出したいということで鋭意努力してまいりました。

簡単に申し上げますと、「連結納税制度の導入の意義」に出ておりますが、企業経営の一体性というものが進みつつある、特に純粋持株会社が認められることに伴って企業集団の経営の一体性が一層進むであろう、こういった状況のもとで連結納税制度を導入するようにとの御指示がありまして、検討してきているわけです。

具体的には、ここでは「連結納税制度の類型」となっておりますけれども、アメリカ、フランスに見られますように、本格的な連結納税の制度を導入したい。これはどういうことかといいますと、イギリスやドイツに見られますように、企業の個別の法人の中で欠損を生じた法人と利益の上がった法人、これの欠損を利用してお互い相殺する、全体として税額を減らして企業を救済する、いわゆるグループリリーフと言っておりますが、そういったような安易な制度ではなくて、きちんと連結納税のために連結所得を計算して、それに税率を適用して一体としての課税を行う、こういう方向を目指すということであります。

ただ、注意していただきたいのは、連結納税と申しましても、親会社に全部の損益のデータを集中させてそこで一括管理して計算するということではなくて、あくまで従来どおり個別の法人のもとにおきましてそれぞれの法人が収益、費用を計算いたしまして、さらに連結に必要な調整を行って連結所得を計算いたしまして、それに税率を適用して税額を出します。税額が出たところで、今度は各グループの法人につきまして、おそらくは所得の割合に応じて税額を按分して最終的な個々の法人の税額を定める、こういう仕組みでございます。

ですから、念頭にありますのは、個々の法人所得の計算の仕組みと連結全体の仕組みとの整合性をどういうふうに保っていったらよろしいのかどうか。特に、従来は単体としての法人税の計算の仕組みしかございませんでしたので、それをもとにしながら、連結グループ全体としての税額をどういうふうに計算したらよろしいかということで、いろいろ検討課題が出ているわけであります。

簡単に論点の主なものを申し上げますと、1ページ目、6月1日(第13回)で検討したものの中に「適用対象法人」というものが出ております。これは、どのくらいの持株数によってグループ企業としてとらえるかということでございます。アメリカ合衆国などは現在80%の持株比率でやっておりますが、基本的には100%でやりたいというのが小委員会のほぼまとまった方向でございます。100%の子会社について全部含めるかどうか--100%持株がある会社であれば、全部まとめて計算するというのが基本でございますが――、中に、任意に法人を選ぶことを認めてほしいといったような経済界の要望も出ております。そういうことがございますけれども、基本的に100%株式保有の法人に限って連結を認めるという方向で検討したいということでございます。

次の2枚目を見ていただきますと、6月26日(第14回)の検討課題でございます。連結納税制度の枠組みに係る論点の続きですけれども、先ほど申しましたような連結所得、それから連結税額の基本的な仕組みがどういうことになるか、もう一度申し上げますと、これは個別の単体としての法人所得の計算が基本になるということであります。従来、法人の所得を計算するに当たりましては、商法上の決算の手続きにのった損益をもとにして申告調整を行う仕組みになっておりました。いわゆる確定決算主義ということで、商法上の計算手続きの段階で処理しておかなければ、あとで申告調整は認めないという項目もございまして、これが法人の所得計算の適正を担保してきたということもありますので、連結納税の制度におきましても確定決算主義に基づいた個別の法人の所得計算は変わりがないのではないか。これを基本として連結所得を計算することにしたいと思っております。

その下に「連結納税制度に特有な事項」となっておりますが、具体的に幾つか例だけ挙げますと、特に問題になりますのは、連結グループの企業間の取引をどう扱うか、これは現在でもかなり議論がなされております。基本的な方向としましては、内部取引、いわゆる連結に含まれる企業間の取引につきましても時価で取引を行って、そこで譲渡益等が生ずる場合にはこれを繰延べるという形で行いたい。ただ、その方式について若干のいろいろな議論が出ているということでございます。

それからもう一つ、その続きのマルのところを見ていただきますと、寄附金の処理がございます。寄附金というものは、従来、個別の法人について損金算入の限度額を定めて認めてきておりますが、これは単なる国や地方公共団体に対する寄附金といった純粋なものから、親会社が子会社を救援するために債務を免除するとか、無利息で貸付を行う、こういったものも全部寄附金という概念でとらえてきているわけです。したがいまして、連結納税になったということでそれをそのまま維持しますと、非常に複雑といいますか、税金を不当に減少させるような行為も行われかねないということですので、寄附金の処理をどうするか、これについてもかなりの議論がなされております。

これが、連結納税制度の中の特に連結所得の計算の仕組み、個別の法人の所得を計算した上で連結調整をすることの意味ですけれども、いわゆる企業間取引といったものについて、こういう問題があるということで例示として紹介させていただいているわけです。

それから、7月24日(第15回)、最近行いましたものでございます。ここで特に問題になりましたのは、「その他の検討事項」になっておりますけれども、連結グループへの加入・離脱という問題、こういうものに伴った取扱いをどうしたよろしいかということであります。正直申しまして、小委員会では、従来、連結所得の計算に向けて検討はしてまいりましたけれども、それと企業再編成との兼ね合いと申しますか、対応といいますか、そういったものについては議論がそれほどなされてこなかったわけです。

しかしながら、現実問題といたしまして、企業再編成税制のもとで、連結グループがありましてもその企業グループの中でまた分割が行われるとか、外から法人を合併して取り込んでくるとか、逆にグループ内の法人を分割して外へ出すというようなことも行われることになるわけです。そういたしますと、なかなか難しい問題が出てまいります。端的に申しますと、個別の法人が持っている欠損金、含み損益、これをどういう扱いにしたらよろしいのか。基本的には連結のグループに加入・脱退の時点でまず清算をする、あるいは、グループ内で持ち込まれる欠損金を利用することは禁止するとかいう方法がありますけれども、そういったことについてまだ議論が続いておりまして、これについて今のところ「こういう方向」という形ではまだ出ておりません。

それから、租税回避行為の防止の問題です。もともとこの連結納税は、収益の上がった法人と欠損を生じた法人、これをガチャンとやって全体としての税額が減少する、こういうことが起こり得る制度です。それから、企業グループということでございますので、関連企業間の取引が頻繁に行われる。これは裏を返せば、ここでは租税回避行為の防止と書いてございますが、もともと連結納税といった制度そのものが裏腹をなしている。租税回避となっていますと言葉の聞こえは悪いのですけれども、税負担を調整することが可能である。企業にとりましても、こういう制度がある以上、何らかの対応といいますか、どうやったら企業全体の収益を圧縮できるか、当然、そういうプランニングが行われるわけです。ですから、それに対応した措置を考えなければいけない、それを含んだ上での制度を設計していかなければいけないというのは当然の検討課題になるわけです。租税回避行為だけを取り出してそれをたたくというものではなくて、連結納税の仕組みそのものが、税負担を不当に減少させることが行われる、これを含んでおりますので、それに対応した措置がとられなければいけないということであります。それも、個別的な対応の場合もありますし、もう少し予防線を張ることで一般的な租税回避防止規定を置く必要があるというようなこと、こういったことを検討しております。

それから、これは非常に大きな問題ですが、税収減への対応でございます。いま申し上げましたように、一方に収益の上がっている企業があれば、片方で損失が生じている企業があります。これは合わせると全体として所得が減少する。従来の事業持株会社はありましたけれども、個別の単体課税としてそういうことはできなかったわけですが、連結納税をやりますと、収益と損失との相殺が可能になることで税収減が予想されるわけです。これについてどのくらいの減収が見積もられるか。特に30兆円という線が現在出ておりますので、それに対応して法人税の税収減をどういうふうに考えたらよろしいのか、こういう問題があるということです。

例えばアメリカ合衆国のように、連結付加税を考えるということもあり得ますし、制度の簡素化を考えた場合に、租税特別措置は連結を選択する企業グループについては適用を排除する、こういったドラスティックなことも考えられますが、こういったことにつきましても検討を加えているということでございます。

それから、地方税ですけれども、一つの基本的な線は、従来の単体課税を維持したいということです。中に異論はございますけれども、そもそもこの連結納税もあくまで単体で法人所得を計算するというプロセスが残っておりますので、それに税率をかけて個別の法人の法人税額を計算する、こういうふうな可能性はあります。基本的に地方税については結論は出ておりませんが、こういう方向で検討したらどうだろうという案が出ております。

以上のような連結納税制度の枠組み、個別の論点につきまして3回ほど議論いたしました。できるものは方向性を出すということを行ってまいりましたが、これ以上議論を続けてもグルグル回ってしまうようなところもありまして、事務局にお願いいたしまして、技術的、実務的に対応可能な制度ということで基本的な骨子をつくっていただきたい。夏の間に連結納税制度の基本的な骨子となるような具体案をつくっていただいて、9月以降それについて検討を続けていく、こういうような方向で現在論議を進めております。

多少長くなりましたが、以上でございます。

石会長

連結納税に関しまして、今井さんと森下さんから、欠席ではあるけれども、意見書という形でお手元の資料の中にお2人の御意見を書いた紙が入っていると思いますから、御参考までにあとでご覧ください。

水野さんの説明が若干長くなりまして、少ししわ寄せが奥野さんにいっているかもしれませんが、協力してください。

次に、金融小委員会の説明をしてもらいます。

奥野小委員長

では、金融小委員会の審議状況について「総15-2」という紙が配られていると思いますが、それに従って審議状況を御説明したあと、私のほうから今後の方向性について、やや私見になりますが、御説明させていただければと存じます。

「総15-2」の資料に書いてありますとおり、金融小委員会は、金融及び金融税制全般に関してこれまで3回にわたって審議を行ってきました。

本小委員会は、「金融課税小委員会」ではなく「金融小委員会」とされているように、金融税制を議論する際の金融全体のあるべき姿を念頭に置いて、幅広く、根本に立ち返った本筋の議論を行う必要があるという問題意識でやっております。

これまでの審議状況ですが、簡単に御説明しますと、2の[1]に書いてある「我が国金融の現状と今後の方向」ということで、我が国の家計は非常に強い安全資産志向を持っているという認識で一致しております。その理由として、リスク商品のリターンがアメリカ等に比べて非常に低いこと、ペイオフの取扱い、民間金融機関への公的資金の導入や郵貯の政府保証、あるいは預貯金についてリスクが十分に表面化されていないことなどの状況のもとで、国民が「経済合理的」な選択を行えば、当然、安全資産選好になって証券投資をしないということになるのではないか。あるいは逆に、日本経済の再活性化を行うために必要な投資活動を促進するためには、むしろリスク負担の機会費用を低下させることが必要である。

現状では、家計部門が個別に市場に参加するためには、さまざまな理由で取引コストがきわめて高いために、投資信託や年金信託など個人が仲介機関を通じて株式を保有する仕組みが重要ではないか。我々金融小委員会では、今後の金融のあるべき姿は、日本の金融が、いわゆる間接金融主体の戦後型の仕組み、ストレートに個人投資家が最終的な株式を買うというよりも、投資信託や年金信託を通じて買う市場型間接金融が非常に重要になってくるだろうと考えています。

老人マル優のような貯蓄優遇措置についても、家計の貯蓄志向の制度的要因ともなっていることに危惧の念を抱いております。あるいは、そういう意見がたくさん出されました。

それから、市場のインフラ整備ですけれども、東証正会員協会が「個人投資家の証券投資に関するアンケート調査」を行ったのですが、そこで、「証券会社の株式営業が、必ずしも顧客の利益を第一に考えているとは思えない」とする回答が8割を超えていることが指摘されました。その結果、議論としては、証券会社の営業姿勢等、株式市場に対する投資家の信頼確保を図ることが重要ではないか。企業が株主重視の経営姿勢(コーポレートガバナンス)をとる、そういうことをインセンティブとしてつくっていくことが重要なのではないか。あるいは、資金の運用を行う者、典型的には、投資信託とか年金信託というものですが、彼らが受託者責任を制度的に担保することがますます重要ではないか、というようなことが指摘されました。また、市場の透明性・信頼性の向上のために、株式市場の透明性の向上による信頼回復が重要であるという指摘がなされました。

具体的には、我が国では税制を含めた金融の仕組みの中で匿名性が許容される面が大きいということが強調されて、このような仕組みは国際的に例外的なものである、市場の透明性を妨げている、あるいは、信頼性を低下させ結果的に個人投資家の市場参加を妨げている、というようなことが意見としては出されました。

また、株式譲渡益に係る源泉分離課税についても、匿名性を廃し課税の透明性を高めるためにも、申告分離へ一本化することが必要ではないかという議論。

納税者番号制度についても、課税の透明性を高める観点から導入を積極的に検討すべきではないかという議論が出されました。

4番目の、税制上の誘導措置と限界という点ですが、株式市場活性化のために税制として誘導措置を講ずるべきかという問題について、理論的にはそういう誘導措置を排除できないという意見もありましたけれども、大筋としては、ここにも書いてありますとおり、株価や株式市場の動向は個人の資産選好などさまざまな要因によるものであり、税制により株価を維持することには限界があるのではないか、むしろ株式市場という市場自体のインフラ整備が重要ではないかという意見のほうが多かったように思います。

また、株式譲渡益課税等については、短期的な株価対策として検討してもそれで株価が上昇するわけではない、むしろ景気回復や企業価値の向上こそが株式市場にリスクマネーを呼び込むための決定的なファクターである、ということで意見の一致を見ております。

最後に、金融商品に対する税制の中立性ですけれども、税制としてはさまざまな金融商品に対する中立性を追及する必要があり、その際、「中立性」をどう考えるかということについて議論がされております。

利子、配当及び株式譲渡益に対する課税上の取扱いについてですが、所得の性質、例えば発生形態や性格、元本である金融商品の保有実態などが異なっている。具体的に例を挙げれば、貯蓄に比べて証券投資はよりリスキーであって、そのリスクのことを考える必要があるのではないか、そういうことが議論されましたけれども、そういう実態が異なっている点を踏まえて、単純に同じ扱いにすればよいというわけではなく、おのおのの特有な性格を踏まえ、それに応じた税制上の扱いを検討すべきではないかというようなことが議論されました。

以上が「総15-2」の資料ですが、今後の金融小委員会での議論に関して現時点での個人的な考えを述べさせていただいて、それを今回、総会に出して報告させていただきたいと思います。

まず、最近の金融税制を取り巻く状況についてです。第一に、平成13年4月より、申告分離課税方式へ一本化するとの税調での既定方針が実現せず、源泉分離課税方式の廃止が2年延期されているということ。

第二に、先般、景気対策等の観点から、長期保有株式にかかわる譲渡益非課税制度(いわゆる100万円の特別控除の制度ですが)の創設が図られた上、さらなる優遇措置を求める声も聞かれること。他方、経済財政諮問会議のいわゆる「骨太の方針」で、貯蓄優遇から投資優遇への金融のあり方の切りかえなどを踏まえ、「税制を含めた関連する諸制度における対応について検討を行うこと」とされている。

そういう世の中の状況を踏まえまして、金融小委員会においては、政府税調として、次のような視点からしっかりとした審議を行っていく必要があるというふうに考えています。専門的かつ理論的な観点に立った上で、新世紀にふさわしい金融税制のあり方はどのようなものであるのか、中長期的に見た我が国の金融のあり方や、関連する諸問題も含めてそういう点を考えていきたいという方向ですが、そういう観点からしっかりした審議を行っていく必要があるというふうに考えております。

その中でも、昨今の景気情勢や株式市場の動向等を背景として、各方面で話題となっている証券税制、特に株式譲渡益課税のあり方についてですが、申告分離課税方式への一本化に向け、あるべき姿をできる限り早く提示することが重要であるとの認識のもとで、今後の審議に取り組んでいきたいというふうに考えております。

また、小委員会においては、税制のみならず、先ほどから強調しておりますように、金融証券市場、税制のあるべき姿全体についても議論がなされており、その成果をどのような形で発信していくのか、石会長とも相談したいというふうに考えておりますが、総会の皆様の御意見も伺いたいと存じます。

今後のスケジュールですが、小委員会の委員の日程とも相談しつつ、原則、9月以降、あるいは8月末ぐらいからかもしれませんが、毎週または隔週といったペースで精力的に審議を進め、関係者からヒアリングなどを行いたいと考えています。現時点では11月ごろにも中間的な取りまとめを行いたいというふうに考えております。

以上です。

石会長

ありがとうございました。

ここで、大臣は御都合がございますので、御退席になります。

島田委員

せっかく大臣がいらっしゃるので、ちょっと大臣に伺えませんか。

石会長

では、一言どうぞ。

島田委員

いまの金融小委員会の議論というのは、きわめて妥当な論点が整理されていたと思います。資本市場の活性化というのは基本的には企業の収益性の問題だと。それから、リスク負担の構造が直接金融市場を整備するためには考えていかなければいけない、あるいは資本市場のインフラの問題と、きわめて妥当な議論だったと思います。

大臣は、現下の経済情勢をお考えになりながら、証券税制の改革を急がなければいけないという御発言を所々でなさっています。大臣のお立場ですから、個人的な見解というわけにいかないと思いますけれども、一言、少し突っ込んだ感じをお聞かせ願えると、我々の議論の役に立つと思うのですが。

塩川財務大臣

それでは、簡単に申し上げます。

この前の国会中に急に改正法案を提出いたしましたが、あのときの取りまとめ、つまり100万円を特別控除するという譲渡益課税のときに、党税調の中でこういう議論がございました。政府税調も党税調もそうなんだが、証券税制について、移転とか所有とか、そういうものに対する優遇措置をするのか、それとも投資物件としての有利性を保証することにするのか、そこらの問題をもう少し議論してほしいという党のほうの要望があったことは事実です。当面、党としては個人が直接参加しやすい方法としては源泉方式がいいと思うけれども、しかし、税の公平の原理から言えば、これは必ずしも好ましくないという議論もあったことは事実でございます。その点は、党、政府ともどもに検討してもらいたいというのが、100万円の特別控除制をつくったときの党の意見でございました。

それを受けて今日まで来たのでございますが、最近の証券の株安が、税制に対する期待というものを異常に膨らませてしまったと思っておるんです。私は税制だけで株価の回復ができるとは思っておらないんです。けれども、それに対するインセンティブは大きく効果があることは事実だろうと思っております。

実は、きのうも総理と経済問題等について話しましたときに、「税の問題の審議はもう始まるのか」ということを総理は言っておりまして、できるだけ早く御審議してもらうようにしたいと思っているんだということを言っておきました。

いままでの政府税調としての経過がございますので、いま、私からとやかく差し出がましいことを申し上げるのは失礼でございますけれども、しかし、国民的要望は、この調査会に期待しておるということを念頭に入れていただきまして、ひとつ御審議のほどお願い申し上げたいと思っております。

石会長

どうもありがとうございました。

塩川財務大臣

では、失礼いたします。

〔塩川財務大臣退席〕

石会長

引き続きまして、いま御報告のありました二つの小委員会に対して、いろいろ疑問もあるでしょうし、御注文もあろうかと思います。しばらく時間をとりまして、金融と連結納税に関しまして御意見をいただきたいと思います。

どなたからでも結構でございますから、どうぞ御発言ください。

村上さん。

村上特別委員

いまの金融小委員会の大勢的な意見というのは非常に真っ当な議論だと思います。塩川大臣も先ほどおっしゃったように、100万円控除制度のときに党でも議論があったようですけれども、この参院選のあと、いろいろな税に対する期待というか、そういうものが高まってくるだろうと思います。そうしますと、金融小委員会でまとめられていこうとしているようなことでは済まない可能性があると思います。証券税制を、公共事業の上積みとか、金利の引下げとか、いわゆる直接的な景気対策の道具の一つとして考えることは避けなければいけないと思います。やはり中立・公正の税制という観点から中長期的な議論でいかなければいけないのではないか。

それと、100万円の制度が10月から出るわけですが、それに対する株式市場の反応といいますか、それが全然逆の方向に動いていると思うのです。ああいう優遇制度によって、何百万円の利益があってもそれは助かるということであるにもかかわらず、株価がむしろ逆の方向で動いているという点も、投資家、あるいは国民一般の反応がそこに示されているのではないかというふうに思います。

それから、このあと党では、翌年度に対する繰越し損失の扱いの問題、そういうものが出てくるときに、申告納税と源泉分離の二つの方式の扱いをどうしていくのか、そこのところをきちんと政府税調としては言っておかなければいけないというふうに思います。

石会長

重要な指摘をいただいたと思います。

ほかにいかがでございましょうか。

笹森委員

一つは、連結納税の問題ですけれども、100%子会社に限定する、あるいは連結前の損失は通算しないという、今回の小委員会で先ほど口頭で出された分ですが、連結納税制度としては妥当なものであるとは思いますけれども、企業の税負担を軽減するためだけに導入するのだとすれば、納税者の立場からはちょっと納得できないのかな、不満が残るというふうに思っております。

仮に100%子会社に限定したとしても、連結納税制度の導入で純粋持株会社は進んでいくかもしれませんが、そこに働いている者の立場からすると、従業員のみで犠牲が出てくる、損金益金を親子で通算するのであれば、雇用の責任についても親子が連帯しているのが筋ではないかと思っておりまして、実質的には、100%子会社の経営者はみずからの判断で労働条件は決められない、親会社の指示を仰いでいるのが実態です。使用者責任の問題と、企業グループ内における労使協議制の問題、これについて全く考慮されないということになると、きわめて問題が残るのではないか。税制上の問題というよりは、そのことについてひとつ考慮するということが入っていいのではないか、このことをまずは申し上げたい。

二つ目は、金融の問題から言いますと、先ほど大臣も触れられましたけれども、株価の下落を受けて、源泉分離課税の存続、申告分離の税率の引下げなどが、証券税制の見直しということでの論議がいまされているわけですけれども、こうしたことが株式市場に個人投資家を呼び込むことになるとはとても思えない。さきの国会で100万円未満の譲渡益は非課税になるという法改正があったのですが、その結果、申告分離を選んでおけばごく普通の株取引は非課税も同然ということになるわけで、これ以上軽減することは、ごくごく一握りの大口の投資家、資産家の税負担を軽減することにしかならないのではないか。

前の総会のときでもこの点については論議があったと思うのですけれども、一般的なサラリーマンの立場の人がいまあまり株式に手を出さないというのは、証券取引のあり方そのものに原因があるのではないか。言ってみれば、間接金融から直接金融へという政策誘導だけの税制では無理があるのではないかということが一つ。

もう一つ、証券税制というと、源泉分離課税か申告分離課税か、預貯金利子の20%やマル優と比べてどうかという議論にすぐなってしまうのですけれども、やはり総合課税化ということを忘れないでいただきたいというふうに思っております。老人マル優とか生命保険料控除が税収に穴をあけているかもしれないけれども、きちんと総合課税をすればそれ以上の税収が見込めるということに必ずつながるし、社会保障の給付切下げなどの国民の将来不安、こういった問題から見ても、預貯金、生命保険、あるいは、少なくとも安心なサービスが用意できればいいのであって、諸外国で実施されている総合課税が日本でだけできないということは、技術的な問題だということでは済まされないのではないか。できない理由があるのだとすれば、政治的なもの以外にないというふうに言わざるを得ないわけでして、そういったことから言うと、国際的な制度に合わせていこうという動きの中で、キャピタル・ゲインはなぜ分離課税なのか、あるいは、取引の匿名性を許すという制度を残していることが証券市場の健全な発展を妨げていることになるのではないか。言ってみれば、透明で開かれた市場とするためにも、納税者番号制度の導入を入れた総合課税化を目指していくべきではないかというふうに思っております。

石会長

その点につきましては、小委員会でも絶対議論が弾むはずでありますので、御議論はお任せしたいと思います。

それから、連結は決して減税目的でやるわけでございませんで、結果として減税になるかもしれませんが、水野小委員長が言われたように、税収減に対してはそれなりのいろいろ手当てをしたいという議論もございますので、それは十分に配慮したいと思います。どうぞ、奥本さん。

奥本特別委員

証券税制についてでございます。証券市場の活性化のために個人投資家の積極的なマーケットへの参加を促進することは、どうしても避けて通れない部分だというふうには理解しております。小泉総理の所信表明演説でもその点については触れておられるわけです。ただ、おっしゃるように、税がすべてでないということについては、我々もそのとおりだというふうに理解しております。株価は企業のファンダメンタルズを反映するものであり、また、証券市場そのものが信頼というものを確立しないと、なかなかリスクマネーが入ってこないということは全くそのとおりだというふうに思います。

質問にもなるのですが、匿名性ということがさっきから出ています。証券市場に匿名性云々というのは具体的にどういうことを指しておっしゃられているのか、いささか理解に苦しむ。決して証券市場の取引は匿名でできるような制度にはなっていないわけでございます。

それから、100万円云々という件につきましても、10月1日から実行されるわけでございますが、1年以上保有の株式についての優遇措置でございます。個人云々とおっしゃいますけれども、現在のマーケットの中で、売買手口の中で個人の売りが決して増えているわけではございません。個人というのは、IPOといいますか、いわゆる増資の段階で所有し、どちらかというとマーケットでは売り越しというのが一つのパターンになるわけですが、この数字が決して増えていないことは皆様方御存じだと思うのですが、決して個人の売りによってマーケットが崩れているわけではない。その100万円云々を現在のマーケット云々ということにどういうふうに結びつけておっしゃられているのかも、いささか理解に苦しむ点でございます。

これ以上いろいろ言いますとあれになりますけれども、もうちょっとマーケットを厚くしなければいけないんだ、そのために個人の参加が必要なんだ、そのために一つの誘い水としての税制の優遇措置が、各国の例を見ても、過去の例を見ても、どうしても必要なんだという点について、皆さん方自身がもうちょっと理解いただかないと、この議論はおかしな方向に行ってしまうのではないかと危惧いたします。

石会長

匿名性云々は、株の取引自体ではなくて税務署に対してですよ。税務署に対して匿名性云々を皆さんがおっしゃっているわけです。したがって、源泉分離が一番問題で
あると言っているので、そこについては未来永劫、源泉分離を御主張なわけですか。

奥本特別委員

源泉分離云々ということについて主張しているわけではなくて、ただ、源泉分離という長年なれ親しんだこの制度がなくなることによって、どういう摩擦音が出るのかということについて、特に、一般個人の参加について本当に問題ないのかということについては、慎重な御議論をいただきたいということをお願いしております。証券界という意味では、御存じのとおり総合課税については全く賛成でございます。

石会長

松田さん。

松田特別委員

連結についてちょっと申し上げたいと思います。

日本を代表する大会社が次々に赤字に転落するという状況になっています。そういう状況で連結を始めると、それの子会社が仮に黒字を出していても、みんな税金を払わないという状況になるわけで、タイミングとしては非常に悪いタイミングではあるのですけれども、連結を入れようという本来の趣旨は、企業の組織再編成を容易にして競争力を回復する。まさに産業の競争力強化こそがいま日本経済に求められている一番のことだと思いますので、目先の税収減には多少目をつむっても、使い勝手のいい、本当に競争力回復に資する連結税制にしていただきたいと思います。

最悪なのは、形だけ連結納税制度を入れたよといって、使い勝手が悪くてどこも使えない、そういう税制にすることだと思います。目先の損は覚悟して、長期で得を回収するという立場で制度を仕組んでいただきたいと思います。

石会長

声援をいただいたわけですね。

松尾さん、どうぞ。

松尾委員

金融・証券税制のほうですが、先ほど奥野小委員長が示された基本的な方向でよろしいのではないかと思います。キャピタル・ゲインについても、源泉分離課税については「匿名性を廃し課税の透明性を高めるためにも、申告分離課税へ一本化することが必要である」、こう書いていらっしゃいます。これが基本点では大前提になると私は思います。

それから、連結納税制度についての水野小委員長の報告の中で一番注目したのは、税収減への対応として、租税特別措置を連結グループに対しては適用を排除する、そういうドラスティックな案もあるという御説明でした。そこまでいかないまでも、租税特別措置をグループに適用するのか、単体企業に適用するのか、非常に複雑な問題であろうと思います。そこで、租税特別措置を一体どうすればいいのか問題にせざるを得ないと思うわけであります。

これまで租税特別措置について、政府税調では、これは税制の基本理念の例外措置だ、効果には限界もある、徹底した整理合理化が必要であるという指摘を一貫してとってきています。これが重要な点であると思いますし、そういう際に、個人、企業の経済行動にインセンティブを与えるという名目で新たな租特を設けることは非常におかしい、新たな租特を設けることがあってはならないと思うわけであります。連結制度導入を機会に、本当は租特全体を廃止できればいいと思いますけれども、大胆にスクラップするのが筋であると思います。それこそが構造改革の趣旨に沿うものであると私は思っております。

石会長

中里さん。

中里特別委員

法人課税小委員会での議論に参加しておりまして、連結納税の「連結」という用語に関する概念の混乱が見られるのではないかという気がいたします。例えば、会計上の連結決算と連結納税を同一のような感じでわざとおっしゃる方もいらっしゃいます。そういう概念の混乱が生じるのは、連結納税という言葉を使うこと自体がもしかするといけないのではないかという気がします。

アメリカは戦前からずっとある話で、課税逃れを防止するために連結納税制度が入ったということがありますし、フランスは、支店ごとを独立に見るという、法人税をそもそも物税的色彩のものとして見ているわけで、アメリカやフランスで連結と呼んでいるから--英語なりフランス語でしょうけれども--日本もそうしなければいけないというものでもないのではないか。

日本の法人税法の基本理念を前提として連結的なものを組み立てるとしますと、連結という言葉が使われているから云々と、そういう演繹的な思考方法ではなくて、これは水野小委員長の助手論文からの主張ですが、企業組織選択における中立性の確保という基本理念に戻って考えればいいだけのことでございまして、連結納税制度とはカテゴリカルにこういうものであるからこうこう、というような言葉の使い方がどうもおかしいような気がします。例えば企業集団税制とか、企業グループ税制とか、そういうことでもよろしい。フランスはグループ・モンド・ソシエテとか何とか、そういう用語になっていたと思います。

企業集団を一つの法人のようにとらえて課税するのはあくまでも説明上の便宜でございまして、それが本質を説明しているわけではありません。一つの法人と企業集団というのは中身は本質的に異なるものでございまして、日本では民法や商法を前提に物事を考えるのが租税制度の基本的な仕組みになっております。複数の法人格があるということと、それが経済的に一体であるということの矛盾した関係の中に、連結的な考え方を二重構造を解決するために入れるのだということでございますから、フリクションが起こるのはある程度当然のことです。しかも、連結のメンバーが途中で出たり入ったりするということですと、乱用は必然的に起こる話でございます。

いまの法人税法を前提とする限り、個別申告的な本質というのはかなりの程度維持されるのが当然でございまして、連結だからどうこうというふうに租税特別措置的に物事を考えていくことが小委員会の議論でもだいぶ出てきています。これは総会で申し上げようと思っていたのですが、いまの法人税法を根本的に変えない限り、個別的な発想からは100%乖離して、何もかも連結で全部一緒にしてしまうということは、法人税法を全面改正すればできますけれども、できない相談だというふうに思います。

税収の考慮のことも考えて、特にマニュピレーションの防止というのが重要で、執行の観点が重要なことになってきます。穴をあけた租税制度を設けるというのは文明国としては最低のことです。ここを使って逃れてくださいとお願いするようなことは、みっともなくてできるものではございません。企業活動の国際化を考えればそのようなことは当然で、連結納税制度があれば、それをピボットとして利用した課税逃れができるというのは簡単な話ですから。

アメリカは1999年に財務省で「課税逃れ白書」というのを出していますけれども、日本もそれぐらいの考えを入れなければいけないと思っています。いま、連結が格好のターゲットになっているというのがその種のビジネスでの常識でございますので、大盤振る舞いもよろしいのですけれども、ふさぐべきところはふさぐという発想を入れなければいけない。ですから、租税回避の否認に関して姑息なことというふうにお考えにならないで、これこそが連結の本質だというふうに考えるべきではないかと思っております。

石会長

島田さん、どうぞ。

島田委員

金融小委員会についてです。先ほども議論がありましたが、株価が低迷しているということで関係各方面で懸念、危機感が出てきていて、そこから税制を何とかしろという議論が出てくるという気持ちはよくわかります。しかし、事の基本は、日本が成熟経済になっていくときに、間接金融中心の金融システムから直接金融へ太い軸足を移していくような経済構造を構築しなければいけない、それに整合的な税制は何かということを考えることだと思うのです。

先ほど奥本さんがおっしゃったとおりで、しかし、この委員会に期待されるところは、拙速で税というよりも、中間報告にもありましたけれども、公正性、透明性、インフラ、情報の提供の仕方、分析の仕方、人材の問題、企業の行動の問題を含めて、そういうものをしっかり議論していただきたいのです。そして、数年先にはどんな経済構造で、直接金融に基軸を置いた金融システムを構築するとしたらどんな絵姿になっているのだろう、そこから割り出してそれにふさわしい税制があるならばどうだという議論をしていただかないと、株が下がっているから税制というのは、私が言って恐縮だけれども、あまりにアドホックで変なのが入ってくるわけですよ。

100万円の話も吟味された話なのかどうかよくわからないし、前に、税制ではないですけれども、銀行の保有株の取得機構という変なのが入ってきて、ああいうことをやると底値が見えなくなるわけです。そうすれば誰だって買わなくなりますよ。かえって不透明にしてしまうわけです。そういう議論は外ではいろいろあるでしょうけれども、日本ではそういうまともな議論ができるところはここぐらいしかないのではないですか。だから、しっかりやってもらいたいということでエールを送ります。頑張ってください。

石会長

ありがとうございました。

水野さん、お待たせしました。

水野(勝)委員

連結納税につきまして、おそらくこれはかなり複雑な制度になるかと思いますので、この際法人税制全体を見直して、簡素化できるところがあればこれを機会に考え直し簡素化するということがあっていいのではないか。その一つは、租税特別措置をできれば全面的に見直してこの際廃止する、縮小する、そういうことがあっていいのかなと思います。

それから、細かくなるかもしれませんが、寄附金。そもそも親子会社間は事業上の関係があるわけですから、寄附金がこういった親子会社間にあるというのが本来はおかしい。これは贈与なり交際費ではないかと思いますが、そうなると課税がかなり重くなるから、どうしても寄附金として処理してきた面もあろうかと思いますけれども、連結になった場合はこれは認めなくてもいいのではないかという気がするわけでございます。

その次にあります、受取配当の益金不算入。これも調整されるのかなとは思いますが、その際に負債利子控除はどういうふうになるのか。受取配当の処理と同じようになるとすれば、これは簡素化される。いま、負債利子控除はある意味では二重課税になって複雑になっている。こういったものも見直す一つのきっかけではないかと思います。おそらく基本的な御議論はいろいろあろうかと思いますので、難しい面もあるかもしれませんが、法人税を簡素化という点から見なすべき点があれば、ぜひ見直していただければと思うわけでございます。

石会長

では、菊池さん。

菊池特別委員

税制が公平・中立であることは非常に重要なことで、そこから逸脱してはいけない。そうすると、税制によって株価が上がるということは税制が公平でも中立でもないということだと思います。ですから、税制によって株価がもし上がったとすれば、それは不公平な税制をやってしまったということになるのではないか、理屈ではそういうふうに思いますので、まことにこの小委員会の流れは正しいなと思います。

もう一つ、間接金融時代から直接金融時代に行くのがあたかも正しいというか、歴史の必然みたいに思っている人が結構多いのですが、そんなことはないのであって、たまたまいま銀行がだめだから不甲斐ないなというだけで、直接金融が間接金融よりどれだけ優れているかというと、それは全く証明がない。個人的には、証券会社にカネを預けるよりは銀行に置いておいたほうが安心だという人はいまでも結構多い。それで何が悪いんだ、そのせいで株が上がらないというのは違うのではないかと思います。もっと根っこのところまで疑ってかかって、この証券税制というものは企業群対企業群の分捕り合戦にすぎない、日本経済にとってどちらが必要なのかといったようなことも議論していただきたいなと思います。

島田委員

菊池先生、悪いけれども基本的な理解が欠けてますよ。間接金融というのは、開発途上国みたいに経済が持続的に伸びることが期待されているときには非常にいい金融システムなのです。しかし、経済が成熟して上がったり下がったりすると、リスクマネーでないといまの金融危機みたいなことが起きてしまうわけです。銀行というのはおカネを借りて絶対返さないといけないわけだけれども、株が下がったときに返せと言う人はいないんです。ですから、それがいいか悪いかといっても、先進国はこういう方向へ行かざるを得ないわけです。そうでなければ企業におカネが来ない。

さて、そこで何が問題かというと、個人が金融機関のどこにおカネを預けるかというときに、銀行や公的金融や郵貯やいろいろなものがある。これは非常になじんでいます。他方、証券会社がある。どちらにしようかなということをイーブンで考えられる社会にならなければいけないわけですよ。

ところが、現状はどういうことになっているかというと、株を買って儲かったら売ろうというのは、本当は望ましい個人像ではないわけです。先進国というのは企業に関心を持つというふうにならざるを得ない。何も証券会社に頼んで買うだけではなくて、身近な匿名組合に入れるとか、投資事業組合に入れるとか、プライベート・エクイティ・ファイナンスをやるとか、そういう層が厚くなって、人々がみんな企業に関心を持つというふうに先進諸国はならざるを得ないんですよ。それを言っているわけです。

そのときにリスク構造はどうなっているのか。ところが、間接金融でいろいろな税制優遇が入っていたりして、個人で小さな企業に投資して長期で育てようかなんていうのと、そうでないのと比較したときに、いまのリスク構造とコスト構造の負担の構造がイーブンではないのです。そういう根本のところを議論してくれと僕は奥野さんに言ったわけ。だから申し訳ない、菊池さんのお気持ちはよくわかるけれども、私はこういうときはあえて言わざるを得ない。

石会長

何か血の気の多い学校の教師が一席ぶってるようですみませんが、マスコミのほうから見られて、実態が何かおかしいのではないかという反論があれば、どうぞ。

菊池特別委員

そんなに反論したくないですけれども、何が直接金融で何が間接金融かというところまで入らなければいけないかと思うのですが、投資信託が果たして直接金融なのかどうか、投資組合は間接金融とどこが違うのかということを含めて言ったつもりであります。間接金融は衰えていって、直接金融だけがこの世の中の大勢になると割り切って考えて、そういうふうに流れるように税制をつくっていくことが正しいのかどうか、それはわからないなと思っただけのことでございます。

石会長

河野さんも参戦ですか。

河野特別委員

奥野先生のこのペーパーは基本的にそのとおりだと思います。奥本さんにお伺いしたいのだけれども、あなたはおっしゃることがいつも同じで信念に基づいて言ってらっしゃる。しかも、それが実務に直結していることはよくわかるから、それなりに聞いているのですが、政治家がいまの世の中で何かやろうかという動機を持つのはわからんではないですよ。それはよくわかるけれども、税制調査会のメンバーとして見ていると、短期的な株価対策としていろいろな税制を考えることはちょっと待てと。長い目で見て、いま島田教授がおっしゃったような講義内容に従えばその方向は正しいと思います。

しかし、10月から11月にかけての臨時国会の中でバタバタと中長期の視点での議論を性急に前倒しでやることが、本当にバランスがとれた感覚なのかどうか。政治家はどういう考えを持つか、勝手にそうやってくれというふうに言っているけれども、我々は守旧派でも何でなくて、原則的に議論する立場から言えば、バタバタやることがいいかどうかなというぐらいのためらいがあって当たり前だと思っています。

それで奥本さんに質問したいのは、ここであなたがおっしゃっているようなことが実現すれば株価は幾ら上がるのですか。いいですか、奥本さん、お宅もいろいろなところでしゃべっていらっしゃるし、新聞がよく使うから内容は細かく言わないけれども、証券の不祥事が続発しているわけだ。それから、逃げていった個人投資家がどういう恨みを持っているかは統計上明らかですね。その二つのことぐらいクリアしないと、中長期的な理論構成で、だからこうこうだという議論はそんなに頭から結構ですねというふうにならない。そういうことだけ申し上げておきたいと思います。

石会長

奥本さん、質問に答えていただけましたら。

奥本特別委員

河野先生の御質問とも思えないのですが、私どもとしては、いまの株価を上げるために税制を変えろなんていうお願いをしているつもりは全くありません。どこかでそういう議論があったとしたらば見せていただきたいと思います。そういう議論をしているつもりは全くありません。先ほどから申し上げているとおり、日本の経済を変えるために証券市場の活性化がどうしても必要なのです。そのためにどういうことをすべきかということを議論してほしい。

おっしゃるとおり証券市場に対するいろいろな批判はあります。この場の議論ではないと思って私は申し上げておりませんけれども、かなり真剣に我々は取り組んでいるつもりです。残念ながら、最近もいろいろありました。新聞広告等でごらんいただいているかもしれませんけれども、改めて証券市場の我々自身が何をすべきかということについて、7月にようやく全部回り終わったのですが、全国の証券会社の経営者と会っていろいろ話してきました。信頼という一つの触媒がなかったら、リスクマネーというのは証券界に入ってこないのです。それを我々自身が自覚しなければならない最大の場面に来ているという自覚は持っています。

いま河野先生がおっしゃるように、これをやったから幾ら株が上がるのかと、そんな次元ではありません。小泉総理の所信表明演説の中でも、個人投資家のとり入れのために証券税制を含む、こういったものをやるということをうたっているわけです。それに対する期待は大きいわけです。それに対して何も出ないということは大変怖いわけです。マーケットのことをよく御存じの先生がそういうことがわからないわけではないと思いますけれども、そういうことを怖がって、したがって早く議論してくれということをお願いしているわけです。拙速を尊んで何をやれとかいうことを我々としてお願いしているわけではありませんし、ましてや株価対策上、税を云々なんてことは一言も申し上げているつもりはありません。

猪瀬委員

いままで何がまずかったのかというのを三つぐらい挙げてもらったらいかがですか、奥本さんたちの反省として。

奥本特別委員

そんなことをここでやっていいのですか。

石会長

やや税調の議論とはあれですが、簡単に御説明ができるならば。

奥本特別委員

先ほど、一つのアンケートがあるということが出ました。東証正会員協会のアンケートがどういうバックグラウンドでやられたのか私は存じませんけれども、少なくともアンケートの一文が抜粋されていることだと思います。残念ながら、我が国において一番欠けているのは証券教育なのです。アメリカとかヨーロッパでこれだけ証券教育が現実に行われていることに対しては、大変うらやましい部分もある。本来自己責任の問題で、それは我々自身が啓発活動をどんどん続けていかなければならない。

ただし、これは大変難しい問題でして、株式を持った方がそこで興味を持つわけです。そこで初めていろいろなことを勉強しようということも出てくるわけですけれども、無のところにいろいろな勉強をさせようということは難しい。いろいろお願いもしていますし、学校教育で取り上げてほしいのですが、いまの文部省の現状ではなかなかすぐにはできません。そういった問題があります。

御指摘のように我が業界自身いろいろなことが起こりました。これは残念ながら事実だと思います。それに対する世間の不信感が募ってきていることも事実です。それから、株価というのは企業のファンダメンタルズなのです。企業業績がよければ上がるんです。また、株価が上がれば株式に対する信頼は高くなるわけです。それもまた事実なので、そういったものが重なっているというふうに思います。

石会長

きょうは、税調の中でえらく活性化した議論が行われました。別に奥本さんに議論が集中しているわけではないのですが、それは皆さんの思いも熱く、関心も高く、疑問もあったということで、いずれまたこういう場を設けたいと思います。

それでは、株式市場から話を離しまして、次の議題に移らせていただきます。

国税と地方税の税収決算額が平成12年度について出ましたので、清水さんと小室さんから簡単に御説明いただき、それから、前回の総会で宿題が出ておりましたので、この説明も併せ行ってもらいたいと思います。

清水総務課長

資料「総15-3」、平成12年度の税収決算額でございます。12年度の税収決算額が確定して本日発表してございますので、御紹介させていただきます。

決算額が50兆7124億円ということで、12年度の税収の補正後の予算額49兆8950億円に対しまして8174億円の増収額になったところでございます。1枚目の下のほうに推移がございます。決算額50兆7000億円という規模でございますが、さかのぼりますと、50兆円を超えましたのは平成9年以来3年ぶりでございます。

おめくりいただきまして、この決算の中身を見ていただきます。増えました主なポイントだけ申し上げますが、法人税が9312億円。これは、昨年の秋に補正予算の税収見積もりをしたときに比べまして企業収益がより好調であったということでございます。

相続税につきましては、1112億円増収になっております。これは、相続税の延納の利子税率の引下げ等の改正を行ってきておりますので、物納割合が減って逆に現金での延納が増えてきているという要因があるかと思われます。

関税につきましては、加工製品の輸入が予想より好調だったことから、900億円強の増収になっております。

他方、源泉所得税につきましては3035億円の減ということで、これは、雇用者数の伸び、賃金の改善状況が予想を下回ったことによります。

そのほか諸税の減等ございまして、全体としては8175億円の増収になったところでございます。

1枚飛びまして、4枚目です。税収面の増収に加えまして、税外収入で5400億円ほどの増、歳出面で予備費等不用が6900億円ほどございました。2兆円ほどございますが、他方で予定しておりました特例公債の発行を1兆5000億円ほど取りやめまして、全体としては4599億円の増収でございます。このうち地方交付税等に回るものを引きますと、財政法の純剰余金2381億円ということでございます。これの半分以上は公債の償還に充てなければいけないことにされております。

最後のページでございますが、12年度につきましては税収50兆7000億円ということでございます。13年度の見積り、13年度の税収の収納はただいま始まったばかりでございますが、50兆7000億円ということでございます。12年度の増収、一定のものはこれが土台になってくる部分がありますが、他方、企業収益につきましては、12年度に入りまして本年3月の企業収益は好調だったわけでございますが、来年の3月の企業収益についてはマイナスの予想が出ているなど、今後も状況を注視していく必要があるかと考えているところでございます。

小室企画課長

地方税のほうですが、「総15-4」、横紙の資料があるかと思います。12年度地方税収入決算見込額ということで、下の注にもございますが、地方の場合は速報ということで最終値ではございません。それから地方財政計画額ベースというのは、一番下にありますように、法定外税、超過課税の分を除いた形でとっております。

表をごらんいただきますと、11年度決算額に対して12年度地方財政計画額、決算見込額がございますが、国税と違いまして、12年度の当初に見込んだ地方財政計画額を途中で補正することはなく当初のものに対して決算を見てございます。

主な傾向としては国税とも似通っておりますが、個人住民税のほうは、対地財増減額として11年に対してそれほど伸びていなくて、逆に法人のほうは好調である。それから、固定資産税は12年度に若干の制度をいじったわけですけれども、やや落ち込んでいる。その他のところに利子割が入っておりますので、大きな伸びとなっております。合計しますと1.4%、約5000億円の増となってございます。

2ページは時系列ですので省略いたします。

3ページは、その内訳として、都道府県税、市町村税、上のほうと下のほうと分けてございます。上の「都道府県税計ア」というところで、都道府県のほうは法人の比率が高く、また県民税の利子割が大きく伸びていることもあって地財計画に対しても増になっている。それに対して市町村税のほうは固定資産税のところなどがあって減となって、トータルとしては、地方財政計画当初の見込みに対して116億円の減というほぼ同じ数値になっております。

4ページです。これは、会長から御下問がありましたように、前回の総会で地方税の場合には偏在の議論があるのでその辺のデータをということで、それぞれの税について全国平均を100とした場合に、市町村の分もそこに含めてございますが、47都道府県別にその差を見たものでございます。

細かくて恐縮ですが、左から地方税全体の計で言いますと、全国を100とした場合、東京都が182、住民税は東京は164 、それに対して法人二税は非常に格差が大きくなっている。地方消費税については、清算後ではかなり均霑化している。それから固定資産税。次のページにまいりますと、たばこ税、自動車税、軽油引取税がございますが、自動車税、軽油引取税といったところでは、1人当たりで見ますと東京のほうが逆に全国よりも低い、こんなような分析になってございます。

以上、宿題返しを含めて報告です。

石会長

ありがとうございました。

それでは、私のほうから、2回ほど財政制度等審議会とやりました税調委員との話し合い、それから、地方分権推進委員会のメンバーの方々と税調のメンバーが意見を交換したときの状況を、ごく簡単に御紹介いたしたいと思います。

実は、税調だけでは議論し切れない問題がいっぱい出てきました。それが歳出面の話でありますし、地方の行財政の問題でございまして、かねてより幾つかの審議会と意見を交わしたいという希望を持っておりました。そこで、すでに前回か前々回のこの総会で御報告いたしましたが、財政制度審議会の今井会長と話し合いまして、1回やりましたが、その後、6月29日に第2回目の財政制度等審議会及び税調の合同会議というのを行いました。

我々は歳出カットということを念頭に置いておりますので、いま財制審が何をやっているかということに非常に関心があるわけでございます。そこで特に問題になったのは、来年度の予算編成において、特に公債発行額30兆円を踏まえての予算のつくり、仕上がりはどうか、それに対してどういう議論を我々はすべきであるかというトータルの枠組みの問題と、それから、社会資本整備、社会保障制度、地方財政、特殊法人、雇用対策、さまざまな個別の重要なトピックスについていま財制審がどういう議論をしているかということを念頭に、我々は議論を交わしました。財政構造特別部会ですでにいろいろな報告書も出されておりますので、そういう報告を受けたあとで、その全貌を明らかにすべくいろいろな問題提起をし話を伺ったわけであります。

そういうごく短期的な視点と、もう一つは、数年後に議論として起こるであろうプライマリー・バランスの黒字化について、今後どういう形で議論しなければいけないか、あるいは、その関係において国民負担のあり方も問題になるという形で、税制の問題にも波及するであろう。それから、経済財政諮問会議へのフィードバックという問題も、財制審と税調ともに重要であろうという点で意見を交わしてきたわけであります。どちらかといいますと我々のほうが聞き役に回り、将来的な展望について意見を加えたというような形で議論は終わり、非常に生産的であったと思います。また次回もと考えております。

それから7月17日に、地方分権推進委員会の諸井委員長以下5~6名の方と我々5~6名が出まして意見の交換を行ってまいりました。御存じのように地方分権推進委員会はちょうど終わりまして、今度は別な組織での地方分権に関する推進委員会が行われるわけでございます。ちょうど境目でございましたが、諸井委員長と、次の責任者になられます西室(泰三)さんもお見えになりまして、長い視点から国と地方の財政関係のあり方を議論いたしました。

地方分権推進委員会はかねてより機関委任事務とか何かの整理合理化をやって、最後の終わろうというところで、どうしても国と地方の税源移譲の問題を欠かすことができないという形で、この前最終的な報告をまとめられたわけでありますが、やはり地方に独自の財源が欲しい、そういう意味で国から地方への財源移譲ということを大胆に問題提起されました。国もこういう状態でありますから、当然、財源補てんという意味において地方交付税交付金、国庫支出金が削減され、その財源が国から地方に行く、そのかわりとして税源が移譲される、こういうスキームが描かれているわけでございまして、その説明も受けました。

その点については我々も同じような問題意識を持っていたわけでありますが、ただ、急にというわけにはなかなかいかないだろう。いずれ財政構造改革が将来起こったときに、パイが増えたときの分け方が一つ重要な問題になろうが、現在も、国から地方へ国庫支出金とか、地方交付税で資金が仮に浮いたとしても、それがまるまる国から地方に行くような性格のものではないのではないかという議論もいたしました。国・地方を通じて徹底した歳出削減が必要であるという点において、両側の委員の意見は合意に達したようでございます。いずれにしても、この問題も気長に取り組まなければいけないという形でございます。

二つの審議会との議論のやりとりを通じまして、お互いの審議会の状況、調査会の状況がよくわかってきたことはメリットであったと思いますし、歳出面のつながりと国と地方の税源の間のつながりというものは、今後、双方の理解を深めて考えなければいけないという形で議論をしたように思います。

これが簡単な御報告でございますが、残った30分ほどの時間で、今後の税調の運び方について皆さんに忌憚のない御意見をいただきたいと考えております。

実はこの目的は、「基礎問題小委員会」を設置したいということでございます。これに至った経過を簡単に御説明いたしますが、昨年来、党税調の議論があったり、株価が落ちてきたということもありまして、証券税制を中心としてさまざまな議論が政治家主導で行われたときに、どうも我々はあまり発言する機会がなかった。御存じのように税制改革の議論はもうこの政府税制調査会の独占物ではなくて、例えば金融庁、旧環境庁、通産省、運輸省、各省庁がさまざまな形で税制論議をしております。そういう中において、税調の審議の進め方もひと昔前とはずいぶん変わったなあという印象を私自身も受けておりますし、皆さんも受けられていると思います。

これから税調をどういう形で審議を進めるべきかというときの一つのポイントは、税制議論に対して是々非々の態度をはっきりする。同時に、問題を提起するという問題提起型の議論の進め方、シグナルの発し方が重要であろう。それから、世の中で行われている税制論議に対してそれなりのレビューをし、コメントをする。税制に対して、税制の専門的・基礎的立場から意見を指し示すことも必要ではなかろうか。そういう意味で、外の税制の議論がすべて終わったあとに我々のほうで出てそれを取りまとめる、もうそういうスタイルではないであろう。我々も税制改革の論議に、折を見て、タイミングを見て、積極的に出ていかなければいけないだろうということを考えました。

同時に、経済財政諮問会議からもいろいろ注文がついております。租税特別措置を中心として見直せ等々出ておりますので、そういうものの受け皿が必要となります。基礎的・理論的・専門的に我々税調の中で議論する場をつくらなければ、そういう新しいニーズに応えられないし、新しい税調の方向も見えてこない。そういう問題意識で「基礎問題小委員会」を立ち上げたいという形で、きょう、お諮りしているわけであります。

ある程度のグループを限って議論するときにおいて、メンバーの構成というのは非常に重要でございます。そこで、いまからお諮りいたしたいのは、基本的には22人のメンバーにお願いいたしますが、毎年度末に臨時小委員会というのを行っております。そこのメンバーをベースにいたしまして、そのほかに言論界の方々という形で、猪瀬直樹さん、田中直毅さん、堀田力さんに入っていただく形でメンバーを構成し、かつ、おこがましくも私が直接やらせていただくという形にしてこの小委員会を運営したいと考えております。

いま、お手元にメンバー表が回るかと思いますが、そういうメンバーでこれから、基本的な税の仕組み、とりわけバブル崩壊後、過去10年間ぐらい、税制は財政出動の一環として利用され、大いに活用されてまいりましたが、その結果として税制に幾つかの歪みが出ております。きわめて不公平な面も助長されてきましたし、かつ、かなり複雑になってきている。そういう点を踏まえてもう一回税制そのものを見直して、そして、21世紀にあるべき税制の姿を描きつつ税制改革論議をしなければいけないだろう、こう考えております。そういう意味で、ここのメンバーの方々にはこれからかなり御迷惑をかけるかもしれませんが、積極的に議論に参加していただいて、いい結果を出し、かつ、絶えず総会とフィードバックしながら議論を進めていきたいと考えております。

この設置の件、よろしゅうございますか。

そこで、いまから残った時間でぜひお願いしたいことは、新しくできる基礎問題小委員会の最重要課題は何か、どういう問題をここで拾い上げて議論するかという点について忌憚のない御意見をいただきたい。ざっと言いますと、当面する諸課題に対して基礎問題小委員会で議論しなければいけないでしょうし、同時に、税調本来の姿は中長期的な税制のデザインをし、あるべき姿を指し示すことだと思いますので、その視点からもいろいろなテーマが出てくるでしょう。それから、当面あるいは中長期という時限で区切ったこと以外にもろもろの問題点もあろうかと思います。その点をきょうはぜひお出しいただいて、今後、我々がこの小委員会をスタートさせるときの参
考資料にいたしたいと考えております。

そういうわけで、この問題設定を中心に基礎問題小委員会の性格自体についてもぜひ御議論いただきたいし、税調の運び方、それから、私がいま申し上げた税調の性格もあるいは私の独断かもしれませんので、御批判なり御意見があれば承りたいと思います。

島田さん、どうぞ。

島田委員

いま、日本の経済は歴史的に非常に重要な転換点に来ていると思います。最大の問題は何かというと、かつて一定の役割を果たした公的部門が機能不全に陥っていて、民間の市場経済の足を引っ張っているという問題だと思います。民営化を進めるという考え方をいま政権は持っていますけれども、これをやるとなると、実は膨大な過去の債務の処理を誰かがしなければいけないわけです。誰かというのは国民です。そのことをしっかり自覚すると、日本経済の将来像を描くときにインセンティブが刺激されるような強い経済になっていかなければいけないわけです。そういう観点から税制の全体像をしっかり議論しないといけないのではないか。

もちろん税制というと、個別項目からいけば、直接税、間接税、所得税、消費税、その他もろもろということになっていくわけですけれども、それはそれなりに全部、もう長い論議の蓄積があります。そういうことをやるのも一つの手なんでしょうけれども、いま我々はどこに立っているのか、何をしなければいけないのか、民間部門だけでも銀行に負担をかけている不良資産が100兆円ぐらいはありそうだと言われているわけで、公的なところはそれをはるかに上回るわけです。そういうものをどこかで処理しなければいけないという、終戦直後の爆撃の状況みたいなところに直面しているはずなんですね。

それと同時に、生活者はますます傷つきやすくなっていますから、そういうことを忘れてはいけない。そういう基本的な視点を定める必要があると思うので、できるだけ早い段階で会長に指導力を発揮していただいて、みんなのそういう意見も聴取していただいて、「基本的な視点は何か」ということを1~2回やっていただきたいなと思います。場合によってはこのメンバーに宿題を出されてもいいと思うのです。3枚、5枚の紙を書けといって出されて、それを踏まえて会長のもとで太い線でやっていただければと思います。

石会長

早速、島田さんにあとで宿題を出しますから。

猪瀬委員

僕は石原伸晃行革担当大臣の下で行革断行評議会というところに入っています。例えば電電公社はNTTになって税金をたくさん取っています。税金をたくさん取ったほうがいい立場で税調というのはあるわけですけれども、いま島田さんが公的セクションの不良債権もかなりあるとおっしゃいました。そのとおりですが、一方で、実は会計的な処理でごまかしているところもいっぱいありまして、おカネがたくさん貯まっているところもあるわけです。きちんと企業会計を入れて情報公開をしていけば、おカネは取れるのです。分割民営化していけば税金を払ってもらえることになるわけで、必ずしも暗い話ではなくて、おカネをもっと取れるところがいっぱいあるんだという考え方が大事だと思います。

これまで我々はだいぶ数字でごまかされてきたのですけれども、きちんと見ていくと……。つまり、特殊法人など税金をいろいろ投入していますけれども、投入しなくてもやれるのがいっぱいあるんですね。要するにクセがついているだけなんです。経営を合理化して、分割民営化して競争力をつけていけば、逆におカネをどんどん払ってもらえるということがあります。これは歳出の問題になりますけれども、5兆3000億円が特殊法人に入っている、そのうち1兆円を取れるではないかという話になりかけていますけれども、そういうことも含めて、単に予算で5兆3000億円が特殊法人等に入っているのを1兆円抜くというだけではなくて、分割民営化すれば逆に儲かるのだという考え方に切りかえないといけないと思います。

それから、公益法人には税金が6500億円入っている。僕は初め4000億円ぐらいと思っていたら、決算ベースで見たら6500億円になっていたということなんですね。それを僕は初めわからなかった。決算ベースで見ないとわからない。しかし、そうはいうけれども、本当は予算でもわかっているはずなんですね。例えば、その6500億円から抜けば……。単に6500億円入っているということではなくて、ちゃんと彼らが税金を払えばまた6500億円ぐらい税金が取れるかもしれない。合わせると1兆円になる。こういうふうにプラス・マイナスを逆に考えていくと、儲かる話になる。

この前も提起しましたけれども、収益事業を公益法人はやっていますけれども、取ろうと思えばいくらでも税金は取れますからね。取り方は、法律の改正とか、政令の改正とか、いろいろ難しい技術の問題がありますけれども、たまっているものをそこにそのまま置いてあるわけです。それは死んでいるおカネですから、その死んでいるおカネはちゃんと返してもらう、そういうことも基礎問題小委員会できちんと話し合っていかないといけない。

石会長

その辺についてもレポートをお願いできたら。

大田さん、どうぞ。

大田委員

テーマは非常にあると思うのですが、高齢化が本格的に進んでいって、一方で経済の国際化、グローバル化が非常に進んでいる中で、どこで税収を上げていくのかという基本的なところがまだ議論されていないわけです。全体像といえば全体像であるし、とっかかりとしては消費税の位置づけというようなところが最初のテーマかなというふうに思います。本気で10年後を見据えた税のあり方を議論するということだと思います。

お願いなのですが、やり方としては、なるべく事務局にもお手伝いいただいて数値を出す。税を変えることによって、どういう層に、どれくらいの負担が帰着するのか、負担構造はどう変わるのか、その数値を出して、数値を伴った選択肢を示していくということが必要かなと思います。

それから、この基礎問題小委員会で途中で提言のようなものをまとめる場合に、基本的な文章は委員が書くという方向にしたほうがいいと思っています。

石会長

津田さん、どうぞ。

津田委員

いま消費税の話題が出ましたけれども、先の話というよりは、私が心配しておりますのは、例の基礎年金について、3分の1、2分の1にするというのが国会レベルでは4年までにと。4年までというのは、要するに3年度なわけですね。そんなに時間がない。税が最初に出ていく必要がないのかもわからないですけれども、かねてから消費税というのは福祉目的化という考え方で来ているわけです。ですからこの際、保険料なのか、それとも税でやるのか、税の場合には消費税が出ていくのか、あるいは課税最低限等の問題を抱えた所得課税で対応するのか、税制面で早い時期に考え方をまとめていかなければならないのではないか。具体的な問題としてもこの基礎問題小委で取り上げていただければと思います。

石会長

わかりました。

水野さん、どうぞ。

水野(勝)委員

会長からお話のございました基礎問題小委員会、これは時宜に適した問題であり、また、ぜひそうあるべき姿ではないかと思うわけでございます。と申しますのは、いまの内閣になってからというもの、かなり内閣主導型になってきているわけでございます。政党サイドもややそれに引っ張られ、それに対応しているということでございます。そういう意味におきまして、内閣総理大臣への諮問機関である税制調査会は、内閣主導型の現在の政策の進め方の中で枢要な地位を占めるべき存在ではないかと思うわけでございますので、ぜひ一つそうした本格的な活動を適宜、適時お願いしたいと思うわけでございます。

そして取り上げるべき検討事項として、基本的には総理が言っておられるプライマリー・バランスの問題がありますが、この問題はまず歳出構造の見直しが先行する話ではないかと思います。また、当税制調査会は3年間の任期で、いま1年経過しておりますけれども、その任期の間には、基本的な税制のあり方、方向についてまとめていく議論があるわけでございます。その点はこの任期中に考えるという中で、当面の重要な基礎的な諸問題についてはこちらからサインを投げる、ボールが来たらそれを打つという態勢が必要ではないか。その当面の大きな問題としては租税特別措置をどうするかという問題があろうかと思います。よく言われますのは、特定財源と一般財源の制度の問題、あり方でございます。それから、高齢社会での税制のあり方、社会福祉との関連での税負担のあり方でございます。大きな問題としては国と地方の問題。当面、こんなことが考えられるわけでございます。

その点に関連して、いまの議論からはややそれるかもしれませんけれども、先ほど石会長から地方分権推進委員会の話がございました。その中で、今後の地方の財源の拡充・充実というお話がございましたが、分権推進委員会の報告の中で、今後は歳入の自治も拡充、重視しなければならない、その際には自主課税を大いに尊重しなければいけない、拡充しなければいけないということが言われています。

その中で一つ注目すべき点は、「自主財源、課税自主権の実現、尊重に当たってはどうしても法人に限定されて負担が求められる傾向があることには留意する必要がある」という表現があります。これは全くそのとおりでございまして、本来であれば個人が負担と受益に最も直接関係するわけでございますけれども、どうしても超過課税なり自主課税のところは法人が中心になってしまう。県民税なり市町村民税で所得割で超過課税をしている。これは法人がほとんどの都道府県、市町村でやっているが、個人の所得割というのはほとんどないというあたりから見直していく必要があろうかと思うわけでございます。

その点で、最近のやや具体的過ぎる問題かもしれませんけれども、横浜市が勝馬投票券発売税という条例を定めました。これは、馬券の発売所があることによって環境が悪くなるからと、それに対応するのかと思ったらそうではない。ギャンブルをやる人には担税力があるから、課税をするかといえばそうでもない。これは県民が動かすわけではないからです。

その自治体のおっしゃるところによりますれば、要するに中央競馬会は儲けている、積立金があるということでございます。そこに担税力があるということですけれども、中央競馬会というのは第一種法人でございますから、国と同格でございます。そこに利益がある、積立金があるということで、一地方団体が課税するということであれば、あるいは厚生年金基金も郵便貯金も外為関係も積立金があれば課税するということになるわけで、これは税制の秩序に外れるのではないか、地方税法にありますところの国の経済施策に反することになるのではないか。そういう意味におきまして、総理大臣がこれを導入されなかったのはごもっともな話でございます。

それに対しまして、国・地方係争処理委員会というのがありまして、そこに提訴されて、先般、もう一回協議を再開しろという勧告が出されているということでございます。おそらく今後いろいろな問題があると思いますけれども、総務省とされましては、地方税法の規定なり超過課税のあり方、国と地方の間での財源の問題が背景にあると思います、そうした本旨に即して適切な御対応がされるように、ひとつよろしく。これは個別案件になってしまってやや特殊かもしれませんけれども、ぜひ適切な御配慮、御処理をお願いしたいと思います。

石会長

きょうの資料の中に幾つか資料が入っているのを、御説明し損ないましたけれども、地方分権推進委員会のサマリー版とか、財制審の財政制度分科会の中間報告とか、骨太の方針もここに入っております。冒頭、事務局から御説明すればよかったのですが、きょうの豊富な資料をぜひあとでひもといていただきたいと思います。

では、河野さん。

河野特別委員

会長が問題提起された基礎問題小委員会のことです。二つ、三つ申し上げたいのですが、一つは、どういうテーマを選ぶかということについては理論的・専門的にとおっしゃいました。これは第1回をいつやるか知りませんけれども、どなたかおっしゃったけれども、各委員から出してもらって、それを選別しながら整理すればいいと思うのです。上からペーパーが下がるというのはあまりよくないと思います。

二つ目は、その上で思うんだけれども、会長が言われたみたいに、あらゆる基本的な税制について理論的かつ専門的な高度の討議を黙々として重ねる。我々はいずれどこかで花が咲くと思ってやっているわけです。1年先か2、3年先かわからないけれども、それは経済情勢、政治情勢、二つによるわけだから、いつでも対応できるような整備をしておくことが基本だと思うのです。

しかし、きのうきょうの新聞で、総理が言うものだからよく新聞の見出しになるけれども、物事には工程表というのが要るんです。基本的なことについてちょっと先をにらんで理論武装することは当たり前の話ですね。これは黙々としてやればいいんですよ。同時に、きょうの証券税制もそうだし、道路財源論もそうだし、いずれどこかでかなり高度の議論が政治的に巻き上がって、税調がそれをどう理論的に裁くのか、コメントするのかという時期が必ず来るわけです。だから、軸足7割ぐらいは基本問題についてやるけれども、併せて、個別具体的な問題が外から投げかけられたときには、ピシッと「それについて我々はこう思う」と、この小委員会はそういう作業も平気でできる。つまり、二つのことをやる必要があるということだけ申し上げておきたいのです。

石会長

どうぞ、佐野さん。

佐野委員

二、三点申し上げたいのですが、基礎問題小委員会ができて、その結果、小委員会が三つになります。一つ確認しておきたいのは、当税制調査会はやはり総会主義で行くべきである。さっきの議論を聞いていましても、国民各界各層の方が集まっている、そこで自由闊達な議論をすることが大前提で、それが税調としての審議会の特徴でもあるわけです。小委員会単位の委員会主義に陥ってもらっては本来の趣旨に反するのではないか、そこら辺は踏まえておきたいと私個人は思います。

それから、基礎問題小委員会ができたということは言ってみれば石会長の諮問会議みたいなもので、財制審との協議がある、諮問会議との協議がある、地方分権推進会議との協議がある、つまり税調がほかの審議会と意見調整をする機会が非常に増えている。そのとき、税調としてはどういうスタンス、考え方があるのか、そこら辺を委員としては石会長のお耳に入れておきたいと、この基礎問題小委員会はそういう一つの役割があるのかなという感じもいたします。

もう一つは、この基礎問題小委員会というのは税プロパーもさることながら、業際的な分野、時事的な問題に対応していく、そんな役割もあるのかなという気がするわけです。そういう意味で、我々も問題を提起する、しかし、石さんから我々に対して臨機応変に御下問がある、そんな運営にしていったらどうかというふうにも考えております。

石会長

総会は、基礎問題小委員会とあと二つの小委員会と並行して少なくとも月1回のペースで開きたいと思っております。そういう意味で絶えず小委員会と総会の間の活動を掌握して往復したい思っております。最終的な御承認をここでいただくような議論もおそらく起こってくると思いますので、総会の利用の仕方はこれから従来以上の重要性をもって考えたいと考えております。どうぞ、松浦さん。

松浦委員

佐野委員の意見と全く同じですけれども、私も長い間やっていて、総会でいろいろな議論をしてきたわけで、小委員会の報告というのはこの場に来て初めて渡されるわけです。読んでいる時間なんかほとんどないわけで、我々としてそれに対して御意見を申し上げるのは大変難しい問題です。もしこの小委員会をこういう形でおやりになるのだったら、せめて1日前ぐらいに我々の手元に届くようにしていただければ大変幸いだと思っています。

石会長

総会を中心に、あるいは小委員会にシフトするのを今後やるか、非常に難しい問題がありますので、皆さんの意見を聞きながら慎重に進めたいと思います。ただ、細かい税の議論とか、基礎的・理論的なことになりますと、どうしても大きな場ではしにくい問題もいっぱいあります。そういう意味で基礎問題小委員会をつくったわけですが、当然、そこでの議論をこちらにフィードバックしてまた皆さんの御議論をいただきたいと考えております。いまの御意見は頭の真ん中に入れておきたいと考えております。

そろそろ時間がなくなりましたけれども、この際ぜひという御発言はございますか。よろしゅうございますか。

それでは、予定した時間がまいりました。あしたから8月でございます。税調も休みということになりますが、今後の日程は、金融小委を先頭に基礎問題等々も、あるいは8月の最後の週ぐらいから始まるかもしれませんが、9月に入りましてから本格的な議論を開始したいと思います。総会も当然開催を予定しておりますが、基礎問題小委員会をそれに先んじて開く可能性もございますので、その辺はあらかじめ御了解を得ておきたいと思います。

それでは、長時間、熱心な議論をしていただきまして、ありがとうございました。きょうはこれにて散会いたします。よき夏休みをお迎えください。

〔閉会〕

(注)

本議事録は毎回の総会後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成したものです。

内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。