第14回総会 議事録

平成13年6月19日開催

石会長

ただいまから、税制調査会第14回総会を開催いたします。

本日は、塩川財務大臣に御出席いただくはずでしたが、いま、国会の最中でございまして、御挨拶いただけません。またいずれかの機会にと考えております。

それから、副大臣の村上さんがお見えになるはずでございます。お見えになりましたら、御挨拶をいただくわけですが、時間の関係もありますので、きょうの議事次第について若干御説明しておきます。

すでにお手元の会議の御案内に幾つかの報告事項等が並んでいると思いますが、きょうは、前半で財制審以下のいろいろな形の報告をさせていただきまして、そのあとで、特定財源についての御説明をいただいて議論を深めていきたいと考えております。

ただいま、財務副大臣の村上さんがお見えになりましたので、簡単に御挨拶をいただきます。

村上財務副大臣

どうも御苦労さまでございます。引き続き、財務副大臣を拝命いたしました村上でございます。本日、塩川財務大臣は国会の答弁のため出席しておりますので、かわりに御挨拶させていただきます。

小泉内閣は、御高承のように「構造改革なくして景気対策なし」ということで、ほぼ百八十度、政策を転換いたしました。私どもは、財政と経済と教育の建て直しが一日遅れれば遅れるほど次の世代が痛むだけだと考えております。どうしても徹底的な歳出の見直しをし、次の世代に耐え得る財政支出の構造をつくっていかなければいけないと思います。その徹底した歳出の見直しのあと、当然、次に来るのは、皆様方にお願いしている歳入の問題であります。そこら辺につきまして、ここ数年間は歳出を徹底的にやるわけでございますが、どうしてもその間、弾込めの時間というか、綿密なる計画、スケジュールでやっていく必要があると思います。そういう面で、先生方の忌憚のない御意見と御指導を賜れたらと念願する次第でございます。

石会長さんと私は、同じ高校の先輩、後輩ですが、先輩の世代はうまく逃げられた世代だと思います。私と津委員以下は、残念ながら、宴の後の処理世代だと思います。何とぞこの切々たる気持ちをおくみ取りいただきまして、今後ともなお一層の御指導、よろしくお願いします。どうもありがとうございました。

石会長

どうもありがとうございました。力強いお言葉をいただきまして、我々もやる気が出てきたなあという感じがいたします。

きょうは、幾つかの審議会、あるいは小委員会の御報告をいただきますが、最初に、金融小委員会の審議経過を小委員長の奥野さんより御報告いただきます。

奥野小委員長

6月5日(火曜日)に第1回の金融小委員会を開催いたしました。小委員長代理は東京大学の中里教授にお願いいたしました。各委員の紹介のあと、早速審議に入り、事務局から、第一が近年の金融関連税制の動き、第二が緊急経済対策にかかわる税制上の措置、第三がこれまでの政府税調における金融税制についての議論の概要、以上の三点について説明を受けましたあと、今後の進め方も含めて、委員の方に自由に御議論いただきました。

自由討議の中では幾つかの点が議論されました。例えば、小委員会では金融・証券税制のあり方について、公平・中立・簡素の原則に基づいて幅広い観点から議論を行うべきではないかというような論点とか、あるいは、株価や株式市場の動向は個人の資産選好などさまざまな要因によるものであって、税制だけで対応することには限界があるのではないかといった論点。あるいは、さまざまな金融商品の間での中立性の問題について税制全体の中で考えていくべきではないかといった点。所得税だけではなく、法人税についてもさまざまなテクニックを用いて国際的な取引を利用した節税が行われており、その実態を明らかにすべきではないかといった点。インターネット取引やデリバティブ取引といった新たな環境の中で、税制はどのように対応していくのかを検討すべきではないかといった点。金融税制について考える場合には国際的整合性について留意すべきではないかなど、さまざまな意見がございました。

次回の金融小委員会ですけれども、今週の金曜日、6月22日に開催の予定であります。次の会合では、まず、金融・証券税制のあり方の議論の前提として、最近の金融の動きや今後の展望などを、広く、金融のあり方一般について議論していきたいというふうに考えております。

以上です。

石会長

ありがとうございました。これ以下の報告は若干性格を異にしますので、金融小委員会に対して何か御質問なり御意見があれば、いま出していただきたいと思います。とりわけ証券・金融等々は、年初来の株式市場との関連で広く取り扱われてきたということもございまして、我が税調としてもいろいろ御意見をお持ちの方がいらっしゃると思います。何かございましたら、いまお出しいただいたほうがいいと思いますが、どなたか御意見ございますか。

松尾さん、どうぞ。

松尾委員

金融小委については非常に重大な関心があるわけでありまして、新聞報道も見ておりますと、簡単にしか紹介されておりませんでしたけれども、奥野小委員長が記者会見で、老人マル優の問題も含めて検討すべきであると、そういうことをおっしゃったのでしょうか。

奥野小委員長

記憶にないのですが。

松尾委員

そうですか。それは私の読み違いかもしれません。いずれにしても、金融・証券税制だけではなくて幅広い問題がありますので、老人マル優などのあり方も含めて突っ込んで検討していただきたい、そういう要望でございます。

奥野小委員長

老人マル優ではなくて、郵貯については、私、おっしゃる趣旨の方向で触れました。

石会長

ほかにいかがでございますか。よろしゅうございますか。この問題につきましては、後ほど戻ってもらっても結構でございますから、御意見があったときに、また御発言ください。

それでは、第二の論点に移ります。これは、財政制度等審議会及び税制調査会の委員による合同会議という形で、5月31日にある会合を持ちましたので、これにつきまして私のほうから御説明いたします。

最初のほうに2枚紙の5月31日付で、「財政制度等審議会及び税制調査会の委員による合同会議 意見要旨」というのがついているかと思います。これは、私と今井会長がかねてより、この種の合同会議が必要であるということを言っておりましたものですから、小泉内閣がさまざまな形で意見を申される中で、ある方向を打ち出したという段階においてこの会合を持ち、歳出・歳入両側から財政構造改革を促進すべく意見を交わそうという形で持ったわけであります。

双方から5人ずつ委員が出まして、自由に2時間ほど議論をし、その後、この2枚紙の意見を要約したというスタイルをとっております。1枚目が総論であり、2枚目が各論であります。

総論のほうは、「基本的考え方」という形で、最初が、財政構造改革というのはまさにいまある経済構造改革の中の一つとして重要である。不良債権等々の処理問題とも絡めて重要であると。二番目は、歳出・歳入双方の中長期にわたる改革なくしてこれからの財政構造改革はできない。14年度予算の議論はそういう枠組みでやるべきだし、また、中長期のビジョンもこの視点から打ち出すべきである。そういう意味で、諮問会議の役割は非常に重要であるということを認識したわけであります。

それから、プライマリー・バランスの均衡ということが話題になっておりますが、これに向けた取組みは、「構造改革なくして景気回復なし」という基本方針に沿っているわけでありますから、可及的速やかに議論をしてもらいたいということを申し上げました。14年度の予算編成では、プライマリー・バランスの均衡に向けた取組みをしてもらいたいし、15年度以降それがどういうふうに発展するのかということも明確にしておくべきであるという考えであります。

国と地方の歳出の見直しは当然でございます。と同時に、その成果を踏まえて、国民負担のあるべき姿についても検討すべきであるというのを第四点目としてつけ加えました。

おめくりいただきまして、各論です。歳出各論については、当然、全体を通じて歳出カットでございますから、痛みを伴う議論というのがあり、それを明確にすべきであるということです。最初は公共事業であり、道路特定財源などの見直しを通じて、公共投資の規模を縮減して、欧米諸国に近づけるべきであるというのが第一の要旨です。

第二は、社会保障。これは、医療制度改革を中核に置いて、社会保障全般にわたって制度の効率化・適正化を進めなければいけない、こういう趣旨の意見がまとまります。

第三は、国と地方の関係でございまして、やはり受益と負担が明確になるような形で自立した地方行財政制度が必要であろう。そういう意味で、地方交付税等々の抜本的な見直しがしかるべきであるということ。それから、14年度より、地方財政計画を中心とした歳出の見直しについて、補助金・地方交付税等々の抑制も含めて議論すべきである。

最後は、4に出てございますが、特殊法人等。その抜本的な見直しによって、国の財政支出を整理・縮減すべきであるという形で意見を集約したのがまとめてございます。

短い時間ではございますが、大変活発な意見が出て、こういう会合は非常に意義があるという形で、また次回も持とうということで、今月末、第二回目をやることを考えております。私のほうからは以上でございます。

あと、この種の報告を幾つかされたあとで、トータルとして御議論を賜りたいと思います。

それでは、続いて本間さんから、財制審のほうの財政構造改革部会の中間報告を御説明いただけますか。

本間委員

それでは、財政制度等審議会財政制度分科会におきまして、本年1月の財務省発足を機に、我が国の財政構造を改めて見直していくということで論点整理を行いました。私、財政構造改革部会の部会長を務めておりますので、簡単にお話しさせていただきます。

まず、新しい財政制度等審議会になりましてから、我々、地方調査を四国、北海道、近畿で行うと同時に、地方座談会を行いました。さらには海外調査、ドイツ、フランス、スウェーデン、イタリアに各委員に直接お出ましいただいて、ヒアリングを行ってまいりました。そして、インターネットでアンケート調査をいたしまして、1230名の方から御回答をいただくというようなことで、この三者を組み合わせて、「財政構造改革部会中間報告」としてまとめたのがお手元にお届けしている資料でございます。この報告書は、6月11日に開かれました経済財政諮問会議にも財務大臣提出資料として報告されております。

中身ですけれども、簡単に申し上げますと、マクロ的には、欧州が財政健全化を進めている中でひとり我が国だけが財政状況を悪化させていることを明らかにした上で、90年代の財政運営と景気動向について整理いたしております。この時期の政策運営は、反省点も踏まえて、不良債権問題の過小評価と、経済安定化の役割を過度に財政に依存した点にあることを認めております。その結果、財政の効率性が損なわれ、サステナビリティー(持続可能性)に対する信頼も低下したことを認めているということでございます。

それから、97年度の景気後退について論争があるわけですけれども、財政が何らかの影響を与えたことは否定できないものの、主因はやはり金融システムの不安であったという具合に結論しております。

それから、財政構造改革を今後進めてまいりますときに、どういう理念でこれを改革していくべきかということ、これを整理しております。経済安定政策としての財政政策は、不況が極めて厳しく、金融政策の発動余地が限られているときのみ使うべきであるということを明記しておりますし、効率的な資源配分の観点から、民間に任せるべきものについては極力任せるというスタンスを維持すべきであるということ。さらには、サステナビリティーを回復・維持すべきであるということを書き、そのためにプライマリー・バランスの均衡に向けたプランの提示と、政府の実行力への信頼確保、これは(国債発行)30兆円の達成が必要であること。さらには、債務残高対GDP比の削減を志向すべきであるということ。改革プランにおいては、開始時期、達成目標年限、収支改善の強度など、中期的な再建の道筋を明確に示し、早期に取組みを開始する必要があること。国民負担に関する議論が究極的には必要であること等を指摘しております。

各論につきましては、三大項目であります、公共投資、社会保障、国と地方のテーマを中心にしながら、従来に増して構造的な改革の必要性を包括的に整理し、訴えているということであります。その中身は、いま石会長が、財制審・税調との会合の中でお示ししていただいた方向に沿ってまとめられているということでございますので、各論のところにつきましては省略させていただきたいと思います。

以上です。

石会長

ありがとうございました。

それでは、引き続き、現在、経済財政諮問会議において最終的な報告の取りまとめが行われているようでございますが、現時点において状況を御説明いただくのは大変意義のあることだと思いますので、小手川さんと小室さん、御両人からこの辺の御説明を受けたいと思います。

では、最初に小手川さんから。

小手川総務課長

お手元に二つ資料を配付させてもらっております。「総14-1」と、もう少し分厚いもので「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針(素案)」というのがございます。14-1のほうは、分厚いほうの内容のうち税制に関する部分を抜粋したものでございます。いまのお話にございましたように、これは、11日の経済財政諮問会議において提出された資料でございますので、まだ最終版ではないことは最初にお断りしておきたいと存じます。

税制に関しましては、12ページに全体の総論ともいうべき部分が入っております。12ページに「(7)税制改革」というところがございます。その中で下から二つ目のパラグラフの部分、「中立的な税制を構築しなければならない」とか、最後のパラグラフですけれども、「租税特別措置についても、聖域なく徹底した見直しを行い、効率的な企業経営を促進するための制度整備の一環として連結納税制度の導入も進める」といったものが入ってございます。さらに、上から二つ目のパラグラフの4行目、「21世紀にふさわしい税制を実現するためには、さらなる税制改革が求められる」といった文章が入っております。

次に、個別の部分について申し上げます。個別のほうといたしましては、総論の前文のところでございますけれども、2~3ページに「2.構造改革のための7つの改革プログラム」というのがございます。(1)からずっと入っておりますけれども、その中で、「(2)チャレンジャー支援プログラム」について、3ページの上のほうに、「従来の預貯金中心の貯蓄優遇から株式投資などの投資優遇へという金融のあり方の切り替えや起業・創業の重要性を踏まえ、税制を含めた諸制度のあり方を検討する」といった文章が入っております。

そのすぐ下の部分ですが、「(4)知的資産倍増プログラム」というところの一番最後の2行目の部分ですけれども、「環境整備について、税制面での対応を含め検討する」と。

それから、4ページにいっていただきまして、「(5)生活維新プログラム」の[2]の部分ですが、「『働く女性にやさしい社会』を構築するため、税や社会保障制度の見直しに当たっては、個人単位化を進める」といった文章。

ちょっと地方税関係を飛ばしまして、11ページですけれども、「(5)資産市場の構造改革」のうちの[1]、「証券市場の構造改革」という部分につきまして、最初のパラグラフの下から3行目ぐらいのところですが、「その拡大を図るために、貯蓄優遇から投資優遇への金融のあり方の切り替えなどを踏まえ、税制を含めた関連する諸制度における対応について検討を行う」ということでございます。

15ページのちょうど真ん中付近、2の(1)の[1]で、道路等の「特定財源」に関する記述があります。[1]の一番最後にございますように、結論的には「そのあり方を見直す」といった文章になってございます。

少し飛びまして21ページでございますが、社会保障の関係で、1カ所、税制の記述がございます。「(3)女性、高齢者の社会参画の拡大、就労形態の多様化への対応」というところで、その1行目から2行目ですが、「働く意欲と能力のある女性や高齢者の就業を抑制しないよう、年金、医療、税制等の制度設計の見直しを進める」といった文章が入ってございます。

年金に関しまして、24ページの「4.年金制度の改革」の中、25ページの上から二つ目のパラグラフ、[2]の部分でございます。「世代間・世代内の公平を確保するための年金税制の見直し」というところで、下から3行目ですけれども、「この点を含めた年金税制のあり方について、世代間の公平や、拠出・運用・給付の各段階を通じた負担の適正化の観点から見直していく」といった文が入っています。

私のほうからは以上でございます。

石会長

引き続きまして、小室さん、お願いします。

小室企画課長

1枚めくっていただきまして、本文の27ページ、第4章に「個性ある地方の競争」ということで、国・地方関係の議論を展開してございます。1、2とありまして、さらにおめくりいただきまして、29ページの5のところが、「地方財政にかかる制度の抜本改革」ということで交付税等がございますが、29ページの下の部分、(3)に、「地方税の充実確保」ということで表記がございます。「地方行財政の効率化を前提に、国・地方の役割分担を踏まえつつ、国庫補助金の整理合理化、交付税の見直しを図るとともに、国と地方の税源配分を見直し、検討する」ということで、さらに次のページのところで、法人事業税の外形標準課税について触れてございます。

これらのところ、地方税の充実確保の方向性をより明確化すべきではないかとか、いろいろ御議論ございまして、現在、この(3)のところは表現の絞りを含めて調整中でございます。

なお、あと先逆になりますが、4ページの(6)で、プログラムとして「地方自立・活性化プログラム」について触れてあります。

以上でございます。

石会長

ありがとうございました。報告が続いておりますが、あと二つございます。議論の前までもう少し我慢してください。

次は、経済財政諮問会議の民間委員と、税調会長という形で私が参上いたしまして、「今後の税制のあり方」という形でペーパーを用意し、これについて説明し、議論をした経過を御説明したいと思います。

1枚紙が、いまの資料のあとに入っていると思いますが、6月15日午後5時半から6時半まで、1時間という短い時間ではございましたけれども、牛尾さん、奥田さん、本間さん、吉川さんという諮問会議の4人の委員の方と直接会いまして、いろいろな議論を交わしてまいりました。

私が冒頭15~20分、この紙に沿いまして、現在どういうことが問題になっているかという御紹介をし、その後、いろいろな意見を交わしたという経緯でございます。議論に先立ちまして、私は、まだ税調の出番ではないだろうということをはっきり申し上げました。つまり、景気の問題もありますし、小泉内閣の姿勢のこともございますので、本格的な税制の論議ではないが、我々はいま着々と基礎工事をしているのだと。先ほど副大臣の村上さんがおっしゃったようなことを前提にして、議論しました。

第二に、個人的見解を述べるけれども、税調の議論の大きな流れに沿った形で申し述べたいということをはっきり申し上げました。そこで最初は、諮問会議にどういうことを期待しているかという形で、全体像をしっかり組んで出してもらいたい、言うなればプライマリー・バランスの均衡という問題もございます。今後、財政構造改革をやるなら、いますぐとは言わないまでも、全体像を出し、大きな流れをつくってもらって、その制度設計等々は税調のほうが引き受ける。そういう意味で、税調との連携・役割分担は非常に大きな意味を占めるということを最初に強調したわけであります。

そして、プライマリー・バランスの均衡、歳出カットが当然大きな問題になります。それ以外にも、歳入のほうの議論になれば国民負担率の将来像といったような形で、社会保険料、社会保障財源、それと税の関係、こういうこともある大枠を出してもらい、あるいは議論してもらい、それを我々が受けて詳細設計、そういう形でやりたいという分業のことも強く申し上げましたし、サービスと負担というのが一体化して議論されませんと、議論がどうしても上滑りになるというようなことも申し上げました。

各論のほうでございますが、時間の関係もありまして、「望ましい税制の構築」というところで、[1]から[9]まで書いてございます。全体的に触れるわけにはいきませんでしたが、やはり我々としては、公平・中立・簡素という伝統的な物差し、言うなれば基本方針で今後の税制の再構築を図りたいということ。それから、いま、大きな税源、あるいは税負担の変動がない中では、政策税制というものになりがちだけれども、政策税制というのはどうしても公平・中立・簡素に相反することになるので、おのずから限度があり、限られた範囲、限られた期間で使わざるを得ないものであるというその性格をはっきり申し上げました。

ただ、租税特別措置に関しては、ゼロベースぐらいで見直すべきであり、これが非常に重要ではないかという点を強調いたしました。

それから、所得税の課税最低限でありますが、本来は住民税も入れて考えておりましたので、個人所得税にすべきだったかもしれませんが、雑多な所得控除がいっぱい入り、見直すべきものを見直さないという結果として課税最低限が上がったので、これを見直すべきである等々の議論をいたしました。

道路特定財源、環境税の関係とか、最後に、国・地方税源の配分として、ここに地方交付税が書いてございますが、頭の中には国庫補助金も入っていたわけでありまして、国庫補助金、地方交付税、この領域での削減があれば、その浮いた財源を国と地方と例えば半分ぐらいずつ分け合って、地方への財源を渡すこと、あるいは国の借金を減らすことというふうにして、痛みを分かち合ったらいいではないかということを申し上げました。

今後の審議の進め方として、昨年7月、加藤前会長がまとめました報告書にもありましたように、「国民の参加と選択」というのは我々の大きな姿勢であるということを強調し、それから、インターネットですでに情報公開をこの総会でやっておりますように、事情の公開というのはこれから一つ決め手になるだろうと。つまり、国民と向かい合って税の議論をしない限り、本格的な税制改革は進めがたいという意識を持っております。

それから、これから詰めていく段階がいずれ来るわけでありまして、それにおいては、小委員会、さらに基本問題委員会みたいなものを立ち上げて、いずれ議論しなければいけないだろうということと、国民との対話ということを言うなら、公聴会、特に地方公聴会みたいなものも開いて忌憚のない意見を各地で交わすという過程を通じて、税制改革のあり方を探っていきたいというようなことを申し上げました。

あと議論に移りまして、個別の税制、トータルの税制、いろいろな御意見をいただきました。例えば、国際化の中で今後の税制改革を一体どう考えるのかとか、あるいは、道路特定財源の暫定税率というものがどういう位置づけであり、どういう格好になっているのか、さまざまございましたが、これは通常我々が議論している範囲のことでありました。

後半、より重要だと思われたのは、税制調査会の姿勢、あるいは、やっていることと言うべきかな、それに対しての御意見がだいぶ出されました。簡単に言うと、税調は最近国民に対してメッセージを送っていないのではないかということです。つまり、5月の末にこの総会でだいぶ多くの委員の方から、税調はもうちょっとしっかり議論して、メッセージ性のある、あるいは、しっかりした信号を発信すべきだという御意見を賜りましたが、それと同じようなことが特に牛尾さんあたりから強く出されました。

そういうことで、政府税調がいまどういう立場にあり、どういう形で審議すべきかということについては、諮問会議の方々もかなり御関心があるなということを受けとめました。私自身もこの点に関しましてはかねてより不満を持っていたこともあり、そういうことで意見を交わしましたが、いまの政治情勢、あるいは選挙が近いこと等々もあり、それから、本格的な議論は直ちにというよりは、公平・中立・簡素という基本的な枠組みに沿っての議論、税制の再構築という議論、これが重要であろうという形で、いずれ小委員会を立ててやりたいということで意見を交換しながら税調の基本的な姿勢を伝えたつもりではあります。

ただ、外側から税調を見ていて、その審議が十分でないということ、もう少し突っ込んだ問題提起をしてもいいではないかと。例えば道路特定財源とか、国と地方の税源配分等々について、そういう意見が諮問会議から強く出されたということは重要であったし、それを御報告しておかなければいけないというふうに考えております。この辺につきましても、あとの審議状況との関係もございますので、自由討論のときにまた御意見をいただけたらと思います。

それでは、お待たせしました。諸井さんから、地方分権推進委員会の最終報告、御説明いただきます。よろしくお願いします。

諸井委員

お手元に、地方分権推進委員会の最終報告が配られていると思います。我々地方分権推進委員会は、来る7月2日をもって6年間の任期を満了いたします。それに先立って、先週6月14日に小泉総理大臣のところへ最終報告を提出したわけであります。目次を見ていただきますと、第1章は、いままでの経緯についての回顧と反省のようなことが書いてあります。第2章は、我々は監視業務に責任を持っているわけですが、それの総括が書いてあります。第3章は、地方税財源の問題であります。第4章は、今後残された課題というようなところでございます。

時間がありませんので、第3章の部分だけ説明させていただきます。

我々地方分権推進委員会としては、政府税調をさしおいて、地方税の問題について具体的な勧告とか意見、要するに、地方分権推進法に決められた法律的な行為をとることはいままで差し控えてまいりました。

しかし、昨年、この委員会の任期が1年延長されるときに、当時の森総理大臣から、地方税財源の充実確保について検討してくれという御依頼があったことが一つ。もう一つは、昨年の税調の中期答申の中でも、個人住民税、地方消費税を重視するようなことに触れていただいたことが一つ。そういうようなことがありましたので、今回は任務を終了するに当たって、多少具体的なことを述べていかなくてはいけないのではないかということで作業をしたわけであります。ただ、今回も勧告とか意見という法律的行為は控えまして、地方分権推進委員会の立場での提言、将来検討していただくときに参考にしていただきたいと、そういう意味での提言ということでお出しをした次第でございます。

20ページから第3章が始まるわけですが、具体的な個別の税についての記述は22ページから出ていると思います。個人所得税から個人住民税のほうへ、また、消費税から地方消費税のほうへ税源移譲をしてもらいたいということが書いてあります。ただし、これはあくまでも財政、税制を全体として構造改革をするとき、根本的、基本的に見直すときに同時に併せて考えてくださいということです。

もう一つは、税源移譲によって地方の歳入が増えた場合には、それに見合う額を少なくとも交付税、補助金のほうで削減して中立にしておくべきではないか。その二つの点は明確に述べているところであります。

そのほか、固定資産税は安定確保ということと、法人事業税の外形標準課税化というのは述べているところであります。

なお、その前の6月6日に、いまの石会長のお話と同じように、経済財政諮問会議の民間側委員からのヒアリングを受けたわけでございますが、結局、いまのように中央省庁の膨張体質と、地方の公共団体の中央依存体質というものが結びついてしまいますと、どうしても財政は膨張の一途をたどることになります。ですから、今後の方向としては、地域の問題とか、生活にかかわるそういう行政については、権限と税源とを合わせて地方のほうへ移譲して、地方が、自分の努力とか工夫、あるいは住民との協力によって行財政を効率化していく。また、その地域の実情になるべく合ったような行財政を行っていく、そういう方向へ持っていかないと、国も地方も財政はもうもたなくなるということについて議論をしまして、意見は大体一致したと思います。

いずれにしても、地方に対して、交付税は減らすぞ、補助金は減らすぞ、公共投資も減らすぞ、道路特定財源も減らすとかやめるという話ばかりで、税金はビタ一文やらんというふうなことでは地方はもたんと思うんですね。ですから、先のことではあるけれども、財源と権限を同時に移譲して、あなた方自身の工夫や裁量が生きる格好で地方を経営してもらうのだという、将来のある形を見せていくことは国として必要なことではないか、こういうふうに考えているわけでございます。

以上です。

石会長

ありがとうございました。

それでは、最後の御報告、資料説明になりますが、特定財源制度につきまして、事務局より、税制二課長の真砂さんと、都道府県税課長の岡崎さん、おのおのから御説明をいただきます。

では、真砂さん、どうぞ。

真砂税制第二課長

それでは、最後、残りました「説明資料(特定財源等)」に沿って簡単に現在の概要を説明させていただきます。この資料は、昨年7月にお取りまとめいただきました、政府税調の中期答申の特定財源部分の抜粋になっておりまして、昨年も熱心に御議論いただきまして、大変反響の大きかったテーマでございます。

時間の関係で、3ページに飛んでいただきます。3ページに「特定財源等の概要」ということで、国の道路特定財源と言われている四つの税目がございます。揮発油税から自動車重量税までございますが、それぞれ、課税対象、税率。税率のところは、例えば揮発油税を見ていただきますと、キロリットル当たり4万8600円ということで特例税率を書いておりますが、本則税率の上乗せというか、本則税率が2万4300円でございますので、その倍のいまの暫定税率を張っているということでございます。

それから、税収の使途のところをごらんいただきますと、特定財源と言われるものの中にもいろいろな使途の決め方がございまして、揮発油税の場合には、1行目に書いてあります道路整備緊急措置法、この法律によって道路に使うことが特定されているわけでございます。地方道路税の場合には、都道府県及び市町村の道路特定財源として全額譲与するため地方道路税を揮発油にかけるということで、税法上、課税目的になっておりまして、こういうのは講学上「目的税」と言われているものでございます。石油ガス税は、揮発油税と同じく道路整備緊急措置法に基づき道路整備に充てることが決められているものであります。

一番下の自動車重量税ですが、4分の1は法律によって市町村の道路特定財源にされております。4分の3は、制度上、国の一般財源であります。これは昭和46年に創設した税金でありますけれども、その4分の3のうちの8割は道路整備に充てることを運用上行っております。これは、昭和46年、創設の経緯、あるいは国会での答弁に鑑み道路整備に8割を充てているものでございます。

4ページ目は、道路以外の国の特定財源でございまして、航空機燃料税は空港整備費、石油税は石油対策、電源開発促進税は電源立地対策に、それぞれ充てられているものでございます。なお、この電源開発促進税だけが、税法上使途を書いているという意味で目的税と言われているものであります。

特定財源に関しましては、先ほど申し上げた揮発油税で暫定税率を張っていることの関係で、負担が高いのではないかという御議論がございます。中期答申のときも諸外国の比較をしていただきました。9ページに飛んで恐縮でございますが、これはIEA(国際エネルギー機関)の統計でございます。OECD27カ国のガソリン1リットル当たりの価格と税ということで横の棒グラフになっていますが、灰色の部分が個別間接税、ちょっと色が濃くなっている部分が一般的な付加価値税、両方かかっているわけですけれども、それの少ないものを上から順番に並べているわけですが、日本は真ん中からちょっと下ぐらいにございます。右のほうに四角で囲んで「日本の位置(27カ国中)」と書いてありますが、小売価格は高いほうから第4位。税抜価格、この棒グラフでいきますと白い部分ですが、第2位。税負担額が11位ということで、負担率で見ていただくと20位。国際的にはこんな水準にあるわけでございます。

負担率が一番大きいのはイギリス。一番下のところでございますが、イギリスは負担率で75.6%ということで、最も高い負担率になっているわけでございます。近年、ガソリン税を増税してきておりまして、次の10ページ目に、「欧州諸国におけるガソリンに係る個別間接税の税率の推移」ということで、指数化したものでありますが、1980年を100と置きまして、日本は揮発油税、地方道路税合わせてリッター当たり53円80銭と変わりございませんが、イギリスの場合、4倍以上の税になっております。特に1993年から環境の配慮ということで、物価上昇プラス3%とか5%というエスカレーターを導入して、昨年から止めておりますが、こういう形で階段状に増税をしてきたものでございます。

中期答申では、8ページの下、「(3)特定財源等の課題」ということで、「特定財源については、基本的には一般財源化の方向で検討すべきではないかといった多くの意見がありました。これに対し、これを維持する必要があるとの意見がありました」と書いたあと、「一般に、受益と負担の間にかなり密接な対応関係が認められる場合には、一定の合理性を持ち得ますが、他方、資源の適正な配分を歪め、財政の硬直化を招く傾向があることから、その妥当性については常に吟味していく必要があると考えます」というのが中期答申での結論部分でございまして、これが、先ほど御紹介のあった、経済財政諮問会議の特定財源のくだりによく似た形で引用されているということでございます。

私のほうからは以上でございます。

石会長

ありがとうございました。

では、岡崎さん、お願いします。

岡崎都道府県税課長

いまの資料の5ページで、地方税の部分だけ若干補足いたします。地方の消費課税の中のいわゆる特定財源は、ここに四つ挙げております。このうち上の二つが道路特定財源というものでございます。なお、地方の場合には、「税収の使途等」というところに道路財源とありますが、すべて地方税法で目的を規定しておりますので、講学上の目的税になります。このうち自動車取得税につきましては、本則3%の税率でありますけれども、現在5%で、自家用車について暫定税率、特例税率が適用されております。

軽油引取税につきまして、もともとは1万5000円でありますけれども、3万2100円という特例税率になっているわけでございます。

この二つ以外の入湯税、入猟税につきましては、その他の目的税ということで若干の税収ということになっております。

私からは以上でございます。

石会長

ありがとうございました。盛り沢山に御報告をいただきました。1時間以上かかるかと思いましたが、極めて要を得て御説明いただきましたので、予定した時間より大幅に短縮してこの説明を終了しました。残り1時間10分ほどございます。あとは自由に御議論いただきたいと思います。

特に、財制審に関しては今井会長、経済財政諮問会議では本間さん、地方分権に関しては諸井さん、お三方いらっしゃいますので、この際聞いておきたいというのは、別にきょうは税調会長の私が言うことはないのでありまして、どんどん質問してもらって相互に意見を交わしたほうがいいかなと思います。

同時に、税調としても公平・中立・簡素等の基本的な原則に従って、今後どのような形で、どういうテーマを重点的に取り上げて、これから税制改革を進めていくときの指針にするかといった点も踏まえて、御議論いただけたらと思います。久しぶりに比較的時間が多いので、ゆっくり議論ができると思います。

では、どなたでも結構ですから、どうぞ。

村上特別委員

二つ質問したいと思います。一つは、お隣にいらっしゃるので、小さい声で言ったほうが恥をかかないで済むかもしれないのですけれども、地方分権推進委員会の報告で、目玉はたぶん税源の移譲ということだと思います。この説明を読んでみますと、24ページの(2)に「地域的に偏在するのは不可避である」と書かれてありますが、実際どういうふうになっているのか。法人税、所得税、消費税、そういう基幹税が、東京、大阪、名古屋、たぶんこの三大都市に偏在しているのではないかというふうに思われますけれども、もしそうだとすれば、その他の都市、市町村、小都市以下、そういうところに税源がないわけですから、大幅な減収になってしまうおそれがあるというふうに考えられます。ここにも、そういうことのないように、そういう税目を選んで考えることが重要だと書いてありますけれども、そういう妙手があるのかどうか、その辺をひとつお伺いしたい。非常に難しい問題なのではないのかなという印象を持ちますので、その辺はどうなのかということ。

もう一つは、道路特定財源の問題。これは説明がありましたように、税法以外の法律で特定財源が決まっているわけですから、税調として先に飛び出すことはない話かもしれませんけれども、一つ気になっているのは、経済財政諮問会議の竹中大臣らが地方に回られて、それがマスコミ報道などなされていますが、東京対地方で道路整備状況についての認識がかなり違うということです。

一説には、東京近辺というか、大都市は整備率は100%近いかもしれないけれども、その他のところは40%ぐらいではないかということも言われていますし、東京にいて周りを見みわして議論していても仕方ありませんので、客観的にこういうものを調査したものがあるのか、そういうものがあれば教えていただきたい。もし非常に大きな格差があるのであれば、道路特定財源を簡単に一般化することも非常に難しいことになるのかなというふうに思いますし、また、それ以外にそれに代替する方法が見つかるかもしれない。その辺のところは、基礎的なデータ、そういうものがあれば教えていただきたいと思います。

石会長

では、諸井さんから、第一点、御説明いただけますか。

諸井委員

数字は総務省のほうから説明してもらいたいと思いますけれども、税源移譲が1兆円とか2兆円という程度の範囲であれば、現在の地方交付税制度を弾力的にうまく活用することで、何とかいまの個別の格差を埋めていけるのではないかと思います。それから、市町村別になるといろいろ問題がありますけれども、少なくとも都道府県別に言いますと、消費税とか所得税とかいうのは、比較的経済力に比例したような格好で出てくるだろうと思うのです。

ただ、東京のように飛び抜けて多いところと、沖縄のように飛び抜けて低いところがどうしても出てきます。これはすぐすぐあり得ないことだとは思いますが、税源移譲が例えば5兆円とか6兆円のような格好になってきますと、その場合は何らかの水平調整の手段を考えないといけない。それは交付税の中で考えるのか、あるいは別な方法で考えるのか、そういう方法がたぶん必要になってくるだろうと思います。

総務省のほうで……。

石会長

きょう、用意できればいいですけれども、きょうは数字を出すのは無理でしょう。ございますか。

石井税務局長

まず、地方に税源移譲をした場合の地域間格差の問題ですが、これは、いまの段階で数字というのはなかなか難しいと思います。いま諸井地方分権推進委員長がおっしゃったとおりでして、個人住民税とか、地方消費税とか、そういうところに税源移譲をするケースですと、比較的税源の偏在度が少ないですが、率直に言いまして、それでも東京が一人勝ちになる傾向がどうしても出ます。金額にもよりますが、いま委員長が言われた1兆円、2兆円、3兆円というオーダーであれば、耐えられないほどのあれではないかなという感じもしております。これが法人関係税になりますと、いまでも法人関係は、個人所得課税とか消費税よりもはるかに地域間格差が大きいので、非常に難しいと思います。税目で言いますと、自動車税とか、軽油引取税、たばこ税とか、そういうようなものは、東京は、一人当たりにしますとむしろ税収が少ないんですね。ですから、将来、環境税みたいなものができたというふうに考えますと、意外と格差の少ないもので、地方税を充実することがあり得るかも、という議論はあろうかと思います。

それから、道路財源の話がちょっと出ましたけれども、東京とその他の地方という比較は、いま手元にないのですが、国道で言いますと、道路事業費に対する特定財源の比率が95%以上、かなり高いのですけれども、地方道路の場合は特定財源が3割ちょっとであります。そういう意味では、国道と地方道を比較しますと、同じ特定財源といっても、充当の度合いが、国道の場合はかなり特定財源の比率が高いということはあります。

もう一つは、道路の整備状況で言いますと、これも東京とその他という分け方はいまちょっと手元にないのですけれども、例えば道路の改良率ですと、国道は9割近い、地方道は5割ぐらい。舗装率で言いますと、やはり国道は9割近い、地方道は2割ぐらい、こういう差がありますので、国道と地方道と、少し違うのかなという感じもしております。

以上です。

石会長

いずれにしましても、少しデータがあれば、例えば府県別の……。どうぞ、ありますか。

道盛税制第三課長

税収の状況についてのみ数字を御報告させていただきます。平成10年度について言いますと、東京都の県民所得、所得ベースで言いますと、全国に対して東京都が12.7%でございます。これに対しまして法人税の割合は、東京都が42%、所得税ですと、東京都が30.9%、消費税ですと、東京都が33.0%となります。

大阪府もございますので一応申し上げておきますと、県民所得で見ますと、7.5%に対しまして法人税が11.7%、所得税が10.0%、消費税も10.0%というふうになっております。

石会長

どうもありがとうございました。いずれにいたしましても、基礎的なデータを我々は手元に置いておく必要があると思いますので、いまの御質問に関連するものがありましたら、次回以降またお出しいただきたいと思います。

柳島さん、お待たせしました。

柳島委員

いまの地方分権の推進の話ですが、一つ申し上げたいのは、自主財源の強化と財源移譲がどうも混乱しているような印象を受けるのですが、その点はどうなのでしょうか。私自身は、自主財源の強化というのは必要だろうけれども、それは地方の改革が前提だろうと思うのです。それをやらないで財源だけ与えて、また大きな政府をつくりまして、町村合併もしてなくて、道州制とかいろいろあるだろうと思うのです。周りを見ても、区議会議員が多過ぎたり、そういうリストラというのは一体どういうふうに考えているのか。財源をよこせという話をやる前に、やるべき改革をやると。自主財源の強化よりも、やることは地方のリストラのほうが先ではないかというような感じがしてなりません。そのあとに自主財源の強化というのが来るだろうと思うのですが、これは、いろいろな腹案をそれぞれお持ちだろうし、私自身も考えがあるのですが、そんなことよりも、地方のリストラを本当に真剣にやっているのかねという話を、まず町村合併から……。

周りの人を見れば、民間会社をリストラされたり、いま50歳や55歳で1500万円、2000万円とっている人というのは民間会社にはあまりいなくなったんですね。東京都か大阪か知らないけれども、地方の政府を見れば、そういう人はゴロゴロいる。そういうことをやらないで、それで財源だけよこせという話はちょっと通らないのではないかという気がしております。こういう地方制度改革の報告も出たのだから、政府が、地方の改革をやりますというビジョンを示すほうが手順としては先ではないか。財源のほうはその次の話でいいのではないか、そういうふうに感じております。

以上です。

石会長

地方の代表の方がいらっしゃるけれども、何かございますか。どうぞ、お願いします。

松本委員

いま厳しい意見が出ましたので、地方の立場で道路特定財源と交付税関係を申し上げたいと思います。

地方道が少ないということで出たわけが、道路というのは、国民生活、社会活動を支える基礎的なものだと思っております。道路整備が非常に遅れている、また、住民のニーズというものが非常に高いわけです。我々から見て国土の均衡の発展、これが推進されるべきだと思います。

私は九州のほうでございますが、九州を見ても、東九州高速道路、途切れております。それから、私の近くにありますが、西九州道路も途切れて、乗ったかと思うと降りないとだめ。それから、私の町で申し上げますと、ちょうど高速道路のインターがございます。西のほうはバイパスができております。私の町、東のほうが3町だけ抜けてバイパスができているわけですが、高速道路のインターがあるものの混雑してしまうわけです。信号3回待ちとか何かがあります。そういうことも理解していただきたいと思います。

それから、特定財源についての見直し関係、あるいは、使途拡大、一般財源ということでございますが、先ほど話がありましたように、目的税がだいぶあるわけでございます。道路に対して受益者負担という、利用者が納税者でございますので、その点は道路特定財源、ある程度堅持していきたいというのが地方の意見でございます。

交付税関係も先ほどちょっと触れられたので、触れておきたいと思うのですが、厳しい意見が出ています。いままで国税の一定の割合を地方自治体に配分して、補い分として歳出、交付されてきたわけでございます。税収の少ない自治体等においては、財源の保障、あるいは財政格差の調整がなされていたわけでございます。一方的に地方交付税を下げると、いま財源移譲等も出てきているわけですが、やはり地方も地方として地方分権をやっていきたい、それに逆行するような形になってもいけないのではないかと思います。地方分権推進委員会の最終報告が出されたわけですが、所得税の一部を移す、あるいは消費税の一部を地方消費税に、また、補助金関係が縮減となっておりますから、その分をある程度地方に回してもらって、国と地方の税源配分関係、十分に検討していただきたいと思います。

地方は行革をあまりやっていないのではないかということですが、行革は本当に取り組んでおります。実は、私の町でも昨年は職員の定昇をストップしております。また、私の特別職も2%カットしたわけです。職員も、退職者が出ておりますが、もう2年間採っておりません。そういうことで、行革は行革でやっております。それから、市町村合併の話も出ましたが、町村関係では、研究会を持ったりなどしながら鋭意努力しているということを御理解願いたいと思います。

石会長

では、水野さん。

水野(勝)委員

きょう御説明がありました中で、三つの部分につきまして簡単な御意見を申し上げたいと思います。

一点目は、税制調査会に期待されている役割云々ということがございました。私もたしかに常々思いますのは、例えば昭和25年、いまから50年前でも、国税、地方税の国民所得負担率は22.4%であった。現在は22.6%。ほとんど変わっていない。これでよく日本はこれだけのことをやってきて、もっているなあと。それは莫大な借金があるということですが、普通に言ったら、税制が一体ここをどう見ているのかというのは大問題だろうと思います。ですから税制としては、きっと各方面から期待されていると思いますけれども、こうした問題は、まず歳出の中身を徹底的に洗うというあたりから始まるということではないか。

ちょうど10年前に消費税ができましたけれども、その10年ぐらい前に、一般消費税ということで税制調査会でも大きな議論がありました。結局、それは途中でダウンしまして、中曾根内閣の「増税なき財政再建」ということで行政改革が行われ、それを受けて一般消費税が消費税という形で実現したという経緯もあるわけでございますので、ここはひとつ、財政構造全体、歳出のあり方等をまずやっていただく。しかし、税制調査会としてはそこら辺も十分頭に置いて、いまの時点から準備をしておくことが必要ではないかと思うわけでございます。

二点目の分権の問題でございます。分権委員会の報告を読ませていただきました。先ほどの諸井委員の御説明は3章が中心でございましたけれども、私、4章まで読ませていただきまして、今後の展望について非常に感銘を受けたわけでございます。27ページの下から二つ目の段落、ここに、「地方公共団体は、自主財源である地方税収入についてその税率設定権を含む課税自主権を積極的に行使し、行政サービス水準と地域住民の地方税負担のバランスの当否を地域住民に問いかけていくべきである……『歳出の自治』にのみ専念してきた観があるが、これからの分権型社会の地方自治は、地域住民にどれだけの地方税負担を求めるのかという『歳入の自治』まで含むものでなければならない」。まことにおっしゃるとおりで、ここに骨太に書かれておるわけでございまして、これを見ましても御立派な報告であるというふうに考えるわけでございます。

そういった点からいきまして、先ほど諸井委員から、税源移譲論というのは、いわば一つの前提を置いた現時点での細目の検討だという趣旨のお話がございましたが、まさにそのとおりではないかと思います。全体としての国・地方を通じた歳出構造なり、そういった点から見ていかないと、部分的な税源移譲という話になってしまう。

例えば21ページから26ページぐらいに具体的な税源移譲のものはありますけれども、その基本的な考え方、なぜ、この時点で財源移譲、税源移譲を検討するのか、その前提はどうなっているのかということですけれども、6ページを見させていただきますと、「国と地方を通じて国民の租税負担率に制度的変更を加えないとの仮定に基づき歳入中立を前提として、地方税財源の充実確保を再検討する」とございます。

これは、「地方税財源の充実」を「国税の充実」と言葉を置きかえれば、そのまま通用するわけでございます。国と地方を比較すると、国のほうがむしろ借金体質が激しいわけでございます。そうした意味から、「地方税財源の充実確保」を「国税財源の充実確保」と置きかえれば、それでは個人の住民税率を下げて国の所得税のほうに持ってくるという、そのまま逆の理屈も成り立つわけでございますが、そんなことを国と地方でやっていてもどうしようもない。やはりこういう問題は、先ほどお話がございましたように、基本的な財政構造、国・地方を通じた財政構造を検討する中で、骨太な線の中で御議論をいただければと思うわけでございまして、この時点でいろいろな仮定を置いての歳入中立の御議論はいかがかなという気はいたします。

また、各論について見てみますと、住民税率が一番先に出てくるわけですけれども、住民税というのは所得税と一体として申告がされ納付されている。サラリーマンでございますと、ほとんど源泉徴収で済んでいる。その中でどれだけが国か、どの部分が地方かというのはなかなかわかりにくい。自営業者でございましても、税務署に一括して確定申告すると、それがそのまま地方のほうに回って一括して申告がなされているということで、どこからが国で、どこからが地方で、その受益と負担はどうなっているかというのはわかりにくい税金でございます。そこを動かしても、受益者負担、痛みの変化ということがそこに反映されるのかどうか。

そういう意味では、個人住民税率をそこでさわる、そこでもってくるというのは、いかがなものかという気がするわけでございます。住民税で言えば、基本的な検討対象はむしろ均等割ではないか、これが、去年の中期答申でも指摘されているところでございます。昭和25年でもう800円あった。それが、その後の国民所得一人当たりですと、もう80倍になっている。800円を80倍にすれば6万円になるわけでございます。月5000円、こういう水準になる。しかし、分権委員会報告でも、均等割につきましては、無理がないふうにしなければいけないとありますが、5万円、6万円、月4000~5000円ということは現時点ではそんなに突拍子もない話ではない。

と申しますのは、去年から介護保険が始まっている。東京都では6月までは月2200円ですけれども、7月からは月4400円になる。これは年5万3000円でございまして、介護保険料のほうが一歩先に行かれたなあと。5万、6万というのは決して非現実的な金額ではないという感じがするわけでございます。

それから、去年の中期答申でも出ましたが、働いている奥さん方は、御主人が納税者だと均等割がかかってこない。こうした方が880万人おられると。それから、老齢者は均等割を払わない。これは125万円以下だと払わないというけれども、ほとんど年金控除で落ちていて、老年者の方も均等割を払わない。こういった点からいくと、均等割を月4000円なり5000円にすれば数兆円オーダーのものが出てくるのではないか、こんな感じがします。

固定資産税もここで取り上げておられるのは、まことにそのとおりでございます。これも去年の中期答申のときにお話がございました。小規模宅地、これは課税標準が6分の1になっている。6分の1をまるまる1分の1までもっていくのは無理かもしれないにしても、相当な拡充なり適正化の余地がある。これは全国市町村に影響の及ぶ税目ですから、こうした固定資産税それ自体の充実・適正化があれば地方の相当な財源充実になるのではないか。

地方消費税という御指摘もございますけれども、現在の消費税というのは、その仕組みとして前段階税額控除をやっている。前段階税額控除方式のこうした税が、地方団体が個別に執行するのになじむのかどうか、これはなかなか疑問のあるところでございます。ですから、現時点では国が一括して徴収しているわけでございます。むしろ地方がおやりになるというのであれば、小売売上税がこれにピタリではないかという気がします。一つ外形課税の問題もありますから、これと混乱するという問題がありますけれども、もし仮に外形課税がなかなか現実的でないというなら、地方小売売上税を検討されたらいかがかとも思うわけでございます。

それから、地方交付税そのものにつきまして、財制審の中間報告にもございますけれども、これは、財源の調整ではなくて税源の調整に純化したらどうか。財源となると歳出に絡む。歳出というのは結局は現時点では住民の御選択ではないか。もっぱら調整として交付すべきものは税源水準の平準化でいいのではないか、そこに順化したらどうかという気がいたします。これは、いずれ基本的に議論される場があろうかと思いますので、ここで立ち入ることは適当ではないと思いますけれども、交付税というと税ということになりますから、やはり一つの考え方があってもいい。

地方の税源の中心である、例えば個人住民税をとってみますと、各地方団体で一人当たり水準でどれだけ取れているのか。それが平均水準以下のところはこれを補てんするとか、あるいは固定資産税、居住宅地が6分の1になっているけれども、これは全国で評価がばらばらな点もあるかもしれない。これを、居住宅地1平米当たりで平均水準に達していないところに補てんするとか、税源としての補てんの方法はいろいろあろうか思います。

交付税というのは地方独自の財源だとよく言われますけれども、我々東京都民は、所得税を納めているとその32%が地方にいく。これが地方税だと言われますけれども、東京都にはそれが何ら返ってこない。これは変な地方税だなという感じがする。ですから、交付すべき、調整すべき金額を、ある客観的な水準でそれを確定したら、それは交付税ということでなくて、交付金という形で処理されるのがいいのではないか。これは昭和25年のシャウプ勧告の線に戻るわけですが、しかし、交付金では当時いろいろ問題が山積していまのようになっている、ということを言われますけれども、いまの交付税制度も若干現実離れしている。ここは基本的にひとつ検討されていいのではないかと思うわけでございます。

それから、特定財源。特定財源につきましては歳出、使途が特定されている、これは硬直化を招くということがよく言われる。そのとおりでございますし、さらに現在、莫大な赤字国債で歳出が賄われているときに、一つの部門の歳出だけがまるっきりそちらにおんぶしてこれが確保されているというのは、問題がさらに大きくなっているのではないか。使途を切り離したら、暫定税率を含めて引き下げるべきだという議論もありますけれども、この燃料課税というのは、酒、たばこと一緒で社会にもろもろの形で問題を与えているという点がありますから、そこは道路というものと切り離されても、一定水準の課税そのものの負担水準としてはあってもいいのではないかという気がするわけでございます。

石会長

ずいぶん詳細な御議論をありがとうございました。

では、津田さん。

津田委員

まず第一に申し上げたいのは、先ほど財務省のほうから税源の偏在という話がございました。私、ちょっと心配なのは、例えば日立の税金を考えた場合に、国税は日立の本社がある東京で納める。ところが、地方税の場合には茨城県にある工場は工場で納める、こういう仕組みですので、国税におきます数字ですと、それは地方税の偏在度とは別のものでございます。その点は注意してチェックしなければいけないと思います。後ほど、総務省のほうでもまた数字を出すそうですが、そこは考え方を整理して言わないといけないかと思います。

二番目に、地方税源充実か、それとも行政改革か、まず行政改革が先と。これはタマゴとニワトリの話のようでございますけれども、ただ、具体的に一点申し上げておきたいのは、例えば議員でございます。国会議員の削減率よりはよほど地方議員の削減率のほうが大きい。これは数字で出てくると思います。法定よりもかなり下回っているはずです。国会は、先日、参議院で全国区を何人か落としたような格好でございますけれども、地方団体では議員の定数削減は相当やっていることを検討していただきたいと思います。

個別的には申し上げませんけれども、今回の地方税源充実の話というのは、歳出と財源とをなるべく一致させる。要するに、財源の質的転換を図って、まさしくその地域の歳出が地域の税収で賄えるように受益と負担というものを密接にしよう、こういう趣旨でございます。これはまさしく行革にも通じるわけですし、そのことによって国・地方全体の歳出膨張要因を防ぐ、こういう趣旨を御理解いただきたいと思います。これが基本であるかと思います。

それから、特定財源の問題ですが、これはちょっと誤解があると思うのです。例えば、道路特定財源をはずすと道路事業にもう税源として使えないというふうにおとりになる方がいますが、それは違うのでございます。要するに道路以外でも使えるということで、地方団体の長が、うちの地域は道路が必要だといえば、一般財源化した道路財源を道路事業にもつぎ込んでかまわないということでごさいます。

実際問題として、地方の特定道路財源率は4割程度です。というのは、6割は、地方団体の長が自主的に判断して、うちの地域では道路が必要だと、そういう判断で入れておるわけです。特定財源よりもむしろ一般財源でそういうふうに大きく充当しているわけで、その点はあまり御心配なさらないで、道路が必要なところは道路として使えばいいのではないか、この点はどうも誤解があるようでございます。

石会長

松尾さん、どうぞ。

松尾委員

これは、本当にいま税源移譲をやるとしますと、国が減税になって、地方が増税になるということになりますね。危機的な国のほうを減税して、地方を増税するということ、そういうことが現実的かどうかという問題があると思います。国はもちろん歳出を見直す必要がありますけれども、地方も交付税制度をはじめ、併せて歳出を見直す必要があるわけで、その上で国と地方の役割を考える。税源配分はそのあとに出てくる問題であると思います。そういう意味で、先ほど諸井さんが、税源移譲については税財政全体の構造改革のときに併せて考えてほしいという御説明、これも納得できるわけであります。いずれにしましても、税源移譲が一人歩きするのは非常に困るというのが私の考えであります。

経済財政諮問会議の素案には、「地方税の充実確保--地方行財政の効率化などを前提に、国と地方の役割分担、受益と負担の関係の明確化の観点を踏まえつつ、国庫補助負担金の整理合理化や地方交付税の見直しを図るとともに、国と地方の税源配分を見直し」とあります。これはまさしくそのとおりであると思います。これを、違った趣旨に修正しないようにここはひとつよろしくお願いしたいと思います。

それと、道路特定財源の問題でありますが、これは、政府税調としてもこれまで重大な関心を持って取り組んできた問題であります。やっと政治家のほうで税調の議論にのってきたのかなということだろうと思いますが、負担を見ますと、揮発油税をはじめ、国際的比較では負担率は低いわけです。これは、例としてはあまりよくありませんけれども、酒、たばこと同じように、ガソリンに担税力が十分あるということを指摘しておく必要があると思います。

それと、環境との関係です。CO2 の排出抑制という観点からヨーロッパなどでは税率を上げてきている。そういう傾向がありますし、我が国としてもCO2 の排出抑制という観点から道路特定財源を見直ししていく必要がある。いずれ環境税に置きかえるということも視野の中に入れておいていいのではないかと思います。

石会長

では、本間さん、どうぞ。

本間委員

お手元の経済財政諮問会議の第4章に、「個性ある地方の競争」という形で考え方をまとめています。税調という日本の中で最高の有識者の方々の御意見でも、国と地方、あるいは都市と地方という対立の構造の中で議論され、そのことが結果として、両者痛み分けという政治的妥協のもとでこれまで財政赤字を膨らませてきたという基本認識を実は我々は持っているわけであります。これを、各スタンスから繰り返すということでは、この問題に対する21世紀における展望は開けないだろうと思います。その意味で、ここの含蓄ある文章をぜひ読んでいただきたいという具合に思っているわけであります。

この段階になって、交付税及び特定財源のところが、「地方いじめ」というイメージの議論の中で展開されているのは、我々の本意とするところではございません。国と地方の役割分担、こういうものを見直しつつ、双方の行財政の問題点をきちんと将来像を描きながら、それにふさわしい税源のありようを基本的な立場から見直していこうというのが、ここに書いてあることでございます。私どもはこの問題について、もうそろそろ、トータルに国と地方をどういう具合に再デザインするかということを議論しなければならないだろう。部分的な継ぎはぎでやっていれば、またぞろ同じことを繰り返すであろうということでございます。

その点で、ぜひ税調におかれましては、具体的に国と地方のありようについてをイメージしながら、税財源の配分について具体的な案を一度御議論をいただきたい。もしそういう基本的な作業が税調でできないとすれば、我々がトリガーを引くような形で、いまも袋叩きに遇っておりますけれども、具体的な案をつくるのか、それはどこかでやらなければならないテーマになります。その辺のところは、制度的にまた地方分権推進委員会を再構成するということでございますので、諸井委員長のところでももう少し具体的な形でお考えいただき、それぞれが持ち寄って、基本的なすり合わせをこの時期にやっていただきたいというのが私の希望であります。

石会長

建設的な御意見をいただきました。

では、津さん。

津委員

ちょっと質問させていただきたいと思います。この地方分権推進委員会最終報告の中の「地方税源の充実策」という中に、環境関連税制というのがカッコ付で挙げられていました。いまもお話が出ていましたけれども、かつて税調でも環境税についてお話が出たこともありました。何となくそのままで、これからは避けて通れない話題だとは思うのですけれども、もちろん、環境政策全体の中でこの税制の位置づけは考えていかなければいけませんし、国税、地方税とどういうふうに割り振るのかというようなことや、先ほどお話が出ていたように、道路特定財源に直接結びついている石油ガス税とか、自動車重量税とか、そういうものとの兼ね合いをどうしていくかとか、いろいろなことがあるかと思うのです。

諸井委員にお伺いしたいのですが、こういう討議の中で、今後、特定財源とか環境税についてこの税調で話し合っていくときの参考にしたいなと思うのですが、地方税での対応として、環境関連税制について具体的な意見とかそういうものは出たのでしょうか。環境関連税を地方財源の中にどういうふうに取り込んでいくかというような具体的な案は、何かお出になったのかどうかということをお聞きしたいと思いました。

石会長

諸井さん、よろしいですか。

諸井委員

実は、この問題についてはあまり具体的に詳細に議論はしていないのです。ただ、環境関連税というとすべて国税というふうな感覚になっているけれども、例えばごみの処理みたいな問題もあって、地方税として処理するほうが適当であるようなケースもあるのではないかということで、ここへ顔を出しているということでございます。いずれにしてもこれは議論しないといけない話ですね。

石会長

これからだということですね。

それでは、和田さん、お願いします。

和田特別委員

税制につきまして、当然のことですけれども、公平・中立・簡素と。特に、ここしばらく盛んに言われておりますのが、世代間、世代内の公平ということです。そして、いまの構造改革なりいろいろなところで、広く痛みをという問いかけをされておりますけれども、その痛みというのが、高齢者のみでなく世代の低いところにとってもどう考えても痛みが強い。私は昨年も、所得格差が開いているのを自分の実感として感じるんだということを申し上げました。

それで、1カ月余り前でしょうか、「国民生活基礎調査」が出ました。細かく申し上げませんけれども、10年と11年と比べて、所得を4分位に分けまして、所得の多いほうから低いほうまで並べてありますが、どの分位も昨年に比べて下がっている。しかし、所得の多い第4分位が昨年に比べて2.3%下がっているのに比べて、所得の一番少ない層は対10年と比べて8.3%のマイナスになっている。もう一つは、平成2年では、最高分位(第4分位)が第1分位の6.7倍の開きがあるわけですけれども、平成11年で同じ比べ方をしますと、7.9倍になっているということが出ております。

それで、所得格差が開いているのではないか。いま、よく個人消費が伸びないと言われまして、将来の不安と。私もその発言をしておりましたけれども、将来の不安ではなくて、もう目先のいまの不安なんです。相当先の不安というのではなくて、一体全体どうなるのだろうという、いまの不安を抱えているということを感じております。

これに加えて、介護保険料が、いまは2分の1ですけれども、満額取られますと、やはり相当な負担になる。一方で介護保険の利用状況を見ますと、まだまだ利用が少ない。少ない中にはいろいろな状況があると思うのですけれども、所得の低い人にとっては、介護保険を利用すると、1割負担が負担し切れなくて利用していない面がある。所得の多い人にとっては、1割の負担でこれだけの介護保険が受けられるならばと、わりと楽に負担していらっしゃる方が多いのではないかという気がいたします。そういう前提を踏まえてこれから考えていく必要があると思います。

それから、同じ国民生活基礎調査の中に、高齢者世帯、これは満65歳以上……。

石会長

和田さん、申し訳ありませんけれども、ずいぶん手が挙がっていますので、数字はさておき御意見をお述べください。

和田特別委員

はい。あるいは、18歳未満の未婚の者が加わった世帯の、平均ではなくて、中位というのが、230万。前年より減っているわけです。そして、大体50%が230万になっている。いま、高齢者はすべてが貧乏なわけではないと言われておりますけれども、それは否定はしませんけれども、50%の人が230万以下だということはきちんと踏まえておかないといけないと思います。

もう一点は、女性、高齢者の社会参画の拡大、それから、就労形態の多様化の対応というのは、これから大事なこととして進めていくべきだと思います。

それから、地方と国の問題ですけれども、これは両方とも徹底的に歳出を見直すことが大前提で、先ほどもお話がありましたけれども、特に最近のマスコミのとらえ方が、都市と地方とか、都市に住んでいる者が道路のことを言うと、都市のエゴだというような言い方をされておりますけれども、もうそういう言い方では実りが少ないのではないかなという気がします。本当に必要な道路であれば、都市であれ、地方であれ、きちんと一般的な財源でやるべきであって、特定財源が道路の長期計画と結びつくところにいろいろな問題も生じておりますので、これはぜひ考え直すべきだというふうに思っております。

私はいつも発言しておりますけれども、地方税は身近なところで納める。そのかわり、見えますから、身近なところで使い方については注文をつけていく。使い方だけではなくて、税制についても注文をつけていくという方向にぜひ向かうべきだと思います。

道路特定財源につきましては、さっきちょっと発言しましたけれども、これは環境の問題と関係があります。道路が完備されるということは、うっかりすると道路ができればできるほど自動車が増えるということで、NOX 、CO2 の排出が増えてしまうという点があります。公共交通の充実とか、車の総量規制とか、そこら辺に踏み込んでいく必要があると思いますけれども、その辺のところの一つとして道路の問題は考えていく必要があると思います。

以上でございます。

石会長

時間がだいぶ迫ってきているのに比べて、御発言の御希望が急に出てまいりましたので、あまり時間をとらないように手短に、かつ論点も絞ってお願いします。

佐野さん、お待たせしました。

佐野委員

私は、諸井さんにかつて、地方分権推進委員会というこの名前がよくないねというお話をしたことがあります。分権というのは、権限とか、税金の分捕り合いみたいな感じがして、私は、地方自治推進委員会でいいのではないかといって、諸井さんもそうだと同意されたような記憶があるのですが、私の予想したように、国と地方の分捕り合という感じがどうしても前面に出てきてしまう、そういう印象です。国と地方と分けて議論することが多いのですが、地方も国の一部であって、一国二制度ではないわけであります。国全体として考える、あるいは国の将来として地方のあり方も考えていく、そういう視点がこれからの議論では必要とされるのではないかというふうに思います。

若干各論になるのですが、これまでの議論といいますか、分権推進委員会の報告等々ではよくわからない、つまり税源移譲に絡んでやや不明な点がございます。といいますのは、国と地方の財政の関係において、国が償還を肩代わりする、そういったいわゆる借金、国と地方の間のやりとりが相当膨大な数にのぼっている。毎年10兆円ぐらいの収支不足が出る。それについて総務省と財務省がどうするかということで、一部は交付税を増額する、一部は地方債を増額する、それでしばらくしのぐということを繰り返してきたわけですが、その結果、交付税特別会計の借入れが40兆円を超している。あるいは、将来国が償還しますよという約束のもとでの財源対策債、これも広い意味では将来の国の負担にかかわる、交付税に近いような性格のものだと思いますが、これも10兆円を超えている。というと、60兆円ぐらい国が地方に対して債務の償還を保障しているということであります。

実際、地方に税源移譲した場合、この借金の扱いはどうなるんだという問題が当然出てくるわけであります。つまり、国から地方に税源を移譲した、しかし、国が約束した借金の肩代わりはもう勘弁していただきますよ、という議論が出てくることが予想されるわけであります。これはどういうことかといいますと、税源を移譲しても、借金を地方が独自に払うということで実際の実入りは自治体にあまり来ないのではないか。ばかりではなく、税源を移譲されても、人も企業もいないようなところは借金の返済能力がないから、これをどうするんだという問題が当然出てくるわけであります。分権推進委員会の最終報告あたりでは、税源移譲に絡んで、国が肩代わりしている60兆円になんなんとする借金の扱い、これをどうするんだということはいまから議論しておいても遅くはないという気がいたします。

ただ理念的に国と地方の関係ということで、地方の自立云々という理念のもとで税源移譲を議論するのも結構ですが、より現実的に、いまの財政の状況、財政の制度がどうなっているかということから解き起こしていかないと、単なる理念闘争に終わってしまうという危惧を私は感じます。

もう一点、道路特定財源のことです。これは質問ですが、総務省の方がちょうど目の前にいらっしゃるので。自動車取得税、軽油引取税、これは必ず道路の建設に使わなければいけないというふうになっているのか、それとも、道路の建設に使えるという規定になっているのか、どちらなんですか。

石会長

御質問のところ、総務省からどうぞ。

岡崎都道府県税課長

税法上「道路の財源に充てるためにこういう税金を徴する」とありますので、充てなければいけないということであります。

佐野委員

私は、3300ある自治体の中で、自動車取得税であがった税金、あるいは軽油の取引であがった税金、そういうものを道路以外にも使いたいという自治体もなきにしもあらずではないかと思います。したがって法文の規定を、使わなければいけないという趣旨から「使える」というふうに変えて、あとは自治体の裁量に任せる、そういう方法もあるのではないかと思います。

石会長

新しい視点が出てきましたね。

では、河野さん。

河野特別委員

二つのテーマについて簡単に意見を述べたいのですが、一つは、諸井さんの報告された分権委員会のことです。諸井さんも、いまここで10人ぐらいの人がしゃべった報告書に対する批判、水野さんが一番トータルな議論をやったんだけれども、これはすべて予想された反論なんですよね。私は分権委員会にいたから、これで報告を出せばそういうことで出ますよと。そのとおりのことがここで行われたということだけで、私にとっては当たり前の反論が出たなというだけのことですが、そう受け取らない人も中にはいるかもしれないということです。

それで、一つ提言しておきたいのは、きょうも一わたり報告書が出て、公式の審議会でこれだけ時間をかけて議論をするのはここが初めてなんですわ。本間さんのところで、その中のエッセンスをどう文章に書くかということでいま悩んでいらっしゃることはよく知っているけれども、そのことを別にすれば、ここで初めて総論から具体論に至るまで議論したんですよ。

これは審議会の運営にかかわる話だけれども、きょうは第1回と。質問もあったし、疑問も出て、十分な答えも出せないような状況でいま進んでいるわけです。できれば、いつの時期かわからないけれども……あまり急ぐことはないですよ。どうせ地方に国からの税源を移譲するなんて話は十年がかりの話だと思っていますから、それを言い出すと長くなるからやめるけれども、この話はそんな簡単な話ではないのです。しかし、あらかたどういう問題があるのかなということをお互いが確認するという意味で、ある総会を一日これに充てて、それから、資料をもっと整備して、質問が出たら財務省も総務省も十分答えられるということにして、しっかり一度やってみる。水野さんが言ったことはトータルに反論したところがあって、これはこれで重要な発言なんだけれども、ほかにいろいろな意見もあり得るわけです。きょう報告書が出た、叩かれっ放しでおしまいというのではあまりよくないと思います。そうすればわかるところはわかってくるし、時間のかかることはそれはそれでおのずからわかってくるわけです。それはそれで構わないと思いますね。

二番目、道路特定財源。これは、どうせ参議院選挙までそんな細かいことを総理は言うわけがないから、漠然とした言い方をしているけれども、一番取りかかりやすいのは、きょうの財務省の説明を見てもわかるけれども、税の性格からして重量税なんですね。これは、来年度予算編成の中でなにがしかの変動が配分において起こってもおかしくない話ですよ。重量税を下げろという話ではなくて、入ってくる税金をどう分けるかという話なので、まずそこら辺から始めることが現実的なことだと思うのです。

それから、揮発油税。道路財源としてはこれが一番中心に頭に浮かぶ。いま、田中外相がアメリカへ言っていろいろな議論をやっているけれども、温暖化問題での京都議定書からアメリカは離脱することになって、変わらないと思いますが、日本政府がどう腹を決めるか、ブラブラしているからわからないんですよ、いろいろな思惑があって。しかし、いろいろあったけれども、2002年、国会で京都議定書を日本が批准するんだと、政府がそう決めた瞬間から環境税論議を正式にもう一度テーブルにのせないといけない。僕は別のところで一年間、もっとシリアスな環境税の議論をやりました。細かいことを言いませんけれども、目下のところ環境税というのは、京都議定書の行方がわからなくなったということをバックにして、産業界は全面反対。いいですか。相当理由があるし、税のやり方にもよるけれども、そういうのが実際ですよ。

石さんが数年前に書いた本を読んでいても、環境税論議というのは、川の向こうとこっちで怒鳴り合っているようなものだと書かれたでしょう。いま、同じことが起こっているんです。しかし、2002年国会批准というプロセスが政治的にとられるならば、それをクリアするためにはどういう手法が必要かという議論が出てこざるを得ないのです。そのときに、重量税は別にして、既存の道路財源をどう組み合わせるかという議論が一つはあるんです。その上にのせるという議論も単純にあります。いずれにしても、その議論は間もなく税調でも真っ当に議論をやらなくてはならない時期がくるかもしれない。これは政府の決定次第です。避けて通れなくなるかもしれない。環境税を入れなくてもできるという議論もありますから、それはそれでやったらいいんですよ。どちらにしても、そういう視点で考えないといけない問題ですよということだけ申し上げておきたい。

諸井委員

ちょっといいですか。

石会長

はい、どうぞ。

諸井委員

僕はいくらでも反論はあるんですけれども、それでは会長がお困りだろうと思うから、さっきから黙っているのですが、要するに90兆円の歳出を地方がやっているわけです。そのうちの大部分というものは、国から義務づけ、枠づけされたものなんですよ。しかるがゆえに、それの後始末を地方交付税でやっているわけです。そういう形の基本を変えなければ国の財政だってうまくいかないよ、と。だから、地方のほうに自主性を持たせて、そのかわり責任を持たせるというふうにしなさいというのが、我々が言わんとしていることなのです。そこの本質をもう少し理解してもらわないと困るんだね。いくらでも反論しますよ、時間があるなら。

石会長

いずれにしても河野さん御提案のように、この問題は非常にビッグ・イッシューですから、双方の意見を基礎的なデータを交えて議論する場を設けたほうがいいかもしれませんね。

諸井委員

会長がいつも言っておられるように、この問題は、税調とか、地方分権のあそこの組織とか、経済財政諮問会議とか、その辺が一緒になって本当に具体的に始めないと間に合わないと思います。

石会長

ありがとうございました。

では、貝原さん、お願いします。

貝原委員

若干遅れてまいりまして恐縮でございますが、国と地方の問題が非常に大きなテーマになっておりまして、こういう議論をしていただきますことは、私としても大変ありがたいと思います。結論から先に言いますと、私は、分権推進委員会のこのたびの報告はきわめて正しい方向を示したものと思っています。

そもそも論から始めると長くなりますが、国と地方の関係は、端的に言いまして、国際的には、アメリカ、ドイツのような連邦制をとっている国と、イギリスとかフランスのように単一国家制をとっている国と、税制も含めて、両極端といいますか、二つに分かれるわけですけれども、日本の場合は、この中間みたいなものを志向したいまの日本国憲法になっているわけです。

御承知のとおり、憲法では「国民は法律の定めるところにより納税の義務を負う」と書いてありますから、地方自治体が単独で税制をつくるわけにはいきません。「国権の最高機関は国会である」「地方自治の組織運営は法律でこれを定める」と書いてありますから、地方自治体、地方行政というのは、ほとんど政府のてのひらの上にのって実際今日まで来たというのが現状ではないか。

したがいまして、歳入・歳出のお話もたくさん出ましたけれども、社会保障、教育、公共事業、こんな大きな地方自治体が分担していることは、すべからく国で決められたものを実施しているにすぎない。これは、上下、主従、対等、協力というように立場は変わりましても、中身は全然変わっていない。ここら辺を考えていただかないと、さっき、地方自治体が交付税で約束している国の借金があるとおっしゃっていましたけれども、これは、何も国のほうからそういうことをお願いをしてやれということではなくて、国の公共事業政策、あるいは景気対策としてこういうことをやろう、こういう措置をするから、地方自治体はのってはどうですかという制度をおつくりになって、それに対して地方自治体は受けて立っている。こういう実態にあるわけです。

こういう実態であれば、先ほど諸井さんがおっしゃいましたように、どこに責任があるかわからない、あるいは、国民の誰がどういうところで税負担をしているのかわからない。こういうような融合のシステムになっているのを、世界的な潮流であります分権という方向に向けて構造改革をしていこうと、こういうわけです。また、そういう方向で行かなければいけないと、私は30年来自治行政に携わってきて思っているものですから、ぜひそういう方向に行ってもらいたいと思いますが、そのためには、国税に入って、国から補助金とか負担金という形でひもつきで地方自治体に行っている財源の部分を、地方税としてきちんと位置づけて、住民が地方自治体に負担しているという形を国民の前に明確にすべきだと。そういうことで、地方の税負担というもの、スキームをつくっていただきましたら、負担のレベル、どの税率にするかというのは、地方自治体で決められる、租税法律主義のもとでもできますから、そういうスキームを税調あたりではきちんと議論していただかないといけない。こういうことをぜひお願いしたいと思います。

石会長

松浦さん、どうぞ。

松浦委員

私からはもうあまり言うことはないのですが、いま貝原知事さんからもおっしゃっていただきましたし、諸井委員長さんからもお話をいただきました。私ども地方自治体は国に施策によって仕事をしてきているわけでございます。特に公共投資、社会保障、教育、そうした三分野につきましては、国の言うとおりにいろいろな支出をしているわけで、それが約7割強になるわけでございます。地方分権委員会にお示しいただいているように、地方の歳出規模と地方税収との乖離の縮小、これは我々にとってはぜひお願いしなくてはならない問題で、実際に議論を聞いていて、国は本当に税源移譲をする気があるのかどうか、ちょっと疑問に思うところもあるわけなんですね。国の借金を返す財源が必要なので税源移譲はできないということがよく言われるわけですけれども、ここまで借金を抱えてきたのは、国の施策として赤字国債を発行し、財政膨張を行ってきた。これを許してきたことによるわけで、それを全部地方の責任に負わせるというのはいかがなものかというふうに私は思うのです。そういう点でぜひよろしくお願い申し上げたいと思います。

石会長

地方からの御意見でした。

それでは、中里さん。

中里特別委員

幾つかの地方団体の方々とお話しして、地方の財政の状況が非常に苦しい、しかも、国の仕事をかなりの部分引き受けさせられていて、基本的な構造改革が必要だという点について、何の異議もございませんし、そのとおりだろうと思います。ただ、これは難しいところですけれども、国が借りた金を地方に配る形になる税源移譲というのは、国債の格付けのこととか、企業に対する波及効果も大きいですし、そう簡単に軽々しく決めるべき話ではないだろうというふうに思います。

大切なのは、地方が税金が取れる、このことさえ満たされれば別に国の税金を減らす必要はないわけですから、そのための方策、歳出を削減することのほかに、地方が地方独自に、国の税収とは独立変数として税収を増加させるような何らかの手も考える必要があると思います。一つには、何といっても執行の強化でございます。能力は同じだと思いますが、地方団体独自の執行に関する制約というのはありますから、国ほどうまくいかないところは当然あるだろうと思いますけれども、しかし、いま以上に執行を強化しないとなかなか聞こえが悪いということ。

もう一つは、地方と都市の問題です。地方と都市の問題を国と地方の問題にすり替える必要はないわけで、地方団体内部で東京都から沖縄にお金が移っても、いいのか悪いのかわかりませんけれども、そういう考え方もないわけではないでしょう。地方団体内部で問題を解決するということですね。

もう一つ、そういうことではなくて、もう少し考えるとすれば、いまの制度を少し変えることによって地方税がより上がるようにするということだと思います。超過課税を徹底する、均等割を上げるというようなことは、もちろん法律改正も絡むことはありますが、ある程度できる範囲でできることもありまして、必ずしもそれを100%生かしている状況にはない。これは、選挙がありますのでそう簡単ではないわけですよね。ですから、国がいま取っている税金を俺たちによこせということではなくて、いま地方が取っている税金をもう少し増やす努力はしなければいけないし、また、そういう努力がしやすいように地方税法を変えることがまず第一だと思います。

その上で、例えば所得税の課税最低限を下げるというのは、税調のほうの基本的な考え方だと思いますけれども、地方税のほうだけそれを先取りしてなさっても別にバチは当たらないというのか……。難しい問題ですが、いまでも住民税のほうが課税最低限は低いですけれども、さらに下げるというのは、応益負担的な考え方から言うといいことなのかもしれません。国と地方でここでいがみ合うというのは志が低い感じがしないわけでもない。私も志が低い人間ですけれども、取ればいいというものでもないかもしれませんが、もう少しそこを考えなければいけないなと思っております。

石会長

さて、中里節が出たところで、そろそろきょうの議論は終わりにしたいと思いますが、きょうは、国と地方の税源のあり方についての議論と道路特定財源に議論が集中いたしました。私は、例えば政策税制のあり方とか、租特の問題とか、あるいは、財政そのもののあり方のプライマリー・バランス等々をひそかに期待いたしましたが、これは、きょうは議論としては時間もなかったのでしょう。また、委員の方の御関心もそちらに向かなかったかもしれません。いずれにしましても、きょうは大変有益な御議論を賜ったと思います。国と地方の問題は非常に根が深いので、いずれまた合同の議論をする場も考えつつ、ここでまた問題を提起させていただきたいと思っています。

次回は一応7月に催したいと考えております。まだいつか具体的には定まっておりません。そのときは、法人課税小委員会でかなり議論をやっておりますので、その報告。それから、経済財政諮問会議のいわゆる「骨太の方針」というのがもう出ているころでございますので、それについてもう一回御説明をいただき、また御議論賜るという形で議論を進めたいと考えております。

そういうわけで、議論はこれからだんだん本格化していくと思いますので、ぜひ本音の議論をここで交わらせたいと考えております。

そういう予定で考えておりますので、引き続き、御協力をよろしくお願いいたしたいと思います。きょうは、どうも長時間ありがとうございました。

〔閉会〕

(注)

本議事録は毎回の総会後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。

内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。