第13回総会 議事録

平成13年5月22日開催

石会長

第13回の総会を開催いたします。

本来ですと、今日は塩川財務大臣に御挨拶をいただく予定になっておりましたけれども、いま、国会で予算委員会とのことであります。今回、御出席いただけませんが、いずれまた機会を見てお願いすることになると思います。

それでは、今日は次のような形で議論を進めたいと思います。

最初に、いま国会で小泉総理大臣の所信表明演説等々が行われております、その報告を事務局から受けたいと思います。

第二に、緊急経済対策、これは税制上の措置を含んでおりますので、事務局よりその中身を聞き、そこの関係におきまして、証券・金融税制に関して小委員会をつくりたいと思いますので、それをお諮りいたしたいと思います。

第三に、この間の総会で、「ドイツの株式市場と税制」、あるいは「公益法人等に対する課税制度」につきましての御質問がございました。そこで、事務局より資料をまとめていただきましたので、御説明を受けたいと思います。

以上三点、事務局から論点の整理をいただきまして、そのあと自由に討論を行いたいと思います。

議論に入る前に、今日も行っておりますが、インターネットでこの審議状況が中継されております。前回(4月17日)のネット中継の実態がまとまりましたので、この結果を小手川さんから御説明いただきたいと思います。

小手川さん、よろしく。

小手川総務課長

お手元に、番号が入っていない1枚紙で、「審議のネット中継(4月17日分)へのアクセス件数」という紙を配付させていただいております。ちょっと順番が逆ですけれども、「注3」にございますが、30日間の録画の中継も4月17日から5月16日までやっております。ライブと録画双方合わせまして、一番上にございますように、総アクセス件数でいきますと、2500件くらい。内ライブの部分が1100ぐらい、録画の部分が1371件ということでございます。

その下の2番にございますように、ピークのアクセス件数につきましては、ライブ中継のときに95件というのが最大でございます。当方のあれでは、その下の「注」にございますように、400件まで対応可能ということでしたので、一応この中には入ったという状況でございます。

以上でございます。

石会長

ありがとうございました。

では、本日の審議に入りたいと思います。

最初に、小泉総理大臣の所信表明演説、その他、国会の審議状況につきまして、尾原さん、小手川さんからお願いいたしたいと思います。

尾原主税局長

お手元に「総13-1」ということで、小泉新総理の所信表明演説がお配りしてございます。私のほうから、この所信表明演説、あるいは最近の主な国会の質疑、税財政関係でございますが、報告させていただきたいと思っております。

所信表明演説、5月7日に行われたわけでございますが、3ページ目をお開きいただきたいと思います。3ページ目の見出しで、「経済・財政の構造改革-構造改革なくして景気回復なし」と。第一の構造改革、「第二は」ということで、「21世紀の環境にふさわしい競争的な経済システムを作ることです」と書いてございます。この中で、次のページをお開きいただきたいわけでございますが、4ページの冒頭、「証券市場の活性化のために、個人投資家の積極的な市場参加を促進するための税制措置を含む、幅広い制度改革を短期間に行います」と述べられております。同じように、4ページ目の後ろのパーツに、「第三は」ということで財政構造の改革に触れられております。読ませていただきますと、「近年、経済が停滞する中で、政府は、公共投資や減税などの需要追加策を講じてまいりました。しかし、長期にわたり、この政策の繰り返しを余儀なくされ、我が国は巨額の財政赤字を抱えています。この状況を改善し、21世紀にふさわしい、簡素で効率的な政府を作ることが財政構造改革の目的です。

私は、この構造改革を二段階で実施します。まず、平成14年度予算では、財政健全化の第一歩として、国債発行を30兆円以下に抑えることを目標とします。また、歳出の徹底した見直しに努めてまいります。その後、持続可能な財政バランスを実現するため、例えば、過去の借金の元利払い以外の歳出は、新たな借金に頼らないことを次の目標とするなど、本格的財政再建に取り組んでまいります。

私が主宰する経済財政諮問会議では、六月を目途に、今後の経済財政運営や経済社会の構造改革に関する基本方針を作成します。」
このように記述されてございます。

次に、主な国会質疑について申し上げたいと思います。お手元に資料は差し上げてございませんが、財政構造改革につきましては、「財政構造改革のための増税を行わないのか」という質問がなされておりまして、小泉総理大臣から、「財政構造改革に取り組む際、歳出面に無駄はないか等についての徹底的な見直しを行わないまま、安易に増税に頼ることは考えていない。まずは歳出の徹底した見直しを行う。その上で公的サービスの水準と、それを賄うに足る国民負担の水準はどうあるべきかについての国民的な議論が必要であると考えている」との答弁がなされております。

証券税制につきまして、「株式譲渡益課税の見直しなどを早急に行うべきではないか」との質問がなされておりまして、総理大臣から、「証券税制の見直しについては、与党合意においては、長期保有株式に係る少額譲渡益非課税制度を創設するとともに、申告分離課税への一本化後の株式譲渡益課税のあり方について、引き続き協議の上、早急に結論を得るとされたところである。政府としては、個人投資家の積極的な市場参加の促進等の観点から、長期保有株式に係る少額譲渡益非課税制度を創設するための法案を今国会に提出することとしている。また、申告分離課税への一本化後の株式譲渡益課税のあり方を含め、今後の金融・証券税制のあり方については、今月中にも政府税制調査会において新たに幅広い検討を開始することとしている。政府としては、与党における協議や政府税制調査会における審議状況等を踏まえて、適切に対応してまいりたい」との答弁がなされております。

最後に、道路特定財源の見直しについての質問がなされておりまして、同じく総理大臣から、「特定財源についても、聖域なき構造改革の一環としてその使途について検討していきたい」旨の答弁がなされております。

以上が、最近の主な国会の審議状況でございます。

石会長

ありがとうございました。

小手川さんのほうからはないですね。

小手川総務課長

はい。

石会長

わかりました。

それでは、お手元に「予算委員会公聴会議事録」というのが配られていると思います。これは、前回の総会で笹森さんから、予算委員会における公述人の意見の内容を資料として提供してもらいたいというお話がございましたので、今日は、衆・参両院の予算委員会公聴会の記録を用意してもらいました。それがお手元に配られておりますので、御参照いただきたいと思います。

それでは、第二の議題に入りたいと思いますが、「緊急経済対策に係る税制上の措置」でございます。事務局より御説明いただきたいと思います。

税制第一課長の清水さん、市町村税課長の株丹さん、お願いいたします。

清水税制第一課長

お手元の資料の中に、緊急経済対策関係、「総13-2」、「総13-3」、それから、番号はついておりませんけれども、自由民主党、公明党、保守党、与党3党の「緊急経済対策に係る税制上の措置」という三つがございます。これを御参照いただきながら、御説明させていただきたいと思います。

まず、「総13-2」でございます。政府の経済対策閣僚会議におきまして、去る4月6日に緊急経済対策ということで、金融再生、あるいは証券市場の構造改革等についてとりまとめが行われました。

税制については、「現下の経済情勢等を踏まえ、個人投資家の市場参加の促進等証券・土地関連の税制に係る真に有効かつ適切な措置について、早急に検討を行い、結論を得る」というとりまとめが行われました。

その後、緊急経済対策の観点の税制について与党3党において御議論が行われました。お手元に、番号がない、4月20日の「緊急経済対策に係る税制上の措置」、3党の文章でございますが、ここで、証券関連で四点の方針が打ち出されたところでございます。説明資料もつけてございますので、この3党の紙では、まず項目を御紹介させていただきながら、横紙の「13-3」の説明資料で御説明させていただきたいと存じます。

3党で決められました項目としては、まず、1として、自己株式の取得・保有制限の見直し等の商法改正案に係る税制の整備、いわゆる商法上の金庫株の解禁に伴う税制上の整備でございます。

二点目は、上場型株式投資信託(ETF)が整備されることに伴う税制の整備。

三点目は、先ほどの国会審議の御紹介の中でも申し上げましたような、長期保有株式に係る少額譲渡益非課税制度の創設ということで、通常国会への法案の提出をいま準備させていただいているところでございます。

四点目は、老人マル優の対象となる株式投資信託の範囲の拡大でございます。

具体的に、「総13-3 経済対策関係説明資料」に沿って御説明させていただきたいと存じます。

まず1枚目、いわゆる金庫株の解禁に伴う税制の手当てでございます。商法上、自己株式の取得につきましては、これまで、原則禁止、消却目的等に限られた場合について認められておりましたが、今回、商法改正によりまして、一般的な取得を認めるということになっております。

税制上につきましては、消却目的で自己株式を取得した場合の課税関係でございますが、自己株式の取得に応じて、売却をした個人株主につきまして、市場で会社が自己株式を取得した場合は譲渡益課税ということです。相対で取得した場合には、その代金の中に利益の配分に当たる部分が含まれておりますと、みなし配当課税、それ以外は譲渡益課税ということになりますが、基本的に相対の概念の中で、公開市場買付の手続で自己株式を取得される場合がございます。この場合におきましては、市場売却と同じように譲渡益課税とする手当てをしています。

これによって株式の譲渡益と同じような取扱いがされ、株式の分離課税の適用等が行われて円滑な取得が進むということでございますが、このたび自己株式の取得目的についての限定が商法上なくなることに伴いまして、これに応じた売却株主の課税関係についても現行と同じような取扱いをさせていただくものでございます。現在、商法改正関係の法案が国会に提出されておりますので、この整備法の中で手当てをさせていただく部分でございます。

二点目は、上場型株式投資信託でございます。これは、一定の株価指数、例えば日経平均株価225 種とか、TOPIXといったような、株価指数の構成に合わせて連動する投資信託ということです。特徴としては、株価指数の構成に合わせて受動的な運用がされますので、コスト等の面でメリットがあるということでございます。他方、これにつきましては証券取引所に上場されて、投資家におかれましては、市場で売却することによって換金されるということになっております。

現在、この種のものとしては日経300指数に連動する投信がございますが、これについては、市場で売却されることに鑑みまして、株式並みの課税、収益の分配については配当として扱い、譲渡益については株式譲渡益課税という扱いがされております。このたび、株価指数連動型の上場型株式投資信託が投資信託制度の中で拡充整備されることに伴いまして、現行と同様、株式並み課税をする手当てをさせていただくものでございまして、政令で手当てする予定でございます。

三点目でございますが、長期保有株式に係る少額譲渡益非課税制度でございます。一般の個人投資家の方ができるだけ市場に参加していくことを促進していく、個人投資家の方の長期安定的な株式保有を促進するという観点から、株式の売却につきまして、長期保有株式、所有期間が1年を超えている上場株式等をお売りになるときに、申告分離課税を選択された場合には、その年の長期保有株式の譲渡益全体の中での損益がありますので、相殺した中での全体の年間の長期保有株式の譲渡益から100万円の特別控除を差し引く。したがいまして、年間譲渡益が100万円以下であれば、その分は非課税になるということでございます。

このような措置を講ずることによって、個人投資家の方の長期保有を促進していこうということでございます。適用期間は、できるだけ速やかにこの措置を実施するということで、今年の10月1日以降の譲渡から適用することを予定しているところでございます。

この取扱いにつきましては税法の改正が必要となりますので、近々国会に提出させていただく方向で、租税特別措置法の改正案を現在とりまとめさせていただいているところでございます。

なお、この株式の関連で一点補足させていただきますと、3党の「緊急経済対策に係る税制上の措置(4月20日)」の2ページ目でございます。3というところが少額譲渡益非課税制度の創設ですが、(2)のところで、「申告分離課税への一本化の実施時期、一本化時における税率の軽減、譲渡損失の繰越控除制度の創設等株式譲渡益課税のあり方について抜本的な見直しを行うこととし、引き続き協議の上早急に結論を得る」ということで、一本化後における株式譲渡益課税のあり方について検討事項という形で言及されています。

四点目でございますが、老人マル優の対象の範囲の拡大でございます。老人等の少額貯蓄の利子非課税制度につきましては、御案内のように、郵便貯金、国債等のほかに、少額貯蓄、一般の銀行等での老人マル優がございます。この対象商品としては、預貯金等のほかに株式投資信託についても対象になっておりますが、現在、投資信託で株式に運用できる割合、株式への組入れ比率が7割未満ですとか、同一銘柄の株式への投資比率5%以下というような量的制限がございます。

ただ、個人投資家の参加という観点が強く政策課題になってきている中で、基本的には、安定運用の方針の下ではこういう量的制限をあえて付す必要はない、選択肢を広げることが適当ではないかということで、このような量的規制については撤廃させていただく。これは税法の省令で手当てさせていただく方向で準備しているところでございます。

そのほか、3党では、銀行保有株式取得機構等について今後さらに検討していく、というような検討事項が示されているところでございます。

国税関係、簡単でございますが、以上でございます。

石会長

株丹さん、お願いします。

株丹市町村税課長

ただいまごらんいただきました同じ資料をごらんいただきたいと思います。地方税関係、個人の住民税関係でございますが、いずれも、いま御説明のございました「緊急経済対策に係る税制上の措置」四点につきまして、個人住民税につきましても所得税と同様の取扱いとなるように措置をいたすということでございます。

このうち地方税法の改正が必要となりますものは、1ページ目の自己株式の取得・保有制限の見直しの部分、御説明にございましたように、これは商法の改正に合わせまして整備法が国会に提案されてございまして、その中で地方税法の改正も行われるという内容でございます。

もう一点は、3ページ目でございますけれども、長期保有株式に係る少額譲渡益非課税制度につきまして、今国会に地方税法の改正を提出するということで準備をしているものでございます。適用期間等につきましては所得税と同じでございますが、課税年度で申しますと、前年の所得に課税いたしますので、14年度以降の個人の住民税についてということになるわけでございます。

2ページ目、4ページ目の、ETF、あるいは老人マル優の対象となる株式投信の範囲拡大につきましても、個人住民税について同様の取扱いとするということになるわけでございます。

簡単でございますが、以上でございます。

石会長

ありがとうございました。

あとで十分時間をとりたいと思いますが、あらかじめ御退室をお考えの委員がいらっしゃると思います。そういう意味で、これまでのことにつきまして特に御発言があれば、いまの段階で伺っておいたほうがいいかと思いますが、どなたかございますか。よろしゅうございますか。

では、先へ進めさせていただきます。

いまの緊急経済対策の税制上の措置に絡みまして、政府税制調査会といたしましても何かの審議機関をつくる必要があろうかと思いまして、「金融小委員会」を設置いたしたいと思います。これは、申告分離一本化が2年後には予定されているわけでありますが、その後の姿をこの税調としても描き切っておりません。その辺も少し視野に入れ、金融・証券のあり方を税の議論として本格的に議論するほうがいいだろうということで、学識経験者を中心といたしまして小委員会をつくり、そこで議論をいただこうかと考えております。

金融小委員会という名前にしたいと思いますが、その設置を提案し、お認めいただきましたら、委員の方をいまこの場で指名させていただきたいと思います。よろしゅうございますね。

それでは、勝手でございますが、小委員会のメンバーの選考に当たりましては、議事規則において会長が指名できることになっておりますので、以下の方を指名させていただきたいと思います。

本日御出席の方々の中から、奥野正寛さん、竹内佐和子さん、まだお見えでないですが、田中直毅さん、中里実さん、追っつけお見えになると思います。本間正明さん、水野忠恒さん、水野勝さん。

それから、本日欠席されていますが、大田弘子さん、神田秀樹さん、津田正さん。それから、新たに専門委員等々からも御参加いただきたいと思います。慶応義塾大学教授の池尾和人さん、日本総研の主席研究員、翁百合さん、一橋大学教授の清水啓典さん、野村総研顧問の水口弘一さん、国際会計基準審議会理事の山田辰己さん。飛ばしてしまいましたが、吉野直行さんにも御出席いただくことになっております。

以上16名の方で、最後の池尾さん以下山田さんまでは本日付で専門委員に御就任いただくことになります。以上16名の方のほかに、私と上野会長代理に御出席いただきまして、18人でこの小委員会を運営いたしたいと思います。

そこで、小委員長でございますが、これも会長が指名できることになっておりますので、奥野さんにお願いいたしたいと思います。よろしくお願いいたします。

早速でございますが、金融小委員会第1回の審議を、追って御通知差し上げますが、6月5日火曜日の午前中に開催いたしたいと思います。委員の方、よろしくお願いいたしたいと思います。

それでは、第三の議題といたしまして、前回の総会で御意見のございました「ドイツの株式市場と税制」の話と、「公益法人等に対する課税制度」につきまして、事務局より御説明いただきまして、また審議いたしたいと思います。

それでは、池田調査課長、藤田企画官、岡崎都道府県税課長、お3人から順次御説明をいただきたいと思います。

池田調査課長

それでは、ドイツの株式市場と税制について簡単に御説明したいと思います。お手元の「総13-4 ドイツの株式市場と税制」という表紙がついております資料をごらんいただきたいと思います。

1ページ目をごらんいただきたいと思いますが、最初に、この資料で説明したいことを二つのポイントでまとめてございます。ドイツの株式市場の動向、90年代を見てみますと、90年代の後半におきまして株価は総じて右肩上がりということで、好調に推移しております。この株価の動きにつきましては二つのことが言われておりまして、アメリカの株価との連動性が非常に強くて、アメリカの株価の好調に合わせて上昇しているようである。後ほど申しますけれども、ただ、ドイツにおいての株式投資の対象の多くが外国株であることが同時に指摘されております。

株式市場の好調の背景には、さまざまな証券市場に関する規制緩和、市場整備、あるいは金融制度改革の実施があったと言われておりまして、EU市場統合に伴いましてドイツでの株式市場の改革が行われたということです。

具体的には、例えばドイツ・テレコムというような公的企業を民営化する、株式公開をする。あるいは、ノイアマルクトと言われるそうですが、新興成長企業向けの新しい市場を創設したといったようなことがあります。

この間、税制につきましては大きな改正は特に行われておりません。

それから、ドイツにつきまして株式譲渡益課税が非常に軽いということがよく言われております。この点について調べてみますと、ドイツにおいては、伝統的に1920年代以来、株式、土地等の譲渡益については原則として非課税である。例えば投機売買に当たる保有期間1年以下の株式売買の場合には譲渡益として課税されるけれども、1年を超える保有であれば、これは所得ではないというふうに考える方式をとっております。

このドイツの所得税の考え方は、利子とか、配当とか、毎年のように経常的に発生する収益は所得としてとらえるけれども、一時的に発生する、偶発的に発生する収益は所得税法上の所得ととらえない、という考え方でございます。これは、現在ではほかの主要国では見られない考え方となっておりまして、講学上は「制限的所得概念」に基づくと言われております。政策的に株式投資を優遇する考え方が特にあったということではないようでございます。

いま、大きく分けて二点申し上げましたが、以下、この内容を敷衍して申し上げたいと思います。

2ページ目をごらんいただきたいと思います。ドイツの株式市場の動向でございます。90年代に入りまして、一番太い線であらわされておりますのが、ドイツの株式市場の代表的な指数でありますDAX指数の動きです。96年、97年ぐらいの、ドイツ・テレコムの株式公開やノイアマルクトの創設といった時期から、非常に好調に一本調子で右肩上がりになっております。その動きは、すぐ上にあります、アメリカのダウ工業株平均株価の動きと非常に似通った動きになっています。残念ながらと申しますか、この間、日本の日経平均の動きはちょうど逆方向を向いていたことは御承知のとおりでございます。

なお、このグラフの下にありますけれども、上場企業数という欄をごらんいただきたいと思います。1999年時点でドイツの株式市場に上場されている企業は、ドイツの国内企業は900社程度にとどまるのに対して、外国企業が7600社ということで、ドイツ市場に上場されている企業の90%近くが外国企業であるという特徴を持った市場でございます。

そういったことを受けまして、最初にもドイツにおける株式投資は外国株中心であることを申しましたが、3ページの表の一番下の行、1999年の欄をごらんいただきますと、ドイツの株式市場において投資対象となったものは、国内株が23%であるのに対して外国株が77%でございます。企業数では9割近く、投資対象としては8割近くが外国企業である。結果として、市場の動きも外国の株式市場と連動性が強くなっているという特色がございます。

4ページ目をごらんいただきたいと思います。ドイツにおきまして、90年代に急激に個人の株式の保有が進み、金融資産残高に占める割合も上昇したということがときどき触れられることがございます。この動きを、日本、アメリカ、ドイツで比べてみました。

日本におきましては、1989年末、バブルで株価の最も高かった時代でございますと、金融資産に占める個人の株式の残高は13.8%まで一回上昇いたしましたが、その後、株価の低落を受けまして、最近時では6.4%程度まで下がっております。この間アメリカは、16%程度であったものが、やはり90年代後半の株価の上昇を受け24%まで上昇しております。ドイツにつきましては、89年当時は2.9%ということで、かなり低いレベルにとどまっておりましたが、先ほど来申し上げましたような株価の好調も手伝って、12.7%まで上昇しております。個人に占める割合につきましても、株価との影響がかなり大きいように見受けられます。

5ページ目をごらんいただきたいと思います。各国の株式譲渡益課税について比較してみました。一番左の日本については、もう何度も御説明したところでございますので、省略いたします。アメリカ、イギリスは総合課税をとり、税率につきましては、それぞれの段階税率をもって、アメリカの場合にはそれに地方税がプラスされるということになっております。ただ、アメリカの場合、1年を超える保有の場合には10%~20%の課税であり、これに地方税が加わる。通常ですと28%程度という課税が、ニューヨークの場合、多いようでございます。

イギリスの場合は3段階の課税でございまして、ドイツの場合は、これも最初に申し上げましたが、投機的売買等一定のものを除いた上で、原則が非課税、そうでないものについて総合課税が行われるということになっております。フランスにつきましては、申告分離課税で26%の税率になっております。

6ページをごらんいただきたいと思います。ドイツだけが制限的所得税の概念をとっているわけでございますが、これを歴史的に振り返ってみます。アメリカの欄をごらんいただきたいのですが、1913年の時点でアメリカは個人所得税を再導入いたしまして、このときに、いわゆる包括的所得概念ということでキャピタル・ゲインも課税になりました。これを受けましたのが、日本の1950年のシャウプ勧告に基づく所得税の整備でございます。このときキャピタル・ゲインを一回原則課税としたことは御承知のとおりですが、その後、シャウプ税制の再構築の中で、所得税の原則非課税の上での有価証券譲渡益課税の導入、それから、昭和62・63年の抜本改革の中での原則課税化という歴史をたどっております。

ヨーロッパの国々を見ますと、イギリスの1842年、ドイツの1925年、フランスの1910年代、それぞれ制限的所得概念に基づく所得税の導入が図られました。すなわち、キャピタル・ゲインは原則非課税でございました。ところが、イギリスの場合、1960年代にキャピタル・ゲインを原則課税化にしております。フランスの場合は1970年代の後半に原則課税と変えて、アメリカの包括的所得概念に近づいてきたわけでございます。ドイツの場合は、1925年、75年前の制限的所得概念の所得税を現状も維持しているということでございます。

7ページをごらんいただきたいと思います。個人の所得税の世界とは別に、ドイツの最近の税制改正の中で、法人税の世界において株式の譲渡益課税について軽減が行われたということが言われております。調べてみますと、2000年の税制改正の中で、法人の株式譲渡益課税につきまして、現行は1年以上保有する場合には外国株のみの譲渡益だけが非課税で、原則は課税という制度ですが、これを2002年、来年の1月から、1年超保有の株式の譲渡益の場合には非課税とするという改正が既に行われております。譲渡益が非課税となりますから、当然、譲渡損については損金不算入になるわけでございます。

この背景は、一つには、ドイツの企業の大宗が、株式会社というよりは、人的な会社、日本風に言いますと、合名、合資の会社で非公開の会社が大半を占めているケースが多く、これは実は個人所得税の対象になります。大半が個人所得税の対象でございまして、株式会社についてもそういった制度に合わせる形での改正になったように思われます。

なお、この減税措置に対しましては、「注」でございますが、増収策も一方でとられております。個人、あるいは法人企業の配当所得に対しまして、現状、完全インピュテーションと申しまして、前段階での法人税の課税については、次の段階の所得税の課税の段階において完全に計算し、還付すべきものは還付するという調整がとられておりますが、これが2002年1月から廃止されまして、部分調整に移行されます。この増収措置のもとで、法人の一部の譲渡益について非課税となるという改正が行われたということでございます。

一番最後の8ページは、先ほど来申しました「包括的所得概念と制限的所得概念」につきまして、金子宏先生の『租税法』の教科書の中からその該当部分を抜き書きしてございます。御参考までに添付いたしました。

以上でございます。

石会長

では、藤田さん。

藤田主税企画官

公益法人等の課税制度について簡単に御説明申し上げたいと思います。「総13-5」の資料をごらんいただきたいと思います。「公益法人等の課税制度」という表紙がついてございます。

表紙をめくっていただきまして、公益法人等に対する法人税の課税制度の概要をまとめたものでございます。まず課税対象でございますけれども、収益事業から生ずる所得に対してのみ課税ということになっておりまして、その趣旨は、カッコの中に入っておりますが、民間企業が行っておられる事業と競合関係にある事業について、課税の公平性、中立性の観点から課税するとの考え方です。

「注」に書いてございますように、その範囲は政令で物品販売業等33事業を規定しております。3ページをごらんいただきたいと思いますけれども、収益事業の範囲ということで、1号~33号まで、物品販売業から始まりまして、ごらんの収益事業が規定されています。上の四角の下に書いてございますように、この収益事業のうちでも、ある業務が法律の規定に基づいて行われている公共・公益的な一定の事業は、収益事業から除外されております。

恐縮でございます、1ページ目に戻っていただきまして、適用税率でございますけれども、22%の軽減税率。現在、普通法人の基本税率は30%となっております。

もう一つ、寄附金に係る特例がございます。いま御説明申し上げました、収益事業部門から非収益事業部門へ支出した場合、これは寄附金とみなす仕組みになっております。さらに、公益法人等につきましては寄附金の損金算入限度額についても特例がございまして、いま御説明申し上げましたみなし寄附金も含めまして、収益事業から生ずる所得の20%まで損金に算入できることになっております。

最後に、金融資産から生ずる収益、利子・配当等でございますけれども、これにつきましても、収益事業部門から生じるもののみ課税対象であるということになっております。

次に4ページをごらんいただきたいのですけれども、公益法人等の数です。法人税法の別表第2というところで規定されているのですが、全体で約25万6000件ございまして、いわゆる狭義の公益法人と申しましょうか、民法34条法人が約1割、2万6000件程度でございまして、7割が宗教法人であるという内訳になっております。

1ページめくっていただきまして、公益法人等の課税につきましては、昨年7月におとりまとめいただきました「中期答申」でも幾つか御指摘をいただいておりますので、それについて御説明いたしたいと思います。

まず、5ページの税率というところですけれども、中略と書いてある下のところです。先ほど申しましたように軽減税率が適用になっているわけですが、これらの法人の営む事業と一般法人の営む事業とが競合している、税制が競争条件を異なるものとすることは適当ではないことから、基本税率との格差を縮小する方向で検討していくことが適当である、という御指摘をいただいております。

さらに、この5ページの最後のほうですが、「近年公益法人等の各種団体の行う事業内容が次第に拡大し、多様化している。民間企業が行う事業内容との間に大きな違いがなくなってきているのではないかと考えられます。したがって、現在収益事業とされていない事業であっても民間企業と競合するものについては、随時収益事業の範囲に追加していくことが適当です。しかし、そうした対応に限界があるとすれば、対価を得て行う事業については原則として課税対象とし、一定の要件に該当する事業には課税しないこととするといった見直しなどを行うことも考えられます。いずれにしても、その実態を十分把握する必要がある」という御指摘をいただいております。

それから、金融資産収益のところですけれども、収益事業から生ずるもののみ課税になっているわけですが、「金融資産収益については、会費や寄附金収入と異なって、公益法人等の段階で新たに発生した所得であって経済的価値においては現在収益事業の中に入っている金銭貸付業から生じた所得と同じではないかということから、一定の負担を求めてもよいのではないかとの指摘もあります」という記述になっております。

最後に、「一部の公益法人等の活動について批判がなされることがありますが、公益法人等が課税上の特典を享受していることを十分自覚するとともに、主務官庁が適時適切にその業務運営などの適正化を図ることを強く期待します」というふうに指摘いただいております。

以上でございます。

石会長

では、岡崎さん、地方税関係をお願いします。

岡崎都道府県税課長

ただいまの資料の2ページをごらんいただきます。2ページに、地方法人課税関係の整理をいたしております。

まず、課税対象でございますが、公益法人の関係は法人税と同様でございまして、所得という意味では収益事業の分だけ課税でございます。

適用税率でございますが、これは若干国税と異なりまして、普通法人と同じ税率を用いております。法人事業税並びに法人住民税ともに一般の営利法人と同じでございます。

それから、法人住民税に均等割というのがございますが、これにつきましては、収益事業を行う、行わないにかかわらず、原則は課税でございます。ただ、一定の公益法人につきまして、限定列挙した上で、収益事業を行わない場合に限って非課税にするというやり方にいたしております。

寄附金等、金融資産収益につきましては法人税と同じ扱いになっております。

以上でございます。よろしくお願い申し上げます。

石会長

ありがとうございました。

それでは、これで事務局からの御説明は終わることにいたしまして、いまから自由な討論に入りたいと思います。きょうは比較的時間があります。1時間15分ほど残っておりますから、自由闊達に御議論いただきたいと思います。事務局の資料に対する御説明、御意見でも結構でございます。

それから、小泉新内閣がスタートしたわけでございまして、構造改革がいま華やかに言われておりますが、税制改革も構造改革の一環であります。そういう視点から、今後政府税調として、あるいはもっと広げて、日本の税制上の問題でいいのですが、日本税制の改革としてどんなことを議論したらいいか、そういう自由な視点からでも結構でございますので、幅広い視点からの御議論をいただきたいと思います。

どなたからでも結構でございます。特に退室を御予定の方からお先に御意見をいただきたいと思います。

河野特別委員

いま会長のお話のように、前回の総会のときは前の森内閣が最終段階を迎えていて、今回の総会で初めて小泉さんが登場してからの話になったわけです。僕は、小泉内閣登場前と登場後では、財政を含めた構造改革論議というのは様変わりしていると思います。一般的に言って、非常に心強い変化を小泉さんは少なくとも志向していると思うのです。

さらに所信表明、さっき説明を受けましたが、ずいぶん変わった発想でこれから臨むということになっていたのだけれども、あれは総論ですよね。最近になって、こんなに矢継ぎ早に言ってもいいのかと思うほど個別具体論について言及するようになってこられて、昔、左翼の諸君が、「物事が変わるときには一点突破・全面展開だ」と言ったけれども、戦術的には似たようなことをとっていらっしゃるんですね。一番わかりやすいのは道路財源の話。もう一つは、これはもっともっと複雑な話で、簡単ではないけれども、地方交付税の話。ごく一般論で言えば租特の話。いろいろな問題を政治家が主導的に提起されているというのがいまの状況です。ここに本間先生がいらっしゃるけれども、本間先生が所属されている経済財政諮問会議でも、いま流行の言葉を使えば、「骨太の議論」を税制についてもおやりになりたいとおっしゃっているように聞いています。本間先生がいらっしゃるから、立派な議論になるだろうと思いますけどね。

もう一つ、これは皆さんあまり御存じないかもしれないけれども、来月中旬に地方分権委員会が最終的な報告書を総理大臣に出します。勧告ではありませんから、総理は厳密に実行する必要はないけれども、報告で、そこにいろいろなことが書いてあります。私は6年間一緒にいたから当たり前に思っているけれども、皆さんがお聞きになれば、びっくりするようなことが書いてあるんです。きょうは諸井さんがいらっしゃらない。本当は諸井さんがいらっしゃれば説明があるかもしれないと思うけれども、その中で税制の話なんですよ。税制の委譲問題が書いてあるわけです。

例えば、所得税の一部、消費税の一部、たばこ税の一部、その他を、ある数字をもって国税から地方に渡してしまう、国税はそのぐらい減収になると書いてある。併せて、それだけでは間に合わないものだから、国税についてもいろいろ書いてあるんです。セットで議論しましょうということが書いてある。これも、まさかこんな世の中になるとは思わなかったからで、偶然ではありますけれども、大がかりな骨太の議論をやる最中に、たまたま報告書というのが2週間ぐらいの間に出てくるわけです。

ということは、今日もやっていましたけれども、税調以外のところ、国会でもずいぶん活発な議論が始まっています。それを政府税調がぼんやり見ているというのは、おそらく使命の放棄みたいな話に近いだろうと思うのです。会長にお願いしたいのは、今日は時間がたっぷりあるから、皆さんいろいろなことをおっしゃると思って、それを聞いて帰りたいのですが、いま大きなテーマが幾つか並んでいるときに、まだほかにもテーマはあるよとおっしゃる方もいらっしゃるわけで、一回総会をやって、あとは9月ごろになったらやりましょうかなんていうのんべんだらりとしたことをやっていたのでは、間違いなく時期を失するんです。もっと詰めた議論を、予定外ではあるけれども、やってもらいたいと思います。それは会長に対する税調の運営についての注文です。

私の意見は、一つは、道路財源についてはいろいろな議論があって、トヨタの奥田さんは税率の問題を言われていますけれども、事はきわめて単純明快なんですね。これは、長年にわたって当政府税調が引きずってきた宿願、念願みたいな話なのです。去年の4月に加藤会長が記者会見でこのことをしゃべったら、自民党に呼び出されてずいぶん怒られたという経過がありますけれども、幸いなことに今度はそういう状況ではなくなってきたわけです。かねてから我々は理論的準備は全部終わっているわけですから、総理、財務大臣にエールを贈りたい。一生懸命やりなさいということを言いたいのです。

もう一つ、それはもうわかり切った話なので特段強調することもないのですけれども、地方交付税交付金、これは難物中の難物なんです。去年も、何日か忘れたけれども、ここで僕が問題提起をしたら、皆さんが目の色を変えて発言されたことを覚えていますけれども、それほど問題を抱えていると我々は思っているわけです。たまたま来年度予算編成で、交付税交付金について減額するということをおっしゃっていますが、これはなかなか難しいんですね。道路財源を変えるのに比べれば、交付税を変えるということは地方自治体を全部対象にしたような大事業で、いろいろな経過があって簡単にいかないのです。

ただ、あのときもいろいろなことをおっしゃいましたけれども、いまも国家財政の危急存亡のときでも平気で金が流れている、足らないものは特別会計で全部借金していますから。これは誰が考えたって破綻しているのです。個別の分野をよく見れば、公共事業の地方の裏負担金も面倒見るよ、借金の返済も面倒見るよ、利息も面倒見るよと、とにかく至れり尽くせりで、基本概念は「ナショナル・ミニマムを実現するために」というスローガンで、これは戦後50年間変わらないスローガンだと思います。

今日は自治省の局長がいらっしゃって、精緻な議論をお持ちだと思うからあれだけれども、よくもまあこれほど細かく規定されてやったなと思うと同時に、それがきわめて不透明になっているのです。精緻であるがゆえに不透明になっているんですよ。実はよくわからないのです。これを来年どうするかという技術論に近い話は、財務当局が一生懸命やればいいと思うけれども、もう少し先の話になれば、本格的に……。あれは地方固有の税収なのか、いやいや、そうではないというところからあの話は始まるんです。根本的なところの議論は解けてないのです。これはいいチャンスだし、しかも分権委員会からも、地方交付税は減らして結構ですよ、そのかわり国税を一部よこせという議論で、あの議論はバーターなのです。どちらにしても、問題を提起するという姿勢においては変わらないわけです。

きょうは、専門家の先生たちがたくさんいらっしゃるからお聞きしたいのだけれども、あれについては、目先の予算編成上、地財計画編成上のテクニックの話ではなくて、本格的に議論を始めるべきだということについて、総理、財務大臣に、しっかりやってください、我々も協力します、ということを言いたいのです。

以上です。

石会長

河野さんに確認したいのは、税調がぼんやりしているとどんどん置いていかれるようという御趣旨で、二つの大きなテーマを出されましたよね。道路特定財源と地方交付税交付金、これはたまたま二つお出しになったと思うのですが、この種の問題はいっぱいあるのだから、本格的に総会も開き、ここで議論をなるべく早く詰めるべきだ、こういう御提案ですね。

河野特別委員

そうです。

石会長

わかりました。河野さんの御議論もあろうと思いますし、また、別な視点でも結構でございますが、さまざまな御関心があろうと思いますので、どうぞ。

では、水野さん。

水野(忠)委員

これは、今度できる小委員会でも議論することになると思いますが、先ほど御説明いただきました緊急経済対策の中で、自己株式の取得の問題が出ています。私、思い出しましたのは、少し古い話なのですが、アメリカ合衆国で1992年に、ブッシュ政権の最後のところですけれども、法人税改革の報告書が出まして、その中で80年代を総括しているわけです。80年代といいますと、アメリカ合衆国が「双子の赤字」を抱えて一番ひどい時代だったわけですが、その中で出てまいりますのは、80年代にアメリカ合衆国では自己株の取得が非常に進んだと。もともとアメリカ合衆国は州の会社法ですけれども、自己株の取得を一切規制しておりませんので、そういうことは自由なわけですが、その自己株の取得が進んだ、この原因は何だろうかと。

いろいろあると思いますが、一つには、株が売れないから会社が買い取ってもらうという問題があったと思います。もう一つは、自己株の取得は、税金の問題を考えるとどういうふうになるかといえば、見方によっては、会社が株を買い取るわけですから、株式の譲渡が行われているという形になりますが、別の見方をしますと、株式の譲渡の形をとって会社が利益を株主に分配した形にもなる。ですから、税制上の措置のところでみなし配当課税という形になっているわけですが、アメリカ合衆国はこの制度を使いませんでしたので、自己株の取得が乱用された。実質は自己株を取得するというのは、資本を減少しているのと同じことになるわけですから、そういう形でアメリカの企業の経済的な基盤がどんどん弱っていった。これが1980年代であったと総括されているわけです。

この段階で我が国が緊急経済対策ということで、自己株の取得はもう決まってしまった話だからしようがありませんけれども、さて、こうなったときに、少なくとも税制が変な形で自己株の取得にインセンティブを与えてしまうということをやりますと、これは非常にまずいことになってしまうのではないか。自己株の取得は、形の上では株主は現金化することでいいわけですが、それだけ会社の資産がどんどん紙になっていくわけですので、非常に問題があります。これは委員会で議論することになるわけですが、緊急経済対策の手法として本当に役に立つのかどうか。政治の世界ではこうなっておりますけれども、そのあたりから検討する必要があるのではないかと思います。

石会長

これは奥野さんにお願いして、早急に議論をかためてもらいます。水野さんも御出席になるわけですから、また問題提起をお願いします。

引き続きまして、どなたでも結構です。村上さん。

村上特別委員

先ほどの財務省の説明のドイツの株式市場と税制の関係ですが、この資料だけですと、なぜドイツに直接金融の制度が非常に緩やかに導入されているかということがわかりにくい。せっかく第二次世界大戦後のことも資料の中に入っているように思いますので、その歴史的経緯、つまり、ドイツが直接金融を選択し、間接金融を疎んじるというと何ですが、軽視したという経緯、それに対して日本は間接金融重視の政策をとった、直接金融が次に置かれたという感じかと思います。そういうもともとの政策の考え方の違いから発していることだと思うので、その辺、どちらの選択が日本にとって正しかったのかということを検証する必要があると思います。

私は、必ずしも戦後の間接金融を採用した政策が違っているとは思いません。後半はちょっと怪しくなりましたけれども、日本の戦後復興を支えた大きな政策の選択であったと思うので、その辺のところを少し理論的にも説明していただけると、今後の議論をする際に役に立つのかなというふうに思いますので、お願いいたします。

石会長

池田さん、いまの段階で何か御説明いただけますか。

池田調査課長

誤解を防ぐために一つだけつけ加えたいと思います。一般的にドイツの金融の歴史を見ますと、ごく最近、90年代後半になる前までは、日本以上に間接金融主体の国であったと言われております。そういう意味では、結果だけ見ると、日本の戦後と似たようなスタイル、間接金融中心でごく最近までやってきたということがドイツの場合は言えようと思います。最近よく話題にされているのは、それが90年代後半に入って変質しつつあるのではないかということで、それが、日本にとってお手本になり得るのかどうかということが議論されていると見るべきではないかというふうに考えます。そういうことで、今日の御説明は、実は90年代に入ってから後半の説明を中心にさせていただいたということで御理解いただければと思います。

石会長

村上さん、よろしゅうございますか。

村上特別委員

はい。

石会長

松尾さん、どうぞ。

松尾委員

全く同じ問題ですけれども、自民党、公明党、保守党の「緊急経済対策に係る税制上の措置」に沿って、長期保有株式に係る少額譲渡益非課税制度、老人等の少額貯蓄の利子取得非課税制度、これができようとしているわけですね。これは考えてみるまでもなく、これまでの税制調査会の議論の流れに反しているのではないかと思うのです。政治的な圧力に屈してこういうことを認めているというのは、私は非常におかしいと思うんですよ。証券税制を考える場合、これからの直接金融、間接金融はどうあるか、これを考えるのが大前提です。その辺も全く抜きにしてしまってこういうのを認めているのはおかしい、ということを私はひとこと言っておきたいと思います。

それから、これは質問ですが、キャピタル・ゲイン課税について、イギリス、フランスは以前は制限的所得概念をとっていたわけですね。それを変えてキャピタル・ゲイン税創設に移行した。これはどういう事情があったのか、説明していただけますか。どういう理由づけをしているのか。

石会長

前段は御意見と思いますが、後段の所得概念の変更につきまして、いまの段階で説明がつけられるようなことはございますか。

池田調査課長

とりあえず今日御説明できるのは、配付しました資料の一番最後のページ、金子先生の教科書からの抜き書きでございますが、前半の第1パラグラフにつきましては先ほど説明したような経緯がございます。二つ目のパラグラフの下から4行目、「この二つの考え方のうち」ということで、三つぐらいの理由から、包括的所得概念のほうが一般的には支持が多くなっているということでございます。第一に、一時的・偶発的・恩恵的利得であっても、担税力を増加させるということで、課税対象にすることが公平負担の要請に合致するのではないか。第二に、すべての利得・所得を累進課税のもとにおくことが、所得税の再分配機能を高めるのではないか。第三に、所得の範囲を広く構成するほうが景気調整機能も増大するのではないか。そういう理由から、諸国の租税制度は徐々に包括的所得概念の方向に動きつつあるということが言われております。

個別国のそれぞれの事情については、また必要に応じて別の機会で御説明したいと思います。

石会長

この種のところは税法学者がえらく関心があり、御勉強を進められておりますけれども、水野さん、中里さん、何か追加的な情報はございますか。

水野(忠)委員

イギリスですけれども、先ほどの資料に書いてありますように、キャピタル・ゲイン税となっております。これは中身は、イギリスは所得税法は当然ありますが、全く同じ規定がキャピタル・ゲイン税の中に入っているといいますか、所得という理解がイギリス人はなかなかできなかったわけですね。資産があってそれが値上がりしている。資産の値上がりはあくまでも資産であって所得ではない、これをなかなか庶民に納得させることができない。そこで、しようがないので、条文は全く同じなのですけれども、キャピタル・ゲインズ・タックスという別の税金にしてあるのです。これは、日本で言えば所得税の中のキャピタル・ゲインの課税なのですけれども、わざわざそういう別の法律をつくっている。

ということで、国民性として長いこと課税されていなかったものですから、理解を促すことが難しい。逆を言えば、こういう形にしたほうが通しやすかったということかもしれませんけれども、ちょっとつけ加えればそういうことです。

中里さん、何かありますか。

中里特別委員

イギリスのことは水野先生から御説明がございましたのであれですが、ドイツとフランスにつきましては、個人企業も含めた企業の貸借対照表に載っている株式の譲渡益は、譲渡所得ではなくて事業所得ということで伝統的にずっと課税しておりました。ですから、企業でない個人の保有する株式の譲渡益等のものについて、これは所得ではないということで非課税にしていたということで、非課税の範囲はもともと狭かったわけです。事業所得の概念を拡大することによって実質は課税を及ぼしていて、ということがあるのだろうと思います。

石会長

というように、各国さまざまな概念を使っておりますから、資産価値が上がったといっても、上がった分だけを何で所得を見るかというところは国民性もありますよね。ただ、戦後、あるいは直近の時期を見ると、包括的所得税という概念がワールドスタンダードだという気で財政学者は見ておりますので、ドイツ等々の概念はやはりちょっと受け入れがたいなという感じは個人的に持っております。

どうぞ。

木村審議官

いま、松尾委員から非常に厳しい御指摘を受けました。今回の少額譲渡益非課税制度は、先ほど一課長からも御説明させていただきましたように、あくまでも現行の源泉分離選択課税制度のもとで緊急経済対策の一環として一般個人投資家の株式市場への参加を促進する、そういった観点から最大限ギリギリな配慮を行ったものでございます。ただ、改めて申し上げる必要はないかと思いますが、申告分離課税の一本化というこの方針は決して変えるものでございませんので、その点だけは改めて申し上げさせていただきたいと思います。

石会長

水野さん、どうぞ。

水野(勝)委員

先ほど政治情勢の変化というお話がございました。そうした変化の中で、財政構造改革がここで急激に取り上げられ、強力に押し進められているということでございます。しかし、財政構造改革は、平成9年のころ、財政構造改革法というのが一度国会で成立しているわけですけれども、結局、諸般の事情から停止になってしまっているということでございます。税の面で、一般消費税を何とかしようということが取り上げられたのが50年代の初め。しかし、それが実現するまでには三つの内閣、あるいは四つとも言える内閣が代わるぐらいのいろいろな激変があり、10年以上の年月がかかっておったわけでございます。したがいまして、なかなか簡単なことではない。財政の基本的な部分の変更、改革は大変なことでございますが、こういう機運になったとき、これは税サイド、歳入サイドからも積極的に支援するというか、エールを贈るというか、こういうことが必要ではないかと思うわけでございます。

ただ、昭和50年代、60年代の行政改革、財政改革もそうでございましたけれども、税が表に出ていくとまたいろいろな問題が生ずる。主体は、歳出サイドにまず御奮闘願うということではないかと思うわけでございます。先ほどの特定財源の話、あるいは地方交付税の話、こういったものはもちろん税に大きく影響するわけでございますけれども、主役はどうしても歳出サイドになる。そういった意味におきましては、随時、歳入サイドもそれを一緒に議論し、一緒に支援しながら頑張ってもらう、そういう立場ではないかと思うわけでございますので、いろいろな機会をつくって、そうした参画、支援をしていくことが必要であり適当ではないかと思うわけでございます。

それから次の点として、緊急経済対策の中で出てくる税の問題、先ほど御指摘がございましたが、本当にそのとおりだと思います。先ほど会長から、金融課税小委員会の中で、課税が一本化されたときの姿を求めていく、固めていくのだというお話がございましたので、私どもは安心しているわけでございまして、今後、基本的なあるべき姿が固められてくるのであろうと思うわけでございます。

先ほどお話がございました金庫株のお話は、いま直接金融がむしろ過剰ではないか、過剰ならばこれを消却していくということで、金庫株の消却があるわけでございます。そういう中でさらに供給しろという株式の話はちぐはぐな感じがしないこともない。

また、個人に株式の取得なりを奨励しようという一方、株をあまり銀行で持っていると経営の体質を悪化させる、そういう意味では銀行に株を持たせるのはどんなものかという見直しの問題が出てきている。こういったものも一体どっちを考えるのか。そういう意味におきましては、どうも緊急対策は、つぎはぎ的な場当たり的な面が感じられないこともないわけでございます。やはり基本的な立場に立って、税の公平、税の中立性という立場からこういう問題を取り上げていただけたらと思うわけでございます。そうした姿をこれから構築、検討されていくということですので、そうした検討の方向にひとつ御期待を申し上げる。そして、私どもとしても議論し検討していかなければならないと思うわけでございます。

所得の性質に関して、制限的な、包括的な、いろいろな御議論があります。せっかく基本的にこういった問題を検討するということであれば、資産の所得に対して、資産の喪失という面も一緒に考えていけたらと思うわけでございます。来年からはペイオフが始まる。ペイオフが始まると、場合によっては預金がゼロになることもあるわけでございます。

株式については、具体的に申し上げては何ですけれども、長期信用銀行の株を持っていたらゼロになってしまった。これは譲渡ではない。損失だけれども、これを税制上どう見るのか。例えば家屋敷が火事で焼けたということですと、雑損控除で引けるわけでございます。ただ、そこには「生活に通常必要でない資産の損失は除く」とされている。預金とか株は生活に必要でない資産だということだろうと思いますけれども、家は借家で、しかし、基本的な生活は預金なり株で賄っているのだといえば、そうしたものがゼロになる、ペイオフでだめになるという場合には、一体そこをどう考えるのか。そういうところまで所得の性質、その半面としての損失の性質といったものも含めて、今後ペイオフも始まるという時代に合わせて検討があってもいいか、そこまでは行き過ぎなのか、そうした点も検討がなされたらと思うわけでございます。

石会長

水野さんも小委員会のメンバーです。責任の一端もありますから、どうぞ大いに御議論に参加ください。

では、奥野さん、どうぞ。

奥野委員

最初の河野委員の御発言、それから、先ほどの与党税調に引っ張られ過ぎというところとも関連するのですが、政府税調として大きな問題を幾つか出すべきではないかというふうに個人的には思っております。先ほど小委員長に任命されたもので、金融とはできるだけ離れたところで議論を三点ほど述べさせていただきたいのですが、基本的に税制は公平・中立・簡素、それに加えて透明であることは非常に重要だし、2年ほど前に出された本間委員会の、フリー、フェア、グローバル、こういうものも非常に重要だと思うんですね。そういう意味で言うと、これは付け足しですが、納番制とか、消費税のインボイス方式とか、益税とか、そういうのを早く解決していくことはきわめて重要だろうと思います。

そういうことは常識なので、それ以外の点を三点ほど述べさせていただきたいと思います。

一つは、いま話題になっている道路特会です。自動車取得税、保有税、重量税、ガソリン税、そういうさまざまな税があるわけですが、目的税となって道路に使われている。これは財政学の常識から言うとそうなのかもしれないのですが、経済学の常識から言うと、そうではないはずなんです。経済学の常識から言うと、自動車とかガソリンにかかる税金は、一つは混雑にかかる税なのです。つまり、自動車というのは道路をただで通行できる。そうすると混雑を生むわけです。それを我々は外部不経済といいますが、そういう意味で社会的にコストをかけている。そのコストを負担してもらうために、自動車を保有したり、取得したり、場合によっては、走らせるために使うガソリン、こういうものに税金をかける。我々は混雑税と言っていますが、そういうものなのだと考えて、そういう意味で道路特会とは関係ないのだ、基本的にこれは一般財源として考えるべきだというふうに考える。

もう一つは、ガソリン税が典型ですけれども、これは環境を悪化させるという意味で環境負荷という意味の外部不経済を生んでいる。だから、これは環境税として負荷するのだ、したがって道路特会とは関係ない、一般財源として使うべきだという論理構成をきちんと出すべきではないかというふうに思うわけでございます。

もう一つは、さっき触れませんと言いました金融にかかわる話ですが、証券税制の申告分離をやろうということに与党も含めて合意し、事実、2年後にはやることになっています。率直に申しまして、これはちょっと歪んでいるというのが私の印象です。

どういうことかといいますと、どうして証券の譲渡益だけを申告しなくてはいけないの? なぜ普通の給与所得は申告しないで済むの? と。これ、いびつなんですね。なぜいびつかというと、証券税制がいびつなのではなくて、給与所得のほうがいびつなのです。つまり、もうそろそろ源泉徴収で年末調整の時代は終わった、きちんとした確定申告をやる、そうすることによって国民の納税者意識を回復すると。それによって、財政改革、経済改革、構造改革を国民の目からきちんとチェックすることが要請される時代になったのではないか。

急にすべて確定申告というのは無理かもしれませんが、例えば、せめて年末調整を各個人に2月の15日までに戻して、それをチェックして、場合によっては、それを個人の自己責任で変えてもう一遍申告し直させる、あるいは、面倒くさければそのまま出させる。そういうところから始めてもいいと思うのです。もうそろそろ、確定申告をきちんとさせることを考える時期に来ているのではないかというのが二番目でございます。

三番目は、去年の税調で申し上げたので、あまり詳しくは申しませんが、日本では法人税というのが乱用され過ぎている。とりわけ法人の中身ですね。法人税というより、法人の所得にかける税金というのは本当にいいのだろうか。全国の法人の細かい数字は知りませんが、6割ぐらいは赤字法人だと思うのです。要するに、自分の家族を雇ってそれを費用として計上して赤字化したり、さまざまな不動産を買いまくってそれを費用として計上して赤字化したり、その結果、税金を払わないままの大企業、相変わらず税金を払っていないという企業はたくさんあるわけです。それは大企業だけではなくて、いわゆる法人なり、青色申告とか、いろいろなところで問題があるので、法人税関連に関してもそろそろ見直す時期に来ているのではないか。

私自身は、どちらかといえば付加価値税みたいなものにだんだん置き換えていって、法人税はやめて、むしろ消費税で置き換えるほうが本当は望ましいのではないかと。これは個人的な意見でございますが、そういうふうに思っています。それについてもそろそろ議論する時期に来ているのではないかと思います。

石会長

ありがとうございました。根本的な問題を幾つか出されました。

では、本間さん、どうぞ。

本間委員

一つは技術的な問題、一つは総論にかかわる問題を発言させていただきたいと思います。技術的と申しますのは、「ドイツの株式市場と税制」の資料でございますが、書きぶりがちょっと非対照的になって奇異な感じがする点を指摘させていただきます。

1ページに「伝統的に株式、土地等の譲渡益は原則非課税」と書いておきながら、5ページの株式譲渡益課税の国際比較のところになると、突如として総合課税と書かれている。原則と例外を使い分けて表示されている、これは非常に誤解を招きやすい。正直ベースで、あるいは、短期と長期という形で仕分けをして二つの列に分けて書いていただくのが正当なやり方ではないか。そうでありませんと、総合課税で、不可、不可という話になりますと……お気持ちはよくわかるのですけれども、ここのところ、対照的に取り扱っていただきたいというのが第一点です。

もう一つは、総論的な問題でございまして、先ほどからお話に出ております、税調の審議のスタンス、あるいは、広がりについてであります。私は、税制調査会は、言葉がちょっと変な形になるかもしれませんけれども、臆病過ぎるということが税調の権威を下げている、積極的に打って出る時期に来ているのではないかと。

それは、対政治との関係が第一点ございます。党の税調の下請け的な形で位置づけられているというのが世の中の評価であります。これは、あまりにも落とし所を考え過ぎて、自分たちのスタンスをはっきりしないことに対するいら立ち、理論的な部分について材料を提供しない税調へのいわば不信というものがその中に入っているわけであります。政治的な判断はともかくとして、我々は、堂々と粛々と議論をしていくことが税調の権威を高めていくことになるのだろうと思っております。

それと同時に、税調が、税制の調査会、税を調査するところの専売特許が失われつつあるという危機意識を我々は持つべきではないかと思います。おそらく金融の問題でも金融庁も相当議論いたします。内閣府におきましても、あるいは、諮問会議におきましても議論されていくというときに、この税調本体の部分がいつもタイミングが遅れてきちんとした対応を出してこないということになりますと……。この問題は先ほど御指摘の部分と重なるわけでありますけれども、我々自身がこの問題について、ビジョンというものから始まってきちんとした体系づくりをぜひお願いしたいと考えております。石先生が新しい税調会長となられて最もふさわしいスタイルというのは、私はそういうスタイルではないかと思いますので、ぜひ頑張っていただきたいと思います。

石会長

いろいろありがとうございました。

それでは、猪瀬さん。

猪瀬委員

議論の最初の段階で河野委員が、小泉さんになったのだから新しい骨太の議論を税調で展開したほうがいいというふうなことをおっしゃいましたけれども、僕もそのとおりだと思っております。先ほどの小泉総理大臣の所信表明演説の中で、6ページの頭のところに、「特殊法人等についてゼロベースから見直し、国からの財政支出の大胆な削減を目指します。また、公益法人の抜本的改革を行います」と書いてあるわけですね。

今日の議題の中で、公益法人を一つきちんと俎上にのせていただいているので、税調もそういう姿勢であろうというふうに判断しておりますが、特に「総13-5」の資料で、5ページ目の終わりから、「近年公益法人等の各種団体の行う事業内容が次第に拡大し、かつ多様化してきている中で、民間企業が行う事業内容との間に大きな違いがなくなってきている」と。それだけではなくて、民間企業に対して競合し民間企業の事業活動を圧迫しているということがあるわけです。これは、規制緩和委員会、いまの規制改革会議、そういうところで当然扱うべき事柄ですが。

それともう一つは、5、6行目の下に、「公益法人課税についての見直しを行う場合には、まず、その実態を十分把握する必要があります」と書いてあります。これは、石原伸晃行革担当大臣のもとで内閣官房の行政改革推進事務局でやっている見直しというか、調査と絡み合ってくるのですが、問題は、規制改革会議とか、内閣官房の行政改革推進事務局がやっている調査が必ずしも十分ではないということ。ここはやはり税制の立場からというか、これらの委員会とか、それぞれの組織と協力し合いながら、改革を後押しする力というのは税制しかないかもしれないんですね。税制から攻めていくことがきわめて有効であるというふうに考えています。

3ページに「収益事業の範囲」というのがありまして、33項目載っています。33項目載っていても、当てはまらないことがたくさんありまして、課税の対象にならないんですね。皆さん御承知でしょうけれども、法人税法第4条で「公益法人は原則非課税である」となっていまして、法人税法第7条で、「収益事業から生じた所得は法人税がかかる」と書いてあるわけです。それから、軽減税率というのがある。この33業種というのは法人税法施行令の第5条で決まっているのですが、この33業種に当てはまれば収益事業だ、こういうわけです。

ところが、「総13-5」の1ページ目で、適用税率が22%で、普通法人の30%より低いということと、その下に、実質損金算入で、20%は収益から本体のほうに消えていくということになっています。そういういろいろな逃げ道があるのですが、特に、この33業種に当てはまらないと収益でないということになっていくと、課税ベースが非常に限定されていくわけです。そもそもが本体自体が課税されないということですけれども、収益のところから本体のほうに逃げていってしまう。それは20%逃げていくだけではなくて、この33業種に当てはまらないから本体であるというふうに本質的に逃げているわけですね。

そこのところが問題で、では、この33業種というのはどうかというと、33業種の範囲と書いてありますけれども、これをどんどんどんどん追加していったわけです。年度で書いてあるけれども、昭和59年度に追加したのが最後なんですね。ということは、これは1984年だから、20年近く前に追加したのが終わり。それから世の中はどんどん変化していろいろなものができている。それに対して33業種に追加がないわけです。

もともと追加がないものをどういうふうに処理しているかということで、僕は国税庁の人にいろいろ聞いてみたけれども、例えば公益法人がやっている事業の中に、資格とか、試験とか、認定とか、講習とか、免許とか、いろいろなものがあります。それは国の法律に基づいてやっている場合もあるし、そうでない場合もあるけれども、要するに、試験を販売したり、講習を販売したり、認定を販売しているという商売なんです。いろいろなものを販売している。販売していて、かなり利益を上げているわけです。では、それは33のどこに入るのかというと、請負だろうという判断なのです。10番目に請負業というのがある。政府から委託されてこういうものを請け負っていると。請負業だけれども、この請負業の解釈がまたよくわからない。30というのがあるけれども、洋裁教室とかそういうのをやっている。その30に入るかどうか。10か30か、これしかないわけですね。このあたりを詰めていかないといけない。

どこにも当てはまらなければ、ではどうなのかということで、施行令の5条はこの33項目を挙げているわけですけれども、さらにその下に省令があって、本体の事業のほうで収支トントンであれば問題はないんだと。省令はそういうニュアンスになっているのですが、さらにその下に法人税基本通達というのがあって、15の1の27と、15の1の28と、15の1の29と、あえて具体的に挙げますけれども、この通達の中で、請負業に入るかどうかといういろいろな判断の基準みたいなものが事細かに書かれています。例えば、試験とか、資格とか、認定とか、そういったいろいろな事業が請負に入らない場合は残りの32である。32で当てはめてみて入らない場合はこれは非課税である、こういうふうなニュアンスで書いています。そうすると、どんどん課税ベースが限定されていって逃げていってしまうわけです。それが現状です。

これは、法律改正になるといろいろな問題が出てくるかもしれない。各省庁との壁があるけれども、少なくとも通達の範囲では、省令の下ですから簡単に出せるわけですね。だから、国税の人が仕事しやすくできるような形を、税制、あるいは行財政指導的に後押ししてあげれば、かなりいろいろやれるわけです。僕はこの間いろいろ調べていて思ったのですけれども、基本的に皆さんもわかりにくい話です。つまり、事実が明らかでないから、なかなかこういう認識に至らないわけです。それで国税の現場が混乱していると思うのです。

ちょっと長くなって申し訳ないけれども、大事なことだからもう少し言います。例えばこんなものがあるんですね。電気技術者試験センターという財団法人が有楽町にあります。これは五つぐらいの試験を販売しているわけですけれども、理事長と専務理事が天下りでいて、あとは社員が24人いて、売上が26億円ですから、売上は1人1億円です。これはすごいですよ。それで内部留保が30億円ぐらいある。

おかしいのは、電気技術者試験センターというのがあって、同時に電気工事技術者講習センターというのがある。これは新橋のほうにあるわけです。そうすると、税務署の管轄が違うんですね。これは何をやっているかというと、講習を販売しているんです。電気技術試験センターで試験を受けて、5年ごとに更新する更新をこちらでやっている。二つそっくりなのがあって、社員の数も同じくらいで、売上が20億円ぐらいで、内部留保が30億円ぐらいたまっている。それで、電気技術者試験センターは麹町税務署であって、電気工事技術者講習センターは芝税務署です。

そうすると、試験の販売とか講習の販売について、適正な料金かどうかという判断は、幾ら幾らでやるとか法律にある程度明記してあって、電気工事士法とか、いろいろ細かい法律はありますけれども、そうするとそれぞれ判断が違うから、例えば電気技術者試験センターでは、これは実費弁償だから非課税の扱いだというふうになる。電気工事技術者講習センターでは、そもそもが公益事業であるから非課税だと。

実費弁償という言葉が出てきましたけれども、実費弁償というのは、例えば実費で1000円で試験できる。だったら1000円で試験をやればいいわけですが、それを1万円請求する。そうすると実費ではないわけです。9000円が余ってしまう。

そういうふうなことをどうチェックするかということが非常に大事なことです。国税庁には力があるというか、人数がいるわけですから、これをきちっと全部チェックしていくと、結構いろいろなことが明らかになって改革ができるわけです。例えば石原担当大臣のほうで60人の行政改革推進事務局がいても、そんなのは各省庁から上がってくるデータをただチェックするだけになってしまう。やはり実行部隊を持っている国税庁がきちんと調査していけば、かなりの部分が把握できるわけですね。

それから、国税の現場で、この33項目を出しているのは法人税法の施行令ですから、この施行令はなかなか改正しにくいかもしれない。政令ですから、全省庁の事務次官会議で通らなければだめなので、これはいやだというふうなことが出てきて、通らないかもしれない。しかし、それは小泉内閣で改革断行と言っているのだから、この33項目を、試験とか、講習とか、資格とか、いろいろ販売しているものを、35、36、37、38、39、40と、どんどんどんどん追加して50ぐらいにしてしまえばいい。そうしたら逃げ道はないです。そういうことが具体的な改革の実践的な方法で、それを税調できちんと確認していただきたいなというふうに思っています。

石会長

すごい問題意識をお持ちでございますが、審議の進め方で何か御要望はございますか。いずれ総会等々で取り上げればよろしいですね。

猪瀬委員

要するにここで話しただけで終わってしまうのではなくて、具体的にこれをのせていくというふうに石さんからおっしゃっていただく。

石会長

わかりました。

ほかに御発言の御希望の方はいらっしゃいますか。

では、島田さん。

島田委員

先ほど冒頭に河野さんが言ったこと、あるいは奥野さんが言ったこと、本間さんが言ったことを少しセコンドしたいような気持ちです。それは、石税調が本格的に走り出しているわけで、小泉政権が誕生して新しい時代が明らかになっているわけで、我々としても本格的に問題を提起すべきではないかと、本間さんが言われたとおりだと思うのです。小泉さんが提起されている問題というのは、財政の問題にしても、財投システムの問題にしても、交付税の問題にしても、実は、戦後の日本が発展してくるためには全部必要な制度だったのです。ところが、1970年代に高度成長を終えて、それ以降四半世紀、ちょっと言い方は悪いけれども、システム全体が思考停止したために非常な矛盾を生んでいるわけです。そこのところが、いま、非常に鋭角的に問題提起をされているわけで、やはり石税調にもそれを期待したいと思います。

そういう意味でいくと、総理は、30兆円という具体的数字を挙げて財政の中身を徹底的に見直すというわけです。見直して経済活力が出ることを期待しているわけですが、そのあとは当然税のほうにボールが返ってくるわけですね。そうすると、消費税の問題を国民がちゃんと受け入れられるような形に整備をしておくという問題がありますし、所得税の問題についても、配偶者控除みたいなものが戦後のあの仕組みでいいのかどうか。むしろあれを基礎控除に変えてしまって、みんなフラットな構造にするとか、租特を大幅に整理するとか、直間比率を直しておくというような準備の仕方が必要です。

資本市場の問題についても、緊急経済対策にはやや筋の悪い問題提起が幾つか入っているわけです。例えば、個人投資家が投資をしやすいためにどういう条件があればいいかということですけれども、必ず我々が決めておかなければいけないのは、申告分離になったときに損益の通算制度をしておかなければいけないし、これは早くやったほうがいいですね。それから、これから伸びていく企業は、資本政策をするときに、公開前にいろいろな資本市場の規制がある。これは税ではないですが、こういうのを取っ払っておかないとなかなかうまくいかないという問題があって、もっと基本的なところから問題を立てておいて、そして税調として議論する必要があるのではないか。

最後に、交付税のことです。河野さんがおっしゃったように、総理は交付税を減らそうということをおっしゃって、大変結構なことだと思います。他方、分権委員会では、税財源をそっちへ移すとおっしゃっているわけですけれども、ここで一番問われるのは、地方自治体が本当の自治能力があるかどうかということです。住民に対して必要な税をしっかり請求して、しっかり情報公開して、しっかり議論できるだけの能力と覚悟があるかということです。それがないと、税財源をそっちに持っていってもうまくいかないと思うのです。そういうのは税に直接かかわらないけれども、これは連立方程式ですから、総合的に議論しないといけない。そういうものを踏まえて、石税調として「これだ」というのを出していただきたい、そんな感じです。

石会長

石井さん、いま、分権、あるいは地方税が出ましたので、現状と問題意識を御説明ください。

石井自治税務局長

先ほど河野委員からも、道路財源の話と交付税の話が出ました。いま、島田先生からもそういう話が出ました。本当は分権委員会の諸井委員長がおられるとよかったのではないかと思いますが、河野先生から、総務省の局長もいるから何か考えがあるのかというお話もありましたので、簡単にお話をしたいと思います。

交付税につきましては、いま、分権委員会とか、国会でも論議がいろいろされております。私の理解としては、政府税調が手をこまねいているうちにそういう議論が進んでいるということではなくて、昨年、政府税調で中期答申をつくりますときに、地方税、地方交付税の話、国庫補助金も絡めてですけれども、相当熱心に御議論いただきました。そこで、大きな方向としては、これから地方分権を進めていくには地方の自主財源である地方税を充実すべきである、同時に、国庫補助金とか、交付税とか、地方が国に依存している財源を減らしていく方向にすべきではないかと。こういうことをはっきり言われて、そして、国と地方の税源配分も見直すべきだといったような方向を示していただいたと思います。

これは伏線としては、当時、諸井委員長も発言されたと思いますが、地方分権推進委員会の第二次勧告のときにやはり地方税の充実強化という議論があった。しかし、そのときの税の各論は、せっかく政府税調があるのだから、分権委員会がいろいろ踏み込むのはどうかといって御遠慮申し上げて、当時の加藤会長に諸井委員長が、政府税調でしっかり議論してくださいねとお願いされて第二次勧告が出たという経緯があります。昨年の中期答申でも、そういった経緯を踏まえて大変御熱心に議論をしていただいた。

いま、地方分権委員会で国と地方の税源配分の見直しと言っておりますのも、まさに昨年の政府税調の中期答申の流れを受けているわけであります。税収ニュートラルを基本にして、地方が自分の足で立つように地方税をもっと増やすべきだ、そのかわり補助金とか交付税の依存度合いを下げるべきだ、そのための従来以上に踏み込んだ各論をいろいろ議論されているということであります。

私が一番象徴的に思いますのは、分権委員会で第二次勧告をやっていたときは、むしろ補助金を減らして、そのかわり地方税と交付税を増やすという議論だったわけです。しかし、昨年、政府税調の中期答申ではっきりああいう方向を出していただいたので、分権委員会のほうも、いまはそうではなくて、地方税は増やす、そのかわり交付税は補助金と一緒にむしろ減らす方向だということにはっきり転換しているわけです。そういう意味では、第二次勧告からの流れで政府税調に課題をお願いして、その御検討結果を受けてまた分権委員会で議論された、こういうことだろうと理解しております。

小泉総理も、今後交付税の総額を減らすかのような新聞報道も出ておりますけれども、昨年の中期答申のときに御議論いただきましたように、いまの地方交付税制度というのは、国のナショナル・ミニマムを地方自治体の行政にどうやって保障していくかということでできております。先生方はよく御存じだと思いますが、毎年の国の予算編成、それとセットでつくられる地方財政計画、これは、各省から予算要求と併せていろいろな要求が出て、それを閣議で決めて、国会でも審議していただく仕組みになっています。例えば交付税総額を減らすということは、突き詰めていくと、どこまでを、日本全国で維持しなければいけない本当のナショナル・ミニマムだと考えるか、というところに行き着くわけです。

そうすると、一方で国が法令で、例えば教育なら40人学級にしろとか、福祉施設をつくると何人お医者さんを置く、看護婦さんを何人置く、こういったいろいろな基準を決めている、これをどう見直すのか。あるいは、最近議論になっているように、では公共事業を減らすのか。公共事業が国の予算で減りますと、補助金が減るだけではなくて、それに合わせて地方負担が減りますから、したがって交付税も減るという関係になっているわけです。そこのところを全部やっていかないと、地方財政計画で保障する国のナショナル・ミニマムであるレベルが下がらない。しかし、それを幸いにして下げることができれば交付税も減る、こういう関係になっているわけで、そこのところの議論は、いまの分権委員会ではそこまで掘り下げられないから、大きな方向をお示しになるようです。これは、河野さんも委員でいらっしゃるからよく御存じだと思います。

むしろ政府としては、分権委員会を昨年1年間延長したので、さらに延長というよりは、一応今回の地方分権委員会はこれで役割を終えて、地方に対する交付税問題、補助金問題、それから地方税の充実の問題を、例えば国のナショナル・ミニマムとしての法令による地方に対する仕事の義務づけとか、補助事業を通じての国の関与とか、こういうものをどう見直すか。それとの関係で地方財政計画の保障水準をどこまで見直せるか。それの結果、では交付税がどうなるか。むしろこういうことを検討する場を設けてはどうかという議論になっているやに聞いております。

ですから、幸いにして政府税調・中期答申の流れで物事が動いていると思います。政府税調でも、昨年は、個人住民税とか、地方消費税とか、固定資産税の充実、安定確保を取り上げていただきましたが、さらにそういうことを議論していただくのか。それから、さっき島田先生が言われました、地方の行革とか合併推進というのも分権委員会で論議されておりますし、新たに政府でつくるそういう場でも議論されると思います。政府税調でも関連でそういう議論を引き続きやっていただくのもいいでしょうし、それから、本間先生がおられますが、経済財政諮問会議でも骨太に大きな方向が示されるようですから、当然、そういうところでも位置づけがあるだろう、こんなふうに思っている次第であります。

石会長

あと、10数分しか時間は残っておりません。いまのところ、佐野さん、竹内さん、菊池さんから御発言の御要望がございますが、ほかにございますか。よろしゅうございますか。

それでは、佐野さんからどうぞ。

佐野委員

手短かに申し上げます。緊急経済対策に絡んで証券税制がまたしても浮上してきて、いろいろ措置も施されるということのようであります。政府税制調査会も、小委員会をつくってじっくり議論しようということのようでありますが、一つ、私が感じていることをこの際申し上げさせていただきます。

証券税制というのは、この10年間、税制の中心テーマの一つだったと思っているのですが、株が下がると必ず税制の話が出てくるという傾向は共通しているのではないかと思います。したがって、議論の意図するところが、証券市場の活性化策、売買の活性化策、株価の回復策というところにどうしても目が奪われてしまう。議論も、手段というか、対応的な議論になってきているような気がしてなりません。

つまり、個人株主の育成策ということになった場合、何のための個人株主育成策なのかということをちゃんとしておかなければいけない。それは株価を上げるためなのか、売りましょう買いましょうという売買を奨励するためなのか、それとも、金融資産の中で株式という資産価値の重みを増す。それは老後であったり、何か事件が起きた場合の備えとして金融資産の中で株式の厚みを増していく。それは短期なのか、長期なのかということにもつながると思うのですが、私はどちらかというと、個人金融資産の中で株主のウェイトを高めていく、それは長期的な視点で高めていく、そこで税制として何か支援策がないかという観点から考えるのがいいのではないかと思っております。単に売買奨励策、株価対策としてこの問題を議論すると、きわめて薄い話になってしまう。

そういう意味から言いますと、今日もそうですが、証券税制の議論のたびに譲渡所得課税の話ばかりに議論が集中してしまう。長期保有という場合、配当課税でも当然考えなければいけないテーマでありますが、証券税制の議論の中で配当課税というもののウェイトが小さ過ぎたのではないか。昔から、実在説だ、擬制説だということで、実はこちらのほうが税制の問題としては歴史も古いし、学問的にも興味のあるテーマだと思うのですが、どうも最近は影をひそめております。私は、配当課税というものを、譲渡益課税よりむしろ優先して議論するぐらいの姿勢があってもいいのではないかと。これは、小委員会のこれからの議論に期待する一つの注文であります。

それから、先ほどから出ています、河野さんが口火を切った税調のあり方の議論であります。一つは、ここ数年の政策決定、その中での税制の決まり方で気がつくのは、どうも決定のプロセスが不透明である。突発的であり、誰がどこで決めたのかわからないうちに法案になってしまって実施される、というようなことがあまりに多過ぎたと思うわけであります。小泉内閣という新しい政権ができたという機をとらえて、政策というのはあくまでも内閣が責任を持って国会に提出し、失敗したらその責めを負うと。失敗しても誰が責任をとるかわからないような決まり方は、民主主義社会においてあり得ない話であります。ましてや税制においてはあってはならないことであります。そういう中にあって、この政府税調がもっと機能を強化すべき時期に来ているというふうに思うわけであります。

例えば、国と地方の税源配分ということが、地方分権推進委員会という国会により設立された権威ある機関からあと1カ月ぐらいで出る。では、国と地方の税源配分というものは、政府税調として無関心、無関係でいられるのかというと、これは大変な問題であります。そういう意味から言いますと、スケジュールに沿ってやっていくというやり方がいいのかどうか。ここで石会長にお願いしたいことは、総会の招集権は会長にあるわけです。会長の独断でいつでも開けるわけですから、ぜひ総会の招集権というものを活用していただきたいと思います。

石会長

エールを贈っていただきまして、ありがとうございます。

それでは、竹内さん、どうぞ。

竹内委員

最初に、これからの税調の審議の方法とか、透明性みたいな話ですけれども、新しいメンバーがそろって新規にスタートした。また、今回政権も代わったということですけれども、この税調でまず優先的に議論すべきテーマが未だにはっきりしない。どうしても政権から投げられるボールに対して、やや対処的にというか、対応するという格好で議論する形が問題ではないかと思います。我々としては、今年度こういうことが優先度の高い問題だということで、まず委員の中でお諮りいただいて、こういうテーマをともかくやりましょうというような議論ができないかどうか。

議論の中でも、意見として出ているもの、単なる技術な質問、そういうものが一遍に出てきまして、時間のわりにまとまらないというか、ばらばらになってしまって審議が深まらないという問題があります。例えばテクニカルな問題であれば、あとでインターネットとか、あるいは、担当の方を決めておいて、その方にまず質問を行うような方向を考えるとか、そういう時間の有効な使い方をもう少しやっていただければと思います。

それから、来ないとその日のテーマがわからないという状況なんです。それも重要ですけれども、定常的テーマと、そのときアップデートされたテーマを、ある程度事前に、今回のテーマはこうですというようなことがメールで配信されるとか、そういうふうな時間の効率的な取り上げ方を……。せっかく外側はインターネットでやっているので、内側のほうも少し「e」を使える方法をやりたいと思います。資料も非常に多いですし、帰りが重いものですから、できればその辺の省力化も図りたいと思います。

あと、テクニカルな議論のテーマとして、税に対する信頼度が失われるというのは、税は依然として「取る」というスタンスでいるわけで、問題は、使い方とのバランスが非常に悪い。なぜかというと、予算が決まると決算にほとんど意味がないような制度をいまだにやっている。これが変えられるかどうか。つまり、決算は必ず違っているはずなんですね。公共事業でも、予算を立てて、コストダウンすれば実際安くなったという違いをきちっと公表できない。これをやると会計制度上問題だと、こういうふうな骨太の会計制度の問題を税としてもきちっと取り上げていただかないと、税の有効な使い方が議論できないと思います。いつも私は、漠然とですけれども、これは非常に引っかかっているわけです。

もう一つだけ、道路財源の問題です。これは一回きちっと時間をかけて議論したいと思いますが、現状において道路財源は取り過ぎである、あるシーリングを越えているということを伺ったんですね。これは森地教授から聞いたのですけれども、道路財源にはあるシーリングがあって、オーバーフローしているんだと。そのオーバーフローしている部分は、本来道路財源として使う必要のないものまで取っているという議論を聞いたことがあって、そういう取り過ぎの議論というのはいままでやられたことがなかったので、これはあとでも結構ですけれども、もし道路財源における取り過ぎの問題があれば、こういうふうな問題も議論していただきたいと思います。

石会長

いずれ、道路財源につきましてはもう少し議論を深めたいと思いますから、そのときにでも。

最後になりましたが、菊池さん、お待たせしました。手短かにお願いします。

菊池特別委員

金融・証券税制ですが、あれは株価とか何かの足を引っ張ることはできると思いますけれども、現場の税制を直して株価を上げようというのは無理な話でございます。1400兆円がどこにあるかという話ですが、いま、1400兆円の半分は、国債、地方債、社債などでかき集めてしまっていまして、ニューマネーのすべては国債に行っているという状況ですので、ニューマネーが株に行くわけがない。したがって、増税して国債を減らすというのが株価対策ではないかと僕は思っています。そちらのほうで寄与したほうが税調としては寄与できるのではないかと。

もう一つ、株で儲けた100万円は気軽にまけてしまうというような勝手なことをやっていますと、課税最低限を下げなければいけないと思うのですが、貧乏人のほうの35万円の控除は100万円との関係でどうなるのだという話も出てくると思います。関係ないといえば関係ないですが、株で儲けたほうは100万円で少額である、こっちのほうの35万円は巨額であるという関係になってしまう。

あちこちで気軽な改革をやっていると、そういうことがたくさん起きてきます。そういう場合は、一々総会などを開いてどうするこうするとやっている問題でもありませんし、石会長は、当然、とんでもないと、こういうのはわかっていらっしゃるわけですから、こことは別に、外に対して記者会見でも勝手にやってしまっていいのではないか。権限というより、そういう義務を会長に与えたほうがいいのではないかなと思います。

猪瀬委員

すみません、15秒だけ。さっきの公益法人の収益事業の22%、普通法人は30%ですけれども、あれを22%にするリーズナブルな根拠はないんですね。これはやはり30%にしたほうがいいということと、それから、民法34条の改正を石会長がしゃべってもらいたいなと。一応法務省を回るとしても、本当は内閣の強力な権限で言わないといけないと思うのです、根本の問題ですから。それから、税金が4000億円ぐらい民法34条法人(社団、財団)に入っています。これをもう一回調査してもらいたいなと思っています。

石会長

4時を若干上回りましたけれども、今日はさまざまな問題を提起いただいたと思います。税調の機能強化、あるいは、会長はもう少ししっかりせいというエールがだいぶあったと思います。そういう点も踏まえまして、今後の議題設定、あるいは、竹内さんがおっしゃったように、中でのインターネットの活用なんていうのもおそらくあり得るでしょう。毎回、税制に関する何とかの審議という題が1行入っているだけで招集が来ておりますので、おっしゃるとおり、何のために我々が来ているか、来たときにはじめて資料を見て、きょうのテーマはこれかなんてわかっているようでは困る面もあろうと思います。私はいろいろ言っておるのですが、やはり古き体制を誇っている税調でありますから、なかなか構造改革は難しいんですよ。それは皆さんの内在的な御意見によって変えていきたいと思いますので、積極的にどんどんお出しいただきたい。それを事務局につないで、これからもっと活性化した議論をしたいと思います。

それから、小委員会は立ち上がります。小委員会についてもいろいろな御注文があったし、テーマの設定もあったと思いますから、これは奥野さんにバトンタッチいたしまして、ぜひ議論を深めていただきたいと思います。

後のことですが、その前に一つ重要なことをお伝えしなければいけません。かねてより数人の委員の方から、他の審議会との協力関係、あるいは、合同の審議をしてはという御提案がございました。そこで、今回、財政制度審議会の今井会長と個人的な接触があったことを利用いたしまして、税調と財制審が合同で会議を持ち、お互いに財政構造改革をめぐって、歳出と歳入、両方から攻めなければいけないわけでありますから、意見を交換したいということで意見交換の場を設定しつつあります。まだ正式に、どのような日程でどのくらいということまで決めていませんが、全員というわけにいきませんので、最初はインフォーマルな格好で双方から5、6人ずつ、いうなれば御関係の方にお集まりいただいて、意見を交換し、その成果を見て、今後、するかしないかも含め考えてみたいと考えております。それは御報告でございます。

それから、次回等々はまだ決めておりませんが、今日、いろいろな御議論が出ました。例えば道路特会、道路特定財源の話など、我々としてもやはりきちんとした議論をして、理論的な構築もしてということは皆さんの念頭におありと思います。金融小委員会以外のテーマについてはおそらく総会マターの議題になろうと思いますので、それはなるべく早く機会を見つけて、佐野さんは、教授会の招集令みたいに会長に招集権があると言ってくれましたので、やりやすくなってきました。お忙しいとは思いますが、そういう形でまた会議を招集いたしたいと思いますので、ぜひ御協力いただきたいと思います。

それでは、あとは記者会見で今日のことを少し総括したいと思います。

今日は、長時間、どうもありがとうございました。

〔閉会〕

(注)

本議事録は毎回の総会後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。

内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。