第12回総会 議事録
平成13年4月17日開催
〇石会長
それでは、時間になりました。おはようございます。税調は4ヵ月ぶりになると思いますが、再開いたしたいと思います。まだおみえでない委員の方がいらっしゃいますけど、追っ付けおみえになると思います。いつもの部屋でなくて少し狭いので、ちょっと窮屈な感じでありますけれども、まあ親近感が増していいかもしれません。
そこで、今日は、あそこにカメラがございますが、インターネットでこの審議状況を中継するという最初の日でございます。今後も支障がない限り公開するという形で総会を開きたいと考えております。画像は、その後のアクセスもあろうと思いますので、1ヵ月ぐらい使えるようにしようという形になると聞いております。
それから、たしか入り口にファイルがあると思いますけど、インターネットとメールで御意見を伺うということをこの税調はやっておりまして、昨年の10月から本年3月までの半年間に集まりました約300のメール、メッセージがあそこにございますので、お時間がありましたら、ぜひごらんいただきたいと考えております。
今日は、そういうわけで久しぶりに開いたということもございまして、議題はいくつかかなり重要な議題が山積しております。4つほど用意いたしました。最初が平成13年度税制改正に関します法律の国会の審議につきまして、事務局から説明を受けます。第2が緊急経済対策。この税制関連部分について、やはり事務局から御説明を受けます。3番目があわせて本間委員のほうから、経済財政諮問会議の現状を簡単にお話しいただきたいと思います。最後に、その3つを受けまして自由に御議論いただきたいという段取りで、昼までの時間を用意しております。
では、審議に入る前に、自治省のほうで人事の異動がございましたので、石井税務局長のほうから御紹介ください。
〇石井自治税務局長
自治税務局長の石井でございます。どうも先生方、お久しぶりでございます。
それでは、本年に入りまして、1月6日に旧自治省、郵政省、総務庁一緒になりまして総務省ということになりましたが、これに伴います人事異動をちょっと御紹介申し上げます。
お世話になりました前の税務担当の審議官の板倉敏和が総務省の自治行政局公務員部長になりまして、後任に田村政志が税務担当審議官になりましたので、よろしくお願いします。前は国土庁の審議官をやっておりました。
それから、この4月1日付で市町村税課長でありました石川義憲が自治体国際化協会のほうにかわりまして、後任が株丹達也でございます。以前は北海道の総務部長をやっておりました。
それから、税務企画官の飯泉嘉門が異動いたしまして、徳島県の商工労働部長にまいりまして、後任が宮地毅でございます。前は高知市の助役をやっておりました。前任者同様よろしくお願いを申し上げます。
〇石会長
ありがとうございました。
それでは、さっそく本日の議題に入ります。最初に国会におきます主要検討事項の御説明を事務局から伺うことにしたいと思います。尾原さんと石井さん、順次お願いいたします。
〇尾原主税局長
尾原でございます。よろしくお願いいたします。
昨年末、委員の皆さまには、13年度税制改正について精力的に御審議いただきまして、年度答申を取りまとめていただいたわけでございます。その後の状況について御報告申し上げたいと思います。
まず、本年に入りまして1月16日に、お手許の資料でもお配りしてございますが、13年度の税制改正の要綱が閣議決定されまして、2月6日に税制改正関連の2法案、つまり法人税法等の一部を改正する法律案と、租税特別措置法等の一部を改正する法律案が閣議決定され、国会に提出されたわけでございます。この2法案でございますが、国会における審議を経て、3月28日に可決成立いたしました。3月30日に公布、3月31日から施行されているところでございます。
なお、税理士法の一部を改正する法律案でございますが、これは参議院先議の扱いとされまして、今月の11日に参議院において可決され、現在、衆議院において審議がなされているわけでございます。
本日の御審議にも若干関連してまいりますので、この税制改正2法案の概要を簡単に眺めていただきたいわけでございます。皆さんのお手許の1枚紙で、「総12-1」という『平成13年度税制改正関連法のポイント』というのがお手許にあろうかと思います。なお、あわせまして『Message』という形で税制改正の概要の解説したものもお手許にございます。
法人税法等の一部を改正する法律、これは企業組織再編成の税制の整備でございました。租税特別措置法等の一部を改正する法律でございますが、新住宅ローン減税制度の創設、あるいは中小企業の投資促進税制の延長というのがございますが、金融関係税制の改正におきましては、証券税制でございます。御承知のように、11年度税制改正で有価証券取引税の廃止がなされまして、株式譲渡益については、申告分離課税へ一本化するという法改正が行われたわけでございますが、最近の経済状況あるいは株式市場の動向を考慮いたしまして、申告分離課税への一本化については、2年間延期するという措置が講じられているわけでございます。
それから、一番下のほうに土地税制というのが書いてございますが、御案内のように、土地税制、譲渡所得税について申し上げますと、バブル期以前よりも低い負担水準となっておりますが、これらの土地の譲渡所得課税の特例制度につきまして、3年延長されるというような改正がなされたわけでございます。
それで、いまの税制改正の法案に関連いたしまして、国会においてどのような質疑がなされたかということについて、次に御説明申し上げたいと思います。お手許に『国会の審議過程における主要討議事項』「総12-4」という、国税関係でございますがございます。これに即して御説明を申し上げたいと思います。
まず、危機的な状況にある財政について多くの質疑がなされてございます。1番目に、「財政再建・財政構造改革に対する取組み如何。財政構造改革に早期に取り組むべきではないか。」などの質問がなされまして、森総理大臣からは、「わが国財政は厳しい状況にあり、財政構造改革については、わが国経済を自律的回復軌道に乗せつつ、その実現に向けて議論を進めてまいりたい。その際には新世紀におけるわが国経済社会のあり方を展望し、望ましい税制の構築や社会保障制度改革、中央と地方との関係まで幅広く視野に入れてまいる考えである。今般の中央省庁再編において内閣府に経済財政諮問会議を設置した。景気を着実な自律的回復軌道に乗せるための経済財政運営とともに、財政を含むわが国の経済社会全体の構造改革に向けた諸課題について、具体的な政策を主導するとの決意を持って、実質的かつ包括的な検討を行い、国民が安心と希望の持てる処方箋を示していく方針である」との答弁がなされております。
宮澤財務大臣からでございますが、「財政構造改革の検討の際には、税制、社会保障、中央・地方の関係など、さまざまな問題を勘案する必要があり、マクロモデルをつくり、このような要素をすべて含めたところでシミュレーションをする必要がある。このシミュレーションは、おそらく国民にとって非常に厳しい給付と負担の水準を示すことになるが、この点についての国民的な選択が必要となる。この選択は今後10年あるいは15年のわが国経済社会のあり方を決めることにほかならない」旨の答弁がなされております。
また、この財政再建の部分で、「抜本的な税制改革の方向性及び時期についての見解如何」と質問がなされておりまして、総理大臣からは、「税制についてはこれまでも全般にわたりその見直しを進めてきたが、わが国経済社会は少子・高齢化や国際化など、構造変化等がさらに進展している。税制はこれらの変化などに適切に対応していく必要があり、公的サービスの財源であるという税の基本的性格を踏まえながら、望ましい税制の構築に向けた議論が近い将来必要になってくると考える」との答弁がなされておりまして、財務大臣からは、「公的サービスの財源という税の機能を踏まえれば、財政構造改革に取り組む際には、税制の抜本改革が必要となる。その際にはまず公的サービスの水準や国民の負担のあり方についての国民的な選択が必要となる。その上で公的サービスの財源である租税を国民皆が広く分かち合うという観点から、所得課税、消費課税、資産課税、それぞれの機能を生かしながら、21世紀にふさわしい税体系を構築する必要があると考えている。現時点で税制の抜本改革の具体的な中身を申し上げることは困難であるが、現在の所得税の課税最低限は高すぎるといった問題意識も持っており、聖域をつくらずに取り組む必要があると考えている」旨の答弁がなされております。
(2)の法人課税関係でございますが、特に企業組織再編成に係る税制につきまして、8割以上の従業員の承継を適格組織再編成の要件としているわけですが、「これは人員削減を税制面で支援することになるのではないか、あるいは企業組織再編成に係る税制措置は大企業優遇ではないか」と質問がなされまして、財務大臣から、「今回の改正は柔軟な企業組織再編成を可能とするための商法改正が4月から施行されるのに併せ、企業組織再編成全体の税制を整備するものであり、一部の企業のみを優遇するものではない。従業員の承継についての要件は、通常の資産の売買との区別のための基準であり、企業にリストラの手段を与えるという性格のものではない。むしろ国際化が進む中、企業が円滑に組織再編成を行うことで、雇用の安定と改善に寄与するものと考えている」との答弁がなされております。
NPO法人、今回、寄附金の優遇税制が創設されることになっておりますが、これにつきましては、「認定NPO法人の認定基準の考え方如何」、「この基準では認定されるNPO法人が限定されるのではないか」との質問をはじめ、基準に至るまで種々の議論がなされました。財務大臣からは、「NPO法人については、公の関与からなるべく自由を確保するという制度になっているが、寄附金の優遇措置は公的サービスの財源となる租税を減免するものであり、優遇措置の対象となるNPO法人はそれにふさわしい公益性を有するものである必要がある。こうした点を踏まえ、できるだけ明確で客観的な基準を設けており、今回の措置ができるだけ多くのNPO法人に活用されることを期待している。今後、今回の基準が極端に厳しいものとなっているかどうかを含め、実施状況を見守ってまいりたい」旨の答弁がなされております。
それから、主要討議事項の次のページをあけていただきまして、資産課税関係でございますが、「相続税の最高税率を引き下げるべきではないか」というような質問もございました。財務大臣からは、「11年度改正で個人所得税の最高税率を引き下げた際に、相続税の最高税率も引き下げるべきだとの議論があったが、適用を受ける者が少ない最高税率だけを引き下げることについての異論もある。この問題は相続税の全体を見直す際に取り組むべき課題である」との答弁がなされております。
それから、金融関係税制でございますが、「株式譲渡益課税について、予定どおり申告分離課税へ一本化すべきではなかったか」との質問がなされまして、財務大臣から、「緩やかな改善が続いているものの、なお厳しい状況を脱していない現下の経済情勢や最近の株式市場の状況を踏まえれば、1つの現実の方策としてやむを得ないもの」との答弁がなされております。
また、「個人投資家の株式市場への参加を促進するため、株式の譲渡損失の繰越控除等の措置を講ずるべきではないか」等々の質問もなされました。財務大臣から、「わが国の金融資産が銀行預金へ偏っていることや、企業の資金調達が間接金融に偏っていることは大きな問題であり、そういう大局的な視点から投資を罪悪視する社会的風潮や、これを背景とした税制を含めたさまざまな制度を議論することが重要である。税制については、税制調査会でさまざまな議論があるところ」との答弁がなされております。
以上、主要なものについて、かいつまんで御報告申し上げました。
〇石会長
ありがとうございました。
では、地方税関係、石井さんお願いします。
〇石井自治税務局長
国税関係に引き続きまして地方税に関する事項を御説明申し上げます。
まず、お手許に、地方税制改正につきましては、『平成13年度地方税制改正の概要』という4枚つづりのものがあろうかと思いますので、適宜ごらんいただければと思います。
それから、この地方税制関係につきましては、本年2月13日に地方税法等の一部を改正する法律案を閣議決定いたしまして、同日付で国会に提出いたしました。衆議院におきましては、総務委員会での御審議を経まして、3月2日の本会議で原案どおり可決されておりまして、参議院におきましても、総務委員会での御議論を経まして、3月28日の本会議で原案どおり可決成立し、3月30日に公布されておるわけでございます。
続きまして、いま尾原局長から御説明がありました主要審議状況の3ページから4ページにかけまして、地方税制関係の討議事項がございますので、これに即して御説明を申し上げます。
まず、議論としては、衆参のそれぞれ総務委員会、あるいは地方行政・警察委員会、それから衆参の本会議、予算委員会あるいは商工委員会等、関係委員会でも出た議論をまとめたものでございます。
まず、全体的に申しますと、与野党を含めまして、地方分権推進の観点から、地方税源を充実確保すべきだというスタンスでの御質疑がほとんどであったかと思います。あわせまして、法定外普通税ですとか目的税、外形標準課税などについての質疑が多く出されましたほか、自動車税、個人住民税、固定資産税などにつきましても質疑があったわけでございます。
まず、3ページの「地方税総論」の(1)の地方税源の充実確保についてでございますけれども、最初の、国と地方のあるべき税財源配分についての考え方という質疑に対しましては、これはいくつかございましたが、総務大臣から、「税源は所得と消費と資産であり、これを国税と地方税にどう割り振ったらいいのか、国民にわかりやすい大きな議論をしていかなければならない。地域的な偏在性が少なく、税収の安定性を備えた地方税体系の確立が必要であり、その意味で個人住民税、地方消費税、固定資産税を充実する。それから法人事業税の外形標準化を図ることが必要と考えている。政府税調や党税調もあるので、そこでの御審議もいただきながら、しっかりした地方税制を構築していきたい」という答弁を申し上げたところであります。
それから、その次の国と地方の税源配分の見直し及び抜本的な税源移譲についての考え方、あるいは税財源移譲の時期についての考え方という質疑に対しましては、総務大臣から、「今後、わが国経済を自律的回復軌道に乗せつつ、国・地方を通ずる財政構造改革の議論の一環として、税源移譲など国・地方の税源配分のあり方について、幅広く検討を行ってまいりたい」と答弁したところであります。
それから、課税自主権の問題についてでございますが、法定外税に関する協議に臨む態度、及び法定外税に対する考え方如何という御質疑に対しましては、総務大臣から、「法定外税は地方団体の課税の選択幅を広げるなどの意義があり、各地方団体において公平・中立などの税の基本原則に照らし、十分検討した上で地域の事情を踏まえ活用されることを期待している。現在、各地方団体において、法定外税に関するさまざまな検討がなされていると聞いているが、今後、個別に協議や相談があれば、法律に定める要件に従い、適切に対応してまいる所存である」と答弁したところでございます。
それから、法人事業税についてでございますが、外形標準課税については、早急に導入すべきではないかといったような質疑が多くございましたが、総務大臣から、「地方の行政サービスを法人が受けているのであるから、黒字、赤字にかかわりなく、広く薄く公平に外形標準課税で御負担いただき、結果として税収の安定化が図られるのがあるべき姿と考えている。今後は、課税団体である都道府県と連携しながら、経済界をはじめ各方面と具体的な議論を深め、十分な理解を求めながら全力を挙げて来年度税制改正で実現を目指す所存」と答弁したところであります。
それから、「旧自治省の案は実質的には賃金課税であり、特に中小企業における雇用削減などの懸念があるが、どう考えているか」という質疑がございましたが、これについても総務大臣から、「当時の自治省案では、人件費の比率の高い法人については、課税ベースを割り落とす。特に中小企業ほどより大きく割り落とす工夫をしている。したがって、世間で言われるほど雇用に大きな影響を与えない案になっており、こういう点について誤解が生じないよう、中小企業の方に特に丁寧に説明する必要があり、全国の都道府県知事にも御協力を賜ったらどうかと考えている」と答弁したところであります。
次に、自動車税などグリーン化税制、また関連しまして、地方環境関連税制についての質疑が相次ぎましたけれども、「自動車税のグリーン化の政策的効果はどうか」ですとか、「車齢が古いから重課するという措置はとるべきではないのではないか」といったような質疑が多くございましたが、これに対しては、「窒素酸化物などによる地域環境汚染の社会問題化、環境汚染に係る自動車の寄与度の大きさにかんがみ、国民の環境に対する意識を高める効果にも期待してグリーン化税制を盛り込んだものである。極めて厳しい地方財政事情に配慮して、全体として税収中立を基本とし、重課の対象とする基準については、新車として発売された時点における排出ガス性能が、現在のガソリン車の排出ガス規制値の2倍以上悪い車を対象とすることを基本的な考え方としながら、物を大切にする観点、早期廃車による環境負荷等を総合的に勘案して設定したもの」というふうに答弁をいたしております。
また、これに関連しまして、「地域環境対策はもとより、地球温暖化対策に新たな仕組みで対応する場合、特に税制面で対応する場合には、地方税としても積極的に対応すべきではないか」といった御質疑もございましたが、環境関連税制につきましては、政府税調の中期答申の記述を引用するとともに、「環境関連税制には地域環境問題と地球環境問題への対応が考えられるが、前者の廃棄物や下水処理といった住民に身近な環境問題については、地方税制としての環境関連税制になじむ。また後者の地球環境問題についても、地方団体において植林による緑化面積の拡大、公共交通機関の利用促進等の交通政策等、地球温暖化対策に寄与する施策を行っていること、あるいは消費・流通段階での課税が用途に応じた課税措置を講じやすく、消費者の意識を高める。CO2削減に向けたインセンティブ効果が大きくなるといったような観点もあるので、地方税制として構築する方策も考えられる。今後、諸般の状況を勘案して、そのことも含めて検討してまいる所存」と答弁したところでございます。
それから、おめくりいただきまして個人住民税、最近も議論になっておりますが、株式譲渡益課税についても議論がございましたが、「特にすでに決定されていた株式等譲渡益課税の申告分離課税の一本化を予定どおり行うべきではなかったのか」という質疑に対しましては、「源泉分離課税を選択すると地方税が非課税となるため、課税の適正化の観点から平成13年4月からの申告分離課税への一本化が法定されていたところであるが、13年度税制改正の議論において、現下の経済動向を勘案した結果、一本化を2年間に限って延期することとしたものである。15年4月以降の株式譲渡益課税のあり方については、国・地方を通ずる公平な課税の観点から、その適正化が図られるよう努力してまいりたい」と答弁したところでございます。
次に、固定資産税につきましても、「今後のあり方をどう考えているか」といったような御質疑がありましたが、政務官から、「固定資産税は税収の普遍性や税収の安定性に富み、市町村税としてふさわしい基幹税目であり、今後ともその安定確保に努めることが重要。また、現在生じている土地に係る税負担のばらつきを是正していく必要があり、税負担の水準の均衡化、適正化の措置をさらに推進していくことが今後の重要な課題」という答弁をいたしております。
以上のほかにも地方消費税の充実ですとか、ゴルフ場利用税の存続、NPO税制のあり方、軽油引取税の脱税防止対策などにつきましても討議がなされたところでございます。
以上で御説明を終わらせていただきます。
〇石会長
ありがとうございました。いまの両局長の御説明に御質問もあろうかと思いますが、あとでまとめて皆さんから質問を受けたいと思います。
それでは、続いて第2の議題、緊急経済対策の税制関連部門を尾原さんのほうから御説明いただけますか。
〇尾原主税局長
お手許に「総12-5」『緊急経済対策』というのがございます。これが4月6日に取りまとめられておりますが、簡単に経緯のほうから申し上げますと、今回の緊急経済対策でございますが、3月の9日に与党の3党緊急経済対策がまとめられました。これを受けまして、3月15日に政府与党の緊急経済対策本部が設置されまして、その後3月27日でございますが、総理から政府の対策を取りまとめるようにと指示がなされて取りまとめられたものでございます。
全容を御紹介する時間がございませんので、目次をちょっとごらんいただきたいわけでございますが、「基本的考え方」、第2章が「具体的施策」となっておりまして、1番目に「金融再生と産業再生」、2に「証券市場の構造改革」、3に「都市再生、土地の流動化」、それから4に「雇用の創出とセーフティーネット」となっておりまして、5に「税制」という形で取りまとめられております。
11ページ目の税制の部分を見ていただきたいと思います。税制でございますが、「現下の経済情勢等を踏まえ、個人投資家の市場参加の促進等直接金融市場の活性化、土地の流動化の促進、経済構造改革の推進に資する等の観点から、証券・土地関連の税制に係る真に有効かつ適切な措置について、課税の公平等に留意しつつ、早急に検討を行い、結論を得る。」ということになっております。したがいまして、この対策に基づいて当面措置すべき税制につきましては、現在検討中でございますし、また、このような経緯でできたこともございまして、与党3党の税制調査会においても審議が始まったところでございます。したがいまして、現時点で、今日でございますが、その中身について具体的に申し上げる段階にはないわけでございます。ただ、例えばこの対策に盛り込まれました金庫株の解禁、あるいは現物拠出型の上場投信、ETFと言うようでございますが、それにつきましては、それぞれ関係する制度の整備に合わせて税制上の対応を検討する必要があるだろうと。
また、銀行の保有株式取得機構の問題がございますが、その仕組みが具体化されてまいりますれば、その段階で税制上の対応を検討することになるだろうということを申し上げておきたいと思います。
〇石会長
ありがとうございました。
いまの尾原さんの説明にございますように、株式市場の問題が緊急経済対策の主役となっておりますが、次に第3の議題といたしまして、これは「総12-6」という資料が出ております。本間さんがお書きになりました『株式市場の現状と改革の方策について』、これにつきまして経済財政諮問会議のほうの委員であります本間さんのほうから、これと、それから経済財政諮問会議の最近の状況をごく簡単に御説明いただけますか。
〇本間委員
どうもありがとうございます。経済財政諮問会議の活動及び税制に関する問題につきまして、少しお時間をいただきまして説明をさせていただきたいと思います。
1月6日に1府12省庁体制になりまして、経済財政諮問会議がスタートをして、もはや4ヵ月以上たっておるわけでありますけれども、月に2回のペースで公式の会議を開き、その時々の経済状況並びに中長期的な視点から、経済・財政に関する問題を総合的に議論し、これの改革についての方途を逐次まとめている段階にございます。
経済財政諮問会議は、実は経済と財政、どのように総合的かつ時系列的に整合的な仕組みをつくっていくかという大きな命題を抱えておりまして、この問題につきましては、先ほどの尾原主税局長のお話にもございましたとおり、財務大臣がマクロ経済との関係というものを非常に強調され、マクロモデルを使い、かつ制度をそこに織り込むという形で経済と財政の両立に関するフレームワークというものを準備し、その中でシミュレーション的な形で国民に選択を問う、こういうような考え方の中でこの経済と財政の総合的な問題に対して、経済財政諮問会議、これに一番注力をいたしておるわけでありますが、この中長期の問題と短期の景気の問題、これはマクロのモデルを準備するという時間的ななさもございまして、いまそれについては準備をしながら、その論点を整理をしているということでございます。
その論点を我々は4つ実は議論をいたしておりまして、1つはこれは社会保障制度の問題であります。社会保障制度の問題は、御承知のとおり、いまの制度を維持いたしますと、マクロの経済との関係でいいますと、持続可能ではないということがはっきりとあらわれてまいります。この点で国民に対して、歳出・歳入の両面から大きな改革を求めざるを得ない状況の中で、社会保障制度に関して、所得保障型なのか、実物給付型なのかという年金・医療・介護、この全体のバランスをどうつくるかという問題と、それぞれの制度における問題点をきちんと整理した上で、効率的で、かつ国民が安心できる制度というものを、それぞれの制度において構築をするということをいま検討をし、第1回目の経済財政諮問会議における会議の最初に、社会保障制度に関するある種の考え方、これはもうしばらくいたしますと、6月から7月にかけて、骨太な方針というものを経済財政諮問会議でまとめる予定にしておりまして、社会保障制度に関する第1番目のプレゼンテーションがいま終わった段階であるということであります。これはまたセカンドラウンドをするということでございまして、これは関連の社会保障制度審議会、あるいは財政制度等審議会と調整をしながら、それぞれの御意見を賜りながら、最終的に経済財政諮問会議の中で提案をさせていただきたいというのが社会保障制度に関する考え方であります。
第2番目の項目、これは公共投資の問題でございます。公共投資の問題は、経済の景気に対して、主要な政策手段としてこの10年間使われてきたわけでありますが、この効果についてかなり疑問視される部分がございますし、社会資本の整備のありようとしても、質的にもいかがなものかという御批判が非常に強くあるということでございまして、景気調整及び社会資本整備のありようとして、これまた抜本的にこの公共投資の問題について整理をし、改革の方向性というものをはっきりと示しながら、重点的に公共投資の配分というものをプライオリティ付けしていくという考え方の中で、いま論点を整理しているのが現実であります。
明日、この公共投資に関しましては、実は第1回目のプレゼンテーションをするという形になっておりまして、問題点の整理及び今後の改革の方向性について、まず議論を経済財政諮問会議の中でやりたいと。これは当然のことながら、公共投資の問題につきまして、重点化をしていくということになりますと、財政制度等審議会における審議も併用しながら並行的に進めていくということが必要になってまいります。我々、実は経済財政諮問会議のメンバーが財政制度等審議会の会長の今井委員に実はお会いいたしまして、御意見を伺うということをもうすでに第1回目を持っておりますし、今後とも財政制度等審議会との連携を図りながら、抜本的な形で公共投資の見直しをして、重点的な形で、目に見える形で、国民に公共投資の中身が改善されたというようなメッセージを出したいというぐあいに考えております。これは、したがいまして、まず明日第1回目をやるということでございます。
それから、第3番目の項目、これは国と地方の財政関係という問題について、いま議論を整理をしているというのが現状でございまして、これは補助金の問題もございます。交付税の問題もございます。さらには地方税のいわば改革の問題、自主財源の培養の問題等、さまざまな論点があるわけでありますが、この点につきましても、現在の国と地方の制度を前提にする限り、やはり持続可能性という点でいえば、大きな実は疑問が呈される状況でございますので、抜本的な形での議論の整理というものを十分にしながら、これまた地方財政制度の委員会、審議会等とも連携を図りながら、またこの場の中で織り込んでまいりたいというぐあいに考えているわけであります。
第4番目の問題が実は今日の問題に非常に関連をするわけでありますが、もう1つ、構造改革、あるいは経済の活性化というプロジェクトというものをテーマとして挙げております。これは単に受け身の行財政の改革だけではなく、潜在成長率を高めていくということ、そのためには構造改革を実現しなければならない。構造改革を進めるに当たっては、失業率等の問題が顕在化をするという可能性もございます。これに対してどのように事後的な対応をとっていくかという就業構造の問題も併せてこの活性化のプロジェクトの中で議論をしていくということで、いま準備的な作業を進めておるわけでありますが、これの出発点における問題といたしましては、やはり不良債権の問題、株式市場の低迷の問題、これが経済の再スタートを切る場合に桎梏となって、なかなかここから脱け出し得ない困難な状況というものがずっと続いており、これがこの10年間、「失われた10年」のいわば原因という形で我々に重くのしかかっておるわけでありますが、この問題についてどのように経済財政諮問会議が議論をしていくかということで、非常に頭を悩ましながら、不良債権の問題におきましても、本会議においても議論をいたしておりますし、株式市場の活性化の問題についても議論をしているというのが現実であります。
この株式市場の活性化の問題は、お手許に私の名前で『株式市場の現状と改革の方策について』と、こういうタイトルで「総12-6」でまとめて配付をしていただいておりますが、この問題は実は与党のほうが非常に積極的に議論を展開されて、それに対応して問題をどのように考えたらいいのかということでまとめたのがこのペーパーでございます。我々といたしましては、株価対策的なイメージが先行し、PKO的な発想の中で議論が世の中に非常に華々しく出たということに関しましては、非常に危惧をいたしておりまして、株式市場の活性化の問題はあくまでも日本経済の構造改革の観点から、市場としてのきちんとしたワーカビリティを確保するための手段として理解すべきだろうと。その意味で、理論的にこれを整理をしながら、今後の改革の方向性というものをメッセージとして伝える必要があるであろうということで、このペーパーはまとめられております。
お手許の概要を見ていただきますと、1ページから4ページまでまとめております。長くなりますので、私の言葉で少し説明をさせていただきたいと思っております。
我々、株式市場を考えますときに、PKO的な発想ではないということを強調しておりますのは、株式市場における一般的な特徴及び日本的な問題点、この2つの観点でどのように株式市場というものを合理化、活性化をしていくかという問題意識からスタートしたわけですが、御承知のとおり、株式市場というのは、実物経済における投資と金融面におけるいわば証券等との関係における裁定機能を持つわけでありまして、実質経済の活性化にとって、株式市場というものが資源配分上の機能を持つということは非常に重要なポイントになるわけでありますが、その際、株式市場というものがリスクの市場が完璧ではないということ、将来市場が欠如しているという2つの理由の中で、株式市場それ自身が実は完璧に作用しても、十全ではないという性格を持っているというのが特徴でございまして、この意味において、リスクに対応するための勇気ある形での株式市場というものが機能するかどうか、あるいは将来市場の欠如というものをカバーできるような形で機能できるかどうか、こういうことが非常に大きなポイントになってまいります。これを十分性の要件というぐあいに整理することができようかと思います。
つまり、リスクや将来に対して十分実物市場に対して資金が供給できるようなメカニズムが保証されているかどうかということ。第2番目は、生産性の高い分野の株価が高くなり、そこに資金が誘導されるという意味で、効率性の要件が担保されているかどうかという問題。それから、第3番目は、リスクや将来性の市場が存在しないということが予想形成を非常に左右するということでございまして、この予想形成を通じて資本市場、株式市場というものが不安定化を生みやすい構図になっている。このことをいわば緩和するための安定性ある形での市場というものが整備されているかということが3つ目のポイントとして挙げられる。
この3つの要件というものを担保するために、日本の株式市場というものをどのように整備をしていくかということ、これは1つはマーケットそれ自体の問題、それからプレーヤーの問題、さらには税制を含む制度の問題、この3つの問題が非常に重要な検討課題になるということであります。
この3つの検討課題を考えますときに、日本的な特殊な状況というものが非常に我々の目的にとってみると障害になってくるというのが現実であります。これは御承知のとおり、日本の株式市場というものが非常にマイナーな位置づけが与えられている。つまりその意味は3つございまして、1つは、政府と民間という観点でいいますと、政府が非常に大きな国債・地方債を発行しておりますので、ウエイトを占めているという特徴がございます。第2番目は、そのこととも関連するわけでありますが、公的金融と民間金融とのバランスが、諸外国に比べて公的金融のウエイトが高いという問題がございます。それから、3番目は、民間金融の中における特徴としては、これは直接金融のウエイトが低く、間接金融のウエイトが非常に高い。こういう特徴を持っております。この3つの特徴が実は株式市場が十分性の観点、あるいは効率性の観点、さらには安定性の観点から、非常に大きな問題を抱えたことを、いま我々自身が苦労をしているということであります。
最後の民間金融の特徴として付け加えますと、これは間接金融が非常にウエイトが高いということもございまして、株式市場が直接的なパイプ、家計部門から株式市場に入るというチャンネルとともに、いわば間接金融の主体であります金融機関が大きな株を保有し、そのことが中間的な仲買機関、仲介機関としての金融が株式市場において大きなウエイトを占める。こういう問題であります。この問題が実は株式持合制度という形で市場に大きく効率的な資源配分、あるいは不安定な価格形成という点において、非常に我々に問題をもたらしているなということであります。
効率的な面ということは、まさに金融機関というものが非常に同質的な行動をとるということが多様なリスクをとれないような状況で、非常に楽観的なときには膨れ上がり、非常に悲観的なときには収縮をするという一様なビヘイビアというものをとるということが、バブルを生み出し、現在は貸し渋り等と言われるような状況にもつながるような形で、資金の有効な供給というものができない状況を生み出しやすい構図になっている。
しかも、株式市場におきまして、持合の部分のところが固定的な部分で根雪になっておりますので、上の表層的な部分のところが効果的な価格形成としてはうまく機能しないという部分がございます。例えば、株式市場の中におきます製造業のウエイトというのは、この10年間上がっているわけでありますが、資金の間接金融におけるウエイトというのは下がるというような形になっておりまして、資金市場というもののいわば効率的な資金の配分という観点でいえば、必ずしもそれが一致していない状況を生み出している。
この効率の問題と、もう1つは、株式のウエイトが自己資本に比べて金融機関の中で極めて大きいという問題がございます。この自己資本の構成の中における持合の比率が大きいということは、今般のようなBIS規制等の状況の中で、あるいは株価が変動するような状況の中で、金融機関の経営というものが株価によって極めて大きく影響を受けるということが発生いたしておりまして、この点において安定性という観点でいえば、非常にボラタイルする原因となって機能している。
こういう状況を考えますと、我々が今後、日本経済の構造改革を進めてまいりますときには、現在の過去の清算をどのような形でつけながら資本市場が効果的で安定的な均衡に導けるかどうかということが、これが株式持合機構等の合理化をする上で非常に大きなポイントになったということでございます。つまり初期値の状況が非常に重い状況の中で放ったらかしにしておきますと、期待が非常に悲観的になり、将来に向かっての投資というものが十全に担保されないような状況になりますと、悪い均衡、つまり非常に低位の状況というものが出現をしてくる危険性がございまして、この悪い状況を克服するために、初期の状況というものを政策的につけかえて、よい均衡に動かすということが持合解消機構等における1つの合理的な説明であるというぐあいに考えて、今回、我々が株式市場の現状と改革の方向性についてまとめたと。これはいわゆる先ほどの3つのポイントを放っておいて解決できるならば、こんなものをつくる必要はないというぐあいに我々自身も考えておりますが、しかし、それが自力でできないのであれば、政策的にそこの部分のところを初期の状況というものを変えることによって、いい均衡に持っていきたいという考え方の中でこれをまとめております。
こういうことをやりますためには、国民のいわば理解が要るわけであります。国民の理解が要るということは、2つポイントがございまして、1つは、公的資金を入れることに関しての国民のいわば合意が得られるかどうかという問題。もう1つは、株式市場が相対的に弱いということを考えますと、間接金融から直接金融への政策的な誘導というものをどのように考えるか。その際に税制上の優遇措置というものをどのようにつけていくかということが、これが問われる視点であろうかというぐあいに我々が整理をしたということでございます。
公的な金融の問題につきましてはここでは触れませんが、税制上の問題について申し上げますと、戦後、我々は非常に過小貯蓄、過大投資型の経済を高度成長期から80年代まで続けてまいりました。そのために貯蓄優遇という形が非常に正当化された時代状況が続いたわけですが、少なくとも90年代に入りますと、過剰貯蓄型、過小投資型の経済に明らかに変化をしているわけでありまして、貯蓄・投資のバランスをとり、成長率を高めていくためには、現行の税制の特徴であります貯蓄優遇的な税制というものを根本的に整理し直して、その総合的な検討の中で直接金融的な部分に誘導するような形で中立化をしていくことが必要であろうと。
そういう意味で、ぜひ税調におかれましてお願いをしたいことは、単に直接金融的株に対する部分的な優遇措置というだけにとどまらず、過大貯蓄、過小投資型の経済にとって何が必要であるかということを、貯蓄・投資・税制の全般にわたって再検討をしていただきまして、ぜひ我々に対して知恵を提供していただきたいというぐあいに考えております。この点につきまして、おそらくこの税制調査会の幹部の先生方と経済財政諮問会議、今後連携を密にとりながら、ぜひ時代にふさわしい税制というものを実現していただきたいというぐあいに考えております。
お時間をいただきまして、ありがとうございました。
〇石会長
ありがとうございました。わが国の株式市場が当面しておりますさまざまな問題を的確に整理していただきましたし、また、最後のほうでは、具体的な税調に対する御要望もいただきました。我々、それを受けてこれから審議したいと思いますが、いま本間さんがおっしゃっていただきました資料は、ぜひお持ち帰りの上、帰られてからしかと読んでいただきたいと思います。
それでは、60分強まだ時間が残っておりますので、これから自由な討論を始めたいと思いますが、座長としてお願いしたいことは、当然、いま本間さんの出された問題、あるいは緊急経済対策、尾原さんの御説明いただいた問題についての御質問、あるいは国会審議におきます国税・地方税に対するいろいろな情報をさらに確かめたいという御質問ももちろん大歓迎であります。と同時に、我々4ヵ月この税調を開いていない間にさまざまなことが起こりました。今後、やはり税調として詰めなければならない問題がいま山積みしていると思いますので、どういう形で取り組むか、どういうところが一番重要かというような今後の取組み方も含めて、今日は自由に御議論をいただきたいと考えております。
狭い部屋でちょっと私のサイドの方は見えにくいので、ぜひ御発言のときは声を出していただくか、手でも伸ばしていただくか、ちょっと御努力いただきたいと思います。それでは、時間も押しておりますので、さっそく審議を始めたいと思います。どなたでもけっこうでございます。どうぞ、今井さん。
〇今井委員
感想と要望でございますが、今度の成立いたしました企業組織再編税制、これは法人税の抜本改正に匹敵するような大作業だったと思います。これは小委員会の結果、あるいは経済界の実情等も踏まえまして、実に的確、迅速に処理していただきまして、これを非常に高く評価したいと思います。これで企業再編の商法の改正と税制ができ上がりましたので、今後、企業サイドとしては、これを活用して企業の再編、合理化、これに取り組んでいきたいと、かように思っております。
それで、次に必要になりますのが連結納税制度でございまして、これもおそらく大作業になると思いますけれども、ぜひ平成14年度の導入を目指して検討をしていただきたい。私ども経済界としましても、実情等につきましてよく御説明して、我々の要望を提言していきたいと、かように思っております。
それから、もう1点だけ、緊急経済対策に関連してでございますけれども、経済対策そのものがかなり玉石混交のように思いますけれども、しかし、非常に必要なことも入っておりまして、特にいま本間先生がおっしゃった証券市場の活性化、あるいは土地の流動化というものは、いま非常に必要でございます。ぜひこれは来年度というような構えでなく、いまからそういった問題につきまして、ぜひ活発な討議をお願いしたいと、かように思います。
〇石会長
企業再編税制は高い点数を今井さんからいただきました。ありがとうございます。お褒めいただくのは珍しい話でありまして……。
どうぞ河野さん。
〇河野特別委員
いま本間先生から大変問題を整理していただいて、よくわかったのですけど、私が特に発言したいのは、最後に先生が言われた証券税制ということに絞って話をしたいのですが、去年の7月に当政府税調が非常に包括的なレポートを書いて、これから税制論議をやるのならば、少なくともあのペーパーをベースにしながら議論を展開するのが僕は正当だと思っているんですよ。
そういう観点で、皆さんの机の上にありますけど、その中で金融税制、証券税制について、当時の問題意識は、今日と大分違うのですが、申告分離一本化、源泉分離をどうするかという議論があって、それについて随分時間と字数を費やした。それからまた分離課税か総合課税かという議論も書いてあるんですね。ところが、いま本間先生が言われたような日本の個人金融資産の内容分析は書いてあるけれども、それは間接金融の世界から直接金融の世界に誘導すべきだという論点は見事に書いていないんですよね。隣に奥本さんがいらっしゃるけれども、当時、奥本さんがいろいろおっしゃったけど、我々はあれは証券業界の代表が言っているだけだと思っていたところもあって、事実我々は書いていないんです。ところが半年たってみて、もう1年近くなるのかな、いろいろ考えてみると、その後のいろいろな事態の変化もこれあって、本間先生がまとめられたような間接金融から直接金融への政策誘導ということについて、かなりまじめにポジティブに考えなければいけない時代が来たなという気はするんです。それは去年と今年の大きな差だと思うんです。ただ、税制で直接金融の世界に何がしかの道筋をつけるということは大賛成で、そのためにもっと精緻な議論を個別具体論についてはやる必要が僕はあると思いますよ。今日1回や2回の総会で決まるような話では全然ありませんから、性格上。
ただ、それにしても、よく我々の世界で言う言葉で、「株式に手を出す」「あの人は株式に手を出しているそうだ」と。「預貯金に手を出した」という表現はないんですよね。それは預貯金は結構。株式は、ちょっとあの人は人格的に問題があるんじゃないかとか、政治家はやっちゃいかんとか、役人はだめだとか、新聞記者は我々経済部はやっちゃいかんとか、いろいろなことがあったんですよ。だけど、それは国民性で伝統的にそういう人間ができ上がっているんだという説もあるけれども、どうも専門家に言わせるとそうではないらしいと。どうやら後天的にでき上がった日本人の性格らしいんですね。貯蓄愛好、ここまで極端なのは。
それについては、ここにいろいろなアンケートがあって、隣に証券の方がいらっしゃるけど、なぜ株式投資をやらないのかといういろいろな、証券広報センターだから、御自分のところでやっている話だから、それを見ると、大まかに言ってしまえば、株式市場が危ないからということはもちろんあるんですね。だけど、証券の売買を勧誘する証券会社が信用できないという声がベースなんですよ。長い長い経験があってのことで、これだけで非難するとか何とかではないけども、そこを変えないと、税制面で何がしかの変化でかなり抜本的な変化をやっても、お客がぞろぞろ証券市場に入ってくるとは思えないんですね。だから、ここは税制を議論する場ですから、我々は、税制の議論をまじめにやるつもりでいるけども、ついては証券の世界の中で生きていらっしゃる方が、個人投資家がなぜ入ってきて逃げていったか、逃げたやつが戻ってこないか、ということに一番情報を持っているはずなんです。そこのところをしっかりとやってもらうという条件つきで、その前提なしではだめなので、条件つきであるならば、本当にまじめに今度はかなり大規模な証券税制見直し論というのを、本間先生の問題提起に従ってやるべきタイミングだといま思いますね。
2つ目は、これからの運営について何か言えとおっしゃったので、この証券の話はいま申し上げたようなことでやればいいと思うんですよ。本来何も2、3日で決めるような話ではありませんから。しかし、同時にここに今井さんがいらっしゃるので、石さんと今井さんの間で、どういうふうに政権がなるかわかりませんから、目下政治の世界はいろいろなことをやっている最中だから、それをわき目で見ながら、条件が整ったと思われる瞬間から、税調と財政審で少なくともトップの間で、きっちり大きな方向について合意をして、議論を進め、世論を誘導する、という仕事をやってもらいたい。
以上2点です。
〇石会長
ありがとうございました。どうぞ、松尾さん。
〇松尾委員
私もいまの本間先生の整理、大変よくわかったのであります。これは河野さんの御意見ともちょっと関連するのですけど、私も株式というのは、やはり預貯金とは性格が根本的に違うのではないかという感じを日ごろ持っているわけです。ハイリスク、ハイリターンでありますから、完全に自己責任の分野である。そのハイリターンのところは、いわば不労所得ではなかろうかと思うわけです。決して株式投資を罪悪視しているわけではありませんけれども、いま私が言ったようなこと、そういった考え方の根本的な変更を迫るものなのかどうか、これは本間先生にお伺いしたいわけです。
それと、この方策を拝見いたしますと、間接金融から直接金融への政策的誘導、かなり具体的に踏み込んで書いていらっしゃいますね。ドイツの例など引き出されて、ドイツで株式投資が他の金融商品と同等ないしそれ以上に扱われていることに注目すべきであると書いていらっしゃいますね。これは具体的にどういうことなのか。
さらに4ページでは、預貯金の優遇措置を是正する、小口投資家がリスクに挑戦できる環境整備、小口の優遇措置を検討すると書いていらっしゃるわけですね。これは具体的に、例えばキャピタルロスが生じた場合に、それに補助金を出すとか、そういうことをイメージしているのかどうかですね。この辺をお話しいただければと思います。
それから、以下は意見でございますが、申告分離課税の一本化が2年間延長されているわけですから、その期間、こういったいろいろな問題が生じているということで、税制の対応について、やはり小委員会などを設置して検討してはいかがかと思うわけであります。
それと、よくこのドイツの税制の問題を引き合いに出されますので、ひとつこのドイツの税制、この関連でどういう状況になっているのか、御説明いただければ幸いですし、今日でなくても結構ですけども、しかるべき機会に資料を提出いただければと思います。
〇石会長
本間さんが何かリアクションがありますね。それから、今日、資料をドイツに関して出すのは無理と思いますけど、口頭でいまどういうことが問題かということを、事務局のほうから簡単に説明していただこうかと思いますので、では、本間さん、いまの松尾さんの。
〇本間委員
この問題は、我々も預貯金と株の、いま御指摘のとおり性格を異にして、株が不労所得的な位置づけをするという考え方がわりと根強くあるわけですが、金融資産としてのとらえ方と、株というものが裏側で実物投資にどのようにつながるかということを考えますと、日本のいまの不良債権を抱えた状況の中で、間接金融から実物投資に向かうチャンネルが非常に弱くなったときに、直接金融の世界の中でどのように資源配分上のメリットを伴いながら十分性を担保するかと、こういう問題が実はあるわけでありまして、これが現在、設備投資を中心にしながら内生的で自律的な景気回復ができない大きな要因になっておりますので、ここをどのように金融サイドを使いながらやっていくかということが第1のポイントであるということであります。
第2のポイントは、預貯金者が、実はこれは安全神話に包まれておりますけれども、仲介機関たる金融機関が株を持つということは、実は間接的にリスクを金融機関に任せながらとっているわけでありまして、これは金融機関としての性格と預貯金者との関係の中でいえば、ある種利益相反を生む、そういう構図が生じているわけでありまして、我々が持合保有機構的なるものを考え、しかも税制上の優遇措置を認めていくという背景には、もともとの本来的な貯蓄のリスクというものを小さくしていくという考え方があり、そのことが家計部門に直接的な利益というものをもたらさない限りにおいては、公的資金、税制上の優遇措置というものは正当化できないだろうと、こういう理屈づけをして提案をしているということでございますので、ぜひ御理解をいただきたいというぐあいに思っております。
以上2点であります。
〇石会長
尾原局長のほうからドイツのことを簡単に御説明いただきます。
〇尾原主税局長
ドイツでございますが、国会でも「譲渡益課税をドイツのように非課税とすべきではないか」という質問もいただいております。ドイツの資料を今日用意しておりませんので、次回御説明させていただきたいと思いますが、まず、ドイツ所得税の特徴でございますけれども、先進国唯一の特徴があるのがこの部分でございます。つまり、伝統的にドイツの所得税は経常的に発生するもののみを所得としてとらえる。したがいまして、株式とか土地などの譲渡益のように一時的に発生するものは、原則として課税しないという考え方をとっているわけでございます。したがいまして、ドイツの所得税は、従来から短期の売買については課税するが、長期のものはもう非課税というような形で来ております。したがいまして、政策的に株式投資を優遇しているのではないのではなかろうか。所得税の考え方ではないかと思っております。
なお、日本の税制の考え方は、いわゆる包括的所得概念といいましょうか、担税力を増加させるものは、すべて所得としてとらえる。これがいまの先進国の考え方になっているのではなかろうかと思っております。
なお、1点、ドイツの株式市場が発展してございますけれども、外国株の割合が8割近いというようなことを聞いておりまして、アメリカの株価と連動性がそれだけ高くなっているというようなことも聞いております。いずれにいたしましても、次回、また資料を出させていただきます。
〇石会長
次回に詳細な資料を出していただきましょう。
現段階で手を挙げているのは、島田さんと村上さんと水野さんと笹森さんですね。では島田さん、最初に手を挙げていますから。
〇島田委員
本間委員からの非常によく整理された問題提起、感銘を受けましたけど、2点少しコメントを申し上げたいと思うのです。
1つは、本間さんの分類でいうと、十分性ということに関わるのかもしれませんけども、株式市場がリスクというものに対応して、リアル経済に資金を提供していくという役割を十分果たしているかどうかということに関して、いまさまざまな税制改正が与党でも議論されたわけですけれども、本間先生は、この諮問委員会は株価対策というような意図ではない、本格的な改革をしたいということを強調されて、そのとおりだと思いますが、そうすると、いまいろいろなところで議論されている中で、私は1つ非常に重要な点があるなと思うんですね。それは何かというと、株式の投資家の譲渡損益ですね。これを多年度にわたって相殺するということができるかどうかという問題なんです。いまはそういうことは日本ではできない状態になっています。これが自己申告制が一般化すれば、論理的にはそれをやるということは整合的になるわけですけど、これはものすごく重要な意味を実は含んでいると思うんですね。というのは、個人投資家も含めて株式市場は大変なリスク市場ですから、給与とかそういう所得とは意味が違うのであって、その儲かったキャピタルゲインと、それから経済全体が大きく変動するようなときにロスをするというものと、ある程度相殺できるということになると、健全なリスク資本が流入する制度的な担保になるということで、これは本間先生の分類でいえば、十分性を担保するということになるのか。これは非常に重要な点なので、私はできるだけ早く税調でしっかりとその点は議論していただきたい。
もう1つございます。これは本間先生の最後におっしゃられた貯蓄と投資のバランスですね。貯蓄を投資、特に私は民生といいますか、生活に関わる投資のところへ誘導するということが、日本経済を健全なバランスでもって復活させる重要な基幹ではないかと思うんですね。そのときに、民間の貯蓄が消費に向かうということが非常に重要で、つまり投資的消費に向かうということが重要なんですけれども、いま民間の消費が非常に低迷をしておって、貯蓄は一方でどんどん累積をしている。これについてなぜだろうということで多くの議論があるわけですが、一般に言われるのは将来不安。将来不安は3つ言われますね。つまり財政赤字が膨らんでいる。税金が高くなりそうだ。社会保障が長期的に手取りが少なくなりそうだ。これは抽象的にはそうだろうとは思いますけれども、実は生活者がいま貯蓄しているお金を使いたいのだけれども使えないという問題は、そんな抽象的なことよりも、実はもっとうんと具体的な切実な問題なんだろうと思うんです。
ちょっと3つだけ申し上げたいのですが、1つは住宅問題なんだろうと思うんですね。住宅問題は、日本は戦後世界に冠たるマイホームを大成功させた国ですけれども、高齢化をしてまいりまして、そして高度成長が終わって、実は高齢化をしてきますと、いろいろな家族の構造変化とか病気とか、いろいろなことでもって実はいままで住んできた家に住めない。移り替えたい。みんな思っているわけですけど、移ろうとすると、なぜか日本では上物は評価されずにゼロになる。解体費用を入れるとマイナスになる。そういう問題に庶民は直面しているんですね。ですから、一方で多大な貯蓄を累積していても、実は高齢化社会に対応ができない。これは日本の住宅というものが持たせることだけに力点を置いてやってきたので、4,400万家計に対して5,020万戸も家があるという姿ですけれども、流通する社会資本になっていないということなんですね。これは税制も非常に大きな責任がありまして、家を持たせるためのローン減税だけではなくて、もっと重要なのは、私は流通を促進するための譲渡所得税の問題、あるいは取得税の問題、あるいは買替え税制の問題、ここら辺を膨大な住宅資産、いまはもう実際は非常に過大な供給になっているわけです。これを社会資本として流通させるための税制というふうに変えていく役割が非常に大きいので、大いにやっていただきたいと思います。
それから、もう2つ簡単に触れますけど、もう1つは、実は高齢者が高齢化をしていったときに、体が動かなくなっていったときに、彼らがどこに身を委ねたらいいかという仕組みが恐ろしく日本は欠けています。いま要介護者が280万と言われていますね。あと10年か15年で500万になろうと言われているのに、国の手厚いこの補助でもってやられる施設というのは、総計で50万人しか収容できないんですね。これは特養ホームと老健施設ですけども。では多くの人はどうすればいいのか。民間に行きますと、民間の施設は220ヵ所ありますけど、ものすごく高い。入所するのに数千万かかります。これはどうも償却を非常に急いでいるためにそういうことになるわけですけど、誰が償却を急がしているのだというと、これは償却を早くしませんと、不安定な施設になるのだという本当に些細な発想で、角をためて牛を殺すようなことをやっておる。ということでばか高いものを民間ではやる。それでも民間はなかなか経営が大変なんです。そうしますと、普通の人は行くところがないんですよね。これはどうしたらいいかというと、全部公共資産でやれといったら財政破綻しますので、民間の活力をもっと使いやすい形で、そんな早く償却をさせなくても済むような形で導入するということが必要なんですけど、これはもともとは憲法89条が邪魔していてなかなかできにくいのだけども、そういう問題を先延ばししているときじゃないんだろうと思うんですね。
最後に1つ申し上げたいのは、子育てです。子育てはいま日本に2万3,000ヵ所近い施設がございますけども、大都市ではものすごい待機児童です。ですから多くの人は、子供を育てるか、仕事をするのかの選択で、どちらかをやめるという残酷なことになっている。これもいま2万3,000ヵ所に対して1万ヵ所ぐらい本当は大都市につくらなければいけない。これは何でつくるかというと、公共では使いにくいですね。これは民間の資源を導入すべきなんですけれども、民間の個人の支払能力だけで全部こんなものを運営することはできません。ですから、公設民営という形をやらなければいけない。高齢者の場合でも子育てでも。しかし、これについては公共資産の使用というようなことについて、自治省の関連のルールが非常に厳格なものがあって使えないとか、いろいろな仕掛けがあります。この辺のところをやはり本格的に考える。行政資産を守るために国があるんじゃないんですから、国民を守るために国があるんだから、私は総務省の方々には、大いに国民を守るために行政資産の解釈というものを考え直してもらうということが必要であって、こういうことと税制と含めて、つまり何のための税制改革なのか、国民を救うためですよ。国民が世界最大の貯蓄を安心して使える社会をつくるためですよ。そのことが本間さんが言われる貯蓄と投資のバランスということになろうかと思うんですね。そういうことを、これは税制も非常に重要なので、いくつか申し上げましたけども、真剣に考えていただきたいと思います。
〇石会長
当然真剣に考えますから、またよきアドバイスあるいは御意見をいただきたいと思います。
では、村上さんで、笹森さんで、水野(勝)さん、それから当然猪瀬さんもあるよね。では、村上さんお待たせしました。
〇村上特別委員
税制はやはり中立・公平ということを基本に論議しなければいけないだろうと思います。確かに先ほど本間先生のなされた分析でも、それは9対1とか、8対2とか、そういう関係になっていますね。それは事実ですけれども、それは税制が邪魔をしているからそうなっているのか、ということをよく見ないといけない話であって、それはやはり株式とか投資信託というものは、どこまでいってもこれは非常にリスキーなものですよね。ですから、それを制度で解決することはできないわけですから、個人の投資家の自由に属する問題ですよね。それを制度あるいは税制で解決してあげる、あるいはそのリスクを取り払ってあげる、というようなことはできないわけですね。そこを勘違いしないようにしないといけない。
特にいま自民党総裁選に絡めて、いろいろなことを言っていますね。そうしますと、極端な議論は、徳政令の頻発みたいなことも出ていますね。例えばキャピタルロスを全部みてあげますとかいうような議論も出ている。そういうものに政府税調が与するのかということですよね。仮にそういうことをするようなことになれば、これはすべての税制に対して国民の信頼を失うことになると思いますね。私は別に銀行の肩を持っているのではなくて、個人の金融資産が預貯金から直接金融の分野に流れていく、これは結構なことだと思いますし、それが自然な形で流れていく、それはいいことだと思うのですが、それを人為的に何か税制のインセンティブでやるというようなことをし始めますと、これは大変な問題になるのだろうと思います。
ですから、申し上げたいのは、金融資産と金融税制、つまり預貯金税制と証券税制の間にどのぐらいの不公平を生じているのか。一説では1%ぐらいの利回り差という試算もありますけど、それがいまの株式市場の低迷の非常に大きな原因になっているのかどうかというようなこととか、それはよく見ないと、いまこのタイミングがタイミングだけに、非常におかしな方向へ向かうおそれがあると思いますので、その点だけ、政府税調のあり方として、座標軸というのはどこに置くかということを考えた上で議論すべきだと思います。
〇石会長
ありがとうございました。では、笹森さんどうぞ。
〇笹森委員
簡単に申し上げたいと思います。扱い方と位置づけの問題、そして具体的な中身と3つあります。扱い方のほうは、資料として主要討議事項の資料と御説明がありました。伴って国会の中では衆参の予算委員会等を中心として公述人の意見陳述があったと思うのですが、かなり具体的な意見展開を出されている意見もありますので、参考資料としてぜひこの中で出していただければと思います。
それから、2つ目は位置づけの問題なのですが、前の加藤会長のときにもこのことはお願いした経過もあるのですけども、政府税調と政党の税調の関係です。昔の自民党一党で何でもできた時代の自民党税調のなごりが連立の時代になっても全く同じでして、その中でも特に自民党がいろいろやられるのですが、政府税調が検討し結論を出すそのことが、政党税調の中でどう生かされているのか、これは全く位置どりが逆ではないかと思っているのです。前のときに、加藤会長のこの政府税調のお白州に政党税調を呼び出してお裁き申し渡しなさいよと、こういうことも言った経過もあるのですが、その辺を少し明確にしていただいて、政府税調はこれだけの方々が集まって意見論議をされた上での結論を出されるわけですから、どういうふうに尊重していただくのか、この位置づけを明確にしていただきたいと思います。
それから、3つ目の問題は具体的な中身ですが、まず証券税制の問題は、私は河野さんがおっしゃられた意見と全く同じです。そのことを踏まえて、問題はその後延長線上に401k問題があるということだと思うのです。となれば、これは具体的な中身からいうと、いまのままで401kをやられた場合には、問題点があまりにも多すぎるということになっていくと思うのです。これは前のときにも何回も具体的な意見について申し上げましたので、繰り返しませんが、そこのところをどう整理されるかということをやらないと、いまのままで出てきている施策でいいますと、先ほど本間先生のお話でかなり理解はできたのですが、一般的な国民には全く意図が伝わらない。見方によっては、一部の個人投資家の優遇政策をしようとしているのではないかというふうにも受けとめかねないわけで、ここのところはきっちりとしたものにしていただきたいなと。
それから、緊急経済対策ですが、今井さんがおっしゃられたように、玉石混交、玉はほとんどないと思うのですけども、その中で特に問題になりますのは、ここの中で出ている4.の中に触れられている雇用の創出とセーフティーネットのあり方です。やられること自体は、私はいろいろな緊急経済対策をやって、一時的にそれが雇用の問題に影響されるという状況が出ても、これは極めて大きな外科手術としてやむを得ない部分もあるのですが、張られるセーフティーネット、それから雇用の創出のミスマッチ、これをどう防ぐか。これがやはりある程度ないと、痛みが極めて働く側にいきすぎるということについての部分。これは出ている案は旧労働省時代の焼き直しそのままなんです。新しい抜本的な考え方は全くありません。この考え方も旧労働省時代に出して、予算もついてやったのかというと、ほとんど残っちゃっているんですね。だから、ここの部分は緊急経済対策をおやりになるならば、やっつけでないやり方ということをきっちりとしてほしい。
それから、もう1つ、中身的にNPOの問題が触れられました。堀田先生もおられるので、御意見があろうかと思いますが、堀田先生と御一緒にNPO事業のサポートセンターというのをつくらせていただいて、いろいろなアシストをさせていただいていますが、そこの方々から寄せられる意見は、今度のNPO税制ができ上がったこの認定要件、とりあえずスタートの時点としてはおおむねこんなところでしようがないかなという意見はかなりありますが、しかし極めて使い勝手が悪い。それと、税制の場合には問題点が多すぎるということですので、これで終わりということではなくて、引き続きつなげて、改善点をぜひこの税調の場で検討していただきたい。
〇石会長
ありがとうございました。それでは、水野さんどうぞ。
〇水野(勝)委員
先ほどの本間先生の分析、方向を示していただいたその方向を、私もおおむねそうした方向で進んでいいのではないかと思いますけども、若干は消極的な面があるわけでございます。と申しますのは、いま直接金融をさらに推進ということでございますが、先ほど本間先生のお話にありましたように、実物投資と金融とをどう結びつけるかというところに円滑な役割が期待されるわけですけれども、それではいま実物投資資本市場、そこで一体需要が阻害されているのかどうか。むしろ直接金融市場でも過剰というほどではないにしても、そうした状況ではないか。間接金融市場はもちろん過剰資本でございます。現在の株式市場は低迷とは言われますけれども、株価収益率PERで見れば、まだかなり高いという指摘もある。それから、ROE、自己資本利益率、これは日本は3%か4%、アメリカやヨーロッパは10%とか20%とか言われる。これは要するに過剰資本ではないか。そういった面があるのではないか。
そうしたところからすれば、直接金融のほうに向かわせるという供給の面よりは、むしろ実物投資を伸張させるそちらの需要の面からのほうにまず取り組むべき話であって、そこを供給の面からやってもなかなか効果はあがらないのではないか。むしろやはり全体としての構造改革を進める中で、そこが自ずと直接金融、間接金融が選ばれるのではないか。間接金融も過剰、直接金融もある意味で過剰、そうした中で片一方だけを伸張させるという政策に、いま本当に日本経済、日本の資本市場として必要なのかどうか、意義があるのかどうかという点は、若干どうも疑問を感じざるを得ないわけですけれども、これは大きな世界のグローバルな動きの中の1つの流れだと思いますので、検討はすべき課題であろうかとは思います。
また具体的にいえば、間接金融と直接金融、フローの面でいえば配当と利子の関係になるわけですけれども、よく配当は二重課税と言われますけど、昔はよく貯蓄の利子に課税するのは二重課税だと。1回所得税を払ったあとの所得から貯蓄したのだから、また利子にかけるのは二重課税だという議論が随分ありました。いまはもうそういう議論はほとんどないわけですけれども、配当は法人企業が営業活動をした、どれだけ収益を上げたか、どれだけ法人税を払ったかということと、株主が投資する行為とは独立な別の経済行為ですから、二重課税ということはあり得ない。
また、預貯金は20%の分離課税ではないかと言われますけれども、20%分離課税というのは、ある意味では非常に高い税率でございます。サラリーマンの普通の収入、これをマクロ的に見ますと、日本全体で見ると、その所得税の負担率というのは5%に満たないわけでございまして、そういった意味からすると、非常に大衆化している貯蓄利子課税としては20%というのはかなりな税率だという気がします。しかし、老人マル優という点になると、これだけ高齢者がたくさんお金を持っておられる。その中で1,050万円までは非課税という、いまは利子が低いですから、あまり税の効果はないかもしれませんが、これは先ほど本間先生の御指摘がございました過剰貯蓄経済の中でこういった制度がいつまで認められていいのかという点は、問題ではあろうかと思います。
それから、ストックの課税の面でいえば、キャピタルゲイン課税になるわけでございます。キャピタルゲインでございますと、これは利益が出るケースもあれば、損失の出るケースもある。そこをどういうふうに扱うかということは、当然課税上問題でございまして、幅広くこのキャピタルゲインの中で縦横の通算を認めるということが1つの方向として観念されるだろうと思いますし、さらに広くは他の所得とどのように調整をするかということも検討はされるべき面であろうかと思います。しかし、現在は源泉分離課税との選択ができる。そうした場合には、こうした通算制度、こういったものとは両立しないわけですから、まずそちらのほうの基本的なあり方を検討するのが先ではないかと思うわけでございます。
そうした中で、その通算の問題は別としても、さらに一歩進めて、リスクをとる行為による株式投資行為による利益に対しては、リスクをとらない所得と何らかの税制上の扱いを考えていいのではないかどうか。そこのところは非常に難しい問題ではあります。そのリスク・テイキングの所得の中での通算、プラスほかの所得とどういうふうに通算するか、さらにはほかの所得、普通のリスクをとらない所得に対して優遇していいのか、すべきなのか、そこの問題はあろうかと思います。ある意味におきましては、勤労者の給与所得というのは、これはよく昔から言われましたように、従属的所得で独立した所得稼得行為ではない。そういった意味において担税力がないということで、かなりな優遇措置というと叱られますけれども、大幅な給与所得控除によりまして課税は軽減されている。そうしたものとリスク・テーキングな所得と、ここはどういうふうに税制上考えるのか。課税の公平といった面、それから最適課税といった面から、そこは基本的にあるいは検討してもいい余地があるのか、あるいはないのか、そこらは問題であろうと思います。
こうした点を含めて、せっかくの機会でございますから、こうした金融資産所得についてのあり方、ここは基本的に検討をされたらと思うわけでございまして、しかし、あまりじっくり検討していて、タイミングが合わないということでもまたもったいないわけですから、タイムリーに検討される。どういう検討の形態にされるか、そこは会長の御裁断でと思いますけれども、そうした必要はやはりこの時点ではあるのではないかと思うわけでございます。
それから、もう1つそれに関連して、全体としての景気対策ですけれども、いろいろな対策が挙げられておりますけれども、一体本当に基本的にマクロ的に現在が循環的な不況なのかどうか。非常にマクロ的に考えれば、60年にプラザ合意で240円が140円ぐらいになった。さらには、平成7年が最高でございまして、80円までなってしまった。丸10年で3倍に為替レートが上がるという、こういった経済の変化というのはあまり例がないのではないか。それに対するこの日本という輸出・輸入に依存する国の経済が大きく影響を受けることは当然でございまして、その調整に10年、20年かかっても不思議ではないわけでございまして、ひたすら「失われた10年」ということで、あまり卑下することもないのではないかと。そういった意味におきましては、ここは腰を据えて、あまり慌てふためかないで対応されたらどうか。そういった意味におきまして、これこそじっくりと対策を考える。
その際には、やはりこの問題はいまの我々の世代で解決、対処しておくべきで、あとの世代に大きな問題を残すようなことがあってはいかがか。そういった意味におきましては、先ほど本間先生のお話にありましたいろいろな基本的な問題点、4つある。そうした点に正面から取り組む。それによって大きな借金、国債を残すということもないようにして、後代に問題、負担を残さないような基本的な中でじっくりと検討されたらと思うわけでございます。
〇石会長
ありがとうございました。では、猪瀬さん、お待たせしました。
〇猪瀬委員
先ほどNPO法人の税制の問題がちょっとだけ出ていましたけれども、これは非常に重要な問題でありまして、先ほど本間さんの御説明の中にはないわけですが、本間さんの御説明はすぐに効き目がありそうなお話でありますけれども、僕はNPO法人の問題というのは、すぐに効き目はなさそうに見えてありそうな問題だというふうにあえて申し上げたいのですが、公益法人というのが現状ありまして、公益法人とNPO法人というのはどういう関係にあるのかということを考えながら問題を提起していきたいのですけれども、去年の中期答申で公益法人の税制の見直しということをきちんと7月に言っていますけれども、要するに、NPO法人というものが活性化していくというか、経済のソフト化、あるいは文化活動の活発化による国力の充実というか、経済の活性化というのが、そういう方面から考えていくべきなんですが、現状は公益法人をそのまま放置して、NPO法人を下のほうに差別化するというか、そういう形で行っているということであれば、これはなかなかそういう経済のソフト化の方向に進まないのではないか。
アメリカのGDPの10%はNPO法人が占めていると、こういうふうに言われておりますけれども、特に僕が申し上げたいのは、つい最近のニュースでありましたが、先週の金曜日に新聞にいっぱい載りました。内閣府の行政改革推進事務局が国の所管する公益法人を総点検すると言って、こんな厚いものを出しました。これは新聞に載りました。その新聞に載った内容を見ると、全体に113の問題な公益法人、社団・財団法人があって、そのうち62が厚生労働省だと、こういうふうに言われているわけですが、2万6,000の社団・財団があって、そのうち調べたのは中央省庁絡みの7,000法人ぐらいなんですけれども、これまた厚生労働省が悪いんではないんですね。実は正直に申告すると多くなるという、こういう構造なんですね。
それで、例えば警察庁というのは、対象53法人のうち問題はゼロというふうになるんですね。僕が見て明らかにおかしいと思われる法人がいくつかあって、すでに例えば建設業振興基金というのは資産規模が300億円もある。だけど、全部問題なしと丸がついているんです。各省庁に全部任せると、そういう結果になるので、これは総点検しても、ほとんど実質意味がないんです。僕が何を言いたいかというと、公益法人が税制上優遇されているわけですけれども、その税制上優遇されている公益法人というものは、税制上優遇されているけれども、その中身についての基準というものは非常にあいまいで、例えばこの間、国税庁の人にどういうふうに調べているのだというふうにお尋ねしましたが、いろいろ法令があって、また内規があるんですけれども、行政指導の基準があるんですけれども、公益法人をほとんどチェックしていないというふうに僕は判断しました。
結局、公益法人の税務申告数は2万2,000で、これは宗教法人も全部入っていますから、トータルで20数万の公益法人になって、それで結局年間1,200件しか実地調査していないんですね。結局、税務申告したのは2万2,000件ですが、実質5%で、これだと20年に1回しか税務署員が回ってこない、そういう計算になるのです。
国税庁の方に説明を聞きましたら、公益法人の場合の不正発見割合というのは8%ぐらいで、一般の申告法人全体では25%もあると。だから民間に比べると公益法人はそれほど問題があるとは思えないと、こういうふうなことを言っているのですけれども、そもそも公益法人にとって、申告において何が不正であって不正でないかというのは、普通の法人と尺度が違うわけで、尺度が違えばそういう割合も違ってくるわけですから、氷山の一角でありまして、巨額の内部留保でビルを取得したり、保養所をつくったり、そういういろんなことをやっていて、そういうものはいまの現状の税制でチェックしていくと、それがみんな問題なしとなってきてしまう可能性がかなり強いわけですね。したがって、いま言ったように数十億とか数百億のレベルで実際に蓄財しているそういう公益法人が一方でいっぱいあって、そして、NPO法人に対しては税の優遇措置が全然違ってくるというふうなことになる。そうすると、そういう公益法人というものが現状の公益法人の見直しをしない限りは、新しいNPO法人というものが生きてこないというふうになると思うんですね。
そういうことを僕は特に強調しながらしたいんですけれども、中期答申を実際にどのように実施していくのか、あるいは具体的に現在の公益法人に対する優遇税制というものをかなりきちんと、現行法の範囲においても僕はかなり可能だと思っていて、つまり、行政改革推進事務局というのが内閣府にあるけれども、各省庁に全部チェックを任せるというふうな形で、各省庁は自分のところの公益法人のチェックが甘いから、したがって厚生労働省みたいにわりと正直に出してくるところはまだいいけれども、一個も問題なしというふうな、そういう各省庁単位での報告が出てきてしまう。
こういうことで、僕はだから国税庁というものがあるのだから、これがきちっといままでの細かいいろいろな行政指導があるのだけれども、かなりやれば公益法人というものを絞り込んでチェックすることができるし、さらに、現行法をもう少し厳しく改正するような方向性というものを税調で、去年の7月の抽象的な言い方ではなくて、もう少し具体的にやっていただけないかと。そういうことをあえて強く提案して、構造改革というものがどういうものかというのを、やはりもう少し抽象的でなくて、いろいろ金融面の問題はあるのですけれども、こういう具体的なところから見せていかないと、税調は一体何をやっているのか、税の公平性の観点から考えたらおかしいではないか、民業を圧迫しているそういう公益法人を放置したまま税制改正がどうのこうのということではおかしいのではないかと、こういう世論が出てくるということは間違いないと僕は思っております。
〇石会長
ありがとうございました。いまの問題提起、受けとめたいと思います。
では松浦さん。
〇松浦委員
市町村の立場から一言申し上げたいと思います。私、今年度は私ども地方にとって一番大事な時期だと。それは国と地方との税配分の問題であろうと思います。今日も株式の問題が出ておりますけれども、私どもは一貫して申告分離課税一本化ということを申し上げてきたわけでございますけれども、これが2年間残されたことになったわけでございます。いま地方が大変だから合併をせよというようなことが盛んに言われておりまして、一説には300にせよとか、1,000にしようとか、それは結局地方の財政が苦しいからということになるわけでございますけれども、一向に合併も進んでいない。
先ほども島田先生からお話がございましたけれども、要介護者の待機人員が相当の数いるという、これは介護保険の欠陥もあろうかと思いますけれども、要は地方はお金がないということに尽きるのではないかと思います。そういうことで、ぜひいろいろと株式譲渡益課税のあり方につきましては、申告課税一本化が図られて、地方税の課税の適正化が図られた上で私は検討すべきであろうと思います。
また、確かに少額配当ということについて、個人住民税が非課税となっておりますけれども、さらに非課税範囲を拡大せよというような議論もあるようでございまして、課税の公平・適正化の観点から、これは大変問題なことであろうと思います。
以上でございます。よろしくどうぞお願い申し上げます。
〇石会長
先ほど島田さんが公設民営についてちょっと問題提起されましたけど、それにつきまして、自治省のほうから重ねて御説明があるようであります。簡単に御説明ください。
〇石井自治税務局長
直接税制に関わらない話ですけれども、これだけ大勢の方の前で議論がありましたので、ちょっと一言だけ。
公設民営ということの言葉の定義によるのですけれども、例えば大都市における介護施設ですとか、それから保育所施設などのときに、一番何がネックになるかというと、土地なんですよね。この土地については、一定の意欲のある民間の経営者が、あるいは福祉関係者がいて、土地をぜひ、しかし買い取る力がないというようなときには、実際に地方自治体が自分で取得して、土地を貸すというようなこともやっていますし、そのことは実は地方財政措置、例えば地方債の配分とかそういうのを認めるようにしておりますし、それから、一般的に公共施設を地方団体がつくりまして、それの管理運営を民間に任せるというのも、法律上だめというふうにはしておりませんので。以前はそういうことをやったことがあるかもしれませんが、少なくとも一般論としてちょっと公設民営的なことが一切認められていないというのは多分誤解だと思いますので、一応一言申し上げたいと思います。あと先生には別途詳しく御説明したいと思います。
〇石会長
ありがとうございました。
それでは、中里さんのあとに和田さん、松本さんといきましょう。では、中里さんどうぞ。
〇中里特別委員
前に、数年前ですけれども、金融課税小委員会がございまして、そこで有価証券取引税と申告分離の問題を中心に金融課税について議論したことがございまして、報告書も出ておりますですよね。あのときには、名前は金融課税小委員会なので、もっと包括的にさまざまな金融取引について、デリバティブとかセキュリタリゼーション、ストラクチャードノーツとか、そういうものについても議論すべきだったのでしょうけれども、とてものことそういう時間的な余裕もございませんで、多くの問題が積み残されてきているのではないかと思います。これからどんな方向で租税制度の改正を図っていくにいたしましても、基本的なことについての、どれだけ押さえているかということがポイントになってまいります。専門技術的な分野ですから、そう細かく入る必要もないのかと思いますが、大まかなところについては押さえて、そういう全般的な流れの中での租税制度の位置づけ、役割、機能、効果等について考えていく必要が当然出てきます。
ここ数年、10年とかだけではなくて、ここ数年限ってみても、ファイナンスの理論とかファイナンスの取引の発展というのは、ものすごく急速なものがございまして、私もそういうことを勉強してはおりますが、とてものこと全部フォローできないほど急速に進展しております。ですから、基本からさかのぼって議論するようなことがございませんと、もうどうにもならない事態になっているのではないかと思います。
前に書面で、金融取引についてもっと議論すべきだということを申し上げたことがございますが、そういう議論を怠りますと、結局、こちらをまけろ、こちらが不平等だというピースミール的な減税要求ばかり出てきて、いまある制度がもっとひどくなる。ひどくなるというとあれですが、よけい穴が増えていくということで、穴だらけになって、何もなくなって、税金がなくなるというのでも、それはそれで思い切っていいのかもしれませんが、とても現実的ではありませんので、そこを何とかしなければいけないのだろうと思います。やはり金融取引とか証券取引という発想だけでも狭いのかもしれずに、資産所得全般について、課税の中立性ということがやはり一番問題になる。それは公平性にもつながる話ですから。税引き後の所得が平等に課税されるという事態が達成されるということがすべての基本なんだろうと思います。
いま、直接金融と間接金融とかというお話が出ましたけれども、実際には非典型的な商品があらわれておりまして、例えば仕組債とか仕組預金とかございますから、例えば利益に連動して利子の支払われる社債というのは、そこから生み出されるリターンというのは、利子なのか、配当なのか、これはなかなか哲学的な問題ですし、そういうことを考えますと、配当と利子の区別とか、直接金融と間接金融の区別なんていうのも、どこまでいま維持されているのか、非常に疑問だと思う。ファイナンスの人から見ると、当然の発想だと思うわけですね。ですから、そういうことも含めて、35歳以上はファイナンスがわからないというのが通説みたいですけれども、35歳以上の方しかここはいらっしゃいませんけれども、そこはそこで一生懸命頑張って議論していくということが必要になってくると思っております。
もう1つ、課税逃れ商品がやはりファイナンスの技術を駆使していっぱい出てきているわけですね。一番端的な例は、1999年12月にアメリカでつぶされたボスというボンド・アンド・オプション・セールス・ストラテジーというやつなんですが、これがつぶされたと思ったら、その半年後、すぐ直後にベイビーボス、ボスの赤ちゃんという別の商品が出てきまして、これが昨年の8月につぶされたわけですが、こういう仕組みについて、私が必死になって勉強してもなかなかフォローできないのですが、例えば23歳の助手が勉強すると、たちどころにわかってしまうというような状況がありますので、若い方の力も借りながら勉強しないといけないのではないかと思います。
〇石会長
では、本間さんが35歳以上を代表して抗弁して、あと和田さんと松尾さんがあって、そろそろ時間がなくなってきたのですけど、この際ぜひ発言したいという方はいらっしゃいますか。よろしゅうございますか。ではあとお三方に。本間さん簡単に。
〇本間委員
エイジ・ディスクリミネーションというのは、人権の中で非常に重要な要素になっておりまして、アカデミックなレベルでも、年齢を履歴書に書いてジョブサーチをするというようなことは、これは非常にいま問題視されているわけでありまして、若い世代の中里さんがそういうことをおっしゃるというのは、これは若干問題があるのではないか。能力で判断すべきであって、年齢でやるというのは、年功序列的な日本社会のこれまでの悪しき弊害を引きずっている考え方ではないかというのがまず1点、人権の観点から申し上げたいと思います。
それから、もう1つは、マーケットのいわば進展と、初期値としての日本の構造的な特殊性は区別しなければならない。こういう問題をやはり我々が現実に税制改正論議をするときには、きちんと仕分けをして議論していくということが必要であり、いま我々が議論しておりますのは、初期値の構造としての日本的な特殊性をどういう形で、いま中里さんがおっしゃったような形での先端的なマーケット・ストラクチャーの中に結びつけていくかどうかということを議論をしているということでございますので、ぜひ御理解をいただきたいと思います。
それから、もう1つは、先ほど水野(勝)委員の御指摘のとおり、いま貯蓄過剰で、貯蓄があるのだから、投資の面の議論をするときに、それほど税制上というような御指摘がございましたけれども、貯蓄が過剰で投資が過小であるということが、我々成長率を押し下げている部分でございまして、貯蓄の部分のところを動かすということは、貯蓄と消費をどういうぐあいに選択をするかという問題と、御指摘のとおり、投資がどのような形で動くかということ、これは区別する必要があるのだろうと思います。
後者の問題についていえば、私のペーパーにもきちんと書いておりますけれども、日本の企業家等がこれまで資本市場に対して忠実ではなかったという咎が一番大きな問題で、やはり資本に対する収益性の観点から、日本の経営組織というものをきちんと再構築しなければならない。そこがまず一番大事だということを申し上げておりますので、ぜひそのことを御理解をいただいて、しかし、税制上は貯蓄過剰のいわば現状の中で、過小貯蓄時代の税制というものがもたらしている非中立的な効果というものを、これを中立化させていくということが重要なのだということを論理的に申し上げているということでございます。したがって、私の全般的な説明は、古典的なやはり中立・公平というコンセプトの中でくみあげられているということを御理解をいただきたいというぐあいに思っています。
〇石会長
水野(勝)さんからまた何かリアクションがあるかもしれませんが、今日は時間がありませんから。
では和田さん。
〇和田委員
いろいろお話を伺っておりまして感じますのは、一般の消費者にとりまして、金融問題というのが非常に何か変わるのだなと。別に制度であるとかそういうことではなくて、自分自身の、大変なけなしであったり、たっぷりある方もあると思いますけれど、そういうものについて何か変わるのだということの関心は非常に高いというふうに実感しております。これはやはりそれぞれの金融機関の相互乗り入れということで、否応なしに身近に、自分の立場でどうなるのだということの関心というのは非常に大きい。これは税制の問題だけではありませんけれども、大きくなっております。
主婦連も参加しまして、あといろんな金融機関、日銀も含めてですけど、50年になりますが、「貯蓄増強中央委員会」という大変懐かしい名前が、何年前でしょうか、「貯蓄広報中央委員会」に変わったのですけど、今回、それをさらに「金融広報中央委員会」に変えるということで、その変遷というものに思いをいたしております。
それで、先ほどお話がありましたけど、やはりいままで私ども金融資産についての税制であるとか、金融資産所得に対しての税制とか、そういうことに対してあまり関心を持たなくはなかったのですけれども、そこへの関心というものはふつうの消費税なり所得税というようなものに比べると、やはり低かったというふうに感じておりますけれども、やはり基本的な面から勉強し直していかなければならないなということを感じております。
ちょうど昨日、私の身近で90歳過ぎてひとり住まいをしている方のところへ、時々食べ物を届けるのですけど、食べ物を横に置いて、出てきた言葉が、ペイオフという言葉は出てこないのですけど、「1,000万円を超えるとどうなるんでしょうか」と尋ねられまして、とてもお答えできることじゃないんですけれど、ひとり住まいのそういう方がそういうことを何となく頭に入って、誰かに聞かずにはいられないというような時代になってきていると思います。
それと、先ほど河野委員おっしゃいましたように、やはりいままでは、株式にまさに手を出すということについて、何となく、後ろめたさというとおかしいですけれど、何となくという面があったのですけれど、それも少しずつ確実に変わってきていると思います。私どもの会員が、子供、といってももう成人ですけれど、自分で株式を持たなくてもいいから、少なくとも新聞をとっているのだから、株式の欄を見て、世の中どう変わっているのだということぐらいは見るようにしなきゃだめだよと言われて、愕然としたと言っている人がありました。
それから、私の周りの、普通の、別に消費者団体に関係している人ではないですけど、友達で株式についての勉強会というものをあれして、そんな大きなリスクはとても持てないけれども、ささやかなところでやはりやっていこうと思うというような人があらわれて、しかも、それをちゃんをみんなの前で、こういうことを始めるのよということを言っている人が出てきているというのは、確実にその動きは出てきていると思いますので、初めに申し上げましたけど、やはりそういうところへの税制を含めての問題というのは、きちんとこれからやっていかなければならないと思います。
それともう1点は、昨年の中期答申も含めまして、私はいま所得格差が開いているのではないかということを私の実感として申しておりまして、その前後から、いや、そうじゃないんだと、所得格差が開いているという短絡的な見方は間違っているということがあり、それから確実に開いているというような、いろいろな学者の方の御意見もあり、それからいろいろな出方がしておりますけれど、私自身は別にどちらが正しいかという判断がすぐできる問題ではないと思いますけれども、やはりその辺のところもこれからの税調の1つの課題として、いろいろなデータを示していきたいと考えております。
〇水野(勝)委員
先ほどの本間先生のは、私、本間先生とは全く基本的には同じでございますけども、実物投資のほうへのまず政策がある。それは両方重要ではないかということを申し上げたかったわけでございます。
それから、もう1つ、金融資産課税を検討するというときに、いまちょっとお話がございましたペイオフとの関係で当然問題になるのは郵便貯金でございますが、これをどのように扱われるのか。全くリスクのないそうした特殊な金融形態があって、これが日本の貯蓄の2割、3割を占めるというそれについての点は、税制上でいえば老人マル優の問題しかないかもしれませんけども、そこも含めた検討もあるいはしてもいいのではないかという気もします。
〇石会長
ありがとうございました。
では最後、松尾さん、話を締めてください。
〇松尾委員
先ほど国会の審議過程に関する尾原主税局長の説明の中で、財政再建、財政構造改革について、宮澤財務大臣の御答弁を紹介いただいわけです。いまのお話によりますと、宮澤財務大臣の財政構造改革に対する並々ならぬ決意がやはり伺えると私は思いました。私もやはり財政規律がいま地に落ちているという問題意識でありまして、政府税調の再開に当たりまして、やはり財政構造改革について、政府税調として改めて勉強していく必要があると思います。これまで政府税調としても、たびたび財政のあり方については問題提起をきちんとしているわけですね。その上に立って考えていく必要がある。緊急経済対策は決まりましたけども、やはり目先の利得を最優先して根本的な解決を先送りする、そういうムードが出てくると一番困ると思うのです。景気回復を待って構造改革をやるという立場では、やはり改革はずるずる先送りされてしまう。国民の立場から見ますと、人気取りをねらった景気対策ではなくて、中長期的に日本を活性化させるような構造改革を期待しているわけですね。国民はやはり賢明であります。
ほかの外国でどういうことをやっているのか。万年財政赤字に悩んでいたイタリアなんかも、けっこう頑張っちゃって、相当歳出・歳入両面で厳しい政策をとったようでありますけれども、財政再建が実現しているんですね。その辺諸外国の動きもきちっと押さえておく必要があると思います。連立政権という政策上、どうも構造改革を先送りするような力学が働くのではないかということを私は非常に憂慮しております。この問題は非常に政局絡みになっていますので、扱いは石会長にお任せしますけども、そのような議論をする機会を設けていただきたい。よろしくお願いいたします。
〇石会長
諸外国の財政構造改革につきましては、財政制度審議会がかなり数年前からいろいろ海外調査もしてデータ、情報を集めております。それもおそらくお借りするということ、あるいは本間さん、島田さんも委員でございますから、いずれ税調でもその問題を取り上げなければいかんということは皆さん出ておりますので、そのタイミング等々については、事務局とお諮りして、いずれ議論にさせていただきたいと思っています。
12時をちょっと過ぎましたが、あと1、2分お借りしまして、今日のまとめと今後の日程等々についてお諮りをいたしたいと思います。
今日は非常に活発な御議論をいただきまして、ありがとうございました。久しぶりの税調再開にとりまして、グッドスタートであったと思っております。
そこで、当面しております課題は緊急経済対策で、おそらく政府がこれから、まあ政局絡みもありますけれども、進められる問題だと思いますけれども、我々政府税調としても、これまで議論してきた基本的スタンスというものがあるわけでありますから、そういうものと大きく逸脱しないようなことについては絶えずウォッチして、しかるべき何かルートを通じて、対応をしっかりしてくれというようなことを言う必要があろうかと思います。
我々としましては、今日何人かの委員から御意見が出ましたように、やはり申告分離一本化というのは2年後に来るわけでありまして、その後のあとのいうなれば資産所得課税、あるいは証券税制と狭く言ってもいいのですが、あるいは中里さんみたいに最近のファイナンスまで入れた大きな分野での金融課税、そういうことをやはり議論しなければいけないと思っておりますので、次回あたりで具体的な小委員会の設置形態なり、メンバーなり等々も含めて、改めてお諮りをさせていただきたいと、このように考えております。直接金融へどういう形で日本の1,400兆ある個人貯蓄を回していくかというような話がやはり軸になろうかと思いますが、そういう視点からこれから議論をしていきたいと考えております。
そこで、次回でございますが、極めて政治的にはいろいろな局面が流動化しておりますし、新内閣がどういう形で今後、税制改革も含め財政、景気をやっていくかわかりません。そういうことも頭に置きつつ、連休も近々まいりますので、5月中旬以降に次回はこの総会を開きたいと考えております。
それから、もう1つ、我々は水野(忠)さんをキャップにして法人課税小委員会を持っておりますが、先ほど今井さんからございましたように、連結納税についてもこれから本格的に議論しなければいけませんので、連休明け、5月からこの法人課税小委員会再開ということも考えておりますので、その審議状況をまた追い追い水野さんから御説明をいただきたいと考えております。水野さん、それでいいですね。
それから、総会終了後、しばらく記者会見というのは座長である私がやっておりませんでしたが、やはりいろいろな形で御要望もあるし、こちらも論点整理しておいたほうがいいと思いますので、今日以降、総会のあとも記者会見というのをさせていただく予定でおります。
予定したものはすべて終わりましたが、よろしゅうございますか。
〇松本委員
最後に出てきたものですから、ペイオフ関係なんです。やはり地方自治体として、公金問題の保証が何にも出ていないんですよね。我々は責任問題等もございますので、やはり公金問題だけはペイオフ関係でちょっと考えていただきたいというようなお願いでございます。
〇石会長
ただ、ここでやるかどうかですね。金融審議会もあるし、他の審議会もあるでしょうし、御意見は御意見として悩ましい問題は承っておきますが、取り上げるかどうか、それはまた事務局と検討させていただきます。
では、どうも長時間ありがとうございました。
〔閉会〕
(注)
本議事録は毎回の総会後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。
内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。