第49回総会 議事録

平成12年5月23日開催

加藤会長

時間がまいりましたので、税制調査会第49回総会を開催いたします。

税制調査会では、いま、「中期答申」のとりまとめをやっているところでありますが、その議論をいろいろいただきましたので、それを踏まえながら、さらに総会としての議論を進めていきたいと思っております。

お手元に1枚の紙がございまして、「総49-1」と書いてあります。これをごらんいただきますと、下に四角で囲んであるところがきょうやるところでございまして、いままで上のものをやってきた、こういう考え方でございます。

したがって本日は、カッコに囲んであるところ、「国際課税」、「法人課税」、「納税環境整備」、「税務行政」について議論をしていきたい、こういうふうに思っております。法人課税では、言うまでもありませんが、法人課税小委員会、それから、地方法人課税小委員会における審議も議論したいと考えております。

それでは、まず初めに、私が基本問題小委員会の小委員長を兼ねておりますので、概要を御報告いたします。

国際課税につきましては、有害な税の競争、移転価格税制等の国際課税の諸課題について、OECD租税委員会等の国際的な場での議論を踏まえてここで討議をいたしました。

法人課税につきましては、連結納税制度や会社分割にかかわる税制を中心とした法人課税小委員会における審議や、法人事業税の外形標準課税に関する地方法人課税小委員会における審議の状況について、報告を承りながら審議いたしました。

納税環境整備、税務行政につきましては、主税局から関連諸制度の諸外国との比較を中心に説明を受けました後、国税庁にも出席いただきまして、納税者数、申告件数、税務調査等の現状や、電子商取引、電子申告制度に関する取組み等について説明をしていただきました。また、税務局より地方税務行政について説明を受けながら議論いたしました。

こういうことで進めてまいりましたが、きょうは、個々の項目について事務局から説明をしていただこうと思っております。

その前に、まず、法人課税小委員会の小委員長であります石委員から簡単に報告をいただきたいと思います。どうぞお願いいたします。

石特別委員

法人課税小委員会は昨年7月に再開いたしまして、その後6回ほど会合を開きました。我々のテーマは、連結納税と会社分割にかかわる税制でございます。当初は、連結のほうがもっぱら頭にあったのですが、その後、御存じのように商法の改正等々があり、会社分割税制が急遽出てきたということで、いま、両方を視野に入れて議論をしているところであります。

しかし、事の次第によりましては、会社分割を先行させなければいけないのではないかということで、そちらにややシフトした考え方でやっています。そして、ドイツとかフランスとかアメリカにも調査団を派遣いたしましたので、そういうことの報告を整理、かつ、その中で議論しながらまとめているところであります。

主要なテーマは連結納税と会社分割でありますので、いま、どんなところまでいっているかということを簡単に御説明いたしたいと思います。

御存じのように、連結というのは、単体でありました法人活動を、グループでまとめて企業活動をとらえようという形で行われてきたわけであります。例の独禁法の改正とか、分割法制等々、商法も出ておりまして、持株会社などが出てきたということも踏まえまして、会社の経営形態が大きく変わってきたわけです。

国際的に見ますと、グループでとらえようというのが主流でございますので、連結決算も出てきましたし、連結財務諸表もあるという中で、税制がそれにうまくフィットしなければいけないという意味で、グループ、企業集団としてどういうところに着目して税を仕組むかという点が大きな問題だと思います。

そこで、我々の到達したところは、いまアメリカで行われておりますような本格的な連結納税制度を日本に入れるべきだということで、鋭意、そのほうで努力をしているわけであります。逆に言えば、損益通算を簡単にしてしまうような簡便的なものではなくて、連結課税所得を計算し、それに税率をかける形のものであります。

私自身、アメリカに行って幾つか見聞してまいりましたけれども、一言でいいますと、やはり大変です。連結所得を計算するというのも、個別の親会社、子会社の所得をすべて合算したあとで内部調整をかなりした後ということでありますから、そう簡単でないことは十分承知しております。

問題は、アメリカは1920年代から導入して、もう70~80年、歴史があるわけです。その中でも、連結納税とはいいつつ、連結の姿ができてしまったときに、トータルでたった一つの単一体として見るか、それとも、一緒にはしたが、企業集団の個々の特性を見るか、つまり、くっつきあった個別の企業のほうまで配慮するかというあたりも、これは哲学論争でありまして、意見もかなり分かれているようであります。

これはどういうことが重要かといいますと、連結納税を本格的にやるには単一納税でいいわけです。もしくは、単体でその企業グループをまとめてしまえば。しかし、個別の企業までおりていきますと、軽減税率があるような中小の法人まで入ってきたときに、税率を少し分けてみるかとか、いろいろな意味がそこに込められております。

何やかや言っても租税回避のために連結が使われては困りますので、その辺をどう防ぐかというあたりを一番関心にしております。あと税収減の問題も、いろいろな国の事情も踏まえつつ、どうやっていくかというあたりもこれからのテーマだし、それから、持株比率は、フランスが95%、アメリカが80%ですが、それを高める方向でいったほうがいいのではないか等々いろいろな議論があろうかと思います。これから内部を詰めていきたいと思います。

分割のほうはいろいろなケースがあって、アメリカのケース、ドイツのケース、フランスのケースとございます。分割で何が重要かといいますと、企業というのは、いま、国際競争力にうちかつために、生産性の高い企業を分割して外に出してもうちょっと育てようという考え方もあるでしょう、あるいは、赤字で困っている部分を切り離して、分社化するということもあるでしょう。

そういうときに必ず資産の譲渡が行われます。資産の譲渡というのは原則課税です。ただ、原則課税というのをいつまでもやっていますと、企業分割を阻害する。企業分割税制というのは、本来的に企業分割をすることが仮に認められた場合には課税繰延べをしてやろうというわけですから、本来的に企業分割の理由がはっきりしている。その理由をどうとらえるかというあたりが非常に難しい。仮に分割を認めた後ならば、資産を帳簿価格で譲渡するならば、課税繰延べをしてもいいではないかという話がドイツあたりにもありますので、そういうことをこれから詰めていきたいと考えております。

さはさりながら、これもまた租税回避の手段に使われる可能性が十二分にあるわけです。したがって、分割をどういうねらいでやるかというときの、例えば本来のビジネスとしてやるという条件をしっかり満たしているとか、あるいは、分割した後もその企業が株をしっかり5年間持っている必要があるとか、いろいろな制約があろうかと思っています。

そういうわけで連結と併せて会社分割にかかわる税制を、目下、技術的・専門的な視点から整理しているということでありまして、これから、ドイツ、フランスの調査報告、あるいはアメリカでの結果等々をまとめる仕事を鋭意進めていきたい。後で企画官からやや詳しい御説明をいただくのではないかと思います。

地方法人課税のほうは、後ほど発言させていただきます。

加藤会長

ありがとうございました。

それでは、藤田主税企画官、簡単に説明をお願いいたします。

藤田主税企画官

お手元の「総49-2」という検討項目を記した4枚紙、それから、「総49-3 法人税・国際課税関係説明資料」という二つの資料を並べて置いていただきまして、御説明させていただきたいと思います。「総49-3」の資料は、これまで法人課税小委員会あるいは基本問題小委員会に御提出した資料を抜粋したものでございます。

まず、目次の後の1ページ目ですけれども、法人所得課税の実効税率の国際比較でございます。ここでごらんいただきますように、我が国の法人所得課税は、10年度改正・11年度改正を経まして、実効税率40.87%ということで、ごらんいただきますように諸外国と比べて遜色のない水準に達しています。特に国税の法人税で見ますと、基本税率30%ということで、ごらんの国の中ではイギリスと並んで最も低いレベルになっています。付言いたしますと、この10年度改正のときには課税ベースの適正化を併せて行っておりますけれども、11年度改正では税率のみ引き下げたということでございます。

2ページ目は、法人税率の推移でございます。説明は飛ばさせていただきますが、シャウプ税制以来、税率を引き下げたり、所得税とのバランスをとって税率を上げたりしたことがありましたけれども、最近では、30%という過去最も低い水準になっているということでございます。

3ページ目、課税ベースの適正化につきましては、法人課税小委員会、これは平成8年11月に報告をいただいたものでございます。そこで検討を深めていただいたわけですけれども、そこでの検討の視点の部分を抜粋させていただきました。3ページと4ページでございます。七つほど視点がございまして、「()費用、収益の計上時期の適正化」「()保守的な会計処理の抑制」「()会計処理の選択性の抑制・統一化」等々、この視点から検討をしていただいた。

5ページは、38項目、ごらんのような項目について検討が行われて結果をいただいたということでございます。この中の19項目につきまして、平成10年度の改正で見直されたところでございますし、今年度の改正でも、例えば外貨建債権債務とか、金融派生商品のところについては、時価法との関連で改正を行わせていただいております。

課税ベースの問題につきましては、その適正化に向けて取り組むことが必要ということで、毎年、答申をいただいております。

6ページは、10年度改正で課税ベースの適正化が行われた項目のリストでございます。はしょらせていただきます。

7ページは我が国の法人の概要を帯グラフにしたものでございます。平成10年の国税庁の統計からとったものですが、全法人が約251万社、そのうち67.3%に当たる約170万社が欠損法人である。それから、資本金1億円超の大法人は1.6万社ありまして、0.6%なのですが、下にまいりまして、実はこの0.6%の会社が所得金額の67.2%を占めているという実態でございます。

中小法人は、右の7.9%と書いたところが、軽減税率はいま22%ですけれども、軽減税率800万円と基本税率両方適用になる中小法人。それから、24.1%が800万円以下でありまして、軽減税率のみ適用の中小法人、こういった法人の内訳になっておりまして、いかに中小法人の割合が高いか、赤字法人の割合が高いかというところが見てとれるのではないかと思います。

8ページは、欠損法人の割合の推移をグラフにしたものです。景気の影響によりまして、特にバブルの崩壊後、その割合が上昇していることが読み取れるのではないかと思います。

9ページは、租税特別措置等の整理・合理化でございます。去年11月にいただいた答申をつけさせていただいていますが、これは毎年の答申で御指摘いただいている事項でございます。租税特別措置につきましては、税負担の公平・中立・簡素という税制の基本理念の例外である。したがって、政策目的が合理的か、政策手段として妥当か、利用の実態が低調となっていたり、一部の者に偏っていないか、こういった点から十分吟味を行い整理・合理化を行うことが適当だという答申をいただいております。

10ページにまいりまして、検討項目の「企業組織再編と法人税」という部分ですけれども、いま石先生から御紹介ありましたように、法人課税が直面している大きな問題は、会社分割、連結といった企業組織等に関連する法制に対応する税制改正等々が求められているところでございます。

そこに入ります前の一覧表は、独禁法とか、商法とか、企業会計とか、企業組織に関連するこういった法制が最近どのように変わってきたかというのを一覧表にしたものでございます。

まず、独占禁止法等のところをごらんいただきますと、平成9年12月に持株会社の設立が解禁されたという動きがございます。商法のところにまいりますと、平成9年10月に合併手続の簡素合理化がなされた。あるいは昨年の10月ですけれども、株式交換・株式移転制度の創設がなされた。それから、まさにいま国会で審議中ですけれども、会社分割法制の創設を含む商法改正法案が国会に提出されているという動きでございます。一番右端の企業会計のほうでは、連結財務諸表制度の抜本的な見直し、金融商品に対する時価評価の導入という動きがございます。

この中にカギのカッコで書いています、例えば「<株式交換に係る課税の特例>」とか、「<金融商品に対する時価評価等の導入>」、これにつきましては税制上も対応させていただいているところでございます。

会社分割についてまず御説明申し上げます。11ページが、ちょっと複雑でございますが、いま国会に出てされております商法等の一部改正案におきます会社分割の形態の概要でございます。この会社分割法制、実は、昨年の産業競争力会議で速やかな国会提出が必要だということで法務省も検討を急ぎまして、この国会に出ている状況であります。さらに、税制のほうでは法人課税小委員会で検討していただいているところでございます。

中身を簡単に御説明申し上げます。新設分割、吸収分割という縦に見ていただきますと、もとあった会社の営業の全部または一部を分けるのですけれども、分けて新しい会社をつくるのが新設分割、ある既存の会社にくっつけるのが吸収分割でございます。さらに、それぞれが株を発行するのですけれども、ここで言うと、A社の株主に交付するやり方ともとの会社自身に交付するやり方で、分割型、分社型というふうに分かれます。人によっては、分割型のことを人的分割、分社型のことを物的分割と言う方もおられます。

さらに、注に書いてございますように、この二つの組合せみたいなもの、株主にも株を交付するし、会社にも交付するという中間形態も認められるそうでございます。こういうように形態が多岐に渡ることを頭に置いていただきたいと思います。

それから、12ページは、そういった商法ができているわけですけれども、我々、税制を検討するに当たりまして主な検討の視点を四つばかり挙げさせていただいております。

まず、よその会社にくっつけるという形態もございまして、合併に似たような形態がある。あるいは子会社化するような形態もあるということで、合併とか現物出資等、資本等取引にかかる課税のあり方とどういうふうに整合性をとっていくのだろうかという視点が第一です。

それから、株を株主なりに配りますので、そのときの株式譲渡益課税、みなし配当課税、こういったところに対する適正な取扱いをどう確保していくのか。当然、所得税などにも関係してくるわけでございます。

第三は、13ページでございますけれども、納税義務・各種引当金、税法にはいろいろな引当金がございますけれども、そういった意義・趣旨を踏まえて適正な税制措置のあり方を考えていかないといけない。いろいろな税制上の措置を一つひとつ当たりまして、分割が起こったときにどういう課税の取扱いになるのだろうか、ということを考えていかないといけないということでございます。

最後に、言わずもがなでございますが、いろいろな形態がございますので、租税回避の防止に使われないように法制上万全の措置を講ずる必要があるということでございます。

我々、企業会計の動向、商法会計の動向、そういった具体的な取扱いの検討も踏まえつつ、13年度の税制改正においてこれに対応すべく検討を進めているところでございます。

14ページ以下ですが、連休前に、法人課税小委員会の神田先生と吉牟田先生がドイツ、フランスに行ってこられまして、会社分割、あるいはフランスは連結納税もですが、お調べいただいたその概要をおつけしております。

簡単に御説明申し上げますと、ドイツでございますが、先ほど石先生からお話しいただきましたように、分割会社における課税はどうなるのだ、原則、移転資産の譲渡益に対する法人税は課税だと。ただ、下のフローチャートをごらんいただきますと、「独立事業要件を満たす場合」。これはTeilbetrieb と書いていますが、組織的に独立したものとして区分できる事業、これを満たす場合で、分割会社に対価として金銭等の交付がされていない場合、さらに、分割会社が移転資産の価額を帳簿価額とした場合、この場合には課税関係は課税繰延べになる。そのほか、これから外れていくと、原則どおり移転資産については譲渡益が課税される、こういった制度になっているということでございます。

15ページは、新設・吸収会社、受けるほうの課税の関係、それから、株主の関係について書いております。こちらは時間の関係で省略させていただきますが、特に株主のほうは、株で受ければ株の部分は課税の繰延べができる、お金で受けた部分については課税の繰延べはできないということになっております。

フランスもよく似ておりまして、原則は、分割会社においては移転資産の譲渡益課税。ただ、フランスは大蔵省の承認というのがありまして、承認があれば繰延べできるというのがかつての原則でしたが、最近、承認が必要ない場合として、三つ要件が書いています。独立事業要件をみたすとか、株式を3年以上保有するとか、帳簿価額を基礎に将来課税できるとか、こういった要件がある場合には、承認が必要なく課税の繰延べができる制度になっているということでございます。

受けるほうの会社、株主における課税の関係はドイツと同様でございますので、省略させていただきます。

18ページですけれども、昨年、「法人課税小委員会において、具体的な対応を検討することとしています」という御答申をいただいております。

それから、19ページ、連結納税制度と連結財務諸表制度のイメージ図をお示ししております。よく「連結」という言葉が頭につきますので、似たような制度だと言われるのですが、例えば連結する対象とか、特につくる目的も違いますし、連結する対象の取引も異なっているということで、似て非なる制度だというふうに考えております。

点線で囲ってあるのは連結財務諸表制度でございますが、国内も国外も子会社、しかも基本的には50%以上、さらには実質的な支配力基準等々がございまして、例えば20%の関連会社なども連結の対象に含まれるわけでございます。

片や連結納税制度のほうは、フランス、アメリカもそうですけれども、国内の会社であり、かつ、アメリカは持株比率が80%以上、フランスが95%以上になっております。

20ページにまいりまして、諸外国の企業集団税制、石先生からもご紹介がありましたけれども、大きく分けましてフランスとアメリカが本格的な連結納税制度でございまして、12年度の答申で、アメリカ型の本格的な連結納税制度が適当であるという御答申をいただいております。ドイツ、イギリスは、損をグループ内で振り替えるという損益振替型と呼んでいる制度でございます。

さらに、アメリカ、フランスですけれども、簡単に課税のやり方を申しますと、単体でまず一度課税所得を計算し、単体を合算する前にそのレベルで一度調整を行う。引き算するものは引く、足すものは足すということを行いまして、さらに単体を合算する。合算した後、連結全体で、例えば寄附金の枠がどうだというようなことを見まして、アメリカなどはそこから全体で寄附金の控除をする。その後、税率をかけるという仕組みになっているようでございます。

21ページでございますが、法人課税小委員会で夏以来御議論いただきまして、「連結納税制度に関する主要検討項目」というのをとりまとめいただいております。ここには大きな項目8、中項目24を掲げておりますけれども、この下に小項目が59ございまして、広範な論点が示されています。いずれにしても、いまは課税単位は個々の法人ですけれども、そこに企業集団を課税単位とするという税制を導入することで、その整合性等々多岐にわたる検討項目があるということでございます。

22ページ、23ページは、昨年の12月に連結納税制度に関していただいている答申でございます。省略させていただきます。

それから、「総49-2」の資料では三つ目のマルになりますけれども、「事業体の多様化と法人税」と書いてございます。24ページの資料ですが、法人のとらえ方ということでございます。いま、法人税法ではこういった法人の区分がなされておりまして、それぞれ課税上の取扱いはごらんのようになっております。いろいろな種類があるということで、制度を考えていく上でこれらの法人の性格を十分考慮して課税のあり方を考えていくべきでございますけれども、実は、法人税法には法人の定義という
のがございませんで、民法とか商法等の私法上の法人の借用概念になっております。

ところが、25ページでございますが、これは、いろいろな事業体が事業とか投資の運用をしたときに、どういう課税になっているかというのをイメージ図であらわしたものです。一番上がいま24ページでごらんいただいたような法人で、この段階で法人課税をして、残りが株主等に配当されるということですけれども、真ん中のところ、SPC(特定目的会社)、投資法人、特定信託、流動型信託等でございますけれども、金融の自由化等もあって出現してまいりました。

こういったものが活動した場合にどういうふうに取り扱うのか。例えば、特定信託というのは法人格がないわけですけれども、こういったものをどう取り扱うかという議論がありまして、この段階では法人課税をするのが原則ですけれども、「90%以上投資家に配当する」などという要件を満たす場合には、実質的にこの段階では課税せずに投資家の段階で課税をする、といったような導管的な取扱いをするものが出てきたということでございます。

さらに、国際課税の関係にもなりますけれども、我が国にはないような事業体が出てきて我が国で事業活動や投資活動を行うとか、逆に、我が国の企業なり個人が外国の事業体を利用する例等が出てまいります。投資や事業の主体が多様化することが予想されるのですけれども、そうなった場合に、法人格のあるなしで決めるのではなしに、事業体の内容をよく踏まえて課税のあり方を検討しないといけない、という問題が出てきているのではないかということです。

26ページは、日米の事業体にかかる課税上の取扱いで、これも省略させていただきますが、アメリカは、経済実体、実質に目をつけている状況にあるということでございます。

27ページは、特定非営利活動法人、いわゆるNPOの課税上の取扱いを並べた表でございます。人格のない社団と同じ取扱いになっているということでございます。

28ページは寄附金に関する税制の概要でございますが、29ページをごらんいただきたいと思います。NPO法人に対する税制ですけれども、やはり去年12月に答申をいただいておりまして、ここでご指摘いただいているのは、いまは、どういう活動が展開されるのかまだわからない、まずはその実態を見極める必要がある。それから、優遇措置を考えるに当たっては、公益性を判断する基準なり公益を確保する仕組みが必要である。さらには、寄附金控除制度、公益法人税制全体のあり方、補助金制度のあり方にも関連する問題であることに留意する必要がある、というようなご答申をいただいているところでございます。

以上が法人税関係でございまして、続きまして国際課税関係について御説明申し上げます。「国際課税関係資料」という表紙がついております。「総49-2」は2ページ目をごらんいただきたいと思います。

国際課税の考え方ですけれども、大きく二つ挙げられます。そこに書いてございますように、国際的な二重課税の排除、課税権の確保でございます。課税というのは、納税義務者の居住地、課税対象となる所得の源泉地を基準としますので、クロスボーダー取引が行われたときには課税権が競合する。したがって二重課税を避ける必要があるというのが一つ目のマルでございます。

逆に、ある所得がどこの国においても課税されない場合、例えばタックス・ヘイブンにペーパー・カンパニーを置くことで課税を免れるような場合ですけれども、こういったときに二重課税の排除を行いながら課税の空白を防止して、自国の適正な課税権を確保する、というのが二つ目のマルの内容でございます。

31ページは、それぞれに対してどういったルールが設けられているかということでございます。一言でいえば、国内法と国際課税ルールとあるのですけれども、先ほどの二重課税の排除でいけば外国税額控除制度というのが用意されている。それから、課税権の確保ということになれば、外国法人課税、移転価格税制、過少資本税制、タックス・ヘイブン税制という制度が用意されている。

さらに国際課税ルールで申しますと、二重課税の排除、課税権の配分、税務当局間の国際協力という観点から租税条約が結ばれ、あるいはOECDで条約のモデル等が決められている、こういった国際課税ルールも重要な役割を果しているということでございます。

こういう国際課税をめぐる環境の変化はこれまでの小委員会等でも御説明してまいりましたけれども、企業の事業形態が多様化するとか、経済活動が一層国際化している、あるいは、情報化というのでしょうか、電子商取引の普及に始まりまして、いろいろなサービス取引の増加がある。それから、金融その他のサービス活動に対する優遇措置の導入による、有害税制の競争という問題点が指摘されている状況がございまして、そういう環境変化を背景にして、国際課税の主な検討項目として考えられるのがこの資料の六つのマルでございます。

まず、「事業形態の多様化への対応」です。これは、先ほど法人課税のところで若干申し上げたのですけれども、43ページにポンチ絵がついています。海外の事業体が日本で、その事業、運用を行って収益を得るという場面を想定しているわけですけれども、事業体には法人格のあるもの、法人格のないものがあります。ある所得が事業体に支払われる場合の納税義務を考えるときに、この所得が帰属する主体を、国内税制上、どういうふうな主体と認識するのかということでございます。先ほど申しましたように、我が国のいまの税法では、納税義務者たる法人に該当するかどうかは法人格の有無で判定しているということでございます。

ところが、いろいろな事業体が出てきているわけで、例えば法人格がないけれども、取引をみずからの名で行っている、あるいは、経済取引の中で実体があると言えるものもあるのではないか。そういったときに、その事業体を納税単位とすることも合理的な理由があるのではないか、というケースも考えられます。さまざまな事業体の所得に対する課税を考慮する場合に、こういう事業体を課税単位と認識するかどうかについて、法人格があるなしで判断していいのかどうかという問題があるのではないか、という議論でございます。

二つ目の「国家間の課税ベースの配分」です。これにつきましては、例えば移転価格税制のようなものが用意されているわけですけれども、国際取引は複雑化しているというところで、取引内容をいかに把握するかというのが非常に困難になっているのではないか、という課題が生じているところでございます。

「外国税額控除制度」ですけれども、先ほど申しましたように、二重課税を排除するためにつくられている制度です。日本の法人が外国に支店を置いて外国でも所得を得る場合に、日本では外国の所得も含めて課税されるわけです。外国で課された法人税を、全世界所得に対する我が国法人の法人税から引くということですけれども、最近の問題としては、外国で納めた税が、外国税額控除で言う外国法人税と言えるのかどうかという問題が指摘されております。

四つ目のマルは、「高度化するタックス・プラニングへの対応」ですけれども、一つだけ例を見ていただきますと、45ページでございます。「不動産タックス・シェルターの例」と書いてございますが、個人投資家がパートナーシップに投資して、そのパートナーシップが建物等を購入するのですけれども、加速度償却ということで減価償却費が最初の年度のほうで非常にたちますので、その損失を投資家のその他の所得と通算することがアメリカで行われた。アメリカでは1986年にこれに対処する制度ができたわけですけれども、こういったタックス・プランニングが高度化してくる、これにどういうふうに対応していくのかという問題がございます。

それから、「執行上の困難性への対応」というところでございます。制度面での対応も重要ですけれども、執行上もかなり難しい問題が出てきている。執行当局も一生懸命対応してきているのですけれども、移転価格税制の執行などにつきまして、国際取引にかかる資料の入手をどうするのだ、そこら辺で困難性が増しているのではないかという問題意識がございます。

最後に、「国際的なルール作り・議論への積極的な参加」ですけれども、国際課税の問題について国際協調が重要だということで、我が国も有害な税の競争などにつきまして、OECDの場での議論に参加しているわけですけれども、33ページに、有害な税の競争の例を掲げてございます。各国が金融などの逃げ足の速い産業への優遇税制を設けるという有害な税の競争が問題視されているということで、1998年にOECDで報告書がとりまとめられて、いまもそのフォローアップ中でございます。こういった国際的な場におけるルール作り・議論に、我が国も積極的に参加していくことが重要だろうと考えております。

説明は以上でございます。

加藤会長

ありがとうございました。

それでは引き続きまして、外形標準課税について、武田府県税課長、よろしくお願いいたします。

武田府県税課長

お手元に「外形標準課税関係資料」及び「参考資料」ということで、2種類、資料を配付させていただいております。関係資料「総49-4」のほうで御説明させていただきたいと思います。

ページをめくっていただきまして、1ページからでございます。「外形標準課税の意義」として、昨年出していただきました小委員会報告より作成いたしておりますが、四つの意義を整理いたしております。

地方分権を支える安定的な地方税源の確保ということで、法人事業税の外形標準課税の導入は、税収の安定性向上とともに自主性を高めることから、地方分権を支える地方税体系の構築に重要な役割を果たすことが期待されるという点。

二つ目として、法人の事業活動と地方の行政サービスとの幅広い受益関係に着目して課されることから、本来の応益課税の性格の明確化を図る、こういう観点も重要であるという点。

それから、応益原則による地方税負担を薄く広く、公平に分担するということで、税負担の公平性の確保につながるという点もございます。

四つ目として、外形標準課税の導入は、所得に係る税負担を緩和することとなり、より多くの利益を上げることを目指した事業活動を促し、企業経営の効率化、収益性の向上、経済構造改革に資することが期待できるという点もございます。

そういった意義を踏まえまして、2ページ以降、具体的に地方法人課税小委員会で示していただきました四つの外形基準の類型につきまして、いろいろ御審議をいただいたわけでございます。

まず、[1]類型として事業活動価値というものでございます。これは、出資をした株主等への分配・剰余ということから、利潤。労働を提供した者への分配ということで、給与総額。資金等を貸した者への分配ということで、支払利子。土地等を貸した者への分配ということで、賃借料。こういった四つの生産要素に対する対価を算定して、法人の事業活動規模を表そうというものでございます。

3ページは、今回御審議いただきました中で、一つのポイントとなります金融取引についてどう考えるかという点でございます。ここにございますように、金融取引は、貸し手から借り手への金銭的価値の移転を行う取引であり、利子は金銭の時間的価値と考えられるのではないか。したがって、金融取引は、仲介機関が存在しない場合には付加価値を生み出さない。逆に、仲介機関が存在する場合には、その仲介機関が仲介サービスを生産し、付加価値を生み出しているというふうに観念できるのではないか。そして、その場合のサービスの対価としては、「(貸付先からの受取利子)-(預金者に対する支払利子)」、いわゆる利ざやと考え得るのではないかという点を御審議いただきました。

4ページにそれのポンチ絵をつけてございます。金融取引、これは銀行業が仲介業務を行うわけでございますが、預金者から預金を受け取りまして、それを一般の企業に貸付をするということでございます。この際、利率Xというのが、「注」にございますように、銀行が仲介しない場合の通常の利子率と仮定しますと、預金を預かる場合、「X-a」%という利率で預かり、貸付する際には「X+b」%ということで貸付をする。この貸し付けられた資金が、製造業法人におきまして生産要素としての資金活用がされる。こういうことによりまして付加価値を生み出すということであろうかと思います。銀行仲介業務におきましては、利ざや分、すなわち「a+b」%が、銀行における生み出された付加価値と考えることができるのかなという資料でございます。

5ページは、しからば利ざやを事業活動価値の課税対象としてどう考えるかということでございますが、左は利ざやを事業活動価値に算入しない場合、右は算入する場合でございます。左のほうで見ていただきますと、「資金運用収支に係るもの」というのがいわゆる利ざやでございますので、資金運用収支に係る業務純益、営業経費、こういったものが抜けてしまう。業務粗利益の8割以上を利ざやが占めておりますので、それが抜けてしまう格好になります。右のほうは、利ざやを事業活動価値の対象にする場合でございまして、8割分は課税対象になるというものでございます。

6ページに、都銀における業務粗利益の内訳をつけました。81%が資金運用収支、いわゆる利ざや収入でございます。

7ページは、業種別事業活動価値の構成イメージで、左に製造業の法人、右に銀行等の場合を入れました。中ほどの大きな斜線で「資金調達費用(支払利子)」というのがございます。この課税関係についてどのように考えるかという点も御議論いただきました。網かけをしておりますところは、一般の企業でいきますと、労務費、人件費、給与部分、支払利子、賃借料、利潤、こういったものを算定するわけでございますが、銀行の場合、人件費や賃借料あるいは利潤というのは、網かけしてございますが、この支払利子の部分をどう考えるかという点を御議論いただきました。

資金の貸付を受けて生産活動を行う企業の場合には、その支払利子が事業活動価値を構成すると考えられるわけでありますが、銀行業の場合には、資金を調達し、それを転貸するわけでございます。自ら生産要素として使わない資金に対する支払利子、例えば預金者に対する支払利子等については、課税対象としないことが適当と考えられるのではないかといった点を示した図でございます。

8ページは、同様の構造を持っております不動産貸付業の場合でございます。これも賃借料のところに斜線を引いてございます。不動産の貸付を受けて生産活動を行う場合(一般の企業の場合)は、その賃借料が事業活動価値を構成すると考えられるわけでございますが、不動産貸付業のように、不動産を借り受けそれを転貸する場合、すなわち転貸用建物の支払賃借料につきましては課税対象としないことが適当なのではないか。

ただ、一方で、借り上げました自己のオフィスに対する支払賃借料、こういったものは不動産貸付業が自ら生産要素として使う物件であるということで、これについては課税対象とすべきではないかという考え方があることを示しているものでございます。

9ページでございますが、利潤というものも事業活動価値の構成要素でございます。これについてどのように考え方を整理するかという点を御議論いただいております。左に売上高というのがございますが、ここから売上原価を引いたものが売上総利益になります。この中に販売費、一般管理費等の経費が含まれておりますので、これを除きました営業利益、これが全国ベースで25兆円程度ございますが、この営業利益にさらに営業外の損失を加えたものがいわゆる経常利益。それにさらに特別の損失を加算・減算したものが、一番右にございます税引前当期純利益になるものでございます。

次のページに、具体的に営業外の収益・費用、あるいは特別利益・損失、どういうものが含まれているかというのを掲げてございます。例えば、キャピタル・ゲイン、キャピタル・ロスについてどう考えるかという点がございまして、事業活動価値の利潤の概念に含めないことも考えられるわけでありますが、担税力という観点から利潤の概念に含めることも考えられるのではないか、そういった考え方もございます。

11ページは、事業活動価値と付加価値とを比較したものでございます。三つの会社、A社、B社、C社と書いてございますが、例えばA社の支払賃借料・A2というのがございます。それから、支払利子・A3というのがございます。これがB社に対しての支払いであると考えますと、B社の収入の中で、同じ額でありますが、受取賃借料、これがA2'、受取の利子がA3'ということで、それに相当するものがA社、B社間にございます。

こういったものが付加価値の計算、国民経済計算上はだぶらないように控除する、そういう調整を行っているわけでございますが、事業活動価値として各企業の活動規模をどうとらえるかという観点から、この辺をどう考えるかという点を御議論いただきました。例えば、利潤を法人税法上の所得とした場合には受取賃借料、受取利子が含まれてくるわけでございますが、これを控除しなければならないとの考え方がある一方で、事業活動価値の算定に当たっては、利潤を法人税法上の所得として割り切ることとしてもよいのではないかといった考え方もございました。

12ページは、事業活動価値における申告イメージです。四つの要素を足すということで、それぞれ関係の書類等、できるだけ既存の資料を活用しながら申告していただくというイメージをつけてございます。

13ページが、第2類型の給与総額でございます。これは、法人の人的活動量を反映しているという考え方でございますが、事業活動価値の7割、大宗を占めるという観点もございます。さらに、給与総額に所得基準による課税と併用させる考え方をとりますと、「事業活動価値に近似する仕組み」との位置づけができるのではないかという観点がございます。

14ページ、事業活動価値の内訳をごらんいただきますと、給与総額が7割強、利潤、支払利子、賃借料がそれぞれ1割前後という内訳になってございます。

15ページは、給与総額の場合の一つの論点として、福利厚生費、フリンジ・ベネフィットをどうとらえるかという点がございます。どこまで課税対象としていくのか。ここに、法定福利厚生費、法定外の福利厚生費、いろいろと例を挙げてございます。ある程度簡素な仕組みをとる工夫は必要であると考えられますが、例えば四角で囲ってございますところは、退職給与に関して課税対象とした場合に、退職金のかわりに企業年金を実施している法人との整合性をとる必要があるのではないか、こういった考え方もあるところでございます。

16ページは、給与総額を使った場合の申告イメージを出させていただいております。

17ページは、第3番目の類型、物的基準と人的基準の組合せでございます。人的基準をあらわす給与総額に加えまして、物的基準をあらわす事業所の床面積などを組み合わせたらどうかという考え方でございます。このときの論点の一つは、物的活動量をあらわすときに、使用者に対して課税するのか、所有者に対して課税するのか、こういう論点がございました。

その点、18ページをごらんいただきますと、「現行の事業税における事務所・事業所の概念」ということで、中ほどの「六(1)」に、「事務所・事業所とは、それが自己の所有に属するものであるか否かにかかわらず、事業の必要から設けられた人的・物的設備であって、継続して事業が行われる場所」、こういう観念をいたしております。こういうことからすれば、使用者課税を原則とする考え方なのかなというふうにも考えられるわけでございます。

19ページをごらんいただきますと、物的基準、家屋床面積、資産の価格、減価償却費という例示をされておりますが、それぞれ建物であったり機械等ということで生産要素と関連いたします。また、事業活動価値で言うと、支払利子、賃借料に関連する生産要素という位置づけがあるかと思います。

家屋の床面積につきましては、使用者課税を前提とした場合の特徴でありますが、所有者と使用者が異なる場合でも課税庁としての把握はある程度容易である。また、一たん決まれば変動性はそれほど大きくないという特徴がございます。資産の価格、減価償却費につきましては、所有者、使用者が異なる場合はその把握に制度上の工夫が必要になってくる、また、変動性がある程度大きいのではないかという特徴があろうかと思います。

20ページに、[3]類型、物的・人的基準の組合せの申告イメージをつけさせていただきました。

21ページは、[4]類型ということで、資本等の金額。これも、資本等の金額を直接の課税標準とするのではなく、事務所の数、従業者数、こういったものを加味し、さらに所得基準、他の外形基準との併用が小委員会報告でうたわれているところでございます。

22ページには、その申告イメージをつけさせていただきました。

23ページ以降につきましては、東京都の銀行業等に対する課税の中で業務粗利益という概念も出されました。それとの関連で、一般企業における同様の考え方でいきますと、売上総利益(粗利)がどうとらえられるべきかということも検証いたしました。その中で事業活動価値との比較をしたのが23ページでございます。売上高から売上原価を引いたもの、これが売上総利益という概念でございます。その中には営業利益、販売費、一般管理費、こういったものが入ります。

右の事業活動価値は四つの要素を足したものでございますが、右と左の違いを見ていただきますと、例えば事業活動価値は、売上原価の中に占める労務費、賃借料、こういったものが入ってまいりますが、売上総利益の場合には、売上原価の中の人件費、賃借料等は対象から外れるという点がございます。それから、販売費、一般管理費の中で、白抜きの部分がございますが、減価償却費、消耗品費等につきましては、事業活動価値の場合にはこれが対象から外れるという違いがあることを示してございます。

24ページは、売上総利益の大きさがどれくらいあるかというのを、平成元年以降、見たものでございます。事業活動価値に比べて、1割から2割程度上回っているという数字で推移いたしております。

25ページは、これまでいろいろと御議論いただきました四つの外形基準の特徴を整理した表をつけてございます。[1]の事業活動価値は、法人の人的・物的活動量を客観的かつ公平に示し、法人の事業活動規模をあらわすものとして最も理論的。また、各生産手段の選択に関して中立的。課税ベースが広く安定的。課税・納税事務の複雑化につながらないよう検討することが必要、という特徴があろうかと思います。

給与総額につきましては、人的活動量を示す、また、事業活動価値の7割が給与総額であることから、事業活動価値を代替するという位置づけもできる。また、所得基準との併用で事業活動価値に似ている仕組みという位置づけもできるということがございます。

[3]類型の場合も、相当程度総合的に事業活動規模をあらわしておりますが、さらに所得基準との併用により事業活動価値に似た仕組みという位置づけも可能ではないか。

また、使用者課税を前提とした場合の把握の工夫が必要かという点がございます。

四つ目は、資本等の金額。これは、ある程度事業活動規模をあらわしておりますが、資本等の金額それ自体はきわめて簡素な基準であるということがございます。納税事務負担等は少ないのではないか。ただ、それ単体で的確な事業活動規模をあらわしているかという点に難があろうかと思いますので、他の基準との組合せが基本ではないかと思われます。

参考までに、売上総利益というものをどうとらえるかということでありますが、課税ベースが広く安定的、また、企業会計上の位置づけは明確という点がございます。一方で、売上原価に区分するのか、販売費・一般管理費に区分するのか明確でないものが存在する。また、売上原価と比較して、販・管費の比重の高い業種の負担が大きくなることが想定される。こういった点が整理されているところでございます。

26ページは、改革に伴う諸課題ということで、そこに掲げてございますような点をいろいろと御議論いただきました。この中で、27ページ以下ございますが、中小法人への配慮方策として、四つの方式について御審議をいただきました。

28ページ、一つ目が軽減税率方式でございます。これは、一定条件を満たすものについて低い税率を適用するものでございます。現在ございます税目は右に書いてあるとおりでございます。

29ページに、軽減税率方式のイメージ図をつけさせていただきました。

30ページが、基礎控除方式。これは、課税標準から一定額を控除する方式でございます。この場合には、課税標準が大きくても常に一定額が控除されるという点がございます。イメージ図は右につけてございます。

31ページが、免税点方式。これは、零細負担を回避する等の理由から免税点以下のものは課税を行わないとするものでございます。イメージ図は右のとおりでございます。

最後の導入率変更方式。これは、一定条件を満たすもの、例えば1億円以下の中小法人につきまして、外形基準による課税の適用率を低くしようとするもので、激変緩和を図るという観点がございます。イメージ図をつけてございます。

33ページは、赤字法人の場合につきましてのイメージ図。

34ページは、相当額の黒字法人の場合にも、導入いたしますと、黒字の中小企業に減税になるケースを置いてございますが、これについてのイメージ図をつけてございます。

35ページに、各配慮方策の特徴を整理したものをつけさせていただきました。

36ページは、給与総額と利潤との関係で、他の条件等が変わらないとすれば、給与総額を増額いたしますと利潤が減少するという関係。37ページは、逆に、給与総額を減少すると利潤が増加するということで、事業活動価値の算定には変更がないという点を示したものでございます。

38ページ以下は、現行地方税法における課税標準の特例ということで、72条の19、東京都等の根拠規定になったものを示しているところでございます。その場合、39ページにございますように、他の地方団体の税収等に与える影響も示してございます。

最後に、40ページでございますが、外形課税をある団体が72条の19で導入した場合と、全国的共通に導入した場合を比較したものでございます。例えばA県、B県、C県、それぞれ課税標準を異なって導入しますと、3種類それぞれの企業全体の課税標準を積算する必要がございます。右のほうには、共通の課税標準でやりますと、企業全体の1種類の課税標準の積算をすれば足りるという点がございます。

なお、税率に差がある場合につきましては、分割後のそれぞれの課税標準に税率をかけるということでありますので、申告納税時にはそれほど増大しないと考えられているところでございます。いずれにしても、全国的共通の制度が望ましいのではないかという考え方でいろいろ御議論いただいているところでございます。

以上でございます。

加藤会長

ありがとうございました。

それでは、ここで、地方法人課税小委員長をやっていらっしゃいます石さんから、簡単に御報告をいただきます。

石特別委員

いまの御説明で、何をやっているかということはおわかりいただけたと思います。非常に複雑なことをやっています。技術的にも、データ上も、細かい点まで詰めたというのが今回の地方法人課税小委員会の特色ではないかと思います。昨年の夏、7月だったと思いますが、中間報告を出しまして、2月に再開いたしました。

その再開の意味は、4類型を出しっ放しであったわけで、それを仮に選択することを考えたときに、どんな条件、あるいは、どんな中身を詰めなければいけないかということを、再度、小委員会で詰めたというのが今回の経緯でございます。したがいまして、いま武田さんから御報告いただきましたように、四つの類型に従いまして、実際に申告するときにはどんなことを考えなければいけないかというところまで詰めたわけであります。たまたま2月に、石原新税なる銀行税が飛び出まして、粗利にかける銀行業の課税ベースは何ぞやということまで議論いたしました。いうなれば、四つプラス一つあった外形基準の中身を精査した、というのが今回の特色であったと御理解ください。

かいつまんで、どんな点に我々が留意したかという点だけ御説明いたします。先ほど藤田企画官が使いました「49-2」という4枚紙がございます。この3ページ目が地方法人課税小委員会における審議でございまして、1~5までの項目が並んでおります。これに従いまして、武田さんが、概略データを使って説明してくれたわけであります。

1の「導入意義」というのは、説明するまでもありませんので飛ばしますが、具体的な外形基準四つあったわけであります。それプラス売上総利益という粗利があったわけでありますが、その中で我々が何を主として議論したかと申しますと、理論的には事業活動価値が基本であろうということでは合意に達しました。

しかし、残りの、我々がつくりました給与総額、物的・人的の組合せ、資本金に対してという三つもまんざら捨てたものではなくて、簡便な方式としてあくまで選択肢の中に残すべきではないか。同時に、激変緩和の意味もございますので、古い基準であります利潤基準との併用は大いに考えるべきではないか。その比率をどうするかは議論の残るところでありますが、例えば、半分を古い基準の所得基準で、残り半分を事業活動価値にするとか、あるいは給与総額にするとか、この併用がいいのではないかというのが我々の委員会ではほぼ合意に達した、このように考えております。

先ほど幾つか実例がございましたが、銀行業とか不動産業というのはやはり特殊な事情がございます。銀行業等の払う支払利子とか不動産貸付業の支払賃借料といったものは、性格上、事業活動規模に入らないのではないかとか、キャピタル・ロス、キャピタル・ゲインの問題をどうするかということもずいぶん議論しました。本来、付加価値の概念からいたしますと、事業活動価値に含めないということもあり得るけれども、担税力を検討する意味においては、利潤の概念の中にキャピタル・ゲインも含めたほうがよくて、税負担の対象になるのではないかといったような議論も事業活動価値の中身を精査するときに議論いたしました。

それから、第2の尺度の給与総額であります。給与といっても、簡単に聞こえますが、先ほどの図にもございましたように、いろいろ附帯的な給与がございまして、退職手当を課税の対象とするならば、企業年金拠出金なんていうのもおそらく課税の対象になるだろうし、福利厚生費のところ、フリンジ・ベネフィットが幾つかございますか、あれもどこまで詰めるかというあたりも現実的には非常に難しい問題をはらんでいるということであります。

それから、物的基準と人的基準の組合せで、人的基準は給与総額でありますから、さっきと同じ第2の尺度になりますが、物的基準を入れるときには、家屋とか土地は使用者課税が原則ではないかということで一応議論いたしました。

東京都の出しました粗利につきましては、結構時間を割いて議論いたしましたが、銀行業という特殊な事情があるからあれが使えるのであって、具体的に詰めていきますと、売上原価と販売及び一般管理費の区別をするのが、例えば製造業と金融業では違いますので、企業慣行上いろいろな問題があるのではないかということも詰めました。

そういう形で売上総利益というのは一つの合意にはなるけれども、四つ、我々が挙げたものにかわり得るものにはならないのではないかというのが、我々の共通の了解事項であったと思います。

それから、「地方団体の課税の自主性」というのがメモ書の3にございます。これは、石原新税が使いました地方税法の第72条19、特定の地方団体が独自の課税ベースで外形かけてもいいよというところでございますが、これは、いま武田さんの説明にもございましたように、一つの特定の地域の特定の地方団体がかけると、他の地方団体に影響を及ぼす。こういうことをやるならばやはり全国共通のものとして導入すべきではないか、というのが我々の到達した共通の了解事項ではなかったかと思います。

今回の小委員会で特に我々が苦心しましたのは、仮に導入するとした場合、いろいろな環境整備が必要であります。税負担の変動が激烈であってはいけないから激変緩和にするとか、中小法人への配慮をどうするとか、雇用の配慮をどうするか等々議論いたしました。

その中でも、中小法人への配慮というのは、先ほど四つほど類型がございましたが、これにつきましては1回分、割いて議論いたしました。四つの中でも、基礎控除とか免税点方式よりは、税率を操作する、あるいは導入率変更のほうがいいのではないかというご意見が強かったように思います。

それから、導入率比率というのはいまの説明だけではおわかりにくいと思いますが、古い所得基準と新しい何らかの基準とを併用するときに、常識的には5対5。所得基準を5にして、残りを事業活動価値とか給与総額を5でやる場合でしょうが、そのときにおそらく問題になるのは、新基準の場合には赤字法人にかかりますので、導入の割合を、5対5ではなくて、8対2ぐらいにして、仮に2割だけ新基準にすれば、それだけ赤字の法人にかかる割合が少なくなりますので、一種の軽減にもなります。逆に言えば、黒字のほうの中小法人の有利性は縮小する、そういう組合せもあって、おそらく中小法人への配慮は導入率比率を使ってもできるのではないかという議論をいたしました。

最後に、その他で、全体として言いますと、外形課税に対して批判も当然強いわけでありまして、それに対して、やるからには、市町村合併とか、情報公開とか、地方のリストラをやってからではないかという強いことを言われる委員もございました。それに対して、これまでかなりの努力をしてきた、都道府県等々で真剣なリストラもやってきた、それはさらに進めるとともに、応益課税という原則を生かした外形課税は清々粛々とやらざるを得ないのではないかという、二つの相対立した意見があったこともご紹介しておきたいと思います。

以上であります。

加藤会長

ありがとうございました。

予定からまいりますと、あと、納税環境整備の問題、税務行政とあるのですけれども、説明が長引きましたので、これは次の機会に回しまして、ここで一応終わります。そして、あとは皆様方のご意見をいただこうと思います。

お手元に、きょう出席できないということで、栗田さんと森下さんの二つの御意見を配付しておりますので、それも御参考にしていただきながら御意見をいただきたいと思います。

それでは、どなたからでも結構です。きょうは、法人課税、国際課税でやりましたけれども、それ以外のテーマでも結構でございますから、御遠慮なくおっしゃってください。

松田さん、どうぞ。

松田特別委員

外形標準課税の検討というのは、何をやっているのかなと思っていたら、わりと真面目に詳細を詰めていたので安心した次第ですけれども、ちょっと石先生にお伺いしたいと思います。最後におっしゃった、変更割合の操作で何とかするというのは、赤字法人については新基準を2割にする、黒字のところは5対5でやると、そういう感じなのですか。

石特別委員

いいえ、違います。やるなら赤字とか黒字は考えておりませんで、一括、中小企業の軽減の意味を込めた調整で使うという一つの案です。大変真面目にやっていましたので、こういう案も一つ出てきたということです。

松田特別委員

しかし、それをやるとどうなんでしょう。同じ税収を確保しようとすると、中小ではないところはかえって増税になったりしませんか。

石特別委員

どういう基準をとるか、それから、トータルの縛りでレベニュー・ニュートラルでやるのか等々で税率も変わってきますよね。レーバー・インテンシブかキャピタル・インテンシブかという産業構造の違いで例えば給与総額をとれば、賃金を払っているところは課税率はふくらみますから、いろいろなところでデコボコはたぶんあるのではないですかね。業種ごとにもあるし、規模別にもある。

実は、仮の計算はしましたけれども、まだ表に出せるほどのことはやっておりませんので、そこも数字は精査しなければいけないと思っています。おっしゃるとおり、ある企業がそっくり旧基準から新基準になっても同じということはないでしょう。したがって、業種間あるいは規模別のばらつきをどう調整するかということが、実際の導入では重要な問題になってきますね。

諸井委員

本当に非常にしっかりと議論をしていただいたようで、最後に石小委員長が総括的におぼろげな方向をまとめておられると思うのですが、私は、基本的にそういう方向がよろしいような感じがしております。

問題は、外形標準課税というのは実現するタイミング、コンセンサスを得られるタイミングが難しいのではないかという感じがします。ただ、私としては、できれば今度の中期答申で、この方式で行くんだ、こういう軽減措置をとるんだという粗々の方角だけはしっかり示していただく。いつやるかということは、経済情勢とか政治的な判断もあるでしょうし、コンセンサスをつくった上でということだと思うのですが、そんなふうにしていただけるとありがたいと思うのです。あまり先送り、先送りしていきますと、いつまでたっても決まらないということになるのではないかと思うので、ぜひひとつお願いしたいと思います。

松尾委員

この外形標準課税の問題、基本小委でも相当論議の対象になっているわけですが、これまでも基本小委で出ましたように、税負担の帰属をどう考えて納税者をどう納得させるのかというのは非常に重要なポイントだと思うのです。グローバリゼーションが急進展している中で、外形標準課税が経済活動を阻害するのではないかという心配が産業界にはあるわけです。

具体的な問題点として、この4類型それぞれに産業界が反対している、その辺をどう考えるかということがあると思うわけです。例えば、基本的に合意されたといま説明がありました事業活動価値とした場合も、派遣社員、出向者の人件費、フリンジ・ベネフィットなどの現金以外の給与の支給、賃料の範囲の確定とか、デリバティブ取引はどうするのかとか、算定が非常に困難ではないのかという問題が産業界では指摘されているわけです。

物的基準と人的基準の組合せにいたしましても、先ほど、家屋床面積の場合、所有者と使用者が一致しない場合でも課税庁として把握はよいという御説明でしたけれども、共有・共用などの場合はどうするんだ、把握は非常に難しいのではないか、そういういろいろな問題点があるわけです。これは納税者をどう納得させるのか。果たしてできるのだろうかと、私などは疑問を持っているわけです。

さらに、海外の動きをどう考えるのか。ドイツでは98年に、同様の外形標準課税である営業資本税を廃止している。フランスの職業税は見直しています。アメリカのミシガン州でも昨年に単一事業税を廃止している。いずれも、大企業をねらい打ちしているとか、国際競争力に不利とか、投資阻害的であるとか、雇用阻害的であるとか、産業発展にとって大きな阻害要因になっているとか、そんな理由がつけられているわけですけれども、こうした動きをどう見るのか。石先生、御意見を聞かせていただけますか。

石特別委員

おっしゃるとおり、産業界を中心として納税者の方の説得が非常に重要だと思いますが、端的に赤字企業をねらい打ちというだけの狭い話ではなくて、産業構造、経済構造全体に、外形課税をかけたときには影響が出てくると思います。ただ、少なくともいまの利潤税的なものは儲かっている会社だけねらい打ちしているわけです。それが、今回、広く薄くなりますから、少なくとも黒字会社は歓迎だと思いますね。そういう面もございますから、これから幾つかの説明の仕方でよく納得してもらうべきことが幾つかある。

それから、松尾さんのおっしゃる事業活動価値の算定は難しいというのは、おっしゃるとおりです。そういうことをはっきりおっしゃる委員の方もいらっしゃいましたが、考えてみると、新税は悪税だから、新しいことをやると何でも大変、大変といいますけれども、本当を言えば旧税のものも大変なんですよね。いまある法人税でも、例えば消費税。売上が何だ、仕入が何だと、これまた大変なことをやっているわけで、結局は割り切りのところがいずれ出てこなければいけない。ただ、初めから割り切るというと、何か恣意性があって物差しがおかしいと怒られますから、とことんまで詰めて、いろいろなことをやって、努力をした後で、おそらくグレーゾーンとかが出てきたときには幾つかの割り切りも必要かなと思います。

最後に、海外の状況であります。たしかにおっしゃるとおり、ドイツ、フランス、アメリカ等々では、幾つかあった課税ベースの組合せから一個落とすというようなこともやっておりますが、これは、その土地、土地のいろいろな事情がある。ドイツは、東西ドイツと合併したときの資本税の問題とかがあります。これは、後から武田さんから御説明いただきますが、固有の地方税というのは、土地、国の固有の事情がありまして、海外は海外としてあって結構なのですが、我々として、海外が撤収しているからやってはいけないという話ではないだろうとは割り切っております。

武田府県税課長

ちょっと事実関係だけ御説明させていただいてよろしゅうございますか。いまお話がございました諸外国の最近の状況だけ簡潔に御説明いたします。

まず、ドイツでございます。法人所得に対する実効税率が48%を超えている上に、営業資本税が課税されておりましたが、旧東独地域には営業資本税が課税されていなかった、それが、統一によってそのバランスをとっていくというようなことから、営業資本税の廃止になったというふうに伺っております。

フランスでございますが、これも法人所得に対する税率のほか、地方の外形課税としての職業税が課税されておりますが、週35時間労働制の導入、こういう政策を推進する観点から、段階的に縮減を進めようということで、減収分については国が補てんをしているようでございます。職業税のうちの給与部分を段階的に縮減しようと。一方で、資産価値の分、固定資産価格の分は引き続き課税と伺っております。

アメリカのミシガン州のシングル・ビジネス・タックスは、いま景気が調子がいいということで、財政余剰の発生に伴う減税政策を実行するということで、毎年0.1%ずつ落として、23年間たてば税が廃止される、こういう状況でございます。ただ、その後の景気の動向等によりまして、財政調整基金が一定額を下回れば減税はストップするという歯止めがかかると伺っております。

イタリアでは、1998年度に州生産活動税として新たな外形標準課税が導入される。また、その他のところでも導入の検討がされているということで、石小委員長からお話がございましたように、諸外国でもいろいろな動きがあるのかなということでございます。

佐野特別委員

地方法人課税小委員会、検討のテーマというか、範囲が広いということだったのですが、先ほどの説明で、例えば法人住民税との関係。これを導入した場合、法人関係の地方税がいろいろあり過ぎるので、できるだけ集約してくれないかという意見も実は納税者側にはあるわけで、ここら辺の検討がどういうことになっているのかお聞かせいただきたいと思います。

それから、地方税としての特徴といいますか、地方税らしさを出すというのが一つの考え方になっていたわけであります。この4類型の中でどれを選ぶかということも、地方税としてどれがふさわしいかという基準がかかってくるということではあるのですが、どうも、4類型の分析とか精緻化にずいぶんご熱心だという印象を受けます。そのほかの、例えば税率をどうするかとか、あるいは、4類型の中でどれかを選ぶ、そのうちどれか一つというふうに国が統一的に決めるのか、それとも各自治体ごとに選択の可能性を残す、そういうケースも想定されているのか、そこら辺を伺いたいということです。

もう一つ、議論の経過を伺っていますと、パーフェクトなものをつくりたいというお気持ちがありありと感じられるわけであります。実は、パーフェクトなものは時間もかかりますし、それぞれに抵抗も強いということで、これを導入する以前に何か次善の方法はないものかどうか。例えば、現在の所得課税、法人税の所得基準をほぼそのまま使っているわけでありますが、事業税の所得基準に関しては、例えば繰越欠損は入れないと。事業規模、受益ということに照らせば、法人税のような繰越欠損を加味した所得計算は、事業税の場合、必要ないのではないか。つまり、本格制度の導入までに何かそういう次善の策が講じられないのかどうか、そこら辺を石先生、ちょっと伺いたいのですが。

石特別委員

地方住民税という議論は、議論の当初にずいぶんございました。ただ、法人住民税を大きく増税して、この外形に代わるものだというところまでは無理ですよね。税のロットというか、格というか、これが全然違うわけでありますから。ただ、住民税を上げなければいけないというのはおそらく一般的な提言としてありますので、外形課税を除いてもその議論は十分にあり得るべしと我々の小委員会では考えておりました。

それから、地方税らしさを出せ、だから4類型はどうかという話でございますが、これはいろいろ難しいですよね。どれをとっても説明はつきやすいとは思いますが、例えば第3類型の人的と物的というのは、ある意味では法人税らしいかもしれません。事業活動価値というのも、ある意味では地域の応益原則に合体している話としてきわめてうまく説明できるかもしれない。どれをとるかはこれからの判断のときのポイントだと思いますが、そこまでは詰め切っておりません。

それから、佐野さんの年来のご主張の、地方ごとに選択させたらいいではないかということ。これも十分あり得るのでしょうけれども、分割が前提となるような税を各地域でばらばらに、あるところは第1類型、あるところは第2類型等々やったときの税務行政の煩瑣というのは、おそらく耐えられないのではないかと思っておりまして、これについては我々は議論いたしておりません。同じ課税ベースで税率を選択させるということはあり得ると思うのです。ただ、課税ベースを各県に任意選択といったときの煩瑣なことは、ちょっと難しいのではないかと思います。

それから、パーフェクトなことは……目指しているというべきなのか、わかりませんが、我々、やや腰くだけになりまして、所得基準と併用していいではないかなどと言うのは、パーフェクトを目指していない証拠でありまして、これはけしからんという委員もいたんですよ。やるなら、100%フルに置き換えるようなことを目指すべきであるという勇ましい議論もあったのですが、だんだん時間がたつにつれて、これはかなり激変したときに受け入れられないのではないかという意味で、例えば併用なんていうのはパーフェクトでないわけで、かなり現実的に考えております。併用した後、将来的に完全に新基準にするという議論もたぶん残っていると思いますが、そこまではまだ議論いたしておりません。かなり真面目に、かつ現実的な対応を考えたつもりであります。

河野特別委員

自治省にお伺いしたいのですけれども、東京都で知事が地方税法を上手に読んだというか、何か知らないけれども、とにかく銀行税ができた。今度大阪府で、これは選挙のしこりがあっての話だと俗っぽく言われているけれども、理由はどうあれ、いまの状況だと、そっくりそのままのものが大阪でも実現しそうである。通産省出身の太田知事が拒否権を発動することも法律的には可能だと思うけれども、どうもそれほどのこともなさそうだ。つまり、東西の東京、大阪で銀行税が始まるんですよ。東京は始まったし、大阪は来年からということらしいです。

ここで我々は、石先生を中心にしてかなり現実的な案を練りつつある。諸井さんはそういうのを盛り込んでくれとおっしゃっている。自治省はこの間、東京都の場合にはいろいろ議論をやったけれども、疑義ありということでおしまいになっている。同じ動きが大阪で起こっているときに、自治省は何をやっていたのかなという気がするんです。いや、そんなものは干渉できないんだという話ならば、それも一つのお答えだとは思うけれども、もう少し知恵があったのではないかという気がするので、どこまで話せるかわからないけれども、話をちょっと聞かせておいてください。

石井税務局長

大手の銀行に対する外形課税については、政府の考え方としては、御承知のように、2月に閣議口頭了解を出しておりますから、自治省としてもまさにそういう考え方でいるわけです。東京都についても、いま河野委員さんから、自治省は疑義は表明したけれども、それっきりというようなお話がありました。よく御承知のように、石原都知事と私どもの保利自治大臣と会談をしたり、その前後にもずいぶんいろいろなプロセスを経て、最終的に政府としては相当慎重な対応を強く求めたのですけれども、都議会でああいう議決になったということです。

大阪府についても、河野委員さんも御存じのような動きがこの3月ごろからあったわけですけれども、私どもとしては政府の考え方ははっきりしているわけでございますので、もちろん、大阪府知事さんをはじめ府当局にも、政府の見解に沿って慎重に対応していただくように再三お願いをしております。

それから、なかなか微妙な面もありますけれども、例えば金融機関にももちろん大阪府から説明はしてもらわなければいけませんし、銀行業の皆さんからも、この税制についてこういう点で異議があるということをきちんと説明してもらう、いろいろな場で訴えていただくことも、我々の立場からも促しをしてきた。

ただ、河野委員さんも御存じのとおり、大阪府の場合には、知事部局といいますか、当局の側がぜひやりたいということではなくて、当局は政府見解に沿って慎重なお立場なのですけれども、府議会のほうが議員提案で、銀行に対する課税について意欲を持っていらっしゃるということであります。

そうしますと、中央省庁の一員であります私どもが府議会の審議の中身についてまで逐一あれこれ申し上げることは、地方自治法あるいは憲法上の地方自治の保障といった問題とも絡みますので、そこはおのずから限界もある。しかし、まだ決まったわけではございませんので、さらに引き続き努力はしていく、こういうことでございます。

水野(勝)委員

外形につきましては、いままで非常に精緻なご検討が行われている。あとは、これをどのようにして納税者に納得してもらって受け入れてもらえるかということではないかと思います。納税者が納得し受け入れてくれる一つの大きな要素は、一体どこへ負担を処理したらいいのかということではないかと思うわけでございます。企業が地方団体から応益している、その応益とは何だろうか。これは、4要素のそれぞれの生産要素の提供者が受益をしている。株主も経営者もその中に入ってくるわけですけれども、そういう一つの見方もありますが、一方、本当に受益しているのは、その企業活動によって生産された商品・サービスの購入者、一般の消費者ではないかという見方もある。たしかシャウプ勧告でもそんなことを言っていたように思います。

生産要素の提供者にそれぞれ比例的に配分していくというのか、その企業の生産物の消費者に最終的に受益がいっているはずだから、そちらに負担してもらうように整理するのか、そこらの方針を明らかにして、納税者すなわち企業にご納得いただく一つの方向づけがあってもいいのではないか。また、そういったものがないと、5兆円、10兆円の税金ですから、世の中にすんなりと受け入れられる環境が整いにくいのではないか。負担の配分、負担の処理についての考え方の整理、これが今後必要ではないかと思うわけでございます。

もう一点、いまのお話のように、東京都がお始めになる、大阪もそういう問題が起こりつつあるというわけですので、あまり時間をかけていると、それぞれの都道府県なり地方団体がいろいろなことをばらばらにおやりになる、それはやはり適当ではないと思いますので、あまり完全なものを求めていつまでも導入ができないというよりは、簡素なものを一つ、代表的なものを具体的に全国統一的に持っていったらどうかという気がするわけでございます。

そういう場合には、端的には給与総額ではないか。しかも、これが企業活動価値の7割を占めるわけですから、それの1%なり2%なりということであれば、十分説明もできるし、簡素であると言うことができる。それは一つの考え方ではないかと思います。

しかし、先ほど松尾委員からもお話がありましたように、あらゆる人件費を全部人材派遣業会社から提供を受けるような形になったら、それは生産要素としてどう考えるのか、賃金と考えるのかどうか、そういった問題も今後出てくることは頭に置かなければいけない。となると、検討はされたけれども、ちょっと脇にやられている売上総利益も一つの候補になるかもしれない。いまの段階では、賃金総額、給与総額といったものから現実的にお始めになるのが一つの方向ではないか。

では、その負担はどこへ行くんですか、と。賃金の切下げですというのか、生産物価格の引上げなのか、これはある程度お示しして納税者に納得を得ることが必要ではないか、こんなふうに思うわけでございます。

柳島特別委員

外形標準課税そのものは私は正しいと思うのですけれども、結局、税調として、どういうふうに何にかけるかということにかかっているのだろうと思います。そうでないと実現はやはり難しいと思います。石原新税は、政府税調内は8~9割が反対していますけれども、世間に出ると、残念なことに大衆というのはみんな拍手しているわけです。それで、また大阪がやり、いま水野さんも言われたように、5兆円を3兆円にして、1兆円にして、だんだん小さくしていけば、地方でどんどんできるわけです。これがまた世間から拍手をもって迎えられれば、全国的に一番悪い格好で外形標準課税なるもの、銀行税なるものが波及していくおそれがあると思います。だから、曖昧な格好ではなくて、いま税調は、いち早く「これだ」という意思表示をすることが一番肝要なことだろうと思います。

第2点目は、いま4類型を示されたわけですが、私も不勉強で申し訳ないのですが、一部は、算式を変えると付加価値税とあまり変わりないのが出てくるのではないかと思うのです。そういう場合、前から言われている地方消費税を回す、そういうことで暫定的に済まないのかという話もあるだろうと思うのです。新税にすると、徴税コスト、人手がかかるという問題もあるし、その辺をどういうふうに考えたらいいかということだろうと思います。

津田委員

外形課税の問題で、いま水野さんがご指摘のように、一体誰に帰属するのか、こういう議論はたしかにあると思うのです。しかし、この問題は、法人課税や何かにおきましても、形式上は株主の配当が減るということなのですが、前転、後転、いろいろな説があるわけで、なかなかきっちりとは言えない問題かと思います。

外形課税の問題というのは、公共施設、公共サービスに対する対価という受益的な関係をはっきりさせる意味で、生産要素、要素費用という考え方に立っているわけでございます。ですから、反対論として一番強いのが、何で赤字の企業にかけるんだ、所得のないのにかけるんだ、ということなのですが、考え方をむしろ改めて、これは生産要素の話なので、赤字だからといって給与を払わない……現実にはもちろんある場合もあるでしょうけれども、そういうようなことではなくて、赤字、黒字にかかわらず、給与なり支払利子なりを払わなければいけないという生産要素に対する要素費用の考え方でいいのではないか、こういうふうに思います。

現行法の扱いにおきましても、租税公課の中で法人事業税は、法人税の所得計算上、損金算入されております。ところが、法人県民税なり市町村民税というのは、まさしく所得の中の話ということで損金算入されない。現行法におきましても、事業税の物税的な性格と申しますか、いわゆる生産要素的な性格は出されていることも忘れてはならないのではないかと思います。

それから、東京、大阪の動きに対してどのように考えるかということにつきましては、きょう、たまたま福井県知事、出てきておりませんけれども、彼の提出した文書によれば、税調におきます審議を進めてもらいたいと。「このたびの東京都の銀行業に対する外形標準課税の導入は変則的であり、できるだけ早く、全国的な制度として、外形標準課税の導入を図るべきであると考えております」と。これが知事会の中の常識的な意見として、税調においてもこの線で対処してよろしいのではないか、かように思います。

ただ、先般の総会におきましても、地方財政問題、地方税問題、いろいろな議論がありました。あれだけ時間を延長したにもかかわらずまだ十分やっておらない。外形課税導入の問題も、地方財政なり地方税の基本的な考え方が必要でございますので、外形課税の問題のみならず地方税全般につきましても、税調におきます大方のコンセンサスを得られるよう審議をお願いしたいと思います。

加藤会長

ほかにございましょうか。国際課税、法人税のほうはいかがですか。どうぞ、吉田さん。

吉田特別委員

NPO法人の件で一つ申し上げておきたいと思います。先般、始まったばかりの介護保険をめぐりまして、NPO法人に対する課税をどうするかという話が出ておりました。そのときに大蔵省からは、社会福祉法人の場合は法人格の認定が厳しく、そして利益が出ないように運営も監視されている、そこがNPO法人と大きな違いがある。だから、課税上の扱いも一緒にはできない、いわば課税するのだというお話が出ておりました。

たしかに公益性という問題から見まして、いま誕生したばかりの数多いNPO法人が、公益性の面から見て果たして合格するのか、しないのか。いろいろな意見があると思います。したがって、ただいまのような解釈を説明するのもやむを得ないのかと思います。しかし、これからNPO法人が市民社会を支えていく意味合いから、活躍をしてもらいたいという期待が各方面から出ているときでありますから、いまのような説明はどうも一般的には釈然としないのではないか。したがって、早く公益性の基準を明快にすると同時に、NPOに対する法人課税のあり方も早急に検討しておくべきではないか。

これは一体経済企画庁のお仕事なのか、税が絡んでくれば、もちろん大蔵省の仕事にならざるを得ないと思うのですけれども、NPO法人が誕生するときの附帯決議の中に、2年後にケリをつけるというようなうたい文句があったと思うのです。そういう面から見ると、昨年の政府税調の答申の中では、基準が明らかでないからとか、あるいは、基準を明らかにしたとしても、どこがそれを運営するのかその辺がまだ決まっていないからとか、先送りの内容になっていたように思うのです。これはそう先送りできない問題だろうと思いますので、この辺でしっかりと議論をしていただきたい。寄附金控除の問題も含めて論議をしていただきたい。

以上、特に法人課税の中の一部だと思いますので、お願いしておきたいと思います。

加藤会長

一言、事務局のほうからどうぞ。

福田審議官

いま吉田委員からご指摘のように、そういう記事が出たのは事実ですが、ちょっと確認しておきたいのですが、大蔵省は、決めたとか決めないの以前の問題といたしまして、今回、介護保険法で保険給付の対象とされている介護サービスはどういうものかという事業内容を見ますと、医療保険業、物品貸付業、物品販売業、請負業、この四つに該当すると見られるわけです。

釈迦に説法ですが、この四つにつきましては、いまの法人税法の施行令で、これは民間で同じような仕事をしているから、収益事業であって課税になりますと。社会福祉法人も、NPO法人も、生活協同組合も、農業協同組合も、営利法人も、すべて介護サービス事業を行う主体でありますけれども、これらについてはすべて基本的には課税になっています。

ただし、収益事業を決めた当時、社会福祉法人につきましては、社会福祉という一般的に公益性が高いと認識されている事業を営むことを目的として設立されていて、かつ、生活困窮者に対して無料または低額な料金での診療事業や老人保健施設を利用させる事業を行わなければいけない、行うことが法制上予定されている、こういう法人であるから、社会福祉法人が営む医療保険業については収益事業から除外しましょうということで、昭和32年に医療保険事業が収益事業とされたときに外れて、それで現在に至っているわけです。

したがって、介護保険事業については、現行の法制上では、営利法人も同じようなことをやっている、あるいは、農協、生協、社会福祉法人もやっている。公益法人もあり得るわけでございますけれども、それが基本的には課税であるということで、課税になりますという、いわば現行法令の当てはめの問題でございます。

他方で、NPO法人の課税関係、NPO法人自体、NPO法人に対して一般的な寄附をされる場合の扱いをどうするかというのは、まさにいま吉田委員がお話しのように、法律上は3年以内となっていますけれども、附帯決議で2年、具体的には、今年の11月末までには何らかの結論を出しなさいという附帯決議が出されているところでございます。

吉田特別委員

私も不勉強なところがあるのですけれども、それは前提といたしまして、未来永劫に社会福祉法人の課税とNPO法人の課税は全く別なんだというふうにお考えなのかどうなのか。

福田審議官

ちょっと舌足らずで、あまり余計なことを言うとあれなので申し上げませんでしたが、社会福祉法人に対するいまの課税状況がいいのかどうか。社会福祉法人だけではなしに、公益法人の課税をどういうふうにするのがいいのか。これは、この税調でも御議論がありましたように、常に見直していかなければいけない、これは当然のことでございます。累次の税調答申でもお書きいただいているところで、これは一般的な見直しとしてあるということは当然だと考えております。

加藤会長

ほかにございませんか。きょうは、法人税、国際課税があまり議論が出ていないのですが、よろしいですか。どうぞ、平田さん。

平田委員

7ページの法人の内訳の表を見て感ずるのですけれども、全法人250万社の中で欠損法人が168万社。欠損法人の割合がだんだん高くなるというので、私も税理士でございますので、その辺は大変心が痛む。不況ということだけでは解決できなくて、年度の表もついていますけれども、好況のときでも半分は赤字法人があります。それが現在不況ということもありまして、67%まで上がっている。所得がないということが地方税における外形標準の事業税の問題にもいくわけで、何とかもう少し有税になるような所得課税の仕組みというものを、単なる課税ベースを広げるというだけではなくて、考えなくてはいけないということをいつも申し上げてきているのですけれども、きょうは特に法人税ということでございますので、それを一つ申し上げておきたいと思います。

それから、外形標準課税のお話は、いま皆さん方がおっしゃいましたように、あまり置いておくのはよくないように思います。これだけあちこちでやることになると、銀行業に対する粗利益課税が当たり前のものになってしまうおそれがあります。ぜひ今回の中期答申ではっきりした形で入れることを決断するような方策ができないものか、という気がいたします。

水野(勝)委員

いまのお話、全く同感でございます。200万の法人があって、ほとんど赤字である。赤字であってもすぐに解散するとか何とかにならない。おそらく同族経営者なり何なりの人件費、それでとっていれば、会社自体は別に赤字でも存続していける面があるのかなという気がするわけでございます。法人税についても、経営者、同族役員、もちろん賞与はいまでも損金不算入というのがありますけれども、一定のメンバー、役員、執行部、これらの人件費は、法人税法上は損金にしないという考え方もあり得るのではないかと思うわけでございます。それからさらに進めれば、人件費はすべて課税をする。しかし、これは法人税ではとても無理だと思いますから、そこを外形課税で給与総額をとってやるのが一つの現実的な方向ではないか、ということを先ほど申し上げたところでございます。

水野(忠)委員

事業税の問題ですが、どういう形で実現していくのかということです。先ほど、小委員長、あるいは武田課長から御説明がありましたように、基本的な態度としまして選択肢をたくさん置いておく。一本化して持っていくと、政府与党のほうに出たときにはねられた場合には、もうそれで終わってしまう。そういう配慮から複数になっているわけですが、さて立法の過程で何をやろうかといったときに、報告書に幾つも選択肢が並んでいるために、中間報告のような形で認識されてしまっても困るという問題があるわけです。

いま総会で意見を伺うと、本来小委員会では、メニューをそろえればその中から気に入ったものを選んでもらえるだろうという話だったのですが、メニューがたくさんあることが、まだ審議不十分で一本化できていない、そういう形で認識される危険はたしかにあると思いますので、先ほど平田委員がおっしゃいました、何らかの形で早く立法の過程に結びつくような方策を考えていただけたらと思います。

それが、事業税に関する私の感想ですが、もう一点、ちょっと説明を聞き損ねたのですが、きょうは国際課税のお話もあったということで伺っておきたいと思います。「法人税・国際課税関係説明資料」の43ページです。非常に興味のあるところですが、さまざまな事業体、例えばパートナーシップとか、信託とか、投資信託という形で最近では議論されているわけですが、一番右端の「それぞれの本国での課税」と。我が国では、法人税法ですと138 条に国内源泉所得という規定がございますが、新しい事業形態、投資形態で出てきた所得について一体いままでの国内源泉所得の規定だけで十分なのか。

例えば、国内源泉所得の規定を見ますと、匿名組合はちょっと出てまいりますが、組合もございませんし、信託についても何もない。それでは本法の一番最初の事業活動、事業から生じた所得という形で対応するのかどうか。43ページのクロスボーダーの取引がどんどん新しく出てくることに対応して、我が国としては国内源泉所得の規定、どういうふうに国内取引かどうかを見分けるか、こういう作業にかかるべきであると思います。私としては、昭和37年の規定ですので、あまりにも古い、もう現実に対応できなくなっているとは思うのですが、このあたり事務局はどうお考えか、感触などを伺わせていただけますでしょうか。

藤田主税企画官

まさにおっしゃったとおりでございまして、御指摘のソースルーと申すのでしょうか、そういったところも含めまして、新しい事業体に対する課税のあり方の検討を考えていかなければいけないと思っております。

尾原主税局長

問題意識といたしましては、今年、SPCの改正をしていただきましたが、SPCは法人であって導管であるがゆえに法人税の取扱いをちょっと変わった形でしているわけです。日本の法人税法は、とにかく法人というふうに書いておりませんとそういう取扱いをしない。ところが、いまおっしゃったように、私法上の法人格を持たないものが出てきた、それをどうしていくのか。まさにそれが問題でございまして、これから検討していかなければいけない課題だと思っております。

加藤会長

時間を超えましたが、まだ残った問題が幾つかございます。きょうの予定でございました納税環境の問題、税務行政の問題、さらに、議論の中で出ておりましたけれども、地方財政をどう考えるかといった問題はまだまだ議論しなければいけないところが残っております。

総会は、この次の5月30日が最後のつもりでおります。30日は午前10時から開催いたしますが、この総会でもって、いま言いましたような議論をどんどん出していただきまして、ある程度の方向づけをした上で起草に入っていきたい、こういうふうに考えておりますので、皆様方のご意見をいただきたいと思っております。

きょうはこれで終わらせていただきますが、この次はやはり同じ場所でございますので、よろしくお願いいたします。

どうもありがとうございました。

〔閉会〕

(注)

本議事録は毎回の総会後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、大蔵省主税局及び自治省税務局の文責において作成した資料です。

内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。