第48回総会 議事録

平成12年5月19日開催

加藤会長

それでは、ただいまから税制調査会の第48回総会を開催いたします。

税制調査会におきましては、現在いわゆる「中期答申」を取りまとめるところでありまして、御審議をいただいておりますが、基本問題小委員会の議論がかなり出ておりますので、そこで、きょうは総会としてこの問題を取り上げてまいります。

前回の総会では、4 月28日が総会でございましたが、第1 回目の審議といたしまして「環境関連税制」「税と社会保障」「資産課税」「消費課税」などをテーマとして議論をいたしました。

きょうは、第2 回目でございますので、1 枚紙で「総48-1 」というのがお配りしてありますが、その『本年の基本問題小委員会における検討状況』で今回の検討項目としてお示ししております項目、「個人所得課税」「納税者番号制度」「地方税総論」について議論をしたいと考えております。

進め方といたしましては、「個人所得課税」「納税者番号制度」というのを1 つにいたしまして、もう一つは、後半で「地方税総論」の2 つに分けて議論をしたいと思っております。

そこで、まず自由討議をする前に、「個人所得課税」及び「納税者番号制度」について議論したいと思いますので、私から審議の概要を御報告させていただきます。

「個人所得課税」につきましては、まず個々の専門的・技術的な論点を含めまして、基本枠組ワーキング・グループ及び課税問題ワーキング・グループにおいて2 回議論した上で、さらに基本問題小委員会において両ワーキング・グループと合同で2 回議論いたしました。

「納税者番号制度」については、税制調査会としてこれまでの答申においても考え方を示しておりますけれども、納税者番号制度をめぐる最近の環境変化を踏まえて、さらに議論をしたところであります。

このようなことで、全体として問題を取り上げているわけでございますが、事務局から簡単に説明をしてもらうことにしたいと思います。

それでは、清水税制第一課長、井原市町村税課長、よろしくお願いいたします。

清水税制第一課長

それでは、「総48-3 」『基本問題小委員会における意見の概要』というメモに沿いまして、これまでの意見を紹介させていただきたいと存じます。

なお、2 回の基本問題小委員会にお出ししました資料が、分厚いのがおありかと思いますが、そのうちから基本的な資料につきましては、参考資料といたしまして「総48-4 」という形で抜粋させていただいてございます。適宜御参照いただければと存じます。

個人所得課税の基本的な考え方でございますが、これからの検討の視点につきましては、少子・高齢化、雇用形態の多様化、女性の社会進出など、いろいろな社会経済情勢の変化を踏まえて個人所得課税、それぞれ各種の控除ですとか年金課税とか関係いたしますので、全般にわたって抜本的に見直す必要があるのではないか、といった御意見がございました。

また、個人所得課税の位置づけ等につきましては、歳入調達、所得再分配など重要な機能を果たしている。個人所得課税の基幹税としての役割は今後とも維持すべきである。そういった観点から考えていく必要があるのではないか、というような御意見。

それから、最近の所得分布状況ですが、高度成長期にかなり所得の格差が縮小しましたが、最近足踏み的傾向がございます。そういったことも踏まえて所得再分配機能というのは重要ではないか、といったような御指摘がございました。

また、個人所得課税の全体としてのマクロでの負担水準なり、あるいはミクロの税額の負担水準、累次の税制改革、あるいは景気対策としての減税などを経まして、主要国でも最も低い水準になってきておりますので、今後、個人所得課税の基幹税としての役割や財政状況を勘案いたしますと、減税はすでに限界に達しているのではないか、といったような御意見がございました。

また、基本的な仕組みでございますが、税率構造につきましては、これまでの改革によりまして、最高税率あるいは刻みの簡素化は、主要国と遜色のない累進緩和が行われてきているのではないか。今後考える際には、社会経済情勢、所得分布の状況、平等感、あるいは勤労事業意欲などを総合的に勘案していくべきではないか、というような御指摘がございました。

課税最低限につきましては、社会の構成員として稼得した所得に応じまして、広く公平に税を負担していこうという見地からは、課税最低限のあり方について見直していく必要があるのではないか、といった御意見。

また、課税最低限というのは、個人所得課税の負担を求める際の最低の所得水準でありますが、具体的には各種の控除の積み重ねで決まってまいりますので、それぞれの各種の控除のあり方をどう考えるか。それから、税体系の中での所得税、個人所得課税の位置づけをどういうふうに考えるか、そういったいろいろな幅広い観点から、総合的に検討する必要があるのではないか、といったような御意見がございました。

課税単位、夫婦の所得を合算する世帯単位、あるいは独立にそれぞれ見る個人単位というのがございますが、課税単位につきましては、婚姻に対する中立性等の観点から個人単位が適切ではないかと。ただ、個人単位のもとでも、配偶者や扶養親族への配慮のあり方につきましては、それぞれ控除がありますので、それぞれの控除のあり方について検討する必要があるのではないか、といったような御意見がございました。

また、所得のとらえ方などの基本的な枠組みについてですが、所得税の課税ベースである所得については、広く公平に税を負担するということから、できるだけ包括的にとらえることが基本ではないか、といった御指摘。そういう観点からは、非課税所得ですとか、控除など課税の対象外となっているいろいろな仕組みがございますので、それぞれの制度の趣旨を踏まえながら、あり方について見直しを行うべきではないか、といった御意見。

また、会社から現物給付などの形でいわゆるフリンジベネフィットという問題がございますが、雇用体系の変化、会社人間というようなことも変わってきておりますので、フリンジベネフィットに対する課税のあり方についても検討が必要だ、という御意見。

また、総合課税、分離課税の問題に関しましては、利子や土地譲渡益などにつきましては、それぞれの所得の性質、所得の把握体制の現状などを勘案して、実質的な公平の観点から分離課税の仕組みがとられておりますが、基本的には、包括的所得税の理念を踏まえまして、総合課税を原則として考えていくべきではないか、といった御指摘がございました。

控除につきましては、基礎控除、配偶者控除、扶養控除、その他人的控除、多数の控除や、あるいは加算措置が設けられて複雑な制度となっているのではないか。いろいろときめ細かな配慮をするにも自ずと限界があり、簡素化、集約化が必要ではないか、といった御指摘がございました。

配偶者控除、配偶者特別控除につきましては、女性の社会進出等踏まえて、就業に対する税の中立性といった観点から見直しが必要ではないか、といった御指摘。他方で、配偶者控除などは現実に多くの世帯に適用され、定着しておりますので、見直しについては慎重に考えるべきではないか、といった御意見がございました。

扶養控除につきましては、特定扶養控除あるいは老人扶養控除というように、年齢などによりましていろいろ複雑な体系になっております。制度の趣旨も踏まえながら、簡素化等の観点から見直しをすべきではないか。

扶養控除のあり方を考える際には、家族構成に応じて税負担の調整を図るという機能、あるいは基礎控除や配偶者控除といったほかの基礎的人的控除とのバランスということも配意しなければいけないのではないか、といった御議論がございました。

老年者控除などの特別な人的控除につきましては、制度創設時との事情の変更など踏まえまして見直すべきではないか、といった御意見。

租税特別措置等につきましては、公平・中立の観点からの抜本的な見直しの必要性について御指摘がございました。

各種の所得の関連では、給与所得につきまして給与所得控除の水準が平均的には収入の3 割程度と手厚いものになっておるわけですが、給与所得控除の性格づけについていろいろ考え方がありますが、特に勤務費用の概算控除としての側面に留意しながら考えていくべきなはないかと。

他方で、給与所得控除の性格づけについて、辞令一本でいろいろ指揮命令を受けるという給与所得の性格への配慮ということが指摘されるわけですが、最近は、雇用形態が多様化してきている、変化してきているので、そういう給与所得の性格も変わってきているので、それを踏まえて給与所得控除のあり方を見直すべきではないか、といった御指摘がございました。

退職所得課税につきましては、雇用の多様化、流動化等を踏まえまして、長期勤務についてより厚くなっている退職所得の課税のあり方についても見直す必要があるのではないか、といった御指摘がございました。

それから給与と事業、その他いろいろな所得の間の不均衡感、いわゆるクロヨンといった指摘についても留意していく必要があるのではないか、といった御指摘がございました。

年金課税につきましては、拠出段階での社会保険料控除と受け取るときの公的年金控除等の仕組みがございますが、少子・高齢化の中で高齢者についても生活実態が多様になってきている。そういうことを踏まえまして、拠出・運用・給付を通じた年金課税全体について適正化を図る必要があるのではないか、という御指摘がございました。

金融税制の関係でございますが、金融商品が大変複雑化、多様化してきている。金融の国際化や電子化も進んでおりますので、そういった点を踏まえながら適正な課税のあり方を考える必要がある、といった御指摘。

また、利子や配当、株式譲渡益など各種の金融資産からの所得についての課税方式を考える際の考慮事項として、それぞれの所得の性質、経常的に発生しているのかどうかといったような所得の性質、あるいは必要経費などの計算方法がどうなっているか、あるいは資産の保有階層の実態がどうなっているかといった点にも留意する必要があるのではないか、といった御指摘がございました。

また、株式譲渡益課税の申告分離課税の一本化につきましては、申告手続き等につきまして不安等も見られますので、適切な広報を行うべきではないか、といった御指摘がございました。

生損保控除、非課税貯蓄、複利型の長期の課税繰延べ商品などについては、そのあり方を見直していくべきではないか、という御指摘がございました。

また、金融取引の複雑化、多様化に関連しまして、デリバティブなどのいろいろな金融商品を利用した租税回避行為が巧妙になってきたり、あるいは実態把握が難しくなっているので、税制としても適切な対応を考える必要がある、といった御意見がございました。

土地譲渡益課税につきましては、各種の特別控除とかあるいは軽減税率など、課税ベースがかなり狭められており、また制度が複雑になっているのではないか、といった御指摘。

また、土地につきましては、その価値が主として外部的要因により増加するという資産としての特性、あるいは給与や事業など、ほかの所得の税負担との公平等に留意しながら考える必要がある、と御指摘をいただいております。

納税を支える制度につきましては、税制への信頼確保ということから、行政庁サイドと納税者サイド、両方あわせた公正・簡素な納税過程の確立が必要だといった御指摘。

また、年末調整につきましては、大多数のサラリーマンは年末調整で税額が精算されて完結するわけですが、申告によって納税者が社会の構成員としての自覚を高めることになるのではないかといった考え方。他方で、年末調整というのは、納税手続きを簡便化し、納税にかかる社会全体の費用を最小化しているのではないか、といったような両面からの御意見がございました。

また、取引の電子化とか国際化の関連では、法定資料の充実ということが指摘されてございます。

納税者番号につきましては、最近の番号利用がいろいろな分野で一般化している。国際的な資金移動が高まっている。マネー・ローンダリングの問題、電子商取引が進展している。こういう観点からも国民の受けとめ方を把握しながら検討する必要があるのではないか、という御意見。

あるいは、納番につきましては、資料情報制度など納税環境の整備に関係するいろいろな制度と関連させて議論を深める必要がある、という御意見。

また、納番を導入いたしましても、事業者の売上げや仕入れ、すべての取引の把握は困難であるということに留意すべきだ、という御意見。

また昨年の法律改正で、住民票コードの仕組みが導入予定になりましたが、基礎年金番号とともに住民票コードといった番号の整備状況なども踏まえながら、付番のあり方などについて検討する必要があるのではないか。

それから、従来から御指摘ございましたが、民間、行政、両サイドでの費用対効果の分析、あるいはプライバシーの保護といった問題も含めて、さらに納税者番号について具体的な検討を進めるべきではないか、といった御指摘がございました。

なお、制度そのものではないですが、これまでの御審議の中で、例えば所得税、住民税の税額を計算するとき、収入700万円の場合には所得税額がいくらになると計算するときに、社会保険料控除を算定しておりますが、これについては税務統計などから回帰した近似式を使っております。収入の7%ぐらいが社会保険料控除相当という計算をしておりますが、近年の保険料改定などの実態も踏まえて、そこら辺実態調査をという宿題をいただいておりますので、いま、実態調査を進めさせていただいていることを付け加えさせていただきます。

井原市町村税課長

引き続きまして、市町村税課長の井原でございますけれども、ただいまの資料の6 ページに個人住民税関係がございますので、個人住民税関係独自の課題等について、資料に沿いまして御説明させていただきたいと思います。

はじめに、課税最低限や控除などの個人住民税のあり方については、分権時代の住民に対する税として、地域社会の費用について、できるだけ多くの住民が分かち合うという所得税とは異なる独自の性格があり、現在も住民税につきましては、課税最低限は所得税よりも低くなっておりますし、また、税率につきましても緩やかな累進構造となっておりますけれども、こうした独自の性格を踏まえて検討すべきではないか、という基本的な御指摘をいただいております。

また、地方税財源の充実確保につきましては、地方分権推進計画において、「国と地方公共団体との役割分担を踏まえつつ、中長期的に国と地方の税源配分のあり方についても検討しながら、地方税の充実確保を図る」ということにされておりまして、また、いわゆる地方分権一括法の附則におきましても、充実確保についての指摘がなされております。そうしたことに基づきまして、今後、経済情勢の推移や国・地方の財政状況等を踏まえつつ、総合的に検討していく必要があるのではないか、という御意見をいただいております。

その場合、個人住民税は受益と負担の対応関係が明確であり、その充実確保は地方の自己決定権や自己責任を拡充するとともに、地方行政の効率的な推進につながるのではないか、という御意見をいただいております。

次に、生命保険料控除等でございますけれども、こうした政策的な控除については、極力整理していくべきではないか、という御意見をいただいております。

また、金融関係につきまして、割引債の償還差益等について、現在個人住民税が非課税となっておりますけれども、その適正化を図っていくべきではないか、という御指摘をいただいております。

また、均等割の問題でございますけれども、均等割の負担水準は、かつてに比べ相当低下しているということで、昭和20年代当時は、個人住民税収に占める均等割は約2 割ぐらいあったわけでございますが、それが現在2%に満たないぐらいになっておりまして、相当低下しているということで、その果たすべき役割にかんがみて、過大な負担とならないように配慮しつつ、負担水準の見直しが必要ではないか、という御指摘をいただいております。

また均等割につきましては、市町村につきましては人口段階で3 段階ほどに分かれておりますけれども、この税率格差については、縮小がこれまで図られてきておりますけれども、市町村間のサービスの均質化というものが進んでおりますので、さらにそのあり方を見直すべきではないか、という御指摘をいただいております。

最後に、均等割の生計同一の妻に対する非課税措置ということでございますが、これは、均等割の納税義務を負う夫と生計を一にする妻、これが夫と同じ市町村に住所を有する場合には非課税ということになっておりまして、考え方として、個人住民税は基本的に個人単位課税でございますけれども、ここは夫婦単位課税ということになっております。しかしながら、妻も行政から受益をしており、また一定の所得を稼得する妻は、税負担能力を有しているということを踏まえまして、今後そのあり方を見直していくべきではないか、というような御意見をいただいているところでございます。

加藤会長

ありがとうございました。

それでは、お手許に御参考の資料などもございますので、皆さまの御意見をいただきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。どなたからでも結構でございます。

榎本委員

所得課税の問題ですけれども、御案内のように地域では少子・高齢化が進む。分権に伴って自治体としての住民に対する責任も高まる。当然ながら提供するサービスを含めて住民ニーズが大変増大をし、かつ多様化してきている。しかしながら一方では、御案内のように、地方財政がかつてなかったような危機的な状況にあるわけです。ですから、歳出構造を当然抜本的に見直さなければならないということだと思うのですが、どう見直していくのか。それはやはり住民自身が施策の優先度を選択できるような、そうしたプロセスが必要なのだろうと思うのです。

そういう点からいくと、やはり、今のような財源の多くを国に圧倒的に依存している、自治体によっては自らの税収は歳出の1 割も賄えないというところもかなりある、こうした現状の中では、住民と相談づくで何を優先した使い方をしていこうかということは困難なわけですね。そういう点で、自治体の財政自主権といいますか、財政の自己決定権を高めていくということが、これは地域の必要という点で否めないと思います。これまでもいろいろと議論はありましたけれども、自治体の財政の健全性、あるいは自主性という観点から、この際、所得税から住民税への税源の移譲について踏み込んだ検討をして、考え方を明確に出すべきではないかと思っております。

加藤会長

この問題は、また次のところでも議論いたしますので、よろしくどうぞ。

ほかにございませんでしょうか。

大体皆さま方の御発言の趣旨はこの中に入っておりますでしょうか。1つの方向にまとめたのではなくて、皆さま方の御発言をただ並べただけでございますから、そこに入っておりませんと、最後のまとめのときにも抜けてしまいますので。

中西委員

あと1 か月あるかないかで、数回の総会しかないと思うんですね。我々は「中期答申」という卒業論文を出さなければいけないわけですから、いろいろ議論がされておりまして、改めて大きく加えることはないと思うのですが、ちょっとポイントを申し上げますと、私はこの中期答申は21世紀を視野に入れて、なおかつ社会保障費や税との関係、これは国民負担率ということで不即不離で考えざるを得ないのではないかということと、国と地方の財政配分のあり方ですね。そういったものも大きく税制体系に絡んでまいりますから、そういった視点を持ちながら税体系全体の再構築を中間答申で答申するということをやっていただきたいと思います。

具体的に、細部はさておきましてポイントを申し上げますと、これは多くの委員の方からも意見が出ておりますが、一番の問題は、直間比率の是正を昨年、一昨年あたりからいろいろ議論してまいりまして、直接税は個人所得課税も法人税もかなり累進税率を引き下げておりますから、これはいや応なしに広く薄い付加価値税・消費税のほうに力点を置くということで、当然、食料品その他の軽減税率の適用とかインボイスの導入とかいろいろな問題が起こるでしょうが、やはりこれはやるべきであると。

そのやるべきもう一つの大きな理由が、最近にわかに浮上してまいりました石原知事が導入された外形標準課税ですね。これは前々回も私申し上げたのですが、これを全国一律で全業種に適用すべしという議論が一部出ておりますが、これは産業界は真っ向から全部反対でございまして、地方自治体は当然財源が必要ですから、何らかの形で取っていいのですが、私はいまの議論、なるべく一番広く薄く国民から徴収できる、消費税なら消費税でこれは対応すべきであって、産業界にだけしわ寄せをして、これに過重にかけることは、産業活力を国際市場で奪うんですね。

この前も申し上げましたが、すでにもうヨーロッパもアメリカもほとんど外形標準課税は廃止の方向に進んでおりますから、こういう企業を苦しめ、活力を喪失さす非常に愚かな税制だと思うのです。ですから、これはちょっと、地方自治体の財源に必要であるという論理、あるいは応益課税としての論理はわからんではないのですが、私はやはりこれは消費税アップをして、それを国と地方の取り分をどうするかという議論に収斂していくべきではないかということを、ちょっと申し上げておきたいと思います。

それから、もう一つ、随分前に、もう何年も前の土光臨調で出た「増税なき財政再建」ということを、ここでいまこそ国民は思い出すべきではないかと。いまの現小渕内閣・森内閣は、景気優先ということで財政構造改革も後回しにしている。これはこれで私も産業人ですからよくわかるわけでして、やはり経済の自立回復なくして、いまやったらもっと、それこそデフレスパイラルのアリ地獄に入っていきますから、これはちょっとやれないだろうけど、しかし、いずれ財政再建・構造改革は、財政といわず、行政といわず、やらざるを得ないと思いますね。

その場合に、私はすぐこれを増税と言わないで、行政改革、もろもろの構造改革をやることによって財政再建が可能ではないかと。例えばいま国税から大半なものが交付税・交付金で地方自治体に出ているわけですね。この地方自治体に出る交付金と補助金を、例えばの話半減すれば、ここにも首長の方がおられるので、何を言うかと、こういう御意見はあると思いますが、私はこれは半減すれば何十兆という金が浮くと。現に、いま新聞で報じられているように、地方自治体の市町村の合併が至るところで大きく動いているんですね。これは、商工会議所あたりの前の永野会頭あたりも提言されておったのですが、かつての三百諸侯の300ぐらいの自治体に集約するということをやっていいではないかと。いま企業は会社の分割統合をやりまして、簡単に3 分の1 ぐらい人を減らしていますから、もう日常茶飯事のようにやっていますから、そういう再編統合をやることによって大きく公務員の数も、再就職先をどうするかは別の議論として、リストラでそこのコストダウンが図れるのではないか。そういうことをやりながら、どうしても仕方ないときに増税をやるということであって、簡単に増税を言うべきではないと。だから私は、直間比率の是正でそういう間接税のアップはやむを得ないと思いますが、我が答申は、やはり「増税なき財政再建」を言うぐらいの、思い切った答申をバックボーンとして持ったものを出したいと思っております。

もう一つ大きなポイントは、納番制の議論にこの後なると思うのです。私は前から言っている納番制をやらざるを得ないところに来ていると思うのですが、やるならば、前から言っている、これは大蔵省の方は御不満に思われるし、いろいろ御意見もおありでしょうが、私は抜本的な改革としては源泉徴収制度を思い切って考え直す、申告制にするということ、これとセットで納番制は考えるべきではないかと思います。

大田委員

いま中西さんがおっしゃったサラリーマンの源泉徴収の話が基本問題小委員会でも出たのですが、ちょっとまとめで弱いかなと思うのです。サラリーマンの納税意識とか公平感ということを考えますと、そろそろ今回の中期答申あたりから、源泉徴収に完全に依存した形は変えるべきだと思うのです。

3 ページの(各種の所得)の給与所得控除のところで、読めないこともない程度に書かれてはいるのですが、サラリーマンの納税意識を喚起するという意味でも、給与所得控除の見直しが必要だと思うのです。給与所得控除よりかなり圧縮して実額控除の範囲を広げていくという形での見直しが必要だと思いますので、ぜひここにサラリーマンの源泉徴収の改革を含めた形で書いていただければと思います。

加藤会長

いまの問題で、5 ページのところの上のほうに年末調整のことがちょっと出ているのですが、これはいいですか、これも弱いですか。

大田委員

年末調整のここでもいいのですが、ただこれは年末調整のやり方であって、そもそも給与所得控除が経費控除と勤労控除みたいな性格を持ったままですと、基本的に年末調整する人が少なくなるわけですから、給与所得控除の見直しがセットではないかなと思います。

加藤会長

源泉徴収を原則とする、というのが逆になってこなければいけないでしょうね。

榎本委員

ただいまの中西さんのお話の反論というわけではありませんが、ちょっと観点というか、実際にどうなのかと。つまりいまのお話ですと、できるだけ増税なく財政再建というのは、これは誰も一致すると思うのですけれども、そのために地方の交付金、補助金を一遍に半減してはどうか。それには自治体の数が多過ぎるから、300にすればそれが可能ではないかという、文脈としてはそういうお話だったのですが、それほど合併というのは万能薬ではない。

1 つは過去の事例がありますね。過去の合併経験からしますと、これは地域を疲弊させたのでは意味がないわけですから、そういう点では、合併をしながら、なおかつ地域の活性化も図る。これを両立させない合併なら何でもできますけれども。そうすると、過去の事例からすると、中心部は確かに活性化したけれども、周辺部は以前よりもはるかに疲弊してしまった。こういう問題があります。これが1 つ。

もう一つの問題は、大きければ効率化するかどうかという問題ですね。これはいろいろな研究がありますけれども、私どもが学者の皆さんと具体的に自治体を調べたときに、人口10万人のところまでは確実に効率化していく。ですから、それは確かにそういう効果はあるのですが、10万人を超えると、必ずしも大きいことはいいことだ、効率的だ、ということにならないという結果がはっきり出ています。

だから、そういう点から言いますと、全国を300に機械的にしてしまえば、補助金、交付金を半分に削っても大丈夫なぐらい財政は助かるぞという、これは事実としてはちょっと考えられないことなので、申し上げておきます。

松本(和)委員

町村の立場で合併論のことについて申し上げたいのですが、いま話が出ましたのですが、私の町、隣は武雄というところで、少し合併したのですが、特に中心はよくなりました。ただし職員数が減ったかというと、あまり減っていないですね。周りの町村は何も、行政サービス関係はちょっとあるのですが、いろいろの面ではあまりよくなっていないのです。そういう現実を見ると、我々のところであまり合併論というのは話が出てこないのですが、合併については必要であるということはよくわかります。我々のところは、消防に続いて、今度は介護の問題にいたしましても、ごみとか何か2 市10町で広域行政でやっているわけですが、そういうことで事は足りていると思います。

しかしながら、やはり効率化ということで、私の町でも実は今年度は昇給ストップしております。2%の特別職のカットもいたしました。そういうことで行革絡みといいますか、行革を何とかしていきたいということで、事務事業の見直し、それから、いろいろの面で見直しをやっているわけですが、そういうことで地方自治体関係も頑張ってやっているということだけは御理解を願いたいと思います。

加藤会長

いま職員は減らないとおっしゃったけど、議員の数は減るのでしょう。

松本(和)委員

議員は減らしました。

加藤会長

例えば合併した分だけ、半分ぐらいになってしまうのですか。

松本(和)委員

それはなると思いますね。だけど、その他の面で周りを見ておりまして、あまりよくなっていないんですね。我々の町も2 町は合併しております。今でもやはりそのしこりというのは残っております。そういうことで、大きな合併というのはいいかどうか、我々もいまから検討してまいりますが、やはり効率化を目指しながら我々も努力しているということを御理解願いたいと思います。

島田委員

2、3 ございますが、1 ページ目の個人所得課税についてなんですけれども、個人所得課税が基幹税としての役割を維持すべきである、そのとおりだと思いますが、この文章の意味は、そういう観点から見直すというのは、どっちのことを言っているのかちょっとわからないのですが、私は、いくつか関連した文章がありますけれども、1 つ重要な視点は、日本の経済の活力を維持というか増進しないといけないのではないかと思いますけれども、そういう観点から個人所得課税はもちろん基幹税ですけれども、その次に減税をどう考えるかということについて、減税はすでに限界に達しているのではないかという意見がありますが、平均値で見るのと、税率構造を見るのと、活力の問題は平均値よりも税率構造の問題が大きいと思うのです。ですから、1 ページの最後のほうに課税最低限の見直しについての議論がありますけれども、課税最低限はできるだけ下げる。それから、中高所得層についての税率をできるだけ下げるということが活力増進のために望ましいので、そういう観点から考えることが重要ではないかというのを、どこかに書き込んでもらいたいですね。

それとの関連で、もう一つ消費税を中心とした間接税というのは新しい基幹税だと思いますので、そこを重視していくということでないと、日本経済の活力は保てないということがあると思うのです。

もう一つ、2 ページ目の冒頭になりますが、1 ページの終わりからの続きですけど、結局、課税最低限というのはさまざまな控除の積み重ねの結果決まってくるわけで、これは下げるといって「課税最低限の引下げありき」という議論よりも、むしろ中身を緻密に議論しなければいけないわけですけれども、ここで税控除なのか、それとも、むしろポジティブな、例えば家族構造なり生活を支える政策支援なのかという選択があると思うのです。税控除によって生活を支えるのか、それとも直接的な社会保障支出なり、給付なり、教育支援なり、そんなことで支えるのかというところですね。

だから、控除項目というのはそれなりの理由があってこれまでできてきているわけなので、ただ控除を減らすというわけにいかないのだろうと思うのです。控除を整理するならば、今度は直接的な社会保障給付なり、教育支援なり、住宅支援なりというものを増やさなければいけないということが出てくるのだろうと思うのです。その辺の議論をきちっとやるべきだということは、書いておかなければいけない。

そして、もう一つ非常に重要な点は、政府の収入でしょうね。税負担と社会保険負担を考えますと、社会保険負担が一方的に伸びつつあるわけですね。この社会保険負担と社会保障のさまざまな給付、年金だけではなくて介護の問題がだんだん大きくなってきますが、そういったものとの関連というのを、保険料負担を十分重視した上で税負担の問題というのを考慮する必要がある。私は非常に大きな問題だと思いますね、保険の負担をどう考えるか。それはちょっと整理して書いていただきたい。

それから、2 ページ目の所得計算の基本的な仕組みのところで、2 番目のパラグラフに、フリンジベネフィットに対する課税のあり方について「検討すべきではないか」と書いてありますが、私、もしかして欠席していたのかもしれませんけど、どういう観点から検討するのか、この文章だけだとわからないのですが、私は、ぜひ付け加えていただきたいと思うのは、労働市場の流動化を支えるようなといいますか、移動することがいまは非常に怖いといいますか、移動すると不利になるフリンジベネフィットの構造になっているわけで、移動すると不利になる、移動に対して中立的でない、そういう制度を支えるような税制になっているわけですね。退職金税制なんか非常にいい例ですし、財形貯蓄の問題もそうですし、ほとんどあらゆるフリンジベネフィットの構造というのは長期勤続を前提にしておりますので、これは移動に対しては極めて中立的でございません。ですから、移動に対して中立的になるような制度を支えるような税制にすべきでないかというような、より明確な記述が必要ではないかと思います。

それから、3 ページ目に、(各種の所得)の中で雇用形態の多様化・流動化等々があって、給与所得控除のあり方を見直すべきではないかと。どういうふうに見直すのかというのは、私も理解不足なのでわからないのですけれども、これだけだと無意味綴りのセンテンスになっていると思うのです。どういう方向に見直すべきか、ちょっとこれまた教えていただければいいと思います。

松尾委員

地方税財源の充実確保策として、所得税から住民税への税源の移譲という問題が出されたのですけれども、私、財政状況は地方に比べてむしろ国のほうが深刻であるという現状から見て、それは極めて非現実的であると思います。個人所得課税、国の基幹税としての役割があるわけでありまして、もし所得税から税源の移譲をしますと、基幹税としての役割を著しく損なう結果になる。これもうはっきりしているわけですね。所得再分配機能などは一地方でやるべき筋合いのものではないわけでありまして、そういった機能を著しく損なうようなことはしてはならないと思います。

さらに、自動的に景気を安定化する税制の役割、ビルトインスタビライザー機能があるわけでありまして、そういったビルトインスタビライザー機能を著しく形骸化させることにもなるということであります。ですから、私はそれには反対でありまして、地方はやはり個人住民税を充実させる、そういった方法で対処すべきであろうと思います。

竹内委員

細かい点で、控除のところで配偶者控除、配偶者特別控除については、依然としてこの1 点だけなのですけれども、依然としてこの配偶者控除の性格、家事労働の対価なのか、何の対価かわからないという点と、それから控除分をなぜ夫のほうの所得から引くかというのがわからないわけです。つまり、もし主婦が働いたら、自分が働いた給与から配偶者控除を使えれば、これは家事労働の対価として完璧にワークするわけだし、全く労働のインセンティブにマイナスにならないのですけれども、夫のほうの所得から引くという考え方が、そのリターンが必ず主婦のほうに戻ってくるかわからないという、個人単位といっても、日本の場合全然個人単位になっていないので、論理矛盾なので、その性格や活用の見直しというような、そこまで書いていただけないと、何を言っているかわからないという部分がございます。もしかしたらかなり少数意見だと思いますが。

それから、次の給与所得のことなのですが、いま、大田さんのほうから源泉をやめて申告という部分のお話が出たのですけれども、確かに年俸制の方とかいろいろな方が出てきている。それと給与所得控除のあり方の見直しというのがどうリンクするかというのがいまだにわからないのです。つまり、年俸制だと年額が決まっているので、最後のときにドカンと払うということになりますと、一時的にキャッシュフローが1 年間増えてしまうわけですね。その間に例えば消費性向とかそういうものの計算をどうするのかなと。金利は増えると思うのですが、その分、逆にいくら使っていいものかというのがわかりにくい人が出てくるのではないかと。最後に払うときに何百万というのを払うとすると、フランスはそうなのですけれども、ものすごくそのときにショックで消費が落ちるんですね。そのほうがいいのか、それともダブルスタンダードで、一旦ある程度のパーセンテージを取っておいて、あとでもう一回自分のやり方でやり直すという形もあり得るのではないかなという、その感覚をまだ持っていまして、この点が1 つ。

それから、退職金をやめて給与にしている会社が増えているということ、これもそのとおりなのですが、これと退職所得課税の見直しにつなげるというのは、依然として非常にわかりにくいように思うのです。つまり一時的に、働いているときに給与が増えていく。では、その人に対してこれは退職金の一部だから、税率を低くしようということなのか、この辺の書きっぷりがよくわからないということで、これは疑問で申しわけないのですけれども、意見として申し上げます。

大田委員

いまの竹内さんがおっしゃった点で、源泉徴収をやめるということと給与所得控除の関係で、要はサラリーマンが経費控除をどうするかということで、完全に一人ひとり経費を申告して控除する、給与所得控除をゼロにするという選択は当然あると思います。それも含めて見直しということなのですが、いま青色申告控除というのもあるわけですね。私の意見は、青色申告控除を仮に存続させるとすれば、35万円ですか、それと同額の勤労控除にして、経費はサラリーマンが申告するという形もあり得るだろうと思うのです。ですから、サラリーマンの経費控除をどうするかという観点から給与所得控除を見直すという意味で、これが源泉徴収と大きくつながっているということを申し上げたかった。

諸井委員

話が地方税のほうも入ってしまっているのですけれども、これはまた後半でやるわけでしょう。これについて私またいろいろ意見があります。

所得税の関係で、さっき、課税最低限の問題が出ていて、私も前から日本の課税最低限は高過ぎるなと、これは引き下げなければいけないのだなという考えはあるのですが、ただ、それと、いずれまた片方で消費税を税率を引き上げなければならないというところへ追い込まれているのだと思うのですけれども、この両方を税調として主張するということが、今回の中期答申でいいのかどうかというのが、あるいは政治的な判断なのかもしれないのだけれども、かなり難しいような感じがするのです。どっちを取るかといったら、やはり消費税の引上げのほうに重点を置くべきではないかというのが私の考えなのですが、そうかどうかによって書きっぷりが随分違ってくるのではないかと思うのです。両方とも取ろうというのは、少し無理があるのではないかという気がするのですけれども、その点いかがなものでしょうか。

和田委員

一番初めに、やはり歳出の削減ということを強く考え方として示すべきだと思います。これはいろいろ手当てされていることは承知しておりますけれど、まだまだ国の場合であっても地方の場合であっても削減できる。できるというより、しなければならないということだと思います。削減となりますと、消費者行政などというのは真っ先かけて削減というところの矢面に立っておりまして、いろいろ私どもも運動はしておりますけれども、とにかくやはりそれを一番強くきちんと出していかなければいけないということを、まず申し上げておきたいと思います。

それから、所得税ですけれど、前回も申し上げましたけれども、日本生協連の実際的な調査でも、年収700万円を境にして、確実にいままでの何度かの減税というところで、700万円以下のところは増税になり、所得格差は確実に開いてきているということが言えると思うのです。そこで、やはりいろいろな控除を見直すということは必要だろうと思いますけれど、課税最低限をばっさりと下げるべきだということは、賛成できないということを申し上げておきたいと思います。

それと、今回の発言の中に入らないのかもしれないのですけど、次、出席できないものですから、前回、消費税につきまして、これは納める義務があるのは事業者なんだ、小売りの立場にあるものが納めるんだというお話がありまして、それに絡んで内税にすべきではないか、内税のほうが望ましいというお話が出ておりました。確かに法律の上では「納税義務のあるのは」というのは書いてありますけれど、一般の生活者すべてが消費税というものは払っているという前提は間違いのない事実でございまして、それから言いますと、消費税に限らず、自分が何についていくら税金を払っているのだと、これは別に「痛み」という言葉だけ使う気はありませんけれど、いくら税金を払っているんだと、その税金がどう使われているのかというのを見ていく、というのがやはり納税者の義務でもあり、責任でもある、それから権利でもあると考えておりますので、やはり、単純に内税にしたらというようなことには賛成できないということを申し上げておきたいと思います。

島田委員

いま、和田さんと諸井さんの言われたこと、ちょっと関係発言したいのですが、1 つは和田さんがおっしゃられた、諸井さんもおっしゃられたのですけど、課税最低限問題で、課税最低限は私は下げるけれども、実はそれの根拠になっているような給付について、国民の生活を守る給付をしっかりした上で下げるという方向で検討しなければいけないのかなと思うのです。それとの観点で重要な問題として出てきているのは、介護保険だと思うのです。といいますのは、あれは所得の低い人でも払わざるを得ないわけで、そうすると、税のほうは負担が軽くなるけれども、保険のほうは逃げられないということがあって、現実の徴収というのはなかなか難しいですけど、そういう構造になっているのをどう考えるかという、これはやや突っ込んだ、つまり税調としてあるべき姿をどう考えているのだということがわかるような書き方をしないと、空虚に課税最低限は下げる、社会保障支出は充実は要らないと、変な書き方はだめだと思うのです。

もう一つそういう意味で出てくるのは、典型的な例は、いま、財政支出は削減ということをまず書けと和田さんがおっしゃって、私も大賛成ではありますが、日本経済が活力を持って未来型に発展していくための財政支出というのは惜しむべきではないと思うのです。例えば情報化投資とか教育関係とかいうのは惜しむべきではないと思いますが、無駄な支出というのは減らさなければいけない。また介護保険の例に戻りますけど、介護保険の給付単価が1 時間ヘルパー4,020円という値段がついているというのは、ものすごいことだと思うんですよ。十何時間ヘルパーさんを頼んだら、月で百何十万という実費かかるんですね。実際、それを介護に参入している会社は手にするわけですけれども、じゃあ、会社は儲かるかというと全然儲からない。というのは、アイドルな時間が多くて儲からない。一体、仕組みとしては何をやっているのだと。ちゃんと請求をするとものすごい値段になる。しかし供給している会社は儲からない。そして財政負担だけ増えていく。そして本当の介護はないんですね。こういう仕組みを、実を言うとこれは私は膨大な無駄だと思うのです。整理しなければいけないのだけれども、単価を減らせば整理できるというものではないので、こういうシステムそのものが機能するような格好に見直していかないとやれないという問題が出ているのだと思うのです。つまり、日本の政府の抱えている無駄というのはそういうところにあるような気がしまして、この辺の無駄を徹底的にメスを入れるということでもって歳出は削減するけれども、情報化投資とか教育とか、重要なことは思い切って出すんだと、こういうようなことでないといけないのかなと、その辺十分に書き分ける必要があるということです。

加藤会長

単なる税制の問題ではなくて、歳出をどういうふうに使っているかということが非常にポイントでありますからね。今回はそういうところもぜひ書き込んでいきたい。つまりほかの省であると、どうもなかなか遠慮して言えないけれども、しかしそこを言わなければ直らないんですよね。そこを私どもとしてはやりたいという気持ちを持っていますので、最終のまとまるころになりましたら、ぜひどんどん意見を出していただきたいと思います。

島田委員

特にこの点で、税のほうはある意味では圧迫されるんですよね。というのは、社会保険がどんどん増えていくものですから、低所得者から見たらあの負担はたまらないんですよ。ですから、税のほうでどんどん遠慮してくれという議論に世の中はなってしまう。しかし、それでいいのか。では、正当化されるような社会保険の構造になっているのかというのは、税調としては我慢すべき問題ではないと思うのです。非常に妙な構造にいま膨れ上がりつつあると思うのです。

加藤会長

それから、先ほどの諸井さんと和田さんの御意見がありましたが、1 ページの下のほうで、「課税最低限については」とあって、1つ上が、稼得者所得に応じて広く公平に税を負担する見地から、課税最低限を見直せと。これは課税最低限を下げろという意見なんですね。これに対して、そうは言っても、やはりいろいろな控除のことを考えていかなければならないよと言って、2ページの冒頭でございますが、「税体系における個人所得課税の位置付け」という文章があるのですが、実は私も諸井さんと同じように、消費税が上がっていく場合はどうなんだということを聞いたことがあるんです。そうしたら、「この文章は税体系という中にそれが含まれているのです」と、こう言っておりました。そこのところがどういうふうに、はっきり書いたほうがいいのかどうか、1つポイントであると私は思っております。

それから、もう一つ配偶者控除のお話、年末調整の話ですか。どうぞお願いします。

清水税制第一課長

ちょっと御質問等ございましたので、簡単に2点触れさせていただきます。

配偶者控除の考え方ですが、これまでの税調での御審議、税制改正の整理の中では、配偶者控除と配偶者特別控除がございますが、配偶者控除につきましては、昭和36年以前は扶養控除という形で、もともと家族で配偶者なり扶養親族なり、世帯員が多いと担税力が減りますので、そういう世帯人数に応じた担税力の減殺を考慮するということで、扶養控除という形だったのですが、子供さんなんかと同じ形でくくるのはということで、配偶者控除という形で独立して、世帯員の規模等による負担調整をしているという考え方でございます。

他方で、配偶者特別控除につきましては、昭和63年前後の抜本改革のときに入りましたが、そのときには配偶者の主たる稼得者に対する貢献というのですか、いわゆる内助の功のようなこととか、あるいはパート問題で税の逆転を防ぐというような、そういった観点を複眼的に踏まえてできてきているというような整理になっています。この部分については、配偶者が収入を得ても配偶者特別控除が主たる稼得者のほうにつくというような部分も御指摘されているところでございます。

また、給与所得控除の考え方ではいろいろの御議論がありまして、縮減のこととか、先ほど御指摘ございましたように、実額控除との関係の御議論がありました。年末調整との関係では、アメリカもイギリスも給料支払のときは源泉徴収はしているわけですが、ただ、細かな控除なんかを加味して年末に精算するという年末調整の仕組みはアメリカではございません。イギリスは毎月の支払いごとに精算していまして、日本よりもある意味では精緻なんですが。日本の場合は、普通のサラリーマンの方ですと、年末に年末調整をしているので、それで大体精算が済んでしまいますが、アメリカは年末調整の精算の仕組みがないので、全員最終的な精算は申告をしていただいている。そういった申告をどの程度していただくかということに関しては、給与所得控除との関係でいろいろ御議論、御指摘が、きょうもちょうだいしておりますが、あったところでございます。

水野(忠)委員

いまの清水課長のお話に出ました給与所得について、なぜ源泉徴収が問題になるのか。これは例えば利子・配当所得というのは源泉徴収ですが、同時に源泉分離課税になっていますので、いわゆる総合課税を理想とする我が国の税制から見るとかけ離れている。だから源泉分離はやめなければいけないということなのですが、これとは逆に給与所得の場合は、源泉徴収した上に年末調整をやりますので、100%総合課税ができてしまう。これだけ完璧にそろっているにもかかわらず、なぜそれを変えなければいけないのかというところ、そこが私にはよく理解できないのです。

あり得るとしますと、おそらく先行き課税最低限の見直しですけども、給与所得控除の金額が大幅に下げられる。そうなりますと、給与所得控除ではカバーできないような経費を伴ったサラリーマンが多くなってくる。そうなったときに申告の道を開く。そういうプロセスがあれば、源泉徴収から申告納税に変わるということは十分あり得ると思いますが、理論的に申告納税のほうが源泉徴収のよりも、これは理念ではありますけども、そうあるべきであるから、給与所得者の源泉徴収をやめて申告させるべきだというのは、どうも私には理解できないのです。それが1点です。

それから、もう一つは、前にいただいた資料ではちょっと出ていたのですけども、今度の意見の概要を見ますと、退職所得が落ちています。先ほど年俸制というお話がありましたけれども、だんだん人の移動が激しくなりますと、雇用時に契約をして年額いくら、あるいは退職時にいくらという形での、従来の永年雇用に伴う退職所得とは違った形の退職所得が出てくるのは目に見えているわけです。いわゆるゴールデンパラシュートといったような形のあとで、年金あるいは退職所得の形で給与をもらうという、デファーとコンペンセーションの考え方ですが、そういうのに対応していくというのもこれからの我が国の税制のあり方ではないかと思いますので、何か落ちてしまっておりますけれども、退職所得についても少し検討していただきたいと思います。

加藤会長

3ページのところの下から3つ目ぐらいでしょうか、退職所得課税について書いてありますが、これでよろしゅうございますか。もっと中身を書いたほうがいいという御意見ですか。

水野(忠)委員

失礼しました。大体このような趣旨で……。

佐野特別委員

所得税の議論ですが、所得税というのは、消費税と並んで非常に対象者の多い税金だという認識がまず必要だと思います。したがって、あらゆる層、あらゆる状況に置かれた人たちを対象にする税であるということだと思います。したがって、一部の人たち、一部の立場の意見を全体化するということは避けなければいけないというのは私の基本認識であります。ここということではありませんが、世間一般の議論を聞いていると、どうも自分のお立場だけ、あるいは自分のお立場を中心に物事をおっしゃる。そういう傾向があるので、非常にその場合、所得税論議としては避けなければいけない。そういう危惧を感じます。

課税最低限の議論が先ほどからありますが、私は大変これは難しいということをかねがね申し上げております。なぜかといいますと、どうも夫婦子2人ということがずっと伝統的に指標として用いられ、それが国際比較されている。どうもここだけの議論になっているわけでありまして、何度か申し上げたことがありますが、単身者世帯もいらっしゃるし、御夫婦だけの世帯もある。単身者世帯の課税最低限は110万円程度、月10万円もならない。御夫婦だけの世帯だと200万円をちょっと超える。月20万円にもならない。そういうところから税金を取るという課税最低限の引下げ論議に、私はなかなかくみできないのであります。

実際に何を課税最低限として廃止あるいは縮小していくのかという具体論になりますと、これがさらに難しくなる。確かに給与所得控除というのは、国際比較からいって、寛容な控除になっているということはわかるわけでありますが、実は単身者世帯にとっては基礎控除とこの給与所得控除しかない。若干社会保険の控除があるにせよ。単身者といいますか、単独稼得者の中には、もういまや1,000万人にもなろうとするパートタイマーのような方がいらっしゃって、この方々の課税最低限にも使われている。というようなことを考えますと、基礎控除、給与所得控除は難しいということになってしまうわけなのであります。配偶者控除に関して御批判のある方もいらっしゃいますが、専業主婦という方は1,300万人いらっしゃるわけでありまして、この方々の御意見というのも尊重しなければいけないということであります。

では扶養控除しかないわけで、扶養控除ということになるわけでありますが、ことし、これを児童手当に置き換えたという事例もあります。あるいは民主党のほうが課税最低限の引下げということを言っている。よく聞いてみると、扶養控除を削って児童手当に回すということのようでありますが、これは税でやるのか、手当でやるのかという非常に重要な問題、また別途検討しなければいけない大きいテーマがあるわけなのでありまして、単に夫婦子2人の国際比較を見て課税最低限の引下げ論議に行ってしまうということについては、慎重であるべきではないかと思います。

あと、先ほどから出ている源泉徴収でありますが、所得税というのは、いまの税金の中では一番古い税金の1つでありまして、特に戦後50年以上かけてこの源泉徴収体制というのが、世界でも冠たるほどに整備されているわけなのでありまして、ここにも書いてありますが、やはり徴税コスト、あるいは納税の利便性等々を考えますと、いわゆる一種の公共財とみなして、尊重していってはどうかと。特にいまの源泉徴収は、制度が社会的に、あるいは税制上大きな支障になっているという現象も私には見られないということであります。そんなことを言うと、全然変える必要がないということになってしまうわけですが、私は実は所得税については、いますでに制度的減税ですか……

加藤会長

定率減税。

佐野特別委員

定率的減税とか、いわゆる橋本さんの定額減税とか、あれに至る資料はいつかお出しいただいたことがありましたか。

加藤会長

ありましたね。

佐野特別委員

つまり、今度の「中期答申」は、いつまでもああいう暫定措置をやっていくわけにいかないということが所得税論議の大きい動機になっていますので、繰り返しになるかもしれませんが、資料に次回またもう一度、私すっかりもう忘れてしまって、申しわけございません。

ということで、1つ所得税については、やはり所得税の中の資産的な税金の部門なのでありまして、数日前に長者番付が出ても、株を売った人がずらっと頭に並ぶという、それは確かに彼らはリスクを背負って努力してここまで至ったんでしょう。それ自体は別にお喜び申し上げるわけだけれども、世の中の所得構造といいますか、それがそっちのほうになっている。それにもう少し対応する、つまり私は基本的には勤労所得というのを尊重すべきであって、所得の構成として資産性の所得というものがこれから増えてくる。それに着目した税制というのをさらに整備する余地があるのではないかというのが私の意見であります。

島田委員

佐野さんは非常に説得的なので、まあまあそういう感じになるかもしれません。ちょっとあえて少し注文をつけさせていただきたいのですけど、税か手当かという基本問題なので、まさにそれをやるときが来ているのだろうと思うのです。児童手当だけがそういう問題ではないので、家族をどう維持していくか、介護の問題が非常に大きい問題だと思いますけど、これは税なのか、手当なのかというのは、やはりここでしっかり、中期答申ですから、やっておく必要があると思います。

それから、配偶者控除の問題も、1,200万人いらっしゃるから、ちょっと手がつかないというのは妙なので、労働省の調査などでも、その中の300万人、400万人ぐらいでしたか、配偶者控除がなければ、もうちょっと勤労しようという意図を持っているという、繰り返しそういう調査はあるんです。非常にここのところはネックになっているという議論はあって、だから配偶者特別控除まで入れてやったけど、それでも片付かないという問題があるので、1,200万人いるから、ちょっと手が触れられないというのは、これは税調の意義を問われると私は思います。

それから、竹内さんがさっき言われたとおりの話であって、何で配偶者控除というのが夫のたばこ代になるのだということですよ。それはとんでもない話ですよ。関係ないですよ、夫なんていうのは。だから、そこのところは賛成ですね。ということで、やはりこの辺は議論すべきだと思います。

平田委員

この所得税議論というのは、本当に先ほどどなたかがおっしゃいましたけれども、各分野のいろいろな御意見を入れていくと、本当に総花的になってしまう恐れがありますね。だから、税調の「中期答申」としてぜひ私は言っていただきたいのは、所得税の世界は、所得のある方は何らかの負担があってほしいということです。課税最低限の問題とも関連しますけれども、やはり私なんかは実際に申告書を書く立場ですけれども、国税の出ない人というのは多いんですよね。国税が出なくなってしまう。それはいま減税なんかがどんどん続いているということもありますけれども。それで、地方税は結構かかる。これはやはり地方税の仕組みがちょっと違いますから、同じ所得でもそういう方があるということであります。国税も、地方税がかかる方は国税も少しかかるというふうな形に、昔はそうだったんですよね。だから、ぜひそういう世界に戻るような書き方をしていただきたいなと思うのです。それは所得税のいろいろな性格づけの中から生まれてくるものであって、やはり最近の景気回復のための減税が非常に効き過ぎてしまっているところがありますね。その点をぜひお願いをしておきたいと思います。

大田委員

水野先生がおっしゃった点で、源泉徴収に関して理論的に変えるべきだということはないと思います。理論的には現在のままでもいいのですが、理論ではなくて、理由は2つありまして、1つは不公平感といいますか、クロヨンというものがある。だから給与所得控除はクロヨン控除だと言われたりしているわけで、やはりそういう不公平感というものを放置したままこれから税負担が増えていくというのは望ましくない。それから、もう1点は、先ほど和田さんもおっしゃった、使われ方に対して納税者のチェックがどれぐらい働くかという点で、やはりサラリーマンが自ら計算して納税する場合と、あらかじめ取られる場合とで、納税意識は全然違うと思います。

それから、納税コストは、いまは企業が徴税コストを肩代わりしてくれているわけですから、企業がそれでいいと言えばそれでいいのかもしれませんが、これがパソコンを使った納税に次第に変わっていけば、納税コストも少し少なくなる余地が出てくるわけですし、私は少々徴税コストが上がっても、日本の現状を考えると、むしろ政策の決定の仕組みという観点から見て、サラリーマンが自ら計算して納税するほうが望ましいと思っています。そういう理由です。

本間委員

所得税のあり方についてでございますけれども、私も課税最低限をアプリオリに下げるというような議論の荒っぽいやり方は、適当ではないと思いますが、個別の控除項目について、理論的・整合的な形で再構成をするということは、これは不可欠のことだろうと思います。その結果として引下げになるというようなことが起これば、それは1つの結論だろうと思います。

具体的に申し上げますと、例えば配偶者あるいは配偶者特別控除というようなものは、これは加藤先生の御専門ですけども、アーサー・セシル・ピグーという方が、家政婦の方と実質的には夫婦関係にありながら、なぜ結婚しないのだと、こう言ったときに、結婚したら内部自家消費をしてナショナルインカムが減ると、こういう形で茶化してお答えになったということを聞いておりますけれども、つまり、自分のところで奥さんの家庭のサービスを受けるということは、これは自家消費でありまして、本来はそれを足した上で税金をかけるということが理論的な正当性を持つ。しかし、それとは逆なことをやっているわけで、それを、竹内さんがおっしゃったとおり、主たる所得の稼得者のたばこ代にするというのは本末転倒であるということは、これは明らかであります。しかも、それは控除の問題だけではなくて、給付の年金の問題においても同じことが起こっておるわけでありまして、配偶者であるということは、負担が夫の負担によって賄われるという形で、単身者の女性よりも免除をされている。こういうようなことを放置して、この問題を議論しないということは、私はこれはいかがなものかということであります。

それから、もう一つ、例えばチャイルドケアの問題もそうでありますけれども、扶養控除の問題も、さらには地方税の課税最低限の問題と、そういう福祉の最低レベルの問題、これはいまばらばらでありまして、所得税だけの部分のところでの水準のありようというものは、当然、その他のバランスの上において議論をされてしかるべき問題でありまして、この辺のところについては、おそらく過大に専業主婦というものがベネフィットを受け過ぎているのではないかという気がいたします。これが第1点であります。

それから、もう一つの問題、実質的に社会保障の部分のところがどんどんこれから増えてまいりますので、所得税の空洞化の問題が起こってくるわけでありますし、そして、それと同時に課税最低限が実質的にはどんどん下がっていく問題。これは税と社会保険料の再分配効果というものをどのように考えていくかということになりますと、なかなか難しい問題はありますけれども、私は税のほうが再分配効果があってしかるべきだろうと。その点においても、いまのありようというのは、いかがなものかという感じを持っております。

いろいろございますけれども、先ほど諸井委員が御指摘の課税最低限の問題というのは、消費税の税率で割り引いた実質で課税最低限を議論するということがセットになっておりませんと、これはミニマムな負担のレベルをどう規定するかということは、理論的には解けないわけでありまして、ぜひその辺の部分の実質の課税のレベルというものをどのように規定するかというものは、連動させながら議論をしていくということが必要であろうかというぐあいに思います。

最後に、私いつか述べたこともあるのですけれども、退職所得課税というものの非合理性というものをぜひ検討をしていただきたいと思います。この問題について、事例的には、勤続年数が多いと所得金額が多くても所得課税の退職の課税のレベルが逆転をするようなケースというのはままあるわけでございまして、中立的な課税の状況からすると、これは必ずしも適当ではない。したがって、前半の課税免除と後半の20年を超えるような部分のところのありようについても、十分に検討をすべきであろうと思います。

佐野特別委員

先ほどから配偶者控除の話が出ていまして、亭主のたばこ代だとか何とかという話もありますが、それは一例なんでしょう。別に亭主のたばこ代ばかりのために配偶者控除があるわけではない。

そもそもこの配偶者控除というのは何十年もある制度でありまして、そのとき、どういう理由か知りませんが、内助の功という、あるいは奥さんにも奥さんなりの生活費がかかるだろうということで始まったと思うのですが、これを廃止なり縮小なりする場合は、そもそも制度の目的としていたものが削がれている、つまり変質しているという実証が必要ではないか。それができるのかどうかということであります。

もう一つは、先ほど年金との関連といいますか、それとつながったお話が出ましたが、やはり配偶者控除という場合、奥さんには収入がないのだと、ない主婦を対象にするのだということが前提になっているわけで、年金なんかも、確かに奥さんの年金保険料を払わないということは、年金の財政にとっては大きい話かもしれませんが、ないところから取れないだろうという極めて素朴な理由からあるわけでして、130万円を超していれば、奥さんからも年金を取るということになっているわけなので、専業主婦にはもともと収入がないのだと、所得がないのだという前提でこの配偶者控除を考えていかないと、何か新しい世の中の動きに控除制度を合わせるという結論になりかねないということを懸念します。

本間委員

お言葉ですが、私は配偶者の地位にとどまっていらっしゃる女性は、高額所得者であるということをお忘れになっていらっしゃらないかという気がするわけです。つまり、配偶者控除を受けているのは、これは決して所得がないからではなくて、主たる所得の稼得者が非常に大きな所得を稼いでいるがゆえに、そういうことが起こっているということは、これはデータを見れば明らかなわけでありまして、それを1つの理由といたしますし、それから、女性の就業構造をいわば結婚の中立性という形での非バイアスを持たせるような形でのありようというものは、これは当然議論をされなければなりませんし、そのことがいわば単独課税なのか、個人課税なのか、あるいはジョイントの申告なのかというような問題を、諸外国では生み出しているわけでありまして、こういうライフスタイルに関してのある種のフェイバーを与えるということは、必ずしも私はいいことではないのではないかということで申し上げております。

加藤会長

そろそろ地方税のほうに移りたいと思っていますが、いまの議論は大変難しい。私もいろいろなところで聞かれるのですが、専業主婦という人は一体どこにいるんですかと言われると、何か団体があるわけでもないんですね。誰が反対しているのだかよくわからない。しかし、何となく手を入れようとすると反対になってしまう。不思議なものだということを私いつも言っておるのですが、そこら辺のことをもうちょっと私も検討してから、またお答えしたいと思っております。

それでは、申しわけございませんが、お待ちかねでございますので、地方税のほうに入っていきます。地方税総論について、それでは地方税の財政全体についての幅広い検討が行われておりますので、事務局から簡単に説明していただきます。小室企画課長、よろしくお願いします。

小室企画課長

資料の「総48-6」と「総48-7」でございます。6のほうの2枚にいろいろ意見が書かれております。それに関連した資料を用意しておりますので、資料にこんなものがあるという中で意見を織り交ぜていきたいと思いますので、必ずしもこの順番ではないかもしれませんが、資料のほうをめくりながらお願いしたいと思います。

まず、地方の自主財源の充実強化がずっと言われてきたという流れで、特に分権の関係の1ページに並べてございます。つい先日、地方分権推進法が1年延長になりました。その過程で、次の2ページ、3ページにありますように、閣議で分権計画の概要ということで、2ページの下のところ、国庫補助負担金の整理合理化とか、3ページの上に、地方税・交付税の一般財源の充実確保というようなことを触れています。また、4ページのところでは、税については、歳出の比率と税の比率が乖離しているので、縮小の方向というようなことをいただいていて、5ページにありますように、法律の審議の際に、附則ということで修正が行われたり、あるいは参議院では附帯決議がついております。この辺を踏まえて、やはり経済が安定した時点で議論すべきではないかとか、国・地方を、財政が大変なので、財政構造改革、それとの関連で議論すべきではないかと、こういう議論をいただいております。

そこで、6ページのところですが、国・地方の行政責任のあり方ですとか、あるいは国・地方の行財政全体、支出、それから、税だけでなく議論が必要だということで、国・地方の仕事の分担を書いてございます。その際、地方のほうは当然歳出をいろいろ点検しなければいけないのですが、7ページを御覧いただきますと、地方の歳出の場合には、国のほうから補助金・負担金が出ているもの、例えば義務教育の職員費ですとか、生活保護ですとか、公共事業、あるいは警察、消防、高校といったところは、職員配置が政令で決まっているような義務的な部分がございますということで、それがどうかという議論があります。

以下、地方財政の状況は8、9、10、11と省略させていただきまして、12ページのところでございますが、先ほど社会保障負担の議論が出ましたが、地方の場合には年金等と違いまして、社会福祉サービスを税で賄っているという状況がございますので、この表を入れております。

それから、13ページのところで、国・地方それぞれ大変な中で、どういうふうに地方税を充実していくか、税と歳出の乖離を縮めるかといったときには、地方税だけの議論ではなくて、政府間の財政移転であります交付税、あるいは特定目的の国庫支出金、いわゆる補助金ですが、これとあわせて議論すべきではないかという御意見をちょうだいしております。

そうすると、その国庫支出金というのは、どんなイメージですかというのを、念のため14ページに入れてございますが、支出金と一口に言いますけれども、負担金というのは、先ほどの義務教育とか、公共事業とか、あるいは生活保護、こういったようないわばルール的な形のもので、真に負担すべきものを限定して確実に負担する方向だというふうに分権委員会のほうで言っております。それに対して下のほうの奨励的、財政援助的な補助金については、国家補償とか税の代替のようなものを除いて廃止・縮小の方向であると、こういう答申もございます。

そうした場合に、国庫補助金を削って、地方団体は本当にやっていけるのかと、逆に税に振り替えると偏在があるではないかという御議論があるので、15ページにそれぞれ主なところの偏在度を記してございます。

それから、とんでいただきまして18ページに、地方税の議論をするときに、その充実なり何なりというのは、どういう税目の特徴があるのかということで、主なものを書いてございますが、個人住民税を充実するとか、固定を充実するとか、そういった御議論を記載してございます。

それから、あともう一つの議論が、課税自主権を十分に活用してということで、19ページ、法定外普通税ですとか、20ページの超過課税を活用すべきだという御議論をいただいております。

そして、最後に、歳出との関連でもありますが、行政改革、とりわけ民間委託とか職員費、そういったところということで、22ページあるいは23ページは具体例として、例えば東京都の例が一番上にありますが、ベアをとめるとか、定期昇給をとめるとか、給料を切り込みを入れるとか、こういった例を書いてございます。

あと、給与、公務員数をとばしていただいて、最後のページですが、御議論がありました合併についてということで、これを進めるべきだという御議論ですが、中ほどにありますように、都道府県に合併のパターンをつくるようにいま要請していますが、このパターンというのは、合併の姿を地図に落としたものというような形でいまお願いをしているところでございます。そういうことで、大体この2枚の意見、ほぼ触れたと思いますので、ここで終わります。

加藤会長

それでは、どうぞ、河野さん。

河野特別委員

地方税総論のところを読んでみると、いろいろなことが書いてあって、僕が言ったことも一応それなりに書いてあるので、そのことはあまり過不足がないように思うんです。

ただ、この黒でいくつか書いてあるうちの4項目の中に、地方交付税の話が入っているんですよ。これは地方にとって紐のつかない一般財源で極めて貴重なもので、これで皆さん首長はいろいろな仕事をしていらっしゃる。確かに思い出してみると、4月25日の基本問題小委員会では、こういう議論はあったのだけれども、地方交付税そのものについて、大雑把にしろ、ラフにしろ、精緻にしろ、ほとんど議論をやっていないんですね。しかし、考えてみれば、その議論を一応やっておかないと、政府税調が地方税総論をやったことにならないと思うんです。私はここに書いてあるいくつかの意見は、私の意見とほとんど同じなのだけれども、まず、いまとりあえず、栗田さんを含めて知事とか市町村長がおやりになってもらいたいと思うものは、いま課題になっている地方財源の充実、改善ということについて、外形基準もそうだし、住民税の均等割の話もそうだし、いくつかあるんだけど、それをとにかく首長は納税者を相手にしながら汗をかいてやることだと。政府税調ではそれを抜きにして前には絶対議論が進まないと思う。

第2に、それをちゃんとやって、みんな汗をかいてやって、それもなかなかすぐにはいかない、壁にぶち当たる現象が起こったときに、第2にもっと大掛かりな、地方分権委員会、我々が答申したような国と地方の間の税財源の配分の見直しという大作業に入らなければいけない。しかし、これは極めて大掛かりな、100年に一遍ぐらいの大議論をやらなければこの話はできない。

とすれば、僕は手順論としては、まず当面、地方税は汗をかくことがあるだろう。その次にチャンスを見て、どの総理大臣が決意するかわからないけれども、それは相当な決意がなければ、こんな大議論は起こせませんから、いまの森さんができるかどうかわからない。わからないけれども、いずれそれはやらなければならない。それは国と地方の財政の再建問題を全部含めて総掛かりでやらなければいけない。そのときの地方税の話が当然入ってくると思うんです。それはここに書いてあるからそれでいいのだけども、その議論をやるときに、地方交付税という巨大なものを基本的にどう考えたらいいのかということについて、やはり一応基本的にこの上に乗せておく必要があると僕は思ったんです。

私の言うことは、栗田さんを含めて地方の団体の方から反発を食らうかもしれないけど、そんなことはわかっていて最初から申し上げますからね。議論がそれで活発になれば、ウェルカム、大歓迎。

まず、いまの交付税の制度というものは破綻に瀕している。誰がどう見たって、大局観で見れば、破綻に瀕している。なぜそうなっているかというと、いろいろな説明の仕方があっていいんですよ。細かいいまの交付税の仕組みはこうこうで、特別交付税が6%から入っているから、細かいことをやるとこんな資料が要りますから、とても追いつかない。我々はラフな議論をやらざるを得ない。

非常に単純に砕いて言うと、これは教科書に全部書いてあるけれども、まず基準財政需要がある。これありきなのが、ここが大問題なんだ、僕に言わせれば。いままではそれでよかったけど、これからはそうはいかないと思うんだけど、まず基準財政需要があって、これはこうこうこういう仕方で計算するんだよと、自治省が書いている。それに対してこの基準財政収入というのを計算しようと。差額が出てくる。いままで高度成長下で交付税の税源になる法人税、消費税その他のあれがふんだんに入っているころは、まあこれでもいいと、ナショナルミニマムの議論も有効だったし、田中角栄を含めてね。ある時期有効であったことも事実だから。それから、格差を是正するという行政水準のこれまた再挙でもあるんですよ。いままではそれでいいけど、ここに至ってこのやり方は、本当に重大な壁に逢着したと思うんだね。

それで、差額が出たら、しようがない、国で地財計画の中で面倒を見るか。今度、いまは銀行から借金をしてこの特別会計をやっているんだからね。40兆円から何かの金を借りて。聞いてみれば、あれはいずれ国が面倒を見るんだろうと、地方は知らないと。国が面倒を見るんだろう、どこでどう処理するか知らないけれども。ということが基本の了解だと聞いている。いまのシステムからいったら、そうかもしれない。しかし、それはいつまでも続けることはどう考えたっておかしいじゃないかと。

僕なんかは、ラフに言えば、いつも言うことはラフなんだけど、基準財政需要まずありきで、それがまず先決にあって、しようがないから借金でもやって積んでおくかというやり方を基本的に考え直さなければ、細かいことはなんぼ議論しても役に立たない。帳尻合わせの尻を全部国が結局長期にわたって担うのだということはおかしいではないかという問題提起を、すぐに僕は結論が出るとは思っていないけれども、今度少なくとも中間報告の中には、地方税総論の中できちっと書いておかなければ、政府税調は何をやっていたんだと言われると思うんですよ。

いまのようなやり方だと、言っちゃ悪いけども、地方で本当はいろいろな努力をやらなければいけないのを、これが緩褌だと、何だかんだ合理化をやっているとおっしゃるし、事実、部分的にやっていることは認めるけども、不十分ですよ。お尻に火がついていないんですから。全部平等に均一に地方の行政水準をやらなければいけないということは、理念としてわかるけども、そろそろ、その理念もここまでレベルが上がってきたならば、考え直すべきではないかと思うんですね。

僕は冒頭に事務当局から説明を受けたときに、地方税のことをあまり書いてないから、事務当局、大蔵省と自治省は何をやっているのだと思ったけど、追加して説明を聞いてみれば、まあまあ書いてあるんですね。だからそれに文句を言うことはやめますけど、とにかく追加して、交付税のあり方について、本質的な問題提起をしないといけない。

しかし、その議論は、僕が申し上げたようにすぐにできる話ではありませんよ。大掛かりな国・地方の財政・税制全体を考えて、その中で税財源の配分論というのをやったらいいんですよ。1年かかっても2年かかっても構わないから。そのときにはこの交付税の話に触れざるを得ないです。これは全部お戻しいただきますよ、私でやりますよ、ほかのところでちょうだいよ、という話は絶対通らない。税調だとか財政審だとか、どういう団体を集めたって、と思うんです。

都会の人間は、とかく地方に対して偏見を持っている。そうかもしれませんね。マスコミの85%は東京だから、偏見はあるんですよ、栗田さん。よく中西さんが言うのも、あの人もやはりかなり偏見があるかもしれない。だけども、それが常識的になっているというところが事実なんだ。それを確認しないと議論ができないんですよ。それだけ申し上げておいて、いまの議論をきちっと記載してもらうということを前提として、あとは反論を待ちたい。

中西委員

私、冒頭、この「中期答申」の税体系を抜本的に再構築する場合に、当然、社会保障費との関連を抜きにしては議論できないということを申し上げたのですが、さっきから島田委員やその他いろいろ意見が出ているので、これについてちょっと申し上げたいのですけど、全くこれは、今度、介護保険が新たに創設されまして、もう税と社会保険、どっちが多いかなというぐらいに、あわせて国民負担率がものすごいものになってきておるわけで、税だけいくら議論しても、まさに魂の抜けた議論になるわけですから、私は、さっきどなたかがおっしゃったのだけど、当然、高齢化社会がどんどん猛スピードで進んでおって、若者の数は減っていると。どうするのだと。完全に年金も医療保険も破綻ということは歴然としてきているわけですね。ではうっちゃらかすかというと、そうはできないですね。当然のこととして、これは税のほうへ援軍を頼みに来る。さっき島田さんもそうなるのではないかとおっしゃって、私もそうなると思いますね。

となると、これはやはり、例えばそれが本当のシビリアンミニマム、本当の底辺のセーフティネットとしては何を置いてもやらざるを得ないと思います。そうなると、これは金を出す者は口を出すんですよ。経済の社会でも何でもね。国家間でもそうです。金を借りたら、金を出した人がものを言っていいわけですから、私はやはり税の21世紀をにらんだ大きな中間報告の中には、社会保障のありようの基本的なポリシーを言っていいのではないかと思うのです。

これは大いに議論しなければいけないと思うのですけれども、私の日頃思っていることを申し上げれば、ザクッと言えば誤解を招くかもわかりませんが、昭和48年ですか、福祉元年で、それでどんどん社会福祉が進んだのですが、結局、ここへ来て非常に国民は豊かになったわけですから、私は公的年金はほんの基礎年金部分、1階部分だけに限って、それから、世代間の付加方式の年金も、やはりここで大幅に抑制して、そして積立て方式で、かつ、それをなるたけ民間がやることで、大いに選択させればいいではないかと。公的年金は本当のシビリアンミニマムの、これだけはちゃんと面倒を見なければいけない層に対して、厚く完璧なセーフティーネットを敷くということをやるべきである。それぐらいのポリシー論を税制体系の中に織り込んでいいのではないかと思います。

もう一つ、地方税のことをさっき河野さんがおっしゃったので、私も冒頭、国と地方政府との間の財源の配分問題を抜きにしては、税の議論はできないだろうと申し上げたのですが、河野さんがそこを詳しくおっしゃって、全くそのとおりなんです。

ここで一言私の意見を申し上げますと、さっき首長の1人の方が、俺らもリストラをやっていて、いろいろやっているのだと。これ以上やれるとか、やれんとか、これは水掛け論になるのですが、私はまだできていないと思います。これはとてもじゃないが、首長さんがいくら旗を振ってもできないと思いますね。これをやる主体は何がやるかといったら、県民であり、市民であり、住民がやると思うんです。したがって、県民、住民、市民に、自分の税がどう使われているかということを監視さす目を向けさせるのはどうしたらいいか。これは一言で言えといえば、課税自主権を与える以外ないですね。課税自主権を地方自治体に与えて、自らの負担、要するに税を納める、社会保障費も納める、それが一体どういう行政サービスとして、給付としてはね返ってくるかということを、一体としてみせるシステムにしたら、むしろこれはどんどんと住民がリストラを推し進めるだろう。首長さんはやらなくても。そうすれば、相当の合理化ができるので、まさにさっきから言っていた交付税・交付金を、私は仮にと言ったのですが、仮に半分というのも、それでも数十兆円浮くはずですよ。ですから、一概にそういう数字を独断と偏見で言うわけにいきませんが、やはり交付税・交付金をかなりのところを絞って国から配給するという、首長さんが霞が関にお百度参りをするというシステムをやめて、文字どおり名実ともに地方自治体が自ら課税し、自ら政治を行うという形にするのが理想だと思います。だから、当然、税制体系の儀論としては、やはりそこまで踏み込んだ議論をしていいのではないかと思います。

諸井委員

地方分権委員会は、国と地方の税財源の配分の問題について、具体的な提言をしようということで、いろいろ研究もしたわけです。しかし、最終的には、この問題はやはり政府税調があって、そこで広く国税・地方税あわせて考えるべき問題だと。だから分権委員会のほうで具体的な税目等について述べることは、差し控えてもらいたいというような線があったわけで、それで我々としては、例えば偏在性が少なくて、安定性のあるような税源を地方へ移譲してもらって、現在の歳入と歳出の乖離をなるべく縮めるようにしてくださいと、そういうような提言をするにとどめたわけですね。したがって、今度の中間答申の中で、国と地方の税源配分の今後の考え方について、やはり何らかの具体的な方向性というものを示していただかないと、一体我々は何のために勧告を控えて抽象的な議論をしたかという意味がなくなってしまう。

加えて、今回、国会で1年間任期が延長になってしまったんです。これは国会のそのときの議論を見ても、かなり税財源問題をやってくれという要請が、国会の中でも、あるいは地方団体のほうからもあることは事実なんです。ですから、もし税調のほうでその問題についてあまり検討しないということになると、今度はいよいよ我々がやらなければならないという話になって、非常にお互いにぐあいの悪いことになってくるのではないか。ですから、お互いにいろいろ協議をしながら、役割分担して議論をしていくということは私はいいと思うのですけれども、ぜひとも今度の中間答申の中で、この問題についての具体的な方向をひとつ書き込んでいただきたい。これが第1点であります。

それから、どうも1つ誤解があるように思うのですけれども、この地方分権あるいは地方税財源という問題について、何か地方のほうが余計な財源を持っていく、いままで以上の財源を持っていくと、そういうふうに誤解されている面があるのではないか。現在は、さっきの表にも出ているように、地方の歳出というのは、大体90兆円とかそういうようなレベルにあって、その中で地方の税金で賄っているのは35兆円とかそんな程度のことなんですね。あとは交付税とか、あるいは補助金とか、あるいは地方債とか、そういうことで賄っているわけです。我々が主張しているのは、90兆円をもっと増やしたいということを言っているのではない。地方の財政需要からしても、むしろ90兆円をもっと減らさないといけない。これは中西さんなんかがおっしゃるとおりなんです。その努力はどんどんやらなければいけないと思うんです。そのためにも、地方に財源があって、その財源を住民が見ていて、それをどう使うのが一番合理的なのだという形に持っていくのが、お互いに財政を改善していくためにプラスになる。いまのように補助金がついていて、それで国の補助条件に合ったものでなければいけないということになれば、必要のない部分までやらなければいけない。それは交付税なんかにしても、交付税を交付するいろいろな条件があるわけですから、中央の言うとおりやっていれば、楽に財源がついてくる。このやり方では、地方のほうでもなかなか行財政改革ができない。ですから、むしろ地方に財源を振り当てて、自分たちで行財政改革をやらせるという形に進まないと、国も地方も困るんだ。そういう考え方で、決して税源なり財源なりをもっと増やしてくれということを言っているのではない。だから、もし税源が増えれば、その分は補助金を減らすとか、交付税を減らすとか、なるべくそういうものを減らしていく方向へ行くべきだということを言っているので、そこも誤解がないようにしていただきたいということですね。

それから、最後に、外形標準課税の問題ですけれども、これは実はいま法人事業税でいただいているものを、所得基準から外形基準に変えようという話ですよね。我々が理想としているのは、広く薄くということです。応益課税ですから、小さな法人でも、場合によっては赤字の法人でも、少しは納めてくださいよという考え方でいきたいというのが我々の理想ですよね。だけど、それは現実に税制をつくるときに、中小企業はどの辺まで取るのかとか、ベンチャービジネスはどういうふうに免税するのだと、いろいろなやり方があるわけですから、取る相手とか範囲とかというものは、いろいろ考えられる。ただ、これはやはりあくまでも税収としては中立で、現在取っている法人事業税に当たる部分を外形基準でいただきたい。そうすれば応益課税になるし、それから、安定性が出てくるということを言っているわけなんですね。これも何か余計取ろうとしているのだと、企業をさらに苦しめるものだというふうな話にすりかわってしまうと思うのですけれども、そうではないのです。そこをひとつよく理解をしていただきたい。

竹内委員

まず第一前提として、現在の地方交付税の性格は、97年ぐらいから完全に性格が変わったと思います。つまり、基準財政需要という考え方ではなくて、いわゆる財源補てんという考え方、地方の財政の財源補てん、それに応じて、実際はかなり経済成長率以上に動いていくという、この現状にまずストップをかけるというのが第一前提だと思います。どんな人もマネジメント能力なんていうものは、歳入が減らなければ絶対に起きないので、地方交付税は完全に減らすべきだと思います。ないしは現状維持、あるいは経済成長率を上限とする、ないしは何らかのガイドラインを設ける、というような形にしませんと、これがいわゆる財源補てんに対して、何の危機感も生まないことになってしまうのではないか。

2番目に、現在、景気対策及び公共投資計画で年間50兆円ぐらいの公共投資が依然として見込まれているという状況、これに対してはっきりとメスを入れるということが必要だと思います。つまり、最初に歳出の額が決まってしまっているという変な状況を直さない限り、地方が裏打ちもない公共事業を必死にやらなければいけないというような状況に対して、はっきりとした見解を出すべきだと思います。

3番目に、地方財政計画というマクロな計画が実際どういう意味があるのかということについて、きちっと御議論いただきたい。つまり、これは足し上げたものだという考え方がございますが、現在のところ、自治省は自治体の個別チェックを一切やっておられないという段階で、足し上げたものだけをベースに御議論なさるということに対して、私は大変おかしいと思います。

最後に、財源の足りないという、1割になっているとか、2割になっているとか、いろいろそういう問題がございますけれども、あくまでも先ほど言いましたように、地方公共団体というのはサービスを主にやっているわけですから、サービスの対価はすべて個別事業別に情報開示して、そのコストとして住民からお金を払っていただくということを徹底していただく。つまり地方公共団体は事業別にすべてばらばらにして、そして、その対価をきちっと払っていただく。その形が税であれ、料金であれ、フィーであれ、そのような形で地方財政としては財源を拡大するという方向しかない。

現在の日本の地方財政システムというのは、まさに国を滅ぼす状況にまでかなり来ているなと。つまり、地方財政の失敗を日本国民全体が負担するという仕組みである。実際国が360兆円の赤字、地方が170兆円と言われていますが、この350兆円の中にも地方原因というようなものもかなり含まれておりますし、すべて地方の財政マネジメントの失敗を国全体が、しかも将来世代がみなければいけないという、このとんでもないシステムを、これは10年後ではなくて、すぐに、今年中にでもきちっとメスを入れていただきたいと思います。

松本(和)委員

地方交付税関係が大分出てきたわけですが、これは地方といたしましても、やはり地方公共団体の不均衡を調整する、是正するということでの交付税だったわけです。それで基準財政需要額、また収入額が乖離がある。これを何とか埋めてやっていかないと、なかなか地方団体というのはやっていけない。今後においても少子・高齢化の社会に入ってくる。また町村においては介護の問題、子育ての問題、生涯教育の問題とか、いろいろ出て、町村にとっては役割も本当に大きく今後なってくるのではないかと思います。

それで、さっき課税自主権等も出てきたのですが、町村において課税自主権といっても、なかなか取るところがないんですね。そういうことを考えますと、やはり地方交付税というのは、需要額と収入額、この乖離を何とか埋めてもらって、地方分権を進める方向でいかないといけないのではないかというような感じを持っております。

また、地方もやはり効率化を目指しながら頑張りつつあるわけです。行革もやっております。そういうことで、いろいろの御意見等を聞いておりますと、都市部においては、財政力指数というのは高いのですが、我々町村を見て、私の町でも0.35しかないわけです。それで課税自主権にいたしましても、なかなか取る目的の目的税にしてもございません。そういうことになれば、結局、都市部を外して、町村部を切り捨てみたいな声に聞こえてくるわけですね。やはり日本全国不均衡にならないように、これが交付税で保たれていると思いますので、そういうところも十分理解をして、地方交付税によって財政の調整を、これは町村にとっては不可欠の問題だと思います。そういうことで御理解願いたいと思います。

加藤会長

ちょっとここで税務局長から。

石井税務局長

先ほど竹内委員から地方財政計画の話、それから、河野委員さんからも基準財政需要額の話が出ました。先生方で議論していただいたらいいのですが、もし誤解があってはいけないので、ちょっと一言だけ言わせていただきたいのですけれども、地方交付税の総額を毎年計算いたしますときに、地方財政計画というものをつくるのですが、先ほどの資料の中で言いますと、地方税総論の資料の7ページをちょっとだけ見ていただきたいのですが、先ほど時間がなかったので、担当課長が説明を省略してしまいましたけれども、先ほど諸井委員のお話にもあったように、地方財政計画は12年度で大体88兆9,000億円ぐらいの規模になっているわけです。

先ほどから交付税を減らせとか、地方財政計画を見直せという議論があるのですけれども、結局、この地方財政計画の歳出の水準というのは、別に自治省が勝手につくっているのではございませんで、毎年毎年各省庁に照会をし、地方にももちろん御照会しているのですけれども、例えば義務教育でいえば、義務教育の学校の先生が何人必要なんですか、警察官は何人要るのですか、ということを各省庁に聞くわけです。そうしますと、お子さんが40人いれば、40人学級で1人学校の先生を置いてほしいと。これは法律に書いてある。国会で決まっているわけですね。そういうものを根拠にして計算を文部省さんがして、来年は何人ですと、こういう話なんですね。それから、例えば生活保護をやる。4分の1が地方の負担だと。これはやはり生活保護をやる以上は、国費も出しますけれども、地方負担も要るから、それは計算に入れてくださいと、こういうふうになっている。それから、警察官の数は警察法の政令に全部人数が書いてありまして、北海道は例えば何千人、埼玉県は何千人と、こう決まっている。この人件費はやはり保障しなければいけない。それから、例えば公共事業でいいますと、建設省さんも農水省さんも運輸省さんも、来年はこういう計画でこういう事業をやりますと、予算にはこういう国庫支出金がつきます。これはちゃんと計算に入れてくださいよと、こういうふうに言われて積算ができてくる。

もちろん、そういうものの積み上げたものが地方財政計画の歳出でありまして、一方、先生方に御議論いただいて、来年一体地方税がいくら入ってくるか、それから、地方交付税は御承知のように、いま法律上は所得税ですとか法人税とか消費税の一定率で決まっていますから、法律どおりやったら交付税はいくら入ってくるかと計算をしまして、どうしても足りないものを地方債でやったり、それから、例えば生活保護みたいなものは経常経費ですから、お金が足りないとなったら、これは地方債でやるというよりは、むしろ交付税を臨時に増やしましょうといったようなことで処理して、これで計算をしまして閣議決定をする。その内容については、毎年国会で審議をしてもらって、地方財政計画はもちろん国会でも説明しますし、それから、基準財政需要額というのは、毎年毎年地方交付税法を法律に出しまして、その中で例えば教育費はいくら、すごく細かいものを出すのですけれども、それぞれ分野ごとに積算を示して、国会で御審議いただいて決めている。

こういうものですから、もし先生方が交付税をもっと大幅に減らせということをおっしゃるのでしたら、それはそれで結構なのですが、それにはその前提となるいわばナショナルミニマムをもっと減らせということなのだということをよく理解していただきたいのです。例えば、お金のない地域の小学校は、あるいは中学校は、40人に1人先生がいなくてもいいじゃないか、50人に1人で我慢しろと、60人に1人で我慢しろということをおっしゃるのかどうかなんです。そういうふうにやってもいいとおっしゃるなら、それで結構なので、自治省は法律や各省の御要望を受けてこれをつくって、国会で御議論をいただいているのですから、そこのところをよく理解した上で議論をぜひしていただければありがたいと思います。

松尾委員

せっかくの税務局長のお話ですけど、やはり世間に与えている地方交付税の印象、これを御存じでしょうかね。御存じでないはずはないと思うのです。どういう印象を与えているか。地方団体がせっかく努力して税金を集めてきても、その分交付税を減らされるなら、国に頼って何もしないほうがいいということですね。50年もそれに親しんできているわけですから、交付税依存体質から全く抜け切れていない。これは社会主義中国の国有企業の体質によく似ているんです。そっくりです。行政学者の間には、これはまるで共産主義国家ではないかと、そう言っている人がいるんですよ。ですから、自治省を頂点とする親方日の丸体制そのものであると、こういう批判が現にあるわけです。交付税制度の仕組みはわかっていましても、中身が極めて不透明である。名前を変えた自治省の補助金と言われても仕方がないんですね。

その原因の1つは、やはり基準財政需要額の算定方式があまりにも複雑化している。どこでどう手心が加えられるか、そういうかなり疑問があるんですね。ですから、そういった制度の中身をすべて公開すべきであると思います。これは次の機会で結構ですから、よろしくお願いします。

それから、交付制度の、意見の概要では、「国庫支出金や地方交付税の見直しを含めた国と地方のトータルな意味での税財源配分を考えるべきである」というまとめ方になっていますけども、この段階ではもう遅いですね。この段階というよりも、もっと前に進む必要がある。単なる見直しではなくて、交付税制度のどこに問題があるのか、それはやはりはっきり指摘しなければいけない。もっと踏み込むべき段階に来ていると私は思うのです。

現在の制度は、借金の返済費まで交付税交付団体の収支尻の全部を面倒を見ているわけですね。このため野放図な財政運営を招くこともあるでしょう。交付税が補助金化していると批判もされるわけであります。ですから、歳出の全部の面倒を見るというそういう哲学を変えなければいけない。ですから、交付税を定額的なもの、あるいは歳入調整に限定すべきではないか。これが地方分権を議論する大前提になると思います。

加藤会長

ちょっと時間が超えておりますが、大変盛り上がっておりますので、もうちょっと続けたいですね。どうぞ、栗田さん。

栗田委員

地方分権を進めていかなければならないわけですが、先ほどの資料でもありましたように、国税が6割、地方税が4割ということですが、実際の支出は地方が6、国が4ということで、それは要するに補助金を国から地方へ流している。その補助金が地方分権にとって大きなマイナス要因になるということで、補助金を減らして、あるいはまた補助金の裏負担である交付税を減らして、その分を地方税に回すべきではないかと。そうしますと、国税を減らして地方税を増やすということですから、所得税からの住民税への移譲とか、あるいはまた消費税と地方消費税との税率を地方にシフトするといったような形で、ぜひ地方財源を充実する必要があるというぐあいに思っております。

地方が汗をかくべきではないかという意見が先ほどから出ているわけですけれども、制度として地方税を増やしてもらう。そして、地方税を徴収するのに汗をかくということ。それから、法定外普通税もありますし、そういった税制上認められているものについて、地方が努力をするという、そういうことで進めていくべきであるというぐあいに思います。

それから、交付税につきましては、交付税自体の見直しはもちろん必要でしょうけれども、マクロで辻褄が合っても、それぞれの市町村の財政需要と税収との間の乖離というものを考えますと、財政調整機能を果たすという意味で、交付税制度そのものは大事な制度ではないかというぐあいに思います。

それから、来週、外形標準課税のことがまた議論されるようですけれども、来週出席できませんので、一言述べさせていただきますが、いま小委員会でいろいろな検討を進めていただいておりまして、敬意を表する次第でございます。そこで、外形標準課税は、もう小委員会でもいろいろ議論がありまして、都道府県との受益関係に着目をするということですから、努力をして所得をたくさん出した法人が法人事業税をたくさん納めるというのは、やはり理屈からしてもおかしいわけで、外形標準課税をぜひ早期に導入していただきたいと思います。いま東京都が外形標準課税を導入しておりますが、私に言わせれば、ああいう変則的な形ではなくて、全国一律の外形標準課税というものの導入を早く図っていただきたいと思います。

それから、外形標準課税と消費税の税率アップを、いわばどちらを先にするかという議論がありますが、これはもともと別な議論でして、税源の充実という意味で、消費税の税率引上げの課題があるわけですが、それと別にまた外形標準課税の課題があるということで、その点を進めていただきたいというぐあいに思います。

大田委員

「中期答申」では、地方交付税の改革を最優先事項で書き込むべきだと思います。もちろん、ある程度の財政調整制度は必要だと思いますが、いまの交付税は、これは先ほどから議論に出ているように、あまりに問題が大きいわけですね。石井局長はナショナルミニマムとおっしゃいましたけれども、いまの水準はナショナルミニマムではないと思います。都道府県レベルで東京都以外は全部ナショナルミニマムに達していないとすれば、ナショナルミニマムがおかしいわけで、自治省はよく教育の例をお出しになるわけですけれども、教育以外のところでもすごく問題が大きいわけですね。

このまとめの4つ目の黒丸に、国と地方の税財源配分で、財源配分を先行させるべきという考え方が書かれていますが、地方交付税がありますと、いくら税源配分しても、不足分は交付税で補てんされるわけですから、意味がないんですね。この中には財政構造改革、つまり国も地方も赤字だから、地方交付税のあり方を議論すべきだとなっていますが、赤字だからというだけではなくて、地方交付税とセットの地方分権というのはあり得ないと思います。いまのままですと、自ら税を取ろうという努力は働きませんし、受益と負担の緊張関係がない中で外形標準課税が応益課税だから必要だと言っても、説得力がないわけですね。

それから、河野さんがおっしゃったように、これは時間がかかる議論ではありますが、最優先事項で議論に入るということをぜひ「中期答申」の一番のポイントで書いていただきたいと思います。

松浦委員

いろいろと地方のことを言われておりまして、地方の首長というのは、先ほどもいろいろとお話がございましたけれども、私どもが本当に直接市民に対し、町民に対し、村民に対し、一番これに直接身近に接しているわけで、いろいろな声は直接入ってくるわけで、「市長、何をやっているんだ」という形でもっていろいろと言われているわけでございます。そうした中で、おかしなことをやれば、即、その首長の首は飛ぶわけで、選挙を見ればすぐそれはおわかりだと思います。そうした意味で、我々市町村は真剣に毎日毎日を過ごしているわけでございます。

そうした中で、地方の財源不足というのは、もう皆さん御承知のとおりだと思います。いま、河野委員さんもおっしゃいましたように、この問題に関しては、もっと大いに議論をすべきだと私は思っています。それと、諸井委員さんもおっしゃいましたけれども、地方分権という立場で、我々は今後、環境関連税制とかいろいろなことがあるわけで、特にいま介護保険が4月から始まっておりますけれども、これなんかも国会で我々地方を全く抜きにした形でもって、保険者は市町村だという形でもって4月1日からやっているのですけれども、全く細かいことについては手探り状態が続いているわけでございまして、いまどういうところでもって、どういうことが起きるのだか、首長は毎日安心して寝られないというような状況が続いているわけでございます。そのことにつきましても、現行の事務、権限配分のルール、そうしたことで行財政の運営に大きな支障が生じてくるのではないかと思っています。

先ほども課税自主権というようなお話がございましたけれども、我々が持っている課税自主権というのはほんのわずかなところしかないのだと私はいま思っています。介護保険なんかもそうなのですけれども、これはマスコミの方たちはよく御存じだと思いますけれども、ニューゴールドプラン、これがハードの一番基本になるのですけれども、全国の6割を超える市町村はまだ100%これを達成していない。これはお金がないからなんですね。私どもはおかげさまで100%に達しておりますけれども、ほかは達していないというのが現状でございます。そうしたことを踏まえて、我々地方自治体はいま一生懸命やっているのですけれども、いま栗田委員さんもおっしゃいましたけれども、地方における歳出と税収との乖離、この縮小を基本に、いわゆる増大する市民ニーズ、行政サービスの財源を安定的・普遍的に確保するという観点から、国から地方への税源の移譲を含む抜本的な税制改正を進めていただきたいと思っています。

具体的には、都市自治体としては基幹税目の1つでございます固定資産税を安定的に確保する。それと所得税から個人住民税への移譲、消費税から地方消費税への移譲を求めているわけでございまして、ますます増大する一方のそうした市民ニーズ、行政サービスを支える地方税源の拡充は、私は不可欠であるというふうに考えておりますので、どうぞ御検討いただきたい。また大いに私は議論していただきたいと思います。

本間委員

地方交付税は基本問題小委員会等で私繰り返し述べさせていただいておりまして、総会でこういうぐあいに活発に御議論いただけるのは、時代も変わったなという感じもするわけですけれども、諸井委員がおっしゃったとおり、地方が必要とする財源をどのような形でファイナンスするかという問題は、非常に重要な問題でございまして、いま現在行われている地方交付税のシステムが、それを前提にして課税自主権を主張するということは、5分の1課税自主権、あるいは4分の1課税自主権というものを要求しているということにほかならないわけで、これを並立させながらどちらも残せという議論は、実は結果として大きな政府だけを求める。国民に対して非常に非効率的なシステムの中で、大きな政府を助長するようなシステムになっているということを、まず私は十分認識する必要があるのだろうと思います。

その上で、交付税のシステムというものがモラルハザードを生んでいるという事実を、我々はやはり着目する必要があると思うのです。いま地方当事者の方からお話しいただきましたけれども、国から金を持ってくる首長さんが有能な首長であるということが実は一番大きな問題でありまして、課税自主権をやはり自分のベネフィットと結びつけながら自主判断させるためにも、その地域で自己調達したものを自分たちで需要する、こういうシステムづくりがされませんと、受益と負担がアンバランスのままでこういうことをやるということは、これまた制度改革にはつながっていかないのだろうと思います。

3番目の問題は、これは明らかに国のいわば残渣として地方の計画が決まっていくという、はしなくも税務局長がおっしゃった問題であります。つまり、全部政策が決まって、国が決まったものを、地方財政計画の中に落とし込むという形になっておりますから、しかも全国一律でそのことをやるような形になっておりますから、個性ある事業展開でありますとか、そういうことができないような状況の中で財源補てんをするがゆえに、大きな政府が実は出現をしてきている。こういうような観点から申し上げますと、私はやはり課税自主権というものを地方交付税制度の中における配分のルールのありようとともに、一緒に議論をしていくことによって、効率的で十分に必要に合うような形での財政システムというものを模索する必要があるのだろうと思います。

水野(忠)委員

いろいろ地方交付税をめぐって議論を聞かせていただきましたが、やはり地方分権推進法、それから分権推進計画、これができてきて、だんだん交付税の問題についても考えざるを得ない状況に進みつつあるのではないかと私も思うわけです。

簡単に先ほど分権推進法の中身ということで御紹介いただきました最後の3ページに、自己決定権と自己責任の拡大と、こうなっているわけですが、法律の面でこうなっておりますけれども、結局のところ、どうもこれにはいわゆる何らかの地方公共団体がそうしなければいけないというインセンティブなり、そうしないとペナルティがかかるという、ペナルティというのは広い意味の負担ですけれども、そういうものが抜けているのではないかということです。それは結局交付税のあり方にかかってくる。

例えば先ほどお話に出ましたけれども、法定外普通税のみならず、法定外目的税も認めたと。いわゆる許可制度も廃止になったということで、非常に地方自治体は自由に自ら税源を開拓することができるという仕組みになっていますけれども、それに交付税をぶつけますと、結局、今度は交付金のほうが減ってしまう。地方公共団体としては、わざわざ自分で一生懸命新しいことを考えることに対するインセンティブが何も働いてこないわけですね。しかも、何人の方も言われていますけれども、いわゆる自己責任の問題です。最終的にはやはり財政の締めくくりは自分の地方公共団体がやらなければいけない問題で、それを最後丸ごと国へ持ってくる、そういう形では今後はなってはいかないのではないか。いわゆる法律を見ますと、どうもそういう観点から見た場合に、地方公共団体に対するインセンティブなりペナルティといったものが欠けている。そのあたりを、これはどこでやるのかわかりませんけれども、今後検討していかなければならないと思うわけです。

石井税務局長

水野先生、ちょっと私の聞き違いかもしれませんが、念のために申しますけれども、いま例えば地方が超過課税をやったり、法定外目的税を取ったりしますと、それは交付税の基準財政収入額に入りませんから、その分は丸々地方の増収になるんです。そこは誤解のないようにひとつお願いしたいと思います。

榎本委員

どうもお聞きをしていて、交付税と補助金の問題がごちゃになってとらえられているような向きを感じます。率直に申し上げて、いまの国・地方のもともとの税財源の配分を見ますと、これはもう多くの人が指摘しているとおりで、使う段階で巨大なお金が国から地方へ移動するわけですね。この移動を前提にして地方税の配分がなされている。ですから、これは足りないで当たり前の状態なので、そういう意味では、交付税というのは確かに国税の一部を使っているとは言いながら、それは地方が共有する調整財源であるというのが私どものとらえ方です。だから、国が地方の面倒を見ているのだというようなとらえ方は、制度の理解、あるいは実態に対する理解が違うのではないかというのを1つまず申し上げておきたい。

2つ目に、地方の失敗で国が滅びるというかなり過激な表現がありました。これも事実にかなり違うのではないだろうか。特に90年代以降の地方財政の危機は、これはたびたびの景気対策に、地方だけではありませんけど、国の財政も同じですけど、つまりそうした政府の政策に、地方の財源が言ってみればぼろぼろになるまで酷使をされて、その結果起きてきている。これは数字を時系列に見ていけばほぼ明らかなので、地方が無駄遣いをしたり、放漫財政をやっていて、そしてそれを国が全部面倒を見ているから、だから国全体が滅びちゃうよという、ちょっとあまりにも事実と違うのではないかと思います。

やはりそうなると、使う段階で大きく地方へ国から財源が移動しているよと。この移動が言ってみれば国の過剰な関与、あるいは後見的な役目につながっているし、地方の側から言うと、依存と甘えになっている。これは事実だと思うのです。ですから、そこのところを、その量を減らしていくというのが重要なので、そうすると、その場合、地方交付税なのか、補助金なのか、はたまたその両方なのかという問題になると思います。

地方の側から、あるいは地方の実態からすれば、交付税はあくまでも、あなたのところにお金がどのぐらい必要ですかという計算をするだけの話であって、来たお金は一般財源ですから、どう使うかというのは地方の自己決定、同時にまた自分の責任として問われることなんですね。しかし、補助金のほうはそうではなくて、特定の事業目的に添ってお金が行っているわけですから、厳密にそれに即した使い方をする以外に使いようがないようになっている。そういう点でいきますと、モラルハザードという問題が指摘されましたが、モラルハザードの問題に最もなりやすいのは補助金であって、現に地方議会を見ても、補助金をやってやる事業については、自主財源を使ってやる事業と、地域における必要性の吟味は雲泥の差ですよ。外からのお金だということならば、それは盛らないと損だからという、極めて安易な次元のところでその事業の採択がなされてしまうというようなことがいくらでもあるわけで、そういう点では、一般財源として使い道が自由になっている交付税とは全く違っているということを特に申し上げておきたいと思います。

それから、地方交付税そのものの問題ですが、これは現実の問題として、先ほども言いましたが、自己の地方税収入が歳出の1割にも満たないというところもあるわけですから、そういう点では全国間の財源調整措置としての地方交付税制度というものは、これは地方にとって不可欠だと思います。

ただし、それではいまのでいいのかといえば、先ほど自治省の補助金だというような話がありましたが、これはちょっと言い過ぎかなと思いますが、そういう傾向になってきている面があることは否定できないと思います。これは自治省だけの問題ではなくて、地方の側にも責任がある。つまり俺のところにこういう事情があるのだから、こういうものをきちんと需要額の算定に当たって補正係数として見てくれというようなことをたびたびやりますね。それをみんな受け入れていくと、本来はナショナルミニマム、あるいは全国的基準を満たすものであったものが、実額保証的になってしまうんですね。そういうふうになり過ぎている。もう少し算定基準を包括的なものに簡素化していくとか、そういった交付税そのものの中身を本来の趣旨に改革していくということは必要だと思いますが、交付税そのものを、これがとんでもないのだ、諸悪の源だというのは、これはあまりにも地方の側から見ると乱暴な議論だということを申し上げておきたいと思います。

松田特別委員

乱暴なことを申し上げますけれども、やはり交付税は諸悪の根源だと思います。この間、地方交付税の出側と入り側のギャップが40兆円あって、そのうちの一部は銀行借入にしたわけですけれども、この銀行借入にしたというのは、最近、大蔵省がやった政策の中で極めていい政策だと思います。これははっきりと借金であるということを認識させる意味において、こういう措置をもっと早くからすべきであって、この部分は市場原理のマーケットの荒波を受けるようになるわけです。いま現在そんなに金融に影響を与えていませんけれども、これ以上大きくなってくると、かなりマーケットにも影響を与えるし、マーケットからの影響も受けることになるのだと思います。

それで、これだけ多額の借金が地方交付税特会にあるわけですけれども、きょう、地方側の出席された皆さんから随分御発言があったのですけれども、誰一人として、その借金に対して半分は地方に責任があるのだという自覚を持ったような御発言は1つもなかったというのは、極めて遺憾なことで、そういうことが今日の危機を招いている1つの原因だと思います。ですから、これだけ税調で議論が出たのですから、地方交付税問題というのは、はっきり税調の問題だと意識して、「中期答申」に何らかのことを書き込むべきだと思います。

津田委員

遅い時間に申しわけありません。きょう、随分活発に出ました地方税制の問題を考える場合には、歳出がどの程度の水準であるべきか、誰が責任を持つか、そこが出発点として議論をしなければいけないと、まことにごもっともでございますし、小委員会でもそういうような議論が出ました。

そこで、きょう配られております意見の概要の「〇地方税総論」の3番目に、「地方税制を考える基礎として、国と地方の行政責任のあり方、民間、企業、家族、個人の責任分担のあり方、国民の租税負担全体のあり方などの議論があるべきではないか」とあります。実はこれが入っておりますので、私は以上のような議論のとっかかりというのは、できておるのではないかと思います。もちろんこれにもうちょっと肉付けをして、きょう聞いております議論、批判しなければいけない点、あるいは誤解のある点がございますが、例えば介護手当にしても、誰が責任を持つのだと。国が持つのか、市町村が持つのか、あるいは家族が持つのか、地域が持つのか、まずその議論がなければならない。しかし、現実の問題としては、介護手当というやつは市町村の義務にされてしまった。それでは財政収入、ファイナンスの責任は誰が持つのか。こういうふうに話が当然つながってくるわけでございますし、最終的にはこれは税制としてどうあるべきかということでございますので、この項目をもうちょっと肉付けを今後していただければよろしいのではないかと、こういうふうに思います。

加藤会長

ありがとうございました。大変議論がいろいろな問題から指摘されまして、非常に有意義だっと思いますが、もう時間があまり突破しておりますので、これで終わらせていただきますが、この次は法人課税につきまして、5月23日、来週の火曜日でございますね。午後2時から行いますので、よろしくお願いしたいと思います。どうもありがとうございました。

〔閉会〕

(注)

本議事録は毎回の総会後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、大蔵省主税局及び自治省税務局の文責において作成した資料です。

内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。