第47回総会 議事録

平成12年4月28日開催

加藤会長

それでは、ただいまから第47回の総会を開催いたします。お忙しい中をお集まりいただきまして、ありがとうございました。

現在、税制調査会といたしましては、「中期答申」を取りまとめるということで審議を進めておりますが、前回の総会が2月29日でございまして、大変その間時間をあけて申しわけなかったのでありますが、その間、基本問題小委員会を中心にいたしまして、精力的な議論を行ってまいりました。

今日は、まず、その間の税制改正関係法律の国会審議状況について、事務局から説明を伺いまして、それから、基本問題小委員会の審議状況の報告を行った上で、自由討議を行いたいと考えております。

それでは、まず、税制改正関係法律の国会審議状況について説明していただこうと思いますが、税制改正関係の法律につきましては、3月22日に「地方税法等の一部を改正する法律案」、24日には「租税特別措置法等の一部を改正する法律案」及び「法人税法の一部を改正する法律案」が可決・成立しております。前回、すでに若干の点について御説明をいたしましたけれども、本日はそれ以降にわたる審議状況について、また改正の概要について、簡単に説明をしてもらおうと思います。

まず尾原主税局長、次いで石井税務局長、よろしくお願いいたします。

尾原主税局長

いま加藤会長からお話がございましたように、12年度の国税関係の税制改正関連法案2つを提出させていただきました。「租税特別措置法等の一部を改正する法律案」と「法人税法の一部を改正する法律案」の2つでございます。3月24日に国会で可決・成立いたしまして、3月31日に公布、4月1日から施行されているところでございます。

お手許の中に、『平成12年度税制改正関連法のポイント』という1枚紙、あるいは『平成12年度・税制改正』というパンフレットが入ってございますので、中身はパンフレットを御一読いただければおわかりいただけるかと思いますし、また、要綱も一緒に法律案のほうは付けてございます。

簡単にポイントだけ1枚紙でお話しさせていただきますと、「租税特別措置法等の一部を改正する法律」のほうは、いわば6兆円を相当上回る恒久的減税が今年も続いておりまして、それが何よりの景気対策になっているわけでございますが、追加的な配慮といたしまして、ここにございますように、住宅ローンの税額控除制度を半年間適用を延ばす。あるいはパソコン減税をさらに1年間延長する。中小企業・ベンチャー企業の振興といたしましては、エンジェル税制の対象となる株式の譲渡益課税について、大幅に減税する。同族会社の留保金課税の特例を創設する。その他の項目といたしましては、児童手当との関係で、年少扶養親族の割増特例を廃止する。相続税の延納の利子税の軽減を図る。等々の改正でございました。

それから、法人税法のほうでございますが、これも商法、企業会計におきまして、時価法等が導入される。法人税法におきましても、売買目的の有価証券へ時価法を導入する。あるいはヘッジ会計を導入するという改正が内容でございました。

なお、12年度の税制改正のうち大きな項目として実はこれ以外に2つあったわけでございます。1つは確定拠出年金制度、もう一つがSPCと言われておりますが、集団投資スキームの多様化を図る税制上の措置でございます。いまのこの2つの項目については、それぞれ別途提出された法律案におきまして、税制改正が行われることになっているわけでございまして、このSPC等の特定目的会社等の関係の法案でございますが、きょう、参議院の本会議を可決いたしまして、衆議院にこれから送られるということになっております。

なお、確定拠出年金法案でございますが、国会に提出されてはいるわけでございますが、審議の目途はどうもまだ立っていないという状況のようでございます。

次に、これまでの国会での質疑状況について、御説明申し上げたいと思います。お手許の資料といたしまして、「総47-2」というのが入ってございます。5枚紙ぐらいでしょうか、『国会の審議過程における主要討議事項』というものでございます。これに即しまして御説明申し上げたいと思います。

まず、1ページ目、財政再建・財政構造改革の関連でございますが、危機的な状況にございます財政について、数多くの質疑が出されました。この要旨に書いてございますように、「財政再建・財政構造改革に対する取組み如何」「財政構造改革のビジョンを示すべきではないか」というような質問でございますが、森総理大臣からは、「財政構造改革は我が国経済が本格的な回復軌道に乗ることを見きわめた上で速やかに取りかからなければならない課題であり、単に財政面のみの問題にとどまらず、税制や社会保障のあり方、さらには中央と地方との関係や経済社会のあり方まで視野に入れて取り組んでいく課題であると考えている。ただ、まずは緩やかな改善を続けている我が国経済を本格的回復軌道に乗せることが重要であり、それに向けて全力を尽くしてまいりたい」との答弁がなされております。

大蔵大臣からは、「財政構造改革は避けて通れない課題ではあるが、経済回復の軌道が明確でないと、中期的な経済の展望を描くことができず、税収の見込み、歳出削減の見通し、金利と国債発行との関係などがわからない。また、財政構造改革は21世紀初頭における日本の経済社会全体のあり方の再構築につながるものであり、マクロのモデルをつくって、財政だけの問題にとどまらない大きなフレームワークのもとに、計数を伴った財政再建の計画を立て、国民の選択を仰ぐ必要があると考えている」と答弁がなされております。

また、「財政構造改革のためにどのような税制改革が必要と考えるか。国民に負担増を求めていくのか」という質問がございましたが、森総理大臣から、「財政構造改革については、まずは我が国経済が民需中心の本格的な回復軌道に乗ることを確認することが必要であり、現時点ではその中身について具体的に申し上げられる状況にはない。いずれにせよ税制のあり方については、公平・中立・簡素といった租税の基本原則等に基づきながら、今後の少子・高齢化の進展など、経済社会の構造変化や財政状況等を踏まえ、国民的な議論によって検討されるべき課題であると考えている」と答弁がなされております。

それから、1ページの下のほうに個人所得課税関係がございまして、「年少扶養親族に係る扶養控除の加算措置について、平成11年度税制改正で創設した理由、及び平成12年度税制改正で廃止する理由如何。1年間で廃止するのは問題ではないか」というような趣旨の御質問がございまして、大蔵大臣から、「平成11年度の税制改正において、子育て世帯へ配慮するため、当該加算措置を講じたが、12年度改正においては、財政・税制を通じて少子化対策の重点化を図る観点から、当該加算措置を廃止し、児童手当を拡充することとしたものである」と答弁がなされております。

また、「児童に係る扶養控除を廃止し、児童手当に切り替えていくことについて見解はどうであるか」との質問がなされまして、大蔵大臣から、「個人所得課税においては、所得の多寡にかかわらず、世帯構成に応じて人的控除をし、担税力に応じた課税を行っている。児童手当との関連において扶養控除を廃止することとなると、このような世帯構成に配慮した税負担の調整機能が失われるなどの問題がある。したがって、今後、扶養控除を児童手当に切り替えていくことについては、所得控除全体及び社会保障全体のあり方との関連で慎重な検討を要すると考えている」との答弁がございました。

その下に連結納税制度の導入について質問がなされておりまして、これは事務方のほうから、現在の法人税制が個々の法人ごとに課税するのに対し、連結納税制度は企業集団を1つの課税単位とするものであって、そもそも現行の法人税制と異なる考え方に基づくものである。したがって、全く新しい法人税体系をつくるようなものであり、検討すべき事項が多い。21世紀のインフラとなる制度であるので、本格的な導入に向けてしっかりした検討を行ってまいりたい」と答弁をしてございます。

それから、次のページをお開きいただきたいわけでございますが、資産課税関係について、「相続税の最高税率の引下げについては、税制全体の議論の中で検討していくべきではないか」という質問がございまして、大蔵大臣から、「11年度税制改正で個人所得課税の最高税率を引き下げた際に、相続税の最高税率も引き下げるべきだとの議論があったが、適用を受ける者が少ない最高税率だけを引き下げることにどれだけの意味があるのか疑問が呈された。この問題については、相続税全体の構造を変える際に取り組まなければならない」との答弁がなされています。

1つおきまして、「贈与税を軽減すべきとの議論があるが、見解如何」との質問がございました。大蔵大臣から、「相続税の抜本改正の際に贈与税についても見直しが必要になると思う。ただ、それまでの間に何らかの改正が必要かどうかについては、税の専門家である税調において検討されるものと思う」という旨の答弁がなされてございます。

それから、このページの下のほうにNPOの関係で、「NPO法人に対する優遇税制を認めるべきではないか」との質問がなされ、大蔵大臣から、「NPO法人に対する税制上の優遇措置については、今後、法人格を取得するNPO法人の実態を見きわめた上で、例えば公益性の基準や、それを確保するための仕組みをどのようにするのか等の課題の観点から検討していきたい」と答弁がなされております。

国会の主なものをいま御紹介させていただきました。いま国会の審議以外に税制に関する動きを申し上げますと、株式等譲渡益課税の源泉分離選択課税方式の廃止について、自民党の一部にその延期を求める意見が出ているとの報道がなされておりました。この問題について一言申し上げますと、来年の3月末をもって源泉分離選択課税方式が廃止され、申告分離一本になるという改正がすでに行われておりますが、この源泉分離選択課税方式は諸外国にも例のないみなし課税になっておりまして、申告分離課税との使い分けにより、つまりたくさん儲かった場合は源泉分離選択課税方式を選び、あるいは他の損と通算する場合は申告分離課税を選択するというように、税負担の軽減を意図的に図られるような制度になっているということから、従来から当税制調査会において、税負担の公平の観点から問題が指摘されておりまして、適正化を行う必要があると指摘されておったところでございます。平成11年度の税制改正におきまして、有価証券取引税の廃止とあわせて、一本の法律で廃止することとされたわけでございます。将来をにらんであるべき税制の方向を考えますと、まさに正しい改正であったと考えられるわけでございまして、何よりも円滑な実施が図られるよう議論することが大切であろうと思っております。

これは当税制調査会からも指摘されているわけでございますが、申告になじみのない納税者の方に申告をしていただくということになってまいります。そうしますと、取得価額の把握をどうしたらいいのだ、あるいはそういうような不安があるではないかと、よくその不安を解消するように広報をするべきであるというふうにも指摘がされてきたわけでございます。いまの取得価額の把握の問題については、取引報告書はもとより、株式名簿のさまざまな資料で把握することが可能であるわけでございまして、そういうことでお手許に『株式等譲渡益課税制度について』というパンフレットをつくらさせていただきました。この中では、いまの取得価額の把握から、あるいはこれも誤解があったわけですが、取得価額がわからないと、税務署から5%とされてしまうのではないかというような誤解とか、あるいは本年中のいわゆるクロス売買というのは含むかどうかというようなことについて、説明を書いて不安を取り除くようにしてございます。このパンフレットを税務署、市町村等にこれから配布してまいりたいと思っております。これ以外にも大蔵省のホームページ等でも同じような資料をすでに載せているところでございます。

いずれにいたしましても、新しい制度に移行していく際には、さまざまな不安や疑問が出てくるわけでございまして、それらにつきましては、これからも耳を傾けまして一つ一つ対応していきたいと思っております。

以上が国会における審議状況と最近の情勢についての御報告でございます。

石井税務局長

自治省の税務局長でございます。お手許の資料の後ろのほうになろうと思いますけれども、『地方税法等の一部を改正する法律のポイント』というのがございますので、御覧いただきたいと思いますが、先ほど加藤会長から御紹介がございましたように、「地方税法等の一部を改正する法律」につきましては、去る3月22日に原案どおり可決・成立いたしまして、3月29日に公布されているわけでございます。

その内容でございますが、ポイントという表にございますように、1つは土地・住宅税制でございまして、土地に係る固定資産税の税負担の調整措置を講ずる。特にここに表として示しておりますように、都市部の商業地等の土地の負担水準が高いといったような声もございまして、今回、負担水準の調整を図る、均衡化を進めるという観点から、ここにございますような措置を講じております。あわせまして都市計画税についても同様の調整措置を講じたわけでございます。

それから、宅地等の取得に係る不動産取得税の課税標準につきましても、これまでの価格の2分の1とする特例措置を引き続き3年間講じるといったような措置を講じております。

また、新築住宅等についての固定資産税の減免措置の期限の延長も行っておるわけでございます。

そのほか、ベンチャー企業関連の株式譲渡益に係る課税の特例でございますとか、不動産の特定共同事業についての不動産取得税の特例措置ですとか、といったようなことを盛り込んだ地方税法の改正が成立しておるわけでございます。

この主な審議の状況でございますけれども、全般に申しますと、国会審議では、与野党を通じまして、地方分権推進の観点から、地方税源を充実確保すべきであるという姿勢での質疑がほとんどでございまして、そういう文脈の中で外形標準課税の問題ですとか、あるいは法定外普通税、目的税の問題ですとか、あるいは先ほど御紹介しました3年に一度の評価替えの年に当たります固定資産税の問題ですとか、といったようなことについて御質疑があったわけでございます。

その内容は、先ほど主税局長が国税関係で御説明されましたが、その後ろのほうに、4ページになりますが、地方税関係としてまとめてございますので、その要点をかいつまんで申し上げたいと思います。

まず、地方税のいわば総論といいますか、地方税源の充実確保につきまして、ここの要旨に挙がっておりますように、「国から地方への税財源の移譲等の問題も含めて、地方税財源の充実確保をなるべく早く進めるべきではないか」とか、あるいは、「偏在性が少なく、かつ安定性を備えた地方税源を確保する、あるいは地方歳出との乖離を縮小する、といったようなことを進めるべきだ」といったような御質疑・御意見があったわけでございますが、これに対しましては、「地方税源のあり方は、住民の受益と負担の関係をより明確化していくということが大切である」と。また、「地方分権一括法が成立したわけでございますが、地方の歳出規模と地方税収との間に大きな乖離がある。これをできるだけ均衡化させるような形に持っていくことが将来像として必要である」と。

それから、法人事業税の外形標準課税は、「現在の経済状態等を十分勘案して、中小企業に対する配慮もしながら、その導入時期を検討してまいりたい」といったような答弁を自治大臣からしているわけでございます。

また、地方税の体系の問題につきましては、「税源の偏在性が少なく、税収の安定性を備えた既存の地方税としては、地方消費税のほかに固定資産税、あるいは個人住民税などがあり、こうしたものの充実を図っていくことが必要」。

それから、「国と地方の税源配分の見直しを含めた地方税財源の充実確保は、経済の安定が回復された段階で、将来の税制の抜本的改革の方向も見きわめつつ取り組みたい」といったようなことで、自治大臣などから御答弁をいたしています。

それから、課税自主権の問題についても、いろいろ産業廃棄物対策、環境対策、観光振興といったようなことに関連して質疑がございまして、自治大臣からは、「産業廃棄物、あるいは環境対策、観光振興といったような分野で、地方分権ということもあり、できるだけ地方団体が、せっかくの課税自主権でありますので、それを生かして積極的に取り組むように促していきたい」といったような答弁をいたしております。

それから、地方環境税を検討すべきだという御質疑もございまして、これにつきましては、「環境税については、2つの要素・側面がある。1つは環境税を導入することによって環境をよくしていくという効果をねらった税制、それから、2つには、環境税を創設することによって増収を図って、環境対策に資するという側面、2つあるけれども、北ヨーロッパ等でいわゆる炭素税といったような税制が広く採用されつつあるという状況もあり、自治省としても、地方税としての環境関連税制のあり方に関する研究会を発足させて、真剣に取り組みたい」。また、「日本でも環境に対する税制というものを真剣に考えていくべき時期に来ているのではないか」といったような答弁を自治大臣からいたしております。

次に、法人関係税でございますが、前回も御議論いただきましたけれども、東京都の銀行業等に対する外形標準課税に関連して、多くの質問をいただいておりまして、まず、「東京都の外形標準課税についての考え方はどうか」という点につきましては、自治大臣のほうから、「東京都の外形標準課税については、極めて厳しい地方財政の現状等を背景とした地方分権の観点からの1つの試みとして、全く理解できないわけではないが、大手銀行に対してのみ外形標準課税を課することについて、合理的な理由があるかなど、いくつかの問題があり、東京都に対する考え方を2月22日の閣議口頭了解としてまとめて、東京都に対し慎重な対応を求めてきたところだ」といった趣旨の答弁をいたしております。

そのほか、地方税法の72条の22の第9項などの意味だとか解釈だとかにつきましても御質疑がございましたが、いまの72条の22の第9項の「著しく均衡を失する」という点の解釈ですけれども、「法72条の19の規定に基づく外形標準課税は、主として特定の業種の税負担がその受益の程度に比してかなり低いという場合に、その負担の程度を引き上げて、受益との均衡を図ることを目的に導入するというものであるから、条例によって外形標準課税を導入することによって、所得を課税標準として課税する場合と比べまして、ある程度事業税の負担が増加するということは、法の予定するところだと考えられる。したがって、問題は、どの程度になると条例による外形標準課税による事業税負担が、所得を課税標準とした場合に比べて著しく均衡を失すると言えるほどに重いということになるかということであろうかと思うが、これは事柄の性格上、画一的にあるいは定量的に基準を設定するということは困難であると考えられ、いろいろな要素を総合的に勘案して、究極的なところは社会通念に照らして判断するしかないのではないか」といったような趣旨の答弁を、内閣法制局の部長さんからされておるわけでございます。

それから、こういう東京都の動きもございますが、「これまで政府税調で検討されてきた本来の外形標準課税の導入をどう考えるのだ」といったような御質疑も出たわけでございますが、自治大臣のほうから、「かねて政府税制調査会等において、これまで議論されてきた方向に沿って、すべての都道府県において幅広い業種を対象に広く薄く負担を求める本来の外形標準課税が望ましいと考えており、こうした仕組みができるだけ早期に導入できるように具体的な検討を進めていきたい」という趣旨の答弁をいたしております。

それから、「全国的な外形標準課税の制度が導入された場合に、東京都がどういう対応になるのか」といったような御質疑もございまして、これについては、「都知事が2月29日の議会で、法律改正があった場合には、基本的にその内容を尊重するという姿勢に変わりがないという旨の発言をされていると承知している。そういうこともあるので、政府としては、できるだけ早く税調等で御結論をいただいて、外形課税を実現する。東京都もそれを尊重していただくということを願っている」という答弁を自治大臣からいたしております。

それから、ゴルフ場利用税関係の質疑もございましたけれども、これは「ゴルフ場所在の市町村にとっては貴重な財源でありますので、これからもその存続を図っていきたい」といった趣旨の答弁が自治大臣からございました。

それから、最後に固定資産税関係でございますが、「今後とも固定資産税の安定的確保が必要であると考えるが、平成15年度以降の税負担のあり方はどうなのだ」という質疑がございましたが、これにつきましては、「固定資産税の安定的確保は必要不可欠であるが、そのためには納税者の理解と信頼を得ていくことが必要であり、平成15年度以降の税負担のあり方については、同年度の評価替えや負担水準の状況、その時点での市町村の財政事情等を踏まえ、負担の一層の均衡化を進めていくことを基本として、総合的に検討し対処してまいりたい」といった答弁をいたしておるところでございます。

以上が地方税関係の主な討議事項でございますが、地方税制改正等につきましては、お手許に『地方税制改正のポイント』、さっき御説明したもの、それから、『地方税の改正の概要』という7ページのもの、それから、水色のパンフレットで『分権型社会を支える地方税制の構築に向けて』というものがございます。適宜御参照いただければと存じます。

どうもありがとうございました。

加藤会長

どうもありがとうございました。ただいまの説明について、何か御質問がありましたら、どうぞおっしゃってください。

それでは、先に進んでよろしゅうございますか。もし、また振り返ってこのことについて確かめたいということがございましたら、どうぞおっしゃっていただきたいと思います。

それでは、今日の議題に入りたいと思いますが、基本問題小委員会では、今年に入ってからの開催状況が1枚の紙にまとめてございます。「総47-3」という1枚紙でございます。これでいままで何をしてきたかが開催日ごとに並んでおりますが、現在までやってまいりました中で、この下線を引いた部分がございますが、この項目を今日は特に取り上げていこうということで考えております。環境関連税制、税と社会保障、資産課税、消費課税について議論していきたいと思います。

私がこの基本問題小委員会の小委員長も兼ねておりますので、審議の概要を簡単に申し上げまして、さらに項目的に内容を、皆さま方のお手許にございますが、今度は「総47-4」というのがございます。この「総47-4」で基本問題小委員会に出されました意見が出ておりますので、御参考になりながらお聞きをいただきたいと思います。

まず最初に、環境関連税制でございますが、環境関連税制について検討を進める上で、前提といたしまして、環境庁から環境問題一般についてのヒアリングを行いました。今後、環境税を検討する場合の考え方を議論したわけでございます。

それから、税と社会保障につきましては、社会保障に関する税制について検討を進める上での前提として、厚生省から社会保障政策全般についてのヒアリングを行いました。

また、資産課税につきましては、相続税のあり方について、少子・高齢化の進展との関係や生前贈与との関係なども含めて議論をいたしましたほか、登録免許税、印紙税などの流通税や固定資産税についても議論をしたところでございます。

また、消費課税につきましては、消費税や特定財源等のほか、OECDなどにおいても議論となっておりました電子商取引に関する課税の問題についても議論をしたところでございます。

まだ結論が必ずしも出ているわけではございませんで、むしろ事情をいろいろと調べまして、皆さま方からこれから御意見をいただきながらまとめていきたいと考えておりますが、個々の項目につきまして、事務局から簡単に御説明をさせていただきます。

加藤総務課長と小室企画課長、よろしくお願いいたします。

加藤総務課長

それでは、先ほど会長からお話がありました「総47-4」という意見の羅列してあるものと、もう一つ、「総47-5」『参考資料』と、これを両方を見比べながら簡単に御説明させていただきます。

資料はポイントを絞って載せておりますが、まず最初に、環境税制でございます。先ほどお話がありましたように、3月10日に環境庁からお話を伺いました。参考資料の1ページを御覧いただきますと、環境庁のほうからは、環境基本法における政策手法、つまり規制であるとか、それから税も含む経済的な措置とか、いろいろ環境対策の政策手法があるということで、それをメリット・デメリットの比較等も含めて、それは資料の2ページに整理してありますが、こういう御報告をいただきました。そのほかいくつかの大きな、地球温暖化問題ですとか、大気汚染問題等々につきまして、現状と課題等を御説明いただいたところです。

意見のほうで、1ページにそのときのいろいろな御意見が要約されておりますけれども、基本的には、やはり税調においても、税制の観点から環境税問題というのは正面から議論していくのが適当だという御意見がかなり強うございました。

ただ、3つ目のポツで、環境問題といってもいろいろな対応のものがあるので、それぞれに応じてどういう手法がいいのか、税も含めきちっと議論をしていく必要があると。特にその次に環境税として議論するという場合も、本当に税制としてやることが適当なのか、むしろ規制のほうがいいという場合もございます。それから、既存の燃料課税等の税制との関連、整合性をどう考えるかとか、税収の使途、それから、国税と地方税、どういう役割分担の仕方なのか、いろいろ多面的にこれからきちっと議論していく論点が多いという御指摘もございました。そういう点の御指摘。次のページもそれに関連する環境税を議論するに当たっての御指摘が載っております。

資料のほうは、あとずっと環境税の関係は外国の資料とか、我が国で若干環境にかかわるような税制とかという、これはまさに参考資料でございますので、省略させていただきます。

次に、3月24日になりますが、参考資料の9ページ、それから、意見の資料は3ページでございますが、社会保障制度につきまして、厚生省のほうからは、社会保障の経緯、給付・負担の現状、それから、大事なのは将来推計。将来推計につきましては、現行の制度を前提にして、資料の11ページに出ておりますが、このままいった場合の負担がどのようになるのかという御説明もいただきました。それから、いま社会保障構造のあり方を考える有識者会議等で、いろいろ社会保障改革について、制度としての議論がなされておるという御報告もいただきました。

それから、社会保障の財源問題につきまして、社会保険方式、税方式、いろいろ議論がございますが、その辺について、厚生省のお立場からの御説明がございました。

意見のほうを見ていただきますとわかりますが、特に税調とのかかわりの深い財源論、いわゆる税方式か保険方式かというような問題につきましては、ポツの2つ目、特に財源論として云々という問題ではなくて、給付の性格も含めた制度の基本設計をどうするか、まずそこを社会保障のあり方としてきちっと議論しなければならないというような御指摘がございました。

それから、社会保障に関連しまして、給付の問題と、もう一つは年金税制とかいろいろな税制も、高齢化の進展に伴いまして、世代間の公平というのが非常に重要だという御指摘もございまして、社会保障制度のあり方と税制のあり方というのは、やはり相当密接に関連しているので、よくよく両者の関連を見ながら議論していく必要があるということで、皆さんの御意見の開示がございました。

それから、次は4月4日に資産課税の御議論がございました。これは資料の16ページをお開きいただきたいと思います。

まず相続税につきましては、この表で見ていただきますように、経済社会の構造変化、少子・高齢化、ストック化等々の状況の変化が非常に進んでおるわけでございますけども、現在、税体系全体の中で、所得課税のフラット化、消費税の導入という状況の中で、相続税の担う富の再分配機能というものについて、これはやはり非常に重要であるというような御意見がかなり出ました。もともと相続税というものの現状、これは表の真ん中にございますように、極めて一部の方が負担する税である。いま、お亡くなりになる方の5%、100人に5人の方が相続税の対象となる資産を残されるということで、いまの現状が果たして適切かどうか。高齢化の中で資産のストックが高齢者にどんどん偏っているという状況も踏まえまして、今後の相続税のあり方をどういうふうに見直していくかという御議論がございまして、右のほうにいくつかの論点、100人に5人という非常に基礎控除等が水準が高いものですから、そういった課税ベースをどうするか。

それから、贈与税につきましては、もともと贈与税というのは、相続税を回避するために生前に贈与するということを防止するためにできております。したがって、かなり厳しい税負担を求めているわけでございますが、昨今のように高齢化が進みまして、高齢者への資産集中が進んでいる。むしろ何とか少し工夫して、生前に贈与しやすくして、若い人に資産が移転する、そしてそれを有益に活用するようなことができないかという御指摘もありました。4ページの下のほうに出ております。

それから、各種の特例措置。小規模宅地ですとか、農地の納税猶予の問題等も課税ベースの関連でどうしていくかというような議論。あと、租税回避の問題についても今後議論をしていく必要があるという御指摘もございました。

それから、登録免許税等、流通関係の税につきましても、5ページにありますように、タックスミックスという大きな税体系の中で、やはりそれぞれ重要な役割を背負っているという前提のもと、ただ、それぞれやはり見直すべき点は見直していく必要があるという御指摘がございました。

それから、4月の18日の基本問題小委員会では、消費課税を中心に議論が行われました。意見のほうが6ページから、資料のほうは19ページでございます。

まず電子商取引でございますが、この電子商取引は、御案内のようにインターネットを通じて情報が行き交うわけですが、2つの面があるということで、税の側面で、点々で長丸で囲んでありますが、1つは通信手段としてのインターネットということで、非常に見えにくくなる。暗号化されたりして見えにくくなるということで、ある意味では適正課税の執行、制度面も含めて適正課税担保という面で1つ大きな問題がある。

もう一つが、クロスボーダー、国境を越えた取引。これは国際課税の分野でどこに所得源泉があるかという認定の問題もありますし、もう一つは消費課税の問題。これは資料の20ページで、物の輸入は、形があるものは税関を通るわけですが、いまインターネットの中で要するにコンテンツのあるもの、音楽であるとか、ソフトプログラムであるとか、そうしたものがもうインターネットを通じて配信されてしまう。こうした国際間の役務取引というのは、現行の消費税は非課税になっておるわけでございますけれども、このウエイトが高まれば、それを何とか課税しなければいけない。しかし、事業者は外国にいるということで、なかなか適正な課税が難しい。いまOECDでもこの問題については大変議論になっておりまして、そういった点についても、今後適正な対応が必要だということで、いくつかの御指摘がございました。

それから、消費税、地方消費税につきましては、21ページ以下資料がずっとありますが、1つはやはり消費税の将来に向かってのあり方については、消費税だけではなくて、所得税とか相続税、いわゆる税体系全体の構造の中で、消費税もその1つとして考えていく。全体として税制はどうあるべきかということで、所得再分配機能ですとか、累進問題とか、それから給付も含めて議論していくべきだという御意見がございました。

あと、いろいろ御指摘が7ページにかけて並んでおりますのは、消費税の適正化と申しますか、よりブラッシュアップするための仕入税額控除方式の問題、それから、中小企業の事業者向けの特例、免税点ですとか簡易課税等の特例の問題、納付回数の問題等々についても、今後ともいろいろと検討していく必要があるという御指摘をいくつかいただいております。

最後に、特定財源の制度につきましても、資料では33ページ以降、各種の現行の特定財源制度があるということですが、これにつきましては、やはり時間をかけてでも一般財源化を図り、使途を緩めていくという方向が望ましいのではないかという御指摘もいただいております。

簡単にかいつまんで申し上げましたが、以上、意見について簡単に御紹介させていただきました。

小室企画課長

それでは、重複を避けて地方税関係を簡単に申し上げます。資料のほうは、ただいま御覧いただきました「総47-5」と一緒になっておりまして、その中の7ページのところが地方団体と環境ということでまとめてございます。地方団体が行っているさまざまな環境保全関連事業、あるいは法律に基づきまして条例ですとか計画、そういう対応と同時に、下のかまぼこの表は、地方団体が実際6兆円余りの環境保全対策経費を使って対応しているという趣旨でございます。

1枚おめくりいただきました8ページのところに、地方税と環境のかかわりということで、環境負荷を減らすという意味では、現在、流通段階にかかっています軽油引取税が従量税であるとか、あるいは保有に係ります自動車税・軽自動車税が排気量によって税率を設定しているとか、かつては消費の段階で電気税・ガス税がありました。それから、中ごろですが、いろいろ環境の関連に関して、特例、低燃費車・低公害車に対して軽減措置ですとか、公害防止施設の特例などが定められております。そのほか、地方団体個々ですが、砂利採取税ですとか、あるいは一番下のエネルギー関連としては、核燃料税等、これらは法定外普通税として実施されております。この4月から法定外目的税ができましたので、そういった議論も一部で始めております。

なお、意見のほうは、先ほど加藤課長のほうから御紹介がありましたが、意見の2ページの頭のところが、消費抑制からいろいろ流通消費段階でも考えられるのではないかと、こんな意見がございます。

次に、資産関係でございますが、きょう、固定資産税の話は特にこの資料のほうに入っていないで、厚いほうの封筒のほうにありますので、省略させていただきますが、もし必要なときは御覧いただければと思います。

意見のほうで申し上げますと、5ページのところに、登録免許税等と並びまして、不動産取得税について2、3触れてございますが、先ほど御紹介がありましたので、とばさせていただきます。

そして、消費課税の関係、地方税の関係ですが、資料の29ページのほうにまとめてございます。全体として35兆円のうち7兆5,000億円、構成比としては21.4%と、国のほうより若干消費課税のシェアは低うございます。大きなところで申し上げますと、地方消費税、自動車税、軽油引取税、あるいはたばこ税といったところでございます。

1枚おめくりいただきまして、30ページのところに地方消費税の概要ということで、地方分権の推進、あるいは地域福祉の充実、これは実際に地方のほうでは、民生費、衛生費等、平成10年で20兆円を超す歳出があるわけですが、こういったことに充てるようなために、平成6年秋の税制改革において創設されて、平成9年4月から施行されてございます。消費税額の25%ということで、実際、消費税率に換算すると1%、現在の税収としては約2兆5,000億円の規模になってございます。

31ページの仕組みは省略しますが、賦課徴収については、当分の間、国・税務署のほうにおいて、消費税とあわせて徴収していただいている。

32ページが地方消費税のときの調査会の答申でございますが、一番上のパラグラフにありますように、所得・消費・資産等の均衡がとれた国税・地方税を通じた体系、それから、中ほどにございますように、地方消費税は地方分権を推進し、地域福祉を充実するための地方税源の充実ということで評価し得るというふうな答申をいただいております。

最後になりますが、特定財源の御議論として、地方の関係は一番最後の34ページにまとめてありますので、御参照いただければと思います。

以上でございます。

加藤会長

ありがとうございました。

それでは、ただいまの説明をいただきましたので、皆さま方の御意見をいただきたいと思います。いかがでございましょうか。どなたからでもどうぞ。

松本(和)委員

環境税関係、また特定財源関係が出てきたわけでございますが、地方公共団体の立場でちょっと申し上げてみたいと思います。

道路というのは、我々は、国民生活を支える、また活力ある経済あるいは社会活動を支えて、基礎的なものであるというような認識を持っているわけでございますが、そういうことで道路関係において、まだまだ先進諸国に比べまして整備が遅れているのではないか。都市部においても、また地方においてもそうでございますが、例を申し上げますと、私の町の西のほうまでバイパスができております。それから、東、私の町と隣町ができていなくて、それから東がバイパスができているのですが、私の町にちょうど高速道路のインターもございます。そういうことで非常に混み合うのですが、その連携関係もできておりません。それから、九州にとってみますと、高速道路関係で東九州高速道路、これも部分的にできている。それから、西九州道路等についても部分的にできて、つながりができておりません。そういうことを考えます、道路整備が非常に地域については大事なことでございまして、いまからもやはり、特定財源でございますが、これを堅持していただきたい。それも29年に創設されて、拡充もされてきたわけでございますが、これについては、利益者である自動車利用者が費用負担、これも同意を得ながら理解をして負担をしていただいているわけでございます。そういうことで、道路特定財源について、いろいろ御異論が出ているようでございますが、堅持していただくことが必要であるというような認識を持っておりますので、意見として申し上げておきたいと思います。

加藤会長

いまおっしゃいました特定財源というのは、重量税も入れているのですか。

松本(和)委員

はい。重量税、それから、拡充されたのですが、取得税関係ですね。そういうことも入れながら、ぜひとも必要であるという認識を持っておりますので、そういうことで意見として申し上げておきます。

加藤会長

念のために申し上げますが、重量税は必ずしも特定財源にはなっていなかったのですが、それを意図的に持っていったということになりますね。

ありがとうございました。ほかにいらっしゃいますか。

榎本委員

まず、環境税の問題ですが、環境問題がこれだけ重要な社会的な課題になり、国民の関心も強くなっていることを考えれば、この制度の創設について、まず積極的に検討を進めるべきだと思います。

その環境税については、1つは、そうした環境に負荷を与えるものに負担を求めて、税収増を図って環境対策に充てるという趣旨、と同時により重要なことは、そうしたことを通じながら排出の抑制を図っていくということだと思います。そういう点で、小委員会で出された意見については、それぞれ大変重要な事柄が言われていると思いますが、ただ、こうした環境問題、例えば地球温暖化問題が国際的な課題であるから、即、これは国税なのだと、こういう論理に果たしてなるのか。確かに国際的な課題であると同時に、それは人々の生活のあり方、振る舞いの結果として起きてくる地球規模の課題なわけでありますから、そういう点では、グローバルな形でまず網をかけて、そこからものを考えるという方向よりも、むしろそうした問題を起こしている地域のあり方、社会のあり方、人々の生活のあり方というものを見直していかなければいけない。一言で言えば、国民の環境とかかわった意識を変えていかなければならないのではないかと考えるわけです。

そういう点では、税負担による排出の抑制効果というものを重視するとすれば、市民のそうした自覚を促しながら、地域の事情に即した環境対策を進めていくという任務を主として自治体が持っていることを考えると、この環境税についても、地方税として検討を進めるべきではないかと考えます。

もう一つ消費税の問題について、これは連合の立場で少し申し上げたいと思います。これはすでに導入されて10年以上になるわけですから、制度としては定着していますが、不幸なことに、今日なお一般には不信感が強い。これを探ってみますと、1つは、福祉のためにと説明されて導入されながら、実際には医療も年金も福祉も給付水準が下がり続けている。こういったこともあると思いますが、それ以上に、この制度が、払ったのにそれが国庫に納まらないという益税の問題とか滞納の問題があるのではないか。会計検査院は昨年度で7,000億円ほどの滞納があるというふうに言われていますから、こういう点が不信感のベースになっているのではないか。直間比率等の是正を含めて、将来的にはやはり私自身は、消費税というものについて、これまで以上に積極的に考えていかなければならないというときに、この税が持っている国民の不信感というのは、何としても早期に払拭をしなければならないと考えております。

そういうふうに考えてみますと、やはりこの税が持っている欠陥、つまり透明性の欠如というような問題について、きちんと正していくこと、価格と税額を明示したインボイス方式にしていくことが必要ではないかと考えるわけであります。

平田委員

ただいま環境税からお話が始まったようでございますけれども、私は税のアイテムとして、こういう新しい税を模索することは大変結構だなと思うのでありますが、やはり税の基本的な性格の1つであります所得課税の論議を置いていってしまうような感じになることには、ちょっと反対であるという考えであります。

それはなぜかと申しますと、所得課税の税制自体はきちんと毎年毎年つくって、常に補完をしながら進んでいるのでありますけれども、その所得課税の実際の納税義務者が、この景気低迷ということも原因がありますけれども、非常に数が少なくなっている。所得が出ないというような事業体が非常に多くなっているということでありますから、課税ベースを広げるということよりも、納税義務者が所得課税によってうまくスイッチオンするような、そういう仕組みを所得課税の中に導入するようなことを研究なさってはいかがかと思うわけであります。

例えば、法人関係で申し上げると、欠損の法人が65%というようなことでありまして、この中身を調べていきますと、資本金の小さい法人の数が非常に多いというふうなことも言われております。こういったことが常に欠損の推移をするということは、所得課税の税制自体がきちんとつくられていく中では、非常に置き去られていく感じがあるわけでございまして、そういったことを何か仕組みを変えていくような、所得課税の税制に目を向けるような形というものがぜひ欲しいなと思うわけであります。

それから、消費課税について、私はこの税調の場面でいつも言ってきているのでありますけども、消費税でありますから、消費者が負担をするということに直結をしがちでありまして、消費者が負担をするということは、しかしそれは実態としては当たり前のことでありまして、現実、物の購買を通じまして売上になってきたものが、事業者がその売上の中から払っているのが消費税でございます。消費者の方が負担するというふうなことは、話の力点としてあまりそっちへ話が行ってしまうと、どなたかの御意見にもありますように、常に私たちの払っている税負担が国庫に入らないではないかというような話になってくるわけでありまして、それはそれである一面正しいかもしれませんが、消費税の基本は、売上を実際に集めている、すなわち消費者の方が支払った物の価格、その中に含まれるわけでありまして、物の値段は一物多価でありまして、1つのものを買ったから必ず同じ消費税がその中に含まれているということにはならないわけであります。そういった意味で、事業者が負担をしている税だということを、もう一度改めて広報し直していただくといいなと私は常々思っているわけであります。

ですから、例えば今後、「中期答申」で消費税が値上げになることを予測するような文章をお書きにならなければならないと思うのでありますけれども、そういうことと裏腹に、何か手続き的な面で、いまのような価格の表示が内税になっていくようなことを、ぜひ執行機関の皆さん方で考えていただくと、私は非常に負担しやすい税になっていくのではないかと思うわけであります。

以上申し上げました。よろしくお願いいたします。

松浦委員

環境問題のお話が出ているわけでございますけれども、私ども12年度予算は4月1日からでございますが、いま私ども高崎市が抱えている大きな問題は、ごみ対策だと思っております。いま、私どもは広域圏の行政をやっておりますけれども、その広域圏事業におきまして、ごみの処分場をつくって、いま最終処分場はそろそろいっぱいになろうということで、新たな最終処分場をつくっております。それに伴いまして、ダイオキシンを1ppm以下に抑えろということで、大幅なそうした改造も行われているわけでございますけれども、そうしたことで炭素税の導入問題とかそういった環境税の問題を考える際には、地方公共団体が実施をしております環境対策の財政負担を考慮して、その財政確保を図る意味で、地方税の財源としての位置づけをぜひ明確にしていただければと思っているわけでございます。

また、私ども地方が抱える1つの問題として、4月1日から介護保険が導入をされたわけでございまして、これが認定をされる人たちはよろしいわけでございますが、まあまあですけれども、認定から漏れた者、しかし、すでにいろいろといままでの各種のサービスを受けている者、そうした方々に対しては、我々の自治体としては、住民要求が大変強いものでございますから、従前どおりそうしたものをやるということを明確にさせていただいているわけでございます。そうした意味で、いまいろいろと消費税の問題が出ていますけれども、消費税というのは、私どもそうした地方行政サービスを支える大変な税源だと思っておりまして、今後も地方消費税の拡充というのが不可欠であると私は思うわけでございます。ぜひその点をよろしくお願い申し上げたいと思うわけでございます。

また、そうした財源は、地方を支える基幹税目でございます固定資産税につきましても、今後とも、土地・家屋、償却資産等を通しまして、税収の安定的確保を図るべきであると考えますので、ぜひよろしくお願い申し上げたいと思います。

竹内委員

ただいまごみの問題、あるいは環境の問題が出ておりまして、資料のほうにも環境税を税制のほうからどうとらえるかという資料が出ているのですが、第一の原則は汚染者負担の原則ということになれば、汚染度に応じて何らかの負担をするという考え方と、税という考え方が国際的に見てぴたっと一致するかどうか大いに疑問のところがございます。したがって、ここでは、例えば日本の税制の中では、4ページのあたりですか、汚染者負担に対応するものはないと書いてあるのですけれども、しっかりと税制として対応できる、比較的一律に徴収すべきものと、それ以外に汚染者負担として汚染度に応じて払ういわゆる変則的な部分といいましょうか、料金の変わる部分をきちっとコンバインした形で議論する。税制のほうには汚染者負担を考える必要なしというのは、ちょっとおかしいわけで、それを一部の税という考え方にするのか、料金という考え方にするのか、それは別として、この税調の資料は、環境問題に対して少し後ろ向きの印象が強いわけで、地方税のほうの問題にむしろ引っかかっているのかもしれないのですが、やはりきちんと汚染者負担というものと税制をどうくっつければいいのかということについて、もう少し切り込んだ点が欲しいなという感じがいたします。

それから、環境税は地方財源の補てんのためにやるわけではなくて、あくまでも環境の目的に応じてやるべきものなので、いま財政が足りないから環境税という、この議論の展開は非常に危険だと思います。あくまでもこれは環境目的のための1つの新しい範疇だということをきちっと出していただきたいと思います。

あと、所得税の控除のところを議論したときにいなかったものですから、大分議論が出たと思うのですが、控除の問題、特に配偶者控除、特別控除、この辺の取扱いについて、特に課税最低限が日本の場合高いという問題、あるいは一定の負担をすべきだという考え方に応じて、この控除の問題はもう少しはっきりと出してほしいと思います。

それから、先ほど生前贈与の話を初めてきょう税調の場で伺ったのですが、政治家の方がどう判断されるかは別として、ものすごく重要な観点だろうと。つまり、生前贈与をどうやって認めたらいいかということ。これは税制というよりは、1つの日本の所得移転の形をより新しい形に変えていくという意味で、生前贈与を容易にするといいますか、そういう方法についてちょっと検討をしていただきたいなと。どちらにしても、いま勤労者から高齢者への所得移転というのは、いろいろな形で増大傾向にあるわけですが、高齢者においては、所得が余剰分があるという傾向が非常に強いと思いますので、その余剰分がお亡くなりになるまでずっと使われないということよりは、日本の経済政策の全体の観点から見て、この生前贈与、つまりトランスファーをより促進できるようなことがもしできれば、ぜひ前向きに検討できないかなと。これはもちろん税制の問題ではなくて、もっと政策的な問題だと思うのですが、この点について、若い学生さんたちの意識、関心が非常に高いものですから、特にこの点を取り上げていただきたいと思います。

加藤会長

ありがとうございました。

いま控除の問題については、多分御覧になったと思いますけれども、この『年内の議論における主な意見』「総46-5」というところで控除が2ページ、3ページに挙がっております。ここで御覧になりまして、もっと付け加えるものがあったら、ぜひあとで出していただきたいと思っております。

ほかにございましょうか。

和田委員

1つは環境に対する税制の問題ですが、これは地球温暖化をはじめとしまして、いま環境問題というのは非常に大きなこれからの問題になっております。それで、先ほどからお話が出ておりますように、循環型の社会という方向への社会経済のシステムそのものを転換していくという時期でもありますけれども、この税制というのは、その環境問題に対応する1つの手段として、相当時間をかけて、ゆっくりしていいということではありませんけれども、検討していく必要があると思います。まさにいまおっしゃいましたように、汚染者が負担するのだという原則、それと税制とのかかわり、あるいはそのほかに規制とかいろいろなことを総合的に考えていかなければならない問題であって、その辺のところを検討していくのであって、これはあくまでも環境問題をどうしていくのかというところに、当然のことですけれども、それが目的なのだということでのいろいろなやり方があって、環境税というのは1つの手段だということの原則をきちんと踏まえておく必要があると考えております。

それから、税制全体についてですけれども、私ども「中期答申」を前にいたしまして、主婦連合会だけではなくて、消費者団体、生活協同組合なども含めまして、7団体で税制調査会、それから各党に対しまして、要望書を4月の初めに提出いたしました。

その中で7団体で話し合って、非常に基本的なところで要望を出しておりますけれども、所得の格差というのが確実に広がっているという前提があります。これは1997年の消費税が引き上げられたこと、それから、99年の所得税率の平準化によって、所得格差が広がって、中低所得者の負担というのがさらに重くなっているという現状を踏まえた上で、1点目は、消費税の税率の引上げを行わない。これは税率の引下げという運動をしておりますけれども、とにもかくにもこの「中期答申」に向かって使う言葉としまして、消費税率の引上げは行わないで、それから、食料品の非課税など引下げの措置を行うこと。それから、2点目が、所得税の課税最低限、これの引下げを行わないこと。これは先ほど申し上げましたような所得税の負担というのが確実に増大しておりますので、課税最低限の引下げを行わないこと。それから、3点目といたしまして、納税者番号制度の検討というのが進められておりますが、これについて賛成か、反対かという意見までは出しておりませんけれど、この検討に当たって、その前提として、個人情報の保護法を含む制度というものをきちんと整備していただきたいということの3点につきまして、税制調査会と各党に要望書を出しております。

それを初めに申し上げまして、消費税の問題につきましてちょっと申し上げたいと思いますのは、私どものいまの7団体の中の日本生活協同組合連合会、ここが家計簿調査をいつも実施しております。これに基づいて毎年発言をしておりますけれど、今回も全国の世帯で調査をいたしました。1999年度の調査がまとまっておりますけれども、一番単純なところだけを申しますと、年収800万円未満の世帯というのは、所得税の負担額というのが確実に前年より増加している。800万円を境にしまして、それ以下のところは増税になっている。これは実態でございます。世帯数は721世帯というところでの調査でこういう結果が出ておりますので、先ほど申し上げましたような要望書、別にこれをもとにして要望書をつくったわけではございませんけれども、並行して調査も出てきたということで、参考までに申し上げておきたいと思います。

ですから、いま相続税の問題、それから生前贈与の問題なども出ておりますけれども、これだけ格差が広がっているところで、相続税の問題あるいは生前贈与、新聞情報なんかを見ますと、相当大きな数字が出ておりますけれど、そういうことを再分配機能と総合的に考えたときに、これから十分に検討していかなければいけないということを感じております。

岩瀬特別委員

テーマを変えて恐縮でございますけれども、先ほど尾原局長から御報告ございましたキャピタルゲイン課税の来年4月からのいわゆる適正化、申告分離一本化の問題でございますが、いわゆる適正化がなされた来年4月以降の形がどうなっているかということで申し上げますと、預貯金の利子に対する課税が、税率にして20%の源泉分離というものに対して、キャピタルゲイン課税が申告分離を強制されて、税務申告を納税者に強制した上でもって、かつ、税率が26%と、こういう差をつけるという形になるわけですが、世の中がますます市場重視の経済に移っていって、ますます間接金融から直接金融へという大きな時代の流れになっているときに、なぜ預貯金の利子に対する税制とこのキャピタルゲイン課税についての税制がこういう差をつけるのかということについて、もうちょっと納得ある御説明を承らないと、「適正化、ああ結構ですね」というわけにはなかなかいかないのだということを、ちょっと申し上げたいと思うのです。

加藤会長

何かお答えをもらいますか。

岩瀬特別委員

いや、例えば、基本問題小委員会等でもって議論していただければ幸いでございます。

加藤会長

わかりました。ほかにいかがでございましょう。

吉田特別委員

話題を変えてまた大変恐縮でございますけれども、去る4月の20日に新聞各社の報道で大変大きく、確定申告に電子申告を取り入れるということが報道されております。何か2003年にこれが具体化していくということで、水野忠恒先生が座長で進めておられる。

このことに関連いたしまして、いま手許にある資料を見ておりますと、「納税者本人を確認するために、電子申告整理番号やパスワード等を何らかの手段で付与していく」とありますので、これはいずれ話題になってくる納税者番号制度と一体どういうふうに関係づけて考えていけばよろしいのか。納税者番号制度が正式に導入された暁には、この電子申告の整理番号というものは、それに一本化されていくのかどうなのか、この辺を1つ伺っておきたい。これが第1点です。

それから、同じ電子申告に関連いたしまして、インターネットの利用を前提に、納税者自らが申告していく。そういう利便性を図るために、特別な仲介者を設けない方向で検討するべきだと。特別な仲介者を設けないということは、税理士会のかねがねの御提言から見ると、若干その方向がいわば納税者本位に考えられておるのだろうと。私ども青色申告者のグループといたしましては、これは結構な方向だと、こう賛意を表するわけでありますが、これとの関連におきまして、一方で「税のしるべ」という新聞の報道によりますれば、税理士法の改正が来年をめどに進行しておるというようなお話が出ておりました。これはどこで論議されているのかということになりますと、大蔵省主税局、国税庁、日本税理士会連合会。税理士業の方々の特別立法のことだから、こういう中での御議論が進んでおるのかもしれませんけれども、いまの電子申告という近代的なインターネット化時代であり、しかもパソコンというものが大変ポピュラーになってきておる。そういう中で、税理士業務の論議は納税者サイドでも大変関心を持っておる。そういう意味から見ると、かつて税理士法の改正等は、政府税調の中で話題に供されて、一般納税者、ユーザーというのでしょうか、こういう意見も反映させながら検討された過去の事例から見ると、今日、税理士法が何か来年に向けて改正が進んでおるのだと。伝えられるところによりますと、規制緩和に絡んで、法廷陳述権であるとか、いろいろなことが話題になっているようでありますが、それは結構なことですけれども、一方、税理士業務というものの範疇をこれからのこういう近代的なインターネット時代に対応してどうあるべきかということを、政府税調の中でも論議されてはいかがなものかなと。何か別個の社会の中で粛々と進められておることに対して、若干私どもから見ると、何がしか申し上げざるを得ないのではないかなと、こう思っております。

それから、また新聞情報で大変恐縮なのでありますが、通産省の中に研究グループがございまして、その研究グループから、これは4月27日、昨日の新聞に出ておりまして、かねがねサラリーマンの源泉徴収、自営業者の申告納税、こういうものを所得捕捉率から見て、クロヨンだ、トウゴウサンだという意見があったけれども、実態はそれほどではない。こういう意見があると同時に、さりとて、白色申告という記帳の不確かなグループがいるから、やはりクロヨン、トウゴウサンではないけれども、所得の捕捉率について不公平感がサラリーマンのほうにも残るのは、これは何とかするべきだと。そういう意味合いで、白色申告制度をやめにして、青色申告制度に一本化すべきだというふうな提言を新聞紙上で見ておるわけでありますが、これは私どもから見ると、一挙に白色申告をなくすというわけにはもしいかないといたしましても、いまの申告納税制度の中では、青色申告が選択制度になっておる。そうではなくて、今度は白色でやらしてくれ、いまは記帳技術が未熟だから当分の間は少し勘弁してくれないかというふうな、青色申告を原則にして、そして白色申告を特例にしたらどうかと。いまの申告納税制度は逆になっておりまして、白色申告が原則で、青色申告を特例的に選択する、届け出をする。これは本則間違っておるのではないか。これもパソコンの発達とともに、記帳技術というものは相当に前進してきておるように見受けますので、この辺を税制上、しっかりと論議をしていただくことによって、サラリーマンから見た自営業者に対する不信感、これも解除してもらうべきではないかな。

それから、先ほど消費税の問題が出ておりまして、何かクロヨン、トウゴウサンではありませんけれども、益税を懐にしてけしからんというお話。これは滞納のあることは事実でありますので、大きな顔をして反論するつもりは毛頭ありません。けれども、やはり小規模企業者の実態というものも一遍よく御覧をいただきながら税制の論議もしていただければいいのかなと。つまり、消費税を外税でなくて内税にするというのも1つの方法ではないかなということを申し上げておきたいと思います。

先ほどの、1つだけ若干お答えがいただければありがたいなと思うのは、電子申告の何とか番号、それと納税者番号との関連は、一体どういうふうに将来なっていくのであろうか。この点をひとつお答えいただければありがたいなと思っております。

加藤会長

電子申告整理番号と納番との関係、これは田中さんですか。どうぞ。

田中税制第三課長

基本的には国税庁が担当していますので、私ども、まだ研究会の報告を勉強している段階であり、おそらく水野忠恒先生のほうが詳しいかと思います。私、間違えていたら補足いただければと思いますが、納税者番号制度は御案内のように、すべての国民に番号を付与して、実際に税務当局にそれがどう使われるかといえば、さまざまな情報が税務当局に上がってくるときに、その情報の中にその番号が書かれている。例えば、いま日本でそういう制度があるかないかは別にして、金融機関の取引について、税務当局に出しなさいという制度が仮にあったとすると、その取引の相手の納税者番号がそこに書いてあるということで、それを税務当局が情報として処理するときに処理がしやすいということとして有用である。それから、本人の確認というのがきちっとできるという意味で有用である。こういうことだと思うのですが、国税庁が検討しております電子申告については、まずこの電子申告をすること自体、義務づけるわけではありませんので、紙で申告をするか、電子申告をするかはその人の自由ということになる点において大きな違いがあるわけです。

それから、もう1点、中身は、ID番号というのをおそらく使うでありましょうし、それ以外にもパスワードというのを使う場合もあるのだと思うのですが、番号自体はどんな番号でも番号にすぎませんから、機械処理のための整理番号という意味では、ある種納税者番号の機能のごく一部を担うことになるのかもしれませんが、本人を確認する手段としては、いま現在はID番号のほかに、パスワードあるいはデジタル署名というのでしょうか、そういうようなことで本人が私は誰々ですということを税務当局にきちっと正確に把握してもらうために、別の手段、つまりID番号と別の手段でそういうことをやりますので、その意味においては、納税者番号とこのID番号というのは、機能は違ってくる。納税者番号の場合は、番号自体がある種本人確認を果たしておりますので。ということかなという気がいたしております。もし間違えていたら、水野先生、訂正いただきたいと思います。

加藤総務課長

1点、税理士法の改正問題の状況を簡単に御報告いたします。

私ども、いまの状況といたしましては、税理士会が今日の税理士法を今後どうするべきかということで、まさに会のイニシアチブで勉強をされていると。それに関係の国税庁が若干参加している。私ども事務方が一部参加しているという状況がございますが、あくまでも税理士会の勉強という状況というふうに認識しております。したがいまして、いずれこの税理士法改正問題が具体的に政府の検討スケジュールに上ってまいりました段階では、当然、政府税調にも御審議を賜ることになろうと私どもも認識しております。

加藤会長

水野さん、よろしゅうございますか。何か付け加えますか。

水野(忠)委員

電子申告の問題ですけれども、いま田中課長がお答えになりましたように、これは記者レクチャーのときにもはっきり申し上げたのですが、いわゆる電子申告の番号というのは、あくまで申告のときの整理番号である。本人確認の役割を果たしておりますけれども、基本的には納税者が申告をするときに必要な番号であり、おそらくそれをカバーするために何らかのパスワードをつけるということはあると思うのですが、基本的には納税者番号とは分けて考えているというのが報告書の方向であります。

現実問題、アメリカ合衆国などは昔から納税者番号が入っておりますし、1990年代に電子申告を採用しましたけれども、納税者番号はその本人確認のためには利用されていないということがあるわけです。現実には非常に面倒なことなのですが、我が国のいわゆる署名にかわるもの、本人を確認するために、申告書類はわざわざ電子申告の後から送らなければいけないという二重の手間をかけていたわけですが、それほどまで納税者番号とはかなり違ったものだと認識していただきたいと思います。

というのはなぜかと申しますと、真っ先に電子申告をやりたがるのは還付を受ける人たちになるわけですが、還付を人の納税者番号を使う、あるいは納税申告のときに他人の番号を使うと、非常に間違いが大きなことになりますので、この辺ははっきり分けていきたいということです。現実には我が国でも、一回納税申告しますと、次の年から申告書が送られてきまして、そこには税務署管内での整理番号がついてくるわけですね。私の今年のを見てみましたら、どうも電話局番が先頭について、それに何らかの番号がくっついているということですので、それプラス、パスワードで本人を確認する。それでも不十分な場合には、デジタル署名のようなものをさらに開発していくと、こういうようなことでおりますので、納税者番号は念頭には置いていないというように御理解いただきたいと思います。

加藤会長

吉田さん、よろしゅうございますか。

吉田特別委員

電子申告番号と納税者番号が実現した暁は、両方が併存していくのですか。

水野(忠)委員

十分併存していく可能性はあると思います。少なくとも2003年に出発するわけですので、おそらく、先はわかりませんけれども、納税者番号が採用されたときには、かなりの電子申告特有の番号が普及してきているということでありますし、また先ほど申しましたけど、納税者番号というものが、これ自体は確かに本人の確認にはなりますけれども、濫用されるようなもとになってしまってはいけないという問題もあるわけですね。どういうふうに使われるかという問題はありますけれども、そういうことですので、これは切り離して、幸い所轄の税務署というのは大体決まっておりますので、そこで使われている整理番号などを念頭に置いて議論を進めてまいります。ですから、納税者番号が入っても、それが直ちに電子申告のときのいわゆる IDになるかといいますと、それはまた別の問題であろうと考えております。

今野委員

先ほどから相続税、生前贈与の話題が出ておりまして、私も先生方と全く同じような理由で、ぜひ思い切って見直していただきたいと思っております。竹内先生もおっしゃっていましたけれども、そうすることによって世帯間で流動化していき、それが結果的に景気対策にもつながっていき、政策的にも非常にいいのではないか。また、若者たちのニーズにも合っているから、非常に若者たちの活性化にもつながって、いろいろな意味で望ましいのではないかと思っております。そのとおりで……。

相続税、生前贈与が家族という範囲の中でのその目的であるとするならば、それと同じような意味で、もっと広く社会全体にそういう動きをつくっていくために、私はぜひともNPO法人に対する税制上の措置を早く見直していただきたいと思います。国民は税負担という形でいろいろな国づくりに参加しているわけなのですけれども、もっと国民が一人ひとりの自分たちの意思で、主体的に社会参加できる、つまり、動物愛護とか、環境問題とか、災害とか、途上国援助とか、何でもいいのですけれども、自分たちの意思が表現できる、実現できるという形で、自発的にお金を使っていける、そんな世の中にするためにも、ぜひともそれを早くやっていただきたいと思います。もちろん、NPO法人といいましても、いろいろありまして、税金を使って逆に民業を圧迫するような法人もたくさんあるわけですから、そういう実態を把握していただいて、本当にいいものを残すという作業は必要ですけれども、そういう動きを1日も早くつくっていただけますようにお願いしたいと思います。

石特別委員

私、基本問題小委に入っているものですから、きょうは皆さんの御意見を伺ってという立場だと思いますが、お聞きしていて若干違和感を覚えるようなことが2、3出てまいりましたので、また基本問題小委に持ち帰って議論するにしても、ちょっと反論ということではございませんが、我々のサイドの議論を少し御紹介しておきたいと思います。

1つは、確かに地方税と環境税、この組み合わせでいまいろいろな形で議論が出ているのは十分にわかっておりますが、さっき竹内さんがおっしゃったと思いますが、環境税はあくまで環境対策の一環なんです。経済的措置、経済的手段の中で税制を活用するという意味ではなく、環境税の名のもとにおいて財源確保などに使うというのは、そもそもの環境税ではない。したがって、例えば、ごみとか廃棄物処理等々で財源が必要だし、これは環境と絡むのは十分わかりますが、そういうものに環境税を活用するというのは、ちょっと本来の筋から違うのでありまして、産廃とかごみ処理は、これはあくまで地方の法定外普通税とか法定外目的税でやるのが筋でありまして、そのときは間接的に環境に絡めるかなという議論だろうと思います。

そういう意味で、若干この辺のところに議論が集中し、かつ、マスコミあるいは他省庁でも、特に環境庁あたりも環境税は関心を持っておりますが、あくまで環境に負荷を与えるものに対して抑制しようというのが環境税でありますので、やにわに取りましょうというときに環境というのは、ちょっと逆立ちしているということだけ、まず冒頭申し上げたい。これが第1点になります。

第2点は、たしか平田さんがおっしゃったことかな。消費税は事業者の負担であると。これはおそらく今後消費税税率アップのときには、一般の消費者に対しては、そう言ったほうが多分通りがいいだろうという御配慮から出たことかなと推察しておりますが、ただ、この税調も含め、世界の流れも含め、やはり消費税は事業者ではなくて、たまたま納税義務者でありますが、最終的な負担者は消費者だと我々繰り返し議論してきたんですよ。ただ、法定上、それを特定化はしておりませんが、転嫁すべきであるという性格であって、最終的には最終消費者が負担すべき税であるということを繰り返し言っていますので、ここはやはり事業者の負担だというような説明をしてしまうと、後々困るのではないかなという感じがいたしておりますし、私も元来そういう説明を絶えず教室でもやるし、いろいろなところでやってきたので、ちょっといまさら変えるのも難しいかと、私自身はこう思っております。

それから、キャピタルゲインの申告分離一本化で、適正化に反するというお話もございましたが、その説明の論拠が利子との比較でおっしゃって、金融資産の中立化ということだと思います。これはこれでわからなくもないのですけど、ただ、利子とキャピタルゲインというのは決定的に違いますよね、金融所得としても。片や恒常的に定期的に入ってくるのに対して、キャピタルゲインは自分で実現を選べるわけだし、キャピタルロスもいうなれば操作できるわけだし、そういう意味で同じ20%にすることは、私は全然必要がないと思う。

適正化と我々が言っているのは、申告分離と源泉分離をうまく操作して、何かうまいぐあいにと言うと語弊があるかもしれませんけれども、ロスが出たときに申告分離にするとか、そういう形で税制の中で任意選択制というあたりは不適切であるという意味において、適正化が申告分離一本につながったというのが我々の考え方として筋であろうと思います。

もう一つ、道路特定財源は環境と引っかけて御発言がございましたけど、これまたこの中でも非常に議論があるのを重々承知はいたしておりますが、もう50年ほど前に道路特定財源をつくり、それを全部道路へ充ててきたというこのやり方自体、そろそろ見直すべきであるというのが我々の一貫した意見であります。

それで、道路に対するニーズは私は無限であると思います。あと100年たとうが、200年たとうが、道路道路ということは、おそらく地域の方から見ると消えてこない。ただ、マクロ的に見て、私は日本の道路がそんなに悪いとは思っておりませんし、50年前に比べると圧倒的に整備されたと思っていますし、世界中見渡しても、ガソリン税を道路特定財源にしている国はもうすでにございません。元来、ガソリンを道路にしてきた歴史は随分多くの国が持っているのですが、それは道路が整備されるに従って、成功裏のうちにシフトさせているのです。そういう時期ではないかと私は思っております。加藤会長なんかは新聞で言って、何やらいろいろな政治的トラブルもあったようでありますが、これはやはり言うべき時は言わなければいけないのかなと思ってはおります。

最後に、生前贈与のやり方は皆さん御関心もあるし、ただ、自民党の某有力議員が言っているように、1,000万円贈与枠を広げるなんていうのは、まさか実現するとは思っていないと思いますが、ポイントは、贈与税というのは、相続税を補完するという従の立場であるということをよくよく考えないと、贈与税に穴をあけてしまうと、相続税というのは身も蓋もなくなりますから、資産の再分配も何も全部吹っ飛んでしまいますから、あえてこの辺の枠を広げるのだったら、いま、一生に一回配偶者に住宅の贈与をするときにかなりの幅がありますよね。僕はああいうのは筋としては認め得ると思いますが、毎年毎年定期的にいま60万円あるやつを、500万円なり1,000万円なりにしてしまったら、これは相続税なんかつくる必要がなくなりますから、全く意味がない。60万円をいくらに上げるかということはやってもいいのだろうと思います。しかし、あれだって60万円をフルに使って10年間で600万円、いうなれば1,200万円をというような筋も残っているわけですから、あれがどれだけ認められるかというのが議論ではないかと思います。

栗田委員

まず、環境関連の税制ですが、最近のダイオキシンの問題、あるいは私どもの産業廃棄物問題、また一般家庭のごみ問題にいたしましても、廃棄物リサイクル対策あるいは緑化の推進ということで、環境施策において都道府県あるいは市町村の果たす役割が非常に大きいわけでございまして、そういう意味で、環境政策の財源確保が必要だろうというぐあいに思っております。できるだけ地方税財源として位置づけるべきであると考えております。

いま石特別委員が言われましたように、単なる財源確保ではおかしいということですけれども、産業廃棄物なり、あるいは水質汚濁、これは地方公共団体が条例で対応することが適当な事務でございますし、その場合に例えば法定外普通税であるとか、あるいは法定外目的税、さらには任意に課税できるような、そういう仕組みを考えるべきではないかと考えております。

それから、ヨーロッパの炭素税のようなものを導入する場合でも、軽油引取税のように流通段階で課税するというような工夫をすれば、国民、消費者にも近いところで課税されるというわけですので、消費者にもわかりやすい、環境汚染の抑制を図る目的が理解されるのではないかというぐあいに思っておりまして、こういった税制を考える場合に、国税一本でなくてもいいわけでございまして、地方税として徴収をするということを十分考えてもらう必要があるのではないかと思っております。

それから、2番目に不動産取得税ですが、これにつきましては、流通課税としてさまざまな議論があることは十分承知しておりますが、不動産の取得という事実に担税力を見出しているものでございまして、都道府県の税収の4%ないし5%を占めているという重要な税でありますので、都道府県税としての大きな意義を持っているということを十分御理解いただきたいと思っております。

それから、3番目に地方消費税関係でございますが、地方分権が進んでまいりまして、地方の財源がますます確保することが重要だということでございまして、地方でも行政改革を徹底することによって、この財政危機を何とか乗り切ろうということで努力をしておりますし、また先日も有志の知事が集まりまして、国と地方の税制を考える会を立ち上げるといったようなことで、真剣にこの税のあり方に取り組むことにしているわけでございますが、地方消費税につきましては、この地方公共団体の安定的、普遍的な基幹税源の拡充が必要であるということで、消費税そのものについて、今後どのような議論がされるかということでございますが、地方公共団体側からしますと、増大する地方行政サービスを支える地方消費税の拡充というものが不可欠であるというぐあいに考えております。

それから、最後に道路特定財源の関係でございますが、道路の整備が環境破壊かどうかという議論もあるわけですが、例えば都心部を迂回するバイパスの整備がされれば、中心部のCO2あるいはNOXの発生を少なくできるということで、市街地の環境の改善にもなる。そういう側面もあるわけですし、道路の整備というのは、都市部だけでなく地方におきましても、まだまだ整備を進めていかなければならない課題でございまして、道路整備のための財源措置はまだまだ必要であるというぐあいに思っております。特定財源でやるかどうかという問題ですが、現行の税目を見ていますと、そういったそれぞれの税を徴収する根拠からして、個人的には特定財源として、将来は別として、当面はそういう形で進むべきであろうというぐあいに思っております。

松尾委員

道路特定財源の問題ですけども、これは政治とのかかわりが非常に強くて、完全に聖域になってしまっているんですね。いまの財政から見て、こういった聖域を認め続ける余裕はもうないのではないのかと私は思うのです。社会資本の整備という面である程度進んでおりますし、これは誰の目にも明らかですね。相当進んでいるわけです。でもある程度社会資本の整備が進みますと、やはり財政上の非効率を生みがちであります。これはやはりもう特定財源ではなくて、一般財源として優先順位の高いものから配分していく。そういうスタンスが必要であろうと私は思うわけです。既得権化は避けるべきである。国民の資源の無駄遣いはどうしても避けてもらいたいと、私は国民の1人としてそう本当に要望しているわけです。

さらに、公共投資全体にいまや環境対策の視点が必要になってきている。そういう段階に来ていることは間違いないと思うのです。環境税制を先ほど石先生がお触れになりましたけれども、これは1つの対策でありまして、地球環境保全システムの重要な一環と位置づけなければならないだろうと思うわけです。地球温暖化対策全体としては、当然総合的なパッケージが必要になろうと思います。税負担だけではなくて、ほかにもいろいろありますね。途上国に対する資金・技術移転もありますし、受益者負担の原則といったものもあると思うわけです。こういった総合的なパッケージの中で道路財源も検討する必要があるのだろうと私は思います。

地方の場合、受益者負担の原則を私はもっと考えていいのだろうと思うのです。廃棄物とかごみ処理なんかは、受益者、排出者がはっきりしているわけですね。これは有料化するのが筋であろうと思うのです。ごみ回収の完全有料化というのは、まだそんな話は聞きませんけども、廃棄物処理法に基づく条例の施行で、それはいまでもできるわけですね。一部負担しているところはあるようですけど、完全有料化というのはあまり聞いたことがない。やはり地方はこういった受益者負担の原則ということを、環境対策の観点からも真剣に取り組む必要があるし、そうしていただきたいと私は思っております。

平田委員

税調の場で初めて税理士法改正のお話が御質問とお答えの中に出てまいりまして、私が税理士業界ということでありますので、一言申し上げさせていただきたいのでありますが、御存じのように、新聞なんかで資格制度が非常にいま問題になっておりまして、これは規制緩和の流れの中で、あらゆる資格が検討されているといういま状態であります。私ども税理士業界では、規制緩和のお話の前から、業界として、着ている衣を少し変えたいというところがございまして、以前の改正が昭和55年でございましたから、もうすでに20数年たっているということでございまして、お願いをしていたという経緯があります。細かいことは申し上げませんけれども、いずれにしても税理士法改正が今後1つの形がまとまりますと、当然のことながら、この政府税調の場で御論議をいただくことになると思いますので、その節はひとつよろしくお願いしたいということであります。

それから、もう一つは贈与税の問題について、先ほど申し上げなかったので申し上げたいのでありますが、石先生がおっしゃいましたように、贈与税は相続税法の中にあるんですね。贈与税法という税法はないのでありまして、相続税法の中にありまして、まさに相続税法の補完の税制であるということでありまして、これを簡単に、生前贈与をどんどんいいですよということになりますと、本当に民法で考えている私有財産制度をどんなふうに日本の国の場合は維持していくのかというところから論議をしていただかないと、相続、人が死んだときに財産が移っていくのだというような基本的な枠組みからしても、日本の民法的にいっても、税制的にいっても、生前に私有財産を移転するのはだめだよと言っているようなものだろうと、私たち実務家はそう考えているのです。だって、基礎控除が60万円ということは、全く何にも移れないということと同じでありまして、やってはいけませんよというふうな法制度の中で私たちは暮らしているということであります。

この60万円というのは、理論的根拠はどこなのだという話があるのですけれども、私のつたない知識では、所得課税の中で一時所得というアイテムがありますが、その一時所得の中で基礎控除として50万円というものを引くのですけれども、その50万円の金額と相対しているような感じで説明をしたような記憶があるわけでありまして、まさに60万円なんていうものは、もう何年来というか、何十年来この金額が維持されているというふうになるわけであります。新聞等で1,000万円なんていう話が出ていますけれども、そういうことを考えるだけでも、それはいままでの話と全く違ってしまうということでありまして、もしも多少直すということを今後の税制の中で考えるとすれば、それはだんだんと直していくということが、やはり民法の考え方とか、そういったほかの税制との公平性からいっても当然であろうと思う次第であります。

それから、私がさっき申し上げた消費税の問題でありますけども、これはいくら議論をしましても、1つの理論というものと実際の実務というものの狭間みたいな話でありまして、導入をするときには消費者に御負担を願うということのほうがやりやすかったのかもしれませんけれども、現在、もう大変な税収の根幹をなしている基幹税でございますので、新たな視点でまた広報のし直しとか、そういったことをぜひ考えていただいて、将来の基幹税として大いに育てていただきたいと思う次第であります。

竹内委員

「総47-4」というところの2ページ目の丸ポチの3番目なんですけど、「環境問題の対応の検討に当たっては、国際的な整合性や産業活動との関係についても議論が必要ではないか」というここのくだりなんですが、ぜひ地方公共サービスの民営化及び環境PFIの推進というのを意見としてはっきり入れていただきたいのです。つまり、税収の問題が出ますと、いませっかく環境ビジネスに火がつこうとしているときに、税金でみんな料金を持っていかれてしまうと、ビジネスにならないんですね。これから環境ビッグバンというか、ニュービジネスをやっていくには、あまり税制がしゃしゃり出るのは問題があるので、議論が必要ではないかということですから、意見として、きちっとそういう文脈を、まさに国際的整合性というのはそういうことなのであって、ぜひ入れていただきたい。

加藤会長

非常にいい御指摘ですね。

水野(勝)委員

先ほど御議論のございました消費税の負担・性格論でございますが、やはりその税金は誰が本当に負担をしていただくかということは、税制としてははっきりさせておく必要があるわけでございまして、やはり消費税というのは、消費者に御負担いただくべき性格のものであるということは、はっきりしておくことが必要ではないかと思うわけでございます。しかし、実際の制度上は、事業者がその売上の中から払う。売上の105分の5というのは、必ず消費税として払わなければいけない。しかし、前段階税額控除があるということでございまして、これは先ほどお話がありましたように、日本のいまの経済システムでは、すべて物価は自由でございますから、どのように価格付けをしようと自由です。ですから、よく「消費税はうちはいただいておりまません」と言っても、そういう価格で設定したけれども、その105分の5は必ず税務署に払っていただくわけでございますから、建前は消費者が御負担する。しかし事業者がそれを納税する義務がある。納税義務者だということではないかと思うわけでございます。

先ほど、創設のとき消費者に御負担いただくのだということでなければ、なかなか創設はできないという、まさにそのとおりでございまして、創設のときにはそういうことで十分事業者に御理解を、あなた方が負担していただくべきものではないです、ということをはっきりいたしたわけで、それによって創設され、現在のように定着してきているということでございます。

しかし、今後、創設ということはありませんけども、いろいろな事態でまた税率の引上げ等々の問題が起こる可能性はある。そうした場合に備えというか、理論をすっきり整理しておくためには、やはり負担は消費者に御負担いただくものですということをはっきりしておく必要があるのだろうと思います。しかし、それは納税義務者はあくまで事業者、そして105分の5を払っていただくということですから、ある程度定着してきている現時点では、できるだけこれを内税化していく。それが経済の取引の実態に合うのではないかと思うわけでございます。

それから、環境税の問題もいろいろ御議論ございます。ここでいまいろいろな方からお話がありましたように、あくまであるべきものは環境対策であり、環境政策なのでございまして、その一環として税が活用される、税が設けられる、創設されるといった場合に、それをどのように地方にも配分するかということであれば、地方税としてという点もわかるわけでございますが、この政策の観点からすると、なかなか地方税としてはなじまない。必要がある場合には、料金体系なり受益者負担、あるいは法定外普通税で個別に処理をされるのが筋ではないか。そして対策として環境税といったものが登場した場合には、それは全体としてどういうふうに配分をするのか。そのときにそれは地方税のあり方というのを議論すればいいのではないかと思うわけでございます。

それから、生前贈与については、いろいろ出ておりまして、1,300兆円になって、これを早く移転させて、消費の拡大に寄与するという議論が最近盛んでございますけれども、現時点のような家族制度になってきた場合に、本当に自分の将来を案じつつも、若い世代に移転する人が本当にどれだけいるだろうかということは、大変疑問でございます。しかし、そういった制度があれば、活用はされないことはない。そういった意味で、その政策的要請がわかる。

しかし、相続税と贈与税という法体系の中で何か案があれば考えるということではないかと思いますが、そうした考え方から来る1つの方向としては、現時点でも住宅のための資金贈与は、60万円を5年分先取して一括して贈与をするという形で、60万円を3倍なり5倍して活用されている制度があるわけでございます。ですから、例えばその方の年齢、それから、平均寿命までの年数、あと10年ありそうだというなら、10分10乗してあげてもいい。そして、その場合に住宅取得資金というものと、何らかさらに似たようなものに拡大していくということで、政策的に考えるという方法もある。そういうことで何らかの方策はあると思いますが、一遍にただ単純に基礎控除を巨額なものにするというのは、やはり税の体系のあり方からすると、いかがかなという気がいたします。

加藤会長

まだ御議論がおありと思いますけれども、時間を過ぎてしまいましたので、この問題につきましては、あと2回こういう会を設けまして、また議論を進めさせていただこうと思いますので、きょうはこの辺にしたいと思っております。連休になりますので、これから事務局のほうに、「中期答申」の柱というのではなくて、「中期答申」の外側というのでしょうか、どんなふうに論じていくかというようなことについて、いろいろな基礎的な条件がありますから、その基礎的な背景、個々の制度の仕組みとかというものがどんなふうになっているかということを、一般の人にわかりやすくまとめたいと思っておりますので、事務局にそれをこれからやっていただきます。そして、それをまた小委員会や、あるいは総会で議論をしたいと思っております。

今後の予定を申し上げますと、いま申し上げましたように、きょうのような議論があと2回ほどございまして、連休明けの予定は5月12日に地方課税小委員会、金曜日でありますね。それから、5月の16日火曜日に基本問題小委員会を開催する予定にしております。総会の開催は5月19日の金曜日、5月23日の火曜日に予定をしております。本日と同じように基本問題小委員会の報告を受けながら議論を進めたいと考えておりますので、またよろしくお願いをしたいと思っております。

それでは、本日はありがとうございました。

〔閉会〕

(注)

本議事録は毎回の総会後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、大蔵省主税局及び自治省税務局の文責において作成した資料です。

内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。