第6回総会 議事録
平成12年11月28日開催
〇石会長
ただいまから、第6回総会を開催いたします。
前回、総論的な部分で、制度改正の議論を始めました。景気動向、税収の見積り等々申し上げましたが、今日から、二回に分けて各論に入りたいと思います。
きょうは、法人関係税制、住宅・土地、相続税・贈与税の三つのテーマに分けまして、おのおの区切って議論をいただきたいと思います。
残る主要な検討事項の金融・証券、酒税、税理士法、租特は、今週の金曜日の次回まわしとしたいと思います。ただ、次回は欠席で、今日しか出られないという方がいらっしゃいましたら、先取りでも結構でございますから、今日のうちに御議論いただいたほうがいいかもしれません。また、追加的に、我々が提示していない問題で議論したい点がございましたら、どうか御遠慮なくお出しいただけたらと思います。
きょうは3時間という長丁場でありますから、途中で一回、休憩したいと考えております。
最初に、法人関係税制。これも国税と地方税に分けて議論したいと思います。
それでは、池田調査課長と岡崎府県税課長から、おのおの20分ぐらいで御説明ください。
〇池田調査課長
それでは、法人関係につきまして簡単に御説明したいと存じます。資料は「総6-1 説明資料(法人関係税制)」でございます。
2枚おめくりいただきまして、1ページをごらんいただきたいと思います。最初は、企業組織等に関する法制・企業会計の改正の動向でございます。何度か見ていただいた資料かもしれませんが、企業組織に関連する法制・企業会計の改正の動向につきましては、9年12月に持株会社設立の解禁、商法において、合併手続の簡素合理化、株式交換・移転制度の創設等が行われております。さらに、今年の5月には、会社分割法制の創設という大きな改正が行われたところでございます。企業会計のほうでは、11年4月から連結財務諸表の抜本的見直しが行われ、連結財務諸表を原則とすることになったことは御承知のとおりでございます。
これに対応しまして、四角で囲んだ項目については税法の改正が行われているわけでございます。先般、会社分割・合併等につきまして、組織再編成にかかわる税制の基本的考え方について、税制調査会においても御審議をいただき、その考え方を示していただいたところであります。その基本的考え方に基づきまして、現在、13年度改正に向けて細かい技術的な検討を進めているところでございます。
1枚おめくりいただきたいと存じます。次の課題として、連結納税制度の導入について議論が及ぶわけでございますが、これまでも法人課税小委員会において検討が進められております。中期答申においても、企業経営における、企業集団の一体的経営の強まりや組織の柔軟な再編成を可能とするため、独禁法あるいは商法における見直しが進められる中、企業の経営環境の変化に対応する観点や、国際協力の維持・向上に資する観点、企業の経営形態に対する税制の中立性の観点から、我が国においても連結納税制度の導入を目指すことが適当である、というふうにおまとめをいただいたところでございます。
それでは、我が国においてどういったタイプの連結納税を導入すべきかということにつきましては、企業集団の経済的一体性に着目して制度を構築するという理念の下、企業の経営形態に対する税制の中立性を踏まえまして、米国において導入されているいわゆる本格的な連結納税制度を導入することが適当である、というふうに中期答申等でおまとめをいただいたところでございます。
2ページの資料は、連結財務諸表と連結納税とは必ずしも一致するものではないということを絵にしたものでございまして、これの説明は省略させていただきます。
1枚おめくりいただきますと、いま申し上げました本格的な連結納税ということになりますと、検討すべき項目が非常に多岐にわたるわけでございます。その検討項目について、法人課税小委員会においていろいろ御指摘をいただいております。かぎかっこで囲みましたのが大項目8、その下に黒ポツで示した中項目24がございます。さらに、4ページから13ページにかけましては、中項目に対して、それぞれ具体的にどのような検討をする必要があるか、同じく小委員会でまとめていただいたものがございまして、小項目では59にわたるわけでございます。
この内容の御説明は省略いたしますけれども、いずれにいたしましても、国際的に遜色のない連結納税制度を導入するに当たりましては、いま申し上げたような多岐にわたる項目について、きちんとした詰めをしていく必要があるわけでございます。法人課税小委員会において一層の検討をお願いしていく必要があるところでございます。
次の法人課税の課題といたしまして、資料16ページを御覧いただきたいと思います。NPO法人に関する課題でございますが、NPO法(特定非営利活動促進法)において、NPOの組織がどのような形で認証されるかということについて、簡単に絵にしてございます。
左にございますように、申請について、一定の要件に適用すると認めたときには設立を認証しなければならないということで、知事の裁量行為の幅を非常に狭めている規定になっておりますし、監督に関しましても、法令等に違反する疑いがある相当な理由があるときに報告・検査することができるということで、監督・指導についてもごくごく弱い規定となっております。反対に申しますれば、NPOについては、公の関与はなるべく少なくしよう、民間の自由な創意に基づく活動を促進しようというのが法の精神になっているように思います。
さらに1枚おめくりいただきたいと思います。ことしの11月17日現在、2,945 のNPO法人の認証が行われております。都道府県分で2,712 、経企庁分で233 となっております。ただ、いま申し上げたように、公の関与をなるべく少なくするということから、その内容は、ある意味では非常に多岐にわたっているわけでございまして、言葉は悪うございますが、玉石混淆と言えるのではないかという感じになっております。
右側には、NPO法人について実態調査をした結果を示しております。これによりますと、66%が保健・医療、33%が社会教育、31%がまちづくりといった分野になっていますが、それぞれが複数回答になっておりまして、どこを中心にしているかということはこれからは必ずしも明らかでないのが現状でございます。
経企庁がアンケートをいたしましたところ、例えば回答率が3割にとどまっているということで、認証している役所、経済企画庁にしても、本当の実態を必ずしも把握できずにいるというのが一つの特色となっております。
1枚おめくりいただきますと、玉石混淆と申しますのは、高齢者ケア、災害救助、難民救済といった社会福祉的な側面の強い団体も数多いわけですが、一方、カラオケ教室、株式投資セミナー、無料法律相談、格闘技クラブ、何々公園を守る会といった、実に種々雑多なものがNPO法人としての認証を受けている現状にあるわけでございます。
NPO法人に対する税制上の優遇措置につきましては、その実態を見極めた上で、課税の公平から考えまして、公益性をどのように確保するのか、そのための基準や仕組みをどうしていくのかということについて検討していく必要があります。また、従来からございます寄附に関する税制、例えば公益法人課税のあり方や、他の法人団体に対する課税とのバランスといった点から幅広く検討していく必要があるわけでございまして、現在、NPO法人に対する優遇措置については、国税、地方税それぞれに要望が出ているところでございます。
1枚おめくりいただいて、19ページを御覧いただきたいと思います。現状の優遇措置は、大きく分けて、国や地方公共団体に対する寄附金に関する損金算入の制度、特定の活動に対する寄附金の制度、特定公益増進法人に対する寄附金の制度の三つがございます。
特定公益増進法人については、もう1枚おめくりいただきまして、20ページをごらんいただきたいと思います。特定公益増進法人に対しては、NPO法人とは少しスタイルが違っておりまして、主務官庁からの設立の許可に対して厳密な審査がございますし、監督に関しても、いつでも職権での検査、その他ができることになっております。それを前提に、主務大臣によって特定公益増進法人として認定した場合は、個人の寄附あるいは法人の寄附に関して一定の損金算入が認められているわけであります。
具体的には35の類型がございまして、21ページをごらんいただきますと、科学技術に関する試験研究、学校教育、社会教育、経済協力、国際交流の分野から、最後のほうに学校法人、社会福祉法人が入っております。総数としては1万8,900に及んでおりまして、学校法人、社会福祉法人がその大半を占めているのが現在の姿でございます。
こういった特定公益増進法人の中には、赤十字のようなところから、文化振興ということで考えますと、オーケストラのような芸術の普及振興に関するもの、文化財保護、歴史的風土の保存に関する業務を行っているもの、博物館の振興に関する業務を行っているもの、博物館の設置・運営に関する業務を行っているもの等が対象になっております。先日、文化に対する寄附金については、よく考えていく必要があるという御指摘をいただいたところでございますが、こういったものがその対象となっているところでございます。
22ページでございますが、指定寄附金、あるいは特定公益増進法人への寄附金の状況でございます。それぞれ1,000億円、700億円前後、さらに法人に関しましては、御承知のように、資本金と収益をベースにした一般の寄附金という枠がございます。それに加えて、同額の特定寄附金の制度が用意されているわけでございます。結果として、5,000億円前後の寄附金が毎年行われています。
(e)の欄の一般の寄附金の算入限度額と同額が、特定寄附金の限度になるわけですが、それで割り込んでみますと、一般の寄附金については、毎年50%あるいは60%程度利用されております。一方、特定公益増進法人については、同枠が用意されておりますが、10%強から14%程度の使用状況にとどまっている現状にございます。こういった状況を踏まえて、NPO法人についても課税を考えていく必要があろうかと存じます。
もう一つの課題で、26ページにまいりたいと存じます。先日御指摘をいただきました特別法人税でございます。適格退職年金契約や厚生年金基金契約など、退職年金等積立金に対する特別法人税の課税が行われておりますが、その趣旨は、事業主が負担する掛金については将来の従業員の年金等の支払いに充てられるわけですが、ある意味では、将来、従業員への所得になるものでございます。所得課税を年金受給時に行うわけですけれども、当然これは運用するわけでございますので、その間、利息が生まれます。これについて所得課税が行われないことになっておりますので、特別法人税という形で、一種の遅延利息相当分について、一般の所得課税との公平を確保する観点から、課税が行われているものでございます。
ただ、そういった形で相当の理由を持つものと考えますけれども、11年度の税制改正におきまして、昨今の大変な低金利の状況、企業年金の財政状況の悪化などを踏まえまして、2年間の臨時的な措置としてその課税を停止しているところでございます。
現状の説明にとどまりますけれども、私からは以上でございます。
〇石会長
ありがとうございました。
岡崎さん、お願いします。
〇岡崎府県税課長
総6-2の「地方税関係資料(NPO法人関係)」を先に説明させていただきます。1ページの1、個人住民税における寄附金控除の考え方でございますが、個人住民税は、地域社会の費用を住民がその能力に応じて広く負担を分任するという独自の性格を有しております。したがいまして、特定の行為を奨励するような政策的な控除は原則として認めていないところでございます。こうした考え方を前提としまして、控除を行う地方公共団体において、寄附金を受けた団体からの受益があることが明白な寄附金に限って控除対象としているということでありまして、所得税と比べますと、きわめて限定されたものになっております。
次に、2.では、[1]、[2]、[3]と寄附金控除の対象が書いてあります。地方公共団体に対するもの以外では、[1]の共同募金会については、県内の社会福祉法人等に対して寄附金を配分することが担保されております。また、[3]の日赤支部につきましても、同じ県内の災害救護設備、医療救急体制等の整備に使用されることが法的に担保されています。こういうことで対象になっております。したがいまして、国への寄附とか、特定公益増進法人への寄附の対象にはなっていないということでございます。
2ページは、法人の区分の表であります。省略いたします。
3ページは、その代わりといっては何ですが、地方公共団体によるNPO法人やボランティア団体等への支援についていろいろ財政的な措置を講じております。地域福祉基金等による財政面での支援を幅広く行っております。その他の支援策として、物的な支援、拠点施設の整備を行っているということで、こちらのほうで公共団体が相当な支援を行っております。
4ページは、法人課税の面での取扱いを整理したものでございますが、説明は省略させていただきます。
以上が、総6-2でございます。
引き続きまして、外形標準課税の関係について御説明申し上げます。総6-3-1、総6-3-2、総6-3-3が概要の説明でございまして、総6-4として「外形標準課税関係資料」をつけておりますので、それぞれ簡潔にご説明いたします。
総6-3-1が、法人事業税の改革案についてまとめたものでございまして、これを文章で説明したものが、総6-3-2の「改革案の説明」でございます。総6-3-1に沿って説明させていただきます。
まず、改革の趣旨。これは以前からだいぶ言われていますが、公平性、応益課税としての明確化、安定化、経済の活性化という四つの趣旨が書かれております。このうち特に公平性の確保については、その下に円グラフが三つございますが、現在、245万社が事業税の対象法人になっておりますけれども、この所得課税にかかる3.8兆円については、全体の34%の利益法人がすべて負担しているという状況でございまして、163万社は負担はゼロ円であります。1億円超の大企業、1億円以下の中小企業と分けますと、大企業では52%の会社が負担しておりますけれども、中小企業では3分の1の会社が負担しているということで、公平の面では問題があると思っております。
それから、安定性の話でございますが、法人事業税収の推移が右側のグラフでありまして、元年以降を見ていただきますと、3年までは非常に好調で、6、7年以降はどん底に近いような落ち込みをしておりまして、所得にかかるがゆえにこういう不安性があるということでございます。
今回の改革のポイントが下の2番でございます。現在、所得にかけておりますが、所得の部分を2分の1にして、残り2分の1を外形基準で課税いたしたいという案でございます。この結果として、所得にかかる税率は、現在、基本税率9.6%ですが、半分の4.8%の税率に引き下げるということでございます。
2ページを御覧いただきます。外形課税が入った場合の課税の仕組みでございますが、法人事業税額は、所得基準、いま言った半分の部分の税額と、残り半分の外形基準の税額を足したものになるわけでございます。
そこで、課税標準でございますが、所得基準による課税については現在と全く同じとお考えください。税率が半分になるということでございます。
[2]の外形基準による課税でございますが、法人の事業活動の規模をあらわすものとして、「事業規模額」というものを課税標準にしたいと思っております。コメ印の資本金1,000万円未満の法人の特例は後ほど申し上げます。
事業規模額の概念ですが、収益配分額にプラス・マイナス単年度損益という考え方でございます。収益配分額については、それぞれ、広義の意味での収益、付加価値をどこに配分したかという局面でとらえまして、働いた者への配分として報酬給与額、資金提供者への配分として純支払利子、法人に土地・建物を貸した者への配分として純支払賃借料を足したものを収益配分額といたしております。利子と賃借料に「純」がついているのは、受取利子、受取賃借料を控除するという考え方でございます。
単年度損益というのは、利益剰余または欠損の部分ということで、付加価値を配りすぎれば、ここはマイナスになりますので、その場合には収益配分額から差し引くことにいたしております。この単年度損益という概念は、法人事業税の所得の過年度の繰越欠損金の部分を遮断したものと御理解いただきたいと思います。当該年度の損益ということでございます。
それから、標準税率でございます。所得基準は9.6%を4.8%にいたしております。少額部分の軽減税率についてもそれぞれ半分にいたしております。外形基準は1.6%でございますが、資本金1億円以下の中小法人については1.0%という税率にいたしたいと思います。
なお、所得基準に外形基準が入ってくるわけでございますけれども、いきなり半分導入せずに、最初の3年間は4分の1導入するということで激変緩和を図る考え方でございます。その場合には、所得基準の税率はいまの4分の3、外形基準については、2分の1入れた場合の半分で、0.8%ないし0.5%ということで考えております。
3ページを御覧いただきたいと思います。改革に当たって配慮した事項でございます。当政府税制調査会の中期答申等におきましても、外形標準課税の実現に当たって配慮する事項がいろいろございました。そうした宿題にこの部分でお答えしているつもりでございます。
まず中小法人への配慮でございますが、先ほど申し上げましたように、税率を軽減いたしております。それから、資本金1,000万円未満の法人については、納税事務等にも配慮いたしまして、事業規模額を算定することなく、簡易事業規模額を選択できる。したがって、実際に計算して簡易事業規模額よりも低ければ、そちらを選べますし、簡易額が低ければ簡易額を選べるということでございます。なお、簡易事業規模額は480万円と設定しておりまして、中小法人は1%でございますので、税額にして年4.8万円、月にすると4,000円ぐらいになるわけでございます。
次に、雇用への配慮ということで「雇用安定控除」という仕組みを導入いたしております。これは、利子、賃借料、報酬給与を足したものに占める報酬給与額の割合が85%を超えた場合には、雇用安定控除として収益配分額から一定額を控除することにいたしております。なお、この85%の基準率は中小法人にあっては70%といたしたいと思っております。控除する額は、報酬給与額額から、収益配分額に85%(中小は70%)を掛けたものが引かれる。後ほど参考資料で御説明しますが、そういう考え方でございます。
次に、企業再建。赤字の企業、ベンチャー企業への配慮でございます。赤字が3年以上継続する法人、再建等に取り組む法人と、創業5年以内の赤字ベンチャー企業のために、経営が軌道に乗ってから納税いただくように新しい徴収猶予制度を創設いたしております。一定の要件のもとで、さらに3年延長ということで、最長で6年間徴収猶予いたしまして、それからお支払いいただくという仕組みを入れております。猶予した場合の延滞金、利子に相当するものについては減免をするということでございます。
税負担変動の緩和につきましては、先ほど言いました、最初の3年間は4分の1で導入するということで対応したいと思っております。
適用期日等は、13年度税制改正において制度化したいと考えておりまして、周知期間を置きまして、平成14年4月1日以降に開始する事業年度から適用するということでございます。中小法人につきましては何ぶん数が多く、相談体制等の構築にも時間が多少かかりますので、平成16年4月1日以降に開始する事業年度から適用いたしたいと思っております。
なお、その下のマルでございますが、電気、ガス、保険の収入金額課税法人については現行制度を継続いたしたいと思います。すでに外形化されているということでございます。
公益法人等及び特別法人につきましては、特殊法人等改革という動きがございまして、この状況を踏まえながら、外形標準課税のあり方等について速やかに検討して、結論を得て、実施するということでございます。
次に、4ページをごらんいただきます。税収に与える効果でございます。本改革による最終的な効果を、どの時点でやるか難しいのですが、平成12年度の地方財政計画、つまり現在の景気状況をもとに推計いたしますと、平成12年度の地方財政規模は3.65兆円ぐらいでございますが、外形が全部、中小法人も含めて2分の1が入り切ったという前提で計算して約4.0兆円と考えております。
なお、平成元年度から10年度の実績は、単純に平均すると5兆円になりますが、いま税率が引き下げられておりますので、その低い税率で換算して物価補正した平均は4.4兆円でございます。これと4兆円の見込みとの関係は、いまの景気では、半分残っている所得課税部分がまだ相当低いのですが、これが過去10年間の平均並みの所得水準に上がってまいりますと、そちらも上がりますので、4.4兆円になります。その0.4兆円のすき間は所得基準の部分の差でございます。
次に7番、「地方税法第72条の19」、東京都の銀行に対する外形標準課税の根拠になっている条文でございます。これは、所得を課税標準にしているものを対象にして、都道府県が外形課税できるということでございますので、事業規模による外形標準課税が実施された段階で、そうした法人については、その実施以降は本特例の適用対象外となるように改正いたしたいと思っております。
次に8番でございます。これは、内容というより御説明でございますが、本改革によって外形標準課税が導入される部分は、下の棒グラフで見ていただきますように、法人所得課税のうちのごく一部でございます。残りの大部分については、引き続き3分の1程度の黒字法人が負担するということでございまして、所得課税の中で特に法人事業税については、都道府県のサービスに対する対価的な性格がある、その税の半分ぐらいを外形標準化したいということでございます。
総6-3-2は、いまの説明の内容を文章で書いております。
総6-3-3は、ただいまの制度の詳細を説明したものでございますので、御覧いただければと思います。
残りの時間で総6-4の御説明をさせていただきます。これは「外形標準課税関係資料」でございます。1ページは、税の性格でございます。何度も申し上げておりますが、応益的な税ということで御理解いただきたいと思います。
2ページでございます。現行の法人事業税は、先ほど言いました一部の収入金額課税を除いて、所得にかかっているというのが(3)でございます。一番下に「注」がございますが、平成9年度までは税率が12%でございました。9年度と申しましても、3月決算法人は、10年度になって県に入りますので、税収ベースでは平成10年度まで、平均した10年間すべて12%でございます。平成10年度、11年度の2段階で引き下げられまして、いまは9.6%が基準税率になっておりますので、過去の税収については、基本的に12分の9.6 に圧縮して平均したものに物価補正を掛けて4.4兆円と、先ほどの数字になるわけでございます。
3ページは省略いたします。
4ページ、改革の緊急性でございます。一つには、7月の中期答申でも、「外形標準課税について、景気の状況等を踏まえつつ、早期に導入を図ることが必要です」というふうに御指摘をいただいております。
5ページ、地方団体からも強い要望が何度も出されております。
6ページは、東京都等のお話もあったと思いますが、外形標準課税に対する意識が高まっていることの一つの材料として参考に示させていただきました。7月に神奈川県が、県内在住の20歳以上の男女3,000人を対象に行ったアンケートで、いろいろな税について幅広く聞いております。その中に2項目、外形の話が入っておりまして、「法人事業税が非常に不安定な税目であることをご存じでしたか」というのは、約7割、68%の方が「知っていた」という答えでございます。「事業税について、赤字、黒字であるかにかかわらず、規模に対して応分の負担をするという外形標準課税を入れるべきと思うか」と。「中小への配慮があれば」「激変緩和措置があれば」という条件付きも含めますと、68.3%の方が賛成しています。これは、調べたほうもやや驚くほど意識が高まっているという結果だと思います。
7ページは、「会社形態を変更する場合」という表題になっておりますが、企業形態の多様化が非常に進んでおります。左側でごらんいただきますと、現在の所得課税の仕組みですと、X県とY県に生産拠点があって、ここで利益が上がっている会社では、これをどう配分するかといいますと、本社のほうで分割基準で分けます。つまり、利益にかかる所得課税を従業員数で案分して両方に納税する。分割基準である程度外形的な分配をしていることになっております。ところが、これがA社とB社と別会社化されて、よくある話でございますが、工場部門が赤字になって、片方が黒字になりますと、分割基準がききませんので、X県には税収が入りますが、Y県の税収は一挙にゼロになります。これが外形であれば、B社のほうも外形標準に応じた課税がなされるということで、最近、会社形態が多様化している中で、私どもとしてはできるだけ早く導入したいわけでございます。
8ページからは、公平性、安定性等、四つの意義が書いてありますが、省略いたしまして、13ページをごらんいただきます。先ほど御説明した、所得と外形の足し算のイメージを書いたものでございます。税率1.6%、中小は1.0%でございますが、上の表にあるように、二つの結果を足すということでございます。その結果、黒字A社の場合は、所得が全然変わらないという前提でございますが、所得にかかる税負担が4分の3を経て半分になる、そのかわり外形の負担が出てくるということで、この図では結果として税が減ります。B社の場合は、もともと所得がマイナスないしはゼロでありますので、外形部分だけをご負担いただく形で純増になるということでございます。
実例の会社を基にして、やや数字は丸めてありますが、それをやったのが14、15ページでございます。A社は、資本金10億円、従業員800人、売上高800億円程度、42億円の所得があるということで、報酬給与額その他を伺って計算すると、所得分が半分の2億円、事業規模額分が1.4億円で、3.4億円になるという例でございます。
15ページのB社は、2億円ほどの単年度損益が出ております。この場合には、所得課税はゼロで、外形導入後もこれはゼロでございます。一方、報酬給与等が22億円あるということで、これを足しますが、その際に単年度の損益の2億円は控除しております。こういう計算をいたしますと、約3,000万円ほどの新たな税負担が出てくるわけでございます。
16ページは、報酬給与額とはどんなものかということを整理したものでございます。基本的には、報酬、給料、賃金、賞与、退職給与引当金、企業年金拠出金で、いずれも法人税で損金算入されたものに限るという考え方でございます。
先ほどの4枚物には入っておりませんでしたので、17ページで補足して説明いたします。労働者派遣契約につきましては、派遣先においてその指揮命令系統のもとで生産に従事するということで、付加価値も派遣先で生んでおります。したがいまして、下の図にありますように、派遣を受けた法人のほうで一定の割合を給与に算入しようということで、契約料の75%-これは派遣会社の実態調査に基づきまして、純粋な給与、ここでいう報酬給与に当たるものが75%ぐらいであろうということで設定した率でございますが、この額を足し込んでいただきたい。逆に派遣元の法人につきましては、派遣した職員の給与費から、みなし派遣給与、つまり派遣契約料の75%を控除する。実際の付加価値の生産場所に応じた課税関係になるようにということで考えております。
18、19ページは、利子と賃借料がどんなものかということで、省略いたしますが、いずれにしても受取を引くというのがこの二つの考え方でございます。
20ページは、事業規模額の中立性です。下の図のように四つを足すものでございますから、報酬給与額を増やすと、損益がその分、減る、あるいは、報酬給与額を減らすと、その分、損益が増えるという計算で、全体のものは変わらない。所得の課税と違って、単年度損益を調整して、税負担を減らそうというインセンティブは減少するであろうということでございます。
21ページは雇用安定控除の仕組みでございます。中小法人は70%の基準率が適用されますが、例えば収益配分額が130の中で「5・5」と極端な例にしていますが、報酬給与額が120と非常にウエートが高い場合、130の70%は91でございます。これを120が超えておりますので、この超えている29の部分が控除されるということで、何もしないと140の課税標準になりますが、111 になるという考えでございます。
22ページは、これも単純な比較で恐縮でございますが、X社は、全体の事業活動の規模が150、損益が10、報酬給与額が125、Y社は、損益が30、報酬給与額が105 と、基本的には同じような価値を生産している企業であることを前提に計算しますと、控除の式がありますが、X社は144 、Y社は147 の規模額になる。すなわち、雇用や給与水準を維持すれば税負担がむしろ抑制される仕組みになるというのが、この控除の効果でございます。
次に23ページ、税率設定の考え方でございます。先ほど4.4兆円という平均税収を申し上げましたが、全体の四角が4.4兆円とお考えいただきまして、今回の改革の対象外になる、所得課税以外の収入金課税法人、特別法人を除きますと、残りが3.9兆円になります。この半分の額をそれぞれ外形化する。1億円超の企業についてその半分の1.2兆円を外形化することによって、1.6%でこの額になる。中小につきましては、0.8兆円というベースを外形化することによって、1.0%の税率を設定したということであります。この基本的な考え方は、大法人と中小法人を別に計算しまして、結果として大法人から中小法人に負担の移動が起こらないように、それぞれ別々に計算した税率であります。なお、1,000万円未満につきましては簡易な特例を設けております。
24ページは簡易の特例で、省略いたします。
25ページは、東京・大阪の条例との関係でございます。これも省略いたしますが、先ほど申し上げましたように、72条の19の適用対象外になるようにするということでございますので、一番下にありますように、東京・大阪の条例の対象からほとんどの部分がその段階ではずれてくるということでございます。
26ページは、重なりますので省略いたします。
27ページは、法人事業税の負担のイメージということで、法人はいままでは、利益の出た年にまとめて負担している、赤字法人も負担しているわけです。それが、点線の所得課税でございますが、赤字の年はゼロということが、外形が入ってきますと、儲かった年の負担が薄くなり、その代わり利益が出ない年も外形部分を薄く負担していただくということで、かなり平準化されるイメージではないかと考えております。
28ページは、財政状況でございます。端的に事業税との関係で見ております。左側は、元年を100として、事業税収が非常に低迷している中で、仕事は増えますので、県債残高はこの10年間で2.5倍に増えております。右側は、仕事は4割増、税収は横ばいからややマイナス、事業税収は非常に減っているということで、大変苦労しております。
その中でいろいろ行政改革もやっておりまして、29ページ、公務員数も5年連続減ってきて、約5万人減っております。特に、直近の11年4月現在では1万7,000人ほど減りまして、過去最大の減少数になっております。
なお、参考にありますよう、介護保険等でいろいろな福祉の仕事が増えまして、平成10、11年度で、地財ベースではこちらの増員が9,000もある中で毎年努力しているということでございます。給与水準も毎年着実に落ちてきております。
最後に、30ページ、行政改革の主な取組み、都道府県がどんなことをしているか。税収がふるわない中で、東京、神奈川の例を挙げておりますが、23都道府県において給与の抑制が実施されております。その他、定員管理の適正化、組織の見直し等は全府県で行っております。
下にありますように、全都道府県において、年度内に定員管理の数値目標を設定・公表した行政改革大綱を策定しておりますので、これから強力に推進されるであろうということでございます。サービスは切れません。安定的な行政サービスを提供しながら、一生懸命やっていることを御理解いただきたいと思います。
以上が説明でございますが、いずれにいたしましても、現在の所得課税方式と、今回御提案しております事業の規模に応じて薄く広く負担する方式と、どちらがより公平であるかという観点から、ぜひ御審議を賜りたいと思います。
〇石会長
ありがとうございました。
いま、おふたりの課長から御説明をいただきましたが、法人課税関係のところを二つに分けて議論したいと思います。
一つは、主として国税に関係ありますが、連結納税、NPO法人(寄附金税制も含みます)、特別法人税について、最初、20分ほど時間をとりまして、これで議論をひとまず完結して、そのあと、自治省側から御説明がありました外形課税のほうに入りたいと思います。
ただ、中途で御退席される方もいらっしゃると思いますから、必ずしもこの仕切りにこだわらず、時間に合わせて御発言いただけたらと思います。原則として、最初に国税関係の法人税制のほうをいきましょう。
どなたでも、御質問、御意見をどうぞ。これは年度改正でありますから、積極的にいろいろなご意見を賜りたいと思います。
村上さん。
〇村上特別委員
文化・芸術税制、NPOの場合は非営利団体を対象にしているということですが、私がこの前申し上げたのは、営利団体であっても税制上の措置をとるべきではないか、優遇措置を講ずるべきではないか、という趣旨です。申し上げたいことは、文化とか芸術の国際的な水準を高めていくためにどちらがいいかという議論、これは難しいことですが、NPOといいますか、非営利団体は、地方公共団体の中でたくさん活動をしておられますが、それで十分国際的に通用するような文化・芸術の水準が得られているのかどうか。非営利であってもやっていける、水準が高められるということが本筋ではないかというふうに思いますので、その点での寄附税制をご説明いただければと思います。
〇石会長
池田さん、何かありますか。
〇池田調査課長
寄附する側について見ますと、先ほどもちょっと触れましたけれども、相手が特定公益増進法人でないケースであっても、日本の場合、一般の寄附金という枠が用意されてございます。これは、特定公益増進法人に対する枠に比べると比較的よく使われておりますが、それでも6割程度になっておりまして、まだ多少余裕があるのかなという感じがいたしております。
〇石会長
ほかに、どうぞ。
〇猪瀬委員
前回の基本的な考え方のところでちょっと申し上げようと思って、時間がなかったのですけれども、NPO法人に即関わるということではなく、間接的に関係することで、税調の場合は税金の問題だけを論じることになるのですが、基本的に歳入と歳出の大きな差を考えた場合に、例えば教育改革国民会議のようなところで、18歳になったら、1年間、義務的に働く、ボランティア奉仕をすると。これが、奉仕とか義務という言葉はきつい、戦前の勤労動員を思い浮かべると、そういうふうな反対意見があるわけですが、それはそれとして、考え方としては、介護保険の事業規模が4兆3,000億円くらいある。こういうものに対して、ただ税金を集めるだけでは解決していかないのではないか。言い方としては、勤労動員みたいな言い方をすると非常に反発を招くのですが、「教育の実習」みたいな形で表現していけば……。
つまり、歳入ということで税金と考えては限界があるわけで、考え方を少し変えていくことも必要だろうと思うわけです。これは前回言うべきことだったのですが、お金のことをやっていくと限界が出てくるというのはよくわかるので、そういう考え方も入れながら、税調だけではなくて、全体でそういう方向性が見出せるようなことがあっていいのではないか。
例えば、勤労動員というのが徴兵制につながるという言い方が反対意見の中にありますけれども、ドイツはむしろ徴兵制が崩壊しかけていて、その過程で、13万人ぐらいの19歳ぐらいの人たちが、老人介護の現場とか、森林保護とか、そういうところへ行っているわけです。そういうことを月3万円ぐらいの給料でやっているわけです。
「公」というものが、全部税金で賄うという考え方ではなくて、公というものがNPOとかそういう形で移行していくと。ある部分で行政だけが公を担うのではなくて、違う形で公を担っていくことを考え方として入れていかないと、いくらたっても税収は追いつかないということが、一つ言いたいことであります。これは前回言うべきことだったのですが。
それから、もう一つだけ。これも直接NPOではないのですけれども、いろいろ問題になっている社団・財団法人で、国の補助金が4,000億円ぐらい入っています。こういったお金の使い方をしていると……。これも歳出に関することですけれども、NPOのような形で肩代わりしていけるところはできるだけ肩代わりしてやっていかないと、税収の論議をしていっても非常にむなしい感じがするわけです。
〇石会長
おそらく前段のほうは、基本的な意見を述べるときに吸収してかけるというふうなことだろうと思います。
ほかに、どうぞ。
〇笹森委員
実際的なNPOの活動の育成に向けて申し上げたいと思います。NPO法案ができまして、認可の手続き、それの育成・運営、こういうものをどう手助けするかということで、堀田力さんや小山内美江子さんと一緒に「NPO事業サポートセンター」というのを設立しました。先ほど報告のあったNPO法人の6分の1ぐらいをカバーしているのですが、たしかに一律には扱えないという状況にはありますけれども、極めて公益性、ボランティア性が高いという状況になっております。公益性が認められる要件の見方というのは、設定するのは難しいのかもしれませんが、一定要件が満たされれば、NPOへの寄附金については、特定公益増進法人への寄附金と同等の扱いをするべきではないかと思っております。要するに、寄附金控除の対象としていただきたい。
それから、個人所得税の問題について、一定金額の範囲内で税額の20%までを控除できるという制度も併せてつくるべきではないか。現実には、法人ができて活動している中で、最後の画竜点睛を欠いているのはこの税の取扱いというのが、実際に携わっている人たちの大きな意見でありますので、ぜひ御配慮いただきたいと思います。
〇石会長
笹森さん、一定の基準をどこが認めたらいいですか。
〇笹森委員
認めるところは、いまの関係で言えば、「認可をしているところ」ということになるでしょうね。
〇石会長
税が絡んでいてもですか。
〇笹森委員
はい。
〇石会長
わかりました。どうぞ、ほかに。大田さん。
〇大田委員
いまの特定公益増進法人というのはその決められ方があまり透明ではなくて、税制上の優遇という観点から等しい条件になっているかどうか、はっきりしないわけですね。各省庁が決めていますから、申請が働くという話もありますし、私は、税制上の優遇措置を与えるのはそれはそれで、各省庁ではなくて、やはり税の優遇として1カ所で決めるべきだと思います。一定の基準をそこでつくって優遇措置を与えるということではないかと思います。
そのときに、非営利法人全体に言えるのですけれども、税制上の優遇措置を得ながら情報開示が不十分なところが非常に多くて、学校法人もそうなんですけれど、「情報開示なくして税の優遇なし」というのは原則つくっておいたほうがいいと思います。
〇石会長
その一定の基準というのは、国税庁とか、あるいは、しかるべき第三者機関を念頭に置いているわけですね。
〇大田委員
そうです。
〇石会長
わかりました。
今井さん、どうぞ。
〇今井委員
ちょっと時間の関係で先に外形標準の問題を申し上げたいと思います。これは、経済五団体よる反対意見ですが、前から、事業活動価値をベースにした外形標準課税は、税制の簡素化への逆行だ、国際競争力や雇用投資活動への影響が大きいという問題、さらには、税務執行上の課題が大きいということから、非常に多くの問題があるので、これは賛成できないという態度を表明しております。
税収の確保のために新たな税制を導入するのであれば、貝原委員のような立派な方がおられて恐縮ですが、その前に地方自治体の側で徹底した歳出削減努力を行って、納税者の納得を得る必要があると思います。拡大した地方行政をそのままにして、このような課税を行うことには賛成できないということでございます。
〔村田大蔵総括政務次官出席〕
〇今井委員
根本的には、近い将来、国と地方を通じた税財政の抜本的改革が必要になると思います。結局、地方交付税の見直しを含めた地方財政の確立、消費税や地方消費税の引上げがその際不可避になる。いまはそのような環境づくりを慎重に進めなければいけないときに、このような問題を持ち出す時期ではないのではないか、こう思っております。
それから、事業税の性格からいきまして、応益課税が望ましいとしましても、法人、個人、あるいは企業規模の大小にかかわらず、受益に応じて薄く広く公平に課税する簡素な税であるべきで、今回の税は公平さを欠いていて、さらに、雇用経済に悪影響があるおそれがあると思っております。
具体的には、大法人に多くの負担をかける不公平な税。それから、仕組みが非常に複雑で、執行面で混乱が起こるのではないか。先ほど御説明がございましたように、課税ベースの大部分を報酬給与額が占めておりまして、これは結局、雇用に悪影響がある。いままで何回も指摘されておりますように、フランスでも、ドイツでも、アメリカでも、こういうのは縮小の方向にある中で、そういう国際的な潮流に逆行するのではないか。同じ付加価値をもとにする課税であっても、消費税の場合には、国際税調整ができるけれども、こういう形では国際税調整はできないという国際競争力上の問題があります。
繰り返しますが、国・地方を通じた税財政の抜本見直しを進めなければいけないというときに、特定の企業、業種に偏重した課税ではなくて、やはり景気の回復による税収の確保をベースにしながら、地方公共団体の再編等の合理化を徹底して、そして歳出削減を行う。それから、地方交付税のあり方を含めた国と地方との間の財源配分の見直しを行う、直間比率の見直しを行う、あるいは、地方消費税の拡充を行う、こういうことをいまは辛抱強く国民に呼びかけて理解を求める時期である、こういうふうに私どもは考えている次第であります。
それから、国税につきまして二つだけ簡単に申し上げます。特別法人税でございます。これは廃止を求めたいのでございますけれども、給付時課税が徹底できるまで廃止が難しいということであれば凍結を継続していただきたい、こういうふうに思います。
それから、このあと説明がありますが、特定事業用資産の買換え特例、これは、企業が事業の再構築を進める上で不可欠な措置でありますので、しばらく延長していただきたい、この二点でございます。ありがとうございました。
〇石会長
外形に関しましては後ほど時間を別途とりますので、退席される方はご発言いただいて結構でございますが、ほかの点で……。
水野さん、どうぞ。
〇水野(忠)委員
私も、これで退席しなければならないので、いまお話しさせていただきます。半分は質問ですが、いわゆるNPOの問題です。もともと法人に対する課税はどうであったかといいますと、宗教法人が社会的に非常に問題を起こしまして、その当時、公益法人等に対する規制といいますか、管理をもっとしっかりしろ、主務官庁がだらしない、というのが世論であったわけですね。税制面から見ると、収益事業にだけ課税する、この収益事業は一体何だ、と。お寺であろうと利子は利子ではないかという形で、むしろ公益法人等の課税のあり方を見直す方向で議論があったと思うのですが、阪神大震災を契機に、今度はNPOという問題になりまして、逆に、ボランティア団体についてはできるだけ認定も緩く、課税も緩くという形になってまいりました。私の頭の中では、この二つの流れを一体どういうふうに調整すればいいのだろうかという疑問があるわけです。
一つ、唐突で申し訳ないのですが、国税、地方税両方御説明いただいて、岡崎さんの説明で地方税関係の2ページです。大きな質問ではないのですけれども、この意味がちょっと不明なので。公益団体がどこまで入るかというと、[3]のところまで入ってくるということで、その中に医療法人があります。非常に奇妙な話ですが、先ほどから議論がなされていますように、公益性の認定の基準は難しい。学校法人、宗教法人までは公益法人等に入るのですが、いわゆる医療という、たしかに公益を追求している法人は法人税の上の公益法人等には入っていないのです。これはどういう理由かわかりませんし、社会的にどう認識されているのかわからないのですが……。にもかかわらず、これは経済企画庁の国民生活白書ですが、そこでは公益団体という形に入れているわけです。この食い違いはどういうふうに御説明できるのでしょうか。ちょっと伺えますでしょうか。
〇岡崎府県税課長
これは、ここにありますように、まさに出典が国民生活白書そのものでございまして、たまたまこういうふうに整理されているものがあるので参考までに供したということでございます。ただ、お説のように、医療法人は公益法人の範疇に入れておらないのが通常の取扱いだと思いますが、これはなべてあって、アメリカとかこういう範囲がありましたので参考に供しましたけれども、白書のほうでなぜこういう線引きをしているかというのは、私ども、確認させていただきたいと思います。恐縮です。
〇本間委員
NPO法人に対する税制の問題ですけれども、いま水野委員がご指摘のとおり、私がNPOに関心を持ちましたのは、85年の中曽根税制改革で売上税導入のときに、公益法人は“公悪法人”だということで、税を強化しろと、こういうような議論がございました。
そのときに私は、実際どうなっているかということを、アメリカ、ヨーロッパ、あるいは日本で調べてみましたが、いいものもあるし、悪いものもある、こういう中でこれを一律に扱うことはいかがなものかということを感じまして、私は、善玉に対しては優遇措置を与えるべきだ、こういうスタンスでNPOに対する活動をずっとしてきたわけであります。このNPO税制の問題を、NPOという狭義の非営利団体だけに限定して議論するのか、私は「制度化されたNPO」という言い方をしておりますけれども、財団法人等も含めて、既存の枠組みを整合的にもう一度ここで洗い直すのかということが、基本的な考えの整理の第一段階としてあるべきであろうと。
それをやりませんと、いままでのランキングの中で、NPOがまたそれのランキングの中に入り込み、しかも、そのNPOを仕分けをするというようなことになりますと、NPOの相撲番付みたいな話になってきまして、暗黙のうちに序列付けをしている。共通の基準と共通の税制というコンセプトの中で、もう一度全体を洗い直す必要があるのではないか。その意味で、つぎはぎだらけのNPO税制だけにはしていただきたくない。税調の中で小委員会的なものをつくって、公益法人を、NPOも含めてトータルで議論する場をぜひ設けていただきたいというのが私の意見であります。
以上です。
〇石会長
ほかにございますか。ぼつぼつ時間も押してきましたので、外形課税のほうに入っていただいても結構です。
では、松田さん、どうぞ。
〇松田特別委員
連結納税制度ですけれども、いま現在は、いつから入れるかというのが、14年4月からというのが暗黙の了解のようではありますけれども、公式には全く決まっていない。もう時期も時期ですので、14年4月から入れることを方向性としてはっきり出すべきではないかというのが私の意見であります。
〇石会長
水野さん、御退席になりましたが、私、前の小委員長として一つ申し上げておきます。まさにできればと思いますけれども、作業のボリュームと事務局の事務量のこなし方。ですから、もうちょっと見ないとわからないのではないかと思います。いま、やっと会社分割が終わったところで、いま連結に飛び込んで、すぐさまどれだけこなせるか。つまり、会社分割のほうが、法制化の中でかなり頑張らなければいけません。いずれその時期が来ようかと思いますが、現段階において、ターゲットとして言うというぐらいの軽い気持ちならという気もしますが、ここで確約はできないのではないかと思います。
事務局はいまの点はどうですか。
〇尾原主税局長
いま、12人からなる特別チームでございますが、特別な部屋をつくりまして、土日返上で分割の作業をやらせてもらっております。政省令がございますので、法律でいま手一杯ですが、法律ができ上がりますとまた政省令ということになりまして、おそらく3月まではそれに手がかかる。あと、通達をどうするかという問題がある。我々は、そのあとにマンパワーを連結のほうに投入していきたいと思っております。いま、何を検討していかなければならないかという問題点の項目までは挙げさせていただきましたが、作業をやって、どこにどういう問題があるか、まだ見当がついていない段階でございます。我々、なるべく早く入れたいということでこれから作業はいたしますけれども、その日を、「そこまで絶対大丈夫か」と言われますと、いささか自信のないところでございます。
〇松田特別委員
企業のほうは待ったなしで再構築を進めているわけですね。税制もあずかって大いに関係のある分野ですので、作業が大変だというのは、それを言ってしまうとおしまいのような部分が相当あるのではないかと私は思います。もう少し明確に導入時期を出したほうが企業の再編がやりやすいのではないか。むしろそれは非常に重要なことではないかということを再度言わせていただいて、意見とさせていただきます。
〇石会長
松尾さん、どうぞ。
〇松尾委員
NPO関係で一言ですが、先ほどの御説明ですと、NPO法人もいろいろあるんですね。玉石混淆ということ、たしかにそうだと思います。税制上の優遇措置を与える場合には、きちんとした仕分けが必要になるのは当然だと思います。この面について中期答申は非常にしっかり書いてあると思います。「NPO法人に関する税制上の措置については、その実態を見極めた上で相当の公益性を担保するため、基準や仕組みをどうするかを含めて、広範な観点から検討を進めていく必要がある」と言っているわけでありまして、やはりこの中期答申の線に沿って検討するのが必要であろうと思います。
〇石会長
諸井さん。
〇諸井委員
経団連会長が外形標準課税に強く反対されたあと、経済人として違う意見を言うのはいささか気が引けるところがありますが、私も地方分権委員長をすでに5年半ぐらいやっておりまして、この問題にもタッチしてまいりました。私の感じとして、外形標準課税というのは、税収を増やすために考えているのではない、いままで、儲かっている企業だけからしか取らない、儲かっていない企業からは一切取らない、そういう不公平な形になっていたし、そのために、景気の変動によって税収の変動がある。それをなるべく安定化させようという動機になっているわけです。
地方の自治体と企業の関係というのは、自治体がかなりの行政サービスを企業に対して行っている。ほとんど事業税全体を、儲かっている企業だけが負担しているわけだけれども、儲かっていない企業は一切負担していないという形は、基本的に少しおかしいではないかというところからスタートした話で、私は、この理屈は正しいのではないかという気がします。それから、地方の自治体としても、収益によって税収が変動するというのは、地方の行政をやっていく場合に非常にやりにくいわけであります。応益課税の本質ということで、税収を増やすという動機ではないわけですから、これは認めていただけないものかなという感じがします。
それから、今井さんのお話の中で、雇用に対してのかかり方が非常に多いではないかというお話がありました。さっきの説明にあったように、事業税全体の半分はいままでどおりの取り方で取るわけですね。残りの半分のうちの一部は、まだ収益が残っているわけですし、そのほかに利子とか賃貸料も入っているわけですし、雇用にかかる分は一部であると。かつ、雇用の割合が多い企業に対して、特に中小企業に対しては、相当な割掛けをしているわけですから、雇用に対する影響というのは言われるほど大きいものではないのではなかろうかという感じがするわけです。
簡素という面はあるのかもしれませんけれども、あまり中小に偏りすぎてもいかん、大企業に偏りすぎてもいかん、いろいろなことを考えてやっていくとこういう形になるわけでしょうから、私は、今度の案というのは、小委員会でも非常によく検討していただいて大変よくできた案ではないかという感じがいたします。ぜひ、ひとつ採用していただきたいと思います。
ただ、今井さんのお話の中で、国境税調整の問題と国際潮流の問題とあったのですが、これはさっき説明の中にありましたかな。私、聞き漏らしたのかもしれないのですけれども、その辺はちょっと今井さんのお話は違うような気もしないではないのですが、何か説明を補足できたらしてもらいたいのですが。
〇石会長
国境税調整の問題と国際的潮流の二つですね。では、補足的にどうぞ。
〇岡崎府県税課長
国境税調整の問題につきましては、消費税のような消費課税であればたしかに行われるわけですが、法人事業税は現在も企業課税でございますし、外形標準化したあとも企業課税ということでございます。企業に対する直接税につきましては、WTO協定でも、国境税調整はしてはいけないということになっておりますので、これは、現在と同じ扱いで、法人事業税の性格、企業課税の性格がある限りはそういう問題は起こらないと理解しております。
国際的な潮流につきましては、すでにいろいろ御審議をいただきまして、お手元にも配付されていますが、中期答申の203 ページ以降に、アメリカ、ドイツ、フランスの例を引いて書かれておりますので、特に提出いたしませんでした。この中で、例えば、アメリカのミシガン州で下げているのは、非常に景気がいいことに伴う段階的な減税なのだということでございます。したがいまして法律上も、財政調整基金が一定の額を下回れば引下げ措置は停止する仕組みになっている、そういう減税策だということ。ドイツにおきましても、東ドイツとの関係で営業資本税というのを、向こうには資本に課税されていないものですから、廃止したということ。フランスについては、失業問題に対するワークシェアリングとして週35時間労働制の導入をすることを背景に給与課税部分は廃止したとか、そういうことがすべて書いてございます。
それぞれの国にそれぞれの事情があって、外形基準について一部見直しが行われております。それから、外形課税がすでに地方の基幹税としてある国の話でございまして、それを、少なくとも所得課税にみなしている国はないというふうに考えておりまして、むしろ薄く広く負担することこそ国際的な潮流ではないかと考えております。
〇石会長
牧野さん、どうぞ。
〇牧野特別委員
この外形標準ですけれども、諸井さんの御意見に対してちょっと申し訳ないのですが、私はこれは賛成いたしかねます。法人が、生産活動なり事業活動を地方でやっていて地方からサービスを受けている、それに対する応益課税であるべきだ、それに対して赤字法人はほとんど払っていないではないか、不公平ではないか、というような議論は、法人事業税に限ってはそういうことが言えるのかもしれません。一見もっともらしく見えますけれども、法人事業税というのは法人が地方に納めている税金のごく一部であって、法人としては、当然のことながら、固定資産税とかいろいろな税金を払っているわけであります。したがって、法人の地方税負担全体の中で考えますと、言われているような実態が果たして本当にそうなのかどうかということにまず疑問をおぼえます。
ざっと見てみましても、固定資産税とかそういったもの、いわゆる所得外、一種の外形標準みたいなものだと思いますけれども、それから、法人事業税についても、ごくわずかではありますけれども、均等割というのがあります。いわゆる所得にかかるものと所得にかからないものを、法人の地方に納めている税を見ますと、半分ぐらいになるのではないかというふうに思います。固定資産税とかそういったものは、市町村税であって都道府県税ではないというのはそのとおりですけれども、それは取るほうの論理でありまして、事業活動をしている法人から見れば、いずれにしろ地方税として納めているわけであります。
それから、応益と行政サービスといいますけれども、市町村と都道府県とどういうようなサービスを企業にしているのか、どういう割合になっているのかという問題もあり得るのではないかと思います。したがって、一般に言われているように、赤字法人がサービスを受けながら払っていないというのは、法人の地方税負担全体の中から見ると、果たしてそういうことが本当に言えるのかどうかという疑問もあります。
前回、法人事業税は所得にかかっているがゆえに大都市が有利であって、地方は必ずしもそうではないのだという議論があったように思います。つまり、大都市には本社があって、そこに集中しているという議論があったかと思います。これは、先ほど自治省から説明もありましたように、事業分割をしている、つまり、ある企業が全国に展開していて、その本社に属するところに税金を納めているわけではなくて、製造業の場合は従業員で各地に分割して払っているわけです。それから、たしかに大都市に事業税が多く入っていることは事実でありますけれども、これは、東海道メガロポリスといいますか、大都市に事業活動が集中していることであって、これは税制のせいではないということでありましょう。
そういうことから考えますと、赤字法人が云々、不公平である、応益課税云々というのは、果たしてそれほど強く言えるのかどうか。法人の納めている地方税全体から見ると言えるのかどうか、ということを一つ指摘しておきたいと思います。
私は、合理的な外形標準がもしあるならば必ずしも反対というわけではありませんけれども、ここで説明を提起されている案は、いままでいろいろ議論がありましたので、あえて多くはつけ加えませんけれども、経済に対して中立的でないと。税制の大事な点は、一つは、経済活動に対して中立的であることだろうと思います。所得に対してかかるというのは経済活動に対しては中立的だとは思いますけれども、この案によりますと、例えば3年間、4分の1にするとか、賃金の控除を設けるとか、いろいろな配慮がなされているようですが、いずれにいたしましても、賃金にもっぱら課税されるという実態は変わらないわけであります。
そうなりますと、これは増税になるとかどうとかいうことではなくて、特定の産業が割りを食う、経済に中立的でないところに非常に大きな問題があると思います。これは、それぞれの産業についていろいろ計算をしてみればすぐに出てくることであろうと思いますけれども、非常に多くの税金を納めているところが得になると。そういう企業はこれがいいというかもしれませんが、そういう問題ではなくて、特定の産業企業、あるいは特定の事業活動が不利になる税制は非常に問題であると思います。
特にこれから、IT化、研究開発とか、製造業などはそういうところに非常に投資をしていくわけです。これは人件費のかたまりでありますから、ここに税金がかけられるということは、公益事業はこの制度が適用されないようですけれども、これと製造業とのアンバランス、それから金融業とのアンバランスというように、そこでの新たな不公平が生じてくると思います。
三つ目は、御指摘がありましたので繰り返しませんが、課税ベースの確定が非常に難しくなるのではないか。派遣についてはいろいろな配慮をするとか、考えられてはおりますけれども、例えば請負とか、これは全部委託契約にしたらどうかとか、それを一々確定する。あるいは賃金といっても、フリンジ・ベネフィットがどうだとか、ストック・オプションがどうだとか、そういう細かいことは別にして、これから逃れようとする企業が出てくる。そうすると、それを確定するのは非常に厄介になってくると思います。
私は関係しておりませんけれども、中期答申にも、消費税の免税点の問題とか、いろいろな問題を今後適正化していくということが言われているわけです。そういった中で、これから、課税をされる主体とのいろいろな厄介な問題が生じてくるのではないか。そういうときに、もう一つこういう複雑な厄介な問題が、課税の確定、あるいは徴税に関して起こってくるのではないか、そこは非常にマイナスではないかと思います。いずれにいたしましても、経済に中立的でないというところが非常に問題だろうと思います。ただし、増税でないにしても、現在の所得にもっぱらかかる法人事業税というのは年度間のフラクチュエーションがある、最近、これが非常に問題だということはある程度理解しなければいけない問題だと思います。
ただ、この問題に対しては、さっき申し上げましたように、法人事業税にはすでに均等割というのがあるわけです。この均等割のウエートを上げていくとか、赤字法人でも、単年度の赤字法人よりも、累積の赤がかぶせられていることが最近非常に問題になっているわけです。この累積の赤字はバブルの後遺症の処理から出てきていると思いますけれども、これの繰越しに一定の制限をすることによって、所得課税から生ずるフラクチュエーションの問題には対応する、そういう考慮はする必要があるのかなという感じはいたします。
さらにもう一点申し上げたいのですけれども、地方分権が進む中で、地方の税収を強化していくことは非常に大事だろうと思います。それについては何ら反対するものではありません。したがって、総合的な検討の結果、法人に対して増税にしてはいかんということを頭から否定しているわけではありません。結果としてそういうことはあるべしと思います。
ただ、この問題を議論するに当たっては、当然のことながら、地方の歳出の問題、地方自治体の制度の問題といったことを総合的に検討する必要がありますし、税制に関しても、法人関係の税、消費関係の税、個人所得税、そのバランスの適正化はどうかといったような総合的な検討の中で出てくる問題であろうと思います。この外形標準の問題は、前回も御質問したときに明確なお答えをいただいておりますけれども、決して増税をねらったものではない、それはそうだと思いますけれども、だからといってこれがいいということではない。かつ、地方に関して、今後、全体として増税が必要だということも必ずしも私は頭から否定するものではありませんけれども、その場合には、総合的な税制全体、あるいは歳出、自治体のあり方といった問題も含めて総合的な検討が必要であろうということであります。
〇猪瀬委員
牧野さんにちょっと質問ですけれども、通産省は前に外形標準課税に賛成していましたよね。情勢判断で変わるのはいいのですけれども、論理としてどこが変わったのかわからないので、説明していただきたいのですが。
〇牧野特別委員
私は、いま、通産省ではありませんし、通産省が過去に外形標準課税に賛成したということも私は承知しておりません。
〇猪瀬委員
外形標準課税に賛成した意見を出しています。
〇牧野特別委員
そうですか。私はそれは承知いたしておりません。
〇猪瀬委員
論理的にどうして変わったのかというのがわからないので。
〇牧野特別委員
少なくとも私は承知しておりません。すみません、通産省にお聞きいただきたいと思います。
〇石会長
しかるべきルートからその話は整理しましょう。
〇松本委員
NPO税制関係で、町村の立場で例を挙げながら申し上げたいと思います。実は、私の町では「ボランティア連絡協議会」というのを設置しています。人口が過疎になりまして、9,000人近くになったわけですが、町民の3分の1に当たる3,400人がボランティア関係で登録しております。地域ぐるみのボランティア活動が進められているのではないかと思います。また、登録ボランティアは、身障者を町の祭りに御招待して、そのお手伝いや、老人ホーム訪問など、活発な活動を行っております。町としても、地域福祉基金の運用益を町の社会福祉協議会を通じながら費用等に支出しているわけですが、今後とも、NPO、ボランティア活動に対して地域に根ざした支援ということで実施していくつもりでございます。
それから、途中で退席しますから、外形まで触れさせていただきます。町村にとりましても、外形標準課税の導入につきましては、都道府県の税収の安定化、町村にいたしましては県と車の両輪であるわけでございます。そういうことで活動をしているわけでございます。地方6団体挙げて、平成13年度税制改正に向かって強く要望しているわけでございます。このたび公表されました自治省案をベースに早期に実施していただきたい、そういうふうに町村では思っております。
それと、先ほどから地方交付税関係が出てきたりして、地方には本当に厳しい意見等が出てきているわけですが、地方団体も行革大綱を何回もつくりながらやってきております。効率化を目指しながらやっているわけでございます。そういうことで地方税の充実を兼ね備えて、国庫負担金、補助金、そういうことも絡めながら地方交付税の論議をしていただきたいと思います。以上です。
〇石会長
佐野さん。
〇佐野委員
私は、中期税制答申の作成時点から事業型付加価値という外形課税の仕組みには一貫して反対してまいりました。こうやって税率とか数字が入りますと、改めて、反対してきたのが正解だったという思いを新たにしております。これは、いわゆる加算型付加価値と言われる手法であります。つまり、付加価値というものを課税ベースにとろう、こういう基本的な考え方に根ざした方式だろうと理解しているわけですが、付加価値を課税標準に使う、課税の物差し、負担の物差しに使うという考え方自体は、シャウプ勧告のころから、つまり50年前ぐらいからあったわけです。
付加価値を課税標準にした場合、その課税の対象のかなり大きな部分が賃金というものになってしまうこともわかりきっていた話であります。「さて、どうするか」ということで実は税制は悩んできたわけであります。一つの方法として、付加価値分を消費者に転嫁する、企業の外に出してしまうという考え方が現実にとられているわけです。外に出すということは、それだけ賃金への負担が消費者等々に拡散される。それによって産業別、企業別、業種別、あるいは、個々の企業の置かれた状況から中立的な課税であり得るということで、実は、外形標準を課税ベースにとっている方法はほとんどがこの転嫁型でありまして、ヨーロッパの付加価値税も日本の消費税も転嫁型という方式をとってきたわけです。
しかし、今回この案を見ると、転嫁型ではございませんで、企業が内部でかぶるという方式になってきていて、かなり話が違ってくるわけです。つまり、付加価値のかなりの部分、賃金部分にかなりの負担が寄せられる。それを企業の内部で処理していかなければいけない、こういうことになるわけです。これはとりもなおさず、雇用なり研究開発投資への影響は軽視できない、そういう課税の方法になっているわけです。先ほど事務局からも説明がありましたドイツ、フランス等々は、転嫁しないで、企業の中にかぶせる方式をとっているわけですが、これは御承知のように、失敗、見直しを余儀なくされています。したがって、私は、企業の付加価値、わけてもその大部分を占める賃金部分に着目した課税の方式は経済への影響が強すぎるということで、これに賛成するわけにはまいりません。
もう一つ、この資料のところでありますが、先ほど諸井さんの御意見の中で、半分は所得基準で外形部分は半分だという御意見がございました。自治省のつくられた資料を見ると、たしかにそういうイメージはありますが、これはあくまでマクロ的に見た数字であります。税収の推計、税率の設定のために半分ずつにする、こういうことであくまでマクロの数字です。個々の企業で、半分、半分になる企業はおそらくめったにない。例えば、これが赤字法人の場合はどうなのか、利益が薄い法人の場合はどうなのか。ほとんどすべて、あるいは全部が、外形基準になるわけであります。そして、その中の85%が賃金に対して課税される、こういう課税の方式になるわけです。これが賃金、雇用に影響がないと、どうして言い切れるのか。そこら辺の説明が必要ではないかというふうに思います。
この税金というのは、1人に1,000万円払ったら16万円は県庁に払え、1人に500万円払ったら8万円は県庁に払え、こういう税金であります。これが果たして経済的に中立であるかどうか、よくよく考えなければいけない、そういう方式であろうと思います。もちろん私は、赤字法人が3分の2を占め、事業税を負担していないことを放置すると言っているわけではありません。先ほど牧野さんからもあったように、例えば繰越欠損金、赤字の大きな要因、しかも、現在、85兆円の繰越欠損を抱えて、この繰越欠損を入れた場合の所得計算においてしばらく赤字が続く事態は放置できない。ここでも、外形部分の単年度損益からは繰越欠損金を遮断するということでしたが、これだけでも、税の赤字法人への負担の求め方、税収の確保という面から見てずいぶん違うのではないか、とりあえずこういうことをやったらどうか、という考えを持っております。
もう一つ、何人かの方がおっしゃられたように、こういう状況で税収の確保・安定を求めるなら、併せて、地方の財政状況、国と地方の財政システムを根本的に見直さなければいけない。それを抜きにして、ただ税収が増えるからとか、都道府県の財政が困っているからということで、こういう新しい方式を持ち出すのは順番が逆転というか、これだけ独走している、そんな感じがいたします。私は、赤字法人課税問題というのは、国の法人税も含めて、なぜこんなに赤字法人が多いのか、なぜこれだけの赤字法人が放置されているのか、制度上、執行上、改めて検討していくべき時期ではないかと思っております。
〇石会長
貝原さん、どうぞ。
〇貝原委員
法人事業税の外形課税ということになりますと、当事者、徴税側としては私だけだと思いますので、ぜひ発言をさせていただきたいと思います。
今井委員がおっしゃいましたように、地方交付税の問題、地方消費税の問題、さらには地方行革の問題等々、議論をしなければならない時期にあることは、地方分権が具体的に進められる中にあって大切なことだし、ぜひやらなければいけないことだと思います。
ただ、現実の姿を見ますと、地方自治体が、国・地方を通ずる行政サービスの7割近い部分を分担しながら、税収入が35%程度だという現実はいかにも問題がありはしないか。国から地方へ財源移転がなされているわけですが、そのことによって国が地方の行政をコントロールするという現実の姿があります。地方行財政について、申し上げましたようないろいろな検討はしなければいけませんけれども、法人事業税の問題は、それができないとやれないという課題ではないのではないか。
現に47都道府県がありますけれども、財源不足団体だということで財政調整で地方交付税をもらっているのが46団体あるわけです。東京都のみが自前でやれるという財政、税制構造になっております。地方分権が進むときには、いろいろ議論はありましょうけれども、地方税源を充実していく方向になっていくべきだということは私は当然だと思います。したがいまして、それができなければこの問題は議論すべきではない、ということにはならないのではないかということを一点申し上げたいと思います。
第2点としまして、公平性の問題、複雑性の問題、国際的な潮流の問題、中立性の問題について種々議論がありました。これは長い議論の中で、7月の中期答申の中で、外形標準課税を導入すべきだと。「景気の状況を見ながら」という前提はついていますけれども、そういう結論が出ているわけであります。
法人負担と地方自治体との関係がどうかという議論がありますが、大ざっぱに言いまして、市町村は、ゴミ処理とか、下水とか、福祉とか、地域住民の生活サービスを主として担当いたしております。そういう市町村ですから、個人も法人も、持っている固定資産税で応益負担をしましょう、そして応能部分の住民税、この両方で構成されているわけです。都道府県のほうは、どちらかといいますと、治安、道路、河川、こういった社会基盤の整備を担当しておりますから、応能部分の住民税と、事業活動を行うことに対する応益負担としての事業税、こういうことで構成されております。そういう全体の中で法人の負担が多いか少ないかという議論こそ、中期答申の中で検討して結論が出されている。そういうことについてぜひご理解をいただきたい。
我々、第一線の県政を担当しておりまして、こういう税の中で3分の2の法人が税負担をしていないことの不公正さは何としても是正すべきではないか。先ほど、神奈川県の住民意識調査が自治省から出ていましたけれども、我々も現実に税制を担当しておりまして、この不公平さについての意見はたびたび聞くことであります。たしかに経済団体は中央の団体から一斉にドキュメントが流れていまして、反対、反対とおっしゃっていまして、私のところにもお見えになるのですが、「これは実態はこういうことですよ」というお話をすると、「ああ、そういうことなんですか、私の認識が間違っていました」という方が非常に多いんですね。
そこら辺は、私どもも正確に説明し切れていない。これは、私はこの前もお詫び申し上げましたけれども、そういう点があります。いま、そういう努力を一生懸命しているところですけれども、そこら辺の実態につきましてはよく御認識いただいた上で御判断いただきたいということが2点目です。
3点目といたしまして、私、現実に財政運営を行っておりまして、これだけ税収に不安定があるということは、単に不安定があるから財政運営が困難だということのほかに、財政悪化の原因になるということなのです。景気がいいときには税収が増えてきますから、地方自治体としては、貯金は、やりますけれども、あまりたくさんはできない。財源があるなら行政サービスをすべきだという世論が非常に大きうございますから、財政サービスを大きくする。
ところが、一たん経済が悪くなって税収が不足してきますと、もちろん締めますけれども、逆に、景気対策として財政出動すべきだという昨今の財政運営のパターンがございます。地方自治体も国のお世話になりながら(財源措置を一部していただきながら)、税収は減るのに財政サービスはむしろ増加させなければいけない、そういうことになってまいります。財政収入のフラクチュエーションンがありますと、いいときは財政出動する、悪いときも財政出動する、こういうことになりまして、きわめて構造的な財政悪化の要因になりがちです。地方自治体の行政サービスというのは、どちらかというと経常的な行政サービスが多いわけですから、経常的な行政サービスに対する社会的コストとして、法人も、固定資産税と同じように都道府県に負担していただく、そういうことが経済全体の安定性、あるいは財政全体の合理的な運営にもつながるのではないか、このように思います。
私どもも知事会の中で種々議論しておりますが、最後に申し上げますと、長い議論をして中期税制でここまで答申が出ているのに、国、あるいは国会のほうで、このことについて結論を出されないということであれば、地方自治体は地方自治体の責任として、独自に現行地方税法に基づいて外形課税を導入するという決断をすべきではないか、という知事がかなりたくさんおられます。今回、こういうことが見送られることになりますと、おそらく、いろいろな形で地方自治体独自の外形課税導入がなされるのではないか。私は個人的には、そういうことよりは全国に共通したルールに基づく税負担をしていただくほうがいいのではないか、そういう意味でも、ぜひこの機会に法律による全国一律の外形標準導入をすべきではないか、このように考えております。以上、少し長くなりまして、恐縮でした。
〇石会長
この辺で一服入れましょう。白熱したときには少し頭を冷やすことも必要だし、何せ両陣営がっぷり四つに組んでいますから。
〔休憩〕
〇石会長
ちなみに、相続税と住宅・土地税制という大きなものがありますので、あるところで打ち切りたいのですが、前半のテーマでぜひ発言したいという御希望の方、何人ぐらいいらっしゃいますか。
〔挙手多数〕
〇石会長
和田さん、どうぞ。
〇和田特別委員
NPOの税制につきましては、以前から、既存の公益法人に対する課税の問題について税調の中で相当厳しい議論が繰り返されておりましたし、私も、宗教法人、学校法人に対する課税の問題について相当疑問もあり、厳しい発言をした覚えがあります。先ほど本間委員から「狭い意味でのNPO税制」というお話がありましけれども、そこのところをどういうふうに整理していけばいいのかなというのは、これからの問題だろうと思います。まさに狭義の意味での、いま新しく出てまいりましたNPOの税制については、社会的な役割というのはすでに相当大きくなっておりますし、これからもさらに役割が重要になってくると思われます。PL法が衆議院を通りましたときの附帯決議にもはっきりありますように、NPO支援の税制は積極的に示していくべきだと思います。
ただ、先ほどもお話がありましたように、既存の公益法人に対する課税の問題と一緒に、本当の意味での公益活動についてどこが仕分けをするかという難しい問題もありますけれども、それも含めてこれからの問題として、NPO支援の税制ということについては積極的に考えていくべきだと思います。
外形標準課税は、正直なところ、大変難しい問題で、はるか昔からの流れを見ておりますと、それぞれの時で、それぞれのお立場でのいろいろな議論があったようで、素人がとても専門家の方たちの御議論に入っていけるようなものではないのです。ただ、先ほどからお話が出ておりますように、法人の3分の2が、地方行政のサービスは受けながら払っていないことについてはやはり納得できないというのが本当のところで、それが、先ほどお示しいただいた神奈川県の意識調査にもあらわれているのではないかなというふうに考えております。
経済団体からのお話もございましたし、いろいろな書面もちょうだいしておりまして、拝見もしましたけれども、消費税の税率アップ、地方消費税の拡充という言葉か出ておりますと、消費者といたしましては、自分のうちの家計が赤字になったからといって別に消費税をまけてもらえるわけでもないのに、というのが正直な感想で、「それはないじゃないの」という感じがしております。
〇石会長
森さん、どうぞ。
〇森委員
法人事業税の外形課税の導入について、いろいろと是非論が出ました。それはさておきまして、私は、今回の自治省の提案に対しまして、いろいろ配慮されたことについてはそれなりに評価をしているわけであります。私は実務家でございますので、実務家的な観点から御意見を申し上げたいと思いますけれども、まず第一に、法人事業税の改革を進めるためには、各地方団体の歳出の削減は言われているわけですけれども、どうも具体的にわかりやすく見えてこない。これを、国民に納得できるような形で、わかりやすく、具体的に説得する必要があるのではないかと思います。
もう一つ、ミクロ的になりますけれども、この自治省の案を見させていただきまして、簡易事業規模の適用が資本金1,000万円未満になっているわけで、これによりますと、株式会社は全部適用除外になるわけです。株式会社がこの制度から適用対象除外になることに根拠はないのではないか。ただ、一定の基準を設けなければいけないということはわかりますけれども、単純な基準の儲け方でいいのかどうか、という気がします。
なお、この資本金の適用限度の引上げとともに、簡易事業規模を資本金に応じて、480万円、4万8,000円ということでなしに、資本金を基準にしてもう少し段階別に税率を決めていったらどうかなというふうに思います。そういうことをひとつ検討していただきたいと思います。
それから、企業の都道府県からの受益と負担の程度を一致させることは原則ですが、この分割基準について、現行法どおり従業員基準でやると言われているわけですけれども、各都道府県からの受益は人数の比例に近いものかどうかということが、まず疑われるわけであります。したがって、地域間における税収の偏在と併せて、さらに検討していただきたいと思います。
それから、徴収猶予の問題です。これは、欠損法人とか新設法人に配慮されているわけでありますけれども、具体的には不明確であるわけです。したがって、もう一歩踏み込んで、いわゆる猶予ではなく、一定の減免措置をやる必要があるのではないか、そのように思います。
それから、申告すると同時に、課税標準等の調査の方法、検証、チェックといいますか、適性がどうかと、そういうようなものはどういうふうになっているのか。これを読ませていただきますと、更正及び決定と一応書いていますけれども、都道府県独自に調査されるのか、あるいは、いままでどおり税務署に委ねてやる方法とあるわけですが、そういったことも考える必要があるのではないかと思います。また、各企業間の格差、各地域間の格差も問題があるのではないかと思いますから、議論していただきたいと思います。
意見でありますけれども、一点だけ、調査、検証、それについてどのようなお考えを持っておられるのか、ちょっとお聞きしたいと思います。
〇岡崎府県税課長
簡潔に申し上げます。基本的にこの税が入りますと調査等の必要がございます。6-3-3の4ページ、[2]の「更正及び決定」であります。事業規模額の中で、法人の所得に影響しない部分については知事自身が調査をして更正・決定できますが、いまの考え方としまして、法人税の課税標準に変更があるような場合には税務署のほうに依頼をする、更正等の請求を行うという考えをとっております。
調査につきましては、非常に頻繁にあるというイメージは全くございませんで、所得課税ですと、所得を仮に一部減らした場合、そこの部分の実効税、4割ぐらいの額が税として逋脱になるということでありますが、これは、1.6%と非常に薄い税でございます。そういう意味ではインセンティブは非常に低くて、そもそも、不正の起きづらい税の構造になっているのではないかということで、外形から見ても、明らかにおかしいと思われるところには調査に入るという態勢ですので、そう大がかりにならないで、現行の体制の活用でできるのではないかと考えております。
〇森委員
それ以外のことについては、また議論をしていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
〇石会長
あとでまとめて、また何かありましたら。
では、竹内さん、どうぞ。
〇竹内委員
外形標準課税について一言申し上げたいと思います。私は、この課税の設定の仕方は、これからの地方財政、地方の行政投資の水準を考える上でどうしても不可欠なものになるのではないかととらえています。つまり、いま、地方も景気対策、中央政府も景気対策をやっているのですが、何のためにやっているかといいますと、企業の付加価値の増大とか、雇用に対する影響をねらってやっている。現状のシステムですと、どういう効果があったかというのは全く盲目状態で投資をしていることになりますので、そもそも投資が最適であったかどうかは自己的には全く検証できない。自分の地域に、どのくらいの企業が、どのくらいの利益を上げているかを全く知らないで投資をやっているわけで、効果を算定できない。これが、日本の行政投資の不確実性、無駄の多さ、あるいは、最適化を妨げているというふうに考えますと、この税の取り方についての方法はいろいろあろうと思いますけれども、この税が入ることによって、地域の経済がどのように最終的に変化したのかというフィードバックをフォローアップする一つの大きな武器になり得るのではないかと思います。
先ほど、地方の財政に税収の面でフラクチュエーションがあると。でも、そのフラクチュエーションというのは、現状の制度では本当のフラクチュエーションではないんですね。儲かったか、儲からないかの差はありますけれども、3分の2が抜けているということは、本当の意味で地域の経済規模をとらえていないという意味でいけば、リアルデータとしてはあまり意味のないフラクチュエーションを受けているわけです。その意味では、フラクチュエーションを知ることが重要なことであって、フラクチュエーションしては困るのではなくて、まさにこのフラクチュエーションが地方財政にとって重要な指標になり得るのではないか、というふうに私としてはとらえたいと思います。
もう一つ、注文です。いろいろな控除を入れるということもあるのですが、あまりに複雑な税制を入れますと、逆に、もともとどの程度の雇用効果があったかというのをとれなくなってしまいます。税率で調整するのはいいのですが、あまり細かく調整をすると元データがとれないという意味では、シンプルな税にしていただくことが重要ではないかと思います。
それから、フランスなどでも、地方の付加価値税、法人の外形標準は入っていまして、大きく出てくる批判は、設備投資、資産額等々、課税対象を大きくとっていることが負担の原因になっているというデメリットが指摘されています。もし、日本が新しい形で、単年度収益と給与額プラス・ネットという形で、非常に限定的な形での外形標準をもし考えることができれば、新しい形の地方応益課税としての意味を持ち得るのではないか。
最後に、固定資産税というのは、地方自治体から見ると、回収率の非常に低い税制であると思われます。投資をしたらその効果が回収されるというのが経済原則でございます。現状では、いくら公共投資をしても回収ができないことで赤字がたまってしまうということで言えば、固定資産税の税制というのは不完全であって、応益課税、つまり、地域経済がどの程度のメリットを受けたかという意味でのフィードバックを得るということからすれば、経済活動そのものの付加価値からフィードバックをさせるという税制が最も回収率の高い税制ではないかというふうに、メリットを強調したいと思います。
〇石会長
大田さん、どうぞ。
〇大田委員
外形標準課税、私は考え方はいいと思うんですね。問題は、政治的に難しいですから、取りやすいところから取る結果になって、結局、広く薄くと似て非なる税になるのではないかなという懸念が一番の問題だと思います。
今回の自治省の案は、非常に苦労なさって、工夫されていますが、相当配慮なさった結果として、二点、問題があると思います。一つは、あまりに中小に配慮しすぎではないか。国税の法人税であっても、法人に対して個人と同じように所得再分配的なことをやる必要があるかどうかというのは議論があるところで、まして、応益である法人事業税でこれほど中小企業に配慮するのはいささかやりすぎではないか。
二点目は、その結果としてあまりに煩雑すぎるというふうに思います。私は、法人事業税の外形標準は、もう少しシンプルな形にして、税率は地方に任せることがいいと思っております。やはりそれぞれの自治体が企業と向き合う必要がある。ただでさえ地方税は法人に依存しすぎていますので、本当に応益にかなっているかどうか、それぞれの自治体が企業と向き合って調整することが必要ですし、地方分権ですから、そういう時期にきているのではないかと思います。
〇石会長
菊池さん、どうぞ。
〇菊池特別委員
外形課税についてですが、赤字法人が税金を払っていないという不公平感、それを是正するのが目的の一つだと思います。もう一つ、私としては、外形標準課税というのはかなり大型の税金として期待していたわけですが、いま、国だけで言いますと、使っている分と税収の差は30兆円ぐらいあるわけです。地方を入れれば、40兆円、50兆円の差がある。それをいずれ埋めていかなければならないということを考えますと、外形標準課税は、先々、消費税並みの10兆円ぐらい収入の上がる税金に育てていかなければならないのではないか、こう思っています。
その要素があるものだとは思いますが、それを、目先、ここで現実に妥協して、こういう格好で導入して……。小さく産んで大きく育てようと思っているのかどうか知りませんが、この格好ではなかなか大きく育たないのではないかと思います。ですから、ここで、1兆円、2兆円の目先のことを考えるよりは、もう少しじっくり考えて、先々10兆円以上の収入の上がる税金に育てていくべきではないかと思います。
そうはいっても現実が別な方向に動き出すとすれば、一つ考えなければいけないかなと思うのは、事業税なのか、法人税なのか……基本的に事業税だと思うのですが、事業をやっていても法人ではない、なおかつ、担税力は相当あるなと思われるお医者さんとか、弁護士とか、お花の先生とか、これを事業税としてとらえて、法人だけに限らない外形まで考えたほうが、そもそもの不公平感を払拭するというところから考えればその必要性があるのではないかと思います。
もう一つ、流れでしようがないのでしょうけれども、地方税としてだけとどめていいのかどうか。消費税が国税として入って、一部地方税になったのを、逆の方向で国税になっていくということも考えたほうがいいのではないかと思います。
それから、NPOです。経企庁の見方に賛成するわけでもないのですが、長い目で見て、公の負担過剰を解消するために、NGO、NGOを含めて、いろいろな公的なものを担ってもらうという方向性をもし持っているのだとすれば、何が出てくるかわからないところが最初からあるわけですから、かなり余裕を持って、あるいは大ざっぱにというか、前向きに、多少怪しくても免税を認めていくという方向で考えていいのではないかと思います。
まだ全然育っていないわけです。たった2,900。万の数が来るはずだったのが、あれしか来ていないというのは、どこかで制度的に促進的でないところがあるわけですから、進める。これが5万とか10万になった段階でびしっと締めればいい話で、その間は、KSDのようなひどい寄附行為は一罰百戒で徹底的に見せしめにする、そういう方向をとっていくのがよろしいのではないかと思います。
〇石会長
笹森さん。
〇笹森委員
外形標準課税の問題について申し上げたいと思います。連合の立場からすると、いろいろな人から、「この案に対して、昔の労働団体だったらば大反対運動を起こしただろう、おまえら物わかりよすぎるよ」と、いま、大変怒られています。ただ、私ども、業種別の73の組織を抱えておりまして、よって立つ組織の基盤によって利害関係が対立してしまって、論議はしたけれども最終結論が出ないというのが、率直に言って実態なのです。
ただし、この問題については、前回の方針をまとめる中で、最終的には導入の方向性についてみんなで理解をするという方向にはなったわけです。その中で私どもの姿勢としては、現行の所得課税の問題点、何人かの委員の方々も触れられておりましたが、いうなれば赤字法人の問題等を含めて、それをどう解消するのかということについて中心にした導入を検討するのであれば、そのこと自体については反対しません、こういう姿勢で論議には参加したわけです。
しかしながら、きょう示された案は、率直に言って、前提条件がクリアできていないことと、方法論として問題が多すぎるということで、賛成しかねる。気持ち的には佐野委員、牧野委員の発言と私は全く同じような気持ちを持っています。なぜ、クリアできていないのかというのは、これも触れられておりましたけれども、地方自治体がそれぞれ努力されていることもわかりますし、貝原さんの発言も理解できないわけではないのですが、地方の歳出が効率的かどうか、このことを見直しすることが前提だった、これがまず一つ目だと思います。
二つ目は、経済への影響、雇用への影響、これが悪影響を及ぼさないということも前提だったはずです。これについては、方針の中で、「雇用への影響が懸念される」という表現を、「『懸念』ではなくてこれは雇用にも影響しますよ、だから人件費の問題等については慎重に扱ってくれ」、こういうことをあえて申し上げた経過もありますが、この中身から言うと、結局そのことが全くおろそかにされている。先ほど事務当局から説明があったほど、内容的に見て、本当にそんなにおいしくてウマ味のあるものかということについては、とてもそうは思えないというのが基本的な受けとめ方です。
これもある委員が触れられておりましたが、私どもも、もともとこの標準課税の導入については、当初の理念は何だったのか、と。これは説明にもあったけれども、「広く薄い課税」だったはずですが、いま出された中身を見ると、そこから遠く離れてきている。結論的に言えば、税務当局が一番把握しやすくて、取立てのしやすい賃金、支払利子、そこに偏りすぎているのではないかと思います。そうなると、それこそ企業の発展の問題、これについては経済活動が停滞するということと、雇用への影響は間違いなくあるというふうに断言せざるを得ない。
現状の雇用の問題から言えば、きわめて高どまりをしている。4.7%、320万人、多いときは350万人ありました。これは、365 日・24時間で割り戻すと、約1分から1分半に1人、失業しているという計算なのです。もし導入して、いまのような方法論をとっていくとすれば、その高どまりをさらに悪化させることにつながりかねない。諸井委員さんは雇用には影響ないよと言いましたが、そういう企業家、経営者ばかりではないわけで、このことを利用するという懸念もありますから、これについては、方法論としてはもう少しきっちりしたものにしなければいけないということが一つです。
それから、導入の問題ですが、これは導入前提でやっていきますと、いまの経済状況、景気状況、そして雇用状況から言うと、とてもそんなことを取り入れる時期ではないと思います。したがって、ここから先、景気の足かせとならないように、一定の経済成長が達成されるまで、外形標準課税の問題については十分なる論議を行って、その時期についての見極めもしながら、一番合理的で、国民にとって納得できるものについて時間をかけることが必要ではないか、そういうふうに思います。
一つだけ、次は出られませんので、小さい問題で追加させてもらいたいのですが、発泡酒、酒税の問題です。いま、政府の中で発泡酒に対しての増税構想が論議されているようですが、率直に申し上げて、唐突であり、「またか」という感じです。論議不足は否定できません。庶民のささやかな楽しみの中で、大衆的な飲料となっている現状を考えた場合、たった4年前ですよ、96年に増税されている。困ってくると全部そこに行くということであります。酒税全体のバランスを十分に踏まえて、短時間で結論を出せるものではない、政府、あるいは、ある政党の思惑だけでやってはいけないということをぜひ基本にしていただきたいと思います。
〇石会長
猪瀬さん、どうぞ。
〇猪瀬委員
いまの笹森さんのお話で、地方の歳出のあり方が問題だとおっしゃいましたけれども、問題なんですよね。しかし、それとこの問題は別であります。というのは、いままでの4.4兆円だった地方事業税を4兆円にすると言っているだけです。今度3.6兆円になるのかもしれませんが、とりあえずは増えたり減ったりするわけではありませんので、それとこれとは別の問題だと思います。
僕が先ほど牧野さんにちょっとだけ御質問したのは、外形標準課税は公平な課税だというふうなことを、牧野さんではないけれども、通産省としておっしゃっていた。だから、情勢の判断で変わってきたということだったらわかるのですけれども、論理として変えるというのは……。論理は変えられないものだと僕は思っていますので、そこのところが非常に奇妙だなと思って御質問した次第です。
僕は、いまここで行われている一部の議論で、世間一般の感覚からずれているのではないかと感じるのであえて申し上げたいわけですけれども、人件費を中心に外形標準課税がつくられそうだということですけれども、すでに固定資産税で9兆円取っているわけで、これも外形標準課税です。それは高どまりだと僕は思っていますけれども、それはそれとして、世間一般からかけ離れていると思うのは、例えば、石原慎太郎さんが銀行に対して外形標準課税をやったときに一斉に喝采を浴びたのはなぜかというと、「大企業であれだけ収益を上げていて払っていないではないか」、こういう問題があったからです。もちろん、赤字の企業から取るというのは、赤字の企業にとっては苦しいかもしれないけれども、それは黒字の企業がその分負担しているわけです。これはゼロサム・ゲームですから、誰かが誰かのかわりをしているということがあるわけです。
具体的に申し上げると、皆さん、こういう名前を言うのはいやだろうと思うけれども、言いますが、住友商事が10兆円の売上があって法人税を全然払っていないわけですね。日立製作所が8兆円、日産自動車、東芝が6兆円、NECが5兆円、三菱電機が4兆円、日石三菱が3兆5,000億円、三菱自動車工業が3兆5,000億円。こういう数字で見ると、普通の世間の感覚で見た場合、おかしいのではないかと思うのが普通ではないかと思うのです。特に、給料が高いと言われている日本航空、東京海上火災保険も、日本航空は1兆6,000億円、東京海上火災保険は1兆3,000億円ぐらいの売上がある。高い給料で知られているところが法人税を払っていないし、もちろん法人事業税も払ってこないわけです。
普通に考えた場合に、納税者はお金を払うという当たり前の、国民として国家に参加しているという意識というか、そういうもののモラルハザードを招いていくわけです。これは、全体で増税ではなくて、黒字企業は減税になるわけですから、そういうことを含めて考えた場合に、ある一定の義務を果たすという意識はあっていいわけです。社会との共存共栄とか、いろいろなスローガンを抱えて会社の経営活動をしているわけですが、そこのところで一番基本が抜けていては仕方ないのではないかと、あえて申し上げたいわけです。
それぞれの業界の利益とか、いろいろなものがあると思います。経済団体の場合はこぞって反対していますが、ただ、個人的には、先ほどの諸井さんのような御意見もあったりするわけです。実際、半分くらいの大企業は黒字で払っているわけです。中小・零細の場合は3分の2が払っていないということですけれども、今回の案を見ますと、1,000万円以下の有限会社だったら4万8,000円でいいよとか、課税最低限の問題と同じで、みんな参加しているんだという意識というか、サービスを受けているんだという意識をつくらないと、政治的な無関心さを助長するだけです。そういう意味で、僕はあえて申し上げたいのですけれども、この中での一部の議論は少し原理主義的になった反対論であって、おかしいのではないかというふうに思いますね。
〇石会長
大宅さん、どうぞ。
〇大宅特別委員
久しぶりに税調に出戻ってまいりまして、前より議論がずいぶん活発になったなというのが実感ですけれども、私の理解では、導入するのが前提だと思っていたんですね。小委員会もできたというのが、原理原則のところまで戻って、3分の2が赤字だけれども、法人事業税は大した部分ではない、一部でしかないとか、そこまでさかのぼって、「えっ、まだそんなことやってるわけ?」という感じがしてしようがないのです。
三つあるのですが、一つは、共通の事実認識。データも要ると思うのですけれども、どういうことなのかというのが必要だと思います。いま猪瀬さんがおっしゃったように、3分の2が赤字で、つまり参加費を払っていない。本当に努力して赤字になるならしようがないですけれども、「赤字にしている」というのがいっぱいあって、それが逃れられているというのは、どう考えても許しがたいことだと思います。私は税調の委員として、国民に納税の義務があるんだということを一生懸命言って歩いたのに、こんなことを言われてしまうと、私は何のために一生懸命言っていたのかなと、むなしい気がします。
ですから、共通の認識を得るためのデータが要る。もう一つは、そのあとで入れるか入れないか、ちゃんと決める。そして、決めることになったのであったら、ポジティブに、広く薄くシンプルにという形にもっていくというふうにしないと、いつまでもぐるぐる回っていて、また先延ばしなんて話になったら、それこそ景気によくない影響があるというふうに思います。
それと、議論ですが、自分が損することは公平ではない、中立ではないといったら、何にも決まることはないと思いますし、懸念があるといってやらなかったら、何の改革もできないというふうに私は思います。
〇石会長
久しぶりに大宅節だなあ。
松尾さん、どうぞ。
〇松尾委員
この自治省案を拝見しまして、まず気がつくのは各方面に配慮している点です。先ほども大田さんがおっしゃいましたけれども、中小法人については軽減税率を適用する。さらに、個人事業者への適用はないわけです。その結果として大法人にしわ寄せされる、これは明らかに不公平だという意見が出てくるのは当然だろうと思うわけです。また、実質的な賃金課税ですから、雇用とか、研究開発とか、設備投資に与える影響、これも無視できないものがあると私も思います。外形標準課税だけに焦点を当てるのではなくて地方行財政改革全体の見直しが必要、これも当たり前のことだろうと思うわけであります。
それと、地方自治体の対応としてどういう対応があるべきなのか。最近、大阪府は法人住民税の均等割の引上げを検討しているという話です。神奈川県、東京都は繰越し欠損金の利用制限も検討していると。これは非常に評価できる取組みではないかと私は思います。
それはともかくとして、この外形標準課税については、全国知事会などが「積極的に導入すべきだ」という決議を採択して、一方、経団連など全国73経済団体は、導入反対だと決議しているわけです。やはり現実は非常に重い。これは絶対無視してはいけないと思いますし、法人から税金をいただこうというわけですから、相手の法人の理解を得るためにもっと徹底的に議論しないといけないのではないでしょうか。そういう趣旨は、直接的な表現ではありませんけれども、この中期答申にも出ているわけです。「課税団体である都道府県が、納税者である法人などに対して外形標準課税に関する理解を得るための取組みを、一層積極的に進めることが重要である」と書いてあるわけです。これをぜひやっていただきたいと思います。
〇石会長
松田さん。
〇松田特別委員
私はこの自治省案に賛成であります。地方財政、都道府県税収は安定させる必要があると思います。それから、赤字法人にも応分の負担を求める必要があると思います。応益課税ということになりますと、やはり事業規模に応じた課税ベースを設けるのがいいのでしょう。事業活動規模というのは、ニヤリーイコール給与課税にならざるを得ない。それが雇用に悪影響を与えるか否かという視点が当然考えられるわけですけれども、これは現段階では税率1.6%で、例えば、社会保険関係の企業負担などはもっとはるかに高い率を取っているわけです。それに比べたらこの1.6 というのはずっと少ない額であります。企業も文句があるなら、そちらの社会保険料のほうでなぜもっとガンガン言わないのかと思います。もう今井さんがいなくなってしまったのは残念ですけれども。
あと一つ、考えなければならないのは国境税調整だと思います。これはたしかに日本企業が不利になるのですが、それぐらいのハンディは背負って頑張ってもらわないとしようがないというのが私の感じです。最近、企業のほうは、何でもかんでも消費税にかぶせればいいという意思が強すぎる気がします。課税してどういう格好で払うかというのはよくわからないわけですけれども、値上げして利益を上げて払うのか、あるいは、内部留保を削って払うのか、それはブラックボックスの中になってしまう。どうも最近の企業を見ていると、自分のところからは絶対払いたくない、全部消費税に回せばいいのだという意識が強すぎて、はなはだ好ましくないと思います。以上です。
〇石会長
村上さん、どうぞ。
〇村上特別委員
私は、外形標準課税については、国民の納税意識をきちっと持たせる意味で、比較的公平性を確保できる税制だと思っています。この前も、国税も収入に対して一定の負担をすべきだということを申したのですが、自治省の案、技術的な問題はいろいろあるかもしれませんが、そういう意味での応益課税としてはすぐれているのではないかと思います。
それから、薄く広く取っていくという意味でも、いろいろなやり方はあるのかもしれませんが、ひとつやってみる価値のある案ではないかと思います。いろいろな技術的なことを挙げて先送りするよりは、現在の税制に歪みのあることが指摘されている、先ほどから出ている、長期に赤字を出しながら倒産していない企業が3分の2もあるという現実、そういうものに全く改善を加えないで議論ばかりしていても意味がないのではないかと思います。そういう観点から、私は、この税はやってみたらどうかなというふうに思います。
〇石会長
福原さん、どうぞ。
〇福原委員
ただいまの外形標準課税については、すでに皆さん議論を尽くされたわけですので、私からそれ以上申し上げることはありません。ただ、もしこれをさらにお進めになるとすれば、中央と地域、特に国と県、市町村、これの地方交付税なり地方消費税なり、そういった財源負担についてもう少しはっきりした考え方をお示しいただけることが一つ。
もう一つは、自治省でずいぶん御苦労なさっているそうですけれども、市町村の合併が進むに従って、その間の地方財政の削減はどのような計画でなされていくのか、行財政の改革はどのようにされていくのかについて、かなり具体的なガイドラインが出てくることが必要ではないか。そうしないと、なかなか納得がいかないのではないかというふうに思っております。
次に、石先生の切り分けにかかわらず、もう30分しかありませんので、相続税のほうに入らせていただきたいのですが、前々回だと思うのですが、中期答申の相続税のモデルについて御説明がございました。それは、公示地価10億円、路線価8億円の宅地330平米と建物・預金1.4億円の合計11.4億円を、未亡人と長男と長女の3名が法定相続をするという想定のモデルでございました。いろいろな控除がございまして、未亡人は相続税ゼロ、長男が1,200万円、長女が1,200万円で、合計11億4,000万円に対して2,400万円の相続税であるというモデルでした。
これを全く別な対極のモデルでお示ししますと、これは相続税と中小企業の事業承継との関連ですが、この土地がすべて会社の未上場株式として評価された場合で、それを奥様がすべて相続した場合。これは、取引相場のない株式100%相続ということになりまして、評価は8億円そのまま乗るわけでございます。それから、小規模宅地の減免もございません。結局、奥さんは1億2,000万円の負担、長男、長女は2,400万円ぐらいの負担、こういうことになって、合計では1億6,700万ほどの相続税になるわけです。
この違いはあまりに大きいわけでして、奥さんがもし1億何千万の金額を払う場合、土地を売って事業をやめるなら別ですけれども、事業を続けるとすれば、これに対して何らかの方法をとらなければいけないということで、中小企業の事業承継については非常に困難があるということが絶えず言われているわけです。
この問題について、相続財産のかなりの部分が未上場株式として評価される場合、評価方法は改善していただいたわけですが、しかし、今度は別の問題が出てきております。それらについてもう一度この問題をお考えいただき、そして、事業承継の新しいジャンルを設けていただく必要があるのではないかと考えております。
もう一つ、相続の場合、これはケース・バイ・ケースで処理されているようでございますが、例えば500平米の土地に、大正時代に建てた歴史的・文化的な意味のあるおうちがあった場合、土地を切りわけて処分することになりますと、その家が壊されてしまうことになる。また、その500平米にわたってこんもりと繁った緑があった場合に、その地区の緑は果たしてどうなるかというような問題があります。
ここで、評価の問題と法律とマッチしない面があるわけですが、そういう特別なことについてこれからどのように考えていくかということも、税制の枠のちょっと外で考えていかなければならないのか、あるいは税制の中でそれが処理できるのか、この辺をお考えいただきたいと存じます。以上です。
〇石会長
新しい問題提起としてお伺いしておきます。
本間さん、どうぞ。
〇本間委員
法人事業税に関して議論が錯綜している大きな原因は、自分の言葉が他人の言葉の定義と違うというところが非常に影響しているのだろうと思います。中立性という言葉がそれぞれの論者によって意味が違っている。例えば、先ほどの牧野委員のお話で、現状の税負担に比べて税負担が変わる。そして、これが規模別、産業別に違ってくる。これは、税を変更する場合には必ず起こってくる問題でありまして、これは必ずしも中立性とは限らない。むしろ、現状の税制が課税のありようによってどのようにバイアスを持っているかという、事前的なレベルの問題がまず規定されなければならないわけです。
法人事業税は、いま、法人利潤に対して唯一課税ベースを求めていることに対して、今度の法人事業税は、生産要素をほかの要素にも広げようと。その意味では生産要素間の中立性を担保しようというのが、この法人事業税のもともとの考え方である。したがって雇用の問題に対しては、佐野委員がおっしゃったとおり、たしかに部分的に見ると、雇用に対してはネガティブな影響は、タックス・プラスのウェッジというものが上がることによって抑制的でありますけれども、法人利潤が、新規の投資及びニュークリエイトするジョブという観点で言えば、ダイナミックに、どちらが構造改革に資するかという問題をきちんと議論しなければならないということが第一点としてあるわけです。
もう一つ、佐野委員がおっしゃった問題で、アウトプット、あるいは付加価値に対して間接税的に課税した場合は、要素に対して中立的だという御議論がちょっとございましたけれども、これは決してそうではなくて、資本集約的な企業と労働集約的な企業との間では、影響は全く違うということであります。今回の法人事業税は、生産要素に対していままでバイアスをもたらしていたものを、一律的に近くに持っていくことによって、今度は、付加価値のもともとの部分のところでどのようにそれが消費者に転嫁されるかという形で、目に見えない形になっているがゆえに、あたかも中立的であると、こういう議論が出てくる危険性がある。そこをどのように理解していくかが非常に重要なポイントだろうと思います。
もう一つ、最後に、自治省案はなぜ2分の1を最初にもってきたのかという点であります。例えば負担の軽減、緩和措置というものであれば、ゼロ・1の間のところで選んできて、現状に一番近いのは、1に限りなく近い形で利潤を持ってくる。そしてそれをシフトさせたときに、一体どのように企業間、産業間、あるいは就業構造に対してインパクトをもたらすのか、あるいは、事前と事後の税負担がどのように変わるのかということを、きちんと検証・分析した上で出したのかどうか、丸めて出してきたのかどうか。その辺のところが必ずしも説得的でないところに、これまでの御議論があるのではないかという感想を持ちます。最後の部分については、自治省の課税の実態を踏まえてデータ的なものも含めてお出しいただけないかというのが、私の希望であります。以上です。
〇石会長
自治省にまとめてお答えいただくことも幾つかございますから、いまのことも含めて、あとで時間ができましたらの話ですが……。
河野さん、どうぞ。
〇河野特別委員
いままで、このテーマについてずいぶん議論してきましたけれども、本日ぐらい、白、黒、中立を含めて、真面目な真剣な議論をやったことはないと思います。きょうは歴史的な日なんですよ、この税制の議論については。私自身は長い間、分権委員会に若干関係があったこともあるけれども、過去の経過から見て、この話は、この方向でやることについて基本線は賛成です。内容は細かいことはいろいろあるかもしれないけれども。
問題を仕分けてみると、皆さんの意見を聞いていると、二つに分かれる。私みたいに、とりあえずこれをやろうではないかという意見と、いや、包括的な中央と地方の税財源再分配論というのはあるわけで、分権委員会、諸井さんのところはこれから提起することになっている。そういう議論の中で、この話も全部込み込みでやろうではないかと、方法論は二つに分かれるのです。真面目に考えれば、何かやらなければいけないことは明らかなのです、誰がどんな立場で物を言おうと。僕は、どの役所が何を考え、どの経済団体が何を考えているか、全部知っている。いまのポジションはどうでも構わないけど、事の流れはそういうことなんですよ。
今度自治省が出した案は年度答申にかける。来年の通常国会で法案を通して、自治省は再来年という話でしょう。えらい具体的なんですね。そこが、従来の観念的な定説によるところと全く違うところなのです。そうなってみると、自治省は、いまの地方の財源の中でどう充実するかという議論と、国の税金と地方の税金をどう交換するかという話と分けてやる議論に立っているわけです。それは、いまの議論の経過からすれば真っ当な議論だと思います。
同時に、国家財政の再建論というのが、いま、ぼつぼつ出かかっているわけで、その中には、地方を巻き込んだようなことも明らかなわけで、「それなら、そのときにやったらどうだ」というのは、一つの便宜論ではあるし、一つの議論ではあると思いますね。その中には、みんなが言っている地方の行財政問題は必ず入ってくる。交付税の改革の話も全部入ってくる。一括して全部、大整理をやるか、そのときまで中途半端なやつは待て、という議論が一つあるわけです。僕の頭の整理では、これも馬鹿にできない議論です。
僕自身は、いまの税調の議論の経過から見れば、これを先行させても筋が通らないわけではない。いろいろ欠点はあるかもしれない、それはそのとおりだと思うけれども、大局において二段階論でやっていいのではないか。政治の話は、公明党、自民党が何を言っているかというのは聞いているから、我々が何かを言ってもすぐに政治が動くとは思わないけれども、それは見え見えの話だけれども、とにかく税調としては議論の流れの中で……。
きょうもほとんどの人が発言して、誰がどういうポジションか全部明らかになったので、これ、いいチャンスですよ。そして、我々が最終答申を書くわけです。そのときに僕はやはり二段階論なのです。しかし、一括方式が一番いいとおっしゃる方もいらっしゃるので、それもむげに否定はしない。そういう議論があったということはよく確認しておきますが、私はそういうふうに仕分けたい。
〇石会長
論点の整理をしていただきまして、どうもありがとうございました。(笑)座長のかわりによくまとめていただいたと思います。また、本間さんの理論的な整理もそういうことであろうと思います。
あと15分しか時間がないのですが、あとの問題に入るのはいささか難しいので、来週来られないからきょう言っておきたいとか、何か御発言がありましたら、いまから承りたいと思います。
どうぞ。
〇榎本委員
来週来られないこともあり、立場上もひとこと言っておきたいと思います。連合の中では長い議論をしてきて、先ほど笹森事務局長が、最終の結論は出ていないということを申し上げましたが、基本的な論議の枠組みとしては、応益課税という性格をより明確にしたものに変えていくべきという、論理の前提は大体一致しています。ただ、具体的な方法論をめぐって、労働組合ですから、雇用に対する影響に大変敏感になっている、この点では私も同様です。
ただ、外形標準課税の論議は、これまでたびたび確認されているとおり、地方自治体が提供する側、提供するサービスについては、景気に連動して上下させるわけにはいかない。しかし、収入のほうは法人事業税を中心に景気の変動を受ける、ここのところを安定化させたい、このことについてはほぼ全体として合意されてきたし、同時に、多くの皆さんが言うように、地域社会の共通の利益を享受していながら、それに対応する税を7割近い法人が払っていないことは、何が公正か、何が公平かというのはいろいろ議論はありますが、やはり社会での最大の不公平ではないか。
この辺をただすことについては、中期答申の中でほぼ結論が出ていることではないか。そうだとすれば、メンバーは代わっても税調としては続いているわけですから、中期答申で到達した地点をこの税調ではスタートにしていただきたい。つまり、「導入すべき」ということを共通の立場にした上で、その中身をめぐって議論することにしていただかないと、いつになっても堂々巡りの議論をしているだけということになりますので、税調としての役目をぜひ積極的に果たしてほしい。これが一点です。
二点目に、経済5団体がいろいろおっしゃったことについて、経済界が申し上げることはそれぞれの企業の事情ですから、実は、労働組合もその事情の中に組み込まれているので、似たような特徴が相当あるわけです。それは私どももよくわかりますが、ただ、ここで問われている事柄は、そうした個々の業界や立場の損得を越えて、個々人の住民も、企業も、法人市民として共同して地域社会を構成しているわけですから、そこでお互いに負担と享受の関係を考え合おう、そういう仕組みを考えていこうではないかというのが議論の前提だと思います。
そういう点で言えば、地域社会で法人市民として企業が負うべき社会的責任についてもう少し自覚があっていいのではないか。聞いている限りで言うと、国と地方の政府間関係を変えていくこと、それから、経団連が10月2日に出されたように、将来の消費税を10%から25.5%というシミュレーションを描きながら、最低でも10%は必要だということが経団連の会長からも言われているわけです。政府間関係を変えることと、国民一般に負担を転嫁していくことの中にだけ答えを求めて、みずからが痛みを背負うことについては一切何も入っていないというのはいかがなものか、という感じが私はします。
結論的に申し上げれば、中期答申で「導入すべき」ということを税調として答申したわけですから、そこをスタートにして、具体的な方法論について議論することをぜひお願いしたいと思います。
〇石会長
そろそろ最後にまとめてください。
〇津田委員
外形課税の問題については私は推進論者でございますので、一々言いません。ただ、NPOなり寄附金の扱いで、地方税サイドの議論がわりにスッと行ってしまったものですから、特に申し上げたいと思います。
NPO、その他、公益事業に対する寄附金の扱いは、歳出面で助成する場合と、歳入面、税でまけてやる、こういう二つの方法があるわけです。地方税の場合にはよくある話ですが、例えば宮崎県出身の人が大阪へ行って成功して、今度は宮崎に寄附をする。そうすると、大阪府は公益事業は関係ないのに、何で大阪の税金だけまけて、宮崎は公益活動という受益だけ受けるのはおかしいではないかという議論があるものですから、そもそも地方税における寄附金の扱いというのは、少し厄介だし、どうも狭くやらざるを得ない、こういうことです。
それから、NPO等の法人で、これが本当に公益上必要なのかどうかという基準をつくるとなると、おそらく地域的に基準の判断が違うと思うのです。都市部は都市部なりの判断、農村部で高齢者ばかりのところは、高齢者に対するものを中心に置くでしょうし、子供が多いところは子供のほうを中心に置くでしょう。だから、全国一律な公益増進とか、そういう基準はなかなか難しいのではないかと思います。
現実にもそうなのですが、歳出のほうについては、御承知のとおり、NPOに事務所を貸したり、電話当番などの人件費を見てやったり、あるいは、印刷製本の面倒を見てやったり、そういうことでやっております。それも、PTA活動の一環でやる場合もありますし、商店街が、大売出しの場合ももちろんそうですが、そうではなくて、公益のために老人に食事をやるのはどうか、というようなことがあるものですから、一概に区別できない。結局のところは、歳出面で地方団体の自主性に任しようがあるのではないか。それから、判断基準をつくるとなると、やはり地方自治の観点に立ってローカルな判断を重視すべきではないか、この点だけ、さっきの議論から抜けておりましたので。
〇石会長
ありがとうございました。
ぼつぼつ5時になります。きょうはすごく白熱した議論で、私は税調に長く在籍しておりますが、これほどのことは初めてであって、学会の論争を上回るぐらいの迫力がある議論だったと思います。NPOと外形二つがメインのテーマだと思います。NPOにつきましては、ある基本的な方向で技術的に詰めるということで議論はある程度まとまっていくと思いますが、外形につきましては、二段階でやるか、一括でやるまで待てというのか、この辺も二つに分かれていると思います。
非常に興味深かったのは、マスコミの方、経済界の方、労働組合の方が別々に分かれた意見を言ったことは、まさに国民の代表である税調の委員にふさわしい話ではないか、こう思いますし、まだ時間がございますので、次回以降少し詰めていきたいと思います。
〔閉会〕
(注)
本議事録は毎回の総会後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、大蔵省主税局及び自治省税務局の文責において作成した資料です。
内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。