第4回総会 議事録

平成12年11月7日開催

石会長

それでは、時間になりました。第4回目の総会を開催させていただきます。

前回に引き続きまして、7月に出しました中期答申、お手元にございますが、「わが国税制の現状と課題」につきまして、復習も兼ねて、新しいメンバーの方に対する情報提供も含めて議論しております。

きょうは各論の第2回目としまして、資産課税、国際課税、その他諸課題についてご議論いただこうと思いますが、前回、所得税、法人税、消費課税をやりました。議論の後は込み込み、混在しても結構だと思いますので、同じ各論ということもございますから、自由闊達にご議論いただけたらと思います。時間の都合で、またさかのぼって総論の部分にお触れいただいても結構だと思いますが、一応きょうでこの総論的な、あるいは各論も含めた勉強会みたいなスタイルのものは終わりにしたいと思いますので、ご自由にご議論いただけたらと思います。

それでは、最初、事務局のほうから一とおりご説明いただきまして、あと時間をとりまして議論したいと思いますが、最初は資産課税につきまして、道盛税制第三課長と井上固定資産税課長、お二人からご説明をおのおのいただきたいと思います。では道盛さん、お願 いします。

道盛税制第三課長

それでは、まず資産課税のうち国税に関するものについてご説明申し上げます。お手元のやや厚めの資料のうち、一番上に載せております資料「資産課税等関係資料」、4-1という資料を用いましてご説明させていただきます。

目次の次の1ページからお開きいただきます。国税・地方税合わせた合計ベースでの税金の内訳、税収の内訳を見ております。左下のほうに、資産課税17.1%というのがございまして、そのうち相続税 1.9%。きょう私からはこれを中心にご説明させていただきます。

2ページをお開きいただきまして、「最近における相続税の主な改正」をあらわしております。昭和63年以降3回、税制改正が行われまして、概ね3つの事項について改正を行ってまいりました。1つは、一番上の四角にございます税率構造についてでございまして、抜本改正前の75%、左上の段階から、現在では最高税率70%まで引き下げておりまして、また、70%が適用される税率区分を20億円超という非常に高い税率区分に改めてきております。

ただ、この70%につきましては、所得課税の最高税率が国・地方合わせて50%に下げられたことを踏まえると、まだ比較的高水準にあるというご指摘もございます。

2番目の基礎控除の欄、課税最低限ともなります基礎控除でございますが、ここにございますとおり、3度の改正で、基礎部分、2,000万円から 5,000万円、それから一人当たりの基礎控除額が 400万円から 1,000万円ということで、基本的に 2.5倍の基礎控除の引上げがなされております。

それから一番下に小規模宅地の課税の特例、これは事業用、居住用に個人の方が供される土地につきましては、事業承継ですとか、あるいは居住用の資産の相続を容易にするために時価を減額いたしております。その減額割合は一番下にございますが、事業用40%、居住用30%から、現在では、事業用、居住用とも継続してお使いになる場合には、80%の減額と、80%割引というような評価をいたしているところでございます。

3ページ目をお開きいただきまして、こちらが、その結果、現在の相続税の実際の姿というのをモデル計算しております。ここでは、個人で電気店を営むAさんのケース。四角の一番上にございますが、妻、長男と電気店を営んでいたAさんの遺産が、秋葉原駅付近にある店舗、銀行預金など合わせて11億 4,000万円。このうち土地が 330m2で10億円。残された家族は妻、子供2人で、妻が土地を、2人の子供がその残りを相続し、店は妻と長男が続けていくことにしたという前提を置いた上で、仮定計算をいたします。

一番上の遺産相続11億 4,000万円でございますが、まず2つ目の四角にいく過程で、相続税は路線価という時価表示をいたしまして、これが公示地価の約8割で評価されまして、この段階で土地が10億から8億になります。さらに、今申し上げました小規模宅地の課税の特例ということで、80%の減額を土地について評価されますので、この時点で、8億から1億 6,000万円に土地が減額されます。これに基礎控除等が適用されまして、最終的な姿、一番下で見ていただきますと、妻の場合は配偶者の税額軽減がございますので、この場合ですと、税金がかかりません。結果的には長男、長女の方、1,200万円ずつということで、一番右下にございますが、合計で、このご家族の場合には 2,400万円の相続税を納税していただくということで、遺産額の 2.1%の相続税を納めていただくことになります。

次、4ページをお開きいただきますと、上場企業役員Bさんのケースで、全く同じことをいたしております。表の絵の四角の一番上に遺産総額2億 8,750万円=約3億円とございますが、内訳は土地が1億 8,750万円、預金などが 4,000万円、死亡保険金、死亡退職金がそれぞれ 2,000万円、4,000万円という前提でございます。一番下を見ていただきますと、このケースの場合ですと、結果的には相続税は課税されません。もちろん、このケースというのはさまざまな控除がフルに効くケースですので、その意味では特殊なケースでございますが、モデル計算の典型的な例で申しますと、この程度の場合ですと、相続税というのはかからないというのが現在の実態になっているわけでございます。

その結果、一番右下にございますが、相続税が課税される割合は死亡者 100人に対して約5人ということで、相続税は5%の方にかかっている、残りの95%の方にとってはいわば関係のない話ということになっております。

5ページをお開きいただきます。死亡者数等を時系列的に整理してございまして、一番下の平成10年のところを見ていただきますと、死亡者数が93万人、課税件数が4万9,000件ということで、(b)/(a)が 5.3というのは左から3番目の四角にありますが、私が今申し上げました 100人中5人というのがここにあらわれております。上のほうにずうっと見ていただきますと、昭和62年、7.9というのがございます。バブルの高騰とともに、一時期は 100人のうち8人ぐらいの方が負担されていたものが、バブルの崩壊と、それからさまざまな減税が講じられてきたことによって、現在は約5人という姿になっております。

6ページをお開きいただきます。相続税の課税価格階級別の課税状況、つまり、亡くなられたときにどの程度の課税価格の遺産を残されるかということを区分したものでございます。例えば一番多いのは、この表の件数の一番下に4万9,000という件数がございます。これが私が申し上げました4万9,000件に相続税がかかるということを示しております。その内訳でございます。

一番多いのは1億円~2億円で、ここに約2万2,000件、半分近いケースがここに入っております。その次の3億円までというところに注目していただきますと、ここの累積割合のところに77.7とございます。大体3億円までの遺産を残されて亡くならなれる方が大体全体の8割。私が先ほど 100人中5人の方に相続税を払っていただいていると申し上げましたが、100人中4人の方は3億円以下の財産。これ以上の3億円以上の財産を残されて亡くなられる方は大体 100人のうち1人というのが現在の実態でございます。

7ページをお開きいただきます。相続税の負担率を主要諸外国と比較して見たものでございます。日本は太線で示してございます。縦線で3億円というところに入ってございますのが、今申し上げましたように、この3億円の左の世界に大体 100人のうち4人が入っていらっしゃる、3億円の右の世界は 100人のうち1人だということで、3億円で仮定で線を引いてございますが、日本の場合は、相続税の負担率は7.49%でございます。諸外国と比較しますと、それより低い国はドイツ、それより高い国はアメリカ、イギリス、フランスというふうになっております。

8ページをお開きいただきます。中期答申に際しましてさまざまな、今後相続税をどう考えていくかということについてのご議論をいただきました。この一表は最近の税制改正の主な流れをあらわしております。

税金の中には、所得課税、消費課税、資産課税、大きく分けて3つあるわけでございますが、所得課税につきましては、累進構造の緩和、税制のフラット化というのがなされてまいりました。2つ目の四角の消費課税は、63年度に3%で創設された後、5%へ引き上げられております。

この2つの世界というのは、消費課税につきましては、商品に対しては比例的ですが、所得に対しては、場合によって逆進的ではないかというご指摘をいただくことがございます。

それから所得課税につきましては、今申し上げましたように、フラット化という流れがございまして、上の2つの世界では、富の再分配という意味では、そういった効果を弱める方向に税制改正を進めてきているわけでございます。その中で、一番下の相続税をどう考えていただくかというのは、こういう富の再分配ということはこれから社会全体としてどういうふうに考えていくかということと関連していくわけでございます。

9ページは2つ目の経済構造の変化でございますが、これは経済のストック化をあらわしている表でございます。△で結んでおります折れ線グラフが所得の伸びを指数化したものでございます。■でずうっと折れ線グラフが続いておりますのがストックの伸びを指数化したものをあらわしております。バブルのころ非常に増えましたストックの指数は、その後バブル崩壊とともに下がりましたが、いまだに所得の伸びよりは高い。つまり、経済のストック化が進んでいるということが1点。

それからそのストックの内訳を見てみますと、実物資産、薄い斜線で入ってございますが、実物資産は、やはり平成2年、3年のころをピークに下がってきておりまして、一方金融資産は着実に増えてきております。いわばこの資産の中で金融資産の占める割合がだんだん増えてきている。大体、現時点ですと半々になっているわけでございますが、昔のように、相続はしたけれども納税をするお金なんかないというようなお話というのは、少なくともマクロベースではだんだん変わってきているということが示されております。

10ページ目、貯蓄を世帯主別の構成であらわしてみたもので、一番右上の49.5%、これが60歳以上の方が貯蓄を有している割合。大体全貯蓄の半分は60歳以上の世帯が持っていられて、その割合は年々高まっているという数字でございます。

11ページをお開きいただきますと、「平均寿命の推移」。この表で、一番下の平成11年、現在は人生80年時代になってきております。昔は人生65年時代ぐらいのころが長かったわけでございますが、このことが相続というベースでどういう影響を及ぼしているかと申しますと、昔は大体65歳ぐらいで亡くなられた方の遺産を35歳ぐらいの方が相続されるというのが典型的なケースであったと思われます。現在では、80歳ぐらいで亡くなられて50歳ぐらいで相続されるというのが典型的なケースに変わってまいりました。昔であれば、35歳のころというのは親の遺産をいわば当てにした形で人生設計を組まれる方が多かったと思いますが、現在では、50歳の方というのはご自身の資産形成もだんだん進まれてきている段階にあるのではないかと思われます。

12ページは、地価の推移と、それから一番最初にご説明をいたしました税制改正の推移を追ってみたものでございます。地価は平成3年度をピークに、現在はバブル期前の水準に低下しておりますが、累次の減税措置というのはそのまま残ったという形になっております。

13ページ、そのことを実際の相続税の負担で見たものでございまして、これは千代田区外神田に事業用の土地を 200m2、その他の財産1億 4,800万円を持っていられる方が亡くなった場合にどの程度の税金をお支払いいただくかというのをずうっと表にしてみたものでございます。

折れ線グラフで書いてございますのが地価の推移でございます。一方、棒グラフは税負担の推移ということで、平成3年に相続税の負担がピークを迎えたときには、この方のケースの場合ですと、1億 9,000万円の税金がかかっていたわけでございますが、その後、1つはバブルの崩壊、それから減税措置によりまして、現在では一番右の 1,144万円まで軽減されております。この地価の折れ線グラフの伸びよりも棒グラフの落ち方が激しいのは平成4、平成6ということで、どんどんと2回落ちておりますが、減税の効果があらわれているわけでございます。

14ページ、住宅地について、全く同様の計算をしたものでございます。

以上のようなことを踏まえまして、中期答申におきましては、最高税率につきましては、個人所得課税の最高税率の格差が大きい等のことにかんがみれば、これを引き下げていく方向で考えることが適当ではないかと。

もう一点、課税ベースの問題につきましては、今のようなごく一部の資産家層を対象に課税するという従来の位置づけから、より広い範囲に課税していくという方向でそのあり方を検討していくことが必要ではないか。いずれにせよ、そういったことを総合的に幅広く検討を行うことが適当であるというお考えを示していただいております。

15ページにつきましては、「贈与税の仕組み」を簡単に書いてございます。贈与税は相続税の補完税と位置づけられてございまして、この15ページの表にございますとおり、最高税率70%、相続税と同じ税率で設定されております。

それから16ページ以下では、ほかの諸税といたしまして、資産税としては登録免許税、それから17ページ、18ページ、それから19ページに印紙税がございますが、こちらにつきましては、ご説明を省略させていただきたいと存じます。

以上でございます。

石会長

ありがとうございました。それでは、引き続きまして、地方税関係で固定資産税課長の井上さん、お願いします。

井上固定資産税課長

それでは、続きまして、資産課税に関しまして地方税関係につきましてご説明を申し上げたいと存じます。表紙に「地方税関係資料」、右肩に総4-4と付されている資料をごらんになっていただきたいと存じます。

表紙をおめくりいただきまして目次がございますけれども、さらにおめくりいただきまして、1ページでございます。これは固定資産税と都市計画税の概要について書いてある資料でございます。特に固定資産税でございますけれども、税収は、平成10年度決算額で9兆円余となっておりますが、一番下のグラフにもございますとおり、市町村税収の44%を占めておりまして、基幹的な税目となっているところでございます。

次に2ページでございますが、これは「固定資産税の土地評価と課税の経緯」でございます。中ほどの平成6年度から平成8年度の部分をごらんになっていただきたいと存じますけれども、平成6年度から公的土地評価の均衡化などの観点から、地価公示価格の7割をめどとして評価することとしたところでございます。しかし、その結果、評価額が急上昇することとなったところでございますけれども、税負担につきましては、急激な変化が生じないよう、緩やかに課税標準額を上昇させる負担調整率を適用することとしたところでございます。あわせて、住宅用地につきましては、特例措置を拡充いたしまして、税負担の緩和を図ったところでございます。

しかし、もともと以前から、各土地の間に評価水準の格差があったわけでございますけれども、それを7割評価に統一した結果、税額を策定する基礎となります課税標準額と評価額が乖離いたしまして、また、各それぞれの土地の間でもその乖離の程度に大きなばらつきが生じたところでございます。

こうしたことを踏まえまして、平成9年度からは、このような評価額に対します課税標準額の乖離の程度、これを負担水準と呼んでおりますけれども、その均衡化措置を講ずることといたしたところでございまして、その一環として、負担水準の高い土地につきましては減税または据え置きにすることとしたところでございます。

次のページでございますけれども、これが今申し上げました負担水準の各都道府県ごとの商業地に係る状況でございます。都道府県間におきましてかなりのばらつきがあることがおわかりいただけるのではないかと存じます。実はこのばらつきは、都道府県のみならず、市町村ごとに、さらには個々の土地ごとにあるというのが現状でございまして、課税の公平の観点から、この負担水準のばらつきを是正することが重要な課題となっているということでございます。

4ページはちょっと飛んでいただきまして、5ページでございます。こうしたことを踏まえまして、現在の宅地に係る固定資産税の課税の仕組みがどういうふうになっているかという資料でございます。左のほうの商業地等の住宅の部分をごらんになっていただきたいと存じます。今まで申し上げました負担水準でございますが、それが75%以上の土地につきましては、75%の水準まで引き下げることとしております。平成14年度につきましては、70%まで引き下げることとしておるわけでございます。それから負担水準が60%から75%の土地につきましては据え置き。特に価格下落率が全国平均の12%以上の土地、45%から75%の土地につきましては据え置きとしているところでございます。

負担水準の低い土地につきましては、その割合に応じましてなだらかに引き上げることとしているわけでございまして、よく地価が下がっているのに固定資産税が上がっているのではないかというご指摘がございますけれども、今ご説明申し上げましたとおり、一定の負担水準にある土地につきましては、税額が引下げ、または据え置きの状況にございまして、現在、税額が引上げとなっておりますのは、もともと負担水準の低い土地ということでございます。

右のほうは小規模住宅用地についての課税の仕組みでございますけれども、小規模住宅用地につきましては、価格に対しまして課税標準を6分の1とする特例措置があるところでございます。

6ページでございますけれども、こうした措置、そしてまた地価の下落の状況を踏まえまして、平成12年度の固定資産税の税収見込み額でございますけれども、前年に比べまして 2,120億円の減収の見込みとなっているものでございます。

7ページでございますけれども、主要都市における税収の状況を書いた資料でございまして、大都市につきましては、最近かなり税収が落ちているという状況でございます。

次に8ページは「特別土地保有税の概要」でございます。詳細は省略させていただきますが、現在は土地の有効利用を促進する税制としての役割を果たしているものでございます。

次に9ページでございます。これは当税制調査会の中期答申の抜粋でございますが、固定資産税の今後のあり方についてでございますが、一番下のほうでございます。下から2行目でございますが、固定資産税は、どの市町村にも広く存在する固定資産を課税客体としており、また税源の偏りも小さく、地方分権の観点からも市町村税としてふさわしい基幹税目であり、その安定的確保が必要であるとの考えが示されているところでございます。

また次の〇でございますけれども、地価公示価格の7割を目途とする課税評価水準につきましては、基本的にはこれを維持していくことが適当であるとされているところでございます。

次に11ページでございます。固定資産税と離れまして、「不動産取得税の概要」でございますけれども、課税主体は都道府県、納税義務者は不動産の取得者でございます。

12ページでございますけれども、この不動産取得税の住宅と住宅用地の特例措置について書かれているものでございまして、住宅は新築の場合、評価額から 1,200万円を控除することとしております。また住宅用地につきましても、新築、中古とも住宅の床面積の2倍相当額を減額するという特例措置があるところでございます。

13ページでございます。「事業所税の概要」でございますけれども、人口30万以上などの都市に所在いたします事業所に対しまして課する目的税でございます。現在の課税団体は70団体となっているものでございます。

簡単でございますけれども、地方税関係につきましての説明を終わらせていただきます。

石会長

ありがとうございました。引き続きまして国際課税に入りましょう。では、杉江さん、お願いします。

杉江国際租税課長

お手元の資料、総4-2という資料に基づきまして、国際課税に関しましてご説明を差し上げたいと思います。

まず1ページ目を開いていただけますでしょうか。「国際課税の現状と課題」についてまとめたものでございます。今回の中期答申におきましては、国際課税につきましても、その基本的な考え方を体系的、総合的にまとめていただいたということで、国際課税の面についても画期的なものだったと考えているところでございます。

まず国際課税とは何かということでございますが、この中期答申の中では、国境を越える経済活動に対する課税、これを国際課税と呼んでおります。

左のところでございますが、「国際課税を取りまく環境」、これにつきましては、まず、経済活動が一層国際化をしている。グローバリゼーションと呼んでおりますが、企業が事業形態の多様化をしている。あるいは個人が投資活動をいろいろ多様化させている。こういうような国際化が進んでいる。

2点目は、情報化の進展でございます。電子商取引はクロスボーダー取引への参加を容易にするということで、いろいろな方が電子商取引を使えるようになっている。あるいはそういうような情報化の進展に伴いまして、サービス取引でございますとか、無形資産取引の重要性が高まってきている。あるいはグローバルトレーディングというような新たな形の取引が出現しているという状況がございます。

政府のほうでは、一番最後にございますが、有害な税の競争ということで、金融に対する優遇措置の導入の動きが見られます。これにつきましては後ほどご説明を差し上げたいと思っております。

このような国際化、情報化の進展に伴いまして、税の面について見てみますと、国際的なそのような経済活動につきまして、各国の課税権が競合する、あるいは課税の空白が起こる、そのような可能性が高くなってきております。一例を申し上げますと、いろいろな国で活動を行っております多国籍企業がございますが、このような多国籍企業の活動につきましては、いろいろな国が重複して課税するという可能性が起こります。また、タックス・ヘイブンのような国があるわけでありますけれども、このような国に子会社を設立しまして、その子会社に所得を留保するということになりますと、そのタックス・ヘイブンを使った取引につきましては、親会社の本国でも課税されませんし、そのタックス・ヘイブンでも課税されないということで、課税の空白が起こるというような問題が生じているわけでございます。

そういうような問題に対して、現在、国際課税に関する制度がどういうふうになっているかというところを簡単に真ん中の図でご説明を差し上げたいと思います。

まず国際課税の趣旨でございますが、国際的な二重課税を排除するとともに、我が国の課税権を確保する。これが大きな考え方になっております。この国際的な二重課税がどうして起こるかと申しますと、国際課税の考え方には2つの大きな考え方がございます。1つは、居住地国の課税。これは納税者が居住している国がその納税者の全世界所得に対して課税をするという考え方でございます。もう一つの国際課税の考え方は源泉地国課税というもので、その所得が発生した国に課税権があるということで、その所得が発生した国がその所得に対して課税するというのが源泉地国課税の考え方でございます。

この2つの考え方によりますと、国外に源泉のある所得につきましては、この居住地国の課税、源泉地国の課税、それぞれの考え方に基づきまして、重複して課税が行われる可能性があるということで、この国際的な二重課税が生じてしまうということになるわけでございます。

それから我が国の課税権の確保ということにつきましては、こういうような課税が競合する、あるいは課税の空白が起こるということに対しまして、いかにして我が国の課税権を確保していくかということが重要になっていくわけでございます。

したがいまして、国際課税の問題の中心というのを考えてみますと、こういうような国際的な二重課税を排除しつつ、一方で課税の空白を防止することによりまして、いかに自国の課税権を確保するかというところが大きな課題になるのではないかと考えております。先ほど申し上げましたような国際化、情報化に伴いまして、この国際課税の問題がますます重要になっているというようなご指摘をいただいているところでございます。

この国際課税の制度につきましては、国内法の仕組み、それから国際課税のルールという2つの面がございます。国内法につきましては、ここに書いてございますような外国税額控除、移転価格等々の国内法上の制度がございます。もう一つの国際課税の制度としては、ここに書いてございますが、国際的な課税ルール、これは二国間の租税条約、あるいはOECDでのOECDモデル、あるいは移転価格ガイドラインというような国際的な取り決めがあるわけでございます。これは、当然、各国の税制はそれぞれの国の事情で異なっているものでございますから、その仕組みが異なる税制をどういうふうにやって調和をするかと。そのための国際的なルールが必要になっているということでございまして、こういうような国際課税の中では租税条約の果たす役割は大変重要なものになっているということでございます。

現状でございますが、先ほど申し上げましたように、クロスボーダー取引が量的に増加、質的に変化しているということで、こういうような課税の競合、繰延べ、回避の機会が急速に増加していく中で、どうやって我が国の課税ベースの侵食を防止するかというところが大きな課題になっているわけでございます。

「今後の課題」でございますが、具体的な課題、いろいろな指摘をいただいておりますが、本日は時間がございませんものですから、このうちの事業形態の多様化への対応だけについてご説明を差し上げたいと思っております。

途中を飛ばしていただきまして15ページをお開きいただきますでしょうか。先ほど申し上げましたように、企業の事業形態が多様化しているということで、ここで示しておりますものは、海外の事業体が我が国において事業とか運用を行って収益を得ているというようなものを図に書いたものでございます。例えば今まではあまり日本では見られなかった外国のパートナーシップ等の事業形態がございまして、こういうものが多様化している。そうしますと、我が国の税制では、その外国の事業体がその外国におきまして私法上法人とされているかどうかということで、法人課税の対象とするかどうかを判断しているわけでございます。

したがいまして、さまざまな事業体の中にはその外国で法人格があるものもございますし、ないものもあるわけでございますけれども、その法人格がないようなものについて見てみると、日本では法人課税の対象にしていないということで、その活動実態を見てみますと、法人税の課税対象とすることがふさわしいものもあるのではないかというようなご指摘をいただいているところでございます。

このような法人格を持たないような事業体、これを法人課税上どう取り扱うかという問題につきましては、法人税制全体にかかわる問題でございますが、このようなクロスボーダーの外国の多様な事業体に係る取引につきましても、活動の実態等、実質的な基準によって課税を判断することを検討することが必要だというようなご指摘をいただいているところでございます。

それでは、2ページをめくっていただきまして17ページ、先ほど指摘をいたしました「有害な税の競争」について簡単にご説明を差し上げます。現在、OECDの中で有害な税の競争にかかわる議論をしているところでございますが、経済のグローバル化に伴いまして、金融、その他のサービス産業のような「足の速い」経済活動、これを誘致するために、タックス・ヘイブンでありますとか、あるいはその加盟国の中にも有害な税の引下げ競争を行っているというような事例が見られているわけでございます。

このような「足の速い」経済活動に対して優遇税制を講じますと、例えばサラリーマンの所得でございますとか、消費税でございますとか、このような可動性の低い課税ベースが相対的に重課になるということで、税体系の公平性、中立性が損なわれるわけでございます。さらには、課税ベースが侵食をされて税収が減少する。そのことによりまして、ひいては資本移転、経済活動が歪んでしまうというような問題点がこのOECDのレポートの中で指摘されているところでございます。

この問題につきましては、各国で単独で対処することは限界があるということでございまして、現在、OECD、あるいはEUといった国際的な場で議論がされているところでございます。OECDにおきましては、現在、アメリカとフランスが共同議長、日本とアイルランドが副議長ということで、この「有害な税の競争」のプロジェクトをやっておりまして、我が国は幹事国として、この税の競争のプロジェクトを強く推進している状況にございます。また、累次のサミット、あるいはG7等の会合におきましても、この税の競争のプロジェクトは強く支持されているところでございます。

次のページは現在の状況でございますけれども、この有害な税の競争は、1つが加盟国の有害税制、2番目がタックス・ヘイブン、3番目が非加盟国との対話の3本柱がございます。加盟国の有害税制につきましては、ことしの6月に加盟国の有害税制のリストというのを公表しております。その中で、47措置が潜在的に有害であるということでリストに計上されているところでございます。今後は、どういうところが有害かどうかという具体的な指針を作成しまして、2003年4月までに有害税制を除去するということが決められているところでございます。

この加盟国の有害税制につきましては、既にOECDの中で、この加盟国は有害税制の新規導入を行わない、それから既存の有害税制については2003年までに廃止をするということが決められているところでございます。

2番目の柱でございますが、タックス・ヘイブン。これにつきましても、本年6月にタックス・ヘイブン・リストというのをOECDから公表しております。このリストによりまして35カ国がタックス・ヘイブンとして認定されております。それ以外に6つの国がございまして、この国についてはもう有害税制をなくすということを約束したということで、大きな成果が得られたのではないかと考えているところでございます。

今後の作業でございますが、これらのタックス・ヘイブンとの対話を続けまして、このタックス・ヘイブンのうちOECDの税の競争に対して協力的なタックス・ヘイブンと、非協力的なタックス・ヘイブンに分けまして、この非協力的なタックス・ヘイブンのリストを来年の7月末までにつくることになっております。この非協力的なタックス・ヘイブンにつきましては、協調的な防御措置を加盟国で協調してとっていこうということを今検討しているところでございます。

もう一つは非加盟国との対話でございますが、この「有害な税の競争」は加盟国、タックス・ヘイブンだけの問題ではございませんで、いろいろな非加盟国がございまして、そういうような非加盟国に対しても税の競争の考え方を説明して、その理解を求めるというようなことを今後、ミッションの派遣、地域セミナーの開催等で行おうということになっているところでございます。

以上、簡単ではございましたが、国際課税についてご説明を差し上げました。

石会長

ありがとうございました。それでは、残された諸問題につきまして、大蔵省から、調査課長の池田さん、主税企画官の上田さん、そして自治省から、企画課長の小室さん、続けてご説明ください。では池田さんからどうぞ。

池田調査課長

引き続いて、総4-3、「資料」とありまして、納税者番号制度、環境問題等々という表紙になっている資料をごらんいただきたいと思います。

2枚おめくりいただいて、1ページをごらんいただきたいと思います。最初は納税者番号制度についてです。仕組みでございますが、ほとんどの方はすでにご承知のとおりでございますが、右肩に付番機関ということで、左側の個人や法人に一連の番号をつける。それをいろいろな取引をする際、例えば金融機関で口座をつくる、債券を買う、株を取引するといった際に、本人確認として、その番号を告知していただく。そうすると、その金融機関等を初め、その番号告知を受けた機関は情報申告、あるいは法定資料等で税務当局へ取引内容を報告する。個人や法人から後で申告が出たときに、その番号を持って情報とマッチングいたしまして、申告の内容が正しいかどうかがチェックできるというのが納税者番号の仕組みでございます。これによりまして、取引をする際に真性の名義を使うということが担保されるであろう、あるいは、税務当局にとってはさまざまに収集した資料の突合や名寄せが効率化できるであろうということで、よってもって、適正・公平な課税、あるいは税務行政の効率化、高度化といったことに大変大きな武器になるであろうという意義を有しているというふうにまとめていただいているわけでございます。

これまで、ご承知のように、課税方式、なかんずく所得税の総合課税化、利子を含めた総合課税を行う場合には、当然の前提条件であるということで議論がされてきました。また、タックス・コンプライアンスと申しますか、納税者としては、税制が正しく執行されているという信頼感を醸成していく上でも、こういった制度があることが有力ではないかというご意見をいただいてきたところでございます。

1枚おめくりいただきたいと思います。諸外国の状況ですが、これもよくご承知のとおり、アメリカ、カナダにおきましては、1960年代に社会保障番号を使って納番が導入されました。あとは北欧、デンマーク、スウェーデン、ノルウェーといった国が住民台帳番号的なものを使っております。最近では、お隣の韓国が93年に金融実名制といったこととあわせて住民登録番号を納税者番号に使って大きな成果を上げたと聞いております。

ただ、反対に申しますと、よく国際比較に出てまいります英、独、仏といった国では納税者番号は使われておりません。

3ページ目をごらんいただきたいと思います。納税者番号につきましてはさまざまに課題があるわけでございますが、この3ページの右肩上のほうにありますように、必要とされる付番のあり方をどう考えるか。やはり、全国一連の番号で二重付番がない。あるいは個人の番号は一生不変である。住所情報とのリンケージがきちっとついている。大多数の個人をきちんとカバーするといったことが条件になるわけでありますが、我が国の場合、残念ながら、そういった番号は現状では存在しておりません。

下にまいりまして、情報申告書の範囲をどのように考えるか。最初にも申しましたように、番号が付されているだけではなくて、それが取引の場面で使われ、そして税務当局に対して情報として申告されるということがセットでなくてはならないわけですが、その範囲をどこまでいろいろな事業者に義務をかけていくのかということが問題になります。

左側にまいりまして、その義務をかける範囲によりましては、経済取引のシフト、金融取引のシフトといった不測の影響を与える可能性がございます。あるいは、いろいろな事業者に情報申告をお願いしていきますと、かなりのコストがどうしてもかかってしまうということで、それと効果との兼ね合いが問題になろうかと思います。あるいはプライバシーの問題についてまだまだ不安があるのではないかといったことが課題となっているように思われます。

4、5、6ページはそういった課題についての紙でございますが、ちょっと飛ばしていただきまして8ページをごらんいただきたいと思います。付番がないと申し上げましたが、現状で基礎年金番号、住民票コードといったものが実行、あるいは法律によって定められております。基礎年金番号につきましては、基礎年金制度ができ、さらに平成9年の段階で、年金加入者につきましては一連の番号が付されたわけでございますが、もう一枚、9ページのほうをちょっとごらんいただきたいと思います。

内容について多少の評価をしております。基礎年金番号をごらんいただきますと、年金の支払いといった受益を伴う分野ですので、税務の分野で仮に使おうとしても、アメリカの例などを見ても、比較的受け入れられやすいのではないかということが言われますが、片や、年金の対象者でない方については自主申請にならざるを得ない。あるいはいろいろ年金掛金を掛けている途中で年金制度がいろいろ変わっていく過程では、きちんとそれがフォローされているかどうかということについてはなかなか難しい面がございまして、直ちには使いにくい状況にございます。

右側にまいりまして住民基本台帳番号につきましては、昨年、法律、立法化されまして、3年以内にということですから、今時点から2年程度の間には付番がされるということになってございます。この番号の優秀なところは、やはり住所移動がきちっと把握されるということでございますが、下のほうにまいりまして、現在、法律上、民間利用が禁止されております。したがって、先ほど言いました納税者番号の仕組みの中で本人確認や民間業者への告知といったことができない状況にございまして、これも直ちには使えないという状況にございます。

1枚おめくりいただきまして、以上、納税者番号につきましてはさまざまに課題がございます。これは中期答申のまとめの部分でございますが、一番最後、11ページをごらんいただきますと、国民生活全般に大きな影響を及ぼす制度ということでございまして、今まで申し上げたようなさまざまな論点について、さらに議論が深まることを期待する状況というまとめをいただきました。

12ページをごらんいただきたいと思います。ここからちょっと話題を変えまして、環境税についてでございます。環境税につきましては、地球温暖化問題との関係で注目されているところでございまして、ご承知のように、97年の京都会議におきまして、温室効果ガス、CO2 等についての削減目標が定められました。これについては、ことし、今月の11月13日~24日、ハーグにおきまして、この条約について実効あらしめるため、実施のためのさまざまな事項について最終的な合意を成立させるべく会議が行われますが、ここで合意を見るかどうかについては予断を許さない状況でございます。

いずれにしましても、最近の状況を見ますと、1990年に比べ、CO2 の排出量は5%程度上回っているということでございまして、国際条約が成立することになれば、かなり抜本的にさまざまな政策を組み合わせた対策をとっていく必要があります。

1枚おめくりいただきまして、こういった環境施策、特に地球温暖化の観点から考えますと、税だけではなくて、さまざまな政策が考えられます。やはり何といいましても規制といったことで、企業の工場等々の排出、あるいは自動車の省エネの燃費の基準でありますとか、あるいは電化製品の省エネの基準でありますとかいった形で、規制的な手段が最初の手段としてあります。あるいは、企業の省エネの取り組みとあわせて自主的に取り組んでいただく。

さらに経済的手段につきましては、工場といった、あるいは事業者といった排出者としてのポイントが絞られるのではなくて、ごく一般大衆からの排出、例えば自家用車といったものにあっては、税をかけることによって社会的コストを認識していただき、省エネルギーと申しますか、CO2 の排出を抑えていくというインセンティブを与えるといったことが議論されてまいるわけであります。

14ページをごらんいただきたいと思います。現行の税には、ご承知のように、日本の場合、炭素の排出に着目した税、環境税、CO2 税というのはございませんが、真ん中のほうにまいりまして、課税目的は異なっておりますけれども、結果としてCO2 の排出抑制と整合的になっているものとしては、現行でも、例えば石油税や揮発油税等の石油に対する重量的な税、あるいは自動車重量税、自動車税といった排気量、重量による自動車への課税といったことがあります。これは目的は全く異なっておりますが、結果として抑制しているという側面がございます。

15ページへまいりたいと思います。CO2 税については、北欧の諸国では90年代の初めに導入されました。これはそれぞれの国で大体、ガソリン税を初めとして燃料課税がありました。それに上乗せする形で、CO2 の排出源として、CO2 の含有量に応じた税負担を追加的に上乗せしたという形で導入されております。

さらに1枚おめくりいただきまして、最近の動きとして、同じくヨーロッパのイギリス、ドイツ、フランスなどで環境税という政策目的のもとに幾つかの税が導入されつつあります。イギリスなどについては、90年代の半ば、93年ぐらいから、ガソリン税を環境目的ということで毎年上げてまいりました。さらに来年からは、気候変動税ということで、産業向けについて課税が新たに行われると聞いております。

ドイツについても、エネルギー税の引上げ、あるいは電気税の創設といったことが行われており、環境税という手段を使うということはヨーロッパ諸国ではだんだん一般化しつつあるということであります。

ただ、北欧と違いまして、これらの国ではCの量、CO2 排出量に必ずしも課税の量がリンケージしていないということで、正確な、本格的な意味でのCO2 税とまではなかなか言いにくいのかなと思われます。

17ページでございますが、いずれにいたしましても、今回の中期答申においてまとめていただいた中で重要なのは、やはり税の問題を考えるに当たっても汚染者負担の原則を貫かれるべきである。すなわち、CO2 の排出により地球環境に負担を与えているとすれば、その負担を与えている者がその原因に関して原因者としての負担を負うべきであるということであり、税の論理から、税の手段を使うとすれば、一定の税負担を負っていただくという形で環境税というのは仕組まなければならないということではないかと思われます。

私は以上です。

上田主税企画官

次に電子商取引と税制につきまして、お手元の資料の続きでございますが、何枚か省かせていただきまして、恐縮ですが、22ページからご説明させていただきたいと思います。22ページでございますが、電子商取引の課税問題でございます。インターネットが、ご承知のとおり、そもそもグローバルな性格、あるいはボーダーレスな性格を有しておりますことから、OECDにおきまして国際的な検討が行われているところでございます。その検討課題を大別すると、ここにお示ししている3点でございます。

まず1点目、「取引の把握の困難化」とございますが、電子商取引は通常の取引と比べまして取引の把握が困難化する可能性があるわけでございまして、これに対していかに対処していくか。これはいわば税務行政全般にかかわる課題でございます。

それから2点目、「国境を越える所得の帰属と分類の判定」とございますが、これはクロスボーダー取引に係る直接税の問題、すなわち、国際的に活動している企業等の所得に対し、各国間で課税権をいかに配分するかにかかわる問題でございます。

このような課税権の配分、ルールにつきましては、先ほど国際課税のところでもご説明ありましたが、OECDモデル条約等におきまして定められているところでございますが、新たな取引形態である電子商取引にそのような課税ルールをいかに適用していくか、OECDにおきまして、専門的、技術的な検討が行われているところでございます。

次に3点目でございますが、国境を越える役務の提供、特にオンライン取引に対して消費課税をいかに考えるべきか。すなわち、クロスボーダーのサービス取引、とりわけインターネットの発展によりまして、音楽、映像、あるいは情報をオンラインで配信するということが可能になっているわけでございまして、そのようなクロスボーダーのサービス取引につきまして、消費課税をいかに考えるべきかという問題でございます。

この3点目の問題は制度的な意味合いが最も大きいと考えられますので、若干、次ページ以降敷衍してご説明いたしたいと思います。

次の23ページでございます。前回の総会におきまして、税制二課長からすでにご説明申し上げているところでございますが、この図は、電子商取引をモノの物理的な配送を伴う場合と、インターネットを通じてオンラインで配信する場合、この2つに二分いたしまして、おのおの国内取引モデルとクロスボーダー取引モデルをお示ししているものでございます。

まず左側の国内取引モデルでございますが、(a)(b)どちらにつきましても、この場合は通常の取引と同様、消費税が課税されてございます。ちなみに、(b)のインターネットを通じた配信取引はサービス取引と位置づけられているところでございます。

他方、右側のクロスボーダーの取引モデルでございますが、モノの輸入を伴う場合、すなわち [1]でございますが、この場合には、税関を通る時点で消費税が課税されるわけでございます。

そこで問題は [2]、インターネットを通じたクロスボーダーの配信でございまして、このようなクロスボーダーのインターネットによる配信につきましては、この図のように、配信事業者の事務所が海外にあります場合には、現行の取り扱いはこれを国外取引としてございまして、すなわち、消費税の課税対象外、いわば不課税という扱いになってございます。この状況はVATを有しております欧州諸国も同じでございます。

ただ、この取り扱いがいわばモノの輸入取引、あるいは国内のインターネット取引との課税の中立性からどう考えたらいいかということが議論されているわけでございまして、このような取引もやはり消費される国で課税されるべきではないかという原則のもと、どのような徴税の仕組みが設けられるかなどにつきまして、今OECDでいわば国際的な検討が進められているわけでございます。

なお、この点に関連いたしまして、よく米国ではインターネット取引促進のためにインターネット取引は非課税となっているという議論があるではないかということが往々にして言われる場合がございますが、これにつきましては誤解に基づく面もあろうかと思いますので、次のページ以降でちょっと補足的な説明をさせていただきたいと思います。

次、24ページでございます。結論から申し上げますと、アメリカでは、インターネット取引一般が制度上非課税になっているというわけではございません。確かに非課税にせよという議論も一部にはございますが、それはどちらかといいますと、米国の売上税の固有の問題点に基づく議論であるといったことに留意することが必要であろうかと思います。

このページではポイントは2点ございます。課税主体と課税対象でございます。アメリカの、ここでは小売売上・利用税とありますが、売上税と省略して呼ばせていただきますと、アメリカの売上税の課税主体は州や郡、あるいは市、アメリカ国内に 6,000に上る課税主体があって、それぞれが区々の税率を張っているということのようでございます。

それから次に課税対象でございます。財の販売、すなわちモノの取引は包括的に課税されておりますが、サービス取引、役務の提供取引につきましては限定的にしか課税されていないのが通例のようでございます。したがいまして、インターネットの発達によりまして新たなサービス取引、あるいはデジタル取引などが生じますと、その都度、課税、非課税が議論され得るという制度的な土壌があるわけでございます。

次のページをお開きいただきたいと思います。これはアメリカの州の売上税の州内取引のモデルと州をまたぐ小売取引のモデルを、先ほどと同様の形でお示ししたものでございます。ここでは、州内のモデルは先ほどの国内の消費税と同じ課税態様になってございますが、アメリカの問題点は、州をまたぐ小売取引でございます。

そこで右側の取引モデルをごらんいただきますと、Nexus がある場合、ない場合とございます。これはA州の消費者がB州の事業者からモノを買う場合に、B州の事業者が消費者のいるA州にNexus 、すなわち物理的な事業拠点、支店や代理店でございますが、これらがある場合には、事業者が通常の消費税と同じように納税義務者になりますが、そのような事業拠点がA州にない場合、こういった場合がインターネット取引では多いわけでございますが、消費者が自己申告しなければいかんと、そのような状況になってございます。

しかし、このような場合は自動車のような一部の例を除きほとんど機能していない。すなわち、制度上は課税はされているのだけれども、徴収は実質的に困難となっていると。こういったことは州の境に税関がありませんものですから、このモノの取引も含めて、すなわち[1]、[2]両方ともに起こる問題でございます。

こういった問題点はすでにカタログによります通信販売におきましてもあった問題でございますが、インターネット取引の発展により拡大しているようでございまして、こういったことを背景に、いっそ非課税にしたらどうかという議論が一部から出ているということでございます。したがいまして、これは売上税の固有の問題に起因した議論であるということでございまして、いわば更地から電子商取引の促進のためという議論ではないことに留意すべきではないかと思います。

他方、アメリカでは法律上、課税がモラトリアムとなっているのではないかというご議論もされることがございます。それにつきましては、次の26ページでございます。この第1パラグラフに、インターネット・タックス・フリーダム・アクトの簡単な説明を掲げてございます。確かに、この法律が今施行中でございますが、実は法律上の文言を見ますと、ここにある2点、インターネット・アクセス料への新たな課税についてモラトリアムをかけている。あるいは、電子商取引だけをねらい撃ちにした差別的な課税や複数の州による重複課税についてモラトリアムを課しているということでございまして、通常の売上税の電子商取引に対する課税自体に影響は与えないものというふうに解釈されるところでございます。

なお、資料にはございませんが、アメリカの連邦政府は、この地方の売上税につきまして非課税にせよという立場ではもちろんございませんし、まして国際的に消費課税を非課税にせよという立場に立っているものではございません。

3枚おめくりいただきまして最後のページに、中期答申の関連部分の要約をつけてございます。さきの中期答申におきましては、今申し上げました課税上の問題点のご指摘をいただきまして、今後とも、OECDにおける議論に積極的に参加しつつ、公平・中立・簡素の原則を踏まえ本問題について検討を進めようとおまとめいただいたところでございます。

以上でございます。

小室企画課長

自治省の企画課長、小室でございます。

地方税関係資料、先ほど固定資産税を説明しました総4-4に戻っていただいて、1~2分お時間をいただきます。「地方税関係資料」、総4-4の14ページから、環境の関係について一二補足させていただきます。

地方団体の環境対策ということで、条例、計画に基づきまして、14ページの上にございますように、リサイクル、あるいは交通基盤整備ですと、駐輪場の整備とか、パーク・アンド・ライドとか、そのほか植林、緑化、このように幅広く行っております。

なお、下のほうでございますが、6兆を超える経費を使っております。

それから次の15ページですが、これは法律における地方団体の位置づけですので飛ばさせていただきます。

16ページ、先ほど国税のほうからご紹介ありましたが、地方税が混じっておりますので、17ページでちょっと補足させていただきます。

17ページが地方税と環境との関係で、前のページの中段に当たる、結果として環境負荷の軽減となるものとして、地方税としましても、軽油引取税、自動車税、軽自動車税、あえていえば、かつてあった電気税、ガス税といったような関係がございます。それから環境という政策目的で、税負担の軽減を行っているものもございます。そこにありますように、低燃費車、低公害車についての自動車取得税の軽減、そのほか、公害防止施設等につきましては、固定資産税、特別土地保有税、事業所税等がございます。

なお、以上のほかに、地方団体が独自で環境関連としては、砂利採取税ですとか、あるいは東京都における自動車税の不均一化税、その他、一番下にございます核燃料税等の関連が出てくるかと思います。

最後に18ページでございますが、答申の中で、既存税制の関係とか、地方団体の役割がございますが、下から2つ目のパラグラフで、環境と地方税の関係でいきますと2つの局面がございます。廃棄物とか下水とか、地域の実情を踏まえて身近なところで対応する、こういった独自の対応がなじむものが1つ。それからもう一つは、地球温暖化対策といったような地球規模の問題でございますが、これについて、地方税を仕組むに当たっては、地方団体がばらばらということではなく、全国的視点から制度を構築するのが適当だと。2つの局面があるということに触れております。

以上でございます。

石会長

ありがとうございました。約1時間、大変盛りだくさんなご説明をいただきましたので頭が混乱してきたかもしれませんが、あと1時間かけまして、これから議論いたしたいと思います。

3回勉強会をやったわけでありますが、1回目は総論部分、2回目、3回目が各論を分けたわけでありまして、きょうは各論の最後のほうでありまして、このA3判に書いてあります3枚目のあたりの議論をやっているということで、全体の位置づけはもう一回確認してご議論いただければよいと思います。

資産課税以下の環境問題までやっていただきましたが、前回ご欠席の方もおられると思いまして、前回は所得税、法人税、消費課税、非常に重要な問題もやりました。そういう意味で、軸足は資産課税以下に置くといたしましても、前のほうに立ち戻ってご議論いただくのも一向に構いませんので、残った時間を有効に使いたいと思います。

それでは、ご質問でも結構ですし、それからご意見、さまざまなことがあろうと思いますので、どうぞご発言ください。どうぞ、森下さん。

森下委員

前回ちょっと発言する機会がございませんでしたので。

この「わが国税制の現状と課題」というタイトルの中で、1つは、私は法人事業のほうでございますので、法人税の問題とか、また、今新たに会社分割、連結納税という問題が論議されておりますけれども、これの起因するところは、高度成長から新しい世紀へ移る産業構造が変わってきたからゆえに、いろいろな事業採用をしなければならない、そしてまた新しい企業の活性化によって成長を図らなければならない、収益を上げなければならないと、こういう背景から出てきておる分割法であったり連結納税制度であると同様に、もう一歩、また地方分権にしても、私は同じことが言えるのではないかと思います。国のあり方と地方のあり方、これも戦後五十有余年たって新たな時代を迎えて、そういう地方と国という問題があるので、一括法ができたり、そういう意味で、そういう地方のあり方と国のあり方のために税はどうあるべきかと。また同様に、例えば医療、介護、また年金というふうな問題をとらまえましても、これも構造問題が背景にありますので、これも税の問題と、社会保障どうあるのかというふうな問題。

すべてが、どの切り口から見ても、この30~40年の一つの時代の変わり目に入ったというところで、やはり構造と税のあり方という問題をどうしても並行して考えていくべきであると。この調査会もどうしても税中心になるわけですけれども、その税を変える場合の時代背景と構造改革をやはり論議しながら、税はどうあるべきかということにこれから取り組むべきではないかと思っております。よろしく検討していただきたいと思います。

石会長

重要な問題で意見をありがとうございました。ちょっと1つ忘れたのですけれども、きょう中里さんがご欠席でありまして、ご意見を文書でいただいております。お手元に配付していると思いますので、お時間ありましたらごらんいただきたいと思います。どうぞ、どなたでも結構ですから。どうぞ、村上さん。

村上特別委員

前回やはり発言できませんでしたので、総論みたいなことになるのですが、前回の議論を聞いていましても、根源的には、政府、あるいは政治に対する不信感というものが税に対する不満、そういうものにあらわれていると思いました。その公平を期するという観点では、今森下さんがおっしゃったのですけれども、税の問題だけではなくて、社会保険に対する、あるいは年金、そういうものに対して将来にわたって国民が安心して納税できる、あるいはそういう保険料を払えるという環境をつくらなければいけないのだろうと思いますので、そういう観点では、同じ人が払うわけですから、同じ土俵でといいますか、舞台でやるべきではないかと。

それから、これはよく言われていますけれども、結局、節税であるとか脱税であるとかいうことの根源は、税負担感が異常に重過ぎたりすることですから、それはずうっと方向でも出てますけれども、できるだけ低く、広く、薄くとるということが原則になるのだろうと思います。

そういう意味で、ちょっと突拍子もないかもしれませんが、いわゆる所得税、あるいは法人税などについて、その一つの考え方として、実額控除というような考え方よりは、むしろパーセンテージ、つまり収入のある人は一定額、何がしか税金を払うのだと。それが当たり前のことなのだという納税意識を持たせるような制度を考えるべきなのではないか。課税最低限の問題もありますけれども、結局それが多いか少ないかという議論を幾らしても、あまり基準がはっきりわからないわけですから、国民は、収入がある人は何がしか税金を払うという納税義務というのを、言葉はどうかわかりませんが、ナショナルミニマムというか、そういう考え方がとれないのかなと。何とか控除、扶養控除、配偶者控除がいいとか悪いとかいう、実額控除の議論を幾らしてもそういう問題の解決にならないし、それから自営者とサラリーマンとの不公平感、そういうものも解決することにならないのではないかという気がするのですね。

法人税の約7割の赤字法人という問題も出ましたけれども、それもやはり、地方税ではありますけれども、国税としては一定の割合で、これは売上高でも何でもいいのですが、通常は売上高だと思いますが、一定の割合の税金を負担するのだという考え方ですね。そういうものが導入できないのかなという、そういう考え方はできないかなと思っておりますので、ちょっと……。

石会長

最後おっしゃったのは、ミニマムタックスみたいなのをお考えだと思いますけれども、控除とか何かは取っ払ってしまって、所得なり利潤があれば、例えば5%か10%かけたらどうかと、こういうご提案ですね。

村上特別委員

利潤とか言いますと、そこで控除とかいう問題が発生しますし、それからそこで節税とか脱税とか、出ますよね。そうすると、税務署へ行って申告しているときに、隣に自営業者の方がおられて、私の払っている税金、追加税と比べてみると圧倒的に差があるとか、そういうことを毎年感じますけれども、そういうことではなくて、一定の収入がある場合に一定額は払わなければいけないと。そういうことによって、税金が本当に高いのか安いのか、あるいは使われ方がいいのか悪いのかという国民意識がそこで高まるのではないかという気がします。

石会長

わかりました。ありがとうございました。ほかにいかがでございますか。猪瀬さん、どうぞ。

猪瀬委員

きょうのテーマというか、話題の中の一つで、CO2 税、炭素税ですね。こういう機会にこういう炭素税のようなものが出てきたときに、やはり道路特定財源なんかを見直していくきっかけだと思うのですね。こういう時代だからこそ、こういう環境税のようなものが出てきているわけですけれども、道路特定財源の問題、前からいろいろな問題があるということはご存じだと思うわけですが、炭素税をきっかけに日本の燃料課税全体を見直す、そういうきっかけになれば一番いいなと思います。

特に道路特定財源もいろいろありますけれども、自動車重量税というのは本当は道路特定財源ではないはずですよね。だから、そういうものなんかは、薄く広く炭素税はかけていったほうがいいと思いますが、その場合に、もちろん増税と減税が対応していかなければいけないと思いますが、自動車重量税はもうそろそろ、名前というか、概念をはっきりさせたほうがいいのではないかと。法律的に道路特定財源と書いてないわけですから、法律的に書いてないものを道路特定財源化、かなりの部分が比重で道路特定財源化されていますけれども、それはやはりモラルハザードというか、そういうことになると思うのですね。ですから、やはり法律的根拠のないものはなくしていくと。そのかわり炭素税のような法律的根拠をきちんとつくったものを入れていくというふうな考え方をしていかないといけないのではないか。せっかくこれが出てきたのですから、この際やはり見直すきっかけにぜひしていただきたいなと思っていますけれども。

石会長

それでは、松浦さん、どうぞ。

松浦委員

前回、前々回と欠席をしておりまして、市長会としてちょっと3点だけ申し上げたいと思います。

ゴルフ場利用税の問題でございますけれども、地方の団体の現下の厳しい地方財政状況のもとで減税要望というのは到底受け入れられないものだと思います。特にゴルフ場の利用者は地方団体のさまざまな行政サービスを受けておりまして、ゴルフ場の利用税を負担するのは私は当然のことだろうと思っております。

そして都道府県税分のみを撤廃するとかいうお話もあるようでございますが、全くこれは不可能な話でございまして、これは市町村交付金の削減につながり、また市町村からもかなり強い反対があるわけで、特に10万以下の市にとりましては、これは由々しい問題であると思っております。

それから、伝え聞くところによりますと、自然災害の被災者の住宅再建を支援する制度の検討が一部の国会議員の皆さん方によってなされているようでございます。これは財源として住宅所有者から負担金を固定資産税に上乗せして徴収する案になっているようでございます。固定資産税と全く性格の異なるものをあわせて徴収することは問題でございますし、事務経費も膨大なものになります。国民のコンセンサスが得られるかどうかも大いに心配でございます。この点について、全国市長会としても、負担金徴収に反対する意見を出させていただいております。税制に深く関連することでございますので、この機会に申し上げさせていただきたいと思います。

それから3点目といたしまして、個人住民税における株式譲渡課税の適正化の問題でございますけれども、これは前回にも大分出ていたようでございますけれども、個人住民税では株式譲渡益の源泉分離課税が非課税となっておりまして、公平性に欠ける制度となっている。また累次の税制改正で、個人住民税は大幅に減税される一方、市が行うべき行政サービス、介護保険ですとか、年金の問題にかかわります再任用の問題ですとか、そういうサービスがさらなる増加が見込まれているわけでございます。市長会といたしましても、株式譲渡益課税の申告分離課税への一本化の堅持を強く要望していることでございまして、地方税における課税の公平、適正化も十分念頭に置いていただきたいと思います。

以上3点でございます。

石会長

自治省のほうから、今の松浦さんの第2点で何か補足説明ございます? 固定資産税の上乗せ等々の話。あれば……。

井上固定資産税課長

それでは、第2点目の被災者住宅の再建支援制度につきまして、今お話がございましたけれども、簡単にご紹介させていただきますと、現在、超党派の国会議員の会がございまして、そこの中で、地震等が起こった場合に、全壊、または半壊した住宅に対してどういう支援をしていくかというようなことで、いろいろな案をご審議されているところでございます。その案として現在浮かんでおりますのは、住宅の所有者から一平米当たり25円を徴収すると。その際は市町村が固定資産税と合わせて徴収するというような案があるわけでございまして、この案に対しまして、全国市長会及び町村会から、さまざまな実務上の問題があるのではないかというご意見が出されているという状況でございます。

石会長

ありがとうございました。ほかに、どなたでも結構ですから、どうぞ。

(不明)

1つ、電子商取引のところでちょっと質問させていただきたいのですけれども、インターネットを通じて、モノのみならず映像とか音源とかソフトとか、それらを売買するということは、これからそういうサービス取引がますます増えていくかと思うのですけれども、特に異国間での取引というのは、その課税のあり方というのはOECDのほうでも問題視しているというようなことのご報告がありまして、その中でアメリカの売り上げ、小売売上・利用税ということのご説明があったのですけれども、その中で1つだけお伺いしたいと思いまして。州をまたいでの取引、インターネットを通じた配信サービス取引などの場合に、事業者のほうに納税義務がない場合、消費者が納税するというようなことが書いてありました。これは執行上の問題があると指摘されていると書いてあるのですけれども、この辺、何かのヒントになるかもしれないと思うので、ちょっとそこだけご説明をいただければありがたいと思います。

石会長

では上田さん、どうぞ。

上田主税企画官

その州をまたぐ小売取引でございますが、先ほど申しましたとおり、この25ページの図で申し上げますと、消費者のいるA州にB州の事業者が事業拠点、Nexus という言葉でございますが、事業拠点を持たない場合には消費者が自己申告をしなければならないという制度になってございますが、結局、これにつきましては、消費者からの自己申告というのはほとんどなされていないと。それに対して個々の消費者に対して税務上の調査も特に行われていないというふうに私どもは聞いておるところでございます。

ただ、1点、自動車の場合につきましては、自動車は、ほかの州から購入した場合でも、それを使う住所地の州に登録をしなければいけないという別途の要請がございまして、その登録の際にこの税を納めることが要件になっていると。そういったことで、自動車の購入に際しましては、この消費者の自己申告は機能しているようでございますが、それ以外の例につきましては、この自己申告というのが、制度上課税はされているのですけれども、実質上ワークしてない、そういう状況のようでございます。

(不明)

ありがとうございました。

石会長

ほかに。では水野さんの後、和田さんにして、こっちのほうへいきましょう。

水野(忠)委員

今、資産課税から始まって非常に興味深いお話を伺ったのですが、きょうは自由討議ということで、私の私見のようなお話をさせていただきたいのですが、資産課税の問題で、道盛課長、非常に興味深いことを言われまして、当然のことでありますけれども、いわゆるストック化が進んでいると。これは、今後考えてみますと、税制と照らし合わせるとどういうことになるかといいますと、消費課税が進んでくると、消費課税というのは、逆をいえば投資や貯蓄された部分には課税しないということですから、そこでまたストックが増加するということになるわけです。それから、先ほど税の競争の話がありましたけれども、いわゆる金融関係の所得、足の速い所得というものも、これをあまり課税すると逃げてしまうということで、どうも先行き頼りない状況になっていると。そういうことで、金融所得に対する税負担を軽くしますと、ここでまたストック化が生じてしまうと。

そこで何を言おうかということですが、結局のところ、そういう部分はもともと相続税といいますか、相続税は所得税の精算課税だと言われたこともありましたが、やはり相続税に対する依存は高くなっていくだろうというのが第1点でございます。

それから第2点ですが、相続税の最高税率、最近議論されておりますが、所得課税と同じように議論できない点は、もう一つ、今度は贈与税とくっつけて考えてみますと、これも先ほどの道盛さんのお話、非常に興味深かったのですが、かつて、いつごろのことかはわかりませんが、確かに65歳で亡くなると30代の子供が相続をすると。現在ではむしろ80歳の方が亡くなると50歳ぐらいの人が相続人になって、すでに財産形成などができ上がっているような方が相続する状況になっていると。

そうしますと、相続税の税率ですね。仮に所得の再分配というのを考えた場合に、35歳の人が相続する段階と50歳の人が相続する場面とではかなり状況が違っているということですね。ですから、一概に、所得の再分配という一つの機能がありますけれども、これをどういう家族関係で考えていくのかということを議論しなければいけないと思われるわけです。

それからもう一つ、これは補足ですが、いわゆる贈与税と相続税の関係、今お話ししたような年齢的な問題が出てまいりますが、35歳で相続する場合には、おそらく相続税という形ではとりますけれども、ある程度子供に財産を残して、そこで管理させて生活を維持させる、こういう機能があるわけですが、50前後の方が相続人になった場合に、さてどうなるのだろうか。そこで財産管理、わざわざ相続を受けて、これから相続として財産をいろいろ管理するという必要性がどうかといえば、やはり35歳の方に比べると随分減っているわけですね。

そうしますと、何を言おうかということなのですが、結局、ある程度贈与税の問題を考えていかざるを得ないのかなと。今我が国の贈与税というのは非常に厳しくて、1億円超えると70%超えたと思いましたけれども、そういう形で生前の贈与はかなり厳しく規制されて、最終的に、80歳の方が亡くなって50歳の人が相続すると。それでいいのだろうかと。各国それぞれやってきて、必ずしもいい例はほとんどないのですけれども、生前贈与、あるいはそういった形で信託などを使う形で生前に財産の分割なり移転などを認めておく、そういうようなことも考える余地はあるのかなと。これは具体的には贈与税のあり方ということになるのですけれども、そういうようなことをちょっと考えております。

長くなって失礼いたしました。

石会長

ありがとうございました。では和田さん。

和田委員

きょうご説明いただきました課題と、それから前回発言しませんでしたので、一緒に発言いたします。

1つは相続税の問題ですけれども、きょうご説明ありましたように、いろいろの経緯がありまして、現在、この程度の人なら相続税このぐらいですよというような実例も、それから 100人死亡があっても5人ぐらいしか相続税は払っていませんよと、いろいろな材料は提供していただきました。

ただ、今、相続税の累進を緩和すべきではないかというようなご意見もありますけれども、やはり今非常に財政状況厳しい中でそれをするだけの余地があるのかなというような気がいたします。それで所得格差が、今見ておりますと確実に開いておりますし、これは税制だけではなくて、医療制度が改められたり、それから介護保険の導入でいろいろな問題が出てきておりまして、どちらかというと高額所得者、裕福な層に対するいろいろな見直しなり、そういう方向にこの何年か進んできたと思うのですけれども、果たしてその方向にこれ以上進んでいいのかなというところが一般の人たちの私の周りの者の感想です。それで、財政が全然もうゆとりがあってというなら別ですけれども、そういう場でないところで、やはりそれは無理ではないかなという気がいたします。

これは贈与税につきましても、今のお話の85歳から50歳、昔は六十何歳から30歳ということで、また改めて考えなければいけないのかもしれませんけれども、今の60万円というのを、話が出てますのは非常にポンと高い金額がよく新聞なんかにも出ておりますけれども、そこまでやるというのはやはりちょっと納得いかないというのが受けとめです。

それから環境税につきましては、もうすでにお話が出ましたけれども、積極的に検討していくことが必要だと思います。ただ、今もいろいろなエネルギー税がありまして、この上にポンと乗せるというのではなくて、特にエネルギー税が特定財源になっておりますから、それが、きょうの資料にもありますけれども、外国とも相当違うと思うのですね。目的税にはっきりなっているというのが、特定財源になっているというのは違うと思いますので、やはりエネルギーの関連税、いろいろな税と一緒に整合性を全体で考えていく必要があるのではないかと考えております。

それから所得税について簡単に申し上げますと、今申し上げましたように、所得格差は確実に開いておりまして、前々回ですか、申し上げたかと思いますけれども、日本生協連の調査でも、800万円を境としまして、800万円を超える所得の人にとっては減税になってますけれども、それ以下のところでは所得税が増税になっているという実際の調査も出ております。そういう中で問題の一つとして課税最低限、これは課税最低限が高いから下げるというその一言で言われるのですけれども、やはり私はそれぞれの控除を丁寧に見直していく必要があるのではないかなと。その積み上げによって課税最低限の議論をすべきであって、いきなり課税最低限を下げるという言い方は少し乱暴ではないかなと。

課税最低限のことを考えますときには、やはり男女共同参画という面からの税制の見直しというのも必要になってくると思いますので、その辺、すぐに二者択一の結論は難しいと思いますけれども、確実にそちらの方向へ向けてきちんと議論していくべきではないかなと考えております。

それと最後に消費税ですけれども、消費税は中期答申の中でも重大な税目であるということが言われておりまして、はっきりどうするというのは出されておりませんけれども、議論の中では相当税率のアップということが各委員の方から多く出されておりました。それで、私は何度も発言しておりますから繰り返しになりますけれども、やはり逆進性があるというところで、所得格差が開いているということとあわせ考えまして、どのようにしていくのかという対応をやはり考えていかなければいけないと思うのです。

逆進性があることは認めるけれども、他の税目が累進的であり、社会保障もある程度手当てされてきているからというのが言われております。これは今回初めてではなくて、平成6年の答申の中にも、これは全体で判断しなければいけないということが言われているのですけれども、このときからさらに、このときは消費税3%のときなのですね。これから5%に上がり、パーセントが上がれば上がるほど逆進性というのは確実に出てくるわけですから、その辺の対応というのをやはりきちんと考えるべきだと考えております。

以上です。

石会長

ありがとうございました。それでは奥本さん、河野さん、それから水野さんね。

奥本特別委員

すみません。貴重な時間をおかりします。前回も出ていたのですが、株式譲渡益課税の問題です。あえてお話しするまでもないと思っていたのですが、またきょうも出ましたので、一言お話だけさせていただきます。

そもそも私ども、この問題、株式の譲渡益課税につきましては、ほかの金融資産の中立性、公平性の観点から検討していただきたいということが一番基本的なお願いであります。特に日本の金融システムを間接金融重視型から直接金融重視型に持っていかなくてはならないという中、やはり資本市場、株式市場にリスクマネーをどうやったら円滑に供給できていくのかということは大きな課題なのだと認識しております。

その中で、今、重要な個人の参加を促すためにも、現在あります源泉分離課税という部分をなくすことがどれだけのマイナス効果になるのかということで訴えているわけでございまして、ぜひその辺のところはご理解いただきたい。本来、これがなくなれば申告分離1本になって、地方税が増えるから、だからそれで反対だというのはあまりにも、ちょっと議論としてはいかがなものだろうかという気がします。

石会長

ありがとうございました。では河野さん。それから水野さんと、佐野さんもだね。

河野特別委員

全体の話と個別のテーマについて、僕は前回欠席したものだから申し上げたいのですけれども、最近の政党の議論とか学者の議論とかいろいろありますけれども、ここ2~3年で様変わりしたことが1つあるのですね。それは、法人税、所得税の税率の大幅な引下げという議論がほとんど消えたのです。法人税はもう国際的な水準に明らかになったわけで、その以上のことは財界からも出ていないわけです。

所得税は、僕はこれは明らかに下げ過ぎだと思ってますからね。過去数年間のいろいろな理由があってそうなってしまったのだけれども、それで大欠損が出ている理由の一つですから。有力な。これはいろいろな形で長期にわたって見直す方向でベクトルはいくべきなのですよ。だれが考えたって。ただ、そういう議論は、この前民主党が幾らかちょっと言って、すぐにうやむやになってしまったけれども、あの発想は基本的に間違ってない。

もう一つは消費税。これは僕は和田さんといつも全く意見が、10年間全く違うのだけれども、明らかに待機の姿勢。これは値上げのための、税率を上げるためのタイミングだけ考える。大義名分はあるわけで、歳出のカット関連でどう考えるかというだけの話ですね。つまり、根幹税については大方の合意はおおよそ大体でき上がっている。

地方税についていえば、さっきちょっと説明があったけれども、固定資産税なんていうのは地方税の本当の固有の基本的な税制で、でこぼこがあるから訂正するのは当たり前のことだけれども、これをこれ以上どうこうという議論は全く間違っている。地方財政の現状から見て、だれが考えても。

というわけで、根幹税制については、所得税は下げ過ぎ、消費税はこれから上がる、そういう基本的認識だけ持っていればいいと思うのですよ。だから、つまり方向は、減税一本やりのベクトルなんていうのはほとんどなくなっているのだという話ですね。直間比率論もなくなるわけで、消費税を上げて所得税を下げる、法人税を下げるという議論はもうなくなったわけですな。おしまいになったのですよ。そういう認識が必要だと思うのですね。

個別税制について言うと、さっき水野先生がいいことを言われてね。僕もたしか1年半ぐらい前に、生前贈与はもうちょっと考えたらどうだと言ったことがあって、随分大蔵省の人から冷やかされたけれども、やはり政策はああいう理屈があれば納得できるなという気がしてね。僕は自分が70になっているから、あまり金はないけれども、わかるような気もしないでもない。孫5人いますからな(笑)。わかるような気もしないでもないのですよ。60万はいかにもひどい。こんなものは。これは常識に戻したほうがいいという感じがするのですね。

それから最高税率は、これも前回から言っているのだけれども、いかにも今のやつは高いのですよ。適用する人間が少ないからもうちょっとふんだくったっていいではないかという気持ちもないではないけれども(笑)、そこはやはり基本哲学の話であって、あれはいじったほうがいいという気がしますね。

石会長

今のは相続税ですね。

河野特別委員

相続税。それから株式譲渡の話は、今新しい株式市場に登場する投資家が増えているので、その人たちをディスカレッジしてはいかんという議論があって、それはそれで正しいと思うのだね。この人たちがそんなにこれからもうけるかもうけないか知らないけれども、大したことないですよ、今の状態で見たら。来年、株式が大化けすれば別だけどね。だから、この人たちは頭に置いて、その人たちのことを考えて譲渡益課税についてはどうこうだという議論はあまりやることない。

事の本質は、今まで相当のストックを持っていて、その出所が実は不明であって、不明かどうかわからないけれども、それがはっきりなるのが嫌だというのが根本にあるのですよ。そんなことはみんなわかっているわけだ。だから、これから所得税のことについて何か総理がもの言うとかいうことになっているけれども、あれは格好だけつけているだけの話であって、これから個別税制の具体的な検討は年末、11月ぐらいにやるのかな、そのときには実態に即した議論をやる。一瀉千里で議論をやらない。もう一度きめの細かい、抽象的に言うけれども、議論をやったらいいのではないかという気がするのですね。

それから環境税は今こういう状況にあるのですよ。排出権取引という議論があるのですね。これは日本財界みんなプラスになるから、基本的にやることになっているのですよ。みんなオーケーなのです、そのこと自体は。ただ、排出権取引をやることによって、環境税を入れなくていいという議論が一部にあるのですね。私はその両方やるべきだという議論なのです。今そういうことを別のあれでやってますから。幾つかの複数のところで。

ただ、そのときに一番悩ましいのは、さっきどなたかおっしゃったけれども、既存の税制とどういうふうに絡むかというのは一番頭痛いのです。そろばん勘定がみんな違うものだから。個別業種、個別税種によってね。こんなもの、調整を本気になってやろうと思ったら、何ぼ強力な通産の官僚で頭よくてもなかなかできないですよ。関係省の職員入れても。というのが実態に近いと僕は思っているのです。

もう一つ、最近のヨーロッパで環境税絡みで上げているのは、環境税で上げるということがとおりがいいからやっているのですよ。それで財源は福祉関係に回しているのだから。消費税は15%でもうピークですからね。だから、環境税論議というのはいろいろな動機があって、純粋に地球環境論なんて、それは建前の議論は半分ぐらいあるけれども、本音半分は全然別のところにあるのですね。

だからそういうことを考えてみると、この議論も実態に即して議論することはなかなか難しいのです。ただ、税調に持ってきて税調が判断するのは先の話ですからね。あちこちでいろいろな議論を学者なり研究会なり省なりがやっているだけであって。ところが、ここに来たときには、会長、さばくのは容易ではないと思いますよ。石さんは大専門家でいらっしゃるけどね。だけど、それは先の話、来年今ごろの話ですから、まあゆっくり見てればいいことだと思います。

以上。

石会長

臨場感あふれる話、どうもすみません。では水野さん、どうぞ。

水野(勝)委員

きょうの議題の項目に即して申し上げさせていただければと思います。資産課税の問題でございますが、所得、消費、資産、バランスのとれた税制をということは前から言われてきているところでございますが、特に先ほどご説明ございました、個人金融資産 1,300兆ぐらいあって、それと同じぐらいの実物資産が蓄積されている。昔は所得はそのまま右から左に消費されているということでございましたから、所得課税と消費課税でいいわけですけれども、これだけ蓄積が増える、そういうことであれば、稼得してから消費されるまでの間が資産として保有されている。その資産に対して適正な課税がやはり行われるように考えられるべきではないか。

これを徹底しますと、かつてシャウプ勧告が言った経常的な財産税になるわけでございます。あのときは富裕税ということで、ごく低い税率での経常的財産課税が行われておりましたけれども、そこまではいかがか。それは地方税で固定資産税というものもありますし、そこまではいかないにしても、常々、資産課税について適切な課税を行うように配慮すべき。そして、現在におきましては、したがいまして、資産の再分配というよりは、経常的に資産に対して適切なご負担をお願いするというのが基本的な考え方の方向に、そういう方向に持っていったらいかがかなということでございます。

これを具体的に見ますと、国としては、相続税、贈与税があるわけでございますが、相続税について言えば、確かに最高税率の話もありますし、また基礎控除の話もある。しかし、先ほどのように、100人に5人というのはやや少なめではないか。したがいまして、仮に所得税、住民税にあわせて最高税率を下げていくということであれば、それと同時に、基礎控除等、課税最低限をどうするか、もう少し広くしてもいいのではないか。

それから、例えば先ほど、もう今や相続される方が50歳、60歳だというお話もあるとすれば、基礎控除をかなり下げていって、しかし、そこに例えば、30代の人は1人 1,000万円であれば50代の人は 500万というふうに年齢的な配慮がある。これは現在の税制でも未成年者について相続税に税額控除があるわけでございますから、そういう発想は今でもあるわけですから、そういう工夫をしてでも、相続人となる方の年齢構成を考えてもいいのではないか。

それから現在、先ほどご説明があった小規模宅地については8割控除という、これはバブル期にできた税制でございます。もともとは2割から3割ぐらいの控除だったわけでございますから、そのあたりは見直していくことが必要ではないかと思うわけでございます。

地方税について申し上げれば、先ほどお話もございましたが、まさに固定資産税というのは住民税とともに市町村民税、地方税の基幹税でございますから、現在ございます6分の1評価というのはいかが。これはその前のバブル、昭和48年のときに2分の1になり、49、50年でございますか、4分の1になり、そして平成になって、バブルでまた拡大されて6分の1になっている。これは機会を見つけて、それからまた、例えば相続税をある意味で税率を下げたりするときにあわせて、資産課税として、何か機会を見つけて、6分の1課税というのはせめて4分の1課税、あるいは3分の1課税評価に戻していく必要があるのではないかと思うわけでございます。

それから資産課税に関連して、直接関連するかどうかわかりませんけれども、株式のキャピタルゲイン課税の問題があるわけでございます。これは先ほどもご議論ございました、金融資産間のバランスの問題という点もあろうと思いますし、今までの資産、どうやって蓄積されたのだというその出所についてのいろいろな複雑な受け取られ方がある。ということであれば、ここで完全に、分離課税、比例分離課税にしても課税の方向に行くということであれば、思い切って、今まで蓄積された部分というのはもう問わないと。今後発生するキャピタルゲインに限って課税をしていくのだというぐらいに徹底して、そういったことでご納得を得ていくという方法もあるのではないかと思うわけでございます。

資産課税に関連してきょうお話しございました納税者番号でございますが、これはかつてグリーンカード制度でなかなか複雑な世の中のご感情を受けて今は消えてしまっているわけでございますけれども、あまり完全な付番を行う、そして常に、資産取引をするときに、あるいは事業取引をするときにすべてそれを申告するという、そこまで徹底するということは、なかなかこれは言うべくして難しいではないか。グリーンカードのときの経緯等も考えますと、そんな感じがいたします。

銀行預金をするとき、あるいは証券会社で口座を開くとき、必ず、現在ではかなり厳密な本人確認が行われているわけでございます。身分証明書はあまり認めてくれません。印鑑証明書とか運転免許証とか、そういったものをきちんとおとりになって口座を開いておられる。ということでありますから、もう事実上金融取引については本人確認は行われていると見てもいいのではないか。

したがいまして、そうした実情を前提として、今後、資産課税、すべて税務署へその点を情報申告するというところまで徹底するというと、世の中なかなか複雑な受け取られ方をしますので、そうした本人確認が行われている状況を前提として、税務調査等に積極的にこれを活用していくというあたりぐらいから道を開いていくということも考えないと、どうも完全な納税者番号制というのはなかなか道が遠いという気がするわけでございます。

それから環境税関係について言えば、やはり従来から長い考え、経緯、特定財源がございます。これを一気に見直していくということは事実上なかなか難しかろうと思います。概ね、現在、燃料であれ、自動車であれ、かなりいろいろなご負担はいただいている。その中でやや軽めかなと見られるのは、トラック関係、ディーゼル車関係でございます。そういうことであれば、むしろこの際、実質的な平等を保持する、維持する、回復するためにも、トラック関係やディーゼル車関係についてご負担を願う。そしてほかの燃料課税、自動車課税とバランスをとるということでもいいのではないか。そういった観点を持って検討してもいいのではないかという感じがいたします。

以上でございます。

石会長

どうもありがとうございました。思いのたけを述べていただいた感じでありますが(笑)、時間が大分押してきましたので、手短にご発言をお願いします。では佐野さん、どうぞ。

佐野委員

資産課税についてちょっと申し上げたいのですが、1つは株式譲渡益課税の問題がいろいろ取り沙汰されていますが、私は基本的に、これは予定どおり実施することを基本に今後の検討に入るべきだと思っております。なぜならば、これはすでに法律になっている話でありまして、税制というのはとかく弾力性でよく動くということばかりが目につくわけですが、これはまぎれもない法律でありまして、法律で決まったことはそのまま実行するということが、言ってみれば民主主義といいますか、法治国家の基本でありますから、その点は重視しなければいかん。

それからこの株式譲渡益課税についてはいろいろ議論を経た上でこういう決定になったわけでありますが、税制調査会としての、この申告納税の一本化ということについて了承を与えたという経緯がある。それだけ我々としても重みを意識しなければいかんと思います。

奥本さんのおっしゃっていること、お立場、お気持ち、よくわかりますが、これが申告納税一本化ということになった原因の一つは、やはり所得課税である限り所得を基準に課税するべきではないかと、それが各国に共通したグローバルスタンダードにもなっていると。やはり売買代金というものに一定率を課税するというのは所得税の課税方式としていかがなものかということがあったと思います。ここら辺も尊重しなければいかん点ではないかと思っております。

それから相続税に関してですが、先ほどから出ております生前贈与についてですが、私も、生前贈与の拡大ということは早急にやるべきではないか、決断すべきではないかと思います。各国の相続税制度を比較してみましても、なかなか前提があって国際比較が困難な分野ではありますが、はっきりしているのは、日本では生前贈与が非常に厳しいということであります。

特に創業者のような方にとっては、生前に息子さんなりに経営の資産を譲り、自分の目の黒いうちに経営指導に当たりたいと、そして安心して老後なり人生の終末を迎えたいと、こういう人情があるわけでありまして、そこら辺も配慮すると、日本の生前贈与は厳し過ぎるということで、これをやるに当たっては、先ほど水野委員からも出ましたけれども、やはり贈与税との関連といいますか、一体的に考えるということがどうしても必要になるわけで、今の贈与税の議論というのは、何か60万円を 100万円にしろとか、そういう議論ばかりで、ちょっと矮小化されているわけでありまして、相続税、贈与税一体で考える姿勢が今後必要ではないかと思います。

最後に、これは若干大蔵省への質問も含むのですが、最近また出てきた話に、無利子国債の議論がある。きょうも与党の間でこれをまたちょっと考えてみようという機運が出てきたような報道が夕刊に載っておりますが、私は、この無利子国債、あるいは相続税の対象外にする特異な国債を出すことに反対でありまして、そういうことを考える前に国債をいかに減らすかということが大事であって、国債の消化策というものをあまり緩めると、かえって財政の節度を損なう懸念があるということで、基本的に反対であります。

ただ、今後議論、若干尾を引きそうな話なので、二三、大蔵省当局に質問したいわけですが、これは去年かおととしだったですか、1回出た話であって、そのとき、与党と大蔵省の間で若干のやりとりがあったように記憶しております。そのときのことをちょっと思い出してもらいたいわけですが、そのときの議論で、この無利子国債の商品の内容みたいなものに話が入ったのかどうか。例えば償還期間をどうするのだと。あまり短いものですと、自分がまだ生きているうちに満期を迎えてしまうと、また買いかえなければいかんというようなところもありまして、そういう商品性の話にも入ったのかどうか。

それから例えば無利子ということで、換金性とか市場性、流通性は若干ハンディを負うわけでありますが、そこら辺の換金市場とか、場合によっては買取市場みたいなものまで考えられていたのかどうか。これは二三のあくまで頭で考えた話ですが、つまり聞きたいことは、そういうところまで議論が入ったのか、あるいは相続税の減少になるという入り口論で終わってしまった話なのか、ちょっとそこら辺を伺いたいと思います。

石会長

では大蔵省から無利子国債につきまして、竹内さん。

竹内審議官

今ご質問の商品性とかそういう議論というのは、私は主税局の前に理財局におりましたので発行のあれもありましたが、1度もそういう議論があったとは記憶しておりません。まさにおっしゃったような入り口論としての相続税なり国債のあり方として適当でないという議論があったやに承知しております。

石会長

それでは、時間も押してきましたが、あとお一人二人。では松尾さんから、その次、そっちに振りますから、お待ちください。

松尾委員

キャピタルゲイン課税の問題ですけれども、この問題については、これまでの経緯をやはり再確認しておく必要があると思うのです。有取税廃止とのセットで決められたものでありますし、これを源泉分離を単純延長するとしますと、それではどうするのだと。外国にもあまり例を見ないような源泉分離を単純延長するとすれば、やはり有取税も復活するのかと、そういうことになると思うのですね。そういう議論が当然出てくる。やはり税の公平の原則、これはやはりはっきりさせる必要があります。それと、仮にこれを単純延長しますと国際的なクレディビリティの問題が生ずるわけですね。そこを一体どう考えてくれるのかということであります。

また、利子も総合課税にすればいいではないかという議論がこの問題に関連してありますけれども、利子を総合課税にする場合は、資料情報制度の充実とか、納税者番号制度の導入とか、それが必要なのでありまして、それがそう簡単にできるものではないということですね。この点もやはり十分考えてみる必要があると思います。

それと環境税の問題でありますが、これは水野さんご指摘のように、特定財源なんかは一気に見直すのは難しいと。まさにそのとおりだと思いますけれども、やはり既存の税制との調整、これはどうしても出てくると思います。これまでのエネルギー対策としての原・重油関税、それから道路特定財源としての揮発油税などありますが、その上に仮に炭素税を導入するとすれば、本当に上乗せできるのかどうか。そういう問題があると思いますが、いずれにしても、環境制御のための税制というのは真剣にやはり考えていく必要があると思います。ですから、この問題については、道路特定財源の見直しは当然出てくると思いますし、この際、聖域を設けずに検討してみる必要があると思います。これは環境税だけに限りませんけれども、今後の税制調査会の審議に際しては、道路特定財源の問題も含めて一切聖域はなしということにしていただきたいと思います。

石会長

ありがとうございました。それでは松本さん、どうぞ。

松本委員

先ほど松浦市長さんのほうから市長会のことで出たわけでございますが、町村会のほうも、実は私の町にもゴルフ場を持っているわけですが、この利用税関係、本当に市町村にとっては極めて重要な財源になっております。そういうことで、地方税関係の充実確保ということになっているわけですから、ぜひとも堅持をお願いしたいと思います。

それと同時に、今、道路特定財源、環境問題で出たわけですが、地方にとってはまだまだ道路関係というのは本当にしなければいけない。高速道路にいたしましても、高規格道路、県道、国道にしてもあるわけですが、そういうことで住民のニーズというのは高いのです。そういうことを考えますと、道路特定財源、地方団体といたしましてはこれは絶対堅持をしていただきたい。そういう意見を持っております。

それから前回に申し上げたのですが、松浦市長さんからも出たわけですが、やはり地方税の充実ということで、個人住民税関係で株式問題、これはやはり申告分離課税ということで地方団体としてはぜひともお願いしたいという気がいたします。

石会長

ありがとうございました。では、どうぞ。

猪瀬委員

この前の税調の終わりに島田さんが、税調のフラストレーションがあるということで、ほかの審議会との関連とかそういうものを総合的にやっていただきたいということで、改めて相続税や贈与税の問題も、この間の有識者懇でリバース・モーゲージの問題が出てましたから、そういうのと併せて考えるということもぜひやっていただきたいということ。

それから納税者番号の問題も、個人情報保護法との問題がありますから、個人情報保護法というのは非常にちょっと問題がある部分がありまして、自分の情報の開示権とか是正権とか、あるいはそれを見る権利、それがなかったりするのですね。それからプライバシーの問題がある。個人情報保護法との関連で背番号も考えていかないといけない。

その2点、ちょっと追加しておきます。

石会長

ぼつぼつ終わりにしたいのですが、よろしゅうございますか。

きょうで一応勉強会という形の3回のシリーズは終わったことにいたします。さまざまな問題をお出しいただきましたので、これはいずれ資料として引き続いてご議論いただくための参考にしたいと思ってますから。例えば環境税の話にしても、あるいはキャピタルゲインにしても、あるいは相続税、贈与税一体化の問題等々、貴重なご意見をいただきまして、ありがとうございました。それで、まだ議論は続くわけでありますので、きょうご発言いただかなかった方も次回はぜひご発言ください。

これから一応年末の税制改正問題に移らなければいけないと思いますが、目下、日程はまだ調整中でありまして、候補としては、一応火曜、金曜ということを開催のルールとしておりますと、11月21日の火曜日か11月28日の火曜日、いずれかの午後あたりを最初の年度改正審議という形に充てたいなと考えておりますが、まだいろいろな形の日程が調整できません。そういう意味で、なるべく早く事務局からご報告いただくことにいたしております。

それからこの会議は通常2時間なのですが、だんだん押し迫ってきますと、2時間では足らんと。加藤さんのときも3時間とかやりましたので、長期的な長期マラソンみたいになりますが、頑張っていただきたいと思います。今、2日申し上げましたが、午後でございますので、3時間ということもあり得べしですので、ちょっと次回ご連絡を差し上げたときにはその辺がいくかもしれませんので、よろしくお願いいたします。

今事務局から訂正がありまして、2日間のいずれかではなく、いずれも可能性がある、両日ということもあり得るということでございます。いずれにしても両方とっておいてください。

きょうはどうも長時間ありがとうございました。

〔閉会〕

(注)

本議事録は毎回の総会後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、大蔵省主税局及び自治省税務局の文責において作成した資料です。

内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。