第3回総会 議事録

平成12年10月27日開催

石会長

第3回総会を開催いたします。

本日は、村田大蔵総括政務次官に御出席いただいておりますので、ごく簡単に御挨拶をいただきます。

村田大蔵総括政務次官

すでに御挨拶させていただいた方もございますが、改めまして、新会長のもとで御挨拶させていただきたいと思います。

本日は、経済対策と中期答申に基づく幾つかの税目について、事務当局から説明があるようでございます。私もできる限り出席させていただきまして、改めて税制の勉強に努めたいと思っておりますので、先生方からの御忌憚のない御意見を賜りたいと思っております。きょうは本当に御苦労さまでございました。

石会長

審議に入る前に、審議会の公開につきまして、この間、和田さんからも御意見がございましたので、皆さんにお諮りしたいことがございます。

和田さんのほうから、「一般の方もこの会議が傍聴できるように取りはからってくれないか」という問題提起がございました。これに対しまして、私、上野さんと相談いたしまして、問題点あるいはクリアしなければならない壁もあろうけれども、事務局で技術的に検討してくれないか、ということをお願いいたしました。同時に、「和田さんの御発言を重く受けとめたい」という発言もいたしましたので、そういう観点から事務的に検討をお願いしたわけであります。

情報公開というのはいま非常に重要な問題でございますから、昔とはだいぶ違った次元の話になってきたと考えております。そこで、いろいろな機器も利用できるのではないかと思いまして、事務局にさまざまな角度から慎重に検討していただいております。

そこで、総務課長の小手川さんからこれまでの経緯などを御説明いただきまして、それを踏まえて広く皆様から御意見をいただけたらと思います。つまり、技術的に公開が可能かどうかというのを探ってからでないと議論もしにくいと思いますので、事務当局から、その点について御説明いただきたいと思います。

小手川さん、お願いします。

小手川総務課長

私どものほうでは、現在、政府の関係の審議会において実際にどういう状況になっているか、資料等も限定されますので、限界はありましたけれども、いろいろ調べさせていただきました。その結果、相当な数の審議会におきまして公開をやっております。その公開の程度につきましては、この税調のように、新聞記者の皆さん方に来ていただくとか、議事の内容をインターネットにのせるといったことのほかに、先般、和田委員から問題提起をされましたように、一般の方に会議を傍聴していただくという審議会も相当数ございます。

傍聴の方式についてはいろいろございまして、千差万別というところです。一つは、会議がいつあるのか、傍聴を希望する方はどうぞ、という通知は大部分はインターネットでしているようでございます。ただ、長いものは2週間ぐらい前から通知するところもありますし、前日にインターネットにのせるところもあるようでございます。

傍聴の人数については、スペースの問題もあると思いますが、5~10人から、100人とか、200人というところもあるようでございます。人数が限定されているところでは、事前に希望される方から葉書をいただいて抽選する方式とか、会議の場に当日やってきていただいて、もしスペースがないようであれば、その場で抽選するという方式をやっている審議会もあるようでございます。

そういうところが現状でございますが、私ども税調関係では、会議の頻度が非常に多いということもありまして、現在使っている大蔵省内の会議室の状況について申し上げますと、一般の傍聴をオーケーする場合も数が非常に限定されてしまいます。目の子ですが、5人程度のスペースしかありません。したがって、多人数になってまいりますと、外部のホテルでも借りてやるしかないのではないか。政府の審議会の中には、外部のホテルを使っているところもあるようでございますが、その際には、当然のことながら使用料というファイナンスの問題が生じてまいります。

また、技術的な問題として、こういう方法はどうかということでいま検討しておりますのが、インターネットを使ってこの会議の模様をオンタイムで中継することができないか、ということでございます。政府の場合、国会のいろいろな委員会についてそういうことをやっておりますし、規制緩和関係の委員会において、まだ試行的ですが、やっていると聞いております。

具体的なイメージとしましては、会議室の内部にカメラを設置しまして、審議会の模様を撮影して、それを回線でインターネットにオンタイムで送るということでございます。

その際にいろいろな問題があります。一つは、回線の容量の問題がありまして、外部からアクセスする数が多い場合、太い回線を用意する必要がありまして、若干の工事等が必要かと思います。もう一つは、外部からアクセスする方が、その映像を入力するというか、その情報に手を加えることがないようにしっかりディフェンスをする必要がある。それから、それに伴うソフトの開発等があります。目の子で言いますと、数百万から一千万円を超すオーダーでそういうものができるのではないかという状況でございます。

税調につきましては総理府の関係もありまして、関係省庁との調整とか、大蔵省内の会議室を使う場合に大蔵当局との調整も必要ですが、もう少し時間をいただきましたら、技術的な検討を加えた上で、そのような調整をやってみるのも一つのオプションではないかと思っております。

以上であります。

石会長

ありがとうございました。大蔵省は何事につけても慎重に事を運んでくれますので、今回も慎重に御検討いただいて、「インターネットではどうか」という可能性も探っていただきました。結局は、この総会で我々委員が公開については決定すればいいことだと思います。和田さんからございました発言を受け、かつ技術的な問題も踏まえて、皆さんから自由に議論をいただきまして、できたら、きょう、方向ぐらいは決めたいと思っております。

御発言がある方はどうぞ。

本間委員

石新会長のもとで税調が発足し、一つのメッセージとして、時代の趨勢で情報公開をやっていくことは、石先生のお考えにもよるわけですけれども、私は、将来的には不可欠ではないかという感想を持っております。たしかに税は国民の利害対立を生みやすい問題で、私のところも、微妙な問題について、緋文字の脅迫状まがいのものが来たり、カミソリが送られてきたりということも実際にはあり得るわけで、オープンにした場合、それなりの覚悟が要るだろうと思います。

しかし、委員会の代表としてここに出てきているからには、緊張ある形で参加していくことも、自己の発言に対して責任を持つという意味で非常に重要なことではないか、技術的な問題が幾つかクリアできましたら、ぜひ公開の方向で進めていただければという感想を持っております。

石会長

「慎重にやれ」という御意見もあってしかるべきだと思いますし、いろいろな意見があっていいと思います。どうぞ。

菊池特別委員

税調は別に見せ物ではないわけですから、映像というのは不必要だと思います。音声だけで十分ですし、基本的には、増税に賛成するのがいかんというので見張りに来るわけですから、5人ならいいか、10人ならいいか、100人ならいいかというのは、どこに線を引いても、1億人も住んでいるわけですから何の意味もない。5人と100人でどちらが多いかというのは、1億人に比べれば同じ数なわけですから。

そういうことで考えれば、一般の人がここに来て見ても何の意味もない。それが公開性があるとは思いません。では、公開性をどこに求めるかというと、音声だけインターネットで流せば安上がりですし、それで十分ではないかと思います。

石会長

音声で公開をという御主張も出ましたが、ほかにいかがでしょうか。

津田委員

きょうもこれだけ資料が配られているわけですね。この資料がなくて聞いて、どの程度理解して論議が判断できるのか。そうかといって、私も作業をやっていましたけれども、事務当局がそんなに前にこれはできやしないわけです。おそらく毎回ぎりぎりに持ち込む。ですから、資料をなるべく早く配る、速記もなるべく早く配る、そういう算段がどうも実際的ではないかと思います。

石会長

公開についての御意見はどうですか。

津田委員

おそらくインターネットでやっても意味がないのではないかと思います。理解できないと思います。

石会長

理解できる、できないというのは、いろいろな人がいますから……。理解できないから、やっても無意味だと、そういう御意見ですね。

津田委員

十分な判断ができないのではないかと思います。

石会長

ほかにいかがですか。

佐瀬特別委員

私は新聞に勤めていた関係もありまして、こういう委員会というのは、方法はどうあれ、公開して問題はないし、また公開すべきものだと思います。例えば政府税調に関して言えば、昔から大蔵省の隠れみのになっているという疑惑を持たれているようでありますし、問題は方法論だけではないかと思います。もちろんインターネットでも構わないし、物理的にここに人が入れるなら入れる。ただ、精神としては基本的に公開すべきものと思います。以上です。

今野委員

すでに公開するということは私たちは了解して、限定された人ではあっても、出席なさっているのですから、最終的には出たい人が出られるというのが一番望ましい形かもしれませんが、いきなりそこまではいけませんので、いまのような形から、本格的な公開に向けて少しずつ努力していくということでよろしいのではないかと思います。

石会長

公開の方向にいけば、方法は、ネットでもいいし、一般傍聴でもいいということですね。どうぞ、猪瀬さん。

猪瀬委員

現在の部屋の問題で言えば、僕は作家ですけれども、新聞記者以外に、作家とか、新聞記者とか、フリージャーナリストとか、そういう人に限定して傍聴させることは可能だと思います。

それから、僕はインターネットでやるべきだと思います。先ほど、資料がこれだけあるのはどうするのかということがありましたが、この資料もインターネット上にのせればいいわけです。ただ、この厚いのは無理かと思います。これは販売していますか。

石会長

しているはずです。

猪瀬委員

これ、なかなか力作で面白いですけれども、それは案内すればいいわけですね。コストを払って買ってもらうのは大事なことですから。

もう一つ、小手川さん、先ほどインターネットでやりたいとおっしゃったけれども、メドはどのくらいですか。

石会長

メドというのは、時間ですか、金ですか。

猪瀬委員

金は、1,000万とかそのくらいということで大したことないでしょう。時間のメドです。

石会長

おそらく今年中とか……、いろいろ工事しなければいけないでしょうから。半年先とか1年先ではないと私は理解しています。

猪瀬委員

小手川さんに聞きたいのですが。

小手川総務課長

前例があれば、役所風にどのくらいというのがはっきり言えるのですが、初めてのことなので明確なお約束はできないのですが、会長及び税制調査会の御指示があれば、年内にできるかどうか、できるとしたら、どういうふうな形式であるかという方向性は見出せるように頑張ってみたいと思っております。

猪瀬委員

今年中にやれそうだという感じですね。

石会長

島田さん。

島田委員

この問題は、さっき本間さんが言われたとおりだと思いますが、歴史の流れとしては公開していくのは必然的だと思います。税調について世間がある種の疑問を持って、これは本当の話ではないわけですし、そんなつもりで出ている税調の委員はほとんどいないと思いますが、密室ではないか、隠れみのではないか、そういうふうにとかく言われることもある。そういう意味でも公開することの意味は大きいと思います。

しかし、公開して、見ている人がどのくらい理解できるのか。これは、会長も言われたように千差万別だとは思いますけれども、少なくとも、密室で隠れみのでやっているのではない、少なくとも議論は共有しているということで、理解がどこまで進むかというのは問題ですけれども、実は、情報公開というのは、情報を得た人たちにそれなりの責任も生じているのです。

だから、長期的将来の理想論を言えば、情報は全部公開されているのだから、税を決めることについては、委員ばかりではなくて国民全体も責任を負うんだということですよね。そっちの方向へ向いていくのだろうと思うんです。ですから、基本的に私は賛成です。ただ、部屋の問題とかいろいろあるから、インターネットというのは非常にいい考えではないかと思います。

さっき御意見が出たように、直前まで一生懸命ぺーパーを刷って、積んで、頑張っているのに間に合わないではないかということですけれども、何十年とこういうことをやってきたからそういう生活慣習になっているわけで、インターネットに出るんだということで議論が始まると、それもちょっとずつ変わっていって、「もうちょっとうまいやり方はないのか」ということにおのずのとなっていくのではないかと思います。ですから、インターネットでリアルタイムで流すというのは、いまの状況ではなかなかいい考えではないか、やってみる価値ありということです。

石会長

奥野さん。

奥野委員

本来のほうで話をするつもりで、こちらは話をするつもりはなかったのですが、議論が情報公開のほうにばかりいっているので、逆のほうに注意してほしいということで一言申し上げます。

最終提案をまとめる段階は特にそうだと思いますけれども、パブリック・コメントという制度があって、単に我々から発信するだけではなくて、国民から我々が受信して、国民がどう思っているかということを我々の提案に反映させる、あるいは議論も反映させていくことがきわめて大事である。したがって、インターネットで誰でも聞けるようにするだけではなくて、彼らが何か言いたいことがあれば、限られたスペースにしないと容量が大変だと思いますけれども、そういうものも受け入れるという仕組みも同時に入れていただきたいと思います。

石会長

パブリック・コメントの提案については、後ほど、いま集めている資料の御説明をいただきますけれども、いま言ったようなことを配慮しつついろいろやっておりますので、公開と直接引っかけなくてもその問題はクリアできるかと思います。

和田特別委員

私が発言したことに対しまして、いろいろな御意見を伺わせていただきました。私はインターネットという方法をあまり考えていなかったものですから、ああ、そういう方法もあるのかと。この場にこだわるわけではありませんけれども、この部屋で考えるとすると、せいぜい5人か10人以外には物理的に考えようがないということでしょうか。それでしたら、積極的に考えていくということが大事ですから、いままでの御発言に沿って、いろいろ考えられる方向でしていただきたいなと思います。

それから、答申なり報告をまとめる最終段階までぜひ同じやり方で公開していただきたい。といいますのは、この答申をまとめましたときにも、マスコミ公開もやめて、あくまで委員だけという形をとっております。「最終の決まったものではないから」という説明だったのですが、ないからこそオープンにしていく必要があるのではないかという気がいたしますので、ぜひ、その辺の確認も含めて御検討いただきたいと思います。

水野(勝)委員

基本的には、国民の皆さんのふところに響くことを審議するところですから、公開の方向というのは現代の社会の大勢でもございますし、積極的に進めるべきだと思いますが、言いっ放しでお互いに聞くだけというのでは、会議なり審議会の本来の姿ではないのではないか。お互いに議論して、場合によっては考え方を変えていくし、場合によっては妥協して一つの線にまとまっていくというのが、最終的には会議のあるべき姿だと思います。

意見を交わして、それがだんだん集約されていくのを公開することは、国民の権利義務に非常に関係のある、税制としては当然だとは思いますけれども、何らかのものに向かってまとめていくという段階では、時には妥協したり、時には折れ合ったり、時にはいままでの考え方を変えたりということもあるわけです。そこらの会議の機能を考えると、全部が最終段階まで公開でいいのか、場合によっては、取りまとめのときは、会議というものの本質に返って議論すべき場面もあろうかと思いますので、そこは何らかの姿がある。

先般、現在の公開を決めたときも、会長の御判断で、いろいろな措置があり得るというふうになっていると思いますので、そこはひとつ会長にしかるべく御裁断を願えれば幸いでございます。

中里特別委員

お急ぎのところ、申し訳ございません。大学で租税法の講義をして研究するのが私の仕事なので、テクニカルな意味での税金の専門家ですけれども、学問的な良心というのは往々にしてポピュリズムと反することがございます。減税、減税とばかり言える立場の方がうらやましいなと。つまり、ここでの発言に関して、私どもの法的及び政治的責任について明らかにしていただかないと、それに対する対応はできないのではないでしょうか。常識だと思いますけれども。

石会長

多方面から御意見をいただきました。整理させていただきます。

和田さんの発言を受けて「公開」と言ったときの私の意味は、総会に限って申し上げております。なぜ総会に限ったかというのは、いま、たまたま水野さんから御発言いただきましたけれども、起草委員会の段階、あるいは法人課税小委員会等の小委員会では、かなり細かい(かつ不確かというか)技術的なやりとりの過程を経ております。議論があっちいったりこっちいったりするのがそのまま出るということがあり、混乱を起こすのではないかとかねがね考えております。

いま、ステップ・バイ・ステップでやっていこうという話になっておりますので、和田さんの御意見のとおり、将来はそういうこともあるのかもしれませんが、当面は一足飛びにそこまでは難しいと考えております。そこは御了解いただきたいと思います。

それから、いま中里さんがおっしゃった点は重々わかりますし、そういう御意見があって反対している審議会もいっぱいあると思います。したがって、インターネットで公開するにしても何にしても、我々の実質的審議が妨害されるようなことが起こったら考え直す、という留保事項を置いておけばいいと思います。

オープンになりますから、本間さんの話ではないけれども、葉書がバンバン来るのは覚悟していただかなければいけないのですけれども、それ以上に個人的に攻撃があったり等々で、ここで発言すること自体が非常に問題であるというふうになれば、公開について考えざるを得ないと思います。我々の正常なる審議が阻害されることが仮に起きたら、皆さんからおっしゃっていただきまして、そこで再度審議いたしましょう。

したがって、そういうことが起きないという前提と、当面(かなりの時間だと思いますし、ずっとかもしれませんが)、総会ということに限らせていただきまして、インターネットというのもこれから有力でありますので、それらを踏まえてさらに一段と踏み込んだ議論をしていきたいと思いますので、きょうのところは、「前向きに検討しよう」という締めでよろしゅうございますね。効果がないという方もいらっしゃいましたけれども、有害だという意見はあまり出ていないようでありますので、少なくとも、有効ではないか、必要ではないかという御意見を、一応多数の意見として採用させていただきたいと思います。もう少し事務的に詰め、時間も含めて、改めてしかるべきときにお諮りいたしたいと思います。

それから、先ほど奥野さんから出た議論と絡むのですが、これまで、電子メール等で多数の御意見が寄せられておりまして、これについて厚いものができております。事務局から、どういう形で公開するのか、我々が見られるのかという点について、御説明いただけますか。

小手川総務課長

税制調査会におきまして、本年3月から、調査会の審議の参考にするという観点から、郵便とか電子メールによって税制全般に関する意見を募集しております。これを3カ月ごとに集めて総会に報告させていただいています。今回、現物は私の手元にございますけれども、本年6月から9月までの間の、1,000ページを超す非常に分厚いものを、会議室の入り口の左側に2部置いてございます。現在、大蔵省の4階に閲覧窓口を置いておりまして、そちらのほうで閲覧できるということでございます。

かいつまんで3カ月分の実績を申し上げますと、意見の総数は3,068 通でございました。そのうち圧倒的多数だったのが、道路特定財源の堅持という観点からのもので、これが3,016 件、全体の約98%でございます。その次、株式譲渡益課税関係のものが20件弱。媒体別に申し上げますと、2,957 通が郵送、残りの111 通が電子メールでございます。以上であります。

石会長

時間を見つけてお立ち寄りいただいて、ぜひごらんいただきたいと思います。なかなか得るところがあるかもしれません。

きょうは、二つ議題がございます。一つは、去る19日にまとめられました、「日本新生のための新発展政策」という森内閣の経済対策の税制の部分について、事務局から説明を受け、質問を受けたいと思います。

次は、お手元にございますが、前回、「わが国税制の現状と課題 -21世紀に向けた国民の参加と選択-」について総論部分をやりましたので、きょうと次回以降は各論部分、特にきょうは直接税の部分の説明をいただきまして、議論を深めていただきたいと考えております。間接税の中の消費税もやりたいと思っています。

時間が押しておりますので手際よくやりたいと思いますが、最初に、新生プランの税制関連部分につきまして、補正予算との関係で、税収の実績額が出ましたので、国税・地方税併せて議論をしていきたいと思います。

小手川さんから御説明をいただきます。

小手川総務課長

お手元に、2枚紙の「日本新生のための新発展政策」というタイトルのぺーパーを配布させていただいていると思います。それと、もう1枚セットで、「平成12年度の税収実績見込」がございます。

ぺーパーの右上にございますように、平成12年10月19日、経済対策閣僚会議でこの経済対策が決定されました。内容につきましては、第1部、第2部と分かれておりまして、第2部の具体的施策の3番目の「その他」に、「税制」ということでここに載っているような文章が入っております。

この件につきましては、19日の会議の前に、一部の報道等によって税に関する記事が載ったこともございましたのか、先生方から問い合わせがありまして、いろいろ御心配をおかけしたのではないかと反省しております。

経済対策の案文を読み上げさせていただきますと、「1.税制」とありまして、「税制については、平成13年度改正において、現下の経済情勢等を踏まえ、企業の組織再編成に係わる税制、国民生活に資する税制等、真に有効かつ適切な措置について検討を行い、結論を得る。また、株式譲渡益課税について、これまでの経緯を踏まえ、株式市場の役割や株式市場への影響、一般投資家の参加、公平な課税等の見地から、検討し、年度改正の中で早急に結論を得る」という文章になっています。以上、報告させていただきます。

この対策の関係で、平成12年度の税収実績について見直しを行いました。その結果、このぺーパーの右下にございますように、一般会計の「計」の欄では、1.24兆円と、1兆円を超す増額補正をいたしたいと思っております。1.2兆円というのは、平成2年に1.1兆円の増額補正がございましたが、その後、平成3年からはほほ毎年減額補正ばかりでございまして、唯一、平成8年が4,000億円弱の増額補正だったのですが、平成2年以来の大幅な増額補正だと思います。

主要な部分としては、上にございますように、法人税が一番大きなところで、0.87兆円の増額補正でございますが、これは、いわゆる大法人を中心にいたしまして、昨今、経常利益が相当程度伸びてきていることを背景にしたものでございます。

それから、一番上の源泉所得税について0.52兆円の増、申告所得税について0.15兆円の減、という補正を考えております。源泉所得税につきましては、給与につきまして、雇用の人員とか、それから雇用所得について、現在、若干ながら改善の方向が見られること、利子について金利の支払いが若干増えてきていること、配当についても、企業収益の好転の関係からか、最近、若干改善していること 等を中心にして増額補正をしてございます。

申告所得税につきましては、11年の決算が当初の見込みよりも相当程度下がっております。それをベースにして、12年度についても、ここはあまり好調ではないということから減額にしてございます。申告所得税の減収の原因は、2,000万円を超す所得の場合は源泉ではなく申告のほうにやってくるのですけれども、会社のリストラの関係もあるのか、そういった方々の数が減って、申告から源泉のほうに回られるとか、申告所得税を引き続き納めにいらしてもその額が減るといったことが、相当効いているような雰囲気でございます。以上であります。

石会長

ありがとうございました。地方税収もと思いましたが、まだ集計ができておりませんので、しかるべき時期に御報告をいただくことにいたします。

いまの小手川さんの御説明に御質問もあろうかと思いますが、次の議題と密接に関係しておりますので、次の議題の質疑応答のほうに回させていただきたいと思います。

それでは、きょうのもう一つの議題でございますが、「わが国税制の現状と課題」という前税調の中期答申を、復習あるいは勉強会も兼ねて順次見ております。前回、総論部分の第1の基本的な考え方について議論いたしました。質疑が十分に行われていないので、そちらまで含めてきょう議論したいと思いますが、きょうは個別税制のほうにいきたいと思いますので、所得税、法人税、消費税の三つにつきまして、簡潔に事務局より御説明いただきまして、それから審議したいと考えております。

最初に、所得課税につきまして、清水税制第一課長と石川市町村税課長から、各自の持ち時間でよろしくお願いします。

清水税制第一課長

それでは、「個人所得課税関係説明資料」に沿って御説明させていただきたいと存じます。先般の中期答申では、所得課税の中で、所得税の基本的な仕組みから各論的テーマまで広範な問題を取り上げておりますが、今回、時間の関係もございますので、基本的な仕組みを中心に御説明させていただきたいと存じます。

目次を飛ばして、1ページ目をお開きいただきたいと存じます。ここでは、給与所得者の所得税額計算のフローチャートということで、所得税の収入から控除を引いて課税所得を計算して担税力をとらえ、これに累進税率を適用して、所得に応じて負担を求める構造を示しているものでございます。

例えば給与収入700万の場合ですと、給与所得控除190万になりまして、さらにこれに基礎控除、配偶者控除、扶養控除といろいろな控除が適用されます。4人世帯の基本的なモデルで計算いたしますと、さらに285万ぐらい引かれて、課税所得としては225万、給与収入のうちの3分の1ぐらいになりまして、これに税率が適用されて、ただいまの例では所得税18万になるわけでございます。

このような控除の問題、あるいは税率の構造の問題、以下、ごらんいただきたいと存じます。

2ページでございますが、ここ10数年の税制改革を経まして、所得税については、現在、一番右側にございますように、最低10%から最高37%まで4段階の税率構造に累進化が図られてきております。この間、諸控除の引上げにより、課税最低限もごらんのように拡充されてきた状況でございます。

3ページは、所得税と地方の住民税を合わせた姿を同じようにお示ししたものでございます。最高税率につきましては、現在、所得税の37%に住民税の13%を足して、最高50%という水準まで来ているということでございます。

4ページは、このような所得税の基本的な仕組みを主要国と比較してごらんいただいたものでございます。税率構造をごらんいただきますと、主要国でも1980年代、90年代にかけて累進化、フラット化が行われておりますので、現在のわが国の税率構造は、最高税率、階段の数等を見ましても主要国と比べて遜色のない姿になっているかと存じます。

税率構造につきましては、このように累進化が図られてきましたが、中期答申では、最近において、所得格差、所得の平準化の明確な動きが見られなくなってきている、所得税の所得再分配機能という点からは、現在の税率構造については基本的に維持していくべきであろう、という取りまとめをいただいているところでございます。

また、課税最低限は各国さまざまな状況でございますが、主要国の中でもわが国は高い水準になっております。

5ページでは、このような基本的な控除、税率構造を前提に、具体的にこの収入の場合どのくらいの所得税、住民税の負担になるかということで、4人世帯の場合で計算したものでございます。アメリカと比較しておりますが、年収700万ぐらいのところで、縦に見ていただきますと、日本が黒線で、国・地方合わせて31万9,000円の御負担をいただいて、負担率にして4.5%ぐらいになります。アメリカの場合ですと、この水準で税額は103万9,000円。日本の場合は3分の1ぐらいになっています。以下、ほかの国との比較もおつけしてございますが、主要国の中でも、中・低所得者層を中心にわが国は相当低い負担水準になっている状況でございます。

中期答申では、このような負担水準の現状、あるいは厳しい財政事情を勘案すれば、これまでやってきた減税によって個人所得課税は限界に達しているのではないか、という取りまとめをいただいているところでございます。

6ページ、7ページは負担水準の国際比較でございますので、省略させていただきます。

9ページ以下、課税最低限の関係の資料をおつけしております。9ページには、課税最低限の内訳・計算方法を示していますが、10ページのほうでごらんいただきたいと存じます。世帯構成に応じていろいろな控除を合計したところで、そこを超えると所得税の負担をいただく。例えば4人世帯の場合ですと384万2,000円という現状になっているわけでございます。

課税最低限につきましては、公的サービスの財源、コストを所得に応じて基幹的な税である所得税で分かち合っていく場合に、社会共通の費用ですので、課税最低限の水準が高過ぎることは望ましくない、という取りまとめをいただいております。

他方、課税最低限の具体的な水準については、一つ一つの控除を積み重ねた結果決まってくるものなので、それぞれの控除について、社会経済情勢の変化の中でいろいろ検討して考えていく必要がある、という取りまとめをいただいております。

11ページでは、課税最低限の国際比較を世帯類型別にお示ししてございます。

12ページでは、課税最低限を構成する控除等をはじめとした所得税の人的控除の一覧をお示ししてございます。世帯構成、年齢、障害の有無といった納税者のさまざまな事情に応じて税負担能力をとらえ、そういった事情を考慮するということから、かなりきめ細かな控除の仕組みが設けられております。他方、かなり細分化している面もございます。世帯構成の変化など社会の変化を踏まえて、公平・中立・簡素化という観点からの検討が必要だという指摘をいただいております。

13ページは、控除のうち配偶者関係のものです。配偶者に関しては、配偶者控除、配偶者特別控除という二つの控除が設けられております。これはこれでそれなりに定着している面があるという御意見もありますが、他方、女性の社会進出の状況、あるいは就業に対する中立性という観点から、配偶者関係の控除のあり方についても検討すべきではないか、という取りまとめをいただいたところでございます。

15ページには扶養控除についての資料をつけています。ごらんのように、年齢等に応じてかなりきめ細かな配慮がなされておりますが、それだけ細分化しておりまして、そういったこと、あるいは扶養親族の間でのバランス等も踏まえながらの検討が必要である、という御指摘をいただいたところでございます。

17ページには、医療費控除、生命保険料控除、損害保険料控除、その他の控除の概要を示してございます。

18ページ以下に、課税最低限を構成する基本的な控除の一つである給与所得控除について、グラフをお示ししてございます。給与所得控除につきましては、右下のほうをごらんいただきますと、給与の総額228兆円に対して、給与所得控除が64兆円ほどございます。平均的には28%の控除率でございます。

サラリーマンの必要経費についての概算控除という性格があるわけでございますが、この点については、サラリーマンの勤務に直接必要な経費がどのくらいか、家計調査等の分析を見ましても1割弱ぐらいではないか、あるいは、諸外国の給与所得関係の勤務費用の控除は、例えばアメリカですと、実額控除と概算控除がありますが、かなりの方が概算控除を選択しておりまして、夫婦合わせて80万円弱でございます。日本ですと、年収700万円ですと、190万円ぐらいの給与所得控除になっています。

こういった現状を踏まえまして、サラリーマンの雇用形態が流動化・多様化してきて、年功序列という姿も変わり始めている中で、サラリーマンに対するこのような手厚い控除のあり方はどうだろうか、勤務費用の概算控除という性格を重視しながら検討していくべきではないか、という取りまとめをいただいているところでございます。

以上が、所得税関係の基本的な仕組みに関する部分でございます。

時間の関係であとは省略させていただきますが、簡単に申しますと、公的年金等の年金課税につきましては、高齢化の進展、あるいは高齢者の生活実態も多様化している中で、年金に関する拠出、運用、給付の段階を通じて、現在は、いろいろな控除によって実質的にかなり非課税になっています。そういう年金課税の適正化の問題。土地税制につきましても、特別控除等によってかなり課税ベースが狭められていますが、土地の公共的な性格などを踏まえた適正負担のあり方、あるいは金融について、利子配当、株式譲渡益、特に新しい問題としては、電子化、国際化などの中で、足の速い金融商品からの所得について、いかに適正な負担を考えていくべきかという問題提起がされております。

最後に、納税を取り巻くいろいろな制度ということで、法定調書の問題、挙証責任の問題等についてもいろいろ御議論いただいて、関係の資料をおつけしたところでございます。以上でございます。

石会長

石川さん、お願いします。

石川市町村税課長

個人住民税について説明いたします。

先般の中期答申では、「個人住民税については、地方分権や少子・高齢化に対応し、負担分任の性格などを踏まえその充実を検討することが必要」というふうにされております。お手元の「地方税関係資料」に基づいて説明させていただきます。

資料の1ページ、個人住民税所得割額計算のフローチャートでございます。個人住民税につきましては、前年中の給与収入をベースといたしまして、給与所得の金額までは所得税と同一の計算となっております。課税所得の金額の計算につきまして、以降、個人住民税独自の計算というふうになります。

2ページは、個人住民税所得割の推移ということで税率構造の推移を書いています。負担分任という性格から、現行のところでは、道府県民税、市町村民税合わせまして、5、10、13ということで緩やかな累進構造となっております。また、課税最低限については、325万円ということで、所得税の384万2,000円と比べ低くなっております。

3ページに課税最低限の内訳等について書いてありますが、これについては、基礎的な人的控除の額が、所得税に比べ低く設定されていることによるものでございます。

また答申でも、負担分任の性格から、所得税に比較して広い範囲の納税義務者がその負担を分かち合うべきものであるため、所得税と一致させる必要はないとされております。

続きまして、6ページをごらんになっていただきたいと思います。配偶者控除についても国税と同様でございますが、国税の38万円に対して33万円となっております。

7ページは、扶養控除の概要、基本的な体系は所得税と同様になっております。

9ページは、その他の所得控除制度の概要でございます。これにつきましても、基本的には所得税と体系は同じでございますけれども、負担分任の性格から、所得税に比べて限定されたものになっております。特に生命保険料控除、損害保険料控除といった、貯蓄の奨励など国家的政策の見地からの控除につきましては、「地方税では個人住民税においては極力整理すべきものであると考えられます」というふうにされております。

10ページは、公的年金の課税の仕組み、公的年金控除までは所得税と同じ仕組みでございます。

13ページは、利子・配当等課税制度の概要についてでございます。住民税においても所得税同様課税がされているわけでございますけれども、このうち株式等で1回の支払金額の配当が5万円以下のもの、また、割引債の償還差益については非課税となっておりまして、適正を図る必要があるとされているところでございます。

14ページは、株式等譲渡益課税制度の概要でございます。現在、申告分離課税と源泉分離課税の選択制になっておりますけれども、現在の法律では源泉分離課税は13年3月31日をもって廃止ということでございます。従来、住民税は非課税でございましたので、一本化となれば、住民税も課税されることとなりますので、課税の公平化・適正化が図られることになっております。

16ページは、個人住民税均等割についてでございます。均等割は、負担分任の性格を有する個人住民税の基礎的な部分でございます。少子・高齢化の進展に伴い、住民が税負担を広く分かち合うことが必要となっていることからも、均等割が果たす役割は大きいとされておりますけれども、現在の税率は、平成8年度、市町村の人口規模別に、3,000円、2,500円、2,000円、そして道府県民税が 1,000円となっているところでございます。個人住民税収入額に占める均等割割合は、左の一番下のところですが、昭和25年は18.3%、これに対して現在は1.8%ということで、負担水準が低下しております。答申では、過大な負担とならないように配慮しつつ負担水準の見直しを図る必要がある、とされているところでございます。

続きまして、19ページを見ていただきたいと思います。人口規模別地方公共財の整備状況の推移が書いてあります。都市化の進展に伴い受益が増加するということで、住民税の均等割が人口別に3段階となっておりますけれども、整備水準がそれぞれかなり上がってきたということで、この格差の縮小を図る必要がある、というふうにされているところでございます。

ちょっと戻っていただいて、18ページ、個人住民税の納税義務者の状況。所得割納税義務者は5,232万人でございますけれども、このうち、Cのところ、生計同一の妻という方、884万人が非課税になっております。これに対しては、個人単位課税の観点からそのあり方を見直す必要があると考えられる、というふうにされているところでございます。以上でございます。

石会長

引き続きまして、法人税関係、国税、地方税分けて御説明いただきましょう。

藤田さん、お願いします。

藤田主税企画官

「総3-4法人税関係説明資料」に沿いまして、中期答申でお取りまとめいただいた事項をかいつまんで御説明申し上げたいと思います。

表紙と目次をめくっていただきまして、1ページ、まず税率でございます。法人所得課税の実効税率の国際比較をしたものでございますが、日本は平成10年度の改正、11年度の改正によりまして、実効税率40.87%と、ごらんいただきますように国際水準並みに引き下げられているということでございます。

もう一点申し上げておきたいのは、10年度の改正で法人税率が37.5%から34.5%に引き下げられたわけですが、このときには、後ほど触れますけれども、課税ベースの見直しも同時に行っておりますが、11年度の34.5%から30%への引下げでは課税ベースの見直しは行っておりません。中期答申ではこういった11年度の改正の経緯もかんがみ、課税ベースの一層の適正化に向けて今後取り組んでいくことが重要だ、というふうにお取りまとめいただいております。

2ページは、戦後から現在に至る法人税率の推移でございます。昭和50年代の終わりから60年代の初めにかけましては、所得税減税あるいは財政再建ということで法人税率が引き上げられましたけれども、昨今、先ほど申し上げましたような税率の引下げが行われまして、30%という水準になっております。

3ページは、先ほどの課税ベースの見直しでございます。これは、平成8年11月の法人課税小委員会で、法人課税の課税ベースについて、費用概念の厳格化、費用収益の計上時期の適正化等の視点から個別的検討を行っていただいたもののエッセンスでございます。38項目にわたって個別的検討が行われたわけですが、10年度の改正で、約半分の項目について課税ベースの見直しが行われた、まだ残っている課題もあるということでございます。

4ページは、法人税の課税状況について若干御説明申し上げます。上の帯グラフ、法人数をごらんいただきますと、全法人約251万社のうち欠損法人が67.3%、利益計上法人が残りの20数%でございます。

ところが、所得金額を見ていただきますと、大法人、これは資本金1億円超のものですが、1.6万社、全体のシェアで見ますと0.6%ですが、そのものが得ている所得金額が67.2%、こういった課税状況になっているということでございます。

5ページは、いま申しました67.3%の欠損法人の割合の推移を折れ線グラフにしたものです。景気等の影響によりまして、バブルの崩壊後、上昇してきているという状況が見て取れるのではないかと思います。

6ページは、これも課税ベースとも絡むわけですけれども、租税特別措置でございます。減収額は、所得税、法人税、その他を合わせまして平成12年度ベースで約2兆6,000億円あるわけです。法人税のところをごらんいただきますと、7,540億円の減収で、そのうち景気対策と言われているものが4,400億円ございますけれども、パソコン減税とか、中小企業の投資のための促進税制、こういったものによりまして減収額がかなり大きくなっていることがお見取れいただけるのではないかと思います。

1枚めくっていただきまして、累次の税制調査会の答申で租特の整理合理化が必要だと言われておりまして、累年の比較をしたものがこの表でございます。現在、企業関係の租特は80項目あります。毎年、30項目ぐらい縮減合理化の努力をしているということでございます。

8ページは、整理合理化が必要だということを今回の中期答申でも取りまとめていただきましたけれども、それの抜粋を載せております。

いま、法人課税が直面している大きな課題は企業組織再編等に対応した税制ですが、10ページ以下は会社分割・合併等の企業組織再編成にかかる税制です。先般、10月3日の総会で法人課税小委員会の取りまとめをご了承いただきました要約をつけております。したがって、きょうはここは省略させていただきたいと思います。

14ページは、もう一つの大きな企業組織絡み、再編絡みの課題が連結納税制度でございますが、連結納税制度と連結財務諸表制度の違いをイメージであらわした図でございます。同じ連結という名前がついておりますけれども、似て非なるものだとお考えいただければと思います。連結財務諸表制度は、ご存じのように情報開示を通じて投資家はじめ利害関係者の意思決定に資するという目的を持っておりますし、片や連結納税制度は、税負担の公平の確保を基本的な考え方として、適正な課税を実現するという目的を持っています。

したがって連結の範囲は、諸外国を見ましても、連結納税は実線の楕円形ですが、きわめて持分比率の高い国内の子会社に限られている。片や、連結財務諸表はかなり広く、国外も含めて連結の対象になっている。そういったグループの範囲、所得の計算方法にも違いがございます。諸外国でも別個の制度として構築され、それぞれ発展してきた経緯がございます。

15ページでございますが、連結納税制度につきましては、昨年以来、法人課税小委員会で検討いただいています。そこで、これについて考えていかないといけない、検討していかないといけないというのを、「主要検討項目」ということでまとめていただきました。ここでは項目だけを並べております。大項目が8、中項目が24ございますけれども、さらにこの下に小項目が59ほどありまして、こういった問題を今後検討していかないといけないということでございます。

16ページは、税制調査会においてお取りまとめいただいた連結納税についての文章です。一番下のところですが、「わが国においても、連結納税制度の導入を目指すことが適当である」ということを記述していただいております。

1ページめくっていただきまして、第1パラグラフの終わりですが、連結納税を入れる場合には、「アメリカにおいて導入されているような本格的な連結納税制度を導入すべきと考えます」という御提言をいただいております。

その下の3行ですが、「今後、本格的な連結納税制度の導入に向けて、具体的な検討項目について検討を深め、国際的にも遜色のない、21世紀のわが国経済のインフラとなる連結納税制度を構築する必要がある」とされております。

18ページでございますが、中期答申では公益法人等に対する課税のあり方についても触れられておりまして、これが、現在の公益法人等に対する法人税の課税制度の概要でございます。課税対象は、19ページにつけております収益事業から生じる所得に対してのみ課税される。適用税率は22%。寄附金に係る特例、みなし寄附金という制度がございます。

中期答申では、この税率については「基本税率の格差を縮小する方向で検討していくことが適当」と言われていますし、収益事業の範囲を含めまして課税のあり方について今後も検討が必要だ、とされております。

20ページは、NPO法人でございます。これについてもお取りまとめいただいております。まさに非営利活動の担い手の新たな類型として登場したものですけれども、左側の図に書いてございますように、公の関与からなるべく自由度を確保するということで、設立認証という制度で法人格を取得することができるようになっております。

片や、税制上の優遇措置ということになりますと、公益性を担保する仕組み、基準が必要になってくるということが取りまとめられております。

21ページは、公益活動に対する寄附金の概要でございます。ちょっと省略させていただきます。

22ページが、中期答申の当該パーツでございます。中ほどですが、「まずはその活動の内容や業務運営などの実態を十分見極めていく必要がある」。もう1ページめくっていただきまして、23ページの最後のところでは、「相当の公益性を担保するための基準や仕組みをどのようにするかを含め、広範な観点からその検討を進めていかなければなりません」とされています。

最後でございます、24ページです。実は、法人税の課税対象は基本的に法人格の有無による。法人格があれば法人税を課するというのがこれまでの取扱いでございまして、法人の性格、目的に応じまして、この図のような課税状況になっております。

1枚めくっていただきますと、最近になりまして、SPC(特定目的会社)とか、投資法人、特定信託といったものが出てまいりました。この図は、いろいろな事業とか運用を行う普通法人等でありますれば、法人段階で課税をするという意味でございます。そのほかのところでは、法人段階では課税をせずに投資家等で課税するという図ですけれども、申し上げたいのは、SPCとか投資法人というのは、法人格を持っているけれども、実質的に法人課税はしない仕組みにしております。片や、特定信託というのは法人格はないわけですけれども、今回12年度の改正で、法人課税も一定の場合する、というふうにさせていただきました。

このように、金融の自由化、国際化が進みますと事業体が非常に多様化してきます。

それについての適切な対応が必要である、というとりまとめもいただいておりますので御紹介しておきたいと思います。以上でございます。

石会長

それでは、府県税課長の岡崎さん。

岡崎府県税課長

それでは、地方法人課税関係について説明いたします。先ほどの地方税関係資料をおめくりいただきたいと思います。20ページから法人関係でございます。

20ページ、21ページは、法人住民税の概要と税率の推移でございますので、省略させていただきます。中期答申では、法人事業税について外形標準化の問題を中心にお取りまとめいただいております。

22ページは、法人事業税の概要の御説明です。課税標準は、通常の法人は各事業年度の所得及び清算所得になっております。中期答申では、事業そのものに課せられる税であって、法人がその事業活動を行うに当たって受けている地方団体の各種の行政サービスの経費負担を求める応益課税という性格を原則にいたしまして、その後、外形標準化の議論になっております。現在は、普通法人は所得のうち9.6%という数字が基本税率になっております。

所得にかかっている関係上、(6)にありますように、税収額が法人の所得の状況、すなわち景気の状況によって大きく変動しておりまして、現在、平成12年度では3兆6,000億円程度になっているという状況でございます。

23ページに税率の推移がございます。平成10年、11年と、12%から11%、9.6%と下げてきたということでございます。

24ページには、過去の経緯をつけておきました。シャウプ勧告以来議論がある問題ですが、政府税制調査会におきましては、平成8年以降、特に議論がなされておりまして、中期答申に結びついているという経緯でございます。

25ページをお開きいただきます。字が小さくて恐縮でございますが、中期答申の概要を1枚にまとめたものでございます。外形標準課税の導入意義ということで、安定的な地方税源の確保、応益課税としての性格の明確化、税負担の公平性の確保、経済の活性化等、こういう四つを挙げておられます。

それから、望ましい外形基準のあり方ということで、事業活動価値、給与総額、物的基準と人的基準の組合せ、資本等の金額と四類型を挙げておられます。その中で、事業活動価値が理論的に最もすぐれているという考え方に留意しつつ、さらに事業活動価値を含めた各外形基準案について、納税・課税事務負担の観点から検討を進めていくことが適当である、というおまとめをいただいております。

改革に伴う諸課題であります。上の四角は省略いたしますが、下の四角で、税負担等への配慮に関する課題といたしまして、中小法人の取扱い、ベンチャー企業の取扱い、雇用への配慮、経過的な措置、という課題が四つ挙げられております。

導入の時期につきましては、外形標準課税の導入は重要な意義を有する改革であり、きわめて厳しい地方財政の現状等を踏まえれば、景気の状況等を踏まえつつ、早期に導入することが必要である、というおまとめになっております。

26ページは、先ほどの四つの意義をまとめさせていただいたものでございます。細かい説明は省略いたします。

27ページには、利益法人及び欠損法人の状況をつけさせていただきました。都道府県税の課税状況調べによりますと、245万418 社というのが全法人数で、そのうち利益法人は82万4,000社、33.6%。欠損法人が162万6,000社、66.4%。この66.4%の法人所得課税、すなわち法人税、法人住民税の法人税割、法人事業税、すべてを負担していない状況であるということでございます。残りの3分の1の利益法人ですべてを負担しているのが現状でございます。

28ページは、主要税目の税収の増減率で、法人事業税は他の地方税に比べて変動が大きいというグラフでございます。

29ページは、法人事業税収の推移で、特に法人が集中している都市部の変動が激しいということで、東京、大阪、愛知、神奈川を挙げさせていただきました。ピークに比べて半分近くに減っている県もあるということでございます。

30ページは、外形標準で、事業活動規模をどうやってはかるかということで四つの類型が示されております。事業活動価値というのは、利潤、これがマイナスであればマイナスで引くわけですが、給与総額、支払利子、賃借料、四つを足したもの。給与総額というのは、給与総額を目安にしてさらに所得基準と併用する。物的基準と人的基準の組合せ、それから資本等の金額、これらも所得基準との併用という基本的な考え方でまとめられております。

その中で、事業活動価値の考え方を詳しく書いたのが31ページでございます。労働を提供した者、資金等を貸した者、土地等を貸した者への付加価値の分配の額、プラス、その上での剰余、あるいは株主への分配である利潤を足し込む。利潤がマイナスなら引き算をするという形でございます。

32ページでございます。中期答申で「各生産手段の選択に関して中立性が高いことから、外形基準としては(事業活動価値が)理論的に最もすぐれている」というまとめになっておりまして、その説明でございます。

例えば、全体の事業活動、業績や経営環境が変わらずに給与総額だけが増えた場合は、利潤がその分減少する。利潤は減りますが、全体の事業活動価値で見ますと変わらないということで、ある意味では利潤を調整して税負担を減らそうというインセンティブが減るのではないか、ということを示した図でございます。

33・34ページは、該当する答申の部分の要約でございます。以上でございます。

石会長

それでは、消費課税に移りたいと思います。税制第二課長の真砂さん、国税のほうをお願いします。

真砂税制第二課長

消費課税関係説明資料に沿いまして、消費税を中心にごく簡単に説明させていただきたいと思います。

その前に1ページ目でございますが、消費課税の国税全体に占める位置づけということで、国税全体の収入が50兆円ありますが、そのうち消費課税全体で18兆円、35.6%でございます。うち消費税が9兆8,000億円、それ以外の個別間接税が8兆2,000
億円弱でして、その中身は、酒税、たばこ税、それから、要望・意見が多数を占めたという道路特定財源等々の特定財源が石油税まで並んでいるわけであります。

4ページから6ページにかけては、消費税に関する今回の中期答申の要約をつけさせていただいております。消費課税については、あらゆる世代に広く公平に負担を求めることができる、ライフサイクルの一時期に負担が大きく偏らないという特徴があるので、今後、急速に少子・高齢化が進展していく中で、その役割は引き続き重要である。水平的公平の確保に資することができるほか、その税収が他の税と比べて景気変動による影響を受けにくいという特徴があります、ということが記述されております。

1枚おめくりいただきまして、それぞれ消費税の仕組みの中で考えるべき論点として、「税率」以下、ございます。まず、税率につきましては、「国・地方合わせて5%というわが国の税率水準は、先進諸国の中で最も低い水準にあります。今後のあり方についても、国民的な議論によって検討されるべき課題であると考えます」と。

軽減税率を設けるべきか否かについては、政策的配慮の必要性と制度の中立性・簡素性との比較考量ですが、ヨーロッパ諸国並みとは言えない税率水準のもとでは、極力、単一税率の長所が維持されることが望ましい、というふうに取りまとめていただいております。

以下、中小特例、仕入税額控除等ございますが、資料に沿って説明させていただきます。

7ページは、中小特例でございます。消費税創設時は三つの中小特例がございましたが、限界控除制度についてはすでに廃止いたしております。免税点制度は、課税売上が3,000万円以下の小規模事業者については納税義務を免除するという制度でございますが、現行もそのようになっております。簡易課税制度につきましては、売上に占める消費税にみなし仕入率を掛けて、引くべき消費税を簡易に計算するという制度であります。適用上限を5億円から4億円を経て、いま2億円。みなし仕入率についても、当初の90%、80%の2区分を、50%を含む5区分まで細分化してきているところでございます。

中期答申では、例えば免税点制度については、相対的に規模が大きな事業者については課税事業者としての対応を求める方向で検討を行うことが重要、あるいは簡易課税については、適用上限の引下げなど制度縮小の方向で検討することが必要、という御答申をいただいております。

8ページは、仕入税額控除の方式についてであります。現在、請求書などを保存していただく、いわゆる請求書等保存方式という制度になっております。答申では、「信頼性・透明性の観点から検討を行う必要がある」ということで、ヨーロッパでとられているインボイスを導入することは、こうした信頼性・透明性の観点に資するという御指摘とともに、わが国の現行の請求書等保存方式とインボイスの最大の違いは、免税事業者がインボイスを発行できないことでございまして、免税事業者からの仕入れについては仕入税額控除ができなくなるというのが最大の違いでございます。

現在、6割が免税事業者という中で、そうした免税事業者が課税選択を強いられるか、あるいは、取引から排除されかねない問題についてどう考えるか、という問題の指摘をいただいているところでございます。

9ページでございますが、ちょっと視点が変わりまして、消費税と価格表示の関係でございます。ヨーロッパ諸国は、消費者保護の観点から、消費者が最終的に支払う総額を表示しなさいという定めがございます。中期答申でも、こうした総額表示方式の普及を図ることが適当だという取りまとめをいただいております。

10ページに、具体的な総額表示方式の諸類型ということで、このケースですと、本体価格が9,800円。消費税等というのは地方消費税ですが、合わせて5%の490円かかっている。総額で1万290円で、こうした総額を何らかの形で表示されているのが総額表示方式、この普及が望ましいと取りまとめいただいているところでございます。

11ページ目でございますが、消費税の使途について簡単にポンチ絵にしたものです。

消費税につきましては、消費税4%と、地方消費税1%。地方に対しては、地方税としての地方消費税と、国4%のうちの29.5%の交付税が地方の財源でございますので、国としては56.4%が国の財源になる。これが、現在、基礎年金、老人医療、介護に充てるということが予算総則で明らかにされているところでございます。

最後に、電子商取引と消費税の関係でポンチ絵をつけさせていただいております。いま、OECDでいろいろ議論をしているわけですけれども、どの部分を議論しているかということをまとめたものであります。真ん中に消費者がいまして、国内の事業者からインターネットを通じて注文する。その結果、物が送られてくる、あるいはインターネットを通じた配信がある。

これについて消費税がかかることは、一般の通信販売と何ら変わるところがないわけですけれども、外国の事業者に対してインターネットを通じて注文したという場合、物が入ってくる場合ですと、税関で関税と消費税が徴収できますが、インターネットを通じた配信の場合、現行法上、消費地が事業者の所在地ということで外国になっているものですから、付加税という形になっています。ヨーロッパも同様であります。この取引について公平性の観点から、消費地をどのようにとらえるか、徴税の仕組みをどう構築するか、この点がOECDで議論されているところでございます。

以下、酒税、たばこ税、特定財源、資料がございますが、時間の関係で省略させていただきます。

石会長

引き続きまして、岡崎さん、地方の消費課税をお願いします。

岡崎府県税課長

地方税関係資料の35ページをお開きいただきます。地方の消費課税の概要を一表にまとめてあります。地方税収入計35兆円のうち消費課税で7兆5,000億円ということでございます。主なものは、額の大きい地方消費税、自動車税、軽油引取税等でございます
36ページは、地方消費税につきましての中期答申の書きぶりの要点をまとめさせていただきました。一番上のマルでございますが、「清算を行うことにより税収の偏在性が少なく、また、安定性にも富んでおり、地方分権の推進や少子・高齢化の進展等に伴う幅広い行政需要を賄う税として、重要な役割を果たしている」というまとめでございます。

二つ目のマルで、消費税の使途の問題ですが、「消費税創設時に地方間接税の廃止等に伴い創設された消費譲与税の廃止や住民税減税の財源として創設された」という経緯がごさいまして、「これらがもともと一般財源であったことも踏まえると、今後とも地方の幅広い行政サービスに充てるための財源として位置づけていくことが必要と考えます」、こうなっております。

最後のマルは、「福祉・教育など幅広い行政需要を賄う税として、今後、その役割がますます重要なものになっていく」ということでございます。

37ページは、具体的な仕組みでありますが、先ほどありましたように、実質的に消費税率を換算しまして1%というものでございます。

38ページ以降に、その他の消費課税、自動車税、軽自動車税、その他、それから特定財源の関係がありますが、省略させていただきます。

石会長

あと、冊子が二つ、お手元にあると思いますが、これは、前回の総論の部分をカバーする資料を再度入れていただいたという形ですので、御参照ください。

それから、別紙で堀田さんから「税制についての私見」というのが私宛てに来ております。きょうは御出席にならないということでお出しいただきましたので、折りを見て御参照ください。

残り時間が30分少々となりましたが、これまでいただきました三つの税につきまして、かつ、税収の見込み等々につきまして、自由な御意見を賜りたいと思います。

今井委員

前回も発言できなかったので、総論の部分に触れさせていただきます。私、今度の税調は非常に重要な税調であると思いまして出戻ってまいったわけでございます。何といいましても、これから景気が立ち直ったら、財政が問題になるわけでございまして、いまの説明にもありましたように、9兆円ぐらいが先行していることが、財政赤字の一番大きな原因になっているというふうにも認識しております。

それから、先般、社会保障の問題が有識者会議でまとまりましたが、税と社会保険とどちらで行くのかということが非常に重要な問題になります。また、地方と国との交付税のあり方も非常に大きな問題であります。

税調でも、こういった問題を税の観点だけではなく、歳出・歳入両方含めた総合的な財政という観点から検討する場がなければ本当の議論ができない、こう思っておりますので、どうぞひとつ、そういう点にも御配慮いただきたいと思います。

各論でありますが、時間がありませんのでポイントだけ申し上げたいと思います。いずれ消費税はここで議論の俎上にのってくると思いますけれども、消費税の信頼性を回復するためには、インボイス方式の導入、免税点の引下げといった益税回避の措置の整備が必要だと思います。したがいまして、そういった点をできるだけ早急に整備する必要があると思います。併せて、地方の消費税がもう少し拡大していく方向で考える必要があると思っております。

法人課税でございますけれども、ただいま説明がありました、企業の再編に関する税制は実行あるのみでございまして、ひとつよろしくお願いしたいと思います。連結納税制度は、2002年度に間に合ようにぜひ具体的な検討に入っていただきたいと思います。

それから、地方法人課税について私はこの取りまとめに異議がございます。歳入の問題もありますけれども、地方の歳出をもっと合理化するといいますか、そちらのほうが先行するのではないかと思っております。市町村の合併等もありますし、そちらのほうと並行しながら、地方交付税のあり方の見直しと一括して考えていかないと、この問題はいい解が得られないと私は思っております。とりあえずは住民税の均等割等を増やすことをやりながら、抜本改善を考えることがいいのではないか。

個人の所得税でございますけれども、各種の控除を見直しながら課税最低限を引き下げていくことは、絶対必要なことだと思います。その際、年金につきましては受給時課税になっているけれども、実質的な控除でほとんど課税されていない。年金については、給付時に課税していないということがございますので、そこのところは、若い人の所得税の最低課税限度引下げと同様な措置が必要であろう、こういうふうに思っております。

あとは折りに触れて申し上げます。以上でございます。

石会長

盛りだくさん御意見をいただきましたが、御意見ということで承っておきます。

一点目の他の審議会との関係については、いずれ事務局と相談いたしまして、議論する場を設定したいと思っていますので、またお諮りしたいと思います。

ほかにいかがでしょうか。

津田委員

法人課税におきましても、消費税の免税点におきましても、課税されるのは3分1で、3分の2は脱落しているというのは、税制全体として考えなければならない大きな問題ではないかと思います。具体論はこれから御審議いただくと思いますが。

当面の問題として、株式譲渡益課税の問題につきましては、国税においても、端的に金持ち優遇になってしまっているわけです。地方税においては、源泉分離すると非課税、申告分離なら課税と、歴然たる不公平税制になっております。これは税制の問題だけではなくて、所得が福祉関係にも使われているわけですね。保育所の入所、老人ホームの入所、介護保険もここらの所得から決まる。市町村しかやれないものですから、市町村住民税の計算によって福祉まで基準が決められているわけですから、税制上の不公平だけではなくて、福祉関係でも大きな不公平の問題になっているのではないか、こういうふうに思います。

もう一点、この問題というのは経済対策上取り上げているのですけれども、一種の金融資産の問題なわけです。マル優のときにもずいぶん問題がございましたけれども、一回グリーンカードができたのが、施行されないままつぶされてしまった。ところが、外国から、そういう貯蓄優遇のために、日本の貯蓄が高くてさっぱり消費に向かないのではないか、こういう議論もあって解決されたわけでございます。

今度も同じ問題で、景気対策はむしろ逆行するのではないか。金融資産に金を積むよりは消費に回すべきなのが経済対策の基本ではないか、こういうふうに思いますので、やはり既定方針に沿って是正していただきたいと思います。

石会長

松本さん、どうぞ。

松本委員

市町村の立場で申し上げたいと思います。さっきも津田先生から出ましたけれども、個人住民税関係で株式譲渡益の源泉分離課税、これが非課税になっているわけですが、これは、公平な課税の見地からしてきわめて大きな問題ではないかと思います。市町村の立場から、少子化の問題、高齢化の問題、地方分権の進展の問題、さまざまな行政サービスをやっていくわけですが、その財政的な裏付けとして、個人住民税は充実を図るべき重要な税源であるという感じを持っております。

したがって、町村として、株式譲渡益課税の申告分離課税の一本化の堅持は強くお願いしたいと思います。実は全国町村会でも、この一本化については、既定方針どおり実施していただきたいというお願いを政府にしております。

あと一点、税調でも今後、地方税関係について論議がなされてくると思います。しかしながら、新聞の論評、いろいろな会議等において、地方交付税の縮減、廃止というところが強く出てきて、心配しているわけですが、地方税の充実関係と並行して交付税関係も検討していただきたい。国庫負担金、補助金の問題等もあるわけです。また町村においても、合理化ということで、効率化を目指していろいろやっていることだけは御理解願いたいと思います。

石会長

いろいろなお立場からいろいろ議論が出ております。

奥野さん。

奥野委員

できるだけ簡単に、二点についてだけ触れたいと思います。

一つは、所得税に関して給与所得控除制度というのがありました。課税所得額を下げることに関しては当然下げるべきで、それに関しては私は何の文句もないのですが、御説明では、給与所得控除制度というのはサラリーマンの費用控除なんだ、それが約3割なんだ、だけど、実質は1割なのだから、この控除制度を改めろというお話でして、それは少し話が違うのではないかというのが私の印象です。

なぜかというと、そもそも所得の捕捉が違うわけです。サラリーマンは源泉ではっきりつかまえられてしまっていて、10割つかまえられている、あるいは9割つかまえられている、自営は6割、農業は4割。だからクロヨン、あるいは、トウゴーサンと呼ぶわけですね。この給与所得控除制度というのは、所得の捕捉の違いを是正するための仕組みというふうにもとらえられるはずで、そういうことも含めた上できちんと考えないと公平性を失する。そういう意味で言うと、給与所得控除に関しては、もっと控除を増やす方向で考えてもいいのではないかというのが一点です。

二点目は、法人税と消費税両方に関する問題です。ややラディカルな議論ですが、地方税関係資料の27ページを見ると、欠損法人比率は、資本金1億円以下では約3分の2になっています。全法人でもそのくらいです。

こういう仕組みを使うと実は多額の富を貯められるというのが、猪瀬先生が最初の著書でお書きになった、スポーツ界の有名な帝王の例ではないかと思うのです。彼は莫大な富を持っていながら、私の理解している限りでは、ほとんど税金をお支払いになっていない。なぜならば、赤字法人という仕組みを使ってやっておられる。間違っているかもしれません。間違っていましたらお詫びしますが、少なくとも法人税率という仕組みを使って、実際上、みずからの所得をかなりの程度税金を払わないで消費してしまう、あるいは、拡散して子供に残しておくということが行われているように思います。

私の印象では、法人所得自体があまり意味をなさない概念ではないかと。法人税というのは法人実在説に基づいて行われているわけですが、現在の世界では、法人というのはややベールに包まれた、実体のない存在である。むしろ、所得があろうがなかろうが、そこから生まれてくる付加価値に税を課したほうがいい。これは、石先生とか本間先生の財政学の常識ですが、法人税は資本家に帰着するのか、労働者に帰着するのかさえわかっていない税率なわけです。つまり、学問的にも、誰が負担しているのかわからない税率。

そういうことを考えると、法人が生み出した付加価値に課税をするほうが、本来の税金のかけ方ではないか。地方税でやっている外形標準のほうがむしろ本筋なのではないか、それを国税のほうでも考えるべきではないか、というのが私の意見です。

石会長

いま、給与所得控除の説明について疑問が出されましたので、清水さん、何かございますか。

清水税制第一課長

中期答申のときの議論を若干紹介いたしますと、給与所得控除の性格づけについては、ただいま御指摘のように、サラリーマンの勤務に伴う必要経費的な部分と、その他の所得の方との負担の調整的な機能と、両面あった。そういう整理もかつてこの税調で行われてきたわけですが、かつては、サラリーマンの就業者に占める割合が5割程度、あるいはそれ以下の時代もあったわけですが、現在は8割ぐらい。雇用形態として主とした形態になっている中で、サラリーマンは、辞令一本で転勤とか、有形無形の指揮命令系統に拘束を受けるというようなことから負担の調整という議論が行われてきたけれども、そういった事情にも変化がある。あるいは、外国との比較とか、実際の費用の支出実態とかを考えて見直す、という御意見でございました。

奥野委員

先ほどどなたかがおっしゃいましたけれども、大学の奨学金を受けられるのは農家の子弟ぐらいなのです。つまり、課税所得が低いのは農家の子弟であって、サラリーマンの子弟はその基準を超えてしまっている。それがどうして起こるかというと、まさに捕捉率が違うからであって、サラリーマンが多いから是正しましょうというのは結構ですけれども、その前に農家と自営業者の捕捉率を改めていただきたい。その上で議論していただきたいと思います。

猪瀬委員

すみません、自営業者でありますから、発言させていただきます。(笑)先ほどの奥野さんの後半の御議論は賛成ですけれども、前半の給与所得控除については、「わが国の税制の現状と課題」中期答申で、総務庁の統計では必要経費が10%以下になっているというのは実態だと思うのです。僕は別にサラリーマンいじめをするということではなくて、給与所得控除を含めてさまざまな控除がパッチワークのように張りついているのは、整理していったほうがよろしいのではないか。その筆頭に挙がるのは給与所得控除だと思うし、特定支出控除というのを前につくったのに、ほとんど活用されていませんよね。そういうことも含めて、給与所得控除というのは下げていったほうがいいと思うのです。

それに絡めて、地方税のところで、いわゆる専業主婦の方がいて、これが非課税になっていると。これは外形標準課税とちょっと違いますけれども、これらの主婦の方はゴミをいっぱい出すわけですね。住民税がかかっていないのはおかしいわけですよ。それと、他の審議会との絡みがあるかもしれませんけれども、主婦は、働いていないで年金を払わなくても、あとで年金をもらえるというのがあります。これは夫の家に就職しているという形になりますね。こういうふうなおかしさは直していかないとだめだと思うのです。

だから、基本的なところでちょっとずれているところがあるのではないか。そこのところを含めて、サラリーマンの給与所得控除を見ていかないといけないのではないか、こういうふうに思っております。

それから、今井さんが先ほどおっしゃったように、歳出と歳入は総合的なところから見ていかなければ、この税制調査会の意味というのは出てこないと思うのです。僕は新しく入りましたのでちょっと申し上げたいのですけれども、それは石会長が、あとで検討したいとおっしゃった。ぜひお願いしたいと思います。

石会長

いろいろなところからいろいろな問題を出してもらって結構ですから、どうぞ。

貝原委員

法人事業税の外形標準課税については、賛成、反対、両方の意見が出されました。私どもは、この問題につきましては、過去の長い経過の中で種々議論をしてまいりました。いまの状況からして、外形標準課税を導入しないと、税負担の公平が損なわれているのではないかということを非常に問題にしておりまして、外形標準課税を導入することは、増税をしようというよりは、むしろそちらのほうで……。

私どもは実際地域で仕事をしておりまして、3分の2ぐらいの法人は負担せずに、3分の1のほうにだけ課税になっている、こういう実態からして、もう見逃せない状況にまで来ているのではないか。こういうことで全国知事会でも長い議論をした結果、総意をもって、できるだけ早く導入すべきだという結論に達しているわけであります。

歳出との絡みでこれを議論することとは離して、この問題は議論していただきたい、このように思います。

石会長

ほかにいかがでございますか。佐野さん。

佐野委員

これまで出ている話とも関連するのですが、一言申し上げたいのは、大蔵省なり自治省の方々の説明、とりわけ中期答申の趣旨の説明を聞いていて、どうも大蔵省なり自治省の言いたいことが出過ぎている。つまり、この議論、あるいは中期答申をめぐっては相当な議論があって、賛成論、反対論、いろいろありました。そこら辺の議論の濃淡をもう少し出してもらいたい。ご自分のおっしゃりたいことばかりをここでおっしゃるのはいかがなものか。新しい委員さんもかなりいるわけなので、もう少し議論の中身の正確を期してもらいたいということを申し上げたいと思います。

それから、先ほどから出ている給与所得控除ですが、特に、20ページに必要経費がどうのこうのという表があります。必要経費なのだ、しかし必要経費の実態に比べて給与所得控除の額が大きいのではないかと、たしかにそういうとらえ方はできるでしょうし、必要経費という概念で言うと、給与所得控除の額が多いことはまぎれもない事実として認めざるを得ないわけです。

しかし一方で、給与所得控除が所得税全体の負担水準、あるいは、各所得層ごとの負担比率の調整の役割を負っているのも否定しがたい機能なわけです。必要経費はそのとおりなのか、必要経費は正確に反映しているかどうかという議論のほかに、いまの給与所得税の負担水準がどうなんだという現実的な問題もあるわけです。これは給与所得控除に限らず、あらゆる控除がそういうことになっているわけで、必要経費かどうかという議論ばかりやると、単に増税の口実というか、理論づけに使われるにすぎないわけです。私は、各種控除と税負担水準という現実的な視点からながめていかないと、どうも増税路線にのってしまうという懸念を感じます。

石会長

中期答申の解釈の仕方で、例えばどういう点が一番気になったか御披露いただけますか。

佐野委員

例えば給与所得控除制度、いま私が申し上げたような実際の家計調査にあらわれた額と、現在の控除額の関係の議論がありました。一方でそういうこともあるだろうけれども、これは所得税の負担水準のための調整弁という機能もあるので、そこら辺は総合的に考えなければいけないと、そういう意見もあったということ。時間の制約があるので説明に限りがあると思いますが、今後、説明する場合は、「いろいろな議論があった」というところも併せて御紹介いただけると、委員さん方の正確な理解に資するのではないかと思います。

石会長

事実、いろいろな意見があったわけです。どうぞ、水野さん。

水野(忠)委員

ただいま、給与所得関係のお話が出ました。これから個人所得課税で課税ベースを広げていくとなった場合に、一つの大きな論点になるのはこの給与所得控除だと思うわけです。皆さんもそう思われると思うのですが、清水課長の御説明は必要経費の論点をかなり強調されましたので、中期答申の101 ページを見てみましたところ、給与所得控除の性格については、一つは勤務費用の概算控除で、もう一つは、他の所得との負担調整のための特別控除となっているわけです。

勤務費用の概算控除は、必要経費ということで最高裁判所まで認めたものであります。もう一つの、他の所得との負担調整というのは、中期答申のときに検討すればよかったのかもしれませんが、非常に誤解しやすいといいますか、わかりにくくなっているわけです。他の所得との負担の調整というのは、簡単に言えば、勤労性の所得は担税力が低いわけです。そこで勤労控除という形で控除を認めるかどうか、これは一つの選択ですけれども、シャウプ勧告などはそういう考え方に強く反対していたといいますか、消極的であった。勤労控除を認める以上は事業所得者にも認めざるを得ないし、そうなると、かなり低い額で抑えなければいけないというのがシャウプ勧告であったわけです。

お話が長くなって恐縮ですが、ここで言っている負担調整というのは、よく見ると中期答申に書いてあるのですけれども、例えば金融性の所得で生活している人と給与所得者を比べてみますと、ここには「有形無形の負担」とありますが、一つには、働けない体の状態になってしまったらお金が入らないという負担。

もう一つは、勤務地の制約を受ける。投資者の所得はどこにでも入りますけれども、給与は、働き場所に行けるようなところに住まなければいけないということ。

三つ目は、余暇が犠牲になる。株の売り買いでも、電話をかけたり、時間は犠牲になると思いますけれども、給与所得はあくまでも「働いて幾ら」という世界である。これが、他の所得との負担調整という意味合いで給与所得控除の存在根拠になっているわけです。

それに加えて、先ほどおっしゃられた事業所得と比べての捕捉率ですが、最高裁の判決はこの点には一切触れなかったわけです。さて、どの程度捕捉ができているかということを実証することは難しいわけです。しかも、事業所得はきちんと納められていないということ、これを正面から公の判決で言うこともできない。実際、税制調査会などでもそれらしき記述がなされたことがありますけれども、これは本当にどうなのか。制度を組み立てるときに、どこまでそれに依存することができるかといいますと、はっきりしなくなってくるわけです。

だから、給与所得本来の担税力の弱さはありますし、給与所得者の概算控除といった問題もあります。この二つを踏まえた上で、給与所得控除の設定をどの辺に置いたらいいのかとか、いまの二つの趣旨で、現在の課税最低限の割合が高すぎるということであれば、それを下げていく、ということになるのではないかと思うわけです。そういうことで中期答申でまとめておりますので、適正な金額というのはなかなか難しいわけですが、これに従った上で御検討いただければと思います。

石会長

どうぞ、大宅さん。

大宅特別委員

いまのサラリーマンの話ですが、これは巷ではよく出る話で、申告制度にしたほうがいいのではないかというのは税調で出てきたことはあまりないのですが、本当に考えたほうがいいのではないかという気がします。いまの日本のおかしさを考えるときに、ほとんど個人が自己責任で何かに参画しているという意識がない。ボワーッとしていてもお金はふってくるという感じがある。しかも、知らない間に取られたお金がどう配られようが、田舎のタヌキのために高速道路が使われようが、あまり痛みを感じないということの根っこは、8割と言われているサラリーマンが黙って持っていかれるところにあるのではないか、という気がするのです。

先ほどの情報公開とも絡むのですけれども、いま世の中の流れとして、情報公開せよという人はたくさんいるわけですけれども、公開して何を見て、何を訴えるの? 何かものがあるわけ? というと、ほとんどそうではない人のほうが多い気がして仕方がない。「わからない」という説もありましたが、わかる、わからない以前に、何かを訴えたいという気がない人のほうが多いというのは、私は、行政改革委員会とか、いろいろなところで公聴会などを聞くたびに、そういう気がしているわけです。

さっきも、1,000ページのこちらに対するあれがあったと。何のことはない、ほとんど組織票なわけですよね。個人で何かを訴えている人なんていうのは数えるほどしかいない。

そういうことを考えると、みんながちゃんと自分で税金を払うんだというところから始めないと、国民一人としての意識革命ができないのではないか。それを考えると、きめ細かい配慮はもう要らないから、「わかりやすい構造」という全面的見直しが必要だと思います。

石会長

久しぶりに大宅節を聞きました。102 ページに、「サラリーマンの申告納税もいいのではないか」ぐらいのことを今度は書き込みました。見てください。

笹森さん、どうぞ。

笹森委員

きょうは発言するつもりはなかったのですが、各委員のご発言を聞いていて、ここはやはり言っておかなければいけないかなと思います。

あまりサラリーマンをいじめないでください。雇用所得者の関係から言うと、いま日本の1億2,000万国民の中の81.5%が給与生計世帯なのです。この人たちがどういう税金の納め方をしているか。これは最近調べていないので、あとで資料を出してもらいたいのですが、私どもは、過去30年間の各ジャンル別の税金の納め方を調べさせてもらいました。サラリーマン、源泉徴収者は、特別減税があった年、例えば1兆円がフラットになる、2兆円がフラットになる以外は、もう30年以上ずっと右肩上がりで納税額は増えているわけです。

ところが、「その他納税者」というジャンル、きょうもお見えになっていますが、お医者さんとか、弁護士とか、芸能人という方々は、この30年間、納税額が下がってきています。収入が減っているとは思いません。どういうことになっているのか。あとのほうでそれぞれの委員の方がおっしゃられていましたけれども、私は所得の捕捉率の問題だと思います。

だから、必要経費から入って、その高さがどうだとかいうことではなくて、全体の税の仕組みの中でそのことをどうするか、その上で他の所得とのバランスをどうとるのか、そういう観点でやってもらわないと、100%所得が捕捉されていて、その中で完全に源泉徴収で税金を納めている人たちの層が、勝手にいじられてはかなわないのですよ。ものすごいごまかしみたいなことをやっているところが多いのだから。大宅先生が言われたように、もしそうだとすれば、私どもは全部源泉徴収をやめさせてもらって直接納税に切り替えさせてください。

島田委員

私は前から座っている委員の一人です。きょう、ご発言が非常に活発だった方は新任の委員の方が多いという印象でした。非常にフレッシュないい意見だったと思います。私も常にフレッシュなつもりですけれども。

さっき、佐野さんはかなりフラストレーションだったと思いますけれども、私もやや似た面があるのですが、こういうふうに言い直してみたいのです。それは、中期答申をつくるときにものすごく議論があったわけです。石先生は一番よく知っているけれども、やはりかなりフラストレーションがありました。しかし、絶妙な加藤会長のあれでもって何とか形になった。今度、せっかく石会長のもとで新しくスタートして、ややフレッシュな原点に戻ってやれるとするなら、非常に大きな問題が幾つか残されているので、指摘はしておきたいということがあります。

それは、実を言うと、さっき今井委員が言われたこととも直結します。どういうことかというと、読んでもらうとすぐわかりますけれども、こういう大前提から入っているわけです。「景気がよくなったら財政再建を考えます、それに見合った税金のことを考えたい、だから消費税はちょっと含んでおいてくださいね」、こんなトーンになっているわけです。

これは何を意味しているかというと、景気がよくなったら増税しますよ、ということでしょう。さもなければ支出のほうを減らしますよ、ということですよね。支出を減らすといっても、どこを減らすのかというと、省庁再編程度では支出なんか減らないです。焼け石に水ですよ。どこを減らすかというと、もうおわかりだと思いますけれども、20何兆円の社会保障、そういう大所に手を入れないとだめですよ。建設もそうです。

そうすると、これは単に役所の機構を変えるなどというマイナーな話ではないです。そこに入らなかったら意味がないのです。その問題は何かというと、さっき今井さんがおっしゃられた財政の問題ですよね。さっき石会長は、「そこのところはやりますから」とおっしゃって、力強いのだけれども、どこまでやるのかというのはちょっとクギを刺しておきたい。

石さんは財政審の委員ですけれども、財政審で議論しているのとここで議論しているのと、一緒に合わせて再統合論では、ほとんど何も出てこないと思う。役所ベースで整理されたことを議論するだけの話ですから。実は、中期答申で暗黙に書かれた深刻な話は、本当は表に出して議論しなければいけないということです。

来年から財政経済諮問会議というのが出てくるわけですね。そこがトータルでやりますよというときに、私があえて申し上げたいのは、この税調で数回そういう議論をして、「税調の立場からいったら財政経済諮問会議はこういうことを議論してください」ということを明確に打ち出す。これは骨だと思います。石会長にぜひお願いしたいと思います。

もう一つは、地方の問題です。議論でものすごくフラストレーションがあった。日本の地方税財政の仕組みというのは、国民であればどこに住んでいても、同じ行政水準のサービスを得られるという形で高度成長のときはやってきた。財政需要と財政収入の差額を交付税と補助金で埋めてきている。その交付税のあり方が問題ではないかというのは、ずっと議論があったわけです。

しかし、これは交付税だけ突ついてもたまらないですよ。全体が相互依存の仕組みになっているのだから。交付税だけ突つくのはあまり建設的でなくて、そもそもこの地方制度をどうするのか。諸井さん座っていらっしゃいますけれども、ここまで来たんだよということを諸井さんにきちっと説明していただいた上で、税の立場からの徹底討論をひとつお願いしたいと思います。

それから最後に来るのは、さっき佐野さんも出した、個人がどうのこうの、経費がどうだこうだということです。控除というのは税で面倒を見ていますけれども、実は、家族生活をどう維持していくとか、教育をどうするとか、本当ならポジティブに他の省庁の関連する支出が面倒を見る話なのですよ。それを大蔵省は帝国主義でもって、自分のところで全部悪いことは引き受けるからというので引き受けてきているから、こういう格好になっているのだと思います。

しかし、そうではないのではないか。必要なものは必要なもの、だめなものはだめなものと、国民に自覚してもらう。その上で、人口が減っていく、成熟社会のあるべき社会保障の姿、税の姿、雇用のあり方を論じたいというのが、そもそも有識者会議の能書きだったはずです。どの程度のものになっているのかよく知りませんし、精査しておりませんが、それも一応出されるわけです。そういうものを一回徹底的に分析して、「税から見たらこんな議論では困るよ」ということをちゃんとやる。

つまり、三つありますね。財政経済諮問会議に対して、財政というのは税から見たらこうだよ、地方制度というのは税から見たらこうだよ、社会保障のあり方というのは税から見たらこうだよ、ということをきちんとやらないと最初の問題に帰らないのです。どこを節約するかといっても、一番節約しなければいけないところは社会保障と建設なのです。もちろん行革も必要だけれども、しかし、これは戦後のあり方を全部変えるような話なのです。いま、そこに来ているわけです。

だから、大変フレッシュな石会長がいよいよここに座られて、さっきの情報公開、見事に裁かれましたね。あれだけ力のある会長ですから、いま私が申し上げたことをバシッとやっていただきたい。実は、我々、そういうフラストレーションを持ってきたということです。新しい委員の方にそれを理解しておいていただきたい。

石会長

最後の結論は見事に島田さんにまとめていただいたと思いますが、「これからやるべき大きな課題がある」ということを、ぜひ我々の共通の理解にしたらいいと思います。中期答申をめぐっていろいろなことがあった、新しい委員の方もその辺はご理解いただいたと思います。しかし、消費税、キャピタル・ゲイン、給与所得控除等々、幾つか出た問題を、我々は真剣に基本から議論しなければいけないなという感じがいたします。

きょうは、取りまとめたり、皆さんにある方向づけをお願いするという時期ではございませんので、自由にご議論いただいたことは事務局におまとめいただきまして、いずれ将来の議論につなげたいと考えております。

次回のテーマは、中期答申の各論の後半の部分、資産課税、国際課税、その他の諸課題につきまして、事務局から御説明をいただいた後で、きょうみたいに活発な御議論をいただきたいと思います。

次回の予定は、11月7日(火曜日)2時~4時、ここでやりたいと思いますので、御多忙中とは思いますが、ぜひ御出席いただきたいと思います。

きょうは本当にありがとうございました。

〔閉会〕

(注)

本議事録は毎回の総会後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、大蔵省主税局及び自治省税務局の文責において作成した資料です。

内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。