第2回総会 議事録

平成12年10月3日開催

石会長

定刻になりました。第2回目の総会を開きたいと思います。おはようございます。まだ国会等の都合で事務方の一部がお見えになっておりませんが、ほぼお見えでございます。

最初に、荒井自治政務次官が御出席でございますので、御紹介いたします。

荒井政務次官

おはようございます。

石会長

今日は2つ大きな議題がございます。1つは、法人課税小委員会が検討いたしました報告につきまして、基本的枠組みをここで御承認いただきたいということと、もう1つは、7月に出しました『わが国税制の現状と課題』という例の中期答申をめぐりまして、今後の議論に備えて、予備的な議論を今日から開始したいということであります。

そこで、最初の議題は、会社分割に係る税制に関することでございまして、これは後ほど水野小委員長からも御報告があると思いますが、法人課税小委員会でいま詰めております。

若干経緯を申させていただきますと、通常国会で商法改正がございまして、会社分割制度が創設されました。それを受けまして、税制面もそれに即応した形で修正しなければいけないということで、議論を重ねてまいりまして、13年度税制改正、つまり来年度の税制改正に間に合わせたいということでありまして、急遽議論を早めております。したがって、9月14日の第1回の総会におきましても、皆さまにお諮りいたしまして、この法人課税小委員会を立ち上げたわけであります。

そこで、昨日、第10回目の小委員会におきまして、ほぼ基本的な枠組みがまとまりました。水野さんのほうから、審議状況を御報告いただきまして、皆さんの御意見を伺ったあとで、当調査会といたしまして、その枠組みを承認したいと思っております。

では、最初の議題でございますが、水野小委員長のほうから、法人課税小委員会でまとめました審議状況につきまして、御報告いただけますか。

水野(忠)委員

ただいま石会長からお話がありました法人課税小委員会の審議状況について、御説明させていただきます。

法人課税小委員会は、平成8年に課税ベースを拡大して税率を下げるというような方向で検討していたわけですが、それが一段落したというところだったわけであります。また後に藤田企画官のほうから御説明いただきますが、かなり状況が変わりまして、いわゆる商法改正で会社分割制度などが入りまして、それに対応した税制の整備も必要となってまいったわけであります。

そこで、昨年7月から法人課税小委員会が再開されて、当初、連結納税について議論をしていたわけですが、会社分割の法制も整ったということで、急いでそれに合わせて税制も対応しなければいけないということになったわけです。具体的には、御承知のように、何々ファイナンシャルグループといったようなものがすでに持株会社としてできております。こういった会社が企業の再編成ということで、いわゆるリシャッフルといいますか、分割していろいろくっつけたりというような作業をこれから始めたいということで、今年度改正を目指して、急いで作業を進めているわけであります。

具体的には、3月から会社分割を含む企業組織の再編成、これももともとの中心は会社分割であったわけですが、いろいろ企業再編成ということで合併がかかわります。あるいは子会社を設立するという別の方法、これを特定現物出資と呼んでおりますが、そういった制度等もありますので、整合性を考えて、全体として法人税法にどう位置づけたらよろしいかと、こういうような観点も頭に置いて議論してまいったわけです。

具体的には、前に御紹介いたしまして、本日の資料としても、大分たくさんございますが、後ろのほうに『税調委員海外調査報告』ということで、ドイツ、フランス、アメリカの調査をしてまいったところであります。今回の調査は非常に切迫したものでございまして、実際問題としまして、ドイツ、フランスの企業組織の再編成に係る税制というものも、かなりアメリカ法の強い影響を受けたものであることがわかりました。我が国でも税制を考えるに当たって、非常に外国法を参照する部分が多かったわけであります。

基本的な考え方につきまして、またお話ししたいと思いますが、その前に、経緯につきまして、事務局のほうから、税制を整備していくことになりました背景ですとか、特に大事なのは、さきの通常国会で成立しました商法改正、この商法改正がそもそもどういうものであったのかということについて御説明いただいて、そのあと、基本的な考え方を改めて私のほうからさせていただきたいと思います。

藤田企画官、お願いいたします。

藤田主税企画官

それでは、お手許に7ページほどの資料で、表紙に『説明資料』とだけ書いてある資料がございますけれども、それを使いまして御説明いたしたいと思います。

2枚おめくりいただいて1ページをおあけください。この表は、最近、企業組織等に関連しまして、法制あるいは企業会計でいろいろな動きがございますが、それを簡単に表にしたものでございます。

まず、一番左の独占禁止法の関係で申しますと、平成9年の12月に持株会社設立が解禁されたという動きがございますし、真ん中を見ていただきますと、特に今回商法が改正になったわけですけれども、平成9年ごろから企業組織に関連する商法の改正の動きは続いておりましたわけで、ここで見ていただきますように、平成9年の10月に合併手続の簡素合理化がなされました。

それから、1つとばしていただきまして、昨年の10月ですけれども、株式交換・株式移転制度の創設がなされました。

なお、四角で囲んでありますけれども、これにつきましては課税の特例ということで、平成11年度の税制改正で手当てをしたところでございます。

さらに、あとで詳しく御説明いたしますけれども、この5月に会社分割法制の創設を含む商法改正法が可決・成立したという動きになっております。法務省のほうでは、この会社分割法制の創設で、一通りの企業組織関連の商法改正は一区切りついたというようなことを申しているやに聞いております。

企業会計のほうでも、御覧いただきますように、連結財務諸表制度の抜本的見直しが行われているというような動きがございます。

それで、1枚おめくりいただきまして、ちょっと複雑な図ですけれども、これが今回5月に可決・成立いたしました商法におきます会社分割の制度でございます。経緯を若干御説明いたしますと、法務省のほうでは、政府の規制緩和3か年計画などで、平成12年度を目途に会社分割法制について結論を得るとされておりましたけれども、昨今のいろいろ企業の経営環境をめぐる動き、急速な変化等を踏まえまして、昨年の産業競争力会議で会社分割法制の早急な整備が必要だということで、検討が前倒しになりまして、さきの通常国会に法制審議会の審議を経まして法案を提出し、5月24日に可決という運びになったわけでございます。

それで、この商法改正の中身を御説明申し上げますけれども、まず、縦に見ていただきますと、新設分割というコラムと吸収分割というコラムがありますけれども、まず新設分割を御覧いただきたいと思います。これは、ここでいいますA社、もとの会社と考えていただきたいと思いますが、「分割会社」というふうに商法では呼んでおります。これの営業の全部または一部を、ここでは新設分割ですから、新しい会社をつくってそこに移転するというものでございます。それから、右側ですけれども、吸収分割というのは、そこは新設の会社ではなくて、もとある既存の会社、ここでは「吸収会社」と呼んでいますけれども、そこに営業の全部または一部を承継させるという制度でございます。

さらに、実はこれは上下の区分になっておりまして、分割型、分社型というふうに分かれております。上の分割型でございますけれども、先ほど営業の全部または一部の承継を受けました新設分割であれば新設会社、吸収分割であれば既存の会社である吸収会社が、その発行する株をもとのA社の株主に配るという形態でございます。

ここで見ていただきたいのは、右上の吸収分割の分割型というのは、実は合併に非常に近い。仮に営業の全部を承継させたとすると、まるっきり経済効果としては合併と同じだということになります。分割という名前をつけながら、これは合併と同じことができるということでございます。

それから、下にまいりますと、新設会社の株式あるいは吸収会社の株式を、今度は株主ではなくて会社自体に交付するというものでございます。したがって、左側の新設分割の分社型というのは、これは先ほど水野先生からもお話がございましたが、現物出資という格好で子会社をつくるのと全く経済的な効果は同じだということになります。このように非常に商法における分割の形態は多様でございます。

先ほど出ましたけれども、銀行のほうで何とかファイナンシャルグループというのは、右上の、多分、吸収分割の分割型というのを使いまして、機能別の再編成を行っていくのだろうというようなことが言われております。

それで、税制上の対応の必要性なのですけれども、商法が成立したわけで、このまま何も税制上の手当てをしませんと、商法上制度ができたけれども、全く動かないのではないかということが言われております。それはなぜかと申しますと、3つほどございます。税制の大原則は、資産がここでいうと会社から会社に移転すれば、その時点で含み益があれば、時価取引として譲渡益課税ということになります。したがって、割れた斜線部分が新設会社なり吸収会社のところに移る。ここには資産等が含まれるわけですから、ここで含み益の課税が起こってしまう。そうしますと、企業組織の再編が円滑に行われなくなるという問題がございます。したがって、諸外国の例等いろいろありますけれども、一定の要件を満たす場合に資産が移転する、移転するときに譲渡益課税が原則だけれども、一定の要件のもと、課税を繰り延べるという措置をとる必要がございます。

そこで、課税の繰延べということですけれども、仮にここで言うA社(元の会社)に土地がございまして、大昔に取得した土地で、非常に帳簿の価格は低い。ところが、いま時価は非常に高くなっている。そこの差に譲渡益課税というのが発生するわけですけれども、繰延べというのは、あとにも出てまいりますが、帳簿をそのまま引き継いで、将来、ここで言いますと、B社が第三者にまた売ったときに、その時点でその含み益に課税しようと。非課税ではございませんで、将来の時点まで課税を繰り延べるという措置でございます。

それで、先ほど申しましたように、企業の組織再編を阻害しないように、一定の要件のもと繰り延べるというときに、最大の論点になりますのは、通常の資産の売買取引といかに区別するかというポイントでありました。そこの点について、いろいろ議論を法人課税小委員会で重ねていただいたところでございます。

それから、もう1つ、このまま放っておきますと、どういうことが起こるかということですけれども、実はいまの話は法人の資産の移転で、法人にどんな課税がかかるかということですけれども、今度は株主の側です。この左上の新設分割を御覧いただきますと、A社の株主というのは、実は分割されたあと、A社の株の価値というのは、この図でいくと、大体半分に分かれていますので、価値が半分になってしまっている。資産が減っているわけですから。そのかわりにBの株をもらっていて、これでペイしているわけですけれども、これも放っておきますと、B社の資産等は時価評価されますので、株もかなり高いものが来る可能性がある。そうすると、Aの価値を半分手離して、Bの株の高いものをもらうということで、ここで株主にとっては株式の譲渡益の課税というのが発生し得ることになります。そこで、企業組織再編が起こったたびに株主に譲渡益課税を生じさせるというのでは、企業組織再編を阻害しかねないということで、やはりこれも一定の要件の場合に、株主の譲渡益課税を、将来その株主が売ったときまで繰り延べる。そのまた一定の要件の検討というのが必要になるわけでございます。

それから、税制上の対応としての3点目ですが、法人税法その他の法律でいろいろ税制に関する制度、あるいは引当金とか、いろいろなものがございまして、その引継ぎのルールというのを決めていかないと、この会社分割なりもスムーズに動かないということで、そういった面での検討も必要になるわけでございます。

そういったことで、特に合併の場合ですと、複数の会社が1つになるだけですので、非常に簡単ではございますけれども、分割の場合は分けるのが自由だということで、非常にルールを決めていくのが複雑だというところがございます。

それにつきましては、3ページ以降に、私がいま申し上げたようなところは、検討の視点ということで書いていますけれども、これは字を読むだけでは難しいので、少しかみ砕いてお話をさせていただいたところでございます。

それから、5ページ以下には、7月にとりまとめていただきました中期答申の会社分割に係る税制のところを引いております。

それから、先ほど水野先生からも御紹介がありましたけれども、お手許に『法人課税小委員会の審議状況』という1枚紙がお配りされていると思いますので、それを御覧いただきたいと思います。平成11年の7月に第1回を始めまして、昨日で10回目でございまして、先ほど水野先生からも御紹介ありましたけれども、この3月以降、会社分割に重点を置いて、海外調査報告なども含めまして議論を重ねてきたというものでございます。

水野(忠)委員

いま、藤田企画官のほうから、審議の背景、商法の改正のお話をしていただきまして、我々、法人課税小委員会では、お手許に配っていただいておりますが、『会社分割・合併等の企業組織再編成に係る税制の基本的考え方(案)』というもの、これは番号がついておりませんが、ちょっとめくって探していただきたいと思います。これにつきましては、すべてあとで事務局のほうで読んでいただくことになります。

企業組織の再編成というのは、企業の側にとって非常に大事なものでありますが、非常に技術的な側面が強くて、なかなか理論的なものが見えてこないということでありますので、まず理論的な枠組みのほうを、私のほうで簡単に御説明させていただきたいと思っております。

それにつきましては、もう1つ、いま御紹介しました『会社分割・合併等の企業組織再編成に係る税制の基本的考え方(案)』、それの要約版というものを、私と事務局の説明のためにつくらせていただいております。これを御覧いただきながら、最初に大まかな企業の再編成、特に分割ですけれども、どういう考え方に基づいて税制が組み立てられていくのか、その方向を示してありますが、それについて考え方をお話ししまして、あと、全文を読み上げていただくようにいたします。

なるべく簡単に御説明いたしますが、まず要約のほうに沿ってお話しさせていただきます。

第一に基本的な考え方。これは藤田企画官のほうからもすでにお話しいただきましたが、企業の組織再編成による資産の取引については、その実態に合った課税を行う。具体的に申しますと、企業再編成という言葉が最近使われますが、現実には、税制の中にもうすでにいくつか存在しているわけです。典型的には、合併の場合ですが、清算所得に係る法人税という1つ特別の法人税が法人税法の中につくられております。

それから、従来分社と呼んでおりますけれども、100%子会社をつくる場合どういうふうに行うかというと、いわゆる会社の資産、財産の出資を行う。会社の財産の一部をもとに出資しまして、それで子会社をつくるわけです。先ほど企画官のお話にありましたように、資産を移転するということは、これは所得課税の原則からしますと、それまでの含み益が実現しますので、その段階で課税する。これが大きな原則になるわけです。そこで、特定現物出資と呼んでおりますけれども、法人税法の中に特別の規定をつくりまして、この場合には特別な会計の仕組みを使って、課税を先送りにするという措置がすでにとられております。これは昭和40年から続いております。

それから、合併も実際問題としまして、法人税法の中には合併の場合にはこういう課税をするという規定があるわけですが、現実には、これは法律の根拠はないのですけれども、合併の場合には取得価額、帳簿価額をいわゆる被合併法人から合併法人に引き継ぐということが認められてきております。ですから、合併というのは従来、よく言えば柔軟な対応ですが、どういう価額で引き継ぐのかというときに、それはもっぱら企業に任されておりましたので、当然のことながら課税関係が生じないように、帳簿価額がそのまま合併する会社に引き継がれた。こういうような形になっていたわけです。

そういうような企業の組織再編成に係る一部の規定がございましたが、今回、商法で会社分割という新しい規定と申しますか、形態を設けましたので、税法上も企業の分割に係る税制を考えなければいけない。そのときに、いままであった税制、すでにあった会社の合併、現物出資といったもの、これとの整合性を考えなければいけないということが大事であったわけです。これが(2)でございます。

(3)に簡単にまとめてございますけれども、先ほど御説明ありましたように、企業の再編成というのは、分析してみると何が行われているかといいますと、会社の資産が2つに分かれるとか、あるいはもともと2つの別々の会社に属していた資産が統合されるといった形で、必ずそこでは資産の移転が行われているわけです。ですから、そのままにしておきますと、先ほども申しましたが、キャピタルゲインが実現するということで、いわゆる課税の問題が生ずるわけです。

株主にとってはどうなるかと申しますと、これは100%子会社の場合には、株主には関係のない、いわゆる分社と呼んでおりますが、厳密に申しまして、分割の場合ですと、先ほど企画官のほうから新設分割というお話がありましたが、これは子会社をつくったときに、その子会社の株式を親会社の株主に交付する。こういう手続が行われるわけです。そこで、その場合には子会社の株をどう扱ったらよろしいだろうかということで、2段階の課税問題が生ずるわけです。

要約のところを見ていただきますと、第二のところで「資産等を移転した法人の課税」、それから、1枚おめくりいただきまして、第三のところですが、「株主の課税」ということで、法人段階、株主段階ということで課税問題が生じます。

基本的にはどういう扱いをするかと申しますと、第一の「基本的な考え方」、これが非常に大事なものですので、読ませていただきますと、「企業の組織再編成により移転する資産の譲渡損益については、移転資産に対する支配が継続していると認められる場合に」、資産に対する支配が継続しているということですね。「また、株主の旧株の譲渡損益については株主の投資が継続していると認められる場合に、それぞれの計上を繰り延べる取扱いをすることなどが考えられる」。ですから、ここでは、会社の支配状況が変化していない、資産に対する支配が継続している、もう1つは株主の投資が継続している。いわば株主から見ますと、従来、投資家なり事業主であったわけですが、それが継続していると見られる状況。会社から見ますと、従来資産を保有していたわけですけども、その資産の保有、形は変わりますけれども、実質的には支配関係が続いている。こういう場合には課税の繰延べを認めてよろしいのではないかということであります。

これは我が国の税制の中にすでにごく一部存在はしております。小委員会で議論したわけではないのですが、所得税法の中に固定資産の交換というのがございまして、固定資産を交換しまして、同一の用途に供する。例えば農地と農地を交換して、交換の後も農地として使っていますと、この場合には譲渡がなかったものとみなすという考え方がすでに入っておりますが、大体それを法人にも適用するといいますか、拡大した考え方でよろしいのではないかと思うわけです。ですから、資産の使用状況、いわゆる運用がそのまま継続していると見られる場合、この場合には課税の繰延べを認める。これが基本的な考え方であります。これはなかなか理解しがたいところがありまして、小委員会の中でもいろいろ質問、意見等が出たりするわけですが、もとをたどりますと、アメリカ合衆国が1920年以前よりこういった仕組みをとっておりまして、それが合衆国の最高裁判所で、なぜこれが課税が繰り延べられるのかということが明確に示されているわけです。

そこで出てまいりましたのが、投資の継続という考え方であったわけです。もっと徹底して申してしまいますと、こういった取引はペーパートランスアクションではないかと。単に書類のやりとりがあるけれども、実際には実態は変わっていない。こういう場合にあえて課税するには及ばないのではないかということであります。

これが基本的な考え方でございます。ですから、逆に申しますと、ちょっと話が先になってしまいますが、私がよく例に使うのですけれども、例えば大手のスーパーマーケットがありまして、隣に小さな八百屋さんなりあったとしますと、この2つをくっつける。例えばスーパーマーケットが隣の八百屋の敷地と店舗、これを売買によって購入する。いわゆる取得しますと、この場合は当然キャピタルゲインが実現しますので、資産の譲渡ということで課税されるわけですが、合併した場合には、基本的には従来の我が国の税制でも課税が繰り延べられるということが可能であったわけです。しかしながら、こういった状況を見てみますと、どうなるかといいますと、大手のマーケットのほうは、例えば上場しているとしますと、そこに株式があるわけですが、合併を行った場合に、それによって従来小さな店舗を開いていた八百屋さんのほうはどうなるかといいますと、持株が例えば0.1%とか、そのような状況になるわけですね。そうしますと、従来八百屋として事業主であり、なおかつ会社だったとしますと、一人株主として全部会社を支配していたという状況が、この合併によって崩れてしまうわけです。ですから、大手の企業の単なる株主になってしまう。見方を変えますと、現金と等しい価値のある資産を会社との合併の見返りにもらったということになるわけですね。ですから、この八百屋さんは実質的にはもうこの段階では会社とはかかわりなく、単なる現金に換金可能なものを受け取ったと、こういう形になるわけです。

ですから、こういう場合には、今後の措置になりますけれども、従来のような課税の繰延べは認められない。そういうことになると思われるわけです。ですから、投資の継続と申しますと、非常にわかりにくいのですが、簡単に申しますと、いわゆる従来の経営なり株の保有関係といったもの、これに変更が生じた場合には課税されますけれども、そうでない場合には、課税を先送りするということになっているわけです。

そこで、これが基本的な考え方ということですが、大事なことは、第二の「資産等を移転した法人の課税」を見ていただきますと、いまお話ししましたように、一定の条件が整った法人につきましては、課税を繰り延べるということになるわけですが、そこでさらに網をかぶせまして、どういう場合がこれに当たるだろうかということで、簡単に見ていただきますと、(1)企業グループ内の組織再編性、例を挙げれば、今回予定されているようなファイナンシャルグループといったもの、いわゆる企業グループを形成しまして、その中でシャッフルを行う。こういうことが行われるわけですが、この場合には、ここには一体的な経営というのが書かれておりますけれども、こういうような状況で行われる分割あるいは合併といったものについては、課税が繰り延べられてよろしいのではないかということであります。

ただ、企業グループであれば何でもいいかというと、それでは困りますので、その下に[2]で以下の要件が必要であると。ここでは、独立した事業体で行われる、あるいは移転した事業が継続するということ。なぜこういうことが書いてあるかと申しますと、あくまで事業性を持った企業が継続していなければいけないということでありまして、ここにも書いてございますが、単なる個別の資産が譲渡されたに等しいような取引では困るということであります。

それから、もう1つは、(2)共同事業を行うための組織再編成ということですが、これは、従来もございましたが、2つの会社、特に大手の企業が合併をする。そうしますと、合併ということですから、2つの企業が今後は共同して事業を行うという形になるわけですね。単なる2つの会社がくっついただけですと、共同事業という形になりますが、その下にさらにそれぞれ子会社を持っていたとしますと、今度は[1]の企業グループを形成するということになるわけであります。

共同事業の場合にも、どういう場合に認められるかということで、一番下に要件が出ておりますが、ここでは事業の関連性となっております。これはかなり厳しい要件で、例えば何でしょうか、ちょっと思い浮かびませんが、例えば建設会社と自動車会社が合併する。これはあまり関係がありませんので、こういう場合には関連性がない。

それから、それぞれの事業の規模が著しく異ならないこと。先ほど私が例に用いました大手のスーパーマーケットと小店舗の八百屋さん、こういったようなあまりにもアンバランスなものは、もう前提条件から除いてしまおうということであります。そこで共同事業ということで絞りをかけたわけであります。

2ページ目を見ていただきますと、当然、従業員の問題、それにかかわる退職給与引当金等、いろいろ問題がございますけれども、またそういった点についてはあとで報告案を読んでいただくことで対応したいと思います。

それが法人の関係で、それから、簡単に申しますと株主の課税。株主も合併した場合には、必ず被合併法人の株式と交換に合併した法人の株式を取得する形になっているわけです。

それから、会社分割の場合ですが、これは先ほど企画官から御説明ありましたように、分社型の分割と言われているものと分割型の分割、2つありまして、従来の親会社の株主に株が配られる場合と配られない場合が出てまいります。配られない場合は従来から分社と呼んでおりますが、この場合には問題は出てこないと思われるわけです。もともと親会社の株主が子会社の株を受け取った場合、この株は何になるのかということですが、先ほども御説明いただきましたが、単なる株式が親会社に分割された場合を例にとりますと、それだけ親会社の株式の価値は落ちてくるわけですので、それに対応して他方で子会社の株が交付されるということで、あわせて見れば前と変わらないということになるわけです。

ただ、問題が出てまいりますのは、利益積立金、商法でいう利益準備金といったようなもの、これを原資としまして、それに対応して株が配られた場合には、やはりここではこのような利益積立金が表に出てくるというのは、所得の実現が行われていると申しますか、所得が実現した形になりますので、これに対応した課税を行う。具体的には、交付された株式に何らかの課税を行うということになるわけであります。

あと、第四に「各種引当金の引継ぎ等」、これはあとで読んでいただくようにいたします。

それから、「第五 租税回避の防止」ですが、これだけお話ししておきますと、非常に複雑多様な取引の形態が出てくるであろうと。先ほども御説明がありましたけれども、合併を行うのと、先ほど吸収分割というのが出ましたけれども、吸収分割というのは、会社を分割した上で合併をするという2つの手続を1つで済ませるようなものでありますので、こういったような同じような取引が行われる。これはさらに課税を繰り延べるという大きな利点が伴いますので、現在すでに監査法人等ではいろいろ考えているようでありますけれども、税金がかからない状態で、本来の組織再編成とは違った目的に使われる。一言で言えば、資産の譲渡というもの、あるいは配当、こういったものが課税がされないような形で行われる。そのようなスキームが含まれるという可能性が十分にありますので、第五のところで租税回避の防止というものが強調してあるわけでございます。

ちょっと長くなってしまいましたけれども、こういった基本的な枠組みということを御理解いただいた上で、この基本的な考え方を御説明いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

石会長

どうもありがとうございました。

議事の途中でございますが、ただいま村田大蔵総括政務次官がお見えになりましたので、御紹介いたします。

それでは、引き続きまして、事務局のほうから案というのができております。ちょっと大部でございますが、お急ぎで朗読をしていただきたいと思います。

事務局

(『会社分割・合併等の企業組織再編成に係る税制の基本的考え方(案)』朗読)

石会長

どうもありがとうございました。長文の朗読御苦労さまでした。

それでは、若干時間を割きまして、いま水野さんの御説明以下の法人の企業再編成に係る税制につきましての御意見なり御質問なり承りたいと思います。

島田委員

今日は久しぶりに非常に完成度の高い御説明をいただきました。日本の経済がグローバル化が浸透して、技術革新が加速している中で、産業構造がどんどん変わらなければいけないという中で、企業再編成を支える税制として、こういう非常に完成度の高い報告が行われたことは、私は小委員会の皆さまは大変な御努力だったと思うので、敬意を表したいと思います。

それを申し上げた上で1つだけ御質問したいのですけど、4ページ目の「共同事業を行うための組織再編成」というところで、共同事業としてこの税制を適用する要件を3つぐらい書かれているわけですが、その中の1つで3行目ですね。「組織再編成により一つの法人組織で行うこととした事業が相互に関連性を有するものであること」というここのくだりですけど、先ほど水野小委員長が、ちょっと例を出しましょうということで自動車会社と建設会社、それはたまたま思いつかれておっしゃったのだろうと思いますけども、私は水野先生の御意見を聞いて、これは極めて関連性が深いと瞬時に思ったんです。

それはなぜかというと、例えばいまITSというようなことが考えられていますね。これは自動車会社であり、建設会社なんですよね。そこへまた通信が入ったら、まさに一番戦略的に重要な産業なので、そういうのを一緒にやるというのはウェルカムではないかなどと一瞬思ったのですけど、実はこういうことを言い出すと、私は悪い癖があって100時間ぐらい言えちゃうんです。やめますけど。

実は新しい産業が伸びるときというのは、どういう産業分類になるかというと、既存の産業分類でないものが多いんですね。それは何だというと、一見、これまでの考え方から見ると、全く関係がないように見えるところに、実は企業のコアコンピテンスを活用して新産業が生まれるという例が非常に多いんです。ですから、これは思いつきでそういうことが生まれますよというのはよくないのですけれども、多分、産業関係者は必死になって、新しい社会が変化していく、経済が変化していく、需要に合った新しい商品・サービスをクリエイトしようと努力されている。その中に、これまでの考え方からいうと全然関係がないように見えるものが多いと思うのです。

そこは、この言葉の中の関連性という意味なんですけど、関連性は新事業をつくるのだから関連性があるのだというふうに解釈されれば大変いいことなのですけど、これまでの、一見見たところ全然関係ない産業ではないか、だから関連性に乏しい、申請を出してもこれはだめよと。

ただ、申請を出すときに、こういう新事業をしますからと申請を出すということは、ビジネスモデルとの関係もあって、どちらかというと企業は言いたくないんですね。全部でき上がって、さあ、そうだと、こういうふうにしたいものですから、そこのところを積極的に評価すれば、この文章でもいいのですけれども、これまでの考え方で、やはり全然一見関係ない、中を説明してみろといったら、これは企業は企業秘密ですから、新事業の場合は説明しにくいですよ。それをどうお考えになるか。そこら辺のところを、これは同じ絵を描いても、角を矯めて牛を殺てしまう可能性がありますので、ぜひひとつ積極的にお考えいただきたい。

石会長

税調の恒例の島田節から始まりましたけど、この関連性の定義について、事務局から何かございますか。あればで結構ですが。注意しろということだと思いますけど。

木村審議官

いま島田先生のおっしゃることはよく理解できると思います。私ども小委員会の御議論を拝聴しておりまして、こういった基準が設けられたというのは、あくまで先ほど小委員長から話がございましたように、通常の資産の売買取引と企業の組織再編成をどうやって区分するか、どういう基準でまず課税の繰延べを認めていくか、ということの基準として、企業グループという明確な資本関係がない場合には、共同事業という1つのこういったものについても対処していく必要があるだろうと。その基準として、こういった3つぐらいのものがあって、これを総合的に勘案していく。例えばこのうち1つがだめだったら絶対だめかというと、そこはまた全体の判断だと思いますけれども、そういった意味で、いま島田先生がおっしゃったようなことも確かによく考えてやっていく必要があることは、そのとおりだと思っております。

松田特別委員

私もいまのところと若干関連するのですけれども、その上の4ページ目の3行目、「独立した事業単位」、その次の行の「移転した事業が継続すること」、それから、いま島田先生がおっしゃった「事業が相互に関連性を有する」、その次の「事業の規模が著しく異ならない」、ここらあたりは割と裁量の余地のある概念であると思うのですけれども、これは法律でどこまで書くのか、それから、政省令段階でどこまで書くのか、あるいは税務署の裁量に任せてしまうのか、その辺はどうなのでしょうか。

藤田主税企画官

おっしゃるとおりで、税制を運用していくためには、できるだけ明確なものが必要ですので、これは基本的考え方をいただいているわけで、これからいろいろな経済界の実情とかをお聞きしながら、この要件を明確化していきたいと思いますけれども、法律レベルでも書くでしょうし、政令・省令、それから通達レベルでも書いていくということになると考えております。

菊池特別委員

同じところで従業員の相当数引継ぎなのですが、これは意味がちょっとわかりません。税金を取ることと従業員の引継ぎということの関連性が見えないのですけれども。

石会長

ちょっと御説明いただけますか。

木村審議官

先ほど来申しておりますように、この要件は、通常の資産の売買のときにどうやって区別するかということに尽きるわけです。例えば事業を一緒にやるといっても、人はすべて切り離してしまって、物だけくださいといったことを、共同事業という形で本当に考えていいのかどうか、そういうことでございまして、もちろん企業組織再編成のときにリストラがいけないということは当然あり得ない話でございますから、全部引き継いでこいということは書いていないわけでございます。あくまでもそういった、まさに共同事業たる要件を判定する基準として、やはり従業員もある程度来て、一緒に仕事をやっていくのだということが通常の場合ではないでしょうかということで、こういった要件が入っているというふうに考えております。

石会長

水野さんのほうから何かこれまでの議論でございますか。

水野(忠)委員

ちょっと逆になりましたが、補足させていただきますと、1つは会社分割を例にとりますと、商法上、営業を一括に譲渡する、そういうような形になっているわけですね。さて、それで今度は商法上は営業の包括的承継は何であろうかと。商法のサイドでは、営業というものをどういうふうに見るのか。もともとは権利・義務で済ませていたのを、営業というもっと大きな概念にしたのですが、そちらの方面でも問題になってくるわけです。ただ、商法サイドは、当事者がもめない限り裁判になりませんので、おそらく今度は税法上、ここに何度も出てまいりましたように、事業を継続するとか、あるいは、いろいろ御質問に出ましたけれども、独立した事業であるかどうか。この認定は、島田先生がお話しになったように、やはり非常に難しいことになろうかと思われます。ただ、できるだけごく一般的と申しますか、誰でも理解できるところから始めて、限界的なところについては、イエスという答えが出るか、ノーという答えが出るか、これは非常に難しい問題となろうかと思われます。

それから、いま審議官がお答えいただいたことですが、これもやはりそもそも商法上の規定が営業の包括的承継となっておりまして、労働法もそれに対応した規定が出てまいりますので、従業員の移動というものも当然行われることになるわけです。

その場合に、これはまたやぶ蛇になるかもしれませんけれども、退職給与引当金、それから、年金関係の積立金、こういうものはどうなるのだろうという問題が税法上も出てくるということで、従業員の引継ぎというものは、税法上も考慮しなければいけない問題であるということではないかと思います。

島田委員

重要なポイントなので申し上げたいのですが。

全部わかるのですけど、これが実際現場で適用されて、解釈されていくことになると、どんな状況が出てくるかということなのですけど、木村さんがおっしゃられたように、やはり資本取引を税制特例を受けましょうということで、こういうことをつくりますと、そういう意図からやる人も当然いるわけですね。現場でそれを判断しなければならなくなりますね。そうすると、さっき私が申し上げたような例でもって本当に新規事業を起こそう、ただ中身はいま企業秘密だから言えませんという形で出てくるのと、単に資本取引をやって税制特例を受けようというのと、言い方が悪くて申しわけないのですけど、現場でミソとクソの区別がつかないですよ。

さて、そのつけるときにどうするかというと、この委員会ではみんな大所高所ですから、基本的な考え方に書いているように、「経営環境が急速に変化する中で、企業の競争力を確保し、企業活力が十分発揮できるよう」と、見事に書かれているんです。だけど、こういう文章は現場の係官の判断になったときには、やはり彼らは責任を問われるのは嫌ですから、どちらかというと、ネガティブになる可能性が非常に大きいと思う。だから、現場の係官の判断根拠として、企業活力の増進に結びつくのかどうかというのが1行入っていたほうがいいくらいなんだけど、そんなことって判断できませんよというのが税担当官の話だと思いますね。

しかし、それをやっていると何が起こるかというと、こういう仕組みをつくっても、結局、現場の裁量に任されると、使えないということになるおそれが非常に大きいので、私の提案は、もう一歩踏み込んで、これの補足システム、つまりあくまで企業活力を高めるためにミソとクソを見分けるのだというのは、こういう方法論だという、ちょっとタスクフォースでもつくって、やはり一度つくられないと、さっき松田さんがおっしゃられたように、現場の裁量に任されると、はっきり言ってこれはだめになりますよ。だから、裁量に任せない仕組みを何かつくらないといけない。

石会長

これから実務的なところを詰めなければいけない。あとで御承認いただいたらしますので、島田さんの御意見を十分に生かしたような形で、これから法律もつくり、政令もつくりということになると思いますので、配慮していただきたいと思います。

水野(勝)委員

いまの点に関連しての1つは、こういった制度は本当に企業活動に大きく影響します。できると思ったらできない、そうなったら企業としても大変だと思います。そういった意味で、非常に難しいかもしれませんが、これを実行していく段階で、もしできることであれば、事前照会制度的なものを何か考えられるかどうか。これはアメリカ的にまで徹底できるかどうかわかりませんけれども、そういったものを視野に置いて検討されるのも1つの方向かなと思うわけでございます。

それから、もう1つの点は、12ページでございますけれども、繰越欠損金。これは被合併法人の繰越欠損金を引き継ぐということで踏み切られておる。これは非常な御英断ではないかと思います。いままで不自然な逆さ合併的なものが多かった。こういったものが認められるということでございます。そうしますと、(2)で分割型会社分割はどうなのだという、ここは実務的に慎重な検討を行うという御表現でございます。まさに非常に難しい問題ではあろうかと思いますけれども、(1)とあわせて、前向きに慎重に御検討いただければ幸いであると思うわけでございます。

石会長

水野さん、何かありますか。

水野(忠)委員

繰越欠損金、これは1つ大きな論点で、いまおっしゃいましたように、結局、最高裁判所が合併の場合に繰越欠損金の引継ぎを認めなかったものですから、今度は逆に欠損のある法人を残存会社にして合併してしまおうというような変な仕組みが出たりしたもので、それは今回の企業組織の再編成という大きな1つの枠に入れるということで、合併には多少の絞りはかかりますけれども、逆から見ますと、こういった繰越欠損金が認められるようになるということでよろしいのではないかと思います。

それから、いわゆるアドバンス・ルーリング、事前照会制度のお話、これは昨日も法人課税小委員会で意見が出ましたし、あるいは、かつて金融課税小委員会の中間報告を出した折にも、新しい金融商品が今後出てきた場合にどういうふうに課税されるのかという問題が出るので、できるだけ事前照会制度をつくることが望ましいという報告を出しておりますが、同じようなことで、これはどうしても国税庁の人事的な対応がありますので、どこまでできるか難しいところでありますけれども、やはり重要な問題は、なるべく、現在の組織だとしますと、国税庁の審理課あたりまで上げて検討して答えを出す。現場サイドで簡単に答えてしまうと、話がこじれるだけになりますから。当面はそういう現実にある組織を使って動いていただくのかなと思います。

松尾委員

会社分割税制としてこの基本的な考え方はしっかりした内容になっておると思いますので、私はこれで了承したいと思うわけです。

それで、ちょっと注文なのですが、7ページのところに、「消費税の納税義務の判定等に関する特例を設ける必要がある」とありますね。会社分割によって消費税の納税義務を免れるケースがこの結果続出するということになると、これは大変なことになりますので、この辺はきちんとした対応をする必要があるだろうと思います。実際問題として、こういった会社分割を租税回避の手段として利用するケースがやはり出てくると思うのです。これに対してアメリカなども、そういった租税回避行為を助長する可能性に着目して、十分対応しているということでありますし、我が日本としても、租税回避防止について、きちんとした規定を設ける必要があるだろうと思いますし、事務的にその辺はしっかり詰めていただきたいと思います。

石会長

御意見という形で承っておきます。

河野特別委員

最初に会長がおっしゃったように、これだけ膨大な、しかも多様で複雑な話を、一気に今日話を聞いて、まとめてくださいという話なんですよね。これはこれからの作業を考えれば、それしかないと私も思うのです。いろいろ疑問点らしきものが頭に浮かばないわけではないけれども、要するに大義名分があって、商法改正が行われて、急遽、法人のメンバーが10回にわたって会合をし、しかも大蔵省の納税技術の問題について精緻な人が全部議論に加わったわけですよね。私はもう、要するにこの大きな方向に向かって税制は邪魔しない、本筋さえ守られていれば邪魔しないのだということだと思っているんです。これだけ精緻な議論が行われたのだから、僕らはそれに全然入っていませんから、議論された石さんなり水野先生なりを信頼して、とにかく、これは丸飲みだと。そのかわり注文は、これが実行上問題が生じたら、そのときはまた考えればいいわけで、これから大蔵省は大作業が始まるわけだから、大変だと思いますけど、しっかりやってください。私はこれは基本的に賛成です。

石会長

私が言うようなことを言っていただきまして、ありがとうございました。

佐野特別委員

これの説明を聞いていて、やはり率直な印象は、わからないということですね。これがすっとわかる人は、相当の達人だと思います。これが実際の事業経営にこれから大きく影響していくとすると、正確性を期す文章としては、こういうふうに書くしかないのかもしれないけれども、より正確にわかりやすく理解してもらうという努力というのは、やはり惰ってはいけないと思います。

一、二私なりの不勉強ゆえの質問をさせていただくのですが、例えば、「共同事業」という言葉がこの資料によく出てくるわけです。この共同事業というのはいかなるものかという解釈は、人によって様々だと思いますよ。例えばそれは合併、あるいは今回で言う吸収分割、あるいはこの資料には出ていないけど、合弁というような形態もございます。経営統合みたいなものもある。その共同事業というものの言葉の定義というのは、もう少しかみ砕いてわかりやすく表現できないものかどうか。ここら辺は質問であり、意見でもあるわけです。

それから、もう1つ、現行の合併、あるいは特定現物出資等もあわせて見直しを行うということで、むしろ分割、合併、現物出資というような組織再編を一線に並べるという基本的な考え方は、私もそのとおりだと思いますが、それを文章で表現する場合、では、一体現行の合併税制というのは、どこが変わって、どこが変わらないのか、あるいは特定現物出資という法人税法の51条は一体どうなってしまうのか。ここら辺が少し補足的な説明をする必要があるのではないか。もちろん、文章にそれを入れろということではありませんが、外部への説明においては、そこら辺がもう少しわかりやすいような努力をしていただきたいというふうに考えます。

石会長

御意見にわたる部分もございましたけど、水野さん、何がございますか。

水野(忠)委員

いま佐野委員からお話のあった共同事業という言葉ですね。これは素朴な意味でいうと、もともとは組合みたいな事業形態だったと思うわけですが、先ほどおっしゃったようなジョイントベンチャーが出てきたり、いろいろなケースが考えられますが、一番企業結合の典型的なものは合併という形で、2つの企業が一緒になるということですね。あるいは緩い共同体の場合には、その間に組合といいますか、元の長期信用銀行の形がそうなると思いますけれども、そういう形で組合を介在して2つの事業が結びつく。こういうような形態もいろいろ考えられると思います。そうなると、今度は企業グループというもう1つの概念がございまして、そちらのほうに入ってくる可能性もあるわけです。ただ、確かにおっしゃいましたように、共同事業という言葉だけを使っておきますと、わかりづらいところがありますので、この点は補足説明なり入れておきたいと思います。

藤田企画官のほうはいかがでしょうか。

石会長

何かあればどうぞ。

藤田主税企画官

おっしゃるように、いろいろ正確性を期して書いていますので、わかりにくいところがあるのは、本当に申しわけないと思うのですけれども、行く行くはこれで行くということで固まりましたら、わかりやすい言葉でやっていく必要があるのだと思っております。

それから、共同というところですけれども、先ほど出ていますように、いかに資産の取引と区別するのだというところで、共同という概念を持ち出して、いろいろなメルクマールを3つほど掲げてあるわけです。先ほど申しましたけれども、これから経済界の方たちの御意見とか実態もいろいろお聞きしながら、中身はもう少し詰めていかないといけない。それで、文章にしていかないと、執行のほうも動きませんので、ということを考えております。

石会長

さて、ぼつぼつ次の議題に移りたいのですが、佐野さんと竹内さんが手を挙げられていますね。では、お二人に限らせていただきます。どうぞ。

佐野特別委員

いまのお答え、大体理解してもらったと私は解釈するのですが、要するにこの共同事業という文章、これは合併なんかも含むとあるのですが、一方で「合併」という言葉も出てくるんですよ。すなわち「共同事業」という言葉と「合併」という言葉が2つ出てくる。そこら辺がわかりにくいということを申し上げているわけなので、ひとつ検討いただきたい。

竹内委員

1つだけ質問なのですけれども、支配の継続性という言葉で、課税をするかどうかということをおっしゃられたのですけれども、逆に最近の事業会社による金融会社の創設みたいな場合は、支配継続性があってはいけないというような観点で、金融監督庁なんかは、逆になるべく競争政策上、支配継続性をなくすという判断もあり得るわけで、継続性があるからということがプラスであるというふうには捉えられないケースもたくさん出てくると思うのですが、こういう場合、やはり金融監督庁あるいは公取との議論の整合性というか、この辺はどういうふうに捉えるのか。

石会長

新しい側面ですね。何かございますか。

水野(忠)委員

金融機関、例えば銀行ですと、銀行法の規定で、以前から銀行はほかの事業に乗り出すときには5%以内とかありましたが、さて、それは金融行政の問題であるわけですが、おそらく先ほど島田先生が言われたように、事業と事業がくっついたり離れたりする。一体事業の意味はどうなのだろうと。そういう中で考えられる問題ではないかなと思っております。

逆に政策的に租税政策と他の金融政策とが錯綜すると申しますか、一致しない。これは十分あり得ることなんですね。そもそも商法の問題につきましても、商法はかなり営業の包括的承継ということだけを言いまして、あとは全部会社任せで、悪く言えば丸投げしているのですが、それを税法でかなり絞りをかけておりますので、やはり企業の側から見ると、多少改正された商法に比べて税法はきついなという印象を持たれるかもしれないのですが、同様に、ほかのいわゆる業法関係で定めている支配の割合、それと税法との整合性を完全に保つということ、これは無理でありますし、やはりそこは政策の違いということがありますので、基本的には別のものではないかなと思っています。ただ、あまりにもそれがあるために何か障害が大きいという場合には、税法改正するということも十分考えられると思います。

石会長

それでは、まだおありかと思いますし、またこの種の議論をする場も設けたいと思います。次の議題が待っておりますので、移らせていただきます。

とりあえず確認をしておきたいのは、今回の「基本的考え方」という読み上げていただいた案、これを一応総会として御了承いただきたいということであります。よろしゅうございますか。

(「異議なし」の声あり)

石会長

では、この案に即しまして、これから事務当局のほうで細かな点を詰めていただくという作業が残っております。またいずれかの機会に御紹介いただくこともあろうかと思います。

それでは、次の第2の議題に移りたいと思いますが、これは、今日から本格的な実質的な審議が始まったわけでございます。3年間議論をしていくわけでございますが、おそらくしかるべき時期に、あるいは後半かもしれませんが、骨太の議論を税制改革に対して行わなければいけないわけでございまして、その準備をぼつぼつ始めていただかなければいけないと思っております。

そこで、先ほども御紹介いたしましたけれども、この4月に加藤前会長のもとで、我々中期答申を、分厚いものがお手許に配付されていると思いますが、『わが国税制の現状と課題―21世紀に向けた国民の参加と選択―』というものをつくりました。新しいメンバーの方も加わられたということもございまして、この参加と選択という我々の中期答申を再度議論の素材に乗せまして、今後の来るべき税制改革に備えての準備を始めたいと考えております。

大変大部なものなので、1回でとても終わりませんので、今日はその前段というか、もっと前の部分だけでございますが、「基本的な考え方」というところ、いうならば総論部分ですね。それにつきまして、事務局のほうから簡単な要約をしていただき、問題点を指摘していただき、その後議論をしたいと考えております。したがいまして、この中期答申をめぐる議論がこれから数回続くとお考えいただいて、今日はその序論ということにしていただきたいと思います。

では、池田調査課長と小室企画課長、順次御説明をお願いします。

池田調査課長

それでは、お手許に「総2-1」というA3判の大きい資料がございます。これを、机の上がちょっと狭くなってしまいますが、この1枚目が先般の中期答申の総論部分のごくごく簡単なまとめになっております。これを御紹介する形で進めたいと思います。それから、「総2-2」で『資料』という横紙の資料集がございます。これも何枚かめくっていただきたいと思います。

それでは、申し上げます。先般、7月14日に『わが国税制の現状と課題』ということで中期答申をいただきました。21世紀にふさわしい税制に向けての抜本的見直しが不可欠であるという問題意識のもとに、その本格的な議論に備えて、国民一人一人に税制について考えていただきたい。そして、責任ある選択をしていただきたい。そのためには、きちんとした判断材料を提供する必要があるということで、こういった大部になっておりますけれども、ほとんどすべての税目や税にかかわる事項について、議論をしていただき、おとりまとめいただきました。

その「基本的考え方」という部分が全体の総論になっております。それを御紹介したいと思います。

最初に、「租税の意義と役割」とございますけれども、社会を安全で安心あるものとしていくためには、公的なサービスというものが様々に必要になってまいります。そのサービスを国民が受け取ることによって受益があるわけですが、その費用を誰が賄うのかというと、これはやはり同じように国民が負担をしていただかざるを得ないわけでありまして、租税はそれをつなぐと申しましょうか、受益を賄うための費用を調達する。租税はそういったサービスの財源調達機能を持つものである。これが第一の基本的な役割であろうかと思うわけであります。当然、その際、受益と負担は原則として、そして国民全体として一致している必要がございます。負担のない受益というのは、これは基本的には存在し得ないわけでありまして、そのことが時々忘れられてしまっておりますことについて、御指摘をいただいたところであります。

それから、その負担を誰が一体分かち合うかということについては、やはり受益というのは基本的に国民全体で受け取るものでございまして、社会の構成員として、皆で広く公平に分かち合わざるを得ないのではないか。それが第一の原則であろうという御指摘でございます。

右側の箱にまいりたいと思います。「税制の基本原則と経済社会との関わり」というところでございますが、誰が、どのように負担をしていくのか。これはルールが必要になるわけでございまして、それを法律によって定めているのが、税法あるいは税制と言うことができようかと思います。その税制を組み立てていくときに、構築するときの基本原則として、従来から「公平・中立・簡素」の3原則が重要であるということを、しばしば御指摘をいただいております。

公平ということにつきましては、何をもって公平と言うかということについては、非常に古くからいろいろに議論がされております。今回の答申の中でも、アリストテレス以来の議論を簡単に御紹介したようなところもございます。かように難しい課題ではありますが、税についてよく言われますのは、「水平的な公平」あるいは「垂直的な公平」という2つの概念、そして、最近は「世代間の公平」ということについても意を用いるべきであるということが、しばしば言われるようになっていることは御承知のとおりでありまして、高齢化が進む中で、世代ごとの負担と受益の関係について、あまり大きなアンバランスがあることはいかがなものか、ということが言われるわけであります。

中立性については、経済活動と税制の関係について、当然、経済に一定の影響を与えることはやむを得ないのでありますが、その与え方がなるべく経済活動の選択や行動を歪めないという形にとどまるようにする必要があるという原則かと思います。

簡素という点についても、わかりやすく、執行しやすい税制であることが必要であるという要請と考えます。

あるいは、それ以外にも経済活力を維持伸長させるための税制、あるいは国際的な整合性といった点が最近の議論として注目すべきものと考えます。ここにもありますが、公的サービスに必要な費用、経済活動の様々な局面で租税は分担していくものであり、税制と経済活動には相互に密接な関わりがある。したがって、経済社会の構造変化に対応していくことが必要であり、経済社会と税制とは調和していくことが必要であるという御指摘をいただいたところであります。朝令暮改ということはあってはならないわけで、安定性も要請されるわけですが、一方、社会の大きな変化に対して、税制はなるべく遅れずに対応する必要があるという御指摘をいただいたところであります。

そういった中で、また、どういった税体系を組み立てていくかという点については、所得・消費・資産に対する課税を適切に組み合わせ、全体として偏りのない税体系ということがやはり選択すべき対象ではないかという御指摘であります。

いま申し上げた経済社会の構造変化について、いくつかの論点を御指摘いただきました。下の大きな四角の中に5つの黒いポツで示されておりますが、21世紀において「公正で活力ある社会」を築くためということで、5つの御指摘をいただきました。もちろん、経済社会の変化をこれですべて論じ切るというものではございませんが、税制との関係では、こういったことが重要なポイントであるという御指摘であります。

第1に、やはり少子・高齢化と人口減少ということでございまして、高齢化ということが言われて久しいわけですが、21世紀の2006年とか2007年には人口の減少さえ始まるということで、新しい局面に入りつつあります。そういった中で、勤労世代だけに大きな負担を求めるということには、なかなかまいらないわけでありまして、あらゆる世代が公平に負担を分かち合っていくという観点が重要になるのではないか。そういった際に、税体系として、消費課税の役割はやはりますます重要になるのではないか。個人所得課税についても基幹税としての地位を引き続き担う必要があるのではないか。相続税についても、高齢化との関連でいろいろ議論すべきではないかといった御指摘をいただきました。

国際化、情報化との関係は、当然、企業活動との関係で大変重要な側面があろうかと思います。いまも御説明のありました企業の組織再編の関係におきましては、国際競争力という観点から、より自由度を増すということが必要かと思います。そういった点で、会社分割に関する税制というのが急がれるわけでありますし、それを済ませた上では、さらに連結納税制度の導入に向けた検討を行うべきであるという答申をいただいております。

金融取引については、やはり金融商品の多様化、そして変化の速さということが、これからますます進んでいくと思います。そういった中で、資産性所得に対する公平な課税ということをいかに確保するか、あるいは金融商品間に対する中立性といったものにどのように意を用いるべきか、ということが重要になると考えられます。

ライフスタイルの多様化というところにつきましては、例えば、人々の生活のパターン、例えば終身雇用といった典型的な生活のパターンというものが、必ずしも典型でなくなっていくというような形で、雇用の形、消費行動、生活の様式というのが多様化していくように考えられます。そういった中で、税制がそれぞれの個人の選択に対して中立性を保つ必要があるのではないかという御指摘がありまして、個人所得課税における様々な控除の問題や、あるいは消費税について、ライフスタイルを通じて平準的な負担を求めるという意味で優秀ではないか、といったような指摘をいただいたところです。

また、所得分布の動向について、どうなっていくのかということについて、問題提起を今回いただきました。高度成長を通じて、所得分布が日本の場合かなり平準化したということは御承知のとおりですが、最近におきましては、そういった動きがどうやら終わったのではないか。不平等化がどんどん進んでいるという、そういうデータがどんどん出てきているというわけではありませんけれども、どうやら平等化が一層進むということは終わったのではないか。経済におきます市場原理の貫徹でありますとか、あるいは自己責任原則といったことをますます重視する必要があるとすれば、これから所得の分配の問題は注視する必要がありましょうし、それとの関連で、税制の持ちます所得再分配の機能、所得税や相続税の累進性の問題について、重要性がこれから減るということはないのではないか、というような御指摘をいただいたところであります。

左側にまいりまして、「財政の現状と課題」というところでございますが、資料集の16ページを御覧いただきたいと思います。国民負担率の国際比較の表でございます。これも何度も御覧いただいた表でございますが、一番左側に日本のケースがございまして、負担率36.9%、右側に順番に見てまいりますと、アメリカが37.6%、イギリスの48.9%、ドイツの55.9%、フランスの64.6%と、大陸諸国はどんどん高くなります。福祉国家として有名な北欧諸国であれば、この数字は75%程度まで上がっていくわけであります。日本の場合、主要先進国で一番低いというところにございます。租税負担率で見ますと22%、社会保険料の負担率で14%、合わせて37%程度ということです。

低いのは結構なことのように見えるわけでありますが、反対に0%より下のところに財政赤字を掲げてございますが、国民所得比で日本の場合12%を超える赤字を抱えておりまして、この部分はある意味では歳出が行われている、サービスが行われているわけでありますから、この部分、12.3%と36.9%を足した49.2%という数字がいわば日本の歳出の国民所得比だと見ることもできるわけでありまして、歳出サイドは、あるいはサービスのレベルは、ほぼヨーロッパのレベルに達しつつある。そういう高い水準に達しつつある。片や負担のほうはアメリカを下回る水準にとどまる。結果、このギャップが生じまして、それが巨大な財政赤字になっておるというところが財政の現状ではないかと思われます。これを放置することはできないわけでありまして、将来世代に負担を先送りしないという観点から取り組んでまいる必要があるという強い指摘をいただきました。

その際、自然増収で景気がよくなれば、このギャップは何年かかけてクローズしていくのではないかという議論がございますけれども、この答申の中で議論していただきましたように、アメリカの例を見てそういう議論が有力な議論としてあるわけでございますが、この答申の中では、その点についても御指摘をいただいておりまして、自然増収のみによっては、現在の巨額な歳入歳出ギャップを大きく改善することは困難であるという結論をいただいております。

そこで、御指摘いただいていますのは、第1に、現状の赤字の幅というのが、例えばアメリカが最悪であった時代でも、12%というような赤字ではなくて、その半分程度、6%程度が最大の赤字のときであったということ。それから、第2に、アメリカの場合には、国防費を削減するという形で、歳出の見直しというのが大きく貢献したわけでございますが、日本にはそのような大幅に国民所得比で3%も4%も減らせるような歳出項目があるだろうか。むしろ社会保障のように、これからさらに増えていかざるを得ない費用項目が多いのではないかということがございます。

それから、歳入サイドで見ますと、アメリカの場合には、税収の7~8割が所得税によって占められておりまして、これが景気がよくなると、税収弾性値が高い、結果として税収が大きく伸びるということがございますけれども、日本の場合、所得税の割合というのは、30%台でございまして、おのずと自然増収による財政の改善の度合いというのは、非常に小さなものにとどまらざるを得ないということであります。

景気が回復すれば、法人税が伸びるであろうという議論もございますが、法人をめぐりましては、当然、一定の改善はあるというふうに期待しておりますけれども、同時に最近の状況を見ますと、累積欠損が大変多額にありまして、景気が回復してもすぐに法人税が大幅に伸びていくということが、なかなか見込みにくい状況にございます。また、法人税の基本税率自体も、かつて平成の初めごろまでは40%前後であったものが、現在30%に下げているということから見ましても、法人税に大きく期待することも難しいかなと。そういういろいろと細かい議論をしていただき、自然増収論には無理があるという御指摘をいただいたところでございます。

もとの1枚紙の大判の紙に戻りまして、「税と社会保障」のところですが、これも非常に様々に議論をいただいたポイントでございます。これから増大する社会保障負担、給付、それに見合う負担について、保険料と税をどのように組み合わせるかということについて、様々に議論をいただきました。権利性の強い負担の見返りとしての給付、その権利性が強い社会保険方式を中心とするのか、結果として救済の形になってしまう税という形を強めていくのか、社会におきます自己責任のあり方、あるいは社会保障制度のあり方の根幹にかかわる問題として議論していく必要があるという御指摘をいただいたところであります。

一番下にまいりまして、「税制の抜本的見直しの必要性」という欄がございますが、その左下のところ、いままで申し上げてきましたように、税制総体として大きないろいろな課題を抱えておりますが、最終的には公的なサービスによる便益を見直していくのか、あるいは賄うための費用を負担する、そういう税負担や社会保障負担を見直す、あるいはもう少しこれまでよりも大きくお願いしていくのか、あるいは両者を適切に組み合わせるのか、この3つしか方法はないわけでございまして、将来の世代のことを考えて、その中からきちんとした国民的議論を経て選択していく必要があるというのが、今回の答申の総論におきます最大のメッセージではないかと言えようかと思います。

大変はしょった説明でございますが、時間の関係もございますので、お許しいただきたいと思います。

石会長

ありがとうございました。

では、地方税のほうを引き続きお願いいたします。

小室企画課長

いまの大きな判、総会資料2-1の左の下のほうに「地方分権と地方税財源の充実確保」とございます。中期答申の段階では、地方税について大変幅広く活発な御議論をいただきまして、厚い本文のほうでは58ページからということですが、そのエッセンスをここへ抜き出してございます。地方の歳出規模と地方税収の乖離を縮小し、課税自主権を尊重しつつ、地方税の充実確保を図ることが必要だと。その場合には、地方公共団体が自立的な運営をできるよう、国と地方の役割分担を踏まえ、補助金の整理合理化とか、地方交付税の見直しとともに、国・地方の税源配分のあり方について検討ということでございます。

お手許の一番下の資料で、「総2-3」という横書きの『地方税関係資料』がございますので、2点ほど補足させていただきます。1枚おめくりいただきますと、国・地方の役割分担ということでございますが、保険料で賄われています社会保障基金の関係を除いた一般政府ベースで国と地方、目的別にどんな役割分担をしているかというのがそこの図でございます。全体で156兆円ですが、斜線を引いております地方、これは都道府県、市町村ですが、合わせて63%、98兆円の部分を負担してございます。

そして、次のページにございますように、2ページのところですが、これに賄うに当たって、税金の段階では、国税51兆円、地方税36兆円ということで、59%と41%、こういった比率になっております。そのあとで法人税等の5税の一定割合を地方交付税として交付し、さらには国庫補助金、負担金といった支出金へ移して、地方のほうでは地方債等を加えて、最終的に98.5兆円の歳出を賄って仕事をしている。これはトータルの中で63%というわけでございます。そうした支出のベースが63%に対して、収入の税の段階で41%という乖離がある。これを縮小しろというのが趣旨でございます。

当然のことですが、歳出を抑えながら地方税の充実確保を図る。その場合に国からの財源については依存度を縮小していく。そうすることによって、地域の負担で地域の歳出を賄う。自主性が高まるとともに、受益と負担の関係が明確になりますので、住民のチェックが厳しくなる。そこで歳出の抑制が働く。このことは、引いては国・地方を通ずる行政改革、財政構造改革につながるという趣旨でございます。

以下、課税自主権にもついて触れた分権計画とか国会のがありますが、とばしていただいて、財政状況も5ページにありますが、とばしていただきまして、地方税とはということで、7ページのところをちょっと御覧いただきたいと思います。地方税の充実確保といったときに、どんな税目があるかということで、7ページの円グラフ、4つあります。国税、地方税、それを分けた道府県税と市町村税、それぞれ見てのとおりでございますが、次の8ページに主な税目というのをまとめさせていただきました。これは答申の62ページにも整理されておりますが、地方税の場合には、安定的で、かつ普遍的な税目が好ましいということで、この中では、個人住民税、地方消費税、固定資産税、その大きな3つが安定的であり、かつ普遍的で、今後役割も増しますし、充実確保が望まれる。

それに対しまして、法人住民税、法人事業税のところは、安定性に欠ける面もございます。例えば法人事業税ですと、ピーク時には6兆5,000億円ありましたが、12年度見込みでは3兆6,000億円といったことでございます。この辺は(注)の2にございますように、税収の安定化等の観点からも、外形標準課税の御議論をいただいたところでございます。

最後のページでございますが、社会保障の御議論がありましたが、国の場合には、保険料と関係して年金の議論があります。地方の場合には、福祉ということで、非常にここ最近福祉系統の経費が伸びておるということを示した図を1枚つけさせていただいております。

時間の関係ですので、ここで失礼します。

石会長

ありがとうございました。

事務局から御説明いただきまして、さて、これから討論というところなのですが、残された時間はわずか6~7分しかございません。

そこで、実はこの問題は、次回以降も引き続いて当然のこと議論の対象になります。ただし、まだ若干の時間がございますので、今日はぜひとも総論部分について御発言したいという方はウェルカムでございますので、どうぞ御発言いただけますか。

村上特別委員

総論として、国民負担のバランスについて十分触れられていますので、そのとおりだと思うのですが、問題は実際にやる場合に、国民的議論とおっしゃるけれども、役所間の縦割りが基調になっていて、それの引っ張り合いというのが実態だと思うのです。その辺をどういうふうにうまく議論をかみ合わせていくのか、その辺をこういう総論段階では1つ議論するのがいいのではないかなと思います。

石会長

税調と他の審議会の連携等々も含めてのお話だと思います。

水野(勝)委員

この答申にも指摘されております点、当面の大きな課題は、財政構造の改善の話であろうかと思いますけれども、この問題を税制の面から世の中に持ち出していきます際には、必ず歳出面はどうなのだと、それから、税制でなお解決すべきいろいろな問題点や穴があるのではないかと、そういった点が必ず出てくるわけでございます。10年以上前の税制改革のときも、その前には土光さんの土光臨調があって、「増税なき財政再建」ということで、税制はそのあとの問題だと。行政改革をやり、歳出を見直すということでございました。今回におきましても、この点はやはりそういうことになるのではなかろうか。したがって、税制は基本的には待ちの姿勢で、とにかく全体としての行政改革なり歳出の節減・合理化、これをじっと見ていくということではないかと思うわけでございます。若干はがゆい点があるかもしれませんが、それはやむを得ないのかなと。

ただ、もう1つの点として、税制にいろいろな問題点が残されているのではないかという議論。これに対しては税制として答えを出していく必要があるわけでございます。その点で、先ほどこの大きな紙で御説明がございました。経済社会の構造変化の中での金融取引の多様化、経済のストック化という点の御説明がございまして、こうした点から、今後、資産課税を適正化していく必要がある。金融資産間の中立を確保していく必要があるという御指摘がございました。この点に関連して最近よく出てまいります問題は、株式の譲渡益課税の問題でございまして、この点は、今日は奥本さんの隣に座ることになりましたので、まことに問題ではありますが、お許しを得て一言申し述べたい。やはりこの点が今後の財政構造改革の1つのポイントになるのではないか、という意味におきましては、これはすでに平成11年改正で決まったことでもございますし、ぜひこれは淡々と円滑に実施していくということで対処していただければと思うわけでございます。

金融資産間の中立、先ほどお話がございました。よく問題になりますのは、預金利子は20%で、こっちは26%になるのではないかという議論もありますけれども、預金利子のほうはフローとしての20%でございます。こっちはキャピタルゲイン、ストック課税でございまして、そこは違うのではないか。また、フローの問題であれば、株式の配当の申告不要、これは20%になっていますから、バランスはとれているのだろうと思います。そういった意味におきましては、すでに11年度改正で改革され、有価証券取引税も取引所税ももう廃止されているわけですから、淡々とひとついきたい。

その際、よく問題になりますのは、取得価額がわからないのではないか、いまから急に言われても、という点がよく言われますが、この点は、よくその取引口座で御相談なり、あるいは最終的には税務当局との話し合いもあろうかと思うわけでございます。1つの点として、この株式がいままで非課税だったのが課税になるということであれば、1つの議論としては、非課税の時代にあったキャピタルゲイン分、これは非課税だったではないかという議論もあり得るわけでございまして、例えば昭和63年に非課税制度が課税になった時点、あるいは源泉分離をやめた平成11年、この時点までのキャピタルゲインというのは、これは別ではないかという議論もあり得ると思うのでございます。

しかし、この制度を導入したときに、源泉分離課税という非常にきめ細かい妥協的な知恵が出されましたので、そうした基本的な議論が出てこなかったのは残念だったとも思えるわけでございまして、端的に言えば、昭和63年なり、平成10年のその時点での価額が出発点となってもいいのではないかという気もするのですけれども、そこらは、しかし、すでに源泉分離ではなくて申告分離を適用してこられている方もおられる。平成10年でいえば、2万人の方が申告して、3,000億円の譲渡所得を申告しておられるので、そうしたすでに申告してきておられる方とのバランスもあるわけですけれども、これだけ大きな問題になってきている。これを円滑に実施するには、そうした取得価額、原価計算、そういった面での思い切った見直しも含めて、何とかこれを予定どおり来年の4月に円滑に実施するように環境づくりをしていくことが必要ではないか。今後の財政構造の問題を解決していく上でも、この点が必ず問題になると思いますから、これは前向きに、骨太に議論して、ひとつ円滑に実施していくような環境づくり、これはむしろ事務的な話かもしれませんけども、ぜひしかるべき御検討を願いたいと思うわけでございます。

石会長

やにわに核心部分に議論が入り込んできましたけれども、今日はまだ前哨戦であります。

奥本さんも何か言われた以上は言わなければいけないので……。

奥本特別委員

時間がないところで申しわけございませんが、突然ボールが飛んでまいりましたので。

すでに決まったことではないかという御指摘につきましては、私ども全くそのとおりだと思います。ただ、決まったから何でもかんでも実施するという考え方が果たしてどうなのかということについて、いまさら申し上げるまでもない話ですが、それからまた、私どもとして、平成11年度の税制改正というのは、いまおっしゃられたように、有取税の廃止というグローバルの流れの大変大きな重要な問題を抱えておりました。それが中心なことでございました。

この税の申告課税の一本化ということにつきましては、当時から私どもとしても反対していたのでございますけれども、この有取税の問題の重要性にどちらかというと劣後してしまったというのが実態でございます。

その後の株価の動きにつきましては、先生方すでにいろいろ御案内のとおりでございまして、私どもとしましては、ほかの金融商品が源泉分離課税をとっている中で、なぜ株式の譲渡益だけが申告課税をとらなければいけないのか。つまり、現在、少なくとも世界の趨勢としては、資本市場、証券市場を活性化することが、経済の活性化の絶対必要なインフラであるという認識のもとに、ヨーロッパ各国が典型的な例だと思いますけれども、各国、その税について、あるいは証券市場の活性化について、大変意を尽くしている中で、なぜ日本だけがその例外であっていかれるのか。つまり従来の間接金融から直接金融に変えていくことが、これからの経済運営の中ではどうしても必要だということは、10人が10人の先生方皆さん認めている中でなぜ株の、1,300兆円あると言われている国民の資産の仮に1%が動いたところで13兆円が動くわけです。そういった方策を少なくとも政策としてとっていかなくてはならないというのが実態なのだと思います。

その中で、仮にこういった源泉分離課税というものが廃止されてしまいますと、大変な混乱をもたらす。しかも、国民の大多数がいわゆる税務署で自分の所得を申告するということに慣れていないという現実、これはやはりかなり重要な部分だと思います。先ほどからお話しのように、税制と経済の活動というものは、十分密接な関係を持っていかなければならない中で、やはりこの問題については、ぜひ御検討いただきたいというのが、私も初めて参加で、若干上がっておりまして、まとまりのない話になってしまいましたが、いまのところ思っております。

石会長

議論に参加されたい方はここでいっぱいいらっしゃると思いますが、いずれまたしかるべき時間をたっぷり取って、両陣営からとくと御意見を伺いつつ、意見をまとめたいと思います。

最後に和田さん、どうぞ。

和田委員

これから議論を始めるに先立ちまして、私はちょっと事務的なことで意見と質問をしたいのです。

意見としましては、この税制調査会そのものの会議の公開ということを、もう一度申し上げたいのです。といいますのは、1回目に発言すればよかったのかもしれませんけれども、何度発言しても通らないものですから、半分諦めていたのです。諦めてはだめだということで、今日もう一度申し上げますけれども、3年前まで、本当にこの審議会を含めて政府の審議会はほとんど非公開という立場だったのですけれども、3年前からこの税制調査会もマスコミだけの公開、それも記者クラブに入っていらっしゃるところへの公開ということで、一般の傍聴ということはできない形で3年間過ごしてまいりました。

私は、人数が少なくても公開すべきではないか、一般の傍聴ができるような形をとるべきではないかと、3年前にも発言しましたけれども、そのまま3年来てしまいました。今回、1回目の御説明の中で、「会議は公開とする」とはっきり明記されているわけですね。「ただし」以下は文章にはなっていないわけです。物理的な、会場が狭いので一般の傍聴ということはできないという、短い言葉でいえばそういう御説明がありました。傍聴を希望した人を全部入れるのは無理だろうとは思います。これは会場が制限されているわけですから。ですけれど、ほかの審議会を見ましても、少ないところでは10名とか15名の傍聴を認める。私もほかの審議会へ入っておりましてわかっておりますし、私自身がほかの審議会に傍聴したくて、往復はがきで申し込んで、それで今回は傍聴できないとか、できるとか、そういう返事が来まして、その傍聴ができるというところへ私も行っております。そうなりますと、大勢が行けなくても、行ってきた仲間から、こういうやりとりだったと。これは議事録を見たり記録を見ればわかるといいながら、やはりその中の雰囲気というのは、本当に傍聴しなければわからないということがあるわけなんです。

それで、会場が狭いということを言っていますと、この会場を使っている限り、3年間はだめですし、3年先になっても、おそらく同じ状況は変わらないと思うのです。

1つは質問なんですけれども、何とかしてこの3年の中にでも、工夫して一般の傍聴を認めるという、本当の会議の公開ということを考える余地があるのかないのか、会場がこうなんだからだめですよと言ってしまうおつもりなのかどうか、その辺伺いたいのです。

それで、今日の御説明の中にも、「国民の参加と選択」ということを非常に今回は強調しているわけですね。そうすると、材料は提供しての「参加と選択」かもしれませんけれども、それならどんな会議をどうやってやっているのだということを見たいと思っても、それは認めませんよというのは、少しおかしいのではないかなと。もう少しやれることをやっていこうという姿勢が出るのが本筋ではないかなと思いますので、あえて時間は過ぎておりますけれども、意見と質問をさせていただきました。

石会長

わかりました。質問のほうは、まだ我々として、特に私個人として事務局とまだ議論はしておりませんし、いまそういう質問が出ても、急にはお答えにくいと思います。したがって、しかるべきときにもう一回お諮りするというような格好で、この公開問題を議論したいと思います。

審議会はいくつかございますので、全く従来どおりのことをやっているところもあるし、あるいは一部抽選みたいな格好で入れているところもあるし、様々でございますので、一足飛びにすべて全面公開というのは、おっしゃるとおり物理的な問題もございますので、物理的な問題も考えつつ対処するような方向で議論したいと思っていますが、今日の御発言、重く受けとめておきたいと思います。

まだ御議論があろうかと思いますが、時間も過ぎてしまいました。議事の不手際で申しわけございません。

次回は10月27日、金曜日でございますが、2時~4時を考えております。今月の27日、金曜日です。次々回は11月上旬を考えております。ちょっと会場の都合等々でまだ決めかねておりますが、決まり次第また御連絡をいたしたいと思います。

今日は大変実のある議論をしていただきまして、ありがとうございました。今日の総会はこれで終わりにいたしたいと思います。お忙しいところ、ありがとうございました。

〔閉会〕

(注)

本議事録は毎回の総会後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、大蔵省主税局及び自治省税務局の文責において作成した資料です。

内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。