会社分割・合併等の企業組織再編成に係る税制の基本的考え方(要約)
第一 基本的な考え方
(1) 企業の組織再編成による資産の取引については、その実態に合った課税を行う。
(2) 企業の組織再編成に係る法人課税のあり方については、現行の現物出資、合併等に係る税制を改めて見直し、全体として整合的な考え方に基づいて整備する必要がある。
(3) 企業の組織再編成により移転する資産の譲渡損益については、移転資産に対する支配が継続していると認められる場合に、また、株主の旧株の譲渡損益については株主の投資が継続していると認められる場合に、それぞれその計上を繰り延べる取扱いをすることなどが考えられる。
第二 資産等を移転した法人の課税
組織再編成により資産を移転した法人について、組織再編成の実態や移転資産に対する支配の継続という点に着目し、以下の場合にその帳簿価額を引き継がせることにより、譲渡損益の計上を繰り延べることが考えられる。
(1) 企業グループ内の組織再編成
[1] 企業グループ
企業グループ内の組織再編成は、基本的には、完全に一体と考えられる持分割合の極めて高い法人間で行う組織再編成とすべきである。ただし、企業グループとして一体的な経営が行われている単位という点を考慮すれば、商法上の親子会社のような関係にある法人間で行う組織再編成についてもこの企業グループ内で行う組織再編成とみることが考えられる。
[2] 個別の資産の売買取引と区別するため、以下の要件が必要である。
・資産の移転が独立した事業単位で行われること
・移転した事業が組織再編成後も継続すること
(2) 共同事業を行うための組織再編成
[1] 共同事業
以下の要件などにより判定するのが適当である。
・事業が相互に関連性を有するものであること
・それぞれの事業の規模が著しく異ならないこと
・それぞれの事業に従事していた従業員の相当数が引き継がれること
[2] (1)[2]の要件に加え、資産の移転の対価として取得した株式を継続保有することが必要である。
第三 株主の課税
(1) 株式の譲渡損益
株主が金銭等の株式以外の資産の交付を受けず、株主の投資が継続していると認められる場合には、譲渡損益を繰り延べることが考えられる。
(2) みなし配当
分割型の会社分割・合併により、法人の資産の移転が帳簿価額により処理される場合には、配当とみなされる部分(利益を原資として新株等の交付が行われたと認められる部分)は無いものと考えるのが適当である。
第四 各種引当金の引継ぎ等
会社分割・合併等により移転する資産の譲渡損益の計上が繰り延べられる場合には、その資産に関して適用される諸制度や、引当金等の引継ぎについても、基本的に従前の課税関係を継続させるとの観点から、組織再編成の形態に応じて必要な措置を考えるべきである。
第五 租税回避の防止
組織再編成の形態や方法は、複雑かつ多様であり、租税回避の手段として濫用されるおそれがあるため、包括的な租税回避防止規定を設ける必要がある。
第六 その他
分割型の会社分割における分割法人の分割前に納税義務の成立した租税については、基本的に、新設法人等がその承継した財産の価額を限度として連帯納付の責任を負うこととすることが適当である。
会社分割による資産の移転に係る消費税については、合併と同様に取り扱うことが適当である。