第46回総会 議事録
平成12年2月29日開催
〇加藤会長
ただいまから、税制調査会の第46回総会及び第12回基本問題小委員会の合同会議を開催いたします。
税制調査会は、例年、4月以降、改正税法が成立した後に開かれることが通例でございますが、今年は、中期答申に向けた審議を再開する必要がありますので、例年より早く審議を立ち上げることといたしました。これは石原ショックではございません。なお、本日は、総会と基本問題小委員会の合同開催としております。
本日の議題の審議に先立ちまして申し上げておきますが、第一に、東京都の外形標準課税の問題が大きな議論を呼んでおります。税制調査会としての議論を行いたいと思っております。
第二番目に、今通常国会に、昨年末の答申を踏まえた年度改正法案が2月1日及び2月4日(2月1日は国税関係、2月4日は地方税関係)に提出されたところであります。年末の答申以降の経過報告ということで、その内容について簡単に説明していただこうと思います。今国会における審議等、最近の状況を事務局から報告してもらいます。
第三番目に、これから中期答申をとりまとめるに当たりまして、今後の税調の進め方や審議日程を検討する必要があります。私どもの委員の任期の問題とも絡みますので、皆様とご相談していきたいと考えております。
このほか、幾つかの報告事項、例えば税制に関する意見募集をしたいという気持ちがございますので、その提案とか、さらに、税調委員の海外視察の問題などがございますので、そのご報告もしたいと思っております。
第一の議題でございますが、先日、ご承知のとおり、石原東京都知事から銀行等に対する外形標準課税が提案されまして、条例案が都議会に提出されました。これを受て、先日25日(金)には、総会に先立って、地方法人課税小委員会においても論議をしていただいたところであります。
この点につきまして、まず自治省から経過報告をいただくとともに、地方法人課税小委員長の石さんから、先日の委員会において出されました意見について、ご報告をいただこうと思っております。さらに、その上で自由討議をしたいと考えております。
それでは、石井税務局長、石小委員長、それぞれよろしくお願いいたします。
〇石井税務局長
それでは、お手元の資料によりまして、東京都の外形課税案の内容なり経過、それから、私どもの今後の考え方といった点について簡単にお話し申し上げたいと思います。お手元に「外形標準課税関係資料」というのがあろうかと思いますので、これをめくっていただきながら、お話を聞いていただきたいと思います。
1枚おめくりいただきますと、1ページ目が、「銀行業等に対する外形標準課税の導入について」でございます。これは、2月7日の午後4時ごろ、石原都知事が記者発表されていた時期、ほぼ同じ頃に私どもにご連絡いただいた東京都の構想でございます。
法人事業税につきましては、普通法人の年800万円超の所得に対して、いま9.6%の税率で課税されているわけでございますが、東京都の考え方としますと、銀行業等にほとんど法人事業税の納税をしていただいていない。そこで、安定的な税収の確保ということから、地方税法の第72条の19という規定を活用して、資金量の残高が5兆円以上の銀行業について課税をしたいと。対象は、日本銀行を含めて約30行というご説明であります。
課税標準は、事業年度の業務粗利益、普通、粗利益と言っているものでございまして、これに3%の税率をかける。なお、農林中金等の特別法人については2%の税率をかける、5年間の暫定措置ということでございます。
2枚目をごらんいただきますと、地方税法の72条の19の条文が右上にございます。いまでも収入金課税になっている4つの業種を除きますと、一般の業種については所得に課税されているわけですけれども、それによらないで、資本金、売上金額、家屋の床面積、従業員数といったものを課税標準とできる。あるいは、所得とこれらの外形基準をあわせ用いることができるという規定がございまして、都としては、この規定を活用したいという説明でございます。
なお、法定外普通税、目的税といったものですと、自治大臣と協議をしなくてはいけないという規定があるわけですけれども、この規定についてはその規定がございません。72条の22という条文の第9項が2ページの下のほうにございますが、ここで、外形基準によって事業税を課す場合は、所得によって税を課す場合の負担と著しく均衡を失することのないようにしなくてはならないという規定がございまして、これとの関係が議論になるわけでございます。
3ページの表は、日銀も入れた主要な20行についての法人事業税の税収実績でございます。直前の11年度の見通しですと、主要20行で34億円くらいの法人事業税の税収見込みである。ただ、平成10年度は500億円近い税収があったわけで、また、昭和59年以降の15年間をとると、平均で1,040億円ぐらいの税収があった。また、平成元年のピークのころは2,100億円ほどあった。都としては、こういう数字から見ると、所得で従来どおり課税する場合と比べて、著しく均衡を失することはないのではないかという説明であります。
4ページをごらんいただきますと、業務粗利益という概念でございますけれども、この表にございますように、銀行の場合、資金運用収益、低い金利で預金をいただいて貸付をされるという、この利ざや(スプレッド)の部分と、為替取引その他の役務取引等利益(手数料)、それから、株とか債券の売買等による利益、その他業務利益、この3つを足したものが業務粗利益です。
これから人件費や物件費等を引きますと、業務純益ということになるわけですけれども、銀行業の場合は、不良債権処理等の損失などの処理の問題がありますから、それを引きますと、右下の当期利益、税引き前の図になるわけです。ここが、多くの銀行では現状はマイナスである。いまのままですと、ここに税率9.6%がかかるわけですけれども、実際は、税収が期待できないので、業務粗利益のところに3%かけたい、こういう説明になっているわけでございます。
なお、5ページをごらんいただきますと、日経金融年報からとった資料でございますけれども、1位の東京三菱さんから29位の八十二銀行さんまでが資金残高5兆円台でございまして、日銀を入れて30行という説明をいただいているわけであります。
私どもとしては、この構想を承りましてから、実務的に課長レベル、局長レベル、最終的には都知事と私どもの大臣とも会談していただきました。基本的には、東京都の大変厳しい財政事情を背景にした、地方分権の観点からの一つの試みということで、気持ちが全くわからないわけではないのですけれども、資金量5兆円以上の銀行に限るとか、いろいろな面で、本来の外形標準課税とはおよそ似て非なるものではないか、疑問点が多いということで、いろいろお話をいたしたわけであります。
去る21日の夕方には自治大臣と都知事の会談もあったわけでございますが、その際も、自治大臣から、このあとご説明します閣議口頭了解とほぼ重なっておりますけれども、6つの問題点も指摘させていただいたのですが、都知事のほうは翻意されなかったという結果になっております。
6ページをごらんいただきますと、最終的に都知事のほうが翻意されないことがはっきりいたしましたので、2月22日の閣議の場で、ここにございますような口頭了解として政府の見解をまとめております。詳しくは後ほど読んでいただければと思いますけれども、表紙にありますように、「税制については、国税・地方税を問わず、公平・中立等の租税原則に則ることはもとより、他の政策目的との整合性等にも十分な配慮がなされなければならない」と。
それから、7ページ以降をごらんいただきますと、マスコミその他で論じ尽くされた感もありますが、資金量5兆円以上の銀行業に対象を限定することに合理的理由があるかどうか疑問だ。あるいは、先ほどご紹介しました地方税法の規定で外形課税をやる場合には、「著しく均衡を失することのないようにしなければならない」とあるわけですが、この規定との関係で疑問がある。あるいは、法人事業税の税額は、ご承知のように、法人税の計算上は損金になりますので、今後、東京都以外の地方公共団体の法人関係税なり地方団体全体の交付税原資が減少するという問題。
それから、まさにこの政府税調の場で、47都道府県すべてについて、幅広い業種を対象に薄く広く負担を求める外形標準課税を導入することを検討してきていただいている中で、東京都だけが独自に、銀行業という特定の業種について業務粗利益を課税標準として導入することが妥当かという疑問。それから、いま、ご承知のように、金融システムの安定が喫緊の政策課題でありますから、こういったこととの関係で整合性を欠くとか、不良債権処理、経営健全化計画の履行、公的資金の返済への支障、いろいろな問題があるのではないかといったことを政府の見解としてまとめたわけでございます。
政府としては、東京都案はいまのような問題をはらむということで認識を明確にして、この23日に東京都議会にこの案が提案されているわけですけれども、東京都及び東京都議会の慎重な対応を求めたいということでございます。
なお、自治省といたしましては、法制的な面もいろいろ検討してみたのですけれども、この内容ですと、直ちに違法とは断定できないということでございまして、都議会で十分な議論をされて慎重な対応をされることを期待したいと。なお、これに関連しまして、全国知事会からも、早期に全国的な制度としての外形標準課税を政府としてご検討いただきたいといった要請もいただいております。
そういうこともございますが、政府税調の昨年の12月にまとめていただいた答申でも、「景気の状況等を踏まえつつ、できるだけ早期に導入を図ることが望ましい」というようにまとめていただいておりまして、これを機会にそういった審議も、既定方針どおり粛々とお願いできたらと思っております。
なお、いまの資料の9ページは、現在の法人事業税の仕組みを説明したものでございまして、説明は省略しますが、一番下をごらんいただきますと、都道府県全体で、法人事業税は平成3年は6兆5,000億円ほどあったのが、11年度決算見込みですと、3兆6,000億円台になっている。ちなみに東京都は平成元年度がピークで1兆6,000
億円近くあったのが、いまは7,900億円ぐらいの見込みになっています。
12ページをごらんいただきますと、これは、昨年の12月16日の政府税調のご答申で、先ほど申し上げたようなまとめをしていただいているわけでございます。
13ページが、昨年の7月、地方法人課税小委員会報告をまとめていただきましたが、その際、小委員会で、外形基準として4つの類型が考えられる、それから、実際にこういう改革をした場合には、中小法人に対する配慮、雇用への影響、経過措置、所得基準による課税との併用の問題、いろいろな課題が残されておりまして、こういうことを今後ご検討いただければと思っている次第でございます。
これまでの経過と、東京都案の主な内容、問題点等について、ご説明させていただきました。どうもありがとうございました。
〇石特別委員
それでは、地方法人課税小委員会をこの間開きましたので、そこでどういう議論が行われ、どういう見解が支配的であったかということをかいつまんでご説明させていただきます。
冒頭、石井さんからいまご説明いただいたと同じように、資料の説明を受けた後で自由にディスカッションいたしました。それで、5つか6つ、主要な論点があると思
いますので、それについての委員の議論を集約いたしまして、ここでご報告します。
最初は、東京都の案が違法なのかどうかという点、一種の法律論争でありますが、マスコミを通じても割れておりますように、委員会の中でも、違法か違法でないかということで意見が分かれました。
端的に言って、違法とまでは言えないという意見が一方であり、この理由としては、電気、ガス、生保は、いろんな形で既に外形課税的なことをやっているし、生保と銀行は似たような業務をやっていて、生保が認められてなぜ銀行が、という議論もあり、新たに銀行が加わってもいいではないかという議論がないことはなかったわけです。
それに対して、明らかに違法であると強くおっしゃった方もいらっしゃいました。72条の22で、電気、ガス、生・損保が一つの括りで、その他の事業がもう一つの括りになっている、その他の事業の中に銀行が入っているけれども、その他の事業を分けていいかどうか。つまり、銀行だけ、その他の事業から引っ張り出していいのかどうか、これは法律上いろいろ難しい問題があるのではないか、銀行側も恐らく行政訴訟というような形で出てくるであろうと。法律論争は小委員会で決着がつくわけではございませんが、対立した意見があったということが第一点であります。
第二点は、課税ベースの選択の問題であります。業務粗利益というのは、我々が出した4案とは違うんですね。似て非なるものというべきでしょうか。あえて言えば、付加価値に減価償却がつけ加わったかなという概念でありまして、言うなれば第五の選択肢に当たるようなことになるのではないか。そういう意味で、今回新しく出されてきたわけでありますので、検討には値するのではないか。
ただ、これは銀行業界特有の課税ベースの概念であって、全業種を対象にしたとき、これでできるかどうかというあたりも実は問題として残っているわけでありまして、今後、外形課税の議論を詰めるときに、新たな選択肢が与えられたという意味で、検討してもいいのではないかという議論が第二番目であります。
第三番目は、課税自主権のことですが、課税自主権というのは一体どこまで認められるか。東京都のように、ほんの少数の人があるとき決めて、地方分権とか地方自治の立場から、断固、課税自主権は認められると強いて言うのか。それとも、そうは言っても日本というのはまだ中央集権的な形をとっており、国と地方の密なる連携でやっているわけだから、地方といっても国のことを考える責務、義務があるではないかと。
国で言えば、いま、金融システムの安定化で銀行業に対して多額の公的資金を投入しているわけでありますから、東京都流の外形課税をやりますと、恐らくそこでかなりダメージを与えるであろう。そういうことになりますと、国に対して、地方は、それなりの制約を課された中で議論したほうがいいのではないかという議論もございました。連邦国家をとっているドイツにおいてすら、ボンの継承において州政府がやるといっても、連邦がしかるべきコメントができると言うならば、課税自主権を標榜しているにしても、恐らくある範囲、ある制約があるのではないかという議論が第三番目であります。
第四点として、これは本来なら全国知事会が受け皿になって、外形化を推進するということなのでしょうけれども、それにしても、これを受けて、全国ベース、全業種でやるときに、課税の主体である知事の方が一体どうやってやるのか。そういうことについて、いろんな意見を聞きたいといった議論も当然あったわけであります。
最後は、手続き論に対して世間から広く疑問が投げかけられているように、小委員会としても、手続き論についてはやはり問題があると。納税者がある話でありますから、1年間ぐらい、ゆっくり情報を提供し、お互いの言い分を言い合って決めるならいいけれども、突然こういう格好で決められるのは問題があるのではないか。東京都に対しては、公聴会、議会のレベルでしっかり議論してもらわなければいけないだろう、という点があったわけであります。
以上、5点ほど申し上げましたが、こういう形で議論を集約し、その後で記者レクをしたわけでありますから、記者の皆さんからいろいろなご質問が出ました。それはご質問があればお答えしますけれども、以上5点について、2時間近く、かなり突っ込んで小委員会で議論したということだけご報告しておきます。以上です。
〇加藤会長
ありがとうございました。いま、石井さんと石さんの報告がございましたが、このご報告について、30分ぐらいの時間でございますので、なるべく要点をつまんで、ご質問、ご意見をいただきたいと思います。
松尾さん、どうぞ。
〇松尾委員
先日、私、世間から日本を代表する知識人の一人と目されている方と会って、懇談する機会がありました。日ごろ、この方は石原都政に非常に批判的な方ですけれども、東京都の銀行税導入案に対しては拍手喝采で、「銀行バッシング大賛成である、大いにやれ」と、石原都知事が大喜びしそうなことを言っておられました。ただ、この方は、日ごろ、逆説的な論理の展開がお好きで、そのうちどんでん返しがあるのではないかと思っていますので、石原都知事も手放しで楽観はできないだろうと思うんですね。
それはともかくといたしまして、銀行も徹底的に憎まれたものだとつくづく感じた次第であります。銀行に対する批判的な国民感情は確かにあるんですけれども、これは税金の問題とは全く別の次元の問題だと私は思います。東京都のように、銀行バッシングをサポートしやすい、受け入れやすい国民感情につけ込んで銀行業界をねらい打ちにした銀行税、こういったものを導入するのは、私は、危険なポピュリズムと判断せざるを得ないのです。このような税が実際に導入されますと、国税、地方税問わ
ず、税制全体に対する信頼感を揺るがすことにもなりかねないと私は考えています。
地方自治体は、法定外普通税や法定外目的税を新設し、または変更する場合、先ほど説明がありましたように、国の同意を必要とする事前協議制になっております。地方税は国税との整合性を考えなければならないのは当然でありますから、外形標準課税を導入する場合に、このような事前の協議制がないのはどうしてもおかしいです。これは現在の地方税法の欠陥と考えざるを得ない。地方税法を改正する必要があると思いますし、自治省はその準備に入るべきだと思います。この点について自治省の見解はどうか、伺いたいと思います。
それから、政府統一見解は非常によくまとまった見解だと思います。この2で指摘されておりますように、東京都案は、地方税法の規定に照らし合わせますと、どうしても違反していると私は判断せざるを得ないのです。さらに、銀行業だけ、しかも資金量5兆円以上に限って外形標準課税を導入する案は、法の下における平等という憲法の定めている原則に違反していると思います。
政府統一見解の1の、「対象を限定して導入することに合理的理由があるか疑問」とする指摘は、憲法違反という意味に解されるわけでありまして、非常に重みがあると思うのです。その重大性を東京都ははっきり認識しているのかどうか。まず間違いなく、東京都はそのような認識はないだろうと思います。としますと、水かけ論になってしまいますので、この点についてはやはり司法の判断を求めて、理非曲直をはっきりさせる必要があると私は考えます。
3月末には東京都議会で外形標準課税条例案が可決・成立するのは確実ということであります。税制は、議会で可決されれば、あるいは新聞社などの世論調査で、半数以上が賛成すれば、何をやってもいいというものではないわけです。この点を東京都及び東京都議会は熟慮すべきであります。
課税は法律によって厳格に行われて、行政の恣意性を排除することが基本であります。日本の税制などを読んでみればわかるように、そのような考え方が、アダム・スミスの四原則、ワグナーの四大原則、九原則、マスグレーブの六条件、そういった租税原則に盛り込まれているわけです。東京都は、こういった租税原則が厳しく戒めている恣意的な課税をあえて強行しようとしているわけでありまして、これは非常に大きな問題であると思います。
どなたもご承知のように、金融分野では、日本の銀行、外国銀行、異業種からの参入と、互いにこれまで経験したことのないような激しい競争を繰り広げているわけであります。東京都案の具体的内容を見ますと、東京を営業の重要な基盤とする同じ銀行業でありながら、適用される分割基準などもあって、一部の銀行が非常に重大なダメージを受ける、一部の銀行はそれほどでもない、外国銀行に至っては影響ゼロ、といったぐあいに差別が持ち込まれているわけです。
これは、競争条件の著しい不均衡というわけであります。これは自由な経済活動を阻害する結果になりますし、そうした経済のゆがみに与えて生産活動を低下させかねない税制は最悪ですね。すべてにすぐれた税制はそもそも存在するはずもないと言われますけれども、経済への阻害効果の少ない税制を考えるのは政策当局者としての常識だと思うわけです。
それから、欧米各国も東京都案には重大な懸念を持っているわけでありまして、恣意的な税制は日本でのビジネス・リスクを高めると『ファイナンシャル・タイムス』は指摘しております。経済大国の首都である東京が、市場経済になかなかなじめない発展途上国並みの烙印を押されるということを意味すると思うわけです。また、銀行の事業活動が萎縮して、体質強化が遅れますと、東京のマーケットの規模も縮小しますから、国際金融センターとしての東京の魅力は薄れざるを得ない。これは日本の国益に著しく反するわけです。国際感覚が欠落しているという点は、まさにあきれるほどであります。
この案が実施されますと、当然、経費の増加になりますので、常識的には、銀行側としては貸出金利の引上げとか、手数料の引上げといった形で利用者に転嫁することが考えられるわけです。当面は、反発を恐れて銀行もやせ我慢するもしれませんけれども、それも限界があるのではないでしょうか。あるいは、従業員の賃金を引き下げるということもやりかねない。これらはすべて東京の責任であることをはっきりさせておく必要があると思います。ですから、東京都案に拍手喝采をおくるわけには絶対にいかないというのが私の立場であります。
最後に、石先生はじめ地方法人課税小委員会の、これまでの外形標準課税案についてのとりまとめの努力に対しまして深い敬意を表しております。その上で、例外なく薄く広い公平な税体系をこの分野でどのように構築するか、さらに突っ込んで検討する必要があると私は申し上げたいのです。
外形標準課税の場合、事業が儲かろうが儲かるまいが課税するわけでありますから、従来指摘されているように、「誰が負担する税なのか」という点についての議論がこれまで十分にされておりませんから、議論を尽くす必要がある。さらに、納税者の同意はぜひとも必要であると思います。
諸外国では外形標準課税について、ドイツは既に廃止、フランスは昨年から5年間で廃止、アメリカのミシガン州も段階的に廃止することを決めているわけです。このような国際的な動きをどう考えるのかという問題もあります。わが国産業界の方の意見を伺いますと、現在の案では、ベンチャー企業、機械組立産業だけが重い負担を強いられるのではないかという強い危惧があります。ですから、東京都が独自に外形標準課税を導入するからといって、この際、一挙に全国一律に外形標準課税導入に突っ走るというのではなくて、市場重視の観点に基づいて、どうすれば公正な税制が確立できるか、腰を据えてじっくり考えてみる必要があるのではないかと思います。以上です。
〇加藤会長
ありがとうございました。
橋本さん、どうぞ。
〇橋本特別委員
申し上げたいことをほとんどおっしゃっていただいたような感じがありますので、部分的になりますけれども、第一番に、手続き論に属するかもしれませんが、政府税調の12年度答申におきまして、外形標準課税の導入については、都道府県や納税者である法人など関係者による活発な議論が行われて、国民の理解が一層深まるよう努める必要がある、こういう答申がなされているにもかかわらず、今回の東京都のやり方というのはこれまでの税調の議論が全く反映されていない。
しかも、先ほどお話がありましたとおり、22日に政府から、「銀行業に対する東京都の外形標準課税について」というさまざまな疑問点が発表されて、都に対して慎重な対応を求められているにかかわらず、現状は、都議会において、議論をするより先に導入賛成を前提にしているようなきらいがあります。
そもそも法人というのは選挙権がないわけでありますので、法人に対する税の導入に関しましては、納税者側である金融機関をはじめとした関係者との議論を深めた上で、一定の納得性をもって導入の是非を考えていただかないといけない。そういう意味で今回の都の決定はあまりにも一方的であると思います。
第二点は、公平性の問題であります。地方税法72条の19に規定されている外形標準課税導入の特例で、その他の事業を銀行だけ分けてやるというのは法律的に疑義がある。「にわかに違法とは断定できない」と先ほどおっしゃいましたけれども、これは法律上明らかに疑義があるのではないかと考えます。しかも、資金量5兆円以上に限定した点において、非常に恣意的に法律を運用しているのではないだろうかと思います。
あと、国の経済政策との整合性の問題とか、国税とか、他地域の税収に悪影響を及ぼすとか、いろいろな問題があります。これに関連して思いますのは、これを機会に全国一律の外形標準課税導入論が高まっているわけですが、外形標準課税の導入に当たりましては、申すまでもなく、さまざまな論点があって十分な合意形成が必要であると思います。
景気の状況、雇用への影響、税負担の変動、中小法人、創業期法人の取扱い、これらの論点につきまして、税制として十分な合意形成が導入の前提ではないか。全国知事会は全国一律的な税制導入を要望しているようですし、経団連をはじめとした主な経済団体は、これに反対しているという現状にありますので、この折り合いをどういうふうにつけていくかということが非常に大きな課題だと思います。
もう一つは、石先生もおっしゃいました課税自主権の問題です。仮に全国一律制度を導入したときに、東京都の今回やろうとしていることがどうなるのか、そのまま全国的な制度に吸収されて、これが運用されないことになるのか、あるいは、それはそれとして、一国二制度のように外形標準課税が日本の国の中で二つに分かれて運用されていくのか。その辺どういうふうになるのかという感じがするのですけれども、地方税法にある課税自主権というものも、地方とは言いながら日本の国の中でありますから、一定の範囲、あるいは、自主権の行使についての条件が必要なのではないだろうかと、今回の件を契機として感ずるわけです。
もう一つは、外形標準課税を含めて地方税制全体のあり方を、この際もう一度、入り口論に立ち返って問題とすべきではないだろうか。つまり、歳出と地方税収との間で、歳出が7に対して税収が3、国の場合はその逆になっているという問題がかねがね指摘されているわけです。地方消費税の問題もあるわけですけれども、国と地方自治体の役割分担に応じた地方税財源をどういうふうに考えていくのか。
それと、企業は、地方行政サービスの対価として、固定資産税とか、都市計画税とか、法人住民税均等割とか、事業所税とか、一種の外形標準に基づく税負担を既に担っているわけでありますので、新たに外形標準課税を導入する場合には、税体系の簡素化とか、直間比率の見直しという観点からも全般的な見直しが必要なのではないだろうかという気がいたします。以上です。
〇加藤会長
島田さん、どうぞ。
〇島田委員
いろいろ、いい意見が出ていますので、論点を絞って申し上げます。
いまの東京都の案は、政治プロセスで言うと、議会で各党の支持を得て成立することになると報道されているわけです。そうすると、これにどういうふうに対応するのかということが出てくると思いますけれども、政府の統一見解は、幾つかの項目を挙げてかなり強い調子で批判しているわけです。
ただ、第1項目の、憲法の法の下の平等原則に違反するのではないか、あるいは、地方税法から見ても72条の22の9項に違反するのではないかというのは、疑いがある、問題があるというところまで書き込んでいますけれども、「違反する」ということは恐らく政府は言い切れないだろうと思うのです。これは司法の問題ですから。
ですから、プロセスとしては銀行が行政訴訟をすべきなのではないか。そして、法的に決着をつけるところへ持っていくべきなのではないか。東京都はとりあえず決めてしまうでしょうから、銀行は払わなければならないだろうけれども、そしたら、これは株主代表訴訟の問題になるだろうと思います。そこでもって、法的に憲法違反なのか、地方税法違反なのかという問題に決着をつけることになるのかなと。
そういうことでございますので、それでは税調は何をしたらいいのかということについて、一つ二つ申し上げたいと思います。
今回の税の最大の問題は、皆様がおっしゃっているように銀行税です。私は銀行の肩を持つつもりは全然ありません。銀行はまだまだリストラできると思いますし、効率化できると思いますし、まして、市場に転嫁する、消費者に転嫁するなんていうことがあったら、これはとんでもない話だと思います。ポピュリズムと松尾さんはおっしゃられましたけれども、言い方はきついかもしれないが、こういうやり方というのはちょっとファッショの感じがしますよね。
こういう形で通ることは、世間は、銀行だからいいではないかと言っていますけれども、突然、「自治体が財政難だからこの業種にかけますよ」と、あまり説得的な理由なくかけられるということが起きてくると、国民の税に対する信頼が失われます。税というのは行政の根幹ですから、誰だって払いたくない税について、基本的な原則を満たしたものについてはしょうがない、みんな払いましょう、という約束が成り立っているわけで、私は、税調としては、公平原則という意味は何なのか、どれほど重要なものなのか、ということをしっかり言うべきだと思います。
もう一つは、議論の余地があまりなくて成立させるということは、地方自治から見て非常に問題があるわけです。これは応益税でございます。応益税というのは、地方自治体のサービスに対して、納税者が、そういうサービスがあるならと納得して対価を払おうというのが税の本質ですから、地方自治体からの情報開示とか、東京都はほかにできることがいろいろあったのではないかということを全部説明して、にもかかわらずこれは必要なんだ、そうか、メリットがあるんだね、ということで払うなら意味があるけれども、そのプロセスを全部欠いておりますので、これは非常によくない。
本来、外形標準課税の最大のメリットは、行政が努力をし、情報を開示し、説明し、納税者が納得する、そういう責任ある自治を構築する一歩になることだと思っています。税調は、そこに意義があるんですよということを世間に対して明確に言う必要があるのではないか。
最後に一番重要な点を申し上げます。石先生が小委員長をなさった地方法人課税小委員会がレポートをまとめたけれども、あれは4つの基準にばらけてしまっていて、あれで検討してくださいといっても、あんなものは戦略にならんですよ。私も入っていましたから、(笑)「非常に高く評価する」などと言いましたけれども、参考意見としては高く評価されますが、こういう本当の話になってきたときにあのレポートは役に立たないです。
石先生をはじめとして、すばらしい方々が参加しているのだから、国のことを本当に思って、一つに絞り込んで、「一番バイアスのない適切な課税標準はこれでありますよ」ということを言う。それから、経過措置として何年かけてこういうふうにします、ショックをやわらげていく措置はこう考えます、手続きはこうします、計算はこうしますという、みんなが受け入れられるような戦略案をつくらなければいけない。税調でこういう形で議論しろといってもちょっと無理ですから、石先生の指導のもとで課税小委員会が……あと2、3カ月で我々もお役御免になるようですけれども、最後の仕事はやるべきではないでしょうか。それだけは強く言っておきたいです。いま問題意識を共有している人たちが、戦略案としてこういうものを出した、それが全国知事会に受けとめられて、全体に一つの案になっていくということをお願いしたいと思います。
〇加藤会長
中西さん。
〇中西委員
東京都の突然の銀行税というべきものについてはあまた議論がされておりまして、また、これは法廷で争うようなことですから、あえてきょうは私は触れないのですが、いま某一流紙は、東京だけこれをやるのはアンフェアである、銀行業だけにやるのもアンフェアである、全国一律に全業種に向かってかけるべきであろう、という論陣を展開しております。わが小委員会も、石先生以下ご苦労なさって、いろいろまとめておられるやに聞き及んでおりますし、いま島田先生も「4つの案ではなくて戦略案一本に絞れ」ということですので、私、大変な関心を持っているわけです。
産業人として、私は、「こういう方向に持っていってもらっては困る」ということを早手回しに申し上げたいと思います。そもそも論に戻りまして、外形標準課税の世界の動きがどうなっているかというと、ドイツも98年に廃止していますし、フランスも同じく賃金税を廃止していますし、アメリカのミシンガン州も99年から廃止。ミシガン州が廃止した考え方は、これは最後のビジネス・バリアだから、よろしくないと。フランスも、雇用に与える影響を重視して社会党政権が廃止を決断したということですから、わが国もよほどここを考えてやらないと。企業が、リスクをかけて投資や雇用を行わねばならない、非常に難しい時代に入っているわけですが、そのときに、所得の有無にかかわらず投資や賃金に課税するというこの愚かさは、よくよく考えていただかないといかん点であろう。これが第一点です。
第二点は、外形標準課税の持つ宿命といいますか、各国でもそのようですし、小委員会の経過報告を聞きましても、そのようになっているようですが、適用除外とか配慮条項をどうしても設けざるを得ない。そこから来る不公平が非常に問題だと思うのです。
小委員会でも、中小企業、特に個人事業者に配慮して、個人事業者は、会計処理の面などで法人との間に一定の格差があると考えられるから、これは外形標準課税からは外すということですから、既にこの時点で611万の事業者の中の364万事業者が適用除外になるのです。残った247万事業者中、またまた中小法人に対しては一定の配慮を行うということで、これは事実上適用除外なんですね。247万事業者に特例が適用されるとなりますと、実際に適用されるのはたかだか3万事業者程度なのです。
これをもってアンフェアと言わずして何と言うか、ということですね。これは非常に難しい問題をはらんでいるわけです。不公平でないのは付加価値だけですから、加算型付加価値でいくか、控除型でいくか、これは議論の残るところですが、公共税その他ありますから、前から言っていることですけれども、これは大きな問題として残ると思います。
もう一つ申し上げたいのは、中小企業四団体は、最近、俺のところは課税しないように配慮してくれよという主張はしていないです。どういう主張をしているかというと、どんな配慮をされようとも、外形課税には断固反対だということなのです。その理由は、こういう不公平なことになるのはよろしくないので、逆にインボイスでも入れて、免税点を是正した欧州並みの付加価値税への移行をやってくださいと。やはり時代が大きく変わりつつある。だから中小企業団体も、赤字法人への課税強化になるから反対しているということではなくて、ここは非常に大事なことなのですが、そういう大きな世界の流れがあるし、どう考えても不公平が起こる。
もう一つ言うと、さじかげんで、暗やみに引っ張り込むというのはおかしいけれども、密室で、おまえのところのある産業セクターはかけなくていいようにしてやろう、これはかけるよ、と。この間のどこかの大臣の発言ではないですけれども、そういう古典的政策手法に回帰するのはまことによろしくない。その辺を十分配慮してかからないと、この問題は大きな禍根を残すのではないか。
だから、わが税調としては、中期答申は、今後5年間の税のあるべき基本的な枠組みというか、もうひとつ言えば、租税のフィロソフィーを議論する場ですから、いま私が申し上げたことを踏まえて、外形標準課税の導入に対しても軽々に推し進めるべきではないのではないかと申し上げておきたいと思います。
〇加藤会長
河野さん。
〇河野特別委員
第一は、石原知事の発言、行動についての評価は、いいところを突いたという意見と、非常にファッショ的で、北京の中共政権並みだという二つの評価があるんですね。私はどちらかといえば明らかに後者だと思っています。
第二に、新しく彼が提案した内容については、何人もの方がおっしゃったから全部やめます。時間のロスになるから。政府見解はいいところを突いていると思います。問題は、ここから先なんです。誰が考えても、いまの都議会のあれを見れば実行されるんですよ。それを我々は先取りして、島田さんもおっしゃったけれども、そこから先をどうすべきかについて一言だけ言いたいのです。
一つは、橋本さんも出ていらっしゃるから、あとで決意表明を聞いておきたいと思うけれども、都市銀行というか、大銀行は行動を起こすべきなんだ。いますぐやることはないから、タイミングは選んでいいですよ。司法の判断を堂々と仰ぐべきですよ、これだけ問題があるのだから。政府見解におどおど書いてあることと同じような判断を司法がするなら、それも一つの判断。司法もだんだんポピュリズムになっているから、危ないところもあると思うけれども、そうでないかもしれない。わからない。それをどんどんやるべきだと思う。それをやらないで、同じことを新聞広告に出してもあまり効果はない。
第二は、我々も、それが来年から実施されるということを前提でどういう議論をやるか。そのときの私のスローガンは2つなのです。一つは、参加。国民の大多数に参加してもらう。一つは、選択。これがキーワード。今度の都知事のあれは参加も選択も何もないわけだ。自分でお決めになっていいんだと言っている。本当はそうではないらしいけれども、まあまあそれでやった。私の考えでは、いろんな人にいろんな角度からこれから参加してもらって十分だと。時間は十分ある。
第三に、来年、参議院選挙があるのに、いまの与党がどういう体制になるか知らないけれども、国民全体広範にかけるようなことを選挙のスローガンに掲げるわけがない。それが日本の政治の現実ですよ。ということは、2001年に導入なんていうことは考えられない。2002年が勝負時ですよ。誰が考えてもそうなる。そうすると、時間はたっぷりあるんです。
私がなぜ「選択だ」というかというと、我々、石さんを中心にして外形標準課税の議論をやってきました。私もその旗頭の一人だと自分で思っています。しかし、同時に、時間のあるうちにいろんな議論が出てくることは間違いないと思う。いま中西さんが言われたことは代表例の一つですよ。外形標準課税というのは、世界の大勢はどうか知らない、彼の言うことが正しいかもしれない……むしろ別の選択があるのではないか。
政治的に非常に難しい外形標準課税に固執し続けるのか、「別の道もあるぜ」という議論をやるのか、内部でもそうだし、半年か1年の間に、外部でとうとうとした議論が起こるのは間違いないと思っています。時間は十分あるんですよ。選択論をやってもらう必要がある。それでもなおかつ外形標準だというなら、それはそれで結構。しかし、私の予想では、やった結果、そんなことにならない。いろいろな意見が並立して立ち往生することになるのではないか、というのが私の予想なのです。
最後に、「世論の支持がある」という言葉があるでしょう、政府税調が消費税を入れたときの新聞報道によれば、当時、消費者団体を含めて8割か9割は反対だったのです。しかし、10年たって、いまや定着ししつあるんですよ。どう改善するかが問題だけど。今度は、東京都都民の世論調査だと8割以上が賛成だということになっている。世論ぐらいあてにならんものはないんですよ、私の長年の経験によれば。それに寄りかかることは極めて危険だということだけ申し上げます。
〇加藤会長
見通しまでいただきまして、ありがとうございました。
榎本さん、どうぞ。
〇榎本委員
まず初めに、島田さんもおっしゃったように、石原ショックとは言いながら、これだけ世の中が外形標準課税をめぐってざわめいている。率直に言って、外形標準課税なんていうのは税にかかわる人たちしか知らなかった言葉ですね。これが井戸端会議の話題にもなっている。これはある意味ではいいことだと思うのです。
そういった状況の中で、政府税調はより具体的に明確なあり方を出すべきではないか。4分類に一つ加わりますから、5つの選択肢が見えてきているわけですけれども、「あとは政治のほうで片をつけてくださいよ」ということではなくて、それぞれのメリットやデメリットも明確にしながら、中小企業への配慮とか、簡便な方法にはどういうものがあるか、地方法人課税小委員会の専門家の皆さんで技術的・専門的な検討をしていただいて、できれば私どもの任期の中で、政府税調としても、法人事業税の外形標準化について具体的な提言をすべきではないかということを申し上げておきたいと思います。
東京のやっていることについて、政府税調、誰ひとり肩を持つ者なしというのもちょっとあれですから、私なりにちょっと……。手法、やり方にポピュリズム的な危険性がにおうというのは私もそう思います。プロセスとして説明責任を十分果たしていないと思いますし、その代役は議会がちゃんと示さなければいけない。この点は私は全くそのとおりだと思います。
ただ、言われたような、それほどとんでもないことなのかということについて申し上げれば、一部の銀行、それも大銀行だけに絞ったのが不公平かということですが、言われるように、72条の19で、きちんと「事業の状況に応じて課税標準を外形的なものに変えることはできる」と書いてあるわけです。
これは、銀行税をつくったとか、銀行業界は「銀行新税」という言い方をしていますが、そういうものではなくて、いまの法人事業税を、業種と規模、つまり事業の状況に応じて課税標準を変えただけであって、税率が著しく均衡を失するというのでなければ、これは特に法的には問題ないと私は思います。
そうなると、同じ地方税法の「著しく均衡を失する」というのは税率を問題にしているわけであって、税率の3%が高いのかどうなのかということは議論の余地があろうかと思います。私自身はそれについて、格別違法であると言うほどの著しい均衡の欠如というふうには考えないということです。
〇加藤会長
松浦さん、どうぞ。
〇松浦委員
外形標準課税につきましては、私からも何回も発言させていただいております。ただ、この問題は都道府県税でありまして、福井県知事の栗田委員からの意見が文書で提出されておりますので、それ以上私のほうから申しませんけれども、この問題は地方税財源の安定確保のシンボリックな課題であるわけで、市町村の財政への影響についてもご配慮いただきながら早期実現をしていただきたいと思います。
また、今回の東京都の問題に関連して、地方団体の課税自主権の問題が取り上げられているわけでございますけれども、地方分権一括法がこの4月には施行となります。今後、地方分権の推進とともに、課税自主権を尊重しつつ地方税財源を充実すると、いわゆる地方分権推進計画等で言っているわけでございますので、いまさらのように課税自主権について抑制的な制度の導入を検討することは、地方分権推進の時代の流れに逆行するのではないかと思います。
いまは、むしろ課税自主権の拡充についての検討を求められているわけでございまして、それを縛るような処置につきましては、議論するなとは言いませんけれども、極力慎重に取り扱っていただければと思っています。以上でございます。
〇加藤会長
水野さん。
〇水野(勝)委員
たくさんのご意見が出ておりますので、私は10秒で申し上げたい。
先ほど税務局長さんから、似て非なるものであるという指摘もある。それから、事業種類を分けて、あの4業種以外は同じように扱うべきではないかということからしますと、非常に疑義があるというよりは、納税者から私有財産を調達する税の問題ですから、いささかでも疑義のあるようなシステム、措置は避けるべきであると思います。そういう疑義を残すような余地のある72条の19という条文そのものが、どうも問題ではないか。
先ほど、これは改正を考えるべきであるというご指摘もありましたが、むしろこれを削除する。そうすれば、東京都としては、72条の19に基づいてこれを提案するとされておりますから、その根拠がなくなるわけでございます。しかし、これだけ外形課税が大きな議論になっていますから、72条の19がなくても別段実質上困る点はない。この際は19の削除を考えたらどうかと思うわけでございます。
〇加藤会長
本間さん、どうぞ。
〇本間委員
これまで出ておりません論点について触れさせていただきたいと思います。
私も、石原新税がかなり問題であることはいろいろな形で述べておりますけれども、課税自主権を主張すること、及び安定的な財源における外形課税の一つの提案をしたという意味では正当に評価される部分があるだろうと思います。ただ、法律等で、いままで出ましたけれども、応益課税を前提にしていまの石原新税を正当化できるかどうかということになりますと、これは論理は全くない。つまり、応益というのはすべての業種において受ける、しかも、差別的な税率においても可能だろうと思います、応益課税を主張する限りにおいて。したがって、各都道府県が税率が異なる形で上げたり下げたりするという、シンメトリーある形での提案が行われて、地方の分権論議の中において、自主財源の強化という形でこれが提案されれば、それはそれなりのブレークスルーになるだろうと思っています。
銀行に限定するというのは当然間違いでありますけれども、そのときに自治省が歯切れが悪いのはなぜかということを考えますと、交付税の存在があるわけです。この問題について一体どういうぐあいに考えるかということなしに課税自主権等を議論しても、ある意味ではナンセンス、無意味だということになるわけで、我々自身がこの点をどこまで視野に入れてやるのか。
例えば、基準財政収入額に対してプレミアム的に課税した部分についてどのような扱いにするのか、あるいは、新税の導入に対してどのような扱いにするのかによって、財源配分が全く異なってくることを考えますと、実効税率が違ってくる。表面の税率ではなくて、実は、そこから起こる再配分メカニズムを入れながら各地方団体における課税の状況を判断していくことが必要になってくるわけで、交付税制度の問題について、地方自治との関連の中で同時並行的に議論していくことが必要になってくるだろうと考えます。以上です。
〇加藤会長
水野委員、どうぞ。
〇水野(忠)委員
いろいろご意見が出ましたので、簡単にさせていただきます。私、考えましたのは、政府の税制調査会で一つの地方団体がつくろうとしている条例案を議論することにどういう意味があるのだろうと、ちょっと疑問があったのです。意味というのはいわゆる位置づけですけれども、伺っていると、マスコミで報道されている世論、あるいはマスコミによってつくり出されている世論に対して、税制を議論している集団がある種の意見を投げかけるという意味で一つ意味があると思うのですが、もう一つ、国と地方の関係、今回の税制調査会の議論をバックに、もう一回、自治省が東京都と話し合いをするときの何かの材料になるのかなと思いました。
もう一つ、税制調査会の中に都道府県の代表の栗田知事が入っておられます。時間をかけて地方法人課税小委員会でも議論してきたことですけれども、それに対して石原知事が、非常にまだるっこいという形でああいう構想を持ち出したことに対しては、一つのリアクションはあって当然であろうと思うわけです。我々としましては、今日の経済情勢を十分配慮した上で、景気が軌道に乗った段階でということで慎重に考えていたわけですけれども、そこへ突っ走ったわけですので、それに対して税制調査会として何らかの見解は出てしかるべきではないかと思っております。
私、いままであまり言われていない論点についてちょっとだけ言わせていただきますと、これは法律論ですが、一つは、72条の19の今回の根拠になっている「事業の状況に応じて」ということです。銀行業については、事業の状況に応じて粗利益が適当である、また、5兆円という資金量が免税点である、この二つが、なぜ「事業の状況に応じて」を説明しているのか、この辺の合理性が、私の入手した範囲では東京都は全然明らかにされていない。このあたりが違法性を疑わせる材料になっているのではないかと思うわけです。
もう一点、これが逆に振れた場合のお話で、東京都のつくった税金は違法だから、これは絶対納めるべきではないと銀行協会で決めるとか、もっとひどい例になりますと、株主代表訴訟が起きるとか、こういうことを言って世の中が混乱することがあり得るわけですが、これは全く間違った話でございます。これは法学上の話になりますが、行政庁の活動というのは、もともと、裁判によって取り消されるまでは合法性の推定が働きますので、それであるからこそ行政庁は活動できるわけです。
ですから、まだ取り消されてもいないうちから株主代表訴訟だと言って騒いでみたり、あれは違法だから納めるべきでない、このような議論が出てくるのは逆の意味でのファッショですので、こういうことについては極めて慎重に対応していただきたい。また、新聞の会見等で、会長からも、株主代表訴訟が議論されているなどということは言っていただきたくないと思いまして、一言つけ加えさせていただきました。
〇加藤会長
どうぞ。
〇和田委員
二者択一で意見を申し上げられませんし、私は全く素人の立場ですので、制度上の問題というか、きちんと分けて考えなければいけないと言われたことは承知しております。ただ、榎本委員もおっしゃいましたように、この2、3年、私たちは外形標準課税の話を仲間でしようと思っても、そちらに関心が全然向かなかったのに、みんながそちらのほうに向いたということは大変な問題点の指摘だったと言えると思います。
もう一つ、盛んに不公平だと言われるのですけれども、これまた分けなければいけないと言われるのかもしれませんけれども、今回のことに至る手前の段階の、銀行に対する不公平感というのが一般の人たちの頭には深く入っておりますし、金利ゼロが続いていることを考えましても、ただ感情的に銀行憎しということではないのですけれども、行政サービスの対価について、「それはおかしいんじゃないの」という気持ちは否定できないのではないかと思います。
先ほどお話がありましたように、とんでもない、悪いものを東京都が選択しようとしているのかというのは、私、正直なところ十分にはわかりません。自治省のさっきのお話の最後も、「直ちに違法とは断定できない」という言い方をされております。それともう一つは、これが都議会に上がるまでの東京都での議論なり情報の出し方が、非常に不十分だったとは言えると思いますので、これから時間をかけて議論を重ねていくべきで、地方の税制、地方の課税自主権、財源については、これを機会にもっと積極的に議論していくべきだと考えております。以上です。
〇加藤会長
時間がございませんので、ご意見のある方はまだいらっしゃると思いますけれども、お顔を拝見していると、大体こういう意見だという感じがいたしますので、いままでのご意見を私なりにこれから考えたいと思っています。
自治省から何か一言ございますか。
〇石井税務局長
いま、委員の先生方がいろいろおっしゃったことについて、お話ししておきますと、先ほど一、二の委員さんから、地方税法の72条の19の規定を、国が協議にあずかる仕組みにすべきだとか、規定を削除してはどうかというお話もございました。
経過だけ申しますと、この地方税法の規定は、戦前からのいろいろな経緯がございますけれども、昭和22年時点で言いますと、このときは法人事業税は営業税と言っていました。営業税の課税標準については、営業の種類を限って純益以外に他の標準を併せ用いることもできるという規定がございまして、ただ、当時は「内務大臣の許可が要る」となっていたのです。
しかし、昭和23年に、戦後の民主改革とか、地方分権、地方自治の尊重ということもあったと思いますけれども、「内務大臣の許可」というのはなくなって、そのかわり、所得によらないで、外形基準でいく場合には負担の著しい不均衡がないようにしなければならないという規定が入った経過がございます。
ですから、もちろん立法論としていろんな議論があると思いますけれども、私どもは必ずしもこの規定が法の空白とか何とかということではなくて、それなりに十分論議がされた上でいまの規定が当時できた。それから、当時から、法人事業税というのは応益課税ですから、本来外形基準でやるべきだという考え方が根底にあって、しかし、諸事情で所得にかけるのが一応原則になっている。しからば、せめて条例で、外形基準でやるのぐらいはできるだけ自主的に認めてあげようではないかという配慮がこの規定の背後にある。実際に、当時の立法作業に携わった方のご意見を確認いたしましたが、そういうふうに理解いたしております。
一方で、先生方もご承知のように、地方分権一括法も通りましたし、それにさかのぼりまして、地方分権推進計画というものが閣議決定されておりますが、そのときにも地方の課税自主権はなるべく尊重していこうということが閣議決定されています。それから、分権一括法を国会で通していただいたときには、附則で、地方税財源の充実・確保について、政府ができるだけ早く検討して結論を出しなさいという宿題も実はいただいているということがあります。
したがいまして、いまの地方税法の体系の中で、地方団体が独自にみずからの財源を確保する努力をすることは尊重すべきですから、国との調整規定を設けるといった感じで課税自主権に対して抑制的な制度を導入することについては、よほど慎重な議論をしていただく必要があるのかなと思っております。
もちろん、今回の東京都の案については、先ほどご説明しましたように、私ども自治省も含めて、多々疑問点があることは事実ですし、先ほど手続き論の話が出ましたけれども、閣議口頭了解では5点言っています。自治大臣が都知事と会われたときに、6つの懸念というのを言われまして、その5点以外につけ加えた一つというのが、これだけの改正をするならば、直接納税者になる銀行業界はもとより、各方面に十分理解を求めて、時間をかけてそれなりの努力をしてやるべきではないかということも自治大臣としても申し入れている次第でございます。
私ども自治省としますと、かねて政府税調で、外形課税については望ましい方向の改革であるということはまとめていただいておりまして、むしろ景気動向を踏まえる、中小企業対策、その他、いろいろな課題を具体的に詰めようと決めていただいた矢先でございます。こういった既定のご方針に沿ってご審議をさらにしていただいて、幸いにして全国的に外形基準が導入できるといたしますと、72条の19は、所得についてかけるのが原則、それ以外は外形基準を条例でできるとなっているわけですから、おのずから72条の19の規定ぶりは変わってくるわけでありまして、それはそれでそういうときに総合的な解決の方法があるのではないか。
なお、委員の方のご発言の中に、全国的に外形基準を導入した場合、東京都はそれとは別に引き続きやることになるのだろうかというお話がありました。これはもちろん、東京都知事はじめ東京都当局がどういうふうに考えているかということですけれども、私どもとしては、課税自主権といってもおのずから国全体の法律の中での話でありますので、全国都道府県共通に外形標準課税が導入されるという段階になれば、当然、それを尊重した対応を東京都がなさるものと期待しておりますし、そうではないかと思っている次第であります。以上でございます。
〇加藤会長
今野さん、どうぞ。
〇今野委員
今回の法人事業税の改革につきましては、何がどう変わるのか、なぜこれをすることがいいのかという、国民のコンセンサスづくりに関してもっと努力をしたいと思っております。先ほど島田先生がおっしゃっておられましたけれども、6割を超える法人が赤字法人で、行政サービスを受けているにもかかわらず、法人税を払っていない、そういう説得の仕方だけではなくて、課税自主権を持つことによって本当の地方分権国家が誕生する、そのことによって法人も法人税を払うことの意味がどういうところで見えるのか。もう少し志高く、ビジョンがはっきり見えるような、希望が見えるようなコンセンサスづくりをしたほうがいいと思います。
それから、あちこちで皆さんにもおっしゃっていただいているようですけれども、今後の新しい日本経済の牽引力となり、また、いまの4.7%の失業率を吸収するための雇用の場を創造するニュービジネスとかベンチャーが、再び活力をそがれることのないような配慮と、国際競争力がしっかりと身につけられる、そういう希望が見える呼びかけをぜひしていただいてコンセンサスをつくっていただきたいと思います。
〇加藤会長
本間委員。
〇本間委員
意識的にお答えをなさらなかったのだということは類推しているのですが、交付税をどういう具合に考えていらっしゃるのか。これの枠組みがかたまらないと、課税自主権のありようについても議論できないわけであります。暫定的でも結構ですし、今後、この場で議論するときにその点について明確な方針を打ち出していただかないと、議論の収束のしようがないのではないかという気がいたしますが。
〇石井税務局長
本間先生がおっしゃるのは、外形課税を導入した場合に、基準財政需要額がどういうふうになるのかということですか。計算の仕方がどうなるかということですか。
〇本間委員
課税自主権を究極的に主張するのであれば、交付税そのもののありようについて抜本的な改革を要求する可能性は論理的にあり得る話で、そこのところまで考えませんと、配分のところは変えずにモラルハザードを起こすシステムにしておきながら、都合のよい課税自主権、増税型の議論だけに使われていくことになると、地方自治という観点からいっても問題がありはしないかということを申し上げています。
〇石井税務局長
課税自主権といいますか、地方税の充実を図った場合に、国庫補助金とか交付税制度との関係を聞いていらっしゃるのだと思いますけれども、きょう諸井委員もおられますが、地方分権委員会の勧告も受けて地方分権推進計画ができております。基本的にできるだけ地方税の充実を図る、その際には、将来、国民の皆さんに実質的な増税をお願いすることもあるのかもしれませんが、地方分権だから国民の皆さんに増税をお願いするということはあり得ないと思います。そういう前提で考えますと、地方税を充実すれば、おのずから、国庫補助金の整理をもっと徹底してやるとか、交付税そ
のものを見直すという議論に関連してくるのは当然だと思います。
それから、基準財政収入額の点ですけれども、まだ正式に決めたということではありませんが、県によって外形標準課税を導入されれば、所得にかけるのが原則だけれども、条例でそういう道をとられて……所得だと非常に変動が激しいけれども、外形基準によって安定的にとっていくということですから、普通に考えますと、基準財政収入額の計算上は、外形標準課税をおやりになるところは、そのことによって通常得られる税収を計算の基礎に入れていくことになると思います。したがって、それが増収になる分、普通ですと収入は増えますから、都道府県なら、その8割分ぐらい差引いて交付税が結果的には減ることになると思います。
〇本間委員
東京都がいま不交付団体で、交付団体と非対照的な形に影響が及ぶというのが交付税を通じての媒介的な効果だと思うのですが、それはどういう具合にお考えでいらっしゃいますか。東京都の新税をどういう具合に扱うか、もし交付団体であれば。
〇石井税務局長
東京都が交付であろうと不交付であろうと、同じなんですね。基準財政収入額は、外形課税で計算して入ってくる税収を標準税収入として考えていく。
〇本間委員
超過課税については考慮しないというのが、普通の地方交付税の扱いですね。
〇石井税務局長
超過課税はそうです。ただ、外形課税は、所得課税が原則なのに課税方法を外形に変えるわけです。
〇本間委員
超過課税と理解しないわけですね。
〇石井税務局長
そうです。そういう考え方です。ですから、東京都がたまたま将来交付団体になることがあり得るかどうか、なかなかそういう事態はないのではないかと思いますが、いまは交付税はもらっていないという話になりますけれども、仮にいま交付されている団体がそういうふうにやれば、そういう計算の仕方になる。これは、役所として正式に決めたわけではありませんが、私どもはいまのところそういうふうに考えております。
〇加藤会長
議論がまだ尽きないのですけれども、ここら辺でまとめませんと次の議題に入れませんので、私の考えておりますこと、あるいは、政府税調はいまの問題に対してこれからどういうふうに対応していくかについて、若干の私の考えを申し上げさせていただきたいと思います。
最初、この問題が出ましたときに、何となく地方の課税自主権のやり方として面白いよという感じで受けとられたものですから、自治省の対応を見ていましても、半分喜んでいるような感じがありました。(笑)私の誤解だったら許してください。それが結果的に国民から見ると、結局石原さんの言うほうが正しいんだという印象を与えてしまったと思うのです。それからずっと議論が続きまして、いや、やっぱりそうじゃないよということになってきて、税制のほうから考えるといろいろと疑問があるんだよ、内容からいっても、手続きからいっても問題があるわけです。
特に手続きのほうは非常に問題だと思うのですが、「一本の小骨といえども抜かない、協議は絶対したくない、したらつぶれるから」。つぶれるならやらなければいいんですよね。それを、そんなことを言って一生懸命議論するというのは、ちょっとやり方がよくない。税制というものは正々堂々と議論していかなければならないものです。そういう意味で私たちは常に広く考えているのですけれども、あれは、うまくやろうとする気持ちのほうが強くて、どうも納得できないところが残ってしまったという気持ちが私にはあるのです。これからあれが一般化してしまうと困りますので、そういうことに対して私たちはきちんと言っておくことが必要ではないかという気持ちを持っています。
そういうことで、特に先ほどの課税自主権の問題でありますが、諸井さんの地方分権委員会で、課税自主権をどういうふうにしたらいいかということを考え、税源を考えろ、こういうご意見でございますから、私どもとしては何とかそれをやらなければならないというふうに思っております。
どういう方法でそれをやったらいいかということでいろいろと考え方があるわけですけれども、私の考えでは、一つの課税をやろうとするときには、これは財政額の原則でございますね、相手の手足を縛って権力者が勝手にやるわけにいかんのですよ。私から言わせると、アメリカの場合だったら、一つの課税があったときに、それに対して不満だったら、ご承知のように反乱権があります、あるいは選択の余地があります。そういうことをきちんと認めておいてやるならいいけれども、それをやらないで、手足を縛っておいて、「さあ、これでのめ」と言われたら、反対するのは当たり前です。
そういうところまでも含めて議論しななければいけないということを教えてくれたという意味では、石原さんは大変いいことをやってくれた。いいことというのは反面教師でございます。あんなことをしてはいけないよという意味でありますが、内容とか手続きの面から見て、皆様方がお出しになりましたように、いろいろな議論があります。そういういろいろな議論を私たちは考えながら、これからどういうふうに進めたらいいかということになりますと、先ほど河野さんも言われましたけれども、まだ時間があるんです。そうだとしますと、私たちとしては、地方法人課税小委員会が出された一つのきちんとした結論がありますから、その結論をさらに具体化するためにどうしたらいいのか考えてみるということが一つの方向でございましょう。
私たちは、都の新しい銀行税なんていうのには振り回されずに、これはどちらかというと、歪められたと言ってはおかしいけれども、ちょっと迷い道に入った、横道に入ってしまった。その横道に入ったことをやめまして、私たちは本道に沿ってどういうふうにこれを進めていったらいいかということを、きちんと考えていったほうがいいのではないか、こういうふうに私は思っております。
そういうことをやっている間にだんだんと世論もわかってきて、こういうふうにしたほうが税としてはいいのではないかということをみんなが理解するようになってくれば、私たち税制調査会の非常に大きな貢献ということになるわけでございます。
そんなわけで、これからいろいろ検討しながら、この税制調査会、あと何カ月かで終わりますけれども、終わるまでに私たちも何らかの具体案を出しながら進めていこうと思っておりますので、そういう方向で進めていってよろしゅうございましょうか。そんな気持ちでおります。
そこで、もしお許しをいただきましたならば、残った時間、まことに少なくなりましたけれども、国会審議などの状況について報告を聞きまして、中期答申についても、何かご意見などがあったらいただくことにしまして、時間を終わりたいと思っております。
最初に、年度改正法案が出ておりますので、これについて事務局よりご報告をいただこうと思います。
尾原主税局長と石井税務局長、よろしくお願いいたします。
〇尾原主税局長
それでは、国税関係の状況からご報告申し上げます。
昨年ご審議いただきました平成12年度の答申に基づきまして、1月14日に税制改正の要綱が閣議決定されております。国税関係でございますが、2 月1日に、税制関連の二つの法案といたしまして、お手元の資料にございます「租税特別措置法等の一部を改正する法律案」及び「法人税法の一部を改正する法律案」が閣議決定され、現在、国会で審議されているところでございます。本日にも衆議院大蔵委員会において採決され、12年度予算案とあわせまして本会議に上程される運びになっていると聞いております。
なお、この二つの法案でございますが、昨年ご審議いただきました、確定拠出型年金制度とSPC等の特定目的会社等にかかわる税制上の措置につきましては、別途の法律で措置することになっておりまして、この中には含まれていないわけでございます。
これまで本会議、予算委員会がなされておりますので、次に、国会におけるこれまでの主な質疑状況をご紹介させていただきたいと思います。
お手元の資料で、「総46-4」というのがございます。これで見ていただきますと、今国会では、危機的な財政状況について数多くの質疑がなされております。要旨を見ていただきますと、財政再建・財政構造改革に対する取組みをどうするのか、財政構造改革のビジョンを示すべきではないか、財政再建は経済の自律的回復の後とすべきではないか等々の質問がございまして、総理大臣から、「財政構造改革という重要な課題を忘れたことは、片時もない。しかし、景気を本格的な回復軌道にのせるという目的と財政構造改革に取り組むという課題の双方を同時に追い求めることはできない、『二兎を追うものは一兎をも得ず』になってはならない、と考えている。まず経済新生に全力で取り組み、わが国経済が低迷を脱し、名実ともに『国力の回復』が図られ、それにより財政・税制上の諸課題について将来世代のことも展望した議論に取り組む環境を整え、その上で財政構造改革という大きな課題に向かってまいりたいと考えている」と、お答えされております。
大蔵大臣からは、「財政構造改革は避けて通れない課題ではあるが、経済回復の軌道が明確でないと、中期的な経済の展望を描くことができず、税収の見込み、歳出削減の見通し、金利と国債発行との関係などがわからない。また、財政構造改革は、国・地方の関係も含め、21世紀初頭における日本の経済・社会全体のあり方の再構築につながるものであり、準備には相当の時間がかかる。その実現のためには、わが国経済が民需中心の成長軌道に乗ったということを確認し、財政だけの問題にとどまらない大きなフレームワークのもとに財政再建の計画を立てる必要があると考えている」という答弁がなされております。
それから、個人所得課税でございますが、ご承知のように、児童手当の関連で年少扶養親族にかかる加算措置が廃止されておりまして、それらの理由は何かという質問がなされております。大蔵大臣のほうから、11年度改正で定額減税をとりやめて、定率減税を実施した際、増税になる層が出るという問題にも配慮し、かねてから子育て世代への配慮として議論のあった年少扶養親族にかかる扶養控除を10万円増額した。12年度改正においては、少子化対策を児童手当で行うか、税金で行うかという問題について、与党三党の協議の結果、児童手当を拡充することとなり、同じ目的を持つ政策の間の転換としてこの控除の加算を廃止することとした、という旨の答弁がなされております。
さらに、平成12年度税制改正では、いまの加算が廃止されて、課税最低限が引き下げられているが、今後の方向性についてどのように考えているかという質問がございまして、大蔵大臣ご自身の考え方として、「今回の課税最低限の引下げは児童手当の拡充に伴う年少扶養控除の廃止の結果としてのものであり、長期にわたって課税最低限を下げるという方針の結果ではない。ただ、課税最低限を引き下げ、最低税率を引き下げることにより、もう少したくさんの国民に少なくてもいいから所得税を納めてもらうというのが理想だと考えている」という答弁がなされております。
それから、「その他」のほうでございますが、消費税の福祉目的税化を含む自自公三党合意に関連いたしまして、年金、介護、高齢者医療の包括的枠組みの構築の具体化に取り組むべきではないか、との質問がございまして、総理大臣から、「先般設置した『社会保障構造のあり方について考える有識者会議』において横断的な観点からの検討をお願いしているところであり、こうした議論や与党の協議等も踏まえながら、将来にわたり安定的で効率的な社会保障制度の構築に全力を挙げてまいる」という答弁がなされております。その他、大蔵大臣からも外形標準課税についての答弁がなされておりますが、省略させていただきます。
以上、国会における審議状況と最近の情勢についてご報告させていただきました。
〇加藤会長
ありがとうございました。石井さん、どうぞ。
〇石井税務局長
続きまして、地方税関係の年度改正法案の内容、国会の審議過程における主な討議についてご報告させていただきます。
まず、年度改正の法案につきましては、「地方税法等の一部を改正する法律案」といたしまして、去る2月4日に閣議決定の後、国会に提出いたしたところでございます。その内容につきましては、お手元に「地方税法の一部を改正する法律案のポイント」という1枚紙をはじめとしまして関係資料を挙げてございますので、ごらんいただきたいと思っております。
次に、今国会の本会議なり予算委員会の審議過程における地方税関係の主な討議事項です。ただいまの資料の2枚目に、二として「地方税関係」ということで掲げてございますが、簡単にそのやりとりをご紹介いたします。
地方税の総論といいますか、地方税源の充実に関しては、自治体が自己責任を持ち得るためにも、抜本的な財源配分の見直しが必要ではないかという問いに対しまして、内閣総理大臣から、「厳しい地方財政の立て直しのためにも、まず景気を本格的な回復軌道に乗せることが必要」ということと、併せまして、「地方分権の進展に応じて地方団体がより自主的、自律的な行財政運営を行えるようにするためには、地方税財源の充実・確保を図っていくことが重要である。将来の税制の抜本的改革の方向も見きわめつつ総合的に検討すべきもの」といったご答弁をいただいております。
それから、課税自主権の充実につきましては、自治大臣から、「地方分権を進めていく上では課税自主権の拡大は重要であり、そういう方向性を求めていきたい」という答弁をしていただいております。
それから、外形標準課税については、先ほどご論議いただきましたけれども、幾つか質問が出ておりまして、自治大臣からは、「都知事に対して都の財政事情等から一定の理解できる点もあるけれども、所得に対する課税の場合の負担と著しく均衡を失しないかなど、6項目を挙げて都に対して懸念を表明した。しかし、都知事の意志が非常にかたく、導入するということであった」という状況報告をされました上で、「国としては、東京都案は銀行業等という業種のみに導入することなど、合理的理由があるかどうか疑問であり問題をはらむものだ。したがって都において慎重な対応をしてほしい」といった答弁がなされております。
それから、外形標準課税の早期導入につきましては、自治大臣から、「基本的な方向として、地方における安定的な財源を確保するためにその導入は必要であるが、そのやり方、時期等について、税制調査会等でご議論いただいている最中である」というご答弁をしていただいております。以上でございます。
〇加藤会長
ありがとうございました。何かご質問ございますか。
もしないようでございましたら、いまの報告を前提にしながら、中期答申につきまして、いま、どんなふうな方針、手順でいるかということについて若干ご説明をさせていただきます。その後、時間があればでございますけれども、なければ、この次から中期答申に入りますので、そのときにまたご意見をいただければというふうに思っております。
私も、1年前だったかと気がついたのですが、昨年の6月以来、中期答申のとりまとめに向けた議論が進んでおります。この中期答申の最終的なとりまとめに向けた審議の進め方についてご相談したいというのが、本日のこの会の趣旨でございます。総理からの諮問の期間が本年の4月23日まででございます。任期も大詰めを迎えつつありますが、今回の中期答申は検討することが大変多いので、4月23日までにとりまとめることは大変難しいと私は認識しております。
したがって、任期を延長してとりまとめる必要があるかと思いますが、任期延長にも限度がありまして、6月30日ごろまでが考えられるのではないかという気がいたしますので、6月30日まで任期を延長いたしまして、それまでに中期答申をとりまとめることとしたいと考えております。そういうことでよろしゅうございましょうか。皆様方、大変長くなってしまって申し訳ございませんが、考えてみますと、大蔵省の名前がついた最後の答申でございますね。そういうことで、私といたしましてもこの任期中に何とか出したいと思いますので、6月30日まで延期させていただきたいと思っております。
なお、スケジュールを皆様方のお手元に配ってありますので、ごらんいただきたいと思います。いままで議論してまいりましたことで、個人所得課税についての議論をやったり、基本問題小委員会でそれをさらに詰めたり、環境、社会保障などの問題についてもヒアリングを行ったり、その後、法人課税、消費課税、資産課税、地方税全般を含めた各種の議論を一巡させたいと考えております。
特に地方の場合、税金をかけるだけで地方の財政問題が解決するとは思っておりませんので、そういう意味では幅広い議論を私たちはしなければならない。先ほど本間さんと局長との間で話し合いがありましたけれども、課税自主権の問題は明らかに交付税問題とかかわってまいりますので、こういったことも含めて議論したいと思っております。
こういうことでやるといたしますと、任期延長につきましては任免権が総理にありまして、税制調査会令の一部改正が必要とされるということでございますので、所定の手続きを事務的に進めますので、よろしくお願いしたいと思います。
それから、中期答申でございますが、年内の議論を整理したものを机の上に配付してございますから、ごらんいただきたいと思います。今後、中期答申に向けた議論は基本問題小委員会が中心になりますので、基本問題小委員会以外の総会メンバーの皆さんにおかれまして、あらかじめご意見をちょうだいしておく点があるのではないかと思っております。これは、またいずれ、いろんなときに伺うことになると思いますが、きょう、もし時間が余りましたら、いただこうと思います。
私が頭の中に描いておりますのは、中期答申というのは、いままで税調というのが何をやってきたかということをちゃんとする必要があると思っております。これをやっておきませんと、石原さんみたいに「政府税調は10年間何もやっておらんじゃないか、何をやっていたんだ」なんて言う。だから私も石原さんに、「あなた、そんなことを言うけれども、あなた、参議院10年間で何かやったのか」と言ったら、「それは国会が悪い」と言ってました。(笑)
それはともかくといたしまして、私どもといたしましては、ちゃんとやっているのに、それを理解してもらえない。しかも、減税をやったり、いろんなことをやっているわけです。やってきたことをちゃんと理解してもらわなければいけない。ということでございますので、私どもとしては、社会構造の変化とか、景気への対応について、税制はこんなことまでやってきたんだということを、ぜひやりたいと思っているわけでございます。
そういう意味では、誤解もいろいろございます。例えば、消費税が景気が悪化した原因であるという議論があります。そういう議論はエコノミストの中にもかなりございまして、私も訂正するのに大変なんですけれども、ご承知のように、消費税が上がったときは消費は全然下がりませんで、6、7、8とむしろ消費は増えた。ところが、社会保険料が上がったときにガクンッといくんですね。社会保険料というのは国民にとって結構大きな打撃だったことがわかるのですが、そういうことが案外理解されないで、税調に関係していらっしゃる方でも、「消費税が上がったことは悪かった」なんて頭を下げる方がいらっしゃる。これは、ぜひ皆様方の誤解を解く必要があるのではないかと思っております。
それから、私どものつくります税制の中期答申がちょっとわかりにくいんですよね。ご承知だと思いますが、表を全部後ろに持っていって、「付表参照」となる。文章を読んでいて、付表参照と言われると、またもとへ戻ったりして読みにくくてしょうがない。そういうのはパンッと文中に書いておいてくれるといい。そういう工夫をする必要があるのではないか。これは余計なことでございますけれども、特に今回は中期答申でございますから、消費税についてはこういう意見もある、こういう意見もある、いろいろなことがあると思います。そういう意見を総ざらいして、少なくともそれを読んだ人はどれを選択しようかと考える、そういう形に持っていきたいと思います。
つまり、税制というのは参加と選択でございます。みんなが参加して議論する。議論をすると同時に、その中から自分はどこを選ぶのかという選択の余地を残しておく。これが重要でございまして、選択の余地がなくて、ただ税金をかけるということになりますと、強制的になってきまして、こういうやり方はよくございません。税調はいままでやってきましたことを積み重ねがら、選択をしてもらうということを一つの大きな柱として打ち出していきたいと私は思っております。そういう意味では、今度の中期答申の中心として、「国民の参加と選択」というキーワードをきちんと守っていくことができないだろうか、ということを考えていることをあえて申し上げさせていただきます。
さらに、私どもとしましては、参加ということからまいりまして、一般の方からの意見募集が必要でございます。もちろんモニターの方もいらっしゃるのですけれども、同時に、大蔵省ホームページの「税制調査会」のコーナーというのがございまして、ここに幅広い情報提供をしていくことは非常に重要でございます。
特に若い方は情報提供に物すごく敏感でございまして、実は、恐らく日本で初めてではないかと思うのですが、自分のことを申し上げてはいけないですが、入学試験で初めてバナー広告をやったのです。ヤフーを儲けさせたのは悔しかったんですけれども、(笑)それは別としましても、そしたら何と全国の人たち1,000件からアクセスがありました。そして、実際に「バナー広告を見て受けに来ました」という学生が出てくるわけですね。そこまで日本の若い人たちは進んでおります。そういう意味でインターネットを大いに利用してパブリック・コメントをやっていくことが必要ではないかと考えておりますので、そういうことなどもこれからやっていきたいと思っております。
さらに、税制というのは、規制とは違いまして、協議して理解をする、納得をしてもらなければいけないわけです。納得してもらうことによってはじめて税制というのはできるのでございまして、納得なくてできるなんていうことはあり得ない。
そういう意味で私どもとしては、時間が許せば、ホームページでもってやると同時に、意見募集をやったり、東京中央郵便局に「税制調査会」の名前の入っている私書箱を設置いたしまして、常時、税制全般に関する意見を幅広く受け入れることにしてどうかと思っているのですが、これがなかなか難しくて、出てくる意見というのは大抵変な意見でございまして、(笑)どうしょうもないことが多いのです。私も困ってしまうことがあるのですけれども、そこら辺は取捨選択をしながら考えていきたいと思っています。
さらに、総理府、大蔵省、自治省に、「税制調査会」宛てとして送られてきた意見についても、私たちとしては同じように取り上げていきたいと思っております。そういう意味で、幅広い議論をしていきたいと思っていることが二番目でございます。
三番目に、これもお願いでございます。当たった方には申し訳ないのですけれども、委員による海外調査を行っております。これは例年やっているのですが、今回は特に遅れてしまったわけでございます。これから中期答申をつくるとなりますと、わからないところが幾つか出てまいります。特に、これから中心になってまいります議論の中では、企業分割とか、連結納税をどうするかという問題がかかわりますし、消費税の動きもある、さらには、先ほど中西さんも言われたように、外形標準課税がどういうふうに動いているかということもございます。
そういうことを含めて、特にフランス、ドイツを中心にしたグループと、アメリカ中心のグループを考えて、そういうところを専門的によく聞いてきてほしいという考え方でおります。4月から5月にかけてそれをお願いしたいと思っておりまして、お名前を出して恐縮でございますが、欧州のほうには、神田秀樹特別委員、吉牟田勲専門委員、米国班は、石弘光小委員長と水野忠恒委員の4名の方々にお願いしたいと思っておりますので、ぜひよく調べていただきたいと思います。もし間違えますと、私
どもが間違うことになるのでありますから、非常に責任が大きいわけでございます。
ということで、いろいろと皆様方のご意見をいただきたいと思っておりますが、今後の予定でございます。先ほどご説明いたしましたとおり、当面、3月から4月が、基本問題小委員会及び個人所得課税ワーキング・グループ、法人課税小委員会において議論を進めます。
次回の基本問題小委員会につきましては、3月10日(金)午前10時から、本日と同じ場所で開催いたします。
総会につきましては、4月、5月となりますと、ほとんど1週間に2回ぐらいずつはやってまいります。特に大学の方々は、4月の最初でございまして、大変忙しいのですけれども、大学はしばらく休んでいただいて、(笑)来ていただきたいと思っておりますので、どうかよろしくお願いしたいと思います。総会につきましては、正式に決まり次第ご連絡を申し上げたいと思っております。
私が申し上げたことの中で、何かご疑問などがございましたら、どうぞ。
はい、石さん。
〇石特別委員
まだ数分ありますので、2、3分、借りまして、中期答申をどういう格好でやっていくかということについて意見を申し上げたいと思います。
一部の方と個人的に議論はしたのですが、従来、中期答申というのは、専門家向けのプロフェッショナルな視点からの無味乾燥な読み物として受けとられていました。今回、先ほど会長もおっしゃったように、もともとの議論をしたほうがいいと思いますので、過去10年ぐらいさかのぼって、ずいぶん減税をやってきたということもあるし、気宇壮大な試みもずいぶんしました。そんなことは全部忘れ去られていますから、この際、ちょうど3年ごとの中期答申でありますから、大いにその辺から説き起こして、「税とは何か」ということを理解してもらわないと、21世紀にかけての税制構築も難しいと思います。少し書き込んだ形の、倒れてしまうのではなくて、やや厚めの、少なくとも立つぐらいのボリュームがあるようなことをやるべきではないかと思っています。内容については、これから大いに議論したほうがいいし、これまでずいぶんストックがありますから、全部集めてもできますので、そういうことに配慮していただきたいと思います。
〇加藤会長
ことしは辰年ですから、ぜひ立つようにしたいと思いますね。(笑)
ほかに何かご意見ございますか。どうぞ。
〇松本(和)委員
市町村の立場からも申し上げておきたいと思います。
実は、4月から地方分権一括法が施行になるわけですが、地方分権も実行の時代に入ってくるわけでございます。一括法の附則で、地方税財源関係、充実・確保ということで検討の条項が追加されております。地方分権、財政的なことがまだまだ不十分だと思います。
同時に、この4月から、我々、ちょっと頭が痛いのですが、介護保険が3,200余りの市町村を保険者としてスタートすることになります。半年間、保険料の徴収延期ということになっておりますが、その後の問題として、財政負担に市町村が耐え得るかどうか、まだまだ心配の点があります。このような状況でございますので、市町村関係者は地方税財源充実・確保措置を何かと待ち望んでいるわけでございます。
この問題等について、総論ではほとんど賛成していただいているわけでございますが、一歩進んで具体的にどうするという話になると、明確なものがございません。景気の状況、あるいは政治との絡み合いもありますが、難しい判断等もあると思います。いますぐは無理でも、近い将来にこうする、また、方向づけを示していただく、多くの市町村はそれだけでも安心して行財政運営に当たるのではないかと思います。
そういうことで、地方税財源の充実・確保策について、中期答申においては十分に検討していただきたい。明確な方向性を幾らかでも出していただきたいという気持ちを持っております。お願いします。
〇加藤会長
わかりました。介護保険の問題は非常に重要でございまして、このことにつきましては、恐らく審議している途中で厚生省などにも出てきてもらいまして、ヒアリングもしながらやっていきたいと思っております。特に、きょう久しぶりでご出席いただいた宮島さんは社会保障のご専門でございます。頼りにしておりますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。
もう一つ私が思っているのは、自治体はもっと歳出を努力しなければいけません。例えば、交付団体になったと神奈川県の人は言っていますけれども、神奈川なんか何で県立大学をつくるんだ、と。ああいうのをつくるから意味がないんですね。あれをつくらなければ、みんな私のところへ来てくれると思っておりますが。(笑)大変難しい話でございますが、そういうこともぜひ議論していきたいと思っております。
そのほかございましょうか。よろしゅうございますか。
それでは、これできょうは終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
〔閉会〕
(注)
本議事録は毎回の総会後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、大蔵省主税局及び自治省税務局の文責において作成した資料です。
内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。