第41回総会 議事録

平成11年12月3日開催

加藤会長

それでは、ただいまから税制調査会の第41回総会を開催いたします。

本日は、前回に引き続きまして、12年度答申に向けた主な検討項目について事務局から説明をしてもらいまして、そのあとで自由討議をしたいと思います。なるべく事務当局の説明は短くしたいと思っております。

それでは、本日の議題に入らせていただきますが、今後の12年度答申の取りまとめに向けて議論すべき項目については、事務局にこの前整理してもらって、1枚紙を出してございます。その1枚紙のうちの最初のほうの4つの項目について、年金税制まで一通りこの間は説明をもらいました。そして、また御討議もいただきましたが、今日は説明は固定資産税から経済新生対策、租税特別措置などの整理合理化、その他に移りまして、説明が終わりましたあと自由討議をしたいと考えておりますが、前の問題に戻っても結構でございますし、前回欠席されました方は、特に前回の分についても御発言をしていただきたいと思います。また、今日後半もしお帰りになる方がありましたならば、最初のほうでなるべく御意見をいただければと思っております。

そこで、お手許にもう1つ、今日御欠席でございますけども、森下委員からの意見書がございますので、これもひとつ御覧になっていただきたいと思います。

それでは、まず事務局から各項目について、ポイントを絞って補足の説明をしていただきたいと思いますが、岡崎固定資産税課長、加藤総務課長、真砂税制第二課長、小室企画課長、それぞれ順々によろしくお願いいたします。

岡崎固定資産税課長

固定資産税課長でございます。私から固定資産税の説明をいたしますが、『説明資料[3](固定資産税)』という「総41-1」というものを御覧いただきたいと思います。以前に出した資料と重なっている部分もございますので、できるだけ重なった分は省略いたします。

1ページは概要でございまして、市町村税収の、9年度で41%を占めるという表でございます。

そして、2ページでございますが、大都市、都市、町村別に分けました固定資産税のウエイトということで、税収に占めるウエイトでいきますと、むしろ町村のほうが高めである、48%であるというようなことでございます。

なお、一番下にありますのは、全市町村のウエイトの平成11年度の地方財政計画分でありますが、個人住民税のほうの減税等のこともありまして、ウエイトとしては、平成11年度は46%まで高まっているということでございます。

3ページ目、前に類似の表をお出ししましたが、市町村民税が黒い棒でして、かなり最近不景気あるいは減税で波打っているのに対しまして、灰色の棒の固定資産税が安定をしているということでございます。上の折れ線グラフ、いわゆる福祉に係る経費を決算で入れてみました。こういう経費が大変伸びている中で、貴重な安定財源であるということでございます。

それから、4ページは同様に地方債の現在高の伸びが相当高いということで、こういうものを将来に向けて償還していくためにも、安定的な財源が必要だということでございます。

次に5ページでございます。これも少し前に詳しい表で説明しましたが、簡単に経緯をまとめたものをここにお出しいたしました。特に平成6年度、7割評価以降の流れとしまして、7割評価を実施しまして、評価の均衡化・適正化というものを図ったというようなこと。それから、その結果として、真ん中の四角の下の米印の2つ目ですが、各市町村間の評価水準がいままで格差があったものを、一気に7割ということで公平に統一したということのために、課税標準額が評価額に追いつけないで乖離したと。さらに、しかもその乖離の仕方がばらついているということから、9年度のスキームになったわけでございます。経緯の詳しいものが6ページでございます。

7ページを御覧いただきます。これは一度御説明したと思いますが、いまのスキームのポイントでございますので、簡単に御説明申し上げます。一番上の四角にありますように、評価額は7割評価で、すべての宅地について、基本的にはかなり公平な評価になったと考えておりますが、それに対しまして、実際の課税ベースとなる課税標準額が過去の経緯からばらついている。同じ価値の土地に対して税負担の水準がかなり違っているということが現実にございますので、これを是正するための措置でございます。

9年度に導入いたしましたが、左側の商業地等を見ていただきますと、例えば地価公示水準が143万円ぐらいの土地ですと、7割評価で100万円になるわけでございます。その100万円を一番上の100%といたしますと、現実の課税標準が143万円の地価公示の土地でありましても、90万円ぐらいの土地とか、70万円の土地とか、50万円とか、30万円とか分かれておるわけでございまして、その不公平を是正しようということで、例えば90万円の土地は80万円まで一気に引き下げる。60~80万円は据え置いて税額を変えない。下の方の低いところは、公平の観点から1.05というのは、例えば5%毎年上げるということで、少しずつ引き上げていきまして、負担の公平を図るという仕組みにしたわけでございます。

なお、右半分の据置きの幅が大きいのは、価格下落率が3年間で全国平均の25%以上落ちた土地につきましては、そういう地価下落から負担感に配慮しまして、45%のところまで据置きにしているという仕組みでございます。

また、下の点々の四角にございますが、10年度または11年度において、さらに地価に関する諸事情から下落傾向が見られる場合には、簡易な方法により評価額に修正を加える。要するに、土地・家屋につきましては、3年に一度評価して、その評価を据え置くということでしたが、地価下落の状況にかんがみまして、途中の年度でも簡易な方法で下方修正だけはできる。上げることはできませんが、下方修正できるという仕組みを入れました。

なお、右側にありますように、小規模住宅用地は評価額の16.7%までしか最大でも課税標準が上がらない仕組みに6分の1という特例でなっております。地価公示に対しましては、11%ぐらいのところまでしかいかないということで、相当水準が住宅は安いのですが、それにしても、その中で多少ばらつきがございますので、商業地等に類似した仕組みを導入してございます。

8ページは、以前御説明しました県別のばらつきで、省略いたします。

9ページも御説明いたしましたけども、東京都特別区だとか大阪市の実際の土地の例でございまして、左にありますように、8年度までは負担水準のスキームが上に上がる一方でしたので、税額が上がっておりますが、9年度から落ち始めた土地がかなりありますということでございます。この土地ですと、銀座4丁目ですが、8年度より21%税額が減っております。また、下の四角にありますように、23区の場合には、商業地等のうちの72%が下がるか据置きになっているというような状況が最近の状況であります。右が大阪市でございまして、同様に、例の土地は37%落ちておりますが、ほぼ8割の土地が引下げまたは据置きというのが大阪市内の状況でございます。

なお、大都市ばかりいままで説明いたしましたので、ちょっといくつか地方都市の例を次の10、11ページに挙げております。前橋市、大体30万人程度、20万人で甲府市、10万人で大和郡山市、5万人で能代市と、それぞれ特に中心的な市街地のあたりにつきましては、街の大小にかかわらずかなり地価が下がったりしておりますので、そういうところで負担水準が高い土地があれば、こういうふうな下がり方をするということでございます。例示でございます。

12ページでございますが、これも以前説明しましたが、いまのように引下げになるような土地が比較的多い大都市におきましては、すでに税の伸びが、これは伸び率でございますが、9年度以降はマイナスが出てきているというような表でございます。

なお、全国計は下から2欄目でして、9年度以降は1.7%とか2%とか1.29%と伸びておりますが、ちなみに、一番下に宅地面積の増というのを併記させていただきました。毎年大体1.44%とか1%前後宅地が増えております。農地等から宅地に転用されたりしますと、当然のことながら税額はかなり上がりますので、そういう要素もこの増の中にあります。そうしますと、そういうものを除きますと、私どもは大体横ばいぐらいの土地分の固定資産税の最近3年間の推移かなと思っております。

13ページは答申ですので、省略いたします。

それから、以前の御議論でいくつか評価に関する御議論がありましたので、簡単にまとめさせていただきました。14ページ、評価に対しては、異議がある場合には、固定資産評価審査委員会というところに審査申出ができるわけでございます。平成6年度の7割評価時には、2万2,000件というようなかなり多くの審査申出が出ました。訴訟についても189件という訴訟が起こされましたが、9年度の同じ7割評価でも、負担調整のスキームで引下げ等を入れるというスキームに変更しましたところ、少なくとも評価に対する審査申出は1万3,000件とか、訴訟も52件とか、そういう意味では大分理解されてきたのか、定着してきたのかなと思います。まだまだもちろん多いわけですけども、そんな気がいたします。

それから、下にありますが、12年度の評価替えを控えまして、この春、法律を改正させていただきまして、この審査申出を大幅にやりやすくいたしました。従来は、縦覧に行って価格を見てやらないと、納税通知書をもらってからではもう審査申出ができないという仕組みでしたのですが、実際に手許に納税通知書を受け取ってから30日後まで申し出ができるというふうにいたしまして、大幅にやりやすくいたしました。私どもとしては、こういう評価にある程度不服のある場合には、簡単に審査申出ができるようにして、件数にこだわらずに、とにかくそういう審査申出がしやすいような形のほうが、かえって最終的には税に対する信頼が増すだろうということで、こういう改正をしたわけでございます。

15ページには、公的土地評価の比較ということで、評価の地価公示、都道府県地価調査、相続税、固定資産税を4つ並べさせていただいております。地価公示は1月1日、都道府県地価調査は7月1日でございます。大体3万地点前後、一番下でございますが、やっております。相続税は国税庁の所管でございますが、1月1日で大体39万地点ですが、下から2欄目の表にありますように、公示価格8割水準ということを目途にしております。一番右の固定資産税は7割を目途にしまして、1月1日、基本的には3年に一度、44万地点ぐらいをやっております。標準宅地は44万地点ぐらいということでございます。

固定の場合には、それを使いましてすべての宅地を評価するということで、16ページに評価の手法を一応簡単に書いておきました。ちょっと細かいので、次のポンチ絵みたいな、17ページを御覧いただきますと、用途別に状況類似地域というのを区分いたします。商業地区とか住宅地区という区分をいたしまして、その区分の中に1つ標準地を選ぶわけでございます。その標準地につきまして、3にあります。ここには鑑定士とありますが、地価公示価格等があればそれを使うこともございますが、3万地点では足りませんので、40万地点ほど鑑定を入れまして、宅地の価格を求めるわけでございます。これを使って路線価というものを決めます。この路線価でこの道路のこっち側はいくらという価格が決まりますので、あとは評価基準で公表されております補正係数というものを掛けまして、例えば形が悪いとか、角地であるとか、こういうものに補正を掛けまして評価をするというような仕組みでございます。

18ページ、12年度評価替えでございますが、引き続き7割評価ということでいま進めておるところでございます。地価下落に対応した評価額の修正、引き続きどうも下落傾向が12年度評価替えにおきましてもあるようでございますので、1年前の11年1月1日の評価をそのまま使わずに、今回11年の7月1日までの、さらに半年の変動率で修正をした上での価格を評価額としたいということで、いま作業をしております。

なお、3番に路線価等の公開とありますが、先ほどのように求めた路線価につきましては、個別の土地は別にしまして、路線価につきましては、現在では平成9年のすべての路線価を公開いたしております。

次に19ページでございます。12年の評価替え作業中で、47都道府県のいわゆる基準値、標準値といいますか、各1か所につきましては、中央固定資産評価審査会でこれで了承された数字でございまして、言ってみるとそれぞれの県で一番高いポイントというようなところが選ばれておりますので、かなり下落率は大きく出ております。右から3欄目、変動割合というのがこの1年間の変動割合とお考えになって結構でございますが、全国の単純平均で△14.2%となっております。

なお、3年間ではその右の△33.2%でございますが、いま申し上げましたように、非常に都市の中心部の土地ばかりでございますので、全部の宅地の平均の下落率というのは、これよりも相当小さくなるだろうということで、いま作業を進めております。

20ページは、先ほどの路線価の公開の、どんな形でやっているかということのモデルでございまして、道路別にこういうふうに振ったものを各市町村ですべて公開をいたしております。

21ページは、いまの路線価の動きに関係しまして、地価公示の上での3年間の都道府県別の変動率を参考までに挙げさせていただきました。

それから、22ページに据置年度の下落修正措置ということで、ちょっと付記させていただきました。3年に一度しか評価しなかったわけですが、途中の年度におきまして、2にありますように、用途地区等を単位として、あるいはもう少し細かく地域を区分しまして、その中にある都道府県地価調査のポイント、あるいはそういうものがない場合には鑑定を入れまして、地価が落ちているということであれば、その落ちた分だけ基準年度の評価額から下げて修正をする。その地域内の土地はすべて同率で下げてしまう。そういう簡易な方法でありますが、こういうことで納税者不利にならないようにということでやっております。

最後の23ページは、いままでの御意見でございます。

以上、私からの御説明でございます。

加藤総務課長

それでは、引き続きまして、資料「総41-2」『説明資料[4]』という資料で、経済新生対策、租税特別措置の整理合理化等について、若干の御説明をさせていただきます。

表紙、目次をとばしていただきまして、まず2ページでございますが、経済新生対策は11月11日に閣議決定をいたしたわけでございますが、その中で税制につきましては、2ページの下にございます四角に囲んだ形で触れられております。「景気の本格的回復と新たな発展基盤の確立を目指す観点から、中小企業・ベンチャー企業支援に資する措置、民間投資の促進に資する措置等、真に有効かつ適切な措置について検討を行い、結論を得る」と。今後の検討に委ねられておるわけでございます。

そして、経済新生対策絡みでいくつか議論がされておりますテーマがございますが、まず1つ目が3ページでございますが、住宅ローン減税の取扱いで、一部議論がございます。これは去年、この2年間だけの措置として、異例とも言える大幅な措置を講じました。これによって住宅投資の前倒し促進を図るということをしておるわけです。ただ、これにつきましては、平成12年の12月末までに居住をするという条件のもとに適用が行われる。居住要件をベースにしておるわけでございます。

いまちょっと議論がございますのは、工期の長いマンション建設の関係の方から、いまから着工する大型マンションは、12年の12月までには完成が間に合わないと。したがって、この辺がネックになって着工が逡巡される。したがって、この居住要件を少し緩和できないか、もしくは少し別の形で要件ができないか、契約要件にして、これまでに契約すればいいとか、そういう議論も若干ございます。ただ、ちょっと次のページを見ていただきますと、全体の住宅建設のところ、確かにマンションはかなり伸び率は高いわけですが、実際の戸数から見ますと、やはり持家のほうが圧倒的に多いわけで、持家は工期が3か月から6か月で短いということもありますので、これを単純に延ばしたりしますと、逆に今度は前倒し効果を減殺するというような問題もございますので、もう少しこれは議論をしていく必要があると思っております。

いずれにせよ、この措置は極めて異例な措置で、5ページにもございますように、実際には夫婦子2人ですと、課税最低限が892万円まで上がる。この住宅ローン減税をフルに適用すれば、892万円までの方は全員所得税がゼロになるということでございますので、極めて大きな課税ベースの脱漏になっております。減収額も、6ページ、租特の中のウエイトも極めて大きいということで、この辺の取扱いは、税制面からもやはり慎重にしていく必要があるという認識でおります。

それから、7ページ、これはいわゆる中小企業・ベンチャーへの配慮の問題でございます。7ページに書いてありますのは、いま現在講じておりますベンチャー企業に投資した個人投資家への優遇措置でございます。2つありまして、創業者利益への配慮ということで、公開したときの創業者利益については、通常の譲渡益の2分の1に軽課するという話と、それから、いわゆる損失をこうむったときに、通常ですと、その年の他の株の譲渡益との通算しかできませんが、3年間繰越しを認めるという制度を講じております。

それで、8ページをちょっとお開きいただきたいのですけども、実はエンジェルの関係では、株式の譲渡益の損失を他の株の譲渡益だけではなくて、その他の所得と損益通算を認めてほしいという要望もございます。これにつきましては、すでに基本問題小委等でも御議論ございまして、ここに意見を抜粋させてもらいましたが、「エンジェル税制については、株式譲渡益について分離課税制度をとっている下で、一般の所得との損益通算を認めることは、税の公平の観点から問題があり、また、株式投資リスクを税制で配慮することには、自ずから限度があるのではないか」という御意見をいただいております。やはり我が国の株式譲渡益課税は非常に特殊でございまして、申告分離課税ということでございますので、他の所得との損益通算は慎重にすべきだという御意見でございます。

それから、9ページ、これも中小企業への配慮ということで御議論がございます。同族会社の留保金課税制度について、見直しを求める声が一部ございます。これは、御覧いただきますとおわかりのように、法人の所得は基本的には配当として社外へ流出する分と留保される部分とあるわけですけども、この留保金課税というのは、配当として株主に配付されれば、それは所得課税として所得税の最高税率で課税対象になるわけですが、社内留保をしますと、法人税率だけの課税で済むと。したがって、留保している間は所得税の課税の繰延べが起こると。所得税と法人税の税率に格差がある以上、やはりこうした個人と法人の課税の調整という意味で、この制度は重要であるということ。これは10ページに法人課税小委の報告でも、こういう下線部分のようないま申し上げた御指摘をいただいておるところでございます。

次は租税特別措置の整理合理化、これは私ども、要するに税制にとってこうしたものにきちっと対応していく、常に不断の見直しをしていくというのは、累次御指摘いただいていることでございまして、これについては引き続きこうした点の重要性についてお訴えいただく必要があろうかと思っております。

あと、13ページ、14ページは、その計数資料でございますので、省略させていただきます。

16ページからその他に入りますが、16ページから18ページまでは、あとで税制二課長のほうから御説明させていただきまして、19ページをちょっとお開きいただきたいと思います。NPOの関係でございます。これにつきましては、すでにNPO法で現在認定が行われております。このNPO法人について、税の特例を、特に寄附金等の特例をというお話がございますが、これにつきましては、この19ページの2のところに、施行の日から起算して3年以内に検討を加えて必要な措置を講じる。それから、附帯決議では、税制も含めその見直しについて法律の施行の日から起算して2年以内に検討し結論を得ると。ですから、一応12年の11月30日、来年の11月30日が2年ということで、私どもとしては、いずれにしても、まだいま始まったばかりで、どういう実態なのかということが不明でございます。そうした設立認証を受けたNPOがどのような実態かをきちっと把握した上で、必要があれば措置を検討していくということだと思います。

ただ、ポイントはやはり公益性の認定という問題に行き着くわけでございまして、税の特例を受ける以上は、その公益性というものを担保される必要がある。それをどのように担保するか。いま特定公益増進法人制度という公益法人のいわゆる税の特例の制度がございます。これは主務官庁がきちっとした監督のもとで公益性を担保するというわけですが、NPOというのは元来国家の介入というものを最小限にするという意味もございまして、その辺、やや相反する部分があるわけでございますが、いずれにせよ、公益の認定というものをどういうふうにやっていくかというのは1つの大きな議論の部分でございます。

22ページには、アメリカとイギリスが現在どういうふうにしているかという表がございます。アメリカは内国歳入庁でやっております。イギリスはチャリティー・コミッショナーズという行政機関がやっておりますが、こういった仕組みも含めて、そもそも実態をきちっと把握し、それから、具体的な措置をとるに当たっては、公益の認定をどういうふうにしていくのか、この辺まで詰めていく必要があろうかと思っておりまして、いずれにしても将来の課題だとは思っております。

それから、23ページ以降、人的控除の一覧表等がついています。これは3党合意で、児童手当の絡みで若干扶養控除の見直し問題が提起されております。これはまだ政治的な動きの中でいま必ずしも十分な結論が出ているわけではなく、動きがあるということでございますので、一応、必要に応じて御議論いただくということで、資料をつけさせていただきました。ただ、25ページ以降で、基本問題小委ですでにこの諸控除についてはいろいろ御意見をいただいておりまして、やはり諸控除は抜本的に見直していくということで、複雑化している制度の見直しも提起されております。ですから、大きなベクトルの方向というのは、すでにかなりお示しをいただいておるわけで、そうした方向との整合性というのは十分留意して、いろいろな物事に対処していく必要があるのではないかと考えております。

それから、27ページから29ページまでは、これも後ほど税制二課長のほうから御説明しますので、30ページから、金融関係でいくつか補足的に御説明させていただきます。

1つは、株式の譲渡益課税の関連で、これはすでに平成13年の4月から、いわゆるいまの源泉分離課税と申告分離課税の選択制度を廃止して、申告分離一本にする。つまり実額で取得価格と譲渡価格の差を所得として計算して、その26%を課税するという、申告分離一本化が図られるわけでございますが、一部、証券関係者とかの間で、取得価格がわからない場合には、制度の運営がうまくいかないのではないかという御議論がございます。

これは30ページに資料化させていただきました。一度一課長のほうからも御説明しましたが、実は取得価格の把握というのは、御本人が少し努力をすれば、ほとんどの場合は現在でもわかります。これは上場株式等だけの話でございます。上場と店頭公開ですね。それ以外の株式でありますとか、いわゆる資産、ゴルフ会員権とか、絵画もそうですが、我が国の法体系は譲渡所得というのはすべて基本は実額を把握していただくわけです。上場株式につきましては、基本的に証券会社を通じてお取引いただくわけですから、ここの売買報告書というものでまず売ったときの値段は当然わかりますが、もし買ったときの値段が御本人が記録していないとすれば、当然、顧客の勘定元帳、この四角のところの上から2つ目ですが、ここで問い合わせていただければ、かなりの取引は保存されております。それから、そういうのがない、例えば相続を受けたとか、それから、取引証券会社を変えたとかいう場合でも、実は御自身でいろいろな手控えをされていることもありますが、最大、上場株主なんかの場合ですと、どうしても配当を受け取るために名義変更をされるわけでございます。ですから、発行会社とか証券代行会社に自分の株式の名義変更がいつ行われたかというのは、問い合わせていただければわかります。そういう取得時期さえわかれば、実は証券会社のデータベースとか、新聞記事とか、上場の証券ですと、必ずそのときの相場があるわけでございますので、そうしたものを使っていただく。我が国の場合、申告納税制度でありますから、納税者が合理的な申告を行えば、それを否認するためには、むしろ挙証責任は税務当局にあるわけですから、そこはきちっとした申告、合理的な申告をしていただくということが前提でありますので、そういう努力はしていただく必要があると思っておりますが、こういった点、きちっと実情をやはりお示しいただくということも必要なのかなと思っております。

それから、32ページからは、これは金融の多様化ということで、最近いろいろな金融の動きがございます。32ページはSPCというSpecial Purpose Companyのことを書きました。これは例えば株式を投資するための法人、ですから、株主は要するに投資家でございまして、お金を集めて証券投資をする。それから、土地の流動化を図るために、土地を取得して運営する。それを株主に分配するという、こういう会社でございますが、いわばトンネルのような形で、その会社自体が独自に存在するというよりは、あくまでも集団的投資スキームということなものですから、これは通常の法人と異なって、いくつかの税制上の配慮をしております。条件を満たせば配当の損金算入もできるわけですが、こういった制度が非常に投資対象を拡充するとか、いろいろな動きがございます。それから、信託を利用した投資スキームにつきましても、拡大の動きもございます。

それから、次の33ページには、国債の多様化ということで、これも経済新生対策に出ていましたが、国債の発行については、一番下の行ですけども、「確実かつ円滑な消化を図る観点から、市場のニーズを踏まえ、国債の多様化を進めるとともに公社債市場の活性化を図るため、平成12年2月を目途に5年利付国債を導入する」と。5年利付国債は別に通常のものですが、そのほかの多様化の議論もございます。ストリップス債とかいろいろございます。こういった金融の多様化というものについて、やはり税制は適正な課税の実現ということを十分達成するための対応が必要だ。これは34ページ以下で、すでにこの基本問題小委等でも御指摘をいただきまして、特に35ページの集団投資スキーム等についても、具体的に指摘をいただいております。こういった点は今後とも、やはり税制調査会としても、こういう点に留意すべきということを御示唆いただければ幸いだと思っております。

以上でございます。

真砂税制第二課長

それでは、引き続き同じ資料をお戻りいただきまして、16ページでございます。自動車関係諸税に係るいわゆる運輸省等から出ておりますグリーン税制の要望でございます。これもすでに御説明申し上げたとおりでございますが、そこにありますような軽課・重課という形になっております。対象台数は軽課が100万台、重課が35万台というような、燃費基準による軽課・重課という要望でございます。これも御説明いたしますが、環境政策としてもいろいろ問題が多いということで、(注)の1にありますように、1つは大型のトラック、CO2をたくさん出しておりますが、燃費基準がないという理由で、この適用対象外になっているという点が1つ大きな問題ではないかと思っているところでございます。

次のページでございますが、さらに、現在の技術水準でいきますと、CO2を減らすとNOX が増えるという逆相関の関係にございまして、NOX の与える影響というのは、下のほうに環境白書から引っ張ってきておりますが、酸性雨でありますとか、あるいは光化学スモッグの原因になる。さらには人体に悪影響を及ぼすということでございまして、東京都はこの点をとらえて、現在、NOX の対策を検討しているところでありまして、運輸省の減税案というのは、環境政策としての整合性も問題があるのではないかと考えているところでございます。

次に、小委員会において本件について出された意見をまとめておりますが、環境問題への税制での対応の基本は、汚染者負担の原則を踏まえて、追加的な負担を求めることではないかとか、あるいは、いわゆる自動車関係諸税のグリーン化案は減税となっており、環境関連税制の正しい方向への第一歩とは言えず、また、大型トラックが対象外であるなど、環境問題全体を考えた提案になっていないのではないか、等々の御意見がございました。その後の総会におきましても、CO2の排出を抑制する観点からは、やはり燃料消費に対する課税のあり方について検討すべきではないか、あるいは環境問題の取組みとしては、自動車の交通量を抑制するということが必要なのであって、そのためには公共交通機関へのシフトを促進すべきではないか、といった御意見が出たところでございます。

少しとんでいただきまして、27ページでございますが、これはさっき総務課長から申し上げましたように、3党合意の関係で、消費税の福祉目的化あるいは福祉目的税化の資料をつけております。これは当調査会でも中期答申との関係で、いろいろ多くの御意見をいただいているところでございまして、29ページにこれまで出されました本件に関する小委員会での御意見の抜粋をつけさせていただいております。

以上でございます。

小室企画課長

それでは、地方税の関係について。企画課長でございます。『説明資料[5](地方税関係)』「総41-3」をお願いいたしたいと思います。

はじめに、租特等の整理合理化ということで、2ページに減収額の内訳が書いてございます。そのうち社会保険診療報酬の所得計算の特例ということで、3ページのところをお願いしたいと思いますが、事業税において社会保険制度の普及あるいは充実を図るとの見地から、社会保険診療報酬について課税しないという制度が昭和27年度に創設され、現在に至っております。事業税は本来、事業に対して課税する税でありますから、他の公益性のある事業にも課税されていることなどから、これまで当調査会の答申において、この特例の見直しにおいて御指摘をいただいているところでございます。

めくっていただきまして、その他へ移りまして、6ページをお願いしたいと思います。地方税、固有のプロパーな話でございますが、個人住民税、均等割と所得割、その非課税限度額の推移について書いてございます。個人住民税の均等割・所得割の非課税限度額というのは、御案内のとおり、国民生活水準との関連で、低所得者層の税負担に配慮を加える必要があるために設けられているところでございます。

具体の設定の考え方としては、均等割については前年の生活扶助額の水準、また所得割のほうについては、前年の生活扶助額に住宅扶助額と教育扶助額を加えた生活保護基準額の水準、これを上回るように設定されてきているわけですが、12年度においては、それぞれ前年のそうした額を下回ることとなるため、改正について御検討をいただく必要があるものと考えてございます。

7ページは、いま御説明がありましたが、地方税のほうでも、自動車税、軽自動車税関係について、12年度の税制改正要望をいただいております。そこにありますとおり、自動車税では5,000円軽課・重課、あるいは軽自動車税として2,000円の軽課・重課ということで、資料を付してございます。

なお、これらについての御意見は、8ページに重ねて掲載させていただいております。

9ページをお願いしますが、個人住民税の寄附金控除でございます。地方の場合には、寄附金と控除を行う地方自治体との間で応益関係が認められていることが必要であるといったこと等から、所得税と比較して極めて限定されたものとなっております。具体的には、地方団体に対する寄附金、それともう1つは、納税義務者の住所地の都道府県共同募金会、それから、日本赤十字社の支部に対する一定の寄附金に限られているわけでございまして、特定公益増進法人に対する寄附金等は認められておりません。

それから、10ページは、個人住民税、人的控除の一覧でございます。白色事業専従者控除を除きまして、負担分任という性格から、所得税よりそれぞれ若干低い額となっております。

なお、個人住民税の場合には、年少扶養控除は設けられてございません。

以下、11ページは扶養控除、控除親族の年齢に応じた図でございます。

12ページが各種人的控除の適用状況、さらに13ページにつきましては、これまで基本問題小委員会に出された意見を抜粋してございます。

14ページは、地方消費税の関係について念のため入れてございますが、関係の意見は15ページに発言をつけさせていただいております。

そして、最後の16ページでございますが、株式等譲渡益課税制度の概要が書いてございます。実は先ほど総務課長のほうからお話がありましたように、11年度改正で申告分離課税に一本化されたわけでございますが、この改正によって、住民税がいままで非課税とされていた源泉分離課税が廃止されましたことで、適正化が図られることとなっております。これに対しまして、12年度改正について、申告分離と源泉徴収を納税義務者が選択できる新たな源泉徴収制度というのが要望されてございます。その要望の中では、申告分離課税を選択すると、当然、住所地の地方団体による前年課税になります。ところが、源泉徴収を選択しますと、金融機関の営業所在地の地方団体による現年課税と、こういった2本といいますか、選択によって分かれていく。こういったような形で要望を受けているところでございます。

以上でございます。

加藤会長

ありがとうございました。

それでは、皆さま方から御意見をいただこうと思いますが、お先にお帰りになる方、あるいは前回お休みになった方、どうぞ御発言を先にお聞かせください。

諸井さんからいきましょうか。

諸井委員

ちょっと次の会議があって、途中で出なければならないので、先に言わせていただきますが、おかげさまで地方分権のほうも地方分権の一括法が7月に通りまして、来年の4月からいよいよ実施に移る段階になってきております。ただ、税制、財政の問題に関しては、これはやはり地方分権委員会だけで勝手に具体的なことを決めるわけにいかないということで、これは政府税調のほうで議論をしていただくということで、こちらについては、ほとんど具体的な法律改正にはなっておらないわけでございます。

そこで、前から申し上げているように、今度の中期答申の中で、ぜひとも地方の自主財源の充実について明確な方向を示していただきたい。要するに、いまは88兆円ぐらいの地方の財政の中で、地方税で上がっておるのは35兆円で、あとは交付税と補助金と地方債というふうな形になっておって、その点が非常に地方の行政の自主性を損ねている面があるわけですから、財源を増やしてくれということよりも、むしろ自主性がはっきり出るように地方の自主財源を増やしてくれと、こういう方向でのお願いをしたいと思っているわけです。

今日議題になっておりました固定資産税というのは、極めて重要で、かつ、ほとんど唯一と言っていいぐらい現在のところ地方の独自財源であります。そこで、いま、何かこれを下げるとかいうような議論も出ているようでございますけれども、私としては、いまでも3割ぐらいしか自主財源がないのに、それをさらに引き下げるような方向というのは、これは地方分権の方向とは全く相反するものではないか。

地価が下がっているのになぜ下げないのだという議論もあるようでございますけれども、御承知のように、あるいは今日の説明にもあったように、地価がどんどん上がっているときに固定資産税のほうは上げ方をうんと抑制してきておるわけですね。ですから、いま地価が確かに若干下がってきてはおりますけれども、その地価の水準に対しても、まだまだ到底標準のところまでいっておらないということですね。しかもまた、いま負担の均衡をいろいろやって、大きな問題の起こらないような措置をとっているわけですから、これ以上これをいじくり回すということのないようにぜひお願いをしたい。

中西委員

いまの諸井委員の意見と真っ向から反対の意見になるので、申しわけないし、それから、委員の中に地方自治体の首長さんもたくさんおられるので、若干差し障りがあると思いますが、私の考え、固定資産税に対する問題点、私は大いにありと思っていますので、それを4つぐらいに絞って申し上げたいと思います。

まず第1点です。いま話も出ましたように、いま地価下落に反して固定資産税が増加し続けているという問題が巷から大変な批判というか、反論として出ておるわけでして、この問題を第1に取り上げてみたいと思うのですが、地価公示価格は平成3年をピークに下落の一途をたどっているのです。ところが、固定資産税額のほうは、地価の動向と全く無関係に上昇を続けているという現実がある。こういうことですね。その両者はますます乖離が進んでおる。

これは一体原因は何なのだということなのですが、いわゆる平成6年度の評価替えに際して、自治省さんが評価額を地価公示価格の7割まで一気に引き上げたということですね。それまでは各地方自治体でかなりの差額があって、こんなに高くなかったのですが、地価税との関係でともかく一気に上げられた。その結果どういうことになったかというと、あの当時を思い起こすとわかりますが、大変な負担急増の土地が続出しまして、喧々囂々(けんけんごうごう)の声が東京のみならず全国的に起こったわけです。

そこで、自治省さんは慌てて、慌ててと言っては悪いけど、これは具合が悪いということで、負担調整措置としてまことに緩やかな引上げを図るという、要するに私に言わせれば「ゆでガエル理論」というやつですね。じりじりじりじりと風呂を温めていけば、カエルは飛び出ないですね。それで、じりじりじりじり、20年から30年ぐらい沖縄だとそれぐらいかかって、最終のところへ持っていくという、まことにいい知恵だと思うのですが、これは複雑怪奇で、この間も税理士さんと話したのですが、税理士でもよく理解できないほど複雑怪奇で、一般の人はわからないですね。結局、私に言わせればこういう非常に間延びした時間軸の設定をやった結果、いま言われているのが、地価は下がるが逆に税負担は増えるという、非常に硬直的な問題が発生してきた原因はそこにあると、こう私は言わざるを得ないと思いますね。

これは到底、固定資産税の性格の正邪を論ずる議論を超えて、問答無用というか、そういう視点でフェアな納税を求める納税者の納得は得られないような状況になっておる。こう言わざるを得ない。これが第1点です。

例えば具体的に言いますと、住宅地のほうはいいのですが、非住宅地、要するに商業地ですね。こういうところの実効税率は、過去と比べましても、世界と比べても、いまや最高水準にあるわけでして、地価安定期と言われた昭和50年代は大体0.3%ぐらいだったですね。それから、昭和60年代はさらに0.2%ぐらいに低下したんですね。ところが、平成に入りまして上昇が続いて、直近では0.5%を突破している。昨年は0.54%となっているわけですね。これは全国商業地平均です。過去の固定資産税の歴史の中でもまことに突出して高い水準になっておるわけでして、登録免許税や不動産取得税は取得時だけの負担ですけど、固定資産税というのは所有をしている全期間にわたって負担がかかりますから、これは大変過重な負担を企業に強いることになるわけでして、私はこれは大変な、いまや過重な税負担を非住宅地、すなわち企業関係に強いておると、こう言わざるを得ないと思います。実際に企業にかかる不動産税の租税総額に対する割合でも、英国は6.6%、米国は7.5%、フランスで1.7%、ドイツが1.1%、日本は何と7.6%、非常に世界で断トツで高いということですね。

そこで私は、これは当然、第2点として、固定資産税の実効税率をこの際引き下げることを、諸井さんには悪いのですが、提言したいと思います。

そもそも論でいきますと、平成6年度の自治省の固定資産税評価替えに当たって、自治大臣が何とおっしゃったかというと、こういう通達を回しておるわけですね。「今回の固定資産税の見直しは、土地評価の均衡化・適正化を図ることが目的であって、増税を目的とするものではありません」ということを、全国の市町村長に通達を出していますね。ところが、実態はどうなっているかというと、いまや土地にかかる固定資産税が、さっきから言ったようにどんどん上がってきて、平成5年に比べて昨年段階で約8,000億円も自治体にとっては増収増益になっておるし、それから、現行の負担水準にもし収斂された場合は、最終的な増税額は、仮に今後の地価下落率をゼロとした場合、商業地で約6,000億円、一般宅地で4,000億円、計1兆円近い増額が期待されるというか、そこへ入ると、こういうことになるわけでして、これは固定資産税が大変な重みを持ってきているので、いまカエルを湯の中で緩やかに緩やかに、カエルがびっくりしないように緩やかにやっているのですが、これはそうではなくて、本当にカエルがゆで上がるときの水準をきちっとこの際明示すべきであって、平成9年より10年のほうが、土地は逆に減税になったよとか、そういう議論ではなくて、やはりゴールとなる最後の固定資産税の姿をきちっと私は打ち出してほしい。それをここできちっとしていかないと、大変なことになると言わざるを得ないということです。

それから、第3点ですね。国民所得あるいは市町村税収に対して、これも固定資産税の比率がかなり上昇しているんですね。固定資産税の国民所得に対する比率は、昭和58年以降現在に至るまでほぼ大体一貫して上昇傾向にあるのですが、特にさっき言った平成6年の7割評価の導入をされた以降、年々最高水準を記録しておりまして、昭和58年が0.6%、平成6年が0.88%、平成10年が0.98%と、15年間で5割も増えておる。こういうことになっておるわけですし、固定資産税は地方自治体の大変大事な財源であるという側面は確かにあるのですけれど、地方財政の再建に多くの意見が出ていますが、やはり行政のスリム化ですね、これを第1にやるべきだろうと思います。

ただし、これだけでは非常に厳しい意見になりますので、さはさりながら、さっき諸井さんもおっしゃったように、現在の地方財政は大変窮迫しておりますから、そして、かつ地方分権という観点から、やはりこれはどうしても地方財政の基盤を強化することは不可欠な要請でしょうね。前回松浦委員もおっしゃいましたけども、私もこれはよく理解できるので、ではどうするかということですね。これは私は、我が税調としては、やはり中期答申で、これも多くの意見が出ていますし、私も賛成ですが、直間比率の是正という視点をしっかり踏まえて、やはり消費税を上げざるを得ないのではないか。消費税を上げて、その中の1%、消費税の1%というと、正確にちょっとわかりませんが、2兆5,000~6,000億円ではないでしょうか。そうすると、それを地方財政に振り当てるということですね。そうすると、私は、さっき言いましたように、固定資産税の適正水準、これは平成5年に戻すべきだと思います。平成5年に戻しますと、7兆5,000億円ぐらいではないでしょうか。ともかく今年が大体10兆円ぐらいのようですから、その差額が2兆4,000~5,000億円ということですから、これは消費税1%を割り振れば、これで大体ちょうどイーブンになるのではなかろうかと思うのです。これは正確にはいろいろあると思うのですが。

もう1つ、直間比率の見直しというのは、御案内のように中期的課題ですね。すぐにできるものでもないですから、当事者としては、一体その実現までにはタイムラグがあるがどうするのだという議論が確かにあると思います。

そこで私は、国税と地方税のありようは、税に限らないで、前からもちょいちょい議論が出ていますが、財政の問題、特に地方財政と中央の国の財政との交付税交付金とか補助金の配分の問題とか、そういうところまで踏み込んだ議論を、これは少なくとも中期答申なんかで――税だけに線引きをして、一切財政には触れないという硬直した議論でもう突破できないところに問題が来ておる。わかりやすく言えば、社会保障費と税の関係もそうでしょうし、長くなりますが、そういう点を踏まえて、私はこれは固定資産税は固定資産税としてやはり若干異常なところにあると、こう言わざるを得ない。

諸井委員

ちょっと一言だけ。

いま中西さんのほうから、かねて主張しております地方消費税についての応援演説をしていただきまして、大変ありがたいと思います。ただ、さっき言われた数字の中にちょっと私の持っている数字と違うのが多々あるものですから、例えば他国との固定資産税あるいは不動産税の比較とか、それから、いまの税収のいろいろパーセンテージとか、その辺正確なデータを一遍出していただくようにお願いをしたいと思うのです。

加藤会長

中西さんは反対するようでありながら、結構同情的でもありますね。

ほかにいかがでございましょうか。

津田委員

前回出席しておったのですが、時間がないために発言できなかった点を2~3申し上げたいと思います。

1つは、税収の見込みで、平成12年度に利子所得課税が大体3兆円特別に出てくる、いわゆるバブル期の定額貯金等の関係で。それの使い方についても税調としてやはり一見識持っておくべきではないか。この財源というものが一般歳出の増加の要因に使われてしまいますと、おそらく平成13年度、この財源がはげ落ちたときには、また国債を出さなければいけない。やはりこの際は、財政の第一歩でございます経常歳出は経常財源でやるのがあれなので、こういうような一時的なものを経常歳出に回しますと、非常に後年度財政的に問題が出てきます。端的に言えば、この3兆円を国債整理基金等に入れて、減債の財源にすれば、そっちでプラス3兆円。ところが、一般歳出の増加に使えば、3兆円むしろ国債が増えるということで、これは往復6兆円の話でございまして、財政運営の将来に与えます影響というのは非常に大きいものですから、この使い方につきましては、十分財政当局等でも考えていただきたいと。特に現実問題として、この定額預金が出ていきますと、いわゆる財投原資やなんかはどうなんだ、国債管理がうまくいくのかどうか、これによってもし利息等の引上げの要因になりますと、これはおそらく財政的に致命的な打撃を与えると思いますので、この臨時の3兆円収入というものは、十分慎重に配慮して使ってもらいたいものだと、これが第1点でございます。

それから、第2点は事業税の外形課税の問題でございます。この点につきましては、もう先日も随分議論が出たわけですが、ただ、申し上げたいのは、どうも現在のこういう経済情勢の中で、赤字企業の税負担云々というのを言うなというような実は風潮があるわけですが、しかし、反面におきまして、例えば一連の経済対策の中で、かなり効果を持ったと思われます信用保証協会の保証枠の拡大、これなんかは、これによって昨年の暮れですか、資金が回り出したというのが肌で感じられるような状況だったわけでございますが、これはいずれにしましても、県の信用保証協会を通じましての対策でございます。おそらく信用保証協会に行った方は、事業税を納めていない3分の2のほうの企業で、納税しております3分の1の企業は、信用保証協会は行かなくても十分自前で資金調達をしておったのですが、そういうことを考えますと、事業税の外形課税化ということによりまして、受益と負担の対応関係というものがはっきりしてまいりますし、何よりも黒字企業に過重な負担だけをかけるのではなくて、広く薄く地方財政の支える仕組みとして、この外形課税の問題を積極的に取り組むべきではないかと、かように思います。よろしくお願いいたします。

松本(和)委員

中西委員からいろいろ出たわけですが、本当に地方財政関係というのは危機的な状況になっていると思います。それで、我々の市町村、地方公共団体もスリム化ということで、いま現在頑張っているところですが、現在まで借入れ関係が179兆円になっているんですね。それで、来年度はやはり足りない分、財源不足が10兆円ぐらいになるのではないかというような気がいたします。そういうことで固定資産税関係も出たわけですが、何度か言わせていただいたのですが、やはり町村にとっては全体で固定資産関係が48%占めております。私の町は51%なのですが、そういうことで、最大の基幹の税目でございます。そういうことで市町村の立場においては、固定資産税は現行の制度を堅持していただきたい。地方分権を進めるためにもそういう考えを持っております。

それと、グリーン税制が自動車関係で出てきたわけですが、二酸化炭素、またNOX問題、2.5トンを超える貨物自動車の取扱い問題、様々な問題が指摘されているところでございますが、税制中立を言いながら軽減措置が先立っているような気がいたします。そういうことで、実は今日の新聞だったのですが、国税における重量税、自動車税ですね、これが除外ということで、これはやはり道路の特定財源で、受益者負担ということで、当然のことだと思います。しかしながら、それにかわって地方税、自動車税、軽自動車税、この2税が導入ということがちょっとついていたわけですが、これについて地方のほうといたしましては、絶対容認ができないというような気がしております。

それと、環境関係税制について、今後真剣に検討していただくように、現時点で出されている自動車税のグリーン化案は、余り問題が多すぎるのではないかと思いますので、全く賛成ができないということを言わせていただきたいと思います。

塙委員

先ほど中西委員のほうからお話がございましたが、固定資産税については、私ども全く同意見でございます。100%賛成でございます。1つ、2つ付け加えさせていただきますと、いま固定資産税について企業側が非常に大きな問題としているのは、税額もさることながら、遊休土地を抱えて困っているところが非常に多いということでございます。土地がフルに使われて、それで税金を払うという状況では余りない。使わない土地について税金を払う。持っているわけですから、払うことについてはやむを得ないとは思うのですが、それにしては実効税率が高くなっている。先ほど0.54%というお話がございましたが、私ども自分のところで計算しますと、0.6%を超えております。

そういうようなことでございまして、外形の問題も同じだと思うのですが、地方財政のお話を伺うと、本当にごもっともだとは思うのですが、外形の基準を仮に土地などにした場合には、全然遊んでいる土地に応益税だということで税金を払うということについては、どうも釈然としないというか、納得ができないということでございます。

それから、先ほどの実効税率でございますが、何でもどんどん下げればいいかということではないと思いますので、私どもとしては、大体かつてこの辺が妥当ではないかと言われた0.4%ぐらいが、いま0.6%としますと、そのぐらいをメドだということで、やはりメドを出す必要があるのではないかと考えます。

平田委員

この前発言をいたしませんでしたので、12年度税制改正における問題点につきまして、発言をさせていただきたいと思います。

まず、基本的な考え方のところでありますけども、従来からずっと長い間、減税を景気対策という観点から何年間かにわたって行ってきたわけでありますが、法人税の減税なんかは、やはり一度決めましても、実際に減税効果というか、現金で払うときに減税になるというのは、ちょうど昨年から今年にかけて、来年にかけてというような感じになるわけでありまして、一度決めたことではあるけれども、なかなか効果というものは、景気回復に役立ったかどうかというのは、大変疑問のあるところだろうと思うのです。

政府税調としては、常に減税ばかり言っているような感じでありまして、一番の税の基本的な考え方、すなわち税というものは多少国民の義務でありまして、痛税感というのでしょうか、税を払うということは大変嫌なことだと、痛みがあるというところを、やはりもう一度国民の皆さん方にお話しをして、ぜひそういう国民の義務としての税金を負担してくれるような、そういう観点からのお話もぜひしていただきたいなと思う次第であります。

特に申し上げると、所得税・住民税の非課税限度が非常に所得減税によって高くなっておりまして、税金を払っていない国民というのが非常にマジョリティーになりつつあるというところも、これは将来的課題としてはやはりまずいのではないか。国民全部が公平に薄く負担という言葉は語弊がありますけれども、やはりみんなが負担をするというところに力点を置くべきではないかと思うわけであります。

それから、法人について申し上げますと、法人は欠損法人が非常に最近増えておりまして、1億円以下の資本金の法人につきましては、63.5%ということになっております。これも非常に異常な事態であります。景気回復を非常に叫びながら、依然として高水準の欠損法人が続いているということは、中小・零細を含めて、日本の法人企業というのは、儲けるのを忘れたかというぐらいの感じがするわけであります。

しかしながら、ここで皆さん方に思い出していただきたいのは、一番景気のよかった昭和62~63年の頃でも、あの頃は税収がたしか62兆円ぐらいだったと思いますが、一番景気がよくても日本の国は62~63兆円しかお金が入らない国なのでありまして、いま下がったといっても45兆円入るわけでありますが、その45兆円の時代に、30兆円からの国債を毎年毎年出していかなければならないというこの実態というのは、どう考えるべきか。いまの欠損法人の多いということと比べ合わせてみますと、まさにだんだん消費税のほうへどうしてもシフトしていかざるを得ないかなということを示唆しているような感じがいたします。

それと、62年の一番好況なときの、それでは1億円以下の法人の欠損割合はどの程度だったかというと、たしか私の記憶で間違いがなければ、その当時でもやはり40何%は赤字法人だったなという記憶があります。ですから、やはり中小・零細法人の利益の出方というものが、余り出ない形になっている。税法上の課税所得というものがなかなか出ないということは、やはり何か法人税の税法の仕組みの中で考えるべきことなのか、ないしは企業の会計の仕組みの中に、そういう経費になる非常に公的な負担が非常に長年にわたって増え続けてきていることに原因があるのか、何かその辺を解明してみたいなという気持ちがあります。

それが大体基本的な考え方でありまして、何かこういったことを打ち出していただければありがたいなと思う次第であります。

それから、個別のことになりますけれども、相続税は私は最高税率の引下げ、さらにまた、取引相場のない株式の評価につきましては、やはり現行の形というものは、もうちょっと何か一工夫あってもいいのではないか。というのは、この前も私申し上げましたけども、こういう同族法人の取引相場のない株式を実際に相続税で負担をするときに、非常に看過できない。株式の評価が、要するに創業者がいま死んでいくときでありますので、戦後の50年の剰余金の蓄積みたいなものがありまして、非常に資本のプレミアムが高くなっているというところが、1つの原因になっているだろうと思うのです。それが現実看過できないものだということになると、それでは会社側でどういうふうなことを考えるかといいますと、やはり生前贈与なんかを考えるんですね。株式を実際の贈与税評価額で計算をしまして、事前に次の世代に贈与をしていくというようなことをして、1つの相続税の高額になるところを避けるような動きがあります。そういったことをどちらをインセンティブに考えるかということでありますが、贈与をさせることをしょうようするとすれば、贈与税の基礎控除をもう少し上げたらいいのではないかという気がいたします。

それから、所得税の1つの聖域で、私が申し上げておりますように、やはり年金の税制は、公的年金控除を少し引き下げて、年金から税金が取れるようにしたらどうかということであります。

それから、退職金課税につきましても、非常に課税が聖域になっておりますから、この辺も一工夫あってしかるべきではないかと思う次第であります。

以上、いくつか申し上げましたけれども、税の基本は先ほどの痛税感もありますけれども、やはり法人・個人ともに私有財産制度を基本にして税金の体系をつくっておりますから、個人から法人へ1つの財産が移動したり、法人間で移動したりすれば、それなりに税金を負担するという仕組みでできておりますから、例えば最近流行りの会社分割であるとか、合併とか、連結納税とかというような諸問題についても、やはり税の原則を忘れるようなといいますか、考えないような風潮を招ヘイするような課税の繰延べというのは、どうも余り関心をしないなという考えがあります。

以上、雑駁でございますが、よろしくお願いします。

松田特別委員

私も前回発言する時間がなかったもので……。

まず、相続税なのですけども、やはり70%という最高税率は引き下げるべきだと思います。適用する人が10数人しかいない、それでもって70%を維持していいということにはならないのではないかと思います。これは逆に10数人を寄ってたかっていじめているという、そういう悪しき制度のような気もします。

それから、次に連結納税ですけれども、分割の税制を先にやるという事情は非常によくわかるのですが、連結納税が2001年4月から導入されるというのを織り込んで、実際の企業の提携なり合併なりというものが先行しているわけですね。これはやはり日本の企業が国際競争力を維持するためにやはり必要なことですので、大変な作業になるのは十分わかるのですけれども、そこを曲げて導入を急ぐべきだと思います。

それから、今日の部分で、租税特別措置なのですけれども、社会保険診療報酬の所得計算の特例というやつですね。これはいま残っている最大の不公平税制だと思います。ですから、やはり最大限強い調子でこの撤廃を求めるべきだと考えます。特に事業税については、外形標準云々が論議されているわけでして、それをもし導入しようとするなら、その準備段階として、こういうものは一刻も早くなくさなければいけない。しかも、これの理由になっているのは、社会保険診療報酬が不当に安いということの見返りというのがきっかけなわけですけれども、これはどんどん上がってきていますし、今回でも医師会は3.6%上げるというような案を出しています。ですから、もはやこれを非課税にしておく理由はなくなったと考えます。ついでに所得税のほうも、この社会保険診療報酬については、かなり甘い計算になっていますので、ちゃんとした本則に戻して課税するのが正しいのではないかと考えます。

吉田特別委員

前回欠席いたしましたので、そのときに話題になったであろうと思いますが、ただいまありました相続税の問題について、2、3申し述べてみたいと思います。

相続税には、よく言われておる富の再分配機能、それから、所得税の補完税という意味合いの性格がある。どちらに視点を置くかによって税率の決め方が決まってくるのだろうけれども、それにしても、ただいまも御発言ありましたが、最高税率70%というのは、再配分思想が強すぎるのではないか。やはりこれは検討し直してみるべきではないか。

それから、相続税の論議がとかく中小企業承継税制だけに何か恩恵を与えるような意味合いに受けとめられておりますが、そうではなくて、やはり一般の国民全体の問題として再検討していただくべきではないかなと。

特に相続税が話題になりますのは、大都市部の相続税の問題ではないかと思うのですが、このときに話題になるのは、結局、資産価格とフローの所得との開きがありすぎるんですね。ですから、この資産価格、つまり相続税の路線価ですね、これを一遍検討してみる必要があるのではないか。これは92年度の税制改正で、それまで公示価格の70%とされておりましたのが80%に引き上げられた。これは地価鎮静策という意味合いもあったし、いろいろな評価額の統一化という問題も絡んでおったかと思うのでありますが、今日は地価が下落してきているという状況と同時に、大変所得が伸びていないという個人の事情等々を勘案いたしますと、路線価をもとの70%に戻してもいいのではないかと、これは1つの検討課題ではないかなと。

それから、もう1つ、小規模の居住用宅地については、課税の特例が設けられて、それなりの配慮がされておりますが、これを330平米までは非課税にしてはどうか。それもいわば坪数控除といいますか、基礎控除的な考え方でやってみてはどうか。以上が相続税にかかわる申し上げてみたいところでございます。

それから、第2は固定資産税の問題でありますが、これは先ほど来、中西委員がとうとうと論じられておられますし、私ども納税者サイドから見ると、大賛成と言わざるを得ないのでありますが、何しろいま納税者側が、地価が下落しているのになぜ固定資産税が下がらないのかという素朴な気持ちは、これはどう答えていけばいいのか。それから、何しろ負担の急増を避けるという配慮から、小刻みに課税標準額を引き上げる負担水準という激変緩和措置ですね。この配慮が逆に納税者側から見ると非常にわかりにくいのですね。ですから、税はできるだけ透明性が必要だとするならば、ざっくばらんに言いますと、課税標準にずばり税率を掛けて税が出るようにしてみるべきではないのか。

そのときに、私は常々申し上げておるのですが、地方分権ということと、それから、地方自治体は財政事情がそれぞれ違っておるはずでありますから、固定資産税の負担水準を全国的に1つの水準に合わせていくのだという考え方は、必要ではないのではないか。そういう意味合いから見ると、税率は各自治体に自由に決めさせることが、これからの地方自治の本質に立ち返ることではないかなと。つまり、もっとわかりやすい固定資産税制にするべきではないか。

次に3点目で申し上げておきたいのは、NPOですね。非営利法人に対する寄附金控除、これはNPO法案の中にも附帯決議がありますので、いずれは答えなければならない日が来るのだろうと思うのでありますが、今日、NPOが行政と企業と並んで社会を支える第3の柱にあることは、またそうなってもらいたいことは誰も異存がないのではないか。そのときに、NPOを支えるのは、財政基盤を固めさせるための税制の優遇措置というのはどうしても欠かせないのではないか。そのときに話題になりますものが、NPOが果たして公益的な対象者であるのか、ないのか、判断をどうするのかという問題も残りますけれども、いずれにいたしましても、若干視点は民間サイドに重点を置いた公益判断というものを前提にしながら、寄附金については所得から控除するのか、あるいは税額控除にするのか、仕組みは検討してみる必要があるのではないか。

同時に、NPOも自活していかなければなりませんので、収益活動もやっております。その収益活動を非営利部門、つまり公益というような方面にこれを支出する場合は、一部を寄附金としての配慮、いわば損金算入を配慮する。こういうような税制を検討すべきではないかなと。

以上3点を申し上げておきたいと思います。

和田委員

4点について申し上げたいと思います。

1点は、いまもお話に出ましたけれども、NPO法人に対しての寄附金に対する税制上の優遇ということで、いま私たちの団体の周りで随分NPO法人をとっている団体が増えています。そして、その結果として、感じ方はそれぞれなのですけれども、非常に運動なり仕事がやりやすくなったと言われるところもありますし、当然のことですけれども、事務量が非常に増えて大変だとおっしゃるのも事実です。これはやはりそれだけの資格を取るからには、事務量というのは、帳簿なり何なりというのがきちんとなっていなければならないというのは、当然のことだろうと思いますけれども。

いまNPO法人の資格を取っていらっしゃる方というのは、介護に関するいろいろな仕事をやっていらっしゃるところ、それから、やろうとしていらっしゃる、それぞれの地方の小さな草の根のようなグループが多いのですけれども、そういうところがこれから相当大きな、介護だけではありませんけれども、日本の社会というものを背負っていくということを支援する意味でも、やはり税制上の問題というのは、積極的に考えていただきたいと考えております。私ども主婦連合会自体もいまのところはNPOの法人のあれを取っておりませんけれど、どうしようかといっていま迷っているところなのですけれども、やはり税制上の優遇があるかないかということは、非常に大きいと思います。ですから、公益的な、ちゃんと仕事をしているかどうかという、その認定というのは、これはこれで必要なことだろうとは思いますけれど、ぜひ積極的に取り入れていく方向で考えていただきたいと思います。

それから、今日の資料にも入っておりますが、租税特別措置の中でいつも入ってきますけれども、生損保の控除、今年の資料ですと2,850億円。これがいつでも相当やり玉に上がります。いつも発言することは同じですけれども、やはりこれからの国民にとって、自助努力というのがこれだけ言われておりますときに、これの軽減ないしは廃止というところまで言われているときもありますけれども、やはりそれは納得できないということを発言しておきたいと思います。

それで、この控除をスタートしたときの目的である加入が90何%までいっているではないかということをよく言われますけれども、いまの加入額で必ずしもみんな十分だと思っているわけではないわけで、その辺のところを考えますと、やはり生損保の控除というのは、むしろ増やしてもいいぐらいであって、少なくともこれから減らしていくということは、私どもとしては納得できない。

この隣にちょうど老人マル優が書いてありますが、利息がこれだけ減っておりますと、数年前までの資料は、生損保控除と老人マル優の枠とが大体似たぐらいの額があったのが、老人マル優がこれだけ少なくなりますと、余りやり玉に上げられなくなったのかなということを感じながら見ておりました。

それから、もう1点は、これはちょっと質問も含めてなのですが、個人所得課税の課税最低限の話が出まして、これが外国と比べても高すぎるから問題だと言われます。昨年も私は意見ないしは質問として出したのですけれど、ここで標準世帯というのが夫婦共稼ぎと子供2人ですか、そして夫婦の片一方は仕事を一切持っていないと。そして、子供は特定扶養親族に該当すること、年少扶養親族ですか、そういうあれが標準世帯と出されているんですね。私はこの標準世帯に反対ではなくて、これがなぜ標準世帯なのですかということの納得のいく御説明がいただいていないのです。私の周りで見ましても、こういう世帯が世帯数の中で、「ああ、なるほど」というほど例えば割合で多いとか、何らかの理由でこれが標準世帯で、これで比べればいいのだという納得のいく御説明があればいいのです。私はこれで反対と言っているわけではないのです、くどいですが。例えば共稼ぎ世帯の場合を比較するとか、単身者の世帯で比較するとか、いくつかの世帯で比較した上での資料をいただきたい。去年でしたか、いろいろ検討してみますというお話があったものですから、その辺がどうなっているのかなということを1点申し上げておきたいと思います。

それと、もう1つは、先ほどからお話の出ています環境問題に関しての自動車の重量税で、私は前回余り積極的な発言をしていないのですけど、私はむしろ自動車なりCO2、NOXについては、非常に私ども厳しい運動に取り組んでおりますので、もっと、例えば自動車については、税の負担あるいは制限をするとか、いろいろな措置が必要ではないかなと。もっと厳しいところを考えているものですから、積極的に余り発言はしなかったのですけれども、正直なところ、先日ですか、気象庁から「異常気象'99」というのが出されましたけれども、温暖化傾向が続いていく。それで、CO2の排出がこのまま続くと、100年先には海面が15センチないし数十センチ上がる。地球が全く様変わりすると思うのですけれど。そして、CO2との因果関係をはっきり認めているわけですね。ですから、そういう中にあって、特にCOP3のあと、とにかくCO2を6%減らしていかなければならないという厳しいことを達成するためには、やはりできることからいろいろなことをやっていかなければならないだろうと思います。そういう意味で、重量税の案が出ておりますけれども、これがものすごい効果があるとか、そういうことまではなかなか、もっといろいろやっていかなければならないのですけれども、1つの取り組むポイントとして、これは積極的に考えていってもいいのではないかと考えております。

加藤会長

いまの和田さんの御発言の中で、標準世帯の問題で、例えば課税最低限の人は標準家庭ではこれくらい、2人ではこう、独立個人ではこうというのを統計が出ていたのですが、あれ以上のものを要求されているわけですか。その辺ちょっと調査課のほうから御説明ください。

加藤総務課長

和田先生の御質問、過去においてもいろいろ御指摘をいただいておりまして、これは基本小委の10月22日に課税最低限とか諸控除の御議論をいただくときに、どういう世帯が構成の割合でどうだとか、それから、いろいろな世帯別に課税最低限はどうだという資料は一度提出させていただいておりますが。

和田委員

10月22日の分ですか。

加藤総務課長

はい。10月22日、「基小8-2」という資料に……。

和田委員

ちょっと今日は手持ちにありませんけれども。

加藤総務課長

また別途説明させていただきます。

大田委員

まず固定資産税ですが、地価が下がっているのに負担が上がるのがおかしいという声はあるのですが、これはやむを得ないと思うのです。過去が不当に低かったわけですから、それを評価を適正にしていく過程で、地価とのタイムラグがあるのは、これはやむを得ない措置だと思います。私は評価を7割に固定するというのはいいと思っています。

ただ、やはり負担調整措置というのが諸悪の根源なんですね。負担水準は基本的には税率で決めるべきなのに、負担調整というさじ加減でやってきたことのツケがここに来ているわけで、評価は7割で固定して、その上で税率をきちんと議論すべきだと思います。負担水準がどの程度がいいのかというのは、実は固定資産税の議論の中ではこれまで出ていないように思います。評価を7割にした上で、税率をどれぐらいにするかという、これはデータをきちんと見た上で議論する必要がありますので、先ほど諸井さんもおっしゃったように、データを出していただきたい。負担調整措置というのは、あくまで次の評価替えまでの微調整に使うべきと思います。

本来は、吉田さんおっしゃったように、やはり税率は地方が決めるものだと思います。行政サービスの対価なわけですから、やはり住民と向き合って、増税をする努力をなさるべきだし、それが地方分権だと思います。本来はそうあるべきですが、そこにいく前は、やはり評価は評価で固定した上で税率の議論をすべきと思います。

固定資産税に関連して、小規模宅地は余りに優遇されすぎていて、前の御発言にもあったようですが、価格を6分の1に調整するというのは、優遇のしすぎだと思います。小規模宅地の優遇は変えるべきです。

それから、次に相続税に関連して、吉田さんが事業主の土地の評価を農地並みに非課税にすべきだという議論をおっしゃいましたが、農地並みの扱いをするということは、用途を固定化するということで、これは産業構造が変わるときに、事業用地の用途を固定化するというのは、大変悪弊が大きいわけで、私はこれは理不尽な話ではないかと思います。土地に関してはもう十分に優遇されていると思っております。

それから、次に住宅減税に関連して、半年入居を延ばす、つまり再来年の6月までに延ばすという案があるという御説明でしたが、景気対策というのは時限的だから景気対策なわけですし、住宅がなぜ景気対策になるかというと、耐久消費財とか波及効果が大きいからであって、それから言えば、基本どおり年末までの入居で十分だと思うのです。それをマンションの場合はできるまでに時間がかかるから延ばすというのは、何かマンション業界への露骨な保護ではないかと思います。

次に、社会保険診療報酬の特別扱い。これも前々から出ている議論で、こういうのは一刻も早く廃止すべきだと思います。

最後に年金税制で、おそらく確定拠出型年金の話は前に出たのでしょうが、私はやはり確定拠出型年金というのは導入すべきだと思いますし、それは税制の優遇がないと意味のない話ですから、きちんと導入の方向で議論すべきだと思います。ただ、いまのまま屋上屋を重ねる優遇措置はやはりおかしいので、年金税制そのものの見直しが必要です。そのとき和田さんもおっしゃった生損保控除、これも含めて老後向けの貯蓄なり社会保障に代替するもの全部をきちんと見直すべきです。来年の税制改正に間に合わないにせよ、きちんと議論をして、年金課税全部を見直すべきではないかなと思います。

松浦委員

個人住民税について2点ばかり申し上げたいと思います。

まず、所得割や均等割の非課税限度額につきましては、低所得者層の税負担に配慮するために、その水準を引き上げることが適当であると思っています。また、平成12年度の税制改正で、株式譲渡益に対する課税について、証券会社による源泉徴収を行い、申告不要とする制度を創設する旨の要望が出されているようでございますけれども、これにつきましては、平成11年度改正で、住民税が非課税となる源泉分離課税を廃止し、申告分離課税に一本化することとされたところでございまして、住民税が課税できなくなるような要望は、課税の適正化を確保する観点から、認めるべきでないと考えております。

また、先ほどから固定資産税の問題でございますけれども、私ども地方自治体は、今年度景気対策に協力をして、約1兆円にも上る住民税の減税を実施したばかりでございます。来年度税制に向けまして、いまいろいろな問題が出ておりますが、軽自動車税の問題ですとか、ゴルフ場利用税の問題とか、我々にいたしますと、地方税が減る話ばかりでございまして、そういうところにまた固定資産税の大幅減税というような話が出ておりまして、我々地方自治体を預かるものとしては、大変な大きな問題であろうととらえております。

この間の御報告だと思いますが、公債依存度、いわゆる15%の危険の水準をすでにもう60.2%の自治体が超えているというような状況の中で、介護保険の問題ですとか、福祉政策、公共事業、そうしたものに我々は住民サービスを、これからやらなければならないことがたくさんあるわけでございまして、固定資産税というのは、いまさら申し上げるまでもないのですけれども、最も重要な地方の基幹税目でございますし、我々にとっては最後のよりどころだと思っております。そうした意味で、ぜひ固定資産税の安定的確保が必要であることを、重ねて申し上げておきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

松尾委員

住宅ローン減税の問題ですけど、現在の制度は昨年のいま頃、侃々諤々(かんかんがくがく)議論した結果、マイホーム取得支援を目的に、前倒し効果を狙った景気対策として創設したわけですね。ですから、非常に破格であり異例な措置である。これは間違いないですね。また、これは居住者を基準とする制度、これもはっきりしている。これに対してマンション業界が居住要件の緩和とか、契約要件の導入を要望しているということですが、非常に疑問があるわけです。契約要件を入れるとすると、これは入居者中心ではなくなってしまう。やはり実際の入居で適用を判断するのが筋である。これは当然だと思います。契約の有無によって控除が変わる仕組みにするというのは、非常におかしいと思います。13年に入居する人については、13年分の制度として議論すればいいことであると思うわけです。安易に措置を延ばしたりしますと、アナウンス効果は失われる。税制としても景気対策としても非常に疑問があるわけでありまして、2年間の臨時の措置、これは守る必要があると思うわけです。租税特別措置全体として、臨時異例の措置でありますから、絶えず見直しをして整理合理化をする必要があると私は思うわけです。

それから、株式譲渡益課税のところなのですが、申告分離課税への一本化問題に関連して、株式取得価格がわからないということになっているようですけれども、どうもこれは源泉分離復活論に結びついているのではないかと、そういう気がしてしようがないわけです。先ほどの御説明ですと、株式取得価格も把握できるということですから、把握できるということを、政府として広報に努めればいいのだろうと思うわけです。そういう広報はこれからなのでしょうか。いずれにしてもこの辺は気をつけるべき点であると思います。いずれにしましても、キャピタルゲイン課税適正化の流れにさお差すことはできないと思いますし、予定どおり申告分離課税へ一本化する必要があると私は思います。

それから、先ほど出たNPO法に関する問題ですけども、税制上の優遇措置を講ずるには、公益性が確保される、これは当然のことであると思うわけです。現在は優遇措置を講じるということは、結局、ほかの誰かにそのツケが回る。ほかの誰かが増税になるということを意味する。この点を忘れてはいけないと私は思うわけであります。NPOに政府がどのように関与するのか、公益性確保のためにどのような仕組みにするのか、やはり十分議論する必要があると思いますし、それはいま国民生活審議会でやっている最中ですね。ですから、そこはよくよく議論する必要があると思いますし、こういった前提抜きに、一周年だからといって繰り上げて支援措置を決めるというのは、ちょっと無理があるだろうと私は思います。

それから、いまの財政状況は非常に厳しいという中で、巨額の国債をファイナンスする必要が出てきているわけですけども、その中で国債の多様化ということですね。これについては、やはり税制として対応が必要なのかどうか。必要ならば、どのようにするのか検討する必要があると思います。

それと、自自公合意の中で出てきている少子化対策として、児童手当と扶養控除を検討するという話ですが、それは重要であると思いますけども、基本小委での検討のように、控除のあり方として検討する必要があると思いますし、扶養控除の体系の中で考えるべきであろうと思います。

それから、同族会社の留保金課税、これを廃止しろという議論が出てきておりますけども、この制度は多額の留保をした分、つまり租税回避行為になりかねないものに課税する措置でありまして、結局、全体の税負担を考えた制度だと思うわけであります。この制度があるから、個人と法人とのバランスが保たれているということが言えるわけでありまして、法人課税小委もこれまで当然に必要とされる制度と報告で指摘しております。したがって、私はこれを廃止する必要はないと思います。

それから、最後にグリーン税制でありますけども、運輸省案に対して自動車重量税を対象外にしてやるのだと、自民党交通部会が決定したと聞いておりますけども、実態は全く変わっていない。NOXを大量に排出する車を減税するというのですから、これはどう見てもおかしい。単なる減税要望にすぎないと思うわけであります。やはり汚染者負担の原則で、燃料課税を重課するというのが環境対策の基本でありますし、運輸省案のようなものを認めますと、これは環境税の議論がそもそもスタートできなくなると私は思います。

佐野特別委員

固定資産税の話が随分出たようで、私からも一言申し上げたいのですが、議論の前提として、先ほどから地方財政が危機的な状況にあるというようなことが、いくつか御意見として出ております。私はこの地方財政危機、数字の上からは確かにそうなのでしょうけども、どうも国民・市民の共感、同情は得ていないという現実はちゃんと直視していただきたい。今度の第2次補正予算が6兆8,000億円この御時世にまた出して、3兆5,000億円公共事業を追加する、全部国債でと、こういうことをやっているわけであります。この3兆5,000億円の公共事業、どういう分担なのかわかりませんが、おそらく同額は地方に行く。地方はお金がない。地方債を増発する。それで公債費負担比率が危機的状況だというデータを示されても、国民は、あるいは市民は同情いたしません。ましてや固定資産税を何とか維持させてほしいということも、説得材料にはならない。つまり、周囲の地方財政あるいは地方自治体を見る目というものを、きちんと当事者の方々は意識していただきたいということをまず申し上げておきます。

それから、先ほどからの負担水準方式ということであります。私は基本的にこの負担水準方式そのもの、枠組みを維持するということには賛成です。ただ問題は、負担水準方式と税収の確保というのがどうも混同しているといいますか、ごっちゃになっている嫌いがあるということです。つまり思想性と税収の問題というものが、どうも二股かけた議論が行われている。ここは分けて考えなければいけない。つまり評価額が同じならば、課税標準も同じであると、これは当然のことなのでありまして、それに向かった努力というものは、これはやらざるを得ない。

ただ、問題は、それが税収の確保にもう1つの目的がついてきた場合なのであります。先ほどから、地価が下落しているのに税負担が上がるというような御指摘もありますが、確かにそのとおりなのでありますが、税負担が上がるというのは、これまで軽すぎたということが1点、それから、すでにもうとっている、十分な負担水準に至っているのに下がらないというもう1つの問題点があると思います。したがって、今回負担水準方式という基本式は維持しながらも、すでに十分な水準に達しているところならば引下げという部分があってもいいし、据置きという部分があってもいい。しかし、そこに至らない場合は、やはり段階的に収斂していく負担水準を求めていくということも許容せざるを得ないということであります。政府税調ではこれ以上細かいことは申しませんが、基本的な考え方としてはそういうことではないかと思っております。

それから、これは私が基本問題小委員会か何かで申し上げたことなのですが、そこで1つ問題になるのは、評価という問題なのであります。つまり、私は基本的に税金を軽くしてもらいたいのなら、まず負担水準云々の議論の前に、評価というものについてもっと着目しなければいけないということであります。ここの16ページ、自治省でいろいろ追加的な資料をそろえていただきました。大変感謝いたします。この資料を見ますと、16ページに宅地の評価方法というのがございます。用途地区の区分から始まって、各筆の評価額の算出というところまで手続きの図が出ているわけですが、どうも、不服審査請求という制度が効果があるといいますか、話になるのは、下から2番目の画地計算あたりからかなと。つまり、路線価の付設以前の話は、どうも納税者が参加できない、あるいは情報を十分に得ていないという印象があります。つまり川上のあたりから納税者を含めた何か議論の場ができないものか、つまり対話というものをもっと広げる工夫ができないものか、そんな気がいたします。

それから、もう1つ、実際に課税額が決まったあとの不服審査請求を実質90日ということでありますが、準備等々の都合もありますので、ここら辺もう少し延ばす余地があるのかなという気がいたします。固定資産税は大体以上です。

それから、NPOですが、どうもずっと議論を聞いていますと、来年度の税制改正答申は、あれもだめ、これもだめで、非常にわびしい感じになりそうな気がいたします。にぎやかにしたほうがいいということでもありませんが、私はNPOというのは基本的に育てていく制度づくりというのを考えていいのではないかと思います。ただ、問題は税制で優遇するということを安易に、また過剰に優遇すると、かえってNPO活動というものを堕落させる懸念もある。そこら辺はよく押さえておかなければいけない。ただし、それを心配する余りに、入口段階でいつまでも議論が進まないというのはいかがなものかと。実態調査を急ぐなり、基準づくりを急ぐなり、何なりの努力の表明というのは、答申に入れてもいいのではないか。

あとグリーン税制でありますが、この運輸省の出した案というのは、一応の考え方としては、あるいは問題提起としては、こういうことがあってもいいのではないかということで、箸にも棒にもかからないということではないと思います。ただ、いかんせん、ここは塙さんもいらっしゃいますが、各メーカーが努力している最中、それぞれ低燃費ということで懸命に努力されている最中なのであります。そういうときにメーカー別、車種別に余り負担の変動をもたらすような税制からのインパクトを与えるということは、自動車産業の現状とか、あるいは規模の大きさ、裾野の広さからいって、果たして適当かどうか。環境税制全体の中で考えていくべきかなという気がいたします。

そして、ここのこれまでの議論の中で、どうもちょっと気になるのは、炭素税ということは意外と積極的に出されている。炭素税も1つの考え方かもしれませんけども、私は環境税制全体を考えた場合、どこか情緒的に流れる懸念がこの環境問題というのにあるわけなので、その勢いに乗って国民あるいは企業に税負担を求めていくということは、ちょっと気をつけなければいけない。あくまでも客観的、冷静に判断すべき問題だと思います。もう1つ言わせていただくと、たしかこの環境基準という問題は、国際的な整合性というのが1つのテーマになっていたわけなので、できれば国際的な動向をあわせてというくだりが必要かなと考えております。

最後に住宅ローンであります。これは実はいま松尾さんからもあったのですが、私は去年非常にこれは頑張りまして、ただ、そのとき申し上げたことを改めて繰り返しますと、最初から私は2年間の時限措置というのは反対だったわけなのであります。むしろ住宅の質の向上、あるいは資産の豊かさというものを目指す税制があってもいいのではないかと。そういう意味で、むしろ景気対策とか何かよりも、あるいは前倒し効果云々よりも、要するに基本的な税制としてつくったらどうかということを申し上げました。その考えにいまも変わりはございません。

幸田特別委員

2点ほど申し上げたいと思いますが、1つは年金税制の問題で、あるいは前回御論議があったのかもしれませんけれども、401Kの問題等については、年金制度全体の位置づけというものが明確にならない限り、そう急いで導入をすべきではないと私は思います。いまの制度では、社会保険料も控除になりますし、また老年者控除で実質的に年金はほとんど非課税だという実態、積立金についても非課税ということになりますと、何もかも非課税ということになりますから、この辺はもう少し慎重に検討したほうがいいのではないだろうかと。

高齢者の中にはかなり資産格差、収入格差が開いてきておりますから、いろいろな面の配慮は必要でありますけれども、年金制度全体の中でどういうふうな考え方をしていくか、生損保控除の問題もありますし、マル優の問題も、そういうことも全体的に含めて、もう少し時間をかけて検討をすべきではないかと思います。

私は日本人のような農耕民族には、こういう401Kみたいなそれぞれが口座を持って、それぞれのリスクでやるということが、果たしてなじむのかどうか。狩猟民族で、今日は獲物はないけれども、1週間に1回大きな獲物があればいいという狩猟民族とはちょっと違うのではないかなと私はかねて思っておりまして、こういうものはもう少し見極めてからやったほうがいいのではないだろうかと。税制がなければこれは全く意味のない制度になりますから、それにしては関係業界は少しシステム投資その他先走っているという感じを私は持っておりますが、これは私の個人的な考え方であります。

それから、もう1つは、その他の関係で、児童手当と扶養控除の問題でありますけれども、扶養控除については、所得がないとか、極めて所得が少ないという人については、全くの恩恵はないということを考えなければならないと思います。低所得者については、扶養控除は全く意味がないわけでありますから、そこのところをどう考えていくのか。昨年の改正で今年から扶養控除が子育て減税ということで、たしか38万円から48万円に引き上げられたわけでありますけれども、これは低所得者には及んでいない。いまさらこの48万円をまた38万円に戻すということもできないかとも思いますが、いろいろな扶養控除との関係で、児童手当の問題は少し御考慮いただいたほうがいいのではないかと思うわけであります。

岩瀬特別委員

最初に、松浦さんがお触れになったキャピタルゲインについての申告不要制度の創設というのは、申告分離一本化の流れの中でおかしいではないかと、それは20%ということで地方税がなくなってしまうという問題を言われましたが、実はそれは違うのでございまして、本来、本人が申告分離すべきケースでも、証券会社のほうで保護預り等々をやって、全部キャピタルゲインを確定できるということになっているのが通常でございますから、証券会社が徴税して、そして申告するということで、26%を徴税するわけです。さっき自治省のほうから御説明あったように、その場合の6%というのは、利子の場合と違って、6%というのが道府県民税と市町村民税に2%と4%に分かれているものですから、その処理をどうするかということが問題になっているという御指摘があったわけなんです。

それから、今日、この『説明資料[4]』の30ページのところで、「株式の取得価額の把握」ということで、大変見やすい整理をしていただいて、大変感謝していますが、ただ、こういうことだから、株式の取得価額というのはわからないはずはないのだと、大体わかるぞという御説明なのですけれども、ことはさように単純ではないのだと私は思うのです。いろいろな個人の投資家の場合に、一体自分の持っている株式の取得価額はどうなっているのかということについては、なかなかわかりにくいということが実態でございまして、もちろん30ページの資料のとおりで、これでかなりの程度はカバーできるとは思いますけれども、実際にはそういうケースがかなりあるということで、現在、大変個人株主の間に不安感が強くなっているということで、それは前に国税庁の通達の95%のあれが大変不安感を呼んでいるということでございますから、こういう大きな制度改革をやろうというときに、そういう不安感がたくさん出ていることははっきりしているわけですから、ぜひいまの事態に即した、新しい何か行政のほうからの通達とか何かの形で、そういう不安を静めるような措置をぜひやっていただきたいというふうに希望します。

それから、これは和田さんがおっしゃったことで、生損保の保険料所得控除の問題でございますけれども、これは税調で発言すると、何だか大変問題児みたいに思われがちなのでございますが、私もこの生命保険料の控除というのは、いまの5万円になってから、これは49年に従来の3万7,500円から5万円に引き上げられて、すでに25年間ずっと続いているわけで、この増額というのはいろいろな問題はあるかもしれません。ですけれども、国のいろいろな社会保障で手の回らないところを国民の自主的な自助努力で、やはり保険というのはまた貯蓄と違って、ユニークな保障機能を発揮するわけでございますから、これから少子・高齢社会にどんどん傾向が強まっていく中でもって、やはりこういう定着した制度というのは、余り手をおつけにならないほうがいいのではないのかということを申し上げておきます。

加藤会長

時間がなくなってまいりましたけども、今日御意見をぜひ伺いたいと思いますので。

柳島さんが先でしたね。どうぞ。

柳島特別委員

いま岩瀬さんが大体言われた例の証券のキャピタルゲイン課税なのですけど、これはやはり源泉分離を復活しろとか、そういう話ではなくて、非常にわかりやすい税制というか、税制の簡素化ということから逆行するのではないかと思うのです。しかも、いま個人株主というのは4,000万人だかいて、あとインターネットをやっている人でどんどん株主も増えています。業界のことを考えるとかいうのではなくて、やはり納税者の立場から見ると、日本の税制というのを読みますと、来年から源泉分離がなくなって申告一本化だというのをちゃんと書いてあるのですけど、日本国民は、残念ながら日本の税制というのをみんな読んでいるわけではなくて、課税当局が突然自分で変えて、それでみんなに強制的に申告させるというようなおそれというか、大衆心理というのが働いて、大げさに言うと、地価税とかそういうようなものと同じような混乱が出てきて、それがまた大蔵不信だの何だのという大衆心理を煽る危険性というのは私非常にあると思うのです。

なぜかということを大体申し上げると、先ほど岩瀬さんがおっしゃったのですが、20年前、30年前の株というのを、大体みんないつどうなったかわからないというのが第1で、本人が買ったのならともかく、親が死んじゃって出てきて、証券会社もわからなくて、それでこれを証明しろと言われて、証明できないとその9割だとみなしでやられると。また、取得のときも必ずしも名義書換えのときが取得とは限らなくて、3月期とか9月期とかその前に出すから、その場合変動している可能性もあるだろうということがあるんですね。

それから、第2点はもっと細かい話で、例えば端株の無償交付の場合は原価というのはゼロなのかどうかということですね。あと、この端株で例えば20株とか30株とか出てきた場合に、それまでも一々申告しなければいけないのか。例えばサンケイビルだか何だか200円の株を10株持って2,000円で、それも申告分離しなければいけなくなるのか。そういう話におそらく運用の点で非常に問題点が出てくるだろうと思うのです。

だから、要約して言いますと、古いものにどうやって措置をとるのかということと、それから、単位株というものに対してどういう措置をとるのか。おそらくそんな細かいものはみなし課税とか、そういうことにする以外は方法は余りないのではないかとも思うのですけど、その辺を課税当局はどう考えておられるのかということなんです。要は原価をどう見るかということと、少額の納税者に対してどういう措置をとるか。それを早く決めておかないと、再来年の税制改正の話なのだけど、おそらく再来年の直前になると大混乱になると思うので、いまのうちから指摘しておきたいと思うのです。

河野特別委員

グリーン税制で一言言っておきたいのですけど、これは前にも発言してあって、運輸省の諸君が考えたグリーン税制というのは欠点が多すぎる。少なくとも環境問題を考えて税制をしくのならば、スタートにおいて理論的に現実的に間違ってはだめだ。理論的に間違っている。したがって、これは正しい方向ではない。そのことは繰り返しませんけど、いま問題になっているのは、現実的に基盤が崩壊したということなんですよ。今日の新聞かなんかに出ていたと思うけども、自民党の交通運輸部会と建設省の部会が話をして、運輸省はもう下りたと、重量税にはかけない。地方税に残ったわけだ。そうすると、今度はこの話は地方税でしっかりやりますかと。今度は地方部会が決起するんじゃないかと思うんだね。取引をやると、かける対象がなくなるんですよ。税源をどこへ持っていくかというのがなくなってしまうわけだ。つまり、私に言わせれば理論的に間違っている。余りガタガタ言わないけども。この話は現実的に基盤が崩壊しちゃった。したがって、通常、租特の細かいことについて、我々税調で議論することはほとんどないんですよ。この話は自民党税調と省庁間の話だ。

僕がこれを前にもここで取り上げたほうがいいと言った理由は、せっかく運輸省が時流に乗ったというか、いずれ先を読んでアイデアを出したので、それを契機に我々は、中間答申でもし環境絡みの税金を考えるならば、こういうロジックでやったらどうだということを考えるいいチャンスをくれたと、運輸省は。あんたの案はだめだけども、きっかけにはなった。私はその点だけ高く評価する。局長にも言ったんだがね。「河野さん、何でもいいから芽を出してくれ」と言うから、「あんたのところは無理だ」と。足場がいまもう崩れちゃったんだから。「だから、もうこれはあんた諦めなさい。しかし、おたくの功績は永遠に残るので、問題を提起したわけだから、我々はそれを契機にしてまじめに中間答申で議論するから……」と言って帰ってもらったんですよね、昨日かなんか。いまでも私はそう思っているんだ。

それから、本当は環境の問題というのは2つあって、1つは規制の問題があるわけだ。今度、東京都知事が言っているのは規制の話ですよ。アメリカも同じことですよ。これはアメリカでよく使う手段だから。規制を強化して、それにメーカーは合わせろよという話ね。通産省と運輸省はもうそれをやっているの、省エネ法の規制で。家電メーカーと自動車メーカーに何年までになんぼ熱効率を上げるということを、業界は全部確約しているわけですよ、メーカーが全部、自動車も家電も。それにこれを乗っけるのだけど、実はあの話はメーカーが全部乗っかっているんです。すでにやるつもりでいるんですよ、こんなことをやらなくても。そのことは間違った方向でやらなくてもいいんです。

結局、いま環境学者というか、環境グループの中で最大のテーマは、いかにして環境税を入れるかいうことなんですよ。さっきどなたかこれは情緒的な問題があると言われたけども、そういう要素ははらんでいるけれども、しかし私はそれだけじゃないと思うんだね。住宅減税というのはいまでも非常に短期の話だと思うけれども、この環境税全般の話は、20年、30年、40年にわたる話なんですよ。だから我々はまじめな議論をやろうという話ですから。だから、租特の話として来年はできない。しかし問題提起だけ受ける。我々は勉強する。これでいいのだと思うのです、この話は。

あと1つだけ、固定資産税の話は、私は諸井さんの委員長の下で地方分権委員会をいまでもやらされているんです。地方自治団体の話を山ほど聞いている。諸井さんが言っていることもよくわかる。それで私は基本線は基本的に変える必要はないと思っているんだ。ただ、それにしても問題があることは明らかなので、それをどうするかですよ。そうしたら大田さんが言うには、そういう微調整をやるから世の中はこんがらがってきちゃって、わからなくなっている。それはそのとおりだね、中西さんも言っていたけれども。しかし、中西さんが今日言ったことは、1つあれがあって、対案を出したわけだ。これの減収をどうやって埋めてやるか。地方消費税の話でしたね。これは諸井さんが言ってたみたいに、中央と地方の財源をどう配分するか。神野さんを含めて何人かの学者が言っているし、それはそれで1つのアイデアとしてあるのだけども、その議論をやるのだったら、この前ここで言ったけども、税調なんかでできる話じゃないです、この話は。関係審議会が全部合同して大審議会をつくって、総理大臣がリーダーシップをとらないとできない、こんなことは。それならば、便法として中西さんが言ったみたいなこともあり得るかもしれない。しかし、それはちょっと時間がかかる話ですよね。来年から下げるという話になると、それじゃ減収分どうしてくれるのだと。交付税に逃げるというと、またそれが延々と、交付税というのはすでに現実にはこんな巨大な赤字を抱えているわけで、そう簡単にいかないかもしれない。だから、私は極めて妥協的に言うけれども、大田さんが言ったみたいなことはよくないのだけども、よくないことを2~3年もう1回やるかと。それしか現実的に自民党の中で整理がつかないだろうと私は思っているんです。

森田委員

なかなか総会に出るチャンスがなかったので、少し根本的な話をちょと短くしようと思うのですけど、アメリカの経済学者のジェフリー・サックスというのがいまして、彼はロシアのいろいろなプランで失敗しているから、彼が言っていることが正しいわけではないのですけども、日本に2つの道があると。1つは、ある程度財政再建しながら着実に回復する。非常に中長期的な道を歩むというのと、それから、非常に無理な財政金融政策をとって、これはアメリカが要求していることでもありますけれども、それによって破局に至ると。いまやっていることは、将来的に見ると、ハイパーインフレーションか、大増税か、年金をカットするとか、そういうことしかつじつまが合わせられないことを、みんなが寄ってたかってやっているということだろうと思うのです。2年前の橋本首相のときには、ある程度前者の道をとったのですけど。ジェフリー・サックスは非常に堅実な財政政策をとるべきだということを言っているのですけども、そういう大方向を税調としていま示すことが、我々の1つの責務ではないだろうかというような感じがします。

それで、60兆円以上の税収がこれだけ減ったということは、それだけでスタビライザーの効果が経済の中にあるはずなので、それもやはりちゃんと着目しなければいけないと思います。

それから、こういうときに、デフレだから、少しデフレ政策というのは当然なのですけど、ちょっと度が過ぎてやしませんかという感じですよね。そこら辺はぜひ答申の前文のところで強調しなければいけないところではないかと思うのです。

余りこういうときにジタバタするとろくなことないんですよね。税金というのは、古い税金はいい税金だという1つの言葉がありますけれども、古い税金をなるべく大事にして、穴をあけないようにする。大蔵省なんかは、2年前までは一生懸命みんなふたを閉じて回っていたのだけど、最近大蔵省は何か諦めたのか、もうそういうこともしなくなったので、大蔵省のかわりに言うような感じですけれども。

それから、401Kにつきましては、いまグローバルマネーが一体どうなるか全然わからないですよね。収縮する可能性がある。グローバルマネーの末期的症状がいま進行中だと思うのですけども、それに最後に乗って転落しないように、だからこの問題はやはり慎重になるべきだと思うのです。

それから、いま一番泥をかぶっているのは企業ですから、労働の流動性もなかなか難しい。だから、そこである程度、資本主義ですから、企業を助ける方法として、なるべくお金がかからないで助ける方法をしなければならない。その意味では、国際的な競争だとか何かでツールとなっている連結納税だとか、会社分割のときのいろいろな、これもなるべく税収に傷をつけないようなやり方を考えるしかないのかなと。

あとはみんな小さい問題をたくさん出していますけど、課税ベースにみんな穴をあけることばっかり流行っていて、我々税調というのは、穴をもう1回ふさぎ直して、課税ベースを広げて、それで税率を下げるというのが我々の王道であって、みんなで虫食いみたいになって穴をあけるべきではないと思うのです。アメリカはループホール産業といって、穴をあけるのが弁護士の産業になっていて、穴をたくさんあけたら、今度はまた餃子の皮をすくって、残った分をもう1回丸めるみたいにして、それでまた穴をあける競争を始めるという、そういうふうなループホール産業というのを弁護士だとか何かで言われていますけど、ああいうことをすべきではないと思うのです。やはり税のほうは王道を歩むべきだというふうに感じます。

榎本委員

余り機会がないと思いますので、いくつかダブるところがあると思いますけれども、固定資産税の問題についてだけ発言させてほしいと思います。

この税は言うまでもなく、基礎的自治体である市町村の税でありまして、市町村の仕事は歳入事情の変化によってそう大きくいじれない。住民生活に密着した不可欠な領域を担っているわけです。そこがかなり財政的に厳しくなっている。いま佐野さん御指摘のように、そこへ向けている国民の、あるいは住民の厳しい目線は意識しろという指摘は、これは全くそのとおりだと受けとめますが、とはいいながら、現実に大変厳しい状況にあり、その中で税収の半分近くを占める最も基幹的な税を、塙さんのお話ですと、30%以上下げると。そうすると、税収全体からすると15%ぐらい下げるということになるわけですね。地域住民にとって大切な公共財である市町村という器そのものが壊れかねない。これは到底耐えがたいのではないかということが1つです。

同時に、諸井さんおっしゃったように、いま分権を進めるという点では、ほぼ全体的な合意があるのかと思いますが、分権の目的は結局は団体自治としては市町村の自己決定をどう高めるかということだと思うのですが、いま言ったような市町村財政の状況になるとすれば、これはどうしても財政面から県や国に対する依存を強めざるを得ない。依存が強くなるということは、逆に国や県からの市町村に対する関与と支配は強まらざるを得ないわけですね。そういう点で、この分権という流れが財政面から逆流させられかねない。このことはぜひ申し上げておきたいと思うのです。

ただ、中西さんや、あるいは吉田さんからも御指摘のあったように、現在の制度が、私どもが聞いても簡単にはわからないような大変複雑なものになっているということは事実ですから、これを極力簡素・簡明化していくというのは、必要なことではないかと思います。

それから、もう1つ、塙さんから遊休地なのにそこの税負担で困るというような、これは当事者としてはよくわかるのですが、ただ、社会的な思いから言えば、いま逆に土地をどう流動化させていくかということが、景気対策面でも重要なわけですね。そういう点ではできるだけ早く手放す圧力があったほうがいいわけなので、それは逆に言うと、負担は負担としてあったほうが流動化を促すのではないかなと考えるわけです。

もう1つ、本来の分権の趣旨からいえば、市町村それぞれが自らの判断で税率を決めたらどうかと。これはあり方としてはそのとおりだと思うのです。ただ、そうはいっても分権というのは独立国をそれぞれつくるわけではないので、やはり全国的な基本的なベースの部分というのは共通していなければいけない。評価制度の適正化をいま進めている段階ですから、例えば非常に大きな矛盾、同一市町村の中の同一の価値を持った資産に対して、これがその地域の中でも違ってしまっているという不公平があるんですね。これは市町村が勝手にやっていいということよりは、やはりそのぐらいは全国的なならしがなされた先で議論をすべきことではないだろうかと考えます。

平田委員

実はこの『参考資料』の7ページをちょっと見ていただきたいのでありますが、それと、もう1つの今日の御説明のありました『説明資料[4](国税関係)』の9ページ、ここに同族会社の留保金課税制度の概要について、2つのペーパーが出ているのでありますが、皆さんの議論の中でこの点について言っていただいたのはお1人だけでございまして、私の立場から一言申し上げておこうかなと思う次第であります。

これだけのペーパーが出ているということは、行政さんのほうでも、おそらく党の税調なんかで非常に問題になっているのではないかなという感じがするのでありますが、中小企業税制を直そうといういまの国会の論議の論点からいけば、これなんかは一番やり玉に上がるところだろうと思うのです。というのは、『参考資料』の中の7ページを見ていただいておりますが、シャウプの使節団の日本税制報告書という、極めて税の古典的な、昭和20年の初頭に報告されたもので、アメリカ税制を基本にした、いまの日本の税制の枠組みをつくった有名な報告書の中なのですが、ここに留保金課税の法律的な根拠を書いてあるわけなんですね。シャウプさんの税制というのは、学者の方のお話を聞いたほうが間違いないでしょうけれども、私の記憶でいえば、非常に所得税中心の税制を構築した方だと言われておりまして、それが戦後50年間の日本の税制の主流になってきておりまして、所得税を中心にいたしまして、累進課税をしていこうと。それによって富の再配分機能を持たせるということの基本的な枠組みで現在まで来ているわけであります。このシャウプの税制の報告書の中にこの同族会社の留保金課税が入っているわけでありますが、現在まで50年たってきまして、実際の税の執行の世界でいくと、何度か改正がありまして、ほとんどの同族法人がかからないようないま仕組みにまで定額控除を増やしてきておりまして、ここに出ておりますように、一千何百億円の税収ぐらいであるし、かかる法人が二万何千件であるということで、非常に小さいマイナーな税制になっているのですけれども。これは意外にどうなんでしょうか、税の理論からいくと、余り現在は意味がない税制になってきているのではないか。それだけにまた反対の意見が多いということだろうと思うのです。

というのは、ここにシャウプの報告書の中に書かれてありますように、「個人たる株主に所得税があるため経済的理由から望ましい範囲を超えて法人内部に留保を増加しようとする積極的刺激が生ずることとなる。提案された附加税は、……」云々ということでありまして、株主に所得税が課税されるために利益を留保しようとすることの圧力と大体において平衡を保つことを目的とするために創設をされたということでありまして、現在のように最終的に同族会社の内部留保というものが、相続の段階でいま問題になっておりますけれども、取引相場のない株式の評価と連動して、相続税の世界で課税を受けているということなどを考えてみますと、わざわざこういうふうな制度を法人税法上の中で温存をしておく必要は、もうそろそろなくなってきているのではないか。これは実は法人の擬制説というのと法人の実在説というものにも多少関係があるのですけども、そのことそのものずばりではございませんので、まさに同族会社という非常に日本独特の、留保金課税なんていうのは日本にしかないと思いますが、こういう制度をいつまでも置いておかなければならないようなことにはいまはなっていないのではないか。

法人自体も、先ほど来お話が出ておりますように、合併であるとか、分割であるとかという新しい法形式を採用するような時代になっておりますので、こういう戦後新しくつくられた所得税中心の税制を考案したシャウプさんの発案にいつまでもこだわる必要はない。私はこの税制は、そろそろ基本問題小委でもって、改廃するような方向でぜひ検討していただきたいなと思う次第であります。

加藤会長

ありがとうございました。

大変遅くなってしまいまして申しわけございませんでした。これで前回と今回と合わせましていろいろな御意見をいただきましたので、この御意見をこれから整理してまとめて、次第に方向を決めていきたいと考えております。そのためにいままでの慣行によりまして、臨時小委員会を設けまして、そこでその議論をしていきたい。こんなふうに考えておりますが、こういうふうにしてよろしゅうございましょうか。

もしよろしいようでございましたら、臨時小委員会に所属していただく方について、これは会長指名ということになっておりますので、私のほうからお名前を申し上げさせていただきます。

石 弘光さん、大澤雄三さん、大田弘子さん、河野光雄さん、佐野正人さん、島田晴雄さん、竹内佐和子さん、津田 正さん、本間正明さん、松尾好治さん、松田英三さん、水野忠恒さん、水野 勝さん、森田明彦さん、柳島佑吉さん、以上の方々に私と松本会長代理が参加させていただきます。

臨時小委員会で松本会長代理に小委員長をお願いしたいと思っておりますが、この中で議論をまとめまして、いろいろな御意見を並べて、そして皆さま方に公平に判断をしていただくことになるわけでございますが、それを次回の総会にお出しいたします。

次回の総会は12月7日午後2時、場所はここではなくて虎の門パストラルでございます。虎の門パストラルで小委員会の開催で整理したものを検討したい。こういうふうに考えております。

それから、7日、10日というふうに総会があるわけでございますが、あと12月13日以降の週については、まだ明確ではございません。火曜日、金曜日以外にも開催することになるかも知れません。かなりタイトなスケジュールになるかと思います。

なお、当税制調査会では、いままで審議の透明性を確保するために、総会における審議を公開してきましたけれども、次回以降は答申案作成に向けての論点の整理でございますので、答申案文の審議を行うことになりますため、議事規則に基づきまして、審議の公開は行わないことにしたいと思っております。各省庁幹事の方の出席については、御遠慮願うことになると思います。こういうようなことで進めさせていただきますが、よろしゅうございましょうか。

それでは、今日はどうもお忙しいところ遅くまで時間をいただきまして、ありがとうございました。

〔閉会〕

(注)

本議事録は毎回の総会後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、大蔵省主税局及び自治省税務局の文責において作成した資料です。

内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。