第40回総会 議事録
平成11年11月30日開催
〇加藤会長
第40会総会を開催いたします。
きょうは、林大蔵政務次官にもご出席いただいております。
本日の議題でありますが、前回(11月26日)の総会から年度改正の審議を始めることになったわけでありますが、これについて個々の問題を検討していこうと考えております。
本日はまず、前回、私から事務局にとりまとめをお願いした、年度答申に向けて議論しなければならない主な検討項目について、説明してもらい、そのあとで自由討議をしたい、こういうふうに思います。
お手元に、中期答申との関係ですが、11月16日の基本問題小委員会において、金融課税等と地方税全般について出された意見をとりまとめた資料をお配りしてあります。
それでは、議事に入りたいと思います。
事務局に、今後の12年度答申のとりまとめに向けて議論すべき項目について整理してもらい、お手元にお配りしてあります。これをまず事務局から説明してもらいまして、さらに、12年度税制改正に関する各省庁の要望書を綴じたものを備えつけておりますので、適宜ご参照の上、自由にご意見をいただきたいと思います。
また、各種団体等から税制調査会宛に出されました12年度税制改正に関する要望書を、入口のところで閲覧できるようにしてありますので、ごらんいただきたいと思います。さらに、これからも要望書が出てくると思いますので、関心のある方はぜひごらんいただきたいと思います。
それでは、まず、主な検討項目について、尾原主税局長、石井税務局長、よろしくお願いいたします。
〇尾原主税局長
お手元に、1枚紙で「平成12年度税制改正における主要検討項目」というのがございます。この1枚紙の項目に沿ってお話しさせていただきたいと思います。
まず1番目に、「基本的考え方」でございます。平成12年度税制改正をとりまく状況について整理してみます。まず、経済情勢でございますが、景気は緩やかに改善して最悪期は脱していると思われるものの、まだ自律的回復までには至らない。本格的回復を目指す必要があるということで、先般、経済新生対策がとりまとめられまして、これに基づき第2次補正予算が提出され、審議が開始されようとしているところでございます。
税制との関連で申し上げますと、ご承知のように、9兆円を超す国・地方合わせての恒久的減税が今年度から継続されていくという状況にございます。
なお、経済情勢というよりはむしろ構造改革とでもいいましょうか、例えば、経済の国際化の一環としての国際会計基準へのサヤ寄せとの関連、企業組織再編の問題、あるいは、金融のさらなる自由化というような観点もあろうかと思っております。
財政状況でございますが、これは、先般ご説明申し上げましたように、今年度の補正予算で1兆4,000億円の減額補正をいたしまして、公債依存度は平成11年度は43.4%、税収割合も終戦直後以来の51.3%と、まことに深刻な状況にあることはご承知のとおりでございます。
先般の政府税調の冒頭で、大蔵大臣からも、「我が国の経済がプラスの成長軌道に乗ったと判断されたら早速財政改革に取り組まなければならない、税制についても基本的にいろいろお願いしなければならない、それによってはじめて21世紀の本格的な税制改革をやっていただけるのではないか。それと同時に、財政改革もやっていけるようになればと思っている」という挨拶がございました。
それから、「その他」と書いてございますが、ご承知のように、来年の中期答申に向けてのご審議をいままでお願いしてまいりました。来年からもご審議をお願いすることになるわけでございます。21世紀のあるべき税制の姿と今年度の改正が反しないといいましょうか、その方向の妨げにならないという点も必要かと思っております。
それでは、12年度答申に盛り込むべき主な各論の検討項目として考えられるものについて、お話しさせていただきたいと思います。
まず、法人課税でございますが、来年度の12年度改正で時価法を導入する必要があると思っております。これは、企業会計の改正で、時価法、ヘッジというものが来年の4月1日から導入されることになっておりまして、早急な措置が求められているわけでございます。
さらに、会社分割の問題がございます。この夏、次期通常国会に商法改正が出されることが決定されたわけでございます。商法改正案の詳細は、あるいは、考え方は、よくわかっておりませんし、企業会計をどうするのかということもまだ判明していないわけでございます。
しかし、実効ある会社分割を目指すためには税制の検討が必要でございます。なにぶんにも分割のパターンが多様になっておりまして、資本等取引にかかわる問題が多うございます。合併等はこの税制の中でも最も複雑な部分でございまして、しっかりした検討を行うにはそれなりの時間が必要であろうと私どもは思っております。また、引き続き法人課税小委員会においてご検討をいただく項目になっているわけでございます。
連結納税制度でございますが、これも、小委員会において論点整理をしていただきました。答申においては、その必要性と選択すべき類型、検討すべき諸課題は何か、ということについてご議論いただければと思うわけでございます。
なお、スケジュールでございますが、分割税制の検討が入ってまいりましたので、連結納税制度は当然一緒にご審議いただくにしても、分割税制のあとにならざるを得ないと考えております。
法人課税につきましては、従来から課税ベースの問題がございます。課税ベースの問題についても議論が必要かと思っております。
相続税につきましては、11年度の改正の審議の中で所得税の最高税率が引き下げられました。これとの関連で、相続税の税率をどうするかというご議論をいただいたわけでございますが、個人所得課税の抜本的見直しとの関連において幅広く検討を行っていく必要がある、というご指摘をいただいております。この問題につきましては、夏の総理の発言を契機に、最高税率の引下げや中小企業の事業承継、取引相場のない株式の評価をどうするかという問題になるわけでございますが、これについて問題提起がなされましたので、これらの問題についてのご意見をいただきたいと思っております。
次の年金税制でございます。我が国の年金税制、入口も出口も非課税という特異な年金については、負担のかからないいびつな税制になっているわけでございますが、今年度、確定拠出型年金の税制についてどう考えるかという問題がございます。年金制度全体での位置づけをどう考えるかというのもございましょうし、貯蓄との関係をどうするか、さらには、退職金課税の問題に触れてくるところもあろうかと思っております。将来のこれらの議論の方向性も念頭に置きながら、ご審議をいただければと思っております。
経済新生対策でございますが、先般の経済新生対策の中で、税制については、「景気の本格的回復と新たな発展基盤の確立を目指す観点から、中小企業、ベンチャー企業支援に資する措置、民間投資の促進に資する措置等、真に有効かつ適切な措置について検討を行い結論を得る」とされているところでございますので、これらについてもご審議をいただきたいと思っております。
それから、租税特別措置の整理合理化でございますが、これは各年度の税制改正において常に留意すべき点でございまして、今年もご指摘をいただければと思っているわけでございます。
「その他」という項目でございますが、年度答申とは直接かかわらないにせよ、例えば今年度の税制改正で、税制面から環境問題へどう対応するかという問題の指摘もございます。中期的な課題でございますけれども、中間報告的にお考えをまとめていただければというふうに考えるわけでございます。
それから、国会でよく問題になるお話としてNPOがございます。NPOについて税制上の措置をどう考えるかということは、「これらの実態を見極めた上で寄附の公益性をどのように担保するかについて慎重に検討する必要がある」と、いままで答えてまいりました。私ども、実態、何がなされているのか、いまは全くわからない状況でございます。いずれにいたしましても、NPO法案の見直しの時期が平成13年度と法案に書いてございますので、税調の考え方を示しておくことが適当ではないかと思っております。
それから、納税者番号制度がございます。これまでも納税者番号制度については種々のご指摘を答申でいただいております。この8月、住民基本台帳法の一部改正の成立がございました。そのような状況を含めまして、引き続き検討を深めていく必要があるのではないかと考えております。
最後になりますが、自自公の与党の3党合意の関係といたしまして、消費税の福祉目的税化の問題、それから、児童手当との関係で、所得課税の諸控除の整理というのが3党合意に盛られてございます。これから与党の議論がどう進んでいくのか、全くわかりませんが、税調として発信していただく必要があるのではないかと思うわけでございます。
以上、事務局として、来年度改正に向けたご審議においてご検討いただきたい項目を説明させていただいたわけでございますが、このほか、検討すべき項目がございましたら、ご指摘いただければと思います。
いずれにいたしましても、来年度改正、現在の税制の置かれている状況を十分にご勘案いただきまして、全体をにらみながら、将来をにらみながら、適切なご指針を示していただければと思っております。以上です。
〇石井税務局長
続きまして、地方税関係の年度改正の検討項目についてご説明申し上げたいと思います。
まず、基本的考え方につきましては、ただいま、経済情勢等について主税局長からお話があったようなことでございますけれども、地方税独自の観点といたしましては、公債費負担比率15%以上の地方団体が約2,000団体に達するというきわめて厳しい地方財政の状況ということ。それから、地方税のあり方の背景にある地方分権推進の動き。特に、ことし7月に地方分権推進一括法が成立いたしまして、来年4月から施行されるということ。しかも、地方分権推進一括法の成立の際に、国会で議院修正によりまして条文が追加され、「地方税財源の充実確保の方途について検討し、その結果に基づいて必要な措置を講ずる」とされた経過も十分念頭に置いてご議論いただければありがたいと思っております。
それから、法人課税の中では、先ほど主税局長からいろいろございましたが、地方税につきましては、特にこの7月に地方法人課税小委員会からご報告いただきました法人事業税への外形標準課税の導入についてご議論をいただきたいと考えております。
また、先ほどお話に出ました連結納税制度につきましては、地方税の場合、応益課税としての性格もございます。そういった観点で、仮に連結納税制度を議論する場合に、地方税についてはどう考えるかといったような問題もあろうかと思っております。
年金税制につきましては、確定拠出型年金についてただいまお話がございましたように、地方税につきましても、拠出、運用、給付の各段階を通じた適切な課税のあり方、さらに、公的年金に対する課税のあり方等、所得税と概ね同様の点についてご議論をいただきたいと思っております。
固定資産税でございますけれども、ご承知のように平成12年度は3年に一度の固定資産税の評価替えの年に当たっております。3年前の平成9年度の評価替えにおきましては、新たに負担水準という概念を導入いたしまして、負担水準の高い土地については税額を引き下げる、あるいは、それより少し低めのところは据え置く。相当低いところはなだらかに引き上げさせていただくという抜本的な見直しに着手したところでございますけれども、今回の評価替えに伴いまして、税負担の調整のあり方をどう考えていくかという点を中心にご意見を賜ればと思っております。
経済新生対策に係る税制改正につきましては、景気の本格的な回復と、新たな発展基盤の確立を目指す観点から、真に有効で、かつ適切な措置について検討していただくということではなかろうかと思っております。
それから、地方税における非課税等特別措置の整理・合理化につきましては、引き続きその推進に向けて努力いたしたいと考えておりますので、よろしくお願い申し上げます。
その他の事項としては、まず、低所得者層の税負担について配慮いたしますために、個人住民税の均等割、所得割の非課税限度についてご検討いただければと考えております。これまで2、3年ごとに、生活扶助額とか、生活保護基準額の改定の関係もありまして、ご議論、ご検討いただいているわけでございます。
先ほど納税者番号制度のお話も出ましたけれども、税制を支える制度としてどうあるべきかという点についてご議論いただきたいと考えております。
それから、最近の環境問題との関係で、グリーン化の問題、金融関係の問題、地方税の各税目における幾つかの点についても、ご検討いただくことがあるのではないかと思っております。
なお、与党3党の合意事項にございます児童手当等との関係での個人住民税における諸控除の整理の問題とか、また、これまでもご議論いただいておりますが、消費税の福祉目的税化の問題に関連して、地方消費税などの地方の税財源をどう取り扱うかといったような問題もございます。
これらの点についてご意見を賜ればありがたいと思っております。よろしくお願い申し上げます。
〇加藤会長
ありがとうございました。
いま2人のご説明がありましたが、主な検討項目について、きょうと次の総会、2回で一とおり整理をしていきたいと思っております。ただ、次の総会のときにご欠席の方があるかと思いますので、その場合は本日ご意見をいただいても結構でございますから、そういうものも一つの材料として検討していきたいと思っております。きょうは、主な検討項目の前半を扱っていきたいと思っていますので、まず、法人課税、相続税及び年金税制について補足の説明をしてもらおうと思います。
藤田主税企画官、田中税制第三課長、清水税制第一課長、武田府県税課長、よろしくお願いいたします。
〇藤田主税企画官
まず、法人課税の課題につきましてご説明いたしたいと思います。法人課税の課題につきましては11月19日の総会で石先生からご報告があったところですけれども、今回のポイントを絞りまして、資料を幾つか見ていただきながら、補足的な説明をさせていただきます。
まず最初に、時価法でございます。「説明資料[1] 総40-2」という資料の3ページをごらんいただきたいと思います。これは、売買目的で取得した有価証券やデリバティブ等を期末の時価で評価して、その評価損益を当期の所得に反映させるということで、何でもかんでも時価で評価するのではなく、売買目的有価証券、デリバティブ等であるということでございます。
4ページ、「導入の必要性」でございますけれども、売買目的の有価証券、デリバティブ等につきましては、下線部をごらんいただきたいのですけれども、それを評価することによってはじめて法人の活動の成果を的確に所得に反映させることができる。2番目に、租税回避の防止に必要であるということ。それから、企業会計におきましても平成12年の4月から、売買目的有価証券等につきましては時価評価されるということでございます。
それから、7ページをごらんください。やはり平成12年の4月から企業会計で導入されるものにヘッジ会計がございます。「ヘッジ処理の意義」と書いてございますけれども、一言でいえば、デリバティブは基本的に時価評価されるわけですけれども、それがヘッジの目的であるものにつきましては、その評価損益等について、ヘッジの対象である現物の損益と相殺されるように対応させて、それと同時期に損益を計上するという処理でございます。これも企業会計で認められることになりますので、税のほうでも同じような取扱いをしたいと思っております。
8ページでございますが、ヘッジ処理導入の必要性ですけれども、そういうふうにヘッジ対象とヘッジ手段、デリバティブを対応させることによって、ヘッジの実態を正しく所得に反映させることができるということでございます。時価会計、時価法、ヘッジ処理、いずれも12年度改正で行いたいと思っているものでございます。
それから、これも石先生からご紹介があったのですけれども、法人課税小委員会の議論では、企業会計と同じように税の面でも時価法を適用すべきだ。それから、いま低価法というものがありますけれども、これは適正な課税の観点から問題ではないか、との意見があったところでございます。
次に、会社分割でございます。10ページをごらんください。これはちょっと複雑な図ですけれども、実は、この7月に法務省から「商法等の一部を改正する法律案要綱」の中間試案が出されておりまして、そこに盛り込まれている分割の形態で、多々ございます。
簡単にご説明いたします。縦にマトリックスをごらんいただきますと、左側に新設分割、右側に吸収分割とございます。新設分割のほうは、もとあったA社の一部を分割してB社を新設します。そのB社の株式をもとのA社の株主に交付するという分割型でございます。
下をごらんいただきますと、いまのケースは、B社の株式をA社の株主に交付したのですが、これをもとのA社に交付する。いわば分社でございます。こういった形が一つ考えられております。
右側は、吸収分割と申しまして、A社のほかにもう一つB社という会社がある。A社の一部を切り離して現在あるB社にくっつけてしまう。くっつけた上で、B社の株式をもとのA社の株主に配るという形態。それからもう一つ、先ほどと同じようにB社の株式をA社に配るという形態がございます。
それから、注に書いてありますけれども、株主と会社両方に配るケースもあるということで、類型が多々あるというふうにされております。
もう1枚おめくりいただきまして、法務省のほうでは、法律にはしないけれども、アメリカにおいて認められているような形態、解釈で行える可能性も否定しないというふうに言っております。
一番上は、P社がもとなのですが、まず現物出資で子会社を設立し、それで取得したS社の株式をもとのP社に株の配当として配ってやるという形態。真ん中は、現物出資により設立した子会社の株式を、自分の株式と交換でP社の株主に渡してやるという形態。3番目は、子会社を二つないし複数つくりまして、その後、自分自身は清算してしまう。清算の対価、残余財産の分配という格好でP社の株主に子会社の株式を配ってやる。こんないろいろな形態を想定しております。
もう1枚おめくりいただきまして、現在、こういう形でいろいろな形態が想定されていますけれども、商法の具体的な中身、具体的な取扱い、さらには、企業会計の取扱いというのが全く定かではございません。そんな中で、会社分割に係る税制についてどんな検討の視点から考えていったらいいのだろうかというのが、12ページ、13ページの資料でございます。
「合併・現物出資等の資本等取引と整合性のある課税のあり方」。先ほど申しましたように、吸収分割というのは合併が一部組み込まれているような格好ですので、そういったところとどう整合性をとっていくのかということでございます。
2番目は「株主における株式譲渡益課税やみなし配当課税に対する適正な取扱い」ということで、株を株主に配ったりするわけですから、そこのところの譲渡益課税、配当課税はどうなるのか。これは、所得税まで含めた検討が必要であろうということでございます。
13ページですけれども、「納税義務・各種引当金などの意義・趣旨を踏まえた適正な税制措置のあり方」。これは、いろいろな引当金等々ございますが、隅から隅まで多様な形態に対応できるようにチェックし、必要な手当てはやっていかないといけないということでございます。
最後の「租税回避の防止」はいずれの視点にも当てはまるのですけれども、分割というのが新しく導入されることによって租税回避が起こることはいけないということで、万全の対策を講ずる必要があるということでございます。
いずれにしても、合併というのは複数の会社が一つになるということでわりと単純なのですけれども、ご説明申し上げましたように、分割というのは多種多様な形態があり、実際の場面でも、資産、負債、資本のいろいろな分け方があるということで、かなり困難な検討が予想されるということでございます。
最後に、連結納税制度でございますが、17ページをごらんいただきたいと思います。法人課税小委員会で、4回、議論していただきまして、「主要検討項目」をあらい出してとりまとめていただきまして、これがその総括表でございます。大きな項目で8項目、小さなポツで24項目ございますが、特にご紹介を絞ってさせていただきたいと思います。
18ページでございますけれども、まず、連結納税制度の導入の必要性でございます。二つ目のポツですが、「企業の組織変更に対し、税制の中立性の観点から、連結納税制度の導入が必要ではないか」、「税制が企業の組織変更に与えるディストーションを考慮して税制を考えるべきではないか」、こういった意見が多うございました。
それから、もう一つ議論していただいたのが、19ページ、「連結納税制度の類型」というところでございます。一つ目のポツですが、「企業集団を単一の主体としてとらえて課税を行うアメリカやフランスのような本格的な連結納税制度の導入を検討すべきではないか」。あるいは三つ目のポツ、「ドイツやイギリスのような損益振替型の制度は、連結納税と異なり、単なる減税であり、子会社の権限と責任の不明確さを助長するなどの問題があるのではないか」ということで、米・仏型の本格的な連結納税制度の導入を検討すべきであるというふうにされております。
簡単でございますけれども、以上でございます。
〇田中税制第三課長
相続税につきまして、同じ資料の30ページをお開きいただきたいと思います。
すでに何回か説明している資料は簡単に要点だけで飛ばさせていただきたいと思いますが、30ページの資料は、秋葉原を例にとりまして、100坪の土地で事業をやっていらっしゃる方、11億円余の資産を持っていらっしゃる方の相続税の計算を実際にやってみたということで、約2.1%の負担になっています。これは個人の事業者でございますが、土地を持っていらっしゃる個人の事業者の場合、小規模宅地の特例がかなり効いてくることが見てとれる表でございます。
31ページはサラリーマンの例でございますが、ちょうど相続税がゼロになる事例をあえてつくってみたものでございます。東京の中心、渋谷の松涛地区に住んでいらっしゃる方、200平米の土地を持っていらっしゃる方でも、さまざまな控除、小規模宅地の特例が効きまして、最後、遺産額がゼロになる事例でございます。
34ページは新しい資料でございます。前回ご説明しましたときに、水野忠恒委員から、外国に財産がある場合、あるいは、外国に相続人がいる場合の課税関係についてのお話がございました。これでご説明いたします。
四つのケースに分けて書いてございますが、一番上は、亡くなった方、被相続人も相続人も国内にいらっしゃる場合でございます。この場合は、どこに財産があっても全世界の財産に課税をするのが現在の相続税。贈与税も同様でございます。
二つ目の事例は、亡くなった方が外国にいた場合、相続人が国内にいる場合でございますけれども、この場合もやはり全世界の財産に課税をするということでございます。
三つ目の事例でございますが、亡くなった方が国内、相続人が外国に居住している、すなわち日本の居住者ではない場合については、日本国内の財産にしか課税がなされないということになります。
一番下は、両者が外国にいた場合についても国内の財産にしか課税がなされない。よく相続税の節税関係の本に書いてあるような節税方法の背景には、制度がこうなっているということでございます。
36ページは、過去、相続税の改正を3回、大きな減税をやってきておりますので、それに伴って負担率がどう変化しているかという表でございます。これもすでにご説明いたしました。
37ページは、地価がかなり下がっていることと相続税の減税が相まって、税負担がかなり変化しているという表でございます。千代田区の外神田で200平米の土地を持っていらっしゃる方、金融資産等が1億5,000万円弱ある方についての相続税の額、一番高いときで1億9,000万円、いまは1,249万円であるということでございます。これは配偶者と子供3人の場合で計算しております。
39ページは、相続税の課税がどのくらいの割合でなされるかということで、左から3番目の欄の一番下ですが、平成9年で言いますと、亡くなった方のうち5.3%の方に相続税の課税がなされているということで、限定された方にかかる税金であることが見てとれるかと思います。
41ページでございますけれども、5%の方々の中でどういう負担関係になっているかというのがこの表でございます。下に延びている黒い棒グラフが課税価格の分布でございます。2億円以下の課税資産を持っていらっしゃる方の割合が26.59%でございます。上が課税件数でございます。右のほうの方が負担がかなり重いというのが見てとれるかと思います。
もっとよくわかりやすくしたのが42ページでございまして、件数の累積割合と税額の累積割合をグラフにして、相続税の累進度合いの高さをあらわしたものでございます。
43ページは、外国との比較ということで、日本の相続税が非常に高いというお話がありまして、諸外国と比べてみますと、課税価格、すなわち資産がかなりある場合は別でございますけれども、日本の場合は3億円ぐらいが課税価格の平均値で、その辺と比べると、日本の場合、相続税の負担率は必ずしも高くないということが見てとれるかと思います。
45ページは、先ほどの秋葉原の例は個人の事業者でございましたが、会社を持っていらっしゃる方の場合は、遺産の中に株式がある場合がありまして、その株式が取引相場のない株式である場合が多うございます。その取引相場のない株式についての評価の仕方、国税庁の通達で決めておりますが、それを書いてございます。ことしの税制改正の中で、通産省あるいは商工部会からは、取引相場のない株式について評価方法を、実態をよく見て変えてほしいという話が出てきております。
46ページがその詳しい中身でございます。原則的な評価の仕方だけ簡単に申し上げますと、取引相場のない株式の会社につきまして、まず、規模を大中小と分けます。この分け方は次のページに、従業員数、資産額、取引金額によってマトリックスをつくって分けてあります。分けたあとで、大きな会社につきましては、類似業種比準方式といいまして、類似業種の平均株価をもとに計算する仕方になっております。取引相場がございませんので、実際に取引相場のある類似の業種の株価をもってきて計算をする。46ページの右の上の計算式がそれでございます。
ただ、そういう会社であっても、純資産価額方式のほうが低ければ、そちらを選択してもいいことになっております。純資産価額方式は、46ページの右の一番下の3でございますが、その会社の総資産額から負債を引きまして、さらに評価差額に対する法人税相当額。その会社が解散したらどのくらいのキャピタルゲインに対する法人税、地方税の法人税部分がかかるかというのを考えて、それを引いて、さらにそれを発行済株式総数で割るというやり方でございます。
大会社の場合は、一般の上場会社にかなり近い会社ということで類似業種比準方式を認めております。
中小の会社の場合には、個人事業者との均衡も考えまして、類似業種比準方式と純資産方式との加重平均といいますか、併用しております。それは46ページの右の真ん中の式でございます。類似業種比準価額で計算した場合と純資産で計算した場合、その両方の値をもってきまして、それを一定の割合で混ぜ合わせるということをやっております。ここら辺が今年は議論になっております。
48ページでございますが、昨年度の政府税調の答申でございます。相続税につきましても一定の考え方をいただいております。まず相続税につきましては、個人所得課税の最高税率の引下げに関連して税率の引下げをどう考えるかという観点、そういう観点があるというご指摘をまずいただいた上で、しかし、土地がかなり下がってきていること、減税を3回やったことを踏まえて考えなければいけない。それから、景気対策と直接関係がないことも考えなければいけないということで、「直ちに税率の見直しを行う必要はない」という答申をいただいております。
最後の3行でございますが、「相続税については、今後、個人所得課税の抜本見直しとの関連において、税率構造や課税ベース等について幅広く検討を行っていくことが適当と考えます」という内容のご指摘をちょうだいいたしております。
審議の際に、特に事業承継に関連して、事業承継の実態、相続税がどの程度障害になっているかという実態をよく考えて議論すべきだというご指摘がありました。これにつきましては、いま、鋭意私どものできる範囲で……私ども、国税庁の協力を得て税務申告の内容からアプローチするしかございませんけれども、プライバシーの問題とか、幾つか障害がございますが、できる範囲でいま調査を行っているところでございます。なるべく早くこの審議会にもご説明できればと思っております。
それから、いままでのご意見でございますが、お手元の資料の中に、基本問題小委員会での意見を抜粋した資料がございます。相続税のあり方についての議論と、今年何をやるのかという議論、両方分けて考えてみますと、後者につきましては二つのご意見がございました。
一つは、相続税というのは必ずしも景気と直接関係あるものではないので、むしろ長期的な視点に立って議論すべきだ。あるいは、所得税の最高税率が37%になったのは今年であって、相続税というのは一生涯の財産に清算課税的に課税するのだから、すぐに所得税の引下げを反映させる必要はないのではないかというご意見。すなわち、最高税率については全体の議論をする際に考えるべきだ、先の話だというご意見が一つございました。それに対しては、自民党の税制調査会での議論とか世の中の議論を考えると、これは年内に急いで議論を詰めるべきだというご意見もございました。産業の再活性化のためには、豊かな投資家が存在できるという観点から相続税を考えなければいけないというご意見もございました。
相続税の全体のあり方につきましては、お手元に配らせていただいております内容をごらんいただければと思いますけれども、フローへの課税についてはフラット化により可処分性を高める必要があるかもしれないけれども、相続時点のストック課税としては再分配機能を堅持したほうがいいのではないか。それから、ストック化の進展を踏まえると、ストックに対して広く薄く課税すべきではないかというご意見。それから、消費課税の充実が今後不可避であるとすれば、その場合、所得再分配機能を有する所得税や相続税の役割はますます重要になってくるのではないか、というご意見がございました。
事業承継についても、土地の特例については資産選択を歪めているというご指摘がございました。一般のサラリーマン、給与所得者への課税のバランスを事業承継の問題を考えるに当たっては考えなければいけない。それから、取引相場のない株式の評価について評価の方法を吟味する必要がある。海外への資産の移転をどういうふうにフォローしていくかという問題を考えるべきだ、というご意見がございました。
以上、いままでの政府税調でのご意見のご紹介です。全部網羅できていないと思いますが、代表的なご意見をご紹介いたしました。
〇清水税制第一課長
引き続きまして、年金税制関係ということで、ただいま確定拠出型年金の導入が政府の中で検討されておりますけれども、導入された場合、税制の中でどういう取扱いをしたらいいかということで、そういう切り口から資料を幾つか用意させていただきました。
52ページですが、年金についていろいろな仕組みがございます。イメージ的に整理してありますが、国民全員に共通の国民年金(基礎年金)。これは通常「1階」と言っています。それから、サラリーマンの方については報酬に応じた厚生年金がございます。公務員の場合は共済年金がありますが、基礎年金、厚生年金、共済年金、これがいわゆる公的年金でございます。この1階、2階の上に、サラリーマンの場合ですと、厚生年金基金とか適格退職年金と言われる企業年金というものがあって、1階、2階に上乗せた年金の給付を行えるようになっております。厚生年金基金については、厚生年金の運用給付も一緒にやっていますので、2階の部分も入ってくるわけです。自営業者の方につきましては、2階、3階に相当する国民年金基金というものがございます。
今回話題になっております確定拠出型の年金というのは、提示されているスキームを見ますと、1階、2階、3階の上に、いわば4階のようにみんなにかかる形のイメージになっているかと存じます。
次に53ページですが、年金について制度がいっぱいありますけれども、年金についての課税を考える上での基本的な要素を取り出してイメージ図にしたものでございます。その場合、掛金がどう扱われるかということがあるわけですけれども、企業年金をとりますと、企業が従業員の退職後に年金を支給するためにお金を支出する分については、強制拠出の公的年金であっても、あるいは、任意に拠出する企業年金であっても、いわば損金になる。給料を出せば損金になるのと同じように、将来の退職給付のための支出ですので損金になるわけでございます。
それから、本人、受け取る従業員から見ますと、給料はもらえばすぐ給料として所得になるわけですが、年金の場合には、年金を受け取るまで課税が繰延べされるということで、その課税の繰延べの利息分についての税金の問題、いわゆる特法税の問題がございます。
本人の拠出について考えますと、自分で積み立てて自分で受け取るということになります。公的年金の場合には強制拠出ですので、社会保険料で控除され、課税されないわけですが、企業年金その他いろいろな年金については、自分で積み立てて自分でもらうということで、税金の取扱いを考えるに当たっては、自分で貯蓄を積み立てて引き出すというところと密接類似の関係がございますので、そこを見ながらよく考える必要があるかと存じます。
54ページに、確定拠出はどんなものかということで、いろいろイメージをお持ちだと思いますが、簡単なイメージ図をつくってみました。左側には現在の確定給付型年金がありますが、将来、例えば20年加入したら毎月これだけの年金をいただけますということで、給付のほうの年金額をも決めてしまって、それに対して拠出を幾らすればよいかについては、一定の年金計算をして予定利回りで割り戻して掛金が決まってくる。したがって、運用状況によっては、掛金の過不足……財政再計算のたびに料率が改定するわけでございまして、掛金が不確定である。給付は確定しています。
これに対しまして、いま話題になっている確定拠出型年金のほうは、拠出した段階でそれを確定しておいて、そのかわり、将来もらえる年金の額は実際に年金資産を運用してどれだけで回ったか、その実績によってもらえる。したがって、拠出は確定しておりますが、給付は不確定になるわけでございます。
次に55ページ、このイメージ図を字にしたわけでございます。上のほうは、拠出と給付の関係で、どこが確定しているかということですが、それを、具体の商品の中身に則して見ますと、運用主体につきましては、現在ある確定給付の年金については、厚生年金基金なり企業年金を受託したところでまとめて運用するわけです。
確定拠出型年金については、加入者の本人がどういう商品を購入するか、そういったことを自分で決められる、指図する。いわば運用主体が本人です。確定拠出の場合は、払い込んだ拠出、それが運用された額が全体として個人別に把握できる形になります。これに対して現行の確定給付は、全体として年金計算、保険数理が働いております。大数の計算でやっていますから、具体的な持分は不明確であるということになります。
裏返して言いますと、いわゆる相互扶助性という言い方をしますが、確定給付型年金では、平均寿命とかそういうことをもとに年金を数理していますので、加入者全体の中で回している、相互扶助性が働いていますが、確定拠出は個人別の額が決まってまいりますので、加入者相互間で年金数理なり相互扶助性はないことになります。そういう意味で確定拠出は、本人のコントロールが及んでいて、貯蓄的な性格が強いと言われている部分でございます。
56ページは、いまごらんいただきましたいろいろな年金を並べてみたものでございます。一番左側に、国民年金、厚生年金、いわゆる公的年金ですが、掛金は強制的に徴収されまして、それを一定期間、65歳なり60歳から受給されるわけです。これの課税の取扱いにつきましては入口の段階で全額控除されますので、課税がない。それから、運用時も課税なし。給付、受け取るときには実質課税なし。公的年金等控除と、かなり高い控除の仕組みがございますので、実質課税がないということになります。
厚生年金基金については、先ほど見ました2階の部分も一緒にやっていますので、公的年金のところに引っ張られておりますが、純粋の3階という意味では適格年金をごらんいただきますと、掛金については強制ではございません。任意になりますが、課税については原則として拠出の段階で課税する。それから運用の段階で、自分で出した分を除きまして課税が行われる。入口の段階は、これも公的年金等控除が適用されていますので、実質的に課税がない現状になっています。
それから、個人年金もございますし、いわゆる財形貯蓄の中に年金タイプの財形年金というものがございます。これはもちろん任意の掛金になるわけですが、これについての課税の関係を見ますと、入口の段階で課税。積み立てた分を控除することはございません。受け取るときには、これは、運用利子分は非課税という仕組みになっておりますので、課税がない。入口で課税がされているということでございます。
一番右側、確定拠出型年金の提示されているスキームで見ますと、これは強制の年金ではございません、任意の年金になるわけですが、課税のスキームとして提示されているものは、入口の段階で全部控除する、課税がない。運用の段階でも課税がない(非課税)。出口の段階では、やはり公的年金等控除の対象にして実質課税がない。一番左側の公的年金と同じような扱いを求めるスキームになってございます。
57ページ、58ページは、いま表で見ていただいたのをイメージ図化したものでございます。簡単にご説明しますが、日米の比較をしています。日本の公的年金ですと、拠出、運用、給付と実質課税が行われない。運用時と給付時で箱がちょっと上がっていますのは、払い込んだ部分に運用分が増えていくことをイメージしたものでございます。
アメリカの公的年金については、入口の段階で社会保険料控除に当たるものがございませんので、入口の段階に課税する。そのかわり運用、給付の段階では課税がない形になっています。一般の企業年金につきましても、拠出の段階では課税。アフター・タックスで積み立てていただいて、給付時に元本分は課税されませんが、運用益分については課税が行われるという形になっています。
ただ、401(K)という条項に当てはまる年金につきましては、入口の段階で、一定限度ですが、課税がないという扱いになっております。そのかわり、払い込んだ分を除きまして出口の段階で課税が行われることになっています。
58ページも同じイメージ図ですが、適格年金、個人年金、財形年金と見ますと、基本的に入口の段階で課税が行われる形になっております。
59ページですが、いままでご説明させていただいたことを別の切り口から整理してみますと、企業が拠出したものをもとにした年金につきまして、いままでのような確定給付(給付を確定させていく)、そういうタイプではなくて、むしろ拠出を固定しておく、そういう運用の選択肢が広げられないかという問題があります。その関連の問題としては、給付が確定していると、従業員の方が職場がかわったりしたときのポータビリティーの問題が完全ではないといったような問題も言われております。
従業員本人のサイドから見ますと、自分でどこに積み立てるかという問題になりますので、現行の確定給付なり確定拠出のスキームのほかに、個人年金や財形年金というスキームとの関連性が問題になってくるわけでございます。
60ページですが、以上のような点は、基本問題小委員会、それから総会でも基本問題小委のご議論を紹介させていただいておりますが、それも踏まえて論点を整理したものでございます。矢印のあるところだけご紹介しますと、年金制度としての位置づけとしては、給付の変動リスクをどう受けとめるかという問題。全く新しい私的年金制度として導入するのか、現行制度に選択肢を加えるのかといった議論。
最初の図で見ていただきましたように、いまの1階、2階の年金も、1階は基礎年金で共通ですが、いろいろばらばらになっているわけです。その上に全体に4階をかけるようなスキームになっていますので、既存の年金制度の整理が先決ではないかといった問題がございます。
それから、年金課税としては、少子・高齢化社会の税制のあり方として、公的年金においても入口、真ん中、出口と実質課税が行われませんので、特異な税制になっています。それ自体についてどう考えるかという基本的な問題がございます。
3番目でございますが、マクロの経済的な観点から言いますと、個人消費の喚起、対外収支、景気回復といった中で、貯蓄の奨励、新たな貯蓄優遇にならないかといった問題がございます。特に本人の拠出については貯蓄性が非常に強い性格のスキームでございますので、年金ではございましても、貯蓄性がきわめて高いことについてどう考えるか。そういうことを踏まえて慎重に検討すべきだという論点をいただいています。
最後に、昨年の税調でいただきました答申と、62ページには、現行のいろいろな年金にかかる減収額ということで、そのフローがどのぐらいのオーダーかというイメージを持ってもらうためにつけてございます。いろいろな公的年金、例えば企業年金の掛金に伴う税金の減収が9,500億円とか、かなり大きなオーダーの話でございます。例えば生命保険料控除は5万円でございますが、それのオーダーも2,850億円と、そういうオーダーのフローにかかわる問題でございます。
以上でございます。
〇武田府県税課長
引き続き、地方税の関係でご説明させていただきます。お手元に「説明資料[2](外形標準課税関係)総40-3」という資料がございますので、それでご説明させていただきたいと思います。
法人課税の関係の中で、地方税の大きなテーマといたしまして、法人事業税への外形標準課税の導入の問題がございます。
1ページ目は、法人事業税の概要をつけさせていただきました。課税標準は原則的に所得を課税標準にとっているということでございます。下のほうの税収を見ていただきまして、平成9年度の決算の数字でいきますと、4兆8,294億円ということで、都道府県税の中で最大の税収を占める基幹税目でございます。
なお、参考までに、平成3年度を見ますと約6兆5,000億円。これが11年度の当初見込んでおります地財計画額では約3兆9,000億円ということで、ピーク時に比べますと4割以上落ち込んでいる状況がごらんいただけるかと思います。なお、平成11年度は、いまの景気の動向等を踏まえますと、3兆9,000億円よりももう少し下回る、そういう見込みを持っているところでございます。
2ページは、これまでの外形標準課税の検討の経緯の概略をつけさせていただきました。シャウプ勧告以来いろいろ議論がなされてきております。政府税調におきましても、昭和39年、43年、そういった答申がございます。また、平成8年の法人課税小委員会でご議論いただきましたときにも、地方税のテーマとして検討すべきであるというご指摘がございました。9年、10年と答申をいただきました後、平成11年、今年の7月でございますが、地方法人課税小委員会、石小委員長のもとでまとめていただきました報告を総会に報告させていただいたという状況でございます。
次の3ページにその小委員会報告のあらましをつけてございます。まず、外形標準課税の意義として4点整理させていただいております。
一つは、今後、地方分権を本格的に進める中で、地方分権を支える安定的な地方税源の確保という意義があります。実際には、課税標準を所得、法人の利益をベースにしておりますために非常に不安定であるということで、実際の地方におけるサービスの安定的確保等を考えますと、この基幹税につきましては安定性を持たせる必要があるのではないか、こういう観点があろうかと思います。
二つ目は、応益課税としての税の性格の明確化という意義でございます。事業税につきましては、企業の事業活動を行うに当たりまして、地方団体の各種行政サービスを受けて活動されていることから、その必要な経費を事業活動に応じて分担していただくのが本来的な応益課税としての性格でございます。それを明確化すべきではないか。現在、所得のみを課税標準にしておりますので、欠損法人、赤字法人になりますと、事業税の負担が出てこない、黒字法人にのみ負担をお願いしている、こういう現状について見直しをする必要があるのではないか。
また、そのことは企業間、納税者間の税負担の公平という観点からも見直しが必要ではないか、というふうに整理いたしております。
さらに、経済構造改革との関係でいきますと、収益があがれば税負担が増えてくるという構造を改めることによりまして、収益性の向上を目指す将来的な経済構造改革にも資するのではないか、そういう意義を整理させていただいたところでございます。
こういった重要な改革であるという認識のもとに、具体的な外形基準のあり方も議論させていただきました。その基準といたしましては、事業活動の大きさを適切にあらわすものが望ましい。普遍的、中立的なものが望ましいという観点。併せまして、簡素で納税事務負担が小さな仕組みが望ましいということで、理論及び実務面、両面での考え方をベースにいたしまして、具体的な外形基準の類型として、小委員会では四つの類型を検討させていただきました。
[1]は、事業活動によって生み出された価値、仮称で事業活動価値というふうに呼んでおりますが、利潤と給与総額、支払利子、賃借料、これによって算定する。いわば企業の生産要素のそれぞれ1年間の対価というようなもので、それを積み上げた形で算定したらどうだろうか。
それから、この事業活動価値の一番大きな要素が給与総額でございまして、全体の約7割を占めます。そういったことから事業活動価値の簡易型という考え方もとれるのではないか、給与総額をベースに考えられないか。その際、所得との併用で考えますと、事業活動価値の中の8割を超えるウエートを占めるということも議論がなされたところでございます。
[3]は、物的基準を組み合わせたらどうだろうかということで、例えば事業所の床面積、事業用資産の価額、減価償却費、こういった物的な基準をあらわすものと、人的基準をあらわす給与総額の組合せ、こういったことが考えられないだろうかということでございます。
[4]は、もっと簡単に、資本等の金額をベースにして考えたらどうだろうかと。その場合、例えば資本金等につきましては、事業活動の大きさを的確にあらわすという点では難点があるので、事務所の数、従業者数、こういったものを加味する考え方はどうだろうか、そういうことで議論させていただきました。
税率につきましては受益に応じた税負担ということから、基本的に比例税率が適当であろう。税収につきましては、これまでの税収規模が大きく変化することは前提とせず課税の仕組みを検討したということでございます。
なお、改革に伴っていろいろな課題があるだろうということで、税負担の変動についての配慮、そういうことで所得基準との併用も議論いたしました。その他、納税事務負担の観点からの簡素化、中小法人への配慮、雇用への影響についての留意、適切な経過措置、こういったものについて議論させていただきました。
結びとしては、できるだけ早期に外形標準課税の導入を図ることが望ましい。なお、その具体的な実施時期は景気の状況等を踏まえて判断する必要がある、こういう小委員会報告をいただいたところでございます。
4ページ以下、ざっとデータだけ見ていただきますと、主要税目の対前年度増減率の推移ということで、法人事業税が伸びるときは伸びますが、落ち込むときも非常に大きい、不安定だという状況がおわかりいただけるかと思います。一方、歳出のほうはある程度一定の伸びを示しているという状況でございます。
次の5ページに、それを分析したものをつけさせていただきました。昭和60年度を100といたしまして、9年度の決算の数字までの状況でございますが、真ん中辺の太い線が都道府県の歳出で、最近は少し落ち込みがございますが、一定の伸びを示してきている。
その内訳で見ますと、一番上の三角印のものが土木費ということで、公共事業等こういったものが反映されているかと思います。その下にございます四角印は、民生費と衛生費を足したもの、福祉・環境経費、こういったものがあろうかと思います。公債費がバツ印でございまして、かつては低かったものが、最近かなり伸びてきているという状況がごらんいただけるかと思います。それに対して法人事業税、これまでは歳出を支えてきたということで、平成3年度あたりからそれがグッと減ってきている状況がおわかりいただけるかと思います。
6ページには、全国の法人事業税収の推移、特に、いま財政状況が大変厳しいと言われております大都府県の状況をつけさせていただきました。
7ページに、利益法人、欠損法人の状況ということで、全法人で見ていただきますと、63.3%の法人がいわゆる赤字法人ということで事業税を納めていただいていない状況でございます。
8ページは、各基準に係る課税ベースということで、所得でいきますと年間36兆円程度。これが事業活動価値あるいは給与総額等で見ますと、200兆円というオーダーでございますので、同じ税収を確保する場合に税率はかなり低く設定できるということであろうかと思います。
9ページは、それぞれの外形基準の安定性を見たものでございます。利潤の変動に比べてかなり安定しているということでございます。
10ページには、最近における全国知事会における総理大臣のご発言、それから、自治大臣の国会答弁をつけさせていただきました。
最後に、ご参考までに、小委員会報告の要旨ということで11ページからつけてございますが、16ページをごらんいただきたいと思います。「結び」というところで、法人事業税の外形標準課税は、重要な意義を有する改革であり、できるだけ早期の導入が望ましい。なお、具体的な実施の時期は景気の状況等を踏まえて判断するということで、今後は、具体的な導入に向けて各種課題についてより一層検討を深め、その際、できるだけ事務負担の増加を招かないようにすること。また、地方団体の行財政運営の一層の効率化と行革努力等についても取り組み、納税者の理解と協力を得る努力が必要だというご指摘もいただいております。「今後、この報告を踏まえつつ、事業税のあり方について、都道府県、経済界等をはじめとして幅広く活発な議論が行われ、合意の形成が望まれる」というふうに結ばれております。
この報告をベースに私どももさらに具体的な検討を進めさせていただいておりますが、課税の仕組み、各種の改革に伴う課題、実施のいろいろなタイミング、そういったことをさらにご検討賜ればありがたいと考えているところでございます。以上でございます。
〇加藤会長
ありがとうございました。
ただいまの説明をご参考にしていただいて、ご自由なご意見をいただきたいと思います。どうぞ、水野さん。
〇水野(忠)委員
先に失礼いたしますので、発言させていただきます。いま武田課長からご発言がありましたように、事業税の外形標準の問題は石小委員長のもとで10数回検討して、具体的な選択肢まで出たものです。実現に向けてということで、今回の年度改正の中にも盛り込むようにできればお願いしたいということで、これは前にもお話ししたことですが、改めてお願いしたいと思います。
これは税制調査会の中の報告書なのでよろしいのですが、もう一つの別の論点、先ほど藤田企画官がご説明になりました会社分割税制です。法人課税小委員会で私は申し上げましたが、資料の10ページと11ページ、これは本当に法制審議会のほうに伝えていただきたいと思うのですが、率直に言って、法務省と商法学者が集まってどうしてこんなものをやったのだろうということです。おそらく無理解だと思うのです。
具体的に10ページの商法の分割ですが、こういう案があるとしますと、これはこれで十分なわけですね。11ページにアメリカにおける会社分割の形態がありますが、アメリカ合衆国の会社法に分割形態というものがありませんでしたので、税法上課税の繰延べができるような形で、いわゆる連邦の所得税を使った仕組みということで会社分割の形態を三つつくったわけです。これはあくまでアメリカの会社法をもとにして、なおかつ、連邦の所得税で課税の繰延べができるようにということでできたものでありますので、我が国の商法にはそのまま当てはまらないはずなのです。
細かい話ですけれども、例えば1のスピン・オフの例ですと、これは現物配当という形をとっておりますけれども、現物配当がいいのかどうかということは商法学者に議論のあるところであります。
2番目のスプリット・オフという形は、親会社と子会社の株式を交換していますけれども、この仕組みがなぜできるのか。これは、我が国では資本を減少するといった仕組みしか考えられないのですけれども、そういったところまで深く検討がなされているとは思えないわけです。
ですから、なぜ、商法の中で会社分割を認めながら、なおかつアメリカにおけるこのような会社分割の形態を認めなければいけないのか、これは全く理解できないところであります。くどい話ですが、あくまでアメリカには会社分割の形態が商法上なかったので、税法を使ってこういう形態をやっとこさっとこつくり出したということですので、本末転倒もはなはだしいことであるわけです。
税制調査会の場面でこういう話をしてもなかなかあれなのですが、ぜひともこれは事務局を通して、法制審議会等に、最終案としてこのようなものが出てこない形で改めてお願いしたいと思うわけです。
もう一点だけお話しさせていただきますと、先ほど田中課長がご説明いただいて、私の質問に答えるという形でしたが、34ページです。相続税の国際的な問題ですが、外為法が改正になりましたので、以前にもまして資金の流出が自由になった。我が国の相続税の仕組みですが、相続人が国外におりますと、国内の財産だけが相続税の対象になるわけです。
考えてみまして、国外にどれだけおればよろしいかといいますと、これはたしか非居住者ということですので、1年いなければよろしいと。かつてですと、日本に1年いないというのは大変大きなことだったのかもしれないのですが、現在の世の中で、1年不在していることがそんなに大きな意味を持つのかどうかということです。
所得課税の世界ですと、租税条約ができ上がっていますので、いまさら変えるわけにいかないのですが、相続税は日米条約しかございませんので、我が国の国内法でいくらでも検討することは可能であります。例えば、このあたりの納税義務が軽減される国外にいる相続人ですけれども、これの期間を延ばして5年ぐらいにするとか、そういう形での先行きの検討はなされてしかるべきではないかと思っております。
〇加藤会長
石さん、どうぞ。
〇石特別委員
会社分割に関して、温厚な水野さんが何度もクレームをつけておりますから、これは重大な問題だと受けとめて法務省なり商法のほうの方にぜひ言っていただきたいと思います。
私の意見を二、三、申し上げます。これから年度改正をやり、中期答申という段取りになっていますが、私は、その先におそらく起こるであろう、21世紀に入ったあたりの抜本改革を視野に入れた議論をいまからしておかないとまずいのではないかと思います。したがって、基本的な原則なり視点を今回の一連の議論の中に含み込むべきだと思っております。
というのは、景気が回復すればいろいろな形でさまざまなことが起きるわけであります。いまやろうとしている直近の話も、長い税制改革と抵触しない方向で行くべきでありまして、外圧が来たからといってアドホックにちょこちょこいじくるのは、日本の税制をひどく悪いほうにもっていくのではないかと絶えず心配しておりますので、その点をきっちり押さえていただきたいと思います。これは総論であります。
各論は、相続税。小渕総理が問題提起があったというので受けとめていろいろ議論しておりますが、景気刺激の面でも、中小企業の育成に関しても、相続税をいじくって目的を達成するとは思わないのです。ただ、総理の発言は重要でありますから、検討しなければいけないと思いますけれども。したがって、必要最小限に押さえるべきである。バブル以降のいろいろな弊害は過去3回の相続税改革で直っていると思います。資料にございましたように、いろいろなケーススタディをやりましたけれども、それほどひどい税負担になっているとは思えないし、たかだか、と言っては怒られるかもしれませんが、100人ケースがあって5%ちょっとの話でありますから、ロットとしても少ないのです。
そういう意味で、直すとすれば、税率70%をほかの税率きざみに関係のないようにいじくるか、あるいは、中小企業の事業承継の株式の算定で何かひと工夫あるのかというぐらいでいいのではないかと思います。
もう一つは、401(K)に絡む新しいタイプの年金であります。これは年金とついていますけれども、貯蓄だと思います。自己責任でやりますし、幾ら入ってくるかわからないし、何といっても大数の法則が効かない形で個人責任でやるわけですから、銀行に預金する、郵貯に入れる等々と類似した行為を我々の責任でやるわけです。ただ、60歳まで引き出せないという面は年金の要素があるかもしれませんが、そこを加味しても、これは年金としてスタートラインを考えないと議論が混乱すると思います。現行の年金税制も、入口、真ん中、外と、えらく甘すぎますので、年金税制を改革するときに、当然、どちらかで許可することにならなければいけない。401(K)がまた、従来の甘いほうに引きずられてはまずいのではないかというのが私の意見です。
それから、水野さんもおっしゃっていましたように、外形はせっかく我々が苦労してつくったものでありますので、くず箱に行ってしまうのでは大変腹立たしゅうございます。4案あるわけですから、その中の利害得失を図るとか、実施段階でどういう問題があるかということも含めて、何だったら、もう一回ぐらい税調のラウンドにのせてもらいたいような気も小委員長としては持っております。
最後に、環境について。いまグリーン化の問題がありますが、問題提起としてはいいと思います。さはさりながら中身を検討いたしますと、減税先行的な話でありまして、本来環境の負荷に対してかける環境税の性格が全く生かされていないということもございます。これを問題提起として受けとめて、しかし、環境に対する税は非常に重要だという点に力点を置いて、中期答申あるいはその先を見るような書き方にしていただきたいと思います。
〇加藤会長
河野さん、どうぞ。
〇河野特別委員
簡単に申し上げますけれども、相続税は、いま石先生がおっしゃったようなことが経過としてあるわけです。いまの税率構造を直ちに直さなければいけないという緊急性はないし、どうせこれは所得税の抜本改正とのにらみでやる話になって、年末答申で全体をどうするかという議論をやる余裕もありません。まずこれが大前提です。
しかし、さはさりながら二つあって、一つは、中小企業の事業承継に絡む話で、同族会社の株式をどう評価するかという話、さっきの説明にありましたけれども、これは実は私なんかよくわからないんですよ。大変細かい通達が国税庁から出ていることはわかりますけれども、とにかくここは、なにがしかの改正をやらなければならない諸般の状況があると思うのです。さっき石さんが言われたけれども、税の基本的な原則に抵触しない範囲内で説明できるような手直しをやるなら、それはそれで結構だと思います。
もう一つ、最高税率の話があって、これにはいろいろな意見があったことはよく聞いています。これだけ切り離してやることの是非は議論が分かれたと思うのです。分かれていると思うけれども、私は、これはのどにかかったトゲだと思っています。ちょっと言い方がピンとこないかもしれないけれども、これを取り除かないと相続税問題に対する冷静な議論ができないのです。これ、手探りでやるような話ですから、特にどういうふうに再配分をやるかということについて。適用人数は少ないのです。少ないけど、いかにも7割というのは突出しすぎていると思うのです。
ただし、これには一つ条件があって、さっき初めて説明がありましたけれども、租税回避行為というのは、僕らが茶飲み話で財界人に聞けば、金持ちは結構やってますよという話はたくさん聞くのです。ただ、裏付けがないからよくわからないのです。誰がどんな租税回避をやっているかというのはよくわからない。推定するに、やっているに違いないと思うのです。これについては水野さんが具体のことを言われたので、なるほどそうかと思って聞いていたけれども、最高税率70%をいじるなら、租税回避について穴を埋めますよ、と。一般庶民から見て、「大金持ちだけ優遇しやがった、いまの総理、何やってるんだ」と言われないようにセットでやるべきだという気がします。
それから、外形標準課税の話は長い長いいきさつがあるのです。ただ、これは実行するにはいまだ機熟さずなのです。政治情勢と経済情勢、二つから勘案して。これは今度の答申では、「念には念を押して積極評価しておく、ただ、いろいろなやり方があるわけで」ということも触れながら、そういうふうにしておかないと、いままで議論してきたことは何なんだという気がするのです。情けないと思うのです。いろいろな抵抗があることはよくわかっています。しかし、それを排除しなくてならないような状況もあるわけで、積極評価をしておくことが税調としては正当なのではないかという気がします。
最後に401(K)です。私もそういう選択肢ができても構わないと思うのだけれども、事の性格上、税法上めったやたらと優遇措置を与えることは大反対です。金利とかその他に対して、どういう税のとり方をやるのかということは原則あるわけです。これを変えるなら別ですが、いま、一応ルールがあるわけです。その範囲内で、それに抵触しないような形でやる。常に長い尺度でいまの問題を裁くという石先生のご意見に全く賛成で、同じことを申し上げておきます。
〇加藤会長
笹森さん、どうぞ。
〇笹森委員
まず総論を申し上げますと、いま、石先生、河野先生がそれぞれ言われた観点とやや似ているのですが、抜本的な改革論の問題です。前回も申し上げさせてもらいましたが、税制と社会保障、これをトータルでどういうビジョンを出すのかということがいま一番求められると思うのです。大蔵省マターでない部分もあるのですが、特に厚生省関係の社会保障、税制と社会保障とセットで全体像を描いて、それに対してどういうあり方が基本的にいいのかというのがどこでも示されない。各論で出てくるわけです。
今回の税制もいろいろ出されているけれども、問題は、少子・高齢化になるのはわかりきっている。支える側が少子で、分母がどんどん小さくなる。支えられる側も高齢化でカサがどんどん大きくなる。そこに2本の柱が立たなければいけない。これは、税制と年金制度の社会保障を根幹にする、介護とか医療がつく、そういう部分だと思います。この論議がいま日本の中でされていない。ここのところを明確に打ち出すという役割が大きいのだと思います。そういう意味では、20年先、25年先の抜本改革論につながる、当面しなければならない部分と、そのことをどういうふうに整理するか、これは明確にさせていただきたいというのが一つです。
それから各論ですが、外形標準課税は、連合はあまり賛成はしていなかったのですけれども、ごみ箱に入れるつもりは全くありません。ただ、できるだけ早くということになると、いま、各論の部分が具体的に詰まっていない。4案の部分について、どういうふうなケースでこうなるのだということを明確にした上で、そのことの選択をどう求めるかということにするべきだから、いまの段階では、「できる限り早く」という表現についてはいかがかな、というふうに思っております。
相続税の関係ですが、設定がちょっと違っているのではないか。すべてのケースについて「子供3人」と出ていますが、現状は1.34だと思います。いま年金制度の改革で打ち出されているのは、1.6 人になるだろうという見方ですが、これすら危うい。ということになると、半分にもいかないという状況ですから、その場合にどうなるかというケースを一つ正確に出すべきだと思います。中期的な問題は、いま河野先生が言われたように、私も哲学論を持っているわけではないので言い切れませんけれども、平成11年の答申の域、ここまでが限界なのではないかと思っております。
それから、401(K)は、労働側の立場からすれば論外と思っておりますが、日本の場合にはそもそも成り立ちが違う。退職金の分割なのです。そのことをどう整理するかというのが一つ前提条件としてクリアされて、それで、退職金と年金の問題を税制上どうするのかというのに入っていかなければいけないということが一つ。
もう一つは、ポータブル化の問題もいろいろ言われますけれども、企業年金制度を持っていないところは日本の中では全体的に4割です。ですから、ポータブル化しても、ないところの企業が新たに年金制度をつくるかというのは疑問です。そうなると、あるところの人、いうなれば富裕な層ばかりが面倒を見られるということに必ずつながっていくので、そういう意味では支援をする優遇措置と。税制上やるとなれば、当然とらなければいけないのかもしれませんが、偏るのではないかということが一つと、リスク転嫁があまりにも大きい。
個人運用というのは日本人はできませんよ。いま厚生省が扱っている年金基金の問題が、きちんとした運用をしているかどうかは別です。大幅な赤字を出していることも事実だから、どっちがいいかというのは別ですけれども、ただ、個人のリスクに負わせるという部分の中で、1階建ての部分と2階建ての部分がきっちりとした制度になっていないのに、その上に個人運用の部分だけ先に走らせる。こんな馬鹿な話はないと思っております。
〇加藤会長
塙さん、どうぞ。
〇塙委員
会社分割と連結納税ですけれども、いま各企業では、タイミングとして非常に急いで決めていただきたいということを思っているところが多うございます。特に連結納税は2001年からというお話もあったので、新聞等でもごらんのように、それを前提に企業統合、分割が行われております。これは、そのタイミングで連結納税が行われるということでやっているわけで、先ほどのお話のように、会社分割の法制のほうで忙しくて、連結納税はそのあとだからちょっと待てということになりますと、経済界ではかなり混乱を起こすのではないかと思います。
それから、会社分割そのものについてですが、複雑に考えれば確かにいろいろあるかと思うのですけれども、企業側は、いまある会社を分割したというだけで何で税金が増えたり減ったりするのだろうか、そういうことについての素朴な疑問があります。分割の方法は、ここにある絵だけではなくても、いろいろな形が考えられておりますし、分割だけではなくて、統合と分割がミックスしていろいろ考えられているわけでございます。ただ形を変えるだけで税金が変わることについて十分理解できないところがありますので、そのタイミングと、フレキシビリティーといいますか、その二点についてよく検討していただきたいと思います。
〇加藤会長
佐野さん、どうぞ。
〇佐野特別委員
年金税制、とりわけ401(K)について申し上げたいのですが、これは平成12年度改正の検討項目となっておりますが、12年度改正には間に合わないといいますか、議論の環境ができていない。年末まで2週間あまりで、急いで結論を出す状況にはないという判断をしております。
ここ何年かかかって、経済戦略会議とか、政府の経済対策とか、確定拠出型年金の導入が言われておりまして、来年秋に創設と。これは誰が言ったのか、どこで決まったのかよくわかりませんが、いつの間にかそういう一つの時限的なものが設定されて、税制的な対応を決めなければいかんような雰囲気がありますが、私は必ずしもそうは思っていない。
といいますのは、401(K)というものがあたかも大変結構な制度であるかのごとき評価で来すぎたのではないか。これ、中身をいろいろ考えてみますと、必ずしもいいことばかりではないわけであります。例えば、これをやるとたしかに企業は身軽になるかもしれない。ただ、過去勤務債務といいますか、いま年金をもらっているOBたちのお金は誰が出すのかという問題は解消されないわけでありまして、むしろその問題が表面に出てくる。
それから、政府とか自民党の小委員会の案ですと、貯蓄か年金かという議論にも絡むのですが、選択制だと。つまり、ある企業がこれを導入すると決めても、個々人が入る入らないは自由。ある人は相変わらず確定給付、ある人はこっちの確定拠出にいくとなった場合、年金財政というのは一体どうなってしまうのか。一、二、例を申しますと、そういったところが詰まっていないわけであります。あるいは主婦も入れるとか何とか、要求案自体が整備されていないという感じがいたします。そういうものを前提に税金をまけるとか、まけないという議論をやれと言われても私どもは少々困ってしまう、そういう感じがいたします。
もう一つ、よくわからないのは、退職給与規約との関係。いまの企業年金は退職給与規約をもとにしているのですが、これはその中に入るのか。つまり、代替的な関係にあるのか、それの上乗せ的なものなのか、そこら辺もよくわからないわけであります。
あと制度的な問題としては、これに絡む問題として解決されていない問題が結構ある。その一つが、厚生年金基金の代行返上というのを産業界は非常に求めているわけでありますが、これを返上するかしないかで積立不足というのがえらい変わってくる。したがって、労使交渉に対する材料がえらく変わってくる。この制度というのは労使の合意により確定拠出型年金規約をつくると。実は労使合意が一丁目一番地なわけでして、労使交渉に第一義的に委ねるということなのですが、こういう状態で労使交渉をどうやってやるのだろうか。笹森さんもいらっしゃいますが、非常にお困りではないかという気がいたします。
それから、もう一つの問題といたしまして、前回、石先生にもちらっと伺ったのですが、企業年金会計との関係を私は個人的に非常に大事にしています。といいますのは、退職金の処理という問題がもう一つ選択肢であってもいいのではないか。前回の法人税改革、課税ベース拡大と税率引下げという議論の中で、退職給与引当金の限度額が引き下げられたわけですが、その後、年金会計というものが出てきて発生給付みたいな問題が出てきてしまった。
個人的な意見として言わせていただくと、退職給与引当金の40から20にするという率。議論の前提が変わったのだから、年金会計との絡みで改めて議論する必要があってもいいのかなというふうに思っております。これまでですと、40から20に税率を引き下げたのだからもうお金ないよということで、それはそれで納得できるのですが、こういうものに使うお金が出てくると、引当金の見直しも議論の対象になるのかなという気がいたします。
あれやこれやで、この問題は、経済戦略会議等々で言っているのとは違って、あるいは、要求案に出ている内容とは違って、もっと幅広く深く議論すべき問題が多すぎる。それをあと2週間で結論出せと言われても非常に困ってしまう。あやふやな結論になってしまう。非常にリスキーであるという気がいたします。労使交渉に委ねるという中で、何か安易な税制対策を立てるとどちらか片方に加担してしまうことになる。税制の中立性という観点から考えても慎重な審議を求められる問題ではないか、そのように思っております。
〇加藤会長
島田さん、どうぞ。
〇島田委員
今度の年度改正ですが、石先生言われたように、長期・中期の本格改革を踏まえながら年度提案をするということは非常に重要だと思うのです。特にどこを踏まえるかについて、税制の公平・中立・簡素ということは三大原則で言われているわけですけれども、私は、特に活力というものをもう一つの原則として踏まえることがあってもいいのではないかと常々考えているわけです。それを踏まえた上で、年度改正に取り組んでいく必要があるのではないかと思います。
二つ、三つ申し上げたいのですが、一つは、事業承継の問題です。さっき河野さんがおっしゃったように、いろいろな問題があって事態が十分明らかではないわけですけれども、最高税率の問題に象徴されるように、一生懸命努力をする、いろいろな工夫する、そういうふうにして活躍してきた人で、事業が適切に承継できないという感じを持っている人が多いことは事実なのです。国民全体の中から見ればわずかかもしれませんが、そのことが日本社会の活力についてある種の問題を持っているのではないか。
ただ、先ほども事務局から資料の説明がありましたけれども、では、具体的にどういう状況の中でそういうことになっているのかということについてはまだまだ明らかではないわけです。あるいは、さっき河野さんがおっしゃった問題で、税の回避についていろいろなテクノロジーがありそうなことはみんなよく知っているわけです。そんなこともトータルで踏まえたときに、本当に努力してきた人間が報われないという格好になっているのはどういうところかというのを、もう一段、二段、しっかり研究した上でないといけないと思うのです。
何を言いたいかというと、拙速は避けたほうがいいのかなという感じがします。しかし、これは非常に重要な問題ですから、三つか四つのケースで「そういうことは問題ないんですよ」といって済ませる問題ではないから、もっとしっかり研究をして、「やはりこういうところで活力が生かされないことがあるではないか」というのを確認することが必要だと思います。ですから、そういう問題が重要だということを年度税制に書き込んでおいてもらいたいと思います。
2番目の問題は、401(K)問題に関係するのですが、いま佐野さんがおっしゃったこと、そのとおりだと思います。いろいろな問題があることは事実ですけれども、特に長期的な問題としてとらえますと、いまの公的年金の改革案が長期にどういうことを意味するかというと、後世代になるほど経済成長の成果が年金の給付に反映されない。20年ぐらい先になると、経済成長が反映される場合とされない場合を計算してみると、3割以上ぐらいの差が出てくるかと思います。そういう根本的な構造改革になっているわけです。
これまでの年金というのは賃金スライドですから、経済成長の成果が反映されるわけですけれども、それがなくなってくる。平均的な国民が将来の老後所得を手にするときに経済成長の成果を確保できないということになると、どういう形でこれを補ったらいいのかという問題が出てくるわけです。多様な資産運用の可能性でこれを補うことが必要になるのだろうと思いますが、そういう大きな問題の一環としてとらえる意味もあると思うのです。
もう一つ重要な意味は、経済活力との関係で、いま提起されている税制優遇が適切かどうか、私はわかりません。というか、ちょっと安易な考え方になっていないかなという感じがして、その点は佐野さんと意見が似ているのですが、ただ、税制優遇も含めてこういう制度が制度化されると、かなりの程度、直接金融の比重を将来の経済によって高めることが出てくることが予想されるわけで、それは経済の長期的な方向にとってきわめて望ましいと思います。
ただ、先ほどから笹森さんも意見を出しているように、果たして日本人が個人の責任でリスクをとれると言えるのかと。私は、そんなことはやったことはないという議論をされるのはちょっと後ろ向きの議論だと思うのです。歴史のあり方として、成熟国はそうしなければならない状況になってきていますから、やらなければいけない。ただ、現状は、個人で資産運用のリスクをとれるかといったときに、情報基盤が非常に弱いです。情報が十分にあっていろいろなことがわかるということでなければ、自己責任はとれないわけです。
そんなことを考えると、これも非常に重要な課題で、2週間で片づけろという性質の問題ではない。むしろ逆に、重要だから、時間をかけてしっかりとやる必要がある。私は、これは伸ばしていくべきだと思います。日本人はリスクをとれないと決めつけるのではなくて、リスクがとれるように情報基盤を整備する形で、直接金融の経済にしていくことが活力という面で重要ではないか。それを税制が大局的に支えることは意味があるのではないかということです。
最後に、一番重要なことを言いたいのですが、外形標準課税の問題です。外形標準課税は、きょうご報告もいただきましたし、紹介もいただきましたけれども、石先生の小委員会でやったこの紙は、何度読んでも堂々たるレポートだと思います。それがくず箱行きだとか、あるいは、政治的な配慮で葬られるというのはとんでもない話で、堂々たる議論をしているわけです。
なぜかというと、日本には非常に大きな構造的な問題がいままでありまして、一つは、地方税収が非常に不安定。こんなところで地方行政をしろといっても無理ですから、ここのところを安定化させることは必要である。それから、本来地方というのは応益原則で税をとるべきなのを、応能税に便乗した形で変な税制をずっとやってきた。これはこの際に変えなければいけないことは明らかで、応能であるということによって、地方分権、地方主権という声もありますが、納税者と当局との対話、透明な情報共有による責任ある自治を確立する重要なチャンスなのです。
最後に申し上げたい3点目、一番重要な点ではありますが、公平と言われますけれども、地方自治体にそれなりのサービスをさせながら企業活動をやっている以上、6割が税を払わないというのは非常に問題です。よく、中小企業の負担が大変ではないかという議論があるけれども、そうではなくて、利益の上がっている中小企業が大変な所得税負担を経ている、そのことを軽減して全体に広く負担するのだという議論が抜けているから、中小企業にやたら負担がかかるという話ですけれども、成長力があって利益の出るところは負担が軽減されるわけです。ですから、経済構造改革に非常に役立つし、活力という面で非常に重要だと。
これだけしっかりした論理があって、これだけのレポートが出ている。何年も何年も時間を費やしてやってきた。そして、四つの基準がありますけれども、これの中で産業間によって一番バイアスの少ないのは、事業活動価値という変な名前がついていますけれども、付加価値です。はっきりそういうことになっているのはわかっているわけですから、そういうことをもう一回書き込むことが必要で、景気の配慮ということですけれども、これは短期的な問題で、重要な問題ですから、さっき申し上げた2点とは違って、今年度税制改革で射程距離の中に入れて実現するように努力すべきだ、というくらいの強い調子が入っていいと思います。
〇加藤会長
松尾さん、どうぞ。
〇松尾委員
総論部分で一言いいたいことがあります。これまでの財政主導による景気刺激策の効果が次第にあらわれてきていると思うのです。国民は、てこ入れのツケが将来増税となってはね返ってくるのではないか、そういうおそれから消費を慎重にさせている要素もあるのではないかと思うのです。
財政出動がとっくに限界に来ているのは明らかですね。世の中には楽観論者もいまして、国債増発をしても国内の貯蓄があるから心配することはないんだという人もいますけれども、今回の第2次補正で、国と地方の債務残高のGDPに対する比率はおそらく120%を上回ることになると思うのですが、こういった状況はほかの先進国には見られないです。イタリアよりも上回っている。イタリアよりもひどい状況にあるということはもっとはっきり認識する必要があると思うわけです。財政赤字が巨大化している、これが中長期的に経済成長の阻害要因になることは世界的な常識です。財政再建に本格的に取り組むべき時期に来ていると私は思いますし、そうしないと、後の世代に対してあまりにも無責任であると思います。少なくとも年度改正を考える場合は、そういう視点は頭に入れておく必要があると思います。
それと年金課税についてですが、これまでもご指摘があったように、我が国の年金課税全体が非常に甘すぎる。少なくとも入口か出口かどちらかで課税するのが筋であると思いますし、年金課税全体の適正化は中期答申の大きな柱になると思います。
そういう流れの中でこの401(K)をどう考えるかでありますが、企業が拠出する部分については損金に算入されますので、問題はないと思いますけれども、従業員の拠出部分は明らかに貯蓄であると思いますし、相互扶助性もない。これに対して公的年金と同じ扱いを求めるスキームというのはとんでもない話だと思います。いまの連立政権ですと、時間的余裕がなくてもこんなこともやってしまいかねないので、私は、これは絶対認めることはできないというシグナルを出す必要があると思います。
〇加藤会長
和田さん。
〇和田委員
相続税につきましていろいろご意見が出ておりますけれども、私は、最高税率の下げを含めまして、税率の改正、下げるということについてはどうかなというふうに考えております。所得税のフラット化が進められておりまして、所得の格差が確実に大きくなっている中で、きょうの資料を拝見しましても、具体的な事例が出ております。こういう事例を拝見したときに、どうしてもいま下げていかなければならないというところにはつながらないと感じております。
それから、これが適当な参考資料になるのかどうかわかりませんけれども、きのう、国民生活金融公庫総合研究所が関東・甲信越の個人企業経営者430人にアンケートをとったという調査結果が、新聞に小さい記事で出ておりましたけれども、全体の9割が先代の事業をそのまま受け継いでいる。直面した問題としては先代からの借金の返済が一番であって、次が、技術力・競争力の低下、3番目が、取引先などに対する信用力の低下。相続税の支払いというのは問題として4番目に出てきていて、パーセンテージは必ずしも言われているように大きなものではない。
これは別に税のために調べたものではありませんけれども、さっきお話が出ましたように、事業の承継につきまして、私も周りにいろいろおりますので、大変だという話は出るのですけれども、客観的な資料として、これだけの資料があるから相続税の税率をこういじるべきだ、というほどの納得できるような資料は得られていないのではないかなと考えております。
私は理論的にはわかりませんけれども、私の周りでそういう人たちの話を聞いていましても、非公開株の評価の方法とか、その辺についてはあるいは検討する余地があるのかもしれません。税の回避とかいろいろなことも出ておりますので、いまの段階で、日数が限られたところで、相続税についての税率の引下げということには納得しかねる、それだけ申し上げておきます。
〇加藤会長
水野さん、どうぞ。
〇水野(勝)委員
概ね皆様方と同じ方向の意見でございますが、基本的な改正というか、長期的な検討が今後予定されているところですので、それと抵触することのない年度改正を行う必要があると思います。本格的に景気が回復した場合に問題となるのは、財政構造の体質改善でございますから、それに反することは避けておいたほうがいいのではないか。
しかし、長期的な方向とは別としても、現在の景気情勢との関連でも、していいことはある。それは資産に対する課税でございます。景気が不振だと言われるのは、消費がなかなか伸びてこない、落ち込んでいるということでございますから、その点においては、資産に対する課税が強化されても景気にはそれほど悪影響はないのではないか。そういう意味におきましては、相続税の問題は現時点で取り上げるべき問題なのかどうか。中長期的には所得税との関連、事業承継との関連で基本的に検討していいと思いますけれども、それほど緊急性があるのかどうかは疑問だと思います。
同じように年金課税についてもそうでございまして、いろいろご議論が出ております。これは貯蓄そのものではないかというご議論が多いわけでございますので、そうした貯蓄に対して、特例的な措置を拡大することにもつながる年金課税の見直しは避けておいたほうがいいのではないかと思うわけでございます。
それから、法人課税でございますが、現在は合併税制はあるけれども、たしかに分割的なものの規定はほとんどない。現物出資の特例ぐらいのものでございますから、現在の景気情勢に合わせれば、むしろその整備を急ぐべきではないかと思うわけでございます。
連結納税の点につきましては、企業会計上も来年から連結決算が中心になるということで、そういう動きになっているのが世の中の動きであるとすればやむを得ないとは思うのですが、法人税というのは、各法人が法人ごとに、法人を単位として企業活動を行った成果に対して課税させていただくということであれば、本当は単独課税が原則ではないかと思うわけでございます。しかし、世の中がそういう方向に動きつつあるということであれば、検討していくべきことだと思いますけれども、急ぐ話ではないのではないか。
むしろ法人単位別課税から連結納税的なシステムに移行するという意味であれば、同じその機会をとらえまして、個人と法人との関連についても、個人的な会社をつくったとしても個人と法人は一体として課税する、例えばパートナーシップ的な課税、そういったものも併せて検討すべきではないか、そんなふうにも思うわけでございます。分割の問題は、組織の変更のときに一度起こる問題ですけれども、連結とか単独は経常的に起こる問題ですから、じっくりと腰を据えて検討すべき問題ではないかと思うわけでございます。
外形標準課税でございますが、事業税という事業活動に対する応益的な課税を維持する以上は、現在の事業税はおかしい、付加価値を中心とした課税標準で課税していくべきだと。それはこのおまとめいただいている考え方、まさにそのものでございますが、所得、消費、資産、これがよく言われる三つの課税物件でございます。そうした意味におきましては、地方税、あるいは都道府県税の柱として、事業活動税といったものが本当にふさわしいのかどうか。法人課税のあり方、あるいは消費課税のあり方全体の中で考えた場合に、そういった考え方がどういうふうに位置づけられるのか、その点についてはいつも若干違和感を感ずるところでございます。
また現実的に考えても、もう30年、40年、50年と検討されてきている。それだけの問題がある大問題でございますが、現在は景気情勢が思わしくないからといってできない。しかし、景気がよくなって税収が上がってまいりますと、各地方団体が真面目にさらに取り組むのかどうか。景気がよくなって税収が上がる時期になって外形に移行するというときには、おそらく利益を上げている大法人は減税になり、中小の方々が負担増になる。景気が上がり税収が上がるときに、そういった改正が本当に現実性が出てくるのかどうか。そういったことの繰り返しがいままでの30年、40年の歴史ではないかと思うわけでございます。
そういう意味におきましては、大変ご努力の結果のおまとめでございますけれども、基本的にはそうした点に問題があるので、現在までのような経緯をたどってきている、そして、今後もたどる可能性が強いのではないか、そんな懸念を持っているわけでございます。
〇加藤会長
松浦さん、どうぞ。
〇松浦委員
平成12年度の税制改正を審議するに当たりまして、基本的な考え方の中に地方分権の推進という考え方はきちんと位置づけておいていただきたいと思っております。と申しますのは、地方分権推進一括法が成立して、今後、地方税源の充実を図っていこうという中で、私どもの立場からいたしますと、例えばゴルフ場利用税の廃止を求める要求とか固定資産税の大幅軽減を求める要求が、いま政治的にかなり強い調子で言われているわけでございます。選挙等も近いわけで、それはわからないじゃないわけでございますけれども、地方分権の推進において地方税の充実確保が必要なのだという一つの柱を、税調の中でしっかりと立てておいていただければというふうに思っております。
二つ目は、税負担の公平性と地方税の安定性を確保する象徴的意義もある事業税の外形標準課税について、いまも数人の方からご発言がございましたけれども、小委員会報告を踏まえて、できるだけ早期に導入を図るよう年度答申の中でもきちんと位置づけていただければと思っております。
〇加藤会長
柳島さん、どうぞ。
〇柳島特別委員
一言だけ簡単に相続税について申し上げたいと思います。前回も申し上げたのですが、この大蔵省の資料というのは基本的におかしい、間違っていると思います。それはなぜかといいますと、秋葉原の電器屋さんと松涛の資産家、これは、小規模宅地制度とか、そういう諸控除をフルに使って一番うまくいった例なのです。隣に税理士の専門家もいらっしゃいます。私も税理士とかいろいろなところを取材して聞いたのですけれども、これはあり得ないケースです。
例えば、この秋葉原の電器屋さんの場合は、個人事業主であるところがミソです。これがもし法人だったら税金をとられるわけです。松涛の人も、息子がいて奥さんがいて、4分割とか5分割するから税金がとられないということで、これはもう少し実態を詳しく調べていただきたいと思います。
私が聞いたところでは、税務署が株を査定しまして、実際にこれこれの額だと。これで払えないから財務局に持っていって物納しようとすると、財務局は、その額では受け取らない、市場で売ってきなさいということを言うらしいのです。だから、やるやらないは別にして、恣意的ではない資料をちゃんと出さないと国民に誤解を与えるだろうと思うのです。
もう一つは、100人に5人だと言われますけれども、大都会ではどのくらい発生しているのか。結果の平等より機会の平等だ、オギャアと生まれたときはみんな一緒だと。それでとるというのもわかるのですが、おそらくとり方が現場で非常に混乱しているのではないかと思います。だから、もう少し実態をよく調べていただきたい。以上です。
〇加藤会長
まだご質問がおありだと思いますけれども、いま柳島さんが出された問題と、先ほど笹森さんが出された標準家庭の問題について、田中税制第三課長から説明をしたいということです。どうぞ。
〇田中税制第三課長
きょうはちょっと時間がなかったので飛ばしてしまいましたが、39ページをお開きいただきたいと思います。左から4番目に「被相続人1人当たり法定相続人数」という数字がございまして、62年から平成9年まで、子供の数が少なくなったということでしょうけれども、減ってきております。ただ、現在はまだ3.68という数字でございます。少子化が進んで、現在の出生率は1.3 とか1.4 とかそういう数字だと思うのですが、いま亡くなられる方はまだお子さんがかなりいらっしゃる方が多いという点が一つございます。
それから、この3.68の中に、配偶者が入っていらっしゃる方と、配偶者がすでに亡くなっていらっしゃる方がいます。いわゆる人口統計では、半分ぐらいは配偶者がいらっしゃる、あるいは、半分ぐらいはいらっしゃらない、こういう感じでございまして、そういう意味で子供の数については、3.68から1を引く、あるいは、引かないということがその場合の計算方式になるということだろうと思います。
柳島委員のおっしゃいましたいわゆる実態、これは、先ほど申し上げましたようにいま調べております。なるべく早い段階でお出ししたいと思っております。株式のモデルケースというのはなかなか難しゅうございまして、先ほど申し上げたように株式の評価方法がかなり分かれています。
例えば先ほどの評価で、利益があまり出なかったり配当が出なかったりしますと、類似業種比準方式の部分の額がかなり落ちる。したがって、幾ら土地を持っているか、幾ら資産を持っているかだけでは株式のモデルケースがつくれないものですから、そういう意味で、先ほどの秋葉原の例は、株を持っていらっしゃる会社形態の人の場合には全く適用になりません。そこら辺の実態をいま調べておりますので、後刻、ご報告ができるかと思います。
〇加藤会長
それでは、きょうはこれで終わります。12月3日が次回でございますが、このときに、きょうお出しになれなかった問題、さらにまた新しい問題というふうに全体を議論していただければと思っております。
どうもありがとうございました。
〔閉会〕
(注)
本議事録は毎回の総会後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、大蔵省主税局及び自治省税務局の文責において作成した資料です。
内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。