第39回総会 議事録

平成11年11月26日開催

加藤会長

ただいまから税制調査会の第39回の総会、第11回基本問題小委員会、並びに第10回基本枠組ワーキンググループ、及び課税問題ワーキンググループの合同会議を開催いたします。

本日は宮澤大蔵大臣に御出席をいただいております。来年度答申に向けて立ち上げの審議を開始することにいたしておりますので、まず一言御挨拶をいただきたいと思います。

どうぞよろしくお願いいたします。

宮澤大蔵大臣

林政務次官、御同席いただきましたので、御紹介いたします。

税制調査会第39回総会が開催されるに当たりまして、一言御挨拶を申し上げます。

税制調査会の委員の皆さまには、これまでも精力的な御審議をいただいておりまして、心から御礼を申し上げます。また、本日もお忙しいところをおいでくださいまして、ありがとうございました。

税制につきましては、昨年は景気に最大限配慮するという趣旨から御審議をお願いしまして、その結果といたしまして、個人所得課税及び法人課税の大幅な減税をはじめ、国・地方を合わせまして平年度9兆円を超える減税を今年度において実施をさせていただくことができました。このことは、不況からの脱却を使命としましたこの内閣の最初のしかも最大の仕事でございますので、税制調査会からこのような税制の施行につきまして御審議をいただき、またお認めいただきましたことは、この1年間ばかりではございませんが、少なくともこの1年間において非常に大きな影響があったことは、おそらく皆さま方もお認めいただいておることと思います。

また、現在、税制調査会におきましては、中期答申に向けまして「我が国の望ましい税制のあり方」についての御審議をいただいておるわけでございます。このことは、現在の目先の問題はそれといたしまして、21世紀に我が国の税制のあるべき姿をどのように構築するかということの礎となりますものでございますので、現状につきましてもいろいろとお願いをすることはございますが、将来に向かってのこの大きな仕事につきましても、引き続き将来に向けての観点から御議論をお願い申し上げたいと思います。

そこで、最近の経済情勢でございますが、昨年ああいう御答申をいただきまして、それを実施し始めたばかりの1年でございますけれども、1年たちまして、いろいろな政策効果が少しずつ浸透したかと思いますし、アジアの情勢も、思いがけず早く展開をしてまいりましたことも影響しておると思いますけれども、経済そのものはおそらく最悪期は脱したのではないか、また大方がそういうふうに判断しておられますので、国際的にもそういう見方でございますから、まあ、そこは多分間違いないと思っております。

しかしながら、今年の第1四半期、第2四半期は、とにかくそういう結果になりましたが、第2四半期ぐらいになりますと、どうも消費は実は余り強くないように見られます。ことにその後の家計調査なんかを見ておりますと、消費の伸びは必ずしもよくない。それは基本的には所得の伸びがよくないということでございます。月によって消費性向が高くなったりする月もありますけれども、そんなことはしょっちゅう続くはずはありませんので、やはり所得の伸びがどうしてもよくないように、足下もそうではないかと実は思うのでございますが、やはりリストラ等々がこれだけ行われますと、むしろそれは不思議でないのかもしれないと思いますし、今年の暮れのボーナスなんかも、いいと言ってらっしゃるところはほとんどないように思います。

雇用のほうの数字は、不思議に5%になるなると言ってならずにおりますが、見ておりますと、大企業ではやはり常雇用が減っていまして、そして、パートの雇用にそれが転換している。それはかなり大きゅうございます。中小は必ずしもそうではないようですが、大がそうですから、大数的にはそういうことで雇用の失業者数の激増というのは救われているように思いますけれども、やはり所得ということになりますと、どうしても所得の伸びは悪いというふうに思われます。

それから、設備投資も、これはいまさら不思議はございませんけれども、伸びは甚だよくないということでございます。それでございますから、もう一度財政の後押しをしなければならない現状だと思いますし、財政そのものもまた公共投資につきましては、地方財政がことに非常に苦境でございますから、単独事業などはなかなか地方はやってくれない。やれないと言ったほうがいいのかもしれませんが。地方財政の問題でもありますから、その手当てを昨年もいたしましたが、これからもしなければなりません。いずれにしても、公共事業についてのたるみがどうも出てきそうな、いつになりますかわかりませんが、すでに出ている分もあるかもしれませんし、来年の1~2月にはどうもそうなるのではないかということもございますから、そういうことも考えまして、補正予算と本予算をもう一遍つくる意味で、15か月で財政の後押しをしなければならないという判断をいたしました。

御承知のように、しかしその結果としては、公債依存度が43%ということに今回の補正予算をもちましてなるわけでありますから、いまの状況をいろいろ考えまして、来年はもうこういうことを繰り返さないようにならないかなと、民需が官需をとってくれて、もう何もしない、とはもとより思いませんけれども、いまのような極端な予算を組まなくてもいいようなことに、来年のいま頃にはなっていてくれないかなというのが正直な気持ちでございます。

もとより皆さまには、そういう財政の将来の姿というのは御心配いただいておるわけでして、私どもも、それはもう一刻も早くしなければならない仕事でありますが、ともかく二兎を追うわけにもいきませんから、我が国の経済がプラスの成長軌道に乗ったと判断されましたら、もう早速にいわゆる財政改革に取り組まなければならないと思っております。その際にはもとより税制についても基本的にいろいろお願いを申し上げなければならない。そのことはすでに御検討していただいておるわけですけれども、それによって初めて21世紀の本格的な税制改革がやっていただけるのではないか、それと同時に財政改革というものもやっていけるようになればと思っておるわけでございます。

さしずめ平成12年度予算編成も間近になりましたので、本日からは平成12年度の税制改正についての御審議をお願いすることになるのだと承っておりますけれども、大変時間も短こうございますが、平成12年度税制について、やはりいろいろ思いますと、非常に非正常な経済状態ですから、早く脱却しなければならないと同時に、しかしその脱却した姿は21世紀のほうに向かって正しい姿勢になっていなければいかんという問題がありますから、何でもかんでもやればいい、というわけのものではもとよりないのであろうと思います。その辺はもうよく御存じでございますから、それもあわせまして平成12年度税制改正についての指針をお示しくださるようにお願いをいたします。

お忙しい皆さまに大変短い時間でお願いをいたしますことになりますが、どうぞ会長、よろしくお願いを申し上げます。

加藤会長

大変示唆のある御挨拶をありがとうございました。

大臣は日程の御都合もございますので、ここで退席されますが、御了承をお願いいたします。

宮澤大蔵大臣

それでは、どうぞよろしくお願い申し上げます。

(宮澤大蔵大臣 退席)

加藤会長

なお、本日は林政務次官に御出席をいただいておりますが、時間のある限りおいでいただけるということで、大変うれしく思っております。どうもありがとうございました。

本日の進め方でございますが、まず3時間という時間を皆さま方にお願いをいたしましたが、前半のところで中期的な答申でまだ残っておりました部分、個人所得課税についての議論を行いまして、その後、後半が来年度答申に向けた立ち上げの審議を行う、という形で進めたいと考えております。

したがって、後ほど保利自治大臣がお見えになりますが、そのお見えになりましたときに御挨拶をいただくことにいたしまして、審議はそのまま続けていきたいと考えております。

さて、そこで今日の審議に入りたいと思いますが、これまで中期答申に向けた検討といたしまして、個人所得課税については、基本小委員会で3回にわたり議論を行いました。本日は個人所得課税の見直しに向けた第4回目の検討といたしまして、総合課税と分離課税、所得分類と所得計算方法、あるいは損益通算などの課税方式を論じたいと思っております。それが1番目でありまして、2番目には、納税者番号制度についても議論をしたいと考えております。昨年、ワーキンググループで取りまとめていただきました中間取りまとめをもとにいたしまして、個人所得課税の広範な課題について一通り概括できるのではないかと、こういうふうに考えております。

納税者番号制度の問題については、当調査会といたしましては、いままでの答申で意見を述べてきておりますが、今年8月には住民基本台帳法の改正法が成立するなどの変化がありましたので、このような環境変化も含めて議論したいと思っております。

さらに、3番目には国際的な税制論議に関してOECDを中心に議論が進められているということで、有害な税の競争というようなこと、あるいは電子商取引に対する課税のあり方などについて検討していく必要があります。こうしたことが今日の議題になるかと思います。

それでは、まず、事務局から関連の資料について簡単に説明していただきたいと思います。

まず第1に、総合課税と分離課税等の課税方式について、加藤総務課長からお願いいたします。

加藤総務課長

総務課長の加藤でございます。

お手許に、「総39-1」で、もうすでに基本枠組・課税問題、両ワーキンググループの中間取りまとめをいただいております。これで論点等が整理されておるわけでございますが、それに加えまして「総39-2」『説明資料(個人所得課税[4])』という資料を使いまして、検討のベースとなる資料について簡単に御説明したいと思います。

まず1ページ目からでございますが、1ページ目は所得税の基本的仕組みということで、最終的な税額を計算する過程があるわけですが、その一番最初の、収入または経済的利益、ここのスタートがまず1つ大きな大事な点でございまして、2ページを見ていただきますと、そもそも課税対象となる所得というものをどう考えるか。税法上の課税の対象となる所得というもののほかに、やはり経済的にはもう少し外側に広い所得がございます。その中で税法上の課税の対象となる所得というものがあり、その中で非課税所得を控除し、さらにまた特別控除などの担税力等々の調整も含めた調整があって、最終的に課税所得が確定していくと、こういうプロセスでございます。

3ページもその関係が別の形で書かれております。

4ページ目以降、いわゆる課税方式の問題でございますが、4ページは、総合課税か分離課税かという、いわゆる課税方式についての従来の政府税制調査会の基本的な考え方を示してある答申を抜き刷りさせてもらいました。

(2)の真ん中あたりのところで、「当調査会は、従来から、利子・株式等譲渡益について、基本的に総合課税を目指すべきであるとの考え方を表明してきた」と。ただ、これに対して、「累進税率や所得把握を嫌った資金の海外シフトのおそれ、各金融資産の税引後収益が納税者毎に異なること、年末調整の対象になる大多数のサラリーマンに膨大な申告事務負担をもたらす懸念があること等の問題を指摘する意見があった」、それから、「所得課税の税率構造のフラット化が進めば、公平性の観点から総合課税化する必要は少なくなるのではないかとの意見があった」ということで、総合課税と、それに対するいわゆる分離課税についても、メリット・デメリット、いわゆる課税方式について、広く今後とも議論していく必要があるのだという御指摘をいただいております。

5ページは、そういうことでその後も金融小委等々でもいろいろ御議論いただきまして、大体、公平・中立・簡素という観点から、総合課税と分離課税というものが、どういうメリット・デメリットがあるのかということを整理してきておるわけでございます。それがこの資料でございます。

それで、検討に際しまして、やはり各国の状況もこの問題については非常に重要だということで、6ページに若干外国等の課税方式の比較表をつけております。どちらも原則としては総合課税、つまり給与、事業所得、いろいろな種類の所得がありますが、基本は総合課税ということだと思います。ただ、利子とかキャピタルゲインについてどういう課税をするかという点の違い、もう1つは、これもあとで出てきますけども、総合課税の場合の源泉徴収の問題とか、年末調整のあり方とか、そういう点がやはり各国それぞれいろいろな違いがあるわけでございます。

7ページ以降は、基本的に課税をしていく場合、総合課税、分離課税いろいろな方式があるその現状、まずいまの現状、日本の場合は基本的に総合課税ということで、上の欄で給与収入とか、事業収入とか、それぞれ所得を計算して総合して、あとは人的控除等々で引いていくだけです。そのほかに、所得の種類によって、山林所得以下、山林、退職、それから株式譲渡、利子等々、分離課税が行われている。ですから基本は総合課税ですが、所得の種類によって分離課税を採用するという混合方式がとられております。

次のページをちょっと見ていただきますと、いろいろな所得の種類があるわけですけども、いまの税法上は10種類の所得に分類をしております。所得分類というのは、現在の状況においてこういう分類が正しいかどうか、という御議論も当然ありますが、総合課税をする場合であっても、所得の種類によって、いわゆる所得計算についてはどうしてもいろいろ違いが出てまいりますので、分類自体は、分離課税をするから分類が要る、総合課税だと要らないとか、そういうものでもないわけで、所得計算上の必要性ということもありますので、分類の是非以前に分類の仕方の問題も十分議論をしていく必要があろうかと思っております。

それから、総合課税の場合はどうしても損益通算という問題がございまして、この話が9ページ以降ちょっと出ておるのですが、基本的に我々総合課税といいますと、利益を総合する、当然損失も通算するというようなイメージになりがちでございますが、確かに我が国のいまの税制は基本的に総合課税ということで、総合課税の対象となるものは損失も損益通算可能ということになっております。

一部、これは黒網の(2)の部分で「以下の損失を除く」というところで、一部の非課税所得に係る損失とか、生活に通常必要でない資産からの損失とか、株式等の譲渡損失、株式等の譲渡損失は分離課税ですから当然なわけですけども、この一部については制限をしておりますが、基本的に制限をしておりません。

ただ、この損益通算の問題は、総合課税をするから損失は必ず通算するのだというのが基本だというのは、必ずしもそうでもなくて、次の10ページを見ていただきますと、アメリカはまさに最も総合課税を原則としている国でありますけども、それぞれ損益通算の場合はいくつかの例外を設けています。損益通算というのは、損失の取扱いというのは、やはり課税ベースの侵食と申しますか、税の抜け道に利用されるということを認識されているということもあるかと思いますが、例えば、アメリカは株は、柱書きのところですけども、当然株の譲渡益は総合課税なのですけども、損失は3,000ドルまでしか損益通算は認めていません。

それから(1)で支払利子控除の制限でございますが、投資目的に借入れして借入金の利子を支払うといっても、その利子が全額損金に落ちるのではなくて、その投資によって生じた所得の範囲内でしかできない。一部ちょっと措置していますが、よくワンルームマンションの問題で、節税ということで借金をしてワンルームマンションを買いまして、賃料をもらっても支払い利子のほうが多いから、その利子を給与所得と通算するというようなことが、いまでも一部あるわけですけれども、アメリカの場合はこういう形でそういうことはできないようにしております。

それから、これもパッシブ・アクティビティ・ロス・ルールと言って、いわゆる事業所得の中でも自分が直接的に事業に関与せずに金だけ出して、配当をむしろ中心にもらうような組合的なものについては、仮にそこで損失が出ても、それは所得の範囲内しか通算しませんよと。こんなことで損益通算の問題というのは、やはり総合課税の中にあっても非常に重要な問題であるということでございます。

11ページ以下は、いままでは制度の問題、税負担水準の問題に絡むわけですが、これ以降は適正な執行という意味で、これは地味ではございますが、税制の適正な執行を確保するためにいろいろな制度が必要だということでございまして、まず給与所得の源泉徴収制度の話でございます。

よく日本の場合は源泉徴収と年末調整で完結するということで、サラリーマンの方の納税意識の高揚に問題があるのではないかという御指摘もございますけども、アメリカは年末調整制度がございませんで、全部申告です。源泉徴収の有無のところを見ていただきたいのですけれども、源泉徴収は日本、アメリカ、イギリス、ドイツともあるわけです。フランスだけないわけですけれども。よく誤解があって、源泉徴収制度と年末調整をセットで、何か誤解されている向きもあるのですけども、廃止して全部申告にしたらどうかという御意見もありますが、やはり適正な申告を確保するという意味では、源泉徴収というのはむしろ欠かせないというのが世界の大勢でございますので、こういう意味でも、源泉徴収というのは適正な課税の確保という見地から、非常に重要な機能を果たしているという点がわかるかと思います。

次に、納税者番号制度との関連におきましても、よく利子・配当の源泉徴収も議論になるわけですが、確かにこちらの場合はアメリカは納税者番号制度ということで源泉徴収はありませんが、イタリアでは源泉徴収も当然セットをしております。あと利子についてはそのほか、どうしても源泉徴収ということで課税の適正を確保するというのが世界の大勢であるということは事実でございます。

次に、13ページは、納税についてのいわゆる挙証責任の問題でございます。申告納税制度をとっている国、賦課制度をとっている国がございますけども、どちら側に挙証責任があるかによってかなり執行のやり方が異なってくる。日本の場合は、税務当局に挙証責任がございますけれども、アメリカの場合はむしろ納税者に挙証責任があるということで、ドイツも挙証責任が基本的には納税者にある。この辺をどうするかによって制度的にも、それから執行面でもかなり違いが出てくるということで、この辺も議論の対象であろうかと思っています。

それとあわせて時効の問題、14ページですが、これも各国でかなり違っておりまして、アングロサクソン系はやはり相当長い、無制限というものも、これは特にアメリカは挙証責任との関係で、無制限でも挙証責任が納税者にありますので、ここはセットになって考えていくことかなという気がいたしますが、この辺もやはり執行と制度とをどのように構築するかということで重要な点だと思います。

最後15ページ以下は法定資料でございます。いくら税制がよくても、適正な執行が担保されなければ絵に描いた餅でありますが、そのためには課税当局が的確な情報収集ができるということが必要であります。各国ともいろいろな工夫をしております。特に納税者番号制度というものは、まさに適正な資料制度があることが前提、つまり資料を名寄せするためのシステムでございますから、どういう資料をどういう形で徴求するか、それをどういうふうに活用するか、これはこれからの税制の構築とともに非常に重要な点だと思っております。

以下は現状の資料でございますので、説明は省略させていただきます。

以上でございます。

加藤会長

ありがとうございました。

それでは、次に納税者番号制度について、池田調査課長からお願いいたします。

池田調査課長

お手許の資料、「総39-4 基小11-4」『納税者番号制度(説明資料)』という表紙になっております資料で簡単に御説明したいと思います。

目次を除きまして1ページを御覧いただきたいと思います。累次の答申でいろいろ議論をしていただいておりまして、若干復習的になりますが、最初に定義でございます。

納税者番号につきましては、納税者に広く番号を付与し、その各種取引を行う際、取引の相手方、例えば金融機関等に番号を告知することが第一段階でございます。そして、それに加えて納税者及び取引の相手方が税務当局に提出する書類に納税者の番号を記載する。こういうことを義務づけることによりまして、納税者に関する課税関係の資料を番号に従って集中的に整理する。番号をキーとしてマッチング、突き合わせをするということでございまして、まず納税者に番号が付与される。それを金融機関等の取引の相手方が本人確認等に使用し、その番号によって本人を確認していただく。さらにそれを税務当局に提出していただいて、名寄せをする際に活用する。そしてさまざまな資料と申告書を突合し、確認する。こういう段階を経る制度と考えられます。

2ページは、いま申し上げたことを図解してございます。説明は省略しますが、(注)のところにちょっとございますように、納税者番号制度を入れれば、ありとあらゆる所得が完全にわかってしまうかというと、必ずしもそうではなくて、(注)にありますように、例えば有価証券の売買の価格、売渡価格がわかったとしても、最初にいくらで買ったかという取得価額が必ずしもわかるわけではありませんので、これだけで譲渡所得が完全に把握されるというものでもございませんし、あるいは事業所得等につきまして、売上げ、仕入れ、すべての取引が納税者番号制度によって資料を収集されるということも非現実的であるということも、これまでの報告の中で触れていただいております。

そして、3ページでございますが、現状、一体どういったところが納税者番号制度をめぐる論点になろうかという点につきまして、昨年のワーキンググループの取りまとめや、12月の11年度答申での記述をまとめております。

第1に経済社会情勢の変化ということですが、一般的に様々な形でのカードの利用といった形で、番号の利用ということが一般に普及してきつつある。経済取引のグローバル化というのは、金融取引を中心とした資本移動の活発化、あるいは金融システム改革による様々な金融商品が新たに生まれてくる。それに伴う資料情報の重要性が一層増しているのではないか。あるいは電子商取引、電子化の進展といったような状況が背景にあります。

そして、これまでも具体的に御検討いただいてきて、3類型と呼びならわしておりますが、具体的にどういったところを目的としていくのかという点で類型を分けております。第1に行政サイドの機械化・適正化によります効率化という側面。2番目に利子・株式譲渡益をはじめとします現在分離課税になっている分野を総合課税化していく際にこの納番を活用する。3番に相続税をはじめとする資産課税につきまして、資産の存在等を明らかにするためにこの納番を活用するという考え方かと思います。

その際、常に考慮すべき要素として3つほどが挙げられていまして、経済取引への影響ということでは、資金シフト等が起こるのではないか。4番目にありますように、コストについて、いろいろしっかり確かめていく必要がある。民間の金融機関、あるいは給与関係であれば、様々な源泉徴収義務者といったところに、コンピュータをはじめとする立ち上げのコストがかなりかかるのではないか。納税者サイドにも煩わしさみたいなものがあり得るのではないか。反対に効果としては、納税の透明性・信頼性が非常に高まっていくということが挙げられようかと思います。プライバシーの問題がやはり常に一般の国民の心配の種となっておるように思われます。

そういったことを受けまして、「納税者番号制度については、国民の理解がさらに深められ、より掘り下げた具体的な議論が行われることが重要」という指摘をいただいております。その際、昨年あたりの報告書では、タックス・コンプライアンスの観点、納税過程における法令の遵守、あるいは税制の信頼といった納税者の立場からの観点に立った検討が必要ではないかという御指摘がございました。それから、先ほど会長からもお触れいただきましたが、行政による全国一連の番号の整備の状況が進んでおります。そういった点を考慮する必要がある。資料情報制度が何といっても納番の制度をワークさせるためには必要であるので、そこを同時に検討する必要があるということだろうと思います。

次のページに、個人の付番方式につきまして、行政サイドでいくつかの整備が進んでおりますので、簡単にまとめてございます。左側の基礎年金番号は、国民年金法の規則で定められておりまして、社会保険庁の付番でございます。公的年金加入者すべてに付番がすでに行われております。目的としては公的年金の制度の適正化ということで、未加入問題への対応、行政サービスの向上といったことが目的とされておりますが、付番の対象者が公的年金加入者ということですから、当然普通であれば20歳を超えたところで番号が付番される。あるいは事業所に就職するという形で厚生年金に加入するといったことがなければ、番号がないということが1つございます。住所等の情報については、国民年金の場合などを中心に本人届出が必要であるというようなところがありまして、十分なフォローができないという問題がございます。ただ、現在、一番下にございますが、平成9年1月からすでに実施されているというところでございます。

片や住民票コードにつきましては、本年8月の国会におきまして可決・成立し、3年後に実際の活用・利用が始まるということで、現在準備を進めておるというふうに聞いております。住民基本台帳に基づきまして各市町村が付番をする。基本的にすべての住民に付番をされます。ただ、目的につきましては、住民基本台帳関係の事務の効率化、あるいは行政機関への情報提供とございますが、現在、法令上明らかにされた分野に利用が限定されておるということで、現在の法律では税務関係は地方税を含めて入っておりません。あるいは民間での利用につきまして、むしろ法律上禁止されているという事情がございます。

最初に申し上げましたように、納税者番号につきましては、金融機関あるいは取引相手方に番号を告げるということが不可欠でございまして、そういう意味では、法律上は活用がいまのところはできないという形になっております。

いずれの番号にいたしましても、法人に対する付番は行われておりませんので、これは別途検討する必要があるということになろうかと思います。

次に、5ページ、6ページは、いま申し上げた住民基本台帳ネットワークシステムの構築についてでございますが、大体申し上げたとおりでございまして、住民基本台帳のネットワーク化により住民へのサービス向上を図る。例えば全国どこでも住民票の写しがとれる、あるいは転出・転入する場合にも、いまは両方の窓口に行かなくてはいけませんが、1回だけで済むとか、あるいは法律上規定された分野では、住所確認・生存確認・本人確認について住民票の証明を取りに行かなくてもいいようになる、というような効果があると聞いております。

1枚抜かしまして、7ページ、基礎年金番号についてですが、これも先ほど申し上げたとおりでありまして、60年に年金の一元化が図られ、すべての方が基礎年金としての国民年金に入る。その際番号を一本化するという形で管理を一元化したということで、番号の付番が始められております。

9ページにまいりたいと存じます。納税者番号につきましては、先行する主要国での活用というのが見られます。御承知のとおり、アメリカ・カナダでは1960年代に社会保険番号を活用して納税者番号として活用しております。同じく60年代の後半から70年代初めにかけまして、北欧のデンマーク、スウェーデン、ノルウェーといったあたりでは、日本で言うところの住民登録番号、韓国・シンガポールでも90年代に入りましてから同様の活用が始まっております。イタリアでは、財務省が税務のための番号を付番するという形で行われております。

1枚おめくりいただきまして10ページですが、先ほども総務課長から申し上げましたように、納税者番号を使う場合には、資料というものが充実していることが必要でございます。ここに現在法定資料として集められている様々な課税資料がございますが、46種類掲げておりまして、かなり充実しているように一見見えるわけでございますが、例えば一番最初の1番、2番あたりの利子関係の調書ですと、現状分離課税ということでございますから、ほとんどの個人の方については、これは提出が実際には行われておりません。配当関係についても、申告不要という制度に係る少額の方については提出がされておりません。

あるいは株で見ますと、14番ですが、株式等譲渡の対価の支払調書ということでございますが、現在、源泉分離の制度と申告分離の制度がございまして、源泉分離を選択いたしますと、この調書は提出されないという形になっております。ただし、昨年11年度の税制改正におきまして、13年度からは申告分離に一本化されますので、株に関しましては、支払調書の数量も増えていくということが予想されるところでございます。

11ページですが、他の主要国におきます法定資料につきまして、ここでは細かく分けておりませんが、ごくごく一般的に申し上げれば、アメリカとフランスでは大変幅広い網羅的な法定資料の制度が設けられております。アメリカはそれを納税者番号でマッチングをして活用するということになっております。フランスの場合には納税者番号はございませんので、住所・氏名でもって突き合わせをしている。イギリスについては納番はございませんが、税務当局に大変広範な資料提出要求の権限がございます。反対にドイツでは、法律上の金融機関に対する資料提出の権限が当局にはございません。ただ、こういったこともあって源泉徴収制度ができたというような事情があったやに聞いております。

1枚おめくりいただきまして、アメリカについては比較的納番に絡めていくつかの説明がされてきておりますので、それ以外の欧州の主要国について触れております。イギリスにつきましては、いま申し上げましたように大変幅広い資料の請求が行われておりまして、利子関連ではすべての預金者に係る資料が毎年税務当局に報告されるといったようなことがございます。フランスもほぼ同様でございます。ドイツではそれができないがゆえに、93年から30%の利子源泉徴収制度が導入されたというふうに聞いております。

本人確認につきましては、税務関係の法律によってフランス・ドイツでは義務づけられております。同時にマネーロンダリング関係の規制上、英・仏・独すべての国で確認が法的に要請されております。

13ページは、ちょっと話が変わりますが、名寄せをすると申しましても、事務的には相当大変な手間暇のかかることだろうと思いますが、これはちょっと話が違うのですけれども、金融審議会の「預金・保険の制度に関する基本的な考え方」という報告書が先般出されましたが、この中で金融機関の破綻処理に絡んで預金者の名寄せをそれぞれの金融機関はきちんとやっておきなさいと、事前にやっておくべきであるということが言われております。審議会の報告でそれが法的に担保されたということではございませんが、金融機関サイドでは、いずれにせよそういうことはやらなくてはならないという要請があるということでございます。

14ページはプライバシーの問題でございまして、納税者番号制度をめぐりましては、様々な局面でのプライバシーの問題があろうかと思いますが、特によく問題にされますのは、例えば一番最後、[9]にございますが、民間企業が番号を使って様々なデータを集積・蓄積する。それを法的に認められた以外のところ、あるいは流用するといったようなことが、アンケート等を見ますと、一般の方が最も不安に思っている部分であろうかと思われます。

プライバシーの問題につきましては、16ページをちょっと御覧いただきたいと思いますが、前の納税者番号小委員会におきます報告書におきまして、16ページの上のほうですが、税務当局の場合、税務執行のためには様々な情報を元々収集する必要があり、その限りにおいてプライバシーの権限が制限されざるを得ないということは、ある程度受け入れられつつあると。ただ、特に納税者番号が導入されて、番号が民間で利用されれば、プライバシー侵害のおそれが高まるという不安があることに留意すべきである。さらに適正な税務執行のために必要な限りでプライバシーの権利が制限されることもやむを得ないと考えられるとしても、税務以外の行政分野で利用されることについては、プライバシーの観点から強い懸念を抱いているという御報告をいただいております。

17ページはコストの議論でございますが、これも付番機関でのコスト、それから民間サイドで、先ほども申し上げましたように、最初に金融機関や一般企業で電算のシステムを立ち上げる、顧客に連絡する、受け付ける、データの入力をする、といった形で初期コストはかなりかさむ可能性がございます。税務当局は、これを受け取ってマッチングするための電算システムを構築するというコストがかかるのだろうと思われます。

最後に18ページでございますが、番号とタックス・コンプライアンスの観点ということでまとめております。納税者や源泉徴収義務者の観点から税制への信頼・透明性、あるいは納税過程における法令遵守を担保していくためには、様々な形で納税環境を整備するということが必要だろうと思われますが、納税環境の整備ということに関連しましては、先ほど総務課長の説明の中にもございましたが、源泉徴収、年末調整をはじめとして、記帳義務、挙証責任、あるいは質問検査権、資料情報システム、そして、それを活用するための、効率を上げるための納税者番号制度といった様々な要素がお互いに助け合って、相まって、全体として整備が図られていくというふうに考えられるかと思います。

反対に申しますと、納税者番号が単独で切り札となるというものではないように思われるわけでありまして、この様々な納税環境整備のための制度の中の1つの重要な要素というふうに位置づけられるのではないかと思います。そして資料情報制度の拡充と相まって、課税の公平・適正化、納税者意識の向上に資するというふうに考えられるのではないかと思われます。

以上でございます。

加藤会長

ありがとうございました。

最後に、国際的な税制論議に関しまして、杉江国際租税課長と上田主税企画官からよろしくお願いします。

杉江国際租税課長

国際租税課長の杉江でございます。

本日は、国際的な税制論議ということで、私のほうからOECDでいま行われております「有害な税の競争」のプロジェクトの話、それから、後半は主税企画官の上田のほうから、電子商取引の関係について御説明を差し上げたいと思います。

まず、有害な税の競争の関係でございますが、資料は「総39-6 基小11-6」という『国際的な税制論議』という資料でございますが、1ページをお開きいただけますでしょうか。現在、OECDの中に租税委員会という委員会がございまして、これは各国の租税の担当者、専門家が集まって税制について議論をする場でございます。現在、その租税委員会の中で税の競争のプロジェクトというのをやっておりまして、本日はどういう問題意識でその税の競争のプロジェクトをやっているのか、その問題意識について御説明しまして、具体的に現在何をやっているのか、それから、これからどういうことをやっていくのかという、この3点に絞りまして御説明をしたいと思っております。

まず、第1点でございますが、どういう問題意識かと申しますと、その前に経緯でございますけれども、1996年にこのOECDの租税委員会において、税の競争のプロジェクトというのは開始されております。その結果、1998年の4月に報告書がすでに出ておりまして、現在その報告書を実施に移すという段階に入っているわけでございます。

この税の競争の問題意識でございますけれども、経済のグローバル化に税制がどういうふうに対応していくか、というのが問題意識でございます。つまり、以前の国境があって、国境の中の閉鎖的な経済の中では、資本移動というのが制限をされておりまして、そういうような状況のもとでは、一国の租税制度というのは、それぞれ国内の経済事情とか、国内の経済の問題を考慮して構築されているということで、それぞれの国ごとの税制の相互の関連性というのは、余り重要でなかったわけでございますけれども、この規制緩和で資本移動が自由化をされる、あるいはインターネットというような通信革命が行われて、急速な技術革新が行われることによりまして、国境というものが事実上経済取引については余り意味をなさなくなってきている。つまり、経済がグローバル化して国境がない、ボーダーレスの経済になっている。そういうような経済のグローバル化がどういうような租税政策に影響与えるかと申しますと、いままでは国内の事情だけを考えて租税政策を行っていたわけでございますけれども、グローバル化された経済のもとでは、それぞれの国の租税政策が他国の経済に大きな影響を与えるという問題意識がございます。この経済のグローバル化は、経済を活性化させまして、生活水準を向上させるというメリットがあるわけでございますけれども、税金の面を見てみますと、例えば企業とか個人が、海外取引を使って税金を回避することが容易になるという問題点がございます。こういうような経済のグローバル化の中で、各国は外国からいろいろな資本を誘致するために税を引き下げていく、特別な税の恩典を考慮するというような、税の引下げ競争を行いやすいというような状況が生まれているわけでございます。

この税の引下げ競争の問題でございますけれども、特にグローバル化して、企業はどこにでも企業拠点を置ける。特に金融とかサービス、そういうようなものですと、自由に拠点を動かすことが簡単になるわけでございまして、我々、「足の速い所得」というふうに呼んでいるのですけれども、金融所得あるいはサービス所得というような足の速い所得については、税制を使ってそういうような企業を誘致することが非常に簡単にできるということになるわけでございます。そうしますと、そういうような金融所得等については、相対的に軽い課税が行われるということになるわけで、そうしますと、そういうような足の速い所得以外のもの、つまり稼働性の低いもの、低い課税ベース、これは勤労所得でございますとか消費というようなものについて、むしろ相対的に重課になってしまうというような問題点がございます。その結果、税体系の公平性あるいは中立性が損なわれる。その国から見れば課税ベースが侵食されて税収が減ってしまうという問題がございます。その結果、経済的に見ますと、資源の最適な配分というのが歪められるということで、資本移転、あるいは経済活動の歪曲につながっていくというような問題点が、この税の競争のプロジェクトの報告書の中で指摘されているところでございます。

ただ、1つ注意していただきたいところは、すべての税の競争を否定しているというわけではございませんで、各国とも、いま例えば法人税におきましても、課税ベースを広げて税率を下げるという形の税制改革が行われているわけでございますが、そういうようなことを否定しているわけではございませんで、例えば金融所得とか、サービス所得とか、そういう足の速い所得をその国に呼び込もうと、ほかの国の課税ベースを侵食して自分の国に持って行くために、特別の有害な税制をつくると、そういうようなところを「有害な税の競争」というふうに定義をしておりまして、そういうものをなくしていこうというのが、この税の競争の問題意識でございます。

次に、いま何をやっているかということでございますけれども、2ページをお開きいただけますでしょうか。2つございまして、1つはタックスヘイブンのリストをつくるという仕事。もう1つは、OECDに加盟している国の有害な租税の優遇措置をリスト化するということを行っております。タックスヘイブン・リストについては、来年6月のOECDの閣僚理事会までにつくりまして、これを公表する予定にしております。

3ページ目でございますけれども、これから何をやろうかということでございますけれども、1つはタックスヘイブンのリストをつくったあとのことでございますけれども、国内法上の措置ということで、タックスヘイブン税制の導入あるいは強化、あるいは先ほどから話が出ておりますが、資料情報制度、特に海外に関する資料情報制度を導入する。こういうようなことをOECDの加盟国の中で協調して行っていくべきではないかというような議論がされているところでございます。

それから、3つ目のところに書いてございますが、加盟国の有害税制については、原則として2003年までにこれを縮減・廃止するという方向になっております。

それから3点目でございますが、一番最後に非加盟国との対話というのが書いてございますが、税の競争の話はOECD加盟国だけの問題、タックスヘイブンだけの問題ではございませんで、OECDに加盟していない非加盟国とこの税の競争の問題について対話を続けていこうということが、これからOECDでやろうとしているということでございます。

以上でございます。

上田主税企画官

主税企画官の上田でございます。

それでは、お手許の資料を引き続き使用させていただきますが、その資料に沿いまして、電子商取引の課税のあり方につきまして、ポイントを御説明申し上げたいと思います。

まず、電子商取引でございますが、これはいろいろな定義があり得るわけでございますが、ある定義によりますと、「電子的データのやりとりにより、ネットワーク上で商取引の一部または全部を行うこと」とされております。

こういった電子商取引は、改めてここで申し上げるまでもございませんが、インターネットの活用の広がりを通じまして、我が国におきましても本格的な実用化への機運が高まっていると申し上げることができると思います。

このような電子商取引の発展でございますが、取引時間の短縮、ひいては取引コストの低下によりまして、経済活動の効率化をもたらすものと考えられているわけでございます。また、電子商取引は既存の経済活動の効率化をもたらすというだけでなく、新しいタイプのビジネス機会もつくり出していると考えられます。したがいまして、今後、経済発展を促進していくためには、この電子商取引が健全に発展していくことが重要であるわけでございまして、そのための環境整備を行っていくということが必要であると考えられます。

例えば、電子商取引におきまして、取引の安全を確保するために、現在、政府において電子署名、電子認証に関する法的整備が検討されているところでございます。そのほか消費者保護あるいはプライバシーの保護等の問題も検討されているわけでございます。

そこで、税とのかかわりでございますが、やはり中立・公平・簡素といった課税原則のもと、人々にとって予見可能性の高い税制、あるいは納税コスト、コンプライアンスコストが抑えられた税制といったものを、電子商取引についても維持・確保していくことが重要であろうかと考えられます。

一方、先ほど租税回避の話もございましたが、電子商取引は課税ベースから逸脱するもの、あるいは脱税の温床となるといったようなものであってはならないと考えられるわけでございます。すなわち、電子商取引は伝統的な取引形態と比べて、課税面で直ちに優遇されるということではない。あるいは結果として優遇されているような状況となってしまうということは、ぜひとも回避されなければならないということであろうかと思います。それがここに挙げました「電子商取引の普及が課税ベースの侵食を招いてはならない」という趣旨でございます。

そこで、電子商取引の課税面への影響でございますが、ここに大きく3点お示しいたしてございます。

1つ目は、取引の把握の困難化でございます。電子商取引は取引のペーパーレス化を促すだけではなく、取引経路の複雑化といったものももたらし得る側面がございます。また、電子商取引の取引の中には匿名性の高い取引形態もあるわけでございまして、さらに暗号技術の発達によりまして、ますます外から見えにくくなっていると考えられるわけでございます。それに加えまして、電子商取引は通信の秘密、あるいはプライバシーの保護といったように、制度面からも内容の把握が外からはなかなか困難になっているという可能性が考えられるわけでございます。このように電子商取引の普及が税務行政にどのような影響を及ぼしていくか、実態の把握によく努めていくことが重要であろうかと考えられます。

次に、所得の帰属と分類の判定の問題がございます。この問題は特に国際課税の場面でより顕在化するものでございます。例えば、恒久的施設なくして課税なしという1つの国際課税上のルールがございますが、このインターネット取引における例えばサーバーなどがこの恒久的施設に当たるのか、あるいは電子商取引の広がりに伴い、これについては別のルールを検討すべきかといった問題があり得るわけでございます。また、あるオンライン取引により生じました支払いが、物の所有権の移転の対価としての支払いなのか、あるいは役務の対価としてのロイヤリティの支払いなのか、いずれに分類すべきかといった問題も生じるところでございます。こうしたことはある国際取引上生じた所得がどの国に帰属すべきかという判定にかかわってくる問題でございます。

3点目でございますが、国境を越える役務提供、サービス取引でございますが、国境を越えるサービス取引につきまして、いかに消費税あるいは付加価値税を課すかという問題がございます。すなわち、物の貿易と異なりまして、サービス取引は税関を通りません。したがいまして、物の貿易とは異なる課税の仕組みを考える必要が生じるわけでございます。

そこで、この電子商取引はこういったクロスボーダー、国境を越えるサービス取引、あるいはデジタルプロダクトと呼ばれるものの取引を増加させると考えられるわけでございまして、こういった問題がより顕在化し得るということであろうかと思います。

また、インターネット取引におきまして、課税地、すなわち消費の場所をいかに特定し得るのかといった問題も生じるところでございます。

このような電子商取引、特にインターネット取引は、ただいま申し上げましたとおり、国境を容易に飛び越えて行われるというその本来的な性質があるわけでございます。したがいまして、いま申し上げてきました問題へいかに対処するかという検討は、国際的な場で行う必要があると考えられるところでございます。すなわち、そうした課題への対処は、国際的な整合性が保たれる必要があるわけでございまして、そうでないと、ビジネスへの無用の障害ともなり得るものでございます。また、これらへの対処自体に国際的な協力が必要、あるいは重要となることも考えられるわけでございます。

このようなことから、昨年12月でございますが、オタワで開催されましたOECD電子商取引閣僚級会合の中で、OECD租税委員会の報告書「課税の基本的枠組」が提出され、公表されたところでございます。

1ページおめくりいただきまして、5ページは電子商取引のイメージ図、グローバルに広がるインターネットのイメージ図でございます。

6ページでございますが、ただいま申し上げました「課税の基本的枠組」の概要でございます。これは大方のコンセンサスが得られました点を申し上げますと、この電子商取引の技術によって納税者サービスの改善のための機会を提供する。あるいはその下、下線部分でございますが、先ほど申し上げました中立・公平・簡素等の伝統的な課税原則が適用されるべきであると。また、現段階では既存の課税ルールがこれらの原則を実現できるということでございます。

そして、その下に今後の検討課題がございます。ここでは3点申し上げますが、納税者の本人確認、あるいは情報アクセスといったものを税当局が確保すべきである。あるいはその下でございますが、先ほど申し上げました消費地の定義や課税方法等についての検討を各国間で行っていくべきである。さらに、国際課税原則の電子商取引への適用方法、執行協力のあり方等について、検討を進めていくべきであるということでございます。

それで、その検討方法をこの「オタワ会議以降のプロセス」というところで書いてございますが、この電子商取引という問題の性質上、民間との協議、技術的な側面があるということで、民間との協議を継続するとともに、途上国にも影響を与える問題でございますので、OECD加盟国以外の国々とも接触しつつ、OECD租税委員会において作業計画を進展させるということでございます。

最後のページ、7ページでございますが、これに基づきまして、現在検討体制が組まれてございます。その概要をお示ししたものでございます。詳しい説明は省略させていただきますが、この検討体制は2000年末、来年末まで続けるということになってございます。

それで、現在の検討状況でございますが、各論点につきましては、いまだ具体的な方向性が出されたというところではございませんで、本格的な検討はこれからといった段階でございます。

以上でございます。

加藤会長

ありがとうございました。

これから、いま説明いただきましたことについて、30分ぐらい皆さま方の御意見をいただいていきたいと思っております。どなたからでも結構でございます。

島田委員

ちょっと質問のようなことでよろしゅうございますか。

源泉徴収制度について1つ教えていただきたいのですが、アメリカの場合に、一般的に源泉徴収が行われていて、しかし、同時に確定申告の手続きも行うというふうに理解していいんですね。その源泉徴収が行われていて、確定申告も一般的に行われていたのではないかという私印象なのですけど、完全にオーバーラップしているのだとすると、どういう意味でこれを二重にやるのかちょっとよくわからないので、そこのところを1つ。

それから、ちょっと細かい点ばかりですが、あと2つ教えてください。もう1つは挙証責任の問題ですけど、アメリカの挙証責任は、行政庁の処分については正当性の推定ということですから、税務に限らずある大原則のようなものがあるわけですね。ちょっとその歴史的背景を教えていただけると、いつそういうことがあって、そんなことが導入されたのか、ちょっと知りたいですね。といいますのは、ドイツの場合に、収入そのものは徴税当局が挙証責任を負っているけど、その中で例えばこういう経費があったのだということについては、納税者が挙証しなさいよという仕掛けになっているわけですよね。私は日本でも本当は挙証責任をある程度納税者に負わせることができれば、徴収が非常に効率的になったりいろいろするのではないかと思うものですから、各国独特の背景だと思うのですけど、どういう背景でこの挙証責任というのが入ってきているのか、簡単でいいです、もしあとで説明するということであれば、それでも結構です。

それから、1つ国際的な問題で、台湾というのは、所得税・法人税で大体25%に2年ぐらい前にたしかしたと思いますけど、OECDではそういうのはタックスへイブンというふうに扱うのかどうか、ちょっとそこら辺、25%がたしか限界になっていたように思いますけど、アイルランドなんかはもっと低いのだと思いますけど、台湾みたいなある意味ではまともな国ですけど、OECDはどう扱うのだろう。国と言ってはいけないのかもしれませが、まともな経済単位だと思いますから、どういうふうに扱うのか教えていただきたい。

加藤会長

いまの質問に、加藤さんからですか、どなたですか。

池田調査課長

米国の源泉徴収と申告の制度ですが、大雑把に申しますと、サラリーマンに対しましては、毎月の源泉徴収があります。それが簡単にいうとやや大目に源泉徴収がされます。しかしながら、日本で言うところの年末調整がございませんので、普通のサラリーマンの方は、仮にサラリーだけの収入しかない場合でも、それ以外に医療費の問題とか住宅ローンとか、いろいろある場合もありますし、そういったことをあわせて申告をしていただく。その際、納税者番号を付与することで、そこに書いたサラリーの金額が正しいということがチェックできるということを受けて、若干の還付を受けるというシステムに……

島田委員

かなり一般的に申告して還付を受けているという感じですよね。

池田調査課長

そのように考えて結構だと思います。

挙証責任につきましては、各国、もともとの税法の構造が大陸法系と英米法系でかなり異なっていることを背景にしまして、おっしゃったように歴史的な経緯が若干違っております。残念ながら本日それについてコメントできるだけの用意がございませんので、別途考えます。

島田委員

歴史的な背景は、あとで資料でもいいですから教えてください。

池田調査課長

はい。

杉江国際租税課長

台湾の件でございますけれども、今回のOECDの報告書におきましては、タックスへイブンの定義といたしまして、無税もしくは名目的な課税を行っている国、英語ではNo Nominal Taxというようなことを言っておりまして、台湾のような国であれば、そういうタックスへイブンというようなことではなくて、むしろ非加盟国、OECDに加盟していない国の範疇で議論を行うということではないかと思います。

島田委員

25%という基準が一時あったように聞いていましたけど、それは何かいまでも意味があるのですか。例えば、沖縄でFTZのところでいろいろな条件を満たすと実効26%まで持っていきましたよね。あれは25%にならないようにしていたのかなという感じもちょっとあるものですから。

杉江国際租税課長

25%の基準というのは、我が国でタックスへイブン税制というものがございまして、これは外国の例えば子会社、我が国に親会社があって、タックスへイブンに子会社があるといった場合に、そこの税率が25%より低い場合、かつ、そこに余り経済実体がないような場合に、そこのタックスへイブンの子会社の所得を親会社の所得に合算して課税をする、これはタックスへイブン税制というふうに我々申しておりますが、その基準として25%というのがございます。しかしながら、これはあくまでもそこで実際に工場があって、実際に産業活動が行われているような場合には課税になりませんので、あくまでもそこにペーパーカンパニーのようなものをつくって、そこに所得を移転しているような場合に、かつ、法人の負担が25%よりも低い場合に発動になるということでございます。

松尾委員

意見と質問、両方お願いしたいのですけども、この納税者番号制度の説明資料、さっき伺った3ページですね。「納税者番号制度を巡る論点」「これまでの検討の諸類型・具体的なイメージ」とあって3つ並んでいますね。税務行政の機械化・適正化、利子・株式譲渡益の総合課税化、相続税等の資産課税の適正化、つまり納税者番号制度を導入するとすれば、これが目的になるということだろうと思うのですが、この場合、仮に入れるとした場合の大義名分は、やはり利子・株式譲渡益の総合課税化だろうと思うわけです。そうしますと、利子所得税について、総合課税が本当に必要なのかどうかですね。これはやはり十分詰めることが必要になると思います。利子所得とほかの勤労所得との担税力が異なるから、総合課税は不適当だという考え方が以前からあるわけですね。

それに預貯金の口座が、この前伺ったところによりますと、10億口座ですか。10億口座もありまして、これはやはり源泉分離で一括課税したほうが合理的ではないかと、そういう見方も当然あるわけですね。その上、いまの総合課税では所得税、住民税合計最高税率50%と、こういう50%という税率では、これは総合課税にすると、やはり納税者に対する影響は余りにも大きすぎる。ですから、やるとすれば、やはり税率のフラット化は一層進めるべきだと思うわけです。

それと、仮に導入するとすれば、先ほど御説明ありました挙証責任は、当然納税者側に移す必要があるし、記帳資料保存、これもきちっとする。罰則規定をはっきり設ける。さらに一般的な資料徴求権も税務当局に与える必要があると、私はそう思うわけです。

それでちょっと質問があるのですが、以前、納番導入による行政コストの試算結果、これを伺った記憶があるのですけども、最新のデータがあったら教えていただきたい。

それから、納税者番号らしい納税制度を導入しているのは、結局はアメリカとカナダだけということですね。あとは統一コードということですが、この統一コードと納番の違い、ちょっと具体的に説明していただきたい。

それから、先ほどの預貯金の15億口座、これは納番を導入すれば、名寄せが簡単にできるものなのかどうか。

さらに、電子商取引と税の御説明を受けますと、やはり取引の把握が非常に難しいと。これは容易に想像がつくわけですね。国際的取引の拡大による課税の漏れ、これは相当あると思われますし、それに対処して世界的に統一された納税者番号制度を設けるような、そういう議論はいまあるのか、ないのかをお答え願いたいと思います。

加藤会長

この答えは池田さんですか。

池田調査課長

御質問いただいた件は、コストに関する件と北欧諸国の件だったと思いますが、行政コストにつきましては、この説明資料の17ページに概念図で示しておりますが、初期コストとして電算システムを立ち上げる。それから、それをワークさせるということになります。どの程度の、つまり現行の法定資料でも、例えば現状のままですと、国・地方を合わせまして1億5,000万枚を超える資料になっておりますが、さらに、例えば先ほど申しましたように、株式の関係の資料が増えるとか、あるいは利子の関係はどうするのかといったことがありまして、それによってコストはおのずと相当の差がございます。きちっと積算をしたというものではございませんので、申し上げるにはかなり、イメージということでお受け取りいただきたいのでありますが、行政サイドとしては、初期コストを少なく見積もっても200億円、多ければ500億円程度、ランニングコストとして500億円程度から700億円程度というようなことが試算としてはできようかと思いますが、これは行政庁、会計課が責任を持ってやったというような性格のものではございませんので、オーダーという程度にお受け取りいただければと思います。

当然、民間サイドにつきましては、試算は非常に難しゅうございます。どこまでを法定資料の納番をつけた資料を出していただく者に入れるかということで、オーダーを含めて大きく変わるものでございますので、ちょっと試算はいまのところ難しいと考えております。

杉江国際租税課長

先ほど国際的な納税者番号制度のような議論があるのかどうかという御質問がございましたが、いま、そこまでの議論はございませんが、国際課税上、いろいろ情報を集めることが必要だという議論がなされておりまして、例えば国内法の中で、海外の資料情報制度を導入すべきだと。日本でも外為法の自由化に伴いまして、200万円以上の国外送金をした場合には、税務署にそれを通報するような制度を入れたわけでございますけれども、諸外国におきましても、例えば海外との取引をした場合、あるいは海外に銀行口座を開設した場合、あるいは海外資産についてそれを報告するような制度を導入している国もございます。そういうようなものが1つ考えられると思います。もう1つは、租税条約の中で、税当局間で情報交換を緊密にしようというような考え方がとられておりまして、租税条約で相手側の国から情報をもらう。そういうことによって国際課税の適正化を図っていくというような議論が行われているところでございます。

吉田特別委員

1つ御質問させていただきたい。

私どものいままで承知しておりましたアメリカの申告納税制度の中の挙証責任の件ですが、何か全部納税者側に挙証責任を持たしておりまして、それが若干荒っぽい行政があったために、最近、IRS改革法案というのが通って、そして納税者権利憲章というような趣旨のものができたというようなことを、どこかで読んだことがあるのでございますが、今日現在のアメリカの申告納税制度のこの挙証責任というのは、一体どのような状況にあるのか、ちょっと教えていただきたい。

池田調査課長

アメリカの挙証責任につきましては、おっしゃったような事情で、IRSの改革法というもので若干の変更が加えられております。先ほど御説明しました、所得税の説明資料、「総39-2」の説明資料の13ページ、加藤から説明しました資料の中の挙証責任につきましてでございますが、下欄に(注)をつけてございますが、アメリカについては1998年、IRS改革法により、納税者が内国歳入庁(IRS)の税務調査、資料提出等に十分な協力を行うこと等一定の条件を満たしている場合に限り、事実認定に関する挙証責任を納税者から税務当局に移すこととなったということで、一部IRS改革の一環で当局のほうに移されております。ただ、一般的には個人の納税者が調査に協力した場合というふうに大雑把にお考えいただければいいかと思います。協力度合いが非常に低い場合、あるいは大企業の場合には、引き続き納税者サイドにあるとお考えいただいてよろしいかと思います。

吉田特別委員

何かそのときに民間の人を入れた審査委員会というようなものがどこかに設けられているとか、そういうことはありませんか。

池田調査課長

IRSの組織の一番上のところ、長官を含めたところで委員会制度ができまして、民間の方が議会の承認人事を受けた上で任命されて、IRSの事務全般に指導・監視を行うという体制になったやに聞いております。

田近専門委員

総合課税、分離課税の話なのですけども、すでにいろいろお話が出ていて、先ほども税率構造がフラット化しないと、利子を総合課税化するのは難しいのではないかと。もっともな話なのですけども、1つ指摘されていないポイントで重要だと思われるのは、配当課税もあると思うのです。株式のキャピタルゲイン税に関しては、源泉分離から申告分離に移っていこうと。これもある意味で分離課税の考え方を貫いていこうと。一方、利子を総合課税にすると、配当課税はどうするのだと。配当はいま原則は総合課税ですけども、実質的にはいろいろ分離的な措置がされている。もし配当を総合課税化していくと、法人税のほうでどうするのだと。インピュテーションの話が出てくる。法人税で配当分の経過措置というのが平成元年の改革で取ってしまったわけですよね。したがって、僕が言いたいのは、利子を総合課税化するかどうかという、それ自身大きな問題ですけども、資本所得全体に対して目を配らないと、この問題は解けないだろう。

そして、先ほどある所得は足が速いとおっしゃいましたけど、別に所得は国境をまたいで足が速いだけではなくて、国の中でも足が速いわけですよね。つまり利子所得にするか、キャピタルゲインにするか、配当所得にするか、それはいかようにも変えられるわけですから、したがって、分離課税か総合課税かという話をするときは、もう少し利子だけつかまえて、こいつを総合課税にできるかどうかというのは、少し議論のパースペクティブが足りない。非常に重要な点、法人税までも戻る話ではないか、というのが言いたかったことです。

岩瀬特別委員

前回も申し上げましたけれども、私どもの立場から考えますと、金融商品の所得について、ものによって適用税率のばらつきがあるというのはどういうことなのかということで、あくまで最終目標は総合課税化して、そのために先ほども御説明あった納番制もしっかり整備していただいて、その上でもって各商品間の不公平がないような税の中立性を保っていただきたいというのが私どもの立場です。

ところが、現在、キャピタルゲイン課税は、税率の面でもほかの金融所得が20%であるにもかかわらず、申告分離の場合には26%という、税率でこれだけの差をなぜつけられなければならないのか。それから、また、今度は一本化ということでもって、ほかの金融商品が源泉徴収されているときに、このキャピタルゲイン課税についてだけ申告を義務づけるという、そういう二重にも三重にも、これから直接金融の時代に入っていこうというときに、なぜキャピタルゲイン課税についてそれだけハンディキャップをつけようとするのかということについて、私は何か納得ある御説明を伺いたいなと、そういうふうに私は思います。

加藤会長

それはいま聞いたほうがよろしゅうございますか。

島田委員

それは私も聞きたいです。非常に重要なテーマです。

清水税制第一課長

いろいろと御議論を税制調査会の場でいただくテーマかと存じますが、株式譲渡益課税の、現在源泉分離課税と申告分離課税の選択制になっておりますが、これが申告分離課税に平成13年4月以降一本化されますのは、昨年御議論いただきまして、今年度の改正で有価証券取引税、取引所税、この4月から廃止されております。そういったこととの関連で、株式譲渡益課税について適正化、いままでのみなし所得率によります源泉分離課税について、これを廃止するというような流れがこれまでの税調での御審議を踏まえて、答申等で御指摘されたことを踏まえた適正化があったということではございます。

中里専門委員

株式のキャピタルゲインが税率が高いのは、課税が繰り延べられているからだと、それだけの理由だと思いますけれども。

それから、源泉徴収はできませんし、取得価額を保存するということですから、別に申告はいじめているということにはならないと思いますが。

加藤会長

岩瀬さん、よろしゅうございましょうか。

岩瀬専門委員

ちょっとわかりません、私ども。そのために20%と26%のそれだけの差をつける納得性というのはないのではないですか。

中里専門委員

考え方によると思います。

加藤会長

これはもう少し説明はあとでまたできるように準備しておきたいと思いますので。

吉野専門委員

金融の関連なのですが、いま利子と配当、株式の話がありましたが、今後は不動産の証券化のようなものが始まりますと、土地に関する譲渡益課税、それも金融商品になると思いますので、やはり金融商品の幅を考えながらやらないといけないというのが意見でございます。

平田委員

大分御質問が挙証責任の話がたくさん出ていまして、これは私ども税理士業界から言わせると、一番関係のあるところなのですけれども、歴史的なことについて何か御返事があとでいただけるということでありますから、私はちょっと観点を変えて申し上げるのですけれども、納番制の資料の中で18ページに、「納番制度とタックス・コンプライアンスの観点」ということで(未定稿)になっていますが、このような納税環境の整備が非常に関係をしてくると私の立場では申し上げるわけでありまして、簡単に申し上げて挙証責任が納税者側にあるほうが理想的なのでしょうけれども、日本の場合はなかなか納税環境が十分ではないという、私ども税理士制度がある立場で申し上げると、それは完全に挙証責任は納税者側にあって、税理士が代理をしてきちんと答弁ができる、これが一番いいのでしょうけれども、そこまでいくには、まだまだこういう納税環境の整備がちょっと足りないなという考え方があります。

「法律」も本当はこの中に加えていただきたいなと思うぐらいでありまして、やはり税法自体が各国の税法とまた違う、実定法のつくり方が歴史的に大変違うということもございまして、挙証責任をいまのところ改めて納税者側にするだけの、そういう法律的な形にもなっていない。手続規定だとか非常に不完全であるという点もあろうかと思います。私はそういう意味でこの挙証責任を説明したいなと思うのでありますけれども。

もう1つは、納番制度で、付番をいたしますと、すべての租税に関する動きが全部わかってしまうというような考え方が1つありますね。だから、付番をすることは大変いいのですけども、問題は付番をした結果、そこで集まってきた資料をマッチングして名寄せをするには、先ほどもちょっと御説明がありましたが、大変なコストがかかりますし、コンピュータがここまで進んできたにしても、何と申しますか、お金がものすごくかかるだろうということでありますね。ですから、納番制度を付番をするということによって、逆にいうと、脱税がなかなかできないとか、租税回避ができないという意味でのそういう1つの制度的な担保という点ではいいかもしれませんけども、実際にこれが使えるようになるには、大変なコストがかかるだろうということも、ちょっと私としては考えているということであります。

加藤会長

いま自治大臣がおいでになりましたので、御挨拶をいただこうと思います。

(保利自治大臣 入場)

ただいま御多忙な中を自治大臣がおいでになりましたので、一言御挨拶をいただこうと思います。どうぞよろしくお願いします。

保利自治大臣

先般、就任に当たりまして御挨拶を申し述べたところでございますけれども、これから平成12年度の税制改正の御審議を賜りますので、改めてお願いの御挨拶を申し上げたいと存じます。

委員各位におかれましては、これまでも地方税制につきまして熱心な御論議をいただいて、適切な指針をちょうだいしておりますことに対し、心からまずもって御礼を申し上げる次第でございます。

御案内のとおり、現在の地方財政は、多額の財源不足が続いておりまして、今回の補正分を含めまして、平成11年度末で借入金残高が179兆円に達するものと見込まれております。また、地方税収入が落ち込み、公債費の割合が著しく増加するなど、極めて厳しい状況にございます。その一方で、今般の経済新生対策への対応でありますとか、少子・高齢化社会に向けての総合的な地域福祉施策や生活関連社会資本の整備などの重要政策課題に係る地方公共団体の財政需要は大変大きなものが見込まれているところでございます。

このような中で、さきの通常国会において成立いたしました地方分権一括法には、地方税財源の充実確保の方途について検討し、必要な措置を講ずるようにとの附則が追加されたところでもあり、今後、地方分権の進展に応じて、地方公共団体の税財政基盤を充実強化していくことは、極めて重要であると存じております。

さきに小委員会の御報告をいただきました法人事業税への外形標準課税の導入につきましても、その実現に向けて一層具体的な御検討を進めていただきたいと存じます。また、自治省といたしましても、景気の動向などを勘案しながら、できるだけ早くこれを実現していきたいものと思っております。

委員各位におかれましては、限られた日程の中ではございますが、現下の厳しい地方財政の状況とともに、地方自治の基盤となります地方税の重要性に深い御理解をいただき、適切な御指針をお示しくださいますようにお願いを申し上げる次第でございます。ありがとうございました。

加藤会長

どうもありがとうございました。

大臣は日程の御都合がございますので、ここで退席されますけれども、御了承いただきたいと思います。

大臣、どうもお忙しいところ、ありがとうございました。

(保利自治大臣 退席)

それでは、これで前半の審議を終わりまして、後半の審議にこれから入りたいと思いますが、5分ほど休憩をいたします。

それから、ワーキンググループの委員の方々もぜひ最後まで討論に参加していただければありがたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

それでは、5分後に再開いたします。

(休憩)

加藤会長

それでは、再開させていただきます。

これから後半でございますが、前半の中期的な答申に向けての討論あるいは議論は、これで一応休みまして、また年明けから始めたいと思っております。大体議論が一通り出ましたので、中期答申もお正月休みのときに皆さま方がじっくりお考えになっていただけると思いますので、ぜひよろしくお願いしたいと思っています。

さらにこれからやりますのが、来年度税制改正の答申に向けた審議でございまして、非常に短い時間の間にやらなければならないので、皆さま方に大変御迷惑をおかけいたしますけれども、よろしくお願いしたいと思っております。

来年度税制の問題でございますので、はじめに型通り、まず最近の経済情勢及び今後の見通しについて、経済企画庁調整局の川本審議官から説明をしてもらおうと思います。よろしくどうぞ。

川本審議官(経済企画庁)

経済企画庁の審議官の川本でございます。よろしくお願いします。

お手許の資料ナンバー「総39-7」を御覧いただきたいと思います。タイトルは『最近の経済情勢と経済運営について』ということになっております。

1ページをおめくりいただきますと、日本経済の現状、四半期のGDPでまず見ていただきますと、5四半期連続のマイナスのあと、今年に入りまして、1-3、4-6と実質で2.0、0.1というふうにプラスになっております。また、その内訳も国内需要が同様に5四半期マイナスから1-3、4-6ではプラスになってきております。

それぞれのコンポーネントにつきましては、2ページ以下を御覧いただきたいと思います。

まず個人消費でございますけれども、全体に収入が低迷していることなどから、このところ足踏み状態になっております。10月は前期比で見て若干プラスの指標も出ておりますけれども、総じて足踏み状態と見ております。

それから、3ページの住宅建設でございますけれども、持家がずっと伸びてきたわけでございます。最近特にマンションの着工が10月には大幅に増えているということで、前年を上回る水準で推移しております。

4ページにまいりまして、設備投資でございますけれども、98年度マイナス、99年度も4月から9月見込みでマイナスですし、10-3月の計画も2桁のマイナスということで、大幅な減少基調が続いております。設備投資の先行指標であります機械受注を見ても、前年マイナスが続いているところでございます。

それから、公共投資につきましては、一番下の公共工事出来高にございますように、事業は進んでいるわけでございますけども、最近着工が低調な動きとなっております。

5ページにまいりまして輸出入でございますけども、日本の輸出、最近増えておりまして、特に対アジア向けが増えております。緩やかな増加となっております。

6ページは在庫でございますけれども、在庫調整が進んでまいりまして、在庫率は前年を下回る水準となっておりまして、こうした中で生産は持ち直しの動きが見られております。

7ページにまいりまして雇用情勢でございますけども、下の図のように、残業時間などが増加しております。完全失業率のほうは高水準でございますけども、若干ここ2か月ほどは低下しているということでございます。全体としては依然として厳しい状況と認識しております。

8ページの企業収益でございますけども、99年度計画に見られますように、持ち直してきております。業況判断のほうもなお厳しいわけでございますけども、改善は進んでおります。大企業、中小企業ともに言えます。

全体としては、9ページの[9]のように、景気は民間需要の回復力が弱く、厳しい状況をなお脱していないけれども、各種の政策効果の浸透に加え、アジア経済の回復などの影響もあって、緩やかな改善が続いていると認識しております。

次に、10ページでございますけども、最近の経済運営ということで、去年、11月16日に緊急経済対策、減税を含めて約24兆円の規模であったわけですけども、緊急経済対策を決定し、補正予算を組んで決定していただいたわけで、そういう政策効果の浸透もございまして、最近緩やかな改善が進んではいますけども、民間需要に支えられた自律的な回復には至っていないということであります。

今年に入りまして、金融再編成の進捗とか産業競争力の強化、企業体質の改善など、ようやく積極的な動きがあらわれてきていると見ておりますけれども、雇用の流動化とか過剰設備、過剰負債の整理などに伴いまして、問題が生ずるおそれがあるわけでございます。

こうした中で、今年の10月5日、小渕第二次改造内閣の初閣議におきまして、総理から景気の自律的回復の契機となるとともに、今後の我が国の経済運営の指針となる総合的な経済対策を取りまとめるようにという指示がございまして、11月11日に経済対策閣僚会議において、経済新生対策を決定したところでございます。事業規模は17兆円、介護対策を含めまして18兆円程度の事業規模でございます。これをもとに第二次補正予算案が昨日決定されたところでございます。

まず、この対策の内容をごく簡単に見ていただきますと、11ページでございますけれども、需要の回復ということと、21世紀型社会への基盤整備、この2つを狙いとしているわけでございます。本文そのものは、資料の冊子の一番最後に別添で配られているところでございます。『経済新生対策』という、これはフルのテキストで20ページ強でございますけども、私はこの11ページの要旨でポイントを説明させていただきます。

そして、この12ページのほうでございますけども、そういう2つの目的で景気の本格回復に乗せるということと、構造改革を進めるという2つの狙いでございます。

日本経済新生の道筋としましては、12ページの下のほうでございますけども、11年度は、これと同時に経済見通しも経済企画庁の試算ということで改定していますけども、0.5%を0.6%ということで、基本的には実質0.5%程度の経済成長を今年度は達成する見込みである。平成12年度におきましては、年度の後半に本格的な回復軌道に乗せる。平成13年度は、民需を中心とした自律的な回復から新たな成長軌道に乗せることで、日本経済の長期的発展を確実にすると、そういう道筋を考えながらこの対策を取りまとめたわけでございます。

具体的には13ページ以下でございます。これは個々に説明しますと大変時間がかかりますので、項目だけを見ていただきますと、時計文字のIで、「日本経済のダイナミズム発揮のための施策」ということで、中小企業、ベンチャー対策、それから、戦略的な重点的技術開発の推進を特に強調しております。

それから、14ページにまいりまして、3の「成長分野や事業活動の基盤に係る規制緩和・制度改革」でございます。4が雇用対策、5番目が少子化・高齢化対策。

それから、15ページにまいりまして、時計文字のIIで「21世紀の新たな発展基盤の整備」ということで、これは主として社会資本整備でございますけども、事業規模は6兆8,000億円、国費3兆5,000億円を投ずるわけでございまして、1にございますように、21世紀型に向けた生活基盤の整備・充実等、それから、2の基幹ネットワークインフラの整備、この中にはETC、ノンストップ自動料金集中システム、これを900か所平成14年度までに導入する。具体的ないろいろな目標を本文では書いております。

それから、16ページでは、3の「情報化の飛躍的推進」ということで、情報化について重視して、いろいろな施策を盛り込んでいるところでございます。

それから、16ページの下のIIIは、「金融市場の活性化と不動産の証券化等」でございます。

それから、17ページ、一番最後の「その他」、4の新千年紀記念行事、耳慣れない名前でございますけれども、ニューミレニアムゲートイヤーフェスタと称して、2000年末から2001年にかけて、情報ネットを使った大々的なフェスタをやろうということもあわせて決めております。

18ページは、この経済新生対策の効果でございますけれども、事業規模18兆円でございますけども、この中の社会資本整備による今後1年間のGDPの効果を試算いたしますと、名目で1.7%、実質では1.6%程度となっております。

次に、19ページ、今後の見通しでございますけれども、現在、作業中でございます。先ほど申しました平成12年度、13年度の回復の経路を念頭に置きつつ、個別の事業項目等を見ながらいま作業をしているところでございます。

なお、この対策と同時に、見直し、政府見通し、これは今年度の実質成長率0.5%でございます。20ページでございますけども、0.5%を見直したところ、GDP全体としては0.6%、0.1ポイント上方修正いたしております。中身では、個人消費が1.4%ということで、比較的強いということで、ここらあたりが大きな変更点でございます。

それから、ちなみに、20ページの一番下に、民間シンクタンク34機関の見通しの平均を書いておりますけども、平成11年度は0.8%というふうに見ておりまして、若干政府よりも高い。ただ、民間見通しにつきましては、昨年末の11年度の見通しを発表したときには、民間の見通しの平均はマイナスの0.6%であったわけで、上方修正を続けて、いま0.8%という数字を民間のシンクタンクの平均では出しているところでございます。

それから、21ページは、その経済見直し試算をもう少し詳しく見たものでございますけれども、実質は余り変わらない。0.5%が0.6%になったわけですけども、この上の行の3行目あたりに、名目の成長率があるわけですけれども、これも当初0.5%プラスを見ていたのですけれども、今回の見直しでは、物価が安定している、マイナスということもあって、マイナスの0.3%ということで、ここが大きく変わっているところでございます。

それから、失業率につきましても、下のほうの雇用の完全失業率、これは4.3%と今年度見たのですけども、見直しで4.7%ということで、雇用の厳しい状況を反映しているわけでございます。

国際収支は3.4%GDP比で見ていましたけれども、これは輸出が傾向的に、直近はアジアの回復等も増えていますけど、全体として見ますと、当初考えていたほどは経常収支の黒字幅は増大しないということで、2.8%程度と見ております。

それから、12年度の経済見通し、政府、いま私ども作業中でございますけれども、民間のいままでに出しているのを整理したものが22ページでございまして、12年度は、平均してみますと、実質国内総生産は0.7%プラスということでございます。

次に、23ページはOECDの見通しで、これはたしか11月16日、最近出たばかりでございますけども、比較的強めの見通しではないかと思いますけども、これは暦年でございます。1999年が日本は1.4%、2000年が1.4%、2001年が1.2%ということになっていまして、年度と違いますけども、99年、2000年、これを年度に直しますと、機械的に見ますと1%以上の数値になると思います。

それから、物価につきましては、OECDのほう、‐0.6、‐0.5、‐0.3ということでマイナスが続く。失業率は4.7ということで高止まりと見ております。

それから、一番最後がIMFの世界経済見通しでございますけども、これは9月に出たものでございまして、99年、2000年を日本は1.0%、1.5%ということで、IMFも回を重ねるごとに上方修正しているところでございます。ただ、失業率については、OECD以上に2000年5.5%ということで、まだ雇用情勢の悪化が続くというような見方でございます。

民間、国際機関、それぞれ前提を置いて見通しているところでございますけども、各機関によってかなり相違が出てきているところでございます。

時間の関係で説明は以上で終わらせていただきます。

加藤会長

ありがとうございました。

何かこれについて御質問ございましょうか。よろしゅうございましょうか。

特にないようでございますので、どうもお忙しいところ大変ありがとうございました。

(川本審議官 退席)

続きまして、今年度の第二次補正予算が提出されまして、これから国会審議が行われることになりますが、その概要と、それを踏まえた国と地方の財政状況、税収動向について、簡単に説明していただきたいと思います。

それでは、まず財政状況について、主計局の飯原総務課長さん、よろしくお願いいたします。それから、財政局の林審議官、どうぞよろしく。

飯原総務課長(主計局)

主計局総務課長の飯原でございます。よろしくお願いいたします。

お手許に『我が国財政の現状』という、資料番号でいいますと「総39-8」という資料をお配りいたしておりますので、それに基づいて概略御説明させていただきます。

表紙をめくっていただいて1ページ、若干細かくて恐縮でございますが、横表を御覧いただきたいと存じます。これが昨日内閣から国会に提出されました第二次補正予算の概要になっておりまして、真ん中四角で囲った部分が補正予算の概要を億円単位で四捨五入をしたものでございます。

左の歳出、右の歳入。歳出のほうから御説明いたしますと、大きな1の社会資本整備費3兆5,000億円、中身が物流効率化の(1)から(6)の災害復旧等まで分かれておりますが、社会資本整備費が3兆5,000億円、2の中小企業等金融対策費7,733億円、3の住宅金融対策が2,001億円、雇用対策1,917億円、5の金融システム安定化対策9,279億円、6の介護対策費9,110億円、以上、実は大きな1から大きな6までが経済新生対策を裏打ちいたします補正予算の一般会計部分でございまして、数字は書いてございませんが、全部足し上げますと、6兆5,041億円といった金額になります。これに見合います事業費、補助費等を入れました事業費がその左の欄外の注のところに各項目にわたって記載してございます。例えば社会資本でいいますと、一般会計歳出では3兆5,000億円ですが、社会資本の整備で事業費が6.2兆円程度。

なお、これにはその社会資本整備の下の方の丸に、公共事業の前倒し、いわゆるゼロ国というのも0.6兆円含みますので、社会資本整備自体では全体では6.8兆円の事業規模になります。

以下同様に中小企業については7.4兆円、うち5兆円は貸し渋り特別保証枠10兆円追加のうちの本年度実行分5兆円が含まれております。それから、3の住宅金融対策、10万戸、2兆円の追加。それから、雇用対策が特会を含めて1.0兆円。それから、金融システム安定化対策は預金保険機構に対する交付国債の財源でございます。これは事業費にカウントいたしませんが、ここまでで17兆円の事業規模。さらに6の介護対策を含めますと、0.9兆円の上乗せになった18兆円程度が今回の経済新生対策の事業規模といった形になるわけでございます。

以下、実はこれ以外に、歳出の7以下、義務的経費の追加、生活保護とか老人医療費、国民健保に対する補助金・負担金の追加、8として都市基盤整備公団、これは従来の住都公団ですが、10年度決算が出ましたことに対する補給金の交付、それから、9番厚生保険特別会計、これは中身が政管健保ですが、政管健保の財政状況の悪化に対応しまして、実は過去に隠れ借金の形で一般会計から繰入れを猶予していただいた分の元本分4,183億円の返済、隠れ借金の返済分もございます。

それから、10のその他の経費。これは例えばサミット関係であるとか、それから、先日の原子力災害関係の対策等が含まれております。

それから、11番既定経費の節減。これはかなり大きくなっておりますが、9,119億円。事務費の節減であるとか、むしろ金額的に一番大きいのが国債費の金利の不要部分が4,000億円台ございますが、これは予算積算より実際の金利が下がってきたものによるもの。あるいは2,000億円程度が人勧によりまして0.3か月分の手当削減がありましたので、その分のはね返り等々でございます。

それから、12の地方交付税の減額は、税収の見積もり減、1兆4,000億円に対応する地方交付税の減額ですが、これは一般会計から地方交付税特会への減額でございまして、実際、これに見合いの金額を交付税特会のほうで資金運用部から借入れをいたしますので、実際、道府県なり市町村に交付される交付税の金額は変わらないという措置にいたしております。

右の欄、歳入の欄を御覧いただきますと、税収のほうは主税局から御説明があるということで省略をいたしますが、2の税外収入は、これは主として社会資本整備のうちの公共事業に伴う直轄負担金が400億円強ということで中心でございますが、その他在位10周年の硬貨に関する貨幣改正準備資金の受入れ等々もございます。

それから、公債金収入は差っ引きですのであとにいたしまして、4の前年度剰余金受入5,849億円というのがございますが、これは10年度決算を締めましたときに、日銀を中心に1兆円程度、9,000億円台の剰余金が発生をいたしました。うち3,737億円は一時補正の財源に使用いたしておりますので、残りの5,849億円を一般会計の財源として繰り入れるといったことで受け入れるということでございます。

その結果公債が差っ引きで出ますが、公債金収入、3のところ、7兆5,660億円とございますが、この内容については、右側の欄をちょっと御覧いただいたほうがわかりやすいかと思います。10年度決算で公債金の発行額が34兆円ちょうどでございましたが、11年度の二次補正後で38兆6,160億円と増えてございます。

さらにその内容を御覧いただきますと、建設国債のほうが、実は全体が増えたにもかかわらず、10年度決算の17兆500億円よりは13兆1,660億円と減っております。これは10年度公共事業を中核とした補正を2回組んでおります。本年度は1回であるということで、建設公債は減額をされております。むしろ特例公債のほうが16兆9,500億円から25兆4,500億円ということに大幅に増えております。これはいろいろな要因がありますが、大きな要因の1つが昨年度の減税のはね返りということが言えるかと存じます。

そういうことで結果的に公債依存度が10年度決算で戦後最高の40.3兆円でございましたが、二次補正後でも43.4%ということで、それをさらに上回るといった形になるかなということでございます。

2ページは社会資本整備を分解して事業費を出した分です。これは省略をさせていただきますが、むしろ最近プレスの方に注目していただいています指標が3ページにございますので、3ページだけお開きいただきたいと存じます。これは実は折れ線グラフが、いま御紹介しました公債依存度を過去昭和50年度から大体5年おき、ないしは最近については毎年度ピックアップしたものでございまして、昭和50年代で言いますと、昭和54年度の福田内閣、日独機関車論の時代の34.7%というのが1つのピークでございました。現在の10年度の40.3%なり、11年度第二次補正後の43.4%というのは、それをさらに上回る水準になっているというのが1つでございます。

もう1つ、棒グラフがございますが、黒い棒グラフが実はこれは表題にもありますが、税収(交付税除き)とございます。つまり国が受け入れた税収のうち地方交付税の部分は、国が使えないで天引きされるというふうに考えますと、いわゆるネット税収は地方交付税除きであるというふうに観念をいたしますと、計算上、黒い部分の税収が出てくるわけでございまして、他方、白抜きのところが公債発行額でございます。昭和54年度の過去のピークのときでも、ネット税収が17.8兆円、借金が13.5兆円でございますから、ネット税収のほうが多かったわけですが、10年度、11年度を御覧いただきますと、10年度は税収と借金がほぼイコール、実質的公債依存度という表現が適当かどうかわかりませんが、フィフティ・フィフティに近くなりましたが、11年度の第二次補正後では、そこにございますように、ネット税収よりも公債のほうが多いという状態に至ったということでございます。

以下の資料は、従来から何回も御説明した資料でございますので、省略をさせていただきますが、1点だけ、最後のページ、8ページを御覧いただきたいと存じます。これが平成12年度予算をめぐる財政事情の試算でございます。単純な試算でまことに恐縮でございますが、この表の数値の置き方を御説明させていただきますと、11年度はこれは第二次補正後ではなくて、当初予算の数字をあくまでそのまま置いてございます。12年度試算のところですが、これは歳入の税収、それから税外収入、とびまして歳出の国債費、それから、税収の一部の地方交付税は、中期財政試算の1.75%のケースをそのまま置いた数字になっております。

それで、一般歳出につきましては、8月30日に各省庁から提出をされました概算要求の数字をそのまま47.6兆円置いてございます。すべて残差は歳入の公債金で調整をするということで、30.7兆円という数字を単純に置いてございます。これにいろいろな要因が乗るわけですが、例えば一般歳出の査定減等もありますが、他方、一般歳出でいいますと、備考のところにありますように、11年度予算は最終場面で公共事業等予備費0.5兆円が乗っかったわけですが、これについては概算要求には当然含まれておりません。また、介護対策についての予算措置等は、予算編成過程で検討ということでございまして、一般財政の概算要求には計上されていない。

また、ちょっと上のほうに戻っていただいて恐縮ですが、国債費のところで、11年度予算の19.8兆円には預金保険機構に交付をいたしました7兆円の交付国債の償還財源2.5兆円を含んでおりますが、これについては、いまの段階では、国債費に預金保険機構に対する交付公債というものの措置は全く含んでいないといった要因がございまして、すべてどういうことになるかということについては、潜在的な要因ということで、まだ何らの方向も出ていないといった状況にございます。

以上でございます。

林審議官(自治省)

自治省の財政担当審議官の林でございます。

お手許の『地方財政関係資料』に基づきまして、地方財政の現状につきまして御説明させていただきたいと思います。

1ページでございますが、御案内のように、地方財政は、通常収支の不足が巨額になってきておりまして、お手許の資料にございますように、平成7年度から恒常的な通常収支の不足、あわせて恒久的な減税等によります財源不足に見舞われております。平成11年度の場合は、恒久的な減税の実施によります減収額が2兆約7,000億円。また、通常収支におきます財源不足が10兆約4,000億円ということで、合わせまして13兆円の財源不足が出ている状況にございます。

これにつきましては、その不足を補てんいたしますために、交付税特別会計における借入れとともに地方債の増発を行って、必要な財源を確保している状況にございます。その結果、2にございますように、地方財政の平成11年度末の借入金残高は179兆円に及ぶことになっておりますし、また、個別の団体の財政事情は、3にございますように、私ども財政運営上警戒ラインと言っております15%以上になる団体が全体の6割に及ぶ状況になってきております。

こういう状況でございますが、IVに簡単に記してございますように、地方財政は、これからこれらの元利償還金の増嵩に対処しなければならないという課題とともに、高齢化社会に向けました介護保険の導入をはじめといたします各種の福祉施策、あるいはまちづくり等の多様な財政事情に直面しているのも事実でございまして、この巨額の財源不足を解消しながら、健全化を図り、新しい時代の財政基盤をつくっていかなければならないという事態に直面いたしているわけであります。

2ページ以下、簡単に御説明申し上げます。

2ページは、先ほど申し上げました毎年度の財源不足がどういうふうに推移をしてきたかをグラフにいたしております。一番右端平成11年度は、13兆円に及びまして、これは過去最高の財源不足であることはもちろんでありますが、地方財政計画の14.7%にも達する規模となっているわけであります。

3ページを御覧いただきたいと思います。借入金残高179兆円と申し上げましたが、その推移を示したものでございまして、御覧いただきますとおわかりのとおり、平成4年度以降、特に6年度以降、借入金残高が急増いたしておりまして、3種類ございますが、特に一番シャッポの部分が交付税特別会計の借入金の残高でありまして、平成11年度の場合、179兆円のうち22兆円強になっております。上の囲みの中に黒ポツが3つございますが、3つ目にありますように、特例的な借入金は2つ目にありますように45.7兆円になっているわけであります。そのうちでも赤字地方債と考えられます減税補てん債と、実質的な全国ベースでの赤字地方債と考えられます交付税特別会計の借入金を合わせたものが、3つ目にありますように29.5兆円に上る状況になっておるわけであります。

4ページ以下は、個々の団体の状況につきましてのグラフでございます。

4ページは、3,279団体ございます地方団体のうち、一般財源に占める公債費、いわゆる償還費でございますが、その比率が15%以上の団体がどのぐらいあるかを示したものでございまして、平成3~4年は1,000団体前後でございましたが、今日、その数は急増いたしておりまして、平成10年度には1,974団体、全体の3分の2に及ぶ団体が警戒ラインに達するような状況になっております。

5ページを御覧いただきたいと思いますが、いま公債費で御覧いただきましたが、加えまして人件費と扶助費、社会福祉関係経費でございますが、それらに充てられます一般財源の比率がどのぐらいかをお示ししたものが、この経常収支比率というものでございます。これも御覧いただきますとおわかりのとおり、平成10年度では全国平均で89.4%という状況になっておりまして、財政運営の弾力性が乏しい、いわば硬直化が進んだと言える状況になっております。大変悪い団体の場合は、110を超えるような団体で、経常的な収入で経常的な支出が賄えないというような団体も出てきておる状況にございます。

それらは一連のこの間の景気の低迷によります地方税収の減収、あるいは減税等による税収の減、あるいは税の変動によることによるものと考えているところでありますが、6ページを御覧いただきたいと思います。

6ページは、そういう状況下で私どもそろそろ来年度の地方財政対策の作業を始めなければいけない時期に来ているわけでありますが、その状況をこの表でちょっと御説明申し上げておきたいと思います。平成11年度の場合、この表の下にございますように、財源不足の欄を御覧いただきたいと思いますが、先ほど申し上げましたように、通常収支で10.4兆円、恒久的な減税の影響分で2.6兆円、合わせて13兆円の財源不足がある状況下で、交付税あるいは地方債を通じてこの穴を埋めまして、地方団体におきます財政運営に支障が生じないよう、必要な財源対策を行ったわけでありますが、明年度のことを考えますと、まず地方税につきましては、今後、当税調でも御審議いただくことになるわけでありますが、昨年の35.3兆円を基本に考えましても、まず本年度の税収が決算見込みで7,000億円から8,000億円の減収になるという見込みを立てております。その意味で発射台の落込みが8,000億円くらいございますし、また、恒久的減税の平年度化によりまして、地方財政の場合、1兆円ほどさらに税収が減になります。といたしますと、発射時点が33.5兆円から、今後の税制改正の動向による増減により、明年度の税収見込額が決まっていくことになるわけであります。

税に関係いたしますのは交付税もそうであります。実は平成11年度20.9兆円というふうになっておりますが、これは法定分が11.2兆円でございまして、財源対策あるいは恒久的減税の補てんのために、9.7兆円借入れをした結果、20.9兆円の交付税総額を確保いたしたわけでありますが、明年度を考えます場合は、その右にございますように、概算要求ベースでは14.8兆円の要求しかできておりません。国税のほうの発射台の落込み、あるいは法定5税の税収の増減にもよりますが、いずれにしても14.8兆円±という要因で決まっていくことになります。昨年度の20.9兆円には大きく及ばない状況になっております。

片や歳出のほうでございますが、一般歳出は私どもも地方団体に行革をお願いをいたしております。そのことも反映いたしまして、可能な限り抑制したものにしたいと考えておりますものの、社会福祉関係経費の増はある程度見込まなければならない状況もございます。また、公債費につきましては、過去発行いたしました地方債の償還費が来年度は当然増として7,000億円ぐらい出てくることが予想されております。こういうものをあわせ考えますと、その下にございますように、昨年度の財源不足は10.4兆円でございましたが、発射台の落込み、恒久減税の平年度化、公債費の当然増を考えますと、11.9兆円を基点といたしまして、今後の税制改正の御議論の結果に待つようになるわけであります。

ただ、そういうことを考えましても、通常収支の不足の大幅な改善を期待するのはなかなか難しいのではないかと、そういう状況にあると私ども考えております。ぜひ大変厳しい地方財政の状況を御賢察いただきまして、地方税等の安定的確保に御理解を賜りますようお願い申し上げたいと思います。

7ページ以下は参考におつけしております。7ページは前にもお示しして御説明したことがございますが、財源不足が生じた場合、恒常的に1割程度の財源不足が生じた場合は、地方税制度の改正、財政制度の改正、交付税率を含めまして、その改正により地方財源を確保しなければならないという規定が交付税法の中にございます。それに照らし合わせますと、この1割を超えた状況が平成6年度以降続いておりまして、平成11年度の場合は95.6%の数字になっている状況にございます。これに対応しまして、現在は基本的には財源不足につきましては、国と地方が交付税特会で借入れする場合は折半をして負担するというルールをつくって対応いたしている状況にございます。

なお、8ページは、さきの通常国会におきまして分権一括法を御議論いただき、成立したわけでありますが、その際、附則として追加された規定がございますので、御紹介をさせていただいているものでありまして、「地方税財源の充実確保の方途について、経済情勢の推移等を勘案しつつ検討し、その結果に基づいて必要な措置を講ずるもの」と、こういう附則がつけられているわけであります。

9ページは最近の経済対策の概要を参考までにお付けいたしました。

また、10ページ以降は、最近の厳しい財政状況を反映いたしまして、地方団体の行政改革、地方行革がいろいろな形で進んでいると私ども理解しておりますが、特に11ページには、東京都、大阪府、神奈川県、岡山県のような県で、どういうことが取り組まれているかというものを参考までにお示しをいたしております。12ページも主な団体のものをお示ししてございます。

13ページ、14ページも御参考にしていただければと思います。

15ページ、時間がございませんので省略させていただきますが、市町村合併につきましても、政府として積極的に取り組まなければならないということで、関連法律の一部改正等を行い、合併の障害を取り除こうという努力をいたしていることをお示ししたものでございます。

以上でございます。よろしくお願いいたします。

加藤会長

ありがとうございました。

主計局の総務課長の飯原さんは4時半までしかおられませんので、何か御質問があればどうぞ。

特にございませんか。それではよろしゅうございますか。

どうも、飯原さん、ありがとうございました。

(飯原総務課長 退席)

それでは、地方財政のほうはいかがでございましょうか。いま林さんが説明されましたが、何か御質問などございませんか。よろしゅうございますか。何度もお聞きしておりますので、みんな頭に入っておりますから、大丈夫ですね。

どうも、林さん、ありがとうございました。

(林審議官 退席)

それでは、その次に移らせていただきます。

今度は税収動向について、主税局の加藤総務課長、税務局の小室企画課長によろしくお願いいたします。

加藤総務課長

それでは、お手許の資料「総39-10」でございます。先ほど主計局の総務課長から補正予算のお話がございました。この補正予算に当たりまして、実は歳入の額につきましても見直しを行っております。

1ページの一番下のところでございます。当初の予算では47兆1,190億円の歳入を見込んでおりましたが、1兆4,410億円の減額補正を行うことになりました。最終的な補正後の歳入額、予算額は45兆6,780億円ということになっております。

内訳につきましてはここに出ておるわけでございますが、ちょっと次のページを使わせていただきまして、内訳とその要因について御説明させていただきます。2ページでございます。

もともと10年度の決算が出た段階で、予算で見込んでおりました50.1兆円が7,000億円減額になって、49兆4,000億円に決算額がなっておるわけでございます。私ども11年度予算を見積もるに際しましては、この10年度の補正後の予算額50.1兆円をベースに税制改正の影響、特に昨年は恒久的減税がありましたので、その影響ですとか、それから、経済の動向等を勘案して見積もったわけですが、その土台が7,000億円落ちたということが1つ今回の補正減の要因の1つでございます。

さらに、ここに還付金の増というところで、左のほうに還付金の11年度にずれ込む4,000億円ということがございます。3月期の決算法人の申告税額につきましては、11年3月期の分につきましては、10年度の予算になるということは年度区分で決まっておるわけでございますが、去年は非常に決算の状況が悪うございまして、その前の年の9月に中間納付をしていた企業が、最終的に決算をしてみたら、申告税額がほとんど出なくて還付になってしまったという企業がたくさんございました。その還付金の支払いがどうしても5月の末の申告を待って、その審査の上還付するものですから、それが翌年にずれ込んでしまいます。ですから、実態としては10年度の決算にかかわる、本来なら10年度税収に入るべきものが、結局、11年度に還付という形で影響を受けてしまっている。その分が4,000億円。これはですから、両者合わせて1.1兆円というのがいわゆる土台減。土台減のそれぞれ中身は右に税目別には出ております。

それで、本年度の進行年度中の要因といたしましては、この右の、ちょっと細かいですが、源泉所得税0.4、これはやはり給与がボーナスを中心に不振であると。あと、酒税についてはややビールが低調という要因もございまして、1,000億円ほど減になっております。一方、法人税+1とございますが、土台減のほうで法人税は約7,000億円ほど落ちておるわけですが、いま現在進行中の年度につきましては、やや経常収支等も上向きということで、少しプラスが見込める。

それから、消費税につきましては、昨年1,000億円の土台減がございますが、やや輸出が低調ということもありまして、還付金が減っております。それが結果的には増要因ということで、消費税についてはプラスマイナスでゼロ、現在進行中の年度の要因で3,000億円ぐらいの減が見込まれます。

以上、全部足しまして、約1兆4,000億円の補正減を立てましたところ、最終的な補正後予算が45.7兆円という見込額になったわけでございます。

3ページは、その45.7兆円という数字、過去の推移を見ていただければわかりますように、この数字は62年度の税収の46.8兆円をも下回る、12年ぶりに低い極めて厳しい水準であるということがおわかりいただけると思います。

4ページは、歳入と歳出の関係ということで、税収と歳出の関係を経年的にグラフ化したものでございます。元年あたりにぐっと締まったわけですが、その後、歳出と税収の格差は開くばかりでございまして、公債依存度とはまた別の指標で、歳入に占める税収の割合という考え方もございます。一番下の欄にその歳入に占める税収の割合というのでずっと数字を挙げさせていただいておりますが、11年度は51.3%、要するに歳出のうち、歳出歳入、いわゆる賄うべき予算額のうち、税収は5割ちょっとしか貢献できていないという形になっております。この数字自体、まさに終戦直後こういう時代がございましたけども、それ以来という、その時代の数字に匹敵するものということでございます。

次に、5ページをちょっとお開きいただきたいと思います。こういう状況の中で12年度の税収状況でございます。12年度の税収については、今後予算編成の過程において経済見通し等も勘案しながら税目別に積み上げていくということで、まだ作業中でございまして、具体的なことは申し上げる状況ではございませんけれども、いま時点で判明している粗々のことを申し上げますと、まず、当然12年度を見積もるに当たっては、11年度の税収が発射台となりますので、45.7兆円というのがスタート台になるわけです。ただ、今年の場合は若干特殊要因がございます。この特殊要因につきましてちょっと御説明しますが、いまのところ私ども特殊要因で大体2兆円ぐらいの増収があると見込んでおります。

まず、これはプラスαが増収、βが減収で、差引きして私ども大体2兆円と思っておるわけです。そのプラスアルファの要因でございますが、1つは郵便貯金。これは郵政省がすでに夏の段階で発表されておりますが、平成2年に預けられました割と高金利の時代の定額貯金が大量にございます。これが来年満期を迎えますので、これが利子の税収として相当入ってくる。これにつきましては、郵政省のほうの数字で、およそ国税分でネット増3兆円ぐらいが見込まれると考えております。

一方、特殊要因としての減収分、-βの要因もございまして、これは先ほど自治省の財政局のほうからもお話ししました、国にも恒久的減税が平年度化することによって減収が立ちます。法人税のほうの税率引下げは11年度は3月期決算のみでございましたが、12年度は4月から2月の決算法人も全部適用になりますので、それで約6,000億円の減収が拡大します。

一方、所得税につきましては、11年の1-3月の減税分は本来10年度税収で引くものですが、後ろ倒しの11年度で調整をいたしましたので、11年度は15か月分の減税を行った形になっております。それが3か月分はげますので、それで3,000億円のプラスがある。差引きこの平年度化要因で約3,000億円の減収が立つと思います。

もう1つ、これは極めて個別の特殊事情でございますが、消費税の関係でございます。実はNTTが持株会社化を図りまして、持株会社と3つの事業会社に分かれた。それで、各々その間で現物出資でありますとか資産の譲渡が行われる。これはかなり大量に行われまして、そういう場合の譲渡は当然消費税が課税になるわけです。その金額がおよそ3,500億円ぐらい国分の消費税収であるわけですけども、ただ、それは一旦支払いますけども、当然、事業のあれですから、仕入税額控除になるわけです。ところが、払う税収は11年度の3月末の申告で入る。一方で、支払税額控除での還付はどうしても翌年に、先ほどの法人税と同じように期をまたがってしまいますので、それで差引き3,500億円の消費税が11年度はプラスになり、逆に12年度はマイナスになるということで、差引き7,000億円のマイナス要因がございまして、約1兆円の、先ほど申しました平年度化の3,000億円とこの特殊要因の7,000億円、大体1兆円のβ要因がある。したがいまして、先ほど申し上げましたように、プラスマイナスで約2兆円という特殊要因による増収をいまの段階で見込んでいるということでございます。

それに今度加えまして経済成長の要因でございます。もちろん、名目の成長率はおそらく若干のプラスは当然見込めますので、ある程度増収は見込めるとは思いますが、これはこれから見積もってまいるということになろうかと思います。

ただ、最近の新聞記事で、特殊要因の過大評価等もございまして、若干税収が50兆円を超えるというような報道もございますが、やはりいま申し上げた増収要因も、先ほどのマイナスの要因もあるということ、それにプラス経済成長はあるとしても、なかなか50兆円に達するというわけにはまいらないのではないか。いま私どもはそういう感じでおります。

私のほうからの説明は以上でございます。

小室企画課長

それでは、自治省のほうから御説明させていただきます。資料は『地方税収の動向について』ということで、「総39-11」でございます。これまで何度かお話ししましたので、要点だけ申し上げます。

1ページのところが総括表で、9月末で11年度を見込んだものでございます。左手、地財計画額A欄の一番下、35兆2,957億円、これが先ほど来、出てきております35兆3,000億円でございます。10年度は38兆5,000億円の見込みに対して3兆1,000億円不足があって、決算見込みとしては35兆4,000億円でございます。この35兆4,000億円に対してA欄の35兆3,000億円というのは、▲0.3%ということで相当抑えた数字になっております。▲0.3というのが一番右にございます。この抑えた見込みに対しまして、9月末の調定額で昨年と比べますと、そこに右から2つ目の下にございますように、▲2.3%ということで、かなり落ち込んでおります。原因としましては、そこにあります法人住民税、事業税の関係で、3月決算が主力でございますので、それを4-5月で受けて11年度に効いてまいります。ここら辺がちょっと落ち込んでいる。地方消費税はちょっと数字が大きくなっておりますが、10年度の前半が膨らんだ要素でございますので、これはおいおい回復すると見ております。いずれにしましても、このまま推移すると、11年度においても7,000億円から8,000億円、35兆3,000億円に対して税収不足になるのではないかと見込んでおります。したがいまして、これは平成9年度、10年度、11年度と3か年続いた税収不足でございます。この7,000~8,000億円というのが12年度に対する発射台の減ということで、先ほど林のほうから御説明しました資料「総39-9」の6ページの上につながってまいります。こういった発射台の減、それから、減税の平年度化がありまして、そのほかにこれからの経済要因等々が加わって推計されるということでございます。

なお、2ページにおいては、県と市町村に分けて、2.3%減と申しましたが、右から2つ目の欄、県のほうが▲6.0、市町村のほうが▲0.3と法人関係が効いて県のほうに大きく影響が出ているということでございます。

以下、資料は省略させていただきます。

加藤会長

ありがとうございました。

それでは、皆さま方から何か御意見あるいは御質問がありましたら、どうぞおっしゃってください。

森下委員

前回も申し上げましたけれども、いろいろと企業関係の企業分割というものが来年度の通常国会で検討されるということに予定はなっております。そういたしますと、分割法が成立するという前提におけるそれに伴う税制措置をどう取り上げていくかという問題と、前回にも申し上げました連結納税制度というものが、分割法と連結納税、非常に関連がございますので、そのほうをぜひ一つお取上げをいただきたいなということでございまして、2点目が、来年度は個人消費に伴う息切れが出ないようにするということが必要でございますので、この住宅に伴う税制をあと半年延長するとかというような論議も出ておりますけれども、このあたりをどのように取り上げていくのかということを提起したい。

加藤会長

最初のほうのことにつきましては、これは石さんがおられますと御説明していただけると思いますけども、分割の問題をとにかく鋭意やらなければならないということでございますので、法人課税小委員会でもってこれは煮詰めていきたいと思っております。

あとのほうの問題につきましては、これはむしろこの総会でどんどんお出しいただきますと反映してくるかと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

そのほかございましょうか。よろしゅうございますか。

今日はいろいろな知識が入りましたけれども、これから我々がこれをどういうふうに裁いていくかということが問題になるわけでございます。

それでは、今後のことについてちょっと御説明しておきます。次回の総会は11月30日、午前10時からでございます。2時間の予定で12時まででございます。この同じ場所で開催いたします。次回以降は、来年度答申に盛り込むべき内容を具体的に検討していただく必要がありますので、そこでいま事務局で、これまで出ました御議論を踏まえまして、こんな問題を取り上げなければいけないとか、こういうことはもっとどうするかというようなことについて、検討項目をいま整理してもらっておりまして、これを次回の総会に提出してもらおうと思います。そして、その提出してもらいました検討項目につきまして、いまどのような状況であるかということについての説明をいたしまして、その説明につきましてまた我々が議論をすると、こういうことを続けていきたいと思います。そこでいま森下さんのおっしゃった住宅減税の問題なんかも当然出てまいりますので、御議論をいただきたいと思っております。

ということで、総会が11月30日に開かれますが、そのあとの予定を申し上げますと、12月3日金曜日午後2時から、それから、7日火曜日午後2時から、10日が金曜日午後2時からということで、それぞれ開催いたします。

それから、13日以降、つまり12月の13日の週に入りますと、最終的な取りまとめをいたしますので、そこで、日程がまだ固まっておりませんけれども、定例日である火曜日と金曜日以外にも開催をしなければいけないということが起こりますので、どうぞその辺を御了承いただきたいと思います。

こういうふうにタイトになってまいりますけれども、よろしくお願いをしたいと思います。今日はしたがって前哨戦でございますので、早く終わることにいたしましょうか。どうも今日は皆さまお疲れのところ、ありがとうございました。

〔閉会〕

(注)

本議事録は毎回の総会後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、大蔵省主税局及び自治省税務局の文責において作成した資料です。

内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。