第37回総会 議事録
平成11年10月29日開催
〇加藤会長
ただいまから税制調査会の第37回総会を開催いたします。
本日の議題でございますが、前回の総会以来一月余りありましたが、その間に基本問題小委員会を3回開催いたしました。その審議状況を御報告するということでありますが、基本問題小委員会では、個人所得課税の問題とか資産課税の問題など議論をいたしました。本日は、これらについて皆さま方の御意見もいただきたいと思っております。
なお、御案内では、先週22日に行われました法人課税小委員会第3回会合の審議状況の報告も行う予定にしておりましたけれども、この第3回会合と来月16日に予定されております第4回会合でもって、連結納税制度に関する主要検討項目のとりまとめを行うこととしておりますので、次の総会でまとめてこの点について御報告をしたいと考えております。
今日は、御案内いたしましたけれども、いつもより長く、2時から5時までという3時間の時間を予定させていただいております。途中で休憩が5分程度できるかなという感じもいたしておりますが、3時間に延びたからといっても、報告をいただく方、あるいは御質問の方、なるべく短くして、いままでどおりにしていただきたいと思います。
さて、今日は、内閣改造で新たに就任されました保利自治大臣に御出席をいただきまして、御挨拶をいただくことになっております。本日は臨時国会が開催されましたので、3時から4時頃の間にそういう時間を取りたいと思っております。
それでは、本日の議題に入りたいと思います。
本日の議題は、先ほど申し上げましたが、基本問題小委員会の審議状況を報告した上で、総会としての御議論をいただこうと思っておりますが、基本問題小委員会の小委員長を私が兼ねておりますので、私のほうからまず簡単に御報告をいたしまして、そして、さらに説明もいただこうかと思っております。
小委員会の報告といたしましては、前回の総会以降、個人所得課税については10月1日と10月22日の2回、資産課税については10月15日に1回、計3回議論をいたしました。
個人所得課税につきましては、基本的なあり方とか課税ベースの全般、具体的には給与所得控除や各種の人的控除、年金課税等について議論を行いまして、資産課税等については、相続税、固定資産税を中心とした議論を行いました。特に個人所得課税については、昨年来参加されているワーキンググループの委員の皆さんも交えて理論的な議論を積み重ねました。
小委員会では、まだ議論が集約しておりませんので、専門的・理論的な観点から事務局より提出された資料をもとにしながら幅広い論点について御議論をいだだいたのでありますが、今回各種の論点について、ポイントをついた的確な御意見が出されたものと考えております。
また、小委員会において議論された項目の中では、最近話題になっております相続税や年金課税などについても活発な議論が行われましたので、今後の年度改正に向けた議論を行っていく上での粗ごなしが大体できたものと考えております。
本日は小委員会3回の報告で出ましたものについて、2つの点からお話をしていただきたいと思います。個人所得課税と資産課税でございますが、これの議論といたしましては、後ほどまた事務局からの説明もございますので、それを簡単にこれから御紹介していくのですけれども、私のほうではその前に、委員から出ました主な意見について、若干整理しておきましたので、そのことについて申し上げたいと思っております。委員の方から積極的な非常に広い御意見が出ましたので、それをまとめますとこんなことになるのではないかと思います。
1つは、個人所得課税関係では、シャウプ勧告以後50年たっているので、そのシャウプ勧告を基本的に見直すべきところを見直そうということが1つありました。そういった中で各種控除のあり方の問題、それから少子化や高齢化への対応といった問題についても御意見をいただきました。
年金課税につきましては、その適正化についての議論が行われまして、最近話題になっている確定拠出型年金、401Kでありますが、その話について、これは一体貯蓄課税とどういう関係があるか、あるいは、どういうふうにこれを考えるべきかということについて、むしろ慎重に議論したいという御意見がありました。
個人住民税関係では、地方固有の制度であります均等割の負担水準、これについてかなり踏み込んだ御意見がございました。
資産課税の関係では、相続税については、高齢化やストック化などの社会経済状況の変化を踏まえつつ、ストックへの課税として今後どういうふうに考えようかという問題がございました。
固定資産税については、適正な地価と評価との関連で考えるべきだという、一番前に地価税の問題がございましたが、そのときの議論がまた同じように出てきているということだけは申し上げておかなければなりません。こういうわけで、議論が行われたわけでございます。
これから事務局の説明をいただこうと思っていますが、資料を御覧いただきますとおわかりになると思いますけれども、小委員会では、制度の細かい点まで含めて大部な資料に基づいて議論をしました。本日は総会ですから、小委員会での議論を踏まえまして、総会としての議論をしたいと思っております。
それでは、まず個人所得課税について、事務局より説明していただきたいと思います。資産課税等については、後ほど説明を受けました後で議論をしたいと考えております。
では、事務局からポイントを御紹介していただこうと思いますが、特に個人所得課税については、小委員会2回分の資料を要約する必要があるとともに、その審議状況についてもあわせて説明していただくことになりますので、多少時間がかかるかもしれませんが、その点はお許しをいただきたいと思っております。
それでは、清水税制第一課長、井原市町村税課長、よろしくお願いいたします。
〇清水税制第一課長
税制一課長の清水でございます。
資料、大部ございまして、これまでの基本問題小委員会の資料をそれぞれお手許にお配りしますとともに、その上に『基本問題小委員会における検討項目(個人所得課税関係)』という1枚紙、項目がございます。それから、これからの資料は、個人所得課税関係では10月1日と22日に配りました説明用の資料が大部ございますので、『説明資料(抜粋)』「総37-1」というのに沿って御説明したいと思います。
なお、各基本問題小委のときには、昨年のワーキンググループの報告の関連部分の抜粋をそれぞれのところにつけてございます。また、基本問題小委員会のワーキンググループの報告の全体図は、この大きなA3の1枚紙でつけてございます。これまで2回の個人所得税関係の御審議では、この大きなA3の紙でいきますと、左側の項目を大体御検討いただいた形になっております。
それでは、『説明資料(抜粋)』に沿って御説明させていただきたいと存じます。
まず1ページでございますが、サラリーマンの所得税の計算の仕組みのフローチャートでございます。これはもう全体像が見えるということで御参考にしていただきたいと思いますが、給与収入から給与所得控除を引く。さらに所得控除を引く。こういった課税ベース関係の部分があり、それに累進税率を適用して税額を算出するという流れが出てございます。
2ページをおあけいただきまして、所得税の現在の姿を御覧いただきたいと思いますが、一番右の欄、現行のところを御覧いただきますと、上のほうの税率構造につきましては、最低の10%の税率から最高37%まで4段階の税率構造になっております。それぞれの税率構造の適用範囲、ブラケットの範囲については、そこで課税所得に諸控除等を足し込みました給与収入ベースでお示ししてありますけれども、例えば最高税率は、夫婦子2人、4人世帯の場合で言いますと、2,300万円くらいのところから適用されるような形になっております。
最高税率につきましては、これに地方の個人住民税13%がございますので、37足す13で50%になっているという状況でございます。
また、この十数年のいろいろな税制改革の流れで御覧いただきますと、この間、税率構造につきましては、累進緩和が図られてきております。最高税率を御覧いただきますと、国の所得税で70%から37%まで、また階段(ブラケット)の数では、15段階から4段階になってきているわけでございます。
また、課税最低限につきましては、夫婦子2人のサラリーマン世帯の場合でお示ししてございますが、現在では382万1,000円という状況になっております。このように抜本改革を通じまして、全体として相当の負担軽減が図られてきている状況が御覧いただけるかと存じます。
次に、3ページをお開きいただきたいと思います。このようないまの所得税の負担水準、これを主要国と比較してどんな状況になっているかということでございますが、税率構造、上のほうを見ますと、諸外国ともかなり刻み数が少ない累進緩和がされた形になっております。最高税率を御覧いただきますと、日本の37%は、御覧いただくような形で、大体一番低い水準になってきているということでございます。
また最低税率は、アメリカですと15%とか、ドイツですと23.9%というような形がございます。各国とも、ちょうど日本で累進緩和が図られましたように、80年代、90年代を通じまして、相当の累進緩和が図られて、フラット化が進んでこのような形になってきたわけでございます。
例えばアメリカですと、レーガンの前までは70%、15段階といったような形がございましたが、80年代、レーガン政権のもとでフラット化が進みました。ただアメリカの場合ですと、一旦レーガンのときに最高税率28%、2段階までまいりましたけれども、その後ブッシュ、クリントンと最高税率の引上げがありまして、現在では39.6%というようなところになっております。
また、課税最低限につきましては、御覧のとおり、特に英米では課税最低限、かなり日本に比べて低い状況になっております。
以上、所得税の現在の姿、国際比較、あるいは累進緩和の流れ、最初のテーマでございます所得税の基本的あり方、あるいは全体の負担水準を通じたような部分におきましては、いろいろ基本問題小委員会でも御意見を賜っておりまして、国際的にかなり低い負担水準になっている反面、課税ベースがかなり狭められているのではないか、原点によく立ち返って検討すべきだとか、あるいはこういう累進緩和の流れがありますが、やはり基幹税の所得税の所得再分配機能というのは重要であるといった御意見、あるいは、かなりこれまで減税が繰り返されてきたので、本来の姿にどのように戻していくかということも、これから考えていかなければいけない、あるいは、他方で21世紀に向かってさらにフラット化なり課税ベースの拡大ということを考えていくべきだ、というような御意見。あるいは、これまでの直接税から間接税へのシフトというような動きを踏まえながら、今後の所得税のあり方を考えるべきだと、いろいろな角度から御意見をちょうだいしてございます。
4ページを御覧いただきまして、負担水準をもう少しミクロの姿で御覧いただきたいと存じます。4ページは国・地方、所得税・住民税を合わせました夫婦子2人のサラリーマン世帯の場合ですが、税負担額の給与収入に対する負担率をカーブで示したものでございます。例えば、給与収入1,000万円のところを上に見ていただきますと、それぞれの負担率が入ってございます。太線が恒久的減税後の日本のカーブですけれども、9.7%ということで、ちょうどフランスが大体そこと同じくらい、若干フランスのほうが上ですが、重なっております。これに対しまして、アメリカ、ドイツが20%前後の負担で、イギリスは26.8%。日本の水準の倍以上ぐらいのところで、負担率で1,000万円前後を見ましても、かなり日本の負担が軽減されている状況が見て取れるかと存じます。
同じように5ページを開いていただきまして、アメリカとの関係でいまと同じような負担率、実効税率の比較でございます。右に箱書きがありまして、具体的に数字が入っていますが、例えば給与収入700万円の4人世帯で見ていただきますと、日本の場合は、国・地方込みで36.2万円くらいの税負担をいただいているわけですが、アメリカは93.3万円。1,000万円のところですと、日本が97万円に対してアメリカは194万9,000円というような形になっております。1,000万円くらいですとアメリカの半分ぐらいですし、700万円ぐらいだと3分の1前後、500万円ぐらいのところになると4分の1ぐらいというような状況になっています。
逆に、このようなミクロの負担が全体で集約されましたマクロの国の所得税収で見てみますと、日本の今年の予算が15兆7,000億円という数字でございますが、アメリカの連邦所得税収、換算いたしまして約97兆8,000億円、約100兆円弱というところでございます。
同じような、もう少し国際比較でやったのが6ページの立体のグラフになったものでございますが、最前列が主要国の国の所得税収をそのまま円に換算して並べたものでございます。ただ、例えばアメリカは人口が日本の2.1倍ぐらいありますので、そういうように各国の人口で日本と同じ規模に引き直してみたものが2列目でございます。3列目が同じようなことを国民所得で引き直してみたものでございます。各国の所得税収の実力を国際比較したようなものでございますが、いずれを見ましても、フランスが日本と人口比で見ますとちょっと下回りますけど、ざっと見まして各国とも基幹税としての所得税収、かなりの水準が見られるということでございます。
7ページ、所得税の全体、基本的なあり方の関連で所得税の税収の推移を御覧いただきたいと存じますが、平成11年度の予算の数字が15兆7,000億円という数字でございます。ピーク時には平成3年頃26兆7,000億円の所得税収がございましたが、現在と同じ水準は、昭和60年、61年ぐらいのところをさかのぼったのと大体同じぐらいの数字でございます。
ただ、御案内のように、一般会計での税収全体の歳入歳出総額に対するカバー率が、現在ですと6割を割っていまして、57.6%ぐらいですが、この60年、61年の頃は7割を超すような水準であったということでございます。
税収の推移は以上でございます。
それから8ページを御覧いただきますと、いまの税収の構造、所得税がどんな位置づけになっているかということでございます。一番左側ですけれども、一般会計の税収が47兆1,000億円。この中には、道路関係に使っているガソリン税、あるいはエネルギー対策に使っている石油税というような特定財源がございます。
それから所得税、法人税、その他の酒、たばこなどでも、地方交付税交付金という形で地方の財源に使われているものもございます。
それから、消費税の一部は地方税のほうにいっていますが、残りの国の消費税、これは消費税の4%分ですが、そのうちの地方交付税分を引いた残りの手取りにつきましては、今年度の予算の総則におきまして、基礎年金ですとか、老人医療とか介護といった使途に充てられることになってございます。そういたしますと、税収の中で使途の自由な財源というのは、所得税や法人税などの地方交付税を除いた国の手取り部分が23兆円ぐらいあるわけでございますが、他方でこういった使途がリンクされている部分を除いた歳出の部分が現在54兆円ぐらいあるということで、この辺が全体としての歳入歳出構造の現在の状況でございます。
続きまして9ページでは、納税者の数などがどういうふうにいまなっているかという資料でございますが、平成11年の予算ベースで、上から2番目の折れ線ですが、サラリーマンの源泉徴収をいただいて納税していただいている方が4,600万人ぐらいでございます。それから、申告納税をしていただいている方は、一番下のところで三角をプロットしたグラフですが、837万人ぐらいになっております。
サラリーマンにつきましては、昭和60年ぐらいに比べますと、900万人ぐらい増えております。また申告納税者はざっと100万人ぐらい増えておりまして、サラリーマン化がかなり進んできているのかなというところが見えています。
それから、申告納税をしていただいている方、そのほかの還付申告をして提出していただいている方、×でプロットしているところですが、両方合わせて税務署に申告書を出していただいている方が平成10年のところで1,945万人、大体最近2,000万人ぐらいの数字になってきてございます。
なお、参考で、これは労働力調査の数字ですが、全体としての就業者の数というのは6,510万人ぐらいの数になってございます。
以上、所得税の全体の基本的なあり方に関するところでございます。
次に10ページ、課税ベースの関係ですが、収入や経済的利益というところから出発しまして、いくつかの課税ベースから外れていくものがあります。非課税所得、遺族年金とか通勤手当、あるいは老人マル優や財形の利子、給与所得控除とか退職所得控除、あるいは土地の譲渡所得の特別控除とか、いろいろな各種所得の控除がありまして、そのほかにその次のグループとして基礎控除、配偶者控除、扶養控除といったいわゆる人的控除があります。そのほかに、さらに社会保険料控除とか医療費控除といったその他の所得控除があって、この4つのカテゴリーを差し引いた残りが課税所得ということになっています。
課税ベースのこのあり方については、ワーキンググループからも、いわゆる侵食(イロージョン)というような問題と公平との兼ね合いをどう考えるか、あるいは経済活動やライフスタイルに対して、いろいろな控除等によって中立性がどのように影響が生じているか、あるいは税制の簡素性、透明性といったような観点からよく検討すべきだ、という御指摘をいただいておりまして、基本問題小委員会でもそれぞれの控除なりの趣旨やその後の事情の変化等を踏まえて、よく洗い直しをして見直しをしていくべきだという、全体的な御意見をいただいております。
次に11ページですが、人的な控除の一覧表でございます。様々な世帯事情に対する配慮ということから、いろいろな控除が御覧のとおり設けられております。大きく分けますと、基礎控除、配偶者控除、扶養控除のような基礎的な人的控除と、その中にもいろいろな年齢なり加算なりがございます。また、もう少し特別な世帯事情に対する配慮である「特別な人的控除」とございますように、かなりきめ細かな体系になっているわけでございます。
ここら辺につきましては、小委員会で、全体として簡素化といった観点から控除のあり方を見直す、整理していくべきではないかといったような御意見がございました。また他方、各世帯の負担能力ということにも配慮すべきであるので、それぞれの控除なりの趣旨をそれぞれよく吟味して考えていくべきだというような御意見もちょうだいしております。
次に12ページですが、課税最低限の内訳と計算過程をちょっと示しております。いま御覧いただきましたような、基礎的な人的控除プラス給与所得控除等の合計で、課税最低限が御覧のように構成されているわけでございます。それぞれの納税者に対する世帯事情、家族事情に応じた負担の調整が図られていると同時に、全体としまして課税最低限ということで、これ以下の所得の場合は負担をいただかないということで、そういう観点から、公共サービスの財源を支える所得税の、どういう範囲で分かち合っていただくかというような観点からの御検討がされたわけでございます。ここら辺の観点では、課税最低限の水準自体の検討、それから、それを構成しておりますそれぞれの控除についての見直しというのは、一応区別した上で考えていくべきではないか、といったような御意見もいただいております。
なお、計算過程につきましては、御案内のように、基礎控除等の控除、定額でございますのに対して、給与所得控除等や社会保険料控除は収入の一定割合を差し引くことになっておりますので、ここに御説明してあるように、方程式で解くような形になっております。
13ページを御覧いただきますと、以上のような、いま夫婦子2人の4人世帯の場合で課税最低限を示したところですが、こういった控除の問題を考える上で、いろいろな世帯がどういう状況にあるのかということで、世帯構成の状況をお示ししたものでございます。いろいろな多様の世帯があるわけでございます。単独の世帯、夫婦のみ、あるいは夫婦子1人、子2人等と、三世代といったようなものがございます。これは平成10年の国民生活基礎調査でございますが、平成元年の調査と比べてみますと、例えば、単独世帯は数ポイント、シェアが上がってきています。また、夫婦子2人の世帯は逆に数ポイント、シェアが下がっている。また三世代の世帯も若干下がっているということで、10年ほど前に比べまして、より世帯のいろいろなタイプの多様化が進んでいるのかなというようなことが御覧いただけると思います。この関連では、こういったいろいろな世帯構成の変化とか、いろいろな世帯構成があるということに十分留意をして、所得税の問題についてよく検討すべきだというような御指摘をいただいてございます。
14ページでは、そういったことから先ほどの課税最低限を、いろいろな、3人世帯、2人、それから単身の世帯ということで、世帯状況に応じた課税最低限を示したものでございます。説明は省略させていただきます。
15ページにつきましては、今度は世帯状況に応じました課税最低限につきまして、国際比較を見ていただいたものでございます。各世帯を見まして、ドイツはかなり高いのですが、それを除きますと日本の水準は相対的に高い水準にございます。
16ページ以下、今度はいろいろな人的控除の個別の問題に触れさせていただきたいと存じますが、16ページは配偶者控除・配偶者特別控除の仕組みでございます。配偶者控除38万円に対して、配偶者特別控除はいわゆる消失控除ということで、配偶者の所得に応じまして、なだらかに額が減っていく仕組みになっております。配偶者特別控除につきましては、昭和62年に創設されておりますけれども、所得を稼ぐこと、所得稼得への配偶者の貢献、いわゆる内助の功のような点とか、あるいはパート問題の解決、それから事業所得者で専従者給与が払われるけれども、主としてサラリーマン世帯における負担調整とか、いろいろな御指摘が当時の税調の答申でも御指摘されております。
ここら辺の関係では、基本問題小委員会におきまして、配偶者への配慮という意味でのこの控除につきまして、女性の社会進出に対する中立性という観点から、縮減すべきだとか、あるいは女性の働きとしての信用力の低下に結びつくので、よく見直すべきだというような御意見、他方で一定の配慮は必要だといったような御意見を賜ってございます。
なお、なだらかにこの配偶者特別控除とあわせて控除が変化する仕組みになりますので、いわゆるパート問題が解消されているわけでございます。もう御案内かと思いますが、配偶者特別控除がない状態では配偶者控除を、これは横軸に配偶者の所得がありますけれども、現在ですと給与所得控除の課税最低限と基礎控除を足した103万円のところで切れるわけでございます。それを超えると、ほかに配偶者特別控除がなければ、すぐ配偶者控除が切れて、世帯主の課税所得が控除がなくなる分、ばんと増えるので、世帯としての税負担が増えてしまうというような逆転現象がありましたが、いまはこういう仕組みがありますので、そういったものは解消されているわけでございます。
その関連で次の17ページでございますが、最近でもいろいろなパート関係のアンケートなどを見ますと、いろいろ年収の調整をするといったようなことが指摘されていまして、余計働いたから世帯として税引後で損をするという逆転現象は解消されているのですが、いろいろまだその部分誤解というか、ございまして、ほかの家計の収支に響くような要因ということで、例えば健康保険の被扶養者から収入130万円以上になりますと外れるとか、あるいは同じような国民年金の第3号被保険者の壁とか、それから、ここでは国家公務員の給与法で、民間準拠なので代表させていただきましたけれども、会社の賃金なんかで配偶者手当とか家族手当が一定のところで切れる。公務員の場合ですと130万円という区切りがあるものですから、そこら辺のところの収入を配偶者が超えてやりますと、家族手当がなくなる。この公務員の例でいきますと年間で20数万円響くわけですし、年金や健康保険のこういった保険の関係ですと、独立の被保険者になってくると、年間でもやはり20万円前後増えてくるというような、そういった問題がございます。そういったことを含めて御検討をいただく必要があろうかと思っております。
18ページ、19ページでは、いわゆる課税単位等の問題についての資料をつけています。簡単に触れさせていただきますが、いまの課税の単位を個人の所得、稼得者の単位で見るか、あるいは夫婦なり世帯の単位で見るかということでございます。簡単に申し上げますと、基本的には個人単位が基本になっているかと思います。
アメリカやドイツでは、2分2乗といったものも選択できるようになっていますけど、個人単位等の併用になっています。それから、イギリスなどはかつては世帯単位で来たわけですが、個人単位に来ておりまして、ほかのヨーロッパの国でもかなりそういう形で動いてきております。
課税単位に基づくメリット・デメリット、比較につきましては、ワーキンググループで整理されておりまして、例えば個人単位ですと、婚姻しているかどうかについて中立ですけれども、夫婦単位、世帯単位にしますと、そこが中立でなくなる。夫婦単位でも合算した上で分割しない場合と、分割する場合とありますが、分割する場合は逆に累進が緩和されるので婚姻に有利になる、分割しないとペナルティーのようになる、といったような比較がされております。それから各国の2分2乗が入ってきたような状況を見ますと、アメリカなどだと民法上の財産制度といった背景が関係しているようでございます。
19ページは、そういった課税単位と、配偶者や基礎控除といったものの比較表でございます。夫婦の関係につきましては、控除なり、2分2乗、フランスの場合は子供まで含めたn分n乗ですが、そういう形で何らかの配慮が行われている状況になってございます。
次に、20ページは扶養控除の関係の資料でございます。年齢に応じまして扶養控除につきましても、いろいろな、御覧のような金額がありまして、かなり精緻な仕組みになっております。
この関連でお手許の資料の中にも先般の自自公合意が入ってございますが、その中では児童手当とか少子化対策といったことが触れられておりまして、その関連で所得課税の諸控除の整理とか税率引下げや簡素化についても協議をしていくのだということが触れられております。この関係では、こういう形で扶養控除は、いろいろな状況に応じて配慮されているわけで、そういう扶養控除の中でのバランスとか、あるいは扶養控除とそのほかの配偶者控除とか、そういった人的控除とのバランス、あるいは少子化対策といっても、控除や手当といった経済的負担以外に、仕事や育児が両立できる環境、むしろそういうことが大事ではないかというような御指摘もいろいろされているようでございます。
小委員会の中では、扶養控除は、いろいろ配慮は必要だけれども、かなり複雑になってきているので、簡素化という観点の見直しが必要だとか、あるいは歳出との関係では、税制なり歳出の手当ということの所得分配面の効果の違いも含めてよく検討すべきだ、といったような御指摘をいただいております。
21ページではこういった扶養控除関係の国際比較でございまして、御覧のとおりです。控除だけか、手当だけか、あるいは両方併用しているか、各国まちまちでございますが、何らかの形で税の中でも子供に配慮しているというのが大宗になっているかと存じます。
はしょりまして恐縮ですが、22、23ページで、そのほかの特別な人的控除ですとか、そのほかの所得控除をお示ししてございます。ここら辺ではそれぞれの制度ができたときの趣旨、あるいはその後の社会状況の変化とか、あるいは社会保障制度みたいな歳出と関連するような点については、そういった問題も含めた検討とか、あるいは簡明性からどう考えるかといったようなことが、ワーキンググループ等で検討の視点として御指摘されてございます。
22ページは、特別な人的控除。23ページは、その他の所得控除でございます。23ページのほうでは、例えば社会保険料控除や小規模企業共済等掛金控除などにつきましては、後ほどお触れします年金の課税の問題との関係もございます。それから、生命保険料控除、損害保険料控除につきましては、金融商品の金融課税との関係もございます。それから寄附金控除、特定寄附金を支出した場合に控除というものが認められておりますが、一定の公益活動、公益法人に対する寄附に対して、こういった寄附金控除が基本的に認められているわけでございます。
ここら辺で最近ちょっと話題になっておりますのは、いわゆるNPOの問題がございまして、特定寄附金は民法上の一定の公益法人に対する寄附というものが優遇されているわけですが、NPOに対する税制の取扱いというのが1つの課題になっております。昨年の12月に公布・施行された法律ですけれども、法律の中で3年後に仕組みを見直す。それから附帯決議で、施行から2年以内に検討して一定の結論を出すというような形になっています。
この関連では、NPO自体、準則主義で設立されますので、なるべく公の関与を避けているわけでございます。寄附金との関係で言えば、一方で公益性の担保というのが必要なわけで、そこら辺の兼ね合いをどう考えていくかというような問題がございます。
24ページは給与所得控除のイメージ図でございます。御覧いただくような収入に応じた控除率がございます。この関係では、従来、税制調査会でこの性格づけにつきまして、勤務費用の概算控除といった性格、あるいは事業所得などほかの所得との負担の調整を図るといった性格とか、そういったような御指摘もされています。現状見ていただきますと、このような階段構造になっておりますけれども、マクロ的に見ますと、一番右下の小さな箱にありますように、給与所得控除の総額の給与に占める割合、控除の平均的な水準が28.4%、3割弱といったかなり高い水準になってきてございます。
この給与所得控除の関係では、小委員会で、諸外国と比べてもかなり手厚い状況になっているので、思い切った見直しも含めて検討すべきだとか、あるいは一方で給与所得控除の見直しに当たっては、全体の税負担の見直しといったこととの兼ね合いでよく考えるべきだとか、それから雇用の流動化が進んでいる状況を踏まえて見直していくべきだ、それから、いわゆるクロヨンの問題なんかにも留意すべきだ、といったような御指摘をいただいております。
25ページは、給与所得控除関係の国際比較ですけれども、一言で言いますと、どこの国を見ましても、イギリスを除けば、いわゆる概算控除、日本の給与所得控除のような概算的な控除が認められております。また実額控除も選択が可能になっております。ただ、実額控除の範囲は、これは小委員会に出した資料には詳しいのがついておりますが、各国とも旅費だとか、特別の制服だとか、あるいは職務上必要な研修費といったような範囲は、大体限定的で同じような状況になっています。アメリカでも、7割くらいの方が概算控除のほうを選択されているというようなことも聞いております。
26ページは給与所得者の特定支出控除ですので、説明は省略させていただきます。
27ページは退職所得の関係でございますが、退職所得控除、勤続年数20年まで1年あたり40万円、20年を超える部分は1年あたり70万円という退職所得控除があり、これを差し引いたところに2分の1をして課税する。2分の1課税になり、累進税率の適用に当たっては退職所得の金額だけ分離して課税するということで手厚い配慮がありますが、これにつきましては給与の後払い的な性格とか、退職後の生活の糧だということで説明されてきておりますが、小委員会では、雇用の形態も大変流動化しているので、こういうことについてもよく見直していくべきだという御指摘をいただいております。
28ページ、29ページは、事業所得の関係でございまして、28ページでは事業所得の計算のイメージ図ですけれども、必要経費に関連する論点として、ワーキンググループ等で、家事関連費と必要経費の判別、区別の問題、あるいは交際費、法人の場合は一定の冗費抑制という観点からの交際費に関する損金算入制限の仕組みがございます。そういうこととの関連。あるいはワーキンググループであれば、ここら辺の関係では、個人事業と法人事業の形態の違いとか、それに対する問題といったようなものが論点として御指摘をされております。
29ページも同じく事業所得に関する控除でございますけれども、白色の事業者についての専従者控除、事業に従事される親族について配偶者控除や扶養控除に代えまして一定の控除がある。青色の場合ですと、専従の実態に応じた青色専従者給与の支払いが認められているわけです。そのほか青色申告特別控除がございます。
30ページ以降、年金の関係でございますが、30ページでは、公的年金に関する課税の仕組み、御覧のとおりです。入口、掛金を払った段階で社会保険料控除、それから年金給付を受けるところで公的年金等控除がございまして、そのほか、老年者控除やその他の控除を合わせて、端的に年金収入についての課税最低限を見てみますと、例えば夫婦お2人の世帯で、年金を受けられる世帯主が65歳以上ですと、課税最低限は334万6,000円。これに対して現役の夫婦2人のサラリーマン世帯ですと、209万5,000円といったような形になっております。
厚生年金の平均の支給額、統計で見ますと、年額で206万円ぐらいになっているようでございます。20年以上加入の場合ですが、基礎年金込みでそのぐらいの水準になっております。
31ページ以降でいろいろな年金制度に関する課税の関係ですが、まず31ページは、イメージ的にいろいろな制度がある状況でございます。いわゆる1階の国民年金(基礎年金)、それから2階には厚生年金があり、2階、3階の関連では厚生年金基金、2階の公的年金の代行もしている厚生年金、それから3階の適格退職年金、それから自営のほうでは、2階、3階のところに相当する国民年金基金といったものがあります。このほか関連の制度では、自営業者の方なんかについての小規模企業共済とか、あるいは小さな中小企業の退職金のための中小企業退職金共済の仕組みなどが関連してくるわけでございます。
ここら辺の各種の年金についての課税関係、これもイメージ図つきで32ページでお示ししてございます。公的年金、企業年金等々、それから事業主、企業と本人というようなところの流れを表していますが、公的年金については、本人あるいは事業主から強制的に掛金を支払わなければいけないということで、企業が支払った分は損金算入されますし、本人が支払えば社会保険料控除になります。
それから、企業年金につきましては、企業が従業員の退職後の年金や退職一時金のために拠出していくわけで、そこで企業から企業年金等に拠出されたところで損金算入が行われるわけですが、従業員のための経済的な利益の、将来のものですが給与ですので、本来なら給与としての課税との対比が問題になるわけですが、こういった一定の企業年金の仕組みに拠出した場合には、受取り側の給与課税というのはすぐ行わないで、実際に年金なり一時金を受けるときまで課税を繰り延べる関係になっております。その間の運用については現在凍結されておりますけど、特別法人税という問題がございます。
それから、こういった公的年金、企業年金から年金を受け取るときは、年金で受け取れば公的年金等控除、先ほど御覧いただきました。それから一時金を選択されますと退職所得控除、これも先ほど御覧いただいたものが適用される関係になっています。また本人がこの企業年金等に拠出した場合については、厚生年金ですと、2階部分の公的年金の代行もしていますので社会保険料控除が適用され、あるいは適格年金の場合ですと、生命保険料控除が適用されるという関係になっています。ただ、実態を見ますと、従業員本人が拠出されるというのは極めて僅少であると承知しております。
国民年金基金については、厚生年金基金との兼ね合い等ございまして、社会保険料控除が適用されていますが、かなり余裕のある人が利用できるような状況になっています。
それから、この企業年金と次に述べます確定拠出年金との関係で言いますと、貯蓄との関係も問題になります。本人が金融商品にいろいろ貯蓄すると、貯蓄を引き出したときにいわゆる利子に対する課税が、一般的には預貯金とか投資信託をやれば、その利子や運用益に対する課税が生じるわけですが、財形年金ですとか老人マル優といったものについては、貯蓄を引き出したときに利子は非課税になるというような仕組みがございます。
ここら辺の公的年金や企業年金等をめぐる課税関係につきましては、いろいろな年金制度全般の見直しとあわせながら年金課税を考えなければいけないのではないか、あるいは公的年金の水準だとか対象範囲についてはよく見直しをすべきだ、それから年金と貯蓄との関係をきちんと整理していくべきだ、といったような御意見が出てございます。
33ページは、いま32ページで御説明したところを字にしたものなので、省略させていただきます。
最後に34ページですが、いま話題になっています確定拠出年金について、簡単に整理させていただいたものでございます。これも御案内かと思いますが、現在の年金、確定給付年金ということで、予め何年加入したらいくらの給付が年金以外にもらえるということで、予め定められた給付額を賄うのに必要な掛金を年金数理により計算する。それを拠出するということになっています。
拠出は予定利率、運用実績次第では掛金が改定されて追加払いといったことが生じるわけです。他方で給付につきましては確定していると。これに対しまして、左側の確定拠出型につきましては、拠出者が任意に拠出した額で拠出額が確定いたしまして、逆に給付のほうの運用実績によって、要するに年金の給付額が変わるということになります。
この関係でアメリカの税法の401Kという条項に基づく401Kということでよく言われているわけですが、そういったことの関係で、いま現在要望が出ているようなものを整理してみますと、運用主体につきましては、これまでの確定給付年金につきましては厚生年金基金とか適格年金の受託をされている金融機関がまとめてやって、全体として年金数理を働かせながらやっているので、それぞれの方の持ち分というのは不明確なわけですが、確定拠出型では、運用につきましては、御本人が株だとか債券だとか、そういうのを指図できるようになっています。それも数か月に一度変えられるというような仕組み。それで拠出、運用時を通じまして御本人の持ち分がはっきりしているということでございます。
現在出ている要望につきましては、こういう確定拠出型の年金につきまして、拠出時、運用時を通じて非課税ということ。それから、給付につきましては公的年金等控除なりを適用するということで、実質的に非課税にというような形の要望になっています。
この関連で、年金や貯蓄、御覧のような仕組みが、かなり持ち分も明確で、指図とかいったことから見まして、貯蓄性が極めて現在のものに比べて高いわけです。年金制度や貯蓄制度との関係をどう考えるか、あるいは年金制度、公的年金を含めた全般で、公的年金については先ほどありましたように、その水準自体が問題意識に上がっているわけですが、そういう中でこの確定拠出型年金の問題をどう考えるか、あるいは貯蓄課税との整合性の関係、あるいは個人消費の喚起というような経済政策の流れの中でどう考えるか、といったような指摘がされています。
なお、アメリカの401Kにつきましては、見てみますと、基本的には拠出時、アメリカでは公的年金も含めて控除が認められていない中で、401Kだけは特別に拠出時の控除がある。一方で給付段階では、401Kについては、掛金分を除きまして課税が行われているというように承知しております。
ちょっとお時間をいただきましたが、以上でございます。
〇井原市町村税課長
市町村税課長の井原でございます。
続きまして、個人住民税の関係につきまして、お手許の「総37-2」『個人住民税関係資料』に基づいて御説明いたしたいと思います。この資料は基本問題小委員会の資料から抜粋したものでございますが、目次にありますように、主に2つの部分に分かれておりまして、基本的なあり方、課税ベースの部分、これはただいま説明のありました所得税に対応する資料でございます。
それから、個人住民税関係は個人住民税独自の課題について取り上げたところでございます。
まず、基本的なあり方、課税ベースということで、所得税との相違点を中心に簡潔に御説明いたしたいと思います。
1ページでございますが、給与所得者の個人住民税所得割額計算のフローチャートということでございますが、給与収入、それから給与所得金額の計算ということで、給与所得控除を差し引いて給与所得の金額を計算する。ここまでは所得税と同一の計算でございますが、そのあと課税所得金額の計算に当たりまして、所得控除、税率等につきまして、住民税独自の定めというふうになっておりまして、所得控除につきまして、負担分任という考え方から、所得税よりも若干低い控除額、また税率につきましても、緩やかな累進構造ということで、課税ベースを広くとって、緩やかな累進構造によって課税がなされているということでございます。
続きまして2ページでございますが、個人住民税所得割の推移ということでございます。62年9月・63年12月抜本改革前におきましては、最高税率が18%、ブラケットの段階も14段階ございましたけれども、これが現行におきましては、最高税率が13%、税率も3段階ということで、フラット化いたしてきているところでございます。課税最低限も62年度は191万円でございましたけれども、平成12年度には309万5,000円ということで、逐次引上げがなされているところでございます。
次に、3ページにこれを実効税率の形でグラフにしておりますが、62年度が一番上の線、平成12年度が一番下の線ということで、逐次フラット化がなされているという様子をグラフであらわしたものでございます。
続きまして、4ページでございますが、主要税目の税収の推移ということでございます。この中で各年度4本の柱がございますけれども、一番左側が個人住民税でございます。このピークが平成4年度でございまして、11兆5,000億円ほどございましたが、その後、減税あるいは景気の状況等を反映いたしまして、低下ないし横ばいということで、11年度には9兆3,000億円ということになってございます。
続きまして5ページでございますが、地方税収の構成等ということでございます。63年度と平成11年度を比べますと、地方税は63年度30兆1,000億円でございましたが、平成11年度の地方財政計画では35兆3,000億円ということで、この間の増加率が大体17%でございます。それに対しまして、歳出のほうが63年度66兆4,000億円に対しまして、平成11年度は88兆5,000億円ということで、33%ほど伸びておりまして、歳出の伸びに比べて税の伸び率が低いということで、その構成比も低くなっているところでございます。一方、その間に地方債のほうが5兆6,000億円から11兆3,000億円と大幅に伸びております。また、交付税のほうにおきましても、11年度20兆9,000億円ございますけれども、このうち借入れが8兆4,000億円。63年度は借入れがなかったわけですが、こういうことで非常に公債金依存の財政になってきているということでございます。
続きまして6ページでございますが、人的控除につきまして、住民税と所得税を対応したものでございます。住民税は地域社会の費用を住民が広く負担を分任するということで、課税ベースも広くとっているということがございまして、所得税よりもそれぞれ低い額の控除になっているところでございます。ただ、一番最後の白色事業の専従者控除につきましては、所得税と同一の額となっております。
続きまして7ページでございますが、個人住民税の課税最低限の内訳及び算出方法でございます。所得税と比べまして、給与所得控除は同一でございますが、社会保険料控除以下の控除について、それぞれ低い額になっておりまして、その結果、課税最低限も309万5,000円と所得税よりも低い額になっているところでございます。
続きまして8ページは、世帯構成モデル別にそれを示したものでございます。
さらに9ページでございますけれども、配偶者控除・配偶者特別控除制度の仕組み。これにつきましても、配偶者控除が33万円、配偶者特別控除が同じく33万円、所得税よりも低い額となっておりまして、その点が相違点でございますが、仕組みそのものは同一の仕組みとなっております。
次に10ページでございますが、扶養控除でございます。年齢に応じまして、老人扶養控除が38万円、通常の扶養控除が33万円、特定扶養控除が45万円。それから、所得税と一番違いますのが、16歳未満につきまして、所得税の場合は通常の扶養控除に比べまして若干の加算をしておりますけれども、住民税におきましては、特に加算をしておりませんで、通常の扶養控除と同じ33万円ということになっております。
次に、11ページでございますが、特別な人的控除でございます。この控除額のところがそれぞれ所得税よりも若干低い額になって、課税ベースが広くなっているということでございます。
次に12ページでございますが、その他の所得控除制度の概要。このうち雑損控除から小規模企業共済等掛金控除、ここまでは所得税と基本的に同じでございますが、生命保険料控除、損害保険料控除につきましては、最高限度額が若干低い額になっております。寄附金控除につきまして、非常に住民税のほうは限定しておりまして、都道府県、市町村、特別区に対する寄附金、または住所地の都道府県共同募金会もしくは日本赤十字社の支部、これは県の支部でございますけれども、に対する一定の寄附金を支払った場合に控除ということに限定をいたしておりまして、いわゆる足切り額につきましても、所得税は1万円でございますけれども、10万円という形で限定した形になっておるところでございます。
続きまして13ページでございますが、分離課税に係る退職所得の課税方式でございます。収入金額から退職所得控除額をマイナスする。この退職所得控除額については、所得税と同じでございますので、それに2分の1を掛けまして、退職所得の金額の計算は所得税と同一の計算でございます。そのあと、税率につきましては、住民税の税率でございますので、緩やかな累進構造、さらに10分の9がかかっているわけですが、これにつきましては、住民税は通常、前年所得に課税しますが、この分離課税に係る退職所得につきましては、現年課税ということになっておりますので、1年前に課税をするということを考慮して、10分の9という形にされておるところでございます。
続きまして14ページでございますが、青色事業所得者と白色事業所得者との各種控除の比較。これにつきまして、基礎控除、社会保険料控除等の金額が住民税といたしまして所得税よりも低い金額になっております。
それから、15ページでございますが、公的年金等に係る課税の仕組みでございますが、これも公的年金等控除の部分までは所得税と同一でございますが、そのあとの老年者控除、その他の所得控除、ここにつきまして住民税のほうが低い額になってございます。
課税最低限につきまして、右側の表を見ていただきますと、公的年金受給者65歳以上のところに、課税最低限とあわせまして老年者等非課税限度額というのがございます。これは後ほど御説明いたしますけれども、合計所得金額ベースで125万円という非課税限度額が住民税はございまして、これを収入に置き直すと266万6,000円になるということでございます。独身の部分につきましては、課税最低限よりもこの非課税限度額のほうが高いので、実質的に266万6,000円が実際の課税最低限になっております。夫婦につきましては、課税最低限のほうの額の310万5,000円、317万6,000円というふうにそれぞれ課税最低限がなっておりますが、いずれにいたしましても、給与所得者に比べて相当高い課税最低限になっているということでございます。
以上、所得割を中心でございますけれども、基本問題小委員会の御意見といたしましては、住民税は課税ベースをもっと広くしてもよいのではないか、所得税と住民税の課税最低限はかなり違ってきてもよいのではないか、あるいは住民税は諸控除をもっと整理して税率をさらにフラット化すべきではないか、などの御意見をいただいているところでございます。
続きまして、個人住民税独自の問題ということで、16ページからでございますけれども、はじめに個人住民税のあり方でございます。昨年の税制調査会の答申におきましても、個人所得課税につきまして、住民税の性格づけがなされております。「地域社会の費用を住民がその能力に応じ広く負担を分任するという独自の性格を有していることから、課税最低限は所得税よりも低く、税率も緩やかな累進構造となっていることなどを十分踏まえて検討を行う必要がある」とされているところでございます。
また、地方分権推進計画におきましては、地方税財源の充実確保ということで、歳出と地方税収入の乖離があるということで、「地方税については、基本的に、この地方における歳出規模と地方税収入との乖離をできるだけ縮小するという観点に立って、課税自主権を尊重しつつ、その充実確保を図る。今後、地方分権の進展に伴い、地方公共団体の財政面における自己決定権と自己責任をより拡充するとともに、住民の受益と負担の対応関係をより明確化するという観点から、国と地方公共団体との役割分担を踏まえつつ、中長期的に、国と地方の税源配分のあり方についても検討しながら、地方税の充実確保を図る」、さらに、「この場合、生活者重視という時代の動向、所得・消費・資産等の間における均衡がとれた国・地方を通じる税体系のあり方等を踏まえつつ、税源の偏在性が少なく、税収の安定性を備えた地方税体系の構築について検討する」とされておりまして、この検討に当たりまして、住民税の性格を踏まえて、どのように考えるかということが一番のあり方の問題点かと考えております。
その場合に、住民税の位置づけでございますけれども、次の17ページを御覧いただきますと、右側のところを特に御覧いただきたいのですけれども、道府県税におきましては、個人道府県民税が18.8%、下の個人市町村民税では33.8%ということで、非常に道府県におきましても、市町村におきましても、基幹的な税になっているということでございます。
次に、18ページでございますけれども、個人住民税の納税義務者及び人的非課税の範囲ということでございます。納税義務者の範囲でございますけれども、市町村内に住所を有する個人、住所を有する方に均等割額と所得割額の合算額を課税する。さらに、住所がなくても、いわゆる家屋敷課税というふうに言われておりますけども、事務所、事業所、または家屋敷を有する個人で市町村内に住所を有しない者、これにつきましては、均等割額を課税するということになっております。
その場合に人的非課税という制度がございまして、まずアといたしまして、「均等割と所得割がともに非課税とされる者」がまずございます。生活保護法の規定により生活扶助を受けている者、もう1つは、先ほどちょっと触れましたけども、障害者、未成年者、老年者、寡婦または寡夫で、前年の合計所得金額が125万円以下の者、これらの方につきましては、均等割と所得割がともに非課税とされております。
次に、イといたしまして、「均等割が非課税とされる者」というのがございまして、均等割のみを課すべき者のうち、前年の合計所得金額が一定の基準に従い市町村の条例で定める金額以下の者ということで、これは生活保護法の生活扶助の額を考慮いたしまして基準を定めております。
あわせまして、1つとびますけど、ウに所得割についても同様の制度がございまして、「所得割が非課税とされる者」。これにつきましても、同様のことが書いておりますけれども、こちらのほうは、生活保護のうち生活扶助額にさらに住宅扶助と教育扶助を加算をいたしまして、この額との均衡を考慮して非課税限度額を設定いたしているところでございます。
ちょっと戻りますが、さらに均等割にもう1つ非課税とされるものがありまして、それが[2]の「均等割の納税義務を負う夫と生計を一にする妻で、夫と同じ市町村内に住所を有する者」ということで、いわゆる同居の妻と言われておりますけれども、これにつきましては、均等割については、夫婦を社会生活上一体とみなして二重に課税をしないという考え方で、例外的に世帯単位の課税とされているところでございます。したがいまして、夫が均等割を払っている場合には、妻に所得があって、所得割が課税されていても均等割は非課税となると、そういうことになっております。
その結果、次のページをちょっと御覧いただきたいのですが、19ページでございます。住民税の納税義務者の状況を書いておりますけれども、先ほども御説明いたしましたように、非課税限度額は均等割のほうが低くなっておりますので、通常ですと、均等割のほうが納税義務者数が多くなるということになるのですが、実際は所得割の納税義務者がAの欄で5,246万人、均等割の納税義務者がEの欄で4,682万人ということで、所得割のほうが相当納税義務者が多くなっております。これはCの欄に所得割のみの納税義務者、これが生計同一の妻、御説明したものでございますけれども、この方が883万人いらっしゃるということで、所得割の納税義務者のほうが相当多くなっているものでございます。この点につきましては、小委員会でも個人課税を徹底する観点などを踏まえまして、今後のあり方としては、廃止を目指すべきではないかなどの意見をいただいているところでございます。
続きまして20ページでございます。個人住民税均等割の税率改正と収入額の推移でございますが、個人住民税の均等割は昭和25年度に地方税法の制定とともにできまして、初めは人口50万人以上の市が年額で800円、5万人以上50万人未満の市が600円、その他の市及び市町村が400円と、3段階になっております。29年度に道府県民税というものが新設されまして、大体現行の制度になったわけですが、その後、税率改正がそれぞれ記載の年度に行われています。29年度から50年度まで、高度経済成長時に所得割が伸びたこともございまして、据え置かれておりまして、51年度に改正された。その後、55年度、60年度、平成8年度と改正されまして、現在、市町村におきましては、人口別にそれぞれ3,000円、2,500円、2,000円、道府県民税は1,000円ということになっております。
このようにまず1つは、市町村が3段階ということになっているわけですが、これは本来、大都市と町村ではサービスに差があるというようなことを考慮して、3段階とされたものでございますが、その後、町村におきましても、公共施設等が整備されてきたということも踏まえまして、最近の改正では、大体同額引き上げるということによって、倍率でいった格差としては縮小するという方向になっておりますが、これがどうかということでございまして、小委員会の御議論といたしましては、今後の方向としては、一本化をさらに目指していくべきではないかとの御意見をいただいているところでございます。
もう1つ、収入額の推移のほうでございますけれども、下の表をちょっと御覧いただきたいと思いますが、25年度で見ていただきますと、住民税の収入額全体がCの欄464億円、そのうち均等割の額、これはFの欄ですが、85億円ということで、25年度には18.3%、F/Cということで、均等割が住民税収入額全体に占める割合は18.3%でございました。これが29年度、道府県民税ができまして、29年度におきましては13.4%でございましたけれども、その後据え置かれていたということもございまして、51年度に引き上げましたけれども、それでも1.9%、現在、平成8年度で見まして1.8%ということで、かつてに比べて相当低い割合になっております。
これを所得との比較をしてみたのが次の21ページでございます。均等割の平均税率等の推移ということがございまして、まず下の表のほうをごらんいただきたいのですが、平均税率で見ました場合は、昭和30年度が439円、平成9年度、一番右ですが3,509円。これを指数で見ますと、30年を100として9年度が799ということで、約8倍になっております。消費者物価指数はこの間、30年度を100といたしますと、平成9年度は589で約6倍。1人当たり歳出決算額でいきますと、30年度を100といたしますと6,163ということで、約62倍でございます。1人当たりの国民所得ですと、約40倍になっているということで、それをグラフにしますと、上のグラフになるわけですが、一番上が1人当たりの歳出決算額、その次が1人当たり国民所得、その次の菱形になっているのが平均税率、下の丸が消費者物価指数ということで、ほぼ消費者物価指数並みの伸び率になっておりますけれども、国民所得や歳出決算額のほうを考えると、相当低い水準になっているということで、小委員会の御議論といたしましては、今後の方向として、税率のかなり大幅な引上げを検討すべきではないかという御議論をいただいているところでございます。
以上、住民税の関係について御説明させていただきました。どうもありがとうございました。
〇加藤会長
どうも御苦労さまでした。
それでは、皆さま方からの御意見をいただこうと思いますが、全体といたしまして、個人所得課税の基本的なあり方、人的控除などの問題が先にございました。それから、2番目には給与所得、退職所得、事業所得並びに年金課税、そして最後に3つ目が個人住民税でありましたから、大体順序に従って議論を進めようと思っておりますが、特に基本問題小委員会に入っていらっしゃらない総会のメンバーの方々の御意見を優先いたします。基本問題小委員会の方にも、もちろん補足すること、あるいは敷衍することがありましたら、御遠慮なくお願いしたいと思いますが、御意見をいただこうと思います。いかがでございましょうか。
〇竹内委員
基本小委なので、皆さんの御意見が先なんですけど、ちょっと待っている間……。
1つ、今日の資料の中で、やはりかなりショックというか、問題だなと思われる点が、繰り返しになりますけれども、個人単位か世帯単位かという議論で、19ページの部分だと思うのです。それで、日本は課税単位が個人単位というふうに書いてありますけれども、実際には配偶者控除を使っている人たちが約2,000万人から2,500万人ぐらいいると思いますので、これは変形した世帯単位だと思います。
それで、どこが問題かといいますと、アメリカは夫婦単位で共同申告の場合には人的控除がある。イギリスは女性が働いたら女性のほうが最初に控除を使うことができるという発想で、ドイツ、フランスともに、やはり夫婦が同時に働いているというケースを想定して、それに対する控除のスタイルをつくっている。日本だけが夫婦片方が働かないというケースに対して制度を設けているという点が、極めて違っている。だから、中身は世帯単位でアメリカ、イギリス、ドイツ、フランスと似たような世帯単位のような考え方を使っているけれども、実は全く違った方向のベクトルを使っている。この制度によって、女性が働かないということに対して、税制が極度に影響を及ぼしている動きがある。やはりこれから一番重要なことは、女性が子供があっても働いていて、なおかつ控除があるべきであるというふうに考えますと、どうして夫婦が働いていると個人単位になってしまうのかというのが、わからないのです。全くのメリットがない。だから、両方が働いている場合にメリットを与えるような、そういう夫婦単位の控除の方法をぜひ考えていただきたいなと思います。改めてそのように感じました。ここをこのままあと10年も20年も置いておくと、本当に欧米コンプレックスが強まってしまって、日本だけが全く逆の税制を持っているということになりかねないと思います。
あと社会保険料の控除については、一定の控除ができるのですけれども、これは若干の上限は全くないというふうに考えていいのか、これは質問です。上限を設定しなくていいかどうかということです。
〇清水税制第一課長
2番目の社会保険料控除につきましては、支払った全額が控除できますが、ただ、実際どのぐらい社会保険料控除になるかにつきましては、それぞれの年金の制度とか、そういう中で標準報酬の関係とかというので決まっている部分はあるかと思いますが、全額が控除できるような仕組みに現在なっております。
〇加藤会長
ほかにどうぞ。
〇吉田特別委員
若干あちらこちら飛ぶかもしれませんが、お許しをいただいて……。
個人所得課税の最高税率が50%、これに比べて法人課税の最高税率が40%。個人課税のときに事業所得課税に当たりまして、法人形態が得なのか、個人形態が損なのかという損得論がよく出てまいります。その1つに、法人税率と個人の所得税率との違い、これがやはり1つの要因のように思いますので、個人課税の所得課税の最高税率は40%に引き下げて、その上でなだらかな累進税率のフラット化というのが考えられていいのではないかなと。
それから、もう1つ、前回も私申し上げたのですが、給与所得控除の見直しをこの際しっかりと論議していただきたい。経費概算的な控除部分と、それから、勤労に配慮した所得控除部分がある。これを明快にしていただいて、この勤労所得控除部分は、個人の自営業者にもやはり適用するべきではないか。同時に、法人企業の代表権を持っておる役員の方々に対する役員報酬、これに対する現行の給与所得控除は、いまのような改め方が実現されていくと、やはり勤労所得控除部分だけでよろしいのではないか。これは法人、個人、損得論との絡みもあって、ぜひ検討課題にしていただきたい。
それから、最近よく言われるのが、103万円の年収になりますと、パートの方が働くのをおやめになる。そして片や配偶者控除を適用する。これが実は配偶者控除があるので、いまのような女性の就労意欲を阻害しているのではないか、だからこの際、配偶者控除の縮小ないしは廃止をしてみてはどうかと、そういう論議もよく聞かれるのでございますけれども、私が個人的に考えますと、就労していくのか、あるいは専業主婦としての座に求めていくのか、これは私は選択の自由だろうと思うのです。同時に専業主婦というものは、内助の功は言うに及びませんが、育児だとか、あるいは教育であるとか、介護であるとか、家事ももちろんでありますが、これらを通じた大きな労働価値をそういう人は提供している。そういう意味合いから、この配偶者控除というものを慎重に検討していかなければいけないのではないか。
同時に、私はいま相続税とか贈与税に絡みまして、財産形成の、あるいは維持に内助の功があったというので、大変大きな配偶者控除という配慮が相続税、贈与税の中にもある。したがって、所得税の配偶者控除の見直し論のときには、そういう部分まで絡んで税制の一貫した、所得税の補完である相続・贈与税のその部分にまで配偶者控除というのは絡んできておるわけでありますから、これは所得税の範疇だけでなくて、検討をしていかなければいけないのではないか。
同時に、私は所得税制の中で、夫婦のそれぞれの働きは、あるいは合算課税のほうがいいのかなと。しかし、2分2乗のようないわば配慮があっていいのではないかなと。したがって、個人単位課税というものが、若干夫婦間というものはもう一遍慎重に論議してみる必要があるのではないか。こんな感じがいたしております。
〇松浦委員
個人住民税のことでもよろしゅうございますか。
〇加藤会長
はい、どうぞ結構です。
〇松浦委員
個人住民税のことにつきまして、2つだけちょっと触れておきたいと思うのですが、まず均等割のことでございますけれども、小委員会でも税率の大幅な引上げを目指すべきとの議論があったようでございますけれども、私ども高崎市において見ますと、平成10年度の個人市民税収は約125億円ございました。そのうちの均等割は2億円、わずか2%程度にとどまっております。今後、高齢者や子供に対する様々な人的サービスをさらに充実をしていくためには、最も基礎的な税源でありますこの均等割というのは、この際、見直し、引上げを行っていく必要があるのではないかと考えられます。
また、所得割のことでございますけれども、税率をさらにフラット化していくべきではないかとの議論があったようでございますけれども、現実にはなかなか難しいのではないかと思います。私ども人口24万人の狭い地域社会においても、厳然とそうした所得格差があります。このことは住民も当然意識をしているわけでございまして、そのような中で仮に所得割を1つの税率で課税していくことは、いくら住民税が会費的な性格を持っているといっても、住民感情からすれば、これはちょっと納得が得られないのではないかと思います。所得税に比べれば、住民税はすでに相当ゆるやかなフラットな税率構造となっていると思っておりますので、この累進構造自体は維持をしていくべきではないかと思います。
〇加藤会長
どうぞ、次の問題に移っても結構でございますから、いかがでございますか。
〇塙委員
余り大きな話ではないのですけど、退職所得の課税です。この退職所得についての特別な課税措置がとられているということは、従業員にとっても企業にとっても非常に長いこと助かってきたわけでありますけれども、最近、労働移動率が非常に多くなったり、役員の場合でも執行役員制度などというのができたりしますと、終身雇用を前提にした退職金制度そのものがいま崩れつつあるというか、再検討されつつあるわけでございます。あとの年金との関係も出てくるのかとも思いますけれども。ところが、いまの退職金に対する特別な課税の魅力というのが逆に作用しまして、なかなか自由な制度がつくりにくいというようなこともありますので、将来どんなふうに全体の雇用の仕組みの変化に沿って変わっていくべきかということも検討していただけたらと思いますが。
〇橋本特別委員
確定拠出型年金税制の問題ですが、資産課税との関係等において、慎重に検討するべきであるというような御意見があるようでございますが、御承知のとおり、新しい退職会計基準によりまして、2000年度から年金債務の開示が予定されております。この積立不足問題というのが表面化されますと、企業財務面に直接影響するわけでありますから、財務体質の悪化によりまして、円滑な資金調達が阻害されるとか、あるいは企業利益が圧迫されるとかいうことになって、ひいては従業員の雇用とか待遇面の悪影響が想定される。したがって、1つには企業年金の積立不足問題にどう対応するかという観点から。
それともう1つは、日本の年金制度については、確定給付型しかいま選択肢がないわけですが、今後の労働の流動化だとか、あるいは公的年金というのがどうしてもこの厚生省の見通し等によりましても、先細りせざるを得ないというような、それを補完する機能からいたしまして、受給者の立場から、やはりこの制度はどうしても導入するべきではないかと、このように思うわけです。既存の貯蓄と同じではないかという御意見もあるわけですが、一般の貯蓄と違うところは、いま示されております4省案については、確定拠出型年金の受給条件としては、年齢制限をつける、あるいは死亡とか高度障害というようなケースに限定する。つまり貯蓄と同じように、何でもかんでも中途解約だとか一定の条件がなくてもいつでも税制上の優遇が受けられるということではなくて、中途解約のときなんかは税制上の優遇をなくすというような工夫がなされておるわけでありますから、完全に貯蓄とは違うのではないかと。やはり新しい制度は老後の経済保障について、自助努力をするということに対するインセンティブを与えるという見地から、この拠出時の非課税枠について、一定の税制上の措置ということが必要ではないかなと思っております。
〇平田委員
課税問題ワーキンググループの中間とりまとめというこの論点の中で、いろいろな御意見が出ておりますけれども、いま御説明を承っている中で、恒久的減税というものの後の、今の所得税の姿というものが、それではどういうところでそういうことがあったかというと、非常に景気が悪かったということが1つの大きな原因ですね。それで非常に減税、減税というのを何回も何回もやったわけでありますが、そういう恒久的減税をした1つの大きな理由が景気の問題であるとすれば、では景気という1つの経済政策を除いたところで基本問題は考えるのだということをぜひ論点に加えていただきたいなと思うのであります。
それから、所得課税の一番の問題、聖域的なところで、いつも問題になりながら、余り課税ベースを広げるようなことが行われていなかったのが、私ども実務者の目から見ますと、退職年金の課税と、それから公的な年金の控除の額が大変大きいということなんですね。この2つはぜひもうちょっと課税ベースが広がるような形にすべきではないかということであります。
それから、地方税に関係しますけども、地方税と国税との人的控除が同じ形で行われているということはいいことなんですけれども、額を必ずいくらかずつ違えているということがあるんですね。これは歴史的な経緯があって、最初が違うから、だんだん減税額がいくらかずつ増えたにしても違ってくるということがありますけれども、この辺も何か改革をしてもいいような気がしますね。
以上、思いつくままでありますが。
〇加藤会長
ありがとうございました。
自治大臣がお見えになりましたので、ちょっと中断をさせていただきます。
(自治大臣入場)
それでは、保利自治大臣がお見えになりましたので、一言御挨拶をいただきたいと思います。よろしく、どうぞ。
〇保利自治大臣
このたび自治大臣を拝命いたしました保利耕輔でございます。税制調査会第37回総会の開催に当たりまして、一言御挨拶を申し上げる次第でございます。
委員の皆さま方には、地方税制につきまして御熱心な御論議を賜り、適切な御指針をいただいておりますことに対し、心から御礼を申し上げます。
御案内のとおり、現在の地方財政は、多額の財源不足が続き、借入金残高が平成11年度末には176兆円に達するものと見込まれるほか、地方税収が落ち込み、また、公債費の割合が著しく増加するなど、極めて厳しい状況にございます。
地方税は地方自治の基盤をなす極めて重要な役割を担うものでございます。先の通常国会においては、地方分権推進一括法が成立いたしましたが、そこには地方の課税自主権の強化につながる法定外目的税の創設等が盛り込まれているところでありまして、また、国会の修正により、地方税財源の充実確保の方途について検討し、必要な措置を講ずるようにとの附則が追加されたところでもございます。今後、地方分権の進展に応じて、地方税源を充実強化していくことは不可欠でございまして、税源の偏在性が少なく、税収の安定性を備えた地方税体系の構築に努めてまいらなければならないと考えております。
法人事業税への外形標準課税の導入については、この7月に小委員会報告をいただきましたが、今後さらなる御検討を賜り、景気回復の状況を見定めつつ、実現への道筋ができるだけ早く描けるよう努力してまいる所存でございます。
委員の先生方には、地方財政の状況や地方公共団体の役割と、それを支える地方税の重要性に深い御理解を賜りますようお願い申し上げまして、簡単ではございますが、私の御挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。
〇加藤会長
どうもありがとうございました。大臣は日程の御都合がございますので、ここで退席をされますが、御了承をいただきます。
お忙しいところ、どうもありがとうございました。
(自治大臣退席)
それでは、ちょうどいいチャンスでございますから、ここで一息入れまして、休ませていただくことにします。5分ぐらい休憩ということにさせていただきます。
(休憩)
〇加藤会長
まだ中座されている方もいらっしゃいますけども、始めさせていただこうと思います。
いま、審議途中でございましたけれども、いまの問題にさらに続けて何か御発言がありましたら、どうぞお願いいたします。
〇諸井委員
個人住民税や所得税についての現在進んでいる議論の方向というのは、基本的には私は別に大きな問題はないと思いますが、ただ1つ退職金の問題について。確かに現在、これからポータブルな退職金とか、あるいはもう退職金を出さないで給与の中へ織り込むとか、いろいろなことがこれから進んでくるのだろうと思うのですけれども、現時点でまだこれからしばらくは、ずっと終身雇用で積み上げた人たちがやめる時期だと思うのです。リストラも進行しているわけですね。ですから、余り長い間かかって積み上げたものを突然に変えるということは、ちょっと問題なのではないか、慎重にすべきではないかという感じがいたします。
第2点は、住民税と所得税の課税最低限のレベルが違うのを合わせるという御意見がちょっとございましたけれども、どうも日本の課税最低限というのはいままで政治的にどんどん引き上げられてきておって、ほかの国と比べるとやはり非常に高いレベルにあると思うんですね。ですから、それを上のほうへ合わせていくということは、なるべく避けたほうがいいのではないか。所得税のほうの課税最低限を下へ引き下げるというのは、本来私はやるべきことだと思いますけれども、やれないのだとすれば、むしろ現状を維持したほうがいいのではないかと思います。
それから、恒久減税というのは、景気対策のためにやったので、景気がよくなったらまた考え直すべきだという御意見がございまして、ただ、私はずっと前から法人税と所得税の累進課税の問題は、国際水準に合わせていかないと、日本の競争力がなくなってしまうということを強く主張してきたわけでして、今回の恒久減税の改正というのは、そういう趣旨で行われたと私は考えているわけです。もちろんそれは景気対策という点もあったと思いますけれども。ですから、景気がよくなったからといって、またもとへ戻すというのは、私はおかしいのではないかと。むしろ、さっきもちょっと御意見がありましたけれども、所得税の最高税率と法人税の最高税率との関係とか、ほかの国の所得税の最高税率との関係というものを考えるべきではないかと考えます。
〇水野(忠)委員
遅れてきて御説明を伺っていないので失礼なのですが、いまちょうど退職所得のお話が出ましたので、私も一言これについてお話しさせていただきたいと思うのです。諸井委員のお話にありましたように、ポータブルな退職所得ということで、いわゆる従来の終身雇用といいますか、1つの会社に何十年勤めて退職金をもらうという形が、これは当然先行き崩れてくるわけで、そうなりますと、3年、5年契約の年俸制という形になってくるわけですが、年俸制でどういうふうに給与を契約するかといいますと、10%から37%までの税率を考えて、他方で退職所得の課税の仕組みを見た上で、それぞれ考えることになるわけです。そうしますと、いわゆるデファーとコンペンセーションと言っていますけども、課税を繰り延べる給与所得といった形態が出てくるわけで、そうなったときに我が国の従来型の、ここにありますが、勤続年数30年型の退職所得の課税累計そのままでよろしいのかどうか。やはりポータブルな退職所得、3年、5年で移っていくような形態に対応した退職所得の課税方式というのが必要になってくるのではないかと私は思うわけです。
これは全く所得税の税率との関係によりますけれども、現在のところかなり退職所得は優遇されておりますので、しかも外資系を中心に3年、5年で年俸制で契約して移っていく人というのは、非常に高額の所得をもらいますので、当然課税を繰り延べて、最後の退職所得という形で受け取る。これはおそらく現在でも出ていると思いますが、こういった新しい動きに対して何らかの課税方式を考えるということもあってよろしいかなと思っております。最近、年金のことに議論が集中しておりますけれども、退職所得のこの問題、昔からの議論ですけども、ひとつ御検討いただきたいと思っております。
〇佐野特別委員
ちょっと退職所得に関する発言が続いているので、私も一言申し上げたいのですが、この退職金の課税方式を強めるべきだという御意見が目立つようですが、私は先ほど諸井さんも言われたように、その時期ではないという基本的な考えがあるわけです。先ほど塙さんが労働移動率が高まっているから、要するに退職金制度、終身雇用を前提としたようないまの考え方はどうかと、こういうことなんですが、労働移動率というのは2種類ありまして、前向きの労働移動、つまり上方移動と、それから、後ろ向きといいますか、いわゆるリストラ、これは塙さんのところも大変だと思うのですが、要するに、やむにやまれず、しかも突然のように訪れる、そういう労働移動と2種類あるわけで、現在の労働移動というのは、好景気に支えられて上方移動していくという性格の労働移動ではありませんで、むしろ突然に訪れる、あるいは準備の余裕がない、こういうケースが目立っているわけです。
そういうときに何が必要かというと、とりあえずはお金が必要だと、一時金が必要だということが一般的なサラリーマンの姿だと思うのです。例えば会社からは住宅ローンを借りている。これを返済しなければいけない。あるいは自分で何か事業を始める。そのための資金が要るということで、後ろ向きのリストラに伴うような移動の場合、そういうまとまったお金の価値というのが普通の状態よりもさらに高まる。そういう中でとらの子の退職金に対する課税を強めるというのは、いかがなものか。いかにもタイミングが悪いのではないかという気がいたします。
それから、長期雇用者と短期雇用者との関係なのですが、こういう世の中ですと、長期雇用者というのは再就職は困難であるという厳然たる事実があるわけでありまして、一般的に短期と長期という比較よりも、長く勤めているほど再就職が困難だという事実を目の前にすると、なおさら、確かに長く勤めている人のほうが有利になるといういまの税制の仕組みは否定しませんが、実態としてなかなか原理原則論でいかない状況にあるということだけは、ここで認識としてとらえておく必要があるのではないかと、そういう気がします。
それから、ついでなのでもう一言申し上げたいのですが、地方税のところで、先ほど自治省の事務局の課長さんの説明がありました。基本問題小委員会の紹介がございました。とりわけ均等割に関して、確かに基本問題小委員会で議論がございまして、いまの水準はいかにも安い。つまりこれを高めていく余地はあるということでは、各委員の方々同じような意見だったと私なりに解釈しているのですが、もう1つ、事務局のほうから紹介していただけなかったことがあって、それは、自治体が自主的にやってもらうというのが筋ではないかと。つまり、この国がといいますか、政府の税制調査会が上げるのだとか、そういうことよりも、確かにいま松浦委員が2億円しかないというようなことで、これは上げなければいかんとおっしゃいましたけど、松浦さんのところ、ぜひ御自分で上げていただく、まずそういう努力をしていただきたいと。政府税調としては、松浦さんがそういうことだったら応援いたしますということで、何よりももう地方分権の時代でありまして、特に均等割なんていうのは制限税率を取っ払ったわけなので、2倍でも3倍でも上げられるわけですから、市町村の方々、あるいは都道府県の方々、ぜひ、お金がないというならば、御自分でまず努力していただきたい、という意見があったということを申し添えておきます。
〇幸田特別委員
非常に総論的なことを申し上げますけども、これからますます21世紀になりますと、少子化・高齢化が進みますので、1つはやはり女性が働きやすい環境を税制面で考えていただく。少なくともそういう女性の稼働について、中立的な税制であるべきではないかと私は思います。先ほどもどなたかがおっしゃっていましたが、課税単位の問題をもう少し基本的に日本の場合には考えるべきではないか。これは日本の社会全体が男性といいますか、夫中心というような仕組みになっていますので、そういう点はやはりお互いに男女共同参画社会でありますから、そういう観点に立った税制というものをお考えいただくべきではないだろうか。
そういう面で、103万円の問題も、私が関係をしている企業や団体で働いている女性の方は、ある程度の金額になりますと、もう働くのをやめてしまうというのが相当数、大多数と言っていいと思いますので、これは確かに141万円で逆転現象はなくなりましたけども、やはり103万円そのものの水準が私は低すぎるのではないかなと。健康保険やなにかの130万円がいいのかどうかという、これも1つ吟味が必要だと思いますが、そういう意味合いも込めて、女性が働きやすいような、あるいは少なくとも女性が働くことについて中立的な税制であるべきではないかというのが第1点であります。
第2点は、高齢化が進みますので、やはり高齢者に対する課税のあり方というものは、どうしても考えていかなければならないのではないか。これは年金受給者の問題でもありますが、同時に先ほどお話の出ている退職金の問題にも絡む問題だと思いますが、私、お願いしたいと思いますのは、いずれ手をつけなければならない問題なので、その場合に一挙にやるということは非常にショックが大きい。特に年金受給者などの場合には生活に直結をいたすわけですから、なだらかな、ショックが余り感じられないようなことをやっていただかないと、国民としては非常に困ってしまうのではないかと。そういう意味では、1日も早くこの問題は手をつけていただくべきことだと思いますし、同時にある程度将来の姿が見えるような形で、高齢者の、あるいは年金課税のあり方を含めた、退職金課税のあり方についても、なだらかな、10年とか、自分たちが退職するころにはどうなっているかということがわかるような、目に見えるようなそういうなだらかなことをやっていただかないと、非常にショックが大きすぎるのではないかと。そして、1日も早くそれは手をつけるべきではないかということであります。
〇平田委員
先ほど私が申し上げたことにつきまして、御意見をたくさん賜っているようでありますが、景気対策で恒久的減税を二度行ったというようなことは、多少正確な話ではないかなと思うのですけど、表の4ページのところに、「所得税・個人住民税の実効税率の国際比較」というのがございまして、これは前から何回も見せていただいている表でありますが、日本の個人所得税の累進構造というのは、このように諸外国と比較しても大変下のほうに位置するようにまでなったということは事実でありまして、これが課税ベースのイロージョンみたいなこととあわせて考えますと、何か基本問題を考えるに当たっては、そういう景気対策で減税した分は、少しあとへ戻して考えるべきではないかなということを私は申し上げたかったということであります。
それから、退職金課税の問題は、実は皆さん方御存知だと思うのですけども、退職所得は総合課税になっておりませんで、分離課税で2分の1にいたします。大変な何千万円というお金が一遍に入ってくる。それはいままでの労働対価の後払いだという理論的なお話もございますけれども、とにかく目先何千万というお金が入ったときに、大変税負担が低いということは事実なんですね。ですから、この制度、退職所得の分離課税というのは、退職所得というものをつくったときからの制度でありまして、塊が何千万になったということは、戦後50年もたって終身雇用がこれまで完成をしたからそういう話になったんですね。ですから、その間に余り税率的な手直しをしていないということもありまして、私ども実務家の目から見ますと、サラリーマンさんが定年でもらえるお金が非常に税負担が少ないなというのは、やはり1つの違和感を持つんですね。
ですから、この辺はもうちょっと・・・。事業所得者というもので1つ考えてみますと、事業所得者は絶対に退職金ということはないわけですよ。自分で会社をつくって、会社から退職金をもらう以外方法はないのでありまして、青色申告でずっとやっている方、白色申告でやっている方、そういう個人の所得税で事業所得を選択している方たちは、絶対に退職所得というものはあり得ないわけでありまして、何かその辺で公平さが欠けるような感じがするということで申し上げているわけであります。
公的な年金課税につきましては、公的年金控除がすごくグロスが大きいですから、これもほとんど課税にならないというのが事実でありまして、この辺も少し手直しをしたほうが税収増につながるという、まさに基本問題の考え方を少しそういう税収増というふうにすれば、ぜひ欲しい財源だなと思うわけであります。
〇塙委員
どうも退職金にばかりこだわるようで申しわけありませんが、ちょっと誤解があるといけないので……。いまの退職金の税率が低いから上げたらどうだと申し上げたわけではなくて、逆に、この大きな、長いことかけると低い税率が適用できるということで、かえって労働移動を自分がしたくともブレーキがかかってしまうというケースがあったり、比較的能力があって、あちらこちら動いた人にとっては損になる、黙ってじっと長くいた人が非常に得になるというアンバランスもあったり、退職の理由の如何を問わず、動くほうがともかく損だという価値基準でやっているので、その不公平をなくすような方法を考えるべきではないだろうかということでございます。いまの退職金の率が低すぎるから、どんどん上げたらどうだということではございません。
〇加藤会長
そろそろ先に進ませていただこうと思っていますが……。どうぞ、吉田さん。
〇吉田特別委員
地方分権ということに絡んで、各市町村がそれぞれ財政需要に応じて税収確保のための特別税制をつくってもいいようなお話が聞こえてくるのですが、住民税の均等割とか、住民税の税率とか、そういうものは各市町村でこれから自由にできる時代が来るのでしょうか。
〇井原市町村税課長
住民税の均等割につきましては、先ほど申し上げましたが、標準税率というふうに書いておりまして、先ほど御紹介がありましたけれども、制限税率が従来あったのですけど、撤廃いたしまして、自由に率は決められるということになっています。
〇吉田特別委員
各市町村で自由にできる。
〇井原市町村税課長
標準税率というものがありますけれども、それと別に税率を市町村で決めることができるということになっております。
〇吉田特別委員
税率はどうですか。
〇井原市町村税課長
税率といいますと……
〇吉田特別委員
3段階とか4段階ありますね。
〇井原市町村税課長
所得割のほうでございますね。
〇吉田特別委員
所得割でなくて、累進税率。
〇井原市町村税課長
所得割のほうの税率でございますね。そのほうもブラケットは変えられませんけれども、税率は法律上は変えられるということです。
〇吉田特別委員
それはいつごろからなるんですか。
〇井原市町村税課長
もうすでにそれは従来からなっております。
〇加藤会長
ぜひ頑張っていただいて……。
〇吉田特別委員
ぜひ頑張ってもらって、こちら隣にいらっしゃるから。
〇大澤委員
こういうことはあえて言うほどのことではないかもしれませんけれども、多分、これから先審議が進むと、こういう話はますますしにくくなると思うので、一言だけ申し上げたいと思ったのですが、個別の税制改正、ここ10年ぐらいのタームで流れを見ていると、1つの方向性というのは当然浮かび上がってくるわけで、いま論議されている方向もその流れの中で来ていると思うのですが、それを言葉で言えば、一種の自力救済型といいますか、そういう方向に税の流れというのは、今日の所得税・住民税的な所得課税だけではなくて、資産課税についても、消費課税についても、自力救済といいますか、優勝劣敗というと言葉がひどすぎるかもしれませんけども、やはりそういう1つの考え方の流れというのは出てきて、それはそれで、それがいけないということを言いたいわけではないのですが、税のあり方というのは、基本的に一種の国家観みたいなものがあると思うんですね。その国家観というのが結果としてどういう形でにじみ出て個別の税制になるのか。
例えば、憲法みたいな基本法につく前文というか、プリアンブルというようなものが税法にはつかないと思いますけれども、1つの結果としての国家観、もしくは日本なら日本という国の1つの国家共同体というものに対する感覚というのが、個別の税のあり方ににじみ出てくる。そうすると、それは一種のメッセージ性というのが税のつくり方に出てくるわけですから、そういうメッセージ性というのを抜きにして個別の議論というものを積み重ねるだけでいいのかなとちょっと思うわけですね。それは非常に抽象的な問題になってくるので、ちょっと言いがたいのですけれども、やはりそういうものを念頭に置いた1つの社会のあり方であるとか、国家に対する見方というようなものを、税調で提案をまとめられるという場合に、何かの形で示すということもやはり必要ではないかなと思いましたので、それだけちょっと申し上げます。
〇加藤会長
ありがとうございました。
まだ御議論があるかもしれませんが、あとでまた御議論いただく時間もございますので、さしあたって、次に資産課税についての説明をいただこうと思います。小委員会の議論の紹介も含めまして説明をしてもらいたいと思います。田中税制第三課長と岡崎固定資産税課長より、よろしく。
〇田中税制第三課長
税制三課長の田中でございます。時間も限られていますので、ポイントを絞って御説明したいと思います。資料は積んであります下のほうから御覧いただくとありますが、『資産課税等関係資料』、10月15日「基小7-1」というものでございます。
3枚めくっていただきまして、ページがついているページから御説明いたしますが、資産課税、なかんずく最初相続税のお話をしますが、このことを考えるに当たりまして、社会・経済のいろいろな変化を考えなければいけない。3つ大きな変化があるだろうということで、最初の1ページから3ページまでは、いわゆる高齢化という変化についてのペーパーでございます。
中身はもう何回も御覧になっているデータなので、詳しく御説明しませんが、2ページをちょっと御覧いただきたいと思います。死亡なさる方の数だけを取り出したデータでございます。現在、約100万人弱の亡くなる方がいらっしゃるわけですが、当然、高齢化社会の中でこの数がかなり増えていくということで、いわゆる相続の起こる件数がかなり増えるということで、税体系の中での相続税の位置づけというのを考えるに当たって、こういうことも踏まえて考えなければいけないだろうという意味で入れてございます。
3ページは出生率ですが、とばします。
4ページ以降は、いわゆるストック化という変化でございます。家計の資産の推移というのが4ページ、名目値でございますが、御覧いただきますと、バブルがはじけて若干確かに落ちましたが、金融資産、薄いところが金融資産ですが、金融資産を中心にかなりの額がまだ家計に残っているといいますか、家計の資産形成が進んでいるというのが実態であろうという表でございます。
それを、ではどういう年齢の方が持っているかというのが、1ページとばしまして6ページでございますが、まず金融資産だけに限ってみたのが6ページでございます。これはなかなかいい統計がございませんで、貯蓄動向調査から見たデータしかつけてございませんが、2人以上の一般世帯で見ますと、一番上でございますけれども、いわゆる金融資産については、47.5%を60歳以上の世帯の方々が持っている。ここには単身の老人世帯ですとか、あるいはお子さんがすでに主たる収入を得ていて、そこに老人の方がいらっしゃるというのが入っておりませんので、そこまで入れると、おそらくこれよりも高齢者のいわゆる所有割合というのは高まるだろうということだろうと思います。
次のページが実物資産、基本的には土地が主だと思いますが、その保有割合ということでつくりました。
それから、もう1つの大きな変化が8ページでございますけども、いろいろな国際化が進んでいる。なかんずく外為法の改正がございまして、御案内のように、ビッグバンということで、すでに海外にいくらでも預金を移すことができるという、金融資産を海外に持つことは極めて自由になっているというのは、この相続税なんかを考えるに当たっての1つのポイントでございます。資料はつけてございませんが、相続税の場合には、相続が発生した、すなわち亡くなったときに相続人が居住者であるか、非居住者であるかということで課税の対象が変わってまいりますが、そういうことにも関係する変化でございます。
それから、その次の9ページも、外国にいらっしゃる邦人数の推移を見ておりますが、当然でございますけど、相当の勢いで外国に住んでいらっしゃる方が増えているということでございます。
そこから先は相続税の実際の中身でございますけども、余り毎年毎年払う税金ではございませんので、実際の計算方法について、ちょっと具体的事例をもとに御説明をしたいと思います。
11ページをお開きいただきたいと思います。モデルケースでございますが、秋葉原の付近で土地を100坪、330平米持っていて事業をやっている方がいた。そこに店舗兼住宅で住んでいるという場合でございます。土地以外の資産としまして、金融資産等が1億4,000万円あるという事例でございます。1億4,000万円は一定の私どもの統計から平均的なところをとった金額でございます。したがいまして、土地の値段を11年度の路線価のもとになりました公示地価ベースで計算いたしますと、土地が約10億円、330平米、1平米当たり303万円ということで約10億円になります。相続税の計算でございますが、御案内のように、相続税の場合に土地は相続税評価額で計算いたしますので、この10億円ではなくて、約8億円が計算の出発台になります。
そのあと、この方は個人で事業をやっていらっしゃって、土地を自分で持っていらっしゃった方、なおかつ、その事業を奥様と長男が続けるという前提にしてございます。そうしますと、小規模宅地の特例という制度がございまして、現在ですと330平米まで土地の評価額を8割軽減する、すなわち2割にするという制度がございます。したがいまして、8億円の土地は計算上1億6,000万円という額に直して計算をすることになります。預金・建物の1億4,000万円はそのままで計算が出発します。
そのあとに基礎控除という制度がございまして、5,000万円+1,000万円×法定相続人数ということで、この場合、法定相続人、子供2人、妻1人ということで3人でございますので、基礎控除8,000万円という控除が受けられます。したがいまして、土地の1億6,000万円、建物・預金の1億4,000万円、合計3億円から8,000万円を引いて、2億2,000万円が課税される遺産になります。
日本の相続税の場合は、まずこれを法定相続分で按分をいたします。したがって、この場合妻が2分の1、長男・長女が4分の1ずつになります。その按分したそれぞれの額に税率表を当てはめまして、税額をまずとりあえず算出して、それをもう一回足し合わせます。ちょっと面倒くさくて恐縮ですけれども、妻であれば1億1,000万円に相当する税額を計算し、長男・長女であれば5,500万円に相当する税額を計算して、その3人分の相続税をまず足し合わせます。それが5,140万円、括弧の中に入っている数字ですが、これを計算いたします。それを今度は妻、長男・長女、それぞれが実際に何を相続したかという額に応じて按分をいたします。そうしますと、この場合でございますと、長男・長女には5,140万円のうち1,200万円ずつの税額が割り振られる。妻には2,740万円の税額が割り振られる。ただ、妻につきましては、配偶者の税額控除がございまして、法定相続分または1億6,000万円の大きいほうに対応する税額を控除できるとございますので、この場合、妻には税額が発生しないということになります。したがいまして、結果は長男・長女に1,200万円ずつの税額が発生するという計算になっております。
これは土地を持っていらっしゃる個人の事業者の方が念頭にありますので、例えば会社をつくっていて、実際に持っている資産の大半が自分の会社の株であるというような場合には、この計算例では計算ができないということになります。
それから、もう1例、今度はサラリーマンでございますが、サラリーマンで実際にどの辺から課税になるかという感じを見ていただくために、相続税がちょうどゼロになる方をわざと計算しております。これは渋谷の松涛に200平米の土地を持っていて、預金が4,000万円ある方が亡くなった。現職で亡くなられた。死亡保険金が2,000万円おりて、死亡退職金が4,000万円出たという場合でございます。
200平米の土地の公示価格でございますけども、平米当たり約94万円というのが足下の価格でございまして、土地の値段は1億8,750万円でございます。土地につきましては、先ほどと同様に相続税の路線価に直し、なおかつ小規模宅地の特例を、8割カットという特例を受けられますので、最後に土地の値段は3,000万円という額が計算の中に入ってまいります。預金は特別措置はございませんので、4,000万円がそのまま計算の基礎に入ります。
それから、死亡保険金、死亡退職金につきましては、法定相続人の数×500万円というのがそれぞれ控除できますので、この場合は子供さん3人という計算にしてございますが、それぞれ2,000万円ずつの控除が受けられますので、死亡保険金はゼロになり、死亡退職金は2,000万円残るということになります。
合計9,000万円が課税価格になりますが、この場合は基礎控除が、4人おりますので5,000万円+4,000万円ということで、法定相続人4人おりますので、基礎控除9,000万円が受けられて、相続税は一切かからないという計算になってございます。
それから、次のページは相続税の超過累進税率というのはこういうものですというものでございますが、所得税と同じように、超過累進税率が適用になって、現在でありますと、先ほど御説明いたしましたように、相続人に法定相続分を分けたあとに、それぞれがいくらかということに着目してこの計算を当てはめます。したがって、分けましたあとに20億円を超えるその部分について70%が適用になる、最高税率が適用になるということでございます。
1ページとばしまして、15ページでございますが、従来、相続税の制度がどのような改正を経てきているかということで、直近の3つの大きな改正を載せてございます。その3つの大きな改正の前の欄が一番左の欄でございますけども、例えば基礎控除でいいますと、先ほどの定額控除の5,000万円は、昭和63年の抜本改正の前は2,000万円であった。それから、法定相続人の数に比例する控除は、いまは1,000万円ですけども、当時は400万円であった。それから、税率は現在20億円を超えるところに70%が適用になるという制度になっていますけれども、当時は5億円を超えるところに75%が適用になる。こういう制度になっていたということでございます。
それから、下のほうの四角でございますが、先ほどの小規模宅地の特例も現在は80%を引くということになっておりますが、以前は40とか30とか、そういうような控除率になっていたということでございます。
次のページはそれを表にあらわしているものでございます。
それから、17ページは、かなり相続税につきましては、土地の値段にリンクして税負担が変わってまいりました。あるいは税制改正によってももちろん税負担が変わります。その変化をあらわしたものでございまして、千代田区の外神田3丁目でやはり200平米の事業用土地を持っていて、それ以外の土地以外の資産が1億5,000万円弱だという人を前提に計算をいたしますと、バブルの頂点の平成3年のころには、この方には1億9,101万円の相続税が発生した。当時の公示価格で計算しますと、20億円の資産を持っているという計算になりますので、このぐらいの額になってしまうのですが、括弧の中が当時の平米当たりの路線価でございます。現在は一番右でございますが、この方がもし現在亡くなったというふうになりますと、平成11年でございますが、税額にして1,249万円、括弧の中が路線価の191万円と、かなり大きな土地の値下がりがあり、それから、相続税の改正もあって、大きな相続税負担の変化が発生しているということでございます。これは配偶者と子供3人の例で計算してございます。
その土地の変化の表が18ページでございます。
それから、19ページでございますけども、一番左の下の欄を御覧いただきますと、現在亡くなられる方は約91万人、だんだん増えてきていますが、91万人の方が亡くなっております。そのうち相続税のかかるような亡くなり方をなさった方が、その右の欄、(b)欄ですが、4万8,605人ということで、相続税の課税割合としまして5.3%というふうになっております。
さらに1ページめくっていただきまして、その課税価格によって、当然累進税率ですから、負担率も変わるわけでありますが、いま申し上げた約4万8,000件の件数を課税価格階級別に分布いたしまして、それぞれについて負担率を計算したものでございます。一番左の欄を御覧いただきますと、1億円超から2億円以下というところが一番多いところでございますけども、そこでいいますと、負担率、右側に御覧いただきますと、(b)/(a)で3.8%、一番重いところが、当然20億円を超えるところでございますが、421件、この平均的な負担率が32.6%でございます。421件の中にいわゆる最高税率の適用になる方がいらっしゃいます。ここに書いてある20億円は、遺産を法定相続割合で分割する前の金額でございますので、分割したあとも20億円を超えるような方が発生する場合には70%が適用になるわけですが、この421件の中に、推計でございますけれども、10件程度70%が適用になる方がいらっしゃるということでございます。
21ページはいまの表をグラフにあらわしたもので、上の棒グラフが課税件数の分布、下が課税価格。課税価格というのは課税ベースとお考えいただいて結構だと思いますが、の分布でございます。課税価格のところを御覧いただきますと、総額で13兆8,330億円が現行の相続税のいわゆる課税ベースになっているということでございます。
それから、次の22ページが課税件数と税額の累積割合ということで、横に件数の累積をとり、縦に税額の累積をとってみたものでございますが、当然でございますけども、いわゆる課税価格の高いほうの人が相当の税額を納めていて、それが全体に対する割合も高いというのが見て取れるかと思います。
それから、外国との比較でございますが、23ページでございます。右下の四角の中を御覧いただきますと、最高税率、最低税率、課税最低限、課税方式と、それぞれ区々でございまして、一番下の課税方式のところを御覧いただきますと、アメリカ、イギリスが遺産課税と書いてございます。非常に大ざっぱに言いますと、アメリカ、イギリスは先ほどの法定相続割合で割ったあとに税額表を適用するという制度ではなくて、分ける前の遺産の額を念頭に税率表を適用するという制度になっております。日本はどちらかといいますと、ドイツ、フランスに似た遺産取得課税という制度になっているということでございます。
それから、日本の70%は、先ほど言いましたように、分けたあとに20億円を超えるところに適用になりますが、アメリカの55%は、300万ドルを超えるところに適用になります。約3億円でございます。
以上、若干いろいろな点で比較がなかなか難しいので、それを表にしたのがこういうグラフでございます。
それから、24ページ以降は、先ほどもちょっと出てまいりました小規模宅地の特例、24ページに小規模宅地の特例の制度の中身を書いてございまして、事業を継続したり居住を継続したりした場合に、先ほどの8割の軽減というのが受けられる。事業とか居住を継続しなくても、被相続人の持っていた土地が宅地であれば、50%までの控除が受けられるという制度になってございます。
それから、25ページは、先ほどちょっと申し上げました、自分で土地や資産を持っているのではなくて、会社にして当該会社の株を持っている場合の評価の仕方というのが、実は国税庁の通達で決まっておりますが、その中身は25、26、27と、非常に細かいので、詳しくは今日は省略いたしますが、決まっております。
一言で申し上げますと、すでに一部上場、二部上場しているような株式と違いまして、取引相場が存在しない株式でございますので、一定の推計を行って、当該株の価格を決める。その推計を行う際に、そういう会社の中でも大きいほうの会社は似たような会社の株価を持ってきて、そこから推計をする。中小会社の場合には、その似たような会社からの推計という方式だけではなくて、純資産に着目した推計を行っているということでございます。推計という言葉は適切ではないかもしれませんが、そういう意味の時価として、こういう価格で計算をするのは適当だろうという形を国税庁のほうから通達で示しているということでございます。
それから、相続税についての昨年いただきました税制調査会からの答申が28ページにつけてございます。省略いたします。
それから、贈与税が29ページ、30ページでございますが、現在の贈与税、30ページを御覧いただきますと、税額でございますけれども、1,299億円の贈与税を納めていただいております。それから、件数にいたしましては、48万6,900件の件数になっているということでございます。
それから、31ページ以降は、資産課税ということで土地に対する課税の中身を、本当に簡単に書いてございます。時間がございませんので、取得時、保有時、譲渡時に、こういうそれぞれの税目が課税されているということの説明だけで省略させていただきたいと思います。
それから、最後でございますけども、44ページを御覧いただきたいと思いますが、いわゆる所得税、法人税、消費税のような大きな基幹税目以外の税目というのが大体いくらぐらいあるかというのがこの表で見て取れると思いますが、欄外を御覧いただきますと、上から2つ目にその他と書いてございまして、10年度の決算が7兆3,000億円ということで、その内訳、相続税が1.9兆円、酒、たばこが1.9兆円、1.0兆円、関税が0.9兆円、登免税・印紙税といったのが1.6兆円ということで、合計して7.3兆円ございます。このグラフはその税目が結構安定的に税収として寄与してきているというのをあらわすグラフでございまして、そういう意味では、一つ一つ見ると所得税とか法人税に比べますと税収は大きくありませんけども、合わせて見ると非常に大きな税収になっているというのが見て取れるかと思います。
それから、基本問題小委において出された意見でございますけれども、加藤会長のほうから記者会見をやっていただいておりますが、まず1つ相続税については、フローへの課税、特に所得税についてはフラット化が進んできているけれども、その必要もあるかもしれないけれども、相続時点のストック課税としては再分配機能を堅持したほうがよいのではないかという意見が1つございました。
それから、相続税を考えるに当たっては、その課税の理由、課税根拠をしっかり議論する必要があって、それによって最高税率の水準のあり方なんかも議論の中身が変わってくるのではないかという意見がございました。
それから、やはり相続税というのはキャッシュフローがない場合に課税するとなりますと、かなり負担感が発生するという点を考えなければいけないという御議論がございました。
それから、もう1つは、ストック化が進展してきているので、ストックに対して広く薄く課税すべきだという御意見がございました。
それから、事業承継に絡みましては、土地についてかなりの特例をしているけれども、これは資産選択を歪めるという問題が一方であるので、これについての考慮が必要であると御意見がございました。
それから、事業承継の問題を考えるに当たって、一般のサラリーマン、給与所得者への課税とのバランスをどう考えるかといった観点が重要であるという御意見がございました。
それから、事業承継の問題につきましては、税の問題だけではなくて、そもそも遺産分割自体の問題もあって、まずはとにかく実態を十分踏まえた上で検討すべきだという御意見、いくつがございました。
それから、先ほど御紹介しましたが、相続税においては、もはや土地ではなくて、取引相場のない株式の評価というのが問題ではないかという御意見がございました。
それから、海外への資産の移転、ある種課税回避みたいなものもしっかり考える必要があるという御意見がございました。
いずれにしましても、昨年度の答申では、個人所得課税の抜本改革との関連でという答申をいただいておりますが、これに対しましても、最高税率と事業承継の問題は少し短期的に考えていく余地があるのではないかという御意見と、やはり相続税の問題は必ずしも景気と直接関係あるものではないので、長期的な視点に立って議論すべきではないかという御意見等々ございまして、全部網羅できていないかもしれませんが、主要なところの御意見を紹介させていただきました。
〇岡崎固定資産税課長
固定資産税課長の岡崎でございます。資料は「基小7-2」という『固定資産税等関係資料』という資料でございます。お時間の関係もありますので、この中に地方の資産課税として固定資産税、都市計画税、それから、特別土地保有税、不動産取得税と、4つの関係資料がありますが、固定資産税を中心に御説明させていただきます。
まず、2枚めくっていただきまして、1ページと書いてあるところでございますが、ここに固定資産税、都市計画税の概要が書いてございます。どちらも市町村の税でございまして、課税客体、固定のほうは土地、家屋及び償却資産ということでございます。
課税標準は適正な時価ということで、これにつきまして土地・家屋は3年ごとに評価替えを行っておりまして、平成12年度が評価替えの年に当たります。
なお、住宅用地につきましては、6分の1ないし3分の1の特例がございます。税率は1.4%です、というのが概要でございます。
2ページでございますが、大体の税のウエイトでございます。右下に市町村税がありますが、固定資産税、これは9年度でございますが、41.6%のウエイトを占めております。8兆8,000億円。その上に都市計画税がありますが、6.3%、1兆3,000億円でございます。特別土地保有税はその他の中に900億円ほど入っております。それから、上の道府県税に不動産取得税がございまして、7,300億円という大体のウエイトでございます。
それから、3ページは租税総額等に対する割合でございますが、省略をいたします。
4ページにつきましては、市町村税収の推移ということでございます。市町村税収全体が平成3年度まで着実に伸びてまいりましたが、その後大分波を打っております。この原因は中のグラフでわかりますように、市町村民税が景気の影響あるいは減税によりまして、大分3年以降は減少しているという中で、固定資産税が堅実に伸びているということで、市町村の仕事の非常に支えになっているということがわかろうかと思います。
それから、5ページですが、ちょっと細かい国際比較なので、6ページのグラフで御説明いたします。なかなか税の構造が違いますので、単純に比較できませんが、1つの目安として、土地と家屋に係る保有課税ということで、日本の固定資産税、土地・家屋分、それから、都市計画税、保有税、地価税、これは8年度でありますので、そこまで全部入れて比較をしております。グラフの左側が国民所得に対する比率でございまして、日本の場合は2.2%と書いてございまして、ドイツを除きますと、諸外国に比べて必ずしも高くはないという水準かなということでございます。
なお、外国において一部技術的に分け切れないので、償却資産のところに入っております。あくまでもこれは1つの目安ということで御理解いただきたいと思います。
それから、7ページでありますが、過去の経緯を簡単に整理しております。御承知のように、平成元年に土地基本法ができまして、公的土地評価について、相互の均衡と適正化を図るという条文が入っております。その後、土地政策審議会あるいは政府税制調査会で議論いただきまして、上から4つ目にありますが、2年の12月の政府税調の答申で、「速やかに、地価公示価格の一定割合を目標に、評価の均衡化・適正化を推進すべき」という御意見をいただいております。それを受けまして、またさらに議論を進めまして、最終的には5年3月31日に法律を改正いたしまして、平成6年度で7割評価、地価公示水準の7割に評価を統一するということを前提にいたしまして、法律改正を行ったわけであります。負担調整措置を決定したり、あるいはこのときに小規模住宅用地あるいは住宅用地に係る特例を拡充いたしたりしております。そういうことで平成6年に、それまでややバラツキのありました評価につきまして、地価公示の7割水準ということで全国的な統一を図ったわけであります。
その後、平成9年度の評価替えに当たりまして、8ページでございますが、1番にやや背景が書いてありますが、9年度までの3年間の地価の状況を見ますと、上がった団体、下がった団体、かなりバラツキがございました。また一の2にありますように、負担調整措置等を6年ずつ講じてきましたので、総地積のうちの96%はまだ評価額に対して課税標準額が下にあるという状況にございました。さらにその下にある乖離の状況が地域や土地によってバラツキがあって、公平の点でも問題があるということがございまして、9年度には負担水準の均衡化というのを重視した負担調整措置を導入いたしております。
言葉ではあれですので、10ページの図を御覧いただきたいと思います。この図の左側が商業地等でございます。右側が小規模住宅用地を挙げております。左側でこの見方でございますが、地価公示の7割評価の額を一応ここで100%と置かせていただいております。この評価額にほとんど近いところまで課税標準になっているというところにつきましては、80%水準までキャップをはめたといいますか、引下げをしたということでございます。60~80%、つまり評価額の60~80%水準に課税標準が来ている土地につきましては、課税標準、すなわち税額を据え置こうということでございます。
それから、さらにずっとその課税標準が小さい、実際の評価に比べまして非常に小さいところにあるものにつきましては、少しずつ上げていこう、なだらかに上げていこうということでございまして、例えば10%から20%にあるのは、1.10ということで、毎年10%の上昇をさせていただこうと、こういうような仕組みでございます。
付け加えまして、縦に2つに割った右側が価格下落率25%以上というふうに下に書いておりますが、要するに平均的な下落率よりも大きく下落した土地で、かつ、45%を超えるような負担水準にあるものについても、据え置きをしようということで仕組んでございます。
右側の小規模住宅用地につきましては、もともと6分の1という外国にも余りないような優遇税制になっておりますので、6で割った16.7%のところから13.3%までを据え置く。そこから下はだんだん上がってくるというような仕組みにしております。
なお、もう1つ、この表の一番下、(注)の上でありますが、据置年度における下落修正というのがございまして、これも新たに入れたのですが、3年に一遍の評価替えであったわけでありますが、地価がどんどん落ちていくときには、やはり途中で修正をしないといけないだろうということで、平成10年度及び11年度におきまして、地価公示あるいは都道府県地価調査から見て、下落しているなという地域につきまして、簡易な下落修正、評価額を修正することができるようにいたしました。
そういうような仕組みをとっておりますが、11ページには、そういう結果として10年度のいわゆる評価額に対して課税標準がどのぐらいの水準にあるかという県平均を挙げております。高いところでは東京、大阪57%台、低いところでは沖縄が23.7%、あるいは徳島、福井あたりが35%台ということでありまして、同じ評価額の土地に対しての税負担がこのぐらい違っているという状況でございます。
12ページには、県平均でありますので、それが市町村別にも随分違いますよということで、市町村の3,232団体の、どういうところにあるかという分布を示させていただいています。
それから、13ページでありますが、一応そういうようなことで、上のほうを下げて、下のほうを少しずつ上げるという形にいたしましたので、いわゆる負担水準の分布を商業地等について示した棒グラフでございます。平成8年度の課税標準額は9年の評価に対しまして80%を超えるところにも存在いたしましたし、低いところにも結構存在いたしました。これを9年度以降、上をカットしましたので、すべて80%以下に集まってきた。それから、下のほうは少しずつ上がってきたので、10年度を見ますと、大分8年度に比べると、かなり山がまとまってきたという感じが見てとれると思います。
それから、実際にどんなイメージなのかということがわかりやすいように、14ページに、東京の例えば銀座でどんな動きをしているかというのを例にさせていただきました。これの左側の表でありますが、平成5年度にこの土地の場合には例えば3億4,500万円の評価でありましたが、6年度に地価公示の7割ということにいたしましたので、それまで非常に低い評価しかしていなかったのですが、16億円の評価になった。これは3年間据え置かれます。その間に右側の税額については、そこに少しずつ近づくような調整でございましたので、ずっと上がり続けてきた。9年度にいまのようにある意味ではベクトルを変えましたので、評価額も地価の下落でどんと落ちましたけれども、その8割ということで、80%というキャップをはめましたので、そこまで課税標準を落とし、税額が落ちたわけでございます。さらに、先ほどの下落修正という仕組みがありますので、毎年評価額を修正いたしますので、税額は毎年落ち続けているというような状況でございます。
なお、平成12年にまた評価替えしまして、おそらくまた地価が落ちておりますので、さらにまた落ちていくだろうという傾向になると思います。
左下にありますが、特別区23区内の商業地のうち、ほぼ7割以上が引下げまたは据置きになっているというような状況でございます。これは10年度の場合でございます。
次に、15ページは同じく大阪の日本橋の例でございまして、これも同様の8年度まで上がり続け、9年から下がるということで、11年度はすでに5年度よりも低い税額になっているような例でございます。大阪の場合には、左下にありますが、ほぼ8割に近い土地が引下げまたは据置きになっているというのが見て取れるわけでございます。
そういうようなことで、特に東京、大阪等の大都市を中心にしまして、かなり下がる土地が出てきて、あるいは据置きの土地が多いということから、16ページにありますように、大都市部を中心に土地に係る固定資産税収全体の伸び率を掲げさせていただいておりますが、全国的には9年度以降も少しずつ伸びておりますが、大きなところではもうすでにマイナスに転じているという状況でございます。
それから、17ページに12年度の評価替えにつきまして概要が書いてありますが、次の18ページにもありますように、税調等の答申もございまして、17ページの1番に整理しましたが、負担水準の状況あるいは評価替えの動向、それから、市町村財政、大変厳しい状況を勘案しまして、さらに負担水準の均衡化、適正化の観点から年末に向けて具体的な負担調整等の検討を行っていこうと思っております。スケジュールは2番等でありますが、いずれにしましても、税調等でもまた御議論いただきたいと思います。
それから、18ページは答申ですので省略いたします。
以上、固定資産税でして、19ページに特別土地保有税、20ページに不動産取得税がございます。お時間の関係もあって基本的には省略いたしますが、一番最後のページに、不動産取得税の関係で家と土地の絵がかいてございます。不動産取得税はかなり大きな課税標準額の控除をする制度がございまして、大体東京都で平均的な一戸建て住宅等でありますと、不動産取得税は、控除されまして、実際はかからないというようなことが書いてございます。
資料の説明は以上でございますが、基本問題小委員会におきましてどんな議論があったかというのを二、三紹介いたします。
1つは土地の評価の関係で、固定資産税の土地の評価について、もっと透明性を高めるべきではないかというようなこと等、評価に関する意見がいくつか出されております。
それから、土地税制の1つの狙いであった保有課税というのを重くして、地価を抑制しようという基本的な考え方は、やはり今後も堅持をしていくべきではないかというようなお話もございました。
それから、やはり固定資産税は市町村の安定的な財源であり、その安定性を損なうべきではないし、また、均衡化、適正化という方向も間違ってはいないというので、このような前提の中でどこまでいろいろな工夫をしていけるかということではないかというような御意見もございました。
それから、先ほどの住宅用地につきまして、住民が応益的に負担すべき水準というものがあるのだろうから、価格の6分の1というのはやや極端で、特例を拡充する前の4分の1ぐらいに戻していいのではないかというような御意見もあったところでございます。
私からは以上でございます。
〇加藤会長
ありがとうございました。どうぞ、皆さま方御意見ありましたら、お出しをいただきたいと思います。相続税、固定資産税、土地税制など。
〇平田委員
すでに新聞等で相続税の最高税率を下げるお話と、事業承継の株式の評価も考えようというような2つの議論がなされているようであります。私の立場で申し上げますと、特に取引相場のない株式の評価を何とかならないものかなという立場であります。非常に細かい通達が出ておりまして、擬制的に公平な観点から評価ができるような仕組みにはなっているのでありますけれども、いずれにいたしましても、いまは戦後50年たっておりまして、創業者がつくりました1つの企業の株式会社が、ちょうど創業者が死亡するという時代に差しかかっておりまして、相続財産の中で取引相場のない株式の評価の額が相続人間で非常に問題になるというちょうど時代なのでありまして、何といっても自分の事業承継をいたします株式会社の株式の評価でありますから、よそへ売って現金化することはできない。現金に換価できないものを相続財産として評価をして税額の計算をする。相続人の間で認識をするのがなかなか難しいという点がございまして、非常に公平ないい評価方法がいまはできているのですけれども、何かその辺もう一工夫あってもいいのではないか。非常に小規模の承継をいたす宅地でありますとか事業用の土地なんかについては、ただいまの御説明にもありましたように、非常に大きな控除をつくっておりまして、大変制度的にはいいのですけれども、それでも、なおかつ、まだまだ創業者がつくりました株式会社の留保金の額が大きいということもありまして、非常に取引相場のない株式の評価が依然として高いということがございますので、この辺は私としては何か一工夫をしていただければなと思うわけであります。
〇松本(和)委員
地方公共団体の立場から一言言わせていただきたいと思います。
来年が固定資産税の評価替えでございますが、最近、一部の業界などから固定資産税を大幅に引き下げるべきという声も出ているようでございます。また、言うまでもなく固定資産税は市町村の基幹の税目でございます。いまや市町村の行政サービスを充実させながら、継続して安定的に地域住民に提供するために、最も重要な税目であると思います。固定資産税収について、全国の町村では大体48%。実は私の町でちょっと調べたのですが、税収全体の51%が固定資産税収になっております。
また、厳しい財政事情の中にあって、国の景気対策の対応等もやってきたわけでございますが、そういうことで、固定資産税がどうにか安定的に確保されたのも、やはり固定資産税があったからではないかと思います。大きいと思います。地価の下落傾向にある中で、固定資産税の負担の感が増しているという意見もありますが、一方では景気の如何にかかわらず、市町村の行政サービスが一定の水準に確保できたことは、これによって認めていただけると思います。
また、町村において固定資産税は、ずっと見てきているのですが、大体地価横ばいの状態に町村はございます。そういうことで、毎年調整等も入ってきていたわけでございますが、3年に1回の評価替えですか、それで町村はいいのではないかという気がしたわけでございます。
また、仮に一部の方が主張しているように、固定資産税の税収減が大幅なものとなった場合には、公共事業、あるいは今後始まります介護保険制度の円滑な導入にも支障が来るのではないか。まして地方分権の時代に入ってまいります。行政の第一線である市町村が、今後とも安心して様々な住民サービスを行っていけるように、中長期的に固定資産税の安定的確保がぜひとも必要であるということを申し述べておきたいと思います。
〇橋本特別委員
固定資産税の問題につきまして、先ほどの御説明にありましたとおり、平成9年度の固定資産税の評価替えに伴いまして、新しく導入されました負担水準による税額調整、これは負担水準の均衡化をより重視するということを基本的な考え方としておりまして、宅地のうちで負担水準の高い土地について、その税負担を抑制しながら負担水準の均衡化を図ろうという意図のもとに行われたものでありますから、これは正しい方向性を示しているのではないかと思います。
しかしながら、一方で現行の固定資産税制のもとでは、特に住宅地以外の非住宅地における実効税率というものが、バブル以前の0.4%水準を上回る水準になってきておりますし、またこの現行方式によりますと、かなりの都道府県で地価が下がりつつあるにもかかわらず、税負担の増える土地が税負担の減る土地を上回るのではないかと。したがって、増大した税負担の引下げにつながらないおそれが強いということが言われておりまして、もしそうなるのであれば、これは納税者の立場から見ると、土地が下がっているのにどうして固定資産税が上がるのかという納得性が得がたいわけでありますので、先ほどの資料の平成12年度評価替えについての方針が書かれておるわけですが、固定資産税負担の均衡化に加えまして、適正化の見地からこの負担水準をどのレベルに収束されるのがいいのかということを御検討願うべきではないだろうかと思います。
〇水野(忠)委員
中期答申に向けて、税制、特に消費税と所得税との関係をどういうふうに記述していくのかということがあるわけですけども、そのような消費税の書き方によりましては、非常に相続税というものが重要になってくるわけです。簡単に言えば、消費税というのは所得のうちでいわゆる貯蓄の部分には課税しない税制ですので、どうしても貯蓄部分が残ってくるということがあるわけです。相続税につきましては、もともとは、亡くなる人から見れば、清算課税である。いわゆる生前中取れなかった所得税を最後に取るんだよという説明がありますし、また、相続人の側から見れば、これは富の再分配であると。偶発的な利得に課税をするとか、いろいろありますけれども、これが消費税を充実してだんだん所得課税のウエイトを下げていくということになりますと、相続税というのは、消費税を補完するという言葉は使っておりませんけれども、どうしても必要な税制になってくるわけですね。それで、21世紀に向けて所得税と消費税の関係をどう見るのかといったときには、必ずこの相続税の存在というものである程度バックアップするような形をとりませんと、税体系が非常にアンバランスなものになってしまう。こういう点に留保しておく必要があるのではないかと思うわけです。
〇塙委員
先ほど土地の値段が下がるのに税額が上がるのだという話がありましたけれども、私どもも各企業から同じような問題点を指摘されております。土地のいまの値下がりは非常な勢いでありますけれども、税額だけはきちんきちんと上がっていくということで、実効税率はかなり高くなっている。もう少し下がってもいいのではないかという意見がありますが、どの辺が妥当なのかということについては、私どもも策はないのですけれども、以前、地価が安定していたころの税率が妥当ではないかという意見が多ございます。
それから、工場用地みたいに非常に大規模な土地を抱えているものの、最近、土地の有効利用率が低いということ、極端な場合には遊んでいる土地をたくさん持っているということもあるのですが、それについては規模格差補正をしていただいているわけですが、その補正率をもう少し考えていただけないかとか、それから、緑地化率なんかがあるわけですけど、その緑地についての税率を少し見直していただけないかという要望が各所から出ておりますのを御報告したいと思います。
〇加藤会長
ありがとうございました。
一通り御意見いただいたことで、また議論を詰めなければいけないことがございます。いま出ました御意見、いろいろと小委員会に戻りまして、また小委員会でフィードバックしながら議論を展開したいと思っております。
次回は11月19日、今日と同じ場所でございますが、また3時間ほどの時間をいただいて、基本問題小委員会、法人課税小委員会の審議内容について議論をまたしていきたいと思っています。そのあと、11月30日にまた時間をいただいております。これは午後とお聞きになったかもしれませんが、午前でございます。11月30日は午前でございますが、中期答申に向けた議論はここでは中断いたしまして、いよいよ年度答申に向けた議論を11月30日から始めたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
今日はどうもお忙しいところ、ありがとうございました。
〔閉会〕
(注)
本議事録は毎回の総会後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、大蔵省主税局及び自治省税務局の文責において作成した資料です。
内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。