第36回総会 議事録

平成11年9月21日開催

加藤会長

それでは、ただいまから税制調査会の第36回総会及び第5回基本問題小委員会の合同会議を開催いたしたいと思います。

今回は、夏休み後中期答申に向けた本格的な審議の第1回ということでありますので、総会と基本問題小委員会の合同ということにいたしました。

本日の議題をまず申し上げておきますと、最初に、通常国会が8月13日に閉会いたしましたが、国会の審議状況について事務局より報告をいただこうと思います。

次に、連結納税制度等について検討するために、7月に法人課税小委員会を再開しましたが、これまでの審議状況について、石小委員長より報告をいただきたいと思います。

最後に、来年の中期答申に向けた検討といたしまして、税制を取り巻く最近の状況等について、自由討議を行いたいと思います。

始めます前に、まず、事務局のほうで人事異動がありましたので、石井税務局長より御紹介をいただこうと思います。

石井税務局長

このたび税務局長を拝命いたしました石井でございます。前任の成瀬のあとを受けてよろしくお願いいたします。

それから、向こうのほうにおりますけれども、新しい税務担当審議官の板倉でございます。前任の林審議官は財政のほうに回っております。

それから、新任の企画課長がその隣でございまして、小室でございます。前任の桑原課長のほうは、地方公務員災害補償基金の局長に転出いたしております。

それから、新しい市町村税課長は井原でございます。前任の上田は三重県の副知事のほうに転出をいたしております。いずれも前任者同様よろしくお願い申し上げます。どうもありがとうございました。

加藤会長

ありがとうございました。

では、今日の議題でございますが、はじめに国会の審議状況について、事務局より報告をしていただこうと思いますが、国会の審議状況につきましては、4月の総会ですでに一度報告をいたしておりますので、今回はそれ以降についてお願いをしようと思います。

では、尾原局長、よろしくお願いいたします。

尾原主税局長

それでは、4月以降の国会の審議状況等について、御説明申し上げます。

お手許の資料に「36-1」という資料がございます。これは産業活力再生特別措置法案関連の租税特別措置法の一部を改正する法律案の要綱でございます。

この審議経過でございますが、御承知のように、6月11日の産業構造転換・雇用対策本部決定の緊急雇用対策及び産業競争力強化対策を受け、7月21日に閣議決定され、国会に提出されたものでございます。国会審議を経まして、8月6日に可決成立し、8月13日に公布されたわけでございます。現在、10月1日から施行ということになっておりますので、事業再構築計画等の認定に係る基準の策定など政省令の最終段階の作業に入っているところでございます。

次に、お手許の「36-2」でございますが、4月以降の税制に関連いたします主な国会質疑を御紹介したいと思います。

1の「税制一般」のところの「税体系」でございますが、「高齢化時代を迎え、直間比率を見直すべきと考えるがどうか」との質問に対しまして、大蔵大臣から、「平成11年度の予算では直間比率が57対43となっている。これはおそらく正常な姿ではない。消費税云々の議論よりは、まずは所得税収や法人税収が経済の正常化に伴って上がっていくことによって、もう少し直接税のほうにウエイトがかかる経済運営がいいのではないかと考えている」と答弁されております。

それから、法人課税でございますが、「連結納税制度導入についての見解如何」というのがございます。大蔵大臣から、「我が国の法人税制は基本的に個々の法人に課税するという建前に立っているので、連結納税ということになると、法人課税の体系全般を見直さなければならない。しかし、確かに連結納税は世の中の動きなので、幅広い論点について専門的、実務的な検討を行う必要がある」旨答弁がなされております。

それから、その下に「同族会社に対する留保金課税制度を見直すべきではないか」との質問に対しまして、私どものほうから、「この制度の趣旨は、少数の株主が意思決定権を有する同族会社において、配当の抑制による個人の累進所得課税の回避を防止するとともに、間接的に配当支出を誘因することにより、法人形態と個人形態との税負担のバランスをとることにある」というふうに答弁してございます。

それから、次に相続税がございます。「平成12年度改正において、最高税率を引き下げるべきではないか」との質問がなされまして、大蔵大臣から、「最高税率だけを直して済むということではなく、相続税全体の問題とあわせて議論しなければならない」旨答弁がされております。

それから、少し下のほうになりますが、「住民票コード番号を納税者番号制度に利用することを考えているのか」の質問に対しまして、大蔵大臣から、「平成11年度の政府税調の答申では、『より掘り下げて具体的な検討を進めていくことが必要だ』と述べられており、政府としては具体的な実施方法を答える段階に至っていない」と答弁されております。

それから、その一番最後でございますが、NPO法人に対する寄付金の問題の御質問がございました。大蔵大臣から、「NPO法が施行されたばかりであり、今後どのような団体がNPO法人の資格を取得し、どのような活動をするかを見極めた上で、税制について各種法人や団体に対する課税のバランスも考えながら検討してまいりたい」と答弁されております。

次のページをめくっていただきまして、「その他」の中で、「国と地方の税財源のあり方を抜本的に見直すべきではないか」という質問が度々なされました。総理からは、「地方税財源の充実確保については、今後、経済の状況や国・地方の財政状況等を踏まえるとともに、将来の税制の抜本的改革の方向も見極めつつ総合的に検討すべきものであると考えている」と答弁されておりますし、大蔵大臣からは、「現下の極めて厳しい財政状況については、我が国の経済成長が回復軌道に乗った段階において、国のみならず地方においても根本的な改革が必要であり、その際には国と地方の行財政の再配分の検討が必要である」との答弁がなされております。

それから、「36-3」の資料がございます。これは9月上旬に自民、公明両党の政策合意がなされまして、お手許の資料のとおり、税制についても何点か盛り込まれておりますので、御覧になっていただければと思います。

以上、国会における審議状況と最近の状況についての御報告を終わらせていただきたいと思います。

加藤会長

それでは、石井税務局長、お願いいたします。

石井税務局長

それでは、引き続きまして、地方税に関する事項を御説明申し上げます。

3枚目をおめくりいただきたいと思いますが、地方税関係の4月以降の議論といたしましては、地方分権一括法の審議の際に、質疑応答を中心にいろいろな議論がございましたので、御説明申し上げます。

この法案は3月29日に国会に提出されておりまして、衆議院では6月11日に可決、参議院が7月8日可決・成立。それから、7月の16日に公布されておるわけでございます。

なお、この審議の間に、この政府税調のメンバーでもいらっしゃいます諸井地方分権推進委員長さんに大変参考人その他でお世話になっております。

まず、この項目たくさんございますが、1番目から4番目あたりは大体共通の問題でございまして、地方税財源の充実確保についての基本的考え方ですとか、あるいは国と地方の税財源の配分を見直す際にどういう考え方でやるのか、あるいは税財源の移譲もあわせてやるべきではないか、それから、景気動向とは関係なく分権とあわせて直ちに国から地方への税財源の移譲を行うべきではないか、といったような議論がございました。これに関しましては、自治大臣のほうから、「今日の経済の低迷を反映しまして、国・地方とも極めて税収が落ち込んでいる状況である。経済の成長がノーマルな状況になって、税収構造というものを見た上で、国と地方の税財源配分を見直し、地方税自体としてのバランスのとれた所得・消費・資産等といった税体系を検討してまいりたい」というふうにお答えをいたしております。

それから、5番目ですけれども、いまの問題とも絡みますが、「地方税財源を充実強化するために、国と地方の役割分担に応じた実効性のある充実確保策を検討して、3年以内に法制化を図るべきだ」といったような御意見が出ましたけれども、これにつきましても自治大臣から、「経済戦略会議で出された答申で、まず経済をプラス成長に転ずることが大事だ。あるいは2%程度の成長を第2段階として確実にしていくことが大事だといったようなことが言われている。そういったことも念頭に置いて、そういった段階において国・地方の税財源の配分を新たに組み立てていきたい」といったようなお答えをいたしております。

それから、その下の所得税の一定部分を個人住民税に移譲することや、地方消費税の問題についてどう考えるかという御質疑も出たわけですけれども、「所得税と住民税は似ていますけれども、課税最低限も違っている。また、消費税については、単に国や地方の一般的な財政需要を賄っていくというだけでいいのか。これからの少子・高齢化に対応する社会保障という考えもあるので、税調における御議論も十分に踏まえて検討してまいりたい」といったようなことを自治大臣からお答えをいたしております。

それから、「政令市とか中核市といった大規模な都市の税財源の充実をどのように図っていくのか」といったような問題提起もございましたが、これに対しては自治大臣から、「大都市地域の財政状況も大変厳しい状況にありますが、基本的には経済情勢がノーマルな状態になった段階で、国・地方の問題、それから大都市地域に対する税財源の充実などについても、総合的に検討し取り組んでいかなければならない」といったお答えをいたしております。

それから、先日、この総会でも御報告いたしました外形標準課税の問題に関連した議論として、「地方税財源の確保が重要な課題であり、法人事業税の外形標準課税は避けて通れない。今後ともその導入に向けて議論すべきではないか」といったような御意見が出ましたけれども、これにつきましても、自治大臣から、「地方の自主性・自立性を確立するためには、財政的な自主性を保障する仕組みが必要である。事業税は都道府県の税収入の中で中核的な税目であり、応益課税あるいは収入の安定化の観点から、この外形標準課税は積年の課題であり、また現在、政府税調の地方法人課税小委員会で議論いただいているところ。こういった議論を踏まえて、導入については、激変緩和のための経過的な形を含めいろいろ知恵を出して、特に社会保障とのかかわり等も念頭に置いて議論をしていきたい」といったお答えをいたしております。

それから、課税自主権の関係で、今回の地方分権一括法に盛り込まれております法定外目的税の議論が中心になりますが、「地方自治体の課税自主権を強化していくべきではないか」ですとか、「法定外目的税の創設について、どういう場合であれば新しい税金を認めるのか」とか、あるいは「地方分権一括法で法定外税の制度の見直しが盛り込まれているけれども、住民の負担が増えるのではないか」といったような議論がございました。これに対しては自治大臣から、「地方自治のためには課税自主権は重要であり、法定外普通税の許可制度の廃止、法定外目的税の創設もそういう意味で図った。運用にあたっては、国税なり他の地方税と課税標準を同じくしたり、あるいは住民の負担が著しく過大とならないかどうか、それから、第2には、地方団体間における物の流通に重大な障害を与えないか、第3に、国の経済政策に照らして適当か、といったようなこの3つの問題をクリア、問題がなければ自治大臣は同意しなければならないという制度になっていますので、こうした法制度の趣旨に沿って適切な運用を図れるようにしたい」とお答えを申しております。

それから、日銀の法人住民税なり法人事業税の中間納付額の還付、あるいは還付加算金の支出についての地方団体の対応についての御質問、御意見が出ましたけれども、この点については、私どもの前任の税務局長から、「還付財源を留保するなど所要の措置を講じた団体もありますし、多くの団体でいろいろな情報収集に努めて、できるだけ適切に対応するように努力をしたところであります」といったような答弁をいたしております。

最後になりますが、先ほどの主税局長のお話とも絡みますが、「住民基本台帳ネットワークシステムを納税者番号制度に活用することを想定しているのか」といったような議論が出ました。これは住民基本台帳の一部改正法を地方分権一括法とは別途国会に出しておったわけですけれども、これに対しては自治大臣から、「今回の改正法では、住民基本台帳ネットワークシステムの利用を住民の居住関係の確認のための利用に限定していることから、これをそのまま納税者番号制度に使うことはできない。将来的な問題として、今後導入されるシステムの活用状況ですとか、その時々の社会経済情勢を踏まえて、多面的な検討が必要である」といったふうに答弁をいたしております。

地方税関係については以上でございます。どうもありがとうございました。

加藤会長

ありがとうございました。

御質問がおありかと思いますけれども、あとでまとめてお願いをしたいと思います。

それでは、次に法人課税小委員会が審議を始めておりまして、前回の総会で申し上げましたが、7月13日に再開いたしまして、今月17日には第2回会合が行われております。審議事項について、石小委員長、よろしくお願いします。

石特別委員

それでは、簡単に御報告をいたします。

いま加藤先生からお話ございましたように、二度やりましたので、まず内容的にはそれほど突っ込んだところまでいっておりませんが、ただ、大体の守備範囲といいますか、その領域について、いまのところ委員の協力を得てかなり詰めた議論をいたしております。

7月13日に最初の連結納税の議論をしましたが、「再開」と言われましたのは、数年前にこの小委員会がありましたので、テーマを新たにして再開したという意味であります。そこでは、事務局のほうから、法人税関係の最近の動向とか連結納税についての基本的な考え方について御説明いただきまして、その後自由な討論をいたしました。

それから、先般9月17日、先週の金曜日でございますが、第2回の会合が開かれまして、これはやはりもうちょっと企業経営全般にわたるような議論をしなければいけないということも問題意識としてありましたので、委員の関さんから、なぜいま日本の企業が連結経営が必要かというようなところからお話もいただきましたし、また、事務局より、企業組織等に関連いたします法制面、あるいは企業会計面の最近の改革の動向であるとか、あるいは各国の企業集団税制の概要等々の御説明もいただき、その後自由に討論をいたしました。

そこで、どんな議論が出ているか、5つ、6つ御紹介いたしたいと思います。

まず最初に、21世紀の法人税制を考えたときには、やはり連結納税というのは避けて通れないだろう。これは国会でも随分御議論があったと思いますが、そういう認識がございまして、それならば本格的な連結納税、この制度を検討するということを速やかに、かつ慎重にやりたいということであります。

それから、連結納税は御存じのように、アメリカ型と、ヨーロッパで使っておりますドイツを中心とするようなものがあるのでありますが、本格的にやるならば、やはりアメリカ型の連結の課税ベースをしっかり計算するような形の議論をすべきであるということについては、委員会のメンバー全員が合意に達しております。そういう意味では、かなりの作業量、あるいは複雑になる可能性もございますが、しかし本格的にという意味では、それは避けて通れないと思っています。

それから、やはり連結になった場合には、税収減になるのではないかという点につきましてどういうふうな配慮をするか。それから、他の税目に与える影響等もやはり視野に入れておかなければいけないのではないか。地方税であるとか、消費税にも及ぶのではないかという御意見もあるわけであります。

それから、連結納税というのは、連結財務諸表、ここから出てくるわけでありまして、大体においては大法人の問題でありますが、やはりそうはいっても連結納税制度そのものについては、中小法人にも議論が及ぶわけでありますので、この中小法人に対してどういうことを考えるかという議論も必要でありましょう。

それから、諸外国のいろいろな例を我々丹念に調べなければいけないだろうということで、先ほど申し上げたアメリカの連結制度もさることながら、他の国の連結納税制度について十分調査したいと思っています。

それから、いま商法との関係で、商法は連結決算をまだ入れていませんので、連結に対する帳簿上のいろいろな法的な措置、位置づけが明確でない。配当可能利益に対する計算等も、おそらく我々がこれから考えているものとは違ってくる可能性がある。そういう意味では商法との関係をどうすべきか、あるいは連結財務諸表との関係をどうするかという問題、これをこれから少し詰めなければいけないと思っています。

それから、連結の範囲をどこにするか。これはグループの範囲でありますが、親子関係を持ち株の比率によってやるというような議論でありますが、こういったところを、いま95でやっているところ、75でやっているところ、さまざまでありますので、日本の場合にはどれがいいのかという議論をしなければいけないと思います。

それから、やはり連結になったときの最大の問題は租税回避の問題ではないかと思いますので、租税回避防止になりますと、制度はどうしても複雑になりますね。しかし、さはさりながら、簡素ということも十分に配慮すべきでありますので、その辺のバランスをどうするかといったこともこれからの議論ではないかと思います。

いずれにいたしましても、外側のほうから急げ急げという声もあるのでありますが、我々の事務を預かってくださる主税局のほうのいろいろな作業量等々もございますし、やはり慎重に議論しなければいけないということでありますので、しばらくは月1回のペースでやりつつ、議論を次第に絞っていきたいと考えております。次回は10月22日に開催いたしまして、これまでの論点を整理いたしまして、それを中心に議論を進めていきたいと考えています。

以上でございます。

加藤会長

ありがとうございました。

それでは、いままでの事務局の国会審議の状況、それから法人課税小委員会の報告など、何か御質問があればいただきたいと思います。

それでは、御質疑がいまのところ出ないようでありますが、また審議をしておりますうちに関係したものについては、御質疑があれば、どうぞお出しいただきたいと思います。

それでは、次の議題に進ませていただきますが、いま法人課税小委員会から報告がありましたが、それと同じように、もう1つ基本問題小委員会がございます。その2つの小委員会、その下にまたワーキング・グループがございますが、この小委員会の議論、それをいまのように報告をしていただきながら、皆さま方の御意見をまたいただいて、フィードバックしていくという、こういうことを積み重ねていきたいと思っております。

そしてまた、ワーキング・グループにつきましては、専門的な知識を必要とする場合もございますので、そういった専門的な技術的知識も入れまして議論をしていただきました。そしてまたここでもって議論をしていくというようなことを積み重ねていきたいと思っておりますが、今年度中、年度改正がございますので、総会、小委員会を合わせて週に1回程度のペースで開催いたしまして、そして、個人所得課税を中心に消費課税、資産課税なども含めた全体について一通りの議論を行いたいと思っております。最近話題になりました相続税や確定拠出型年金の問題などにつきましても、こうした中期答申に向けた議論の中に織り込んでいきたいと思っております。その後、年度改正の審議を挟んで、中期答申に向けまして、年明け以降、さらに本格的に詰めた議論を行っていこうと考えています。

いま申し上げましたことを簡単に申し上げますと、我々のこれから総会でやっていきますことは、中期答申を目指しまして、その中期答申は本格的には年明けになりますけれども、その中期答申に対する問題点などを差し当たって年内に一通り私たちも議論をいたしまして、ある程度の方向づけを出します。その出します中から、年度末でもって早くやってもいいものがある、あるいは、これについては早く結論を出そうというようなものについては、この中期答申に向かっての議論の中から煮詰まってきたものを出していくという、こういう考え方でございます。つまり中期答申も目指しての中で年度答申も扱っていく、こういうふうに考えております。こういうような考え方で審議を進めていきたいと考えておりますが、いかがでございましょうか、よろしゅうございましょうか。

水野(忠)委員

ちょっと質問させていただきますが、先ほど石委員の言われました法人課税ですが、これは年度改正あるいは中期答申、これとの関係ではいかになりますでしょうか。

加藤会長

この問題は、私がお答えするより石さんからお答えいただきましょうか。

石特別委員

それは会長からで結構です。まだわかりませんよね。

加藤会長

私から申し上げますと、中期答申を目指して、例えば中期答申でこんなような方向が出てきますよとか、あるいは、こういうことについてというように煮詰めていくのですけれども。その間にもし早くまとまれば、そういうことを考えることもできるのですけれども、おそらくなかなかそういうふうなところまで煮詰めることは難しいのではないか。特に議論の中で出てきましたけれども、商法とか会社法の改正なども含めて考えていかなければなりませんので、ちょっと時間がかかるなという印象を私は持っております。

石特別委員

ちょっと忘れました。今日は連結納税関係の資料が随分お手許の資料に入っていると思いますが、これは第1回目と第2回目に一応配付されたものがすべて出ておりますので、後ほど御覧いただきたいと思います。

水野(忠)委員

それから、もう1点。同じく法人課税ですけども、いわゆる地方法人課税で、この間まで、私ども地方法人課税小委員会で報告書を7月に出しました事業税の外形標準の問題ですが、こちらも年度答申になるか、あるいは中期答申になるか、議論があるところだと思いますが、これについても御議論、いわゆる記念碑にならないような形で御議論いただければと存じます。

加藤会長

私も石さんと同じように記念碑にならんようにと願っているのですけども、ただ、これを実行いたしますのには、やはり私どもはあそこでもって議論いたしましたが、景気をある程度考えなければならない。そういう情勢と、もう1つは、地方制度がこれからどういうふうに課税の割当てなどを考えるかということにも絡んできますので、一気に答えは出し切れないのですが、一応私たちは外形標準課税については、こういう方向だということを決めてありますので、その方向に従って、あとは政治的判断がそこに入ってまいりまして、そして結論が、もし早く出せるならば出すことになるだろうし、そうでない場合については、もうちょっと細かいところも議論しておいたほうがいいかなという感じは残っております。

石特別委員

ただ、いずれにしても政治のほうにボールを投げたわけですから、自民党税調をはじめとして一応議論は向こうでやってもらって、1回こっちに戻ってくる可能性もないことはないのでしょう。

加藤会長

そうですね。

石特別委員

ぜひ戻してもらったほうがいいとは思いますけどね。

加藤会長

そのほかございませんか。

それでは、いま私が申し上げましたように、フィードバックをしながらやって、中期答申を目指してやっていって、その途中で煮詰まってくるものがあれば、それを年度末答申に入れていく。こういうことを考えまして進めてまいりたいと思いますので、ちょっとその予定表を事務局と相談して煮詰めてまいりましたので、それを御覧いただきたいと思います。

(資料『当面の検討予定(私案)』配付)

お手許にお配りしましたのは、非常に簡単な概略でございますので、まだまだ考えなければならない、特に11月のところはもうちょっと流動的であろうかと思っておりますが、このような日程でもってやっていってはどうかと考えております。

今日は第1回目でございますので、いわば中期答申の総論的な部分を中心に御意見をお出しいただきまして、そして、夏休み前の議論の中では、「来年の中期答申は21世紀のガイドラインとなるものにする必要がある、バブル崩壊後にどのような改正が行われ、また、どのような課題が宿題として残されているのかというきちんとしたレビューをしておく必要がある」という御意見がございましたので、その点を踏まえまして、私たちはこれを中期答申に向けて検討していこうと、こういうふうに考えているわけでございます。

この事務局からの内容、ちょっと御覧になりにくいと思いますので、簡単に説明していただきますので、そのあとで御議論をいただこうと思っております。

よろしくお願いいたします。

加藤総務課長

予定表について簡単に御説明いたしますが、10月にまず基本問題小委員会ということで、個人所得課税、10月1日午後2時からというのが第1回目、課税ベース等の御議論をいただいて、次に15日に資産課税、それから、22日にもう1回個人所得課税について御議論いただく。それから、法人課税小委につきましては、10月22日の金曜日午前10時から。午後と書いてありますのは、2時からということで御予定いただきたいと思っております。総会を10月29日の午後にお願いしております。11月中は具体的な日取りはまだ入っておりませんが、大体基本問題小委を3回、法人課税小委1回、総会1回と、こんな形で、これ以降、また12月は年度改正のほうに入っていただきますので、かなりまた詰めた日程になると思いますが、いまのところこういう形で、なるべく日程のほうは会長とよく御相談して、前広に決めていきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

加藤会長

特に総会は、これから月1回でございますので、御議論が残るかと思いますので、そういう点があってはいけませんので、あとでまた申し上げますけれども、おそらく2時間というのではなくて、3時間ぐらいをいつも予定しておかないと、無理かなというふうに思っておりますので、前もってお断りをさせていただきます。

それから、いまここで検討予定が出ましたが、大体これで中期答申に向けての骨格は議論できるのではないかと思っております。これを議論した上で、来年、今度は本格的な中期答申の提起に入っていこうと思っております。

それで、皆さま方からまたいろいろな御意見があると思いますので、その御意見をいただきたいのでありますが、まず最初に、池田調査課長、それから小室企画課長から説明をいたしまして、そして御審議をいただきたい。こういうふうに思っております。

それでは、池田調査課長、よろしく。

池田調査課長

それでは、お手許に幾つか資料を用意いたしましたので、簡単に御説明をしたいと思います。

最初に、資料の「総36-4」、『平成元年以降の主な税制の動き』というA3判の大きな紙を使いまして、過去10年ほどの税制改正の動きについてレビューをしたいと思います。

御承知のように、ちょうど昭和から平成への時代の変わり目に抜本的な税制改革がございました。基本的な社会経済の変革、時代の要請に応じた措置ということで、昭和62年の9月及び63年の12月に行われた改正でございます。それが現実に執行に至りましたのがちょうど平成の元年ということでございます。

個人所得課税の分野では、累進構造の緩和、課税最低限の引上げということです。これより以前、累進構造は15段階、10.5%から70%ということでしたが、この時点で5段階、10~50%、所得税ベースですけれども、というふうに累進度の緩和が行われました。課税最低限につきましては、後ほど申します消費税の引上げということにも配慮しまして、大幅な引上げがございました。当時で4人家族で235万円というものが327万円、ほぼ100万円、90万円以上の大幅な引上げでございました。

法人課税につきましても、税率の引下げがございまして、これ以前までは42%の基本税率でしたが、平成元年から40%、それから、平成2年には37.5%という形で基本税率の引下げが行われ、この37.5%が実現したときから、配当に関する軽課も廃止されております。

同じく1つ飛びまして「資産課税等」の欄にございます相続税ですが、やはりこのときに大きな減税が行われております。最高税率が75%から70%、それから、「基礎控除の引上げ等」とございますが、基礎控除につきまして2,000万円のものが4,000万円と倍増、あるいは法定相続人1人当たりにつきましても倍増という措置がとられました。

同時に消費税の創設、導入が図られたわけでありまして、このとき、他の種々の間接税につきましては、整理合理化が行われました。物品税等の廃止、あるいは酒税、たばこ税につきましても、従量税・従価税といろいろなシステムがございました。このとき従量税への一本化が図られております。全体としまして、所得、法人等、いわゆる所得課税に対する減税が行われる一方で、消費税が創設され、消費課税にウエイトを幾分か移す。そういった形で所得・消費・資産の間でのバランスのとれた税体系を構築しようという最初の試みということでございます。

この後、時代といたしましては、昭和の末期から平成の最初というのは、もう御承知のとおり、いわゆるバブル経済の時代でありまして、特に土地の問題、地価の高騰というのが大きな問題でございました。これにどう対処するかというのも税制の1つの課題でございまして、平成元年の12月に土地基本法という法律が成立いたしまして、そういったことを受けて、平成2年の10月、「主な動き」の欄にありますように、「土地税制のあり方についての基本答申」を税調に出していただいております。これを受けて平成3年に土地税制改革が行われました。土地基本法の基本的な精神というのは、土地の公共性というものに着目をし、土地の資産としての有利性、あるいは投機の抑制を図る。その上で土地の有効利用を図ろうということでございました。税制についても、土地政策上の幾つかある手段のうちの1つとして位置づけられるというものでございました。土地の保有、譲渡、取得、それぞれの段階での見直し、結果としましては、国税の世界では、平成3年に譲渡益課税につきまして大幅な強化が図られております。基本的には国税、地方税を合わせて税率26%であったものが、39%と大幅に強化されたというのが基本であると考えます。

また、平成4年には保有段階の税として新たに地価税が創設されております。

固定資産税の問題につきましては、後ほど自治省から触れられると思いますので、省略したいと思います。

続きまして、平成5年、6年にまいりますと、大きな課題として、財政の面におきましては、バブル崩壊に対する景気対策というのが重視されておりましたが、同時に税制の世界におきましては、元年におきます抜本的税制改革の流れを受けて、さらにこれを推し進めるという形での改革が行われました。高齢化の一層の進展、あるいは平成元年の改革で取り残された形になった中堅層における直接税の負担感に対処するということを基本にいたしまして、平成5年に「今後の税制のあり方について」という中期答申をいただき、平成6年に「税制改革についての答申」をいただいております。これを受けて平成6年にいわゆる税制改革が成立しております。

内容的にはすでに御承知のとおりですが、個人所得課税の世界におきまして、基本的には10~20%のブラケットの適用される範囲を大幅に広げるというような形で、生涯を通じて、一般のサラリーマンの方であれば、ほとんど同一の税率で生涯を過ごすことができるようにするといったような形での累進度の緩和が図られたわけであります。そういった制度的な改正が成立したのは平成7年でございます。このときに課税最低限も327万円から353万円へと幾分かの引上げが行われております。

同時に、景気への配慮ということが大変重視されました。したがいまして、特別減税という形での所得税の先行的な減税ということも行われたわけであります。平成6年につきましては、5.5兆円の特別減税、それから、平成7年、8年につきましては、先ほど申しました制度減税が3.5兆円でしたので、これに付け加えること2兆円の特別減税という形でございます。

一方、消費税につきましては、消費税率全体としては3%から国税では4%へ、これに1%の地方消費税の創設を合わせまして、5%の課税ということになりました。同時にさまざまな特例措置につきまして、整理合理化を図る、縮減をいたしました。内容的には、免税点について、新設法人への適用を排除する。あるいは簡易課税につきまして、4億円から2億円に限度を下げる、限界控除制度について廃止をする、といったことでございます。

なお、消費税の特例措置の見直しについては、平成3年の時点で一度行われております。それとあわせまして平成6年に本格的な特例措置の縮減が行われたということでございます。しかしながら、先ほども申しましたが、景気への配慮、経済情勢への配慮ということで、所得税につきまして先行的に減税をし、消費税についての実施は平成9年の4月からということであったのは御承知のとおりで、3年間の先行的な所得減税が行われました。

平成7年、8年にまいりますと、景気の一定の浮揚が見られました。橋本内閣における改革路線というのが始動されたわけでありまして、平成8年の主な動きの欄にもございますが、財政構造改革あるいは金融ビッグバン等々の構造改革路線というのが敷かれたわけであります。企業、金融企業活動における国際化、グローバル化ということが盛んに言われたわけであります。情報化、電子化の進展とともにボーダーレス化というような言葉が言われ、「グローバル・スタンダード」という言葉が大変よく使われるようになった時代ではないかと思います。

法人課税の世界では、国際課税につきましていろいろな措置がとられてまいりました。少しさかのぼりますが、この欄からは外れますけれども、昭和61年に移転価格税制が導入され、平成元年になりましては、外国税額控除について幾つかの適用の厳格化が行われました。それから、平成4年にタックス・ヘイブン税制の見直し、これはタックス・ヘイブンの国、地域を指定する制度から、法人所得課税25%以下の国という指定制度から定性的な制度への大きな変更が行われております。そして、平成9年につきましては、金融機関でのトレーディング勘定への時価法の導入、そして平成10年には改正外為法の施行がございました。外為取引の完全な自由化が行われましたので、これに合わせて国外送金資料提出等の制度の創設が行われております。これは法人課税に限らない、むしろ個人課税の世界の措置というふうにも見ることもできると思います。

この間、企業会計の世界でもグローバル・スタンダード化ということが強く要請されました。さまざまな措置がとられております。先ほどの金融機関のトレーディング勘定への時価法の導入、あるいは平成8年におきましては、ストック・オプションの税制が一部に導入されております。平成10年にはこれが商法の改正とともに一般化されております。それから、平成10年、銀行持株会社制度に対する課税の特例、11年に入りまして、本年度ですが、株式交換に係る特例等が措置されたところでございます。

グローバル・スタンダードへの対応という流れの1つの成果が、平成10年の法人税改革と見ることができようかと思います。課税ベースを拡大、適正化する。同時に税率を大幅に引き下げるという措置がとられました。準備金、引当金については、見直し、廃止が行われると同時に、税率については、37.5%から34.5%への引下げということで、既往、最低になったわけであります。この流れは平成11年に恒久的な減税への措置に引き継がれております。

これらの流れとは1つ別のところで、平成9年の秋以降の金融不安に端を発しました景気の後退への対応ということが、ここ1~2年の大きな課題でございました。平成10年におきましては、2回にわたります所得税の特別減税が行われました。この内容は、施行を迅速化するため、異例の措置として、定額減税という形で2兆円という大変大きな減税が2度にわたり行われております。

平成9年に一旦成立しました財政構造改革法につきましても、平成10年には凍結ということになったわけでありまして、この平成11年の恒久的な減税につきましては、景気への最大限の配慮というところに集中をする形になりました。したがいまして、特別な財源措置をとることなく4.3兆円に及ぶ所得税・住民税の減税、それから、2.5兆円に及ぶ法人税の減税が行われております。御承知のとおりでございます。

この中では、所得税につきましては、最高税率の引下げということは構造改革の残された課題を果たすという形で行われておりますが、それ以外につきましては、税率構造を現状のままにして、定率減税という形で景気対策としての減税が行われました。一部扶養控除の加算が行われております。法人税については、御承知のように、34.5%の基本税率を、特に財源措置をとることなく30%へ引き下げております。

また、バブル崩壊、金融不安から来る問題に対しまして、土地取引の活発化を図ってもらいたい、そのための措置をとってもらいたいという要請もさまざまにございました。少し戻りますが、平成8年におきまして、地価税率の引下げ、あるいは譲渡益課税の軽減を図りました。平成10年になりまして、譲渡益課税につきまして、再び大幅な軽減を図りました。これによりまして、バブル期以前までさかのぼっても最も軽い形の譲渡益課税の軽減という形になっております。これは12年度までの措置としてとられております。

なお、同時に平成10年から当分の間ということで、地価税の課税の停止が行われております。

金融取引につきましては、有価証券取引税、取引所税につきまして、平成10年に半減する、税率を2分の1にするという措置がとられましたが、平成11年には両税を廃止いたしております。ただし、株式譲渡益課税の源泉分離課税については、平成12年度までは生き残るけれども、13年度以降は申告分離課税に一本化をするという形の適正化を図っております。

以上、大変駆け足でございますが、元年以来の大きな改正について簡単にレビューをいたしました。こうした税制改正の流れの中で、今後の検討課題として考えられるものとして、大きな紙の一番下に幾つか掲げてございます。

全体にかかわる事項としては、すでに御承知のとおり、財政事情についてどう考えるかという問題がございます。バブル期以降、積極的な景気対策が累次とられてまいりました。特に税制面におきましては、平成10年、11年に景気への最大限の配慮ということで、特に財源措置をとることなく所得税、法人税で大幅な減税が行われました。財政事情は急激に悪化しておることはすでに御承知のとおりです。次の時代にこのままの形で受け継がれるということは到底考え難いのは明らかではないかと思われますが、そうした事情にどのように対処していくべきかという大きな問題があると思います。

また、社会経済状況の変化につきましては、少子・高齢化、ストック化、グローバル化、あるいは情報化といった言葉でここで示しておりますが、これらのことが言われるようになりまして、もう随分と時間が経ったように思われます。1990年代初めからすでにいろいろに指摘されてきたことでございますが、それぞれにその深刻さの度合いなり進展の度合いは、当時予想したよりもスピードが上がっているということが言えようかと思います。高齢化、少子化につきましては、欧米、特にヨーロッパ諸国の高齢化先進国と言われた国に高齢化比率でほぼ追いついております。少子化の度合いは、予想を超えて進んでおりまして、結果として高齢化のスピードは早まる一方という事態になっており、人口の減少にあと数年のうちには直面をする、そういう新たな事態が加わりつつあるように思われます。

ストック化、成熟化につきましても、経済のサービス化、あるいは消費の選択的支出の増加といった側面、あるいは個人金融資産が積み上がっている点等々、方向性に大きな変化があるというよりも、その程度に非常にスピードが上がる、どんどんとその傾向が強まっている、ということが言えようかと思います。

グローバル化、ボーダーレス化につきましても、「国際化」という言葉がもう陳腐化するほど進んでいるわけでありまして、ヒト・モノ・カネ、どの側面についても大きな動きがあります。特に金融関係につきましては、物事が瞬時に大きく動くということが見られます。平成9年のアジアの金融危機あるいは最近の円レートを見ても、そういうことは言えようかと思います。

各税につきましての検討課題としては、累次の答申等におきまして、しばしば御指摘をいただいている点を整理してみたものでございます。資料といたしましては、「総36-6」という資料を用意しております。『今後の検討課題(5年中期答申以降の主な指摘事項)』という形で整理しております。全部触れている時間は当然ございませんので、少しめくる形でございますが、所得課税につきましては、ここで「36-6」のほうの資料ですと、3ページ、4ページあたりですけれども、税率構造あるいは課税ベースの適正化、各種控除のあり方についていろいろ議論がございます。あるいは課税方式、所得分類等の問題もございます。納税者番号制度についても、いろいろと御議論をいただいております。これらを含めまして、いずれにしましても、抜本的な見直しについては、中長期的に見て我が国の将来を見据えた望ましい制度の構築が必要である。抜本的な見直しは引き続き検討されていくべきものとして位置づけられていると考えております。

法人課税につきましては、企業組織のあり方について、大きな動きがございます。あるいは企業会計でさまざまな動きがございます。これに対応するという意味で、本年度は株式交換等に係る課税の特例が措置されておりますが、来年度以降につきましても、企業分割等に対する対応、あるいは先ほども御紹介がありました連結納税制度に対する対応が喫緊の課題と考えます。また、7月に報告を出していただきました外形標準課税も大きな課題と考えます。それらを踏まえまして、以前からの通奏低音のように続く課題としては、法人課税につきまして、課税ベースについて一層の見直しが必要ではないかという議論があると思われます。

消費課税につきましては、特例措置について、縮減化、合理化が図られてきました。また、高齢化の進展等の関係で、その役割について重要視するという考え方が広がりつつあるように思われます。特に、本年の予算におきましては、消費税について、高齢者向けの福祉にその使途を限定する、いわゆる福祉目的化が図られております。こういったことにつきまして、どのように考えていくべきかということが大きな課題と考えます。

その他さまざまにございます間接税関係の特定財源制度も、中長期的には大きな課題と考えられます。

資産課税等におきましては、相続税について最近幾つかの議論がございます。相続税につきましては、何度もいろいろと税調の答申の中でも触れていただいておりますが、それらによりますと、富の再配分の機能と同時に所得税の補完税としての機能がある。所得税等が、あるいは消費税の導入により税制全体がフラット化する、累進化が弱まる中で、相続税の役割をどのように見るかということについて、きちんとした議論が必要だろうと思われます。いずれにしましても、個人所得課税の抜本的な見直しとの関連で、課税ベースを含め検討するべきであるという御指摘を従来よりいただいております。

土地税制につきましても、譲渡益課税のあり方について、平成13年度以降をどうしていくかということを考える必要がございます。

また、金融関係の課税が大きな課題として残されているように思われます。利子・配当あるいはキャピタルゲインに関する課税について、金融の制度が大きく動いていく中で、同時にそれらの利子・配当、キャピタルゲインといった形が、いろいろな金融手段によって大きく自由に動くような時代になっていく中で、どのような課税のあり方が考えられるのか、公平・適正な課税が考えられるのかということが課題であろうかと思われます。

各税を通じまして、納税者番号制度について、その導入の如何を含めどのように考えていくか。あるいは金融課税や法人課税を中心に国際的な税制論議がございます。これにどのように我が国として対応していくか。あるいは地方分権の問題、環境関連の税制等々、大きな課題が21世紀に向けて残されているというふうに見ることができようかと思います。

大分時間を費やしてしまいましたので、あとの資料については、ごくごく簡単に触れたいと存じます。

資料「36-5」ですが、『中期答申について』ということです。現在の税調委員の皆さまが任命されて以来の動きを簡単にまとめたものです。最初の紙と重なっておりますので、改めて指摘するところはないかと思いますが、真ん中の個人所得課税のところで、基本問題小委を昨年の5月に設置していただき、ワーキング・グループを中心にさまざまな議論をしていただいております。これらの成果を受けて、今回の基本問題小委を運営していく必要があろうかと思います。そこでの課題は、個人所得課税に限らず、消費課税、資産課税にまで及ぶものと考えております。この紙につきましては、以上でございます。

以下、「総36-7」という『経済、社会、国民生活等の推移』という資料がございます。簡単に触れたいと思います。

最初の1ページ目でございますが、「現在」というところに、平成9年の一番上の右側でございますが、国民総生産の動きということでございます。507兆8,500億円という数字が掲げてございます。比べるに昭和63年、昭和の一番最後の時期、あるいはバブルの直前、あるいはバブルの最中と見ることもできるかもしれませんが、この時期に比べて、実はGDPというのは、名目ベースで約30%以上伸びております。

同じようなことは、4段目にございます1人当たり国民所得につきましても、昭和63年当時242万円であったものが現在313万円ということで、同じく3割程度の伸びが見られます。平成2年のバブルの頂点の時期に比べましても、それぞれ10%以上の伸びがあるわけでございまして、平成に入りまして大変景気がよろしくないということでありますが、日本経済全体としては一定の伸びが見られたところでございます。

また、経済構造の変化等につきましては、第3次産業へのウエイトの高まりという傾向、あるいは就業者数なり付加価値ベースで見た第3次産業のウエイトの高まりという傾向には、とどまることがない状況でございます。

国民所得につきまして見ますと、1人当たりの国民所得が、先ほど1割程度バブルの頂点からも伸びていると申しましたが、平準化の度合いにつきましては、昭和40年当時から2.9倍という形の数字がフラットな形でずっと続いておるということがデータ上示されております。

ただし、これは家計調査ベースの勤労者世帯ということにデータが限定化されておりますので、直近の動きを十分に反映しているかどうかについては、議論のあるところかとは思われます。

1ページおめくりいただきまして2ページ目ですが、サービス化の進展ということにつきましては、真ん中辺に「家計の最終消費支出に占めるサービス消費の割合」というデータがございます。平成9年で58.7%ということで、こういった傾向も引き続き強まっております。

人口の高齢化につきましては、3ページを御覧いただきたいと思います。これもすでに何度も見ていただいた資料でございますが、足下で20歳から64歳までの労働力人口の世帯、生産人口に対しまして、65歳以上の人口は、2000年で3.6倍、これが2025年には2倍になっていくという形でございます。そのスピードの速さということが問題なわけであります。

また、この表でいいますと、出生率、2000年で1.38というのが下のほうに掲げられておりますが、この合計特殊出生率につきましては、厚生省の推計等では、今後少し戻る、1.61程度までは戻るという形に推計されておりますけれども、昨今の動きを見ますと、現実にはそういったことが起こるのかどうか、つまり少子化が一層進む、ペースが速まる、結果として高齢化社会へのスピードが速まるということもあり得ると考えられるわけであります。

4ページは人口の推計でございます。2000年代のごく初めのところで人口はピークをつけるというふうに予測されております。

5ページは先ほど申しました合計特殊出生率です。足下は1.38というデータですが、傾向的な低下が止まらないという状況にございます。

6ページは社会保障に関する給付の拡大についてでございます。基礎年金、老人医療、介護といった高齢者に係る社会保障に限りましても、足下、平成11年では給付総額25.3兆円、国庫負担8.8兆円ということになっておりますが、2010年で55兆円、2025年には107兆円という大変なスピードで拡大していくということが見込まれております。

経済のストック化につきましては、8ページを御覧いただきたいと思います。細かい数字が並んでおりますが、一番下の段の右側にございます個人部門の金融資産は、1,253兆円、GDPの2.5倍という、これは世界にも類を見ないほどの蓄積と言うことができます。

ただ、その内訳でございますが、11ページをちょっと御覧いただきたいと思います。高齢者の貯蓄率の高さということがございまして、個人金融資産に占めます高齢者の世帯が持っている比率というのは大変高くなっておりまして、平成9年では47%、ほぼ半分を占めているという状況になっております。これは世界的には珍しい傾向ということが言えようかと思います。

グローバル化につきましては、あるいは情報化につきましては、15ページ、16ページを御覧いただきたいと思います。グローバル、情報化の進展は、経済におきます必然でございますが、税の側面ではさまざまな課税が難しくなるという事情も含んでおります。15ページは対内・対外直投、あるいは証券投資の残高を掲げております。16ページは、情報化の象徴といたしまして、インターネットの普及状況の表でございます。10年度におきましては、企業、300人以上の企業ですから中堅以上の企業ですが、普及率は80%。企業社会ではもうインターネットは常識化しております。家計や中小企業での普及率も非常な勢いで高まっているという状況にございます。

財政につきまして、「総36-9」の資料を御覧いただきたいと思います。1ページ目は一般会計の歳出総額及び歳入の総額を折れ線グラフで示しております。これも何度も見ていただいた資料でございますが、税収につきましては、平成2年、3年当時の60兆円をピークに低下傾向にございます。先ほど申しましたように、昭和62~63年当時に比べ、GDPは3割、4割伸びている。あるいは平成2年に比べても1割伸びているにもかかわらず、税収は大幅な減収になっているということが問題になっているかと思います。

時間の関係もございますので、この資料の6ページあるいは7ページを御覧いただきたいと思います。6ページでは、OECD諸国におきます国民負担率の国際比較、7ページでは租税負担率の国際比較をしております。7ページ、御覧いただきますように、OECD諸国におきまして、日本の租税負担率というのは、メキシコを除きますと一番最後、一番低いという形になっております。一番低いこと自体が問題ではないわけですが、片やOECD諸国の中でほぼ最大の債務残高、国債残高を負っているという点とあわせ考えますと、大きな課題であろうかと考えます。

急ぎましたけれども、以上でございます。

加藤会長

ありがとうございました。

では、小室企画課長さん。

小室企画課長

池田調査課長のほうから経済状況等共通する部分、国税についてお話がありましたので、私のほうは、地方税関係について限ってお話しさせていただきたいと思います。

はじめに、「36-4」という大きなA3判の『平成元年以降の主な税制の動き』、先ほど御説明がありましたが、この表自体は地方税と合わせた形になっております。例えば個人所得課税、法人課税でありますと、先ほどの恒久的な減税のところ、「最高税率の引下げ」と一言で書いてありますけれども、こういった中には個人住民税の税率、あるいは法人でいいますと、事業税の関係等が含まれているというわけでございます。

それから、消費課税のところを御覧いただきたいと思うのですが、消費課税のほう、御案内のとおり、平成元年の抜本改革、消費税の創設にあたりまして、個別間接税制度の整理合理化というときに、このとき当然、地方税のほうも電気税、ガス税、あるいは木材取引税、こういった税が廃止される等の措置があるわけでございます。

また、消費課税で下っていただきまして、平成6年の地方消費税の創設というのが大変大きなところでございます。実際に実施されたのが平成9年になるわけですが、そのときにあわせて特別地方消費税、料理飲食等消費税の変形でございますが、これが12年度廃止が決定するというような形になってございます。

資産課税につきましては、固定資産税が中心になるわけでございますが、平成6年のときに適正化、均衡化を図る。そうした上で9年のときには、さらに均衡化を重視した調整措置を導入する。こういった3年おきのパターンになってございます。

それから、今後の課題は、そこの下にもございますが、資料の「36-6」、『今後の検討課題』という冊子があると思いますが、5年中期答申以降の主な指摘事項ということで、この中にも地方税の関係が織り込まれておりますので、幾つか御紹介させていただきたいと思います。

まず、個人所得課税の中で、ポツ4つ目、個人住民税関係ということでございますが、ここの部分、4ページのあたりを開いていただきますと、課税ベース、課税方式等々ございますが、中ほどになお書きで、個人住民税については、地域社会の費用の分任ということで、最低限を低くとか、緩やかな累進構造、こういった記述があるわけでございます。

1枚おめくりいただきますと、資料6の5ページですが、法人課税について言いますと、下のほうに外形標準課税ということで、事業税の外形標準課税の課題というのを、10年答申からいただいておりますが、そこへ11年度答申がございます。もちろん、先ほど来お話がありますように、地方法人課税小委のほうでもお取りまとめいただきまして、総会のほうへも御報告いただいたところでございまして、それをどうするかという段階であろうかと思います。

なお、6ページのところでは、課税ベースの関係で、事業税の社会保険診療報酬等についての部分に触れさせていただいております。

6ページの下のところから、消費課税ということで、消費税のお話が書いてございますが、当然、こうした中には地方消費税、これをどのように充実していくかという話についても、いろいろと御議論があるところかと思います。

飛んでいただきまして8ページになりますが、「資産課税等」というところで、土地税制の話になろうかと思います。9ページのところに固定資産税について11年度答申を上からポツ3つ目、3分の1ほどのところでございますが、12年度以降の負担について評価替えの動向、負担水準の状況、市町村財政の状況等を踏まえて、均衡化・適正化を進めるようにという趣旨でございます。

9ページの下の金融関係税制ですが、10ページのところの中ほどに、なお書きで、個人住民税について株式等譲渡益、このところの非課税は11年で対応がなされたわけですが、割引債の話等について記述がございます。

地方の関係で一番ポイントになりますのが、11ページをお願いしたいと思いますが、分権との関係で、「地方分権の推進と地方税」ということです。11ページの一番上のところに線が引いてございますが、分権の推進にあたっては、財政基盤の確立、そのために地方における歳出規模と地方税収入の乖離を縮小するという観点に立って、課税自主権を尊重しつつ充実していく。また、国と地方との役割分担を踏まえつつ、中長期的に国と地方の税源配分のあり方についても検討しながら、偏在性が少なく税収が安定した地方税体系を構築していくことが必要との答申をいただいているところでございます。

時間が限られておりますので、資料の「総36-11」、『地方税財政等について』、どうしても周辺の状況が必要ですので、お話しさせていただきます。「36-11」でございます。

『四.地方税財政』ということで、1枚おめくりいただきますと、1ページのところ、中ほどにグラフがございます。地方財政のほうもマクロとして大変な借入金残高、トータルとしてでございますが、11年度末で176兆円となっております。そして、これが平成3年度から急激に伸びているというのがグラフでわかると思いますが、この中には交付税特別会計の借入金ですとか、公営企業の起債で一般会計が持たなければいけないもの等含まれております。ただ、いずれにしましても、平成3年度の段階でGDP対比で15.1というところでやや持ち直したのですが、その後急激な悪化ということで、11年度末35.4%まで上がっているという状況にございます。

1枚おめくりいただきますと、2ページでございますが、公債費負担、これは3,000団体がそれぞれ状況が違うもので、借入金の償還、公債費と言っておりますが、これが歳入に対してどれくらいの割合になるだろうか、一般財源ベースで見たものでございます。これを15%を1つの警戒ラインとしておりますが、15%を超える団体というのが、下にありますように、平成4年度の1,000足らずから、もう2,000近くまで上がっている。しかも急激に上がっているという状況を御理解いただければと思います。

3ページのところが歳入・歳出財源構成でございますが、63年度の決算と平成11年度の地方財政計画を対比させてございます。歳出のほうで見ますと、投資的経費が非常に大きくなっているとか、あるいは公債費も膨らんでおります。それに対しまして、歳入の地方税のほうは、30兆円から35兆円にしか伸びていない。しかもシェアでいいますと、44.3%から39.9%へシェアが落ちているという状況にございます。

また、この11年度の地財計画の段階では、大変大きな財源不足がございまして、恒久減税の対応分を含めまして、全体で13兆円の財源不足がございます。そして、そのうちの8兆円については、地方交付税特別会計の借入れということで、この20兆9,000億円の中には、8兆4,000億円の借入れが入ってございます。あと、地方債の中で2兆5,000億円ほどの特例的な地方債を出す。このような大変バランスが崩れた状況でございます。

そこで、4ページでございますが、地方税の関係の収入の推移ということでグラフがございます。上の地方税の計というところを見ていただきますと、平成9年度36兆2,000億円でピークでございます。実は平成10年度は当初の計画の見込みでは38兆5,000億円を見込んでいたのですが、実際大きな穴があきまして、現在の決算見込みとしては35兆4,000億円。そういった動向を踏まえて、11年度は地方財政計画の見込みとして35兆3,000億円と、非常に抑えた形になってございます。

それから、内訳として下のほうに法人2税ほかありますが、法人2税を見ていただきますと、法人住民税、事業税、合わせて矢印のいったところが、ちょうど平成元年10.8兆円ということですが、その後大分落ち込み、また回復したと思ったら落ち込んで、現在のところ6兆6,000億円というところまで落ちてございます。個人住民税につきましても、10兆を挟んで行ったり来たりと、固定資産税が安定しているのが救いというところでございます。

それから、5ページに進ませていただきますと、分権一括法の御審議の際に、衆議院の段階で議院修正が加えられました。それが5ページにございます附則251条でございます。「政府は地方団体が自主的かつ自立的に執行できるよう、国・地方公共団体との役割分担に応じた地方税財源の充実確保の方途について、経済情勢の推移等を勘案しつつ検討し、必要な措置を講ずるものとする」と。さらに参議院では附帯決議が付けられたので、そこへ付けてございます。

以下、6ページ以下行革の関係等について資料がございます。地方税の御議論のときにまた細かくお話しすることがあろうかと思いますが、6ページのところでは、さらなる行革を求めて、もう一度数値目標をつくるように、見直すように指針を出してございます。

7ページに各団体の行革の取組み事例がございます。東京都でベアの改定をずっと遅らせたとか、それが波及したとか、さらにもっとここの段階以上に厳しいものを打ち出して現在交渉中ですとか、あるいは大阪府であれば、ベアでなくて定期昇給、これを遅らせると、こんな話も出ております。いずれにしても、ここに挙げられている団体、御覧のとおり、事業税の関係、法人事業税と法人関係税で非常に大きな痛手を受けているところが、思い切った行革に取り組んでいるということが現われているかと思います。

なお、そのほか9ページに地方公務員の給与の水準が下がっているとか、あるいは公務員数がどうだという10ページ、これも下がってございます。

それから、最後のページ、11ページでございますが、市町村合併の関係について、政府の取組みということで、実は分権一括法の中に合併特例法も7年の改正に加えて、さらにもう一度11年の改正を行っております。そうした中には、知事が合併協議会を設置、勧告できるようにと、こんなところまで盛り込んでおりますが、この8月に、11ページの3にございますように、自治省のほうで指針、ガイドラインを作成しまして、12年中の早い時期に都道府県において合併推進要綱、この中には合併のパターン、組合せまで入れたものをつくるような要請をしてございます。

以上、大変はしょりましたが、私のほうの説明とさせていただきます。

加藤会長

ありがとうございました。

大変説明が長くなりましたので、議論する余地がちょっと短くなりましたが、基本的にいま申し上げてまいりましたことは、税目の問題はございますけども、その税目の問題をめぐるいろいろな問題を考えなければならない。いまそういう事情が大きく変化しているということを基本にお二人から説明していただいたわけでございますが、あと残りました時間の許す限り、皆さま方の御意見をいただきまして、特に今日は初めの最初の総会でございますから、いろいろなことにつきましてお感じになっておりますことを、中期答申に向けてどんなことを一体考えたらいいか、スタイルなどについても御意見をいただきたいと思っております。

中西さん、どうぞ。

中西委員

今日は、いま会長の御指摘のように、今後の全体的なグローバルな視点で、議論の進め方その他についても御説明があったわけですが、その点についてちょっと2点ほど私、意見を申し上げたいのです。

この我が政府税調の進め方は、さっきおっしゃったように、本総会と各小委員会との間を絶えずフィードバックしながら議論を詰めていくと。それで煮詰まったものから来年度答申に入れていくというふうな御説明であって、それはそれで私いいと思うのですが、そこで問題は、私2点ほどちょっと御意見を申し上げたいのですが、年内に結論を出してでも急ぐべきであるというのが2つほどありますね。1つは相続税の問題ですね。これは私の情報が間違っておるかもわかりませんが、党税調はかなりこの相続税に対して力を入れていまして、来年の通常国会に多分これを出すだろうというふうに私は理解していますね。となると、これは煮詰まらないから中期答申にするよと先送りしたのでは、一体政府税調の存在意義は如何と。こうなることになるわけでして、やはり両者の整合性を考えた場合に、私はこれは年内に少し急いででも議論を詰めるべきであろうと思います。

論点は2つほどあると思いますね。1つはいま御説明があったように、大蔵省が特に所得税その他の累進税率をどんどん緩和していっているから、これは富の再配分という社会正義に基づけば、やはり唯一相続税を、相続時点でそれをやるというのは残しておくべきだという御意見だと私は思いますね、ポイントは。ところが、我々産業人は、これは通産省も言っていることですけど、今後の国会にかかった、まさに大不況がいまだにはきと自律回復が見えていないんですね。4-6は若干GDPがよくなりましたが、私は、これは私のひがみかもわかりませんけれど、かなり鉛筆をなめられたのではないかという感じがしているわけでして、果たして7-9はどうなるかなと、私も非常に興味を持って見ていますが。

であるがゆえに、産業の再生ということを、やはり無視するわけにいかんのですね。そういう視点から、産業界はやはりこの相続税は、何も70%も取るのはほんの2%のわずかな人じゃないかと、大した影響はないよと言うのですが、そうじゃないと思うんですね。やはりこれは大きく競争の原理というものに対してインセンティブを与えることですから、これを全部否定すると、誰も努力しなくなるという論理につながるわけでして、やはり今後、中小企業、社債市場とか、ジャンクボンド債とか、石原知事なんかは言っていますが、そういった直接金融市場の活性化というふうな視点も考えれば、やはりこれは産業の再活性化で、エンジェル集団というのを育てるというか、投資側のほうをある程度豊かにしてやらないと、全然そういう市場の仕組みを幾らつくっても、誰も投資せんですね。それではベンチャーの起こりようがないわけですから、私はやはりそういう点では、大いにこれは年内に詰めて議論をしていただきたいというのが私の希望でございます。これが1点。

それから、2点目は資産課税ですけど、これも今後の検討課題で煮詰まってからというのでは、果たしてどうかなという疑問を持っております。というのは、今日の新聞、国土庁が発表しまして、基準地価がこれで8年連続上がっているんですね。都市部では6.6も上がっているんじゃないですか。大変なまさに資産デフレですね。私はこの問題は、今日大蔵省が、平成元年からの税制改革の一覧表をつくっていただいて、非常に興味深く拝見したのですが、これを見ると、平成元年から11年ぐらいまでの動きが実にうまく出ておるわけでして、税制というのは、当然のこととして経済環境が激変すれば、それに応じてやはり変化するというのが、この表にも説明のあったようなことでして、平成元年当時はまさにバブルの絶頂期で、いかにしてこれを抑えるかということで土地基本法ができたわけですね。したがって、そのときにできた諸々の例えば譲渡益課税なんかも非常に高いものに逆に引き上げたですね、今日のこの説明でいきますと。ところがバブルがはじけた。これは大変なことになったわけですね。そこで、これを今度は緩和するということで、この表を年度順に見ていきますと、諸々の緩和の手が打たれていますね。地価税も一時凍結というようなことになっています。

ところが、これは緩和が、手が打たれて当然のことなので、それはそれでいいのですが、それが実際に土地の値下がりを止めておれば、これは税制効果があったということで、私はそれでいいと思うのです。問題が決着したというか、税制効果があったと。全然止まっていない。6.6、私はさっき言い間違えましたが、下がっているわけですね。ですから、これは資産デフレが止まっていないということは、ある意味では恐るべきことで、釈迦に説法で恐縮ですけど、やはりストック経済の側面を忘れると、例えば銀行に公的資金をあれだけ導入しても、これは土地が下がれば、たちまちまた銀行の不良債権は増えるわけですから、フロー経済の諸々の諸施策が全部パーになるということはあり得るですね。これはそういうことになるわけですから。だから、やはり資産デフレを止めるということは、私は年内に急いで議論を詰めていただくべきであろうと。

この2点でございます。

松尾委員

私は最近いろいろな経済指標から見まして、景気は明らかに回復局面に入っていると思うのです。ということは、やはり財政再建について、真剣に考えるべき時期にすでに来ていると思うわけです。これまでの景気対策の大盤振る舞いの結果、結局、次の世代にさんざんツケを回して、財政の節度もすっかり失われてしまっている。

税制面も見ますと、非常に弾力的に対応してきているわけでありまして、結果としてどういうことになったかというと、財源調達機能が著しく損なわれてしまったということだと思うのであります。したがいまして、中期答申では、いかにしてこの税制の機能を回復するか、これは当然重視せざるを得ないと思います。もちろん歳出削減努力も必要であります。先般のおざなりの看板を書き換えただけのような行政改革で国民はだまされないわけです。この問題について、歳出削減をいかに図るか。この問題については、税制調査会としても財政制度審議会と議論をすり合わせる。いろいろなチャンネルでそういった議論をすり合わせることを考えてもいいのではないかと思います。

税制機能を回復する際、やはり最も重視すべきは公平の原則であります。税制に対する国民の信頼感をしっかり確保するためには、公平の原則を貫くということが不可欠であると思うのであります。税制の中身を見ますと、やはり相当既得権化したものがある。聖域があるわけであります。これを認めてはならないと思いますし、大胆にメスを入れるべきであります。21世紀の税制の指針と、そう胸を張れるような方向づけが必要になると思います。

もう1点、中期答申では消費税の福祉目的税化が大きな争点になると思います。現在では消費税の福祉目的化となっておりまして、目的税化にはなっていないわけですね。現在のところは毎年判断の余地がありますので、まだ我慢できますけれども、これをはっきり福祉目的税化するということは、いささか問題がある。いささかというか、大変問題があると思います。直間比率の是正という大きな基本的な流れを考えますと、これはいかがなものか。使途が限定されるということは、往々にして節度が失われるということを意味すると思いますし、それは現在の特定財源制度を見れば明らかであります。この固定化は非常に弊害が多過ぎると思いますし、先進国の消費税、付加価値税を見ても、そういう例はないわけでありますね。したがいまして、私はこの消費税の福祉目的税化には反対するということを、いま申し上げておきたいと思います。

竹内委員

今日は中期答申に向けて少し大きな議論ということなので、少し幅を広げて意見を申し上げたいのですが、まず、いま伺った資料などの分析のアプローチといいますか、そういうものがやはり相当古びてきているなというのが最初の印象でございまして、税制自体が最近の経済政策の中では、いわゆる経済政策の中で金融政策であるとか、財政政策の追随型といいますか、後追い型のような形で税制がくっついていくというような、非常に税制自体が政策の一因になってしまうというか、そういう傾向があって、これに対してどうやって税の考え方というものを新しいものに早く変えていくかというのがポイントだと思うわけです。

例えば、環境の問題ですとか、NPOですとか、今度企業年金の問題などでも、私は法人課税のときに、減価償却制度を非常に変えたり、企業年金の損金繰入率を変えたりしたというのは、あれはすごくいい1つの試みだったと思うのですが、新しい時代に対して、税制が変化を阻害するようなところをもっと早くやめるべきだと思いますし、配偶者控除についての考え方も、もはや女性が社会での活動も続けたいというときに、何か付属物みたいな発想をまだ残してしまっているとか、そういうのについて、反対意見もあると思いますけれども、きちっとした考え方をもっと早くに出すべきだと考えております。

それから、2点目は、地方財政及び国の財政の赤字体質という問題なのですけれども、税が足りないから、ほかの税でまた上げられないかという発想も、非常に限界があると思っていまして、例えば地方税の収入が下がっているということは、ただ景気の問題だけではなくて、きちっと住民の合意を得て、例えばごみの処理ですとか、水道については、行革ではただ削減しましたと言っているのですけれども、きちっとした料金システムの改革をするということであって、必ずしも地方税収が足りないから地方税を上げてくれという話ではないのではないかと。

住民のほうは、もっと明確な地方公共サービスを求めているのであって、いまのような資料のつくり方ですと、いかにも税の問題を税でしか解決できないという印象を強く出してしまう。そうすると、世の中の人から見ると、税調はいつも税の問題ばかりを議論していて、システムの変化みたいなものを視野に入れていないというふうに言われてしまう可能性があるのではないかと。もう少し税の問題の背景にある構造的な問題ですとか、住民との関係で、税がいいのか、料金がいいのか、どっちがチェックシステムとして行革にプラスになるかとか、そういう新しい発想、これはPFIみたいなものも含むのですが、そういうふうなことを入れていくべきだと思うのです。ですから、環境、NPO、こういう料金、地方公共サービスも、かなり住民のほうの、住民と言うのも変ですけれども、意識が上がってきているので、それに対してインセンティブを与えるような税制のあり方とか、そういうものについても視野に入れるべきではないかと思います。

橋本特別委員

先ほど石先生から、法人課税小委員会の連結納税の進め方について、これは避けて通れないから、速やかに、かつ慎重にやりたいと、こういうお話があって、大変ありがたいことだと思うのですが、それと同時に、いや、むしろそれに先立って、昨今の企業組織の再編というのは、非常に大きな動きになっていると思うんですね。したがって、国際競争力を強化するために、持株会社をつくり、かつ、いままでの会社組織を分割するというような流れが大きな流れとして出現してきておりますので、連結納税の問題は、すでにグループ会社を持っているところは、差し当たりこの連結納税制度の導入ということがテーマになるわけなのですが、これから新たにグループ経営に乗り出したいという企業にとっては、むしろ連結納税よりも、持株会社設立に伴う税制の整備だとか、あるいは会社分割、分社化に伴う税制対応、その次に連結納税と、こういうような流れになるのではないかなと思いますので、この連結納税の問題と同時並行的に、いま申しました持株会社の設立とか分社化の問題について、これは法人課税小委員会でやるのか、総会でやるのかわかりませんが、とにかくこの大蔵省の出された資料の中にも、今後の検討課題と考えられるものとして、会社分割、あるいは株式交換等に係る課税の特例だとか、その次に連結納税制度と、こういうふうに書かれてありますので、なるだけ速やかに検討をしないといけないのではないかなと思います。

松本(和)委員

政府税調において、これから平成12年度の答申、さらに我々の卒業論文的な位置づけにあります中期答申に向けての議論が本格化していくと思います。ただいま説明をいただいたわけでございますが、税制を取り巻く我が国の経済社会状況の変化の一環として、ここ数年、地方分権の推進という動きが出てきて、これも見逃すわけにはいかないと思います。御承知のとおり、地方分権推進一括法、これがさきの国会で成立いたしました。戦後50年を経て、国と地方との関係が大きく見直されることになってきたわけでございます。

しかし、国会の質疑の中でも数多く指摘されておりますが、地方に対するしっかりとした税財源の措置が明確になっておりません。まさに国と地方公共団体の役割分担に応じた地方税財源の充実確保について検討、あるいは必要な措置を講じる必要があるのではないかと思います。この検討の場は、この税制調査会においてほかにはないと思います。

また、法人事業税の外形標準課税の導入問題も当面大きな課題でありますが、小委員会報告が出て、それでひとまず時間を置いてということでは困りますので、ぜひ小委員会報告をさらに具体化していただいて、導入に向けてさまざまな角度から議論をしていただきたいと思います。

それと、事業税の外形標準化や地方税源の充実確保の方策として、その他地方税に関する主要事項に関して、ぜひ税調の中でも一定の時間を取っていただき、議論を深め、地方分権の進展に応じた地方税制度、こうあるべきだといった一定の方向並びに具体策を示していただきたい。こういうことを強くお願いをしたいと思います。

それから、いろいろ地方についても御意見があるわけでございますが、地方においてもやはり行革大綱を再度見直しながら、やはり効率的にやるべき、また、省く点については十分対応してやっているつもりでございますので、その点は御理解を願いたいと思います。

吉田特別委員

平成11年度の税制改正による恒久減税は、将来の抜本的税制改正の架け橋だというふうに我々は認識しておったわけでありますね。そういう将来の税制への架け橋という前提で、所得税・住民税の最高税率の引下げが行われたわけなんですね。ということになりますと、これからの議論の中で、将来税制において何をなすべきかというと、やはり所得課税の税率のさらなる引下げ、いわばフラット化、それから、やはり課税最低限の見直しも話題になってくるだろうと思うのです。

しきりに課税ベースを広げるということにかかわりまして、各種所得控除の見直しがやはり論議になると思うのでありますが、そのときにぜひひとつ勇断をもって議論をしていかなければならんのは、給与所得控除、これがやはり大きな課題ではないかなと。同時に、従来給与所得控除というものは、サラリーマンの収入をあげるための必要経費概算控除部分と、それから、体で働く勤労性に対する格別の配慮をした控除部分、こういうふうに聞かされてきておりますが、もし必要経費概算控除部分があの給与所得控除の中にあるならば、それをもう少し明快にするべきだ。そして、いわば所得計算にあたりまして、これは収入からいまの経費概算控除部分はまず引くべきだと。残った課税所得に対していわばこの勤労性に対応する配慮部分、これを何控除というのか存じませんけれども、これを適用していくというふうに税金計算の基本に立ち返って給与所得控除を分解していくべきだと。これをぜひひとつ最大の課題の中に取り上げていただきたい。

それから、もう1つ、私は給与所得者のために申し上げておきたいのでありますが、源泉徴収、年末調整といういまの徴税方式は、なるほど徴税者側にとりましては、これは便益があるかもしれませんけれども、納税者自身の自意識を削減してしまっておることになるのではないか。したがって、アメリカでもやっておりますけれども、給与所得者に対しましても、いまの給与所得控除を分解して、そしてさらに年末調整のこのやり方を廃止いたしまして、申告納税の中に持っていくべきではないか。これは私は地方分権ということがことさらに話題になってきておる今日、納税者意識というものを住民のすべてが持つ、そのことによって、社会、政治、経済等、すべてが納税者意識の中で論議が始まっていく。いまのこの仕組みはそれを殺してしまっているのではないかと。いわば徴税者側から、便益の法則でいいますと、そういうことがありますと、大変な手数がかかるからコストが大変だとか言われますけれども、情報の処理機器というものが今日大変進歩してきておるわけでありますから、したがって、これはそれほど言うほど難しいことではないだろう。

それから、もう1つ、将来、納税者番号制度の導入ということが真剣に話題になってくるときが来るだろう。そのときに納税者意識を削減されているいまの源泉徴収、年末調整に慣れ切っている方々が、納税者番号制度導入というときには、非常にいわばこれを無関心というのか、あるいは制度導入そのものに差し障りが出てくるのではないか。そんなことも考えますと、この際、所得課税のあり方について大いに論議をしてもらいたいのは、給与所得控除のあり方と、給与所得者に対する徴税方式のあり方、これは1つの大きな課題ではないかと、かように考えております。

加藤会長

時間がなくなってきましたので、あと何人ぐらい御発言……、かなりいらっしゃいますね。では、なるべく短く御発言してください。諸井さんからどうぞ。

諸井委員

いつも年次答申のときは政治との掛合いで、なかなか思うようなことをきちっと言えないですね。ですから、やはり中期答申だけは、しかも我々としては大体任期が来るわけですから、一種のこれは遺言みたいなものなので、きちっと今度は言っていきたいなというのがまず第一です。

それで、いまとにかく30兆円から足りないのだろうと思うのですけれども、歳出のカットというのは、もちろんそれは行政改革その他やっていかなければならないけれども、歳出の大宗というのは、結局福祉と教育なんですよね。この面はこれからさらに歳出が増えるような方向にあって、国民全体に問いかけたときに、こっちをもっとどんどん減らしていいよという話にはやはりならないのだろう。そうすると、どうしても負担増のほうでやるしかない。負担増の場合には、本人が負担するとか、あるいは保険とか手数料のような形で、将来も受益者が負担するというような面と、それから、国がということは、要するに税金が負担するという面とあるわけですよね。このバランスをどのぐらいにしていくかというのは大変大事な問題で、ここをしっかり国民に問いかけていかなければいけないのだと思うのです。

私は、全部を国でみるということは、これはやはり本筋ではない。本人も負担できる人はある程度負担すべきだし、将来の受益者も当然負担するべきで、国が、要するに税金が負担するのは、ある一定の割合の範囲にする。それがどのぐらいかということが大変問題ですが、少なくとも5割かその前後のところなのではないのだろうかという気がします。そこをひとつはっきり我々としては言うべきなのではないでしょうかね。

その場合に、それでは今度はどの税金でいくかということがありますが、所得税と法人税は、国際比較の中で、もうこれ以上上げられないということがはっきりしているわけですね。この面では、結局、納税者背番号の問題とか、あるいは課税最低限を引き下げるのかとか、あるいは外形標準課税を取るかといえば、どっちかというと、公平原則に近いような、あるいは応益原則に近いような形で、そこへどれだけ取るかという話で、あまりこっちから大きな財源を期待することはできない。結局、ですからこれはどうしても消費税になってしまう。そこをやはりはっきり言って、その消費税も、さっきの受益者の負担との関係で、受益者の負担がこの程度で止まるんだったら、消費税はやはりこの辺までいっちゃうんだよということを、はっきりすべきだと思う。

それから、もう1つ地方に関しては、一番問題なのは、財源を増やすということよりも、むしろ財源の大部分が地方交付税とか補助金とかであるというところに問題があるわけで、補助金はなるべくやめて交付税に持っていく。その交付税もできれば減らしていきたいわけですね。それが自立性を高め、地方の歳出減につながっていく話なのです。そのためには、結局、消費税も使わないといけないのではないだろうか。ここでしか財源の増える部分がありませんし、それから、地方の経済実力とマッチしている税金というのはこれしかないわけですね。所得税や法人税は全部地方にあげたって全然足りないところはいっぱいあるわけですね。ですから、やはりそこでも消費税を使わなくてはいけないのではないか。その辺の大きな太い線をぜひはっきり今度は言っていきたいものだと思っております。

和田委員

今日いろいろ御説明いただきました中で、それから、今日の税制の資料だけではなく、例えば経済戦略会議というような中でも、フラットにしていくという方向が相当明確に示されていると思います。個人所得税で見ますと、最高税率を下げる。それから、課税最低限を見直す、下げていく。そういうことが相当明確に出されておりますけれども、どこまでフラットに目指していくのかということは、やはりいまの御発言にありました介護保険が大変身近な問題として、具体的に10月からは査定の手続も始まりますので、身近なものとして皆が考え始めているときですので、税なのか、保険なのかということまで含めて、いろいろと考えていかなければならない、非常に大事な時期だというふうに考えております。

それで、今日の資料なんかを拝見しましても、個人所得税など相当フラットになってきている。これ以上フラットを目指すのかという気があるのですけれども、その中で、消費税につきましては、今日の資料にもありますが、平成6年の答申の中で、消費税というのは逆進性があるということだけれども、これは消費税だけ取り上げては間違っているのだと。他の税制が全体としてかなり累進的であり、しかも社会保障というのがさまざまな分野で整備・充実されているのだから、そういうことを考えながら、平成6年の消費税の税率アップということへつながっていったわけですね。そうすると、これだけ個人所得税をはじめすべてのところで、これからはフラットを目指していくのだということを考えるときに、消費税の逆進性ということが、ほかの税制は累進的なのだというところとどういうふうに合わせて考えていくのか、どういうふうに国民の納得が得られるような形でそういうものが進めらていくのかということは、やはり消費税とフラット化の問題だけではなく、それから、税と保険の問題と、いろいろな幅広い点について考えあわせていかなければならない問題ではないかなということを申し上げておきたいと思います。

河野特別委員

平成元年以降、私たち税調がやってきたことを一表にして見て、つくづく、消費税を導入し税率を上げるというのが片一方にあって、片一方でこれを契機にして、あらゆる直接税についての合理化、改正というのをやったんですよね。そうしたのがいまここにあるわけだ。直接税を、いろいろな議論があるけれども、ここまで合理化したことは、大変な実績だったと思うんです。そこまでは正しかったと思うんです。ただ、バブルの崩壊後の長期的な不況ということに我々もみくちゃにされたので、実はいろいろな問題がいまでも残っているんですが、少なくとも来年の春、我々がここで中期答申を出すときには、どういう経済状況になっているかわかりません。わかりませんけれども、仮に、中西さんは同意されるかどうかわからないけど、仮にもうちょっと世の中が安定軌道に経済が乗っているかもしれないなという状況に、1年後だから、なっていれば、やはりもうちょっと我々ははっきりものを言える時期が来るかもしれない。そのときに、いま諸井さんから言われたけれども、個別税制全部やらなければいかんでしょうね。法人税から何から全部やらなければいかんけども、やはり消費税についてもう一度ものを申さないと。10年間でやったことを見て、この税調は無責任極まる税調になってしまう。

ただ、そのときに、さっきちょっと冒頭で言われた人がいたけれども、消費税を福祉目的化する、使途をそれに限定するということになっているんですよね。これは福祉関係の支出がどんどん増えるので、それだけだって相当上げたって追いつかないことが現実に目に見えているんですよね。といって法人税を上げろだとか、所得税を上げろなんて議論ができるわけがないわけで、我々、これは一応筋が通ったことをやったと思っているから。そうすると、結局また最初に戻って、消費税を相当上げても、何年先になるかわからないけれども、上げる方向を明確に出しても、財政が全体として税収によって相当程度支えられるという姿は本当に見えてこないんですね。見えてきませんよ、誰が考えたって。しかし、それでもなおかつ10年間減税1本でやってきて消費税だけ別にすれば、ベクトルを変える方向で議論をやって、中期答申を書いて我々いなくなるということにしないと、あとの人は大変だと思いますね。そんなことを議論できる場は、この前もちょっと申し上げたけども、財政審でもなければどこでもなくて、税調しかないんですよね。国民に対しては部分的に辛いことを言うかもしれない。それを覚悟してベクトルを基本的に変えるという方向でいかないといけないんですね。

ただ、さっき冒頭に中西さん言われたけども、相続の話は議論すれば解決がつく話なんですよ、こんなものは、と私は思うんだ。実はいろいろな裏の話を聞いてみれば。それはそれでケリをつければいいんですよ、そんな話はね。だけど、基本は、10年間の実績をかえりみて、それを誇りとすると同時に、やはり消費税について税調はもう一度はっきりものを言うという姿勢がないといけない。財界人も全部、とにかく消費税を上げればケリがつくだろうとみんなおっしゃるわけで、それならここで言わなければいかんですよ。そのときは、現在だけの話じゃないわけだから、ということを申し上げたいのです。

加藤会長

あと時間がありませんので、2人だけにいたしますが、今野さんにしましょうか。

今野委員

エンジェル税制についてお話しさせていただきたいと思うのですが、景気は底を打ったとは言われておりますけれども、依然として失業率は上がっているわけですし、開業率より閉業率のほうがいまだにまだ上回ったままですし、日本とアメリカの新規株式公開企業の数は、依然としてアメリカの5分の1にとどまったままです。これだけ世の中変化している中で、日本はこの10年間さまざまな経験をして、本当にやる気をなくしたというか、元気と勇気をなくしてしまったと思うのですが、こういう時期、やはり新しい世の中のニーズをつかんで、いろいろなニュービジネス、ベンチャーをもっとどんどん生み出す、そういう世の中をつくって、新しい雇用を生み出していかなければいけないのではないかと思います。

では、どうしてこういう動向が続いているかというと、やはり資金調達の違いにあるのではないかと思います。アメリカの場合は、開業時に企業の初期段階の資金調達にベンチャー企業の多くが、エンジェル、個人投資家からの資金調達を行っております。アメリカのベンチャー企業の40%がそうした資金を使っておりますが、日本は依然として不動産担保による自己資金とか、親族からの応援といったようなものに依存しています。自己資金80%、親族からが56%と言われておりますが、個人投資家からの資金は、わずか4.8%にとどまっています。

そういうふうに考えてみますと、エンジェル税制は生まれてはいるとはいうものの、まだ本当にそれが機能するような形にはなっていません。ですから、投資した損失がほかの株式譲渡益としか通算できないということではなくて、一般の所得との通算を可能にすることによって、投資家以外の一般の人たちも、そういう新しい経済的な動きに参加していく機運が生まれるのではないかと思います。そういうふうにリスクをとって知恵と勇気で勝負していく生き方が評価される国づくりというのをするためにも、ぜひこういうことが必要ではないかと思っております。

この2年間ほど急激な貸し渋りで、私の周辺のベンチャーがバタバタと倒れそうになりましたが、もちろん倒れたところがいっぱいありますが、私はその中の幾つかに本当にささやかながら応援をし続けてみました。その結果、そのほかの要因もいろいろあるというものの、ほとんどの会社が見事に立ち直って、本当にすばらしい動きをいま見せておりまして、私はベンチャー企業というのは、誰かがわずかな応援をすることによって、こんなふうに生き返ることができるのだということを身をもって体験しております。

よくエンジェル税制が悪用されることによって、税収減につながるのではないかとおっしゃる方もいらっしゃいますけれども、それはやはりベンチャーというものがどういうものであるか、御存じない方のお話だと思います。損をしようと思って投資する人は1人もいないわけですし、また、エンジェルから受け取った資金というのは、ベンチャーであるならば、本当に自己資金よりも重くそれを受けとめて頑張るわけですから、そういう立ち直った企業からの税金で国はもっと税収増が図れると私は思います。そういうネガティブなシナリオでものを考えるのではなくて、ぜひともポジティブなシナリオでこのエンジェル税制をもう一回再考していただきたいと思っています。

加藤会長

では、最後に水野さん。

水野(勝)委員

税は何と申しましても、財源、国庫歳入の調達機能がまず期待されるわけですが、先ほど拝見させていただいた図表等によりますと、今年度の税収が12年前の税収と同じぐらいである、あるいは負担率はOECDで最低である、あるいは歳出のカバー率が50%台であるということを考えると、大変に税制の機能につきまして問題があると思うわけでございますけれども。これはしかし、考えてみれば、昭和62年に比べると、所得税は65%から37%になっている。法人税は42%から30%になっている。こういうことからして、ある程度そういう方向に持ってきたので、これはこれで現時点でさらにこれをもう一回高めていくということについては、やはり問題もあろうかと思うわけでございます。そしてまた、当面景気がこのような状態ですが、いずれ回復し本格的な上昇傾向に復帰するのであれば、おそらく税収もそれに応じて返っていくことと思いますので、今回の中期答申にあたりましては、景気がおおむね平常時に戻ったという状態、そういったものを前提として考えていくのではないかと思います。

そうした局面において、税率水準というものを、法人税であれ個人税であれ、ここで見直すというのは、なかなかいまや難しいということでございますと、やはり課税ベースの問題を基本的に取り上げていくべき方向になるのではないか。所得税でいえば、先ほどからもお話がございました配偶者の問題、給与所得者の問題、それからまた老年者控除の問題もあろうかと思います。こうした人的控除中心に課税ベースにつきまして、今後中心的な課題として取り上げていくことでどうだろうか。法人税についてもそのような気がするわけでございます。

それに関連いたしまして、連結納税の問題でございますが、まだ商法の世界でも必ずしも方向が定まっていない。それから、先ほどもお話がありましたように、分割もあれば合併もあり、M&Aもあるということでございまして、企業の今後の展開は流動的でございますから、そこらも十分見極めて慎重に小委員会のほうでおまとめいただき、お聞かせいただければと思うわけでございます。

最近課題になっております相続税の問題でございますが、これはある意味では所得税の最高税率が下がってきたということとも関連があると言われておるわけですけれども、所得税の税率が下がってきたのは、37%になったのはほんの今年でございます。相続税というのが生涯の取得した財産のいわば清算課税であるとすれば、所得税の最高税率と合わせていいわけですけども、まだまだこの5年前、10年前をとってみれば、所得税が60%なり70%であった時代もまだ相当あったわけですから、一気にここで相続税の最高税率もすぐ所得税に合わせて下げるというほどの緊急性といったものがあるのかどうか、それは事業承継等々において問題になっているということであれば、本当にどういった事態になっているのか、実態をよく研究させていただければと思うわけでございまして、そうした実態の分析等も含めて慎重に対処したらいかがかと思うわけでございます。

消費課税については、いろいろお話もございましたように、税制調査会としてこれを大事にして、それにつきましての考え方を出していくことがぜひ必要ではないかと思うわけでございます。いまや所得税はともかく、法人税と並ぶ税収を嫁得しておる消費税でございますから、それだけの大黒柱でございますから、あまり軽々に目的化するということにつきましては、やはり慎重に対処していく必要があるのではないかと思うわけでございます。

それに関連して、個別消費課税には、相当目的税あるいは使途特定の財源というのがあるわけでございます。大所は揮発油税であり、地方道路税であり、石油税あるいは自動車重量税といったものがある。これが相当な規模の消費課税の税収となっている。ここらにつきまして、これを基本的に見直すということは、大変いろいろな各方面に関連してくるところが多くて、難しいこととは思うわけでございますけれども、欧米諸国におきましても、こうしたものは最初は特定財源となっておりましたものが、漸次一般財源化してきているという傾向があるわけで、そういう歴史をたどってきているわけでございますから、今回の中期答申におきましても、ここらの点につきまして、問題を提起し、どこまでいけるかわかりませんけれども、はっきり議論をしていくことが必要ではないか。一気に一般財源化ということは難しいとすれば、環境的な歳出、福祉的な歳出に少しずつ、そうしたものとも関連性はないことはないわけでございますから、使途を広げていく。そして、さらには一般財源化していくということも視野に入れた検討がそろそろ始められていい時期ではないかと思うわけでございます。

加藤会長

ありがとうございました。

大変時間を超過いたしまして、不手際で申しわけありませんでしたが、これからは、先ほど御覧いただきました日程に従いまして、順次進めてまいりたいと思っております。

今日はお忙しいところ、どうもありがとうございました。

〔閉会〕

(注)

本議事録は毎回の総会後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、大蔵省主税局及び自治省税務局の文責において作成した資料です。

内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。