第34回総会 議事録

平成11年6月22日開催

加藤会長

ただいまから税制調査会第34回総会を開会いたします。

今日は、始めに事務局より報告を受けることがございます。

1つは、国、地方の税収の状況。続いて先日発表になりました政府の産業構造転換・雇用対策本部で取りまとめました「緊急雇用対策及び産業競争力強化対策」があります。それから、さらに雇用対策関連の補正予算と産業再生法案を緊急に取りまとめまして、8月まで会期が延長される国会に提出する予定でありますが、この産業再生法案の提出に伴う税制の取扱いについて、事務局から報告をしてもらおうと思います。

次に、来年の中期答申に向けた今後の審議の進め方について、前回の総会では十分に議論ができませんでしたので、改めて自由討議を行いたいと思っております。

本日の議題に入る前に、特別委員の異動がありましたので、御紹介いたします。

昨年7月より特別委員を務めてこられました中村仁さんが、先般、中央公論新社社長に就任されましたが、この職務に専念されたいとのことで、辞表を提出され、今月15日、正式に辞任されました。これに伴い、同日付けで読売新聞社の松田英三論説委員が新たに特別委員に任命されました。また、松田委員には基本問題小委員会の委員として、議事規則に従いまして私から指名をいたしました。

松田委員、どうぞよろしくお願いいたします。

松田特別委員

松田です。よろしくお願いします。

加藤会長

また、事務局のほうでも人事異動がありましたので、御紹介いたします。自治省税務局企画課に「税務企画官」が新設されまして、大西秀人前北海道総合企画部地域振興室長が着任されました。

大西税務企画官

大西でございます。よろしくお願いします。

加藤会長

それでは、今日の議題に入ろうと思いますが、初めに、事務局から報告を受けます。何点か報告事項がございますが、皆さまからの御質疑は一通り報告が終わったあとでお願いをしようと思っております。

まず最初に、国及び地方の税収の状況について報告をいたします。伏見総務課長、桑原企画課長、よろしくお願いいたします。

伏見総務課長

平成10年度の一般会計税収の動向について、現状を御説明いたします。資料で「総34-1」といういつもの税収の1枚紙がございますが、1枚目は細かいところまで出ておりますので、2枚目にその要点を抜き出したものがございます。それを御覧いただきたいと思います。

10年度税収は4月末まで収納が終わっておりまして、あと1か月残されております。まず全体でございますが、一番下の欄、「一般会計分計」というところを御覧いただきますと、補正後予算額が50兆約2,000億円に対しまして、42兆円余の収納が終わっている段階でございます。この累計の伸び率でございますが、右から2つ目にございますように、△7.2%ということで、予算の伸び率は△7%でございますから、見かけ上この段階では若干弱含みですが、ほぼ予算額のとおりのような姿でございます。ただ、内訳を見てまいりますと、以下に御説明しますように、厳しい状況にあるのではないかと思っております。

まず一番上の源泉所得税でございますが、これはほぼ収納が終わっておりまして、進捗割合のところで御覧いただきますと、99.9とございますように、ほぼ予算額どおりの形になっております。

次の申告所得税でございますが、これは確定申告の延納分が5月まで入ってまいりますので、残っておりますけれども、確定申告の結果自体は数字が出てきております。それから見てまいりますと、5月分の延納分を入れましても、2,000億円前後の減収は避けられないかなと、こんな状況でございます。

それから、3段目の法人税でございますが、進捗割合を御覧いただきますと、まだ61.6ということで、予算額の4割近くがまだ残っている形になってございます。これは、法人の場合は3月決算が非常に多いということで、一番最後にその大きな塊が入ってくる形でございます。

この3月決算の動向につきましては、いろいろなところにも報道等なされておりますけれども、なかなか厳しい状況ではないかと思っておりまして、なかなか予算額の達成というのは難しい状況ではないかと思っております。したがいまして、申告所得税の2,000億円の減というのがありますが、それをカバーするというような状況ではないということだと思います。

それから、消費税でございますけれども、消費税の進捗割合のところを御覧いただきますと、76.9ということで、約4分の1近くが最後に入ってまいります。これは累計のところを御覧いただきますと、ここまでのところは累計の前年比が16.4で予算が9.7でございますので、予算を上回っているように見えるわけでございますが、消費税の場合にはまだしばらく税率の引上げの関係が、やや技術的な要因から不規則な動きになってきておりまして、この4月分単月の前年同月比は実はマイナスになっております。おそらく5月もマイナスになると思われますので、全体として見ますと、年度の税収が達成できるかどうかというところだろうと思います。

その他の各税目も全体に弱い基調であります。そういう関係から、補正後予算では50.2兆円というふうに見込んでおりましたが、どうもこの50兆円は切ってしまいそうな、そういう状況にあろうかなと思っております。最終的な姿については、また次の総会にでも御説明できるかと思います。

1枚めくっていただきますと、一般会計分税収の最近の、去年の当初予算、それからその後の補正等の動きを図にしたものでございます。当初予算の段階では、10年度税収というのは、棒グラフの上にございますように、58.5兆円と見込んでおりました。一次補正の段階では、所得税についての2回目の定額減税など、経済対策に伴う一部分の手直しでございます。三次補正の際には、法人税等につきまして、景気動向を反映しました手直しをいたしました。50.2兆円というふうにしてあったわけでございますが、どうもこれが50兆円を切れそうだという形になってございます。

それをベースにしました11年度税収が一番右側にございますが、例えば所得税、法人税のところを御覧いただきますと、10年度当初では20.6兆円というふうに置いておりました所得税でございますが、11年度当初では15.7兆円、約5兆円いわば見積もりとしても下がっている。

それから、法人税につきましては、10年度当初では15.3兆円と見ておりましたが、11年度当初では10.4兆円、これは全体の景気の動向もございますし、それから、一方的な税率の引下げ、そういう両方の要因がございます。といった形で11年度の税収ができているということでございます。

国税関係は以上でございます。

桑原企画課長

それでは、地方税につきまして、お手許の資料「総34-2」に基づきまして御報告させていただきます。

最初の1ページ目、都道府県の11年4月末現在の10年度の税収の状況でございます。(A)の欄、地方財政計画に基づく収入見込み、これが平成10年度の都道府県の税収見込みでございまして、下から2行目、合計のところで、トータルで17兆4,450億円余を見込んでいたところでございます。

(B)の欄、現在までに都道府県で税額の確定処分を行いました額の累計が15兆7,000億円余でございまして、4月末までに実際に都道府県に収入されました税額が(C)の欄、14兆8,650億円余ということになっております。(A)に比べましてこれまでに入ってきました額、大体2兆5,800億円余のマイナスということになっておりまして、(A)分の(C)で御覧いただきますと、税目ごとにざっと見ますと、特に個人の道府県民税が特別減税等の影響で-15%程度、それから、法人の道府県民税あるいは法人の事業税は、特に法人の事業税は見込みに比べまして8割という数字になっているとか、ほとんどの税目で見込みを下回っているという状況でございます。都道府県の会計は5月末で締めますので、まだ若干収入が入ってくる部分もございますが、今の見込みで申し上げますと、大体都道府県税で2兆3,000億円ないし4,000億円ぐらい見込みを下回るものと考えております。

市町村のほうは、毎月の統計をとっておりませんが、県税に比べますと、固定資産税、住民税等、景気の変動の影響を受けにくい税がございますが、それにいたしましても、いまのところ7,000億円程度の見込みを下回る税収不足になると見ておりまして、県、市町村を合わせますと、3兆円前後の税収不足になるものと見込んでおります。

次のページは、国税と同様に、10年度における税収の変動、それから、11年度の見込みでございます。10年度当初で38兆5,000億円地方税全体で見込んでおりましたが、2回目の特別減税で約5,000億円程度の減収となりまして、それで38兆円。さらに先ほど申し上げましたように、当初に比べて3兆円前後の見込みを下回るということをいま見込んでおります。その結果も踏まえまして、11年度の税収見込みといたしましては、35兆3,000億円を見込んでいるところでございます。

なお、いずれにしましても、県・市町村決算が確定いたしましたら、改めて総会に御報告させていただきます。

加藤会長

ありがとうございました。

続きまして、今月11日に政府の産業構造転換・雇用対策の法案がまとめられてまいりましたので、これを今度の国会で雇用対策関連の補正予算と産業再生法案ということでもって提出をする予定でございますので、この法案の提出に伴う税制の取扱いについて、事務局から報告を受けたいと思います。

加藤税制1課長、よろしくお願いします。

加藤税制第一課長

それでは、お手許の「総34-3」という資料でございます。今回、政府で決定しました緊急雇用対策及び産業競争力強化対策というものは、この資料のとおりかなり大部なものでございますが、1枚目に大きな構成と税制関係のところだけ抜き刷りしております。2つに大きく分かれておりまして、緊急雇用対策と産業競争力強化対策。緊急雇用対策のほうは主に予算措置中心で、税制にかかわる部分はございません。次の2つ目のパートで産業競争力強化対策ということで、1から2、3と具体的な目標に伴ういろいろな政策の提言があって、最後に4ということで、税制につきましては、読ませていただきますが、産業競争力強化のための税制ということで、「経済再生、産業の競争力強化等に資する見地から、新規産業の育成、企業財務の健全化、組織の戦略的変更、資産流動化の促進等のために必要な税制や企業年金制度の見直しに伴う措置、連結納税制度などについて検討し結論を得る」。

具体的にはこれからこういった趣旨で税制についてもいろいろな見直しを行う。その中身については、例えばここに具体的に出ています連結納税とか、もうすでに大きな方針が出て、これから研究をしていかなければいけない。しかし、それはかなり時間がかかるものもございますし、ある程度次期年度改正で処理するものもある。また、これから御説明しますように、一部については年度改正を待たず前倒しで処理するほうが適当なものがあるということで、こういう趣旨の対策の具体化をこれから図っていくという状況でございます。

それで、まずその第一段といたしまして、今国会で所管通産省が、先ほど御説明しましたように、企業の事業の再構築という喫緊の課題に対応するために、一定の要件のもとにそういう企業の再構築を支援する、そのための基本法でございます産業再生法案を今国会中に提出するということになりました。したがいまして、その法案に伴います必要な税制措置については、今国会であわせて御審議いただいて、成立を図りたいというのが現時点の政府与党の方針でございます。

ただ、具体的には、この産業再生法案の中身がかなり絞り込まれた形でいま検討が行われております。どのようなコンセプトでどういう場合を支援していくのかということを、いま早急に詰めております。それに伴って、そのために税制の具体的な措置がどのようなものが必要ということを、私ども税制当局もこれから議論していくわけですが、いずれにせよ、基本的な税制の問題は当分まだ時間がかかるわけで、今回やるのは、いわば従来企業関係特別措置としていろいろな措置を講じてまいりましたが、それを講ずるに当たってのいろいろな御指摘も税調のほうからもいただいておりますが、そうした枠の中で実務的に十分詰めて、政策手段としての妥当性、政策効果の有効性等を関係省庁と実務的に詰めて、今後具体化を図ってまいりたいと、このように考えております。いずれにしましても、まだいまの段階で具体化しておりませんので、具体的な措置が固まりましたら、速やかに御報告したいと思っております。

こういう状況でございます。以上でございます。

加藤会長

ありがとうございました。

それでは、ただいまから事務局の報告につきまして、何か御質問があればお願いしたいと思います。どなたからでもどうぞ。

津田委員

税収の見積もりの点ですけれども、結局、3月決算法人が5月に収納という、これが残ってしまって、これが年間の税収入としては最大の山のところが、昭和50年代に財政の単年度収支を何とかしようという狙いもあって、債権発生主義というんですか、そういうことで切り換えたわけですけれども、この結果、毎年毎年、税収見積もりというのが非常に外れてきておる。これは無理ないので、3月決算あるいは5月の収入を、前の前の年の秋に税収見積もりを立てる。ほぼ1年半前に予測しなければならん。それがまた一番大きな税収の塊のところであると。ここに非常に財政が不安定になっておるのだと思います。正直言って、財政が非常に苦しい中ですけれども、むしろこの際思い切って、その見積もりの仕方というのを直さないと、予算編成という意味が非常に不安定になる。この際、一つ考えておく必要があるのではないかと思います。

石特別委員

加藤さんの御説明について、もうちょっと聞きたいのだけど、産業再生法ができて、ぼやっとしたものを明るくしたわけですね。それで、税を使いなさいという話がこれまたあるわけですよ。産業再生法案については、再生についてはいろいろサプライサイドで関心を持っている方、あるいは支持者も多いと思いますが、税が今後どういう形で積み上がっていくかというのも興味あるのですけど、おそらく税調の絡みで言うなら、やはり課税ベースというものをしっかり見直しましょうというのがずっと来ている流れの中にあって、これは所得税と法人税を使うわけでしょう、結果としては。おそらく消費税とかほかのものは使いませんからね。そうなると、課税ベースに穴をあけざるを得ないような格好でこの産業競争力とか何とかという話が多分出てくるのでしょうね。

そこで、各業態、あるいは通産あたりからいろいろ要望が上がってきて、それをまとめて、いずれ税調でも、時間的関係があるかと思いますから、全部はのせられないにしても、議論をさせてもらうような場があるのですか、見込みから見て。

加藤税制第一課長

今回の産業再生法案の提出に伴う税制上の措置につきましては、先ほど説明いたしましたように、かなり限られた措置、つまり従来の租税特別措置的なミクロ的な細かい配慮が中心になると思います。それで、石先生おっしゃるように、課税ベースに大きな穴があくとか、基本税制に影響を与えるような、いろいろ税制として十分議論をしなければならないようなことは、今回とても内容に盛り込めるような余裕もありませんし、それから、法案の性格自体が、そういうことでとにかく当面の事業の再構築に、どうしてもここはというところに絞って行われています。基本は法人税だと思うのですが、課税ベースに穴をあけるというよりも、円滑な事業の展開に、例えばいまでも現物出資の特例のような制度がございますが、それの使いやすさを一部何か実態に応じて変えるとか、そういう技術的な部分の手直しが中心になると思いますので、そういう意味では、政府ベースで従来から企業関係租特の中身につきましては、大きな御方針をいただいた中で処理させていただいておりますが、その種のものしか今回は対応し切れないと私ども思っておりますので、もしそれを超えて何か重大な問題が発生するということになれば、当然、また御審議をいただいて御判断をいただくような、こんな形になろうかと思います。

石特別委員

我々としては心配することないねと、こういうことですな。

加藤税制第一課長

そういうことではないですが、いろいろ政府ベースの政策との絡みもございますので、少し私どもに御信頼いただく必要もあろうかと思います。

塙委員

道府県税の実績のほうなのですけど、自動車取得税というのが、(A)分の(C)が著しく低くて、74.6ということになっているのですけど、これは私ども車が売れない実感ではあるのですけど、そのせいだけでしょうか、それとも、税金の取り方が後に寄っているとか、そういうことでこの率がかなり低いとか、その辺はどうでしょうか。

桑原企画課長

いま申し上げました(A)分の(C)は、そういう意味で見込みに対する実績ということでございまして、年度当初に見込んだよりも自動車の取得が少なかったということかと思います。右から2列目、対前年比で御覧いただきますと、88.6ということで、1割ちょっと減ということかと思います。課税のシステムが変わったとか、あるいはこれからもう少し入ってくるとか、そういった特別な事情があるというわけではございません。

加藤会長

いまの説明でよろしゅうございますか。

ほかにございませんか。

中西委員

外形標準課税の問題に離れてもいいんですか。

加藤会長

一応、外形標準課税につきましては、いま小委員会でまとめておりまして、この次あたりの総会で多分出てくるのではないかと思います。ですけど、もしそれについて何かここで、小委員長もおられますから、言っておかなければいかんということがあったら、どうぞおっしゃってください。

中西委員

産業再生法案にかかわることなのですが、それは同時に外形標準課税にもかかわることで、細部のテクニカルな議論はいま石さんと話したのですが、小委員会の御努力で9日に総会にかかるようですね。それが出て、それを拝見してから細かい話は申し上げたいと思いますが、今日はちょっとざくっとしたもう少し大きな視点で、前回は地方自治体の財政の交付税交付金、その他との絡みの議論を申し上げたのですけど、今日は、競争力会議が、いろいろこれに対して御意見が澎湃と出てまいりまして、少し大企業優先の趣きがあるのではないかとか、設備配置よりもむしろニュービジネスというか、ニューエコノミーというか、新しい分野の創出のほうに力点を置くというか、そっちのほうがむしろプライオリティーとしては先にやるべきではないかとか、いろいろな議論が出ているのですが、私、今日これを拝見しまして、中小企業、ベンチャー企業の育成ということを、非常に重要なあれで、ドンとここへ出てきているので、これはこれでいいと思うのですけど。

ニューエコノミーの分野で、私の知っているので、1人で300万円ぐらいの資本金で始めた。どんどんと投資してくれる人がおって、いまは資本金が8,000万円ぐらい。だけど、これは社長兼従業員で、1人でコンピュータをたたいて、ソフトをやっている。そうすると、これは俗にSOHO企業というやつで、まさにスモールオフィス・ホームオフィスですね。ほとんど土地も持っていない。会社の形態はない。従業員はいないよというようなこと。1人でありながら8,000万円の資本金。そうすると、在来型のオールドエコノミーで外形標準課税を論じている大きな視点の1つは土地ですね。1つは従業員の給料の総額、1つは資本金と、こういうふうなものがあるんです。あるいはその併用。今後、わが国の産業の再生というのは、そういうSOHO企業も含めて、ニューエコノミーが、アメリカはこれで産業の再生を成し遂げたので、日本もおそらくそういうパターンをとるのではないかと思う。そうなってきたときに、外形標準課税を在来型の発想、在来型のいま申し上げたような3つのそういう範疇でとらえるだけでいいのどうか、そこのところの抜本的な発想の転換が私は起こってくるのではなかろうかなと。

もう1つ突っ込んで言えば、各自治体一律にそういうことを基準をつくって、広くあまねく公平・平等に一律にやらねばならんものかどうなのか。各自治体、市によってそういうソフト型のSOHO企業、ニューエコノミーを俺のところは育てているのだと、そこに力点を置いてやるのだという自治体があるとしますか。そうすると、これに対しては非常に優遇的な法人事業税というものを、極論すれば、それをほとんど少なくするようなことをやるとか、いろいろな形が私は出てきていいのではないかなと思うのです。また、そういうふうなことになって、「こちらの水は甘いぞ」、「蛍は俺のところへ寄って来い」ということで、企業誘致をただ宣伝だけするのではなくて、そういう税制のありようで大きく変わる、そういうきっかけにこの法人事業税がなるのではなかろうか。あるいはそういうような形になってもいいのではなかろうかと私は考えているのですが、大きな課題は、そういう切り口というか、視点も考えておく必要があるのではないかと思います。

加藤会長

ありがとうございました。

石さん、何かおっしゃいますか。

石特別委員

いや、個人的にいろいろやっていますけど。

いまの御指摘は、もろに具体例として取り組むことは難しいかもしれませんけど、考え方としては、租税特別措置なり政策効果なり、そんなことを使う余地があるよ、なんていう説明も一部入れておりますので、各都道府県の配慮を、余地があるというようなところで、中西さんにあまり怒られない程度の問題提起ができるのではないかとは思っています。

加藤会長

アメリカなんかはかなり思い切ってやっていますからね、そういうのは日本でも必要だと思います。

ほかにございませんでしょうか。よろしゅうございますか。

それでは少し先に進みますが、また何かいまのところで御意見があれば、あとでお出しいただいても結構でございます。

それでは、今後の税制調査会の審議をどう進めるかということについての自由討議をいただきたいと思っているのですが、前回の総会で、来年春の任期がございますので、それを見据えまして、税制調査会として中期的な税制のあるべき姿を示すという、いわゆる中期答申と呼んでいるのですが、その中期答申に向けて今後どういうふうに議論をしていったらいいかということを皆さま方から御意見をいただきたかったのですが、十分に御意見をいただけたわけではございませんので、そこで今日もまたそれを引き続いて行いたいと思っております。

御承知のように、平成11年度の税制改正に関する答申では、将来の税制の抜本的な見直しの必要性を説くとともに、具体的な今後の検討課題を指摘しておりますが、御参考までにお手許には『平成11年度答申における今後の検討課題』を資料としてお配りしてございます。

そこで、始めに、この今後の検討課題について事務局より簡単におさらいをしてもらいまして、その上で今後の税調の進め方について自由討議をしていきたいと考えております。まず、この今後の検討課題の中で、各項目について田中調査課長から御説明をいただきますが、なお、検討課題のうち連結納税制度については、11年度答申の中で「法人課税小委員会において本格的な分析・検討を行うことが適当」というふうに書いてあります。したがって、前回の総会で私のほうから法人課税小委員会を再開してくださいということを申し上げたわけでありますが、この連結納税制度について杉江企画官から補足していただこうと思います。また、地方税の関係につきましては、桑原企画課長から説明をしてもらおうと思います。

それでは、それぞれよろしくお願いいたします。

田中調査課長

すでに御案内の内容でございますので、ごく簡単に御説明をいたします。資料は「総34-4」というものでございます。

ここに最初に1枚紙がございまして、9つの今後の検討課題というのが書いてございます。11年度答申におきまして、この9つについて記述がなされているわけでありますが、当然のことながら、中期答申に向けた御議論におきましては、この項目にとらわれることなく幅広い検討をお願いしたいということでございます。

最初の項目の「わが国の財政」という点でございますが、答申の中では、平成10年度の公債発行額が34兆円であるということ、あるいは公債依存度が38.6%という過去最高に上っているというようなこと、それから、諸外国と比較しても危機的な状況となっているということを踏まえて、いずれ経済が回復軌道に乗った段階において、再び財政構造改革に取り組まざるを得ないという認識が書かれております。その際、歳入、歳出両面から具体的にどのような取り組みをしていくかが大きな課題になるという内容でございます。

2番目の「個人所得課税」でございますが、これにつきましては主要先進国と比べて、1つは課税最低限が高い、それから最低税率が低いということから、低中所得者の税負担がほかの国に比べて最低の水準になっているということと、それから、税収が国民所得に対する割合をとってみると、これも最低になっているということがございまして、このような点を踏まえて、そのあり方を検討するわけですけれども、昨年の10月に2つのワーキング・グループにおいて取りまとめられたものがございまして、その中で各種控除のあり方などの課税ベースの適正化、所得分類、課税方式の見直し、個人住民税のあり方、納番制度の導入問題などのいろいろな点について、掘り下げた検討を行う必要があるというふうにされているところでございます。

それから、3番目の「相続税」でございますが、いま申し上げました個人所得課税の抜本的見直しとの関連において、税率構造や課税ベース等について幅広く検討を行っていくことが適当であるという認識が書かれております。

法人課税の中で、外形標準課税はあとで自治省から御説明がありますし、連結納税は一課の企画官から御説明がありますが、それ以外の部分におきまして、平成8年の11月に法人課税小委から御報告をいただいておりますけれども、そこで指摘されている課題のうち、まだ残された課題がいくつかございまして、それについて引き続き検討を深めていく必要があるということが書かれております。

それから、企業会計において、時価評価あるいはヘッジ会計の導入などに向けた検討が進められておる中で、これに伴う法人課税のあり方についての検討を進めていく必要があるという認識が書かれております。

それから、5番目、「年金課税」でございますが、年金課税については、公的年金に係る課税について、1つは拠出段階で保険料の社会保険料控除という制度があって、これによって全額課税ベースから控除されているというのが現状でございます。

なお、給付段階においては、公的年金等控除や老年者控除があって、これがサラリーマン、勤労世帯の通常の勤労所得の負担よりも税負担が軽減されているという指摘がなされております。これにつきましても、課税問題ワーキング・グループの中間取りまとめにおいて、入り口すなわち拠出段階、それから運用段階、出口すなわち給付段階の各段階の課税のあり方を含めた総合的な観点からの検討が必要であるという認識が述べられております。この問題につきましては、課税問題ワーキング・グループにおける検討を踏まえつつ、先ほどの個人所得課税の課税ベースや課税方式などの問題とあわせて総合的に検討していく必要があるということにされております。

なお、確定拠出年金の問題でございますけれども、年金制度全体の中での適切な位置づけを検討した上で、他の例えば退職金課税の制度あるいは給与課税の制度とのバランス、他の金融商品に対する課税とのバランス、貯蓄課税の適正化との整合性などの幅広い観点から拠出・運用・給付の各段階における課税の方式について検討を進めていく必要があるというふうに指摘をいただいております。

次に、「納税者番号制度」でございますけれども、これにつきましても、基本枠組ワーキング・グループの中間取りまとめにおいてもいくつかの指摘がなされておりまして、今後国民の理解がさらに深められるよう、より掘り下げた具体的な検討を進めていく必要があるという御指摘をいただいております。

その次が「地方分権の推進と地方税」ですが、これは自治省のほうから御説明していただきます。

8番目が「税制の簡素化」という観点でございますけれども、これにつきましては、自由化、国際化が一層進む中で、納税者が予見可能性の高い経済活動を行う上で、税制の簡素性、それから、税制・税務執行の透明性の観点が重要になってくるという認識が述べられております。

最後が「国際的な税制論議とわが国の対応」ということでございますが、1つは国際的な税の引下げ競争の問題についての内容でございますが、昨年の4月のOECDの「有害な税の競争」と題する報告書がございまして、これに基づいて昨年のサミットでも、あるいは今年の5月のOECDの閣僚理事会でも、あるいは先ごろのケルンのサミットでも、この有害な税の競争の問題が議論になりまして、OECDの報告書の内容を支持するということで、積極的な取組みの方向が打ち出されております。こういう国際的な取組みに積極的に政府が関与していくことを期待したいという内容が書かれております。

それから、同じ国際的な話としまして、電子商取引の問題でございますけれども、これについても、事柄の性格上国際的な検討が必要であるということで、今後ともOECDにおける議論に積極的に参加していくとともに、課税関係についての予見可能性を高めるということで、電子商取引自体の発展する環境を整備するという観点からも、その進捗状況や実態の把握に努めていく。なお、課税のあり方についても検討していくという内容が述べられております。

簡単でございますが、国税関係からは以上でございます。

杉江企画官

引き続きまして、連結納税関係につきまして補足をさせていただきます。「総34-5」という資料がお手許にございますでしょうか。これに沿って御説明を差し上げたいと思います。

1ページ目でございますが、連結納税制度につきまして、昨年12月の答申の中で御答申をいただいておりますが、現在の法人税制は商法などの現行諸制度を基礎といたしまして、個々の法人ごとに課税をするという基本的な考え方のもとにつくっております。しかしながら、仮にその連結納税制度を導入するという場合には、個々の法人ではなくて、企業集団を1つの課税単位とするということになるものですから、現在の法人税の課税体系全般を根本的に再構築することが必要となるという御答申をいただいているところでございます。

次に、3ページ目でございますが、よく連結財務諸表制度と連結納税制度の関係について、連結財務諸表が入っているので、連結納税制度もすぐ導入できるのではないかというような御議論がされていることがございますが、この2つの制度を比較したものがこの表でございます。右のほうの連結財務諸表制度は、企業集団の財政状況とか経営成績を投資家にディスクローズするという目的でつくられているものでございます。したがいまして、この連結財務諸表につきましては、その対象は上場、店頭登録企業等の大企業に限定した制度になっているわけでございます。

一方、連結納税制度につきましては、これは税の制度でございますので、法人一般が対象になるというところで、対象がかなり違ってくるという問題がございます。

それから、投資家に対するディスクロージャーという観点から連結財務諸表制度につきましては、連結される範囲につきましても、国内、国外、それから子会社及び関連会社まで含めるということで、かなり広い範囲の子会社、関連会社を連結の対象にするという形で、できるだけいろいろなものを取り込んでディスクローズをするという考え方で制度が構成されております。

一方、連結納税制度につきましては、アメリカでは持ち株割合が80%以上、フランスでは95%以上ということで、持ち株割合が極めて高い国内の子会社、海外の子会社は対象から外されておりまして、国内の子会社に限定して、そういうようなかなり血縁の濃い会社を対象として連結納税というものが仕組まれているわけでございます。

諸外国でどういうような法制が行われているかと申しますと、特にアメリカとドイツだけ御説明いたしますと、5ページをお開きいただきますと、アメリカの連結納税制度の概要の資料がございます。アメリカでの連結納税制度は2つの効果がございまして、1つが各グループ内の、各会社間の損と益を通算するということで、グループ全体の課税所得が減少するということがございます。

もう1つは、グループの中の会社ごとの取引、グループ会社間の取引の内部計算化ということで、これは現在は親会社と子会社との取引を本社と支店間との取引というような形で内部計算化するということが、このアメリカの連結納税制度で行われているわけでございます。アメリカの連結納税制度につきましては、この連結納税制度に係る法律とか規則等は大変大きなボリュームになっておりまして、わが国におきます法人税法あるいはその政省令のすべてに匹敵するぐらいのボリュームがあるというふうに聞いております。

6ページでございますが、ドイツの機関会社制度がございます。これはアメリカの連結納税制度とは本質的に異なる制度でございまして、株式法上の利益移転契約というものを前提にしております。この利益移転契約と申しますのは、子会社で利益が出た場合には、それを親会社に移転をする、あるいは子会社で欠損金が出た場合には、それを親会社が補てんをするというような、株式法上の利益移転契約を前提にしまして、この企業集団の税制が仕組まれているわけでございます。このように諸外国ではそれぞれの商法あるいは取引慣行に応じまして、さまざまな形態の企業集団課税が行われておりまして、連結納税制度の検討に当たっては、諸外国での制度あるいは運用の実態について、十分把握して、わが国の実情にふさわしい制度を検討していく必要があるのではないかと考えているところでございます。

7ページでございますが、もう1つの論点としまして、連結納税制度に伴う税収減の問題がございます。連結納税を導入いたしますと、繰り越された欠損金のほか、企業グループ内の他の会社の欠損金を活用できるという話と、もう1つ、親子会社間の取引が内部取引化され、未実現のものとして扱われるということによりまして、法人税額が減少するということが考えられます。わが国の現状を見てみますと、約65%の法人が赤字法人であるという状況でございますので、大きな税収減が生ずることは避けられないという形で御答申をいただいているわけでございます。

いずれにしましても、連結納税制度につきましては、法人課税の体系全般に及ぶ検討が必要であるということで、専門的、実務的な観点から本格的な分析・検討を行うことが適当であるという御答申をいただいているところでございます。

以上、簡単に補足をさせていただきました。

桑原企画課長

それでは、先ほどの資料「総34-4」に戻っていただきまして、平成11年度答申における今後の検討課題のうち、地方税関係につきまして御説明させていただきます。

2ページ目は、わが国の財政の状況が書いてございます。先ほど国の財政の状況の御説明がございましたが、地方におきましても、ここにあります国・地方の長期債務残高560兆円のうち170兆円近い借入金残高がある等々、大変厳しい状況にあるわけでございます。

それから、3ページ目、個人所得課税についての記述がございますが、地方税につきましては、下から2行目、個人所得課税のあり方について全般的に検討する中において、「個人の住民税については、地域社会の費用を住民がその能力に応じ広く負担を分任するという独自の性格を有していることから、課税最低限は所得税よりも低く、税率も緩やかな累進構造となっていることなどを十分に踏まえて検討を行う必要があると考えます。」といった御答申をいただいております。

4ページの「4法人課税」のうち、(1)で法人事業税の外形標準課税についての御答申でございます。アンダーラインの部分、特に外形標準課税が地方に適した税体系の1つであり、導入を急ぐべきであるという意見が多く出されているというようなことが御答申いただいておりまして、昨年の5月に設置されました地方法人課税小委員会ですでに16回にわたって御審議をいただいております。4月の23日あるいは5月の25日の総会でも、そうした審議の状況について小委員長から総会に御報告させていただいて、御論議いただいたところでございますが、近いうちに報告書を取りまとめいただく予定になっておりまして、また改めまして総会で御議論をいただけるものと考えております。

それから、ずっと飛びまして8ページ、7番で「地方分権の推進と地方税」という項目がございます。「地方分権の推進に当たっては、地方の財政基盤を確立することが不可欠であって、地方における歳出規模と地方税収入との乖離を縮小するということ、あるいは国と地方の役割分担を踏まえつつ、中長期的に国と地方の税源配分のあり方についても検討しながら、税源の偏在性が少なく、税収が安定した地方税体系を構築していくことが必要です。」というふうに述べられておりまして、9ページの後段におきましては、「地方団体の課税自主権を一層拡充していくとともに、地方団体が住民の意向を踏まえ、自らの判断と責任において行政サービスと地方税負担のあり方を決定できるよう、国と地方の間の行財政システムの改革を進めていくことが必要です。」ということを御答申いただいております。

地方分権推進につきましては、地方分権推進委員会の累次にわたる勧告等につきましても、これまで税制調査会に御報告させていただいたところでございまして、そうしたことを集大成いたしました地方分権一括法案が現在国会で審議中でございます。衆議院はすでに通過しておりますが、衆議院の審議におきましては、特に今回の地方分権一括法の中におきまして、地方税源あるいは地方財源についての充実に関することが今回の法案の中にはないのではないかとか、弱いのではないかといったような議論がございまして、最終的に衆議院の審議におきまして、議員修正によりまして、地方税の充実に関します条文が1条追加されております。

条文を読んでみますと、「政府は地方公共団体が事務及び事業を自主的かつ自律的に執行できるよう、国と地方公共団体との役割分担に応じた地方税財源の充実確保の方途について、経済情勢の推移等を勘案しつつ検討し、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする」という条文が議員修正で加えられております。今後参議院で審議されるわけでありますが、政府税調においてもこうしたことも踏まえて御審議をいただくことになるかと考えております。

以上でございます。

加藤会長

ありがとうございました。

中期答申に向けました審議を進めていくに当たって、いま報告をしていただきました今後の検討課題、これにもちろんこだわることはございません。税制全般に対して幅広い御検討をお願いしたいと思いますので、御自由に御発言をいただきたいと思います。

なお、外形標準課税につきましては、いまも何度か説明がございましたけども、7月9日の総会のときに多分議題になってくるかと思いますので、そのときにまた取り上げていただこうと思います。しかし、今回はそれと絡めて、さらに今後の税調の進め方ということで御意見をいただければと思っております。

お手許には前回お配りしました税制や財政の現状に関する資料、総33-2、3、4を配付してありますので、適宜御参照いただいて御議論をいただければと思います。

では、どなたからでも結構でございますので、どうぞお願いいたします。

河野特別委員

2つ提案したいことがあります。第1は、いま会長おっしゃったみたいに、前回の総会のときから、中期答申における検討課題というのがたしか9項目ぐらい並んでいるんですね。1つはそれに関すること。もう1つは、項目に1つ加えたらどうかという提案をしたいことが1つあります。その2つです。

第1に、最初のことでちょっと事務局にお願いしたいことがあって、それは10年度の税収、一般会計の推移のこの表を見ても、だんだん税収が落っこちてきていることはよくわかって、これは景気の問題と大減税の双方が相乗効果でこうなっていることはわかっているのですけど、その中で消費税、法人税、所得税というのは基幹税制ですよね。そのほかにたくさん項目がありますけどね。一体財政が破綻していることはもう天下に明らかなので、これから先どうするかという話に我々の考え方が向いているのですけど、それについて公債依存度が非常に高いことはもはや常識になっていて、そのこと自体はそれでもう言及する必要もないことなのですが、税収というのはどういう構成にいまなっているのだと。かつてはこれだけの、例えば法人税、所得税はこういう比重だったけどいまはこうなっている。消費税はこうなっている。この日本の国の税収の構造というのは、いまの断面でぶった切ってみればどういうことになっているのか。それは、これからどうせ個別税制が項目にたくさん並んでいますから、いろいろな議論をやらねばいかんと思いますけど、それに全部かかわる話だと思うのです。全体がそのことを確認した上で、個別税制について増税、減税何でも結構だけども、議論を出すということをやらないと、無責任な議論になると思うのです。

実は法人税減税をやるときも所得減税をやるときも、お互いの腹の中にあったことは、いずれの時期か条件が整えば、消費税というものをもうちょっと税率を上げなければ、国家財政は破綻することは明らかなんだ、ということがあったんですよね。どういう減税を要求しても、政治家も民間人も、いずれ我々だって消費税のことが表面に出てくるときには、賛成し協力しますよという趣旨のことを言われることが常だったんですね。それを言わなければ無責任極まる話になりますからね。

ところが、消費税というのは、この前の総会でも説明があったのですけども、消費税の福祉目的税化という議論が定着して、基礎年金と老人福祉と今度の介護に集中的に投入すると書いてあるんですね。ほかには向けないということですよ、この消費税の税収というのは。それでも、この3項目だけでも膨大な歳出ですから、これは増えると思うから、これをカバーするだけだって大変だと思いますけども、とにかく大きなところの減税をやれば、あとは消費税をいじくれば何とかなるぞという発想が、ここから見てもそう簡単でなくなったのではないかという気がするんです。

もう1つは、消費税を上げることの政治的なコストの巨大さということを我々身にしみて感じているので、その2つを考えてみれば、消費税を上げればいいではないか、直間比率でいいよということを軽く言うのは、評論家は結構だけども、国家財政の本当のことを考えてみれば、それだけでは済まないような要素があると思うのです。つまり、消費税ということに対して、あまり幻想を持たないほうがいいのかもしれないという状況にいまなっているのではないかという気がするのです。

ということはどういうことかというと、ここのところ3年か4年間、政府税調の議論のベクトルというのは明らかに減税。それは、法人税から所得税から、しかるべき理由があってのことなんですよ。それはそれでいいんですよ、我々は相当審議してきたのだから。しかし、同時に、そのことによって、こういう財政が破綻寸前に、景気問題もあって、なったこともまた明らかなので、これからはここのところにある基幹的な税制について、いろいろな改革論議、検討論議、これから始まるわけですけども、方向が全部減税一本だという話は、もう去年まででおしまいだと私は思うのです。それでもなおかつ合理化すれば、減税の話が項目が入ってくることは全部知っていますよ。知っているけれども、基本はそうではないかという気がするのです。そういう議論をするためにも、事務当局にわかりやすい、ここにもちょっとあるけど、もうちょっと精緻な、いまの税体系はどういうことになっているのだと、どういう経過でどうなっているのかということについて、わかりやすいデータを次回の総会で出してもらいたい。

第2は、これは塙さんがいらっしゃるけども、運輸省と環境庁の審議会なり研究会なりが、自動車税のグリーン化というテーマを持ち上げてきたんです。いままでは燃費効率のいい車はなるべく税金を安くするよという、租特の若干手直しみたいなものだから大したことはないと思っていましたけども、これはあらゆる面でグリーン化という言葉がいま流行なんですよね。理由はいろいろありますけども、自動車の場合にも明らかに地球温暖化絡みの話ですよ。それはそれで筋の通ったある方向での議論の流れだと私は思うんですね。これは自動車という大衆がみんな持っていることにかかわる話でもあるし、ごく特殊な業界の特殊な話ではなくて、全般にかかわる話だと思うんですよ。

いま環境庁の諸君が言っている話と運輸省の審議会が出したのとは少し違いますし、技術的に検討すべき要素は随分たくさんあると思うのですが、既存税制をCO2対策用に組み変えるという話ですから、石さんが最近出された広範な著書があって、私、何遍も読みましたけど、あの中にも随分書いてあって、これはそういうことかといって理解できるんですよ。税制のグリーン化という話は、これは時の流れなんですね。ノーと言えないという明確なる大義名分が後ろに控えている議論なんです。

そこで、提案したいのは、ここに9項目が並んでいる事務当局が用意した個別項目には書いていないのですけど、それから、また同時に炭素税だとか、環境税だとか、極めて大がかりの兆単位の税収につながるような話がいますぐできるとは誰も考えていないわけで、いずれはそこに話が行く筋道があると思うけども、いまは自動車税制の手直しという話ですよね。それさえいろいろな議論が実は誘発されているんです。技術論を含めて、それから景気論も含めてね。

ですから、私の提案したいのは、9月から基本税制の小委員会が始まるとすれば、どこかの段階で関係者を呼ぶなり、税務当局の見解、それぞれ微妙に食い違っているところもあるんですよね。しかも要求は年度答申で書いてくれということですから、議論としては新しい流れなんです。これは一般の庶民もジャーナリズムもかなり関心のある話であることは間違いないですね。

ですから、そういう意味で、どこかの段階で、これは会長にお願いしておきたいのですけども、ちょっと何人かの関係者を呼んで、一体どういうことを考えているのか、将来これはどういうことなのかと。中期答申でグリーン化というのはどういうレベルの話にいま我々は始めて、将来どういう議論があるのかということについて、書き加える必要があると思いますね。税調はそのぐらいの感度よく行動したほうがいいのではないかと思う。この2つのことをお願いしておきます。

加藤会長

いま大変有益な御指摘がありまして、2番目のほうは私もまことにそのとおりだと思っておりまして、これはいずれやらなければいけないし、取り上げなければいけない問題だと思っておりますが、確かに私も新聞紙上なんかでいろいろ見ている限りでは、何を言おうとしているのかがよくわからないところがありますね。自動車のグリーン化というと、そちらのほうに税金が安くなるというので、自動車関係の方では大変賛成という方もいらっしゃるのですけども、逆に今度はそれが企業の負担になるよとなると、企業はそういうのはあまりやってほしくないという反対が出るわけで、この辺のところはやはり税調としてきちんと考えておかなければいけない問題だと思いますし、中期答申にはぜひ組み込んでいきたいと思っておりますので、まことに賛成でございますね。

第1のほうはどうですか。

尾原主税局長

ただいまのお話のございました資料は、次回用意させていただきたいと思っております。

加藤会長

そのほかございませんか。

松本(和)委員

いよいよ中期答申に向けた議論が税調として本格化していただくことになると思います。先ほど自治省の平成11年度答申についての説明がありましたとおり、地方分権の推進に当たって、地方税をどのように充実していくかということが重要な課題であるのではないかと思います。

地方分権推進一括法案について、国会で審議が進んでいることは、地方団体として喜ばしい限りでございますが、衆議院において法案修正がなされているとおり、地方税源の充実は、今回の法案では積み残された課題であると思っております。この政府税調でどのような中期答申を取りまとめていただくか、こういう観点から地方団体はこぞって注目しているところでございます。

充実した税源なくしては、地方に大きな役割分担を求めることは不可能ですし、せっかくの地方分権の流れに水をさすといいますか、竿を差すことになるのではないかというような心配があるわけでございます。いかに地方の税源を充実し、地方分権の実を上げるか、ぜひとも具体的な提案を世に問うていただく場としていただき、我々は残された任期において、大きな一歩を踏み出すべきときが来たというような感じを持っております。

中西委員

この中に書いてあるわが国の財政問題に絡むことですが、私、経済審議会のメンバーでもございまして、経済審議会を踏まえて、経企庁がこの7月半ばごろにまた今年の白書を出すわけですね。これはどういうのが出てくるか興味津々なのですが、この間審議会で、経企庁が「デフレスパイラルの危機は脱した」と、こういうふうに言われたんですね。私は疑義ありと言いまして、現にこの1-3のGDPが1.9%対前年比よくなったということを盛んに喧伝されておりますが、総務庁の3月の全国家計調査は、依然として対前年比マイナスなんですね。ひとつも消費は増えていない。それから、日銀がやはりこの5月だったか、貯蓄率と消費傾向をはじき出した。若年層は依然として年金制度改革がはっきりしないということで、これは消費を引き締めておる。中年は、過剰雇用ということを競争力会議が盛んに喧伝したものだから、結果的にかあちゃんが財布のひもを締めて、「今度はリストラはあんたの番だろう」ということになる。これはまただめと。高年は、これは介護保険がまたついていて、ひょっとしたらこれは実行できないのではないかと、また財布のひもを締めた。消費はほとんど動いていない。逆にマイナスということですね。もちろん民間の設備投資はほとんど動いていない。となると、これはちょっと4-6を見ないとわからないでしょうが、景気は必ずしも、私は産業人として第一線におるわけですが、実感としてもほとんどよくなっていないんですね。

一昨年、私、NHKの日曜討論で、新保経企庁局長が「自律回復局面に入った」とおっしゃって、私は「自分の体感温度はそんなもんじゃない。逆に突っ込んでいっていますよ」ということを申し上げたのをいまでもはっきり覚えておりますが、結果的にひとつも自律回復ではないわけですから、私は大いに疑義があるんです。

となると税制も、経済白書がどういうふうに出てくるのか、それから、4-6のその辺の模様を見まして、景気対策も景気はいいよと、これは自律回復のいいところへ来たよということであるのかどうか。これは私は大いに疑問があると思います。ほとんど消費も動かない、GDPの5割も6割も占める消費がほとんど動いていない、民間設備投資も動いていないとなると、これは楽観していいのかどうかなということを思っています。

となると、その対策として、当然いろいろな問題が出てくるわけでございまして、これはいろいろな議論があるわけですが、税制もやはり1つの大きな景気浮揚のための手段、ツールであるわけですから、当然、例えば今日の競争力会議の資料にもありますが、ベンチャー企業を澎湃と起こすというのを、一体その資金をどこからそれに回すのかという問題。

私はこの間もあるテレビで申し上げたのだけど、俗に国民の預貯金は1,200兆円あると言われている。だけどローンを引くと600兆円ですね。その600兆円のうちの半分以上、350兆円は、60歳以上の年寄りが持っているんですね。となると、この人たちの最大の関心事は相続税ですから、相続税をいかにニューエコノミーのほうへ資金を引っ張ってくるか。となると、例えばいま石原都知事が言っておるジャングボンド市場とか、あるいは自民党でいま検討されている中小企業社債、これもある程度政府保証をどの程度つけるのか、そういうようなものを相続税を持っている人、老人が買った場合に、相続税をある程度減免するといいますか、そういった税制がやはり必要になってくるのではないかなと。ニューエコノミーを育てるということで当然税が絡んでくるだろうということと、景気の浮揚には、私は前から、ここ2年ぐらい言い続けている資産デフレを止めて、企業の土地関連の税制が、ここでどうしてももう一遍俎上に上げて議論する必要が起こるのではないかなと。企業の民間設備投資が一切動かない最大の原因は、私は実感として、みんな企業はバランスシートが崩れたんですね。ですから、資産価値があれだけドンと下がれば、みんなバランスシートが壊れていますから、ほとんど設備投資どころの騒ぎではないわけでして、そこでやはりこの問題が解決していないわけですから、ここをどうするかという議論がある。

景気はこれであたかも1-3のGDPが対前年比よくなったからということで、危機を脱したような雰囲気になっていますけど、私は大いに疑義ありで、そこをしっかり見つめて今後の税調の議論をしていただきたい。

水野(勝)委員

この今後の検討課題の順番でまいりますと、やはり第1番目のわが国の財政の問題、財政体質の問題が一番大きいのではないかと思うわけでございます。このいただいた表でいきましても、今年の歳出は81兆円、税収は47兆円で、これは57%しか税が賄っていないということでございまして、こうした状態が長く続けられるものではないと思うわけでございます。

また、47兆円という税収は、ずっとさかのぼってみましても、昭和62年度の46.8兆円というこのあたりに見合っておる。12年前の税収規模だということでございまして、果たして本当に日本税制は歳出を賄うというその基本的な機能を十分果たしていると言えるのかどうかという基本的な問題があるわけでございます。こうした状態はできるだけ早く解消しておくべきではないか。確かに景気の点はございますが、先般の1月-3月期1.9%、確かに公共投資の効果もありますけれども、半分以上は個人消費支出と民間設備投資が寄与しているという数字でございます。果たしてこれが本当の姿を表しているのかどうか。まだまだこの4-6、あるいは次の7-9を見る必要があろうかとは思いますけれども、税制を中期的な観点から長期的な答申を頭に置いて検討するとすれば、確かに当面の景気の問題もありますけども、やはり中期的な問題であるとすれば、中期的なわが国の財政、税制の基本的な課題をまず検討しておく必要があるのではないか。このように思うわけでございます。

その次の個人所得課税でございます。確かに所得税は控除も大きいし、税率は最低税率が低い。したがって、低所得者にはかなり低い水準になっておるということはございますけれども、所得と消費、これが課税の大きな2つの基礎なのでございますけれども、やはり消費税を導入し、所得から消費に課税のウエイトを置き、実質的な公平を図るという税制改革に踏み切ったわけでございます。所得税の控除は縮減し、課税最低限を引き下げる。最低税率を引き上げるということは、理念的にはそのような方向が望ましいとは思いますけれども、現実的な税制として考えた場合には、やはりそこは消費税の充実でもって対処していく問題、現実的にはそういうふうに考えざるを得ないのではないかと思うわけでございます。

この後ろにあります年金課税、これも一緒でございまして、老年者控除あるいは老年者年金特別控除等々で年金課税はかなり甘くなっている。しかし、これを正面から取り上げて、縮減していこうというのもやはりあまり現実的ではない。ここもやはり高齢者といいますか、お年寄り、消費はかなりな力が発揮されているわけでございますから、そこも消費税でもって現実的に対処していくというのが現実的ではないかと思うわけでございます。

そうした意味におきまして、税制それ自身として所得課税から消費課税という重点の移行ということの結果として消費税がある。消費税をただ単に目的化する、あるいは目的税化して歳出との関連だけで考えるのでなくて、やはり税体系のあり方の中で、確かに所得課税、これを縮減するというか、負担を引き上げるということも1つの選択肢ですが、現実的に考えれば、税制において消費税を充実していくという方向の中で解決されるべきものではないか。したがって、あまり歳出のほうと結びつけての議論だけに引きずられないようにする必要があるのではないかと思うわけでございます。

それから、連結納税の問題ですけども、確かにそういう立法例を持っている国は少なくないわけですけども、課税単位は法人ごとに課税をするという、納税をしていただくという基本原則、ここで急いで大きく変革する必要があるのかどうかということについては、疑問を感ずるわけでございますが、こうした風潮がグローバル化の中で必要だというのであれば、必要な範囲において絞って考えていくということではないかと思います。それは税収の確保という面からもそういった点に配意すべきではないかと思うわけでございます。したがいまして、制度化するに当たっては、例えば、現在ある法人税の軽減税率、こうした制度をどのようにするか、制度自体の適用範囲をどうするか、税率水準をどうするか、こういったことで対処すべき面もあるのではないかと思うわけでございます。

それから、中小法人は65%が赤字であると。赤字であってもそれは継続して経営しておる。それはおそらく同族会社的に構成され、その利益は赤字であっても、役員が報酬等を取っておるということで、経営が続いているという点があろうかと思います。したがいまして、法人との間で連結をするという場合には、それをさらに一歩進めて、所得税とも統合して、そこの同族的な中小法人の役員の報酬等については、役員の賞与と同じような扱いとして、これを損金として全額みるのか、あるいはこの部分を統合して課税をしていくという、そういう面まで発展して考えてもいいのではないか。そのようないろいろな仕組みをこれと一体となって付け加えることによって、連結納税ということによっても、それが有利になるとかそういうことでなくて、合理的な納税をお願いできるような制度に仕組む考え方もあるのではないか。こんなふうに考えるわけでございます。

加藤会長

私も伺っておこうと思って忘れてしまったのですが、いま水野さんが出されました連結納税の問題なのですけど、これは先ほど税制一課長の加藤さんが言われた、競争力対策の(抄)というので見ると、「連結納税制度などについて検討し結論を得る」とありますが、これは今度の8月の国会までですか。

加藤税制第一課長

いいえ、これはまさに大変な基本的な話なので、中長期的な話ということで御理解を。今国会に処理するのは極めて限定的な産業再生法案という通産省の出す立法のいろいろな措置の1つとしての一部企業関係特別措置的なものを盛り込みたいということで、全然次元が違いますので。

加藤会長

わかりました。

石さん、どうぞ。

石特別委員

中期答申というのは、3年ごとに税調が一種の卒業論文みたいに出しているわけですが、これは後世かなり重要なんですよね。戦後日本の財政史を研究するときには、税の面で言うなら、税調の3年ごとのさまざまな問題提起というのがどうしても世の中に残る。党税調のほうは一時力が強かったですけど、あれはすぐ忘れられてしまうんですよね。記録も何も残していないし、そう言っては悪いけど、あまり基本理念もないで、つぎはぎだらけのことをやりますから。

そういう意味では、僕は来年は2000年の5月か6月がターゲットですから、これは非常に時期的にも重要なわけですよ。そういう意味では、21世紀にかけてのガイドラインになるような、そういう高い志を持った中期答申というのはやはりつくらなければいけないのではないかなと思っていますので、そういう視点から2点ほど申し上げたいのですが、1つは、やはりバブル崩壊後の日本経済の構造的不況によって、税制は実態面のほうが先行してしまって、減税、減税で来て、基本的理念もないままに景気を支えるという意味で随分使われてしまったという形ですよね。使われたのはいろいろ功罪あるのでしょうけど、税調としてやることは、税の体系論という形から、過去4、5年、特に我々の任期は3年ですから、3年の間に何が起こったかということをちゃんと整理して、課税ベースを広くして税率を低くしようというのは、ずっと 持っていた基本理念ですけど、片一方だけやられているわけでして、税率が確かに法人税は国際的レベルになったでしょう。あるいは最高税率も所得税も随分下がったでしょう。それはそれでいいのですが、それがちゃんとした基本理念に従ってやられたかというと、そうでもなくて、時の勢いというか、何か政治的影響というか、それでバタバタやられてしまった面もあるので、後追い、事後的で結構なのですが、ちゃんとしたレビューをやっておかないと僕はまずいと思います。そういう意味で、今日の検討課題の中の前の4つ、5つ、それから、地方分権推進と地方税も含めて、国税、地方税にわたってレビューをしっかりするのが私は最大の任務であろうと、それが1つです。

さはさりながら、随分残された問題を我々抱えたまま走ってきたわけです。そういう意味で、総論的なことが終われば、やはり21世紀にかけて早晩解決しなければいけない問題というものを、少し時間的な可能性も追ってちゃんとしっかり書き込んでおくべきであろうと思います。そういう意味では、河野さんがさっきお出しになった自動車税制のグリーン化なんていうのは、全く新しい問題だけれども避けて通れないという新しいタイプの議論のほかに、納番なんてもう10年以上、20年以上と言うべきかな、宿題を抱えちゃって、まだどうしようもなくて、この方向がまだうろうろしておるし、年金は高齢社会でこれから大変でしょうという意味で、ここに書いてある年金、納番、それから事業者税制等々の、これは国際課税の問題ですね。この辺はスペシフィック・トピックスと言うべきかな、個別の税制の中で総論とは別にしっかりやるべきだということを、少しフィージビリティーも含めて書き込む。僕はこの2点がないと、今後のガイドラインにならないし、2000年を期して出す税調としてはお粗末なものがあると思いますので、いろいろ景気等々の議論も必要かとは思いますが、やはりまさに中期答申なのだから、しっかりした長い目で見た税体系のあり方論を議論すべきだろうと私は思っています。

松尾委員

私は財政の悪化が急激に進展しているということについてですけども、これはどうもいまの深刻な事態に慣れ切ってしまって、感覚が麻痺している面があるのではないかと思うのです。ですから、これはどういうことなのかと、いかに重大な問題を将来に先延ばししているかということを、もっと絶えず警告をする必要があるというふうに思います。

ここにいただいた資料によりますと、国と地方の債務残高がGDPに占める比率、これは99年の場合に日本では108.5で、これを上回るのがイタリアが117.5となっておりますけど、日本政府の推計では、これを上回っているわけですね。日本政府の推計では99年度末は119.8になるだろうということで、これはやはりいくら何でも異常であると思うのです。せめてアメリカとかイギリスとかドイツ並みに50%とか60%台に持っていくのが当然だろうと思うわけです。

そういう点から、財政再建のためにいかにして歳入を確保するのか、これはやはり中期答申で最も重視するべき問題だと思うわけです。

97年1月にこの政府税調がまとめた『これからの税制を考える』では、非常にいいことを言っているわけでありまして、「課税ベースをできるだけ広げ、中立性を増す方向」ということをはっきり言っているわけです。これをやはり再確認する必要がある。

さらに税制に人気取り政策が入り込む。何かといっては入り込むのですけれども、これは絶対阻止する必要があると思います。

それから、連結納税制度でありますが、これは親会社は分社化のメリットを考えて子会社をつくっていると思いますが、こと税制に関しては、同一法人として扱うということになりますと、当然国の損失が生じるわけでありまして、この国の損失をどうするか、これはやはり重要な視点になります。

さらに、企業の欠損金の取扱い、要するに連結納税制度で損益通算ということになりますから、欠損金の取扱いにつきましては、法人だけでなくてやはり個人の問題も含めて検討する必要がある。そうしないと、バランスを著しく失することになると思います。したがって、十分慎重に検討する必要があると思います。

それから、河野委員が自動車税の見直しの問題を取り上げられたのですが、環境税というのは政府税調でも絶えず検討課題として来ているわけでありますから、これはもっと本格的に取り組むべき時期に来ているのではないかと思います。

松田特別委員

この今後の検討課題ということで、9つ挙がっていて、これにどれだけ拘束されるかというのはよくわからないそうですけれども、こういうふうにタイトルで挙げるとすれば、消費課税というテーマが出ていないというのは、やはりちょっとおかしい感じがしますので、こういう格好で整理をするなら、消費課税というのを1項目立てるべきではないかと考えます。

中西委員

たびたび言って申しわけないですが、中期答申の問題ですね。これは石委員がおっしゃったのと全く同感でして、わが政府税調として、まさに歴史に残るものですから、一番大事なところをピシャッと言わなければいけないと思いますね。先ほどの私の意見は産業人として喫緊の景気の問題を申し上げたけど、今度はぐっと長期の格調高いあれで、石さんと並んでますので、これは申し上げたいと思うのですけど、やはり私は、前々回申し上げた、地方がいま財政が逼迫しておる、だからどうのこうのという目先の意見ではなくて、あのとき地方交付税交付金の問題の見直しをやれということを申し上げたのですが、やはり一言で言えば、中央政府と地方政府の行財政システムをここで抜本的に見直す。もう1つ突っ込んで言えば、やはり自治体に課税自主権を認めるという、そういう方向の答申をやはり税調として出していくべきなのかなと。いつからやるかは別にしましてね。そうしないと、私は地方自治体には、成瀬さんにもこの間申し上げたけど、地方には恐るべき無駄があると言ってもいいのではないか。いろいろな無駄がまだあるわけですよね。その原因の第一は、やはり課税の受益と負担が一枚岩になっていないところからそういうことが起こっている。だからこれはやはり課税自主権を持ってもらって、そして、サービスを受けるには腹が痛むのだということを、県民なり市民にしっかりと知らしめるという、そこのカーブをきちっと切らんと――社会主義的な広くあまねく公平・平等に、財政力指数の低いところほど手厚く交付税交付金をばらまくというその社会主義的な哲学をここでぴしっと変えるというのが、石さんの言われる格調高い中期答申のポイントではないかと、こういうことをちょっと一言申し上げておきます。

岩瀬特別委員

金融ビッグバンと金融関係税制のあり方という観点から一言申し上げたいと思うのですが、昨年の12月に金融ビッグバンの法制度が整いまして、自由化、規制緩和を主軸としました欧米型の改革が本格的に動き出したわけでございます。こうした流れに合わせまして、金融関係税制につきましても整備されてきてはおりますが、これからは中期的な観点から、なお一層金融関係税制を見直しまして、つくり直していく必要があるのではないかと思います。

それがビッグバンの結果、これからは金融商品のメインである預貯金の比重が傾向としては低下する一方、異なるリスクを持つさまざまな金融商品が登場いたしまして、浸透していくという事態が予想されるわけです。これまでの金融所得課税の議論は、総合課税化の流れをベースとしながらも、現実には所得の把握体制とか執行面から、分離課税を適用することが実質的な課税の適正化とか公平性を確保する上で適切であるということで進められてきたと思います。そうは申しましても、現行制度の枠組の中で、現実的・実務的とされました金融商品ごと、あるいは所得分類ごとの課税方法がこれからもそのまま生かせるのかどうか、不適正が起こらないかどうか、今後さまざまな金融商品が登場してくるだけに、こうした問題についても検討する必要があるのではないかと思うわけです。

このビッグバンが本格的に進展する中で、1つの考え方といたしましては、さまざまな金融商品から生じる所得を金融所得として統一化、類型化して、できるだけ横断的な、そして同一の取扱いをするような課税方法を考えていく必要があるのではないかということ。また、同時に金融所得の範囲に限定した形で譲渡損益を通算する方法なども輪番制の導入とあわせて検討していく段階にすでに入っているのではないかと考えております。この小委員会とかワーキング・グループにおかれましても、ビッグバンが本格的に進展する現在、このような包括的、横断的な視点からこれからの金融所得税制につきまして御検討いただければ大変幸いだと思います。ひとつよろしくお願いいたします。

塙委員

先ほど自動車の税制の話が出ましたので、自分のところの業界のものですから、一言だけあれしたいと思いますけど、環境をよくするために税金の体系が考えられるというのは、私どもも大賛成でございまして、ぜひそうあるべきだと思いますけども、いまなかなかスムーズにいかない1つのあれは、あまりにもいままでの税金が取りやすいところから取られ過ぎている。全体の公平性を欠いているのではないかというのが1つ感じられるということであります。

自動車については、数え切れないくらいのたくさんの種類の税金が課されているわけでありますけども、ガソリン税なんかも含めればそうですけれども、車が非常に税金が取りやすいときに次々といろいろな税金をかけてきた。先ほど、計画と実際の徴収の比率が非常に低いというのがありましたけど、昨年と同じぐらいの88でありながら、実際に74だということは、やはり計画が少し高過ぎる、つまりそれに現実が追いついていかないところだと思うのですけれども、いずれにしましても、あまり複雑な税体系のままその新しいものを組まれても、全体についていけないということではないかと思います。したがいまして、少し税の種類や体系をシンプルにしていただいて、目的が非常にすっきりして、合目的的に税金が取られるということだと、全体が納得いくのではないかと、これは地方税についても同じようなことが言えるのではないかと思います。

平田委員

中長期の税制問題で御論議をいただいているわけでありますけども、一番最初に財政問題が書かれておりまして、その財政問題を長い間いろいろ皆さんで御検討いただいているわけでありますけど、いっこうに解決をしない。すなわち歳出の方が圧倒的に多いといういまの状態は、なかなか一遍には解消しないですね。それについて税制調査会が歳出まで云々するということは、なかなかできないわけでありまして、税制を言っていくということになると、どうなのでしょうか、いまの日本の力というのでしょうか、国民所得であるとか、国民総生産とか、それからいまの経済状態とか、そういうものから日本のいまの所得課税とか住民課税、その他課税客体はいろいろつくっていますけれども、この中で税収というのはどの程度が1つの上限であるのか。また、適当な値なのか。そういうことを言っておく必要はないのかということなんですね。それでないと、歳出の金額が大きいから、ある意味ではそれに近づけるためには、税収を上げなくてはなりませんから、歳出が切れなければ税収を上げる。税収が止まっているなら歳出を切らなければならん。そういう論議だけで何年間もお話をしていても、なかなか解決はしないのではないか。ある意味では、我々は税制の専門家集団でありますから、いまの日本の国の1つの経済的価値といいますか、経済的な力から生み出される税金の額というのは一体どのぐらいが上限なのかというようなことが多少理論的に追求できないものかなという気がするわけであります。それが1つ申し上げておきたい点でございます。

それから、もう1つは、国民全部が納税の義務を負っているということが1つありますね。それから、所得課税、消費課税が中心でありますから、そういう事業体が1つの課税客体になるわけでありますが、その両者を含めて、税金のかかっていない集団が随分増えてきているという現状ですね。これをやはりぜひ解決をしておく必要があるだろう。だから、税金のかからない、例えば赤字法人が、同族法人が多いのでしょうけれども、65%になるということ、それから、課税最低限の非常に高くなっている段階で、個人の方が非常に税金のかからない集団が非常に増えているということ、こういう2つのことは、何か税制の上で手当てをしておくべきではないか。それがどういう方法かということは、いろいろな方法があると思うのですけれども、やはりそういうことで多少先ほど申し上げた、日本の国としてこれだけの税収は確保しなければならんという数字に多少でも近づけるような、そういうメッセージを税制調査会が出すべきではないかなと、大変大きい話で申しわけないのですけれども、そういう感じがするわけであります。一応ちょっと申し上げさせていただきました。

今野委員

ちょっと違った話をして申しわけないのですが、いま6つほどの公益法人の理事とか評議員をやっておりまして、いつも思うことなのですけれども、非常に大企業さんがやっておられる立派な公益法人なんかでも、毎年赤字を出し続けておりまして、私はそれは本当に不思議に思いまして、いろいろ聞いてみますと、まず利益は上げてはいけない、それから、内部留保を増やしてはいけない、そして、これだけ10年ぶりに株が上がっているにもかかわらず、株式を保有してはいけない。2年ぐらい前から例外的に保有してもいいことになっているようなのですけれども、ともかく、がんじがらめで、しかもそれなのに、次はこの建物を建てなさいとか、こういう施設をつくりなさいとか、考えてみると、すばらしい知恵のある経営者がたくさんいながら、そういう知恵が一切出させてもらえないような仕組みで公益法人というのが動いている。全部でないかもしれませんが、少なくとも私が参加している6つぐらいのところは、ほとんど似たり寄ったりのようなことになっています。

それを考えると、ともかくなぜそんなに干渉するのかと。しかも干渉するだけの知恵と経験がある方が干渉なさるのだったらば、それは干渉でなくなるかもしれませんが、少なくともその理事たちのほうがはるかにいろいろな経験を積んできて、いろいろな知恵を持っているにもかかわらず、そういうのを一切発揮させないで、鳴かず飛ばずというか、どんどん疲弊させるような方向に行っていると私の目には見えて歯痒くてしようがないのです。ちょっと言い過ぎかもしれません。いつもちょっと言い過ぎますけれど。そういうことが地方の問題にもあるのではないかと思います。いつも「地方の財政基盤の確立のために」とか、「都道府県の税収の安定化のために」とかという言葉が随所に出てくるわけなのですけど、先ほど中西さんもおっしゃっていましたけれども、これはいま本当に知恵の時代ですから、地方は地方でぎりぎり知恵を出して、自分たちの地方は自分たちの手で守る、発展させる、知恵のないところは、それは当然のことですけれども、瀕死の重傷も負うでしょうし、そういう瀕死の状態になってみて初めて出る知恵とか活力とかというのも絶対あるわけですから、そこを何とかして安定させよう、確立させようと思うところで、外形標準課税とかいろいろな案も出てくるのかと思いますが、ここは一度本当に抜本的に、お互いに主体的にもって生きる、それから、リスクとリターンということはどういうことなのかというのを、国も地方も個人も企業も、みんなでいま味わう絶好のチャンスのときではないかと思っていますので、ぜひそういうふうに考えて税制もやっていけたらなと思っております。

橋本特別委員

産業力強化対策に伴う税の面の対応ということにつきましては、基本的な税の枠組に関する事柄については、8月の再生法案にはとても時間的にも間に合わないから、技術的に解決できるごく限られた範囲内のものについて当面考えると、こういうお話であったわけなのですが、この産業力強化対策の中で、会社分割制度というのが次期通常国会において導入をするということがはっきり書かれておるわけでありますので、少なくともそれとタイミングを合わせて会社分割に関する税制対応というものを、どういうふうに考えていったらいいのかという議論は、やはりやっていく必要があるのではないかと。やる場としては、法人課税小委員会でやるのがいいのか、よくわかりませんが、そういうふうに思います。現在の税制の枠組の中ではちょっと処理し切れない問題ではないかなと思います。

尾原主税局長

会社分割について一言申し上げますと、商法のほうがこの会社分割というのを改正して、入れることになっているのはそのとおりでございます。したがいまして、税制のほうもこの会社分割の税制、商法の改正を受けまして、同じ対応をした税制をしていく必要があるというふうに我々は考えているわけでございます。

ただ、一言だけ申し上げておきますと、税制は商法のほうの分割の仕組みが一体どうなるのだろうかというようなことを踏まえませんと、この税制で仕組めないという問題が1つございます。

それから、改正としては大変ボリュームの大きい改正になるのではないかと予想しているところでございます。いずれにいたしましても、この商法が改正になれば、税制でも改正していくということかと思います。

大澤委員

いわゆる中期答申に関連して一言申し上げてみたいと思ったのですが、先ほどの税収見通しの説明を伺いながら思ったのは、私が漠然と考えているのは、税制というのは現実の社会というか、経済社会と全くぴったり一致してあるというのは、ほとんど難しいことであって、現実の社会の動きより半歩遅れるというか、ちょっとずれて遅れて行くと。ただ、経済社会の現実と税制というのは、あまりかけ離れるとどうにもならなくなってしまうということは当然なのですけども、どうも税収減というのが景気の動向以上に当然広がってきている。つまり現実の経済社会と税制とのギャップは非常に拡大している1つの姿が今度の見通しなんかにも反映されているのではないかなと思ったのです。

中期的な税制のあり方ということで、先ほど何人かの方がおっしゃられた話に関連するわけですけれども、要するに、例えば財政収支とか、それの中での税収のあり方とか、そういう問題になってきますと、いまの変化というのを、どこまでの広がりとインパクトを持っているものか、ということをどうとらえるかということをまず確定してかからないと、非常に減速経済時代の税制の手直しといったような理論的な手法を積み重ねていく、繰り返していくというようなことにどうしてもなってしまう。現実問題として、税金というのは、払う側からすれば、少なければ少ないほどいいというのは当然のことですから、税制の改正によって税の負担が増える側からは常に反対が当然あって、それは避けれないことだと思うのです。

その場合でも、大げさになりますけれども、国に対してどこまでを期待するのかという問題を含めて、一種のトータルなこれからの社会像といいますか、経済社会のトータルなビジョンというものがあって、それをベースにした各論というのがしっかりと組み立てられる。そういう形で議論を進めないと、いわゆる大衆社会的なメカニズムの中で反対の波に押しまくられる。例えば、外形標準課税でもすでに非常に強い反対の意見があちこちから起こっておりますし、当然税の負担が増えるということに対して、個別の反対というのは常に起こるわけですけれども、まず1つ税調という機関が行う議論としては、ちょっと行き過ぎではないかということは当然あるかもしれませんけれども、やはりトータルなビジョンというものをきちんと前面に押し出す。その上で各論を精緻に当然積み上げていく。そういう形で進めることによって、多少でもアピールの力を強くできるのではないかなと思うわけです。これは非常に難しいことだと思いますし、そう簡単なコンセンサスが日本全体で得られていない問題でしょうから、それを税調でそんなことできるかということが十分考えられるわけですけれども、一応そういうこともちょっと念頭に置かざるを得ないのではないかなと思いましたので、一言だけ。

和田委員

前回税制調査会を欠席いたしましたので、十分に今日出されております課題について、一つ一つ申し上げられるだけまとまってもおりませんが、何点か気がついたところだけ申し上げます。

1つは、わが国の財政、歳出と税収と拝見しましても、やはりこれだけの開きというのは、慣れてしまっているというお話がさっきありましたけれども、確かに慣れてしまっている面もあるけれど、確実に自分たちの子供たちなり将来への負担というところへ流してしまっているということを、もっと厳しく受けとめなければならないなということを痛感しております。

それともう1つ、国であっても地方であっても、まだまだやはり歳出の削減、これが大きいものでなくても、小さいものの積み重ねで、まだできるところがあるのではないか。そういう見直しがさらに必要ではないかなということを感じております。

次に、個人所得税ですが、課税最低限あるいは税率が外国に比べてということがよく言われますけれども、そこの生活の質ということを考えましたときに、やはり日本の生活の一番基本的なところの物価ですね。内外価格差は一時よりは小さくはなっておりますけれども、やはり生活必需品的なもの、毎日買わなければならないもの、というところの値段はまだまだ高いということがありますので、その辺も、単に税率なり金額だけを比較してどうのこうのということではなく、もう少し広く見なければならないのではないかなということを感じております。

それから、もう1点は納税者番号制度、これは本当にずっと何年も出てきている問題ではありますけれども、この8ページにありますように、「国民の理解がさらに深められるよう」という、理解のところの議論をするところまでなかなかまだ行き切っていないというのが現状ではないかなと。「納税者番号制度」という言葉はやっとみんなのものになってきて、話としては出るのだけれども、本当にまだ議論というところまでいっていない面があるのではないかな。ですから、ここにありますような、一番気になりますプライバシーの保護というところあたりを、もっと具体的な問題を出しながら、みんなの問題として議論ができるような方向、何をいまさらとおっしゃるかもしれませんけれど、やはり一般の人の中で話をしてみますと、その程度ではないかなというような気がしております。

それから、環境問題のグリーン化の問題は、先ほど自動車のCO2の排出量に従っての税率のいろいろな対応のお話が出ておりますけれど、この問題だけではなくて、やはり環境のグリーン化、いろいろな項目がこれからも出てくるだろうと思うのですけれども、そういうものについて、やはり時間をかけて考えていく必要があるのではないかなと思っております。

加藤会長

局長にちょっと伺いたいのですが、納税者番号で、今度国会で住民番号が通りましたね。

成瀬税務局長

まだ通っていません。いま衆議院を通りまして、参議院で審議中ということです。

加藤会長

そうですか。何かあれは付帯条項がついているのでしたか。納税者番号はいけないとか。

成瀬税務局長

いま出しております住民基本台帳法の改正案は、行政機関が処理している情報についての番号化ということで、直ちに納税者番号制度に使えるという仕組みにはなっていないわけですけれども、それでありましても、今回の国会論議でいろいろ問題になりましたのは、やはり包括的な個人情報保護法案といったようなものの制度化が前提ではないかということで、ほぼそれに近いような形で、附則に1条が設けられたということで、衆議院を通過しまして、参議院でこれから審議が行われるという段階でございます。

加藤会長

納税者番号に適用してはならないということになるのですか。

成瀬税務局長

今回の法案は直ちに納番を意識しているということではなくて、転出入届とか、そういったものが1回で済みますとか、いろいろな各種の証明書をもらうときに、従来ですと住民票とかなんかを持ってきてくださいということになるわけですけれども、そういった手続きを踏まないで、番号制度が制度化されれば、役所の関係の手続きが非常に簡便に済むというようなメリットがたくさん出てくる、そういう内容の法案でございます。

加藤会長

それはわかるのですけど、前に税調総会でいろいろヒアリングしたときに、住民台帳の番号ができたらば、それを利用して納税番号に利用できるのだという話がありましたよね。これは否定されていないのですか。

成瀬税務局長

それは否定されていません。ただ、いまの法律の制度のもとでそのまま使うという形にはなっておりませんので、将来的にその番号を活用していろいろ納税者番号制度にも生かしていくということであれば、別途の工夫をして導入を図るということかと思います。いま申し上げましたように、納番につきましては、住基の番号を使うということであれば、別途法律改正が必要ということになります。その際にまたいろいろ御審議をいただいて、どうあるべきかを議論していただくということになろうかと思います。

和田委員

ちょっと1点よろしいですか。ここで質問することかどうかよくわかりませんけれど、実は地方振興券がありまして、これだけの金額が果たして意味があったのかどうかというこの議論は別としまして、地域振興券を各地方自治体で配りますときに、これは私何かの報道で見たのですけれども、子供はわかりますけれど、高齢者に配布するときに、その個人の税務情報を地域振興券を配るときに使った地方自治体と、それから、税務情報はあくまでも地域振興券をこの人が対象かどうかということを判別するときの材料として使ってはならないという考え方で、使わなかった地方自治体とがあると。使わなかったがために、自分が資格があるかどうかということで、資格がありながらその辺のところが的確に判断できなかったマイナス面はあるかもしれないけれども、税務情報をそういうところに使うのは妥当ではないというので使わなかったところがあるというような報道を聞きまして、いまの納番と直接関係があるわけではありませんけれども、その辺のところは地方自治体、例えば東京都の中でも区によって違うというような報道をしていましたもので、その辺がどうなっているのかなということは、いままとめて一概にこうですというお答えをいただくのは無理かもしれませんけれども、わりと関心を持ってその辺のところを見ている人が多いものですから、ちょっと聞かれまして、どういうことかなと思いながら質問させていただきます。

桑原企画課長

直接自治省の税務局で地域振興券を担当したわけではございませんが、御質問に答えられる範囲でお答えしたいと思っております。

基本的に地方公共団体の税務当局が課税事務を執行するに当たりまして把握しました個人の秘密に当たる事項は、これは税務事務のみに使うということになっておりますので、おっしゃったようなほかの部局にその情報をストレートに渡すということはできないことになっております。

今回の地域振興券につきましては、65歳以上の方につきましては、例えば住民税の納税義務がないこととか、いくつかの税に関する要件が付せられていたわけでございます。それぞれの市町村においては、どういうふうにそれを把握するかということ、いろいろ工夫してやったわけでございますが、例えば御本人から非課税であるということを申告してもらう、その証明書を出してもらうとか、あるいは地域振興券を配付するに当たって、課税情報を自分については地域振興券の担当部課が税務当局からもらってよろしいという同意書を出すとか、いろいろな対応があったかと思いますが、考え方は最初に申し上げましたとおり、税の情報は税だけで使うということで対応しているところです。

河野特別委員

相続税で極めて素朴なことをしゃべりたいのです。笑われるかもしれないと思うのだけど。住宅対策のために、たしか1,500万円まで生前贈与の税率を大幅に今度まけましたよね。いままで1,000万円だったのを1,500万円にした。それがいまの住宅の若干の高揚にどの程度役立っているのか、ほかにも金利もあるし、いろいろな要素があってのことだと思いますけど、統計がないものだからよくわからない。

何が言いたいかというと、さっき中西さんがちょっと言っていたけれども、個人の金融資産というのは膨大なものがある。借金を引いてもかなりありそうだと。ところが、これはいつか税調でも大蔵省から出した資料の中にあったけども、かなり高齢の人たちが相当持っているんですよね、その比率は。いろいろな説があるだけで、正しいことはわかりませんけどね。実物資産と金融資産と、かなり持っていそうなんですよ。金融資産はたくさん持っているのだけど、私ももう数えで70歳だから、いいかげん年寄りなのだけども、考えてみるとそんなに買うものがない。家はあるし、車は持っていないし、ネクタイはもうたくさんあるから要らないし、背広は腐らないし、女房と2人で金の使いようがないんですね。といって僕は金があるということを言っているんじゃないんですよ。実際そうなんですよ。つまり消費性向が低いということを言いたいんです。

私は娘が3人いて、孫が6人いて、つまり生前贈与の話ですよ。大蔵省の説明によれば、生前贈与は年間60万円まで無税かな。60万円がいつ決まった金額で、当時物価水準がいくらだったか知らないけど、いかにも古い話がまかり通っているなと。何もそれを1,000万円にしろとか言っているんじゃないんですよ。短期の経済対策のために減税をやるよりも、お年寄りから生前贈与を子供にどんどんやらせて、これは消費性向が高いから、来たら使うわけだ、実際は、娘も孫も。そのほうが景気振興になる。我々所得税の減税なんかやる必要はないのだという議論まで拡大はしないけど、死んだときに70%を65にするとか何とか、死んだあとの話はどうでもいいと。生前にちょっとでも金を回せば、孫も娘も喜ぶかもしれない。生きている間にね。60万円で抑えることはないではないかという気がかねがねしているんです。これは財界の中でもお年寄りになんかに聞くとみんな同じこと、「河野さん、そのとおりだ」と言うのだけど、どうも言って恥ずかしい話かどうかよくわからない、この話は。というのでいままで黙っていたのですけど、これもしかし年末までの、相続税も1つの対象ですから、議論の1つではないかという気がするだけで、あえてちょっと申し上げておきます。

加藤会長

大変共感を得るお話でして、ぜひ検討したいと思いますね。

今日いろいろと御意見を伺ってまいりまして、もしよろしいようでしたらば、今後の進め方について申し上げておきたいと思うのですが、まず個人所得課税のあり方につきましては、昨年10月に基本問題小委員会のもとに2つのワーキング・グループができまして、そして検討したのでございますね。そこで、さらにこれを秋以降に深めていこうと考えておりますので、基本問題小委員会は来月に再開したいと考えております。中期答申に向けまして、個人、法人の所得課税以外の問題も含めまして、税制全般にわたる幅広い問題について、いまの相続税も含めまして、検討をしていきたいと考えております。

具体的には7月6日、午後2時から大蔵省本庁舎の4階第4特別会議室、部屋は変わりますが、ワーキング・グループと合同で開催したいと思っております。したがって、基本問題小委員会においては、本日の皆さま方の御意見を踏まえまして、さらに中期的な答申に向かっての基本的なコンセプトを検討していきたい。こういうつもりでございます。

それから、さらに連結納税制度につきましては、この検討を法人課税小委員会に来月改めて再開していただきたいと考えておりまして、小委員会のメンバーはこれは基本的に従前の委員に引き続きお願いいたしますし、若干の異動がございますので、次の総会で御紹介をしたいと考えております。具体的なこの法人課税小委員会の開催日程は、いまのところ7月13日火曜日の予定でございます。基本問題小委員会が7月6日の火曜日、それから、7月13日の火曜日が法人課税小委員会。

今後、これらのワーキング・グループ、小委員会で検討いたしましたものを順次総会にフィードバッグしてまいりまして、そして総会で皆さまの御意見を伺ったあとでこれを小委員会、ワーキング・グループにまた検討してもらう。こういうような形にして、中期答申へ向けて進んでいきたいと考えております。

地方の法人課税につきましては、先ほども申し上げましたけれども、地方法人課税小委員会で報告書を取りまとめることになっておりまして、この最終的な取りまとめを行っておりますけれども、次回の総会でその報告を受けたいと、こういうふうに予定しております。したがって、次回の総会は7月9日でございますね。7月9日に午後2時からこの場所でもって開催したいと考えております。立て続けでございますけれども、7月、まず6日があって、7月9日があって、それから7月13日と、全部の委員会それぞれ分担されている方はよろしいのですけど、全部に関係のある方は全部お願いすることになります。

7月6日は午後2時からでございます。大蔵省の第4特別会議室で行います。それから、7月13日は午前だそうです。午前10時からということであります。それから、7月9日の総会は午後2時から本日と同じ場所で行います。ということでございます。大変立て続けでございますけれども、よろしくお願いをしたいと思います。

それでは、今日はどうもお忙しいところありがとうございました。

〔閉会〕

(注)

本議事録は毎回の総会後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、大蔵省主税局及び自治省税務局の文責において作成した資料です。

内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。