第33回総会 議事録

平成11年5月25日開催

加藤会長

それでは、ただいまから税制調査会の第33回総会を開会いたします。

本日は、まず初めに、来月に報告を取りまとめる方向で審議を続けていただいております地方法人課税小委員会の検討状況について、石小委員長から報告を受けまして、皆さま方の御意見を伺いたいと思います。

そのあと、昨年末の年度答申で指摘いたしました「今後の検討課題」を含めまして、今後の税制調査会の審議の進め方について自由討議を行いたいと思います。

途中で石小委員長は御用事で退席されますが、そのあとももし御意見があれば、続けてやっていきたいと思っております。

それから、初めに地方法人課税小委員会の審議状況の報告を受けたいと思いますが、小委員会における審議状況については、前回4月23日にも石小委員長から御報告をいただきまして、総会の皆さまから御意見を伺いましたが、その後も小委員会が精力的な検討を行っております。この間の審議状況と報告の取りまとめに向けた今後の審議の進め方について、石小委員長から報告を受けたいと思います。よろしくお願いいたします。

石特別委員

それでは、若干のお時間をいただきまして、12回、13回、14回と3回分御報告させていただきます。

4月23日に行いました総会で、それ以前のことはすでに御報告済みでございます。お手許に「地法小13」「地法小14」というのがございます。「12」は多分お手許にもう渡っていると思います。これは11基準をある種の順番で並べたのですが、一応可能な限りの物差しを整理したという意味で11基準をつくりまして、それが最初に具体化に入った第一歩として、12回目の会合でこの議論をいたしました。その中には資本金とか収入とか経費とか物的要素とか人的要素とか付加価値とか、さまざまなあり得べきことを全部網羅したという形でありまして、まだ荒削りの議論でありまして、それからだんだん絞り込むという形で、13回目、14回目のたたき台という構想に入ったわけであります。したがいまして、13回目、14回目で行いましたことを御説明いたしますと、だんだんこの議論がある方向に向かっているなということがおわかりいただけるかと思います。したがいまして、それにつきましてごく簡単に御説明を申し上げます。

「地法小13」(外形標準課税に関する議論のたたき台について)というのをちょっとお開けいただきたいと思います。たたき台でありまして、文字どおりここに入っているものにすべて絞り込んだということではなくて、ほかにも考え得ることがあれば、十分拾い上げたいと思っているという意味でのたたき台でございます。そういう形のものとして御理解いただきたいと思います。

一応、作成の基本的考え方が1ページ目に載っておりますが、やはりなぜやるかということを絶えず頭に入れつつ議論をやっております。つまり、具体化の問題が出てきて、何を選択するかというほうに走りますと、本来のそもそも論の、今回我々の小委員会に課せられた任務なんていうものがちょっと逸脱したところで議論がされがちなときもございますので、やはり今回は地方税の中の府県税の基幹税であります法人事業税、これがいろいろ問題をはらんでいるので、その抜本的な見直しをしたいという視点から議論を起こしているというのを絶えずチェックしながら議論を進めております。

そこで、やはり事業課税に対する応益課税という性格が明確になるような課税ベースがいいだろうし、かつ、現在景気変動でかなり振れてしまうような、そういう景気変動にある意味で弱いといいますか、不安定だという点を直したいという意味で、応益課税と税収の安定性というのが必要であるというのが2つの大きな狙いであり、それから外形基準という具体的な選択に入ってくる。具体的な選択については2つあって、1つは普遍性の高い基準であることが望ましいということと、やはり税務執行上、簡素で円滑にできませんと、府県税のほうの税務執行に問題があるという意味で、具体的にはその2つを考えております。

そこで、2ページ以降はその絞り込んだことが書いてございますが、一応、11の基準の中から4つ選んでまいりました。単体であるものもありますし、組合せの場合もありますし、組合せの場合も物的なもの、人的なもの、あるいは資本的な要素のもの、さまざまなものを考えますが、まず、最初が3ページ目に書いてございます事業活動によって生み出された価値(付加価値)ですね。この加算型のが1つ有力な候補になるだろうということで、ここに書いてございますように、所得、給与総額、支払利子、賃貸料、こういうものを重ね合わせたものを課税ベースとしようと。これはシャウプ税制以降の一連の流れの中で、有力な候補としてこれまで残ってきたものでありますので、いうなればスタートラインとしては当然この議論から始める必要があろうという問題意識を持っております。具体的にはどういう形で計算するかというのもこの括弧で書いてございます。それから、4ページの別案で書いてございますが、加算型ではなくて、控除法もあるのではないかという議論もいたしております。これにつきましては後ほど申し上げますが、地方消費税との絡みもありまして、なかなか難しい問題も含んでいるというふうに我々は理解しております。第1が付加価値、加算型ですね。

それから、第2案が5ページに書いてございますが、給与総額。これは総額でございますから、俸給・賃金、賞与、退職給与引当金等々すべて合計したもので、いうなれば賃金税みたいなものになるだろうと。これは外形ですね。そういう形で考えたのが2つ目。

それから、3つ目が6ページの事業所家屋床面積と、いうなれば給与総額を組み合わせる。物的なものと人的なものとを組み合わせて、課税ベースというものを想定しようというのが3つ目のケースであります。ただ、事業所家屋床面積という、まさに何平米とか、そういう形でやるという考え方もありますし、別案としては、単なる平米でやったときに、北海道の1平米と東京の1平米は多分かなり意味が違うのだろうという意味で、これはマネーバリューにしたほうがいいのではないかという意味で、別案には書いてございますし、それから、家屋のみならず償却資産というのも入れるべきではないかという選択肢もございますし、あるいは次をめくっていただきますと、7ページにちょっと書いてございますが、減価償却という概念でいわゆる資本の貢献分も入れてもいいのではないかという話もございます。いくつか変形があるだろうという、これが3つ目ですね。

それから、4つ目が資本金等の金額という形で、今度は各企業、事業体が持っております資本金、これは積立金も含みますし出資金も含みますが、それと、あるいはまた各県内にある事務所、これは物的資産になると思いますが、事務所の数も合わせた形で、いうなれば一定の税額を課してはどうかと、こういう4つの案を考えております。

これが大体絞ってきた4案でございまして、これにつきまして9ページ以降論点が書いてございますが、今日は主といたしまして、今日というのは午前中やりましたけど、この9ページ、10ページ目に書いてあります『「議論のたたき台」の検討に当たっての主要な論点』をもうちょっと本格的に整理して、今日、「地法小14」という資料で午前中議論を重ねてまいりました。

そこで、『議論のたたき台[1]~[4]の検討に当たっての主要な論点について』という次の資料を御覧ください。

こういうふうに4つ絞ってきまして、具体的に今度は課税ベースにして、課税ベースの具体的な範囲を決めてどうしようかというときに、さまざまな論点があるじゃないかということで、各ケースごとに1ページ目から6ページまで論点のポイントが出ております。

そこで、まず最初1ページ目を御覧いただきますと、現行ありますのは所得基準でございますが、これはいうなれば利潤でありまして、利潤と言ったときに益金から損金を控除した金額が適当であって、欠損が出たときに欠損を他の要素と控除してもいいかどうかなんていう議論があったり、あるいは給与総額の場合に、できるだけ広い範囲で給与をつかまえるという意味で、先ほど申し上げましたような項目を入れましたが、ただ利益処分による賞与の場合は、給与総額に含めないのがいいのではないかとか、いろいろここで選択肢があるわけですね。

それから、2ページ以降も、付加価値という構成要素について支払利子とか賃貸料、これを計算するときに金融業とか不動産貸付業の場合の各々支払利息や賃貸料は若干性格が異なるじゃないかという話とか、国境税調整の問題とか、いくつか論点になることをここにメモしてございます。

それから、3ページは給与総額ということでありますから、加算型付加価値の中の給与ということでありますが、ただ、給与総額を単一のものとして掴んだときには、おそらく雇用に対する影響というのはかなりあると思いますので、この辺をどう配慮するかという議論がこの3ページの(2)で書いてございます。

それから、物的な物差しとして事業用家屋床面積等を入れたときにはどんな点が問題かというのが、4ページあるいは5ページにかけて書いてございます。物的基準と人的基準をどう組み合わせるかというこの組合せを考えたときには、相互のウエイトがどうしても問題になりますね。

それから、自己の事業に付しているのはいいのですが、借りてきている物件はどうするかとか、所有者と占拠者の場合の関係をどうするかとか、いろいろ議論としては、その辺をしっかり整理する必要があるだろうというのが論点でございます。

それから、6ページには[4]の資本等の金額で書いてございます。とりわけ既存税制の関係がちょっと触れられておりますが、その問題も多分あるでしょうし、それから、事業活動の規模に合った税負担という形で資本等をとったとき、どういう形にし、かつ事務所等が県内にあったときには、それも入れてかけるべきではないか、かけないべきではないか、という議論が多分残ってくるのだろうと思います。

こういうポイントにつきまして細かい議論をいたしたあと、実は7ページ以降に若干の計算結果を付け加えてございます。4通りのケースに分けて、現行の法人事業税を新しい外形標準に4通りにスイッチしたとき、各事業体、各業種別にどのような変動が出てくるかどうかというのは、ある程度検討をつけなければいけませんので、事務局にお願いいたしまして、数字は用意していただきました。

そこで、7ページを見ていただきますと、その一番根っこになる外形基準の変動が出ておるのですが、7ページに出ておりますのは、いうなれば一番変動の激しいのは当期純利益でございまして、これがいうなれば現行の所得基準。これをベースにして一定の比率をかけておりますから、法人事業税は非常に振れが激しいわけです。景気のいいときには非常に入ってきますが、だめなときは、バブル崩壊後の平成2、3、4、5年あたりで急激な落ち込みを示しております。これがいうなれば地方の府県税、基幹税としてどうも不安定な税収しかあげられない欠陥の1つとされているわけであります。

そこで、付加価値以下、給与総額、事業所床面積等の物差しが6つ当期純益以外に書き込まれておりますが、これは変動が明らかに密集しすぎていてどの線がどれかわかりにくいのですが、この変動が極めて少なくなったということが一目瞭然かと思います。先ほど申し上げた4通りの物差しというのは、このような変動が少なくなった外形基準をいくつか組み合わせてやっているというふうに御理解いただきたいのですが、まずこういうものを使って外形基準をやると、税収が安定するなということは、こういうことでお読み取りいただけると思います。

それから、9ページに実はファクト・ファインディングだけ整理いたしました。と申し上げますのも、いくつか試算はしてもらったのですが、データが完全にとれないこともありますし、それから、1990年代に入りますと、毎年極めて経済の変動というのが振れが大きくて、どの年次をとるかによって結果が大分違ってきます。と同時に、業種間のいろいろな特色もありますし、マクロ的に見た数字が即個別の企業の税負担をあらわすというわけでもなさそうだと。当然ないわけでありまして、そういう意味で、数字が一人歩きするのは大変困るという危惧を持ちまして、今日は生の数字はお知らせしておりませんが、大体のファクト・ファインディングスはここに書いてあるとおりでございます。

どういうことかといいますと、当然のこと、所得基準つまり利潤基準から課税ベースを広げるわけですから、収益がこれまで多かった企業は外形にいたしますと減ります。それから、収益が低いあるいは赤字という企業は、今度は課税ベースを広げて外形基準にすると当然広がりますね。そういうことが例えば9ページの下から3つ目の丸で書いてあります。「負担の変動は、高収益だった場合は減少傾向となり、低収益だった場合は増加傾向になる」、これはある程度、当初これを狙ってやっているわけでありますから、当然計算結果もこれに類似したような格好のものは出てきます。

問題は、次のページに書いてございます赤字法人比率、いうなれば欠損法人比率の業態間のバラツキがおそらく外形にしたときに影響としては強く出てくる。これは避けられないことだと思います。つまり、欠損法人の比率が高いところほど、外形にすると今度は外形分だけ課税ベースが広がって負担が重くなります。それから、仮にトータルで縛っていれば、その重くなった分だけ軽くなる領域というのは利潤が多いところですよね。そういう意味で、ここで見ていただきますと、1億円未満、1億円以上という左右の見方もありますが、合計の欄で縦で見ていただきますと、小売業が一番欠損が多い。それから、不動産業ですか。等々見ていきますと、この欠損比率が高いほど、外形にしますと、当然の結果ではありますが、負担が多くなるというような、そういうことが出てきております。これは当然そこを狙っているわけでありますので、どんな数字を使ってもある程度はそうなるだろうという感じはいたします。

それから、選択を4つ出しましたけど、加算型の付加価値というのが一番課税ベースの範囲が広いわけでありますから、当然のこと、丸の下から4つ目に書いてございますように、付加価値の場合は比較的直したときバラツキは小さいわけですね。それから、資本金区分で見て1億円以上と1億円未満といたしますと、1億円未満のほうが欠損法人の割合が大きいわけでありますから、この物差しだけ見れば、当然のこと、小さな規模のほうが変動の幅は大きくなるだろうと、こういうことが出てくるというわけであります。

そういうわけで、業態別に見るとバラツキは当然のこと出てきますので、その辺をどういうふうに激変緩和を含めて議論しようかという点が、1つこれから争点になると思います。

そこで、問題は丸の下の「2」に書いてございますが、現行の所得基準でやっております法人事業税をそっくり変えてしまうのか、それとも半分ぐらい変えるのか、4分の1ぐらい変えるのかという選択も残るわけですね。そこで、新旧の変動を少なくするのだったら、当然、半分だけ、あるいは4分の1だけ変えるほうが変動のバラツキは少なくなるわけですよね。そういう意味で、今後考え得る形としては、例えば、いまざっと言って5兆円ぐらい法人事業税があるわけですが、2兆5,000億円はそのままにしておいて、残り2兆5,000億円をいま考えているような外形基準で新たにかけようかどうかという組合せの問題が当然出てこようかと思います。実はそれはある意味で中小企業特例みたいな話にもつながるわけでありまして、変動幅を少なくするためには2分の1ぐらいでスイッチしたほうがよくて、いうなれば激変緩和的な要素にもこの2分の1課税に、仮にとれば、なるだろうと。これは課税最低限をつくるとか、免税点をつくるとか、あるいは軽減税率をつくるとかというものに類したような形の一種の軽減措置になるのではないかという議論が当然ございます。

そこで、今日やりました議論の中で、再度確認しておこうということで議論ができたことは、具体案が出てきますと、当然のこと、実際的な観点から議論が進み、とかく物差しの選択のほうに目が奪われ、そもそも何のためにやるのだったかという議論がなおざりになることがありまして、そこを再度確認いたしまして、いうなれば先ほど申し上げましたように、府県税の基幹税というものをしっかり見直そうと。それも応益性、安定性の視点から。

もう1つ、今日、特に強調されましたのは、やはり課税ベースが狭い所得基準というのに、いうなれば何層も何層も政府がある。そこにかかっているわけですね、国、府県、市町村等々が。したがって、府県の段階は国あるいは市町村がかけている狭い課税ベースではなくて、広い課税ベースでかけるというのに大いに意義があるのではないかと、そういう意見も出ておりまして、その辺の理論的な構築もしたいと思っております。

それから、地方消費税を増やすことによって、今回の法人事業税の外形課税問題は解決するのではないかという声も、特に経済界あたりからいま出ていると思いますが、これは我々の小委員会としては、どうも方向が違っているのではないかというふうに一応理解はいたしております。というのは、法人事業税そのものを見直して、その中でどういう形にしようかというわけでありますから、あくまで企業課税の問題、事業課税の問題なのですが、地方消費税のほうにスイッチするということは、消費者課税に企業課税を移すということでありまして、これはちょっと議論としてはとりにくいだろうと。したがって、その延長上で考えますと、控除型付加価値税というのは、現行の地方消費税が国税の控除型付加価値税を一部分けてもらう格好になっていますように、どうしても地方消費税とつながるのです。控除型付加価値税というのは、4段階控除法がいま世の中に流布しておりますから、これは消費課税なんですね。そういう意味で、我々の土俵を決めるときに、地方消費税にスイッチする、あるいはそれに類した控除型付加価値税というほうには議論の主流はいかないだろう。ただ、議論として紹介することは当然触れますけれども、そういう形で考えておりますので、土俵の設定においては、その辺は重要なポイントになるのではないかと理解をいたしております。

その他いろいろ御議論がありましたので、御質問が出たら御紹介したいと思いますが、大体時間も大分たちましたので、あとは皆さんの御意見を聞いて、さらに持ち帰って、これから答申をつくるわけでありますから、そこに生かしたいと考えております。

あとの予定は、大体2回ないし3回6月にやりまして、最終報告案を、ここの総会にかけられるように月末までというか、その辺あたりまでには仕上げたいと考えております。

加藤会長

ありがとうございました。

それでは、ただいまの小委員長の報告につきまして、御質問などをいただきたいと思いますが、先ほど申し上げましたように、石小委員長は所用により途中退席されますので、小委員長の報告に対して特に御質疑のある方は、優先的にお願いをしたいと思います。別に石たたきじゃありませんから。どうぞ、どなたからでも結構でございます。

塙委員

毎回どうも同じようなことばっかり申し上げるようなのですけれども、今度の石先生のいまお話あったのは、外形標準を前提にしてどういう形がベストかという非常に深い研究のプロセスだと思われますけれども、私としましては、やはり地方税全体像の中でこの事業税がどうあるべきかという、その中でまた外形がどうあるべきかという論議の場というのは、やはり持っていただきたい。特に小委員会の中で持っていただきたいと思うのです。外形あるべしという前提で、どうあるかというありようだけではなくて、もともとの問題と冒頭おっしゃいましたが、一番基本のところに帰って、場合によると固定資産税なんかも入るのかもしれませんが、地方の課税全体がどうあるべきかということ、それをもう一度お考えいただきたいというのが1つでございます。

それから、もう1つは、やはり地方自治体の歳出についても、徴収のほうだけではなくて、徴収のほうの安定もさることながら、歳出についてもう一回見直す必要があるのではないか。これがこの小委員会の場かどうかということは、ちょっとわからないのですが、それも含めて総合的にやらないと、やはり赤字課税を受ける人たちにとっては、なかなか納得がいかないことではないかと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

石特別委員

当然委員の中には中小企業の代表の方もいらっしゃいますし、経済界の代表の方もいらっしゃいますので、いま御指摘の点は十分検討したつもりであります。当然のこと、行革をしなければいけませんし、税源配分の問題も含めて地方税の税源の確保ということもしなければいけないだろうということは前提とした上で、最初のころは大分その議論をいたしましたが、さはさりながら、我々「地方法人課税小委員会」という名前で示されるように、いうなれば地方が持っている法人課税の体系を見直そうという役割を我々は担っていると理解しておりますので、土俵を広げれば広げるほど法人課税の議論にはなりにくいんですよね。そういうこともありまして、いま絞り込みの段階でありますので、大きな議論からだんだん絞ってきたという意味で、当然のこと、いま御指摘の点は念頭には置きますが、もう1回それに立ち直って議論せよというのは、ちょっといまの段階では難しいし、無理だろうと思いますので、それはまた別途、基本問題小委なり、加藤先生の領域でやってもらうとか、何か別途やり方があるのだと思いますので、決して無視するつもりではございませんが、いまのところ我々は限定的に役割を考えております。

加藤会長

いまの塙さんの問題は、総会でまた煮詰めますときに議論したいと思います。

大田委員

石先生が繰り返しおっしゃっているように、なぜ法人事業税を変えなければいけないのかというところが一番大事だと思うのです。赤字法人だって行政サービスを受けているということと、収益にいまかなりペナルティーがかかって、経費がかかり過ぎている企業には有利な税になってしまっているという点がポイントですので、この点をくれぐれも押さえることが必要だと思います。それから言うと、私はこの外形標準において中小企業に対して特例をとる必要はないと思っております。

それから、いまの税を変えるときに、どういう基準をとっても反対は必ず起こるわけで、そこは現実として何を採用するかということで、政治的なプロセスといいますか、そういうのが多分大事なのだろうと思います。そのときに、何をやっても反対が起こるということは、外形標準課税は広く薄くかけることがおそらくいいのだろうと思うのです。ですから、外形標準課税、つまり法人事業税を変えた外形標準課税自体はなるべく広く薄くかけて、一方で均等割ですとか、すでにある外形課税、こちらとの組合せで地方税収を考えていくことが必要なのではないかなと思います。

石特別委員

御指摘のとおり十分考えさせていただきます。

平田委員

石先生の委員会の御論議は大変貴重なお話を聞かせていただいているわけでありますが、この4通りになさったのは、本当に御苦心の結果だと思うのです。これはいくつも外形にとるものはあるわけですけれども、その中でこのような、1番目に置かれたような付加価値をまず加算型にするとか、それから給与だけにする、それから、床面積と給与の合計とかというふうになるのだろうと思うのです。

ぜひ私の立場で申し上げておきたいのは、給与の総額というのは、日本全国で払っている給与というのは大変な額でございますから、課税ベースとしたらものすごく大きいですね。だから、ものすごく大きいから、掛け算でいくのでしょうけれども、税率的にはものすごく低くなってしまうのかなという感じがしますね。それをものすごく控除の方式か何かを考えられてやるのか、これがちょっと大変だなと思うことがあります。

それから、給与の総額というのは、実は国税でとっています消費税の中では、はっきり言って消費税がかかっている課税ベースだと言ってもいいものなんですね。移転型でやっていきますから、付加価値部分は抜け出してしまうわけでありまして、これは全く5%いまかかっている課税ベースだということでありますから、そこへまた同じようなものを使うというのは、これもまた大変な作業だなという感じがいたします。

石特別委員

給与には反対でしょう?

平田委員

そうですね。反対が多いですね。

それから、床面積基準なんていうのは、まさに外形標準としては一番いいですね。目に見えるものでありますから。だから、これを価格でやるか、平米でやるか、これもなかなか論点が難しいところだろうと思いますね。

その4つのアイテムにしていただいたことをまず前提にしますと、その次に私が申し上げたいのは、大変執行するのに難しいだろうということですね。ですから、先生があと2回ぐらいの小委員会を開かれて答申を書かれるときに、その執行の点までどの程度言及なさるのかなという感じがするのですけれども、執行は執行でまた別に考えるというふうな書き方におそらくなられるのではないかと思うのですけれども、課税ベースを法律で決めて、その法律にそういうインセンティブなり、モラルがちゃんとついたような形で申告納税をさせるというふうなことは、地方税の皆さん方が、実際に国税のように調査をするしないの問題もありますから、そういう執行を担保するようなつくり方というのが大変難しい。新しい税金を入れるには常にその問題がありますけれども。

それから、中小法人に対して減免は関係ないよというような御意見もありましたけれども、これもやはり何か考えていただかないと、大変だろうなと思うのです。というのは、国税の消費税の導入のときにも、簡易課税方式であるとか、限界控除という大変うまいクッションになる制度を入れられたために、大変、中小法人の理解が早かったということがあるんですね。今回もそれに類するような執行の1つの大きなテクニックを入れられないと、なかなか実現は難しいなという気がするわけであります。

以上、大変御苦労に感謝しながら、よろしくお願いをいたしたいと思います。

石特別委員

若干補足してよろしいですか。

加藤会長

はい、どうぞ。

石特別委員

いま平田さんのお出しになったことと関連して2、3付け加えますと、完全にでき上がった姿を想定して過渡的な措置を入れようかという議論は起こっていますが、その過渡的なやつがいつまでも続いてしまうと、何かふわふわした、あまり感心できないような体系が続くのはよくないだろうということ。例えば、2分の1だけ変えましょうというのは、過渡的なのか、それとも永久的に2分の1にするのか、それとも最後は全部そっくり変えるように持っていく過程の2分の1なのか、それはいろいろこれから議論しなければいけないと思います。

それから、既存税制との兼ね合いというのは非常に重要だと思います。そういう意味で、加算型付加価値というのは、いうなれば国税でかかっている消費税の中の消費型付加価値とまさにおっしゃる点ダブっていますので、直接にこれを持ってくるということには、タックス・オン・タックスの議論もありますし、いくつか議論を整理しなければいけない点もあろうかと思われます。それは、いずれこれも含めて、床面積とかなんかも入れて組合せというところが、1つ新しい観点からの外形かなというような意味合いになるのではないかという意見もございます。いずれにいたしましても、複雑に組み合わせれば組み合わせるほど執行面で問題がありますので、その辺の兼ね合い、それをどうするか、やはりこれから詰める段階でも十分に検討したいと思いますし、やはり簡素とか執行の容易さというのは絶えず皆さんの口から出ておりますので、その辺、もう少しお知恵をいろいろな人から借りつつまとめてみたいなと思っています。

水野(勝)委員

この問題の基本は、石先生からもお話ございましたように、事業活動に対して課税をする、そういう税だということをどの程度理解をしてもらえるかということではないかと思います。事業活動そのものでございますから、利益があがってもあがらなくても、とにかく外形的に活動量そのものにかけるのであると、そこを徹底して理解をいただければ、あとはどういう具体的な課税標準がいいかということになるわけではないかと思うわけでございます。

そして、1枚目の表に御説明がありましたように、安定的な税収の確保ということで、その実質的な狙いがあるわけですけれども、どうしても現在のように不況の状態になると税収が減る。減ると、課税団体側は大変大きな問題として取り上げる。しかし、そのときにはまさに不況のときで、なかなか導入はしにくい。一方、景気がよくなると、税収が豊かになる。豊かになると問題意識が薄れてしまって、余り熱心にその問題が議論されなくなるという、いままでそういう歴史を繰り返してきたのではないかと思うわけでございます。

したがいまして、現実的には、不況のときでも結構ですけれども、とにかく徹底的に詰めておく。そして、現実的に導入するとすれば、それは景気のいいときを選ぶ。そして、ネット減税でとにかく御了解を願う。ちょうど国の消費税は、62年の売上税のときは、増減税同額で、ややまだ不況も残っていましたのでできませんでしたけれども、63年のときは、2兆円から3兆円のネット減税で世の中に御理解もいただきながら導入をいたしたわけでございまして、その後は景気のいかんにかかわらず、その役割が発揮されているところでございます。そういう意味では、現時点はとにかくとことん詰めておく。そして、好況のときになって課税団体側もその問題意識を失わないで、いろいろな工夫をして導入をする。そのときのための準備ではないかと思うわけでございます。

それから、もう1つ、4つ掲げて整理しておられますけれども、その中の資本の点については、ある意味では自己資本に限るということは、それが事業の活動量とうまく結びつくのか。事業の活動量と結びつけるのであれば、総資産、総資本という概念もあるのではないか。自己資本だけでなくて、他人資本も含めた総資産ベースでございます。このほうが全体の事業活動量に近いのかなという気もいたします。

松尾委員

私は地方税体系の構築につきましては、地方税と国庫補助金、地方交付税とのあり方について総合的に検討する、これが大前提になると思うわけであります。先ほど塙さんが御指摘になりましたけれど、やはり歳出抑制、これも最優先されるべきであるのは当然でありまして、この点に関して、どうも地方自治体の中に安易に考えているところがあるやに聞いておりますので、やはりこれは真剣に取り組む必要があると思います。

それから、法人事業税の問題でありますけれども、石先生の先ほどの御報告を伺いますと、応益課税としての性格の明確化、税収の安定化等ということでありまして、赤字法人課税ということは触れていらっしゃらないわけですね。私はこれでいいのだろうと思います。赤字法人をこの外形標準課税によって狙い撃ちにするということは、どうしても無理があると思わざるを得ないわけです。法人課税はやはり所得課税が中心であるべきだと思いますし、そういう観点からは、所得課税と併用する方法が私はベストではないかと思います。赤字法人の中には、本当の赤字法人もあれば、数字を操作してごまかしている擬似赤字法人もあると思いますが、擬似赤字法人につきましては、私はこの外形標準課税ではなくて、別途、税の執行面で何らかの方法で検討するべきではなかろうかと考えております。

栗田委員

この事業税への外形基準の導入の問題は、事業税自体が都道府県からの受益に対して課税をするという税の性格からいっても、また、都道府県に安定的な税源をもたらすという意味においても、非常に重要な課題であるという具合に思っております。今回の統一地方選挙でも、東京都の石原新知事も選挙のときに外形課税の導入を訴えられたと聞いておりますし、また、多くの候補者もそういうことを主張していたようでございます。また、県会でもいくつかの都道府県でこの2月、3月議会で外形課税の議論が熱心に行われたということで、地方にとりましては非常に大事な課題でございますし、最初に申しましたように、事業税の性格からいって、あるいはまた都道府県に安定的な税源をもたらすという意味においても、ぜひ進めていただきたいという具合に思っております。

小委員会でいまお話しいただいたように、積極的に取り組んでいただいておりますので、さらにこれを煮詰めていただいて、ぜひとも実現の方向に持っていっていただきたいと思います。都道府県の立場からも強い決意でこれに取り組んでいきたいと思っております。

それから、外形課税ではなくて、地方消費税の引上げで対応すべきではないかという意見でございますが、先ほど石先生からもお話がありましたとおり、これは性格が違う問題でございまして、法人事業税をどのように課税していくかということと、地方消費税が消費者の負担をどうするかというそういう性格から見て、それぞれこれは別のものではないかということで、事業税の外形基準の導入というものと、地方消費税の充実というものは分けて考えるべきだろうと、このように思います。

橋本特別委員

石先生がお示しになりました4つの課税標準につきましては、先ほどのグラフで見ますと、まあ経済効果としては大体似たり寄ったりという感じがいたすわけです。したがいまして、あとはどの基準が最も事業活動の規模をあらわしているかということと同時に、執行等における便宜性といいますか、より執行がしやすいということから、なるたけシンプルなものを選ぶのがいいのではないかと。そういう観点からしますと、3番目の家屋の床面積と法人の事業活動の規模という欄がありますが、物的な活動と、それから給与を組み合わせたやり方が一番単純で明快ではないかなという感じがいたします。

それと、そもそもなぜ外形標準課税を導入するかという問題にさかのぼって考えますと、確かに所得基準による事業税というのは、企業努力によって収益が上がれば、それによって税負担が重くなる。いうなれば、努力した者があまり報われない税制という非難もあるわけでありますから、そういう観点からすると、外形標準による応益課税に替えたほうが、地方税収の安定化ということにも寄与するから、その方がいいと思うのでありますが、問題はそういう建前がはっきり貫けるかどうかということではないかと思います。ちらちらお話に出ていますとおり、例えば、赤字法人課税はもうやらないとか、あるいは逆進性をなるたけ少なくするとかいう観点から、所得基準を併用したりいたしますと、その結果としては、黒字法人の課税というのがかえっていままでより増えてくるのではないかという懸念が若干するわけでございますので、その辺がどういうふうになるかなと。黒字法人の課税がこれまでよりもこの結果として増えるということでは、やはり経済界としては大変困ると思うのです。その辺の検証が少し必要かなと。

それから、導入時期の問題につきましては、4つのこの課税標準のいずれも物的資産と、それから人的な給与が中心的なメルクマールになっておりますので、やはりいまのような不景気のときに、景気振興に逆行するような経済効果を招きかねないので、導入に当たってはやはり時期を慎重に見極める必要があると、このように思います。

島田委員

いまの橋本委員のお話について、ちょっとコメントですけど、資料の7ページの図でもって、企業所得、当期純利益が非常に景気変動で激変をいたしますが、それ以外は似たり寄ったりだというお話でした。たしかに全経済を平均値でとるとこのような動きをするので、その限りにおいては企業の所得にリンクした現在の事業税のあり方は見直さなくてはならないということは、明確だと思うのです。

しかし、そのほかの指標は似たり寄ったりかというのは、これは平均値にとるとこういう格好になりますけど、一番我々が問題にしたいのは、各企業、納税者が、いま橋本委員もおっしゃられたように、努力をして収益を出しているところに過大な負担がかかってはならないというような考え方からしますと、納税者の収益性といいますか、努力というものについて、税を変えることがどういうインパクトを持つかということですね。その近似としては、業種別とか、あるいは企業規模別とかというのがあり得ると思いますが、それになると、相当なバラツキが出てくるわけですね。ですから、この全体を集計したものについては、どの指標をとっても大体同じだということになるわけですけど、ちょっと集計をばらしますと、非常にバラツキが出るので、やがて議論になると思いますけど、そのバラツキの出方というのが、過度のバラツキにならないようにするための新しい指標が何なのかということについて、我々はまだ次の段階で大いに議論しなければいけないのかなという感じがしております。

河野特別委員

石先生がいらっしゃる間に質問しておきたいのですけど、税の権威の方たちが集まって4つの類型をつくった。それは外形標準に移行するのだという課題を与えられて、それで案をつくられたというわけですよね。税の理論からすれば、この4つに一応仕分けられるよということだと思いますけれども、その中でも、ごく単純に考えて、それぞれ[1]から[4]までどれがどの業種にとって好ましくて、どの業種にとって好ましくないかという話は当然裏にあるわけで、その数字は今日は問題があるから出さないとおっしゃったから出ないと思いますけど、それを考えてみれば、4つの類型にこだわることはないのではないか。

前回も今回も水野さんが言われたけれども、外形標準化ということに、私なんか一番強くそれを言い続けてきて、今日まで議論が来ていると思うのですけど、外形標準化ということを完璧に通すのだということにこだわると、行動範囲が狭くなるかもしれない。税調としても。政党はもちろんですよ、自民党は。それならば、そこに救いの手を出してやるという意味ではないけれども、現実論として考えてみれば、4つ以外の案は全部堕落した案で、政治的妥協案で、過渡的な案で、どうにもならんというふうに位置づけるのか、いやいや、簡単にそうはいかないかもしれない、4つの案が理屈の上では成り立つけれども、それも実はたくさん問題を抱えていることはみんなわかっているわけだ。実は個別の問題について突っ込んでみれば突っ込んでみるほど、計算してみればみるほどね。

とするならば、さっきちょっと最後のところでおっしゃっていた5兆円の収入があって、そのうちの半分ぐらいを所得基準に残して、半分ぐらいをという、えらい大まかな話で、それがまたどういうふうな効果を業種別に持つかという数字は全然わからないままの話なのですけど、選択肢としては、4つを並べて、ほかはちょっとランクが低い、税調としては筋が通らないと思っているというふうな位置づけをするのか、外形ということにこだわれば4つになるよと、しかし、法人事業税の改革だと、より安定した財源でより公平でというふうな観点にすれば、別の選択肢もあるかもしれないなというふうに並べてもらうのが現実的なのか、アメリカの小売売上税だとか、地方消費税の導入論というのは、基本的に、少なくとも小委員長の権威においてそれはノーだと言われたので、その道はないとすれば、この4つの類型にこだわり過ぎた議論というのをやっていると、収拾がつかなくなるのではないか。

水野さんが言われたみたいに、私もこの前申し上げましたけど、これは本当に政権がしっかりしていて、景気が直らなければ実行できない話なのですよ。どっちにしても、どんなやり方をやるにしても。それはわかっている話で、それならばもうちょっと選択肢を広げたペーパーを最終段階では出していただいたほうがいいのではないかという気がします。これはちょっと石さんに聞いてください。

石特別委員

河野さんに対するお答えと、ほかの方から出ていることで2、3感想を述べさせていただきます。

最初、河野さんのお出しいただきました4つに絞るというのは、自ら狭くしてしまうというお話で、まさにそのとおりだと思います。私、ちらっと申し上げましたけど、あくまでたたき台として4つ出しているのでありまして、これ以外は一切認めないという形ではないのです。11の中で組み合わせたということですから、これはやり方としましてはまだ無限にあるのです。そのとき応益性とか安定性とか、あるいは執行面という面から見て簡便性、まだ議論の過程の中でほかにも出てくる可能性はあり得ると思いますね。例えば、ケース4の資本金のほうと何かもう1つ組み合わせるとか、そういうのもあるだろうし、それはもうちょっと自由な形で書きたいと思いますが、ただ、最後まとめるときに、7つも8つも11もそのままでは、ちょっとこれは、いかにも我々小委員会として、やや無責任であろうと思いますので、範囲を縮めていくことに十分な目配りをした上でここまでやりましたという形で仕上げたいなとは思っています。ただ、御指摘のとおり、あくまでたたき台という形でまだ考えております。

それから、何人かの方からお出しいただいた中で、非常に重要で我々悩ましいと思っているのは、赤字法人の説明なんですよね。何も赤字法人課税を主目的でやっているわけではない。ただ、マスコミの新聞などに「赤字法人課税」とバーンと出ますと、これがまさに外形の主たる狙いではないかと思われがちなのですが、これはあくまで結果なんですよね。結果でありますから、中小特例的なのをどこまで入れるかにもよりますが、仮にベンチャーに対して特別な措置を入れようということならば、かなり赤字は落ちますよね。そういうことも踏まえて、あくまで結果の出来上がりということで御判断いただくしかない。どなたかおっしゃっていましたように、やはり黒字を出して頑張っているところからは税が安くなり、減収あるいは赤字のところから出てくるというのは、必然的なような税体系なんですよね。それはそれで事業活動そのものにかけるということをくどいほど説明して、この辺は納得をしてもらうべき最大の努力をしたいと考えております。

したがって、資本ではなくて、水野さんおっしゃったように、総資本というのもこれも1つの選択になり得るのでしょう。そういう意味で、まだ具体的にこれぞというところまで到達しておりませんので、もうちょっと広げて議論しますが、ただ、これぞ1つというふうにまとめるのは、ちょっと難しいと考えておりますので、ある箱の中で最後は議論を取りまとめたい。

と同時に、中小企業関係もどうするか、認めなくていいのか、認めるのか、等々もちょっとその辺まだ皆さんと議論しながら最終的にまとめていきたいと思います。

ただ、今日は皆さんの御意見を伺ってみると、基本的にはとりあえずサポートしていただけているのだなという、それでよろしいですね。そのような印象を持って今日は帰ることにします。また何かありましたらどうぞ。

本間委員

2点申し上げたいと思います。私も小委員会に入っておりまして、余り出席できずにこんなところへいると石先生にお叱りを受けるかもわかりませんけれども、1つは、いま河野委員がおっしゃった問題とも絡んでいるわけですけれども、タックスベースを選択していくときに、なぜそれが選ばれたかというときに、課税ベースの変更に伴う税負担の変更と既存の税目、ほかのところで課税されている部分の増減と組み合わせていくということは、これは非常に重要なポイントで、きちんとこの点については、少なくとも資料を提示して、そしてなぜ選択肢の中で4つに絞り込まれたかということは、やはり基礎資料として私は税調の中では準備しておく必要があるのではないかという気がいたします。

そのことを前提にした上で、第2番目のポイントは、安定性というときの意味なのですけれども、この図、7ページを見ていただいたらおわかりのとおり、これは増減率で書いてあるのですけれども、税収が例えばあるスパンで考えたときに、税収安定性という形で、現在値で考えられることになるわけでして、地方財政を議論されていると、1年先のことは全然考えておらずに、今年何%だったから、それ使えと。そして、次の年になったら、減ったぞ、どうするんだと、こういうような意思決定がされている節があって、それは増えたときには大きな政府になり、小さな政府は下方硬直性になって、トレンドとして見ると、非常に大きな政府になってしまうという危険性があるわけですね。ですから、中立性というときに、現在価値で考えていくということは、実はほかの税を選んだとき、課税ベースを選んだときに、税収の税率をどう選定をして、中期的に例えば5年、10年でどれだけの税収を得るのかどうかということが確定されませんと、税率選定というのは、単年度のときに選んでいきますと、税収面で非常に違った意味を持ってくるということをどこまで意識しているかということは、今後我々議論するときに十分に意識しておく必要があるのだろうと思います。

これは多年度予算でやれば、変動したってプラスのときとマイナスのときがあるから、相殺されていいのだよと、しかも成長の果実をきちんと担保すると同時に、ビルトインスタビライザーとして、景気がいいときにはたくさん取るし、景気が悪くなれば負担減するのだと、こういうプラスの効果があるではないかという、先ほどの橋本委員の御指摘のインプリケーションもあるわけで、そこを一体どういう具合にマイオピックで近視眼的な形だけで議論して中立性というようなお話は、あまりにもちょっと幼稚過ぎるというのが私の印象でございまして、その辺のところについても、中立性についての意味をきちんとコメント、あるいは意味についての詳細について、やはり書き込んでおく必要があるのではないかという気がいたします。それは税率の選定の問題にも影響するということをきちんと理解をしておく必要があるのだろうと思います。

加藤会長

いまのことについて、ほかの小委の方、何かございますか。

島田委員

いま本間委員の言われたこと2点あったと思いますが、1つは我々がある意思決定をする根拠になるデータというものを、できるだけ詳しく多面的に、そしてわかりやすく提示をする。それを共有した上で意思決定する。これは全くそのとおりですね。今日は、いま整理されている途中のデータは開示はされておりませんけど、それは多くの委員は、大体、いろいろな散らばりのある、いろいろな変動のあるデータがあるだろうということは、御存じの上だと私は思いますが、それをまずみんなで共有するということは非常に重要だと。

もう1つは、安定というのは大変重要ですね。どういうスパンで変動をとらえるのかということで、例えば最近のように非常に経済変動が激しい場合、いまもし精いっぱいデータを集めると、3年前ぐらいのデータが限度だと思いますけど、そこでできた印象と、例えば今年のデータが手に入ったときの印象は、がらっと変わるだろうと思いますね。しかし、自治体は単年度でやっているわけなので、そこのところをどう考えるかというのはまさに大問題ですね。それも前段でおっしゃられたデータを共有するということとあわせて、いままでの議論はどちらかというと概念的な議論が多いですけど、これからデータをしっかり見つめた上での具体的な議論というふうになっていくのではないかと思います。

水野(忠)委員

いま抽象的な議論のたたき台ですけれども、これが現実の税制になるときにはどうなるかということを考えますと、かねがね言われていますように、1つの租税というのは、税率がありまして、それから課税標準があるということですが、法律の専門の観点からいいますと、これまた課税標準をどう定めるかというのは、非常に難しいわけですね。例えば、簡単な例で給与総額ですけれども、さてこれに社員に対するフリンジベネフィットを含めていく場合に、どういうふうにそれを算定して入れていくのか、いわゆる福利厚生費などそれも入れてしまうのか、そういうのは1つの個別的な問題ですけれども、そういう形で全部、ここでは給与総額ですとか、家屋床面積というような形になっていますが、ひとつひとつ組み込んでいかなければいけないわけです。家屋床面積にしましても、では、だだっ広い馬小屋はどうしたらいいとか、私どもはそういうことを考えてしまうわけですが、それを決めていく。

さらに、今度は執行の段階でどうなるか。法律が仮にできた場合に執行ですけれども、現実にはひとつひとつ、例えば帳簿の調査から始まることになるわけですけれども、実際に架空の数字の上ででき上がっているものと現実の徴収とでは、いつも問題になりますように、そこでの執行の可能性というものが出てくるわけですね。そういうことも考えて、いろいろ総合的な判断をしなければならないわけですので、これはあくまでたたき台になっておりますが、ここから先、本当に現実の立法化を考えていく場合にも、さらにいろいろなハードルがあるなと、そういうことは十分認識しなければいけないと思っております。

加藤会長

ほかにございますか。よろしゅうございますか。

いま出ましたように、一応4つの基準をまとめてまいりましたというか、だんだん集約しているわけでありますが、いろいろな言い方があるわけで、外形基準をとにかく入れよう、入れなければならないのだという理屈がちゃんとありますと、そこで入れてきて、それがいろいろなバランス上の問題からいうと、不均等を起こすかもしれない。そこで、その不均等をなるべく是正するための方策を考えていけば、全体として導入の合意が得られるのではないかというようなことが流れになっているのですが、その場合もいろいろな考え方があるわけで、なるべくいろいろなものを合わせると、相殺されて結果的にうまくバランスがとれるということもあり得るわけで、そういうようなものを何か探せればいいのではないかという気がいたしますね。

小委員会にこれから本間さんもぜひおいでいただいて、御議論いただきたいと思います。

島田委員

さっき河野さんの言われた問題、ちょっと私、別の観点から問題提起してみたいのですけど、この税調は6月ぐらいまでをめどに、この地方課税改革について、事業税にかわる新しい税の本格的なたたき台を世間に提示するという任務でやっていると思うのですが、そのときに、いま会長がおっしゃられたこととも関係しますけど、一体何のためにこれをやっているのかということを、関係者によく理解してもらうということがまず必要ですよね。それはいままで持っていた地方事業税というものが、1つは非常に景気変動に弱いということがあるし、それから、日本が歴史的な転換をしていく過程で、もう少し頑張った人々が報われるような、効率的といいますか、そういう税体系の改革というのが望まれているのではないかという基本線がありますよね。その基本線を考えたときに、先ほど河野委員が、「いや、そんなことができるのは景気がよくなる展望があり、かつ、政権が安定するということでないとできませんよ」と。逆に言うと、河野委員がおっしゃられたことを別の意味でとると、景気の先行きがはっきりしなくて、失業がどんどん増えていくような状態の中で、政権の非常な難しさを抱えているときに、そういうものを提起しても余り意味がないではないかということが意味されているのかなとちょっと思ったのです。

しかし、それはちょっと我々も困るので、やはり政府税調としては、税調の外の世界のいろいろな不確定要素や激動はありますけれども、1つの見識ははっきり示さないといけない。その見識もある程度のしっかりした根拠と、本間委員の言われるようなデータをシェアしながら示さなければいけないのだろうと思うのです。そういうふうに考えますと、今日は非常に詳しいデータは提示されておりませんけれども、今日ぐらいの段階で、何のためにやっているのだということについては、はっきり1つの考え方を持ったほうがいいのかなと思うのです。

それで、4種類に括ったというのも、私はそれなりの根拠は十分あると思うのですけれども、何のためにやっているのかという点をはっきりさせませんと、かなり無限にいろいろなチョイスが出てきてしまう可能性もあるし、まして経済動向や政治状況が変わると、税調としては、出しても聞いてもらえないようなものだから、しようがないよという議論になってしまうと、何のために税調をやっているのかわからなくなりますから、そういう意味では、最後に1つ申し上げたいのは、3つあるのかなという感じがするのです。

1つは何かというと、はっきりしているのは、地方財政から考えて、税収が安定する税体系に移行しなくてはならないということは、多分全国民シェアできるのではないかと思うのです。もう1つは、経済そのものがもっと効率的な経済で、努力する者が報われるようなものだろうと思うのです。そうすると、現状の所得にリンクした事業税のようなものは、やはり努力した成果に懲罰的な税がかかるという構造ですから、これはよくないのだというのは明白だろうと思うのです。

そうすると、それをつなぎ合わせる税の理論としては、非常に明快なのは、地方税というのは応益税なのだという考え方で、努力をした者が過度にパニッシュされないように、広く薄くかけられる税というのが応益税の原則に基づいており、かつ税収の安定につながるのだということは明白だと思うのです。

ですから、そう複雑な議論ではなくて、その2つですね。つまり、税収の安定と経済効率というもの、私はそこに我々の理論構成は踏まえることができるのではないかと思うのです。その観点をしっかり踏まえておくと、11だとか8つだとかいろいろあるかもしれませんが、やはりもう一度詳しく吟味をすると、4つくらいになるかもしれません。しかし、おそらくそのうちの順位が自ずから見えてくると思うのです。今度データが詳しく展開されたときには、自ずから順位は見えてくるのだろうと思います。そこのところは税調としてしっかり示しておくべきであって、あと政権が揺れていてどうするのだという議論は、我々がどうしようと言ってもしようがない議論なのではないか。それは政治の判断ですし、あるいは景気が回復の展望が見えないというときに、みんな不安になりますから、そういうときにいつ入れられるのかというのは、税調の守備領域を越えているのではないか。だから、我々としては権威を持って、そういうものを示しておくということが必要なのではないかなと。今日はデータ不十分ですけど、その原則ぐらいは我々もうちょっと議論して、ある程度踏まえる必要があるのではないかと、こんな感じがいたします。

河野特別委員

私、長く税調をやっていて、政府税調というのは、税の制度というのを、筋の通ったことを世間に提起すべきだと。時の権力与党はそれをまたソロバン勘定を入れて、どう修正するかわからないけれども、そういうことはいつも起こってきたし、これからも起こるだろうということが原則なのです。

それで、先生がおっしゃったように、7月に今度また石先生のところでもっと詰めた議論をオープンにするでしょう。政府税調はパブリックコメントにかけるという正式の態度をとらないのだろうと思うのです。ほかだったらいくらでも、いまみんな流行りでどこの省でもやっているんです。だけれども、世間に出して、7月、8月、9月といろいろなことが起こるけれども、その間にいろいろな波紋を呼ぶでしょう。知事会もあるし、いろいろなところがある。学者もいるし、新聞記者もいるし。みんながそれをどう評価するかということが、その間に、日本のレベルは高いから、進むだろうと思うのです。秋口になって、来年度の答申の中に盛り込むべきテーマかどうかということについては、そこから先はもうちょっと具体的な議論に入りますけれども、その前は、おっしゃったみたいに、なるべくなら学者の先生が中心になって、筋の通ったものを提示する、それが当方の責任だということは変わっていませんから。

本間委員

いまの点にも関連するのですけれども、我々は暗黙のうちにほかの税収というものは動かさずに、これを法人事業税の範囲の中で議論をする。しかも法人事業税の中で議論するというのは、いままでの法人所得に対する課税を、課税ベースを変えることによって、動かしたときにどうなるかと。その税収上のインプリケーションについて、これはいろいろ判断があり得ると思うのです。つまり、現状で増税型でいま我々が暗黙のうちに議論しているのか、一定という形で縛って議論しているのか、それとも景気対策といういまの直近の課題からすると、減税型で議論をしているのか。ここら辺のところは、フィージビリティーの問題として、政治の風土の中でおそらく私は最後にメンションしたやり方というのは、これは法人税の本体のところで税率を引き下げているわけですから、そういうようなことすら考えられないわけではないわけですね。

ですから、我々自身がここで問題を提起していくときに、そこの部分のところについて、やはり今度は税というものを、増税的にここの部分のところを動かしたところと、一定のときと減税という場合の違いというものについても、やはりある程度経済的な判断の材料を提示していくということは、私は重要なのではないかという気がしておりまして、どうも全体としては、地方財政が大変だから、これは増税的なインプリケーションでいま提案され、それが政治的に無理だろう、あるいは雇用というような問題に対して、賃金をやったら無理だろうと、こういうような議論になりつつあるわけですね。ですから、その論点のところについては、少なくとも我々はきちんと認識しているよと、それは最後に調理するのは政治の世界でしょうけれども、我々としては論理はこういう具合に整理していますというところについて、事務局あるいは小委員を中心にして、事務的な作業をきちんと詰めておく必要があるのではないかという気がいたします。

島田委員

いまの本間委員の議論は大変重要な問題提起だと思うのです。といいますのは、いま我々は事業税を改革するにはどうしたらいいかという議論をしていますけど、もっと大局観から見れば、この人口が高齢化していく中で、あるいは経済がグローバル化していく中で、直間比率を変えていく必要があるという議論があるわけで、中期的には消費税の比重をうんと高めていかなければいけないのだという議論がもちろんあるわけですよね。経済戦略会議でもプライマリーバランスを獲得するためには、うまくいって2%ぐらいの成長が起きたときでも、プライマリーバランスをいまから7年後から8年後ぐらいに獲得するためには、消費税は10%だというような試算を出しているぐらいで、そういう大局変化があるわけですね。そういうものももちろん我々は承知した上で、いろいろな目配りをした上で、その全体の相互依存関係の中で、しかし事業税の改革ということに当面焦点を絞って、その中でやるのだという話なのかなと私は思っているのですが、そのときにいま増税含みなのか、減税含みなのかという議論は、私はちょっとそういう議論がこれまで整理されたかどうかよく知らないのですけど、限られた一定の限定の中で焦点を絞って我々がこの問題について提起をするときは、やはり税収は中立ということなのではないかなとちょっと思ってはいたのですが、それと景気論を混ぜると、制度改革の議論を我々はするのだろうから、ちょっと違うのかなと思いますけど、いずれにしてもそういうことも含めて、適切に位置づけを全部した上で、その中で事業税の改革ということではないかと思っていますが。

平田委員

先生方のお話が白熱していますけれども、地方分権の点からこの税金を考えるというお話が1つも出てこないなと思って拝見していたのです。地方税の財源の中で、これが将来的には分権制度とつながって、自主財源としてとてもいいものになるだろうと、そういう考え方が当然あるのではないかなと思うのですけど、それだから、当然いまのお話の中でもありますように、税収中立でやっておいて、少なくとも減税という考えはないのではないかなと思うのですけど、そういう感じがいたします。

諸井委員

地方分権の立場から何回か同じことを申し上げておると思いますが、やはり地方の自治体が努力してもどうにもならないような外的な要件で税収がどんどん増えたり減ったりして、結局は中央に補てんを頼らざるを得ない、というのがさっき松尾さんがおっしゃったんでしたか、そういう格好だったら、どんどん地方は甘くなっていってしまうのだろうと思うのです。ですから、やはりしっかりした、安定した、ある程度計算のできる、そしてまたそれでやらなくてはならんと思うような税収が、やはり地方にとっては必要なので、法人課税に関していえば、ぜひとも外形標準課税のほうへ、この4つの中のどれかというのはまたいろいろ議論があると思うのですが、そちらのほうの形へやはり持っていっていただきたいというのは、私のもう前から何遍も申し上げているお願いでございます。

吉田特別委員

いろいろな論議、大変参考に相なりまして、特に小委員を務めておられる島田さんにちょっと申し上げておきたいのですが、事業税を基本的に応能から応益に切り換える、外形標準課税に持っていくと、こういうふうに税の性格を根本的に切り換えていくのだということであれば、半分事業税を残して、いまの所得課税を残して、半分は外形標準課税でいくのだというそういうテクニックを使いますと、説明し切れないのではないかという気がしますね。ですから、外形標準課税にいくのだという前提であれば、そういう中途半端なバランスをとりながら、ごまかしながら持っていくのだというのではなくて、理論をしっかりと打ち立てて、説明をしていくという対応がいいのではないかなと、私はそう思っております。

島田委員

私個人の考え方は、いま吉田委員のおっしゃられたのと全く同感なんです。本来あるべき税の姿として、21世紀の日本経済というのを考えたときに、いま諸井委員も言われたような意味で、1つは地方行政の財源の安定と、そして地方自治体が努力をしてしっかり予測のつく税として確保するという意味と、それから、利益が出ているところは懲罰的な負担をかけられないで済むという意味での経済効率の観点から、外形標準のある種の形が望ましいというのははっきりしていると思うのです。それを長期的な姿として明確に打ち出す必要が私はあるのではないかと思って、もう1つは所得基準と混合でできますよというのは、それはたたき台としてはいいかもしれませんが、長期としてはそうではないのではないかと私は思うのです。ただ、現実にこれを導入していくとなると、業種間で、例えば皆さんのお手許の10ページの表、業種区分ごとの欠損法人比率というのを見ただけでも、これ随分産業によって欠損法人比率が違いますね。ですから、欠損法人比率の多い業種というのは、外形標準に移行しますと、やはり負担が移行過程で増えますね。構造変化を迫られることになりますよね。ですから、長期の目標が純然たる外形標準課税だとしても、私は移行過程というのについては、さまざまな措置があり得るのではないかと思うのです。ただ、それを移行過程ではなくて、妥協の産物でいろいろなものを組み合わせたものが税のあり方ですよと言ってしまうと、おそらく30年後ぐらいに、「何という税を入れたのだろうか。複雑でよくわからない。あのときの税調に出ていなかったら全く意味がわからない」というような変な税になってしまうと困るので、移行過程である、長期的にはこの姿だというのは、私は税調は明確に示すべきではないかと、そんなふうに思います。

本間委員

いまの問題は、特に激変緩和措置との関連の中で法人事業税を残して、外形課税を導入したらどうだというような話のコンテキストで出てきている部分があるのですけれども、その問題と、ここでたたき台で整理した1番の問題、これは所得を入れているわけですね。ペアリングをするのか、新規に外形課税をして、付加価値税にするかという問題は、実はその精神にどこまで発揮するのだということになっているわけで、1番のところについては、法人所得についての部分のところを入れ込んでいる。しかも、別のところは給与総額にして、それに法人事業税を残すのだと、そういう議論の組み方になると、やはりちょっと理屈の上では説得的ではないというのが私申し上げたいことであります。

それから、もう1つ、この問題に一番重要なのは、私は減税すべきだということを申し上げているわけではなくて、課税ベースの選択をする場合に、ほかの既存の税項目との関連の中で、一体この位置づけをどうするかという問題は、負担構造の変化を判断するということとあわせて非常に重要なポイントになるわけで、これは単独だけで議論をしていくのがいいのか、それとももう少し幅広くほかの、いまの島田委員がお答えになった問題と実はセットになっているのですけれども、それは同じことになる可能性があるわけで、既存の部分のところでの調整も含めますと、トータルで一体どうなるのだというようなことは、非常にマイナーであっても起こっているわけですね。そこを思い切ってぐっと出しながら、地方財源としてきちんとした税体系を組むためには、もっとドラスティックに入れ替えて考えたらどうですかという組立て方はあり得るわけで、その辺の部分のところの現実的なすり合わせと論理の組立ての問題について、私はもう少しはっきりと出したほうがいいのではないかというのが、正直申し上げていま感じている点であります。

橋本特別委員

先ほどから、増税なのか、税収中立なのか、あるいは減税という範疇で考えるのかというお話があるのですが、例えば、いま都道府県税収に占める法人事業税の割合というのは、約3分の1、30数%に上っていると思うのです。そのほかに法人住民税であるとか、固定資産税だとか、事業所税だとかいうのが賦課されているわけですから、これは地方自治体の法人向けの行政サービスに対する応益負担との比較考量でいきますと、これをかなり超えた程度ではないかなという感じがしておるわけです。そのため、その結果として国際比較でも、いま法人実効税率は国税はかなり下がりましたけれども、地方税負担は13.5%ですか、国税と合わせて40.8%、まだ高い水準にあるわけであります。したがって、今度もしこの外形標準課税を入れた場合に、増税ということを念頭に置いて考えるというのは、法人の立場からしたらとんでもない話で、少なくとも税収中立、でき得べくば減税ということを展望して制度を考えるべきではないだろうかと思います。

水野(忠)委員

私も小委員なので一言申し上げておきますと、委員会でもこの激変緩和措置が最近議論になるのですが、どうも考えてみますと、1つは確かに、いろいろシュミレーションした結果、業種による負担が変動するといった問題がありますので、それを緩和する必要があるということですが、もう1つは、現実問題としまして、先ほどの話の続きなのですが、制度を仕組んで、それが本当にどういうふうに動くかはやってみないとわからないところがあるわけです。現実にいまの個人所得税がどうなっているかというと、例えば、一頃よく言われましたように、クロヨンだとかトウゴウサンとか言われていますように、給与所得者がどうも負担が偏っているらしいけど、現実に一体どれだけ負担されているかというのは、これはいまだにわからないわけです。そういうようなことがありますので、やはりふたを開けてみないとわからない面というのがありますので、そういう意味で、ただいきなり飛び込んで、最初から100%ボンと取りたいというのは、これは実行可能性の意味からみて無理があるわけですね。そういう意味で、これは現実に本当に制度を入れた場合には、さあ、何分の1かでやっていくかというのは問題が出てくるかと思いますが、ある程度、表に、制度を動かしたときに初めて出てくる数字というのがあると思いますので、その辺が1つのきっかけになって、だんだんに経過措置として引き上げていくなり、そういうようなこともあると思いますので、この激変緩和は、こうなるとこういうことが目に見えているので最初から緩和措置をとるという意味合いだけではなくて、やはりテストケースということも現実には考えていかざるを得ないのではないかと、このように思っております。

加藤会長

ありがとうございました。よろしゅうございましょうか。

いろいろと御議論をいただきまして、私もこれからまた小委員会に期待をするわけでございますが、一言小委員会にこれからまたやっていただきたいなと思っていますのは、今日お話しいただいたのは、基本的にはこういう考え方でやっております、そしていろいろと煮詰めてみて、いろいろとデータを集めてみると、安定的で効率的であろうとするとこういう方法がありますと、こういうことが出てきたわけですね。ところが、実際にそれをやろうとするときに、今度は総会でやりますときには、激変緩和はどうするかとかいうことを考えざるを得ません。全体の税制の中でどういう意味を持っているかを考えなければいけません。

そういうことを考えますと、非常に重要なことは、小委員会が理論的に純粋にこうですと出していただいても、我々としてはそれを受け取ったときに何が問題になるかというと、激変緩和をしたときに、どこまでその委員会の考えていた理論が崩れないですか、ということを我々一番知りたいのです。つまり、事業税を半分残して、半分ほかの外形基準を入れたとしますね。そうした場合に、どこまで事業税を認めておいても大丈夫なのか。あるいはもう事業税を100%やめないと理論が通らないというふうに考えるのか。それとも、事業税はこの程度残しておいても、あともしほかの外形基準が入ってきましたときには、性質が変わってきて、新しいトキが生まれるようなものだというようなことで考えていただけるかどうか。それの理論を詰めていきたい。我々としては一番知りたいですね。そこのところを純粋にお考えいただいて、激変緩和措置をとったときにどこまで理論が崩れないでやれるかどうか、ということについてもひとつ考えておいていただけると、小委員会の結論が我々として非常に使いやすいということになるわけでございますから、ぜひこれからまたひとつ活発な御議論をいただきまして、総会に向かって最終的な報告を取りまとめていただければありがたいと思います。今日はその問題だけで一応終わります。

今度は、最後の残した時間、いよいよ我々は次のことを考えなければいけないのでありますが、現在の税調というのは、平成9年の5月9日の総会において、総理から「21世紀に向けて、我が国経済社会の構造変化や諸改革に対応した望ましい税制のあり方について審議を求める」旨の諮問を受けまして、審議を開始したわけであります。我々の任期はしたがって来年の春までとなっておりまして、任期の終わりに税制調査会として中期的な税制のあるべき姿の展望を示す、いわゆる中期答申というのをまとめて、世の中に訴えていきたいと考えております。昨年末の「平成11年度の税制改正に関する答申」では、将来の税制の抜本的な見直しの必要性を説いておりますけれども、そのうち個人所得課税の見直しについては、御存じのように、すでに基本問題小委員会で検討が進んでおりまして、これをもとに今後検討を深めていこうと考えております。

なお、御参考までに、11年度答申において示されている今後の検討課題は、お手許の資料の「総33-1」としてお配りしてございます。ただ項目が並んでいるだけでございますけれども、そういうふうに検討課題がございます。

そこで、中期答申に向けまして、これらの項目に限らず、こういう問題も取り上げておくべきではないか、あるいはこの問題についてはこういう角度から取り上げたほうがいいのだとかいうことについて、皆さま方の御意見をいただいておきまして、そして、次からの、もう基本問題小委員会を開催していかなければならないと思っておりますので、そういったことについてのいろいろな御議論をいただこうと思っております。

その前に、まず、産業競争力対策関係につきまして、杉江主税企画官からお願いいたしたいと思います。

杉江企画官

産業競争力関係について御説明を差し上げます。資料は特に用意してございません。口頭で御説明をいたします。

3月の中旬にこの産業競争力会議が設置されたわけでございますが、我が国経済を自律的な成長軌道に乗せるためには、需要面の対策のみならず、経済の供給面の体質強化に取り組むことが不可欠であるという考え方のもとに、この産業競争力会議が開催されることになりました。

現在、3月末から月1回のペースで3回ほど行われておりますが、この産業競争力会議では、さまざまな御意見が出されておりまして、雇用問題を含めまして幅広い議論がされている状況でございます。

このような状況のもと、5月18日の閣議におきまして、総理の方から、産業構造転換・雇用対策本部を6月中旬に開催しまして、雇用対策及び産業競争力強化対策を取りまとめるよう指示がなされたところでございます。さらに、本日の閣僚懇談会におきまして改めて指示がございまして、6月11日に雇用対策及び産業競争力対策を決定するということが決まったところでございます。

今後でございますけれども、本日の指示を踏まえまして、関係省庁において取りまとめに向けて検討が進められていくものと考えているところでございます。

以上、産業競争力関係につきまして、簡単に御説明をいたしました。

加藤会長

続きまして、税制や国の財政の巨視的な姿について、田中調査課長からよろしくお願いいたします。

田中調査課長

それでは、お手許の「総33-2」と「総33-3」という資料に基づきまして、簡単に御説明申し上げます。

「総33-2」は平成元年以降の主な税制、経済の動きというのを簡単にまとめたものでございますが、先ほど会長からお話がございましたように、税制調査会では過去何回か中期答申というのを出していただいておりまして、この表はたまたま平成元年からになっておりますので、抜けておりますが、63年に当時消費税の創設を含めました税制改革の答申をいただいておりまして、その後、この表に入りますけれども、「土地の税制のあり方についての基本答申」を平成2年にいただいております。その後、消費税の一部改正、これは議員立法でございましたが、成立したり、地価税が実施されたりしましたが、平成5年に入りましてからは、政府税調のほうから、「今後の税制のあり方についての答申」という形で、やはり同じような中期答申を頂戴いたしております。

その後、政府税調のメンバーの変更がございまして、平成6年には、2行目でございますが、「税制改革についての答申」というのが6月21日に出されております。これもいただいたわけであります。これはちょうど羽田政権のもとでちょうだいいたしております。

それから、平成9年でございますけれども、これはメンバーの交代の時期に当たっておりました関係で、中期答申というふうに呼ぶのが適切かどうかわかりませんが、「これからの税制を考える」という内容の政府税調からの報告をいただいております。

先ほど会長のお話にもございましたように、この年の5月9日に当時の橋本総理からいまの政府税制調査会に対して諮問がなされておりまして、この諮問に対して来年しかるべき時期に中期答申を出していただければというふうに考えているわけでございます。

この表の中では、御存じのように法人税改革がありましたし、それから、いまの総理になられてからの恒久的な減税の内容が書いてございます。

次の資料、「総33-3」、この資料は財政の状況について、もう御案内の内容が多いと思いますので、簡単にやりますけれども、まとめました。

最初の1ページ目は、国の一般会計の税収、歳出総額、国債発行額の推移ということでございます。御案内のように、11年度予算におきましては、税収の規模が47.1兆円、歳出規模が81.9兆円という形になっております。この税収規模の47.1兆円は、ちょうど左のほうへ追っていただきますと、62年の46.8兆円とほぼ同じ税収になっているということでございます。

ここに書いてございませんが、当時の62年の租税負担率は、国の分だけでいいますと16.8%、国と地方を足しますと26.4%でございました。現在の47.1兆円に相当する国の租税負担率が12.9%、地方を足しますと22.3%ということで、税収は同じぐらいでありますが、租税負担率はかなり落ちているということが言えるかと思います。

下にあります棒グラフは、国の一般会計の抱えております借金、特に特例公債と建設公債を両方足した借金の金額についてのグラフでございますけれども、62年の9.4兆円というのは、公債依存度で申し上げますと16.3%、今年の予算の31.1兆円という国債については、依存度は37.9%という数値でございます。

1枚おめくりいただきまして、いまの1ページ目の表を、もう少し昔からさかのぼって作ったような表でございます。昭和30年から今年の11年までの一般会計の歳出と一般会計の税収の推移でございます。御案内のように、48年の第一次石油ショック、それから48年の福祉元年という予算の面における充実等がございまして、このころから歳出と税収との間でかなり大きな乖離が発生しております。

49年にはいわゆる 2兆円減税が行われて、この年は13か月税収といいますか、会計年度所得区分の変更を行った年でありますので、若干自然体で数字が出ておりませんけれども、50年の部分でかなり税収が下がっているのが見て取れると思います。減税をやらざるを得なかったという時代でございます。

その後、第二次石油危機を経まして、昭和55年からは歳出面でかなり財政再建、行政改革ということで、ゼロシーリング、マイナスシーリングといったようなかなり厳しい歳出の抑制を行いました。歳出のグラフが若干横に寝ているのが見て取れるかと思います。

その後、プラザ合意、円高不況ということで、再び歳出でかなりマクロ的な対策をとらざるを得なくなり、一方、バブルの中で税収が上がりましたけれども、平成2年度あるいは3年度を頂点として大きく税収が下落していった。この間大幅な減税措置を何回か繰り返しておりますので、その影響も出ているということでございます。

ただ、このグラフは縦軸が実額になっておりますので、いわゆる伸び率を見るというのには不適切でございます。それで、次のページの3ページでございますが、いまのグラフを対数で示したものでございまして、伸びの比較をするという面では3ページのほうが適切かということでございます。

次の4ページでございますが、世界各国と比べた際の日本の財政収支の状況ということで、これももう何回か御覧いただいていますので、簡単にいたしますが、下のグラフで御覧いただきますと、このページはフローの財政赤字をGDPで割ったデータでございますけれども、世界各国と比べてかなり大幅な乖離が発生している。

次のページは、国及び地方を両方を足しました債務残高のストックのGDP比でありますけれども、そろそろイタリアと手を結ぶような状況になってきているということでございます。

さらに、6ページは、国税の中で主要な税目、所得税と法人税と消費税を3つとりまして、それの58年以降の推移を見ております。もちろん、税制改革がそれぞれの税収に影響をしておりますので、それを考えて見ていかなければいけないわけでありますけれども、所得税、法人税の大幅な下落が見て取れるかと思います。

それから、7ページ以降は国民負担率及び租税負担率のデータでございます。7ページはよく御覧いただいております国民負担率の国際比較ということで、社会保障負担と租税負担を足しまして、99年度予算でいいますと、日本の場合、36.6%というNI比になっております。ちょうどアメリカと同じぐらいのNI比でございますが、内訳については、アメリカの場合は保険料の負担が日本より少し低うございますので、租税負担だけで見ますと、次のページでございますけれども、かなりアメリカの方が高い負担率になっております。

さらにその次の9ページは、国税だけで見ました場合の租税負担率の比較ということで、これも日本よりもアメリカのほうが少し高い負担率になっております。

10ページ以降は、昨年の秋にこの総会にお示ししました所得課税、保険料、消費税、この大きな3本の柱を足しこんで国際比較をしたらどうかという御指摘に基づきまして提出した資料ですけれども、それのリニュー版でございます。リニューしたところは、日本の今回の税制改正を織り込みましてリニューをしております。10ページは、所得課税だけで比較したバージョンでございます。11ページがこれに保険料が乗っかったバージョンということでございまして、例えばアメリカと比較をいたしますと、これは夫婦子2人の世帯でありますけれども、保険料まで乗せますと、日本の場合は約15.2%の負担、アメリカが19.9%の負担ということでございます。

さらにその次は、これに消費課税を乗せまして、アメリカの場合は消費課税の計算が難しゅうございますけれども、小売売上税の全米全体の収入を民間消費支出で割るという手法でやっておりますけれども、イギリス、フランス、ドイツ、それぞれ付加価値税を足しまして、日本は消費税を足しまして、先ほどの11ページのデータに加算したものでございます。

以上、駆け足でございましたが。

加藤会長

ありがとうございました。

それでは、続きまして、地方財政の巨視的な姿について、桑原企画課長、よろしくお願いいたします。

桑原企画課長

それでは、お手許の資料「総33-4」に基づきまして、地方財政の姿につきまして御説明させていただきます。

1ページ目は、先ほど国税にも同種の資料がございましたが、地方財政の大きな流れを表にしたものでございます。この点線が地方の歳出の推移、それから、実線が地方の税収の推移でございます。昭和50年代後半あたりから歳出と税収の間にかなり大きな乖離が生じているということでございますが、ここにいろいろ書いております出来事は、地方財政に大きな影響を与えた事柄の主なものを挙げたものでございます。例えば昭和55年に、これは文部省の法律で、小中学校を40人学級にするという制度改正が行われた、それに伴って市町村が財政的な対応を求められた。あるいは平成元年のゴールドプラン、平成6年の新ゴールドプラン、同じく6年のエンゼルプランといったような、高齢者あるいは子育てのための福祉施策が相次いだということ、さらには平成9年に介護保険法が成立いたしまして、来年の4月から施行される予定になっておりますが、これも地方に県・市町村合わせまして1兆円近い負担が初年度から求められますし、また、具体的な運用につきましても、さまざまな議論がいまなされているところでございます。

下のほうに、平成7年、阪神淡路大震災というのがございますが、このころ、大きな災害、事件、事故が相次ぎまして、そうしたことで例えば警察官がこの2年間の間で5,000人、これも国の政令で増員されるとか、そうした大きな制度改正、さらにはその下のほうに、平成3年以降、バブルの崩壊に伴いまして、さまざまな国の経済対策が講じられまして、地方におきましても、地方単独事業の実施、あるいは地方の減税の実施ということで対応をしたところでございます。

2ページは、いま全体の歳出の中の地方税のシェアを御覧いただいたわけでございますけれども、個々の項目ごとに平成2年度からの推移を御覧いただく資料でございます。一番下の地方税、平成2年度は全体の地方の歳入に占めますシェアが4割を超えておりましたが、平成9年度では36.2%になっております。地方交付税のシェアは17%前後でほぼ横ばいということでございます。上から2番目の地方債につきましては、2年度に7.8%であったものが徐々にその発行額が増えてまいりまして、9年度でほぼ倍近い14.1%ということになっている、借金への依存がどんどん進んでいるという状況でございます。

3ページ目は地方財政トータルの財源不足の状況を、これも表にしたものでございます。上のほうに少し解説を書いておりますが、地方財政の財源不足は、地方税収の落込み、減税等によって平成6年度以降急激に拡大しておりまして、平成11年度には13兆円という過去最高の財源不足になっておりまして、この財源不足を地方交付税の特別会計の借入れでありますとか、あるいは個々の地方団体におきます地方債の増発でしのいでいるところでございます。それで、地方債と交付税特別会計の借入金を合わせた地方の実質的な公債依存度も6年度以降急激に上昇し、平成11年度には17.5%という状況になっております。

4ページ目は、地方財政全体の借金の残高の推移でございます。この棒グラフにありますように、これも急激に伸びておりまして、平成11年度末でトータルで176兆円に達するものと見込まれておりまして、平成3年度から比べますと、平成11年度2.5倍、金額で申し上げますと106兆円の増加ということになっております。

5ページはそれぞれの地方公共団体が借金を返します公債費の負担が、財政上どのような状況になっているかということで、地方税と地方交付税を足しましたいわゆる一般財源に占めるこの公債費に充当した金額がいくらかというものでございます。ここにありますように、この財政運営の硬直性を黄色信号、警戒ラインということで、一応、これが15%を超えたら財政運営にかなり危ない兆候が出るというその15%を超えております団体が、地方団体全部で3,279ございますが、そのうちの1,853団体が平成9年度でこの警戒ラインを超えているという状況にございます。

6ページは、地方の歳出の中で、平成11年度は地方財政計画全体で89兆円ございますが、その歳出の相当部分について、地方団体の自由な裁量ができない、国の関与によって歳出が決められているということを示した表でございまして、国庫補助関連事業、あるいは先ほど少し御紹介いたしましたような警察官や教職員の定数など、国が法令で基準を設定しているもの等々ございまして、全体で公債費を除いた地方の一般歳出で約74兆円、全体の2分の1程度が、こうした国がルールを決めている歳出ということになっております。表でいいますと、この一番黒く網かけになっている部分がその部分でございます。もっとも白い部分で地方単独というところは、一応この振り分けでは地方団体が自ら決定権を持っているということにはなっておりますが、例えば白いところでも戸籍の事務、福祉の事務、保健所の事務等々は、実際には細かな国の法令でさまざまな仕事のやり方が決められている部分が相当あるということでございます。

7ページは地方税の主要税目の税収の推移ということで、一番左が個人住民税、その隣が法人住民税、3番目が法人事業税、一番右が固定資産税ということで、昭和63年度からの税収の推移を見たものでございます。個人住民税につきましては、平成4年度の11兆5,000億円が一番大きな額でございまして、平成11年度にこれが減税等の影響で9兆3,000億円まで落ち込んで、それから、左から3番目の、先ほど御議論がございました法人事業税につきましては、平成3年度の6兆5,000億円がピークでございまして、平成11年度におきましては、景気の落込みあるいは法人事業税の税率の引下げによりまして、これは見込額ではございますが、3兆9,000億円まで落ち込んでいるという状況でございます。

最後のページは、先ほど租税負担率につきまして、国・地方のトータル、あるいは国税についての御説明がございましたが、地方税だけについて各国と比較したものでございます。我が国の地方税の負担率は9.4%ということになっておりまして、アメリカの11%をやや下回るという状況でございます。

ドイツにつきましては、3.7%ということになっておりますが、これはドイツの市町村税だけの負担率でございますので、仮にこれにドイツの州税も加えてみますと、14%をちょっと超えるぐらいの額になります。フランス、イギリスはそれぞれこういったことになっております。

説明は以上でございます。

加藤会長

それでは、島田さんどうぞ。

島田委員

先ほど御説明いただいた産業競争力会議のことに関係してなのですが、6月11日ですか、めどにしてプランが発表されると聞いておりますけれど、あの考え方を効果的にするには、もちろん予算措置プラス、多分税制措置も伴うものが随分あるのではないかと思うのです。特に設備の償却とか、資産の流動化とか、土地の流動化とか、あるいは私は人材の流動化ということもあると思うのですけど、それらについてはさまざまな税制措置が不可欠かなと思うのです。政府税調がそこにどういうふうに関わるのか、ちょっと教えていただきたいのは、本格的にそれをやるとなると、税制改正をいくつか伴うものが出てくるのだろうと思うのです。それは多分秋の臨時国会になるのかどうか知りませんが、政府税調としてはどこでどのぐらいそれを議論をして、それがいつどんなタイミングで法案化されて、それが再生戦略としてはいつごろ効果を持ってくるのか。それはうんと早ければ早いほどいいわけですね。ですから、それはどんなタイミングでおやりになるのか、我々はどこにどう関わるのか、ちょっと教えていただければありがたいと思います。

尾原主税局長

先ほど企画官のほうから産業競争力会議の説明がございましたが、18日の閣議で総理から指示がございまして、6月の中旬に対策を取りまとめるということのようでございます。ただ、その具体的なものについては、ようやく各省庁で勉強が始まったというようなところでございまして、実は税調の話にするには、どのような考え方なり、どのような内容なのかとか、そういう段階にいま私ども何ら至っていないわけでございます。したがいまして、この問題についての税調の取扱いでございますが、いまの状況を見ておりますと、政府部内でこれから検討状況がどうなっていくのかというようなこと、あるいは今日も御議論いただけるのかと思いますが、総会での御議論を踏まえながら、必要に応じ会長と御相談させていただく以外ないなというように、私どもいま考えているところでございます。

加藤会長

項目がまだ具体的ではありませんので、したがって、そろそろ向こうがまとまってからと思っています。これから残った時間はわずかでございますけれども、ここでやっておくべきことがあるかというようなことについても、もし御発言があればいただきたいと思います。

島田委員

私は税調としてやるべきことがすごくあるのではないかと思うのです。日本の経済を蘇生させるのはどうしたらいいかというのは大問題ですから、これまでは公債の発行に依存してきたのだろうと思いますけど、もはやそれは非常に危険なところへ来ていますから、そうではなくて構造改革だと。我々の持っている資源を十分に活用するようなことを考えなくてはいけない。設備の調整とか資産の調整、土地の調整、私はとりわけ人材の問題が大きいと思うのです。これから失業率がどんどん増えていくのは多分不可避だろうと。ただ、そのときにいまの日本の雇用制度や労働市場の慣行ですと、一度失業すると、特に中年の勤労者にとっては、非常にこれは恐怖が大きいですね。二度が効かないような構造になっていますから。ですから、失業しても恐くない社会というようなものを制度的につくらなければいけないのではないかと思うのです。日本の労働行政というのは、企業の長期雇用慣行を前提にして、それを支える、補うという形でできているのであって、自由な競争市場を支える労働行政インフラはないんですね。

ですから、1つ申し上げたいのは、税との関係でいいますと、この勤労者のますます大きな比重がホワイトカラーになっていますね。日本はブルーカラーの人たちについては見事な訓練制度を持っているのですけど、ホワイトカラーについては非常に訓練制度が弱いんですね。これは当たり前のことなんで、ホワイトカラーは集団訓練が馴染まないのですから、自分のニッチで自己啓発する以外ない。そうすると、自己啓発にかかった費用は、課税所得から控除するというような租特みたいなものを、時限を決めてもいいと思いますけど。失業保険期間を延ばすとか、職業紹介を自由化するとかということと並んで、自己啓発優遇税制のようなものを導入するときなのではないかと思うのです。もしチャンスがあれば、そういうこともこの6月に向けての、失業の恐くない社会をつくるために、考える価値があるのではないかというようなことを、どこかで政策の議論に反映させることができれば、望ましいのではないかと思います。

加藤会長

大変いい御意見をいただいたと思います。中期答申を私はいま頭の中で描いているのですけれども、税制だけで日本のいまの改革というのはもうできなくなっているんですね。税制を1つ変えようとすると、ほかのインフラがどうなっているか、そこを変えなければならない。例えば、土地問題は非常に重要だといまおっしゃいましたけど、土地問題は重要なのだけれども、その土地の問題を考えようとすると、どういうふうに、誰が買っていて、誰の持分であるかというのがありますから、すぐ裁判所が問題になる。裁判所はそれについて時間がかかってしまって答えが出ない。裁判所が出ないだけでなくて、それもやりたくないという考え方が先にありますと、進まない。ということでインフラが直っていないと、どんなにいい税制を出しても効果が出てこないのです。そういう意味で、私は中期答申はかなりそういう面まで含めて、経済全体について発言をしていくような中期答申が必要になるのではないかということを前々から思っておりましたので、いまの御意見、大変ありがとうございました。

ほかにございましょうか。

松本(和)委員

中期答申のことが出てきたわけですが、中期答申に向けて、議論について市町村の立場で申し上げてみたいと思います。

先ほど地方歳出と税収の推移の説明があったのですが、これを見ても、やはり国の施策によって地方負担が大分増えてきているわけですが、さらに今後の問題でございますが、少子・高齢化社会、どのようにして市町村が行政を切り盛りしていくかという問題がございます。それとともに、財政的に非常に頭が痛いということに来年度からなってくるわけでございますが、来年から始まります介護問題について、我々はどのようにこれを運用していったらよいか。例えば、要介護認定で住民の方の納得が得られるよなことができるかどうか、また住民が望むような介護サービスが確保できるかどうか、また町村にとって財政的にこれが賄いができるかどうか、そういう大きな問題が我々にのしかかってきているのではないかと思います。

そういうことで、我々の地区もそうでございますが、やはり認定問題等で頭が痛いものですから、市町村が広域的に取組みをしているところが多くなってきております。それと同時に、今日は知事さんもお見えでございますが、介護について、やはり都道府県から財政面、また制度運用面で御負担をいただいていかなければいけないのではないかという気がいたします。そういうことで、この介護の問題1つを取り上げただけでも、今後のいろいろ問題があります。また、今後の地方分権の推進や行政サービスのさまざまな展開に対して、十分な税源が地方団体として確保していただくことが不可欠なことではないかと思います。

せっかくでございますが、地方分権について国会で議論されているところでございます。地方分権の実質を担保とするための御理解をいただきたい。そういうふうに考えております。よろしくお願いする次第でございます。

加藤会長

ありがとうございました。ほかにございますか。

いまもお話がございましたが、介護保険の問題も中期答申ではちょっと遅いくらいですけれども、しかし、いまのやり方が本当にいいのかどうかというと、税制のほうから見ると、非常に不安がございますね。そういう意味で、私はこういう問題については、国がやるというのではなくて、もっと民がやるということを前提にした形のシステムにしていかなければいけないのではないかと思っておるのですが、その辺についてもまだ十分な議論ができていないような気がいたしますので、そういうことまで踏み込んで中期答申で言わなければならないだろうと思っております。

したがって、お手許に1枚紙でもって『平成11年度答申における今後の検討課題』(総33-1)というのがお配りしてございますが、これを見ましても、我々が思っていることが大体出ておるのですけれども、しかし、実はこのこと一つ一つの裏にあることが議論されませんと、私はどうも日本のいまの状況の中では、実現が非常に効果が薄くなってしまうという気持ちを持っておりますので、皆さま方からさらに御意見をいただきたいと思っておりますが、今日はまだ十分に御議論をいただくだけの時間がございませんので、この次にまた中期答申に向けて、どんなことをしたらいいかということを、皆さま方からお伺いしたいと思っております。

今日は一応これからの予定を申し上げておきますと、個人所得課税のあり方については、これから基本問題小委員会がありますが、これは2つのワーキング・グループがありますので、ここで具体的に取り上げてまいりました。これを6、7月にもう一度再開いたしまして、秋以降のワーキング・グループ及び小委員会でさらに検討を深めていきたい。これが1つであります。

もう1つは、連結納税制度の問題がございますので、この問題の検討を法人課税小委員会を6、7月に一応再開いたしまして、この法人課税小委員会、ここは小委員会の委員については従前の委員がいらっしゃいますが、また最近の動向もありますので、若干の異動が起こるかもしれませんが、石小委員長と相談をして、委嘱をしていきたいと思っております。

それから、個人、法人の所得課税以外の問題について、中期答申に向けまして、先ほども出ましたようないろいろな裏の問題がございますので、必要に応じまして基本問題小委員会の場において検討していきたい。こんなふうに思っております。

それから、地方の法人課税につきましては、先ほどすでにもう一通りの報告はいただきましたが、地方法人課税小委員会にあと1か月ぐらいのめどで報告書をまとめていただきまして、そして、次回の総会でその報告を受けたいと考えております。

次回の総会の日程につきましては、まだ流動的でございまして、一応1か月後ぐらいをめどに考えておりますので、そのときはまたよろしくお願いしたいと思います。

どうも今日はありがとうございました。

〔閉会〕

(注)

本議事録は毎回の総会後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、大蔵省主税局及び自治省税務局の文責において作成した資料です。

内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。