基本問題小委員会において出された意見
平成11年11月19日
総38-3の1
(注)本資料は、これまで(10月1日から11月5日まで)の基本問題小委員会において出された意見を、総会での検討の便宜のため、掲載したものです。なお、小委員会としての意見を集約したという性格のものではありません。
個人所得課税関係
個人所得課税の基本的なあり方
- シャウプ税制以来50年が経過し、所得税の負担は国際的にも低い水準となっている反面、課税ベースが相当狭められている。もう一度、原点に立ち返った議論が必要ではないか。
- 21世紀の税制を考えれば、税率構造のフラット化と課税ベースの拡大を行うべきではないか。
- 所得税の税負担は低下してきているが、所得再分配等の機能は重要であり、税体系の柱としての所得税の地位は維持すべきではないか。
- 今後、消費課税の充実は不可避であるとすれば、その場合、所得再分配機能を有する所得税や相続税等の役割はますます重要になっていくのではないか。
- 人口構造や経済成長の変化の中で、税体系が直接税から間接税へシフトしてきたが、これを踏まえて、所得課税のあり方を議論すべきではないか。
- 所得課税や法人課税の減税は既に限界に達しており、今後は、直間比率是正のためといった観点から減税するという議論は成り立たないのではないか。
- これまで所得税・住民税については、減税を繰り返してきているが、これをいかに本来の姿に戻すかを考えていく必要があるのではないか。
- 所得税、法人税等の直接税にどのように負担を求めるかについては、財政赤字の解消や福祉財源の確保を、全て消費税によって対応することは困難であることも踏まえて検討する必要があるのではないか。
- 少子化や高齢化に対して、フロー(所得)だけでなく、ストック(資産)等も含めて、税制全体としてどのように対応していくべきかを幅広く議論すべきではないか。
- 所得課税の税負担を考える際には、社会保険料の負担も考慮する必要があるのではないか。
課税ベース
(控除全般)
- これまで様々な世帯類型に応じて控除の数及び加算措置を増やしてきたことによって、制度全体が複雑になってきている。個人所得課税の抜本的見直しの一環として、簡素化等の観点から、控除のあり方を見直し、整理すべきではないか。
- 控除は既得権益化しやすく、見直しは容易ではないが、社会経済の変化や制度の歴史的な経緯を踏まえ、考え方を整理して見直すべきではないか。
- 控除のあり方については、納税者の税負担能力等にも配慮して、各種の控除ごとに趣旨、水準などを十分に吟味すべきではないか。例えば、年齢要件のみの控除等、所得や支出・負担の多寡と無関係な諸控除をまず整理すべきではないか。
- 控除のあり方を検討する際には、世帯構成の変遷について留意する必要があるのではないか。また、これまでのように夫婦子二人の標準世帯のみではなく、夫婦のみの世帯や独身者にも着目して考えるべきではないか。
- 課税最低限については、課税最低限の水準をどう考えるかという観点とともに、課税最低限を構成する各々の控除のあり方をどう考えるかという観点の2つの観点から検討する必要があるのではないか。
- 政策上の配慮の手法として、所得控除等の税制面からの手当てと歳出面からの手当てを比較する場合には、税体系全体の中でのバランスとともに、所得分配面への影響の違いに十分に留意すべきではないか。
(人的控除等)
- 配偶者控除や配偶者特別控除は、女性の社会進出への中立性の観点から、縮減すべきではないか。
- 配偶者控除は、女性への配慮というよりは、むしろ独立した働き手としての女性の信用力の低下につながっており、問題ではないか。
- 配偶者や扶養親族といった世帯類型に応じた税制面での配慮は必要ではないか。
- 配偶者控除は、生計費への配慮という観点から設けられているものであり、多数の世帯に適用されており定着していること等からしても、現行の水準を縮減する必要はないのではないか。
- 世帯構成等に応じた配慮は必要としても、現在の扶養控除は複雑に過ぎ、簡素化すべきではないか。
(給与所得、退職所得、事業所得)
- 給与所得控除は、平均で収入金額の3割程度の水準となっており、諸外国と比較しても手厚く、日本独特のものであるため、思い切って見直す必要があるのではないか。
- 給与所得控除を見直す際には、公的年金等控除等他の控除のあり方や税率構造など全体の税負担のあり方の見直しも合わせて行うべきではないか。
- 給与所得控除や退職金課税は、雇用の流動化等の勤労形態の変化を踏まえて見直すべきではないか。
- 給与と事業など、各種の所得の間には、いわゆるクロヨンの問題が指摘されていることについても留意する必要があるのではないか。
(年金課税)
- 年金課税のあり方は、多様な年金制度全般の見直しと関連して議論し、適正化を図るべきではないか。
- 年金課税については、貯蓄との関係をきちんと整理すべきではないか。
- 公的年金等控除については、その水準だけでなく、対象をどうするかということも含めて見直すべきではないか。
- いわゆる確定拠出型年金に対する課税のあり方については、年金制度や貯蓄制度との関係、年金課税全体の適正化のあり方に対する検討の中での位置づけ、貯蓄課税の適正化との整合性、経済政策(個人消費の喚起等)との整合性等を踏まえて、慎重に検討すべきではないか。
個人住民税関係
- 個人住民税収に占める均等割税収の割合は低下してきているが、個人住民税の基本的な柱としての位置づけを踏まえ、税率を大幅に引き上げていくべきではないか。
- 均等割の税率の引上げは、国が標準税率を引き上げるのではなく、地方自治体の自主性に任せるべきではないか。
- 均等割の税率の引上げは、国として上げるという方向を打ち出すことが必要ではないか。
- 均等割は、人口規模別に税率格差を設けているが、行政サービスの水準等を踏まえて一本化していくべきではないか。
- 生計同一の妻に対する均等割の非課税措置は、個人課税を徹底する観点から、廃止すべきではないか。
- 所得割は、諸控除を整理して課税ベースを拡げ、税率をフラット化していくべきではないか。
- 所得税と住民税の課税最低限は、かなり違ってもよいのではないか。
資産課税等関係
相続税関係
- 今後の相続税のあり方を考える場合に、まず相続税の課税根拠をしっかり議論する必要があり、最高税率の水準のあり方も課税根拠をどう考えるかで変わってくるのではないか。
- フローへの課税については、フラット化により可処分性を高める必要があるかもしれないが、相続時点のストック課税としては再配分機能を堅持した方がよいのではないか。
- 相続税はストック課税ではあるが、キャッシュフローがないために負担感を持つという点も考慮する必要があるのではないか。
- ストック化の進展を踏まえ、課税対象を再検討し、ストックに対して広く薄く課税していくべきではないか。
- 中期的な相続税のあり方については、所得課税の抜本改革との関連で考えていくことになるが、最高税率と事業承継の問題は短期的に考えていく余地があるのではないか。
- 相続税には各国ごとに課税方式の違い等があることから、国際比較は非常に難しいのではないか。
- 土地の特例については、資産選択を歪めていると考えられ、このような観点からの見直しが必要ではないか。
- 事業承継の問題を考えるに当たっては、全体としてストックに対する課税をどう考えるのか、一般の給与所得者への課税とのバランスをどう考えるかといった点を検討する必要があるのではないか。
- 事業承継の問題は実態を十分踏まえた上で検討する必要があるのではないか。
- 事業承継の問題は、公平性に加え、経済的効率性と重要な関係をもつので、その経済的効果を十分吟味する必要があるのではないか。
- 相続税においては、土地ではなくて取引相場のない株式の評価が問題ではないか。
- グローバル化の進展とともに海外への資産移転をどのようにフォローしていくかといった問題を考える必要があるのではないか。
- 相続税の問題は必ずしも景気と直接関係あるものではないので、むしろ長期的な視点に立って議論するべきではないか。
- 相続税のほか、印紙税、登録免許税といった税目も含めた資産課税の税目は、貴重な税収源であり、基幹的な税目の税収では財政を賄いきれない中、税収減につながる議論は不適当ではないか。
固定資産税関係
- 固定資産税の土地の評価や地価公示価格について透明性を高めるべきではないか。
- 土地税制の一つのねらいであった保有課税を重くすることによって地価を抑制するという基本的な考え方は堅持していくべきではないか。
- 企業の収益に含まれる固定資産税の比率が上がり続けており、一体どこまでいくのかということが関係者の懸念になっているのではないか。
- 地価が下がる中で全体として固定資産税は増えているという状況ではあるが、固定資産税は市町村の安定的財源であり、その安定性を損なうべきではないし、均衡化・適正化も方向としては間違っていないので、このような前提の中で、どこまで工夫できるかという問題ではないか。
- 住民が応益的に負担すべき適正な水準を考えた場合、小規模住宅用地について価格の6分の1まで調整する必要はなく、特例の拡充前の4分の1に戻してよいのではないか。
消費課税関係
消費税・地方消費税関係
- 消費税は今後の財政再建を考えていく上で重要な役割を果たすべきではないか。
- 所得課税や法人課税の減税は既に限界に達しており、今後は、直間比率是正のために減税とセットで消費税を充実するという議論は成り立たないのではないか。
- 財政赤字の解消や福祉財源の確保については、全て消費税によって対応することは困難であり、所得税、法人税等の直接税にどのように負担を求めるのかも含めて検討する必要があるのではないか。
- 消費税は、所得に対してはやや逆進性を有することや、貯蓄にはかからないこととの関係で、所得税の累進構造の強化や相続税等の資産課税の強化により所得再分配を図る必要があるのではないか。
- 目的税化は財政による資源配分を歪める傾向があり、諸外国でも消費税等を目的税化している例はないことから、税体系の柱である
- 消費税の福祉目的税化については慎重に考えるべきではないか。
- 消費税充実の必要性への理解を深める上で、福祉目的税化にも意味があるのではないか。
- 仮に敢えて福祉目的税化を行う場合には、負担を先送りするのではなく、福祉関係の歳出増と消費税負担との対応関係をはっきりとさせていく必要があるのではないか。
- 福祉関係の歳出の見通しを明確にしながら、そのために必要な消費税の税率等のあり方について検討していくべきではないか。
- 地方消費税を含め消費税収の4割強は地方の一般財源とされているが、仮に消費税を福祉目的税化する場合には、地方分を一般財源のままとするのか、福祉目的とするのかは大きな問題ではないか。
- 地方消費税は、消費税創設時に地方間接税の廃止等に伴い創設された消費譲与税の廃止や住民税減税の財源として創設され、もともと一般財源であった経緯から、目的税化は適当でないのではないか。
- 今後の福祉財源を確保するために、別途、消費税と同じ課税ベースに課税する新税を創設するといった考え方もあるのではないか。
- 消費税の更なる定着のため、どのような点を工夫し得るかが中期答申に向けての検討課題ではないか。
- いわゆる逆進性の問題については、社会保障対策として必要な手当てをしている点に留意すべきではないか。
- 課税ベースの広い消費課税としての消費税の性格上、食料品の非課税やゼロ税率は問題が多く、その採用は認め難いのではないか。
- 食料品等に対する軽減税率は、標準税率が欧州諸国並みの二桁に達する場合には検討課題とも考えられるが、少なくとも標準税率が
- 一桁の間は単一税率を基本として議論すべきではないか。
- 軽減税率を適用することについては、課税ベースの広い消費課税としての基本的な性格に反するほか、経済取引に及ぼす影響も大きいなど問題が多いのではないか。
- 消費税が充実してくると食料品の軽減税率の議論が出ると考えられるが、その場合、EC型のインボイスが必要となるのではないか。
- インボイス方式では、免税事業者からの仕入れは仕入税額控除できず、取引から排除されかねないなど影響が大きいのではないか。
- 仕入先から転嫁された税額に応じた仕入控除税額を正確に把握するため、事業者番号付きのインボイス方式に改めるべきではないか。
- インボイスの導入により、簡易課税制度も基本的に不要となるなど制度の透明性や信頼感が高まるのではないか。
- 消費税率を上げる際には、免税点の引下げや簡易課税制度の見直しを行うべきではないか。
- 申告・納付回数は、二度にわたり見直されているが、消費税率が上がる際には、滞納している事業者の実態を踏まえつつ、滞納の未然防止の観点から更なる見直しを検討すべきではないか。
- 商品購入時の価格表示方法については、消費者の便宜を図る観点から、個々の商品について消費税を含めた最終的な支払総額を表示する「総額表示方式」を広める方向で検討する必要があるのではないか。
特定財源等関係
- 特定財源制度については、財政の資源配分調整機能が損なわれるため、歳出の削減・合理化を前提に絶えず見直しを行う必要があるのではないか。
環境と自動車関係諸税
- 環境問題への税制での対応の基本は、汚染者負担の原則を踏まえて追加的な負担を求めることではないか。
- これに対し、いわゆる「自動車関係諸税のグリーン化」案は減税となっており、環境関連税制の正しい方向への一歩とはいえず、また、大型トラックが対象外であるなど、環境問題全体を考えた提案になっていないのではないか。
- いわゆる環境税には、消費抑制のために非常に重い負担を求めるという考え方もあるが、環境対策の財源確保のために広く薄く課税することが現実的ではないか。
- 環境負荷を与えるものに負担を求めるいわゆる環境税について、本格的に議論すべきではないか。