連結納税関係資料

平成11年6月22日
総34-5

平成10年12月
税制調査会

三 今後の検討課題・抜本的見直し

4 法人課税

(3) 連結納税制度

分社化や持株会社化など企業の組織形態の多様化に対応する観点や、経済の急速な国際化が進展する中、国際競争力の維持・向上に資する観点などから、企業集団をいわば一つの「課税単位」とする連結納税制度の導入を求める意見があります。

一方、わが国の法人税制は、商法などの現行諸制度を基礎として、個々の法人ごとに課税することとしており、企業集団を一つの課税単位とする連結納税制度とは基本的な考え方が大きく異なっています。仮に連結納税制度を導入する場合には、法人税の課税体系全般を根本的に再構築することが必要となります。

また、連結納税制度を導入する場合においても、全ての法人が連結対象法人となるわけではないことから、わが国の法人税の課税体系は、現行の個々の法人を課税単位とする体系と、企業集団を一つの課税単位とする体系との双方が併存することになります。このような課税体系の下では、連結納税を行う企業集団と単体企業との間の課税の公平をどのように図っていくのかという問題があります。したがって、連結納税を行うことができるようにするために措置しなければならない連結納税制度固有の問題のみならず、個々の法人を課税単位とする体系と企業集団を一つの課税単位とする体系との間の課税関係の整合性を確保するための措置など広範な論点について、専門的・実務的な観点から、十分かつ慎重な検討を行うことが不可欠です。このような検討が十分に行われないまま制度を構築する場合には、様々な形で租税回避が行われるおそれがあります。

(参考)例えば、次のような論点について検討が必要となります。

  • 納税義務者を親会社一社とするのか各構成会社とするのか。
  • 連結対象となる子会社の範囲をどうするのか。
  • 内部取引に係る損益をどの範囲まで消去するのか。
  • 連結対象法人の中に中小法人が含まれている場合や、中小法人のみが連結した場合の適用税率をどうするのか。
  • 連結グループへの加入・連結グループからの離脱があった場合には様々な技術的問題点が生ずるが、この場合に課税関係の継続性をどのように図っていくのか。
  • 法人税と法人住民税が一体として制度設計されている現在の外国税額控除制度の取扱いをどうするのか。
  • 個々の法人が課税単位であることを前提としている各種租税特別措置についての適用関係をどうするのか。

さらに、仮に連結納税制度が導入されるとした場合には、企業集団内の取引が内部取引化され未実現のものとして取り扱われることや、法人の利益が他の法人の欠損金と相殺されることから、約65%の法人が赤字法人であるというわが国の現状に照らせば、大きな税収減が生ずることは避けられないと考えます。

連結納税制度については、以上のような論点を含め、法人課税の体系全般に及ぶ検討を行う必要があり、まずは、専門的・実務的な観点から、法人課税小委員会において本格的な分析・検討を行うことが適当と考えます。

諸外国の企業集団税制

アメリカ連結納税制度
イギリスグループ控除制度(注1)
ドイツ機関会社制度(注2)
フランス連結納税制度

注1. イギリスのグループ控除制度は、グループ内の欠損会社の欠損金の全部又は一部をグループ内の利益会社に振替えることを認めるものである。
イギリスでは、本制度が導入される前から子会社への補助金支払を損失として認識していた。

注2. ドイツの機関会社制度は、株式法上の利益移転契約(機関会社(子)の利益をその年度において機関主体(親)に移転し、機関会社の欠損をその年度において機関主体が補てんする契約。5年間継続を要件。)を前提として、親子会社間の損益通算が実現するというものである。
ドイツの機関会社制度は、当初は累積型売上税について税の累積を避けるため設けられたものが、法人税にも適用されるようになったものである。

他のG7諸国についてみると、イタリア、カナダにおいては企業集団税制は導入されていない。

連結納税の技術的問題点等

課税所得・税額計算

  • 資本金、所得金額等を基準とした各種措置の限度計算
  • 法人の規模、業種を基準とした各種計算規定の取扱い
  • 適用税率に格差がある場合の取扱い
  • 法人の規模を基準とした税額控除制度の取扱い
  • 所得税額控除制度の取扱い
  • 外国税額控除制度の取扱い
  • 土地譲渡益追加課税の取扱い
  • 同族会社の留保金課税の取扱い 等

申告・納税・罰則

  • 納税義務者
  • 納税額の分担方法
  • 加罰対象者
  • 連結納税用の帳簿書類の作成・保存

税負担回避行為の防止

  • 損失の二重控除問題等
  • 国内、国外を通じた所得移転問題
  • 納税者の立証責任 等

その他

  • 連結加入・離脱の場合の調整
  • 解散・合併の場合の取扱い
  • 地方税の取扱い 等