第27回総会 議事録
平成10年12月4日開催
〇加藤会長
ただいまから、税制調査会第27回総会を開催いたします。
きょうの議事は二つありまして、一つは、地方税の諸問題、それから、前回に引き続きまして平成11年度税制改正における主要検討項目を討議したい、こういうふうに思っております。
地方税の問題につきましては、地方税に関する問題について委員の皆様から要求がありました資料があります。その資料の説明を事務局からしてもらおうと思っております。
それでは、桑原企画課長、よろしくお願いします。
〇桑原企画課長
それでは、お手元の資料「総27-1 地方税等関係資料」に基づきましてご説明をさせていただきます。
表紙をめくっていただきますと目次がございますが、前半は、地方税全体の課題なり検討事項についてご説明いたしまして、後半は、地方税の個々の税目につきまして、現在課題になっている事項とか、これまでの総会でご議論のあったお話を中心にご説明させていただきます。
1ページをお開きいただきますと、地方税収の全体の姿が書いてございます。8年度の決算で、左側の上、トータル35兆円の地方税収入がございます。右側が道府県税でございまして、道府県におきましては、法人関係税の税目が大きなシェアを占めているということ。それから、市町村では個人の住民税と固定資産税が大きなシェアを占めているというところでございます。
2ページをお開きいただきますと、平成に入りましてからの地方の歳入全体に占めます地方税の割合を表にしております。平成元年度には42%のシェアがございましたが、徐々にそのシェアが低下しておりまして、8年度時点で34.6%になっている。一方で、上から2段目ですが、それをカバーするために地方債のウエートがどんどん高くなってきているという状況にございます。
3ページ目は、その歳入の構成を県と市町村とで分けたものでございまして、一番左でございますが、地方税のシェアは市町村のほうが県よりもやや高い。その分、地方交付税の占めるシェアが県のほうが市町村よりも高い。国庫支出金についても、県のほうがシェアが高いというような状況になっております。
4ページ目は、このうち市町村につきまして、政令指定都市、大都市、中核市、おおむね人口30万人以上でございますが、それから、人口10万人以上の中都市、10万人未満の小都市、それから町村というふうに分類してみたものでございます。地方税のシェアは中核市、あるいは中都市あたりが一番高くなっておりまして、小都市、さらに町村になりますと、ずっと小さくなって、その分、地方交付税のウエートが高くなるという状況でございます。
5ページ目は、歳入総額に占める地方税の割合が、県、市町村ごとにそれぞれどういうふうになっているかというのを分類したものでございます。右側の上のグラフが、都道府県の歳入に占める地方税のシェアでございます。10~20%の団体が20団体、その次が20~30%ということになっておりまして、一番大きなシェア、これは東京都でございますが、60~70%の位置にあるということでございます。市町村になりますと、このばらつきの幅がもっと広くなってまいりまして、1割未満の市町村も全体の4分の1ぐらいのウエートになっているところでございます。
6ページは、今年の5月に閣議決定されました「地方分権推進計画」の中の地方税に関する事項でございます。昨年の7月に分権推進委員会から地方税財源の充実を中心にした第2次勧告が出されました。それにつきましては、分権推進委員会からこの税制調査会にも説明・報告があったわけでございますが、そうした勧告を踏まえまして、この5月に地方分権推進計画として閣議決定されたものでございます。
(1)のアの(ア)でございます。国と地方の歳出に占める地方の歳出の割合が3分の2であるのに対し、租税総額に占める地方税の割合が3分の1となって、この間に乖離が存在している。この乖離をできるだけ縮小するという観点に立って、課税自主権を尊重しながら地方税の充実確保を図っていくべきである、というのが基本的考え方でございます。
(イ)におきましては、第1段落の後段ですけれども、国と地方公共団体との役割分担を踏まえつつ、中長期的に、国と地方の税源配分のあり方についても検討しながら、地方税の充実確保を図る、というふうに述べられております。もう2つ下の段落で、平成10年度においては、事業税の外形標準課税の課題を中心に、地方の法人課税につきまして総合的な検討を進める、といったようなことが計画に盛り込まれているところでございます。
7ページは、個別のテーマといたしまして、課税自主権の尊重についての分権推進計画の内容でございます。法定外普通税の許可制度を事前協議制度にする、あるいは法定外目的税を創設する、それから、地方税の個別の税率の地方公共団体における判断の裁量の余地を広げようというのが(ウ)(エ)でございます。
これらの項目につきましては、いずれも当税制調査会の昨年12月の答申で、そうしたことを進めるようにという答申をいただいているところでございまして、(ア)と(イ)につきましては、来年1月召集されます通常国会へそのための法案を提出する予定でございます。(ウ)と(エ)につきましては、既に今年の3月末の地方税法改正で措置したところでございます。
8ページは、さっきご紹介しました租税総額と歳出との間の乖離を表にしたものでございます。
9ページは、現在開催されております第144 回国会におきまして、小渕総理が所信表明で地方分権の推進について述べているところでございます。線を引いておりますが、「政府として地方分権を強力に推進する。5月に決定した地方分権推進計画を踏まえた関連法案を次の通常国会に提出する。国と地方の役割分担、費用負担のあり方を明確にしながら、その一層の推進を図ってまいります。」というふうに述べられております。
10ページは、さっきちょっと申し上げました、昨年12月の当税制調査会の答申のうちの分権及び課税自主権の関係部分を抜粋したものでございます。
11ページは、地方分権推進計画に基づきます今後の地方税法の改正についてのいまの考え方でございます。「地方分権推進計画を踏まえ、以下の事項について、地方自治法の一部改正と併せて地方税法の改正等を行う」と考えておりまして、次期通常国会に法案を提出する予定でございます。
項目といたしまして、1番目は、法定外普通税、法定外目的税の関係でございます。法定外普通税の許可制度を事前協議制にするとともに、協議事項をより簡略化する、それから、法定外目的税制度を創設するというのが一つでございます。
12ページにまいりまして、次期通常国会に出します地方自治法の改正等におきまして、従来からございました国と地方公共団体との関係のうち機関委任事務を廃止することになっております。現在、地方税法の中にございます機関委任事務につきましても、[1]は、都道府県知事が行います市町村税に関する若干の事務、これを自治事務とすること。[2]は、固定資産の評価につきまして、都道府県知事の事務の一部について法定受託事務という制度にする改正を考えております。
3番目は、現在、そのほか地方税法にあります自治大臣の許可制度につきまして、地方税については基本的に地方の仕事であるということで、自治大臣の許可制度を廃止しよう、あるいは、事前協議制度にしようということでございます。その他、細かな事項につきまして所要の規定の整備を行う予定でございます。
13ページ、14ページは法定外普通税の資料でございますので、ご参照いただければと思います。
15ページは、先ほどの総理の所信にも少し触れられておりましたが、地方行革の考え方についてということでございます。昨年の11月に地方分権を推進するため、あるいは財政構造改革を進めるためということで、自治省から地方公共団体に対して地方行革の新しい指針を示したところでございます。上の四角の中に書いておりますが、新しい指針におきましては、平成10年末までの早い時期に地方公共団体それぞれ行革大綱を見直して、具体的な行革の数値目標を設定するなど、取組内容の充実を図るとともに、これを住民によりオープンにしながら、一層の行政改革の推進に努めるように求めているところでございます。本年末までに、ほとんどの地方公共団体でこの指針に沿った行革大綱が策定されることになっております。
「新指針のポイント」というところに書いてございますが、2番目に、数値目標の設定により具体的で目に見える取組をするように、この指針は強調しております。定員適正化計画における数値目標、あるいは組織管理、補助金の整理合理化等、できる限り目標を数値化いたしまして、3番目に、積極的な広報によりまして、住民の理解と協力のもとで行革を推進するように求めているところでございます。
16ページ以降に、地方公共団体の行政改革の取組の具体的な事例を幾つか挙げております。東京都におきましては、平成10年の予算で施策の総点検により 1,000億円を超える削減を行った。あるいは、平成8年、9年で職員を3,300人ほど削減した。今後も10~12年まで 4,700人を削減する。
大阪府におきましても、同様の定員削減に加えまして、2番目のマルにございますが、平成9年度の給与改定を凍結する。さらに、その2つ下でございますが、平成11年から普通昇給を延伸するといったようなことも検討しております。府立高校の入学金の引上げ、10倍ということも現在検討中であります。
神奈川県におきましても、定数の削減、手当の削減等取り組んでいるようでございまして、今年のベースアップ、給与改定につきましても、財政状況が苦しくなっている県を中心に人事委員会勧告の一部凍結、実施見送りといったことを行う、あるいは、行わんとしている県も相当数あるようでございます。
18ページは市町村の合併についての資料でございます。市町村の合併につきましては、地方分権の推進と併せまして、あるいは、行財政改革と併せましていろいろ議論されているところでございます。平成7年に「市町村の合併の特例に関する法律」を一部改正いたしまして、[1]で、住民が合併についての発議のできる制度を創設する。[2]で、議会の議員の定数特例、あるいは在任特例を拡充いたしまして、合併をしやすい環境をつくる。[3]で、地方交付税の特例を講じて財政的な配慮を行う。[4]で、国あるいは都道府県も市町村の合併を推進するための役割を法律で明確にする、といったような改正を行ったところでございます。
市町村の合併を一層推進する必要があるという考えのもとに、今後の取組ということで、1番でございますが、地方分権推進計画も踏まえまして、次期通常国会にさらにこの合併特例法の改正を行おうということを考えております。住民発議制度の拡充とか、財政上の優遇措置、地方交付税の合併算定替の期間の延長といったことを内容とする法案をいま準備しているところでございます。
19ページは平成10年12月1日現在の資料でございますが、全国で市町村合併の動きがいまどういう状況にあるかというものを表にしたものでございます。黒いマル印のところが、先ほどの合併推進法に基づいて法定の合併協議会が設置されたところ。要するに、法律の手続きに沿って現在も合併の作業・手続きが進んでいるところでございます。黒い四角のところは、法律の手続きまではいきませんが、任意の協議会が設置されているところ。白いマルは、そこまでまだいっていませんが、市町村合併の動きが関係市町村で起きていることが報道等によって知らされているところでございます。
そういったところが地方税全体の姿、あるいはそれを取り巻く状況でございまして、20ページからは、個別の税目の課題につきましてご説明させていただきます。
最初に、事業税の関係でございます。税制調査会でも法人事業税を中心にいろんな議論が既に行われておりますが、事業に対する応益課税の観点から、法人と同様に個人につきましても個人事業税が課税されております。 (1)法人と同様、課税団体は道府県が行っております、(2)にありますような事業を行っている人に、(3)前年中の不動産所得あるいは事業所得を課税標準として課税しておりまして、(4)その税額の算定に当たりましては、零細負担の排除、あるいは事業主報酬の概算的な控除という観点から、現行制度上、270万円が事業主控除として控除されております。 (5)が税率でございまして、税収は2,700億円ほどになっております。
21ページは、個人事業税と法人事業税の税収の推移を表にしたものでございます。並べて比べますと、税収全体の伸びは、法人事業税の伸びのほうが個人事業税の伸びを少し上回っている状況にございます。
22ページからは、法人事業税の外形標準課税の導入についての資料でございまして、22ページは昨年12月の当税制調査会の答申でございます。事業税を外形基準によって課税されることになれば、事業税の性格が明確になる、あるいは税収の安定が加わる、さらに地方分権の推進にも資するということから、一番下の2行でございますが、「地方の法人課税については、平成10年度において、外形課税の課題を中心に総合的な検討を進めることが必要です」とされているところでございます。
23ページは、そうした昨年の答申に基づきまして、当税制調査会に地方法人課税小委員会が設置されたところでございますが、これまで8回の審議を行っていただいております。委員の先生方からのレポート、事業税の沿革やこれまでの議論の整理、それから、海外において外形標準課税と同じような制度をとっている国への調査といったことが、これまで行われているところでございます。
24ページは、法人事業税の外形標準課税についての考え方とこれまでの検討の経緯を、これは昭和25年、現行の地方税法ができた以降の議論の主なものをまとめたものでございます。
25ページは、外形基準を課税標準に導入することの意義をまとめたものでございます。税の性格の明確化、あるいは、薄く広い税負担を求められるということ、都道府県の税収の安定化、それから、分権の推進に資するといったことが大きな意義かと考えられます。
26ページは、具体的な外形基準の検討に当たってこうした点を留意しなければいけないだろうということで、小委員会での議論等を踏まえてまとめております。「参考」のところには、今後考えられる具体的な外形基準の例というものを挙げております。
27ページは、前の臨時国会で、外形標準課税の考え方につきまして小渕総理が答弁したものでございます。アンダーラインを引いておりますが、外形標準課税という課題につきましては、こういう税の導入ということも十分検討していかなければならない課題ではあると思っております。しかしながら、現下の最大の課題である景気回復、あるいは中小企業の現在の経営状態、実態を考えますと、いま、この問題を取り上げるということは、これはできかねるだろうと思っております。将来的課題としては検討しなければならぬと思っております、ということで、来年度の税制改正で具体的に取り上げるのはできかねるが、今後の課題としては十分検討していかなければならない、というふうに総理も述べておられるところでございます。
28ページは、これも長い間の課題でございますけれども、社会保険診療報酬に係る事業税の特例措置についての現行制度を説明したものでございます。
[1]にございますように、事業税の所得金額の算定上、社会保険診療報酬に係る収入は総収入金額に全く算入しない、また、その経費も必要経費に算入しないということで、法人事業税につきましても、個人事業税につきましても、社会保険診療報酬にかかる部分は全く非課税という状況になっているということでございます。[2]で、これは昭和27年に議員提案によりそうした制度ができ、今日に至っているわけでございまして、これによります減収が平成10年度で 790億円程度ということになっております。
29ページからは、軽油引取税の資料でございます。都道府県が軽油の引取に対して1キロリットル当たり3万2,100円の税率で課税しておりまして、下から3段目に書いてありますように、道路に充てる財源として課税されているものでございます。税収は、1兆3千億円余の税収がございます。
30ページをお開きいただきますと、「軽油の輸入等に係る課税の適正化」という資料がございます。実は、地方税の中で、この軽油引取税というのがしばしば租税回避行為の対象になり、脱税額も一番多い税目の一つになっております。これまでもいろいろな事案があったわけですが、1の「事案の概要」に書いてありますように、本年10月に、これまでにない大規模な軽油の脱税事案が摘発されたところでございます。下表のとおり、地方税法上の軽油に当たる関税定率法上の粗油と、地方税法の軽油の定義と関税定率法の定義が若干違っておりまして、そのすき間を突きまして、関税法上粗油という名前のものを韓国等から大量に輸入いたしまして、それを国内で軽油引取税を納付しないまま軽油として販売していたという事案が摘発されたわけでございます。
脱税額は、ここにありますように、合計で25億円をちょっと上回るぐらいでございますが、一番右側の欄にありますように、輸入された粗油の総量から推計いたしますと、これを相当大きく上回る額が脱税されているのではないかと推測されております。
2番目の「事案の原因」のところに書いてありますが、こうした事案が生じた背景といたしまして、平成8年3月をもちまして、特石法(特定石油製品輸入暫定措置法)がいわゆる規制緩和の一環として廃止されまして、事実上、石油製品を誰でも輸入できるようになったわけでございます。一方で、課税団体であります都道府県は、そうした輸入の情報が入手できないということにあるわけですので、そうした情報がないまま地方税法の軽油に当たるものが違う名前で輸入されて、国内で大規模に流通していたということでございます。
3番で、そうした事案を防ぐためにこれからどうしようかということで、私どもの中で検討している事項でございます。一つは、輸入実績等を適切に把握するために、軽油の輸入等に関する情報を関係行政機関同士で連絡を十分とって、情報提供のためのシステムづくりをしていこうではないかということを考えております。併せまして、軽油の輸入等に係る報告義務の規定の整備、さらには、罰則の強化などを考えているところでございます。
31ページ、32ページはその関係の資料でございます。
33ページからは、個人住民税についてのテーマでございます。個人住民税につきましては、恒久的な減税の議論の中で種々ご説明はさせていただきましたので、きょうは、検討事項を少し絞っておりますが、いずれにいたしましても、33ページの一番上に書いておりますように、「個人住民税は、地域社会の費用について住民がその能力に応じて広く負担を分任するという性格を有する税」でございまして、賦課期日現在の住所所在の市町村及び都道府県で課税している税でございます。
34ページをお開きいただきますと、こうした個人住民税におきまして、所得税においては課税対象となっている所得で、一部、住民税が課税されていないものがあるということを示した表でございます。一番右側の住民税というところで非課税と書いてございますのが、一つは、割引債の償還差益でございますし、もう一つは、配当所得のうち1回の支払配当の金額が5万円以下の少額配当と呼ばれるものでございます。
35ページは、同様の観点で、株式等譲渡益につきまして、現行の申告分離課税と源泉分離課税の二つの方法がございますが、そのうちの源泉分離課税が選択されたものにつきましては、住民税が課税されていないという状況にございます。
36ページは、個人住民税の均等割及び所得割の非課税限度額についての資料でございます。個人住民税の均等割、所得割の非課税措置は、国民生活水準等との関連で、特に低所得者層の税負担に配慮を加える必要があるという趣旨に基づいて設けられている制度でございます。ここにありますように、限度額は、均等割につきましては、前年の生活扶助額の水準と比較しながら必要に応じてその見直しを行ってきておりますし、下のほう、所得割の非課税限度額については、生活扶助額も含めました生活保護基準額との比較において、その水準をこれまで改定等行ってきているところでございます。
平成11年度、現行の制度のままでまいりますと、所得割の非課税限度額が 268万5,000円ということになりますが、生活保護基準額につきましては、平成10年の基準額、少し引き上げられておりまして、269万4,000円ということで、生活保護基準額のほうが非課税限度額を上回る状況が発生するということになっておりまして、このあたりも今回検討を要する事項になっているかと考えております。
37ページからは、固定資産税及び都市計画税についての資料でございます。固定資産税の基本的な課題につきましては、先月11月27日の住宅・土地税制のときにご説明し、ご検討いただいたところであるかと思いますので、きょうは、38ページをお開きいただきますと、固定資産の評価につきまして、納税者がその評価等についての異議がある場合に、不服申立を行います固定資産評価審査委員会についての現状の問題点等をご説明させていただきたいと思います。
この表は、評価審査委員会に対する審査申出件数を固定資産税の評価替えの行われました年ごとに集計したものでございます。平成3年度の評価替えで 6,600件の審査申出がございましたが、平成6年度には評価方法を変更いたしまして、いわゆる地価公示に対する7割評価というものを採用いたしました。そのときには3.4倍ほど不服審査申出の件数が増加し、2万2,000件になっております。
平成9年度には、負担水準の考え方というものを採用いたしまして、課税標準の高いところは、その負担を引き下げるという方式を採用いたしました。それもありまして、審査申出件数1万3,000件と、ほぼ半減したわけでございますが、いずれにしても、かなり多い審査件数が年間出されているという状況にございます。
39ページをお開きいただきますと、そうした審査申出の処理の状況を、どの程度の期間で処理されたかというものを表にしたものでございます。平成9年度の1万3,000件について見ますと、申出から審査の決定まで30日以内になされたものが全体の 4.9%でございますが、6カ月を超えてなされたものが14.4%ある。さらに、平成10年の1月までの状況でございますが、この時点までに未だに審査決定がなされていないものが全体の52.1%、約半分あるという状況にございます。
実は地方税法では、審査申出がありましたら30日以内に審査決定をするようにという制度になっております。そういう意味から申し上げますと、定められた期間をかなり超過して処理している。要するに、全体を処理するになかなかはけないという状況があるということでございます。
40ページは、固定資産評価審査委員会の審査の迅速化を図る観点から、どういう問題点が現行制度上あるかということを簡単にまとめたものでございます。納税者は、固定資産台帳の登録事項に不服がある場合にこの審査委員会に申立ができることになっております。この審査委員会は固定資産の価格について審査するというのが本来の役目かと思いますが、現行制度では、課税台帳に登録されていた事項については、原則としてすべて受け付ける制度になっているということ。
もう一つは、2番目の四角でございますが、審査申出の期間が縦覧末日後10日以内ということになっておりまして、これが少し短すぎるのではないかといったような議論もあるということがございます。それから、実質審査のところで、実は制度上、この審査委員会は書面審理の手続きがございませんので、審査をするとなると、公開による口頭審理を行わなければならない。そうしたことが、なかなか審理が短期間に終えられない事情になっているかと思われますが、こういったところの迅速化も少し検討しなければいけないのではないかと考えております。
41ページは、固定資産税に係る情報、資産の評価額等につきまして、納税者、あるいは、それ以外の関係者に開示する必要が生じている場合がございます。そういったものがいまどういう状況にあるかというものをまとめたものでございまして、納税者本人、あるいはそれに準ずる者が申請した場合には、資産の評価額等を開示しておりますが、[2]、[3]、[4]など、裁判とか登記に必要な場合には、訴訟の申立人、あるいは登記申請人等に、固定資産税の課税台帳に登録されている事項についての証明、あるいは開示を行う場合がございます。
ただ、いずれも、法律ではなくして通達等に基づいて行っております。これは、せんだっての総会でもご報告いたしましたように、通達による税務行政の見直しという観点からも再検討が必要かというふうに考えております。
[5]は、今年改正されました民事執行法では、そうした観点に立って、民事執行法で固定資産税の情報の開示を明文で規定したというものでございます。
評価審査委員会に関する資料は以上でございます。
きょう、ご検討していただきたいと考えておりますテーマは、以上でございます。
〇加藤会長
ありがとうございました。
では、ご意見、あるいはご質問がございましたら、どなたからでもどうぞ。
栗田さん。
〇栗田委員
地方税の問題でございますので、発言させていただきます。
最初に、この資料でもうたわれておりますように、地方分権と税源の充実の必要性の問題です。地方分権の推進につきましては、福井県の取組をちょっと紹介させていただきます。
まず、啓発活動といたしまして、セミナー、あるいは地方分権塾を開くということで、経済界あるいは住民の方々の参加による研究会を進めております。去年は諸井座長ご自身に来ていただきまして、住民に対する啓発も行ったところでございます。
そこで、県から市町村へ具体的に委譲している事務でございます。例えば、図書などの自販機の設置許可等の受理に関する事務とか、火薬類の譲受消費の許可に関する事務、屋外広告物の許可等に関する事務などを、県から市町村へ委譲しておりまして、現在、22事務・ 233項目について委譲いたしております。平成10年度は約4,000万円の交付金を市町村に渡しております。
それから、地方分権の推進の受け皿としての広域行政の推進につきまして、平成12年から始まります介護保険について、広域的に処理する、あるいは、有線テレビにつきまして広域的な処理をする、さらには、産業廃棄物、ごみ処理、リサイクル等につきましての広域行政の推進を行っております。そのほか、電算事務、医療施設、消防等につきましても広域行政を推進いたしております。
市町村の合併の問題につきましては、具体的に研究会を設置いたしまして、市町村合併の機運をつくるということで取り組んでおります。
このように地方分権についての取組を進めているわけでございますので、この際、ぜひ税源の充実を図ってもらう必要があろう、このように考えております。特に、補助金の整理等々が行われますと、地方税そのものを国税から委譲してもらうといったような税源の充実をぜひ図っていただきたいと思います。
二番目に、法人事業税の外形標準課税の問題でございます。先ほどの説明にもありましたように、総理のご発言で、平成11年度には取り上げないということになっております。総理も、今後の課題であるということは答弁していただいているわけでございますし、地方法人課税小委員会でいま検討いただいているわけでございます。事業税の外形基準の導入につきましては、都道府県に安定税源をもたらす、そして、地方分権時代を支えるためにきわめて重要な課題でございますので、今後、引き続き精力的に検討を進めていただきまして、できるだけ早い時期に方向性を示していただきたいと思っております。
三番目に、軽油引取税の脱税の問題が先ほど報告されました。軽油引取税につきましては、軽油の消費量の増加等に伴いまして、軽油の製造、輸入についての脱税事案が全国的に発生しておりまして、特に大都市圏では大きな課題になっております。軽油の場合は、転々と流通いたしますので、今回のように脱税も広域的かつ組織的に行われるわけでございます。課税庁において、これらの脱税行為を摘発することはもちろんでございますけれども、有効な脱税防止対策を講じていく必要があろうと思っております。特に今回の事件から考えますと、輸入実績等を確実に把握するために、税関等の協力をぜひ求めなければならないのではないかという具合に考えられます。さらには、無申告者に対する罰則の強化などにつきまして、早急に手当てをすべきではないか、このように考えております。
以上です。
〇加藤会長
ありがとうございました。
松本さん、どうぞ。
〇松本(和)委員
最初に、前回の総会の折の私の発言について少し敷衍させていただきたいと思います。
町村においては、特に農山村地域は土地利用などで大きな制約を受けながら、行政サービスを提供しているところでございます。一方で、国土の保全、水資源の涵養、食糧やエネルギーの供給といった、国民生活を支える公益的機能の面で大きな役割を果たしているところでございますが、私の町は、いまでは人口がだいぶ減ってしまいました。しかしながら、かつては炭鉱の町、あるいは石炭の町として非常に栄えた町でございます。その折に都市にエネルギーを供給したということもございます。このように、都市と地方とは相互的に補完的な関係、持ちつ持たれつの関係にあると言ってもいいのではないかと思います。このような点について、ぜひご理解をいただきたいと思います。
そういう中で、我々の町村においては、歳入に占める地方税の収入が都市部に比べて相当低いわけでございます。その大きな原因は、税源の偏在によるものだと思います。同じように地方税が配分されていても、我々の地域にはその税源が乏しいわけでございます。その意味で、現状のままで地方税のみで歳出のすべてを賄うことは、町村にとって困難だということを申し上げたいと思います。
また、この税調で地方税についていろいろご議論されるときには、ぜひ、この税源の偏在という事実にも十分配慮していただきたいと思います。これから、地方分権の推進に伴う地方税源の充実強化ということが税調においては大きなテーマだと思います。地方分権の時代の地方税のあるべき姿を、ぜひ議論していただきたいと思います。今年の税制改革においても、地方分権推進の方向に踏み出していただきたいと思います。その際には、地方に税源を配分するに当たって、税源の偏在という観点も併せて考えていただき、偏在性の少ない体系をつくっていただきたいと思います。
また、先ほど知事さんからも話がありましたが、平成12年からの介護保険の導入が目前に迫ってきているわけでございます。なかなか先が見えないような仕事を我々は任されているわけでございますが、よりよい行政を実現したいという一念で頑張っているところでございます。しかし、まだまだ足りないという意見もだいぶあるようでございます。我々にいたしましても、行政のスリム化、また、市町村合併も検討しているところもたくさんあるわけでございます。そんな我々が期待をこめて注目しているのが地方分権の具体化でございます。分権時代が到来したといっても、絵に描いた餅ではどうしようもございません。分権とともに、地方税の充実強化について、目に見える形で実現をしていただきたいと思います。
以上でございます。
〇加藤会長
平田さん、どうぞ。
〇平田委員
いままでのお話の中で、地方の新たな税源としてクローズアップされているのが法定外普通税でございます。国との事前協議というふうなところまで進展してきている。すなわち、新たな税源を地方でどんどんつくってくださいよ、ということだろうと思うのですけれども、法定外普通税の具体的なお話が、いままで、税調の場ではなかったような気がするのですが、もう少し詳しく皆さん方にお話をしてあげたらどうでしょうか。
〇加藤会長
いますぐやりますか。
〇桑原企画課長
はい。資料の14ページをお開きいただきますと、これは、現在、法定外普通税を課税している都道府県、市町村の状況でございます。平田委員のお話がございましたように、分権推進委員会からの勧告、それから、昨年末の税制調査会の答申等を踏まえまして、地方公共団体でも手続きが簡素化される、あるいは、法定外普通税を起こしやすい状況になるということで、いま、いろんな団体でいろんな知恵を絞っておるようでございます。
具体的に公になっているものとしては、まだそんなに数はございませんが、例えば茨城県におきましては、現在課税しております核燃料税の課税の仕組みを、少し拡充するようなことを検討しているようでございます。青森県でも、今年の10月でしたか、法定外普通税の要件を少し拡充するといったようなことを行っております。市町村のほうでも、それぞれの地域の状況を踏まえまして、いろんなアイデアを出しているところ、幾つかあるようでございます。
私どもとして公式にお話を聞いているのは正確にはまだございませんので、そのあたりは、もう少ししたら、もう少しいろいろ面白いお話ができるかと思いますが、そういう状況でございます。
〇加藤会長
松浦さん、どうぞ。
〇松浦委員
続いて、地方の立場から四点ばかり申し上げたいと思います。
個人住民税は、これまでの答申にも述べられておりますように、地域社会の費用を住民がその能力に応じて広く負担を分任する性格の税でございます。所得税とは異なる独自の性格を有しているわけでございます。こうしたことから、課税最低限も所得税よりも低く設定されておりますし、税率構造につきましても、税の性格の違い、個人所得課税に求められる所得再分配の役割が、個人住民税は相対的に小さいこと等を踏まえまして、所得税に比べて緩やかな累進構造となっているわけでございます。今後、個人所得課税についてのご議論の際には、このような住民税の性格を十分踏まえていただきたいと思っております。
二点目は、個人所得課税の最高税率を50%に引き下げることが前提条件となる中で、個人住民税の最高税率が2%の引下げにとどめられたことは、個人住民税と所得税の性格及び求められる機能の違い、地方分権推進の観点等を踏まえれば、適当なものであったのではないかというふうに考えているわけであります。
三点目は、きょうの資料にも提出されておりますし、前回の総会におきましても、委員の皆さん方からご発言もあったようでございますが、金融関係では、株式等譲渡益における非課税や割引債の非課税などの課題が残されているわけでございます。 これらにつきましても、現下の金融情勢からすれば難しい面もあろうかと思いますけれども、地方税源の充実確保の点から、個人住民税における課税の適正化を図るために、利子割方式も参考にしながら検討していただければと思います。
四点目、最後になりますが、先ほどご説明のございました住民税所得割の非課税限度額については、低所得者に対する税負担に配慮するためにその水準を引き上げることが適当であるというふうに思います。
以上4点、どうぞよろしくお願いいたします。
〇加藤会長
はい、中西さん。
〇中西委員
いま、自治体の首長さんがご発言になりましたが、私がこれから申し上げることは、いまの方々に天敵みたいなことを言うことになると思うのですが、どうぞご容赦なく。例えば、無駄の排除のようなことも申し上げますけれども、これは、松浦さんのところでは、「そんなことはない」と、こういうお怒りがあっていいと思うのですが。というのは、前回たしか今野委員もおっしゃったのですが、これだけ何兆円の大型減税をやるわけですから、当然、その財源論議は国民もしっかりと受けとめておるわけでございまして、赤字国債で逃げるという程度ではどうにもならないわけです。税調として、どういう方法で財源を手当てするのかというシナリオ、あるいは方針というものを、この時点で出すべきであろうという意見が出たと思います。私も全く同感でございます。そこで、あえてきょう、この地方の問題で言わせていただければ、特に地方自治体の行財政改革にメスを入れていくべきだろうと。言い方をかえれば、ただ行革だけを求めるのではなくて、地方自治体の財政自主権をどうやって高めていくかという国民的議論を高めていく必要があるのではないか、こう思います。
仄聞しますと、きのうの3日、地方自治体の6団体が、交付税、交付金をもっと増額しろという要求を中央にしたようでございますが、どうもそこのところが一体どうなっているのかいなと。最近の自治体の財政は非常に悪化しております。特に大都市圏、東京都とか大阪は、企業が非常に悪いですから、当然、企業収益の悪化から自治体の財政も悪化しているわけです。
短期的に見るとそういうことでしょうが、私は、中長期的に見て、中央政府と地方自治体との間の財政の配分の仕組みといいますか、もう一つ言えば、課税のありようという、そういった仕組みそのものに、いまこそ切り込みをかけていくべきではなかろうかと。したがって、いま政府がやっているように、東京都のような不交付団体に対して、地方特例交付金制度を設けて減収をカバーする、そういう臨床的なつぎはぎの手当てをやるのではなくて、もっと抜本的に、国と地方の財政の仕組みがどうあるべきかということを、いまこそ絶好のチャンスですから、地方自治体の財政自主権を高めるにはどうしたらいいんだ、あるいは、効率的な財政運営を地方に求めていくにはどうしたらいいんだ、ということをやはり議論すべきだろうと。
言い方は悪いですが、自治省さんと大蔵省さんが今度の財源で綱引きをしているのも、もうそういう時間的余裕はないのではないか。いまこそ、そういう議論に本気で取り組まないと、これは国も地方も含めて、財政赤字は毎年のごとくどんどんと膨れ上がっていかざるを得ないと思うのです。
大きく言って、私は二つあると思います。一つは、無駄の排除があると思います。一つは、仕組みの改革をやらねばならぬと思うのですが、まず簡単に、その二つについて私の意見を述べさせてもらいます。
仕組みは、結局こういうことだと思うのです。ホームページを見ますと、平成9年度の地方自治体の借入金残高が約147兆円という膨大な金額になっています。これは、各自治体さん、いろいろご苦労があるのでしょうが、問題は、意外に知られていないのですが、名目と実質の借金返済額があるのです。
なぜそういうことになるかというと、地方自治体の借金がまさに交付税、交付金によって、これは地方行政を行う上で必要額であるという認定のもとに、国の交付税、交付金で地方財政の借金が支払われるという仕組みになっています。個人でも会社でも、自分が借りた借金を自分が払う必要がないならば、非常にルーズになるのは当たり前であって、ここのところの仕組みを変えない限り問題の解決にはならないだろうと。
特にいま、諸井さん、大変ご苦労いただいて、地方分権委員会がやっておりますが、これもやっと補助金行政にメスが入った程度で、地方交付税についてはほとんど議論が踏み込まれていないわけでして、ここに踏み込みをかけていくべきだろう、こう考えております。
例えば、ある大きなプロジェクトを地方でやる場合、これは釈迦に説法でございますが、起債と交付税の組み合わせで、ざくっと言って、地方自治体は全体のたかだか1割程度の頭金を用意して、毎年1~2%程度の返済金を払えばもう事業が成り立つ。結局それは、交付税、交付金と、国庫支出金、いわゆる補助金、それに地方債を発行して、その地方債も最後は償還は国がやってくれる。こういうことですから、これは止めどもなく借金が増えていかざるを得ない仕組みになっているわけであって、ここのところをどう変えていくかというのが仕組みの問題点だと思います。
それから、地方交付税の配分の仕組みも、これは恣意でやっているのではないのだと自治省殿は当然そうおっしゃるのですが、この物差しになっている基準財政需要額というものも昭和63年から急増し続けています。バブルに近い急増です。平成元年の対前年度伸び率が15%にもなっていて、どんどん増えている。したがって、これを基準の物差しでやりますから、どんどん増える、こういうことでして、この仕組みの改革をやることが大事なポイントであろうと思います。
いま一つは無駄の排除です。きょうお見えの方はそんなことはないと思うのですが、構成メンバーが自治体の首長さんと学者でできている地方自治経営学会というのがあります。たまたま私の手元にここが調べたあるデータがあるのですが、長くなりますので、ポイントを二つだけ申し上げます。
一つは、自治体の主な直営事業があります。いわゆる学校とか庁舎の警備とか、文化スポーツ施設の管理、給食事業。こういうものを民間にアウトソーシングで委託した場合、人口10万人の自治体だと、年間、何と30億円の経費が削減できる。これが人口20~30万人の自治体の場合だと、年間40~90億円の経費の削減が可能だということが言われています。
ある具体例を言いますと、この調査は95年にやったのですが、全国の 482市町村からの報告事例をもとにやっております。可燃ごみの収集を民間企業に委託した場合、1トン当たりの経費が、自治体が直営で事業をやっている場合の何と46.0%で済む。要するに半分で済むということです。これほどの経費削減ができるということで、中学校の学校給食なんかも、直営の場合は、1食当たりの経費が 408円と試算されておりますけれども、民間委託に切りかえると、何とその47.3%でやれる。これも半分で済むということです。
この事例は、いま、三重県の北川知事あたりが、公営でやっていたものを独立行政法人にして、どんどんと民間委託でアウトソーシングをやっておられるわけです。かなりの成果が出ておりますから、私は、こういった問題を、ぜひひとつ地方自治体の方々にやっていただくような方向に、これは非常に厳しい言い方になりますが、自治省殿もご努力いただいて、国民的な議論としてこれを高めていく。そして、自治体が本当の地方分権として課税自主権を持つようにしていただくというのが私は理想だと思います。
これだけ過大な減税をやるよう、私は、主税局、大蔵省にもいろいろかみついておりますけれども、これに関しては、国家の金庫を預かる者として、構造改革にこそその財源を求めるということを加藤会長の名においてここで打ち出さないと、税調のプライドがないのではないか、こう思います。
〇加藤会長
どうぞ、津田さん。
〇津田委員
ここのところ地方分権の動きが非常に活発でして、その趣旨というのが、自己決定、自己責任で、この方向に沿って計画ができ、来年も通常国会で各種の法案が出されるわけでございます。やはり自己決定と同時に、自分で責任が持てるように、自主財源の充実確保につきまして当税調としてもお図りいただきたいと思います。
それから、いま交付税の問題が出ましたが、各国を見ましても、地域的な経済的発展の不均等がございますので、それぞれ財政調整制度というのを持っております。
イギリスも地方交付金というのはありますし、フランスも、経常経費調整交付金と申しましたか、それからドイツの場合には、ご承知のとおり、連邦と州との共同税という格好。さらに、その一部を市町村のほうの財源調整に向ける制度。アメリカにおきましては、カテゴリー補助金とかブロック補助金と、こういうような制度が財政調整として行われております。
日本の地方交付税の特色というのは、非常に精緻である。例えば、雪が降るところには暖房費や何かの経費を見るとか、老人世帯が多いところは老人人口で割増するとか、そういう意味では、各国の財政調整制度以上にきめ細かく、一部は、おっしゃるとおり、なり過ぎたという点もあるかと思います。
ただ、日本の地方交付税制度の特色というのは、財源調整だけではなくて、財源保障という面があるわけでございます。例えば、東京都は警察官を何人置かなければいけない、小中学校は生徒40人に対して教員を1人置かなければいけない、保育所、幼稚園などでは、かつては必ずブランコ、すべり台、砂場をつけることというようなことがございました。それはなくなったにしましても、赤ん坊にはたしか3人当たり保育婦を1人置かなければいけない、それより大きいのは、7人か8人に1人、保育婦を置かなければいけないと。要するに、置くべしというのが国の法令で決まっているものですから、そういう意味で、地方行政で自主的にやれるという分野がなく、また、財源を国で保障しないと国で義務づけた行政ができない、こういうような仕組みになっております。
そういう意味で、ほかの国の制度より、財政調整のみならず財源保障の面が強いわけです。しかし、その財源保障という面も、この分権の時代に、国の地方団体に義務づけしている規定、特に機関委任事務と言われるものを廃止しようということでございますので、今後の交付税のあり方としましても、国が地方団体の縛り方を緩めれば、また交付税制度の改革というものもなって、冒頭申しました自己決定、自己責任、こういうような子細になってくるのだと思います。
それから、行財政改革につきましては、地方のみならず国も同様でございますが、これは必要でございます。その場合に不要不急事務をなくすのはもちろんでございますけれども、補助金の整理とか、いまおっしゃられた民間委託とか、あるいは、大阪府などでは高校の授業料を引き上げるとか、ごみの有料化とか、そういうような問題も抱えて、行政の事務範囲、守備範囲をどうするかというのが基本的に問題になってくると思います。
そういう意味におきまして、これは地方団体の執行者だけではなくて、議会、あるいは住民に絡む問題でございまして、当調査会の答申が政府に対する答申ということになっておりますが、それと同時に、国民ないしは住民に、こういうような状況である、こういうふうにすべきだ、というような意見表明はあってしかるべきでありますし、必要でございます。また、そういう答申が出ることによって、地方団体の行政改革も力を得てやれるのではないか。自主財源の確保と同時に、地方団体におきます行財政改革の推進についても、当調査会で書いていただくべきものではないか、かように思います。
それから、細かい問題ですが、社会保険診療報酬の問題です。これは多年、懸案ですが、なかなか片づかないわけです。税の負担、公平が求められ、また、行財政改革で国民なり住民にもいろんな面でご協力をいただかなければならない時代に、やはり不公平感というものは一つでもつぶしていかなければならないということでございます。いままでも書いていただいておりますが、引き続き、当調査会の意見として出していただきたい、かように思います。
それから、事業税の外形課税の問題でございますけれども、どうもいままでは、どちらかというと法人税、法人事業税、法人住民税を含めた実効税率と絡めての議論で来ておるようなこともございますが、先ほどありましたように、自主財源の確保と同時に、税源の安定化、事業活動と地方団体の関係のあり方、税の性格を明確化するという趣旨がございます。今年はあまり進められませんが、今後の大きな課題として精力的にご審議いただきたい、かように思います。
〇加藤会長
水野さん、どうぞ。
〇水野(勝)委員
地方税について言えば、先ほどお話がございましたように、地方の経費を、個人なり法人が能力に応じて負担をするということであろうと思います。そういう意味におきましては、地方税として中心的に位置づけられるべきものは、基本的には人頭税であり、土地税であり、小売売上税ではないかと思うわけでございます。それぞれ、各自治体との関連がきわめて密接であります。
まず、第一点の人頭税は、いわば均等割でございますが、これは昭和20年代でも 600円くらいであったわけです。現在は、一番の大都市でも 4,000円程度ということですから、地方税の趣旨を貫徹するための最も典型的な税としての均等割、人頭税といったものは、もっと大事にされていいのではないかと思うわけです。
現在はすべて減税の世の中ですから、当面の改正でなかなか具体的には取り上げられにくいと思いますけれども、あるべき方向としては、例えば最低1万円、あるいは月1万円ぐらいずつのものがあってもいいのではないか。これは中長期的な話かもしれませんが、検討されていいのではないかと思います。
次に土地税制ですが、これは固定資産税が大半を占めているわけでございまして、この数年間、これがかなり充実されてきているということは非常に結構であろうかと思うわけでございます。これが、必ずしもあるべき姿に向かって樹立が図られなかった、そこで数年前に地価税が登場したという経緯も考えられるわけでございます。引き続きまして、固定資産税については充実した方向で進んでいかれることが望ましいと思います。
それから、流通税というのは、本来、地方税にはあまりなじまないものではないかと思いますけれども、小売売上税といったものであれば、地方自治体に密接に関連するものではないかと思うわけでございます。小売売上税となりますと、これは売上税の一種でございます。その中で、いわば事業者に対する売上を除いたものを小売売上として把握すればいいわけでございますが、現時点でこうした新しいものをやるということは、減税の世の中ではなかなかできにくい面がある。また、そのために何千人、何万人という自治体の職員にそれをやってもらうことは、現在の行政改革の面から見ても難しい面があるのではないかと思いますし、政治的にもなかなか難しいかもしれない。しかし、方向としてはそれが一つの方向ではないかと思うわけでございます。
それと、外形課税との関連も考えれば、外形課税の中で売上というのが、先ほどの表にもございまして、考えられるものとしてはあったと思いますけれども、売上そのものは、二重課税の話もあるし、地方税との絡みを考えると、あまり適当ではない。小売売上税ならばふさわしいのではないかと思います。
しかし、それが、政治的な面、あるいは行政改革との関連から難しいということであれば、もっと簡素な計算しやすいものを持ってくるということで、例えば、あの表にございました従業員割ということがあると思います。一番端的なのは加算型の所得型の付加価値というのが外形としてはふさわしいというのが、先ほどのあれにもございましたが、付加価値というのは7割、8割は人件費でございます。それをもっと単純に把握するなら、人頭税、従業員でございます。したがって、最初に申し上げた均等割の充実ということを関連づけて考えれば、企業の段階で従業者割で外形課税をすることが、一つ適切な方向として考えられるのではないかと思うわけでございます。
しかし、事業税の外形課税、これは昭和39年くらいから言われてきて、40年近い年月がたつ。好況のときには、自治体としてもかなりの税収が上げられるわけですので、あまり痛痒を感じない。不況のときになると税収が変動する。しかし、不況のときに、そうした新税は負担増加になる企業もかなり多いわけですから、不況期にもこれまた難しくなる。
議論は数十年続いていても、なかなか難しいということからいたしますと、実質的にそれに近いものとしての小売売上税---小売売上税というのは事業者間を免税にする、現在の消費税は前段階控除でそこを調整する。経済的には同じことでございますから、地方消費税の面で考えるのが結局は現実的な打開策ではないか。しかし、今年はその点は具体的に詰めないということでございますので、具体的な問題にはならないと思いますが、中長期的に、しかも現実的に考えると、地方消費税の問題として考えるのが現実的ではないか、そんな気がいたします。
〇加藤会長
まだご意見があるかもしれません。ちょっと中断のような形でございますが、資料の説明を聞きまして、そして11年度の改正の問題を検討していきたい、こういうふうに思いますので、説明を受けたいと思います。
杉江企画官、お願いします。
〇杉江企画官
それでは、私のほうから、年金税制の問題、法人課税の問題につきまして、簡単にご説明をさせていただきます。お手元の資料「総27-2」に沿ってご説明を差し上げます。
まず、年金課税のほうでございますが、6ページをお開きいただけますでしょうか。公的年金等に係る課税の仕組みでございます。現在、入口、掛け金を出すところでは、社会保険料控除で全額が掛金は非課税になっております。出口のほうでは、年金収入に対しまして公的年金等控除。これは、定額控除 100万円、そのあとに定率控除ということで、公的年金等控除が行われております。それから、65歳以上の方につきましては、老年者控除というようなかなり手厚い控除が行われております。
その次、11ページでございます。このような控除の結果、年金を受けていらっしゃる受給者の課税最低限につきましては、所得税で 334万6,000円、住民税で 310万5,000円ということで、給与所得者の場合に比べてかなり高い課税最低限になっているということでございます。
16ページでございますが、確定拠出型年金ということで、いま、いろいろ議論されてございます。アメリカで401(K)プラン、これは企業年金でございますが、この仕組みについて簡単にご説明を申し上げます。
まず、真ん中のところに四角で囲ってございますが、企業が給与を出しまして、その給与の税引前の所得からの拠出、これは年間1万ドルまで非課税が認められております。それから[2]のほうで、税引後の所得からの拠出も認められております。これは課税後でございます。それに見合うものとして、企業が拠出金を出すというようなことが認められております。これを運用しまして、給付時でございますけれども、これについては課税をするという形で税制が設けられております。
次のページでございますが、アメリカと日本におきまして、公的年金と企業年金、課税がどうなっているかというのを比較したものでございます。日本の公的年金、企業年金におきましては入口の段階では非課税になっている。給付段階では公的年金等控除がございますので、実質的に非課税になっているということでございます。イメージのところを見ていただきますと、入口で非課税、出口で実質非課税ということでございます。
アメリカは、公的年金につきましては入口で課税されております。企業年金につきましては、原則として入口、出口、課税でございますが、401(K)という特別な制度におきまして入口で非課税になっている。401(K)におきましても、出口では課税されているということでございます。
以上、駆け足でございましたが、年金税制についてご説明を差し上げました。
次に、法人税について三点ばかりご説明を差し上げます。
資料の35ページでございます。一点目は軽減税率の問題でございますが、今回、法人税の基本税率を30%に下げるということになっております。これは、過去の中小法人、公益法人等の軽減税率の推移を示した表でございます。
36ページ、次のページをお開きいただきますが、こちらは、法人事業税の軽減税率等について書いた資料でございます。
37ページでございますが、この軽減税率の問題につきましては税制調査会でいろいろご答申をいただいておりまして、まとめたものでございます。下のほうの法人課税小委の報告でございますが、下から6行目、「中小法人の所得 800万円以下の部分に係る軽減税率は、中小企業対策としての政策的配慮から設けられているものである」ということで、その最後でございますが、「この軽減税率については、基本税率との格差を縮小する方向で検討することが適当である」、こういうような答申をいただいているところでございます。
二点目は、連結納税でございますが、39ページの資料をお開きいただけますでしょうか。この資料は、連結納税制度と連結財務諸表制度を比較したものでございます。連結納税制度につきましては、投資家が企業の実態を把握するというディスクロージャーの観点から設けられている制度でございます。そういった観点から、連結の対象となる企業も、国内、それから海外の子会社も広く含めるという形になっております。
一方で連結納税制度は、税金の制度ということでございますので、持株割合がきわめて高いところに限定する、あるいは、国外の子会社は含まれないという形になっております。また、実際に対象となる企業につきましても、連結財務諸表につきましては上場・店頭登録企業ということで、大企業だけでございますが、連結納税制度につきましては、中小法人も含めてすべての法人が対象になるということでございます。
次のページを開いていただきますと、これが諸外国の連結納税制度でございます。イギリスではグループ控除制度、ドイツでは機関会社制度、アメリカ、フランスでは通常の連結納税制度ということで、諸外国の制度もかなり異なっているということでございます。
41ページでございます。連結納税制度については、昨年度の答申でも議論されているところでございますけれども、(7)の下から3行目でございますが、「したがって、連結納税制度については、今後、企業経営の実態や、商法等の関連諸制度のあり方、さらには租税回避や税収減の問題といった諸点を踏まえつつ、引き続き検討を深めていく必要がある課題である」というふうに答申をいただいているところでございます。
三点目は、租税特別措置の問題でございます。46ページを開いていただけますでしょうか。現在、国税におきましては1兆 8,640億円が租税特別措置の減収額になっております。この内訳としましては、住宅取得促進税制等のものがございます。
47ページが、地方税の非課税等特別措置の減収額の内訳でございます。
この租税特別措置につきましても、累次の税制調査会の答申でご答申をいただいておりますが、48ページ、平成9年度の税制改正の答申におきましては、(1)「租税特別措置及び非課税等特別措置は特別の政策目的を実現するための政策手段であり、税負担の公平・中立・簡素という基本原則の例外措置として設けられている」ということでございます。
具体的にどういう観点から検討すべきかということにつきましては、51ページでございますが、平成7年度の整理合理化の基本方針ということで、「その目的が現下の喫緊の政策課題に資するものであるか、政策目的達成のために効果的な措置であるか、そもそも政策手段として税制が適当か、利用実態が特定の者に偏っていないか、利用実態が低調となっていないか、創設後長期間にわたっていないか、等について十分吟味を行い、廃止を含めた検討を行うことが適当である」というような答申が行われております。
来年度から法人税率が30%に引き下げられることも念頭に置きまして、今後とも、租税特別措置の整理合理化に努めてまいりたいというふうに考えております。
以上でございます。
〇加藤会長
ありがとうございました。
それでは、ご審議をいただきたいのですが、その前に、お手元に佐野委員からご要望のありました住宅税制につきましての資料がございます。ごらんいただきたいと思います。
なお、塙さんがきょうはご欠席でございます。塙さんのご意見が出ておりますので、ご参考にしていただきたいと思います。
はい、平田さん。
〇平田委員
平成11年度の税制改正に関する検討項目の中で、いままで全然お話が出てきていないのですけれども、実は、企業者といいますか、納税者にとって、大変喜ぶのではないかという一つの減税の考え方があるんですね。それは、執行の段階で税金を払わなかったということで、ペナルティとして利子税とか延滞税がつくのですが、これが、いまはものすごい低金利でありますのに、大変高い数字のままで推移してきているという経緯があるのです。これは皆様方、あまりご存じない。すなわち、皆様方は税金なんか滞納したことはないでしょうから、おわかりにならないと思うのですけれども、延納しますと、利子税で年間7.3%取られるのです。
年で 7.3%という数字は全くバブル的な数字でございます。ご存じのように、定期預金の金利とか、貸付の金利に比べますと、ものすごく高いんですね。高いままでずっと来てしまっていまして、これが改正になるチャンスがなかったということでありまして、たまたま今回は大変な減税をしていただくわけでありますから、これもひとつ、ぜひ直していただきたいのです。 7.3%をいまの市中金利の水準にまで下げていただけば、納税者にとっては大変な恩恵になる。大体、税金は全部現金で払えということになっていますから、多少懲罰的な意味というか、納税を100%期限内にやってもらうというインセンティブに動くように、高くしておくということもあるのですけれども、それにしても高すぎるのではないか。
そのほかに、皆様方、言葉としてはご存じのように、延滞税というのがあるのですけれども、これが大変高い。これは、二次的な遅延損害金みたいなものでございますから、こっちのほうはともかくとして、現実、普通の納税者が負担をしなければならない利子税は、7.3%なんていう天文学的な数字ではなくて、現実の納税者が払いやすいものにしていただきたいということであります。これが直りますと、相続税の延納のときの利子税も下がるでしょうし、贈与税の延納という制度がありますから、これも連動して下がるだろう。納税者にとってみると、大変納税の意欲をわかせるものではないかと思うわけであります。
さらに、事業者にとっては、いま、非常に貸し渋りがあります。いままでは、例えば延滞税が高ければ、銀行から借りて満額払ってしまおうということで、銀行のほうにいくインセンティブだったのですけれども、いまは逆です。貸し渋りで貸してくれないわけですから、これは、お国がひとつ利子税を下げて助けてやっていただきたい。
同じような納税制度の中で、昔、延納というのが法人税にあったのですが、これがいまはなくなってしまっています。個人所得税の申告所得税には1回だけ延納が認められていますけれども、法人税は全くありません。それから、いま、消費税の未納が非常に多いなんてお話も私は聞くのですが、その消費税も、1回ぐらいは延納ができるような制度がないものかなあと思うのです。これは預かっている金だから、本当は直ちに払わなくてはいけないのだけれども、やはり資金繰りに使ってしまっている企業があるわけですから、これも延納制度ができていれば、大変喜ぶのではないか。
そのほか、納付に関する形としては、昔、青色申告していますと、欠損の繰戻しの制度なんかもあったんですね。1回税金を払うと、当期が欠損になれば繰戻しができるという制度があったのですけれども、これもなくなっています。そういった制度もまた復活していただいて、いまの納税者のタックス・コンプライアンスを助けていただくようなことを、ぜひ本年度の減税の中に入れていただければありがたいと思うわけであります。
〇加藤会長
私もかねがね疑問に思っていまして、こんなことはみっともないかと思って言わなかったのですが、延納したときは大変高いのですが、政府が間違って取った場合、戻してくれるのですけれども、全然利子をつけないんです。これ、おかしいですね。半年ぐらいたってから戻してくれて、利子はつかない。
〇平田委員
いや、還付加算金というのがつきますよ。
〇加藤会長
ああ、そうですか。知りませんでした。申し訳ございません。
〇平田委員
高い税率で返してくれますから、それは連動しています。
〇加藤会長
ありがとうございました。
どうぞ、小長さん。
〇小長委員
ただいまのご説明にございました租税特別措置の関係でございますが、基本的な原則として、整理合理化に努めていかなければいけない、目的を達したものはもうやめていくべきだ、そういう方針はまさにそのとおりだと思います。しかし、現下の政策目的から見て、緊急に必要なものについては、思い切ってやるという対応も必要なのではないかと思うわけでございまして、その中の一つが住宅の促進税制の問題だと思います。いま、手元にもローン利子所得控除制度の概要が配付されているわけでございますが、私自身は、従来から制定されております住宅取得促進のための制度を内容を充実して、抜本的に拡充する方向で対応していくことによって、この問題を解決していくのが適当ではないかと考えております。
例えば、最大の税額控除額を現在の 170万円から思い切って増やすとか、あるいは、借入金額の上限を3,000万円から 4,000万円以上に増やしていくとか、中身はいろいろ検討すべき点はあろうかと思いますけれども、現行制度の抜本的な拡充によってこれは対応したほうがいいのではないかと思います。
それから、研究開発の促進税制の関係も、我が国の新規産業とか、雇用創出の源泉につながってくるわけでございますので、これについてもかなり思い切った拡充を考えていいのではないかと思います。
また、情報の関連で、情報産業というのは21世紀の中核産業分野になってくるわけでございます。例えばパソコン等の情報機器につきまして、1年間で 100%償却できるという即時償却措置のようなものも導入することも、検討対象として考えていっていいのではないかと思います。
それから、連結納税制度のご説明があったわけでございますが、これはここのところ、税制調査会の答申でも累次に取り上げられているわけでございます。いよいよ2000年の3月期から、証券取引法に基づく企業業績の情報開示が連結財務諸表を中心としたものに変わるという事情があるわけでございますから、文字どおり早期の導入ということで、まさに焦眉の問題として具体的な検討をやっていただきたい。この二点を申し上げておきたいと思います。
〇加藤会長
和田さん、どうぞ。
〇和田委員
先ほどの地方税につきましては、一言で申し上げますと、地方分権に向かいまして、地方自治体自体の財源の確保、地方自治体自体が責任を持って課税をする。具体的に言えば、徴税についても、汗を流して徴税はするけれども、その使い道については、住民が相当厳しい目を向けていくということだろうと思います。地方で見ましても、国税と同様に、使い道について、いま住民から、いろいろな無駄というようなことが言われております。その辺のところは、十分に厳しい目を向けていかなければならないということは、もうご発言もありましたけれども、申し上げておきたいと思います。
特に、公共工事でいろいろな箱ものができているのですけれども、それがどれだけ利用されているか。よく地方へ参りますと、できたけれども、維持のためのランニング・コストでかえってお手上げになっている。しかも、利用率なんていうのを聞きますと、いろいろなことをこれから考えていかなければならないなということは痛感しております。
それともう一つ、租税特別措置です。今回も、生保・損保の控除、あるいは老人マル優なんていうのが出ております。前から、加入率が高いとか、いろんなことが言われておりますけれども、いまのこの生活の実態の中で、それから、自分たちの生活なり、老後の自助努力、自己責任ということがこれだけ言われているときに、なぜ、いま、ここに手をつけなければいけないか。それだけの納得はなかなか得られないのではないかということを痛感しております。
老人マル優に至っては、私が税調に入りましてから何年かの間に、幅がだんだん少なくなってきているということは、金利が下がっていますから、否応なしにこういう数字になるのだろうと思いますけれども、その辺の実態をよく見て、生活の実態をよく考慮する必要があると思います。
それから、土地税制につきまして、住宅ローンの問題ですけれども、11月27日に大変具体的な資料をいただきまして、私どもも団体の中で話もしましたし、大変関心は大変呼んでいるんですね。単純に、住宅ローン大変だから、それならというのですけれども、具体的な制度の概要を説明しますと、ウーンと考え込む人が多い。前回も申し上げましたけれども、高額所得者の人が際限なく大きなものを建てれば減税額が非常に大きいということで考えまして、いまあります住宅取得促進税制をもっと拡充していくということで足りるのではないか。
私の周りに、若い女性なのですけれども、大変苦労してローンを組んで、マンションをあれしまして、この話をしましたら、自分がマンションを買ったときに、この住宅取得促進税制が適用されると思って行ってみたらば、50m2以下だというのです。好んで小さいものを買ったわけじゃないんですよ、お金があれば大きいもの買いたいですよ、もう泣きの涙で、これは対象にならなかったのだ、と。いま、住宅ローンのこんなものをやるというのはどうしても納得できません、と言われましてね。それが、私たちの周りの素朴な意見だということを申し上げておきたいと思います。
以上です。
〇加藤会長
はい、橋本さん。
〇橋本特別委員
一つは、確定拠出型年金の導入の問題ですけれども、いま、企業年金の積立不足問題というのが、年金制度の中で最大の問題になってきていると思います。資産運用規制の撤廃とか、予定利率の弾力化というような措置が講じられてきておりますけれども、今度会計基準が変わりますと、年金で穴があいている部分は企業の膨大な赤字として計上されるということで、企業年金、厚生年金基金、こういうものが壁に突き当たっているわけです。
したがいまして、企業側にとりましては、そういう後発債務が発生する恐れがないし、また従業員側にとりましても、雇用の流動化に対応してポータブル化できるし、あるいは給付原資を外部に積み立てていく、こういう形式をとるメリットは非常に大きいと思いますので、これはぜひ積極的に議論して、導入すべきものというふうに思います。
それから、いま問題になっています住宅ローン利子所得控除減税につきまして、これまでの議論で賛否両論あるわけですけれども、私としては、再度申し上げておりますとおり、この際、時限的な措置として導入するべきではないか、景気回復の即効薬になるのではないかと。6兆円の恒久的な所得及び法人の減税が行われるわけですけれども、本年度実施されました特別減税はなくなるわけで、それを考えますと、グロスではネット2兆円。これだけにとどまりますと、せっかくの減税効果が、景気回復に対する力が少し弱いのではないか。
情報通信産業と並んで、住宅産業というのは日本の産業構造の中で戦略分野でありますし、しかも、生産波及効果が 1.8とか 1.9と、倍ぐらいの生産波及効果がある。住宅が建つと、車も売れ、家電も売れる。そういう波及効果が非常に大きいので、住宅を建てるならいまのうちだ、いまをおいてほかにないと、そういうインセンティブを強力に打ち出すと。現在の住宅促進税制を拡充してという考え方も当然あるわけですけれども、一般市場に与えるインパクトの強さという点では、新味のあるそういう制度を新たに導入する。旧制度もメリットがあれば併用すればいいわけで、それがなくて、少しずつ改造するだけでは訴えるものが少ないのではないか。
もちろん、既存の制度でも、既に住宅を建てて買い換えようとするときに、バブルのときに建てた人は、いま、含み損を抱えているわけですが、いまの促進税制では、買換えの繰越損、あるいは買換え特例といまの制度と選択制になっておって、どっちか片一方しか利用できないという問題があります。それから、いまの制度では、所得要件というのもあって、年収 3,000万円以上の人は利用できない。
そういう意味では今度の制度は金持ち優遇だという非難もあるのですけれども、むしろこれまでは、金持ちの人はせっかくのそういう減税の恩典に浴していない。しかも、建てる家の面積についても、240m2以下とか、さまざまな制約条件があります。それよりも、新しい制度を思い切って導入したほうがいいのではないか、このように思います。
〇加藤会長
いま「時限」とおっしゃったのは、どのくらいのことをお考えですか。
〇橋本特別委員
3年ぐらいの期間がいいのではないかと思います。
〇加藤会長
佐野さん、どうぞ。
〇佐野特別委員
資料を要求しまして、出していただいたということもありまして、住宅ローン利子所得控除について、これまでも言ってきたのですが、改めて言わせていただきますと、私はやはりこの制度を導入すべきであるという意見です。ただいま小長さんから、いまの住宅取得促進税制の充実でいいのではないかというお話がありましたけれども、要するに、いまの住宅取得促進税制の定額控除方式では魅力のない層がある。ここ1、2年、定額控除額の増額という措置もとられたわけですが、実際に住宅建設に対する刺激は出ていない。きのう発表されました7-9月のQEでも、住宅建設は前期比マイナス6.2%。年率にすれば20数%の落ち込みと。もろもろの要因が重なった結果なのでしょうけれども、少なくとも定額控除制度では効力が不足していると言わざるを得ないというのが私の判断です。
建設省の資料によりますと、なぜ効力がないのか、あまり効かないのかというと、年収 1,000万円ぐらい以上を境に効果が寝てしまう。つまり、この層にとっては魅力が乏しいという現実になっているわけであります。したがって、この層になにがしかの住宅を持たせる誘因を与えるとすれば、ローンの利子控除制度創設に効力が期待できるのではないか、このように思うわけです。
ここで出てくるのは常に高額所得者優遇という議論なわけですが、ここの資料にもありますように、年収 1,000万円以上という所得層が恩恵を受けると。この年収1,000万円という層を高額所得者と見るのかどうか。40代後半あたりになりますと、3割から4割の人が年収 1,000万円になっていることから言うと、とりたててこれを金持ちと位置づけ、この制度を金持ち優遇と言うのはいかがなものかと思うわけであります。
つまり、いまのような時代、あるいはこれからの時代も含めてですが、比較的余裕がある、あるいは、年収からいっても、家族構成からいっても、職場での地位の安定からいっても、そろそろ家を建てようか、より広い家にかえようかという層にターゲットを絞った政策がないと、前に進まない。逆に言うと、低額所得者との不公平感というのはあるにはあるのでしょうけれども、そういった不公平感に引きずられていると、何事も前に進まないという気がするわけであります。
先ほど橋本委員もおっしゃいましたように、定額控除のほうがたしかに有利だという層もあるのも厳然たる事実なので、そこは併用制で対処すればいいのではないかと思います。
以上です。
〇加藤会長
どうぞ、榎本さん。
〇榎本委員
年金とかかわる税制のあり方について、連合の立場、考え方を申し上げさせてほしいと思います。
これからの社会保障を考える場合、公的な保障を柱としながら補完的に共助、自助というものを組み合わせていく形になっていくのではないかと考えます。ただ、昨今の年金改革とかかわる議論を聞いておりますと、いたずらに自助努力が強調されて、そのことが国民の将来不安に結びついて、消費をすくませ、ひいては景気にも影響しているというふうに考えるわけです。そういう点で、年金制度改革にかかわる年金税制の議論においては、基本として、公的保障、公的責任を重視すべきだというふうに考えます。
二つ目に、先ほどお話のありました企業年金についてであります。報道によりますと、与党の側でも、現行の確定給付型から確定拠出型への移行が検討されていると言われております。ただ、私どもからしますと、企業年金は、いわば賃金の後払いである退職金を切りかえたというのが多くの実態であります。そういう点からしますと、確定拠出型への単純な移行は、働く側にとってどうも不利になるのではないかという心配があること。同時に、アメリカの企業年金を見ますと、ERISA法に基づいて強制適用の支払保障制度があるわけです。我が国の場合、任意の共済制度がありますけれども、これは保障内容が不十分であると同時に、受給権を保障する法的な担保がないわけです。
そういう点で考えますと、まず、こうした環境を整備することが先決であって、それらが整備されぬままに確定拠出型の年金とか、401(K)プランの導入とかかわって税の優遇措置が検討されるというのは、いささか順序が逆ではないかというふうに考えるわけであります。
〇加藤会長
中西さん、どうぞ。
〇中西委員
毎回、住宅ローン利子所得控除を私は申し上げているのですが、一遍に申し上げられませんので、小出しでいろいろ申し上げているのですが。これについていろいろ批判なり、在来型の促進税制のほうがいいというご意見がございますが、その中で反論の最たるものが、金持ち優遇である、こういうご意見があるわけです。
これに対して、調査したもので反論したいのですけれども、所得税の課税額に対する減税額の割合を見た場合、ローン減税は決して高額所得者有利とはなっていないのです。年収 500万円の人で、所得税額に占める減税額の割合が22%あるのです。ところが、1,000万円前後、さっき佐野さんがおっしゃった中堅のところへ来ると、これは15%程度しかない。年収 1,500万円の人になると、14%しかない。 2,000万円前後の年収の人になると、12%しかないということであって、所得税額に占める減税額の割合は決して金持ち優遇にはなっておらん、こういうことです。額はそうなるのですが、大きな投資をする人は、投資に高いインセンティブを与えるようにしていくことがいまのビッグバンの時代の投資のあり方ですから、これは当然そうあっていいと思います。
それから、これは佐野さんがおっしゃったことですけれども、金持ち、金持ちと言いますけれども、日本の 1,000万円前後、あるいは、以上と言っていいでしょうか、この辺の所得者というのは、我が国の勤労者の中堅を占めている、まさに一般勤労者と言っていいのではないでしょうか。そして、建てかえ・住みかえ層の48.4%が、1,000万円以上の所得を持っている人でして、この辺の層を高額所得者と呼ぶのはいかがなものか。では、一般所得者というのは500万円以下の税金を払っていない人かと、こういうことになるわけであって、私はこれはちょっと行き過ぎの議論ではないかと思います。
もう一つの反論が、こういう利子を所得から控除する制度は税制のあり方として不合理だ。所得課税のありようとして、税制体系上不合理だということを、前にどなたかがおっしゃったことがあるのですけれども、私は、従来型の発想でこの制度を不合理と決めつけるのでなくて、むしろ、日本の税制のありよう---例えば前回申し上げましたが、これは大蔵主税局殿はいろいろご意見もおありでしょう。私は、源泉徴収を中心に据えてきた日本の税制の基本的なレジームをここで議論していくべきはないか、こう思っています。だから、こういうローン制度はおかしいので、不合理な臨時の特別措置をやるのはいかがなものか、という意見があるのでしょうが、それを言うならば、住宅取得促進税制も不合理極まりない臨時の特別措置であって、これを拡充しようという意見が、いま、あるようですが、これはまさに矛盾するわけであって、これは同じことだというふうに思います。
もう一つが、なぜ住宅のローンだけにそれをやるのだ、こういう議論ですけれども、私は、在来の源泉徴収を中心に据えてきた日本の税制の枠内では、この問題は議論が避けられてきたきらいがあるのではないか、こう考えています。これからは、個人による住宅資産や人的資産への投資が非常に重要になる時代でして、例えば、住宅ローンや教育ローンに加えて、最近言われているホーム・オフィス。自分のところで自己訓練をやって、パソコンのような機器を購入する。そういうことのためのローンの利子の所得控除も当然考えていくべきであって、これは、大きな時代の潮の流れに対応する税制として、申告制にしていって、徐々にそういう方向に持っていくのがいいのではなかろうか、こう考えています。
三つ目の反論ですが、持家の帰属家賃への課税の問題で、どうも矛盾があるというご意見があるようです。もともと、住宅政策の最初からこの議論はあった。これは課税側の問題の議論であって、それはそれとして、政策的・制度的な議論が今後とも必要であることは言うまでもないことですが、それをもって住宅ローン利子の所得控除制度に反対する根拠にはならないと思うのです。これが、反論への反論です。
〇加藤会長
平田さん、どうぞ。
〇平田委員
住宅のローンの所得控除の問題が大激論になっておりますけれども、私は、所得控除制度というものを導入するのはあまり賛成ではないのです。意外にご理解が最終的にいっていないのかなと思うのですけれども、所得控除よりも税額控除のほうが、本当は納税者の方にとっては助かるはずなのです。所得控除でいきますと、そこに税率をかけたその結果しか税額としてはありがたくないという話がありますから。いまの住宅取得促進税制が35万円まで還付をしてしまうということは、所得で800何十万円の方が税金がゼロということですから、すごい税制なんですよね、現行税制であっても。それを少し手直しをしようではないかということで、所得控除に十分代替ができる、私はそういうふうに思います。
それから、いままでは敷地の取得についてのローンが入っていないのです。建物分だけしか入っていません。土地を買ったやつのローンもいいですよということも、税額控除の一つのプラス・アルファでございますし、それから、意外に皆様方のお話の中に出てこないのですけれども、こうやってどんどん住宅をつくれ、つくれということを、税制面からインセンティブにやっていくにしても、私の土浦あたりでも、公共事業ですごい道路が農地の真ん中にできるんですね。できるんですけれども、農地というものはご存じのようにいろんな規制がありまして、勝手に住宅にならない。特に調整区域なんかは全然だめということになっています。せっかく農地の間にすごい一級国道を通しておきながら、その周辺地域を農転に困難な規制をしておいて、それで、住宅をつくれ、つくれといっても、なかなかインセンティブにそういうものが動かない、これが一つあると思うのです。
もう一つは、いま、年金課税とか退職金課税が問題になっていますけれども、意外にお年寄りが貯蓄を持っているということが統計的に出ていますね。一番肝心の働き盛りの人はあまりお金を持っていない。だから、住宅取得資金の贈与制度がありますが、あれなんかをもっと拡充してやれば、親御さんが持っているお金を子どもさんに使うことができる。しかも、非常に安い贈与税でそれができる。
ですから、贈与税制の一番根幹になりますが、基礎控除の60万円は、長い間60万円を据え置いていますから、あれを100万円ぐらいに上げていただいて、住宅資金については、いまの 1,000万円を1,500万円とか 2,000万円に上げるということによって、インセンティブに住宅にお金が回っていく。それから、いまのような敷地のローンも入れる。それから、敷地自体がみんな調整区域になっていて、さっぱり家が建てられないということでは困る。税制ばかりで景気をよくしようといってもなかなか無理ですから、農林省も協力をしていただいて、建物を建てられる土地をうまく解放していただくような、農地法の規制緩和も考えていただきたいなと思う次第であります。
〇加藤会長
水野忠恒さん、どうぞ。
〇水野(忠)委員
住宅利子控除、随分出ております。この前も申し上げたのですが、一つは、投資減税をやる場合に、一般的な減税と個別的な減税がありますが、我が国は、今度、法人税・所得税両方とも大幅に税率を引き下げることになったわけです。やはりこの重みというものを、税制調査会の議論の仕方としては考えるべきではないかと思うわけです。
もう一つは、いわゆる政策的な税制ですが、住宅ローン利子所得控除といった政策税制が、税制調査会の場でこういう形で議論されていいものかどうか。租税特別措置につきましては、税制調査会、一貫して縮小削減する方向で話が来ているわけですが、こういう政策税制をやれ、やれという形で税制調査会の議論としてまとめていくことは、いままでの趣旨に合わないし、他方で、一般的な減税という形で所得税率、法人税率の引下げを行っているにもかかわらず、なおも加えてこういう議論をすることには納得がいかないわけです。
それからもう一つは、技術的な点ですけれども、所得控除という形で利子控除を入れるということは非常に波紋を呼ぶことになるわけです。現実に住宅を持っている人についてはどうなるのかという問題、それから、家賃を払っている人にはどうなるのか。これが、教育費ローン控除、家賃ローン控除といった形でどんどん広がることは目に見えているわけです。いわゆる利子控除というものを認めたアメリカ合衆国は、これを抑えていくことに50年以上苦労したわけですけれども、我が国も同じような形で今度は逆方向へ広がっていくということを、私は非常に懸念しております。
以上です。
〇加藤会長
佐野さん、どうぞ。
〇佐野特別委員
もう一言いわせていただきたいのですが、いま水野さんのおっしゃった、政策的な税制をこういう税調の場で議論するのはいかがなものかというご意見ですけれども、住宅ローンの利子所得控除というのは単純な政策税制ではないというふうに私はとらえているわけです。なぜならば、一つは、所得に応じて負担を軽減していくのだという考え方がある。もう一つは、高額所得者というのは一体どういう定義をすればいいんだという問題がある。ですから、通常の政策税制、租税特別措置としてお考えいただくよりも、税制にとって基本的な問題をはらんでいる、したがってこれだけの議論になる、ということだと思います。
それから、税額控除と所得控除の比較で、税額控除のほうがいいのではないかということですが、私は、何度も言いますように、所得に応じて軽減額が減っていくというシステムがあっていいのではないかと。 800万円ぐらいの年収に相当するということですが、それ以上はみんな同じということで通していいのかどうか、そういう問題も含んでいるのではないか。
もう一つ、贈与の非課税枠の拡大ということがありましたけれども、私はやや慎重論であります。なぜならば、いま、住宅を持てるということが、親の遺産とか、親からの援助とか、あるいは、奥さんの実家からの援助とか、そういうことで決まっている要素がかなり高い。本人の努力よりも、そういった外からの援助、そこで持家の取得能力が変わってくる。本来これは、本人の勤労の集積として住宅を持つというほうがいいのではないか。そういう意味からも、所得に応じて軽減額が決まる所得控除方式というのを私は主張しているわけです。
〇加藤会長
中西さん。
〇中西委員
私も、いまの水野さんのあれに一言、反論したいのです。反論の反論ですが、アメリカはこれはだんだん縮小してきているといいますが、たしかにそうなんですね。アメリカは最初、いろんなローンの控除をやっておったけれども、いまは住宅のほうへ収れんしてきている。
だけど、こういう議論をするときに、そこの国の置かれている現実がどうなっているかという時間軸を抜いて議論すると、何が何だかわからなくなるわけです。アメリカは、そういうことで内需の振興に成功して、いま、まさにパックス・アメリカーナになっているわけです。したがってアメリカは、内需型よりも、いまは輸出型に切りかえていかなければいけないから、これはこれで若干不合理のあるところを縮小していっている。
日本は、いままさに、輸出型から内需型の経済に大きく足を踏み出していかなければいけないわけですから、私に言わせたら、アメリカのように思い切って右足を前に出すというか、そういうことをやるべきであって、日本がいまどういう状況に置かれているかということを考えるべきだと思います。
私は、あえて比較すれば、英国の15、16年前のサッチャーがやった、官主導で、ものの考え方が労働党的な社会主義的な理念でやられた……。累進税率だって、当時、90%いっていたわけです、ロージ・ジョージのころは。それをサッチャーは、重税はまさに重規制だ、スモール・ガバメントにやるということで、思い切って右足を出した。時間軸で言えば、日本はいま、ちょうどそういうところにあるわけですから、そこを無視して、いまアメリカはこうだからこうよという議論はいかがなものかと思います。
〇和田委員
一言だけです。私は、金持ちとか高額所得者というのをどこで線引きするかなんていうのは議論するつもりもありませんけれども、納税者数から言いまして、これはいつも配付されている資料ですけれども、1,000万円以下の累積比が93%だと。この事実だけは間違いのない事実で、どこで線引きするかなんて問題ではないと思います。
それと、課税最低限にも関係してくるのですけれども、夫婦子ども2人で、1人は課税対象ではなくてという、あれだけを標準世帯に考えていいですかということを、前から私は疑問があって出しているのですけれども、この給与収入会計別の所得税を見ましても、100万円以下の人でも納税はしているわけです。パーセントとして 1.5%という数字があるわけで、そこら辺のところもやはり押さえていかなければいけないということは感じております。
〇野(忠)委員
よろしいでしょうか。先ほどの中西委員の話ですが、アメリカ合衆国が利子控除を制限したのは、ちょうど双子の赤字を抱えている1986年ということですから、お話がちょっと合わないと思います。その点はまたご検討いただきたいと思います。
〇加藤会長
この議論は反論も含めまして、まだいろいろあると思いますので、この次のときにまたいただきたいと思っております。
ここで、ちょっとご相談させていただきますが、今後の進め方でございます。従来の例でまいりますと、答申に入りますときに、臨時小委員会を設置いたしまして、総会でのご議論を踏まえまして、骨組みをつくりまして、論点を整理しまして、そして、また総会で議論していただく、こういうような進め方を考えてきたのでございますが、今回もこういうことをしてよろしゅうございましょうか。
もしよろしいようでございましたら、そうさせていただきます。
そうしますと、臨時小委員会に所属していただく方々は、議事の規則によりますと、会長が指名することになっておりますので、早速でございますけれども、私のほうから指名をさせていただきます。
これから申し上げます方々、ご多用のところまことに恐縮でございますが、よろしくご協力をお願いしたいと思っております。
石弘光さん、大澤雄三さん、大田弘子さん、河野光雄さん、佐野正人さん、島田晴雄さん、竹内佐和子さん、津田正さん、中村仁さん、本間正明さん、松尾好治さん、水野忠恒さん、水野勝さん、森田明彦さん、柳島佑吉さん、でございます。
以上の方々のほかに、私と松本会長代理が参加させていただきますが、小委員長は松本会長代理にお願いしたいと思っております。
それから、今後の予定でございますけれども、第1回の臨時小委員会が、早々で恐縮でありますけれども、12月7日、来週月曜日の午前10時から開催したいと思いますので、よろしくお願いいたします。
また、次回の総会は、12月8日、火曜日の午後2時から開催いたしまして、これまでの総会審議のいろいろな問題についてご議論を集約していくことになります。そういうことでよろしくお願いしたいと思いますが、12月8日の総会でのご審議を踏まえまして、臨時小委員会に答申作成作業をお願いいたしまして、12月11日、金曜日午後2時からの総会で、臨時小委員会が作成した答申案をもとに年度答申の重点項目について審議いたしまして、その後、答申案をとりまとめていきたい、こういうふうに思っております。12月15日、16日も総会を開催することになると思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
税調では、審議の透明性を確保する観点から、総会における審議を第20回以降、公開してまいりました。しかし、次回、8日以降は、答申案の作成でございますので、そこで答申案文の審議を行うことになりますから、議事規則に基づきまして、審議の公開は行わないことになります。
また、各省庁幹事の方の出席はご遠慮願うことになっておりますので、よろしくお願いしたいと思っております。
こういうことで進めてよろしゅうございましょうか。
〇平田委員
15日、16日以降の予定はどういうふうになっていますか。
〇加藤会長
15日か16日には出したいですね。というつもりでおります。
それでは、きょうはこれで終わらせていただきます。ありがとうございました。
〔閉会〕
(注)
本議事録は毎回の総会後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、大蔵省主税局及び自治省税務局の文責において作成した資料です。
内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。