第26回総会 議事録

平成10年12月1日開催

加藤会長

それでは、ただいまから、税制調査会の第26回総会を開催いたします。

本日の議事をあらかじめ申し上げておきますと、最初にまず、円の国際化との関連とか、あるいは金融関係の課税問題、電子商取引に関する課税問題など、今まで何回か登場しているのですが、十分なご説明ができておりませんので、これを事務局から説明してもらおうと思います。

それから次に、前回の総会で私のほうから事務局に指示しておきました来年度税制改正の主要検討項目について、事務局から簡単に説明してもらいまして、それをもとに自由討議を行いまして、答申とりまとめに向けて論点を煮詰めていきたいと考えています。

それでは、早速説明をしてもらおうと思いますが、金融関係税制についてさまざまな議論がございますが、これまでの動きやその背景などについて、まず、円の国際化と税の競争に関しまして、谷口国際租税課長からお願いします。次に、そのほかの金融関係の税制につきましては、加藤税制第一課長、上田市町村税課長から説明を受けたいと思います。

それでは、谷口さん、よろしくお願いします。

谷口国際租税課長

お手元に2つ資料がございまして、いずれも横向きの資料でございますが、1つが、総26-1「円の国際化〔説明資料〕」、もう一つが、総26-2「税の競争」、薄い3枚ぐらいの紙ですが、まず初めに「円の国際化」のほうからごらんになっていただきたいと思います。

2枚めくっていただきまして、1ページ目、グラフがございます。円の国際化ということで最近いろいろなご要望が出ているわけでございますが、そもそも円の国際化とは何かということも実はなかなか難しい問題でございまして、一つの考え方としてよく言われますのは、通貨当局の外貨準備に占める円のシェアが、例えば日本のGNPのシェアはアメリカの半分であるにもかかわらず、円の外貨準備に占めるシェアは、アメリカのドルが50~60%であるにもかかわらず、日本の円のシェアは6~8%で、マルクが14~15%ですから、GNPに比べると円がマルクの半分、ドルの7分の1というのは少な過ぎるのではないかというご指摘で、これは、ドルやマルクは非居住者非課税にしているにもかかわらず、円は非居住者に対して課税しておりますので、源泉徴収しておりますので、そのせいではないかというご議論が多いわけでございます。

そこで、このグラフを見ていただきたいと思いますが、実はドルやマルクやフランが非居住者非課税になりましたのはレーガノミックスのころでございますが、歴史的背景は後でご説明いたしますが、84年でございます。ところが、84年を境に各国の通貨のシェア、特に円のシェアがほかの通貨に比べて下がったかというと、そういうことは特にございません。

それからもう一つ、ドルとマルクと円という比較はよくありますけれども、実は非居住者非課税にしてますのはポンドとフランスフランというのもありまして、このグラフを見ていただくとわかるように、ロンドンマーケットというのは立派なマーケットかもしれませんが、非居住者非課税にしたからといって、ポンドが国際通貨になっているというわけではないという面もございます。

それから92年というところに日本のTB・FB非居住者非課税というのがございますが、これは、次のページで説明いたしますが、還付方式という形で非居住者に非課税にしたのが92年でございます。しかし、残念ながら、このときも円のシェア自体は上がっておらないということが言えます。

2ページ目をお開きいただきたいと思います。「非居住者の受け取るTB・FBの課税関係」となっておりまして、制度をご説明いたしますと、TB・FBは短期の割引国債でございますので、発行時に18%の源泉徴収を行っておりますが、相手が外国中央銀行の場合には、取得時、中央銀行が買ったときに即時に全額、その源泉徴収分を還付する、あるいは外国法人であれば満期の償還時に全額源泉徴収分を還付するという形で、いずれにせよ、非居住者の場合には源泉徴収分を全額返すという形で、結果的に非課税という扱いになっております。これが先ほど申し上げましたように、92年のことでございます。

下の、数字が横に並んでいるものを見ていただきたいと思いますが、売買高と、発行残高と、円の外準シェアというのが順番に並んでおります。92年の前後を見ていただきますと、このような非課税措置をとったことによりまして、91年と比べますと、売買高は1,200兆~ 2,000兆円。その後も大体 2,000兆円レベルの非常に大きい売買高になっておりまして、これはアメリカのTBマーケットがやはり 1,500兆円ぐらいのマーケットと言われておりますので、それに匹敵する、あるいはそれ以上の売買高という非常に大きいマーケットに育っております。

ところが、先ほど見ていただきましたように、円のシェアは増えておりません。なぜ増えておらないかというと、これは残高が増えておらないからでございまして、保有シェアを増やすためには、税よりも、税も大事かもしれませんが、むしろ残高を増やさなければいけないという問題が残っているわけでございます。

ちなみにアメリカのTBは、この下に書いてございますが、残高 100兆円でございまして、日本のTB残高の約7~8倍。そうしますと、外貨準備のドルと円の比率が、先ほど申し上げましたように、7倍、8倍というのもあながち、全くの偶然ではないということでございます。

次のページを見ていただきたいと思いますが、次のページは振り返って我が国の公社債利子課税制度の原則が並んでおりまして、いろいろな主体に応じて課税関係が違うわけですが、原則として日本の場合は源泉徴収を行っていると。それから、仮に一定の非課税、源泉徴収免除を行う場合でも、その人、その者が持っていた期間按分を行うと。これは利払いの最後の日に、たまたま持っていた人が非課税だと全額非課税ということではやはり乱用が起こるという問題があるからでございます。

その辺をダイナミックにごらんいただくためにちょっと図でご説明したのが次の4ページでございまして、これは利付国債の場合ですが、発行時から投資家は転々流通いたしまして、最後の利払いを受ける人が源泉徴収を受ける。で、支払調書、申告書ということで突合して適正課税が行われるという形になっております。

次のページはTB・FBでございまして、TB・FBの場合は、先ほど申し上げましたように、割引国債でございますので、発行時に源泉徴収を行って、最後に申告書が出てくる。もしこの源泉徴収を仮にやめてしまうということになったときに、支払調書も何も出ないままで、申告書の適正をどうやって担保したらいいのだろうかというのが悩みなわけでございます。

次のページを見ていただきますと、今後の検討課題の一つといたしまして、本人確認をすれば非課税にしてもいいではないかというご議論もありますので、その本人確認の仕組みの前提として、例えばアメリカはどうなっているかというのをご説明する資料でございます。

アメリカの場合には、ブックエントリー、振替決済制度と申しまして、すべての国債の取引が口座と口座を振り替えることによって行われることになっております。例えばAからB、BからCというふうに取引が行われますと、それぞれの段階で必ず口座と口座の振り替えが行われて、それによって捕捉漏れがない状況になっております。

ところが、日本にこれと同じようなことができるかと申しますと、実はなかなか難しくて、日本の登録制度というのがあるのですが、これは任意の登録ということになっております。そういたしますと、AからB、BからCという取引があった場合に、Bは課税の業者が間に入っておるわけですけれども、登録上は、Bを抜かして、AからCという登録が可能な状況になっております。したがいまして、登録しているAとCを幾ら本人確認してもBは捕捉できないという問題があるわけでございます。

次のページをごらんいただきたいと思います。次のページも日本とアメリカの制度の比較で、日本の制度がなかなか本人確認に向かないつらい制度であるというご説明なのですが、アメリカは、今申し上げたようなブックエントリーにすべての取引が入っておりますので、間を抜いたりすることが基本的にできないという仕組みになっております。日本にも実はブックエントリーという仕組みは国債についてあるのですけれども、日本のブックエントリーというのは中途半端と申しますか、先ほど申しました任意の登録、あるいは現物債と出し入れが自由な制度になっておりますので、ブックエントリーに乗っておればいいのだよと言いたい気持ちはアメリカを見ると出てくるのですけれども、日本のブックエントリーというのはそういう意味で、それ以外の取引と出し入れが自由で、そうすると本人確認というのは一体どうなってしまうのかというところが問題なわけでございます。

そこで、もう一度利子課税のグローバル・スタンダードというものに立ち戻りたいと思いますが、8ページでございますけれども、そもそも利子課税については源泉徴収するという選択をしていくにはかなり多くございまして、これはやはり利子課税というものが大量・反復に行われる所得に対する課税という性格があるからでございます。

他方、やはり源泉徴収のかわりに本人確認・調書を重視するという国もございますが、いずれにせよ、どちらかを行って適正な課税を担保するというのがOECD、EUの考え方でございます。これらがありませんと、大量の租税回避、あるいは大量の資金シフトといったものを招くわけでございます。

問題は、転々流通する国債でございますので、どういうふうにして有効な本人確認を行うかと、あるいは効率的な本人確認を行うかということとのバランスなわけですが、各国とも、ブックエントリーというものを最大限利用して、非課税にする場合には非課税にしている、本人確認を担保しているということでございます。

それから、最近、円の国際化ということでつい忘れがちなのですが、国債利子というのは基本的には、税法、税の原則でまいりますと、国内源泉所得ということで、当然、利払いを行う国に課税権があるわけでございますが、これを非居住者非課税にした場合どういうことが行われるかというのを概念的に図で示したものが9ページでございます。

国債をまず居住者が買う場合には当然課税なわけですが、日本のような場合、一部、老人等のマル優がありますが、基本的には課税の世界になっているわけでございます。かなり限度額の厳しい非課税措置になっております。

これに対して、もし非居住者に非課税ということになりますと、非居住者マル優をつくってもしようがないので、基本的には青天井非居住者非課税ということになる可能性がありますが、その場合、日本で非課税にするという意味は、世界中から非課税ということではございませんので、結局、税収が源泉国である我が国から外国、投資家の本国に行くことになるということでございます。この課税権の放棄を一方的にする必要があるかないかという問題があるわけでございます。

それから次のページを見ていただきますと、ブックエントリーとは先ほど申し上げましたが、非居住者非課税にしている主要国とのバランスでどういうバックグラウンドがあるかということを説明した表でございます。日本と比較しますと、下の2段を特にごらんいただけるとわかるのですけれども、日本以外はすべてブックエントリーでございますが、日本にはブックエントリーもあるけれども、ほかの制度が併存していて、先ほどのように、本人確認がしっかりできない恨みがあると。特に日本以外の国はすべて現物債の発行をとりやめておりまして、ここでも日本が流通制度として本人確認に向かないものが残っているという苦しいところがあるわけでございます。

それから次のページを見ていただきますと、ここはTB・FBについて同じような表をつくっておりますが、やはり同じように、諸外国はブックエントリーのみ、日本の場合も、TB・FBについては実態上ブックエントリーで取引されていると言われておりますが、制度的にはブックエントリーの外に出るということが一応可能でございまして、この辺をどうとらえるかという問題があるわけでございます。

最後に、それでは日本の流通制度は今後どうなるのかという、税のバックグラウンドとしてどう考えるかというのが12ページでございますが、実は日本でも日銀を通じまして国債の流通制度の改善が図られておりまして、2000年末までにはかなり国際的なスタンダードにそろうというふうに言われております。この場合には、明示的ではありませんが、原則的にブックエントリーの仕組みに乗らざるを得ないのではないかと、ほかの仕組みではなかなか効率的な決済制度が達成できないのではないかというふうに言われております。

以上で円の国際化の関係を終わらせていただきまして、ちょっと時間がオーバーしておりますので、簡単に税の競争について触れたいと思います。

税の競争につきましては、すでにOECDにおける議論をたびたびご紹介しておりますが、去る4月に閣僚理事会でこの税の競争についての報告書が正式に公表されておりまして、5月のサミットでもそれが支持されております。

税の競争の問題点は、これまでにもご説明しましたように、特に稼働性の高い経済活動が優遇される結果、稼働性の低い勤労所得でございますとか、消費にしわ寄せが来て、そこに相対的重課が生じてしまう。この問題をどうするかというのが最大の問題でございます。

2ページ目を見ていただきまして、特に重要なのが2ページ目の一番最後の囲ってあるところでございまして、OECDガイドラインというものが定められております。ここで有害な税制については、「囚人のジレンマ」と同じように、そのままほうっておきますとお互いに悪いほうに収斂するという面がございますので、みんなで努力して我慢していこうということになっております。

具体的に申し上げますと、有害な措置を新規に導入するのをやめましょう。それから、すでにもし有害な措置を持っている国は2003年までにこれをやめましょう。それから、やはり正直者が損をしないように、お互いに相互レビューをいたしましょうと。こういうガイドラインができ上がって、今後これに各国がコミットして実施していくということになっているわけでございます。

以上でございます。

加藤会長

ありがとうございました。続きまして、加藤課長と上田課長にお願いいたします。

加藤税制第一課長

それでは、「金融関係税制〔説明資料〕」総26-3でございます。目次をめくっていただきまして、1ページ、まず、昨年ご審議いただきました金融課税小委員会の中間報告のおさらいをさせていただきますが、金融システム改革、フリー、フェア、グローバルというこの3つの柱で行われまして、それに金融関係税制も対応していかなければならない。この真ん中の細長い四角で、「租税原則(公平・中立・簡素)、税の基本的性格に基づきつつ、金融システム改革を受け止めていくことが求められている」、こういうご指摘でございまして、具体的には、新しい金融商品への課税の対応、それから真ん中の税負担の公平確保、資料情報制度の充実、それから特に「足が速い」所得が増す中、金融関係税制の税体系における位置づけ、これらについてご論議をいただいたわけでございます。

2ページで、具体的な対応といたしましては、第1弾、去年の秋の臨時国会で、「外為法改正への緊急対応」ということで、資料情報制度の整備と、民間国外債の利子非課税措置に係る本人確認制度を整備させていただきました。それから第2弾として、昨年暮れの税制改正で、「証券市場の構造改革への対応」ということで、有取税、取引所税、それから株式譲渡益課税の適正化、それからストックオプション等々についてご審議いただきまして、ご意見としては、ここの四角の中に入っているご意見をいただいたわけでございます。そしてさらに、残された課題として、納税者番号制度等々についてのご指摘がございました。

3ページで、具体的に、ご指摘を踏まえて10年度税制改正でどのような金融関係税制の手当てがなされたかがここから始まっておりますが、主に有取税、取引所税の税率の引下げ、これは最終的には半減するという形で改正が行われました。一方、適正化が求められておりました株式譲渡益課税につきましては、現行の源泉分離選択課税のみなし譲渡利益率の特例を現行のまま2年間延長するということで、株式市場の状況に配慮するということになったわけです。

ただし、下の(注)でございますが、「有価証券取引税及び取引所税については、平成11年末までに、金融システム改革の進展状況、市場の動向等を勘案して見直し、株式等譲渡益課税の適正化とあわせて廃止」という、この検討課題が残っておるわけであります。

以下、次のページは特別な関係でございますが、いずれも新金融システムに対応する税制として、金融システムの円滑な運営に税制が障害とならないよう、きめ細かい手当てを行ったところでございます。

5ページ以下、残された課題について若干補足させていただきますが、6ページは、現行の「利子・配当等課税制度の概要」でございます。利子は源泉分離課税、配当は原則、総合課税。ただし、投資信託の収益は利子並びで源泉分離課税ということで、国税は現在のところ一様の形となっております。

7ページにいきまして、株式等譲渡益課税。これはもう何度もご説明しておりますが、我が国においてはいわゆる実額のキャピタルゲインに20%、住民税を含め25%の課税を行う申告分離課税制度と、それから源泉分離課税、これは譲渡代金の5.25%を所得とみなすということで、そこから20%を源泉徴収するという、この選択制という極めて特異な税制をとっておるということでございまして、この是正の問題がいまだ残っておるわけでございます。

上田市町村税課長

地方税関係、同じページをごらんいただいて、つけ加えさせていただきます。

6ページでございますけれども、住民税の関係で、概要の右側でございます。利子等の課税につきましては、住民税利子割という形で、62年、63年の改革で導入されましたけれども、これの並びでいきますと、割引債の償還差益の部分、これに所得税が課税されておりますけれども、住民税では現在非課税になっているという実態でございます。

それから配当について申し上げますと、同じところの下から2番目でございますが、少額配当の課税につきましては所得税確定申告不要となっておりますが、その部分につきましては住民税は非課税という形になっております。

7ページでございますが、株式譲渡益の関係では、[2]のほうで、国税において源泉分離課税を選択した場合、住民税が非課税となっております。

これら3点につきましては、昨年の当調査会のご指摘もございますけれども、住民税における非課税の部分についていろいろ工夫するようにという指摘をいただいておりまして、我々、検討課題というふうに認識いたしているところでございます。

加藤税制第一課長

8ページから11ページまでは省略させていただきます。11ページは先ほど口頭で申し上げたことが閣議決定されている文章でございます。

12ページが有価証券取引税でございます。先ほど申しましたが、昨年度の改正ですべて税率を半減いたしまして、税収のほうを見ていただきますとわかりますように、過去のピークから見れば、累次の改正及び証券市場の状況等から、大幅に落ち込んできております。最終、10年は1,810億の税収まで落ち込んできております。

13ページは、同じく有取税にあわせまして取引所で行われる先物取引に課税されております取引所税でございますが、これも昨年の改正で半減させていただいております。

それから14ページ以下は、これも長年の懸案となっておりますが、生命保険料控除・損害保険料控除でございます。15ページ、概要でございますが、ご案内のように、支払い保険料に応じまして、最高、生命保険ですと5万円、それから損害保険料は長期契約1万5,000円、短期が 3,000円を限度として所得控除が行われております。

この制度は保険の普及ということを目的にした、いわゆる政策税制ということで、今日においてその存在意義についてはやや、もうすでに失われておる。後で出てきますが、非常に普及も進んでおる。それから他の金融商品との、貯蓄性商品とのバランスからいってもおかしいというご指摘をいただいておるわけでございます。

16ページは住民税の同じ制度でございます。

17ページはこういう制度が諸外国であるかということですが、基本的には自助努力の世界でございますので、アメリカ、イギリス、フランスはございません。ドイツは社会保険料控除と個人年金の掛金を合わせて一定の控除は認めておりますが、それもすき間という形で認められているものでございます。

18ページがその生・損保控除が税収に占める割合でございます。10年度ベースでございますが、3,590億円、租特の19%というかなりのウェイトになっておりますので、財政的にもなかなかのものになってきているということでございます。

それから19ページは同じく地方税における生命保険料・損害保険料控除の減収額 1,250億円でございます。

適用状況、20ページから見ていただきますと、生保控除、ほぼ8割を超える状況。21ページの損保は42%ですけれども、分母である持ち家が6割ですから、そういう意味からは相当な割合になっている。申告所得者は6割ということですが、ほとんどが持ち家の方に対応しているのではないかと思っております。

それから住民税もほぼ同じ計数でございます。

23ページが、この見直しの必要性をご指摘いただいた昨年の中間報告でございます。

それから24ページ以降は「課税繰延べ・非課税貯蓄制度」の問題でございます。

25ページで、長期の複利商品は1年ごとに一たん金利が支払われたと仮定して、それを複利で運用しています。実際にはもちろん引き出さない限り具体化しないわけですが、したがいまして、本来ですと、その1年ごとの金利について税の徴収が行われまして複利に回る利払い分というのは減少するわけですが、それをずうっと税を引かないで累積させて、最後に課税する。最後の収益の2割を課税するということで、左の図でいきますと、100万円を5%で10年複利にしますと、手取り額が 150万円、税収は12万円となります。

一方、課税繰延べをしないで1年ごとに利子に対応する部分の2割を源泉徴収していきますと、逆に手取りは減りますが、税収は14万円。手取りの減少率よりも税収の増加率のほうを見ていただきたいわけですが、孫利子、その間の経過利子等も含めますと、税収としてもかなり大きな金額になるということで、やや他の金融商品とのバランスからいかがかということで、かねてからご指摘をいただいております。

特にこれから商品の自由化、今までは長期商品の自由化が行われてませんでしたので、どんどん新しい商品が出る。特に長期化が図られている。26ページに出ておりますが、都銀等もすでに10年ものというのを出してます。以前は定額郵貯だけの問題でございましたが、そういう意味でも、こういう商品の普及というのはやはり税制の適正化の必要性を促しているのではないかと思っております。そういった問題点が指摘されているのが27ページの中間報告であります。

あわせて非課税貯蓄制度の問題にもここで触れておりますが、これは次の28ページをごらんいただければ、現在でも、従来のマル優は廃止されましたが、老人等に限って依然として従来のマル優制度が存続しておるわけでございます。あと財形貯蓄もありますが、これも次のページの残高を見ていただきますと、預貯金で30兆円、郵貯でも30兆円を超えるということで、概ね預貯金の全体の1割程度がこういう非課税貯蓄になっている。かなり課税ベースとして大きなものになっている。

30ページを見ていただきたいのですが、そもそも高齢者世帯の所得というもので利子の問題を議論される場合が多いわけですが、基本的には年金とか稼働所得で賄われておりまして、利子による所得による生活というのは限られた面もございますので、やはり課税の適正化という要請もかなり強いという議論がございます。

31ページに老人マル優等による減収額ということで、国税が 850億円、次の32ページ、地方税が 290億円、こういう減収額が立っている。これらが残された現時点での検討課題と認識しております。

以上でございます。

加藤会長

続きまして、電子商取引の課税問題について、渡辺企画官から説明を受けます。

渡辺企画官

お手元の資料、総26-5という縦長の紙を見ていただけますでしょうか。ご承知のとおり、近年、情報通信技術が非常に発達して、また普及するということに伴いまして、インターネットなどのネットワークを通じて取引をするという、いわゆる電子商取引が出てまいりまして、今後、本格的に発展していく可能性があるわけでございます。

ご承知のとおり、インターネットというのは全く国境のないシステムでございまして、電子商取引が発達するということは、経済の情報化という側面とともに経済の国際化ということもさらに加速することになるのではないかと考えられるわけでございます。

一般的に申しますと、電子商取引が発達することによって経済活動の効率化がグローバルな規模で図られるという可能性があるわけでございますし、また、電子商取引が健全に発達すれば、新しいビジネスチャンスの発生などを通じまして我が国の経済の活性化に資するという可能性もあるわけでございます。

ただ一方、電子商取引の普及が課税ベースの浸食につながるというようなことがあってはならないと考えられるわけでございます。例えば電子商取引の普及によって脱税が横行するというような事態にもしなるとしますと、それはむしろ電子商取引の健全な発展ということにつながらないのではないかと、こういうぐあいに考えられるわけでございますが、電子商取引の発達によってどのような課税上の問題が生じるのかということを現段階ではなかなか明確に予測することは困難でございます。

考えられる問題といたしましては、まず、だれが、どこで、どのような所得を幾ら稼得したかということを認定するのが困難になる可能性があると考えられます。この点につきましては、税務当局がその取引を把握することが困難になるという執行面の問題が1つありますし、また、どこの国で所得が発生したのかということにつきまして、各国間で意見の相違が生じ得るというような国際課税上の問題もあり得るかと考えられるわけでございます。

このほかの問題といたしまして、電子商取引の発達に伴いまして、国境を越えるサービスの取引、あるいは、いわゆるデジタル化された商品の取引などが増加することが考えられるわけでございますが、このような取引が国境を越えて行われた場合に、付加価値税を適正に課税するというのはなかなか難しい面がございまして、このような問題にどう対応していったらいいのかというような問題も考えられるわけでございます。

いずれにいたしましても、このような問題に対応していくためには国際的なアプローチが必要であると考えられまして、こういう国際的なアプローチをとることによって電子商取引の課税に対する国際的な整合性を確保する。また、各国間の協力を推進していくことにつながるのではないかと考えられるわけでございます。

これまではOECDの租税委員会におきまして電子商取引の課税問題がいろいろ検討されてまいりまして、この10月に「電子商取引:課税の基本的枠組」というレポートが提出されました。そのレポートの仮訳なども資料として一応つけてございます。

このレポートにつきましては、電子商取引の課税に関する基本的な考え方をとりまとめるとともに、今後検討していくべき課題について掲げられておりまして、必ずしも個々の問題についての具体的な結論が示されているわけではございませんが、今後の議論の一つの出発点となり得るものでありまして、こういうものがまとめられたことはそれなりに意義があるのではないかと考えております。

そのレポートの中身を簡単にポイントとして掲げたものがこの紙の (1)から (8)まででございます。まず (1)でございますが、このレポートは、電子商取引の技術を利用して、これは電子商取引そのものではないのですが、そういった、同じ技術を利用して納税者サービスの向上、あるいは税務行政の効率化が図られるのではないかということを強調しております。

(2)と (3)は課税問題についての基本的な考え方についてでございますが、まず、電子商取引につきましても、いわゆる中立・公平・簡素等の伝統的な課税原則が適用されるべきであろうと。もう少し具体的にいいますと、例えば電子商取引であろうと、その他の取引であろうと、課税上同じような取り扱いを受けるべきではないかということが書かれてございます。

またその次に、電子商取引の発達の現段階におきましては、とりあえず既存の課税ルールを適用することになるだろうということも述べております。もちろん、課税のルールを電子商取引の環境に適合させるために何らかの新しい措置を導入するということを別に否定しているわけではございません。

それからその次の (4)、(5)、(6)あたりは具体的な課題としてどのようなものが考えられるかということでございますが、例えば税務行政面では、税務当局が納税者の本人確認がきちっとできるか、あるいは納税者の情報にきちんとアクセスできるかという問題がございまして、そういった税務当局の能力をきちっと確保する必要があるだろうというようなことなどを述べております。

それから付加価値税につきましては、先ほど申しましたような問題がございまして、国際取引に関しまして、消費地で課税するという考え方を実現するためにどういうぐあいにしていったらいいのかを検討する必要があるということを述べております。

また、国際課税の分野でも既存の国際課税の原則をどう適用していったらいいのか検討しようというようなことを述べておるわけでございます。

それから (7)でございますが、電子商取引につきましては、例えば電子署名の問題でありますとか、あるいは電子マネーの問題、その他いろいろな側面でさまざまな基準、標準がつくられつつあるのでございますが、これらのものにつきましても課税上かかわりがあり得ることがございますので、やはり課税当局としても十分にモニターしていくべきではないかということを述べた後で、一番最後、(8)といたしまして、このようなことを今後ともOECDを中心に継続的に検討していこうと。その際、OECD以外の国とか、あるいは民間セクターとの意見交換も十分行っていこうというようなことを述べておるわけでございます。

以上のような点も踏まえまして、今後ともOECDにおける議論に積極的に参加していくとともに、我が国におきましても、電子商取引の実態がどうなっているのかということの把握に努めつつ、その課税のあり方について検討していく必要があるのではないかと考えられるわけでございます。

以上でございます。

加藤会長

ありがとうございました。それでは、ただいまの事務局からの説明につきまして、ご意見、あるいはご質問がありましたらどうぞおっしゃってください。どうぞ、松尾さん。

松尾委員

円の国際化の問題でありますけれども、私はこれは以前から重大な関心がありまして、ちょっと意見を述べさせていただきたいと思います。

今、世界を見渡すと、やはりドルが過剰に流通しているところに大きな問題があると思うのです。アジア各国があまりにもドルに依存していたことがアジア通貨危機の原因の一つと言われているぐらいであります。アジア通貨危機後、中長期的な課題ではありますけれども、円の国際化を進める必要性が高まったと私考えております。アジアを援助する場合も、やはり円の役割を高めなければならないと思うわけです。

円の国際化を推進するには、やはり円を使い勝手のよい通貨にしなければならないというふうに考えるわけでありまして、こうした観点から、外国為替等審議会もその具体的な提案をしておりますね。FBの市中公募を初め、TB・FBの償還差益にかかわる源泉徴収の廃止、それから利付国債の受取利子にかかわる源泉徴収を非居住者については免除することなどを提言しているわけです。私は、この提言には基本的に賛成であります。

問題は、税制面でこれにどう対応するかであります。外国為替等審議会も、本人確認とか、調書など、適正な課税が確保できるような措置を講じなければならないと提言しております。税制でがんじ絡めにして機能しないようにするのは問題あると思いますけれども、源泉徴収を廃止したけれども本人確認が甘かったり、FBやTBの量が少なかったりしては何のために源徴を廃止したのかということになると思うわけです。要するに源泉徴収廃止に際しましては、やはりその前提条件をきちんとクリアーする必要があると思います。

当然、FB、TBの量は増やす必要があります。それから、先ほどの説明にもありましたけれども、日本の国債流通システムは、登録は任意で、さらに現物に権利がついているという、ほかの国にない特徴があるわけです。どうしてそうなっているのかというと、民法、商法が関係しておりまして、どうも民法、商法が最近のテクノロジーの進歩についていっていないというところに大きな問題があると思います。納税者番号制度がないのもやはり問題です。

ただ、こうした民法、商法の改正とか納番の導入にはやはり時間がかかると思いますので、先ほど説明がありましたブックエントリーの仕組みをやはり強化するということで対応せざるを得ないと思うわけです。その前提条件をクリアーして、源徴の廃止が実質的な効果を上げるような仕組みにする必要があると思いますし、そのためには、やはり大蔵省内、主税局初め国際局、理財局間で具体案を早急につくるよう、私、提案したいと思います。

加藤会長

ほかにございませんか。佐野さん、どうぞ。

佐野特別委員

金融税制ですが、自民党のほうで確定拠出型の年金という議論が大分進んでいるようですが、これは別途、年金課税ということでまた議論する機会があるのですか。

尾原主税局長

またご議論いただきたいと思っております。

佐野特別委員

この中でまた生命保険料控除のことが出ているわけですが、それに伴って課税の繰延べ問題というのが出ているわけです。おそらく、年金課税になると、この課税の繰延べ問題なんかも一つの議論の焦点になるという気がするわけですが、生命保険料控除で、私、かねがね感じていることを申し上げさせてもらうと、この控除の是非ということがどうしても前面に出るわけですが、課税繰延べに絡んで、給付のほうの課税をどうするのだという視点がやや欠けてきているような気がいたします。

生命保険料控除というのは、どちらかというと、ここまで定着したものを動かすのはちょっと困難ではないかと思うわけですが、一方で給付ということが今のままでいいのかということをかねがね疑問に思っているわけであります。つまり、控除し、課税を繰延べし、給付も相続段階において実質的に非課税というケースがかなりある。それはこのままでいいのかどうか。例えば 500万円以下だったら非課税という制度があるわけですが、子供が小さいとか、まだ教育費がかかるとかいう場合は給付の場合の非課税措置というのも残していいと思いますが、例えば30、40の大人が親から相続を受けた。それが非課税になるというのは少しやり過ぎというか、優遇し過ぎではないか。給付もあわせて考えるべきだと思います。

加藤会長

ありがとうございました。ほかにございませんか。中西さん、どうぞ。

中西委員

円の国際化の推進ということにかかわる議論ですが、今、松尾さんがおっしゃったことと私も同じような意見なのですが、円の国際化の役割、こういうのを高めていくためには、使い勝手がやはりいいということになると思いますね。1つは、そのためには通貨価値がまず安定しておるということが非常に大事なことだし、1つは、資金運用に便利な国際金融市場があるということ。次が取引コストが低くなければならんということと、取引の制約がないということがやはり大事な条件だと思うのですね。

そこで、この税調の場で、税制改正という視点からこの問題を取り組みますと、国際金融市場の取引のコスト引下げのために必要な税制改正のポイントは、我が国の金融市場の取引コストが海外の金融市場に比べましてかなり高いのですね。その高い要因は、現在、税制として4つの税金が存在しているということにあると思いますね。それは1つは、言われているような有取税ですね。1つは取引所税がある。1つは公社債利子の源泉徴収制度。4つ目が配当二重課税だと言っていいのではないか。この4つをやはり早急になくしていくということをやらねばならんと思いまして、さっきの説明がありましたが、いずれ納税者番号制度の導入はやらねばならんと思いまして、これを極力早期に総合課税へ移行するということをやるべきではないか。

それと同時に、これは主税局殿は多分反対のご意見だろうと思いますけれども、これもかなりラディカルな意見ととられかねませんが、私は、源泉徴収制度はこれに絡めて、いずれの日にか、それもなるたけ早く廃止していくという方向に行くべきではないかと。現在、非居住者のみについては源泉徴収を行わん方向で改革が進められようとしておるわけですけれども、そもそも市場参加者によって制度が異なるというのはおかしいわけで、やはり健全なマーケットメカニズムを歪めるものになるわけですから、私は、せいぜい平成12年度、2000年度末ぐらいまでに、内外一体の総合課税への全面的な移行、できればこれを断行するということの思い切った改革が今我が国の、国の形を変えるということが求められているのが今の我が国の時代の要請ですから、過去はともかくとして、今の時点ではそれだけの思い切ったものをやるべきではないか。

それから第2に有取税と取引所税の全廃を、これは来年の4月1日ぐらいからやるように、前倒しで実施するぐらいのことをやられてはいかがかと思います。

それから配当の二重課税の存在、これが日本の市場での投機活動が海外の主要市場に比べて非常に不利になっていることでございまして、これも平成12年度末ぐらいまでに適切な調整を私は行うべきではなかろうかと。

以上、取引コストを下げ、国際化を高めるという視点から、税に絡むこととして申し上げたいと思います。

加藤会長

平田さん、どうぞ。

平田委員

金融税制という一つのくくった形での税制を議論するようになりましたのは本当にまだ歴史が浅いと思いますけれども、中身は、ある意味ではほとんど源泉分離の利子課税みたいな話が大半でございまして、先ほど来お話が出ておりますように、総合課税に移行するということになればこういった問題は一遍に解決してしまうだろうというふうに思われるわけであります。しかしながら、私も職業的に、源泉分離課税が直ちに総合課税にいくかどうかということは、行政的に執行の段階でなかなか難しいなあという気がするわけでありますが、いずれにしても、この金融税制をさらに進めていく中で、特に今回のような所得税の減税をこれだけ大きな形でしているということは、そろそろこの利子所得関係も総合課税に移行する一つの大きな理由になってくるのではないかという気がいたします。

それから、この源泉分離の中で地方税さんが取られていない部分があるというふうなお話がございまして、それも昨年のときにお話が出たわけでありますが、地方分権制度に伴って地方財源を非常に欲しい欲しいと言っておられる中でこれがなかなかうまくいかないというのはどういうものか。ぜひこれも、そういう意味では地方税さんにとっては非常にいいお話ではないかと思うわけであります。

それからもう一つ、電子商取引につきましてご説明がありましたが、実はこの第1ページの「OECDにおける検討」の中で (1)「電子商取引の技術を利用した納税者サービスの向上と税務行政の効率化」というところが一番日本の場合とっかかりやすい部分ではないかなと思うわけであります。今現在、例えば私どもの税理士の事務所におきましても、ほとんどパソコンを使った情報系のネットワークなど、どんどん進捗しておりまして、また国税の世界でも、全部そういう電子申告対応の申告書を出しておられることはもうすでに皆さんご承知のとおりでございます。ですから、当然、これからは商売のやり方自体が電子取引になるということばかりではなくて、実際の申告納税制度を維持していく中で、それの媒体としてこの電子商取引の技術がどんどん使われていくことは間違いのないことだろうと思うわけであります。今後もひとつこういった点に事務当局のお勉強をどんどんしていっていただくことが大変いいことではないかと思うわけであります。

加藤会長

ありがとうございました。今野さん、どうぞ。

今野委員

電子商取引についてご質問させていただきます。

確かに今後とも、取引の形態が変わっても、税の3原則、中立・公正・簡素、そういうのが変わるべきではないということは私もよく理解できるのですが、でも、本当にこれまでと全く違ったことが始まろうとしているわけですから、この2.のOECDにおける云々のところの (2)とか (3)にあるような、「現段階では既存の課税ルールを適用」するとか、「伝統的な課税原則を適用」するとかいうことのほかに、やはりもっと徹底して研究してみるという姿勢があってもいいのではないかと思います。

ご存じのとおり、電子商取引に関しては日本は大変後進国だと思います。その理由は、まだそういうものを使いこなすリテラシーがないとか、普及してないとか、その他いっぱいありますけれども、例えばアマゾン・ドット・コムのような、ああいう本の世界で爆発的なというか奇跡的な大成功は日本には絶対にあり得ない。例えば本とか化粧品とかその他、再販制というものが現存する以上は、この電子商取引でモノを買うとなると、買った人は今までの既存の買い方よりもはるかに高いものを買わなければいけないことになるわけで、そういうことでは新しいものは日本には根づかないと思います。そういうものを根づかせる、新しいものを根づかせることで今のこの硬直した日本経済をもう少し流れをつくるというような前向きの意図があるならば、やはりそれを使うことによって、提供する側も買う側も何らかのインセンティブがなければいけないと思います。

アメリカなんかは、そういう意味では、この電子商取引に関して税制的にもいろいろな意味で前向きな研究がいっぱいなされているというふうに私は聞いておりまして、その動きを大変関心を持って見ているわけですけれども、日本の場合、残念ながら、新しいものは何かいつも、いかがわしいもの、できればそういうものを排除したい、と思っておられるかどうかは知りませんが、そういうふうに私には見えてしまうような動き方が常にあるということは大変残念です。

ですから、この参考のページの一番最後のページにあるように、確かに、だれが、いつ、どこで、どのような取引を、どれだけ行って、どれだけもうけたかという取引の実態を正確にとらえることが大原則というふうに書かれておりますけれども、そのとおりですけれども、その前に、これを使って本当に人々がもっと自由に自分たちの新しいスタイルを享受できるように、その結果、経済がもっともっと活性化するようにということがまず大前提としてあった上で、大いに活況を呈したそういう電子商取引上のその世界の中でたくさんの税金が後から転がり込んでくるように、そういうふうに考えるべきではないかと思いますので、いつも捕捉することばかり考える、そこから発想するのはそろそろちょっと考え直したほうがいいのではないかと思います。

加藤会長

ありがとうございました。ほかにございますか。どうぞ、岩瀬さん。

岩瀬特別委員

きょう、12月1日はたまたま金融システム改革法の施行ということで、金融関係の税法のことを議論されるのはちょうど時期がまさにあれなのでございますが、今お話が出ました有取税の完全撤廃でございますが、マーケットでもってますますグローバル化というのは本当に急速な勢いで進んでいるわけでございますから、来年いっぱいにということにはなっておりますけれども、ぜひ、有取税、取引所税については早期撤廃、全廃という点をやるべきではないかと思います。

それで、言うまでもなく、今もご説明がございましたように、キャピタルゲイン課税の適正化ということが言ってみれば条件づけられているわけでございますが、前にもここでも申し上げましたように、キャピタルゲインの適正化というのが即申告分離に一本化ということが言われているわけでございますけれども、現在、源泉分離課税と申告分離と選択制になっているということは、中途半端な制度になっているというご批判は確かにありますけれども、だけど、実際問題として、投資家の過半が源泉分離課税をとにかく選んでいると。過半が選んでないほうへ一本化しようということですから、これはかなり、長い間慣れている投資家なんかには無理があるのですね。

そしてキャピタルゲイン課税についてだけ申告制度を採用するということについては、私は、税の公平ということからして、かねてから大変問題があるのではないかと。ですから、それはおかしいというのではなしに、利子・配当等の他の金融商品の所得と一緒に公平に相互課税の対象にすると。そのためには、納番制の検討も随分進みつつあるわけですから、捕捉を適正にやって、総合分離のほうを目指すと。その途中の一里塚としてキャピタルゲイン課税だけを抜き出して申告制を導入するというのは、株式市場をもっと活性化しなければいけないというときに、これはかなり問題を招くのではないかということを指摘しておきたいと思います。

加藤会長

ありがとうございました。佐野さん、どうぞ。

佐野特別委員

かねがね私、疑問に思っているのですが、といいますのは、来年の末で有価証券取引税をともかくゼロにするということがうたわれているわけなのであります。ゼロにするのは結構なのですが、その分、じゃ所得税でどうするのだということがいま一つ不確かな感じがいたします。つまり、来年でもう切れてしまう。再来年の1月からは何がしかの所得課税で有価証券のキャピタルゲインに対する課税を考えていくと。ただ、その内容がどうなるかということが、それぞれ頭の中で描いてらっしゃるのでしょうけれども、はっきりした構図が見えてこない。たしか去年の答申では、金融所得というものをひとまとめにして申告分離、しかもそれに累進税率を掛けるというようなことが念頭にあったように思うのですが、さて、これはどうなっているのかはっきりしないということ。

それからもう一つ、ストックオプションというのが実は始まっているわけで、今の姿は26%の分離課税ということのようですが、これが実際に権利行使する場合、どういう格好になっているのか。すでにもう付与を始めたところもあるわけですが、実際にそのオプションを受けた人が権利を行使し売却益を得るという段階でどういう課税になるのか、そこら辺がはっきりしてない状態だと思うわけであります。

本来ならば、来年度の税制改正で有価証券取引税をゼロにするのに対応した所得税の見直しと有価証券取引に対する所得税の課税のあり方というのははっきり決めておくべきだと思うわけでありますが、どうも時間的な余裕がないというような感じがしております。ならば、来年度、年度内に早く決めて、来年1月からこういう格好にするのだという措置が必要ではないのか。再来年度の税制改正というわけにはなかなかいかないのではないかという気がしております。

加藤会長

ありがとうございました。どうぞ、橋本さん。

橋本特別委員

金融商品に対する所得課税の問題につきましては、やはり所得の把握体制、それからそれに要するコストだとか、あるいは納税者の便益性ですね。こういったようなものを総合的に考えて、総合課税にするのか、あるいは分離課税が適当なのかという判断に立つべきだろうと。その所得把握の方法として納税者番号制度というのが検討されつつあるわけですけれども、納番を導入する際の検討項目として、私は3つぐらいあるのではないかなと思っているのです。

1つは、納番を導入したときに、資金シフト、資金フライトといいますか、お金が実物、金だとか、あるいは海外の商品だとか、そういうところに資金が逃避する懸念がありやしないかということ。

それからもう一つは、行政とか民間における徴税コスト、納番コストというのがどのぐらいかかって、それをどこが負担するのかというコストと効果の比較の問題。

それからもう一つは、普通一般のサラリーマンが課税に対して非常に不満を持っているのは、いわゆるクロヨンだとか、トーゴーサンだとか、そういう問題が納番制度を導入することによってかなり解消されるのかどうか。つまり、法人所得の把握なんかが十分この納番制度を特定することによってできるのかどうか。その辺を十分検討する必要があるのではないかなと思います。

加藤会長

中西さん、どうぞ。

中西委員

さっきちょっと言い落としたのですが、この11月15日の総会で加藤会長から問題提起された中に、電子商取引への我が国の税制の対応、どうしたらいいかということを今後議論していこうという提案でした。ことしの10月にクリントン政権が電子商取引のタックス・フリーダム法というのを策定したですね。これはどういうことかというと、インターネットを使った商取引には従来の税以上の新しい税を各州に対してかけさせないということ、3年間禁止するということを打ち出したのですね。さらにクリントンは、電子商取引自由貿易主義という旗を掲げて、諸外国に対してもインターネットを使った国際的な取引には関税はかけないようにしようではないかということを言ってきているわけですね。

これに対して我が国は一体どうするのだと。この提案に対して米国に追随していくのか、あるいは我が国はどう対応すべきかということになると思いますが、私は、日本は、言われているように、米国以上にはるかに、一生おくれほど、この電子商取引の普及はおくれてますから、米国のように、従来の税以上の税をかけない、時限で禁止するという程度のことではとても追いつかないと。ましてや、今後、景気の浮揚、あるいはボーダーレス経済の中で世界経済と戦っていく過程でどうしても、我が国はインターネットでの商取引なんかについてはより積極的な、取引にかかる税を廃止する方向でもっと前向きに取り組むべきだろうと考えておりまして、少なくとも電子商取引については印紙税なんていうものは即刻廃止するということ、あるいは個別の間接税もなるべくなくしていくことが望ましいわけで、私はそういう対応をすべきだろうと。それから関税も、我が国の関税率は比較的国際的に低いわけですから、我が国がむしろ率先して関税はかけないというぐらいのことをこの際打ち出すという対応をしていくべきではなかろうかと考えてます。

加藤会長

ありがとうございました。

それでは、ここでちょっと中断するような感じでございますけれども、また自由討議でご意見をいただくことにしまして、12月中旬の答申とりまとめがございますので、それに向けての項目といいますか、どんなことを考えようかということでお手元にお配りしてありますので、皆様にこれをごらんいただきまして、事務局から説明をしてもらいまして、そしてさらにまた自由討議をしたいと思いますので、よろしくお願いします。

尾原主税局長

お手元に「平成11年度税制改正における主要検討項目」総26-8というのがあろうかと思います。これはこれまでのこの税制調査会の議論を、たくさんいただきましたが、私どもなりに大くくりをして整理したものでございます。

最初に「基本的考え方」という項目がございますが、恒久的減税を含めまして、来年度税制改正全体をどう考えていくのかということがあろうかと思います。税制改正の前提として、当然のことながら「平成11年度税制改正を取り巻く諸状況」をどう考えるのかということがあろうかと思います。

「経済情勢」と書いてございますが、景気低迷、非常に深刻化しているわけでございます。1つは、景気対策の観点から、来年度税制をどう考えていくのかというのが前半としてあるように思います。それから、これまでの税調でも取り上げられてまいりましたが、「社会経済構造の変化」に対応いたしまして、税制はこれに対応していかなければならんというご指摘をいただいております。当然のことながら、日本の社会経済、少子・高齢化の問題、国際化の問題、いろいろ変化がございます。こういう中での税制の対応をどう考えていくのか。広い意味では、経済、景気対策ということになろうかと思いますが、最高税率の引下げや、あるいは法人課税の実効税率の引下げというような項目はこういう面からも切り口があるのかなというふうに思うわけでございます。

それから税は、当然のことながら、歳入調達手段でございます。財政状況をどう認識するのか。ご承知のように、この景気の落ち込みとともに、過去最大の税収減、それに恒久的な減税ということもございまして、財政状況は急速に悪化しているわけでございます。しかし、現内閣は景気対策最優先ということで、財構法を凍結して景気対策に全力を尽くすということかと思います。したがいまして、減税財源につきましても、総理の所信表明では、当面赤字公債で行う、あるいは国有財産、行政改革ということが言われております。いずれにいたしましても、将来との関係で今の状況をどう考えておくのかというような問題があろうかと思うわけでございます。

次に、「抜本的見直しとの関連」というふうに整理させていただきましたが、当税制調査会におきまして、21世紀を踏まえながら、今後の税制どうあるべきかということで、地方法人課税小委員会、さらには基本問題小委員会、2つのワーキンググループをつけて、あり得べき抜本的見直しを考えながらスタートしたわけでございますが、今回の恒久的減税について申し上げますと、いわゆる控除のあり方を含めまして、あるいは課税最低限を含めまして、課税ベースを含む包括的な見直しができるような状況にはございません。やらないということに今回はなっているわけでございます。後から自治省のほうからも説明があろうかと思いますが、外形標準化の問題もことしは見送りとされたところでございます。

そうなってまいりますと、たくさんご意見をいただいたかと思いますが、今後の減税の具体化に当たっては、少なくとも将来の抜本的見直しの妨げとならない姿にしていく必要があるのではないか。あるいは、景気対策ということでこれから有効なものを考えていくにしても、税制のあり得べき姿と背馳するということはいかがかというようなご意見もあったかと思います。

続きまして、「恒久的な減税」というのが来年度の税制改正の大きな柱になるわけでございます。簡単に経緯を振り返ってみますと、2兆円、2兆円のいわゆる定額減税というのを実施させていただきましたが、7月の総裁選の公約から、6兆円超の恒久減税を実施するということになり、8月の国会でその大枠について所信表明演説がなされたわけでございます。

この恒久的な減税といいますのは、先ほど申し上げましたが、広い意味では景気対策でございますが、中には、先ほどの繰り返しになりますが、最高税率、法人課税、少し意味合いの違うものも入っているかもしれません。いずれにいたしましても、この恒久的な減税ですが、これまで明らかにされておりますのは、景気回復が確実になるまで、法律改正がない限り継続するというのが恒久的な減税というふうに考えられるわけでございます。そういたしますと、課税ベースの見直しなしに、定率減税、あるいは課税最低限のあり方等の議論なしにやる恒久的減税でございますから、どうしてもその位置づけは抜本的改革までのつなぎ的な色彩を持つのかどうかというような問題があろうかと思います。

次に、「個人所得課税」と書かせていただいております。最高税率の引下げの問題について申し上げますと、実はかねて当税制調査会では、税の適正・公平な課税という面からは、納税者番号制度、きょうもご議論がございましたが、これをどうするか、あるいは資産課税をどう考えるのか。いわゆる分離課税がいいのか、総合課税がいいのか、まさに現在、ワーキンググループで議論がなされているわけでございますが、そういうことは今回、景気に配慮し行わずに引下げが行われることになっておりますけれども、この辺、今後の検討課題、抜本的見直しの関係でどう考えるのかという問題もあろうかと思います。

それから、かねて当税制調査会におきましては、我が国の所得課税の負担率は、マクロで見ると主要先進国中最低であるという指摘をいただいているわけでございます。これはもちろん課税最低限の問題もございます。今回、定率減税という形でその負担を引き下げるわけでございますが、将来の所得税制のあり方、税体系のあり方から見てどう考えていくのかということがあろうかと思います。

なお、私どもなりに今回の定率減税といいますのを整理させていただきますと、恒久的な減税という以上は定額減税という方式はとり得ない。つまり、結果的に、451万円まで課税最低限が上がるわけですが、そのような方式を恒久的に続けるわけにはいかない。そうなってまいりますと、では抜本的な見直しかということに論理的になるわけでございますが、今申し上げましたように、税率構造と課税ベースを一体のものとして将来を見据えて検討するのが抜本的見直しということになるわけでございます。

しかし、景気等を配慮いたしますと、負担増を一部の所得階層でもたらすような課税ベースの拡大はとり得ませんし、また時間的余裕もない。そうなってまいりますと、その次の策といたしまして、今までの所得税の負担構造をできる限り維持する。そうなってまいりますと、まさに定率方式といいますのは今の負担構造を少し圧縮する形で残るわけでございますから、税制としては定率方式をとらざるを得ないという考え方ではないかと思っているわけでございます。

なお、最高税率の話につきましては、自治省との折衝の結果、大臣協議を踏まえましてご報告させていただきましたが、残っておりますのはいわゆる定率方式の定率が何%ぐらいになるのか、また中堅所得者層に配慮するということがまさに定額の、またややこしくなりますが、頭打ちを設けるということを申し上げてまいりました。

これにつきましては、現在、来年の税収見積もりがどうなるのかという関連で、あるいは課税データをどう来年見るのかというのがございます。それから納税者にとっては国税も地方税もないわけでございますから、まさに住民税と所得税の関係をどうするかということで今検討をやっているところでございます。いずれお諮りさせていただきたい。それが残っている点かと思います。

それから「法人課税」のほうの問題でございます。これは我が国企業、国際社会の中で十分競争力が発揮できるようにということで、この2年間で 49.98の実効税率から40%になるということかと思います。かねて税制調査会では、税率を引き下げる場合は課税ベースをどう考えるのかという問題のご指摘をいただいてきたわけでございます。また、地方法人課税の問題もまだ残されているところでございます。

したがいまして、恒久的な減税につきましては、まだ今後の検討課題、その後をどうするかと、抜本的見直しとの関係でどうしていくのかということがございまして、来年以降引き続き、基本問題小委員会、総会でご議論を賜らなければならない事項ではなかろうかと思っているわけでございます。

それから「住宅・土地、年金、金融関係等税制」というふうに大くくりさせていただきました。住宅・土地につきましては、恒久的な減税のほかに、今の経済情勢を反映いたしまして、景気対策の観点から、住宅・土地税制についてさまざまなご要望がなされているわけでございます。とりわけ住宅税制につきましては、これまでもご議論いただいておりますが、ローン利子所得控除制度の創設要望がなされておりまして、所得税制の根幹にかかわる重要な問題があろうと思っております。引き続きしっかりしたご議論を賜ればというふうに思うわけでございます。

それから年金でございますが、ことし、年金制度改革の年に当たるわけでございます。年金制度改革の帰趨、必ずしも現在明確ではございません。いずれにいたしましても、ワーキンググループの中間とりまとめでも指摘されておりましたが、課税ベースという観点からは重要なテーマでございまして、所得税制の基本を踏まえた検討が必要な課題ではなかろうかと思っているわけでございます。

それから金融関係でございますが、きょう事務局のほうから説明させていただきました。現在、円の国際化というのが一つの政策課題として取り上げられているわけでございます。この中で特に非居住者に支払われます国債利子の源泉徴収について議論がございます。ただ、この源泉徴収の問題、まさに利子課税全般にかかわる、所得税制の根幹にかかわる問題であろうと思います。

それからまた、ほかの国がやりましたのは、まさにどうやって資金を自国へ引いてくるかということの関連で源徴をやめたりしているわけですが、我が国において今の議論は政策目的と政策手段の関係でどう考えていくかということがございましょうし、さらに非居住者であるという本人確認というのが我が国の制度を前提にして可能かどうか、適正な課税ができるかどうかという問題もあろうかと思っております。

それから株式課税でございますが、有取税の取り扱いと一体のものとして、このキャピタルゲイン課税の適正化、具体的にどうしていくかという問題があるわけでございます。そのほか、生保控除や課税繰延べ問題、引き続き今回もご議論いただければと思っております。

それから「租税特別措置等の整理合理化」でございます。今回の税制では、課税最低限の引下げ、あるいは外形課税はしないという答弁がすでになされておりますが、一方で課税の適正化という問題は不断に取り組むべき課題ではないかというふうに考えておりまして、今回の税制改正でも、当然のことながら、いわゆる租税特別措置の整理合理化は行っていく必要があるだろうというふうに考えているわけでございます。特に来年度税制改正では、法人課税の実効税率が40%に引き下げられるということがございます。そういう中で、まさに公平・中立・簡素という観点からも、この租税特別措置、今後どう考えていくのかという問題が浮き彫りにされてきているような気がいたします。

それから最後に「その他」と書いてございますが、たくさんのそれ以外の重要な議論があろうかと思います。きょうご議論いただきましたように、国際的な税の引下げ競争について、我が国としてどう考えていくか、電子商取引についてもどう考えていくかということかと思います。

いずれにいたしましても、来年度の税制改正でございますが、すでに「21世紀を見据えたあるべき税制」というご答申をいただいておりますが、中長期的な税制の姿に背馳しないようにどのように税制改正を行うべきか、ご議論をいただければと思っております。

加藤会長

ありがとうございました。それでは、成瀬税務局長、お願いします。

成瀬税務局長

それでは、地方税関係の項目につきまして説明をさせていただきます。国税と、論点でありますとか基本的考え方、共通にするところは省きまして、地方税関係の固有の問題等を中心に話をさせていただきたいと思います。

まず「基本的考え方」、全般的な問題でございますが、特にここには取り出して書いておりませんけれども、地方分権の推進ということにつきましても、ぜひご議論いただけたらというふうに思っております。ご案内のように、本年の5月には地方分権推進計画が閣議決定されたところでありますので、その趣旨を十分に踏まえまして、やはり地方のほうからは、地方分権の推進に当たっては、権限とか事務の移譲だけではなくて、財政基盤の充実、地方税財源の強化といった要請、要望の声も大変強いものですから、そういった観点から、分権推進に伴います地方税源の充実でありますとか、あるいは地方税制のあり方についても付言していただけたらというふうに思います。

次の「恒久的な減税」につきましては、すでにさまざまな角度からご議論いただいているところでありますけれども、個人所得課税につきましては、個人住民税の基本的性格を踏まえまして、引き続き、課税ベースの見直し、あるいは課税最低限のあり方など、今後の個人所得課税のあり方についてご検討いただきたいというふうに思っております。

また、関連いたしまして、「今後の検討課題・抜本的な見直し」につながる大変大きな、重い課題として、現在、地方法人課税小委員会のほうで精力的なご議論をいただいております法人事業税の外形標準の導入の検討につきまして、地方税収入の安定性を増す観点、あるいは地方税源の充実・確保を図る観点からも、引き続きご検討いただきたいというふうに考えております。

また次の「住宅・土地、年金、金融関係等税制」の項目でございますが、まず、こうした現下の経済情勢にかんがみましてとられようとしております政策税制の問題に関しましては、個人住民税や不動産取得税などの基本的性格を十分に踏まえた上でぜひご議論をいただきたいと思っております。

また土地税制では、ここに特に書いてございませんが、特に固定資産税につきまして、宅地に係る負担水準の均衡化の問題がかねてからいろいろ指摘されております。こういった問題につきましても、ぜひご意見いただきたいというふうに思っております。

金融課税につきましては、先ほどご意見ございましたように、個人住民税が非課税とされております株式等譲渡益などの所得につきまして、公平性、中立性を確保する観点から、課税の適正化についてのご意見をぜひいただきたいというふうに思っております。

特別措置の整理合理化につきましては、当省におきましても引き続きその推進に向けて努力したいと思っておりますので、よろしくお願いいたしたいと思います。

それから地方分権関係の項目といたしまして、課税自主権の尊重の観点から、法定外普通税の許可制度の見直し、具体的には事前協議制への移行を図ろうとすることや、法定外目的税の創設などの制度改正に現在取り組んでおりますので、こういった問題、テーマにつきましてもぜひご意見をいただけたらと思っております。

「その他」の事項といたしましては、低所得者層の税負担について配慮するための個人住民税所得割の非課税限度額の引上げなどの問題がありますけれども、こうした問題を含め各税目につきまして、今後ももろもろの点についてご検討いただくことがあるものと考えております。

以上であります。

加藤会長

ありがとうございました。ただいま説明をいただきましたが、すでにご発言の出ております問題もございます。この問題、いろいろとございますので、次回にも審議を続けたいと思っておりますので、きょうはさしあたって時間の許す限りご意見をいただきたいと思っております。どうぞ、松尾さん。

松尾委員

こういう時期になりますと、流通税なんていうのも格好の攻撃目標になるわけですね。しかし、財政が非常に深刻化している現在、むしろこの流通税の意義を無視できなくなってきているのではないかと、そういう言い方もできると思います。財源面から見ますと、国税で2兆円を超す税収がありますね。この2兆円を超す税収をかき集めるというのは大変なことだと思うのですね。しかも補完税としての流通税の役割、これもやはり重要性を増してきているのではないのか、そういう面があるのではないかと思うのですね。例えば有取税などはデリバティブ取引の抑制効果があるというふうに考えられます。

あと平成10年度税制改正では、有取税及び取引所税については平成11年末までに、金融システム改革の進展状況、市場の動向等を勘案して見直し、株式等譲渡益課税の適正化とあわせて廃止する、というふうになっているわけですね。なぜ平成11年末なのか。これは株式の手数料自由化と対応したものと私は理解しております。有取税、取引所税を前倒し廃止するとすれば、やはり当然、手数料の自由化も前倒ししなければならないし、さらにキャピタルゲイン課税の適正化も前倒しして廃止する必要があると私は思うのですね。それができるのかどうかです。これまで、手数料自由化を前倒ししてやるという話は私は聞いておりません。

また、このキャピタルゲイン課税でありますけれども、源泉分離課税はみなしキャピタルゲイン、つまり譲渡益の1.05%となっておりますけれども、これは幾ら何でも優遇し過ぎであると、公平の原則から著しく脱しているというふうに私は思うわけです。こうしたみなしキャピタルゲインなんていうのは先進各国に例を見ないわけですね。それは、投資家の大半はキャピタルゲインがあれば源泉分離課税を選択したほうが有利ですから、当然そっちのほうに進むと思いますけれども、キャピタルロスがある場合は逆に申告分離課税を選択する。このほうが有利になりますから、当然のことであります。いずれにしましても、これは既定方針どおりといいますか、やはり申告分離課税に一本化する必要があると私は思います。

加藤会長

ありがとうございました。森下さん、どうぞ。

森下委員

論議された中で、私、前回欠席いたしたわけでございますが、一応大枠を大蔵、自治に詰めていただきまして、それに対しては大変敬意を表したいと思います。

ただ、法人税の中で今回あまり論議されてないのを追加をお願いしておきたいと思いますのは、どうしても企業の活性化、また再編・構造改革というふうな点から見ますと、やはり連結納税制度の見直し改革ということ、これは必ずそのときにまいってくる要素だと思いますので、今回はあまり論議がそこにいってませんが、法人の40%のほうへ来てますが、本年度の中で、次年度といいますか、必ず連結納税制度をひとつ見直していくというか、そういうことが大事ではないかということが1点です。

個人所得ベースのほうは、先ほど主税局長のほうからご説明ございましたけれども、やはり景気対策の問題であるけれども、今現在、恒久的というところですね。少なくともそれが当分の間ということでございましょうけれども、やはり定率的が結果的に恒久になるような方向づけをにらんだ形をとっていかないと、どうしても定額が定率になって、特別減税的な形がずうっと表に出てきますと、何か先行きに対するものがふっ切れないという面がございますので、1年目はある程度やむを得ないにしても、それが当分の間のその次の段階においては定率がいわゆる恒久減税になるような一つの枠組みで検討していくべきではないかなあと思いますので、その点もこれから詰めていく段階においてぜひ検討を加えていくべきではないかということを申し上げておきたいと思います。

加藤会長

ありがとうございました。どうぞ、津田さん。

津田委員

流通税の地方税関係としまして不動産取得税の問題がございまして、これが土地・住宅対策絡みで議論も出ておるようです。ただ、先般も説明がありましたように、現行の税制におきましても、いわば庶民の土地・住宅建設にはもうほとんどかからないような状況になっておりますし、事業用地につきましても、実効税率が大体1.4%ということで、いわゆる取引を阻害するとか停滞させるとか、そういうようなことにはなっておらないのではないかと思います。

それから特にお考え願いたいのは、この不動産取得税、全国で総額 7,000億円台の税収でございます。特に現在、税収減で困っております大都市を抱える府県の有力な財源でございまして、先般の法人関係税の国・地方との問題解決に当たりましても、そのような大府県の対策は非常に難しかったわけでございまして、この不動産取得税におきましても、そういうような税収の落ち込みの激しい大府県が税収として非常に貴重なものでございますので、その点を考えていかなければならないのではないかなと思います。

それから主税局長がおっしゃられましたように、最高税率の問題は、いわば税制としての構造的な改革の方向の一つでございまして、決して暫定的なというようなものではないと思います。単に事業意欲だとか、勤労意欲だとか、それの増進だけではなくて、最高税率が高過ぎることによりまして、法人成りの問題、あるいは所得分割の問題、そのほか、金融関係の分離課税の税率と公平か不公平かというような議論まで実は今まで引きずってきたわけでございまして、何としても、この最高税率引下げというのは抜本改革の一環として取り上げるべきではないかと思います。

ただ、この最高税率の引下げの問題も、前回は昭和61年程度ですか、私が税務局長をやっている時分でございましたが、それから手がつけられなかったというのは、今のような構造的な意味があると同時に、やはり一般国民からは金持ち優遇云々という議論で非常に厳しい批判もあるところでございます。

それで、実際論的にも考えていただきたいのは例の住宅ローンの所得控除の問題でございます。これも政策目的というものが不分明だけではなくて、特に端的に金持ち優遇というような議論がされておるわけでございまして、抜本的な構造改革的な最高税率の問題を処理するときに、この住宅ローン控除の問題も抱えてやるということはなかなか難しい点も出てくるのではないか。

そういう点もお考えいただきたいと思いますし、基本的に私は、税制としての問題があると同時に、住宅・土地対策のエースとも言うべき住宅金融公庫のローンにおきましても、所得が高い者に対しては基準利率のものを適用しないで高い利率のものをやる、あるいは規模の大き過ぎるものは融資の対象から外すと。こういうようなものがやられておって、それとの整合性が欠ける---欠けるというよりは、やはり国民の常識としては、そういうような高額所得者についての利息、利子負担などのあり方、あるいは面積が大き過ぎる住宅のあり方に対しては国民意識というのは非常に厳しいものがあるのではないか。これと所得税、住民税の最高税率の問題、一緒に議論されますと、なかなか難しい事態もございますので、今回は私は避けるべきではないかと思います。

森下委員

もう一点、ちょっと追加で。

加藤会長

どうぞ。

森下委員

もう一点、発言の中に入れておきたいと思うので。ちょっと抜けましたのですが、抜本的で、これからいろいろと論議なされていく過程において忘れてならないのは、国税のほうにしても、地方税のほうにいたしましても、歳出をいかに下げていくかという構造改革、これは今、日本全体が、産業界もいろいろな構造を見直さなければならないという時期に来ておりますので、やはり小さい政府、小さい地方自治体、これをぜひとも、中長期にわたっての中には、ベースとしては避けてはならないということだけ1つつけ加えておきたいと思います。

加藤会長

ありがとうございました。諸井さん、どうぞ。

諸井委員

ちょっと皆さんの話の流れと外れてしまうかもしれないのですけれども、地方の財政のことを考えますときに、やはり今のように、補助金とか、交付税とか、地方債とか、こういう形で、いわば中央依存、あるいは中央におんぶにだっこするような形で地方の財政が行われているというのは、やはりどうしてもいろいろなむだが生じてしまう。いろいろ地方の公共投資やなんかでも非難があるのですが、もちろん地方にも私は悪いところはたくさんあると思いますけれども、一方では、例えばこれは中央の景気対策のしりが回ってきているような面もありますし、あるいは必置規制等で地方の行革がなかなか進めにくいという、いろいろな問題はそこにあるわけですね。地方の財政を考えたときは、本当は地方自体が自分で税金を取って、それでその税金の中でやるべきことを自ら優先順位をつけてやっていくという形に持っていくのが最も住民のニーズにも合うし、効率的な行政にもなっていく。あるいは行政改革も進むと。そういう方向ではないかと思うのですね。

前置きが長くなりましたけれども、そういう方向で考えたときに、やはり消費税というものがどうしても頭に出てくるのです。というのは、いろいろな税金の中で、少なくとも都道府県レベルでいうと、消費税が一番地方の経済の実態と比例した形で上がってくるわけですね。ほかの税金ですと、何といったって一極集中で、みんな東京とか大きなところに集中してしまうということになります。

それで、こういうような問題は、ことしのような難しい時期とか、あるいは今のような押し詰まった時期にいろいろ考えたり言ったりというのは無理なことは百も承知しているのですが、ただ、一方で自民党と自由党が提携をする、連立するという中で、例えば消費税の問題が福祉目的税みたいな格好で急に、我々税調の議論とは全く関係なくドカドカッと問題が決まってしまうというようなことになると、これは全くチャンスを逸してしまうことになるのですね。

いずれにしても、ことしの中央・地方を通して財政の結果というのは、おそらく、後で振り返るとものすごくひどい格好になっている。それは来年も続くでしょう。再来年も続くでしょう。これを最後に一体どうするのかということは、やはり歳入、歳出、財政全般を通して本当に構造的に国民全体で相当しっかり考えないといかん。今、もらうほうの人はみんな欲しい欲しいの一点張り、それを負担するのは嫌だ嫌だという一点張りで、これじゃ僕は日本というのはどうにもならなくなってしまうと思う。根本構造を考えながらいつもやっていかなくてはいかんだろうと思うのですね。

そういう意味で、消費税の問題なんかでも、今はそういうことを考える時期じゃないなと思って黙ってはいるのだが、やはりそういう基本的なことをきちっとやっておかないといけないなという気持ちが片方で非常に強くするものですから、それであえて発言させていただきました。ありがとうございました。

加藤会長

ありがとうございました。佐野さん、どうぞ。

佐野特別委員

先ほど住宅ローンの利子控除制度の話が出ましたけれども、私はこれをやるべきであると、容認派、あるいは推進派であります。景気対策ということもありますが、もっと根源的なこととして、私は国の金の使い方ということを考えるわけです。つまり、人のいないようなところに道路とかダムとかをつくる、そういうことではなくて、ゆとりのある家づくりというものに国の資源、お金を投入するのが21世紀にふさわしい姿ではないか。そこから実は私の意見は出発するわけであります。

そこでもう一つ、住宅政策ということに限定して申しましても、これまでのような、公団、公社住宅による現物の給付、あるいは利子の補給ということによる一律的な対策というものはもうすでに時代的使命を終えたのではないか。むしろそれぞれの所得に応じて、ゆとりのある人は広い家をつくる機会を増やすということのほうがこれからの時代にふさわしい。それにはやはり税制というものの出動を求めていくということが重要な手段になるのではないか。そういう観点から申しているわけであります。つまり、これまでの画一的な住宅政策の転換という意味合いから、この利子の所得控除というものを認めていったらどうかというのが私の基本的な考え方です。

加藤会長

中西さん。

中西委員

前回、私、欠席したものですから、後で聞きますと、さっき佐野さんもおっしゃった、私はずっと、住宅利子ローンの所得から全額、全期間にわたって控除しろと言い続けているわけですが、前回はほとんどその意見がなかったということなので、そのツケをちょっときょうは埋め合わせさせてもらおうと申し上げたいのですが、私も今の佐野さんと同じ意見でして、やはり今の経済界にとって最後の決め手は、土地を含めた住宅市場を大きく政策税制で刺激する以外に、いまだにこれは立ち直らんで、第一線の現場はいまだにほとんど、ほんの一部、公共関係が出てきたという感じでして、あまり、ほとんど動いてないですね。だから失業率、まだまだこれは上がっていきますよ。これは大変なことになるわけでして、金融システムの安定法、2法案通ったのですが、まだ、転げ落ちている坂道がちょっととまるかなということであって、そこから上がる力はないでしょうね。

そうするとやはり強力な、最も乗数効果の高いところへ政策税制をぶち込むべきだと。今、公共投資は俗に、学者先生によると 1.0から 1.1ぐらいの乗数効果しかないと。住宅市場は、同じことを言うのですが、これは木材産業から、鉄鋼産業から、家電から、家具から、ありとあらゆる産業へものすごく波及効果があるわけで、これは1.8か 1.9か、それぐらいあると言われているのですね。ですから、やはりここを刺激するということが1つ景気対策として。

もう一つは、さっきおっしゃったように、私は住宅政策も、今この国の形、加藤さんも本を書いておられますが、一言でいえば官主導から民主導に変えていく時期ですよね。やはり国の形を変える時期に来ている。ということは、この住宅施策も、ほとんど半分以上が公団、公庫で、ウサギ小屋をどんどんとウン十年かかって提供してきたと。これは完全に過剰ですよね。なお広い良質の家屋を求めるというインセンティブが、要求、ニーズがものすごくあるわけですから、これを公団や公庫の金ではなくて、民間金融機関の金が使い勝手いいような仕組みが、このローン利子を全額所得から控除してやるということが民間金融機関が住宅に対してどんどんローンを貸し付けるということになるわけですから、1つ大きな、官主導から民主導に動くということで舵を切るということになる。

もう一つ、やたらにこれを言うと金持ち優遇と言うけれども、私は、ずばり言わしめれば、今の我が国の税制を、累進税率を下げるというのも---これはハイエクがいみじくも指摘したように、何でソ連が崩壊したのだと。あまりにも平等に平等にとやり過ぎた結果崩壊したということはハイエクが指摘していることですから、そのソ連崩壊後、世界がやはりフラット化に向かったのですよね。税制の。これは当然のことですよね。だから、我が国の累進税率を下げるというその思想というか、その視点と同じ視点で、この間、島田先生も意見を言われたけれども、私はこれは金持ち優遇というよりは、金を持てる者が市場にその金を投入して市場を刺激するということを、金持ちはより多く市場に出してより大きい家を買うというインセンティブが働くわけですから、いい意味でのバイアスがかかっていいのだと。若干金持ち優遇の、金持ち優遇と私は言いたくないのですが、そういうバイアスは今この場合は望まれるべきバイアスではないかと、こう思うのですね。ですから、何でもかんでも、いつも同じように、政治的にとらえて平等であらねばならんというのはおかしいわけですから、私はこれをやるべきだと。

ただ、この間も言いましたが、低額所得者が 5,000万円のローンを組む。高額所得者が 3,000万円のローンを組む。だけど、高額所得者のほうが有利になるということをある人が調べてきて私に言うからね。それは、累進税率の階段のぎりぎりのところにおる人は、3,000万円でも、高額所得のほうがドーンとそれだけメリットが出ますね。これは仕組み上仕方ないわけであって、そこまで言うと議論がどうも的が外れてくるわけですから、私はこの際、在来型の取得促進税制よりもローンの所得控除のほうが、すでに既得のローンを組んでおる人全部面倒を見てやってもたかだか2兆円なのですね。今度の大型減税は7兆円を超えるということを小渕さんは言っておられるので、私は若干ほかのところを削ってでも、7兆円が8兆円に近くなっても、この際、景気を浮揚さすためには政策減税としてそこをやるべきだと思います。

加藤会長

松本さん、どうぞ。

松本(和)委員

地方、町村の立場でちょっと申し上げておきたいと思いますが、先ほど話が出たのですが、地方税だけで、我々徴収したのだけで町村がやっていけということになれば、本当にこれはもう全然やっていけません。というのは、財政力指数関係でも0.34しかないわけです。それで、全国の土地環境を調べても、町村だけで72%、国土の分があるわけでございますが、先ほどお話がありましたように、確かに地方交付税、32%いただいているわけですが、そのほかにも地方債関係でも大分借金をしながら賄いを立てているわけでございます。そういうことで、行革関係も、行革大綱に、国の指導等もございましたが、2回に分けて一応やっていっているわけです。それで今後においての高齢化問題、また福祉の問題も出てくるわけですが、我々も、福祉関係、こういうことに取り組まないというわけにまいりません。そういうことで地方分権関係も進めてまいらなければならないのですが、それとともに、72%の国土を町村で持っているわけでございますから、そういうことで、やはり権限と同時に我々に財源もある程度与えていただかなければどうしてもやっていけない状況ではないかと思います。

1つ例を申し上げますが、我々の町で約1万でございます。それで、財政力指数0.35でございます。実は平成2年に大水害が起きました。それで町民の被害総額、約60億円の被害を受けて激特によって河川改修をしたわけですが、地方においても中小河川の整備もやっております。そういう災害関係がある。我々も、国土、全国的に均衡ある発展ということもあるのではないかと思います。災害関係にも投資をしていかなければまいりません。特に高齢化も問題になってきております。

そういうことで、財源関係、地方税、固定資産税とか住民税、我々、それではやっていけない。そうなれば、結局田舎というのを切り捨て論的なことではないかと思います。そういうことで、やはり今のところは地方交付税でもっていただいているわけですが、それにかわるところの財源をあれしていただいて、その中からいろいろ計画的にやってくということはわかりますが、地方税だけでやっていけという発言等については、我々はやっていけない状態だと思います。

加藤会長

ちょっとこれは続けて、諸井さん、どうぞ。

諸井委員

これは誤解があると思いますが、僕は市町村までそうしろと言っているのではないです。

加藤会長

よろしいですか。じゃ松尾さん、どうぞ。

松尾委員

住宅ローン利子所得控除制度の新設につきまして、中西さん、熱弁を振るわれましたので、ちょっとそれに水をかけるようで恐縮ですけれども、やはり私は、租税特別措置の拡充には基本的に慎重でなければならないと思うのです。7兆円を超える恒久減税を実施するわけですから、それで十分ではないでしょうか。この際やはり、政策減税というのは極力遠慮していただきたいと思うわけです。

それとやはり、繰り返しになりますけれども、著しく不公平であることは間違いないわけでありまして、その辺が国民の信頼を失わせることになるのではないかということを非常に危惧するわけです。当面の景気対策としては、やはり住宅取得促進税制の拡充で対処するのが筋ではなかろうかと思います。

それからもう一点ですが、先ほど有取税、取引所税についての発言でちょっと言い間違いがあったかと思いますので、ちょっと訂正しておきます。有取税、取引所税を前倒し廃止するとすれば、手数料の自由化、キャピタルゲイン課税の適正化も前倒しすべきだと言うべきところ、キャピタルゲイン課税の廃止と言ったかもしれません。廃止ではなくて、適正化でありますので、訂正しておきます。

加藤会長

河野さん。

河野特別委員

さっき主税局長が、抜本的見直しとの関連ということで、我々が中長期にねらっている税制の構造改革に背馳しないようにしなければならないということを念を押されたのですけれども、僕はそれだけでは足らないと思うのですね。諸井さんも松尾さんもおっしゃったけれども、戦略会議の中でも学者が中心になってやっていると思うけれども、当たり前のことだと思うのは、これだけ不景気をバックにしてほうはいたる減税論が出てきて、ほとんど問答無用に近い議論が横行しているのですよね。それはそれぞれ理由があってのことだと思うけれども、その結果、この前もちょっと申し上げたけれども、非常に異常な状態に国と地方の財政がなること、これもみんな知っているわけですよね。言っている財界人も全部知っているわけだ、こんなことは。

それならば、さっき局長が言ったみたいに、税制の中長期的な、背馳しないようにということだけではなくて、ここは税調だからおのずから自分の守備範囲でものを言っているということならばそれで事は済むかもしれないけれども、一般の人から見れば、これだけ国家財政、地方財政がめちゃくちゃになれば、いずれ増税だろうとみんな思うのは当たり前なのですね。しかし、そうなったらば景気対策効果というものは半減するかもしれない。そうでないかもしれない。わからない、それは。

それならば、そこから先について、税調の権限を超えるかもしれないと思うけれども、従来だって言ってきたので、やはり歳出構造についてもうしっかり言わなければ、まことに片手落ちな議論を税調は2カ月間にわたってやったということを言われるのですよ。先に見えている、そんなことは。それならば、結局、といって単純な小さな政府論にいくかどうかわからないけれども、とにかく、まず最初にきっちりと言っておかなければいかんことは、歳出の合理化ということについて、中央、地方について相当思い切ったことをやらなければいかん時期がいずれ来なくてはならないし、来るということは景気が平常な状態に戻るということだから、それをベースにしてやらなければいかんのですね。

本当はそれだけでは足らない。小さな政府論をやるにしたって、やはり消費税を上げるということを片方でやらなければ、もちようがないよ、こんなこと、だれが考えたって。そこまではっきり言えるかどうかわからないけれども、どっちにしてもその点を、税調の枠を超えるかもしれないけれども、言っておかなければ、まことに無責任な議論だけやったことになるということが一番怖い話だと僕は思うのですよ。そのことをきっちり書いておく必要が僕はあると思いますがね。

加藤会長

佐野さん、どうぞ。

佐野特別委員

時間がないので、この住宅減税の議論はまた次回やることになると思うのですが、一言だけ、先ほど松尾さんが言われた政策税制のことですが、私は政策税制を全面的に否定するものではないわけです。要するに無限に膨らんでいくことが好ましいとは思いませんし、整理、縮小、見直しというのは不断に行っていかなければいかんことだと思いますが、これ以上増やさないという早い者勝ちの論理というのは容認できない。つまり、何が必要で、何がもう使命を終えたか。必要なものは新たに加えればいいのだし、使命を終えたものはどしどし削っていけばいいと。問題は必要か必要でないかということで、政策税制そのものを否定するものではありません。

加藤会長

それじゃ水野さん、中西さんということで終わりましょう。

水野(勝)委員

11年度税制改正、先ほどご説明ありましたように、景気対策としてもろもろの諸施策は講じつつ、恒久的な措置、抜本的な見直しとの関連、ここらを頭に置いて、そこにそごを来さないようにする、これはぜひそういうふうにお願いをしたい。あまりにも当面の景気対策ということを頭に置き過ぎて、将来に変な、おかしな仕組みを残すようなことは避けてもらいたい。

それから、今回このような措置をするならば、この機会をとらえて、何らかの、将来ともやっておくべきようなことはこの際やっていいのではないかと思うわけでございます。

その1つは給与所得控除という点でございまして、給与所得控除が非常に手厚いために、日本の所得税の課税最低限が高く出ているという面がある。 491万円というのは確かに高いですけれども、給与所得控除によるところの影響がかなり大きい。給与所得控除を除いて諸外国と比較すれば、それほど日本の課税最低限が極端に高いということはないだろうと思います。しかし、今まではどちらかというと高額所得者にも給与所得控除が及ぶように、昔は頭打ちがあったのが天井を取っ払ってやってきているということはございます。しかし、今回は累進税率をかなり思い切って緩和するわけですから、そこらを含めて、この際、給与所得控除というのは例えば全部5%ずつ削ってしまう、あるいは半分にする。半分にしつつ、一定水準以上の所得者については実額控除的な措置も認めるということにすれば、かなり高額所得者にとってもそこは利用できる制度になるのではないか。そういった給与所得控除の見直しといったことも含めて、もしうまく来年度の税制改正ができればありがたい。累進税率を思い切って緩和しますから、その一つの機会ではないかと思うわけでございます。

それから基本的な税制、抜本的なあり方、恒久的なあり方にそごを来さない改正をお願いしたいという中の一つの点は、今ご議論がたくさん出ております利子控除の点でございます。住宅利子のローンを控除する。これは借金の利子を控除するということに意味があるのか、住宅税制として、住宅対策としての意味を重視されるのかでございまして、住宅税制、住宅対策ということであれば税額控除制度がすでにあるわけでございまして、これを必要があれば時限的にいろいろ拡充するということが考えられるわけでございます。

利子控除、借金の利子を控除するのだという発想ですと、これは到底、日本の今の税制にはなじまないのではないか、あまりにも異なった問題を取り込み過ぎるのではないか。じゃほかの借金の利子はどうなるのだとか、あるいは所得が、資金があっても借金をしてきて、わざわざ借金を組んで、そういう場合も控除するのかとか、利子の問題、それは自動車のローンの利子だってありますし、奨学金の利子もある。そこらを利子そのものに着目してのご発想なのか。おそらく住宅対策ということだろうと思いますので、ここはやはり基本的に将来に問題を残さないためには、今ある特別措置の中で対処していくのが適当ではないかと思うわけでございます。

加藤会長

中西さん、どうぞ。

中西委員

今の水野さんのご指摘というか、ご質問に対しては次回か次々回にでもまたお答えをしたいと思いますが、それはさておきまして、私はこの間、上野村の財政の質問をして、きょう、ぺーパーが入っておりますね。これを見ますと、さっき諸井さんも触れられましたが、非常に明快に出ているので。日本の地方自治体ですね。

加藤会長

これは説明しなくてよろしいですか。

中西委員

結構です。もう見ればわかりますから。地方交付税がこれで40.5%、それから国庫支出金が5.1%、それから地方債が13.8%、これにプロジェクトをやる場合は補助金なんかがついてきますから、この3つだけですでに59.4。これに県からの支出金を入れますと、何と78.2と、もう8割方、まさに、言い方は悪いですけれども、他人任せ。国に頼るというか。悪くいえば、かつての国鉄が国家財政に頼ったようなものです。あれは財投の金ですけどね。

私、言いたいのは、これだけ11年度の税制改正の大事な、基本的な考え方はきょう局長が触れられましたが、これはどなたかが言われたことと、河野さんですかね、全く同意見なので、これだけの大幅な、今思い起こすと、2年前に我々が法人税引下げをいろいろ申し上げたときに、大蔵当局はたしか1%の引下げだったのですね。シナリオが、後で聞くと。だけど、これは今や、驚きであって、40まで下がる。だけど、これだけ下がると、一体どうなるのだと。日本の国民は知的レベル高いですから、みんなそれは河野さんが言われるようにわかってますわね。赤字国債があれだけあって、また赤字国債で逃げると、一体これどうするのだと。これは当然、専門家集団と言われているこの税調で、片方だけを論じないというのはおかしいので、私はかねがね、この初回のときも申し上げたけれども、例えば財政審議会と一緒に議論するとか、それが不可能ならば、当然、税調の枠外になるけれども、やはりこの問題を何らかの形できちっと方向だけでも打ち出さんと、これは国民の理解が得られないのではないかと。

ましてや、我が国の一般会計の、公債の償還費を除いて過半数が地方にいっているわけですから、これは、諸井さんの言われたように、公平・平等にというのは一つの立派な国を治める理念ですよね。だけど、あまりにもそれをやり過ぎて、要するに日本の仕組みは、財政力指数の低いところ、これは怠けていて低いところもあるわけですね。非常に不幸にして低いところもあるでしょうが、いろいろある。努力されたところにはいかないで、要するに弱いところに手厚くいくようになっているということは、ソ連と同じですよ。だから、この方式を根本のところから一遍議論する必要があるのではないかなと。だから、だれも努力しなくなって、変な話ですけれども、ここに首長さんおられて烈火のごとく怒られると思うのですが、私はやはりこれは、この辺で地方の行革こそ喫緊の課題ではないかと。いつも私が緑のおばちゃん 700万という話をするのですが、これは高くもらえればそれにこしたことはないですが、諸井さんもいみじくも言われたように、私も私なりのいろいろな情報で、かなりむだがあると言わざるを得ない。やはり、ぜひひとつ自治省殿もその辺の、行革をやりながら財源を大蔵省殿と一緒にお考えいただくというふうなことをおやりになってはいかがだと。これを申し上げたいですね。

加藤会長

今、中西さんが上野村のことをおっしゃったのですが、ちょっと自治省が一言言いたいそうですから。

桑原企画課長

説明は、ごらんのとおりですから省略いたしますが、中西委員もおっしゃったとおり、地方税の全体の予算に占めるシェアというのは非常に小さくなっております。しかしながら、上野村におきましては、村づくりを進めるために、自主的な財源を何とか拡充する方法をこれまでもいろいろお考えになってきたところでございます。その結果と申しますか、平成6年に上野村と東京電力の間で、この上野村に世界的にも有数の規模の水力発電所を建設するというプランがまとまりまして、今すでに工事に入っております。大体あと5年ほどしますと完成いたしまして、そうした暁には固定資産税の税収が相当増えてまいりまして、上野村はおそらく地方交付税をもらわない不交付団体になる。いわゆる自前の財源で行政運営ができるような団体になるものと予想されます。

そんなことで、いろいろな町村におきまして首長さんが努力されているということをぜひご理解いただきたいと思います。

松本(和)委員

緑のおばさんの関係が出たのですが、我々のところはボランティアで、PTAと婦人会の人たちがやって、もうほとんど報酬はございません。そういうことで協力してもらっておりますから、特別な地区ではないかと思いますので。

加藤会長

いい例もございますので。

前回は住宅ローンの所得控除につきましてはちょっと不利な状況だったのですが、きょうは大分盛り返しているようでございますから、この次もさらに続けて議論したいと思ってますが、今度は特に地方の問題を取り上げまして、地方行革は本当にやってもらわないと、ただお金がないだけではどうしようもないので、ぜひ考えていただこうというので、この次これを取り上げたいと思っております。

この次は12月4日でございます。それからさらに、12月8、11、15、16日というふうに連続ございまして、論点を煮詰めて、また起草委員会をそろそろ考えてやっていきたいと思っておりますので、よろしくご協力をお願いいたします。

きょうはどうもありがとうございました。

〔閉会〕

(注)

本議事録は毎回の総会後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、大蔵省主税局及び自治省税務局の文責において作成した資料です。