第25回総会 議事録

平成10年11月27日開催

加藤会長

それでは、税制調査会の第25回総会を開催いたします。

本日の議事を申し上げておきますと、最初に、総理の公約でありました、6兆円を超える恒久的な減税の国と地方の分担についていままで審議をされてまいりました。その結果がここで出てまいりましたので、報告を受けたいと思います。

次に、第3次補正予算と、それを踏まえた財政・税収状況につきまして事務局から説明を受けたいと思います。

さらに、住宅関係税制などに関して、これまでの審議において委員の皆様から要請のありました資料などを提示いたしまして、自由討議をしたい、こういうふうに考えております。

それでは、大蔵省・自治省両省の間の協議の結果について報告を受けたいと思います。

まず最初に、恒久的な減税の国・地方の分担の考え方について、尾原主税局長から、次いで、恒久的な減税に伴う地方財政対策などについて、成瀬税務局長からお願いしたいと思います。

それでは、尾原さん、どうぞ。

尾原主税局長

総理の公約でございます6兆円超の恒久的な減税の国と地方の配分につきまして、昨26日午前、大蔵・自治大臣の協議が行われて合意がなされましたので、ご説明申し上げたいと思います。

中身に入ります前に、簡単に経緯を振り返ってみますと、政府税制調査会におきましては、8月7日、この公約についての所信表明演説が行われましたあと、懇談会が開かれました。その後、さまざまなご意見をちょうだいしてまいりました。とりわけ、10月23日にこの問題を本格的に取り上げていただいて以来、幅広いご議論をいただいてきたわけでございます。11月17日の税制調査会総会におきまして、私ども大蔵・自治両省に対しまして、両省間で調整した上報告するようにとのご指示をいただいたものと承知しております。また、大蔵大臣、自治大臣からも、臨時国会までに基本的な考え方について合意を得るよう、という指示もいただいてきたわけでございます。

そのような経緯で、主税局、税務局のみならず、地方財政対策もございますものですから、主計局、財政局と4局で精力的に協議をやってまいりました。

先週の11月20日夜には、大蔵大臣と自治大臣との話し合いも行われたわけでございます。この連休中も含めまして、連日やってまいりまして、25日には事務次官の協議が行われ、昨日、大蔵大臣、自治大臣との協議により、ようやく合意に至ったというのが経緯でございます。

この両大臣の合意を得た決定内容でございますが、お手元に、「総25-1」ということでお配りしてございます。ポイントを簡単にご説明申し上げたいと思います。

まず初めに、基本的考え方でございますが、2つあると思っております。

1つは、当然のことながら、国税、地方税それぞれの税の性格を踏まえた税制のあり方を基本に考える。

2番目といたしましては、地方財政の円滑な運営に十分配慮していくということで、この減税、地財対策一体的に実施するということかと思います。

1に書いてございます個人所得課税でございます。これは、減税規模の4兆円というのが先に決まっているわけでございます。そのうちのまず最高税率の引下げですが、これも、現在65%を50%というのが総理の公約でございます。所得税につきましては、現行50%でございますが、37%ということでございます。税率構造は、いままで、10、20、30、40、50の5段階でございましたが、10、20、30、37の4段階になるわけでございます。

それから、個人住民税でございますが、15%から13%という形で、ここも3段階の累進構造は維持することになっているわけでございます。

それから、定率減税でございますが、それを含めましたところでの国・地方の減税額がどうなるかということについて申し上げますと、所得税が2.9兆円、個人住民税が 1.1兆円の4兆円ということになります。従来、国・地方の減税割合は7対3ということでやってまいりましたが、これで計算してみますと、7.25対2.75ということで、国税のウエートの高い形の減税の姿になるわけでございます。

その次の2の法人課税でございます。これは、減税規模といいますよりも、国・地方合わせました法人課税の実効税率を、46.36%から約40%にするというふうになっていたのが公約でございます。国の法人税率につきましては、平成10年度税制改正におきまして、37.5%から34.5%に基本税率を3%引き下げたわけでございます。

これまでの経緯からいたしますと、「地方税中心の対応とする」ということも考えられたわけでございましたが、ただいま申し上げましたような、国・地方の配分の基本的考え方を踏まえまして、最終的には、国税である法人税率の大幅な引下げを行うこととするということで、ここに書いていますように、現行の基本税率34.5%を30%に引き下げるということでございます。したがいまして、国の法人税率については、2年間で37.5%から34.5%、さらに30%ということで、2年間で7.5%引き下げられることになるわけでございます。

法人事業税につきましても、12%でしたのが11%へ引き下げられ、9.6%。2年間で12%から 9.6%になるということでございます。

この結果、実効税率でございますが、40.87%ということで、端数がついておりますが、約40%になるわけでございます。これを振り返ってみますと、10年度改正前は49.98%、これが現行の 46.36%になり、 40.87%ということになるわけでございます。

なお、実施時期でございますが、平成11年4月以後開始事業年度から適用ということにされております。

実施時期について個人所得課税で言い忘れましたので、見ていただきますと、実施時期は、国については平成11年分から適用する。つまり、平成11年の所得税について適用する。住民税のほうは11年度から適用する、こういう形になるわけでございます。

それから、3にたばこ税が書いてございます。恒久的な減税の実施に伴いまして、地方財政の円滑な運営に十分配慮するということで、当分の間の措置として、国と地方のたばこ税の税率を改正することにしてございます。もとより、実質的なたばこに対する税負担を引き上げるというものではございません。

どういうことになるかと申しますと、税率と書いてございますが、国の現在の税率は千本当たり3,126円でございますが、千本当たり 410円、国のたばこ税率を引き下げます。その分を地方のたばこ税にかさ上げする形になるわけでございます。

なお、実施時期、いろいろ準備の都合がございまして、来年の5月1日から実施ということになっております。

以上が内容でございますが、参考までに、一番最後のページを開いていただきたいと思います。国と地方の減税額をそれぞれまとめたものでございます。実は、来年度の税収は、今後、経済見通しがどうなるかということで、作業を積み重ねていく途上にございます。したがいまして、利用できる数字ということになりますと、今年度(10年度)の補正後の税収を基礎につくってある数字でございます。

これでまいりますと、個人所得課税 2.9兆円と1.1兆円で4兆円。法人課税が、これは当然平年度ベースでございますが、1.6兆円と 0.7兆円の 2.3兆円。これを国、地方に分けますと、4.5兆円と約 1.8兆円というのが、いわゆる10年度補正後予算を起算にした数字でございます。

以上が、税のほうのポイントでございます。

加藤会長

ありがとうございました。

では、成瀬税務局長、お願いいたします。

成瀬税務局長

それでは、お手元の2枚目の資料になりますけれども、「恒久的な減税に伴う地方財政対策」ということで、必ずしも税金の世界の話ばかりではございませんけれども、併せて説明をさせていただきたいと思います。

いま、主税局長から説明がありましたように、減税額のうち地方税で引き受けます規模が約1.8兆円ということに相なります。この 1.8兆円をどのような形で財源補てんをするかということで、財政局と主計局の間でいろいろやりとりをいただいたわけであります。結果として、そこに掲げられておりますような措置を併せ講ずることによりまして、地方財政の円滑な運営に配慮していこうということで内容が固まったものでございます。

以下申し上げますと、まず1番目が、先ほど説明がございましたように、国のたばこ税から地方たばこ税に約0.1兆円、配分割合を変更することで財源措置をするというのが一つの柱でございます。

2番目が、法人税にかかります交付税率を上乗せするということで、今回、地方法人課税、とりわけ法人事業税につきましても、かなりの減税に伴う減収額が出るということで、そういうこともにらみながら、現在、国の法人税の32%が地方交付税として配分されておりますけれども、その32%の率を上乗せして、約0.3兆円を確保するということでございます。

3番目が、地方特例交付金。これは、まだ正式名称は決まっておりません。それから、配分の仕組み等もこれから定められていくことになっております。今回の減税、いわゆる交付税措置だけですと、不交付団体についての財源措置が全くできないということで、今回、新たに一般会計のほうから、地方税の代替的性格というようなことも持たせながら、不交付団体も含めて約0.9兆円の金額を配りまして、財源補てんに充てようというものでございます。

それから、残りの減収分につきましては、減税補てん債でもって手当てをするということで、これが0.4兆円程度。

以上、4つの措置を組み合わせることによりまして、地方税の減収分を、国としても財源的な面で十分配慮していこうという内容で固まったものでございます。

なお、その下に「国税減税の地方交付税への影響分」というのが出ておりますけれども、ご案内のように、所得税と法人税の税収入額の32%が地方交付税の原資になっております。したがいまして、今回の減税に伴いまして、約1.4兆円の国税減税に伴う地方交付税の減収額が生ずるわけでございます。これは、従来のルールによりまして、交付税会計の仕組みの中で国と地方が折半の負担により補てん措置をやっていこうということで、内容が定められたところでございます。

以上であります。

加藤会長

ありがとうございました。

ただいまご報告がございましたように、今回、国と地方の減税の分担につきまして、当事者の方々、連日連夜、そして、連休も全部返上してやっていただきました。私たちとしては、非常によくやっていただいたと思っておりまして、その結果がこういうような良識ある答えになりました。これもひとえに、この問題を単に局の問題、あるいは省の問題として考えるのではなくて、国民の立場から見れば同じことなのだから、何とかそこで話し合いをしてくれ、こういうことで委員の皆様方がおっしゃってくださったことが、一つの大きな基礎になってこういう結果が出たのだと思っております。いろいろと満足できないところもありますけれども、しかし、一応良識ある結果が出たのではないかというふうに私はここで感謝を申し上げておきます。

続きまして、第3次補正予算の概要と、それを踏まえた財政・税収状況につきまして、説明を受けたいと思います。

それでは、主計局の飯原総務課長と、主税局の伏見総務課長から説明をお願いいたします。

飯原総務課長

それでは、お手元に配付させていただいております、A3版の大きな1枚紙が2枚ございますが、それをお開きいただきたいと存じます。表題が、「平成10年度補正予算(第3号)フレーム」と、「社会資本整備」という2つになっておりますが、最初のほうの「平成10年度補正予算(第3号)フレーム」を主として使わせていただいて、ご説明をさせていただきます。

去る11月16日に、経済対策関係閣僚会議で緊急経済対策が決定されたところでございますが、その内容は大きな柱として3つございました。

8月に設定されました概算要求基準の基本的考え方におきましては、景気対策特別枠をすべて入れまして、込みで4兆円ということにいたしておりました。これにつきましては、金融対策を中心に3兆円を大きく上回る額を上積みをして、7兆円を大きく上回る額を確保すべし、というのが第1点でございます。

第2点目は、3次補正予算における国及び地方の財政負担は10兆円を超える規模を確保する、ということでございます。

第3点目が、緊急経済対策の事業規模は17兆円超ということで、当時、減税の規模がまだ最終的に決まっておりませんでしたので、減税6兆円超を含めれば、合わせて20兆円を大きく上回る規模ということでございます。

これを踏まえまして、本日、概算閣議を行いました補正予算のフレームが、お手元にあるものでございます。

なお、今回、日程が極めてタイトでございましたので、本日は概算閣議のみを行いまして、予定といたしましては、12月の4日に予算書の提出閣議をするという、日程的には異例な形になっているわけでございます。

そのフレームの真ん中の四角で囲ったところを中心にご説明いたしますが、全体の姿を見ていただくには、歳入のほうから見ていただいたほうがよろしいかと思います。後ほど主税局からご説明があると思いますが、税収が6兆8千億円強落ちまして、結果、経済対策の歳出に充てるための公債も含めまして、3番目の公債金が12兆3,250億円の増発となっているわけでございます。

建設公債と特例公債の内訳は下にあるとおりでありますが、3の公債金のところを右にたどっていただきますと、矢印がございます。当初18兆4千なにがしであった公債発行額は、1次補正予算を経まして、これはたまたまでございますが、3次補正後は、34兆円ちょうどという公債発行額になるわけでございまして、これは当然過去最高となります。

いろいろ注意書きがある下のほうで、ちょっと飛んで見にくいかと思いますが、公債依存度という欄が下のほうから2段目ぐらいにございます。それでごらんいただきますと、3次補正後の公債依存度38.6%でございます。いままでの最高が、昭和54年度、第2次石油ショック当時の日本機関車論の時代でございますが、34.7%でございましたので、それをはるかに上回る最高の水準になってしまうというのが一つの特色でございます。ここまでの臨時異例の財政出動をして、この経済回復に全力を尽くすということが、今回の経済対策及び補正予算の最大の目的でございます。

左の歳出欄をごらんいただきたいのですが、大きく分けまして、今回の補正予算、いま申しました緊急経済対策対応の部分のほかに、通常の補正予算の部分---経済対策がなくてもこの時期に編成することが通例である補正予算の分も含んでおりますので、それもあわせて若干の言及をさせていただきます。

まず、緊急経済対策関連、1番目の大きな柱が、何といいましても現在の景気状況の最大のネックになっております信用収縮対策でございます。2つ大きな柱がありまして、1つ目が、中小・中堅企業等金融特別対策ということで、主な内容が、信用保証協会への補助金、あるいは中堅企業(大企業も含みますが)に対する運転資金の供与等の日本開発銀行の活用といった観点からの開銀への出資金を含めまして、これが1兆370億円でございます。

(2)が預金者保護対策でございまして、北海道拓殖銀行等の清算に伴いまして、預金保険機構に国債整理基金から1兆1,054億円の穴埋めをしたわけでございますが、これを、一般会計から国債整理基金に戻すといった形の国債費計上でありまして、2つ合わせますと2兆1千億円強の補正計上額となります。

2番目の大きな柱が、需要喚起ということで社会資本整備でありますが、これがトータルで3兆9,601億円でございます。この基本的な考え方ですが、当初の4兆円の社会資本整備景気特別枠を補正予算に前倒しをする。つまり、11年度当初予算に計上するのではなく、補正予算に前倒しをするという考え方で編成をいたします。大臣はこれを「15カ月予算」と呼んでおられますが、この15カ月予算の考え方にのっとりまして、4兆円のうちの3兆5千億円を第3次補正予算に計上したということでございます。

(1)から (7)までがその内訳でございます。実は、その詳細な内訳が、もう1枚にあります「社会資本整備」といった内容になっておりまして、これをすべてご説明させていただく時間はないのですが、特徴的なところを申し上げます。[1]から[3]の、情報通関・科学技術、福祉・医療・教育、環境というところまでが、1兆円超の事業費を確保している。さらに、1番目と2番目の情報通信、福祉・医療・教育は、実は公共事業中心ということではなく、公共事業以外---私ども、非公と呼んでおりますが、非公共部門の経費を中心に計上いたしております。中には、インターネット関連とか、デジタル放送関連等々、先端的な情報通信関係の経費が計上されているところでございます。

恐縮でございますが、もとの補正のフレームに戻っていただきます。そういうことで、社会資本整備4兆円の中から3兆5千億円を第3次補正予算に前倒し計上するわけですが、別途、本年の災害が若干多かったものですから、災害復旧等事業費として、(8)にありますように 4,601億円の経費を計上しているところでございます。

大きな3が、地域振興券。これは、与党と公明党の間の協議で実施することが決まったものでございます。端数と申しましても大きいのですが、7千億円を超える698億円の部分は事務費でございます。

4番目が、住宅金融対策。これは、10月1日から実施されました住宅金融公庫の金利の2.0%の引下げ等に伴うものでございます。

雇用対策費。これは、15カ月予算で1兆円の事業費と言っておりますが、これの本年度分の一般会計計上分だけでございます。別途、特別会計のほうに1,900億円余の経費が計上されております。

6番目のアジア対策費。これも、一般会計分だけで510億円と小さな数字になっておりますが、別途、出資国債が3,600億円、アジア開発銀行向けにありますので、合わせますと事業費が1兆円程度になります。

その次の「その他」以下が、通常ベースと言っております補正項目であります。生活保護等の義務的経費の追加とか、住都公団への補給金。10番が、ちょっと目新しいというか、今年限りでございますが、日韓漁業協定に伴う経費、あるいは国際漁業再編とありますが、マグロ漁対策といった経費を計上しているところでございます。

12番のところに国債整理基金というのが出てまいりますが、これは、国鉄の債務承継法案の施行が当初予定よりずれたことによる、技術的なずれに対応するための経費でございます。

13番目が、既定経費の節減。

14番目が、税収の6兆8千億円強の落ち込みに対応する地方交付税の減額分でございます。

予備費は、年度末が近づいていることもありまして、通例どおり、2千億円の減額をいたしているといったことでございます。

こうした補正予算を核に事業費を計算いたしますと、左のほうにございます、事業費の合計では17兆円超、これに減税を合わせますと、20兆円を大きく上回る規模になるわけでございます。

なお、表にはございませんが、財政状況の概括的なことを見ていただきたいと思います。3つだけ数字を申し上げますと、今回、税収が兆円単位で50兆円になります。地方交付税が4千億円、経済対策で上乗せをしておりますが、別途、三税の落ち込みによりまして、1兆9千億円強減額しておりますので、トータルではほぼ14兆円の規模となります。

それから、国債の発行額が34兆円ですので、国の手取りという観点から見ますと、50兆円のうち、地方交付税のほうにいきます14兆円は、事実上、天引きをされているというふうに考えますと、50兆円マイナス14兆円の36兆円が税収の国の手取りである。一方、借金が34兆円ですから、収入の手取りが36兆円、借金が34兆円。借金と収入とがフィフティーフィフティーの関係になるといった、きわめて厳しい財政状況になっていることが申し上げられるかと思っております。

以上でございます。

伏見総務課長

引き続きまして、税収の補正のほうを簡単にご説明いたします。資料で「総25-2の3」というのがございます。A4版の4枚ほどの紙でございます。

補正額でございますが、一番下の欄にございますように、6兆8,840億円の減額補正をしております。この結果、いまお話がありましたが、平成10年度の補正(第3号)後の税収の見込額は50兆1,650億円という形になります。

主な補正の税目でございますが、源泉所得税で1兆3千億円余、申告所得税で5千億円余、所得税計では1兆9,760億円ということで、約2兆円弱の減額補正でございます。それから、法人税で3兆4,870億円の減額。

消費税では、6千億円余の減額になっておりますが、これは実は、土台となります9年度の決算で、補正後予算に対しまして約3,600億円の減額が生じてございます。そういう意味では、消費税につきましては、本年度に入ってからの変動といいますか、減額幅は相対的に小さなものになっているという状況でございます。

次の2ページをごらんいただきたいと思います。前にもごらんいただきました図でございますが、57兆円の現在存在しています補正後予算、そこから6.9兆円落ちました50.2兆円というのが新しい数字ということになります。平成11年度、これを受けてさらに作業を続けておりますけれども、いずれにしましても、相当な減税が行われることになりますので、50兆円を下回る税収の見込みにならざるを得ない状況だろうと思います。

その次の3ページでございますが、過去の税収全体の動き等が示されております。この結果、平成10年度、50.2兆円でございますが、過去をさかのぼってごらんいただきますと、昭和63年度の決算が50.8兆円、それを下回っておりまして、その前ということになりますと、62年度という形になります。

その次の4ページでございますが、所得税収の推移を棒グラフにしてございます。途中で「注」がついておりますのは、いろんな減税が、いつ、どのぐらいの規模で行われたかというのを示すものでございます。

所得税全体で17.2兆円になりますが、左のほうにさかのぼっていただきますと、昭和62年度が17.4兆円でございます。したがいまして、それを下回っております。その前年、グラフからはみ出した格好ですが、61年度が16.8兆円でございまして、それに次いで低いレベルということになります。

その次の5ページでございますが、法人税収の推移がグラフになってございます。法人税のほうは、今回のものが11.7兆円でごさいますので、これもグラフの中には出てまいりません。平成5年度、バブルの崩壊時の税収が12.1兆円でございました。これをさかのぼってまいりますと、昭和59年度、11.3兆円というのがございます。それ以来の低い水準になります。

なお、このグラフの中に、法人税の基本税率のグラフもあわせて出してございます。ざっとごらんいただきますと、62年度当時の42%から始まりまして、2段階で平成2年には37.5%になっております。その時代が長く続きましたが、先ほどご説明いたしましたように、平成10年度から34.5%、さらに、平成11年度から30%に基本税率が下がるという形でございます。

以上でございます。

加藤会長

ありがとうございました。

それでは、国・地方の分担についての報告とか、ただいまの事務局からの説明につきまして、ご意見かご質問がありましたら、若干の時間、お願いいたします。

河野さん、どうぞ。

河野特別委員

会長が冒頭で、大蔵・自治両省の努力と、でき上がった成果について感謝の念を表明されたので、会長はそういうふうに総括されたということですよね。私も、まあ、いろいろなことがありますけれども、いろいろな経過をずっとウォッチしている立場から見て、いま、ぎりぎり考えられる妥当な線がとにかく出されたということだと思うのです。会長はそれを感謝された。私は、妥当な線だなという気がするということで、それぞれいろんな不満が残ったと思いますけどね。

それを確認した上で、これからのことについてなのですが、今回は課税ベースの問題というのは全部先送りした。それは事情があってそうなので、それはそれでいいのですが、もう一つは、地財対策で、いろんなことが恒久的に決まったんだけれども、裏付け財源対策というのは、「当分の間こうやるよ」ということを、いま、自治省は説明された。「当分の間」なんですよ。税率を下げる、その他のことは、恒久的な措置として安定的にやるけれども、その裏付けの対策は当分の間だということ。当分の間はいつか終わるわけで、よくわかりませんけれども、総理大臣は一両年だというし、幾つかの省は、3年ぐらいかかるかもしれないと、日本経済が正常な巡航速度に戻るのが。

いずれそういう日が来なければならないと思って我々はこういう対策を打っているわけで、これを黙認しているわけで、そのときになったらば、課税ベースの見直しとか、その他、万般のことについて、正常な議論がこういう場でできるようになることが望ましいし、そうならなければ日本経済沈没みたいな話ですから、いずれそうなるでしょう。その日に備えて、いまでも税調では、学者の専門の方を中心にして地道に議論をやっていますけれども、それを整々としてやって、そういう議論が真っ当に俎上にのるようなハッピーな時代が来れば、それが前面に出てくるというふうにしたいものだと思うんですよね。いずれにしても、さっきの主計局の説明を聞いていれば、来年、再来年は、先進国の中で最もミゼラブルな財政事情になることは間違いないんだね。みんな、それをわかった上でこれを評価しているわけです。しかし、いずれは、それをどうするかということについて、政治的にも議論しなくてはならない時期が来るだろうと思うんです。当然そうなるだろうということを期待しながら、この結果については、私はそれで結構だと思っています。

第2は、ちょっと中座しなくてはならないので、お願いしておきたいのですけれども、この前の会長の説明だと、きょうは土地と住宅問題について議論するという話だったですよね。どのくらい時間があるのか知りませんけれども、特に住宅問題については、非常に大ざっぱな議論がここまでのところは横行しているわけです。住宅を増やすのだから何でもいいではないかという議論から、それに対する反対論としては、金持ち優遇だからけしからんと。これ、両方とも非常に単純すぎる議論なんです。

そうではなくて、ここは税調の場なので、仮に住宅ローンの所得控除をやるにしても、それが一体どういう問題をはらんでくるのかということをテーブルの上に出してもらって、それで、「そういうことはあるな、しかし、それでもなおかつ乗り越えてやろう」という結論になるのか、「それはそう簡単な議論ではないな」というふうになるのか、そんなことはわかりません。とにかく俎上にのせなければ、いまの議論、実に単純な話をやりすぎていると思うんですね。そういうことを、一回か二回、ここで議論してもらいたいと思います。

加藤会長

ありがとうございました。

いまの河野さんの住宅と土地の問題ですが、これは、きょう結論を出してしまうというのではなくて、かなり長引くと思います。したがって、ぎりぎりまでやっていきますので、きょうは早くお帰りになっても、あとで議論をまた追加していただきます。

ほかの方、何かございますか。よろしゅうございますか。

それでは、何かありましたら、またあとで出していただくことにいたしまして、先に進めさせていただきます。

飯原総務課長、どうもありがとうございました。

平成11年度の税制改正について、ご議論いただきたいのでございますが、いままで、住宅減税もそうですが、いろいろな審議の過程で議論が出ましたので、委員の方から資料要求がありました。それをきょうは事務局からまず説明をしてもらいまして、そして議論をしていきたい、こういうふうに思います。

それでは、まず国税につきまして、加藤税制第1課長、真砂税制第3課長、それぞれ、よろしくお願いいたします。

加藤税制第1課長

お手元の「住宅・土地税制関係説明資料」、総25-3の1でございます。お開きいただきまして、目次を飛ばして1ページ目に、「住宅ローン減税について」ということで、マルで5つ、論点が書いてございます。これは、重なっていると思いますので、外して、これに沿って資料の説明もさせていただきたいと思います。先ほどご指摘がございましたように、住宅ローン減税についていろいろな議論が行われているわけです。やはり一度議論を整理していただきたいという意味で、私どものほうから資料等を用意させてもらいました。

まず、「所得税制の基本的考え方」というところにつきましては、ご案内のとおりでございますが、我が国の所得税、基礎控除等の基本的な課税最低限を構成するものを除いたものが課税所得になって、それで課税が行われる。したがって、一般の家計の消費というのは、そういう税がかかったあとの処分として任意に行われるわけでございます。

いろいろな買物があると思いますし、食料、家賃等々、いろいろあるわけです。住宅ローンの利子も含めて、利子というと、何か特殊なイメージがあるわけですが、物を買うときに、前倒しして買う対価として利子を払う、お金がない段階で、先にその物の効用を手に入れるということで、先に買うということの負担をローンという形で支払うわけで、税法上は、利子も含めて所得処分の一環ということで、基本的には差別ができない。それがまず大前提でございます。もちろん、特別な扱いを政策税制としてするとかいう議論はその先の話だと思います。

次に、「政策税制の論点」ということで、確認のために、2ページから、現行の住宅取得促進税制、住宅のためにどのような配慮が行われているかという資料を出させていただいております。

現行の住宅取得促進税制というのは、ローンの残高の一定割合を、直接、税額から控除するという税額控除方式でございます。2ページのように、若干先倒しして住宅を建てていただきたいということで、年分によって違いますが、11年分は、2年目はローンの残高に応じて最高35万円までの税額控除が受けられる。3年目以降は25万円になりますが、それが6年間、税額控除ができる、こういう制度でございます。

次のページを見ていただきますと、その35万円という所得税がどのような意味があるのかということのご確認です。これを逆算いたしますと、夫婦・子2人で、給与収入が789万 7,000円の方がちょうど35万円の所得税を納めていらっしゃると。平均給与が700万円ちょっとでございますので、いわゆる普通のサラリーマンの方にとってみれば、その年の所得税全額に匹敵する水準だということでございます。

もう1ページめくっていただきまして、これは、「政策税制としての論点」の1番目の参考資料で、「政策目的が何か」ということに尽きるわけですけれども、現行の住宅取得促進制度は、住宅をつくる人、買う人に着目して、中低所得者の普通の方が庶民の夢である持家を何とか持ちたい、それを支持する税制、政策目的としてつくられております。

したがいまして、所得要件は3千万円以下の方にしか適用になりませんし、床面積についても、大きなものは自力でやっていただくということで、50m2以上240m2以下という限定までついているわけでございます。

最近、世の中で言われている要望で、特に、2つ大きな流れがございます。

いまの住宅取得促進税制をより拡大する。基本は中低所得者の持家促進をベースに、それを拡大していくという流れ。

もう1つが、右の欄に出ています住宅ローン利子所得控除制度の新設、こういう流れ。これは、いわゆる中低所得者というものを意識したわけではなくて、ここで見ていただきますとわかりますように、所得要件はない、床面積要件もない、ローン残高が1億円というように、むしろ高額の所得者により高額な恩典がいくということで、新しい考え方に立脚した制度です。しかも、期間も、ローンの利払いをする全期間ということですから、住宅ローンの平均期間は20何年、30年と、こういうところまで常にずっと恩典がいくという制度でございます。

ちょっと恐縮でございますが、5ページをめくっていただきますと、税額控除と所得控除の基本的な違いを図示させていただきました。左側は、住宅促進税制の税額控除制度でございます。先ほど説明しましたように、例えば3千万円ですと、1千万円までは2%、1千万円を超えて2%の部分は1%、2千万円以上は0.5%。いわゆる残高の一定割合を直接税額を控除するということで、この場合、満額で35万円が控除されます。ですから、この方がどういう所得かどうかというのは、全然かかわりがない。まさにローンの残高だけで決まってくるわけです。

一方、所得控除制度は、右に書いてございますように、同じ3千万円のローンを借りる。当然金利は同じですから、利払費を3%と仮定すれば、90万円の金利を年間に払う。ところが、年収700万円の方は限界税率が10%ですから、90万円の利払いを所得控除しますと、90万円課税所得が減る。ということは、税金が9万円まかる。逆に言えば、81万円は自分の力でローンを返すということになります。

3千万円の年収の方は---ちょっとこれは新しい税制を前提にしておりますが---今度、37%になりましたので、90万円の所得控除があれば、その37%分の33.3万円の税負担の軽減が図られる。そうすると、自分では67万円弱の負担で済むというように、同じローンを借りても、所得によって税負担の軽減割合が異なる。これが所得控除の最大の特徴でございます。

それを6ページに、仕組みをわかりやすく図示しました。ですから、自分がどういう年収で、どういう課税所得になっているかによって、所得控除でどれだけの金額が変わるかというのは全然変わってくることになります。

7ページは、両者の比較をしろというご要請がありましたので、これは、あくまでも単年度で比較をしたものでございます。実は、全体の比較というのは非常に難しい。このように単年度でいきますと、3千万円では、税額控除方式だと35万円まで引けますけれども、所得控除でいきますと、どんなお金持ちでも、33万3,000円ですから、1年間で比較すると、税額控除方式のほうが金額が引けます。しかし、これが仮にどんどんふくらめば、当然、ここは逆転が起きてくる。

それから、もっと根本的な問題は、期間が全然違う。いまの取得税制は、現行6年間の適用ですが、ローン利子所得控除の要求は、20年、30年と、いわゆる全期間なものですから、その期間の間どういうふうに所得が変動するか、どういうふうに金利が変動するか、これをすべて織り込んで比較することは実際には困難です。私ども、仮定を置けばできないことはありませんが、かえって誤解を与えるということで、今回はあえてしておりませんが、単純に例えば9万円でも、30年やれば270万円と、そういう数字は出ると思います。

それで、先ほど言いましたように、政策目的をまずはっきりさせなければいけないということで、中低所得者の持家を促進するのか、それとも、つくる人は関係ない。住宅投資そのものに着目して、優良な住宅投資を促進していくと。もっと極端に言えば、優良だろうが、悪かろうが、とにかく景気対策だから、何でも家が建てばいいのだといって割り切ってやる。それによって、仕組み方とか考えが違いますから、まず、ここのところの政策目的をはっきりさせる必要があろうかと思います。その上で、論点にも書きましたが、今度は、どういうその政策目的に合う税制の手段があるのか、という議論に入ってくるというわけでございます。

それで、ちょっと恐縮ですが、8ページ、政策目的の関係で、もともと政策税制に対しては、従来から税調はいろいろな面で疑問を呈してこられたわけですが、今回、2つの比較をしてみました。

まず、8ページの第1の表でございます。人に着目するという見地から議論をせずに、物に着目する。人に着目すれば、どういう場合であっても、お金持ちにたくさん支援をするという発想は税の世界からは出てこない。つまり、支援を必要とする方は可処分所得の少ない方でありますから、所得の少ない方にどうしてもいくわけで、むしろ今度は物に着目して、住宅という切り口で、いい住宅を建てたらそれなりのフェイバーがいくという議論はあると思います。

ただ、この場合、見ていただくとわかりますように、仮に住宅ローン利子所得控除を導入した場合ですが、上の段は、全く同じ規模の住宅をつくった場合。これは先ほども説明しましたが、3千万円のローンを借りて180m2の家を建てる。 180m2が評価の対象になるかどうかはまた別にして、もっと大きな家を対象にしても構いませんけれども、とにかく、この厳しい時代にちゃんとした住宅を建てることを評価して、税制上の恩典を与えるとしても、同じ家をつくって、その住宅としての評価は、経済効果とか投資効果は同じはずなのに、高額の所得者のほうがたくさんまかるというのは、住宅に着目した税制としてもいかがなものか。住宅に完全に着目するなら、住宅の大きさとか、質とか、一定の物差しで、その評価に応じて比例的な恩典がいくべきではないかという気がするわけでございます。

下の表は、逆におかしなことになるのは、700万円の方が無理をして3千万円の借金をして 180m2の家をつくっても、9万円しかまからない。一方、2千万円の給与収入がある方、この方は限界税率が30%あるわけですから、ローンは2千万万円で、小さなウサギ小屋をつくる---ウサギ小屋というのはちょっと大げさかもしれませんが、この時期にあえて小さな家をつくっても、税の恩典は、無理をして3千万円を借りてつくられた方よりも、小さくなる。

社会的にいま求められているのは、良質な住宅投資とか、経済波及効果が大きい住宅だということになれば、これは、住宅という観点から見てもおかしいのではないかという疑問もわいてくるわけでございます。

もう一つの論点として、効果の評価という問題も実は非常に難しい問題です。こういうことをやればこれだけのことがある、という評価はなかなか難しい。9ページ、10ページに資料をつけましたが、住宅の建設というのは一生に一度の買物なものですから、税制とか、家庭のいろんな事情とかもありますので、なかなか難しいわけですが、いろんな要因でフラクチュエートしています。

特に、いま、私どもが問題だと思っているのは、10ページにありますけれども、空家率が相当高くなっています。構造的に需給ギャップというのも大きくなっているわけですから、もともと百何十万戸という目標を設定しても、なかなかそこに達成しないということも言えると思います。ですから、税制面でどこまでできるのか。法のもとの平等ということから、同じ所得があれば同じ税制をするのが原則なのに、あえて住宅を取得する人にフェイバーを与える以上は、よほどの公共的・福祉的な観点からの効果がないと納得は得られないわけです。その辺のところがどこまで検証できるかという問題も、クリアしなければいけないと思っております。

それから、税制の適正・公平確保、これは言うまでもありませんが、11ページ以降、繰り返しになりますが、住宅取得促進税制自体、租税特別措置の中の最大の項目でございます。年間で6,190億円の減税。所得税も、減税に減税を重ねて、かなり少なくなってきているわけですけれども、その割合も高まっておりますので、そういう意味では、租税特別措置という見地からおのずと限界があるのではないかという考えもあると思います。

それから、12ページでございますが、適正・公平の確保という観点から、我々がこの問題に疑問を持っておりますのは、仮に自己資金のある方が、あえて住宅ローン利子所得控除制度を使いましてローンを組む。ローンを組めば、支払い利子が所得控除されて、37%、税が軽減される。一方、同額の自己資金は運用を行って、その運用の成果は、仮に投資信託等で支払い利子と同水準が得られれば、利子所得の分離課税税率は20%なので、最高税率の37%と20%の差はいわゆる節税メリットとして残るわけです。

アメリカにこういう制度はあるわけですけれども、アメリカの場合は、全部総合課税なので、利子もローンも同じ税率がかかりますから、あえてこういう問題は生じないのですが、日本特有の問題として、課税の適正という面では、やや疑問もあると。

我々が最も苦慮しておりますのは、13ページでございます。住宅の建設を望む関係者の方々にとってみれば、新規の住宅着工が進むことが何よりであり、そのための税制が強く望まれるわけですが、税というのはあらゆる分野に及ぶものであります。これまで、現時点も含めて、さまざまな所得控除の要望がございます。

ここに例を挙げさせていただきましたが、新築によるものよりもむしろ、過去のバブル期に高い金利で借りたローンで苦しんでいるものを引いてくれというのも既に出ております。それから、私学教育費、保育料、自動車購入のローン利子、パソコン購入。住宅関連で言えば、家賃控除というのは、持家を持たない方にとってみれば、それにかわる家賃がなぜ所得控除できないのか。つまり、税制の問題として、特定のものだけをピックアップして優劣をつけて仕切れるのかどうか。この辺は、住宅を離れて、まさに所得税のあり方そのものの問題。こうやって特定の経費を引いていくということは、最終的には所得税は貯蓄にだけ限るとか、そういう税制に変貌していくわけですから、この辺のところはぜひともご議論を深めていただきたいと思っております。

最後に、諸外国の動向だけ説明させていただきます。このローン利子所得控除の問題につきましては、アメリカにこの例があるということがかなり大きな要因になっております。ただ、事実関係だけはっきりさせていただきたいのは、アメリカは1913年に連邦所得税法を入れましたが、そのときには、住宅に限らず、あらゆるローンの利子をすべて所得控除すると。つまり、経費のような概念ですべて所得控除をしておりました。

しかし、ローンの利子も所得処分の一環で、買物と同じだと。所得税の理論面からそういう指摘がありまして、1986年に、これはレーガン税制改革の一環なのですが、ローン利子所得控除はおかしいということで廃止しようとしました。全部廃止したかったのですが、住宅関係ローンだけは、アメリカも住宅に対する根強い感覚とか、政治的にいろいろあって、これが残った。したがいまして、消極的な意味でいま残っているので、アメリカが住宅税制としてこういう制度を入れたのではない。あくまでも大きなローン利子所得控除が住宅に限定されて現在に至っている、というふうに事実関係としては言えると思います。

イギリス、フランス、ドイツも、ローン利子所得控除制度とか、住宅取得費の所得控除、いわゆる所得控除制度を入れております。そういう事実はございます。しかし、先ほどいろいろ申し上げましたように、住宅取得促進税制としては疑問がある。所得の多寡によって恩典が変わるのは、住宅というものに着目した場合おかしいのではないかという議論がございまして、税額控除制度に変更になっております。その後、それを廃止したところもありますけれども、いずれにしても、諸外国でのグローバル・スタンダードから見ても、この段階で新たに積極的な形で、こういう住宅ローン利子所得控除制度を評価する流れはいまのところ見出せないという状況でございます。

長くなりました。以上で住宅関係を終わりまして、そのあと、土地税制に入りますけれども、土地の関係は、個人、法人の所得課税関係は、10年度税制改正でバブル以前の状態に完全に戻しております。バブル期に譲渡益課税を強化するという動きが強まりまして、いろいろな形で強化させていただきました。

16ページを見ていただきますと、所得税につきまして、優良、一般、平成元年から推移を出させていただきましたが、平成3年に大幅に強化しております。7年、8年と、少しずつ緩和して、10年度で平成元年と同じ、もしくは、それ以上に緩和した形になっているということでございます。

17ページは、譲渡益は特別控除等の適用がきわめて多額にのぼっておりまして、課税ベースから見ると、譲渡益12兆9千億円のうち、一般的な課税が行われるのは28%の3.6兆円しかないという、土地についての譲渡益課税は総合的には軽減された形になっております。

18ページの法人につきましても、従来、追加的な課税を求めておりました。しかし、それも一切廃止しまして、適用停止等もございまして、いまは普通の法人税の適用一本でございますので、土地について何か特別な取扱いというものはございません。

19ページ、買換え特例制度もバブル以前の状況に戻して、特に右側の列の9番でございますが、流動化のための買換えということで、条件を緩和して80%の買換えを認めておりまして、これも現時点ではきわめて緩やかな形となっております。

以上でございます。

真砂税制第三課長

私からは、20ページ以降でございますが、住宅・土地関係のその他の税目について、ごく簡単に説明させていただきます。

20ページは地価税でございます。これは、ご案内のとおり、ことしから「当分の間課税停止」ということになっているものでございます。

21ページでございますが、登録免許税でございます。これは、土地の所有権等の移転登記等にかかる税金でございます。下のほうを見ていただきますと、課税実績ということで、税収額、平成9年度で8,200億円ということで、そのうち土地分が 6,800億円、さらに、不動産の価額、これを評価基準にしているものが5,000億円ございます。この 5,000億円は、平成8年度から見ますと地価が下がっているものですから、2割程度減っているという状況にございます。

22ページ、登録免許税の関係で、土地・住宅に関しては既に軽減措置を講じております。まず、土地にかかる軽減措置でございますが、登録免許税額は固定資産税評価額---これはそもそもが地価の7割でございますが、それに課税標準の特例としまして、6割を減額するという形になっております。それに税率を5%掛けるということでございますので、1.4%というのが実質的な負担になっております。

それから、下の表でございますが、住宅にかかる登録免許税の軽減措置は、保存登記あるいは移転登記の税率について、軽減税率を適用しているということでございます。

26ページ、次の税目に移らせていただきます。次は、印紙税でございます。印紙税につきましても、住宅あるいは土地に関して特例措置を講じております。不動産の譲渡に関する契約書、あるいは請負に関する契約書につきましては、最高25%の軽減率を講じておりまして、例えば1億円の不動産の譲渡に関する契約書ですと、現在4万5,000円が印紙税額ということになっております。

次が27ページでございますが、17日の総会で相続税に関するご議論もあったものですから、相続税に関して簡単に説明させていただきます。相続税の課税状況でございます。

平成8年のところを見ていただきますと、死亡者数というところで、毎年約90万人の方が亡くなられるわけですが、そのうち相続税の課税になるのは5万人弱ということでございまして、比率で求めますと5.4%。100人の方が亡くなられると、5人の方に関して相続税が発生するという形になっております。その数字を右のほうに2つ飛んでいただきまして、被相続人1人当たりの金額を見ていただきますと、2億9千万円、約3億円の資産がございます。それで一つ飛んでいただいて、1人当たりの相続税額が3,900万円ということで、 4,000万円でございます。負担額が13.8%というのが平成8年度の数字でございます。

次が、課税価格階級区分でございます。件数で見ていただくと、累積割合でございますが、5億円までで87.9%。約9割の方は5億円までということでございます。一番高いのが20億円超というところがございまして、平成8年、502件というのがございます。平均の課税価格で見ると、32億円という形になっております。

ただし、これすべて70%の最高税率がかかるかといいますと、分けたあとの価格なものですから、右のほうに被相続人、法定相続人の数を書いております。502人のうち、法定相続人が1人という方はたしかに70%の最高税率がかかりますが、2人以上になりますと、分割するものですから、必ずしもすべて70%の最高税率がかかるわけではございません。

次の29ページでございますが、相続税の主な改正ということで、過去3回、相続税につきましては大幅な改正をしまして、相当の減税をいたしております。

31ページをごらんいただきたいと思います。31ページは、相続税の負担の推移を、商業地で一つのモデル計算をしたものでございます。右側に四角で囲んでおりますが、千代田区外神田ということで、事業用の土地が200m2、その他の財産として約1億5千万円という財産をお持ちの方が、配偶者と子ども3人で亡くなられたというモデル計算でございます。

昭和62年に亡くなられた場合から以降を、相続税額を折れ線グラフで表示しております。ピークが平成3年の1億9千万円。カッコの中が、路線価の価格であります。そのときの路線価価格が932万円という形になっております。路線価のピークは平成4年の972万円でございますが、3回の減税があったものですから、相続税額そのものは減っております。それが、平成10年では路線価の価格が210万円、納税額が 1,344万円ということで、ピークの1億9,000万円から相当程度落ちてきている。

これは2つ原因がございまして、1つは、地価の下落というのがございます。もう1つは、相続税に関する3回の改正という2つの要因で、相続税の負担は相当軽減してきている。

ちなみに、3回の改正を減税だけの効果を見ますと、例えば、昭和62年の路線価が246万円となっております。昭和62年の路線価に似たところは、平成8年、266万円というのがございます。これは、もし改正がなかりせば、むしろ平成8年のほうが多少相続税額が多いということになるわけですけれども、改正の結果、ここまで負担が減ってきているというのが見てとれるかと思います。

最後になりますけれども、35ページでございますが、住宅税制との絡みで一つ議論になっておりますのが、住宅取得資金の贈与に対する特例措置でございます。これは仕組みとしては、36ページをお開きいただきたいと思います。住宅取得資金に限って贈与税の特例措置を講じております。住宅資金が1千万円までの場合、左側が本則でございますけれども、1千万円を贈与いたしますと、基礎控除が60万円ございます。その残りの940万円が課税対象になりまして、計算いたしますと、贈与税額が283万円になります。この特例では、1千万円までに限りこれを5年間に分ける。いわゆる5分5乗いたしまして、そこからそれぞれ基礎控除を60万円ずつ引く。合計300万円を引けるわけでございます。その結果、右のほうの棒グラフでございますが、贈与税額は70万円ということで、大幅に贈与税を減額している、こういう制度が住宅に関してございます。これも住宅税制の中で一つ議論になっている点でございます。

私のほうからは以上でございます。

加藤会長

ありがとうございました。

それでは、地方税につきまして、武田固定資産税課長からお願いいたします。

武田固定資産税課長

それでは、「住宅・土地税制関係資料(地方税)」というものをごらんいただきたいと思います。目次をあけていただきまして、次の1ページからご説明を申し上げます。

平成10年度におきまして、地方税の土地・住宅関係の見直しの概要でございますが、まず、左上の固定資産税につきましては、新築住宅等にかかる減額措置の要件緩和等を行ったところでございます。さらに、適用期限の延長もあわせて行っております。

特別土地保有税につきましては、市街化区域内の保有期間10年を超える土地を対象から除外する、あるいは、三大都市圏の免税点の引下げ措置の廃止を行う、あるいは、地価下落に対応した簡易な修正制度を創設する。また、恒久的な建物に使う予定の土地についての徴収猶予制度等を創設する。このような所要の見直しを行ったところでございます。

次に不動産取得税につきましては、住宅の取得及び住宅用地の取得についての税率の特例等がございます。これをそれぞれ3年間延長いたしました。また、住宅及び住宅用土地の取得についての課税標準等の特例がございますが、これの対象となる住宅の床面積要件の充実等を図ったところでございます。

右のほうは、土地譲渡益課税の関係でございます。個人の長期所有土地等につきましては、6千万円以下については住民税6%、6千万円を超える譲渡益については7.5%とするなど、所要の見直しを行ったところでございます。

次に、2ページをごらんいただきたいと思います。固定資産税等の概要をつけさせていただきますが、そこに書いてあるとおりでございます。特に課税標準をごらんいただきますと、これは価格ということでございます。この価格を評価いたしますが、土地及び家屋につきましては3年ごとに評価替えを行うということで、前回の基準年度が9年度でございました。次は12年度が評価替えに当たるわけでございます。

なお、このうち宅地につきましては、地価が下落をしているという状況がございますので、2年目、3年目、平成10年、平成11年という途中の年次でございましても、地価が下落している地域にありましては、下落修正ができる制度を導入いたしたところでございます。

また、価格がそのまま課税標準になるというのが原則でございますが、課税標準の特例として、そこにございますように、小規模住宅用地につきましては価格の6分の1、一般住宅用地については3分の1にするなどの特例も置いているところでございます。

次に、3ページをごらんいただきたいと思います。前回の基準年度でございます平成9年度におきまして、特に宅地についてどのような扱いをするかということで、大きな議論になったわけでございますが、このときは、負担水準の均衡化をより重視する見直しを行ったところでございます。

これにつきましては、その一つ前の基準年度であります平成6年度の評価替えの際に、土地の評価の基準を統一させていただきまして、地価公示の7割を目途に評価することにしたわけでございます。これに伴いまして、宅地の評価水準がかなり上昇したわけでございますが、一方で、課税標準は前年度の額を少しずつ引き上げる負担調整措置を講じてきたこととの関連から、負担水準(評価額に対する課税標準額の割合)を見ますと、負担水準の高い土地から低い土地までいろいろ存在するということで、この全国的な土地の負担水準を均衡化すべきであるということが、一番重点的な課題として取り組んだところでございます。

それらを念頭に置きまして、具体的には5ページをごらんいただきたいと思います。例えば商業地等の宅地の場合、図の左のほうの絵を見ていただきたいと思いますが、地価公示の7割というのが評価水準でございます。これを100とした場合に、評価額に対する前年度の課税標準額の割合、この負担水準がかなり高いところ、具体的には80%を超えているような土地につきましては、80%になるまで課税標準を引き下げましょう、ということにいたしております。

それから、そこそこ相当なレベルまで来ている、具体的には、負担水準が60~80%のところは据置きを行う。60%に満たない負担水準の低い土地につきましては、少しずつ引上げを図っていくということで、一番下にございますように、最大で15%、毎年上げていくという措置を講じたところでございます。

次の6ページをごらんいただきたいと思いますが、以上のような平成9年度における見直し、負担水準の均衡化措置を9年度、10年度、11年度と3カ年適用することになるわけでございます。10年度現在におけるばらつき度合いを都道府県別にごらんいただきたいということで、このグラフを見ていただきますと、全国の商業地等の場合の宅地の負担水準、平均では48.8%でございます。高いところでは、東京都57.3%、大阪府57.1%というところもございます。また、一番右でございますが、沖縄県23.7%、こういった地域もあるということで、全国的に見ましても、土地の負担水準、さらに均衡化を進める必要があるという現状でございます。

次に7ページでございますが、先ほど申し上げましたように、3年に1度というのが評価替えの基本的な考え方でございます。平成9年度におきましては、大都市圏を中心に地価下落が続いている、こういう状況がございましたので、据置き年度でございます10年度、あるいは11年度におきましても、地価が下落している場合には、価格の修正、下落修正を加えることができる、こういう仕組みを導入いたしました。

具体的には、都道府県地価調査、あるいは鑑定評価を活用いたしまして、一筆ごとに評価をするということではなくて、用途地区単位等の簡易な修正を行うという仕組みを導入いたしました。平成11年度におきましては、私どもの見込みでは、全市町村の55.5%に相当する1,793市町村で下落修正が実施される見込みでございます。11年度対10年度の宅地の評価額はマイナス3.4%ほどになるという見込みでございます。

こういった下落修正の効果は、価格が修正されることによりまして、11年度の固定資産税の計算の際に引下げになるものが生じるなどの変更が生じ得るということが一つ。

もう一つは、不動産取得税、あるいは登録免許税といった固定資産税評価額を用いて税負担の計算を行っている税がございます。こちらの税負担にも引下げの効果がある、こういうふうな影響があろうかと思います。

次の8ページでございますが、11年度において、いま申し上げました全国ベースでは3.4%程度の減になるという下落修正の状況を、都道府県別に示したものでございます。

9ページでございますが、上のほうは、昨年の新総合土地政策推進要綱。下のほうは、昨年12月にこの政府税制調査会における答申をいただいております。この中で、特に固定資産税の土地につきましては、12年度以降の税負担につきまして、評価替えの動向、負担水準の状況、市町村財政の状況を踏まえた上で、さらに負担の均衡化・適正化を進める措置を講ずることとされており、そのための検討を進める必要があるという考え方でございます。

また、納税者の理解と信頼を確保するために、納税者に対する情報の開示をさらに進める必要があるというご提言もいただいているわけでございますが、具体的に次の10ページをごらんいただきますと、その情報開示の一つのものとして、路線価等の公開ということでこれまで取り組んできております。具体的な取組状況、下のほうの2番でございますが、平成3年度から約4万地点を公開しました。6年度は37万地点。そして、前回の9年度評価替えにおきまして、全路線価等になります約393万地点を全面的に公開することができたわけでございます。

次に、11ページからは、不動産取得税につきましてその概要をご説明させていただきます。これは都道府県の税でございますが、沿革といたしましては、昭和15年に法定税化をされ、昭和29年に現行制度の形へ再整備をされたものでございます。課税標準は、固定資産税における評価額をベースに使っているということでございます。税率は、標準税率4%でございますが、住宅等につきましては特例がございます。住宅の税率は3%、住宅用地につきましても、税額の4分の1相当額を減額するということで同様の軽減を図っているところでございます。

さらに、住宅あるいはその用地につきましては特例がございまして、課税標準の特例といたしまして、新築住宅の場合には1,200万円を控除する、中古住宅につきましても、新築された時期によりまして最高1,200万円まで控除するという特例を置いてございます。住宅用地につきましても、税額の軽減措置ということで、150万円、あるいは床面積の2倍( 200m2限度)に相当する価格のいずれか大きい額に税率をかけた額を減額するということで、かなり大幅な軽減を図っているところでございます。

一番下でございますが、宅地等の特例ということで、棒グラフをつけてございます。これは、平成6年度以降、先ほど申し上げました固定資産税評価額が地価公示の7割水準ということで、かなり引き上がったことを受けまして、税負担の軽減を図る観点から、平成6年度以降、2分の1等の特例をかけて税負担を軽減いたしております。現在は平成9、10、11と3カ年、課税標準の特例として2分の1を乗ずるというものを置いているわけでございます。

さらに、平成9年の評価替えの際に、具体的な負担軽減としては、評価が約25%下がっているという影響も受けておりますし、10、11年につきましては、先ほど言いましたように、全国的に見ると約3.4%ずつ下がっている、こういう評価の減も実質的な税負担の軽減につながっているかと思います。

税収といたしましては、9年度決算見込みで約7,300億円でございます。

次の12ページで、住宅あるいは住宅用地の特例、具体的な例をお示しさせていただきました。東京都内の平均的な一戸建住宅の例でございますが、例えば住宅につきまして、床面積107m2、評価額 930万円というのを平均的な姿として想定いたしますと、この場合には、住宅につきましては1,200万円控除の適用が全部かかってまいりますので、実質的には非課税になる。土地の部分につきましては122m2、これは住宅床面積の2倍( 200m2)の範囲内でもございますので、これにつきましても全額非課税となる。こういうふうなことで、実質的な住宅につきましてはかなりの軽減策がとられているということでございます。

13ページに税収の推移をつけました。6年度が6,600億円程度、7年度で 7,800億円、8年度は 8,000億円までいったわけでございますが、9年度、7,300億円程度になる見込みでございます。10年度は「?」と書いてございますが、最終的にはどうなるか、年度終わっておりませんけれども、9月末の対前年同月の伸びを見ますと、マイナス13.8%ということでございますので、10年度におきましてもかなり落ち込むのではないか。平成6年度の税収水準よりも落ちるのではないかという感じがございます。

次に14ページでございますが、これは、都道府県の税収に占める不動産取得税の大きさを示したものでございます。シェアを見ていただきますと、各県とも5%程度の税収のウエートを持っている基幹的な税目の一つであるということでございます。

最後に、15ページでございます。特別土地保有税の概要につきまして簡潔にご説明申し上げます。この税は、市町村におきまして、具体的には「免税点」というところで2千m2から1万m2と市町村ごとに書いてございますが、こういう一定規模以上の大きな土地を対象にいたしまして、それの取得価格に対しまして一定の税率をかける、その場合には、固定資産税相当額、あるいは不動産取得税相当額は控除するという仕組みでございます。

有効利用の促進等を図るという観点から、住宅等につきましては、建てる場合には非課税、それから、恒久的な建物等の用に供する場合、納税義務の免除制度というものも設けてございます。また、これら有効利用される予定の土地につきましては、徴収猶予制度も設けたところでございます。

下のほうは「平成10年度改正」ということでございますが、冒頭申し上げましたように各種の見直しを行っております。土地の有効利用の促進という本来の役割を踏まえつつ、バブル対策として強化した部分につきましては、バブル以前に戻すといった所要の見直しを行ってきたところでございます。

以上でございます。

加藤会長

ありがとうございました。

それでは、ただいまの説明を参考にしながら、自由なご意見をいただきたいと思います。なお、この議論はこの次も続けてやっていきたいと思っております。きょうは、全部の方にご発言は無理かと思いますので、その点、ぜひ短い時間でなるべくご意見をおっしゃっていただきたいと思います。

お手元に11年度税制改正に関する各省庁の要望書、こういう白いものでございますが、置いてあります。なお、各種団体から税制調査会宛てに出されております要望に関しましては、入口のところで閲覧できるようになっております。今後の総会での審議の際も、これらの要望書をごらんいただきまして、ご意見をいただきたいというふうに思っております。

それでは、どなたからでもどうぞよろしく。

水野さん、どうぞ。

水野(勝)委員

先ほどの、今回の第3次補正予算を控えての税及び歳出等も含めた問題として申し述べたいと思います。国と地方の間で大変な折衝をしていただきまして、無事決着がついたこと、大変結構だと思います。本来であれば、大変な財政事情でございますから、これだけの大幅な減税を行える状況にはないのではないかと思いますけれども、ここは、総理の公約であるということで思い切った減税が行われたところでございます。

その結果といたしまして、今回の補正予算でも、12兆3千億円の国債が発行されておるということでございます。これは、現世代の私どもが減税の恩典を受け、これを後世代の人たちに処理をしていただくということで、まことに申し訳ない気もするわけですが、緊急な事態、不況であるということから、そこはやむを得ないのではないか、お許し願えるのではないかと思うのでございます。それだけに、12兆円の国債を発行するような財政状況でございますから、政策税制等々の面では、さらに減収を伴うような政策は、あの減税でもってすべての景気対策が行われたのだということで、割り切っていくのがいいのではないかと思うわけでございます。

先ほどのローン控除のご説明の表にもございました、例えば2,300万円の年収の方ですと、ローン控除でやりますと33万円ぐらいの減税になるということのようでございますけれども、これくらいの所得者の方であれば、今回の減税で恐らく30万円なりの所得税、住民税の減税が行われているのではないか。それだけの減税が既にあるわけでございますから、利子控除等でさらなる負担軽減を行う必要が本当にあるのであろうかと思うわけでございます。これだけの思い切った負担減、減税を行っていただいた10年度から11年度改正におきましては、ほかの措置、処分、そういったものはもうほどほどにされるべきではないか、こんなふうに思うわけでございます。

加藤会長

ほかにございませんか。

松本(和)委員

今回の減税についてでございますが、地方の立場もだいぶ入れていただいて、十分ではございませんが、本当にホッとしたような感じを持っております。いま、固定資産税に関して説明を受けたわけでございますが、この件について発言をしたいと思います。実は、私も今年の5月まで中固審の委員をしておりました。それと同時に、町村の立場で固定資産税について申し上げたいと思います。

固定資産税については、平成9年度より3カ年間、負担水準の均衡化を図るための措置が講じられたわけでございます。ある程度均衡化が進められたのではないかと思います。先ほどご説明がありましたように、依然としてまだ負担水準にばらつきが見られるのではないかと思います。次回の評価替えが平成12年度に行われるわけでございますが、これに当たって、12年度以降の税負担について、評価替えの動向や、負担水準の状況、さらに市町村財政の状況等を踏まえながら、負担の均衡化・適正化をやっていただきたいと思います。また税調において、答申にもありましたが、この点についてよろしくお願いする次第でございます。

また、固定資産税に対する納税者の関心が非常に高くなっております。我々の町でもそうでございますが、固定資産評価審査委員会に対する審査の申出、これが多くなっております。審査の決定までかなり時間を要するようでございますので、この点についても何らかの対応をする必要があるのではないかという気がいたします。

さらに、市町村においては、これまで路線価の公開等に努めてまいったところでございますが、固定資産税に関する情報の開示、さらに取組が必要であるのではないかと思います。

以上、意見を申し上げておきます。

加藤会長

ほかにいかがでございますか。

松浦委員

先ほどから住宅問題についていろいろとご説明があったわけですけれども、景気対策から、また、私ども中小都市という立場からは、中心市街地の空洞化が叫ばれて久しいわけです。各町でみんないろいろと苦労していますけれども、なかなかその空洞化が解消されない、どうやって活性化したらいいか、それにはやはり住宅だ、というようなお話もあるわけでございます。きょうは、私ども地方の立場から、個人住民税という立場から、住宅取得にかかわる特例制度の問題点だけを指摘させていただきたいと思います。

地方税といたしましては、固定資産税や不動産取得税では住宅関係の特例が講じられているわけでございまして、既に十分な配慮がなされていると思います。個人住民税は、地域社会の費用について住民がその能力に応じ広く負担を分任する性格の税でございますので、地方団体からいたしますと、消防、ごみ処理などの行政サービスを受けている住民が、所得を有するにもかかわらず、特例制度によって住民税の負担を免れることは適当ではないと思うわけでございます。

実際に住宅の建設が進めば、道路、学校、上下水道などの整備を進めなければならないわけで、こうした財政需要が増大するにもかかわらず、住民税において住宅関係の特例が設けられるならば、固定資産税との軽減措置がある上に住民税の大幅な減少を招くわけでございまして、その地方団体の財政面に大きな打撃を与えることになると思います。

したがいまして個人住民税におきましては、これまでも、住宅取得にかかわる特例措置は一貫して講じられてこなかったということでございまして、その点をぜひご留意いただきたいと思います。

加藤会長

佐野さん、どうぞ。

佐野特別委員

ただいまの住宅ローン減税についての税制1課長の説明を伺っていて感じたことですが、所得税制の基本的考え方はさておき、政策目的、妥当性、効果、そして公平性の確保、ここら辺が論点になると思うのですが、どうも政策目的と公平性というのは、いまのお話を伺っていても、矛盾するところがある。つまり、効果があれば公平性が損なわれる、効果がなければ公平性というのはそれほど傷つかない。この公平性という言葉の定義については、私なりの考えを後ほど申しますが、一体どっちに重点を置いた話なのか、そこら辺がわかりませんでした。

それから、この資料ですが、委員からの要求に応じて資料をそろえたというお話ですが、これでははなはだ不十分で、私に限ってですが、これでは判断できない。つまり政策の効果という面で、どうもこの資料は、効果がないことをひたすら強調したいような、やや一面的な印象が拭えません。もちろん、要求の出ている話なので、要求する側にはそれなりのデータなり経験なり根拠なりがおありだと思います。こういう大事な問題、しかも、小渕首相が総裁選で国民に公約した問題ですから、私どもとしても十分議論しなければいけないテーマだと思うわけですが、それだけに、どういう効果があるのか。例えば政府部内ですと建設省が要求されているようですが、建設省の方の話も伺ってみたいなという気がいたします。

それから資料のことですが、先ほど加藤1課長もちらっと触れられたわけですが、この効果については、ある、なしの問題というのは前提の置き方によってかなり違ってくる。とりわけローンの期間、それから、制度の設計を時限的なものにするのか、かなり長期なものにするのか、あるいは完済までにするのか、前提によってかなり違ってくる。たった一つの前提で判断してくれと言われても、それは不可能なことであります。ひとつ資料のほうをもう少し再検討されて、追加的な、「こういう効果も考えられる」というような材料も提供していただきたいと思います。

それから、政策目的ですが、景気の刺激ということからそもそも始まった話だと思います。とりわけ、民間需要を政策手段によって喚起するということを考えると、住宅なんかが真っ先に浮かぶということから始まった議論だと思います。

先ほども、減税というようなことは、今回の最高税率の引下げと恒久的減税でもういいのではないかというご意見もございました。今度の減税の決着の内容を見ますと、たしかに2千万円、3千万円の方々には恩恵が及ぶ。これはいいことだと思うわけですが、実際1千万円とか、1,500万円とか、この方々にどれだけの恩が及ぶのか。今年の特別減税、13万7,500円とあまり大きく変わらないような条件が定されるのではないか、そんな気がいたします。

つまり、やや高い所得層の人たちに対して、今年以上の所得税の減税効果が及ぶのかどうか。今回の減税内容からはやや定かではない。私はあまり期待しておりません。ちょうどその所得層でございますが。そういうことからすれば、これで景気対策をやる必要はもうないという判断にはなかなか立てないわけであります。そういう意味から言いましても、住宅ローンの利子控除というものを考える価値は十分にある。私は、やるべきだと思っております。

もう一つ、公平性の確保ということで、この資料は随分いろんな事例を提示されておりますが、この公平性というのは、そろそろ私どもは考え直す時期ではないか。何が公平かというのを、従来の考え方でやっていっていいのかどうか。例えば資料の5ページ、年収700万円の給与所得者。年収700万円の人が3,000万円のローンを借りるのかどうか、ここら辺の現実的な問題はありますが、とりあえずモデルとしてここにお示しになった700万円というものを使いますと、これは9万円。それから、年収3千万円の人は33万円だと。6ページにその比較表が書かれているわけです。

たしかに9万円と33万円を比べますと、高所得層優遇だな、儲けさせているなという印象をお持ちになる方もいらっしゃるかもしれませんけれども、これを減税の額で見るだけでいいのか、減税の率というもので見る必要はないのかどうか。つまり、所得税10%の方々は9万円。しかし、この方々は一体幾ら所得税をお払いなのか。年収500万円では所得税は10万円ぐらいしかお払いになっていない。所得税がほとんどゼロになる。一方、33万3,000円。非常に優遇されると言われている方々は、この20倍近く所得税をお払いではないのか。どっちが公平なんだというその公平のとらえ方、ここも議論の対象にすべきではないかと私は思います。

加藤会長

水野忠恒さん。

水野(忠)委員

ちょうどいま佐野委員から、住宅ローン減税と公平の問題のお話があったのですが、結論から申しますと、我々、租税を議論するときのこの場合の公平は何かといいますと、いわゆる持家を持っている人と、家賃で住宅を借りている人、この人たちの間のバランスをどうとるかという問題になるわけです。そうしますと、住宅ローン減税、住宅を取得した人の借入利子の控除を認める形をとりますと、今度必然的に、家賃を払っている人の立場をどうするかということで、いわゆる家賃に対する減税といいますか、家賃に対するローン減税のような形で話をもっていかざるを得ないことになってくるわけです。これは、話がだんだん広がってくるわけです。資料の何ページかにありました利子控除の問題ですけれども、住宅に特定すれば話はできますけれども、これが家賃に広がっていくと、今度は生活全般の問題になってまいります。こういう形で、利子控除というのはどんどん広がっていく可能性を持っているわけです。

先ほど、アメリカの例がありましたけれども、アメリカの税制の一つの流れは何であったかというと、どうやってこの利子控除というものを全般的に制限していくかということであったわけです。現実に借入れの利子を使うと、これが所得控除できるということになりますと、タックス・アービトラージと呼んでおりますけれども、いろんな操作が行われる。借入れを使った形によれば何でも生活の手段として税制上の恩典が受けられるということで、租税の研究者から見ると、非常に困った問題を引き起こすことは目に見えているわけです。

これは、住宅ローン減税の一つの技術的な論点でありますけれども、基本に立ち返ってみますと、投資減税をする場合、一般的な減税を行う、税率を下げるという形と、個別的な減税の方式がありますが、我が国はことし、所得課税、法人課税ともに大幅な税率の引下げをやるわけです。にもかかわらず、あえて個別的な減税、いわゆる中立的な問題、公平の問題、これを度外視した形でさらにそこまで踏み込む必要があるかというと、私は、今年度このような一般的な税率の引下げが行われた状況で、そういうことはやるべきではないと考えているわけです。

それからもう一つは、政策税制のあり方ですけれども、こちらの税制調査会は一貫して租税特別措置というものは減らす方向で検討してきている。さらに、租税特別措置を採用する場合にも、どういう基準で考えるべきかというようなことは繰り返し答申に出してきているわけです。政策目的に合理性があるかとか、手段に相当性があるかといった問題ですが、それを考えてみますと、この住宅ローン減税に当てはめて議論する必要が出てくるわけです。それ以前の、減税のあり方の問題、この利子控除が先行き抱える問題というものを考えてみますと、租税法の研究者としては、誰が考え出したのかよくわからないのですけれども、よその国の例を見ましても、所得税の税制に風穴をあけるといいますか、税制の根幹を揺るがしかねない制度でありますので、何が何でもこういうものは入れてもらっては困ると考えております。

加藤会長

はい、どうぞ、松尾さん。

松尾委員

私は今回の緊急経済対策を見ますと、財政の節度が失われている、こういう事実が明らかであると思うのです。大蔵省、自治省の方、大変ご苦労願ったのですけれども、これからは財政の節度をいかにして回復するか、これが非常に大きな問題になってくると思うわけです。来年度税制改正について考えてみますと、財政の危機に輪をかけるような政策減税は、この際、基本的にはご遠慮願うことが必要だろうと思うのです。

そこで、住宅ローン利子所得控除制度ですけれども、景気対策のために高額所得者により高額な恩典を与えて、いい住宅を建ててもらおうということなのでしょうが、私は、現行制度を拡充すればいい住宅を建てられるし、景気対策にもなると思うのです。ですから、いい住宅を建てることと住宅ローン減税とは直結しないと思います。

それと、税負担の公平の原則から見て、住宅ローン利子控除制度が果たして国民の理解を得られるのかどうかという観点は、やはり考えてみなければいけないと思うわけです。どう考えても、一たん認めたら時限的というわけにいかないと思うのです。利払いがある限り、20年でも30年でも控除を受けられるというのは、どう考えても不公平ですよ。いくら何でも不公平ですね。こんなのを認めたら、税制全体に対する国民の信頼を失わせることになります。ですから結論として、現行の住宅取得促進税制の拡充で対処するのが最良の方法であると思います。

それから、流通税のことですが、経済戦略会議では不動産取引促進の観点から、不動産取得税、登録免許税、印紙税を今後2年間凍結するという提案なのですが、この際、何でもかんでもやっていいんだということにはならないと私は思うのです。流通税、これは国税だけで2兆円の税収ですか。いま、これを全部凍結した場合、2兆円の財源を一体どこから持ってくるのだということは誰でも疑問に思うと思うのです。流通税は非常に簡素な仕組みで、さっきの説明を伺いますと、経済的負担も軽いと。こういう流通税のようなものはむしろ大事にすべきであると思うのです。

印紙税の場合は、不動産譲渡契約書だけではなくて、ほかにもいろいろありますね。いろんな経済取引でつくられる文書に及んでいるわけで、特定の文書の課税だけをゼロにすると、課税の公平を著しく損なうことになると思います。登録免許税もこれだけで1兆円ぐらいの税収があるんですね。これも凍結したところで、そんなに意味があるのかと思います。

地価が下落しても不動産の流動化が進まない、そういう現状ですから、登録免許税を凍結して、1.4%程度の実質税負担を軽減して、一体、土地の流動化が促進できるのだろうか、これは非常に疑問に思わざるを得ないのです。むしろ不動産流動化対策としては、銀行の貸し渋りを是正するのが先決であると私は思います。

それともう一点ですが、所得課税の最高税率引下げに伴って、相続税の最高税率を引き下げてはどうかという考え方がこれまで出ているのですけれども、私は結論として、これは現行水準を維持するのがいいというふうに思います。さっきの説明でもわかりますように、これまで相当緩和されてきていますから、相続税の場合は税の性格上、景気対策として減税する、そういう筋合いのものではないと思います。最高税率を下げますと、まさしく大資産家だけを優遇する結果に終わりますので、所得課税の最高税率引下げに伴って相続税の最高税率を下げる必然性は、私は全くないというふうに思います。相続税の負担水準の問題は、これからの所得課税の抜本的改革の中で検討していくのが筋であると思います。

加藤会長

塙さん、どうぞ。

塙委員

今回の所得税、法人税の税率の改正については、私は、冒頭加藤会長がおっしゃられたのと全く同感でございます。このような大変な時期によく決められたというふうに思っております。

ただ、一つお願いしたいのは、その効果をあらしめるためにも、やはりタイミングが大事だろうと。先ほどの話によりますと、99年度の決算のあとに効果が出るということになろうかと思うわけです。税制ですから、景気対策のためだけにやるということではないわけですけれども、せっかくやるのですから、いま一番困っている景気対策に活用できるようにと。前回、事務手続きでは非常に困難だというお話を伺いましたけれども、そこを何とか研究していただいて、できることならば、当年度、来年の1月から3月までの年度に何とか適用できるようにしていただきたいものだというふうにご要望申し上げたいと思います。

もう一つ、本日は住宅のお話が出ております。前回も申し上げたのですが、住宅と自動車はいつもセットで考えていただきたいと思っているわけであります。自動車につきましては、先回は買換え促進税制の減免、これは取得税の減免ということでご提案したわけですけれども、これを税と考えないで、例えば補助金のような形で出して、古い車の買換えを促進する、そういうふうにも考えていただいたらいかがなものかと思っております。

ヨーロッパの例もそうでありますし、これは税の問題ではなくて、補助金として出す。例えば、古い車、10年以上の車に政府が10万円出す。そうすると、売買が成立した途端に、倍になって税収として返ってくるわけであります。むしろ国の経済的な負担はない、プラスになるという方向です。日本の場合ですと、例えば200万円の車を1台買いますと、34万円、私どもは税金等を納めるわけでございます。したがいまして、10万円出しても34万円入ってくるので、差額24万円は政府の収入になる。そういうような考え方もできると思いますので、それで経済波及効果をもたらして景気が浮揚になれば、一石二鳥ではないか。そう思って、あえてもう一度ご検討をお願いしたいと提案する次第です。

加藤会長

吉田さん、どうぞ。

吉田特別委員

きょういただいた資料の「総25-1」、恒久的な減税の国と地方の負担割合の基本的考え方ということで、所得課税の4兆円の国と地方の負担割合が報道されておりますが、この4兆円というものが前提になりまして、そして、これから定率減税がどういうふうに行われていくのか。これはきょうは説明がございません。恐らく、中堅所得者に対する配慮は定率減税の中で十分にお考えになるのだろうと思うのですが、中堅所得層、これはどの辺を言うのか。サラリーマンの年収からいきますと、年収700万円以下のところが8割5分か9割近くあるのではないか。この方々が、定率減税のやり方によって恩恵を浴していくのかどうなのか。恐らく恒久減税という言葉の響きは、大体の国民は素直に受けとめておりますから、私もなにがしかなりとも減税の恩恵に浴するんだ、というふうに理解している。

ところが、きのう、きょうあたりの新聞報道を見ておりましても、きょうのご説明の中にもないわけです。私は、申し上げるには躊躇する面もあるのですけれども、どうも中堅所得層、700~ 800万円以下のところの減税効果というのはほとんど受けられないような報道になっている。この辺を、枠を越えてでも考えていくべきではないか、これが第1点でございます。

それから、法人課税の中で、これも率を明示されているだけでありますから、中身はよくわからないわけですが、ただし、法人事業税を下げられることについてはここに率が出ている。かねがね申し上げてまいりましたので、またか、またかと思われますので、きょうは申し上げませんけれども、事業税の中には個人事業税もあるんですよ、と。このことについて、一体、今度の税制改正の中ではご配慮があるのかどうか。昨日、逆転しておりますよという事実も申し上げた。その辺もきょうのご説明の中にはございません。私は次回と次の2回は出られませんので、したがって申し上げておきたいことは、そのような配慮をぜひひとつお願いをしておきたいということでございます。

以上でございます。

加藤会長

和田さん。

和田委員

きょう示されました減税の大枠を拝見しながら、いまも吉田委員からお話がありましたけれども、最高税率が下がると。これが、3千万円超のところが50%と。先日の資料でしたか、実効税率が50%という数字は出ているけれども、30数%で、これが乖離しているではないかというお話もありましたけれども、そこのところだけがはっきりとわかっているところで、700~ 800万円のところが増税になるのではないかなというようなことを懸念しながら、景気の面から考えても、こういうところの消費性向がむしろ高いのではないかと思いますので、増税になることについてはとても納得が得られないということをまず申し上げておきたいと思います。

それと、きょうは消費税のことはそれほど出ておりませんけれども、前々回申し上げましたように、増税、消費税の税率アップという方向を決めました。あれは、たしか平成6年の税調の答申で、消費税はたしかに逆進性があるけれども、所得税が累進であり、社会保障と全部総合的に見ていかなければいけないのだということが明記されておりますが、これだけ累進が緩和されてきている。それから社会保障が、見直しというか、どちらかというと後退というようなところで、消費税の逆進性というものをどういうふうに考えていくのかということも申し上げておきたいと思います。

そして、いまの減税、いろいろな政策減税も含めまして、後世代への負担ということをよくよく肝に銘じておかなければいけないなということを考えながら、住宅ローンの利子の所得控除を拝見しておりますと、やはりここは、いまやることではないのではないか。大方の納税者にとって納得が得られる制度ではないのではないか。見ておりますと、高額所得者にセカンド・ハウスでも建てて、それが景気回復の一つの起爆剤になるのではないかということのようですけれども、私たちの周りで、高齢者が自分の住宅をリフォームしたいというときに、それぞれ地域でいろいろな手当てを少しずつしている制度はありますけれども、これからは高齢者が多くて、新しく建てることはとっても無理だけれども、いま住んでいるところを何とかリフォームしたいというようなところへは何にも手当てがないのか、というような話も出ております。

それと、そもそも将来の望ましい住宅政策の全体の像がないままに、こういうものを取り入れることの是非もやはり考えていかなければならないことで、先ほどからお話が出ておりますように、それなら賃貸、家賃に対してどうなんだ、それから、バブルのころに購入した人たち---私たちの周りで若い人に随分おりますけれども、そういう人たちからもいろんな声が出ております。その辺を考えますと、住宅ローンの利子の所得控除制度というのはちょっと疑問があります。住宅取得促進税制、これをどのように拡充していけばいいのかというのは、また議論していくことが必要だと思いますけれども、いまのところ、そのように感じております。

加藤会長

大田さん、どうぞ。

大田委員

住宅ローンの利子控除なのですが、私も反対です。住宅ローンの利子は家を取得するときの経費なわけですけれども、帰属家賃に課税しないのに、経費だけ控除するというのは明らかに持家優遇で、既に住宅金融公庫の金利も2%に下げられたわけですし、これ以上持家を優遇するというのは私はやはり賛成できません。

景気対策だからといっても、一度できた税制はなかなか廃止できませんし、もし住宅取得を刺激するのであれば、いまの住宅取得促進税制をあと2年間で廃止するということを言えばいいわけですね。私はいまの住宅取得促進税制も賛成できませんので。それであれば、政策目的と公平性という両立した政策だというふうに思います。住宅ローン利子控除というのは、景気対策に名を借りて持家層に一層の優遇を与えるということです。まして、いまの住宅取得促進税制との選択というのは大反対です。

もし景気対策で、小渕さんの公約で、住宅に何かするんだということであれば、私は、流通税、不動産取得税、登録免許税を大幅カットするということと、それから、定期借家権を早期に創設することが必要だと思います。流通税に関しては松尾さんと意見が反対で、資産に対する取引段階の課税はなるべく軽減する方向が望ましいと思っておりますので、この対策であれば、中・長期とも整合的ではないかなと思っています。

加藤会長

まだご議論があおりかと思いますけれども、時間がまいりましたので、この議論を、次回も次々回も続けていきたいと思っております。

きょう、いろいろなご意見が出ましたので、問題点がかなりはっきりしてきております。我々といたしましては、12月の15日、16日ごろに最終的な答申のとりまとめをしなければなりません。そのために、そろそろ論点をまとめまして集中的な審議をしたい、こういうふうに思っております。そういった意味で、12月1日ごろから論点をまとめるように事務局に指示してあります。皆様方がその論点をごらんになって、さらに集中的な議論をしていただきたいと思います。

さらに、先ほど佐野さんがお出しになりました資料の問題、これは、そこの点をはっきりさせませんと、やめたほうがいいのか、やったほうがいいのか、よくわかりませんので、そこのところは事務局のほうで、恐縮ですが、少しつくっていただきたいというふうに思います。

あとは、ご承知と思いますが、12月1日、12月4日、12月8日、12月11日というふうにございます。12月4日は午前中でございます。大変でございますけれども、時間をご都合していただければありがたいと思います。

では、きょうはどうもありがとうございました。

〔閉会〕

(注)

本議事録は毎回の総会後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、大蔵省主税局及び自治省税務局の文責において作成した資料です。

内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。