第24回総会 議事録

平成10年11月24日開催

加藤会長

それでは、時間がまいりましたので、始めさせていただきます。今週から週2回開催となりますので、よろしくお願いいたします。

主としてきょうの議題を申し上げますと、これまで社会保障とか年金の問題がございましたが、たまたま、いまも福祉目的税化とかいろいろな問題が出ております。そういうことがございます関係で、ここで厚生省からヒアリングをしたいと思います。

それから、最後に宿題になっております資料の提出がありますので、これも事務局から御報告をさせていただきます。

ということで、本日もまた御欠席の塙委員から意見書が提出されておりますので、後ほど御覧いただきたいと思います。

最初に、まず、新聞でいま税収動向とか減税の国・地方の関係、さらには自民党と自由党との間の政策協議について報道されておりますので、事務局から報告をしていただこうかと思います。何かありますか。

伏見総務課長

まず、自民党と自由党の合意の関係でございますが、11月の19日に自民党と自由党の間のいわゆる政策協議、これが合意に至りまして、その中で税制にも関連した言及がなされているわけでございます。ただ、この件につきましては、当方も報道以上のものを承知しておりませんし、政府サイドに具体的な何らかの指示が出ているというわけではございません。

御参考までに、すでに新聞等で御覧いただいているかと思いますが、この自由党と自民党の党首の間の合意書というものがございます。その中の項目としまして、自由党を通して政策については、「両党党主間で基本的方向で一致した。これに基づき、直ちに両党間で協議を開始する」という言い方になっております。

一方、そのとき同時に公表された形になろうかと思いますが、自由党の党首が示しました政策提言というものがございまして、これが第1項目が政治あるいは行政改革でございます。それから、第2項目が安全保障の関係、それから、第3項目といたしまして税制改革についての提案が出てございます。

ここの税制改革の部分のところをちょっと読み上げますと、「経済・社会の構造改革を進めるとともに、社会保障制度の基盤を強化するため、税制の抜本改革を断行する。その第一弾として、また直面する経済危機を克服するために、当面以下の措置を実施する」。1としまして、「消費税については、税率、福祉目的への限定(基礎年金、高齢者医療、介護等抜本的な見直しを行う)」。それから、第2項目としまして、「所得税、住民税等の減税規模は10兆円を目途とする大幅減税を実施する。そのうち法人関係税の実効税率は40%に引き下げる」となっております。

今後、この合意に基づきまして、両党間で税制を含めまして具体的にどのような場でどのような協議が行われるかということは、今後の処理にかかっているということかと思います。

それから、その次に税収の関係でございますが、お手許に「総24-5」『税収動向について』という資料が入っているかと思います。1ページ、2ページは、以前に御説明をいたしました9月末の税収実績の関係でございます。

3ページのところで少し図がございまして、それをちょっと御覧いただければと思います。平成10年度の一般会計税収につきましては、現在ありますのは、補正後予算57兆円という税収でございますが、これがどうも6兆円を上回る減収が生じそうだということを前に御説明申し上げました。現在、近く予定されております補正予算提出に向かいまして、最後の詰めを行っておりますが、この減収額が膨らむ傾向にございます。6兆円を上回ると申し上げましたが、どうも減収額としては6兆円台の後半、逆に申し上げますと51兆円を下回ってまいるわけですが、税収の見込みとしましては、50兆円台の前半にとどまるのではないかという感じになってきております。

それから、11年度、来年度の予算の歳入予算としましての税収でございますが、これは今後の経済見通し等諸要素を勘案して、この10年度の足下の税収の実績見込み、これをベースに作業をしていくことになるわけでございますけれども、右のところに図がございますように、現在行っておりますいわゆる特別減税は1年限りのものということですので、まず減税なしの状況を推計いたしまして、そこに今後行われる減税を改正減としまして立てていくという形になります。それでまいりますと、足下の10年度税収が50兆円台の前半でございますので、いわゆる恒久的な減税の幅が極めて大きなものになるということ等から、どうも11年度の税収予算額としましては、50兆円を下回る形にならざるを得ないのかなという感じになってきております。

次の4ページでございますが、昭和62年度以降の一般会計の税収の推移と、それから、上のほうの棒グラフはGDPの推移でございます。折れ線グラフになっておりますのが、GDPに対する一般会計税収の比率でございます。10年度の実績見込み、右から2つ目でございますけれども、いま申し上げましたように、50兆円台の前半のレベルになる。過去さかのぼりますと、昭和63年が50.8兆円でございますが、これよりも下にいくという感じになってまいりました。

また、この間のGDPの動きを御覧いただきますと、例えば63年当時ですと、GDPが約380兆円ということでございますが、最近、前年比でマイナスが続いているというようなことがありますが、GDPの規模としては500兆円になっているわけでございます。しかし、結果的に見ますと、税収はその63年と余り変わらない、むしろそれを下回るという形になります。

この要因としましては、所得税なり法人税で減税が行われていることによるものだろうと思います。平成2年、3年と税収が膨らんでおりますのは、ここら辺はバブルの影響だろうと思いますので、そこのところのレベルは全く別の要素だと思いますが、その結果としまして、一般会計税収のGDPに対する比率というものが、そこにございますように、どんどん最近下がってきて、このままいきますと、11年度は10%を切る形になろうかなと思われます。

それから、もう1点でございますが、国と地方の関係、いわゆる恒久的な減税についての国と地方の折衝状況でございます。総理の所信表明を受けて、具体的には国と地方の分担を確定しないといけない状況にございます。この問題につきましては、大臣のほうから、臨時国会では基本的な考え方を明らかにする必要があるということで、事務当局に対しまして、早急に詰めるようという指示をいただいているわけでございます。この税調の場でも、地方の財源対策を含めまして、鋭意詰めを行うようという御指示をいただきました。

その後両省間で連日折衝を重ねております。最近の状況でございますが、具体的には、金曜日の夜に両大臣でお会いいただきました。その後、連休中も4局間、具体的には、税制当局でございます主税局と税務局、それから、主計局と財政局という4局間、あるいは税務当局間、これもそれぞれ局長レベルなり審議官レベルなり、また財政当局間でも、この3連休中連日協議を行ってきたところでございます。ただ、まだ最終的な結論をこの場で御報告できる段階には至っておりません。内容については引き続きなお協議中でございますので、どういう折衝状況かということは具体的に申し上げられないことは御了解いただきたいと思いますが、個人所得課税についての最高税率の問題ですとか、あるいは法人課税の実効税率を40%程度とするという場合、国と地方の分担の問題等を含めまして、税体系面での議論とあわせまして、地方財政の財源対策を含め幅広く協議を現在続けているところでございます。いずれにしましても、臨時国会の前に結論が得られますように努力しているところでございます。

私のほうからは以上でございます。

加藤会長

ありがとうございました。

それでは、続いて自治省からお願いいたします。

桑原企画課長

それでは、地方税収の動向につきまして、お手許の資料「総24-6」をもとに御説明いたします。

この資料、最初の2枚は、11月6日の総会で御説明いたしましたことしの9月末現在の全地方団体の税収の状況でございます。今年度、地方財政計画に見込みました額を、3兆円を超えるぐらいの税収不足になるのではないかという御説明を前回させていただいております。

3ページ目は、それぞれの主な都道府県で、現在の税収の状況がどうなっているかというものを、この11月の9日までに公表した県について取りまとめたものでございます。ここにございますように、おおむね当初の税収予想予算額を1割程度下回るといったような状況が並んでおりまして、例えば埼玉県で7,007億円の税収予算額に対しまして、 600億円の減収をいまの時点で見込んでおる。東京都につきましても、4兆6,000億円の予算に対して 4,400億円、神奈川でも1兆 900億円に対して1,150億円、大阪でも1兆 3,519億円に対して 1,839億円といったようなことで、相当大きな税収の落込みになっております。これはすでに公表したものでございまして、これ以外の道府県におきましても、かなり厳しい状況が続いているようでございます。

こうした中で、さきの総会でも島田委員からちょっとお話がありましたように、いくつかの団体では、これ以上の税収の落込みになると、財政再建団体の適用を申請しなければならないといったような瀬戸際に立っているところもございます。

それから、一方で、そうした財政危機を回避するために、様々なリストラ策も講じております。国におきましては、今年度の公務員のベースアップ、すでに実施されておりますが、この中で例えば埼玉県、東京都、神奈川県、愛知県、大阪府、岡山県といったところでは、今年度の、地方では人事委員会の勧告でございますが、それを凍結したり、あるいは実施を見送ったりといったような検討を行っておるところでありまして、それ以外にも定数の削減でありますとか、事業の見直し等に取り組んでいるような状況でございます。

なお、国と地方の恒久的な減税についての取組みの状況は、先ほど大蔵省から御報告があったとおりでございまして、臨時国会開会までに基本的な考え方を取りまとめるべく現在作業をしているところでございます。

以上でございます。

加藤会長

ありがとうございました。ただいまの報告につきましての御質問は、後ほどいただきたいと思っております。

それでは、本日の議題でございますが、まず、厚生省からヒアリングを受けたいと思っております。最近の税負担と社会保険負担の問題とか、あるいは税制のあり方を考えたときに、どういうふうに福祉の問題を考えたらいいのか、また、ことしから来年にかけましては、年金財政の再計算が行われまして、年金制度改革が行われる予定の年となっておりますことも踏まえまして、厚生省から将来像などを伺いたいと思っております。

それでは、厚生省大臣官房の中村政策課長、年金局の矢野局長、それぞれよろしくお願いいたします。

中村政策課長(厚生省)

厚生省の政策課長の中村でございます。

前段に、いま会長からお話がありました社会保障の給付と負担の全体的なお話をさせていただきまして、後段、いま直面いたしております年金制度の改革問題について、年金局長のほうから御説明を申し上げたいと思います。

資料「総24-1」でございます。まず1ページ目でございますけれども、グラフが出ておりますが、これは社会保障にどれだけ給付しているかという給付費の額を部門別、折れ線グラフで書いてありますが、年金、医療、その他、これを年次推移、昭和45年、1970年から平成7年度、一番新しい数字がそこまででございますので、95年度までの推移を折れ線グラフに示したものでございます。

まず、箱で囲ってございますが、直近の社会保障給付費でございますが、合計で64.7兆円、対国民所得比17.05%になっております。昭和45年、1970年のころの水準は、金額にいたしまして3兆5,000億円、対国民所得比で 5.8%でございましたので、この25年間に名目額でも急増し、それから、対国民所得に占める割合も3倍程度になっているということで、高齢化の進展などによりまして、社会保障の給付費が年々増えているということがおわかりいただけるかと存じます。

部門別に申し上げますと、年金で全体の5割強でございますし、医療が4割弱、その他、メインは福祉でございますが、1割を若干超える程度、こういう状況になっております。

2枚目、2ページをお開きいただきたいと存じます。ただいま申し上げました社会保障の給付費、これの国民所得比につきまして、欧米との比較を試みたものでございます。棒グラフになっておりまして、その内訳が、白い部分が医療費、横線が年金、縞になっておりますのがその他でございますが、日本、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、スウェーデン、この国々と比較いたしております。

御覧いただきますように、日本の社会保障給付費はアメリカと並んで2割を切っているということで、ヨーロッパ諸国に比べますと、割合が低いという状況でございます。イギリスが27%、ドイツ、フランスが30%台、スウェーデンが50%を超えているという状況でございます。

特に気がつきますのは、年金制度の成熟化がヨーロッパ諸国では進んでいるということがございまして、日本と比べますと、年金の給付費の対国民所得に占める割合が高くなっているということ、それから、その他の分野でございますが、それがヨーロッパ諸国ではかなり大きいということで、国によって違いがございますが、失業給付とか家族手当、そういったものがヨーロッパ諸国では高い。そういった点がわが国と違うということでございます。しかしながら、少子・高齢化の進展で、将来予測をいたしますと、わが国のこの社会保障給付費の国民所得に占める割合は、今後増えていくと見込んでおります。

3ページをお開きいただきたいと存じます。次に、社会保障を賄うためにいろいろな負担があるわけでございますが、国民の負担といった意味で、租税負担と社会保障負担、これの推移を3ページの最初の表でまとめております。昭和45年から今年度の見込みまでの数値でございますが、税負担と社会保障負担、合わせたものが右端の欄にございますが、24.3%から38.3%と、いわゆる税負担と社会保障負担を合わせたものを国民負担率というふうに呼んでおりますが、国民負担率が38.3%まで増えてきております。真ん中の欄の社会保障負担は一貫して増えてきておりまして、この間、8.3ポイント増加を見ているということでございます。税負担のほうは年により変動がございますが、昭和45年と平成10年の間に5.6%程度の増加になっているというものでございます。

4ページに進ませていただきます。ただいま申し上げました租税負担と社会保障負担、国民負担率の国際比較を行ったものでございます。平成7年の数字で申し上げますと、御覧いただきますように、日本とアメリカが36%台でほぼ同じような負担になっているということでございますが、ヨーロッパ諸国はいずれも50%を超えている。こういう違いがございます。

それから、租税負担と社会保障負担のパターンを見ますと、イギリスやスウェーデンのように、税負担が中心の国、イギリスを御覧いただきますと、イギリスは平成2年の数字しかそろっておりませんが、租税負担が40.4%、これに比べまして社会保障負担が10.2%というふうに、かなり租税中心型の国になっております。スウェーデンもどちらかといいますと租税負担が大きくて、社会保障負担がこれに比べると低いというようなパターンの国でございます。

これに対しまして、ドイツ、フランスを御覧いただきたいわけですが、社会保障制度が社会保険中心型になっておりまして、社会保障負担がドイツ、フランスともに20%を超えるということで、かなり社会保障の比率が他の国に比べて高い。こういうパターンになっております。

日本も社会保障の体系で申し上げますと、ドイツ、フランスのように社会保険中心の体系をとっておりますが、そういった観点から見ますと、ドイツ、フランスと比べますと、社会保障負担は日本の倍、平成7年で13%程度ということで、独、仏に比べると、現段階では相当低い状況になっております。

以上が社会保障給付費と負担についての現状でございますが、将来の見込みはどうなるだろうかという点がございます。5ページでございますが、昨年、厚生省のほうで社会保障の給付費と、それから、社会保障についての負担、これの2025年までの将来推計を行っております。

なお、この将来推計につきましては、現在の年金制度や医療保険制度、そういったものは現行のままで推移するという前提で推計を行ったものでございます。社会保障給付や国民負担の国民所得比、これにつきましては、将来の経済成長率をどう置くかによって変わってくるわけでございまして、経済指標の欄を御覧いただきますように、Aケース、Bケース、Cケースというふうに置いております。名目国民所得の伸びが、それぞれ高い場合から低めの場合と推計しているわけでございますが、社会保障給付費、それから国民負担の国民所得に対する割合は、経済成長が低いと重くなる傾向がございます。例えば、社会保障給付費についてでございますが、試算結果を下に書いてございますが、平成7年度を御覧いただきますと、国民所得比65兆円、17%になっているわけでございますが、これが2025年度、AケースからCケースまで書いてございますが、Aケースの場合で29.5%、Cケースの場合で35.5%になる。こういう結果になっております。

これの負担は給付の裏返しでございますが、社会保障に係る負担、これは社会保険料と、それから社会保障給付に要します税負担、例えば年金などにつきましても、基礎年金の3分の1は国庫負担になっておりますので、そういった部分を含めますと、現在、社会保障についての社会保険料と国庫負担、租税負担、合わせまして、対国民所得18.5%でございますが、これが2025年には29.5%ないし35.5%になる。こういった推計になっております。

6ページをお開きいただきますと、ただいま申し上げましたことを図に書いてあるわけでございますが、(注)の1を御覧いただきますと、ただいま申し上げましたように、社会保険料と社会保障に係ります公費負担、合わせたものが2025年で、経済成長率にもよりますけれども、29.5%ないし35.5%なわけでございますが、(注)の1にございますように、現在、社会保障以外の支出に使われております公費負担の対国民所得比が約20%でございますので、現在の制度のままの場合、将来の国民負担率につきましては20%、ただいま申し上げました社会保障に係る負担を合わせますと、50%ないし56%程度になるのではないかと考えております。

社会保障の費用は、下の箱にも書いてございますが、高齢化等に伴いまして増加が見込まれますので、例えば国民負担率を経済成長の如何にかかわらず50%以内に納めようというような目標を立てたといたしますと、将来的にそういったゴールに達するためには、医療や年金分野を中心に、給付の面で相当程度の効率化や適正化を図らなければならない。こういうふうに考えておりまして、これまでも医療保険、年金制度について改革に取り組んでまいりましたけれども、今後も引き続き社会保障の構造的な改革が必要ではないかと考えているところでございます。

矢野局長(厚生省)

年金局長の矢野でございます。私のほうから来年の年金制度改正に関しまして御説明申し上げたいと思います。

7ページでございます。まず、現行制度がどうなっているかということでございますけれども、ここにございますように、わが国の年金制度は3階建てになっております。1階部分が国民年金、基礎年金でございまして、すべての国民が加入するということで、7,000万人の方が加入されております。その上の民間サラリーマングループにつきましては、2階部分として厚生年金、それから、公務員等につきましては共済年金というのがございます。さらに企業年金といたしまして、厚生年金基金、あるいは適格退職年金、こういった3階部分があるわけでございます。

現在の保険料負担でございますけれども、下の欄の第1号被保険者、これは自営業の方でございますけれども、定額でございまして、月額1万3,300円、それから第2号被保険者、これは民間サラリーマン、厚生年金の場合ですと、給料の17.35%という数字になっております。

それから、年金額でございますけれども、国民年金は40年加入の場合6万6,000円、厚生年金の場合、最近受け始められた男子の平均で見ますと、20万5,000円という数字になっております。

8ページでございます。年金制度改正の基本的な考え方でございますけれども、現在の年金といいますのは、その時々の年金をその時々の保険料で賄う、いわゆる賦課方式の要素が非常に強まっております。基本的には賦課方式で運営されておるということでございます。そういうことから人口構成がどうなるのか、それから、経済がどうなるのか、こういう人口と経済によって将来が非常に強く影響を受けるわけでございます。御案内のとおり、少子化、長寿化が急速に進む、それから、経済の低成長化、こういった社会基盤が大きく変化したということによりまして、将来世代の負担が大きく上昇することが見込まれておるわけでございます。現在、受給者と現役との比率は、4人の現役で1人の受給者をみるという状況でございますけれども、これが2025年ぐらいになりますと、2人で1人をみなければいけない、こういう世の中になるわけでございます。

こういうことから、厚生年金でいいますと、将来の保険料負担が月収の35%にもなる。それから、国民年金でいいますと、月額2万6,000円、夫婦ですと5万円を超える。こういう保険料負担が見込まれるわけでございます。そういうことから、こういった保険料は負担できないのではないかということが言われておりまして、制度の見直しが避けられないということでございます。

そこで、厚生省として、制度の長期的な安定を図るということで、先般、改正案を提示したわけでございます。これは9ページでございます。その際の基本的な考え方でございますけれども、まず将来の負担のあり方でございます。これは、これから受給者が増大していく中で、負担の引上げというのは避けられないわけでございますけれども、将来世代の負担は過重にしてはならないということから、将来の厚生年金保険料の負担の限界、これを年収の20%、月収で見ますと26%程度でございますけれども、これが限界ではないかと、こういう基本的な考え方に立って制度改正を考えたわけでございます。これは前回ですと、月収の30%が限度だということで制度改正を行ったわけでございますけれども、今回、年収の20%、月収の26%程度という考え方をとった背景といたしましては、1つは、各種調査によりますと、負担の限界は年収の20%という意見が一番多かったということでございます。それから、また、ヨーロッパでいち早く年金が成熟化した国の実態を見てみますと、そういった国でも段階的に保険料を上げていったわけですが、年収の20%程度になりますと、これ以上上げるというのが現実的には不可能だと。こういうことから、そういった教訓といいますか、先例も参考にして、年収の20%を負担の限界としたわけでございます。

そういうことで、今後とも段階的に保険料を引き上げていく必要があるわけでございますけれども、今回の私どもの引上げ計画では、ここの欄にございますように、厚生年金保険料につきましては、5年ごとに2.0%、これは前回は5年ごとに 2.5%であったわけですけれども、今回最終保険料が幾分下がるということを考慮いたしまして、5年ごとに2%の引上げにとどめたいという考え方でございます。それから、国民年金保険料につきましては、毎年500円の引上げを予定しております。

それから、給付のあり方でございますけれども、この給付につきましては、これから受給者が2025年時点ではほぼ倍増するということから、給付総額が増えていくわけでございます。現在、厚生年金の場合約26兆円でございますけれども、これが2025年時点では約45兆円に増加するということが見込まれておるわけでございます。そういうことから、将来の負担を過重にしない、年収の20%程度に最終保険料を抑えるという考え方から、給付総額の伸びを抑制をしたい、調整をしたいということでございます。その場合に、現在の年金額、それから、将来年金を受給される方につきましても、そういう方の年金額は現在の年金額より引き下げない、こういうことを考えております。それから、物価スライドは引き続き堅持していくということでございます。それから、急激な制度改正を避けまして、緩やかに制度改正を進めていきたいということでございます。

そういう考え方に立ちまして、具体的に3つの案を厚生省として提示したわけでございます。これが10ページでございます。私ども、この第1案が最も望ましいと考えておるわけでございますけれども、第1案が第2案あるいは第3案と違うところは、括弧で見ますと3つ目でございますが、支給開始年齢ということでございまして、現在、厚生年金につきましては、1階部分と2階部分があるわけでございますけれども、前回改正で1階部分につきましては、2001年から2013年にかけて、60歳支給を65歳支給に引き上げていくという改正が行われたわけでございますけれども、2階部分の報酬比例部分につきましては、引き続き60歳支給とされているわけでございます。この第1案といいますのは、報酬比例部分、厚生年金の約半分でございますけれども、これを2013年から25年にかけまして、65歳に引き上げていきたいということでございます。要するに、支給開始年齢は65歳を原則としたいということでございます。

理由といたしましては、わが国の場合、平均寿命が世界で最も長いわけでございますけれども、支給開始年齢につきましては、世界で最も早い、60歳支給という現状にございます。これは平均寿命の伸びに応じて支給開始年齢は引き上げていくべきではないかという考え方でございます。

それから、これから労働力人口が減少していくわけでございまして、そういう中で高齢者の方々にも頑張っていただかなければいけない。65歳現役社会ということが言われておるわけでございまして、そういった65歳現役社会を見据えて、長期的に支給開始年齢を引き上げてまいりたいという考え方でございます。支給開始年齢が引き上がる分、年金水準自体としては大幅な見直しを必要としないということで、上の括弧の中にございますように、厚生年金につきましては、給付水準を将来的に5%程度適正化、引下げを図っていきたいということでございます。

あと、その他の方策といたしましては、年金を裁定したあとにつきましては、現在は毎年の物価スライド以外に5年ごとに賃金スライドを実施しております。この賃金スライドをしばらく我慢していただくということで、裁定後は物価スライドだけで引き上げていきたいということでございます。

それから、その次にございますのが、60歳台後半、つまり65歳から69歳の方につきましては、働いて収入がある場合も現在は保険料を納める必要はございませんし、年金は全額支給されております。これを働いて収入がある場合には、保険料は納めていただきたい。それから、年金額につきましては、収入に応じて一部我慢していただきたい。こういう制度を復活しようということでございます。これは昭和60年の改正まではこういう制度があったわけでございますけれども、60年に廃止されたわけでございます。

その第2案、第3案につきましては、支給開始年齢は現行のままとする。その分、給付水準の引下げを大幅にするということでございます。第2案につきましては、厚生年金を将来に向けて15%程度適正化をしたい。第3案につきましては、2階部分の報酬比例部分だけでなく、1階部分も同じ比率で適正化したいということでございまして、基礎年金と厚生年金、これは同じ10%程度の適正化を図りたいということでございます。

こういった措置を講ずることによりまして、下から2つ目にございますように、厚生年金につきましては、最終保険料が年収の20%程度に納めることができる。1案、2案につきましては、国民年金は2万3,000円程度、3案につきましては、国民年金が2万 1,000円程度ということでございます。

それから、続きまして11ページでございますけれども、年金改正をめぐる論点ということで、今回の年金改正をめぐりましては、特に基礎年金につきまして、税方式に転換をしたらどうか、あるいは国庫負担を2分の1に引き上げたらどうかと、こういう議論が年金審議会等でも非常に熱心に行われたわけでございます。

これにつきましての考え方でございますけれども、まず税方式への転換でございます。こういった議論が行われるようになった背景といたしましては、国民年金の未納・未加入問題、いわゆる空洞化と言われておりますけれども、この問題を解決するためには、基礎年金の財源はすべて税で賄ったらどうかと。その場合に目的間接税で賄ったらどうかという考え方もあるわけでございます。これにつきましては、メリットの反面、大きな問題があるということでございまして、ここにございますように、[1]から[3]のような非常に巨額な税負担について具体的に確保できるのか、あるいは年金の目的が生活保護と同じようなものになってしまうのではないか、社会保険方式の長所が失われる、こういうことから慎重な検討が必要だとされたわけでございます。

国庫負担の引上げにつきましても、これは将来の国民年金の保険料負担を軽減したいという狙いから、国庫負担2分の1の引上げが主張されているわけでございますけれども、これにつきましても、巨額な税負担について国民の理解が得られるか、税財源を具体的にどのように確保していくのか、ということでございまして、最後は財源確保の方法等と一体として引き続き検討とされたわけでございます。

それから、12ページでございますけれども、この12ページは基礎年金の国庫負担を引き上げた場合に必要となる財源ということでございまして、これは98年、平成10年でございますけれども、国庫負担率3分の1ということで、現在、4兆7,000億円の国庫負担がございます。これを2分の1に引き上げた場合には、6.9兆円ということで、現在よりも 2.2兆円財源が必要になってくるわけでございます。これを年金目的消費税で賄うといたしますと、1%が2.6兆円と見込んでおるわけでございますけれども、 0.8%の消費税の引上げが必要になるということでございます。

それから、これを賄う現行税制ということで、国と地方の取り分といいますか、これを現行どおりといたしますと、1%が約1.5兆円ということでございまして、これに要する消費税率は1.5%に相当するということでございます。その反面、保険料は引き下げることができるわけでございまして、厚生年金ですと1%の引下げが可能になります。国民年金ですと3,000円の引下げが可能になるということでございます。

これが平成37年、2025年でどうなるかというのが下の欄でございます。これから受給者が倍増するということで、現行、3分の1の場合でも8.3兆円が必要になると見込まれております。2分の1では12.2兆円ということでございまして、消費税に置き換えると、ここにあるような数字でございます。それから、厚生年金、国民年金の保険料も下がりまして、ここにございますように、厚生年金ですと3%程度、国民年金ですと、現行より約8,000円程度引下げになるということでございます。以上を図示しましたのが14ページでございます。

それから、15ページでございますけれども、これは確定拠出型年金をめぐる動きということでございまして、わが国の公的年金、企業年金、これはすべて確定給付型でございます。つまり、現行の制度というのは、いくら年金をもらうかというのが最初から決まっておるわけでございまして、それを賄うのに必要な保険料を数理計算を行って決めていくということでございます。これに反しまして確定拠出型というのは、掛け金が決まっておりまして、あとはいくら年金がもらえるかは運用次第だという制度でございます。

現在、特に企業年金の分野では、予定利率が5.5%と決められておるわけでございますけれども、低金利の影響で予定利率を達成できないということで、企業にとりましては追加負担が出てくるということで、確定拠出型を求める声が大きいわけでございます。また、労働移動が激しくなりますと、転職に伴って年金を持ち運びできるということでございまして、確定給付型の場合はなかなか難しい。確定拠出型ですと、持ち運びしやすい。こういうことから確定拠出型を求める声があるわけでございます。この問題につきましては、現在、自民党の中に小委員会が設置されまして、検討が進められております。私どもとしましては、その結論を得て必要な対応を図っていきたいと思っているわけでございます。

もう一つ、この資料にはございませんけれども、次期年金制度改正に関しまして、積立金の運用につきましても、新たな仕組みをつくりたいということを考えております。あわせまして、これは行革の一環としまして、年金福祉事業団を廃止する。また、年金福祉事業団がやっておりますグリンピア事業ですとか各種融資事業につきましては、最終的には撤退をするという方針が示されておりますので、それを受けまして、次期制度改正では、こういった問題につきましてもあわせて措置をしたいと考えております。

加藤会長

ありがとうございました。

しばらくお二人にはおいでいただきますので、何か御質問がありましたら、どうぞおっしゃってください。

松尾委員

ちょっと数字を教えていただきたいのですけれども、社会保険料収入の本人分と事業主分の最新の内訳の数字、それから、保険料として徴収した資金の運用の実態、これを教えてください。

それと、2階部分を民営化するという考え方もあると思うのですが、この点についてはこれまで審議の中でどういう検討がなされたのか、その辺もちょっと教えていただきたいと思います。

矢野局長(厚生省)

まず、厚生年金の場合でございますけれども、現在、保険料収入が年間約20兆円ございます。それから、国民年金ですと約2兆円。こういう数字がございます。それで、こういった年金の保険料につきましては、給付をまず支払うわけですね。そして、若干の余裕がございます。こういったものが積立金として積み立てられておるわけでございまして、それからまた、当然毎年の運用収入もございます。そういうことで、現在、130兆円ほどの公的年金の積立金がございます。これにつきましては、全額資金運用部に預託をするということになっておりまして、これが財政投融資の原資として活用されておるということでございます。私どもの新しい運用の仕組みといいますのは、この預託については廃止をいたしまして、年金サイドで責任をもって運営をしたいということでございます。それから、財投との関係では、財投債とか財投機関債といったものが検討されておりますので、そういった購入を通じて財投機関に対する協力、資金供給を行ってまいりたいということでございます。

それから、2階部分の民営化のお話でございますけれども、これは公的年金としては1階部分の基礎年金だけに限定をする。2階の厚生年金につきましては、これは民間の企業年金なり個人年金なりでやっていただこうという考え方でございます。これにつきましても随分議論が行われたわけでございますけれども、もしこういうことを現実に実施することになりますと、特に中小企業のサラリーマンにとりましては、企業年金とか個人年金といいましても、実際はなかなか普及が困難でございまして、要はこういった方は老後の生活が基礎年金だけになりかねないということでございます。自営業の方は別段決まった定年もございませんし、生活の手段というのがあるわけでございますけれども、サラリーマンの場合はそういったものはございませんので、基礎年金だけでは非常に苦しいということでございまして、そういった問題が一つございます。

それから、もう一つは、一番やっかいな問題といたしましては、二重の負担問題というのが出てくるわけでございまして、これは現在年金を受給されている方、あるいはこれから間もなく受給される方、こういった方はこれまで必要な積立金はなかったわけでございますので、こういった方には約束された年金をこれからも払っていかなければいけない。こういう必要があるわけでございます。それから、現役の若い方は、自分の老後のための年金を企業年金なり個人年金なりで積み立てていくわけでございますけれども、そういたしますと、自分のための年金と、現在受給されている方、あるいはこれから間もなく受給される方、こういった方の年金を二重に負担しなければいけないということでございまして、この二重負担分が、ざっと見積もりますと、厚生年金の場合約350兆円ございます。こういった二重負担をどうやって解決していくのかということは、非常に難しい問題でございまして、なかなか容易ではないという問題がございます。

それから、さらによく言われておりますのが、民間の企業年金なり個人年金なりでやっていただく場合に、将来大きなインフレが来ないとも限らない。年金は40年かけて20年もらう、60年にわたる長期の制度でございますので、そういったインフレが来た場合に、果たして生活できるだけの年金を支給できるのかと、こういった問題も指摘されております。そういったことから、民営化の問題というのはなかなか難しい問題が多いということで、現行どおりの2階建ての年金制度を引き続き運営すべきであると、こういう年金審の意見書もいただいたわけでございまして、今回の私どもの改正案も、現行の2階建て方式を前提とした制度になっておるということでございます。

中村政策課長(厚生省)

保険料についての数字でございますが、平成7年度で申し上げますと、本人の拠出が28.7兆円、それから事業主の拠出が31.5 兆円というふうになっております。

河野特別委員

11ページに年金改正をめぐる論点というのが整理されていますね。これは年金審議会の委員の方が長年にわたって議論されてきて、いまのところはこういう形で集約されていて、例えば、税方式への転換については、いろいろ問題があるので、慎重な検討ということですね。普通、「慎重な検討」ということは、ほとんどやらんということなんだけども、2番目の国庫負担率の2分の1への引上げについてもいろいろ書いてあって、「現在の我が国の財政・経済の状況を踏まえると今回の制度改正において引上げは困難」。だけども、次に「今後の財政状況を踏まえつつ、財源確保の方法等と一体として引き続き検討することとする」というふうに書いてありますね。

この二つは少しニュアンスが違うと思うのだけども、現実にどういう議論が政治的に行われていくのかもちょっと不明な段階ですから、なかなかここで議論するのは、どこに重点を置いて議論するかということは難しいのですが、とりあえず、(1)の税方式への転換については慎重な検討ということがあって、これは年金審議会の委員の方のほとんど大多数の方がこういう御意見なのかどうかということと、厚生省当局が伝統的にどういう考えを持っていらっしゃるのかということを、ちょっと分けて教えてもらいたい。

2番目の、いま3分の1負担を2分の1にするだけでも実は大変な作業なのですが、これと関係づけた消費税をいじくるという案がありますよね。(1)で書いてあるみたいに全面的に消費税で---消費税に限らないけども、税金でカバーするのと、2分の1にするということについて、その増加分を消費税とセットで何か考えられないかという議論があって、あとのほうはかなり現実性があるかもしれないという気がしているのですけど、この点について、現在の皆さんのお考えなり審議会の状況なりということについて、お話をお伺いしたい。

矢野局長(厚生省)

まず、税方式の問題でございますけれども、これは審議会では、意見が非常に対立いたしました。税方式にすべきだというのが、労働界、経済界の委員を中心にそういう主張が行われましたけれども、中立委員を中心に、それは非常に問題があるのではないかと。つまり、いまの年金の性格を根本から変える問題につながるのではないかと、こういう非常に強い反対意見がございました。要は全額税ということになりますと、65歳を過ぎますと、税金で全部面倒をみる。こういうことが果たして日本の将来にとっていいのか、あるいは国民意識にどういう影響を与えるか、これは慎重に考えるべきではないかと。こういった問題点ですとか、ここにございますように、全額税ということになりますと、これは所得とか資産で制限をすることになるし、もらえない人もたくさん出てくるのではないかと。あるいは年金額自体が、現在6万6,000円でございますけれども、こういった高い年金額は期待できないのではないかと。こういうことで非常に年金としてみすぼらしいものになってしまうのではないかという御意見もございました。

それから、もし全部消費税で賄うといたしますと、年金だけで10%に近いような財源が必要になってくる。果たしてそういったことが日本の国民が納得していただけるか、あるいは日本の社会・経済の実態から照らして果たしていいのだろうか。こういうことで非常に強い反論もございまして、結果として「慎重な検討が必要」ということになったわけでございます。

それから、厚生省としての考えはどうかということでございますけれども、厚生省の中でこの問題について議論をして、結論を出したということはございませんで、これは私の個人的な考えだと受けとめていただきたいわけでございますけれども、やはり全額税ということになりますと、基本的には年金の性格を変える問題でございますし、それから、日本の国民意識あるいは日本の社会経済に極めて大きな影響を与えるわけでございまして、私としましては、年金審の中の慎重な意見、これに基本的には賛成でございます。

それから、国庫負担の2分の1引上げにつきましては、これは年金審の中の御意見を申し上げますと、しいて反対される意見はなかったわけでございます。ただ、いまの財政・経済の状況から見ると、これは実質的には今度の改正でこれを実行するのは無理だということでございまして、ここにございますような意見になったということでございます。

それから、消費税で基礎年金を根っこから全部みるのか、あるいは増加分をみるのかということにつきましては、これは両方の意見がいろいろなところで行われている。そういうことではないかと思います。

水野(勝)委員

同じように11ページで、税方式への転換は社会保険方式の長所が失われ、生活保護と類似のものになってしまうということですけども、そこを割り切って、例えば65歳以上になったら、生活保護と基礎年金部分というのは一体のものとして考えて、一定の最低生活水準を維持できるものは支給する。しかし、それを上回る部分については、すべていまの2階建てなり3階建て部分として割り切って、余り社会保険として考えない。現在の適格退職年金的なものにすべてをそこをお願いをするということで、むしろ生活保護と一体に考えたら、どういう不都合があるのか。お年寄りだからということ、あるいは生活水準が一定水準に達しないのではないかというところを、厚生省の中でも縦割り式に考えておられる節はないのか。そこは一体として、一本の年金なのか、生活保護なのかはどちらでもいいわけですから、生活水準の保障、それを上回るものはすべて民間の年金というか、保険というか、そういったものに任せていく。したがいまして、基礎的な部分についてはすべて当然税方式でいいわけで、これはおそらく消費税でいえば3%か4%部分ぐらいで済むのだろうと思いますが、そういうふうな割り切り方というものはないものでしょうか。

矢野局長(厚生省)

そういう考え方も一つの考え方ではあると思います。ただ、税金で65歳になれば最終的には全部面倒をみる、こういうやり方がいいのか、いまのように社会保険の方式で若いころから自助努力で保険料も納める、それによって将来年金を受給する権利がいただける、こういう自助努力型のほうがいいのか、これは価値判断の問題だと思います。

それで、よく言われておりますのは、税金で全部老後の生活の面倒をみるやり方というのは、むしろモラルハザードを招いて、国民の勤労意欲といいますか、そういったものにも影響してくるのではないかと。やはり給付と負担の対応関係を持たせて、若いころから自助努力を促すような社会保険方式のほうがいいのではないか。こういう意見があるわけでございまして、私としましては、やはりこういう社会保険のよさというのは、これからも維持すべきだし、国民のモラルハザードを招くようなことは、慎重であるべきではないかと思っております。

今野委員

私は個人的には余り高福祉という社会は好きでなかったのですけれども、最近、ある経験をいたしまして、つまり私の創業期からのパートナーである女性を亡くしたのですけれども、そのときに東京都が実に機敏に、実に行き届いたサービスを亡くなるまでしてくれました。私はそのとき本当に福祉の大切さというのを実感いたしましたが、だからといって、高福祉イコール高負担ということにはしたくないと、また改めて思いました。

いま国民が本当に健康で長寿をまっとうするというのは、非常に難しい環境にあります。例えば食品の問題、水の問題、それから、ストレスとか薬品とか、そういう問題でなかなか健康を維持しにくい環境にあります。ですから、病気になってしまってどうしようもない人に対しては、本当にこれからも高福祉をしていただきたいのですけれども、それ以前に、病気にさせないための努力といいますか、知恵といいますか、それをもっと厚生省ではやっていただくことによって、高福祉イコール高負担社会ということにならないようにもっとできるのではないかと思いました。

今回の私の経験した例でも、薬の副作用で次々と難病、奇病が発生してしまうというようなことも目の当たりにしまして、やはり健康とは何か、病気を治すということはどういうことなのか、薬と病気の問題とか、そういう意味で本当にこれから日本の医療のあり方ということに関しては、これまでのやり方、考え方を抜本的に見直していただいて、国民の健康づくりというものに力をさらに入れていただきたいと思います。そういうことによって医療費は、こんな第1ページにあるような、とどまることを知らない急カーブというか、こういう行き方でない選択肢が必ずあるはずなので、そういう意味でこの辺の検討は、いまどのような形で厚生省で行われているのか、その辺がもしお聞きできればと思います。

中村政策課長(厚生省)

医療、それに引き続いて介護ということで、相当サービスがかかるわけですが、ここに出ております24兆円というのは給付費でございまして、このほか本人の窓口負担などを入れますと、医療費は29兆円ぐらいになっております。そのうちの10兆円、約36%が70歳以上の高齢者の方の医療費でございまして、高齢者の方の1人当たりの医療費は、70歳未満の1人当たりの医療費の5倍になっているということでございまして、医療の世界でも相当高齢者の医療費を若い世代が支える構造にもなってきておりまして、いま今野委員のおっしゃったとめどもなく膨張していく医療費を、予防とか、健康づくりとか、そういう手段によって、あるいは医療の提供体制なり、診療報酬のあり方をきちんとすることによって、どの程度抑えることができるか。それが非常に大きな課題になっております。

そういった意味で、きょうは御紹介いたしませんでしたけれども、医療保険の改革も大きなテーマになっておりまして、繰返しになりますが、医療の提供体制、診療報酬の話、それから、何といっても伸びが大きいのが高齢者の医療の部分でございますので、高齢者の医療のあり方をどうするか。その際、予防からリハビリまで、特に先生強調されたのは予防の面だと思いますが、高齢者の医療のあり方としてもどうなのか。

その際に非常に薬も多いというようなこともございますので、薬の適正化をどうやって図っていくか。それは保険のほうでは、公定価格で、薬価基準ということでお支払いを医療機関に対してしていますが、そういう薬価基準制度のもとで薬の多用とか、そういった問題がほかの国に比べてないのか、すべて課題になっております。これらについても、2000年を目指して抜本的な改革を進めていくということでございますので、特に高齢者医療のあり方、診療報酬、薬の問題、それから医療の提供体制のあり方、そういったことを中心に見直しの検討をしているところでございます。

河野特別委員

国庫負担率の2分の1引上げのことについてですけど、これはいま局長のお話のように、年金哲学として、保険料をベースにするということは変えないで、しかし国庫負担が現に3分の1だけども2分の1に上げるというような発想の議論が随分ありますよね。政治論として随分ある。

そのときに、これは一つ国民に幻想を与えているのではないかと思うのは、それをやれば、皆さんがお考えになっている年金制度の改革、ある年次にいったらば支給開始が65歳になるとか、ないしは支給の水準を賃金スライドをやめて物価スライドにするとかということを全部なくして、もとのままで野放図にそっちは伸びても構わないよという形で、国民に安心感を与えるというふうな議論をする人もないではないと思うんです。これは随分国民に幻想を与えているのではないかという気がしないでもないのだけども、この点はどういうふうに、もし仮にこれで閣議決定かなんかが行われて、2分の1にするというようなことが決まったとすると、全体の年金の将来像というのはどういうふうになるんですか。私はそれをやったって、将来の給付をより妥当にするだとか、支給開始年限を上げるとかということは、変わらないのではないかと思うのだけども、その点はどうですか。

矢野局長(厚生省)

結論から言いますと、全くおっしゃるとおりでございまして、いま国庫負担の引上げをすれば、ほかの給付を適正化することもせずに、何とかやっていけるのではないかと、こういう非常に安易といえば安易な議論が一部あるのですけれども、何よりも私どもが強調しなければいけないのは、消費税であろうとも、これは国民の負担には変わりないわけです。要は税と社会保険料を合わせたトータルの負担という観点から事を考えるべきであって、そういうトータル負担が将来世代に過重にならないようにするという視点が非常に重要だと思うのです。そういうことを考えますと、何しろ人口構成が抜本的に変わるわけでございまして、いまの制度を維持いたしますと、非常に負担が増えるわけでございますから、これは国庫負担を上げようと、どうしようと、やはり給付の見直し・適正化は進めていかなければ、制度が維持できないということでございます。

それから、もう一つの議論といいますか、特に税方式に絡みまして、税方式にいたしますと、事業主負担分が必要なくなるわけでございまして、その額が大体いまの時点で3兆3,000億円ということが推計されておるわけです。そういたしますと、この事業主負担分が減った分は誰かが負担しなければいけない。それは家計部門で負担するしかないわけでございまして、そうなりますと、税と社会保険料を合わせた負担が果たして現役世代にとって軽減されるかというと、決してそういうことには結果としてならないのではないかということでございまして、やはり国庫負担の引上げ論とは別に、将来にわたって制度を安定的に運営していくために、給付と負担との均衡を図っていかなければいけない。そのためには給付の適正化を進めていかなければいけないのではないかということでございます。

特にここの中で12ページを御覧いただきたいわけですけれども、国庫負担を2分の1にした場合、あるいは全額国庫負担の場合でございますけれども、2025年、平成37年時点での厚生年金の保険料率を見ていただくとわかりますように、国庫負担を上げたからといって、あるいは全額国庫負担にしたからといって、厚生年金の保険料負担というのは、国庫負担2分の1の場合でも月収の32%ということです。こういう月収の32%プラス消費税負担が現役にはかかるわけでございますので、こういった負担が果たして可能かどうかということでございます。これはやはりいくら国庫負担を引き上げても、支給開始年齢の問題とか給付水準の問題、こういった問題を見直していかなければ、やはり将来負担が過大になって、とても制度を安定的に維持できなくなる。こういうことをこの数字が示しておるということでございます。

中村特別委員

主税でも厚生省でも結構なのですけども、増税アレルギーというのは国民の間でものすごく強いですね。なかんずく消費税となると、それが2倍、3倍、4倍になるわけですね。一方、先ほどの御説明にあるように、税収は50兆円を割る。年金財源はともかく、社会福祉の財源増加分を税収増で賄うことはできなくなる。その場合、国民に対して、消費税を上げますが、それは社会福祉のために使うのですよ、無駄な公共事業のためではありませんよ、というふうに言えば、消費税の引上げに対して納得してもらえる率が高まるのではないかなという気がするのが一つ。

もう一つは、いずれにせよ国民負担である、消費税も所得税も社会保険料も。その場合、所得税は累進性が非常に高いわけです。社会保険料の場合はフラットですね。一律。消費税はおそらくその中間なわけです。この税調でも、累進性をできるだけならしていこう、国際的にもそういういう流れがあるという一つの見方があるわけですね。この累進性、一律性という点から見ますと、消費税で面倒みるのか、所得税で面倒みるのか、社会保険料で財源を賄うのか、この辺どう考えたらいいのでしょうか。

中村政策課長(厚生省)

直接お答えする立場にそれこそ厚生省があるかどうか、税金と社会保険料の話でございますので、ちょっと微妙なところがございますが、私なりに考えていることを述べさせていただきます。

従来、社会保険料のメリットとして、給付と負担と直結している、そういうことが言われておりました。したがって、ものの教科書とか、いろいろ先生方の書かれた本を読みますと、負担と受益の関係が社会保険料は明確であり、負担についての理解を得やすいと、こういうことが言われてきたわけでございます。ただ、今回の年金改革の論議を見ておりますと、社会保険料の負担についても相当負担が上がってきたと。いま現在、厚生年金の料率は17.35%でございます。それを従来の財政計画でいうと5年に一度2.5%上げる。これを今回の厚生省案では2%上げるということを言っておるわけですが、経済情勢もあり、御承知のとおり、5年に一度の厚生年金の保険料を引き上げるということについても、相当議論になって、凍結論というのが出ているというのが1点あるかと存じます。

消費税の理解が得られやすいかどうかということについては、ちょっと私どものほうの立場ではありませんので、もう一つ、いま委員のほうでお話がありましたいわば累進性の問題についてでございますが、確かに厚生年金の保険料率は一律でございますので、そういった意味ではフラットでございますが、一つ注意しなければならないのは、ある程度上限が決まっておりまして、永久に一律ではなくて、標準報酬の上限というものが決められている。だから、非常に高い人に対しては、非常に有利になっている。それから、ボーナスについて料率を年金あるいは医療保険は1%しかいただいていないということでありますので、ボーナスの多い人については非常に負担が軽くなっている。いま社会保険料のサラリーマンに対する厚生年金なり健康保険の保険料としては、そういうことが言えるかと思います。

それから、もう一つ、いま税方式などの議論で問題になっておりますのは、むしろサラリーマンの社会保険料の問題ではございませんで、国民年金の保険料の問題でございます。これはお一人1万3,000何がしという定額になっておりますので、そういった意味では、むしろ、言葉はあれですが、定額の人頭税的な感じになっておるので、そういった意味では非常に逆進性が強いのではないかと、こういう指摘がされているところでございまして、その第1号被保険者、自営業の方の国民年金の保険料が十分納められていない、空洞化の問題ということが一つ議論になって、そういう観点から、税方式なり、そういった議論が出ているというのが背景でございます。

平田委員

よくわからないのでお聞きをしたいのでありますけれども、第1ページの社会保障給付費の各部門別の数字が出ておりますが、これは実際にこれだけかかっているというグロスをおっしゃっているのでしょうから、実をいうと、年金なんかの場合には、各本人が積み立てている積立の年金の収入があるわけですね。これはいくらあるのでしょうか。

それから、2番目の医療についても、受益者が払っている金がありますから、これが一体いくらあるのでしょうか。

その他は福祉的な生活保護とかそういうお金でしょうから、これは本人から入る金はないと思うのですけども、まずそれをちょっと聞かせていただきたいことと、それから、年金審でいろいろなケースを計算していただいておりますけれども、先ほど御説明の中で、現在の年金の国が預かっている残高が130兆円というお話がありましたが、実際に2025年になって大変なことになるということで、いろいろな改革案をお出しになっていますが、その2025年には、一体計算上の残高というのはいくらぐらいになっての計算なのでございましょうか。その2つをお聞きしたいのでありますが。

矢野局長(厚生省)

まず、後段の積立金でございますけれども、これは現在130兆円、年間給付費の約5年半分ぐらいございます。これが2025年時点では、大体今回の改正によりますと、年間給付費の4年分ぐらいの積立金を保有するという計算を行っております。

これはどういうことかといいますと、最終保険料を年収の20%に置きたいということが大原則であるわけですけれども、高齢化の進展は実は2025年がピークではございませんで、2050年ぐらいまで高齢化がさらに進むわけです。したがって、2025年時点でもある程度の積立金を持っておかないと、最終保険料を2040~2050年時点ではさらに上げなければいけないということになるわけでございまして、これは具体的に言いますと、2050年ごろになりますと、先ほど年収で20%、月収で26%と申し上げましたけれども、これがそういう積立金がない場合には、さらに月収で6%程度引き上げなければいけない。つまり、月収ベースで見ますと、26%ではなくて32%まで上げざるを得ない。したがって、最終保険料を据え置くためには、ある程度前もって積立金をためておいて、その運用収入でもってピーク時の2040年、2050年ぐらいの保険料を下げる。こういうことをしなければいけないのではないかということで、先ほど申し上げたような積立金を保有するということにしたわけでございます。

中村政策課長(厚生省)

収入面の点ということで、もう一度御説明を申し上げます。

それから、先ほどの数字、大変申しわけありませんが、本人負担と事業主負担の数字でございますが、ちょっと私うっかりして間違えましたので、あわせて訂正をさせていただきます。社会保障給付費に対応いたします社会保障の財源でございますが、先ほど申し上げました本人の拠出、28.7兆円と申し上げたのですが、これは間違いでございまして、24.4兆円でございます。28.7というのは、財源を100%といたしました場合の本人拠出の割合でございました。謹んで訂正させていただきます。

事業主の拠出が31.5兆円と申し上げましたが、これも全体100に対する割合でございまして、金額は26.8兆円、それから、国庫負担が16.5兆円、これは全体に対する割合が19.5%でございます。

それから、他の公費、地方公共団体の負担でございますが、4.2兆円、これは全体に対する割合が5%。国費と公費を合わせまして、24.4%が公費負担になっております。

それから、資産収入がございまして、これが9.8兆円、11.5%、その他が 3.2兆円、 3.8%でございます。

資産収入は、先ほど年金局長からも御説明がありましたけれども、厚生年金や国民年金基金、あるいは各共済組合などが主に入れております資産収入でございます。

平田委員

医療のほうの収入もいまの数字に入っているということですか。

中村政策課長(厚生省)

医療のほうも、保険料といたしまして、健康保険では、例えば政府管掌健康保険では、労使それこそフィフティーフィフティーで入っております。それから、13%の政府管掌健康保険では国庫負担が入っている。それから、若干ではございますが、資産収入があるという状況でございます。

平田委員

そうすると、理解としては、いま問題になっている消費税で対応しようと言っているのは、ここに書いてあるように、まさに国民年金の基礎年金部分というのですか、基礎年金部分の2分の1、3分の1の話だけということで理解していいということでしょうか。

中村政策課長(厚生省)

いろいろな議論のされ方がありまして、例えば、福祉目的税といった場合の福祉というのは、まさに何なのかということが大きな議論にはなるのだというふうに思っています。

例えば、国庫負担という意味で御説明を申し上げますと、10年度の厚生省予算は14兆9,990億円、約15兆円になっております。そのうち厚生省は廃棄物とかそういう公共事業を持っておりますので、そういったものを除きますと、社会保障関係費と言われておりますのが、14兆4,280億円ございます。この中で厚生省関係で年金の国庫負担として出しているのが4兆2,000億円ございます。これが基礎年金に入っている部分でございます。そのほか医療は、例えば自営業の方は国民健康保険に入っておりますが、その医療費の半分は実は国庫負担になっております。そういう問題。あるいは先ほど申し上げました70歳以上の高齢者の方の医療費に対しまして、国庫負担が原則3割入っている。そういうようなものを合わせますと、医療費の国庫負担、10年度で6兆8,000億円でございます。それから、老人ホームや保育所、生活保護、そういったようなものに使われているのが2兆6,000億円程度ある。

そういったものを諸々合わせますと、社会保障関係費として14兆4,280億円というふうに言われております。

平田委員

わかりました。だからここに出ている社会保障給付費が64兆7,000億円と書いてあるけれども、実際の真水で出ていくのは14兆円だということでいいのでしょう。

中村政策課長(厚生省)

はい、国庫ではそういうことになります。

平田委員

あとは自分たち国民がみんなで払っている金だということだ。

中村政策課長(厚生省)

国庫負担という意味ではそのとおりでございます。

松尾委員

厚生省の年金制度改正案ですと、60歳台後半の在職老齢年金制度を導入するということですけど、65歳を過ぎますと、これから高齢化社会ですから、働かなければいけませんから、働いていても働かなくても、そう目くじらを立てなくてもいいのではないかという気もするのですけども、これを導入した場合に、保険料額はどれくらいあるのか、推定されている数字がありますか。それと、このような制度は諸外国でどうなっているでしょうか。その辺の実情を教えていただきたいのですが。

矢野局長(厚生省)

まず、これは「後在老」と称しておるわけですけれども、この60歳台後半の在職老齢年金制度を導入いたしますと、最終的には、保険料を月収ベースで2%ぐらい下げる効果がございます。これは保険料をいただくわけですので、その収入面、それと年金は一部我慢していただくので、年金が節約できる。両方合わせると2%ぐらいの最終保険料を抑える効果があるということでございます。

それから、アメリカでは働いている場合は、年金を調整する制度があると聞いておりますけれども、日本と全く同じような制度をとっている国はございません。

水野(勝)委員

先ほどの続きかもしれませんが、現在、国民年金、その基礎年金部分について、3分の1ぐらいの人が保険料を納めていないということを聞くわけでございます。ある人は減免申請をして納めていない、ある人は全く滞納して納めていないということのようですが、そういった人たちは適齢期になったらどうなるのか。無年金者としてもらえないのか、減免された人は払ったものとしてもらえるのか、そうなると受益と負担と言われるその旗印はどうなるのか。また、全く滞納して納めていなかった人は無年金になるのだろうと思いますが、そうした人たちについては、公的年金的な支給はないのか。それは、もし生活が窮迫していれば生活保護で保護されるのか。その現在の3割ぐらいというところについての基本的、抜本的な見直しが今後ないとすると、そこは一体どういうふうに考えるのか。今後抜本的に改善できるという方向があるのか。もしなければ、やはりそこは、さっき申し上げた生活保護的なもの、65歳以上は一本化するというのが一つの考え方として出てくるのではないかとも思うのですが、現在の納付状況、制度の加入状況、それから、納めていなかった人たちの60歳なり65歳以降になったときの扱いというのは、現在の制度としてはどんなふうになっておるのでございましょうか。

矢野局長(厚生省)

まず、国民年金、これは1号被保険者ということになるわけでございますけれども、約1,900万人ぐらい加入されているわけですけれども、これ以外に160万人ぐらい加入されていない人がいる。これは未加入者と称してますけれども、未加入者が160万人ぐらいいる。それから、 1,900万人ぐらいの加入されている中で、ちゃんと手続きを踏んで免除を受けている方が、大体330~ 340万人いらっしゃる。それから、制度に入っているのだけれども、保険料を納めていない、これは未納と言っていますけども、こういう未納者は実は年金受給には結びつかないわけです。こういう方が170万人ぐらいいるということでございまして、約 300万人ちょっとが手続きを踏んで免除を受けているし、約300万人ぐらいが、制度に入っていないか、制度に入っても保険料を納めていない。合わせますと、約700万人近くになるということでございまして、それで3分の1が未納、未加入、空洞化だと、こういうことが世間でよく言われているわけです。

それで、まず、ちゃんと手続きを踏んで減免を受けた方、これは、免除を受けている期間につきましては、国庫負担分だけ、つまり6万6,000円の3分の1、国庫負担は3分の1ですから、その分だけは年金がいただけるということです。

それから、制度に入っていなかったり、制度に入っていても保険料を納めていないという方は、年金には結びつかないということです。

それで、無年金になるかどうかということですけれども、実は制度に入っていなかったりとか、納めていない人の中の相当部分が、都会の若い人なんです。最近フリーターとかそういう人が多くなっていますけど、こういった人が制度に入っていなかったり、保険料を納めていない。だから、こういう人も30歳ぐらいになってちゃんと勤めれば、厚生年金になりますと、強制的に保険料も源泉徴収されますし、こういう人は年金に結びつくわけです。したがって、一生涯年金に結びつかない人というのは、こういう未納・未加入者の中すべてではなくて、かなり少ないのではないかと見ております。

それから、無年金者は最後はどうするかということにつきましては、これは生活保護で面倒をみるということになります。ただ、生活保護の場合は、これはいろいろ厳しい調査もございますし、自分のあらゆるものを使って生活できない部分だけ生活保護で面倒みれるということですから、これは年金みたいに権利として当然いただけるのとは全然性格が違うわけです。

それから、もう一つ、抜本見直しはどうかということでございます。これはなかなか頭の痛い問題で、要は、非常に俗な言い方をいたしますと、一度ポケットに入ったのを、ちゃんと理解、納得をして納めていただくというのは、なかなか難しいわけでございまして、法的には、それは差押さえとか、そういうこともできますけれども、現実的にはなかなか難しいということで、あの手この手で努力するしかないということでございます。

ただ、そういった面では、いまいろいろなことを今度の制度改正に合わせて考えておりまして、もっと納めやすい環境をつくる。例えばコンビニなんかでも納められるようにするとか、それから、まず最初に年金教育ということで、年金の意義、役割等を小学生のころからきちっと教えてもらうとか、医療保険と連携をして、対象者をきちっとつかんで、それから納付を勧奨するとか、あるいはパート的な専任徴収員を増やすとか、あの手この手でできるだけの努力をしていきたいと思っているわけです。

それから、そういうことではとても無理ではないかということで、税方式なり国庫負担の引上げの議論が出てきておるというのは、先ほど御紹介したとおりでございます。

加藤会長

それでは、残りました時間で自由討議をしたいと思いますので、厚生省のお二人の方、大変ありがとうございました。

それでは、皆さま方、いまのお話を聞かれまして、どういうふうにこの問題をお考えになるかということについて、御意見のある方はどうぞおっしゃってください。

吉田特別委員

自治省に伺っておきたいのですが、『地方税収の動向について』の1ページ、これを拝見いたしますと、上のほうの都道府県税のところでございますけれども、各税目ごとに前年対比のところで見ると、ほとんど三角印がついておる。つまり、これは前年に比べて、地方財政計画から見て、入るべきであろう税収が今年度はこのように落ち込むのだというふうに理解するわけでありますが、その中で事業税の項目を見ると、個人事業税のところは、これが前年対比で0.9%いわば増収になるのだと、こういうふうに見てよろしいのですか。それをまず伺って、それからに……。

桑原企画課長

結構でございます。

吉田特別委員

そういうふうに見てよろしいんですね。そうしますと、私の近辺といいますか、個人自営業者は、昨今の規制緩和であるとか、高齢化であるとか、あるいは後継者不足、それに加えて大競争時代の波をかぶりまして、いろいろな複合的な原因から、小売業界は数字が大激減してきているのです。そういう現状は我々は肌身で感じているのですが、それにもかかわらず、税収がこのように伸びておるのは一体どの辺にあるのだろうか。

実は今回、法人課税の税制改革が大きなテーマになっている。法人課税税率を国際並み基準に下げる。これは国税のほうでおやりになるのか、地方税でおやりになるのか、そこは綱引きをなさっておられますので、私はよくわかりかねるのですけれども、いずれにしても、おそらく法人事業税はそれなりに税率引下げをなさるのだろうと思うのです。そのときに、私はかねがね申し上げておりますのが、個人事業税をどうしてくれるのですかということですね。

実は、国税庁の発表なさっております「法人企業の実態」というこの報告によりますと、いま平成8年で法人企業のうち法人事業税を納めているのは35.5%にすぎない。それに比べまして、やはり国税庁のお出しになっている「申告所得税の実態」、これは個人のほうにかかわるもの、それと自治省のお調べになったものを比較衡量しながら見ますと、個人の事業所得者で個人事業税を納めているのは、57.3%いるんです。つまり、私から言わせれば、法人よりも実は小規模な個人自営業者のほうが、負担率において逆転している。しかも、いまいただいた資料によると、けなげにも増収に貢献している。一体これは那辺にあるのだろうか。

それは私が思うのには、事業税計算のときに、法人企業の場合には社長報酬が全額損金で落ちますね。実は個人の事業所得者に対する事業税計算の上では、この社長報酬に匹敵する事業主の控除、これがわずか270万円なんですね。それしか控除してくれない。ここにものすごい不公平の原因があるのではないか。

もう一つ、国税庁の「税務統計より見た民間給与の実態」というのを拝見いたしますと、平成9年の民間従業員の平均給与は、467万円になっているんですよ。ということは、この事業主控除というのは一体どういう性格のものか。事業主控除が課税対象になっている。それが270万円に6年間据え置かれている。それが今日のいまいただいたこの資料から見ても、個人の方が負担増をしいられている。だから、私の周囲から見ると、数は減っているはずだ、にもかかわらず負担する額は増えてきておる。その原因は一体どこにあるのかというときに、私はおそらく、かねがね言ってきたのですけれども、事業税の見直し、法人課税の減税はもう約束済みですから、その法人課税の減税の中に、おそらく事業税が税率を引き下げていくのだろうと思うのです。そのときに、いまのような個人と法人との矛盾、逆転現象しておる、個人はかわいそうだ、ということを自治省は検討の中に置いておられるのかどうか。私はそれをこの表を見ながら、つくづく自営業者はかわいそうだ、個人はかわいそうだ、不公平だ、税制は中立でなければいかん、公平でなくてはいかん。

そういう意味から見ますと、いまの税論議の中に、市場原理に基づく自由競争、大競争時代だというので、何でもありよという中に弱肉強食あるいは弱者切捨て、こういうような節度を超えた論議が税制改正の中にあるとするならば、これは日本全体がモラルハザードの中に落ち込んでいくだろう。私はやはりこういう機会に声を大きくして、弱者の立場を逆転現象から見て何とかしてくれと、こういうふうに申し上げておきたいと思います。

桑原企画課長

お手許の9月現在の税収の状況の資料をもとに御質問がありましたので、この税収の状況についての説明だけちょっとさせていただきますが、ここにあります個人事業税の税収は、平成9年の1月から12月までの所得に対して今年度課税されている税でございます。したがって、これはその期間の、要するに昨年1年間の所得が前提になっているということです。法人事業税のほうは、これは国税であります法人税と同様に、事業年度終了後、2か月以内に申告納付するということでございまして、今年度に入りましてからの景気の落込みが、法人事業税についてはストレートに反映されている。昨年1年間、後半は非常に景気も落ち込んでおりますが、前半は比較的、個人所得あるいは景気全体もまあまあの状況であったと。そういうことが個人事業税だけプラスになっておって、法人事業税が大きく落ち込んでいるということの原因の一つでございますので、そこのところはぜひ御理解いただきたいと思います。

吉田特別委員

若干修正させていただきますけど、前年の法人税、その前のやつと比較表を出していただきたいと思います。

加藤会長

問題点は残っておりますね。

吉田特別委員

残っています。

橋本特別委員

先ほどの社会保障関係について、税当局にちょっと質問なのですけれども、この消費税を福祉目的税にしたらどうかと、こういう話がいま政治レベルで問題になっているわけですね。私ども素人が考えますと、確かにそうすれば福祉についての財源がきっちり確保できる。福祉に要するお金が増えれば消費税を上げればいい。こういうことになって、そういう点では大変いいと思うのですけれども、わが国の税制のあり方として、直間比率を是正していく、法人税とか所得税に対する依存度を下げて、長期的には間接税にウエイトを移していく観点からいたしますと、従来、法人税だとか所得税で賄われている一般の行政サービス、歳出、こういうものに将来は間接税が使えないということになってしまうのかどうか、ということですね。

それと、もう一つ問題は別ですが、さっき厚生省のお話で、確定拠出型年金を導入したらどうかというお話があって、これも平成11年度までに結論を出すという流れになっているわけです。この確定拠出型年金については、あとで後発的な積立金不足が生じないとか、あるいはポータブルで労働の流動性にプラスになるとか、いろいろなメリットがあると思うのです。ただ、個人が運用リスクを負担するという短所もあるかと思うのですけれども、こういう問題については、主税のほうはどんなふうなスタンスでおられるか。その2点。

福田審議官

それでは、御指名でございましたので、お答えいたしますが、いま議論されているのは、先ほど総務課長からお読みいたしましたように、政党間の協議ということでございますので、それについては私どもはまさに関心を持って見守っているという状況でございます。

あくまでも一般論で御参考までにお話しさせていただきたいと思いますが、これは先ほど厚生省のほうからお話がございましたように、俗に福祉目的税化といったときの福祉の中身をどうするかによってかなり変わりますし、それから、言われております消費税の福祉目的税化といったときにも、消費税全部をそうするのか、そうでないのかによって、これは福祉に充てるといったその福祉の中身にも関係いたしますでしょうし、もう少し広く言いますと、消費税分相当を全額充てるのか、全額充てるときに、先ほど出てまいりましたように、福祉の増加分に充てるというふうにするのか、これによって変わってこようかと思います。

なお、直間比率の是正といったときの話ともいま申し上げたことは絡むとは思いますが、あえて税の立場から申し上げさせていただきますと、所得税あるいは法人税を下げて間接税にということであろうかと思いますが、もう一つぜひ委員の皆さま方に念頭に置いていただきたいのは、この前主計局がまいって説明したと思うのですが、例えば国について言いますと、いわゆる公債残高が285兆円、単年度でいいますと、この第3次補正後で22兆円の財政収支のギャップがございますので、こういう景気状況でございますから、22兆円のギャップというのは大きくなっていると思うのですが、いずれにしても大きなギャップがある。そのギャップをどういうふうに埋めるのかといったときに、それを横に置いたままでストレートに直を下げて間を増やすということは、私は個人的にはなかなか難しいのではないかと。間が引き上げることがあっても、直を引き下げるというのは、いまのギャップを考えると、なかなか難しい問題もあるということだけは頭に置いていただきたいと思います。

それから、確定拠出型の年金でございますが、これも一番最初の福祉目的税と同じことかもわからないのですが、確定拠出型のイメージ、どういうものなのか。これについて、いわば関係者の合意、どういうものを考えておられるのか。関係者間での合意というのは、私が見る限りにおいては、必ずしも一致しているとは思えません。いずれ御議論をいただいて、方向が出ると思うのですが、それに対して税でどのように対応するかというのは、またそのときに考えたいと考えております。

河野特別委員

いまの福田さんの話もそうだし、退席された厚生省の話を聞いても、にわかに連立の政治テーマの中で方向を出そうとしている動きがあることは、よくよくわかっていますし、頭から否定する話でも何でもないとは思いますけども、とにかく余りにも単純な議論が横行し過ぎているという感じだけはよくわかったんです。

仮にその大きな消費税の性格を変えるのだということになれば、当然、総理から諮問が党税調にも政府税調にもあって、議論を始めるのが筋だと思います。きょうはたまたま偶然年金問題をやることになったらば、ちょっとそういう動きがあったので、そういう観点での質問に集中したのですけども、これは意図的に設定されたのではなくて、たまたまそうなったというだけだと思うのです。したがって、議論も入り口のところをうろちょろしただけで終わっているわけですよ。

しかし、本格的にこの議論をやるとなれば、来年の通常国会で法律改正その他をするなんていうテンポの話をやることは、極めて拙速で危うい議論ではないかといのが直感的にするのです。いかに政治決定が重要だ、スピードの世の中だといっても、そう簡単に党のほうだって、野党のほうもそうだし、政府税調でも簡単に結論が出るような話ではないと思うのです。だから、少なくともその方向で議論するにしても、諮問をちゃんと総理からもらって、最低限1年ぐらいかかって、所得税のあり方論を基本的に学者の先生に勉強してもらっているし、地方税もそうなのですが、あわせて大議論が巻き起こる話であって、バタバタと余りの拙速でやるということは、後世に本当に悔いを残すのではないかという気が、話を聞いていて一応したのです、とりあえずはきょうは。それが収穫だったと思うのですが。そういうふうな手順を両党間で協議すれば、当然、事の進め方としては、そういう手順にならざるを得ないと思うのです。これは福田審議官に聞くのは酷かもしれないけども、どんな感じですかな。

福田審議官

私の御説明、やや舌足らずで誤解を与えたかもわかりませんが、いずれにしても大きな問題ですから、政府税調、党税調で議論は当然行われると私は認識しております。

和田委員

消費税が導入されましてから、歳出の面を見ていきますと、社会保障費に充てられている伸びというのが、何となく期待していたような伸びにはなっていないというようなことは、よく発言はしていたのですけれども、だからといって、毎回申し上げていますけど、これを目的税にすればいいということではなかったと思うのです。

いま、政治の場で突如出てきて、そんな簡単にいくことではないと思うのですけれども、片一方で商品券構想、これも出てきたときは「こんなこと…」と思っていたのが、あれよあれよという間にということがありますので、少なくともいまお話がありましたように、消費税そのものの性格の問題でもあり、社会保障全体のいままで一般財源で支出していたところとの問題であるとか、いろいろなことが出てきますので、もっと総合的に、やはり時間をかけて議論していかなければならないと思いますけど、きょう、資料の中で、例えば「年金目的消費税率」なんていう非常に具体的な言葉として出てきたので、正直なところとまどっているというところで、やはりこれこそ拙速は避けて、十分な議論をしていかないといけないということだけ申し上げておきたいと思います。

柳島特別委員

いま二、三の方が言われたのですけど、やはり福祉目的税とすれば何となく取りやすいというような感じ、取る方の論理というのが最近先行しすぎているのではないかと思うのです。この間の住宅ローンのほうは減税なのだけど、あれも結局、いままで住宅金融公庫は政策金融だ、悪い悪いと言っていたのが、あれがあったから、いままで取得税に傾いていたのだろうと思って、結局、支出のほうのリストラというのは全然やらないで、これで取るほうの論理だけでやっていくというのは、私はまずそれは一番反対です。

あともう一つ、別に大蔵省の応援団ではないのですけど、やはり財政の節度というか、おそらくそういうのをこれからは考えなければいかんと思うのです。私が出かけてくる前に考えていたのは、社会保障15兆円あって、あと地方も大体私の記憶だと7兆円ぐらいあって、22兆円で、それで福祉目的税というのはどういうふうに組むのかなと。いま年金の話その他わかったのですが、いずれにしろ、これは福祉目的税にしても足りないわけですよね。あともう一つは、ヨーロッパがなぜこんなことをやっていないのかということも、日本はヨーロッパへ調査団を出してやったのだから、そういうことを徹底的に議論した上でやるべきで、これは税調としては、皆さん言われたように、何か目的税があればすぐ済むという話ではおそらくないと思うのです。

水野(勝)委員

最初に、きょう厚生省から御説明いただきました年金制度等につきましては、基本的に長期的には、基礎的な部分というのはもう国が責任を持って面倒をみる。その他の部分については、確定拠出でも結構でございますし、極力民間におきますところのシステムで対処するように方向づけていったらいいのではないか、そのように考えられます。

それから、それに関連しての福祉目的と消費税の関係ですけども、現在、国税でいきますれば、10兆円を超える税目というのは、所得税と法人税と消費税しかございません。そして、法人税はおそらく数兆円これから減額されるかもしれませんので、国税体系におきましては、この三本の税は大きな柱でございます。その柱につきまして、余りちまちました使途制限等々をつけるのはいかがか。福祉目的といえば、国の歳出はすべて福祉目的でございますから、それでよろしいのではないかというふうに考えられます。

それから、税収につきまして御説明をいただきました。この4ページの表を拝見して非常に興味深く思うわけでございます。元年、2年、3年、このころはGDPに対しまして税収は13%、14%でございますが、これはバブルのころでございまして、バブルがはじけますと、10%台に下がってきている。まさに日本の税制というのは、いわばビルト・イン・スタビライザーの効果を大きく発揮しているわけでございます。したがいまして、最盛期に比べれば4%ぐらい下がってきているわけですが、それは換算すれば20兆円ぐらいになる。その分が公的な部分に民間部門から拠出される部分が減っているわけでございますから、これだけ大きな景気対策的な経済現象はないわけでございます。したがいまして、それ以上に余り減税でさらにというのは、やはり限界があるのではないか。これだけ国の税のシステムといったものが、景気対策的に自動的に動いているというふうにもこの表は言えるわけですから、そういった面も大いにこの表でもって世の中に御説明をしたらいかがか、そんな感想でございます。

津田委員

消費税の福祉目的税化の問題ですが、例えば、消費税が景気がよくて上向きになる。その増収分を福祉水準の向上に努める。それでは下降期はどうするのだということになります。逆に特に福祉の問題ですので、上昇期は減らしていいので、下降期に手厚くしなければいかんということで、まさしく税収と逆行することになる。そうすると、やはり中長的な観点で給付水準を決めるという作業がどうしても要るわけなのですから、道路目的財源があって、あれも公共事業の整理にはなかなか難しい問題で、あれ自体困るのですが、道路目的財源はある程度景気によって配ったりなんかできるのでしょうが、福祉は逆の動きですから、目的財源化といったって、やはりもうちょっと福祉のしっかりした給付水準のあり方だとか、将来の福祉設計ということを考えなければいかんので、どうも本質的に結びつかないのではないかと思います。

松尾委員

先ほど厚生省の説明を聞きますと、保険料を引き上げて給付の条件をいろいろ厳しくしていくということで、やはりこれが一般国民の不安心理をあおっていると思うのです。先ほどの話を聞きますと、社会保険料の本人拠出と事業主の負担を合わせると51.2兆円ということで、もう税収と同じぐらいの規模になっているわけですね。これ以上保険料負担にたえられない。すでにたえられないという状況になっているのではないかと思います。私も水野さんがおっしゃったように、基礎年金の部分は国が面倒をみたほうがいいのではないのかと思います。税によって賄うべきだとの考え方に対しては、モラルハザードの問題があるとか何とかおっしゃっていましたが、やはりここはもっと踏み込んで、政府税調としても踏み込んで検討していく必要があるのではないかと思います。

諸井委員

社会保障の関係は、年金も医療も、それから、これから始まる介護にしても、かなり危ない状態にあると思うのです。要するに、一体負担を高めるのか、あるいは受益を減らしていくのか。そして、例えば負担を高めるのだとすれば、それは誰が負担をするのか。保険者なのか、あるいは受益者なのか、あるいは納税者なのか、そういったことをやはり決定すべきなんです。これは決定するのは僕はやはり国民全体で決定すべき話で、まさにそれこそ政治が、あるいは政党がそれぞれ自ら主張するところを掲げて、国民の選択を仰ぐべき問題だと思うのです。我々、そういう問題についての専門家なのだとすれば、それはいろいろなアドバイスを出す立場かもしれないけども、我々がそれを決めてしまうという話でもないだろうし、また、政党同士が政権奪取のためにそういうことを決めてしまうというのは、やはりおかしな話ではないか。やはりこれは本来正々堂々と国民に説明をして、国民の選択を仰ぐ段階に来ている話ではないのかなと思います。

加藤会長

きょうはいろいろと御意見をいただきましたが、この問題は、もちろん先ほどから出ておりますように、これから本当に審議をしなければならない、早急に答えを出すような問題ではございませんので、これからもまた機会を設けて議論をさせていただきたいと思っております。

きょうはこれで終わらせていただきますが、この次は住宅と土地の税制につきまして議論をしたいと思っております。この住宅・土地の問題について議論いたしましたあと、次にはもう大体週2回ずつ開きますが、その間に次第にまとめていきたいと思っておりますので、ぜひ予定をおとりいただきたいと思います。そして、12月の中旬には年度改正の答申の取りまとめをするということになるかと思いますので、またそのころにはよろしくお願いをいたします。

次回は11月27日、その次が12月1日、それから12月4日、12月8日、12月11日と、大変でございますけども、よろしくお願いいたします。どうもきょうはありがとうございました。

〔閉会〕

(注)

本議事録は毎回の総会後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、大蔵省主税局及び自治省税務局の文責において作成した資料です。

内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。