第23回総会 議事録

平成10年11月17日開催

加藤会長

それでは、ただいまから税制調査会の第23回の総会を開催いたします。

きょうは、議題を申し上げておきますと、最初に、この前積み残しになりました中央省庁等の改革に関連した税制に関する議論を事務局から紹介していただきまして、皆さまの御意見をいただこうと思っています。

それから、そのあと、きのう取りまとめられました緊急経済対策や、これまでの審議において委員の方々から要求のありました資料について、事務局より説明を受けまして、本日の本題であります恒久的減税、政策税制についての自由討議を行いたいと思います。

本日御欠席の笹森委員から意見書が出されておりますので、後ほど御覧いただければと思います。

それでは、本日の審議に入りますが、現在、中央省庁等改革の具体化について、先般、成立しました中央省庁等改革基本法に沿って検討が進められておりますが、このうち税制に関していくつかの論点が議論されておりますので、事務局から説明を受けまして、御意見を伺いたいと思います。

それでは、最初に、中央省庁等改革基本法の規定やこの規定が設けられた経緯について説明をいただきまして、ここで触れられております審議会の廃止あるいは公開、徴税一元化、税制の簡素化などについて伏見総務課長から、さらに、通達の整理合理化や国税当局と地方税当局との協力関係などについて国税庁の田中総務課長から、最後に、地方団体の課税自主権と地方税の徴収制度について桑原企画課長から、それぞれ説明を受けたいと思います。

まず最初に、伏見課長、よろしくお願いします。

伏見総務課長

お手許の資料で、前回の日付になっておりますが、11月10日の「総22-5」『資料(中央省庁等改革関係)』という資料がございます。これを御覧いただきながら御説明をさせていただきます。

いま会長のほうからお話がございましたが、中央省庁等改革の関係は、いわゆる行革会議、この議論を経まして、中央省庁等改革基本法がさきの通常国会で成立をしております。現在、その具体化を図るということで、2001年に新体制に移行するということで、基本法をベースとしまして、各種所要の法案の準備に入っているわけでございます。来年の春には通常国会に法案を出そうかということで準備が進められております。

まず、その1ページでございますが、中央省庁等改革基本法の第三十条、ここに審議会等の整理合理化という事項がございます。新聞等で、税調を含めました主だった審議会が廃止というふうな見出しが出ておりました。一体どうなっているのかと思われた方もいらっしゃるかと思いますが、ここの三十条を御覧いただきますと、「政府は、審議会等について、次に掲げる方針に従い、整理及び合理化を進めるものとする。」という規定になっております。この中でございますが、第一号は、活動の実績が乏しい等、これは当たり前のことでございますが、それから、第二号をとばしまして第三号、その他不服審査等を行う審議会等については、必要最小限のものに限って設置をする。間の第二号でございますが、「政策の企画立案又は政策の実施の基準の作成に関する事項の審議を行う審議会等については、次に掲げるところによること。」としまして、原則として廃止をする。「設置を必要とする場合にあっては必要最小限のものに限り、かつ、総合的なものとする。」という規定になっております。現在、この規定に従いまして、中央省庁の再編の事務局がございますが、そこのほうから、それぞれの審議会を所管する省庁の事務局に対しまして、この基本法をベースとした形でのいわば打出しが行われる。一と三はある程度明らかでございますが、二のところは、原則としまして一律廃止という打出しに実はなっているわけでございます。

私どもとしましては、税調につきましては、当然のことでございますが、税制の変更ということが国民生活・経済にいわば直結する、大きな影響をもたらすものだと。したがいまして、できるだけ幅広く御意見を伺っていく必要があるのではないか。それから、また、内容的に税の世界というのは技術的な面、あるいは実務的な側面というものを忘れることができませんので、そういった意味で単発的に御意見を伺うというのではなくて、やはり常時行われているような場で、税体系といった広い全体像の中での御議論が必要なのではないかということを事務局に対していま説明をしている最中でございます。

この問題は、それぞれの審議会に意見を求められているというものではございませんので、この場で御議論をいただく必要はないかと思いますが、現状、いまそういう状況だということで、御報告をさせていただきます。

なお、この第五号に、「会議又は議事録は、公開することを原則とし、運営の透明性を確保すること。」という項目がございますが、税調につきましては、これに従ってというか、これを進めるような形で、すでに議事の公開まで踏み切っていただいたという状況にあろうかと思います。

それから、その次の二十条、次の2ページでございますが、財務省の編成方針という項目がございまして、その中の第四号、第五号に、税制との関わり合い、あるいは執行との関連の事項がございます。第四号が、「国と地方を通じた徴税の一元化については、地方自治との関係、国と地方を通ずる税制の在り方を踏まえて更に検討すること。」となっております。それから、第五号で、「徴税における中立性及び公正性の確保を図るため、税制の簡素化を進め、通達への依存を縮減するとともに、必要な通達は国民に分かりやすい形で公表すること。」となっているわけでございます。この通達等、国税庁の関連のものでございますので、これは後ほどまた御説明をさせていただきます。

そこで、まずこの第四号の関係でございますが、次の3ページは後ほど自治省から御説明があろうかと思いますので、とばしていただきまして、4ページを御覧いただきたいと思います。4ページのところで、中央省庁等改革基本法関係ということで、いま読み上げましたような該当の条文と、下に(参考)というのがございます。ちょっと字が小さくて恐縮でございますが、いま申し上げました二十条の第四号関係、検討項目になっているわけですが、これが一体どうしてこういう論点として出てきたのか。当時の記録を見てまいりますと、一つの観点は、いわゆる徴税一元化をすることによりまして、税徴収事務の効率化あるいは組織のスリム化が図れるのではないかという観点、それから、納税者サイドに立ちますと、課税団体が国であったり、あるいは地方であったりという、それはそれぞれに必要なことはわかるけれども、納税者の便宜というものを考えたときどうなるか、といったような論点があったように思います。

一方、その当時の議論を見てまいりますと、その中で一つは、徴税の便宜ということはある場合であっても、地方自治との関係を一体どういうふうに整理するのか、あるいは、そもそも単に統一するだけで本当の合理化になるのかどうか、その前提となる国・地方の税制、あるいは申告納税制度と賦課徴収制度との違いとか、そういったものについての整理がまず要るのではないだろうか、そもそも国税・地方税を通じた税制の簡素化というのが大前提としてないだろうか、というような論点が出たようでございます。

そこで、それに関連した資料ということで、次の5ページ以下でございますが、5ページのところに、現状の国税・地方税、それぞれの税目を並べてございます。それぞれを所得課税、資産課税あるいは消費課税に分類しまして、国税と地方税に分けたものでございます。細かいところは省略をさせていただきます。

次の6ページでございますが、国税と地方税、その中でいわば代表的なものを取り上げまして、それぞれがどのように違っているか、あるいは似ているところもあるわけですが、当たり前の課税権者等々を除きまして、例えば所得課税あるいは消費課税といったところで、所得税と住民税がどのように違っているか、十分御案内のところでございますが、一応、表の形に整理をしてございます。

それから、その次の7ページでございますが、税としましては国税・地方税違っておりますけれども、私ども、実際の徴税の段階では、可能な限りできるだけ協力をするということで、事務の流れ、あるいは納税者の便宜というものを考えた徴収のシステムをとっているわけでございます。

その代表的なものとしまして、7ページのところでは、所得税と住民税の申告と、その事務の流れがどうなっているかというものを簡単な図示にしたものでございます。左側の流れが所得税についての流れでございます。右側が住民税についての流れでございます。申告所得者の場合、御案内のように、3月15日までに国税の所得税の申告書が出されますが、出されましたあと、左の欄で、上から下に必要な納付、徴収あるいは調査等が行われるということになります。

この出されました申告書でございますけれども、同時にこれは地方税の住民税の申告書にもなるような形での申告書がつくられております。これが地方団体に渡されまして、それをベースにしまして、課税方式は地方税・住民税の場合には賦課課税の方式ですけれども、同じ資料から作業が行われる。御案内のように、6月以降、賦課決定の形で住民税の事務が行われているわけでございます。

それから、その次の8ページでございますが、法人課税のほうはどうかということで、法人税と、それから法人住民税・法人事業税を対比させたものでございます。この法人税と法人住民税あるいは法人事業税のベースとなりますところを御覧いただきますと、まず所得の計算をどうするかということがあるわけですが、そこに点線で囲ってございますように、基本的にはここは一致をしているわけでございます。御案内のように、法人事業税については一部が収入金課税になっているものがございますが、大宗はその所得の計算がほぼ一致をする。法人税の場合はその所得金額の計算を行いまして、そのあとに税額計算が行われますが、税額計算のところから右側に矢印が出ておりまして、住民税でございます。法人住民税の場合の課税標準は法人税額になっておりますから、法人税の計算をしてまいりますと、いわば法人住民税の計算ができるという形になっている。一方、法人事業税のほうは、収入金課税のところを除きまして、所得の計算はほぼ法人税と同様の形で行われまして、税額計算が行われるという形になっているわけでございます。そのあとの申告等につきましては、それぞれの税の位置付けから異なっているというのが現状でございます。

9ページにつきましては、後ほど自治省から御説明があると思います。

それから、10ページ以降で国税庁のほうから説明をさせていただきます。

田中総務課長(国税庁)

続きまして、国税庁でございますが、まず、国税当局と地方税当局の協力関係及び通達の整理合理化に関して、ポイントを御説明申し上げたいと思います。

まず、10ページの資料でございますが、資料に沿って説明させていただきます。国税庁におきましては、地方団体との税務上の協力につきまして、従来から納税者の利便の向上、あるいは税務行政の効率化、さらには適正・公平な課税、的確な滞納処分の実施等という観点から、いろいろな税法あるいはその趣旨に基づきまして、ここに掲げてありますような種々の協力を行ってきております。例えば課税上の協力、これは課税関係書類、申告書等ですが、それの相互の閲覧、あるいはすでに御説明がありましたけれども、所得税申告書に個人住民税用の写しを添付して、申告書の手続きを一本化している。あるいは申告書の用紙の送付に係る協力等々でございます。それから、所得税や消費税の申告書の市町村における収受、さらに徴収上の協力といたしまして、同一の納税者の所在財産に係る情報の提供、あるいは税務広報上の協力といたしまして、国・地方それぞれが広報紙あるいは各種広報媒体の活用で、相互に税務広報の協力を行っている。さらには、相互の連携・協調のために、各地区ごとに国税や地方税関係者の協議会などを設置しているということでございます。

このように現行制度のもので可能と思われる協力を行ってきております。当庁といたしましては、今後とも地方団体との従来からの協力関係の一層の推進について努力していきたいと考えております。これが国と地方団体との税務行政上の協力についての御説明でございます。

次に、通達の整理合理化ですが、これは資料の11ページ、次のページをお開きいただきたいと思います。

まず、通達の見直しについて御説明する前に、国税庁の通達の性格について、この資料1にございますように御説明させていただきますと、国税庁の税法の解釈に関する通達と申しますのは、税法の適用を適正・公平かつ統一的に行っていくために、国家行政組織法という法律に基づきまして、職員向けに定められているものでございます。いわゆる業者指導的な通達とは異なるものでございます。

また、これらの通達につきましては、税務執行当局の考え方を納税者があらかじめ知ることができるように公開されております。欧米各国の実情を見ましても、わが国と同様に税法の解釈に関する通達を定めております。これは、税額の確定の前提となります経済取引というのが複雑多岐にわたり、また、現実問題として、刻々と変化しているわけでございますので、これらを租税法令のみをもってすべて細かく規定し尽くすということは、技術的に困難であるという認識が背景にあるものと考えられます。

そういう通達なのでございますが、先ほどすでに説明がございましたように、この6月に成立いたしました中央省庁等改革基本法におきまして、「通達への依存を縮減する」、あるいは「必要な通達は国民にわかりやすい形で公表する」ということとされましたので、当庁といたしましても、この趣旨を踏まえまして、春から作業を行っております。それは、この通達というのを納税者に対しましてわかりやすいものとする、あるいはその性格を明確化する、つまり税法の解釈のための通達ですよという性格を明確化する、あるいはアクセスを容易にするという観点から、この資料の[1][2][3]にありますような見直しをいま現在検討しております。

まず、法令の解釈に関する通達、これは個別通達と基本通達を合わせますと、約630本ございます。それを納税者にとってわかりやすいものとする見地から、再編・整理する。例えば、個別通達については一部は廃止する。あるいは基本通達への整理・統合を行う。そういうことを段階的に実施していくつもりでございます。現在、その作業中でございます。

また、個別通達と申しますのは、先ほど御説明申し上げましたように、どうしてもある一定本数は出てくるわけでございまして、その個別通達への検索コードを付与することによって、検索性を向上させる。あるいは法令の解釈に関する通達の名称を、法令解釈通達というふうに呼びまして、その通達の性格を明確化する。そういうことも考えております。

さらには、国税庁は、11月の中旬にホームページを開設しておりますが、その通達の内容をホームページに掲載をするということもこれから順次やっていこうと考えております。

ただし、注書きにございますように、先般、実はデリバティブに関する通達というのを定めたのでございますが、この通達のように、経済取引の実態を踏まえ、課税上の取扱いを明確にするために必要な通達につきましては、今後とも定めていくという予定でございます。

加藤会長

ありがとうございました。

続きまして、桑原企画課長、よろしくお願いします。

桑原企画課長

それでは、中央省庁等の改革関係、地方税に関する部分を説明させていただきます。

お手許の資料、3ページ目をお開きいただきますと、省庁改革によって発足します総務省の編成方針の規定がございます。私ども自治省は、現在の郵政省、総務庁、この3つの役所が一緒になりまして、総務省という新しい役所に編成される予定になっております。第十七条の四号でございますが、ここでは地方自治についての基本的な考え方が述べられておりまして、地方自治が国の基本的な制度であること、あるいは地方自治を維持し確立することが国の重要な役割であること等々が定められております。

その中のニにおきまして、「地方税制について、地方公共団体の課税権の自主性を尊重したものとすること。」ということが定められております。この具体的な内容につきましては、あとでもう少し御説明をさせていただきます。

それから、4ページは先ほど大蔵省から説明があったとおりでございます。

それから、5ページ目に国税・地方税の税目の一覧がございますが、一番下の表が地方税の内訳でございます。国税と違う地方税の特色といたしまして、国税におきましては、その税の税収ベースで99%近くが申告納付制度あるいは源泉徴収制度ということで、納税者でありますとか、給与の支払者でありますとか、そうした納税者のサイドでの事務負担が相当行われているということに対しまして、地方税におきましては、税収ベースで6割を超えるぐらいの税が地方公共団体の側で課税客体を把握し、税額を計算して納税者に通知するという賦課課税方式の税が中心になっているということ、個人の住民税でありますとか、固定資産税でありますとか、自動車関係税でありますとか、そういったことで構成されているというところに大きな違いがございます。

それから、9ページを御覧いただきますと、その賦課徴収方式の具体的な例として、固定資産税の作業の流れを図にしております。一番左、課税客体の把握、土地・建物等の把握でありますとか、そういった資産の評価、これはほぼ年間を通じて行っておりますが、1月1日、毎年賦課期日を定めまして課税要件を確定し、それぞれの資産についての価格を決定して、納税者に通知して納付してもらう。土地については、括弧にありますが、1億7,000万筆、家屋についても6,000万棟といった大変たくさんの資産について評価を行っているということであります。

なお、こういうふうにして市町村が行いました課税客体の把握、資産の評価につきましては、国税におきます相続税、贈与税等の課税資料ということで、国税への情報提供を行っているところでございます。

それから、10ページの国と地方の税務行政運営上の協力は、国税において御説明があったとおりでございます。

11ページに、国税庁における通達についての説明がございます。地方税についても様々な通達は出しておりますが、地方税の通達というのは、国税庁の通達と違いまして、行政機関の内部での上級行政機関から下級行政機関への通達ではなくして、自治省が地方税法の解釈や留意点につきまして、地方団体に考え方を示しているというものでございます。そんな性格の違いがあるということで、地方税の通達につきましては、先ほどの中央省庁等の改革基本法の中では特段述べられておりませんが、通達への依存を小さくして、納税者にわかりやすい税務行政を進めるというのは、国・地方同じであると思われますので、地方税におきましても、通達による措置の見直しということを一昨年来、精力的に行っているところでございます。

それから、12ページは、最初に法律の条文でございました課税自主権の尊重ということについて、少し考え方を示しております。

1番で、まず地方公共団体の課税権につきまして、地方税は地方公共団体の歳入の基幹となるものであり、憲法で保障された地方自治の責任ある運営を保障するものであるということで、地方公共団体が地方税法の枠組みの中で、その課税権に基づいてそれぞれの議会で制定された税条例をもとに、自ら地方税を賦課・徴収し、住民へ行政サービスを提供することが地方自治の基本であるということが基本的な考え方であるかと理解しております。

2番目で、そうしたことにつきまして、(1)ことし5月の閣議決定されました地方分権推進計画でも、地方税を課税自主権を尊重しながら充実確保を図っていくべきであると定められておりますし、(2)は、昨年12月の当税制調査会の答申でございまして、「地方分権を推進する観点から、地方公共団体の課税自主権を尊重し、各地方公共団体が、住民の意向を踏まえつつ、自らの判断と責任において地方税の運用を行い得るための制度を拡充していくことが必要です。」というふうに答申されております。

3番で、その具体的な取組みの例といたしまして、(1)で地方公共団体の税率を決定する場合の自主権の拡大についてすでに措置した項目、(2)で、これは次期通常国会で地方自治法の改正とあわせて措置する予定にいたしておりますが、法定外普通税の許可制の廃止、あるいは法定外目的税の創設といったものを考えております。(3)ですが、今後とも地方公共団体が自らの判断と責任で地方税の賦課・徴収を行い得るよう、課税自主権の拡大の方策について検討を進めてまいりたいと考えております。

加藤会長

ありがとうございました。

それでは、ただいまの説明につきまして、御意見あるいは御質問があれば承りたいと思います。いかがでございましょうか。

松尾委員

税はただでさえわかりにくいものですから、税の簡素化の視点、これは非常に重要であると思います。税の仕組み、執行に至るまで検討する余地が少なくないと思うわけです。そうした観点から、国税と地方税の徴税一元化をどう考えるかという問題であると思うのです。

組織上の問題としましては、これは税の執行と企画立案を分離するということになると思います。専門家の間には、そうしても税法の解釈・適用が執行当局の自由裁量によって決まるおそれはないのだと、そういう意見があることは私も承知しているんです。ただ、経済取引が現在、非常に複雑・多様化しておりますね。それで、こういう一元化をしますと、税法の解釈とか適用がやはり立法趣旨と異なるケースが出てくる。これは大いにあり得ると思うのです。やはり税制の執行と企画立案は一体化でなければならないと私は考えます。

さらに、課税権の問題、これに関わってくるのですが、地方の場合は、結局、この租税の賦課徴収について、地方の議会の承認権限を奪われるということになって、自治体の課税権の否定を意味することになるのではないかと思うわけです。やはりこれは主権者である住民自らの意思を反映されなければならないということですから、徴収部門を一元化しますと、やはり地方分権の流れに逆行することになると思います。

昨年の行革会議でこの問題が取り上げられて、大変な論議を呼んだのですけども、私はこれは政府税調が本来取り上げるべき問題であると思いますし、これから具体的に取り上げていくことを提案したいと思います。

河野特別委員

去年のいまごろでしたか、中央省庁再編の最後の議論をやっているときに一元化論があって、当時やはり、この説明にもあったけども、納税者の立場で便宜を考え、徴税コストの効率化を図るというのが大義名分だったと思うのです。いま、堺屋さんは経済企画庁長官になっちゃったけれども、あの人も何遍かこの一元化論というのを、納税者の立場に立ってというので議論されたことをよく覚えているんです。だから、省庁再編のときも議論があったし、当税調の中にも、何も支配的な議論になったわけではないけれども、そういうことを発言する人がいたことは事実なんです。

それで、そのことはよくわかった上で申し上げるのですが、私はたまたま、自治省の説明にもちょっとあったけども、分権委員会に4年ぐらい関わっていて、最初の2年ぐらいは、この税の世界に絡む話を随分地方団体の方からも聞き、自治省からも聞きという経験を持っているんです。そこで、その結論が2年ぐらい前だったか、総理大臣に対する勧告の中に盛り込まれているのですけど、やはり基本的な当時の哲学というのは、地方団体の意向を強く受け過ぎたかどうかということは別にして、とにかく分権委員会がこなしたところによれば、地方の課税自主権というのはきっちりと尊重しなければいけないというのがベースだったんですよ。それはいろいろな人の思惑が入っているのですけど、一つは、当面正面から出る議論と同時に、やはり地方住民も受益と負担という観点で、何か市長なり県知事にこういうことをやってもらいたいと言うならば、自主的な財源について、場合によっては負担は増えても構わないよというふうな決断ができるような、一方的に補助金とか交付税で国から金が流れるのではなくて、ということも必要なので、地方自治の原点である地方住民のそういう受益負担論についての自覚を促す意味からも、課税自主権というのはこの際強調したほうがいいのではないかという議論だったと思います。いまでもそれは全然不動なものだと思うのです。

だから、この条文にも書いてあるけれども、将来、いつのことかわかりませんけども、国と地方の税制のあり方について、大議論を巻き起こすことが仮にあるとして、そのときに改めてこの一元化論というのは、場合によっては、具体的な議論のテーマとして俎上に上げるのは至当かもしれないけども、いまの状況下でやることはマイナスが非常に大き過ぎる。両省から若干の説明があったけれども、いまのままで、あとは運用をうまくやってもらいたいというのが私の考えです。

石特別委員

いまの話なんですが、一元化論というのはずっと昔からあって、私も税調に出席すると時折出てくる話で、特に経済界の人が効率という点から言うことが多いわけですよね。確かに、いま河野さんもおっしゃっていたけど、住民サイド、国民サイドからいうと、何も分けて-まさにタックスベースが随分似通っているわけですよ。固定資産税みたいなのは別としまして、所得のベース、法人事業のベース、等々すべて似ていますから、それはやってもいいのだと思うのです、やる気ならね。ただ、やはり流れはいまの皆さんのおっしゃってるのと同じ方向でいってるのですけど、課税自主権であり地方分権であるということで、やはり地域住民の受益と負担という発想を育てる必要があるというふうに、私も基本的には一元化というのは難しいなとは思っているんです。

ただ、付け加えて言いたいのは、国税の職員が大体5万5,000人ぐらいかな、それで地方が8万くらいいて、集めてくる税収の規模からいうと逆転しているわけですよね。見るところ、地方税の担当の方に税のエキスパートは少ないし、それを育てるというムードもない。そういう意味で、おそらくいろいろな制度をこれからつくられるのでしょうけど、私は国税がやっておりますような、国税専門官も含めて、エキスパートを育てるという非常に教育システムがしっかりしていると思います。下から上に上がっていくにつれていろいろなシステムがあって税の専門家は出てくるけど、どうも、これは横で見ているだけで正確でないかもしれませんけど、地方の場合は、そういう意識よりほぼ回した中の一つとして税の畑で官僚の方を育てていますから、やはり僕は弱いと思いますね。したがって、これからあえて課税自主権を言い、地方分権を言うなら、やはり税務行政の効率化、それから人材育成等々で、私はもう少し汗をかくべきではないかと。これがないと、課税自主権といっても持ちこたえられないと思いますね。

松本(和)委員

先ほどから国税関係、地方税の徴収関係一元化についての説明が、あるいは一元化の問題が出ているわけでございます。効率的な問題もいま出たわけでございますが、地方の立場といたしましては、地方税については、自ら賦課し、あるいは徴収し、それによって住民に行政サービスを提供する、これが地方自治の原点であるのではないかと思います。

また、地方団体も自ら汗をかきながら、努力をしながら、地方税の徴収をしているところでございます。また、住民の地方自治の関心が高まることになっているのではないかと思います。さらに、地方税の賦課徴収の現場は、地方団体と住民との重要な接点にもなっているのではないかと思います。

そういうことで、納税者の様々な意見や、また行政に対する不満についての把握、それが地方行政に反映していくことになっているのではないかと思います。徴収について一元化され、地方団体が自ら地方税を徴収しないことになりますと、地方税のこのような役割が果たせなくなってしまうのではないか。自ら財源を徴収しない、他から財源をもらうだけの地方自治になってしまい、使うだけの自治になる。そういうことになりますと、財政運営についても節度が失われてしまうのではないかというような気がしております。

なお、地方税は国税に比べまして、確かにコストがかかっていると思いますが、これについては理由があるわけでございまして、地方税は国税に比べまして、地方団体が自ら税額を計算して課税するという賦課課税方式の税目のウエイトが高いことや、徴収に手間のかかる税目が多いのでございます。また、固定資産税の課税客体は、先ほど説明がありましたのですが、全国で約1億7,000万筆の土地、あるいは約6,000万棟の家屋があるわけでございます。このように課税客体への数が多く、事務の負担が多い現状をよく御理解を願いたいと思います。

平田委員

ちょっとしゃべらせていただきますけども、今後の中央省庁の改革の基本法の中で述べられている「国と地方を通じた徴税の一元化」という言葉は、これ皆さんよく読んでいただきたいのですけど、徴税なんですね。だから、税制そのものではなくて、まさに税金を徴収する申告書がどのように出ていくかとか、税金をどう集めるかとかという部分なんですね。

この徴税の一元化というのは、私は現場におりますので特にわかるのですけれども、ある意味ではもう一元化ができていると思うのです。いままでの長い税務行政の流れの中で、地方の税金と国の税金とが確かに複雑であったのですけれども、いろいろ現場の中で切磋琢磨しまして、随分いまの流れとしては、一元化になって、国民の方には余り不便をかけていないなという気がするのですけども、なぜこういう論議になったのか、かえって現場にいる人間としてはよくわからない。

それから、地方自治のお話の中で「課税自主権」という言葉が非常に最近先走っておりますけれども、これも私にとっては、この前もちょっと申し上げたけれども、税法は全部国会の法律で決めていますから、何で地方税だけが各都道府県や市町村で独自に法律をつくって課税できるのかというと、それはできっこないことになっていますから、憲法条項まで変えなければ、本当の意味の課税自主権というのはないのではないか。

また、いろいろな地方税の範囲内で、目的を持った特別の税金を取れるということになっているようですけども、これも余り極端になりますと、例えば、この県は税金が高いからほかの県へ行こうじゃないかとか、この市は税金が高いからよそへ行こうと。いまだってそういう市町村税や固定資産税で多少の乖離がありますので、「住みにくいまち」とか、「住みやすいまち」なんていう言葉を国民の方は言ってらっしゃる場合があるわけでありまして、基本的に課税自主権という言葉が少し先走りをし過ぎているような気がするのですけど、ちょっとこれは私も不勉強ですから、申しわけないと思いますけれども、そういう気がいたします。

それから、通達関係でありますが、これも、私も開業した当時は非常に通達ばかりが多くて、法律でない部分が税務執行の場に取り入れられるというのは極めて遺憾であるということで、非常に論議があったのですが、いまは随分きちんとした、ほとんど法律と同じような形の通達しか残っていない。何回も何回も改正がありまして、法律とほとんど同じ、例えば言葉としては基本通達というふうなものを含めて、まさに法令解釈のためのガイドラインというものしかいま残っていないというふうに現場では思っております。ですから、さっき御説明がありましたけども、さらに努力をしていただいて、なるべく数を少なくして、複雑にならないようにするということは必要だろうと思います。

佐野特別委員

この話は、たしか去年のいまごろだったと思うのですが、大蔵省と国税庁の分離論というのがあって、そこから発生した問題だったというように記憶をしているわけです。国税庁、大蔵省から分離して、国・地方の徴税を一元化すると、こういう話の流れ、組立てだったと思うのですが、この肝心の出発点の大蔵省と国税庁の分離論が、言ってみればなくなったというのが現状だと思うわけで、そういう意味で、こういう問題がまだ残っていたのかというのが率直な印象なわけですが、せっかくの機会なので、改めてこの問題に関する意見を言わせていただきますと、そもそもこの問題で抜けていたのは、やはり憲法論議だという考えを私は当時から持っておりました。憲法94条で、「地方公共団体は行政を執行する権能を有する」と書いてあるわけでして、徴税権というのは行政権の最たるものの一つであるという解釈に立てば、それを国が言ってみれば代行するというようなことが果たして憲法の規定上許されるのかどうか。むしろ憲法の趣旨をより鮮明にすることのほうが重要ではないかということが第1点。

それから、地方税法の第3条、地方税の租税条例主義というのを掲げているわけでありまして、つまり租税の立法権は、法制上はともかく自治体にあると。立法権が自治体にあり、その執行権は国が代行するというのは、法制上いかがなものか、大いなる矛盾ではないか、等々考えますと、そもそもこの話にはちょっと無理があったのではないか。確かに効率性という面では、納税者のほうの不便・不満というのはあるわけですが、それは執行上の問題としてできるだけ納税者の便宜を図るということで解決していく問題ではないかと理解しております。

それで、地方自治体の課税自主権ということでありますが、課税自主権というのは、立法権と執行権と両方あわせ持ったものであるということで、とりわけ立法権に関して国が地方税法で全部決めているのではないかということが、では執行も一緒にやったらどうだという論拠の一つになっているように思うわけです。次期通常国会でこの点に関する改正法を提出されるということのようですが、私はこの場で一度申し上げたことがあるわけですが、課税自主権あるいは租税条例主義というものをとっていながら、いまの地方自治法は、税に関する条例の可変請求権を禁止している。これを禁止していながら課税自主権を唱えるというのも矛盾ではないか。地方自治法で税率の変更を住民が求める権利、これを保障すべきであるということを改めて申し上げておきたいと思います。

加藤会長

この問題につきましては、これから国会などで-何か新聞によると、2001年と言っていたのが半年ぐらい延びるようだという報道があります。真実は知りませんが、いずれにいたしましても、これからまたいろいろ議論がされていくかと思います。いまここで出ました御意見を踏まえて、事務局からもいろいろと説明をしていただきたいと思っております。

ところで、次の議題に進ませていただきますが、きのう、政府・与党でもって緊急経済対策が取りまとめられまして、税制についても若干の提案が出ております。そういった点について説明をしてもらいまして、そこからまた我々がここで自由討議をしたいと思っております。

最初に、緊急経済対策について、伏見総務課長からお願いいたします。

伏見総務課長

資料の「総23-1の2」というのを御覧いただけると思います。「1の1」は要旨でございます。表をめくっていただきますと、目次が出てまいります。第2章のところに具体的な対策が並んでおりまして、Iが金融の関係、IIが「21世紀型社会の構築に資する景気回復策」ということで、1が先導プロジェクトの実施、それから、次のページで2、3、4と来まして、5のところに「恒久的な減税等」という位置付けになっているわけです。6には財構法の話が出てございます。

この税制の関係でございますが、本文の12ページでございます。5の「恒久的な減税等」ということで、(1)で「個人所得課税について、平成11年から最高税率の50%への引下げ等による4兆円規模の恒久的な減税を行うとともに、法人課税について、平成11年度から実効税率の40%程度への引下げを行うこととし、その具体的内容について結論を得る。その際、地方財政の円滑な運営には十分配慮する。」
それから、(2)で、「現下の厳しい経済情勢に対応するため、景気回復に資するよう、住宅建設・民間設備投資等真に有効かつ適切な政策税制について精力的に検討し、早急に具体案を得る。」という記述になっております。

加藤会長

ありがとうございました。

緊急経済対策では、住宅建設とか民間設備投資等の政策税制についても、基礎的な資料を事務局に用意してもらっておりますので、これを御覧になっていただきながら、説明は省略いたしますが、御参照いただきたいと思います。

続きまして、前回までの総会の議論の中で要求のありました資料について、事務局より説明を受けたいと思います。

田中調査課長、よろしくお願いします。

田中調査課長

前回までに御要求のありました資料でございますけれども、まず、「総23-2の1」「試算」、右側に「未定稿」と書いてあります横の資料を御覧いただきたいと思います。

最初に、試算の仮定が書いてございますが、1枚おめくりいただきまして、1ページを御覧いただきますと、所得課税の実効税率という表で、これは税調の先生方は皆さんもうよく御覧になっていただいております国と地方の個人所得課税の収入階級別の負担を各国比較した表でございます。これに各国の保険料、それから、場合によっては消費課税を乗せて比較ができないかという御指摘がございました。これはいろいろと限界がございまして、完全に自信をもった資料にはなかなかならないわけでございますが、あえて大胆な仮定をおいて計算をさせていただきましたので、御紹介いたしたいと思います。

1枚戻っていただきまして、試算の仮定でございます。日、米、英、独、仏について、個人所得課税と社会保険料、あるいは参考資料として消費課税を加えました実効負担率について試算を行っております。

試算に当たりましては、夫婦子2人の民間給与所得者で、世帯主のみが勤労している世帯のケースを想定しております。これについてはたびたび、またこの標準世帯かという御指摘がありまして、別のケースでできないかということですが、今後の課題にさせていただきたいと思っております。

その上で、所得課税の計算上はいままでと同様でございますが、日本の場合には、子どものうち1人を16歳から22歳、アメリカの場合には子どものうち1人を16歳以下という形で計算をしております。

なお、アメリカの住民税はニューヨーク州の個人所得課税を例にしております。

それから、社会保険料でございますが、これは各国の保険料率等の制度に基づいて試算をしておりますが、日本の場合にはボーナスの保険料率が通常の保険料率と違ったりいたしておりますので、試算に当たりましてボーナスを3か月分というふうに仮定しております。

なお、これは言うまでもないことでございますが、社会保険の場合は、拠出に応じまして給付を受ける仕組みになっておりますので、いわゆる所得再分配等にも配意する税金というのとは制度の趣旨が異なることに留意する必要があろうかと思います。国民年金に加入しないでいる人々については、基礎年金は出ないわけでございまして、そういう意味で税金とはちょっと違うという意味があろうかと思います。

それから、各国の制度ごとにおけるサービスも異なることに留意する必要がございます。例えばアメリカの場合には、一般向けの公的医療保険はないとか、あるいはイギリスの公的医療サービスは社会保険制度をとっていないとかいうことがございますけれども、そういうのを前提に考えなければいけない面があるということでございます。

それから、一番計算の上で難しいのが消費課税でございます。様々な統計の限界がありまして、このように収入階級別に負担を出すというのはなかなか困難を極めます。特に外国の比較までやるということになりますと、外国の場合に例えば消費税、付加価値税には軽減税率がございますし、そういうものをどう反映させていくかというのは難しい問題になってまいります。なってまいりますが、ここでは非常に大胆な仮定をおいて消費課税負担の試算を行っております。

なお、消費課税といいましても、日本の場合には消費税、アメリカの場合には小売売上税、その他の諸国の場合には付加価値税を対象にしておりますので、個別間接税としての消費税は入れてございません。

それから、消費課税の相当額の計算に当たってでございますけれども、それぞれの給与収入からそれぞれの所得課税と社会保険料を引きました可処分所得をまず計算して、そこに消費性向を乗じ、そのあと各国の付加価値税等の負担割合を掛けるという形になっておりますが、この消費性向につきましても、厳密に言えばおそらく各国別でございましょうし、給与収入別に見ましても違いがあるとは思いますけれども、ここは日本の家計調査から取り出しました75%という数字を一律に用いさせていただいております。

それから、各国の付加価値税等の負担割合でございますが、先ほど申し上げましたように、ヨーロッパの場合には軽減税率等がございまして、おそらく厳密には、その収入階級ごとにどういう消費をしているかというデータが必要になりますが、これを持ちあわせておりません関係上、付加価値税収を分子に起きまして、分母に SNA上の民間消費支出を置いて、一律に負担割合というのを計算しております。この計算によって、軽減税率の軽減度合いは反映されているものと考えております。日本の分も同様にこのように計算しております。

いずれにしましても、政府と納税者の関係におきまして、納税者が政府に支払うグロスの税、保険料負担を試算したものでありますから、例えば低所得者に対して政府がしかるべき措置を行っているというのがありました場合には、これはこの中には計算しておりません。

なお、換算レートは、現在、主税局が用いております1ドル130円等々の換算レートを使ってございます。これはいささかいまのレートに比べますとドルが高く出ておりますが、仮にいまのレートで計算すると、もう少し各国の負担が高くなろうかと思うわけでございます。

それでは、中身に入らせていただきますが、1ページ目は先ほど申し上げましたように、税金だけの実効税率でございます。御覧いただきますと、日本の場合には最高税率の高さと、それから、飛出し税率といいますか、最初に適用になります最低税率の低さが反映されたグラフになっておりますし、まだこの段階では、フランスのほうが高所得者の範囲を見ますと日本より低い負担になってございます。

1枚おめくりいただきまして2ページでございますが、これは先ほどの前提で計算しました社会保険料をここに加えた、先ほどの1ページに加えたものでございますが、フランスの場合には保険料が高うございますので、日本に比べましてすべての階層で負担が大きくなっております。

アメリカと比較いたしますと、上のほうでは2,500万円あるいは2,600万円あたりで負担の逆転が起き、下のほうでは逆に300万円近辺で日本のほうが高くなるという負担の逆転が起きております。これは、アメリカの場合に、社会保険の制度が日本と異なりますので、いささか保険料のあり様が変わってくるというのが背景にあろうかと思います。

それから、その次でございますが、いまの2ページ目は保険料までのデータでございましたが、そこへ先ほどの大胆な仮定を置いた消費課税を乗せたものでございます。余り先ほどと大きな変化はございませんが、ヨーロッパ勢が上のほうにシフトして、日本との乖離が拡大しているのが見て取れるかと思います。この表では5,000万円までとってございますが、下のほうがわかりにくうございますので、次の4ページでは半分の2,500万円までとって同じデータを見てございます。

御存じのように、家計調査によりますと、日本の場合、夫婦2人世帯で見ますと、約80%の世帯が 900万円の収入までの間に入っております。あるいは90%の世帯が1,230万円までの収入の階級に入っておりますので、大半の国民という観点で見ますと、この表が一番わかりやすいのではないかと思われます。

5ページ以降は、社会保険料、消費課税を所得課税と分けてそれぞれの国に見ております。5ページが日本、6ページがアメリカ、7ページがイギリス、8ページがドイツ、9ページがフランスということでございます。

10ページ以降は、最高5,000万円の収入までとった同じデータでございますので、省略させていただきます。

なお、一番最後の15ページ、16ページには、負担率ではございませんで、負担額で、これは日本だけをとっておりますが、所得課税、社会保険料の分を額として掲示しております。

加藤会長

ありがとうございました。

なお、水野忠恒委員と和田委員より要求のありました資料につきましては、お手許に配付されておりますので、適宜御参考いただきたいと思います。

ただいまの事務局からの説明を参考にいたしまして、本日の本題であります恒久的減税、政策税制の自由討議を行いたいと思います。まず御意見のある方からどうぞおっしゃってください。

河野特別委員

きのうの政府の決定を見ていて、やはりちょっと違和感があるのは、内閣ができて一番最初に決まったのは、法人税と所得税の大まかな減税の構想だったんですよね。爾来、8、9、10、11だから、4か月たっているんですね。きのういろいろ書いてあるのは、その後の状況変化の中で決まったものが書いてあって、一番最初に政府が決定した「恒久的」か「恒久減税」か、どちらにしても、その内容の詰めというのがいままで行われてこなかったわけですね。一番最初に決まったやつが、実はいまの段階でさらに宙ぶらりんになっている。そのことがいろいろな形で不満なり批判なりを招いていることは事実ですよね。

それで、僕は2回にわたって自治省と大蔵省の方に、何かもうちょっと突っ込んだ論点整理みたいなものを出してもらいたいということをお願いしたら、この前のときに、たしか大蔵省主税局長から、「実は大臣から臨時国会前までに両省で打ち合わせをせいという命令が下ったのでやります」という話だったんです。自治大臣は前からおっしゃっていたからね。それなら、あれからもう1週間以上たったのだし、何がしかの論点の整理なりのものが浮かび上がっているのではないかと思うので、ぜひ、どこまで来ているのか教えてもらいたい。

金融の問題のときには、何人かの国会議員の方が、大蔵省だとか、日銀だとかとは別に自分でスタッフを集めて、新人類と言われたけども、法案作成その他についてリードをとったことは事実なんですね。ところが、税金の今回のことについては、各党それぞれおっしゃっているけども、個別の代議士からは全体をまとめきるような構想なんか出るわけないんですよね。ここはいいも悪いも、とにかく事務当局が地財計画なんかを全部頭に入れて、何か役人が前面に出て、前面ということはないが、とにかく素案をつくるという段階では、出てもらわなければ我々だって議論ができないんですよ。注文は山ほどつけることは可能だけども。というわけで、とりあえず、どういうふうにいま進捗しているか教えてもらいたい。

尾原主税局長

まだ具体的な考え方を明らかにできないということで、本当に申しわけなく思っております。連日、大蔵省、自治省の間で休みなしで現在協議をやっているところでございますが、主な検討課題を整理してみますと、3つぐらい税の分野であるのかなと思っております。

1つは、個人所得課税の分野でございますが、最高税率を65%から50%に引き下げるということになっておりますが、所得税と個人住民税、この2つの間でどう取り扱うのかというのが1つでございます。

それから、いまの税率引下げを含みまして、定率分を合わせて減税額4兆円ということになっておりますが、この4兆円という減税額を国・地方でどう扱うのか。

それから、法人課税の問題でございますが、実効税率引下げ40%程度に引き下げるということになっております。これを法人税と法人事業税・住民税との間でどう扱うのかという問題がございます。

さらに、昨日の緊急経済対策にもございますが、これらの恒久的な減税に当たりましては、地方財政の円滑な運営には十分配慮するということになっておりまして、地方財政措置を具体的にどうするかというのも検討課題でございます。これはちょっと税とは若干離れる面もございますが。

いずれにいたしましても、この問題につきましては、前回申し上げましたが、臨時国会までには基本的な考え方について両省間で合意を得たいと。国会で明らかにきちんとできるようにしたいということで、冒頭申し上げましたように、事務当局間で現在連日協議を重ねているところでございます。そういうことでございまして、きょう、具体的な内容をここでお話しできる状況にはないのを、まことに申しわけなく思っておりますが、この点、御理解いただければと思っているわけでございます。

なお、当然の話でございますが、税調の委員の先生方から、毎回様々な御意見をいただいているところでございます。きょうもいただけるものではないかと思っておりますが、政府税調での議論を踏まえながら、今回の減税、わが国全体の景気回復、経済再生を行うことが急務であるという中で実施する減税であるということ、あるいは国税・地方税の性格など、税制のあり方を検討しながら協議していく必要がある問題である。さらには、国・地方ともに、過去に例を見ないほどの大変厳しい財政事情、税収動向でございます。こういう点に留意しながら、税務当局だけではなしに、主計局、財政局といいましょうか、いわゆる財政当局も交えて、ただいま申し上げました期限に間に合いますように、引き続き両省間で精力的に詰めを行ってまいりたいと思っているところでございます。

河野特別委員

一応、らしい答弁だけども、ほとんど中身がないんですね。それはいま進行中だから、それ以上のことをここで子どもみたいに注文をつけようとは思わないのですが、私は前回、たしか地方の自治体のほうも何がしかの分担をやるのが至当ではないかということを個人的には申し上げました。ただ、地方団体の方は、自治省のOBから各自治体の市長に至るまで、一斉にそれは極めて困難だということをるる言われた。それはよく知っています。そういう御意見があることも客観的によくわかります。

結局、8月に政治決定したのを、いまのお話を聞いていても、結局のところ、臨時国会の前にまた政治決断が行われるのだと思うんですよね。その政治決断が行われる前に、我々のところに素案が出て、ないしは自民党のあれに出て、それで決まるというよりも、やはり両大臣がこれは政治決断をするということがあって、細部にわたる議論はあるかもしれないけど、ことになるのだろうと思うんですね。それがいいか悪いかということは、なかなか議論のあるところだけども、いまはこういう政治決定主導の世界だし、異例な事態でもあるから、それはそれでわかるのですが、一つだけ、事務当局が論点を整理するに当たって、何回も繰り返したことにも関連しますけども、今度の決断が、これは加藤会長がいつもおっしゃっているけども、先々、我々が基本的に考えているような、税法はこうあるべきではないかというのを持っているわけです、漠然としているけど。それと全く矛盾して、どうにも継ぎようがない、ということだけはせめて避けてもらいたい。その範囲内でぎりぎりの折衝をやっていただきたい。

中西委員

我々経済人の立場から、この緊急経済対策は大変な関心を持って受けとめているのですが、これを読みまして、基本的な緊急経済対策の考え方として、景気回復への、[1]即効性、[2]波及性、これが出ているんですね。これは非常に私は大事なことだと思うのです。

かねがね私はこの問題に対して、即効性、波及性があって、経済を再生さすための打つべき手は、実体経済に一番そういった効き目のあるものは、土地を含めた住宅市場を政策減税で刺激すべきであるというのが私の一貫して言い続けていることでございます。

これについて、その手法がいろいろ考えられるわけですが、この「緊急経済対策」の3ページで、IIの「21世紀型社会の構築に資する景気回復施策」として、2.に「生活空間活性化策」というのがありまして、これはわが意を得たりということで、この間から申し上げていることですが、この中の丸の土地住宅の促進、1兆2,000億円程度ということで、1.住宅金融公庫の融資の貸付金の引下げ、融資額の大幅拡充、住宅ローン返済困難者対策の着実な実施、広くて良質な住宅の整備促進等、まことにこれはごもっともなのですが、私をもって言わしめれば、これは一言で言うと、在来型の仕組みでこれをやろうとしてござるのですね。どうも発想の転換が私をもって言わしめればできていないということで、この住宅金融公庫の融資は、すでに住宅金融の5割を占めるほど、いうなれば官の金融で行われておる。もっと民間の金融機関のローンを使えるような仕組みに切り替えるようなことをやらないと、いまは住宅金融公庫は史上最低の金利になっていますが、ほとんど利用者が出てこないというような状況ですから、この辺がどうも在来型の考え方だと。それから、融資額の大幅拡充ということも、これもいまひとつ在来型のただの拡充になっている。

だから、私はこの間から、アメリカ型の、住宅ローンの利子を全額所得から控除するという制度をやるのが一番効果があるのではないかということを申し上げているのですが、これに対して、先般からいろいろ反対論もあるわけで、特に金持ち優遇云々論は、前回これは申し上げていますから、今回は申し上げませんが、あと3つほどこの住宅ローン利子控除制度に対する反対論があるのです。この間も某シンポジウムで私この話を申し上げたら、あるエコノミストから、いま銀行の不良債権と担保不動産の処理が終わるまでは地価が下がり続けるから、したがって、こういった住宅ローン減税をしても、住宅を買わせるのはかえって傷を深くすることになるから、よろしくないのではないかと、こういう御意見があったんです。

私はこれに対して反論をしたいのですが、この批判の前提が必ずしも私は正しくないと思うのです。どういうことかというと、銀行の担保不動産になっておるのは、主として商業用地なんですね。住宅地とはかなり別の動きを本来商業用地はするわけでして、土地というものは立地によって価値が異なる財でございますから、単なる総量の需要供給では予測できないと思いますね。ですから、この本格的な住宅ローン減税策によって、住宅需要が単に低所得者の一次取得者だけではなくて、いまローンにあえいでいる、すでにローンを持っておる高所得の買換え層の需要も喚起されれば、住宅地の地価も当然下げ止まってくるわけですから、そういうことに貢献するだろうし、いずれにせよ、すでに住宅ローンを持っている人の負担を軽減して、消費を刺激するという効果の部分については、この批判は私は当たらないと思うのです。要は、この制度によって、住宅市場が刺激されて、所得や消費が少しでも上向いた場合に、税負担を軽減するためにこの制度を一層使おうという誘引が当然働くわけですから、そういう好循環が生じるという点が非常に重要な点であって、これで経済が立ち直って、しかも底を打つ。こういうことになるわけですから、この批判は当たらない。放っておいてデフレが止まるものでもないと思っています。

それから、第2の反論というか批判があるのですが、これは、この制度でローンをするメリットはあるのだけれど、低所得者が大きなローンをしても、例えば低所得者が5,000万円のローンを組んでも、高額所得者が小さなローン、例えば3,000万円を組んだ場合よりも、そのメリットが小さくなる。これは不合理ではないかと、こういう批判があるんです。

私はこれは、例の累進税率が一定のところへ来るとボーダーラインが来て、階段がどんと上がりますよね。あれはその所得が一定のところまで下がるとどんと下がりますから、この仕組みが作用しているわけですが、これを多分この人は指摘していると思うのです。これは一理はあるのですけど、この制度はどの所得層でも、その人がそもそもより多額のローンをすれば、それだけメリットが大きくなるよというインセンティブを与えるところに狙いがあるのであって、異なる所得層の異なった額のローンに対するメリットを比較するということは、本来、論旨としてちょっと的外れではないかと私は反論したいのです。

いつの場合もこういう活力を刺激するような意見が出ると、必ず誰かが水平的な平等論を持ち出して、結局、一律の税額控除といった非常にインセンティブに欠けるような税制のところでぐじゃぐじゃとごまかされる。そうなると、経済の活力は私は出てこないと思います。だから、やはりこの際は、所得税の日本の累進税率の高さもやっとここへ来て調整が言われ出した。というのは一言で言い方を変えると、努力した者が報われるという税制、要するにそれが経済の活力を持つ税制ですから、いままではなるべくフラットに、平等に平等にということで、絶えずそれを持ち出すと、これはいつの場合も非常に経済活力にインセンティブを与えないような税制になる。日本はいまはそっちのほうが行き過ぎているわけだから、私はそうすべきだと。これが2点です。

それから、これは主税局の方がおっしゃる意見だと思うのですが、この住宅ローンの利子を所得から控除するということをやると、食費とか衣料費とか家賃などと同様に、これは所得処分の一部だから、所得から控除することは、そもそも所得税制というものの基本に反するのではないかと、こういう反論があります。

これも私をもって言わしめれば、そもそも現行の所得控除は何の原則もないのです。やたら租特がいまありますけれど、原則はないに等しいわけですから、これは本来議論の対象にならないのではないかと。だから、新しい制度のもとでは、申告制を前提に何を所得控除の対象にすべきかという議論をこれからする必要があるのであって、私は基本的には今後ホームオフィスなんかがどんどん出てくると思うんですね。それから、パソコンなんかも、自宅に皆1人1台持って、どんどん自宅で職業訓練なんかもやるというようなことになってくると、そういった基本的に個人の投資の費用をやはり所得から控除できるようにするのが、今後の社会的な観点からも非常に望ましいわけであって、そういった個人をベースとする消費や投資の拡大、単に企業だけでなくて、個人をベースとする消費や投資の拡大という新しいビジネスの創造につながるような税制に今後組み替えて、考え方を変えていくということをすべきではないかと。

だから、これからはこういう在来型の日本の税制の根本的な基本のところの税制哲学を再考するきっかけにこの住宅ローンの問題、政策減税を打ち出していくべきであろうと、こう私は考えているわけです。

加藤会長

ありがとうございました。

住宅減税については、きょうなるべく議論をどんどんいただきたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思うのですが、その前に、先ほどから手を挙げておられた竹内さん、どうぞ。

竹内委員

所得課税のこれからの方向性といいますか、その議論について、きょうはいろいろ税率及び実効税率の表を見せていただきましたが、ここで税調として、これからの所得税減税の姿をどう描くかということについては、だんだんあいまいになってきまして、ほとんど哲学がないような税制論議になっているので、ちょっといくつか申し上げたいと思うのです。

まず、景気対策の中で出てくる4兆円規模の「恒久的」というこの言葉が非常にまやかしもので、総額が最初に決まっていて、これをどう分けるかという議論を延々とやっていても、日本の税制としての姿というものが出てこないんです。やはり本当に議論したいのは、日本の税制の姿をきょう見て非常に感じたのは、税率という問題と実効税率の乖離が日本の場合はものすごく大きい。つまり、税率は65%かかっているのだけれども、実効税率は3,000万円ぐらいの方を見ますと33%程度に、すごく下がるんですね。アメリカなんかに行って、「日本の税率はものすごく高いじゃないか」と。だけど、「もしあなた3,000万円稼いでいたら、日本と全く同じなんですよ」ということを言ってもわかってもらえないわけです。つまり実効税率を正確に世界的にわかっている人はほとんどいないわけで、日本の税率はやはり最高税率65%で、累進性が強い税制だということが世界へのメッセージとして伝わっているわけで、この乖離をどうやって埋めていくかというのをきちっと議論していただきたいなと思うのです。

つまり、なぜこういう実効税率と税率の差が出てきてしまうかというと、日本の課税ベースがぐちゃぐちゃだからなんですね。つまり、私なんかは単身者と同じ税金を払っていまして、最低課税所得が100万円ぐらいなんです。だから、ちょうどイギリスと同じような感じで、最低課税水準が決まっているわけで、私にとっては非常に税率は高いと感じているわけで、1人の世帯の方が日本の税率を見ると、やはり高いという欠陥も出てくるわけです。2人世帯で、2人の子どもで、この世帯で、なおかついろいろな控除がたくさんくっついている、この税率の考え方をやはり一旦やめていただきたいと思うのです。まず単身者で比較していただいて、それでどういう結果になるか。いろいろな扶養者控除とか配偶者控除で持ちあがってしまって、実際は安いんですよと、こういう言い方はだんだん世界的に通じない形になってきているのではないかなという感じがするのです。本当に必要な人には、手当とかそういうやり方があると思いますし、働けない人には生活保護的な手当もあると思いますけれども、こういう実効税率で見ると高くはないですよという、この論法はもはや通じないという感じがするので、課税の最低限というのですか、この議論を小渕政権はすごく嫌がっているのですけれども、税調としては、いくつか課税最低限の議論を、きちっと、どこまで変えれば最高税率65%を50%ぐらいまでに税率として変えられるかという、このシナリオをぜひ描いていただきたいなという感じがしております。

あと、利子ローンのお話。中西さんの、ぜひ住宅減税とプラスアルファしてというお話を聞いていまして、経済戦略会議もこの利子ローン控除というものを、一つの政策減税の頭に置きたいという考え方を持っていまして、私も一応統一戦線の立場からいくと、余り疑義を挟める立場ではないのですけれども、利子というものの考え方がこの世の中の変動金利の中で、どの程度はっきりと、どこまでが利子で、どこまでが本当の住宅の値段であるのか、どこまでを控除することを利子ローン控除と言っているのかというのが、非常に不明確なんですね。では家賃は全部控除なのかとか、そういうような議論からいきますと、利子ローンというものの考え方が、実際の運用上可能なのかどうかということについては、アドバルーン的に言うのは簡単なのですけれども、きちっと議論していただきたいなと。さっき私が申し上げたように、日本の課税ベースはぐちゃぐちゃだという段階、その問題をかんがみましても、きちっと課税ベースに関わってくる問題なので、課税最低限に関わってくるようなテーマなので、ここでまた最高税率65%にしておいて、「いや、利子ローンをやりましたので、最高税率の方はけっこうお得ですよ」みたいなことを言っていても、やはり国際的なマーケットでは通用しないんですね。最高税率をきちっと外から見てもわかるように下げるには、課税最低限をいろいろな課税ベースをぐつぐつとくっつけるのではなくて、きちっと決めておく。これがどういうパターンであっても、ここまでですというのをきちっと決めていただいて、その上で最高税率を下げるなり何なりして、そういう議論をしないで、政策減税だということでやっていただいても、余り効果はないと思います。

それから、消費を活性化するために、所得税減税をするのだという発想法も、これはケインジアン的な需給ギャップを短期的に埋めるために4兆円という数字を出してきていると思うのです。ただ、こういうふうな短期的な政策をベースとした総額の考え方というものが、本当に中期的にきちっと整合性が取れているかというのは、全く誰も計算していません。ですから、こういうことをやっていて、日本の消費が増えていくかどうかなんてわからない状態でやるのは非常に危険だと思います。私は個人消費は余り増えないと思います。むしろ本当に必要な消費というものが隠れている分野をきちっと描き出す。特に医療・福祉ですとか、そういう本当に出てくるべきニーズが実際にマーケットに出てこないような仕組みそのものを変えない限りは、単なる税制上の問題で景気対策を延々とやっていくというのは、短期的にはいいかもしれないけれども、余り通用するようなものではないと思います。

ですから、やはり所得税減税については、みんな政策減税みたいな発想になっているのだけれども、少数意見として、日本の所得税はこういうふうになってほしいというのをきちっと出していただきたいし、単身者でまずベースで考えていただいて、どの程度の課税最低限にすればいいかという議論をきちっとした上で、なるべく実効税率と税率の乖離が少ないような形で描き出すというのを、一つのポイントにしていただきたいと思います。

吉田特別委員

ぜひ消費税について一言申し上げてみたいと思うのですが、御承知のとおりに、先般来、大手スーパーが消費税還元セールというのをやりまして、きのう、きょうのマスコミ報道によれば、大変これが好評で、軒並みに売上高が前年同期に比べて30%から60%増加したと報ぜられているんです。これが本当に冷え切った消費者の心理を揺り動かして、そして消費性向を促進する効果があったのならば、これは経済緊急対策として消費税率の引下げも検討すべきではないかと思うのです、が、ここが大切なのですが、実はそうではなくて、近隣の商店街等の犠牲のもとに販売促進効果を得ているのだということであれば、実態は私よくわからないのですけれども、これは問題だと思うのです。

それはなぜかというと、私、きょうここに「消費税の転嫁と独占禁止法についての手引」という-公正取引委員会が消費税導入のときと、さらに5%に引上げのときに、わざわざこういう手引をつくって、これをまいて、我々もその手引に従って業者指導をしているんです。それによりますと、こういうことを言っているんです。「当店は消費税をおまけしています」、あるいは「当店は消費税額分を値引きします」、あるいは「消費税は当店が負担します」、こういう具体例を挙げながら、こういう表示は景品表示法上問題になるおそれがありますよと、こう言っているんです。

実はこれとの関連で、今回、大変消費者が歓迎されておることですから、私は荒立てて言うつもりはないのですけれども、今後、こういう消費税還元セールというような商行為が横行するようだったら、これは消費税の持つ逆進性に加えて、中立性を欠く、私はこういう欠陥税制だと思わざるを得ないのです。

そこで、私はこの機会に、消費税というのはしばしば言われている将来の高齢化対策ということから見て、年金だとか社会保障等の財源に充てるための福祉目的税にしたらどうかという意見もありますよね。私はもしこれが福祉税だということに姿が変わっていけば、まさか福祉税還元セールなんていう反社会的な行為はなくなるのではないか。同時に、そういういう目的であるならば、消費者も嫌税的な心理が緩和していくのではないかと。そういう意味合いで、恒久減税、緊急対策を絡めながら、この問題は避けて通れない。だから、ぜひひとつ政府税調としても、将来の消費税の中にこういう問題も含めて検討すべきではないかということを、私はやはり提言していくべきだと思うのです。

それから、もう一つ、いま法人課税減税論が出ておりますね。結構なことだと私は思いますけれども、私は将来の日本の少子・高齢化社会というものを見つめたときに、そこで問題になるのは、雇用と社会保障の問題が出てくるだろう。そういうときに高齢者の方々を厄介者、邪魔者扱いにするのではなくて、こういう方々に自分の自己責任、自己選択、こういうことで活動できる範囲を広げるように税制も配慮してやったらどうかと。例えば、高齢者仲間で企業を立ち上げていったようなときに、それなりに税制上の措置をするとか、あるいは逆に所得税の中で、高齢者向けのいろいろな税対策、控除額を減らす意見もあるけれども、私は逆にこういうもので誘導しながら、自立していく高齢者というものを増やしていく、これがやはり将来の日本の経済を支えていく底辺を広げていくことになるのではないか。こういう意味も兼ねまして、抜本的税制改正の中にそういうものも見据えていただければ私はいいのではないかと思います。

もう一つ、法人税の減税40%という意見は、私は反対するつもりはありませんけれども、しかし、所得税のほうも将来はその線に向かっていくべきではないかなと、こう思っております。なぜならば、これは法人が得か、個人が得か、というような論議が私はなくなっていくべきではないかという気がしていますので、それがまず1点。

それから、もう一つは、ここでは相続税の問題は話題になっておりませんけれども、相続税もやはり所得税率の軽減に合わせて税率を改定していくことも視野に入れておくべきではないかと、私はそう思っております。

和田委員

2点質問いたしまして、あと意見を申し上げたいと思います。

1点は、前々回に私が、標準家庭というのがこれを一つだけを取り上げるのではなく、いくつかの例をとっていただきたいということで、きょう示していただいておりますが、これの2番目、3番目、単身者は別ですけれど、これは両方とも配偶者は課税対象者ではないわけですね。ちょっとそこのところ確認させていただきたいのです。

それともう1点は、私だけが知らないのかもしれませんが、いままで税制の議論とか答申の文章の中で、「恒久減税」とか「恒久的減税」という言葉は、使われなかったのではないかなと思うのですけれど、これからはこの「恒久的減税」あるいは「恒久減税」、それに対比してというのでしょうか、「政策減税」「特別減税」「一時的な減税」とか、いろいろな言葉が出てきているのですけど、「恒久減税」という言葉が出ていると思ったら、今回ははっきりと文章として入っておりますので、その辺のところをちょっと伺いたい。

以上、質問は2点です。

それから、意見というよりも、実はこの12日、13日と全国から消費者が集まりまして、1 年に1回あります全国消費者大会というのを開いております。そして、食糧の問題とか、消費者契約法の問題とか、金融の問題とか、それぞれの分科会でやりまして、私は税制の分科会に入りまして、その中での決議が3点ございます。

その1点目はやはり消費税率で、もう長々と申し上げませんけれど、消費税の税率引下げ、それから、食料品の非課税、それと所得税・住民税減税によって、すべての世帯で今年度より増税にならないように。定率減税、いま言われておりますところですと、どれぐらいでしょうか、1,000万円あるいはもうちょっと下でしょうか、のところから下は増税になるのではないかというようなことが言われておりますけれども、その辺の懸念がありまして、懸念というよりもはっきり出ていると思いますけれど、こういうことが1点目。

それから、2点目につきましては、税金の使い方として、公共事業について、事業の必要性、効率性、環境への影響など、多面的に検討して、見直しや中止を進める。それから、あとは行政改革をきちんとやって、歳出の抜本的な削減を行う。

それから、3点目は、当面の減税の財源として赤字国債ということが出ておりますけれども、今後の景気回復局面も想定して、財政再建をどのように進めていくのかということの考え方をきちんと示してほしいということを出しております。

そして、消費税が導入されたときからいまに至るまで、消費税がどうやって使われているのだろうか。先ほどからお話が出ていますように、その当時、「高齢化社会に向けて」とか、「に向かって」とか、そういう言葉が使われていたんですね。もうずっと言い続けておりますけれども、その辺のところで、高齢者社会に向けてその財源が使われる、別に目的税というところまでは捉えていないのですけれど、そういう期待が非常に大きかったのだけれども、歳出を見てみると、むしろ社会保障費の伸びというのはほとんどなくて、防衛費あるいは公共事業費、それからODA、そこら辺のところの伸びが非常に大きいということがはっきりしておりますので、その辺のところで、やはり消費税に対する考え方、これはいま目的税ということも言われておりますけれど、単純に目的税にすればいいということではなくて、総合的にもっと考えていく必要があるのではないかと考えております。

田中調査課長

きょう、資料で「総23-2の3」というのをお出ししております。1枚紙でございます。説明は省略させていただきましたが。『日本と主要諸外国の所得税の課税最低限(未定稿)』ということで、御質問は、一番上にあります夫婦子2人、あるいは2番目の夫婦子1人、3番目の夫婦のみ、というような夫婦が前提になっている場合に、これは共働きの世帯なのか、それとも、どちらかが働いている世帯かということでございますが、この計算上は、片一方、夫か妻が働いている場合を前提に計算してございます。

それで、では仮に共働きの世帯の場合にどういうふうに考えるべきかということでございますけども、これは一番下に単身者という欄がございます。控除の関係がございまして、これを単純に2倍するというわけではないわけでありますけれども、そういう意味で、単身者が2人いる場合、働いている人が2人いる場合に、家計全体としてどう見るかという見方みたいなものが、それをどういうふうに見るのかというのは、何と言いましょうか、2人働いているということをもって、では2人の合計の課税最低限みたいなもので計算するのかどうかみたいな、若干頭の中が整理できない段階だったものですから、この表上は、2人いる場合のデータは片働きというふうになってございます。

尾原主税局長

それから、恒久的減税、「恒久的」というような、あるいは「恒久」という言葉が、過去用いたことがあるかというお尋ねであったかと思いますが、税制調査会等の答申では、これまでなかったと思います。

いま先生おっしゃられましたように、一時的な特別減税に対比する政治的な意味合いも含めたところでの恒久ということであったのかなと思っております。つまり、いま使われておりますのは、一時的な減税であれば、どうしてもそのときだけ消費が拡大するけれども、長続きしないというようなところから出てきたのものであって、今回の恒久的減税といいますのは、いわば別の法律を出さない限りはそのまま続く税制であると、こういう意味かと思っておるわけでございます。

石特別委員

きょう、事務局のほうから、未定稿ながら試算を出していただきまして、それを非常に興味深く拝見したのですが、ちょっと細かい点をいろいろお聞きしないと、にわかには判断できないのですが、しかし少なくとも、所得税のみならず社会保険料あるいは消費税を乗せたとき、2,500万円までという比較的身近な所得階層から見ると、日本はやはり一番低いというところが一つポイントなんだと思うのです。いろいろ解釈はあると思いますけど、これは事実だろうと思いますし、そうなると税とか国民負担とかということで、いうなれば政策手段としてこれをほかの国並みに使えるかというと、本来ならば使えないだろうと。そういうのがきょうの試算の中から出てくる本当の姿だろうと思います。これから高齢化が来て、財政需要が増えてなんていうときに、こういう負担面での政策手段というものは、これ以上下げられないというのが普通の常識的な判断だと思いますよね。

さはさりながら、いま要求されているのは、緊急経済対策でもわかりますように、何兆円規模の税でありまして、私、それもいまの状況から見ると、全面的に否定できないと思いますから、そこで何をすべきかということが一つ問題になると思いますけど、税制には本来の原理原則があって、それを余り逸脱して、今景気が悪いからといって、何でもそっちのほうにシフトして、いうなれば本体と臨時異例的なものとがごちゃごちゃになるのを、僕は非常に恐れますね。

いま例えて言うなら住宅関係のローンのところですけど、ローンを控除するという話になると、いうならばこれは政策減税として扱うしかないだろうと思いますね。これを税の本体として扱うのは非常に難しい。というのは、家計に住宅サービスの生産をさせると仮定するならば、減価償却もいいし、利子もいいし、企業と同じようにコストを認めてやって、そのかわり生産の果実である帰属家賃みたいなところに税をかけるというなら、コンシステントなんですが、片一方だけ取られていますから、どれだけ私、これによって住宅が刺激されるかわかりませんけど、これだけ戦略会議を中心として言われている以上、まあやってみるしかないだろうと、やや冷たい目で見ているのですけど、それが税のほうにはね返って、税の本体を著しく後退させたり傷つけるというような話では僕は困る。例えば、所得控除と税額控除を両立させるなんていう税の理論は僕はないと思いますね。いろいろなところを見ているけど。やるんだったら、どっちか片一方に統一して、金持ち優遇と言われてもいいから、効果を認めて所得控除でやりましょうというなら、それはそれで筋ですけど、なおかつ、税額控除を残してなんていうのは、どうも私は税の理屈としてはおかしいと思います。

それから、竹内さんがさっきおっしゃっていましたけど、実効税率と名目上の法定税率の差というのがこれほどあるというのは、明らかに課税ベースの漏れの問題と、分離課税と総合課税の問題なんですね。だから、そういう点をしっかり押さえないと、いろいろな計算をしても、政策論議がそこから出てこないんですよね。急に景気対策用の税制活用ということで、この辺の本体の議論が飛びぬけて落ちてしまっていますけれども、絶えず税調としては、税の本体の議論というものを置きつつ、テンポラリーな、あるいは臨時的なものについて、そこそこ協力しなければいけないのではないかというスタンスこそ重要で、いま大変だから、何でもかんでも税制で、本体のほうはどうでもいいよという話では、この税調の議論としてもおかしいし、日本の税制はえらく歪みが出てくると思います。

もう1点、法人税のタックスベースの問題は、ちょっと遠のいてしまったのだけれども、税率を下げると言っているわけですから、この間、49点いくらから46まで下げたときには、かなり課税ベースを議論して、レベニュー・ニュートラルをやったんですけど、あのときは税率の引下幅が狭いから、まだ租特を残したり、いろいろな形で、まだまだ本来課税ベースを広げていいところを遠慮したということもないことはないわけですよ。今度は本格的に法人税の税率を下げるなら、私はもう一回課税ベースについて触れて、租税特別措置みたいなところまでいって議論する。それで、残念なことに、法人事業税の外形課税がいま封じられていますが、それは着々とやって、いずれ日の目を見るような形の議論にしていかなければ悪いと思います。

最後に1点、吉田さんがお出しになった消費税のいまの還元セールを含めて、この問題は私は非常に重要だと思うんですよ。かつ、凍結案も出たり、ゼロ税率が出たり……。消費税を今後どうするかという議論は、いずれ集中審議的に、政治問題が絡んで難しいかもしれませんけど、税調でしかとした意見を僕は出すべきだと思いますね。還元セールなんていうので、やや人気取り的にというか、消費税の不人気を煽るような、そういう議論のみが先行しては、やはり安定した財源確保、高齢化といったような視点からの消費税の本来の性格が歪められますから、これは蛇足ですが、最後の消費税については、いずれ機会を設けてもらいたいと、このように思います。

橋本特別委員

住宅ローン利子所得控除制度について、前々回のときにも申し上げたのですが、今回の緊急経済対策でも、「景気回復に資するよう、住宅建設に有効かつ適切な政策税制について精力的に検討し、早急に具体案を得る」というような記述をなされておりますので、前回申し上げたこととほぼ同様な意見を申し上げたいのですが、これの導入の趣旨並びに目的につきましては、1つには、97年以降、住宅着工件数が非常にガタ減りである。98年に入っても、特に後半以降、なお下がる傾向にあるということ。

それから、2つ目は、住宅建設の耐久消費財、あるいは雇用に対する波及効果というものが極めて大きい。一説には、1兆円の住宅をたてると、1.9兆円の生産誘発効果があるというような試算があるくらいであります。また、雇用も非常に影響を受けると。

それから、3つ目は、わが国の住宅ストックのレベルというものが、これまでは主として一次取得者を対象に施策を打ってこられたわけなんです。したがいまして、まだまだウサギ小屋と言われるように質的なレベルが低い。したがって、個人消費の足かせ要因を除いて、景気浮揚させるための一つの戦略分野として、あるいは一種の投資減税というような考え方でもって、この住宅市場を活性化を図るという政策目的は大変有効であろうと思います。

ただ、導入に当たりまして、既存の住宅取得控除制度というのがあるわけなんです。これを拡充すれば、こういうのを新しく入れなくてもいいのではないかという意見もあるし、あるいは併用性については、いま石先生が、税体系から考えておかしいと、こういうような意見があるわけなんですが、こういう制度を入れた場合に、本当に年収とか借入額からどのレベルであれば減税というものがより大きくなるのか、というような実際の計算というのが、まだ私には不透明なところもありますので、そういう具体的な一つの試算のようなものが税当局のほうから出ないかなと思うのですが、いかがでしょうか。

福田審議官

きょう、「総23-1の3」に関係資料をお出ししております。これは、ちょっと表現は悪いかもしれませんが、皆さま方の御議論にできるだけ、中立的であろうとして、1ページから4ページまで、現在の税制の概要のみをお配りさせていただいておりますが、御要望でございますので、次回にでも、どういう資料をお出しできるか、ちょっと検討させていただきたいと思います。

森下委員

冒頭に河野委員からも意見が出されましたけれども、昨日の緊急経済対策の中で、やはり法人税と個人所得税の内容がまだいまのところ示されていないというのが、非常に残念でございまして、ぜひとも、残されている時間もそう多くありませんので、大蔵・自治と当局はもちろんのこと、またこの政府税調としても、何か具体案を早急にまとめて提示していく。

いま国民に、「恒久的」か「恒久」かは別といたしまして、やはり現在とここ一両年、2001年までのこの間の具体的な内容を示していくということが非常に大事ではないかと思うのです。いますぐそれが景気対策というよりも、やはりこの一両年に、例えば昨日の発表のときに、もちろん法案が通っていませんから、一つの案の状態だけれども、平成11年度はこうなる、12年度はこうなる、2001年まではこうなるよというふうな形のものが、仮に試案の試案でも出ておれば、次回の国会でそれが承認されて、こうなるのだというふうなものがなされますと、本当に具体的に国民一人一人が何か道筋が見えてくるだろうと思うのであります。

昨日もいろいろな政策、対策が打たれましたけど、いま一歩、具体的に、そしてタイムスケジュールが出ないという、このあたりを今後ぜひとも考慮していただきたい。今回もぜひひとつ、法人税の40%程度、個人所得の50%を早く体系的に示していただくということを、またお願いをいたしておきたい、意見を申し上げておきたいと思います。

松尾委員

住宅の問題なのでありますが、現在の住宅取得促進税制を見ますと、現在、租税特別措置の中ではやはり最大規模ですね。6,000億円を超えております。これに住宅公庫に対する利子補給を合わせますと、住宅政策としてはもうすでに1兆円を上回る措置を講じているわけです。私は、この制度を拡充すればいいという考えです。面積制限とか所得制限を廃止しまして、控除期間を長期化すれば、住宅の質の向上を狙いとする建替え需要をかなり促進できるのではないかと思うのです。ただ、持ち家は充足しているわけでありまして、住宅需要全体が景気浮揚の牽引車になるという状況ではないのではないかと思います。

また、住宅ローン利子所得控除制度の税制としての問題点でありますが、前回にも申し上げましたので、重複を避けたいと思います。ただ、現在、貯蓄優遇税制がありますね。この制度を設けると、税制上のバランスは一体どうなるのか。その辺はやはり考えてみる必要があると思います。

また、これは時限立法とするという説も聞いておりますけども、時限立法にするのは事実上不可能なのではないかと思います。高額ローンを組んで住宅を取得する高額所得者ほど優遇されることになる。これは事実でありまして、その辺の問題点があるから、イギリスとかフランスとかドイツは見直ししているのだと思うのです。この利払いがある限り20年でも30年でも控除を受けられるというのは、これはいくら何でも不公平過ぎないかと思うのです。こういう制度を設けますと、私は税制を著しく歪める、それでいいのか、というふうに思います。

塙委員

いま住宅のお話が非常に盛んに言われているのですけども、自動車買換え促進税制というのもぜひ御検討いただきたいと思います。私自身が自動車屋なものですから、非常に言いそびれていたのですけれども、これは立場を離れまして、非常に有効ではないかと思っております。御承知のように、ヨーロッパではフランス、スペイン、イタリアでこれが非常に実効を上げておりまして、しかもいいことには、石先生の御心配になるような税体系の基本を全く揺るがさず、エキストラの対応として景気対策に非常に有効だということなのですけれども、どういうわけか、この自動車という話になりますと、何で自動車屋だけを益するのかとか、需要の先取りではないかということで、なかなか取り上げていただけないのですけれども、これは景気対策としては極めて有効なものだと思いますので、自動車屋の立場を離れて、ぜひ御検討いただきたいと思います。よろしくお願いします。ありがとうございました。

加藤会長

きょう御議論いただきましたが、国税と地方税の問題につきましては、これはいままで議論いたしまして、御意見はまだ尽きないと思いますけども、論点はかなり明らかになっておりますので、その論点については、大蔵・自治の事務当局でこれを煮詰めてもらいまして、そして、しかるべき時期に早い段階でもって出していただきたい。それが法人税の減税問題を早く解決することになりますので、ぜひこれは事務局にお願いしたいと思っております。

なお、来週以降は、これまで出されました論点のあらごなしに入っていきたいと思っておりまして、論点の整理がこれから行われてまいります。きょう出ました御議論ももちろん含めまして議論をしたいと思いますし、また住宅減税につきましては、資料を来週出していただきますので、それをまたもとにして、もうちょっと議論したほうがいいかと思っております。そういうことで、週2回やりたいと思っておりますので、27日と申し上げておったのですが、その前の24日の火曜日、午後2時から4時にも開催をいたしたいと思っております。

さらに、来週は、減税とはちょっと外れることもありますが、負担という点では同じなのですけども、最近、年金問題についても新聞などでは税制の論点が出てきておりますので、そういった点を含めまして議論したいと思っております。そこで、次回は厚生省を呼びまして、そして、年金制度の改革について議論の状況をヒアリングしたいと思っております。そういういうわけで、その上でこれまでの審議で出されました論点のあらごなしに入っていきたいと思っております。

12月に入りますと、原則といたしまして、火曜日、金曜日の2回、12月1日、12月4日、12月8日、12月11日を予定しておりますので、よろしくお願いしたいと思っております。そういうわけで、きょうはこれで終わらせていただきますが、お忙しいところ、どうもありがとうございました。

〔閉会〕

(注)

本議事録は毎回の総会後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、大蔵省主税局及び自治省税務局の文責において作成した資料です。

内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。