第22回総会 議事録
平成10年11月10日開催
〇加藤会長
それでは、ただいまから、税制調査会の第22回総会を開催いたします。
きょうは、議題といたしましては、今まで、国・地方の財政状況などについてのご意見がいろいろありましたので、そのデータを整理いたしまして、きょうお出しするということ。そしてさらに自由討議を行いたいと思っています。最後に、時間が許す限りでございますけれども、中央省庁の改革に関しての税制部門についての議論がございますので、それもご紹介いたしましてご意見を伺いたいと、こういうふうに思っております。
それでは、初めに、国の財政状況について、主計局の寺澤次長から、また、地方の財政状況について、財政局の石井審議官から説明をお願いいたします。
それでは、最初に、寺澤次長、お願いいたします。
〇寺澤次長
主計局次長の寺澤でございます。座ったまま説明をさせていただきます。
お手元に「我が国財政の現状」という資料を配付してあるかと存じますが、この資料によりまして、財政の現状につきましてご説明を申し上げたいと思います。
1ページをお開きいただきたいと存じますが、バブル崩壊後、税収が伸び悩みまして、累次の経済対策を実施いたしました影響等から、現在、多額の公債発行に至っておりまして、財政事情、極めて悪くなっております。公債発行額、平成3年度、6.7兆円が、10年度の2次補正後でございますが、21.7兆円となっているわけでございますが、恐縮ですが、13ページをちょっとお開きいただきたいと存じます。
これは特例公債から脱却する過程、それからバブル崩壊後の過程を少し長く見たものでございまして、平成2年度に特例公債から脱却をいたしました際には、公債依存度が9.5%ということで、一般会計の歳出の財源として公債に依存する割合は1割を切ったわけでございますが、平成4年度以降、累次の総合経済対策を実施して、バブル崩壊後の経済対策に努めたわけでございまして、その対策の規模、事業費でいいますと、累計いたしますと80兆円近くになると思います。その間、対策に要しました追加的な公債発行額は25兆円程度になっておりまして、このトレンドで見ていただきましても、最近の7、8、9、10年というところは相当高い公債依存度になっているわけでございます。
1ページにお戻りいただきまして、下の公債依存度のところは、先ほど見ていただきましたバブル経済崩壊後のところだけに限っておりますけれども、平成10年度予算、当初予算では公債依存度20%でございましたが、2次補正後、26.3%ということになっているわけでございます。
次、2ページをお開きいただきたいと存じます。公債残高でございますが、毎年の公債発行額が相当大きな規模になっておりますので、平成3年度、171兆円の公債残高であったものが、10年度第2次補正後、285兆円ということでございまして、その内訳は182兆円の建設公債と 103兆円の特例公債、赤字公債ということでございます。
平成2年度に特例公債から脱却いたしましたときに、財政制度審議会から、これからの財政運営はどうあるべきかということで、新たな財政運営の目標について答申をいただきました際には、今後、少子・高齢化社会に向けていく際に、後世代に過大な負担を残さないようにということで、公債残高を、当時166兆円でございましたが、公債残高が累増しないような財政体質に持っていかなければいけないというのが財政制度審議会から提言されました内容でございましたけれども、残念ながら、それ以降、100兆円を超える公債残高が積み上がってしまったということでございます。
なお、これは公債残高だけでございますが、15ページを見ていただきますと、公債以外にも国は借入金等がございまして、国の長期債務残高は10年度末で397兆円でございます。うち、普通公債が285兆円ということで、約100兆円の借入金等がございますので、国は大体 400兆円の借金をしているということでございます。
なお、地方も借入金が増えておりますけれども、160兆円ということでございまして、国に対しましては4割程度という状況になっているのかなということでございます。
それからGDPで国の長期債務残高を見てみますと、下の表にございますように、2次補正後、76.4%ということで、これも平成3年度以降、急速にこの割合が高まっているわけでございます。
3ページをお開きいただきたいと存じますが、現在、そのように非常に財政事情が悪くなっておりますけれども、若干視点を変えまして、国の各般の施策を賄う財源構成を税収と公債金収入の関係でお示ししたものが「税収と公債発行額の比較」という図でございます。これは国の税収の中から地方の財源となります地方交付税交付金を除いた額、いわゆる国債費と地方交付税交付金を除いたものを一般歳出と言って、政策的経費と我々は言っておりますけれども、地方へ交付いたします額を除きました国の税収と公債発行額を比較してみますと、平成3年度では43兆円対6兆7,000億円ということで、かなり大きく割合が違っていたわけですが、10年度の2次補正後で見ていただきますと、41.2兆円対21.7兆円ということで、半分強が公債に依存しているということがおわかりいただけると思います。
なお、これは2次補正後の姿でございまして、現在、私ども、どういう実質的な姿にあるかということを申し上げますと、かなり大胆ではございますけれども、ご参考のために申し上げておいたほうがよろしいかと思いますが、9年度の決算におきまして税収が53兆9,000億円ということでございますので、補正後予算額に比較いたしまして2兆3,000億円、土台減となっております。これからさらに10年度の経済見通し、現在、経済企画庁で改訂試算ということで、▲1.8%というお見通しを持っておられますけれども、こういう経済の見通しを踏まえますと、10年度の税収は9年度の税収でございます53.9兆円をかなり下回るのではないかということで、大胆に申し上げますと、6兆円を超える税収減があるのではないかと見られているわけでございます。したがいまして、実力ベースで見ますと、この41.2兆円という税収の柱はおそらく35兆円前後ということで見ておいたほうが確実なのかなあというふうに考えられます。
一方、公債のほうでございますけれども、仮に6兆円の税収減があるといたしますと、その分は公債で埋めなければならないということでございますから、6兆円を埋めるということで、公債発行に頼らざるを得ないと存じます。さらに、9年度の決算、歳入欠陥でございました。その決算調整資金の繰り戻しを考えますと、約1.6兆円を上積みしなければならない。その上に、現在まさに作業しておりますが、緊急経済対策を打つための財源、さらに、例年ございます追加財政需要等々の財源を公債で賄うということにいたしますと、税収が35兆円前後に対しまして、場合によっては公債金収入が35兆円のところへ届く、またはそれを超すということも考えられるような状況にあるわけでございます。
それから下は、仮にそういう実力を考えますと、10年度の3次補正の姿といたしますと、ここには、10年度2次補正後で41.2兆円の税収に対しまして国債費が17.3兆円となっておりますけれども、35兆円の税収に対して国債費が17.3兆円。17.3兆円の国債費はさらに上にいくと思いますけれども、そうなりますと、国債費と税収の関係は、税収の半分を国債費が食ってしまうというような財政事情にあるということがご理解いただけるかと存じます。
4ページでございます。それでは、我が国は他の主要先進国との関係でどういう状況にあるかということでございますが、国・地方を合わせました財政収支をOECDが出しておりますけれども、これで見ますと、米国、それからヨーロッパ諸国はGDP比が大体2%前後の財政赤字でございますけれども、我が国は6.7%。これは政府の推計値でございまして、OECDの数字とは若干違います。この6.7%は実は10年度に一般会計が承継いたしました国鉄、国有林野の債務を除いた財政赤字でございまして、これをカウントいたしますと、6.7%の財政赤字は▲11.7ということになるわけでございます。これは単年度限りの赤字でございますので、それを除いて考えるのが適当であるということでございますが、それにいたしましても極めて高い財政赤字でございます。
それをバブルの崩壊前後と比較しますとどういう状況であったかということでございますが、OECDの数字によりまして1990年を見ていただきますと、我が国の財政収支のGDP比は▲0.7ということで、先進諸国と比べますと一番優等生の状況でございました。イタリアの11.1は別といたしましても、米国は当時3.7ということであったわけですが、一番右の1999年の見通しによりますと、我が国は4.7ということでございますが、主要先進国は、イタリアを含めまして2%台のところにとどまっているという状況で、様変わりということでございます。
また債務残高につきましては、1990年、一番下の表を見ていただきますとおわかりのように、イタリアが104.5で、カナダが71.5、日本が62.6と、高いほうから3番目ということでございますが、そのイタリアも、途中、1994年の125.1を境にしまして徐々にその残高比が低下しておりまして、現在116.1ということで、イタリアが一番高いわけですが、我が国は99.5ということで、もうイタリアに追いつくような姿になっております。
これが先進国中における現在の我が国の姿でございます。アメリカを初めヨーロッパ諸国、財政構造改革、財政再建に努めている中で、我が国は財政構造改革よりも景気対策に重点を置かざるを得ないという状況にございまして、残念ながら、この改善の見通しがまだ見えないというところでございます。
5ページはそのGDP比の推移を我が国の中で見たものでございまして、平成元年度▲0.6だったものが現在▲6.7と、国鉄、林野の債務の一般会計承継を入れますと、11.7ということでございます。概ね3分の2が国、3分の1が地方というような形でございます。下はそれを図示したものでございます。
6ページを見ていただきますと、国と地方の長期債務残高を昭和50年からのトレンドで見ていただいたものでございますが、先ほど申し上げましたように、国の場合には400兆円になっているということでございます。地方と国の当時の50年を起点とした残高の伸びを実線と点線でお示ししているところでございます。
7ページは国の租税収入と地方の租税収入を実質的に配分された後のベースの割合がどうなっているかということを示したものでございます。10年度で見ていただきますと、国の一般会計、特別会計合わせました税収が60.3兆円、地方の税収が39.1兆円でございますが、地方交付税、地方譲与税等を地方に配分いたしました後の割合で見ますと、地方が55.9、国が44.1ということでございまして、かなりの財源を地方に配分している。そのトレンドが50年から出ておりますけれども、徐々に国の割合は小さくなっている傾向にございます。
以上、少し最近の国の事情、大胆な推計も踏まえまして、粗々の財政事情を説明いたしました。ありがとうございました。
〇加藤会長
ありがとうございました。それでは、石井審議官、よろしくお願いします。
〇石井審議官
自治省の財政審議官の石井でございます。よろしくお願いします。
お手元に「地方財政関係資料」というものがあろうかと思いますが、これでできるだけ手短にご説明を申し上げたいと思います。
まず1ページをごらんいただきますと、「地方財政の財源不足の状況」が示してあるわけでございまして、平成10年度の場合は当初に特別減税の影響の8,000億円も含めまして、通常収支の不足を合わせますと、合計で5兆4,000億円の財源不足があったわけでございますが、本年度は税の減収が約3兆円程度見込まれておりまして、全体として10年度の財源不足は8.4兆円という見込みに相なっております。
なお、その下に、最近、この数カ年度の財源不足の状況が出ております。平成8年度が、当初ベースでは財源不足のピークで8.6兆円だったのですけれども、この年は税の増収が若干、7,000億円ほどございまして、むしろ最終的な見込みとしては10年度が財源不足のピークというふうになっておるわけでございます。
それから2ページをごらんいただきますと、地方財政の借入金残高でございますけれども、平成3年度当時は、かなりバブル経済というようなこともあったかと思いますけれども、地方債残高も大分落ち着いてまいっておったのですけれども、その後、減税を相当やりましたり、あるいは、ただいまお話がありましたように、景気対策等のための地方債の増発等もやっておりまして、平成3年度からは90兆円以上の地方債残高の増加というふうになっております。この中の約4割が、この四角の中にございますけれども、減税補てん債ですとか、財源対策債、減収補てん債、あるいは交付税特別会計借入金というような特例的な借入金になっておりまして、大変赤字体質が定着してきたということでございます。
なお、特例的な借入金の中で、赤字地方債でありますところの減税補てん債と、それから全国ベースである意味では実質的な赤字地方債という位置づけも可能な交付税特別会計の借入金が23.8兆円といった状況になっております。
3ページをごらんいただきますと、10年度の特例的な借入金の状況でございますけれども、まず、もちろん公共事業等につきましては、地方債の適債事業でございますので、すでに可能な限り、建設地方債を充当しております。それから交付税の増額は、最近では、国の財政も大変だということで、主に交付税特別会計で財投から借入れを行って対応しているわけでございますが、これは見方を変えますと、個々の地方団体によります赤字地方債の発行にかえて、いわば赤字地方債を全国ベースで発行しているというふうな位置づけもできるものでございます。加えて、特別減税の財源につきましては、これはすでに減税補てん債という、まさに赤字地方債の発行で対応しておりまして、すでに地方債はこれ以上の発行余力がないという状況になりつつございます。
ちなみに、最近、市場重視ということがよく言われるわけですけれども、この四角の中の下にございますように、最近は国債と地方債のクーポンレートの差も急速に拡大しておりまして、ここ数年間、6年ぐらいずうっと国債と地方債のクーポンレートは0.1の格差で推移しておったのですけれども、ついに10月債からは格差が0.5に拡大しまして、11月債でも引き続き、今そういう基調が続いておるわけでございます。
その下のほうは、10年度に、地方自治体は赤字地方債を出してないのではないかという誤解があるようですけれども、先ほども申し上げましたが、ここに挙がっておりますような赤字地方債、あるいは交付税特会借入金のように、全国ベースでの赤字地方債的な位置づけのできるような借り入れも行っているということでございます。
それから4ページをごらんいただきますと、先ほど、地方財政全体のマクロでご説明を申し上げたのですけれども、ご承知のように、地方公共団体は3,279の県と市町村合わせました団体でございますが、個々の個別団体で見ていきますと、この公債費の負担比率というものを私どもは財政の健全性をはかる尺度に従来から使っております。ここにございますように、一般財源の総額、地方税と交付税を分母にいたしまして、分子が公債費に充てられていた一般財源ということでございます。昭和30年代以来ずっと、この公債費の負担比率というのが15%を超えますと警戒ラインだというふうにしてまいったのですけれども、平成4年当時はこの15%を超える団体が1,000団体ちょっと上回る程度だったのですけれども、その後はこの数年間の数次にわたる経済対策、あるいは減税に伴います減税補てん債の発行といったようなことが重なりまして、平成9年度の推計では約6割の1,847団体がこの15%、警戒ラインを超す。10年度はおそらく、まだ数字は出ておりませんが、2,000団体を超すのではないかと心配をしておるわけでございます。
それから5ページにまいりまして、これは個別団体の財政の健全性をもう一つはかります物差しで、人件費ですとか、社会保障、福祉等の扶助費、それから公債費を分子にしまして、分母はやはり地方税、交付税といったようなもので割って、経常収支比率というものを出しております。これが80とか90とかいう水準になりますと財政硬直化が著しいということになるのでございますが、ごらんいただきますように、この10年ほど非常に高くなって、急速に悪化しているということがおわかりいただけるかと思います。
それから6ページでございます。これは比較的最近まで財政状態がわりあい良好といいますか、いわば富裕団体だと言われてきたような大都市、大府県の状況の一端を見ていただく表でございますけれども、10年度の当初予算におきます地方税の見積もり額に対しまして、いずれも、今の時点で、当初予算に比べて1割内外の税収不足が見込まれております。
なお、むしろこの幾つかの団体からはもっと大きくなりそうだという話が出ておりますが、これは公に各自治体で発表した数字だけを挙げておるわけでございます。
なお、その右側にございますのは、平成9年度の決算をベースにした場合に、標準財政規模の5%、赤字額が超えますと財政再建団体になってしまうというラインがここに示されておるわけです。例えば神奈川県さんですと520億円、愛知県さんですと530億円といったふうになっておるのですけれども、ことしの税の減収だけでその2倍近いものがあるという状況になっております。
それから7ページをごらんいただきたいと思いますが、最近の地方財政の事情、特に11年度がどんな様子になるのかということを今の時点でお示ししたものでございます。
まず地方税の10年度と11年度の比較で見ていただきますと、特に地方税につきましては、大体昨年の38.5兆円という地方財政計画の当初ベースの数字を基軸にして考えますと、まず発射台が、先ほど申し上げましたように、3兆円ほど落ちるということがございます。それから地方消費税の平年度化で、0.3兆円ほど、11年度落ちてくるという話ですとか、そのかわり特別減税が終わるわけで、0.8兆円増える。そのかわり、今回議論になっております6兆円を相当上回る7兆円近い所得課税、法人課税の減税をするというお話ですけれども、その内容がどうなるかによりますけれども、こちらのほうは相当大きく影響があるということで、-αとしております。それ以外に、11年度の税収をどう見るか。ことしは経済成長率- 1.8%ということもございますので、ほとんど税収増は期待できないのではないかということで考えております。したがいまして、この地方税は、昨年が38.5兆円でしたけれども、11年度は36兆円-α±βという結果になるわけでございます。
それから地方交付税のところを見ていただきますと、昨年は17.5兆円ということだったのですけれども、ことしは15.4兆円-γという見方にしております。これは国税も相当税収の落ちが大きいわけですけれども、法人税ですとか、所得税等の減収がございますと、その32%は地方交付税の減収になりますので、そういったものの影響ですとか、また昨年の17.5兆円はすでに通常ですと確保できない交付税を交付税特別会計で借入れをしたり、あるいは国にお返しすべき借金を償還繰延べしたりしておりますが、そういった部分をとりあえず除いた自然体でいいますと、これだけ、15.4兆円-γという影響になっているわけでございます。
それから地方債につきましては、今の段階で経済動向もわかりませんので、財源不足を補てんしますための減税補てん債とか財源対策債等、一応落とした数字で挙げております。
それから歳出のほうはどうかといいますと、昨年の10年度の地方一般歳出は、先ほどお話が出ましたように、昨年は財政構造改革ということで、地方一般歳出をマイナスにするという方針がもうすでに決まっておりまして、地財計画ベースでも-1.6%としたのですけれども、ことしは、先生方ご承知のような事情でございますので、この73.3兆円から、社会保障関係費等を初めとして、むしろ非常に当然増経費がかさむのではないかと見て、+δとしております。
それから公債費は今の時点で推計ができるわけでございまして、昨年の12.4兆円に比べますと、少なくとも0.9兆円程度の増になるのではないか。
そういたしますと、右下の財源不足ですけれども、11年度は、今申し上げたようなところを+、-を整理していきますと、昨年が5.4兆円の不足だったのに対して、一番右下の隅ですが、8.8兆円の不足にプラス、さらにαとγは減税した場合の地方税と交付税の影響の額、これはこれからお決めいただくわけですけれども、いずれにしても財源不足が増える。それから±βというのは11年度の税収の、そういった減税要素以外の増減でございますから、これは仮に伸びたとしてもほとんど大きなものは期待できない。それからδは、先ほど申し上げました地方一般歳出の社会保障等の当然増経費、これは国の予算がどうなるかによりますけれども、おそらくかなり増えるのではないか。
というようなことでございまして、全部兼ね合わせますと、どう見ても10兆円をかなり上回る財源不足になるのではないかと、大変憂慮いたしておる次第でございます。
それから8ページをごらんいただきますと、最近の地方財政がどんな状況かということですけれども、財源不足が、この8ページの中ほどにございますように、ずっと大きな数字で続いております。地方交付税法の6条の3という規定がございまして、普通交付税の額が普通に計算した場合よりも1割足りないという状態が2年連続して生じて、3年以降も続くと見込まれる場合には、この交付税法の6条の3で、地方財政もしくは行政に係る制度改正または地方交付税率の変更をするというふうに書いてあるわけですけれども、そういう状態になりましたのが平成8年で、以下、9年度、10年度、引き続き3年度、そういう状態が続いております。11年度も、このままいきますとそういう状態に陥るのは必至という情勢でございます。
8ページの下のほうに、8年度、9年度、10年度と、これは大蔵省ご当局ともご議論をさせていただきまして、一応交付税法に反しないように、何らかの地方行財政制度の改革的なことをやらせていただいておるわけですけれども、来年度は、今申し上げたように、さらに厳しい状況になりますので、どう対応するか、今から大変悩ましい気持ちでおるわけでございます。
それから9ページをごらんいただきますと、よく、お金が足りないのなら歳出を減らしたらいいではないかという話をおっしゃる方もいらっしゃるわけですけれども、この10年度の例えば地方財政計画の歳出を見ていただきますと、全体として87兆円ありますけれども、その相当部分については国の補助事業とか国庫負担事業というものを通じて、地方負担がいわば義務的に出すような形になっております。たとえていいますと、公共事業もそうですし、生活保護費もそうですしといったようなこと、あるいは教育費もそうだと。それからまた、警察官の数ですとか、高等学校の先生といったように、これは国が補助金を出しておりませんでも、法令で何万人でなければいかんというふうに大体決まっておるものもございます。
したがいまして、この地方の歳出というのは、半分近くは国がいわば基準を定めて、それに沿ってやっているものだと。それからまた一方で、景気対策のために地方の単独でもそれなりの事業をやってくれという話もございますので、なかなか歳出抑制は容易ではないということでございます。一方で地方分権とか、いろいろなこともやらなければいかん。
それから10ページをごらんいただきますと、地方の行革はどうかということですけれども、従前、平成6年度に1度、地方行革を大いに進めるべきだということで、自治省としても「指針」を出しておりますが、昨年、地方分権推進委員会の第2次勧告をいただいて、さらに地方行革を進めよという勧告をいただきましたので、昨年の11月に新しい行革「指針」というものを示しまして、従来以上に、職員の定数とかいったようなことを初めとしまして、より具体的な数値目標を設定して行革を進めると。それから広域行政を進める、あるいはその職員の意識改革を図る、住民参加を図る、それから規制緩和の時代でもございますし、できるだけ民間委託を進めるといったようなことをやっておるわけでございます。
11ページをごらんいただきますと、最近は大分新聞でも取り上げていただくようになりましたけれども、東京都を初めいろいろな団体がやっておりますその行革の一端を示したものでございまして、例えば東京都では8年、9年で職員定数を3,300人ほど、すでに純減でやっておりますが、さらに4,700人ぐらい減らそうということを今進めておられます。それから大阪府も、10年間で7,000人の定数削減ということ、また給与改定につきましては、1年間凍結をするとか、あるいは来年度から普通昇給は24カ月延伸するとか、あるいは府立高校の入学金を10倍に引き上げるとか、かなり、従来の感覚でいいますと思い切った措置が出てきております。一々ご説明いたしませんけれども、神奈川県とか、岡山県とか、相当思い切った内容のものが出ております。
それから12ページですけれども、そういった職員定数を減らすとか給料を引き下げるとかいったことだけではなくて、三重県さんなんかはかねてから、従来の事務事業の評価システム、今までの役所の仕事の仕方を根本から見直すといったような新しいシステムを知事さんの提唱で一生懸命やっておられるとか、かなり動きがございます。
また、従来はややもしますと行革というのは都道府県中心で、一般の市までなかなかという見方もあったのですけれども、最近は、ここにありますように、市とか町においても相当熱心に取り組まれているというふうに私どもは受けとめております。さらに進めていきたいと思っております。
それから13ページは地方公務員の給与水準でございまして、かつて、二十数年前、昭和49年ごろは1割ぐらい高いなんていう話もございましたけれども、幸いにして適正化が相当進んでおりまして、国を100としますと100未満というところがむしろ全国の自治体の7割を超しておりまして、まだ若干100を上回っているところもございますが、もう極めて例外になっているわけでございます。
それから、14ページをごらんいただきますと、地方公務員の定数も、先ほどもちょっと資料がございましたが、ことしで3年連続、職員が減っておりまして、9年4月1日の場合は、その前の1年間で7,300人ぐらいの減少ということでございます。
それから15ページでございますが、市町村合併も進めるべきだというお話がございまして、これも来年度、通常国会に法案を出すことにいたしております。
それから16ページ、17ページは先般の第1次の総合経済対策と、そのときにどのような財政措置を講じたかということでございます。
それから19ページをごらんいただきますと、1次総合経済対策の後、公共事業はどの程度進んだかということですけれども、一時、マスコミ等で地方団体が、財政が苦しいので、景気対策を国が打ち出しても補正予算を組まないのではないかというような話もございましたが、執行もかなり進んできておりますし、それから19ページの下のほうをごらんいただきますと、10年度の第1次の補正予算につきましては、16兆6,500億円のうちで約4兆円が地方の予算の公共事業だったのですけれども、約3.7兆円は6月と9月の予算で計上済みになっております。それから地方単独事業を1.5兆円やってほしいという要請をしたのですけれども、9月までの実績で1兆5,500億円計上となっております。
ただ、その後、減税の問題、それからさらに3次の総合経済対策をやるということになっておりますので、大変地方自治体からも先行き不安だという声が挙がってきておりまして、今後その辺が明確になりませんと、さらに景気対策をやるといいましても、地方自治体がなかなかついてこれないという事態が出てくるのではないかと憂慮いたしております。
それから20ページは、ご参考までに、地方自治体におきます中小企業金融対策を挙げたわけです。ことしの1次総合経済対策で初めて、政府系金融機関の制度融資の拡大だけではなくて、都道府県とか政令指定都市とか、自治体側の単独の融資枠の拡大というのを中小企業貸し渋り対策のために打ち出したのですけれども、当時、5,000億円の融資枠の拡大を要請しましたところ、これはやはり現場に近いということもございまして、6月、9月補正で、実際には1.3兆円の融資枠の拡大をしていただいております。
したがいまして、例えば9年度の場合、融資枠の拡大をしますと50億円ぐらい、特別交付税の措置をしておるのですが、ことしはその3倍の150億円ぐらいになるのではないかということでございまして、苦しい中でも、金融機関、この中小企業対策なんかは自治体も一生懸命にやっているという状況が見てとれるかと思います
以上で私のご説明をとりあえず終わらせていただきます。
〇加藤会長
ありがとうございました。この後、前回に引き続き自由討議を行いたいと思います。国税、地方税の現状については、お手元の資料をごらんになっていただきながらお話しいただければと思いますが、寺澤次長と石井審議官、しばらくここにおいでになりますので、もちろんご両人を含めまして、皆様方のご議論をいただければと思います。どうぞよろしくお願いします。中西さん、どうぞ。
〇中西委員
前回欠席しましたので。今度、一応政府のほうからも大型減税、すなわち法人税の実効税率を40前後と、所得税は50まで下げるという大型減税の方針が出ているわけですが、問題はその財源の獲得について、さっきから、きょうもるると、国、大蔵省当局と自治省それぞれ財政の苦しさ、いろいろ訴えられました。全く、これを拝見していると、公債依存度がおそらく、3次補正後には国は40%ぐらいになるのではないでしょうかね。非常にこれはもう異常事態、財政破綻と言ってもいい状況ですし、GDP比の財政赤字も、おそらくこれは3次補正後は世界最悪の、ブラジルを抜いてマイナステンぐらいになるのではないでしょうかね。非常に今悪い時代になっておる。
これは、どうも話を聞いてますと、地方自治体も、先般私が、税制論議は当然、ここまで来ると、財政論議、財政構造へ踏み込んで一緒に議論するほどのことをしないともう無理ではないかとうことを申し上げたのですが、きょうも、聞いておりまして、これはどうもいろいろと首長の方々が第一線の現場でもう首が回らないということを、この間も3人ほどおっしゃったのですが、そのとおりだと思いますがね。これはとめどもない、何というか、押しくらまんじゅうであって、一体どうしたら解決するのだということだと思いますね。
ですから、私は、これはザクッと言いまして、国と地方の税収の配分が、現在、交付税徴収後は、昔から国が2に対して地方1と言ってましたが、今の実情はもう 100対127ぐらいあるようですね。地方のほうがむしろ多い。現に今、この間から言ってますように、交付税交付金制度と補助金制度という、国と地方財政の配分というか、仕分けの仕組みが今はもう機能しなくなってきたのではないか。ここのところへ踏み込んで議論しないと、変な話が、地方自治体は自分のところの税収は、ほんのわずかのプロジェクトをやる場合に、交付税交付金と、まさに補助金と、そして足らなければ地方債を発行すると。これも自治省の認可で、財投の金で買ってもらうということですから、ほとんど中央依存という制度でいる。なおかつ、実際にむだがあるなしという議論をしますと非常に長くなりますが、現にいろいろありますね。これも皆さんご存じだと思いますね。
ですから、私は思い切って、ここで一気にはならんでしょうが、要はこういうふうな財政逼迫も経済のものすごい落ち込みですから、経済を立ち直らすのは、サッチャーがやったように、私はやはり思い切った減税を、非常にいい大型減税になるのですが、もう一歩踏み込んで、経済、企業を活性化するような思い切った減税をやって、それと同時に、アクションプログラムとしては、一気にやるのは、これは現実問題としてあれですから、3年後、5年後のタイムスケジュールでいいから、例えばそこまで減税をやるのだから、その財源は、極論すれば、交付税交付金は全廃すると。これで十数兆あるのではないでしょうか。それから補助金は半分にたたき切るというぐらいの思い切ったことをやるよということを国民に明示する。幾ら減税しても、日本の国民の知的レベルが高いですから、こんなに大量の減税をして、国の財政がブラジル以下になるような状況で、いずれ増税来るぞとなると、これは消費に回らんですよね。やはりそういうシナリオをピシッと書いて、そして交付税交付金全廃という、例えば非常にラディカルなことですが、これは一気にはやらんでしょうが、5年先がいいのか、6年先がいいのか、これは大いに検討していただいていいと思いますが、それぐらいのことを打ち出すということが必要ではないか。先行きを透明にするということがやはり国民の消費意欲、企業の投資意欲を刺激するのではないかと、そう思いまして、ぜひひとつ、今後、税制論議と財政論議を一緒にしていただく機会をつくっていただきたいと。
〇加藤会長
ありがとうございました。ほかにございませんか。水野さん。
〇水野(忠)委員
今のお話ですが、総理大臣のほうから6兆円減税と、それから最高税率を50まで引き下げるというお話が先に出ているわけですが、そうしますと、税制調査会ではどういうふうに議論するのかと。後追いのような形になるわけですが、やはり議論は緻密に詰めていく必要があると思うのです。
そういたしますと、最高税率の引下げが1つどういう意味を持っているのかということですが、いわゆる50%の税率を、仮に所得税の最高税率50を40に引き下げると。これが実際として本当に経済にどういう影響を与えるのか。というのは、50%の最高税率を占めている人たちがどういう職種であり、またその中でサラリーマン、勤労所得者がどれだけいるのかということを明らかにしていただきたいと思うわけです。税率というのは通常、簡単にひとり歩きするのですが、実態を見てみますと、例えば我が国ですと利子所得は20%の源泉分離課税をやっていますので、大体高額所得者の場合はこちらを利用するという形になりますので、最高税率というのはえてして、あるけれども適用者がいないようなことも考えられるわけですね。ですから、こちらの税制調査会の中で1つしっかりとした資料などを提出して、それを明らかにしていただきたいと思うわけです。
住民税についても、15%の最高税率、これは一体どういうような内容を持っているのか、この点を確認していただきたいと思うわけです。きょうお配りいただいた資料をちょっと見てみましたところが、大体1,000万円の給与所得者までしか資料が出ておりませんので、やはり今回問題になるような高額所得者、所得税でいえば50%、住民税でいえば15%が適用されるこの職種、それからその構成といったものをちょっと明らかにするような資料をいただきたいと思います。
それからもう一つは、これはちょっと話が違いますが、消費税の関係ですが、最近では消費税のほうもあわせて減税という話が出ていますが、所得税というのはその経済情勢に応じて上げたり下げたりするということは通例見られるわけですが、消費税でこういうことが本当にあり得るのかどうか、どういう効果を持っているのかということですね。
ちなみに、諸外国の例で、大体、所得税減税を行うのと見返りに付加価値税の税率を上げるという形で推移してきているわけですが、諸外国においても、いわゆる景気対策のために付加価値税、消費税を減税する、税率を下げるという試みというのは今までなされてきているのかどうか。こういう点、ちょっと参考資料として、議論の提供のためにちょっとお教えいただきたいと思います。お願いいたします。
〇加藤会長
資料の提出は後ほどまたお願いすることにいたしまして、ほかにございませんか。どうぞ、松本さん。
〇松本(和)委員
市町村の立場で申し上げたいと思いますが、これまでも何回となくお話ししてきたわけでございますが、自治省からの説明もありましたように、地方財政は本当に厳しい状況になっております。特に都市部ほど厳しいのではないかと思うのですが、これは我々地方行政を任されている者すべての実感だと思っております。前回の総会でもどなたか、日本の企業は現在非常に重傷を負っているのではないかというようなお話がありましたが、地方団体もそのように、企業と同じように、非常に重傷を負っていると言わざるを得ないような状況でございます。
問題はこの背景でございますが、1つは税収の落ち込みがありますが、度重なる景気対策を精いっぱい努力して、地方債を起こしながら公共事業等を実施してきたところでございます。そういうことで、景気対策の結果、借入金が非常に多くなっております。財政状況が厳しくなっているわけですが、実は私も先日、9月でございますが、選挙がございました。その折に対立候補のほうから借入金の急増について非常に厳しく批判をされたところでございます。そういうことを考えますと、私だけの問題ではございません。町村会皆様方のいろいろご意見を聞いていたわけでございますが、やはりどこでもそういう状況が出ているわけでございます。
そういうことを考えますと、やはりこのことが減税の議論の出発点になるのではないか、そういうふうな感じを持っているところでございます。国の財政も非常に厳しいでしょうが、国と異なり、地方財政は3,300の地方団体が集合したものでございますし、単体と、実際には存在しない集合体を単純に比較することはいかがなものかというような気がいたします。そういうことで、税調において、財政問題を論議する場ではないかもしれませんが、そのあたりは間違わないようにお願いしておきたいと思います。
〇加藤会長
ありがとうございました。どうぞ、松浦さん。
〇松浦委員
今、松本さんのほうからお話があったのですけれども、ただいま自治省の方から地方財政について、その深刻な現状の説明がありました。また先日、地方税全体で3兆円の税収不足だというような報告がございました。地方団体といたしましては、このような地方財政の危機的な状況を十分に踏まえて、減税問題を初めとする税制改正の議論がなされるべきだというふうに思っております。また、16日にも決まると言われております緊急経済対策の話も煮詰まってまいっているようでございますけれども、3次補正の話なども具体化してくるのでしょうけれども、公共事業につき合わされて、その上さらに減税までもということになれば、この危機的な財政状況の中で、我々、どう対応すればいいのか、とても対応できないというのが正直な気持ちでございます。赤字地方債を発行すればなどという議論もあるようでございますけれども、これは問題の先送りにすぎないというふうに思います。地方財政の破綻につながりかねないものであるということをぜひお伝えしておきたいと思います。
また、このようなときに青臭い議論だと言われるかもしれませんけれども、減税などの検討に際しては地方分権の推進ということもぜひとも必要な課題だというふうに思っております。この大きな時代の流れに逆行することがあっては、私は取り返しがつかないのだというふうに思います。分権推進計画が策定されて初めての税制改正ということもございます。地方団体は政府としての対応を注目しているわけで、このあたりを十分に認識をいただきたいと思っております。
なお、法人課税や所得課税について国際比較がよく持ち出されますけれども、それも税制を検討する上で一つの基準だと思いますけれども、私は前々から、数字だけが何かひとり歩きをしているような気がしてなりません。アメリカだけを見ても、国のレベルでは比較の意味があるかもしれませんけれども、地方のレベルではどうなのでしょうか。各国で地方団体が内政面で果たす役割、位置づけは私はさまざまだろうというふうに思います。それらを無視して単純に数字だけで比較できるようなものではないのではないかというふうに思います。
地方分権の議論を思い起こせばよくわかりますように、我が国では国と地方の歳出総額の3分の2は地方団体が担っているわけです。このような国はほかにないわけでございまして、そのあたりは、ご指摘の先生方、よくおわかりなことというふうに思います。ぜひよろしくお願い申し上げたいと思います。
〇加藤会長
諸井さん、どうぞ。
〇諸井委員
ここで本当は私は地方分権の話をしなくてはいけないのでしょうけれども、ただ、現在、所得税、法人税の減税、これは公共投資と並んで、今の日本の経済を何とか破滅から救い出して景気の回復から浮揚へ軌道に乗せていくと、これのためにどうしても必要なアクションだと思うのですよね。どうも財政改革も単に歳出をカットするとか、あるいは負担を増やす、増税なり保険料を上げるとかいうような形で負担を増やすという形では今度は逆にデフレ効果も出てきて悪循環になっていくということはすでに我々学習したわけで、やはり景気がよくなるということと、それから今のようなこととを両方合わせて、併合してやっていかなければ、財政の改革というものもできないということではないだろうかと思うのですね。
したがって、この状態の中ではやはりどうしても減税と公共投資というのを並行して思い切ってやっていかなくてはいかん。そこへ我々追い詰められているのだと思うのですよね。その肝心なときに、この税調で、これは国が負担すべきなのだと、地方が負担すべきだということをただ言い争っていていいのだろうか。どちらの状況も非常に破滅的な状況にあることはもう累次説明を受けて、みんなわかっているわけですね。しかし、その中で解決策を生み出さなくてはいけない。これは我々素人がいろいろ案を出してみても仕方がないわけなので、むしろ両方の当局が何とか早く結論を出すのだと。それこそ2週間とか3週間のうちに基本的な結論だけは何とか出すのだというその構えでお互いに譲り合って何か道を見つけ出す。
これは、私、そんなに簡単な話ではないだろうと思いますよ。中西さんのように、スパッと割り切ってしまえばいいのかもしれんが、地方交付税を全廃しろとか、補助金半分にしろとか言ったってそうはいかないわけですから。やはり非常に難しい問題がたくさんあって、その中で細い道を見つけなくてはいけないわけですから、両方の当局がお互いに押しつけ合うのではなくて、何とか解決の方法を見つけ出す。それも一日も早く見つけ出すという考え方で話し合ってもらうということが大事なのではないかと思いますね。
ただ、それが行く行く後代に非常に禍根を残すような形であったのではいけないと思いますけれども、しかし、この際はやはり一刻も早く問題を解決する。そして結論を出す。例えば国会の法律が、税制が例えば来年に延びることがあるとしても、もう結論は出ているのだということが非常に大事だと思うのですね。また例によって大蔵省が、あるいは自治省がサボタージュをやって何とか先延ばしにしようとしているのではないかと、国民は半分ぐらい疑いかけているわけですね。これがまた景気に非常に悪い影響を及ぼすわけです。せっかくの減税がそれだけ効果を減殺するわけですから、ぜひとも早く結論を出していただきたい。お願いいたします。
〇加藤会長
寺澤次長と、それから石井審議官があと5分ぐらいでございますので、何か質問が先にありましたら伺いたいのですが、いかがですか。お二人に対して何か特にご質問ございませんか。
もしないようでしたら、ちょっと一言だけお聞きしておきたいのですけどね。今度の減税などにつきまして、当面は赤字国債を財源にするということを言っておるのですけれども、それに対して所信表明演説でも、総理はやはり国有財産の処分、処理を考えておられるのですね。それから閣議の中でもそのことを言われて、官舎、公舎の処分ということを言っておられる。ところが、そういうことに関して、きょうのご説明は、国も地方もどちらもそのことについてほとんど書いてないですね。つまり、何も意識してない。これはやはりおかしいのではないですか。つまり、総理がそういうふうにおっしゃっているのですから、それをやはりここで反映させてこないと、財政の説明を聞いたことにならないと私は思うのですけれども、いかがでしょうか。
〇寺澤次長
会長が今ご指摘された件につきましては、政府部内で検討会を設けておりまして、各省が所管をしております財産についてどういうものが可能か洗い出しをし、検討しております。ただ、現に行政の用に使われているものをすべて売るというわけにはまいりませんので、そういった観点から現在検討中ではございますけれども、それが大きな財源に直ちになるというような期待は持てないのではないかなという印象を持っております。
〇石井審議官
地方団体の場合にも、先ほどもご紹介しましたように、行政改革の新しい指針を自治省としても示しておりますし、その中で、不急不要の財産、これを見直して、処分できるものは処分するというのは、当然それはおっしゃるとおりだと思います。現に自治体でもそういうことは取り組んでいると思いますが、一方で、ご承知のように、非常に土地が流動化しないから、なるべく自治体に買ってくれとかいうような経済界からの要望もあったりしまして、非常に苦慮しております。しかし、今会長おっしゃるとおりでありますので、そういう姿勢でやっていきたいと思っております。
〇加藤会長
そのお気持ち、よくわかりますけれども、今、お答えになっていることの中にも、やはりちょっと意識が違うのではないかと思うのですね。例えば売るものはあまりないから財源にならないというふうにおっしゃってますけれども、実は今度、公的資金を導入する場合でも、副位的な施設を売れということまで1つ条件にしているのですね。そういうことまで言っている以上、国が何もしないで、とにかく売れないのだと、使っているものは売れません、行政のものは売れませんと、こうおっしゃっているけれども、実際はそれだって売るような方法というのはあるわけですね。イギリスなんかではPFYでもってどんどんやっているわけですから、そういうことをなぜ日本で考えられないか。国民から見ると、政府は自分のやることをやらないで、そして国民にだけ押しつけていると、こういうふうに思いますよね。その辺のところをぜひ、今のお考えではなくて、もうちょっと見直していただいて、そして本当に国の財政はこういうふうに、本当に困って、ここまで引き締めているのだということを明確にしていただかないと、国民としてはなかなか税金を納める気持ちがなくなるということは、これはもう前から私は指摘しているのですけれども、そういうことに対してぜひお考えいただきたいということでございまして、大変足をとめてしまって申しわけありませんけれども、ぜひお考えいただきたいということでお願いしておきます。
松尾さん、どうぞ。
〇松尾委員
せっかくいらっしゃっているので、自治省の石井さんにちょっと伺いたいのですけれども、先ほど地方財政の悪化についてるるご説明を承りましたが、さっき中西委員も指摘なさったように、全般に、地方交付税交付金制度、それから補助金への依存体質がやはり強過ぎるのではないか、そこに最大の問題があるのではないかというふうに私思うのですね。第三セクターなども含めて考えますと、中には立派な第三セクターもあると思いますが、親方日の丸的体質が非常に強いと。そういう話もよく聞くわけです。
しかも、一人の住民としての感想を申し上げますと、私、東京都民ですが、過去の箱もの行政がちょっとひど過ぎたのではなかろうかという実感があるわけです。東京都庁でもものすごい年間維持費がかかるそうですね。ほかにもいっぱい箱ものがつくられております。そういった過去の政策ミスのツケがやはり回ってきていると。そういう面があるのではないかと。これは住民のやはり実感ですよね。ですから、今こそ地方財政はリストラをするチャンスだよと。今こそ、こういう時期だからこそ、チャンスというふうに私は考えるのですけれども、自治省はどういうふうにお考えになってますか。
〇石井審議官
最初におっしゃいました、地方自治体が国庫補助金なり地方交付税に依存し過ぎているのではないかという点は、ちょうど諸井委員さんもおられますけれども、地方分権推進委員会の勧告にも、第2次勧告でもうたわれてますし、今度、第5次勧告も近く出るようでございますが、まず、できるだけ補助金の整理・合理化を図ると。それから地方交付税についてもできるだけ地方の意見をあれするとか、それから配分方法も簡素化するとかいったようなことがうたわれておりますし、例えば中長期的には、いずれにしても、地方税を、先ほどどなたかのご意見にもございましたが、歳出のほうは国と地方で1対2、歳入のほうは逆に国が2で地方が1という実態もありますので、それが結局、補助金依存、あるいは交付税依存という話になっておりますから、やはり地方税をどういうふうに拡充して、受益と負担をできるだけもっとフィットさせて、そして自主自立の意識を地方自治体が持って、行革もそういう角度で取り組むように頑張っていただくという仕組みに持っていくということが大切ではないかと思っております。
東京都のお話も出ましたけれども、私どもは、先ほど申し上げました、地方の行革指針でも、いろいろな箱ものでご批判を受けているケースが少なからず見受けられますので、今後そういうことについては十分気をつけてもらうということと、それからすでにつくったものについても、今加藤会長からもお話がございましたし、またPFYの話もございましたが、いろいろな民間活力を活用して有効活用を図るといったような方向で、できるだけ改善に努めてまいりたいというふうに考えております。
〇中西委員
ちょっと質問ですが、さっきの国と地方の資金の配分の流れの問題なのですけれども、さっきちょっとマクロの話を申し上げたので、きょうはミクロの話を。きょう松浦さんお見えですが、群馬県に上野村という日航機が落ちた村があるのですね。ここの村の税収の規模はせいぜい1億ちょっとです。ところが、その村役場の人件費が何と3億円前後あるということですね。それから、その年がたまたま特例であったのかもわかりませんが、30億円程度の年間予算を組んでいると。一体これはどういうわけでこういうことができるのか、ちょっとお尋ねしたいのですがね。私、不勉強でわからんものですから、一体その辺どういうことか。この事実関係は、群馬県の某首長からの直の情報でございますので、私はまず間違いないのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
〇加藤会長
これはおそらく急には石井さんもお答えにくいと思うので、調べまして、後にまた資料でも出していただければと思います。
〇石井審議官
それでは、時間もとりますから、もしあれでしたら、また後日ご説明させていただきたいと思います。
〇加藤会長
お二人、どうもありがとうございました。
それでは、柳島さん、どうぞ。
〇柳島特別委員
加藤会長のあれで、国と地方の長い間のポテンヒットみたいな話をちょっと思い出したので、別の話をちょっとしようと思っていたのですけれども。例えば、練馬区がありまして、豪華庁舎を建てたのですけれども、その周りに田んぼがありまして、要は消防車も入らないような道路があるのですよね。あるとき、練馬区にたまたま用があったので、豪華庁舎を建てて、田んぼで、消防車も入れないようなところに乱開発やって、それならちゃんと都市計画やったらどうだという話をしたところ、練馬区の話だと、いや、それは国の仕事だというわけですね。それで今度国へ行きますと、いや、あれはもう区の仕事だと。おそらく都心なんかでも相当、さっき加藤会長が言われたように、周りを歩いていても、どことは申しませんけれども、余った土地というか、国が持っていて、それをうまく使って有効に開発すればかなり、森ビルじゃないけれども、いろいろなことができるのではないかと思っているのですけどね。そういう場合の都市計画というのはどっちが立てて、どうやってやったらね。そういうネックがなくなると、相当いろいろなことがおそらく、都市開発プロジェクトで、今、田舎の農道空港より都市をやれという話がよく出ているけれども、そうすればもっとニューヨーク並みに住めたり、通勤も1時間半かからないで、将来もっと近くに職住近接できたり、いろいろな方法があると思うのですけれども、何というか、センター前のポテンヒットで、外野が取るのだかセカンドが取るのだかわからないような話があったので、ちょっと伺いたいと思うのです。
〇加藤会長
河野さん。
〇河野特別委員
2回前の総会のときに、大蔵省と自治省になるべく早く、今議論しているようなことについて、財政需要の説明プラス、どういうふうにこの問題を-減税問題ですよ-処理するのかについて、基本的な考えがあれば示してもらいたいというお願いをしたのですね。きょう、お二方から話を聞いて、それは前のほうの、財政が苦しい、破綻寸前、もう破綻状態でしょう、経済も破綻なら、国も地方の財政も破綻、至るところ全部破綻なのだけれども、その状況は改めてよく説明してもらったのですよ。問題はそこから先の話なのですね。
それで、2つのことを申し上げたいのだけれども、いずれ月末から臨時国会が開かれれば、予算委員会で討議すべきテーマはいろいろあると思うけれども、政府がどういうふうな案を当時つくっていようがいまいが、国会で先生方が大議論されることはもう目に見えているのですよね。我々も政府税調でその議論を同時並行的にやることにはなると思うのですが、2つのことだけ申し上げたいのですが、1つは、諸井委員のおっしゃったように、当面、双方苦しいことはもう重々わかっている話ですよね。問題はこれからどういう血路が開けるかということの展望がないとなかなか乗れないということは国も地方も同じことだと思うのだけれども、例えば法人税の引下げ論でいえば、我々の議論の流れというのは、国税は相当程度やったので、法人事業税をいじくろうではないかという話が基本の流れであって、今でもその議論を小委員会でやってますよね。それから所得税の最高税率であれば、国税と地方税を組み合わせというのは常識的に言われていた。そのことが今ぐらついているわけですよ。
ぐらつく理由は十分あるし、地方団体の方が県知事のグループからいろいろあって、いろいろ言われていることもよくわかっている。しかし、さはさりながら、今回やはり、これは事務当局だ、何ぼ自治省の局長と大蔵の局長が徹夜で論議やったって水かけ論に終わるのではないかと思ってますけどね。思っているけれども、何かの打開策を講じなければ突破できないわけで、それはやはり国だけがすべてを負うという議論だけで済む話では本質的にないと思う。議論の流れからいって。ただ問題はそこから先の話であってね。
諸井さんいらっしゃるけれども、我々、第何次だったか忘れたけれども、地方分権委員会では勧告を総理大臣に出したことがあるのですよ。そのときに、非常に抽象的に中長期的な話として書いてあることは、さっきから税収と歳出の食い違いという論議をベースにして石井さんも言っていたけれども、中長期的には、国の地方の財源のあり方について、その中に当然、交付税は全部入ってくる話ですよ。非常に広範な話で、一朝一夕に議論できるような話ではないのですよ。聞けば聞くほど、この話は。
しかし、いずれの時期か、その議論に踏み込むのだと。我々、勧告しているわけだから。総理、受けたのだから。ただ、それが来年すぐできるとか、そんなタイミングでできるとは思わないけれども、そのことも視野に置いて議論するということを言う必要は僕はあると思うのですね。それで地方が安心するとか、そんな簡単な話ではありませんよ。ないけれども、そういう議論をやろうではないかということを言わないと、先々の展望が開けないと思うのですよ。それぞれ責任ある、民選の町長から県知事いらっしゃるわけで、我々はそういう大きな枠組みでものを考えるということが今どうしても必要なのではないか。
ただ、話を聞けば聞くほど、具体的にどういうふうに地方と中央が持ち合うかということについて、財源をどうするかということについて、ものを言うのが本当に恐ろしいような話だということがあるので、皆さん沈黙を守っていると思いますけれどもね。しかし、結局割り切ってみればそれしか道がないと。内閣がそういうことを決めているわけで。基本的には8月の段階で。そういう政治の方の決断をもう3カ月前にやっているわけだから、この話は。そろそろとにかく責任を持って、まず事務的に詰めてみる努力を精力的にとにかくやってもらいたいということを含めて、諸井さんと同じようなことを申し上げておきたい。
〇加藤会長
榎本さん、どうぞ。
〇榎本委員
諸井さんがおっしゃるように、急げということなものですので、この間我々も、おくれれば、せっかくの対策も実効が薄くなるし、かかるお金もそれだけ膨大なものになるという学習をしたわけですから、そういう点では、いずれにせよスピードアップすべきだと。この点はそのとおりだと思うのです。ただ、今、国か地方かという論議で、こういう事態ですから、本来的にどっちの責任だということは議論あるにせよ、両方ともやれることはやるという構えで臨むべきだと思います。
ただ、地方と国では違うと。そのやれる範囲がね。これはこの前も申し上げたのですが、1つはやはり、今の特に地方、東京、大阪、愛知、神奈川という名だたる府県が、実質的には、さっきの資料でありましたように、事実上破産状態ですね。破産の5%水準を倍ぐらいオーバーしてしまっていますから。歳入欠陥がね。ですから、その分歳出を落とさなくてはいけないという、今無理やりなことをやってますけれども、それができるかどうか。そこにさらに負担が覆いかぶさるということになれば、これは本当に再建団体に落ち込むという事態。
この事態が、原因としてはそれぞれの自治体の財政運営の問題もあるかと思いますけれども、やはり基本的な原因になっているのは、平成4年以降の景気対策に地方財政が動員されてきた。はっきりいえば酷使されてきたということと、それから減税による負担、それからもう一つは減収ですね。この減収は、特にこの1年は国の政策の失敗による不景気がもたらしているわけですから、そういう点では、一言でいえばやはり国の施策が原因となった地方財政危機なのだということですから、そういう点からいえば、やはり国の側がより多く責任を持つべきであろうというのは当然だと思うのです。
もう一つは、今何といっても景気を何とかしなくてはいけない。そうでないと、今までのような一般的な不景気とは違って、経済全体が破綻しかねないという大変な危機にあるというのは事実なわけですから、そうすると、減税にしても、それから公共事業による財政出動にしても、いずれにしても、それが景気対策に結びついていかなくてはいけない。減税しただけでは済まないわけで、今、民需がすっかり冷え込んでいるわけですから、財政出動による官需による刺激をしなくてはいけない。
どうやるかといった場合、これまでも明らかなように、これは国が決めても実行主体は地方なのですね。将来は変わっていくにせよ、現行制度は国が頭で地方が手足という、機関委任事務制度が根幹に座った関係にありますから、実行主体は地方なのです。しかし、その地方が、るる説明があったような形で、もう再建団体に落ち込みかねない危険水域にかなり多くの、先ほどの数字でいえば 2,000団体近い自治体、つまり6割を超えている自治体がそういう財政状況にあるとすると、これは国がせっかく予算措置をしても地方は身がすくんでしまって、それを実行できないという事態になるわけですね。すでに第1次補正、予算計上は確かにさっきの説明でされてますけれども、じゃ執行されているかというと執行されてないですね。まだ第1次補正のほうもね。相当大きく執行されてない。これ、できないわけですよ。地方はね。
そういう点で、それじゃ地方が安心できるように、借金してもいいよと。借金については、従来のように、地方交付税で、その元利償還については地方交付税の需要額で見ていくからという、この手法がもう限界に来ているというのははっきりしているわけですね。これ以上借金をしなさい、だから安心して国の施策をしっかりと実行してくださいということでは、これは地方は動かないですよ。そうなるとやはり、今河野さんが言われたように、税源そのものをこの際大きく見直して、地方消費税を1%上げるとか、あるいは所得税の一部を住民税に持っていくなどといった抜本的な地方財政に対する制度的なてこ入れというものをやってもらわないと、これは幾ら笛吹いても、地方は踊りたくても踊れないということになるということについて申し上げておきたいと思います。
〇加藤会長
佐野さん、どうぞ。
〇佐野特別委員
先ほどから国と地方ということで議論が行われているようですが、1つ忘れてはいけないのは、地方対地方という問題、そういう視点というのが不可欠であろうと思っております。地方対地方というのは、つまり、大都市部対遠隔地、大都市部対田舎ということであります。
今回の宮沢蔵相の減税案、つまり事業税の引下げ、住民税の最高税率の引下げということをそのまま実行しようとすると、その減収というものの受ける程度は大都市部のほうが大きいということは自明の理なわけであります。その補てん案として、1つ、国が国債を出して、その交付税で補てんしようという案があるようですが、交付税というのはどうしても遠隔地のほうに配分が厚くなる。そういう一つのシステムができ上がってしまっている。そういう意味では、従来どおり、交付税で地方の歳入を埋めていくという手法は限界に来ているのではないか。
しかも公共事業というものを考えますと、大都市部のほうにもっと事業をやったほうが効率的であると、効果が上がると、必要度も高いという議論が行われております。しかも再建団体ということになりますとなぜか大都市部に集中しているということもこれあり。つまり、国と地方という関係ばかりではなくて、大都市部対地方、つまり、地方自治体ごとの財源のあり方、地方内部の財源分配のあり方というものを考えなければいかん。
そのためには、例えば地方消費税の地方の取り分を増やすというアイデアが自治体のほうから出ているようですが、これは私は検討に値するのではないかと。つまり、地方消費税のような譲与税方式というものを活用するといいますか、そういうふうに財源をシフトしていく一つの機会かなあという気もいたします。そのかわり交付税分は圧縮するというような方向。つまり、国と地方というようなことで押し合いばかりをしているのではなくて、1つ、地方財政、地方税制というものをこの際抜本的に見直してみようと、そういう視点が必要ではないかと思います。
〇加藤会長
今おっしゃったのはセールス・タックスのことですね。
〇佐野特別委員
いや、地方消費税。要するに4対1の1の部分。
〇加藤会長
その分け方のほうですか。
〇佐野特別委員
ええ。
〇加藤会長
別にその小売税をつけようというのではなくて?
〇佐野特別委員
はい、そうです。
〇加藤会長
森下さん、どうぞ。
〇森下委員
私は前回にも申し上げたのですが、1点繰り返しになりますが、特に減税政策をこのまま先送りするということは現下の情勢からいって非常に大きな問題であります。よって、内閣の命運をかけているこの経済対策と減税政策というものが大きな柱になっておるわけでありますので、皆さん方も意見をおっしゃっていらっしゃいますけれども、これを早く道筋をつけるということが何よりも大事だと思います。いずれにしても、先送り先送りとなって、半年おくれれば1年以上の悪影響を及ぼすというのが今の経済実態でありますので、やはり先送りをしない。先ほど皆さんからおっしゃいましたように、早く決めて、枠組みを国民に示す。そして減税についてはあまり短期的な問題ではなしに、先行きの見通しを示していく。私は、現在の不況プラス、まことに先行き不安に対する不況というものが重なっていると思いますので、先行きの道筋を示すということが一番今大事ではないかというのが1点であります。
2つ目には、特に地方の財政、きょうるるお話を伺いましたけれども、まことに危機的な状況になっていることは事実でございます。これは一挙になかなか、国と地方の枠組みだけでは改善されない問題かもしれませんが、これは少し中長期の問題として、過去からの枠組みだけではとても解決の道筋が難しいというふうに思いますので、根本的な21世紀型の国と地方の枠組み、もちろん分権もあるでしょうけれども、その枠の中でやはり考えていかないといけないのではないか。
私たちは、民間の経営を毎日やっている感触からいきますと、まことに驚きであります。もう民間ベースからいきますとまことにびっくりする感覚でありますので、ここには、一つの経営というものから考えますと自主裁量ということが欠けていると思うのです。自主裁量で地方自治体なり国がやっていけば一つの形というものが生まれてくる。それがどうしても頼るという形になるとこういう形になると思いますので、ぜひともひとつ自主裁量がもっともっと発揮できる、もっと特徴のある地方自治体ということを考えていけば、私は必ず5年もあれば改善されるのではないかと。経営でも、3年かければほぼ見通しがつけられるわけでありますから、そういうふうな感覚で、何か枠組みを変えて地方自治体の財政を変えるというふうなことに取り組まないと、過去の延長線上だけでこれをああしようこうしようと言ってもなかなか解決しないのではないかという感じがいたしますので、我々も毎日経営をしている立場からいっての一つのご意見として申し上げておきたいと思います。
〇加藤会長
ありがとうございました。今、大枠だけでも示せないかというご意見なのですが、どの辺までできるかどうか、ちょっとお願いします。
〇尾原主税局長
大変難しいお話でございますが、なるべく早く大枠を示せという、きょう先生方からのご意見がほとんどだったと思います。大蔵大臣から私どもに対しましては、いよいよ今度臨時国会が始まるわけでございまして、臨時国会では基本的な考え方についてはまとまっている必要があるだろうと。したがって、事務方、つまり、主税局、税務局だけではなしに、主計局、さらには財政局を入れたところでしっかりした議論をしてほしいというご指示をいただいているところでございます。
〇加藤会長
小長さん、どうぞ。
〇小長委員
デフレギャップが20兆円と言われている中で、今度の16日に出される緊急経済対策の中身というのは大変重要だと思うわけですけれども、今世間で言われている議論の中に、税制の関係は臨時国会には間に合わなくて、通常国会マターだと。これは税技術的にはそういうことだと思うのですけれども、それも国民から見ると何か先送りしておるのではないかというような受けとめ方をされている点があるわけでございますから、仮に審議は通常国会冒頭であるにしても、要するに、臨時国会で議論するのと効果は同じなのだということを今度の緊急経済対策の中で少なくとも触れておいていただいて、国民のつまらん誤解は避ける必要があるのではないか。
その緊急経済対策の中で盛り込まれる税制の措置については、少なくとも先般の臨時国会の冒頭で小渕総理が国民に対して約束をされた内容は最低限入れなければいけないわけでありまして、デフレギャップとの関係からいうと、減税規模はもうちょっと膨らませてもいいのではないかという議論も別途あるかと思いますけれども、その辺は税調の中でもう少しこれから議論を積み重ねたほうがいいと思います。いずれにしましても、緊急経済対策の中で、少なくとも小渕さんが臨時国会で言われた線よりも後退するような税制改革の中身であってはいけないという点をまず強調させていただきたいと思います。
それから、先ほど自治省、大蔵省のつばぜり合いを聞いておったわけでありますけれども、やはり両方とも苦しい事情というのはあるわけでございますから、その辺、苦しさはともに分かつという基本的な考え方をベースに、中長期的展望を踏まえれば、地方消費税なんかの見直しの議論なんかも念頭に置きながら、当面は国も赤字公債、地方も赤字地方債というような対応でもってやっていただくというのが現実的な解決策ではないのかなという感じがいたしますけれども、その辺はまだこれから事務当局同士でもさらに詰めていただきたいと思います。
〇加藤会長
津田さん、どうぞ。
〇津田委員
国と地方との税財政の見直しということにつきましては、今いろいろなご意見が出ましたが、私も基本的な方向で見直すという必要が現実的になってきたのではないかと思います。
なお、つけ加えますと、要するに地方分権というのは官と民との間の規制緩和と同様の問題なわけです。規制緩和をして地方団体がやりやすくすれば、それ相応の財源を自分でも調達するし、また支出のほうも効率的なものを図るということでございますので、やはり基本的な方向として地方分権ということが民間に対する規制緩和と同様なテンポで進めなければならない、こういうふうに思います。
それから景気対策と地方団体の関係でございますけれども、もちろん地方団体も景気を回復するということには非常に熱心であると思います。ただ、正直申しまして、個々の地方団体が工事を発注しても大手ゼネコンが取るということになれば、経済対策の効果というのはその地方団体ではスピルアウトということにもなるわけです。あるいは購買力をするにしたって、千葉で減税したその購買力が東京で使われるということがございますと、個々の地方団体としてはやれる限界というものがあるわけでございます。
ですから、将来の見通しなり保証というものがなければなかなかやれないというのが事実ですし、これは民間企業が不景気のときにリストラをするとか、むしろ経費を切り詰めるのと同様なことも地方団体だって保証がなければ走るということでございますので、やはり国全体として景気対策をどうするか。かなり公的資本形成には大きな割合を占めております地方団体が喜んで景気対策に協力できるような安心感を持った財政措置というものが国において必要ではないか。地方団体は絶対拒否するということではなくて、先ほどの説明にありましたように、地元の企業に対する信用保証などは一生懸命やっております。これはまさしくスピルアウトしないで、景気対策として成り立つわけでございます。
よく言われております、地元商店街に対する商品券の発行ということも数団体でやっておられますが、これはまさしく、その消費購買力というのが逃げないように、地元で落ちるようなという観点での景気対策はやるわけですが、しかし、やはり限界があるわけでございますので、全国的な景気対策をやるためには、やはり国、地方共同してやらなければならない。地方団体がリストラとか、歳出をむしろ節減するような方向ではないような仕組みというものがなければならないというふうに思います。
それからもう一点、最高税率を国と地方でどうやるかということでございますが、今回の一番のねらいは、やはり勤労意欲、事業意欲をむしろ増進させて経済活性化を図ろうということです。ですから、問題は限界所得の増加分を税金と手元に残るのとどういうような率がいいのであろうかということだと思います。
その場合に、住民税で申しますと、これも財政の基本的な機能としまして、東京での成功者、あるいは高額所得者が北海道なり九州の生活保護者を支援するというわけにはいかないものです。ですから、地方団体の税制というものは、所得再配分というものは非常に限られたものになっておるわけです。ですから、所得税の場合には50%、住民税は15%ですが、手元に残るいわゆる所得、可処分所得から見ますと、国の場合には限界所得 100に対しまして50しか手元に残らない。それを幾らに上げるか、手元に残る率をどうするかということです。
例えば全部15、国のほうでかぶるとすると、65、手元に残るわけです。いわば、今まで2分の1取られておったものが3分の2は手元に残るということで、これはかなり事業意欲なり勤労意欲の刺激ということにつながるのではないかと思います。
ところが、住民税の場合には15%ですから、手元に85%残っているわけです。それを90%にするというのが果たして今回のねらいの事業意欲なり勤労意欲刺激というものにつながるものかどうか、これは税制としてお考えいただく必要があるのではないか。もちろん全体的な住民税の減税割合をどうするかとか、そういう基本的な中で、財政も含めての解決すべき点でございますが、税制としてはそういうような問題がございますし、これは税制とは逆に、大ざっぱですが、法人税が34.5%というような率、所得税の場合には限界税率の問題で本質的には違うのですが、表面上は15%国がかぶったとしても35%で、法人と所得税の最高税率のあり方としては一つのめどというものがあるのではないかというふうに思います。
〇加藤会長
中村さん。
〇中村特別委員
何やら内ゲバめいてきましたので、別の話を1つさせていただきたいと思います。
今の政治の状況を見ますと、大切なことほど先送りし、問題のあるものほど繰り上げて決めていっているという気がしてならないわけですね。政府税調は従来、予算編成にあわせて年度末に答申を出すというペースですね。しかし、これほど政治がいろいろな思惑で目まぐるしく動いている時代には、政治のペースにもあわせて何かものを言う課題、テーマというのがあると思うのですね。
一例を挙げますと、公明党の商品券の話とか、自由党の消費税引下げの話ですよね。これは政府税調の年末の答申を待っていたら、こっちのほうはどんどん先に決まっていってしまうわけですね。実質的に政治的にセットされてしまうわけですね。後からいろいろ批判してもしようがない。
私のお願いは、消費税とか、商品券とか、政治のベースで前倒しで決まりつつあるものに対しては、政府税調としてこのような見解を持つというのをまとめて発表したらいかがかというふうに思うわけです。これまでの審議でも、こうした問題に対して散発的には意見が出ておりますね。それから政府税調以外でも、経済界の人とか、エコノミストとか、学者の人とか、いろいろ散発的には意見が出ている。しかし、必ずしも権威があるまとまった見解というのがこれまであまり聞かれてない。ぜひ、少なくとも消費税、商品券については、このような問題があるとか、それは従来の議論を踏まえて見解を示すべきだというふうに思うわけですね。
最近、行政、特に大蔵省は政治に対して遠慮し過ぎているというか、無気力そのものですよね。もう少し政治と行政というのは好ましい緊張関係を持つべきだというふうに私は思うわけです。そのような緊張関係がないと、この前の金融再生法案審議のように、非常に問題のある、あるいは後手後手の選択をしてしまう。ぜひ政府税調は、これも前から議論が出ておりますけれども、権威を回復する努力をしたほうがいいのではないかと思います。
それから地方団体について、これまでの議論、大変興味深く聞かせていただいておりますけれども、1つはやはり、会長がおっしゃったように、特に赤字再建団体になった場合は、国ばかりではなくて、地方も公的財産を売るとか、人員を減らすとか、あるいは企業と同じように、隣接した赤字再建団体は合併するとか、ここにある市町村統合の基本方針なんていうのはちょっと甘いわけで、企業並みの統合、統廃合の努力を義務づけるとか、そこまでやれば、国民、住民の理解ももう少し進むというふうに思うわけです。
〇加藤会長
松尾さん、どうぞ。
〇松尾委員
かなり具体論が出ておりますので、私も具体的にちょっと問題点を指摘したいと思います。
恒久的減税の国・地方それぞれのあり方を考える場合に、やはり税体系そのもののあり方ですね。これはやはりどうしても注目せざるを得ないと思うわけです。この最高税率65%を50%にする場合に、全部国の負担にしていいのかどうかということを考えてみる必要があると思うのですね。50%が一挙に35%になるわけですから、こういう累進度でいいのかどうかということはちょっとやはり考えておく必要がありますね。一挙に15%国税が下がるということは、それだけ国税の所得再配分機能が損なわれるということになると思うのです。
一方、住民税率の15%ですね。これも、こういう2桁の住民税率というのは国際的に見るとちょっとやはり珍しいですね。アメリカの州税にちょっとあるようですけれども、住民税の最高税率15%は国際的にもちょっと例を見ない。ここはやはり、国は40に下げて、地方は15を10に下げると。最高税率、所得税40%、住民税は10%、これが穏当な線だろうと私は思うわけです。
それから消費税について、これは当面の5%という税率を動かさないまま地方の取り分を増やすのがいいのかどうか。これは現に地方交付税に回す分を含めて見ますと、消費税率5%のうち地方財源に充てられている分が44%ぐらいになるわけですね。正確には43.6%ということでありまして、ここをさらに地方の取り分を増やすということになるとどうなってしまうのか。つまり、消費税は少子・高齢化に対応して歳入構造の安定化のために創設したわけですね。ですから、これからますます公共サービスの増加がありますから、それに国として適切に対応していく必要があると。地方消費税の配分を今増やすとすれば、やはり国民福祉の充実のための国の歳入確保は著しく難しくなるという問題もやはり考えてみる必要があると思うのです。所得課税はもちろん、消費課税のシステムについても、国と地方の調整は中長期的には必要になると私は思います。
結論としまして、最近の所得減税を見ますと、国・地方の配分は大体国7に対して3となっていますから、いろいろそれは国も大変ですし地方も大変ですけれども、引き続き地方も応分の協力は必要であるというふうに考えます。ですから、この問題については当面、地方の財政負担に関しましては、地方財政対策で配慮する以外に方法はないと。所得減税が至上命令である以上、当面はそれ以外に私は方法はないと思います。
〇加藤会長
きょうはあまりあと時間がありませんので、きょうのところはこの次のときに回していただくということにしまして、しかし、どうしてもおっしゃりたいですか。
〇森田委員
はい。
〇加藤会長
じゃ簡単にお願いします。
〇森田委員
税調再開後初めて出席できる機会を得まして、ちょっと発言したいと思います。
2つのことを言いたいのですけれども、まず、臨時国会に減税法案を出されないということになったのですね。やや1カ月ぐらいの時間の猶予があると。だから、ワーキンググループの結論やなんかも含みまして、できるだけきめ細かい、あるいは正当性、あるいは4~5年の、みんなから価値があったというようなものをつくりたいし、またそういう心構えでありたいと思います。
それに絡みまして、1つあまり言われないのは、大変な税収不足だと。8兆円、9兆円の税収不足だと。これは税におけるビルトイン・スタビライザーの機能が当然働くということでして、要するに、この面をやはり注目しなければいけないと。だから、そうなると、確かにいろいろなことをやらなければいけないのでしょうけれども、その分をある程度考慮に入れるべきだと。先ほど松尾さんが言いましたけれども、最高税率を必ずしも50%にする必要はないと。52%でもいいでしょうし、あるいは法人税も必ずしも40%にすぐ引き下げる必要はないと。43%で、また外形標準課税みたいなものが登場してきたときに、その残りの分をやればいいという、ある程度柔軟的な、とにかくやりくりでやるしかないというふうに思うのですね。
それから第2は、世界不況が来ると、アメリカの経済、いつつぶれるだろうかということが非常に重くのしかかっているわけですけれども、そういう中で、今日本が、要するにこの財政の困難、窮状の中で、最後の小判を全部それに賭けてしまっていいのかどうか。私は、多分、今回の不況というのは70年、80年に及ぶ世界経済の構造的な不均衡の産物で、とりわけドルが71年にぺーパーマネーになって、それがアメリカの財政赤字が増えるごとにいろいろなところで悪さをするということと、それからイノベーションの循環が非常にそこにあると。それから住宅ブームだとかなんかが世界的に一巡していると。それから大変な世界的な過剰生産ですね。中国に行ってみたら、テレビの生産設備の過剰設備が 1,000万台以上もあるという。これは本当に一例で、今一生懸命、中国では繊維の織り機を溶鉱炉に投げ込んで、みんなで要するに設備廃棄やろうという運動をやってますけれども、これは為替の変動によって、みんな世界的にヘッジしなければならないということで、余分な設備をたくさんつくってしまった結果だと思うのです。
だから、そういう中で、トンネルの中に入らないための備えというのは当然必要ですけれども、同時に、トンネルに入ったときにもうお金がないということになっては困ると。ルーズベルトが1933年に登場して、33年~35年でニューディール政策でやったのですけれども、そのときに、ルーズベルトは一生懸命やったのですけれども、実際はあまり効果がなかったと。それは連邦政府の開発投資、公共事業投資に対して、それ以上の分の地方の投資が入ってしまったと。要するに地方のほうの州政府だとかなんかが疲弊していると。今の状況を見ますと、今度トンネルに入るとまさしくそういう事態が出てくるのではないか。だから、やはりもうちょっと中期的に考えたほうがいいのではないかと思うのですよね。
〇加藤会長
この後、中央省庁等改革をやろうと思ったのですけれども、これは差し迫った問題ではありませんので、きょうの今の議論のほうがホットでございますから、これをぜひ水野さん、これから、ごゆっくりというわけにはいきませんが、どうぞ。
〇水野(勝)委員
基本的に現在の問題である減税の問題、これはもう本当に国も地方も減税できるという財政状況にあるのかという、非常に厳しい状況にあるわけでございます。しかし、総理がお約束になった。これはぜひともやらなければいけない。先般、前回でございましたか、津田委員がダッチロールがいかに信頼を失うかということでございます。しかし、実際はこれだけの厳しい財政状況ですから、時間がかかるのは仕方がないと思いますね。それだけ厳しい状況の中でやるのだということを納税者なり国民の皆さんにわかっていただける、そのためにも、ある程度時間がかかっても、これは仕方がないのではないか。そんなに簡単にできる話ではないということをむしろ世の中に理解してもらわなくてはいけないので、時間がある程度かかっても、とことん、国・地方それぞれで議論をしていただいたらと思うわけでございます。
それから国と地方の財源配分の問題については、地方分権という大きな観点があると思いますが、一方、それほど広くない日本におきましては、従来、昔から言われておりましたのはシビルミニマムでございまして、どんな僻地、どんな地方においても、最低水準と申しますか、基本的な生活水準と申しますか、福祉が保証されるということからいくと、財源はすべて各地方団体に持ってもらうということも必要ですけれども、やはり財政調整制度というのは基本的には避けて通れない問題でございますがら、端的にただ税目の配分を思い切って地方にとかという話でもないのではないかと思うわけでございます。
それから税率の点については、前からも申し上げておりますように、本当に所得税、住民税の最高税率、きょうもご議論ございますけれども、そんなに急いで、確かに基本的な方向として、長期的な方向としては50%、これが理想でございます。半分は残るということですけれども、それほど緊急の問題であるかどうかという点はやはり議論をしてもいいのではないか。
ただ、前から申し上げておりますように、法人の段階の限界税率、これが50だということになりますと、どうしても個人の段階の限界税率がそれを超えているときには、法人経理にさまざまな歪みをもたらすという問題がありますので、法人課税のほうでさらに下げていくということであれば、やはり個人の限界税率も下げていかなくてはいけない。そういう意味において、もう一回、法人課税の税率、個人課税の税率合わせてじっくりご検討いただいたらいいのではないかと思うわけでございます。
それから国と地方の最高税率なり限界税率の話でございますが、先ほど大変興味深いご議論をお聞きしたのですけれども、国のほうが50で、50残ると。地方は15を10にすると90残るというお話もございましたけれども、納税者としては所得は1つでございます。1,000万円の所得があって、500万円は国に申告する所得で、500万円は地方に申告する所得であると分かれておればそのようなご議論もできるかと思いますけれども、結局は納税者の所得は1つですので、やはり50と15あれば65払って、手元に35残るということで、納税者はやはり1本で限界税率を加算したところで考えますので、50と15を分けての限界税率の議論というのは、おもしろい議論であるとは思いますけれども、納税者の実感とはちょっと離れている面があるのではないか。やはり1本として、2本を2つ加算したところでどうあるべきか、その中において地方と国とはどういうふうに配分するかという議論ではないかなという感じがするわけでございます。
それから、先ほど会長からご指摘のございました国有財産の点でございますけれども、これは個別の議論になりますけれども、私どもの会社はまだ140万株ある。これは本日現在で 100万円でございますから、1兆4,000億円ございます。しかし、法律でも3分の2は国が持てという制度になっておりまして、法律、制度が変わりませんとこれ以上出せないのですけれども、こういったところも含めて国においてご検討いただければ、むしろ私どもとしてはお願いをしたいところでございます。ありがとうございました。
〇加藤会長
ありがとうございました。大澤さん、どうぞ。
〇大澤委員
抽象的なことを短く申し上げるわけですけれども、先ほどの財政収支の、これで見ますと、1990年、平成2年からの現在までの急速な悪化ぶりですね。これの最大の原因はというか、鶏が先か卵が先かということですけれども、景気対策に伴う国債の累増というものが今の財政収支の驚くべきカーブの最大の要因だと思うのですね。そうすると、景気対策を打つことによって財政収支は悪化するという現象はだれが見ても明らかなのですけれども、今度また恒久的な減税をやるのか、恒久減税をやるのか、公共投資とどういう組み合わせをするのかというのはもう近々決まるというようなところへ来ているわけですけれども、一体そこにどういう戦略的な展望があるのかということを、財政当局はもちろん、私どもも含めて、戦略的展望といいますか、どういう展望のもとに何をやって、それがどういう形で、どういうスパンで効果を上げるのかと。それはだれも保証できない問題ではあるけれども、結局、景気対策を進めることによって、これまでの財政収支のこれほどまでの悪化を来したということをやはり思いいたさざるを得ないのではないかというふうに私なぞは思うわけなのです。そこのところ、税調の議論から外れるかもしれませんけれども、これからの審議の中でそういう展望というもの、少なくとも当局サイドとしての展望はいかなるものなのか。
先ほど、大蔵、自治の方々がいらしたときに、私、ふっと思ったのですけれども、そういうお答えは多分いただけないだろうと思ってあえて質問は控えさせていただいたわけですけれども、やはりそれがないと、どう考えても私はおかしいという気がしてしようがないのですね。それだけちょっと申し上げたかったのです。
〇加藤会長
平田さん、どうぞ。
〇平田委員
いよいよ減税を具体的に決めなくてはならない時期に来ているわけでございまして、いろいろなご議論があると思いますけれども、財政当局のご説明は、大変だ大変だというお話ばかりでございまして、これは国・地方を問わず、実際の現在の景気低迷による減収の傾向が非常に顕著であるということをご説明いただいていると思うのですね。ですから、減税というこれからの法律をつくっていく前に、もうすでに実質的な減収になってしまっているというのが実際だろうと思うのですね。
その中でも、とにかく政府がお約束をした、個人の所得課税と法人課税の最高税率並びに実効税率の引下げをやらなくてはならない。そうなると、課税ベースとして共通しているのは、やはり個人の所得課税の最高税率を引き下げるということですから、それはやはり地方税と国税とは所得課税の同じ課税ベースの中で減税を考えるというふうに考えるのが正しいことだろうと思うのですね。
しかしながら、この減税を決めるに当たって、総理大臣の表明演説にも出ておりますように、「望ましい制度の構築に向けて抜本的な見直しを展望しながら、景気に配慮して」という言葉になってますから、やはり将来を見据えた、税制の持っている、例えば垂直的な公平であるとか、簡素であるとか、いろいろな原則がありますけれども、そういうものをやはり無視しないで、特に垂直的公平などには留意した形で税率を決めるということをぜひ考えていただきたいと思う次第であります。
それから、そういう将来のいろいろな税の仕組みを考えていくときに、地方税さんが、とにかく所得ベースでは、今言ったような個人と法人しかありません。その他の自主財源というものは、固定資産税であるとか、すべて違う税目なのですね。国税とは違う税目をお互いに分担して税の財源としているということから考えますと、まさに地方税法という法律を地方の自治体が勝手に決められるわけではないのですね。法律はもう国会で地方税法で一くくりで決めなくてはならない仕組みになってますから、それは幾ら地方分権と言い、かつ地方財源、自主財源と言っても、やはりそれは国会で決める法律で決まるということですから、県とか市町村で独自に財源を獲得するということはほとんど難しいだろうということが言えるわけですね。ですから、やはりそういう財政調整のための交付金のやり方とか、補助金のつけ方などで調整するよりほかないだろうということであります。ですから、その辺まで含めてひとつご議論をしていただきたいことがお願いであります。
それから税を直していくコンセプトが何かわからなくなってしまっているということがありますね。所得課税を中心としながらも、消費課税に移行していくのだよという一つのコンセプト、それからやる気のある税制、そういうものをつくるのだよと。少子・高齢化に向けての税制を目指すのだよというような、そういうコンセプトがあったはずなのですけれども、これを何か景気の話になってしまうとすべて忘れてしまうというところがあります。その辺もひとつぜひ考えに入れてやっていただきたいと思います。
〇加藤会長
ありがとうございました。よろしゅうございますか。
時間が大体まいりましたのでこれで終わらせていただきますが、この次は、きょう積み残しました中央省庁の問題と、それから先ほど、中西さん、それから水野(忠)さんから出ましたご質問など含めまして議論をしたいと思います。特にこれからは政策税制の問題についてかなりいろいろと議論していきたいと思っておりますので、ぜひよろしくお願いいたします。
次回は11月17日を予定しておりますが、さらにその次が27日となっておりますけれども、場合によりましてはその途中でもう一回やるということもあり得ますので、ご都合、よろしくお願いいたします。どうもきょうはありがとうございました。
〔閉会〕
(注)
本議事録は毎回の総会後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、大蔵省主税局及び自治省税務局の文責において作成した資料です。
内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。