第21回総会 議事録
平成10年11月6日開催
〇加藤会長
ただいまから、税制調査会第21回総会を開催いたします。
きょうの議事の内容について申し上げておきますと、最初に、最近の経済状況等について、経済企画庁から説明を受けたいと思います。
続きまして、最近の税収動向及びこれまでの総会で委員から出されました資料要求について、事務局から報告を受けたいと思います。
あと、1時間以上、時間をとりまして、自由討議を行いたいと思っております。
それでは、初めに、最近における経済状況について、経済企画庁の調査局 池田審議官から簡潔にご説明をお願いしたいと思います。
どうぞよろしく。
〇池田審議官
それでは、お手元の資料「最近の経済情勢」に従ってご説明させていただきます。
これは、本日の朝、月例経済関係閣僚会議に報告された月例経済報告の概要でございます。
最初に1ページ、個人消費でございますが、個人消費は低調に推移しております。家計調査の実質消費支出4-6月、7-9月、ともに前年同期比でマイナス1.3%、マイナス2.5%と、1~2%程度のマイナスで推移しております。
この基本的な要因は、「収入が減少していること」。表の下のほうに、1人当たりの現金給与総額が出ておりますが、マイナスとなっている。それから雇用者数、これもマイナスが続いているということで、収入が減少していること。
それに加えまして、「消費者の財布のひもが依然として固い」。これは、消費者のマインドを意味しているわけですが、下の表の消費者態度指数を見ていただきたいと思います。低くなるほどマインドが悪いということを示しますが、6月、9月と悪い状態が続いている、こういうことであります。
なお、個別に見ますと、エアコン、パソコン等の家電製品、真ん中に「家電(小売金額)」というのがございます。量販店の数字でございますが、これは比較的堅調に推移している。一方、天候不順等で衣料が売れないということで、小売業の販売額のマイナス幅が大きい。あるいは、財布のひもを締めて、選択的なサービス支出-例えば、そこに旅行が出ておりますが、そういうものが減少しているということでございます。
1枚おめくりいただきまして、住宅建設でございます。これがやはりレベルを下げてきているということで、着工件数は、97年度・134万戸でございますが、98年の4-6月に入りまして、年率にしまして、120万戸、7-9月には110万戸台、こういうふうにレベルが下がってきております。
持家につきましては、9月に0.1%ということで、底を打った動きが出てきております。貸家、分譲、特に共同建て分譲、マンションでございますが、これが足を引っ張っているということで、マンションの販売が不振であり、在庫が増えてきていることを背景にしております。
続きまして、3ページ、設備投資でございますが、大幅に減少しておりまして、特に中小企業の落ち込みが顕著であります。日本銀行の短観、9月調査によりますと、98年度の設備投資の計画でございますが、主要企業が2.3%の減少、中小企業の全産業が16.7%の減少ということになっております。
このほかに、中堅企業等を含めた全国企業ということで見ますと、ここには載っておりませんが、98年度で8.7%の減少ということでございます。
機械受注という、設備投資の先行指標の動きが第4表に載っておりますが、前年比で見まして、20数%のマイナスが続ているということで、当面、設備投資は減少基調で推移するであろうということでございます。
4ページをお開き願いたいと思いますが、公共投資です。前倒し執行とか、1次補正予算をやっておったわけです。なかなか出てこないということでしたが、ようやく9月ぐらいから前年を上回る数字が出てきております。公共工事請負金額、8月はプラス3.5%、9月は23.8%と伸びております。官公庁からの受注額も増えております。やっと効果が顕在化してきたということであります。
5ページをお開きいただきます。いままでは、最終需要の主なものを見てきたわけですが、生産の推移(グラフ)を見ますと、在庫調整をずっとしてきたということで生産が減ってきたわけですが、ここのところ、減り方が緩やかになってきております。9月の生産、3カ月ぶりにプラス2.5%ということであります。ただ、非常に水準は低いということ。
それから、在庫も5か月連続で減ってきたのですが、出荷との比較で見る在庫率、点線で出ておりますが、これは依然高水準でございます。それと、企業の在庫の過剰感も非常に強いということで、減少傾向、緩やかにはなっておりますが、引き続き在庫調整は続くものと見ております。
続きまして、6ページでございます。企業収益は、ご案内のとおり、減益となっております。日銀の短観の経常利益の調査でございますが、10年度の上期は、ここには出ておりませんが、前年比で27.9%、全産業で減るということになっております。企業のマインド、業況判断も、そういうことで厳しい状況になっております。特に中小企業がそこにグラフが出ております。中小企業の業況判断D.I.、いろんな機関の調査がそこにまとめて載っておりますが、非常に厳しい状況が示されております。
続きまして、7ページでございますが、雇用です。下の9図で見ていただくとおわかりのとおり、今年の2月ぐらいから、製造業、建設業を中心に前年を下回るということになっております。失業率につきましては、ご案内のとおり、4.3%、過去最高の水準で推移しております。有効求人倍率も0.49%と、9月はまた一段悪化しております。
8ページは、金融機関の貸出が低調なことから、企業は貸出態度に対する懸念を高めており、手元流動性確保に向けての動きを強めている。年末越えに対して、厳しい状況になっているということ。こうした中、海外の景気減速などについての懸念があることや、為替レートが大きく動いたこともあって、経済の先行きに対する不透明感が依然強いということであります。
まとめとしまして、以上のように、景気は低迷状態が長引き、きわめて厳しい状況にある、というふうにまとめてございます。
以上が、最近の経済情勢でございます。
〇加藤会長
どうもありがとうございました。
続きまして、調整局の川本審議官からお話を伺いたいと思います。
〇川本審議官
資料の45ページをお開きください。経済の現状は大変厳しいわけでございまして、それを踏まえまして、今年度、経済はどういう姿になるかということでございます。当初、私ども、平成10年度は1.9%の経済成長率を見込んでおりました。この表の上から2行目でございます。それを、最近の情勢に照らして見直しまして、GDPではマイナス1.8%程度になろうというふうに改訂しております。
中身を見ていただきますと、民間最終消費支出、これは当初2.5%のプラスと見ておったわけですけれども、マイナス0.9%。それから、民間住宅、これが4.9%プラスと見ていたのが、マイナス11.6%。民間企業設備、これも3.5%と見ておりましたのを、2ケタのマイナス10.1%ということで、民間需要がおしなべて悪いことを見通さざるを得ないということでございます。
それから、雇用の関係では、労働力人口、就業者総数が出ております。これも、当初はともにプラスを見ていたわけですけれども、今回、それぞれ、マイナス0.7%、マイナス0.9%ということで、これを割って失業率で見ますと、当初3.3%の失業率を見込んでおりましたけれども、4.2%程度にならざるを得ないということでございます。
それから、鉱工業生産指数、1.8%と見ておりましたけれども、これもマイナス7.3%。物価のほうは、卸売物価がマイナス1.7%ということで、さらに下がる。消費者物価上昇率も、0.7%からプラス0.1%に下方修正しております。
国際収支は、輸出は、当初見通しより伸び悩むわけでございますが、景気の停滞を反映して、輸入がさらに落ちるということで、経常収支全体では、当初12.4兆円と見ておりましたのが、16.6兆円。対GDP比で言えば、2.4%と見込んでおりましたのが、3.3%程度になろうということでございます。
これらの見通しは、一番下に書いてありますように、前提条件として、「大規模な金融機関の破綻が生じない」「世界経済において、金融・通貨市場の大きな混乱が生じない」等々を前提にして見通したわけでございます。
そして、11年度につきましては、政府としては見通し作業はまだこれからでございますけれども、民間の諸機関がいろんな見通しを出しております。それが、46ページの上。9月11日以降、見通しを出している26の民間機関を平均しますと、今年度がマイナス1.8%。これは、私どもの改訂見通しとたまたま一致しているわけでございますけれども、来年度についてはマイナス0.2%でございます。
国際機関では、つい先週出たOECDの見通しでは、これは暦年でございますけれども、今年がマイナス2.6%、来年はプラス0.2%。それから、IMFの見通しでは、マイナス2.5%、来年がプラス0.5%ということになっております。
44ページの文章のほうにお戻り願いたいのですけれども、「11年度の経済見通しと今後の政策運営」でございます。いまご紹介いたしましたように、経済情勢、非常に厳しくて、民間の見通し等では、来年度もマイナス成長ということが出てきておるわけであります。このままでいきますと、3年連続のマイナス成長の可能性があるわけでございますけれども、それは何としても回避しなければならないということで、来年度につきましては、回復基盤を底堅いものとし、12年度の回復を確実なものとするために、今年度後半から来年度が正念場であると考えております。
そして、経済回復、景気回復のために全力を挙げて経済運営に当たることが重要だと考えておりまして、10月27日には、閣議で総理から、わが国経済をめぐる現下の厳しい情勢に鑑みまして、11月の中旬までに緊急経済対策を策定するように指示がございました。11月16日・月曜日に緊急経済対策をまとめるべく、いま、鋭意作業中でございます。
以上でございます。
〇加藤会長
ありがとうございました。
続きまして、先般、10月20日に「短期日本経済マクロ計量モデルの構造とマクロ経済政策の効果」が、経済企画庁経済研究所から発表されておりますので、簡潔にご説明をお願いしたいと思います。
経済研究所の貞広所長、よろしくお願いいたします。
〇貞広所長
お手元の資料の47ページでございます。私ども、これまで長い間、「EPA世界経済モデル」ということで、マクロ政策の効果を分析することをやってきましたけれども、対象としたデータ期間がかなり古くなりましたので、いまご紹介がありましたように、新しいモデルをつくっております。
本日は、そのうち、公共投資と所得税減税の効果の結果をご紹介させていただきたいと思います。お手元の47ページの下の表をごらんいただきたいと思います。左側が公共投資の乗数、右側が所得税減税の乗数というふうになっておりまして、公共投資、所得税減税とも、上段が対名目GDPのインパクトでございます。下段が実質GDPのインパクトでございます。
それぞれGDPの中身が、ここでは民需と公需というふうに2つに分けております。実は、ちょっとミスプリがありまして、民需は、正確に申し上げますと、「民需等」ということで、外需が入っております。申し訳ありません。民需等と公需に分けて表をお示し申し上げております。
まず、左側の上段、名目の公的資本形成、これは、GDPの1%というショックを与えたときに、名目GDPのインパクト。1年目が1.3、2年目が1.7ぐらい、3年目が約2ということになっております。
ちなみに、文章の最後のほうに書いてございますが、これまで私どもが持っておりました第5次版のEPA世界経済モデルの名目公共投資乗数、1年目が1.3、2年目が1.8、3年目が2.1ということで、結果はほとんど変わっておりません。
また表のほうにかえりまして、この名目GDPの内訳、民需等と公需をごらんいただきますと、公需が約1出てくるのに対して、民需が、1年目0.3、2年目0.6、3年目0.9というふうに、GDPの中の構成としては、公需、すなわち公的資本形成が1立つということでございます。民需へのインパクトは相対的に小さいという結果になっております。
下のほうに移らさせていただきまして、今度は、実質GDPのインパクトをごらんいただきます。1年目1.2、2年目が1.3、その次が1.2ということで、このモデルですと、2年目がピークで、あとは下がってくるというふうになっております。理由は、金利が少し上がるとか、為替レートが少し増加するとか、物価が少し上がる等々の理由で、リアルGDPへのインパクトは2年目でピークアウトする、こういう結果になっております。
それに対して所得税減税、これはマグニチュードとしましては、公共投資の場合と比較できるように、GDPの1%分ということで、コンパラブルにしております。まず、所得税減税の上段、すなわち名目GDPへのインパクトは、公共投資よりも小さい。0.4、0.7、0.5ということになっております。
ただ、民需等と公需の内訳を見ますと、いまのところ、公需はゼロでございます。少なくとも1年目、2年目もそうですけれども、民需、特に消費、投資へのインパクトは所得税減税のほうが大きいというふうに、このモデルではなっております。所得税減税の場合も、名目GDP、実質GDP、大体2年目でピークアウトするということになっております。
その次のページをごらんいただきますと、「参考」ということで、上段のボックスが、いまお話し申し上げました、公共投資の名目GDP1%相当額。若干細かい表でございますけれども、重複していないところで申し上げますと、上段のボックスの2段目の欄、真ん中あたりに、財政収支対名目GDP比というのが、マイナス0.61%とか、マイナス0.3%、そのあと少し下がって、マイナス0.28%となっております。
これは、他の条件が一切変わらなければ、もちろん、ここにマイナス1という数字が立つわけでございますけれども、GDPが上がって増収ということで、0.4%から0.7%くらいの増収があるということで、結果的にこの数字になっているということでございます。
それに対して所得税減税の場合は、同じ財政収支への影響は、公共投資よりも少し大きく、逆に言うと、税収のあがりは少ない。これは言うまでもなく、GDPへのインパクトが相対的に公共投資よりも小さいということになっております。
最後になりますけれども、このモデルは幾つかの限界があることはもちろん言うまでもございません。これまでは、短期の分析ということで、しかも需要面を中心として開発されたものでございますので、例えば、公共投資へのいろんな評価をする場合には、生産面、サプライ・サイド、あるいは潜在成長とか、公共投資の効率性という議論が当然あるわけでございますけれども、このモデルはそういうことは一切考慮していない。
2つ目の限界は、予想形成が、このモデルは過去の経験的なパターンで将来を予測するという定式化になっております。それゆえ、例えば消費税を上げた場合の駆け込み需要、その反動とかいう心理面、期待面への影響は、このモデルではとらえられないということ。さらに言うならば、バブル、あるいはその崩壊以降のポスト・バブル期における、いわゆる不良債権問題を計量モデルで表現することはなかなか難しいということで、この面では十分ご利用いただきたいと思います。
以上でございます。
〇加藤会長
ありがとうございました。
それでは、ただいまの説明につきまして、ご意見やご質問があれば伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。どなたからでも結構でございます。
大澤さん、どうぞ。
〇大澤委員
蒸し返す意図は全くないのですけれども、経済企画庁として、この見通しのそごという問題、理由をどういうふうにごらんになっているのかということを、一言、伺っておきたいと思います。非常にギャップが大きすぎると私は思いますので。
〇川本審議官
たしかにご指摘のとおり、まさに符号が逆になっているような状況で、私ども見通しをまとめた立場からしても、こういうことは、あってはならない気がしています。なにぶん去年の12月段階で、経済情勢が非常に厳しかったわけでございます。その後、いろんな金融面の手当がだんだん進んでいくということ。それから、世界経済全体も、去年は7月ごろからアジア危機が起こって、非常に厳しい状況であったわけです。それが、今年の春ぐらいから、少しずつ収束していくのではないかと。政府の対策、公共的な支出でサポートするとか、そういうことも相まって、少しずつ回復のほうに向かうものというふうに、全体的に考えていたわけですけれども、それ以上に、消費、企業、個人のマインドの冷え込みが非常に厳しかった。国際的にも、さらに厳しい情勢-最近はロシアに見られますように、そういう状況が波及していったということで、そこまで十分見通せなかったということが率直に言ってあろうかと思います。
〇加藤会長
大澤さん、よろしゅうございますか。
〇大澤委員
はい。
〇加藤会長
ほかにいかがでございましょうか。
はい、どうぞ。塙さん。
〇塙委員
いま、いろいろ指標をご説明いただいたのですけれども、公共投資の前倒し執行や、第1次補正予算の効果があらわれて、9月は非常にいい数字だということを伺って、非常にうれしいのですが、現在の経済全体の実感とはあまり合わない。少しタイムラグがあると思いますけれども、このトレンドが、これから10・11月とずっと続いて、経済全体をかなり上向きに引っ張っていく、いいトレンドの兆しだというふうに見ていいのでしょうか。
〇川本審議官
私ども、4月に16兆円を超える総合経済対策をとりまとめまして、6月の補正予算で国会を通過して、それが逐次、具体的に契約着工等に結びついていくということで、全体的には、4月の経済対策の効果がGDPの2%程度に及ぶというふうに考えておりました。ただ、この指標を見る限り、その発現が遅れているのではないか、ほとんど効いていないのではないかというご意見があったわけです。9月の指標に見られますように、その効果が数字の上でもかなりあらわれてきているのではないかと。
ご存じのように、地方議会等では、6月の地方議会の補正に間に合わなかったせいもありまして、9月議会でその手当をしている都道府県が非常に多いわけでありますので、これから、着実に公共工事のほうは上向いてくるというふうに思っているわけでございます。
ただ、全般的に、4月段階で考えておりましたよりも経済が非常に冷え込んでおります。この経済対策の効果は間違いなく出てくるわけですけれども、全般的に冷え込んでいるということで、下支え的な効果はあるわけですが、当初考えていたほど、全体として見ますと、プラスの要因、マイナスの要因がせめぎあいまして、目に見えた形で経済全般がよくなってくるという形はなかなか見通しにくいということで、今般、緊急経済対策をさらにとりまとめて、着実な回復軌道に日本経済をのせていきたい、そういうふうに考えているわけです。
〇加藤会長
ほかにございませんか。どうぞ、平田さん。
〇平田委員
最初にご説明いただきました8つの最近の経済情勢の中で、不良債権の償却による金融機関さんの大幅な赤字転落とか、景気の低迷による上場企業の赤字の発生というものが、いま、非常に大きく新聞で取り上げられています。庶民の感覚でいくと、税金をいっぱい払っていただいていた大企業が赤字に転落するというふうなことが、経済情勢の中に大きなインパクトで出てこなくてもいいのかなという気がするのです。その辺は、素朴な質問で申し訳ないのですが、いかがでしょうか。
〇池田審議官
私ども、企業の収益についても十分関心を持っております。残念ながら、あまり長い説明ができないのですけれども、6ページのところに、「企業収益は、全体として減少」と。それで済ませてしまった形になるのですが、お手元にお配りしてある資料の中に、「主要経済指標の最近の動き」ということで、いろんな統計が載っております。それの24ページをお開き願いたいと思います。
ここに、日本銀行の「企業短期経済観測」、いわゆる短観の数字が載っております。それによりますと、10年度の上期-これは実績見込み。9月調査でございますが、主要企業の全産業で27.9%と、前年同期と比べて大幅な減少となっております。
ちなみに、短観の6月の調査がマイナス21.4%ですから、それよりも悪化しているということであります。特に中小企業につきましては、マイナス38.8%。主要企業と比べて大幅なマイナスになっておりまして、これも6月調査ではマイナス18.8%でしたから、大幅な下方修正になっているわけです。
このような企業収益の悪化を背景にしまして、先ほども申しましたとおり、設備投資が大幅に減少しているというような影響を抱えているわけで、そういう点も十分監視して分析しておるわけでございます。
〇加藤会長
橋本さん、どうぞ。
〇橋本特別委員
46ページの「各種機関による日本経済の見通し」ですけれども、OECDとかIMFは、10年度、マイナス2.6%、マイナス2.5%というふうになっております。経企庁のほうはマイナス1.8%。この差は、片や暦年で、片や年度という差によるものなのか、あるいは、前提条件の置き方の違いによるものなのか、いずれでございましょうか。
〇川本審議官
基本的には、カレンダー・イヤーとフィスカル・イヤーの違いでほとんど説明できるというふうに思っております。本年の1-3月期もマイナスであったわけでして、暦年ですと、その影響がもちろん入ってきますので、OECDの数字と私どもの見通しもほぼ近いものと思っております。ですから、今年度、あるいは今年については、OECD、IMFの見通しとそれほど大きな違いはないということでございます。
〇加藤会長
今野さん、どうぞ。
〇今野委員
5ページの表、第6図について質問させていただきたいと思います。
これを拝見しますと、当然のことですけれども、生産とか、出荷に比べて、在庫とか、在庫率が非常に多くなっております。経営の面からいきますと、これは非常に破滅的な傾向を示していると思いますが、私、ちょっと疑問に思いましたのは、果たしてこれは正しい数字をもとにしているのだろうか、ということです。いま、中小企業をはじめどこの企業でも、先ほどからご説明していただいているような大変厳しい状況の中で、ただ単にその中でズルズル生き延びているのではなくて、いろんな知恵とかを総動員しながら頑張っているわけです。
これまでのやり方、これまでの生産、物流、小売の考え方、そして、そのやり方、システム、そのままズルズル行くとこうなる、ということはたしかに言えると思いますが、例えばここで、新しい情報化とか、情報システム、いろんなソフトを前向きに取り入れることによって、これまでと相当違う動きがつくられるのではないかと思うのです。
ごく最近、アメリカの大手の半導体メーカーの日本の社長さんとお話をしているときに、つい1、2年前まで、そこのメーカーさんの在庫が-ちょっとごめんなさい。正確に数字は言えないのですが、例えば数千万個というオーダーの在庫を持っておられた。それは、市場から、または、同じ会社の販売ディビジョンからの圧力がかかって、どうしてもそういう在庫を持たなければならなかったのですが、それを、「西ドイツのある在庫管理のソフトを取り入れることによって、現在、その在庫数が10万個に減りました。この10万個も、さらに減らすことが可能だということを確認しています」というお話を聞きました。
これは、その会社だけではなくて、うちのような小さな会社も、何とかそういう方法があるのではないかと必死に模索しているところですから、「これまでだと、こうなる」というものを説明なしに出されると、ちょっと印象が違ってしまう、判断も違ってしまうということがあると思います。こういう表を出すと同時に、それでも今後変わるかもしれない方向性というものも述べておいていただかないと、全くわからない人たちは間違ってしまうのではないかと思います。
そういう意味では、7ページの、就業者数。これも、非常に暗い傾向が示されているわけですし、それから、45ページのいろんな経済見通し。そこで民間の設備投資みたいなものもあるわけですが、これも一連全部、いま何とかできないかという動きの中の一プロセスであると見ることもできるのではないか。民間の住宅なんかも、一つの待ちの姿勢の中での数字ではないかと私は思います。例えば税制が変わるとか、いろんなものが変わるのをもう少し見通してからと、そういう数字と見られないこともないのではないかと思います。流動的な激しい動きの中での数字だということ、私なんかはちょっとそんな気がしております。
〇加藤会長
水野さん、どうぞ。
〇水野(勝)委員
いろいろお示しいただいた数字、特に45ページの数字等々は、大変元気の出ない数字ではありますけれども、ここらの数字は、ある意味ではすべてフローの数字であろうかと思います。ストックに対してこれだけのフローというのは、そこでの生産性というか、生産率というか、そういったものは一体どういうふうになるのか。金融資産であれ、固定資産であれ、それがバブルがはじけて圧縮される。そうした総資産に対してこれだけのフローが出る。その率からすると、フローそのものを前年対比すれば、マイナスになるかもしれないけれども、生産率から言うと、本当にどんどん下がっているのか。
そうした基礎となるストックが、ある程度圧縮されてきている段階では、こうしたフローの数字がマイナスになることも、そんなにびっくりすることでもないのではないかという気もするのです。そこらは、専門家のお立場として、どんなふうに考えたらいいか、教えていただければと思います。
〇川本審議官
ストックとの対比でということですけれども、いま手元に明確な資料がないのであれなんですけれども、ご存じのように、資産で言えば、日本は個人の資産が1,200兆円ぐらいあるということでございます。それは、基本的にはずっと増えてきたわけでありますが、最近は、たぶん横ばいになってくると思います。それから、負債ももちろんあるわけですけれども、ネットで見ましても、800兆円ぐらいの個人の資産はございます。
それから、生産的ないろんなストック。これは、フローとしての民間設備投資がマイナスになっても、ストック自体は伸びていくわけでございますから、ストックと生産との対比で見た場合には、それを仮に生産性と言いますと、全般的には国内総生産がマイナスの中で下がってきているものと思われます。
ただ、そのストックについても、生産的なストックは、先ほどお話がありましたように、本当にそれが現時点でも使えるものなのかどうか。技術革新の中で、ヴィンテージというか、そういうものは、長くなってくると、真の生産設備とカウントすべきかどうかという問題も出てくると思います。全般的には、フローのマイナスがいろんな面に効いていて、生産性を、大局的に見た場合には、基本的には下がっているのではないかというふうに私は思います。
〇池田審議官
具体的に数字を挙げることはできないのですけれども、先ほどの話にもちょっと絡むのですが、中期的に見て、日本の経済成長に対する期待成長率といいますか、そういうものが下がってくる中で、資本ストック、あるいは雇用のストック、そういったものについてのいろんな見直しが、今後、行われてこざるを得ない。あるいは、金融機関におきましても、貸出債権の見直しも行われていかざるを得ない。そういう意味で、中期的に見て、構造調整というか、いろんな調整面からのデフレ的な圧力がかかってくるのではないかというふうには考えられます。
〇加藤会長
ほかにございますか。
河野さん、どうぞ。
〇河野特別委員
47ページのことについて、2つ、教えてもらいたいと思います。
1つは、公共投資と所得税減税の効果について、一応の計算が出ているのですが、企画庁は昔から、この手の計算は、そのときどきでやってきていると思うのです。5年前、10年前、どうでもいいんだけれども、同じような計算をやったときに、過去のあるときには公共投資はこうであった、所得税減税の効果はこうであった、というのがあれば―あると思うんだけれども―それと今回、出方が違うならば、なぜそう違うんだということを教えてもらいたい。
第2は、これは所得税減税のことを書いてあって、GDP1%ということで構わないけれども、法人税減税をやったときの効果は計算したことがあるんですか。あったら、教えてもらいたい。
〇貞広所長
公共投資の過去の乗数と比べて今回の乗数はどうか、というのが最初のご質問かと思います。これに関しては、実は、いろんなやり方があるのでございますけれども、単に過去のモデルの乗数と今回のモデルの乗数を時系列的に比べてみた数字をご紹介申し上げますと、実質でしか過去の数字がないのですが、まず、今回の実質公共投資が1.2ぐらいというふうに、この表のマトリックスの下のところに出ております。
この今回のものより4年ぐらい古いモデルでございますけれども、これが1.24。さらに4年ぐらい前が1.33。さらにそれより4年ぐらい前が1.16ということで、これぐらいの差ですから、あまり大きな変化はしていないというのが一点。
もう一つは、過去のモデルと比べていまのモデルはどうかという場合に、実は、モデルの構造が変わっておりますので、正確な比較はできない。今回、私ども、この作業をしたときに、先ほどご紹介申し上げました、このモデルと全く同じ構造を、80年代のデータだけに当てはめて係数を推計して、公共投資乗数を計算してみたところ、1年目と2年目に関してはほとんど変わらないという結論を得ております。
公共投資の乗数が下がっている云々という議論の中でよく出てくるのは、期待形成のフォーミュレーションによって随分違うとか、いろんなモデルの構造によって変わるということもありますので、そこには十分留意する必要があるかと思います。
それから2つ目のご質問は、法人税減税の乗数はどうかということでございます。最初の私のご説明の最後のところで申し上げましたけれども、このモデルは需要面のモデルでございまして、法人税減税の議論をする場合では、サプライ・サイドといいますか、あるいは、外国とのコスト競争力とか、もう少し中長期のサプライ・サイド面に光を合わせたモデルでないと、正確なところはわからないということで、今回のモデルは限界があります。
なお、ちなみにということで、短期の需要面だけに限ったもので、法人税減税の乗数をあえてご紹介させていただきますと、これは名目GDPのインパクトということで、しかも、これは比較しやすいように、名目GDP1%相当額だけ法人税を減税した場合です。
名目GDP1年目が、0.1、2年目が0.26、3年目が0.4ということで、だいぶ小さくなっております。これは、いま申し上げましたように、サプライ・サイド面、あるいは供給面を考慮していないということではなかろうかと思います。
ちなみに、名目GDPへのインパクトは小そうございますけれども、設備投資へのインパクトだけを見ますと、1年目が0.4、2年目が1.2、3年目が1.9ということでございますので、設備投資へのインパクトだけを考えると、それほど小さくはない。他のものと比べても比較的大きく出ているということです。設備投資のインパクトは結構ありますけれども、ご案内のように、設備投資はGDPの実質で14~15%ですから、GDPへのインパクトはそれだけ小さくなるということであります。
〇河野特別委員
もう一つ、所得税減税の効果について。公共投資の話は、過去にさかのぼった比較などが出て、それなりにわかったのですけれども、所得税減税のほうも、何か数字があったら教えてください。あまり変化はありませんか。
〇貞広所長
所得税減税の効果は、世界経済モデル、すなわち4年前の乗数をご紹介申し上げます。これは、実質GDPへのインパクトです。ですから、このマトリックスの表の右の下の0.48、0.57、これに相当するものです。これが1年目が0.42、2年目が0.72ということでございます。ここは、モデルの定式化を少し変えましたので、2年目は少し違いますけれども、少なくとも短期のインパクトはそれほど変わっていないということであります。
〇加藤会長
和田さん、どうぞ。
〇和田委員
1ページのトップのところに、「個人消費は低調で、所得者の財布のひもが依然として固い」と。これは、しばらく言われ続けたことで、いままでにもよくご意見が出ていますけれども、高齢者に限らず、いまは若い人に至るまで、自分たちの生活設計が立たないんだということが言われております。いろいろな手を打っても、将来に向けての医療なり、介護なり年金、その辺の社会保障のビジョン、自分がこれだけやっておけば将来こうなるんだ、というような生活設計が立たないことが、財布のひもを緩める気にならないというところに一番結びついているのではないかなと。
これから減税について議論するわけですけれども、たとえ減税がありましても、ある意味での下支えにはなるけれども、それがストレートに消費に結びつくのかどうか。その辺のところがあるのではないかなというふうに感じておりますが、いかがなのでしょうか。
〇池田審議官
この消費者態度指数というものは、幾つかのことを聞いて、それを合成したものでございます。暮らし向きとか、耐久消費財の購入時期とか、物価とかありますが、その中で、雇用環境が今後どうなるかということを聞いております。態度指数が悪化している中で、引下げ要因に大きく寄与しているのが、この雇用環境の悪化という形です。これは、いまお話しになったことと、直、結びつくかどうかあれなのですが、雇用環境が非常に悪くなれば、先行きの暮らしのめどが立たない、そういうことでマインドが悪くなると。同じ意味合いだろうと思います。一般的に、そういうことで消費性向の押下げ要因として、先行き不安というものが非常に効いているのは事実だろうと思います。
〇加藤会長
時間がだいぶたちました。ご迷惑になってはいけませんので、終わりますが、2つだけ、ちょっと確認させていただきたいと思います。
1つは、公共投資と所得税減税の効果が出ました。これは、短絡的に結論を出してはいけないのですけれども、少なくともこれからの政策として、公共投資に重点を置くほうがいいという一つの方向は出てくるのでしょうか。それとも、そこまで言っていかんということなのでしょうか。そこをちょっと伺いたいと思います。
もう一つは、一番最後のところでシミュレーションがございました。大変面白いのですが、このシミュレーションを見まして、たしか経済企画庁は経済白書でもって、今年は、「流動性のワナに日本はない」ということを断言しておられます。ここに書いてあることからいくと、むしろ考えが変わられたのかどうか、そこのところを伺いたいと思います。
〇貞広所長
加藤先生の最初のご質問でございます。ちょっと言葉は違いますが、この乗数でもって公共投資を擁護しているのかというふうなご質問であれば、私どもは、冒頭に申し上げましたけれども、公共投資の効果を総合的に判断するためには、個々の需要サイドだけの乗数で云々というのは危険ではなかろうかというふうに思います。もちろん、この需要サイドのインパクト、当面、とにかく需要をつくらなければいけないということで、重要な指標ではあると思いますけれども、公共投資の効果を総合的に評価するためには、サプライ・サイド面がどうとか、経済学でよく言われていますように、中立命題、実際どうなっているとか、あるいは、心理面に与える影響はどうとか、それから、公共投資の効率、アロケーションの問題はどうとかいう総合的な判断をする中で、判断をしていく必要があろうかというふうに思っております。
2つ目は、私、ちょっと理解が間違っているかもしれません。会長がおっしゃったのは、一番最後の金融のところの乗数でしょうか。
〇加藤会長
そうです。
〇貞広所長
これは、大変限定的な形で、言い訳めいたことを書いていますけれども、現下の金利になっていますから、これから金利を下げるということは、物理的にコンピューター上計算できないわけで、ここではプラスでやっていますけれども、インプリケーションとしましては、仮に公共投資を出して、若干、金利上昇圧力がある場合には、それをオフセットするような金融緩和政策をやれば、もうちょっと乗数は大きくなりますねと。もちろん、不良債権問題とかいろいろありますけれども、そういうことを無視すれば、このモデルでは、金融政策と財政政策でデフレ政策をとれば、大体こういう数字ですねと、こういうための一つの参考データというふうに理解をしていただきたいと思います。
〇加藤会長
ありがとうございました。
大変時間を越えまして、ご迷惑をおかけしたと思いますけれども、池田審議官、川本審議官、貞広所長、大変お忙しいところをお答えいただきまして、ありがとうございました。
続きまして、最近の税収動向や、前回までの総会の議論の中で出されました委員からの資料要求のうち、ご報告できるものについて、順次、事務局から説明を受けたいと思っております。
それでは、10年度税収の動向について、伏見総務課長から、また、道府県税の徴収実績については桑原企画課長から、それぞれ説明を受けたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
〇伏見総務課長
国税関係の税収動向について、ご報告させていただきます。資料で「総21-2」という、表が4枚綴りになっているのがございます。
9月末までの実績が最近判明いたしました。1ページは全体像でございますが、細かくなっておりますので、1ページ飛ばしていただきまして、2ページをごらんいただきたいと思います。
同じものでございますが、主な税目等にまとめたものでございます。9月末段階、一般会計分計という一番下をごらんいただきますと、補正予算額が57兆円でございますが、ここまでに収納されましたものは15兆 2千億円余でございます。
進捗割合でございますが、予算額に対しまして、まだ26.7%の段階でございます。したがいまして、全体像を見通すというのは非常に難しい点がございますが、個々の状況をごらんいただきますと、一番上の源泉所得税、15兆円の予算に対しまして6兆 7千億円の収納でございます。この段階の前年比でございますが、右から2列目にございますように、マイナス15%でございます。予算で見込んでおりますのはマイナス1.8%ということになります。
特別減税の効果もございますので、単純にこのままということにはならないと思いますが、いまの経企庁の説明にもありましたように、賃金動向、これが、この中の給与所得にかかわる源泉所得税に一番影響してまいります。最近、残業時間が減少傾向であるとか、あるいは、今年の冬のボーナスについていろんな議論が出てきております。したがいまして、源泉所得税についても非常に厳しい状況にあるのではないかと思います。
一つ飛ばしまして、一番変動の大きい法人税ですが、法人税は、15兆円の予算に対しまして、まだ1兆4千億円しか収納されておりません。進捗割合は9.3%でございます。最近、法人企業の決算が3月期に集中する傾向がございます。税収のほうも、全体の税収の4割ぐらいが一番最後に入ってくるという形になっております。
これまでの累計でございます。右から2番目にございますように、マイナス21.9%ということで、予算の12.8%に対して大幅に下回った形でございます。現在、一番ウエートの大きい3月期決算の中間決算が徐々に出始めておりますが、その動向を見てまいりますと、総じて、年度を通じた収益見通しが下方修正にあることから、法人税の税収についてもかなり厳しいだろうというふうに思っております。
それから、消費税でございますが、10兆8千億円の予算に対しまして、現在、2兆2千億円の収納が行われてございます。前年比をごらんいただきますと、ほかと違いまして、累計で21.1%のプラスということで、比較的順調な姿になっております。
ただ、この中には、昨年4月から消費税の税率がアップいたしましたけれども、申告は法人の決算期に合わせて行われてくるということもありまして、税収の増の平年度化というやや技術的な要因もございます。したがいまして、いま、予算の伸びを上回っているという効果は徐々に薄れてまいりますので、最終的には、法人税ほどの変動はないと思いますけれども、最近の消費動向等勘案いたしますと、これについてもある程度の減収は避けられないのではないかという状況にございます。
その他の税目、まとめて見ますと、11兆円余になりますが、これも累計で、右から2列目にございますように、これまでのところ、マイナス8%という状況にございます。
全体が、一般会計分計のところで右から2段目にありますように、現段階ではマイナス10%という状況でございます。
次の3ページをごらんいただきたいと思います。3ページのところで、漫画のような形で税収の姿が出てございます。平成10年度の57兆円という予算は、前年の平成9年度の予算56.2兆円というのをベースにいたしまして、それに対して一定の経済規模の拡大を見込んだ税収の予算でございます。
9年度については実績が出ておりますが、53.9兆円という形で、2.3兆円の減収が生じております。いわゆる土台減が生じてございます。したがいまして、その後の経済の動きが、見通しに沿ったような動きでありましても、土台減を回復できない形になりますし、仮に前年と同じ程度の税収にとどまった場合には、そこに矢印を結びまして、▲3.1とございますが、3兆円ほどの減収が生じるということになります。
ところが、個々の状況をごらんいただきましたように、いま、全体の情勢が非常に厳しくなっております。現在、補正予算の編成に向けまして、個別税目ごとの見積りを作業中でございます。ある程度の感触的なものになろうかと思いますが、全体としては、どうも6兆円を上回る減収が生じそうだという状況でございます。
中身を大胆に申し上げますと、恐らく法人税で3兆円余、源泉所得税で1兆円余。その他、全体を合わせまして2兆円程度が減収になる。したがいまして、57兆円という予算がございましたが、それが、51兆円以下。結果的に相当な見通しの誤りと。まことに申し訳ない結果になろうかと思いますが、そういう事態になりそうだというのが現在の作業状況でございます。
国税関係は以上でございます。
〇桑原企画課長
それでは、地方税につきまして、お手元の資料に基づきまして、9月末現在の、47の都道府県と、3,232の市町村、全地方団体の徴収の状況につきましてご報告いたします。
上のほうが県税についての状況、真ん中の表が市町村税についての状況、一番下の細い表がトータルでございます。それから、左半分に平成10年度の数値、右半分に平成9年度の数値が挙げてございます。
平成10年度、A欄でごらんいただきますと、年度当初の税収の見積額、下から2行目でございますけれども、38兆4.7千億円余を見込んでいたところでございます。それに対しまして、Bの欄、これまでに税額が確定した分が31兆5千億円余、それから、実際に地方団体に税収として入ってきたものが19兆2千億円余ということでございます。
右から2列目、B/Eという欄をごらんいただきますと、これは、平成9年度と平成10年度の調定額税額確定ベースの金額で税収の状況を比較したものでございます。主なところをごらんいただきますと、上から2行目、個人の道府県民税につきまして、特別減税の影響等によりまして、前年度をマイナス12.8%、いまの段階で下回っております。その下、法人の道府県民税がマイナス9.2%。その4つ下、法人の事業税でございますが、これも景気低迷による落ち込み等によりまして、マイナス11.7%の前年対比になっております。
その下の地方消費税は、前年度に比べまして、162倍というちょっと異常な数値になっております。地方消費税、昨年の4月から制度がスタートいたしましたけれども、昨年度は4月から7月まで、国内の取引につきましては、税収が、制度上、地方団体の収入として入ってこないという状況になっておりました。その影響が残っておりまして、こうした異常数値になっております。
その下の不動産取得税につきましては、土地、建物等の不況を反映して、マイナス13.3%。それから、都道府県の主な大きな税としては、唯一、自動車税だけが前年度に比べて2.1%増となっておりますが、さらにその下の自動車取得税、軽油引取税等、前年度をかなり下回っております。
道府県税トータルといたしましては、下のアの欄でございますけれども、4.8%増になっております。これは、先ほどの地方消費税の異常値を含んでおりますので、それを除いて比較いたしますと、再計イの欄でマイナス8.6%となっております。
市町村税のほうは、市町村民税につきまして、個人の市町村民税がマイナス8.2%。特別減税の影響でございます。法人の市町村民税につきましても、県と同様、マイナス8.7%という落ち込みになっております。
固定資産税につきましては、3.7%の増になっておりますが、これは、土地にかかる固定資産税につきましては、ほぼ前年と同額。大きな都市におきましては、前年を少し下回っているという状況になっておりますが、家屋につきまして、前年より少し大きくなっているということで、トータルで3.7%の増。
それから、特別土地保有税につきましては、いわゆるバブル期税制の見直しが10年度改正で行われましたことなどによって、26.4%のマイナス。市町村税トータルとしては、2%のマイナスということになっております。
地方税トータルで前年同期と比べまして、下から2行目でございますが、先ほどの地方消費税の異常値を含みましても、0.3%増でございます。今後、地方消費税の伸び率は、年度が進むに従いまして、もっと小さな、いわば正常値に近くなってまいりますし、法人関係につきましては、9月の中間決算が11月末までには大体出そろってまいります。それも、今年に入りましてからの景気の落ち込みなどによって、税収が相当落ち込むのではないかと思われます。したがいまして、この0.3%という対前年の伸び率は、もっと小さくなってくるというふうに考えております。
地方税トータルといたしまして、平成9年度の決算額、Dの欄でございますが、35兆5,000億円に対しまして、先ほどごらんいただきましたA欄の下から2行目、38兆4,000億円。2兆9,000億円、9年度決算より高い税収を見積もっております。したがって、仮に前年と同額が確保できたとしても、2兆9,000億円のマイナスになりますし、今後予想されますさまざまな状況を見込みますと、地方におきます税収不足は3兆円。場合によっては、それを超えるのではないかというふうに懸念しているところでございます。
その次のページは、過去におきます地方税収の地方財政計画額と決算額の推移を表にしたものでございます。Aの欄が年度当初の見積り、Bの欄が決算額でございます。平成5年度がこれまでで最も計画を下回った年でございます。1兆5,000億円ほど計画を下回った実績となっておりますが、今年度は、3兆円、場合によってはそれを超えるということになりますと、平成5年度を2倍近く上回る、過去最大といいますか、言葉では言い尽くせないような大きな税収の落ち込みになるのではないかと懸念しております。
以上でございます。
〇加藤会長
ありがとうございました。
続きまして、都道府県ごとの人口1人当たりの地方税収額と公共投資を比較した資料について、説明を受けたいと思います。
桑原企画課長、どうぞ。
〇桑原企画課長
それでは、前々回の総会でご要請がありました、都道府県ごとの人口1人当たりの地方税収の額と、都道府県ごとの公共投資の額をまとめた表につきまして、若干ご説明させていただきます。
1ページ目の表は、地方税全体につきまして、都道府県ごとの税収額をそれぞれの都道府県の人口で割算した額を表にしたものでございます。左側の表をごらんいただきますと、税収額を人口で割算したものでございます。
一番大きいのが東京都で、50万6,000円。その次に愛知県、大阪府、神奈川県、福井県という順番で大きな県が続いておりまして、あとは、宮城県、栃木県、富山県、石川県、静岡県、滋賀県、京都府、そういったところが1人当たりの税収額が大きくなっております。
小さいほうは、一番小さいのが沖縄県で、13万6,000円。宮崎県、鹿児島県、長崎県、青森県などがそれに次いでおります。
右側の表は、その税収額を、全国平均を100として、指数化した表でございます。
2ページ目は、都道府県別の行政投資の状況ということで、それをまとめたものでございます。一番下の「注」に、小さくて恐縮ですが、行政投資とは、国、地方公共団体及び公団等が行いました整備事業費、施設の維持補修費、計画調査費、そういったものの決算額をまとめたものでございまして、それを県ごとに分けたものでございます。
左側の県単位での行政投資額、一番大きいのは東京都でございまして、2番目が北海道、3番目が兵庫県。小さいほうでは、一番小さいのが鳥取県。それから香川県、和歌山県となっておるかと思います。
真ん中は、これを人口で割算した、人口1人当たりの行政投資額でございます。1位は島根県の63万8,000円、2位が長野県、3位が高知県となっておりまして、低いほうは、一番小さいのが埼玉県。それから神奈川県、千葉県となっております。
一番右の表は、行政投資額を都道府県の可住地面積当たり幾らになるかということで比較したものでございます。この方法で比較しますと、1位が東京都、2位が大阪府、3位が神奈川県となりまして、小さいほうは、北海道、青森県、秋田県というようなことになっております。
いまのは個々の団体ごとに税収と行政投資を比較したものでございますけれども、その次のページは、税収と投資額の差というのは、地方財政全体でもそういう形になっているということをごらんいただきたい表でございます。
このページの一番上の表が、租税総額。国と地方トータルで90兆3,000億円ございます。そのうちの61%が国税、38.9%、35兆円が地方税ということでございます。下のほうにまいりまして、歳出についてこれを見ると、国と地方で151兆円の歳出がございますが、国の歳出は、そのうちの35%である53兆円、地方の歳出は、64%である97兆7,000億円になっております。
租税総額の国と地方の比が、歳出の面ではほぼ逆転した比になっているということで、「参考」のところにありますように、この間の乖離を地方交付税や国庫支出金で埋めているという状況でございます。
一番最後のページは、今年の5月29日に閣議決定されました「地方分権推進計画」でございます。昨年7月の地方分権推進委員会の第2次勧告に基づきまして、この部分は閣議決定されたものでございますが、ここの4、(1)のアのところで、いまのことが計画に盛り込まれております。
すなわち、「国と地方の歳出純計に占める地方の歳出の割合は3分の2であるのに対し、租税総額に占める地方税の割合は約3分の1となっており、歳出規模と地方税収入との乖離が存在している。地方税については、歳出と税収入の乖離をできるだけ縮小するという観点から、その充実確保を図る」というふうになっております。
以上でございます。
〇加藤会長
ありがとうございました。
それでは、何かご質問ございますか。もしありましたら、自由討議のときに出していただいても結構でございます。
これから残りの時間を、自由討議の時間にとりたいと思っております。前回の恒久的な減税の問題、ワーキング・グループの報告などございましたが、そういうことをめぐっての個人所得税のあり方などを中心に議論いただきたいと思います。まだ十分にご発言になっていない方も、どうぞ、この時間でおっしゃっていただきたいと思います。
はい、森下さん、どうぞ。
〇森下委員
所得税減税について、きょう、特に申し上げたいと思うのでございますが、昨日の報道によりますと、この秋の臨時国会で、所得減税法案を来年に見送るという報道がされております。現在の内閣はまさに経済再生内閣とうたわれて、大幅な経済対策と減税政策を打ち出して経済を再生する、こういう公約でスタートされたと思っております。
きょうも、企画課長から種々のデータに基づく説明がありましたように、現在の経済情勢というものは、実体経済は閉塞感がただよっている。きょう説明がありましたことは、先ほどもご質問がございましように、ストック面があまり出ておりませんで、フローの形ですが、ストック面では非常に資産のデフレが発生している。さらに、金融も正常な形で動いていないという形で、過去の経済不況と違う構造になっております。実体経済はまさに未曾有の状態というところは、どうも政府の認識と、実体経済とのギャップが出すぎているのではないかなということを私は非常に危惧をいたしております。
そういう危惧をいたしておるところに、所得減税を来年度に見送るというふうなことは、どうしても避けるべきではないか。やはり所得減税と、また、前回討議されておりましたような住宅関連の減税政策、この分野については秋の国会で論議されて、そして、少なくとも所得減税は1月以降から施行されてくるというふうなことに、最大のベストを尽くしていくべきではないかと思っております。
単に減税しても、すぐ景気はよくならないという意見もありますが、プラス、先行きの不安ということが非常にただよっているわけでございますので、この減税政策を、「恒久的」か、「恒久」か、言葉は別にいたしまして、やはり恒久減税的なものを打ち出していって先の道筋をはっきりする、というふうな所得減税法案をぜひ論議していただきたい。この政府税調で、少なくともこの部分だけは、今臨時国会に意見として出していただきたいということを強く申し上げたいと思います。
法人税の問題は、特に緊急からいけばこの問題が多うございますので、きょうは、その問題に絞って意見として申し上げておきたいと思います。
〇加藤会長
いまの事実関係について、事務局からお願いします。
〇尾原主税局長
昨日、官房長官の記者会見が行われたようでございまして、いまの所得・法人税減税法案の提出時期について、質問があったようでございます。
ちょっと読ませていただきますと、「外交日程のはざまに行われる臨時国会では、98年度第3次補正予算案、金融再生委員会の同意人事、日韓新漁業協定の国会承認などをお願いしなければならない。税制関連法案までお願いできるはざまがあるのか心配している」、こういうふうに述べられ、また、政策減税の点でございますが、「税制全体の中から個別政策をつまみ出すのは難しいのではないか」、というようなことをご発言になられたようでございます。
いわゆる6兆円超の恒久的減税について申し上げますと、所信表明演説の中では、通常国会に提出するというふうに明言しておられます。
それで、私がここから先を申し上げるのがいいかどうかわかりませんが、今回の所得税の問題、法人税の問題、この6兆円超の問題は、国、地方でどうするのかという問題を解決する必要がございます。この場合、税だけではなくて、結局、国、地方の財政状況全体をどう考えて、どういう決め方をするのかということにもなってくるのかなと思います。
そういう中で、全く物理的な話だけさせていただきますと、きょう、ご結論を得たといたしますと、実は、法律策定までにひと月は-これは恐らく、土・日全部出てくると思いますが-かかるというのが私どもの感じでございます。それから国会審議をいただかなければならない。今度の国会の期間、どのくらいになるかどうかでございますが、さらに、その審議がスムーズにいったといたしまして、特にサラリーマンの源泉徴収をはじめ、源泉徴収義務者の方にお願いしなければならないわけでございます。そこのところ、どう短くとりましても、実施まで2カ月くらいはいただきませんと、源泉徴収義務者の方にやってもらうのにはなかなか難しい面があるという問題がございます。
それから、年内編成というようなこと、あるいは、いまの国会の状況を考えますと、これは国会で決めていただく話になりますけれども、ある程度の期間、審議時間が本当に確保できるのかというようなことを背景に、昨日、ご発言になられたのかなというふうに考えているところでございます。
〇加藤会長
事務的に土曜、日曜返上しても2カ月というお話がありましたが、森下さんのほうから見れば、何を言うか、非常事態のときにそんなこと言っていいか、とおっしゃりたいのだと思いますが……。よろしゅうございますか。
〇森下委員
戦後かつてない構造的な不況といいますか、そういう時期だけに、国自身としての大きな難局という位置づけにとらまえなければならない時局ではないかと思いますので、過去を乗り越えた、何かいろんな知恵を出せないものか、ということをつけ加えておきたいと思います。
〇加藤会長
ありがとうございました。
田中さん、どうぞ。
〇田中委員
森下さんが言われた視点で、少し時間をいただいてお話しさせていただこうと思います。
減税というカードをせっかく内閣が切ると言われたわけですから、これを有効に、タイミングよく行うのは非常に重要だと思いますし、経済情勢は、まさに一刻も早い減税の実施を望んでいるし、それが大きな意味を持つ情勢だと思います。
現在の情勢をどう考えるかということですが、たぶん役所に勤務されている人も含めて、銀行に対しての取付け騒ぎが起きていませんから、経済情勢、そんな大したことはないというふうにお考えの方が多いと思うのです-どうもそうらしいのです、メディアも含めて。
しかし、取付け騒ぎがないのは、ペイオフをしないと政府が言っているからこそ、銀行を、預金を引き出す人が取り巻いていないだけであって、実際の経済過程では、信用連鎖はブチブチと断ち切られているのが現状だと思います。誰がそれを認識しているかということですが、お金の世界ですから、どうも日本銀行がその点については一番ご認識が進んでいるようでございまして、9月9日の政策決定会合では、インターバンクの金利を0.25%に引き下げると。言うならば、インターバンクはジャブジャブにする。流動性が枯渇している状態で、それに対していくらでも供給するという態度を明らかにされました。
たしかに日本銀行の資産の部には、企業が発行されましたコマーシャル・ペーパーが銀行を通じて入ってきています。3分の1から、時には半分ぐらい、すでに事業会社の発行するコマーシャル・ペーパーが日本銀行の資産に入ってきているわけでございまして、このあとは、商業銀行が発行するコマーシャル・ペーパーも買う、あるいは、社債も買うというぐらいまで検討が進んでいるやに聞いております。日本銀行だけは、取付け騒ぎはないけれども、現実の信用連鎖の遮断が起きていることをご存じだと。そういう意味での緊急度認識は非常に強い。
これに対して、政府部門は、全体として非常に鈍感になってきているのではないかというふうに思います。一般に信用収縮という形で銀行の貸し渋りが議論されるのですが、たぶんお手元にいったと思いますが、図の1をごらんになってください。傘でとってあるのですが、たしかにずっと内側に入ってきています。
1930年代の大恐慌のときには、輸入額をとりますと、これはどんどん内側に入っていったのですが、わが国でも、たしかに銀行の貸出残高は減ってきています。これは、第二次世界大戦後で見れば異常なことなのですが、しかし、ものすごく減ったのかというと、2年前に比べてもマイナス2%程度。ですから、地価とか株価が下がっているもとにおいて、与信残高が異常に低いとは言えない。そういう意味では、銀行と事業者との関係において、異常なことが起きていると言うのは少し誤りかなというふうに思います。しかし、実際には流動性選好というのはものすごい勢いで始まっているわけでして、その異常性はすでに実物経済にあらわれております。
その次のページで、機械受注と鉱工業生産指数を見ていただくとわかりますが、昨年の秋からのつるべ落としの落ち方を見ていただきますと、不況期にはもちろん下がるのですが、異常に落ちております。
こういう状態は何かというと、流動性選好が事業会社でもきわめて強くなりまして、みずからを守るためには、キャッシュ・ポジションの積増しをしなければいけない。一番いいのは、原材料の在庫手当をしないことでありますし、つくりだめもしないこと。これは当たり前のことです。それから、倉庫にいっぱいある在庫は叩き売ることが流動性の積増しでありますし、いまや、そういう状態がどんどん進む中で、過剰資本ストックも発生しています。半導体、DRAMについてはもう撤収が始まっておりますし、建設機械等においてもそういうことが起きています。これも、よく考えてみますと、流動性を積み増す、最適資本ストックについての見直しが始まる、こういう一連のプロセスが始まっているわけです。
この状態は、どんどん累積する可能性を持っております。現在の事態がどの程度異常かを、多変量自己回帰(AR)モデルを使って予測をしてみます。1982年から足元までの毎月のデータで、6個の変数を選びまして-ここは、機械受注と鉱工業生産について掲げてございますが-そのほかに、金利の指標とか、為替レートの指標とか、ハイパワード・マネーの指標等をつくりまして、多変量自己回帰モデルでやってみますと、図の3は、機械受注について、上と下と2つ、グラフが表示してございます。
上は、今年の8月までのデータをどんどん入れまして、逐次推計というのをやった形でございます。下のほうは、パラメーターを1982年から足元の4月までで止めて、それで予測を行ったものでございます。
下ので見ますと、足元はたしかに大幅に崩れてきているわけですが、パラメーターを4月までで固定いたしますと、それでも、西暦2000年にかけて、何とか前年比ゼロにまで戻っていくパターンが確認されます。逐次推計という手法をとった上のほうで見ていただきますと、4月までは何とか戻っていくのですが、5月から異常値が出始めまして、8月には、もう戻らない。対前年比マイナス30%ですから、前年比で70%になります。70%、70%が2年続きますと、7×7=49で、半減するわけです。
現在、民間設備投資は、90兆円近くまでいったのが、一たん70兆円に落ちまして、いまは80兆円台です。これが2年かけて半減するというのは、民間設備投資だけで、2年で40兆円減る。非常に大ざっぱな尺度で言うと、40兆円減るぐらいの大幅な累積的な下降段階を示しているわけです。
その次には鉱工業生産指数を示してございますが、今年度に入りましてからのデータを入れて推計したパラメーターでいきますと、マイナス10%以上。ですから、鉱工業生産で見ても、前年比10%のマイナスは西暦2000年まで続くという形になっております。
私は何を申し上げているかというと、異常なことが今年度に入ってから起きているわけで、この背景に、遮断された信用連鎖がある。銀行にたまたま、取付け騒ぎを起こさないように、ペイオフはしないということをしたものですから、システミック・リスクの部分化をしてしまいまして、その部分化の内側でいる人は、例えば銀行預金を1,500万円持っている。1,000万円を超える500万円は心配だなあ、と。ペイオフをするということなら、それになるわけですが、ペイオフはないわけですから、1,500万円はいいということでしょう。
そして、みずからの所得について、例えば国家公務員の場合は典型的だと思いますが、クビにはならないということになりますと、職場は確保されている。預金も大丈夫だということだったら、何が信用秩序に問題があるのか、こういう部分化が起きてしまったわけであります。
しかし、実際の事業会社、民間でやっている人たちは、自己を守るために、流動性の積増しをし、在庫を削り、生産を削り、そして、過剰資本ストックについては廃棄を決め、したがって、もう手当もしない、補修費も出さないという形をパラメーターが拾いますと、こういう姿になるわけです。
それでは、16兆円の補正をするからいいだろう、こんなことにならないのではないかと言われる方もあるのですが、先ほど言いましたように、この時系列モデルは1982年から足元までを拾っております。92年から96年にかけて、政府が主張されましたのも足しあげますと、60兆円以上公共投資をしたことになっています。景気が悪くなると補正が行われて、92年から96年だけとっても、60兆円、1年で見て15兆円ずつ補正が行われているということは、モデルが拾っておりますので、今回16兆円が出たというのも入っているわけです。それも拾っているわけですから、16兆円の補正が行われても、8月のデータに見られるように、民間設備投資が2年で半減するという異常な数値をいまや示している。私は、これは異常性の尺度だというふうに思っています。
異常性の尺度は幾つかございまして、その次に、国債の利回りと株の配当利回りをとってございます。株の配当利回りが1%上回ってきたというのは、株価が下がったせいでございますが、ついに、国債利回りと配当利回りとの間に格差が出ました。このスプレッドは、いうならば倒産確率の急拡大を示していると言っていいと思います。
データをとりますと、1950年代には、配当利回りのほうが金利よりも高い。完全に元本が保証されたものと、株式という信用リスクを含んだものとの関係でございますが、この差が倒産確率の急拡大を示しているというふうに思います。日付を見ていただきたいのですが、幾つかの政策-16兆円とか、小渕総理が言っておられます減税も、方向としては私は間違っているとは思わないのですが、「六日の菖蒲十日の菊」というやつでして、タイミングがずれにずれて、どんどん問題が悪化しているということなのです。
株価の大幅な下落、そして、配当利回りのほうが高いという状態が出ましたのは、この秋になって以降でありますし、それから、先ほど見ましたパラメーターが異常値をすくい始めたのは5月以降でありますが、適時的確になされていないというのは非常に問題だと思います。
そういう意味では、わが国の政府が大変切れ味が悪い政府になっていて、政府のクオリティを今度は尺度化しなければいけない。ここは、民間の異常な流動性積増しを尺度化するためにやってきたのですが、私は、これ以上政府の動きが鈍いのだったら、日本国政府のクオリティについての尺度をつくらなければいけないと思っておりますが、きわめて切れ味の悪い政府になっております。これまで、総合経済対策というのは、いろんなものを積み重ねればいい、拾い上げればいいという話なのですが、そうではなくて、目的に対して手段を割り当てる。ティンバーゲン先生の発見された手法を、これはやはりきちっとやるべきだと。
個々の目的に対して最もふさわしい手段を割り当てていくことが、いまこそ重要であって、いろんなものを引っ張り出して16兆円に積み上げてみるとか、それが総合経済対策だというのは、もうやめたほうがいい。タイミングというのはきわめて重要ですし、この異常値を早く消すために、先ほど森下さんがご主張されましたように、減税政策も骨格は早急に決める必要があるし、実施時期も早ければ早いほどいい。遅れれば遅れるほど、事態は累積的な下方への力を現実が持ってしまう。そういう恐れがあるのではないかというふうに思っておりまして、税制の骨格を早急に決めて、そして早急に実施する。どうせ、このカードを切ると言われたわけですから、切ると言われた以上は、それが最も有効な形で行われるべきではないかというふうに思います。
〇加藤会長
津田さん、どうぞ。
〇津田委員
二、三、申し上げたいのですが、非常に厳しい財政事情でございます。経済の安定というのは財政の基本的機能の一つですので、やはり思い切ってやらなければいけない。そして、当面、赤字公債でつなぐのもやむを得ないのではないかと思います。
ただ、当然のことながら、赤字公債調達というのは限界があるわけで、そんなに続けられない。あとの財政をどうするのか、こういうようなスタンス、基本的な考え方を持ちながら、今回の税制改正にも取り組まなければいけないのではないか、こう思います。
この間の参議院選挙のとき、各党みんな減税規模の叩き売りみたいなことをやりましたけれども、ああいうふうに自民党が敗退したのは、結局のところ、後半戦におけるダッチロール的な総理の発言で、やはり国民は冷静に見ている。果たしてあれで政権担当できるのだろうか、単に減税規模というだけではなくて、あとのこともどうするんだというスタンスのないままいろんなことを言ったというのが、敗因なのではないかと思います。私ども税制調査会でも、将来の財政をどうするんだというような考え方を持ちながら、ご審議をいただかなければいけないのではないかと思います。
それから、税制措置の内容も、中期的に経済の構造改革、あるいは税制自体の構造改革に資するものでなければならないと思いますし、現在の経済の実態に則した経済対策としての実効性がなければならないと思います。このような構造改革の方向に矛盾するようなものであってはならないし、また、効果という点でも、過去にとられた措置が実際どのような効果があったのか、という反省のもとに考えなければならないのではないかと思います。
これは個別論で、また別の機会のご審議になるかと思いますけれども、例の住宅ローン利子所得控除の問題というのは、金持ち優遇というあれもありますし、住宅取得というのは、私どもにすれば一生に一回か二回で、たまたま当たった人がこういうような特別措置を受ける。しかも、金持ちが優遇されるようなものは、どうもおかしいと思いますし、税制としても果たして所得控除になじむのか、基本的に検討しなければいけない問題だと思います。
先般のワーキング・グループでご指摘がありました一つですけれども、例の社宅に対する現物給与の取扱い。あれなんかは戦後の住宅事情の厳しい折にとられたものが、いままで温存されているわけで、むしろああいう特例を廃止して、まともに現物給与として認定すれば、それ自体が恐らく-国家公務員住宅も含めてですけれども、需要創出効果というんですか、住宅需要を押し出す要因にもなるし、正直言って、国有財産、それから、長大企業等との資産で有効活用にもなるのではないか。そういうような措置が、例えば構造改革の方向にも沿ったもので、それに逆行するような措置はとるべきでないと思います。
先ほども、法人税の減税の経済効果というので議論がありましたけれども、いままで出ている実績とすれば、税収が落ちるのはやむを得ないと思うのです。ただ、納税法人の数が落ちています。減税の効果があるというなら、納税法人の数が増えなければおかしい。納める税金は少なくても、納税法人というのは増えてこなければいけないのが、先日の国税庁の発表でも、現状は3分の1ぐらいになってしまった。というと、果たしてこれは経済効果があるのかどうか。十分吟味していただかなければならない。特に今後の問題としては、法人税の減税というのは、要するに3分の1の法人にしか効かないという現実の事態もよく見極めて判断すべきことではないか、こういうふうに思います。
それから、若干悲観的に申しますと、こういうような政治情勢、特に国会情勢ですので、修羅場の中で最終的な税制措置が決まる可能性があるわけです。ですから、税制調査会の審議も、基本的問題というものにじっくり腰を据えて、骨太の答申を出して、実際、国会での修羅場や何かでも、誤りのない落着点に導くような審議の仕方を考えていかなければならないのではないかと思います。
最後は質問なのですが、国会答弁で、「税制改正に当たっては増税は一切含んでおりません」と言っているわけですけれども、例の特別措置や何かの整理・合理化という問題も全然手をつけないのか。あるいは、先ほど申しました社宅や何かの現物給与の問題も全然手がつけられないのか。
さらに、若干応用問題的になりますけれども、例えば景気対策として、全般的な減価償却率を何年分かこの際まとめて償却させる。あるいは貸倒引当金、今年改正したばかりですけれども、単純な実績ではなくて、この際、非常に不安感を持っているのですから、その何倍というものも認めると。こういうような措置も考えられるし、そのような措置は、将来にわたって税収の復元効果もあるわけですけれども、そこまで増収の話もいけないというような政府のスタンスになっているのか。まあ、政府税調はもちろん別の立場もあるのでしょうけれども、政府側として、その点をどのように考えておるのか、教えていただきたいと思います。
〇尾原主税局長
いまご質問がありましたように、外形標準課税のような話は、いまの景気の現状に鑑みると、少なくとも来年はやめる、こういうことを言われているわけでございます。
それからまた、課税最低限、いま361万円、特別減税前の課税最低限でございますが、これを引き下げる環境にはない。これは、まさに景気の状況をおもんぱかっての答弁がなされたわけでございますが、いまおっしゃいましたように、課税の適正化というのは、適正化を行えば結果的には増収になるわけでございますが、これは別の範疇であって、どんなときでもご検討いただくべき話である、こういうふうに考えております。
〇加藤会長
それでは、なるべく3分以内にお話しいただきたいと思います。どうぞ、諸井委員。
〇諸井委員
質問ですけれども、主税局長言われたように、2カ月かかるとか何とかという話。そうすると、例えば1月に通常国会を開いて、冒頭に税制の問題を審議し、そして、1月中に法人税と所得税の減税のことがきちんと決まったと仮定した場合に、所得税の源泉徴収は、さっきの計算だと、大体4月ごろから減税という形でできる。そして、1~3月分は、まとめて4月に一緒に戻すという形になるのかということが一つ。
それから、法人税の場合はどうなるのかな。3月期末の会社の場合、どういうことですかね。まあ、その決まり方にもよるのかもしれないけれども、3カ月分は6月に減税という格好で出てくるのか。いま、すべて「例えば」ということで前提条件があります。その前提条件でちょっと……。
〇尾原主税局長
まず、所得課税の実施時期についてのお尋ねがございました。所信表明演説で想定していたケースは、4月から実施をする。それで1~3月分は、いま、4月に返すというお話がございました。それはこれからのご審議によると思いますが、所得税は年分課税でございますので、1~3月分については、どの時期になるかは別として、必ず1~3月分までさかのぼって減税をするということかと思います。いつ、その1~3月分をやるかというのは、まさにこれからの話になるわけでございますけれども、想定しておりましたのは、すんなりいけば4月から実施するということ。それから、年分課税ですから、当然、1月から適用されるということでございます。
もう一つ、法人関係の実施時期についてお話がございました。これは、この間も説明させていただきましたが、8月に小渕構想の骨格というのが示されたわけでございます。それによりますと、今度の法人関係税の税率引下げの適用は、4月から始まる開始事業年度からというふうに示されているところでございまして、そういう意味で言いますと……。
〇諸井委員
来年度からと。
〇尾原主税局長
さようでございます。それが8月に示されたということでございます。
〇加藤会長
岩瀬さん、どうぞ。
〇岩瀬特別委員
いま、局長のお話でも適正化の問題に触れられておりました。皆さんのご関心が、所得税、法人課税にいっておりますけれども、その絡みで、証券課税のことにちょっと触れさせていただきたいと思います。
ご存じのように、平成10年度税制改正で、有価証券取引税、取引所税の税率が2分の1に引き下げられまして、平成11年末までには全面廃止されることになっております。この点、内外の金融証券市場を取り巻く環境は大変激変しているわけでございまして、とりわけ国内株式市場の活性化、国際競争力強化の観点からも、11年の末までと言わず、極力速やかに撤廃すべきものと私どもは考えております。
これと関連する、例のキャピタルゲイン課税の適正化でございます。適正化、すなわち、言うところの源泉分離課税の廃止並びに申告分離課税一本化という点についてでございますけれども、現行の課税制度というのは、導入後すでに9年余り経過しているわけでございます。証券市場や個人投資家の間には、すでに完全に定着している制度でございます。かつ、大半の個人投資家が申告を要しない源泉分離課税を選択するといったことで、これは税制として有効に機能しているのが実情でございます。
現在のような長期低迷を続ける株式市場におきまして、申告分離一本化を図ることは、はかり知れない深刻な打撃を市場に与えることになります。キャピタルゲイン課税の見直しにつきましては、利子・配当等の他の金融資産所得に対する課税のあり方とともに、一体としまして、総合的に検討することが、課税の公平の原則からも望ましいわけです。ぜひ、納番制度の早期導入を図って、所得の捕捉力を高めまして、総合課税の実現の方向でもって検討していただきたいというのが私どもの主張でございます。どうぞよろしく。
〇加藤会長
和田さん、どうぞ。
〇和田委員
先ほどの、減税が即、消費者の財布のひもには結びつかないという疑問はありますけれども、消費税のアップ、その他、昨年からのいろいろなことがきっかけになっているのは間違いないということで、一つは、消費税の税率の引下げ、あるいは、食料品の非課税ということをぜひ検討する必要があると思います。
もう一つ、所得税の税率につきましては、最高税率を下げることだけが既定の事実のように言われておりますけれども、前回も申し上げましたが、すべての世帯で、今年度よりも税負担増にならないような対応を求めていきたいと思います。
それともう一つは、公共事業について、公共事業そのものの質の問題というのを相当厳しく考えていかなければならないのではないかなと。そして、その事業が必要なのかどうか、効率が上がっているのかどうか、あるいは、環境への影響がどうなっているのか。そのような多方面から見直し、あるいは、計画はあっても、それを中止していくというようなことでの、公共事業の質の見直しということをぜひやる必要があると考えております。
もう一つ、これは質問も兼ねてなんですけれども、課税最低限につきましては、いますぐに引き下げる状況にはないということになっておりますが、課税最低限の話が出ましたときに、必ず、夫婦・子ども2人、配偶者は課税対象者ではなくて、子どものうち1人は16~22歳ですから、これは特定扶養親族ですか、そういうところが標準世帯ということで、それだけでいいのかなと。反対まではいたしませんけれども、疑問を感じるんです。これが何で標準なのかなと。
例えば、独身で比べてみるとか、共稼ぎで、配偶者も課税の就労者である、そういうような幾つかのサンプルで出していただいて、比較していく必要があるのではないかなと。これは質問を兼ねてです。
以上でございます。
〇尾原主税局長
いま、いろんな世帯形態がございます。これまで、最もティピカルな国際比較をするという意味で、いま和田委員からお話のあった、夫婦・子2人、そのうちの1人は16~22歳までということで比較して、今日に至っております。当然、それ以外の世帯形態もあるわけでございますので、それがどうなっているか、次回、数字をお示ししたい、こういうふうに思っております。
〇加藤会長
はい、橋本さん。
〇橋本特別委員
減税政策を考える上での経済環境評価につきましては、先ほどの田中委員のご発言の内容について、全く同感でございます。小渕総理は、6兆円を相当程度上回る個人所得課税及び法人課税減税をやる、こういうお話でありますが、そういう観点からいたしますと、減税規模としては、本年、4兆円の特別減税が行われて、これがなくなるわけであります。よしんば、表面10兆円規模の減税をやったとしても、ネットでは6兆円。さっきの乗数効果からいきますと、GDPを0.6%ぐらいしか上げる力がない。したがって、少なくともゼロ成長、あるいは若干のプラスに持っていくためには、この程度の減税をやると同時に、それに匹敵する公共投資等の財政支出を同時並行的にやっていかないと、所期の効果が上がらないのではないかという感じがいたします。
減税につきまして、具体的には個人所得税及び住民税について、最高税率を65%から50%に下げて、各層については定率減税というような構想があるやに聞いておりますが、いま申しました定額減税廃止に伴う中低所得者層に対して、景気対策上、何らかの配慮といいますか、例えば、一部定額減税を併用するとか、そういう措置が必要ではないかと思います。
それから、所得課税減税を国税と地方税でどのように分担するかという大変難しい問題であります。中堅所得層への減税効果が高いということを考えますと、地方財政の悪化の現状もさることながら、それに対して、一時的な地方歳入への措置を検討することとして、やはり個人住民税の引下げもどうしても対象とせざるを得ないのではないか。
法人課税につきましても、実効税率40%への引下げが示されておるわけです。これもやはり国・地方の分担問題があるわけですが、今年度、国税では3%の引下げが行われて、結果として、引下げ後は一応国際水準並みになっているということを考えますと、これについても、地方税収入に対する配慮を行いながら、今回の見直しに際しては、法人事業税と法人住民税の税率見直しを全然やらないというわけにはいかないのではないかというふうに思います。
それから、昨今、非常にやかましく言われております住宅ローン利子所得控除制度の導入、これの趣旨については、私は、結構なお話ではないかというふうに考えるわけです。それは、さっきの説明にもありましたとおり、97年以降、住宅着工件数の低迷が続いておって、本年度でも、夏場以降さらに低下してきている。一方、住宅建設は、ご承知のとおり、耐久消費財とか、あるいは、雇用に対する波及効果はきわめて大きい。1兆円、住宅を建てると、1.9兆円の波及効果があるという試算もあるようであります。
それともう一つは、わが国の住宅ストックのレベルが、数はともかくとして、非常にウサギ小屋的でありまして、まだまだ低い。したがって、質の高い、より広い住宅、あるいはセカンドハウス、こういうものへの潜在需要を刺激して、個人消費の足かせ要因を取り除く一種の戦略分野といいますか、あるいは、個人分野における投資減税的な考え方でこういうものを考えることは、必要なことかなというふうに思うわけです。
ただ、導入に当たりましては、既存の住宅取得特別控除、住宅促進税制、これとの併用の妥当性、あるいは特別控除の拡充、こういうものとの優劣比較を考慮しながら、具体的メリットをさらに検討する必要があろうかと思います。
なお、これとは別に、住宅取得コストの低減を図るという意味で、住宅取得税制が、日本の場合、わりあい高いので、これについては別途検討を行う必要があるのではないかと思います。
〇加藤会長
時間を10分ぐらい延長させていただいて、ご意見をいただきたいと思います。
平田さん、どうぞ。
〇平田委員
私は、減税は景気対策としてはあまり効果がないのではないかという考えを前も申し上げておりますので、あまり発言をしなかったのですけれども、過去を見ましても、景気が過熱したときに、あんまり過熱しすぎるから増税をするというふうなことで、一つの景気の調整役をするということは効果があったけれども、いまみたいな消費の低迷のときに、消費を刺激するために減税をするというのは、あまり効果はないのではないか。皆さん方、そういうご意見を言う方は多いのではないかと思うのですけれども、しかしながら、政府、時の首相が減税を口にしておられますから、現実に、法人税の最高税率、所得税の最高税率を下げることの意味の減税ということになっていくのではないかと思います。
しかしながら、政府税制調査会としては、そういうこととは別に、基本問題のいろんなお調べをしていただいておりますことや、課税ベースの問題等の研究成果を踏まえて、「あるべき税制」ということで討論をしていくべきではないかと思うわけであります。
基本的に、税制に対する国民や産業界の要望というのは、すべて減税なんですね。増税をしてくださいということを言ってくるジャンルはないわけであります。それを、そのときどきの国会審議の中で取り上げていきますし、先ほど局長さんからもお話がありましたが、適正な課税ということは常に考えていかなくてはいけないという立場から言っても、減税をただスースーやっていたのでは、税金は取れなくなってしまう、ゼロになってしまうということなのです。
いまの形で言うと、収入が50兆円で、歳出が80兆円ぐらいあるわけですから、全く収入と支出は合わない状態がずうっと続いているわけであります。これをどうするかということは、昨年までの税調論議では、行財政改革ということで、皆さん方、大変おっしゃっていたはずなんですけれども、今年になっての税調は、一言もそれを言わなくなっているというのも大変おかしなことではないか。政府が支出をしていく歳出は一体幾らが適当なのかというグロスの話をしないことには、減税だってうっかりできませんし、また、増税もうっかりできないということだろうと思うのです。歳出をはかって収入を考えるということは、どういう企業でも同じであります。ぜひ、そういう観点を忘れないでご議論を賜ればありがたいと思います。
〇加藤会長
吉田さん、どうぞ。
〇吉田特別委員
一つ疑問に思っていることを、会長さんにも伺っておきたいのですが、いま、しきりに商品券構想が話題になっているし、また、消費税の問題をどうするか、自民党と野党の間で話になっている。こういう商品券構想等は、いま我々が議論しようという税制の枠の中で考えていくのか。それは、6兆円超の小渕総理の公約を受けて、その中で我々は議論していく、そのらち外に置いておくのか。これが予算的に入ってくると、税制の論議も枠が縮まっていくのか、一体これはどうなのか。
どうも商品券構想というのはあまり評判がよくないんですね。かえってコストがかかって、その効果があるのだろうかというときに、もっと純粋な税制論議でやったらどうだという声が非常に強い。そういうことから見ると、らち外に置く話なのか、枠の中に置く話なのか。それによって、我々税制調査会の取り組む態勢も変わるのではないか、この辺をどのように解釈すればよろしいのか、お聞かせいただければと思っております。
〇加藤会長
簡単に申しますと、商品券問題は、私は社会保障だと考えております。したがって、税制の枠で考えることはないのですが、国民負担ということからまいりますと、いずれは我々としても念頭に置かなければならないということで、それが政治的な一つの条件の中で進んでおりますので、私どもとしては、それに対していろんなところで発言はしながらも、その動向に注目しているということでございます。そういう意味では、税制としてまともに議論する話ではないだろう、こういうふうに私は理解しております。よろしゅうございますか。
〇吉田特別委員
消費税の問題は、これも政治の論点と。
〇加藤会長
そうですね。そういう論点はいろいろあってもいいと思います。しかし、我々が考えますのには、将来の税制の体系を考えたときに、間接税、あるいは消費税に比重を移していこうということは、私たちの一つの結論的な動きでございますから、これを私は否定することはできない、こういうふうに思っております。
〇吉田特別委員
例えば、いま、6兆円超、7兆円の減税論議を税調の中でやろうとしている。それの枠外に置くのか、枠の中に置くのか。
〇加藤会長
消費税ですか。
〇吉田特別委員
はい。
〇加藤会長
消費税の問題がもしあるとすれば、我々は議論しなければいけません。
〇吉田特別委員
議論しなければいけませんね。我々はそれを、やはりこの場で議論しなければいかんと思いますね。
〇加藤会長
当然、それが議題になってくれば、考えざるを得ないわけです。ただ、我々としては論外であるという感じは持っているんですけどね。
〇吉田特別委員
論外であるといっても、なかなかそうもいかない動きがあるとすれば……。
〇加藤会長
それに対しては、基本的な構想はこうなんだということを我々は明確にして、将来の方向を崩すようなことをやっては困るということについても、我々はこれから主張していかなければならないと思っています。
〇吉田特別委員
了解。
〇加藤会長
塙さん、どうぞ。
〇塙委員
あるべき税制の論議と景気対策とが、どうしても議論としてミックスするわけですけれども、総理が基本的に減税をしようと公約されたのは、景気対策を念頭に置かれたからではないかと思うわけであります。そういう意味でも、骨格だけでも今度の臨時国会で論議していただいて、プロシージャーには少し時間がかかるかもしれませんし、実際に一本化するのは時間がかかるにしても、議論だけでも早くしてもらうことを、私どもとしてはお願いしたいと思います。
私どもというのは、さっき田中先生のおっしゃった、冷静でおられる者と、おられない者と分けますと、我々は冷静でおられない者のほうなものですから、よろしくお願いしたいと思います。
〇加藤会長
ほかにございませんか。よろしゅうございますか。
時間を大変超過いたしまして、ご議論がまだまだ残っているところがございますが、これは、この次もずっと続く議論でございますので、そのときにまた伺いたいと思います。
次回は11月10日の午後2時から4時ということで予定しております。
議題は、恐らく国と地方の財政状況も含めまして、お互いの税制の関係などを論じなければならないということになってくると思いますので、そういうこともひとつ情報をいろいろ提供しながら、やっていきたいと思っております。
それから、その次は、すでにご承知のとおり、17日と27日の開催を予定しておりますけれども、その予定以外にも、火曜、金曜は開催をお願いすることもありますので、その点はお許しをいただきたい、こういうふうに思っております。
では、きょうはどうもありがとうございました。
〔閉会〕
(注)
本議事録は毎回の総会後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、大蔵省主税局及び自治省税務局の文責において作成した資料です。
内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。