第20回総会 議事録

平成10年10月27日開催

加藤会長

ただいまから、税制調査会第20回総会を開催いたします。なお、第3回基本問題小委員会も同時開催ということになります。

審議に入ります前に、一つお断りをさせていただきます。前回の総会で、お手元にありますが、「税制調査会の今後の運営について」ということでご了承いただいたのですが、本日から、こういうふうに公開制になっております。

公開で傍聴していただいて大変ありがたいのですけれども、あるいは、こういうところに出るのはかえって時間的にはロスかもしれません。しかし、公開でもって皆様方に聞いていただくということになりました。

会場が非常に細長いので、端っこのほうになってしまって、まことに申し訳ありません。会場が手狭だということでお許しいただきたいと思います。

本日は最初に、基本問題小委員会のもとに設置されました二つのワーキング・グループから、それぞれ報告をいただきまして、皆様のご意見を伺うことにしたいと思います。

なお、本日は二つのワーキング・グループに所属していただいております専門委員の皆様の中から、東京大学教授の井掘委員、東京大学教授の神野委員、一橋大学教授の田近委員、慶応義塾大学教授の吉野委員にご出席をいただいております。どうぞよろしくお願いいたします。

続いて、地方法人課税小委員会から、これまでの審議状況についてご報告をいただきまして、皆様の意見を伺いたいと思いますが、前回、時間の関係上、議論を積み残した分がございます。前回ご欠席された方、あるいは、発言が十分にできなかった方には、ぜひご意見をいただきたいと思っております。

では、ワーキング・グループでございますが、これまでの税調審議を念のために振り返りますと、4月9日に予算成立のあと、橋本前総理の記者会見が行われ、特別減税の年内追加2兆円と来年への継続2兆円等を述べられた中で、個人所得課税や法人課税のあり方について、検討してほしいとの政府税制調査会への新たな要請がありました。

これを受けまして、税制調査会では、21世紀を見据えた個人所得課税のあり方について、聖域を設けることなく抜本的な見直しを行うため、総会にお諮りし、基本問題小委員会を設置することとし、これまで2回の審議を行い、論点の洗い出しを行いました。

その際、個人所得課税の議論に当たっては、最高税率・課税最低限のほか、課税方式・納番など、広範にわたるいろいろな問題につきまして、相当に専門的・理論的に検討する必要があることから、小委員会のメンバーを中心とした数名の学者からなる二つのワーキング・グループを設置いたしまして、本間委員と石委員に主査をお願いいたしました。

その後、7月の審議を初回に、夏休み返上で精力的な審議が行われ、途中、海外調査をはさみまして、これまでそれぞれ5回ずつ審議を重ねていただき、先般、12日、13日の両日、それぞれのワーキング・グループにおいて、現時点での中間的なとりまとめが行われました。

そこで本日は、総会と基本問題小委員会との同時開催ということでありますので、その報告を受けたいと思っております。

また、税制調査会では、両小委員会の検討に資するために夏休みに海外調査を行っておりまして、今回は、基本問題小委員会と地方法人課税小委員会と合同で行いました。具体的には、8月から9月にかけて、竹内委員、田近委員、そして林委員に、アメリカ、イギリスについて、石委員と水野忠恒委員には、フランス、ドイツ、オーストリアについて、課税の実態などを詳しく調査していただきました。

そこで、本日の審議の参考とするため、ワーキング・グループからの報告を受けますが、まず最初に、基本問題小委員会関係の海外調査の報告を受けたいと思います。地方法人課税小委員会関係の海外調査の状況につきましては、後ほど、石小委員長からお話の中で触れていただきたいと考えております。

海外調査報告書は、お手元の資料で「総20-2」と書いてありますが、それを配付してあります。会議後じっくりごらんいただくといたしまして、まず、調査に行かれた委員より簡単にコメントをいただきたいと思います。

まず、石委員からお願いいたします。

石特別委員

いま会長からご紹介いただきましたように、20-2の資料を使いまして、ごく簡単に所得税関係のところのご報告をさせていただきます。

アメリカとイギリスというのがひと括り、それから、フランス、ドイツ、オーストリアがひと括りでございます。

最初に、この資料もその順になっておりますので、アメリカ、イギリスのほうを田近さんから4~5分で簡単にご説明いただき、ヨーロッパのほうを私がご説明し、あとは、もし何かありましたら、ご参加いただきました水野さんから総合的に補足いただくという段取りでやらせていただきます。

田近専門委員

それでは、海外調査報告ということで、アメリカとイギリスに参りましたけれども、アメリカ、イギリスの所得税を中心に、調査の過程で特に印象に残ったことを幾つか指摘させていただきたいと思います。資料は、お手元の「税調委員海外調査報告(所得税)」を適宜ピックアップして報告します。

アメリカですけれども、2ページ、80年代に入って以来のアメリカの税制改革をどう読むかということが調査の最大の眼目であって、その結果として、レーガン税制をどう評価するかというようなことを考えてきました。

ここに書きましたように、アメリカの80年代の税制改革は、まず第一点は、所得税にベースを置いた改革だったということです。

70年代はインフレが非常に激しかった。そこで、所得税の持つさまざまな問題点が露呈してきたわけです。限界税率が上がるだけではなく、支払利子を控除することに伴ってさまざまな節税行為が行われた。いま、住宅税制の一環として支払利子の控除が議論されていますけれども、欧米の国では、インフレ、高い名目金利、そして、それを課税ベースから引くという税制戦略が70年代に非常に使われたわけです。

それに対してアメリカは、80年代前半、所得税のインデクゼーションをした。タックスのかかるブラケットも、あるいは控除額も、きちんとインフレ調整をした、これが最大の改革の一つだったと思います。

その後、86年にさらにタックスベースを広げるわけですけれども、日本の税制との関連で言うと、4ページをお開きいただきたいと思います。課税ベースの拡大と一言でいいますけれども、日本とこれだけ違うのだということを強調したいのですが、まず、日本のように、給与所得の一定をみなしで控除する給与所得控除はない。この辺は非常に厳格です。

第二点として、社会保険料控除というのはアメリカでは認められていない。私の知る限り、いま、アメリカのソーシャル・セキュリティの保険料率は12%程度だと思いますけれども、それは個人の所得税から引かれない。なぜか? それは、払った保険料ともらう給付額とは、完全に保険のシステムとして対応していませんから、ほかの税と同じようにソーシャル・セキュリティはタックスなんだという考えです。

もし、日本で給与所得控除と社会保険料控除をとってしまったら、課税ベースはガッと広がるわけです。だから、我々の議論している課税ベースの拡大というものを、既にはるか先に課税ベースをさらに拡大していった。その典型は、フリンジ・ベネフィットをどうかけるかというところでもきわめて厳しい査定をしています。

アメリカの確定申告書をごらんになればわかるのですけれども、いろんな足切りがあります。最低これ以上使ったときには引いてあげる、等々です。したがって、単に課税ベースの拡大というお題目ではなくて、その実質はきわめて厳しいものがあるということです。

その一方、何が起きるかというと、401K、企業年金ですけれども、会社側で控除してあげるという仕組みになるわけです。そして、社会保険料控除にかわって、個人年金勘定等に、インディビジュアル・リタイアメント・アカウントに積み上げるときには控除してあげるという形になってきているというわけで、基本的にはタックスベースを広げる。しかし、そこで政策的に、個人が年金を積み立てるときには引いてあげる。そして、企業側がケアするときには、それを損金に算入するという形になっていることが一番印象的でした。

そのほか、納税者番号等ありますけれども、時間がありませんから、いま我々の緊急の税制改革との関連で報告させていただきました。

イギリスのところも、時間がありませんから一言。イギリスでも、主として課税ベースについて調査をしてきました。7ページをごらんになっていただきたいのですけれども、イギリスは、ご存じと思いますけれども、課税最低限が非常に小さい。そこで、すぐに基本税率が適用されてしまう仕組みになっています。

イギリスでいま非常に議論されていたのは、7ページの第2段落、ワーキング・ファミリー・クレジット、「就労家族税額控除」と書いてありますけれども、ここのアイデアはいわゆる“働かざる者食うべからず”という考えで、控除額を大きくして所得税負担を小さくするのではなくて、低い所得でも税は払ってください、そのかわり、低い所得で働いている人に対してはタックス・クレジット(補助金)をあげます、という仕組みです。

ここで我々が得た印象ですけれども、所得税を考えていくときには、課税最低限を大きくする、すなわち所得控除を大きくして税負担を下げるという仕組みがいいのか、あるいは課税最低限は小さくして、早い段階で税は取る。しかも、そこで働いている人たちがインセンティブを失わないように、きちんとクレジットをあげる。こういう二つの仕組みがぶつかり合っているというか、大きな考え方としてあるということが印象的でした。

以上です。

加藤会長

ありがとうございました。

石委員のほうから。

石特別委員

7ページ以降のフランス、ドイツ、オーストリアにつきまして駆け足でご説明いたします。

ただ、この9月以降の班は、地方の法人課税の外形について調査に行ったというのが主たるねらいでありました。所得税のほうは既にいろんな形で資料も集まっておりましたので、今回、ホットな情報を集めるという以外には、アメリカ、イギリスほど細かくやってこなかったということだけあらかじめお断りいたします。

フランスでありますが、ご承知のようにラテン系の国でありますから、所得税よりは間接税の国という意味で、現行の所得税を大幅に変えようという意識はないようであります。

例えば、源泉徴収を企業についてやっていないという珍しい国です。それから、課税単位が、n分n乗のように複雑な家族単位であるという国。最高税率も54%ありますが、これもそう下げようという動きはないという意味で、自分たちの持っている所得税はそのままという感じでありました。

ただ、フランスについて特に注目すべきことは、7ページの下に書いてあります、CSGという一般社会税を、社会保険に対する目的税的に特定財源的に入れていって、社会保険料のほうを下げてきた。つまり、社会保険料を下げて、税として社会保険関係の財源を調達するということをやっておりまして、これはきわめて成功していると思います。CSGについては重税感がないというのは、まさに保険料を下げたからでありまして、初め・1%で入ったのが、いまや8%ぐらいになっているわけであります。それだけ重くなっても、目的税化してというところが一つポイントだったように思います。

ドイツでありますが、ドイツは所得税がかなり重い、したがって最高税率を下げたいという意欲を持っている国であります。と同時に、あそこは非常にブラケットが細かい。線型的で、1マルク上がってもすぐ税がかかるというようなスタイルにしております。これも、累進税率をしっかりかけるにはこういうほうがいいという信念を持っているようでありまして、アングロサクソン的なフラット化という、そういう哲学ではないと思います。最高税率も下げたいということ。

それから、9ページの一番上に書いてございますが、ゼロ税率適用最高限度額を引き下げるという意味は、言うなれば課税ベースを広くするということでありますが、さまざまなフリンジ・ベネフィット的なものを整理しながら、課税ベースを下げつつ最高税率を下げるというような発想を持っている国であります。ただ、この国には納番がありません。納番がないので、性善説的に資本所得課税をやっているということであります。

オーストリアのほうは、それほど細かく調査する時間がなかったのですが、ここも、最高税率を下げたいという意識を持っております。ただ、ここは納番がありまして、資本所得課税というのはしっかりやっているという印象を受けました。

水野さんから、もし何かあれば、補足していただきますが。

水野(忠)委員

フランスにつきましては、フランスは付加価値税の国ですから、付加価値税の比率が60%で、所得税が40%ぐらいだと思います。そうなりますと、そういう国の所得税の存在意義がわが国とはかなり違ってくるということで、非常に興味があったわけですけれども、それだけに所得税の税制というのは、いわゆる高額所得者の税制である。一般的な人は付加価値税を納めまして、それを上回る収入のある人が所得税を納める、そういう構造になっていることに非常に興味が持たれました。

それからもう一つが、CSGと言われていますが、社会保障税といいますか、社会保障財源ですけれども、実質は、所得のベースに税金をかける、こういうものの比率がだんだん高まりつつある、こういう点に興味が持たれました。

あとドイツですけれども、石先生言われましたように、ほかの国がだんだん税率の階段を少なくしているのに比べて、グラフで言うと、線状の税率、累進税率をそのまま維持している。

今後の方向としては、この間の選挙にも出てまいりましたけれども、最高税率を引き下げる、そのかわり課税の最低限も下げて、なおかつ課税のベースを拡大する、そういう傾向にあるということが印象的でありました。

以上です。

加藤会長

ありがとうございました。

それでは、ご質問などはあとにいたしまして、ワーキング・グループの中間とりまとめについて報告を受けたいと思います。

まず最初に、基本枠組ワーキング・グループの報告を受けます。資料は、お手元の「基本枠組ワーキンググループ中間とりまとめ」(総20-4)をごらんいただきたいと思います。

それでは、事務局から朗読をしてください。

事務局

資料「総20-4」と右肩に書いておりますが、その資料に従いまして、読み上げさせていただきたいと思います。

資料は分厚いもので、前半と後半に分かれております。後半は参考資料になっておりますので、前半部分を1ページから順次、右側の「論点・意見」の欄のみを読み上げさせていただくという方式でやらせていただきたいと思います。

左側の欄には、各項目ごとの簡単な説明がございますので、後ほどごらんいただきたいと思います。

まず、全体に関する意見でございますが、少子・高齢化など社会経済の構造変化、金融取引の進展、国際的な資本移動の進展等を踏まえ、所得課税における課税方式や、納税者番号制度等について幅広く検討、見直しを行うべきではないか。

課税方式は「総合課税と分離課税」という項目でございます。

所得課税の対象をどの範囲までとすべきと考えるか。フリンジ・ベネフィット等をどう考えるか。さらに、未実現のキャピタルゲイン、インピューティド・インカム(帰属所得)についてどう考えるか。

所得課税が年を単位として課されることとの関係で、長期間にわたって実現される所得についてどう考えるか。

総合課税と分離課税について、課税の公平、中立、簡素の観点、所得の性質及び税率構造、税負担のあり方等に照らし、その特質をどう考えるか。

2ページ、3ページと飛びまして、4ページでございます。「所得分類、所得計算方法」。

現行の所得課税は、所得の発生形態、性質等に応じて、10種類の所得に分類した上で所得が計算されているが、このような所得分類についてどのように考えるべきか。

預貯金・株式等の金融資産からの所得については、勤労性所得との違いをどう考えるか。金融取引の特性をどう考えるか。国際的な資本移動の中立性の観点からどう考えるか。

土地等の譲渡所得につきましては、勤労性所得との違いをどう考えるか。軽減税率の適用範囲と特別控除をどう考えるか。所得が長期間の経過により生ずることをどう考えるか。

土地等の証券化の進展を踏まえ、金融課税と土地からの譲渡所得への課税等の関係をどう考えるか。

不動産所得につきましては、事業所得・雑所得との関係でどう考えるか。

現在、雑所得に分類されている公的年金に係る所得をどう考えるか。

長期的に発生した所得に関しては、累進緩和も念頭においた措置がとられているが、税率の累進緩和の流れの中で、これらの所得計算方法をも検討する必要があるのではないか。

「金融課税」の項目でございますが、金融ビッグバン、国際的な資本移動の一層の進展の下、1,200兆円もの個人金融資産について、公平、中立等の観点から、課税のあり方をどう考えるか。

利子、配当、株式譲渡益などに関して、次のような点についてどう考えるか。

まず利子所得については、課税の公平・中立、執行体制の整備、利子所得の特異性。配当所得につきましては、利子課税とのバランス等。株式等譲渡益課税につきましては、申告分離課税方式への一本化。地方税における課税の適正化などでございます。

7ページでございますが、長期金融商品の課税繰延べについてどう考えるか。

非課税貯蓄に関して、高齢者等の貯蓄、勤労者の財産形成への配慮のあり方についてどう考えるか。

生損保控除について、制度の趣旨や金融商品間の中立性、公平性等の観点からどう考えるか。

金融システム改革、国際的資本移動の一層の進展の下で金融商品や金融取引にどのような動きが見られるか。

集合的投資スキームなどハイブリッド型商品やデリバティブなど新型金融商品に対する課税のあり方について、商品間の中立性等を踏まえつつ、どう考えるか。

新型金融商品について、これまで個別の商品ごとに課税のあり方が検討されてきたが、金融商品の開発が急速に進展していること等に鑑み、そのリスクなどに着目しつつ、包括的、横断的な対応を検討すべきか。

金融商品からの所得について、所得種類の転換、課税の繰延べ、損益の通算、源泉地の転換等を通じた租税回避行為への対応を手続法的、実体法的にどう考えるか。

8ページでございます。「非居住者国債利子源泉徴収制度」に関連してでございます。

円の国際化との関係、国境越え利子課税・本人確認のインフラ(国債流通システムのあり方等)のグローバル・スタンダード、居住者による租税回避防止についてどう考えるか。

9ページにまいりまして、「土地譲渡益課税」でございます。

土地譲渡益課税のあり方については、次のような点に留意しつつ、土地税制全般の一環として検討を行うべきではないか。

所得・消費・資産等の間で均衡のとれた税体系。土地基本法の基本理念(土地の公共性など)を踏まえた総合的な土地政策の一環としての役割。長期的、構造的な制度の構築。各種の特別控除等により狭くなっている課税ベース。税率構造のフラット化に伴う資産課税の適正化。

10ページでございますが、「損益通算・繰越控除・平均課税」という項目でございます。

損益通算を認める範囲や人為的に損失を創出することも可能な操作性の高い受動的活動からの損失(パッシブ・アクティビティ・ロス)の取扱い等についてどう考えるか。

現行の所得課税は暦年課税を原則としているが、損失の繰越し、繰戻しについてどう考えるか。繰越しされた損失と他の所得との相殺を認めるべきかどうか。

税率の累進構造の緩和の下で、変動所得・臨時所得の平均課税について簡素化してもよいのではないか。また、対象となる所得についてどう考えるか。

11ページでございますが、「納税過程の公正、簡素」という項目でございます。

今後は、納税者の税制に対する信頼を確保するため、適正な執行の確保という課税する側の観点とともに、納税者がどのような形で、どの程度、納税過程に関与するかという納税者の立場から見たタックス・コンプライアンス(税制への信頼と納税過程を通じた法令遵守)の観点を重視して、納税過程の公正・簡素を推進していくことが必要ではないか。

ビッグバン、金融取引の進展、国際的な資金移動の一層の進展、電子化等によって、租税回避行為が高度化していることを踏まえ、どのように適正な執行の確保を図るか。

課税制度の変更に際しては、適切な所得の捕捉がなされるように資料情報の提出等、執行にも資するような制度的な検討も必要ではないか。

また、資料情報の提出をどのように確保するか等についても検討が必要ではないか。

次のページにまいりまして、「納税者番号制度」の項目です。

納税者番号制度については、国民の理解がさらに深められ、より具体的な議論が行われることが重要ではないか。

「制度の具体像」に関しましては、番号利用の一般化、行政による番号の整備、国際的資本移動の一層の進展、金融システム改革に伴う資料情報制度の充実の要請、電子化の進展等を踏まえ、段階的な導入も含め、納税者番号制度の具体的な制度案を構築して、それをもとに、その得失について検討を進めることが望ましいのではないか。

納税者番号制度については、課税する側の観点からだけではなく、タックス・コンプライアンスという納税者や源泉徴収義務者といった関係者の観点にも立った検討が必要ではないか。

納税者番号の使用を望まない納税者に関しては、より高い税率による源泉徴収を行うというような、納税者の選択の余地を残すような仕組みについてどう考えるか。

納税者番号として利用できる番号として、年金番号と住民票コードの具体的な比較検討を進めるべきではないか。

13ページでございますが、所得を捕捉する資料情報の制度として、番号の活用の必要性が高まっているのではないか。

また、「課税方式との関連」ですが、利子・株式等譲渡益の総合課税化と納税者番号制度との関係をどのように考えるか。

納税者番号制度を資産性所得の課税の適正化のために活用していくことは必要ではないか。

次に、「経済取引への影響、民間及び行政のコストと効果」に関してですが、資金シフト等、経済取引への影響をどう考えるか。

民間及び行政のコストについてどう考えるか。

納税の透明性に資すること等の定量的に示すことができない効果にも配慮する必要があるのではないか。

納税者番号制度のメリットについてどう考えるか。

「プライバシー保護」に関連しましては、納税者番号制度の具体像をもとにプライバシー問題の生じうる局面を整理して検討すべきではないか。

納税者番号制度のプライバシー保護のため、罰則等の法制度やコンピュータ・システムを含めた執行面についてどう考えるか。

以上でございます。

加藤会長

ありがとうございました。

では、本間主査から。

本間委員

ただいま事務局から朗読していただきましたとおり、基本枠組ワーキング・グループは、そもそも論に立ち返って、現在の大きく変化する環境条件の中で、所得税を中心にして全般を見直していくという作業を行ったわけであります。

お手元に、「税制調査会基本問題小委員会ワーキンググループ・中間とりまとめ(概要)」というものが配付されていると思いますので、その項目に沿いながら、私から簡単にコメントさせていただきたいと思っております。

我々、基本枠組ワーキングは、課税方式及び納税過程の公正、簡素、さらには、それと関連する納税者番号制度について議論を中心的に行ったということであります。

課税方式につきましては、所得それ自身が非常に多様化し、発生形態と同時に、それを実現するタイミング等も含めて複雑化をしているというのが実態でございます。これまでのような分類及び単年度課税、さらには、それを越えて発生する所得の捕捉の問題等も、現実の執行面も含めて、公正、簡素な税制を実現する上で障害になっているわけであります。

その点、我々はまず、未実現の所得、あるいは、持ち家等の帰属所得をどう考えるか、あるいは、交際費等の関係でフリンジ・ベネフィット等をどのように考えるか、そのような所得の概念整理をもう一度したということでございます。

さらには、それを踏まえて、税調でもこれまで、総合課税と分離課税の妥当性、及びその現実的な適用における折衷案ということをやってきたわけでございますけれども、そもそも論に立ち返って、現在、租税理論の中でどのような考え方があるのかということを再整理したというのが実態であります。

現在、包括所得税、総合課税が唯一の考え方ではなくて、むしろ分離課税的な方向を是認する議論が、最適課税論、あるいはデュアル・インカム・タクセーションという考え方の中に反映していることは、理論と現実の整合的な位置づけという意味では、今後、わが国の税制改正論議において考え直していかなければならないテーマかという具合に考えております。

その上で、現行行われております所得税は、ご承知のとおり、日本の場合には、10種類の所得を、所得の発生形態、流動性等の、キャッシュとの互換性における容易度に応じて分離課税をしているのが実態でございます。それぞれの所得に対して控除を設けて、一部分は総合的な課税、そして、残りの少数のものについては分離課税を適用するという形になっております。

このようなやり方を踏襲していくことが、特に金融関連の所得の多様性とか、土地の証券化等における流動化の可能性、さらには、公的年金、私的年金にかかわらず、年金というものが複合的な性格を持っていることを勘案いたしますと、この所得分類、所得計算方法が、従来のやり方が唯一妥当かどうかということは、基本に立ち返って、分類も含めてもう一度考え直していくことも必要になってくるのではないか、この点を包括的に議論をいたしました。

とりわけグルーピングの問題で大きな課題になりますのは、金融課税の問題でございます。ご承知のとおり、昨年、金融課税小委員会を設けまして、ビッグバン対応としての第1段階の議論は、有取税等についての改革案をまとめたわけでございますけれども、残された問題につきまして、さらに包括的に検討を加えたというのが実態であります。

そこに、項目が挙げられております、利子、配当、株式譲渡益、こういうようなインカムの配当とか、キャピタルゲインの株式の譲渡益等についての取扱い、さらには、課税年度を越える問題がさまざまな形で行われておりますので、課税の繰延べ、さらには非課税貯蓄、生損保控除、このような問題についても、新たな角度から議論をしていく必要があるだろうと我々はそれぞれ詰めたわけであります。

その背後にありますのは、金融取引、「足の速い」商品としてきわめて調整が速いスピードに、税制がついていけないということもございます。それぞれ新しい所得が出てきたら、それに新たな課税方式をつけ加えるというやり方では根本的に解決できないのではないか、グルーピングを金融商品についてはより大括りにして、包括的・横断的な対応等も考慮する必要があるのではないかという指摘もございました。

さらに、非居住者国債利子源泉徴収制度につきましてはビッグバンとの関連において議論がなされたということもございましたし、この点について現実に相当動いていることも事実でございます。国際的な流動性の障害になる取引関係と、捕捉も含めての体制づくりを考慮するということも、また、今後の課題であろうかと考えております。

土地譲渡益課税につきましては、さまざまなご議論がありますし、これまでの経緯がございます。金融課税、土地譲渡益課税に共通して、我々が今後考えてまいらなければならないテーマは、課税年度を越えて発生するインカム及び控除の取扱い、さらには、それに対応する税率の考え方でございます。

フラット化を徹底的に押し進めますと、この問題はなくなるわけでありますけれども、累進課税を現実にとっておりますと、損益計算、繰越し控除というものをどのような形で行うかということは、タックスを繰延べしていくというインセンティブを生む危険性がございます。その点で、損益計算、繰越し控除、平均課税の問題についても、現実に計算能力が飛躍的に高まっている執行面における効率化も含めて、検討すべき時期に来ているということでございます。

さらには、納税過程の公正、簡素さ、納税者番号制度でございます。これにつきましては、我々、どうしても税の側から執行を見る、特に徴収する側を見るということが中心でございますけれども、これを納税者の立場から、幅広く、全体としての執行を効率化していくことが必要だという考え方が強く出されまして、ここでは「タックス・コンプライアンス」という言葉を使っておりますが、執行をする協力体制というものをくみ上げていくことが必要だろうと。

さらには、それを担保するためにも、適正な執行の確保をするために、電算機化等の効率化を含めて、これの前進を図っていく必要があるという議論が出てまいりました。

納税者番号制度につきましては、金融課税小委員会でも昨年取り上げて、これについては、従来よりも前向きの考え方を示させていただいたわけであります。今回の基本枠組ワーキングにおきましても、これについてはもう具体的に議論をする段階なのではないか、とりわけ経済取引が非常に複雑化して、国際間の移動が高まる状況の中では、この面についての対応が遅れることは、十分な執行体制が担保できないことになるだろうという危惧も出ていたということであります。

しかし、そうはいっても、アレルギーが強く持たれている納税者番号制度でございますので、これについては、国民の理解を求めていく作業は不可欠でございます。とりわけプライバシーの保護は、制度面も含めて、どのようにこれを具体化していくか。これについても、入口論ではなく、現実化したレベルにおける踏み込んだプライバシー保護の議論も積み上げていく必要があるという論点をまとめたということでございます。

我々の議論は、そもそも論から、日本の所得税制が抱える問題点を再整理したというのが実態でございます。これは、当面はともかく、中長期的に我々自身が改革に取り組むべき課題である。その論点を整理したというのが、このワーキング・グループの課題であったということでございます。

以上でございます。

加藤会長

ありがとうございました。

続きまして、課税問題ワーキング・グループの報告に入りたいと思います。

資料は、お手元の「課税問題ワーキング・グループ中間とりまとめ」(総20-5)でございますが、ごらんいただきたいと思います。

まず、事務局から朗読をしていただきます。

事務局

それでは、右肩に総20-5と書いてございます、ちょっと分厚い資料でございますが、こちらも基本枠組ワーキング・グループの方と同様に、前半と後半に分かれております。後半は参考資料となっておりますので、前半の方を1ページから順に朗読させていただきたいと思います。

まず1ページでございますが、「個人所得課税の基本的なあり方と負担水準」の項目でございます。

税体系全体の中での個人所得課税の位置づけについてどう考えるか。

個人所得課税の負担水準について、次のような観点からどのように考えるか。

マクロで見た租税負担率の水準と国民の重税感との関係。収入階層、世帯類型、所得の稼得形態に応じた税負担の状況。

社会保険料負担を合わせた負担水準についてどのように評価するか。

現在及び今後の公共サービスの水準についてどう考えるか。また、その水準から見て、国民負担の水準はどのようにあるべきか。

財政赤字が将来の負担水準に及ぼす影響を、現在の負担水準を評価する上でどのように考慮すべきか。

所得再分配機能の観点から見て、個人所得課税はどの程度の累進性を有するものであるべきか。

個人所得課税の累進構造が次の諸点にどのような影響を及ぼしているか。

個人の勤労意欲や事業意欲。人的資本への投資。国境を越えた人的資本の移動。

個人所得課税の課税ベースについて、次のような視点からどのように評価するか。

課税ベースのイロージョン(浸食)はどの程度生じており、それが、税負担の公正に対する信頼感にどのような影響を与えているか。ライフスタイルや経済行動の選択に対して、できる限り歪みを与えないようなものとなっているか。簡明さと透明性が保たれ、誰が見てもわかりやすく、納得できる制度になっているか。公共サービスの提供のコストを広く分かち合うことができる仕組みとなっているか。

アメリカ、イギリス等の諸外国では、70年代終わりから80年代後半にかけて税率構造の大胆なフラット化や制度の大幅な見直しが進められ、その後、アメリカでは最高税率の引上げの動きも見られた。このような税制改革の流れをどのように評価するか。

3ページ、「税率構造」の項目でございます。

税率の構造的なあり方を検討する場合には、課税ベースや課税方式のあり方との総合的な判断が必要であるが、所得課税体系全体の中で税率構造のあり方をどう考えるか。

所得再分配機能(垂直的公平)と限界税率の累進性の関係をどう考えるか。

限界税率の水準、累進度と勤労意欲、事業意欲との関係をどう考えるか。

機会の均等が保障され、所得が平準化している中で、リスクをとり、あるいは、希少な能力を発揮して得た所得に対する課税の水準はどうあるべきか。

限界税率の水準や累進度が、租税回避の誘因となったり、会社におけるフリンジ・ベネフィットへの依存など、経済行動に影響を与えていないかどうか。

最高税率の水準が諸外国に比して高いことが、人的資本の海外への漏出につながっていないかどうか。

税率構造は、公平・中立・簡素といった税の基本原則にかかわり、個人所得課税のあり方を規定する最も重要な要素の一つであることから、単に景気調整の観点からではなく、長期的な視点から検討していくべきではないか。

4ページですが、国税、地方税のそれぞれの性格に鑑み、所得税と個人住民税の税率構造のあり方についてどう考えるか。

個人所得課税の税率構造と法人所得課税の表面税率(調整後)の関係についてどう考えるか。

次に、「給与所得課税」に関連してですが、
勤務費用の概算控除、他の所得との負担調整など、従来から給与所得控除の性格づけとして論じられてきた点についてどう考えるか。

給与所得控除は、マクロ的に見ると給与収入金額の約3割の水準に達しているが、勤務費用の概算控除として位置づける場合、この水準をどう考えるか。

最高税率の水準と給与所得控除に頭打ちが設けられていないこととの関係をどう考えるか。

給与所得控除の最低保障額制度をどう考えるか。

社会・経済情勢の変化等を踏まえ、従来、給与所得控除の性格づけの一つとして指摘されてきた他の所得との負担調整の観点についてどう考えるか。

勤務形態や給与の支給形態が多様化していることに対し、税制面でどのように対応すべきか。

給与所得控除に関し、いわゆるサラリーマンに対する給与と、同族会社の役員に対する報酬や青色専従者給与の相違についてどう考えるか。

「特定支出控除」に関連してですが、特定支出控除の適用件数は僅少となっているが、職業上多額の必要経費の支出を余儀なくされる場合に、申告による控除の道を開く制度としての意義は認められるのではないか。

他方、給与所得控除の水準が高い(マクロ的に見ると、給与収入金額の約3割の水準に達している)こととの関係をどう考えるか。

6ページですが、「源泉徴収と年末調整」に関連しまして、
雇用形態の変化や所得の発生形態の多様化を踏まえ、現在の源泉徴収の範囲についてどう考えるか。

年末調整の意義につきましては、申告によって税額の確定を納税者みずからが行うことは、税負担を通じて政治参加意識を高める観点から重要であるとの見方についてどう考えるか。

消費税創設後、税負担を通じた政治参加の意識は消費税を通じて相当程度高まっているとの指摘についてどう考えるか。

年末調整は、納税者の手続きを簡便化し、社会的なコストをできる限り最小化する仕組みとして評価できるのではないか。

7ページですが、「事業所得者の経費、控除」の項目です。

必要経費の範囲について、家事費用・家事関連費用と事業の必要経費との判別がケースによっては困難であるが、制度上、執行上、これにどのように対応していくべきか。法人の場合と異なり、交際費や公益的寄付金以外の一般の寄付金について必要経費算入を制限する制度がなく、必要経費性については個別判断に委ねられていることをどう考えるか。

事業における個人形態と法人形態の選択に対してできるだけ歪みを与えないために、それぞれの課税のあり方についてどう考えるか。

青色事業者については、専従者給与の支払いによる配偶者等への所得分与が可能となっているが、専従の実態等から見て過度の支払いが行われている場合には公平を失することになるのではないか。

事業所得の申告水準の向上のために一層の納税環境整備が必要との指摘についてどう考えるか。

9ページにまいりまして、「公的年金等課税」の項目です。

少子高齢化が進展する中で、世代間における税負担の公平についてどのように考えるか。また、その考え方を年金課税にどのように反映させるか。

年金課税については、拠出(入口)、運用、給付(出口)の各段階の課税のあり方を含めた総合的な視点から検討する必要があるのではないか。

公的年金等控除の性格についてどう考えるか。

公的年金等については、入口は社会保険料控除により非課税、出口は公的年金等控除等によりほとんどの受給者にとって実質非課税となっているが、年金受給者数の増加、年金所得の増大等、年金制度が成熟化していくことを踏まえ、適切な課税のあり方を検討していくべきではないか。

高齢者間の所得・資産の分布状況は他の年齢層と比べて分散が大きいことを踏まえ、公的年金等に対する課税のあり方をどのように考えるか。

企業年金及び個人年金については、公的年金の上乗せとなる自助努力のための制度としての性格を踏まえ、年金制度全体の中での位置づけや他の金融商品とのバランスとの関係で、その課税のあり方についてどう考えるか。

10ページにまいりまして、「退職所得課税」の項目です。

現行の退職所得課税の仕組みは、勤続年数に応じて厚く支給される退職金支給のあり方を反映したものとなっているが、雇用形態が多様化・流動化してきていることを踏まえ、どのように検討していくべきか。

退職金の支給形態が一時金方式から年金方式に徐々にシフトしていること等を踏まえ、退職所得課税と年金課税との関係をどのように考えるか。

退職所得は、給与所得の後払いとしての性格を有することについて、どのような配慮を払うべきか。

国境を越える課税関係についてですが、来日後、本邦で短期間のみ在職する従業員等に対し、本邦での給与支給に代えて、本国帰国後に退職金を支給するといったことが行われ得ることについてどのように考えるか。

11ページにまいりまして、「譲渡所得課税」についてでございます。

土地税制については、土地をめぐる社会経済情勢の変遷に応じて改正が行われてきているが、政策的見地から設けられている各種の特別控除等により、土地譲渡益のかなりの部分が課税ベースから脱落していることについてどう考えるか。

12ページにまいりまして、「非課税所得」の項目です。

非課税とされている趣旨を踏まえつつ、個別の項目毎にどう考えるか。

続きまして、個別の項目ですが、「フリンジ・ベネフィット」については、
従業員または役員に対する現在の現物給与等の非課税範囲についてどう考えるか。

雇用形態が多様化し、従業員と会社との関係が変化(いわゆる「会社人間」から脱する気運等)している中で、個人の会社への帰属を前提とした福利厚生と、その課税のあり方についてどう考えるか。

13ページにまいりまして、「老人マル優等」についてです。

世代間の公平の観点からどう考えるか。

高齢者間でも所得、資産の状況に多様性がある中で、高齢者であれば一様に非課税の恩典が及ぶことについてどう考えるか。

「社会保障給付」については、社会保障給付の増加や国民の生活水準の向上、所得・資産の状況の多様性等を踏まえ、社会保障給付に係る所得税の取扱いについてどう考えるか。

「非永住者制度」につきましては、居住者のうち来日5年以内の外国籍の者の課税ベースが縮小されているが、課税の公平の観点から問題があるのではないか。

14ページですが、「所得控除の概要」についてです。

所得控除のあり方については、社会・経済情勢の変化を踏まえながら、それぞれの控除が設けられている目的・背景や、公平・中立・簡素といった租税の原則に照らして検討を行う必要があるのではないか。

納税者の置かれた社会的条件の差異等に着目して新規控除を創設することについては、制度がいたずらに複雑になるとともに、そもそも稼得された「所得」に負担を求める税である以上、さまざまな国民の生活態様の中から特定の条件や家計支出(「所得」の処分)を抜き出して斟酌するにはおのずから限界があり、適当ではないのではないか。

「基礎的な人的控除と課税最低限」の関連ですが、
課税最低限は、どの程度の所得階層から所得税の負担を求めるかという限界を画するものであるが、そのあり方に関し、総合的に勘案される次のような要素についてどう考えるか。

国の公共サービスの財源を納税者が負担する視点。国民の生計費などの生活状況。税率構造と課税最低限の組み合わせによる個人所得課税の累進構造のあり方。家族構成に応じた負担の調整。税務執行上対応可能な納税者数。

国民生活の水準の向上、社会保障制度の充実等を踏まえ、いわゆる最低生活費への税制上の配慮についてどのように考えるか。

税負担を通じて政治参加の意識が高まるのではないかとの指摘についてどう考えるか。また、このような考え方から、課税最低限の水準はどのようにあるべきか。

わが国所得税の課税最低限は、累次にわたる引上げにより主要諸外国に比して既に高い水準となっており、所得税制全体としての累進度を強めていることについて、所得再分配機能の観点からどう考えるか。

21世紀の少子高齢社会において、活力を損なわないためには、所得税負担はどのような範囲の人にどの程度求めるべきか。

次に、障害者控除、老年者控除などの「特別な人的控除」の関連です。

特別な人的控除は、特別な事情による追加的費用を斟酌し、担税力に応じた負担を求める見地から設けられているものであるが、次のような観点から、その意義について十分吟味・検討していく必要があるのではないか。

制度創設時と比べ事情が異なってきているものはないか。基礎的な人的控除の水準との関係。社会保障制度等の歳出面の措置との関連。制度の簡明性、透明性。

次に16ページですが、「課税単位と配偶者特別控除等」の項目です。

累進税率の下で世帯単位での合算課税の仕組みをとることについては、以下のような側面があることについてどう考えるか。

合算非分割制とする場合には婚姻に対するペナルティ的な効果を持ち、2分2乗制のような合算分割制とする場合には、同一の所得を有する単身者と既婚者を比べた場合、一般的には既婚者に有利となるというように、婚姻の有無により税負担の程度に変動が生じる。

同一の所得を有する世帯間(共働き・片働き)では税負担は同じとなる。

専業主婦が新たに就労した場合などの追加的所得に対して配偶者の所得に応じた限界税率が適用される。

一方、累進税率の下で個人単位課税の仕組みをとる場合には、以下のような側面があることについてどう考えるか。

同一の所得の単身者と既婚者を比べた場合、配偶者に係る控除がなければ、一般的には、同一の税負担となる。

片働きと共働きを比較した場合、同一の所得を有する世帯では、配偶者に係る控除がなければ、一般的には共働きのほうが有利となる。

世帯に対する税負担のあり方は、課税単位のとり方のみでなく、人的控除のあり方、税率構造、さらに給与所得控除のあり方ともかかわる問題であり、総合的な観点から議論していく必要があるのではないか。

配偶者控除と基礎控除、扶養控除といった人的控除の組み合わせのあり方についてどう考えるか。

課税単位や配偶者に係る控除のあり方は、各国毎に区々であり、関連する社会制度や歴史的背景の影響を色濃く受けていることについてどう考えるか。

イギリスをはじめとする幾つかの先進諸国で、近年、世帯単位課税から個人単位課税に移行する動きが見られたことについてどう考えるか。

配偶者控除・配偶者特別控除は、所得がない、あるいは、所得の少ない配偶者がある者に対して、税制上相応の配慮を払うものであると考えられるが、これらが女性の就労インセンティブに影響を及ぼしているのではないかとの指摘についてどう考えるか。

パート収入については、給与所得控除の最低保障制度等により一定額まで非課税となるとともに、さらに配偶者控除、配偶者特別控除により、世帯主の税負担も軽減される扱いとなっていることについてどう考えるか。

次に、生損保控除などの「その他の各種控除」についてです。

政策的配慮に基づく税制上の控除について、税制の簡素化、課税の公平・中立の観点から、今後、どのように考えていくべきか。

金融システム改革が進み、金融商品間、業態間の課税の公平・中立性が求められている中で、生命保険料・損害保険料控除については見直しを検討していくべきではないか。

社会保険料控除については、運用・給付段階における課税のあり方との関連を踏まえ、どのように考えるか。

社会保険料控除については、社会保険等の制度が多様化していることを踏まえ、個々の制度毎に、その制度の趣旨等に照らして考えていくべきではないか。

次に、「租税特別措置等」の項目です。

租税特別措置等については、それらが特定の政策目的を実現するための政策手段であり、税制の基本原則の例外措置であることから、今後とも、その徹底した整理・合理化の方向で検討を行っていくことが必要ではないか。

その中で「住宅取得促進税制」に関してですが、
住宅政策との関連で、この制度の位置づけをどう考えるか。

持ち家を対象とした制度であるが、借家住まいの者との負担の公平についてどう考えるか。

減収額が租税特別措置の中でも最大の6,000億円余となり、夫婦子二人の給与所得者の場合、年収約800万円まで所得税額がゼロとなっていることについてどう考えるか。

20ページ、「個人住民税関係」です。

個人住民税の性格についてどう考えるか。

応益課税という地方税の性格に鑑み、個人所得課税から資産課税へのシフトを行うべきではないかとの意見がある一方、今後は地方の対人サービスが増えるので、地方税については資産課税より個人所得課税を充実すべきとの意見があるが、これについてどう考えるか。

地方団体の費用を賄う財源は、料金を中心とすべきとの考え方がある一方、むしろ税を中心とすべきとの考え方もあるが、これについてどう考えるか。

個人住民税の課税最低限の構成については、個人住民税の性格を踏まえ、現行の給与取得控除や所得控除を整理し、簡素化すべきとの意見があるが、どう考えるか。

生命保険料控除等政策的なものは、個人住民税の性格を踏まえ極力整理すべきであるとの意見があるがどう考えるか。

21ページですが、個人住民税は、所得を課税標準としており、住民がそれぞれの負担能力に応じて地域社会の費用分担するという性格の税であることから、累進構造は維持されるべきとの考え方についてどう考えるか。

個人住民税は、応益課税(利益説)の考え方に立って、累進税率ではなく比例税率を採用すべきとの考え方についてどう考えるか。

22ページですが、個人住民税の税率構造を改正する場合には、地方団体によって所得格差があることなどから、やり方によって個別の地方団体に対する影響が大きく異なることについてどう考えるか。

均等割の税率をもっと引き上げるべきであるという意見があるが、税率水準についてどう考えるか。

人口規模に応じて均等割の税率を変える現行制度の仕組みについてどう考えるか。

同居の妻に対する均等割の非課税措置についてどう考えるか。

以上でございます。

加藤会長

それでは、石主査からお願いいたします。

石特別委員

説明が相次いでおりますので、そろそろ、イライラされてきた人もいるし、私自身もいささか疲れたから、なるべくこちらのワーキング・グループのご説明は簡潔にしたいと思います。

ただ、分厚い資料が出ておりますように、そもそも論から始めまして、各項目につきましてムラなく議論したということもございます。

我々の大きなねらいは、いま、所得税というのは減税の対象になっておりまして、来年も4兆円という規模の減税をしなければいけないという中で、中長期的に見たら、「所得税いかにあるべきか」という視点がどうしても必要だろう。つまり、21世紀、日本の税制の中で、やはり所得税は有力なベスト・タックスの位置は譲らないだろうという視点から見ますと、現行の所得税が抱えておりますいろいろな問題、これはこの際総ざらいして、しかるべきときにそれに向けて改革をする視点をつくりたいという趣旨で議論を始めたわけであります。

いまお読みいただきました資料をパラパラめくっていただいても結構ですし、あるいは、本間さんが使われた1枚紙のほうでも結構でございますが、どういうことを主としてやったかという点につきまして、かいつまんでご説明いたします。

税体系の中で、個人所得税、個人所得に係る税をどうするかということにつきましては、今後、社会保険料といったような別の負担との兼ね合いで議論する必要があるのではないか。我々払うほうの側から言いますと、所得税であろうが、社会保険料で負担しようが、同じような所得ベースにかかる税でありますので、この点が今回強く意識されましたし、それから、累進性といったときに、所得再分配の視点から見て、どのくらいの累進度が必要か。これは別に確固たる理論的根拠はないのですが、最高税率を下げろという議論もございますし、アングロサクソン系のフラット化の流れもありますので、それを踏まえて、日本にはどうか、と。まだ結論は出ておりませんが、その辺の議論をかなり時間をかけてやったということであります。

二つのキーワードといいますか、累進税率の刻みをどうするかということと、課税ベースの広い・狭い、これをどうするかという二つに尽きますので、それが主として我々のワーキング・グループの印象であったということであります。

課税ベースのほうでございますが、4ページ以降に書いてございますように、いまある控除の中で幾つか問題があるとすれば、給与所得控除、これはマクロ的にもかなり大きくなってきているし、他の所得との負担調整をどうするかということです。あとの退職給与引当金との絡みでありますが、いま雇用体系が非常に変わってきていることを踏まえて、一体給与所得控除というのはどうなっていくのかね、という議論は我々の問題意識の根っこにはあったわけであります。

さはさりながら、課税ベースのときには必要経費というものが非常に重要でありますし、特に事業所得者の場合の必要経費の計算については、いろいろ問題があって、法人税ほどしっかりしていないのですが、これについて幾つか論点があったということであります。

それから、公的年金をこれからどうしようかということに絡めて、課税問題、これは非常に大きいであろうという印象を我々は持っております。先ほど、アメリカについて田近さんからご説明がありましたように、社会保険控除を入口で控除しない国もあります。あるいは、日本みたいに控除する国もある。日本の特色は、出口も入口もともに、年金所得に対しては甘いということであります。

そういう意味で、今後、適正な課税をどうもっていくかというときには、恐らく年金です。それから、先ほどちらっと申し上げましたが、いまの退職所得課税というのは、勤労年数が長いほど有利になる。雇用形態がいま非常に流動化し多様化している中で、税が雇用体系に歪みを与えないか、そういう問題もあるということにつきましては、幾つかの角度から議論いたしました。

フリンジ・ベネフィットに関しましては、いま、会社人間というものがだんだんなくなってきたのかもしれません。個人の会社への帰属意識も変わってまいりました。そういうことになりますと、福利厚生ということを会社はやっておりますが、それに対して受け取る側の個人のほうの課税問題、どう考えるかという問題も恐らく避けて通れないだろうと思います。

それから、個々具体的な所得控除につきましては、分厚いほうの資料の14ページに一覧表がございます。勘定の仕方によって幾つか分かれるのですが、23種類も広がってしまった所得控除というのは、やはり時代の趨勢によって変わってくる、あるいは、社会・経済情勢が変われば控除の性格も変わるのです。それが相も変わらず----というと語弊があるかもしれませんが、そもそも設けられたときのねらいとはだいぶ違っているものがあるだろう。そういう意味で、公平、中立、簡素といった租税原則の立場から言うと、抜本的に見直す必要があるだろうということです。

それとの絡みで、課税最低限が他の主要先進国より高いという点につきまして、課税最低限をどう位置づけるか。これは、応益原則もあるし、応能原則もあるし、いろんな原則があるわけですから、そこからにらんで論点を整理する必要があるのではないかと思います。

課税最低限が高いということは、どうしても根っこのところが削れていきますから、現行の累進所得税課税においては累進度を弱めるのです。そういう意味で、所得再分配政策との絡みでどうなるかということです。

日本は、課税単位については個人ベースで来ておりますが、現行の個人単位については「直すべきだ」という視点もございませんでした。ただ、いろんな角度で、共稼ぎ、片稼ぎ等々で、どういう問題があるかという点は整理しておかなければいけないだろうという問題意識は持ちました。

それから、18ページ以降に、配偶者特別控除、配偶者控除等々、女性の社会進出にディスインセンティブになっているのではないかという話があって、配偶者絡みの控除につきましても、もう一回議論を整理する必要があるだろうということであります。

それから、住宅ローンの支払利子につきましても議論はいたしました。そういう観点から、所得控除全般についてかなり広範囲に目をこらして、一応個別に議論はしたつもりでおります。

個人住民税関係も、国税の所得税の変革に応じて、それなりにいろいろな問題はあるだろうという印象は持っております。ただ、そもそも論から言いますと、個人住民税というのは、応益課税、地方公共サービスに対する地域住民の負担という視点から見るのがいいのではないか。つまり、対人サービスが今後増えるから、資産課税よりは住民税は重要であるという点につきましては、議論がだいぶ集中いたしました。

ただ、国税と同じような格好の仕組みでいいかどうか、これにつきましては、独自の住民税の形態はあり得るのではないか。と同時に、累進構造というのは、いまみたいなのがいいのか、それとも、応益原則というなら、比例税的でいいのではないかといったような税率絡みの議論もそこであったわけであります。

そういうわけで、我々、本間さんと同じように、そもそも論でやったわけでありますから、必ずしも具体的な結論まで目下のところは導いておりません。そういう意味では、所得税改革というのは一朝一夕にいかないだろうという問題意識を持っております。先ほど両論併記的には申し上げましたけれども、これについて直ちに断を下すのは時期尚早ではないか、このように考えております。

いずれにいたしましても、基本問題小委とか、総会でのご議論を踏まえまして、詰めていきたい。論点を幅広に整理したという点で、我々ワーキング・グループの責任はとりあえず最初は終わったということにさせていただきます。

加藤会長

ありがとうございました。

ワーキング・グループに所属なさいました委員の方には、夏休み返上で、短期間で精力的にご審議いただきまして、本日の中間とりまとめをしていただきました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。

なお、今後、税調は、きょうのワーキング・グループのご報告などを念頭に置きながら、年度改正の審議に入るわけでありますが、その年度改正の審議は、基本問題、さらにはワーキング・グループでやられました基本枠組の問題と、なるべく調整がとれるような形で審議をしていこう、こういうふうに思っております。したがって、それが終わりましてから、再び、基本問題小委員会の審議をお願いすることになろうかと思いますので、そのときはまたよろしくお願いしたいと思います。

それでは、両ワーキング・グループの報告に対する質問を含めまして、また、前回ご発言ができなかった方々も含めまして、ここで自由討議をしたいと思います。どなたからでも結構でございます。

中西さん、どうぞ。

中西委員

ワーキング・グループの方々の大変なご努力、そもそも論から始まって、詳細な検討、敬意を表するわけですが、いずれにしましても、この問題は一朝一夕に解決するべきものではないし、年度内にどうのこうのということではなくて、来年度にもまたがることだと思うのです。

わが税調で、もののプライオリティとして、ぜひとも年度内に、あるいはもっと早く結論を出すべきものは、この間、河野さんもちょっとおっしゃいましたが、いまはともかく経済は最悪の事態にあるわけです。まさにエマージェンシーの赤ランプが点滅しているわけです。近いうち、小渕内閣がまた新しい経済対策をお出しになるようですが、政治の一番勘どころはやはり税制に大きくかかわっています。仄聞するところによると、小渕内閣の今度の経済対策の一つの目玉として、住空間の拡大、そういう視点が出るように伺っています。

実体経済に一番波及効果がある減税措置ということになると、住宅市場を刺激するような減税を打ち出さなければいけないだろうという思いがございます。そういう意味で、この間から言っております、アメリカでやっているような住宅ローン利子の所得控除制度をこの際導入することを、この税調で議論していただきたいと思うのです。

これについてはいろいろ反論がございまして、そもそも、政策減税としてこれは非常に不合理で矛盾があると。これは一次取得者の高額所得者を重視した減税であって、いままでの住宅政策の中低所得者の持ち家取得促進と矛盾するではないか、というふうな意見があるわけです。

いままで、住宅取得促進税制という制度を公庫や公団でどんどん提供していった。そこで、逆にウサギ小屋がいまかなり余っているわけです。そういうことではなくて、小渕内閣も言われているように、国民は、より良質な、より空間領域の広い家へ住み替えようというニーズが非常に強いと思うのです。そこを刺激することが産業の活性化につながるわけですから、これは、在来の発想にとらわれないで、大きく変えていくべきだと思っております。

それから第二の反論が、これは金持ち優遇ではないかと。なぜならば、このローン利子の所得控除制度は、高額なローンを組んで住宅を取得する高額所得者ほどより優遇されることになるわけだから、これはよろしくないのではないか、まさに課税の公平性の原則に違反するのではないか、という反論があるわけです。

私は、課税の公平性をあまりにも掲げすぎた結果、日本の税制がおかしくなっておるのではなかろうかと思います。累進税率の見直しもその辺にあるわけでして、いままでわが国が公平というものを必要以上にやってきたところに問題があるわけですから、この辺も思い切って見直しをするべきだと。

これは決して金持ち優遇ということではなくて、その高額所得者は、より多額のローンを組んで、リスクを負って住宅市場に投資をするわけですから、市場の活性化に貢献した対価として所得控除を行うのは、ただ単純な高額所得者優遇ということには私はならないと思います。むしろ、累進税率を下げるほうが高額所得者優遇になるわけですから、私は、このローンはそうはならないだろうと考えます。

それから、アメリカはそもそもいろんなローンがあって、どんどんそれをやめてきて、このローンの支払い利子の所得控除は過去の遺物だ、こういう批判があるのですが、決してそうではないですね。いまアメリカは、住宅2軒まで無制限に住宅ローン利子の所得控除が認められているわけです。これが大変な住宅税制の柱になっているわけであって、決して私は遺物にはなっていないと思いますし、日本とアメリカでは事情が違っているわけです。日本の現状がどうあるかということ、アメリカの現状がどうあるかということの、現状の欠落しているところを是正する税制をやるべきだと。

アメリカは内需がものすごく強くて、最近はこれがひと通り終わって、輸出型のほうに経済構造を変えようとしています。日本は、その輸出型をこれから変えろということを国際社会からも言われていますし、我々も思い切った内需の経済の活性化が必要だと思っています。その意味では、このローン税制を導入することはぜひともそういう活性化に必要ではないか、こう考えています。

その他いろいろありますが、あまり長くなってもあれなので、税調として、ぜひ政策減税の議論を取り上げていただきたいと思います。

加藤会長

貴重なご意見ですけれども、なるべく2分以内でお願いいたします。

はい、どうぞ。

森下委員

私は、短期と長期の問題に区分けして、この税制というものに取り組まなければいけないと思います。法人税の問題、法人実効税率の問題、また所得減税の問題も、大綱は決まっております。一両年、赤字国債でやりますから、そのやり方を、早く具体的にスキームで国民に知らせていくことが、短期的には非常に大事な問題であろうかと思います。

赤字国債がいつまでも続くわけではございません。きょうのワーキング・グループ等々からご意見が出ていますように、中長期の問題としてどういうふうにこれを整合していくのかという問題。中長期のほうにいきますと、短期の問題がぼやけてしまう。近々の短期の問題はこうあるべきだ、それは早く示して実行するということと、中長期の問題を区分けして、この論議をしていくべきだというのが一点でございます。

二点目は、中長期のほうに入りますけれども、産業界の構造改革という点からいきますと、次なる連結納税の問題に手をつけなければ、産業界の構造改革に乗り遅れるのではないかという感じがいたしておりますので、連結納税の問題も、中長期の中に必ず入れていくということを、意見として申し上げたいと思います。

加藤会長

吉田さん、どうぞ。

吉田特別委員

大変庶民的な意見で恐縮でありますが、まちの声を聞いておりますと、今回、景気浮揚のための最高税率の引下げ、定率減税の実施、さらには、住宅ローン利子所得控除、こういうことを聞いておりますと、どうも高額所得者、金持ち優遇にすぎるのではないか。いま一番困っているのは中小企業、小所得者、こういう立場から言いますと、年収700万円以下のところになにがしかの手厚い配慮はどうかと。

商品券構想とか、戻し税減税構想、これもそういう階層に対する配慮かもしれないけれども、正確に、効率よく、しかも混乱なくできるのだろうか。いろんな案があるようだけれども、率直に言うと、まちの声は、消費税を引き下げることのほうが的確で早いのではないか、これが偽らざる声のようでございます。

ただ、かような声に対しまして、将来の少子高齢化社会に向けての税制の方向づけとして、「それはなかなか言うべくして無理だよ」、こういう説得をした場合には、わかってはくれるのですけれども、景気対策のために中小所得者に対してどういう施策が行われていくのだろうか、これにまちの人たちは大変注目をしている。

そういう中で、極端な意見を言いますと、将来の税制のあり方の一つかもしれませんけれども、飲食料品の非課税を考えたほうが早いのではないか、こういう意見があることも事実のようであります。

したがって、所得減税、法人減税という枠の中で政府税調が方向づけをしていこうとするときには、国民に対する相当な説得力のある説明をしなければいけないのではないか、PRも必要ではないか。その枠組を越えたなにがしかが景気浮揚のためにあるのだと言えば、もっと違った構想もあっていいのではないか、こういうことは、まちの声を聞いておりますと相当に強い。我々税調も、そういう声を踏まえながら議論すべきではないか。

一方、今度の税制改革で恩恵を受ける人が高額の方々だと。そのときに、課税最低限が高すぎるのではないかという逆の意見も出てきております。したがって、将来的には課税最低限の見直しも必要だろうし、先ほど石先生が言われたように、給与所得控除の見直し論というのは、自営業者の立場から言いますと、早急に検討に入っていただきたいという声が強い。こういうことを申し上げておきたいと思います。

加藤会長

ありがとうございました。

松尾さん、どうぞ。

松尾委員

先ほどのワーキング・グループの中間とりまとめですが、非常に重要な論点がすべて網羅されておりまして、大変結構だと思います。そこで私が感じましたのは、やはり時代の激しい変化に税制が対応できていないという現実があると思うのです。本間先生もご指摘になりましたけれども、経済取引の複雑化とか、大規模な国際的資金移動、そのほかにもいっぱいあると思いますけれども、そうした動きに税制がついてきていない。ですから、できるものは速やかに答えを出していく必要があると思います。

例えば納税者番号制度でありますが、本間先生は、いまや具体的に議論する段階に来たと言われましたが、私も全くそのとおりだと思います。納番は、導入を決めましても、準備期間が相当必要だと思います。そういうことを考えますと、導入自体、来年度税制改正で決めてもいいのではないかと思っているくらいです。中間とりまとめによりますと、「段階的な導入も含めて」というふうに表現されておりますが、この「段階的な導入」というのはどういうイメージなのか。この辺、お尋ねしたいと思います。

それからもう一つは、意見でありますが、住宅減税について、経済戦略会議が「住宅ローン利子所得控除制度」の新設を提唱したわけです。同時に、税額控除制度も当面存続させて、利用者の判断でどちらかの制度を選択できるようにする、としております。

私は、住宅取得促進税制の拡充には賛成します。持ち家は量的には充足されていると思いますし、着工戸数を重視する段階もとっくに過ぎていると思います。やはり質の充実、これが重視されなければならないと思います。特に、大都市中心に建て替え需要がありますから、これを税制面から促進することは非常に意味があると思うのです。

現行の住宅促進税制の床面積要件とか所得要件があります。床面積要件は、50平方メートル以上240平方メートル以下。所得要件は、合計所得金額が3,000万円以下、こういうふうになっておりますが、こういった床面積要件、所得要件を廃止する。さらに、控除期間6年間ですが、これを長期化する。これだけでも住宅取得促進に随分効果があると私は思うわけです。

住宅ローン利子所得控除制度は、せっかくの経済戦略会議の提言でありますが、やはり問題点が多すぎると思います。住宅ローンの利子は、食費、被服費、家賃、これと同列に置かれますから、これを課税所得から控除するというのは、そもそも所得税法の基本に違反しているのではないかと考えます。

さらに、帰属家賃の問題がございます。帰属家賃のことで考えますと、やはり住宅ローンの利子を経費と考えることはできない。さっき中西さんもおっしゃいましたけれども、高額所得者優遇、これがどうしても引っかかります。自己資金で持ち家を取得できる資産家も、住宅ローンを組むことによって、自己資金で余資の運用ができることになります。こういう節税ができるような仕組みは、どうしてもおかしい。

アメリカの場合は、こういった制度は縮減しているというのが事実でありますし、ヨーロッパ諸国もこれを税額控除制度に改めております。私は、併用ではなくて、住宅促進税制の拡充によって対処するのが適当であろう、こう思います。

加藤会長

本間先生、納税者番号の段階的導入について、どうぞ。

本間委員

松尾委員ご質問の件でございますけれども、納税者番号制度というのは、これまで、総合所得課税を担保するために導入するというご議論が主流であったということでございます。しかし、フラット化が十分に進んでいない段階の中で、グローバルにモノ、カネが動き回る状況の中で、これを導入し、総合課税の道を開くことは、中立的な観点からいきましても、あるいは、公平性というものをこれまで考えてきた状況から、飛躍的に負担構造自身が変わりますので、執行を含めて、段階的に、この問題を徐々にならすような考え方をとるべきではないかというのがこの議論の前提にあったということでございます。

例えば、金融の把握の問題に限定してこれを活用するという形でやっていくとか、税務執行体制の効率化への道を開くという形でこの問題を導入し、そのあとで、それぞれ問題点を克服しながら、より包括的な形での課税の公平さを担保するというのが、ここで「段階的」と書いた所存でございます。

加藤会長

島田さん、どうぞ。

島田委員

ワーキング・グループの作業は大変な作業で、そもそも論からすべての問題を扱われて、本当に心から感謝したいと思います。

四つほどポイントを申し上げたいと思います。

一つ目は、さまざまな控除に関する問題です。ワーキング・グループで詳細に紹介していただきましたように、実に多くの控除が入っているわけです。これらの控除は、別の見方をすると、社会保障の諸制度、教育、そういったものが扱うべきものでもあるのです。それを、税で控除という形でケアするのか、それとも、直接的に積極的な政策でケアするのかというあたりが、これまで数十年間、なし崩し的に税の中に取り込んできたということがあるのではないかという感じがいたします。

中長期の問題としては、歴史の転換点だと思いますので、やはり税というのは簡素であって、わずかな所得でもみんなが適切に負担をするという考え方を貫く方向で、むしろ社会保障なり教育なりの政策でもっと具体的に取り上げていくと。大議論になりますけれども、頑張って進めていただきたいと思うのです。

その際に、雇用制度とか、家族をどう考えるかとか、あるいは、年金をどう考えるかとか、それこそ、そもそも論をやらなければいけない。タックスベースの話をするけれども、タックスベースの拡大というのは、この数年、にわかにできそうもないというのは、私は天佑だと思うのです。それだけの時間を専門家のために与えられたと思いますので、さらに真剣に続けていただいて、私どもも参加したいと思います。

二番目のポイントは、源泉徴収問題ですけれども、源泉徴収制度にはそれなりのメリットがあることはよく承知していますし、諸外国にもあることはご説明いただいたとおりですけれども、税に対する認識、コンプライアンスの協力、権利、責任、こういった感覚を養うために、自己申告というものの幅をもっと広げることはぜひとも考える必要があるのではないか。

これはコストはかかると思います。社会的コストも個人的コストもかかると思いますが、それは、税民主主義を確立するための必要な経費ではないかと思います。

いままでは、そこのところを軽視しすぎていたのではないかというふうに思います。

三番目のポイントは、住宅に関する利子の控除の問題でございます。甲論乙駁が出ておりますが、理論的に言うと、帰属家賃に対する課税がないというところで、利子控除というのは整合性があるのか、という問題が基本的にはございます。ございますけれども、私はここは、次のようなことを考えるときに来ているのではないかと思います。

大局論からしますと、日本は人口が収縮していく。そして、働いた国民が、依然として、「住」という最も基本的な富について質的に豊かなものを持っていない。これからの日本ということを考えたときに、利子控除をやりますと、明らかに資源配分にバイアスが生まれます。しかし、そのバイアスは、日本の将来を考えるときに、価値のあるバイアスではないかどうか、ということを考えるときに来ているのではないか。アメリカが長いことそれを持っていて、だんだん縮めていったという経緯は承知しているわけですけれども、逆に、日本はそういうものを進めるときに来ているのではないかと思います。

最後に、地方との関連で、きょうでなくても結構ですが、ぜひ当局からご説明をいただきたい。地方財政再建特別措置法が昭和30年にできていて、これが地方自治体の再建団体指定をやるわけですけれども、都道府県ですと、実質の収入が5%減ると再建団体指定、市町村は20%減るとやるということになるわけで、先日もこの議論の中で、「現場がもたない」という議論がありました。この制約があったら、当然、現場はもたないと思います。再建団体指定をされて国の管理下に置かれるのをよしとするかどうかという、これは大問題でございますから。

しかし、私はこれをぜひご説明いただきたいのは、なぜ都道府県は5%なのか。これは昭和29年に決めた法律です。長期的・安定的に成長が想定されるときに決めたものではないかと思うのです。不況になっても、成長率が下がるということしか考えられない長期の展望のもとで、5%ということを考えたのではないかという気がするのですが、これ、詳しく説明をいただきたいと思うのです。

というのは、多くの経済主体が、民間も公的部門も半世紀間経験しなかった経済の転換期を経験しているわけで、そのときに、このような制約、歯止めが自治体の自由度を著しく奪っているのではないかと思うのです。

例えば、これを都道府県も20%にしたらどういうことになるかというと、自由度は出てきます。自由は出てくるけれども、税収は激減しているわけですから、大変なことになります。しかし、国だって、自治体だって、経済主体も、みんな同じなのですから、そういう大変なところでみんな一緒に立ち上がる。それが、地方自治の責任感というものを、住民も含めて養うもとになるのではないか。この5%というのは何なのか。これを変えることを、当局は、考える余地があると考えているのか、ないのか。その辺のところを、今回でも結構ですし、いつでもいいですが、しっかりしたご説明をいただきたいと思います。

加藤会長

地方の問題については、このあと、石委員長からの報告に入るかもしれませんので、そのときにまたお願いいたします。

では、笹森さん、どうぞ。

笹森委員

全体的には、小渕総理の所信表明演説の中に入っていましたように、問題としては、制度減税をやるというふうには言っていないで、継続的に行うと。持続的に実施をするということですから、あくまでもこの税調の中では、制度減税は必ずやるという内容について決定をすべきだし、併せて、政策減税について具体的な考え方を出すべきだ、こういうふうに思います。

それから、前回のときに、「最高税率の引下げの問題については、問題ありということだけにとどめます」という発言をしました。先ほどもお話がありましたように、ほんのひと握りの人たちの対象ということと、両方合わせて65%という数値が、外国と比べて高いのか、低いのかということになれば、総合課税方式ということから言うと、単純比較はできないだろう、こういうふうに思っています。したがって、最高税率の引下げをやるとすれば、総合課税方式と納番制度、これが絡まって、前提でやらなければいけないというふうに思っています。

それから、累進構造の維持、所得再分配の機能の重視という観点から言いますと、税負担の垂直的な公平を図ることが必要なのではないかと思っております。税率構造のこれ以上のフラット化をすることはいかがなものか、というふうに私は考えております。

具体的な底辺の問題から言えば、課税最低限の引下げの問題は、いまの状況から言うと妥当ではないというふうに思っておりますが、全体的な見方からすると、最低税率をどこに置くのかということの中でフラット化が図れないかというのがございます。

もう一つは、政策減税の問題ですけれども、中西さんの言われた住宅減税の問題については全く賛成でありますが、そこの中で選択性をとれるかどうかということと、家賃控除についてどう考えるかという問題を、一つ制度として考えておく必要があるのではないか。加えて、教育、雇用の問題についても、具体的な政策として入れ込む必要があるのではないか。

それから、一つ質問ですが、先ほどの報告の中で公的年金の問題が出ておりました。これは、課税をするという考え方で提起をされたのかどうかということで、実態から言うと、モデルで23万円。実際23万円適用されている方はおりません。21万円というのが最高なのです。関係諸税を引きますと、実質手取り17万円。生活保護世帯が14万円ですから、大差がないという支給になっている中で、課税をするということがいかがなものか。もし課税することを根底に考えられたとすれば、やや問題があるかなというふうに思っております。

加藤会長

石さん、どうぞ。

石特別委員

課税をするか、しないか、そういう視点から議論をしたわけではございませんで、さまざまな課税の性格、あるいは所得控除の性格等々、横並びで議論していきますと、年金というものの所得が、控除も含めまして、特に他の所得に対して圧倒的に有利に扱われているではないか、そこが問題だということを指摘したのであります。その結果として、課税ベースが広がって課税になるのか、それとも、政策減税的に高齢化社会とかいうのを踏まえてやるのか、それはまだ先の話というふうに理解しています。

加藤会長

この問題、議論はまだあるのですが、残りました時間で、地方課税小委員会のご報告もいただきたいと思っておりますので、次の総会に出られない方だけ優先してご発言いただきたいと思います。

はい、中村さん。

中村特別委員

最近、この税調に加わらさせていただきましたので、一言、感想を述べさせていただきます。

税調でありますから、経済関係の学者とか、評論家の方とか、それが中心になって議論している。それは当然なのですけれども、それがゆえに見落としている重大な問題があると思うのです。憲法その他に規定されているかどうかつまびらかではありませんけれども、国民の基本的義務の一つが納税義務なわけです。

したがいまして、納税義務をどんどん減らしていくという選択は、経済対策としてはあり得ても、国民の全体的な政治を含めたあり方としてはいかがなものか、と思うわけです。減税は必要だが、無税層を増やすというのは違うわけです。その辺の議論がどうも混同されているような気がします。住宅ローンについても、この資料によると、既に800万円くらいの所得層が無税になっているわけです。無税層はできるだけ増やすべきではないと思います。

それから、やや政治論でございますけれども、できるだけ、納税者と有権者は合致しているほうが好ましいわけで、そのギャップを広げるような選択は、日本の国の形としてすべきではない。そういう議論を踏まえて減税改革論議をしていただきたい。

以上、要望でございます。

加藤会長

佐野さん、どうぞ。

佐野特別委員

これからの議事の進め方とも関係するわけですが、といいますのは、この11月の末あたりに臨時国会の召集がほぼ固まっているということで、補正予算の審議もあるでしょうけれども、来年度、あるいは来年からの税制もここで取り上げられる関係があるわけです。

そうなりますと、政府税調としても、残り1カ月ぐらいの間、11月の頭あたりまで、税制の、とりわけ緊急を要する問題について、おおよその考えみたいなものをまとめておくぐらいの姿勢が必要かなという感じがいたします。

そこで、一つだけ申し上げたいのですが、先ほどから出ている住宅減税のことであります。住宅減税、いろいろ議論があるわけですが、ともかく必要なことは、早く方向を示すことではないか。一体やるのかやらないのか、どの程度のものになるのかわからないという状態が長く続きますと、はっきりしてから決断しようと、買い控えが起きてしまう。できるだけ早期に決めて、実行するならできるだけ早期に実行する。これが景気対策にとっても得策ではないか。そういう意味で、住宅減税については、ある程度集中的に審議する場があってもいいのではないかという感じがいたします。

そこで、住宅ローン減税については、私はやるべきだと思います。いま言われている住宅取得促進税制と住宅ローン利子控除の併用制の問題がありますが、私は、併用制を認めてもいいのではないかという意見であります。

というのは、住宅取得促進税制に加えて利子控除制度を設けると、これは税の理論的にはいろいろ問題があるということは理解できますが、一つの見方としては、いまの住宅促進税制が定額制であるということで、所得の階層に関係なく住宅ローン残高を基準に上限が設けられている。そこで、何か所得に反映する方法はないものかどうかという視点から言いますと、住宅ローン利子控除というものがあってもいいのではないか。ここで、金持ち優遇という指摘が一方に出るわけでありますが、私は、金持ち優遇という言葉は厳密に考えて使ったほうがいいと思うわけであります。

特にこの場合の金持ちというのは、どうも所得税率が高い層という意味で使われているようであります。現在の所得課税で言いますと、1,300万円を超すと45%。たしかにこの45%層は、利子控除すれば、いまよりは恩恵を受けるということでありますが、では、この1,300万円の層が果たして金持ちというふうに社会的に言えるのかどうか。ここら辺も含めて考えたほうがいいのではないか。

先ほど、家計支出と住宅ローンの支払いは同じではないか、それに控除を認めるとなるとすべてに認めなければいけない、こういうご意見が出たわけですが、私はそこはちょっと違うのではないかと思います。なぜならば、食費とか教育費というのは、そこで使われて完結してしまうわけであります。

ところが、住宅の場合は、登録免許税あり、固定資産税あり、果ては相続税ありということで、ほかで取るという税制が完備されているわけです。つまり、取得時は税を軽減する。もちろん、消費税というものも払うわけでありますが、住宅にまつわるさまざまな課税があり、それによって税収が得られるということも含めて、総合的に検討する必要があるのではないかと思っております。

加藤会長

今野さん、どうぞ。

今野委員

いま、政策減税といいますか、景気対策として急がねばならないさまざまな問題、例えば住宅減税にしても、生き残るべき中小企業とかベンチャーを支援するための策とか、そういうのをいろいろ議論されてまいりましたけれども、本当にもしやっていただけるのでしたらば、先ほどもどなたかがおっしゃっていましたように、急がねばならないのではないかと思います。死んでしまってから特効薬を持ち込んでも始まらないわけですから、それはぜひ急いで検討していだたきたいと思います。

きょう、ワーキング・グループの方々のおかげで、これまでの議論のすべてを拝見させていただいて改めて思ったことがあります。それは、緊急対策も大事ですけれども、私が税調の委員にならせていただいてからもう随分になります。その当初から議論されてきたさまざまな問題、例えば、先ほど島田先生がおっしゃったような控除の問題も、依然としてそのままになっております。配偶者特別控除の問題にしてもしかりです。

あまりにも長い期間取り残されていくということは、どういうことなのでしょうか。緊急ではないにしても、こういう問題を一つずつでも具体的に解決していくことで社会は変わると思います。ですから、緊急のほかにも、一つずつやれるところから具体的な成果を出していける、ぜひそういう税調にしていきたいと思っております。よろしくお願いします。

加藤会長

水野さん、よろしゅうございますか。

水野(勝)委員

論点は非常によく整理されていて、全くごもっともだと思います。特に、最初お話がございました、日本の所得税というのはあまりにも控除等が多くて、結局は高額所得者課税になっているというご指摘、これは本当にそのとおりではないか。フランスと同じぐらいの地位ではないか。むしろ、だんだん消費税のほうに根幹を譲っているということになるのかなと思うわけでございます。

それにしても、これは大事にしなければいけない税金であるとすれば、できるだけ課税ベースを狭くするような改正は今後は控える、あるいは、できる範囲ではこれを広めていくようなことができないか。

例えば給与所得控除であれば、一般のサラリーマンについてこれを縮減することはできないにしても、会社の役員については、事業所得者扱いで控除適用をやめる。しかし、別に控除しないというわけではなくて、必要経費控除でやっていただく。先ほどお話のあった、自己申告という制度に移しかえていくことはできないことではない。それは、役員さんの退職金についてもそうではないかと思うわけでございます。また、課税ベースを狭めることは極力避けるという意味では、ローン控除というのはやはり問題ではないかと思うわけでございます。

最高税率は、たしかに急ぐ必要はないというご議論はあると思いますけれども、法人税率との絡みでございまして、法人税率の方とそろえないと、先ほどの「論点」にもありましたように、いろいろな問題、歪みを呼び込む可能性が大きいわけ
ですので、法人との絡みでやはり検討すべきではないか、こんなふうに思います。

消費税につきましては、いまや基幹税としての地位を占めつつある。消費税については、いろいろな要請があっても、大きく変える、根幹を崩すことは適当ではない。さっきお話のございました食料品についてでございますけれども、少なくとも5%程度の水準の税率の段階では、いろいろな控除、特例扱いを持ち込むということはいかがか。

ここはむしろ、いま議論にあります商品券なりフードスタンプの問題等とも併せて、食料品について特別扱いをするというような、消費税に複雑性を持ち込むことは、まだその時期ではないのではないかと思うわけでございます。

以上でございます。

加藤会長

まだご意見があると思いますけれども、この次の総会で引き続き議論していただきます。きょうご発言のなかった方は、優先的にさせていただきますから、よろしくお願いいたします。

最後に、地方法人課税小委員会の報告を受けたいと思います。地方法人課税小委員会は、夏休み前の審議に引き続きまして、先日まで6回審議をいたしました。

その第3回から6回までの小委員会の審議の模様について、海外調査報告を含めまして、石小委員長からお願いいたします。

石特別委員

たびたび登場いたしまして、申し訳ございません。「総20-6」という1枚紙の資料と、「地法小5-2」という海外調査報告と書いたのがございますが、これにつきましてごくかいつまんでご説明をいたします。

1回目、2回目につきましては既に総会でご報告しておりますが、3回目以降6回目までにつきましては、ここに一覧表が出ております。

目下のところ、委員のレポートを出していただく作業。それから4回目で、知事さんお二人に来ていただきまして、地方財政の現状をお聞きしたという外部のヒアリングが一部入ったということ。それから、海外調査の報告をした、こういう三通りの仕事をしてまいりました。

細かくは一々申し上げませんが、各委員がご自分の立場から、いろいろな推計を踏まえたり、理論的な根拠の説明をされたり、あるいは学説的に、外形課税というのはそもそもどういうものがほかにあるか、というような話もいただきました。

6回目の水野さんの報告には、イタリアの生産活動税、この調査をされたことも踏まえ、かつ、スイスのほうにもこの種の税があるものですから、これについても敷衍していただいたということもございます。

それから、経済界のご出身という形で、関さんから、経済界のご意見を、現状の情報化、国際化、あるいは高齢化を踏まえて、外形課税はどうあるべきかという議論をしていただきました。

そういうわけで、今後ももう少しヒアリングの対象を広めて、だんだん具体的な議論にもっていきたいと思いますが、まだちょっと時間が必要かと思っております。

それから、冒頭申し上げた海外調査の報告書は、6枚紙にまとまっていると思います。フランス、ドイツ、オーストリアにも似たような税がございまして、フランスの場合は職業税、ドイツの場合は営業税、オーストリアの場合には賃金総額税というのが、おのおの市町村のレベルで入ってございます。

細かく一々申し上げませんが、私の印象では、その国、国、あるいはローカルの物の考え方、文化というか、歴史というか、そういうものが全面的にこういう税で体現されているという形です。そういう意味で、非常に勉強にはなったけれども、それを即、イコール日本のものだというふうにはなかなかいかないだろうとは思います。

外形課税というのは、現在、3カ国では、課税ベースを狭くするような格好、対象を絞ってくるような格好でやっております。しかし、厳然たる事実として、地方財政の中で非常に重要な税として残っていることだけは十分理解できました。そういう各国の状態を踏まえつつ、日本独自の外形課税化の具体的な構築をする必要があると思います。

以上です。

加藤会長

ありがとうございました。

それでは、先ほど島田さんから質問がありました件について、自治省から説明していただきます。

桑原企画課長

財政再建について若干ご説明いたします。

地方団体が赤字を生じて財政の建て直しが必要になった場合におきまして、地方団体としては二つの方法が選択できるわけでございます。

一つは、みずからの力で自主的に財政再建をする方法でございます。これは、特に何ら制約、制度、そういったものはないわけでございます。

もう一つは、地方財政再建促進特別措置法という法律の適用を申請いたしまして、国の協力を得ながら再建を行うという制度でございます。こちらのほうは、一定の額の赤字が出ました地方団体が、その制度に基づいて財政再建を行うかどうかということについて、議会の審議も得て、地方公共団体としてそういう方法を選択するということでもって、自治大臣に法律のもとでの再建を申請する。自治大臣が承認した再建計画に基づいて、計画の期間中に再建を行うという制度でございます。

したがいまして、島田先生から自由度というお話がございましたが、そもそも財政の建て直しにつきましては、地方団体には自由度はいまもあるということでございます。

もう一つ、5%、20%というお話がございました。これは、その法律の適用を申請する場合の基準とされているものでございます。地方公共団体の赤字比率と呼んでおりますが、決算で出ました赤字が、地方団体の標準財政規模----わかりやすく申し上げますと、補助金等を除いた地方公共団体の自主財源の額、それに対する赤字の比率が、県では5%以上、市町村では20%以上の場合に適用の申請ができるというものでございます。

この 5%、20%につきましては、過去の地方公共団体の財政の建て直しの際の状況を、経験的あるいは統計的に判断いたしまして、一定の期間内に建て直しが可能なレベルはこの程度であろうということで、基準として定めているわけでございます。

再建促進法は昭和30年にできましたが、その後、改正も行われておりますし、再建団体そのものは50年代にもかなりございました。現在も1団体ございます。そういう意味では、財政の建て直しにどの程度の赤字比率が妥当かというのは、その後もそうした事例によって検証されているということかと思いますが、もう少し詳しい説明が必要ということでございましたら、また後日、説明させていただきます。

以上です。

加藤会長

それでは、いまの地方法人課税小委員会の報告を受けて、河野さん、どうぞ。

河野特別委員

これは会長にお願いしたいのですけれども、きのう、自治大臣が臨時記者会見をやって、宮沢さんが言われた、地方で赤字公債を出したらいいというのに反論されたでしょう。あれ、珍しい会見だったと思うのです。

私が言いたいことは、住宅関係の議論はちょっと別にして、基本的にもう減税の枠組が決まっていて、それをどういう財源で当面しのぐかという話なのです。ここのところ2カ月ぐらい、特に地方団体、自治労の諸君を含めて、いろいろな問題提起も行われていて、おぼろげながら前哨戦というのは大体わかってきているわけです。

それで大蔵省と自治省にお願いしたいのは、このあとどうするんだ、当面どうするんだ、そのときどうつなぐんだということについて、せめて自治省の意見とか、大蔵省の意見というのを、いま固まっているわけでもないし、それこそ政治問題だけれども、もうそろそろ、少なくともどういう論点があるのかという論点整理メモぐらいは出してもらいたいのです。

さっき、住宅減税については佐野委員が言われたから、それはかなり集中的にどこかでやる必要があると思うけれども、それと並行してというか、その前に、法人税と所得税の大きな話題があるわけです。これ、実はみんな迷っているわけです。しかし、我々は、個別のニュースはあるけれども、十分にデータを持っていないわけです。

だから、ひとつ物事を整理して、議論が建設的に具体的に前に進むように----これは主として党税調でやる仕事かもしれないと思うけれども、我々だって、当然のことながらそれを議論すべきである。といっても、いろんなタイミングのことがあるのはよくわかっているけれども、どこかの段階で両者を整理して、「こんないろんな案があるんです」というのを出してもらいたい。それでないと、議論がなかなか進まない、建設的議論にならないという気がするのです。これはひとつ、会長、お願いします。

加藤会長

はい。

津田さん、どうぞ。

津田委員

島田先生のご質問に対して自治省が答弁したわけですけれども、端的に申しますと、5%、20%というのは、都道府県の場合にはいわゆる機関委任事務が非常に多い。ですから、財政が硬直的である。要するに、教員を抱え、警察官を抱え、これがみんな法令で決められている。カネがないからといって、機関委任事務をやめていいかというと、やめられない。非常に自由度が少ないものですから、5%ぐらいでどうするかを決めないと、どうにもならない。

市町村のほうは、もちろん、保育所とかいろいろな問題を抱えております。県の場合には3分の2以上が機関委任事務。ところが、市町村の場合には、機関委任事務は4割程度だろうと言われておるのです。ですから、市町村のほうは義務的経費の部分が少ない、自由度がある。自由度があるということは、自主再建なりの努力のし甲斐がある。国の行政も困り方は少ないです。都道府県のほうは自由度がないものですから、国の法律で定められた事務をやれるかどうかと。それが、赤字比率で差を設けている一番大きな原因だと思います。

ただ、5%がいいのか、20%がいいのか、これはまた見直しの必要もあるかと思いますが、性格的にはそういうものです。

島田委員

津田委員が大変重要な点をおっしゃったと思うのです。つまり、そこのところは避けて通れないと思うのです。この大不況から脱却するときに、国と地方の税収配分をどうするかというときに、いまの根本問題に触れるわけです。

ですから、ちょっと要望なのですが、地方財政のあり方について、当面の話ではありませんけれども、21世紀の初頭にどういう国を築くかというときに、この問題をきちっとやらないと、同じことをずっと繰り返すことになるだろうと思いますので。どうもありがとうございました。

津田委員

まさしくそれは地方分権で、機関委任事務をやめようというのがいまの方向になっておるわけですから、それになりますと、考え方はまた全然変わってくると思います。

加藤会長

議論が大変出ているところなのですが、これはまた続いてこの次もやっていきたいと思いますので、そのときに取り上げます。先ほど中西さんがおっしゃいましたように、経済政策と、現在の経済状況と、我々の税制の問題とは一体感があります。この問題につきましては、この次の総会、11月6日でございますけれども、そこで経済企画庁の経済状況の報告などを受けまして、我々としてはもう少し突っ込んでこの議論をしたい、こういうふうに思っておりますので、よろしくお願いしたいと思っております。

なお、今後の予定につきましては、既にご案内してありますけれども、10日と17日と27日の開催を予定しておりますが、それ以外の火曜、金曜では、恐らく小委員会、あるいは、それぞれの部会が開かれたりいたしますので、日程の調整をよろしくお願いしたいと思います。

きょうは、時間でございますので、終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

〔閉会〕

(注)

本議事録は毎回の総会後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、大蔵省主税局及び自治省税務局の文責において作成した資料です。

内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。