第19回総会 議事録
平成10年10月23日開催
〇加藤会長
ただいまから税制調査会第19回会合を開会いたします。
本日は、宮澤大蔵大臣と西田自治大臣に御出席いただいておりますので、両大臣から御挨拶をちょうだいしたいと思います。
では、まず宮澤大蔵大臣からお願いいたします。
〇宮澤大蔵大臣
本日はお忙しいところおいでくださいまして、ありがとうございました。8月から大蔵大臣を仰せつかりまして、本来御挨拶に伺うべきところでございますが、先週の末まで国会がございまして、まことに御無礼をいたしました。どうぞよろしくお願いを申し上げます。
税制につきましては、本年8月の小渕総理大臣の所信表明演説及びその後の国会の審議におきまして、「わが国の将来を見据えたより望ましい制度の構築に向け、抜本的な見直しを展望しつつ、景気に最大配慮して、6兆円を相当程度上回る恒久的な減税を実施する」ということを総理は述べられました。個人所得課税につきましては、最高税率を引き下げること、それから、定率減税を行いたいということ、法人課税につきましては、実効税率を国際水準並みへ引き下げること等の減税の大枠が総理大臣からすでに示されております。税制調査会におかれましては、この恒久的な減税の具体的内容、あるいはその他政策税制のあり方などについて、御審議をお願いしたいと存じます。
最近の経済情勢につきまして、政府としまして現下の最大の問題は、長期化する景気の低迷と、金融システムに対する信頼の低下であると考えておりまして、こうした経済の現況を踏まえ、景気回復と金融の再生を最優先課題として取り組んでいるところでございます。先般、金融の再生と安定に万全を期するための枠組みであります金融再生関連法及び早期健全化法が可決され、成立をいたしまして、本日から施行になったわけでございます。政府といたしましては、今後ともわが国経済の再生に全力を尽くしてまいりたいと考えております。
委員の皆さまにおかれましては、まことに御多忙な中でございますけれども、今後とも御審議を進めていただき、あるべき税制の姿について、適切な指針をお示しくださるようにお願いをいたします。
以上をもちまして私の御挨拶といたします。
〇加藤会長
どうもありがとうございました。
引き続きまして、西田自治大臣にお願いいたします。
〇西田自治大臣
御紹介をいただきましたこのたび自治大臣を拝命いたしております西田司でございます。よろしくお願いをいたします。
税制調査会第19回総会の開催に当たりまして、一言御挨拶を申し上げます。委員の皆さま方には、これまでも地方税制につきまして、熱心な御論議を賜り、適切な指針をいただいておりますことに対し、心からお礼を申し上げる次第であります。
さて、現在の地方財政は、多額の財源不足が続き、借入金残高が平成10年度末には160兆円に達するものと見込まれるほか、個別の地方団体の財政状況についても、経済状況を反映して税収が伸び悩み、また、公債費の割合が著しく増加するなど、極めて厳しい状況にございます。
こうした中で、地方分権推進計画が5月に閣議決定され、地方分権はいよいよ実施の段階に入ってまいりました。地方税は、地方自治の基盤をなす極めて重要な役割を担うものであり、地方分権の推進のためには、地方税源の充実確保が不可欠でございます。また、当面の大きな課題といたしまして、政府においては、我が国の将来を見据えたより望ましい制度の構築に向け、抜本的な見直しを展望しつつ、景気に最大配慮して、6兆円を相当程度上回る恒久的な減税を実施することといたしております。
恒久的な減税の具体的な内容につきましては、今後、政府税制調査会等の御審議を踏まえながら決定していくこととなりますが、委員の皆さま方におかれましては、極めて厳しい地方財政の状況や、地方分権の推進に伴う地方税源の充実強化の要請を御理解の上、よろしく御検討をお願いいたしたいと考えております。
さらに、法人事業税への外形基準の導入につきましては、引き続き政府税制調査会における専門的、理論的な検討をお願いしたいと考えております。委員の皆さま方には、地方財政の状況や、地方公共団体の役割とそれを支える地方税の重要性に深い御理解をいただき、望ましい地方税体系の構築について、適切な指針を賜りますようお願い申し上げまして、私の御挨拶といたします。よろしくお願いをいたします。
〇加藤会長
どうもありがとうございました。
両大臣とも日程の御都合がございますのでここで退席されますが、御了承願います。また、両大臣にはお忙しいところをどうもありがとうございました。
それでは、本日の審議に入りたいと思います。
最初に、本日の進め方を申し上げますと、本日は、第1に、まず審議会の公開についてお諮りをしたいと思います。第2番目には、7月に小渕総理から6兆円を超える恒久的な減税の方針が表明され、その後の国会審議の過程において減税の大枠が示されるなどの動きがありました。8月の懇談会でも議論いただきましたが、さらにその後の動きについて事務局より報告を受けまして、皆さま方の御意見を伺いたいと思います。最後に2点ほど事務局より報告を受けたいと思っております。
今日は、まず夏休み中の懇談会で話が出ました税制調査会総会審議の公開につきまして、皆さまにお諮りをしたいと思います。これまでも税調総会におきましては、審議の一層の透明性を確保するということで、積極的に取り組んできたことは御承知のとおりでございます。例えば、毎回の会議終了後に、私から記者にその日の議事の概要をブリーフィングするというようなこと、あるいは原則として、答申案の審議などを除きまして、発言者名を入れた議事の要旨(議事録)を公表する、あるいは資料を公表する、というようなことを行ってまいりまして、大変これが定着してきたように思います。前回、8月26日に開催した懇談会におきましては、これをさらに一歩進めまして、総会の審議そのものを公開してはどうかという提案がありまして、税調の意義を世に示し、審議会の透明性を高めるためにも、審議そのものを公開することが大方の御意見だったというふうに思っております。
これを受けまして、今日は、今後の審議の公開方法について、私の方から事務局に指示して、私なりの案を配布しておりますので、御覧をいただきまして御審議をいただきたいと思っております。
まず最初に、『税制調査会の今後の運営について(案)』という資料をお配りしてあります。お手許にございますので、御覧いただけるかと思います。
御説明を申し上げますと、第1、総会の会議については、今後、原則公開といたしたい。ただし、答申案作成に向けての論点の整理や答申案文の作成の審議については、議論が途中段階のもので方向性が定まっておらず、間違った捉え方をされる虞れがあることや、いずれ議論の結果は答申という形で公表されることから、従来より議事録の公表もしておりませんので、これらの審議については、会長(私自 身)の判断で非公表とすることとしたいと思っております。
第2に、会議の公開は、会議室のスペースの都合もありまして、当面、報道関係者に限定することとしたらどうかと思います。この場合、報道関係者と申しますのは、総理府大臣官房広報室(報道室)に登録している「永田クラブ」18社でございます。それから、大蔵省の大臣官房文書課広報室に登録しております「財政研究会」、財研と略しておりますが、29社、それから、自治省大臣官房広報室に登録しております「内政クラブ」27社でございます。以上を考えております。これらの各社から調整をいただきまして、各社1名の傍聴を認めることにしてはどうだろうかと考えております。
手続き的には、先ほどの報道各社から事前に所管省庁の広報室、具体的には総理府であれば大臣官房広報室(報道室)、大蔵省であれば大臣官房文書課広報室、自治省であれば大臣官房広報室というところにお申し出をいただこうと思っているわけですが、報道各社内で調整の上、各省所属の広報室に所属記者クラブ名、あるいは社名、氏名、それから連絡先を登録していただきます。各省の広報室では、会議室の状況を勘案いたしまして、場合によっては傍聴席に余裕があれば、先ほどの報道各社に限り、追加的に抽選で各社複数名の傍聴を認めることといたします。傍聴者にはあらかじめ各広報室から傍聴整理券及びリボンを交付することといたしまして、傍聴者は当日、傍聴整理券及びリボンを持参していただくことにしたいと思います。
なお、先程の報道関係者につきましては、この会議室でありますと、各社1名の傍聴席は確保できるかと思います。
なお、今日はこの広い会議室を使っておりますが、必ずこの会議室とも限りません。場合によっては少し小さい会議室になることもあります。以上を第2の「傍聴」の後段に書いてあります「傍聴者、傍聴場所、傍聴手続き等については会長の定めるところによることとする。」、こういうふうにしてありますので、具体的な内容については、これらを指示していきたいと思っております。
第3に、議事録と提出資料に関してでありますが、議事録は速記録のまま無修正で公表したいと思います。いままでは御覧をいただきましてから出すということにしましたけれども、無修正で公表したいと思います。
また、当然のことながら、提出資料は公表いたします。
第4、今後会議の公開のため、物理的なスペースもなくなりますので、委員の随行の方の会議室への入室は御遠慮いただくこととなります。
第5、最後に、ここに記載してあります項目も先程の第3と同様、これまでと同じ扱いでございます。
そのほか傍聴者に対しては、各省の広報室を通じて、私の方からお願いしておく事項がございます。傍聴席はこの会場でありますと、私から見て右奥に設ける予定でございます。こちらの後ろの方の絵の前あたりです。ここが傍聴席になるかと思います。
それから、当然のことでございますけれども、会議中の写真やビデオ撮影、議事内容の録音、携帯電話などの使用は認めないことといたします。会議中の写真を撮りたいという方が意外に多いのでございますけれども、これは将来はそういうことも可能かと思いますが、現在のところは、かなりカメラが音をたてたりいたしまして、非常に我々が発言するときの感情に影響し得ます。そういうことを考えますと、今は使用を認めないということにしたいと思っております。
会議中の入退室についても認めないこととしたいと思います。これは傍聴者の方であります。
以上、税調の今後の公開審議の運営について御説明いたしましたが、ただいま御説明いたしました中で、傍聴の具体的な手続き等については、次の『傍聴実施要 領』という案があります。これはメモ書きで整理したものでございますので、まだ十分とは思いませんけれども、あわせて御覧をいただければと思っております。
以上で簡単に説明をいたしましたが、審議の公開の方法については、このように考えてはどうかと思っているわけでございます。この案について御意見がありましたら、お願いをしたいと思っておりますが、いかがでございましょうか。
〇松尾委員
質問です。公開が原則ということですが、具体的には物理的なスペースの問題もあるので、総理府、大蔵省、自治省の記者クラブ所属各社1名に限るということです。ただ、これは当然、傍聴したいという要望が広がると思うのです。記者クラブだけに限っていいのかどうか、記者クラブに所属しなくたっていいではないかといったいろいろな意見が出てくるでしょうね。外国報道機関もたくさんおりますし、フリージャーナリストもいる。これはどのように考えればいいのか。将来はやはり物理的スペースも広げて、さらにそういったいろいろな要望に応えていくということになるのかどうか。この辺、御意見を伺いたい。
〇加藤会長
十分なお答えになるかどうか分からないのですが、最初は非常に要望が多いので、傍聴したいという方がたくさんおられると思うのですけれども、そのうちにだんだんと慣れてまいりますと、ここのところは聞こうとか、ここは聞かないとかいうことが出てくると思います。そういうときには若干の余裕が出るかもしれません。これは分かりません。そこで、審議の透明性の確保ということは重要でございますから、これからもなるべく幅広い方々に見ていただくことは少しも構わないのですけれども、今のところはスペースが限られておりますので、このように限定いたしましたけれども、将来はそういうことについてもし余裕が出てくれば考えていきたい。こういうふうに思っているところでございます。
ほかにございませんでしょうか。よろしゅうございますか。
それから、いまのお話の中でもう一つ忘れましたが、新聞記者だけに限っていいのかという御意見ですね。私もその辺はもうちょっと広げてもよいかどうか考えたのですが、これはまた限りなくなるんです。それから、もう一つは、やはり今の段階では、新聞記者ですと一応ここの議論を伝えるときに、正しく公平に伝えてくれるであろうと、こういうふうな気持ちがございます。やはり新聞記者が今の世界というか日本では、一つの広報のための重要な手段になっておりますので、やはり最初はそこから始めたほうがいいのではないかと、こういう考えでございました。
ほかによろしゅうございますか。
それでは、こういうことで決定をさせていただきたいと思いますが、御了承いただけますでしょうか。これにより、今後の税制調査会の審議を公開することにいたしますが、よろしゅうございますね。特に御異議がないようですので、そうさせていただきます。
続きまして、ただいま了承いただきました公開の方針に従いまして、税制調査会議事規則、これは37年の8月10日に決められておるのですが、その議事規則を改正することが必要になります。現行の議事規則第5条では「会議は、非公開とする。」と規定されております。この部分の改正を行うことになるわけであります。あわせて議事録の取扱いなど若干の改正項目がありますので、お手許の『税制調査会議事規則の一部改正案』というのがございますが、その資料に基づきまして、事務局に説明してもらおうと思います。
伏見総務課長、どうぞ。
〇伏見総務課長
お手許に『税制調査会議事規則の一部改正案』、それから、これはちょっとわかりにくいかと思いますので、後ろに新旧対照表というのがございます。内容的には、いま会長からお話があった通りで、下の段の方に現行がございますが、第五条「会議は、非公開とする。」というふうになっているのがこれまででございます。それを上のほうにございますように、「会議は、公開とする。ただし、会長が必要と認めるときは、会議を非公開とすることができる。」等々、細かい御説明は一々省略いたしますが、ご覧のような形での訂正をしていただければと思います。
〇加藤会長
ありがとうございました。
御意見がございましたらどうぞ。よろしゅうございますか。
それでは、議事規則の改正につきましては、原案通りに御賛同いただきました。そこで、来週に総会が開かれますが、そのときから公開ということになるわけでございますので、御了承いただきたいと思います。
次の議題に入らせていただきますが、先般、総理から税調に、総理の公約である6兆円を相当程度上回る恒久的な減税の具体化について、検討を開始するようにとの要請がありました。まず、総理の減税公約をはじめ関連する最近の動きについて、先週閉会いたしました第 143回国会における税制関係の審議の状況なども含め、事務局から報告してもらいます。
最初に、国税関係について、尾原主税局長、お願いいたします。
〇尾原主税局長
それでは、私のほうから総理の減税公約、国会審議の状況、あるいはこれまでの経緯等について、かいつまんでお話しさせていただきたいと思います。
御承知のように、今年の2月から、2兆円の特別減税が行われたわけでございますが、本年の4月に総合経済対策が策定されまして、2兆円の特別減税が追加されました。したがいまして、現在、合計4兆円の特別減税が実施中ということになっているわけでございます。この4月の総合経済対策の中でございますが、個人所得課税については、「公正・透明で国民の意欲を引き出せるような税制を目指し、幅広い観点から検討を行う」という項目、それから、法人課税につきましては、「今後3年のうちにできるだけ早く、国・地方を合わせた総合的な税率を国際的な水準並みにするよう、検討を行う」という項目がございまして、これを受けまして、税制調査会におきましては、基本問題小委員会、地方法人課税小委員会の2つの小委員会が設置され、さらには、この基本問題小委員会に2つのワーキング・グループが設置されまして、検討が行われているところでございます。
その後、景気回復・経済再生が最優先ということで、6兆円の恒久的減税を公約に掲げました小渕現政権が誕生したわけでございます。前の懇談会でも御説明申し上げましたが、この恒久的減税の内容をもう一度確認してまいりますと、この骨格は、さきの臨時国会における所信表明演説、それに続く国会答弁の中で明らかにされているわけでございます。そういう意味では、恒久的な減税の大枠が現在示されているところでございます。
お手持ちの資料で『小渕総理大臣所信表明演説』というのがございますが、
ちょっと読ませていただきますと、「わが国の将来を見据えたより望ましい制度の構築に向け、抜本的な見直しを展望しつつ、景気に最大配慮して、6兆円を相当程度上回る恒久的な減税を実施。」となっております。
個人所得課税でございますが、最高税率を50%(現在65%)に引き下げる。それから、後ろのほうの総理、大蔵大臣等の質疑の中で明らかにされているわけでございますが、あらゆる所得階層に減税の効果が及ぶように定率減税を行う。最高税率の引下げと定率減税を組み合わせる。平成7年、8年の特別減税がございましたが、あれは定率減税で実施されております。そのようなイメージでございます。
それから、課税最低限の問題でございますが、現在 361万円。今年は特別減税で結果的に 491万円になっておりますが、課税最低限といった場合は361万円でございまして、これを引き下げる環境にはない。規模は4兆円。それから、実施時期でございますが、所得は年分課税でございますので、1月以降の実施ということになるわけでございます。
それから、法人課税でございますが、いわゆる実効税率を40%程度に引き下げる。実施時期は来年度以降。いわゆる4月から始まる開始事業年度から実施していくということかと思います。
それから、中小企業の経営状態にも配慮いたしまして、外形標準課税については、少なくとも来年度は導入しないということになっております。
それから、減税財源でございますが、当面は赤字国債といたしまして、長期的には、今後の経済の活性化の状況、行財政改革の推進等と関連づけて検討すべき課題ということになっております。
なお、関連法案につきましては、次期の通常国会に提出する。こういうふうに大枠がなっているわけでございます。
先週閉会した臨時国会でございますが、お手許の資料で、『国会の審議過程における主要討議事項』というのがございます。この6兆円の恒久的減税について、この臨時国会でも審議されたわけでございます。この減税についての考え方、あるいは残されている課題について、いろいろ質疑がございました。
この中から主なものを御紹介させていただきたいわけでございますが、ちょうど「総論」のところに書いてございましょうか、「本格的な税制の改革をすべきではないか」という質問がございました。これに対しまして、総理のほうからは、「今回の改正は、景気に最大限配慮して実施するものだが、今後はさらにわが国の将来を見据えたより望ましい制度の構築に向けて、税率、課税ベース等をはじめとした幅広い論点について検討していく必要があると考えている。政府及び党の税制調査会において、引き続き検討していただきたい」という趣旨の答弁がなされているわけでございます。
それから、「6兆円超という減税規模の根拠は何か」という質問がございました。これも総理から「本年の所得税・住民税の特別減税の規模の4兆円、あるいは国・地方の法人課税の税率の国際水準並みへの引下げといった点も考慮しながら、景気対策の観点から、自ら決断したものである」という趣旨の答弁がなされております。
それから、減税の具体的内容についても質問がございました。減税の大枠については先程ご説明したように明らかにされているわけでございますが、総理、大蔵大臣から、「具体的内容については、政府・党の税制調査会に検討していただきたい」という趣旨の答弁がなされているところでございます。
それから、「減税の国・地方の配分をどうするのか」という質問がよく出ましたが、これにつきましては、大蔵大臣、自治大臣の方から、「地方財政対策とも関連して考えていかなければならない。今後、政府・党の税制調査会で検討していただく」という趣旨の答弁がなされているわけでございます。
また、定率減税の問題についてでございますが、「定額減税を実施しております本年に比べて、中低所得者層には負担増になるのではないか」という質問もございました。「本年の特別減税は、本来望ましい方式とはいえないものの、できるだけ早く実施することを最優先して、臨時異例の措置として定額方式をとったものである。今回恒久的に実施することとしている減税と単純に比較することは適当でない」という趣旨の答弁が総理からなされております。
なお、これとの関連で、「所得階層別に異なる減税率を適用してはどうか」という質問がございましたが、これにつきましては、「源泉徴収義務者に過大な事務負担を与えるという問題がある」という趣旨を大蔵大臣が答弁されているところでございます。
それで、2ページの方に入っていただきますが、特に政策減税の問題に関連いたしまして、「住宅投資を喚起するため、住宅ローン利子控除を導入すべきではないか」など、種々の具体的なご意見・ご質問がございました。これに対しまして、総理の方から、「こうした政策税制については、政府及び党の税制調査会において、来年度税制改正の中で検討を行っていただきたい」という趣旨の答弁がなされております。
それから、景気対策等との関連で消費税についても質問がたくさんございました。つまり「個人消費を喚起するためには、消費税を3%に引き下げるべきではない か」という質問でございます。これに対しまして、総理の方から、「少子・高齢化の進展に対応するという税制改革の流れに反することから、消費税の引下げは全く考えていない」という趣旨の答弁がなされております。
なお、議員提出法案でございますが、消費税の引下げ法案が国会に提案されている状況でございます。
それから、一番後ろの方(3ページ目)にちょっと触れてございますが、「減税の恩恵を受けられない所得者に配慮しつつ、消費を喚起するために、期限つきの商品券の支給を実施すべきではないか」という提案もございました。よく「商品券減税」というようなことを言われることもございますが、これは税とは関係ありません。つまり、税金を支払っているかどうかということにかかわらず、この商品券支給の問題があるわけでございますので、税制の問題ではございませんけれども、これにつきましては、「実務上いろいろ問題があるので、研究したい」という趣旨の答弁がなされているわけでございます。
この資料にございませんが、先の臨時国会では、税制に関連する法案といたしまして、通常国会より継続審議となっておりました国鉄の長期債務処理関連法案が成立いたしました。これによりまして、たばこ特別税が12月1日より実施されることになりました。税制の関連では、10年度改正の懸案がすべてこれで処理がなされたことになるわけでございます。
なお、金融再生関連法案が成立いたしましたが、ブリッジバンクについて、税制上の特例措置がとられることとなっております。引継ぎがやりやすいようにという内容でございます。
以上が先の臨時国会における審議の状況とそれまでの状況でございますが、時間の関係で他の項目を御紹介することができませんが、ぜひ資料にお目通しいただきたいというふうに考えているわけでございます。
なお、お手許に、この14日でございますか、総理の諮問機関である経済戦略会議におきまして、「短期経済政策への緊急提言」というものが発表されまして、税制を含む幅広い景気対策について具体的な意見が出されているわけでございます。お手許にお配りしてございますので、御覧いただければというふうに思っております。
〇加藤会長
ありがとうございました。
続きまして、地方税関係について、林審議官からお願いいたします。
〇林審議官
失礼をいたしまして、私のほうから、地方税に関します事項について御説明をさせていただきます。
いま御覧いただいております資料の4ページからが地方税に関する事項となっております。今国会におきましては、地方税につきましても、恒久的な減税に関する議論が中心となっております。詳しい内容につきましては、後ほど御説明させていただきますが、主だった質疑は、「景気対策等は基本的に国が行うものであり、極めて厳しい地方財政の状況や地方分権推進の要請などの観点を踏まえて、地方税の対応を検討すべきである」という考え方からのものが多かったように思います。
最初に、地方税制のあり方についてでございますが、「地方分権推進計画の閣議決定など地方分権推進の流れを踏まえて、地方税源の充実強化を図るべきではないか」といった質疑が多く出されております。
上から2つ目になりますが、「税源の移譲を行うことが必要ではないか」というような質疑もございました。これに対しましては、「地方分権の進展に応じて、地方公共団体がより自主的・自立的な行財政運営を行えるようにするためには、地方自治体の財政基盤を充実強化していくことが極めて重要である。今後、地方分権推進計画を踏まえ、地方税源の充実確保を図ってまいりたい。その際には、国税から地方税への税源移譲についても総合的に検討していきたい」、こういう答弁が自治大臣からされております。
次に、(2)の減税関係の質疑でございますが、これにつきましては、「国と地方の振り分けがどうなるのか」「その大半を地方が負担することにならないか」「もし負担するのであれば、税源保障として地方消費税を増やしてはどうか」「大都市等は特に大変ではないか」などの質疑がたくさん出されております。
特に今回の減税の問題につきましては、全国知事会などの地方六団体からの緊急要望を踏まえたものが多くございました。知事会等が中心となりまして、全国大会を開催するなど、地方の側からは、地方税について、地方財政運営に与える影響や地方税源充実の必要性を踏まえて検討してもらいたい旨の強い要望がございまして、これを踏まえた質疑があったわけであります。先日、官邸で開催されました全国知事会議におきましても、土屋知事会長から、総理に対し同様の要望がなされたところであります。
具体的に申し上げますと、(2)の1番目でございますが、「今回の減税では、地方分権推進の観点を踏まえ、国税と地方税の振り分けをどうするのか」という質疑がございましたが、これに対しましては、「今回の税制改正の具体的内容については、国税と地方税をどのように取り扱うかを含め、今後、政府及び党の税制調査会における幅広い検討の結果を踏まえて決定していきたい。個人住民税や法人事業税、法人住民税は、地方税の基幹税目であり、その改正内容によっては、地方団体の財政運営に大きな影響を及ぼすものである。減税の具体的内容については、地方団体の意見も十分に伺いながら、極めて厳しい地方財政の実情や、地方分権の推進に伴う地方税源の充実確保の要請などを踏まえて検討していきたい」、こういう答弁が自治大臣の方からなされております。
(2)の減税関係の最後のところでございますが、「実効税率を40%に引き下げるというが、外形標準課税の取扱いも含め、具体的にはどのような方法により減税を行うのか」、こういう質疑もございました。これに対しましては、「具体的な内容については、国税と地方税をそれぞれどのように取り扱うかということも含め、政府及び党の税制調査会等の場で十分御議論をいただき決定すべきものと考えている。この場合、国の景気対策のための負担を地方にしわ寄せすることがあってはならないということを重要に考えている。法人事業税は都道府県最大の基幹税目であり、都道府県の財政運営に与える影響もあるということを、さらに検討していただかなければならないと考えている」、こういう旨の答弁が自治大臣からなされております。
そのほかの総論的議論といたしましては、地方税収の動向などについての質疑もございましたが、これは後ほど御説明をさせていただきます。
次に、個人住民税関係、2でございますが、これにつきましては、「地方分権の趣旨、地方六団体の要望等も踏まえ、個人住民税の今後のあり方についてどう考えるか」 、こういう質問がなされました。これに対しましては、総理からの答弁がなされておりますが、「個人住民税は、地域社会の費用について住民がその能力に応じて広く負担を分任するという性格から、現行の税率構造は3段階となっており、所得税に比べ簡素でフラットなものとなっている。今後の地方分権の推進にとって、地方税の充実確保は重要な課題であるが、個人住民税のあり方についても、その性格を踏まえつつ、政府税制調査会での幅広い議論もいただきながら検討してまいりたい」、こういう答弁がされているところであります。
4ページの下から3番目になりますが、最高税率の問題につきましても質問が出されております。「所得税の最高税率を40%に、住民税の最高税率を10%に引き下げる考え方があるが、どう考えるか」という質問がございました。この質問は、住民税の性格から見て、このような考え方が出てくるのはおかしいのではないか。こういう疑問を持たざるを得ないという趣旨の質問であったわけでございますが、これに対しましては、自治大臣から次のように御答弁申し上げております。「この方法は、最高税率が適用される所得区分が、個人住民税と所得税とでは大きく異なることなどから、地方の側からこれを見ると、慎重に検討してほしいという声があり、そういう問題を含んでいるということを十分考えていかなければならない」、こういう答弁がされております。
次に、地方法人課税につきましては、1ページおめくりをいただきまして5ページでございますが、前国会に引き続きまして、事業税の外形標準課税に関する質疑が多く出されたところでございます。上から4つ目になりますが、「今の景気の中で実施できるかどうかは別問題として、法人事業税への外形基準の導入について検討を進めることが必要ではないか」、あるいは「外形標準課税について早期に導入すべきではないか」、こういった質問がなされました。これに対しましては、「法人事業税への外形基準の導入については、最近の経済情勢等から、さまざまな議論があることは承知をしている。税制のあり方としては、私は望ましい方向であると考えている。したがって、これから導入のタイミングの問題を含め検討を進めていく必要があり、引き続き政府税制調査会等において専門的、理論的な検討をお願いしながら取り組んでいきたい」、こういうふうに自治大臣が答弁されております。
最後になりますが、ここに出しておりませんが、議論の中で一つ、「地方の法人事業税率は高いのか」と、こういう御質問もございました。これに対しましては、「法人事業税を含む地方法人課税の実効税率については、例えばニューヨークはわが国より高い水準にあることから見ても、必ずしもわが国が高いとは言えないものと考えている。各国における地方自治制度や、国・地方を通ずる税体系、地方団体の役割などを無視して、諸外国と単純に税率を比較するということは適当ではないものと考えている」、こういう答弁をいたしたところであります。
〇加藤会長
ありがとうございました。
以上で国会における税制審議の状況を報告してもらいましたが、続きまして、税収動向について伏見総務課長から、また都道府県の徴収実績につきましては、桑原企画課長から報告を受けたいと思います。どうぞよろしく。
〇伏見総務課長
お手許の資料で、「総19-2」という番号がついております『平成10年度8月末税収』という表と次にグラフがございます2枚紙を御覧いただければと思います。
まず、全体の状況でございますが、一番下に一般会計分計という欄がございます。現在の補正後予算額は57兆円余でございますが、この8月末までで税収実績は13兆 1千億円余収納されております。予算額に対しまして、進捗割合と申しておりますが、23%程度が収納された段階でございます。この実績の対前年度同月末比でございますが、△8.2%になっております。
なお、補正後予算の伸び率、一番右の欄は5.8%となっておりますが、これは左の欄のトータルの額、9年度税収の実績が53兆 9千億円でございますから、これに対して 5.8%伸びますと、57兆円になるという形になっているわけでございます。
主な税目を御覧いただきますと、まず源泉所得税、一番上でございますが、予算額15兆円に対しまして6兆円余の収納でございます。前年同期比の累計が△10.4となっておりますが、これは一つには、今年実施しております特別減税、第1回目のうち4月以降に影響が出てきている分、これが反映されております。
なお、追加の特別減税分、これは8月の源泉徴収から実施しておりますので、8月の源泉徴収分というのは9月の10日、翌月10日の納付になります。したがいまして、ここにはまだ出ておりません。来月以降にその第2回目の追加減税分の影響が出てくるということになります。
また、非常に大きな影響を持ちます賃金動向を見ましても、所定外労働時間等がマイナスになってきているというようなことから、いまのこの姿、累計の△10.4というのは、やや過大に出ていると思いますが、源泉所得税についてもなかなか厳しい状況だろうと思っております。
それから、申告所得税は来年の確定申告結果待ちになりますが、現時点でマイナスが大きく出ておりますのは、申告所得者につきましては、第1期の予定納税、ここに特別減税をまず行っておりますので、その関係でマイナス幅が大きくなっております。
それから、一番振れの大きな法人税でございますが、予算額15兆円に対しましてまだ1兆円余、1割にも満たない段階でございます。ただ、前年同期比の累計が△21.6という形で、かなり低調な状況が続いております。
なお、予算ベースでは12.8%の伸びを見込んでおりますが、左の欄にございますように、括弧の中、9年度の決算では13兆47千億円になっております。それに対しまして現在の予算額は15兆円ということですから、かなり伸びないと予算額が達成できない形になっておりますが、結果的に9年度の税収実績が予算額を下回って、この13兆円余になってしまったということから、このような姿になっております。
現在、大きな主な企業の、3月決算企業の中間決算等が公表されつつございますけれども、企業収益の動向を見てまいりますと、大宗はどうもやはり下方修正に動いている。そういったあたりをどう考えていくかという大きな問題がございます。
それから、その次の消費税でございますが、前年同期比、右から2番目を御覧いただきますと、18.5%、補正後予算の伸び率が16.3%ですから、これは予算の伸びを上回っております。ただ、この消費税につきましては、税率が国税の場合3%から4%に上がりましたが、その影響というのが、税収年度につきましては、昨年1年間では全部出きりませんで、今年度にいわば平年度化の影響が及んでまいります。その関係で見かけ上伸びが高くなるという要素がございます。ただ、いずれにしましても、他の税目と比べますと、消費税はまずまずの線で動いているということだろうと思います。
その他、諸々の税金、全部合わせますと約12兆円でございます。これにつきまして、右から2段目にございますように、前年同期比が△8%ということで、低調な状況にあろうかと思います。
次のページを御覧いただきたいと思います。上のほうに棒グラフがございますが、何回も御覧いただいている図でございますけれども、9年度と10年度のところだけ御覧いただきますと、9年度は補正後予算額で56.2兆円を見込みまして、それに対しまして、10年度の税収が57兆円になっているわけでございます。ところが、土台の56.2兆円が決算では53.9兆円と 2.3兆円土台が下がった形になっております。景気の動向等によりましては、もちろんこの補正後予算額も達成可能ということになりますが、種々の経済動向、経済指標等を見ていきますと、おそらく前年実績に到達するのもかなり厳しいというのが実態ではないかと思います。したがいまして、いずれかの補正予算編成の際には、税収につきましては、補正減額をせざるを得ないという状況になってきたのではないかと思います。また次の税収実績等が入りました際、改めて最新のデータ等は御報告をさせていただきたいと思います。
私のほうからは以上でございます。
〇桑原企画課長
それでは、続きまして、資料「総19-3」に基づきまして、地方税の状況につきまして御報告いたします。
お手許の資料の1枚目は、8月末現在の都道府県税の徴収実績でございます。左半分が今年度の数字でございまして、(A)の欄の下から2行目、合計のところ、今年度道府県税で17兆44百億円余の税収を見込んでおりまして、8月末までに税額が確定しました額(B) の欄が10兆 5,370億円余、実際に税収として入ってきた分が(C)でございます。これを前年度と比較しました数値が右から2列目でございます。主な税目について御覧いただきますと、一番上の道府県民税の個人の分でございますが、87.2%と前年度を相当下回っております。これは特別減税の実施による減収でございます。
その次の法人の道府県民税でございますが、これも89.6%と前年を1割以上下回っているという状況でございます。
もう少し下のほうにいきまして、3つ下の法人事業税も前年比88.7%ということで、これも大きく減収になっております。
その下の地方消費税ですが、これは平成9年の4月から課税がスタートしておりますけれども、初年度は7月までは実際に地方公共団体に税収が入ってきておりませんで、平成10年から平年度化したという状況でございます。したがいまして、前年と比べますと、200倍以上の伸びということで、制度上の異常値と言ってもいいような数値でございます。
その下の不動産取得税につきましても、土地、住宅等の取引の低調を反映いたしまして、85.3%ということで、その4つ下の自動車税につきましては、都道府県の税の中では唯一前年度を若干上回っているというような状況でございます。
もう少し下のほうの自動車取得税あるいは軽油引取税といった消費流通関係税につきましても、相当落ち込みが大きいということで、先ほどの少し異常な数値であります地方消費税を加えました全体の前年の対比では105.2%と、下から2行目でございますが、なっております。それを9年度、10年度、両方から地方消費税を除いて比較いたしますと、再計のところでございますが、91.5%ということで、トータルといたしまして、前年を大きく下回っているという状況でございます。
一番右の列が地財伸率と書いております。地方財政計画を平成9年度の決算と比較した伸び率でございまして、下から2行目、合計のところで、平成9年度よりも税収が18.8%伸びるという見込みをしておったところでありますが、御覧いただいたような状況で、見込みを相当下回るということになるかと考えております。
なお、市町村につきましては、四半期ごとに調査をいたしておりますので、8月末現在の数字はございませんが、いずれ次の機会に9月末現在の状況を御報告いたしたいと思っておりますが、市町村におきましても、全体の4割を占めます固定資産税はほぼ前年と同額ぐらいの税収が確保できるかとは思っておりますが、全体の3割を占めます個人の住民税は、特別減税により相当落ち込んでおりますし、法人住民税につきましても県と同様な状況でございます。県ほどではありませんが、市町村につきましても、前年を相当下回るという状況になるかと思っております。
2ページ目は、過去の地方税収と地方財政計画額、あるいは決算額の推移を表にしたものでございます。御覧いただきますと、一番右端、年度当初の見込み、地方財政計画と決算がどういうふうに差があったかということで、一番大きな見込みよりも減収の大きな年が平成5年度、1兆 5,000億円ほどでございますが、平成10年度におきましては、これを相当上回るような減収になるのではないかと懸念いたしているところでございます。以上でございます。
〇加藤会長
ありがとうございました。
それでは、これから皆さま方の御意見をいただきたいと思います。約1時間程度予定しておりますので、御自由に御発言をいただこうと思いますが、討議の参考資料といたしまして、お手許に『資料』と『地方税関係資料』がお配りしてありますので、御参考にしていただきながら、御意見をいただければと思います。どうぞ、どなたからでも結構でございます。
〇島田委員
きょうは久しぶりの総会でございますので、基本的な話題がいくつかあろうかと思うのですけど、これまでの御説明を伺って理解できそうなのは、当面は減税の財源は赤字国債で賄うということですね。そうだとすると、当面の私どもの議論の課題は、所得課税の減税の仕方をどうするかということ、あるいは法人課税の仕方をどうするか。しいて言えば、40%に下げるのだけれども、これを国と地方でどう分けるかというような類の話ですね。
もう一つ、しかし、どうしてもこれは同時並行でしっかりやらなければいけないなと思うのは、財源をどうするかという話になるのだろうと思うのです。当面やらないから考えないでいいといったら、これは大変なことになる。プラス年金の問題もかかわってくると思うのです。ですから、例えば3年間財源の措置の方はしないにしても(赤字国債でやるにしても)、3年後に望ましい形にするのだということにしたときに、3年後の望ましい形をどう構築するのかというのは、どのぐらいのリードタイムのかかる話なのかというと、3年間必死になって議論しても、間に合うかどうかという話なのだと思うんですね。そういう意味で根本的にやらなければいけない。
そういう仮定から考えますと、ちょっと2つ3つ提案したいのですが、1つは、所得課税の問題について、課税最低限を引き下げるということの意味は、実はさまざまな控除がございますね。この控除というのは、実は配偶者とか、子育てとか、介護とかいったことに関わる教育とか社会保障に関わることでございますから、これをむしろ社会保障のサービスということで確立をすることによって、税の控除ということから抜いていくという議論、そして税をシンプルにする、それを徹底的にやるということを一つお願いしたい。法人課税との関係でいうと、外形標準課税、これをやはり考えざるを得ないわけでございますけれども、そのときに地方が外形標準課税を法人にお願いをするときに、どのぐらい自ら行革をするのか、自ら情報を透明化するのか、そういったことについてのシステム的なしっかりした基盤がないと、私は納税者の納得を得にくいのだろうと思うのですが、その辺の問題もできるだけ早く地方行革の問題へ踏み込んでいただきたい。そんなふうに思います。
〇大田委員
ちょっと質問よろしいですか。
国会の議論の中で、国税のほうで、所得階層間において減税率に差を設けるという意味なのですけど、私のイメージは、税率刻みごとにこの税率幅を変えていく。50%は例えば4%下げて、40%のところは3%下げるというようなイメージを持っていたのですが、それだと源泉徴収者がそれほど面倒なことはないと思うのです。ですから、私のイメージが違うのかどうかを教えていただきたい。これが1点です。
もうひとつお聞きしたいのですが、2番目に、課税最低限以下の低所得層に関しても、何らかの恩典を与えるべきであるという議論が主流であるのかどうか、そのときの手段としては何が一番議論されているのか、ということをちょっと教えてください。
〇尾原主税局長
いまのお話でございますが、宮澤大蔵大臣は特に「中堅所得者層」というお言葉を使われたわけでございます。そこで、いま大田先生おっしゃいましたのは、定率減税をやる場合、何百万円から何百万円までは(例えば15%とか20%)定率で減税するけれども、それを超えたら率を変えるとか、そういうふうに複数に率を変えたらどうかということのように思います。
実は、これから御審議になるわけでございますが、恒久的減税ということになりますと、月々の源泉徴収に反映させていかなければならないわけでございます。そうすると、今のような仕組みでは大変複雑なものとなって、とても源泉徴収義務者の方というのは対応できなくなる。例えば月の収入何十万の人で、扶養者が何人おればいくらという形で、実は源泉徴収額の数字を埋めなければならないというのが課題になっておりまして、大変複雑なことになってくるわけでございます。これはまた大変技術的になりますので恐縮ですが、そういう問題がございます。
それから、いま税金を支払われない方、恵まれない方に対する恩典についてのお話であったと思います。これまでの特別減税のときに2兆円、平成7年、8年、あるいは今年もやったわけですが、1,500億円、例えば生活保護の方やら、65歳以上の寝たきりの方やら、そういう方を対象に、現に1万円とか3万円とかお配りしたという例はございます。
〇中西委員
今日は初日ですから、ざくっとした全体の枠組みで少し質問したい、意見を言いたいのですが、この秋のわが税調は、大きく言って、法人税・所得税の減税と、もう一つは政策減税で、景気の浮揚に一番効く政策減税は何かと。例えば住宅市場への刺激とか、これは私前回からいろいろ申し上げていることですが、政策減税のほうは今後のあれとしまして、まず法人税を40%程度に引き下げる。財源は、いま島田さんがおっしゃったように、当面は赤字国債で走るということですが、これはそう何年も赤字国債で走るわけにいかんわけですから、早急にこの議論をしなければいかんと思うのです。この春から若干議論されておりますが、結局、国税の方は、この前資料を見まして、日本もやっぱり31%ぐらいになっていますね。海外も大体31%ぐらいですから、これは、(大蔵に肩を持つか、自治省に肩を持つか、この綱引きがあるようですが、別に私はどっちに肩を持つわけでもなく)公平に見て、国税31%というのは、国際的にいいところに来ているのではないか。
問題は、この財源は、15%ある地方法人税の方をどう取るかということですが、これは、この間からのまな板に乗っている議論は、外形標準課税の場合に、控除型でいくか、あるいは加算型でいくかというような議論になっておって、ここに中小企業の赤字企業へもこれを加算していくのかどうかという議論がある。私はそこのそういうテクニカルな問題というより、もっと大きく財政の問題と大きく関わっているのではないかという気がしまして、このメンバーにも首長さんが大分見えて、あとでお叱りを受けるかもわかりませんが、私はこの事前にもらった資料を見ましても、今度の消費税を、いま4:1になっている国と地方の関係を、今度3:2にしたらどうだ、地方のほうへ2寄こせと、なぜならば地方財政が非常に苦しいから、とてもじゃないが、財源をほかに捻出する方法がないというような議論も出ておるようですが、私は財政まで突っ込んで当然議論をすべきであって、前にも言ったと思うのですが、財政審議会と税調で本来一緒になって議論すべき性質のことに、この議論を突っ込んでいくとそうなるのではないかなと。
そもそもいま地方行革、いろいろ分権は言われておるのですが、私、地方の行革、いわゆる本当の意味でのリストラというか、これがほとんど手つかずというか、余り行われていない。言われているように、地方交付税と補助金と公共事業費なんかを含めて膨大な、国債償還を除いて、一般会計の半分以上が地方へいっているわけですから、この辺の仕組みを変えるというところにメスを入れていかないと、ただ税のところだけでどうのこうの議論をしておっても、これ、いかがなものかという感じがします。その辺、財政まで踏み込んで議論をするのかどうか、その辺もひとつ、この秋の審議会でどういうふうにやるのか、私としては問題を投げかけたいと、こういうことでございます。
〇榎本委員
いまの中西さんのお話に関わって少し申し上げたいと思います。特に地方に責任を負っている、当たる側の立場からしますと、財政の問題を抜きに税を論じていただいては現場がもたないと思います。一つは、地方財政がもうぎりぎりのところへ来ていて、もう一押しで、軒並み破産、つまり財政再建団体に転落するという状態にある。とりわけ今回特徴的なのは、東京、神奈川、大阪、愛知などの大都市を含んだ地域が極めて深刻な事態になっているということで、東京も財政危機宣言をしましたし、神奈川も非常事態宣言という---実質的には、例えば東京の場合4,000億円を超える収入欠陥が出ておりますから、標準財政規模の5%を超えると府県の場合は破産宣告を受けるわけですから、実質的には破産しているわけですね。この破産に陥らないためのぎりぎりのところを、リストラで何とかしようというのがいま東京でやられている事柄ですが、実はこのことは、府県レベルだけではなくて、大都市近辺にほぼ集中していますけれども、市町村でも相当深刻な事態なわけです。
問題はその背景ですが、この間、公債費に対する依存度が急激に膨張してきている。そして、そのことが財政を硬直させて、経常的な支出もとても経常的な収入では賄い切れない。つまり経常収支比率が 100%をとうに超えている自治体が大都市周辺では軒並みですね。この原因が自主的な地方財政の運営の結果として起きたのだとすれば、これは地方の責任に属することですけれども、その問題が全くゼロとは思いませんけれども、数次にわたるこの間の国の景気回復という施策に対して、涙ぐましいほど地方が協力をしてきた。言葉を変えて言えば、国の施策に対して、地方財源が動員をされてきた。もっと言うと酷使をされてきた。その結果として地方財政が疲弊し尽くして、もう一押しすれば軒並み破産というところへ落ち込んでしまっているという現実がある。この現実を無視して、国と地方の今度の減税の振り分けを行うことはできないし、もしこの主要な自治体が軒並み破産という事態になれば、これは国民に対しては大変大きな打撃を与えるわけでありますから、あるべき景気対策というものもすっ飛んでしまうというような事態にも私はなると思うわけです。
そういう点では、今回の景気浮揚という主として国の責任に属する施策の実行として行う減税等の措置については、基本的には国の責任で国税をもって充てるべきだということと、もし地方も減税をするのだとすれば、これから地方分権の課題とも関わらせて、地方に税源移譲をきちんと行うべきだと。そのことを抜きにしてやるとすれば、相当地域経済や地域社会が大混乱になるという、そのすれすれのところまで来ているということを認識をいただいた上で、この問題については議論をしてほしいというのが意見であります。
〇松浦委員
関連して、私ども全国市長会も10月1日にこの問題について緊急の決議をさせていただきました。ちょっと御紹介させていただきますと、「経済対策は基本的に国の責任と負担のもとに行うとの考え方に立って検討が進められるべきであること」、また2番目として、「地方分権推進計画に沿って、地方の歳出規模と地方税収入の乖離を縮小するため、所得税から個人住民税への、また消費税から地方消費税への税源移譲などを含む抜本的な税制改正を進め、地方分権時代にふさわしい都市税財源の充実強化を図ること」、3番目といたしまして、「所得課税のあり方に関する検討におきましては、個人住民税は現在の5、10、15%の税率構造は十分に簡素かつ緩やかであり、最高税率15%も十分低いものとなっていることを踏まえて、慎重に行うこと」。
以上、大きく申し上げてこの3つのことについて緊急決議をさせていただきまして、私ども市長会も、いま榎本委員さんからもお話がございましたように、いま一生懸命やっているわけでございまして、しかし、いま紹介されているような現状に地方があるわけでございまして、今日も2時半から総理と我々の代表が1時間半にわたって、4時まで話し合いをさせていただくというようなことになっております。以上、そうしたことを御理解をいただいて、ぜひそういう立場に立って減税の議論をしていただければと思っています。
〇中村特別委員
最初に、中堅所得者を大切にという、いわゆる政治的スローガンについて、感想を述べさせていただきたいと思います。
私はむしろ表現としては、「人材を大切にする税制への転換」を目指すべきだと思うわけです。中堅所得層というのは、誰もこの内容を余り検証しないまま、この言葉を使ってしまっているわけです。その中身をもう少し今後考えるべきだと思うのです。ライフサイクル上、まだ年代が若くて、中程度にとどまっているケースもあるし、能力が平均的であるがゆえに中所得層かもしれない。その内容が非常にごった煮なわけですよね。だから、この中堅所得層を大切にという税制が何を理念として求めているのか、よくわからない。私はむしろ人材を大切にする税制が必要であり、これが新しい日本の活力を生み出していくのではないかと思うわけであります。だから、総理がそうおっしゃったからそうしますというのでは、能がないわけで、根源的にいろいろこの場では考えていく必要があると思います。
企業のレベルでも、能力給をどんどん導入しようというふうになってきているわけです。能力給を導入して、能力のある人は給与が高くなる。そうでない人は中程度にとどまっている。税制上も能力給で能力のあると認められた人は、それ相応の、優遇とは言いませんけれども、それ相応の処遇を税制上受けるべきだと思います。いま、企業がやっていることと、中所得層を大切にという税制が矛盾する、バッティングする面があるように思われます。それが一つ。
もう一つは、税制改正にもっとスピードをつけろというふうに申し上げたい。いま、ボーダレス・エコノミー、金融・経済で瞬時に経済的結果が決まってしまっている。金融についても国会は3か月もかかっている。遅すぎるわけですね。歳出も税制よりもまあまあだけど遅い。税制が一番遅れているわけですね。だから、税制上の意思決定ももっとスピーディーにやっていかないと、市場が反応しない。あまり何か月も、週1回でなくてもいいのですけれども、もっとスピーディーに税制改革の結果を出していただきたいと思います。
それから、資料の補足要求がございます。1つは、8月の懇談会のときに、私は、今後税制改正、財政のあり方でも、地域間の不公平を是正することが大切だと申し上げて、その資料の提出を要求いたしました。それに対して、個人的には何か似たような資料をお持ちくださったのですけれども、この税調の場でその資料をちゃんと出していただきたい。それは一人当たりの納税額と、一人当たりの公共投資の地域間の棒グラフで結構でございます。こういうのをもっと出していただければ、マスコミの人たちも便利よく使えるわけです。あまり個人的に資料を当局は出してくるべきではないと私は思います。今後とも委員個人から要求のあった資料は、全員に配っていただきたい。
もう一つの資料要求がございまして、今日のデータの中にも、国民負担率の内訳の国際比較がございますね。次の次のページぐらいにある、実効税率の上にその所得層別の社会保障負担率を上乗せしたデータがないものだろうか。自分の所得を思い浮かべながらこの実効税率の表を見ても、どうも実感がわかない。その理由は、おそらく社会保険料というものがこの表からは抜かれているし、それから、これは所得課税とすれば、消費税なんかも載っていないわけですね。だから、手許のお金が非常に乏しいという、もっとそういう実感を多くの方が持つべきであり、それがよりよい税制改正の原動力になるわけでございます。この国民負担率の表を、国別ではなくて、所得層別に何か表現する工夫をしていただけないだろうか。その中に固定資産税とか消費税とか、そういうのが乗っかればさらにいいわけで、いかに公的部門に資金が個人の懐から流れているかというのが一目瞭然わかるようにしていただけないか。その資料が可能ならば提出していただきたい。
〇加藤会長
いまの資料はよろしゅうございますか。
〇尾原主税局長
いまの国民負担率の所得課税の負担といわゆる社会保険料負担を合わせたときどうなるか、ちょっと工夫させていただきたいと思います。ちょっと技術的に難しい点もあろうかなと思いますが、工夫させていただきたいと思います。
〇水野(勝)委員
現在のこの財政状況からすると、なかなか減税という時期か、また現在の景気動向というのは、可処分所得が少なくて不況になっている、消費が伸びないというわけではない。皆さん方はそれぞれ、そこそこのお金は持っておられる。しかし、将来の不安に対して備えておられるというところから、消費が抑制されているという要素が大きいのではないかと思うわけでございます。
そういったことからいたしますと、現時点では減税という、本当にそうした必要性というか役割、それほど期待できるものかどうかということは、疑問が非常に大きいわけでございます。しかし、政治的な要請からして、6兆円なり7兆円の、あるいは10兆円の減税をせざるを得ないということからすれば、これは緊急異例な事態として対応せざるを得ないのではないか。
そうした場合においては、こういう事態のもとで税制改正を行うのであれば、それが緊急避難的に行うことによって、将来の税制に禍根を残すようなことだけはやめておく必要がある。あるいは、いずれにしても、将来やらざるを得ないという改正をこの時点で解決しておくという視点、そうした視点でもって対応することが必要ではないか、また適当ではないかと思うわけでございます。
そうした観点からしますと、所得税についていえば、従来から日本の最高税率、個人所得課税、所得税・住民税を含めた最高税率、これは国際的に見て非常に高いということ、また、法人の実効税率から比べても高いということ、これはいずれにしても解決をしておくべき問題であろうかと。また、全体として累進緩和するということも必要ではあろうかと思うわけでございますから、そうした方向の改正については、これは結構ではないかと思うわけでございますけれども、しかし、よく議論されておるように、日本の課税最低限というのは非常に高い。しかし、これは今は下げる時期ではないと言われるわけですが、そこは最高税率を下げ、累進緩和をする。そうした恒久的な制度をつくっておいて、それが今年、あるいは平成9年、あるいは平成8年の税負担に比べて増税になるという人が出たら(それは総理のお話にもありますように)適当ではないとすれば、一人一人について、前年、前々年を上回らない金額で納税額を頭打ちをする。一方において恒久的な制度を作りつつ、増税になる人が出ないようにするための個別的な経過措置ということで解決できないものか。それは制度的に、所得階層別に減税率といったものを置くことによって解決できるかもしれませんが、それはどうも恒久的な税制改正になじまない。やはり恒久的な制度を作っておいて、個別的に経過的措置として解決しておくという方がいいのではないかと思うわけでございます。それをさらに一歩進めれば、恒久的に最高税率なり累進の緩和を行いつつ、一方においていま議論されている商品券の問題がございます。あるいは米国式のフードスタンプといった構想もある。そういったシステムで増税になる人を出ないようにしておく。税制としてはとにかく宿題を解決し、累進の緩和をしておくということで、あとのことはそうしたシステムにお願いをするということも考えていいのではないか。税制としては、やはりすっきりとした改正を行っておくということがいいのではないかと思うわけでございますが、これはなかなか難しいかもしれないと思うわけでございます。
それから、法人税についていえば、外国並みという税率にまで下げていくということですが、その外国並みという表面税率 46.36%まで来たと。これはカリフォルニア州に比べるとまだ高いという議論ですけども、ニューヨーク州に比べればほどほどのところですから、本当に法人税率といいうのをここで下げる時期なのか、基本的に下げていく必要があるのかどうか、ということをもう一回基本的に考えてもいいのではないか。しかし、さらに下げるべきだとすれば、(先ほどから議論があります)国でやるのか地方でやるのかという問題があるわけですけれども、国税はとにかく下げました。あとは法人住民税なり事業税の話ではないかと、順序といたしましてはそういう気がする。
また、財政状況からいたしますと、先ほど御説明がありましたように、都道府県だけについてですけれども、前年比はむしろ地方は105%である。国は91%。地方消費税を調整しても91%ですから、国と地方というか、都道府県と比べれば、そんなに財政状況というのは変わらないのではないかという気もするわけでございますから、そこは淡々と考えていくことができないかというふうに思います。
それから、政策減税についていえば、時々議論が出ております住宅税制について、ここはローン利子控除にしたらどうかという御議論があるようでございます。しかしながら、現在の貯蓄課税を見ると、概ね20%なり26%の分離比例税率で課税されている。ある意味では貯蓄優遇といった形がまだ残っているような形でございます。貯蓄を優遇する、一方においてローンの利子を控除するということは、借入金の優遇になるわけございまして、一体これは政策がどっちを向いているのかということになるわけでございます。もし借入金を優遇し、もっとどんどん金を借りて使ってくれ、住宅を作ってくれ、車を買ってくれというのであれば、借入金は優遇する、しかし、貯蓄課税、利子課税の方は、分離比例税率を引き上げるとか、あるいは総合課税に移行するとか、そういったことがないと、精神分裂的な税制になるのではないか、そんな気がいたします。それはまさに禍根を残さない税制改正をしていくべきだという考え方からすると、非常に問題が多いのではないか、そんな気がいたします。
〇島田委員
恐縮ですが、いま水野委員の意見を聞きまして、これははっきりさせていただかないと議論できないなと思ったのは、「恒久的減税」というのはどういう減税なのか、ちょっと定義を教えていただきたいのです。つまりそれがこの秋の税調の宿題でございますから。こういうことですか、例えば3年間赤字国債で財源を賄うというのに照応する減税を恒久的減税と言うのか。そうではなくて、赤字国債で賄っているのは、本来、これは恒久という言葉はつけられないはずだと思うんですね。赤字国債で賄ったら、将来増税になるのに決まっているわけですから。そうだとすると、当面は赤字国債でやって、財源の議論はするのだけれども、恒久財源はつくれないから、しかし、やがて時期が来たら恒久財源を構想するということを前提にしながら、それと照応する減税なのか。それとも、3年間の赤字国債で賄う(2年でもいいですよ、知りませんが)、そういう減税なのか。それとも、そういう財源は一切考えない減税なのか。この3種類の解釈のどれなのかによって議論が変わってきてしまうので、あとに禍根を残さないといっても、何の禍根だか分かりませんので、ちょっと当局からこれは説明いただきたい。総理のお心かもしれませんが、説明いただきたい。そうでないと議論できないはずです。
〇尾原主税局長
「恒久的減税」の意味でございますが、国会答弁の中で、内閣総理大臣から次のような話がございました。これは「恒久的」と「恒久減税」というのはどこがどう違うのかということでございますが、「単年度、単年度で行われる特別減税という用語に対しまして、『恒久減税』という用語は、消費喚起の観点から、1年限りの減税でなく、将来に向かって継続される減税を行う方が効果があるという意味で、これまで新聞等で多く用いられてきた。総裁選での公約においても、その意味で『恒久減税』という言葉を用いた。つまり私が公約で申し上げたかった趣旨は、将来どうなるかは不確定な1年限りの減税ではなく、期限を定めないで制度改正を行い、その後、特に法律改正を行わない限り継続していくというものであり、私としては、今回の減税が所得・住民税の最高税率の引下げ、定率減税及び法人課税の実効税率の引下げを内容とする制度改正を行い、全体として期限を定めない6兆円を相当程度上回る減税とするということとしたものであり、これが公約の趣旨である」云々と、述べられております。従って、今回の減税は単年度、単年度で行うわけではない。7年度、8年度の特別減税は例えば「平成7年分所得税の特別減税のための臨時措置法」「平成8年分所得税の特別減税のための臨時措置法」などの法律を出したわけですね。それで、その年分が過ぎますと、前の税に戻るわけでございます。これに対し、今度の恒久的減税というのは、前の税に戻るためには「そのような税制改正はやめにします」という新たな法律を出さなければならない。そういう意味で、「恒久的減税」ということでございまして、一方において相当程度、景気が着実に回復するまでの間は続けられるであろうというような趣旨の答弁も大蔵大臣からなされたことがございます。
それから、いまの減税財源の話でございますが、お手許にございますように、「減税財源は当面は赤字国債」という言い方になっております。「長期的には、今後の経済の活性化の状況、行財政改革の推進等と関連づけて検討すべき課題」というふうに述べられているところでございます。
〇河野特別委員
今日は第1回なので、総括的な意見を述べたいのですけど、私は、いまの経済状況からすれば、従来、私、十数年間税調に座っていますが、減税規模をなるべく小さくしようとか、そういう発想で臨むのではなくて、この際だから、税制が果たすべき役割が相当程度僕はあると思うんだね。それにふさわしいだけの大胆な減税を思い切ってやったらいい、筋が通るものだったらやったらいいと思うんですよ。
もう一つは、しかし、これは何人かの方がおっしゃったけれども、我々、将来はこういう姿であるべきなのだということを、漠然としながら皆さん持っているわけですね。小委員会もその勉強を常にされているわけなんです。だから、今回の大胆な減税が、将来の我々がぼんやりではあるけれども頭で考えているものとものすごく反する、ないしは障害にたくさんなるというようなことだけは極力避けるべきだ。これはちょっと矛盾することがあるんですけれども、そう思うのです。
それで、今回の減税というのは、二重の意味で極めて政治的だと思うんですよ。政策減税はこれから議論することだけれども、法人と所得税減税については、8月、内閣ができた瞬間にもう大枠と方向が決まって、あと具体的内容をどう詰めるかということになって、もう決定済みなんですね。やること自体には異議は全くないという形に今なっているわけです。私もそう思うんです。ただ、しかし政治的な決定というのは、今度はそれだけでは済まないんですね。誰もわかるように参議院の状態を考えれば、政府が党と我々の税調のところで、ある結論を大まかに出したとしても、参議院のことを考えてみれば、その次に与党と野党の全部との間が、また相当ハイレベルのというか、政治協議が必要になってくるんですね。それがなければ国会を通りませんから。その混乱の仕方によっては、内閣がつぶれることもあり得るわけで、その意味で二重に政治的なんですよ。
そこで、最初に申し上げるので、ほかにたくさん言いたいことはたくさんあるのですが、とりあえず言いたいことは、将来に禍根を残さないという趣旨のことだけは、いかなるレベルでこれから政治決定が行われようと、守ってもらいたいなと思うんです。
何を言いたいかというと、消費税をどういうふうに取り扱うかということなんですよ。御承知のように、まだ栗田さんは発言していないけれども、地方消費税を配分の問題で1から2に上げるという意見があることは事実ですよね。あるいは党によっては、これは共産党と自由党だけれども、暫定・恒久は別にして、消費税率を3%に下げたらどうだという意見もあるわけです。また、これに関連して、直に税制問題ではないけれども、しかしバックに消費税の問題を頭に置いた議論としては、公明党の皆さんが言っている(公明党じゃないか。いま2つの党がこれから一緒になるのだけれども、そこで言っているような)商品券という、3か月前だったら荒唐無稽な議論が、ごくまっとうな議論になりかかっているような雰囲気である。それも2%の消費税アップを返すという、限定的に時限的に返すというのが説ですよね。
それから、もう一つは、これは最近会長が(読売新聞だったかな)インタビューで言われた戻し税みたいな話もある。これも広い意味で消費税絡み。つまり、いろいろな案があるんですね、消費税については。
ただ、どう考えても、導入の契機、理屈、それから将来のことを考えてみると、消費税の姿に傷をつけるということだけは。ほかにいろいろやり方があるのなら、それをなるべく導入することによって。消費税だけは無傷というわけにいかないかもしれないけれども、これを下手に曲げてしまえば、後々もとへ戻すのにまたえらい政治的なエネルギーを必要とするんですよ。これは間違いないと思うんです。誰でも分かっている話で。それを考えれば、安直にみんな考えているわけではないけれども、何か消費税に手を加えれば何とかなるというふうな発想だけは、労働組合も財界も、我々もそうだけれども、持ってもらいたくない。これだけは慎重に。今の姿を全部完全にいけるかどうかということについては、私は、(さっき申し上げた政治決定の話があるから)自信はないけれども、しかし、ひょっとして我々が危惧の念を持っていることが実現するかもしれないので、それだけはやはり税調としては、声を大にして言っていくべきではないか。私個人は終始一貫そのことを基準に置きながらこれからの議論に持っていきたいと思っています。
〇松本(和)委員
先ほど松浦委員から、市長会の立場で決議ということが出たのですが、町村会のほうにおいても、決議をなされたところでございます。また、地方の運営について先ほども話が出ておりますが、我々町村においても、国の景気対策ということで、いろいろの事業関係でも取り組んでまいりました。そういうことで財政基盤が非常に弱くなってきているのは事実ではないかと思います。そういうことを御理解を特にお願いしたいと思います。
それと、減税問題について、町村長の立場から言わせてもらいたいと思うのですが、今回の減税問題について、私をはじめとして町村長は、非常に国からひどい扱いを受けているのではないかというような感じさえ持ったところでございます。御承知のように、本当に町村は自主財源が乏しくて、非常に厳しい状況になっております。そんな中にあって、個人住民税は固定資産税と並んで本当に貴重な財源でございます。そういうことで、その動向について、非常に気にかけるところですが、減税問題は税調などで十分に論議をした上で結論を出すことになっているというような気持ちでおります。
先ほどの国会審議の過程で、大蔵大臣が個人住民税の最高税率を5%引き下げるというような意向を示されたわけでございますが、そういうことで、我々にとりましては、地方税のことについて、非常に心外というような気持ちを持っております。
そうしたところでございますが、きのうの22日の読売新聞でございますが、1面に大きく見出しで、「定率減税について、住民税の下げ率を所得税より大きくす る」という記事が出ていたわけでございますが、これが一体どうなっているのか、また、あたかもこういうふうに出れば、決まったような感じを受けるわけでございますが、そういうことでちょっと遺憾のような気がいたします。
所得税のことは国でお決めになることでございますが、それで結構でございますが、住民税のことについては、やはり我々の思いを十分に反映したところの改正をぜひお願いしたいというような気持ちを持っております。
〇石特別委員
これから税調で本格的に議論が始まるわけですから、ちょっと二、三、気のついたことだけ述べておきたいのですが、いま短期的な景気刺激という視点から、減税が至上命令で我々に押しかぶされてきているわけで、これは河野さんもおっしゃったように、いまの景気情勢から見て、7兆円というのはまさに当てられたような額になっていますけど、これはしっかり中身を精査しながら法人課税、所得課税を考える必要があると思います。
が、もう一つ、中長期の視点というのがどうしたって税調としてあって、21世紀、税制はどうあるべきかというのは、やはり絶えず念頭に置きつつ短期の問題を考えなければいけないのですけれども、短期の問題がまさにクローズアップされてしまって、何でもありといったような議論がどうも横行しがちですよね。僕は税調として税の理屈というのがあるのだから、あまりにも珍奇な、あるいはおかしな、どうにもしようがないというような税制改革を減税に引っ掛けて持ち込むのはまずいし、それから、長年の懸案のいろいろなことをやっているのを、減税ということに引っ掛けて、それを一気に解決してしまおうというのは、これまたおかしいし、私はその点、やはり何でもありというのは、この際しっかり見極めて、ちゃんと理路整然とせねばいかんだろうと、これは私は税調の責務だと思いますね。
7兆円の所得税、住民税、法人課税を考えていくには、これは中身をいろいろやっていかなければいけない。いずれにしても、減税をそれだけやったら、税制は傷みますよね。そういう意味で、今後修復が非常に重要になると思います。来週火曜日にお出しできると思いますが、一応ワーキング・グループで、所得税の世界においては、控除、税率、それを含めて課税最低限等々、考えるべき論点というのを一応整理してありますので、そういうのを出して、ここでそれを手がかりにしていただいて、こういうことをやらなければいけないよということが頭にありますと、そう短期の方で無茶苦茶なことを言えないのではないかという期待もしているのですけど。
例えば、住宅ローンの所得控除の問題も、実は税の議論にすると非常に重要な問題なんですよね。ましてや、いま政治家が言っているように、現行の税額控除と所得控除の両方を選択でいいじゃないかと。こういう税制というのはあり得ないので、これもしっかりしなければいけないし、住宅ローンの控除を認めるとか、あるいは住宅の減価償却を認めるなんていうのは、しょっちゅう出てきますけれども、税の理屈からいうと、いま帰属家賃に対して税がかかっていないというような、本来、そもそも論の議論のところに密接に関わっているので、一部つまみ食いというのではなくて、やはりしっかりした議論をしなければまずいですよね。いうなれば政策減税なんだからいいじゃないかという言い方もあるけど、それならそれで政策減税のある程度の効果を見極め、有効な手段かどうかというのを見極めて議論をするという、そういうやはり正道な議論をせねばいかんだろう。こういうことを税調に期待したいと思います。
それから、もう1点は、地方の首長さんもおられて、地方のいま苦しいところ、お立場を申された。重々理解しているつもりですが、私は今度の減税の額の大きさとか、国と地方をどう分けるかというときに、どっちの財政赤字が大変だという議論は、余り生産的ではないと思うのです。たまたま地方には再建団体になってしまうという恐怖感がありますけれども、ある意味で見ると、国ももう再建団体に近いんですね、おそらく。ましてこれから先、財政構造改革が吹っ飛んでしまったわけですから、それで何でもありでいま赤字国債でやっていますから、数年後に景気がよくなったときにふと気がつくと、国の財政赤字というのが僕は膨大な形でのしかかってくるという危惧を絶えず持っているんです。
そういう意味で、地方消費税を1から2にしようとか、あるいは減税の幅をどうしようかというときに、余り双方の赤字の大きさで議論するのは、僕は不毛だと思うんですよ。そういう意味で、その点は控えて、税制の議論として、例えば所得課税、法人課税の世界で、どう負担を分け合ったほうがいいのか。トップレートのところを、本当に50・50と、いま15あるやつを、これはどっちがどうなんだという議論を僕はできると思うんですけど、そういう議論はするべきだろうと考えております。
以上、2点です。
〇大田委員
簡単に2点申し上げます。
先ほど来、地方財政の話が出ていますが、いくつかの自治体が財政危機になった直接のきっかけは景気対策ですが、やはり基本的には法人からの税に依存し過ぎて、バブル時代に肥大化した歳出構造を持ったまま来てしまったということが根幹にあるのだろうと思います。だからこそ私は法人事業税の改革というのをきっちりとやるべきだと。やはりこれをきっかけに、自治体が財政運営にもっと責任を持つといいますか、そういう体制をつくるべきだと思います。もう、そのぎりぎりのところに来ているのだろうと。地方が独自の税財源を持つという点は賛成ですが、そのときにはやはり地方交付税の大幅な改革をセットにしてやるということに是非、着手すべき時期だと思います。
それから、もう1点、減税のやり方ですが、供給サイドを刺激するのか、需要サイドを刺激するのかという基本的なあり方としての選択があるだろうと思います。私はいまの経済状況を考えますと、供給サイドの刺激にウェイトを置くべきだと思います。その理由は、やはり今の状況を見ていますと、潜在生産能力を上げるということが非常に重要で、簡単な需要刺激策をとっても、消費は伸びない。それから、もう一つの理由は、いまの税の歪みをこれ以上拡大してはいけないという2点で、今回の減税は、政治的には修正を余儀なくされますが、基本的なあり方としては、供給サイドを刺激すべきだと。具体的には法人税の減税と、それから、所得税に関しては税率が高いところの下げ幅を大きくするという形がやはり望ましいのではないかなと思っています。
〇塙委員
いま日本経済は瀕死の重傷を負っているということだと思います。これは金融システムだけではなくて、それに連なる私ども製造なんかもそうですが、非常に倒産も多くて、非常に瀕死の重傷を負っているわけです。人間にたとえて言えば、病気で寝ているようなもので、その者に運動をして健康になれと言っても意味がないのと同じで、この税の議論も、理論的な制度減税といいますか、先ほどの恒久減税といいますか、そういう議論と切り離した形で景気対策の税の問題というのをしていただけたらなと、あるいはすべきではないかと思います。
先ほど将来に禍根を残さずというお話がありまして、全くその通りだと思いますが、いま瀕死の病人にどういう薬を飲ませるかということと、将来の健康のメニューとは違っていると思うので、場合によっては期間を限定してやるとか。例えばミクロの話ですが、スクラップ減税というのがあります。これは自動車についてヨーロッパでやって、非常に景気対策としては成功をおさめている。税金としては、出る税金と入る税金がほとんどイコールで意味ないのですが、景気対策としては非常に効果のあるものです。これを1年とか2年とか限ってやっているわけです。そういうふうな対策が税の面で考えられると、将来に禍根を残さない制度としてやれるのではないかと思うわけですので、そのように御検討願えたらと思います。
〇本間委員
先ほどからお話が出ておりますけれども、今回の税制改正に当たって、短期的な問題と中長期的な問題、どこに力点を置くかということは、必ずしも整合的な形で両立させることが難しい状況にあるのだろうという具合に考えますが、しかし、そのことをきちんと論理的に整理しておきませんと、ますます税制が複雑かつ怪奇なものになっていくということは、これは事実でありまして、この4~5年の税制改正ですら、実は定率・定額の組み合わせによって、我々が税制改正の姿かたち全体を見るときに、実は極めて制約を与えてしまったという反省を我々はまずすべきなのだろうと思います。
つまり、税制改正の議論をするときに、現在の税制の負担構造というものを出発点にして、そしてそれで定額・定率というような形でいたしますと、実はこれはかなり歪んだものになってしまうわけでありまして、全体の負担構造を白地に絵を描くような形でやるのか、現行の税負担構造というものを前提にして議論するかによって、ずいぶん違う。これを数次繰り返しますと、もうとんでもないものになっていく。つまり当然、後者のほうをやりますと、とんでもないことになってしまうわけであります。これがいま実は非常に全体の負担構造を減税に導きながら、これをうまく中長期的な形で理想的な姿にすることができるか否かという問題を、我々に突き付けておりますし、そのことが実は両立できないがゆえに、戻し的な減税であるとか、商品券構想であるとか、そういういわば邪道な手段を導入せざるを得ない形になってきておるわけでありまして、我々はここで出発点のところでもう一度自由に絵を描いた上で、そこで現在の負担構造とどういうぐあいに乖離が起こってくるかということを、定率・定額などという姑息なやり方ではなくて、抜本的に自由なレベルの中で描いてみて、その上でこれを歳出面も含めて調整をする。こういう考え方をとりませんと、我々は同じ過ちを続けるということになりはしないかということを、非常に危惧をしているということであります。
さらにもう一つは、これは基本的に地方と国との問題というものが常に税収面から出てくるわけでありますけれども、その点についての論理的な整理というものが必ずしもついていないということが非常に大きなポイントで、税収配分と同時に、地方税と国税との関係というものを、受益なのか、あるいは能力的なものなのか、一体どう考えるかということを、もう少し基本に立ち返って議論をしていくということがおそらく求められるのだろうと思います。
そういうようなことから、私はやはり減税に当たっては、構造的な問題をより重要視した形で議論をし、しかし、それに対して、短期的に問題が起こるとすれば、政策減税というものを明示的に期限を切って、これを実現をしていくという方向で議論を整理していく必要があるのだろうと思っております。
その点で申し上げますと、先ほどから潜在的にいろいろ議論が出ておりますけれども、住宅ローンの問題等も、これは政策なのか、あるいは構造的なものなのかということが非常に整理がしにくい面があるわけでありますけれども、私自身は、もちろん石委員がおっしゃったように、帰属所得の問題はもちろんあるわけでありますけれども、法人のレベルにおいて、利子を控除の対象にしておきながら、所得税の中でこれに対してはこれまで認めてこなかったという対照的な問題、あるいは時価評価の問題が取得原価主義で法人税がなっている状況の中で、この問題についてもう少し幅広く検討をする必要があるのだろうと。しかもこの利子ローンの問題については、我々は実は住宅金融公庫というやっかいなものを抱えている。これとどういう形で整合的な形でやるのかどうか。この辺についても我々はきちんと議論していく必要があるのだろうと思います。
〇栗田委員
地方の立場から話を進めさせていただきますが、全国知事会をはじめ地方団体で、この10月8日に税制改正に関する緊急決議を行いました。法人事業税あるいは個人・法人の住民税、これは申し上げるまでもなく、地方公共団体の税収の大宗をなす重要な税源でございます。大変厳しい地方財政の現状でございますので、法人・個人の所得課税減税は、国税中心でぜひお願いいたしたいと思っております。そもそも景気対策は国が行うべき仕事であるという、そういうことからの出発が大事であろうと思っております。
それから、今日いただきました資料で、経済戦略会議の「短期経済政策への緊急提言」の中に、不動産取得税の凍結といったような極論まで出ておりますが、不動産取得税は戦前から都道府県の基幹税目でございますし、また、税収としても重要な位置を占めているわけであり、いま地方自治あるいは地方分権に逆行するような議論が出ているのは、いかがなものかという感じがいたします。
また、地方の行財政改革について先ほどお話がございましたが、地方では行財政改革を積極的に進めておりまして、本県の場合でも、定数の削減、事務事業の見直し、また組織の効率化などに取り組んでおりますし、来月には行政改革大綱の見直しを断行したいと思っております。このように血を流すことによって、地方分権を進めていくという努力をしているわけですが、減税の如何によっては、そういったことが報われなくなるということも懸念されるわけでございまして、そういった立場から十分議論をしていただきたいと思います。
それから、もう一つは事業税の外形基準の導入ですが、総理が平成11年度は取り上げないと言っておられるようですけれども、これは小委員会で検討していただいているわけでございまして、都道府県に安定財源をもたらす、あるいはまた地方分権の時代を支えるために、極めて重要な課題でございますので、引き続き積極的に検討していただきたい。そして、その方向性を示してほしいと思います。
〇加藤会長
時間がなくなってまいりましたので、急いで御発言いただきたいのですが、和田さんですか。
〇和田委員
減税につきましては、すべての世帯で今年度よりも税負担の増にならないような減税というのを行うべきだと考えております。そのために定率減税に加えて、例えば、差し当たり、今いろいろ言われておりますような何らかの定額の減税というものを組み合わせていくということも、考えていく必要があるのではないかなということを考えております。
そして、それによりまして、消費税の問題は先ほども出ておりますけれども、やはり私どもは、消費税の導入そのものというのは、もう繰り返しませんけれども、異常な政治行動の中で導入された問題ということもありますし、それから逆進性、これは当然のことですけれども、いま申し上げましたようなことによって、逆進性の緩和というような面も出てくるということを考える必要がある。ということが1点です。
それから、もう1点は、国にしろ、地方にしろ、行財政改革というものを、やっているとおっしゃいますけれど、もっともっと行財政改革というのを厳しく対応してほしいし、私どもも納税者として見ていく必要があるというふうに考えております。前回の答申あるいは中期答申の中でも、相当行財政の改革というのは厳しく求めておりましたけれども、果たしてそれに応えてこられたのかという点は、まだまだ足りない、疑問があるということを感じております。
時間がございませんので、以上簡単に申し上げました。
〇加藤会長
まだお手を挙げていらっしゃる方があるのですが、時間がなくなりましたので、この次の時間にもこの時間を取ろうと思いますので、この次来れないので、今日どうしても御発言という方はいらっしゃいますか。
〇笹森委員
基本的な部分で2つあるのですが、1つは、いま一番求められているのはスピードだと思うのです。方針の中でも来年の1月実施、それから、来年度から実施とありますね。それから、総理の発言の中では、いま何をやらなければいけないのか、この景気の回復、日本経済の建て直し、そのために景気への最大の配慮、という中でフレームが決められたんですね。それに対して、先ほど河野さんが非常に大事なことを言われたのですが、55年体制時の政府与党と野党の関係ではないんですよ。今度の金融関連法案の中でも、そのことが実証されました。政府案ではない、野党案で出てしまう。今度の問題も、いくら立派な先生方がこの中でやられても、政府与党案を出して、では野党との共同の中でどうするかというと、ズタズタ、メチャメチャにされる可能性が非常に強い。だけど、何をやらなければいけないのか。いま一番求められているのは、景気の回復のために早急にスピードであげなければいけないというのが1つですね。
それから、もう一つは、そうなっていくと、政府税調の存在意義、前回の懇談会のときに加藤会長が存在意義を示したいと、明確に最後のときにおっしゃられたと思います。私は非常に大切なことだと思うのです。ということになれば、役割と権限の中で、政党税調と政府税調との関係を、どちらがどうなのかということを明確にして、当然、最終的には政治の段階になりますが、政党間のおもちゃにさせないという、そういう対応をきっちり発言をしていく必要があるのではないかと思っています。
それから、テクニカルな部分は次に言いますが、2つだけ。1つは消費税の問題を言われました。連合も意見がまとまりませんし、連合はなぜ下げろと言わないのかと言われていますが、消費税についてはぎりぎり今踏みとどまって、現行でというふうに守っています。
それから、最高税率の問題、大幅な引下げという御意見も出されましたけれど、これについては非常に異議ありというふうに申し上げておきます。
〇松尾委員
各論は次回に回すとしまして、今日は最初ですから一言だけ意見を言わせていただきたいと思います。
6兆円を相当上回る大幅な恒久的減税の方針は、減税財源を考えますと、緊急避難とはいえ、明らかに問題の先送りであります。やはり国民が納得できるようなビジョンを示す必要がありますし、そうしないと減税の効果はまず期待できないだろうと私は思うのです。「将来を見据えた望ましい制度の構築」、こういう抽象的な言葉では国民は納得しませんね。もっとはっきりしたビジョンを政府税調として出すべきであると思います。
〇加藤会長
まだ御意見があると思いますけれども、この次のときにワーキング・グループの報告が2つございますから、その2つのワーキング・グループの報告を巡ってまたいろいろと意見が出ますので、そのときに皆さま方の御意見をいただくことにいたしまして、今日は自由討議はこのくらいにいたしまして、次に2点だけ事務局から報告事項がありますので、ちょっとお聞きをいただきたいと思います。
先般、10月8日ですか、日本・韓国租税条約全面改定の署名が行われました。それについての報告でございます。
続きまして、10月8日から9日にカナダのオタワで開催されましたOECD電子商取引閣僚級会合の際に公表されました報告書の報告を受けたいと思います。
それでは、谷口租税課長と渡辺企画官、よろしくお願いします。
〇谷口国際租税課長
谷口でございます。極力短くやらせていただきたいと思います。
お手許資料の「総19-6」という横長の紙で、『日本・韓国租税条約(全面改定)』という2ページの資料がございます。これを見ていただければ大体わかりますので、ポイントだけ申し上げますと、要するに、30年ぶりの全面改定でございまして、日韓租税条約は、韓国から見れば戦後初めての租税条約でもございましたので、やはり21世紀の日韓関係ということでは、歴史的な意義があるということでございます。
中身のほうは、そういう意味で21世紀の、韓国もOECDの一員となりまして、これまでは途上国対先進国型の条約であったのですが、基本的に先進国同士の、まさにイコール・パートナーシップとなった条約になって、お互いに投資を促進するような形で、二重課税の切り分けができるようになったということでございます。具体的なところは省略させていただいて、基本的な精神はそうであるということで、よろしくお願いいたします。
〇渡辺企画官
引き続きまして、OECD租税委員会の電子商取引に関する報告書でございます。「総19-7」でございます。本体はお手許にお配りしておりますが、時間もありませんので、概要の1枚紙だけ御説明いたします。
その内容でございますが、まず納税者サービスを向上させる機会を提供するということを言っております。その次に、電子商取引に適用される課税原則は、従来の伝統的な中立・公平・簡素というようなものを適用すべきであると。また、現段階では現在の課税ルールを適用したらよいのではないかということを言っております。若干具体的な項目は3に書いてありますが、まず税務行政につきまして、本人確認の問題、あるいは情報アクセスの問題を伝統的な取引同様、税当局として保持するべきである、あるいは徴収についてもきっちり行うようにすべきである、消費税については消費地で課税されるべきであり、今後どうしていくか各国で検討していきましょう、等々いくつかのポイントが書いてありまして、最後に、今後ともOECDで民間との意見交換等も踏まえながら、さらに具体的に検討していこうと、そのような内容になっております。
〇加藤会長
ありがとうございました。
最後に、次回の総会は来週の10月27日、午前10時から12時までを予定しております。先ほど申し上げました2つのワーキング・グループからの報告、また地方の法人課税につきまして、地方法人課税小委員会から報告を受けるということになると思います。
それから、局長、審議官から説明がありましたが、恒久的減税、そのほかの大きな問題について、年度改正審議に入る前の11月中に荒ごなしをしてもらいたいと思っております。その中に中央省庁改革基本法との関係で御議論いただくこともあろうかと思います。このような進め方で、11月に入ってからの日程は、とりあえず6日と10日と17日、27日、お手許に紙があると思いますが、そのように予定しております。例年通りですと、27日から年度改正の審議に入っていきたいと考えているところでございます。
なお、11月以降の開催日程につきましては、火曜日又は金曜日に、大体行われるのだというふうに念頭においていただきまして、日程の調整をお願いしたいと思います。
本当に今日はお忙しいところ、ありがとうございました。これで終わらせていただきます。
〔閉会〕