第18回総会 議事録

平成10年6月19日開催

加藤会長

それでは、第18回の総会を開催させていただきます。

本日は、松永大蔵大臣にご出席をいただいておりますので、ごあいさつをいただきたいと思います。

松永大蔵大臣

先生方、ご多用の中を、国民生活にとっても、国家と社会にとっても、最も大事な基本的な税制についてのご審議をしていただいておりますこと、まことに感謝に堪えません。

私は、1月30日に大蔵大臣に就任させていただきました。本来ならば、もっと早く皆様の前に出てご挨拶を申し上げるべき立場でございましたが、ご存じのとおり、重要法案が山積している国会の審議の真っ最中でした。いわば、試合が始まって間もなく主戦投手がマウンドを降りて、急遽、リリーフ投手を命じられたわけであります。ウォーミングアップも十分でないままリリーフ投手の立場になったわけでありますが、できれば、ジャイアンツのリリーフ投手にならないように(笑)、後で点数を相手に与えないような形でいかにして国会を終えるかということで、全身全霊を傾けて今日までまいりました。 141日目でございます。

実に多くの難しい法案を通させていただきました。皆様方のご審議をいただいた上での法人税の基本税率の3%引下げ、こういった税制改正法案も通させていただき、また特別減税、さらには、最近になってまた大きな問題になっている、金融システムをいかにして安定・強化させるか、そのための法律が金融安定化緊急措置法、そしてそれを実行するためのいわゆる30兆円の公的資金、こういう関係の法律案や、あるいは補正予算等々の審議の真っただ中にあったわけです。私が就任してから本格的な審議に入ったような状態ですが、そういったことのために今日までご無礼しておったということをお許し願いたいというふうに思います。昨日で 158日間、延長分も含めてようやく国会が終わりました。さようなことでご無礼しておったということをお許し願いたいというふうに思います。

委員の先生方には、これまでも大変な税に関するご審議をしていただき、また大変有益、貴重なご提言をいただき、本当にありがとうございました。心から御礼を申し上げる次第でございます。

4月24日に新しい総合経済対策を策定いたしまして、その中で重要な柱の一つが税制改正であります。所得課税の関係では、公正・透明、そして国民の意欲が引き出せるような、そういう税制のあり方というものを根っこからよく議論をしていただいて、そしてご提言を願いたいというわけで諮問をさせていただいております。また、法人課税につきましても、先ほど言ったとおり、国税のほうは3%引き下げを実現することができたわけですが、あと地方税の関係等を中心にして、あるべき法人課税の姿、なかんずく、欧米等の先進国に比べて実質上の負担率がまだ相当高いということでありますので、3年以内のできるだけ早い機会に欧米先進国並みに実効税率を引き下げることができるようにと、こういったことを考えながら諮問をさせていただいているわけであります。

実は我が国の税制については、案外、諸外国は本当のことを知らないということがございます。就任して最初に国際会議に出たのは、0泊3日で行ったロンドンでのG7の会合です。あれは2月早々だったと思いますが、私、38.5度の熱があったのです。しかもそれが、委員会の関係で夜しか出れなかったものですから、夜6時頃成田を発ったのですけれども、その時点ではロンドンのほうに行く飛行機はないのですよ。そこでアメリカに向かいまして、シカゴで乗りかえて、そして翌日の朝8時にロンドンに着いて、それからすぐ会議でした。シカゴで乗り継ぎをしているときに念のために体温をはかってみたら、成田をスタートするときは38度だったのです。しかし、シカゴに着いたときは38度線を超えてましたな(笑)。38.5度になっておった。しかし、やはり就任早々でありますから、気が張り詰めておったのでしょう。何とかその会議を終えて、そしてその日の夕方、今度はロンドンの空港から成田に向けて出発をして、そして成田に着いたわけです。

そのとき、しみじみ感じた。なるほど、日本の航空会社の飛行機のほうが休まるなあと。大事にしてくれますし、それから食べ物も私の体に合うものですから。それで飛行機の中で風邪を治して、そして成田に着いたということでありました。

私が最初に行ったロンドンでのG7の会合の席では、所得課税についての恒久減税ということは非常に強く言われたのですよ。そのとき、日本の個人所得税はこういうようになってますというふうに説明をしたのですが、まだ十分は理解していなかったかもしれませんね。

2回目のG7が4月に、今度はワシントンでありました。実はそのときも0泊3日になりましたね。そのときは、かねがね作戦を練っておりまして、税のことが出たならば、先に日本の個人所得税がどうなっているかということを説明した方がいいというわけで、いい資料をつくりまして、そしてルービン財務長官に一方的に15分ぐらいしゃべりまくりましたよ。榊原財務官が、もうそろそろしゃべるのをやめてルービンさんにしゃべらせろというぐらいな形になるまで詳細に、日本の個人所得税がどうなっているかということを説明しました。すなわち、税制調査会の先生方のご努力で、2度にわたって所得税課税のあり方についてのご諮問をいただいて法改正もして、その結果、日本の個人所得税の課税の姿は、課税最低限もアメリカや英国に比べればはるかに高い位置にあると。 361万になったのですね。そしてさらにそれから 1,500万、2,000万ぐらいまでの間は税率構造も非常にフラットになっている、なだらかになっていると。しかも最初の税率が10%、アメリカは15%で、英国は20%。

ただ、日本の所得税の課税の税率が、3,000万以上超えるような状態では、日本のほうが槍ヶ岳みたいに急になっておりますから、それが言うなれば問題点の一つだという認識は我々持っているけれども、しかし、そもそも、日本の所得税負担は、アメリカ、イギリス等々先進国の中では、一番軽いものになっています。国民所得に対する負担の率からいっても、先進国の中では一番低くなっています。こういった状況にあるということをよく説明しましたら、3回目以降はもう絶対、所得税の恒久減税というのは、ルービンさん以下、言わなくなりました。

これは向こうが知っていると思っていても案外ご存じない面があるようでありますから、詳しく、くどいぐらいに説明したほうが得だなということを、国際会議というのはそういうものかなということを感じました。

3回目以降は、もう税についてのいろいろなことはございませんでした。ただ、景気回復のための税のあり方の検討をしっかりやってくれという話はございました。おそらくそのためには、私は法人課税でないのかなあと。先ほどサマーズ氏が来ておりましたので、その中でも、税制改正を含む構造改革をしっかりやるということを約束しておるわけでありますから、その点はしっかりやりますということを申し上げておきました。

同時にまた、銀行の抱えておる不良債権の処理、これは強い決意を持って、かつ、極力スピーディにやるという固い決意を持っておったし、橋本総理が先頭に立って旗振り役をしていただいている関係もありますので、これは参議院選挙が終わってからでなくして、今から、参議院選挙中も含めて徹底した議論をして、できれば、参議院選挙に突入する前に不良債権処理の具体的な方法についても大枠は決めてしまいたいと。そして、法改正をしなくとも実行できる分は実行に移すというぐらいのスピード感を持って私は取り組んでいく決意だと、こう申し上げておきました。そして法改正を伴うものは、参議院選挙後の臨時国会で速やかな法改正を実行して本格的な不良債権処理をやるということをサマーズさんには申し上げておいたわけでありますけれども、実際、そういう決意でおるわけであります。

今度の選挙では、どの党も随分大型の減税を公約していらっしゃるようでありますが、減税を主張される以上は財源も一緒に主張してもらいたい。国会の答弁の場でも、財源についても提案していただく減税提案ならば検討が十分できるけれども、財源は政府の方が何とかせよと言って、減税だけを声高に主張するということではまともな国会における審議にはならないのではありませんかというふうに申し上げておったわけであります。

同時にまた、政府や自民党は減税をやらんのかという質問が随分ありました。そうした質問に対しては、税制改革はぜひやりたいと申し上げ、その場合の税制改革の基本的なあり方というものは公正・透明、そして国民の意欲が引き出せるような所得課税のあり方というものをぜひ提案していただいて、それを受けて我々は改革に取り組みたいと答弁してきておりました。

しかし、税制調査会に諮問をして、そして結論が出たならばというのは、政府や自民党は熱がないのではないかという質問もありました。そこで、税というものは国民生活に直結するものであり、かつ、我が国の経済そのものを大きく左右するような問題であるから、政府の方が予め方向性を示して、そして審議をお願いするということは適当ではないと申し上げてきました。やはり税に関する専門家の皆様方に、まず公正・透明、国民の意欲、こういったものを中心にした税のあるべき姿というものを十分議論していただいて、そして調査会としての結論を出していただきました上で、それを最大限尊重して政府案を作るのですという姿勢で国会の答弁は一貫してまいりました。

したがいまして、大変難しい問題であろうと思いますけれども、お願いした諮問につきまして、ぜひひとつ立派な答申を仰せ賜りますように心からお願いをしたいわけであります。

加藤会長さん、前から大変ご指導いただいている尊敬する先生でありますし、また石先生にもしばしば予算委員会で有益な参考意見をいただいております。吉田委員には青色申告会等で随分ご指導をいただいてまいりましたが、ほかにも随分ご指導いただいている先生方が多うございます。ご多忙でありましょうけれども、非常に掘り下げた議論をしていただいた上で立派な答申を賜りますように心からお願い申し上げる次第でございます。

重ねて、大変ご挨拶が遅れたということを、また皆様方に大変ご苦労をおかけするということにつきまして、心から感謝を申し上げまして、雑駁で恐縮でございましたが、私の挨拶とさせていただきます。

加藤会長

大臣は、日程のご都合もございますので、ここで退席されますが、ご了承いただきたいと思います。大変お忙しい中をおいでいただきまして、非常に貴重なご意見をいただきまして、ありがとうございました。

〔松永大蔵大臣退席〕

加藤会長

それでは、審議会を続けさせていただこうと思いますが、ただいま大臣のお話を伺いまして、大変我々の責任が重いことを感ずるのでございますが、巨人のリリーフよりははるかにいい方のような気がいたします(笑)。どうか皆様方、よろしくご協力お願いしたいと思います。

きょうは、初めに、事務局からの報告がございます。報告事項がちょっと多くなりますので、大変恐縮でございますけれども、なるべく手短にお願いしたいと思っております。国会における税制に関する審議の模様、それから税収動向、さらに最近話題となっております不良債権の問題、それから電子商取引の課税問題、そういうことがございます。それから次に、基本問題小委員会が6月12日に開かれておりますので、そのときの模様につきまして私からご報告を申し上げます。さらに我が国の所得課税の現状について資料の説明があり、皆様方のご意見を伺いまして、そして最後に、6月9日に開催されました地方法人課税小委員会の第2回目の審議の模様につきまして石小委員長から報告を受けまして、皆様のご意見を伺うということにしております。

[報告事項 1:国会審議の状況]

それでは最初に、事務局から報告を受けたいと思います。まず最初に、国会における税制審議の状況などについて、事務局から報告してもらいます。まず、国税関係について尾原主税局長からお願いいたします。

なお、お手元に「国会の審議過程における主要討議事項」(資料1)という資料がお配りしてございますが、これは4月17日の総会に提出された資料にその後の国会における討議事項を追加したものでございます。したがいまして、第 141回国会及び、昨日6月18日に閉会いたしました第 142回国会における税制関連の討議事項を網羅したことになっておりますので、ご参考までにごらんいただければと思います。

尾原主税局長

それでは、昨日、通常国会が閉会いたしましたので、まず、今国会の税制関連法案の審議状況について、簡単にご報告申し上げます。

平成10年度の税制改正でございますが、「平成10年度の税制改正に関する答申」を踏まえまして、今年の1月9日に、「平成10年度税制改正の要綱」を閣議決定した上で法案を提出させていただきました。

まず、2兆円の「平成10年分所得税の特別減税のための臨時措置法案」を1月19日に提出いたしました。この法案は1月30日に原案どおり可決・成立いたしまして、同日に公布され、2月の給与支払いから減税が行われるということになったわけでございます。

また、1月30日には「法人税法等の一部を改正する法律案」、「租税特別措置法等の一部を改正する法律案」、いわゆる電子データ保存法案(「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律案」)を国会に提出いたしました。電子データ保存法案は3月30日に、法人税法等の一部を改正する法律案及び租税特別措置法等の一部を改正する法律案は3月31日に、それぞれ原案どおり可決・成立いたしまして、この3つの法案は3月31日に公布されているところでございます。

さらに、今回の総合経済対策を受けまして、ただいま申し上げました特別減税に加えまして、2兆円規模の特別減税を追加する、あるいは投資減税、住宅減税といった政策減税の実施が決定されたわけでございます。これらの措置を盛り込みました、「平成10年分所得税の特別減税のための臨時措置法及び租税特別措置法の一部を改正する法律案」を5月11日に国会に提出いたしまして、この法案は29日に可決・成立し、同日に公布されております。

なお、総合経済対策では、来年、2兆円の特別減税を継続することとしておりますが、その実施方法、時期については今後検討が行われることになっております。

また、たばこ特別税の創設が盛り込まれました、「一般会計における債務の承継等に伴い必要な財源の確保に係る特別措置に関する法律案」、いわゆる国鉄等の債務関係の処理の法律案でございますが、2月20日に国会に提出されましたが、次期国会に向けて継続審議ということになりました。

なお、この改正法案関係は16回総会の資料でお配りしてございます。今回、2兆円の追加の分の法案の要綱、関係政令の資料(「税制改正関係法律案要綱等」(資料2))をお手元にお配りさせてもらっておりますので、どうぞお目通しいただければと思います。

それから続きまして、資料の中に「国会の審議過程における主要討議事項」という資料がございます。既に、大蔵大臣の方から国会の審議の模様については話がありましたので、かいつまんでお話しさせていただきます。

大臣からお話しございましたように、景気との関連での税制の議論が非常に多うございました。それで、1ページ目の上のほうにいわゆる恒久減税、所得税の議論がございますが、これにつきましては、お手元の資料の中に「個人所得課税の見直しについての総理答弁」(資料3)というのがございます。議事録でございますが、これを読んでいただきますと、今の大臣からお話のあった点が詳しく総理答弁の形で書いてございますので、ぜひお目通しいただきたいと思っております。

それから景気等の関係では、この1ページで、昨年4月の消費税率の引上げがこの不況を深刻化させたのではないかと、9兆円の負担増が景気を深刻化させたのではないかということがよく議論されました。これにつきましては、ご承知のように、消費税率の引上げが、駆け込み需要とその反動減という形で経済に与えた影響は否定しないが、その後のマクロの経済を表す指標である民間最終消費支出について見ると、平成9年7~9月には消費が持ち直してた。昨年秋以降景気が後退するに至った原因としては、バブルの後遺症といった構造問題に加え、相次ぐ我が国金融機関の経営破綻やアジアの通貨金融不安といった予期せざる事態のもとでの不安感の広がり、国民が消費や設備投資に慎重になったという事情があったのだという答えが総理からなされました。

それから、特別減税よりも消費税率引下げのほうが、景気刺激策として有効ではないかというような質問も出ました。これにつきまして総理からは、消費税率の5%への引上げを含む税制改革は、少子・高齢化の進展という我が国の構造変化に税制面から対応するもので、真に必要な改革だったと考えている。したがって、税率の引下げは考えてない。また、その引下げの経済効果については、税率引下げ実施までの間に相当の買い控えが発生するほか、社会経済的コストが生じ、価格にはね返るというような答弁がなされております。

それから次のページ、「税収」でございますが、平成9年度税収は予算額の達成が難しいのではないか、従って10年度も予算額の達成は難しいのではないかというような質問がございました。これは後ほど説明をさせていただきたいと思っております。

それから個別の論点になるわけでございますが、今回の特別減税、定率方式でなく、なぜ定額方式にしたのかという質問がありました。これにつきまして大蔵大臣の方から、できるだけ早急に、かつ集中的に減税による効果を発揮するために、定額方式でまず特別減税を行ったが、その上にさらに2兆円の追加ということになるので、源泉徴収義務者の方の事務にも配慮する必要があり、引き続き、定率よりも定額方式が望ましいということになったという答弁がなされております。

それから、この2ページの下のほうに課税最低限の議論がございます。我が国の課税最低限は国際的に見て高いわけですが、総理から答弁の中で我が国の税制の特徴としてその旨の説明があったわけでございます。それに対して、それでは課税最低限を引き下げるのかという質問がございました。これにつきましては、所得税については働いた方が報いられるような税制にしたい。その上で、標準世帯における課税最低限が 361万円という事実を指摘したまでである。所得課税については、各種控除の問題、年金課税の問題等の課税ベースの問題など、さまざまな議論があるので、こうした諸論点について幅広く、税制調査会で議論していただきたいという旨の答弁がございました。

それから、その下に「教育、子育て減税を実施すべきではないか」という質問もございましたが、これにつきましては、子育て支援の重要性は十分理解できるが、問題は、それをどういう形で支援していくのが望ましいのかということである。今回の補正予算ではいわゆる子育て支援基金 900億円を創設するなど、きめ細かい子育て支援を予算面で実施していくことにしているという答弁がありました。

それから次のページにまいりまして、法人課税についてもさらに国際水準並みに引き下げるべきではないかという質問がございましたが、大臣からお話しのあったとおりでございます。

それから、下のほうに消費税関係がございます。消費税につきましては、飲食料品等の非課税、軽減税率、あるいは逆進性対策を考えるべきではないかという質問がありましたが、これにつきましては、消費税の飲食料品非課税化などの問題については、消費一般に広く負担を求める消費税の基本的な性格に反するというほか、課税の累積が生じてかえって価格が上昇したり、事業主の負担も増えることになるなどの問題があるので、慎重に対応せざるを得ないというような答弁がなされております。

それから5ページへ飛びますが、金融関係税制につきましては、有価証券取引税の税率の半減は中途半端であると考えるがどうか、あるいは、今回、株式の譲渡益課税の適正化をやってなかったのはなぜかというような質問がございました。これにつきましては、株式譲渡益課税の適正化については、税調においても、今やるべき時期ではないという意見もあって、10年度の改正では適正化は見送ることになった。こうしたことから、今年度は有取税などの税率を半減することとし、平成11年末までに金融システム改革の進展状況、市場の動向等を勘案して見直し、株式等譲渡益課税の適正化とあわせて廃止することとしているという答弁がございました。

それから6ページへまいりまして、最近、円の国際化ということが話題になっておりますが、円の国際化の観点から、非居住者の受け取る国債等の利子に係る源泉徴収を見直してはどうかという質問がございました。これにつきましては、総理のほうから、国債にかかる非居住者の利子源泉徴収については、現在の原則を変えることは慎重でなければならないが、金融課税については、市場環境整備を含めた適正課税担保のための措置とあわせて検討を行っていく必要があるという答弁がございました。

それから7ページへ入らせていただきますが、9.の「不良債権」がございます。不良債権につきましては、総合経済対策において、臨時不動産関係権利調整委員会に関連する税制上の措置に関連して記述がございます。それについての質問もございました。これは後ほど説明させていただきたいと思っております。

それから、これも大臣からお話がございましたが、一昨日のいわゆる日米の協調介入に伴いまして大蔵大臣談話というものが発表されております。お手元に4枚紙で「大蔵大臣談話 平成10年6月17日」(資料4)というのがあると思います。

1ページ目のほうは、「ルービン長官との協議」以下は「不良債権問題への対処」ということにページを割かれておりますが、2枚目を見ていただきますと、5.の「構造改革」でございますが、ここに税の記述が入っております。読ませていただきますが、「我々は、また、経済回復を確実なものとし、また、持続させるために税制改革等の構造改革を含む必要とされる行動を取る用意がある。また、市場の開放と……」となっておりまして、「構造改革」という中で記述がございます。これまでの説明と同じ流れの中で書いてあります。

以上で、説明を終わらせていただきますが、時間の関係でご説明できなかった部分もありますので、資料をご覧いただきたいと思います。

加藤会長

続いて、地方税関係について、成瀬税務局長からお願いいたします。

成瀬税務局長

国税関係に引き続きまして、地方税に関する事項につきまして、ご説明申し上げます。8ページをおめくりいただきたいと思います。8ページからが地方税に関する事項となっております。国会で出されました主な質問事項、それに対する、総理または自治大臣から答弁されました内容につきまして、その概要をご説明申し上げます。

まず「地方税制のあり方」、最初のところでございますけれども、今回は地方分権の推進ということで、地方税源の充実に関する質問がたくさん出たところでございます。例えば、一番最初に書いてございますように、「所得・消費・資産等の均衡のとれた、税源の偏在性の少ない、税収の安定性を備えた地方税体系とすべきではないか」といったこと、あるいは、上から5つ目になろうかと思いますけれども、「国と地方公共団体の役割分担の見直しに応じて国税から地方税への税源移譲を議論するべきではないか」といったような論点がたくさん出たところでございます。

これに対しましては、地方における歳出の規模と地方税収との乖離、これが現在かなりあるわけですけれども、これをできるだけ縮小するという観点に立って地方税源の充実確保を図る必要があるといったこと。さらには、今後、国庫補助負担金の積極的な整理合理化等が進められていくとすれば、そうしたことや、あるいは国から地方への権限移譲、これも進んでいくと思うわけでありますけれども、こうした中で、国と地方の税源配分のあり方について検討しながら、地方税の充実確保を図っていく必要があるといった趣旨の答弁がなされております。

また、上から7番目に書いてございますが、具体的な税源移譲の方策として、例えば地方消費税の税率を2%として税源移譲を図ったり、あるいは所得税の課税最低限の関連で、低いところを住民税として移譲を図ったらどうかといったような提案もなされております。これに対しましては、やはり税源、財源の配分というのは国と地方の役割分担、そのあたりも十分にらみながら考えていかなければならない問題であろうということ。

それから地方消費税につきましては、ご案内のように、平成7年度から先行実施された個人住民税の恒久減税に見合うものとして9年度から創設されたものでありますので、そういった中で、国、地方の取り分を変更するということについては、国全体、あるいは国と地方という関係で十分検討を加えながら考えていかなければならない課題があるのではないかといったこと。

あるいは、個人の所得課税につきましても、担税力に応じた負担を求める所得税と、一方、地域社会を構成する一員としての会費的な性格もあわせ持っている個人住民税とのそれぞれの税の性格、そういったことも踏まえながら、あり方を考えていくことが適当ではないかといった答弁がなされたところであります。

それから次に「個人住民税」の関係でございますけれども、最初の1)にございますように、課税最低限をはじめとするさまざまな質疑があったところでございます。例えばこの2番目のところに、「低所得者層の地域的偏在は少ないので、地方税源充実の観点から、例えば 500万円以下の所得課税はすべて地方税に移換し、所得税はそれを上回るものに限ってはどうか」といったような、先ほどちょっと説明しましたのと同じような趣旨の提案もなされておるところでございます。

それから次に、1枚おめくりいただきまして9ページ、「特別減税」の関係でございますけれども、これについても多くの質疑がなされておりまして、例えば、最初にありますように、「国の景気対策としての特別減税は、国税である所得税のみで実施すればよいのではないか」といった質問や、あるいは「国が景気対策として減税を行う場合において、地方団体は独自の判断で減税を行うか否かを決定すべきと考えるがどうか」と。国のほうですべて住民税の減税のあり方を決めてしまうといったようなやり方、システムというのは、分権の推進という流れの中でいかがなものかといったような観点からの質問かと思いますけれども、これにつきましては、国の財政と地方の財政は車の両輪とも言われておりますし、個人住民税は所得税と共通の税源によりご負担いただいております税でもあることから、国全体の政策として景気対策等のために減税を行う必要がある場合には、一体として減税を行うこともあるのだといったような趣旨の答弁がなされております。

それから「法人関係税」でございますけれども、まず、地方法人課税に関する全般的な問題といたしまして、1)の「総論」の1つ目に書いてございますが、「法人の税負担の軽減のためには、赤字法人課税や事業税の外形標準化を考えるべきであるが、応益負担の観点から地方税の問題として検討すべきではないか」というご質問がございまして、これに対しましては、事業税は、従来から事業が地方団体から受けております行政サービスに必要な経費を分担すべきであるとの考え方に基づきまして、事業の規模や活動量を示す外形基準により課税することが望ましく、この外形基準の導入により赤字法人課税の適正化に資するとともに、課税ベースが拡大することなどにより、法人の所得に対する税負担も軽減されるといった趣旨の答弁がなされております。

さらに、この法人課税の負担引き下げという中で、外形標準課税の導入問題のみが議論されているようだけれども、地方だけでできるものではないので、国税であります法人税の取り扱いも含めて全体として議論をすべきではないかという質問がございました。これに対しまして総理のほうからは、法人課税を見直し、国際水準並みに下げていこうとしたときに、一般的によく言われるのが外形標準課税の問題でありますが、法人課税の簡単な引き下げは、地方財政への影響も考えなければできない議論なのであるといったことをよくわかっていただきたい。法人課税のさらなる引き下げを考えるとき、地方財政に与える影響、あるいは地方税財源としての法人事業税の持つ重みというものをよく踏まえた上で、なおかつ、国際水準にまで下げていくとすれば、この外形標準課税の問題も避けて通れないという意味を申し上げておりますといった趣旨の答弁がなされております。

さらに、その次のところでございますけれども、今後、法人課税を見直していく場合に、その中心が地方法人課税であるとよく言われているけれども、地方税の見直しだけで国際水準までの引き下げが担えると考えられるかという質疑に対しましては、仮に外形基準を導入することとした場合に、なお法人の実効税率の議論があるときには、その段階で、国、地方を通じた法人課税の問題、税体系全体の問題として議論されるべきものと考えるといった答弁がされております。

次に「外形標準課税」の問題でございますけれども、外形基準を導入すれば、都道府県の税収の安定性が増すとともに、応益課税としての性格も明確になるのではないか。あるいは、1枚おめくりをいただきまして10ページでございますが、外形標準課税の導入は、税収中立で行うべきであり、仮にネットで法人課税の負担を引き下げる場合には、すべてを地方で担うということは問題ではないのかといったような質問がよく出ておったところでございます。

これに対しましては、外形標準課税の導入につきましては、事業税の課税の仕組みを変更するかどうかの問題であって、基本的には税収中立を前提として検討しなければならないのではないかと。ただ、全体として法人の税負担をどうすべきかという問題につきましては、国税、地方税を通ずる税体系全体のあり方の中で検討されなければならないものと認識しておるといった旨の答弁がなされております。

それから、今回は外形標準課税に関する質疑が非常にたくさん出ておったところでございまして、例えばもう少し外形基準の選択肢、具体的に何を物差しとしてとるのかといったことをいろいろ出して合意点を探る努力が必要なのではないかといったようなこと。あるいは、スムーズな導入を図るためには、段階的な導入といった手法や、中小企業の特例にも配慮するような仕組みもつくらないとなかなか困難な面が多いのではないかといったようなこと。あるいは、中小法人、特に赤字法人の存在を考えますと、課税標準を一気にすべて外形基準とするといったようなことではなく、所得による課税と付加価値などの外形基準による課税とを併合するような仕組みも考えられないかといったような質疑が出されたところでございます。

主な討議事項は以上でございます。

[報告事項 2:平成9年度税収動向]

加藤会長

続きまして、平成9年度の税収動向について森信総務課長から、また、道府県税、市町村税の徴収実績につきましては桑原企画課長からそれぞれ報告をしてもらいます。どうぞお願いします。

森信総務課長

それでは、お手元に「平成9年度平成10年4月末租税及び印紙収入、収入額調」(資料5)という二枚紙の資料がございますので、これに基づきまして簡単に、平成9年度の税収動向につきましてご説明申し上げたいと思います。

この平成9年度の平成10年4月末の税収の動向でございますが、これは本年の6月2日に発表されたものでございます。この4月末累計のところを見ていただきますと、左から4つ目の欄でございますが、4月末累計で45兆 7,174億円とになってございまして、その2つ左側の補正後予算額を見ていただきますと、56兆 2,260億円となってございます。これに対する進捗割合と申しますのが左から5つ目の欄に81.3%と書いてございます。そういう意味では、この補正後予算額を達成するために、残された5月分、もう1カ月残ってございますが、その5月分税収で10兆 5,000億円強の収納がされることが必要という状況になってございます。

現在、国税局とか税務署におきまして5月分の税収の集計作業が行われているわけでございまして、これが行われますと、9年度の税収の決算額というものが確定いたします。これは来月の上旬になるわけでございますが、その5月分の税収の中に、法人税のウェイトの大きい3月決算法人の税収が含まれております。それから消費税につきましても、3月決算法人の収納が行われるということと同時に、今回、消費税の税率の引上げが行われておりまして、そのいわゆる増収効果が3月決算法人を中心に集中的にあらわれてくるということでございまして、そういう特殊な状況等もありまして、この集計の結果が判明する7月初めまでは、この9年度税収の全体の具体的な見通し、見込みというものは、今の段階ではちょっと確定的に申し上げることは困難であるということでございます。

現在、国税局とか税務署におきまして5月分の税収の集計作業が行われているわけでございまして、これが行われますと、9年度の税収の決算額というものが確定いたします。これは来月の上旬になるわけでございますが、その5月分の税収の中に、法人税のウェイトの大きい3月決算法人の税収が含まれております。それから消費税につきましても、3月決算法人の収納が行われるということと同時に、今回、消費税の税率の引上げが行われておりまして、そのいわゆる増収効果が3月決算法人を中心に集中的にあらわれてくるということでございまして、そういう特殊な状況等もありまして、この集計の結果が判明する7月初めまでは、この9年度税収の全体の具体的な見通し、見込みというものは、今の段階ではちょっと確定的に申し上げることは困難であるということでございます。

ただ、この4月末の段階で既に相当入っているもの、あるいはほぼ収納が済んでいるもの等もございます。例えば申告所得税の税収でございますが、これは所得税、上から2番目のところでございますが、補正後予算額に比べまして、4月末の累計が書いてございますが、相当下回っております。これはほぼ収納、さらに集計作業も完了して、こういうふうな状況になっているということでございます。それから法人税の税収も予想外に低調となっているということでございます。

そういうことからいたしまして、税収全体といたしましては、この見積りを担当する者といたしましては、非常に残念でございますが、補正後予算額のこの56兆2,260億円の達成というのはなかなか難しい状況に至ったというふうに認識しております。税目ごとに詳しくご説明する時間がございませんが、先ほど申しましたように、申告所得税、これは主として土地を中心とする譲渡所得が予想外に大きく下回っておりまして、その結果、補正後予算額を3,000億円強下回るというような状況になっております。

それから法人税につきましては、まだ3月期決算法人の集計結果が入ってきておりませんが、今の段階でも非常に難しい状況になっているというふうなことでございます。

いずれにしましても、こういうことで、当初に予想しておりました税収に比べまして不振というふうな状況になってございますが、経済の見通しが十分でなかったということ、つまり、昨年の、主として冬以降の厳しい経済状況が税収面で色濃く反映しているのではないかということでございます。

なお、これだけの税収不足が生じますと決算についてはどうなるのかということでございますが、決算につきましては、税収以外にも、税外収入とか、それから歳出不用等々の額が判明しませんと、全体としてどうなるかという確たることは申し上げられる段階にはございませんが、決算上の不足が生じた場合には、この決算調整資金から一般会計に資金を組み入れると。ただ、現在、決算調整資金の残高がゼロでございますので、国債整理基金から決算調整資金へ繰入れを行いまして対応するということになろうかと思います。その場合には、平成11年度までに一般会計から決算調整資金を通じて国債整理基金へいわば返済をしなければいけないという規定になってございますので、今後のこの財政事情と申しますのはさらに厳しい状況になるのではないかと考えております。

桑原企画課長

それでは、地方税のほうをご説明させていただきます。お手元に3枚つづりの資料(「平成9年度地方税徴収実績」(資料6))がございまして、9年度の地方税徴収実績でございますが、最初が道府県税の徴収実績、10年の3月末現在の数字でございます。一番下の合計欄にまとめてございますが、(A)が地方財政計画に基づく見込み額、年度当初の見積もり額ということでございまして、これが16兆 714億円。それから税額が確定しました額、(B)の欄ですが、調定額、15兆 3,700億円、それで実際に都道府県に税収として収納されました額が14兆 412億円ということになっております。地方公共団体の決算、5月末で締めますので、今後かなりの部分が(B)から(C)へ移ってくることになるわけでございますけれども、3月末現在の進捗率、(A)分の(C)でございますが、ごらんいただきますと、87.4%ということになっております。

個別の税目の特徴、右から2列目の前年対比でごらんいただきますと、上から2番目、法人の道府県民税が96.5%と前年をかなり下回っております。その3つ下の法人事業税も、94.5%ということで、法人関係税が低調ということ。それからその下の不動産取得税が90.1%ということで、これも住宅建設、土地取引等の低迷等を反映いたしまして、前年を相当下回っております。

それから下から4行目の自動車取得税も、昨年3月の消費税の税率引き上げに対応した駆け込み需要等が反映いたしまして、9年度に入りましてからは、85.7%とかなり前年を下回っておりまして、結果として、前年対比でトータルで 102.1%ということになっております。

一番右の欄が見積もりベースの前年対比で、12.4%の増を見込んでおりましたので、見積もりに対して相当下回っているという状況でございます。

それから2ページ目は市町村税の徴収実績、3月末でございます。ただし、これは(注)1に書いてございますように、調査団体が東京都の特別区、それから県庁所在地、それから政令指定市の49団体でございまして、全体の市町村の動向を反映しているものではございませんので、その点にご留意いただきたいと思いますが、合計の欄でごらんいただきますと、(A)の平成9年度の市町村税のこの49団体の確定した税額が9兆 4,389億円。それで(B)の前年度の調定額累計が9兆 2,513億円ということで、調定額トータルでは2.0%の増ということになっております。

個別の税目では、市町村民税の所得割、左から4列目の(A)/(B)でございますが、111.0%。住民税につきましては、平成9年度は特別減税は実施されなかったということで、こうした大きい伸びになっておりますが、その2つ下、法人税割は、先ほどの都道府県と同様の傾向で、87.7%となっております。都道府県よりも法人税割の落ち込みが大きいのは、この49団体が大都市であるということで、大都市に法人関係税の落ち込みの影響が特に大きく出ているということを反映しております。

その下の固定資産税は100.3%ということで、平成9年度は評価換えの年でございましたが、負担水準を高いところは下げる、低いところは引き続き上げるといった措置を講じました結果、ぼぼ前年度と同額の累計になっております。

その結果、合計で対前年比 102.0%となっております。3ページ目を開いていただきますと、過去の地方財政計画額と決算額の対比を示しておりまして、一番右の欄がB-Aで、計画額に比べて決算がどうであったかという表でございます。

バブルのピークの平成2年、3年ごろは決算額が計画額を1兆数千億上回っているという状況でございましたが、4年度以降、逆の現象が生じておりまして、5年度は計画に比べて1兆 5,000億の減収といったようなことになっております。平成9年度については、先ほど申し上げましたような傾向でありまして、これからまだ5月までの間に変動要素はございますが、今の時点では、この平成5年の1兆 5,000億円まではいきませんけれども、これにかなり近い程度の減収額、今の時点では1兆 3,000億円程度、計画額を下回るのではないかというふうに見ており、かなり厳しい税収の状況となっております。地方公共団体ではこうした減収を補てんしますために、地方債を発行いたしましたり、あるいは、過去に積み立てました基金や積立金を取り崩すといったようなことで、決算対応を行っているところでございます。

[報告事項 3:不良債権問題]

加藤会長

続きまして、不良債権の問題について、伏見税制第一課長から報告していただきます。

伏見税制第一課長

お手元に、一枚紙でございますが、「総合経済対策(抄)」(資料7)、右上の番号で総18-3という資料をごらんいただければと存じます。4月24日の経済対策閣僚会議で決められました総合経済対策の中に、別紙がございまして、「土地・債権の流動化と土地の有効利用」というものが出てございます。その中に、「1)不動産担保付不良債権等に係る債権債務関係の整理」という一項目がございます。現在、そこのいわゆる不良債権の処理の問題というものがいろいろなところで議論されているわけでございますが、この 1の3行目、(臨時不動産関係権利調整委員会(仮称)の設置)ということで、現在この作業を進めているところでございます。具体的には、内政室に準備室を設けまして、次の臨時国会に法案を出そうということで準備作業は行われています。

この問題意識でございますけれども、現在、いわゆる不良債権問題、債権債務関係が非常に錯綜しているためになかなか処理が進まないということがあるわけですが、現行法制のもとで考えてまいりますと、いろいろなケースがありますが、極端なケースを考えますと、例えば司法手続による場合がございます。債務者側の営業が立ちいかなくなったということで、例えば会社更生法の申請をする。会社更生法の手続に乗りまして、この債権債務関係を整理していくということはあるわけでございます。ただ、これについては非常に時間がかかるという問題点がございます。

一方、その対極にありますのが、関係者が集まりまして、まさに関係者間の合意が成立すれば、それなりの債権債務関係の整理もできる場合です。ただ、これも利害まさに相反する場合がございますので、なかなか実際に動かないということで、この債権債務関係をできるだけ迅速に処理するために、この臨時不動産関係権利調整委員会といった新しい組織を法的に整備しまして、少しでも早くこの不良債権の処理を進められないかということでございます。同時に、不動産というふうに出ておりますけれども、この債権債務のときには、大抵の場合、担保となっている土地がございます。せっかくの土地が、本来有効利用すべきものがいわば塩漬け状態になっている可能性がある。そこの処理の観点からも重要ではないかという問題意識でございます。

税とのかかわり合いでございますが、その下の段落、なお書き以下のところにアンダーラインが引いてございます。2行目にございますように、「臨時不動産関係権利調整委員会(仮称)のあっせん、調停等によって債権者及び債務者の合意が図られ、債務者の合理的な債権計画が策定される場合に、債権放棄による損失の損金算入及び債務免除益の累積欠損金との相殺を認める措置を検討する」ということで、これは現行の会社更生法の処理が行われた場合、あるいは純粋に関係者間の話し合いができた場合でも、まさにこういう税務上の取扱いができるわけでございますが、ある意味でいうと、はっきりいって、こういったものを明記しておいたほうが今後の作業もやりやすいだろうということで、このような記述にしてございます。

2のところは税務執行の関係でございますが、通達の内容等の明確化もあわせて行おうということで、この4月の段階で対策の中に盛り込まれております。

[報告事項 4:電子商取引の課税問題]

加藤会長

続きまして、電子商取引の課税問題につきまして、谷口国際租税課長からお願いいたします。

谷口国際租税課長

お手元に「電子商取引に対する課税問題について」(資料8)という資料がございますので、それをごらんになりながら聞いていただければありがたいと思います。

電子商取引に関する課税問題につきましては、前回、石先生からもご質問をいただいておりまして、そういう意味でも簡単にご説明させていただきたいと思います。

まず、主な論点でございますが、電子商取引というのはまさにデジタル化、バーチャル化された取引、さらにクロスボーダーの取引ということでございますので、1つ目の論点といたしまして、だれが、いつ、どこで、どのような所得を、幾ら稼得したかと、こういう認定の問題がまず直ちに起きるわけでございます。さらに、そのクロスボーダーのサービスにつきましては、いわゆる商品が税関を通るといった形での捕捉ができないために、これまでの付加価値税の体系とどうやって整合性をとるかといった問題が生じるわけでございます。こうした観点から、電子商取引につきましてはすでに内外でいろいろな問題意識が起きておりまして、いろいろなところで検討が始まっております。

まず、国内でございますが、総理をヘッドといたしまして、高度情報通信社会推進本部というものがすでに設立されておりまして、その中に、電子商取引についての検討部会といったものがございます。この部会が5月に実は「中間とりまとめ」というのを出しておりまして、ページをめくっていただきますと【参考2】の中にそれが入っておりますが、一般的な形ではございますが、中間とりまとめがされております。

また海外でも、例えば5月のG8外相・蔵相会談や日米の会合等で、やはりこの問題が取り上げられておりまして、中立性の原則をどうするかとか、あるいはOECDにおける検討状況を期待するといったようなことが宣言の中に入っております。

そういう意味で、国際的なルールづくりという意味で一番注目されておりますのはOECDでございますが、このOECDにおきましては、実は10月にオタワで閣僚級の会合を開くことになっておりまして、現在はそれに向けて、税については租税委員会を中心に検討準備が進められているというところでございます。その意味で、6月30日から、私と渡辺企画官で行ってまいることになります。

いずれにせよ、インターネットの世界でございますので、いろいろなことが起こるわけでございますが、いかなることになろうとも、課税問題については、この取引についてはまさに国際的な視点で検討を進めざるを得ないと。取引そのものがグローバルでございますので、個別の国でルールを作ってもどうしようもないということでございます。したがいまして、我が国としても、この検討にむしろ積極的に参加して、今後の国際ルールづくりに貢献していきたいという考えで行ってきたいと思っております。

[基本問題小委員会の報告]

加藤会長

それでは、ご意見、あるいはご質問があるかもしれませんが、時間が押しておりますので、報告をもう少し続けさせていただきます。前回の総会で設置されました基本問題小委員会、これは総合経済対策というのがありますので、それを受けまして、個人所得税について専門的、理論的に検討するということで設置されたわけでございますが、この基本問題小委員会の会合の第1回目が12日、金曜日に行われました。この会合はこの総会とのフィードバックを重視するということでございますので、私が小委員長を承りまして、そして小委員長代理として松本作衞委員にお願いしてあります。そこで、まず小委員会の内容について若干のことをご報告させていただこうと思っておりますが、この会合は実は7月7日、夏休み前にもう一回開きまして、そして第1回の議論を整理いたしまして、さらに検討すべき問題、特にこの総会で出ましたご議論をさらに踏まえまして検討していきたいと思っておりますので、秋以降に、こうした議論を考慮に入れまして個々の論点にかかわる議論を深めて本格的な審議に入りたい、こういうふうに考えております。

なお、個人所得税につきましては論点が非常に広範でございますので、小委員会の下に理論的な研究を進める場としまして、小委員会メンバーを中心に数名の学者からなるワーキンググループをつくろうということを提案いたしましたところ、ご了承いただきましたので、こういうワーキンググループも幾つかつくりながら問題を煮詰めていきたい、こんなふうに考えております。

そこで、基本問題小委員会で出ました意見を若干ご紹介させていただきますと、最初にまず、日本の所得課税というのは負担が低いのに実際には負担感が大きい。

これはおそらく、パッチワーク的に今まで対応してきたものというのが通用しなくなったためではないのか。したがって、最高税率、累進課税、あるいは累進構造、それから課税最低限、課税ベースのあり方といった所得課税の基本構造について根本的に見直す必要があるのではないかというご意見が一つの大きな流れになっております。特に課税ベースというのが非常にわかりにくい。この課税ベースは一体どうなっているのか。生・損保控除とか、あるいは住宅取得促進税制などございますけれども、こういう租税特別措置も考慮に含めまして明らかにしていく必要があるというようなご意見がありました。

それからさらに、取引が国際化してきておりますので、資産課税のあり方についての議論も必要になってきているというご意見もありました。また、さらに日本型の税制の累進課税でございますが、これが今のように、高い累進構造をとる日本型でいくのか、それとも大胆にフラット化して、2~3段階の税率構造でいく英国型という選択が世界的にはあるわけでありますが、そういうことを含めて、私たちは最高税率はともかく大きな見直しはなかなか難しいのでありますけれども、しかし、それにしても、これを検討する必要があるというご意見がありました。

それからさらに、税制の根幹というのは税率と課税ベースであって、今後はむしろ所得税の課税ベースについて見直しを行うべきである。所得税の議論に当たりまして課税ベースといった切り口で、日本の所得税の課税ベースが広いのか狭いのか、各種の控除やフリンジベネフィットのあり方を考えていく必要があるのではないか。例えば、なぜ宝くじの当せん金が非課税であるのかなどということは理解できないのではないかというようなことがご意見としても出ておりました。

また、最近の課税理論では、フラットタックスでいくのだという方向とか、あるいは個人所得税も支払い段階の法人段階で課税すべきだという考え方もありますし、それから勤労所得と資産性所得とを二分して、前者は累進課税、後者は定率課税という考え方も出てきておりますので、こうした最近の理論の評価を組み入れまして、我々としては個人所得税を考える必要があるというご意見がありました。

それからまた、所得課税については、所得分配を重視する日本、ドイツ型と、公共サービスの対価として広く負担を求めるアングロサクソン型との2つのタイプがありまして、どちらを一体我々は将来選択していったほうがいいのかといった問題意識を検討する必要があるというご意見がありました。

さらにまた、今や税制の問題は課税最低限の問題など政治的に極めて難しい次元にまで来ている。したがって、消費税との役割分担や、所得税と住民税の役割分担を考えていくことが必要であるというご意見。それからさらに、政府税調は理論的に税制を考える場でありますから、したがって、この所得課税を根本的に見直していく必要が出てきている。特に税調の考え方は政治的判断とは別に、課税最低限、さらに消費税の問題をどう考えるかという大きな問題について税調の考え方を打ち出していくことが必要ではないかというご意見がありました。

さらにまた、税制による活性化という議論がありますけれども、税制が経済社会を活性化するということはあまりないのではないか。むしろアングロサクソン・スタンダードをどのように考えるかなど、日本の社会のあり方についての根本的な検討も含めてほしいというご意見もありました。

それからさらに、源泉徴収制度をめぐりまして、源泉徴収制度を見直すべきだというご意見がかなりありました。申告納税制度を適用すべきではないか。そのほうが政治とか行政への関心が増大するのではないかということで、サラリーマンの源泉徴収制度を見直したらどうだというご意見がありました。

これに対しまして、むしろ源泉徴収制度は維持していくほうがいいのではないか。税意識向上には、消費税の導入によりまして非常にそれがはっきりしてきているということもありますから、むしろ源泉徴収制度は維持していくことを考えるべきではないかというご意見もありました。

さらには、税は公的サービスのための負担なので、納税の負担を軽くする仕組みを考える必要があるのではないかというご意見がありました。さらにまた、所得税の負担はマクロで見たら比較的軽いように見えるけれども、社会保険料負担を合わせた負担が家計単位でどの程度なのか、きちんと分析する必要がある。夫婦子2人というような構成単位で本当にいいのかどうかということも検討する必要があるというようなご意見が出まして、最初の第1回でございますけれども、本質的な問題が次々に出されてまいりまして、今後、私どもといたしましては、この点について検討していきたい、こんなふうに考えているところでございます。

[個人所得課税の現状]

以上のように考えまして、我々はこれから進めていきますので、皆様方からさらにご意見をいただきたいと思っておりますが、その前に、伏見税制第一課長と上田市町村税課長から、審議の前提となります、我が国の所得課税の現状について、簡単に説明を受けたいと思います。

伏見税制第一課長

お手元に「資料1(所得税関係)」(資料9)という横長の資料がございます。時間の関係もございますので、簡単にごらんいただければと思います。

ページをめくっていただきまして2ページに円グラフがございます。この2ページのグラフは、平成10年度の予算をベースにしまして、国税が全体58兆 8,700億円、これは特別会計も含めた数字でございますが、所得税収というのはどれぐらいのウェイトかというものをごらんいただければと思います。右の横にありますように、所得税で19.1兆円ということで、全体の税収の中の32.5%を占めております。大きなもの、ほかを見てまいりますと、下にございます法人税が15.2兆円で、全体の中で25.8%、それから左側にございますが、消費税が10.8兆円で、全体の中の構成比が18.4%になってございます。

それから次の3ページでございますが、国税収入全体と所得税収全体がどのように推移してきているか、最近のところを見たものでございます。ごらんいただきますと出ておりますように、バブル当時、平成3年度の税収が総額で63.2兆円でございますが、その後、バブルの崩壊、あるいは減税の実施によりまして税収が落ちてまいりました。平成10年度予算の補正後予算で58.9兆円と見込んでいるところでございます。

このうち所得税収のところでございますが、下の棒グラフの黒い部分でございます。所得税収も平成3年度がピークでございました。このときに26.7兆円ございましたが、平成10年度補正後予算では19.1兆円と、7兆円余の減収といいますか、ピークと比べると落ちた姿になってございます。

この要因でございますが、次の4ページをごらんいただきたいと思います。4ページのところで、所得税、それから参考までに法人税、消費税も入れてございますけれども、それを抜き出しまして、特に所得税につきましては、全体の税収を、右のほうに注がございますけれども、棒グラフの格子状のところが所得税収のうち資産性所得の税収。この資産性所得というのは、下の(注)2、字が小さくて恐縮ですが、利子、配当及び土地譲渡に係る所得税額、これは推計でございますが、それだけを抜き出したものでございます。ごらんいただきましてわかりますように、平成3年当時、この格子状のものが非常にウェイトがございましたが、バブルの崩壊の過程で、土地の譲渡益等が減少する、あるいは金利が低下するということで、この部分が減少してございます。

それから、この格子状の下の黒く塗ったところが一般の所得税収になりますが、ここの部分の関係では、平成6年度にこれが落ち込んだ姿が出てございます。欄外、上のほうにございますけれども、平成6年度から特別減税、あるいは7年度以降は制度減税と特別減税の組み合わせということで、いわば意図的に税収を落としているというものもございます。その関係で、トータルの税収がバブルのピーク時と比べると7兆円少ないというのが現状になっているということでございます。

それから少し間を飛ばしまして、7ページをごらんいただきたいと思います。初めの大臣の話の中にも出てまいりましたけれども、マクロで見たときの租税負担率、あるいは所得税負担率がどうなっているか。これは何回もごらんいただいているものでございますけれども、この棒グラフの中で黒く塗りましたものが、国、地方を合わせました個人所得課税の対国民所得比、租税負担率でございます。マクロで見ますと、日本の場合、98年度予算ベースでは7.1%ということで、所得税中心国であるアメリカと比べますともちろん小さくなっておりますし、間接税、消費税のウェイトが非常に高いヨーロッパ諸国と比べましても、相当ウェイトとしては小さいということがマクロでは出ているわけでございます。

日本の現行の線が黒い線になってございます。それから、いわゆる抜本改革後、平成6年11月の改正前の姿が比較的濃いめの太い点線になってございます。このグラフを2つごらんいただきますと、全体にグラフを下に押し下げたような形になっておりますが、具体的には、まさに累進緩和が行われたというのがこういうグラフに出てまいります。

それでは、このグラフを見ましてほかの国との比較がどうかということでございますが、1つ、日本のグラフと対極にあるのが一番左の、一点鎖線というのでしょうか、イギリスのグラフになります。イギリスと日本の太い実線を比べてみますと、まず横軸で見てまいりますと、立ち上がり、どこからその線がスタートするかというのが違ってまいります。どこからスタートするかというのが課税最低限になります。イギリスの場合には課税最低限が非常に低く、かつ、このグラフが非常に垂直に立つような形で上がり出しまして、途中から寝ていくという形になってございます。これは後でごらんいただきますが、課税最低限が、イギリスの場合、非常に低く、それから税率構造が単純で、かつ早く最高税率に到達するというところから出てまいります。

それからその次ですが、日本のグラフが一体どういうところでほかの国と交差するかというところを見てまいりますと、年収で 3,000万円ぐらいのところでアメリカの細い実線と交差してございます。それから年収 3,500万円ぐらいになりますと、イギリスと交差するという形になります。ドイツは日本よりもずっと上をいった形。それからフランスが、ほぼ平行ですが、日本より下をいくという形になります。

そこのところ、1ページ抜きまして20ページをごらんいただければと思います。20ページのところは今のグラフと同じでございますが、ややわかりにくいところもありますので、年収で 500万円、700万円、1,000万円、それから 3,000万円ととりまして、それぞれ具体的な所得税と住民税の負担が、この今申し上げました夫婦子2人といったモデルをベースにした場合、どれぐらいの税負担になっているかというのを棒グラフにしたものでございます。給与収入 700万円のところを黒く塗ってございますが、これは日本のサラリーマンの給与所得者の納税者の平均の給与収入が 700万円になっているというところからでございます。現行法の特別減税前のベースでいきますと、日本の場合の負担は45.9万円でございます。平成10年の場合には、特別減税が行われておりますので、実際にはこれが32.2万円ということになります。

海外を見てまいりますと、アメリカが仮に同じ給与収入 700万円といたしますと94万6,000円、それからイギリスが 154万円、ドイツが 106万円、フランスが日本の特別減税前とほぼ同じ46万円という形になっております。

それから一番上の 3,000万円のところをごらんいただきますと、日本の場合が大体 1,000万円程度。これはほぼアメリカと同じ程度になります。イギリスがやや上の 1,074万円、ドイツが 1,264万円、それからフランスですと 935万円というのが現状の姿でございます。

次の21ページをごらんいただきたいと思います。税率構造と課税最低限、極めて単純化した姿ですが、イメージがつかみやすいようにということで絵の形にしてございます。課税最低限の違いは下のグラフにございます。日本の場合、現行法、特別減税前ですと 361万円、平成10年に限って見ますと、特別減税を考慮いたしますと、これが 491万円。横に見てまいりますと、イギリスの場合はこれが 105万円程度ということになります。

それから税率構造のほうでございますが、階段の数は日本は5段階、アメリカの5段階と同じでございます。それからイギリスが、先ほど申しましたように、3段階、それからフランスが6段階、ドイツは、方程式を使っておりますので、この比較はできません。

もう一つは最低税率と最高税率のところですが、日本は10%から始まりまして50%、アメリカは15%から始まって39.6%、それからイギリスは20%、23%、40%という3段階、ドイツは25.9%から始まりまして53%まで、フランスは10.5%から54%という形になっているわけでございます。

それから24ページをごらんいただきたいと思います。「個人所得課税の基本的な仕組み」ということで、簡単な絵が出てございます。そもそも、最終的な所得税の負担というのはどういう計算過程をたどってくるかというのを絵にしたものでございます。一番左側に収入又は経済的利益というのがございますが、一定の収入から必要経費を引きましたものが税法上の所得になってまいります。これから各種の所得控除を引きまして、課税所得が出てまいります。この課税所得に、今ごらんいただきましたような累進構造による税率を掛けましたものがまず出まして、それから、例えばいわゆる住宅取得控除、これは所得税額控除制度になっておりますので、租税特別措置のようなものがありますと税額控除が行われまして、最終的な税額が確定するという過程をたどります。

次の25ページでございますけれども、「所得の範囲について」の概念図でございます。一番広いところに現行の所得課税、所得税法上の所得にならないものというのがございます。理論的には所得と考えられるものがございますが、実際の算定がなかなか難しいということで、そもそも税法上所得とは見ていないものがございます。それから、その次の四角でございますが、税法上の所得となり得るわけですが、非課税所得というふうに法律的に定めたために所得から外れているものがございます。

具体的に何かというのがその(注)にございます。先ほどの会長のとりまとめの中で宝くじの話が出てございましたが、3のところ、「その他の法令の規定によるもの」ということで、宝くじの当せん金品等はこの非課税所得ということになっております。

それから、その非課税所得等を除きましたものが課税所得になりますが、実際には、さらに各種の特別控除等が行われますと、この課税所得の課税ベースが縮まってくるという形になります。

次の26ページでございますが、この所得税の仕組みをちょっと別の角度から見たものでございます。現行、その所得税法上、所得を分類しておりまして、まずその分類ごとに計算をした。基本的な原則は総合課税でございますが、大きな四角の下のほうに分離課税となっているものがございます。山林所得、あるいは土地、株式、あるいは利子、配当等にかかわるもの、ここら辺は分離課税になっております。一方、その他のものが、給与所得なり事業所得それぞれに応じまして所得を計算していくという過程をたどります。

細かいところはちょっと省略いたしまして、次の27ページをごらんいただきたいと思います。代表的な「給与所得者の所得税額計算のフローチャート」が出ております。給与収入がございますが、ここからまず、給与所得控除。給与所得控除も、右上の囲みにございますように、給与の収入金額に応じまして控除率が定められております。その結果、給与所得の金額が定まりますが、そこから、点線にございますような所得控除、右上に各種の所得控除の種類が出てございます。所得控除を引きまして課税所得が確定いたします。これに今の累進税率を課税ブラケットごとに乗じていくということをたどります。その結果、算出税額が出てまいりまして、最終的に、税額控除がありますと、それを引いたところが具体的な納付税額になるということでございます。

これから、ここの小委員会、またこの総会でも各種いろいろなレベルでこの所得税の基本的な仕組みにかかるところ、いろいろなご議論がございますので、そこを含めてご議論をこれからいただくことになろうかと思います。

それから30ページをごらんいただきたいと思います。過去、税率構造、あるいは課税最低限を含めまして、どういうふうな形で変化してきたかというのを簡単にまとめたものでございます。これは所得税だけを抜き出してございますが、かつて、例えば昭和61年、抜本改革以前でございますが、そこにございますように、税率の刻みが非常に細かく、10.5%から70%まで定められておりました。抜本改革から平成6年11月の税制改革前までが真ん中でございます。この真ん中と右側とを比べますと、5段階であるという点、10%から50%の5段階だということは変わりませんが、この階段を全体に右にずらすような形での改正が平成6年11月、現行の税制につながるものの改正でございます。

具体的には、この限界税率の適用が始まるところがそれぞれ幾らの収入金額になるかということが書いてございます。真ん中のところでごらんいただきますと、かつては限界税率が30%になるラインというのが給与収入で 1,046万円でございました。現行税制では、特別減税は考慮しないでということでまいりますと、給与収入が 1,354万7,000円になりまして初めて限界税率が30%になります。途中で、時間の関係でご説明を省略いたしましたが、納税者であるサラリーマンを見てまいりますと、94%の方が給与収入は1,000万円以下でございます。したがいまして、大部分のサラリーマンをとってみますと、具体的に適用される限界税率というのは10~20%ということになります。

それから最高税率の関係でございますが、一番右にございますように、現行税制では年収 3,500万円程度、一定の夫婦子2人というモデルを考えますと、それぐらいになりますと、所得税の限界税率が50%になるということでございます。

上田市町村税課長

続きまして、個人住民税の関係、「資料2(個人住民税関係)」(資料10)によりまして手短にやらせていただきます。所得税と共通するところはできるだけ省きまして、5~6枚だけご参照いただきたいと思います。

まず資料2の1ページ、縦向きでございますけれども、地方税全体の税収の状況、それと個人住民税の関係をちょっとごらんいただきたいのでありますけれども、円グラフがございます。地方税収、地方財政計画ベースで、平成10年度、37兆 9,700億円と見込んでおりますけれども、この中で約25%程度が個人住民税。個人住民税はこのグラフのちょうど上のほう、北の方角から左側に市町村民税、右側に道府県民税が入っております。市町村民税で6兆 5,000億円、個人の道府県民税で2兆5,000億円、利子割で 4,300億円、こういった形になっております。これが全体的な個人住民税の現段階における位置でございます。

続きまして、次の2ページをお開き願いたいと思います。こうした個人住民税の状況を経年的に見てみますと、これは所得税と類似した推移をたどっているわけでありますけれども、平成の4、5年というあたりで3分の1ぐらい、地方税収入のシェアを占めておりましたけれども、その後いろいろ、減税とか地方消費税の導入とかいうことがありまして、10年度では25%にまでなっているという実態にございます。

それからずっと飛ばしていただきまして、次に14ページをお願いいたします。個人住民税も基本的に個人所得に対する課税ということでございますけれども、国税と地方税ということ等もあり、所得税と仕組みの違うところが幾つかございます。例えばこの縦長の表で幾つかありますが、住民税の場合には住所地の市区町村、あるいは都道府県の課税を行う。国税の場合には国一本でありますけれども、地方税の場合にはそれぞれの自治体が課税権を持ち、収入はそれぞれの自治体に帰属するというような特性があるわけであります。

それから課税方式につきましても、できるだけ所得税と二重にいろいろな申告等をしなくていいようにということ等も考慮しまして、賦課課税方式、市町村が税額を計算確定して賦課をするというやり方をとっているところであります。

それから所得控除、あるいは課税最低限という欄がございますけれども、住民税につきましては、地域の費用を地域の住民がその能力に応じて広く分担、負担分任をするという考え方に立っておりますことから、いろいろな控除等の額につきましても、所得税よりも低い水準に定められてきておりまして、課税最低限につきましても、全体的には所得税よりは低くなってございます。

ただ、今回、特別減税の関係がありまして、国税との差はございますけれども、かなり高い水準に平成10年度の場合にはなってございます。

それから、その下に税率がございます。税率につきましては、現在、すでに3段階、県、市合わせて、5、10、15の3段階ということで、相当にフラット化が達成されているのではないかというふうに考えております。

大体こういったところが特徴でございますが、もう一つ、税率の下のほうに均等割というのがございます。これは所得税にはございませんけれども、都道府県、市町村民税それぞれに均等割というのが所得割のほかに存在しているところでございます。

次の15、16ページですが、これは詳細は省きますが、こうした住民税の特色等につきまして若干生い立ちから沿革をたどってみると、明治の時代には戸数割といったような、まさに各戸に負担を割り振るといったようなところから発足してきている。しかしながら、課税の仕方が、資力とか、いろいろな絡み合った要素を対象に見立てによっていたという歴史が長くございまして、16ページの昭和25年の地方税法のできるときにシャウプ勧告を受けて、基本的には所得というものを課税のベースに定めるというような制度になって、概ね今日の姿に近くなってきているという歴史を述べております。

それから、ちょっとまたページ飛びますけれども、18ページをお願いします。所得割の税率の推移でございます。所得税の税率推移と同様のイメージ図を作成しております。一番左側がいわゆる抜本改革前の状況でございまして、全部で14段階あったということでございますけれども、抜本改革後に3段階に整理されまして、現在では、一番右の状況でございますが、住民税、5、10、15でございますが、内訳を申しますれば、道府県民税で2%、3%、それから市町村民税で3、8、12というような形でそれぞれ税率が定められているという状況でございます。

それから、参考までにもう一つだけ、21ページでございますが、個人住民税均等割がございます。経年的に引き上げを行ってきておりますけれども、物価水準と比べれば必ずしも現在高い数字にあるというふうには考えられないところでありますが、こういう状況にございます。

それから市町村民税につきまして、平成10年度、バーが引いてございますけれども、これはいわゆる制限税率というものを地方分権との関係で、今度、撤廃いたしました。所得割でも 1.5倍という金額の上限を撤廃いたしたものですから、ここはバーになってございますが、したがいまして、標準税率のみ上のほうの形になった状態という状況にございます。

加藤会長

大変報告が長くなって恐縮でございましたけれども、ここで皆様方から、今までの報告の中でご質問、あるいはご意見がありましたら伺いたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

塙委員

今、個人住民税のデータをご説明いただいたのですけれども、国際比較というのは何かあるのでしょうか。国税のほうは大分、国等の比較で、そう日本は高くないというご説明があったのですけれども、こういう住民税みたいなものはどうなのでしょうか。

上田市町村税課長

正直申し上げまして、国税ほどに整理されたものは、実は私ども、持っておるわけではございません。もちろん、いろいろな機会に調査をして個別にデータを持っておりますけれども、それぞれルールが非常に、各国といいますか、国の地域ごと、区々でございまして、なかなかこういう場にお示しできるような資料を持ち合わせてないというのが実態でございます。しかし、今後とも努力をして比較のデータをそろえたいと考えております。

加藤会長

今度、海外調査なんかでもそういうのを調べていただくといいですね。

上田市町村課長

できればそうさせていただきたいと思います。

津田委員

今、外国の住民税のお話が出ましたので一例だけ述べてみますと、スウェーデンの場合には、所得課税がほとんど地方団体の税体系に組まれております。考え方はほとんどフラットな税率で、大体20%から30%ぐらいの税率。所得再配分という意味で高額所得に国税が薄くかかる。スウェーデンの場合にはこういうような仕組みになっております。アメリカなどでは州税、市町村税にも所得課税があります。確かに各国非常にばらばらですけれども、今後、いろいろな意味で検討材料にはなるかと思います。

それから、ついでですが、課税ベースの話で宝くじの問題が出ましたけれども、あれはご承知のとおり、みんなが買うわけですが、4割は地方団体の収入として公共施設財源になっており、残りを当せん金として配分しています。ですから、その辺の考え方が、源泉徴収4割ぐらいかけられていると、こういうようにも考えられますので、単純に当せん金を全部所得算入にするのかどうか。利子課税などでは大体源泉徴収20%ぐらいです。その辺との比較なり内容の検討が必要ではないかと思います。

平田委員

基本問題小委員会での討議の内容については、すばらしいお考えがたくさん出ていまして、その方向でぜひお願いしたいと思います。ただ、いろいろなところで、現在の経済不況をそういう制度減税、ないしは恒久減税でやろうという話が蔓延していることにつきまして、私の立場からも、これはなかなか無理難題を言っているところがあるなあという気がするわけであります。

いろいろ事務当局でお示しをいただいております統計、国際比較などは、日本の特に所得税関係は、ある意味ではそんな高いものではないよということを示している数字ばかりだと思います。大蔵大臣のお話にもありましたように、少しやる気の出る税制ということになりますと、税率構造をもう少しフラット化する程度のことかなということになるわけであります。また論点の中で、税収中立で考えていきますと、どうなのでしょうか。日本の国を、全体に賄っていく費用がある程度目安としてありませんとなかなか、制度をいくらいじくっても、どの程度の税収になってくるかが大変計算が難しいのではないかと思うわけでありまして、やはり税収をどの程度に抑えての、どういう制度の改革であるかというところも論点に加えていただければ大変ありがたいと思うわけです。

私の立場で申し上げると、例えば年金課税とか退職金課税、それからいろいろな租税特別措置の整理とか、そういったところで課税ベースはいくらか広がるかと思います。現在のご検討の課題をさらに進めていただくようにお願いをいたしたいと思います。

堺屋委員

今、日本の経済は非常に困難な時期に当たっているわけですけれども、税制を考えるときに、まず税収ありきという考え方はやめなければいけないと思うのです。今まで、成長を前提としていましたから、常に税収は増加すると。支出も増加する。それをいかに賄うかという形がまずあって、その中にどういう税体系を盛り込むかという発想だったと思うのです。おそらく、レーガノミックスのような、真っ先に赤字を出して将来の長期的黒字を考えるというようなことは今の発想からは出てこないと思うのですが、今、私たちに必要なのはそういう大胆な改革発想で、縮小均衡と言えば言い過ぎでございますが、非成長経済に対する税制のあり方を抜本的に考えなければいけない。これが第一であります。

そのときに、戦後ずっと続けてきました平等優先の発想、例えば所得税の課税最低限がどんどん上がるとか、そういう発想を続けていいのかどうか、これも重大な問題でございまして、税体系全体が経済の落ち込みを防ぐという形で考えていただきたい。これは抜本的に発想を変えていただきたいと思うのです。一度、税収の観点を除いて、幾つかの選択肢を提示するという形で小委員会等で検討していただけないかと考えております。私も幾つかの考え方は持っておりますが、まず小委員会にそれをお願いしたいと思います。

もう一つの問題は地方税でありますが、これまで地方税は、大都市は非常に税収が伸びるという前提でやってまいりました。ところが、ここへまいりまして、大都市の企業の収入がよくありません。その結果、大阪府を初めといたしまして、大都市を抱えている都道府県、大阪も神奈川も愛知もそうですが、非常に税構造、財政構造が悪くなっています。これは公共事業の配分、その他、出すほうにも関係はあるのですが、この税収、地方税の考え方をどうするのか、これを抜本的に考えないと、ほとんどの大都市を抱えるところが大変赤字になって、財政再建団体になる寸前まで来ているという状態であります。

これも、高度成長時代の地方税、地方財政のあり方、もちろん出す方も問題ですが、税収のほうも徹底的に見直す必要がある。大都市は大変大きなお金を国税に払っておりますが、地方に戻るのが少ないものですから、大変窮乏しているというのが現実なのですね。今や、部分的な問題ではなくして、日本の経済のビジョンを、まず" 後の先" という発想で、ここで相当大胆なことをやらないと救われないのではないかという気がいたします。

昨年、消費税等の値上げをいたしましたけれども、結果としては、私は、あまりよくなかった、日本の経済にはもちろん、財政構造にもよくなかったという気がしておりますので、そういった大胆な発想で、まずある程度のことを覚悟して本当の、税制を変えるという、平準型税制に変えるということを考えていただきたい。その場合、やはり従来との関係がございますから、複数の選択肢を提示していただくようにお願いしたいと思っております。

[地方法人課税小委員会の報告]

加藤会長

大変重要な問題をご指摘いただきました。ほかにございましょうか。

よろしいようでございましたら、この後、今堺屋さんからも地方税の問題が出ましたので、この前、6月9日に開催いたしました第2回地方法人課税小委員会の審議の模様を石小委員長からご報告をいただきまして、そしてまたご意見をいただこうというふうに思いますが、よろしゅうございますか。

石特別委員

お手元に「事業税の沿革等と外形基準について」(資料11)という冊子が入っていると思いますが、これを使いまして、地方法人課税小委員会の模様を簡単にご報告いたしたいと思います。

この小委員会は基本問題小委員会より1回先行いたしておりまして、第2回目を6月9日に行いました。所得税、個人住民税につきましては、事務局のほうから説明がありましたが、こちらのほうは私が、資料も兼ねて、どういうことをやったということを簡単に説明いたします。

時間帯を2つに分けまして、最初に、地方財政、地方分権、地方の行革、あるいは市町村合併等々の大きな問題について議論をいたしました。というのは、単に外形課税と、最初から小さな問題に限定するのではなくて、大きな視点からやりたいということでございました。そちらのほうの資料は今日はお手元に配付してございません。後半のほうに、事業税の外形課税化を含めまして、もうちょっと立ち入った議論をしましたので、それにつきましてかいつまんで説明をいたします。

論点は2つ3つあろうかと思いますが、最初にこの資料の5ページ目をお開きいただきたいのですが、実は外形基準の採用ということは、すでにもう過去にございました。それは条例がございましたという意味であります。地方税法の第72条の19の規定におきまして、都道府県の条例によってこういうことができるよということがはっきり書き込まれております。これに基づきまして、昭和50年に千葉県が一つのアイデアを出しておりますし、52年には全国知事会が同じような考えに基づきまして条例案を作成したという過去の経緯もございます。つまり、このルートからもすでに外形課税化の議論は行われているということです。

ただ、条例によって我々が今回やろうというわけではございません。これとは直接関係ないのでありますが、すでにこの種のことで、あるいはアイデアが我が国にもあったということを最初に確認をいたしました。

それから次に、15ページ目になります。じゃ何のためにこんなことをしなければならんのかということにつきましては、しかとした理論的なフレーム、あるいは基準なり、俗に言われますノウハウというものの視点が必要かと思います。そこで、外形課税を入れることの意義ということが15ページに4つほどの○で囲まれていると思います。

税の性格の明確化等、お読みいただきますとわかりますが、応益課税ということについて、やはり明確な形で位置づけよう。あるいは2つ目は、広く薄く税負担を求めるという形におきまして課税ベースの拡大をしたいと。結果的には、欠損法人、俗に言われます赤字法人の負担になるかもしれません。さはさりながら、元気で頑張っている方の法人には税負担が少なくなるといった面もあって、いずれにいたしましても、広く薄くという税負担が望まれているのではないかという視点。

それから税収の安定化に一番寄与するというのが重要でございまして、最後の地方分権の推進と絡めまして、中央、地方に安定した財政基盤を与えたいといったような趣旨があるのではないかということです。

これにつきましては、例えば応益課税といっても狭い意味でとらえるのではなくて、幾つか議論がございましたけれども、例えば社会契約説的な利益といったような視点からいいますと、単に企業対地方公共団体というのではなくて、企業を取り巻く、逆にいえば企業からいろいろ購入している人、言うなれば消費者のような視点からも、あるいは企業を支える地域全体の住民、そういう視点からも応益原則というのはあり得るのではないかと、広い意味で捉えたらどうかというような議論もございましたので、一例ご報告しておきます。

それから18ページに具体的な導入のイメージも書いてございます。現行は一番左端でございまして、これは所得にのみかけておりますので、縦にグラフができておりまして、11%かかってますが、今度仮に外形課税ということをしますと、これが横になるわけですね。当然のこと、所得にかかる部分もございますし、その他もろもろの、組み合わせによって、a%ならa%という形で、収入が中立ということになりますとこういうイメージになる。あるいは、課税ベースの半分は言うなれば所得課税にして、半分は外形課税にしようという組み合わせもあるかもしれない。幾つか、これから考えなければいけないイメージをこういう形で図式化したようなことをめぐりましても議論をいたしました。

それから次の19ページをおめくりいただきますと、留意点というのがございます。おそらくこれが非常に重要ではないかと思いますが、6つほど○がございます。これ以外にも国際化に備えてどうするといったような視点が当然入ってこようかと思います。外形課税に当たりましては、課税の公平・中立はもとよりのこと、特に我々委員の中で議論いたしましたのは、シンプルなほうがいいだろうと。あるいは、地方に新しく導入するということになりますと、税務行政上、そう複雑なものでも困るだろうと。それから徴税コストも十分考えるべきである。あるいは、中小企業に対する配慮、あるいはベンチャーに対する配慮、仮に赤字法人ということになりますと、そういう点の配慮も必要になってきますので、そういう点についても十分配慮すべきではないかという議論を交わしました。

それから(参考)のところに書いてございますが、仮に具体的に何をとらえるかということの候補ですね。ここに、資本金又は出資金以下7つ8つ書いてございます。したがいまして、単純に所得型付加価値税というものに最初から論点を絞って議論しているわけではございません。ここに書いてあるような幾つかの、まさに外形課税の課税ベースを念頭に置いて、これから議論を進めていこうと。まだどのようにしようという点はとてもいっておりません。今、堺屋さんがおっしゃいましたように、選択肢を出せということにつきましては、我々も十分その点には配慮いたしておりますので、これに書いておりますような外形基準の例を具体的にどういうのがいいかという点につきまして、これから議論を重ねていきたいと考えております。

加藤会長

それでは、ただいまのご報告、さらには先ほどのものでも結構でございますが、何かご意見がありましたらどうぞお願いいたします。

塙委員

外形基準については、毎回同じようなことばかり申し上げて申しわけないですが、理論的な考察をしていただくときに、私ども、企業家としましては、現実問題としまして、今でも税負担がかなり高くて景気浮揚のお役に立ててないということもあるものですから、景気への影響というか、非常に短期的なもののように思いますけれども、そういう経済に与えるインパクトを同時にぜひお考えいただきたいというふうに思います。

吉田特別委員

外形標準課税につきまして毎々同じようなことを申しておりますので、またかということになるのでありますが、石小委員長さんにまず伺っておきたいのでありますが、ただいまのご報告、大変感銘深く伺っておったのでありますが、そのときに、中小企業に対する配慮、赤字法人に対する配慮等もそれなりに検討しておかなければならんというご説明はそれなりに私はやはり意義があるだろうと思うのであります。

ただそのときに、かねがね私は青色申告者、個人企業、こういう立場で申しますと、個人企業が負担している個人事業税と赤字法人が負担していない法人事業税とのバランスをこの機会にぜひ話題にしていただけないかと。それがどういうバランスに今なっておるのか、この辺もぜひひとつ話題にしていただきたい。もし仮に赤字法人企業に対する、特に中小、小法人に対する特例的な配慮が必要だということになりますと、この負担をしている個人企業とのバランスというものもぜひこの際にご検討いただきたいと思うわけでございます。

石特別委員

十分にその点、テークノートしておきたいと思いますし、何だったら、吉田さんに一回来てもらって、何か基礎的なデータをお持ちでしょうからお話も伺わせていただきたいと個人的には希望しております。その節はよろしくお願いします。

[今後の予定]

加藤会長

ほかにございましょうか。

よろしいようでございましたら、そろそろ時間がまいっておりますので、実は今日が夏休み前の最後の総会でございますので、これからの見通しについて少し申し上げて、そしてまたご意見などありましたら伺いたいと思っておるのですが、今、委員会、いろいろな報告についてのご意見をいただきましたが、これにつきましてはこの委員会でフィードバックいたしまして、さらに論点としてまとめながら検討していこうと思っておりますが、この税制調査会では、例年、委員による海外調査を行っております。今回は、基本問題小委員会、地方法人課税小委員会において検討されております所得税、個人住民税、地方の法人課税、とりわけ法人事業税の外形標準課税の問題に関して、海外の状況についての理解を深めるために、8月下旬から9月上旬にかけて海外視察を行いたいと考えております。人選、日程につきましては私にご一任をいただきたいと思いますが、そういう視察の結果をまた一つの我々の知識といたしまして、さらに検討を9月以降に進めていきたいと思っているわけでありますが、予定から申し上げますと、私どもはあと2年、任期を残しておりますので、その任期2年の間に当然、平成11年の終わりごろというのでしょうか、そのころに中期答申をまとめることになるかと思います。そういう中期答申というのをまとめるわけでございますが、それがどんなふうな形になるかどうかということはまだここでは答えを出すことができませんけれども、おそらくそういった問題を考えていきたいと思っています。

また、年末の報告はあるのですけれども、その年末の中間報告をとりまとめるかどうかについては状況を見ながらご相談をしていきたいと考えております。その進め方につきましては、先程も申し上げておりましたけれども、小委員会が2つできまして、1つは地方課税小委員会、もう一つが基本問題小委員会、そしてフィードバックをしながら、基本問題小委員会のほうにはワーキンググループを幾つかつくりまして、そのワーキンググループで専門的な、理論的問題を検討していただいて、そして問題を整理した上で、さらにそれを小委員会で議論する。その小委員会で議論したものをさらに総会で議論して、さらにそれを深めていくという形で進めていきたいと考えております。

このようなことでございますので、夏の間はお休みをいただきまして、9月に入ってから本格的な審議を行いたいと思っておりますから、その意味で、秋以降は大変スケジュールが過重になってくるかという気もいたしますけれども、しかし、皆様方のお力によりまして、もう目の前に、ことし中にはやらなければいけないと私は思っているのですが、ちょっと途中で参議院選挙なんか入りますと少しのんびりしているような感じがして、私は大丈夫なのかなという気持ちがするのですが、そういうようなところを何とか私どもとしては早く乗り越えて、世界の今の情勢の中に我々もついていかなければならんと、こういうふうに思っておりますので、9月以降は少し過密なスケジュールでございますけれども、どうか皆様方のご協力をお願いしたいと思っております。

そういうわけで、7月7日に基本問題小委員会を開きますが、総会はこれで夏休み前は終わりにさせていただこうと思っております。このようなスケジュールの進め方でございますけれども、何かご質問などございましょうか。

途中でいろいろと報告もいたしますので、その報告のときにご希望などございましたらどんどんおっしゃっていただければ、それを取り入れながら進んでいきたいと思っておりますので、よろしゅうございましょうか。

それでは、これできょうは終わらせていただきます。

〔閉会〕