第17回総会 議事録
平成10年5月19日開催
〇加藤会長
それでは、第18回の総会を開催させていただきます。
本日は、松永大蔵大臣にご出席をいただいておりますので、ごあいさつをいただきたいと思います。
[大蔵大臣の挨拶]
それでは、最初に事務局より報告を受けたいと思います。まず最初に、すでにご承知のことと思いますが、今般の総合経済対策について、去る5月11日に関係法案が国会に提出されています。そこで、総合経済対策においてどのような税制上の措置が講じられるのか、事務局より説明を受けたいと思います。
〇伏見税制第一課長
『総合経済対策(抄)』(資料1)という資料があります。総17-1という番号がついていますが、これが4月24日にとりまとめられた総合経済対策のうち、税制上の措置について抜き刷りにしたものです。現在、これを法案化して国会で審議を受けている最中です。
大きな2つの柱があって、1つが、「IIの特別減税」の関係です。特別減税の中身ですが、1.として「特別減税の追加・継続」と書いてます。「所得税・個人住民税について、本年すでに2兆円の特別減税を実施しているところであるが、早急に2兆円の特別減税を以下の概要により追加実施する」。内容は後で申し上げますが、来年の2兆円減税について、内容はそこにあるように、減税方法等については今後検討するということですが、来年もやるということをここに明記しています。
追加の特別減税の概要ですが、減税の規模は、今申し上げたように、国税、地方税、所得税、住民税合わせて2兆円、このうち所得税の分が 1.4兆円です。
減税方式については、ことしの2月から国税の所得税の場合行っている定額控除方式と同様の方式になっています。3)のところで「減税額」ですが、本人が所得税で2万円、控除対象配偶者が1万円、扶養親族が1万円ということです。夫婦子2人といったモデル的な世帯を考えてみると、下の(注)にありますが、2月から実施している特別減税は4万5,000円です。
これは、今申し上げた2万円、1万円、1万円というバランスが1万8,000円等々という形で、前回のほうが少なかったわけですが、この差は、前回、特別減税をやった結果、定額控除の方式をとるので、結果的に課税最低限が上がった形になっています。今回、追加減税をする際、課税最低限、以下の方には当然減税の恩典が及ばないので、同じ 1.4兆円の減税になりますが、一人当たりのいわば配分額が、若干ですが大きくなるということによるものです。前回の4万5,000円の所得税の特別減税が今回は夫婦子2人の場合には5万円ということです。したがって、年間を通すと、所得税については9万5,000円の減税が行われるということになります。
住民税については後ほど自治省の方から説明しますが、自治省の個人住民税、両方合わせたトータルの効果というのが(注)の右の下の方に出ています。
それから次の2ページにおける具体的な「実施方法」ですが、給与所得者については、平成10年8月1日以後に支払われる給与に係る源泉徴収税額から控除するということで、要するに8月分の給与、その中で、給与について源泉徴収しているわけですが、今申し上げた減税額を控除するという方式になります。具体的には、源泉徴収税額が少ない場合には、8月単月では処理が終わらないので、残った分については9月以降、あるいは10月、11月というふうに継続して控除していくということになります。
それから年金受給者は、給与所得者に準じた方法により実施します。
それから事業所得者のケースですが、給与所得者について2月から実施している特別減税、これとの関係で、事業所得者については毎月の納税というのがないので、そもそも7月の予定納税の際に前回の特別減税を実施する予定でした。今回、いわばその追加減税のほうがそれに追いつくような形になるので、そこにあるように、予定納税の通知の期限、それから第1期分の納期をそれぞれ1カ月おくらせた上で、具体的に納期が7月になっていますが、これを法改正をして8月にして、当初分の減税と追加分の減税、これを合わせて実施するという方式にしたいと思っています。
なお、年税額が少ない方の場合には予定納税の必要がないので、この場合には来年の確定申告の際に調整をしていただくということになります。
住民税のほうは後ほどご説明します。
それから、その同じページの2.の「政策減税」の関連ですが、まず投資減税ですが、民間投資を促進するための税制上の措置として、1年間の臨時措置、6月1日実施ということを前提として、1にあるように、中小企業者等が取得等をする一定の機械装置、それから器具備品等々について、7%の税額控除、または30%の特別償却を選択適用できるような、そういう一般的な投資減税についての措置をしたいと思っています。
2のところは特定電気通信設備の特別償却とありますが、例えば地方のローカルテレビ局等で使う一定の装置等を念頭に置いたものです。
それから次の3ページですが、2)のところで研究開発の関係。現在、中小企業者等の試験研究費に係る税額控除制度というのがあります。ベンチャー企業を含む中小企業の研究開発を促進するという観点から、この制度で税額控除率、6%になっていますが、それを10%に引き上げる措置を講じるようにしたいと思っています。
それから住宅減税の1)ですが、現行の住宅取得促進税制、現行制度は平成9年から平成13年まで各年の所得、この住宅取得促進税制は所得税額控除制度になっていますが、各年の税額控除額というのが決められています。それについて、そこに例があるように、例えば平成10年居住分、これは現行の制度では平成10年以降6年間の措置として、控除額の総額が 170万円になっていますが、それを180万円に引き上げる等の措置を盛り込んだものです。
2)は地方税の関係です。後ほどご説明します。
それから3.「法人課税」についての文章です。読み上げますが、「法人課税については、今後3年のうちにできるだけ早く、国・地方を合わせた総合的な税率を国際的な水準並みにするよう、検討を行う」というように記しています。
それから4.「所得課税」のところですが、「個人所得課税については、公正・透明で国民の意欲が引き出せるような税制を目指し、幅広い観点から検討を行う」となっているわけです。
国税関係は以上です。
〇上田市町村税課長
それでは、地方税関係、同じ資料を使わせていただきたいので、(資料1)の1ページにお戻りいただきたいと思います。
できるだけ重複は避けますが、減税の規模、それから国税、地方税の割り振りについては大蔵省から説明のあったとおりでして、1ページの半分より下のところの3)の「減税額」をごらんいただきたいのですが、本人、それから控除対象配偶者、扶養親族につき、個人住民税は真ん中の欄に書いていますが、本人が 9,000円、配偶者、扶養親族、4,500円ということになっています。ことしの1月の当初の2兆円減税のときには、本人が 8,000円、配偶者、扶養親族、4,000円でしたから、先ほど国税についてご説明申し上げたと同じような理由で、納税義務がなくなる方がおられるということとの関係で、単純に2倍ではなくして、若干上乗せの額が大きくなっているということになります。
この結果、一番下に夫婦、子2人のモデルで事例を示していますが、当初においては、2万円の特別減税ということになっていましたが、今回、2万2,500円追加され、合わせると4万2,500円の特別減税の効果が及ぶという形に相なるところです。
次の2ページをお願いします。中ほどの個人住民税の減税の実施方法です。給与所得者の場合、住民税は、通常の年だと、6月から翌年5月までの12回に分けて年税額を12等分して納めていただくという仕組みですが、本年度の場合には、6月分を徴収せずに、7月以降の11回でこれを納めていただく、こういう方法をすでに1月の法律改正で講じています。今回、+ 6,000で1兆 2,000になりますが、この1兆 2,000すべてを合わせて、このスケジュールで賦課徴収、したがって特別減税を実施するという形になるわけです。
それから年金受給者、事業所得者等の場合については、これは地方団体によって条例で若干違いがある場合もあるようですが、原則としては、6、8、10、翌年1月の4期に分けて納税をいただいています。できるだけ前の期、第1期のほうから順次税額控除する方法としています。
なお、どちらの場合も、例年と比べると、この時期に法律が審議をされているという状況でもあるので、税額通知を行う時期、それから第1期の納期、これをそれぞれ1カ月おくらせて、1年間の賦課徴収のスケジュールをスタートを若干おくらせることによって、1兆 2,000億の住民税減税を円滑に進めたいという考えでおるところです。
次に「政策減税」ですが、地方税関係は3ページの住宅減税の2)、不動産取得税の関係ですが、住宅取得促進といった観点から、宅地建物取引業者が、一定の買取仲介を行って、既存住宅を居住者から取得して、暫定的にこれを保有をしてしかるべき居住する者に譲渡する、こういった場合においては、当該取引業者自身は実際には住まないのだが、宅地建物取引業者にも居住者と同様の特例措置を講じようということです。
地方税関係は住民税と不動産取得税、以上2点です。
[報告事項 2:財政構造改革法の改正]
〇加藤会長
続いて、今回の総合経済対策では、財政構造改革の枠組みの中で、緊急避難的な措置を講じるため、財政構造改革法に修正を加えることとして、改正法案が国会に提出されています。
この財政構造改革法の改正法案は、去る4月24日の財政構造改革会議において決定された「財政構造改革法の弾力化等について」が法案化されたものです。この財政構造改革法の見直しについて、事務局から説明を受けたいと思います。
〇杉本主計局法規課長
主計局で法規課長をしている杉本と申します。よろしくお願いします。
それでは、お手元の資料のうちに『財政構造改革法の一部改正法案について』(資料2)という二枚紙の資料があるので、それを見ていただければと思います。総17-3の1と打ってある資料です。
今ご紹介があったように、財政構造改革法に関しては、財政構造改革会議が3回開かれて、その結論が4月24日に得られています。その結論においては、最近の我が国の内外の経済情勢を見渡して、悪条件が一斉に重なって、極めて深刻な状況にある、そういう事態を踏まえて、財政構造改革を進めつつ、それぞれの状況に応じながら、いわば緊急避難的に適切な措置を講ずると、そういった枠組みを整備する必要があるという観点から、財政構造改革法の改正について、3つの点について決定がなされています。それに基づいて法律を改正して、今国会に提出いたしており、現在、衆議院で審議が行われているところです。
改正の要点は、そこにあるように、3点です。第1点は「特例公債発行枠の弾力化を可能とする措置」です。現在の財政構造改革法においては、第4条において、毎年の特例公債の発行額の縮減を図るという規定があります。したがって、毎年度、特例公債の発行額を縮減していくという規律がかかっているわけです。それに対して今回の改正案においては、1つには、著しく異常かつ激甚な非常災害、これは阪神淡路大震災のようなものを想定しています。または経済活動の著しい停滞。この点については若干後ほどご説明させていただきたいと思いますが、こういった事態が国民生活等に重大な影響を及ぼしている場合、そういった事態に対処するための施策の実施に重大な支障が生じるときを除きということを入れて、こういった事態においては、特例公債を毎年度縮減していくという規律が働かない事態を想定した改正にしています。そういうときを除いては縮減を図っていくのだという改正にしています。
次に、「経済活動の著しい停滞」という中身ですが、(注)にあるように、「経済活動の著しい停滞」とは、国内総生産の伸び率の低い事態が継続する等の政令で定める状況(直近の2四半期連続で実質GDP成長率が1%未満であること等)です。
その点については、次のページを開いていただきたいと思いますが、財政構造改革会議の決定においても、経済活動の著しい停滞とは何かということについて決めていただいています。それがその下にある3点です。1番目が「直近の2四半期連続で実質GDP成長率(前期比年率)が1%未満」の場合です。アメリカに包括財政調整法OBRAというのがあって、それにおいては、キャップ等に関連して、大統領の一律削減命令について弾力条項があります。その発動基準がこれと同様のものでして、2四半期連続で実質GDPが1%未満という事態です。
ただ、我が国の場合、これを当てはめると、今出ている直近のGDPが昨年の10~12月期のGDPです。これは- 0.7%でございましたが、その前の7~9月期について見てみると、これは年率で 3.2%の成長でした。したがって、この1)の基準をそのまま現状の我が国の数字に当てはめても、1)にはまだ適用するような状況に至っていないということになっています。ただし、今申し上げたようなGDPの数値が出るのが大体3カ月おくれでして、昨年の10~12月期のGDPがことしの3月に発表されたということです。したがって、そういった時間的なラグを補完する観点からも、2つ目の基準が設けられています。
それは、「直近の1四半期の実質GDP成長率が1%未満」で、かつ、当該四半期後、すなわち最近で申すと昨年の10~12月以降の消費・設備投資・雇用、こういった指標が著しく低調、軒並みマイナスといったような事態ですが、そういった事態についても、1)と同様のものとして、経済の著しい停滞に当たるとされています。現在の我が国の状況については、財政構造改革会議でいろいろ検討が行われて、こうした消費・設備投資・雇用の指標について見ていった結果、今の状況はこの2)に当たるとされています。
それから3)は、経済は何が起こるかわからないので、「直近の実質GDP成長率は1)2)のような状態にはないが、予見できない内外の経済ショックによって急速に経済活動が停滞状態に陥る場合等1)2)に匹敵する状況」ということが決められています。これは、例えばですが、石油ショックだとか、為替の急激な変動だとか、戦前のアメリカに見られたような、株価の急落があって、経済がすでに著しい停滞に陥っている、ただ、GDP等の指標がまだ出てないといった事態を想定しています。
そういった3つの基準が財政構造改革会議において示されて、これに基づいて経済活動の著しい停滞ということを考えていくということになっています。
また1ページ目に戻っていただくと、今申し上げたのが特例公債発行枠の弾力化についての措置です。
第2点目が「財政健全化目標の年度の延長」です。財政健全化目標については現在2つ目標があって、国、地方を合わせた財政赤字ですが、これの対GDP比を3%以下にする。それから2つ目が特例公債の発行をゼロにするという基準です。これらの目標達成年次については、現行法上は平成15年度、すなわち2003年度になっていますが、今回の改定案においては、これを2年延長して、平成17年度、2005年度に延長することとしています。この平成17年度、2005年度というのは、戦後生まれた方が60歳になられるという時期でして、高齢化社会がますます進展していく一つの節目になる時点だというような考え方が付されています。
それから第3点目が「11年度当初予算の社会保障関係費の量的縮減目標」、いわゆるキャップの関係です。財政構造改革法においては、10年度、11年度、12年度、この3年間に関して、いわゆるキャップをそれぞれ規定しています。そのうちの社会保障関係費については、11年度、おおむね2%を上回らないとなっていますが、これを改正して、「増加額はできる限り抑制した額とする」という改正をするものです。12年度については、社会保障関係費についてもおおむね2%というキャップは維持することとされています。
以上3点が、財政構造改革法の主な改正点です。
その関係で、財政構造改革会議の決定の資料(資料3)をその後ろにつけています。それから、その次の資料で『我が国財政の現状』(資料4)という資料があるので、これについても簡単にご紹介させていただきたいと思います。17-3の3という資料です。
その1ページ目をめくっていただくと、「国及び地方の財政収支・債務残高の推移」という資料があります。これが先ほどご紹介した、国、地方を合わせた財政赤字のGDP比を3%以下に抑えるということに関連する数字ですが、現在の数字を見ていただくと、10年度当初、補正後、これが上段と下段の2段書きになっています。上段のほうが、10年度予算で織り込んでいる国鉄及び林野の長期債務を一般会計に承継するので、その分を含んだ数字です。下の欄は、そういった10年度の特殊要因を除いた数字です。10年度(当初)の欄で見ていただくと、それが 9.7%、国鉄、林野を除いて 4.7%でしたが、10年度(補正後)、今回の措置の結果、約2%これが上昇して、11.7%、6.7%ということになります。
それから下のほうが、このストックベースの対GDP比です。それを見ていただくと、10年度(当初)で、結局、国及び地方の債務残高がGDPを上回る 101.6%という数字になっていました。これが(補正後)でいくと 103.6%という数字になるわけです。
次のページを見ていただくと、この国際比較の関係で、OECDのほうからエコノミック・アウトルックという形で昨年の12月に発表された数字です。国及び地方の財政収支、フローの推移ですが、そこで見ていただくと、他の先進諸国においては、米国は、ごらんのように、1%前後の数字になっているし、ドイツ、フランス、イタリアあたりも3%を切っていくような流れになっています。それに対して我が国はごらんのような数字になっているわけです。
それからさらにもう1ページめくっていただくと、これは残高、ストックベースでやはりOECDのエコノミック・アウトルックで国際比較したものです。そこにあるように、国際比較しても、先進国、米、英、加、仏あたりは6割程度の数字で並んでいますが、我が国においては、OECDの比較においても90%前後の数字になっているということです。
次のページを見ていただくと、「公債発行額の推移」です。上の折れ線グラフが公債依存度でして、10年度、これは補正後ですが、26.3%になります。公債発行額のほうは、その下の棒グラフですが、10年度で21兆 7,000億という公債発行額になっているわけです。
さらに次の5ページは「公債残高の推移」です。一番右の10年度のところを見ていただくと、公債の残高が10年度末で 285兆円という数字になるという階段のグラフになっています。
それから6ページは「国及び地方の長期債務残高」でして、これはストックを兆円単位で示しています。今申し上げたように、普通国債の残高が、10年度補正後では、10年度末で 285兆円という見込みでして、国と地方、長期債務を合わせると、544兆円という数字になるわけです。
それから最後のページは「国民負担率の推移」です。
[報告事項 3:「OECD租税競争プロジェクト報告書」]
〇加藤会長
それでは、報告事項の最後ですが、いわゆる「税の競争」の問題について、OECDの租税競争プロジェクトにおいて報告書がとりまとめられて、4月28日のOECD閣僚理事会で承認、公表されています。また、この報告書は5月8日のサミットG7蔵相会議で報告されています。これについて、事務局から説明を受けたいと思います。
〇谷口国際租税課長
お手元に『租税競争関係資料』(資料5)というパンフレットが用意されていて、この中に、目次を見ていただくと、「OECD租税競争プロジェクト報告書について」と「大蔵大臣談話」4月28日付、それから参考1、参考2、参考3とございます。参考にあるのは具体的なドキュメントなので省略しまして、資料の1と2を使って、特に1で簡単にご説明したいと思います。
それでは1ページをごらんいただきたいと思いますが、「OECD租税競争プロジェクト報告書について」という1ページのものです。まず、この報告書の「意義」ですが、今ご紹介にあったように、これはOECDの閣僚理事会で採択、公表されたものでして、さらにサミットにおいても報告されたものです。これは2年前の閣僚理事会において、OECDの中に租税競争についての問題点とそれに対応する措置について検討しなさいというマンデートがおりて、過去2年間の検討を踏まえてでき上がった報告書です。
我が国とフランスが共同議長になって報告書のとりまとめに携わりましたが、これは、税調の場でも、グローバル・スタンダードとか、いろいろな話がありますが、日本もいろいろなこういう場で国際的なルールづくりに貢献しているということの一つのあらわれでもあります。
具体的な問題に入りますが、2番目の「税の競争の問題点」のところをごらんいただきたいのですが、経済のグローバル化が進展すると、どうしても企業活動が移転しやすくなっていくと。そのときにいろいろな要因でもちろん動くわけですが、特に金融サービス等については税率のちょっとした差によって動きやすいということがあります。他方、労働とか消費とか、ちょっとした税率だけでは必ずしも国境を越えて動くかどうかというものもあります。そういうものがあるので、仮に「税の競争」が行き過ぎると、そういうふうに動きやすいものに余計メリットがいって、動きにくいものについてはそのしわ寄せがいくという問題が起きます。これが「税の競争」の問題点の1つ目に書いてある、可動性の低い課税ベース(勤労所得、消費等)の相対的重課によって、税体系の公平性、中立性を損なうという問題です。
それから特にEU等で問題になったわけですが、こういうふうに国際的に課税ベースが縮小されると、それによって、まさにその課税ベース、要するに税収の減ということによって財政の規律を損なう。税の競争を放置しているとマーストリヒト条約の財政赤字3%以内という前提条件を損なうおそれがあるという問題があったわけです。
それから3つ目の問題点としては、経済学的な議論ですが、税の競争によって、資本移動、それから経済活動そのものが歪んでしまうといった問題です。
こういったことがありますが、他方、税体系を決めるのは各国の自由ですので、税の競争を放置しておくと、いわゆる囚人のジレンマのゲームのように、いいほうに行くというよりはむしろ悪いほうにいってしまうということがあるので、どうしても国際的な協調によって対応する必要があるということになって、OECDプロジェクトが始まったわけです。この報告書においても、対応策として、いろいろな勧告が出されていますが、特に重要な点としては、国際的に一緒にやっていこうということでガイドラインをつくったことです。
このガイドラインとしては3つあって、1つ目は、「有害な措置の新規導入の制限」、貿易用語でいうとスタンドスティルということで、新規に悪いことをしないということです。2番目が、やはり貿易用語でいうと、ロールバック。要するに、現在ある有害な措置を縮減・廃止していくということです。とりあえず目標年次として2003年までに、今すでにある有害措置を持っている国についてはそれをやめていこうということになっています。それから3つ目が加盟国間の相互レビューで、正直者が損をしないように、お互いにこの有害措置を見張りながらやっていくということになっています。
〇加藤会長
それでは、以上の事務局からの報告にいろいろとご質問などがあるかと思いますので、若干、10分ぐらい時間をとって、皆様方のご質問、あるいはご意見を伺いたいと思いますが、どなたからでも結構ですから、どうぞ。
〇石特別委員
谷口さんに1つだけお聞きしたいのですが、OECDの議論の中で、インターネットの取引、これには金融サービスも入るでしょうし、それから実際の商品の受け渡し等の話も入ると思いますが、インターネットというのはこれから大変難物なわけで、それについての何か具体的な国際間の取り決めなり、あるいは問題意識なりというのはまだ出てこないのでしょうか。あるいは今後何かあるのでしょうか。
〇谷口国際租税課長
今の問題は、実は電子商取引と税の問題というのは、まさに石先生のおっしゃるように、大問題になりつつあって、OECDでも、実は昨年の秋にフィンランドで会合があって、その後、ことし1月の租税委員会で正式に電子商取引と税の問題について検討しましょうということになり、実はことしの10月にオタワでまた会合が予定されているのですが、そのオタワ会合に向けて、電子商取引と税に関して一定の枠組み、細かいルールは、これから発展することなのでつくれないというのが実感だと思いますが、とりあえずどういうことが原則になるのか、どういうことを忘れてはいけないのかといったような枠組みを決めていこうということになっています。
〇加藤会長
ほかにいかがですか。--よろしゅうございましょうか。
じゃ、若干時間があるので、杉本さん、せっかくおいでになっているのでお聞きしたいのですが、この「我が国財政の現状」の中に、エコノミック・アウトルックのOECDの表が出ているのですが、OECDのエコノミック・アウトルックでは常に一般政府の債務残高と一緒に一般政府の純債務残高が出てますね。それを出さないということは、何か特に考え方があるのですか。その点ちょっと伺いたいのです。
〇杉本主計局法規課長
OECDのほうは、会長おっしゃるように、ネットとグロスと両方出しているようです。それで、私どもの資料を見ていただいても、フローのほうで見ていただくと、今おっしゃった資料の2ページですが、エコノミック・アウトルックのところで、修正積立方式の年金制度を有する日本とアメリカの場合はということで、日本とアメリカの場合のOECDの比較を書いてあります。
日本の場合は、やはり今の日本の社会構造を反映して、社会保障基金の金額の構造が諸外国と大分違う。これから高齢化が急速に進展していくという事態を踏まえて、大分諸外国と構造が違うという点もあるので、こうした社会保障基金の観点を除いたというか、社会保障基金を取り込まないような数字で比較するのが、日本と諸外国の比較の上で今の時点においては適当なのではないかという観点から、私どものほうの資料で出すときには大体グロスで資料を提示することにしているということのようです。
〇加藤会長
ちょっとつけ加えておきますが、外国では大体こういうエコノミック・アウトルックを見ているので、そうすると、一般政府の純債務残高が出るものですからね。日本は非常に低いと。そうすると、日本というのは何でそんなに苦しんでいるのだろうということを外国が誤解するわけです。だから、私は日本人に説明する場合にもそういう点についてはむしろディスクロージャーしたほうがいいと思うのです。それがないと、何となく日本というのは外国の見方と違うのかなという印象を与えてしまうという気が私はしているので、その点、工夫していただければありがたいと思います。
〇杉本主計局法規課長
いろいろ世の中にわかるように機会をとらえて説明することはぜひ必要だと思っているので、その辺はよく踏まえたいと思います。
[地方法人課税小委員会の報告]
〇加藤会長
次に、石さんが途中で退席をされなければいけないので、石さんは地方法人課税の小委員長をしていらっしゃって、きょう午前中にその会合が開かれているので、石さんからその報告を先に受けたいと思います。よろしくお願いします。
〇石特別委員
若干の時間をいただいて、きょう午前中行われた第1回目の地方法人課税小委員会の模様をお伝えいたしたいと思います。
きょうは12名ほどの委員が参加され、たしか欠席は2人だったと思いますが、極めて良好な滑り出しで、小委員長代理を水野さんにお願いをしました。そしてきょうは最初ですので、今後の進め方等も踏まえて、出席者全員から個別にいろいろご意見を伺ったということです。当然、その前に基本的なデータのご説明は事務局のほうからしていただきました。
そこで3つ4つ、どういう点に我々関心を持ったかという点をご紹介したいと思います。1つは、単に法人事業税というものだけ取り上げても、議論を矮小化する。やはり世の中の、特に経済情勢、非常に変わってきている。右肩上がりの経済の成長がとまったし、その中での言うなれば税制を考える必要があるだろう。あるいは、経済、グローバル化と言われるが、よく考えてみると、ローカライゼーション、ローカル化というのも起きているわけでして、地域に密着したさまざまな地方自治の問題なり地方分権の問題なりがあり、その中でこの法人事業税の外形化問題を考えたいということであります。あるいは市町村合併の問題があったり、地方行革、地方公務員のリストラの問題があったりしているわけですから、そういうもの等を踏まえて、住民の受益とか負担という観点からも議論する必要がある。大きく問題をとらえたいというのが第1点であります。
第2点は、やはりこれは非常に新しい試みであります。外形課税するといっても、それなりにある物差し、ある基準が当然必要です。そこで、やはり軸になる考え方は応益課税であろうと、このように思います。応益課税というのは、言うなれば、個人でも、企業でも、その地元に住んでいて、地方の政府から地方公共サービスを受け取っているという側面があって、それに対していかに税負担をしようかという観点が重要になってくるわけです。言うなれば、企業市民税というようなことを言われた方もありますが、そういう観点から外形課税を考えたい。特に従来の法人事業税は非常に変動的でして、景気がいいときはいいのですが、悪いときにはかなり税収が落ち込んで、安定した財源を供給しない。歳出面では安定した公共サービスを提供しなければいけないのに、歳入面でこうガタガタしては問題であろうということです。
結果として、外形課税化すると赤字法人課税になり得ることも当然考えられます。そういう意味で、赤字法人課税になったときに、日本経済の経済活力との関係でどうなるかというのも詰めなければいけないだろうと。例えばベンチャービジネスというのは5年も6年も、おそらくもっと累損、累積赤字が出てくる可能性があります。そういうときにこの種のベンチャービジネスを法人課税の改革に突っ込んだときどうなるのかという点も十分検討しなければいけないだろう。あるいは海外でどうなっているかという点も踏まえて、この辺の議論を深めたいというのが第2点。
それから第3点は、今申し上げた応益課税という原則からいうと、受益と負担の関係を客観的にとらえる必要があるだろう。例えば企業はしかるべきサービスを地方自治体から受け取っているわけで、それに対して応分の負担をするといったときには、これは難しいのですが、企業のベースにおいて受益と負担のデータ、あるいは実証研究と呼ぶべきでしょうか、その種のものを用意して本格的に議論する必要があるだろう。そういうことも改めてやってみたいという意識を持ったわけです。これはかなり難しいですが、しかるべき研究者も入っているもので、事務局と相談して、こういう数字をつくってみたいと、このように思います。
それから、税務執行上、この新しい試みはいろいろな影響を与えるわけでして、あまり複雑なことをして実際的に動かないというのでも困る。できれば簡便な、税務執行面ではあまり問題が生じないような形の課税ベースの拡大、あるいは外形課税化したいということでして、シンプルなほどいいのではないかというような関心を持っています。
そこで、あと夏休み前までに数回、2~3回だと思いますが、やりまして、大きな枠組み、あるいは基本的な共通の認識を深め合うという議論をして、できればその間に関係者から、地方自治体であったり、あるいは経済界の人であったりしますが、幾つかヒアリングもしたいと思っています。9月の段階で、海外、とりわけアメリカ、ヨーロッパ、いろいろな外形課税化を持っている国があるので、それを実際に見ていきたい。それをベースにして、9月以降、本格的にもっと議論を深めて、できればある種の報告、中間報告になるのか、最終報告になるのかわかりませんが、年内にしかるべき締めくくりというか、整理したものを世に問いたいと、このように思っています。
やっていくプロセスにおいて、途中結果をご報告ということも当然必要だと思いますが、とりあえず滑り出しはそういうことなので、ある程度議論が煮詰まったら、またこの場に持ち帰りたいと、このように考えています。
〇加藤会長
第1回地方法人課税小委員会のご報告をいただいたわけですが、何か特にご質問など、あるいはご意見がありましたらおっしゃっていただきたいと思います。いかがでしょうか。
〇吉田特別委員
外形標準課税を導入するに当たって、今始まったばかりだから、立ち入った質問もできないかと思うのですが、導入を目的にして、したがって導入しやすい手だて、つまり、中小企業関係は最初議論の対象から除いていくとか、あるいは資本金額によって、これ以上のところについて考えてみようとか、そういう論議はあるのでしょうか。
〇石特別委員
当然、まだ中身に入った議論はしていませんが、その種の配慮はやはり含めるべきだというような含意を含めた発言もありました。吉田さんのご関心の個人事業税についても、入れるのか入れないのかという議論もこれからしなければいけないといったような問題を提起された方もいるので、その辺はこれからきちんと詰めていきたいと思いますし、実際にやるとなれば、今おっしゃったように、移行期の問題、これは大きな問題だと思うので、慎重に考えたいと思っています。
〇笹森委員
法人事業税の、今説明のあった外形の標準課税化というのは一つの考え方だというふうに思うのですが、現実には、説明の中にもちょっとあったように、問題が幾つかあると思うのです。私は労働組合の立場だから、働く側からいうと、付加価値を外形とする場合に人件費の比率が非常に大きくなるのではないかというふうに考えており、そうなってくると、結果として雇用に影響しかねないという問題が生じるのではないかというふうに思っているから、企業経営の問題とか、雇用問題についてどういう影響があるかということについて、こういう案というのはきょうは持ち合わせていませんが、ぜひ慎重なご検討をお願いをしたいと思います。
〇石特別委員
今の段階でお答えできることはあまりないのですが、しかし、どれか一つ決めて、この案でいくよということをやるつもりはありません。とりわけ、今ご指摘のように、所得型付加価値税というのがおそらく従来から来た一つの本命的な選択肢でないかなというご理解の方もいらっしゃると思います。しかし、別に付加価値を用いなくても、外形課税というのはほかに選択肢が幾つかあるわけでして、そういうものを組み合わせた形で具体的な案を3つ4つ出して、たたき台的なものを出してご議論いただけたらと思っています。賃金だけが殊更突出するような、そういう案も一つ出てくるかもしれませんが、そのときはご反対いただければいいので、ほかにもいろいろなケースで、ケース・バイ・ケースでご議論いただいて、そのときに、今言った経済成長なり、活性化なり、あるいは雇用の問題なりという議論を踏まえてご意見をいただけたらと思っています。
〇塙委員
1つご質問したいのですが、今先生おっしゃったように、外形課税は赤字法人課税が非常に大きな問題だと思うのですが、外形課税イコール応益課税だということについては何の異論も差しはさむべきではないというか、それは本当にイコールということなのでしょうか。それに対しての違った意見とか、そういうことはないのでしょうか。
〇石特別委員
完全にイコールではない。外形課税というのは、地方分権を進めるに当たって、地方地方が独自に、俗にいう、汗をかいて税収確保に努める必要もあるようなときの一つの形態であろうし、それから中央に最もふさわしいような格好の税体系の一つではないかという議論があり、その根拠づけとして、応益原則というのが1つ有力な物差しではないかという意識であります。当然、応益にかわるものとして応能という原則がもう一つあるわけでして、そういう視点も一部加味できないかなという議論もきょうあって、そうなると、さっき吉田さんがお出しになったように、中小企業の扱いをどうするかというときに、言うならば能力というか、応能というか、経済力の大小によって少し手加減というか、調整するというような面ですね。そういう意味で、今のご質問に答えるなら、イコールではありませんが、有力な物差しに応益はなるだろう。それプラスアルファのところで、今言った応能原則、その他の原則が入るのではないかということです。
〇堺屋委員
近年の日本経済の危険の一つに、自営業の減少というのがかなりあって、1988年から今日まで10年間で自営業が 100万人ほど減りました。これは先進国では日本だけの現象なのです。この赤字法人課税のときに、創業から何年間は除くとか、そういうベンチャー育成というか、新興企業育成の特例というような方法は考えられないでしょうか。
〇石特別委員
吉田さんのときにお答えしましたが、実際に案ができて、これを実施に移すというときには、今おっしゃったような配慮というのも当然入れないと、急にエイヤッでは無理だと思います。移行期という問題をもう少しさまざまな要素から考えてみたいと。特に今おっしゃられた自営業云々の話というのは重要な問題だと思いますので、当然、検討材料、検討の重要なメルクマールになると思います。
〇水野(勝)委員
ただいまの石先生のご説明で、非常に大きな立場から考えて検討が行われるということをお聞きしました。ぜひそのような広い観点から、大きい立場からの、単に事業税、そしてその外形課税ということでとどまらない、大きな観点のご検討が期待されるところです。
先ほどの法人課税の総合経済対策の中で、法人課税、これは3年のうちにできるだけ早く国際的な水準にするという項目があります。これは事業税を廃止すれば大体40%になるということでして、もしそういう観点からの検討も入っているということで、この方向がかなりなウエートを持っているとすれば、確かに所得に対する課税水準は国際的な水準になると思いますが、一方、外国から見ると、そういうような所得なり利潤ではないものに対する、事業そのものに対する相当大規模な税金がある。これは一体何なのだろうかということで、国際的な水準にあわせるという、所得課税水準はそこにあわされたとしても、そういう大きな違った課税が負担として残る、それは何なのだということで、国際的に理解がされるのかどうか。やはり外国にもこういうものはあるだろうとは思いますが、4兆円、5兆円といった規模のものはなかなかない。そこは国際的にどのように理解がされるのかなという気がするわけです。
だから、いろいろな観点からの、例えば先ほどの税収の安定性ということからすれば、地方消費税の充実ということからも検討される。先ほど、所得型付加価値税的な発想があるとすれば、そこらが近くなってくるのかなという気もするわけなので、諸々の観点からの幅広いご検討がなされるということをご期待申し上げます。
〇石特別委員
わかりました。確かに、今、法人事業税、都道府県税、5兆円あるわけですね。5兆円をレベニュー・ニュートラルで外形課税化すると、やはり5兆円というのは大きなロットの税収が外形課税化されて、日本の地方財政に入るということがどういう意味を持つかということまで、あるいは対外的にどういう意味を持つかということまでおそらく考えなければいけないと思っています。
ただ、海外調査でも詳しく調べてきたいと思いますが、ロットの点は除いて、結構各国でこの種の外形課税的なものがあるわけです。その国々の税体系の中での意味なり、意義なり、位置づけなりというのを調べてきたいと思いますが、新しい試みなので、そういった国際的な視点からも、仮にこうなった場合の新税の意義づけというのをぜひ考えて、提案するときには盛り込みたいと考えています。
〇大田委員
地方の法人課税の場合に、各地方が税率を自由にするかどうかという、そのことによってかなり税のつくり方って変わってくると思うのですが、先ほど地方分権を踏まえてということでしたが、そこら辺は、つまり、課税自主権を将来どうするのかというあたりはどういうふうに踏まえて議論なさるのでしょうか。
〇石特別委員
まあ秋以降の問題でしょうね。まだそれまでは頭が回りませんが、おそらく地方分権とか、地方独自の財源というときには、そういう税率の許容範囲、それも問題にはなるとは思うし、それから事業所ベースでやるのか、今ある分割基準で一たん集めて分けるかといったような問題もあるし、さまざまな技術的な、専門的な問題も加味しなければいけない。今おっしゃった点には、当然のこと、話はいくだろうと思います。そのときの議論を少し詰めて、またご報告したいと思います。大田さんは自由にせいというほうですね。
〇中西委員
前回のこの法人課税の小委員会、1年間、小委員会として独自で走られて、年末で、この総会に報告があったと。そこでちょっとぎくしゃくしたような事態があったのですが、今回は、これは何回かの過程で総会にかけて、また小委員会に戻してという方法、スタイルでおやりになるということは、非常にいいことだと思いますが、ベテランの腕のいい石委員長のことだから、これは立派にまとめられると思うのですが、我々も議論の勉強をしたいものだから、例えば、小委員会である程度進みますね。外形標準で議論がかなり進んできて、要するに、加算型でいくか、控除型でいくかということで議論になったという小委員会の議論をちょっと事前に提示してもらって、我々はそれについて勉強してきて議論をすると。そうすると議論がかみ合いますね。そういった点をちょっとご配慮をいただければと思います。
〇石特別委員
わかりました。前回も、機会を見ては報告したのですよ(笑)。ぎくしゃくしたとかいうお話ですが。だから、その回数をもうちょっと増やすかなあという感じ、あるいは特に中西さんのほうを見て言うかなあという感じですが、十分この辺の往復は肝に銘じておきたいと思います。
〇加藤会長
ほかにはいかがですか。--よろしゅうございますか。
大変、第1回目から波乱含みを予想させていますが、しかし、石さんがうまくまとめていただけると思いますが、ただ、小委員会となるとどうしても、一つの意見が出て、それを固守しようという考え方が強くなります。そのために、総会にかけても絶対修正は認めないと。そして、修正されることがあるならばもう我々は一家心中すると、こんな発想が出てきてしまうのは危険なので、その点は弾力的に、先ほど石さんも選択肢を示しながらとおっしゃっていたので、そういう方向でぜひ進めていただければというふうに思っています。
[所得税・個人住民税のあり方]
それでは、議題を先に進めます。きょうの本論ですが、所得税と個人住民税のあり方について、私どもがどういうふうに進めたらいいかということで、前回の総会で進め方の議論をさせていただきました。その議論を集約すると、今後、基幹税である所得税・個人住民税の問題を中心に、さまざまな諸課題について、租税理論を踏まえつつ、幅広い観点から検討する必要があるとの認識で、その検討の場として小委員会を設置することにしました。
本日は、前回に引き続き、所得税・個人住民税のあり方やこれらの問題を議論する場としての小委員会の設置及び審議の進め方について、皆様方のご意見を伺いたいと思っています。
これから議論を始めるに当たり、我が国の租税負担構造の推移について、すでに皆様方はご専門で、ご承知の方が多いのですが、あえて認識を統一するために、私が事務局に指示してつくった資料があるので、これを事務局から説明を受けたいと思います。
なお、そのほか、所得税・個人住民税に関する資料も用意していますが、時間の関係もあり、これらについては、次回以降、適宜説明を受けたいと思っています。
〇鈴木調査課長
お手元の資料、総17-5という資料(資料6)をあけていただきたいと思います。
まず1ページ目、「国民負担率と財政赤字(対国民所得比)」というページです。先ほど主計局から説明がありましたが、国民負担率がどのぐらいの水準にあるかをお示ししています。租税負担率と社会保障負担率に財政赤字を加えた財政赤字を含む国民負担率が一番上の折れ線ですが、これが一般政府の歳出水準を表していると思います。この下に折れ線がありますが、これは下の棒グラフ2つを足したもの、すなわち国税、地方税を合計した租税負担率と社会保障負担率とを足したものです。
ご承知のように、昭和50年度から、オイルショック後の経済の停滞も含めて、財政赤字が増えていきましたが、以後、財政の歳出水準を抑えながら、上の方の折れ線でおわかりいただけますように水平状に推移して、平成2年度に39.2%と、ようやく国民負担率と一致して財政収支の均衡化がなされたわけです。
しかしながらその後、いわゆるバブルの崩壊もあって、税収は落ちていく。さらに最近は所得税の減税等があって、税収の水準は横ばい状態で推移しています。一方、歳出のほうは、景気対策等もあって増加した結果、上と下の折れ線は非常に大きく乖離してきているわけです。平成10年度をごらんいただくと、点線のラインが補正後の数字で46.3%とあります。上の52.8%は国鉄長期債務及び国有林野累積債務の一般会計承継分である26.3兆円分を一時的なものとして乗せたものであり、これらを合計した財政赤字は15.0%ということです。黒い棒グラフが社会保障負担率ですが、一貫して上昇しているということが言えるかと思います。
それから次のページをごらんいただきたいと思います。1頁の表をブレークダウンして、一般会計のベースでごらんいただくものがこの表です。上の折れ線が歳出、それから下の折れ線が税外収入を含んだところの歳入、差額が公債金収入になっています。10年度のところをご覧いただきますと、歳出は点線でお示しした10年度当初のところから上昇していますが、これは補正予算で約4兆 6,000億円増加した分です。また、公債金についていえば、補正予算で建設公債が約4兆 1,000億円、赤字公債が約2兆円増加しています。
口一番下に歳出に占める税収割合を書いています。歳出の中で税収がどのぐらいのウエートを持っているかをお示ししたものですが、平成10年度だと7割を切った状態です。これをさかのぼって見てみると、税収がバブルの影響で非常に好調だった平成2年度は86.8%という水準です。以後、一貫して落ちてきて、8年度は66%でした。さらに過去を見ると、狂乱物価等のあった昭和48年度は、90.4%という水準でしたし、最低のところで昭和52年度が59.6%という水準でした。諸外国を見ても、アメリカが約92%、英国が約83%、ドイツが約76%、フランスが約76%ぐらいというところを見ると、我が国ははなはだ低い水準になっているということが言えるかと思います。
〇桑原企画課長
3ページは地方の歳出と地方税収入の推移を表にしたものです。ごらんいただくとおわかりのように、歳出のほうでいうと、9年、10年は当初予算ベースなので若干落ち込んでいますが、補正を加えると、増加、右肩上がり傾向にあります。一方の税収は、バブルのピークである平成3年度がピークでして、それ以降落ち込んで、やや最近盛り返しているという傾向にあります。平成10年度では地方税収が約38兆円、歳出の合計が87兆円でして、地方財政の場合においては、こうした歳出と地方税収入との間に大きな乖離があり、これを縮小するというのが今後の地方税の充実の方向であるというふうに昨年の地方分権推進委員会の勧告にも述べられているところです。この乖離の分は地方交付税だとか国庫補助金等によって埋められているわけですが、平成10年度においては、そうしたルールどおりに埋めても、なお財源不足額が5兆 4,000億あるということで、その分については、地方交付税の特別会計の借り入れ、あるいは地方債の増発で対応しているところです。
〇鈴木調査課長
次に4ページ、国税の一般会計の主要税目についてごらんいただきたいと思います。左の棒グラフが所得税、真ん中が法人税、白抜きが消費税です。近年の税収の推移を見ると、真ん中の法人税の棒グラフについては、平成2年度から、景気の低迷、企業収益の減退により大きく凹んできています。6年度以降についてはやや持ち直したところです。
また、所得税についてごらんいただくと、平成3年度から4年度にかけて凹みます。資産性の所得、例えば利子のようなものが減少したためです。平成6年度以降はさらに低い水準で推移していますが、これは例えば平成6年度であれば、国税で 3.8兆円の特別減税をしていることや、7年度以降についても制度減税に加え毎年特別減税が行われているためです。
法人税や所得税と比較すると、消費税は安定的に推移しています。9年の4月から税率が引き上げられ、10年度の消費税収は10.8兆円程度と見込まれます。
〇桑原企画課長
5ページは地方税の主要税目の推移です。一番左側の黒の斜線が個人の住民税でして、10兆円前後でほぼ安定した税収ですが、平成6年度、特別減税で大きく落ち込んでいます。その次の灰色の部分が法人住民税、それから横の斜線の部分が先ほど議論があった法人事業税です。
法人事業税についてごらんいただくと、平成3年度が6兆 5,000億円でピークでして、平成6年度に4兆 2,000億円に落ち込んでいる。それが10年度では5兆 3,000億円の収入見込みになっているということです。一番右端の固定資産税については、ほぼ安定した税収を確保しているということです。
〇鈴木調査課長
6ページをおめくりください。国税の年度間の増減を主要経済指標とともに並べたものです。棒グラフはそれぞれ前年度の決算額との差額をそのまま載せたものです。これをごらんいただくと、昭和63年度、平成元年度、2年度と増収ですが、この内訳で特に大きいものは所得税の資産性の所得分であることが明らかであろうかと思います。
平成3年度、4年度、5年度、6年度と落ち込みが激しくなるわけですが、これについては白抜きでお示しした所得税の資産性の所得分が相当落ち込んでくることや法人税が相当落ち込んでくること、あるいは資産課税についても落ち込んでくるといったような状態がご覧いただけると思います。さらに先ほどご説明したような減税が所得税においてなされているということがあります。一貫して、ゼロのラインより上にあるものとしては消費税が挙げられるかと思います。収入の安定性といった観点でいえば、そういった条件を満たしているということが言えるかと思います。
〇桑原企画課長
7ページは地方税の主要税目の対前年度の増減率の推移です。下のほうに経済動向の指標があります。ごらんいただくと、破線で書いてある法人事業税が大変景気がいいときには対前年度比で20%を超える増収になっていますが、一たん景気が停滞すると、平成4年度あたりですが、-15%を超える減収ということになっていて、都道府県の行政サービスにさまざまな支障が生じることになります。固定資産税、自動車税等はほぼ安定した税収、それから個人住民税についても、特別減税等の政策的なことが行われない年にはほぼ安定した税収となっています。
なお、地方においては、消費税が平成9年度から課税が開始されており、昨年、平成9年度は1兆円程度の税収が見込まれています。平成10年度においては2兆 8,000億円ほどの税収を見込んでいます。
〇鈴木調査課長
8ページをごらんいただきたいと思います。国民負担率の内訳の国際比較をとってみました。上の白抜きのところが社会保障負担、それから下が租税負担で、対国民所得比をとったものです。全体を見ると、この5カ国の中では日本は37.8%と、アメリカに次いで低い水準になっています。さらにその下に総人口に占めます65歳以上の人口の割合を載せています。日本は1985年でこの割合が10.3%、これが10年間で 4.2%程度上昇していますが、アメリカを見てもそれほど上昇しておらず、イギリスについても同様です。さらに2000年においては、日本は相当高齢化が進みます。この高齢化に直接関係する社会保障負担をごらんいただくと、日本はアメリカ、イギリスよりは高い水準、ドイツ、フランスよりは半分ぐらいの水準です。もちろん、税と社会保障の関係をどうするかといった各国の事情はありますが、現在の負担水準はご覧になっていただいているとおりです。
それから、社会保障負担の下が租税負担です。租税負担について見れば、日本はこの5カ国中で最も低い水準の24.0%です。各租税負担の内訳を見ていただくと、個人所得課税については、最も低い水準の 7.1%であり、次がフランスの 8.2%ということで、あとイギリス、アメリカ、ドイツと続いています。法人所得課税については6.0%であり、負担率としては高くなっています。
消費課税についてごらんいただくと、アメリカに次いで低い水準になっています。アメリカの消費課税は地方税が主です。それから資産課税については、フランスが相当重い、相当なウエートがあるということです。そういったところが特徴かと思われます。
それから9ページをごらんいただくと、国税の租税負担率について見れば、アメリカよりも若干低いといったところが特徴であり、先ほど申し上げた特徴がそのままあらわれているということが言えるかと思います。
〇桑原企画課長
10ページは地方税の租税負担率の国際比較です。日本については、道府県税と市町村税合わせて 9.5%で、アメリカの11.1%よりは低くなっていますが、イギリス、ドイツ、フランスよりは高いという状況です。ただ、国際比較する場合には、それぞれの国で地方制度が異なっているし、また、地方公共団体の役割、あるいは地方税の構成、それぞれさまざまなので、それに留意する必要があるかと思います。
アメリカは州税と市町村税、両方含んでいますが、イギリスは州税はないので、市町村税だけです。それからドイツは、ここにある数字は市町村税のみでして、ドイツには別途州税もあります。ドイツにおいては、主要国税は州税とあわせて共同税という形で州が徴収しているということで、前のページの国税のほうに州税も合わせて掲載しています。そのようなところに留意する必要があるということです。
〇鈴木調査課長
11ページをごらんください。税体系というか、所得・消費・資産等のバランスをご覧いただきたいと思いますが、新たな観点から、時系列でとってみました。
例えばアメリカについて言えば、20年前、あるいは10年前と比較して、所得課税の割合、あるいは法人課税の割合が動いています。あるいは資産課税等の割合も相当動いています。所得課税のウエートがかなり高まった時期が1985年ですが、レーガン減税と言われている1981年の税制改正で相当減税をしましたが、そのころ、大変なインフレでして、やはりインフレに伴い所得課税が、大変増えています。レーガン減税は、これを下げるといった意味があったかと思います。またそのレーガン減税では、法人税について、いわゆるタックス・エクスペンディチャーといわれている投資減税を相当拡大しました。この結果1985年にはこのような水準になっているわけです。また、資産課税等については、遺産税の改正を81年、84年に行っており、最高税率を引き下げています。1986年になると、逆に法人税を増税しています。課税ベースを拡大するということで法人税のウエートが増えています。それによって所得税は相当程度、軽減されています。後で最高税率の引上げなどもありましたが、こういった水準になっているわけです。
イギリスについては、1985年にかなり法人税のウエートが高まっています。なお、95年に向けて税率の引下げがありました。それからまた、全体のバランスの中で、個人所得課税は、サッチャー政権下で所得税の減税を行い、VATの税率の引上げなど、消費課税の増税を行っています。それから資産課税等が大分減っていますが、地方税改革のうちのレイトの改革を行っています。
それからドイツにおいても、VATや個別間接税等の引上げで消費課税を充実させています。
また、フランスについては消費課税が大分減っており、おやっと思われるかもしれませんが、標準税率自体は上がっているものの、割増税率や軽減税率を下げているといったようなことによるためです。それから資産課税等については、例えば富裕税を再導入するということで、相当充実してきているわけです。
この辺の細かい税制改正の動きについては、12ページをごらんいただくと、各国の最近の主な税制改正を挙げています。所得税の累進構造については、フラット化を世界的な流れの中で各国とも行ってきています。ブラケットを非常に簡素にしています。法人税についていえば、課税ベースを拡大しながら税率を下げています。
ただ、アメリカについては、法人税の税率を、1%引き上げる改正がありました。フランスについては、付加税を導入しています。それから付加価値税の税率について、消費税等も含めて税率は引き上げられているといったような状態です。
13ページをごらんいただくと、アメリカの税制改革が大分話題になっているので、まとめています。1981年から現在まで4つのブロックに分けました。実線のラインが実際の歳入の数字です。レーガンの最初の減税というか、税制改正が話題になるわけです。一番上に点線がありますが、もし税制改正がなかった場合の歳入見通しをアメリカの予算教書などで見ることができます。この水準について、これよりは当然、減税するので下がります。改正を行った場合の歳入見通しが次の△の点線です。ここまで入る予定でいたのですが、実際に歳入として挙がってきたのはそれよりももっと下の実線のラインでした。しかも増税を82年や84年に行っていますが、これを加味しないとさらに下の水準ということであります。この評価については、いろいろな見方があると思いますが、結果として大きな財政赤字をもたらし、やはり長期金利高、ドル高などを引き起こしたことを考えますと、非常にうまくいっていたということは言えないのではないかと思います。
1986年にレーガンが更に改正を行いました。これはレベニュー・ニュートラルということで、法人税の課税ベースの拡大により増税をして、その財源で所得税を2段階にフラット化しましたが、この歳入見込額については大体見通しどおりとなりました。
それから第3番目について、ブッシュ政権になって、所得税の最高税率を31%に引き上げて増税を行っています。1991年はアメリカはマイナス成長のときですが、増税を行い、経済のリストラ、あるいは金融システムの安定化といったようなこともあって、企業収益が徐々に改善にその後向かいます。クリントン政権においてはさらに所得税の最高税率を39.6%まで引き上げており、法人税についても、税率を1%引上げ増税をしています。こういうことも反映して、経済の活性化と、こういった増収措置が、相当財政赤字の減少に貢献していると考えられます。
14ページにはその米国の連邦政府の財政赤字の状況、あるいは実質GDP成長率の推移、財政赤字の対GDP比といった計数を参考までに載せています。後でごらんいただきたいと思います。
それから参考資料の総17-6(資料7)の一番最後と、最後から2ページ目、10ページをお開きいただきたいと思います。前回、私のほうから、消費性向と、家計調査の状況をご説明しましたが、消費性向は2月に68.4%と若干下げどまり傾向が見えたものが、3月に71.7%まで持ち直しています。特別減税の効果といったものも考えられるのではないかと思います。
それから11ページもごらんいただくと、太い方のラインで消費支出の前月比をお示ししていますが、2月に増加して、さらに3月も 3.0%と増加しています。特別減税が2月の源泉徴収から実施されているわけです。
〇加藤会長
そのほか、所得税と個人住民税に関しては、これまでの税調答申を抜粋したもの(資料8)が配付してあるので、参考にしていただければと思っています。この今までの資料などを含めて、皆様方のご意見、非常に所得税、個人住民税はなじみの深い税目でもあるので、ご意見もたくさんおありになると思うから、この際、小委員会の審議の進め方などを踏まえて、それも含めていろいろなご意見をいただきたい。こんなふうに思っています。ではどうぞ、どなたからでもよろしゅうございますから、ご発言いただきたいと思います。
〇塙委員
今、アメリカの税制改革についてご説明があって、アメリカは税率が低いのだが、だんだん上げてきたことによって財政赤字がなくなったのだというご説明で、よくわかりましたが、それでも、上がったといってもまだ我々の目指す40%弱ぐらいのところのようですから、このことだけで私どもの目標が低過ぎるのではないかというふうにはお考えいただかないように、よろしくお願いしたいと思います。
〇中西委員
きょうは政策減税はやらないということなので、次回か次々回ぐらいにお願いしたいと思うのですが、地方の法人課税は、さっきも話が出たように、小委員会でしっかりやっていただくということだし、所得税のありようについても、これは基本問題小委員会で基本的な累進税率、あるいは課税ベース、課税最低限その他、大いに議論が、こいつは簡単に出ないでしょうが、1年ぐらいかけて議論するということだからあれですが、私、ぜひ主税局のほうにお願いしておきたいのですが、今ここまで不況が深刻になって、実体経済が大変な不況でして、これは戦後最大と言ってもいいのではないかと思うのですね。
今度の自民党が出した経済総合対策の中に政策減税もあって、やはりここで、恒久減税はさておいて、真に経済の活性化の効果を持つような、実体経済に対して非常に波及効果の広い、すそ野の広い産業に対してインパクトを持った政策減税をやる必要があるのではないかと。それはもう緊急にやる必要があるのではないか。そうしないと、簡単に景気は持ち直せないのではないかという思いがしていて、この辺を、例えばの話、すそ野の広いといえば、住宅産業、住宅市場が今非常に冷え込んでいますが、これは大変なすそ野を持っており、鉄鋼から、木材から、ガラスから、じゅうたんから、ありとあらゆるものを持っているし、この辺をいかに活性化さすかということをやることが経済浮揚の牽引車になるのではないか。その辺を次回か次々回、ぜひ時間をとっていただいて、提案を申し上げたいと思うので、さっきちょっとお聞きしたわけです。よろしくひとつお願いします。
〇和田委員
個人所得税、大変身近な税制なので、きょういろいろな資料もいただいたので、十分に考えて、また意見を申し上げていきたいと思います。
ちょっと1つお願いしておきたいのは、基本問題の小委員会で、議論、基本的なところを詰めていかれると思いますが、できるだけ多くの回数、この委員会にもう一度戻してというのでしょうか、ご報告いただいて、そちらの小委員会のほうがあまり進まない、それが進んでしまってからということでなく、この税調全体の総会にかけていただきたいということを1点だけお願いしておきたいと思います。
〇石特別委員
ことしの税調の主要なテーマは所得税になるという意味で非常に重要だと思いますが、実は所得税の危機というか、所得税どうするべきかということ、根幹にかかわる問題が今提示されていると思うのです。今回の、景気刺激ということもあって、減税しか多分なかったのでしょう、手段は。金融がもうないし、公共事業に対してはやはりかなり批判が強い。所得税を減税という形で来て、とりあえず、もう起こってしまったことを反省してもしようがないのですが、問題は、一時的な減税か、恒久的な減税か、これが残りますが、それにしても、今受けとめたレベルでの所得税に対するいろいろな影響を今後永遠に持っていくのか、それとも、今ここでもう一回再点検して、どうすべきかという議論をしなければいけない。
一番の問題は、私は所得税の空洞化だと思います。ずうっと資料をいただいて見ていると、課税最低限がこれだけ上がってしまうと、マスコミ報道にあるように、3割ぐらいのサラリーマンがもう払わなくていいということになると、今後の少子・高齢化の世界で一体どういう税目で必要な財源を集めるかというとき、何だかんだ言っても、戦後一貫して我々が持ってきた所得税がだんだん役に立たなくなってくるという事態を、これでいいのか、それとももう一回てこ入れするのかという議論をぜひしなければいけない。そういう意味では、おそらく私は、税率構造の問題と課税最低限を含めた意味においての各種の所得控除、その問題が議論としてあると思います。
もう一点だけ。所得税とか住民税、巷では、高い高いと言われているわけです。ところが、いろいろ今見た国際比較なり、さまざまなものを見ると、決して日本の個人所得の負担というのは、マクロ的に見ても重くないのです。なぜそういう、データの間と、それから一般的な感覚の間で乖離があるか、よくわからないのです。
ただ、はっきりしていることは、どうも情報というのは非常に伝わりにくくて、例えば今2兆円が3回やられていくような個人所得税の減税というものの原資に当たるところというのは12~13兆円しかないわけです。つまり、個人所得税というのは大体ざっといけば20兆円ぐらいしかなくて、その20兆円からさらに利子とか配当等々資産性所得を引いて、残った給与所得と事業所得というのはおそらく13兆円ぐらいだと思います。そこから今6兆円ぐらい、とりあえず減税しているわけです。これを恒久化するということは、半分ぐらい所得税から集めなくていいよという議論になってしまうのかどうか。その議論をどう我々として考えたらいいかというのは、やはり考えてみないといけない。
よくテレビなど見ていると、4兆円、5兆円じゃ少ないから、8兆円か10兆円、所得税減税してくれという話もあるわけです。そうなると、所得税というのは集めなくていいのか、あるいはその方は50兆円も60兆円も所得税が集まってきているのではないかという錯覚を持っているのではないかと思いますが、その辺の世間でいう所得税の負担と実際の世界は非常に乖離しているということ。
それから、つけ足しておきますが、税率の刻みを変えるということは、おそらくこれから議論になると思いますが、(資料7)の4ページに書いてあるように、平成6年の税制改革で低、中のところはかなり所得税の見直しをしたのです。これから所得税、どこで見直すかとなると、おそらく最高税率のところだと思うし、また最高税率というのはシンボリックだから見直すべきだとは思いつつも、最高税率に入っている納税者というのは納税者の中でほんの数%なのですね。したがって、3,000万円とかなんかの上の最高税率というのを直したとしても、マクロ的には、シンボリックには、あるいは心理的にはあるかもしれませんが、それでえらく消費がどんとわいてきたというような話でもないなという感じがします。そういう意味で、税率刻みを変えるときに、過去やったのをもう一回じっと眺めて、どこが一番問題かということもやはり真剣に議論すべきではないかなと、こんなように思います。
それから課税最低限の高くなったところを恒久減税に仮になったとして、そのままにしておいていいということはないので、僕はそこは最大のポイントではないかなと。ちょっと気のついたことだけ指摘させていただきます。
〇吉田特別委員
まだ初回だから細かいことについては申し上げませんが、法人課税については、総理も3年をめどにと。加藤会長さんはもっと早く前倒しでやるべきだという一つの方向が示されて、それに向かって皆集中的に議論が進められているわけです。今回、所得税改正については、来年度の特別減税までもうすでに予約済みですね。だけど、この特別減税ではどうも国民が将来展望がないので、もっと恒久的な税制、どうあるのかを検討してもらいたいと。これがこれからの所得税制の議論に入っていくいわば命題になっていると。
そのときに、加藤会長さんは、この所得税の改正をどういうスパンで、そしてどういう議論をしたいのだというような何か大きなめどがあるのか。それがあれば、我々もそのスパンにあわせながら、真剣に問題を提起しながら、急がなければならんのか、あるいは、いや、ゆっくりでいいのだよということなのか、この辺は大体どんなめどでおられるのか、お聞かせいただければありがたいなと思っています。
〇加藤会長
後でまとめて申し上げます。
〇津田委員
所得課税の見直しの際の一つの観点として、国の所得税から地方の住民税の充実という方向でお考えいただきたい。これは地方自治の進展、あるいは地方政治に対する責任原則というものの強化につながるし、また、税構造の問題としても、課税最低限、あるいは税率のフラット化というのが国税から地方税への移行によってある程度実現していくという実際的なやり方ということもあるかと思うので、ご配慮いただきたい。
それから第2点は、税制の一種の政的な観点ですが、これ以上、納税義務者というものを減らすのは私は疑問だと思います。やはり国政なり地方の政治、あるいは地方行政に対する関心という点からいっても、納税義務者の割合というのはもう今は本当に最低限まで来ているのではないか、かように思います。全般的な税負担というものの議論というのはあると同時に、やはりそういうような政的な感覚での納税義務者を減らすようなことはあまりやるべきではないと思います。
〇水野(勝)委員
先ほどもご議論、ご意見あった、本当に所得税が一体どうなってしまうのかという、基本的にここは所得税、考えておくべき時期ではないかと思うわけです。現時点ではまだ最大の基幹税だから、これをどういうふうに持っていくか、やはりこれは大切にしなければいけないという気がするわけです。何かというとすぐに所得税減税、しかし、その減税の対象となる所得税というのは、先ほどの数字のように、国際的にほとんど最低の水準のものです。この点は最近は外国も、この間のサミットで総理が外国に説明してきてだんだん理解を求めつつあるということで、結構なことではないかと思うわけです。
所得税、基本的にはやはり大切にと思いますが、一方において、このごろ、この表にもあるように、消費税のウエートがかなり上がってきている。所得税と消費税とが相まってそれぞれの役割を果たしたらいかがかと思うわけです。その点について、例えば課税最低限ですが、これは従来からかなり高いということは認識されていましたが、何かといえばすぐ所得税減税。そのときにはやはり、控除の拡充によって課税最低限は引き上げるという方向に来てしまったわけです。しかし、やはり税負担としては広く薄く国民の皆さんにお願いをするというのが理想でして、そういうところからして、一つの観点として消費税というのが導入されてきて、広く薄くご負担を願うということで、その時点において、所得税というのはある一定の所得水準以上の方に所得を基準として負担を求める、消費税は消費一般に広く薄くお願いをするということで、役割が分担されたのではないかと思うわけです。
そういった意味において、本来は課税最低限を低下させて、広く薄く求めるというところは一応あきらめて、それを消費税にお願いをしたということではないかと思うわけです。今回の特別減税で、課税最低限が 490万円になってしまった。それから、先ほどもお話があったように、3割の方がもう非課税になってしまったということです。そこまでいくと行き過ぎだから、この特別減税前の 360万円ぐらい、この水準だったら、ドイツ、フランス並みとも言えるわけなので、この水準あたりに戻していくということが適当ではないか。
しかし、さらにこの課税最低限を引き下げていくべきだというご議論、これはまことにそのとおりですが、これを下げていくということが現実的にいかがか、可能かどうかということ。それからその場合には必ず低所得者に対して何らかの特別の福祉補助金を供与するとか、あるいはかわりに消費税について、食料品を例えば非課税、あるいは軽減税率とか、そういったことになってはかえって税制として複雑になってしまうということからすれば、課税最低限は特別減税前の水準ぐらいにおさめていって、それ以上さらに引き下げることは、そこまでは確かに理論としてはそのとおりかもしれませんが、あまり無理しないほうがいいのかなあという感じがするわけです。
それから税率については、従来から所得税、住民税含めて50%以下の限界税率ということが十数年来言われてきている。これはやはりこの方向で持っていってはいかがかと思うわけです。特に法人税の実効税率水準が地方税を含めて46%になった。これが40%になるという。所得税と法人税との税率の差が法人経理を歪めている面があるのではないかということはよく言われるところでして、例えばよく言われる交際費なり接待費、こういったものはもう個人でやればいいではないかと言われるのですが、法人段階では、たとえ交際費が損金不算入になったって50%で済む。今度は46%、いずれは40%だという。個人に所得を配分して、そこで個人で使いなさいといえば、そこは65%、最高税率で課税されるということ。こういったあたりが、個人、法人を通じた経理の不透明化を招いてはいないか。今後、法人税率を下げていく方向にあるとすれば、より一層所得税の限界税率、これらについて、やはり正面から検討されてはいかがかと思うわけです。
そして一方において、空洞化を呼んでいるというご議論があります。やはりいろいろな面から控除があり、あるいは軽減税率、分離課税がある。ここは基本的に総合課税の方向に進める、その場合には必ず納税者番号制度といったものが出てくる。これについては、おそらくだんだん世の中の理解は得られつつあると思いますが、年金とか、いろいろなサービスを伴う番号であれば、受益的なものの番号であれば国民の皆さんも受け入れる。しかし、課税を強化するという、受益とは逆の立場からの番号というものを国が決めて、これをある意味では押しつけるというのはなかなか最終的には理解を得ることは困難な場合がある。十数年前のグリーンカード制度でも、最初は世の中の圧倒的な支持を受けながら、結局最後は世の中の議論、世論が二分されてしまって消えてしまったという点があるわけです。
したがって、例えば納税者番号でも、生年月日に最後の何桁かは本人の選択する暗証番号を使うとか、あるいは生年月日に氏名を記号番号化したもので使ってもらうとか、国が決めて、これを押しつけるということでない、納税者の選択、納税者の参加した番号制度というか、そういったものでお使いを願うという検討もあってもいいのではないか。そういったことを前提としてぜひ、諸控除、軽減税率、分離課税制度等、そういった点も幅広くご検討いただけたらいいのではないかなという気がします。
〇堺屋委員
今、石委員と水野委員から非常に専門的な観点のお話があったのですが、もっと一般的に、今の不況、さらにこの1990年代に入ってからの経済の停滞に現在の税制は責任がないのかどうかというのが大問題だと思うのです。世間ではやはり、今の税制は消費性向の長期的下落、ここに図解いただいていますが、96年から出ていますが、82年からとっていただくと、長期的に10%以上下がっているのです。それから自営業がなかなか育たない。これも30代の自営業者の数をとると、急速に減っています。これはやはりベンチャーにかける意欲がわかない社会ができている。これは税制ばかりではありません。ありませんが、現在の日本の構造的欠点、そしてそれが生み出した今の不況に現在の税制というのはかなり責任があるのではないかと僕は思うのです。
所得税を軽減するというのが一方的に課税最低限の引上げで行われるのは実に問題だと私も思いますが、日本の社会そのものをもっと活力あるためにはどうすればいいかという大きな議論を抜きにして個々の税制を議論していると、結局、去年と同じように、7兆円増税したらたちまちそれの何倍もの減税と支出増が出て、おまけに金融関係でドッと国の負担が来るというような仕掛けになるのでは、これはたまらんのです。
だから、日本社会全体を活力ある世の中にするにはどういう税制がいいかという巨視的な観点をひとつ先に取り上げて、その中で所得税はどうあるべきか、法人税はどうあるべきかという議論をしないと、それぞれの税目で議論をしていくと、いつまでたってもこの制度が変わらなくて、むしろ増税はして、その次の年に補正予算でめちゃくちゃ赤字が出てというのを繰り返してしまうのではないか。だから、これはひとつ会長にもご尽力いただいて、日本の税制を本当に21世紀に向けて活力ある社会にするにはどうすればいいかという、この巨視的な委員会をひとつやっていただいて、それからそれぞれを議論していただくほうがいいのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
〇加藤会長
大変有益なご意見なので、考えさせていただきます。
〇松尾委員
これから、個人所得税をはじめ懸案の問題を審議する際に、私は国際化の視点をとりわけ重視する必要があると考えています。国際化の急進展は驚くべきものであり、税制として早く対応しないと現実の動きに追いつけないという事態に来ていると思います。この4月1日から外為法改正法が施行されたのですが、その後、堰を切ったようにお金が日本から出ていくという状況にはないようです。ただし、今後じわじわと外に出ていくお金がふえていくのではないのかというのが非常に権威ある専門家の見方です。
また、円の国際化も我が国全体としてやはり進める必要があります。その場合、非居住者の国債利子に対する源泉徴収を免除する問題も出てくるわけでして、この問題をいつまでもほうっておくわけにはいかない。
こういろいろ見ていくと出てくるのは、納税者番号制度の活用です。この制度は、実際に決めても実施までには相当準備期間が要るわけですね。そういうことを考えると、場合によっては、来年度税制改正で納税者番号制度の導入を決めるということも考える時期に来ているのではないかと私は思います。
〇神津委員
先ほど、石さんと、それから堺屋先生のお話、大変興味深く伺ったのですが、いろいろ資料をいただいて、私のような素人が資料の数字を見ても、数字で見るものと、それから実感するものとの隔たりがあまりにも大きいというのはとても不思議なことで、何でそういうことが起きるのだろうかということで石先生がお答えくださるかと思ったら、わからんのですとおっしゃったので、やはりわからんのだなあと安心したのですが、身の回りをちょっと見てみると、例えばペットボトルの水1リットルはガソリン1リットルよりも高いわけだし、それからスポーツクラブにわざわざ高いお金を払って行って、動かない自転車を一生懸命こいで帰ってきて運動したと思っているわけだし、それから携帯電話の充電器というのは、充電器の中に携帯電話を差し込んでいるときよりも、差し込まないでそのまま待機しているほうが消費電力が多いわけだし、どうやって考えてみてもおかしいということはいっぱいあるわけで、旅館に1泊するお金でハワイに3日ぐらいは平気で行けるわけだから、どう考えても、何か社会構造がおかしいということ自体に、もしかすると私たちは反対に、明らかにおかしいということにあまりにも無頓着というか、鈍感になり過ぎてしまって、おかしいことをきちっとおかしいと認識する意識すらちょっと薄らいできてしまっているのではないかなという気が最近はしています。
それと税制がどう関係あるかということは、堺屋さんのおっしゃったことにも関連あるのですが、税制ばかりではないと思うのですが、そこの部分からおかしさを是正するような方向に持っていくことはやはり今生きている人間の使命だと思うので、税制のどこでそのおかしさをいささかでも緩和することができるのかということを考えていくことが一番大切なことだと思います。もちろん、税制だけでは限界があるわけだから、社会構造全体の問題なので、行革が進み国際化が進めばまた別の展開というのが出てくるかもしれないが、少なくともこの税制調査会でそのことを論議するのであれば、そのおかしさを税制でどのぐらい変えることができるのかということにチャレンジをする精神というのを私たちが持っていかなければいけないのではないかなというふうに感じます。
あともう一つは、痛みを伴うことも含めて改革を何かしていくということに理解を示す人というのは結構多いと思うのですが、サイレント・マジョリティというほどではないにしても、多数派とは言えないにしても、ある程度そういう認識を持っている方々はとても多いと思うのです。例えば、ちょっと変な例ですが、こういう会議に来ていれば絶対に携帯電話、鳴りません。でも、新幹線のグリーン車に乗れば必ず鳴るでしょう。車内では鳴らさないようにと言っても鳴らす人がいるのですが、例えばこういうところにいると、だれも、ブルブルとふるえていらっしゃる方はいるかもしれないが、音が鳴るということはない。そのぐらいの良識を持ってきちっと物事を考えている人というのは決して少なくないと思うにもかかわらず、表面で目立つのはそういう良識のある人の意見ではないというのが現状だと思うわけです。
ちょっと変な話なのですが、これからは、税制のこういう改革にしても、行政改革のことにしても、やはりきちっとそういうサイレント・マジョリティの人たちの意見を取り入れて、それをきちっと言語化していく人間というのが必要なのではないかなと思います。選挙で投票率が下がるのも、いわゆる政治家の聞こえのいい言葉とか、実現性のない言葉とか、意味不明の言葉とか、難解な言葉という既存の言葉にもう飽き飽きして、聞く耳を持たない、持ちたくなくなってしまっているがゆえに投票率が下がるということも私はあると思うので、ある意味で、ビジョンを持ってきちっと理解を求めるような説明のできる税制調査会であってほしいという気持ちがあります。
非常に難しい税制の専門の雑誌から、果てはなんて言ってはいけないのですが、NHKの子どもニュースや朝日小学生新聞にまできちっと理解を求められるような多様な言語というか、表現能力を持った税制調査会として、この所得税というような大きな根幹の問題もとらえていっていただきたいなあというふうに思っています。
〇平田委員
いろいろすばらしいご意見をたくさん拝聴させていただいたのですが、私は、このいただいた(資料6)の8ページで国民負担率の国際比較を見て率直にこう思ったのです。というのは、従来から国民負担率が50%になったら大変だということが日本国内で盛んに言われておりますが、現在のところは日本は37.8%である。ところが、ドイツ、フランスになると、56.7%、それから62.1%ということになるわけです。意外にアメリカが少ない。
そうすると、ドイツやフランスで個人の生活を営んでいる方は、簡単にいえば、可処分所得が非常に少ないはずだから、人間的に質素な生活をしている、消費生活は非常に少ないのではないかと思われる。それでは日本の国が37.8%の負担をしていて、さらにまた減税をどんどんしなければ経済が活力を持たないという理由でこれがさらに下がるということはどう理解すればいいのか、国際的に見てよくわからないということが1つあります。
それから非常に実体経済の中身が悪いということのいろいろなご指摘の中で、今まで私も何度か申し上げてきたのですが、日本の国の産業形態が輸出型のフルセット生産できたものが、ここ15年来、非常に空洞化が進んでいて、小企業、零細企業が倒産をしていく形。そしてそのフルセットの生産ができなくなっているところへもってきて、全世界から内需を拡大しなさいと言われる。日本が莫大に持っている供給する能力というものを日本国内の需要で消費をしろと言ってもどだい無理な話だと私は思うのですが、その辺についての全日本的な説明がなされていないということがあります。
それから、そのお話の続きになりますが、小企業、零細企業が非常に数がなくなっているということは、個店の経営自体が本当に破産しつつあるのです。すべての地域において廃業・吸収・合併に追い込まれている。もちろんそれはいろいろな原因があります。実際の消費の不況ということから倒れていくということもありますが、実際はもっと構造的なことで、戦後のこの50年近い経済活動を企業が行ってきて、創業者のつくった企業が次の後継者がいないとか、資本力が足りないとか、国際競争力とまで言いませんが、競争力を失ってなくなっていくというのが現実です。これらのことは日本の国の統計では中小企業庁がそういう白書を出して説明をしておりますが、何となく歯がゆいのです。実体の経済というのは非常に悪いという意味は、個店企業の構造的変化であるということです。
たまたま新聞等で出てくるのは、駅前の商店街が疲弊をしている。どんどん郊外型の店舗に移っていくために駅前の商店街が衰退をしている。そういうことが新聞記事になりますが、その裏にある、企業者が実際に数が少なくなってくる。堺屋先生がさっきおっしゃったように、30代の後継者がいないのです。だから、そういった実体を考えると、企業の所得に財源を求めている所得税、これは企業の利潤だけではない、サラリーマンの方々の所得というのも含めてですが、所得課税というものが将来的にどうなっていくかということは、明るい材料はないと私は思うのです。だから、所得課税、住民課税を柱にした租税収入が将来的に大きなグロスになるとは全く予測できない。その背景にある、利潤を追求する、ないしは会社人間になる、その会社自体が今非常に構造改革をやっており、どんどん数が少なくなっていく状態だということをぜひ申し上げて、皆さん方のご理解を得たいと思います。
〇加藤会長
まだご意見がおありかと思いますが、きょうはこのぐらいにしたいと思いますが、今までのご議論、これからの小委員会を進めていくに当たって、非常に貴重なご示唆をいただきました。そういうことを踏まえて小委員会を運営していきたいと思っていますが、最初に、中西さんおっしゃいましたが、政策減税の問題はきょうはまともには取り上げてないようですが、実は総合経済対策の中にも入っているから、したがって、これは当然総会でもその場その場で議論をしていただきたいと思うのですが、同時に、そのことは今政府自体が何とかしようというので積極政策に踏み切っているところですから、その様子をまた見なければなりません。
そういうことも踏まえてやっていきたいと思いますので、その問題を一応切り離して、私たちは所得税制の、あるいは個人住民税のあり方を考えていきたいと思っているのです。しかし、全く無関係ではないので、現実にすでに特別減税が景気対策のために行われると、そのために今までのちょっと歪んでおった税率体系がまた余計狂っていくわけです。そういうことを考えると、どうやってそれを直していくのかということが必要になるので、そういう議論を私たちはやっていかなければいかんと、こういうふうに思っているから、全く無関係ではなくて、その場その場で総会のときにまたご議論していただければというふうに思っています。
それから小委員会についてはここで設置することになったので、皆様方にお諮りしたいのですが、名称ですが、所得税・個人住民税を中心に据えて議論を行います。また将来の展望も明らかにしていかなければなりません。そういうことで、私どもとしては、単に景気対策だけではなくて、現実の税体系がどういうふうになれば一番いいのかということを考えていきたい。特に堺屋先生がお出しになった、日本人の税制による大きな歪みというのがあるわけだから、この辺のところをどう考えたらいいかということです。
特に石さんがお出しになりましたが、どうも日本の税は軽いと言われているが、実際は重たいと思っている。なぜかということについて私なりの考えを申し上げると、1つは、やはりお金の使い方が納得いかないということです。ちゃんと使ってくれているのかどうかということがよくわからないから、それが不満になります。それからもう一つの問題は、私たちが公平に果たして負担しているかどうかということがよくわからないという問題もあります。こういったことを踏まえて私たちはやはり問題を論じていかなければならないので、非常に長期的なことも含めた論題になってくるかと思います。そういうことを考えて、税制の基本的な問題を議論しなければなりません。そういう意味で、基本的な問題なので、小委員会の名称については「基本問題小委員会」というような名称でこれから呼んでいきたいと思っています。したがって、この税制調査会では、1つは、先ほど報告があった地方法人課税の小委員会と、それからこの基本問題小委員会という2つを設けてこれから議論していきたいと思っています。
この小委員会に所属していただく委員については、議事規則によると、会長が指名することになっています。非常に人数が多いので、あらかじめ事務局にお願いして、ただいま配付した一覧表のように指名をさせていただきました。これは主として、学識者というのがどのぐらい中立かどうかわかりませんが、学識者と、それからジャーナリストの方々を中心にして、一応今までの委員会のような形でご指名をさせていただきました。したがって、一人一人お名前を読み上げることは省略させていただきますが、皆様方のご理解をいただきたいと思っていますが、所属される委員の皆様にはこれから相当のご負担をお願いすることになります。あまりこれを言ってしまうと嫌だとおっしゃる方が出てくると困るのですが、とにかく相当のご負担をお願いすることになるので、あらかじめこのことについてはお断りするとともに、これまで以上に一層のご協力をお願いしたいと思っています。
それから小委員会の審議の運び方ですが、先ほどもご指摘がありましたが、小委員会と総会とのフィードバックを年中行いたいというふうに思っています。したがって、総会のたびごとにそれまでの結果、報告などをどんどんしていただいて、そこでまた議論を詰めるという形もやっていきたいと思っているので、提携を密接にしていくということから考えて、そこで小委員長として会長が指名することになっていますが、今回の小委員会はそういう意味ではフィードバックを非常に強くしていきたいと考えているので、小委員会の小委員長には私が務めさせていただこうと思っているので、ご了承いただきたいと思います。
最後に、次回の総会ですが、6月19日の金曜日、午後2時から開催することを考えています。また、基本問題小委員会については、本日の総会を受けて第1回の会合を6月上旬に行いたいと思っています。なお、時間とか場所など詳しい日程については後日ご連絡をしたいと思っています。
ということで、きょうの会合はこれで終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
〔閉会〕