第11回総会 議事録
平成9年12月5日開催
〇加藤会長
ただいまから、税制調査会の第11回総会を開会します。
本日の進め方について最初に申し上げておくと、最初は法人課税について審議を行って、続いて土地税制について、最近の情勢も踏まえて審議を行いたいと思っています。
最初の議題ですが、これまで、法人課税の問題については、第5回総会において、基本的な考え方や各国の比較など法人課税小委員会での議論のおさらいをして、第7回総会では、課税ベースの各項目に関する具体的な見直しの考え方について事務局より説明を受けて議論しました。第8回総会では、地方の法人課税を含めたところで、再度、法人課税全体の議論をしました。
今日は、前回までの総会で委員からご指摘があった、課税ベースの各項目の見直しにより、それぞれどのぐらいの増減収額になるのかについて、一定の仮定のもとに計算してもらいました。その試算を中心にして、事務局から説明を受けて、法人課税についてご意見をいただきたい。こういうふうに思っています。
それでは、伏見税制第一課長、石田府県税課長、それぞれよろしくお願いします。
〇伏見税制第一課長
お手元に法人税関係の資料が多数入っていますが、『法人課税関係資料(その1)』(資料1)というのは基礎的なものなので、ご説明は省略します。
縦長の資料で『法人課税関係資料(その2)』(資料2)というのがありますが、これは11月(先月)ご説明したものであり、今後、その法人課税の見直し、議論を詰めていく際に具体的な見直しの案というものが必要だろうということで公表したものです。必要に応じて、『法人税関係資料』(資料3)という、縦長で、総11-3という、計数の試算をしたものをご覧いただければと思います。
表紙をめくっていただくと、1ページですが、「増減収額試算」として、(仮定計算)「6年間の減収額の平均値」というタイトルのもとで、まず、そもそも1%の引下げ、各1%単位当たりの引下げを考えた場合にどれぐらいの減収額になるかというものの試算があります。
法人税の基本税率を1%引き下げると、そこにあるように、3,700億円~ 4,000億円、約4,000億円と申し上げてきたが、大体そういうオーダーです。幅があるのは、その下の(注)にあるように、全体としての経済の動向、経済成長率の見方、それにより税収自体が動いてまいります。したがって、1%というのも確定的ではありません。あるいはまた、引下げを行う場合、どの水準によって計算するかというような技術的な問題もあります。したがって、そういう一定の前提のもとでの幅のあるものですが、大体そういうオーダーだということです。具体的には、各項目もすべてそうですが、一定の機械的な前提のもとで、6年間で増減収がどれぐらいになるかという計算をしました。それを単純に平均をした1年分というものがすべて出てまいります。
次の2ページをご覧いただきたいと思います。2ページのところで、見直しの各項目、個別項目ごとの具体的な計数が出ています。~線が出ているのは、今申し上げたように、将来推計の前提の置き方によりある程度幅が出てくるもの。それ以外のものは、幅は実際にあり得るわけですが、オーダーとして小さいということで1本にまとめています。
ざっとご覧いただくと、上のほうから貸倒引当金、これは法定率を廃止して、その間経過措置をつけるという考え方ですが、1,700億円~ 1,900億円。それから賞与引当金、これも廃止として、経過措置をつける。 4,100億円~ 4,600億円。それから退職給与引当金の場合には、累積限度額を現在の40%から30%に引下げ、その過程で 1,800億円~ 2,000億円。それから製品保証等引当金、特別修繕引当金の場合には100億円程度と見込んでいます。
それから減価償却の関係ですが、新規取得の建物及び構築物の関係、これについて、定率法と定額法、現行、選択制が認められているものについて、一定の構築物と建物については、定額法でいった場合に、増収額として 2,600億円~ 2,700億円。
一方、既存の建物と構築物について、耐用年数を短縮してはどうかということを考えているので、こちらのほうは減収になってまいります。これが 2,000億円の減収です。
それから少額減価償却資産、あるいは簡便償却についての見直しをすると、400億円~ 500億円程度の増収です。
それから工事進行基準、現在、工事完成基準と工事進行基準の選択が認められているものについて、2年以上の長期工事については工事進行基準でお願いした場合の増収額が 200億円です。
それから割賦基準の廃止、これも長期、一定の期間以上のものについては基本的に現在と同じような形でしますが、比較的短期のものについてこの基準を廃止すると、100億円の増収です。
それから寄付金について、一般の寄付金額がありますが、これについて2分の1は損金不算入という扱いをすると 200億円の増収です。
それから交際費について、現在、中小企業の場合、定額控除額が認められていますが、そのうち10%が損金不算入になっています。これを仮に30%損金不算入という処理をすると、1,100億円の増収です。
それから受取配当益金不算入について、計算のルール等の見直しをすると 300億円程度の増収。
租税特別措置については、現在、作業中です。個別の見直しの結果で出てまいるので、ここではαとしています。
(注)の1.は、今、基本税率の引下げのところで申し上げたようなことです。
(注)の2.のところですが、念のための(注)ですが、まさに増減収額そのものが引下げ後の税率がどういうレベルかということによっても影響されてまいります。この計算はどこかにフィックスしないと計算ができないので、基本税率を仮に35%に引き下げたという前提での試算になっています。
それから(注)の3.のところですが、先ほど申し上げたように、この数字というのは6年間の増減収額の平均値、1年分ということです。今後、仮にこれらについて結論が得られて、平成10年度から実際の法人税の見直しが行われるとした場合、具体的な予算にあらわれる数字というのは、例えば初年度と平年度の関係とか、また経過措置の効き方によっても違ってきます。そういう意味で、改正増減というのはまた別の作業が必要になりますが、当面の作業の前提としてこういう数字を出しています。
それから最後の3ページですが、見直しの具体案の中には、今申し上げたもの以外にも幾つかの項目があります。その中で具体的な増収額というものが見込めないという意味は、計算が非常に困難な状況であるもの、あるいは100億単位ということなので、そこまでにはいかないだろうというようなものがそこに営業権以下並べてあるようなものです。
〇石田府県税課長
それでは、地方の法人課税関係についてお手元の横書きの『地方法人課税関係』(資料4)という資料でご説明します。
1ページが「法人住民税の概要」です。均等割と法人税割がありますが、法人税割のほうは法人税額を課税標準としているので、法人税がどうなるかによって変わってくるということになるわけです。
1ページおめくりいただいて「法人事業税の概要」です。そこに課税標準が出ていますが、基本として、法人税の課税標準の所得を使っているわけです。
3ページ目ですが、先ほどご説明のあった法人税の課税ベースの拡大に係る法人事業税の対応ですが、今ご説明したとおり、法人事業税の課税ベースは基本的な法人税と同じなので、国の法人税の課税ベースの拡大が行われる場合には、法人事業税の税率の見直しについても検討する必要があると考えています。
2)ですが、先ほどご説明があったとおり、基本税率が国の法人税の37.5に対して法人事業税は12%の約3分の1なので、法人税のほうで1%下げられるだけの課税ベースの拡大があると、法人事業税については0.3%程度の税率の引き下げが可能になると考えています。
1ページおめくりいただいて、以下、「法人事業税の外形標準課税について」の考え方ですが、前回と重複した部分があるので、それについては簡単に触れながらご説明します。
最初の外形標準課税の考え方は、先日もご説明したとおり、事業税というのは事業がその活動を行うに当たって地方団体の各種の行政サービスを受けている、これに対して必要な経費を分担していただきたいということなので、事業税の課税標準は本来、現在の所得ではなくて、何らかの外形的な基準によって課税すべきものであると考えられているわけです。検討の経緯が下に出ていますが、従来はごらんのとおり、付加価値が課税標準としての検討の中心であったかというふうに考えています。
1ページおめくりをいただいて、今申し上げた外形基準を課税標準に導入することについての意義を掲げています。前回も説明しましたが、事業税の税の性格の明確化が図られる、あるいは所得に対する課税ベースが拡大するので、所得に対する税負担の軽減にもなる。結果的には、赤字法人に対する課税の適正化にもつながる。さらには、地方団体が望んでいることですが、都道府県の税収の安定化も図られるというようなことが利点かと考えています。
1ページおめくりいただいて6ページですが、これはこれまで外形基準として実施または検討された基準ですが、そこにごらんのとおり、従来は基本的には加算法による付加価値が政府税制調査会等では検討の中心であったかと考えています。
1ページおめくりいただいて、今申し上げた「『付加価値』の意義」ですが、前回もご説明したとおり、企業というのは下の絵に示してあるとおり、原材料、商品等を仕入れて、機械設備、土地・建物、労働力等を投入して付加価値を生み出す。これを利潤、利子、賃借料、給与という形で配分する活動を行っているということで、この付加価値が事業規模の活動を最も適切にあらわすというふうに言われていて、その計算方法としては、下にあるように、加算法によって足し上げていくという計算方法と、売り上げから仕入れを引いていくという形の2つあるわけですが、従来は加算法による付加価値が検討の中心であったということです。
次のページに、外形基準についていろいろ理論的に考えられるものを一覧にまとめてありますが、先日もご説明したとおり、私どもとしては、付加価値が最も適切ではないかというふうに考えています。理論的には、面積、資本金、従業員等いろいろあろうかと思いますが、これらについてはやや一長一短があるというのが従来の検討の経緯ではないかと考えています。
次のページが諸外国の例ですが、諸外国でも、応益的な観点から、地方団体においてはさまざまな外形標準課税の例があるということです。
10ページ以降が新しい資料ですが、外形基準の導入をご検討いただく場合の主要な論点について掲げています。下の※印のところは、昨年の法人課税小委員会において示されたさまざまな論点のうちの主要なものを取り上げています。その他のものについては(参考5)に掲げているので、後でごらんいただければと思います。
当然のことながら、最初の論点は、何を外形基準にとるかということになるわけです。これまでの検討経緯等からいうと、加算法による所得型の付加価値が検討の中心ではなかったかと思いますが、今後幅広く検討していく必要があると思いますが、ただ、外形基準をとった場合でも、課税標準のすべてを従来の所得から外形基準に改めてよいかという問題があります。昭和43年の答申においても、従来の所得と新しい加算法に付加価値を併用するということが検討されたと。これは税負担の変動等を配慮したということだと考えています。
それから中小法人等について、税負担の変動や納税事務等に配慮して何らかの特別の扱いをする必要がないかというのも検討課題になると考えています。
それからもちろん、2)ですが、どの程度の税率をすべきかというのも出てくるし、3)は、先ほどと関連しますが、当然、赤字法人も含めて個別の基準の税負担が変動するので、これについてどう考えるかということもあろうかと思います。
それから消費税との関係をどう考えるかというのもあろうかと思います。
おめくりいただいて、今申し上げた外形基準の導入による税負担の変動について簡単に絵でまとめています。左側のほうの絵をごらんいただくと、現在はその付加価値のうち所得について課税をしていくということで、その12%ということで縦に長い棒になっていますが、これを例えば付加価値ということで外形基準にとらせていただくと、利潤、利子、賃借料、給与というものが課税標準の指標に入ってくるということで、右に長い棒になってくるということで、所得に対する税負担は大幅に下がってくることになるわけです。
それに対応する変動ですが、右の上に出ているとおり、所得がかなりウエートの高い法人においては、このように税負担としては下がってくるということになるわけです。
一方、所得のない法人、赤字法人等ですが、これらの法人は付加価値額も赤字だと、例えば全体としては下がってくるということになるわけで、付加価値に応じてのご負担ということにはなるわけですが、これらの方についてもこの付加価値に応じたご負担をいただくということで、また、この負担が所得のある法人の税負担の軽減につながるというふうになると考えています。
ページをおめくりいただいて、推計ですが、加算法による付加価値がどの程度あるのかということですが、このことについては大蔵省の「法人企業統計年報」の調査を使っています。ただし、この調査では金融・保険業等は入っておりませんし、無作為抽出法による標本調査ということで、したがって全数調査によったものではありませんが、私どもとしてはマクロ的にはこのような数字ではないかということと考えています。
左側でいうと、資本金別に書いていますが、トータルだと、マクロ的には金融・保険業を除いて 274兆円前後ではないかというふうに考えています。
それから1ページおめくりいただいて、消費税との関連がどうなるのかというのも法人課税小委員会で議論されたわけですが、そこにまとめていますが、事業税というのは──これは加算法による付加価値をとった場合ですが──税の性格としては直接税ということで、事業に対する課税ということです。一方、消費税というのは消費にご負担をいただくということで、間接税ということで、税の性格は全く異なるものと理解しています。
さらに、税の負担者のほうですが、これは納税義務者も企業だし、ただそれはコストとして損金算入されるということですが、企業にご負担をいただく。
一方、消費税については、納税義務者は企業とされていますが、消費者にご負担をいただくということが法制度上明確に予定されているということです。
また、税収の帰属地についても、事業税は事業活動に応じて、例えば分割基準により、それぞれの活動地において納税をしていただくということになっていますが、地方消費税については、ご案内のとおり、最終的な消費地に帰属するように、最終消費の額に応じてマクロ的に清算をするということになっているわけです。
1ページおめくりいただくと、最後ですが、先ほどご説明したような、昭和43年の答申について簡単に触れていますが、そこでは加算法による付加価値と所得金額の併用ということです。
(参考5)は省略しますが、以上、簡単にかいつまんでご説明していますが、この問題は地方団体にとって長年の懸案なので、私どもとしても来年すぐということの実現は難しいとは考えていますが、今申し上げたようなさまざまな意義があると考えているので、ぜひともご議論を深めていただいて、実現へ向けてのご検討をいただければと考えています。
〇加藤会長
それでは、地方の法人課税の問題も入っているので、法人課税全体について掘り下げた議論をお願いしたいと思っています。大体40~50分の時間を考えているので、どうぞどなたからでもご発言ください。
〇今井委員
今までの繰り返しの部分もあると思いますが、私ども、経済団体では今年がこの法人課税の国際水準への抜本的な引下げの最後のチャンスと考えているので、ぜひ今年度、先ほどの地方税の問題も含めて、10%程度の実質的な実効税率の引下げの道筋を明らかにする。その中で、今年度としては、先ほどご説明があった課税ベースの適正化による増収等も織り込んで、それからまた相当額の実質減税も織り込んで実効税率を5%程度引き下げていただくということを要望しているわけでして、今日この増減収額が出たわけですが、この積算根拠については、現在、経団連等の事務当局で詰めさせていただいているので、その点はひとつよろしくお願いしたいと思うわけです。
それから事業税については、前回も申し上げたように、今まで議論が十分尽くされていないと思うので、1年程度、地方の財源の問題とか、あるいは要するに行政改革の問題とか、そういう問題と税収の問題とあわせてじっくり議論して来年度結論を出していただきたいと思いますが、今年度ぜひ、10%程度という道筋だけははっきりさせておいていただきたいと思います。
なお、連結納税について、これはやはり非常に重要な問題だと思うので、1年程度時間をかけて、平成11年度からの導入を前提として、持ち株会社の解禁とあわせて実行できるようにご検討をお願いしたいと思います。
〇津田委員
事業税の外形課税化の問題ですが、これはもうシャウプ税制のとき以来の懸案ですが、特に地方団体として、実感として、何らかの対策が必要ではないかと思われたのは、石油ショックのときに、千葉の工業地帯などが軒並み、あれだけの大コンビナートでありながら、赤字ということで、税収がほとんど出ない。ところが、地かたの中小法人は納めると。どうもやはり不均衡感というのが実感として生まれて、52年ですか、全国知事会で検討会を設けて一応の案をつくったのですが、まだ実現に至らない。
こういう長い間の問題だし、特にお考えいただきたいことは、全国的に見るとそう不均衡はない思われても地域で見ると、まさしく大コンビナートから全然税収がないというのはおかしいではないかという感じを強く持たれているので、ぜひご検討願いたい。
ただ、いろいろな問題があるかと思うし、業態別、あるいは規模別、それから現在の法人事業税の所得課税型からの移行の問題等もあるので、専門的な小委員会等をつくって、ある程度期間をかけてご検討いただければと思います。
〇吉田特別委員
前々回とダブる面もありますが、特に外形標準課税を事業税の中に取り入れるという中に、経過措置としての併用、外形標準課税と今の事業税課税の併用を言っておられるのだろうと思いますが、一体、外形標準課税というのは法人企業にだけ考えておられるのか。事業税というと個人事業税もあるから、法人事業に対しては企業課税という意味合いと同じように将来考えておられるのかどうか。もしこれを同じように考えていくのだということであれば、法人税との、所得税との絡みの中で、所得税率の中でも個人企業を法人企業並みに考えてもらいたい。これは報酬のあるなしという問題がそこに絡んでくる。
したがって、この機会にぜひ申し上げておきたいことは、大体、個人企業というものを企業としてとらえるのか、人としてとらえるのか。サラリーマンとの比較で常に所得税の中で論議されるときには自然人という立場で論議されている。ところが、今のように、地方税のほうへまいりますと、事業税というものはサラリーマンにはかからないが、企業という観点で個人事業にも事業税がかかっている。その事業税が今変形していこうとするときに、この外形標準課税というものは個人の場合には考えていただきたくない。これは人として取るのか、企業として取るのか、そのことによって、国、地方の税体系を通じて、しっかりと個人事業者というものの位置づけを税制上に考えてもらいたい。それがここの外形標準課税で問われてきているのではないか。この面も含めて考えていただきたい。
事業税がまだ当分の間残るというのなら、その事業税計算の中においても、個人事業税と法人事業税の計算に不合理性が残っています。それは事業主の配慮、今、事業主控除 270万というのがありますが、これは一般サラリーマンの初任給の給与にも当たらない。以下の程度にしか事業主の働きを考えていない。これを、事業税の存続をさらに考えるというのなら改めて検討していただきたいと、かように提案 します。
〇諸井委員
この資料を拝見すると、大体どうも6年程度の間に2.5%引き下げていくというようなアイデアのようなのですが、ただ、10%というようなことを考えると、やはり6年というのを3年ぐらいに縮めて急速にやっていかないと、なかなかそういう数字まではいかないのではないかという感じがするわけですね。それで、従来、税制については何か激変緩和とか、税収の面もあるだろうし、また納税者の立場もあるのかもしれないが、そういうソフトに、しかし時間をかけてというような感じがかなり根強いのですね。それから同時に、さっきもちょっと出ましたが、中小がどうだとか、弱い人がどうだとかいう話がまたどうしても出てきて、それでいやが上にも税制というものが非常に複雑になっていってしまう。
私はやはり、今大きな変化に直面して、日本の経済というものを根本的に立て直さなくてはいかん、自由化路線で立て直していかなくてはいけないということですね。同時に国際的な競争力というものを考えていかなくてはいけないということで、私は思い切って、なるべく短い期間に10%なら10%、トータルで引き下げて、国際的な水準に持っていく。そして、あまりいろいろなややこしいことを税制に持ち込まないで、税制に関してはなるべく単純明快にすっきりやる。社会政策的ないろいろな配慮があれば、それはむしろ社会政策のほうで考えるというふうにしてもらわないと、今度は徴税のコストも非常に上がるし、将来の例えば国税・地方税徴収の一元化とか、いろいろなことが考えられるわけだが、とにかくちょっとややこし過ぎてわかりにくくてしようがないので、なるべく単純明快にするということと、なるべく、方針を決めたら短期に実行していく。
そして税収の問題は結局、経済がそれによって活性化していけば、税収というのはそっちのほうが余程たくさん上がっていくわけですよね。税収が減るのではないかとか、上がらないのではないかとか、そっちを恐れてどうもぐずぐずやっていることのほうが経済を不活発にして、結局は税収が上がらないという結果になる。そういう従来の苦い、いろいろな長い間の経験というものを生かして、この際やはり政府税調としては少なくとも思い切った単純明快なことをすっきりきっぱりやるということでぜひお願いをしたいと思います。
〇小長委員
今井委員、諸井委員のおっしゃったこととちょっと重複する点があるかもしれないのですが、法人課税の改革というのは経済構造改革の柱であるわけでして、今回10%引下げという大きな道筋をつけていただいて、特に来年度についてはそのうち5%分は絶対実行するという線をこの税調として確保していただきたいと。そのために課税ベースの拡大というのは一方あるわけですが、それは今諸井さんのおっしゃったように、6年というような長い期間ということではなくて、例えば3年とか4年とかいう話の中で課税ベースの拡大も一方においてより図りながら、しかし、それだけではまだ税源は足らないわけでして、そこの部分は従来から私も主張している、単年度ベースのレベニュー・ニュートラルということではなくて、多年度にわたるレベニュー・ニュートラルという観点から、当面は実質減税ということにぜひ踏み切っていただきたい。
とにかくここで税率の引下げの展望が見えてくると、経済界としては着実に反応するわけでして、私も海外出張のチャンスが多くて、外国の企業家なんかと会うチャンスがわりあい多いのですが、規制緩和も相当進んできたと。この上に法人税の実質引下げというのがあれば、日本の経済土壌というのはかなり魅力のあるビジネスチャンスだと見ている連中も増えてきているわけでして、そういう面からのいわゆる前向きな好循環を期待できる要素というのもあるわけだから、この際思い切って、政府税調としては5%実質減税ということをぜひ踏み切っていただきたいと思います。
〇石特別委員
今の景気状況から見て、経済界の方々がおそらく法人税中心の景気刺激をやってくれというのは十分わかります。おそらく、私は法人税を動かすのが一番今の景気動向にはプラスになると思います。所得税減税とか、公共事業を増やすよりは。
ただ、もう一本の柱で、財政構造改革というのが一応国会でも審議され通っているわけでして、おそらく橋本内閣はそれとの絡みにおいてこの法人税減税を非常に苦慮されているのだと思います。税調としてどう言うかというのは、いろいろ言い方があると思いますが、私は、構造改革のターゲットとしている2003年、それとの関係で一応6年決めたというのはそれなりに意味がある。課税ベースと税率の数値というのは産業構造に非常に影響を与えると思うので、私は基本的にはこの線は崩すべきではないと思う。それからもう一つは、地方税が外形課税になったとき、10%引下げとかなんとかというご意見の中で、これ、どういじくるかというのは大変難しい問題ですよね。
今まで、10%、海外に比べて非常に高いのは地方法人税だと言われてましたが、今度、仮に外形課税という話が出てきたとき、これは法人課税のほうが入るのかどうか。入れるとしても、課税ベースが広がった分だけ税率が下がってくるわけだから、その辺のカウントの仕方によって、この10%というのは全く、今考えている世界と将来起こり得る世界との間のギャップは甚だしく大きくなる。それも踏まえて、今のうちから少し時間をとっていろいろな議論をする必要があると思いますが、ちょっと不確定要素が大き過ぎると思いますね。
そういう意味で私は、具体的な数字を今言って、何%というのは非常に難しいと思いますね。しかし、私はどっちかというと財政構造改革が一番日本で中長期に見ると景気回復につながると思っているので、すっきりさせ早くやりたいとは思います。
それからあと一二つけ加えますが、例の連結納税、この問題は避けて通れない。法人課税小委でも大分議論したのですが、まだ本格的に議論は始まってないと思うし、これからいろいろ出てくる。それに当たって、僕はもっともっと情報の開示といわゆるディスクロージャーが足らんと思いますよね。アメリカ型を連想して言う人とドイツ型を連想して言う人ではやはりいいとこ取り的なところもある。これはぜひ事務当局にお願いしたいのですが、少し前広に、連結納税というのはどういうものかというのを本格的な意味で検討してもらいたい。本当にその中身をすると、こんな連結課税所得を計算しなければいけないかというときの事務コスト等々を考えたときに腰が引けてくる企業もあるのかなあという気もする。その辺の議論が足りないので、いいとこ取りだけの議論をすると双方マイナスになるので、この点はぜひ押さえておいていただきたいと思います。
最後にやはり外形課税、これも長年の、僕はやっと税調でこの議論が本格化すると非常に喜んでいますが、10年、20年の間、やる、やらないでいつも押し問答していたことがやっと席上に上ってきて、来年以降、導入を目指してやるということは大賛成でして、ぜひ慎重に、腰だめ的議論ではなくて、いろいろな理論的、実態的、あるいは海外の事情調査を含めて本格的にやっていただきたいと。こういう要望です。
〇森田委員
ちょっと細かいことを言うことになりますが、非常に短い期間で法人税減税の話を決めなければならないという点で、なかなか大規模な変革は今さらできないと。だから、どうしてもある程度重箱の隅をほじくって税源を捻出しなければならないということになると思うのです。
それで、1つ、この試算表にあるのですが、退職給与引当金の累積限度額を40%から30%に引き下げるという試算ですが、私はこれは、日本のこれまでの会社の丸抱えの体質を改善するという意味も含めてもっと下げていいのではないかと。下げる余地があるのではないかと。これを例えば40%を20%にすると 2,000億円ぐらいの財源が出てくる。
それからもう一つは、交際費ですが、損金不算入の割合を10%から30%に引き上げるというのは、私はこれはむしろ全部なくしてもいいぐらいで、日本のいろいろな税制の不公平だとか、あるいは社用族的な、税制調査会でもたびたび指摘されたいろいろな悪いところというのはこの交際費にかなりあるのではないかというふうに思うので、例えばこの30%をさらに20%引き上げて、損金不算入の割合を5割にすれば、ここでさらに 3,000億円ぐらい出てくる。これは合わせると 5,000億円ぐらいで、今の算定だと、国が 2.5%で地方が0.75%だから、全部で3.25%ですよね。これを加えると大体5%になるのではないか。
こういうやり繰りをして、とりあえず、5%引下げに持っていく。私もことしがラストチャンスだと思うのですよね。それで、来年度以降は所得税と法人税、両方ひっくるめて直間比率の是正という形で解決しないと問題は解けないのではないかと思います。それから今、日本経済を見てもデフレギャップが5%ぐらいありますよね。だから、そういう意味でも、法人税を軽くすることによってある程度成長を促すという余地はあるという感じだし、それから3.25%の減税というといかにもアナウンスメント・エフェクトがない。だから、せめて5%ぐらいすれば、下げたなという感じが出てくると思うのですよね。これは片方でビッグバンという、金融においては国際的なアングロサクソンのスタンダードが適用されるわけですが、金融は実物経済につながっているわけで、金融の面でこのスタンダードが適用されるということが実物経済にも影響を与えるし、すべての面でアングロサクソンのスタンダードが入ってくると。だから、そういう意味ではある程度、なるべく法人税だとか、そういう企業のファンダメンタルズの部分でも合わせないと、これはやはり非常に企業の活力にとってマイナスになるということも考えて、ここはもう少し法人税の減税の割合を増やす算段をしたほうがいいと考えています。
〇和田委員
きょう示された法人税の課税ベースの各項目について、これは今まで優遇していたものを適正にするということだと思います。それで、これに伴ってというか、法人税の税率ですが、やはり今の財政状況からいって、増減中立を超えて減税するというのは庶民の感覚としては受け入れられるものではないと感じています。
ちょうど2週間ほど前に全国消費者大会があって、約1,000名、北海道から沖縄まで集まって、分科会に分かれて議論します。税制、それから今の医療問題、財政改革の問題など、一つの分科会があって、そこで出たのは、一言でいえば、個人をどうしてくれるのだという感じなのですね。やはり消費税のアップ、それから減税の中止、それから医療費の個人負担が増えていると。それから介護保険の法案も通って、そこら辺のところが全部一緒になって、個人にとっての負担というのが非常に、正直なところ、増えている感じではなくて、増えているそのものです。
それで、日本生活協同組合が昨年度の家計調査から試算をしていますが、1つだけ例で申し上げると、40代の、共働きでなくて、片働きの人で、年間で大体20万ぐらいの支出の増になっているわけです。そういう税金なり、それから医療費などの自己負担の増でそれくらい増えている。それから60歳以上ぐらいになると、やはり医療費の自己負担が一番大きく生活に響いているというような事例が報告されています。
そういうことを考えて、やはり今、景気で個人消費が冷えていると言われますが、今の状況の中で、とてもじゃないが、物を買う気になれないと。将来に対する不安とか、政治に対する不信とか、物を買う気になれないというのが正直なところでして、やはりその辺のところから考えても、話が戻りますが、法人税については増減ニュートラルというところ以上のものは消費者の感覚としては受け入れられる状況にないということを申し上げておきます。
それから地方の法人課税については、やはり地方分権との問題も含めてもう少し時間をかけて十分に議論していく問題というふうに考えています。
〇森下委員
私も従来から意見を申し上げていることと重複するかもわかりませんが、この法人税の税調のまとめは、やはり実効税率10%低減ということを、平成12年というふうな年度を明確にして、そして2段階でやっていくのだと。平成10年度は、5%をやっていくということをこの機会に明確にしておく必要があるのではないかと。行政改革のほうも、皆さん方のいろいろなご努力によって2001年というふうな年月が明確にされている。法人税改革も年月を明確にして、そしてパーセンテージをワンステップ、ツーステップでやるということを明示する。ぜひこのとりまとめをしていただきたいと思います。
特に課税ベースの拡大のほうも、お互いに痛みを分けてでも検討しようという機運になっていますので、この機会にそこまで踏み込んでやっていただきたい。そして、先ほども皆さん意見が出ているように、もう6年というふうな長きのことではなしに、やはり21世紀に実効減税を間に合わすということからすれば、最低でもやはり4年でしないといけないのではないか。そうすると、必然的に平成12年ということが明確になってくるのではないかと思うので、その点もあわせてお願いしたいと思います。
もう一点、地方税ですが、まだまだ論議がこれから深まると思いますが、ぜひ本年度の税調のとりまとめとしては、来年度において地方税を本格的に論議するということを明記していただきたい。そして、中央の行政改革と関連づけ、地方の行政改革、地方の歳出削減を前提に、地方税全体の体系を論議をしていく。外形標準的なものがどうなるかということはこの中で大きく論議していく。地方の自治体の改革も含めて、地方税の全体系はどうあるべきなのかということを来年から本格的な論議をしていくということをひとつぜひ明記していただきたい。
〇栗田委員
まず、法人課税の税率の引下げの問題ですが、現在の地方公共団体の厳しい財政事情から考えると、地方法人課税について税収中立でぜひお願いしたいと思います。
福井県の場合でも法人関係税が税収の大宗を占めており、税収を確保するという意味においても、また、地方分権の推進という意味においても、地方の法人課税はぜひ税収中立でお願いしたいと思います。
それから、事業税についての外形標準課税、この点は前回触れましたが、事業税の課税の中で社会保険診療報酬に対する事業税の課税の特例措置がありますが、これは従来からこの税制調査会でもたびたび指摘されているわけですが、手がつけられておりません。それ以外の課税の特例は順次改善されてきているわけですが、この社会保険診療報酬に対する事業税の課税の特例措置について、地方自治体からの要望も強いですし、課税の公平という意味からもぜひ見直しをお願いしたいと思います。
〇大田委員
法人税は、やはり今の状況を考えると実質減税すべきだと思います。ただ、問題は財源でして、歳出削減の余地は十分にあるのですよね。公共事業一つとっても、事業の効率化を図ることは十分に可能で、それができない政治というのが本当に残念だと思います。だから、税の枠の中でだけ議論すると財源も生み出せないのですが、ニュートラルという方法しかないのでしょうが、政策としては実質減税すべきだと思います。
せめて、ニュートラルにする場合でも、移行期間を短くする。前々回に、これは経済界とか通産省が示している案だが、4年移行のケースもあわせて提示して両方議論させてほしいというお願いをしたのですが、やはり早い段階でやるということが今の状況では必要と思うので、4年移行の案もやはり検討すべきと思います。今出された案は、法人税減税による増収を全く見込んでないのですが、やはりそれも見込めると思うので、短期間移行ということもぜひ検討材料にしていただきたいと思います。
それから法人税の改革の中では、法人税の中の構造改革も必要で、前に本間先生がちょっとおっしゃいましたが、今の法人税は0.6%の企業が法人税収の6割を担っているという、これまたいびつな状況です。過去の経緯では、引当金を設置するたびに、これは大企業にとって有利だからというので中小企業の軽減税率を下げてきたというような経緯があるので、ここで課税ベース広げるわけだし、それを考えると、私は中小企業との軽減税率の幅は縮小していくべきだというふうに思っています。
それから地方税の外形標準については、ぜひ早急に本格的な検討に入るべきと思います。それから連結納税についても、早急に検討に着手すべきだと思います。
〇石特別委員
純然たる質問を1つ、我々みんなの共有すべき理解だと思うので。35%にするということは、2.5%税率を下げるわけだから、1兆円ぐらい減税が必要なわけですね。6年間でやるということは、その1兆円を6分の1ずつ切っていくという、それでかつ課税ベースを広げて、毎年毎年同じ額だけおそらくやっていくというのは難しいと思うのですよね。そこで、今議論すべきことは、そのような操作の中で、減税分を先倒しにして、あと増税分を後ろにするとか、6年なら6年の間の操作が可能かどうかということと、仮に3年とか4年とか、今ご意見が出ていますが、それは理論的に可能かどうか。例えば税率 2.5%分をドカッと初年度にやって、ドカッと課税ベース上げることも理論的に可能ですね。
ただ、それはあまりにも企業会計上難しいので、最低限5年が必要だ、3年が必要だ、6年必要だというふうに議論がなるのか。そういう技術的な問題と、税収確保の問題と、単年度ずつとっていった、これは平均値ですよね。増減率の平均値だから。平均値というのはおそらくかなりばらけたところの平均値なのか、それとも均衡的に出てきたところの平均値かで随分違うと思うのですよ。それによって単年度とれば減税の年もあるし、増税の年もあるということならば、減税の年を少し前にするとか、いろいろな組み合わせはあると思いますが、それを一体どう見るか。
それから名目成長率1.75から 3.5という予想の中でやってますが、おそらく皆今心配されているのは、1.75までいかないではないかという影響ですよね。大田さん言われた自然増収というのは果たして見込めるのか見込めないかも問題だと思いますが、すべて不確定な中での議論だから無理とは思いますが、6年間一括で議論することと単年度に区切ったところのギャップですね。もしくは、簡単にご説明できれば、皆さんの理解に役立つと思いますので。
〇伏見税制第一課長
今ご指摘があったように、経過措置をどういうふうに見込むかということによって、相当おそらく変動が出てまいります。極端にいえば、この計算、6年分の増収、要するに経過措置が6年間かかって終了して、その間に出てくる増収分を6年間平均にという計算になっていますが、例えば1年間で全部やってしまうということを考えると、当然、税率を引き下げる幅は大きくなるわけです。問題は、1年間はそれで持ちますが、2年目は経過措置がなくなるから、恒久的な財源として期待し得るようなもの、この分を除くと非常に大きな穴があくということになるわけです。だから、それを現在の財政構造改革との関係でどう考えていくのかという論点が1つ。
それから石先生からもご指摘がありましたが、引当金等の見直しの場合、経済団体のほうからのご意見としては、一応了解するというような感じを承っていますが、個別企業のベースで内々いろいろ私どもも聞いていると、それなりにやはり当たりが強いのだというふうにおっしゃられるところもあります。そういったところも考慮すると、やはりある程度の期間は見ておかないと、これは企業経営のサイドから見ても問題が生じる場合があるのかなという状況だと思います。
〇佐野特別委員
少数意見かもしれませんが、先ほど退職給与引当金、もっと圧縮してもいいというご意見が出ましたが、私は40%で維持すべきであるという意見です。1つは、40%から30%にするという理論的根拠について、たしか去年の小委員会なんかの議論を通じて、平均在社年数が12年から14年に延びていると。8%で回していくとちょうど4割が 100%になるというご説明だったように思います。ところが、今回、資料のその2というのを見ると、勤続25年以上の従業員に対する退職金の現在価値というふうに根拠が変わっているのではないかというところがややひっかかるというふうに思うのです。
それからもう一つ、勤続25年以上の従業員という考え方が、退職給与引当金を考える場合、果たして妥当かどうかということで、むしろ長期勤務者に対する功労という意味ではなくて、今度の山一証券等々の事例でも見られるように、5年とか10年とかそういう、長期とは言えないまでも、言ってみれば、その会社に一定期間勤めた方が、仮に倒産した場合、路頭に迷わせないという制度の趣旨だったと思うわけです。そういう意味で、勤続25年以上というものを中心に40%から30%とする考え方自体に私は若干異論があります。
それから12年、14年という去年の考え方にしても、8%で回るという利回り。実際、今は3%台ぐらいだと思うのですが、そういう数字を当てはめてみても、40%から30%にするという根拠が希薄ではないかという感じがします。先ほどから税率引下げの財源というようなことで、退職給与引当金の圧縮が重要な財源になるというのはわかるわけですが、と同時に、やはりこれから企業の競争が激しくなる。淘汰が激しくなる。そのこと自体、中長期的に見れば、日本経済の体質を強化するという意味でプラスの効果はあると思うのですが、問題は従業員の生活の安定ということも重視しなければいかんということからすると、退職給与引当金というものが、従業員というか、社員の将来の生活の安心感を与えている制度にもなっているのではないかということで、この引当金制度そのものを私は評価するわけであります。
それからもう一つ、40%が30%に仮になるとしても、この引当金の運用というか、これが資産に使われている。土地とか設備になってしまっているというケースがあると聞いています。これはこの制度の趣旨からいっても少しおかしいので、できるだけ、仮に引当金を圧縮する場合でも外部運用というようなものに、本来の制度の趣旨にあわせて、万が一企業が倒産、あるいは整理というようなことになった場合、従業員の生活の保障に使うように、これは制度の問題ではなくて、むしろ企業、労使間の問題かもしれませんが、そういう意見をつけておいていただきたいと思います。
いずれにしても、これからの世の中、競争が激しくなる。従業員、あるいは消費者の立場としても、将来の生活の不安というものが高まると思います。よく個人の金融資産が 1,200兆円あるというふうに数字が引き合いに出されますが、一方で個人の債務も 400兆円ある。これが経済の原動力にもなっているという一面があるわけで、将来に不安があると、はっきりいって、例えば住宅ローンを組むのも躊躇するというようなことにもなりかねない。そういう意味で、従業員の安心感、消費者に安心感を与えるといういう視点も必要ではないかと思います。
〇吉田特別委員
2度の発言で恐縮ですが、法人税の改革に当たっては、税率引下げ、景気対策等と絡んで、これをむげにけしからんというつもりはないのですが、どうも詰まるところは財源論になっていくだろうと。そのときに、減税を先行させながら、2~3年後には税体系の抜本的見直しで、間接税のほうにウエートを置いていったらどうかという意見がもしあるとするならば、これは少々、実は現場を実務的に私も見ているので、しばらく待ってもらいたい。
なぜかというと、個人企業においても、今年、決算期がもう来ています。大体1~3月分と4~12月分の2つに分けて、旧税率と新税率の適用をしながら、しかも概算控除の計算も別々にやらなければいかん。それから仕入れ率も大変複雑になってきているから、こういう計算はまことに大変な負担をかけている。それに加えて、今度は4月1日から地方税の消費税が入ってきている。これがまた、申告書類を見ても、国税と地方税を別々に計算させている。
この複雑怪奇なのを、実は先般、私もある講習会へ行ってみて税務署の職員の説明を聞いていますが、私は1回聞いたきりではとてもとてもこなせない。しかも、聞いていると、税務当局の現場指導というのは極めて回数が限られている。これを2人や3人の従業員を抱えた小規模企業がこなしていかなければいかん。だから、税の理論はわかるが、実務という問題になると大変な負荷がかかっている。これはしばらく、当分の間は、定着させるまでには、やれ消費税の税率をもっとアップしたらどうかとか、あるいは免税点を引き下げたらどうかとか、あるいは複数税率で、米麦のほうは課税しないようにしたらどうか、こんなことになってくると、大変な混乱が出てくると私は見ています。
そういう意味から見ると、今の先行型の減税の財源をどこに求めていくのかということは十分にこの税制調査会は頭の中に置いてやっていただきたい。それなくして、ただ、この機会が最終のチャンスだと言うだけでは、私は国民はこれを取り入れるわけにいかないだろうと見ています。
〇平田委員
私、この前のときに法人税改革については意見を保留すると申し上げたのですが、法人税の減税は基本的に賛成です。しかしながら、財源とをニュートラルでやっていくことになると、ただいまお示しのような増減収額の試算の形になるわけですが、実は法人税課税の小委員会、前期でおやりいただいた論議の中で一番重要な視点というのは、日本の国の法人の数が 240万社あるが、実際にその大半の税を負担していただいているのは、大田委員のおっしゃるように、わずか 0.6%の企業であって、大半は中小零細企業である。だから、中はともかくとして、小、零細の部分がまた 240万社の中で大半だから、その部分の税負担というものをどう考えるかという視点。すなわち、例えば小・零細法人を個人擬制によって考える税制を創るとか、そういう論議がなされないで、個別課税ベースの論点だけでおやりいただいたように私は理解していて、その辺は今後の問題としてあると考えます。
実際、法制度として会社をつくることができるわけだから、中小・零細法人はどんどん際限なく増えていくわけであって、結果的にこのような大変な数の赤字法人ができているということです。この赤字法人のできぐあいというのは私はまた別の理由があると思うのですが、中小・零細法人の場合、例えば個店経営というもので考えてみると、その個店を親代々相続をして経営をしていく中において、戦後の50年のうちにどれだけ公的な経費が会社の収支計算の中に入ってきたかということを皆さん考えていただきたい。
例えば自動車税から始まって、最近の法定福利費の増大、さらにまた簡易課税による消費税の損金算入とか、同じ個店経営の会社の収支計算の中で売上があまり変わらなくて経費の額がものすごく増えてきているわけでして、これだけ考えてみても赤字法人が増えるのはやむを得ないと考えられます。だから、そういう点から言っても、中小・零細法人に対する論議は、課税ベースをただ拡大するだけで処理することは短兵急であって、単に増税にだけしかならないと思うわけです。
それで、この前ちょっとご質問したのですが、少額の減価償却資産を10万円から20万円にするということは一体どういうことか。これは制度の乱用があるからだというお答えでありましたが、実は中小・零細法人にしてみれば、10万円から20万円になったということは大変な税制的の福音なのですね。長い間待ち望んできたものをかち取ったというような感じであって、やっと20万円になったのに、またそれを10万円に下げるのかという、まさに中小法人、零細法人の経営者たちにしてみればそういう意外な受けとめ方が多いのではないかと思うわけです。だから、私はそういう中小・零細法人に関する課税ベースの改正については、ぜひ今後の法人税改革の中で慎重に考えていただきたいと思うわけです。
それから消費税問題にちょっとさかのぼりますが、事業税に外形標準という多少消費税に似たものを入れるという考えが今示されていますが、これも中小・零細法人の経営者たちは何を考えているかというと、私たちの払っている消費税というものは消費者の方から預かって払っているというような感覚というのはなかなかなじめない。極端なことを申し上げれば、やはり自分の利益の中から払っているという感じが強いのです。これは手続的に、だから外形できちんと消費税相当額を消費者の方からいただくという手続的なことが不備であるということから言えるのかもしれませんが、そういう意味で、例えば人件費が付加価値だから、人件費と利潤を足したものがあなたの消費税負担分にちょうどなってしまう考え方、これは現段階の今の付加価値のやり方ですが、そういったこともなかなか理解ができないのが現実でして、私は第1回の総会のときに、国民納税者の目というものがこの税制調査会の一番の基本的な立場ではないかということを申し上げた、その点から申し上げると、国民納税者とは、一部の税をたくさん負担している方ばかりではなくて、数からいえば中小・零細法人、かつまた個人事業者 550万ぐらいおられるが、そういう方たちの目、かつまた、源泉徴収をされているサラリーマンの 4,500万の方たちの目、それらがやはりこの税制調査会の視点としては重要ではないかと思うわけです。ぜひそういう意味で、課税ベースの拡大の中で中小・零細法人が増税になるような部分というものは特に気をつけて見ていただきたいと思います。
〇水野(忠)委員
連結納税の話が先ほど少し出ましたが、これから金融持ち株会社、その他徐々に出てくると思いますが、1つには、持ち株会社になった場合の持ち株会社にするときの税制をどうするかという問題がありますが、もう一つは、持ち株会社になって子会社化された、いわゆる企業の集団ができ上がったときに、持ち株会社そのものをどう考えるか。今の法人税制だと、受取配当というのは原則として課税されないということになるので、そうすると、非常に大きな集団の子会社を抱えた持ち株会社というものそのものに課税所得がなくなってしまうようなことになる。そういうような問題が出てまいるので、いずれ、この連結といったものについて検討せざるを得ないような状況が出てくると思うのです。
それともう一つは、今ある、いわゆる事業持ち株会社と呼ばれてますが、事業会社の間についているいろいろな子会社、これと親会社とのグループとしてどういうふうにとらえるかということなのですが、これは昨年、法人課税小委員会でも随分議論したところですが、なかなか、なぜ連結にしなければいけないのかという根拠がいまだにはっきりしないところがあります。最近の通産省の案などでは、それこそ損益を相殺するための連結制度といったものまで提案されているようで、そうなると、単なるグループとしての税負担を軽減するための税制になってしまう。だから、連結を考えるに当たって、なぜそういった制度が必要であるのかと。いわゆる企業の減税といった問題を離れた場合にも、やはり企業のシステムとしてそういった税制が非常にプラスであると。こういうようなことが何か盛り上がってくるような状況でないとなかなか、検討する、技術的な論点も多いわけで、その辺難しいと思うわけです。
ただ、先ほど申したように、いわゆる持ち株会社絡みでの議論というのはどうしても出てくるので、ここはやはりひとつ区別をした、ひとつ認識をはっきり分けた上で検討するということにするほうがよろしいのではないか。一緒になって持ち株会社が増えてくるから連結を考えるというような簡単な論理をつくると、非常に、政策絡みなのか、そうでなくて純然たる問題なのか、よくわからないようなところが出てくるので、この点には留意していただきたいと思います。
〇竹内委員
今日、法人税の実質的ないろいろな数字が出てきたということ自体大変な改革だと思う。まず第一に、この課税ベースの議論を世の中の動きにあわせてきちっとした見通しをつけるのは非常に重要なことだと思います。
まず、賞与引当金が 4,000億円以上あるというのは非常に大きな発見で、こういう形で月給が低く抑えられ、半年ごとの後払い方式になっているのは、昔はインセンティブになったのでしょうが、現実には消費にマイナスの傾向がある。また国際的に社会保険料を比べるときに、日本だけが15カ月とか17カ月払いだと、保険料の水準が高いのか低いのかわからない。それから12で分けて払う年俸制の社員も増えていて、いろいろな形になっている。賞与引当金を廃止して同時に社会保険や税制の枠組みを考える方法がいいと思います。
それから退職給与引当金、これもやはり一種の後払い方式で、25年になればこういった形の恩典が得られるということで、雇用の流動化に対してマイナスの影響があります。したがって、こういう引当金を下げて、自己貯蓄のために給料が前払いされることによって、自分で老後の備えをするとか、いろんな選択肢が出てくる。企業が引当金の形で累積しておくという方式は、国際競争力から見て非常にマイナス。かつ、特に30代、40代の勤労所得者層にとって、前払いしていただいたほうが消費にとってはプラスの影響があると思うし、この辺は企業によってばらばらというのではなくて、やはり考え方として、きちっと詰めていただきたいと思います。
それから2番目に、ここに 2.5%の引下げ案で、35%に基本税率を引き下げるという考え方、国際競争力の観点というポイントもありましたが、私はものすごい数字だと思っている。基本税率35%というのは、大体アメリカが35%で、イギリスが31%、ドイツの場合はいろいろありますが、45%という数字。等々考えても、地方税が 0.7%プラスされて、全体で 3.2%引き下がるということは国際基準から離れたものではない。むしろ基本税率を35%にして、法人事業税の分、地方税の部分は、地方ごとでいろいろ努力していただく。どうしても企業を誘致したいとか人を誘致した場合は、税制の面で地方ごとに競争して、基本税率に対してさらに引下げ幅を拡大する努力をしていただきたい。そうすれば、基本税率35%という数字は国際的スタンダードから見て非現実的な数字ではなくて、評価したいと思います。
それから3番目に、何年でやるかという問題、それから将来の直間比率の問題があります。将来の財源としては消費税というものが不可欠である。アメリカも、基本税率は35%ですが、消費税は6~7%になっているし、ヨーロッパも、やはり18~20%という消費税率を見込んでこの法人税率が成り立っているわけなので、これをやはりきちっとシナリオとして、そういうことが国際スタンダードなのだというような方式をきちっと出すべきではないかと思います。増収の可能性もありますが、増収はやはり時間をかけなければきちっと出てこないので、時間をかけて増収効果を見るという方法もあると思います。
〇中西委員
前回申し上げたことで少し重複すると思いますが、きょうは景気対策という視点から特に強調して申し上げたいと思いますが、先般、過日、7~9月の経済指標がいろいろ指数が出たわけですが、依然として非常に消費も悪いし、新しい持ち家の着工もそれこそものすごい率で下がっているし、自動車も在庫が増えているというようなことで、経企庁も遂に「回復」という字を取り去ったということで、今、下降局面に入る危険もあるという意見も出るぐらいのことだから、やはり私は経済という今度の景気対策は非常に大事な局面に来ていると思います。
ところが、ご案内のように、財政構造改革と景気対策は相矛盾すると俗に言われて、財政支出は間違っても財政出動できないし、減税もそういうことになるのではないか。したがって、何もできない。金融は超低金利。そうすると一体何があるのだということで、このままいくと、これはもう変な逆スパイラルに入る危険性は私は十分あると思うのです。
私は唯一、この法人税減税がやはり市場に与える景気浮揚のインパクトになり得ると思うのです。減税もある意味では、入ってくるほうを抑制するわけだから、よろしくないではないかという意見もあるのですが、サッチャーあたりの言葉をかりれば、彼女がこの間来て言ったのですね。やはり重税国家というのは重規制国家だと。したがって、重税を取り払って軽減していくのは一つのスモール・ガバメントを目指すことであって、これは財政構造改革と矛盾しないというふうに言っています。私も全く同意見でして、今ここで法人税をやはり思い切って下げる以外に、この景気の手詰まり状態を打破するカードはちょっとほかにないのではないかなあと。個人はどうしてくれるのだという意見もありましたが、今日本の企業にかかわらない個人というのはあり得ないと思いますよ。ほとんどの方が、農業、その他は別にして、大多数の人が何らかの意味で企業にかかわっているから、企業が雇用調整に入ったら、すべての消費者も個人も吹っ飛ぶわけだから、やはりその辺やるべきだ。
そこで私は、産業界の代表の方もおっしゃっていますが、非常に景気にある種のインパクトを与えるような、例えば早ければ2年間で10%、2年が無理なら3年というシグナルを少なくとも10年度の改正で私は打ち出すべきだ。財源問題は当然ありますが、これはいろいろ今後議論を詰めなければいかんですが、当然、シグナルはピシッと出すということをぜひとも書き込んでもらいたい。これはタイムスケジュールと税額を、実質減税、10%なら10%をどの期間でやるかということを明快に出すことこそ、私は政府税調のあるべき論を論じる責務ではないかと思うのです。
具体的にそれがどこまで、例えば地方税、法人事業税、12%ございます。国税のほうは、37%を35%ということなら、これは非常にいいことで、これは国際平準化並みだと思うのです。
しかし、問題は地方法人税だと思います。これは12%ある。これをどうするかということですが、さっき大田さんもおっしゃいましたが、行革、この間会議が終わって、点数を言えというから、朝日に私は50点で落第と申し上げたのだが、加藤さんは0点をつけておられました。これはかなり厳しいが、結局問題は、地方自治体、相当むだがあるのです。
私、この間たしか具体例を申し上げたと思いますが、例えば東京都下のある区はここ数年で人口半減しているのです。にもかかわらず、職員の数は数年で倍増しているのです。それからみどりのおばさんのような、この間もありましたが、あの程度の方々に年収 600万円から 700万円払っているのですよ。これはとてもじゃないが、幾ら税金を取ったって足りません。それから京都の市バスの運転手さんの平均が 1,300万ぐらいかな。たしかそれぐらいですよ。多いことは結構なので、別に悪く言うつもりはないですが、これほとんど、諸井さんに悪いのですが、地方のリストラというかその辺を……。企業は、鉄鋼メーカーなんていうのはこの3年間で3割減らしているのです。ものすごいリストラやっています。
民間は大も小もみんなそれをやっているのですが、官ももう一遍、行革をその辺に視点を置いて、まず私は財源は行革リストラで引き出すという方針をもう一遍この税調でやるべきだと思う。税調であるがゆえに税制の範囲内で論じるという時代は私はもう終わったのではないか。当然、財政にもそういった地方分権の問題、地方財政の問題にも、あるいは場合によれば財投の問題も、広いスパンで総合的に議論をしなくてはならん局面に来ています。だから、私は財源は今後、前回も申し上げた、地方の外形標準課税の消費型付加価値税でどの程度代替していくかという議論は今後時間をかけてやらなければいかんでしょうが、いずれにしても、方向をきちっとやはり税調が示すべきだと思う。税調というのは、ポリティカル・アレルギーはあまり考えないで、やはりあるべき論をきちっと出すべきだ。とても6年先なんていうのは、私はよろしくないのではないか。去年の税調で、1%下げるということをこの税調が拒否したわけですから、私はことしはその辺を明快に数字で書き込んでいただきたいというのが要望です。
〇河野特別委員
地方の事業税の話はもう何遍も発言しているのでやめます。しかし、いずれにしたって、来年1年間で小委員会をつくって徹底的な議論をやるべき。それから入り口で、あまりA案、B案、C案だと固執しないという大原則をお互い確認する必要がある。議論をやっている過程で、またそこに戻るかもしれない。今日の自治省の用意した資料を見れば、ある一定の方向について強調してあって、それはそれで一つの有力な意見だと思うが、別の意見もあるわけで、歳出削減論もあるわけで、いずれにしても、もっと広範な議論をとにかくやるということが必要だということです。
それから、皆さんいろいろなことをおっしゃっているのですが、みんな腹の中で悩みに悩んでいることは、財政構造改革の法案ができて、橋本内閣の一つの看板なのだが、それが今行き悩んでいるわけですよね。それとの関連をどうつじつま合わせて実質減税論をやるかというところにいっているので、みんな腹の中でいろいろなことを考えながら、あえて、しかし財政構造改革法案は否定して、あのスケジュールやめちまえということを言うのははばかるから、小長さんが言ったみたいに、自然増収論という見方もあるし、それからもうちょっと技術論でいえば、赤字公債、年間1兆 2,500億円ずつ機械的に減らすということを書いてもどうだという議論もあるし、これは若干弾力化ですよね。
もう一つは、もうしようがないから、何年か先になって、どうせ法人税だって、4年であろうが、6年でけりつけようが、あとドカンと減収になるわけで、そのときに、何でそれを埋めるのかと。自然増収で埋まるのか、みんな危惧の念を持ちながらも、それぞれ議論をやっているわけです。そのとき出てくるのは、結局は大型間接税というものをより本格的に議論をもう一度巻き起こすしかないのかもしれないなと。しかし、政党的にも、当税調としても、それを今口に出すのははばかるが、それを全部腹の中にのみ込んで議論をやっているという人もいる。
これはいろいろな議論が出ているから、我々、いずれ答申を書く段階で整理しなければいかんのです。どういう姿勢でこの問題に取り組むかということについて。幾つか類型的に今申し上げたが、それぞれどこかの立場に立って議論されているわけです。それはそれで結構なのだが、税調で一本でその議論ができるかどうか。随分議論が分かれているように思うのです。今後、これが一番悩ましい話で、いや、その財政構造の話はもう財政審で、両性動物は石先生ぐらいのものだからいいではないかと。向こうは向こうで考えろと。こっちはこっちで税の議論だけで押し通すというのも一つの考え方です。メンションしないと。そんなことは考えもしないと。それは、今井さんだって、みんなそれぞれ重要なポストでいろいろなことを考えていらっしゃるわけで。これは、みんな悩ましいのですね。これがなければ、もっと単純明快な議論ですよ。法人税下げろという議論はね。実質減税論全部含めて。実際そういう時期だと思うが、そこのところとの兼ね合いをどういうふうに整合性をつけるかということで論者はそれぞれに悩んでいるわけですね。
私は去年から一番早く法人税減税論を言ってきていた立場だが、今最後にとどめを、12月15日か16日に一斉に決まるのですが、そこでどういうふうに落とし込んでいくのかというのはなかなか難しい作業だということ。それから、いずれにしても、この話は2年越しで考える。事業税のこととセットで頭の中で考えるということがどうしても必要な時点だと私は思うのです。
〇諸井委員
今起こっている地方の無駄というのは私も認めますが、それは地方分権したから起こっている無駄ではないのですね。中央集権のもとで起こっている無駄なわけです。その点がどうも誤解が多いような感じがする。例えば地方の職員の7~8割というものは中央が必置規制で定員を決めてやっている。その部分は地方が自分で行革ができない。そういう中央集権のもとの無駄なのですね。あるいは公共投資にしても、中央の景気振興策があれば、無理無理地方に事業をやらせる。そしてまた補助金でやたらいろいろなことを地方にやらせる。地方の負担分の最後の始末は結局また地方交付税なり地方債でもって見ていくことになるわけですね。今、地方が自己責任でやれない、そういう財政構造そのものが地方の無駄を起こしている。地方分権が地方の無駄を起こしているのではない。地方分権をやって、地方にみずからの支出の優先順位を自己責任で決めさせる。そのことが財政の改善につながっていく。そこのところをひとつぜひ誤解をしないようにしてもらいたい。
〇松本(和)委員
ちょっと弁解だけ、すみません。今初めて、みどりのおばさんということで 600万円と聞いてびっくりしたのですが、どこだか私は知りません。だけど、我々の町、近隣を考えると、ほとんどがボランティアでやっているわけですね。それから職員の問題等も、行革関係、2回指導を受けて、行革大綱をつくりながら、民間委託できるのはということで、その問題、それから事務・事業の合理化、あるいは組織の見直し関係、そういうことでやはり地方自治体も努力しているので、その点は、あれはごく一部のところではないかと思うので、ご理解願います。
〇伏見税制第一課長
事実関係だけ少し補足をします。先ほど佐野委員のほうから退職給与引当金についてご指摘がありました。昨年の案と考え方が違うのではないかというご指摘ですが、実は昨年の年末、結果的に時間的な制約もあって見送りになりましたが、昨年も退職給与引当金についての見直しの提案をしています。そのときの考え方と今回のものは同じです。法人課税小委員会でのいろいろなご議論がありましたが、その中にも盛り込まれている考え方をベースにしたものです。
それから在職年数25年以上のものをひとつターゲットにするというのはいかがなものかというお話もありましたが、私どもとしては、これはこれから変わってくる可能性が十分あると思いますが、現在の日本の賃金体系、あるいは退職金規定、これは公務員の場合もそうですが、全体として長期の在職者について賃金が上がり、退職金の支給割合も比例的でなく上がってくると、そういう構造をベースにして考えていたというものです。
それから、恐縮ですが、お手元の資料で『法人課税関係資料(その1)』(資料1)というのがあります。ちょっとだけめくっていただければと思いますが、その中で16ページ、17ページに資本金階級別引当金残高割合、あるいは利用法人割合というグラフがあります。細かくは、お時間の関係もあるので、ご説明は省きますが、それをごらんいただくとわかりますように、現行の引当金、これはどんな企業でも利用可能なようになっていますが、現実に利用されているのは、圧倒的にいわゆる大法人、大企業に偏っているわけです。
今回の見直し、先ほど計数もごらんいただきましたが、引当金の見直しによる増収というのは非常に大きくなっているわけです。したがって、これを見直して税率を引き下げるということになると、その18ページをごらんいただくと、「法人税率の適用概況」というのがあります。大法人もありますが、例えば真ん中のところに中小法人という欄があって、適用の税率が 37.83~ 49.98%という欄のところも相当なウエートがあります。中小法人でも基本税率が適用になっている企業というのは相当あります。基本税率が下げられると、そういった中小法人にも相当の効果が上がるはずだということです。
それから少し戻って13ページに、「法人課税の見直しによる増減収効果」という図があります。この意味ですが、水平線から上のほうに増収の図を書いてあります。課税ベースの拡大、この中に実は2種類あると思われます。1つが引当金の見直し等によるものでして、これは経過措置が終了すると、財源としてもなくなって、もう増収が出てこないわけです。それから、場合によっては、恒久的な措置というものも考え得るだろうということで、この上の欄が2段階になっています。したがって、この経過措置が終了すると、黒く塗ったところが白くなりますが、ここの平成15年度以降というのはまさに実質減税にならざるを得ない。
従来私どもは、国会等でもご議論があって、引当金の見直しをして、例えば所得税の財源に充てたらどうかというご意見もありましたが、恒久的な財源にならないものでそういった措置はとれませんというのが今までのご説明です。
ただ、昨今の諸情勢を考えると、将来、財政上非常に厳しい局面になることは間違いないわけですが、今の段階として、引当金についても見直しをして、税率を下げる、そういう選択をしてはどうかということで、法人課税小委員会以来のご議論を踏まえた措置になっているということです。
〇加藤会長
まだご議論があると思いますが、この問題はこれからも15~16日に向かって、毎回議論していかなければならないので、そのときにまたご意見をいただきたいと思います。
[土地税制]
それでは、次の議題に移ります。土地税制ですが、第6回の審議において、土地をめぐる状況や土地課税の基本的な考え方について、事務局より説明を受け議論しました。土地をめぐる問題については、先般とりまとめられた政府の経済対策において「土地の有効利用の促進」を4つのテーマの一つとして取り上げています。
今日は土地税制についてご意見をいただきたいと思いますが、まず、最初に事務局より説明を受けます。なるべく説明は繰り返さないようにして、新しいところだけお願いしますが、西原税制第三課長と、それから片山固定資産税課長にお願いします。
〇西原税制第三課長
それでは、お手元の『土地・住宅税制関係資料(説明用)』(資料5)によってご説明をします。
目次を飛ばしていただいて1ページ目、ここでは地価の動向について過去からの流れを示しています。3度の地価の高騰を経て、土地基本法というものが平成元年に制定されているということです。
次のページ、2ページ目をお開きいただきたいと思います。最近の土地の動きということの一つの例として、土地の登記件数を見ていただいています。バブル崩壊後低迷していましたが、ここでまた回復してきている。黒塗りにしているのが、1月~9月までの登記件数という形です。
次の3ページ目をごらんいただきたいと思いますが、オフィスビルの賃料と、それから商業地の地価の国際比較、1996年の段階でのものです。賃料については、いわゆる利用価値、それから地価については資産価値というような形になろうかと思います。ごらんのような形になっています。
続いて4ページですが、これは前回ご説明したので省略します。
続いて5ページ目です。最近、経済対策だとか、あるいは有効利用会議というような形でいろいろな議論が出ています。下のほうだけ読むと、「土地・住宅税制については、土地の公共性を踏まえつつ、土地の有効利用の促進及び土地取引の活性化、住宅対策の推進を図る観点から、地価税等の土地保有課税、個人・法人の土地譲渡益課税、買換え特例などの見直しについて検討する」となっています。
それから次の6ページ目です。これは税制調査会で1月に出されたものですが、ここでも土地をめぐる問題について触れています。省略します。
続いて8ページ目、土地税制改革の見直し、8年度、9年度の概括表です。これについては中身は次のページ以降なので、省略します。
9ページに「地価税の概要」が出ていますが、地価税については、最近、報道でいろいろごらんになっている方もあろうかと思いますが、各方面から、現在の経済情勢にかんがみて、いわゆる政策的な見地から廃止、あるいは凍結すべきではないかというような意見が出てきています。
この地価税について、次のページをごらんいただくと、税収が棒グラフで、それから公示価格での地価の推移が出ています。ごらんのとおり、地価の下落に伴って税収が減っているという状況です。
次のページ、申告件数ですが、これも同じように、やはり地価の下落に伴って、ごらんのとおり件数が減ってきているということです。
次の12ページをごらんいただくと、その申告件数のうち法人について見てみると、上の棒グラフの方では、いわゆる法人数 240万社のうちで地価税を払っているのが1万8,000社、すなわち1%弱ですが、下の方を見ていただくと、そういう法人が資産価値としては40%程度を保有しているという状況です。
次の13ページです。そういった法人数ですが、大法人、中小法人、どういうような内訳になっているかというのをごらんいただいています。
次の14ページですが、これはどういったところに納税が起きているかということで、これは国税局別で見たものです。
それから次の15ページです。地価税の負担がどういうものか、どの程度なのかというものを見たものですが、これを10年間の平均利益、経常利益率と比較してみると、納税申告の 100位で見ると、平成8年分を右側で見ていただくと、経常利益に対して5%以下の負担というのが86社、7年分に比べるとかなり負担軽減が図られているのは税率が 0.3%から0.15%に落ちたということの影響かとも思います。
それから次のページは平成7年の税制調査会における答申です。
飛んで20ページ目です。譲渡益課税の概要ということで、ここで一括して掲示していますが、次のページをごらんいただきたいと思います。
譲渡益課税と申しても、譲渡益を計算する場合には特別控除という形でいろいろ控除の仕組みがあるということをお示ししています。
次の22ページ目です。これも前回説明したので省略しますが、一番上がバブル前と言われるもの、それから一番下が最近の例ですが、対比すると、右と左の端だけがかつてと違っているということです。軽減部分が残り、あるいは39%というのが残っている。これは所得税と住民税合わせたパーセンテージでお示ししています。
次の23ページ目ですが、これらを給与所得者と、それから土地売買の長期譲渡所得、これをどういう実効税率かというのを示したものです。ごらんのような形になっています。
続いて24ページ目です。これは譲渡益を出すときの計算例です。時間の関係で省略します。
それから次に25ページですが、譲渡益についてどのような状況か、先ほど特別控除というのがあるというふうに申しましたが、ごらんのとおり、実は譲渡益のうちの60%に相当する部分が特別控除でもって非課税になっているという現状です。
続いて次のページ、法人の譲渡益追加課税の仕組みです。時系列に上から並べていますが、最近では15%の追加課税になっている。時系列に並べています。
次のページです。事業用の買換え特例の制度、これについても前回ご説明しましたが、所定の買換え・交換により生じた譲渡資産の譲渡益については、買換資産の帳簿価額を圧縮することによって、原則として、その80%相当額まで損金算入が認められると。いわゆる課税繰延べのシステムです。移転促進だとか、あるいは構造改革、設備投資、そういったいろいろな形でこの課税繰延べの仕組みがあるわけです。
次の28ページ目です。居住用財産の譲渡所得についての課税の状況をお示ししています。左側が保有の状況で、長期、どのぐらい保有したかによって分けていますが、10年超のところで3つにさらに分かれています。上の、いわゆる墳墓の地と言われるもの、相続等で受けたものですが、そういったものとか、あるいは一定の要件のもとに2億円以下、あるいは居住が10年以上であるもの、こういった要件のもとに選択的に、右側に移ってまいりますが、買換え特例の課税の繰延べ、あるいはその下にあるような軽減税率というような措置の選択制があります。
次のページ、これについても前回ご説明したので省略します。
それから次のページ、登免税です。これについても前回ご説明したので、省略します。
31ページですが、昨年度の改正において、住宅減税については住宅促進税制の見直し、あるいは登免税、印紙税、これについても軽減措置を図っているということです。
続いて32ページです。そのうちの住宅促進税制について昨年の見直しの内容について書かれています。
続いて33ページをごらんいただくと、その減収額というものが出ていますが、租税特別措置による減収額のうちの一番大きい部分、6,600億円の減収効果に住宅促進税制がなっているということです。
最後のページに、各国比較で住宅の譲渡に関する課税の取り扱いをお示ししています。
〇片山固定資産税課長
続いて地方税ですが、前回お話ししたことと重複を避けて、かいつまんでご説明します。
35ページ(資料5)からずうっと前回と同じ資料でございますので、40ページを開いていただきたいと思います。40ページは「平成10年度における固定資産税の宅地の価格の修正について」ですが、従来、固定資産税は一度評価すると、3年間据え置く制度です。そうすると、昨今のように、地価が下落しているときに、2年目、3年目にはいささか具合の悪いことが出てくるということもあり、平成9年度の税制改正で、平成10年度、11年度、地価が下落する地域についてはその下落分を評価額に反映させて修正しようという仕組みを新たに設けました。
最初の適用で、平成10年度に向けて、現在、その修正の作業を地方団体でやっています。これはまだ見込みですが、2のところにあるように、下落修正を実施する見込みの市町村が 1,737です。下落修正をすると、これも見込みですが、トータルで、平成9年度に比べて宅地の総評価見込み額が 3.4%低くなるということを予測しています。下落の修正が行われると、固定資産税についての税負担の計算の仕組みが変わってくるということはもちろんありますが、それ以外に、3の2)にあるように、登録免許税と不動産取得税では固定資産税の評価額を使っているので、下落があったところはそれがそれぞれ両税に反映するということになります。
次の41ページは各県別にまとめた下落の見込みです。例えば東京都を見ていただくと、9年から10年にトータルで宅地の総評価見込み額が 5.6%減ずるであろうという資料です。
それから42ページからは、現在私どもで進めている、いわゆる情報公開、納税者等に対する課税情報の開示について少しご紹介したいと思って資料をつけています。最初の42ページの資料は、固定資産税における路線価の公開状況です。従来、相続税は路線価の公開をしていましたが、固定資産税についても順次公開度合いを高めてまいりました。平成9年度の評価換えに際しては、すべての路線価を公開しようということで取り組んでまいりまして、それがほぼ達成されています。若干、公開の時期が、納税者の縦覧の時期とあわせた団体が73%、それ以外は少し縦覧より遅くなったというような嫌いはありましたが、いずれにしても、固定資産税についても路線価の公開がほぼ達成されたというふうに理解しています。
それから43ページは固定資産税の課税明細書をつけるということで、当たり前といえば当たり前なのですが、従来、固定資産税は縦覧があるので、納税通知には税額だけ書くということがありましたが、本来、それぞれの課税資産の内訳、課税情報というものが納税者にわかるようにしようということで、これも取り組んでまいって、平成8年までははかばかしくこの送付は進まなかったのですが、平成9年に一挙に 3,018団体までこの課税明細の送付が進んで、かなり公開度が高くなったと思っています。ただ、これによってやはり、情報開示するので、課税誤りだとか、そういうトラブルが過渡的には発生していますが、それを克服して、さらに適切な課税に進んでいくものと考えています。
それから44ページは固定資産税の課税台帳の縦覧制度ですが、これは地方税法に、3月に納税者、その他の関係者に縦覧しなければならないという規定があります。この縦覧は、その後に引き続いて、不服があった場合には不服申し立てができるということとセットになっている手続です。
ところが、幾つか問題点があって、1つは、これは実例とか最高裁の判例とかで認められているというか、そういうことになっているのですが、縦覧というのは例えば納税義務者は当該納税義務者本人の資産のところしか見られない。したがって、近隣、その他の他人との資産の評価の比較ができないという取り扱いに1つなっています。それから、実際に税負担が転嫁されているであろう、例えば借地人、借家人、そういう人も課税情報の開示を受けられないという取り扱いに今なっていますが、従来からこうやって守秘義務と課税情報の開示との関係で、どちらかというと守秘義務の保護の方により重きを置いた取り扱いになっている、それに対して情報の開示をもっと進めるべきではないかという意見があって、私どもも今、そういういろいろな意見を聞きながら勉強しているということのご紹介です。
45ページ以下、前回と重複資料なので、省略します。
〇加藤会長
それではどうぞ。きょうは12時25分ぐらいまでの予定です。
〇河野特別委員
議論を始める前に、ちょっと事務当局に、資料というのか、説明してもらいたいのだが、1日の日に、衆議院の予算委員会、特別委員会だったかな、宮沢さんと今の首相がいろいろな議論をやり合って、あれが一つの転機になったのですよね。あのときのメインテーマはもちろん公的支援という話であったのですが、そのときに、総理は宮沢さんとの一問一答の中で、政府税調並びに党税調に対して、有取税と地価税のことをメンションしたと。僕はあのテレビ、聞いてなかったのですよ。時間がなくてね。夕刊をちょっと見たが、あれは要約かもしれないので、よくわからない。
ただ、我々は総理の諮問機関だから、総理が国会で宮沢さんとのやりとりの中で言ったということは一応頭に入れておかないといかん。そのとおりにするかどうかは全然別問題ですよ。しかし、総理が国会の中で言ったということはやはり頭の片隅に置いておくべき性格のものだと思うのですよね。まずそのことを、一体どういうせりふで総理があの問題をやり合ったのかということだけ、ちょっと教えてもらいたい。
〇加藤会長
これは資料を用意して、この会議が終わるまでにはお配りいたしますが、ちょっとその前に……。
〇薄井主税局長
今会長から申し上げたように、多分書き取ったものがあると思いますから、それを客観的にお配りしたほうがいいかと思います。流れからいうと、宮沢元総理の質問に対して、土地税制についての答弁のところが今のご指摘の部分でした。その後に金融課税についてもやりとりしていますが、注目されたのは土地の方かと思います。その表現ぶりは後ほど見ていただきますが、地価税の凍結を含めていろいろな意見が世の中にあることは承知しているというような言い方をされました。つまり、総理の答弁の中で、世の中の意見とはいえ「凍結」という言葉を使ったというところが注目されたのだと思います。後半の答弁で、土地をめぐる現在の状況の中で抜本的に見直しをしていく必要があると言われてますが、これは地価税だけではなくて、土地税制全体について言われたというふうに私には聞こえました。また、最後に、とはいえ、こういうことについては政府税調、党税調でご議論いただいているので、そこにも自分の気持ちは伝わるようにしたいというような趣旨のことも言っておられました。後ほど配ります。
〇今井委員
先ほどご説明あったように、最近は地価の下落が非常に大きいわけでして、そこで、今年の2月の閣議決定で、土地に関しては地価抑制型から有効利用型に明らかに政策転換をした。そして、また6月以降のいろいろな景気対策の中でも土地の有効活用というものが取り入れられているわけです。その結果、土地や建物の規制の撤廃緩和というものは相当にここのところ進みました。ただ税制だけは、これはこういう税調の場があるから、税制の問題についてはまだ完全に残っているわけです。
したがって、私はこの際、今まで地価抑制のために4~5年前に設けられたさまざまな税制は一たん全て撤廃ないしは凍結を考えるべきだ、凍結すべきだというふうに思っているわけです。その際やはり考慮すべきは、先ほど固定資産税の最近の抑制のお話がありましたが、固定資産税については、私が前にも申し上げたように、地価抑制政策が出てから今日まで、おそらく1兆円以上、応益がそれほど増えていないにもかかわらず、税収としては土地だけで増えているわけです。だから、そういうこともひとつご考慮の上、この土地税制については、前のバブル期に設定したものはすべて撤廃ないしは凍結すべきであるというふうにご提案申し上げたい。
それからもう一つだけ、ライフスタイルの変化で、今個人の住みかえということが起こるわけですが、バブル期に土地、建物を手当てした人は大変困っているわけです。だから、それを処分して建てかえるときの損益通算ですが、今、単年度でやっていますが、これは何とかもう少し、3年とか4年とか延ばせないかと。そして、これはものすごく大きな金額かもしれませんが、そういうことによって、一番中堅的なサラリーマン層、所得層の人の住宅が一番おくれているわけだから、そういう住みかえ等ができるだけうまくいくような方策をとっていただけないかというふうに思うわけです。
〇松尾委員
今、この時期、やはり不良債権への対応、これが非常に重要になってきているということはよくわかるわけです。税制として何ができるかということになります。そういう状況の中で、土地譲渡益課税についての見直しは私はある程度やむを得ない情勢だろうと思います。
それから土地の証券化を促進するという観点から、特別目的会社、つまりSPC、これに税制上の優遇措置は考えていいのかもしれない。ただし、SPCに税制上の優遇措置を考える場合、租税回避に使われるおそれもなきにしもあらずで、その点は十分チェックする必要があると思います。
地価税は、税率0.15%にすぎませんで、しかも損金に算入されているわけでありますけれども、赤字法人も膨大な土地を所有しておりますと課税されるというので経済界に不満があるのだろうと思います。土地の有効利用の促進、これは最近特に強調されていますが、地価税自体もやはり土地の有効利用の促進に資する観点から導入されたわけです。単なる火消し的な役割を求めたわけではなくて、これはあくまでも長期的、体質改善的な措置として導入したわけです。土地の公共性にかんがみると、全国的に適切な税負担を求めるのは当然であると思います。
さらに、現在の地価水準は下がってきているといっても、国際的に見ると非常に高い。しかも土地神話が消え去ったわけでもない。依然として土地神話は根強く残っている。こういう点も十分考える必要があると思います。廃止、凍結論が勢いをつけてきているわけですが、凍結すればやはり復活は非常に難しくなると思います。長期的、体質改善的措置として導入した以上は、やはり廃止、凍結はすべきでないと私は思います。
〇水野(忠)委員
ちょっと質問でお伺いしておきたいのですが、先ほどの説明用の資料(資料5)の5ページですが、「土地の有効利用促進のための検討会議」の提言、この下のほうですが、今のご意見にも関係しますが、「土地の有効利用の促進及び土地取引の活性化、住宅対策の推進を図る観点から」とあって、「地価税等の土地保有課税などの見直しについて検討する」。これはいわゆる土地の有効利用と保有課税との関係ですが、もともと本来の土地保有課税というのは、いわゆる仮需要を抑制するということで、投機的な土地保有をしてしまうと有効利用ができなくなるので、保有課税で、土地のコストを引き上げることによってむだな土地保有はなくすという趣旨なのですが、有効利用の促進ということから土地保有課税などを見直すと、ここがちょっとよくわからないのですが、事務局のほうで何かおわかりでしたら……。
〇西原税制第三課長
これについては、おそらくいろいろな議論があるのだと思います。確かに、先生おっしゃるような、保有コストをかけることによって有効利用の促進になるのだという意見、もちろんあります。それと同時に、一方で、逆にその保有コストがあるから、なかなか土地が動かないのだ、有効利用すべき土地がなかなか買い手に回らないのだというような逆の意見もまた会議の席上で出てきたりして、そこのところは今後いろいろ議論されていくのだろうと思います。
〇加藤会長
西原さん、その議論はみんなどっちもあり得るような感じの議論なのですが、何か判断するための資料みたいのはありますか。できますか、そういうのは。
〇西原税制第三課長
この土地有効利用会議のための検討会議、ここにおける提言、これは抜粋部分ですが、これ全体をお示しするということは可能だと思います。
〇加藤会長
いや、数字でもって出ますか。例えば地価税を凍結というのがありますね。凍結してしまったら、本当にみんな有効利用のためには売りに出さないで持っているのではないかとか、いろいろあるでしょう。何かよくわからない。しかも実際に地価税を負担している人はあまり大きな範囲ではないのですよね。そういう人たちが、地価税安くなったらやはり持っているのではないか。つまり売りに出すことはないのではないかというほうの議論もあり得るわけです。それについて何か判断できるような資料みたいなものはないでしょうか。
〇西原税制第三課長
この検討会議自身では特にそういうような、かなり経済分析的なものは出てきていませんが、例えば説明資料(資料5)の15ページですが、この地価税がかかっていることによって、どの程度負担が重いと感じられるのかというようなものは、このような形で公示されている 100社について、過去10年の平均の経常利益に対してどのぐらいの負担になっているのかというのはあります。それのバックデータは参考資料(資料6)のほうで20ページ以下に細かい資料をつけていますが、そういうような形で地価税の負担が、各企業体というか、それぞれごとによって負担の感じが違っています。それがどういうふうに響いてくるのかというのは実際のところなかなか分析は難しいのかなという気はします。
〇加藤会長
負担してもらうならば、負担が重いから嫌だというのは困るので、負担すべきものなら負担してもらいたいと思いますしね。そういうところは……。何かあります か。
〇西原税制第三課長
あとそれから、もう一つつけ加えると、参考資料(資料6)の13ページ目を見ていただくと、保有コストに関しての関係でいうと、これは土地白書からとったものですが、企業の意識として、保有コストは無視できないので土地の利活用を図る必要があるかどうかという質問に対して、やはり半分以上の方が「そう思う」ということで、保有コストというものが無視できない、有効利用活用につながるというようなご意見は出ています。
〇石特別委員
この問題、今、加藤先生もいろいろ質問を出されていますが、法人税等と同様に、極めて悩ましい。税調でもどっちに行くかということはほかの人も関心があるでしょうし、判断は難しいと思います。
そこで、まず最初に土地の流動化ということから土地税制の見直しが出てきていると思いますが、私は個人的に、土地の流動化というのはSPCでやるとか、アメリカ型のRTCでやるとか、あるいは証券化でやるとかいうのが今とるべく最大の有効手段だと思っています。私は、税制をいじくったからといって、今凍りついている土地がそう急に動くわけでもなさそうだと思う。そういう意味で、こちらのほうに税制を活用するべきであって、ほかのキャピタル・ゲインなり地価税に対してどこまでやるかということについては若干疑義があるわけです。そういう意味で、まず最初に、土地の流動化と税制の関係が税率をいじくるとかなんかというよりは直接的な手段でやるべきだということを私はやはり強調すべきだと思います。
それから第二は、さはさりながら、キャピタル・ゲインをドカンと下げるとか、地価税をドカンと下げるというのは、精神的というか、アナウンスメント効果はかなりあるでしょう、市場に対しては。しかし、それはそれで政策税制的なものでありまして、税調としてそれを率先してやるべきだというのは僕は難しいと思う。というのは、土地税制というのはやはり資産課税の重要な一環であり、我々、やはり課税の公平とか中立化ということをやる場だから、そういう意味で、例えば勤労者所得の負担との関連において、土地譲渡益、取得税をどうしようこうしようという議論がやはり今求められているのではないか。ほかの審議会が景気刺激のために土地税制を抜本的に見直してどんどん軽減しろという言い方はあると思いますが。しかし、我々税調としての基本、あるいはそれなりの使命というのはあるのではないかと思います。
そこで、キャピタル・ゲインはバブル前に返せという議論は一つ通用すると思うし、上に乗っかっている39%──個人の場合ですね──と32.5%と20%と3段階あって、煩瑣だというのも、よくわかります。そういう意味で、一挙に39%を26%とかなんかに下げるのは非常に難しいと思いますが、この辺を少しいじくるということは当然あり得べしだし、それから法人のほうで、超短期があり、短期があり、これまたごちゃごちゃしているのもバブルの後遺症かもしれないので、この辺を見直すという意味で、私は、法人税については、前に戻すという視点、といって過度に今バブル以前にまでさかのぼって、バブルのときよりもっともっと軽減するという必要はないだろうと思うし、そうやると、さっき言った勤労者との関係で、キャピタル・ゲインの保有者との不公平等々も問題になるので、それは十分注意すべきだと思います。
それから地価税も、私は、廃止するときのメリットと、廃止するときのデメリットは、やはり今、税調としては考えておくべきではないかと思いますね。先ほど申し上げたように、土地の流動化にとって、私は、どれだけこの地価税というのが重荷になっているかよくわからない。有効活用という点からいうと、あったほうがいいかもしれない税です。そういう意味で、私は、地価税見直しのメリットというのはさしてないと言うと怒られるかもしれませんが、アナウンスメント効果以外にさほどのものはないのではないかと思うので、ゼロとか、凍結してしまったときのデメリットというのを考えておくべきだと思います。
私はやはり、戦後3度あった地価高騰というのは将来も起こり得べきということは前提にして議論すべきだと思います。そうなるとやはり、凍結とかゼロにしたときに復活はまず難しい。と同時に、地価税というのはいろいろな情報の収集の能力があって、地価税ができたから、全国画一的なベースで地価保有というデータが集まったし、おそらく相続税等々のはね返りも今後十分に考えなければいけないわけで、私は、地価税をどうしてもいじくらなければいけないといったら、まあ引下げといったような話で議論が終結できるのが一番望ましいのではないかと、このように考えています。
〇河野特別委員
石さんが、これは悩ましい話だとおっしゃったのは全く同感で、ここ2~3年、この席で地価税問題というのにあまり言及したことがない。口が重くなるのです、いろいろ経過を考えてみれば。石さんが当時、我々を引っ張って、我々はその驥尾に付して、地価税導入について理論構成から何からやった覚えがあってね。あの状況下だから、一般世論もそれに全部ついてきたし、いろいろなことがあって実現したのです。それからその後に起こったことはご承知のことがあって、それで総理の国会答弁を頭に置きながら考えてみれば、総理の言っていることはおそらくアナウンスメント効果を政治的にねらったということでしょう。今、石さんがおっしゃったみたいなメリット、デメリットを並べて、官邸の中で十分考えたなんてことは僕はないと思います。総理はそんな暇ないわけだから。そこはもう政治の話ということになるのでしょう。
我々の土俵と、政治がどう判断するかということは別にある。しかし、税調としてどう頭を整理するかという話は、去年、おととしに比べればはるかに緊迫度の高い、避けて通れない話になってしまったということもまた事実なのです。こういう議論を今までここ2~3年やったことがないから、きょう堺屋さん見えてないが、彼は2~3年前から、土地神話は終わったからなんていう話でね。僕もそのころは半分そうかなと思い、半分そうでもないかなと思ったが、今の時点を考えてみれば、今再びバブルの発生ということをおっしゃったが、こんなことは、これだけひどい目に遭ったら、銀行の人も、不動産の人も、個人も、冗談じゃないと、こんなこともう一回やってたまるかということになっていると思うのです。
〇石特別委員
でも、起きますよ。
〇河野特別委員
そう? それは50年や30年に1遍、資本主義だから、起こるかもしれない。そこは病みたいなものだ。だけど、そのためにアナウンスメント効果を全部ぶった切っていいかという議論とはまたちょっと違うと思うのだね。どういう視点で考えるかです。石さんが一番実は悩んでいると僕は思うのだが、僕も、地価税をやめたから土地の流動化が急激に起こるなんていう話はあまりロジックは合わないと思うのです。
ただ、1点だけ、地価税を導入したときに、当時、尾崎さんが局長でいたのだが、あのときの瞬間的に思ったことがこの12ページ(資料5)にある。何を言いたいかというと、平成8年分地価税の申告事績におけるこうこうと書いてあるでしょう。地価税の納税者になった法人、1万8,000社、約1%、納税金額、下に書いてあるように、前提である。これはそういう人はたくさん土地を持っているからです。高い土地をね。しかし、これは、ちょっと加藤会長、今、高いからやめろという議論はだめだとおっしゃったが、納めている立場の人、ここ2~3年来しょっちゅう言われていて、だから僕はあいまいもことしてここでしゃべれなかったのだが、例えば三越とか、それぞれ土地を有効に利用しているのです、精いっぱい。あれをさらに有効にするために何とかせいという議論は現実問題としては成り立たないから、そういうところに集中的に重くかかっていることはまた事実なのです。
そういう税金にあの瞬間になってしまったのだ、この土地税制というのは。地価税というのは。いろいろなことがあって。骨抜きになったというか、何か知らんが、それが今の姿なのです。その矛盾が今明らかになってきていることもまた客観的に認めないと、プラスマイナスの議論って、我々、石先生にくっついてきたのだから、今も石抗議で、だから面と向かって座っているわけだから、やるつもりでいるが、ここは虚心坦懐、その事実を確認しないと、土地有効利用論だとか、土地は相当な負担をすべきだとかという議論だけで、従来の議論だけで押し通せるかといったら、それはもう剣が峰に来たと思うのです。だから、ここは、石さんがとにかく首謀者でやったのだから、我々はそれに驥尾に付していったのだから、ここはひとつ石さんが、あいまいもこではなくて、いろいろな議論を展開してもらいたい。
〇田中委員
純粋持ち株会社が認められるようになりました。立法府の意思を考えれば、純粋持ち株会社のもとに子会社を幾つかぶら下げる形によって、日本のサプライサイドを合理化し、新たな我が国の経営資源を使い、もう一度新たな視点に立って使おうというわけです。だから、これが立法府の意思だとすれば、私は企業分割に伴う譲渡益課税と、それから登録免許税は免除すべきだというふうに思うのです。現在のままの譲渡益課税と登録免許税を置いたままでは、株主の立場からいけば、企業の分割に伴って、通常の場合、納税額が多額に及ぶわけだから、それはとらないわけです。ということは、立法府がたとえ純粋持ち株会社の保有をよしとしても、現税制のままでは我が国のサプライサイドの再編は行われないということを意味するわけです。
この問題は、もう検討されているのか、少なくともここでは出てないように思うのですが、どうなのでしょう。立法府の意思を支援するのが少なくともこの審議会の役割ではないかと思うのですが。
〇薄井主税局長
その点については、1日の日に発表していただいた当税調の金融課税小委員会でも検討してもらっており、政策意図が実現する方向で適切に対応すべきであるという中間報告をいただいています。私は国会に毎日今出ていますが、きのう、純粋持ち株会社というか、銀行持ち株会社法の参議院の最後の審議がありました。そこでも、私はこの税調の中間報告の線に沿って適切に対応してまいりたいという答弁をしています。
なお、今の点は2点あって、出資のときの譲渡、キャピタル・ゲイン課税の問題と、やや技術的になりますが、三角合併方式や一般的な抜け殻方式への対応との2つの問題があって、これらの点については実務的に我々勉強し、10年度改正で対応していきたいと思っています。
なお、登録免許税のほうは、これすべてが今要求ベースどおりに認めていいものかどうか。いろいろなケースが考え得るので、説明が十分できるような必要な対応をしていきたいと思っています。そういう状況に今あります。
〇大田委員
前も申し上げたが、私は地価税の廃止が景気対策になるというのはやはりどうしても理解できない。もし土地を動かすのならば、譲渡益課税と登録免許税、取得税を軽減すべきだし、景気対策ならば、今の税収 1,500億ですか、法人税減税に向けたほうがいいと思います。アナウンスメント効果はあるのでしょうが、私はやはり地価税というのは保有課税だと思っているので、あまりどさくさで議論しないで、やはり河野さんがおっしゃった、ごく一部の土地にかかっているにすぎないという問題も含めて、保有課税として議論してからにしたほうがいいのではないかというふうに思っています。固定資産税とあわせて、今負担がどれぐらいになっていて、これからどうなるのかを幾つかのケースで示していただければいいなと、ありがたいと思います。
それからもう一つ、これはメインの理由にはならないのですが、先ほど石先生もちょっとおっしゃった、地価税は実は情報をとるという意味ではわりと重要で、固定資産税の評価替えは、3年に1回だから、地価税で初めて地価に関する情報が毎年出てくるようになった。私はやはり、0%にしたときのデメリットとして、これはそれほど小さくないように思っています。
〇和田委員
やはり日本の地価水準というのは決して、今日の資料の1ページ(資料5)にもありますが、十分な下がり方をしているとは言えないと思うし、それから日本人の土地神話、確かに、もう3度苦い思いをしているのでまっぴらだという感じはあるのですが、その反面、もう少し上がるのではないかなというような、土地に対するそういう期待というのは、もしも調査をしたらば少しは下がっているかもしれないが、ゼロにはなっていないと感じるのです。
それともう一つ、さっきからお話が出ていますが、地価税を凍結したときに有効利用につながるのかどうか。私はつながらないと言うだけの自信はありませんが、なぜつながるのかというところがよくわからないし、それから昨年までの地価税の改正を見ていくと、税率ないしはいろいろな特例とか、いろいろな対策が講じられているというところを見てまいると、今この段階で少なくとも地価税についていじらなければならないというだけの説得力はないのではないかなと思います。
〇水野(勝)委員
地価税については、できたころ、おそらく大変なご苦労をされたのだと思います。私どもはその現場感というものがないものですからよくわかりませんが、非常にご苦労をされた。ご苦労されたものは、0.15%が 0.1%になり、0.05%になってもひとつシステムとしては置いておいて、いろいろな事態に対処するというのがいいのではないかと思うわけです。
きょうのこの参考資料(資料6)の20ページ以下、さっきお話しがあった各社別の負担割合というのがありますが、これは平均利益に対する負担割合だから、これは各社の業態によっていろいろ違うのだろうと思います。それは当然のことであろうと思うし、また、固定資産税をとってやってみても、おそらくこういうアンバランスはもっともっと大きく出てきているのではないかと思うわけで、社別で違う負担割合というのは、この税を保有税として見れば、これはやむを得ない、当然のこと、そこは踏み切られた話ではないかと思うわけです。
前回も申し上げましたが、このシステムは残し、固定資産税と地価税とで相互補完的に適正な保有負担水準をお願いをする。そして地価税のほうが一層弾力的に対応できるという点がある。そこらは両者相まって適正に運営をしたらどうか。ただ、それがあまり、0.05%とか0.01%とかなったら、かえってむだなお手数を納税者におかけするということになるのか、情報収集という意味でやはり意味があると考えるのか、そこらは税率水準との絡みもあります。
それから凍結とした場合でも、情報収集だけは、申告書だけはいただけるようなシステムがあり得るのか。法人税でいえば、欠損申告、所得のない法人も申告書はいただいているわけですが、そういうシステムがぎりぎりできるということであれば、極端な場合、ゼロ税率だっていいのではないかとも思うわけですが、そこは技術的な問題なので技術的にご検討いただければと思いますが、基本的には地価税と固定資産税、相互補完的に、しかも弾力的に対応できるシステムはせっかくのシステムとして保持されたらいかがかと思うわけです。
〇石特別委員
河野さんにちょっと戦犯扱いにされたもので若干のご説明をしておかなければいけないと思いますが、確かに、地価税導入して以降、やはり世の中も変わったし、税制も思いがけない方向で動いているという点もないことはないと思います。おっしゃった、有効活用している三越に過大な負担がかかっているという、それはまさに事実だろうと思いますが、当時のことを思い出すと、やはり随分地価税というのは対象が細ってしまったのです。したがって特定の、例えば百貨店であるとか、不動産業であるとか、ホテルとか、そういうところがねらい撃ち的になって、非常に悪税というイメージが出てきてしまったわけです。
これは我々、土地税制小委員会をやった後、自民党の折衝でこうなったのですが、要は初め、今5万人、あるいは5万社人の課税者しかいませんが、当時はその5倍ぐらい考えていたのですね。25万ぐらい。ところが、課税最低限が非常にかさ上げされたりなんかしてあっという間に細ってしまって、それでも、小さく生んで大きく育てようというような話もあって導入に踏み切ったわけですが、結局、それ以降は細るのみで、ちっとも育たない。そういう格好になってきて、今どうしようかと。虚弱体質になって、このまま行き倒れてしまうのかというような状況かもしれませんが、それで今、税調として考えていくことは、当時の議論として、やはり土地保有税というのはどうしても日本に必要だろうという観点から入ったのです。土地保有税としては固定資産税があったわけですが、それ以降見ていると、固定資産税を土地保有税として使うのは無理だということがもう事実として出てきて、それで3年間の見直しであるものは無理で、隔年でやっていこうというような話になったということから見て、やはり固定資産税というものは応益課税であって、土地保有税とするとかえっとまずいのではないかというのが1つ反省として出てきたと思うのです。
そういう意味で、保有税を残しておくことのメリット、デメリットをやはり今考えるべきだ。これは我々税調に課された最大の使命だと思います。まして、これから高齢化社会になって資産格差はこれ以上についてくると思います。そういう意味では、やはりこういうもので資産格差の是正みたいなものの手段というか、資産税を残しておくべきだという理屈はまだまだ、これからもっと一層有効になる。言うならば企業のほうは相続税がないのだから、こういうものがあっていいではないかというのは、海外視察で、外国が言っていたような話も残っているわけです。そういう意味で、せっかく議論したと今水野さんもおっしゃっていただいたが、保有税をばっさり、復活の余地がないような形でやってしまったとき、今いっときの短期の議論で結末をつけたときに、やはり僕は随分将来禍根を残すのではないかなと思って、また再度立ち上げるときには──僕はまたバブルというのはいずれ出てくると思いますから。思い出してください。列島改造の後、日本人は懲りたのです。さまざまな不良資産が全国的に散らばって非常に懲りたのだが、まあ十数年であっという間に戻ったという実績も、同じ日本人が日本列島に住んでいるのだから、多分出てくる可能性は僕は十分にあると見ているので、そういうこともやはり忘れるべきではない。
これはお答えになったかどうかわかりませんが、当時の回想録です。
〇松浦委員
先ほど説明のあった固定資産税の路線価の公開、また課税明細書の送付、固定資産課税台帳の縦覧制度の見直しなど、納税者に対する情報公開については、市長という立場からも、課税事務の透明性にも資することから、ぜひ進めていっていただきたいと思います。
また固定資産税についていえば、地方分権推進委員会の勧告にもあるように、課税自主権の尊重という観点から、標準税率の国の関与についてはぜひ廃止する形にしていただくのが地方分権の時代にマッチするというふうに考えます。標準税率と異なる税率を採用する場合の届け出は個人の道府県民税や不動産取得税にもありまして、これらも同じく廃止するのが適当ではないかなというふうに思っています。この分権委員会の勧告では、法定外普通税の許可制度の事前協議制への移行、法定外目的税の創設もうたわれていますが、これらも課税自主権の尊重という観点から非常に大事なことだと思うので、ぜひ進めていっていただきたいと思います。よろしくお願いします。
〇伏見税制第一課長
1点だけ、ちょっと事実関係を補足したいと思います。
先ほど住宅の住み替えのご議論がありましたが、現状、いわゆる第二次取得者というか、住みかえられた場合、この場合でも住宅取得税制は適用可能になっています。だから、いわば2回使うこともできる。このレベルですが、先ほどトータルで租特の減収額 6,600億円と申し上げたが、あともう一つ、住宅対策ということだと、住宅金融公庫の補給金もあります。両方合わせると、実は歳出、歳入合わせて1兆円を超すようなものが住宅対策としてすでに使われています。こういった問題との関連をどう考えるか。
それから、今の住宅取得促進税制のレベルですが、平均的な収入の方だと、6年間ほとんど所得税がかからないような構造になっています。もちろん、それを上回る方でも、所得限度、今 2,000万円ですが、平均的な方を上回って取得 2,000万円に至るまでの間、これは住宅取得促進税制の適用を受けられるということがあります。
それから税の理論ということになりますが、現行税制だと、実は住宅を売って売却益が出た場合、この場合はほとんど実質非課税になっています。一方で損の場合には、その上、また繰越控除等を認めるというあたりのアンバランスをどう考えるかという問題もあります。
それから今の日本の取り扱いですが、住宅を売って、仮に価格が下がっていて、売却損が出ます。サラリーマンの方でも給与収入と通算ができるわけですが、この扱いは国際的に見ると非常に寛大な扱いに実はなっています。イギリス、ドイツ、フランスではそういう例はありません。それからアメリカの場合にはキャピタル・ゲインは基本的にキャピタル・ゲイン、ロスの間だけで通算をする。限定的に年間 3,000ドルだけ他の所得と通算できるというような措置になっています。そういった諸状況、諸要素を考えた上でどう考えていくかということかと思います。
〇加藤会長
まだご議論があろうと思いますが、これは来週中に我々も……西原さん、どうぞ。
〇西原税制第三課長
一点だけ、法制的な面でご説明します。先ほど、法人の場合に赤字であって、納税しなくても申告させることができるではないか。したがって、例えば地価税、ゼロ税率であっても申告させることができるのではないかというご質問がありましたが、法制的にはさらにいろいろ検討してみたいと思いますが、実は法人税の場合には税率がありまして、それに対して、場合によっては赤字になるか黒字になるかというようなことがあって申告をさせているということでして、片方、ゼロ税率で、全く納税する義務がない状況のもとにおいて出すということは非常に難しいのではないかというふうに思っています。
〇加藤会長
ご議論はまた来週に回させていただきます。
今後の予定ですが、次回の総会は12月9日です。火曜日の午後2時から開催して、これまでの総会審議における種々の問題についてご論議をいただこうと思っています。大変皆様方お忙しいところですが、ぜひよろしくお願いをしたいと思っています。
それでは、きょうの総会はこれで終わります。お忙しいところをありがとうございました。
〔閉会〕