第9回総会 議事録
平成9年11月28日開催
〇加藤会長
ただいまから税制調査会の第9回総会を開会します。
本日は、三塚大蔵大臣と上杉自治大臣に御出席をいただいて、御挨拶をいただく予定になっていましたが、両大臣とも国会審議のため御出席できなくなったので、中村大蔵政務次官、佐藤自治政務次官に御挨拶をお願いしたいと思います。
それでは、まず中村大蔵政務次官からお願いします。
〇中村大蔵政務次官
大蔵政務次官の中村でございます。今、加藤会長からお話ございましたように、今日は、国会の終盤を迎えて大蔵委員会が開かれていて、三塚大蔵大臣が参れませんので、私から御挨拶をさせていただきたいと存じます。
加藤会長をはじめ税制調査会の委員の皆さまには、日頃精力的な御審議をいただいて、心より感謝申し上げます。税制調査会第9回総会が開催されるにあたり、一言御挨拶申し上げさせていただきたいと思います。
現在、橋本内閣は、6大改革の推進に不退転の決意で取り組んでいるところであります。税制については、ここ10年間、これらの改革に先行して、時代の要請に応じた抜本的な改革が行われてきていますが、引き続き経済構造改革、金融システム改革等への対応が求められています。現在、御審議いただいている法人税制改革や金融関係税制改革は、これらの構造改革を支えるものとして極めて重要な施策であると考えています。
なお、金融システム改革の関連では、資料情報制度及び本人確認制度を整備する法律案が本日参議院において可決成立しました。ここに御報告申し上げるとともに、これまでの御審議に改めて感謝申し上げます。
さて、我が国経済の最近の動向を見ると、民間需要を中心とする景気回復の基調は失われていないものの、景気はこのところ足踏み状態にあります。また、昨今、個別金融機関において幾つかの経営問題が発生しています。政府としては、金融システムの安定と信頼の確保のために万全を尽くしています。一方、我が国財政は、今や主要先進国中最悪の危機的な状況にあり、財政構造改革は一刻の猶予も許されない喫緊の課題であります。
本日、財政構造改革法案が可決成立したところですが、平成10年度は、財政構造改革法案成立後初めての予算編成となります。平成10年度予算編成を目前にして、本日から平成10年度税制改正について、具体的な御審議をお願いします。委員の皆さまにおかれては、これまで申し上げた諸状況を踏まえ、先の経済対策でも指摘された法人課税、金融・証券関係税制、土地税制等について、これまでの御論議をさらに深められ、平成10年度税制改正についての適切な御指針をお示しくださるようお願い申し上げる次第でございます。
簡単ですが、以上をもって私の御挨拶とさせていただきたいと思います。どうかよろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。
〇加藤会長
引き続き、佐藤自治政務次官にお願いします。
〇佐藤自治政務次官
自治政務次官の佐藤静雄であります。大蔵政務次官からただいま御挨拶がございましたが、地方税を所掌する立場から、税制調査会の第9回総会の開催にあたって、一言御挨拶を申し上げます。
はじめに、委員の皆さま方には、これまでも地方税制について熱心な御論議を賜り、適切な指針をいただいていることに対して、厚く御礼を申し上げる次第でございます。
さて、今日、地方自治が直面している課題は、まことに数多く多岐にわたっています。今国会に内閣が提出した財政構造改革の推進に関する特別措置法案は、本日たった今参議院で可決成立したところです。地方財政においても、平成15年度までに、交付税特別会計借入金や財源対策債を圧縮することによって、国と地方の財政赤字の対GDP比3%以下を達成することとし、その後、速やかに累積した多額の債務残高の縮減等に取り組むこととしています。自治省としても、地方財政の健全化、財政構造改革の推進に全力を挙げて取り組んでまいりたいと考えています。
また、地方分権の推進については、地方税財源の充実確保や課税自主権の尊重について勧告をいただいた第2次勧告をはじめとする地方分権推進委員会の4次にわたる勧告を最大限に尊重し、自治省としても、地方分権推進計画の作成について、期待される役割を果たしてまいりたいと考えています。
委員の皆さま方におかれては、限られた日程の中で当面の平成10年度税制改正について御審議をお願いすることになりますが、地方分権が実行の段階を迎えた今、地方公共団体が自主的、主体的に自らの行政を行うことのできる新時代にふさわしい地方自治を確立するためには、行財政改革を推進するとともに、地方税財源の充実確保を図っていくことが極めて重要であるということに御理解を賜りまして、適切な指針をお示しくださいますようお願いを申し上げて、簡単でございますが、私の挨拶とさせていただきます。どうもありがとうございました。
〇加藤会長
お二方とも日程の御都合がございまして、ここで退席をされますが、御了承をいただきたいと思います。
政務次官には、お忙しいところ、どうもありがとうございました。
〔両政務次官 退席〕
では、本日から平成10年度の税制改正についての審議をお願いすることになります。12月中旬に予定している答申のとりまとめに向けた短期間の審議ですが、これまでの審議の蓄積を踏まえて、実りある論議を行ってまいりたいと考えているので、御協力のほどをよろしくお願いします。
それでは、議事に入ります。
本日の議事の進め方について、まず最初に申し上げておくと、最初に最近の経済情勢、財政状況・税収動向について、事務局から状況説明を受けたいと思います。
次に、平成10年度税制改正における検討項目について、事務局から説明を受けたあと、フリートーキングをお願いしたいと考えています。
[最近の経済情勢]
それでは、初めに、最近における経済情勢について、経済企画庁の野村審議官からお話を伺うことにします。どうぞよろしくお願いします。
〇野村審議官(経済企画庁調整局)
お手許の配付資料のうち、「経済企画庁」という表紙のついている資料(資料1)を使います。この資料は、11月月例経済報告の説明資料をベースにしたものです。月例経済報告自体は、今月14日、すでに半月前に発表したものですが、本資料では、その後入手したデータ等も補足しています。それにしても、ここ1~2週間の金融界の激動等を十分反映したものとはなっていませんが、現時点で客観的なデータから読み取れる経済の動きを見るとこうだということで、お聞き取り願いたいと思います。
来年度の経済見通しについては、12月初めに7-9月期のQEが発表され、これを待った上で本格的な作業に入ることとなっていますが、現時点では、政府の見通しを公式にお示しできるものはないので、月例資料の御説明のあと、御参考までに、民間シンクタンク等での予測についても御紹介したいと思っています。
それでは、資料の第1ページを見て下さい。これはGDPの推移を下の方にグラフで書いています。一目瞭然のとおり、96年の7-9月期から順調に成長率が高まってきているものが、本年4-6月期、-2.9%、年率では10%を超える大きな落ち込みがありました。これは御承知のとおり、消費税の駆け込みとその反動という状況を反映している部分があります。大きな流れとしてはこういうことですが、以下、個別の重要項目等について簡単に御説明を申し上げたいと思います。
2ページに、個人消費の動向がいろいろな指標で示してありますが、総じて申し上げれば、消費税率引上げに伴う駆け込み需要の反動減から立ち直りつつあるものの、総じて回復テンポは遅いというのが消費の現状です。ここにあるいろいろな指標は、好材料と悪材料相半ばしています。いい方から申し上げれば、例えば下から5つ目の行に、新車登録、自動車があります。これは2つ数字が並んでいて、下の方が前年同月比、上の括弧内が季調済みの前期比でして、前年に比べるとまだ水面下という状況ではありますが、7月以降、8月は若干のマイナスでしたが、9月、10月と、少なくとも回復傾向を始めています。
また、1つとんで下から3つ目、旅行については、特に国内を中心に好調が続いています。
また、現金給与総額、雇用者数という一番下から2つの行ですが、こうした家計の所得を形成するファクターについては、7-9月期、それぞれ1.5%、1.0%、前年比ですが、伸びているということで、家計の所得はそれなりの伸びを示しているということです。
また、一番上の実質消費支出、家計調査の全世帯という数字ですが、これについても、7-9月期、季調済み前期比で0.9%、前年比でも1.9%と、それなりの伸びを示しています。
こうしたまあまあの指標に対して、真ん中辺、小売業販売額だとか百貨店の販売額、あるいはチェーンストア売上額、こういった小売関係の売上というところは、概して4月以降、前年比マイナス、前期比でもマイナスという低調ぶりが目立っています。
こういったことで、消費全体としては、所得がそこそこ伸びているし、消費も全体として伸びていますが、物の販売については悪いというのが大きな傾向かと思われます。
1ページとばしていただいて、4ページに住宅建設、これは新設住宅着工という数字であります。5ページの方に図があるので、これを見ていただくと、一番上を這っている「総戸数」というグラフで一目瞭然ですが、96年の秋に160万戸に近づくという極めて高いレベルの住宅着工がございました。これは消費税の駆け込みというのが、この住宅というものの性格上、早めに出てきたということです。その反動がすでに96年中から始まって、97年の7月までかなり急速な落ち込みがありましたが、これについても、8月、9月と少なくとも前月比では回復傾向が見えてきているし、ここには図示されていませんが、ちょうど今日発表になった10月の新設住宅着工では、130万戸台を久々に回復して、3か月連続の増加となっています。
続いて、6ページ、民間設備投資ですが、設備投資は製造業中心に回復傾向にあるというのが大まかな傾向です。一番上の箱の中に、企画庁でやっている法人企業動向調査という設備投資のアンケート調査の結果が示してありますが、全産業で見ると、9年度の設備投資計画が前年比3.0%となっています。四半期で見ると、4-6月期、7-9月期とややマイナスでしたが、今年度下期には再び2.1%、0.2%と、上昇が始まるという計画が現在のところされています。
また、その下の箱に、機械受注という設備投資の先行指標が示していますが、これで見ても、10-12月期、前期比8.2%ということで、設備投資の先行きは、依然として一応回復傾向にあるということが見てとれると思っています。
数ページとばしていただいて、10ページに生産・出荷・在庫と、これは鉱工業生産指数と言われているもので、製造業、物についての実物の統計ですが、これについても、11ページの図の方を御参照いただきたいと思います。一番下の方に太い線で這っているのが「生産」の指数です。これについては、96年中回復傾向がございましたのが、97年に入ってやや一進一退の動きということになってきています。
これは、その上に破線で「在庫」というグラフがありますが、この在庫が97年の3月ぐらい大きく下がっています。消費税の駆け込みということで物が売れたことの反映ですが、その反動がやはり在庫増という形で97年の4月ぐらいから始まっていて、我々の言葉で言うと、ミニ在庫調整がこの間あったかに思われます。これも直近のところ、9月ぐらいでは、ピークを打って在庫が減り始めている動きが見えているので、生産は一進一退ながら緩やかな方向で回復していくということが期待されると思っています。
12ページ、企業収益というところですが、企業収益の数字自体はいろいろな指標から見て緩やかに改善しています。ただ、真ん中の箱、「業界景気見通しBSI」というところで示されているように、企業の業況判断、自分の業界の景気がどうかという判断については、10-12月期、製造業、非製造業ともマイナスということで、やはり悲観的に見る動き、業況判断の厳しさというものが見られていることは事実です。
16ページまでとんでいただくと、雇用情勢がまとめてあります。一言で申し上げれば、雇用者数の伸びが鈍化し、完全失業率が高い水準で推移するなど、雇用情勢は厳しい状況にあるということです。これもちょうど今日発表の完全失業率、10月3.5%という数字が出てまいりました。ただ、これは9月が下2桁までいって3.44%、10月が3.45%ということで、わずか0.01%の違いで1ポイント上がったという形になります。
雇用者についても、8月、9月は0.9%、0.7%というやや鈍化傾向が出て心配していましたが、10月は前年比1.1%増という数字になっています。それにしても、雇用情勢、失業率3.4%、3.5%といった水準にあるということで、厳しいことは事実です。
ただ、その下の箱の中に、「休職理由別完全失業者数」という数字があります。最近の失業者の内訳を見たものですが、総数のところに、例えば9月で12と書いてあるのは、去年の9月に比べて12万人失業者が増えたということです。その増えた12万人の内訳ですが、4つに分けていて、非自発的な離職による者、これは一言で言えば首を切られた人ということです。その下が自発的な離職による者、これは自ら転職を志して辞めていく人、その他が学卒未就職者、その他の者ということで、一番大きいのはその他の者になっていますが、この非自発的な離職による者というのは、7月、8月、9月といずれもマイナスということで、前年に比べてむしろ減っています。これに対して自発的な離職による者、6万人、16万人、8万人と、この3か月かなり増えているので、日本の労働市場もややモビリティーが高まっているという形にも見えるし、それが失業率の高止まりにある程度寄与しているということも事実です。
18ページにいっていただくと、輸出と輸入の動きが書いてありまして、輸出は強含みに推移、輸入はおおむね横這いというのが大きな傾向です。この結果、19ページにあるように、国際収支面では、貿易・サービス収支の黒字が増加傾向にあるということです。
個別の御説明は以上にとどめますが、以上を総括して、11月の月例報告では、先に中村政務次官が引用されたとおり、「民需を中心とする景気回復の基調は失われていないものの景況感に厳しさが見られ、景気はこのところ足踏み状態にある」と判断を後退させたのは御案内のとおりです。
あえて景気回復の基調は失われていないと述べているのは、各重要項目中、個人消費、設備投資、純輸出については、力強さには欠けるものの、それなりの増加基調が続いていること、特に国内民需については、家計の所得、企業利益など、支出の基盤そのものは堅調さを失っていないこと、こういった事実に注目しているからです。
こうした状況下で発表されたシンクタンク等の来年度見通しがお手許資料の一番最後のページ、27ページにまとめた形で示してあります。これは、前回のQE、4-6月期のQE発表後に発表された主要23社の最大値平均値、最小値平均値を並べたものです。一番新しいもので11月7日、一番古いもので9月の下旬に発表だから、今回、金融界が大騒ぎになる前の予測ですので、その点は割り引いていただく必要はありますが、ただ、実質GDPの97年度平均値0.5%成長、98年度1.6%ということで、少なくともこの時点では民間金融機関も来年度にはそこそこの景気回復が続いていくということを見込んでいたと言えるかと思います。
景気の最近の足踏みは、中期的な将来に対する閉塞感等心理的なネガティブファクターに起因するところが大きいと我々も考えていますが、このところの金融機関の相次ぐ破綻や株式市場の動向を通じて、景気観が一層冷え込む可能性が強まったことを懸念しています。しかし、一方で、先週、政府の緊急経済対策が発表されたし、また金融不安に対しては、金融当局が敏速かつ適切に対応をとっていただいています。こうした中、株価は本日も1時50分現在125 円、昨日に比べて上昇していて、この3日間連騰ということで、直近の最安値である13日の1万5,000円台から見ると、約1,300円の値上がりとなっています。
金融システムの危機管理体制についても、政府与党内で抜本的な対応が検討されるものと承知しているし、税制についても、今後、この場等を通じてさまざまな検討が行われるわけですが、こうした対応を通じて、我が国の経済システムが新しい時代に即したものに改善され、そのもとで先ほど述べたような底流としての景気回復力、あるいは日本経済が本来有している底力を、一日も早く顕在させていくことが肝要だと考えているので、よろしく御指導をお願いします。
〇加藤会長
ただいまの説明について、御意見あるいは御質問があったら、どうぞおっしゃってください。いかがでしょうか。
〇中西委員
さっきの鉱工業生産指数の11月、12月は、どういう予想になっているのでしょうか。ちょっと頭を下げてきているのではないかと思いますが。
〇野村審議官
予測指数によると、11月は前月比2.2%減、12月は0.9%増ということになっています。
〇加藤会長
ほかにございませんでしょうか。
それでは、野村審議官、今日は大変お忙しいところ御説明いただいて、ありがとうございました。
〔野村審議官 退席〕
〔主計局総務課長、財政局審議官 着席〕
[最近の財政事情・税収動向]
それでは、続いて、最近の財政状況・税収動向について説明をいただこうと思います。
まず、国の財政状況と税収動向について、主計局の牧野総務課長と主税局の森信総務課長から説明をお願いします。
〇牧野総務課長(主計局)
お手許の資料で「平成10年度財政事情及び税収動向について」(資料2)というのがあると思いますが、その1ページ目、財政事情のフレームがありますので、これに基づいて、10年度の財政事情について御説明をしたいと思います。
平成10年度のフレームについては、先般の財政構造改革法の国会での御審議の際に、一度フレームを提出しています。それがこの表のちょうど真ん中の欄、「10年度財政事情の試算」ですが、これがその時に公表したものでして、その時は成長率を1.75%と3.5%と両ケースあるということで、2ケースを出しました。基本的に今日見ていただく10年度のフレームは、それをできるだけ直近の時点で修正したものですが、ベースにしたのは、その時の1.75%のケースの方を使っています。これは、経済の最近の動き等を考慮すると、3.5%をベースにするのは、ちょっといかがかなということで、1.75%の方を前提にして、それに直近のデータを加えたという形になっています。
前回出した10年度の1.75%ケースの場合には、一番下のところですが、要調整額は2兆9,400億円でした。それが、今回の試算でどうなるかということです。黒枠、太枠で囲んだ今回の10年度試算のところを見ていただくと、まず税収ですが、これは前回と同様、59兆9,400億円ということで置いています。ただ、それに±A±Bというのがついていますが、±Aは、9年度税収の動向等により、土台が、10年度税収の見積もり自体が変動する可能性があるということです。それから、±Bは今後の10年度の税制改正による増減収ということで、この辺については、後ほど主税局から詳しく御説明があると思います。
次のその他収入ですが、これが2兆8,000億円ということで、前回は平年度ベースの1兆8,000億円に置いてあったわけですが、それをほぼ過去最高水準に匹敵する2兆8,000億円までは何とか確保したいということで、数字を置き換えています。それに±Cがついていますが、気持ちとしては、当然、これに何とか上乗せをしたいという気持ちです。
それから、公債金の方ですが、建設国債、これは公共事業の7%減によって基本的に7,000億円の減が立っていますが、さらに査定の過程で、建設国債の発行対象経費である施設費等の査定減をやっているので、そのためのマイナスがさらに立つということで、-Dを置いています。それから、特例公債ですが、6年間で特例公債をゼロにするということで、平均的に1兆2,500億円を置くということで歳入面を出しています。
歳出面ですが、歳出面はまず国債費です。これも前回の試算では要求ベースで出していましたが、今回の試算は、17兆1,000億円となっています。これは、直近の1年間の金利をとって、金利を2.5%ということで、極めて低い、今後金利変動があった場合には、いろいろな問題が生じる可能性がありますが、ともかくできるだけ低い金利で国債費を抑えるということで、2.5%で積算をしています。その結果、前回の試算と異なって、17兆1,000億円ということになっています。
それから、地方交付税ですが、これは自治省の要求ベースでとりあえず 17兆1,000億円と置いています。ただ、それに+0.3(±A±B)とあるのは、先ほどの税収との関係で、おおむね30%程度が地方交付税の税収の増減に伴う増減になるだろうということで置いています。機械的なものです。それに加えて、-Eというのを置いていますが、地方交付税については、3税の32%というような法定率で積算されたもの以外に、特例加算というのを行っていて、それが今回の自治省の要求では、右の備考欄に書いていますが、1兆3,900億円あります。これは、9年度では3,600億円にとどめています。したがって、ここにかなりの開きがあるので、この辺の圧縮を地方財政についても厳しい見直しをしていただいて、この加算額をできるだけ圧縮したいという気持ちがあります。そういう意味でここに-Eというのを置いています。
それから、一般歳出ですが、これは要求ベースで3,200億円の減です。今年度の予算は、御承知のようにキャップ方式ですので、なかなかキャップ以上切り込むというのは、いろいろ抵抗が強くて難しい面がありますが、さはさりながら要調整額を解消しなければいけないということで、さらに査定段階で切り込んでまいりたいと思っていて、それをFで示しています。
その結果、どうなるかというと、要調整額、一番下の欄ですが、まずA、B、C、D等記号の分を除くと1兆4,900億円、前の要調整額が2兆9,400億円でしたが、それが1兆4,900億円まで一応圧縮したと。これは、歳入面でその他収入を増額し、歳出面で国債費を落としたという、その効果によるものです。それに±A、それから±Bの地方へのはね返り分を除いた国への影響額がありまして、それに建設国債のさらなる減額があるということです。
AとBについては、主税局からお話があると思いますが、Dはオーダーとしてはおそらく1,000億円程度だろうと思いますので、あわせて1兆5千数百億円ということになろうかと思います。それに対して、その要調整額を解消する手段としまして、±Cと書いてありますが、これはさっき申し上げたように、できるだけプラスにしたいと思っているので、その他収入の確保を図る。それから、Eは、先ほど申し上げた地方交付税の前年度に比べて特別な加算額が1兆円ほど多い要求になっている。これを圧縮することで要調整額の減額に向けられるだろうと。それから、さらに一般歳出のさらなる減、Fですが、これで要調整額の解消に少しでも役立てたいということで、とりあえずA、Bを除いて、要調整額の解消のために最大限努力をしていきたいというように考えているところです。
〇森信総務課長
それでは、続いて、主税局の方から税収について御説明申し上げたいと思います。
税収は同じページの歳入の一番上に書いてあります。9年度予算、57兆8,020億円と書いてあります。それから、その右の欄ですが、10年度の財政事情の試算、10月2日に当税制調査会でも御紹介していますが、これの1.75%ケースの数字、59兆9,400億円という数字があります。それから、今回黒でくくっている10年度試算ということで、59兆9,400億円±A±Bという数字がここに書いてあります。
この真ん中の欄の10年度の59兆9,400億円という数字ですが、これは9年度予算、57兆8,020億円に1.75%成長という前提のもとでこの成長率に弾性値を掛けて、さらに税制改正の影響──これは主として消費税の改正に伴う平年度化増分ですが──これを加算して、機械的に計算した数字です。この59兆9,400億円という数字をこの10年度の試算のところにも仮置きしています。それに±A±Bという記号がついているわけです。
備考の欄を御覧になっていただきたいのですが、±Aというところで書いてあります。これは9年度税収の動向、それから今後の政府経済見通し作業等を踏まえた10年度税収見積り額の変動ということで、±Aという記号を書いています。
まず、9年度税収の動向について、簡単に御説明を申し上げたいと思います。先ほど申したように、9年度税収は57兆8,020億円ということですが、これは政府の経済見通し、9年度の名目成長率3.1%というもの等々を参考にしながら見積った数字ですが、最近の経済情勢、先ほども説明があったが、例えば11月の月例報告を見ると、「景気は足踏み状況」という表現がなされているし、また、経済企画庁長官は国会で、9年度の政府経済見通しは達成が難しいという答弁もなされています。そういうことで、経済が当初に想定したラインよりも悪化している。それを反映して税収も落ち込んできているというところが正直なところです。9年度の57兆8,020億円という当初予算の確保、これはなかなか容易ではない状況にあるということです。
このことについては、3ページ目の、平成9年度の9月末の税収の動向を見ても、そういうようなことが見てとれるということです。簡単に御説明申し上げると、9年度末の税収の累計、真ん中よりちょっと下の欄の一般会計分計のところですが、一番右の欄で、8年度決算に対する9年度の予算額が111.0となっています。それに対して9月末の累計が102.7 というように書いてあって、大幅に開いているのは、実は消費税の引上げの効果がこれから年度後半に集中してあらわれてくるという特殊事情があります。それを勘案しても、予算の伸びよりは低いのではないかと予想されているところです。
1ページに戻りますが、10年度の税収を試算する場合には、今のような9年度の税収をいわば土台として計算をするわけです。したがって、9年度の税収が落ち込む可能性が非常に高いという状況をもとにすると、この10年度の税収、これは経済見通しの方は現在まだ作業中でして、これから中身を精査して、それに従って税収の方も精査していく段階ですが、今の段階で言えることは、9年度の経済の停滞に伴う税収の悪化が、そのまま10年度にも持ち越されて、今の段階ではこの 59兆9,400億円という数字は、これを若干下回る税収になるのではないかと予測されるわけです。そういう意味で、±Aと書いてますが、これは-Aになる可能性が極めて高いということです。いずれにしても、ここの具体的な数字については、今後、予算編成の中で経済見通し等も参考にしながら精査していく所存です。
それから、±Bと書いてあります。これも右のところの備考の欄に書いてますが、±Bは、今後議論される10年度税制改正による増減収額ということで、まさにこの場でこれから平成10年度の税制改正について御議論いただくわけですが、各種の税制改正要望を見ても、これは-Bにならざるを得ないという状況にあります。そういうことで、59兆9,400億円±A±Bと書いてあるが、これは-A-Bになるのではないかということです。9年度から10年度への増収というところの欄は、2兆1,400億円±A±Bと書いてありますが、これも2兆1,400億円-A-Bというところが正直なところではないかと思っています。
〇加藤会長
続いて、地方の財政状況と税収動向について、財政局の香山審議官と税務局の桑原企画課長から説明をお願いします。
〇香山審議官(自治省財政局)
お手許にある「地方財政関係資料 地方税収関係資料」(資料3)の1ページをお開きいただきたいと存じます。
一番最初に、財政構造改革会議の報告を受けて閣議決定をした「財政構造改革の推進について」のうち、地方財政に関するくだりというものを紹介しています。内容は大きく申し上げて3つありまして、アンダーラインを引いています。(1)のところに書いてあるアンダーラインの部分ですが、地方財政の赤字を解消するためには、交付税特別会計借入金や財対債を圧縮することによって、国、地方を合わせた財政赤字のGDP比を3%以下にするということを1つ掲げています。
それから、2つ目の柱は(2)の下半分でして、そのために歳出を圧縮する必要があるわけですが、平成10年度の地方財政計画については、まず地方単独事業については、できるだけ削減努力をするということで、対前年度比マイナスにするというふうにしています。それ以外に、地方財政の場合は国の予算と大きく連動しているので、国の方から、率直に申し上げると、地方につけ回しがなされないということが最低限必要なことでして、それを前提とすると、地方財政計画上の全体の一般歳出もマイナスにできるということで、それを目標の2つに掲げているわけです。
3つ目は、3、4、5と書いてますが、個々の地方団体において、行財政改革への取り組みを強く要請していく、あるいは合併が進むような形の実効ある方策を講ずる、地方債、交付税等の財政制度を、それを促すような方向に見直しをする、こういうような3つの柱になっている次第です。
2ページをお開きいただきたいと存じます。冒頭申し上げた地方の財政赤字の削減目標ですが、ちょっと技術的な説明になって恐縮ですが、地方財政は若干複雑な形をとっているので、御説明したいと存じます。地方財政については、平成9年度で申し上げると、地方財政計画上の収支ギャップが5.9兆円あります。このページで見ると、下半分を御覧いただきたいのですが、地方財政計画上生じた収支ギャップというのは、[1]で書いてある特例的な地方債の発行という形で、3.2兆円措置をして埋め合わせをしています。1つは、地方消費税が導入されたわけですが、初年度に平年度ベースの収入が入らないということで、実質的な赤字地方債ですが、特別に許可することをした臨時税収補てん債というのが1.2兆円、2つ目は、交付税の延払いというふうに御理解いただきたいと存じますが、公共事業の充当率等引上げして、その元利償還を翌年度以降交付税でみるという形で対処した財源対策債で2.0兆円、さらに不足する部分については、交付税の増額措置を講じたが、そのうち交付税特別会計の借入れというのが大きな要素になっていて、そういうような措置として2.7兆円というような措置をしています。
これは御覧いただければおわかりいただけますように、いずれも借入金に依存したという補てん策になっています。そうすると、地方の財政赤字対GDP比を計算する式、それぞれが分子の方を膨らませるように働いてくるわけです。具体的には、算式としては、平成9年度に新たに発行する地方債の総額というのが16.3兆円ありますが、それから既発債の償還額6.0兆円を引いて、それから交付税の不足を補うための交付税特別会計の借入金でネットで増えたもの、これが0.9兆円になります。これを分子にしてGDPで割った数字が2.2%になります。地方の財政赤字は現在2.2%であるというふうに申し上げているのはこの数字でして、この数字が国と地方を合わせると、おおむね5.4%に現在なっているということですが、先ほど申し上げた臨時税収補てん債など財源対策債というのは、この算式でいきますコメ印のうちの16.3兆円をその部分が膨らましているということですし、それから、コメ印の[2]の0.9兆円と書いているものも、まさしく交付税の不足を補うための借入金でして、これが地方財政赤字の主な構成要素となるわけです。
現在の地方財政の収支不足5.9兆円というのは、現在のGDP515兆円で割ると、大体これが1.1%に相当します。国、地方を合わせて5.4%を3%に持っていくということですので、地方の部分はおおむね現在2.2%になっているのを、半分に持っていけばいいということです。したがって、この地方財政計画上の収支ギャップをなくすような形で対応していけば、地方財政の収支もとんとんになるし、財政再建目標の財政赤字の縮減の目標も達成できるということです。そのような考え方で、先ほどの閣議決定の考え方が決定されておるというふうに御理解いただきたいと存じます。
そういうことを御覧いただいた上で、明年度の財政の事情ですが、5ページの資料をお開きいただきたいと存じます。先ほど大蔵省の方の御説明にもあったように、まだ経済の見通し、あるいはそういう意味で税収の見通しというのも確定的に申し上げることができない段階ですので、どのような変動要素があるかということについてだけ御説明申し上げたいと存じます。
地方税については、平成10年度の欄、左から4つ目のところにちょっと太く書いた欄をこしらえたところがありますが、そこを御覧いただきたいと存じます。前年度の地方税37.0兆円に対して、変動要素の1つとしては、+αと書いています。先ほど申し上げたように、地方消費税が平成9年度に導入されたわけですが、平成9年度においては、年度いっぱい丸々の収入が入らないということで、平成10年度に持ち越されています。その額が大体2兆円をやや下回る1.8兆円とか1.9兆円のオーダーになるのではなかろうかと思っています。平成9年度は、この分は先ほど申し上げた減税補てん債という特別な地方債で穴埋めをしたわけですが、平成10年度においては、税収だけで見るとプラスの要因として出てくるということになるわけです。
それから、その次に書いてある±βというのは、経済見通し等と連動して、さらに税制改正の動向と連動して決められる税収の変動要素ということです。
それから、2番目に地方譲与税と書いてありますが、これについては0.6兆円になる。したがって、前年度に比べると0.5兆円マイナスになるというふうに書いています。これは、地方消費税導入の税制改正の一環として消費譲与税というのが廃止されました。8年度でなくなったわけですが、地方財政にとっては、持ち越した分が平成9年度は5,000億円ほどありました。その分が10年度に向かっては丸々なくなってしまうという意味です。
それから、3番目の地方交付税です。これはあくまで仮置きの数字ということですが、私どもの方では、概算要求時点に使った数字をそのままここに載せています。大蔵省の方の数字は、一般会計ベースで17.1兆円というふうに御説明があったかと存じます。私ども、概算要求で使った数字は、当時はまだどれに決めるというわけにもいかないので、中期展望にあったGDPの伸び率、一応3.5%の方の数字を使って法定五税というのを推計して、それに対して特例加算として、先ほど主計局の方から御説明があった、国から地方にお貸ししていたものを、ルールどおり返していただくとすると幾らになるかというのが1.3兆円になるので、その部分を加算した額、───これは、一般会計から交付税特別会計に繰出しをしていただく額として17.7兆円というのを要求しました。
ただ、これは一般会計から交付税特別会計に繰り出されるだけのお金ですので、今度は特別会計の方で見ると、過去借入れをした借入金の元金の償還、あるいは利子の償還があります。したがって、主計局の説明があった17.1兆円よりもさらに大きい17.7兆円を繰入れをしていただいたとしても、地方公共団体に配分できる額は、この欄に書いている16.6兆円にとどまります。この数字で申し上げると、地方団体が受け取ることができる地方交付税というのは、前年度に比べて3%マイナスということになってまいります。後ほど御説明しますが、財源不足が平成10年度も引き続き相当の額を覚悟せざるを得ない状況になっているので、最終的に地方団体にお配りする交付税の額については、あらゆる手立てを講じて地方団体の財政運営に支障が生じないように措置したいと考えており、この時点では、これはあくまで仮置きの数字というふうに御承知おきいただきたいと存じます。
地方債については、ここには8.0兆円ということで、前年度に比べて4.1兆円の減の数字を書いています。これは、いわゆる特別の財政対策を講ずる前の通常の事業に対する通常の充当率による地方債の見込額ということです。これに見合う数字は平成9年度は8.9兆円です。それに対して約9,000億ぐらいのマイナスの数字を計上しています。これは構造改革会議の決定等を受けて、公共事業費について、前年度マイナス7%にする。そういうような形で投資的事業費が圧縮されているので、それに見合うものをここに計上しています。
平成9年度にあった減税補てん債、要するに地方消費税の収入が平年度化するのに足りない部分について補っていた地方債は皆減になります。また、財源対策債というのは、現時点では地方財政対策を講ずる前の数字だということで、計上していないということです。
それから、歳出の方ですが、地方一般歳出については、前年度の額74.5兆円-γというふうに書いています。これは閣議決定においても、国から地方へのつけ回しが行われないという前提では、マイナスにするというふうにしています。具体的な数字は国の予算の内容に大きく左右されるということですが、一応、マイナスにするということで-γにしているという次第です。
公債費については、昨年の11.5兆円+δとしています。1つは、今後の金利動向にもよるわけですが、平成9年度の地方税収、特に法人関係の税収がやはり相当計画ベースよりも落ち込むことを覚悟せざるを得ないというような事情にあり、今年度中に各地方団体に対して、交付税計算で想定していた法人税収よりも現実の法人税収が落ち込む分については、新たに減収補てん債といったようなものを発行せざるを得ないというふうに考えており、そういった変動要素があるということですが、そういう変動要素を考慮しますと、前年度に比べ、このδは1兆円ぐらいは増加になるのではなかろうかというふうに見込まれる状況にあります。
そういった要素を全部合わせて、財源不足の額を御覧いただきたいと思いますが、前年度の収支ギャップ5.9兆円に対して、まず消費税の平年度化の影響で増収になる部分があるので、これについては1.2兆円引くことができます。そこまではよろしいわけですが、2つほどとびまして、δの方の公債費というのが増えてまいりますから、おそらくこの-1.2兆円というのは、公債費の増によってかなりの部分相殺されてしまう。残るところは、税収の変動要素の±βと歳出削減努力が予想される-γの部分、それ以外の変動要素±θというところになります。そういう事情ですので、私どもできるだけ歳出削減に努力する所存ですが、収支ギャップの5.9兆円の額について大幅な改善を見込むことは、極めて厳しい情勢にあると思っています。
それから、7ページをお開きいただきたいと存じます。そういうことが地方財政計画レベルでの現時点の見通しですが、個々の地方団体に対しては、こういう国レベルでの厳しい状況を認識していただき、地方行革に対して格段の取り組みをしていただきたいと考えています。ここに書いてありますが、平成9年の11月に、新しい行革指針というものを策定して、地方団体に通知を発して、従前にも増した行革の推進に取り組んでいただくように強く求めた次第です。
この新しい指針は、2つの大きな柱を持っています。「新指針のポイント」と書いてあるところの2番目ですが、まず、定員適正化計画等について、数値目標を具体的に目に見えるような形で定めていただくように指導したのが第1点です。もう一つは、そのような数値目標も含めて、住民に対する広報を積極的に展開をしていただいて、住民の協力のもとで行革推進をやっていただくということを大きな柱にしていまして、私ども、今後とも強く地方団体を指導していきたいと考えています。
8ページは、現在までの各地方団体が取り組んでいる行革の状況、幾つか代表的な件について紹介をしています。東京都、大阪府、神奈川県、こういった大府県は、いずれも具体的な定数の削減計画を定めて行革取り組みを行っている状況にあるということを御承知おき賜ればと存じます。
あと、給与の水準、定数の削減、あるいは分権委員会の勧告の概要等添付していますが、時間の関係もございますので、私の方からの説明は以上にとどめます。よろしくお願い申し上げます。
〇桑原企画課長
それでは、続いて、地方税収の動向について、お手許の資料の15ページ(資料3)をお開きいただきたいと思います。「地方税収の地方財政計画額と決算額の推移」ということで、上の方の表に年度当初の見込額、決算額との比較をしています。一番右の欄、(B-A)が決算と地方財政計画との増減額でして、御覧のとおり、平成3年度までは景気の好調等を受けて、税収が増加したため、決算額が計画額を上回るという状況が続きましたが、平成4年度から7年度まで、逆に決算額が計画額を下回るという状況になっています。平成8年度においては、決算見込額 34兆4,000億円余ということで、法人関係税の伸びなどに支えられて、5年ぶりに計画を上回る見込みとなっているところです。
下の方が、その8年度の決算見込額の内訳と、それから右の方に9年度の計画額を掲げています。9年度、一番下の地方税計の欄ですが、37兆円余を見込んでいるところです。この計画見込額の状況ですが、次の16ページをお開きいただくと、平成9年9月末の道府県民税の徴収実績です。左側に平成9年度の数字があって、括弧の(B)欄が調定額の累計です。平成8年度の(E)欄と比較したのが、右から2番目、前年対比の欄です。
主な税目について見ていただくと、個人の道府県税については、前年対比で6.9%増と一応の伸びを確保していますが、その下の法人の道府県民税が前年に比べると-5.6 ポイント、それからその3つ下の法人の事業税が-7.7 ポイントということで、法人関係の2税が前年度に比べて相当の落ち込みを見せているところです。
下から4番目になりますが、自動車取得税についても、今年度に入ってからの自動車の需要減などがありまして、9.4 ポイント減ということになっており、全体で前年対比1.2 ポイントの減という状況になっています。
17ページを御覧いただくと、これは平成9年9月末現在における東京都の特別区、それから各都道府県の県庁所在地、それから政令指定都市、49団体についての市町村税の調定額を調べたものでして、地方財政計画ベースで市町村税については、一番下の合計の欄ですが、2.2%増の8兆6,000億円余ということになっています。
主な税目について見てみると、市町村民税の所得割については、特別減税の廃止等により、11.0%の増ということになっていますが、その2つ下の法人税割については、83.7%ということで、16.3ポイントの減ということになっています。また、固定資産税については、0.5%ということで、ほぼ前年並み、それから、下から3番目、都市計画税につきましては96.3%ということで、3.7 ポイントの減といったような状況になっています。
なお、これは最初に申し上げたような49団体の抽出調査でして、都市部の動きが全国の市町村の動向と一致するわけではないので、御留意いただけたらと思います。
こうしたように、平成9年度の税収については、法人関係税を中心に低調に推移していて、今後の推移を慎重に見守っていく必要はありますが、現段階では全体としてかなり厳しい状況にあり、年度当初の見込みをかなり下回るのではないかと懸念しています。
また、平成10年度の税収についても、先ほど地方財政の関係のところで説明があったたように、地方消費税の平年度化による収入増が一部ありますが、平成9年度のこうした状況から見ても、平成10年度においては、引き続き楽観が許されない状況が続くのではないかと考えており、今後慎重に税収を見込んでいく必要があると考えています。
〇加藤会長
それでは、ただいまの説明について、御意見、御質問をいただきたいと思います。
なお、牧野総務課長と香山審議官は途中で退席されるので、その点、お含みおきの上御質問をお願いしたいと思います。いかがでございましょうか。
〇大田委員
質問というよりお願いなのですが、やはり今の状況を考えると、税を税の世界の中でしか議論できないというところが大変苦しい。私は法人税は実質減税すべきだし、有取税も廃止すべきだと思いますが、それぞれについて、ではその税収はどうするのだと言われると、大変選択肢が狭くなってしまう。歳出カットの余地はやはり十分にあると思うんですね。不要な歳出を減らして負担を軽くするというのが、文字通りの財政構造改革なので、主計局も本当に政治家相手にいろいろ御苦労なさるとは思うのですが、何とか歳入と歳出を一体として議論できるような枠ができるようにお願いしたいなと思います。
〇河野特別委員
国の方の財政事情のフレームワークの話で、特例公債-1兆2,500億円というのを機械的に置いたと説明されましたね。これはまさに機械的に置いたのでしょうが、機械的に置いたということは、予算編成の現実にぶち当たった時に、要調整の項目がたくさんあるわけで、なかなかうまくいかない時には、-1兆2,500億円というのを、財政構造改革法案が今日参議院で成立したそうですが、それとの関連を考えた場合に、これは変動修正可能なのか、-1兆2,500億円を-1兆円にして、ということになるのかどうかということをお尋ねしたい。
〇牧野総務課長
財政構造改革法においては、特例公債を着実に減額していくということは決まっているので、減額は必須です。必ずやらなければいけない。では、その金額は幾らなのかということですが、さっき申し上げたように、フレームの中で、まだ我々はっきりわからない要素で、税収の±A±Bというのがあるから、税外収入等いろいろ努力をするにしても、結局、どうやっても手が届かないということになれば、もちろん減額はするのですが、1兆2,500億円、我々はやりたいと思っていますが、できない可能性もあるのだと思っています。
〇加藤会長
それでは、牧野総務課長と香山審議官、お忙しいところありがとうございました。
〔主計局総務課長、財政局審議官 退席〕
[10年度改正の検討項目]
次に、平成10年度税制改正の審議に入りたいと思います。
皆さま方に御議論いただく前に、平成10年度改正における検討項目について、事務局から説明を受けたいと思います。
初めに、薄井主税局長からお願いいたします。
〇薄井主税局長
日頃は大変お世話になっていますが、本日から10年度の税制改正の御審議をお願いしたいと存じます。とりまとめは12月の中旬、16日あたりかなと思っています。予算編成、年内編成をすることから逆算すると、そういう日程になってくるかなと思っています。来年度税制改正の審議の開始に当たり、この10年度税制改正を取り巻く環境、あるいは私ども政府として審議会に御検討いただきたい主な項目について、説明をしたいと思います。
お手許には資料の9-4という1枚紙(資料4)を配っています。これに沿って御説明いたします。
まず、平成10年度税制改正を取り巻く環境というか、特徴が3つほどあろうかと思います。その第1は、構造改革というものを今進めている中にあるということです。この9月19日に税調総会が開かれていますが、その際に加藤税調会長からも御説明があったように、例えば法人税の議論、これは経済構造改革の一環として御議論いただいている位置づけですし、また、金融関係税制については、金融システム改革といった構造改革の一環として御議論をいただいていると承知しています。この1月に政府税調で『これからの税制を考える』をまとめていただいていますが、その中でも同様の観点が示されています。平成10年度税制改正を取り巻く1つの特徴としては、中長期的な観点からの構造改革の一環として税制改正をお願いしたいということです。
第2点は、先ほど経企庁からもお話がありましたが、経済の現状、それに加えて昨今の金融・証券市場の状況、そういった中で、来年度税制改正を御議論いただかざるを得ない状況にあるということです。政府としては、これまで経済対策をとりまとめてきていますが、税制改正については、12月中旬にまとめていくということで位置づけられています。
なお、11月18日に経済対策閣僚会議が開かれており、多分お手許にこれも配られていると思いますが、『21世紀を切りひらく緊急経済対策』というものをまとめています。その中で、税制に関しては「税制については、公平・中立・簡素の租税原則、国際的な視点にも配意した事業環境の整備、土地有効利用の促進、民間活力の一層の発揮等の観点を踏まえ、平成10年度税制改正において、法人課税、金融・証券関係税制、土地税制等を含めた幅広い措置について検討を行い、結論を得る」とされています。これが2つ目の環境ということになろうかと思います。
それから、第3のポイントは、平成10年度税制改正が財政構造改革法の成立を受けての初めての税制改正になるということです。先ほど来話題になっていますが、本日昼に財政構造改革法が通っており、歳出の改革と縮減に最大限の努力を傾注していく、特例公債の発行額を縮減していくということが平成10年度予算のポイントになってきます。そういった中で税制改正を行っていくということで、10年度税制改正は、財政構造改革と整合的なものでなければならないといった特徴があろうかと思っています。
このような3つの環境というか、要請というか、それらをすべて満たしていくことはなかなか難しいわけですが、この3つの要請にどう応えていくかということが、今回の税制改正の作業になろうかと思います。そういう意味で極めて難しさがあるわけでして、よろしくお願い申し上げたいと思っています。
次に、10年度税制改正で具体的にどういったことを御議論いただかなければならないかということについて、簡潔にお話ししたいと思います。まず、先ほど来の資料の丸の2つ目の法人課税です。法人課税については、一昨年来議論を続けてきていますが、昨年11月には法人課税小委員会の報告が出ています。それをもとに実務的にも私ども議論を積み重ねてきて、先日、たしか11月7日には課税ベース各項目の見直しの具体案というものも出しているわけです。こういったものをベースに、さらに掘り下げた議論をお願いし、是非とも結論に至ることを強く期待しているということです。課税ベースの適正化と税率の引下げということについては、仮にネット減税でないとしても、法人税の経済活動への中立性を高める改革になると思いますし、新規産業の創設や経済活力の発揮にも役立つものと考えている次第です。
2つ目は、金融関係税制です。この点については、まず御礼と御報告を申し上げます。政務次官から先ほど挨拶したように、本日昼の参議院本会議において、外為法改正に伴ういわゆる海外送金の資料情報制度、それから民間国外債の本人確認制度の2本の法律が可決成立しています。この構想については、金融課税小委員会において御議論をいただいて、さる9月19日の総会で御了承いただいたものでして、その検討の成果が法案の成立という形で実現しました。改めて税調の委員の皆さまに御礼申し上げる次第です。
金融課税小委員会ではその後も議論を続けていただいており、精力的な検討が進んでいます。中間報告のとりまとめ作業も大詰めを迎えていると承知しており、来月初めには総会に報告いただけることになっていると承知しています。
金融関係の税制については、幅広いテーマがあり、今後とも小委員会では議論を続けていただきたいと思っています。10年度税制改正で手当てすべきものについては、それなりの方向性を出していただきたいと思っており、その中心となるのは、証券関係の税制になろうかと思います。総会において小委員会での中間報告をもとに、総合的な答えを出していただきたいと思っている次第です。
なお、証券関係税制といった場合に、いわゆる有価証券取引税、それから取引所税というものが中心的な話になってくるかと思います。また、キャピタルゲイン課税の問題も証券関係税制ということでは出てくるかと思っています。その辺について、総会で幅広い御議論をお願いしたい、結論を出していただきたいと思っています。
3つ目は土地税制です。本年2月に新総合土地政策推進要綱が閣議決定されていますが、土地政策の目標というものが、これまでの地価抑制を基調としたものから、土地の有効利用という方向へ重点が移されてきています。また、11月18日の先ほど紹介した政府の経済対策においても、土地の有効利用の促進ということがテーマとして取り上げられています。また、これとは別なのですが、大蔵大臣、自治大臣、建設大臣、国土庁長官、あるいは与党の政調会長等をメンバーにした土地の有効利用促進のための検討会議というものがあって、ここでも土地・住宅税制について提言を行っています。参考資料の中の先ほど見ていただいた『21世紀を切りひらく……』云々の下の欄に載録していますので、御覧いただきたいと思います。
10年度税制改正においては、土地の二極化といったような状況を踏まえて、有効利用の促進あるいは不良債権問題への対応といった観点からの土地政策上の要請にも配慮いただいて、御検討をお願いしたいと思っています。
それから、次の丸の地方分権関係については、自治省からお話しがあります。
その他の黒ポツが3つあります。規制緩和推進の観点から、帳簿書類の電子データによる保存を検討しています。これには新たに法律が必要でして、その内容について今回御議論いただきたいと思っています。
また、平成9年度末に適用期限を迎える揮発油税等のいわゆる道路特定財源についても、10年度税制改正の中で御検討をいただきたいと思っています。
これらのほかにいわゆる政策減税の議論が与党においては幅広くなされています。こういったことについても、御議論をいただくことが必要になってくるかと思っています。その他ということで、これから何が出てくるか予想し得ないものもあるのかもしれませんが、諸々のことについてお願いしたいと思っています。
ペーパーの点線の下に4つの項目が書いてあります。これは10年度に実施することは無理かと思いますが、この年末にぜひ御議論いただきたいと思っている項目を並べました。
1つは、従来から御検討いただいている納税者番号です。さらに議論をしていただきたい、あるいは今後の検討の方向性について議論をしていただきたいと思っています。
それから、平成11年度に公的年金の財政再計算が予定されています。これと年金課税の関係は、これからの問題として非常に大きなものなので、これを今後どう議論していくか等を含めて、この年末にも議論していただきたいと思っています。
それから、OECDの場で議論してきている税の競争、タックス・コンペティションという問題があります。OECDにおいてはこの問題についての考え方が来年にもまとまってくる状況にあるので、この点についての御認識を深めていただきたいと思っています。先日御説明を簡単にさせていただいていますが、これもこの年末にもう一つ御議論いただきたいと思っています。
最後に、税の簡素化の問題を掲げてあります。税については、公平・中立・簡素ということで、租税原則が3つあります。公平については、常々一番大事なことということで議論してきています。いわゆる垂直的公平、水平的公平ということで議論を続けてきているわけです。また、経済活動に対する中立性ということについても議論を重ねてきています。簡素化についても税率のフラット化等が進んできていますが、税制はやはり簡素でなくてはいけないということを、もう一度ここで踏まえていかなくてはいけないと思っています。
なお、行政改革会議におきまして税制や税務行政について幾つかの議論がありました。そのことがこの税調総会でも過日話題になって、税の簡素化ということが大事であるという指摘がされています。今後の中長期的な課題として、税の簡素化の点についても御議論をいただければと思っています。帳簿書類の電子データでの保存もその一環とも言えます。
具体的には今申し上げたようなことがこの年末にかけて御審議いただきたい項目です。約半月間です。お忙しい中ではございますが、集中的な御審議をお願いしたいと思っています。
なお、この9月から政府税調の御判断により、審議会の審議の模様を、発言者の名入りで公表しています。そういった新しいスタイルでやってきているわけですが、平成10年度税制改正答申をどのようなスタイルでまとめていったらよいのか、そうした点についてもあわせて御検討いただければ幸いに思っています。
以上、国税関係について、この10年度改正で御議論いただきたい点について、御説明しました。
〇加藤会長
続いて、湊税務局長からお願いします。
〇湊税務局長
いよいよ10年度に向けての審議が本格化するわけですが、地方税に関しても、またよろしく御指導賜りますようにお願いを申し上げたいと存じます。
基本的には国税と共通する部分が多いわけですので、それらについては、私どもの方は簡潔にして、地方税に関する部分について御説明したいと思います。
まず、基本的な考え方、今、薄井局長の方から説明がありましたが、先般来、御審議も賜っており、地方分権推進という課題は、経済社会へのシステム変更にかかわる議論でもあり、我々にとって大変重要な課題です。こういった問題について、地方税源の充実あるいは地方分権の推進と地方税制のあり方等についても、こういった議論の中に含めて御意見をいただければありがたいと考えています。
それから、法人課税については、これももうたびたび御論議をちょうだいしているわけですが、1つには法人税の課税ベースの適正化等に対応した地方の法人課税の見直しについて、御論議を賜る必要があります。また、特に地方独自の問題としては、地方分権推進の観点にもかかわる事柄ですが、永年の課題である事業税の外形課税の問題について、是非御検討を賜りたいと考えています。このことは地方分権推進委員会から御指摘をいただいている今後の望ましい税体系の構築という観点からも、大変大切な課題であると考えていて、議論を深めていただきたいと考えています。
それから、金融関係については、ほぼ薄井局長からお話があったとおりですが、地方税独自というか、地方税のみにかかわる問題として、従前から当審議会でも御論議賜っていますが、株式等譲渡益など地方の非課税になっている所得についての議論が残されているわけです。こういった点についても、あわせて御検討を賜りたいと思っています。
それから、土地税制について、すでにこれも御論議をいただいてきていますが、先ほど薄井局長からお話があったように、新たな観点から、土地の有効利用であるとか、あるいは景気対策等の観点からは、流動化等の問題について、いろいろ御意見があるわけですが、こういった点にも御論議をいただくことがあろうかと考えています。
それから、地方分権関係です。特に地方分権推進委員会から、7月8日に出されました第2次の勧告で、税財源についての指針をちょうだいしています。特に地方税の充実については、今後、その具体化は当税調における議論を待ちたいという委員長からのかねての御説明もありましたが、中長期にわたって今後地方の税財源の充実確保ということをどういうふうに取り組んでいくかという観点は、是非この税調において御論議を賜りたいと考えています。当面の課題としては、答申にあるように、税の充実に関しては、補助金等の整理に対応した見直しということになろうかと思っています。この辺は予算の編成がどうなるかということを待たなければ、なかなか当税調で即解決ができる問題ではなかろうかとも思いますが、基本的な考え方の整理等を是非お願いしたいと思います。
また、勧告の中で、具体的な事柄として御指摘をいただいている課税自主権の尊重に関する部分、法定外普通税の許可制度だとか、市町村民税の制限税率の廃止などの問題については、これを踏まえた制度改正に取り組む必要があると考えています。こういった点について御意見をいただきたいと考えています。
なお、その他の事項に関連しては、帳簿書類の電子データによる保存については、地方税についても、国税と同様の観点から御議論をいただければと考えています。
それから、揮発油税等とありますが、地方の道路目的財源についても、暫定税率が道路整備五か年計画の終了に合わせて切れるので、来年度以降の取り組みについて御検討を賜ることになろうと思っています。
なお、その他の事項としては、当然のことですが、各税目にわたっていろいろ点検した結果、いろいろ細かな点についても御論議をいただく必要のあるものも出てこようかと思っています。今日、具体的にどうこうということではないのですが、それらについて、審議の過程でまた御意見を賜ることがあるのではないかと考えているので、よろしくお願い申し上げます。
なお、税の簡素化については、地方税においても、是非とも今後、納税者の利便とか、あるいは行政の効率化に取り組んでいきたいと考えています。中長期的な課題としてという、先ほど薄井局長からのお話がありましたが、地方税においても、同様の視点から是非取り組んでまいりたいと考えています。どうぞよろしくお願い申し上げます。
〇加藤会長
それでは、ただいまの説明を参考にして、皆さま方から御意見をいただきたいと思います。
なお、お手許に10年度税制改正に関する各省庁の要望書をとじたものとしてお配りしてあるので、適宜御参照の上自由に御意見をいただきたいと思います。また、各種団体から税制調査会宛てに出された10年度税制改正に関する要望書を入り口のところで閲覧できるようにしてあります。今後の総会の時にも、これから送られてくる要望書の追加をした上で、入り口のところで御覧いただけるようにしてあるので、御関心のある方は是非御覧いただきたいと思います。
それでは、どなたからでも御発言ください。
〇中西委員
いよいよ10年度の大きな課題、法人税課税と金融関係と土地税制の見直しに入るわけですが、我々産業界は、かねてから法人税の引下げは、実質10%近いものを是非とも減税してほしいということを言い続けているわけでして、この点について、今日の基本的考え方のところとの絡みが、財源を考えた場合に大きな問題になるわけですね。
財源をどうするかということですが、私はこの前、今井委員も島田委員もおっしゃったこととほぼ同じ考え方なのですが、(1996年度末で)GDPに対して7%の赤字がある、これは2003年までにともかく3%以下に持っていく、4%減らそうというのが財政改革の目標です。この97年度で消費税アップと公共投資の削減で、大体2%ぐらいクリアしたのではないかと言われていますね。残りあと2%ですから、2003年まで6年あるわけですね。ですから、そう急いで財政再建というものを、そこに軸足を置いてやる必要はないのではないか。むしろこの間島田委員もおっしゃったような経済の活性化、今は景気が大変な局面にあるから、経済の活性化を促すような大幅減税というものをやることによって、3年なり5年のスパンで歳入歳出の帳尻を合わすという考え方、いわゆる大蔵省殿の単年度主義の帳尻合わせという基本的な視点をひとつ外していただいて───前もこれは申し上げたことですが、───やはりそれをする以外にないのではないかということが、基本的考え方と法人税の引下げとの関連で一つ申し上げたい。
あと一つは、隣に自治省の局長がおられますが、私はこの法人税問題は、かねがね前からも言っていますが、国税は37.5%だから、これは35%まで2.5%下げれば大体国際平準化、欧米並みになるわけでして、問題は地方法人税の12%をどこまで下げさすかということだと思うのです。私は、これは地方法人税が二重課税議論もあることですし、やはり7.5%ぐらいは、結局ここからとらないと10%の財源というのは出てこないだろう。
その場合にどうするのだということですが、この間、水野(勝)委員がおっしゃいましたが、私も同じ意見です。外形標準課税でいった場合、これを従業員の頭数とか賃金とか、あるいは工場の土地の広さということでやると、中小企業に非常に不利になる。土地の広さでいけば、装置型産業の大企業が非常に不利になる。非常にアンフェアになるわけです。やはり私は、これは同じ付加価値税でも国境税調整の効く消費型付加価値税で、総売上から総仕入を引いたところ、付加価値のところに何がしかの税率でかけるということで財源を求めて、現在の地方法人税を7.5%ぐらい代替するという仕組みが求められないものかという考えが1つあります。
それから、土地税制も前から言っていることです。景気対策、経済情勢をどう見るかということにあるのですが、今は非常に景気が足踏みの段階に入っていることは、政府も認めているわけでして、悪くすると、これはもっと突っ込んでいくということもあり得るわけです。資産デフレという問題が大きな景気の病根にあるわけですから、それはやはり土地の活性化というものをどうしても──流動化、活性化をやるには、地価税はこの際思い切って凍結、譲渡益課税は時限を切って免税するか、あるいは大幅に負担を軽くするという措置をこの際思い切ってやらないと、土地税制は微調整ではほとんど市場に織込み済みですから、何のシグナルも与えないということになると思うのです。是非ひとつ、あと半月ぐらいの間、この辺に──土地問題は必ず反論の御意見の方もおられるので、ここ2年越しに同じ議論をしている感じがしますが、私はやはり土地税制と金融関係の有取税だけは、この際思い切って踏み切る。それが現在の経済情勢、景気対策を同時に兼ねることになるのではないか。公共投資の財政出動はまず不可能なことですから、やはり減税で景気の浮揚のインパクトにするということを是非お考え願いたいと思います。
〇島田委員
本日の基本的な考え方、構造改革と経済情勢と財政構造改革と3つあるわけですが、これを受けた重要なテーマとして、法人課税と地方分権関係にかかわる問題として、法人課税について一言ぜひ今回の税制改正で書き込んでいただきたいということを申し上げたいと思います。
それはどういうことかというと、今、中西委員もおっしゃいましたが、法人課税を実効税率で10%程度引き下げるということは、様々な角度から考えて、そういう方向に確実に進み出すのだという自信を経済に与える。そして、それをきっかけにして経済構造の改革も進めるということが不可欠だと思うのです。その時に国税としての法人税でどこまでできるかといえば、これはもうおそらくその半分ぐらいがせいぜいではないかと思われます。つまり消費税の問題もあり、所得税の問題もある。その中で法人税だけということは、バランスも欠くし、ぎりぎりのところだと思うのです。そういう意味では、おのずからワンセットの問題として地方法人所得課税、特に事業税ですが、これについて思い切って切り込むということをしないといけない。
国税の法人税については、もう非常に詳細な議論が積み重ねられてきておって、大体どのぐらいのことがどうできるかというのは、具体論のところへ来ているかと思うのですが、地方の事業税についてどうするか、あるいはその他の法人所得課税についてどうするかという問題は、大変複雑な問題がたくさん絡むから、前回も申し上げましたが、そういう方向で踏み込むのだということを是非今回の10年度改革の中に書いていただいて、そして、特別な委員会をつくるなりして、1年間ものすごく集中的な議論をして、来年度改正には実現を見ると、こういうアナウンスメントを今回の税制改正でぜひ書き込んでもらいたいと思います。そのことが経済社会、特に企業活動に対して与えるインパクト、アナウンスメント効果は非常に大きなものがあり得るのではないかと思います。
その時に、同時に、先ほども地方税の御説明がありましたが、不況になると地方税収が非常に落ち込んでくる。これは当然なので、法人所得課税を地方税として取っているということ自体が、戦後の税制の経緯だったと思うのですが、私は本来はおかしいと思うのです。分権とは言うが、日本は連邦国家ではないのですから、連邦国家でない国が、どうして法人所得課税が地方課税としてあるのか私はよくわからない。これは本来応益課税的なものであるべきなので、ずっと議論が出ているように、しっかりした外形標準課税を導入することによって、地方税収を安定させる。そういうことでもって、是非トータルな法人課税改革を書き込んでいただきたいと思います。
私どもの計算ですと、法人事業税を仮に全廃しても、それは付加価値税をすくい入れた場合に、約1.5%ぐらいの付加価値税で大体対応するということですから、これは地方自治体にとっても非常にいいことになるし、税金を納めている企業にとって非常に活性化になります。そして経済構造の改革になるということで、三拍子そろうわけでして、是非今次の10年度改正で勇気をもって、そういう方向で改革をするのだと、具体的な改革案は来年度かもしれませんが、するのだということだけは書き込んで、国際社会に向けても、日本は一歩踏み出したのだということを明らかにしていただきたいと思います。
〇松本(和)委員
ちょっと地方の方からですが、法人住民税関係で今ちょっと話が出たのですが、市町村関係が12.3%、県のほうが5%ですか、そういうことで、結局、法人税が下げられた場合に地方がまたそのはね返りがあるわけですが、またそれに対して課税対象が法人税額、これをまた下げられた場合、二重の影響が出てくるのではないかというような心配があるわけですが、その点も含みながら地方の立場も考えていただきたいというような気がいたします。
〇水野(勝)委員
来年度税制改正のこの基本的考え方、3つの観点からです。非常に難しい局面だと思います。せっかく財政構造改革、法律が成立して、しかし初年度はできなかったというと、おそらく2年度目以降も特例公債の減額ということが、最初からそういうことだと、かなり難しくなってしまうのではないか。そういう意味においては、是非頑張ってもらいたいと思うわけですが、先ほどから御説明のあるような経済情勢、これはとても一般的な増税であれ、部分的な増税であれ、できる環境にはない。また税収動向も厳しいということですが、そこらのあたりについては、歳入歳出全体を見てのいろいろな知恵を出して、是非構造改革も進めていただければと思うわけです。
最近、一つ世の中に出ている提案で、いろいろな民営化会社の株式──今の株式市場からすると、売れるような状況ではない。そういうことであれば政府の手持ちの株式を担保に、これはどういう形になるのかよくわかりませんが、特例公債でない国債を出して、現在の特例公債を減らしていく。政府の持っている財産を担保にした──これは国債なのか何なのかよくわかりませんが、──そういう提案も出てきているわけです。これは1つの例でございましょうが、税の方ではなかなか知恵がないとすれば、いろいろな知恵を出されて、関係御当局で御検討をいただけたらと思うわけです。
〇高梨特別委員
私、実際に中堅企業を経営している立場で、非常にプリミティブなことを申し上げるかもしれませんが、いつぞや会長さんから、この会は理論的でなければいかんというようなお話もあったように記憶しているから、そういうことはちょっとお話ができませんが、非常にプリミティブかもしれませんが、実際に運営をしている者として、またそういう仲間たちと日常一緒にお話をしたりする状況からして──今日ここへ参りまして、前半いろいろと御当局からお話を承りました時には、どのお話がどうとは申しませんが、また財源問題でぐっと抑えられるのか、私も一つ一つに対して御反発もできない、したがって、これは辛いなと思っていました。
そういう気持ちでいたところへ、先ほどの皆さん方の、島田委員だとか中西委員のお話を承ると、大変明るい気持ちになります。これが非常に大事なのではないかと私は感じていて、今確かに御説明をいただいたように、経済の中身それ自体は、実際は足踏みなのかもしれませんが、マインドとしては、ここ数日は特にでありますが、どうしたらいいのだろう、貸ししぶりではなくて、お金を貸す形が壊れてきているというふうに感じざるを得ないことがあるわけです。優秀な企業だけがあるわけではないので、選別に残った企業だけが大事な日本の経済を支えている企業のすべてであるわけでもないわけなので、是非ひとつ先ほどのお話のように、企業マインド、実際やっている者に、「よし!」という気持ちを起こさせるような先ほどのお話のようなことを、是非取り組んでいただきますようにお願い申し上げたいと思います。
〇大田委員
法人税の減税と有取税、取引所税の撤廃は賛成です。これは景気対策としてだけではなくて、税のあり方としても望ましいと思います。
ただ、次の土地税制のところで、地価税の凍結は、これは景気対策ではないと思います。なぜ景気対策として地価税の凍結が上がってくるのか、私はもう一つ理解できません。その凍結の恩恵が一体誰に及ぶのかということを考えると、私はその分はむしろ法人税の減税に向けた方が望ましいと思っています。ただ、土地税制そのものは、もちろん議論する必要があります。保有税についても、地価税のあり方ももちろん議論する必要があると思いますが、今のように景気対策として地価税凍結というのが出てくるのはおかしいのではないかなと思います。土地税制については、有効活用という方向から見ると、保有税をしっかりかけて譲渡税を軽減する。それから取得税を大幅に軽減するという方向が望ましく、その方向で議論すべきではないかなと思っています。
〇橋本特別委員
前回の時に土地税制について意見を申し上げて、景気対策として土地税制を考えるのはおかしいという、今、大田先生の御意見ですが、現在のこの土地税制というのは、やはりいまだに地価高騰時の体系というものを引きずっているというところに問題があるのではないかと思っているわけです。平成3年の総合的な土地税制改革というのはありましたが、当時の考え方は、土地の資産としての有利性を減殺して地価抑制を図るというバブル対策の観点と、それから、土地の有効利用を図るという土地政策的な観点が混在しており、その結果として、保有と譲渡の両面において、様々な形で土地に対する課税強化が図られた。こういう経緯があるわけですが、現在のいわば土地デフレとも言われる現状、あるいは金融機関をはじめとしてゼネコンだとかそういうところで土地が非常にしこっている。流動化しない。金融機関は不良債権償却をやっていますが、これはあくまでも帳簿上の償却にとどまっており、実質的な土地の動きがないものですから、それがそのまま非常に大きな負担になって残っている。今の金融機関の危機的状況というのは、もとをたどると、やはり土地、それから株式という、こういう資産デフレというものが原因になっているのではないかと思うので、やはり地価抑制を目的にした土地税制というのは、抜本的に見直す時期に来ているのではないかと思います。
この地価税というものの働きは、やはりこれがあると、土地の収益性に対するコストというものが、その分だけ高まるわけでして、現在、土地に対して投資をやろうという人は、その土地を買うことによって投資利回りがどうなるかという観点で買うという傾向に、これは世界的な標準はそうなっているわけですが、大体今まで日本は、近隣の地価が幾らであるかとか、そういうことを参考にして取引が行われていたわけですが、やはりだんだん土地の収益性というものを基準にして売買が行われる。そうすると、地価税なんかがあることが利回りを非常に低くする。つまり、土地に対するニーズがそれだけ抑制されるという効果があるので、今は土地の需給関係からいくと、供給を促進するということよりも、むしろ需要を喚起するという面が重要なので、特に地価税、固定資産税、いろいろな税金があるわけですが、地価税そのものはそういう動機でつくられた税金であると思うし、固定資産税と一種のダブル課税ということになっているので、これはやはり時を移さず廃止もしくは凍結されるべきではないかと思います。
〇今井委員
毎回同じようなことを言うので、遠慮していたのですが、さっきもお話があったように、今度の税制改革というのは、この機会を逃すとまたずいぶん先になるから、したがって構造改革の一環としてとらえて、是非国際的な視点を入れて、展望をはっきり示すということを、今回10年度改正ではありますが、是非お願いしたい。
具体的な要望は、いつも申し上げているように、10%、そして初年度が法人税を中心に5%なのですが、7日の課税ベースの適正化という話が出た時に、これをやると一体どのぐらいの税収効果があるのかと質問をしまして、もう20日経っているのですが、まだ出てこない。これはあと20日もないわけです。一体いつ出て、いつそういう具体的な議論ができるのか、こういうことを今日お伺いいたしたいと思い ます。
それから、確かに事業税については、1年間ぐらいの抜本的な議論が必要だと思いますから、これも基本的な道筋をはっきり出した上で、来年度までにやっていただきたいと思うのですが、それにしても赤字法人課税の問題は、今回持ち出されていますし、法人税の住民税均等割の見直し、是非今年度の課題として議論していただけたらと思っています。
あとつけ加えると、連結納税はこの前も申し上げました。今年やれないと思いますが、課題として是非取り上げておいていただきたいと思います。今日の検討項目の中に入っていませんが、これは非常に必要なものだと思います。
それから、年金課税については、確かに財政再計算と一緒に議論すべき問題かもしれませんが、前から申し上げているように、今の適年の課税、1.0%というのは、金利率7%で計算したものですから、余りにも現在の利率とはかけ離れているということで、是非税率の見直しということを今年度の問題としてお願いしたいと思っています。
〇尾原審議官
課税ベースの具体案を出したにもかかわらず、どのぐらいの税収になるのかということでした。確かに12月の半ばまで日が迫っています。来週には、具体的に各項目についてどのぐらいの規模のものになるかということをお示ししたいと思っています。
〇今井委員
わかりました。
〇松浦委員
先ほどから地方の法人税のことが出ていますが、今、私ども地方の問題として、いろいろとこの中で言われていますが、今一生懸命あがいているというか、もがいているというか、そういう状況にあって、いろいろと合併論議が盛んになってきています。それは、やはり地方の財源が大変苦しくなってきているということにもあるのではないかと思います。そういう点で、先ほども地方の法人税の問題が出ました。それを討議するのもよろしいわけですが、先日も出ていた、今、島田先生がおっしゃったような外形標準課税についても、是非御議論をいただきたいと思います。
それと同時に、私どもは今いろいろと陳情をしている立場で、地方道の問題があるわけです。揮発油税のお話がありましたが、今、建設省では、財源が少なくなってきているものだから、国道優先だということで、地方道に関しては、ほとんど新規の地方道についてはノーという返事が来ています。そういう点で、私どもは地方道の建設、県道、市道を含めて大変苦労をしているわけでして、是非そうしたことについて、揮発油税の問題等を含めて御議論をいただければと思うわけです。
あわせて地方税の充実という点について、先ほども湊局長さんからお話がありましたが、金融課税における地方税の課題として、株式等譲渡益や割引債の償還差益など、個人住民税が非課税となっている。いわゆる地方税の問題で穴があいているわけですが、そうした地方税の課税の適正化を図る観点から、是非利子割方式も参考にしながら検討していただければと思います。
〇大田委員
一言だけ、誤解のないようにちょっと補足させていただきたいと思いますが、私は景気対策として土地税制を議論してはいけないとは全然思っていませんで、それならば譲渡税の軽減と取得税の軽減ではないかということを申し上げたかったわけです。
それから、土地収益が税によって減少するというような点、それについては、固定資産税と合わせてどの程度の税が必要かというのは、もちろん議論すべきだと思っています。
〇島田委員
地方分権の項目について一言申し上げたいのですが、地方分権との関係でいうと、私は3つのレベルがあると思います。1つは、国と地方の機能をどう分担して、そして財源をどう分けるか。これは諸井会長のところでさんざんおやりになった議論だと思うのですが、行政改革問題とも直結している問題で、避けて通れない。やるべきだと思います。
もう一つ重要なのは、地方自治体と住民との間で、本当に住民が地方自治体を支えるのだという認識を住民の方に持っていただくという努力が、つまり私はこれを「責任ある地方自治」と呼んでいるのですが、切磋琢磨があるのか、ないのか。私は、これは現状は非常に薄いと思うのです。ですから、言い方はちょっと誤解を生むかもしれませんが、選挙権のない法人に法人所得税をかけて相当程度の所得を得て、選挙権のある人のところには腰が引けている。例えば具体的に言うと、粗大ごみの徴収の実費を全部取っている自治体がどのぐらいあるかというと、余りない。名目だけ取っているところはありますが。全額本当は取った方がいいのではないかと思うのです。出さない人だっているのですから。そういうことで腰が引けてやっているところに、地方自治の信頼できない面がある。
ですから、外形標準課税というのは非常に意味がある。つまり外形標準課税を出すと、所得課税ではないから、地方が自治体のサービスをやっているのだ、それに対して応益負担をせい、ということです。文句があれば…ということで当然文句は出てきます。その文句に対して情報開示をして、当局が「必要なものを取っているのだからいいだろう。嫌なら出ていってくださいよ」と、このくらいの切磋琢磨をやることで初めて本当の自治体になる。これは私は本当だと思うのです。そういう意味もあるので、是非外形標準課税の議論はやっていただきたい。
ただ、そうすると、生活困難な弱者はどうするのだという問題、あるいは地方で財政力のないところはどうするのだと。これは所得格差の問題であり、発展格差の問題ですね。これは、しかし、税の議論で扱うべき話ではないので、産業経済政策なり社会保障政策なんですね。混同しないでいただきたいということです。
最後に1点だけですが、連結納税について、私も今井社長と同じで是非議論していただきたいのでが、1つすっきりしていただきたいのは、連結納税で子会社をつくって、本当にいろいろな活動をさせたいという場合に、本社が資金を本当に具体的に渡してしまって、そして納税をさせるという方式はヨーロッパでやっていますね。それは有りということでもって議論すれば、この問題はかなり解決しやすいのだと思うのです。是非その問題は避けないでいただきたいと思います。
〇水野(勝)委員
重複するような意見で申しわけないのですが、土地税制については、経済情勢に応じて議論するとすれば、今まで度々の土地高騰期に対策が講じられた譲渡課税を中心に議論がされたらいいのではないかと思うわけです。土地税制については、保有課税については、常に適正な水準でもって御負担をいただくというのが本来の姿ではないかと思います。その場合において、地価税と固定資産税というのは、ダブル課税と考えるのか。これは相互補完的な課税であるというふうに、制定当時の発想からするとそのように性格づけられないか。非常に地価が高騰して、固定資産税の負担がなかなか追いつかないという時には、地価税が即時弾力的に対応できるようになっているわけです。地価が沈静化した時には、固定資産税で足りる場合もあるかもしれない。いろいろな経済の実態、変動があるわけですから、相互補完的な両方の措置で弾力的に対応できる、そういうシステムができれば理想的なような気もするわけです。
〇河野特別委員
今、先週集中的に起こった金融の世界での問題が、我々全員に重くのしかかっていることは間違いないんですね。そのことが政府の従来の景気対策プラス、もっと根源的な金融システム改革論に結びついた手を打たなければいけないという議論になっていることも間違いない。実は今、マスコミの世界では、非常に浮き足立った議論が───実は新聞よりも雑誌なんだけれども───行われていて、世の中目先が真っ暗だというふうな論調ばかりがあるのだが、これはマスコミの悪い習癖の1つが表に出た面もあるんです。
何が今求められているかというと、税制もそうだし、景気対策もそうだし、それから金融システム論もそうなのだけれども、こういうことをやるということが明確になることによって、今確かに足下は埃がたちこめて暗い雰囲気になっていることは間違いないのだが、逆に、だから、悪い膿が出つつあるので、そこに効果的な手を打てば、むしろ先は明るく見える可能性があるというところにこそ問題があるんです。それにつながらない政策を何ぼ打っても、今はほとんど意味がないです。
税制調査会の方にそれを引き受けて考えてみれば、さっき何人かの委員の方がおっしゃっていたことに関連するのだが、やはり法人税については、2年間にわたる方向性ということを明確に打ち出す方がいい。今までだって考えてきたのですが、これは一連のあれが出るわけで、その時に税調がどういう役割を担うかということに関連する話ですが、それが一番重要だと思うのです。
あとは証券だとか土地についていろいろな議論があります。これからでもあるでしょう。総会はあと2~3回あるので。そこでも一番基本なことは、ちょびちょびやるのではなくて、これはこれできちっと仕分けて、これは残す、これは思い切って手を入れる、ということのメリハリをつけることが肝心で、それがないとメッセージが全然伝わらない。効果もほとんどないということになって、それはえらい時間をかけて長々と議論しながら、何をやったのだと言われる所以なんですね。何もすべてを全部やめろという暴論を言っているのではないが、とにかく非常にクリアカットのことをある点については明確に言うという腹の決め方が今求められていると思うのです。そうすれば、ほかの金融システム論で公的資金導入論その他があって、これもずいぶん混乱して議論を目下やられています。しかし、あと1週間もすればずいぶん整理されていることになるでしょう。それはそれでそういうふうになることを期待するのですが、いずれにしても、それぞれの対策をやった結果、来年は展望が開けるのだということを、とにかくみんなが一応納得できる、極端な悲観論者とか極端なある意味でものを言っている人を除けば、という方向に税調の議論全体が乗ることが必要ではないか。ただ時流に乗っかって、減税論に全部乗っかるなんていうことを私申し上げているのでは全くなくて、しかし、メリハリのない議論というのは有効でないということだけ、今日は入り口だから申し上げておきたいと思います。
〇加藤会長
まだ御意見がおありかと思いますが、時間が大体まいりました。
これからいよいよ本格的な議論になってまいります。次回は来週の水曜日、12月3日です。午前10時から開催します。金融課税小委員会で今議論されているのが具体的な最終的な詰めが出てまいるので、これを中心にして議論していきたいと思っています。
それから、それ以後の予定ですが、12月5日、金曜日、これも午前10時から、12月9日、火曜日は午後2時から、12月12日が午後2時からというような予定で開催するつもりなので、また御協力をお願いしたいと思います。
今日はこれで終わります。どうもありがとうございました。
〔閉会〕