第8回総会 議事録

平成9年11月18日開催

松本会長代理

ただいまから、税制調査会第8回総会を開催します。

本日は、加藤会長が所用で遅れるということなので、私が、会長代理ということで司会を務めさせていただきたいと思います。

それでは、本日の議事の進め方について申し上げると、最初に、「帳簿書類の電子データによる保存」について、事務局より説明を受けます。

第二に、地方税について、事務局より説明を受けて、皆さまからの御意見を承りたいと思います。

第三に、前回に引続いて、法人課税について、皆さまからの御意見を承りたいと思います。

最後に、年金課税について、事務局より説明を受けて、皆さまから御意見を承りたいと考えています。

[帳簿書類の電子データ保存について事務局説明]

それでは、最初に、帳簿書類の電子データの保存に関して、まず、本日昼頃に、閣僚会議が開かれて、その場で、政府の経済対策がまとめられたところです。対策は、規制緩和を中心としてまとめられているが、税制については、10年度改正において検討し、結論を得るということになっています。

なお、対策の本文は、現在、刷り増しをしているので、出来次第配付したいと思います。

また、本日、取りまとめられた政府与党で構成される土地有効利用促進のための検討会議の提言、先週、自民党が取りまとめた第二次経済対策と併せてお配りしますので、御覧いただきたいと思います。

それでは、経済対策に規制緩和策として盛り込まれている帳簿書類の電子データ保存については、税制にも密接な関係があるので、事務局より説明を受けたいと思います。主税局の西原税制第三課長、よろしくお願いします。

西原税制第三課長

それでは、私のほうから帳簿書類の電子データ保存について、御説明をします。

この件については、従来から、規制緩和推進計画などでも採り上げられている問題ですが、今、御紹介があったように、本日取りまとめられた経済対策にも、規制緩和策として採り上げられているところです。いわゆる高度情報化、ペーパーレス化の進展する中で、税法上の帳簿書類についても、新たな時代の要請に対応して、納税者の帳簿保存の負担軽減を図るといった観点から、一種の規制緩和ということで、保存方法の見直しを行う必要があると考えています。この件については、国税のみならず、地方税についても共通のテーマです。

それでは、資料に基づいて説明をします。

お手許の「帳簿書類の電子データによる保存」(資料1)に、情報化時代の会計処理ということで、上の段に、従来型の手作業会計処理による帳簿書類の作成・保存と、中段以下に、コンピュータ会計処理による帳簿書類の作成・保存との処理の流れを示しています。網かけになっている部分が、紙の形で帳簿書類として保存しなければいけない部分です。従来は、上の段を見ていただくと、段階を追って証票書類、あるいは各種帳簿の類を集計し、それを転記することを繰り返して、会計処理が行われていたわけです。

それが近年において、その下の段にあるコンピュータ会計になると、その集計をしたり、転記をしたりという部分がコンピュータの中で処理されるようになっています。現行の税制においては、この帳簿書類を紙によって保存するということが前提となっているので、やや右側の方にアウトプットと書かれていますが、コンピュータでの会計処理を行っている場合でも、帳簿書類をプリントアウトして保存しなければいけないということです。そういう面で、わざわざ電子データをアウトプットして、紙で保存しなければいけないというところに、いろいろなコスト負担という問題があったわけです。

2ページの左側にお示ししたように、コンピュータの普及により、高度情報化・ペーパーレス化が進展し、また、会計処理の分野においても、コンピュータ会計が普及し、コンピュータを利用した帳簿書類の作成が一般的に行われるようになってきているわけです。このような新しい時代の要請に対応して、右側に書いてあるように、帳簿書類の電子データによる保存の容認が求められているわけであり、その結果として、これを認めると、納税者の方の負担軽減が図られるということになるわけです。

しかしながら、ただ、この帳簿書類というのは、何と申しましても、申告納税制度のもとにおいては、適正・公平な課税を確保するという観点からは、極めて重要なものですので、無条件に、この帳簿書類の電子データによる保存を容認するということでは問題を生じかねないわけです。と申しますのは、電子データの特性として、下の方に書いていますが、改ざんしやすいとか、あるいはデータの処理過程が目に見えないといった特性がありますので、何らかの形で条件整備が必要であろうというふうに考えています。資料の方で御覧いただくと、可視性とか、真実性、証拠力と書いてあるのが、この条件整備で必要な部分であろうということです。この条件整備に関しては、現在、国税庁の方で、税の執行の立場、いわゆる適正・公平な課税を図るという立場から検討が行われています。近々、国税庁の方としても、考え方を取りまとめて、公表する予定と聞いています。

3ページ目です。こちらは、帳簿書類の電子データ保存により、納税者の負担がどのくらい軽減されるかといったものを示したものです。この例は大手の企業からヒアリングをしたものですが、それぞれ保存量としては会計帳簿、あるいは証票書類というものを非常に多く保存している。その保存スペースも倉庫等で非常に広い。年間保存コストとしては、保管料、あるいは用紙代、あるいは出力費用というような形で、非常に多額を要しているということで、負担軽減の試算をすると、左の保存量の中のアンダーラインを御覧いただくと、そこの部分を電子データとして保存すると仮定すると、負担軽減効果というのは、御覧のような数字になるということです。もちろん、企業の規模だとか、あるいは業種だとか、コンピュータ化への取組み状況によって差はありますが、企業全体としてみれば、極めて大きな負担軽減効果があるものと思われるわけです。

4ページと5ページですが、帳簿書類の電子データによる保存等についての政府の閣議決定等を一覧にしたものです。説明は省略しますが、一点だけ時期的な点を申し上げると、この4ページの2の(1)の下の方のカギカッコのアンダーラインですが、「特に周到な検討を要する場合でも、平成9年度末までに検討を了し、できる限り速やかに所要の措置(法改正が必要なものについては法案を提出)をとる。」このように、速やかな対応が求められている状況です。この件については、国税庁としての考え方が公表された後に、あらためて御説明したいと思っています。

加藤会長

今、電子データの保存についての御説明がありましたが、とりあえず何か御質問があれば、どうぞおっしゃっていただけませんか。

松尾委員

質問ではないが、政府の経済対策の中に、電子データによる帳簿書類の保存について盛り込まれたことは、大変結構なことであると思います。地味な印象を受けるのですが、極めて重要な内容を含んでいると思いますし、多くの企業で帳簿書類をコンピュータで処理する手法が普及している、そういう時代の流れに対応したものであると思うのです。やっと民間の動きにキャッチアップすることになると思います。

ともかく、この措置は、税務執行面から税の簡素化を進めることになるし、税制改正の流れを象徴するものであると思います。要するに、納税者の利益に非常に適っているということであると思うのです。ここ何年間の税制改革の流れを見ると、税の公平性、税の中立性、そういう視点から進められてきているので、今後に残された大きなテーマは、税の簡素化だろうと考えます。これは、税の三大原則の一つであるから、納税コストを削減して、行政改革を推進するという要請に沿ったものであると思います。

この税の簡素化ですが、帳簿の電子保存のような税務執行面だけにとどまってはならないと考えます。さらに、幅広く税制自体の簡素化を検討していく必要があるのではないでしょうか。租税特別措置の合理化、さらには、税率構造のフラット化といったような大きな問題も視野に入れて、中・長期的な議論を進めるよう、私としては提案したいと思います。

水野(忠)委員

一つ、お伺いしたいのですが、この帳簿書類を電子データで保存するということに対応して、今までの従来の質問検査のあり方ですとか、質問検査に関する規定、この辺はいかがなんでしょうか。そのまま、従来の規定どおりで適用できるというのか、質問検査のあり方、情報そのものが電子化してくるので、何か、それに対応して、今後、検討するという方向で進まれるのかどうか。

西原税制第三課長

今検討している段階では、帳簿書類を電子データと読み変えるような形を考えているので、基本的には、特に手を入れなくてもいいのかなと考えていますが、いずれにしても、今後、法律の改正作業をする際に検討してまいりたいと思っています。

柳島特別委員

単純な質問ですが、これは保存期間というのは何年ぐらいなのですか。

西原税制第三課長

ものによりますが、5年とか7年になっています。

加藤会長

ちょっと一つだけ伺っておきたいのですが、これは、フォーマットの統一をするかどうかというような問題もありますが、緊急経済対策の一つとして上がったわけですか。

西原税制第三課長

この件については、かつてから、いわゆる規制緩和推進計画とかいう形で、いろいろ取り沙汰されていたテーマです。それを今回、経済対策という中で、本日発表になったものですが、その中でもきちんとした位置づけにして、早急に、これを手がけようという位置づけになったものです。

加藤会長

そうすると、緊急というよりは、どっちかというと、長期的な見方になりますね。

西原税制第三課長

この件については、平成7年から検討してきているものであり、資料の4ページ目のところで若干触れましたが、2の(1)のカギカッコの後段のアンダーラインのところで、「平成9年度末までに、検討を了して、できる限り速やかに所要の措置を」ということになっているので、可能であれば、次期通常国会で対応するという位置づけになっています。

[地方税(地方財政も含む)]

加藤会長

それでは、また次の機会もあると思いますので、これだけにして、地方税の問題に入りたいと思います。

地方財政及び地方税の現状について事務局から説明を受けて、それから御意見をいただきたいと思います。

なお、地方の法人課税については、後程、法人課税の中で議論するので、御意見は、その際にお願いします。

それでは、地方財政について、自治省財政局瀧野財政課長より説明を受けたいと思います。どうぞ、よろしく。

瀧野財政課長

地方財政について、資料に基づいて御説明を申し上げます。(資料2)の1ページです。地方財政の果たす役割ですが、最終支出ベースで国と地方の役割を示したものでして、国の方が35.4%に対して、地方の方が64.6%の支出を分担しているということです。2ページですが、地方の財政と国の予算との関係を示した図です。右の方に地方財政計画が示されていますが、地方団体において、標準的な水準で行政をやる場合に、どのぐらいの歳出になり、それをどのような歳入で賄うかということで、地方財政計画を策定しているわけです。

歳入を御覧いただくと、全体87兆円のうち、地方税が37兆円程度です。交付税として17兆1,000億円、国庫支出金として13兆3,000億円、地方債が12兆1,000億円と、これが大まかな歳入の項目です。

左側が国の一般会計ですが、国税の一定割合が地方交付税として、地方団体に配分されているわけです。それから、一般歳出の中に地方団体に対する補助金がありまして、それが直接各省庁から地方団体に配分されるという状況を示しています。

3ページですが、地方交付税の性格についてまとめたものです。真ん中から上に、国・地方間の財源配分という図を示しています。平成7年度ベースですが、租税総額としては、88兆円余という数字です。これが国税と地方税に分かれるわけですが、その段階では、国・地方の割合は、右の方にありますが、大体2:1ということです。交付税の配分後の配分割合は、大体1:1、さらに、それに国庫支出金が配分されて、一番最初に御説明した歳出ベースの国・地方に合うような財源配分がなされていると。こういう図です。交付税については、所得税、法人税、酒税の32%、平成9年度から消費税については29.5%、たばこ税について25%ということにされています。

4ページですが、若干細かくて恐縮ですが、これまでの地方財政の歩みを示したものです。特に最近で御覧いただくと、平成元年に消費税が導入されて、個別間接税が整理されたわけですが、その段階で、消費税と交付税がリンクをしました。それから、国庫負担率の見直しという中で、たばこ税が交付税にリンクしたという経緯があります。

5ページ以下は、こういう地方財政についての現状の資料です。現在、地方財政は非常に巨額の財源不足に陥っており、通常収支で平成9年度4兆7,000億円余という財源不足です。一番上の四角の中にあるとおり、財源不足の状況は平成6年度以降続いているような状況です。

こういった状況の中で、二番目にあるとおり、非常に借入金に依存する財政体質ということになっており、平成9年度末で約147兆円という借入金残高になっているわけです。個別の団体を見ると、さらに硬直化が進んでいて、公債費負担比率15%以上という一応の水準で見ると、全地方公共団体の45%が、そういう非常に公債費の負担の重い状況になっているということです。財政事情について、今後、高齢化社会等に対する対応等がありまして、地方財政の健全化が望まれているということです。

6ページは、平成9年度における地方財政の対策と計画をまとめたものです。平成9年度においては、巨額の財源不足が生ずるという中で、歳出の方ですが、特に投資的経費については、補助事業、単独事業とも伸び率をゼロということとしています。このようなことの結果、歳出計は87兆1,000億円で、2.1%の伸びですが、その下の、地方一般歳出ということで見ると、0.9%という非常に低い伸びです。

こういうふうに歳出を抑えましたが、歳入ですが、自然体でいくと、地財対策前というところですが、81兆2,000億円程度しか見込めないという中で、財源不足が5.9兆円あります。これを交付税特会の借入金等借入金の増で賄って、平成9年度収支を均衡させ、財政運営をしているという状況です。

7ページ、8ページは、ただいま申し上げましたものの参考なので、省略します。

9ページですが、個別の団体の財政運営の状況を示したものでして、極めて公債負担比率が高くなっているということですが、特に上の横棒のグラフがありますが、歳入に占める地方税の構成を示したものでして、平均が大体33.2%というところですが、平均以下の地方公共団体が78%強あるということです。こういったところを中心に非常に財政状況が悪化してきているという状況です。

このような状況の下、地方財政の健全化に取り組まなければいけないということですが、まず、10ページですが、特に地方財政の一般歳出を分析すると、国の施策とか、予算と関係の深い公共事業等の投資的経費とか、あるいは社会保障関係、あるいは教育関係、こういった三分野で一般歳出に対して、69.4%ということで、非常に大きなウエイトを占めているので、地方財政の健全化には、特にこういった三分野の見直しが必要であるというふうに考えているわけです。

歳出を、さらに分析したのが11ページですが、大きく分けて給与関係、一般行政、あるいは投資的経費と、公債費があります。例えば、給与関係費で申し上げると、国費が3兆円、地方費3兆8,000億円余というのが、まず最初の上の方に書いてありますが、これは、義務教育の先生方の給与等でして、こういったものについては、国が1/2 、地方が1/2 ということで、法律で負担関係が決まっています。それから、単独事業に分類されていますが、警察、消防、高校の教員というのがありますが、こういったものも、例えば警察官ですと、県別の定数が政令で定められているというような状況もあって、非常に多くの分野で、国が法令等で基準を設定するというような制約が、地方公共団体の歳出の中にはあるということでして、地方団体の歳出を健全化していくためには、そういった国の方のいろいろな規制を見直していく必要があるというふうに考えています。

12ページ以降は、現在、財政構造改革ということで、いろいろ議論されている関係の資料でして、特に12ページで申し上げると、各国に比べて、地方の財政赤字が、かなり大きいということです。黒塗りの部分が地方の財政赤字です。現在、我が国では、5.4%の国・地方を通じる財政赤字があるわけですが、そのうち、地方分が2.2%ということです。

13ページは、この財政赤字を平成15年度までに3%に持っていこうという道筋を示したものでして、それぞれ国・地方努力をして、この目標を達成していかなければいけないということです。

そういった中で、14ページですが、地方の財政構造の改革について、閣議決定を6月3日に行っているわけです。要点だけ申し上げると、の4行目からございますとおり、地方の財政赤字については、再建目標期間中に交付税特別会計借入金や財源対策債を圧縮することにより、これを縮減し、目標の達成に向けていくということです。そういった中で、の真ん中辺に、特に、というところがありますが、平成10年度の地方財政計画については、国が一般歳出をマイナスにする。あるいは投資的経費に係る単独事業についてもマイナスとするというようなことの中で、厳しく歳出の抑制を図って、地方財政計画上の地方一般歳出を、前年度比マイナスにしていくことを目指すという方針にしています。

15ページは、ただいま申し上げた閣議決定を法文化したものです。

16ページですが、地方財政については、特にこういう健全化の方向と、それから、地方分権という流れの中で、財政をさらに地方分権の時代に合ったものにしていくという課題が、もう一つあるわけです。そういった中で地方分権推進委員会における第2次勧告において、いくつかの御提言をいただいています。16ページは、国庫補助金に関するものです。真ん中辺の算用数字の2にあるとおり、国庫補助金については、特定のものを除いて、原則として廃止・縮減を図っていく。その場合、3にあるとおり、国庫補助金の削減計画を策定して、計画的に削減していきなさいと。5にあるとおり、削減した場合に、引続き事務・事業を実施する必要がある場合があるわけですが、その場合には、必要な一般財源を確保すると。こういうような方向が示されています。

17ページですが、税財源については、税については、後ほど税務局からお話があると思いますが、交付税については、真ん中辺から交付税というところがありますが、総額を安定的に確保する中で、算定方法を簡素化していきなさい。それからにあるとおり、算定方法については、地方公共団体が意見を申し出ることができる制度を考えるというようなことが勧告されています。

それから、地方債については、地方債許可制度を廃止して、事前協議制へ持っていくというような方向が示されています。我々としては、勧告を最大限尊重する中で、今後、制度化に向けて種々の検討をしていきたいというふうに考えています。

加藤会長

続いて、地方税の現状について自治省税務局の桑原企画課長からお願いします。

桑原企画課長

お手許の資料「地方税等関係資料」(資料3)に基づいて、地方税の現状について御説明します。表紙と目次をめくっていただくと、租税体系ということで、地方税と国税、それから、地方税の中で道府県税、市町村税、さらに、普通税、目的税に分けた体系図が載っています。

2ページを開いていただくと、それぞれの道府県税、市町村税について、税目ごとの課税要件、納税義務者、課税客体、課税標準をどうとっているか、それから、一番右端の欄の平成9年度の収入見込額は、どの程度であるかといったようなことを表にまとめています。説明は省略します。

4ページにまいります。平成9年度の地方財政計画ベースの地方税収の構成です。御覧いただくと、平成9年度地方税全体で37兆143億円の収入を見込んでおり、このうちの43.4%が道府県税、56.6%が市町村税ということになっています。道府県税においては、右上のグレーの部分の法人事業税、法人道府県民税といった法人関係税のウエイトが大きくなっているし、市町村税の方では、左下の方の固定資産税、あるいは左上の個人の市町村民税、こういったもののウエイトが大きくなっています。

なお、道府県税のうち、法人事業税のすぐ下にございます地方消費税、これがこの4月からスタートした新しい地方税でして、9年度は1兆30億円の収入を見込んでいるところです。

5ページをお開きいただくと、これは、平成7年度、一番新しい、確定した決算ベースでの地方税、それから道府県税、市町村税の状況です。左側の地方税のトータルが7年度で33兆6,750億円です。

内訳を御覧いただくと、右側の道府県税が13兆9,000億円余です。ウエイトとしては、個人の道府県民税が2割弱、これに利子割が7%ほどのシェアを占めています。それから、先ほども御説明しましたが、法人事業税と法人道府県民税、この法人関係2税を合わせると、36.2%ということになっています。

左下の方が市町村税でして、トータルで19兆7,660億円です。固定資産税が42.6%と、最もシェアが大きく、これに固定資産税と合わせて都市部で徴収される都市計画税を合計すると、5割近くのシェアを占めています。また、個人の市町村民税も33.0%と大きなシェアを占めており、市町村税の方は、これに法人市町村民税を加えた4つの税目でほぼ95%を占めているということです。

なお、市町村税については、右隅の(参考)のところに書いていますが、この19兆7,000億円余のうち、大都市(政令指定都市)ですが、12団体で全体の約20%の市町村税を徴収している。人口10万以上の中都市で37.1%、小都市で15%、町村で14.4%、特別区で13.4%といったような構成で市町村税が徴収されているところです。

6ページをお開きいただくと、これは、租税総額に占める地方税の割合ということで、平成7年度、我が国全体で88兆6,000億円余の租税が徴収されており、うち、62%、54兆9,000億円余が国税、38%、33兆6,000億円余が地方税、この比が、ほぼ2:1ということで、先ほど財政状況のところでも御説明があったように、これが〔参考〕の歳出の方にまいると、国の歳出が35.4%、地方の歳出が64.6%で、1:2というふうに、これがひっくり返っているということです。後ほど地方分権推進委員会の第2次勧告のところでも触れますが、こうした地方における歳出規模と地方税収入との乖離を、できるだけ縮小するという観点に立って、地方税の充実確保を図っていくべきであるという分権推進委員会の勧告をいただいているところです。

7ページをお開きいただくと、ここは、少し経年的に地方の歳入総額、それから、それに占める地方税の割合が、どういうふうに推移しているかという表が左側です。それから、右側には地方の歳出総額の構成がどういうふうに推移してきているかということをまとめています。

左側の歳入について申し上げると、地方税の額、あるいは構成比、構成比のピークは平成2年度でして、41.6%を占めています。これが、それ以降徐々に低下しており、平成7年度には33.2%ということになっています。絶対額で申し上げると、平成3年度がピークで35.1兆円ということになっています。

右側の方の歳出を御覧いただくと、平成2年度を歳入との関係で対比していただくと、この時点で一番左側の網かけになっている部分が人件費ですが、人件費のウエイトは平成2年度の28.4%から平成7年度の26.1%ということで、少しずつ減少しているということです。黒い部分が公債費でして、これが8.3%、平成2年度から平成7年度の8.7%、これは少しずつシェアが微増しているということです。それから、公債費の右隣り縦線のマークが入っているところが普通建設事業費、地方における公共事業の関係の経費です。平成2年度でシェアが28.8%でしたが、平成7年度まで31.4%ということで、これは徐々にシェアが大きくなっている。また絶対額も大きくなっているということです。

左側の地方税の収入は、御覧いただいたように、バブルの崩壊等に伴って少なくなってまいったわけですが、地方においては、国の経済対策に合わせた地方単独事業の実施などで、普通建設事業費の拡大をこの間図ってきたということです。

8ページからは、歳入の状況をもう少し分析してみたものでして、一番左の欄が地方税、白いところが地方交付税、それから、格子状になっているところが国庫支出金ですが、費目別に歳入の構造を見たものです。

都道府県、市町村、いずれも一番左側の地方税の構成費が最も高くなっていますが、都道府県に比べると、市町村の方がやや大きいということになっています。地方交付税については、白い欄ですが、都道府県の方がシェアが少し高いということになっています。格子縞の部分の国庫支出金については、県のウエイトがかなり大きくなっています。これは、特に義務教育の学校の教職員の給与を県が負担している、それに対して、国庫支出金が出されているといったようなことが影響しているところです。また黒い部分の地方債についても、かなり大きなシェアとなっているところです。

9ページにまいると、これは今の歳入の決算額の構成費を経年的に見たものです。一番下が地方税でして、シェアが、ピークは平成2年になっていて、徐々に低下しているということです。その上の白いところ地方交付税についても、平成2年度の17.8%から、シェアが少しずつ低下しているということです。もう少し上にある真っ黒い部分、これが地方債でして、地方税、地方交付税のシェアの低下に伴って、地方債のウエイトが徐々に大きくなって、平成2年度の7.8%から平成7年度の16.8%ということで大きく増加しているという状況にあります。

10ページは、今の歳入決算額の構成費を都道府県について見たものです。

11ページは、同じものを市町村について見たものです。対比していただくと、都道府県の方の地方税のシェアの増減が、市町村に比べて多いということでして、バブル期の景気の上昇、それから、その後の景気の落ち込みに伴って都道府県の地方税収の方が、景気変動の影響を大きく受けているということが、これで御覧いただけるかと思います。

12ページは、先ほど租税総額に対する国・地方の割合を御覧いただいたわけですが、これが経年的に、どういうふうに変化してきたかというものを御覧いただきたいというものでして、上の方の斜線の部分が国税、黒い部分が地方税です。平成7年度で地方税のウエイトが38%ということでして、このところ37%から38%の間で推移しています。これも平成元年度以降、少し地方税のウエイトが高くなっているというような傾向にはありますが、これは、制度改正というよりは、国税・地方税それぞれが景気の動向等により、税収が変動した、その変動の影響の大きい小さいでもって、シェアが少し動いているということです。

13ページにまいると、これは税収を所得課税、消費課税、資産課税ごとに分類したものです。上の方が地方税でして、一番下の横線の部分が資産課税、白い部分が消費課税、それから一番上が所得課税です。下の方が租税総額全体でして、それと比較していただくと、地方税においては、消費関係の税のウエイトが小さいということが言えるかと思います。もっとも昭和45年当時には消費課税のウエイトが24.5%ありました。これが徐々に低下してまいりまして、平成元年に国の消費税が創設された際に、地方の消費関係税もかなり整理されて、例えば平成3年度には12.1%というところまで落ち込んでいたところですが、平成9年度、新しく地方消費税がスタートしたということもあり、平成9年度には16.5%まで、このシェアが拡大しているところです。それから、上の方の所得課税については、景気変動の影響、あるいは個人住民税の減税等により、平成2年度の63.7%のシェアが、平成9年度では53.1%まで低くなっています。そうしたものを埋め合わせるような形で資産課税のシェアが変動しているという状況です。

14ページは、地方税・国税それぞれについて、直接税と間接税のウエイトを経年的に、その推移を見たものです。一番左が地方税でして、昭和40年代においては、地方税において、間接税の比率20%台で推移していましたが、50年代に入って、これが15%程度に落ち込んで、先ほども、ちょっと触れましたが、消費税の創設に伴い地方の間接税が整理されたということもあり、平成3年度においては、地方において、間接税等の比率が9.8%、1割台まで落ち込んだところです。これが平成9年度には地方消費税の収入を見込んだということで、14.1%になっているということです。

15ページは、地方税の主要税目について、税収の対前年度の増減率の推移を見たものです。一番上の黒い線が法人事業税でして、その下の点線の部分が法人住民税です。この2つの税は、ほぼ同じような傾向で前年度に比べて増減をしており、バブル期のピークの昭和63年度においては、法人事業税20%を超える高い前年度の伸びを示していますが、平成2年度あたりから、大きく落ち込んで、平成4年度においては、マイナス15%といったような落ち込み、すなわち変動の大きな税ということになっています。その下の細い実線の部分は個人の住民税です。個人の住民税は、比較的安定した伸び率を示しています。平成6年度のところで15%近く落ちていますが、これは、平成6年度にいわゆる特別減税が実施されたことによる税収減です。最後の点線の部分の固定資産税については、ほぼ安定的な伸び率で推移しているということです。

16ページからは、少し地方税の税収の偏在の状況について御覧いただきたいということで資料を作っています。歳入総額に占める地方税の割合、先ほど平成7年度で33.2%ということで御説明しましたが、このうち、都道府県においては、税収の占める割合が1割未満の県が1つあります。それから、10%を超え20%未満が20県ということで、20%未満の県で合計21県、3割未満ということですと38県、約8割ということになっています。それから、右側の市町村で申し上げると、ゼロ%から10%未満のところで876 、10%超20%未満で957 、合計で1,833 、56%ということで、半分を超える市町村が2割未満ということです。下の方は、こういった税収の偏在状況をグラフにしたものです。

17ページは、都道府県の税収の偏在の状況を、都道府県別に人口一人当たりの税収ということで、全国平均を100とした指標で見ていただこうというものです。左側が平成3年度の決算額、右側が平成7年度の決算額です。いずれも全国平均を100とすると、東京都が大きくなっています。それで、沖縄県が一人当たりの額が最も小さいということになっていますが、その格差は、平成3年度で4.26、平成7年度で3.25ということで、法人関係税の変動が主として影響していますが、平成7年度には、その格差は少し小さくなっているという状況にあります。

18ページは、今の一人当たりの道府県税収入額の上位の5県と下位の5県について、どういうような税目別の構造になっているかを御覧いただこうということで、表を作っています。上の方の上位5県を見ていただくと、黒い部分の法人事業税による差というのが相当程度大きくなっています。かつ、その法人事業税のウエイトというものが、非常に大きくなっていて、法人関係税の占めるウエイトが大きいということが、道府県税の税収の都市による変動にも影響しているわけです。

一方で、例えば、一番左の個人の道府県民税については、法人関係税ほどの大きな開きはないし、右から2番目の自動車税については、道府県による一人当たり税額の格差というものは、ほとんどないといったような状況かと思います。

19ページからは、市町村税についての分析でして、市町村税について、平成7年度一人当たりの負担額が全国平均で、一番上の右端にあるように、14万6,200円となっています。これを大都市(政令指定都市)ですが、それと、人口10万人以上の市、人口10万人未満の市、町村というふうに分けると、大都市の住民が21万円余で最も大きい負担をしていて、中都市、小都市、町村というふうに負担額は小さくなっていますが、構成を見ると、大都市では一番左の個人の市町村民税のシェアは29.9%と、シェアとしては一番小さくなっています。中都市が36.3%と最も多く、小都市、町村というふうにシェアが小さくなっています。

その右隣りの法人市町村民税については、大都市がシェア、あるいは額、一番大きく、それから少しずつ中都市、小都市というほどに小さくなっているということです。

その隣りの固定資産税については、額としては、大都市から順番に小さくなっていますが、シェアの方は、むしろ町村が最も大きく、それから小都市が大きいということで、大都市と中都市は、ほぼ変わらないといったような状況になっています。

20ページは、市町村の規模別の歳入の状況ということでして、市町村の歳入、それが大都市、中都市、小都市、町村でどういうふうに異なっているかということです。大都市においては、地方税の一人当たりの額というのは21万1,000円で最も大きくなっていますが、シェアとしては36.0%ということで、その下の中都市46.3%よりは、かなり小さくなっています。そういうことで、地方税のシェアは、中都市が一番大きく、さらに大都市、そのあと小都市、町村といったような具合になっているところです。逆に、地方交付税のウエイトは、小都市、町村になるほど大きくなっているということです。

21ページは、歳出について、これを目的別に都道府県、市町村ごとに眺めたものです。都道府県の段階では、右から3番目、教育費のウエイトが一番大きくなっています。市町村の小・中学校の教職員の人件費等も県が負担しているといったようなことが影響しているわけですが、それに次ぎますのが、黒い部分の土木費、それからその隣りの農林水産業費となっています。

市町村では、土木費のウエイトが一番大きく、それから、福祉行政の多くの分野を担当しているということで、左から2番目のところ、民生費がそれに次いでいて、それから、教育費といったような順番になっています。それから、大都市、中都市、小都市、町村というふうにいくに従って、少しずつ土木費のウエイトが小さくなり、かつ農林水産業費のウエイトが大きくなっています。

島田委員

時間が貴重なんだから、もう少し簡潔にしてください。見ればわかるでしょう。

加藤会長

ちょっと先を急いでくれませんか。

桑原企画課長

そのあと、地方の主要税目の資料がついていますが、ここは御参照ください。

27ページからは、地方の行財政改革関係の資料を載せています。地方においても、行政改革に真摯に取り組んでいますが、自治省においては、四角の中にありますが、地方分権、あるいは財政構造改革を進めるということで、一層の地方行革の推進が求められているということなので、平成9年11月、新しい行政改革の指針を地方に示して、強力な行政改革の取り組みを求めているところです。

下に、新指針のポイントということで書いていますが、特に、2の数値目標の設定等により、具体的で、目に見える取り組みを、今回の行政改革の大綱では明らかにして欲しいとか、あるいは3の住民の理解と協力が得られるように広報に努めるような努力をするとか、あるいは5の財政構造改革と歩調を合わせた取り組みを行うように求めているところです。

28ページは、地方公共団体のこれまでの行政改革の取り組みの状況をまとめたものです。

29ページは、地方公務員の定数の状況をまとめています。四角の中の一番上に書いていますが、地方公務員の数は、平成8年4月1日現在で327万人余、対前年比で3,851 人の減少ということで、平成7年の4,160人の減少に続いて、2年連続の減少となっています。

30ページは、地方公務員の給与の水準について、国家公務員と対比したラスパイレス指数の状況を示しています。ラスパイレス指数は、昭和50年以降、一貫して低下しており、平成8年4月1日現在で101.7 と、国家公務員とほぼ同様になっていて、その下の方のアンダーラインの部分ですが、ラスパイレス指数100未満の団体は、平成8年に全地方団体の7割に相当する2,297 団体ということになっています。

31ページは、そういった行政改革の一環にもなりますが、国と地方公共団体の税務執行上の協力関係について述べており、(1)納税者の利便の向上のための協力、(2)国・地方相互に税務行政を効率化するための協力、あるいは(3)の適正公平な課税、滞納処分の実施のための協力等を行っています。(1)の[1]にありますが、所得税、住民税、事業税については、申告手続きを一本化して、申告書を一本納税者が提出すればいいような扱いにしています。また、[2]で確定申告書についても、税務署だけでなく、市町村においても受け取る制度を行っており、平成7年度、全国の市町村で380万件、確定申告の約2割ですが、これを収受しているところです。

32ページは、地方分権推委員会の勧告で、地方税の関係の部分についてです。

(1)が第2次勧告、7月に行われた勧告でして、これについては、7月11日に地方分権推進委員会から説明があったところです。大きく2つに構成されていて、(1)は、地方税の充実確保について勧告しており、[1]は、先ほども触れましたが、歳出規模と収入との乖離を縮小しつつ、地方税の充実確保を図っていくべきであるということです。[2]は、少し中長期的な観点から、国と地方公共団体の役割分担を踏まえつつ、中長期的に国と地方の税源配分のあり方について検討しながら、地方税の充実確保を図っていく必要があるという勧告です。[3]は、こうした考え方のもとに、当面は、国庫補助負担金の廃止・縮減を行っても、引続き、その事務の実施が必要な場合や、国から地方への事務・権限の委譲が行われた場合において、その内容、規模等を考慮しつつ、地方税等の必要な一般財源の確保を図ることとするという勧告です。

33ページ、7月の第2次勧告のもう一つの柱ですが、(1)課税自主権の尊重ということでして、[1]で、現在、地方税法の中にある法定外普通税の制度について、現行の許可制度を、国との合意を要する事前協議制へ移したら、という勧告です。は、新しく法定外目的税という制度を創設して、住民の受益と負担の関係を明らかにしながら、地方の財源を確保していったらどうかという勧告です。[3]は、現行の地方税法において、標準税率を採用しない場合において、国への事前届出制が定められているものがあります。資料の後ろのほうの35ページと、36ページに、その関係の資料がありますが、この届出制度を廃止すべきであるという勧告です。それから、[4]は、地方税法の中で制限税率を定めている税目がありますが、そのうちの個人の市町村民税については、住民自らが負担を決定する性格が強いということで、その制限税率を廃止すべきであるという勧告です。

(2)は、10月に行われた第4次の勧告でして、これは、国の地方公共団体の本来の事務に対する関与についての勧告でして、国が地方本来の事務に対して行っている許可、あるいは認可、承認、そういったものを原則的に廃止して、33ページの下から4行目、カッコの中ですが、国との事前協議を行う場合に、例外的なものについては、国との同意を必要とする事前協議制にすることができるということを勧告しています。

34ページは、その中の一つとして、一番下の○印のところに書いてありますが、地方税法に基づく市町村民税の納税義務者の所得の計算について、市町村が自ら所得を計算し、市町村民税を課税することに係る国の許可について、これを国との同意を必要とする事前協議に移したら、という勧告をいただいています。市町村民税の所得割については、原則として所得税において計算された所得金額を課税の基礎としており、それが市町村を通じて、著しく適正を欠く場合には、自治大臣の許可を得て、市町村が自ら計算するということになっていますが、今の現行制度を国との合意を必要とする事前協議制に、ということで勧告がなされています。

以上が、地方分権推進委員会の勧告の部分ですが、最初の地方税の充実確保の部分については、毎年度の税制改正や中期的な税制に向けての議論の中で御検討をお願いすることになりますが、あとの方の課税自主権の尊重、それから、国の関与の基準についての勧告で述べられているそれぞれの事項につきましては、勧告に沿った方向で制度改正を進めてまいりたいと考えておりますので、委員の皆さま方の御理解をたまわりたいと思います。

加藤会長

あまり説明が長くなると、何か特に他意があって言っておられるのかというふうに思うので、なるべく簡単にしていただきたい。

桑原企画課長

失礼しました。

加藤会長

それでは、どうぞ、御意見がございましたら。

島田委員

今の非常に詳しい御説明でいろいろなことがよくわかったのですが、一つ、是非教えていただきたいのは、(資料2)に関係した財政の問題ですが、地方の自治体の財政規律への努力がわかるような、そういう何か指標を、今日でなくていいので、是非、用意していただけないかということです。

それは、どういう意味かと言うと、(資料2)の2ページ目をめくっていただきたいのですが、右の方に地方財政計画の歳入と歳出がありますが、歳出の中で義務的な歳出もありますが、例えば、投資的経費のところに補助事業と地方単独事業、地方単独が20兆円ということになっており、例えば、こういうことをやった時に、財政規律というか、自分の力に合わせて、どのくらい自分で財源を賄うのかという努力の度合いがわかるようなのはないか。

歳入の方を見ると、地方債で新しくプロジェクトを起こす時に、地方債を発行するということがあるでしょうし、国からの寄付金もあるでしょうし、交付税もある。いろいろなもので組み合わせてやるわけでしょうが──今回の説明は非常に詳しいのですが──、一つわかりにくいのは、全部トータルでやられているものだから、例えば、3,300の市町村のうちのどういう市が、例えば指定都市と、そうでないところと、どのくらい違いがあるか。あるいは、もうちょっと言うと、指定都市の中でも頑張っている方と、そうでない方がわかるようなのをつくってもらえないか。例えば、今の税構造のデータで言うと、大変面白いデータがあるわけですが───当たり前と言えば当たり前だが───、(資料3)の20ページのところで、規模が小さくなればなるほど、交付税に対する依存が高いという歳入構造になっているわけですが、それだけではわからない。それは、財政力が弱いから当然ということもありますが、与えられた条件の中で、どのぐらい努力しているのかという財政規律への努力の度合いがわかるようなものは、実は詳しくタイプロジィーを分ければ出てくるはずであり、ちょっとそれを何かの折に見せていただきたい。そうすると、財政構造改革をしていく時に、やはり全国で7割のお金を使っている市町村が、自分の意思でもって、自己責任で頑張ってくれるということが基本だと思う。現にそういうふうに努力しているところもあるわけです。だから、そういうところは、どういう条件のところが、どうやって努力しているのかというのが見えるような資料を整えていただけないか。

今井委員

簡単に申し上げます。経済団体では、法人税の実効税率を2年で欧米並みにするため10%下げていただきたいということを、かねてから申し上げており、今年中に、道筋を明らかにしていただきたい。そうすることによって、投資が活発になる。その第1年度として、平成10年度には、国税を中心として、課税ベースの適正化を含めて、相当額の実質減税と併せて、実効税率を半分の5%位の引下げを御検討いただきたい。

それから、本日、主題の地方事業税ですが、これについては、まだ、内容的に検討が必要ですので、1年ぐらい時間をかけて検討して、11年度の税制改正で、残りの5%を実現するように、是非お願いしたいと思っています。その際、先程、いろいろ御説明あった地方分権のような自主財源の確保とか、行政改革でどのぐらい地方の削減ができるとか、そういうことを考えに入れて、1年ぐらいかけてやっていただきたいと思います。

それから、適格年金について、後ほど御議論いただくと思いますが、意見書(別紙1)を出しておきましたので、これを私の意見として御採用いただきたいと思います。

それから、もう一つだけ、連結納税について、会長も、これは検討するということでお話があったと思いますが、これは、是非、今年度は導入に向けての前向きな具体的な審議を開始していただく様これをお願いしたい。

加藤会長

このあとで、すぐ議論します。

大田委員

今回の地方分権推進委員会の勧告の中では、課税自主権については、あまり議論されていない。つまり、税源を国から地方に委譲することと併せて、地方交付税を大幅に減らして、それから、制限税率を廃止するという部分は、これは税調のマターだから、地方分権推進委員会では、あまり議論しないのだというような議論の仕分けがあったようですが、これは税調で議論するのでしょうか。どんな形で議論するのでしょうか。

加藤会長

私ども、実は地方分権推進委員会で、かなりそこへ突っ込んでくれるのではないかと期待していましたが、向こうは大変紳士的でして、こちらにすべてお任せするということだから、我々としては積極的に採り上げていかなければならないと思っています。

河野特別委員

今日の自治省の説明で、一番重要なのは27ページですよ。これは最近自治省が決めて出したのだが、地方行革推進の新しい指針というのがあって、ここに小さい字でいろいろ書いてある。そこで、極めて重要だと思うのは、この中で、従来の各都道府県、あるいは市町村が、首長の指示のもとにいろいろな行革をやっているが、そういうことをはるかに超えたような行革の水準を示して、個別の問題で数値目標を設定して取り組みなさいと言っていることが一番重要なのです。それで、私は、このことに賛成です。ただ、問題は、平成10年末までにということなのですね。それも実態からすれば、やむを得ないことかもしれないと思うのです。

そこで一つ提案があるのは、ここに福井の知事もいらっしゃるから、あとでちょっと印象を聞きたいのですが、都道府県それぞれ責任のある知事がいて、市町村長がいて、自治省は、このことをペーパーで書いてきたが、おれのところは、こういうふうにこなすという、それぞれ個性があってしかるべきですね。通りいっぺんでやるのだったら、自分自身がないに等しいのだから。知事の見識なり、市町村の見識が必要なんですよ。そこで、問題は、それぞれ一応こんなこと、ペーパーが出るから、数字をみんな用意すると思うのです。3,300の地方団体全部。それはそれで結構だが、県民に情報を伝えると書いた──これも重要な側面なのですが──、もう一つ重要なのは、栗田さん、私に言わせれば、これを横に比較するということなのです。栗田さんのところは、福井はこういうことをやった、隣りの県はこういうことをやったと比較してみると、まるきり視点が違うではないかとか、熱意が違うではないかということが歴然としてくるのではないかと思って、僕はそれをまた期待しているのです。

それで、何を言いたいかというと、一応自主的に計画を立てるのだが、それを第三者が見て、これは福井は立派、東京都はだらしがないとかいうふうな比較ができるような物差しを用意して、第三者がそれぞれものを言える。うちは、あれ、だめよということを。実は、僕は、分権委員会で、それを主張したことがあるのです。どこかに書いてあると思いますが。そういうのがないと、計画をつくり、指示の出しっぱなしになる。各都道府県はやり、それは県内で消化されるが、横には全然わからないということだと、地方分権の進め方の中での行革というのは全体としてわからない。これは栗田さん、どうですか。

栗田委員

各県、市町村で取り組みがいろいろ違うと思いますが、福井県の場合で言うと、10年以上にわたって長期に継続している事業を見直して廃止、あるいは縮減するといったような、いわゆる事務・事業の見直しもやっているし、それから、来年度の予算編成では政策的な経費も含めて、継続事業は10%以上削減するといったようなことで取り組んでいる。それから、定数の削減、これは一昨年から、毎年1%削減する、それを新規の事業に当てるといったようなことで取り組んでいるが、今言われた横の比較は、それぞれの県なり市町村が自分のところで一番力を入れているというものを出して、これを住民の判定に任せるという形で、単に、国が示したものをこなすというのでなくて、それぞれの県や市町村が進めているものを、明らかにすべきではないかという具合に思います。

河野特別委員

自治省に質問したいのだが、今、僕が言ったみたいな第三者の、それは相当権威のある問題でないと、これは勝手な議論になってしまう。印象論、感情論になってしまう。そんなことはだめで、客観資料を用意しながら、比較できるようなことができないものか。

加藤会長

この問題は、先ほど島田さんの問題と同じで、そういう比較をやらないと、なかなか進みませんね。

桑原企画課長

自治省としても、できる限り──例えば、類似団体別のいろいろな数値だとか、そういったものを示すといった形で、横の比較ができるようにしたいと思います。もう一つは、今御紹介した指針の中でも、それぞれの地方団体において、過去の実績との比較や、他の地方公共団体との比較を行うような形も取りながら、住民が理解しやすいような情報提供をするようにということを求めています。

松本(和)委員

町村の立場で申し上げたいと思うのですが、佐賀県の場合も、我々も、行革の委員会で策定をして、横とも連携を取りながら検討をして、行革をやっているところです。

佐野特別委員

地方分権推進委員会の勧告で、一つ、私に理解できなかったのは、要するに、住民の条例制定・改廃に関する直接請求の対象から、税金を除いているという地方自治法の規定です。せめて、それについて再検討するというような文言が入るのかなと思っていたら、全く触れられていない。要するに、地方自治というものの特徴は、住民の直接請求というか、直接民主制を入れているということで、首長の解職・リコールから、議会の解散まで住民の直接請求の対象にしているのに、なぜ税金だけ玄関払いになっているのか。あの規定ができたのは、昭和20年代か、せいぜい30年代の初めぐらい。人心とか、経済も安定していませんし、地方自治の組織も安定していない時代だった。そういう背景もありますが、今は、もう相当そこら辺は安定しているので、この税金について住民の直接請求を認めるということは、課税自主権の尊重にもつながるのではないかと思います。

島田委員

関連質問。先ほどの(資料3)の33ページの第2次勧告の最後のところですが、制限税率を廃止するということを文言の中に書いていますが、これは超過税率の制限税率ですか。それとも、標準税率の下限については廃止するという意味が含まれているのですか。つまり、地方自治体が税率を下げていいということを協議してもいいということが含まれているのですか。それとも超過税率の制限税率を外すということですか。

桑原企画課長

超過税率の制限を廃止するということです。

島田委員

私は、それは、やはり大いに今度考え直さなければいけないので、行革をやった自治体が経費を節減できたら、住民にその成果を還元するのは、税率を引き下げることだと思うのです。それが自由にできるようにしなければ、課税自主権というのは成立しないと思うのです。それを強く申し上げておきたいと思います。

桑原企画課長

35ページから36ページに資料をつけていますが、ここに、それれの税目ごとに、税率がどういうふうな定められ方をしているかということが、左から2番目の欄に書いてあります。ここに書いてある標準税率というのは、地方税法で標準的な税率として、定めていますが、地方団体のそれぞれの事情により、これより高い税率を課税することもできるし、低い税率を課税することもできるということです。それで、高い方だけ、税目によって制限税率というものが設けられているものもあるわけです。今回の勧告は、このうちの個人の市町村民税についての制限税率を撤廃するということです。市町村民税について、標準税率より低い税率で課税することは、現在でも可能です。

石井審議官

分権委員会の勧告について、今、両先生からお話があったので、分権委員会の論議としては、おっしゃるように地方分権を徹底するためには、できるだけ課税自主権を尊重すべきですが、その時に、今、説明があったように、標準税率が定められ、それに上乗せする場合制限税率があって、極端に上げられないようになっているわけですね。それについては、いろいろ論議があって、例えば、法人について言うと、これは制限税率が今後も必要であろうと。法人というのは選挙権を持っていないわけで、もし上げるならば、選挙権を有する住民の皆さまに十分議論をしてもらって、そして、住民の代表が議会にいらっしゃるわけですから、こういう人たちの同意を得て上げるのなら、別に青天井でいいではないかと。そういうところまでいったのですが、一方で、さっき佐野委員がお話のように、それでは、標準税率よりももっと下げるのも自由にしていいではないかという議論については、分権委員会の中で、あまりそういう議論は実はなかった。それは、なぜかというと、私、あまり推測的なことは申し上げられないのですが、一部の委員にお聞きした感じでは、やはり税について、高いか低いかというところだけ直接請求の対象にするというのが、果たしてなじむのかどうか。代議制民主主義というのが基本である中で、税率をもっと下げろというところだけ直接請求にするのが、今の諸情勢から見て、まだそこまでいっていないのかなということで、あえて委員会の中では発言しなかったということでした。

ただ、お一人お一人に対して、なぜ直接請求の対象にしないのか、あるいは、それに賛成されないのかという問題提起が、委員会の中であったわけではないので、それ以上申し上げにくいのですが。

島田委員

すみません。非常に重要な点なので……。

先ほどの御説明だと、標準税率より下げることについては、制限をかけてない、と私は理解したのですが、行政当局が行政改革をして経費を節減したので、大幅に住民にこれを還元したいと言って、地方税率をうんと下げるということは自由だと解してよろしゅうございますね。

石井審議官

今の地方財政法の規定で、標準税率より下回って税率を下げると、地方債を発行する時に、制限を受けるという規定があるのです。佐野委員は、或いはそのことを念頭に置いて言われたのかもしれませんが、そこは、いろいろな考え方はもちろんあると思います。分権を徹底する、地方自治を徹底するなら、それも下げてもいいではないかという議論もあるだろうし、一方、島田委員がおっしゃったのと、ちょっと違うかもしれませんが、例えば、財政規律だとか、行政改革とかいったことを考えた時に、その標準税率で税をとらない団体が、後世の子孫にたくさん借金を残すような地方債を、どんどん起こしていいのかといったような議論があって、今のところ、地方財政法の標準税率までとらない場合は、起債は一定の制限をしますよ、という基本の考え方は存続することになっています。

島田委員

法律に書いてありますか。

石井審議官

法律に書いてあります。そのことについて分権委員会では、その制限を廃止すべきという議論はなかったと、こういうことです。

加藤会長

三重県では、それを工夫してやっているという話を聞いたことがありますが、違いますか。

石井審議官

もし必要でしたら調べてみますが、ちょっと、私、承知していません。

中西委員

この委員会、今年一杯ですが、あと、何回やれるのか。ポイントは、今年は、去年持ち越してきた法人税の引下げを、どこまでやるかということと、どういうスケジュールで、どの程度の数値でやるかということの結論を、どうしても出さなければならないと思っています。

我々産業界は、実質10%の引下げということを、かねてから主張していて、これをどう実現するかということは、一に財源についてきちっとした議論がなされないと、これは架空の議論で終わるわけです。財源ですが、今日、この資料、自治省の方の説明を聞いていて、これは思った以上に大変な、まさに我が国の歳出最終ベースで2/3が地方財政に持っていかれたということで、一般会計からいって大きいところでいくと、やはり社会保障費と、公共事業費と、その次に地方財政です。だから、公共事業費だって、40兆円ぐらいあるのを1割減らしても、4兆円浮いて来るわけです。だから、この地方財政の問題は、私は法人税を論じる場合の代替財源の一つのプールとして、非常に大きな、かなり突っ込んで、我々議論していっていいものではないかと思います。

だから、地方分権推進委員会等、あまり遠慮しないで、さっき、どなたか意見が出ましたが、例えば、私、財投制度の抜本見直しの資金運用審議会のメンバーでやっていますが、どうも最終ペーパーは、郵貯の民営化に切り込まないのですね。理財局になぜ切り込まないのかと聞いたら、いや、これは行政改革会議の領域であって、官庁の再編・統合とか、どうするかは、行政改革会議のテリトリーだから、我々は触れないのだと。だから、郵貯の原資の財投への一括預託債を切るということを言ったのだから、それでいいのだと。こういうことだと思いますが、我々の感覚でいくと、それは一つの考え方でしょうが、やはり入口と真ん中と出口が連動しているから、やはり懇談会が、きちっと郵貯の民営化という方向づけをやらないと、あんな国営で、あれは、まさにごまかしであって、国営で自主運用なんか、果たしてできるのかと。これだけの金融ビッグバンの国際金融界に、どこまで入れるか、これは調和に矛盾していますね。そういう議論を審議会のテリトリーが違うものだから、お互いに遠慮して、野球じゃないが、三遊間抜かれて、そこへ球が飛んでいくということになりかねないので、私は、大いにそこのところ議論すべきだと思います。

それから、地方財政の最大の問題は、ここにも書いてあるように、3,300の各地方自治体間の不均衡をなくして、なるたけ広く、あまねく公平にやろうという、この哲学は、それなりの大事な哲学であるのですが、これが補助金にしても、交付税・交付金にしても、必要以上に過度の平等化を具現しようと思って、そこにどんどん予算をつけるというところから、ものすごいムダが出てきていますね。だから、財政力指数の非常に高いところ、強いところは、これは、いつも言うのですが、立派な美術館や、そういうものがあっていいと思うのです。が、さっき、島田先生も言われたのですが、そういう自助努力、自己責任で努力していなくて、非常に破産寸前の自治体にも、言ってくれば政府は、これは平等にやらなければいけないから、では、補助金をつけようではないかと。償還費は、交付税・交付金で払おうではないかということが行われるのは、一にかかって公平の哲学からきていると思うのです。そこにメスを入れて、我が税調が、これはおかしいという議論を、もう少し自主性、自己責任というものを、個人でも過度の累進制というものがいかんということがはっきりしたのです。やはりフラット化する。同じ論理だと思うのです。それが地方自治体3,300に、ちょうど個人の税制の累進税率を否定して、フラット化をもっていくという国際社会の流れと同じ論理が、これにも適用されなければならんと、私は思います。

佐野特別委員

先ほど、石井審議官からお答えいただいたので、私の方から、あらためてもう一回、私の考えを言わせていただくと、一つは、法人事業税の応益の原則とか、あるいは地域性の原則とか、──これから議論するのでしょうが──しきりに聞くのです。これは、別に法人事業税だけに当てはめる原理ではなくて、地方税の基本的な原理・原則・考え方として考えるべきだと。そういう意味では、税金に対する住民の直接請求を例外的に封じているという、今の地方自治法の規定、これはもう見直す時期ではないかということが一つと、それから、これは、あくまで請求であって、最終的に決めるのは地方の議会なわけで、住民が請求したら、そのとおりになるというものではないわけで、あくまでこうしてくれという住民の希望する権利、これはそろそろ保証してやるべきではないかというのが私の考えです。

竹内委員

毎回、この地方財政の話を聞いていて、いつも財源と支出の割合が1:2と2:1という非常に単純な比較が出てくるが、よく見ると、財源の内地方税の割合が20%以下という非常に過疎な地域がある。それが1/2 ぐらいまで達しているのは非常に稀なケースということになる。つまり自分の財源が1/5 しかないというのは、ほとんど破産状態。途上国で言えば、IMFの支援が必要というくらい、相当ひどい状況です。財源のつかないところに、それだけの社会資本をつくっているということ自体が、基本的におかしい。なぜかと言うと、財源がないということは、人口もいないし、企業もないということで、受益者が非常に少ないということです。その間を埋めるために、つまり課税自主権などによって財源を埋めようとすれば、一人当たりの税負担は、非常に高くなる。高くなれば、ますます若い人はそこから逃げていくという構造。単純に財源が足りないから、もっと税収を地方ごとに上げればいいという議論が地方分権でも感じられるのですが、それは非常に間違った方向だと思います。

つまり、もし、財源が足りないのであれば、少なくとも社会資本の必要額に対して、半分ぐらい財源があるというところまで合併をする。ないしは、市町村の名前を残してもいいが、財政的には合併するという条件のもとで、社会資本計画を練るというようなこと以外に方法はないと思うし、ここにある財政規律とか、行革とか、こういうなまやさしい考え方では、地方分権というのは本当は成立しない。地方ごとの社会資本整備に関する計画能力は極めて低い。つまり、自治省が何をやっていたかわかりませんが、そういう計画能力をきちっと育成するような、コントロール機能が、日本にはない。これを放置してきたことに対して、いわゆる量的な変革ではなくて、何か質的な変革方法として何があるかということを、明確に示していただくしかないと思います。

ここに、民営化の話とか、民間委託という形で書かれていますが、中央では、官民の問題をこれだけ一生懸命やっているのに、地方の方は、ちっとも進んでいない。水道事業、下水道事業、病院、公営企業など様々なところに、税金が、どんどん赤字部分として流れていっている。つまり、非効率的な公営企業にもお金がどんどん流れていく状況になっている。そういうところはバランスシートを出して、民営化できるところは民営化する。赤字のところは、なぜ経営がおかしいのかということを、説明する必要がある。今日の景気対策にもPFIという新しい手法が出てきましたが、最も民営化しやすいところはコミュニティーサービスですね。つまり、財源はないが、高齢化してしまったという市町村サービス産業、公共サービスをこれから展開する可能性はある。どうやったら財源が上がってくるのかを考えないと、マクロの指標やっていても、要するに税源がほしいというような話になってしまうわけです。もっと本質的な、いわゆる社会資本のニーズの問題、そこをきちっとしていただきたいのです。

最後に、もし、社会資本が、ミニマムなものとして必要であるとすれば、恐らくこれは国営事業としてやっているはずです。国の財源としてやっているはずであって、地方が必要だということではない。

石井審議官

先ほど、恐らく財政局からも説明申し上げたのかなと思うのですが、今、竹内委員から、先程、中西委員からも、お話がありましたが、一つは、先ほどもちょっと聞かれた(資料2)の2ページで、地方財政計画に地方の投資的事業が計上されていますが、例えば地方単独が20兆もあるではないかというお話がなされることがあります。念のため申しますと、バブルがはじけたあとも、大変地方は借入金がたくさん増えたのですが、その原因の一つは、もちろん税収が極端に落ちてきたかということもありますが、もう一つは、経済界といってもいろいろなご意見があるように思いますが、経済界を含めて各方面から非常に御要請があって、もっと地方の単独事業も含めた公共事業をどんどん増やしてほしい。そうしなければ、日本の経済はもたないではないか。こういう非常に強い御要請があって、例えば、この地方財政計画をつくる場合でも、やはり税収は落ちているのに、それでは、地方単独事業10%伸ばそうではないか、12%伸ばそうではないか。しかも年度の途中で補正予算を組んで、何兆円も追加した。これをやらないと、景気がよくならないではないかと。当時、竹内先生がどう考えられたか存じませんが、いろいろな御意見があって、そして、政府として、そういうことをやらなければいけない。そこで、しかし地方自治体は、やはり自治体ですから、政府として全国3,300の地方団体に要請をして、地方財政計画でも財政的な保障はするから、ぜひ単独事業は増やしてほしいと要請して伸ばしたというようなこともあるのです。だから、私、地方にムダがないとか、非常にいろいろな面から見て、極めて効率的な運営をやっているとか、そういうふうに言うつもりはありませんが、何かいろいろな要素があるのを、全部まとめて、すべて地方にムダが多いかのように考えておられるとすれば、ちょっと誤解があるのかなぁと。そのことだけ申し上げておきたいと思います。

加藤会長

石井さん、だから、マクロ的に数字を出されたのではだめですよ、ということが、今の議論なんです。

石井審議官

ですから、それは努力はします。

そういう点は、地方財政は御承知のように3,300の自治体の財政の集まりですから、なかなかおっしゃるようには、そんなにうまく説得力のあるような資料ができるかどうかわかりませんが、せっかくの御指摘ですので。

加藤会長

自治省には、そういう全体をやる指導力というのはないわけですからね。これは仕方がないと、私は思っています。(笑)

大田委員

地方分権は、私はやはり財源問題、財政自立が一番大事だと思います。公共事業も住民がコスト意識でやってくれれば、何をやってもいいのですが、今、受益と負担が大きく切り離されているというところに問題があると思うのです。

それと、今の地方交付税の制度は、あまりにも問題が多いから、是非、この税調の場で議論した方がいいと思うのです。だが、来年度税制改正の中で1~2回、こうやって議論しても、それほど簡単な問題ではないと思いますので、ぜひ検討の枠組みを、しっかりと小委員会なり何なりつくって議論をしてほしいなと思います。

加藤会長

その枠組みだけは、今度の時につくっておきたいですね。そして、次の年には確実にそれをやるということだと思います。

松本(和)委員

反論するわけではないのですが、やはり町村の立場でちょっと申し上げておきたいと思いますが、たしかに所要財源があって、自主的な財源が運営できたら、これは一番望ましいと思うのです。しかしながら、ここにデータも出ていますが、町村段階で、財政力指数というのが、もう平均で0.34か0.35ですか、そういう状況なんですね。そういうことで、やはりこれは過疎にもなったろうし、経済力が本当に弱くなって、格差が出てしまったわけですが、そういうことで、何とか我々も頑張ってやっていきたいという気持ちは持っています。ただし、「ハコ物」の関係で批判関係、テレビ関係なんかも出たことがあるわけですが、あれはちょっと行きすぎだという感じも我々は持ちます。しかしながら、その町としてみれば、何とか活性化をさせたいという気持ちで願望があったと思うのですが、ほとんどの町村は、やはりそういうことではなくて、何とか生きがいのある町をつくりたいということでも、ほとんどは努力をしていると思うのです。そういうことで、さっきも民営化の問題が出たのですが、民営化もできるところはやろうということで取り組んでおります。それから、広域で消防とか、大きな投資のかかるところは、やはり広域化に取り組んでいるわけです。そういうことで、いろいろの問題点があるのでしょうが、やはり我々としては、地方交付税、この税の配分によって、何とか賄いを立てながら、やはり運営をやっていくということで取り組んでいるので、その点は、所要の財源を保障する制度なので、お願いしたいと思います。

加藤会長

お気持ちはわかりますが、それがだめだから、今、直さなければならんと言って いるのですから、その点だけ御理解くださいね。

松本(和)委員

はい。

津田委員

具体的に申しますと、例えば小・中学校費、大体教育公務員を百何十万抱えていますが、鹿児島等の知事に言わせれば、小・中学校、高等学校で育てて、巨額の金を注ぎ込んだのに、結局は東京、大阪に持っていかれる、交付税制度などを通じて財政補填をやってもらわなければ困るのではないかという議論が地方団体側からとしてはあるわけです。だから、これが人口集中とか、産業の集中とかの問題に絡んでおる。地方税の方も努力していないかと申しますと、所得税の課税最低限より、もっと低いところまで住民税は課税されて、下げてとっている。そうしなければ、税収が集まらない。特に山村等では、税収がなくなってしまうわけだから、酷なようですが、無理やりに課税最低限を下げている。税制面でもこのような実情にあることをお考えいただきたいと思うのです。

加藤会長

いろいろと御意見がありますが、実は、このあと、地方の法人課税をやらなければなりません。それも含めて、説明も聞いて、それから議論した方がいいのではないか。もう話がどんどん広がっているので、そちらの方へいきたいと思います。いかがですか。

もし、よろしければ、まだ御質問のある方は、そのあとでやっていただくことにして、地方の法人課税について説明をいただきたいと思っています。

[地方の法人課税]

法人課税については、前回7日の総会で、課税ベース各項目の見直しの具体案について、事務局より説明を受けて、皆さま方から多くの意見をいただきました。お時間の都合で御意見をいただいていない委員もおられます。そこで、前回に引き続いて御議論をいただきたいと思いますが、御意見をいただく前に、地方の法人課税について、事務局から説明を受けます。石田府県税課長、よろしくお願いします。

石田府県税課長

「地方法人課税関係」という資料(資料4)で御説明をするので、よろしくお願いします。

先ほど、会長が言われたとおり、前回の総会で地方法人課税については、私の方から、法人事業税の国税の課税ベースの見直しに対する対応と、法人事業税の外形標準課税について御説明したが、本日は、かなり時間が押しているので、5~6分で、外形基準について、資料により、さらに御説明したいと思うので、よろしくお願いします。

簡潔に御説明しますので、1ページをおめくりいただいて、法人事業税の外形標準課税に関する考え方をまとめています。事業税の性格というのは、前も御説明しましたが、地方団体の各種の行政サービスを受けていることから、これらのために必要な経費について分担すべきであるという考え方に基づいて課税している。ということからすると、本来の課税標準というのは、事業の規模ないし活動量を的確にあらわすものが望ましいのではないかというふうに言われているということです。これまでの経緯は、ここに書いてあるとおりですが、今までの考え方としては、外形基準として採用するのであれば、加算法による所得型付加価値を検討の中心にしていたということであるかと思います。

2ページですが、私ども、外形基準を課税標準に導入することの意義について5つにまとめています。1つは、今申し上げた事業税の税の性格の明確化です。2つ目には、赤字法人に対する課税の適正化にも資することになる。3つ目には、昨今よく言われることですが、課税ベースを拡大することにより、赤字も含め広く負担されるようになるので、所得に対する税負担が軽減されることになるということで す。4つ目には税収の安定化、さらに、5つ目には租税回避の減少にもつながるのではないかと考えています。

3ページですが、これまで実施、あるいは検討された基準についてまとめており、戦前の営業税の時代には、業種ごとに定額でしたが、さらに昭和25年の付加価値税では、控除法による付加価値が選択された。翌年になって、控除法は手間がかかるという批判があり、加算法による付加価値も選択できるようにするということですが、この両案とも実施されないまま、廃案になったということです。

昭和39年、43年と税調の答申が出ていますが、この時については、所得金額と、加算法による付加価値額との併用が検討の中心であったということかと思います。全国知事会で、昭和52年に出された案も、大体この案でした。

4ページに、今申し上げた昭和43年の答申についての抜粋を掲げています。第3の3の事業税というところですが、最初は、事業税の性格を論じていますが、もし外形基準を導入するとすれば、何らかの付加価値要素を導入することが適当であるということが昭和39年の答申にあったものだから、それを受けて、具体的な外形基準として、に掲げているとおり、ですが、所得金額と加算法による付加価値を併用する。具体的には、所得金額の方については、法人税法の所得の計算の例による。加算法の付加価値については、各年度の給与、利子、地代、家賃及び法人税法に言うところの所得によるということで、5年間については、この繰越を認めるということです。

5ページですが、税率については、現行の事業税額と同程度の収入を得るということと、かつ所得と加算型の付加価値を併用して、1:1にするということを仮案としてつくったということですが、この仮案については、様々な型について、さらに検討を進めるようにということで、答申が出されたということです。

6ページですが、今申し上げた付加価値の意義ですが、枠で囲っていますが、付加価値というのは、企業が事業活動によって新たに生み出した価値ということでして、これは事業活動に参与された人に分配をされるということになるわけで、これらが事業活動の規模を的確にあらわすというふうにされておったということです。下にイメージ図で書かれていますが、企業というのは、原材料や商品等を投入して、それに機械設備や土地・建物等、労働力を使って、これに新たに付加価値を生み出して、それを、例えば出資をした株主については利潤という形で配分をし、資金を貸していただいた方には利子という形で配分をし、土地等を貸していただいた方には賃借料という形で配分をし、労働を提供した方には給与という形で配分をするということで、生産された付加価値は、このように配分をされると。したがって、付加価値でもいろいろ計算方法はあるわけですが、今申し上げたように、利潤、利子、賃借料、給与をたすことによって加算法による付加価値が算定されると。

一方、売上から仕入を引く、ここにカッコ書きで書かせていただいています。総売上高から固定資産、原材料、商品等の購入費等を控除して付加価値を算定するという控除法もあるわけですが、これは昭和25年の反省もありますが、何を売上高に入れるか、あるいは何を仕入の控除の対象にするかというのが、意外に複雑な面もあるし、あるいは投資一括控除という形をとると、企業の設備投資の状況により、事業税額が大きく変動して、担税力をあらわさない面は出てくるという点が指摘をされていたということです。7ページには、今申し上げた外形基準についての検討を一覧で掲げていますが、先ほど申し上げたとおり、従来から一番上の付加価値が検討の中心であったと。これは、事業の人的・物的の活動量を的確にあらわしているではないかということと、業種による負担の偏りは理論的には小さい。さらには、付加価値のうち加算法による付加価値の方が、控除法による付加価値よりも、設備投資による変動が少なく、納税事務負担も軽いということになったわけです。

理論的には外形基準としては、ここに掲げているような面積等があるかと思います。例えば、面積というのがありますが、これは物的な活動量をあらわしています。例えば、2倍の面積を持つ事業活動が、2倍の活動量をしているのかというのは的確には言えないのではないか、あるいは人的な活動量をあらわしているとは言えない、あるいは比較的大規模な設備を要するような装置型の産業等の負担が重くなるとか、いろいろ複雑な面もあるということです。

資本金については、事業の物的な活動量は、ある程度あらわしているというふうに考えられますが、2倍の資本金を持つものは2倍の活動量かというのは、的確には言えないのではないかということです。人的な活動量もあらわしてはいないということです。

従業員数というのも考えられますすが、これはたしかに人的な活動量をあらわしているかと思いますが、2倍の従業員数を持つものは、必ずしも2倍の活動をしているかということは、これについても必ずしも言えないのではないかということです。しかも、また物的な活動量をあらわしているとは言えないのではないかということです。

売上高というのもあり得ます。これは人的・物的な活動量を相当程度あらわしているということで、昭和39年にも御議論があったわけですが、ただ、やはり一番下のポツですが、税率によって、その影響は異なりますが、どうしても課税の累積が出てくるのではないかということで、従来から一番上の付加価値が検討の中心であったということかと存じます。

8ページに、外国の例を参考のために掲げていますが、諸外国でも地方の応益的な負担ということで、所得課税以外に、地方税として法人の事業活動に対して税負担をいただいている例があります。例えばミシガン州──これは有名な例ですが、シングル・ビジネス・タックスですが、利潤とか、報酬とかをたし上げていくという加算法による付加価値を基本としているということですが、資本取得控除等を設けて、資本取得については一括控除を認めているという形になっています。これはミシガン州の12%の税収を占めているということです。これは売上税と併課するという形になっています。

ドイツについては、有名ですが、営業収益税、営業資本税、合わせてドイツ営業税といわれていますが、営業収益税はもちろん営業収益ですが、それに長期の債務の利子をたし上げたり、あるいは設備賃借料の1/2 をたし上げたりして、かなり事業活動をあらわしている形で税負担をいただくという形になっています。下の営業資本税についても、同様の考え方ですが、聞くところによると、これは来年の1月1日から廃止することになっているというふうに聞いています。現在、営業税については、ドイツの市町村税収の4割を占めているということです。

フランスには、伝統的な営業税の考え方があって、固定資産と給与から一定額をいただくという形で税負担を形成するところの職業税というのがあります。これは、現在でもフランスの地方税収の45%を占めるという、かなり基幹的な税収になっています。

お隣りのオーストリアでも、これは市町村税という非常に紛らわしい名前ですが、市町村税という賃金総額税があって、賃金に一定の控除を行って税率3%をいただくということで、市町村税収の2割ぐらいを占めておるという例があります。

最後になりますが、昨年の法人課税小委員会でも、外形標準課税について御議論をいただいています。9ページに抜粋で掲げていますが、4の法人事業税の外形標準課税というところですが、従来から事業税については、今のような問題から、外形標準課税については、いろいろな意味で、課税の適正化に資すると考えられるというふうに整理していただいています。

ちょっと飛ばして、地方消費税の問題について触れているので、そこを見ると、地方消費税の導入により、事業税に外形標準課税を導入することは必要ないのではないかという指摘があったわけですが、両者は税の性格や課税ベース、税収の帰属地が異なっていること等から、理論的には別の問題であるというふうに御整理をいただいています。

第2章の課税ベースに関する個別的検討ですが、の外形基準ですが、ここに先ほどから御紹介しているとおり、事業税の外形標準について、従来から加算型の付加価値を検討の中心にしてきたということで──おめくりいただいて10ページですが、様々な御意見があったわけです。ですが、これまでの検討経緯等から言って、加算法による所得型付加価値を検討の中心としながら、引続き幅広く検討してはどうかという御答申をいただいているということです。その場合、様々な検討課題があり得るということで、ですが、その他の検討課題で一覧で掲げていますが、例えば、業種別の税負担に変動が生ずるではないか。地域別にも税収が変わってくるではないか。あるいは赤字法人にも税負担が生ずる。それから、他の税との関係をどう考えるかとか、様々な論点を指摘されているわけですが、現在、これらについては、私どもで研究会を設けて、様々な角度から研究をしているという状況です。

島田委員

法人課税の問題は、様々な意味から、今、ものすごく重要なところにきていると思うのです。経済の構造改革、それから、景気対策の面もあるのだろうと思います。今回、平成10年度の改革というのは、32年ぶりの本格的な法人税改革になろうということで、私は、この法人課税改革ということでないと、この改革は完結しない。つまり、地方法人課税の改革と対でないと完結しない。こう思っているわけです。是非、それをやっていただきたい。

具体的な提言としては、こういうことではないかと思うのです。地方法人所得課税を──はっきり言ってしまいますが、法人事業税とか、法人住民税、法人税割、これを撤廃するというくらいのことを書き込むべきだ。そして、その代わりに、今御説明のあった付加価値税型の外形標準課税を導入すると。私は、このぐらいのことは基本線として税調答申に書けるのではないか。ただ、具体的にはどういうふうにするのだというと、たくさんの理論的問題があるので、これは、先ほど大田委員が言われたように、自治省の中でも研究会がおありで研究が進められているわけですが、税調として、小委員会を設けて本格的にやるということが必要ではないかと思うのです。是非、再来年度改正、つまり11年度改正に地方税改正を盛り込む。今から1年の検討期間があるから、徹底的にやる。

メリットについては、今いろいろ御説明いただきましたが、私なりにひと言申し上げたいのは、実は、皆さまのお手許に2枚紙(別紙2)を配っていますが、それを法人税と地方法人所得課税と合わせることによって、10%ぐらいの実質的な税率の引下げというのは十分可能になるということです。

それから、外形標準課税を導入して、地方の税体系を変えることは、経済産業構造の効率化・高度化を促進する。それから、地方税収はもちろん安定します。それから、法人の税負担が公平化する。つまり、法人として地域にそれなりの負担をかけているわけだから、それに応益課税として要求するわけだから公平化する。これは赤字法人課税と言われていますが、そうではないですね。赤字法人課税というのは、私は、言葉の誤用であり、法人税というのは、本来、所得課税ですから、それを赤字法人課税なんて言葉があり得るわけがないので、やめたほうがいい。そうではなくて、あらゆる法人が地域サービスに対して、自治体サービスに対して払うというふうに、言葉を正確にした方がいいだろうと思います。

それから、外形標準課税は、所得にかけると、はるかに透明性が高い。だから法人課税の透明性が高まる。それから、何よりも重要なことは、私がお配りした、この紙の2枚目に書いてありますが、責任ある地方自治の実現に資するのではないかということです。と言うのは、本来、応益性を基本とする地方税に、何の理由かで法人所得課税が紛れ込んでいるというのはおかしいのですね。戦後の経緯で出てきてしまったのだろうと思いますが、もうこの際、それはすっきりさせてしまった方がいい。そうして、応益課税ということになると、法人も個人も納税者として非常に税金に対してうるさくなります。当然のことです。本当にそれだけのサービスを提供しているのかどうか。これがいいのですね。そうすると、自治体の方は、本気になって、内容をよくしよう、あるいは効率化しよう、あるいは説明をしようということが不可欠になるので、非常に切磋琢磨が進んで責任ある地方自治の実現に資する。これが一番重要なポイントだと思います。

具体的には、今、御説明があったように、これを所得型にするのか、消費型にするのか、あるいは帰属をどうするのか、消費税との関係をどうするのか、国境税調整をどうするのか、いろいろな問題が起きるので、これは、是非1年間かけて、じっくり研究する。その時に、先ほどから、ずっと議論になっている地方税体系、地方の自治、地方分権、地方財政、こういったものは全部不可欠だから、法人税改革を突破口として、1年間は必死にやって、これをやらなくても、実は、もうあと1~2回の段階で、今の御説明の外形標準を導入して、地方の法人所得課税を撤廃するということぐらいの基本線は、私は、この税調で出せると思うから、11年度には、それを実行するということを言う。

そのアナウンスメントが出たら、株式市場は大交換をして、反発しますよ。そして、そういうことになるのは、今まで事業税を納めていた企業家は、非常に膨大な税率引下げになるわけですから。逃げていた人は増税になるかもしれませんが、それは逃げるのがいけないので、それは投資計画がはるかに拡大されるということで、一石三鳥にも五鳥にもなる。だから、これは税調の見識が問われるので、是非今度の改革で、11年度には地方法人課税を、このように変えるということとパッケージで10年度改正に書き込むということを提言したいと思います。

吉田特別委員

いろいろな論議の中に、有取税は廃止しろ、地価税は凍結、法人税は10%減税、これは一体財源はどうするのだろうかと。同時に、今年から消費税が5%に上がっている。しかも、所得税の特別減税は廃止している。そのほか、医療費の負担は増えている。だから、一般の庶民と言いましょうか、国民と言いましょうか、これは負担増になってきている中で、今のような主張をしていると、どうも大企業優遇、財産家優遇になりすぎやしないか。税制というものは、やはり国民が理解してくれなければできない問題だろう。そういう意味から見ると、私は、当面は、法人税の課税の税率引下げも、やはりニュートラルという線が、どうしても出てくるのではないかと。これが第1点。

それから、法人税率を引き下げるということは反対しませんが、その時にはやはり基本税率の引下げが行われるのならば、中小企業のための軽減税率も引き下げるべきだと。その次に、問題になるのは、やはり赤字法人に対してどうするかという問題が残ると思います。したがって、私は、今日の話題になっている事業税の外形標準課税というものは、これは検討に値するだろうと思っています。ただ、その時に、事業税と言うと、個人の事業税もあるわけだから、一体、個人の事業税はどうしてくれるのですかと。

何か伺っていると、経過措置というのか、法人事業税を一部残しながら、外形標準課税を新たに検討していく。その時には、黒字法人の方は事業税が減って、赤字企業が負担すると。その時に、個人企業の赤字企業というのは、赤字の個人というのはないのですね。だから、その時の個人の事業税は、一体、どうしてくれるのですか。これはやはり検討課題であると、私は申し上げておきたい。

同時に、私は法人税の改正を論ずる時には、個人企業主と法人事業者とのバランスというものは考えるべきだということは、すでに政府税調の「これからの税制を考える」という中にも明記されているのですね。したがって、今度の法人税の改正を論議する時には、やはり赤字法人問題も絡めて、個人類似法人を一体どうするのか、これは、まさしくみなし個人課税というのか、そういう議論が出てくるのか、それがなければ、個人企業とのバランスをとるためにはどうすればいいのか、私は、前回に水野(勝)委員がおっしゃった、赤字法人課税の中に企業を代表する代表権のある取締役の報酬は、損金に落とさないで、法人課税したらどうかと。これは、私は非常に検討に値すると思っています。なぜならば、個人の事業所得計算の際には、代表権を持つ事業主は報酬がないのですから。したがって、法人・個人とのバランスというものを考える時には、これは一つ検討すべきである。

同時に、そういう法人課税をいたしても、なお、給与という形で本人のふところに入る時には、その給与所得の計算の際に、給与所得控除は、私は1/2 でいいだろうと思っています。現行の一般サラリーマンとは違うはずですね。そういう意味から見ると、逆に言うと、私は、給与所得控除そのものを見直していくことが、法人課税との絡みで必要になってくるのではないか。

同時に、もう一歩進めるならば、私はサラリーマンの方々にも、できれば給与所得控除の見直しに変わるべく必要経費を、もう少し認めてあげて、源泉徴収、年末調整をやめにして、これを申告納税の中に入れてあげるべきだ。税制の仕組みを同じにしてあげないと、いつまでたっても所得税の枠の中でサラリーマンと自営業者の不公平感が残るのです。それが、今度は自営業者の場合には、法人企業との不公平感が残るのです。だから、この辺をひっくるめて、法人課税を検討する際には検討してもらいたいなという感じは持っています。以上、私は、総括的に申し上げました。

栗田委員

初めに、地方税を確保できていないような小さい町村は、事業を進めるのはおかしいではないかといったような御意見もありましたが、まさに、どういう税源を与えるかということが、この税制調査会で議論されるべきことです。地方分権推進委員会の勧告では、非常に抽象的に、地方税の充実・確保を図っていくことが必要といったような程度の、あるいはまた、税源の偏在性が少ない、そして税収の安定性を備えた地方税体系を確立すべきだといったような抽象的な文言ですが、是非この税制調査会で、国税と地方税のあり方、特に、国税からの地方税への委譲、これは法人税も所得税もあるが、そういう税全体として、どうあるべきかということを議論しなければならない。国民の負担というのは、国税と地方税を合計したものが国民の負担だから、国税と地方税について、どう配分していくかという問題ではないかという具合に思います。

それから、法人事業税の外形標準課税について、どうするかという問題ですが、我々地方で行政に携わっているものの立場から言うと、応益課税という事業税の性格から見て、是非、外形標準課税にしていただきたいということと、それから、税収の安定化という意味でも、外形標準課税が望ましいのではないかという具合に思います。

その場合の外形標準として、何をとるかということですが、全国知事会でも主張しているように、やはり加算法ということで、利潤、給与、利子、賃借料等を加算する。所得型の付加価値を導入するということが必要ではないかという気がします。いずれにしても、地方税財源の確保は緊急の課題なので、是非、御検討をお願いし たいと思います。

松尾委員

外形基準を課税標準に導入することの意義について、先ほどの自治省の説明では、結果として、赤字法人に対する課税の適正化に資するということでした。結果としてそうなるかどうかは別として、赤字法人課税は、所得課税である法人課税の議論の枠を超えていると、私は思うわけです。法人事業税に外形標準課税の仕組みを導入する考え方については、私は慎重に対応する必要があると考えます。赤字法人の中には、本当に担税能力のないところがあるわけでして、そういうところにまで課税することは実際問題として可能なのかどうか。よくよく検討してみる必要があると思います。

それから、国際的に見て、やはり日本の法人住民税、法人事業税の負担は、過大であると思います。調整後で16.5%ですからね。これについては、昨年11月の法人課税小委員会の報告では、地方団体の役割、歳出構造を無視した諸外国との単純な比較は適当でないと言っていますが、そんなことを言っていては、法人課税の抜本的改革は、いつまでたってもできないと思うわけですね。法人事業税の性格についても、自治省の説明がありましたが、現在の法人事業税自体、かなり問題が多いことは確かである。国税の法人税の課税標準に定率を課する競合課税の形になっていて、しかも損金扱いされていると。これは、本来、廃止するのが望ましい。この点については、私も島田委員と同じであります。一挙に廃止するのは、もちろん難しいと思いますが、代替財源の問題も含めて、しばらく時間をかけて検討する。小委をつくるのも一つの方法であると、私も思います。

平田委員

今まで、皆さまが地方財政の内容について、いろいろな意見を言われたのですが、実務家の目で見ると、ちょっと視点の欠けているところがあるのではないかと思います。というのは、我々税理士は、地方自治体の監査委員に多数就任して、実際に地方財政の執行の状態を見ているわけです。(資料2)の1ページに、財政の支出の内容が詳しく出ていますが、これはシステム的には、国の補助金が加わって、そこに県と市の地方財源を使って、末端の住民サービスとか、国土の開発とか、何かに使われているのが実態であり、それは、もちろん、地方自治体が自主財源で直轄事業としてやる部分と、国と県・市とが連結をして、例えば1/2 を国が出して、残りの1/2 を県と市で分けるという形での支出とか、負担割合をいろいろ決めた補助金の支出の一マニュアルがあるわけでして、これによって、このような末端の住民サービスまでいくということです。

だから、財政当局の御説明は、非常に地方財政が赤字になる、大変だという御論議をしていただいているが、実を言えば、原因は、そのシステムにあると言えるわけでして、そのシステムを改善しない限りは、首長さんたちは、みんなそのシステムに縛られて、自分の思うことはあまりできない。はっきり申し上げて、自分のところでとれる税金では、ほとんど人件費ぐらいしか賄えないというような市町村が、全国には多いわけです。非常に裕福なところは別にして、すべての自治体が、なかなか今の地方税として課税のできるお金で徴収をして、例えば一番大きいのは固定資産税ですが、固定資産税で賄える経費なんてものは極めて小さい。すべて国のお金、県のお金を当てにする。だから、地方税の交付金などが入ってくるのは当然でして、さらに地方譲与税などを加えて、何とか収支相償う。そういう形で住民サービスをしているということですから、システムを変えない限りは、地方財政の歳出の負担というものは小さくならない。

しからば、税調として税制を論議をする、すなわち収入をどうするかという話よりも、歳出構造を、もう少し地方だけのものに変える。それによって、では、国は直接住民サービスをするようなシステムを考えない限りは、これ、いつまでたってもお話は尽きないだろうと実務家の方では申し上げたいと思います。

それから、法人事業税の問題について、吉田委員から御指摘があったように、法人が赤字であるということについては、法人事業税は課されない問題があって、それに対して個人には赤字がないから、事業税は必ずかかるのですよと。その辺の比較をしてくださいというお話がありましたが、実際、そのとおりですが、実は、個人の事業税には控除額が大きくあって、現行は270万円だから、中小法人の赤字法人との均衡を考えるならば、この現行270万円の控除額を倍くらいにすれば、その辺は均衡がとれると思います。

それから、法人事業税に外形標準課税を入れるかどうかという問題は、我々実務家の目で見ると、やはり赤字法人は所得がないから赤字なんですね。だから、所得に課税をするという議論からいくと、やはり赤字はしようがないという考え方が、我々実務家の判断であります。また、事業税に付加価値で課税するという問題については、ちょっと意見を留保しますが、なかなか難しいのではないかなという気がします。

堺屋委員

ちょっとさかのぼりますが、まず、法人税の問題、地価税の問題というと、すぐ財源論が出るのですが、これに対して国でも地方でも出る方が全然しまりなく出て、今度の「北拓」だけでも何兆という金が出るというような話です。地方でも、事業で失敗して、土地造成等でずいぶん使っているのではないか。この辺の不透明な部分が非常に問題で、金融の財政化というのが、ものすごく進んでいるわけですね。旧国鉄、林野、その他、国もありますが、地方も相当そういう事業の赤字を財政化しているのではないか。これをクリアカットに、オープンに透明にしなければ、なかなかいけないと思います。

第2番目に、少子化時代の地方自治のあり方は、一体、どういうことか。これは、全部今まで右肩上がりの人口増加を前提として、過疎地帯というのは例外だったのです。これから過疎地帯が当たり前でして、人口増加するところは、極めて例外になります。高齢化対策で、税金のことはずいぶん言ってきましたが、少子化対策というのは、ほとんど考えられていません。少子化になると、何が問題かというと、サービスの格差を、どこまで認めるべきかという問題が大変出てまいります。学校の生徒なんかでも、ものすごく数の差が出てきて、少数のところもサービスしていくのかどうか。自治体の数も一体どれぐらいのものがいいのかというようなことを、全体として検討する必要があると思います。毎年毎年収入が減ることを前提とした地方自治はいかにあるべきか。これを早く考えないと、限りなく赤字になると思います。

それで、その観点から言って、地方の課税は応益税に徹すべきだと思うのです。だから、地価税なんかもなるべく廃止して、固定資産税に一本化して応益税にすべきだという気がします。応益税という考え方を採ると、今の法人課税は、赤字法人もとるべきです。その場合に、これは商法法人だけではなしに、民法法人も、宗教法人も、学校法人も全部とるべきなんですね。自治体というのは、利益を与えているというように応益でとるのなら、これは赤字であろうが、黒字であろうが、所得に対してとるということは国のやることでして、地方は完全に応益税としてとるべきだ。それが民法法人まで加えて考えると、付加価値方式というのは大変難しくなってきます。それで、付加価値と従業員数と、それのミックスのような形になるのではないかなという気がします。

それから、次ですが、やはり地方の格差というのは、どんどん大きくなってきます。そうなると、交付税その他譲渡税等は、これを避けられないことだと思うのですが、それの分け方について、現在は人口割と固定資産割と売上割というのがありますが、どういう形をとっていくか、これも急いで検討する必要があると思います。その一番大きな問題は、先行投資をした、例えば道路でも、水道でも、高速道路でも、地下鉄でも、先行投資した大都会というのは、ものすごく有利なんですね。だから、東京で言いましたら銀座線一本で、あとの赤字を全部担いでいるような形になります。銀座線のようなのがないところで、最近、地下鉄ができたところは、ものすごく高くなるのです。高速道路が枝線をつくると、どんどんと赤字になるようなことを言っていますが、今、東京の虎の門から新橋まで道路をつくると、一台4,000円とらなければいけないぐらいの値段になるのですね。それがオリンピックの時につくったから、750円で乗っとると。こういうインフレ利得をどういう具合に分けるかということも、一つの課題だろうと思います。

そういうことをいかなる方法で分けるか、例えば炭素税をとって、ガソリン税をその分引き下げて、それを森林面積に分けて割り振るというような、アメリカが、今、世界的に主張していますが、そういうような方法も考えられるかと思います。それで、応益課税で法人税をとった分は、法人所得税の方の引下げを確実にやってもらいたい。赤字法人にもかけた分は、法人税の引下げをして、やはりこの国際競争、グローバル化の時代に備えて、島田先生のおっしゃるように、10%ぐらいの法人所得税の引下げを実現し、その一方では、応益課税として地方税──そうすると、国税が減って地方税に回りますが、それは私はいいことだと思います。

水野(勝)委員

事業税の外形課税の問題は、長い間、議論されてきた問題で、本当に悩ましい問題であると考えるわけです。応益課税は非常に結構です。そして、その中の代表的なものは、やはり加算型の付加価値ではないかというあたりに議論を集約されるわけですが、それでは、この新しい形での付加価値基準とした外形課税、これは誰が負担をするのかということですが、付加価値と申しますのは、恐らく6割から2/3は人件費です。あとは利潤あり、利子あり、配当あり、地代と、こういったものであろうと思いますが、そうすると、付加価値に課税するということは、付加価値に御負担を求めるということになるとすれば、その2/3 、6割は人件費に御負担を願う。そうすると、事業税に外形課税を入れたので、サラリーマンの方からは、全部その分を源泉徴収なり何なりしていただきますということになるのが自然なのかなと。そこから利子、地代、──利潤は今までも課税されていたわけですが、その利潤部分、利益分の負担は、今までの1/5 なり、1/6 になると。そういうことになるのかなと思うわけです。今まで利潤が負担していた部分を賃金に御負担を願うということで、サラリーマンに御負担を願う、源泉徴収なり賃金の引下げなりで御負担を願うということが、それが、果たして現実に可能なのかどうかということでして、おそらく、これは今までの法人の儲けが負担していたものを、人件費に大半を御負担、サラリーマンに御負担を願うということになるのは、必ずしも、これは現実性が期待できないのではないかなという気がするわけです。理論的には、もうそういうことで結構なんですが、現実にどうだろうかと。

それならば、この新しい形の外形課税は、どこに転嫁を願うのか、やはり4兆円、5兆円の税金ですから、現実に、こういうシステムがあった場合に、どなたに、どのように転嫁をしていただくのか、どのように負担配分をしていただくのかは、これは立法者として明らかにせざるを得ない。とすると、付加価値に応じてということは、なかなか難しいとすれば、これはやはりコストであるとして価格に転嫁をするということで御説明をすることになるのかなと。そうすると、これは、結局、消費課税ということで価格に転嫁されていって、消費課税になるのではないか、経済的にもそういうことになるのかなと。もし、事業者がすべて付加価値に対する課税を価格への転嫁ということで前提にしていったら、そういうことになるわけですから、そうなると、消費税との関連というのは、一体どうなるのかなということです。

どこへ転嫁するか、どのように転嫁するかは、それは事業者の判断だと言ってしまえば、それまでですが、5兆円の税金を議論する時に、それは、もう転嫁は御自由です、ということはできないのではないか。何らかの形で立法者が、そこを説明しなければいけない。付加価値に応じた負担ということが現実に無理なら、やはり価格、価格であると消費税との関連はどうかということです。

それと、もう一つは、加算型の付加価値ですと、違ってくるのは設備投資の部分が消費型付加価値税と違うという点はありますが、今後、設備投資のウエイトが下がってくるとすれば、あまりそこは実質的に違いがなくなる。そうすると、納税者としては、たしかに税の性質は全く違うものですが、似たようなものを払うということは、納税者に対していかがなものか。そういうことから、その点も含めて考えると、現実的には、これは地方消費税として対処していくということが一つの方法として考えられるわけです。

しかし、これにしても、法人の今まで負担していたものを消費者に全部負担替えをするのかという議論になって、なかなか難しい問題ではありますが、では、価格に転嫁すると言えば同じことだし、人件費に転嫁すると言えばサラリーマンに説得を願うということは、やはり同じ難しい問題があるということですので、これは、かなり時間をかけて検討する、検討するにしても、現実的な一つの方向は消費税、地方消費税として対処するということが、どうも一つの現実的な方向として出てくるのではないか。それは、なかなか難しいかもしれませんが、説明をしていけば、御理解を願えるのかもしれない。それは加算型を説得していこうとする努力と、そんなに違わないのではないかなという気もするわけですが、なかなか難しい。これは、時間をかけて検討されていい問題ではないかと思うわけです。

これと、ちょっと違う問題ですが、先ほどお話のあった赤字法人課税の問題については、前回、私も申し上げましたが、私が前回申し上げたのは、赤字法人課税として、赤字法人だけについて代表権のある役員については報酬を損金にしないというのでなくて、赤字だろうと黒字だろうと、法人の代表役員の報酬については賞与と同じで、これを損金不算入にする、そういう考え方でして、端的に赤字法人課税として申し上げるわけではなくて、賞与と同じ扱いにすれば、その点は、ある意味での外形課税的な要素を持っているのではないか。しかし、これは別に赤字法人に限るわけではなくて、法人企業一般についての考え方です。

岩瀬特別委員

赤字法人の問題について申し上げたいのですが、地方税は応益税だということでもって、赤字と言えども負担すべきではないかという意見があるが、それはそのとおりであって、現行の制度のもとでも言うまでもなく、赤字法人も、均等割の道府県民税と市町村民税を払っている。何か世の中、新聞を見ていると、赤字法人性悪説のように、ただ乗りしていると言わんばかりの論調が多いのですが、実際は、そういうことで、均等割でもって、ちゃんと地方税は負担しているのだということが一つと。

それから、やはり前にもここでも御意見が出ましたが、実際に赤字法人というのは担税力が欠けているわけですね。赤字法人についてはいろいろ問題があります。しかし、うまいこと、立ち回ってやっている赤字法人と違って、世の一般的な赤字法人というのは一生懸命やって、どうしても赤字になっている。そういったところに担税力を求めることができるのかと。現在の赤字法人も日本の風土の中で、雇用を守って、その雇用を守ることを通して、個人の所得税の増収ということでやっているわけだし、個人を通して地方の消費等も、それなりにやっている。あるいは、雇用を守らないで失業保険をとるようなことをさせないで、ちゃんと会社でもって見てるということからすると、赤字法人と言えども、それなりの機能を果たしているということです。赤字法人を考える場合には、そういう機能を果たしているということについても、ひとつお考えいただきたいと思います。

河野特別委員

私、会長に提案したいのですが、今出た議論というのは、十分に予測された外形基準導入論に対する支持から、懐疑説から、反対説に至るまで全部あるのです。これは前にもやったから、全部わかっている話なんです。それが、ここで、たまたま40分やってみたら、あらかた出たということが実態なんですね。実は、それほど難しい話です。

それで提案したいのは、今度12月の中旬に、我々答申を書きますが、そこで、この問題を書くことは、できれば──できればですよ──法人事業税というものを見直そうと。ただし、どういう方向でやるかということについては、こんなに意見が違うのですよ。簡単に決まるわけはないのです。実は、どういう選択があるかということを我々考えようということなんですから。だから、年末に書くことはそういう大きな構えで、この問題に取り組むよと。考えてみれば、僕の経験では歴史的な取組み方なんです。政府税調がこの問題をここまで本気になって取り組むのは、それだけの意味があるのですよ。その代わり、あまり短兵急に、これだけでなくてはだめだと一人一人が言ったら、この話はとたんに崩れる。この話はガラスみたいな話だ。だから、私は大きく構えて、来年1年間しっかり勉強するということを書くこと、そこまでだったら誰も問題ないと思うのです。行く先どうなるかわかりませんから。それを書いて、できれば来年一杯で、この問題、ケリをつけたいという意思を表明することが一番いいと思うのです。

もう一つだけ、さっき、一番最初に島田さんが言われたから、同じことを言っておきたいのだが、昨日の株式市場の反応というのは、本質的なところに手を入れれば、マーケットもわかるという話の一つの典型例なんですね。今、ここに党の方の景気対策が、ぞろぞろ配られているが、これはどうせ反応が鈍いと思うのです。それはしようがない。逆に、12月中旬の我々税調が出す答申に、すべての注目が集まったという形に幸か不幸かなってるわけだ。だから、僕は、例えば法人税について言えば、筋の通った2年がかりの、大がかりの話をやるのだという熱意を出すことが、極めて重要だと、こう思います。

水野(忠)委員

法人事業税の外形標準化について、いろいろ御意見を伺っていますが、一つ、加えると、御説明があった課税の根拠としての収益活動、あるいは企業の経済活動の規模に応じて負担を求める。この考え方は非常に昔からある考え方で、我が国では営業税にさかのぼるわけですが、先ほど御紹介あったように、ドイツでも営業税、フランスでも職業税と、こういった形で求めているわけです。

ところが、問題は、外形標準、何をもって課税の対象とするかということですが、これは実際には所得税より古い歴史があって、収益力、これを課税の根拠にするわけなんですが、収益力を測定する場合に、まだ所得というものが捕捉できなかった時代のものであったわけですね。現実には、所得課税法人税というものが出てきましたので、国税として、かなりのものはそちらへ移って、今度は地方税としての営業税、外形標準課税ということになってきたわけですが、さらに、その流れの中で、新しい外形標準の基準として付加価値というものが浮かび上がってきた。

国際的整合性ということが最近言われていますが、まだ全世界的にはない税制ですが、ドイツの営業税に代わって、これを付加価値税にするという議論はあるし、フランスの職業税、これも外形標準として付加価値を採用したらどうだと。どの国でも行われている議論であるわけです。アメリカでは、ミシガン州が一部この付加価値税的な考え方を採用していますが、そういう考え方から見ると、我が国で法人事業税を外形標準として付加価値を採用する。これは国際的・世界的な流れ、少なくとも、どの国でも検討されている上に立った議論ですので、先ほど御議論が出ましたが、検討を続けていくということは必要ではないかと思っています。

加藤会長

大分議論が出尽くしてきたような感じですが、この議論は、また次の次の会に採り上げることになります。したがって、今日は、この程度にさせていただこうと思いますが、次回は28日の午後2時から開催して、10年度改正の審議に入るということになります。例年だと、12月の中旬には年度改正答申のとりまとめという段取りになるかと思っています。

なお、金融課税小委員会では、中間報告の最終的な詰めをしている段階でして、できれば、その報告も受けたいと思っています。その後の日程は、原則として火曜、金曜週2回開催することを予定しています。具体的には、第10回総会が12月3日午前10時からですので、昼食を用意しています。それから、11回総会は12月5日午前10時から、これも昼食を用意しています。12月3日は水曜日で、12月5日は金曜日です。それから、12回総会は12月9日火曜日午後2時からです。それから、13回の総会は12月12日金曜日の午後2時ということを予定しています。

今日は、実は、これ以外に、年金課税の問題の説明を受け、さらに議論したかったのですが、その時間がもうございませんでした。したがって、これは、また次の機会に採り上げていきたいと思っていまして、そういう意味でこの問題を残したことで、先ほど、今井さんが適格年金のことをおっしゃっていましたが、これは残った問題として、また採り上げたいと思っています。以上で終わります。どうもありがとうございました。

〔閉会〕